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公共の場でのマスク着用、呼吸器感染症の発症予防効果は/BMJ

 14日間にわたり公共の場でサージカルフェイスマスクを着用した場合、着用しない場合と比較して、自己申告に基づく呼吸器感染症の症状発症リスクが有意に減少した。ノルウェー・公衆衛生研究所のRunar Barstad Solberg氏らが実用的無作為化優越性試験の結果を報告した。感染予防策としてのサージカルフェイスマスクの有効性は定かではなく、観察研究でフェイスマスクの着用が呼吸器感染症のリスクを減少させることが示唆されているが、これまでの無作為化試験は検出力不足など方法論的に限界があった。著者は、「本研究は多くの先行試験と異なり、十分な検出力を有している。フェイスマスクの着用は、負担の少ない比較的低コストで簡単な、呼吸器感染症の流行を抑えるために検討する価値があると考えられるいくつかの公衆衛生および社会的対策の1つである」とまとめている。BMJ誌2024年7月24日号掲載の報告。14日間公共の場でのマスク着用群vs.非着用群、自己申告の呼吸器症状を比較 研究グループは、ノルウェーの全国ネットのテレビ、ラジオなどを含むさまざまなメディアとデータ収集会社を通じて18歳以上の参加者を募集し、同意(オンライン同意書)が得られた参加者を、介入群および対照群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 介入群には、サージカルフェイスマスク(EN14683規格のタイプII/IIR)を無料で提供し、14日間にわたり不特定多数の人と接する公共の場(ショッピングセンター、街中、公共交通機関など)ではマスクを着用してもらった(自宅や職場でのマスク着用については言及されなかった)。対照群では、公共の場ではサージカルフェイスマスクを着用しないよう指示された。 主要アウトカムは自己申告による呼吸器感染症に伴う呼吸器症状、副次アウトカムは、自己申告による新型コロナウイルス検査陽性、ノルウェー感染症サーベイランスシステムに登録された新型コロナウイルス検査陽性などで、評価者盲検で評価した。呼吸器症状の報告は8.9% vs.12.2%、マスク着用により発生が有意に減少 本試験は、北欧の通常のインフルエンザシーズンである2023年2月10日~2023年4月27日に実施された。 同意書が渡された5,086例中4,647例が同意書を提出し無作為化された。このうち同意撤回、18歳未満などを除外した4,575例(介入群2,313例、対照群2,262例)がITT解析の対象集団に組み込まれた。4,575例のうち女性は2,788例(60.9%)、全体の平均年齢は51.0歳(SD 15.0)であった。 呼吸器症状を報告した参加者は、介入群では163例(8.9%)、対照群では239例(12.2%)、限界オッズ比(OR)は0.71(95%信頼区間[CI]:0.58~0.87、p=0.001)、絶対リスク差は-3.2%(95%CI:-5.2~-1.3、p<0.001)であり、介入群で有意に減少した。 自己申告による新型コロナウイルス検査陽性(限界OR:1.07、95%CI:0.58~1.98、p=0.82)、登録された新型コロナウイルス検査陽性(介入群でのイベントがないため、効果推定値と95%CIは算出不可)には統計学的な有意差は確認されなかった。

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妊娠・乳幼児期の大気汚染物質の複合曝露が小児喘息と関連

 妊娠期、子どもの乳幼児期における大気汚染物質への曝露と小児喘息の発症との関連が、日本全国のデータを用いて詳細に検討された。その結果、低濃度の大気汚染物質への複合曝露が、持続性小児喘息の発症と関連していることが明らかとなった。昭和大学医学部リウマチ・膠原病内科の城下彰宏氏らによる研究の成果であり、「Ecotoxicology and Environmental Safety」に6月20日掲載された。 小児喘息の発症は、環境的、社会経済的、遺伝的要因の影響を受ける。大気汚染は喘息の発症や悪化と関連するが、大気汚染物質は複雑な混合物である。比較的低濃度の大気汚染物質の複合曝露による影響については十分に研究されておらず、海外と日本では大気汚染の状況も異なり、エビデンスが不足している。 そこで著者らは、株式会社JMDCの保有するデータベースを用いて、2010年1月~2017年1月に出生した児とその母親のデータを抽出し、妊娠中、乳幼児、幼児期における大気汚染物質への曝露と4~5歳時点の喘息との関連を調べた。大気汚染については国立環境研究所のデータより、微小粒子状物質(PM2.5)、浮遊粒子状物質(SPM)、窒素酸化物(NOx)、一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO2)、一酸化炭素(CO)、光化学オキシダント(Ox)、二酸化硫黄(SO2)、全炭化水素(THCs)、非メタン炭化水素(NMHCs)の各濃度を調べた。 その結果、大気汚染物質の分布は、PM2.5とSPMは九州地方と瀬戸内海地方に多く、NOとNO2は関東地方に多かった。また、SO2は瀬戸内海地方と鹿児島湾地方に多いことが分かった。 解析対象の母親(年齢中央値32.0歳)と子どものペアは5万2,526組(1,149市町村)であり、そのうち1万2,703人(24.2%)の子どもが4~5歳時点で喘息を有していた。 次に、weighted quantile sum(WQS)regressionモデル(各大気汚染物質ごとに重み付けを行い、複合曝露の影響をサマリースコアとして算出する方法)で解析したところ、妊娠期、乳児期、幼児期の大気汚染物質の複合曝露が10パーセントタイル上昇するごとに、それぞれ喘息発症のオッズが1.04倍(95%信頼区間1.02~1.05)、1.02倍(同1.01~1.03)、1.03倍(同1.01~1.04)となることが明らかとなった。 今回の研究の結論として著者らは、「比較的低濃度の大気汚染物質の複合曝露が、小児持続性喘息と関連している」と述べている。また、日本では交通関連の大気汚染は減少しているが、自動車以外からのPM2.5排出を削減することの重要性や、日本のエネルギー生産が化石燃料に依存していることなどの問題を指摘した上で、さらなる大気汚染濃度の改善が必要だとしている。

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適切な糖尿病情報にアクセスする方法(Dr.坂根のすぐ使える患者指導画集)

患者さん用画 いわみせいじCopyright© 2023 CareNet,Inc. All rights reserved.説明のポイント(医療スタッフ向け)診察室での会話患者医師患者医師患者医師患者医師患者医師患者医師患者最近、血糖値が高くて合併症にならないかと心配で…。まずは治療を中断しないことが大切です。はい、それはわかっています。よろしくお願いしますね。現在、糖尿病の飲み薬は9種類ありますので、患者さんに合わせて薬の選択と調整は私の方でできますが、食事と運動療法がポイントですね。薬を飲んでいるだけではだめということですね。そうです。食事についてはいかがですか?栄養士さんに糖尿病の食事療法については話を聞いたのですが、なかなか…。なるほど。運動についてはいかがですか?運動については自己流でやっています。そうですか。そういった情報はどこから得ていますか?テレビやYou Tubeからですかね。なるほど。糖尿病のリスクを知り、対策を立てることは大切ですね。適切な情報にアクセスできるための、検索のキーワードがあります。そのキーワードを教えて頂けますか。画 いわみせいじポイント適切な糖尿病情報にアクセスし、患者に寄り添ったアドバイスをもらえる専門家を持つようにアドバイスします。Copyright© 2023 CareNet,Inc. All rights reserved.

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非難の標的、チートル長官【Dr. 中島の 新・徒然草】(540)

五百四十の段 非難の標的、チートル長官暑いですねえ。大阪の町でも片手に日傘、反対側に手持ち扇風機で歩いている人ばかり。冷房の効いた建物から出て屋外の駐車場まで歩いていくだけでも、暑すぎて「勘弁してくれー!」と言いたくなります。今はまだギリギリ耐えられるけど、5年先や10年先は一体どうなってしまうのでしょうか。さて、YouTubeのショート動画を見ていると、よく出てくるのがシークレットサービスのキンバリー・チートル長官。2024年7月13日のドナルド・トランプ暗殺未遂事件の警護責任者として、米下院公聴会で下院議員たちに散々罵倒されている動画です。彼女は1995年にシークレットサービスに加わり警護スタッフとして働いてきたのですが、2019年に民間会社に移りました。そしてバイデン大統領に任命されて、長官としてシークレットサービスに返り咲きます。おそらく、バイデンが副大統領時代に警護担当をしていた関係で引き上げられたのでしょう。言うまでもなく女性として初のシークレット・サービス長官です。が、このたびのトランプ暗殺未遂事件を未然に防げなかったことから、ありとあらゆる非難を浴びることになりました。「貴女はこの9日間、1回でも銃撃現場に行ってみたのか?」「身を挺して大統領を守ったスタッフたちに労いの電話をかけたのか!」「貴女が長官であるかぎり、われわれ下院議員は全員が身の危険を感じざるを得ない」などなど。そんなもん、全米を飛び回っているトランプの警護は続くし、その一方で暗殺未遂事件の調査もしないといけないし、銃撃現場に行っている暇なんかおまへんがな。シークレットサービスのスタッフ達だって、勤務中に長官からいきなり電話がかかってきたら迷惑でしょう。第一、キンバリー長官自身が公聴会に呼ばれているわけだから、その準備だけで精一杯です。結局、公聴会の翌日に彼女は辞めてしまいました。後からなら何とでも言えます。狙撃場所となった倉庫の屋根に人が近づかないようにしておくべきだった、とか。「屋根に上った人がいるぞ」という目撃者の報告に対処しておくべきだった、とか。YouTubeのコメント欄も「こんな無能な奴は辞めさせろ」とか「長官に刑事責任を取らせろ」とか、大荒れです。でも、こういうのは典型的なhindsight bias(後知恵バイアス)ですね。私は別にチートル長官を庇うわけではありませんが、下院議員たちもそんなに偉そうに言わなくてもいいんじゃないか、と思います。もっと冷静に、原因究明や再発防止を議論するべきなのでは?でも、彼らも自分の選挙区の有権者たちにアピールする必要があります。だから、こういった非難合戦になってしまうのかもしれません。われわれも医師という立場上、何かあったら非難される側になってしまいます。そういったことも想定しつつ、診療したりカルテを書いたり。大変な世の中になってしまいましたが、それも仕事の一環だと思うべきなのでしょう。ということで最後に1句猛暑の日 流す冷や汗 動画見て

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8月1日 肺の日【今日は何の日?】

【8月1日 肺の日】〔由来〕「は(8)い(1)」(肺)と読む語呂合わせから、肺の健康についての理解を深め、呼吸器疾患の早期発見と予防についての知識を普及・啓発することを目的に日本呼吸器学会が1999年に制定し、翌2000年から実施。学会では、肺の病気・治療について全国で一般市民を対象にした講座会や医療相談会を行っている。関連コンテンツCOPD患者の飛行機旅行【日常診療アップグレード】呼吸しづらいときの症状チェック【患者説明用スライド】咳・痰が続くときの症状チェック【患者説明用スライド】診療科別2024年上半期注目論文5選(呼吸器内科編)スパイロなしでも胸部X線画像で呼吸機能が予測可能!?

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第107回 「学会熱中症」にご注意を

学会スーツは夏用を昨年、夏季にある学会に参加したのですが、会場内で熱中症の発症がありました。参加者が医療従事者ばかりだったので、控室で休んで軽快しておられましたが、「学会スーツ」って結構怖いです。現代の地球温暖化が進む中で、スーツのフォーマルな服装としての地位を変える必要があると感じますが、現実には学会ではスーツが主流です。とくに、シンポジストや座長などの演者はスーツが必須です。経験上、多くの医師はスーツに対して特別なこだわりを持っていません。日常業務では白衣を着用し、スーツを着る機会が限られているため、夏冬兼用のスーツを使用することが一般的です。しかし、猛暑の中でのこの選択はリスキーかもしれません。私自身も若手医師の頃は夏冬兼用スーツを使用していましたが、年を重ねるにつれて学会での発表機会が増え、通気性に優れた夏用スーツを着用するようになりました。背抜き仕様の裏地を持つ夏用スーツは、背中が汗でびしょ濡れになることを防ぎます。現在、夏用スーツの購入を迷っている医師の方々には、将来的に必要になることを考慮し、ぜひ購入をお勧めします。ちなみに、海外の学会では、ドレスコードもなくラフな格好で参加している人が多いと思います。日本の研究会風の形式とは異なり、海外の学会はエンターテインメント性が高いからかもしれません。歴史的な暑さ今年は海面の水温が高くなるエルニーニョ現象がなくなり、水温が低くなるラニーニャ現象に切り替わっています。その結果、地上では最高気温の記録更新が観察されており、再び各地の気温が記録を塗り替える可能性があります。地球上の過去最高の気温といえば、デスバレーにおける56.7度です。今から100年以上前、1913年に記録されました。現在、猛暑のためカリフォルニア州では20件を超える山火事が発生し、次第に延焼面積が拡大しています。余談ですが、デスバレーのような高温地域で救急医療が必要な場合、ヘリコプターの出動が増えます。しかし、気温が高すぎるとヘリコプターの離着陸が困難になります。一般的に46度以上の気温では安全性が保証されず、物理的に十分な揚力が得られなくなるためです。

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重度のBPSDに対する抗精神病薬の投与量の軌跡

 抗精神病薬は、認知症の行動・心理症状(BPSD)に対し、適応外で使用されることが多いが、これら薬剤の重要な副作用は懸念となる。杏林大学の多田 照生氏らは、重度のBPSDを有する認知症入院患者における抗精神病薬の長期使用状況、時間の経過とともに使用状況がどのように変化するかを調査した。Pharmacopsychiatry誌オンライン版2024年6月25日号の報告。 2012年10月〜2021年9月の山梨県・日下部記念病院のカルテデータをレトロスペクティブにレビューした。この研究では、認知症診断後、BPSDのために入院し、入院3ヵ月時点で抗精神病薬を使用していた患者を対象とした。抗精神病薬の投与量は、クロルプロマジン等価換算に基づき高用量群(300mg/日以上)、中用量群(100〜300mg/日)、低用量群(100mg/日未満)に分類し、入院15ヵ月までフォローアップを行った。3〜6ヵ月目における投与量の減量と関連する因子を特定するため、二項ロジスティック回帰を用いた。 主な結果は以下のとおり。・対象患者は188例、平均年齢は81.2歳、アルツハイマー型認知症の割合は67%であった。・3ヵ月時点での抗精神病薬の投与量は、高用量群15.4%、中用量群44.1%、低用量群40.4%であった。・平均投与量は3ヵ月目で最高に達し、その後は時間の経過とともに減少していた。・12ヵ月目までにすべての群において、20〜30%の患者は、抗精神病薬の使用が中止されていた。・投与量減少に対する重要な因子は、最初の投与量が高い(オッズ比[OR]:1.003、95%信頼区間[CI]:1.001〜1.006、p=0.01)、男性(OR:2.481、95%CI:1.251〜4.918、p=0.009)であった。 著者らは「重度のBPSDを有する認知症入院患者における抗精神病薬の投与量の軌跡は、これまで報告されていなかった。今回の研究により、脆弱な患者群に対する長期薬物療法のマネジメントにおいて、個別化した治療戦略の必要性が明らかとなった」としている。

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両側乳房切除と乳がん死亡率/JAMA Oncol

 片側乳がん患者に対する両側乳房切除の乳がん死亡率におけるベネフィットは示されていない。今回、カナダ・Women's College HospitalのVasily Giannakeas氏らによるコホート研究において、両側乳房切除で対側乳がんリスクは有意に低下したが乳がん死亡率は低下しなかったことが報告された。JAMA Oncology誌オンライン版2024年7月25日号に掲載。 このコホート研究では、SEERプログラムの登録データベースから、2000~19年に診断されたStage0~III片側乳がん(浸潤性乳がんおよび非浸潤性乳がん)の女性を同定し、手術の種類(乳房部分切除、片側乳房切除、両側乳房切除)によりマッチングを行い、対側乳がんおよび乳がん死亡率を20年間追跡した。 主な結果は以下のとおり。・研究サンプルは、片側乳がん女性66万1,270例(平均年齢:58.7歳)で、マッチング後、3つの治療群はそれぞれ3万6,028例であった。・20年間の追跡期間中、対側乳がんが認められたのは乳房部分切除群で766例、片側乳房切除群で728例、両側乳房切除群で97例だった。20年対側乳がんリスクは、乳房部分切除群・片側乳房切除群で6.9%(95%信頼区間[CI]:6.1~7.9)であった。・累積乳がん死亡率は、対側乳がん発症後15年で32.1%、対側乳がんを発症しなかった患者では14.5%であった(ハザード比:4.00、95%CI:3.52~4.54)。・乳がん死亡は、乳房部分切除群で3,077例(8.54%)、片側乳房切除群で3,269例(9.07%)、両側乳房切除群で3,062例(8.50%)であった。 この研究は、対側乳がんを発症すると乳がん死亡リスクが大幅に増加することを示している。一方、両側乳房切除を受けた患者は対側乳がんのリスクが大幅に減少したが、乳房部分切除または片側乳房切除を受けた患者と乳がん死亡率が同程度だった。

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最重症群「IV度」を追加、熱中症診療ガイドライン2024公開

 7月25日、日本救急医学会の熱中症および低体温症に関する委員会が『熱中症診療ガイドライン2024』を公表した。本ガイドラインの改訂は10年ぶり。本ガイドラインでは熱中症の診療と予防の全般をカバーし、定義・重症度・診断、予防・リスク、冷却法、冷却法以外の治療(補液、DIC治療薬)、小児関連の5分野より24個のClinical Question(CQ)が設定されている。 重症度分類がIII度からIV度へ これまで2015年版でIII度としてきた重症群の中にさらに注意を要する最重症群が含まれていたが、改訂版である2024年版ではこの最重症群を「IV度」と同定し、Active Coolingを含めた集学的治療を早急に開始するよう提唱している。これにより、IV度は膀胱温や直腸温などの深部体温を用いて「深部体温40.0℃以上かつGCS≦8」*と定義し、Bouchama基準の重症が2024年版のIV度に該当することになる。本ガイドラインでのIII度は「IV度に該当しないIII度(2015)」となった。 さらに、IV度の可能性がある患者を現場や搬送中、あるいは来院直後に把握する基準としてqIV度(quick IV度)「表面体温40.0℃以上(もしくは皮膚に明らかな熱感あり)かつGCS≦8(もしくはJCS≧100)**【深部体温の測定不要】」を設け、併せて提唱している。もし、表面体温にてqIV度と考えた場合は、深部体温測定を行い、速やかに重症度を判断する。深部体温が40.0℃以上でIV度と判断された場合には、早急にActive Coolingを含めた集学的治療を実施する。*Glasgow Coma Scale  **Japan Coma Scale用語統一にも注意 Active Coolingについては、何らかの方法で熱中症患者の身体を冷却することと定義し、熱中症診療ガイドライン2015にて「体温管理」「体内冷却」「体外冷却」「血管内冷却」「従来の冷却法(氷嚢、蒸散冷却、水式ブランケット)」「ゲルパッド法」「ラップ法」などと記載していた方法をActive Coolingとして包括的な記載に統一されている。ただし、2015版で記載されていた「冷所での安静」はPassive Cooling(冷蔵庫に保管していた輸液製剤を投与することや、クーラーや日陰の涼しい部屋で休憩すること)とし、これに該当するものはActive Coolingに含まない(CQ3-01、CQ3-02、BQ4-01、CQ4-02、FRQ4-03、CQ5-02)。また、Active Coolingと“集中治療、呼吸管理、循環管理、DIC治療”はActive Coolingを含めた集学的治療と表現される。なお、冷蔵庫に保管していた輸液製剤を投与することは、薬剤メーカーが推奨する投与方法ではなく、重症熱中症患者への有効性を示すエビデンスはないと示している(p.5)。新たな診断基準と治療方法 熱中症の診断基準は「暑熱環境に居る、あるいは居た後」の症状として、以下のように分類され、推奨される治療方法が記載されている(p.7、実際はアルゴリズムとして明記)。I度 めまい、失神(立ちくらみ)、生あくび、大量の発汗、筋肉痛、筋肉の硬直(こむら返り)があるも意識障害を認めないもの。通常は現場で対応可能と判断する。Passive Coolingを行い、不十分であればActive Cooling、経口的に水分と電解質の補給を行う。II度 頭痛、嘔吐、倦怠感、虚脱感、集中力や判断力の低下(JCS1)を認める。医療機関での診察を必要とし、Passive Cooling、不十分ならActive Cooling、十分な水分と電解質の補給(経口摂取が困難なときは点滴)を行う。III度 (1)中枢神経症状(意識障害JCS2、小脳症状、痙攣発作)、(2)肝・腎機能障害(入院経過観察、入院加療が必要な程度の肝または腎障害)、(3)血液凝固異常(急性DIC診断基準[日本救急医学会]にてDICと診断)の3つのうちいずれかを含む場合、入院治療の上、Active Coolingを含めた集学的治療を考慮する。IV度 深部体温40.0℃以上かつGCS≦8の場合、Active Coolingを含めた集学的治療を行う。 重症例(III~IV度)の治療法としては、Active Coolingを含めた集学的治療を行うことを推奨しているが、Active Cooling の中の個別の冷却方法を推奨はしない。一方、軽症例(I~II度)は、クーラーや日陰の涼しい部屋で休憩するPassive Coolingと水分・電解質の補給で症状が軽快しうるが、改善に乏しい場合は、深部体温を測定したうえで、Active Coolingを行うべきである、と記されている。 検討課題として、経口補水液、DIC治療薬、暑熱順化については十分な研究成果が得られていない点も記されている(p.5)。熱中症の疫学的特徴 厚生労働省の人口動態統計(確定数)によると、熱中症の死亡者数は毎年1,000例を超え、全国の熱中症搬送者数は9万1,467例に上る。年齢区分別では、高齢者(満65歳以上)が最も多く、次いで成人(満18歳以上満65歳未満)、少年(満7歳以上満18歳未満)、乳幼児(生後28日以上満7歳未満)の順となっており、発生場所は住居が最も多く、次いで道路、公衆(屋外)、仕事場(道路工事現場、工場、作業所など)の順となっている。他方で、全国の救命救急センターの入院症例を対象とした日本救急医学会の熱中症の調査Heatstroke STUDY(HsS)2020-21では、65歳以上が60%強、男性が70%弱、屋外発生が50%(日常生活が60%、労働が30%、スポーツが10%)、マスク着用は少数(不明例が多数)であった。  最後に同委員会担当理事の横堀 將司氏(日本医科大学大学院医学研究科救急医学分野 教授)ならびに委員長の神田 潤氏(帝京大学医学部附属病院高度救命救急センター)らは、「HsSによると、IV度におけるActive Cooling実施率は90%以上であるにもかかわらず、院内死亡率が20%以上と重篤な状況にある。さらにIV度の可能性が高いqIV度のなかでも、深部体温の不明・未測定例が25%に上り、その不明・未測定例でのActive Coolingの実施状況は60%程度で、院内死亡率は37.0%であった。この状況を踏まえ、最重症であるIV度の熱中症が重篤である点、重症化が懸念されるqIV度での深部体温測定とActive Coolingの徹底が重要」としている。

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シス女性のHIV曝露前予防、レナカパビル年2回投与が有効/NEJM

 レナカパビル年2回皮下投与によりHIV感染の発生は認められず、バックグラウンドおよびエムトリシタビン/テノホビル・ジソプロキシルフマル酸塩(F/TDF)と比較してHIV感染の発生率を100%低下させることが、南アフリカ・ケープタウン大学のLinda-Gail Bekker氏らPURPOSE 1 Study Teamによる第III相無作為化二重盲検実薬対照比較試験「PURPOSE 1試験」において示された。シスジェンダー女性におけるHIV曝露前予防は、予防薬の服薬、服薬アドヒアランスおよび服薬継続に限界があり、新たな選択肢の開発が望まれていた。NEJM誌オンライン版2024年7月24日号掲載の報告。16~25歳のシス女性5,368例をレナカパビル群、F/TAF群、F/TDF群に無作為化 PURPOSE 1試験は、最近の試験で曝露前予防(PrEP)を受けていない思春期および若年女性のHIV罹患率が100人年当たり3.5以上である南アフリカおよびウガンダで実施された。 研究グループは、PrEPを用いておらず、HIV感染状況が不明で過去3ヵ月以内にHIV検査を受けていない16~25歳のシスジェンダー女性をスクリーニングし、中央検査にてHIV陰性が確認された女性を、レナカパビル群(927mgを26週間ごとに2回皮下投与、プラセボ経口投与)、F/TAF群(エムトリシタビン200mgとテノホビル・アラフェナミド25mgを1日1回経口投与、プラセボ皮下投与)、F/TDF群(エムトリシタビン200mgとTDF 300mgを1日1回経口投与、プラセボ皮下投与)に、2対2対1の割合で無作為に割り付けた。 主要エンドポイントは、HIV感染の発生であった。有効性の主要解析は、スクリーニングでHIV陽性が確認された女性集団に基づくHIV感染発生率をバックグラウンドHIV感染発生率として、レナカパビル群およびF/TAF群のHIV感染発生率と比較した。また、有効性の副次解析として、レナカパビル群およびF/TAF群のHIV感染発生率をF/TDF群と比較した。 2021年8月30日~2023年8月31日に、8,402例がスクリーニングを受け、中央検査を実施した8,094例中504例(6.2%)がHIV感染と診断され、うち92例(18.3%)が最近の感染であった。8,094例におけるバックグラウンドHIV感染発生率は、100人年当たり2.41(95%信頼区間[CI]:1.82~3.19)であった。 8,094例のうちHIV陰性で適格基準を満たした5,368例が無作為化された。このうち試験薬が少なくとも1回投与され、無作為化日にHIV感染が判明した症例を除く5,338例が有効性の解析対象となった(レナカパビル群2,134例、F/TAF群2,136例、F/TDF群1,068例)。レナカパビル群でHIV感染の発生はゼロ、F/TDF群よりHIV予防効果が有意に高い 解析対象5,338例のうち、55例のHIV感染の発生が観察された。レナカパビル群は0例(発生率:0/100人年、95%CI:0.00~0.19)、F/TAF群は39例(2.02/100人年、1.44~2.76)、F/TDF群は16例(1.69/100人年、0.96~2.74)であった。 レナカパビル群のHIV感染発生率は、バックグラウンド(発生率比:0.00、95%CI:0.00~0.04、p<0.001)およびF/TDF群(0.00、0.00~0.10、p<0.001)と比較して100%減少した。 F/TAF群のHIV感染発生率は、バックグラウンドと有意差はなく(発生率比:0.84、95%CI:0.55~1.28、p=0.21)、F/TDF群との間でHIV感染発生率に意味のある差は確認されなかった(発生率比:1.20、95%CI:0.67~2.14)。F/TAFとF/TDFの服薬アドヒアランスは低かった。 安全性に関する懸念は認められなかった。注射部位反応はレナカパビル群(68.8%)でF/TAF群およびF/TDF群のプラセボ投与(併合で34.9%)より多く発現した。レナカパビル群では4例(0.2%)が注射部位反応により投与を中止した。

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院外心停止者の血管アクセス、骨髄路vs.静脈路/BMJ

 非外傷性院外心停止成人患者において、骨髄路確保は静脈路確保と比較して、生存退院、病院到着前自己心拍再開、持続的自己心拍再開、良好な神経学的アウトカムのいずれについても差はなかった。台湾・国立台湾大学病院のYing-Chih Ko氏らが、クラスター無作為化比較試験「Venous Injection Compared To intraOsseous injection during Resuscitation of patients with out-of-hospital cardiac arrest trial:VICTOR試験」の結果を報告した。蘇生に関するガイドラインでは、院外心停止時の薬物投与には静脈路を優先し、静脈路が確保できない場合は骨髄路を使用することが推奨されているが、これまでの後ろ向き研究には限界があった。著者は、今回の前向き試験の結果に基づき、「骨髄路確保は、静脈路確保の代替ではなく第1選択として考慮しうるもので、患者や救急医療システムのさまざまな特徴に基づいた血管アクセスの最適な意思決定プロセスを検討する必要がある」とまとめている。BMJ誌2024年7月23日号掲載の報告。4つの高度救命救急チームを隔週で骨髄路群または静脈路群に無作為化 VICTOR試験は、2020年7月6日~2023年6月30日に、台北市消防局に所属する4つの高度救命救急チームが参加し、台北市内のすべての救急責任病院で実施された(2021年5月20日~2021年7月31日はCOVID-19流行のため一時中断)。 研究グループは、非外傷性院外心停止成人患者(20~80歳)を対象とし、4つの高度救命救急チームをそれぞれ2週ごとに骨髄路群または静脈路群に割り付け(クラスター比率は1対2)、骨髄路群の患者には機械的骨髄内穿刺、静脈路群の患者には上肢の静脈内穿刺が行われた。両群とも血管アクセスが確保された後、アドレナリン(エピネフリン)1mg、続いて生理食塩水10mLを急速注入した。 主要アウトカムは生存退院、副次アウトカムは病院到着前自己心拍再開、持続的自己心拍再開(2時間以上)、退院時の良好な神経学的アウトカム(脳機能カテゴリースコア≦2の生存)などであった。骨髄路群と静脈路群で、生存退院、病院到着前自己心拍再開などに有意差なし 適格基準を満たした1,771例が登録され、主要アウトカムのデータが得られた1,732例(骨髄路群741例、静脈路群991例)が解析対象となった。患者は、年齢中央値65.0歳、男性1,234例(71.2%)であった。 生存退院は、骨髄路群では79例(10.7%)であったのに対し、静脈路群では102例(10.3%)であった(オッズ比[OR]:1.04、95%信頼区間[CI]:0.76~1.42、p=0.81)。 副次アウトカムについても、病院到着前自己心拍再開(OR:1.23、95%CI:0.89~1.69、p=0.21)、持続的自己心拍再開(0.92、0.75~1.13、p=0.44)、良好な神経学的アウトカム(1.17、0.82~1.66、p=0.39)のいずれも、両群間に有意差は認められなかった。

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強い骨の形成を促す新しいホルモンを発見

 骨粗鬆症と闘い、骨折を早く治すのに役立つ可能性を秘めたホルモンが、マウスを用いた実験で発見された。それは、CCN3(cellular communication network factor 3)と呼ばれるホルモンで、授乳中の雌マウスの骨量や骨の強度の維持に役立っていることから「母体脳ホルモン(maternal brain hormone)」とも呼ばれている。実験では、CCN3が、年齢や性別にかかわりなく全てのマウスの骨を強化することが確認された。米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)のHolly Ingraham氏らによるこの研究の詳細は、「Nature」に7月10日掲載された。 骨粗鬆症患者の数は世界で2億人に上る。女性では、特に閉経後に骨の形成を促す女性ホルモンであるエストロゲンレベルが低下するため、骨粗鬆症リスクが上昇する。エストロゲンは授乳中にも低下するが、この時期に骨粗鬆症や骨折が生じることはまれである。このことから、授乳期にはエストロゲン以外の何かが骨の形成を促していると考えられている。 Ingraham氏らは過去の研究で、雌マウスの脳の狭い領域にある特定のニューロンのエストロゲン受容体を遮断することで、骨量が増加することを確認していた。このことから研究グループは、血液中のホルモンが骨の増強に役立っている可能性を考えていたが、新型コロナウイルス感染症パンデミックの影響を受けて、研究は中断されていた。 今回の研究では、特定の遺伝子操作により意図的に遺伝子を変異させた雌マウスを用いて、骨の形成を促すこのホルモンを突き止めるために徹底的な調査が行われた。その結果、CCN3が特定された。CCN3は、ニューロンから分泌されるホルモンの典型的な特徴が該当しないため、Ingraham氏らはこの結果に驚いたと話す。 しかし、この疑問は、授乳中の雌マウスの同じ脳領域でCCN3が発見されたことにより解消されたという。これらの特定のニューロンでCCN3が生成されなければ、授乳中の雌マウスの骨量や骨の強度が急速に低下し、子マウスの体重も減り始めることが確認されたからだ。これは、CCN3が授乳中の母マウスの骨の健康維持に重要な役割を果たしていることを意味する。 さらに、若年成体や高齢の雌雄のマウスを対象に、体内を循環するCCN3の量を増加させたところ、数週間のうちに骨量と骨の強度が劇的に増加することが確認された。また、CCN3を2週間かけてゆっくりと放出するハイドロゲルパッチを作成して、高齢マウスの骨折部位に貼り付けた。その結果、骨の形成が促進され、高齢マウスで通常見られるよりも早いプロセスで治癒することも示された。 論文の責任著者の1人である米カリフォルニア大学デイビス校のThomas Ambrosi氏は、「これまで、このような骨の石灰化と治癒を達成した方法は他になかった」と述べ、「われわれは今後も、このホルモンについての研究を進めること、また、軟骨再生など他の問題に応用する可能性を探ることを心から楽しみにしている」と述べている。

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睡眠時間が乱れている人は糖尿病リスクが高い

 睡眠時間が日によって長かったり短かったりすることが、糖尿病発症リスクの高さと関連があることを示すデータが報告された。米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院のSina Kianersi氏らの研究によるもので、詳細は「Diabetes Care」に7月17日掲載された。論文の筆頭著者であるKianersi氏は、「われわれの研究結果は、2型糖尿病予防のために、睡眠パターンの一貫性を保つことの重要性を表している」と述べている。 この研究には、英国の一般住民対象大規模疫学研究「UKバイオバンク」のデータが用いられた。UKバイオバンク参加者のうち、2013~2015年に加速度計の計測データがあり睡眠時間を把握可能で、その時点で糖尿病でなかった8万4,421人(平均年齢62歳、男性43%、白人97%)を2022年5月まで追跡して、睡眠時間の乱れと糖尿病発症リスクとの関連を検討した。睡眠時間の乱れは、7晩連続で計測した睡眠時間の標準偏差(SD)で評価した。 7.5年間(62万2,080人年)の追跡で2,058人が糖尿病を発症。年齢、性別、人種を調整後、睡眠時間のSDが30分以下の群と比較して、SDが31~45分の群の糖尿病発症ハザード比(HR)は1.15(95%信頼区間0.99~1.33)と非有意だった。しかし、SDが46~60分の群ではHR1.28(同1.10~1.48)、61~90分ではHR1.54(1.32~1.80)、91分以上ではHR1.59(1.33~1.90)と有意にハイリスクであり、睡眠時間のSDが大きいほど糖尿病発症リスクが高いという関連が認められた(傾向性P<0.0001)。 SDが60分以下/超の2群間での比較では、後者の方が34%ハイリスクだった(HR1.34〔1.22~1.47〕)。調整因子として、生活習慣、併存疾患、肥満などを追加すると関連性は弱まったが、60分以下/超の2群間での比較では引き続き有意な差が観察された(HR1.11〔1.01~1.22〕)。 糖尿病の多遺伝子リスクスコアの高低で層別化した解析では、遺伝的背景が弱い人ほど睡眠時間の乱れの影響が強く現れていた(交互作用P=0.0221)。また、睡眠時間で層別化した解析では、睡眠時間が長い人ほど睡眠時間の乱れの影響が強く現れていた(交互作用P<0.0001)。 なぜ、睡眠時間の乱れが糖尿病発症リスクにつながるのだろうか? 今回の研究からはその答えに迫ることはできないが、研究グループでは、「概日リズム(1日24時間周期の生理活動)の乱れや睡眠障害が関与しているのではないか」と述べている。 なお、本研究の限界点として、生活習慣に関する情報は加速度計で睡眠時間の乱れを把握したのと同じ時期ではなく、それよりも5年ほど前に収集されていたこと、および、7日間という評価期間が睡眠時間の日常的な乱れを把握するには短すぎる可能性のあることなどが、ジャーナル発のリリースに記されている。

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肺の空洞性病変の鑑別診断(2)[感染症編]【1分間で学べる感染症】第8回

画像を拡大するTake home message肺の空洞性病変の感染症の鑑別診断は多岐にわたる。抗酸菌:結核、非結核性抗酸菌(M. avium、M. kansasiii、M. abscessusなど)細菌:黄色ブドウ球菌、緑色連鎖球菌、ノカルジア、放線菌、クレブシエラ、緑膿菌、Stenotrophomonas、口腔内の嫌気性菌、Legionella non-pneumophila真菌:アスペルギルス、ムーコル、クリプトコッカス寄生虫:エキノコックス、肺吸虫など今回のテーマは、肺の空洞性病変の鑑別診断「感染症編」です。肺の空洞性病変の総論については、前回「CAVITY」で学習しました。今回はその中でも感染症の鑑別診断について深く学習していくことにします。肺の空洞性病変を見たら、まずは肺結核を否定することが何より重要です。しかし、それ以外にも、あらゆる微生物が肺の空洞性病変を呈することが知られています。肺結核以外にも、非定型抗酸菌、具体的にはM.aviumやM. kansasiii、M. abscessusなどが有名です。細菌では、黄色ブドウ球菌、緑色連鎖球菌などのグラム陽性球菌、ノカルジアや放線菌などのグラム陽性桿菌、グラム陰性桿菌ではクレブシエラ、とくに免疫不全者では緑膿菌、Stenotrophomonasなどを鑑別に入れる必要があります。また口腔内の嫌気性菌やレジオネラのnon pneumophilaのタイプが原因となることもあります。真菌では、とくに好中球減少者においてアスペルギルスやムーコル症、またHIVやがんで細胞性免疫が低下している患者ではクリプトコッカスが問題になることがあります。寄生虫では、まれですがエキノコックスや東南アジアからの帰国者では肺吸虫などがあります。肺の空洞性病変を見た際には、疫学的なリスクを考慮しながら結核だけではなく、これらの幅広い病原微生物を考慮することが重要です。1)Harding MC, et al. Fed Pract. 2021;38:465-467.2)Parkar AP, et al. J Belg Soc Radiol. 2016;100:100.

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遺伝性乳卵巣(HBOC)診療ガイドライン 2024年版 第3版

エビデンスをアップデート! 最新HBOC診療指針!多診療科・多職種・当事者がガイドライン作成に加わることで多くの意見を収集し、一人ひとりが納得のいく選択を行えるよう推奨決定に至るまでの議論をわかりやすく記載。総論・遺伝領域では多遺伝子パネル検査(MGPT)のさらなる普及を踏まえBRCA遺伝子に限定せず解説。乳がん・卵巣がん領域では領域をまたがるクエスチョン(RRSO、ART等)を統合し推奨を明瞭化。前立腺がん・膵がん・皮膚がんにおいても最新エビデンスを反映した。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する遺伝性乳卵巣(HBOC)診療ガイドライン 2024年版 第3版定価4,180円(税込)判型B5判頁数344頁発行2024年7月編集日本遺伝性乳卵巣総合診療制度機構ご購入(電子版)はこちらご購入(電子版)はこちら紙の書籍の購入はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら紙の書籍の購入はこちら

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第223回 厚労省ヘルスケアスタートアップPT報告書を読む(後編) あの一般向けがんリスク判定会社もターゲットか?消費者向けの各種検査サービス、医師法に照らし合わせて総点検へ

ヘルスケアスタートアップの振興・支援に向けて25の提言こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。この日曜は、凝りもせずに全国高等学校野球選手権大会の埼玉県大会決勝の花咲徳栄対昌平戦の観戦に、県営大宮公園球場まで行って来ました。同行した野球仲間の1人は早稲田実業の出身ですが、同じ日曜に行われた西東京大会決勝、日大三高対早稲田実業の試合観戦を蹴ってまで、わざわざ暑い埼玉までやって来ました。試合は花咲徳栄が勝ったのですが、10回タイブレークでの決着でした。近年力を付けて来た昌平は、10回表の拙いバント処理さえなければ初甲子園だったかもしれません。日々の基礎練習の大切さを再認識した次第です。さて、今回も前回に続き、6月27日に厚生労働省の「ヘルスケアスタートアップ等の振興・支援策検討に関するプロジェクトチーム(PT)」が公表した最終報告書を取り上げます。2024年2月に厚労省が立ち上げた同PTは、海外と比べてヘルスケア分野のスタートアップ企業がなかなか出てこない日本の現状を打破すべく、その振興・支援策などについて多面的に検討してきました。同PTは最終報告書として、(1)総論、(2)バイオ・再生、(3)医療機器・SaMD、(4)医療DX・AI、(5)介護テックの領域別に合計25の提言を盛り込んだ「ヘルスケアスタートアップの振興・支援に関するホワイトペーパー -健康・医療・介護の未来を拓く起業大国へ-」を公表1)しました。前回は2024年診療報酬改定で往診の報酬が大幅に減額されたことで、夜間や休日の往診サービスを手掛ける医療スタートアップの事業の撤退・縮小が相次いでいる現状を伝えるとともに、診療報酬や介護報酬に大きく依存するビジネスモデルを採るスタートアップの経営の難しさを指摘、25の提言の中の「提言3)ヘルスケアスタートアップ関係者からの診療報酬改定等の要望を受け付け、検討を行う新たな一元窓口を設置する」の内容について紹介しました。今回は、25の提言の中で私がとくに気になった「提言10)非臨床の消費者向け検査サービスに関する法規制の明確化を図る」について書いてみたいと思います。「医療機関では基本実施されず、医療には当たらない(非臨床)とされる消費者向け(Direct to Consumer:DTC)の検査サービスについて、法規制の明確化を図る」というのがその内容です。この提言によって、これまでほぼほぼ“野放し”状態だった消費者向け検査サービス対する規制が強まると見られます。いくつかのスタートアップや関連企業は戦々恐々としているのではないでしょうか。管轄する省庁、法律上の位置づけが不明確なため「リスク判定」という名目の曖昧な検査が“野放し”「非臨床の消費者向け検査サービス」とはどんなものでしょうか。具体的には、本連載の「第88回 がんが大変だ! 検診控え依然続き、話題の線虫検査にも疑念報道(前編)」、「第89回 同(後編)」などでも繰り返し書いてきた、民間企業が検体(血液、尿、唾液など)を基に病気のリスクなどを判定する検査サービスを指します。第88回で詳しく書いたように、臨床検査には、「分析学的妥当性」「臨床的妥当性」「臨床的有用性」の3つの評価基準を満たしているというデータを、きちんとしたプロトコールによって行った臨床試験等で出す必要があります。それがクリアしていれば、保険診療での使用が認められますし、海外で導入されることもあります。しかし、こうした「病気(がんなど)のリスクを判定する」と喧伝する一般向け検査(広告などで知名度の高い「N-NOSE」のほか、「アミノインデックス」、「テロメアテスト」などがあります)の多くは、お金と時間が膨大にかかる臨床試験を敢えて避けて商品化し、日本だけで通用する一般向け検査でお茶を濁しているケースが少なくありません。そうした検査がはびこっている最大の理由は、管轄する省庁、法律上の位置付けが不明確なためです。その結果、「リスク判定」(あえて「診断」とは言わない)という名目の曖昧な検査が“野放し”になってきたわけです。今回のPTの最終報告書は「振興・支援策の提言」のはずなのに、この「提言10」は「規制ではないか」と言われそうです。しかし、これまで監督官庁も曖昧で規制する法律もなかったこの分野に明確なルールを設け、スタートアップ企業として健全な育成を図っていくというのがその狙いなので、振興・支援策だと言えなくもありません。検査サービスの品質や信憑性等についてガバナンスの仕組みの構築を求める声「提言10」の「問題の所在」の項では、「遺伝子検査、血液検査、尿検査等非臨床の消費者向け(DTC)の各種検査サービスが国内外で広がっている。2020年以降の国内市場は100億円規模と予想されており、ヘルスケアスタートアップにとっても魅力的な成長市場として期待されている」としつつ、「一般消費者の利用が拡大する中で検査サービスの品質や信憑性等についてガバナンスの仕組みの構築を求める声がある」と、その問題点を指摘しています。その上で、「米国及び欧州では非臨床の消費者向け検査サービスについてすでに具体的な法的規制が設けられているところ、日本ではこれら非臨床の消費者向け検査サービス特有の法規制は設けられておらず、結果として検査の信憑性に問題があったとしても、行政側による関与が難しい状況にあると指摘されている」として、今後、国が取り組む具体的対策を「提言」として記しています。医師法違反に該当する恐れがある事例等につき解釈を明確化その「提言」によれば、「医師法等を所管する立場から、厚生労働省において、医行為と非臨床の消費者向け検査サービスに係る法的な課題の検討を進め、非臨床の消費者向け検査サービスの外縁の明確化に取り組む」として、2024年度中に次の2つのアクションを起こすとしています。1)不適切な検査結果通知を適正化するため、「健康寿命延伸産業分野における新事業活動のガイドライン」(平成26年厚生労働省・経済産業省連名通知)において示している「検査(測定)結果の事実や検査(測定)項目の一般的な基準値を通知することに留めなければならない」という医師法第17条の考え方に関して、関連Q&Aや事務連絡を発出するなどして、解釈の明確化を図る。2)消費者に通知される検査結果等が公知の科学的根拠に欠ける場合など、無資格者が独自の医学的判断を行っているものとして医師法違反に該当する恐れがある事例等につき解釈を明確化する。厚労省などが起こすアクションによっては事業構造の大幅な見直しが必要につまり、消費者向けの各種検査サービスについて、医師法を管轄する厚労省が主導権を取り、医師法違反という観点から法令違反の恐れがある事例をまとめ、事務連絡などで周知徹底する、としたのです。これまで消費者向けの各種検査サービスは、遺伝子検査については経済産業省が「DTC遺伝子検査ビジネス事業者に対するガイダンス」を策定し、業界は基本これに則った事業展開をしています。しかし、遺伝子検査以外の分野は規制する法律やガイドラインもないことから、エビデンスも不確かでいい加減な判定結果を消費者に報告するなど、まさにやりたい放題でした。そうした検査サービス会社はこの提言を踏まえ、厚労省などが起こすアクションによっては、事業構造の大幅な見直しが必要になってくるでしょう。超多忙な「厚労省は担当したくなかった」という声もところで、こうした方向性が打ち出されるまでには、結構な紆余曲折があったと聞いています。一部には「厚労省は担当したくなかった」という声も漏れ聞こえて来ます。マイナ保険証、「かかりつけ機能」の整備化、次期地域医療構想……等々、ただでさえ超多忙な中、またまた厄介な問題は引き受けたくない、というのが本音だったようです。現状では大きな“被害”は報告されておらず、当面は法律で規制することなく“野放し”のままでいい、と考えていた節もあります。そうした状況の中、「医師ではない者が独自の医学的判断をして、不適切な結果通知を行っているとすれば、医師法違反の恐れがある」として規制の必要性を強く訴えたのは国会議員筋だという情報もあります。いずれにせよ、医師法違反という観点から法令違反の恐れがある事例がまとめられ、検査の結果(リスク判定)を消費者にフィードバックする際の表現についてもガイドラインが設けられる可能性があります。また、検査の品質や信頼性についても、より客観的なデータや再現性が求められるようになるかもしれません。「線虫検査」の広告は、相変わらず一般メディアでよく見かけます。お金をかけた派手な広告を見れば見るほど、「最後の悪あがき」のように感じます。参考1)ヘルスケアスタートアップの振興・支援に関するホワイトペーパー/厚生労働省

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顔の表面温度、脂肪肝や生活習慣病のスクリーニングに有用か

 体温とは、細胞機能と生物の生存に影響を与える、つまり健康状態を知るための重要なパラメータであり、老化と寿命にとっても重要な要素である。そこで今回、中国・北京大学のZhengqing Yu氏らは顔の皮膚温を捉えた熱画像(以下、サーマル画像)を用い、老化と代謝疾患の定量的特徴を明らかにすることで、サーマル画像が老化と代謝状態の迅速スクリーニングに有用な可能性を示唆した。Cell Metabolism誌2024年7月2日号掲載の報告。 研究者らは、2020~22年の期間に21〜88歳の成人2,811人(女性:1,339人、男性:1,472人)の顔のサーマル画像を収集し、赤外線サーモグラフィによる顔のメッシュ認識および領域分割アルゴリズムを用いたThermoFaceを開発、自動処理・分析にて生物学的年齢を測定するなどして、サーマル顔画像年齢による疾患予測モデルを生成し、AgeDiff(予測年齢と実年齢の差)と代謝パラメータや睡眠時間との関連を検証した。 主な結果は以下のとおり・各年代のThermoFaceパターンを調べた結果、男女ともに鼻、頬、眉毛ゾーンの皮膚温が加齢とともに低下していた。ただし、女性は50代から、男性は60代から低下がみられた。・また、皮膚温と代謝疾患との関連について、糖尿病や脂肪肝などの代謝疾患を有する人は健康な人に比べて目の周囲の皮膚温が高く、高血圧の人では頬の皮膚温が高かった。・ThermoFaceは、脂肪肝などの代謝疾患を高い精度(AUC>0.80)で予測し、予測された疾患確率は代謝パラメータと相関していた。・AgeDiffは、BMI、空腹時血糖値、アポリポ蛋白Bなどの代謝性疾患パラメータ、睡眠時間、血液検体のトランスクリプトーム解析によるDNA修復、脂肪分解、ATPaseなどの遺伝子発現経路との関連が高かった。・サーマル画像の皮膚温分布は老化や代謝状態を反映しており、迅速なスクリーニングへの有効性が示された。 研究者らは、「顔のサーマル画像分析が加齢や代謝疾患の迅速な評価に有用であることを示しており、ThermoFaceはデータ取得の速さと利便性、大規模コホートに基づく精度の高さから、健康的な加齢に関するモニタリングや評価ツールとして有用な可能性がある」としている。

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脳転移/髄膜がん腫症を伴うHER2+乳がんへのT-DXd、長期の有効性を評価(ROSET-BM)/日本乳学会

 脳転移や髄膜転移を有するHER2+乳がんに対するトラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)の長期の有効性を検討したわが国のレトロスペクティブチャートレビュー研究であるROSET-BM試験において、前回の発表から追跡期間を1年延長したデータ(データカットオフ:2022月10月31日)を、北海道がんセンターの山本 貢氏が第32回日本乳学会学術総会で発表した。 本試験には2020年5月25日~2021年4月30日にT-DXd治療を開始した患者が登録された。評価項目は、全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)、治療成功期間(TTF)で、さらにOSと関連する背景因子を探索するために、Cox比例ハザードモデルを用いて単変量解析および多変量解析を実施した。対象は20歳以上の脳転移または髄膜がん腫症(LMC)を有するHER2+乳がん患者で、臨床試験でT-DXd治療を受けた患者は除外した。 主な結果は以下のとおり。・国内62施設で適格基準を満たした104例を解析対象とした。前治療は、2レジメン以下が24%、3レジメン以上が76%、中央値は4レジメンであった。また、PSは2以上が約15%、脳転移は症候性が30.8%であった。・追跡期間中央値は20.4ヵ月(前回:11.2ヵ月)であった。・OS中央値は前回と同様に未達であった。1年OS率は74.8%(前回:74.9%)、2年OS率は56.0%(前回:NA)であった。サブグループ解析では、Analytical active脳転移群のOS中央値は27.0ヵ月(95%信頼区間[CI]:16.4~NA)で、Analytical stable脳転移群およびLMC群のOSは中央値に達しなかった(2年OS率:Analytical stable 脳転移群71.6%、LMC群61.6%)。・PFS中央値は14.6ヵ月(前回:16.1ヵ月)、TTF中央値は9.3ヵ月(前回:9.7ヵ月)と若干減少した。・ILDによるT-DXdの中止は23.1%(前回:18.3%)と若干増加した。中止までの期間の中央値は5.3ヵ月(95%CI:4.0~8.8)であった。・多変量解析の結果、OSと有意に相関する背景因子はみつからなかった。 山本氏は「今回の更新データの解析から、前治療の多い脳転移や髄膜転移のあるHER2+乳がん患者に対するT-DXdの長期の有効性が証明された」と結論した。

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統合失調症患者の代謝パラメータに対する非定型抗精神病薬の影響

 3種類の非定型抗精神病薬(オランザピン、リスペリドン、アリピプラゾール)のいずれかを服用している患者と健康対照者の空腹時血清アスプロシン濃度と代謝パラメータを比較するため、イラン・Hamadan University of Medical SciencesのKiumarth Amini氏らは、横断的研究を実施した。Human Psychopharmacology誌オンライン版2024年6月28日号の報告。 対象は、統合失調症成人外来患者62例および年齢、性別が一致した健康対照者22例。患者は、寛解状態にあり、オランザピン、リスペリドン、アリピプラゾールのいずれかの非定型抗精神病薬による単剤治療を6ヵ月以上実施していた。BMI、空腹時血清アスプロシン、グルコース、HbA1c、インスリン、脂質プロファイルを両群間で比較した。さらに、インスリン抵抗性の基準を満たした人(HOMA-IR:2.5超)およびBMIレベルが高い人(男性:27kg/m2超、女性:25kg/m2超)について両群間で比較した。 主な結果は以下のとおり。・オランザピン群またはリスペリドン群は、アリピプラゾール群および健康対照者と比較し、BMI、空腹時血清グルコース、HbA1c、インスリン、トリグリセライド(TG)、HDLコレステロール、アスプロシンに統計学的に有意な差が認められた。・アリピプラゾール群は、健康対照者と同等の値を示したが、リスペリドン群またはオランザピン群は有意に高い値を示し、オランザピン群では、最も高値であった。・インスリン抵抗性および高BMIの有病率は、オランザピン群またはリスペリドン群において、アリピプラゾール群および健康対照者と比較し、高かった。・血清アスプロシン値は、BMI、HbA1c、空腹時インスリン、HOMA-IR、TGなどいくつかの代謝パラメータと有意な正の相関が認められた。・総コレステロールおよびLDLコレステロールに関しては、有意な差が認められなかった。 著者らは「オランザピンおよびリスペリドンで治療された患者では、アスプロシン値の上昇、体重増加、代謝障害との関連が認められた。血清アスプロシンレベルは、これらの代謝障害と双方向性の関連が示唆されており、潜在的な原因経路を解明するためにもさらなる研究が求められる」としている。

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