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iPS細胞による心筋補填療法で脱・心不全パンデミックへ/Heartseed

2024年7月30日に東京証券取引所グロース市場へ上場を果たしたHeartseed株式会社。このタイミングでの上場は、代表の福田 恵一氏(慶應義塾大学 名誉教授)が約30年の歳月を掛けて開発してきた心筋再生医療Remuscularization(心筋補填療法)の第I/II相臨床試験LAPiS試験が着実に歩みを進め、実臨床での実装が現実味を帯びているからであろう。今回、「再生医療で世界を変える」を目指す福田氏に、同社が誇る心筋再生のメカニズムや今後の展望について話を聞いた。―心筋培養の臨床開発における世界的な状況について教えてください。iPS細胞を用いた心筋再生というのは世界各国で開発が進められています。しかし、それらの開発状況について、前臨床試験や第I相臨床試験が走っていることは知っていますが、それ以降の報告は聞こえてきません。その理由はおそらく、心筋細胞の培養方法や投与方法が影響しているからでしょう。心筋細胞は、心房筋、心室筋、ペースメーカー筋の3つに大きく分けられますが、心不全を治療するためには心室筋だけを作らなければなりません。そうでないと、心室のなかに性質の異なる心房の筋肉を入れることになります。われわれが開発した他家iPS細胞由来心筋球HS-001は、心筋細胞の中から拍動に直接寄与する心室筋だけを分化誘導する技術はもちろんのこと、目的外の細胞を死滅させる純化精製技術、細胞の生着率を高めるために心筋の微小組織(心筋球)を作製する技術を用い、重症心不全患者に新たな希望を提供しようとしています。(表)Remuscularization(心筋補填療法)に必要な技術画像を拡大する他家iPS細胞由来心筋球HS-001の発明が、福田氏の約30年間に及ぶ世界最先端の再生心筋研究の賜物であることがうかがい知れる上記の表に示すような“心室筋だけを選択的に分化誘導する”という特徴的な製造法にたどり着くまでには多くの年月がかかりました。再生医療の研究を1995年より始めましたが、この頃はヒトES細胞もなければiPS細胞もありません。最初の研究では、間葉系幹細胞に対して脱メチル化剤を使って無理やり心筋細胞を作っていました。確かに拍動する細胞が出てきて心臓の遺伝子を発現した心筋を作ることはできましたが、大量に作ることは難しかったです。結局、臨床応用には至らず、2001年からヒトES細胞を用い、どういう風にしたら心臓の筋肉ができるのかという研究を5年ほど行いました。2006年には山中 伸弥先生のiPS細胞の発表を機に作り方などを教えていただき、iPS細胞の研究にシフトしていきました。iPS細胞による課題は、すごいスピードで増殖し、いろいろな細胞に分化して心臓の中に奇形種という特殊な腫瘍を作ってしまう点です。それを取り除くために純化精製方法を開発し特許を取得しました。若かりし頃の福田氏―聞き慣れない“心筋球”、開発された“心筋補填療法”について教えてください。心筋球は1,000個程度の心筋細胞を塊にした微小組織で、工場の中で凍結された後に生きている心筋細胞だけが細胞の塊になるよう作られています。この微小組織を作ることで元気な状態の心筋細胞を移植することができます。また、細胞が心筋球になると非常に強くなり、生着率も高まります。心筋細胞自身が分泌した細胞外マトリックス(コラーゲンやフィブロネクチンのような細胞と細胞の間を満たし、生体組織を包み込む高分子の構造体)が存在している状態の心筋細胞は心筋細胞自体を元気にするため、心筋球という微小組織を作って移植するということは非常に理にかなっており、心筋細胞にとって好ましい環境下での移植は高い成着率につながり、臨床効果を出しやすいと言えます。次にRemuscularization(心筋補填療法)とは、不足した心室筋を直接、心臓壁内に移植して心筋を補填する画期的な方法です。心筋球を専用の注射針(SEEDPLANTER®)とガイドアダプターを用い、開胸手術(現在は冠動脈バイパス術と同時)にて投与します。投与した心筋球は患者の心筋と結合し、再筋肉化することで心収縮力を改善すると共に、種々の血管新生因子を分泌して投与部位周辺に新たな血管を形成する作用機序(neovascularization)も期待されます。(図)心筋補填によるRemuscularization[心筋補填療法]画像を拡大する特許を取得した技術の集大成―治験の最終関門を迎えますが、問題点は何でしょうか?心不全のなかでも心筋梗塞による広範囲の壊死を起こしたり左心室が拡張し悪化したりした重症心不全は、現時点で心臓移植しか根本治療は存在しません。今回、われわれは安全性評価委員会により第I/II相LAPiS試験での低用量群(心筋細胞数にして5,000万個を投与)5例における安全性について評価いただき、承認申請前の治験の最終ステージ、高用量群(1億5,000万個を投与)の試験へ移行可能となりました。近い将来、重症心不全患者さんの希望となるよう努めていく次第です。7月30日の記者会見での様子グロース市場上場の同日、第I/II相LAPiS試験での高用量群開始を発表した当研究の治験実施状況については、今年3月に第88回日本循環器学会学術集会でもホットトピックとして発表する機会をいただきました。そのおかげもあり、治験参加に関する問い合わせを受け、これまで関東圏で実施していた治験の範囲を拡大して行うことになりました。これから実施する高用量群の治験は当初の8施設に4施設が加わり、全12施設を対象に実施します。ただしこれにもいくつかの課題がありました。たとえば、輸送に関する問題です。米国では細胞を液体窒素で凍結させて運搬したのですが、解凍させた時点で3割の心筋細胞が死滅してしまいました。死滅した細胞を含んだ心筋細胞を移植すれば、当然、生着率の低下に繋がります。また、壊死した細胞が心筋に残れば、そこで炎症が起こりIFN-γが上昇、HLAが誘導されてしまいます。通常の心筋細胞にはHLAが発現していないため、強い炎症によってHLAが発現すれば、生きている心筋細胞に不整脈が生じたり死滅しやすくなったりしてしまいます。また、塊にした細胞をバラバラにするにはトリプシンなどの酵素を用いることが一般的ですが、そうすると細胞接着因子も破壊されてしまいます。心筋球の作製技法はこれらの点を回避し、元気な状態の心筋細胞で微小組織を作り、凍結させずに生きたままの細胞を運搬できるように開発されています。近い将来、全国各地の実臨床へこの技術を提供できればと考えています。なお、本研究は同士である分子神経生物学の岡野 栄之先生(慶應義塾大学再生医療リサーチセンター 教授、センター長/日本再生医療学会 理事長)のサポートあってこそで、岡野先生に深く感謝しています。世界の期待を背負いグロース市場へ上場HS-001の治験1例目の投与にNature誌が注目するなど、グローバルでも高い評価を受けるHeartseed社は、7月30日、ついに東京証券取引所グロース市場への上場を果たした。サイエンスと臨床の両輪をこなす福田氏率いる心不全改善治療という期待もあるのか、上場当日は好調な滑り出しを迎えた。同社はメインパイプラインとなるHS-001を筆頭にHS-005などの他家iPS細胞由来心筋球の国内ならびに全世界における開発・製造・販売を目指し、ノボノルディスク エー・エスとライセンス契約を行うほか、HS-001の保険償還や新たなHS-040(自家iPS細胞由来心筋球[開胸手術/カテーテル])などの開発加速に務める。上場セレモニーにて今後の将来ビジョンとして、福田氏は「他家iPS細胞由来心筋球HS-001はもちろんのこと、抗がん剤治療に伴う心不全への適用を目指し自家iPS細胞由来心筋球HS-040などの開発にも着手している。また、心筋が線維化してしまうHFpEFへの治療応用も視野にいれている」と、グローバルな製品展開のみならず、身近な患者に目を向けた思いを述べた。医師紹介(取材・執筆:ケアネット 土井 舞子)

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5~17歳の10人に1人がADHD/米国調査結果

 米国疾病予防管理センター(CDC)下の組織である国立衛生統計センター(NCHS)は、2024年3月に米国における注意欠如・多動症(ADHD)に関する調査結果を発表した。この報告書によると、2020~22年にADHDと診断された5~17歳の子供の割合(有病率)は11.3%だったという。 その他の主な結果は以下のとおり。・5~17歳では、男児(14.5%)のほうが女児(8.0%)より有病率が高く、この傾向は5~11歳と12~17歳の年齢別においても一貫していた。・5~11歳の有病率(8.6%)よりも、12~17歳の有病率(14.3%)のほうが高かった。・有病率は、すべての人種において、5~11歳よりも12~17歳のほうが高かった。・5~17歳の子供のうち、黒人の子供(10.8%)やヒスパニック系の子供(8.9%)よりも白人の子供(13.4%)のほうが有病率が高かった。・世帯収入が上がるにつれてADHDの有病率は減少する傾向があり、5~17歳の有病率は世帯収入が米国貧困水準の100%未満の場合は14.8%だったが、200%以上では10.1%となった。世帯収入の増加とともにADHDの有病率が減少するパターンは、いずれの年齢層の子供にもみられた。・5~17歳の子供では、ADHDの有病率が最も高かったのは公的保険に加入している子供(14.4%)で、最も低かったのは無保険の子供(6.3%)だった。

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がん患者の予後がコンサルトに与える影響~アンケート結果/日本腫瘍循環器学会

 診療科横断的な治療アプローチの好例として、腫瘍循環器学が挙げられる。がん治療には、治療を遂行する腫瘍医、がん治療による心不全などの副作用に対応する他科の医師、この両者の連携が欠かせない。しかし、両者の“がん患者を救う”という目的は同じであっても、患者の予後を考えた際にどこまで対応するのが適切であるか、については意見が分かれるところである。実際に、がん患者の予後に対する両者の意識を明らかにした報告はなく、がん患者に対し“インターベンション治療などの積極的治療をどこまで行うべきなのか”、“どのタイミングで相談し合うか”などについて、現場ではお互いに頭を悩ませている可能性がある。 そこで、志賀 太郎氏(がん研有明病院 腫瘍循環器・循環器内科/総合診療部長)が「JOCS創設7年目の今、腫瘍医、循環器医、それぞれの意識は~インターネットを用いた『余命期間と侵襲的循環器治療』に対するアンケート調査結果~」と題し、8月4、5日に開催された第7回日本腫瘍循環器学会学術集会にて、腫瘍医と循環器医の連携意識の差や今後の課題について報告した。 本講演内で触れているアンケートは志賀氏を筆頭に大倉 裕二氏(新潟県立がんセンター新潟病院腫瘍循環器科)、草場 仁志氏(浜の町病院腫瘍内科 部長)、向井 幹夫氏(大阪がん循環器病予防センター総合健診/循環器病検診部 部長)が設問を作成し、CareNet.com会員医師1,000人(循環器医:500人、腫瘍医*:500人)を対象として、2023年11月2~15日にインターネット調査したもの。*呼吸器、消化器、乳腺外科、血液内科、腫瘍科に属する医師「腫瘍循環器的治療の介入時、患者予後(余命)を意識する場面」に関するアンケート<腫瘍医向け>Q1:進行がん患者に対し、侵襲的な循環器治療を希望するか?Q2:がんによる予後がどれくらいだとがん患者の循環器的介入を依頼するか?Q3:カテーテル治療などの侵襲的治療を循環器医に依頼する上で重視していることは何か?<循環器医向け>Q1:進行がん患者に対する侵襲的な循環器治療の相談を受けた際、戸惑ったことはあるか?Q2:がんによる予後がどのくらいだとがん患者に対する侵襲を伴う循環器的介入に積極的か?Q3:カテーテル治療などの侵襲的治療を行う上で重視していることは何か?<共通質問>Q4:コンサルテーションをする上で注意していることは何か? アンケート回答の結果は以下のとおり。・アンケート回答者の年齢別割合は、循環器医(30代:34%、40代:29%、50代:24%、60代:13%)、腫瘍医(30代:30%、40代:29%、50代:26%、60代:14%)で、共に30代が最も多かった。・腫瘍医の診療科別割合は、消化器科:49%、呼吸器科:21%、乳腺外科:20%、血液内科:8%、腫瘍科:2%であり、呼吸器科は40代、乳腺外科は50代の回答者が多い傾向であった。・進行がん患者への侵襲的循環器治療について、腫瘍医の33%が希望すると回答し、こうした侵襲的治療の依頼に循環器医の83%が戸惑った経験があると回答した。・がんによる予後(余命)期間と侵襲的循環器治療の介入について、腫瘍医は「半年から1年未満の期間があれば治療介入を依頼する」と回答した医師が、循環器医は「1~3年未満の期間があれば治療介入する」と回答した医師が最も多かった。・侵襲的循環器治療を行う上で重視することは、腫瘍医、循環器医いずれにおいても「患者/家族の希望」「がんによる予後(余命)」という回答が多く、一方で「ガイドライン」を重視するという回答は最も少なかった。・腫瘍循環器領域を問わず、コンサルテーションをするうえで最も注意している点については「医師同志のコミュニケーション方法(対面、電話、カルテ内)」と回答した医師がいずれにおいても最も多かった。また、腫瘍医は「専門家の意向を尊重する」という回答が上位であった。 この結果を踏まえ、同氏は「余命期間と侵襲的循環器治療に対する腫瘍医と循環器医の意識に違いがあり、腫瘍医は半年以上の予後が期待される場合に侵襲的な循環器治療介入を考慮(依頼)する傾向にあることが明らかになった。こうした違いを理解しつつ連携を深めていくことが肝要」とし、「この差を埋めていく必要性があるのかは不明であるが、このような差があることを伝えていくことにも力を入れていきたい」としている。

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MASLD患者の飲酒は肝線維化リスクが高い

 過体重、糖尿病、脂質異常症などの代謝異常とアルコール摂取はどちらも脂肪性肝疾患(steatotic liver disease:SLD)の原因となるが、肝線維化に対するそれらの影響は不明である。今回、スペイン・バレンシア大学のINCLIVA Health Research Instituteに所属するDavid Marti-Aguado氏らは、代謝異常関連脂肪性肝疾患*(metabolic dysfunction-associated steatotic liver disease:MASLD)患者においてアルコール摂取量が中程度の場合、代謝リスク因子との相加効果を超え、肝線維化進展リスクが指数関数的に増加したことを示唆し、MASLD and increased alcohol intake(MetALD)患者と同程度に病気の進行リスクが高まることを明らかにした。Journal of Hepatology誌オンライン版2024年7月4日号掲載の報告。*日本語名は仮の名称。現在、日本消化器病学会、日本肝臓学会で検討されている。 研究者らは、アルコール摂取量がSLDの重症度に与える影響と代謝疾患との関連性を評価するため、スペイン(導出コホート)および米国(検証コホート)で登録された集団のうち肝臓検査装置フィブロスキャンでMASLDと診断された患者のエラストグラフィデータを用いて研究を行った。SLDは超音波減衰量(Controlled Attenuation Parameter:CAP)を測定してCAP≧275dB/mと定義。また、心代謝系リスク因子が1つ以上ある患者をMASLDと定義し、MASLD患者のうち、アルコール低摂取群は平均5~9杯/週、中等度摂取群は女性が10~13杯/週、男性が10~20杯/週、高摂取群(MetALD)は女性が14~35杯/週、男性が21~42杯/週とした。肝線維化は肝硬度測定(Liver Stiffness Measurement:LSM)でLSM≧8kPaとし、肝線維化進展リスクを有するmetabolic dysfunction-associated steatohepatitis(MASH)はFASTスコア≥0.35**と定義した。**肝線維化進展NASH患者の可能性を予測するスコア1) 主な結果は以下のとおり。・導出コホートにはMASLD患者2,227例(低摂取群:9%、中程摂取群:14%)とMetALD患者 76例が含まれた。・全体的な有病率として、肝線維化は7.6%、肝線維化進展リスクを有するMASHは14.8%であった。・多変量解析によると、アルコール摂取量は肝線維化および肝線維化進展リスクを有するMASHと独立して関連していた。・肝線維化および肝線維化進展リスクを有するMASHの有病率は、1週間の飲酒量と心代謝リスク因子の数で用量依存的に増加した。・検証コホートにはMASLD患者1,732例が含まれ、そのうち肝線維化があった患者は17%、肝線維化進展リスクを有したMASH患者は13%だった。・検証コホートでは、アルコールの中等度摂取と肝線維化進展リスクを有するMASLDとの関連が検証され、オッズ比は1.69(95%信頼区間:1.06~2.71)であった。 研究者らは「代謝異常があるMASLD患者の場合、毎日のアルコール摂取量に安全な範囲はない」とも結論付けている。 なお、昨年に欧州肝臓学会で発表され、国内でも病名や診断基準の検討が進められている(1)MASLD、(2)MetALD、(3)alcoholic liver disease[ALD]、(4)cryptogenic SLD、(5)specific aetiology SLDは、アルコール摂取量、代謝異常などに基づき区分されている。

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うつや不安に対するウォーキング効果〜メタ解析

 ウォーキングから得られるメンタルヘルスのベネフィットに関する総括的な情報は、十分ではない。中国・香港中文大学のZijun Xu氏らは、さまざまなウォーキングパターンがうつや不安症状に及ぼす影響を評価したランダム化比較試験(RCT)のシステマティックレビュー、およびメタ解析を実施した。JMIR Public Health and Surveillance誌2024年7月23日号の報告。 2022年4月5日、各種データベース(MEDLINE、CENTRAL、Embase、PsycINFO、AMED、CINAHL、Web of Science)より検索を行った。研究のスクリーニングおよびデータ抽出は、2人の独立した著者により実施した。ランダム効果メタ解析を用いて、データを統合した。フォレストプロットの95%信頼区間(CI)による標準化平均差(SDM)を算出した。バイアスリスクの評価には、Cochrane Risk of Bias toolを用いた。 主な結果は以下のとおり。・レビューには、RCT 75件、8,636例を含めた。研究の内訳は、抑うつ症状の研究68件、不安症状の研究39件、両症状の研究32件であった。・思春期の結果を報告した1件は、メタ解析に含めなかった。・成人における統合結果では、ウォーキングは、非活動的な対照群と比較し、抑うつ症状(RCT:44件、SMD:−0.591、95%CI:−0.778〜−0.403、I2=84.8%、τ2=0.3008、p<0.001)および不安症状(RCT:26件、SMD:−0.446、95%CI:−0.628〜−0.265、I2=81.1%、τ2=0.1530、p<0.001)を有意に軽減することが示唆された。・ウォーキングは、頻度、期間、場所(屋内/屋外)、形式(グループ/個人)などの異なるサブグループの多くにおいて、抑うつまたは不安症状を有意に軽減させる可能性が示唆された(各々、p<0.05)。・うつ病患者(RCT:5件、SMD:−1.863、95%CI:−2.764〜−0.962、I2=86.4%、τ2=0.8929)と非うつ病患者(RCT:39件、SMD:−0.442、95%CI:−0.604〜−0.280、I2=77.5%、τ2=0.1742)のいずれにおいても、ウォーキングによる抑うつ症状への効果が示された。とくに、うつ病患者では、そのベネフィットが大きい可能性が示唆された(p=0.002)。・ウォーキングは、活動的な対照群と比較し、抑うつ症状(RCT:17件、SMD:−0.126、95%CI:−0.343〜−0.092、I2=58%、τ2=0.1058、p=0.26)および不安症状(RCT:14件、SMD:−0.053、95%CI:−0.311〜0.206、I2=67.7%、τ2=0.1421、p=0.69)の軽減に有意な差が認められなかった。 著者らは「いずれのウォーキングパターンにおいても、抑うつおよび不安症状の軽減に効果的であり、その効果は活動的な対照群と同様であった。うつや不安の軽減に対するウォーキング介入は採用可能であると考えられる。今後は、低強度ウォーキングの効果に関するさらなるエビデンスが求められる」としている。

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若年者の砂糖入り飲料摂取、世界的な動向は?/BMJ

 世界185ヵ国の小児・思春期児(3~19歳)における砂糖入り飲料(sugar sweetened beverage、SSB)の摂取量は、1990~2018年の間に23%増加しており、このことと同年齢層における世界的な肥満症有病率の上昇が対応していることを、米国・タフツ大学のLaura Lara-Castor氏らがGlobal Dietary Databaseを用いた検討で明らかにした。また、世界の小児・思春期児のSSB摂取量は、年齢や親の教育レベル、都市居住か否かによりばらつきがみられたという。BMJ誌2024年8月7日号掲載の報告。1990~2018年の185ヵ国の小児と思春期児について分析 研究グループはGlobal Dietary Databaseを用いた連続横断分析で、世界の小児・思春期児におけるSSB摂取量と経時的な傾向を定量化した。1990~2018年の185ヵ国の3~19歳を、年齢、性別、親の教育レベル、および地方または都市居住によって地域レベルで層別化し分析した。世界の若者人口の10.4%が7サービング/週以上を摂取 2018年において、世界の平均SSB摂取量は3.6(95%不確定区間:3.3~4.0)サービング/週であり(標準化サービング=248g[8オンス])、地域別にみると、南アジアの1.3(1.0~1.9)サービング/週から中南米・カリブ海地域の9.1(8.3~10.1)まで大きくばらついていた。 SSB摂取量は、年少児よりは年長児で、地方居住者よりは都市居住者で、両親の教育レベルは低レベル群よりは高レベル群で高かった。 1990~2018年に、世界の平均SSB摂取量は0.68サービング/週(22.9%)増加していた。最も増加していたのはサハラ以南のアフリカ諸国で2.17サービング/週(106%)であった。 解析に含んだ185ヵ国のうち、56ヵ国(30.3%)の平均SSB摂取量は≧7サービング/週であった。これら摂取群には小児・思春期児2億3,800万人、世界の若者人口の10.4%が含まれる。 結果を踏まえて著者は、「本研究は、とくに中南米とカリブ海地域の都市および地方居住で、教育レベルを問わずSSB摂取量が多い若者へのSSB摂取量を減らすための政策や、サハラ以南のアフリカ諸国において拡大しているSSBの問題に役立つだろう」とまとめている。

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腰椎変性すべり症、除圧術単独は固定術併用に非劣性/BMJ

 腰椎変性すべり症に対する除圧術単独vs.固定術併用を検討した多施設共同無作為化非劣性試験「Nordsten-DS試験」の5年間の追跡調査で、除圧術単独群の固定術併用群に対する非劣性が示され、indexレベルまたは隣接腰椎レベルでの新たな手術実施の割合に群間で差はなかったという。ノルウェー・Haukeland University HospitalのEric Loratang Kgomotso氏らNordsten collaboratorsが報告した。BMJ誌2024年8月7日号掲載の報告。術後5年でOswestry disability index約30%低下達成の患者割合を評価 Nordsten-DS試験は、ノルウェーの公立整形外科および脳神経外科16ヵ所で腰椎変性すべり症患者を対象に、固定器具を用いて行う除圧術(固定術併用)に対して除圧術単独が非劣性であるかを、初回手術から5年後の時点で評価した。対象は、症候性腰部脊柱管狭窄症を有し、狭窄レベルで3mm以上のすべりがある18~80歳の患者であった。 主要アウトカムは、ベースラインから追跡5年時点のOswestry disability indexの約30%の低下。事前に規定した非劣性マージンは、主要アウトカム達成患者の割合の差が15%ポイントであることとした。副次アウトカムは、Oswestry disability index、Zurich claudication questionnaire、脚部・腰部疼痛の数値的評価スケール、およびEuroQol Group 5-Dimension(EQ-5D-3L)質問票の平均変化値などであった。修正ITT解析の達成患者割合は両群63%、事前規定の非劣性マージン達成 2014年2月12日~2017年12月18日に、267例が1対1の割合で除圧術単独群(134例)または固定術併用群(133例)に無作為に割り付けられた。このうち230例(88%)が5年時の質問票に回答した(除圧術単独群121例、固定術併用群109例)。ベースラインの平均年齢は66.2歳(SD 7.6)、女性は69%を占めた。 欠損データに対する多重代入法を用いた修正ITT解析において、除圧術単独群84/133例(63%)と固定術併用群81/129例(63%)が、Oswestry disability indexの30%以上低下を達成し、群間差は0.4%ポイント(95%信頼区間[CI]:-11.2~11.9)であった。per protocol解析の結果は、除圧術単独群65/100例(65%)、固定術併用群59/89例(66%)で、群間差は-1.3%ポイント(-14.5~12.2)であった。修正ITT解析およびper protocol解析のいずれにおいても、95%CI値は事前規定の非劣性マージンである-15%を下回らなかった。 ベースラインから5年時までのOswestry disability indexの平均変化値は、両群ともに-17.8だった(平均群間差:0.02[95%CI:-3.8~3.9])。その他の副次アウトカムの結果は、主要アウトカムと同様の傾向を示した。 新たな腰椎手術は、追跡2~5年の間に除圧術単独群で6/123例(5%)、固定術併用群で11/113例(10%)に行われた。ベースラインから5年時までの同手術の総数は、除圧術単独群21/129例(16%)、固定術併用群23/125例(18%)であった。

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就寝前の運動も睡眠の妨げにならない?

 就寝前の運動が、必ずしも睡眠を妨げるわけではないとする研究結果が報告された。短時間のレジスタンス運動で睡眠時間が長くなり、睡眠中の目覚め(中途覚醒)を増やすこともないという。オタゴ大学(ニュージーランド)のJennifer Gale氏らの研究によるもので、詳細は「BMJ Open Sport & Exercise Medicine」に7月16日掲載された。 従来、激しい運動は体温や心拍数を上昇させて睡眠を妨げる可能性があるため、就寝時間が近づいてきたら運動を控えた方が良いと言われることが多かった。しかし本研究の結果、短時間のレジスタンス運動を行うことで、ソファでゆっくりするよりも睡眠が改善される可能性のあることが分かった。 短時間のレジスタンス運動とは、立った状態で片足の膝を上げたり、つま先立ちをしたり、椅子を使ってスクワットをしたり、股関節を延ばしたりといったことで、これらをそれぞれ3分間、就寝前の4時間の間に30分間隔で行うと、睡眠時間がほぼ30分長くなるという。論文の筆頭著者であるGale氏は、「睡眠に関するこれまでの推奨事項とは反対に、夜間の運動は睡眠の質を損なわないことを示すエビデンスが増えてきているが、われわれの研究結果もそれを支持する新たなエビデンスである」と述べている。 この研究では、18~40歳で日中に通常5時間以上、夕方以降に2時間以上を座位で過ごすという生活を送っている28人に対して、二つの異なる条件で睡眠の時間や質を比較した。一つ目の条件では就寝前の4時間、ソファに座って過ごしてもらい、二つ目の条件では前述のような3分間の簡単なレジスタンス運動を30分間隔で行ってもらった。これら二つの試験は、6日以上の間をおいて実施された。 その結果、レジスタンス運動を行う条件の方が、睡眠時間が平均28分長くなっていた。また、中途覚醒の回数や睡眠効率(就床時間に占める睡眠時間の割合)は、条件間で差がなかった。著者らは、「長時間の座位行動中に、周期的に短時間の身体活動を差し挟むことは、複数のメカニズムを通じて心臓代謝関連の健康を改善する可能性のある有望な方法である」と、ジャーナル発のニュースリリースで述べている。また、このような短時間のレジスタンス運動は、代謝を適度に高めて血糖値を下げることで、睡眠を改善する可能性があるとの推測も付け加えている。 著者らによると、「成人は座位で過ごす時間が長くなりやすく、かつ、1日の摂取エネルギー量のほぼ半分を夕方に摂取する。糖尿病でない人の場合、この時間帯にインスリン感受性が低下する傾向があることも、これらの生活パターンの負の影響を強めてしまう」という。一方で著者らは、本研究に用いられた筋力トレーニングは「器具が不要で簡単に行え、テレビを見ながらでも実践可能であり、多くの人々の就寝前の習慣として簡単に取り入れられるのではないか」と、この方法の長所を挙げている。

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40年前に尿道に入れた異物が原因【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第263回

40年前に尿道に入れた異物が原因泌尿器系の異物の場合、比較的急速に症状が出て、救急搬送されるような激烈な報告が多いです。これは、入れたものが取れなくなるというだけでなく、排尿経路を封鎖すると、尿道や膀胱のタンポナーデが起こるためでもあります。今回は、まさかの40年後に尿道異物が診断されるという、きわめて稀有な症例報告を紹介したいと思います。貝塚洋平ほか. 陰嚢膿瘍と尿道陰嚢瘻を契機に診断され40年間放置された尿道内異物の1例. 泌尿器科紀要. 2024 Jun;70(6):185-188.70歳男性が、高熱と左陰嚢の腫大で来院しました。このとき、左精巣上体炎と診断され、抗菌薬が投与されました。しかしながら、陰嚢腫大は改善せず、やむなく外科的処置が必要となりました。陰嚢切開排膿術を行ったところ、症状は治まったものの、切開部からの尿の溢流が止まらないという状態になりました。問診によると、どうやら約40年前、30歳くらいのときに、尿道に「ビー玉」を挿入したことがあることがわかりました。精神科疾患などが明確でない場合、自慰目的で挿入することが多いとされていますが、このガラス玉が膿瘍と瘻孔を形成したことは明らかでした。このビー玉を、経尿道手術で破砕・除去したところ、瘻孔は術後3ヵ月で消失し、排尿障害も改善したそうです。論文によると、日本で報告された異物挿入後の留置期間としては、この報告が最長と記載されています。まさか、当の本人も40年前のビー玉が原因とは思わなかったでしょう。もしかすると、世の中には一生涯症状が出ないまま挿入された異物というのも存在するのかもしれませんね。

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第224回 トップダウンで醸成された小林製薬の企業体質、記者控室でも明らかに

紅麹サプリによる健康被害が発覚した3月末以来、一度も記者会見を開催していなかった小林製薬。8月8日、同社の2024年第2四半期決算会見に併せ、この問題に関する会見が開かれた。実に4ヵ月ぶりである。この間、対外的に会見が不必要な状況だったとは到底思えない。6月末には同社の紅麹サプリ関連で死亡の疑いがある消費者が3月末時点の5人から一気に76人にのぼることが明らかになったほか、7月末には今回の件を巡る弁護士による第三者委員会「事実検証委員会」の報告書公表と創業家出身の代表取締役会長・小林 一雅氏の退任、代表取締役社長・小林 章浩氏の取締役補償担当への降格、専務取締役サステナビリティ経営本部長・山根 聡氏の代表取締役社長への昇格というトップ人事もあったからだ。ただ、同社は毎年第2四半期(以下、上半期)決算については、8月上旬に発表と同時に会見を行っており、どんなに遅くともこのタイミングで会見を行うことは必至と考えられた。例年と異なり会見なしで済ませれば、“敵前逃亡”のそしりは免れないからだ。7月の段階で同社の上半期決算発表は8月8日に決定していた。私は7月26日に同社広報・IR部に連絡を入れた。この辺は記者クラブ所属ではない私の弱みでもある。担当者によると会見開催は決まっているものの、日時・場所は未定という。再度私から連絡する旨を伝えてこの時は電話を切った。同時に記者クラブ所属メディアの知人記者には会見のお知らせが届いた場合に連絡をお願いしていたものの、8月5日時点でも知人記者らから情報は入ってこない。意を決して同社に再び連絡したところ、まだ決まっていなかった。上半期決算発表は3日後である。この間、記者会見を開いていない以上、その場でこれまでの紅麹サプリ問題に関して記者から追及されることは目に見えていた。時々、不祥事などを起こした企業の決算会見で「質問はあくまで決算内容(いわば数字)に限らせていただく」と宣言することもあるが、これは筋違いも甚だしい。企業の業績はそのサービスや製品だけでなく、企業そのものの立ち居振る舞いも反映された結果であり、決算会見とは数字も含め社業についてあらゆることを質問できる場であるのが当然である。直前まで日時・場所が決まっていない現実を肯定的に受け止めるならば、同社は紅麹サプリ事件について答える用意がある、それゆえ会見の規模・時間を直前まで慎重に考えて日時設定をするつもりだったと解釈できる。逆に否定的に受け止めるならば、直前になってもまだ迷いがあるとなる。根は真面目、だがちょっとずれている翌6日午前11時過ぎ、知人記者たちから一斉に同社会見の日時・場所について連絡がきた。念のため広報・IR部に連絡、メールアドレスを伝えると直後に案内が届いた。案内文には「本説明会においては、当社の決算発表および紅麹関連製品の事案に関わる説明と質疑を予定しております」と太字・下線付きで明記されていた。私個人の雑感を言うと、この企業は基本的に真面目である。以前の本連載でも触れたが、「悪意なき危機感の欠如」がこの会社の特徴と私は捉えている。真面目であり、何もしていないわけではないのだが、取り組みの的が若干外れている。例えて言うならば、学生時代に周囲に1人はいた「勉強しているのに成績は中の下の同級生」のような感じだ。そしてこの“的の外れ”具合は実は会見当日、会見開始前に発生していた。私は会見に備えて前日に関西入りし、当日は会見開始2時間前に会場に到着した。2時間前に行ったのは、相当数の参加者が来場すると予想していたからである。現に前回3月末の会見時は受付開始1時間前でも会場のビル1階ではメディア各社が行列をなしていた。会場に到着すると、すでに1番乗りしていた大手メディアの記者と広報・IR部の担当者が何やらやり取りしていた。私は2番手である。担当者からは用意している控室で待機して欲しいと案内され、到着順に着席した。他方でテレビクルーは別途整理券を発行して対応すると説明を受けていた。この辺はメディア業界と縁遠い人にはわかりにくいかもしれないが、テレビカメラが入る記者会見では、テレビカメラ設置エリアが設けられ、そこの中で各社がベストポジションを巡って争奪戦を繰り広げる。時にこれで会場が混乱することもあるくらいだ。このためセッティングに時間を要するテレビカメラクルーを最初に、その後に記者が先着順で会場に案内されることが少なくない。小林製薬の広報・IR部の対応はある意味、教科書通りだ。ところが、控室に入ってくる記者・テレビクルーが徐々にあちこちへ雑然と座り始めた。明らかにカオスになりかけていたので、広報・IRの担当者に状況を伝え、正しく並んで座ってもらうよう呼び掛けをお願いした。担当者はすぐに了承し、室内に呼びかけてくれ、直後に控室に案内された記者も順番に壁際の椅子に腰を下ろした。ところが十数分も経つとなし崩しになった。私は再び担当者に状況を伝え、案内を徹底してくれるようお願いした。その担当者の退室直後、私の次に着席していた関西地元メディアの記者が「もう、この会社いつもこんな感じですよ。問い合わせをしても禅問答状態で…」と話しかけてきた。私も苦笑するしかなかった。しかし、間もなくテレビクルーと合流するテレビ記者も到着し始め、整理券保持するクルーと合流して順番を意識することなく座りだした。私が恐れていたのはこれだ。テレビクルーを先に案内するのは、カメラ・音声といったテレビ映像配信のための準備に時間がかかるためで、同じテレビでも記者は別だ。時にはこの手法を無意識に“悪用”して、クルーとともに先に会場入りして自分の席取りをしてしまうテレビ記者もいる。あるいは先にセッティングのために会場入りしたクルーが記者のための席取りをしてしまう。これでは早い時間から入場待ちしているペン記者にとっては不公平となる。実はこうした現象は時々あり、3月末の小林製薬の会見でも起きていた。私は仕方なく座っていた席に荷物を置いて廊下に出て、担当者に上記のような事情を話して善処を依頼した。担当者は了承し、その後控室まで来て受付にテレビクルーが自社の記者の席取りをしないようクルーの入場の際に伝えると説明してくれた。少し安心はしたものの、依然、控室では指示通り順番に座らない状態が横行していたので、この件についても再度お願いをした。この担当者が退室後、件の隣席に座る記者が「本当にもう…」と呟いた。受付開始15分前になっても状況は変わらなかった。仏ではない自分はもはや限界だった。私は廊下に出て担当者を呼び止めて言った。「もう一度、控室内で並び方について説明してください」担当者は「はい、はい」と言うものの、固まったままだ。「ですから、テレビ記者でクルーと一緒に座って記者席に先着順に座っていない方々がいらっしゃるんです」担当者は相変わらず「はい、はい」と固まっている。後から考えれば、やや大人げなかったが、ここで私は声を荒げた。「だから、すぐ入って案内し直してください。こんなことだから、あんな事件起こすんですよ!」ここで担当者はようやく控室内に駆け込んで再度案内を始めた。後述するように、声を荒げたことはこの担当者に謝ったが、私は「あんな事件…」は今も言い過ぎたとは思っていない。同族企業やトップダウンの色彩の強い企業では、末端の社員は上から下ってきた指示の忠実な執行には長けている反面、その場の状況に合わせて現場で意思決定や提案することは不得手なことが多い。これは前述の「悪意のない危機感の欠如」とも共通する。現場で意思決定が難しいものは現場サイドに危機感がなければ半ば放置されてしまう。その結果、不祥事につながった事例はこの件に限らず自分は目にしてきている。他者を慮る想像力が弱かったさて会見開始1時間前に受付が始まり、自分なりのベストポジションである最前列の会見者雛壇目前の席を確保した。この席をベストポジションと考えるのは、司会者が質問のための挙手を無視しにくいからだ。自分の場合、自腹を切って大阪まで飛んで行って、2時間前から受付待ちをしているのに、質疑で指名を受けられなかったら半ば意味がなかったと同じなのである。そしてこのポジション確保後、廊下にいた件の担当者のところにいって名刺を差し出して挨拶し、先ほど声を荒げたことを詫びるとともに前述の背景事情も説明した。さらにこの間の案内に尽力していた別の担当者にも同様に挨拶し、会見の流れを事前確認した。それによると、記者1人につき質問は2問まで、予定時間の2時間から十数分は延長できるかもしれないこと、さらに指名されるかどうかは別にして質問後に再度の挙手は構わないとのことだった。自席に戻ると、会見の資料が配布された。その内容は紅麹事業からの撤退に関するもの、特別損失計上に関するもの、剰余金配当(中間配当)のお知らせ、サプリ摂取者の保障関連、上半期決算の補足資料の5点。これらの中身まで一通り目を通し終わった直後、ちょうど会見開始となった。出席者は新社長の山根氏、前社長の小林氏、佐藤 圭氏(執行役員・保障対応本部 本部長)、中川 由美氏(執行役員・CFOユニット ユニット長)、3月末の会見でも登壇した山下 健司氏(執行役員・製造本部 本部長)、梶田 恵介氏(ヘルスケア事業部食品カテゴリー カテゴリー長)に加え、渡邊 純氏(執行役員・信頼性保証本部 本部長)はオンライン参加した。冒頭、山根社長が口を開き、被害者や関係者への謝罪の言葉を述べた後、次のように語った(一部抜粋)。「最初の症例を受けたのが1月。それから2ヵ月、なぜ公表できなかったのか。今から思えば、経営陣以下、原因究明に傾注してしまい、目の前で起こっている事態が、誰にどういう結果をもたらすのか、その想像力を働かすことが弱かった。それが真の原因ではないかというふうに思います。健康に貢献することを存在意義としている小林製薬において、他者を慮る想像力、これが事業の出発点であります。これを見失っていた、弱くしてしまっていた。この現実に直面した今、当社の歴史においても最大の難局にあるというふうに私は思います。(中略)当社がこれから経営を続けていく上での考え方、これは根本から入れ替えなければならないと思います。1人1人が1つ1つの仕事を我が事として、他者を慮る想像力を発揮する。その当たり前を1人1人の心に根付かせなければならない、こういうふうに思います」こうして2時間16分に及ぶ会見が始まった。

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非常につらい倦怠感【漢方カンファレンス】第7回

非常につらい倦怠感以下の症例で考えられる処方をお答えください。(経過の項の「???」にあてはまる漢方薬を考えてみましょう)【今回の症例】70代男性主訴食欲不振既往51歳:胆嚢摘出、70歳:大腸がん手術病歴X年6月、転落による頭部外傷、四肢骨折などの多発外傷で入院加療中で。入院1ヵ月後、腹痛が出現し癒着性腸閉塞と診断された。保存的加療(イレウス管挿入・大建中湯[だいけんちゅうとう]エキスなど)を行ったが再発を繰り返した。入院2ヵ月後に癒着剥離術を施行。術後経過は良好であったが、食欲不振が続き、長期入院のためADLが低下した。入院2ヵ月半後、漢方治療目的に当科に紹介となった。現症身長160cm、体重37.8kg(BMI 14.8kg/m2、入院時と比べて-6kg)。体温35.4℃、血圧105/82mmHg、脈拍66回/分 整、呼吸数16回/分。身体所見では、下肢浮腫が軽度ある以外に特記すべき異常はないが、診察時は車椅子でぐったりした様子でベッドへ移動ができなかった。経過初診時「???」湯(煎じ薬)毎食間を処方。(解答は本ページ下部をチェック!)3日後きつさは軽くなり、ご飯が食べられるようになった。7日後食事は摂れている。活気が出て、よく話すようになった。2週間後リハビリが進みADLが拡大傾向である。漢方治療を終了した。問診・診察漢方医は以下に示す漢方診療のポイントに基づいて、今回の症例を以下のように考えます。【漢方診療のポイント】(1)病態は寒が主体(陰証)か、熱が主体(陽証)か?(冷えがあるか、温まると症状は改善するか、倦怠感は強いか、など)(2)虚実はどうか(症状の程度、脈・腹の力)(3)気血水の異常を考える(4)主症状や病名などのキーワードを手掛かりに絞り込む【問診】<冷えの確認>寒がりですか? 暑がりですか?体の冷えを自覚しますか?寒がりです。体全体が冷えます。<温冷刺激に対する反応を確認>入浴では長くお湯に浸かるのが好きですか?冷房は好きですか?お風呂は熱いのが好きで長風呂です。冷房は嫌いです。飲み物は温かい飲み物と冷たい飲み物のどちらを好みますか?のどは渇きませんか?1日どれくらい飲み物を摂っていますか?温かい湯茶を飲んでいます。のどはそんなに渇かず、1日1L未満です。<ほかの随伴症状を確認>倦怠感はありますか?体全体がだるい感じです。すぐに疲れてしまい、今でも横になりたいです。食べたいという気持ちもリハビリする気力もありません。他に困っている症状はありますか?胸やけ、胃もたれがあります。尿は1日に何回でますか?便秘・下痢はありませんか?便の臭いは強いですか?尿は5~6回くらいです。便は3日に1回で、下痢をします。便の臭いは強くありません。【診察】問診をしても返答が乏しく反応も鈍かった。車椅子で坐位を保つこともつらそうな様子。顔色はやや紅潮。四肢を触診すると冷感が強く、脈診では沈で反発力が非常に弱い脈(脈:沈、極めて弱)であった。また、舌は乾燥した舌苔がわずかで、腹診では腹力は軟弱であった。カンファレンス問診では、寒がり、冷えの自覚がある、温かい飲み物を好む、倦怠感があります。触診でも四肢に強い冷えがあり、「寒」が目立つことから明らかに「陰証」です。さらに脈が沈んで弱く、腹力も軟弱なので、闘病反応が乏しい「虚証」と考えます。今回はあまり「陰陽」・「虚実」の判断は迷わなさそうだね。長期の入院で、体力低下により冷えが生じて、闘病反応が乏しい感じだね。「陰証・虚証」と考えてよさそうだ。少陰病は、冷えが全身に及び、体力が衰えて元気がないのが特徴ですね(第2回参照)。今回の症例は少陰病でしょうか。少陰病は体力が枯渇してきて負け戦の様相を呈する病態だね。少陰病からさらに進行して、極端に体力量が少なくなった状態を「厥陰病(本ページ下部の「今回のポイント」の項参照)」というよ。今回の症例では、車椅子に座っているのもつらい様子、さらに四肢に強い冷えがあり、脈が沈で非常に弱かったことから厥陰病と診断しました。今回の症例は、車椅子に座っているのもきついような、非常につらい倦怠感が特徴だけど、漢方で非常につらがっている症状を何とよぶか覚えているかい?うーん…。ここは重要なポイントですよ! 漢方ではひどくつらがる状態を「煩躁(はんそう)」とよびました。インフルエンザの症例で、強い悪寒があって汗がなく、関節痛がある麻黄湯(まおうとう)を用いるような場合でも、身の置き場もないほどつらがる「煩躁」があれば、大青竜湯(だいせいりゅうとう)(エキス剤では麻黄湯+越婢加朮湯[えっぴかじゅつとう]で代用)が適応になるのでした(第4回参照)。すっかり忘れていました。冬の季節はインフルエンザを診る機会が増えてくるので必ず復習しておきます。太陽病で煩躁があるときは大青竜湯が適応だったね。今回は陰証で煩躁を呈する場合に用いる漢方薬が適応になるよ。慢性疾患で煩躁している場合は、強い冷えを伴うことが多いんだ。それじゃあ本症例をまとめよう。【漢方診療のポイント】(1)病態は寒が主体(陰証)か、熱が主体(陽証)か?寒がり、四肢の冷え、非常につらい倦怠感、下痢の性状(便臭が軽度)、温かい飲み物を好む、脈:沈→陰証(2)虚実はどうか脈:極めて弱、腹力:やや軟弱→虚証(3)気血水の異常を考える倦怠感→気虚下痢→水毒(4)主症状や病名などのキーワードを手掛かりに絞り込む強い冷え、非常につらい倦怠感(煩躁)、脈が沈弱解答・解説【解答】本症例は、厥陰病で煩躁している場合に用いる茯苓四逆湯(ぶくりょうしぎゃくとう)(エキス剤では真武湯[しんぶとう]+人参湯[にんじんとう]で代用)を用いて治療しました。【解説】茯苓四逆湯は附子(ぶし)・乾姜(かんきょう)・甘草(かんぞう)で構成される四逆湯に茯苓(ぶくりょう)と人参(にんじん)が入ったものです。茯苓・人参・甘草に白朮(びゃくじゅつ)が加わると四君子湯(しくんしとう)になり、生体の根元的エネルギーである気を補う基本の漢方薬です。よって茯苓四逆湯は、四逆湯の体を温めて回復させる作用に加えて、弱った元気を補う作用をもった漢方薬になります。茯苓四逆湯は、陰証で煩躁を認める場合に用いる漢方薬です。エキス製剤では真武湯と人参湯を併用して代用することができます。気を補う作用のある漢方薬を補気剤とよびます。全身倦怠感や食欲不振に対する漢方薬と言えば、六君子湯や補中益気湯がよく知られており、補気剤の仲間です。ただし、六君子湯や補中益気湯の適応は冷えは目立ちません。気虚に冷えを伴う場合は陰証の漢方薬が適応になります。食欲不振があって心窩部に冷感を認める場合には人参湯が適応になります。冷えの程度が強く、非常につらい倦怠感がある場合は茯苓四逆湯を用います。冷えの有無や程度に応じて上手く使い分けができるようになるとよいですね(表)。今回のポイント「厥陰病」の解説厥陰病は寒が主体の病態である陰証の最後のステージです。強い冷えがあり、体力が極端に少なくなり強い脱力感、倦怠感を伴います。そのため「極度の虚寒」ともいわれます。胃腸(裏)の働きも低下していて、食欲不振があります。また下痢がみられる場合は、水様性で、臭いがなく、食べ物が消化されずに形が残ったまま出てくることもあります(完穀下痢[かんこくげり]とよぶ)。生体も土壇場なので、最後のひと踏ん張りということで、強い冷えがあるにもかかわらず、逆に熱っぽかったり、顔が赤かったりすることがあります。ロウソクが消える間際にパッと輝く「灯滅せんとして光を増す」ようなイメージです。これを漢方では「陰極まって陽」、つまり、寒が非常に強くなって、逆に熱症状を呈している状態と考えます。脈は沈んで、反発力が非常に弱い軟弱無力な脈が特徴で、「しまりがなく、細い茹でうどんが水にふやけたような緊張感のない脈」といわれます。厥陰病は急性感染症の場合、ショック状態に陥るような危篤状態です。慢性疾患では、冷えと倦怠感がどちらも強度で極度に疲弊した状態を厥陰病と考えます。厥陰病の治療は、体力を補いながら強力に温める治療を行います。代表的な温める生薬である附子(トリカブトの根を加熱処理して弱毒化したもの)と乾姜(しょうがを蒸して乾燥させたもの)、さらに甘草の3つの生薬から構成される四逆湯(しぎゃくとう)を基本とした漢方薬を用いて治療します。

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糖質摂取と認知症リスク〜前向きコホート研究

 いくつかの研究において、食事中の糖質摂取と認知症との潜在的な関連が示唆されているが、実証するエビデンスは限られている。中国・四川大学のSirui Zhang氏らは、この関連性について、大規模集団による検証を行った。BMC Medicine誌2024年7月18日号の報告。 英国バイオバンクコホートに参加した21万832人を対象に、プロスペクティブコホート研究を実施した。食事中の糖質摂取を反映するため、糖質の絶対摂取量および相対摂取量、高糖質食スコアを用いた。糖質の絶対摂取量は、英国バイオバンクのOxford WebQにより特定した。糖質の相対摂取量は、絶対摂取量を総食事エネルギー量で割ることにより算出した。高糖質食パターンの特定には、縮小ランク回帰法を用いた。食事中の糖質摂取量とすべての原因による認知症およびアルツハイマー病との縦断的関係を調査するため、Cox比例ハザード回帰分析および制限付き3次スプラインを用いた。根本的なメカニズムを解明するため、探索的媒介分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・糖質の絶対摂取量(g/日)の増加は、すべての原因による認知症およびアルツハイマー病のリスク増加と有意な関連が認められた。【すべての原因による認知症】ハザード比(HR):1.003、95%信頼区間(CI):1.002〜1.004、p<0.001【アルツハイマー病】HR:1.002、95%CI:1.001〜1.004、p=0.005・糖質の相対摂取量(%g/kJ/日)も、すべての原因による認知症(HR:1.317、95%CI:1.173〜1.480、p<0.001)およびアルツハイマー病(HR:1.249、95%CI:1.041〜1.500、p=0.017)との有意な関連が認められたが、高糖質食スコアは、すべての原因による認知症のみでリスク増加との関連が認められた(HR:1.090、95%CI:1.045〜1.136、p<0.001)。・糖質摂取量と高糖質食スコアの両方が、すべての原因による認知症およびアルツハイマー病と有意な非線形関係を示した(非線形のすべてのp値:p<0.05)。 著者らは、「過剰な糖質摂取は、認知症リスクと関連していることが示唆された。食事中の糖質摂取を制限することは、認知症予防にとって大きな意味を持つ可能性がある」としている。

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国内での小児の新型コロナ感染後の死亡、経過や主な死因は?

 2024年8月9日時点での新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の国内での流行状況によると、とくに10歳未満の小児患者が多い傾向にある1)。日本でCOVID-19発症後に死亡した0~19歳の小児・青年患者の特徴を明らかにするために、国立感染症研究所のShingo Mitsushima氏らの多施設共同研究チームは、医療記録および死亡診断書から詳細な情報を収集し、聞き取り調査を行った。その結果、53例の情報が得られ、ワクチン接種対象者の88%が未接種であったことや、発症から死亡までの期間は77%が7日未満であったことなどが判明した。CDCのEmerging Infectious Diseases誌2024年8月号に掲載。 日本では、2022年にオミクロン株が初めて検出された後、小児COVID-19患者数が急増した。2021年12月までに0~19歳のSARS-CoV-2陽性患者数は24万例(0~9歳:8万4千例、10~19歳:15万6千例)だったが、2022年1~9月(オミクロン株流行期)には480万例(0~9歳:240万例、10~19歳:240万例)に増加し、死亡者数も増加した。 本研究では、厚生労働省、地方自治体、保健所、HER-SYS、学会、メディアから小児・青年死亡症例の情報を収集した。症例は、発症または死亡日が2022年1月1日~9月30日である0~19歳におけるSARS-CoV-2感染後に発生した死亡症例と定義した。死因について、中枢神経系異常、心臓異常、呼吸器異常、その他、不明に分類した。患者の発症から死亡までの日数の中央値と四分位範囲(IQR)を算出し、選択された変数の適合度を検定するために、x2検定またはFisherの正確確率検定を用いた。発症から初回診察、心肺停止、または死亡までの間隔を異なる死因間で比較するためにlog-rank検定を用いた。 主な結果は以下のとおり。・COVID-19発症後に死亡した0~19歳の小児・青年患者62例が確認され、うち53例について詳細な調査を実施できた。46例(87%)は内的死因、7例(13%)は外的死因(新型コロナ感染後の溺水や窒息などの予期せぬ事故)であった。・内的死因患者46例のうち、1歳未満が7例、1~4歳が15例、5~11歳が18例、12~19歳が6例であった。19例に基礎疾患が認められた。・ コロナワクチン接種対象者(5歳以上)は24例で、そのうち21例(88%)がワクチンを接種していなかった。2回のワクチン接種済みの3例(12歳以上)のCOVID-19発症日は、最後のワクチン接種日から3ヵ月以上経過していた。・入院前は呼吸器症状よりも非呼吸器症状のほうが多く、疑われた死因は、多い順に、中枢神経系異常(急性脳症など)が16例(35%)、心臓異常(急性心筋炎など)が9例(20%)、呼吸器異常(急性肺炎など)が4例(9%)だった。小児の多系統炎症性症候群(MIS-C)は認められなかった。・基礎疾患のない患者(27例)では、最も多く疑われた死因は中枢神経系異常(11例)、次いで心臓異常(5例)だった。呼吸器異常は認められなかった。・入院前に救急外来で確認された死亡者数は19例、入院後の死亡者数は27例であった。患者の46%は院外心停止で死亡した。・中枢神経系異常を認めた16例では、発症から心肺停止までの中央値は2日(IQR:1.0~12.0)、発症から死亡までの中央値は3.5日(2.0~14.5)だった。5~11歳が最も多く(9例/56%)、1歳未満はいなかった。急性脳症の12例のうち、出血性ショック脳症症候群(HSES)が疑われたのは5例、急性劇症脳浮腫を伴う脳症が1例、分類不能脳症が 6例であった。・心臓異常を認めた9例では、発症から心肺停止までの中央値は4日(IQR:2.0~4.0)、発症から死亡までの中央値は4日(2.0~5.0)だった。 8例に臨床的急性心筋炎が検出された。 本研究の結果、小児・青年のCOVID-19発症後の死因として、中枢神経系異常、次いで心臓異常が多かったことが示された。徴候・症状への対処に加えて、臨床医は基礎疾患にかかわらず、COVID-19発症から少なくとも最初の7日間は小児・青年患者を注意深く観察すべきだ、と著者らはまとめている。

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肝細胞がん患者、半数が「治療が仕事に影響」、休職・退職も/AZ

 アストラゼネカは、肝細胞がん(HCC)患者を対象に、治療実態と生活への影響を調査し、2024年7月にその結果を発表した。調査は全国47都道府県に住む173例のHCC患者を対象とし、2024年4月22日~5月7日に実施された。アンケートの概要 全国47都道府県に住むHCCと診断されたことのある患者173例(B型またはC型肝炎の罹患歴あり:76例、なし:91例、不明:6例。男性89%、平均年齢66歳)。2010年以前にはB型C型肝炎罹患歴「あり」の患者の割合が74%であったのに対し、2011~20年には約半数となり、2021年以降は26%にまで減った。初回治療の選択とその結果・過去10年以内に診断を受けた患者が80%を占めており、初回治療として最も多く選ばれたのは肝切除(開腹手術または腹腔鏡手術)で54%の患者が選択した。B型またはC型肝炎の罹患歴がない患者は、ある患者に比べて初回治療に薬物治療を選ぶ割合が高かった(24%対3%)。・初回治療から2次治療までの期間は、肝切除を受けた患者は平均32.8ヵ月だったのに対し、薬物治療を選択した患者は11ヵ月と短かった。就労への影響と治療の負担・診断時に就労していた患者は6割で、うち半数が「仕事への影響があった」と回答した。「仕事への影響があった」と回答した人のうち44%が休職、11%が退職を経験していた。とくに薬物治療を受けた患者では7割が「日常生活に治療の影響があった」と回答した。・治療に伴う入院率は初回治療~4次治療を通じて75%以上となり、治療が患者の社会生活や経済活動に大きな支障となっていることが確認された。・治療開始後の体調変化としては「疲れやすい、体がだるい」が34%と最多で、次いで「食欲の増加・低下」が20%、「発熱」が16%だった。医療従事者とのコミュニケーション・86%の患者が治療開始前に副作用や体調の変化について医師から説明を受けていたが、その頻度としては45%が「治療開始前に説明を受けたが、その後は受けていない」と回答しており、フォローアップ不足の可能性が伺われる結果となった。・3割の患者が治療期間中に体調の変化や症状を経験しているが、うち6割が次の診察日までその症状を医療従事者に伝えていなかった。その理由としては「我慢できる範囲だと思った」「急いで報告すべきとは思わなかった」が上位に挙がった。 本調査を監修した国立がん研究センター中央病院の奥坂 拓志氏は「肝がんはかつてはB型・C型肝炎を原因とするウイルス性が大半だったが、現在では非ウイルス性が増加している。非ウイルス性では生活習慣、とくに脂肪肝(アルコール性肝疾患やNAFLD)が大きなリスク因子となる。ALT値が30を超えたら受診を呼びかける日本肝臓学会の『奈良宣言』の徹底による肝がんの早期発見が重要だ」とした。

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AI搭載超音波デバイス、妊娠週数を正確に推定/JAMA

 超音波検査の訓練を受けていない初心者でも、AI搭載超音波デバイスを用いた低コストのポイント・オブ・ケア検査なら、認定超音波検査技師が高性能機器を用いて行う標準的な測定と同等の精度で、妊娠14~27週の妊娠週数(GA)が推定できることを、米国・ノースカロライナ大学チャペルヒル校のJeffrey S. A. Stringer氏らが前向き診断精度研究の結果で報告した。GAの正確な評価は適切な妊娠ケアに不可欠であるが、多くは超音波検査が必要であり、医療資源の少ない環境では利用できない場合があった。JAMA誌オンライン版2024年8月1日号掲載の報告。初心者によるAI搭載超音波デバイスと、認定技師による高性能機器でのGA推定を比較 研究グループは、2022年7月27日~2023年4月10日に、ザンビアのルサカおよびノースカロライナのチャペルヒルにおいて、健康で単胎妊娠の異常のない妊娠初期女性400例を登録し、有資格の超音波検査技師が経膣頭殿長測定によりGAの「基準値」を確定した。 参加者には、妊娠14週0日~27週6日の主要評価期間を含む観察期間中に、無作為に割り当てられた時期に受診してもらい、初心者がAI搭載超音波デバイスを用いて母体の腹部を盲目的にスキャンするとともに(試験検査)、資格のある超音波検査技師が高性能機器を使用して胎児の測定を実施した(標準検査)。 主要アウトカムは、試験検査と標準検査の平均絶対誤差(MAE)とした。各検査の推定値を事前に確定されたGAと比較して算出し、その差が事前に規定した±2日のマージン内に収まる場合は同等とみなした。MAEの差は0.2日であり、精度は同等 主要評価期間(妊娠14~27週)において、MAE(SE)はAI搭載超音波デバイス3.2(0.1)日、標準検査3.0(0.1)日、群間差0.2日(95%信頼区間:-0.1~0.5)であり、事前に規定された同等性の基準を満たした。また、GAの「基準値」との差が7日以内の割合は、AI搭載超音波デバイス90.7%、標準検査92.5%であり、同等であった。 結果は、ザンビアとノースカロライナのコホート、高BMIグループなど、サブグループで一貫していた。 なお、本研究は一般的な妊婦集団を対象としており、高血圧、糖尿病、高度肥満などのハイリスク妊婦におけるAI搭載超音波デバイスの性能評価を目的としていないこと、2ヵ国3施設で実施したものでありより多くの地理的場所を含めることで一般化の可能性が改善される可能性があること、胎児の異常が判明した参加者は除外されていること、などを研究の限界として挙げたうえで、「今回の結果は、医療資源の少ない環境での産科ケアに直接的な影響を及ぼすものであり、すべての妊婦のGAを超音波検査で推定するという世界保健機関の目標の達成を前進させるものである」とまとめた。

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対話型テキストメッセージの禁煙介入、青少年の禁煙率を上昇/JAMA

 ソーシャルメディアを通じて募集したベイピングの中止を希望する青少年に対して、対話型のテキストメッセージによる禁煙介入は、評価のみの対照と比較して、自己申告によるベイピングの禁煙率を上昇させることが、米国・Truth InitiativeのAmanda L. Graham氏らによる無作為化二重盲検比較試験の結果で示された。電子タバコは、青少年の間で最も一般的に使用されているタバコ製品である。10代の青少年のニコチン曝露による有害性は知られているものの、検証されたベイピングを中止するための介入法はなかった。JAMA誌オンライン版2024年8月7日号掲載の報告。対話型テキストメッセージの介入群と、評価のみの対照群に無作為化 研究グループは2021年10月1日~2023年10月18日に、13~17歳で現在(過去30日)電子タバコを使用し、30日以内の禁煙に興味があり、テキストメッセージプラン付きの携帯電話を有する米国居住者を、介入群または対照群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 参加者は、Instagram、Facebook、Snapchatの広告を通じて募集された。 フォローアップ率を最適化するために、電子タバコの使用に関するインセンティブ付きのテキストメッセージ調査(1通5ドル)を、無作為化14日後、以降は6ヵ月間の追跡期間中毎月、すべての参加者に送り評価した。 対照群は、上記の研究継続テキストメッセージのみを受信した。介入群は、研究継続テキストメッセージに加え、認知および行動的対処技術トレーニングと社会的サポートを提供するベイピング中止のための自動対話型テキストメッセージプログラムを受信した。 主要アウトカムは、7ヵ月時点での自己申告に基づく30日間のベイピングの禁煙率。欠測値はベイピングの使用としてコード化しITT解析を行った。7ヵ月時点の30日禁煙率は介入群37.8% vs.対照群28.0% 適格基準を満たした1,503例が、介入群(759例)と対照群(744例)に無作為化された。平均年齢は16.4歳(SD 0.8)、女性50.6%・男性42.1%・ノンバイナリーまたはその他7.4%、黒人またはアフリカ系アメリカ人10.2%・白人62.6%・多民族18.5%・その他8.7%、ヒスパニック16.2%、LGBQ+42.5%で、76.2%が起床後30分以内にベイピングを使用していた。7ヵ月間の追跡調査率は70.8%であった。 主要アウトカムである7ヵ月時点の30日禁煙率は、介入群で37.8%(95%信頼区間[CI]:34.4~41.3)、対照群で28.0%(24.9~31.3)であり、相対リスクは1.35(95%CI:1.17~1.57、p<0.001)であった。 30日禁煙率に対する治療効果に影響を及ぼす、ベースラインにおける変数はなかった。また、ベイピングをやめた参加者が、燃焼式タバコ製品に移行したというエビデンスは確認されなかった。

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犬は人間のストレスのにおいを感じ取り、行動を選ぶ

 犬は人間がストレスを感じているのかリラックスしているのかを嗅ぎ分けることができ、また、そのような嗅覚情報は犬の感情や行動の選択にも影響することが、新たな研究で示唆された。英ブリストル大学獣医学部野生動物保護学分野のNicola Rooney氏らによるこの研究の詳細は、「Scientific Reports」に7月22日掲載された。Rooney氏は、「使役犬の訓練士はよく、自分のストレスがリードを介して犬に伝わると表現するが、われわれは、空気を介してストレスが犬に伝わる可能性のあることを示した」と述べている。 研究グループは、十分に評価されていないものの、人間の間ではにおいが感情的コミュニケーションの重要な一形態であることは以前より指摘されていると説明する。このことから研究グループは今回、人間よりもはるかに高性能の嗅覚を持つ犬は、人間の感情を嗅覚で感じ取り、それに応じた行動をとるのではないかと考え、18頭の犬を対象に実験を行った。 実験は、それぞれ7日程度の間隔を空けて実施する3つのセッションで構成されていた。最初のセッションでは、無臭サンプルを用いて、ある場所に置かれたボウルの中にはおやつが入っているが別の場所に置かれたボウルの中には何も入っていないことを犬に学ばせた。 続くセッション2と3では、ストレスのかかった状態とリラックス状態にある人から採取した息と汗のサンプル(それぞれ、「ストレスサンプル」「リラックスサンプル」とする)に犬を曝露させた上で、おやつ入りのボウルと空のボウルの間の曖昧な位置(おやつが入っているボウルに近い位置、おやつの入っているボウルと空のボウルの中間、空のボウルに近い位置)に置かれたボウルに対して犬がどのように行動するのかを観察した。セッション2では半数の犬にストレスサンプル、残りの半数にリラックスサンプルを用い、セッション3ではその逆とした。犬をサンプルに曝露させる前には必ずおやつ入りのボウルと空のボウルの位置を学ばせる訓練を行った。犬が曖昧な位置に置かれたボウルに素早く近付いた場合には、「ボウルの中に食べ物があるかもしれない」という「楽観的」な心境にあり、逆に、ゆっくり近付いた場合には、「多分、中におやつは入ってない」という「悲観的」な心境にあると見なした。 その結果、セッション3でストレスサンプルのにおいに曝露した犬は、無臭のサンプルに曝露した場合と比べて、曖昧な位置(空のボウルに近い場所)に置かれたボウルへ向かおうとする意欲が有意に低下することが明らかになった。このことは、犬は人間のストレスのにおいを嗅ぎ取ると、エネルギーを節約して失望を避けるというリスク回避行動を取る可能性があることを示唆している。このような「悲観的」な反応は、リラックスサンプルに曝露させた場合には見られなかった。また、おやつ入りのボウルと空のボウルの位置に関する犬の学習は訓練を重ねるごとに向上したが、セッション2と3の間では、セッション3でストレスサンプルに曝露した場合にのみ顕著な向上を見せた。この結果から、においが学習に影響を及ぼしていることがうかがわれた。 Rooney氏は、「犬の飼い主は、ペットがどれほど自分の感情に同調しているかを知っている。しかし今回の実験では、ストレスのかかった見知らぬ人のにおいでさえも、犬の感情状態、報酬の知覚、学習能力に影響を与えることが示された」と話す。 さらにRooney氏は、この知見は実社会への応用が可能だと話す。同氏は、「人間のストレスが犬のウェルビーイングにどのような影響を与えるのかを理解することは、犬舎で飼われている犬、コンパニオンドッグや補助犬などの使役犬として訓練されている犬にとって重要な検討事項だ」と述べている。

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入院中の移動能力の変化が大腿骨近位部骨折リスクと関連

 日本の急性期病院に入院している高齢患者を対象に、患者の状態の変化に着目し、大腿骨近位部骨折(PFF)リスクの予測因子を検討する研究が行われた。その結果、入院中に移動能力が改善した患者は骨折リスクが高く、移動能力の変化をモニタリングすることで骨折の予測精度が向上する可能性が示唆された。獨協医科大学産科婦人科学講座の尾林聡氏、東京医科歯科大学病院クオリティ・マネジメント・センターの森脇睦子氏、鳥羽三佳代氏らによる研究の成果であり、「BMJ Quality and Safety」に6月20日掲載された。 身体機能が低下する高齢者は転倒リスクが高い。転倒のリスク因子として、筋力、日常生活動作やバランス能力の低下などが挙げられるが、これらの能力は入院中の患者の歩行安定性により変化する可能性がある。転倒によるPFFは、患者の予後、QOL、医療費などに大きな影響を及ぼす。そのため、患者の状態や経過を考慮した、より正確な骨折予測モデルの開発が求められている。 そこで著者らは、DPCデータと「重症度、医療・看護必要度」データを用いて、2018年4月から2021年3月に入退院した65歳以上の患者のうち、寝たきりや病的骨折などの患者を除いた851万4,551人(1,321施設)を解析対象とする研究を行った。ロジスティック回帰分析を用いて、入院中のPFFと関連する因子を、移動能力の変化などを含めて詳細に検討した。 対象患者のうち、入院中のPFFの発生(骨折群)は1,858人(0.02%)だった。骨折群は非骨折群と比べて、平均年齢(82.6±7.8対77.4±7.7歳)、女性の割合(65.3%対42.7%)、BMI 18.5未満の割合(30.3%対14.3%)が高かった。また、併存疾患、手術や救急治療の有無、看護師配置や施設規模などの多くの変数についても、骨折群と非骨折群で有意差が認められた。 患者の移動能力について、骨折前日の介助の必要性および入院時から骨折前日の移動能力の変化を組み合わせて比較すると、骨折群は非骨折群と比較して、「介助なし×改善」(33.0%対15.7%)、「一部介助×変化なし」(25.8%対13.9%)、「一部介助×改善」(11.4%対4.4%)に分類される人の割合が高かった。 PFFリスクとの関連を検討した結果、入院時の移動能力については、「全介助」を基準として、「一部介助」のオッズ比(OR)は1.75(P<0.01)、「介助なし」のORは1.49(P<0.01)だった。入院時から骨折前日の移動能力の変化については、「変化なし」のORは1.58(P<0.01)、「改善」のORは2.65(P<0.01)であり、移動能力が改善した患者は、変化しなかった患者よりもPFFのリスクが高いことが示唆された。 今回の研究の結果、入院中に移動能力が改善した患者はPFFのリスクが高かったことから、著者らは、特に高齢患者は状態が変化しやすいことを指摘し、「患者の日々の移動状態の把握とその変化のモニタリングが、入院中の骨折予防に役立つ」と述べている。

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糖尿病の第6の合併症は歯周病(Dr.坂根のすぐ使える患者指導画集)

患者さん用画 いわみせいじCopyright© 2023 CareNet,Inc. All rights reserved.説明のポイント(医療スタッフ向け)診察室での会話患者医師患者医師今、歯科にかかっています。それはいいですね。いつまでも食事を楽しむには、お口の健康が大切ですからね。それに…。それに?「歯周病」は神経障害・網膜症・腎症の3大合併症、心疾患や脳卒中などの動脈硬化性疾患に次いで6番目の合併症と言われています。糖尿病の人は歯周病に2倍以上なりやすいというデータもあります。患者 糖尿病の6番目の合併症!医師 そうなんです。糖尿病になると歯周病になりやすくなり、歯周病が原因で歯を失うと硬いものが食べられなくなってバランスの悪い食事になります。それに食感が変わっておいしく食べられないし、表情が変わったり、喋りにくくなる人もいますからね。画 いわみせいじ患者 確かに、野菜とかは食べにくくなりますね。医師 逆に、お口のケアを上手にすると血糖コントロールもよくなるそうです。患者 えっ、そうなんですか。それなら、きっちりと歯の治療をしておかないといけませんね。医師 よろしくお願いしますね。ポイント高血糖だと歯周病が進行し、歯周病になると血糖コントロールが悪くなる負の連鎖があることをわかりやすく説明します。Rをカ行(関連性、危険性、効果、懸念、繰り返し)で覚えておくと便利です。Copyright© 2023 CareNet,Inc. All rights reserved.

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