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気管支拡張症への高張食塩水とカルボシステイン、肺増悪を改善せず/NEJM

 気管支拡張症の患者に対する高張食塩水およびカルボシステインはいずれも、52週間にわたる肺増悪の平均発生率を有意に低下させなかった。英国・Queen's University BelfastのJudy M. Bradley氏らCLEAR Investigator Teamが、同国20病院で行った非盲検無作為化2×2要因試験の結果で示された。粘液活性薬は作用機序によってさまざまであり、去痰薬(例:高張食塩水)、粘液調整薬(例:カルボシステイン)、粘液溶解薬(例:N-アセチルシステイン)、粘膜潤滑薬(例:サーファクタント)などがある。気管支拡張症ガイドラインでは、粘液活性薬の有効性に関して一貫性がなく、その使用は地域によって異なり、安全性と有効性を評価するための大規模な試験が必要とされていた。NEJM誌オンライン版2025年9月28日号掲載の報告。高張食塩水群vs.非高張食塩水群、カルボシステイン群vs.非カルボシステイン群で比較 試験には、非嚢胞性線維症気管支拡張症で頻回の肺疾患増悪(過去1年間に2回以上[COVID-19パンデミック以降は1回以上])と日常的な喀痰産生を有する18歳以上の成人患者を登録した。無作為化時点で喫煙者および無作為化前30日間に粘液活性薬による治療を受けた患者は除外した。 すべての被験者は標準治療を受け、さらに(1)高張食塩水群、(2)併用群(高張食塩水とカルボシステイン)、(3)カルボシステイン群の3つの粘液活性薬群のいずれか、もしくは標準治療のみを受ける群へ均等に無作為化された。 比較は、高張食塩水群vs.非高張食塩水群、およびカルボシステイン群vs.非カルボシステイン群で行った。 主要アウトカムは、52週間における肺増悪回数。重要な副次アウトカムは、疾患特異的な健康関連QOL評価スコア(QoL-Bなど)、次の増悪までの期間および安全性であった。肺増悪の平均回数、使用群に有意な効果は認められず 2018年6月27日~2023年9月28日に、合計288例が無作為化された。ベースラインの各群の被験者特性は類似していた。高張食塩水とカルボシステインの交互作用のエビデンスは認められなかった(p=0.60)。 52週間における確定肺増悪の平均回数は、高張食塩水群0.76回(95%信頼区間[CI]:0.58~0.95)vs.非高張食塩水群0.98回(0.78~1.19)であり(補正後平均群間差:-0.25、95%CI:-0.57~0.07、p=0.12)、カルボシステイン群0.86回(95%CI:0.66~1.06)vs.非カルボシステイン群0.90回(0.70~1.09)であった(補正後平均群間差:-0.04、95%CI:-0.36~0.28、p=0.81)。 副次アウトカムおよび有害事象(重篤な有害事象を含む)は、比較グループ間で類似していた。

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日本の高齢者データが示す、室内温度と抑うつ症状の関連性

 住環境は高齢者の心の健康にどのような影響を与えるのだろうか。今回、室内の寒さや暑さを十分に防げない住宅に暮らす高齢者ほど、抑うつ症状を抱える割合が高いことが示された。温度調節の難しい住宅に住む高齢者では、抑うつ症状のリスクが1.57倍に上ることが明らかになったという。研究は、東北大学医学部の岩田真歩氏、同大学歯学イノベーションリエゾンセンターデータサイエンス部門の竹内研時氏らによるもので、詳細は8月22日に「Scientific Reports」に掲載された。 日本では室内の温熱環境が深刻な課題となっている。四季のある日本だが、既存住宅の約39%は断熱されておらず、暖房も居間や寝室に限った断続的な使用が一般的で、欧米諸国の全館連続暖房の1/4程度のエネルギーしか使われていない。そのため冬季にWHO推奨の最低室温18℃を満たす住宅は10%未満で、異常な室内温度は心身に悪影響を与え、生活の質(QoL)を低下させることも報告されている。夏季も断熱不足と気候変動による室内の高温が問題化しており、2024年には熱中症で救急搬送された約9万人のうち、住宅内で発生したケースが約38%を占めた。日本は2007年以降超高齢社会であり、高齢者は自宅で過ごす時間が長く、抑うつ症状が認知症や虚弱リスクを高めることを踏まえ、特に自立高齢者における室内の寒さ・暑さと抑うつの関連を検討する必要がある。このような背景から、著者らは自立高齢者における室内温度の知覚と抑うつ症状との関連を検証した。 本研究では、2022年の日本老年学的評価研究(JAGES)の横断データより、65歳以上の自立高齢者を対象とした。従属変数は抑うつ症状の有病率とし、独立変数は住宅が室内の寒さや暑さを防げるかどうかについての参加者の自己報告とした。有病率比(PR)と95%信頼区間(CI)は、潜在的交絡因子を共変量として含めたポアソン回帰モデルを用いて推定した。さらに、地域差を検討するため、地域別に解析を行った。 解析対象となった参加者1万7,491人(男性49.4%)のうち、22.8%が抑うつ症状を示した。参加者の5.1%は寒さや暑さを防げない住居に住んでおり、そのうち41.7%に抑うつ症状が認められた。一方、94.9%は寒さや暑さを防げる住居に住んでおり、その21.8%に抑うつ症状があった。 また、性別・年齢に加え、年収や住居の種類、居住年数などの交絡因子を調整した結果、寒さや暑さを防げない住宅に住む参加者は、防げる住宅に住む参加者と比べて、抑うつ症状のPRが1.57倍(95%CI 1.45~1.71)高いことが分かった。地域別の層別解析では、最北端で最も寒冷な気候の北海道を除くすべての地域で、有意な関連が認められた。 本研究について著者らは、「本研究により、室内の寒さや暑さを感じることが、抑うつ症状の有病率の増加と関連していることが明らかになった。今後は、断熱材の設置などによる室内の温熱環境の改善が抑うつ症状の予防に与える影響を検討する研究が期待される」と述べている。 なお、著者らは、屋内の室温が抑うつ症状に与える影響として、寒冷環境では血圧上昇や脳血流・海馬機能の変化、暑熱環境では脳冷却の困難や血液脳関門の透過性上昇が関与すると指摘している。また、いずれの環境も睡眠の質を低下させ、抑うつ症状の増加に結びつく可能性があると著者らは考察している。

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ロボット支援直腸がん手術、術後1日目のCRPで合併症予測が可能に

 術後合併症や感染症への対応には、早期発見と迅速な対処が求められる。今回、直腸がんに対するロボット支援下直腸手術(RARS)後の合併症リスクが、術後1日目のC反応性蛋白(CRP)値で予測できるとする研究結果が報告された。術後早期のCRP測定が、高リスク患者の見極めや迅速な介入に役立つ可能性があるという。研究は国立病院機構福山医療センター消化器・一般外科の寺石文則氏らによるもので、詳細は8月28日付けで「Updates in Surgery」に掲載された。 RARSは、骨盤内の限られた視野で高い操作性を発揮し、従来の腹腔鏡手術や開腹手術と同等かそれ以上の成績を示すことが報告されている。しかし、依然として術後合併症は患者予後を左右する大きな課題であり、早期に高リスク患者を見極めることが重要だ。炎症マーカーであるCRPは大腸手術後の合併症予測に有用とされるが、ロボット支援手術における術後早期のCRP値の予測的価値は十分に検討されていない。このような背景を踏まえ著者らは、RARS後の合併症リスク因子を解析し、特に術後1日目のCRP測定の有用性を評価することを目的とした後ろ向きコホート研究を実施した。 本解析では、岡山大学病院にて、2020年9月から2025年1月にかけて、原発性直腸がんに対して待機的にロボット支援手術を受けた連続症例を対象とした。血清CRP値は、術前および術後1日目と4日目に測定された。主要評価項目は、手術後30日以内に発生したすべての合併症の有無であり、Clavien-Dindo(C-D)分類に基づいて評価した。群間比較は、連続変数についてはt検定またはMann-Whitney U検定、カテゴリ変数についてはカイ二乗検定またはFisherの正確確率検定を用いた。また、単変量解析で有意な因子や臨床的に重要な因子を多変量ロジスティック回帰モデルに投入し、術後1日目のCRPを含む独立した合併症予測因子を特定した。さらに、ROC解析で最適カットオフ値を算出し、Youden指数で評価した。 追跡期間中に直腸がんに対してロボット支援手術を受けた患者117名が本研究の対象となった。平均年齢は66歳で、男性は59.0%を占めた。術後合併症は26名(22.2%)に発生し、腸閉塞(10例)、腹腔内膿瘍および吻合不全(7例)、リンパ漏(2例)などが認められた。手術後30日以内の死亡はなかった。単変量解析により、これらの合併症は高齢、ASAスコア(米国麻酔学会の全身状態評価)の上昇、術前補助療法、ストーマ造設、手術時間の長さ、術後1日目・4日目のCRP値上昇などと有意に関連することが示された。これらの因子を含めた多変量ロジスティック回帰分析を行った結果、術後1日目のCRP値は術後全体の合併症の強力かつ独立した予測因子であることが明らかとなった(調整オッズ比 0.77、95%信頼区間〔CI〕 0.63~0.93、P<0.01)。 5分割交差検証を用いたROC解析では、AUCは0.735(ブートストラップ法によるバイアス補正95%CI 0.544~0.848)であった。術後1日目のCRPの最適カットオフ値は5.63 mg/dLで、この値でYouden指数は最大(0.484)となり、感度 0.615、特異度 0.868を示した。これらの結果から、術後1日目のCRP測定は、直腸がんに対するロボット支援直腸手術後の合併症を予測する有用かつ独立したバイオマーカーであることが示唆された。 本研究について著者らは、「術後1日目のCRP値測定を術後管理に組み込むことで、高リスク患者の早期発見が可能となり、迅速な介入や最終的な手術成績の改善につながる可能性がある」と述べている。 また著者らは、今後の研究において前向きかつ多施設での検証が必要であることを強調するとともに、CRPと他のバイオマーカーを組み合わせることで、予測精度をさらに高められる可能性があることにも言及している。

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小児の消化管アレルギー(食物蛋白誘発胃腸症)【すぐに使える小児診療のヒント】第7回

小児の消化管アレルギー(食物蛋白誘発胃腸症)消化管アレルギー(食物蛋白誘発胃腸症)は、2000年ごろから急速に認知が広がった比較的新しい疾患概念であり、新生児・乳幼児を中心に増加しています。嘔吐や下痢を主訴に受診する乳児では、感染症や外科的疾患に加えて、食物蛋白誘発胃腸症を鑑別に挙げることが重要です。今回は、代表的な新生児・乳児食物蛋白誘発胃腸症の一型である食物蛋白誘発胃腸炎(Food Protein-Induced Enterocolitis Syndrome:FPIES[エフパイス])を中心に解説します。症例2ヵ月、男児。授乳2時間後に大量に嘔吐を繰り返したため救急外来を受診。普段は完全母乳栄養だが、本日は祖母に預けるため普段は使わない人工乳を使用したとのこと。受診時には活気良好で、腹部所見なし。食物蛋白誘発胃腸症の特徴と分類一般的に食物アレルギーというと、蕁麻疹や呼吸症状を伴う即時型(IgE依存型)アレルギーを想起するでしょう。しかし、食物蛋白誘発胃腸症はIgEが関与せず、主に消化管粘膜で炎症反応が起こる非即時型(非IgE依存型)アレルギーです。食物摂取後、数時間~数日かけて症状が出現し、皮膚症状や呼吸器症状を伴わないことが大きな特徴です。新生児・乳児の消化管アレルギーはわが国独自の疾患概念として扱われていましたが、小児の消化器分野や国際的な概念を鑑みて「食物蛋白誘発胃腸症」として再定義されました。食物蛋白誘発胃腸症は経過や症状から下記のようにいくつかのサブグループに分けられます。画像を拡大する最も代表的なものはFPIESです。日本での有病率は約1.4%と報告されており、決してまれな疾患ではありません。FPIESは経過により急性型と慢性型に分けられます。急性型は原因食物摂取後1~6時間に反復する強い嘔吐が出現し、顔色不良やぐったりするなど全身状態の悪化を伴うこともあります。重症例では、輸液やステロイド投与による全身管理が必要になることがあります。なお、急性期の対応として即時型アレルギーのようにエピネフリン筋注を行っても効果は期待できません。一般的には摂取を中止すると数時間で速やかに改善し、経過は短いのが特徴です。一方、慢性型は原因食物の摂取を続けることで数日~数週かけて嘔吐や下痢、体重増加不良が現れ、除去後も改善までに時間を要します。画像を拡大する実際には症状が重なり合っているためサブグループに分けられないことがしばしばあり、そのために診断や治療に支障を来す場合も見受けられます。日本ではNomuraらによる「嘔吐と血便の有無」で4群に分けるクラスター分類が提唱され、臨床的な整理に有用です。原因となる食物原因となる食物は国や地域によって異なりますが、国際的には乳、魚、鶏卵、穀物、大豆の順になっています。日本の13施設による多施設共同研究(成育医療センター・筑波大学ほか)では、食後1~4時間以内に遅延性の嘔吐を呈した小児225例を対象に解析を行った結果、FPIESの原因食物は鶏卵が最も多く(58.0%)、続いて大豆・小麦(各11.1%)、魚(6.6%)、牛乳(6.2%)でした。鶏卵では94%が卵黄によるものでした。牛乳が原因で発症した児の月例の中央値は1ヵ月と最も早い結果でした。原因食物の違いは各国の離乳食事情によるようで、初期に摂取するものが原因になりやすいと考えられています。診断と治療の基本FPIESには、下記のような診断基準が設けられています。臨床的には、(1)被疑食物を除去して症状が改善すること(食物除去試験)、(2)再度摂取することで症状の再現性があること(食物負荷試験)、(3)他の疾患に当てはまらないこと、を確認します。とくに、小児領域では腹部症状や体重増加不良を来す疾患が多数あるため、他疾患がないか十分に確認することが重要です。FPIESを含む食物蛋白誘発胃腸症は非IgE依存性であるため、一般的なIgE依存性の食物アレルギーで行うような血液検査やプリックテストでは診断できません。末梢血好酸球数、アレルゲン特異的リンパ球刺激試験(ALST)、便粘液好酸球検査、消化管内視鏡検査などを補助的に行うこともありますが、いずれも条件が限定されており、その所見のみで確定診断できるほど有用な検査ではありません。画像を拡大する治療の基本は原因物質の除去です。人工乳(乳)が原因の場合には、代わりに加水分解乳やアミノ酸乳といった栄養剤を使用します。食物除去によって栄養素が不足しないよう、病院の管理栄養士と相談しながら、適宜栄養素の内服や補助食品などを併用します。一般的にFPIESの予後は良好と考えられています。寛解率や時期は原因食物によって異なりますが、幼児期のうちに治ることが多いと報告されており、除去している原因食物が食べられるようになったかどうか、定期的な食物負荷試験で確認します。冒頭の症例では、追加の問診で「半月ほど前にも一度祖母に預けた際に人工乳を使用して2~3時間後に大量に嘔吐した」との情報があり、症状の再現性が確認されました。人工乳の使用を一旦中止し、これまで母乳では症状が出ていなかったため母乳での対応を継続しました。母が不在で母乳の供給が困難な場合には、アレルギー用ミルクである加水分解乳(ニューMA1など)を選択しました。その後、症状の反復がないこと、体重増加が良好であることなどを確認し、症状寛解後数ヵ月を経て経口負荷試験を行いました。離乳食の進み具合に合わせて、他の食材に関しても相談しながら通院中です。保護者への対応の工夫発症予防として、妊娠中の食物制限や離乳食の開始時期を遅らせることは、医学的根拠に乏しく推奨されません。また、「なんとなく怖いから卵はまだ与えていない」といった安易な食物摂取制限も避けるべきです。過度な制限は成長や発達に影響を及ぼすこともあるため、そのリスクを共有し、バランスのとれた摂取を勧めましょう。食物蛋白誘発胃腸症に限らず、食物アレルギーは子供の成長・発達や将来にも関わるため、保護者の心理的負担は非常に大きいものです。長期的な予後や今後の方針を丁寧に共有することで、不安の軽減につながります。FPIESは多くの場合、1~3歳ごろまでに自然寛解することが知られています。日本の報告では、卵黄、乳、小麦、大豆などの原因食品を対象とした場合、発症から12ヵ月後には約半数の児が寛解し、24ヵ月後にはおよそ8~9割が耐性を獲得していました。とくに乳製品が原因の場合、耐性を獲得する月齢の中央値は約17ヵ月と報告されています。冒頭の症例のように乳が原因の場合、乳児の栄養源の中心であるため成長に直結する大きな課題となります。保護者の不安に寄り添いながら、現実的な栄養管理の方法を一緒に模索していくことが重要です。次回は、絶対に見逃してはならない疾患の1つ、「精巣捻転」について取り上げます。夜風が涼しくなり、ようやく過ごしやすい季節になってきました。季節の変わり目、どうぞお身体にお気をつけてお過ごしください。ひとことメモ:よくあるQ&A妊娠中に特定の食物を控えれば、子供のアレルギー発症を抑えられるって本当?発症予防を目的とした母の妊娠・授乳中の抗原食物の制限、除去は推奨されない。完全母乳栄養であれば、赤ちゃんのアレルギー発症を予防できるって本当?母乳中には食物由来ペプチド、サイトカインが含まれており、児が食物に対して寛容を誘導するのに適している。ただし、母乳が原因で食物蛋白誘発胃腸症を発症することもある。他のアレルギーの可能性は?他の即時型アレルギーとは別の疾患概念であるため、必ずしも他の食物アレルギーを発症する可能性が高いとは限らない。離乳食の開始を遅らせると、アレルギー発症を防げるって本当?離乳食を遅らせることは予防・治療には繋がらず、むしろ成長を妨げることもあるため、安易に遅らせるべきではない。参考資料1)食物アレルギー診療ガイドライン20212)Nomura I, et al. J Allergy Clin Immunol. 2011;127:685-688.3)国立成育医療研究センターホームページ4)好酸球性消化管疾患(新生児-乳児食物蛋白誘発胃腸炎)(指定難病98)/難病情報センター5)早野 聡ほか. 浜松医科大学小児科学雑誌. 2025;5:12-18.

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国際学会発表の「読み原稿」を作成する【タイパ時代のAI英語革命】第10回

国際学会での英語プレゼンは医師の必須スキル現在、国際学会で英語による研究発表を行うことは、医師にとって欠かせないスキルとなりつつあります。また、近年では国内の学会でも英語でのプレゼンテーションを求められるケースが増えており、多くの方が英語の発表に苦労した経験をお持ちではないでしょうか。今回から数回にわたり、国際学会での英語プレゼンテーションにおいて、ChatGPTをはじめとするAIツールをどのように活用できるかをご紹介します。英語の壁を克服する国際学会発表で最も大きなハードルとなるのは、やはり「英語の壁」です。とくに大きな課題の1つが、英語でわかりやすい発表原稿を作成し、流暢にプレゼンすることです。非ネイティブスピーカーの多くの日本人医師にとって、発表用に英語の読み原稿を作成するのが一般的だと思いますが、この作業は決して簡単ではありません。しかし、生成AIを上手に活用すれば、この読み原稿作成を飛躍的に効率化することができます。AIを使った原稿作成にはコツがありますが、一度慣れれば、誰でも短時間で質の高い原稿を準備できるようになります。今回は、「英語プレゼンテーションの読み原稿作成」を、ChatGPTを使ってやる方法を、2パターンに分けてご紹介します。ご自身のスタイルや準備状況に応じて、最適な方法を選択してください。2つの方法を組み合わせることも可能です。方法1:まずは日本語で完璧な原稿を作成し、AIに翻訳させる自分の研究内容について、日本語では完璧に説明できるものの、英語で説明するのは難しいと感じる人は多いかもしれません。とくに論理展開をはっきりとさせたい場合などは、まずは日本語で記述してからそれを翻訳するというプロセスを踏むとよいでしょう。文章が完成したら、ChatGPTに翻訳を依頼します。その際、単に「翻訳して」とお願いするのではなく、どのような目的の文章なのかを具体的に伝えることが、より精度の高い翻訳を得るための鍵です。プロンプト例#役割あなたは医学論文や学会発表の翻訳を専門とする翻訳家です。#命令以下の日本語の文章を、国際的な医学学会での口頭発表用の英語原稿に翻訳してください。#制約条件専門用語は正確に翻訳してください。聴衆にわかりやすい、明瞭な表現を用いてください。スピーチとして自然な、丁寧な口語体でお願いします。#日本語原稿[ここに、作成した日本語の原稿を貼り付ける]実際にこのプロンプトを使った際に、私が用意した日本語原稿がこちらです。「皆さん、こんにちは。本日はこのような貴重な機会をくださり誠にありがとうございます。私はマウントサイナイ医科大学の原田 洸と申します。本日は生成AIをいかにして医療現場で活用するかについてお話をさせていただきます。生成AIは生活の至る所で活用されるようになっています。しかし、医療現場のAI活用はまだ十分ではありません」それに対するAIの回答がこちらです。“Hello everyone. Thank you very much for giving me the opportunity to speak today. My name is Ko Harada, and I am a physician at the Icahn School of Medicine at Mount Sinai. Today, I would like to talk about how generative AI can be integrated into clinical practice. As many of you know, generative AI is increasingly being used in various aspects of our daily lives. However, its application in the medical field is still quite limited.”詳しく見てみると、“As many of you know,”などの適切なフレーズを補って、プレゼンとして適切な文章にしてくれていることがわかります。方法2:スライドから原稿を作成するすでにスライドやポスターが完成しており、プレゼン用の原稿を作成したいという場合は、こちらの方法をお勧めします。作成したpptファイルをアップロードして、それを基に原稿を作成するというものです。なお、ChatGPTの場合、無料版ではファイルのアップロードに制限がある可能性があるのでご注意ください。今回は、プレゼンスライドが完成した状態で原稿を作るためのプロンプトの例を紹介します。プロンプト例#役割あなたは○○を専門とする医師です。#命令添付ファイルのプレゼンについて、読み原稿のスクリプトを作成してください。#制約条件プレゼンは英語です。プレゼンの長さは○分程度の予定です。スライド○からスライド○まで、それぞれのスライドの読む内容を作成してください。専門用語は正確に翻訳してください。聴衆にわかりやすい、明瞭な表現を用いてください。スピーチとして自然な、丁寧な口語体でお願いします。アウトプット例Slide 1: Title SlideScript: Good morning, everyone. Thank you for being here today.My name is Dr. Ko Harada, and I’m from the Department of Geriatrics and Palliative Medicine at the Icahn School of Medicine at Mount Sinai. Today, I will be talking about falls in older adults ― why they happen, how we can prevent them, and what we can do to support older patients after a fall.Slide 2: Learning ObjectivesScript: Here are the learning objectives for today’s presentation. First, we will identify key risk factors that increase fall risk in older adults. Second, we will look at medications and comorbidities that contribute to falls, and discuss safer alternatives.Finally, we will explore evidence-based interventions to reduce fall risk and prevent serious complications.Slide 3: Case PresentationScript: Let’s begin with a clinical case. This is a 92-year-old female with a history of depression, hypothyroidism, COPD, hypertension, and high cholesterol.She recently visited the emergency department after falling and injuring her left shoulder. X-rays showed no fracture or dislocation, and she was advised to wear a sling. Three days later, she came to the clinic because the pain was still severe.このように、スライドに基づいて原稿を作成してくれます。注意点としては、図や表など文字が少ないスライドでは情報が少ないため、原稿も短くなる傾向があります。それらのスライドでは方法1で紹介したように、そのスライドで伝えたい内容を日本語で作成し、翻訳するのがよいでしょう。

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ペニシリンの歴史【Dr.伊東のストーリーで語る抗菌薬】第2回

ペニシリンの歴史前回のイントロダクションに続いて、早速ですがペニシリンGについて解説していきます。ここをしっかりと頭に入れていただくことで、今後の抗菌薬の話もスムーズに理解できるため、ぜひ楽しんでいただければと思います。ペニシリンの発見ペニシリンを語るにあたっては、その発見者の話題を避けては語れません。ペニシリンを発見した人が誰か、皆さんはご存じでしょうか。アレクサンダー・フレミング博士ですね。この人は、第1次世界大戦に軍医として赴いた後、黄色ブドウ球菌の研究をしていたのです。ある時、フレミング博士は黄色ブドウ球菌を培地に撒いた状態で、週末の休暇をとっていました。ところが、休暇から博士が帰ってくると、黄色ブドウ球菌の培地に青カビが混入していることに気付くわけです。青カビの周囲ではコロニーが明らかに少なくなっていて、この培養黄色ブドウ球菌は使い物になりません(図1)。図1 青カビの混入した黄色ブドウ球菌培地画像を拡大するここでフレミング博士が素晴らしかったのは、青カビの中に黄色ブドウ球菌を死滅させることのできる物質があると閃いたところです。かくして、ペニシリンが発見されました。このペニシリンの発見は1929年の出来事でした。ペニシリンを薬として使おうとすると、どうしてもタイムラグが出てしまいます。動物実験が行われたのが1940年で、実際に使われるようになったのもそれ以降になるわけですが、さて、1940年代といえばどんな時代だったでしょうか? 第2次世界大戦ですね。戦争が起こると創部感染症が増えるという問題があります。創部感染症を起こすのは黄色ブドウ球菌です。ここで話がつながります。結果的に、フレミング博士は戦時中の戦傷兵の命を救った功績でノーベル賞を受賞しました。この話自体はとても有名で、皆さんの中には「そんなの当たり前」という方もいらっしゃると思います。ここで大事なのは「ペニシリンは、当初は黄色ブドウ球菌を狙って作られた抗菌薬だった」という事実です。しかし、現在はペニシリンで黄色ブドウ球菌をカバーすることがほとんどできません。なぜだか、わかりますでしょうか。戦争中は、ペニシリンはあくまで兵士の間で使われていた軍事資源です。ところが、戦後になると民間でもペニシリンが普及してきます。そうすると、黄色ブドウ球菌のうち、ペニシリンが効くものが淘汰されて、ペニシリンが効きにくいものばかりが生き残ってしまいます。その結果として、現在はペニシリンで黄色ブドウ球菌をやっつけることがほとんどできなくなっています。もちろん、一部の例外的な状況はありますが、そこには触れません。ペニシリンは役立たず?では、ペニシリンが役立たずかというと、そんなことはありません。いまのペニシリンGは、黄色ブドウ球菌を除けば、グラム陽性球菌の大部分をカバーすることができる優秀な抗菌薬です。グラム陽性球菌の名前を皆さんは挙げることができますか? たとえば、レンサ球菌、肺炎球菌は有名ですね。腸球菌も忘れがちですが、グラム陽性球菌です。ペニシリンGはこれらの細菌を得意としています(図2)。図2 ペニシリンGがカバーするグラム陽性球菌画像を拡大する図2で腸球菌をなぜ1段下に落として書いたかというと、これは腸球菌とセットで覚えていただきたい細菌があるからです。腸球菌はペニシリン系がよく効く一方でセフェム系が全然効かないという不思議な細菌ですが、同じような性質を持つ細菌がもう1ついます。それがリステリアです。リステリアはグラム陽性桿菌であり、分類が変わってしまいますが、とりあえずそのことは脇に置いておきましょう。腸球菌とリステリアは、ぜひセットで覚えておいてください。ペニシリンが効いて、セフェム系が効きません。あとはオマケとして、横隔膜から上の嫌気性菌もペニシリンGでカバーできます。要するに口腔内の嫌気性菌のことなのですが、これも知っておくと便利な知識です(図3)。図3 ペニシリンGがカバーする細菌画像を拡大する図3に示したとおり、ここまでペニシリンGがカバーできる細菌を挙げてきました。次回は、逆にペニシリンGが苦手とする細菌を紹介し、実際にペニシリンGを使う場面を考えてみます。

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第285回 訪問看護と有料老人ホームに規制強化の動き、現場からは「こんなもので本当にホスピス型住宅における過剰なサービス提供にブレーキをかけられるのか」との厳しい声も

ホスピス型住宅の「実態ない診療報酬請求」事件に関連して厚生労働省などで規制の動きこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。この週末は、百名山ハンターをしている山仲間に付き合って、紀伊半島の大峰山(八経ヶ岳)と大台ケ原(日出ヶ岳)を登ってきました。東京から京都経由で橿原神宮に入り、レンタカーでぐるりと回って3日間で2峰を落とす(しかも雨の中)という強行軍です。というわけで高市 早苗・自民党新総裁の故郷、奈良県の山間の細い国道、県道を250キロ近く走って実感したのですが、奈良を含め紀伊半島はとても山深くかつ神秘的ですね。中でも大峰山(熊野古道の一部も走っています)は修験道の山としても知られており、山上ヶ岳は今でも宗教的理由から女人禁制が守られており、女人結界門から先は女性の入山が認められていません。日本ではもうほとんどないと言われる女人規制の山が存在する県から、日本初の女性総理が誕生するかもしれないとは……。昨今の政治状況を鑑みるになかなかに意味深なことであるなあと思いながら奈良を後にしました。さて今回は、「第280回 ターミナルケア・ビジネスの危うさ露呈、『医心館』で発覚した『実態ない診療報酬請求』、調査結果の解釈はシロなのかグレーなのか?(前編)」、「第281回 同(後編)」で書いた、アンビスホールディングス(東京都中央区、代表取締役CEO柴原 慶一)の子会社のアンビス(東京都中央区)が運営する末期がん患者や難病患者向けのホスピス型住宅「医心館」で発覚した「実態ない診療報酬請求」事件に関連して、厚生労働省などで興味深い動きがありましたので、それについて書いてみたいと思います。報告書は“グレー”と言っているのに“我々はシロだった”と強引に解釈アンビスホールディングスが8月8日に公表した特別調査委員会の報告書は、「本件通知(厚労省通知)に定める訪問看護時間に比して明らかに短時間であると認められる事例や、複数名訪問の同行者を欠いたと認められる事例が存した。また、勤怠記録と訪問看護記録の齟齬並びに確定時期の異常値に照らせば、訪問実態に疑義を呈さざるを得ない事例も存した」として、記録の不備、営利優先の発想の存在、法令遵守の意識の低さ、業務遂行を確保する組織体制の不十分さなど、さまざまな問題点を指摘、「批判を受けるに値する」としつつも「多額の診療報酬を受けるために架空の事実をねつ造したような悪質な不正請求の事案とまでは認められない」としました。この報告書を受けてアンビスホールディングスは「訪問看護における医療行為が実態のあるものと特別調査委員会により判断されたものと認識」「看護実態について根拠資料の記載が不十分であると認定されたケースは、記録の登録ミス及び記載不足などによる形式的なエラーがその大部分を占めるものと認識」などと、意図的な不正請求はなかった点を強調するコメントを出しました。報告書は”グレー”と言っているのに”我々はシロだった”と強引に解釈しているようで違和感を覚えたのですが、厚労省もやはり同様の違和感を抱いたようです。2026年改定では、主治医が指示書に必要性を明記している場合に限り頻繁な提供を認める方針厚労省は10月1日、中央社会保険医療協議会(中医協)の総会で、有料老人ホームなどで訪問看護を過剰に提供する事業者への規制を強化する方針を明らかにしました。ホスピス型有料老人ホームの入居者らを対象に、一部の事業者による不正な診療報酬請求の横行が疑われることを踏まえたものです。「不正」とは具体的には、必要ないのに「1日3回」の頻繁な訪問や、複数人での訪問、報酬加算が得られる早朝・夜間や深夜の実施などです。2026年度の診療報酬改定で、主治医が指示書に必要性を明記している場合に限り、頻繁な提供を認めることになりそうです。報酬自体も引き下げられるかもしれません。ホームと資本・提携関係のある介護サービス事業所や居宅介護支援事業所の利用を契約条件とすることなどを禁止に続く10月3日、厚労省は「有料老人ホームにおける望ましいサービス提供のあり方に関する検討会」を開催し、これまでの議論の課題と論点を整理した取りまとめの素案を提示しました。同検討会は住宅型有料老人ホームなどでの過剰な介護サービスの提供、いわゆる「囲い込み」や、高齢者住まいの入居者紹介事業者への高額な紹介手数料の問題などを議論してきました。素案では、入居契約とケアマネジメント契約が独立していること、契約締結やケアプラン作成の順番といったプロセスにかかる手順書やガイドラインをまとめておき入居希望者に対して明示すること、契約締結が手順書やガイドライン通りに行われているかどうかなどを行政が事後チェックできる仕組みを作ることなどが挙げられています。また入居契約において、ホームと資本・提携関係のある介護サービス事業所や居宅介護支援事業所の利用を契約条件とすることや、そうした外付けサービスを利用する場合に家賃優遇といった条件付けを行うことや、かかりつけ医やケアマネジャーの変更を利用者に強要することを禁止する措置を設ける方針も挙げられました。さらに、中重度の要介護者や医療ケアを要する要介護者などを⼊居対象とする有料⽼⼈ホームについては、現⾏の届け出制から登録制に切り替える案も提示されました。アンビスが運営しているホスピス型住宅は、施設のカテゴリーとしては「住宅型有料老人ホーム」に位置付けられます。住宅型とは、施設内のスタッフではなく、外部(といっても、併設の訪問看護ステーション、訪問介護事業所を使うケースが大半ですが)スタッフによって看護・介護を提供します。この素案が仮にそのまま制度化されるとなると、ホームと資本・提携関係のある介護サービス事業所や居宅介護支援事業所の利用を強制できなくなるわけで、現実にそんなことが可能かどうかは別として、経営的には少なからぬダメージとなるでしょう。医療法人理事長と訪問看護会社の社長がホスピス型住宅の適正化を要望このように、悪質な有料老人ホームへの締め付けは一見強まっているように見えますが、まだまだ「甘い」と指摘する人もいます。10月3日付のメディファクスは、ホスピス型住宅で不正・過剰請求や居者の不利益が生じていることに関連して、医療法人社団悠翔会の佐々木 淳理事長と、訪問看護の会社Graceの西村 直之代表取締役が厚労省を訪問、鰐淵 洋子厚労副大臣らに要望書を提出、適正化を訴えたと報じています。同記事によれば、「要望書では、ホスピス型住宅を運営する企業で、不正請求が明らかになった事例を指摘。不正が発覚した企業への監査が必要だとした。さらに、他の企業でも不正・過剰請求が起きているのではないか、と懸念を示している」としています。対応した鰐淵副大臣も問題意識を示したとのことです。悠翔会の佐々木氏は首都圏を中心に多数の在宅医療のクリニックを経営するとともに、内閣府の規制改革推進会議専門委員(健康・医療・介護)も務める論客です。その佐々木氏は自身のXにこの厚労省訪問についてポスト、中医協が検討する「主治医が指示書に必要性を明記している場合に限り、頻繁な提供を認める」案では甘く「このままだと例によって本丸は無傷、まじめな事業所のとばっちりで終わるパターンだと思います」と書いています。さらに佐々木氏は「こんなもので本当にホスピス型住宅における過剰なサービス提供にブレーキをかけられると思っているのでしょうか。すでに私たちは一部のホスピス型住宅運営者から『1日3回の訪問看護が必要と指示書に記載せよ』と具体的なリクエストを受けています。もちろん週に数回の訪問で十分な安定した患者にそんな指示を書けるわけがありません。しかし、この要求を拒絶すれば、主治医としての関わりが終わるだけ。結局、言われるがままに指示書を書いてくれる医者を囲い込み、ますますブラックボックス化するのでしょう」と中医協案への懸念を示しています。「ホスピス型住宅を新しい施設類型に定義し直し、特定施設と同様、包括報酬にすればいい」そして佐々木氏は「事実上の施設看護を在宅・訪問看護として取り扱うことの弊害」を指摘、「ホスピス型住宅を新しい施設類型に定義し直し、特定施設と同様、包括報酬にすればいいのではないでしょうか。無駄な看護を押し売りする必要はなくなるし、無駄な社会保障費の支出も大幅に圧縮できるはずです」と大胆な改革案を提案しています。まったくの正論と言えるでしょう。住宅型とは名ばかりで、併設するステーションから自前のスタッフに頻回に訪問させているのでは、介護付き有料老人ホーム、すなわち特定施設と何ら変わりはありません。介護付き有料老人ホームとは異なる特定施設の新類型をつくり、報酬もマルメて(包括化して)しまえば、そうそうアコギなことはできなくなるのではないでしょうか。しかしながら、残念なことに来年は介護報酬改定がありません。再来年の改定に向けて、有料老人ホームの類型や特定施設の制度の抜本的見直しが進むことを期待したいと思います。

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「オピオイド減量」が推進?当事者の“声”が示したこれからの疼痛ケア【論文から学ぶ看護の新常識】第35回

「オピオイド減量」が推進?当事者の“声”が示したこれからの疼痛ケア重症患者の疼痛・鎮静に中心的に使用されているオピオイドには、多くの副作用や退院後の慢性的な使用、依存症のリスクが指摘されている。Lize-Mari Du Toit氏らの研究結果から、「オピオイド曝露の低減」と「補助的な疼痛管理戦略の活用」が患者や家族、ならびに医療者にとって共通の重要なアウトカムであることが示された。Intensive and Critical Care Nursing誌オンライン版2025年6月10日号に掲載の報告。ICUにおけるオピオイド曝露低減に関するステークホルダーの視点:修正デルファイ法による調査研究チームは、重症成人患者におけるオピオイド減量および鎮痛補助薬の使用に関して、患者にとって重要な主要アウトカムを特定することを目的に、修正デルファイ法を用いた調査を行った。ステークホルダー(利害関係者)である患者、家族、医療提供者を対象に、2回のアンケート調査と1回のディスカッションを行い、今後のランダム化比較試験に向けて、患者にとって重要な主要アウトカム、評価時点、および適切な評価ツール/定義を特定、評価した。主な結果は以下の通り。「オピオイドの減量」は、2回のアンケート調査を通じて、参加者の82%により患者にとって重要な主要アウトカムであると特定された。2回のアンケート調査から、患者にとって最も重要と評価されたアウトカムは「死亡率」と「疼痛管理」であった。アンケート調査およびディスカッションからさまざまなテーマが浮上し、ICUの疼痛管理に対して、薬理学的および非薬理学的な補助療法の両方が好まれることが示された。研究全体を通して特定された10個の主要なテーマは、「非薬理学的な疼痛管理戦略」「地域ケア提供者の関与」「家族/介護者の関与」「患者教育」「コミュニケーションの障壁」「メンタルヘルスの評価」「オピオイド曝露歴」「オピオイド依存/中毒」「不適切なQOLの評価」「オピオイドの有害反応/副作用」であった。意見は、臨床的または非臨床的な背景によって多様であった。参加者は、「オピオイド曝露の低減」と「補助的な疼痛管理戦略の活用」が、患者にとって極めて重要なアウトカムであることに合意した。オピオイド代替療法と、薬理学的および非薬理学的介入の有効性と安全性を検討するためには、さらなる研究が求められる。本研究の最も重要な点は、ICUという専門性の高い領域において、患者さんやご家族の「声」を可視化したことにあります。特に、多様なステークホルダーを巻き込むアプローチでありながら、インタビューなどの質的研究特有の解釈の主観性に依存せず、修正デルファイ法によって意見を体系的に集約し、科学的な客観性を与えている点に、研究デザインとしての秀逸さを感じます。その結果、医療者が「死亡率」や「疼痛管理」といった臨床指標を最優先する一方で、患者さんやご家族の個別回答の中では、「オピオイド曝露低減」に関して、自らの体験からネガティブな体験が語られています。これは、ICUでの治療が単に「命を救う」だけでなく、退院後の生活の質や依存リスクといった、その後の人生全体を見据えたものであるべきだという、当事者ならではの切実な視点を浮き彫りにした非常に示唆に富んだ結果です。この医療者と患者・家族との間の視点の違いを埋めるのが、本研究でも示唆されている「コミュニケーション」と「教育」です。「なぜ今オピオイドを使うのか」、「代替案にはどのような選択肢があるのか」、そして「退院後に注意するべきことは何か」。こうした情報を医療者が丁寧に言語化し、患者・家族と共有する姿勢とプロセスが、彼らの不安を和らげ、治療への信頼を築く上で不可欠と言えるでしょう。「命を救う」ことと「その後の人生の質を守る」こと。この二つの目標を高いレベルで両立させるために、私たちはステークホルダー全員の視点を尊重した対話を続ける必要があります。本研究はその重要な第一歩を示してくれました。論文はこちらDu Toit LM, et al. Intensive Crit Care Nurs. 2025 Jun 10. [Epub ahead of print]

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青年期のデジタル依存症が健康に及ぼす影響~メタ解析

 スマートフォン、コンピュータ、ソーシャルメディアプラットフォームなどのデジタル機器の過度かつ強迫的な使用を特徴とする青年期のデジタル依存症は、世界的な懸念事項となっている。中国・Xuzhou Medical UniversityのBlen Dereje Shiferaw氏らは、デジタル依存症について包括的に捉え、それらの青年期におけるサブタイプとさまざまな健康アウトカムとの関連性を調査する目的でシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Journal of Behavioral Addictions誌2025年9月30日号の報告。 Chinese National Knowledge Infrastructure(CNKI)、Wanfang、PubMed、Web of Scienceのデータベースより、青年期のデジタル依存症に関連する健康アウトカムを報告した研究を包括的にレビューし、事前に定義された包含基準と除外基準を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・デジタル依存症の若者では、過体重または肥満(オッズ比[OR]:1.25、95%信頼区間[CI]:1.03~1.48)、自己評価による健康状態不良(OR:1.75、95%CI:1.42~2.08)を報告する傾向がより高かった。・また、不眠症(OR:1.46、95%CI:1.33~1.59)、睡眠の質の低下(OR:1.50、95%CI:1.37~1.64)などの睡眠障害を経験している傾向があった。・デジタル依存症の若者は、自殺傾向(OR:2.63、95%CI:2.36~2.90)、抑うつ症状(OR:1.76、95%CI:1.68~1.83)、ストレス(OR:2.15、95%CI:1.79~2.52)、不安(OR:2.14、95%CI:1.99~2.28)などの精神衛生上の懸念についても高いオッズを示した。・さらに、喫煙(OR:1.55、95%CI:1.41~1.68)、問題のあるアルコール摂取(OR:1.47、95%CI:1.33~1.60)、薬物使用(OR:1.94、95%CI:1.44~2.44)の傾向も高かったことが示唆された。 著者らは「青年期におけるデジタル依存症は、身体的、精神的、行動上の問題を含む、重大かつ広範な健康への悪影響をもたらすことが示唆された」としている。

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室温が1℃下がると血圧はどのくらい上がるか~しずおか研究

 気温が低いと血圧が上昇することは知られているが、室温の影響についてはまだ十分な研究がなされていない。今回、静岡社会健康医学大学院大学の田原 康玄氏らがしずおか研究(静岡多目的コホート研究事業)において、家庭での室温と朝・夕・睡眠時の血圧を調べ、その関連を報告した。Journal of Hypertension誌オンライン版2025年9月19日号に掲載。 本研究は地域住民を対象とした縦断研究で、成人779人(平均年齢70.7歳)が対象。家庭血圧はカフ式オシロメトリック法の血圧計を用いて1週間測定し、睡眠時血圧はタイマー付き血圧モニターを用いて0時、2時、4時に自動的に記録した。室温は血圧モニターの温度計で測定した。 主な結果は以下のとおり。・室温が1℃下がると、朝の収縮期および拡張期血圧は0.863mmHgおよび0.342mmHg上昇し(p<0.001)、夕方の収縮期および拡張期血圧は0.721mmHgおよび0.320mmHg上昇した(p<0.001)。一方、睡眠時の収縮期血圧(0.076mmHg、p=0.181)と拡張期血圧(0.078mmHg、p=0.039)に対する影響は小さかった。・低い室温と朝の収縮期血圧および拡張期血圧の関連は、外気温で調整しても有意であった(0.809mmHgおよび0.304mmHg、p<0.001)。・室温による血圧変化に関連した因子は年齢のみであった。・朝の平均血圧が正常である433人のうち93人が最も寒い日に高血圧となった。これらの参加者は朝の平均血圧が正常範囲内の高い値で、降圧薬を使用している可能性が高かった。 これらの結果から、室温は朝・夕の血圧に影響するが、睡眠時血圧には影響しないことが示唆された。

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小児喘息の発作治療、ブデソニド・ホルモテロールvs.SABA/Lancet

 軽症喘息の小児において、ブデソニド・ホルモテロール配合薬による発作治療はサルブタモールと比較して、喘息発作の予防効果が有意に優れ、安全性プロファイルはほぼ同様であることが、ニュージーランド・Victoria University WellingtonのLee Hatter氏らCARE study teamによる第III相試験「CARE試験」の結果で示された。成人喘息の発作治療では、短時間作用型β2作動薬(SABA)に比べ吸入コルチコステロイド・ホルモテロール配合薬は喘息発作を有意に低減することが知られている。研究の成果は、Lancet誌2025年10月4日号で報告された。5~15歳の無作為化対照比較試験 CARE試験は、研究者主導型の52週間の実践的な非盲検無作為化対照比較優越性試験(Health Research Council of New Zealandなどの助成を受けた)。2021年1月28日~2023年6月23日にニュージーランドの15の臨床試験施設で参加者の適格性を評価した。 年齢5~15歳、喘息と診断され、吸入SABA単剤による発作治療を受けている患児360例(平均年齢10歳[SD 2.9]、女児178例)を対象とした。 被験者を、吸入ブデソニド(50μg)・ホルモテロール(3μg)配合薬の2回吸入を頓用する群(179例)、またはサルブタモール(100μg)の2回吸入を頓用する群(181例)に無作為に割り付けた。 主要アウトカムは、患児1例当たりの喘息発作の年間発症率であった。重症喘息発作には差がない 患児1例当たりの喘息発作の年間発症率(主要アウトカム)は、サルブタモール群が0.41であったのに対し、ブデソニド・ホルモテロール群は0.23と有意に良好であった(喘息発作の相対的比率[RR]:0.55、95%信頼区間[CI]:0.35~0.86、p=0.012)。5~11歳(0.72[0.46~1.12])より12~15歳(0.06[0.01~0.43])、女児(0.94[0.52~1.68])より男児(0.30[0.15~0.58])で、ブデソニド・ホルモテロール群の治療効果が高かった。 また、少なくとも1回の喘息発作を発症した患児の割合は、サルブタモール群の32%(58例)に比べ、ブデソニド・ホルモテロール群は17%(30例)であり、有意に低かった(オッズ比[OR]:0.43、95%CI:0.24~0.75、p=0.0060)。 一方、患児1例当たりの重症喘息発作の年間発症率は両群間に有意な差がみられなかった(ブデソニド・ホルモテロール群0.11、サルブタモール群0.18、RR:0.60、95%CI:0.32~1.14、p=0.11)。有害事象の発現頻度は同程度 少なくとも1件の有害事象が発現した患者の数は、ブデソニド・ホルモテロール群で162例(91%)、サルブタモール群で167例(92%)と両群間に差を認めなかった(OR:0.79、95%CI:0.35~1.79)。また、少なくとも1件の重篤な有害事象が発現した患者の数は、それぞれ5例(3%)および8例(4%)だった(0.62[0.17~2.24])。 成長速度(身長の平均群間差:-0.35cm、95%CI:-0.93~0.24、p=0.24)、喘息で授業が受けられなかった日数(RR:0.68、95%CI:0.44~1.04、p=0.075)、子供の喘息のケアで親が仕事をできなかった日数(RR:0.87、95%CI:0.49~1.56、p=0.64)は、いずれも両群間に差はなかった。 著者は、「これらの知見を先行研究のエビデンスと合わせると、現在SABA単剤による発作治療を受けている5~15歳の喘息患者は、吸入ブデソニド・ホルモテロール配合薬単剤に切り換えることで、より良好な喘息発作予防効果が得られると示唆される」とまとめている。 また、「年長児での高い治療効果は、年少児は吸入器の使用に支援を要したり、保護者が喘息の悪化を認識するのが遅れて治療開始が遅くなることで効果が低下する可能性があるが、年長児は独立して吸入器を使用できたためこの遅れがないという事実で説明が可能と考えられる」「男児での高い治療効果はこれまで報告がなく、喘息のアウトカムは思春期前の女児に比べ男児で不良であることから重要な観察結果となる可能性がある」としている。

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プライマリケアで利用可能な、新たな肝臓のリスク予測モデル/BMJ

 スウェーデン・カロリンスカ研究所のRickard Strandberg氏らの研究チームは、プライマリケアで容易に入手できるバイオマーカーを用いて、肝臓の不良なアウトカムのリスク予測モデル「CORE(cirrhosis outcome risk estimator)」を開発。観察研究により、COREは一般集団の肝関連アウトカムの予測において、現時点で第1選択として推奨される検査法であるFIB-4を上回る性能を発揮し、肝疾患リスク患者を層別化する新たな手段となりうることを示した。研究の成果は、BMJ誌2025年9月29日号に掲載された。COREで主要有害肝アウトカムの10年リスクを評価 研究チームは、プライマリケア環境で主要有害肝アウトカム(major adverse liver outcome:MALO)の発生を予測する新たなリスクモデルとしてCOREを開発し、その妥当性の検証目的で住民ベースのコホート研究を実施した(特定の助成は受けていない)。 モデル開発には、既知の肝疾患歴がなく、プライマリケアまたは産業保健健診で血液検査を受けたスウェーデンのAMORISコホート(48万651例)のデータを用いた。また、外的妥当性の検証は、フィンランドのFINRISKとHealth2000(2万4,191例)、および英国のUK Biobank(44万9,806例)のデータを用いて行い、FIB-4スコアと比較した。 COREは、年齢、性別、AST値、ALT値、γ-グルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)値で構成された。 代償性・非代償性肝硬変、肝細胞がん、肝移植、肝関連死の複合アウトカムをMALOとし、その10年リスクを評価した。識別能、較正能、臨床的有用性が優れる 追跡期間中央値28年の時点で、7,168件のMALOイベントが観察された。10年時のMALO発生リスクは0.27%であった。 訓練データにおける10年後の受信者動作特性曲線下面積(ROC-AUC)は、FIB-4が79%(95%信頼区間[CI]:78~80)であったのに対し、COREは88%(95%CI:87~89)を達成し、識別能が優れることが示された。検証コホートにおける10年後のCOREのROC-AUC(FINRISK:81%[95%CI:77~87]、UK Biobank:79%[78~80])は訓練データよりも低かったが、FIB-4のROC-AUCは73%(データを入手できたUK Biobankの値)と訓練データのCOREよりも低かった。 COREの較正能は3つのコホートのすべてで良好であり、リスクの予測値と観察値に良好な一致を認めた。また、決定曲線分析では、あらゆるリスク閾値においてCOREはFIB-4よりも高い純利益(net benefit)をもたらすことが示され、優れた臨床的有用性が確認された。 著者は、「一般集団にはMALOのリスクの高い人々(とくに2型糖尿病や肥満者)が多く、肝硬変や肝細胞がんなどの重大な合併症が発生する前に患者を発見するには、安価でプライマリケアで容易に可能な非侵襲的検査が求められる」「COREは、将来のMALO予測に関してFIB-4を上回る性能を示し、プライマリケアにおいてMALOリスクを有する臨床的に重要な患者を特定するための有望な第1選択の検査法となる可能性がある」としている。

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米国で「悪夢の細菌」による感染症が急増

 米国で、抗菌薬の効かない細菌による感染症が驚くべきペースで増加していることが、米疾病対策センター(CDC)の最新データで明らかになった。CDCによると、最後の砦とされるカルバペネム系薬剤を含むほぼ全ての抗菌薬に耐性を示すことから、「悪夢の細菌」の異名を持つNDM(ニューデリー・メタロβラクタマーゼ)遺伝子を持つNDM産生カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(NDM-CRE)が2019年から2023年の間に劇的に増加したという。CDCの疫学者であるMaroya Walters氏らによるこの研究の詳細は、「Annals of Internal Medicine」に9月23日掲載された。 NDM-CREを原因とする感染症は、肺炎、血流感染、尿路感染、創傷感染などを引き起こし、治療が困難で、死に至ることもある。治療で医師が利用できるのは、静脈内投与を要する高価な2種類の薬剤だけである。本研究には関与していない米エモリー大学の感染症研究者であるDavid Weiss氏は、「米国におけるNDM-CREの増加は深刻な危険であり、非常に憂慮すべき事態だ」とAP通信に対して語っている。 CDCの報告書によると、米国でのカルバペネム耐性菌を原因とする感染症の発生率は、2019年の10万人当たり2件弱から2023年には10万人当たり3件以上へと69%増加している。中でもNDM-CRE関連症例は、2019年の10万人当たり約0.25人から2023年には1.35人へと460%以上の急増を示した。2023年には、29州で4,341件のカルバペネム耐性菌による感染症が確認され、そのうち1,831件はNDM-CREが原因だったという。ただし、報告書では患者の死亡数は明らかにされていない。 CDCの疫学者でこの報告書の共著者であるMaroya Walters氏は、「耐性菌が広がるにつれ、尿路感染症などの一般的な病気の治療がはるかに困難になる可能性がある」と警告している。薬剤耐性は、細菌が抗菌薬に抵抗する能力を獲得することであり、必要がないときに抗菌薬を使用する、処方された用量を最後まで服用しないなどの誤用によって引き起こされることが多い。また専門家らは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックも、薬剤耐性菌の増加に影響を及ぼした可能性が高いと見ている。米セントルイス・ワシントン大学の感染症専門家であるJason Burnham氏は、「パンデミック中に抗菌薬の使用が急増したことは分かっており、これが薬剤耐性菌の増加に寄与した可能性が高い」とAP通信に対して語っている。 ただし、研究グループによると、今回の分析は、実際の感染者数を過小評価している可能性が高いという。多くの病院は必要な検査を行う能力がなく、カリフォルニア州、フロリダ州、ニューヨーク州、テキサス州といった人口の多い州のいくつかはデータセットに含まれていないからだ。このことから研究グループは、全国の感染者数は実際にはもっと多い可能性があると述べている。

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地中海式ダイエットは歯周病も予防する?

 地中海式ダイエットは、心臓病や神経変性疾患、がんなどさまざまな健康問題の予防に役立つことが示唆されているが、歯周病の重症度とも関連することが、新たな研究で明らかにされた。地中海式ダイエットの遵守度が低い人や赤肉の摂取頻度が高い人では、歯周病が重症化しやすい傾向があることが示されたという。英キングス・カレッジ・ロンドン(KCL)のGiuseppe Mainas氏らによるこの研究結果は、「Journal of Periodontology」に9月15日掲載された。 地中海式ダイエットは、果物、野菜、全粒穀物、ナッツ類、豆類、オリーブ油などの健康的な脂肪の摂取を重視し、魚、鶏肉、脂身の少ない肉、乳製品を適度に摂取する一方で、赤肉、菓子類、甘い飲み物、バターなどを控える食事法である。Mainas氏は、「われわれの研究結果は、バランスの取れた地中海式ダイエットが歯周病や全身性炎症を軽減し得ることを示唆している」とKCLのニュースリリースの中で述べている。 本研究では、KCLの口腔・歯科・頭蓋顔面バイオバンク研究に参加した195人の患者のデータを分析し、食事と歯周病、歯茎および全身の炎症との関連を検討した。対象者は、完全な歯科検診を受け、血液サンプルを提供し、食物摂取頻度調査票(FFQ)に回答した。研究グループは、FFQへの回答内容から地中海式ダイエットの遵守度を評価した。また、血液サンプルから、炎症マーカーであるC反応性蛋白(CRP)、歯周病に関与する酵素であるMMP-8(マトリックスメタロプロテアーゼ-8)、炎症や免疫応答に関与するさまざまなサイトカイン(インターロイキン〔IL〕-1α、IL-1β、IL-6、IL-10、IL-17)の血清レベルを測定した。 195人のうち112人は地中海式ダイエットの遵守度が高い群に分類された。多変量解析の結果、地中海式ダイエットの遵守度が高い群では低い群に比べて、重度の歯周病(ステージⅢ、Ⅳ)のオッズが有意に低いことが明らかになった(オッズ比0.35、95%信頼区間0.12〜0.89)。食品群別に検討すると、赤肉の摂取頻度の高さは重度の歯周病と独立して関連していた(同2.75、1.03〜7.41)。さらに、歯周病の重症度は炎症マーカー(CRP、IL-6)と関連しており、IL-6との関連は交絡因子を調整後も有意だった。一方で、野菜や果物などの植物由来の食品を多く摂取すると、炎症マーカーが低くなる傾向が認められた。 Mainas氏は、「歯周病の重症度、食事、そして炎症の間には関連性がある可能性があるため、患者の歯周病に対する治療方針を決める際には、これらの側面を総合的に考慮する必要がある」と話している。 研究グループは、タンパク質を多く含む食事は有害な細菌の増殖を促す口腔環境を作り出す可能性があると指摘する。論文の上席著者でKCL歯周病学教授のLuigi Nibali氏は、「バランスの取れた食事が歯周組織の健康状態を維持する上で役割を果たしていることを示唆するエビデンスが増えつつある。われわれの研究は、栄養価が高く植物性食品を多く含む食事が歯肉の健康改善に寄与する可能性があることを示している。しかしながら、人々が歯肉の健康を管理するための個別化されたアプローチを開発するには、さらなる研究が必要だ」と述べている。

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2型糖尿病患者は敗血症リスクが2倍

 2型糖尿病患者は、生命を脅かすこともある敗血症のリスクが2倍に上るとする研究結果が、欧州糖尿病学会年次総会(EASD2025、9月15~19日、オーストリア・ウィーン)で発表された。西オーストラリア大学のWendy Davis氏らの研究によるもので、特に60歳未満の患者はよりリスクが高いという。 研究者らが研究背景として示したデータによると、敗血症に罹患した患者の10%以上は死に至るという。また、2型糖尿病患者は、敗血症による死亡または重篤な状態へ進行するリスクが、糖尿病でない人に比べて2~6倍高いことがこれまでにも報告されている。ただし、最新のデータは限られていた。 今回の研究では、オーストラリアの一般住民、約15万7,000人のコミュニティーで実施された縦断的観察研究(フリーマントル糖尿病研究フェーズII)の参加者の敗血症罹患率が調査された。2008~2011年の研究参加登録の時点で2型糖尿病を有していた成人患者1,430人を特定した上で、年齢、性別、居住地域をマッチングさせた2型糖尿病でない5,720人の対照群を設定。登録時点における平均年齢は66歳で、男性52%であり、2型糖尿病群では敗血症による入院歴が2.0%に見られ、対照群でのその割合は0.8%だった。 平均10年間の追跡期間中に、2型糖尿病群の169人(11.8%)と対照群の288人(5.0%)が敗血症に罹患していた。年齢、性別、敗血症による過去の入院歴、2型糖尿病以外の慢性疾患などの潜在的な交絡因子を調整した後、2型糖尿病群は敗血症を発症するリスクが対照群の2倍に上ることが明らかになった。特に、年齢が41~50歳の集団では、2型糖尿病を有している場合に敗血症リスクが14.5倍高くなることが分かった。 また、2型糖尿病患者では、喫煙習慣がある場合に敗血症リスクが83%上昇することも示された。Davis氏は、「われわれの研究により、喫煙、高血糖、糖尿病の合併症など、修正可能な敗血症のリスク因子がいくつか特定された。これは、敗血症リスクを抑えるために、患者自身でも実行可能な対策が存在していることを強調するものと言える」と話し、「2型糖尿病患者が敗血症を防ぐ最善の方法は、禁煙、高血糖の是正、そして糖尿病に伴う細小血管および大血管の合併症を予防することだ」と付け加えている。 2型糖尿病が敗血症のリスクを押し上げるメカニズムとしては、研究者らによると、高血糖が免疫機能を低下させることの影響が考えられるという。実際、2型糖尿病患者は、尿路感染症や皮膚感染症、肺炎などの感染症にかかりやすく、それらの感染症から敗血症へと進展することがある。また、糖尿病により生じていることのある血管や神経のダメージが、敗血症のリスクをより高める可能性もあるとのことだ。ただし研究者らは、今回の研究手法では2型糖尿病と敗血症の間の直接的な因果関係の証明にはならないことを、留意点として挙げている。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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血栓症予防に、避難所ではどんな体操を勧めたらよいか?【実例に基づく、明日はわが身の災害医療】第8回

避難所ではどんな体操を勧めたらよいか?避難所生活も数日が経過し、衛生環境やプライバシーが不完全な慣れない暮らしの中で、とくに高齢の避難者の方々に、疲労の色が濃くなってきました。血栓症の予防や筋力の維持のため、避難者を支えるボランティアや行政の職員から、「何か体操をしてもらおうと思いますが、どうしましょう?」と相談を受けました。このような時、どんなアドバイスをしたらよいでしょうか?東日本大震災の避難所での教訓この問いに対して、私には苦い経験があります。東日本大震災の際、支援に訪れた南三陸町の大きな避難所で、実際に自治体の方からこの相談を受けました。その時、私は「ぜひやりましょう。ラジオ体操などが手軽でよいのではないでしょうか」と安易にお答えした記憶があります。しかしその後、災害医療の専門家から、「朝は低血糖や血圧上昇のリスクがあり、寒い屋外での体操は危険です」とご指摘を受け、自身の配慮が至っていなかったことを大いに反省しました。最終的には、理学療法士のボランティアの方が、午後の時間帯に、被災者の状態に合わせて考案した体操を実施してくださいました。この経験は、避難所での運動を考えるうえで重要な教訓となりました。避難生活の身体機能低下避難生活が続くと、心身にはさまざまな影響が現れます。仮設住宅で生活する高齢者は、自宅での生活継続群に比べ、身体機能が有意に低下することがわかっており、運動機会の確保が重要と示されています1)。また、ストレッチや体操など短時間で軽い運動や、徒手的で低侵襲のマッサージであっても、避難者の「気分」が改善され、即時的に心理状態を改善する効果があることが示されています2)。このように、避難所での運動を促すことは、身体機能の維持だけでなく、精神的にも良い影響があると考えられます。体操はいつ行うのが理想的か?―朝の運動に潜むリスクでは、体操はいつ行うのがよいのでしょうか。とくに朝の運動には注意が必要です。朝は覚醒に伴い交感神経が活性化し、「モーニングサージ」と呼ばれる朝の血圧上昇が起こりやすい時間帯です。実際に、心筋梗塞の発症は午前に発症のピークがあることが知られています。とくに高血圧や動脈硬化のある人は影響を受けやすいので、起床後いきなり激しい運動をすることは避けるように提唱されています3)。また、室温が20℃から10℃に下がるだけで、朝の収縮期血圧が5~9mmHg上昇するというデータがあり、寒さはモーニングサージを増幅します。寒い朝に体操を行う場合は、屋内で上着を着て、ゆっくり開始するのが安全です4)。私が南三陸でご指摘を受けたのは、こうしたことを深く考えていないと思われたからでしょう。「ラジオ体操」は避難所に適しているのか?誰もが知るラジオ体操ですが、避難所で行うにはいくつかの点を考慮する必要があります。ラジオ体操の歴史は古く、1928年に最初のラジオ放送があったといわれています。現在の形になったのは1951年の戦後になってからですが、その当時、音楽に合わせて同じ動きをする民衆にGHQが警戒し、一時的にラジオ体操を禁止したこともあるようです。フレイルがある高齢者に、毎日3セットのラジオ体操をしてもらうことで、俊敏な動きとバランス、持久力が有意に改善したと報告されています5)。しかし、ラジオ体操が考案された当時の平均寿命は60代でした。そもそもラジオ体操は60歳以上の人が毎日行う前提では作られておらず、確かに、ジャンプも含まれるラジオ体操は、高齢者にとってはかなりハードなものと言えます。こうした背景からか、全国の自治体で、理学療法士会など専門家により、高齢者や災害時のために非常に多くのストレッチや体操が考案されており、動画が公開されていますが、ラジオ体操を積極的に推奨されている例はあまり見かけません。たとえば、能登半島地震で活用された、稲葉先生お勧めの「かえるの合唱」に合わせた体操の動画6)や、東京都が推奨している体操7)(図)なども参考になります。画像を拡大する図. 避難生活で行う体操(参考文献7より)以下は、避難所での運動のミニプロトコル案です。避難所でのミニプロトコル案1.1日2回(午前/夕方)、3~5分の体操。椅子座位版も併用2.参加は任意、ハイリスク(急性疾患/胸痛/強い息切れ/著しい高血圧)は見学3.下肢ポンプ運動(踵上げ・足首回し)を前後に追加:VTE対策4.換気と距離確保、床の段差/滑りに注意いずれにしても、避難所や仮設住宅で生活している被災者は、避難生活中の心身機能の維持と回復のための運動が望ましく、無理のない範囲で体操を行うことが勧められます。 1) Ishii T, et al. Physical performance deterioration of temporary housing residents after the Great East Japan Earthquake. Prev Med Rep. 2015; 2:916-919. 2) 熊本 圭吾. 避難所の高齢被災者における軽い運動の心理的効果. 長保医大紀要. 2016;1:15-18. 3) Kario K. Morning surge in blood pressure and cardiovascular risk: evidence and perspectives. Hypertension. 2010;56:765-773. 4) Umishio W, et al. Cross-Sectional Analysis of the Relationship Between Home Blood Pressure and Indoor Temperature in Winter: A Nationwide Smart Wellness Housing Survey in Japan. Hypertension 2019 ;74:756-766. 5) Osuka Y, et al. Effects of Radio-Taiso on Health-related Quality of Life in Older Adults With Frailty: a Randomized Controlled Trial. J Epidemiol. 2024;34:467-476. 6) 体操プロジェクト. かんたんリズム体操(かえるの合唱編)【動画】 7) 東京都総務局総合防災部防災管理課. 東京防災. 2023;232-233.

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第288回 父親の運動の努力が精子RNAを介して子に引き継がれる

父親の運動の努力が精子RNAを介して子に引き継がれる父親が運動に励んで備えた後天的な持久走性能の向上が、精子を介したエピジェネティック(後成的)情報の引き渡しで子に引き継がれることがマウスを使った検討で示されました1-3)。運動で備わった有益な性質がどうやら子に受け継がれることが示されつつあり、親が体を動かすことは子の不活発や慢性疾患を防ぐ効果的な手立てとなりうるとみられています。これまでは母親の運動の次世代への効果を調べたものがほとんどでしたが、父親の運動にも目が向けられるようになっています。たとえば最近の研究で、遺伝配列以外の後成的情報が精子を介して父親から子に受け渡されうることが示唆されています。DNAメチル化やヒストン修飾などの典型的な後成的情報に加えて、精子起源の小分子RNA(small RNA、略してsRNA)も親から子への性質継承にだいぶ貢献しているようです。精子のsRNAは父親がどう過ごしているによって変化し、受精に加わって胚の遺伝子発現や発達を調節し、子の生理機能や振る舞いを変化させることが知られています。南京大学と南京医学大学のチームの新たな研究の結果、雄マウスが運動で備えた持久走性能が精子のsRNAの一種のマイクロRNA(miRNA)を介して子に伝わる仕組みが明らかになりました。持久運動は骨格筋の代謝や構造を好調にします。その順応効果は主にミトコンドリアの新生と筋繊維の糖分解から酸化的リン酸化への移行がもたらします。運動で増え、核とミトコンドリアゲノムからのミトコンドリアタンパク質の発現を調和する転写共役因子のPGC-1αがそれらの反応の多くを担います。PGC-1αの役割は多く、ミトコンドリアの品質管理や脂肪酸利用の代謝を促すことなどにも携わります。骨格筋でPGC-1αを多く発現するマウスは、持久運動をせずとも持久運動がもたらすような順応を呈することが先立つ研究で示されています。新たな研究によると、運動に励んだ雄マウスの子は生まれつき運動向きになっており、不活発な雄の子に比べて骨格筋が糖をより取り込み、代謝指標が良好で、より長く走りました。父マウスの骨格筋でのPGC-1α過剰発現が子の持久力を高めることも示されました。さらに研究を進めたところ、父親の運動の恩恵が精子のRNAを介して子に伝わることが判明しました。運動する雄マウスの精子のsRNAを受精卵に注入したところ、運動した雄の子と同様の振る舞い、代謝、分子特徴が再現されました。雄マウスの運動と骨格筋PGC-1α過剰発現はどちらも精子のmiRNAの顔ぶれを変え、PGC-1αを封じる転写調節因子NCoR1を抑制することでミトコンドリア新生と酸化的代謝を促すことが突き止められました。まとめると、父親のPGC-1α過剰発現が精子のmiRNAを変えて胚のNCoR1が抑制されることで、父親が運動で備えた順応が子に伝わる仕組みが明らかになりました。ただし、父親の運動での持久力の改善は雄の子に限られ、雌の子には認められませんでした。父親の運動の恩恵は均一ではなく性によって異なる仕組みで受け継がれるのかもしれません。肥満や慢性疾患を生じ易くする不活発で体を動かさない生活習慣がまかりとおるこのご時世で、子を授かる前の父親があえて運動することの重要性を今回の結果は示しており、父親の運動は子の糖恒常性を、骨格筋での糖取り込みを促すことで改善しうるようです2)。「言うは易く行うは難し」かもしれませんが、子をやがて授かる男性が運動に励むことは次世代の健康を改善する費用対効果的な手段らしく、肥満と慢性疾患の世代間連鎖を断ち切るのに役立つようです。 参考 1) Yin X, et al. Cell Metab. 2025 Oct 6. [Epub ahead of print] 2) Sperm microRNAs: Key regulators of the paternal transmission of exercise capacity / Eurekalert 3) Well-exercised male mice appear to pass fitness to their male offspring / Science

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