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南海トラフの前兆?【Dr. 中島の 新・徒然草】(542)

五百四十二の段 南海トラフの前兆?先日、3日連続で地震がありました。具体的には2024年8月8日に宮崎県の日向灘。8月9日に神奈川県西部。そして8月10日には北海道のオホーツク海南部です。はたしてこれらは、南海トラフ地震の前触れなのでしょうか?気象庁からの発表によれば、向こう1週間の南海トラフ地震発生の確率が0.1%から0.5%に上がったとのこと。この臨時情報発表を受けてのことか、家具固定用の突っ張り棒がたちまち売り切れてしまったというニュースが報じられていました。私自身は、自宅の本棚や箪笥を突っ張り棒で固定しているので、2018年6月18日の大阪北部地震ではことなきを得ました(第226話、第227話)。ただし1つだけ固定していなかった本棚があり、それだけが見事に倒れてしまい、震度6のパワーを思い知らされたわけです。もちろん、その本棚はその後に突っ張り棒で固定しました。で、今回のテーマである南海トラフ地震についてです。ネットには「デマに踊らされるな」「煽り過ぎ」などという言葉が飛び交っています。しかし私としては、日頃の防災対策を見直すいいキッカケになるのではないかと考えています。というのも、自分なりに防災対策はしてきたものの、やはり穴だらけであることは否めません。向こう1週間が危ないということですが、長からず短からずの程よい準備期間の間に、自分のできることをやりたいと思っています。まずは飲料水。1人1日3リットルの3日間が目安ということなので、夫婦2人で合計18リットル。お茶でもいいのだろうと思い、以前からの備蓄に少し足しました。次に突っ張り棒の増し締め。家中の家具や本棚に合計26本の突っ張り棒を付けているわけですが、長い年月の間には緩んでしまっているものもあります。それらを確認して緩んでいるものは締めておきました。さらに電池。停電に備えてスマホなどの充電用に必要です。単3電池と単4電池をまとめて購入しました。もし地震が来なかったら、これらの余分になってしまう電池をどうするのか?まあ、数年はもつんじゃないでしょうか。簡易トイレ。自宅の洋式トイレを利用するとして、処理袋+凝固剤+防臭袋の部分は必要ですね。しばらく上下水道が復旧しなかったときのことを考えると、100回分程度は必要でしょうか?いろいろな物があるので、YouTubeを参考にAmazonで2種類を購入しました。だた、出遅れてしまったのか、1つは1ヵ月後、もう1つは2ヵ月後に届くとのことです。あくまでも万一に備えてのことなので、2ヵ月後でもよしとしておきましょう。そのほか、マッチまたはライター、カセットコンロ用のガス缶、ラジオ、懐中電灯、保存食、ウェットティッシュ、ニトリル手袋など。ほかにも足りないものがあるかもしれないので、いろいろと調べては少しずつ足していくことにいたします。私自身、1995年の阪神大震災の時はアメリカ留学中で直接には経験しておらず、また大阪北部地震でも避難所生活をしたわけではないので、本当に大地震が起こったら何が必要になるかはよくわかっていません。ただ、今回の3連続地震は、自分でできる限りの準備をしておく良いキッカケになるかと考えております。もちろんこうした準備が空振りに終わったら、これほどありがたいことはありません。何事も起こらないことを祈るばかりです。最後に1句盆来れど 南海トラフの 備えする

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クリーフストラ症候群〔KS:Kleefstra Syndrome〕

1 疾患概要■ 概念・定義2009年にクリーフストラらが9番染色体長腕サブテロメア欠失を持つ複数の症例について、重度から中等度の知的障害、筋緊張低下、てんかんに加え、特徴的な顔貌など、共通する臨床症状があることを報告した。その論文の中で、共通欠失領域に位置していたEHMT1遺伝子が責任遺伝子である可能性を疑い、同様の症状を示しながら9番染色体長腕サブテロメア欠失がない患者を調べたところ、EHMT1遺伝子の病的なバリアントが認められたため、EHMT1の機能喪失が原因であることを明らかにした。これにより、EHMT1遺伝子を含む9番染色体長腕サブテロメア欠失と、EHMT1遺伝子の病的バリアントによって引き起こされる病態をクリーフストラ症候群と称するようになった。■ 疫学正確な疾患頻度は明らかでないが、厚生労働省・山本研究班による複数施設での定点観測では、1万人~1万5,000人に1人と推測され、わが国には推定数千人の患者が存在すると考えられている。■ 病因9番染色体長腕末端から約1-Mbに位置するEHMT1を含む9番染色体長腕の部分欠失による場合と、EHMT1の機能喪失変異による場合がある。染色体欠失による場合の多くはサブテロメア欠失であるが、その切断端は多様であり、欠失サイズもさまざまである。基本的に染色体欠失も遺伝子の機能喪失変異も突然変異によって生じるが、サブテロメア欠失の場合は、他の染色体サブテロメア領域との不均衡転座によっても生じる可能性があり、その場合は両親のどちらかが均衡転座保因者の可能性があるため、次の妊娠時に同じ染色体異常が繰り返されたり、反復流産の原因となることがある。■ 症状知的障害、筋緊張低下、小頭症、先天性心疾患(とくに円錐幹の欠陥)、てんかん(約30%)、および特徴的顔貌(癒合したアーチ型の眉、眼間解離、短鼻、開いた口、および突出した舌など)を示す。その他、先天性心疾患(全患者の50%)、腎泌尿器奇形(全患者の10~30%)、睡眠障害や常同行為などの行動異常、外性器異常、難聴などが認められることがある。■ 予後合併症によるが、一般的に生命予後が不良であるという報告はない。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)染色体異常の場合、マイクロアレイ染色体検査などで9番染色体長腕サブテロメア領域のEHMT1遺伝子を含んだ欠失を確認することにより診断される(図)。遺伝子変異の場合、ターゲット解析、網羅的解析に関わらず、EHMT1の機能喪失変異を確認することにより診断される。図 9番染色体長腕サブテロメア欠失の確認画像を拡大するUCSC genome browserにより、3例のクリーフストラ症候群自験例の欠失範囲を表示した。全例欠失範囲内にEHMT1遺伝子(赤丸)を含む。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)根本的な治療法はない。てんかんに対しては、発作型に合わせた治療が必要である。神経発達症に由来する多動や行動障害に対しては、環境調整や必要に応じた薬物療法を要することがある。 4 今後の展望疾患概念が明らかになってきたばかりであり、疾患特性の理解や治療法の開発はこれからである。5 主たる診療科小児の場合は小児科遺伝学的検査の場合は遺伝診療科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報「マイクロアレイ染色体検査で明らかになる染色体微細構造異常症候群を示す小児から成人の診断・診療体制の構築」研究班ホームページ(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報クリーフストラ症候群日本家族会(患者とその家族および支援者の会)1)Kleefstra T, et al. J Med Genet. 2009;46:598-606.2)Kleefstra T, et al. Am J Hum Genet. 2012;91:73-82.3)Yang Q, et al. Front Neurol. 2024;15:1340458.4)今泉太一、山本俊至. 脳と発達.2024;56:270-272.公開履歴初回2024年08月15日

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映画「心のままに」(その1)【どうハイテンションになるの?そのあとは?(双極性障害)】Part 1

今回のキーワード双極性障害躁状態(躁病エピソード)抑うつ状態(抑うつエピソード)診断基準遺伝率リチウム皆さんは、どんな時にテンションが上がりますか? 仕事がうまく行った時? 好きな人とデートした時? それとも競馬で大穴を当てた時???…などなどさまざまでしょう。そして、数時間かせいぜい数日でそのテンションは元に戻るでしょう。しかし、とくにきっかけなくテンションが上がり、ずっと続いたらどうでしょうか? 精神医学では、これを躁状態と呼んでいます。そして、躁状態のあとには抑うつ状態になることが多く、この一連の状態を双極性障害と呼んでいます。具体的にどんな症状があるでしょうか? なぜ双極性障害になるのでしょうか?今回は、双極性障害をテーマに、映画「心のままに」を取り上げます。双極性障害の主人公を通して、双極性障害の症状と原因を解説します。躁状態にはどんな症状があるの?主人公はジョーンズ。彼はいきなり建築現場に現れ、働かせてくれと現場監督に直談判をするところからストーリーは始まります。ノリノリの話し方で軽いジョークを飛ばし、気を良くした監督は彼にすぐに仕事を任せます。彼はただ気さくでお調子者のように見えます。しかし、すぐに彼が普通ではないことに気付きます。彼は、鼻歌で「心ウキウキ~♪」と歌い続けます。隣り合った建築作業員の同僚に名前を聞いておきながら、自分の名前を聞かれても、楽しさのあまり返事をしません。これは、注意散漫です。そして、明らかにハイテンションになっていて、高揚気分が当てはまります。そして彼は、その同僚ハワードが金づちを叩く音に合わせて、自分も同じリズムで金づちを叩くのです。仕事中ですので、明らかにふざけすぎています。さらに彼は、ハワードと軽く世間話をしたあと、なんと「道で拾った100ドル札だ。天の声が聞こえてきてね、ハワードにやれって言ったんだよ」と言い出します。ハワードから「恵みなんか受けないよ」と断られても、「取っとけよ」と無理やりそのお金をハワードのポケットに入れ込むのでした。高揚気分から気前が良すぎます。そして、このように考えが次から次へとポンポンと飛んで行くのは、観念奔逸が当たります。その後、ジョーンズはまだ骨組みだけの屋根に勝手に上がり、棟木の上を命綱なしで渡り始めます。そして、ハワードに「飛びたいと思ったことはないか? 飛べるよな。飛んでみるか。やってみればきっと飛べるさ」と言い出し、飛ぼうとする真似をします。最後に彼はハワードに何とか捕まえられますが、それでも、楽しそうに笑い続けているのです。このように、「自分は空を飛べる」など自分はすごいという不合理な思い込みは、誇大妄想(誇大性)が当てはまります。いったん精神科病院に運ばれましたが、病棟のベッド数削減の事情によって、すぐに退院となってしまいます。しかし、女医のボーエン先生にまとわりつき、一方的にまくし立てていました。これは、多弁が当てはまります。そして、1人になっても、抑えられずに1人で踊っていました。これは、多動が当てはまります。その後、銀行で預金をすべて下ろしますが、その時に対応した銀行員の女性をデートにいきなり誘います。楽器店で高価なグランドピアノをいきなり買い、高級ホテルに泊まり、リムジンでコンサート会場に乗り入れます。これは、熱中が当てはまります。そして、衝動買いや浪費に発展しています。コンサート会場では、なんと彼は演奏の真っ最中にステージに上がり、指揮者の隣で指揮を執り出すのです。自分の指揮のほうがうまいと思ったのでした。これも、誇大妄想です。精神科病院に再び強制入院となり、隔離室で看護師たちにブーツを脱がされている時は、「空飛ぶブーツだぞ。大事にしろ!」と急に怒鳴っていました。これは、些細なことでも怒りっぽくなる易怒性が当てはまります。以上より、表1の診断基準で、ジョーンズは、6は不明ですが、他のすべての項目を満たしていることになります。次のページへ >>

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映画「心のままに」(その1)【どうハイテンションになるの?そのあとは?(双極性障害)】Part 2

抑うつ状態にはどんな症状があるの?ジョーンズの強制入院の継続を判断する公聴会(日本にはない制度)で、彼は判事に対して、屋根の上に上がって空を飛ぶと言ったことや、ステージに上がって勝手に指揮を始めたことについても、「つい子供っぽいことをしちゃっただけなんだ」「おれはもともと陽気で明るい性格なんだ」と熱弁を振るいます。彼は、たまたま判事とはうまくやり取りができてしまったことで、強制入院は免れます。しかし、その後まもなく、ボーエン先生が予告していたとおり、彼は抑うつ状態になってしまいます。建築現場の元同僚ハワードの自宅に招かれた時、ジョーンズは、もともと計算が得意だったのに、ハワードの小学生の子供の宿題を手伝おうにも、頭が回らず、茫然としているだけなのでした。これは、思考制止が当てはまります。その後も、ジョーンズは、沈んだ表情で、街をさまよっていました。心配して訪ねてきたボーエン先生には、「悲しみが止まらない」と涙ぐむのです。これは、抑うつ気分です。精神科病院に自ら再入院しますが、自分で体を洗うこともできません。これは、精神運動制止が当てはまります。以上より、表2の診断基準で、ジョーンズは、9はみられず、5と6は不明だとしても、1・3・8を確実に満たし、2・4・7は満たすであろうと推定されます。なお、先ほどの躁状態(表1)とこの抑うつ状態(表2)は、感情、意欲、思考の精神機能の点で、ほぼ真逆であることもわかります。また、この双極性障害の抑うつ状態は、うつ病の抑うつ状態とまったく同じ症状(診断基準)です。うつ病の詳細については、関連記事1をご覧ください。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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映画「心のままに」(その1)【どうハイテンションになるの?そのあとは?(双極性障害)】Part 3

なんで双極性障害になるの?ジョーンズは、これまで入退院を20回以上繰り返してきたことが判明します。ボーエン先生は、ジョーンズが双極性障害になった原因を、彼のかつての恋人エレンとの失恋ではないかと考えました。しかし、さすがにこれでは、入退院を繰り返すわけを説明できません。また、ジョーンズは、双極性障害によって、仕事やお金の管理ができなくなり、社会的なトラブルを繰り返してしまいました。それでも、公聴会では「生まれつきなんです」「これがおれなんだ」と言うのです。躁状態は気分が良いので、このままがいいと思う気持ちは理解できるのですが、それにしても、もはや双極性障害が彼らしさ(アイデンティティ)になっています。実際には、双極性障害の遺伝率は、約80%です1)。つまり、原因はストレス(環境)よりも遺伝が大きいことになります。ただし、その発症メカニズムについては、現時点で詳しくわかっていません。なお、ジョーンズが一時持ち歩いていたリチウム(気分安定薬)は、薬理メカニズムは不明なのですが、予防効果が確かにあり、治療薬として使われています。このリチウムはアルカリ金属の1つであり、地中に広く微量に存在します。実際の疫学研究において、水道水に含まれる微量のリチウムの濃度が相対的に低い地域ほど自殺率が高くなるという結果が出ています2)。これを応用して、自殺予防の医療政策として、水道水に微量のリチウムを人為的に添加するというアイデアがあります3)。虫歯予防にキシリトールを水道水に添加する医療政策をすでにしている国もあるくらいなので、一見合理的に思われます。しかし、キシリトールとは違い、リチウムは高濃度で胎児奇形性などのリスクがあります。この点も踏まえて、やはり倫理的な議論を呼ぶでしょう。1)「標準精神医学 第8版」p.306、p.337:医学書院、20212)「飲料水中の天然リチウムと自殺率との関連 生態学的研究の系統的レビューとメタアナリシス」:the British Journal of Psychiatry、20203)「水道水に含まれるリチウムが自殺防止に?」:松丸さとみ、ニューズウィーク日本版、2020<< 前のページへ■関連記事ツレがうつになりまして。【うつ病】

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第109回 南海トラフ「巨大地震注意」で受診が増えたクリニック

にわかに発出された南海トラフ「巨大地震注意」8月8日に宮崎県の日向灘を震源とする地震が起こり、気象庁は南海トラフ地震の臨時情報「巨大地震注意」を初めて発出しました。テレビのテロップが一面「南海トラフ」になったので、結構ビビりました。とりあえず、「注意しながら生活する」ということになるわけですが、リスク推定が難しいためか、注意する「温度感」が国民にうまく伝わっていないのが残念です。私は大阪府のマンションに住んでいるので、南海トラフ地震が起こると、わりと揺れるんじゃないかとガクブルしていますが、一応自宅に災害トイレや非常食などは常備しています。大きな津波が到達するリスクは低い地域ですが、太平洋沿岸に住んでいる知り合いのドクターは、ライフジャケットを自宅に持っている人も多いです。普段から備蓄品を購入しておくことが地震大国に住むわれわれに求められますが、政府ももう少し、常日頃から防災グッズの常備について啓発してくれるとありがたいのにな…と思います。予約受診を前倒しさて、太平洋沿岸のクリニックのドクターと8月9日の夕方にオンラインで話をする機会があったのですが、「今日は外来患者数が多かった。予約を前倒しして来院した人がチラホラ」とのことでした。確かに政府は、「想定震源域の住民には1週間を基本として備えの再確認をしたうえで、通常の生活を続ける」と呼びかけていますが、「通常の生活」とは言いながらも「1週間以内が危ない」という印象が強く残ってしまいました。そのため、8月9日は静岡県などで朝からスーパーに行列ができたそうで、水や食料を買い占める人がいたと報道されました。自宅に水がないのであれば、急いで買に行くことを決して批判するワケではありませんが、防災備蓄品は常日頃から準備しておくものです。クリニックの受診については、いま南海トラフ地震が起これば、薬剤が足りなくなってしまう方がいるのは間違いなく、あの報道を見て前倒ししたくなる気持ちは、わからなくもないです。今回南海トラフ地震が起こらず、この騒動が落ち着いたら、少なくとも1週間くらいは暮らせる分の水・食料・防災トイレなどを備蓄しておきましょう※。※一般的に防災備蓄品は災害発生から最低でも3日分を用意することが望ましいといわれているが、高層マンションなどでは、ライフライン復旧まで時間がかかることがあり、最低7日間は備蓄があったほうがよい。参考文献・参考サイト気象庁:南海トラフ地震に関連する情報気象庁:令和6年8月8日16時43分頃の日向灘の地震について(第5報) 及び南海トラフ地震関連解説情報(第4号)について内閣府:南海トラフ地震臨時情報が発表されたら!

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高齢者のベンゾジアゼピン中止、長期的な抑うつ症状改善に寄与

 カナダ・ケベック大学モントリオール校のArnaud Allary氏らは、ベンゾジアゼピン(BZD)の使用が、将来の抑うつ症状、不安、睡眠の質に及ぼす影響を調査した。Aging & Mental Health誌オンライン版2024年7月2日号の報告。 大規模ランダム化比較試験(RCT)であるPASSE-60+研究よりデータを抽出した。60歳以上の参加者73例を対象に、4ヵ月間の中止プログラムを実施し、16ヵ月で4回の評価を行った。BZD使用の変化は、2回の評価時における1日当たりの投与量の差と定義した。コントロール変数は、RCT中止群、プログラム開始前でのBZD使用および抑うつ症状、不安、睡眠の質のいずれかとした。データ分析には、階層的多重回帰分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・短期的には、中止プログラム直後にBZDの使用量減量に伴い、睡眠の質の悪化がみられた。・この関連は、3ヵ月および12ヵ月のフォローアップ調査において有意差は消失した。・長期的には、BZD使用量減量に伴い、抑うつ症状の軽減が認められた。・すべての評価時点において、BZD使用量と不安の強さとの関連は認められなかった。 著者らは「BZD中止により、抑うつ症状が改善される可能性が示唆された。不安や睡眠の質との長期的関連が認められなかったことから、BZD使用の長期有効性についても疑問が残る結果となった」としている。

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乳がん遺伝子パネル検査の前向き研究、推奨治療到達率は?(REIWA study)/日本乳学会

 転移・再発乳がんにおけるがん遺伝子パネル検査の有用性を評価する前向き観察研究であるREIWA study(JBCRG C-07)の中間解析結果をもとに、乳がん治療におけるゲノム医療の現状や問題点、今後の展望を東北大学病院の多田 寛氏が第32回日本乳学会学術総会のシンポジウムで発表した。 標準治療が終了した進行・再発乳がん患者を対象に、2019年6月からがん遺伝子パネル検査が保険で利用できるようになった。本研究では、FoundationOne CDx がんゲノムプロファイル(F1CDx)およびFoundationOne Liquid CDx がんゲノムプロファイル(F1LCDx)を行うことが決定したde novo StageIVまたは転移・再発乳がん患者を2020年1月~2023年7月に前向きに登録し、変異情報、変異にマッチした治療の情報、後治療、予後などの項目を現在も収集している。主要評価項目は遺伝子変異に対応する治療(推奨治療)が存在した集団における推奨治療が施行された割合、および推奨された治験や臨床試験に参加した割合であった。本シンポジウムでは、第2回の中間解析時点の結果やがんゲノム情報管理センター(C-CAT)の乳がん症例データをもとに、転移・再発乳がんに対するゲノム医療の現状と問題点、今後の展望についての考察が示された。 主な内容は以下のとおり。・解析対象は576例で、Luminalタイプが310例(53.8%)、HER2タイプが93例(16.1%)、トリプルネガティブタイプが173例(30.0%)であった。年齢中央値は56歳(50歳以上が70.1%)、再発は74.1%、再発後の治療レジメン数中央値は3レジメン、F1CDxが選択されたのは85.2%であった。F1LCDxが選択された群では50歳以上の割合が多く、再発後の治療レジメン数も多かった。・推奨治療が提示された割合は61.0%(350/574例)で、複数の推奨治療が提示されたのは23例であった。・全体において、推奨治療(主治医判定)が実際に施行されたのは18.1%(104/574例)であった。・HER2タイプに対する抗HER2療法など既知のものを除くと、治療到達率は13.8%(78/574例)であった。F1CDx群では14.1%(69/489例)、F1LCDx群では11.8%(10/85例)であった(p=0.543)。・主要評価項目である推奨治療が存在した集団における推奨治療が施行された割合は29.7%(104/350例)、推奨された治験や臨床試験に参加した割合は4.0%(14/350例)であった。・治験以外の推奨治療の内訳(n=79)は、免疫チェックポイント阻害薬が29.1%、mTOR阻害薬が21.6%、抗HER2療法が20.2%、PARP阻害薬が13.9%、NTRK阻害薬が5.1%、CDK4/6阻害薬が3.8%、SERDが2.5%、その他が2.5%であった。・F1LCDxを選択した理由(n=85)は、「組織の保存期間が長い」が49.4%、「生検による組織検体の採取が困難」が32.9%、「組織標本は得られたが解析が困難であった」が24.7%、「遺伝子変化の状態をよりよく理解することができる」が8.2%であった。・F1CDx/F1LCDx後の治療の選択理由は、「actionableな遺伝子変異がなく承認薬を施行した」が1stラインでは26%、2ndラインでは19.5%、「actionableな遺伝子変異があり対応する治療を施行した」が13.5%/4.3%、「actionableな遺伝子変異があり対応する治験・臨床試験に参加した」が1.9%/1%、「actionableな遺伝子変異があったが対応しない承認薬を施行した」が25.7%/20%であった。 多田氏は、C-CATについては、「遺伝子変異状況や推奨治療の予測にはC-CATのような大規模なデータベースが有用と考えられる。C-CATの乳がん症例における入力ベースの推奨治療到達率は9.7%であったが、推奨治療薬の薬剤名の未入力が多く、また標的治療に殺細胞性抗がん剤が入力されているなど、入力内容の不十分さが散見される」と見解を示した。 最後に、「REIWA studyは治療歴や予後情報などがクエリ作業のもとに正確に入力されており、転移・再発乳がんにおけるゲノム医療の貴重なデータとなる。今後、全生存期間や個々の標的治療の治療効果を含めた副次評価項目の解析を行い、がん遺伝子パネルの有用性を正確に評価していく」とまとめた。

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浸潤性子宮頸がん、HPV遺伝子型別の有病率を解明/Lancet

 ヒトパピローマウイルス(HPV)の遺伝子型別に浸潤性子宮頸がん(ICC)の有病率を把握することは、1次予防(すなわちワクチン接種)および2次予防(すなわちスクリーニング)のターゲットとすべきHPV遺伝子型を明らかにすることを可能とする。フランス・国際がん研究機関(IARC/WHO)のFeixue Wei氏らは、各HPV遺伝子型のICCとの因果関係を明らかにするために、世界レベル、地域レベルおよび各国レベルのHPV遺伝子型別の人口寄与割合(AF)をシステマティックレビューにより推定した。Lancet誌2024年8月3日号掲載の報告。HPV陽性ICCと正常子宮頸部細胞診の各HPV遺伝子型の有病率を比較 研究グループは、ICCまたは子宮頸部細胞診の正常例における各HPV遺伝子型の有病率を報告している試験を対象としたシステマティックレビューを行った。適格試験の特定には、文献言語に制限を設けず、「cervix」「HPV」を検索単語として用い、2024年2月29日までにPubMed、Embase、Scopus、Web of Scienceに登録された文献を検索した。 地域、文献発行年、HPVプライマー/検査で補正したロジスティック回帰モデルを用いて、HPV陽性ICCと子宮頸部細胞診の正常例の各HPV遺伝子型の有病率を比較し、オッズ比(OR)を推算した。 ORの95%信頼区間(CI)下限が1.0を超えるHPV遺伝子型をICCの原因であると判定。対応する地域の遺伝子型別のAFは、ICCにおける地域別HPV有病率に「1-(1/OR)」を乗じて算出し、計100%になるよう比例調整して推算した。世界的AFは、2022年の地域別ICC症例数(GLOBOCAN)で重み付けされた地域別AFから推算した。ICCの原因とみなされたHPV遺伝子型は17個、HPV16の世界的AFが最も高率 システマティックレビューにより、HPV陽性ICCの症例11万1,902例と子宮頸部細胞診の正常例275万5,734例を含む1,174試験を特定した。 ICCの原因とみなされたHPV遺伝子型は17個であり、ORの範囲は、HPV16の48.3(95%CI:45.7~50.9)からHPV51の1.4(1.2~1.7)までと広範囲にわたった。 世界的AFが最も高いのはHPV16で(61.7%)、以下HPV18(15.3%)、HPV45(4.8%)、HPV33(3.8%)、HPV58(3.5%)、HPV31(2.8%)、HPV52(2.8%)と続いた。その他の遺伝子型(HPV35、59、39、56、51、68、73、26、69、および82)の世界的AFは、合わせて5.3%であった。 HPV16と18、およびHPV16、18、31、33、45、52、58を合わせたAFは、アフリカで最も低く(それぞれ71.9%と92.1%)、中央・西・南アジアで最も高かった(それぞれ83.2%と95.9%)。HPV35はアフリカ(3.6%)で他の地域(0.6~1.6%)よりもAFが高かった。 結果を踏まえて著者は、「今回の研究は、HPVワクチン接種の影響を受ける前の、ICCにおけるHPV遺伝子型別のAFの世界的な実情を示すものとなった。これらのデータは、ICC負担を軽減するHPV遺伝子型特異的ワクチン接種戦略およびスクリーニング戦略に役立つ可能性がある」とまとめている。

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臓器不全の重篤患者、ICU治療にSGLT2阻害薬追加は有益か?/JAMA

 急性臓器不全を呈した重篤患者に対し、標準的なICU治療にSGLT-2阻害薬ダパグリフロジンを追加しても臨床アウトカムは改善しなかった。一方で、信頼区間(CI)値の範囲が広く、ダパグリフロジンに関連する有益性または有害性を排除できなかったという。ブラジル・Hospital Israelita Albert EinsteinのCaio A. M. Tavares氏らDEFENDER Investigatorsが多施設共同無作為化非盲検試験「DEFENDER試験」の結果を報告した。SGLT-2阻害薬は、糖尿病、心不全、慢性腎臓病(CKD)を有する患者のアウトカムを改善するが、臓器不全を呈した重篤患者のアウトカムへの効果は不明であった。JAMA誌2024年8月6日号掲載の報告。ダパグリフロジン10mg+標準ICU治療vs.標準ICU治療のみ DEFENDER試験は、ブラジルの22ヵ所のICUで行われた。2022年11月22日~2023年8月30日に、少なくとも1つ以上の臓器不全(呼吸器、心血管、腎臓)を呈した予定外のICU入室患者を登録し、2023年9月27日まで追跡調査した。 被験者は、ダパグリフロジン10mg+標準ICU治療を受ける群(ダパグリフロジン群)または標準ICU治療のみを受ける群(対照群)に無作為化され、最長14日間またはICU退室のいずれかの初発まで治療を受けた。 主要アウトカムは院内死亡率、腎代替療法の開始、および28日間のICU入室の階層的複合で、解析にはWin Ratio法(win比で評価)を用いた。 副次アウトカムは、主要アウトカムの各項目、臓器サポートを要さない日数、ICU入室期間、入院期間などで、ベイズ回帰モデルを用いて評価した。主要複合アウトカム、ダパグリフロジン群で有意に減少せず 507例が無作為化された(ダパグリフロジン群248例、対照群259例)。平均年齢は63.9歳(SD 15)、女性は46.9%。39.6%は感染症の疑いによるICU入室であった。ICU入室から無作為化までの期間中央値は1日(四分位範囲:0~1)。 最長14日間のダパグリフロジン10mgの使用は、主要複合アウトカムの発生を有意に減少しなかった。無作為化後28日間のダパグリフロジン群のwin比は1.01(95%CI:0.90~1.13、p=0.89)であった。 すべての副次アウトカムにおいて、ダパグリフロジンの有益性の確率が最も高かったのは、腎代替療法の使用に関するものであった。腎代替療法導入の報告は、ダパグリフロジン群27例(10.9%)、対照群39例(15.1%)であった(ダパグリフロジンの有益性の確率0.90)。

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マイコプラズマ肺炎が8年ぶりの高水準、上位は大阪・埼玉・佐賀/感染研

 国立感染症研究所が8月13日付で報告した2024年第31週(7月29日~8月4日)のIDWR速報データによると、マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数が過去5年間の同時期の平均よりかなり多い。第27週(7月1~7日)以降5週連続で増加、2016年以来8年ぶりの高い水準となっている。 全国の定点当たり報告数は0.95人で、都道府県別にみると上位10都府県は以下のとおり。 大阪府 3.89人 埼玉県 2.67人 佐賀県 2.50人 愛知県 2.20人 沖縄県 2.00人 香川県 2.00人 兵庫県 1.86人 福井県 1.83人 東京都 1.48人 京都府 1.43人

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都市居住者VS郊外居住者、より幸せなのはどちら?

 都市居住者は、都市以外の場所に住む人に比べて幸福度や経済的な満足度などが低い傾向にあることが、新たな研究で報告された。この研究では、人が最も幸せになれる「ゴルディロックスゾーン」は、都市と農村の間の郊外にあることが示されたという。アムステルダム大学(オランダ)アーバン・メンタルヘルス・センターの心理学者であるAdam Finnemann氏らによるこの研究結果は、「Science Advances」に7月19日掲載された。Finnemann氏は、「都市に隣接する郊外が、心理的満足度が最も高く、かつ平等性も高い」と述べている。 この研究では、UKバイオバンクから抽出した40〜70歳の成人15万6,000人のデータが分析された。研究グループは、最寄りの都市中心部からの距離だけでなく、その都市の人口密度も考慮して、対象者が都市、郊外、農村のいずれに住んでいるのかを評価した。このような指標を採用した理由についてFinnemann氏は、「同じ『都市から15km離れた場所』という条件でも、ロンドンの場合では都市化が進んでいるが、リーズの場合では農村が広がっているという違いがあるため」と説明している それぞれの居住環境により、平均的なウェルビーイング、社会的満足度、および経済的満足度がどのように異なるのかを検討した結果、都市に住む人は郊外や農村に住む人よりも所得は高いが、そのことが幸福度を高めているわけではないことが明らかになった。都市に住む人では、そのほかの環境に住む人に比べて、ウェルビーイング、社会的満足度、経済的満足度を測定する8つのドメイン(全般的な幸福度、人生の満足度、家族関係、友人関係、孤独感、所得、経済的満足度、仕事満足度)のうちの7つにおいて低スコアと関連することが示された。これらのスコアは都市居住者の中でも変動が大きく、裕福な人は経済的に困窮している人よりも都市での生活に対する満足度が高いなど、大きな不平等が生じており、とりわけ都市中心部でそれが顕著であることが示唆された。さらに、最も幸福度が高い(満足度が高く、スコアの変動が少ない)地域は郊外であることも判明した。 このような結果であるにもかかわらず、人々は都市に集まる一方である。本論文の背景情報によると、都市居住者の割合は、1910年代の10%から、2050年には68%になると予測されているという。 ただし、Finnemann氏は、「農村を離れたり、都市から郊外に移住したりすることで、より幸せになると保証されるわけではない」と言う。同氏は、「郊外という場所が最適な距離として示されたのは、幸福な人がその場所に移り住んでいるからであり、郊外という場所自体がその人の幸福を高めているわけではない可能性がある。したがって、われわれが得た知見は、郊外に引っ越せば誰もが心理的な恩恵を受けるということを意味するものではない」と話している。

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1型糖尿病の子どもたちは「糖尿病の苦痛」にさらされている

 1型糖尿病の子どもは、いくつかのメンタルヘルス上の問題を抱えることが多いとする研究結果が報告された。英ケンブリッジ大学およびチェコ共和国国立精神保健研究所のTomas Formanek氏らの研究によるもので、詳細は「Nature Mental Health」に7月17日掲載された。 報告された研究によると、1型糖尿病の子どもは糖尿病のない子どもに比べて、気分障害を発症する可能性が2倍以上高く、不安症に苦しむ可能性は50%高く、また摂食障害や睡眠障害などの行動上の問題が発生する可能性は4倍以上高いという。ただし、この研究結果は同時に、このようなメンタルヘルス疾患が、1型糖尿病という病態が原因で引き起こされるものではないことも示唆しており、「子どもたちが抱えるこのようなリスクは、むしろ慢性疾患を継続的に管理し続けることに伴う『糖尿病の苦痛』が原因のようだ」と、著者らは述べている。 1型糖尿病は、インスリンを生成している膵臓のβ細胞を免疫系が攻撃することで発症する。β細胞がダメージを受けると、インスリンを生成する能力が失われるため、生存のためにインスリン療法が必要となる。治療は生涯にわたり、日々、絶え間ない自己管理の負担に直面する。また、偏見や差別、自己効力感の低下、将来の合併症の不安、経済的な負担などによるストレスが生じやすく、これらを「糖尿病の苦痛(diabetes distress)」と呼ぶことがある。これまでにもこのような糖尿病の苦痛が、1型糖尿病の子どもたちのメンタルヘルス状態を悪化させたり、自己管理に悪影響を及ぼしたりする可能性が指摘されていた。 Formanek氏らの研究では、チェコ共和国の1型糖尿病の子どもたち4,500人以上の患者登録データが用いられた。データ解析の結果、1型糖尿病の子どもたちに見られるメンタルヘルス関連の問題は、この病気を発症後には常に食事の摂取量を判断したり、血糖値をチェックしたり、インスリンを注射したりしなければならないといった、生活に大きな変化を強いられることに起因するものである可能性が見いだされた。また、社交行事へ参加する機会が減ったり、ほかの子どもたちや教師、さらには家族からも孤立していると感じたりすることも少なくないという実態が明らかになった。 その影響もあって前述のように、1型糖尿病の子どもたちの間で、不安症や摂食障害、睡眠障害などが多く見られた。ただし、統合失調症などの精神疾患を発症するリスクは低く、同年代の子どもたちの約2分の1だった。 論文の上席著者であるケンブリッジ大学のBenjamin Perry氏は、「1型糖尿病患者は『糖尿病の苦痛』を経験しやすいことが知られている。その苦痛には、血糖値に対する極度のフラストレーションや孤立感なども含まれると考えられ、成人でも燃え尽き症候群や絶望感、あるいはコントロールの放棄につながる可能性がある。そのため、1型糖尿病の子どもたちが成人するまでの間に、メンタルヘルス上の問題が顕在化するリスクが高いとしても、不思議なことではない」と述べている。

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HPVワクチンの定期接種とキャッチアップ接種

HPVワクチン(子宮頸がん予防)の定期接種とキャッチアップ接種• 日本では2013年4⽉から、⼩学校6年⽣〜⾼校1年⽣を対象に、公費によるHPVワクチンの無料接種(定期接種)が実施されています• 上記のほか2025年3⽉まで、1997年4⽉2⽇〜2008年4⽉1⽇⽣まれの⽅を対象に、無料で接種できる「キャッチアップ接種」が実施されています• 現在定期接種の対象となっているHPVワクチンは3種類とも3回の接種完了までに6ヵ⽉かかるため、「キャッチアップ接種」の期限内にすべて終了させるためには、2024年9⽉末までに初回接種を行う必要があります<3種類のワクチンと接種タイミング(2025年3⽉までに終了させる場合)>2024年9⽉10⽉11⽉ ・・・・ 2025年3⽉3回目子宮頸がんの原因の50~70%を占めるHPV16/18型の感染を防ぐ3回目HPV16/18型に加え、尖圭コンジローマなどの原因となる6/11型の感染を防ぐ3回目さらに5つの型の感染を防ぎ、子宮頸がんの原因の80~90%を防ぐ2価ワクチン(サーバリックス)4価ワクチン(ガーダシル)1回目1回目2回目2回目9価ワクチン(シルガード9)1回目2回目出典:日本対がん協会「子宮頸がんの予防のために HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチン」厚生労働省「HPVワクチンに関するQ&A」Copyright © 2024 CareNet,Inc. All rights reserved.

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お金持ちになるための最も効率の良い方法とは? 【医師のためのお金の話】第83回

お金持ちになりたい! 医師に限らず多くの人が、心の中のどこかでそう思っていることでしょう。お金持ちに興味がなくても、余裕がなくて汲々しているより経済的に余裕のあるほうが心地良いですね。しかし、周知のようにお金持ちになるのは簡単ではありません。かつての私はバカだったので、医師になれば自動的にお金持ちになれるものだと思っていました。ところが実際にはそうでないことは、皆さんご存じのとおりでしょう。もちろん、世間一般と比べて医師は高給の人が多いので、表面上は裕福な暮らし向きが可能です。しかし、見栄えが良くても、実際に経済的に余裕があるのかは別問題。月末の給料日が待ち遠しい人も珍しくないかもしれません。実は、お金持ちになる方法はシンプルです。お金持ちになる再現性のある方法は、たった3つしかありません。そして、どの方法を選択するのかによって、お金持ちになる大変さが違うとすればどうでしょうか。効率的にお金持ちになる方法を考えてみましょう。自力でお金持ちになる方法はたった3つしかない!日本のお金持ちで多いのは、膨大な資産を相続した人です。具体的には、都市部の不動産や先祖代々の会社などです。出自で人生が決まるとは羨ましいですね。しかし、あなたや私のような一般人が自力でお金持ちになるには、以下に挙げる3つの方法しかありません。高額の給料を稼ぐ起業する投資するいずれもハードルが低いとは言えませんが、「高額の給料を稼ぐ」は医師に最も馴染みがありそうです。かく言う私も、タネ銭を貯めるステージでは、当直をしまくって馬車馬のように働いていました。「起業する」は、医師であれば開業が一般的でしょう。昔と比べると難しくなりましたが、いまでも有効な方法であることは間違いありません。少しの勇気とやる気さえあれば、開業して軌道に乗せることは確実性の高い方法だと言えます。一方、「投資する」は幅広い概念です。数万円程度の株式投資から、数十億円レベルの不動産投資までさまざまです。医師の中で最もメジャーなのは、新NISAを利用しながらオルカンを数百万円程度購入する感じでしょうか。青天井を見込めるのは起業と投資だが…お金持ちになる3つの方法の中で、上限がないのは起業(開業)と投資でしょう。しかし、実際にはさまざまな制約があります。たとえば開業した場合にも、院長1人だけでは医業収入の上限が存在します。人の時間は有限なので仕方ないですね。一方、病院を開院したり、クリニックを多店舗展開したりする方法もありますが、規模が大きくなるとマネージメントに忙殺されます。もちろん事業規模が大きくなると、さまざまなリスクも増加します。何か問題が起こると個人の努力だけではカバーできなくなるからです。そう考えると投資は比較的コスパに優れるように思えます。しかし実際には投資は開業以上にリスクが高いです。株式投資で成功するには、比較的大きなタネ銭と天性の才能が必要です。不動産投資は金融面のリスクや独特のノウハウをマスターする必要があります。何よりも、現状は株式・不動産とも高値圏にあるので、新規参入には好ましい時期ではないかもしれません。オルカンを定期購入するのもアリですが、お金持ちになるころには人生が終わっていそう。老後のためだけの投資など、つまらないと思うのは私だけでしょうか。起業+投資がコスパ最強の資産形成手法!3つの方法のいずれも問題点がありますが、お金持ちになるには避けて通れません。それではコスパ良くお金持ちになる方法は何でしょうか。あくまで私見ですが、起業+投資のハイブリッドが最も効率的かつリスクを抑えてお金持ちになる方法だと考えています。起業(開業)して軌道に乗せても、収益を事業には再投資せず、投資に回す方法です。具体的に言うと、クリニックを多店舗展開したりM&Aで規模を拡大したりするよりも、収益で株式や不動産を購入する戦略です。医療業界では何をするにも医師免許が必要なので、あまり事業での規模拡大はメジャーではありません。しかし飲食業界など参入障壁の低い業界では、事業からの収益を再投資して規模を拡大させる方法が一般的です。具体的にはラーメンのチェーン店ですね。収益を再投資すると急激に成長するので創業者に膨大な利益をもたらしますが、社会情勢が変化するとあっという間に苦境に陥ります。そうなると時すでに遅しで、簡単に破綻してしまいます。医療業界は、事業への再投資が難しいことが幸いしているのかもしれません。私自身は開業していませんが、起業した複数の事業から上がってくる収益をせっせと株式や不動産に転換しています。仮に1つの事業がダメになっても、残りの事業や株式・不動産からの収益があるため、倒れる可能性は極めて低いです。このように一般人が、リスクを抑えながらコスパ良くお金持ちになる方法は、起業+投資のハイブリッドだと感じています。リスクを分散しながら、事業と投資など複数の方法で青天井を目指す…。いかがでしょうか?

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脾腫の鑑別診断(1)[総論編]【1分間で学べる感染症】第9回

画像を拡大するTake home message脾腫の鑑別診断は「CHINA」で覚えよう。今回は、脾腫の鑑別診断について学んでいきましょう。脾腫を診るとき、皆さんは何を考えますか?鑑別診断は多岐にわたりますが、大まかな分類を覚えるのに「CHINA」という語呂合わせが有用です。この「CHINA」の語呂合わせを頭に入れながら、脾腫の病態生理学的な機序を理解すると、さらに覚えやすくなります。まず、うっ滞性の脾腫としては、脾静脈または門脈の閉塞や肝静脈の流出障害などにより門脈内の血流に対する抵抗が増大することによって生じる門脈圧亢進症が代表例です。また、がんの転移、骨髄性腫瘍などのように、脾臓環境に腫瘍細胞が侵入することによっても脾腫が引き起こされます。悪性リンパ腫のように、固有の免疫細胞自体が腫瘍を形成する場合もあります(感染性の鑑別診断に関しては次回説明します)。さらには、関節リウマチ、サルコイドーシスなどでは、免疫活動の増加とそれに続く過形成により脾腫を来します。感染性心内膜炎もこの免疫学的機序が知られています。これらのうち、とくに巨大な脾腫を来すものが「3M」と呼ばれ、Malaria:マラリアMyelofibrosis:骨髄線維症CML:慢性骨髄性白血病を指します。脾腫を来した患者を診る場合には、これらの大きなカテゴリーで鑑別を考えることにより、ほかの所見と組み合わせて診断に寄与することがあります。皆さんも「CHINA」という語呂合わせを覚えて、脾腫の病態生理学的な機序の理解に役立ててください。1)Aldulaimi S, et al. Am Fam Physician. 2021;104:271-276.

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第225回 徳田虎雄氏死去、地域医療にもたらしたインパクトとその功績を考える(後編)

徳田虎雄氏が作り上げた徳洲会、僻地医療、救急医療を半世紀にわたって展開こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。この週末は、愛知県の実家にお施餓鬼のために帰省しました。92歳になった父親が一人暮らしをしているのですが、1週間ほど前に「運転免許の返上を決めた」と電話で話していたにもかかわらず、会ってみると「来年の車検までは乗る」というのでまた親子喧嘩に。挙句の果てに、「車を乗るのを止めたら、電動自転車を買おうと思っている」と言い出す始末。「90歳は自転車で転んで大腿骨を骨折すると、死期がぐっと早まるぞ」と脅したのですが、田舎の超高齢者の交通手段問題が解決する日は遠そうです。さて、今回も徳田 虎雄氏が作り上げた徳洲会が半世紀にわたって展開してきた離島をはじめとする僻地医療や、救急をはじめとする地域医療における功績について、私自身の取材経験(少々偏りはありますが)も踏まえ、考えてみたいと思います。早くから北米型ERを導入、日本の救急医療に与えたインパクト「生命だけは平等だ」をスローガンに、40年近くにわたって「年中無休・24時間オープン」の医療を全国展開してきた徳洲会。その特徴の1つは早くから北米型ER(救急外来)を導入したことでしょう。1970〜80年代、まだ日本の救急医療は増加する交通事故の外傷に対応することが第一の目的とされ、外傷三次救急以外の、内科系や小児の二次救急は整備途上でした。そんな中、徳田氏は、全国に北米型ERのある病院を展開しました。そのあたりの事情を薬師寺 泰匡氏(薬師寺慈恵病院院長、元岸和田徳洲会病院救急科医長)が日経メディカルの連載「だから救急はおもしろいんよ」の2018年1月18日付の記事で書いています。氏は「徳洲会が立ち上がった頃は、夜間休日の救急医療体制が整っておらず、患者はどこに行っていいのか、救急車も呼んでいいのかどうかという状況だったことがうかがえます」と振り返り、「徳田虎雄は、実際に米国留学などでかの地の救急医療に触れた医師を独自に集め、救急医療を担保するとともに、各地で米国式の研修医教育を広めていきました。現在のスーパーローテート方式が始まるずっと前から、独自に各科ローテート研修を行っており、僕自身もそうした歴史の恩恵にあずかりました」と記しています。同記事などによれば、日本において一次・二次・三次救急の整備が始まったのが1977年、消防法の改正によって救急隊の搬送業務の対象が小児科・内科系疾患を含む救急患者一般にまで拡大したのは1987年のことです。徳洲会の最初の病院、徳田病院(現在の松原徳洲会病院)の開設が1973年ですから、徳洲会の全国各地の病院は、日本の救急医療の先駆けとして機能し、その基礎を形作ったと言えるかもしれません。都市部の大病院で研修医を集めて、へき地・離島に期限付きで送る救急医療に加え、へき地医療と地域医療でもその貢献は小さくありません。徳田氏の故郷である鹿児島県の離島に赤字覚悟で複数の病院を開設、初期研修医や後期研修医を「へき地・離島研修」という独自のプログラムのもと一定期間派遣し、その地域の医療を支えたのです。医療機器が充実した都市部の大病院で研修しようというシステムは、人口減少や医師の働き方改革などを背景に、地方での医師不足が急速に進む今の日本でも参考になりそうです。地域医療展開の拠点と言われた野崎徳洲会病院徳洲会の病院は都市部の巨大病院ばかりではなく、地域の中小病院も数多くあります。1980年代後半~1990年代前半、そうした病院を取材すると、徳洲会の地域医療展開の拠点と言われた野崎徳洲会病院(大阪府大東市)でプライマリケア・地域医療を学んだ医師が少なからずいたことを覚えています。たとえば1990年代前半、北海道静内町(現在の新ひだか町)の静仁会・静内病院(現在の医療法人徳洲会 日高徳洲会病院)には、野崎徳洲会病院OBの院長がいました。彼は、野崎徳洲会病院で学んだプライマリケアを実践しながら、徳洲会が買収した老人病院を、救急から在宅まで、包括医療を提供する病院に作り変えようと奮闘していました。今で言う地域包括ケアです。介護保険ができる10年も前に、医療と介護を一体化した診療を行っていたわけです。東日本大震災で際立った徳洲会の活躍救急医療だけではなく、地域医療、家庭医療に力を入れる方針は徳洲会の中で脈々と受け継がれていったようです。2011年の東日本大震災の時、被災した気仙沼市立本吉病院(現在は本吉医院)に、不在となった院長の代わりに赴任したのは、徳洲会系(現在は医療法人徳洲会)の庄内余目病院の家庭医養成プログラムを修了した医師でした。この医師も「町民全体の家庭医を目指したい」と、通常の外来診療を済ませた後に積極的に訪問診療を行っていた姿を覚えています。東日本大震災の被災地ではまた、災害直後から徳洲会の災害派遣チーム・TMATの姿をあちらこちらで見かけました。その支援の規模は、民間病院チェーンの中では最大だったと聞いています。日本赤十字社や済生会の病院では起こり得なかったこと徳洲会は、その規模を生かすかたちで親族が経営するMS法人に莫大な利益を還流し、同時にまた、徳田氏や長男の選挙に大量の人員投入を行っていました。それは批判すべきことではありますが、徳洲会の救急医療や地域医療のノウハウが全国各地に広がっていったこと自体は評価されるべきことでしょう。強烈な個性とリーダーシップのあるオーナー理事長が率いる全国チェーンゆえに、いわゆる医療の”均てん化”が起こっていたわけです。同じ全国チェーンでも、地元大学医学部のジッツとしての役割が大きい日本赤十字社や済生会の病院では起こり得なかったことです。「社会福祉法人恩賜財団済生会などの公的病院を規模でも質でも凌駕したい」と現理事長徳洲会事件を契機として徳田家の支配から脱却した医療法人徳洲会は、「生命だけは平等だ」の理念はそのままに規模拡大を続けており、その経営は順調のようです。日経ヘルスケア2023年2月号掲載の記事、「創業50年を迎えた徳洲会の今(上)」で現理事長の東上 震一氏は「規模は一つの断面に過ぎないが、目標は100病院。1兆円の収益を上げて、社会福祉法人恩賜財団済生会などの公的病院を規模でも質でも凌駕したい」と今後の抱負を語っています。しかし一方で、カテーテル治療後に複数の患者が死亡するなど医療過誤が相次いだ神戸徳洲会病院に神戸市が医療法に基づく改善命令を出すなど、その医療の“質”に疑問が投げかけられる事態も生じています。オーナー経営ではなくなった巨大チェーンを、勤務医出身のサラリーマン経営者が統治していくのは並大抵のことではないはずです(内規で医療法人徳洲会の理事長は3期までと決まっているそうです)。神戸徳洲会病院で起こっていることが、統治・経営の綻びから来ているものでなければいいのですが…。徳田家の支配から離れて、徳田氏の理念や経営方針はいつまで引き継がれていくのか、これからの50年間に救急医療におけるパイオニアワークのような徳洲会らしい新たな功績は生まれるのか――。今後の動きにも注目したいと思います。

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日本人の子宮頸がんに対するペムブロリズマブ+同時化学放射線療法(KEYNOTE-A18)/日本婦人科腫瘍学会

 局所進行子宮頸がん(LACC)に対する同時化学放射線療法(CCRT)へのペムブロリズマブの上乗せは、日本人患者においてもグローバルと同様に無増悪生存期間(PFS)の改善傾向を示した。 1999年以降、LACCの標準治療は、化学療法と外部照射放射線治療(EBRT)の併用とその後の小線源療法へと続くCCRTである。現在、CCRTの効果をさらに高めるために免疫チェックポイント阻害薬の上乗せが検討されている。 KEYNOTE-A18試験(ENGOT-cx11/GOG-3047)は未治療の高リスクLACCにおいてペムブロリズマブ+CCRTとCCRT単独を比較した第III相試験である。グローバル集団の初回解析の結果ではCCRT単独に比べ、ペムブロリズマブ+CCRTがPFSを有意に改善している(ハザード比[HR]:0.70、95%信頼区間[CI]:0.55〜0.89、p=0.002)1)。第66回日本婦人科腫瘍学会学術講演会では、愛知県がんセンターの鈴木 史朗氏が同試験の日本人サブセットの結果を発表した。対象:FIGO2014 Stage IB2〜IIB(リンパ節転移陽性)またはStage III〜IVAの子宮頸がん(リンパ節転移問わず)試験薬群:CDDP(40mg/m2)毎週 5サイクル+EBRT+小線源療法+ペムブロリズマブ(200mg)3週ごと 5サイクル→ペムブロリズマブ(400mg)6週ごと 15サイクル(ペムブロリズマブ群)対照群:CDDP(40mg/m2)毎週 5サイクル+EBRT+小線源療法+プラセボ 3週ごと 5サイクル→プラセボ6週ごと 15サイクル(プラセボ群)評価盲目:[主要評価項目]治験責任医師・治験分担医師評価のPFSまたは全生存期間(OS)[副次評価項目]24ヵ月PFS、全奏効率、患者報告アウトカム、安全性 主な結果は以下のとおり。・グローバル1,060例中、日本人サブセットは90例(ペムブロリズマブ群42例、プラセボ群48例)であった。・日本人サブセットのPFS中央値は両群とも未到達(HR:0.60、95%CI:0.24〜1.52)、12ヵ月PFS率はペムブロリズマブ群81.8%、プラセボ群71.8%、24ヵ月PFS率はそれぞれ71.6%と評価不能であった。・Grade3以上の治療関連有害事象(TRAE)はペムブロリズマブ群の85.4%、プラセボ群の81.3%に発現した。治療関連死はみられなかった。・ペムブロリズマブ群で頻度の高いTRAEは下痢(80.5%)、悪心(80.5%)、好中球減少(63.4%)、貧血(61.0%)など。ペムブロリズマブ群で頻度の高い免疫関連有害事象は甲状腺機能低下(17.1%)、甲状腺機能亢進(9.8%)などであった。 KEYNOTE-A18試験における日本人サブセットの知見から、ペムブロリズマブ+CCRTは日本人の高リスクLACCに対する治療選択肢となり得るのではないか、と鈴木氏は述べた。

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日本の社会経済的指標と認知症リスク

 生涯にわたる社会経済的指標(Socioeconomic status:SES)の推移が、認知症の発症リスクと関連するかどうかを調査した、日本発の研究結果が発表された。大阪大学の坂庭 嶺人氏らによる本研究結果はJAMA Network Open誌2024年5月1日号に掲載された。 2010年8月~2016年12月に実施されたこの前向きコホート研究では、日本老年学的評価研究のデータを使用し、日本の31地域の65歳以上の参加者を対象とした。参加者は介護保険や医療福祉サービスを使用しておらず、認知症の診断を受けていない人とされ、自記式質問票で回答した。データ解析は2022年4月~2023年4月に実施された。SES値欠落者、追跡不能者、ベースラインから1年以内の認知症発症者は除外された。主なアウトカムは認知症発症リスクと、それに伴う生涯にわたる認知症のない期間の減少または増加だった。認知症の発症は介護保険のデータによって特定された。 主な結果は以下のとおり。・計9,186例(男性4,703例[51.2%])が対象となった。ベースライン時の平均年齢は74.2(SD 6.0)歳だった。・SESの推移は、上昇(upward)、安定上流(stable-high)、上位中流(upper-middle)、下位中流(lower-middle)、下降(downward)、安定下流(stable-low)の6つに分類された。・追跡期間中に800例の認知症が特定された。生活習慣、併存疾患、社会的要因など、多くの認知症リスク要因がSESの推移パターンと関連していた。・下位中流のSESと比較したとき、認知症リスクが最も低かったのは上昇(ハザード比[HR]:0.66、95%信頼区間[CI]:0.57~0.74)、次いで安定上流(HR:0.77、95%CI:0.69~0.86)であり、下降(HR:1.15、95%CI:1.09~1.23)、安定下流(HR:1.45、95%CI:1.31~1.61)ではリスクが上がった。上位中流への推移と認知症リスクとの関連は認められなかった。・生涯にわたる認知症のない年数は、SESの上昇への推移で最も増加した(例:65歳時点で1.8年[95%CI:1.4~2.2])。一方、75歳以上の生涯にわたる認知症のない年数は、SESの下降への推移で最も減少した(例:85歳時点で-1.4年[95%CI:-2.4~-0.4])。 研究者らは「この日本の高齢者のコホート研究では、SESの上昇と下降が生涯にわたる認知症リスクと認知症のない期間の長さと関連していることが判明した。この結果は、社会的流動性と健康寿命の関連を理解するのに役立つ可能性がある」としている。

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ゲーム療法は統合失調症患者の認知機能改善に有効か

 統合失調症患者における認知機能は、機能的アウトカムや日常生活機能の低下の主な原因であり、治療対象として有望である。近年、精神疾患の治療において、さまざまな認知機能領域をターゲットとしたデジタル介入(ゲームベースの介入など)の使用が増加しつつある。そして、統合失調症患者に対するゲームベースのデジタル介入は、治療価値があるとの見解が示唆されている。中国・首都師範大学のJunkai Wang氏らは、統合失調症患者の認知機能をターゲットとした新たなオンライントレーニングプログラム(Komori Life)の利用可能性と初期の有効性を評価した。Translational Psychiatry誌2024年7月16日号の報告。 統合失調症入院患者を対象に、ゲーム介入群(セッション完了:40例)または通常療法群(セッション完了:40例)のいずれかにランダムに割り付け、20回のセッションを実施した。すべての患者に対し、登録時および介入完了後に認知機能、臨床症状の評価を行った。また、健康対照群32例を含むすべての対象に対し、感情情報への注意バイアスを評価するためアイトラッキングを用いた。 主な結果は以下のとおり。・ゲーム介入群および通常療法群において、認知機能または臨床症状の評価で差は認められなかった。・ゲーム介入後も、認知機能または臨床症状のスコアに群×時間の相互関係は認められなかった。・アイトラッキングについては、ベースライン時の注意維持に関して、ゲーム介入群および通常療法群は、健康対照群と比較し、脅威刺激に対する注意力の増加が認められた。・ゲーム介入群は、通常療法群と比較し、介入後の脅威場面への注意バイアスが大幅に改善した(脅威刺激への総持続時間の割合、総注視の割合が減少)。・ゲーム介入の有効性が、認知機能改善と関連しており、脅威への注意維持の向上が認知パフォーマンスの低下と関連していることが部分的に示唆された。 著者らは「本研究は、統合失調症患者の認知機能改善に対する遠隔オンライン認知機能トレーニングプログラムの利用可能性および有効性に関する初めてのエビデンスである。本介入は、既存の精神科治療の補完療法として機能する可能性がある」としている。

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