サイト内検索|page:132

検索結果 合計:35100件 表示位置:2621 - 2640

2621.

乳がんdose-dense PTX療法、Peg Gは安全に省略可能/日本臨床腫瘍学会

 乳がん周術期のdose-denseパクリタキセル療法は好中球減少症を引き起こすリスクが高いため、予防的に持続型G-CSF製剤ペグフィルグラスチム(Peg G)が投与されることが多い。今回、Peg Gを省略したdose-denseパクリタキセル療法であってもスケジュールを遅延させることなく治療の完了が可能であり、安全性に問題はなく、薬剤費が削減できることを、東北労災病院の大竹 かおり氏が第22回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2025)で発表した。 これまでの報告で、パクリタキセルを高用量で投与する場合であってもPeg Gを有効かつ安全に省略できることが示唆されている。Peg Gの有害事象や薬剤費というリスクを低減できる可能性があるが、東アジア人では化学療法による骨髄抑制が生じやすい傾向があるため、東アジア人におけるエビデンスが求められていた。そこで大竹氏らは、東北労災病院の乳がん患者のデータをレトロスペクティブに解析し、dose-denseパクリタキセル療法でPeg Gを省略した場合の有効性と安全性を評価した。 対象は、2019年2月~2024年3月にdose-dense EC療法を行い、dose-denseパクリタキセル療法を4サイクル完了した患者で、投与スケジュール、有害事象、相対用量強度(relative-dose-intensity)、薬剤費をPeg G投与群とPeg G非投与群で比較した。なお、Peg G非投与群で好中球減少症が発現した場合はPeg Gの投与が認められた。 主な結果は以下のとおり。・合計48例の患者が解析対象となり、Peg G投与群が15例、Peg G非投与群が33例であった。年齢中央値は49歳(範囲:31~66)、全例がアジア人で、ベースライン時の特性は両群でバランスがとれていた。・相対用量強度は両群ともに高く、投与群は0.961、非投与群は0.985で両群間に有意差は認められなかった(p=0.125)。・各サイクルの投与予定日に、非投与群で好中球減少症のためにPeg Gの投与が必要になったのは最大(3サイクル目)で12.1%であった。・各サイクルの1日目に好中球絶対数が1,000/µL超であった割合は、非投与群では4サイクル目に87.9%に低下したが、両群間に有意差は認められなかった(p=0.796)。・パクリタキセル投与を7週間以内に4サイクル完了した割合は、両群で同等であった(p=0.561)。・投与群および非投与群で発現した非血液毒性は、疼痛がそれぞれ87%(うちGrade3以上が7%)および91%(45%)、浮腫が47%(0%)および48%(3%)、神経障害が87%(7%)および91%(27%)であった。・4サイクルの平均薬剤費は、投与群が56万4,681円、非投与群が17万9,214円であり、両群間に有意差が認められた(p<0.001)。 これらの結果より大竹氏は、好中球などの血液検査の必要性を強調したうえで、「アジア人に対する乳がん周術期のdose-denseパクリタキセル療法において、Peg Gの省略は有望な選択肢となる可能性がある」とまとめた。

2622.

包括的高度慢性下肢虚血、最も有効な血行再建術とは/BMJ

 大腿膝窩動脈領域の血行再建術(±膝下血行再建術)を要する包括的高度慢性下肢虚血患者において、薬剤を塗布していないバルーン血管形成術±ベアメタルステント留置術(PBA±BMS)と比較し、薬剤塗布バルーン血管形成術±BMS(DCBA±BMS)および薬剤溶出性ステント留置術(DES)はいずれも有意な臨床的有益性をもたらさないことが、英国・バーミンガム大学のAndrew W. Bradbury氏らBASIL-3 Investigatorsが実施した「BASIL-3試験」で示された。研究の詳細は、BMJ誌2025年2月24日号で報告された。英国の第III相非盲検無作為化優越性試験 BASIL-3試験は、大腿膝窩動脈領域の血行再建術を要する包括的高度慢性下肢虚血患者において、臨床的に最も有効な血行再建術を明らかにすることを目的とする実践的な第III相非盲検無作為化優越性試験であり、2016年1月~2021年8月に英国の35施設で患者を登録した(英国国立衛生研究所[NIHR]医療技術評価[HTA]プログラムの助成を受けた)。 外科的血行再建術よりも大腿膝窩動脈領域の血行再建術(±膝下血行再建術)を希望する包括的高度慢性下肢虚血の患者を、初回血行再建術として、大腿膝窩動脈領域のPBA±BMS、DCBA±BMS、DESのいずれかを受ける群に、1対1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要アウトカムは大切断回避生存とした。大切断回避生存は、対象肢の大切断(足首より上部の切断)または全死因死亡のうちいずれかが先に発生するまでの期間と定義し、生存時間分析を行った。全死因死亡、大切断にも差はない 481例(平均年齢71.8[SD 10.8]歳、女性167例[35%])を登録し、PBA±BMS群に160例、DCBA±BMS群に161例、DES群に160例(同意が得られなかった1例を除外した159例を解析に含めた)を割り付けた。全体の追跡期間中央値は2.1年だった。 ITT集団における大切断または死亡は、PBA±BMS群で160例中106例(66%)、DCBA±BMS群で161例中97例(60%)、DES群で159例中93例(58%)に発生した。補正ハザード比[HR]は、DCBA±BMS群とPBA±BMS群の比較で0.84(97.5%信頼区間[CI]:0.61~1.16、p=0.22)、DES群とPBA±BMS群の比較で0.83(0.60~1.15、p=0.20)と、いずれも有意な差を認めなかった。大切断回避生存期間中央値は、PBA±BMS群3.16年、DCBA±BMS群3.52年、DES群4.29年だった。 全死因死亡(PBA±BMS群60%、DCBA±BMS群56%、DES群50%)および大切断(14%、11%、16%)にも、PBA±BMS群との比較で有意な差はみられなかった(DCBA±BMS群vs.PBA±BMS群の死亡のHR:0.86[97.5%CI:0.62~1.20]、DES群vs.PBA±BMS群の死亡のHR:0.79[0.56~1.11])。重篤な有害事象の頻度は同程度 重篤な有害事象は、PBA±BMS群で16例(10%)、DCBA±BMS群で9例(6%)、DES群で17例(11%)に発現した。死因の多くは複数の因子によるもので、併存疾患に関連することが多かった。 著者は、「最近の系統的レビューとメタ解析により、BASIL-3試験は、包括的高度慢性下肢虚血患者に対する3種の血管内治療の臨床的有効性を比較した唯一の公的資金に基づく無作為化対照比較試験であることが確認されている」「これらの結果は、包括的高度慢性下肢虚血患者の管理では、大腿膝窩動脈領域の血管内血行再建術として、薬剤塗布バルーンおよび薬剤溶出性ステントの役割を支持しない」としている。

2623.

長年にわたるヨーグルト摂取は大腸がんリスクを低下させる?

 長年にわたるヨーグルトの摂取は、特定のタイプの大腸がんの発症リスクを低下させる可能性のあることが、米ハーバード大学T.H.チャン公衆衛生大学院および米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院の鵜飼知嵩氏らによる研究で明らかになった。長年にわたりヨーグルトを週に2回以上摂取している人では、腫瘍組織内にビフィズス菌が検出されるビフィズス菌陽性の大腸がんの発症リスクが20%低いことが示されたという。この研究結果は、「Gut Microbes」に2月12日掲載された。 人体のマイクロバイオーム(微生物叢)に焦点を当てた新たな研究では、ヨーグルトに含まれる生きた細菌の摂取が健康に有益な可能性のあることが示唆されている。鵜飼氏らは今回、ヨーグルトには一般的にビフィズス菌が含まれていることから、長期間のヨーグルト摂取が、組織中のビフィズス菌の量に応じて、腫瘍のタイプごとに大腸がんの発生と異なる関連を示す可能性があるとの仮説を立て、検討した。対象は、1976年に30〜55歳の女性看護師を登録して開始されたNurses’ Health Study(NHS)と1986年に40〜75歳の男性医療従事者を登録して開始されたHealth Professionals Follow-up Study(HPFS)から抽出した13万2,056人であった。対象者は、2016年1月1日まで追跡された。 こうした研究背景について、論文の共同責任著者の1人であるハーバード大学T.H.チャン公衆衛生大学院およびブリガム・アンド・ウイメンズ病院の荻野周史氏は、「われわれは、長期にわたる食生活やその他の要因が人体の組織に与える影響、例えば、特定の細菌種の有無により組織にもたらされる影響に違いがあるのかなどを調べている。このような探索的なアプローチにより、食事と健康アウトカムとの関連を示すエビデンスの信頼性を高めることができる」と述べている。 追跡期間中に3,079人が大腸がんを発症していた。このうち、腫瘍組織中のビフィズス菌量についての情報が完備したのは1,121人で、うち346人(31%)はビフィズス菌陽性、775人(69%)はビフィズス菌陰性だった。解析の結果、大腸がんのリスクとヨーグルトの摂取量との間に統計学的に有意な関連は認められなかったものの、週に2回以上ヨーグルトを摂取する人では、1カ月の摂取頻度が1回未満の人に比べてビフィズス菌陽性の大腸がんリスクが20%低下する可能性が示唆された(調整ハザード比0.80、95%信頼区間0.50〜1.28)。一方、ビフィズス菌陰性の大腸がんリスクについては、明確な低下は認められなかった(同1.09、0.81〜1.46)。このようながんのタイプによる関連の違いは、近位大腸がん(盲腸、上行結腸、横行結腸)においても確認された。過去の研究では、右側に発生する近位大腸がんでは、左側に発生するがんより予後が悪いことが示唆されている。 荻野氏は、「われわれの研究は、ヨーグルトが特定のがんに対して潜在的に有益な可能性を示す独自のエビデンスを提供している」と述べている。また、鵜飼氏は、「ヨーグルトやその他の発酵乳製品は、長い間、胃腸の健康に有益だと考えられてきた。本研究結果は、この予防効果がビフィズス菌陽性大腸がんに特有のものである可能性を示唆している」との見方を示している。

2624.

真剣交際の準備はできている?友人の意見が重要

 誰かと真剣に交際する準備ができているかどうかは恋愛関係の始まりや維持に重要な役割を果たすが、新たな研究で、「真剣交際の準備ができているか(コミットメント・レディネス〔commitment readiness〕)」についての自己評価と友人の評価は高確率で一致することが明らかになった。米ミシガン州立大学(MSU)のWilliam Chopik氏らによるこの研究結果は、「Journal of Social and Personal Relationships」に2月1日掲載された。 この研究では、4人の友人グループ(合計193グループ、参加者772人)に自分自身と相手のコミットメント・レディネスと愛着スタイルについて評価してもらい、自己評価と友人による評価の一致度や、不安定な愛着スタイルを持つ人は「真剣交際の準備ができていない」と見なされるのかを検証した。研究グループの説明によると、愛着スタイルは安定型と不安定型に大別され、不安定型の愛着スタイルを持つ人は、通常、不安や回避のレベルが高いという。 分析の結果、コミットメント・レディネスに対する自己評価と友人による評価は高確率で一致することが明らかになった。また、友人から、愛着スタイルにおいて回避傾向や不安傾向が強いと評価された人は、「真剣交際の準備ができていない」と見なされることも示された。さらに、自分自身のコミットメント・レディネスに対する評価は、友人のコミットメント・レディネスに対する評価に影響することも示された。このように、仲の良い友人は自分と似たパーソナリティを持つと考える傾向を「想定された類似性」という。 Chopik氏は、「友情は、健康や幸福感から恋愛まで、生活の多くの部分に影響を与える。自分が誰とデートすべきか、すべきでないかを決める際にも友人が影響を及ぼす。友人はまた、恋愛関係を円滑に進める手助けをしてくれることもあれば、さりげなく、あるいはあからさまに邪魔することもある」と述べる。その上で同氏は、「友人のコミットメント・レディネスに対する評価が、友人が恋愛関係を築く手助けをしてくれたり妨げたりする理由を説明する要因となる可能性が高い」との見方を示している。 Chopik氏と、論文の共著者であるMSU心理学分野のHyewon Yang氏は、「この研究が、恋に悩む人に、友人の意見が自分の恋愛観にどのような影響を与えるのかをより良く理解する手助けとなることを期待している」と話している。Yang氏は、「友人は、相手の紹介からアドバイスまで、恋愛関係を築き、維持する上で重要な役割を果たす。しかし、友人が自分をどう見ているかを知る機会はほとんどない。この研究が、自分のコミットメント・レディネスについて、社会的ネットワークの観点から包括的に理解する助けとなり、また、恋愛関係を追求し、発展させ、維持する上で友人が果たす重要な役割を強調するものになることを願っている」と話している。

2625.

歯周病治療で糖尿病患者における人工透析リスクが低下か

 歯周病を治療している糖尿病患者では、人工透析に移行するリスクが32~44%低いことが明らかになった。東北大学大学院歯学研究科歯学イノベーションリエゾンセンターの草間太郎氏、同センターの竹内研時氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of Clinical Periodontology」に1月5日掲載された。 慢性腎臓病は糖尿病の重大な合併症の一つであり、進行した場合、死亡リスクも高まり人工透析や腎移植といった高額な介入が必要となる。したがって、患者の疾病負荷と医療経済の両方の観点から、慢性腎臓病を進行させるリスク因子の同定が待たれている。 歯周病は糖尿病の合併症であるだけでなく、糖尿病自体の発症やその他の合併症の要因でもあることが示唆されている。また、歯周病と腎機能低下との関連を示唆する報告もされていることから、研究グループは糖尿病患者における定期的な歯周病ケアが腎機能低下のリスクを軽減または進行を遅らせる可能性を想定し、大規模な糖尿病患者のデータを追跡した。具体的には、歯周病治療を伴う歯科受診を曝露変数として、人工透析に移行するリスクを後ろ向きに検討した。 本研究では、40~74歳までの2型糖尿病患者9万9,273人の医療受診データ、特定健診データが用いられた。2016年1月1日~2022年2月28日までの期間に、2型糖尿病を主傷病としていた患者を登録した。 9万9,273人の参加者(平均年齢は54.4±7.8歳、男性71.9%)における人工透析の発生率は1,000人あたり1年間で0.92人だった。交絡因子については、年齢、性別、被保険者の種類、チャールソン併存疾患指数、糖尿病の治療状況(外来の頻度、経口糖尿病治療薬の種類、インスリン製剤使用の有無、治療期間)、健診結果(高血圧、高脂血症、蛋白尿、HbA1c)、喫煙・飲酒といった生活習慣などが共変量として調整された。 交絡因子を調整後、人工透析開始のハザード比(HR)を分析した結果、歯科受診をしていなかった患者と比較して、1年に1回以上歯周病治療を受けている患者で32%(HR 0.68〔95%信頼区間0.51~0.91〕、P<0.05)、半年に1回以上治療を受けている患者で44%(同0.56〔0.41~0.77〕、P<0.001)、人工透析開始のリスクが低いことが示された。 研究グループは本研究の結果について、「これらの結果は、糖尿病性の腎疾患の進行を緩和し、患者の転帰を改善するためには、糖尿病治療に日常的な歯周病治療を組み込むことが重要であることを示唆している。また糖尿病患者の管理における専門医と歯科の連携欠如は以前より報告されており、本研究でも患者の半数以上が歯周病ケアを受けていなかった。今後、糖尿病患者の健康を維持するためには、専門医と歯科のさらなる連携が必要と考える」と総括した。なお、本研究の限界について、登録データは企業が提供する雇用保険に加入する個人のみが含まれていたことから、研究の参加者は日本人全体の特徴を表していない点などを挙げている。

2626.

「nanacoギフト」交換レート変更のお知らせ

このたび、ケアネットポイントの交換先である「nanacoギフト」につきまして、2025年4月1日(火)11:00より、交換レートを以下のとおり変更いたします。【変更前】 3月31日(月)13:59まで100pt=100円分【変更後】 4月1日(火)11:00より100pt=95円分※2025年3月31日(月)13:59までにお申し込みいただいた分は、現行のレート(100pt=100円分)で交換いたします。※2025年3月31日(月)14:00~4月1日(火)11:00 に、ポイント交換システムのメンテナンスを実施いたします。状況により、メンテナンスの時間帯は前後する場合がございます。ご利用中の皆さまにはご不便をおかけしますが、何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。ケアネットポイントの交換はこちらよりお手続きください。https://point.carenet.com/exchange※ログインが必要です

2627.

介護が必要となった主な原因(男女別)

介護が必要となった主な原因(男女別)視覚・聴覚障害1.1%呼吸器疾患3.4%視覚・聴覚障害 1.0%呼吸器疾患 1.3%脊髄損傷 1.6%その他11.4%脳卒中25.2%脊髄損傷3.4%男性がん3.9%認知症13.7%パーキンソン病5.4%n=3万4,777人パーキンソン病2.5%女性骨折・転倒17.8%脳卒中11.2%関節疾患12.7%高齢による衰弱8.7%骨折・転倒6.6%認知症18.1%がん 2.1%心臓病4.4%糖尿病5.2%関節疾患 心臓病5.4% 6.5%その他10.0%糖尿病 1.7%高齢による衰弱15.6%n=6万5,223人厚生労働省「2022(令和4)年国民生活基礎調査」第023表「介護を要する者数、介護が必要となった主な原因・通院の有無・性・年齢階級別」を基に作成Copyright © 2025 CareNet,Inc. All rights reserved.

2628.

オーバードーズ対応マニュアルで薬剤師がゲートキーパーに!? 【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第147回

若年者が市販薬を過量服用する「オーバードーズ」が依然として社会問題になっています。市販薬の乱用は昔からあった問題ですが、近年はとくにSNSなどで商品名や方法・体験談が流布され、若年者が軽い気持ちで市販薬の乱用に陥りやすい状況になりました。オーバードーズを繰り返す若年者たちの一部は、万引きによって市販薬を調達していることも確認されており、数ヵ月前には警察から販売時の注意や通報などの協力依頼がありました。薬剤師も薬を扱う専門家として、積極的に関わらなければいけない問題です。しかし、あの手この手で入手しようとしてくるなか、「じゃあ、どうすれば…」という薬剤師も少なくないのではないでしょうか。厚生労働省は2025年2月20日に市販薬の乱用防止を目的とした対応マニュアル「ゲートキーパーとしての薬剤師等の対応マニュアル―OTC医薬品を販売する薬剤師・登録販売者、及び学校薬剤師向け―」を公開しました。なかなかグッとくる題名です。オーバードーズに対する薬局での対応を、(1)気付く、(2)関わる、(3)つなぐ、(4)見守る、という4フェーズに分け、それぞれの対応について記載しています。どこにどういう風に相談するのかということも記載されており、大変実践的です。私が今回のマニュアルで勉強になった3点を紹介します。気付いたらどうする?気付いたら販売しない、という判断がすぐにきっぱりとできればよいのですが、なかなかできない場合もあります。そういう場合は、販売するとしても声掛けをしたり、リーフレットを渡したりするなどの対応フローや声掛けの具体例も記載されています。声掛けの例としては、その状況により「今までも複数購入いただいていましたか?」「眠れていますか?」という確認するものから、「これまでつらかったですね」「頑張ってきた自分自身に優しくしてあげてくださいね」という寄り添うもの、「相談できる医療機関や相談窓口はいくつかありますよ」という相談先を提案するものまでさまざまなものが記載されています。ゲートキーパーは1人で支援することではない薬剤師や登録販売者がゲートキーパーになることを期待されてはいるのですが、緊急時には身を守ることが第一ということも記載されています。また共感疲労に陥らないことも重要と注意されています。そのような場に遭遇したときはドキドキしますし、ベストな行動がとれるかどうかわかりません。後でもっとこうすればよかったと思うかもしれません。店舗内や地域でコミュニケーションをとって仲間を増やしながら、抱え込むことなく販売者自身の心身のケアをすることも大事です。日常が大事販売現場における見守りとして、「さりげないコミュニケーションを販売者側からとるスタンスが重要」とし、来店時のあいさつや購入時の「お大事に」などの一言を付け足すことも見守りにつながるとされています。困ったときに相談できる存在を知ることが当事者にとって大きな助けになるからです。これは簡単に始められそうですね。また日常的に購入者の様子をよく観察し、店舗内で共有し合うことが気付きの第一歩ともされています。高校生全体の1.6%が過去1年以内にオーバードーズの経験があると推計されています。高校生の約60人に1人、つまり2クラスに1人くらいの割合です。軽い気持ちで始めただけなのに抜け出せなくなる、次の依存物質に手を出す…などさまざまな社会問題になる可能性もあります。厚生労働省のホームページには、「薬局等の薬剤師・登録販売者の皆さまは、乱用に対する知識を深め、適切な対応を行うことにより、乱用を防止し、乱用に苦しむ方を救うゲートキーパーとなってください」とあります。薬剤師や登録販売者がゲートキーパーとしての役割を果たすために、まずはあいさつから始めてみてもよいかもしれません。

2629.

慢性消化不良【日常診療アップグレード】第25回

慢性消化不良問題27歳女性が6ヵ月前からの消化不良を主訴に来院した。時々、胃が焼けるような感じがし、食後に胃の膨満感がありげっぷがでるという。体重減少はない。バイタルサインを含め、診察所見に異常はない。血液検査を施行したが、貧血や肝機能障害はない。プロトンポンプ阻害薬(PPI)を処方した。

2630.

第257回 アスピリンのがん転移抑制の仕組みが判明

アスピリンのがん転移抑制の仕組みが判明アスピリンが免疫を促進してがんの転移を抑制する仕組みが判明しました。原発がんの治療は進歩しました。しかし、早期がんの段階で幸いにも治療できたところで多くの患者はやがて転移を来します。COX阻害薬であるアスピリンの連日服用と固形がんの肺、肝臓、脳などへの転移が36%低くて済むことの関連が大規模無作為化試験のメタ解析で示されています1)。また、診断時点で転移がなかったがん患者の低用量アスピリン使用とがんによる死亡率の低下の関連もいくつかの試験で認められています。大腸がん患者のアスピリン使用と生存改善の関連はHLAクラスI抗原が腫瘍で発現している場合に限られ2)、アスピリンのがんへの効果はどうやら免疫絡みのようです。アスピリンが阻害する2つのCOX酵素の1つのCOX-1はほとんどの組織で発現しており、血小板では凝固因子であるトロンボキサンA2(TXA2)の生成に携わります。もう1つのCOX-2はもっぱら炎症の際に生じます。アスピリンは体内で短命(半減期約20分)であり、有核細胞のCOX-1やCOX-2を阻害し続けるには高用量を頻回投与する必要があります。一方、毎日の低用量アスピリン服用の主な矛先は血小板のCOX-1と同酵素が携わるTXA2生成です。無核の血小板のCOX-1は新調(resynthesize)が不可能であり、低用量アスピリンで永続的に阻害されます。英国のケンブリッジ大学の研究者が率いた先立つ研究でARHGEF1という名称のタンパク質がどうやら転移に絡むことが示されています。同チームの新たな研究でARHGEF1は転移へのT細胞免疫を妨げており、ARHGEF1を省くとT細胞機能が向上すると判明しました。さらに調べたところ、血小板でCOX-1に依存して作られるTXA2からの伝達もT細胞を抑制し、ARHGEF1がその伝達経路の一員であることが示されました。そうとなればCOX阻害によってTXA2生合成を阻止するアスピリンは、TXA2がARHGEF1依存的に強いるT細胞抑制を解消して転移を防ぐ効果を担いそうです。マウスで試したところその予想どおりの結果が得られました。アスピリンはT細胞のARHGEF1を欠くマウスの転移を減らせませんでした。また、長持ちなTXA2の類い(U46619)をアスピリンとともに投与した場合もアスピリンは転移を減らせなくなりました。一方、T細胞のARHGEF1を欠くマウスにTXA2を与えたところで転移頻度は変わりませんでした。それらの結果は、アスピリンの転移阻止活性はTXA2を減らし、TXA2のARHGEF1依存的なT細胞抑制を解く作用のおかげであることを示しています3)。COX-1選択的阻害薬や血小板のCOX-1除去でTXA2を減らすこともアスピリンと同様に転移を抑制しました。研究チームは、国際共同無作為化試験Add-Aspirin4)のリーダーRuth Langley氏と提携し、今回の発見を治療の現場で役立つようにすることを目指します5)。Add-Aspirin試験は早期がんの治療を終えた患者がアスピリンを常用することで再発や死亡を防げるかどうかを調べています。今回の成果はさらなる提携や新たな研究の契機を生み出してより効果的な転移抑制手段の開発の道を開くでしょう3)。参考1)Rothwell PM, et al. Lancet. 2012;379:1591-601.2)Reimers MS, et al. JAMA Intern Med. 2014;174:732-739.3)Yang J, et al. Nature. 2025 Mar 5. [Epub ahead of print]4)Add-Aspirin Trial5)Scientists discover how aspirin could prevent some cancers from spreading / Eurekalert

2631.

睡眠時間×身体活動量×食事の質、わずかな改善でも死亡リスク10%減

 睡眠・身体活動・栄養は健康の維持に重要な要素であるが、その影響について、これまで多くの場合個別に研究されてきた。オーストラリア・シドニー大学のEmmanuel Stamatakis氏らは、これらの要素の組み合わせが全死因死亡リスクに与える影響について評価し、リスクを有意に低下させる個人レベルの変化について明らかにすることを目的としたコホート研究を実施した。BMC Medicine誌2025年2月26日号掲載の報告。 本研究では、UK Biobankの前向きコホートデータから、7日間の手首装着型加速度計(Axivity AX3)データおよび自己申告による食事データを有する参加者5万9,078人(年齢中央値:64.0歳、男性:45.4%)を対象とした。加速度計で測定された睡眠時間(時間/日)と中~高強度身体活動(MVPA、分/日)は、機械学習ベースのスキーマを用いて計算された。10項目の食事品質スコア(DQS)により、野菜、果物、魚、乳製品、全粒穀物、植物油、精製穀物、加工肉および未加工肉、砂糖入り飲料の摂取量を評価した(各項目の摂取量を0[最も不健康]から10[最も健康的]の最大100ポイントで評価、値が高いほど食事の質が高いことを示す)。 Cox比例ハザードモデルを用いて、3要素の三分位群27通りの組み合わせと全死因死亡リスクの関連を評価し、3要素すべてが最低三分位に属する群を対照群とした。より詳細な臨床的解釈のために、各行動の5パーセンタイル値を基準として、3要素の複合的な増分用量反応変化を解析した。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値8.1年において、2,458件の死亡が確認された。・対照群と比較して最も大きな全死因死亡リスク低下がみられた最適な3要素の組み合わせは、中程度の睡眠(7.2~8.0時間/日)、高MVPA(42~103分/日)、高DQS(57.5~72.5)で、全死因死亡リスクの64%低下と関連した(ハザード比[HR]:0.36、95%信頼区間[CI]: 0.26~0.50)。・睡眠5.5時間/日、MVPA 7.3分/日、DQS 36.9(いずれも5パーセンタイル値)を基準とした場合、睡眠15分/日、MVPA 1.6分/日、DQS 5ポイント(例:1日当たり野菜を1/2サービング多く食べる、または1週間当たり加工肉1サービングを削減)という最小限の増加が、全死因死亡リスクの10%低下と関連していた(HR:0.90、95%CI:0.88~0.93)。・さらに、睡眠75分/日、MVPA 12.5分/日、DQS 25ポイントの増加は、全死因死亡リスクの50%低下と関連していた(HR:0.50、95%CI:0.44~0.58)。 著者らは、最適な3要素の組み合わせは中程度の睡眠×高MVPA×高DQSであることが示され、睡眠・身体活動・食事の質の非常にわずかな改善も全死因死亡リスク低下に寄与する可能性が示唆されたとまとめている。

2632.

3年間の長期抗CGRPモノクローナル抗体治療は、片頭痛の経過にどう影響するか

 抗カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)モノクローナル抗体を3年以上使用することが片頭痛の経過にどのような影響を及ぼすかを判断するため、イタリア・IRCCS San Raffaele RomaのPiero Barbanti氏らは、12ヵ月間の抗CGRPモノクローナル抗体治療を3回繰り返した後、治療を中止した際の片頭痛頻度を明らかにするため、多施設プロスペクティブ実臨床試験を実施した。Journal of Neurology誌2025年1月25日号の報告。 対象は、12ヵ月間の抗CGRPモノクローナル抗体の皮下投与を1サイクルとし、3回完了した高頻度片頭痛または慢性片頭痛患者212例。中止期間(D1、D2、D3)は、3回の治療サイクル(T1、T2、T3)後、最初の1ヵ月間と定義した。主要エンドポイントは、D2と比較したD3での50%以上の治療反応率とした。副次的エンドポイントには、1ヵ月当たりの片頭痛日数(MMD)、1ヵ月当たりの頭痛日数(MHD)、1ヵ月当たりの鎮痛薬摂取量(MAI)、数値評価尺度(NRS)、頭痛影響テスト(HIT-6)、D3とD1およびD2の50%以上治療反応率の変化、慢性片頭痛の再発率、薬物過剰使用の再発率を含めた。 主な結果は以下のとおり。・D3では、D2と比較し、50%以上の治療反応率、MMD、MHD、MAI、NRS、HIT-6の有意な改善(p<0.001)、慢性片頭痛および薬物過剰使用の再発率の低下が認められた。 【50%以上の治療反応率】77.8%vs.53.8% 【MMD】−2.1±1.7 【MHD】−2.9±2.4 【MAI】−2.6±2.4 【NRS】−0.7±1.3 【HIT-6】−7.2±5.9 【慢性片頭痛の再発率】2.3%vs.18% 【薬物過剰使用の再発率】1.3%vs.10.1%・D3では、D1と比較し、MMD、MHD、MAI、NRS、HIT-6のより大きなベネフィットが示され(p<0.001)、50%以上の治療反応率が高く、慢性片頭痛および薬物過剰使用の再発率の低下が認められた。 【50%以上の治療反応率】77.8%vs.25.0% 【MMD】−2.6±1.9 【MHD】−5.8±3.3 【MAI】−4.9±3.4 【NRS】−1.0±1.6 【HIT-6】−9.4±7.0 【慢性片頭痛の再発率】2.3%vs.67.7% 【薬物過剰使用の再発率】1.3%vs.34.2% 著者らは「3年間の抗CGRPモノクローナル抗体治療により、50%以上の治療反応率は徐々に増加し、片頭痛の負担が大幅に軽減されることが明らかとなった。抗CGRPモノクローナル抗体による片頭痛治療を長期的に実施することで、片頭痛の経過が好転する可能性が示唆された」としている。

2633.

若年性特発性関節炎に伴うぶどう膜炎、アダリムマブは中止できるか/Lancet

 アダリムマブによりコントロールされている若年性特発性関節炎に伴うぶどう膜炎の患者において、アダリムマブの投与を中止すると、ぶどう膜炎、関節炎、あるいはその両方の再発率が高くなるが、投与を再開すると、治療失敗の全例で眼炎症のコントロールが回復することが、米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のNisha R. Acharya氏らADJUST Study Groupが実施した「ADJUST試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2025年1月25日号に掲載された。3ヵ国の無作為化プラセボ対照比較試験 ADJUST試験は、若年性特発性関節炎に伴うぶどう膜炎における治療中止の有効性と安全性の評価を目的とする二重マスク化無作為化プラセボ対照比較試験であり、2020年3月~2024年2月に、米国、英国、オーストラリアの20の眼科またはリウマチ科の施設で患者を登録した(米国国立衛生研究所[NIH]眼病研究所[NEI]の助成を受けた)。 年齢2歳以上で、16歳に達する前に慢性若年性特発性関節炎に伴うぶどう膜炎または慢性前部ぶどう膜炎と診断され、少なくとも1年間、アダリムマブにより関節炎とぶどう膜炎がコントロールされていた患者を対象とした。これらの患者を、アダリムマブの投与を継続する群またはアダリムマブの投与を中止してプラセボを投与する群に1対1の割合で無作為に割り付け、2週ごとに48週目の受診または治療失敗まで皮下投与した。 主要アウトカムは、治療失敗(ぶどう膜炎または関節炎の再発と定義)までの期間とし、すべての患者を主解析および安全性解析の対象とした。治療失敗時にマスク化を解除し、患者は48週まで非盲検下にアダリムマブの投与を受けた。投与中止例の68%で再発、再投与で全例が回復 87例を登録した時点で、事前に規定された中間解析で中止基準を満たしたため、それ以降の登録を中止した。アダリムマブ群に43例(年齢中央値12.56歳[四分位範囲[IQR]:9.44~15.81]、女性74%)、プラセボ群に44例(12.26歳[9.39~13.42]、73%)を割り付けた。各群1例ずつが脱落したが、そのデータは解析に含めた。 治療失敗は、アダリムマブの投与を中止したプラセボ群で44例中30例(68%)に発生したのに対し、投与を継続したアダリムマブ群では43例中6例(14%)と有意に少なかった(ハザード比:8.7[95%信頼区間[CI]]:3.6~21.2、p<0.0001)。治療失敗の多くは追跡期間24週までに発生した。また、プラセボ群の治療失敗までの期間中央値は119日(IQR:84~243)だった。 治療失敗例のうち、プラセボ群の30例全例がアダリムマブの投与を再開し、アダリムマブ群の6例中4例がアダリムマブを継続投与し、いずれの患者も眼炎症のコントロールの回復に成功した。治療失敗後に、眼炎症が最初にコントロールされるまでの期間中央値は、アダリムマブ群が91日、プラセボ群は63日であった。また、眼炎症の持続的コントロールが達成されるまでの期間中央値は両群とも105日で、治療失敗から持続的コントロール達成までの期間中央値はそれぞれ98日および105日だった。重篤な有害事象4件はいずれもアダリムマブ群 非重篤な有害事象は、アダリムマブ群で226件(7.5件/人年[95%CI:6.5~8.5])、プラセボ群で115件(6.8件/人年[5.6~8.1])発現した。最も頻度の高い有害事象は胃腸関連イベント、頭痛、疲労感であった。COVID-19感染症は、アダリムマブ群で多かった(100人年当たり、50件vs.6件)。重篤な有害事象は4件発現し、いずれもアダリムマブ群であった。 著者は、「米国リウマチ学会による、2年間のコントロールが得られた場合は治療を中止してもよいとの推奨は、慎重に考慮する必要がある」「治療中止を試みる場合は、とくに最初の6ヵ月間は再発の有無を注意深く観察すべきである」「今後は、アダリムマブの投与中止の成功を予測する臨床的特性やバイオマーカーについて検討を進める予定である」としている。

2634.

初発Ph+ALLへのポナチニブvs.イマチニブ、年齢別・バリアント別のMRD陰性とPFS(PhALLCON)/日本臨床腫瘍学会

 新たにフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病(Ph+ALL)と診断された成人患者に対してポナチニブとイマチニブを比較した第III相PhALLCON試験では、すでに主要評価項目である導入療法終了時の微小残存病変(MRD)陰性完全寛解(CR)率において、ポナチニブ群(34.4%)がイマチニブ群(16.7%)に比べて有意に高かったことが2024年のJAMA誌に報告されている。日本も参加している本試験の結果を受け、米国では2024年3月にPh+ALLの1次治療にFDAより迅速承認されている(現在、日本で1次治療に承認されている薬剤はイマチニブのみ)。今回、本試験における年齢およびBCR::ABL1バリアント別の微小残存病変(MRD)陰性割合と無増悪生存期間(PFS)、さらに造血幹細胞移植(HSCT)を受けなかった患者における治療中に発現した有害事象(TEAE)の結果について、第22回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2025)で国立がん研究センター東病院の南 陽介氏が発表した。 本試験では、新たにPh+ALLと診断された成人245例(うち日本人13例)を、ポナチニブ群(開始用量30mg1日1回、導入療法終了後はMRD陰性CRが得られた時点で15mgに減量)またはイマチニブ群(600mg1日1回)に2:1に無作為に割り付け、低用量の化学療法(導入療法3サイクル、強化療法6サイクル、維持療法11サイクル)と併用した。化学療法後はポナチニブまたはイマチニブの単剤投与が行われた。HSCTは治験責任医師の判断に従った。主要評価項目はMRD陰性CR率、主な副次評価項目は無イベント生存期間(EFS)であった。今回の事後解析では、年齢(65歳以上/65歳未満)、BCR::ABL1バリアント(p190/p210)で分け、任意の時点でのMRD陰性(MR4:BCR::ABL1IS≦0.01%)の割合とPFS(治療終了時MRD陰性未達、MRD陰性の消失、全死亡、導入療法終了時CR未達、CRからの再発)を比較した。 主な結果は以下のとおり。・データカットオフ時(2022年8月12日)に中央検査機関でp190/p210が確認された232例(ポナチニブ群:154例、イマチニブ群:78例、追跡期間中央値19.4ヵ月)において、MRD陰性の割合はポナチニブ群68%、イマチニブ群50%であった(相対リスク[RR]:1.35、95%信頼区間[CI]:1.05~1.73)。各サブグループにおいても、統計学的有意差は認められなかったものの、ポナチニブ群/イマチニブ群のMRD陰性率(RR:95%CI)は、65歳未満が69%/49%(1.41:1.06~1.86)、65歳以上が62%/53%(1.16:0.67~1.99)、p190が70%/57%(1.24:0.95~1.62)、p210が60%/36%(1.67:0.93~2.98)と、すべてのサブグループでベネフィットが認められた。・PFS中央値は、全体ではポナチニブ群(20.2ヵ月)がイマチニブ群(7.5ヵ月)の2倍以上長かった(ハザード比[HR]:0.52、95%CI:0.36~0.73)。各サブグループにおいても、ポナチニブ群/イマチニブ群のPFS中央値(HR:95%CI)は、65歳未満では18.7/7.3ヵ月(0.50:0.34~0.74)、65歳以上では22.5/7.5ヵ月(0.65:0.28~1.49)、p190では22.5/9.3ヵ月(0.52:0.34~0.81)、p210では9.0/4.1ヵ月(0.48:0.26~0.90)と一貫していた。・HSCTを受けた患者の割合は、全体でポナチニブ群が36%とイマチニブ群の47%より低く、MRD陰性が得られた患者においてもポナチニブ群32%、イマチニブ群56%で同様であった。・HSCTを受けなかった患者では、曝露期間中央値がポナチニブ群(107例)で12.8ヵ月とイマチニブ群(42例)の5.1ヵ月より2倍以上長かった。・TEAEの発現割合は、動脈閉塞イベントおよび静脈血栓塞栓イベントを含め同程度であった。TEAEによる投与中断の割合はポナチニブで高く、TEAEによる減量・投与中止の割合は同程度であった。 今回の結果から、南氏は「Ph+ALLの1次治療でポナチニブ+化学療法を受けた症例は、イマチニブ+化学療法を受けた症例に比べて、年齢およびBCR::ABL1バリアントのどのサブグループにおいてもMRD陰性の割合が大幅に高く、PFSも延長し、さらにMRD陰性が得られた患者ではHSCTを受けた割合も低かったことが示された」とまとめた。また、ポナチニブで懸念されていた血管毒性がイマチニブと同程度であったことについて、「効果が得られた場合に減量するという設定によるものと思われる」と述べた。

2635.

腎細胞がんへのbelzutifan、安全性プロファイルとその管理戦略(LITESPARK統合解析)/日本臨床腫瘍学会

 belzutifanはHIF-2α阻害薬として米国で初めて承認された薬剤であり、日本でも承認申請中である。独自の作用機序を有し、貧血および低酸素症を含む特有の有害事象(AE)プロファイルを示すことが明らかになっている。腎細胞がん患者を対象にbelzutifanの安全性プロファイルを評価することを目的として、4つの臨床試験の事後統合解析が実施され、米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのEric Jonasch氏が結果を第22回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2025)で発表した。 本解析は、既治療の進行淡明細胞型腎細胞がん(RCC)患者を対象とした第I相LITESPARK-001試験、第II相LITESPARK-013試験、第III相LITESPARK-005試験、およびフォン・ヒッペル・リンドウ(VHL)病関連腫瘍患者を対象とした第II相LITESPARK-004試験から、belzutifan 120mgの1日1回経口投与を受けたRCC患者を対象に実施された。 主な結果は以下のとおり。・対象となった患者は計576例で、各試験の内訳はLITESPARK-001が58例、LITESPARK-013が76例、LITESPARK-005が381例、LITESPARK-004が61例であった。・ベースラインの患者特性は年齢中央値が61歳(範囲:19~90)、男性が76.7%、ECOG PS 0~1が98.3%を占めた。西欧39.2%/北米38.4%/日本を含むその他の地域からの参加 が22.4%であった。・全体として、572例(99.3%)に何らかのAEが認められ、355例(61.6%)にGrade3以上のAEが発現した。・288例(50.0%)でAEによる用量調整が必要となったが、AEによる治療中止は37例(6.4%)にとどまった。・最も多く認められたAEは貧血(ヘモグロビン低下を含む、84.2%)で、疲労(42.7%)、悪心(24.1%)、呼吸困難(21.4%)が続いた。・多く認められたGrade3以上のAEは貧血(28.8%)、低酸素症(12.2%)であった。・主なAEの初回発現時期中央値(範囲)は、貧血が29日(1~834)、低酸素症が31日(1~952)、疲労が42日(1~1,017)、悪心が43日(1~1,346)、呼吸困難が57日(1~911)であった。・貧血を認めた485例のうち、111例(22.9%)は赤血球造血刺激因子製剤(ESA)のみ、85例(17.5%)は輸血のみ、62例(12.8%)はESAと輸血で治療された。患者当たりのESA投与回数の中央値は5回、輸血回数の中央値は2回であった。回復までの期間中央値は70日であった。・低酸素症を認めた94例のうち、66例(70.2%)が酸素療法を受けていた。酸素吸入の期間中央値は9日、回復までの期間中央値は11日であった。・治療関連有害事象(TRAE)は526例(91.3%)に認められ、Grade3以上は217例(37.7%)で発現した。Grade5のTRAEとして、多臓器不全が1例報告されている。 Jonasch氏は今回の結果について、有害事象は比較的早期に発現し、初回発現時期の中央値は治療開始から3ヵ月以内であったとし、想定されたとおり貧血と低酸素症が多くみられ、用量調整およびESA/輸血(貧血)・酸素療法(低酸素症)により管理されたとまとめている。

2636.

大腸がん1次治療のセツキシマブ、RAS/BRAF野生型の左側、男性に有効(DEEPER)/日本臨床腫瘍学会

 DEEPER試験はJACCRO(日本がん臨床試験推進機構)が主導し、RAS野生型切除不能大腸がんの1次治療として、3剤併用化学療法(mFOLFOXIRI)の上乗せとして抗EGFR抗体薬・セツキシマブと抗VEGF抗体薬・ベバシズマブの有用性を比較検討した無作為化第II相試験である。これまでにセツキシマブ併用群はベバシズマブ併用群に比べ、主要評価項目である腫瘍縮小率(DpR)が有意に高かったことが報告されている。2025年3月6~8日に行われた第22回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2025)のPresidential Sessionにおいて、聖マリアンナ医科大学 臨床腫瘍学講座の砂川 優氏が、サブグループ解析を含む本試験の最終解析を報告した。・試験デザイン:国内ランダム化第II相試験・対象:未治療のRAS野生型転移大腸がん(mCRC)、ECOG PS0~1・セツキシマブ(CET)群:mFOLFOXIRI(イリノテカン150mg/m2、オキサリプラチン85mg/m2、5-FU 2,400mg/m2)+セツキシマブ・ベバシズマブ(BEV)群:mFOLFOXIRI+ベバシズマブ・評価項目:[主要評価項目]DpR[副次評価項目]奏効率(ORR)、無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)など 今回は観察期間5年における最終生存解析とともに、原発巣の位置、性別、肝転移の状態、BRAF遺伝子などのサブタイプ別の探索的解析の結果が報告された。 主な結果は以下のとおり。・CET群に179例、BEV群に180例が無作為に割り付けられ、それぞれ159例、162例がper protocol setとして解析対象となった。・データカットオフ時点での左側症例におけるPFSの中央値はCET群で13.9ヵ月(95%信頼区間[CI]:12.2~17.5)、BEV群で12.1ヵ月(95%CI:10.9~14.1)であり、両群間で有意差は認めなかった(HR:0.81[95%CI:0.63~1.05]、p=0.11)。・一方で、RAS/BRAF野生型の左側症例(178例)に限定して行われた解析では、PFS中央値はCET群で14.8ヵ月(95%CI:12.6~19.4)、BEV群で11.9ヵ月(95%CI:10.8~14.6)であり、CET群で有意に延長した(HR:0.71[95%CI:0.52~0.97]、p=0.029)。OS中央値はCET群で50.2ヵ月(95%CI:39.9~56.0)、BEV群で40.2ヵ月(95%CI:33.5~48.8)であり、CET群では50ヵ月を超える結果が示されたものの、統計学的有意差は認められなかった(HR:0.74[95%CI:0.53~1.05]、p=0.091)。・さらに、RAS/BRAF野生型左側症例から肝限局転移症例を除外して行われた解析(125例)では、OS中央値はCET群で50.2ヵ月(95%CI:39.6~60.1)、BEV群で38.6ヵ月(95%CI:30.5~45.2)であり、CET群で有意に延長した(HR:0.60[95%CI:0.40~0.90]、p=0.014)が、肝限局転移例ではこの傾向は見られなかった(HR:1.17、95%CI:0.61~2.24)。・RAS/BRAF野生型左側症例では、男性患者においてCET群がBEV群よりもOSの延長を示した(52.8ヵ月vs. 40.2ヵ月、HR:0.59、95%CI:0.38~0.91)が、女性患者ではこの傾向はみられなかった(HR:1.19、95%CI:0.67~2.14)。 砂川氏は「現在、RAS野生型進行大腸がん1次治療の標準療法は2剤併用の化学療法+抗EGFR抗体薬であるが、今後はRAS/BRAF野生型の左側症例についてはmFOLFOXIRIの3剤併用+セツキシマブ療法が有用なオプションとなり、とくに転移が肝臓に限局していない患者や男性患者には有効である可能性がある」とまとめた。 ディスカッサントを務めたDuke大学のJohn Strickler氏は、同じくRAS野生型大腸がん1次治療として抗EGFR抗体薬のパニツムマブとベバシズマブを比較した日本のPARADIGM試験をはじめとした関連試験の結果を紹介し、化学療法は2剤か3剤か、抗EGFR抗体薬に何を選択するか、最適な患者の選択基準など、多くの論点があることを紹介した。質疑応答では、セツキシマブの有用性の男女差が出た理由について質問があった。砂川氏は「抗腫瘍効果に男女差があるかについて先行研究を調べたが、むしろ女性のほうが有効だという結果だった。n数が少なく確定的ではないものの、女性は男性よりも皮膚毒性が強く出ており、治療強度が弱まった可能性がある」とした。

2637.

楽観的な人ほど貯蓄額が多い?

 物事の明るい面を見ることは、気持ちを前向きにさせるだけでなく貯蓄にも役立つ可能性のあることが新たな研究で示唆された。米コロラド大学ボルダー校のJoe Gladstone氏と米ニューハンプシャー大学のJustin Pomerance氏らによる研究で、楽観性が高い人ほど貯蓄額が多い傾向があり、この傾向は特に低所得者層で顕著であることが示唆された。この研究結果は、「Journal of Personality and Social Psychology」1月号に掲載された。 Gladstone氏は、「楽観主義は、それをかけると全てが素晴らしく見えてしまう『バラ色のメガネ』であり、将来のための貯蓄を減らす原因になる可能性があると考えられがちだ。しかし、本研究では、特に経済的困難に直面しているときには、楽観主義が貯蓄に役立つ重要な心理的資源である可能性が示唆された」と話している。 この研究でPomerance氏らは、米国、英国、およびヨーロッパ14カ国で実施された8件の調査(参加者の総計14万3,461人)のデータを用いて、楽観主義(素質的楽観主義)と貯蓄行動との関連を検討した。いずれの調査でも、「将来について常に楽観視している」や「全体的に悪いことよりも良いことの方が多く起こると思っている」などの質問を通して調査参加者の楽観主義が評価されていた。8件の調査のうち、3件はある時点でのみ調査を行う横断調査であり、残りの5件は同じ参加者を追跡して複数回の調査を行う縦断調査であった。 その結果、楽観性の高い参加者ほど、概して貯蓄額も多いことが明らかになった。例えば、貯蓄額の中央値が8,000ドル(1ドル152円換算で121万6,000円)の世帯の場合、楽観性の1標準偏差増加は貯蓄の1,352ドル(約20万5,500円)の増加と関連することが示された。この結果は、年齢、性別、交際状況、子どもの有無、小児期の社会経済的状況、健康状態、雇用状況、および「ビッグファイブ(開放性、誠実性、外向性、協調性、神経症傾向)」など、貯蓄と楽観主義の両方に影響を与える可能性がある因子を調整した後も変わらなかった。 さらに、楽観主義が貯蓄行動に与える影響は、低所得者層で最も強いことも明らかになった。この結果についてGladstone氏は、「毎月の給料を使い切るような生活をしている人は、貯蓄に意味を見出せないかもしれない。しかし、楽観的な見通しがあれば、たとえ今、大変な状況に置かれていても、貯蓄しようという動機が生まれる可能性はある」と述べている。 研究グループは、「本研究結果は、特に低所得者層の貯蓄を増やすことを目的とした金融教育プログラムや政策に影響を与える可能性がある。従来の金融リテラシー訓練に楽観主義を育む手法を組み合わせることで、貯蓄行動を促す効果を高められる可能性がある」との見方を示している。Gladstone氏は、「最終的には、将来に対する希望と貯蓄を賢く管理するスキルを組み合わせることが、より多くの人々が経済的安定を築くための鍵となるかもしれない」と米国心理学会(APA)のニュースリリースで述べている。

2638.

米国では約10年で家族介護者数が30%以上増加

 米国では、2011年から2022年の間に自宅や介護施設で暮らす高齢者を介護する家族や友人などの数が32%増加し、このような介護者が介護に費やした時間も50%近く増加したことが、新たな研究で明らかにされた。米ジョンズ・ホプキンス大学ブルームバーグ公衆衛生大学院のJennifer L. Wolff氏らによるこの研究は、「Health Affairs」2月号に掲載された。 この研究では、National Health and Aging Trends Study(NHATS)とNational Study of Caregiving(NSOC)の2011年と2022年のデータの分析が行われた。NHATSは、米国の65歳以上のメディケア受給者を対象にした全国調査で、高齢者の日常動作に関する情報を収集している。一方、NSOCは、家族や友人などの無償で介護を提供している人(以下、無償の介護者)に関する情報を収集している。2022年のデータでは、無償の介護者の約12%は家族以外の人(友人や近隣の人など)であり、残りは親族であった。 高齢者を介護する無償の介護者の数は2011年は1820万人であったのが2022年には2410万人と32%増加していた。また、無償の介護者が介護に費やす時間も、2011年の週平均21.4時間から2022年には週平均31時間と、ほぼ50%増加していた。被介護者の介護ネットワークの規模は2011年と2022年で変化はなく、1人当たり2人であった。2022年に無償の介護者が介護していた人は、2011年の無償の介護者が介護していた人と比較して、若く、教育水準が高く、男性の割合が高く、認知症である可能性が低かった。また、無償の介護者は、レスパイトケア(介護者が休息を取れるように支援するサービス)や支援グループなどの支援サービスへの依存が減ったと報告していたにもかかわらず、介護の難しさや雇用と育児の両立に対する責任については、ほとんど変化がないと報告していた。 Wolff氏は、「われわれの調査結果は、介護者の数が大幅に増加しているにもかかわらず、彼らの状況は驚くほど変化がないことを示している。これは、政策に関わる人々が口にする『家族介護者の負担が増加の一途をたどっている』という懸念とは異なる結果だ。それでもわれわれは、特に認知症患者の介護に関わる人が直面する特定の課題に対応する必要がある」とジョンズ・ホプキンス大学のニュースリリースで述べている。 本研究では、介護の責任は依然として主に女性が負わされており、また、認知症患者の介護者や経済的に余裕のない人は特に悪影響を受けるリスクが高いことも示されたという。研究グループは、85歳以上の人口は2050年までに3倍になると予測されていることに言及し、介護者の経験における格差に対処することが喫緊の課題だと主張している。 さらに研究グループは、政策立案者が、州レベルの有給家族休暇政策を含む、家族介護者に対する強力な支援策を策定するべきだとしている。Wolff氏は、「家族介護者は、介護提供システムにとって極めて重要だ。将来を見据えて、何百万人もの高齢者が頼りにしている重要なサポートを今後も提供し続けられるように、家族介護者のニーズを把握し、サポートする必要がある」と話している。

2639.

リファンピシン耐性キノロン感性結核に対する経口抗菌薬(解説:寺田教彦氏)

 結核は、依然として世界的な公衆衛生の問題であり、2023年WHO世界結核対策報告書によると、2022年には約1,060万人が結核を発症し、130万人が死亡したとされる。結核治療を困難にする要因の1つに薬剤耐性結核(MDR/RR-TB)があり、今回の対象であるリファンピシン耐性結核は、毎年約41万人が罹患すると推定されている。このうち治療を受けたのは40%にすぎず、その治療成功率は65%にとどまっている(WHO. Global tuberculosis report 2023.)。これは、従来のレジメンが18~24ヵ月と治療期間が長く、アミノグリコシド系やポリペプチド系の注射製剤が含まれ、副作用の問題もあったためと考えられる。 2016年から2017年にかけて、本研究(endTB試験)を含めた3つの多国籍ランダム化比較試験(STREAM2試験、TB-PRACTECAL試験)が開始され、リファンピシン耐性結核に対する6ヵ月または9ヵ月の全経口短期レジメンの安全性と有効性が評価された。 本研究は、15歳以上のリファンピシン耐性・フルオロキノロン感性の結核患者を対象に、ベダキリン(B)、デラマニド(D)、リネゾリド(L)、レボフロキサシン(Lfx)またはモキシフロキサシン(M)、クロファジミン(C)、ピラジナミド(Z)から成る5つの併用レジメン(BLMZ、BCLLfxZ、BDLLfxZ、DCLLfxZ、DCMZ)と、当時のWHOガイドラインに準拠した標準治療群の計6つの治療群を比較した。その結果、3つのレジメンが標準治療に対して非劣性を示した(詳細は「リファンピシン耐性/キノロン感受性結核に有効な経口レジメンは?/NEJM」参照)。 WHOは2024年8月に発表したKey updates to the treatment of drug-resistant tuberculosis: rapid communication, June 2024において、本試験(endTB)の結果を解釈し、内容を更新している。ガイドライン開発グループの解釈では、フルオロキノロン感受性が確認されたMDR/RR-TB患者において、BLMZ、BLLfxCZ、BDLLfxZの3種類の9ヵ月全経口レジメンは、長期(≧18ヵ月)レジメンの代替として効果的かつ安全に使用できるが、DCLLfxZおよびDCMZレジメンは治療失敗・再発率および獲得耐性率が高いため推奨されないとされた。そのため、WHOはフルオロキノロン感性MDR/RR-TB患者に対し、9ヵ月の全経口レジメン(優先順位:BLMZ>BLLfxCZ>BDLLfxZ)を従来の長期レジメンに代わる選択肢の1つとして提案した(条件付き推奨、エビデンスの確実性は非常に低い)。 本研究のレジメンは小児用製剤もあり、妊娠中の使用も検討可能である。今後、2025年のWHOガイドライン改訂にも反映され、より多くの患者に適用可能な治療法の1つとなることが期待される。

2640.

第233回 コロナ罹患後症状の診療手引きがアップデート-支援制度を明記/厚労省

<先週の動き>1.コロナ罹患後症状の診療手引きがアップデート-支援制度を明記/厚労省2.高額療養費の引き上げを凍結、参院選への影響か-与党内にも異論噴出/政府3.2026年度診療報酬改定、医療機関の経営危機対応が最優先課題/三保連4.自治医大卒業生が修学資金返還を巡り提訴、「契約は憲法違反」と主張/自治医大5.吉祥寺南病院、事業継承が決定 救急・災害医療の機能維持へ/東京都6.殺人隠蔽のみちのく記念病院、元院長ら2人を起訴/青森県1.コロナ罹患後症状の診療手引きがアップデート-支援制度を明記/厚労省厚生労働省は2025年2月26日、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 別冊 罹患後症状のマネジメント 第3.1版」を公開した。前回の改訂から1年4ヵ月ぶりで、各章の要点をまとめた「Point」を追加し、罹患後症状が続く場合に利用できる支援制度の解説や患者向け説明資料を付録として掲載した。改訂では、罹患後症状の疫学に関する最新知見が追加され、大阪府八尾市の調査結果を基に、感染者の罹患後症状の割合が3ヵ月後の14.3%から18ヵ月後には5.4%に低下する傾向が示された。また、罹患後症状ごとの診療アプローチを整理し、プライマリ・ケアの対応や専門医への紹介基準などを明確化した。さらに、労災保険や障害年金、自立支援医療制度など、患者が利用できる支援制度を詳述し、厚労省は2月27日に関連Q&Aも改訂した。今回の改訂により、医療従事者の診療支援強化と患者への適切な情報提供が期待されている。参考1)新型コロナウイルス感染症COVID-19 診療の手引き 別冊 罹患後症状のマネジメント 第3.1版(厚労省)2)新型コロナウイルス感染症の罹患後症状(いわゆる後遺症)に関するQ&A(同)3)罹患後症状が続く場合に活用できる支援制度を追記「コロナ罹患後症状のマネジメント」が1年4ヵ月ぶりに改訂(日経メディカル)4)新型コロナウイルス感染症に係る罹患後症状 (いわゆる後遺症)実態把握調査結果について(愛知県)2.高額療養費の引き上げを凍結、参院選への影響か-与党内にも異論噴出/政府政府は3月7日、今年8月に予定していた高額療養費制度の自己負担上限額の引き上げを見送ることを決定した。患者団体の強い反発に加え、与野党からの批判が高まり、夏の参院選への影響を懸念する声が強まったことが背景にある。当初、政府は医療費の増大に対応するため、2025年8月~2027年8月にかけて3段階で負担上限を引き上げる方針だった。しかし、患者団体から「治療を続けられなくなる」との訴えが相次ぎ、政府は2月末に2026年以降の引き上げを再検討すると発表した。それでも批判は収まらず、与党内でも選挙への悪影響を懸念する声が拡大。公明党や自民党の参議院議員が見直しを求め、政府は最終的に引き上げそのものを見送る判断を下した。石破 茂首相は7日夜、患者団体と面会し、「8月の改定を含め、全体の見直しを見合わせる。秋までに改めて方針を検討する」と述べた。患者団体の代表は「われわれの声が一定程度届いた」と評価する一方で、再検討の期間が短く、当事者の意見が十分反映されるか懸念を示した。政府がこの制度の見直しを進めた背景には、医療費の増加と社会保障費の持続可能性確保の問題がある。高額な医薬品の普及により高額療養費の支給額は増加傾向にあり、政府は負担区分の細分化や負担上限の引き上げによって、財政の健全化を図る考えだった。しかし、拙速な決定プロセスが批判を招き、結果的に3度目の方針転換を余儀なくされた。今後の焦点としては、秋までに政府がどのような新方針を打ち出すかにある。代替財源の確保や制度の持続可能性を維持しつつ、患者の負担を最小限に抑える方策が求められる。また、予算案の再修正が必要となるため、国会での審議にも影響が及ぶ見通しだ。参考1)石破首相、高額療養費上げ見送り=今秋までに新方針検討-25年度予算案再修正へ(時事通信)2)高額療養費制度 負担上限額 ことし8月の引き上げ見送りへ 政府(NHK)3)高額療養費の負担引き上げ見送り、参院選への影響考慮…新年度予算案は衆院で再議決の異例の展開へ(読売新聞)4)高額療養費上げ見送り、拙速議論のツケ 医療改革に逆風(日経新聞)5)高額療養費の負担増見送り表明、石破首相 秋までに改めて方針を検討・決定へ(CB news)3.2026年度診療報酬改定、医療機関の経営危機対応が最優先課題/三保連3月6日に開催された三保連合同シンポジウムで、2026年度の診療報酬改定において、病院の経営危機への対応が最優先課題であるとの声が相次いだ。内科系学会社会保険連合(内保連)の小林 弘祐理事長は「病院が赤字で潰れてしまえば、良い医療を提供することもできない」と強調し、医療従事者の人件費高騰や医療材料のコスト増加が経営を圧迫している現状を指摘した。政府が25年度予算案で社会保険料の負担軽減を目的に医療費削減を打ち出したことについて、関係者からは強い警戒感が示された。外科系学会社会保険委員会連合(外保連)の瀬戸 泰之会長も「医療機関が経営危機にあるのは間違いない」と述べ、診療報酬の適切な引き上げを求めた。看護分野では、看護系学会等社会保険連合(看保連)が専門性の高い看護師を手術室や救急外来に配置することへの評価を求める方針を示し、具体的な提案を月内に厚生労働省へ提出する予定だ。また、がん患者への妊孕性相談指導の評価など、看護ケアの質向上に向けた要望も出された。外科分野では、外保連の渡邊 雅之実務委員長が、ロボット支援手術の評価向上や整形外科の手術コード(Kコード)の精緻化を求める方針を示した。現行の評価では、ロボット支援手術は従来の手術法に比べて収益が低く、医療機関の負担が大きいことが問題視されている。また、物価高騰や人件費増加が病院経営に大きな影響を与えており、診療報酬の総枠拡大が不可欠とされた。全国医学部長病院長会議の相良 博典会長は、高額医療機器の更新が困難になっている現状を指摘し、「医療の質を維持するためには診療報酬の適切な引き上げが必要」と述べた。今後、三保連は診療報酬改定に向けた提言をまとめ、政府への働きかけを強める方針だ。医療機関の経営基盤を強化し、持続可能な医療提供体制を確保するため、適切な診療報酬改定が求められる。参考1)令和8年度診療報酬改定に期待するもの 三保連の重点要求項目(三保連)2)経営危機への対応を最優先に、学会から指摘相次ぐ 三保連シンポで(CB news)3)2026年度診療報酬改定で医療技術の適切な評価・点数引き上げを行い、病院経営の持続性を確保せよ-内保連・外保連・看保連(Gem Med)4.自治医大卒業生が修学資金返還を巡り提訴、「契約は憲法違反」と主張/自治医大自治医科大学を卒業した医師が、同大学の修学資金貸与制度の違法性を主張し、自治医大と愛知県を相手取り訴訟を提起した。訴えの内容は、修学資金の返還義務の不存在確認と国家賠償請求である。自治医大の修学資金貸与制度は、医師不足地域の医療確保を目的とし、学生に修学資金を貸与し、卒業後に指定された公立病院などで一定期間勤務することで返還が免除される仕組み。しかし、途中で指定病院を辞職した場合、修学資金と損害金を一括返済する義務が発生する。原告の医師は、大学在学中に約2,660万円を貸与されたが、家庭の事情により指定勤務先を退職しようとした。しかし、自治医大や愛知県は退職を認めず、最終的に一方的に退職を迫られたと主張。その後、大学側から修学資金と損害金の一括返済を求められたため、契約条項の憲法違反や労働基準法違反を理由に訴訟を起こしたもの。代理人の弁護士は「指定勤務を強制することは憲法が保障する居住・移転の自由に反する可能性がある」と指摘し、修学資金返還義務の法的根拠の正当性を問うている。一方、自治医大は公式声明で「本学の修学資金制度は、地域医療を確保するために合理的かつ重要な制度であり、関係法令にも適合している」と反論。これまで原告に対し返還請求の説明を行ってきたとした上で、訴訟の提起を「遺憾である」と表明し、法廷で制度の正当性を主張していく方針を示している。今回の訴訟は、地域医療を担う医師確保の必要性と、医師のキャリア選択の自由とのバランスが問われる問題として、今後の医療政策にも影響を与える可能性がある。参考1)本学卒業生からの訴訟提起に関する本学の見解(自治医大)2)「無知な受験生を囲い込む、悪魔のような制度」自治医大の修学金貸与制度巡り卒業生の医師が提訴(弁護士JPニュース)3)Dr.NKMR〈自治医大卒医師/弁護士志望の法科大学院生/アンチ地域枠制度〉@自治医大・愛知県を提訴5.吉祥寺南病院、事業継承が決定 救急・災害医療の機能維持へ/東京東京都武蔵野市の吉祥寺南病院は老朽化と建設費高騰のため2024年9月に診療を休止していたが、社会医療法人社団・東京巨樹の会が事業を継承することが決定した。東京巨樹の会は関東や九州で病院を運営するカマチグループに属し、今後、既存の建物を取り壊し、新たな病院を建設する予定。新病院は、これまでの二次救急医療機関や災害拠点連携病院としての役割を引き継ぎ、病床数も増やす方針だが、開院時期は未定。吉祥寺エリアでは過去10年間で病院の閉鎖が相次ぎ、救急病床が大幅に減少していたため、地域住民の不安が高まっていた。小美濃 安弘市長は「地域医療の再建に向け、市としても支援を行う」と述べ、事業継承を歓迎した。市民からも「医療機関の減少は困る」「存続が決まり安心した」との声が上がっている。東京巨樹の会は「地域とともに、救急や災害対応に強い病院を作りたい」とし、早期の診療再開を目指している。参考1)“存続危機”の吉祥寺南病院、事業後継者が決定 診察再開時期は未定(TOKYO MX)2)吉祥寺南病院 品川の法人が事業継承 二次救急機能も受け継ぐ(東京新聞)3)休止の東京・吉祥寺南病院、東京巨樹の会へ事業承継(日経新聞)6.殺人隠蔽のみちのく記念病院、元院長ら2人を起訴/青森県青森県八戸市の「みちのく記念病院」で発生した患者間の殺人事件について、青森地検は7日、当時の院長・石山 隆被告(61)と主治医である弟の哲被告(60)を犯人隠避罪で起訴した。両被告は、2023年3月、入院患者の男性(73)が別の患者に殺害されたことを知りながら警察に通報せず、虚偽の死亡診断書を作成し、事件を隠蔽したとされる。死亡診断書の名義人となった医師は認知症を患い、実際には意思疎通が困難な状態であったことも明らかになった。青森県と八戸市は病院に対して立ち入り検査を実施し、医師の勤務実態と記録の不一致、病室の定員超過、許可を得ない設備変更などの問題を確認した。7日には病院に対し改善勧告を行い、勤務証明書類の提出や病床数の適正化を求めた。また、専門家は精神科病棟の特性として外部のチェックが入りにくいことを指摘し、病院内での権力乱用が放置されていた可能性を示唆した。さらに、行政の監査が書類確認に止まり、実質的な医療の質の検証が行われていなかった問題点も浮かび上がった。この病院では、死亡診断書を専門に作成する「みとり医」と呼ばれる高齢医師を雇用し、適切な診療を行わないまま死亡診断書を発行していた疑いもある。警察の捜査では、この名義の診断書が200件以上確認され、その7割が「肺炎」とされていた。事件の背景には、医療機関の管理体制の不備や、社会的に「必要悪」として機能してきた病院の構造的問題がある。地域医療の維持と患者の人権保護の両立が求められる中、今後の行政の対応が注視されている。参考1)病院内殺人隠蔽事件 死亡診断書専門の高齢“みとり医”も(NHK)2)殺人隠蔽の「みちのく記念病院」元病院長らを起訴 青森県と市が改善勧告も(産経新聞)3)患者殺害隠蔽で虚偽診断書 病院元院長ら2人を犯人隠避罪で起訴(毎日新聞)

検索結果 合計:35100件 表示位置:2621 - 2640