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多発性骨髄腫におけるCAR-T細胞の製造不良の要因/京都大学

 CAR-T細胞療法は、再発難治多発性骨髄腫の管理を大幅に改善した。しかしCAR-T細胞には、製造過程で一部に発生する細胞増殖不良による「製造不良」という問題がある。製造不良は治療の大きな遅れや、その間の病勢進行につながるため、治療計画に重大な影響を与える。製造不良の実態把握とリスク因子の同定が急務とされていた。 そのようななか、骨髄腫患者におけるCAR-T細胞製造不良リスクを特定するため、日本でide-cel(商品名:アベクマ)治療を受けた患者の全国コホート研究が実施された。対象はide-cel投与のための白血球アフェレーシスを受けた患者である。 主な結果は以下のとおり。・解析対象は154例で、そのうち13例(8.4%)で製造不良が発生した。・製造不良例では成功例に比べ、診断時の17p欠失率が高く(38.5% vs.14.9%)、アフェレーシス前6ヵ月以内のアルキル化剤治療が多く(53.8% vs.23.4%)、またアフェレーシス前の化学療法ライン数が多かった(中央値6 vs.5)。・製造不良例では成功例に比べ、ヘモグロビン値(8.6 vs.10.0g/dL)、血小板数(5.9 vs.13.8x104/μL)、CD4/CD8比(0.169 vs.0.474)が有意に低かった。・アフェレーシス前6ヵ月以内のアルキル化剤使用は、血小板数とCD4/CD8比低下に関連していた。

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日本人治療抵抗性うつ病患者に対するブレクスピプラゾール2mg補助療法の長期有用性

 うつ病患者では、抗うつ薬単独療法で治療反応が不十分な場合が少なくない。治療抵抗性うつ病に対するブレクスピプラゾール補助療法の有効性および安全性は、プラセボ対照ランダム化多施設共同並行群間第II/III相試験であるBLESS試験において確認されている。BLESS試験は、抗うつ薬単独療法で効果不十分であった日本人治療抵抗性うつ病患者740例を対象に、補助療法として6週間のブレクスピプラゾール1mg/日または2mg/日をプラセボと比較した試験である。関西医科大学の加藤 正樹氏らは、日本人治療抵抗性うつ病患者に対するブレクスピプラゾール2mg補助療法の52週間にわたる長期安全性および有効性を評価するため、本検討を行った。CNS Drugs誌オンライン版2024年10月18日号の報告。 52週間のオープンラベル試験では、6週間のBLESS試験を完了した患者および65歳以上の新規患者を対象とした。対象患者には、第1週目から固定用量としてブレクスピプラゾール2mg/日の漸増投与を行った。安全性評価には、治療中に発生した有害事象(TEAE、主要アウトカム)、臨床評価、検査値を含めた。有効性の評価には、Montgomery Asbergうつ病評価尺度(MADRS)、臨床全般印象度の改善度(CGI-I)、ハミルトンうつ病評価尺度17項目(HAMD-17)合計スコア、シーハン障害尺度(SDS)を用いた。 主な結果は以下のとおり。・安全性/有効性対象には247例(ロールオーバー患者:216例、新規患者:31例)を含め、そのうち138例(55.9%、ロールオーバー患者:132例、新規患者:6例)が試験を完了した。・発生率が10%以上のTEAEは、体重増加(33.2%、82例)、アカシジア(23.5%、58例)、鼻咽頭炎(21.1%、52例)、傾眠(10.5%、26例)であった。・治療中止に至るTEAE発生率は、すべての患者で26.7%、新規患者で58.1%。・ベースラインから52週目までの平均体重増加は、4.2±6.5kg(138例)であり、ベースライン後の診察で7%以上の体重増加が認められた患者の割合は、44.5%(110例)であった。・遅発性ジスキネジア、自殺/自殺企図に関連する有害事象は認められなかった。・原因不明の死亡例が1例報告されたが、治療とは無関係であると判断された。・52週間の試験期間中、ブレクスピプラゾールを投与されたすべての患者においてベースラインからのMADRS合計スコアの改善が認められた(平均変化:−7.3±8.7)。・すべての患者における52週目でのMADRSの治療反応率は41.3%(57例)、寛解率は34.8%(48例)であった。・52週間の試験期間中、CGI-S(平均変化:−0.8±1.0)、HAM-D17合計スコア(同:−5.9±6.3)、SDS平均スコア(同:−1.0±2.2)のベースラインからの改善が認められ、長期ブレクスピプラゾール治療による症状の持続的な改善が示唆された。 著者らは「本試験は、高齢者を含む日本人うつ病患者に対するブレクスピプラゾール2mg/日の安全性プロファイルを評価した初めての研究であり、これまでの報告と同様に、新たな安全性リスクは認められず、52週間にわたる持続的な有効性が確認された」と結論付けている。

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ペムブロリズマブのNSCLC周術期治療(KEYNOTE-671)は日本人でも有効/日本肺学会

 ペムブロリズマブの非小細胞肺がん(NSCLC)周術期治療(KEYNOTE-671)は米国、欧州に続き、本邦でも2024年8月28日にNSCLCにおける術前・術後補助療法の適応を取得している。この根拠となった第III相「KEYNOTE-671試験」における日本人集団の結果について、聖マリアンナ医科大学 呼吸器外科主任教授の佐治 久氏が第65回日本肺学会学術集会で発表した。試験デザイン:国際共同無作為化二重盲検第III相試験対象:切除可能なStageII、IIIA、IIIB(N2)のNSCLC患者(AJCC第8版に基づく)試験群:ペムブロリズマブ200mg+化学療法(シスプラチン[75mg/m2]+ゲムシタビン[1,000mg/m2を各サイクル1、8日目]またはペメトレキセド[500mg/m2])を3週ごと最大4サイクル→手術→ペムブロリズマブ200mgを3週ごと最大13サイクル(ペムブロリズマブ群:397例)対照群:プラセボ+化学療法(同上)を3週ごと最大4サイクル→手術→プラセボを3週ごと最大13サイクル(プラセボ群:400例)評価項目:[主要評価項目]無イベント生存期間(EFS)および全生存期間(OS)[副次評価項目]病理学的奏効(mPR)、病理学的完全奏効(pCR)、有害事象など 追跡期間中央値36.6ヵ月の時点における全体集団のEFS中央値は、ペムブロリズマブ群では47.2ヵ月、プラセボ群では18.3ヵ月であった(ハザード比[HR]:0.59、95%信頼区間[CI]:0.48~0.72)。OS中央値は、ペムブロリズマブ群では未到達、プラセボ群では52.4ヵ月であった(HR:0.72、95%CI:0.56~0.93、p=0.0052[片側])。 日本人集団における主な結果は以下のとおり。・全体集団797例中、日本人は82例(10.3%)(ペムブロリズマブ群39例、プラセボ群43例)であった。手術に至った割合はペムブロリズマブ群85%(33例)、プラセボ群91%(39例)であり、全体集団(ペムブロリズマブ群82%、プラセボ群79%)より良好であった。・データカットオフ時点(2023年7月10日)におけるEFS中央値は、ペムブロリズマブ群では未到達、プラセボ群では32.8ヵ月であった(HR:0.62、95%CI:0.33~1.19)。3年EFS率は、それぞれ66.1%、45.1%であった。・OS中央値は、両群ともに未到達であった(HR:0.87、95%CI:0.34~2.20)。3年OS率はペムブロリズマブ群では78.0%、プラセボ群では77.9%であった。・ペムブロリズマブ群のmPR率は28.2%(95%CI:15.0~44.9)、pCR率は12.8%(95%CI:4.3~27.4)、プラセボ群のmPR率は7.0%(95%CI:1.5~19.1)、pCR率は2.3%(95%CI:0.1~12.3)であり、ペムブロリズマブ群で良好であった。・Grade3以上の治療関連有害事象(TRAE)はペムブロリズマブ群59%(23例)、プラセボ群47%(20例)に認められ、Grade3以上の免疫関連有害事象(irAE)およびインフュージョンリアクション(IRR)は、ペムブロリズマブ群で18%(7例)に認められた。両群ともに死亡に至ったTRAE、irAE、IRRは認められなかった。 佐治氏は、今回の有効性、安全性の結果はKEYNOTE-671試験の全体集団の結果と同等であるとし、「日本人におけるペムブロリズマブの術前・術後補助療法の使用を支持するものである」とまとめた。

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高用量ビタミンDは心血管マーカーを低下させるか

 観察研究において、血清ビタミンD値が低い高齢者の心血管疾患(CVD)リスクが高いことが示されているが、ランダム化比較試験ではビタミンDサプリメントによるCVDリスクの低下効果は実証されていない。今回、米国・ハーバード大学医学部のKatharine W Rainer氏らの研究で、高用量ビタミンD投与は低用量ビタミンD投与と比較し、血清ビタミンD値が低い高齢者の潜在的心血管マーカーに影響を与えなかったことが明らかになった。American Journal of Preventive Cardiology誌オンライン版2024年12月号掲載の報告。 STURDY試験は、潜在的なCVDを特徴付ける心血管マーカーの高感度心筋トロポニン(hs-cTnI)とN末端プロb型ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)が、高用量ビタミンD投与によって低下するかを検証するため、ビタミンD3を4用量(200、1,000、2,000、4,000IU/日)で投与し、効果を検証する二重盲検ランダム化適応型試験で、本研究はこのSTURDY試験の付随研究であった。血清25-ヒドロキシビタミンD(25[OH]D)濃度が低く(10~29ng/mL)、転倒リスク予防のためにビタミンDを投与された高齢者を低用量治療群(200IU/日)と高用量治療群(1,000IU以上/日)に割り付け、Hs-cTnI値およびNT-proBNP値をベースライン、3ヵ月、12ヵ月、24ヵ月のタイミングで測定した。主要評価項目は最初の転倒または死亡までの時間であった。なお、ビタミンDの投与量によるバイオマーカーへの影響は、回帰分析であるトービットモデルを用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・解析対象者688例の平均年齢±SDは76.5±5.4歳で、女性が43.6%、CVD既往歴を有する者は29.4%であった。・hs-cTnIは低用量群で5.2%、高用量群で7.0%の増加がみられた。・NT-proBNPではそれぞれ11.3%と9.3%の増加がみられた。・調整モデルではベースラインの血清25[OH]D値はベースラインのHs-cTnIと関連していなかった。・低用量群と比較して高用量のhs-cTnIは1.6%差(95%信頼区間[CI]:-5.3~8.9)、NT-proBNPは-1.8%差(95%CI:-9.3~6.3)であった。・いずれのマーカーにおいても、3ヵ月後、12ヵ月後、24ヵ月後に有意な変化はみられなかった(Hs-cTnI:傾向のp=0.21、NT-proBNP:傾向のp=0.38)。 研究者らは、「ビタミンD値とhs-cTnIの間には逆相関関係があるものの、ビタミンD3の投与量を増やしても時間経過に伴うhs-cTnIの改善は見られなかった。本結果は、CVDイベントを予防するためにビタミンD3の高用量使用を支持するものではない」としている。

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PIK3CA変異進行乳がん1次治療、inavolisib追加でPFS改善/NEJM

 PIK3CA変異陽性、ホルモン受容体陽性、HER2陰性の局所進行または転移を有する乳がん患者の治療において、パルボシクリブ+フルベストラントにプラセボを加えた場合と比較して、パルボシクリブ+フルベストラントにPI3Kα阻害薬inavolisibを追加すると、無増悪生存期間(PFS)が有意に延長した一方で、一部の毒性作用の発生率が高いことが、英国・Royal Marsden Hospital and Institute of Cancer ResearchのNicholas C. Turner氏らが実施した「INAVO120試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2024年10月31日号に掲載された。国際的な無作為化プラセボ対照第III相試験 INAVO120試験は、進行乳がんにおけるinavolisib追加の有用性の評価を目的とする二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2020年1月~2023年9月に28ヵ国で患者を登録した(F. Hoffmann-La Rocheの助成を受けた)。 対象は、PIK3CA変異陽性、ホルモン受容体陽性、HER2陰性の局所進行または転移を有する乳がんの女性(閉経の前/中/後かは問わない)または男性で、術後補助内分泌療法中または終了後12ヵ月以内に再発した患者であった。 被験者を、1次治療としてinavolisib(9mg、1日1回、経口投与)とパルボシクリブ+フルベストラントを併用投与する群(inavolisib群)、またはプラセボとパルボシクリブ+フルベストラントを併用投与する群(プラセボ群)に1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要評価項目は、担当医の評価によるPFS(無作為化から病勢進行または全死因死亡までの期間)であった。全生存率は有意差がない 325例を登録し、inavolisib群に161例、プラセボ群に164例を割り付けた。全体の年齢中央値は54.0歳(範囲:27~79)、319例(98.2%)が女性、195例(60.0%)が閉経後女性であり、167例(51.4%)が3つ以上の臓器に転移を、260例(80.0%)が内臓(肺、肝、脳、胸膜、腹膜)転移を有し、269例(82.8%)が過去に術前または術後補助化学療法を受けていた。追跡期間中央値は、inavolisib群21.3ヵ月、プラセボ群21.5ヵ月だった。 PFS中央値は、プラセボ群が7.3ヵ月(95%信頼区間[CI]:5.6~9.3)であったのに対し、inavolisib群は15.0ヵ月(11.3~20.5)と有意に延長した(病勢進行または死亡のハザード比[HR]:0.43、95%CI:0.32~0.59、p<0.001)。また、感度分析として盲検下独立中央判定による無増悪生存期間の評価を行ったところ、結果は担当医判定と一致していた(0.50、0.36~0.68、p<0.001)。 一方、6ヵ月、12ヵ月、18ヵ月時の全生存率は、inavolisib群がそれぞれ97.3%、85.9%、73.7%、プラセボ群は89.9%、74.9%、67.5%であり、両群間に有意差を認めなかった。死亡のHR(inavolisib群vs.プラセボ群)は0.64(95%CI:0.43~0.97、p=0.03)であり、事前に規定された有意差の境界値(p<0.0098)を満たさなかった。 客観的奏効率はinavolisib群が58.4%、プラセボ群は25.0%(群間差:33.4%ポイント、95%CI:23.3~43.5)、奏効期間中央値はそれぞれ18.4ヵ月および9.6ヵ月(HR:0.57、95%CI:0.33~0.99)であった。重篤な有害事象inavolisib群24.1%、試験薬投与中止6.8% Grade3/4の有害事象は、inavolisib群が80.2%、プラセボ群は78.4%で発現した。このうちinavolisib群で多かったGrade3/4の有害事象として、高血糖(5.6% vs.0%)、口内炎/粘膜炎症(5.6% vs.0%)、下痢(3.7% vs.0%)を認め、Grade3/4の皮疹は両群とも観察されなかった。 重篤な有害事象はinavolisib群24.1%、プラセボ群10.5%、Grade5(致死性)の有害事象はそれぞれ3.7%および1.2%で発現し、有害事象による試験薬の投与中止は6.8%(inavolisib 6.2%、パルボシクリブ4.9%、フルベストラント3.1%)および0.6%(有害事象によるパルボシクリブ、フルベストラントの投与中止はない)で発現した。 著者は、「本研究では、これらの患者集団において、総投与量を用いたPI3Kα阻害薬(inavolisib)+CDK4/6阻害薬(パルボシクリブ)+内分泌療法(フルベストラント)の併用療法は、PFSを大幅に改善した。一部の有害事象の発現率が高いものの安全性プロファイルは良好であったことから、この治療法は新たな治療選択肢となる可能性がある」としている。

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日本人の認知機能にはEPA/DHAに加えARAも重要―脳トレとの組合せでの縦断的検討

 パズルやクイズなどの“脳トレ”を行う頻度の高さと、アラキドン酸(ARA)やドコサヘキサエン酸(DHA)という長鎖多価不飽和脂肪酸(LCPUFA)の摂取量の多さが、加齢に伴う認知機能低下抑制という点で、相加的に働く可能性を示唆するデータが報告された。また3種類のLCPUFAの中で最も強い関連が見られたのは、DHAやエイコサペンタエン酸(EPA)ではなくARAだという。サントリーウエルネス(株)生命科学研究所の得田久敬氏、国立長寿医療研究センター研究所の大塚礼氏らの研究結果であり、詳細は「Frontiers in Aging Neuroscience」に8月7日掲載された。 認知機能の維持には、食習慣や運動習慣、脳を使うトレーニング“脳トレ”などを組み合わせた、多面的なアプローチが効果的であると考えられている。ただ、それらを並行して行った場合の認知機能に対する影響を、縦断的に追跡した研究報告は少ない。得田氏らは、栄養関連で比較的エビデンスの多いLCPUFAと脳トレの組み合わせが、加齢に伴う認知機能低下を抑制するのではないかとの仮説の下、以下の検討を行った。 この研究は、国立長寿医療研究センターが行っている「老化に関する長期縦断疫学研究(NILS-LSA)」のデータを用いて行われた。2006~2008年に登録された認知症のない60歳以上の地域住民から、EPA製剤が処方されておらずデータ欠落のない906人を解析対象とした。対象者の主な特徴は、平均年齢70.2±6.7歳、男性50.8%で、認知機能を表すMMSEは30点満点中28.1±1.6点であり、3日間の食事記録(サプリメント摂取も含む)から推計したLCPUFAの1日当たり摂取量の中央値は、ARAが152mg、EPAが280mg、DHAが514mgだった。また、クロスワードパズルや数字パズルなどの脳トレを、週1回以上行っている割合は、35.8%だった。 2年間の追跡で、MMSEが2点以上低下した場合を「認知機能の低下」と定義すると、180人(19.9%)がこれに該当。認知機能が低下した群はそうでない群に比べて、高齢で教育歴が短く、ベースライン時点のMMSEが高いことのほかに、ARA摂取量が少ない(140対154mg/日、P=0.005)という有意差が認められた。EPAとDHAの摂取量は認知機能低下と有意な関連を認めなかった。また、性別の分布、喫煙、アルコール摂取量、身体活動量、BMI、基礎疾患有病率、および脳トレの頻度も有意差がなかった。 脳トレの頻度および3種類のLCPUFAの摂取量について、それぞれの三分位で3群に分け、交絡因子(年齢、性別、BMI、喫煙、アルコール摂取量、身体活動量、教育歴、収入、基礎疾患、抑うつ傾向、MMSEなど)を調整して、認知機能の低下との関連を検討すると、脳トレの頻度の高さ(傾向性P=0.025)と、ARA摂取量の多さ(傾向性P=0.006)が有意に関連していた。EPAやDHAの摂取量との関連は非有意だった。有意な関連の認められた脳トレ頻度の高低(週1回以上/未満)、および、ARA摂取量の多寡(中央値以上/未満)とで全体を4群に分けて、双方が少ない群を基準として認知機能の低下のオッズ比(OR)を算出した結果、他の3群は全てオッズ比が有意に低く、双方が多い群で最も低いオッズ比(OR0.415)が観察された(傾向性P=0.001)。 ところで、本研究ではEPAやDHAと認知機能低下との関連が非有意だったが、海外からはEPAやDHAも認知機能に対して保護的に働くことを示唆するデータが複数報告されている。この違いの理由として、日本人は魚の摂取量が多いため、EPAやDHAの平均摂取量が海外の報告より約3倍以上高いことの影響が考えられる。そこで、本研究の対象者のうち、EPA、DHAの摂取量が下位3分の1の人に絞り込んで、上記と同様のサブグループ解析を施行した。その結果、DHAについては摂取量が多いほど認知機能低下のオッズ比が低いという有意な関連が認められ(傾向性P=0.023)、かつ、脳トレ頻度と組み合わせた4群での比較でも、双方が多いことによる相加的な影響が認められた(傾向性P=0.025)。一方、EPAに関してはこの対象の解析でも、有意性が見られなかった。 著者らは、「脳トレ頻度の高さとARA摂取量が多いことの組み合わせは、高齢日本人の認知機能低下リスクを相加的に抑制する可能性がある。また、魚介類の摂取量が少ない高齢者では、DHAも同様に作用すると考えられる」と結論付けている。

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第236回 トランプ氏の返り咲きで変わる?アメリカの医療制度の行方

世界が固唾をのんで見守った米大統領選挙は、共和党のドナルド・トランプ氏(78歳)が全米の選挙人過半数の270人以上を獲得することが確実になり、第47代大統領として返り咲くことが決定的となった。アメリカの大統領としては史上最高齢であり、選挙中2度もの暗殺未遂を切り抜け、さらに退任後の大統領返り咲きは建国以来132年ぶりという異例づくしである。ウクライナ紛争を「24時間以内に終結させる」という明白な放言(あえて不謹慎な言い方をすると、もしそれを実現するならばウクライナ・ロシア両国の指導層を入れ替えるために両国の首都に核兵器を使用することくらいしか私には思い浮かばない)をするトランプ氏が、今後アメリカをどのように導くのかは注目に値する。アメリカの医療制度の行方さて、今回の大統領選挙の争点の一つになりそうだったにもかかわらず、実質的にはほとんど争点にならなかったものがある。それは2010年3月に民主党のバラク・オバマ大統領政権下で制定された患者保護及び医療費負担適正化法(Patient Protect and Affordable Care Act)、通称オバマケアである。ご存じのようにアメリカでは日本のような国民皆保険制度ではなく、勤務先を通じたり個人で加入する民間医療保険を基本とし、これを高齢者と障害者向け公的医療保険のメディケアと低所得者向けの政府・州による医療給付制度のメディケイドが補完する制度設計である。この結果としてメディケアやメディケイドのカバー範疇には入らず、なおかつ所得が低いため民間保険に加入できない無保険者が2010年の米・国勢調査局の報告書「Current Population Survey Annual Social and Economic Supplement (CPS ASEC)」によると、人口の16.3%に当たる約4,900万人と報告されていた。また、2009年に当時のハーバード大学教授のエリザベス・ウォーレン氏(現在は民主党所属のマサチューセッツ州選出上院議員)が発表した論文では、医療関連負債(医療費支払いや病気が原因による収入減)が原因の自己破産は、自己破産者の約62%にのぼる。このような現状を打開するために制定されたのがオバマケアだが、これはメディケイドのカバー範囲を広げるとともに、それでも無保険になる人へは州あるいは政府が運営する医療保険取引所(事実上、単なるインターネットでの保険申し込みの場)を通じた保険加入を義務付け、取引所を通じた加入では所得水準により補助金が支給される。このほかにも民間、公的のいずれでも医療保険がカバーする標準範囲を定めたほか、一定規模以上の企業では従業員向けの団体医療保険の提供義務付け、民間保険会社に対する既往歴などでの加入拒否の禁止、保険未加入者に対する罰金なども定められた。日本人の感覚からすると、かなり至れり尽くせりの制度のようにも思えるが、制定当初はアメリカの主要世論調査機関ともいえるピュー・リサーチセンターやギャラップの調査で、反対派が賛成派を上回る状況だった。背景には、政府による市民生活への介入を最小限にしてなるべく民間に任せる、いわゆる「小さな政府」を望む共和党支持者の声や公的カバー範囲拡大に伴う増税や保険会社による保険料引き上げに対する懸念があったとされる。オバマ氏退任後の大統領選に共和党候補として初出馬したトランプ氏は、オバマケアを標的にし、廃止するとまで言い切った。トランプ氏の就任1期目最初の大統領令がオバマケア見直しを目的とするものだったことからも、その熱の入れようがうかがえる。しかし、共和党が提出した代替法案は一部給付範囲の縮小や既往歴に基づく高額保険料の徴収を認めるというマイナーチェンジはあったものの、オバマケアの骨格を残したもの。それすらも下院で共和党の賛成多数で法案は通過しながら、あろうことか上院で共和党穏健派の造反を招き、成立断念に追い込まれた。奇しくもこの時、上院で造反したのは共和党の重鎮で2008年の大統領選でオバマ氏に敗れたジョン・マケイン氏である。ちなみにトランプ氏とマケイン氏は同じ共和党でも犬猿の仲と言われ、ベトナム戦争期に海軍パイロットとして操縦機の撃墜に遭い、拷問などを受けながら北ベトナム領内で5年間の捕虜生活を送ったマケイン氏のことを、トランプ氏は「捕虜になるような人間は好きじゃない」と公の場で揶揄。トランプ氏の1期目在任中の2018年、マケイン氏が上院議員のまま脳腫瘍で亡くなった際は、大統領だったトランプ氏はホワイトハウスに掲げた半旗を短時間で戻して批判を浴びただけでなく、マケイン氏の遺族が意図的に葬儀へ招待をしなかったほどだ。トランプ氏、今はオバマケアに興味なし?さて今回の大統領選で民主党側の候補者が副大統領のカマラ・ハリス氏に交代後、オバマケアが両候補の間で直接話題に上ったのはABCニュース主催で行われた大統領候補討論会である。この時、トランプ氏と討論司会者の間で以下のようなやり取り(要約抜粋)があった。司会者オバマケアに代わるものの計画はありますか? もしあるなら、それが何なのか教えてください。トランプ私がオバマケアを引き継いだのは、民主党がそれを変えようとしなかったからです。彼らは全員一致で投票しませんでした。彼らはそれを変えるために投票しなかったのです。もし彼らが投票していたら、われわれはオバマケアよりもはるかに良い計画を作れたでしょう。しかし、民主党はそれを支持しませんでした。この辺がなんともトランプ氏らしい。前述のように、1期目の時に共和党が示した代替法案が成立しなかったのは同党からの造反があったからだ。この件について重ねて司会者から「イエスかノーで答えてください。あなたにはまだ、オバマケアに代わる計画はないのですか?」と問われて次のように答えている。トランプ私には計画の概念がありますが、私は今、大統領ではありません。しかし、もしわれわれがより良いより安価な何かを思いつけば、私が大統領の時にそれを変更するでしょう。まあ、この発言を聞く限り、1期目に実現しなかった代替法案「American Health Care Act(AHCA)」以上のものはないか、少なくとも本人の頭の中にはまったくプランがないかのどちらかだろうと個人的には推察している。このように感じるのは、実は1期目の時でさえ、トランプ氏はこの問題をマイク・ペンス副大統領にほぼ任せていたと言えなくもないからだ。その意味では2期目のトランプ政権では、この問題を副大統領となるJ・D・バンス氏が担当することになるのかもしれない。もっとも、作家やベンチャーキャピタリストという経歴を有し、一時はトランプ氏と対立関係にありながら、上院議員に立候補後はトランプ氏にすり寄ったポピュリスト的なバンス氏自身もつかみどころがないのが実際だ。今回、同時に実施された上下両院選挙でも共和党は過半数を制し、トランプ氏にとって目の上のたんこぶだったマケイン氏ももうこの世の人ではない以上、政治上はオバマケア廃止の障害はなさそうに見える。しかし、実は最大の障害は世論である。かつては反対派が上回っていたオバマケアに対し、2021年のピュー・リサーチセンターの調査、2023年のギャラップの調査ともに支持が過半数を超えているのだ。さらに非営利団体のカイザーファミリー財団が行っている世論調査「カイザー・ヘルス・トラッキング・ポール」の2024年4月の調査では、オバマケアを指示する人は62%まで達している。こうした風向きの変化に加え、アメリカ国民は現在の物価高にあえいでいる。苦境に置かれた市民の期待が今回のトランプ氏支持の根っこにあるとの指摘は多い。そうした中で苦境にあえぐ人々の実質負担増になる可能性が高いオバマケアの大幅改変は難しいように思える。いずれにせよ、今後の動向は良くも悪くも目が離せないと感じている。

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11月8日 レントゲンの日【今日は何の日?】

【11月8日 レントゲンの日】〔由来〕1895年のこの日、ドイツの物理学者・レントゲンがX線を発見した日にちなみ制定。また、毎年11月2日~8日の1週間を「レントゲン週間」と定めている。関連コンテンツ腹部CT画像の見落としの有無【医療訴訟の争点】事例020 電子画像管理加算での査定【斬らレセプト シーズン3】X線検査でわかる骨粗鬆症【患者説明用スライド】スパイロなしでも胸部X線画像で呼吸機能が予測可能!?乳がん放射線療法の有効性、1980年代以前vs.以降/Lancet

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絵本「ねないこだれだ」【なんでお化けは怖いの?なんで親は子どもにお化けが来るぞと言うの?(お化けの起源)】Part 1

今回のキーワード象徴機能被害念慮心の理論空想上の友達(イマジナリーフレンド)三項関係サイン言語伝承の心理神の起源皆さん、お化けは怖いですか? 小さい子供は怖がりますよね。それにしても、なぜお化けは怖いのでしょうか? そして、なぜ親は小さな子供にお化けが来るぞと脅すのでしょうか?これらの答えを探るために、今回は、絵本「ねないこだれだ」を取り上げます。「シネマセラピー」のスピンオフバージョン、「絵本セラピー」としてお送りします。この絵本を通して、お化けを怖がる心理とその起源を、発達心理学と進化心理学の視点から掘り下げます。これらを踏まえて、より良いお化けの怖がり方を一緒に探ってみましょう。お化けを怖がる心理とは?絵本「ねないこだれだ」は、子供が夜になかなか寝ないでいると、お化けがその子供をさらい、一緒に夜空の闇に消えていくというシンプルかつ恐ろしいストーリーです。まず、お化けを怖がる心理を大きく2つ挙げて、発達心理学の視点から整理してみましょう。(1)姿がよくわからない絵本の表紙を見てのとおり、お化けのフォルムは、いわゆる魂のイメージのようにぼうっとしていて、全体的に白く、足がなくて宙に浮いています。まさに何かが「化け」て出てきているような、得体の知れない存在です。ちなみに、お化けに足がないのは日本独特で、世界的にはお化けに足はあります1)。1つ目の特徴は、姿がよくわからないことです。つまり、本来は見えないものです。とくに、夜はものが見えにくいので、お化けは夜に現れるという設定も納得がいきます。また、夜は眠気から意識レベル(認知機能)が下がって見間違い(錯視)が起きやすいので、同じくお化けは夜に現れるという設定は理に適っています。それでは、本来は見えないものなのに、小さな子供はどうやってお化けを認識するようになるのでしょうか? 言い換えれば、子供はいつからお化けを怖がるようになるのでしょうか?1歳までは、見知らぬ人や大きな音など、その瞬間に目の前で見えたり聞こえたものだけを怖がります。もちろん、一人ぼっちになることへの不安(分離不安)や真っ暗闇であることへの不安(暗闇恐怖)は、もともとあります。しかし、お化けと言われても怖がりません2,3)。まだ目の前にいないものを認識できず、お化けの意味がわからないからです。2歳後半からようやく、目の前にいないものを認識できるようになり、それがお化けと呼ばれることを知ります3)。このように、言葉によって目の前にない(いない)ものを含めて何かを認識する心理機能は、象徴機能と呼ばれています。この機能の始まりは、生後9ヵ月目に親が指を差した方向や視線を向けた方向と同じ方向を見ることです。この時に、自分が見えていなくて相手が意図している何かをイメージするようになります。それは最初、「ママ」「パパ」や「ご飯」「お花」など実際に存在する具体的な人や物であるわけですが、やがて目に見えない抽象的なものにも広がっていきます。その最初が、お化けでしょう。つまり、生まれて最初に想像した目に見えないものはお化けということになります。ちなみに、2歳半という年齢は、目がない顔の絵に目を描き入れることができるようになる時期と一致しています。つまり、ざっくりとした形を言葉と紐付けてイメージすること(概念化)ができるようになり、「ない」ものや「いない」ものも言葉によって認識できるようになる時期であると言えます。なお、象徴機能の詳細については、関連記事1をご覧ください。次のページへ >>

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絵本「ねないこだれだ」【なんでお化けは怖いの?なんで親は子どもにお化けが来るぞと言うの?(お化けの起源)】Part 2

(2)何かされそうであるこの絵本の最後の2ページは、「おばけの せかいへ とんでいけ」「おばけに なって とんでいけ」と語られ、締めくくられます。その1ページ目の絵には、子供がお化けに引っ張られて、宙に浮いており、子供の足はすでにお化けと同じく足がなくなっています。その2ページ目は、夜空に2つのお化けのシルエットが浮かび、すでにその子供は完全にお化けにされてしまったことがほのめかされています。これは正直、大人が見てもギョッとします。2つ目の特徴は、何かされそうであることです。正体がわからないからこその怖さに加えて、親から教えられたり、まさにこのような絵本から知ることで、特殊能力の使い手であるお化けは、想像上の怖いものとして刷り込まれ、実際に子供を怖がらせる存在になるわけです。幼児における恐怖の対象の研究では、お化けという存在は、一人ぼっちでいること(分離不安)や真っ暗闇の中にいること(暗闇恐怖)と並んで最上位に位置します2)。これらの恐怖には、やはり何かされるのではないかという不安(被害念慮)が結びついています。ちなみに、ある3歳児がお化けのふりをして大人たちを怖がらせているうちに、だんだん自分自身が恐くなって泣き出すという報告があります3)。この現象は、4歳以降では起こりません。そのわけは、4歳に、相手には相手の心があるとわかる心理機能(心の理論)が発達し、自分とお化け(相手)の心を分けることができるようになるからです。この心の理論の発達とあいまって、3歳から6歳にかけて、姿がわからなくて何かされそうな存在は、お化けのほかに、幽霊(ゴースト)、化け物(モンスター)、鬼(悪魔)などとより具体的となり、細分化されていきます3)。そして、良いこともしてくれる妖精や天使、さらには万物の精霊(アニミズム)、恩恵と同時に罰も与える神に発展していきます。ちなみに、話しかけてくるなど実際にいるかのような空想上の友達(イマジナリーフレンド)として現れる心理現象を引き起こす場合もあります。子供にお化けを怖がらせる効果とは?以上より、ただでさえ子供はお化けを怖がるのに、なぜ親は子供にお化けが来るぞと脅すのでしょうか?この絵本でお化けは、夜中にぬいぐるみを持って立ち歩いている子供を発見し、「あれ あれ あれれ…」と言います。そして、「よなかに あそぶこは おばけに おなり」と言い渡します。つまり、お化けはやみくもに何かしてくるわけではなく、とくに言いつけを守らなかった時にやってくることがわかります。まさに、「ねないこだれだ」というタイトルがそれを示しています。つまり、子供にお化けを怖がらせるのは、子供がお化けを怖がることを利用して、しつけをするためであることがわかります。しつけとは、生活習慣から人間関係のマナーなど、社会のルールを教えることです。これは万国共通で、英語圏だと「いい子にしないと、ブギーマン(化け物)がさらいに来るよ」と言います。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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絵本「ねないこだれだ」【なんでお化けは怖いの?なんで親は子どもにお化けが来るぞと言うの?(お化けの起源)】Part 3

お化けを怖がる起源とは?お化けを怖がる心理は、姿がよくわからず、何かされそうであることがわかりました。そして、親が子供にお化けを怖がらせるのは、しつけに利用できるからであることもわかりました。それでは、そもそもお化けはどうやって生まれたのでしょうか?ここで、「個体発生は系統発生を繰り返す」という考え方を体だけでなく心にも応用して、心の発達(個体発生)の順番から心の進化(系統発生)の順番を推測し、人類がお化けを怖がる起源を3つの段階に分けて迫ってみましょう。(1)目の前にいないものを認識する人類は、約700万年前に誕生してから、二足歩行をすることで手が自由になり、手に入れた獲物を余分に持ち歩けるようになりました。その余分な獲物をとくにオスがメスにプレゼントして、メスはそのお礼にセックスをして、そのオスとの間にできた子供を育てていました。これは、プレゼント仮説と呼ばれています。この時、オスとメスとの間にはプレゼントを介した関係(三項関係)が成り立ちます。たとえば、指差しや視線の向きで、「それちょうだい」「それあげる」というプレゼントのやり取りをするようになったでしょう。これが、指差し(意図共有)の起源です。人類に最も近いチンパンジーでも指差しはしないことから、これは、最初の人間らしさの1つでしょう。心の発達に置き換えると、指差しがわかるのは生後9ヵ月です。やがて、指差しや視線のやり取りは、「あのプレゼントちょうだい」「あのプレゼントあげる」のように、自分が見えていなくて相手が意図している何かをイメージするようになるでしょう。1つ目の段階は、相手のしぐさや表情によって目の前にない(いない)ものを認識することです。当時はまだ言葉を話すことができなかったため、コミュニケーションはもっぱらしぐさ(ジェスチャー)や表情などのサイン言語でした。これが、象徴機能の起源です。心の発達に置き換えると、象徴機能によって、目の前にいないもの(お化け)を認識するようになる2歳半です。つまり、人類がお化けを認識していたのは、人類の心の進化のかなり早い段階である可能性が推定できます。もちろん、当時は「お化け」という言葉はないわけですが、目に見えなくて得体の知れない何かの存在を認識はしていたでしょう。なお、プレゼント仮説の詳細については、関連記事2をご覧ください。(2)目の前にいないものの意図を考える約300万年前、人類は家族そして部族をつくり、助け合うようになりました。この時、相手と意図を共有するだけでなく、その意図は自分の意図とは別々である、つまり相手には相手の心(意図)があることがわかるようになりました。これが、心の理論の起源です。その後、長い時間をかけて、目の前にいない存在(お化け)の意図も気にするようになったのでしょう。2つ目の段階は、目の前にいないものの意図を考えることです。そして、その存在に何かされそうと不安に思ったことでしょう(被害念慮)。心の発達に置き換えると、お化けにはお化けの心(意図)があると思うようになるのは、4歳です。当時に、お化けを表すジェスチャーが用いられていたかもしれません。(3)目の前にいないものを怖がり怖がらせる約20万年前に、人類が言葉(音声言語)を話すようになりました。当時から、部族で起きた出来事を語り継ぐようになったでしょう。約10万年前、人類は貝の首飾りを信頼の証(シンボル)としてプレゼントするようになり、抽象的な思考ができるようになりました。当時から、語り継ぎの中で説明ができない現象は、お化けの仕業と説明され、その物語はどんどん抽象化されていったでしょう。そして、部族が団結して秩序を安定させるため、お化けを脅威として利用もしたでしょう。これは、民間伝承という文化であり、伝承の心理です。実際に、その中の多くには教訓(モラル)が盛り込まれています。そして、その罰として登場するのは、お化けのほかに、幽霊(ゴースト)、化け物(モンスター)、鬼(悪魔)、万物の精霊(アニミズム)、そして神へと発展していったでしょう。逆に言えば、神の起源はお化けと言えるでしょう。3つ目の段階は、社会のために目の前にいないものを怖がり、周りを怖がらせることです。心の発達に置き換えると、お化けが細分化されるのは3歳から6歳です。そして、この時期にお化けと教訓を含む多くのファンタジーの絵本が親から読み聞かされるわけです。人類史において、最初の抽象的思考は、貝の首飾りを信頼の証(シンボル)とする約10万年前とされています。しかし、心の発達の視点では、お化けを怖がるのは2歳半であるのに対して、首飾りなどのシンボルがわかるのは早くても4歳ぐらいです。このことから、もしかしたらお化けを怖がる方が、抽象的思考としては貝の首飾りよりも先だったと考えることもできるでしょう。むしろ、お化けを怖がり怖がらせるという伝承の心理を通してこそ、人類の抽象的思考(概念化)が発達したと考えることもできるでしょう。なお、伝承の心理の詳細については、関連記事3をご覧ください。<< 前のページへ | 次のページへ >>

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絵本「ねないこだれだ」【なんでお化けは怖いの?なんで親は子どもにお化けが来るぞと言うの?(お化けの起源)】Part 4

どう子供にお化けを怖がらせる?お化けを怖がる起源とは、目の前にいないものを認識する→目の前にいないものの意図を考える→目の前にいないものを怖がり怖がらせることであることがわかりました。そして、心の進化において、お化けを怖がることと抽象的思考(概念化)には密接な関係があることもわかりました。これを踏まえて、どう子供にお化けを怖がらせればいいでしょうか?それは、やはり子供に読み聞かせをするたびに、怖がることを一緒に楽しむことでしょう。そうすることで、人類の心が進化していったのと同じように、子供の心がより豊かに発達していきます。これは、サンタクロースを信じることにも通じます。「ねないこだれだ」のお化け本のシリーズには、怖そうでありながら、同時に友達になれそうな親近感のあるかわいらしいお化けがたくさん出てきます。よくよく見ると、実は子供と同じ身長と体型です。これこそこの本が、子供に「怖いけど、好き」と言わせ、永遠に愛され続けている最大の理由でしょう。1)「オバケ?」p.29、p.68:オバケ研究所編、ブルーシープ、20242)「幼児期における恐怖対象の発達的変化」p.131:富田昌平ほか、三重大学教育学部研究紀要(第68巻)教育科学、20173)「幼児はお化けをどのように認識しているのか?」p.316:富田昌平ほか、三重大学教育学部研究紀要(第71巻)教育科学、2020<< 前のページへ■関連記事伝記「ヘレン・ケラー」(前編)【何が奇跡なの? だから子供は言葉を覚えていく!(象徴機能)】Part 2映画「アバター」【私たちの心はどうやって生まれたの?(進化心理学)】Part 2昔話「うらしまたろう」(その2)【隠された陰謀とは?そして精神医学的に解釈するなら?(シン浦島太郎)】Part 2

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婚活を始めたキッカケ【アラサー女医の婚活カルテ】第1回

皆さま、はじめまして。「こん野かつ美」と申します。このたび縁あって、新連載を担当することになりました。連載のテーマは……ズバリ「女性医師の婚活」です☆30代前半の女性医師である私は、結婚相談所での婚活を経て、現在の夫(他科の医師)と結婚しました。ただ、結婚までの道のりは、決して平坦なものではありませんでした。約1年半の活動期間の中で、仕事と婚活のバランスに悩んだり、クセ強めなお見合い相手との会話に疲れ果てたり……。(くぅー、いつか話のネタにしてやるんだから!)と思って乗り切った場面が、それはもう、いくつもありました。この連載は、そんな当時の経験を振り返りながら、書き進めていきたいと思います。結婚を意識する読者の皆さまにとって、参考になれば幸いです。かつ美、婚活を始めたキッカケは私は、医学生時代から結婚願望が強いほうでした。学生時代や初期研修医時代にお付き合いした男性は何人かいたものの、残念ながら結婚に至るまでのご縁はなく……。そうこうしているうちに、卒後3年目以降の専門研修に突入し、仕事以外のことを考えるヒマが(物理的に)なくなってしまいました。学生時代からの同級生カップルや、研修医の同期が次々とゴールインする中、漠然と「いつか私も結婚を」という思いを持ちつつも、家と職場との往復だけでは、なかなか出会いの機会に恵まれませんでした。そんな中、ある講演会で提示された「女性の妊孕性の年齢別変化」のグラフを見て、ハッと衝撃を受けたのです。30代以降はとくに、加齢とともに妊孕性がどんどん低下していく……。机上の知識としては知っていたことですが、いざ自分がその年代に差し掛かかると、急に現実味を帯びてきました。(子供が欲しいなら、今動かなきゃ!)こうして、いよいよ本格的に「婚活道」に踏み出す決意を固めました。女性医師にとっての「結婚」女性医師にとっての「結婚」を表す言葉として、「3分の1の法則」や「心電図のたとえ」が有名です。3分の1の法則女性医師のうち、3分の1は「生涯未婚」、3分の1は「結婚後に離婚」、残る3分の1が「結婚生活を継続」というもの心電図のたとえ女性医師が結婚するタイミングとしては、最初の波(P波)が医学生時代や卒後すぐ、最大の波(QRS波)が卒後2~3年の初期研修修了頃、最後の波(T波)が30歳前後にやってくる(その後はない!)というもの真偽のほどはともかく、このようなことわざ(?)が存在するということは、女性医師の人生において「『結婚』が『必須のもの』ではない」ということの、裏返しだと思います。世間一般からすると高い学歴・収入・社会的地位を持つ女性医師は、結婚などしなくても、悠々自適に独身生活を謳歌することが可能です。仕事のやりがいだって、十分にあります。そんな女性医師が、なぜわざわざ「結婚」をしたいのか?私の場合は、先述のとおり「子育てという経験をしたいから」、そして「パートナーと一緒に年齢を重ねる人生を味わいたいから」というのが、その答えでした。これが、婚活を進める中で、一番のモチベーションとなりました。これから「婚活道」に踏み出そうとする方は、「周りがみんな結婚したから」「親にせっつかれるから」などという「受け身」の動機付けではなく、なぜ結婚したいのかという、「能動的」な理由を、ご自身の中にしっかり見つけておくことをお勧めします(婚活には時間もお金もかかりますし、メンタルがすり減ることもあります。受け身の動機付けでは、モチベーションが続きません)。「医師」か「非医師」か、それが問題だ医学生時代や研修医時代からの交際を経てゴールインした夫婦が周りにいると、一見「医師×医師」の組み合わせがスタンダードのように感じられますが、実際には「女性医師×医師以外の男性」という組み合わせでうまくいっている夫婦も、数多く存在します。生物学的な理由で、妊娠・出産においては、どうしても女性側に負担が偏ります。「医師×医師」の組み合わせだと、男性医師が順調にキャリアアップする一方で、妻である女性医師は、出産を機に時短勤務に切り替えるケースが多くなりがちです(こうしたキャリアを否定しているわけではありません)。家事や育児は妻のワンオペという例も少なくありません。一方、「女性医師×医師以外の男性」という組み合わせでは、多くの場合、妻のほうが高収入です。そのような背景もあり、家事や育児を(場合によっては夫のほうが多く)分担しつつ、妻である女性医師も貪欲にキャリアアップを目指す例を私も何例も知っています。「一家の稼ぎ頭」という責任は重いですが、キャリアを積みたい女性医師にとっては、「医師以外の男性」との組み合わせのほうが適している面もあるのかもしれません。私の場合、最終的には医師である現在の夫と結婚しましたが、婚活そのものは、お相手を医師に限定することなく進めました(すてきだなぁと思う男性医師は、残念ながら早々に結婚していることが多いというのも、お相手を医師に限定しなかった理由ですが……泣)。読者の皆さまも、よほどの理由がなければ、いったんお相手の職業にこだわらずに広くアンテナを張ることが、良い結果を生むかもしれません。いかがでしたか?次回は、私が利用した婚活ツールについて、より具体的なお話を書きたいと思います。お楽しみに。

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次世代のCAR-T細胞療法―治療効果を上げるための新たなアプローチ/日本血液学会

 2024年10月11~13日に第86回日本血液学会学術集会が開催され、13日のJSH-ASH Joint Symposiumでは、『次世代のCAR-T細胞療法』と題して、キメラ抗原受容体遺伝子改変T細胞(CAR-T細胞)療法の効果の毒性を最小限にとどめ、治療効果をより高めるための新たな標的の探索や、細胞工学を用いてキメラ抗原受容体(CAR)構造を強化した治療、およびoff the shelf therapyを目標としたiPS細胞由来次世代T細胞療法の試みなど、CAR-T細胞療法に関する国内外の最新の話題が紹介された。CAR-T細胞療法を最適化するための新しい標的の開発 CAR-T細胞療法はB細胞性悪性腫瘍や多発性骨髄腫(MM)などに対する効果が認められているが、毒性については解決すべき課題が残っている。ガイドラインでは主な合併症として、サイトカイン放出症候群(CRS)および免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(ICANS)が取り上げられているが、CAR-T細胞療法による新たな、または、まれな合併症とその管理についての情報は少なく、新たな標的の検討とともに明らかにしていく必要がある。米国血液学会(ASH)のCAR-T細胞療法のワークショップでは、CAR-T細胞の病態生理の理解、まれな毒性についてのデータの蓄積、on-target off-toxicityを回避するための的確な標的となる抗原などが検討されている。 Fabiana Perna氏(Moffitt Cancer Center)らは腫瘍関連抗原(TAA)および腫瘍特異的抗原(TSA)、さらに腫瘍特異的細胞表面プロテオームの解析を行っている。同氏らはこれまで、急性骨髄性白血病(AML)におけるCAR-T細胞療法の標的を同定するために、プロテオームと遺伝子発現の同時解析を行い、26個の標的を同定した。このうち15個は臨床試験で用いられ、その多くがAMLの正常細胞上に高発現する蛋白であった。 MMに対してはB細胞成熟抗原(BCMA)を標的としたCAR-T(BCMA-CAR-T)細胞療法の成績は良好とはいえず、新たな標的抗原が必要である。Perna氏らはMM患者約900例のサンプル約4,700検体を用い細胞表面のプロテオームを解析し、RNAシーケンスを行い、腫瘍組織に高発現するBCAAを含む6個の標的を同定した。そのうちSEMA4Aは再発/難治性MM患者での高発現が認められた。BCMA-CAR-T細胞療法後の再発はBCMAの発現低下に関連し、CARの機能低下を惹起すると考えられ、的確な標的の探索が必要である。Perna氏らはSEMA4AがCAR-T細胞療法の標的となりうると考え、SEMA4A-CAR-T細胞療法を試みている。なお、MM患者の免疫療法に関しては第I相試験が予定されている。 また、Perna氏らはmRNAスプライシングに由来する白血病特異的抗原の解析パイプラインを開発中であり、AML患者サンプルからスプライスバリアントの異常発現を認めたことから、同氏は、疾患特異的スプライスバリアントを標的とした治療法につながることを期待していると述べた。CAR-T細胞療法抵抗性克服と新たな応用の探求 CAR-T細胞療法は、CD19およびBCMA抗原を標的として、B細胞性悪性腫瘍(リンパ腫、白血病)およびMMに対して行われている。BCMA-CAR-T細胞療法は初期治療の奏効率は高いが、長期寛解率は低くとどまっている。CAR-T細胞の機能不全は抗原逃避、T細胞欠損、腫瘍微小環境(TME)などにより惹起される。そこで、酒村 玲央奈氏(メイヨー・クリニック 血液内科)は、CAR-T細胞療法の治療抵抗性克服と新たなストラテジーを探求するうえで、重要な鍵となる免疫抑制細胞について検討した。 がん関連線維芽細胞(CAF)は、CAR-T細胞の機能不全を誘導するが、同時にMM患者の治療効果を高める可能性があると考えられている。これまでの酒村氏の検討でMM患者由来のCAFがTGF-βなど抑制性サイトカイン産生を増加させ、PD-1/PD-L1結合を介してCAR-T細胞を阻害し、FAS/FASリガンド経路を介してCAR-T細胞にアポトーシスを誘導、制御性T細胞(Treg)を動員することが示された。また、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)を標的としたCAR-T細胞はマウスの体重を有意に減少させ、off target効果による重篤な毒性を惹起すると考えられ、CAF表面上に発現するCS1およびBCMAの2つを標的としたCAR-T細胞は腫瘍細胞およびCAFを溶解することが示された。さらに、BCMA-CAR-T細胞療法施行患者由来の骨髄サンプルを用いたシングルセルRNAシーケンスを行い、non-responder由来のCAFが高頻度にデスリガンド(抗腫瘍性リガンド)を発現すること、non-responder由来のT細胞は慢性的に刺激され疲弊したphenotypeであることが明らかとなった。また、non-responder由来の骨髄サンプルではTMEを支配する腫瘍関連マクロファージ(TAM)とCAFの有意なクロストークの存在が示された。 間葉系幹細胞(MSC)は多能性細胞であり、免疫抑制および組織再生治療における効果が研究されている。そこで酒村氏は、MSCの免疫抑制効果を向上させるために、細胞工学技術を用い健康な人から得た脂肪由来のMSCにCARを搭載し、移植片対宿主病(GVHD)に対する治療戦略をマウスモデルで検討した。研究には、とくにGVHDをターゲットとしたE-cadherin(Ecad)特異的なCAR-MSC(EcCAR-MSC)を用いた。EcCAR-MSCの開発では、Ecad特異的な単鎖可変フラグメント(scFV)クローンが生成され、CAR-CD28ζ構造を設計し安定発現させてMSCの免疫抑制機能を強化したことが示された。 GVHDモデルにおいてEcCAR-MSCはマウスの体重減少を軽減し、GVHD症状を緩和し生存率を向上させた。また、Ecad陽性大腸組織へ特異的に移行し、T細胞活性を抑制し免疫調節機能効果を向上させた。また、シングルセルRNAシーケンスにより、抗原特異的刺激を受けたEcCAR-MSCにおいてIL-6、IL-10、NF-κBなどの免疫抑制シグナル経路の活性化が認められた。EcCAR-MSCのCD28ζシグナルドメインを含むCAR構造体はより強い免疫抑制効果を示した。 酒村氏は、CARを用いたMSCの免疫抑制機能を強化する新たな細胞治療とGVHDおよび腫瘍抑制における可能性を提示した。また、MSCの開発は免疫環境の調節を可能とし、炎症性腸疾患(IBD)、全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ(RA)など自己免疫疾患の治療にも新たなアプローチを提供するものと考えると述べ、CAR-T細胞療法を進展させ、より多くの患者予後の改善を目指したいと結んだ。難治性腫瘍に対するiPS細胞由来次世代T細胞療法の開発 難治性NK細胞リンパ腫に対しては、L-アスパラギナーゼを含む抗がん剤治療や末梢血由来細胞傷害性T細胞(CTL)による細胞治療が試みられてきたが、治療効果は十分ではなかった。とくに末梢血由来T細胞は細胞治療後に疲弊し、長期的には腫瘍が増大することが知られている。そこで、安藤 美樹氏(順天堂大学大学院医学研究科血液内科学)はNK細胞リンパ腫患者の末梢血よりエプスタイン・バーウイルス(EBV)抗原特異的CTLを使用し、iPS細胞を作製後、再びT細胞に分化誘導し、iPS細胞由来若返りCTL(rejT)を作製し、NK細胞リンパ腫に対する抗腫瘍効果を検討した。その結果、rejTはNK細胞リンパ腫細胞株に対し強力な細胞傷害活性を示した。次いでNK細胞リンパ腫細胞株を腹腔内注射したマウスを用い、rejTおよび末梢血由来T細胞で治療し生体内での抗腫瘍効果を比較検討した結果、両群とも有意な腫瘍増大抑制効果が認められた。さらにrejTは末梢血由来T細胞に比べ有意な生存期間延長効果を示し、マウス体内でメモリーT細胞として長期間生存し、リンパ腫再増殖抑制効果が持続したことが示された。 次いで安藤氏は、末梢血EBV抗原LMP2特異的CTLからiPS細胞を作製し分化誘導後、iPS細胞由来若返りLMP2抗原特異的CTL(LMP2-rejT)がEBV関連リンパ腫に対し強い抗腫瘍効果を発揮することをマウスモデルで証明した。また、LMP2-rejTは生体内でメモリーT細胞として長期生存し、難治性リンパ腫の再発抑制を維持することを確認した。 安藤氏はこの手法を応用し、LMP2-rejTにCARを搭載することで、2つの受容体を有し、同時に2つの抗原(CD19、LMP2抗原)を標的にできるiPS細胞由来2抗原受容体T細胞(DRrejT)を作製した。マウスを用いた検討ではDRrejTは受容体を1つのみ有する従来のT細胞に比べ、難治性の悪性リンパ腫に対し強力な抗腫瘍効果と、生存期間延長効果を示し、メモリーT細胞として長期生存が示された。 また、安藤氏はiPS細胞に小細胞肺がん(SCLC)に高発現するGD2抗原標的キメラ抗原受容体(GD2-CAR)を遺伝子導入後、分化誘導したiPS細胞由来GD2-CART細胞(GD2-CARrejT)を作製し、SCLCに対する強い抗腫瘍効果を示した。さらに、GD2-CARrejTは末梢血由来のGD2-CART細胞に比べ、疲弊マーカーであるTIGITの発現がきわめて低いことを明らかにした。また、マウスの検討でGD2-CARrejTは末梢血由来LMP2-CTLに比べNK/T細胞リンパ腫を抑制することが示された。 さらに、安藤氏はiPS細胞由来ヒトパピローマウイルス(HPV)抗原特異的CTL(HPV-rejT)を作製し、HPV-rejTは末梢血由来CTLと比較して子宮頸がんの増殖を強力に抑制することを確認した。子宮頸がん患者由来のCTL作製は時間とコストがかかり実用化には課題がある。一方、健康な人のCTLから作成した他家iPS細胞を用いた場合、これらの問題は解決するが、患者免疫細胞からの同種免疫反応により抗腫瘍効果が減弱する。そこでCRISPR/Cas9技術を用い、HLAクラスIをゲノム編集した健常人由来他家HPV-CTL(HLA-class I-edited HPV-rejT)を作製した。マウスを用いた検討で、HLA-class I-edited HPV-rejTは患者免疫細胞から拒絶されずに子宮頸がんを強力に抑制し、長期間の生存期間延長効果も認められた。また、末梢血由来HPV-CTLに比べ、細胞傷害活性に関するIFNG遺伝子や、組織レジデントメモリー細胞に関係するITGAE遺伝子などの発現レベルが有意に高く、組織レジデントメモリー細胞を豊富に含むことが示された。これらの機能解析により、HLA-class I-edited HPV-rejTはTGF-βシグナリングによりCD103発現レベルを上昇させ、その結果、抗原特異的細胞傷害活性が増強することが明らかとなった。現在、HLA-class I-edited HPV-rejTを用いた治療の安全性を評価する医師主導第I相試験が進行中である。 安藤氏はiPS細胞由来の抗原特異的、そしてHLA編集細胞が、off the shelfのT細胞療法に、持続可能で有望なアプローチを提供するものと期待されると締めくくった。

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乳がん薬物療法の最新トピックス/日本治療学会

 第62回日本治療学会学術集会(10月24~26日)で企画されたシンポジウム「明日からの乳診療に使える!最新の薬剤の使いどころ」において、がん研究会有明病院の尾崎 由記範氏が、乳がん薬物療法の最新トピックスとして、KEYNOTE-522レジメンの使いどころ、HER2ゼロ/低発現/超低発現の課題、新たなPI3K阻害薬inavolisibを取り上げ、講演した。高リスク早期TN乳がんへのKEYNOTE-522レジメンの使いどころ 切除可能トリプルネガティブ(TN)乳がんの標準治療としては、術前に化学療法を行い術後にカペシタビンやオラパリブを投与する治療があるが、KEYNOTE-522試験の結果から術前・術後にペムブロリズマブを使えるようになった。 KEYNOTE-522試験は、主にStageII/IIIのTN乳がんに対して、カルボプラチン+パクリタキセル → AC/ECの術前・術後にペムブロリズマブを併用し、予後改善を検討した第III相試験である。本試験で、病理学的完全奏効(pCR)割合、無イベント生存期間(EFS)、全生存期間の改善が認められ、現在、ペムブロリズマブ併用レジメンが標準治療となっている。また、サブグループ解析において、StageやPD-L1の発現、pCR/non-pCRにかかわらず一貫した有効性が示され、StageII/IIIに広く使用できる。一方、免疫チェックポイント阻害薬は免疫関連有害事象(irAE)のリスクがある。術前治療においてGrade3以上のirAEが13%に認められており、5年EFSの9%のベネフィットとのバランスが議論になっているという。 今回、尾崎氏はKEYNOTE-522レジメンの日常診療におけるクリニカルクエスチョン(CQ)のうち4つを取り上げ、自施設(がん研究会有明病院)の方針や考えを紹介した。CQ:T2N0M0 cStageIIAのような比較的リスクの低い症例に対しても使用すべきか?T2N0症例における5年EFSは10%の差があり、TN乳がんは再発すると予後が約2年であることから、使用するようにしている。CQ:ホルモン受容体が弱陽性(ER 1~9%)の症例に使用すべきか?KEYNOTE-522試験にはER 1~9%は含まれていないが、ER 1~9%はTN乳がんとして治療すべきという考えがあり、最近の論文ではThe Lancet Regional Health-Europe誌にもそのように記載されている。ESMO2024でER 1~9%に対するリアルワールドデータが報告され、pCR割合は75%とTN乳がんと同程度だった。がん研究会有明病院ではER 1~9%もTN乳がんと診断して使用している(必ずしも保険が適用されるとは限らないため、各施設での判断が必要)。CQ:アントラサイクリンパートでG-CSF製剤の予防投与をするか?KEYNOTE-522試験での発熱性好中球減少症の発現割合は18%と報告されている。がん研究会有明病院の青山 陽亮氏の発表では22.9%と報告されており(JSMO2024)、多くはアントラサイクリンパートで発現しているため、G-CSF製剤の1次予防投与を推奨している。CQ:術後の最適な治療法は?pCR/non-pCRにかかわらずペムブロリズマブの使用が標準治療になっているが、non-pCRの場合のカペシタビン、生殖細胞系列BRCA病的バリアントを有する場合のオラパリブも世界的に標準治療と位置付けられている。pCRの場合にペムブロリズマブを省略可能かどうかが世界中で議論されており、それを検討するためのOptimICE-pCR試験が2,000例規模で進行中である。また、non-pCRではより有効な治療選択肢が必要とされており、その1つとしてdatopotamab deruxtecan+デュルバルマブが検討されている(TROPION-Breast03試験)。また、周術期ペムブロリズマブ投与後の再発症例は非常に予後不良であることから、再発症例に対してペムブロリズマブ+パクリタキセル±ベバシズマブで比較する医師主導治験(WJOG16522B、PRELUDE試験)を開始予定である(治験調整事務局:尾崎氏)。HER2ゼロ/低発現/超低発現の区別は喫緊の課題 次に尾崎氏は、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)の適応に関連するHER2ゼロ/低発現/超低発現について取り上げた。 HR+HER2低発現/超低発現乳がんを対象としたDESTINY-Breast06試験において、T-DXdの有効性が示された。HER2超低発現の定義は、IHC0で10%以下の細胞に不完全な染色がある場合とされており、HER2-乳がんのうち20~25%とされている。この超低発現乳がんでも低発現乳がんと一貫した有効性が報告された。ESMO2024では、各施設でIHC0と判断された乳がんのうち、中央では24%がHER2低発現、40%が超低発現と判定されたとの報告があり、約6割がT-DXdのベネフィットが得られる可能性がある。T-DXdは今年8月、FDAからHER2低発現/超低発現の転移再発乳がん治療を対象として「画期的治療薬」として指定されており、日本でもすでに効能・効果追加の一部変更承認申請がなされていることから、尾崎氏は「HR+HER2ゼロとHER2低発現、超低発現の区別が喫緊の課題」と述べた。新規PI3K阻害薬inavolisibがFDA承認、日本における課題 尾崎氏は最後に、昨年末のサンアントニオ乳がんシンポジウム2023で初めて第III相INAVO120試験の主要評価項目である無増悪生存期間が発表され、そのわずか10ヵ月後の今年10月10日にFDAで承認されたPI3K阻害薬のinavolisibについて紹介した。 INAVO120試験は、術後内分泌療法中に再発もしくは終了後12ヵ月以内に再発し、PIK3CA変異があるHR+HER2-乳がんを対象とした試験で、inavolisib+パルボシクリブ+フルベストラントの3剤併用の有効性が示された。 現在、尾崎氏が考えるHR+HER2-乳がんに対する薬物療法は、アロマターゼ阻害薬+CDK4/6阻害薬を投与後、PIK3CA/AKT/PTEN変異の有無によって2次治療を選択、その後、ホルモン療法耐性、ホルモン感受性なし、visceral crisisの場合は抗体薬物複合体や化学療法、という流れである。inavolisibは再発診断時からPIK3CA変異を検出する必要があるため、尾崎氏は「米国では、再発1次治療としてinavolisib+パルボシクリブ+フルベストラントの併用がすでに承認され標準治療となるため、将来もしinavolisibが日本でも開発され承認されれば、日本でも同様に再発時点で遺伝子検査にてPIK3CA変異を確認する必要がある」と課題を提示した。

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MET exon14スキッピングNSCLC、グマロンチニブの日本人データ(GLORY)/日本肺学会

 グマロンチニブは、METチロシンキナーゼのATP結合部位を選択的かつ競合的に阻害する薬剤であり、既存のテポチニブ、カプマチニブと同様の作用機序を有する。グマロンチニブは、MET遺伝子exon14スキッピング変異陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)を適応とする薬剤として、本邦では2024年6月に製造販売承認を取得し、同年10月に発売された。本承認の評価試験である国際共同第Ib/II相試験「GLORY試験」1)の第II相パートにおける、全体集団および日本人集団の結果について、後藤 功一氏(国立がん研究センター東病院)が第65回日本肺学会学術集会で報告した。試験デザイン:国際共同第Ib/II相試験(今回は第II相試験の試験デザインと結果を示す)対象:未治療または2ラインまでの前治療歴があり、MET遺伝子exon14スキッピング変異陽性のStageIIIB~IVのNSCLC患者84例(日本人:10例)投与方法:グマロンチニブ 300mg(1日1回、経口)を病勢進行または許容できない毒性の発現まで評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央判定(BICR)に基づく奏効割合(ORR)[副次評価項目]病勢コントロール割合(DCR)、奏効期間(DOR)、無増悪生存期間(PFS)など 主な結果は以下のとおり。・対象患者84例の背景は、男性が57%(日本人集団:60%)、腺がんが75%(同:80%)、StageIVが87%(同:100%)、前治療歴ありが45%(同:20%)などであった。・有効性解析対象集団は79例(日本人集団:8例)であった。・主要評価項目のBICRに基づくORRは、全体集団が66%、日本人集団が75%であった。・DCRは、全体集団が84%、日本人集団が100%であった。・前治療歴の有無別にみたBICRに基づくORRは、未治療の集団(44例[日本人集団:7例])では71%(日本人集団:71%)、前治療歴ありの集団(35例[同:1例])では60%(同:100%)であった。・DOR中央値は、全体集団が8.3ヵ月、日本人集団が5.0ヵ月であった。・PFS中央値は、全体集団が8.5ヵ月、日本人集団が7.6ヵ月であった。・全体集団における主な治療関連有害事象(30%以上に発現)は、浮腫(80%)、低アルブミン血症(38%)、食欲減退(32%)、頭痛(32%)であった。日本人集団で2例以上に発現したGrade3以上の治療関連有害事象は浮腫(2例)のみであった。・投与中断に至った有害事象は全体集団で40%、日本人集団で40%に発現した。減量に至った有害事象は全体集団で37%、日本人集団で60%に発現した。 本発表の結語として、後藤氏は「主な有害事象として、浮腫や低アルブミン血症があるが、それらを休薬や減量などで上手にマネジメントすることで、長期にわたってグマロンチニブを患者さんへ届けていただきたい」と述べた。

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運動しても血圧が低下しない人とは?

 運動は血圧を低下させるのに有効だが、病態生理学的状態、運動の種類、地域による効果の違いはよくわかっていない。今回、福岡大学の末松 保憲氏らによる系統的レビューとメタ解析の結果、健康人や高血圧などの生活習慣病患者では運動の種類にかかわらず収縮期血圧が低下したが、心血管疾患患者では低下しなかったことがわかった。Hypertension Research誌オンライン版2024年11月1日号に掲載。 本研究では、Ovid MEDLINEとCochrane Libraryを用いて開始時~2023年8月1日の期間で運動による降圧効果を検討した435の無作為化比較試験を同定し、メタ解析を含むアンブレラレビューを行った。ランダム効果モデルのメタ解析で複数の研究にわたる効果量を推定した。 主な結果は以下のとおり。・運動により収縮期血圧は、健康人(-3.51mmHg、95%信頼区間[CI]:-3.90~-3.11、p<0.001)および高血圧を含む生活習慣病患者(-5.48mmHg、95%CI:-6.51~-4.45、p<0.001)で有意に低下したが、心血管疾患患者(-1.16mmHg、95%CI:-4.08~1.76、p=0.44)では低下しなかった。・運動の種類別では、健康人と生活習慣病患者ではすべての種類で収縮期血圧が有意に低下したが、心血管疾患患者では低下しなかった。・地域別では、オセアニアでは収縮期血圧の低下はみられなかった。アジアでは心血管疾患患者で収縮期血圧が低下した。 本結果から著者らは「心血管疾患患者で高血圧を軽減するために運動を行う場合、患者の病態生理学的状態と地域を考慮することが重要」としている。

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無症候性重症AS、早期TAVR vs.経過観察/NEJM

 無症候性の重症大動脈弁狭窄症(AS)患者に対するバルーン拡張型弁を用いた経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)の早期施行は、経過観察と比較して複合イベント(全死因死亡、脳卒中または心血管系疾患による予定外の入院)の抑制において優れることが示された。米国・Morristown Medical CenterのPhilippe Genereux氏らEARLY TAVR Trial Investigatorsが、米国とカナダの75施設で実施した無作為化非盲検比較試験「Evaluation of TAVR Compared to Surveillance for Patients with Asymptomatic Severe Aortic Stenosis trial:EARLY TAVR試験」の結果を報告した。無症候性の重症ASで左室駆出率(LVEF)が保たれている患者の場合、現行ガイドラインでは6~12ヵ月ごとの定期的な検査が推奨されている。これらの患者において、TAVRによる早期介入がアウトカムを改善するかを検討した無作為化試験のデータは不足していた。NEJM誌オンライン版2024年10月28日号掲載の報告。全死因死亡と脳卒中・心血管系疾患による予定外入院の複合イベントを評価 研究グループは、無症候性の重症ASで、米国胸部外科学会の予測死亡リスク(STS-PROM)スコア(範囲:0~100%、高スコアほど術後30日以内の死亡リスクが高い)が<10%、LVEF≧50%の65歳以上の患者を、TAVR群および経過観察群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 TAVR群では、経大腿アプローチでバルーン拡張型弁(SAPIEN 3/3 Ultra、Edwards Lifesciences製)を用い、経過観察群ではガイドラインに従って標準治療を行った。 主要エンドポイントは、全死因死亡、脳卒中または心血管系疾患による予定外の入院の複合とし、ITT解析を実施した。TAVR群で複合イベントリスクが半減 2017年3月~2021年12月に1,578例がスクリーニングを受け、適格患者901例が無作為に割り付けられた(TAVR群455例、経過観察群446例)。患者背景は、平均年齢75.8歳、女性が30.9%、STS-PROM平均値は1.8%であり83.6%の患者は地域のハートチームによる評価で手術リスクが低いと判定されていた。 追跡期間中央値3.8年において、主要エンドポイントの複合イベントは、TAVR群で122例(26.8%)、経過観察群で202例(45.3%)に認められ、ハザード比は0.50(95%信頼区間:0.40~0.63、p<0.001)であった。各イベントの発生率は、TAVR群と経過観察群でそれぞれ全死因死亡が8.4%、9.2%、脳卒中が4.2%、6.7%、心血管系疾患による予定外の入院が20.9%、41.7%であった。 経過観察群では追跡期間中に446例中388例(87.0%)が大動脈弁置換術を受けた。 手技に関連した有害事象は、TAVR群の患者と経過観察群で大動脈弁置換術を受けた患者との間で明らかな差は認められなかった。

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出産女性へのトラネキサム酸予防投与、出血リスクを軽減/Lancet

 出産する女性へのトラネキサム酸の予防投与はプラセボと比較して、生命を脅かす出血リスクを軽減することが認められ、血栓症のリスクを高めるというエビデンスは確認されなかった。英国・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のKatharine Ker氏らAnti-fibrinolytics Trialists Collaborators Obstetric Groupが、無作為化比較試験のシステマティックレビューと個別被験者データ(IPD)を用いたメタ解析の結果で示した。トラネキサム酸は、臨床的に産後出血と診断された女性に推奨される治療薬であるが、出血を予防可能かについては不明であった。著者は、「出産するすべての女性にトラネキサム酸の使用を推奨するわけではないが、死亡リスクの高い女性では産後出血の診断前にトラネキサム酸の使用を検討すべきである」とまとめている。Lancet誌2024年10月26日号掲載の報告。トラネキサム酸の無作為化プラセボ対照試験についてIPDメタ解析を実施 研究グループは、WHO国際臨床試験登録プラットフォーム(WHO International Clinical Trials Registry Platform)を用い、出産する女性を対象にトラネキサム酸の有効性を評価した無作為化プラセボ対照比較試験を、データベース開始から2024年8月4日まで検索した。適格基準は、前向き登録、対象例数500例以上、割り付けの手順および隠蔽化に関するバイアスリスクが低い試験とした。 各適格試験の研究者から匿名化されたIPDを提供してもらい、2人の研究者がデータを抽出するとともに、コクランバイアスリスクツール修正版を用いてバイアスリスクを評価した。 有効性の主要アウトカムは生命を脅かす出血(出産後24時間以内の出血に関する死亡または外科的介入[開腹術、塞栓術、子宮圧迫縫合または動脈結紮]の複合)、安全性の主要アウトカムは致死的または非致死的血栓塞栓症の発生であった。メタ解析には1段階法を用いた。出血リスクは有意に減少、血栓塞栓症リスクはプラセボとの差なし 検索の結果、適格基準を満たした5件の臨床試験から計5万4,404例のデータが解析対象となった。4件において4万3,409例のIPDが得られ、1件については公表された試験報告書から1万995例の集計データを取得した。 解析対象のすべての試験は、バイアスリスクが低かった。 生命を脅かす出血は、トラネキサム酸群で2万7,300例中178例(0.65%)、プラセボ群で2万7,093例中230例(0.85%)に発生した(統合オッズ比[OR]:0.77、95%信頼区間[CI]:0.63~0.93、p=0.008)。トラネキサム酸の有効性が、生命を脅かす出血の潜在的リスク、分娩の種類、中等度または重度の貧血の有無または投与時期によって変化するというエビデンスは確認されなかった。 血栓塞栓症に関しては、トラネキサム酸群とプラセボ群との間に有意差は認められなかった。致死的または非致死的血栓塞栓症の発生は、トラネキサム酸群で2万6,571例中50例(0.2%)、プラセボ群で2万6,373例中52例(0.2%)であった(統合OR:0.96、95%CI:0.65~1.41、p=0.82)。 サブグループ解析において、有意な異質性は認められなかった。

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