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第76回 二項分布とは?【統計のそこが知りたい!】

第76回 二項分布とは?二項分布は、結果が起こるか起こらないか(成功か失敗か)のいずれかであるn回の試行を行ったときの、起こった数(成功数)で表される確率分布です。■二項分布(binomial distribution)とはたとえばコイントスのように、ある行動や試行に対して結果が2つしかないときに生じる分布を「二項分布」と呼びます。「ある行動や試行に対して結果が2つしかない」ということが、二項分布では重要になります。オモテの出る確率が50%のコインを3回投げたとき、オモテが2回以上出る確率を例に二項分布を考えてみましょう。コインを3回投げたとき起こり得る組み合わせは、表1に示す8つです。表1 コイントスの組み合わせの例表1を集計して、オモテの出る個数をX、その個数の出現率を全体の8で割った確率をP(X)として確率分布表を作成します。「起こる・起こらない」の二項を取り扱って作られた確率分布が「二項分布」です。表2はオモテの出る確率が50%のコインを3回投げたときの二項分布です。表2 二項分布の表表2の二項分布をグラフで示します(図)。図 表2の二項分布グラフ■二項分布における確率の求め方ある事象の起こる確率をPとします。この事象をn回試行し、X回起こる確率をP(X)で表すと、P(X)は次の公式によって求められます。コイントスの例題のP(X)は下記のようになります。この式にX=0,1,2,3を代入し、二項分布の表3を作成すると次のようになります。表3 二項分布の表オモテ・ウラの組合わせ数と組合わせ別のオモテの個数を調べて、二項分布を作成しましたが、P(X)を求める式からも求められます。この式の確率はExcelの関数で簡単に求められるので、こちらでの求め方をお勧めします。コイントスの例題である、オモテの出る確率が50%のコインを3回投げたとき、オモテが2回以上出る確率をExcel関数で求めてみました。表3よりオモテが2回以上出る確率は0.375、オモテが3回出る確率は0.125より2回以上の確率は0.375+0.125=0.5(50%)となります。では、サイコロの出る目の事例でExcel関数を使って確率を求めてみましょう。1の目が出る確率が1/6のサイコロを20回振ったとき、1の目が4回以上出る確率はどうなるでしょうか?1の目が4回以上出る確率は、0.4335(約43%)ということになります。■感染症罹患の事例で試してみる医療分野での事例でも試してみましょう。全住民の5%がある感染症に罹患しており、その中から無作為に500例を抽出したとします。このとき、抽出された集団の中に罹患者が30例以上いる確率は何%になるでしょうか?こちらもExcel関数で簡単に求めることができます。以上の結果から罹患者が30例以上いる確率は0.1765(約18%)となります。このように、医学論文の分野においても二項分布は、さまざまな場面で利用されています。次回は「ポワソン分布」を解説いたします。■さらに学習を進めたい人にお薦めのコンテンツ統計のそこが知りたい!第56回 正規分布とは?第57回 正規分布の面積(確率)の求め方は?第58回 標準正規分布とは?第76回 二項分布とは?二項分布は、結果が起こるか起こらないか(成功か失敗か)のいずれかであるn回の試行を行ったときの、起こった数(成功数)で表される確率分布です。■二項分布(binomial distribution)とはたとえばコイントスのように、ある行動や試行に対して結果が2つしかないときに生じる分布を「二項分布」と呼びます。「ある行動や試行に対して結果が2つしかない」ということが、二項分布では重要になります。オモテの出る確率が50%のコインを3回投げたとき、オモテが2回以上出る確率を例に二項分布を考えてみましょう。コインを3回投げたとき起こり得る組み合わせは、表1に示す8つです。表1 コイントスの組み合わせの例表1を集計して、オモテの出る個数をX、その個数の出現率を全体の8で割った確率をP(X)として確率分布表を作成します。表2はオモテの出る確率が50%のコインを3回投げたときの二項分布です。表2 二項分布の表表2の二項分布をグラフで示します(図)。表2 二項分布の表■二項分布における確率の求め方ある事象の起こる確率をPとします。この事象をn回試行し、X回起こる確率をP(X)で表すと、P(X)は次の公式によって求められます。コイントスの例題のP(X)は下記のようになります。この式にX=0,1,2,3を代入し、二項分布の表3を作成すると次のようになります。表3 二項分布の表オモテ・ウラの組合わせ数と組合わせ別のオモテの個数を調べて、二項分布を作成しましたが、P(X)を求める式からも求められます。この式の確率はExcelの関数で簡単に求められるので、こちらでの求め方をお勧めします。コイントスの例題である、オモテの出る確率が50%のコインを3回投げたとき、オモテが2回以上出る確率をExcel関数で求めてみました。表3よりオモテが2回以上出る確率は0.375、オモテが3回出る確率は0.125より2回以上の確率は0.375+0.125=0.5(50%)となります。では、サイコロの出る目の事例でExcel関数を使って確率を求めてみましょう。1の目が出る確率が1/6のサイコロを20回振ったとき、1の目が4回以上出る確率はどうなるでしょうか?1の目が4回以上出る確率は、0.4335(約43%)ということになります。■感染症罹患の事例で試してみる医療分野での事例でも試してみましょう。全住民の5%がある感染症に罹患しており、その中から無作為に500例を抽出したとします。このとき、抽出された集団の中に罹患者が30例以上いる確率は何%になるでしょうか?こちらもExcel関数で簡単に求めることができます。以上の結果から罹患者が30例以上いる確率は0.1765(約18%)となります。このように、医学論文の分野においても二項分布は、さまざまな場面で利用されています。次回は「ポワソン分布」を解説いたします。■さらに学習を進めたい人にお薦めのコンテンツ統計のそこが知りたい!第56回 正規分布とは?第57回 正規分布の面積(確率)の求め方は?第58回 標準正規分布とは?

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鉄剤の頻度【日常診療アップグレード】第10回

鉄剤の頻度問題23歳女性。3ヵ月前から倦怠感を感じ、1ヵ月前から階段を上がるときに息切れを自覚している。Hb 7.9g/dL、MCV 70fL、赤血球分布幅(RDW:red cell distribution width)は上昇し、フェリチン2ng/mL(女性基準値:3.6~114)である。鉄欠乏性貧血と診断し、鉄剤(商品名:フェロミア)を1日2回内服の処方をした。

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事例005 生活習慣病管理料の算定の流れ【斬らレセプト シーズン4】

解説令和6(2024)年度診療報酬改定にて、「B001-3 生活習慣病管理料」(以下「管理料」)の算定方法が緩和されました。従来の包括報酬を管理料(I)とし、出来高算定ができる「B001-3-3 管理料(II)」も設定されました。特定疾患対象である「脂質異常症」、「高血圧症」、「糖尿病」が「B000 特定疾患療養管理料」の算定要件から外されたこと、施設基準が設定されたことを理由に、算定方法に対する質問が多く寄せられています。とくに多くの医師から管理料(II)を採用したいと問い合わせがあります。管理料(II)は、従来の特定疾患療養管理料と特定疾患処方管理加算を加えた点数とほぼ変わりません。比較的簡単かつ手厚い診療が可能となる点数です。今回は、規定に則り算定をされるための留意事項をお届けいたします。1)算定前に次の内容の院内掲示が必要です。(1)生活習慣病管理料の算定を行っている医療機関であること(2)28日分以上の長期処方とリフィル処方箋の発行が可能であること2)3つの該当疾患のうち1つを主病としている患者に対して、生活習慣病管理の対象となることを告げて管理開始の了解を口頭で得ます。診療録にその旨を必ず記載します。3)療養計画書(別紙様式9)にて指定された検査を医学的必要性に応じて行い、その結果を参照して、疾患の改善を行うための初回の療養計画書を作成します。4)次回、再診時以降に療養計画の説明を行います。療養計画の説明は、必ず医師が行い患者の申し出事項(たとえば運動するなど)を追記、患者からその場で承諾の署名*をいただいてください。サイン入り療養計画書を診療録に添付して算定開始です。医師の説明以降に看護師や管理栄養士などからの補足説明も推奨されています。糖尿病を主病とする場合は、歯科の受診を勧めることが必須となります。いずれも診療録に簡潔な記録が必要です。*補足説明後署名でも良いのですが、医師の前で署名するほうが効果があるため。5)2回目以降の療養計画は別紙様式9の2を使用して4ヵ月に1度以上の説明が必要です。診療録への添付と記載は必須です。2回目以降には患者サインの必要はありません。6)施設基準が設定されていますが、届出の必要はありません。施設基準を満たしていることは、公的機関から求められたときに診療録を提示して示します。診療録への必要充分な記録が認められない場合は、診療報酬の返還を求められる場合があります。7)管理料は、医療機関内で管理料(I)と管理料(II)の混在ができます。患者の状態に応じた使い分けができます。ただし、管理料(I)から(II)への変更には(I)の算定後6ヵ月以上を経過しないと(II)が算定できないことに留意をお願いします。

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1年間のAChEI治療、認知機能が低下しやすい患者は?

 アセチルコリンエステラーゼ阻害薬(AChEI)治療を1年間行ったアルツハイマー病患者の治療アウトカムについて、台湾・Kaohsiung Veterans General HospitalのPao-Yuan Ching氏らが、調査を実施した。Aging Medicine誌2024年6月18日号の報告。 2015年1月〜2021年9月の電子カルテデータを、台湾南部の医療センターより入手した。対象は、新たにアルツハイマー病と診断され、AChEIによる治療を行った60歳以上の患者。認知機能評価は、AChEI治療前および治療1年後のフォローアップ調査時に実施した。認知機能低下は、AChEI治療1年後のミニメンタルステート検査(MMSE)が3超低下または臨床的認知症尺度(CDR)1以上低下と定義した。ベースライン時とフォローアップ調査後の認知機能の関係は、潜在的な交絡因子で調整したのち、ロジスティック回帰分析を用いて検討した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者数は、1,370例(平均年齢:79.86±8.14歳)。・調整後、認知機能低下群でBMIが有意に低いことが明らかとなった(調整オッズ比[aOR]:0.970、95%信頼区間[CI]:0.943〜0.997、p=0.033)。・認知機能低下群では、抗精神病薬の使用率が有意に高かった(aOR:1.599、95%CI:1.202〜2.202、p=0.001)。・認知機能低下群では、ベンゾジアゼピン受容体作動薬の使用率も高い傾向が認められた(aOR:1.290、95%CI:0.996〜1.697、p=0.054)。 著者らは「AChEI治療1年後の認知機能低下に対し、BMIの低さ、抗精神病薬やベンゾジアゼピン受容体作動薬の併用が影響を及ぼしている可能性が示唆された」としている。

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JN.1系統対応コロナワクチン、一変承認を取得/ファイザー・ビオンテック

 ファイザーおよびビオンテックは2024年8月8日付のプレスリリースにて、生後6ヵ月以上を対象とした新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のオミクロン株JN.1系統対応の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンについて、日本での製造販売承認事項一部変更承認を取得したことを発表した。 両社は2024年6月10日、オミクロン株JN.1系統のスパイクタンパク質をコードするメッセンジャーRNA(mRNA)を含む1価ワクチンについて厚生労働省に承認事項一部変更を申請しており、今回、以下の製剤が承認された。・コミナティ筋注シリンジ 12歳以上用(プレフィルドシリンジ製剤で希釈不要)・コミナティRTU筋注5~11歳用 1人用(バイアル製剤で希釈不要)・コミナティ筋注6ヵ月~4歳用 3人用(バイアル製剤で要希釈) 上記申請は、品質に係るデータに加え、本ワクチンが両社のオミクロン株XBB.1.5系統対応COVID-19ワクチンに比べ、JN.1およびKP.2、KP.3を含むその亜系統に対しても優れた免疫反応を示した非臨床データに基づいている。 2024年5月29日に開催された「第2回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会研究開発及び生産・流通部会季節性インフルエンザワクチン及び新型コロナワクチンの製造株について検討する小委員会」では、2024/2025シーズン向けの新型コロナウイルス感染症ワクチンの抗原組成について、JN.1系統が選択されている1)。 また、諸外国の動向として、英国医薬品・医療製品規制庁(MHRA)は7月24日に、ファイザー・ビオンテックのJN.1対応ワクチンを承認している2)。一方米国では、2024年秋から使用する新型コロナワクチンについて、6月13日の米国食品医薬品局(FDA)の発表によると、可能であればJN.1系統のKP.2株を使用することをワクチン製造業者へ提案しているという3)。

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アルツハイマー病の進行予測に役立つアプリを開発

 人により大きく異なるアルツハイマー病の進行を予測できるアプリの開発に関する研究成果を、オランダの研究グループが報告した。このモデルにより、軽度認知障害(MCI)患者と軽度認知症患者の認知機能がどのようなペースで低下するのかを予測できる可能性が示されたという。アムステルダム自由大学アルツハイマーセンター(オランダ)のWiesje van der Flier氏らによるこの研究結果は、「Neurology」に7月10日掲載された。 Van der Flier氏らは、アミロイドβ(Aβ)の蓄積が検査で確認されているMCI患者310人と軽度認知症患者651人の計961人(平均年齢65±7歳、女性49%)のデータを用いて、認知症検査の一種として知られるミニメンタルステート検査(MMSE)の経時的な変化を予測するモデルを構築した。MMSEスコア(0〜30点)は、25点以上を正常、21〜24点を軽度認知症、10〜20点を中等度の認知症、10点未満を重度認知症と見なす。予測の際には、年齢、性別、ベースラインのMMSEスコア、アポリポタンパク質E4の有無、MRI検査で測定した全脳および海馬の体積、脳脊髄液中のバイオマーカー(Aβ1〜42およびリン酸化タウの濃度)のデータが考慮された。 MMSEスコアは、MCI患者ではベースライン時の26.4から5年後には21.0へ、軽度認知症患者では22.4から7.8へと経時的に低下していた。モデルは、このような認知機能の低下の予測に役立ったが、不確実な面があることも示された。予測スコアと実際のスコアには、MCI患者の場合は半数で2点未満、軽度認知症患者の場合は半数で3点未満の範囲で差が認められた。 ベースラインのMMSEスコアが28で一定レベルのAβプラークが認められるMCI患者を想定して検討したところ、この患者が中等度の認知症(MMSEスコアが20)に達するまでの時間は6年であるが、認知症治療薬の使用により低下を30%抑制できた場合には、その時間は8.6年に延長することが予測された。同様に、ベースラインのMMSEスコアが20で一定レベルのAβプラークが認められる軽度認知症患者の場合では、MMSEスコアが15(中等度の認知症)に至るまでの期間は2.3年、薬により認知機能の低下を30%抑制できた場合には3.3年と予測された。 Van der Flier氏は、「認知障害を持つ人やその介護者が最も気にするのは、『あとどれくらいの期間、車を運転できるのか』や『あとどれくらいの期間、趣味を続けられるのか』といった質問に対する答えだ。将来的には、生活の質や日常の機能に関わるこのような質問に対する答えを予測するモデルが役立つようになることを期待している。それが実現するまでの間は、本研究のようなモデルによる予測スコアを医師が解釈して患者の質問への答えとするのに役立つことを願っている」と述べている。 研究グループは、このモデルを搭載したプロトタイプのアプリを科学的研究のために公開した。次のステップは、患者、家族、専門家の意見を取り入れた、使いやすいアプリの開発であるという。 ただし、研究グループは、今回開発されたモデルは個人のデータに基づいて予測を行うものの、常に不確定要素が存在するため、個々の患者に対して正確な予測を行うことの難しさを示してもいるとの見方を示している。それでもvan der Flier氏は、「これまでの研究から、人は、たとえ不確かであっても自分の予後についての情報をほしがることが分かっている。したがって、われわれの予測モデルを搭載したアプリは、重要なニーズを満たすことができるはずだ」と話している。

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「周期性嘔吐症候群」とはどのような病気?治療法はある?

 あまり知られていないが、悪夢のような症状をもたらす疾患がある。周期的に突然、強い吐き気や嘔吐が繰り返される、周期性嘔吐症候群(CVS)と呼ばれる疾患だ。米国消化器病学会(AGA)はこのほど、CVSの診断と管理に関する新たな臨床ガイダンス「臨床診療の改訂版(Clinical Practice Update)」を発表。CVSの症状があると思う人は、症状についてメモを取り、声を上げるよう呼び掛けている。 同ガイダンスによると、全人口の約2%がCVSを経験しているが、診断に至るまで何年もかかる場合もあるという。同ガイダンスの著者の1人で米ピッツバーグ大学医療センターのDavid Levinthal氏は、「診断は強力なツールになる。診断されることで患者は衰弱性の症状の正体が分かるだけでなく、医療提供者も効果的な治療計画を立てることができるようになる」と説明している。 CVSの主な症状は、数日間にわたって続く吐き気や嘔吐である。次の発作が現れるまでの期間は長い。軽度のCVSの場合、発作の持続期間は2日未満で、発作の回数も年に4回に満たない。一方、重度のCVSでは発作の持続期間がより長く、1年間に起こる発作の回数も多く、患者の中には入院や救急外来の受診が必要になる人もいるという。現在、CVS患者の約半数が少なくとも年に一度は救急外来を受診し、3分の1がCVSの症状による機能障害を抱えているという。また、発作と発作の間に嘔吐を繰り返すことはなくても、吐き気や消化不良といった症状が現れる場合もあるという。 CVSは誰にでも起こり得るが、女性や若年成人に多い。また、片頭痛の既往歴や家族歴がある人にも多いという。CVSの診断を受けるには、過去の嘔吐発作の詳細な記録を残しておく必要があると医師らは説明している。CVSは、胃腸炎や食中毒と誤診されることが多い。これらの症状が一定のパターンの一部であることを示すことで、自分がCVSである可能性を疑えるようになると研究グループは述べている。 Levinthal氏は、「臨床診療改訂の目的は、CVSの認知度を高め、診断が遅れるケースを減らし、患者の治療へのアクセスを向上させることだ」とAGAのニュースリリースの中で説明。その上で、「プライマリケアや救急医療、緊急医療の提供者、特に発作時に治療を求めるCVS患者と接する最前線にいる人たちに届くことをわれわれは願っている」としている。同ガイダンスでは、睡眠やストレスの管理、また薬物療法はCVS患者の助けになり得るとされている。 米国立衛生研究所(NIH)によると、専門家の間でもCVSの原因は明確になっていない。ただ、脳と消化管の間の神経信号の問題や、ストレスに対する脳と体内のホルモンシステムの反応に問題があることなどが原因となる可能性が指摘されている。また、遺伝子もリスクに影響している可能性があるという。

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航空会社のシフト制労働者の不規則な食事リズムは抑うつや不安と関連

 遅い夕食や長い食事摂取の時間枠などの不規則な食事リズムが、抑うつや不安のリスクを高める可能性のあることが、航空会社のシフト制労働者を対象にした新たな研究で明らかになった。上海交通大学(中国)のMi Xiang氏らによるこの研究の詳細は、「JAMA Network Open」に7月15日掲載された。 この研究では、中国の主要航空会社の従業員(パイロット、客室乗務員、航空保安検査員)を対象とした継続中の研究(Civil Aviation Health Cohort of China)への参加者2万2,617人(18〜60歳、年齢中央値29.1歳、男性60.6%)のデータが分析された。研究グループは、調査データをもとに、就業日と休日における朝食と夕食を摂取するタイミング、毎日の食事摂取の時間枠、およびイーティングジェットラグを割り出し、抑うつや不安との関連を検討した。 その結果、午前シフトの日における午後8時以降の夕食の摂取は、午後8時前の摂取と比べて、抑うつと不安のリスク増加と関連することが明らかになった(抑うつ:調整オッズ比2.01、95%信頼区間1.78〜2.27、不安:同1.78、1.53〜2.05)。同様の結果は、夜間シフトの日と休日でも認められた。一方、午前シフトの日に食事摂取の時間枠が12時間未満であることは、12時間以上の場合と比べて抑うつと不安のリスクが低かった(同順で、同0.81、0.75〜0.89、同0.84、0.75〜0.93)。この結果は、休日でも同様であった。 また、午前シフトの日における夕食の遅れと夜間シフトの日における夕食の遅れは、抑うつと不安のリスク増加に関連していた(午前シフト:同順で、調整オッズ比1.39、95%信頼区間1.22〜1.58、同1.32、1.13〜1.54、夜間シフト:同順で、同1.21、1.08〜1.36、同1.22、1.06〜1.39)。さらに、午前シフトの日における食事を摂取するタイミングの遅れは抑うつリスクの増加と関連していたのに対し(同1.35、1.13〜1.61)、タイミングの前倒し、つまり早めに食事を摂取することは不安リスクの低下と関連していた(同0.78、0.70〜0.87)。 こうした結果を受けて研究グループは、「航空会社の従業員の食事リズムは、フライトスケジュール(早朝か、夜遅くかなど)に左右されることが分かった。このような不規則な食事リズムは抑うつと不安のリスク上昇と関連していた」と述べている。また、このような結果が得られた理由として、研究グループは、食事時間の変動が、概日リズムとしても知られる体の睡眠・覚醒サイクルに影響を与え、最終的に気分に影響を与える代謝シフトを引き起こすのではないかと推測している。 研究グループはさらに、「航空会社の従業員は厳しい訓練の中で回復力を養っているため、平均的な労働者よりもストレスにうまく対処し、緊急事態を管理する能力が高いと考えられる。それゆえ、典型的なシフト制労働者において不規則な食事リズムが心理面に与える影響はより深刻な可能性がある」と述べている。

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極端に暑い日や寒い日には診療予約のキャンセルが増加

 極端に高温や低温の日には、予約されている診療時間に来なかったり(ノーショー)、診療をキャンセルしたりする患者が増えることが明らかになった。こうした傾向は、65歳以上の高齢者と慢性疾患を有する人で顕著だったという。米ドレクセル大学医学部のNathalie May氏らによるこの研究の詳細は、「American Journal of Preventive Medicine」に6月20日掲載された。 この研究では、米フィラデルフィア市の13カ所の大学病院の外来患者(18歳以上)9万1,580人の間に、2009年1月から2019年12月31日の間に発生した診療予約104万8,575件の追跡が行われた。May氏らは、受診の有無に関するデータを米国海洋大気庁(NOAA)の国立環境情報センター(National Centers for Environmental Information;NCEI)が提供する気象データに基づいて寒い季節と暑い季節に分類し、極端な気温とプライマリケアの利用との関連を検討した。 その結果、最高気温が華氏89度(摂氏31.7度)以上になると、華氏1度(摂氏0.56度)上昇するごとに、無駄になる(ノーショーまたはキャンセル)診療予約が0.64%増加することが示された。また、最高気温が華氏39度(摂氏3.9度)以下の場合でも、華氏1度低下するごとに、無駄になる診療予約が0.72%増加していた。さらに、極端な気温に伴い診療を取りやめる傾向は、特に、65歳以上の患者と慢性疾患を有する患者で強いことも判明した。 May氏は、「気候変動による異常気象は、慢性疾患を有する全ての患者の健康とウェルビーイングを脅かす」と指摘する。同氏はさらに、「とりわけ、極端な暑さや寒さに対抗するための資源を持っていない可能性のある最も脆弱な患者に対しては、警戒を怠らないようにするべきだ。われわれは、プライマリケアの利用における気候変動の影響を研究することで、特に、都市における気候変動の悪影響の観点から健康と公平性を支援する政策を推進したいと考えている」と話している。 一方、論文の筆頭著者であるドレクセル大学医学部のJanet Fitzpatrick氏は、「ノーショーは、患者が自身の健康を損なうだけでなく、他の患者にも悪影響を及ぼす。診療を切望している患者は他にもいる中でのノーショーは、貴重な予約枠を無駄にし、待ち時間の長さによる患者満足度を低下させる。また、急患や救急外来の利用が増え、慢性疾患の管理も不十分になることから、将来、より多くの医療が必要となり、結果的に国の医療システムにかかるコストも増加する」と話す。 医療システムは、遠隔医療の活用によってこのような影響を軽減することができるとFitzpatrick氏は話す。同氏は、「新型コロナウイルス感染症のパンデミックの際、遠隔医療は医療提供の重要な一形態として機能した。気候変動が悪化する中、この研究は、患者が必要なケアを確実に受けられるようにするための選択肢として、遠隔医療の恒久的な適用を提唱することを支持するものだ」と述べている。

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スタチンの使用はパーキンソン病リスクの低下と関連

 日本人高齢者を対象とした大規模研究により、スタチンの使用はパーキンソン病リスクの低下と有意に関連することが明らかとなった。LIFE Study(研究代表者:九州大学大学院医学研究院の福田治久氏)のデータを用いて、大阪大学大学院医学系研究科環境医学教室の北村哲久氏、戈三玉氏らが行った研究の結果であり、「Brain Communications」に6月4日掲載された。 パーキンソン病は年齢とともに罹患率が上昇し、遺伝的要因や環境要因などとの関連が指摘されている。また、脂質異常症治療薬であるスタチンとパーキンソン病との関連を示唆する研究もいくつか報告されているものの、それらの結果は一貫していない。血液脳関門を通過しやすい脂溶性スタチンと、水溶性スタチンの違いについても、十分には調査されていない。 そこで著者らは、LIFE Studyの2014年~2020年の健康関連データを用いて、コホート内症例対照研究を行った。65歳以上の高齢者で、追跡中にパーキンソン病を発症した人を症例、症例1人に対してコホート参加時の年齢、性別、市町村、参加年をマッチさせた対照5人を選択し、解析対象は症例9,397人と対照4万6,789人とした(女性53.6%)。スタチンは脂溶性(アトルバスタチン、フルバスタチン、ピタバスタチン、シンバスタチン)と水溶性(プラバスタチン、ロスバスタチン)に分類し、コホート参加時からの累積投与量の指標として、標準化1日投与量の合計(total standardized daily dose;TSDD)を算出した。 条件付きロジスティック回帰を用い、先行研究に基づいて併存疾患の有無を調整して解析した結果、スタチン使用は非使用と比較して、パーキンソン病リスクの低下(オッズ比0.61、95%信頼区間0.56~0.66)と有意に関連していることが明らかとなった。この関連は性別にかかわらず、男性(同0.62、0.54~0.70)と女性(同0.60、0.54~0.68)ともに認められた(交互作用P=0.71)。また、年齢層ごとに検討した場合も、65~74歳(同0.57、0.49~0.66)、75~84歳(同0.60、0.53~0.68)、85歳以上(同0.73、0.59~0.92)のいずれも同様の関連が認められた(交互作用P=0.17)。 全体として、スタチンの累積投与量が多いほどパーキンソン病リスクが低いことも明らかとなった。具体的には、TSDD 0(投与なし)の人と比較して、TSDD 1~30ではリスク上昇(同1.30、1.12~1.52)と関連していた一方で、TSDD 31~90(同0.77、0.64~0.92)、TSDD 91~180(同0.62、0.52~0.75)、TSDD 181以上(同0.30、0.25~0.35)ではリスク低下と関連していた。また、脂溶性スタチン(同0.62、0.54~0.71)と水溶性スタチン(同0.62、0.55~0.70)のどちらも、パーキンソン病リスク低下と関連していることが示された。 以上から著者らは、「日本人高齢者において、スタチン使用とパーキンソン病リスク低下との間に有意な関連が認められた。スタチンの累積投与量が多いほど、パーキンソン病の発症に対して予防効果を示した」と述べている。スタチンによる予防効果のメカニズムについては、脳動脈硬化の低下やドーパミン作動性神経細胞の生存などによる可能性が考えられるとして、この予防効果をより正確に評価するため、さらなる研究の必要性を指摘している。

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COPD・喘息の早期診断の意義(解説:田中希宇人氏/山口佳寿博氏)

 COPD(chronic obstructive pulmonary disease:慢性閉塞性肺疾患)は2021年の統計で1万6,384例の死亡者数と報告されており、「健康日本21(第三次)」でもCOPDの死亡率減少が目標として掲げられている。気管支喘息も、年々死亡者数は減少しているとはいえ、同じく2021年の統計で1,038例の死亡者数とされており、ガイドラインでも「喘息死を回避する」ことが目標とされている。いずれも疾患による死亡を減少させるために、病院に通院していない、適切に診断されていないような症例をあぶり出していくことが重要と考えられている。しかしながら、疾患啓発や適正な診断は容易ではない。現在、COPD前段階ということで、「Pre COPD」や「PRISm」といった概念が提唱されている。閉塞性換気障害は認めないが画像上での肺気腫や呼吸器症状を認めるような「Pre COPD」や、同じく1秒率が閉塞性換気障害の定義を満たさないが、%1秒量が80%未満となるような「PRISm」であるが、それらの早期発見や診断、そして治療介入などが死亡率の減少に寄与しているかどうかについては明らかになっていない。 今回NEJM誌から取り上げるカナダ・オタワ大学からの「UCAP Investigators」が行った報告では、症例発見法を用いたCOPD・気管支喘息の診断と治療により、呼吸器疾患に対する医療の利用が低減することが示された。約3万8,000例の中から、595例の未診断のCOPD・喘息が発見され、介入群と通常治療群に分けられ、呼吸器疾患による医療利用の発生率が評価されている。ガイドラインによる治療を順守するような呼吸器専門医の介入により、被検者の医療利用は有意に低下することが報告された。早期診断・治療を受けることにより、SGRQスコアとCATスコアや1秒量が改善することが示され、症例の健康維持に寄与することが期待されている。また、早期診断することにより、自らの病状の理解や自己管理の重要性を認識することも重要と考えられる。 一見、病気はすべて早期発見・早期治療が良いように思われるが、いくつかの問題点も考えられる。1つは軽症や無症状の症例が診断されることにより、生命予後に寄与しない治療が施される可能性がある。診断された患者は不安や精神的・心理的なストレスを抱えることも懸念される。2つ目に、限りある医療資源を消費してしまうことが推測される。呼吸器専門医や呼吸器疾患に携わる医療者は本邦でも潤沢にいるわけではなく、呼吸器専門医が不在の医療機関も少なくない。より重症や難治例のために専門医の意義があるわけで、軽症例や無症状の症例に対してどこまで介入できるか、忙しい日本の臨床の現場では現実的ではない部分が大きい。3つ目には薬物療法の早期開始により、副作用リスクがメリットを上回る可能性も不安視される。とくに吸入ステロイドによる局所の感染症や糖尿病や骨粗鬆症のリスクは、長期使用となると見逃すことはできないのだろう。 いずれにしても症例発見法は簡便であり多くの医療機関で導入可能と筆者は訴えているが、COPD・喘息の早期診断・早期介入が医療利用の低減のみならず、長期予後や死亡率の減少などにつながるかどうか、より長期的な検討が必要なのだろう。

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第223回 院内処方は例外?腑に落ちない「医薬品の自己負担の新たな仕組み」

酷暑が続く最中だが、秋に向けてさまざまな動きがスタートしている。医療界では10月から、患者の希望に基づくジェネリック(GE)医薬品のある先発医薬品(長期収載品)の処方は選定療養となり、新たに自己負担が生じることになる。すでに厚生労働省は特設ページまで用意している。国民に新たな負担を強いるわけだから、この対応自体は一定の評価はできると個人的に考えている。さてこのページを見ていて、ちょっと気になったことがあった。それは「長期収載品の処方等又は調剤の取扱いに関する疑義解釈資料の送付について(その1)」という事務連絡通知だ。余計なことを言えば、「その1」があるならば、「その2」はいつ出るのだろうとも考えているが…。私がこの通知の中で気になったのが以下の疑義解釈である。【院内処方その他の処方について】問7 院内採用品に後発医薬品がない場合は、「後発医薬品を提供することが困難な場合」に該当すると考えて保険給付してよいか。(答)患者が後発医薬品を選択することが出来ないため、従来通りの保険給付として差し支えない。なお、後発医薬品の使用促進は重要であり、外来後発医薬品使用体制加算等を設けているところ、後発医薬品も院内処方できるようにすることが望ましい。「は?」という感想しかない。念のために言っておくと、私は原則的に医薬分業を推進すべきだと思いつつ、過渡的に院内処方はありだと思っている。しかしだ、さすがにこれはないだろうと思ってしまった。まず、国が医薬分業推進とジェネリック品(私の表記はこれで統一、以下GE品)の使用促進を謳っている中で、院内処方にこだわるならば、せめてGE品も院内在庫として有するのが筋というもの。こういうと、「GE品は先発品とは医薬品添加剤などが異なるから実質的に異なるもの」という主張が出てくる。医薬品添加剤などが異なるは、その通りである。しかしながら、GE品は長期収載品との同等性試験のデータを提出して承認されるものである。実は私は会社員として専門紙記者をやっていた頃、この生物学的同等性試験(以下、同等性試験)を受けようとしたことがある。やや余談になるが、その時の話をまず記述したいと思う。同等性試験に参加したワケ当時の私は、所属していた媒体でインフォームド・コンセント(IC)に関する連載を担当しており、臨床試験でのICの実態を体験したいと考えていた。私の友人にはGE品の同等性試験を経験した人がおり、そこから試験申し込みの情報は得ていた。とはいえ、会社員の身で事実上の潜入取材となるため、直属の上司は編集局長の許可がいると言い出し、最終判断は局長一任となり却下された。だが、その直後、直属の上司が社内異動となり、社内の他媒体の編集長が私の媒体の兼任となった。私はこの間隙を縫って、兼任編集長に次ぐ、記者でもある主任に再度掛け合った。主任は私の申し出に腕組みして考えた後、「友人に迷惑かけんなよ。それと試験手前で離脱できるならしろ。その条件で認める。後は俺が責任を取る」と言ってくれた。私は友人から教えられた電話番号に連絡し、事前の採血や健康診断を受け、さらに臨床試験のICも受けた。率直に言って、この時受けたICは、臨床試験に際して求められる項目がかなり抜け落ちたものだった。結局、私は試験開始前に離脱を表明し、最終的にその状況を記事にしたのだった。記事が出た当初、社内で問題になることはなかったが(そもそも局長が社内媒体すべてには目を通していなかった)、しばらくして大問題となった。社内の広告営業部門の幹部が飛んできて「えらいことをしてくれた」と言うのだ。曰く、私と同期入社である営業担当社員が半年ほど、臨床試験受託会社の業界団体加盟社すべてから営業訪問を拒否されているとのこと。長らくその理由も明らかにされなかったが、この同期社員が「なぜ会ってもいただけないんですか?」とある会社に食い下がったところ、私の記事のコピーを差し出されたという。私が離脱した同等性試験を受託していたのは、この業界団体の加盟社だった。結局、同期の営業社員は年間で営業成績が数百万円の落ち込みとなってしまった。彼には直接詫びたが、彼は「まあ、うちら専門紙がやるかという問題はあるけど、(記事は)必要だったと思うよ」と精一杯の“やせ我慢”(と私は思っている)で応えてくれた。私が属していた会社は、いわゆる業界紙という区分にもなる専門紙だったが、私以外にもこうした誤報ではないが、読者でもあり広告出稿者の癇に障る記事を書いて、一時出稿停止になることは珍しくなかった。ちなみに私の退職時の送別会に出席した前述の営業部門幹部から、私の記事が原因で飛んだ7年間の広告料概算総額を聞かされた時は正直血の気が引いたものである。同等性試験の参加者は過酷さて同等性試験に話を戻そう。私は事前に友人が受けた同等性試験の様子は聞いていたが、それはある意味壮絶なものだった。友人の証言に基づくと、彼が受けた同等性試験では最初の6時間は1時間おき、その後は丸2日間にわたって3時間おきに採血が行われたという。これは服用薬の血中濃度測定のためだ。この頻回な採血により、後半になると採血用の注射針を刺した直後に失神する被験者もいたという。いずれにせよ、そうした犠牲を払って行われた同等性試験の結果が正しいという前提に立てば、「GE品は先発品と異なる」との主張はあまり適当ではないと思われる。確かに昨今のGE企業の相次ぐ不祥事もあるが、それでGE品を丸々否定するのはやや度が過ぎていると感じる。そのような中で、今回示された疑義解釈に沿えば、院内処方の医療機関でGE品を在庫していないというだけで選定療養の対象外とするのは、さすがに国の方針としてやや甘過ぎないだろうか? そしてこの解釈を利用すれば、院内処方を行う医療機関と医学的な必要性もなく長期収載品の処方を望む患者が手を組めば、事実上不正な処方も行えることにほかならない。院内処方はたかだか20%なのだから固いこと言うなとの意見もあるかもしれない。しかし、そもそもこの解釈そのものが今回の制度改正の主旨であるGE品の使用促進に伴う国の薬剤費負担を軽減することにすら反する。現行の制度や世の中を取り巻く環境を考えるならば、院内処方をする医療機関はそれ相当の矜持を有するべきであり、国もそれ相応の対応を取るべきである。しかし、この解釈に対しては、少なくとも私は場当たりな印象しかない。最後に申し添えておくと、ときどき保険薬局の薬剤師からは「院内処方をしている医療機関から時に在庫確保が困難だからとかの理由で処方箋が出されることがある」との話はよく耳にする。現在の医薬品供給不足で、在庫確保の困難さは薬局も同じこと。大きなお世話と言われようが、そこは互いに思いやりが必要ではと思ってしまう。

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何はさておき記述統計 その7【「実践的」臨床研究入門】第46回

変数の型とデータ記述方法の使い分け前回は交絡因子について解説し、われわれのResearch Question(RQ)の交絡因子として下記の要因を挙げました(連載第45回参照)。年齢、性別、糖尿病の有無、血圧、eGFR、蛋白尿定量、血清アルブミン値、ヘモグロビン値今回からは、仮想データ・セットからこれらの交絡因子のデータを「低たんぱく食厳格遵守群」と「低たんぱく食非厳格遵守群」に分けて記述し、表を作成していきます。これは論文の表1として示されることの多い、いわゆる「患者背景表」となります。実際に表を作成してみる前に、まずは変数の型とデータ記述方法の使い分け、について説明します。変数の型は連続変数とカテゴリ変数に大別されます。連続変数は量を表す変数です。前述した交絡因子では年齢や血圧などの測定値、eGFR、蛋白尿定量、ヘモグロビン値や血清アルブミン値という臨床検査値、が連続変数です。カテゴリ変数は性質を表す変数で、名義変数、順序変数が該当します。今回挙げた交絡因子のうち性別と糖尿病の有無、が順序のない2値(1 or 0)の名義変数となります。ここからは、無料の統計解析ソフトであるEZR(Eazy R)の操作手順を含めて解説します(連載第43回参照)。表1の作成に必要な仮想データ・セットを以下の手順でEZRに取り込んでみましょう。仮想データ・セットをダウンロードする※ダウンロードできない場合は、右クリックして「名前をつけてリンク先を保存」を選択してください。「ファイル」→「データのインポート」→「Excelのデータをインポート」取り込んだ仮想データ・セットの内訳を下記に示します。A列:id 患者IDB列:treat 比較群分け(カテゴリ変数 1;低たんぱく食厳格遵守群、0;低たんぱく食非厳格遵守群)C列:age 年齢(連続変数)D列:sex 性別(カテゴリ変数 1;男性、0;女性)E列:dm 糖尿病の有無(カテゴリ変数 1;糖尿病あり、0;糖尿病なし)F列:sbp 収縮期血圧(連続変数)G列:eGFR (連続変数)H列:UP 蛋白尿定量 (連続変数)I列:albumin 血清アルブミン値(連続変数)J列:hemoglobin ヘモグロビン値(連続変数)それでは、連続変数のデータ記述方法について説明します。連続変数データの代表値としては平均値(Mean)や中央値(Median)が使われます。また、連続変数データのばらつきを示す値としては標準偏差(Standard deviation:SD)や範囲(Range)、もしくは四分位範囲(Inter-quartile range:IQR)を用いる場合があります。それぞれの使い分けについては、実際にEZRを操作しながら説明します。連続変数を記述する際、まずはヒストグラム(度数分布図)を確認してみましょう。EZRでは下記の手順でヒストグラムを描くことができます。「グラフと表」→「ヒストグラム」を選択すると、ポップアップウィンドウが開きますので、まずは下記のとおりに変数や設定を選択してみてください。年齢のヒストグラムが比較群分けごとに示されています。想定のとおり、低たんぱく食厳格遵守群(treat=1)は、低たんぱく食非厳格遵守群(treat=0)より年齢の分布が若干若いようです(連載第45回参照)。このヒストグラムのように、その連続変数データの分布が一峰性(ひとやま)でおおむね左右対称で正規分布に近似している場合は、その代表値を平均値(Mean)で、そのばらつきを標準偏差(SD)で記述することができます。しかし、臨床研究における連続変数のデータは正規分布に近似するものばかりではありません。たとえば、下記のように「ヒストグラム」のポップアップウィンドウで蛋白尿定量であるUPを選択し、「OK」ボタンをクリックしてみてください。ネフローゼ症候群の患者は対象から除外されていることもあり(連載第40回参照)、多くのデータがUP2g/日以下に偏り、右に裾を引いたようなヒストグラムになっています。このような形状のデータ分布の場合、代表値としては中央値(Median)、データのばらつきを示す値としては四分位範囲(IQR)、もしくは最小値から最大値という範囲(Range)で示すことが望まれます。なお、カテゴリ変数データの記述方法は簡単です。カテゴリ変数はカテゴリ別の頻度か割合で報告しますが、データ数の大きさによって、下記に示したような使い分けが慣例的に推奨されています。データ数が100以上:小数点以下1桁までの割合(%)データ数が100未満20以上:整数の割合(%)データ数が20未満:割合は使用せず、頻度の実数

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東海大学医学部 外科学系腎泌尿器科学領域【大学医局紹介~がん診療編】

小路 直 氏(教授/診療科長)梅本 達哉 氏(助教)青木 芽衣子 氏(臨床助手)講座の基本情報医局独自の取り組み・特徴当科は、泌尿器悪性腫瘍(前立腺がん、腎臓がん、尿路上皮がんなど)に対するロボット支援手術、および腹腔鏡手術を多数実施しています。また、良性疾患である前立腺肥大症、および尿路結石症に対して、幅広い内視鏡手術を多数実施しており、個々の状況に応じた術式で対応しています。特徴ある医療技術として、本学が先進医療として開始し、2022年から保険収載された“前立腺針生検法:MRI撮影および超音波検査融合画像によるもの”、また2023年に先進医療として承認された“集束超音波治療器を用いた前立腺がん局所焼灼・凝固療法”があり、国内外の診療、および研究を牽引しています。地域のがん診療における医局の役割主に神奈川県西部の医療圏の患者さんの多くを診療させていただいています。当院は、三次救急も担っているため、外傷や重症尿路感染症の診察も行うことがあります。また、当科で行っている高度な医療を求める国内外の広い地域の患者さんも多く受診しています。今後医局をどのように発展させていきたいか標準医療を高い精度で実施しつつ、個々の患者さんに対応できる医療技術の選択肢を提供できる診療科を目指します。医工連携は重要なテーマとして考えており、すでに交流のある電気通信大学や東京農工大学との連携により、東海大学独自の診療を確立していきたいと思います。力を入れている治療/研究テーマ治療に関してはロボット支援手術全般、研究テーマとしては「転移性腎がんに対する薬物療法後の待機的腎摘除(Deferred cytoreductive nephrectomy:Deferred CN)の有効性」、「下大静脈腫瘍塞栓を有する腎がんに対する薬物療法後の待機的手術」に現在は力を入れています。腎がんに対する薬物治療の効果は免疫チェックポイント阻害薬(ICI)を主軸とした併用療法の出現により劇的に向上しました。ICIの時代におけるDeferred CNの適応や有効性に関してはまだ明らかになっておらず、当院ではICI併用レジメンを半年以上投与し、外科的CRが達成される症例をDeferred CNの主な適応として治療を行っています。下大静脈腫瘍塞栓を有する症例に対してもICI-分子標的薬併用レジメンを使用し、可能な限り腫瘍塞栓を縮小させた状態でロボット支援手術を併用することにより手術侵襲の軽減が得られると考えています。医局でのがん診療/研究のやりがい、医学生/初期研修医へのメッセージ臓器ごと、がんの種別でチームが分かれていないため、すべてのがんに対して診断や治療を行うことができます。その背景には医局の人数が少ないことも関係していますが(笑)、若手の先生にとっては大きな魅力だと思います。また、当科は臨床に強く、症例数も豊富なため入局後早期から多くの経験を積めると思います。医局の雰囲気が良いことも特徴で、若手の先生方の成長をしっかりとサポートできる環境は整っていますので、興味を持っていただけると嬉しいです。同医局を選んだ理由医学科5年の臨床実習で初めて泌尿器領域に触れ、多彩な疾患と幅広い手技に興味を持ちました。特にロボット支援手術や内視鏡手術における豊富な経験と、絶えず最先端・最良を追求する学究的かつ誠意ある柔軟な姿勢に魅力を感じ、入局を決めました。学生として、研修医として、専攻医として、いかなる時にも熱意をもってご指導いただき、医局の先生方ひとりひとりが私の医師人生のロールモデルとなっています。現在学んでいること入局1年目として、まずは病棟管理の基本を学んでいます。感染症の急性期治療から末期がんの緩和治療まで、患者さんにとっての最善を考え、チームで相談しながら実践しています。また処置や内視鏡手術、ロボット手術の助手など、上級医の先生の手技を学びながら、技術の修得に日々励んでいます。今後のキャリアプラン泌尿器科医として一人前になることが第一で、その後は大学院進学や留学で見聞を広めたいと考えています。悪性腫瘍、とくに尿路上皮がんを専門領域として研究や論文執筆にも挑戦したいと思っていましたが、入局すると女性医師として女性患者さんからの需要を肌で感じ、最近では女性泌尿器疾患にも取り組む意欲が湧いています。いずれにしても、大学病院で最先端の治療と研究、そして患者さんのための医療に邁進するつもりです。東海大学医学部 外科学系腎泌尿器科学領域住所〒259-1143 神奈川県伊勢原市下糟屋143問い合わせ先sunashoj@tokai.ac.jp医局ホームページ東海大学医学部外科学系腎泌尿器科学領域専門医取得実績のある学会日本泌尿器科学会日本治療学会日本内視鏡外科学会日本泌尿器内視鏡・ロボティクス学会日本排尿機能学会日本メディカルAI学会研修プログラムの特徴(1)ロボット支援手術、腹腔鏡手術など、豊富な症例数を経験することが出来ます(2)先進医療などの新しい医療技術を経験することが出来ます(3)関連病院を活用し、地域医療を勉強する期間をつくっています

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消毒の難しい器具の消毒、消毒用ワイプvs.UV+過酸化水素

 理学療法で用いられる器具の消毒は、消毒液を含浸したワイプを用いた消毒では不十分である可能性が示された。米国・デューク大学のBobby G. Warren氏らは、理学療法で使用される消毒の難しい器具について、消毒方法の効果を評価した。その結果、消毒液を含浸したワイプによる消毒では病原体が残存する可能性が高かったが、深紫外線(UV-C)と過酸化水素を用いた消毒方法は病原体の残存が抑制された。本研究結果は、Infection Control & Hospital Epidemiology誌オンライン版2024年7月26日号で報告された。 研究グループは、成人および小児の理学療法で使用される器具を対象として、2段階の前向き比較試験を実施した。第1段階では、使用後の器具を消毒液を含浸したワイプで消毒して(消毒用ワイプ消毒)、汚染状況を評価した。第2段階では、使用後の器具を左右対称に分割し、一方は消毒を実施せず(無消毒)、もう一方はUV-Cと6%過酸化水素水を用いたキャビネットで消毒して(キャビネット消毒)、汚染状況を評価した。 主な結果は以下のとおり。・消毒用ワイプ消毒後に臨床的に重要な病原体(CIP)を保持する割合は43%(52/122サンプル)であった。とくに、歩行補助具(72%)、治療用ボール(66%)の汚染率が高かった。・キャビネット消毒後にCIPを保持する割合は2%(3/196サンプル)であった(無消毒は19%[37/196サンプル])。・キャビネット消毒後のCIPのコロニー形成単位(CFU)中央値は0(四分位範囲:0~55)であり、無消毒の977(同:409~2,547)、消毒用ワイプ消毒後の527(同:117~1,218)と比較して有意に低かった(いずれもp<0.00001)。 本研究結果について、著者らは「理学療法で用いられる器具は、消毒用ワイプによる標準的な消毒後も、病原体による汚染がみられた。これは、形状や素材、消毒液の塗布が難しいことに起因すると考えられ、これらの器具では、UV-Cと6%過酸化水素水を用いたキャビネットでの消毒が効果的であることが支持された」とまとめた。

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うつ病発症リスクが高い夜型人間、再発リスクへの影響は

 夜型クロノタイプは、うつ病発症リスクが高いといわれている。この影響は、主にうつ病の初期と関連するのか、再発エピソードでも見られるのかはわかっていない。中国・上海交通大学のShuang Hu氏らは、うつ病患者におけるクロノタイプとうつ病重症度との関連が、初回エピソードと再発エピソードで同様であるかを調査した。Chronobiology International誌2024年7月号の報告。 対象は、うつ病患者386例(女性の割合:70.7%、年齢範囲:16〜64歳)。クロノタイプ、睡眠の質、疲労レベル、うつ病重症度の評価には、朝型夜型質問紙(MEQ)、ピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)、Multidimensional Fatigue Inventory(MFI20)、簡易抑うつ症状尺度(QIDS-J)をそれぞれ用いた。クロノタイプとうつ病重症度との関連を分析するため、多変量回帰モデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・クロノタイプ、睡眠の質、疲労レベルは、いずれもうつ病重症度と関連していることが示唆された。・夜型クロノタイプは、初回エピソードのみで、睡眠の質および疲労レベルとは独立してうつ病重症度の有意な増加を予測したが(−0.068、p=0.010)、再発エピソードでは認められなかった(0.013、p=0.594)。 著者らは「サーカディアンリズムに焦点を当てた治療は、初回エピソードのうつ病患者のみで検討することが妥当である」としている。

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バスケットボールでよくある傷害は足首の捻挫

 バスケットボールは、わが国でも漫画の影響やBリーグの活躍で非常に人気の高い球技であり、パリ・オリンピック2024でも注目されている競技である。そんなバスケットボールは、身体接触も多く、選手の怪我も多いスポーツである。 では、バスケットボールの選手は、どのような傷害をよくするのか。セルビアのPristina-Kosovska Mitrovica大学体育・スポーツ学部のNikola Aksovic氏らの研究グループは、さまざまな文献を基にシステマティックレビューを行った。その結果、選手は膝と足首を傷害する頻度が高いことが判明した。Life誌2024年7月19日号の報告。シューティングガードのポジションは負傷率高め 研究グループは、バスケットボール選手のスポーツ傷害に関し性別、場所、スポーツ、コート上の位置によるスポーツ傷害の違いを説明する目的で利用可能な関連データを収集した。 研究方法としては、1990~2024年までのPubMed、MEDLINE、ERIC、Google Scholar、ScienceDirectの論文について、データベースを用いデジタル検索を行い、解析した。 主な結果は以下のとおり。・男女共に最も頻度の高い重度傷害は膝と足首の傷害だった。・最も頻度の高い傷害形態は足首の捻挫と靭帯の損傷だった。・最も頻度の高い傷害はランニング中とボールとの接触後に起こっていた。・ポジション別では、シューティングガードの負傷率が最も高く、次にセンター、ポイントガードであり、ガードは内転筋の負傷率が最も高いという結果だった。 これらの結果から研究グループは、「バスケットボール選手には足首と膝のケガが多く、とくに足首の捻挫が多い。膝の損傷は、膝前十字靱帯(ACL)損傷を含め、女子バスケットボール選手に多い。ジャンプ、着地、急激な方向転換、試合中の身体への負荷など、さまざまな要因が傷害の原因となっていることが明らかになった」としている。

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ベンラリズマブ、好酸球性食道炎に有効か?/NEJM

 好酸球性食道炎に対し、ベンラリズマブはプラセボと比較して組織学的寛解率が有意に高かったものの、嚥下障害の症状に関しては有意な改善は認められなかった。米国・シンシナティ大学のMarc E. Rothenberg氏らMESSINA Trial Investigatorsが、第III相多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験「MESSINA試験」の結果を報告した。ベンラリズマブは好酸球を減少させる抗インターロイキン-5受容体αモノクローナル抗体である。これまでの研究で、ベンラリズマブ治療により、血液、骨髄、肺、胃、食道組織における好酸球のほぼ完全な減少がもたらされ、ベンラリズマブが好酸球性食道炎の治療薬として有望である可能性が示されていたが、好酸球性食道炎患者におけるベンラリズマブの有効性と安全性は不明であった。NEJM誌2024年6月27日号掲載の報告。組織学的寛解と嚥下障害症状の改善をベンラリズマブとプラセボで比較 MESSINA試験は2020年9月22日~2022年10月25日に、12ヵ国78施設で実施された。 研究グループは、症状を有し組織学的に活動性の好酸球性食道炎と診断された12~65歳の患者を、ベンラリズマブ(30mg)群またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付け、盲検下で4週ごとに24週皮下投与した後、以降は全例に非盲検下でベンラリズマブ(30mg)を4週ごとに52週時まで皮下投与した。 主要有効性エンドポイントは2つで、24週時の組織学的寛解(高倍率1視野当たりの好酸球数が6個以下)、および嚥下障害症状質問票(DSQ)スコア(範囲:0~84、スコアが高いほど嚥下障害が高頻度または重度であることを示す)のベースラインからの平均変化量とした。ベンラリズマブは組織学的寛解率を有意に改善、嚥下障害症状の改善に差はなし 計211例が、ベンラリズマブ群(104例)およびプラセボ群(107例)に割り付けられた。 24週時に組織学的寛解が認められた患者の割合は、ベンラリズマブ群87.4%、プラセボ群6.5%であり、ベンラリズマブ群で有意に高かった(群間差:80.8%、95%信頼区間[CI]:72.9~88.8、p<0.001)。 一方、DSQスコアのベースラインからの変化量は、ベンラリズマブ群-12.1、プラセボ群-15.1で、両群間に有意差は認められなかった(最小二乗平均の差:3.0、95%CI:-1.4~7.4、p=0.18)。 また、重要な副次エンドポイントである24週時における好酸球性食道炎内視鏡基準スコア(EREFS、範囲:0~9、スコアが高いほど内視鏡所見の異常が多い)のベースラインからの変化量は、ベンラリズマブ群-0.5、プラセボ群-0.4であり両群間に差はなかった。 有害事象の発現割合は、ベンラリズマブ群64.1%、プラセボ群61.7%で、有害事象のために試験を中止した患者はいなかった。

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アルツハイマー病、血液検査で高い精度で診断/JAMA

 血漿中リン酸化タウ217(p-tau217)と非p-tau217の比率(%p-tau217)と血漿中アミロイドβ42およびアミロイドβ40の比率(Aβ42:Aβ40比)を組み合わせたAPS2(amyloid probability score 2)と、%p-tau217のみに基づく検査は、事前に定義されたカットオフ値を用いた場合、1次医療および2次医療で認知症状を有する人のアルツハイマー病(AD)を高い精度で診断できることが明らかになった。スウェーデン・ルンド大学のSebastian Palmqvist氏らが、事前に定義されたバイオマーカーのカットオフ値を前向きに評価する目的で実施したコホート研究の結果を報告した。血液検査によりADを診断できる可能性がある。JAMA誌オンライン版2024年7月28日号掲載の報告。%p-tau217とAβ42:Aβ40比による診断精度を検証 研究グループは2020年2月~2024年1月に、1次医療施設および2次医療施設にて、認知症状のために臨床評価を受ける患者1,213例を登録した。独立したコホートで確立されているバイオマーカーのカットオフ値を、1次医療コホート(307例)と2次医療コホート(300例)に適用し、患者1例当たり血漿1検体を単一バッチとして解析した。その後、1次医療コホート(208例)と2次医療コホート(398例)において、前向きに血液検査を行った(患者1例当たり血漿1検体が採取後2週間以内に解析された)。 主要アウトカムはAD病理(脳脊髄液Aβ42:Aβ40比およびp-tau217の異常により判定)、副次アウトカムは臨床的ADとした。陽性予測値(PPV)、陰性予測値(NPV)、診断精度および曲線下面積(AUC)を算出して評価した。APS2の診断精度は高く、集団全体で90% 1,213例の平均年齢は74.2歳(SD 8.3歳)、48%が女性で、主観的認知機能低下23%、軽度認知障害44%、認知症33%であった。1次医療と2次医療の両方の評価において、患者の50%がAD病理を有していた。 血漿検体を単一バッチで解析した場合、1次医療コホートではAPS2使用時のAUCは0.97(95%信頼区間[CI]:0.95~0.99)、PPVは91%(95%CI:87~96)、NPVは92%(95%CI:87~96)、2次医療コホートではそれぞれ0.96(0.94~0.98)、88%(83~93)、87%(82~93)であった。 血漿検体を前向きに解析した場合、1次医療コホートではAPS2使用時のAUCは0.96(95%CI:0.94~0.98)、PPVは88%(95%CI:81~94)、NPVは90%(95%CI:84~96)、2次医療コホートではそれぞれ0.97(0.95~0.98)、91%(87~95)、91%(87~95)であった。 4つのコホートにおけるAPS2の診断精度は高かった(範囲:88~92%)。 1次医療の医師が臨床検査、認知機能検査およびCT検査により臨床的ADを同定する診断精度が61%(95%CI:53~69)であったのに対し、APS2は91%(95%CI:86~96)、認知症専門医による診断精度が73%(95%CI:68~79)であったのに対し、APS2は91%(95%CI:88~95)であった。 集団全体では、APS2の診断精度(90%、95%CI:88~92)は、%p-tau217のみを用いた診断精度(90%、95%CI:88~91)と差はなかった。

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HPVワクチンのキャッチアップ接種推進に向けて/日医

 日本医師会(会長:松本 吉郎氏[松本皮膚科形成外科医院 理事長・院長])は、定例会見を開催した。会見では、「2025(令和7)年度の予算要求要望」について、「医療DXの適切な推進、地域医療への予算確保、新興感染症などへの予算確保」ならびに事項要求として「物価高騰・賃金上昇への対応」を厚生労働省に要望したことが報告された。また、医師会が日本医学会との協力で発行している英文ジャーナル「JMA Journal」が「1.5」(クラリベイト社発表)のインパクトファクターを取得したことも報告された。そのほか、2024年9月末に期限が迫っている「HPVワクチンキャッチアップ接種推進に向けて」について医師会の取り組みが説明された。キャッチアップ接種について看護学生の9割は「知っている」と回答 HPVワクチンは、定期接種が小学校6年生~高校1年生相当の女子を対象に行われている。現在、接種勧奨が行われているが、平成9年度生まれ~平成19年度生まれ(誕生日が1997年4月2日~2008年4月1日)の女子の中に、 通常の定期接種の対象年齢のときに接種機会を逃した人もおり、HPVワクチンの接種の機会(キャッチアップ接種)が設けられている。 このキャッチアップ接種は、2025(令和7)年3月31日までとなっているが、3回の接種を完了するためには半年程度の期間が必要で、2024(令和6)年9月末までに初回接種をする必要があり、その期限が目前となっている。 こうした事態を受けて、釜萢 敏副会長(小泉小児科医院 院長)が、「HPVワクチンのキャッチアップ接種について」をテーマに、これまでの医師会の取り組みや接種対象の看護学生へのアンケート結果などを説明した。 医師会では、HPVワクチンの接種について、さまざまな啓発動画を制作・公開するとともに啓発資料を作成し、医師会員の医療機関などで活用してもらっている。そこで、最近公開された資料として福岡県立大学看護学部のワクチン対象年齢の学生25人に行ったアンケート調査結果について内容を説明した。 アンケート調査の概要は以下のとおり。・「HPVワクチンの接種の有無」を聞いたところ、「接種した」が48%、「予定している」が28%、「ない」が24%だった。・「キャッチアップ接種について知っているか」を聞いたところ、「よく知っている」が40%、「多少は知っている」が52%、「知らない」が8%だった。・「20代のがんの過半数が子宮頸がんであることを知っているか」を聞いたところ、「よく知っている」が56%、「多少は知っている」が40%、「知らない」が4%だった。  また、自由回答でワクチン接種のきっかけを聞いたところ、「無料接種だから」「母親の勧め」「がん予防のため」「医師の勧め」などの回答だった。一方、接種していない・悩んでいる対象者の未接種理由では、「親が不要と言っている」「副反応が怖い」「注射が苦手」などの回答だった。 「医師会では、ひとりでも多く子宮頸がんなどで亡くなる人をなくしたいという目的でこうした活動を行っているが、接種については本人が決めることであり、接種を考える際の判断材料にしてもらいたい。そして、期限までに多くの対象者に接種してもらいたい」と釜萢氏は思いを語った。 医師会では、今後も9月末の期限までにさまざまなメディアで啓発活動を行うとしている。

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