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日本人高齢者の難聴と認知症との関係

 日本では、高齢者の補聴器装着率が他の先進国より低いといわれている。このボトルネックを特定し、対策を講じることは重要である。広島市立広島市民病院の福増 一郎氏らは、難聴と認知症との関係についての認知向上が、聴力検査や補聴器装着に意義があるかを調査した。Auris Nasus Larynx誌2024年8月号の報告。 総合病院を受診した65歳以上の参加者を対象にアンケート調査を実施し、次の背景因子を調査した。(1)最近の聴力検査歴(2)耳鼻咽喉科を受診し、聴力検査を希望するか(3)難聴と認知症との関係についての認知状況(4)補聴器の装着について 主な結果は以下のとおり。・参加対象患者は517例(平均年齢:78.06±6.97歳)、地域高齢者人口の2.4%を占めた。・5年以内の聴力検査歴は、難聴と認知症との関係についての認知と有意な関連が認められた(調整済みオッズ比[aOR]:2.36、95%信頼区間[CI]:1.49〜3.72)。・耳鼻咽喉科の診療または聴力検査の希望は、難聴と認知症との関係についての認知と有意な関連が認められた(aOR:1.70、95%CI:1.02〜2.85)。・難聴と認知症との関連について認知していた人は、39.3%であった。・有意な関連因子は、女性(OR:2.50、95%CI:1.64〜3.81)、対人関係の趣味(OR:1.66、95%CI:1.11〜2.49)であった。・補聴器装着の有意な背景因子は、高齢(OR:6.95、95%CI:1.90〜25.40)、自己申告による重度の聴覚障害(OR:5.49、95%CI:2.55〜11.80)、独居(OR:2.63、95%CI:1.18〜5.89)であった。・難聴と認知症との関連についての認知は、有意な因子ではなかった。 著者らは「難聴と認知症との関連についての認知を高めることは、自己申告による難聴に対する補聴器装着と関連が認められなかったが、耳鼻咽喉科への受診や聴力検査の希望とは関連している可能性がある。そのため、高齢者に対する聴力スクリーニングなどの手順も不可欠であろう」としている。

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NSAIDの“有害な処方”、とくに注意すべき患者群とは/BMJ

 イングランドでは、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)の処方は5つの高リスク集団において、回避可能な害(avoidable harm)と医療費増加の継続的な原因であり、とくに慢性疾患を有する集団や経口抗凝固薬を使用している集団において急性イベント誘発の原因となっていることが、英国・マンチェスター大学のElizabeth M. Camacho氏らの調査で明らかとなった。研究の成果は、BMJ誌2024年7月24日号で報告された。高リスク集団を対象とするイングランドのコホート研究 研究グループは、イングランドの高リスク集団における問題のある経口NSAID処方に関して、発生率、有害性、英国国民保健サービス(NHS)の費用の定量化を目的に、住民ベースのコホート研究を行った(英国国立衛生研究所[NIHR]の助成を受けた)。 対象は、経口NSAIDを処方された5つの高リスク集団(胃腸保護薬を使用していない高齢者[65歳以上]、経口抗凝固薬の併用者、心不全患者、慢性腎臓病患者、消化性潰瘍の既往歴を有する者)であった。有害な処方によりQALYが失われ、医療費が増加 NSAID処方が有害でなかった場合と比較して、有害な処方により質調整生存年(QALY)の損失と費用の増加を認めた。1例当たりのQALY損失の平均値は、「消化性潰瘍の既往歴」の0.01(95%信用区間[CrI]:0.01~0.02)から「慢性腎障害患者」の0.11(0.04~0.19)までの範囲であった。また、医療費増加の平均値は、「心不全」の14ポンド(=17ユーロ、18ドル)(95%CrI:-71~98、有意差なし)から「経口抗凝固薬の併用者」の1,097ポンド(236~2,542、有意差あり)までの範囲だった。 また、1,000例当たりの有害な処方の発生は、「消化性潰瘍の既往歴を有する者」の0.11から「胃腸保護薬を使用していない高齢者」の1.70までの範囲であった。害を及ぼす可能性が最も高いのは「経口抗凝固薬の併用者」 全体として、有害な処方の頻度が最も高かったのは「胃腸保護薬を使用していない高齢者」であり、1,929(95%CrI:1,416~2,452)QALYが失われ、246万ポンド(95%CrI:65万~468万)の費用を要した。また、有害な処方の影響が最も大きかったのは「経口抗凝固薬の併用者」で、2,143(95%CrI:894~4,073)QALYが失われ、費用は2,541万ポンド(95%CrI:525万~6,001万)であった。 10年間で総計6,335(95%CrI:4,471~8,658)QALYが失われ、イングランドのNHSは3,143万ポンド(95%CrI:928万~6,711万)の費用を要したと推定された。 著者は、「イングランドでは、高リスク集団において問題のあるNSAID処方が蔓延しており、65歳以上の高齢者では、年間10万7,000例が胃腸保護薬なしにNSAIDを処方されている。NSAIDは、経口抗凝固薬を使用している者に処方された場合に、最も害を及ぼす可能性がある」としている。

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排便回数は健康状態に関連

 健康な人において、1日の排便回数(bowel movement frequency;BMF)は、健康に大きな影響を及ぼしていることが、米シアトルにあるシステム生物学研究所のJohannes Johnson-Martinez氏らの研究で明らかになった。BMFにより、腸内細菌叢の属、血中代謝物、および生活習慣因子に違いが認められ、便秘と下痢は、それぞれ腎臓や肝臓の機能に悪影響を及ぼし得る可能性が示唆されたという。この研究の詳細は、「Cell Reports Medicine」に7月16日掲載された。 Johnson-Martinez氏らはこの研究で、1,425人の健康な成人の医療と生活習慣に関するデータを収集して分析した。対象者はBMFに基づき、1)便秘群(週1~2回)、2)低頻度群(週3~6回)、3)高頻度群(1日1~3回)、4)下痢群の4群に分けられた。その上で、BMFと人口統計学的属性、遺伝、腸内細菌、血中代謝物、血漿中の化学物質などの因子との関連を検討した。 その結果、年齢、性別、およびBMIはBMFと有意に関連し、特に、若者、女性、BMIが低い人ではBMFが低い傾向にあることが示された。Johnson-Martinez氏は、BMFが腸のエコシステムの機能に大きな影響を与えることが過去の研究でも示唆されていると指摘。「便が腸内に長くとどまると、腸内細菌が食物繊維を使い尽くして有益な短鎖脂肪酸を作れなくなる。そうなると、腸内細菌はタンパク質の発酵を開始し、それに伴いいくつかの毒素が生成され、それが血流に入り込む可能性がある」と説明する。 実際に、本研究では腸内細菌叢の組成がBMFの特徴を示しており、1日のBMFが1~2回の人では健康と関連付けられることの多い食物繊維を発酵させる腸内細菌が豊富であったのに対し、便秘を報告する人ではタンパク質の発酵に関連する細菌、下痢を報告する人では上部消化管に関連する細菌が豊富に存在する傾向が認められた。また、予想されていたことではあるが、食物繊維の多い食事を摂取し、水をたくさん飲み、定期的に運動している人は、BMFが1〜2回である傾向が強いことも示された。 同様に、いくつかの血液代謝物や血漿中の化学物質はBMFと有意な関連を示した。このことは、腸の健康と慢性疾患リスクの潜在的な関連を示唆している。具体的には、便秘を報告する人の血液中には腎臓にダメージを与えることが知られている、p-クレゾール硫酸やインドキシル硫酸などの腸内細菌由来のタンパク質発酵の副産物が豊富な一方で、下痢を報告した人の血液中では肝臓のダメージと関連する化学物質が増加していることが確認された。さらに精神的な健康状態もBMFに影響を及ぼし得ることも示された。 共同研究者でシステム生物学研究所の准教授であるSean Gibbons氏は、「活動期の疾患がある患者では、慢性的な便秘が神経変性疾患や慢性腎臓病の進行と関連していることは以前から指摘されていた。しかし、排便の異常が慢性疾患や臓器障害の早期段階からの促進因子であるかどうか、あるいはこうした疾患のある患者において後ろ向きに確認された関連が単なる偶然によるものなのかについては、これまで明確になっていなかった」と説明。その上で「今回われわれは、全般的に健康な集団において、とりわけ便秘は、何らかの疾患が診断される前の段階で、臓器障害を引き起こすことが知られている腸内細菌由来の毒素の血中濃度に関連していることを明らかにした」としている。 Gibbons氏は、「全体として、今回の研究ではBMFがいかに全ての身体システムに影響を及ぼし得るか、またBMFの異常がいかに慢性疾患発症の重要なリスク因子となり得るかが示された」と説明。さらに同氏は「これらの知見は心身の健康を最も良い状態に保つためのBMFの管理に向けた戦略に役立つとともに、健康な人の集団における戦略にも有用だと考えられる」と述べている。

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がんによる死亡の半数近くとがん症例の4割にライフスタイルが関係

 がんによる死亡の半数近くとがん症例の4割に、喫煙や運動不足などのライフスタイルが関係していることが、新たな研究で明らかになった。特に喫煙はがんの最大のリスク因子であり、がんによる死亡の約30%、がん発症の約20%は喫煙に起因することが示されたという。米国がん協会(ACS)がん格差研究のシニア・サイエンティフィック・ディレクターを務めるFarhad Islami氏らによるこの研究結果は、「CA: A Cancer Journal for Clinicians」に7月11日掲載された。 Islami氏らは、米国における2019年のがんの罹患率とがんによる死亡率に関する全国データとそのリスク因子を分析し、ライフスタイルのリスク因子に起因するがんの症例数と死亡数を推定した。その結果、2019年に30歳以上の米国成人に発生した、メラノーマを除くがん症例の40.0%(178万1,649例中71万3,340例)とがんによる死亡の44.0%(59万5,737例中26万2,120例)は、是正可能なライフスタイルのリスク因子に起因することが示された。 それらのリスク因子の中でも、がん罹患とがんによる死亡への寄与度が特に高かったのは喫煙であり、あらゆるがん症例の19.3%、がんによる死亡の28.5%は喫煙に起因すると推測された。この結果についてIslami氏は、「米国での喫煙に起因する肺がん死亡者数は、過去数十年の間に喫煙者が大幅に減少したことを考えると憂慮すべき数だ」と懸念を示す。同氏は、「この知見は、各州で包括的なたばこ規制政策を実施して禁煙を促進することの重要性を強調するものでもある。さらに、治療がより効果的になる早期段階で肺がんを見つけるために、肺がん検診の受診者数を増やす努力を強化することも重要だ」と付け加えている。 そのほかの因子でがん罹患とがんによる死亡への寄与度が高かったのは、過体重(同順で7.6%、7.3%)、飲酒(5.4%、4.1%)、紫外線曝露(4.6%、1.3%)、運動不足(3.1%、2.5%)であった。Islami氏は、「特に、若年層で体重過多と関連するがん種が増加していることを考えると、健康的な体重と食生活を維持するための介入により、米国内のがん罹患者数とがんによる死亡者数を大幅に減少させることができるはずだ」との考えを示している。 さらに本研究では、がん種によってはライフスタイルの選択によりがんの発症を完全に、もしくは大幅に回避できる可能性があることも判明した。例えば、子宮頸がんは、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染を防ぐワクチンの接種により全て回避できる可能性がうかがわれた。論文の上席著者であるACSのサーベイランスおよび健康の公平性に関する科学のシニアバイスプレジデントを務めるAhmedin Jemal氏は、「同様に、肝臓がん予防も、その原因となるB型肝炎ウイルスに対するワクチンの接種が効果的だ。B型肝炎ウイルスは、肝臓がん以外にも肛門性器や口腔咽頭のがんの原因にもなる」と説明する。その上で同氏は、「推奨されている時期にワクチン接種を受けることで、これらのウイルスに関連する慢性感染、ひいてはがんのリスクを大幅に減らすことができる」と付け加えている。

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一部の糖尿病用薬の処方が認知症リスクの低さと関連

 メトホルミンやSGLT2阻害薬(SGLT2i)と呼ばれる糖尿病用薬の処方が、認知症やアルツハイマー病(AD)のリスクの低さと関連していることが報告された。慶煕大学(韓国)のYeo Jin Choi氏らの研究によるもので、詳細は「American Journal of Preventive Medicine」に5月3日掲載された。 2型糖尿病は多くの国で重大な健康問題となっており、世界中で約5億3000万人が罹患していて、その罹患によって認知機能障害や認知症のリスクが50%以上上昇する可能性が示されている。認知症もまた、高齢化に伴い世界的な健康問題となっており、患者数はすでに4000万人以上に上るとされている。 2型糖尿病がADのリスクを押し上げるメカニズムについて、インスリン抵抗性に伴う慢性炎症、酸化ストレス、血管障害の関与などが考えられており、一部の糖尿病用薬はインスリン抵抗性改善作用などを介してADリスクを低下させる可能性がある。ただし、糖尿病用薬のタイプによって認知症やADのリスクが異なるのかという点は、十分明らかにはなっていない。Choi氏らは、比較されている薬剤の組み合わせが異なる過去の複数の研究データを統合して、多くの薬剤の影響を比較可能とするベイジアンネットワークメタ解析により、この点を検討した。 文献データベースであるCENTRAL、MEDLINE(PubMed)、Scopus、Embaseのスタートから2024年3月までに収載された論文を対象とする検索により、16件の研究報告を抽出。それらの研究参加者数は合計156万5,245人で、7種類の治療レジメン(メトホルミン、SU薬、α-グルコシダーゼ阻害薬〔α-GI〕、チアゾリジン薬、DPP-4阻害薬、SGLT2i、非薬物治療)が含まれていた。16件中7件は米国、3件はカナダで行われ、そのほかは英国、台湾、中国、香港、韓国などで行われていた。 第一選択薬として用いられていた薬剤のうち最も多くの研究で比較されていたのはSU薬とメトホルミンであり、後者は前者に比べて認知症リスクが有意に低かった(リスク比〔RR〕0.53〔95%信頼区間0.44~0.64〕)。第二選択薬として用いられていた薬剤について、SU薬を基準として比較すると、SGLT2iのみ有意なリスク低下が認められた(RR0.39〔同0.16~0.88〕)。 第一・第二選択薬を区別せずにSU薬を基準として解析すると、メトホルミン(RR0.53〔0.44~0.63〕)とSGLT2i(RR0.41〔0.25~0.66〕)、および非薬物治療(RR0.73〔0.56~0.97〕)でリスクが低く、α-GIはリスクが高かった(RR2.4〔1.2~5〕)。ADリスクについても対SU薬で、メトホルミンとSGLT2iのみ、リスク低下が示された。なお、年齢を75歳未満/以上に二分した層別解析では、SGLT2iによる認知症リスク低下は75歳以上でのみ有意だった。 著者らは、「メトホルミンとSGLT2iが用いられている糖尿病患者は、他の糖尿病用薬が用いられている場合に比較し認知症リスクが低いことが示された。ただし、患者固有の要因がこの関係に影響を及ぼしている可能性がある。例えばメトホルミンは一般的に、合併症が少ない非高齢期に処方が開始される傾向がある。これらの理由により、本研究の結果の解釈は慎重に行われる必要があり、また将来の大規模な臨床試験が必要とされる」と述べている。

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ニルマトレルビル・リトナビルには曝露後予防効果がない(解説:栗原宏氏)

Strong point・実臨床に即した患者層を対象とし、十分なサンプル数を有する二重盲検試験 2024年現在も定期的にCOVID-19の感染拡大が繰り返されている。家庭内や職場等で感染者が出た場合、無症状者に対する有効な予防策が問題となる。重症化リスクを持つ患者の家庭、医療機関や療養施設では大きな関心があると思われる。とくに医療機関や療養施設での患者やスタッフのクラスターの発生は、当該施設だけでなく地域全体にも大きな負担となりうる。 現在、ニルマトレルビル・リトナビル(商品名:パキロビッド)5日分の費用は、3割負担でも約3万円とかなり高額である。十分な予防効果があれば高額費用を踏まえてでも使用する意義はある可能性があり、曝露後予防投与の効果に対する本研究は大きな意義があると思われる。 本研究は2021年9月~2022年4月のオミクロンおよびデルタ株が優勢だった時期に実施された。プラセボ群(898例)、5日間投与群(921例)、10日間投与群(917例)での比較が行われている。重症化リスクとしてBMI≧25、喫煙、高血圧、年齢61歳以上、糖尿病、慢性肺疾患が含まれ、重症化リスクのある患者の割合は全体の7割強だった。 関心が高い主な調査結果は以下のとおり。(1)14日目までに症候性感染が確認された割合は、5日間投与群2.6%、10日間投与群2.4%、プラセボ群3.9%で有意差なし(2)重症化リスク群での感染率は、5日間投与群2.0%、10日間投与群1.9%、プラセボ群3.5%で有意差なし(3)無症候性の感染率は、5日間投与群2.0%、10日間投与群1.9%、プラセボ群3.1%で有意差なし(4)デルタ株、オミクロン株間での効果の差なし 本研究の結果からは、ニルマトレルビル・リトナビル投与期間の長さ、重症化リスクの有無、無症候性感染の減少、ウイルス株の種類いずれの面からも予防効果がないことが示された。 著者はニルマトレルビル・リトナビルの独特の味による盲検化への影響、家庭内の他の家族の影響などを本研究の限界として挙げているが、これを踏まえても結果に大きな変化があるとは考えにくく、この結果からはニルマトレルビル・リトナビルが曝露後予防の選択肢に挙がることはないと思われる。

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英語で「腰椎穿刺」は?【1分★医療英語】第142回

第142回 英語で「腰椎穿刺」は?《例文》医師AHow did the spinal tap go?(腰椎穿刺はうまくいきましたか?)医師BI was able to do it on the first attempt.(1回目のトライで成功しました)《解説》今回は「腰椎穿刺」という医療単語を解説します。「腰椎穿刺」を医療用語では“lumbar puncture”といいます。日本でも腰椎穿刺を「ルンバール」とカタカナで表現することがあるかと思いますが、これはドイツ語由来の言葉です。ほかにも日本で当たり前に使われている医療のカタカナ用語は、ドイツ語由来のものが多くあります。たとえば「マーゲンチューブ(胃管)」という用語も、元になっているのはドイツ語です。英語では“G-tube”(Gチューブ)と呼ばれ、こちらは“Gastric”(胃の)の“G”から来ています。英語話者の患者さんの場合、単に“lumbar”(ルンバール)と言ってもまったく伝わりませんので注意が必要です。“lumbar puncture”まで言えばだいたいは伝わりますが、今度はやや仰々しい印象になってしまいます。そこで、医療者間での会話や患者さんに説明するときなどによく使われるのが、“spinal tap”という表現です。“tap”は名詞でいろいろな意味がありますが、そのうちの1つに“the procedure of removing fluid”(液体を取り除く手技)いう意味があります。これに脊椎を意味する“spinal”を付けることで「腰椎穿刺」という意味になるわけです。“spinal tap”はカジュアルな表現で、口語で使われることが大半です。カルテなどに記載する際には“lumbar puncture”のほうが適切ですので、その使い分けも含めて覚えておきましょう。講師紹介

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AhR活性化を介してアトピー性皮膚炎/尋常性乾癬の症状を改善する外用薬「ブイタマークリーム1%」【最新!DI情報】第20回

AhR活性化を介してアトピー性皮膚炎/尋常性乾癬の症状を改善する外用薬「ブイタマークリーム1%」今回は、アトピー性皮膚炎/尋常性乾癬治療薬「タピナロフクリーム(商品名:ブイタマークリーム1%、製造販売元:日本たばこ産業)を紹介します。本剤は、リガンド依存的な転写因子AhRの活性化を介して炎症性サイトカインを低下させ、抗酸化分子の発現を誘導して皮膚の炎症を抑制するとともに、皮膚バリア機能を改善させる新しい作用機序の薬剤です。<効能・効果>アトピー性皮膚炎および尋常性乾癬の適応で、2024年6月24日に製造販売承認を取得しました。<用法・用量>●アトピー性皮膚炎通常、成人および12歳以上の小児には、1日1回、適量を患部に塗布します。治療開始8週間以内に症状の改善が認められない場合は、使用を中止します。●尋常性乾癬通常、成人には、1日1回、適量を患部に塗布します。治療開始12週間以内に症状の改善が認められない場合は、使用を中止します。<安全性>主な副作用に、適用部位毛包炎(17.0%)、頭痛、接触皮膚炎、適用部位ざ瘡(5%以上)があります。その他、毛包炎、ざ瘡、乾癬、アトピー性皮膚炎、適用部位刺激感、適用部位そう痒感、適用部位変色、適用部位多毛症、適用部位湿疹(1~5%未満)があります。<患者さんへの指導例>1.アトピー性皮膚炎や尋常性乾癬の症状緩和・進行抑制に効果がある非ステロイド性のクリーム薬です2.皮膚感染症を増悪させることがあるので、皮膚感染症があるときは必ず医師または薬剤師に申し出てください。3.この薬で症状の改善が認められないときは、使用を中止することがあります。4.アトピー性皮膚炎では、12歳未満の小児には使用できません。尋常性乾癬では、小児には使用できません。 <ここがポイント!>アトピー性皮膚炎は、増悪と軽快を繰り返す、強い痒みを伴う炎症性皮膚疾患です。治療の目標は、症状がないか、あっても軽微で日常生活に支障がない状態への導入およびその維持です。薬物療法にはステロイド外用薬を中心に、タクロリムス外用薬やデルゴシチニブ外用薬などが使用されます。ステロイドでは特有の副作用、その他の外用薬では対象患者や塗布に関する制限などがあり、使用には注意が必要です。慢性の皮膚疾患である尋常性乾癬は、遺伝的、環境的および免疫学的要因などの複数の要因で発症します。治療にはステロイド外用薬が用いられますが、局所の副作用発現などに注意が必要です。本剤は、非ステロイド性の低分子の芳香族炭化水素受容体調節薬(therapeutic AhR modulating agent:TAMA)で、既存薬と異なる作用機序を有するアトピー性皮膚炎および尋常性乾癬の治療薬です。リガンド依存性転写因子であるAhRの活性化を介して炎症性サイトカインの産生を抑制し、またNrf2経路を活性化させて抗酸化分子の遺伝子発現を誘導してアトピー性皮膚炎および尋常性乾癬における皮膚の炎症を抑えます。さらに、皮膚バリア機能関連タンパク質の発現を誘導して皮膚バリア機能を改善します。使用対象年齢は、アトピー性皮膚炎では成人および12歳以上の小児、尋常性乾癬では成人です。現在、小児のアトピー性皮膚炎に対する臨床試験を実施しており、今後の適応拡大が期待されます。アトピー性皮膚炎患者を対象とした国内第III相比較試験および継続投与試験(ZBB4-1試験)において、投与8週時のIGA反応率(IGAスコアが0[消失]または1[ほぼ消失]で、かつベースラインから2段階以上改善した患者の割合)は、本剤1%群が20.24%、基剤クリーム群が2.24%で、2群間の差は18.0%(95%信頼区間[CI]:10.0~25.9)であり、本剤1%の優越性が示されました。また、尋常性乾癬患者を対象とした国内第III相比較試験および継続投与試験(ZBA4-1試験)において、投与12週時のPGA反応率(PGAスコアが0[消失]または1[ほぼ消失]で、かつベースラインから2段階以上改善した被験者の割合)は、本剤1%群が20.06%、基剤クリーム群が2.50%で、2群間の差(本剤1%群-基剤クリーム群)は18.1%(95%CI:8.3~27.9)であり、本剤1%の優越性が示されました。

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言ってませんか? 実はうまく伝わらない「バットで殴られたような痛みですか?」【もったいない患者対応】第11回

登場人物<今回の症例>70代男性夕食後に突然発症した頭痛で救急要請意識清明。頭全体の激しい痛みを訴える<急いで痛みの性質を確認する必要がありそうです>どこが痛みますか?頭全体がとにかく痛いです。それは、バットで殴られたときのような痛みでしょうか?バット? そんなもんで殴られたことはないからわからん!えーっと、最高の痛みを10とすると、いまは何ですか?え? 10? どういう意味?1番痛くないときをゼロ、最も痛いときを10とすると…。よくわからん! とにかく痛いんだ。なんとかしてくれよ!【POINT】頭痛を訴える患者さんに対し、くも膜下出血で特徴的とされる「バットで殴られたときのような痛み」であったかを尋ねる唐廻先生。しかしあまり有用な情報が得られず、今度はペインスケールを使って痛みの程度を尋ねようとしました。ところが、今度は患者さんから「よくわからん」と一言。どうすればスムーズに問診できるのでしょうか?突然のペインスケールはかえって混乱を招く教科書では、典型的な痛みの表現の仕方として、くも膜下出血の「突然バットで殴られたような」や、心筋梗塞の「ゾウに踏まれたような」というものがよく紹介されています。しかし実際にバットで殴られたり、ゾウに踏まれたりしたことのある人はいないでしょう。突然こうした質問を投げかけられると、患者さんは予想外の事態に面食らってしまうことがあります。また、痛みの程度を知る際には確かにペインスケールが有用ですが、これは患者さん自身にもある程度の“慣れ”が必要になる手法です。たとえば、がん性疼痛などでは、前と比べてどうであったかを数字で表現することで、痛みの推移を医療スタッフと共有し、鎮痛薬の用量調節を行う、といったように便利に使うことができます。しかし、初診で救急搬送されたような患者さんに対して、いきなり「最高が10としたらいまは何ですか?」と聞いても、まともに答えられる人はいません。医師よりは看護師に多い印象ですが、初診の時点で患者さんにこのような質問を投げかけ、「は!?」と不思議そうな顔で返されている姿をときどき見ます。緊急時はとくにスムーズな問診が必須となるため、とにかく答えやすい質問方法を選ぶ必要があるでしょう。では、どのように聞けばスムーズに答えてもらえるのでしょうか?「人生最大の痛みですか?」痛みの程度を知りたい際に、最も答えやすい質問が「人生最大の痛みかどうか」です。同程度の痛みをこれまで何度か経験している・繰り返している場合と、今回初めて人生で経験したこともないほどの強い痛みに見舞われている場合では、想定する疾患は変わってきます。「OPQRST」で痛みの程度以外の情報も集める目の前で強い痛みを訴える患者さんの場合、最初に痛みの“程度”ばかりに意識が向かいがちですが、それ以外の情報もなるべく素早く収集する必要があります。問診すべき情報は語呂合わせでよく紹介されますが、例えば「OPQRST」が便利です。O:Onset 発症様式P:Provocative/Palliative 増悪・緩解因子Q:Quality/Quantity 痛みの性質・程度R:Region/Radiation 部位・放散痛S:associated Symptoms 関連症状T:Time 経過これらの項目をなるべく素早く聞いていき、痛みという主観的な情報を客観的な情報に“翻訳”していくことが大切です。これでワンランクアップ!どこが痛みますか?頭全体がとにかく痛いです。人生でこれまで経験したことないほど痛いですか?※1※1:緊急時には感覚的に答えられる質問が◎こんなに痛いのは初めてです。いつ頃痛くなりましたか?※2※2:痛みの強さ以外のこともしっかり聞き取る2時間くらい前です。全体が締めつけられるような痛みですか? 鼓動に合わせてガンガン痛みますか?※3(以下略)※3:クローズドクエスチョンだとスムーズに答えてもらいやすい。

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第226回 古くはヒトの糞中から見つかった細菌が創傷治癒を促進

古くはヒトの糞中から見つかった細菌が創傷治癒を促進切開部や傷の除菌が大事なことは言うまでもないことですが、本をただせばビールやヒトの糞から見つかった1)細菌が糖尿病患者の治療困難な傷の治癒を助けうることが示唆されました。傷に有害な細菌を検討した数多くの報告とは真反対に、ペンシルベニア大学医学部のElizabeth Grice氏らのチームは慢性創傷の多くに認められる細菌Alcaligenes faecalis(A. faecalis)が糖尿病関連創傷の治癒促進効果を担うことを発見しました2)。その結果によるとA. faecalisは糖尿病患者に多い酵素・細胞外基質分解酵素(MMP)を阻止し、傷口が閉じるのに不可欠な細胞移動を促します。創傷治癒を後押しするA. faecalisの仕組みを把握することで糖尿病と関連する創傷の新たな治療法を生み出せそうです。そもそも治らないか治りが非常に遅い褥瘡、潰瘍、裂傷を含む慢性創傷は糖尿病につきもので、痛い感染症をしばしば引き起こし、悪くすると四肢の切断や死に至ることもあります。手術で壊死組織を除去するか包帯をするくらいがせいぜいで治療法は限られます。糖尿病性足潰瘍(DFU)患者46例からの195の検体のゲノム配列を解析した先立つ研究3)で、A. faecalisは最も多く認められた細菌の1つでした。褥瘡、静脈性下肢潰瘍、鎌状赤血球症下肢潰瘍を調べた他の試験でもAlcaligenes属が一貫してしばしば検出されています。DFUの経過とA. faecalisの関連はあいにく認められませんでした。しかしGrice氏らはA. faecalisの検出や量の多さに興味が湧き、傷の治りが悪い糖尿病マウスを使ってA. faecalisの効果を調べてみました。その取り組みは功を奏します。マウスの背にあえて発生させた傷にA. faecalisを与えたところ、A. faecalis非投与群に比べて治癒が早まり、感染の合併は認められませんでした。さらに調べたところ、A. faecalisは創傷治癒にあたる細胞であるケラチノサイトの増殖と創傷部への移動を促すとわかりました。また、糖尿病患者の皮膚検体をA. faecalisとともに培養したところ、ケラチノサイトが有意に多く増えました。糖尿病患者はMMPが過剰で、MMPが過剰な環境は傷の治りに支障を来すことが先立つ研究で示されています。A. faecalisが投与された糖尿病マウスの遺伝子発現を調べたところ、ケラチノサイトで作られることが知られるMMP-10を含むMMP遺伝子幾つかの発現が減っていました。病原性細菌の黄色ブドウ球菌は逆にMMP-10を含むMMPの幾つかを増やし、黄色ブドウ球菌とA. faecalis投与のMMP-10の発現は最も差がつきました。その他の検討結果も加味するに、A. faecalisはどうやらMMP-10過剰発現を抑制することで糖尿病創傷の治りを促すようです。研究をGrice氏とともに率いたEllen White氏は今回の成果を次のように説明しています。「MMPは細胞同士の結びつきを解いて細胞が動けるようにする。糖尿病患者のMMPは過剰だが、A. faecalisは創傷でのMMP発現を整えて傷口が塞がるのを早めることを今回の研究は示した。」4)上述のとおりヒトの創傷治癒の経過へのA. faecalisの作用を示唆する研究成果はありません。なぜかといえば、それら先立つ試験の検出力がそもそも不十分だったためかもしれませんし、A. faecalisの効果を妨げる要因のせいかもしれません。そのような要因として、たとえば創傷の微生物のどれかが直接的に阻害するか栄養を横取りするかしてA. faecalisの増殖や効果を妨げているかもしれません。今後の課題として、皮膚細胞やその他の細菌とA. faecalisのやり取りや相互作用の仕組みを解明したいとWhite氏は言っています4)。参考1)Weinstein L, et al. N Engl J Med. 1951;244:662-665.2)White EK, et al. Sci Adv. 2024;10:eadj2020. 3)Kalan LR, et al. Cell Host Microbe. 2019;25:641-655.4)Penn researchers reveal how a bacterium supports healing of chronic diabetic wounds / Eurekalert

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内分泌・代謝・糖尿病内科「SGLT-2阻害薬の使い方」【臨床実習を味わうケアネット動画Café】第5回

動画解説臨床研修サポートプログラムの研修医のための内科ベーシック5内分泌・代謝・糖尿病内科より、 前野哲博先生と岩岡秀明先生の「SGLT-2阻害薬の使い方」を鑑賞します。ジェネラリストとスペシャリストの対談って貴重でとてもわかりやすいんです!CareNeTVの大人気シリーズ!

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前夜が超高温だった日は脳卒中リスクが増大

 夜間の暑熱曝露と脳卒中との関連を調べた15年間にわたる時間層別ケースクロスオーバー解析によって、前夜が極端な暑さだった日は脳卒中のリスクが有意に高く、2006~12年と比較して2013~20年はそのリスクが増大していたことを、ドイツ・Helmholtz Zentrum MunchenのCheng He氏らが明らかにした。European Heart Journal誌2024年6月21日号掲載の報告。 都市部のヒートアイランド現象により、ここ数十年で夜間の気温は昼間の気温よりも急速に上昇している。夜間の暑熱曝露の増加は、睡眠や体温調節などを妨げて健康に重大なリスクをもたらす可能性があるが、脳卒中リスクに及ぼす影響を調査した研究はない。そこで研究グループは、ドイツのアウクスブルク地域における夜間の暑熱曝露と脳卒中リスクとの関連性を調査し、15年間にわたる時間的変動を調べた。 対象は、2006年1月1日~2020年8月31日にアウクスブルク大学病院神経科に入院した脳卒中患者2万2,284例であった。そのうち、寒い季節に室内暖房によって引き起こされる大幅な温度差を避けるために、5~10月に発生した脳卒中症例に限定して解析を行った。平均気温、相対湿度、気圧などの1時間ごとの気象データは地元の気象観測所から取得した。分布ラグ非線形モデルを用いた時間層別ケースクロスオーバー解析によって、日中の最高気温やその他の気候変数を調整したうえで、高温夜間過剰(hot night excess[HNE])指数で測定した極端な夜間の暑さ(extreme nighttime heat:HNEの97.5パーセンタイル)に関連する脳卒中リスクを推定した。なお、本研究において、「夜間」は前日の夜の始まりから当日朝の夜の終わりまでであった。 主な結果は以下のとおり。・2006~20年の5~10月に脳卒中のために入院した1万1,037例(平均年齢:71.3歳)を解析に含めた。2006~12年は5,343例、2013~20年は5,694例であった。・2006~12年から2013~20年にかけて平均気温は0.3度上昇し、最高気温は0.7度上昇した。極端な夜間の暑さの日は79日から82日に増加した。・調査期間全体では、極端な夜間の暑さの日に脳卒中リスクが有意に増加していた。オッズ比(OR)は1.14(95%信頼区間[CI]:1.01~1.32)であった。・期間別では、2006~12年は夜間の極端な暑さの影響はみられなかったが(OR:0.99[95%CI:0.91~1.08])、2013~20年は有意な影響がみられた(OR:1.33[95%CI:1.18~1.50])。・2006~12年では、夜間の極端な暑さは年間2例の脳卒中の過剰発生に関連していたが、2013~20年では33例の過剰発生と関連していた。・高齢者、女性、軽度の脳卒中患者では、脳卒中リスクが顕著に増大していた。 これらの結果より、研究グループは「昼間の最高気温を考慮しても夜間の暑熱曝露が脳卒中リスクの上昇と関連していて、2006~12年と比較して2013~20年ではこのリスクが大幅に増大していた。日中の温暖化よりも夜間の温暖化が著しく進むと予測される状況において、夜間の暑熱曝露が脳卒中イベントに及ぼす影響を軽減するための予防措置が必要である」とまとめた。

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メタボリックシンドロームとうつ病〜日本リアルワールドデータ横断的研究

 メタボリックシンドローム(MetS)とうつ病は、どちらも優先度の高い健康問題であり、とくに労働年齢層において問題となる。これまで、MetSとうつ病との関連についての研究は、数多く行われているが、そのすべてが一貫しているわけではない。帝京大学の杉本 九実氏らは、広範なリアルワールドデータを分析することにより、MetSとうつ病の関連性を判断するため、本研究を実施した。Environmental Health and Preventive Medicine誌2024年号の報告。 東京都を除くすべての都道府県の地方自治体職員の2019年度の保険請求および健康診断のデータを用いた。うつ病診断および抗うつ薬の処方月数に応じて、参加者を次の4群に分類した。確実にうつ病ではない(CN群)、うつ病でない可能性が高い(PN群)、うつ病の可能性あり(PD群)、うつ病である(CD群)。MetSおよびその構成要素である内臓肥満、高血圧、脂質異常症、糖尿病と各うつ病カテゴリとの関連性を分析するため、ロジスティック回帰を用いた。 主な結果は以下のとおり。・参加対象者は13万59例(CN群:85.2%、PN群:6.9%、PD群:3.9%、CD群:4.1%)。・男性の場合、CN群を基準としたMetSの調整オッズ比(aOR)は、PN群0.94(95%信頼区間[CI]:0.86〜1.02)、PD群1.31(1.19〜1.43)、CD群1.63(1.50〜1.76)であった。・女性のaORは、PN群1.10(95%CI:0.91〜1.32)、PD群1.54(1.24〜1.91)、CD群2.24(1.81〜2.78)であった。・MetSの構成要素のうち内臓肥満、脂質異常症、糖尿病は、うつ病カテゴリと有意な関連が認められた。 著者らは「これまでの報告と同様に、MetSとうつ病との有意な関連が認められた。本調査結果は、MetSとうつ病の関連性についての確固たるエビデンスを提供するとともに、リアルワールドデータ分析が、具体的なエビデンスの提供に有用である可能性を示唆している」としている。

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EGFR陽性NSCLC、オシメルチニブはどこで使う?~日本のリアルワールドデータ

 EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)の治療において、オシメルチニブが標準治療として広く用いられている。そこで、上原 悠治氏(国立がん研究センター/都立駒込病院)らの研究グループは、リアルワールドデータを用いて、1次治療に第3世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)オシメルチニブを用いた場合と、第1世代または第2世代EGFR-TKIを用いた場合の治療成績を後ろ向きに比較した。その結果、1次治療の薬剤選択によって全生存期間(OS)には有意差がみられなかった。また、1次治療で第1世代または第2世代EGFR-TKIを用いたのちに、2次治療でオシメルチニブを用いた患者は、1次治療でオシメルチニブを用いた患者よりもOSが良好な傾向にあった。本研究結果は、ESMO Real World Data and Digital Oncology誌2024年9月号に掲載された。 本研究は、2015年1月~2021年3月の期間にEGFR-TKIによる治療を受けた、EGFR遺伝子変異(exon19delまたはL858R)陽性NSCLC患者485例を対象とした。対象患者を1次治療でオシメルチニブによる治療を受けた患者(1Lオシメルチニブ群)、1次治療で第1世代または第2世代EGFR-TKIによる治療を受けた患者(1L 1G/2G TKI群)に分類し、無増悪生存期間(PFS)とOSを比較した。さらに、1L 1G/2G TKI群を2次治療でオシメルチニブによる治療を受けた患者(2Lオシメルチニブ群)、オシメルチニブによる治療を受けなかった患者(オシメルチニブなし群)に分類して、OSの12ヵ月ランドマーク解析を実施した。また、1Lオシメルチニブ群と1L 1G/2G TKI群で傾向スコアマッチングを実施して比較した。 主な結果は以下のとおり。・1Lオシメルチニブ群は213例、1L 1G/2G TKI群は272例であった。・PFS中央値は、1Lオシメルチニブ群23.4ヵ月、1L 1G/2G TKI群13.9ヵ月であり、1Lオシメルチニブ群が有意に良好であった(ハザード比[HR]:0.58、95%信頼区間[CI]:0.46~0.74、p<0.001)。・OS中央値は、1Lオシメルチニブ群33.7ヵ月、1L 1G/2G TKI群41.8ヵ月であり、両群間に有意差はみられなかった(HR:0.92、95%CI:0.65~1.29)。・OSの12ヵ月ランドマーク解析において、OS中央値は1Lオシメルチニブ群34.4ヵ月、2Lオシメルチニブ群63.8ヵ月、オシメルチニブなし群22.5ヵ月であった。・病勢進行は319例(66%)に認められた。中枢神経系の病勢進行は、1Lオシメルチニブ群(7%)と2Lオシメルチニブ群(10%)が、オシメルチニブなし群(35%)と比較して少なかった。肺の病勢進行は、1Lオシメルチニブ群(28%)が、2Lオシメルチニブ群(51%)やオシメルチニブなし群(53%)と比較して少なかった。・傾向スコアマッチング後、各群188例ずつ抽出された。・傾向スコアマッチング後のOS中央値は、1Lオシメルチニブ群33.7ヵ月、1L 1G/2G TKI群46.6ヵ月であり、両群間に有意差はみられなかった(HR:0.95、95%CI:0.67~1.45)。・同様に、OSの12ヵ月ランドマーク解析では、OS中央値は1Lオシメルチニブ群34.4ヵ月、2Lオシメルチニブ群51.8ヵ月、オシメルチニブなし群29.3ヵ月であった。

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中等症~重症アトピー性皮膚炎、ネモリズマブ追加で治療成功率が向上/Lancet

 そう痒を伴う中等症~重症のアトピー性皮膚炎を有する成人および青少年の治療において、基礎治療(局所コルチコステロイド[TCS]±局所カルシニューリン阻害薬[TCI])単独と比較して、基礎治療+ネモリズマブ(インターロイキン-31受容体サブユニットα拮抗薬)は、治療成功および皮膚症状改善の達成率の向上をもたらし、安全性プロファイルは両群でほぼ同様であることが、米国・ジョージ・ワシントン大学のJonathan I. Silverberg氏らが実施した2つの臨床試験(ARCADIA 1試験、ARCADIA 2試験)で示された。研究の成果は、Lancet誌2024年8月3日号に掲載された。同じデザインの2つの無作為化プラセボ対照第III相試験 ARCADIA 1試験とARCADIA 2試験は、同じデザインの48週の二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、ARCADIA 1試験は2019年8月~2021年9月に14ヵ国161施設で、ARCADIA 2試験は2019年8月~2022年11月に11ヵ国120施設で患者を登録した(Galdermaの助成を受けた)。 2つの試験とも、年齢12歳以上、そう痒を伴う中等症~重症のアトピー性皮膚炎(登録の2年以上前に診断)で、TCS±TCIによる治療で効果が不十分であった患者を対象とした。 被験者を、基礎治療(TCS±TCI)との併用で、ネモリズマブ30mg(ベースラインの負荷用量60mg)を4週に1回皮下投与する群、またはプラセボ群に、2対1の割合で無作為に割り付けた。 主要エンドポイントは2つで、16週目の時点でのInvestigator's Global Assessment(IGA)に基づく治療成功(IGAが0[皮膚病変消失]または1[同ほぼ消失]で、かつベースラインから2段階以上の改善)、およびEczema Area and Severity Index(EASI)のベースラインから75%以上の改善(EASI-75)とした。9つの主な副次エンドポイントもすべて有意に改善 2つの試験に合計1,728例を登録した。ネモリズマブ群に1,142例(ARCADIA 1試験620例[平均年齢33.5歳、女性48%]、ARCADIA 2試験522例[34.9歳、52%])、プラセボ群に586例(321例[33.3歳、45%]、265例[35.2歳、51%])を割り付けた。 両試験とも2つの主要エンドポイントを満たした。16週時のIGAに基づく治療成功の割合はプラセボ群に比べネモリズマブ群で有意に優れた(ARCADIA 1試験:36% vs.25%、補正後群間差:11.5%[97.5%信頼区間[CI]:4.7~18.3]、p=0.0003/ARCADIA 2試験:38% vs.26%、12.2%[4.6~19.8]、p=0.0006)。 また、EASI-75の達成割合も、プラセボ群に比しネモリズマブ群で有意に良好だった(ARCADIA 1試験:44% vs.29%、補正後群間差:14.9%[97.5%CI:7.8~22.0]、p<0.0001/ARCADIA 2試験:42% vs.30%、12.5%[4.6~20.3]、p=0.0006)。 9つの主な副次エンドポイント(そう痒[Peak Pruritus Numerical Rating Scale:PP-NRS]、睡眠[Sleep Disturbance Numerical Rating Scale:SD-NRS]など)はいずれも、ネモリズマブ群で有意な有益性を認めた。ネモリズマブ関連の可能性がある有害事象は1% 安全性プロファイルは両群でほぼ同様だった。少なくとも1件の試験治療下における有害事象を発現した患者は、ネモリズマブ群ではARCADIA 1試験で50%(306/616例)、ARCADIA 2試験で41%(215/519例)、プラセボ群ではそれぞれ45%(146/321例)および44%(117/263例)であった。このうち重篤な有害事象は、ネモリズマブ群ではARCADIA 1試験で1%(6例)、ARCADIA 2試験で3%(13例)、プラセボ群ではそれぞれ1%(4例)および1%(3例)であった。 ネモリズマブ関連の可能性がある治療関連有害事象は、ARCADIA 2試験で5例(1%)に10件報告された。 著者は、「アトピー性皮膚炎は多面的な病態生理を有する疾患で、臨床においてはさまざまな作用機序を有する薬剤を必要とするため、有効な治療法の探索を継続することは重要である」と述べた。

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膵管がんの化学療法抵抗性を逆転させ得る方法とは?

 膵臓がんは特に攻撃的で治療が難しいが、その理由の1つは化学療法に抵抗性を示すことが多いからである。しかし、米スタンフォード大学材料工学分野のSarah Heilshorn氏らが、膵臓がんで化学療法抵抗性が生じる理由と、それを逆転させ得る方法に関する研究結果を、「Nature Materials」に7月4日報告した。この研究によると、がん細胞周囲の組織の物理的な硬さが、化学療法の効果を低下させているのだという。Heilshorn氏は、「膵臓がんの大きな臨床的課題は化学療法抵抗性であるが、本研究結果は、それを克服するための今後の薬剤開発の新しい方向性を示唆するものだ」と述べている。 本研究では、膵臓がんの90%を占める浸潤性膵管がん(pancreatic ductal adenocarcinoma;PDAC)に焦点が当てられた。PDACは膵管上皮から発生し、コラーゲン、フィブロネクチン、ヒアルロン酸などを主成分とする細胞外マトリックス(extracellular matrix;ECM)の過剰な産生と硬化を特徴とする。 実際に膵臓で何が起こるのかを解明するために、Heilshorn氏らは研究室でPDACのECMの主要な特徴を再現した硬化したマトリックスを作成し、その中で3人の膵臓がん患者のPDAC細胞に由来するオルガノイド(幹細胞を三次元で培養して得られるミニ臓器)を培養した。Heilshorn氏はこのマトリックスについて、「われわれは、がん細胞がECMの化学的シグナルや機械的性質に反応しているのではないかという考えを検証できるようなデザイナー・マトリックスを作成した」と語っている。 その結果、これらのオルガノイドは、実際の患者のがん細胞と同様に、いくつかの抗がん薬に対して抵抗性を持つようになることが確認された。また、このような抵抗性は、高剛性の環境では、ヒアルロン酸と結合する受容体であるCD44とヒアルロン酸の相互作用が増大し、その結果、抗がん薬を細胞外に排出するトランスポーターが多く作られ、抵抗性が生じることも明らかになった。さらに、オルガノイドの培養環境を高剛性のものから低剛性に変えることで、化学療法に対する抵抗性を逆転させられることも示された。 Heilshorn氏は、「がん細胞を、化学療法に反応しやすい状態に戻すことができることが分かった。このことは、CD44受容体を通じた硬化のシグナル伝達を破壊することができれば、患者の膵臓がんを通常の化学療法で治療できる可能性のあることを示唆している」と述べている。 Heilshorn氏は、「がん細胞が薬物に反応するかどうかは、ECMに依存しているため、化学療法をデザインする際には、患者に関連したECMで培養をテストすべきだ」と話している。 研究グループは、CD44受容体、およびその活性後にがん細胞で生じる一連の出来事についての調査を続けている。また、細胞培養モデルを改良し、化学療法や他のがん治療が特定の患者にどのように作用するのかを予測できるようにすることにも取り組んでいるという。

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産後の尿失禁、身体的にも精神的にも大きな負担に

 尿失禁は産後の後遺症として頻発する症状の1つだが、新米の母親に重大な影響を与える可能性のあることが、米テキサス大学(UT)サウスウェスタン医療センター産科婦人科教授のDavid Rahn氏らによる研究で示された。Rahn氏らによると、こうした産後の尿もれ症状が不安や抑うつ症状に有意に関連していることが明らかになったという。この研究結果は、「Urogynecology」に4月30日掲載された。 Rahn氏は、「尿失禁がひどいと、孤立感や恥ずかしさを感じ、社会的なつながりを持つことが難しくなる。尿失禁によって精神的な問題に苦しむようになる可能性のあることは想像に難くない」と話す。 Rahn氏らは今回の研究で、米ダラス郡の妊娠後ケアプログラムに参加した、母親になったばかりの女性419人の出産から12カ月後の追跡データを分析した。その結果、参加者の32.5%が、咳やくしゃみ、ジャンプしたときなどに尿がもれてしまう「腹圧性尿失禁」を経験していた。さらに、16.5%には膀胱に尿が完全にたまっていない状態であっても急に我慢できない尿意を覚えて尿をもらしてしまう「切迫性尿失禁」も認められた。このほか、9人中1人に全般的な煩わしい排尿関連の症状のあることが明らかになった。 解析の結果、腹圧性尿失禁と切迫性尿失禁のいずれに関しても、巨大児の出産や合併症を伴う分娩といった従来のリスク因子との関連は認められなかった。しかし、腹圧性尿失禁は、母親の出産時のBMIが高いこと、出産から12カ月時点での抑うつスコアが高いことに関連していた。また、切迫性尿失禁は、過去の出産回数が多いこと、出産から12カ月時点での不安スコアが高いことに関連していた。 Rahn氏とともに研究を主導したUTサウスウェスタン医療センター泌尿婦人科学フェローのSonia Bhandari Randhawa氏は、「産後ケアに携わっている医師は、産後の女性に尿失禁の有無や精神衛生の状態について必ず尋ねるべきだ」と主張している。同氏はさらに同大学のニュースリリースの中で、「じっくり話し合う時間がなかったとしても、尿失禁や抑うつ症状、不安について医師が質問することは極めて重要だ」と指摘し、「これらは治療可能な疾患であり、適切な紹介によって治療につなげることは患者の生活を大きく変える可能性がある」と述べている。

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米国成人の12%が慢性不眠症の診断を受けている

 入眠や睡眠維持に苦労している米国人は何百万人にも上るようだ。米国睡眠医学会(AASM)が米国の成人2,006人を対象に、2024年5月16日から24日にかけて実施した慢性不眠症に関するオンライン調査の結果が6月14日に報告された。この調査から、慢性不眠症の診断を受けた米国成人は12%に上ることが明らかになった。 慢性不眠症の診断を受けた成人の割合を性別ごとに見ると、男性の方が女性よりもわずかに高かった(13%対11%)。また、同割合を年齢層別に見て高い順に並べると、25〜34歳(16%)、35〜44歳(15%)、18〜24歳(14%)、45〜54歳および55〜64歳(いずれも12%)、65歳以上(5%)であった。世代別では、ミレニアル世代(27〜42歳)が15%で最も高く、地域別では、米国西部が最も高く(14%)、中西部が最も低かった(10%)。 慢性不眠症に関連する症状には、日中の倦怠感や眠気、睡眠への不満、集中力の低下、抑うつ、不安、イライラ感、意欲や気力の低下などがある。また、慢性不眠症は、身体的、精神的、感情的な健康を悪化させ、全体的なウェルネスや日常機能に悪影響をもたらす。このほか、うつ病や不安、物質使用、自動車事故、アルツハイマー病、2型糖尿病などのリスクが高まる可能性も指摘されている。 AASM会長のEric Olson氏は、「慢性不眠症は、夜間の睡眠だけでなく日中の気分や機能にも悪影響を及ぼす。ただ幸いなことに、慢性不眠症に対しては効果的な治療法があり、健康と生活の質(QOL)の両方を大幅に改善することができる」と述べている。 慢性不眠症に対する最も効果的な治療法は認知行動療法である。これは、例えば、「一貫性のある睡眠スケジュールを立てる」「眠れないときはベッドから出る」などの行動戦略と、「眠れないことに対する恐怖をより有益な期待に置き換える」などの思考戦略を組み合わせた治療法である。慢性不眠症に対する認知行動療法は6~8回のセッションで行われるのが一般的であるが、もっと早く改善する患者もいるという。 米行動睡眠医学協会(SBSM)会長のMichael Nadorff氏は、「認知行動療法では、慢性不眠症の患者が抱えている根本的な問題を特定し、健康的な睡眠を促進する長期的な解決策を提供するための、高度に個別化されたプランを提供する」と説明している。

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年間300件のPCIを実施!MGHでのフェロー生活【臨床留学通信 from Boston】第2回

年間300件のPCIを実施!MGHでのフェロー生活マサチューセッツ総合病院(MGH)において、私はインターベンショナル・カーディオロジー・フェローとして1年間のプログラムに従事しています。このプログラムは、3年間のジェネラル・カーディオロジー研修を経た後に行うアドバンスド・フェローシップです。その後の進路として、主に冠動脈のインターベンショナル・カーディオロジストの指導医(attending)として働く場合と、さらに1年間のアドバンスド・インターベンショナル・カーディオロジー・フェローシップ(構造的心疾患、血管内治療、複雑な冠動脈治療)のプログラムを行うことがあります。今回の1年間のプログラムでは、最低250件の経皮的冠動脈形成術(PCI)が求められます。プログラム側は、フェローにこれだけの症例数を供給できるという前提で、雇用するフェローの人数を決めています。MGHでは年間1,600~1,800件のPCIがあり、4人のインターベンショナル・カーディオロジー・フェローがそれぞれ350件ほど経験します。一般的な日本の病院での後期研修医では年間100件ほどではないかと思われるので、MGHでの症例は1年で集約されていると感じます。MGHでの業務は、朝6時半過ぎに病院に到着し、朝7時15分のzoom形式のカンファレンスの前に、1例目の患者さんの診察、カルテ記入、同意書取得を行います。前職のニューヨークのモンテフィオーレではこのような業務はなかったため、少々面倒だと感じています。ボストン近郊の高い家賃や子供の学区を考慮し郊外に住んでいるため、毎朝5時に起きて支度しなければならず、渡米直後の時のインターンさながらの生活を送っています。カンファレンス終了後、7時40分には1例目のPCIが始まります。4人中3人がカテ室、1人は外来と、週ごとに担当が割り当てられ、カテーテルの週は基本的に手技に専念します。カテ室はインターベンションだけで6部屋あり、不整脈はまた別にあります。ただの診断カテーテルはジェネラル・カーディオロジー・フェローやフィジシャン・アシスタントに任せ、PCIを効率的に経験できるように、フェロー3人はカテ室の配属された部屋以外にも随時渡り歩きながら対応します。診断カテーテルの結果を受けてPCIは急に始まることが多く、患者の年齢や名前もわからないまま手技に取り掛かることもしばしばです。カテ室から別のカテ室に行き、「ここのLADを治そう」といきなり言われたりします。もちろん私は日本での経験があるため、さほど難しいことをやっているわけではないので問題はありませんが、なかなか大変です。米国のトレーニングシステムは、このようにフェローに多くの症例を経験させるように設計されていますが、逆に一般の内科レジデントが診断カテーテルを触ることはほとんどありません。ジェネラル・カーディオロジー・フェローはPCIを行わないため、そこは日本の後期研修医と異なる点で、短期的に手技を詰め込む米国流のやり方だと感じます。実際、手技の数が大事である一方で、うまく見返したり、難しい症例のプランをよく練ったりするのも大切なので、一長一短と感じています。

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第204回 医師免許証の手続き、マイナポータルでオンライン化へ/デジタル庁

<先週の動き>1.医師免許証の手続き、マイナポータルでオンライン化へ/デジタル庁2.正常分娩の保険適用に反対意見相次ぐ、産婦人科医会が懸念/厚労省3.外国人患者受け入れ病院で未収金増加、平均50万円に/厚労省4.労基署の勧告受けた市立病院、10億円の未払い残業代支払い困難/宮城県5.神戸徳洲会病院、医療過誤で3件目の認定/兵庫県6.資金不正問題、第三者委員会は理事長の責任を指摘/東京女子医大1.医師免許証の手続き、マイナポータルでオンライン化へ/デジタル庁デジタル庁は、介護福祉士、社会福祉士、精神保健福祉士、公認心理師の4つの国家資格の事務手続きを2024年8月6日からオンライン化すると発表した。これにより、名前変更手続きやデジタル資格証の取得がオンラインで完結できるようになる。紙の書類や対面での手続きが不要となり、住民票や戸籍謄本の写しの添付も省略でき、登録免許税や手数料のオンライン決済も可能となる。さらに、11月には医師や看護師など27の資格についても事務手続きをオンライン化する予定。2025年3月までには准看護師や栄養士など11の資格も加わり、最終的には計84資格のオンライン化を目指す。国家資格のオンライン化に伴い、デジタル庁は資格管理者が共同利用できる「国家資格等情報連携・活用システム」を開発した。このシステムは住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)や戸籍情報と連携し、マイナポータルのデータとも紐付けられる。これにより、資格保有者はマイナポータルから各種の申請が可能となり、迅速かつ正確に事務手続きを進められるだけでなく、事務処理に伴う負担やコストの削減も見込まれる。資格管理者側にも大きなメリットがあるとされている。河野 太郎デジタル担当相は記者会見で「オンライン化により、資格保有者と資格管理者の双方にメリットを出していきたい」と述べ、積極的なオンライン利用を促した。また、デジタル資格者証も発行される。これはPDF形式でダウンロードができ、電子署名も付与されるため、改ざん検知が可能となる。固有の二次元コードも付与され、スマートフォンなどを使って資格者証の検証も行えるほか、資格者証は、印刷して利用したり、スマートフォンの画面に提示して利用したりすることが想定される。国家資格のオンライン化のスケジュールとしては、まず、8月6日から介護福祉士、社会福祉士、精神保健福祉士、公認心理師の4資格が対応開始となり、11月頃には医師、歯科医師、看護師など27の資格がオンライン化される予定。そして、2025年3月頃には准看護師、栄養士など11の資格が追加され、2025年度以降にはさらに多くの資格が順次対応される。参考1)2024年8月6日から4つの国家資格についてオンライン・デジタル化を開始します(デジタル庁)2)国家資格のオンライン申請が8月6日から順次スタート 介護福祉士など4資格から 全84資格で対応予定(ITmedia)3)国家資格の手続きオンライン化へ、介護福祉士など 6日から、マイナポータルで申請可能に(CB news)2.正常分娩の保険適用に反対意見相次ぐ、産婦人科医会が懸念/厚労省厚生労働省とこども家庭庁は、「妊娠・出産・産後における妊産婦等の支援策等に関する検討会」を8月1日に開催し、関係学会や団体へのヒアリングを実施した。今回のヒアリングでは、正常分娩(出産)に公的医療保険を適用する案について、日本産婦人科医会や日本産科婦人科学会などから慎重な意見が相次いだ。日本産婦人科医会の前田 津紀夫副会長は、正常分娩に公的保険が適用されると出産育児一時金の支給額50万円(2024年8月現在)を維持するのが難しく、結果的に出産に伴う経済的負担が大きく変わらないと指摘。また、診療報酬のみでは出産費用をカバーできず、医療機関が減収となるため、産科医療機関の減少やアクセスの悪化、サービスや医療安全に必要なコストの削減が進む恐れがあるとした。前田氏は、分娩のプロセスが多様であり、保険適用に向かないと述べ、「少子化対策」の名の下に拙速な制度変更を行うことに反対の立場を示した。これに対し、健康保険組合連合会の佐野 雅宏会長代理は、「課題が多いことは理解しているが、賛成や反対を前提とせずに議論を進めるべき」との意見を述べた。日本産科婦人科学会の亀井 良政常務理事は、正常分娩に保険が適用されることで医療機関が産科から撤退すれば、周産期医療センターに低リスクの出産まで集中し、病床確保や医師増員が困難になることで、周産期医療の安全が崩壊しかねないと懸念を表明。亀井氏は、「緩やかな集約化は受け入れられるが、急速な減少や医療崩壊を招くような保険適用には反対」と述べた。さらに、亀井氏は「出産費用の保険適用は出産数のV字回復につながる特効薬ではなく、むしろ産科医療施設を廃業に追いやる毒薬になる可能性がある」と強い危機感を示した。日本看護協会の井本 寛子常任理事も、出産前後の女性や新生児に迅速に対応できるケア提供体制の強化が必要だと訴えた。このように、正常分娩への保険適用については慎重な意見が多く、拙速な制度変更には反対の声が強まっている。参考1)第2回「妊娠・出産・産後における妊産婦等の支援策等に関する検討会」資料(こども庁・厚労省)2)正常分娩への保険適用、拙速な制度変更に反対表明 検討会のヒアリングで日本産婦人科医会(CB news)3)出産費用の保険適用、2026年度導入視野 産科医療に大きな影響も(朝日新聞)4)「政府案 出産費用(正常分娩)の保険適用の導入」に関するアンケート 報告(スペシャリスト・ドクターズ)3.外国人患者受け入れ病院で未収金増加、平均50万円に/厚労省厚生労働省は、2023年9月に外国人患者を受け入れた病院のうち、未収金が発生した病院は516病院で、1病院当たりの未収金総額が平均49.6万円と前年度の2倍以上に増加したことを明らかにした。同省の担当者は「1件当たりの未収金額が高いケースが増えている。突発的な増加の可能性もある」と話している。調査では、外国人患者を受け入れた2,813病院のうち、18.3%が未収金を経験していた。1病院当たりの未収金発生件数は平均3.9件で、1件当たりの未収金額は12万8,497円、中央値は1万1,150円だった。未収金額が最も多かったのは「1万円以下」で954件、「1万~5万円」が522件と続いた。外国人患者の受け入れ実績がある病院のうち、最も多いのは「10人以下」の1,273病院で、「11~50人」が879病院、「51~100人」が247病院だった。さらに、都道府県が選出した「外国人患者を受け入れる拠点的な医療機関」608病院中524病院(86.2%)でも受け入れ実績が確認された。外国人患者の診療費については、ほとんどの病院が通常の1点10円で費用請求を行っているが、一部の病院では通訳費用を含む追加コストを考慮し、1点を15円、20円としている場合もある。しかし、多くの病院では請求可能な通訳費用を請求していないのが現状。調査結果を受け、厚労省は外国人患者受け入れのための医療機関向けマニュアルを策定し、未収金発生防止策として、外国人患者が海外旅行保険に加入しているかどうかを事前に確認し、医療費の概算説明を丁寧に行うようアドバイスしている。また、外国人患者受け入れ体制の整備に向けた取り組みを進めている。この未収金問題は、病院経営に大きな影響を与えており、厚労省は引き続き対策を講じ、外国人患者が安心して医療を受けられる体制を目指す。参考1)令和5年度「医療機関における外国人患者の受入に係る実態調査」の結果(厚労省)2)外国人患者の受け入れ、未収金総額は平均50万円 前年度の2倍超に増加 厚労省(CB news)3)依然「外国人患者を受け入れる医療機関の2割弱」で未収金発生、ごく一部だが「月間500万円超」の高額未収となるケースも-厚労省(Gem Med)4.労基署の勧告受けた市立病院、10億円の未払い残業代支払い困難/宮城県宮城県大崎市の大崎市民病院が、医師や看護師ら約1,100人に対し、時間外勤務手当を適正に支給していなかった問題で、古川労働基準監督署から是正勧告を受けた。未払い額は約10.5億円に上るが、病院は約2.3億円しか支払わず、残りの約8億円は経営状況から支払えないとしている。昨年2月に是正勧告を受けた際、病院は基礎賃金に必要な手当を足さずに計算していたため、未払いが発生したことが判明。さらに、時間外労働時間の過少申告も発覚した。労基署は2020年3月にさかのぼって不足額を追加支給するよう求めたが、病院は赤字が続く見込みであり、勧告通りの対応は困難だと判断した。結果として、実際に支給されたのは約10.5億円のうち約2.3億円に止まり、病院は「労基署に相談しながらできる範囲で対応した。10億円は額が大きすぎる。すべて支払うことはできない」と説明した。参考1)市立病院が残業代10億円未払い 労基署が勧告も2億円しか支払わず(朝日新聞)2)令和6年度大崎市病院事業会計予算書(大崎市民病院)5.神戸徳洲会病院、医療過誤で3件目の認定/兵庫県神戸市垂水区の神戸徳洲会病院で発生した患者死亡事故について、同病院が今年1月に心肺停止状態で搬送された90代男性の死亡を医療過誤と認定した。これは同病院で3件目の医療過誤認定となる。今年1月、心肺停止状態で救急搬送された90代男性患者に対して、血圧を上昇させる薬剤の追加投与が遅れたため、患者が死亡した。この事例について病院は「死期を早めた可能性がある」として医療過誤を認定し、遺族に謝罪するとともに、この事例をホームページで公表し、神戸市も報道からの取材に対し認定を認めた。また、遺族への賠償も検討しているという。神戸徳洲会病院では、2023年1~7月にかけて、複数の患者がカテーテル治療後に死亡するなど15件の医療事故が発覚しており、そのうち4件は国の医療事故調査制度に基づく調査対象となっている。これまでに認定された医療過誤は、糖尿病患者へのインスリン投与ミスによる70代男性の死亡、カテーテル治療中に血管を破った90代女性の死亡の2件だった。今回の事例は、国の制度の対象外として病院が個別に検証を行った11件のうちの1件に含まれる。残りの10件については、病院側は過誤の有無に言及せず、遺族への説明を進めている。尾野 亘院長は「患者安全を十分に重視して病院運営を行ってこなかった結果で、深く反省している」とコメントを発表し、改善を誓った。神戸市は、神戸徳洲会病院が適切な治療を提供できなかった問題を受けて、今年2月に医療法に基づく改善命令を出している。また、福田 貢副理事長が6月に行われた有識者会議後に「根本的な原因はない」と発言したが、これは4月に提出された改善計画と矛盾するとして市が抗議。病院側は発言を撤回し、謝罪した。病院側は改善計画書の内容を修正し、根本的な原因として、医師数の不足や組織ガバナンスの機能不全など7項目を追加し、神戸市に再提出した。市は修正版を受理し、今後の対応を見守るとしている。参考1)神戸徳洲会病院が医療ミス3件目認定、90代男性死亡巡り(産経新聞)2)神戸徳洲会、医療過誤3件目を新たに認定…血圧薬補充遅れ直後に死亡(読売新聞)3)血圧上昇させる薬剤投与遅れ死亡 神戸徳洲会病院が新たに医療過誤1件謝罪、賠償を検討(神戸新聞)4)不適切治療で患者死亡の神戸徳洲会病院 法人幹部が報道陣に「根本原因ない」発言、神戸市が抗議(同)6.資金不正問題、第三者委員会は理事長の責任を指摘/東京女子医大東京女子医科大学(東京都新宿区)やその同窓会組織「至誠会」を巡る不透明な資金の流れについて、同大学が設置した第三者委員会(委員長=山上 秀明弁護士)が調査報告書をまとめた。この報告書は、推薦入試での寄付金の考慮や理事長の岩本 絹子氏(77)の「一強体制」による経営の問題を指摘する内容となっている。報告書によると、同大学の推薦入試では、至誠会が持つ推薦枠で生徒を選ぶ際に寄付額が加点要素となっていた。受験生側から至誠会と大学法人への寄付は、面接の直前2ヵ月の期間に集中しており、2019~2022年度の間に受験生側から寄付された総額は3,520万円に達していた。また、寄付金の実績がない受験生が、寄付金を行った受験生に順位で抜かれて推薦を受けられなかった事例や面接の前に寄付を行った事例もあった。さらに、同大学の至誠会から大学に出向していた職員への給与についても、二重払いの疑いが指摘された。この業務委託は、法人の利益を犠牲にし、岩本氏に近い2人の利益を図る行為とされている。また、理事会運営会議の承認を得ずに行われた手続き違反も認定された。第三者委員会は、岩本理事長が異なる意見を持つ職員を排除し、ガバナンス機能を封殺したとし、岩本氏の重大な経営判断の誤りについても言及した。具体的には、小児集中治療室(PICU)の運用停止や小児集中治療医の大量退職を招いたことが挙げられている。また、岩本氏の知人が代表を務める会社とのコンサルティング契約で、不透明な支出があったことも判明している。これらの問題に対して、東京女子医科大学は「組織の改善・改革に全身全霊で取り組む」とのコメントを発表した。また、新たに第三者委員会答申検討委員会を立ち上げ、再発防止策と管理運営体制の再構築を図る計画を示した。文部科学省も、この問題を受けて早急に大学側に説明を求める予定。さらに、国の私立大学への補助金の配分についても見直しが検討される可能性がある。参考1)東京女子医大 同窓会組織めぐる問題 第三者委“抜本的改革を”(NHK)2)東京女子医大、理事長に資金還流か…第三者委員会報告書「金銭に強い執着」(読売新聞 )3)東京女子医大の第三者委、理事長の責任を指摘 報告書を公表(朝日新聞)4)第三者委員会による調査報告書の公表について(東京女子医大)5)第三者委員会の調査報告書を受けての本学の決意と「(仮称)第三者委員会答申検討委員会」の設置について(同)

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