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不妊治療中、男性はコーヒーの飲み過ぎに注意

 不妊治療中カップルの男性におけるコーヒー、紅茶、蒸留酒の摂取量と生児出生確率が逆相関していた一方、ビールでは正相関がみられたことが、米国・ハーバード公衆衛生大学院のAlbert Salas-Huetos氏らの研究で示された。Andrology誌2025年3月号に掲載。 これまでの飲料と生殖に関する健康との関係を調べた研究は相反する結果が得られている。今回、男性343人から採取した精液896サンプルについて、女性が妊娠する前の男性の飲料摂取量と精液の質との関係を調べた。714周期(子宮内人工授精306周期、体外受精408周期)の生殖補助医療を受けた296人の男性とそのパートナーの女性を対象に、飲料摂取量と生殖補助医療によるアウトカム(受精、着床、臨床的妊娠、全/臨床的流産、生児出生)との関係を評価した。 主な結果は以下のとおり。・カフェイン入り飲料、アルコール入り飲料、砂糖入り飲料、人工甘味料入り飲料の摂取は、精液の質パラメータや、生殖補助医療を受けたカップルにおける受精、着床、臨床的妊娠、生児出生とは関連していなかった。・飲料別に検討したところ、体外受精サイクルを受けたカップルにおいて、カフェイン入りコーヒー/紅茶の摂取量と生児出生確率が逆相関していた。摂取量の最低三分位と最高三分位における調整生児出生確率(95%信頼区間[CI])は、カフェイン入りコーヒーで0.49(0.38~0.61)と0.33(0.24~0.43)、カフェイン入り紅茶で0.49(0.33~0.51)と0.31(0.22~0.41)であった。蒸留酒でも0.45(0.37~0.53)と0.32(0.25~0.41)と同様の傾向がみられた。・一方、ビールでは摂取量が多いほど生児出生確率が高く、最低四分位と最高四分位における調整生児出生確率(95%CI)は、0.32(0.23~0.42)と0.51(0.39~0.62)であった。

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Lp(a)測定の国際標準化、新薬登場までに解決か/日本動脈硬化学会

 60年前に初めて発見され、LDLコレステロール(LDL-C)と独立して動脈硬化を促進させる血清リポプロテイン(a)(以下「Lp(a)」)。その存在自体は医師にも知られているが、「一生に一度測定すればよい」との勧告や治療薬が存在しないことも相まって、測定する意義や基準値に関する理解が今ひとつ進んでいないのが実情である。しかし、数年後にLp(a)を低下させる新薬が登場すると期待されている今、これらの解決が急務とされている。そこで、日本動脈硬化学会が「Lp(a)と測定値の標準化について」と題し、プレスセミナーを開催。三井田 孝氏(順天堂大学医療科学部 臨床検査科)がLp(a)測定を推進していく中で問題となる測定値の標準化にフォーカスして解説した。 Lp(a)とは、そもそも何か Lp(a)とは、低比重リポ蛋白(LDL)を形成しているapoB-100にapo(a)が結合して形成されるリポ蛋白粒子である。apo(a)にはクリングルと呼ばれる領域があり、なかでもクリングルIV(KIV、KIV1~10のサブタイプあり)のうちKIV2の繰り返し数がLp(a)濃度を決定付ける。「この繰り返しは遺伝子によって決まるが、それが少ないほどLp(a)濃度が高くなる」と、三井田氏は遺伝子レベルで個人差があることを説明した。さらに、Lp(a)は酸化リン脂質と結合するとLDLと独立した動脈硬化リスク因子となり、心筋梗塞や虚血性脳卒中、大動脈弁狭窄症の発症との関連性も明らかになってきている1)。Lp(a)測定の意義 このLp(a)に対し、医師の本音として“数値の解釈が難しい”、“検査キットによって数値のばらつきがあるから測定したくない…”といった声も挙がっているようだが、強力なLDL低下療法を行っているにもかかわらず思うようにコントロールできない残余リスクのある患者では、Lp(a)の影響が高い可能性がある。そのためLp(a)を測定し、高値であれば冠動脈疾患高リスク患者と捉え、LDL-Cをはじめとする介入可能な危険因子管理をより厳格に行う2,3)ことが求められる。「既存薬で避けられなかった残余リスクを低下させられる可能性があるため、2次予防の観点からもLp(a)の測定は重要」と述べた。また、近い将来に核酸医薬や経口薬といったラインナップの薬剤が上市されることを見越して、「今のうちから高リスク患者だけでも測定しておく意義はある」ともコメントした。測定基準、国際標準化の必要性 このように新薬の上市が期待される中で、Lp(a)の検査をオーダーする医師が少ない以前に解決すべき問題がある。それはLp(a)測定値は30年以上前から測定キットによってばらつきがある点だ。これについて同氏は「Lp(a)測定値は世界的に見ても施設や試薬によって大きく異なり、国際的な標準化が急務。過去に標準化の試みがあったものの、標準物質の入手困難などで頓挫してしまった」と説明した。「各国のガイドラインでハイリスク群のカットオフ値が決められているが、検査に用いる測定キットにより実際の値に2倍もの乖離が生じている。実は30年前に一度、国際臨床化学連合(IFCC)がワーキンググループを設立して一次標準物質としてSRM-2B*を選定したが、残念ながら標準化は達成できなかった。それ以来、各社バラバラの測定値を報告してしまっている。しかし、IFCCは新たなワーキンググループを設立し、2023年には質量分析装置を用いたLp(a)の基準測定法を発表して、ようやく測定基準の標準化に向けて一歩を踏み出した」とコメントした。*SRM:Standard Reference Material<現時点での各ガイドラインにおけるLp(a)の取り扱い>●米国・AHA/ACCガイドライン(2019年) <30mg/dL 有意なアテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)リスクなし ≧50mg/dL ASCVDのリスク増強因子●欧州・ESC/ ESAガイドライン(2020年) ≧50mg/dL ASCVDのハイリスク群●日本・JASガイドライン(2022年) その他の考慮すべき危険因子・バイオマーカー今、日本で進められていること そして残るは測定値の国際標準化だが、三井田氏らが世界をリードして国内からカットオフ値を発信していく取り組みを行っている。それを推し進める理由として「Lp(a)の分子量はapo(a)のアイソフォームにより異なるため、正確に知ることができず、mg/dLで表示することは計量学的な誤りがある。標準化に際し、各キットの値をすべて変更しなければ臨床現場で大きな混乱を招く恐れがあり、標準化値(SI単位)へ移行すれば過去のデータも有効活用することができる」と説明した。 このようにLp(a)は混乱の渦中にあるため、現行の国内ガイドライン2,3)には測定の推奨や基準がまだ明確にされてはいない。同氏は「2027年の改訂時には標準化されたLp(a)値が記載されることが期待される」と述べ、「臨床系の学会への啓発が不足していたこれまでの反省を胸に、各学会や一般市民、世界を巻き込んで標準化を進めていかなければならない」と意気込みをみせた。

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化学療法誘発性末梢神経障害の克服に向けた包括的マネジメントの最前線/日本臨床腫瘍学会

 2025年3月6~8日に第22回日本臨床腫瘍学会学術集会が開催され、8日の緩和ケアに関するシンポジウムでは、「化学療法誘発性末梢神経障害のマネジメント」をテーマに5つの講演が行われた。化学療法誘発性末梢神経障害(chemotherapy-induced peripheral neuropathy:CIPN)は、抗がん剤投与中から投与終了後、長期にわたって患者のQOLに影響を及ぼすものの、いまだ有効な治療の確立に至っていない。そこで、司会の柳原 一広氏(関西電力病院 腫瘍内科)と乾 友浩氏(徳島大学病院 がん診療連携センター)の進行の下、患者のサバイバーシップ支援につなげることを目的としたトピックスが紹介された。CIPN予防戦略の現状と今後の研究開発への期待 まず、CIPNの予防に関する最新エビデンスが、華井 明子氏(千葉大学大学院 情報学研究院)より紹介された。『がん薬物療法に伴う末梢神経障害診療ガイドライン2023年版』には、CIPNを誘起する化学療法薬の使用に際し、予防として推奨できるものはないと記載されている。また、抗がん剤の種類によっては投与しないことを推奨する薬剤もあり、状況に応じて運動や冷却の実施が推奨されるものの、強く推奨できる治療法はない。そのため、多くの患者が苦しんでいる現状が指摘された。 こうした中、手足を冷却または圧迫して局所の循環血流量を低下させることで、抗がん剤をがん細胞に到達させつつ、手足には到達させない戦略がCIPN予防に有効とのエビデンスが散見されており、冷却がやや優位との成績が最近示された。「ただし、冷却の効果は抗がん剤投与中に最大限発揮されるので、投与後数時間経過して出現する症状には効果がない」と、同氏は説明した。 なお、がん治療中の運動は、心肺機能や筋力、患者報告アウトカムなどを改善するとのエビデンスが確立しているため、有酸素運動や筋力トレーニングが推奨されている。一方、CIPN予防における運動の実施は、本ガイドラインでは推奨の強さ・エビデンスの確実性ともに弱い。同氏は、「それでも治療前のプレハビリテーションにより体力・予備力を高めておくことは有効」とした。また、予防ではなく、CIPN発現例に対する治療であるが、バランス運動、筋力トレーニングおよびストレッチは、いずれも長期的には実施のメリットが大きいとの研究成果が紹介された。 「CIPNの頻度は抗がん剤の種類はもちろん、評価の時期・指標によっても異なり、患者の生活状況や主観が大きく影響する。そのため、評価方法の標準化がCIPN予防/治療戦略の開発につながるだろう。また、運動プログラムのエビデンスは増え続けていることから、ガイドラインの次期改訂では推奨が変わる可能性もある」と、同氏は期待を示した。CIPN治療戦略と実臨床への橋渡しに向けた取り組み 次に、CIPNの治療に関する動向が吉田 陽一郎氏(福岡大学病院 医療情報・データサイエンスセンター 消化器外科)より解説された。『がん薬物療法に伴う末梢神経障害診療ガイドライン 2023年版』で薬物療法として推奨されている薬剤は1剤のみであり、予防ではなく治療のみでの使用が可能となっている。同氏はその根拠となった論文と共に、最新のシステマティックレビュー論文に触れ、「エビデンスが不十分で、本ガイドラインにおける推奨の強さは弱い。CIPNの予防や治療の領域では、プラセボが心理的な影響だけでなく、生理的な変化をもたらすことが知られているため、プラセボ効果を含めたデザインの下で臨床試験を実施することが望まれる」と述べた。 こうした中、わが国ではCIPN症状が出現した際に投与する薬剤のアンケート調査が、『がん薬物療法に伴う末梢神経障害マネジメントの手引き 2017年版』の公表前後(2015年および2019年)に実施され、使用薬剤の変化が報告されている。近く再調査が行われる予定で、より現実的なマネジメントの理解につながるとのことである。さらに同氏は、わが国の臨床試験の状況や課題点などを説明するとともに、日本がんサポーティブケア学会 神経障害部会が取り組んでいるCIPNに関する教育動画について、「詳細は日本がんサポーティブケア学会のホームページに近日掲載予定で、2025年5月に開催される同学会の学術集会でも告知予定」と紹介した。がんサバイバーのCIPNに対する鍼灸治療の可能性 わが国では年間100万例ががんに罹患し、治療後も慢性疼痛、とくにCIPNを訴える患者が増えている。石木 寛人氏(国立がん研究センター中央病院 緩和医療科)は、「乳がんの場合、年間9万例の発症者のうち、5年生存率が90%で、その半数が痛みを抱えているとすれば、毎年約4万例の慢性疼痛患者が発生する。現状では各種鎮痛薬による薬物療法が推奨されているが、痛みの原因を根本的に解決する治療ではないため、非薬物療法のニーズは高まっている」と指摘。 このような背景もあり、同氏が所属する診療科では1980年代から鍼灸治療を緩和ケアの一環として提供してきた。治療は刺入鍼、非刺入鍼、台座灸、ホットパックを組み合わせ、標治法(症状部位の循環改善を促す局所治療)と本治法(体力賦活を図る全身調整)により、CIPNでは週1回30分、3ヵ月間の施術を基本とし、施術後に患者が自宅で行うセルフケア指導も治療に含まれる。 同院では、こうした鍼灸治療の乳がん患者における有用性を検証する前向き介入試験を2022年より実施しており、「結果は2025年6月の米国臨床腫瘍学会(ASCO)で発表予定」と、同氏は紹介した。さらに現在、多施設ランダム化比較試験を準備中で、乳がん診療科と鍼灸治療提供施設とのネットワーク作りとして、各施設や学会、企業などと月1回のオンラインミーティングを実施。「円滑な共同研究のためには、まずは互いの人となりや専門性を理解し、強固な連携体制を築いていくことが重要」と強調した。また、鍼灸師が医療機関に出向いて技術交流を行うなど、現場レベルでの連携も進んでいるという。 これに加え、学会やWebセミナーでの交流会、学術団体同士の相互理解を深める取り組みなど、さまざまな普及活動を進めており、「CIPNに苦しむ患者への新たな治療選択肢を提供できる日は近づいている」と、同氏は意欲を示した。CIPNマネジメントにおける医療機器の現状と課題 久保 絵美氏(国立がんセンター東病院 緩和医療科)によると、CIPNのマネジメントには医療機器の活用が重要になるという。ただし、「日・米・欧のガイドラインでCIPN予防/治療における冷却療法や圧迫療法、その他治療法の推奨の強さやエビデンスの質は異なる」と指摘。米国食品医薬品局(FDA)に承認されている機器が紹介されるも一定の評価は得られず、今後も引き続き検証が必要とされた。 一方、内因性疼痛抑制系の賦活や神経成長因子の調整、抗炎症作用などにより複合的に鎮痛をもたらす交番磁界治療器の有効性が、前臨床試験と共に、同氏が研究責任医師として担当した臨床試験で検討されている。それによると、CIPNの原因となる抗がん剤投与終了後1年以上経過した症状固定患者のtingling(ピリピリ・チクチク)やnumbness(感覚の低下)に関して、一定の効果が示唆され保険収載に至っている。 同氏は、「医療機器によるCIPNマネジメントは発展途上で、エビデンス不足が課題である。そのため、前臨床データの拡充と共に、治療効果のさらなる検証は必須」と強調した。脳の神経回路の変化に起因する“痛覚変調性疼痛”の理解と治療戦略 痛みには侵害受容性疼痛、神経障害性疼痛に加え、これまで心因性疼痛や非器質的疼痛と呼ばれていた痛覚変調性疼痛がある。川居 利有氏(がん研究会 有明病院 腫瘍精神科)は、「痛覚変調性疼痛はCIPNに付随するものである。たとえば、3ヵ月を超えるような抗がん剤投与後からの手足のしびれ、強い倦怠感、浅眠、めまい・耳鳴り、食欲低下や、抗がん剤投与終了後も症状が改善せずに遷延・悪化すること、また、不安が強くなり、症状に執着し訴えが執拗になることがある。このような患者に遭遇したことはないだろうか」と問い掛けた。 これは脳神経の可塑的変化により発症、維持される慢性痛で、痛み過敏、睡眠障害、疲労、集中困難、破局思考などを伴う。神経可塑性とは、脳の神経が外部刺激により伝達効率を変化させる能力で、学習や記憶に深く関わる一方、慢性痛では脳の感覚-識別系が抑制され、情動-報酬系、認知-制御系が活性化する。この状態が進むと痛みに対する不安や苦痛が増すばかりか、痛みを軽減する下行性制御系、いわゆるプラセボ回路の機能が低下し、痛みへの自己調節が困難となる。これが不安症や強迫症、治療への期待感の喪失、医療への不信感などにつながるという。 同氏は、「CIPNは長期間に持続し、そこに神経の可塑的変化による痛覚変調性疼痛が追加されることで、痛みはもとより、うつ病や不安症、自律神経症状も加わり、感情調節機能不全に陥る」と説明。また、「CIPNの慢性化では過敏症状の併発に注意し、急激な症状変化の有無についての詳細な問診が大切である。この状態は単なる“気のせい”ではなく、長期間の心理社会的問題などの蓄積による機能障害が原因」とし、「治療には患者との信頼関係の構築が不可欠で、とくに慢性化したケースでは患者の背景や過去の経験に配慮する必要がある。睡眠や心理的ケアは治療上重要なため、心療内科や精神科への適切な紹介が推奨される。CIPNそのものは治らないが、QOL改善には過敏症状のマネジメントが大切」と結んだ。

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CKDの貧血治療、ダプロデュスタットvs.ダルベポエチン アルファ~メタ解析

 貧血を伴う慢性腎臓病(CKD)患者を対象として、ダプロデュスタットとダルベポエチン アルファの有効性と安全性を比較したメタ解析の結果、ヘモグロビン(Hb)値、トランスフェリン飽和度、血清鉄の変化、有害事象の発現率は両群間で有意差を認めなかったものの、ダプロデュスタットはダルベポエチン アルファよりもフェリチン値の変化が小さく、総鉄結合能を改善したことを、中国・長春中医薬大学のShuyue Pang氏らが明らかにした。Journal of Pharmacological Sciences誌2025年5月号掲載の報告。 貧血はCKDの一般的な合併症であり、心血管イベントおよびCKD進行の危険因子である。近年は腎性貧血治療薬も増えているが、貧血を伴うCKD患者に対する治療戦略と有効性の最適化は早急に取り組むべき重要な課題として残されたままである。そこで研究グループは、ダプロデュスタットとダルベポエチン アルファの有効性と安全性を比較することを目的として、系統的レビューとメタ解析を行った。 PubMed、Embase、Cochrane Library、Web of Scienceをデータベース開設から2023年8月1日まで体系的に検索し、透析の有無にかかわらずCKDおよび貧血と診断された患者の治療として、ダプロデュスタット(試験群)とダルベポエチン アルファ(対照群)を比較したランダム化比較試験を抽出した。主要アウトカムはHb値、トランスフェリン飽和度、フェリチン値の変化で、副次アウトカムは総鉄結合能、血清鉄の変化、有害事象の発現率であった。 主な結果は以下のとおり。・4件のランダム化比較試験の7,419例が解析対象となった。ダプロデュスタット群は3,717例、ダルベポエチン アルファ群は3,702例であった。・Hb値の変化(標準化平均差[SMD]:3.23、95%信頼区間[CI]:-0.25~6.70)、トランスフェリン飽和度の変化(SMD:-0.07、95%CI:-0.31~0.17)、血清鉄の変化(SMD:0.24、95%CI:−0.05~0.53)は両群間で有意差を認めなかった。・ダプロデュスタット群はダルベポエチン アルファ群よりもフェリチン値の変化が有意に小さく(SMD:-0.05、95%CI:-0.10~-0.01)、総鉄結合能が改善した(SMD:0.57、95%CI:0.46~0.68)。・有害事象の発現率は両群間で同等であった(リスク比:1.02、95%CI:0.98~1.06)。 研究グループは「これらの結果は、Hb値の維持と安全性プロファイルの点でダプロデュスタットが劣っていないことを裏付けると同時に、鉄代謝における潜在的な利点を強調している」とまとめた。

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局所進行上咽頭がん、化学放射線療法後のcamrelizumabが有効/JAMA

 局所進行上咽頭がん(NPC)の化学放射線療法後の補助療法として、camrelizumabの投与は無イベント生存(EFS)を有意に改善し毒性も管理可能であり、有用性が確認されたことを、中国・中山大学がんセンターのYe-Lin Liang氏らが中国の11施設で実施した第III相無作為化非盲検試験「DIPPER試験」の結果として報告した。NPC患者の約20~30%は、根治的化学放射線療法の施行にもかかわらず再発する。抗PD-1抗体のcamrelizumabは、再発または転移のあるNPCに対する有用性は示されているが、局所進行NPCにおける有用性は不明であった。JAMA誌オンライン版2025年3月13日号掲載の報告。化学放射線療法が完了した局所進行NPC患者が対象、camrelizumabと標準治療を比較 研究グループは、2018年8月~2021年11月に、ゲムシタビン+シスプラチンによる導入化学療法、続いてシスプラチン併用放射線療法を完了したT4/N1/M0またはT1~4/N2~3/M0の局所進行NPCで、18~65歳、ECOG PS 0~1の患者を対象とした。 被験者450例を、補助療法としてcamrelizumabを投与する群(200mg静脈内投与を3週ごと1回で12サイクル、226例)または経過観察群(標準治療群、224例)に1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要評価項目は、EFS(遠隔転移、局所再発、または全死因死亡が発生するまでの期間)で、副次評価項目は無遠隔転移生存、無局所再発生存、全生存期間、安全性、および健康関連QOLなどとした。 追跡調査終了日は2024年3月20日であった。camrelizumab群で疾患再発または死亡リスクが44%減少 無作為化された450例の患者背景は、平均年齢45(SD 10)歳、女性24%、207例(46.0%)がT4期、142例(31.6%)がN3期、311例(69.1%)がIVA期などであった。 追跡期間中央値39ヵ月(四分位範囲:33~50)において、3年EFS率はcamrelizumab群86.9%に対し、標準治療群は77.3%であり、camrelizumab群で有意な延長が認められた(層別ハザード比:0.56、95%信頼区間:0.36~0.89、p=0.01)。 Grade3/4の有害事象は、camrelizumab群で23例(11.2%)、標準治療群で7例(3.2%)が報告された。camrelizumab群の主な有害事象は反応性毛細血管内皮増殖で、発現割合はGrade1/2が85.8%、Grade3/4が2%であった。camrelizumab群で治療に関連したQOLの有意な低下は認められなかった。

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家庭内空気汚染の疾病負担、1990~2021年の状況は?/Lancet

 世界的には家屋内で固形燃料(石炭・木炭、木材、作物残渣、糞)を用いて調理をする家庭は減少しており、家庭内空気汚染(household air pollution:HAP)に起因する疾病負担は大幅に減少しているものの、HAPは依然として主要な健康リスクであり、とくにサハラ以南のアフリカと南アジアでは深刻であることが、米国・ワシントン大学のKatrin Burkart氏ら世界疾病負担研究(Global Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors Study:GBD)2021 HAP Collaboratorsの解析で示された。著者は、「本研究で得られたHAPへの曝露と疾病負担に関する推定値は、医療政策立案者らが保健介入を計画・実施するための信頼性の高い情報源となる。多くの地域や国でHAPが依然として深刻な影響を及ぼしている現状を踏まえると、資源の乏しい地域で、よりクリーンな家庭用エネルギーへ移行させる取り組みを加速させることが急務である。このような取り組みは、健康リスクの軽減と持続可能な発展を促進し、最終的には何百万もの人々の生活の質と健康状態の改善に寄与することが期待される」とまとめている。Lancet誌オンライン版2025年3月18日号掲載の報告。1990~2021年の204の国と地域のデータを解析 研究グループは、1990~2021年の204の国と地域におけるHAPへの曝露と傾向、ならびに白内障、慢性閉塞性肺疾患、虚血性心疾患、下気道感染症、気管がん、気管支がん、肺がん、脳卒中、2型糖尿病および生殖に関する有害なアウトカムの媒介要因に関する疾病負担を推定した。 まず、調理に固形燃料を使用する人が曝露する微小粒子状物質(PM2.5)の燃料種別平均濃度(μg/m3)を、燃料種、地域、暦年、年齢および性別ごとに推定した。次に、疫学研究のシステマティック・レビューと、新たに開発されたメタ回帰ツールを用いて、疾患特異的ノンパラメトリック曝露反応曲線を作成し、PM2.5濃度の相対リスクを推定した。 また、曝露推定値と相対リスクを統合し、性別、年齢、場所、暦年ごとの原因別の人口寄与割合と疾病負担を推定した。HAP起因の疾病負担は減少、ただしサハラ以南アフリカと南アジアでは高リスク 2021年には、世界人口の33.8%(95%不確実性区間[UI]:33.2~34.3)にあたる26億7,000万人(95%UI:26億3,000万~27億1,000万)が、あらゆる発生源からのHAPに曝露しており、平均濃度は84.2μg/m3であった。これは、1990年にHAPに曝露した世界人口の割合(56.7%、95%UI:56.4~57.1)と比較すると顕著に減少しているが、絶対値でみると、1990年のHAP曝露者30億2,000万人から3億5,000万人(10%)の減少にとどまった。 2021年には、HAPに起因する世界の障害調整生存年(DALY)は1億1,100万(95%UI:7,510万~1億6,400万)であり、全DALYの3.9%(95%UI:2.6~5.7)を占めた。 2021年のHAPに起因する世界のDALY率は、年齢標準化DALYで人口10万人当たり1,500.3(95%UI:1,028.4~2,195.6)で、1990年の4,147.7(3,101.4~5,104.6)から63.8%減少した。 HAP起因の疾病負担は、サハラ以南のアフリカと南アジアで依然として最も高く、それぞれ人口10万人当たりの年齢標準化DALYは4,044.1(95%UI:3,103.4~5,219.7)と3,213.5(2,165.4~4,409.4)であった。HAP起因DALY率は、男性(1,530.5、95%UI:1,023.4~2,263.6)のほうが女性(1,318.5、866.1~1,977.2)よりも高かった。 HAP起因の疾病負担の約3分の1(518.1、95%UI:410.1~641.7)は、妊娠期間の短縮と低出生体重が媒介要因であった。 HAP起因の疾病負担の変化の傾向と要因分析の結果、世界のほとんどの地域で曝露の減少がみられたが、とくにサハラ以南のアフリカでは曝露の減少が人口増加によって相殺されていたことが示された。

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新型コロナ入院患者、退院後も2年以上にわたり死亡リスクは高い

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による入院歴がある人は、回復して自宅に戻れたとしても、決して安心できる状態とは言えないことが新たな研究で示唆された。COVID-19で入院した患者は、初回の感染から最長で2年半の間、全死亡リスクの高いことが明らかになったという。パリ・ビシャ病院(フランス)のSarah Tubiana氏らによるこの研究の詳細は、「Infectious Diseases」に2月27日掲載された。 Tubiana氏は、「これまで人々の関心の多くは新型コロナウイルスの短期的な危険性に向けられてきたが、われわれの研究では、COVID-19による入院歴のある人では、数カ月後、さらには数年後まで、重度の合併症リスクが高い状態が続くことが示された。この公衆衛生に対する長期的な影響は重大だ」と指摘する。 Tubiana氏らは今回の研究で、2020年1月1日から8月30日までの間にCOVID-19に罹患して入院したフランスの成人6万3,990人(平均年齢65歳、男性53.1%、COVID-19入院群)を追跡し、年齢、性別、居住地を一致させた、同時期にCOVID-19で入院していない対照群31万9,891人の健康状態と比較した。追跡期間中央値は、COVID-19入院群で894日、対照群で896日だった。 最長で30カ月間にわたる追跡期間中の10万人年当たりの累積全死亡率は、COVID-19入院群で5,218件であったのに対し、対照群では4,013件であった(発生率比1.30、95%信頼区間1.27〜1.33)。6カ月単位で分けて分析すると、COVID-19入院群の全死亡リスクは最初の6カ月間で最も高く(調整ハザード比2.93)、6〜12カ月後では低下し(同1.08)、その後は30カ月後まで大きく変化することはなかった(同1.07)。 また、COVID-19入院群はあらゆる原因により再入院するリスクも高く、10万人年当たりの累積入院率は対照群の1万2,095件に対してCOVID-19入院群では1万6,334件であった(発生率比1.35、95%信頼区間1.33〜1.37)。6カ月単位で見ると、COVID-19入院群の再入院リスクは、最初の6カ月間で最も高く(全入院の調整部分分布ハザード比2.47)、6〜12カ月後の期間で低下し(同1.21)、その後、30カ月後まで低下し続けた(同1.05)。 疾患別にCOVID-19入院群の再入院リスクを見ると、特に呼吸器疾患による再入院リスクが約2倍高かった(発生率比1.99)。また、糖尿病、慢性腎臓病、神経疾患、心血管疾患、精神疾患による再入院リスクも高かった。このような過剰リスクは、入院から6カ月(0〜6カ月)および6〜12カ月後では低下したが、24〜30カ月後では、神経疾患、呼吸器疾患、慢性腎不全、糖尿病による再入院リスクが統計学的に有意に上昇していた。 論文の上席研究者で、パリ・シテ大学(フランス)の感染症専門家であるCharles Burdet氏は、「入院から30カ月が経過しても、COVID-19患者では死亡あるいは重度の健康上の合併症リスクが高い状態が続いていた。これは、この疾患が人々の生活に長期にわたって広範な影響を及ぼすことを示している」と「Infectious Diseases」を発行するTaylor & Francis社のニュースリリースの中で述べている。同氏は、「この研究結果は、こうした長期的な健康リスクの背後にあるメカニズムと、リスクを軽減する方法を解明するための、さらなる研究の必要性を明確に示している」と付け加えている。 研究グループによると、COVID-19は全身の臓器やシステムにダメージを与えることが知られており、特に命に関わる重症の感染症となった場合、その可能性が高いという。「ただ、今回の研究は新型コロナウイルスの新しい変異株が出現する前の感染者を対象としているため、こうしたリスクはその後に新型コロナウイルスに感染した、より最近の入院患者には完全には当てはまらないかもしれない」と研究グループは付け加えている。

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各非定型抗精神病薬の抗精神病薬関連便秘リスク〜米国FDA有害事象報告

 抗精神病薬に関連する便秘は、日常診療において多くの患者にみられる副作用であるが、その研究は十分に行われているとはいえない。便秘は、患者の身体的健康に影響を及ぼすだけでなく、疾患負担に対する心理的ストレスを増大させる要因となるため、一層の注意が求められる。中国・Affiliated Guangji Hospital of Soochow UniversityのSidi He氏らは、米国FDA有害事象報告システムより、抗精神病薬関連の便秘に関する潜在的なリスクを分析した。Expert Opinion on Drug Safety誌オンライン版2025年2月17日号の報告。 FDA有害事象報告システム(FAERS)データベースより、2017年1月〜2022年12月に報告された抗精神病薬関連便秘の有害事象報告を収集した。報告オッズ比(ROR)および95%信頼区間(CI)は、症例/非症例法を用いて算出した。 主な結果は以下のとおり。・期間中に報告された便秘症例562件は、非定型抗精神病薬に起因する副作用であった。・アリピプラゾールとziprasidoneを除く他の非定型抗精神病薬は、便秘リスクと有意な関連が認められた(各々、p<0.05)。・RORは、amisulprideが最も高く(ROR:4.07)、次いでパリペリドン(ROR:2.73)、クエチアピン(ROR:1.83)、クロザピン(ROR:1.61)、オランザピン(ROR:1.50)の順であった。・リスペリドンは、便秘への影響が最も低かった(ROR:0.71)。 著者らは「クロザピン、オランザピン、amisulpride、クエチアピン、パリペリドンは、便秘リスクとの相関が認められた。一方、リスペリドンは、胃腸機能に対する影響が最も少ないことが示唆された。抗精神病薬関連便秘の継続的なモニタリングには、他のデータベースと組み合わせたFAERSデータベース分析が不可欠である」と結論付けている。

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第4回 急拡大する「やせ薬」、新たなリスクにも警戒を

肥満に対し驚くほどの効果を示したGLP-1製剤。私の住むアメリカでも爆発的にその使用が広がっていますが、一方でまれな副作用や長期使用に伴う副作用が十分明らかになっていないという現状もあります。そんな中、以前から話題になっていた「目の副作用」の可能性を示す研究報告1)が出たので、ご紹介します。GLP-1製剤の新たな副作用リスクを示唆する研究今回ご紹介する研究では、デンマークとノルウェーの国民健康登録データを用いて、2型糖尿病治療として使用されたGLP-1受容体作動薬セマグルチドと、SGLT-2阻害薬との比較をするためのコホート研究が行われました。研究では、デンマークでセマグルチド治療を開始した患者4万4,517例、ノルウェーで1万6,860例が対象となり、合計32件の非動脈炎性前部虚血性視神経症(NAION)の発生が確認されています。NAIONは、視神経の血流の障害により、視野欠損や視力低下を引き起こす病気です。片眼に突然起こることが多く、下半分が見えなくなる水平半盲が特徴です。デンマークでは、セマグルチド使用患者でのNAION発生率が1万人年当たり2.19件であったのに対し、SGLT-2阻害薬使用患者では1.18件、ノルウェーではそれぞれ2.90件と0.92件と報告されています。交絡因子調整後の解析で、両国を合わせたハザード比が2.81(95%信頼区間:1.67~4.75)、絶対リスク差は1万人年当たり+1.41件となり、事後のプロトコル遵守解析ではより高いリスク(ハザード比6.35)が示されました。これらの結果から、セマグルチド使用によりNAIONリスクが上昇する可能性が示唆されました。一方、発生件数自体は低く、因果関係があったとしてもまれな副作用であることが考えられます。もちろん、単一のコホート研究の結果のみであり、未知の交絡因子など、研究の限界に注意する必要がありますが、興味深い結果です。急速な普及と不適切使用への懸念近年、米国ではGLP-1製剤を基盤とした安価なコンパウンド医薬品が急速に普及しており、糖尿病治療のみならず、体重管理や美容分野への応用が注目されています。一方、日本では、自由診療や美容業界において、適正な使用法が守られないままGLP-1関連医薬品が導入されるケースが散見されています。適切な診察や検査を経ずに、肥満のない人への体重減少や美容効果を期待して投与される不適切な使い方は、健康を支えないばかりか健康リスクばかりを高めている懸念があります。今回の研究が示唆したような、まれな副作用リスクは、今後も追加で報告されてくる可能性があります。そんな中、十分な指導が行われずに使用された場合にはこうした副作用への発見が遅れ、重大な障害へと発展する可能性があるため、とくに注意が必要です。今回の研究結果は、治療効果の裏に潜むまれなリスクを明らかにするとともに、医薬品の適正使用の重要性を再度認識させるものだと思います。急速な普及に飛びつく前に、その副作用やリスクについても十分に理解、検討をする必要があります。とくに日本国内での自由診療や美容目的での不適正使用に対しては、厳密なルール作りが求められると同時に、消費者への注意喚起も急務といえるでしょう。参考文献・参考サイト1)Simonsen E, et al. Diabetes Obes Metab. 2025 Mar 17. [Epub ahead of print]

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不幸のメカニズム【Dr. 中島の 新・徒然草】(573)

五百七十三の段 不幸のメカニズム花粉がきつい!エレベーターなどで他のスタッフと顔を合わせた時にもこの話題は鉄板です。「花粉、大丈夫ですか?」「いや~、まったくダメですね」そんな会話を交わしつつ、私自身も花粉を避けて過ごしています。さて今回は「不幸のメカニズム」について。もちろん、人それぞれに考えは違うので、あくまでも「私はこう考えている」というお話です。私はずっと患者さんに「明るく、楽しく、前向きに生きましょう」とお伝えしてきました。病気を治すことはもちろん大切ですが、それと同じくらい「幸せになること」も大事だと考えているからです。ただ、どうすれば幸せになれるかとなると、これがなかなか難しい。正解があるのかもしれませんが、簡単には見つかりません。一方で「こうすると不幸になりやすい」というパターンは、確かにあると思います。たとえば、何か嫌なことが起きた時に、それを「社会のせい」や「誰かのせい」にするという思考。私の経験上、そうした姿勢は、ますます不幸を引き寄せてしまう気がします。例を挙げてみましょう。「日本はもう終わってる。こんな国に生まれたから、自分は不幸なんだ」といった声。確かに、今の日本の元気のなさは否定できません。バブル時代を知っている私としては、なおさら残念に感じます。また「自分は人間関係に恵まれないから、不幸なんだ」というのもよく耳にする話です。そういう人は、いつも周囲の誰かに腹を立てている印象があります。これは「卵が先か、鶏が先か」のような問題とも言えましょう。つまり、本当に社会や人間関係に問題があるから不幸になっているのかもしれません。その一方で、私にはその人の姿勢や考え方が、不幸を呼び寄せている面もあるように思えます。なぜそう考えるのか、その仕組みを少し説明してみましょう。不幸な状況を変えようとする時、自分でどうにかできることと、できないことがあります。たしかに、個人の力で社会を変えることが難しいのは言うまでもありません。でも、社会ばかりを責めていると、「自分で変えられる部分」に目が向かなくなるのではないでしょうか。「社会が悪いんだ」とばかり言っている人を見ると、「いや、でも変えられることもあるのでは?」と、つい言いたくなります。とはいえ、言ってもなかなか伝わらないので、黙って聞くようにしているわけですが。また「人間関係に恵まれないから不幸になる」という考え方にも、疑問を持たざるを得ません。誰の周りにも、良い人もいれば困った人もいるのが世の常。でも、立派な人ほど負のオーラに敏感な気がします。その結果、文句ばかり言っていると良い人たちが離れていき、周囲に残るのは、同じように不平不満を抱えている人ばかりになってしまうわけですね。結局のところ、「人間関係に恵まれない」という状況が、自らの手で作り出されているのではないでしょうか。逆に不幸を幸福に変えてしまう人もいます。以前、暴漢に襲われて頭を殴られた人が私の外来にやってきました。この患者さんに「頭部MRIでは外傷性の異常はありませんが、多発ラクナ梗塞がありますから生活習慣に気をつけましょうね」とアドバイスしたら「いやあ、先生に病気を見つけていただいて良かったです!」とすごくポジティブな反応。この人はなかなかのリッチマンだったのですが「さもありなん」と感心させられました。もちろん、こういった考えを患者さんに押しつけるつもりはまったくありません。ただ、もしアドバイスを求められるようなことがあったら、そのタイミングで自分の考えを伝えられたらと思いつつ、日々の診療に励んでいます。最後に1句花粉来て 文句を言っても 治らない

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ドキュメンタリー映画「小学校~それは小さな社会~」(その3)【だから子供の自己肯定感も自殺率も世界最悪なんだ!じゃあどうすればいいの?(ブラック教育文化)】Part 1

今回のキーワード学習指導要領同年齢同学年(学級固定化)教育の平等教育の公平人権意識異年齢教育前回(その2)、ドキュメンタリー映画「小学校~それは小さな社会~」のいくつかのシーンを通して、同調圧力、モラルハラスメント、スケープゴートがはびこる学校での生徒と教師のそれぞれの心理を解き明かしました。このような日本の学校教育の危うさを踏まえると、実はこの映画は、日本の社会問題でもある、以下の3つの現象の謎を解くための大きなヒントになりそうです。不登校の生徒数が過去最多を更新し続ける現象子供の自己肯定感が世界で最低レベルである現象1)子供の自殺率が世界でトップレベルである現象2)今回(その3)、引き続きこの映画のいくつかのシーンを通して、教師たちも不安で受け身になってしまった原因に迫ります。それを踏まえて、これからの子供が学校を楽しむ、そして人生を楽しんでいくためにどう学校制度を改革すればいいのかを一緒に考えていきましょう。なお、この映画はドキュメンタリーであり、実在する人物が登場していますが、この記事で教師個人を批判する意図はまったくありません。あくまでその教師たちすら巻き込む文化としての日本の学校教育の危うさを批判しています。そもそもなんで先生も不安で受け身になってしまったの?―「ブラック教育文化」あるさりげないワンカットでは、1年生の子供たちが自分の大きなランドセルを棚に無理やり押し込もうとする様子が映し出されます。彼らがこれから画一的な学校教育という枠組みに無理やり押し込まれる姿に重なり、痛烈な皮肉のように見えてしまいます。そして、先生たちもまたその枠組みに押し込まれていたのでした。教師たちの心理は、生徒たちと同じように、やることが多すぎて実は不安で楽しめない、やることを変えられなくて実は受け身で選べないということがわかりました。それでは、なぜ生徒たちだけでなく、教師もそうなってしまっているのでしょうか?そのわけは、戦後に学力の地域差をなくすという「教育の平等」の名のもと、学習指導要領、検定教科書、同年齢同学年(学級固定化)の教育政策が徹底されたからです。そして、教師が生徒を高度に管理するようになったからです。しかし、同時にそれは、教師も教師同士で管理される側になってしまったのでした。昭和までは、学校で生徒をコントロールするため、教師による体罰をはじめとしてさまざまな懲戒権が当たり前のように行使され、社会で受け入れられていました。そして、この記事で何度も登場する同調圧力、モラルハラスメント、スケープゴートも学校教育として根付いていったのでした。これを名付けるなら、「ブラック教育文化」です。このネーミングは、ブラック校則にちなんでいるわけですが、実は、日本の学校にはただ「ブラック校則」があるのでなく、その根っことなる「ブラック教育文化」が潜んでいたと言えます。しかし、時代は変わりました。令和では、情報化とあいまって個人主義の価値観が完全に広がり、人権意識が高まりました。映画では、ある先生が「(クラス全員が)チームとして一体になれ」と力説していましたが、もはや令和の社会ではそうする必要も、そうする価値も置かれなくなりました。そうしたい人だけがそうすればいいだけで、そうしたくない人を巻き込む(強制する)のは、やってはいけないことと認識されるようになったのです。こうして、ようやく人権意識が世界基準に追い付いたのです。この変化によって、体罰だけでなく、同調圧力、モラルハラスメント、スケープゴートを使うという手段も、社会ではアウトになりました。たとえば、学習塾、習いごと、スポーツチームなどでは、ビジネスだけに人権意識には敏感です。テレビやネットでも、人権侵害の話題はすぐにニュースになります。近所の人から怒鳴られるようなことがあれば、すぐに警察に通報するご時世です。家庭でも、少子化であることもあり、子供は大切にされています。ところが学校に限り、指導という建前のもと、少なくとも教師たちは同調圧力、モラルハラスメント、スケープゴートの手段はセーフだと思い込んでいるのでした。そして、その事実が、この映画で世界に発信され、明るみになってしまいました。これは、人権意識が、学校外(社会)では高まっているのに学校内では高まっていないというギャップがあるという現実です。そのギャップが開けば開くほど、子供は学校に行きたがらなくなり、自己肯定感が下がり、そして自殺率が増えていくわけです。これが、この記事の冒頭で触れた謎の答えです。逆に、昭和までは体罰などのもっと激しい人権侵害があったのに、このギャップがなかったことで、それが「当たり前」のように受け止められました。そのため、不登校は目立たず、子供の自己肯定感は問題にされず、子供の自殺率は低かったのでした。簡単に言えば、学校の外と比べて、相対的に中での自分の人権が尊重されていないために、それらの手段が「当たり前」ではなく「異常であり苦痛である」と認識するようになったのでした。これは、同僚、友人、知人などの身近な周りの人たちと比べて、自分が経済的、人間関係的に恵まれていないと不満を抱く心理(相対的貧困、相対的剥奪)と似ています。実際の研究では、令和の時代において、小学校での同調圧力が高ければ高いほど、自己肯定感は低下することがわかっています3)。なお、文化進化の視点から見た学校(学歴社会)の歴史の詳細については、関連記事1をご覧ください。また、生徒や教師が受け身である原因は、「ブラック教育文化」だけでなく、さらにその根っこには日本人ならではの「直系家族の文化」の影響が考えられます。この詳細については、関連記事2をご覧ください。次のページへ >>

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ドキュメンタリー映画「小学校~それは小さな社会~」(その3)【だから子供の自己肯定感も自殺率も世界最悪なんだ!じゃあどうすればいいの?(ブラック教育文化)】Part 2

じゃあどうすればいいの?今後、「ブラック教育文化」で硬直化した学校は、不登校でますます生徒は減り続け、メンタルダウンや就職敬遠でますます教師も減り続けるでしょう。もはや、学級崩壊ならぬ「学校崩壊」です。それでは、この「ブラック教育文化」をホワイトにしていくために、どうすればいいのでしょうか?最後に、抜本的な改革案を、大きく2つ挙げてみましょう。(1)生活指導を減らす1つ目は、生活指導を減らすことです。生活指導は、従来から生徒を管理するという裏の目的があったこともあり、令和の時代には明らかにやりすぎています。生徒だけでなく、先生にとっても負担であり、その多くが合理的な理由のないものであることをすでにご説明しました。結局、それでも生徒たちに何とかやらせるために、先生たちは同調圧力、モラルハラスメント、スケープゴートという不適切な手段を使わざるをえませんでした。ただ、よくよく考えると、そうでもしなければできないことは、もはや最初からしない方がいいです。たとえば、給食当番や掃除当番などエッセンシャルな役割や、生徒たちが喜ぶ修学旅行などの行事は残します。一方で、運動会や音楽会などの行事を縮小化し、入学式、卒業式、始業式、終業式などの儀式を簡素化または廃止します。そもそも、世界的に見て、このような儀式を仰々しくやっている国は他にありません。何度も座ったり立ったりして礼をさせられるのは、信仰心(同調圧力)を高めることを目的とした宗教儀式と同じです。だからこそ、それを明らかにしたこの映画が海外から興味深く見られるのです。すでに、コロナ禍をきっかけに、行事は簡素化されましたが、もとに戻っている学校もあるようです。東京の一部の地域では、スペースの確保を理由に、上靴が廃止されました。いかにも学校らしい理由付けですが、とくに理由付けをしなくても上靴は廃止するべきです。よほど山奥の学校で、土足で土や泥を校舎に運んでしまうという問題があれば別ですが、現在日本のほとんどの通学路は舗装されており、上靴を履き替える合理的な理由はなくなっています。そうすることで、同じ靴を履くという同調の心理や、靴をきれいに揃えるかどうかの同調圧力を根本からなくすことができます。また、髪型や服装などを制限する校則は廃止します。このような校則は、昭和に同調圧力を高めるために利用されていたのですが、令和では、明らかな人権侵害です。世界でこんなことをしている国は、どこかの独裁国家ぐらいです。不適切であることを私たちが発信し続ける必要もあります。すでに、そう発信し続けるNPO団体もあります。理想的には、企業に社員が相談できるハラスメントの窓口があるのと同じように、学校に生徒や教師が相談できる人権擁護の窓口が設置されるべきでしょう。つまり、生徒や教師を監視する学校を今度は社会が監視する必要があります。(2)授業や行事を選べるようにする2つ目は、自分のレベルに合ったレベル分けの授業ややりたい行事を選べるようにすることです。逆に言えば、自分のレベルに合わない授業ややりたくない行事には参加しなくていいということです。まず、授業について、その1でもご説明しましたが、画一的な一斉授業のために、できる生徒は先に進めず、できない生徒は置いていかれていました。しかし、現在、学力の地域差が改善され、もはや「教育の平等」を図ることは一定の役目を終えました。今こそ、「教育の公平」にシフトチェンジする時です。たとえば、学習指導要領の達成目標を緩和させ、1人1人の生徒のレベルにあった授業を保護者と相談しながら選んでもらうことです。委員会活動やクラブ活動と同じです。すでに算数はレベル分けが行われている学校が多いです。次はやはり英語です。英語は、語学力だけに個人差(遺伝の違い)や家庭環境の違いの影響が大きく反映されるために、画一的に授業が進められないことから、すでに授業時間数を増やすことへの慎重論が出てしまっています。しかし逆に言えば、だからこそレベル分けが必要なのです。学習塾や習いごとでは当たり前のやり方です。むしろ、これらの教育ビジネスが日本でとくに盛んになってしまっているのは、それだけ学校の教育が機能していない証であると言えます。レベル分けをして、学校がもっと機能的になれば、必然的に学習塾に行く必要がなくなるので、これまで家計を圧迫していた教育費を減らせるでしょう。次に、行事についてですが、 運動会、音楽会などで事前に練習をする取り組みをしたいのなら、希望の生徒をまず募ることです。これは、修学旅行についても言えます。強制参加とせず、参加しない権利を尊重することです。さらに、同年齢同学年の縛りを緩和させ、小学校に入学させる年齢を6歳±1歳として幅を持たせること(異年齢教育)です。その後に、生徒のレベルに合わせて、レベル分けの授業を受けることで、早く進級する場合もあればなかなか進級しない場合も出てきます。さらに、小学校を早く卒業する生徒と遅れて卒業する生徒が出てきます。つまり、入学、進級(学年)、卒業の時期をすべて選ぶようにするのです。これは「教育の公平」のために必要なことです。もちろん、保護者と相談しながら、あえて早く進級しないという選択をすることも可能です。重要なことは、学ぶ内容やスピードを学校から押し付けられるのではなく、生徒が自分で納得して選ぶことです。こうして、進学・進級が流動的になり、生徒の年齢と学年・学級が固定化されないため、同調圧力が弱まり、必然的に入学式や卒業式などさまざまな儀式が簡素化されるでしょう。なお、教育の平等と公平の詳細については、関連記事3のページの後半をご覧ください。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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ドキュメンタリー映画「小学校~それは小さな社会~」(その3)【だから子供の自己肯定感も自殺率も世界最悪なんだ!じゃあどうすればいいの?(ブラック教育文化)】Part 3

新しい「日本人のつくり方」とは?ラストシーンで、その1で登場した1年生の女子は、音楽会の本番に臨む直前、他のメンバーから「私たちは心臓のかけらで、みんなが揃ったらこんな形(両手でハート形をつくる)になる。で、1人こんなふうにずれたら、もう心臓はできない」と言われて、「私たちは過酷な楽器だよ」という名言を残します。まさに従来の「日本人」がつくられる瞬間を見ているようでした。微笑ましく見える一方で、やはり危うさもはらんでいます。それだけに、彼女の将来の行方も気になります。この映画は、「外国から見た日本の小学校とは」という視点で、海外の関係者や私たちに改めて学校教育のあり方を考えさせてくれました。それは、海外の学校としてはまだやり足りないと気付かされ、日本の学校としてはもうやりすぎだと気付かされるというギャップです。この映画をきっかけに、私たち一人ひとりが学校教育のあり方について情報発信をどんどんしていけば、小学校をより良くしようという社会的なムーブメントを起こせるはずです。その時こそ、新しい「日本人のつくり方」が見えてくるでしょう。それは、生徒たちそして先生たちが、日本人の本来の良さである規律、協調性、忍耐力を保ちつつ、同時に不安や受け身にならず、もっと学校を楽しみ、もっと自分の学び方そして生き方を選ぶことです。それは、映画で先生たちが繰り返し強調していた「自分らしさ」(アイデンティティ)と「自主性」(勤勉性)を真の意味で育むことでしょう。なお、今回は、小学校の教育改革についてまとめました。中学校の教育改革については、関連記事4をご覧ください。1)「高校生の生活と意識に関する調査」における国際比較、文部科学省、20172)こどもの自殺の状況と対策p.54:厚生労働省、20243)小学校段階における同調圧力に対する自己肯定感の影響と居場所感について:松井柚子・高平小百合、日本教育心理学会、2020<< 前のページへ■関連記事映画「バッド・ジーニアス」【学歴社会を引っくり返す⁉(カンニング教育革命)】Part 2映画「クワイエットルームにようこそ」(その4)【だから家族のつながりにとらわれてたんだ!だから人権意識が乏しかったんだ!(直系家族病)】Part 4映画「バッド・ジーニアス」【学歴社会を引っくり返す⁉(カンニング教育革命)】Part 3映画「かがみの孤城」(その3)【この城が答えだったんだ!(不登校への学校改革「かがみの孤城プロジェクト」)】Part 3

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高血圧患者、CVD死亡リスクがとくに高い年齢層は?/東北医科薬科大

 高血圧は、心血管疾患(CVD)のリスクとなることは知られている。では、そのリスクは、日本人ではどの程度の血圧(BP)分類や年齢から発生するのであろうか。東北医科薬科大学医学部公衆衛生学・衛生学教室の佐藤 倫広氏らの研究グループは、このテーマについてEPOCH-JAPAN研究における7万人の10年追跡データを用いて、現在用いられているBP分類とCVD死亡リスクの関連を検討した。その結果、高血圧とCVD死亡リスクは関連があり、その傾向はとくに非高齢者で顕著だった。この研究はHypertension Research誌オンライン版に2025年2月20日に公開された。40~64歳の高血圧患者でCVD死亡リスク上昇が顕著 研究グループは、わが国で実施された10のコホート研究データを統合し、7万570例(平均年齢59.1歳、女性57.1%)を対象としたデータを解析した。追跡期間は平均9.9年で、降圧治療の有無で層別化し、最新のBP分類とCVD死亡リスクとの関連を検討した。BP分類は、日本高血圧学会ガイドライン(2019年)に従った。 主な結果は以下のとおり。・約10年間の追跡期間中に2,304例のCVD死亡が発生した。・Coxモデルにより、CVD死亡リスクはBP分類が高くなるとともに段階的に増大することが示され、この関連は40~64歳の高血圧未治療者でとくに顕著であった。・高血圧未治療のI度高血圧群(診察室:140~159かつ/または90~99mmHg、家庭:135~144かつ/または85~89mmHg)がCVD死亡に対する最も高い集団寄与危険割合(PAF)を示した。・治療を受けた患者を高血圧群に含めると、高血圧群のCVD死亡に対するPAFは41.1%だった。・同様のパターンがCVDサブタイプの死亡リスクでも観察され、高血圧症では脳内出血のPAFがとくに高かった。 研究グループでは、「これらの結果は、高血圧の早期予防と管理の重要性を示唆する」と述べている。

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不眠症が泌尿器、生殖器系疾患に及ぼす影響

 不眠症が、さまざまな泌尿器系および生殖器系の疾患に及ぼす影響や因果関係は、明らかになっていない。中国・Fifth People's Hospital of Shanghai Fudan UniversityのYougen Wu氏らは、不眠症が10種類の泌尿器系および生殖器系の疾患に及ぼす影響を調査し、この関連を評価するため、メンデルランダム化(MR)研究を実施した。Translational Andrology and Urology誌2025年1月31日号の報告。 UK Biobank、23andMe、FinnGen、遺伝子コンソーシアムより、不眠症と10種類の泌尿器系および生殖器系の疾患のデータを収集した。主なMR分析として、逆分散加重アプローチを用いた。推定値のロバストを調査するため、MR-PRESSO検定(MR多面性残差和、外れ値)、最尤法、MR-Egger法、加重中央値法を用いて感度分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・ボンフェローニ補正後、遺伝的に不眠症と診断された場合、膀胱炎および前立腺炎のリスク上昇が認められた。 【膀胱炎】オッズ比(OR):1.81、95%信頼区間(CI):1.47〜2.24、p<0.001 【前立腺炎】OR:3.53、95%CI:1.73〜7.18、p<0.001・不眠症は、前立腺がんリスクの上昇、膀胱がんリスクの低下と関連していた。 【前立腺がん】OR:1.30、95%CI:1.00〜1.67、p=0.046 【膀胱がん】OR:0.48、95%CI:0.26〜0.90、p=0.02・腎臓がん、腎結石および尿管結石、神経因性膀胱、前立腺肥大症、男性不妊症、女性不妊症との因果関係は認められなかった。 著者らは「不眠症は、膀胱炎および前立腺炎の潜在的なリスク因子であることが裏付けられた。これらの疾患リスクを軽減するためにも、不眠症は重要な治療ターゲットとなりうる」と結論付けている。

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認知症予防、どのくらいの聴力低下から補聴器を使ったほうがよいか

 難聴が中年期における認知症の予防可能な最大のリスク因子の1つであると報告され1)、注目を集めているものの、どの程度の難聴になったら認知症予防として補聴器を使うべきなのかは明らかになっていない。慶應義塾大学の西山 崇経氏らは、55歳以上の補聴器の装用経験がない難聴者のグループにおいて、聴力閾値と認知機能検査結果が負の相関関係を示し、4つの音の高さの聴力閾値の平均値が38.75dB HLを超えた場合に、認知症のリスクとなりうることを明らかにした。NPJ Aging誌2025年2月24日号掲載の報告。 本研究では、2022年9月~2023年9月までに慶應義塾大学病院耳鼻咽喉科・頭頸部外科外来を受診した55歳以上で、両耳の4周波数(500/1,000/2,000/3,000Hz)における平均聴力閾値が25dB HLを超えた難聴者のうち、補聴器の装用経験がないグループ(未装用群)55例と3年以上にわたり補聴器装用を行っているグループ(長期装用群)62例の計117例を対象に、聴力と認知機能の関係について検討した。認知機能検査は、日本語版ミニメンタルステート検査(MMSE-J)と Symbol Digit Modalities Test(SDMT)の2種類が用いられた。 主な結果は以下のとおり。・未装用群および長期装用群の平均聴力レベル(平均±SD)は、それぞれ40.83±8.16dB HLおよび51.13±14.80dB HLであった。・未装用群において、平均聴力閾値とSDMTスコアとの間に有意な関連(p=0.01)が認められ、38.75dB HL超が認知機能に影響を及ぼすカットオフ値として同定された。・一方、長期装用群では補聴器非装用時あるいは補聴器装用時にかかわらず平均聴力閾値とSDMTスコアとの間に有意な関連は認められなかった。

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細胞免疫療法~CAR T-cell・T-cell engager~の進歩と今後の展望/日本臨床腫瘍学会

 手術療法、抗がん剤療法、放射線療法に続くがん治療の第4の柱として、細胞免疫療法が国内外で徐々に広がりつつある。とくに、最近は通常の免疫機能などでは治癒が困難な難治性のがんに対する治療法として、キメラ抗原受容体T(CAR-T)細胞療法やT細胞誘導抗体(T-cell engager:TCE)が、一部の血液がんに対する効果的な治療法として期待されている。 2025年3月6~8日に開催された第22回日本臨床腫瘍学会学術集会では、日本血液学会と日本臨床腫瘍学会の合同シンポジウムが開催され、細胞免疫療法の現状や課題、今後の展望などについて議論が交わされた。CAR-T細胞療法に残された課題に挑む CAR-T細胞療法は細胞免疫療法の1つとして、とくに一部の血液がんに対して高い治療効果を発揮している。一方で、CAR-T細胞療法にはサイトカイン放出症候群(CRS)や神経毒性のような有害事象、再発率の高さ、固形がんに対する限定的な効果、さらには高額な製造コストなどが解決すべき課題として残されている。 このような背景の中で、玉田 耕治氏(山口大学大学院医学系研究科 免疫学講座)らの研究グループは、固形がんに対する高い効果が期待できる次世代(第4世代)のCAR-T細胞の開発に取り組んでいる。固形がんに対してCAR-T細胞療法が効果を発揮するためには、腫瘍部分でのCAR-T細胞の集積と増殖が必要となる。玉田氏らは、免疫機能を調整する能力をCAR-T細胞に追加することでこの問題が解決できると考え、T細胞の生存や増殖を刺激するサイトカインであるIL-7とT細胞や樹状細胞の遊走や集積を促進するケモカインであるCCL19を同時に産生する7×19 CAR-T細胞を開発し、これをPRIME(Proliferation-inducing and migration-enhancing)CAR-T細胞と名付けた。マウスモデルを用いた研究により、7×19 CAR-T細胞は、内因性腫瘍抗原に対するエピトープ拡散を誘導することで、強力な抗がん効果を発揮することが証明された。また、がん患者の末梢血単核球細胞(PBMC)由来の7×19 CAR-T細胞の抗腫瘍効果なども確認されている。これらのことから、「PRIME CAR-T細胞は固形がんに対する画期的ながん治療法となることが期待され、近い将来、固形がんに対するCAR-T細胞の臨床研究が日本で実施される可能性がある」と玉田氏は述べた。 一方で、CAR-T細胞療法には高い製造コストがかかり、1回の投与で数千万円という高額な治療費を要することが大きな課題となり、とくに開発途上国においては治療の実現を拒む主な要因となっている。そこで、高橋 義行氏(名古屋大学大学院医学系研究科 小児科学)らの研究グループは、製造コストを下げるために独自で安価なCAR-T細胞の製造法を開発した。従来、CAR-T細胞はウイルスベクターを用いた遺伝子を導入する方法で製造されてきたが、高橋氏らは非ウイルスベクターによるpiggyBacトランスポゾン法を用いてCAR-T細胞の培養を行うことに成功した。本法は酵素べクター法の1つで、ウイルスベクターを用いた方法に比べて製造方法が簡便かつ安価であり、ウイルスベクターを用いた従来の方法と同様の治療効果が期待できるという。 そして、高橋氏らは再発または難治性のCD19陽性急性リンパ性白血病患者を対象に、piggyBacトランスポゾン法にて製造したCD19標的CAR-T細胞療法の第I相試験を実施している。CD19標的CAR-T細胞1×105/kgを1回投与するコホート1(16~60歳、3例)とコホート2(1~15歳、3例)、3×105/kgの1回投与に増量するコホート3(1~60歳、3例)において、投与後28日時点で全例に完全奏効(CR)が認められ、2例が再発した。なお、本剤を投与した全例の末梢血で、piggyBac CAR-T細胞の増殖が観察されていた。 さらに、高橋氏らはタイのチュラロンコン大学からの要請を受けてCAR-T細胞療法の臨床研究を支援している。同氏らと同じ方法で製造されたCD19標的CAR-T細胞療法を受けたタイの悪性リンパ腫患者5例の全例で効果が確認され、その中の1人は投与後1ヵ月で多発していた腫瘍が消失し、1年後には寛解となっていた。 これまでの成果を踏まえ、高橋氏は、「安価な製造コストを実現することで、世界中でCAR-T細胞療法が普及することが期待される。また、日本の知的財産を活用した純日本製のCAR-T製剤が承認されれば、日本の医療費削減にもつながるのではないか」と結論した。iPS細胞技術を用いた若返りT細胞療法の開発 これまで、難治性のエプスタイン・バー(EB)ウイルス関連リンパ腫に対して、末梢血由来細胞傷害性T細胞(CTL)を体外で増殖して再び体内に戻すCTL療法が試みられてきたが、治療効果は十分ではなかった。これは、CTLが標的抗原に持続的に曝露されると疲弊してしまうためで、この問題を解決するために安藤 美樹氏(順天堂大学大学院医学研究科 血液内科学)らの研究グループは、iPS細胞技術を用いることで疲弊したT細胞を若返らせる技術を開発した。EBウイルス抗原特異的CTLからT細胞由来のiPS細胞を作製し、再びCTLに分化誘導することで若返ったCTL(rejT)となり、rejTはEBウイルス感染腫瘍を縮小することなどが確認された。さらに、EBウイルス抗原のLMP2に対するrejTをマウスに投与すると、EBウイルス関連リンパ腫に対する強い抗腫瘍効果を示しながら末梢血でセントラルメモリーT細胞として存在することが確認され、LMP2-rejTは生体内でメモリーT細胞として長期間生存することで難治性リンパ腫の再発抑制効果を維持することが示唆された。 また、安藤氏らはCARによる抗原認識とT細胞受容体(TCR)による抗原認識の両者を兼ね備え、2つの異なる受容体により効率よく腫瘍を攻撃するiPS細胞由来2抗原受容体T細胞(DRrejT)を作製した。マウスモデルによる検討では、DRrejTはEBウイルス関連リンパ腫に対して、単一標的のrejTやCARに比べて抗腫瘍効果は高く、効果が長期間持続することが示された。 加えて、小細胞肺がん(SCLC)にGD2が高発現していることに着目して、iPS細胞から分化誘導したCTL(rejT)にGD2標的CARを導入する方法でGD2-CARrejTを作製すると、SCLC対する強い抗腫瘍効果を示すとともに、末梢血由来のGD2-CAR-Tよりも有意に生存期間を延長した。 さらに、同様の方法でiPS細胞からヒトパピローマウイルス特異的rejT(HPV rejT)を誘導したところ、末梢血由来HPV CTLと比較して子宮頸がんをより強く抑制していた。しかし、患者由来のCTL作製は時間とコストがかかり実用化は難しく、他家iPS細胞を用いた場合は免疫拒絶反応などが問題となる。そこで、安藤氏らはCRISPR/Cas9ゲノム編集技術を用いてHLAクラスIを編集した健常人由来のHPV rejTを作製したところ、免疫拒絶反応を抑えながら子宮頸がんを強力に抑制し、長期間の生存期間延長効果も認められた。このような結果を踏まえ、現在、HLAクラスIを編集したHPV rejTの安全性を評価する医師主導第I相試験が進行しているという。 安藤氏は、「iPS細胞技術を活用することで、迅速かつ何度でも十分量のDRrejTを作ることが可能で、“Off-the-shelf”療法として大いに期待できる」と締めくくった。固形がんに対する細胞免疫療法の臨床開発状況と展望 固形がんに対する細胞免疫療法としては、CAR-T細胞療法、CAR-NK細胞療法、CARマクロファージ(CAR-M)療法、TCR-T細胞療法など、数多くの臨床試験が実施されているが、日本で承認されている治療法はまだ存在しない。 CAR-T細胞療法は、CD3ζ単独のCARが第1世代、CD3ζに副刺激分子のCD28や4-1BBを1つ足したものが第2世代、2つ足したものが第3世代と呼ばれ、とくに2010年に登場した第2世代以降のCAR-T細胞療法は、B細胞性白血病/リンパ腫に高い有効性を示してきた。さらに、サイトカイン分子によりT細胞の活性化シグナルを増強させるように設計された第4世代のCAR-T細胞療法の開発が進んでいる。 固形がんに対するCAR-T細胞療法の開発の問題点として、北野 滋久氏(がん研究会 有明病院)は、免疫抑制性の環境が形成される腫瘍微小循環(TME)による有効性と持続性の低下、高いCRSのリスク、on-target/off-tumor 毒性(OTOT)、抗体薬物複合体(ADC)やTCEとの競合などを挙げる。現在、これらの問題を解決するためにさまざまな技術開発が進められており、その一例として、第4世代のCAR-T細胞療法によるTMEの調整、CRSを回避するための抗IL-6受容体抗体や免疫抑制薬の予防的投与の研究、主要組織適合性複合体(MHC)/ペプチド複合体の標的化や三重特異性抗体などによるOTOTへの対応のような研究が進行しているという。 また、CAR-T細胞療法に続く有望な細胞免疫療法として、北野氏はTCR-T細胞療法にも注目している。TCR-T細胞療法は、患者からリンパ球を採取し、がん抗原特異的なTCRをT細胞に導入して再び患者に輸注する治療法で、がん関連抗原であるNY-ESO-1を標的とした高親和性TCRを用いた滑膜肉腫患者を対象とした第I/II相試験では、有効な成績が示されていた。CAR-T細胞療法は細胞表面の抗原を標的とするのに対して、TCR-T細胞療法の標的は細胞内タンパク質と糖鎖であり、最近ではネオアンチゲンを対象としたTCR-T細胞療法の開発も進められている。リンパ系腫瘍に対する細胞免疫療法(CAR-T、BiTE)の現状と今後の展望 CAR-Tと二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)を用いた細胞免疫療法は、B細胞リンパ腫、B細胞急性リンパ芽球性白血病、多発性骨髄腫など、さまざまな種類のリンパ系悪性腫瘍の治療に用いられている。大細胞型B細胞リンパ腫(LBCL)を例にとると、CD19を標的としたCAR-T細胞療法やCD20とCD3を標的としたBiTE抗体療法が臨床使用されている。 LBCLに対するCAR-T細胞療法としては、tisa-cel、axi-cel、liso-celがそれぞれの臨床試験の結果を基に3rdライン以降の治療薬として最初に承認された。その後、初回治療に対する治療抵抗例や、初回治療による寛解後1年以内の再発例を対象にした臨床試験において、標準治療(化学療法+自家移植)を上回るCAR-T細胞療法の有効性が示されたことを受け、axi-celとliso-celは2ndラインでの使用も認められることとなった。このような現状を踏まえ、伊豆津 宏二氏(国立がん研究センター中央病院 血液腫瘍科)はCAR-T細胞療法について、「再発または難治性のLBCL患者の治療にパラダイムシフトをもたらした」と述べた。さらに、今後は高リスクなLBCL患者に対する1stラインでの使用や、ほかのサブタイプによるCAR-T細胞療法の開発などが期待されるという。 加えて、伊豆津氏はCD20とCD3を標的としたBiTE抗体療法について、LBCLに対する2ndラインの有用性について検討した臨床成績、さらには現在進行中の1stラインにおける有用性を評価する臨床試験の概要についても言及した。 最後に、CAR-T細胞療法やBiTE抗体療法のようなT細胞リダイレクト療法には、有効性の長期持続が困難、抗原回避や耐性、CRSなどの有害事象、長い製造時間、高額な製造コスト、最適な治療順序の決定など、解決すべき課題が多く残されていることを伊豆津氏は指摘し、講演を締めくくった。

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デジタルアドヒアランス技術は、結核の治療アウトカムを改善するか/Lancet

 結核治療では、治療のアドヒアランスが不良であると治療アウトカムの悪化のリスクも高まることが知られており、近年、服薬アドヒアランスを改善するためのデジタル技術の評価が進められ、WHOは条件付きでこれを推奨している。オランダ・KNCV Tuberculosis FoundationのDegu Jerene氏らは、ウェブベースのアドヒアランスプラットフォームと連携したスマートピルボックスまたは薬剤ラベルを用いたデジタルアドヒアランス技術(digital adherence technologies:DAT)は、薬剤感受性結核患者における不良な治療アウトカムを低減しないことを示した。研究の詳細は、Lancet誌オンライン版2025年3月11日号で報告された。4ヵ国220施設のクラスター無作為化試験 研究グループは、薬剤感受性結核患者におけるスマートピルボックスおよび薬剤ラベルに基づくDATの有益性の評価を目的に実践的なクラスター無作為化試験を行い、2021年6月~2022年7月に4ヵ国(フィリピン、南アフリカ、タンザニア、ウクライナ)の220の施設で患者を募集した(ユニットエイド[Unitaid]の助成を受けた)。 220の参加施設(クラスター)を、標準治療群(110施設)または介入群(110施設)に無作為に割り付け、ウクライナを除いて介入群をさらにスマートピルボックス群または薬剤ラベル群に1対1の割合で無作為に割り付けた。年齢18歳以上の薬剤感受性結核患者を対象とした。 ピルボックス群の施設の患者は薬剤を保管するピルボックス(薬箱)を配布され、視覚・聴覚的に服薬を促すリマインダーが発せられて、ボックスを開けるとアドヒアランスプラットフォームに信号が送信され、服薬したとみなされた。薬剤ラベル群の患者は、コードが表示されたラベルを貼った薬剤を受け取り、治療量を服薬すると、携帯電話で無料のテキストメッセージをアドヒアランスプラットフォームに送り、これをもって服薬が完了したとみなされた。標準治療群の患者は、各国のガイドラインに準拠した標準治療を受けた。 主要アウトカムは、不良な治療終了の複合アウトカムとし、治療失敗、追跡不能(連続で2ヵ月以上の治療中断)、治療開始から28日以降における多剤耐性レジメンへの切り換え、死亡と定義した。不良な治療終了、フィリピンで8.8%、ウクライナで26.7% 2万5,606例を登録した(介入群1万2,980例、標準治療群1万2,626例)。このうち2万3,483例(91.7%)(それぞれ1万2,170例、1万1,313例)をITT集団とした。ITT集団の35.0%(8,208例)が女性で、年齢中央値は南アフリカの介入群41歳、標準治療群40歳から、フィリピンのそれぞれ47歳および46歳までの範囲であった。ITT集団のうち、介入群の1万540例(86.6%)と標準治療群の9,717例(85.9%)を主要アウトカムの解析の対象とした。 主要アウトカムの発生率は、フィリピンで最も低く(8.8%)、ウクライナで最も高く(26.7%)、南アフリカ(16.0%)とタンザニア(17.1%)はその中間であった。主要アウトカムのリスクは、4つの国のいずれにおいても介入による差は生じず、補正後オッズ比はフィリピンで1.13(95%信頼区間[CI]:0.72~1.78、p=0.59)、タンザニアで1.49(0.99~2.23、p=0.056)、南アフリカで1.19(0.88~1.60、p=0.25)であり、ウクライナの補正リスク比は1.15(0.83~1.59、p=0.38)だった。PP解析では、ウクライナを除き差はない ピルボックス群で、不注意による治療状況の開示に起因する社会的問題が2件発生し、患者の脱落につながった。また、per-protocol(PP)集団の介入群における、解析からの除外の最も頻度の高い原因は、DAT開始の失敗であった(4,884件の解析からの除外のうち4,311件[88.3%])。 PP解析による主要アウトカムの発生率は、ウクライナでは介入群で低かった(14.7%vs.25.5%、補正後リスク比:0.66[95%CI:0.46~0.94])が、他の国では差を認めなかった。 著者は、「これまでに得られたエビデンスは、DATによるアドヒアランスの改善を示しているが、治療アウトカムの結果にはばらつきがみられるため、評価されたアウトカムでは検出されなかったDATの有益性が存在する可能性が示唆されている」「追加的介入として、患者のニーズに基づくトリアージ、最小限の社会的基盤による支援しか必要としないDATの使用、低コストの携帯電話の提供、標準化されたさまざまなアプローチに関する医療従事者の訓練などを導入することで、治療アウトカムに及ぼすDATの効果が改善する可能性がある」「DATの使用は、経済的評価や、患者および関係者の嗜好、計画された治療アウトカム以外の重要な患者アウトカムへの影響に関する追加的なデータを慎重に検討したうえで行うべきである」としている。

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ビタミンD補充、多発性硬化症の疾患活動性を抑制するか/JAMA

 ビタミンD欠乏は多発性硬化症(MS)のリスク因子であり、疾患活動性上昇のリスクと関連しているが、補充による有益性のデータは相反している。フランス・モンペリエ大学のEric Thouvenot氏らD-Lay MS Investigatorsは、プラセボと比較して高用量ビタミンD(コレカルシフェロール10万IU、2週ごと)は、clinically isolated syndrome(CIS)および再発寛解型MS(RRMS)の疾患活動性を有意に低下させることを示した。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2025年3月10日号に掲載された。フランス36施設の無作為化プラセボ対照第III相試験 D-Lay MS試験は、高用量コレカルシフェロール単剤療法がCIS患者の疾患活動性を抑制するか評価することを目的とする二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2013年7月~2020年12月にフランスの36のMS施設で患者を登録した(French Ministry of Healthの助成を受けた)。 年齢18~55歳、未治療、罹患期間が90日未満、血清ビタミンD濃度が100nmol/L未満で、McDonald診断基準2010年改訂版の空間的多発性の条件を満たすか、MSと一致するMRI上の2つ以上の病変を有し、脳脊髄液陽性(2つ以上のオリゴクローナルバンドの存在)の患者を対象とした。これらの患者を、コレカルシフェロール(10万IU)またはプラセボを2週ごとに24ヵ月間経口投与する群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要アウトカムは疾患活動性とし、24ヵ月の追跡期間中の再発またはMRI活動性(MRI上で脳FLAIR病変または脊髄T2病変、あるいはT1強調造影病変が新たに発生、または明らかに拡大すること)で定義した。3つのMRI関連の副次アウトカムも有意に良好 316例(年齢中央値34歳[四分位範囲:28~42]、女性70%)を登録し、試験薬の投与を少なくとも1回受けた303例(95.9%)(ビタミンD群156例、プラセボ群147例)を主解析の対象とした。最終的に、288例(91.1%)が24ヵ月の試験を完了した。 疾患活動性の発現は、プラセボ群が74.1%(109例)であったのに対し、ビタミンD群は60.3%(94例)と有意に少なかった(ハザード比[HR]:0.66[95%信頼区間[CI]:0.50~0.87]、p=0.004)。また、疾患活動性の発現までの期間中央値は、プラセボ群の224日に比べビタミンD群は432日と有意に長かった(p=0.003[log-rank検定])。 3つのMRI関連の副次アウトカムは、いずれも以下のとおり、プラセボ群に比べビタミンD群で発生率が有意に低かった。MRI活動性(ビタミンD群57.1%[89例]vs.プラセボ群65.3%[96例]、HR:0.71[95%CI:0.53~0.95]、p=0.02)、新規病変(46.2%[72例]vs.59.2%[87例]、0.61[0.44~0.84]、p=0.003)、造影病変(18.6%[29例]vs.34.0%[50例]、0.47[0.30~0.75]、p=0.001)。 一方、10項目の臨床関連の副次アウトカムはいずれも両群間に差はなく、たとえば再発についてはビタミンD群17.9%(28例)、プラセボ群21.8%(32例)であった(HR:0.69[95%CI:0.42~1.16]、p=0.16)。33件の重篤な有害事象は試験薬との関連はない 治療開始時にMcDonald診断基準2017年改訂版のRRMSの条件を満たした患者247例を対象としたサブグループ解析では、主要アウトカムはプラセボ群に比べビタミンD群で有意に良好だった(HR:0.66[95%CI:0.49~0.89]、p=0.007)。 試験期間中に、30例(ビタミンD群17例[10.9%]vs.プラセボ群13例[8.8%]、p=0.55[χ2検定])で33件の重篤な有害事象の報告があったが、いずれも高カルシウム血症を示唆するものではなく、試験薬との関連もなかった。また、腎不全および中等度・重度の高カルシウム血症(カルシウム濃度>2.88mmol/L)の報告はなかった。 著者は、「これらの結果は、追加治療としての高用量ビタミンDのパルス療法の役割の可能性を含め、さらなる検討を正当化するものである」「ビタミンDの有効性は、視神経炎を有するCIS患者とこれを有さないCIS患者で同程度であったことから、この治療の対象はすべてのCIS表現型に拡大される可能性がある」としている。

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