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座位行動による健康への悪影響は運動で相殺可能

 毎日8時間以上、座ったまま過ごしている糖尿病の人でも、ガイドラインが推奨する身体活動量を満たしていれば、健康への悪影響を大きく抑制できることが報告された。米コロンビア大学メイルマン公衆衛生大学院のSandra Albrecht氏、Wen Dai氏による研究であり、詳細は「Diabetes Care」に7月19日掲載された。Albrecht氏は、「この研究結果は、オフィスワーカーやタクシードライバーなどの職業柄、長時間座り続ける必要のある人々に対して、習慣的な身体活動を推奨することの重要性を示している」と述べている。 この研究では、成人糖尿病患者の座位行動時間と全死因による死亡リスク、および心臓病による死亡リスクとの関連に対して、身体活動量がどの程度の影響を及ぼし得るかが検討された。2007~2018年の米国国民健康栄養調査(NHANES)の参加者のうち糖尿病を有する成人6,335人を2019年まで追跡。ベースライン時の自己申告に基づく座位行動時間および中~高強度身体活動(MVPA)の時間と死亡リスクとの関連を、Coxハザードモデルで解析した。社会人口統計学的因子、生活習慣、および疾患管理状況の影響は、統計学的に調整した。 解析対象者の主な特徴は、平均年齢が59.6歳、女性48.3%で、非ヒスパニック系白人が61%であり、糖尿病の罹病期間は約半数は5年以下である一方、34%は10年以上だった。身体活動量については、週当たりのMVPAが10分未満の人が38%を占めていた。 中央値5.9年の追跡で、全死因による死亡が1,278件記録されていて、そのうち354件が心臓病による死亡だった。身体活動量が極端に少ない群(MVPAが週10分未満)や不足している群(同10~150分未満)では、座位行動時間が長いほど全死因による死亡および心臓病による死亡リスクが高いという関連が認められた。しかし、身体活動量の多い群(同150分以上)では有意な関連がなく、身体活動量の多寡による有意な交互作用が確認された(全死因による死亡については交互作用P=0.003、心臓病による死亡についてはP=0.008)。 また、1日の座位行動時間が4時間未満の群に比べて8時間以上の群では、MVPAが150分未満の場合に、全死因による死亡と心臓病による死亡の双方のリスクが高かった。しかしMVPAが150分以上の場合は、いずれの死亡についても有意なリスク上昇は認められなかった。このほかに、MVPAが多いことは、特に心臓病による死亡リスクをより大きく抑制する傾向が認められた。 論文の筆頭著者であるDai氏は、「糖尿病が蔓延している現状と、成人糖尿病患者では座位行動時間が長く身体活動量が少ない傾向のあることを考え合わせると、このハイリスク集団に対する死亡リスク抑制のための介入が急務である」と、身体活動をいっそう強く奨励する必要性を強調している。なお、米疾病対策センター(CDC)は、中強度の身体活動にはウォーキングや水中エアロビクス、ダブルスのテニス、庭の手入れなどが含まれ、ランニングや水泳、自転車での高速走行、シングルスのテニス、バスケットボールなどは高強度運動に該当するとしている。

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妊娠糖尿病は乳がんのリスクを高めない

 妊娠糖尿病は乳がんのリスクとは関連がないようだ。平均12年間追跡した結果、妊娠糖尿病を発症しなかった女性と比べ、乳がんの発症率に差は認められなかったという。デンマークのステノ糖尿病センターおよびオーデンセ大学病院のMaria Hornstrup Christensen氏らが、欧州糖尿病学会(EASD 2024、9月9~13日、スペイン・マドリード)で発表する。 妊娠糖尿病は妊娠中に生じる、糖尿病の診断基準を満たさない程度の高血糖であり、難産や巨大児出産などのリスクが上昇する。妊婦の約14%が妊娠糖尿病を発症するとされ、症例数は増加傾向にある。通常、出産後に糖代謝は正常化するが、その後に心血管代謝疾患リスクが上昇することが知られている。また妊娠糖尿病の発症にはインスリン抵抗性が関与していて、そのインスリン抵抗性は心血管代謝疾患のほかに、乳がんを含むいくつかのがんのリスクと関連する可能性が示唆されている。Christensen氏らの今回の研究では、それらの中で乳がんに焦点が当てられた。 解析の対象は、1997~2018年に出産し、妊娠前に糖尿病や乳がんの既往がなかった70万8,121人のデンマーク人女性(平均年齢28歳)。このうち、2万4,140人(3.4%)に妊娠糖尿病の診断の記録が認められた。平均11.9年(範囲0~21.9年)の追跡で、7,609人が乳がんを発症していた。 妊娠糖尿病の記録のある人とない人で、乳がんの発症リスクに有意差は認められなかった(粗ハザード比0.99〔95%信頼区間0.85~1.15〕)。さらに、年齢や民族、妊娠前の体重、喫煙習慣、子どもの人数、収入、職業、教育歴、高血圧の既往などを調整しても、この結果に大きな変化はなかった(調整ハザード比0.96〔同0.93~1.12〕)。また、この結果は、閉経前乳がんと閉経後乳がんに分類した上で行った解析でも同様だった。 Christensen氏は、「妊娠中に妊娠糖尿病の診断を受けた女性にとって、乳がんを発症するリスクが高くないという事実は、安心材料と言えるだろう」と述べている。ただし同氏は、「妊娠糖尿病は乳がんとは関連がないものの、妊娠糖尿病と診断されたことのある女性は、その後の健康に気を配る必要がある」と強調している。研究者らによると、妊娠糖尿病は後年の糖尿病やメタボリックシンドローム、慢性腎臓病、心臓病のほかに、産後うつ病を含むメンタルヘルス疾患のリスク上昇に関連しているという。 なお、学会発表される報告は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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「どのくらいで治る?」と聞かれたら?【もったいない患者対応】第12回

「どのくらいで治る?」と聞かれたら?登場人物<今回の症例>50歳男性工事現場で作業中、機械の誤作動で右手を打撲右手背に約5cmの裂創あり<手術で裂創を縫合しました>局所麻酔で10針縫いましたよ。ありがとうございます。職場にはできる限り早く復帰するよう言われています。治るまでにどのくらいかかるでしょうか?そうですね、順調であれば1週間から10日で抜糸できます。治療期間はその程度とお考えください。わかりました。ありがとうございます。~7日後~どうやら傷口が感染を起こしているようです。少し傷を開いて膿を出す処置をしなくてはなりません。そうですか。長くても10日で治ると聞いていましたが、3日後には復帰してもいいんですよね?傷が膿んでいる状態なので、まだ難しいと思います。そんな…もっと長引くということでしょうか? 職場には10日で復帰すると伝えてしまったんです。困りますよ!【POINT】患者さんから治癒までの期間を尋ねられた唐廻先生は、抜糸までの期間として「1週間から10日」と伝えました。しかし、残念ながら創部感染が起こり、治療は長引きそうです。「長くても10日」と思い込んでいた患者さんは、予定どおりに職場復帰できなくなり、憤慨してしまいました。何が悪かったのでしょうか?“どのくらいで治るか”は明確にわかるものだと誤解されやすい外傷ではとくに、患者さんから治癒までの期間を問われることが多いでしょう。職場から正確な治療期間を伝えるよう求められているケースも多く、医師が診断書に治癒までの期間を書かねばならないこともよくあります。こうした際に患者さんに伝える“治療期間”はあくまでも目安にすぎませんが、多くの患者さんはこのことを知りません。ニュースなどではよく「全治○ヵ月の怪我」といった報道もされるため、医師は患者さんに“治癒までの期間”を比較的明確に伝えられるものだ、と信じている方は多いのです。実際には、創傷治癒にかかる時間には個人差がありますし、何より、創部感染などの合併症が起こり、予想外に治療が長引くリスクは誰にでもあります。長引く可能性についても事前に説明を治癒するまでの期間を問われた場合、患者さんには、治療期間を正確に予測することはできず、ケースバイケースであること順調なら治療期間は〇〇くらいだが、途中で何かのトラブルが起こればもっと長引く可能性はあるということを、きちんと伝えておく必要があります。とくに、職場から復帰できるまでの期間を知りたいと言われているケースでは、医師が予想した期間を超えて治療が長引くと、職場に混乱が生じるおそれがあります。患者さん自身も、一緒に働く職場の同僚も、医師が伝えたタイミングで職場復帰するつもりで準備しているためです。そこで、患者さん本人から「治療期間を予測することは難しい」という旨が職場にもきちんと伝わるよう、医師も配慮することが望ましいのです。“治癒”の意味についても共有しておくちなみに、患者さんが“治癒=まったく元のとおりに戻ること”と捉えているケースは多くあります。しかし、実際には“社会復帰はできるものの、多少の後遺症は生じる”というケースはありえます。たとえ小さな傷であっても、感染を起こして目立つ瘢痕が残るケースもあります。完全に元どおりに戻ることが難しいこともあるという点を、患者さんにはあらかじめ理解してもらう必要があるでしょう。これでワンランクアップ!局所麻酔で10針縫いましたよ。ありがとうございます。職場にはできる限り早く復帰するよう言われています。治るのにどのくらいかかるでしょうか?そうですね、もし順調であれば1週間から10日で抜糸できます※1。ただし、途中で傷が膿んだり、治りが悪かったりする患者さんもいるので、これはあくまで目安です※2。いつ職場に復帰できるかは、いまの時点でははっきりお伝えすることはできません。傷の治り方次第で変わると思っておいてください。くれぐれも、職場の方にもそのように伝えておいてくださいね※3。※1:まずは簡単に見通しを伝える※2:順調にはいかない可能性も最初に共有しておく。※3:周囲の理解を得ることも大事。わかりました。ありがとうございます。

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第227回 東京女子医大 第三者委員会報告書を読む(後編)「“マイクロマネジメント”」と評された岩本氏が招いた「どん底のどん底」より深い“底”

「医科大学と大学病院を擁する本法人の理事長としての適格性が備わっていたのかという点について、疑問」こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。先日、大学時代の山仲間と北アルプスの常念岳と蝶ヶ岳をテントを背負って縦走してきました。初日、三股から登り始めて約30分、樹林帯の中で先頭を歩いていた仲間が突然「何かいる!」と叫びました。と次の瞬間、正面の藪の中からツキノワグマが飛び出して来ました。クマもびっくりしたのかその目はとても焦った表情で、猛スピードで我々4人の間を駆け抜け、沢筋に消えました。私は2番目を歩いていたのですが、3番目だった仲間のウォーキングポールにぶつかるほどの近さでした。これまで幾度か山でクマに遭遇していますが、1メートル以内は最短記録です。最近、登山用品店では「クマ避けスプレー」なるものが売られていますが、「あれじゃ、スプレーを取り出している暇はないね」「今回は大人のクマでなくてよかった(子グマより少し大きい青年グマでした)」などと皆で今後のクマ対策を話しました。それにしてもクマが引き返してこなくて良かったです。さて、今回も引き続き、ワンマン理事長、岩本 絹子氏が招いた東京女子医大の数々の問題について、8月2日に第三者委員会が公表した調査報告書の内容を紹介したいと思います。前回(「東京女子医大 第三者委員会報告書を読む(前編)「金銭に対する強い執着心」のあるワンマン理事長、「いずれ辞任するが、今ではない」と最後に抗うも解任」)は、同窓会組織・至誠会と学校法人の不適切な資金支出や、寄付金を重視する推薦入試や人事のあり方などに対して調査報告書が下した結論について書きました。今回は、岩本氏について「そもそも医科大学と大学病院を擁する本法人の理事長としての適格性が備わっていたのかという点について、疑問と言わざるを得ない」と書いた調査報告書が、その経営手法を具体的にどう評価したのかを見てみます。「高度医療施設を備えて患者や地域医療に貢献しようとすることに対する理解も関心も薄かった」247ページにも及ぶ第三者委員会の「調査報告書(公表版)」1)の最終章、「第10章 原因分析」の「第3 岩本理事長の経営手法にみられる問題点」では、具体的に「1. 教育・研究と病院・臨床に対する理解・関心の薄さ」、「2. 金銭や儲けに対する強い執着心」、「3. 異論を敵視し排除する姿勢と行動」、「4. 人的資本を破壊し組織の持続可能性を危機に晒す財務施策」の4つの観点から、岩本氏の経営の問題点を分析しています。「1. 教育・研究と病院・臨床に対する理解・関心の薄さ」の項では、岩本氏は東京女子医大卒業後、長年にわたり産婦人科医院を経営してきた開業医であり、医科大学で教育・研究に携わった経験も、大学病院という高度医療機関において臨床に携わった経験も乏しいと指摘、「本大学における教育・研究に対する理解も関心も薄かった。(中略)本病院がPICU(小児集中治療室)など高度医療施設を備えて患者や地域医療に貢献しようとすることに対する理解も関心も薄かった」としています。そうした姿勢が顕著に現れたケースとして、報告書は東京女子医大再生を目的に開設したPICUを運用停止した事案を挙げ、「岩本氏の重大な経営判断の誤り」と結論付けています。さらに、運用停止後に小児集中治療医の大量退職を招いたにもかかわらず、何ら有効な手段を取らなかったことについて「二重の判断の誤り」であったとしています。「岩本氏にとっては、 目先において儲かるか否かが最優先事項」「2. 金銭や儲けに対する強い執着心」の項では、前回紹介した、岩本氏の金銭にまつわるさまざまな所業について、「副理事長となって経営統括理事となったその瞬間から、資金の不正支出・利益相反行為の疑義を生ぜしめる行為に手を染めていたことになる。岩本氏は、これを皮切りに、資金の不正支出・利益相反行為の疑義を生ぜしめる一連の行為を繰り返した。そこには、金銭に対する強い執着心と、本法人に対する忠実性の欠如を見て取ることができる」としています。また、PICU閉鎖については、「岩本氏にとっては、目先において儲かるか否かが最優先事項であり、PICU設置を確実に実現することや、医療安全確立による本病院の評価向上、中長期的な業績向上、医療現場の士気向上を図ることなどは劣位に置かれた」とし、「教職員の人件費を低く据え置いたまま自身の報酬を増額させるということも、通常の感覚を持った経営者であれば決してできない行動」と批判しています。「自身の考えとは異なる意見を述べる者に対しては、自身の権力基盤を骨かす存在として敵視し、組織から排除」岩本氏の異常さは、経営姿勢や金銭感覚だけに留まりません。「3. 異論を敵視し排除する姿勢と行動」の項では、その経営手法について、「足元の経営統括部に権限を一極集中させ、全てのことを自身の経験と実績に引き寄せて判断しようとする“マイクロマネジメント”に陥っていた」と指摘、「自身の考えとは異なる意見を述べる者に対しては、自身の権力基盤を骨かす存在として敵視し、組織から排除することを繰り返し行った。それまでどんなに気心が知れている間柄であっても、一度異論を述べた者を突如として敵視し、報復と疑われる不適切な人事措置を講じてまで、組織から排除した」と書いています。その結果、「理事・監事らは、本来なら岩本氏の業務執行を監督・監査する職責を負っていることは自覚しつつも、岩本氏に異論を唱えれば自身が敵視され排除されるという現実に直面し、声を上げることを差し控えてきた。かくして理事会の構成員は『岩本一強』体制に取り込まれ、理事会と監事のガバナンス機能は封殺された」として、「本法人が現在の窮状に陥っていることの大きな要因が、岩本氏の異論を敵視し排除する姿勢と行動にあることは明らかである」と断じています。「岩本氏が進めた財務施策とは、立場の弱い現場の教職員を犠牲にするものであった」「4. 人的資本を破壊し組織の持続可能性を危機に晒す財務施策」の項では、経営指標の面から岩本氏の経営を評しています。岩本氏は、2019年の大学再生計画外部評価委員会総括書において「これまで47%程度であった人件費率を、2017年度には42%台まで低下させている。さらに、諸施策の実行に伴って、2014年度からの赤字を3年で解消し、2017年度は黒字に転換させるなど、明確な実績を上げた」と評価されていた、としつつも「2020年度以降、収支はコロナ関連補助金を除けば一貫して赤字であり、赤字幅が年々拡大している。病床利用率、入院患者数・外来患者数と医療収入は下落の一途を辿っている。もはや岩本氏を財務改善の功労者と持ち上げることはできない」としています。そして、「岩本氏が進めた財務施策とは、要は現場の人員や人件費を削減するものであり、見方によっては、立場の弱い現場の教職員を犠牲にするものであった」と批判、「岩本氏の財務施策は、短期的な財務改善と引き換えに、人的資本を破壊するもの、中長期的な組織の持続可能性を危機に晒すものであったと断ぜざるを得ない」と厳しい評価を下しています。2014年に起きたプロポフォール事件がターニングポイント読むだけでも恐ろしくなって来る話です。よくそんな組織の下で高度医療が提供できていたなと感じます。実際のところ、東京女子医大の経営状況や岩本氏の横暴が東洋経済オンラインや文春オンラインなどで報道されはじめた2020年以降、岩本体制を批判する勢力との対立も激しくなり、「本法人のレピュテーションは著しく毀損され、教職員の満足度の更なる低下と大量退職を招き、また教職員の募集採用活動にも当然ながら悪影響を及ぼしている」とのことです。患者数が激減するのもむべなるかなです。それにしても、最大の謎は「医科大学で教育・研究に携わったが経験も、大学病院という高度医療機関において臨床に携わった経験も乏しく」、「目先において儲かるか否かが最優先事項」で「“マイクロマネジメント”」しかできず、「自身の考えとは異なる意見を述べる者を敵視して組織から排除する」ような人物が、なぜ医科大学の理事長になれたのか、という点です。岩本氏は1973年に東京女子医大を卒業した産婦人科医で、同大の創業者の一族でもあります。同大勤務や葛西中央病院産婦人科部長を経て、1981年に葛西産婦人科院長に就任。2013年6月~23年4月には至誠会の会長を務め、この間、2014年に同大の副理事長、2019年に理事長に就任しています。同大の副理事長に就任した2014年がターニングポイントと言えそうです。その2014年の2月、東京女子医大病院で鎮静剤プロポフォールの投与を受けた男児(当時2歳)が死亡するという事故、いわゆるプロポフォール事件が起こっています(「第30回 東京女子医大麻酔科医6人書類送検、特定機能病院の再承認にも影響か」参照)。このプロポフォール事件と関連して起きた学内のドタバタが、岩本氏の理事長就任の大きなきっかけとなったようです。岩本氏が招いた「どん底のどん底」より深い“底”調査報告書の「第3章 2014年プロポフォール事件以降の本法人の経営状況」では、同事件が起こる前から経営陣と一部の役員・教員の間で対立があったことや、文部科学省から管理運営の適正化のための施策の提出を求められたこと、同事件によって特定機能病院の承認取り消しとなり、経営に大きなダメージを与えたことなどについて詳述しています。文科省は、プロポフォール事件で表沙汰となった東京女子医大の医療安全体制やガバナンス不全について問題視し、学校法人としての管理運営の適正化に資する諸施策を策定して報告するよう求めました。最終的に同大は2014年11月に「大学再生計画」を文科省に提出するのですが、そこに至るまでの間、「事故の原因分析まで踏み込む必要がある」と文科省から指摘を受け、一度受領を拒絶されています。調査報告書は、拒絶された時「文科省からは本法人が『どん底のどん底』にあることをよく認識するようにと厳しい指摘を受けた」と書いています。この大学再生計画提出後、同計画の遂行に大きな貢献があったことなどを理由に、岩本氏は2019年3月、副理事長から理事長になっています。この時、「どん底のどん底」より深い“底”がその先に待っていようとは、誰も想像しなかったに違いありません。今回の調査報告書や、警視庁の家宅捜索などによって東京女子医大の特定機能病院再承認はまたまた遠のいたと考えられます。加えて、年間20億円近くあった私学助成金(私立大学等経常費補助金)も大幅に減額されるに違いありません。一つの医療事故、一つの理事長人事をきっかけに、大学といえどもその組織は簡単に崩壊に向かうのだということを、今回の東京女子医大のケースは教えてくれます。参考1)第三者委員会による調査報告書の公表について/東京女子医科大学

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医師偏在に対する6項目の考え方/日医

 日本医師会(会長:松本 吉郎氏[松本皮膚科形成外科医院 理事長・院長])は、定例会見を開催し、「医師偏在に対する日本医師会の考え方」について、過去の地域医療と医師会の取り組みや実績を辿りつつ、今後の医師偏在への医師会の取り組みについて、その考え方を説明した。 会見では松本会長が、日本医師会は、地域のかかりつけ医として自院の診療や在宅診療以外に「地域の時間外・救急対応」、「行政・医師会などの公益活動」、「地域保健・公衆衛生活動」、「多職種連携(訪問診療などの在宅医療ネットワークへの参画など)」、「その他(看護師・准看護師養成所、種々の診断書の作成など)」の活動を地域と連携して行い、住民の健康を守るため、それぞれの地域を面として支えてきたことを説明した。 そのうえで、「医師偏在については、解決のためあらゆる手段を駆使して複合的に対応していく必要がある」と簡単な解決策はないことを示唆し、「超高齢・人口減少社会を迎える中で、医師会も医師偏在対策に主体的かつ積極的に取り組み、地域医療の強化につなげていくとともに、都道府県における議論とこれまでの取り組みを引き続き充実させていく」として、以下6項目の取り組みを提示した。【医師偏在に対する日本医師会の考え方】(1)公的・公立病院の管理者要件 現在、2020年度に臨床研修を開始した医師から適用されている医師少数区域勤務経験を求める地域医療支援病院の管理者要件の対象病院を、今後医師免許を取得する医師のキャリア形成などに十分に配慮した上で、公的・公立病院にも拡大する。 臨床研修医への導入や、いわゆる後期研修医などの若手医師の研修で、医師少数地域での研修期間をのばすプログラムも検討する。(2)医師少数地域の開業支援など 医師少数地域において新たに診療所を開設する医師に対して、開設から一定期間の資金支援策を創設するとともに、医師少数地域で働く医師(勤務医・開業医)の確保・派遣を強化する。(3)全国レベルの医師マッチング支援 医師不足地域での勤務を希望する医師に対し、リカレント研修や現場体験を行いつつ、医師少数地域での勤務を全国的にマッチングする仕組みを創設する。(4)保険診療実績要件 保険医療機関の管理者として、卒後一定期間の保険診療実績の要件を加え、保険診療の質を高める。(5)地域医療貢献の枠組み推進 現行の地域に必要とされる医療機能を担うことへの要請の枠粗みを制度化し、地域で足りない医療機能を強化し、実績をフォローアップする仕組みを導入する。(6)医師偏在対策基金の創設 上記の施策を5~10年で推進するための1,000億円規模の基金を国において創設する。 とくに(1)では、管理者要件を緩和して拡大することに加え、研修プログラムの工夫とモチベーションの向上について整備すること、(2)では、地域の重要なクリニックなどの継承にも対応すること、(3)では、医師会の「女性医師支援センター」のノウハウを活用して、医師のマッチングにつなげること、(4)では、わが国の医療の根幹は保険医療であることから、保険医の経験を管理者要件として重視すること、(5)では、医師会の種々の取り組みを今後もフォローアップすること、(6)では、国に対して要望し、実現に向けて働きかけを行うことを各項目ごとに解説した。

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ワルファリン時代vs.DOAC時代、日本の実臨床でのVTE長期転帰

 静脈血栓塞栓症(VTE)に対し、実臨床で直接経口抗凝固薬(DOAC)が使用されるようになって以降、ワルファリン時代と比較した長期転帰には実際どのような変化があるのだろうか。京都大学の金田 和久氏らは、急性の症候性VTE患者を対象とした多施設共同観察研究COMMAND VTE Registryから、ワルファリン時代とDOAC時代のデータを比較し、結果をJournal of the American College of Cardiology誌2024年8月6日号に報告した。 本研究では、COMMAND VTE Registryから、ワルファリン時代(2010~14年)の連続3,027症例(29施設)を登録したレジストリ1と、DOAC時代(2015~20年)の連続5,197症例(31施設)を登録したレジストリ2のデータが用いられた。 主な結果は以下のとおり。・DOACの使用率はレジストリ1:2.6% vs.レジストリ2:79%であった(p<0.001)。・レジストリ2における5年間のVTE累積再発率はレジストリ1よりも有意に低く(10.5% vs.9.5%、p=0.02)、そのリスク低下は交絡因子による調整後も有意であった(ハザード比[HR]:0.78、95%信頼区間[CI]:0.65〜0.93、p=0.005)。・2つのレジストリ間で5年間の大出血累積発生率に有意差は認められなかった(12.1% vs.13.7%、p=0.26)。交絡因子による調整後も、大出血リスクに有意差は認められなかった(HR:1.04、95%CI:0.89~1.21、p=0.63)。 著者らは、ワルファリンからDOACへの移行に伴い、VTEの再発リスクが低下した一方、大出血リスクに明らかな変化はなく、DOAC時代でも依然として満たされていないニーズとなっている可能性があると考察している。

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うつ病や双極症、季節性と日光曝露は初回使用の診断や薬剤使用量に影響するのか

 うつ病や双極症の季節性は、ICD-10/11やDSM-Vにおいても認識されている。デンマーク・Mental Health Services Capital RegionのCarlo Volf氏らは、デンマーク国内におけるうつ病および双極症の診断や抗うつ薬の初回処方パターンに対する季節性の影響を評価した。Nordic Journal of Psychiatry誌オンライン版2024年7月24日号の報告。 デンマーク患者登録(Danish National Patient Registry)より、1999~2019年にうつ病または双極症と初めて診断された患者の日付と年を検索した。疾患の定義には、うつ病はICD-10 F32-F33、双極症はF30またはF31を用いた。1999~2021年の抗うつ薬処方(ATC分類:N06A)の初めての購入の日付と年は、1995年以降に薬局で調剤されたすべての処方薬に関する情報を含む処方登録(Danish National Prescription Registry)から収集した。2012~21年の日照時間に関するデータは、デンマーク気象研究所より入手した。 主な結果は以下のとおり。・うつ病および双極症の診断発生率と薬剤処方は、月および季節により違いが認められた。・月ごとの変動は、抗うつ薬で最も大きく、双極症で最も小さかった。・多重線形回帰分析では、うつ病または双極症の初回診断数は、季節と相関しないことが示唆された。・抗うつ薬の初回処方は、冬季と比較し、夏季のほうが有意に少なかった。 著者らは「抗うつ薬の初回処方に関して、季節変動性が明らかとなった。うつ病重症度、双極症の症状やタイプ、日照時間、年間光周期の特定については、さらに調査する必要性がある」とまとめている。

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ナロキソン併用で、オピオイド使用障害妊婦と新生児の転帰改善の可能性/JAMA

 米国では過去20年間に、一般市民におけるオピオイド使用障害の増加に伴い、妊婦での本疾患の発生も著明に増えているが、併用薬の周産期の安全性データが不十分であるためブプレノルフィンの単独投与が推奨されている。米国・ハーバード大学医学大学院のLoreen Straub氏らは、妊娠初期のブプレノルフィン単剤投与と比較してブプレノルフィンとナロキソンの併用投与は、新生児および母体の転帰が同程度か、場合によってはより良好であり、オピオイド使用障害の安全な治療選択肢であることを示した。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2024年8月12日号に掲載された。米国のコホート研究 研究グループは、出産前のブプレノルフィンとナロキソン併用投与による周産期の転帰の評価を目的に、人口ベースのコホート研究を行った(米国国立薬物乱用研究所[NIDA]の助成を受けた)。 解析には、2000~18年の米国のメディケイド受給者の医療利用データを用いた。妊娠第1三半期に、ブプレノルフィン+ナロキソンの併用投与を受けた妊婦3,369例(平均年齢28.8[SD 4.6]歳)と、ブプレノルフィン単剤または併用からブプレノルフィン単剤投与に切り替えた妊婦5,326例(28.3[4.5]歳)を対象とした。 新生児では、13の主な臓器特異的先天奇形(腹壁、中枢神経系、眼、耳、消化器、生殖器、四肢など)と心奇形のほか、低出生体重、新生児薬物離脱症候群、新生児集中治療室入室、早産、呼吸器症状、在胎不当過小について評価し、母体の転帰として帝王切開による分娩と重度の疾患(分娩後30日以内の急性心不全、急性腎不全、急性肝疾患、急性心筋梗塞、急性呼吸窮迫症候群/呼吸不全、播種性血管内凝固/凝固障害、昏睡、せん妄、産褥期脳血管障害など)への罹患を検討した。新生児薬物離脱症候群のリスクが低い、母体の重度疾患は同程度 ブプレノルフィン+ナロキソン併用群はブプレノルフィン単剤群に比べ、新生児薬物離脱症候群(絶対リスク:37.4% vs.55.8%、重み付け相対リスク:0.77[95%信頼区間[CI]:0.70~0.84])のリスクが低く、新生児集中治療室入室(30.6% vs.34.9%、0.91[0.85~0.98])および在胎不当過小(10.0% vs.12.4%、0.86[0.75~0.98])のリスクはわずかだが低かった。 母体の重度疾患の発生率は両群で同程度だった(絶対リスク:2.6% vs.2.9%、重み付け相対リスク:0.90[95%CI:0.68~1.19])。主な先天奇形や心奇形、帝王切開のリスクには差はない 主な先天奇形(絶対リスク:5.2% vs.5.1%、重み付け相対リスク:0.95[95%CI:0.73~1.25])、心奇形(1.4% vs.1.3%、1.06[0.62~1.82])、低出生体重(8.5% vs.7.6%、1.07[0.91~1.25])、早産(14.9% vs.13.1%、1.06[0.94~1.19])、呼吸器症状(12.7% vs.11.4%、1.04[0.91~1.18])、および帝王切開(35.0% vs.32.7%、1.05[0.98~1.12])のリスクには両群間に差を認めなかった。 著者は、「これらの知見は、両薬剤とも妊娠中のオピオイド使用障害治療の妥当な選択肢であるとの見解を支持し、併用治療における意思決定の柔軟性を肯定するものである」としている。

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X世代とミレニアル世代でがん罹患率が上昇

 X世代(1965年から1980年の間に生まれた世代)とミレニアル世代(1981年から1990年代半ば頃までに生まれた世代)でがん罹患率が上昇していることが、新たな研究で明らかにされた。若い世代ほど、34種類のがんのうちの17種類の罹患率が上昇していることが示されたという。米国がん協会(ACS)のサーベイランス・健康公平性科学の上級主任研究員であるHyuna Sung氏らによるこの研究結果は、「The Lancet Public Health」8月号に掲載された。 今回の研究でSung氏らはまず、2000年1月1日から2019年12月31日の間の、34種類のがんの罹患率と25種類のがんによる死亡率のデータを入手した。このデータは、2365万4,000人のがん罹患者と734万8,137人のがんによる死亡者で構成されていた。Sung氏らは、これらの人を、1920年から1990年までの5年ごとの出生コホートに分け、出生コホート間でがんの罹患率比(IRR)と死亡率比(MRR)を計算して比較した。 その結果、世代を追うごとに34種類のがんのうちの17種類でIRRの増加傾向が認められ、このうちの8種類のがんでは出生コホートの影響が有意であることが示された。特に、男女にかかわらず、1990年生まれのコホートの小腸がん、腎臓・腎盂がん、および膵臓がんのIRRは1955年生まれのコホートの2〜3倍に達していた(IRRは同順で、3.56、2.92、2.61)。また、女性では、肝臓がん・肝内胆管がんのIRRも2倍であった(IRR 2.05)。さらに、残りのエストロゲン受容体陽性乳がん、子宮体がん、大腸がん、非噴門部胃がん、胆嚢がん・その他の胆管がん、卵巣がん、精巣がん、男性の肛門がん、男性のカポジ肉腫の9種類のがんについては、古い世代で減少傾向が認められた後に、若い世代での増加傾向が認められた。がんの罹患率が最も低い世代と比べた1990年生まれのコホートでの罹患率上昇には、卵巣がんでの12%から子宮体がんでの169%までの幅があった。 MRRは、肝臓がん・肝内胆管がん(女性)、子宮体がん、胆嚢がん・その他の胆管がん、精巣がん、大腸がんについては、若い出生コホートでIRRの増加に伴い増加が認められたが、ほとんどのがん種で、若い出生コホートでのMRRは減少するか一定であった。 Sung氏は、「これらの知見は、最近増加しつつある、ベビーブーマー以降の世代でのがんリスクの増加を示すエビデンスに新たに加わるものだ。これまで、若年発症の大腸がんといくつかの肥満関連のがんの若い世代での発症増加が報告されていたが、今回の結果は過去のこの知見を広げる、より広範ながん種を網羅している」と述べている。 本論文の上席著者である、ACSのサーベイランス・健康公平性科学のシニアバイスプレジデントであるAhmedin Jemal氏は、「このような若年層におけるがん死亡率の増加は、がんリスクの世代交代を示すものであり、しばしば、国が今後追うことになるがん負担の早期指標となる」と述べている。またJemal氏は、「このデータは、X世代とミレニアル世代における根本的なリスク因子を特定し、予防戦略に反映させる必要性を強調するものだ」と主張する。 本研究には関与していない、ACSがんアクションネットワーク(ACS CAN)会長のLisa Lacasse氏は、「この研究結果は、米国の中年および若年層における包括的なヘルスケアの必要性をも浮き彫りにするものだ。若い世代でのがんの負担増加は、がんの転帰の重要な要因である手頃な包括的医療保険へのアクセスを年齢を問わず全ての人に保証することの重要性を強調している」とACSのニュースリリースで述べている。

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食育プログラムが子どもと大人の孤独を改善

 地域における多世代を対象とした食育プログラムを実施した結果、参加した子どもと大人の孤独感に対して肯定的な影響が認められ、食育が孤独を改善する手段として有効である可能性が示唆された。昭和女子大学大学院生活機構研究科の黒谷佳代氏らが行った研究の成果であり、「Nutrients」に5月28日掲載された。 孤独対策では、人と人との「つながり」を実感できる地域作りが重要である。つながりを感じられる場所を確保する手段の一つとして、日本では食育が推進されている。例えば、子ども食堂は地域の子どもたちと大人が一緒に食事をすることができ、多世代が集うコミュニケーションの場所となっている。しかし、地域における多世代を対象とした食育について、その効果をまとめた研究報告は少ない。 そこで著者らは、多世代を対象に、孤独感の緩和を目的とした1日完結型の食育プログラムを実施する単群介入研究を行った。プログラムは東京都調布市において、2022年12月、2023年7月と8月に実施した。参加者の数は全体で、小学生の子どもが21人、保護者が16人、大学生が3人、高齢者が6人だった。無料のパン作り体験としてプログラムを設計し、発酵の時間にはバター作りやシャーベット作りを行い、自作のパンの試食会を行った。世代の異なる参加者とペアになってもらい、参加者同士が会話を楽しめるようにスタッフがサポートした。 小学生の子ども21人の特徴は、低学年が多く(1~2年生10人、3~4年生7人)、女子の割合が66.7%で、パン作りの経験割合は71.4%だった。大人25人の年齢範囲は20歳から84歳で、女性の割合が88.0%だった。 「さみしさを感じる」など5項目の質問からなる「子ども用孤独感尺度(Five-LSC)」を用いて、子どもの孤独感を評価したところ、介入前後で合計得点が有意に低下し、孤独感が軽減していることが示唆された。項目それぞれの得点の変化については有意ではなかった。 大人については、孤独を感じることが「決してない」と回答した人の割合が、介入前の12.5%から介入後は20.8%へと有意に上昇した。しかし、3項目からなる「UCLA孤独感尺度」の合計得点による評価では、有意な変化はなかった。各項目のうち、仲間付き合いがないといつも感じている人は減少した一方で、疎外されていると時々感じる人は増加していた。また、ソーシャルキャピタルのうち、地域の人が他の人の役に立とうとすると思うことや地域への愛着について、大人において評価が向上した。 参加後に知り合いや友人を作ることができた人の割合は、大人が70%、子どもが43%で、参加者全員がプログラムを楽しんだと回答した。楽しんだ人の割合が高かった内容は、バター作り(子ども88.9%、大人93.3%)、シャーベット作り(子ども77.8%、大人80.0%)、自分で焼いたパンを食べる(子ども77.8%、大人73.3%)、世代間交流(子ども55.6%、大人93.3%)だった。 今回の結果から著者らは、「日本では、多世代を対象とする食育プログラムが子どもの孤独感に肯定的な影響を及ぼし、大人の孤独感には部分的に肯定的な影響を及ぼすことが示唆された」と結論付けている。また、今後はさらに、長期的影響について対照群を設定したサンプル数の多い介入研究により検討する必要性を指摘している。

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主食・主菜・副菜をとる頻度と栄養素摂取量の関係

 主食・主菜・副菜を組み合わせた食事をとる頻度が、さまざまな栄養素の習慣的な摂取量とどのように関係するかを詳細に調べる研究が行われた。その結果、主食・主菜・副菜を組み合わせた食事の頻度は栄養素摂取量の適切さと関連し、その頻度が低いほど、たんぱく質やビタミンなど、いくつかの栄養素の摂取量が低いこと、習慣的な摂取状況が不足の可能性の高い栄養素の数が多いことが示された。神戸学院大学栄養学部の鳴海愛子氏らによる研究であり、「Nutrients」に5月26日掲載された。 食事バランスを考える料理区分として、「主食」はごはん・パン・麺など、「主菜」は魚・肉・卵・大豆・大豆製品を主材料とする料理、「副菜」は野菜・いも・海藻・きのこを主材料とする料理とされる。健康日本21(第三次)では、「主食・主菜・副菜を組み合わせた食事が1日2回以上の日がほぼ毎日の者の割合」を増やすことが目標とされている。一方、これらと習慣的な栄養素摂取状況の適切度との関連はこれまで検討されてこなかった。加えて、食事習慣は他の生活習慣とも関連し、例えば、定期的に運動している人ほど食事の質は高い。食事の内容や頻度と栄養素摂取量との関係は、生活習慣を含め他の要因の影響も考慮に入れて検討する必要がある。 著者らは今回、無作為に抽出した30~69歳の日本人を対象とする横断研究を行い、調査票を用いて、主食・主菜・副菜を組み合わせた食事の頻度や、直近1カ月間の食事内容などを調査し、栄養素摂取量を算出した。解析に必要なデータの得られた対象者は331人(平均年齢48.8±10.2歳、男性62.8%)だった。 対象者のうち、主食・主菜・副菜を組み合わせた食事が1日2回以上の日が「ほぼ毎日」だった人は132人(39.9%)、「週に4~5日」は65人(19.6%)「週に2~3日」は74人(22.4%)、「週に1回以下」は60人(18.1%)だった。「ほぼ毎日」の人は、女性、既婚者の割合が高く、年齢も高かった。一方、主食・主菜・副菜を組み合わせた食事の頻度は、BMI、教育歴、世帯年収、喫煙の有無、1日の歩行時間、睡眠時間、飲酒頻度とは関連していなかった。 たんぱく質の摂取量の不足の確率が50%以上である人の割合を比較したところ、「ほぼ毎日」の人では31.8%、「週に4~5日」は33.8%、「週に2~3日」は47.3%、「週に1回以下」は56.7%であり、主食・主菜・副菜を組み合わせた食事の頻度が少ないほど摂取量が不足の可能性が高い者が多い傾向が認められた(傾向性P<0.01)。この傾向は、ビタミンB2、B6、葉酸、ビタミンCについても同様に認められた。また、摂取量が不足の確率50%以上である栄養素の数(平均値)が、「ほぼ毎日」の人では2.0、「週に4~5日」は2.1、「週に2~3日」は2.7、「週に1回以下」は3.1であり、主食・主菜・副菜を組み合わせた食事の頻度が少ないほど習慣的な摂取状況が不足の可能性が高い栄養素の数が多い傾向が認められた(傾向性P<0.01)。一方、頻度にかかわらず、食物繊維の摂取量が生活習慣病予防のための摂取量の下限値未満である人(全体で86.1%)と食塩の摂取量が過剰の人(同98.5%)の割合は高かった。 今回の研究結果について著者らは、「高齢者の低栄養の予防や、若い女性のやせに対する介入など、栄養不足を予防するための介入に役立つ可能性がある」と述べている。また、主食・主菜・副菜を組み合わせた食事の頻度が低い人ほど海藻、魚介類、卵の摂取量が少なかったことや、頻度にかかわらず食物繊維や塩分の摂取量が適正でない人が多かったことを挙げ、適切な食材選択などについて、さらなる研究が必要だとしている。

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094)「外来で感じるメディアの影響」【Dr.デルぽんの診察室観察日記】

第94回 「外来で感じるメディアの影響」ゆるい皮膚科勤務医デルぽんです☆ジメジメする夏はカビの季節。皮膚科では、水虫の患者さんがぐっと増えます。だいたいは足の痒み、皮むけ、プツプツ(小水疱)など、皮膚トラブルの患者さんですが、中にはチラホラと爪のお悩みも。爪の水虫の場合、かゆみなどがなく、見た目の変化だけなので、放置されてしまいがち。外来に貼ってある爪水虫のポスターなどをきっかけに、「これ、治りますか?」と受診されるパターンが割とあります。ある日の外来で、朝から爪水虫の相談が続いたことがありました。こちらが説明をするより先に、「飲み薬で治したい」と内服を希望する患者さんたち。「おや?」と思ったところ、どうやら前の日に、テレビ番組で爪水虫の特集があったようです。「爪の水虫は、飲み薬を飲まないと治らないと言っていた」と、患者さん談。「なるほどそれで、立て続けに相談があったのね〜」と腑に落ちました。テレビの影響力、皮膚科の外来をやっていても、時々こうしたところで感じますね。皆様のところでは、いかがでしょうか?それではまた、次の連載で。

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ALK遺伝子陽性非小細胞肺がんに対するアレクチニブのアジュバント:ALINA試験【肺がんインタビュー】第102回

第102回 ALK遺伝子陽性非小細胞肺がんに対するアレクチニブのアジュバント:ALINA試験切除可能ALK遺伝子陽性非小細胞肺がんに対するアレクチニブのアジュバント第III相ALINA studyの結果が発表された。試験概要、主要結果、そして視聴者からの質問に対して共同研究者である国立がん研究センター中央病院の堀之内 秀仁 氏に解説いただいた。参考Yi-Long Wu, et al. Alectinib in Resected ALK-Positive Non-Small-Cell Lung Cancer. N Engl J Med. 2024;390:1265-1276.

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英語で「オブラートに包む」は?【1分★医療英語】第145回

第145回 英語で「オブラートに包む」は?《例文1》I did not sugarcoat anything when I obtained informed consent.(インフォームドコンセントを得た際には、まったくオブラートに包まず話しました)《例文2》I will be always honest with you.(私は、常にあなたに対して正直に接します)《解説》医療現場では、患者に対してがん診断などの重大な告知をすることがあります。その状況でよく使われる日本語の表現に「オブラートに包んで話す」があります。この表現を英語に訳すのは難しいと思われるかもしれませんが、実は適切な類似語があり、感覚的にはほぼ直訳することが可能です。“sugarcoat”という英語表現は、「砂糖で物質の表面をコーティングする」ことを意味し、苦い薬を飲みやすくするために使用される動詞です。そのため、“sugarcoat”は「受け入れ難い内容を、直接的でない言い方で伝える」という意味もあります。一方、オブラートはゼラチン質の薄い膜で、苦い薬を包んで飲みやすくするために使われることから、日本語の「オブラートに包む」という表現の由来となっています。単語自体は異なりますが、その由来は驚くほど類似しています。ほかの類似表現としては、“be honest with someone”があります。直訳すると、「相手に対して正直である」という意味です。講師紹介

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第229回 てんかん薬スチリペントールががん治療に役立ちそう

てんかん薬スチリペントールががん治療に役立ちそうがん細胞はエネルギーを生成するのに無酸素での糖分解を好んで利用します。それゆえがん細胞は無酸素解糖系(anaerobic glycolysis)というその反応の最終産物である乳酸を溜め込みます。がん細胞が化学療法を寄せ付けなくすること(化学療法耐性)をその乳酸が後押しすることを示した英国Institute of Cancer Research(ICR)の成果が先月7月初めにNature誌に掲載されました1)。放射線やほとんどの化学療法薬はDNA損傷を引き起こすことで細胞を死なせます。がん細胞が生き残って増えるには損傷DNAを素早く修復しなければなりません。2-ヒドロキシグルタル酸、フマル酸、コハク酸などの代謝産物の蓄積がDNA修復を阻止してゲノム不安定性を促すことがわかっています。一方、がんの生存を促しうるDNA修復を促進する代謝産物はほとんど知られていません。いまだほとんど未踏のDNA修復促進代謝産物を探ることでがんの新たな泣き所が見つかるかもしれません。そう考えたICRの研究者らは手始めに白金化学療法耐性(治療抵抗性)の15例を含む胃がん患者24例の手術後のがん検体の解析に取り組みました。締めて2,347種類のタンパク質を定量して327の代謝産物が同定され、治療抵抗性のがんでは解糖系の一員である乳酸デヒドロゲナーゼA(LDHA)が多く発現していました。また、LDHAによって生成される乳酸もより豊富でした。乳酸が化学療法耐性に寄与しているなら、乳酸を減らすことでがんの化学療法耐性を解消できそうです。その予想は正しく、乳酸生成を減らすLDHA阻害薬スチリペントールが化学療法や放射線治療(照射)を後押しすることがマウス実験で示されました。化学療法耐性の胃がんマウスに化学療法薬シスプラチンか照射と共にスチリペントールを投与したところ腫瘍が縮小して生存が延長しました。乳酸はタンパク質のアミノ酸・リシンの乳酸化に携わることが先立つ研究で示されています。今回の研究によると乳酸はDNA修復に携わる蛋白質NBS1のアミノ酸配列388番目のリシン(K388)の乳酸化によってDNA修復を助けます。NBS1は他の2つのタンパク質・MRE11とRAD50と複合体を形成し、DNA二本鎖切断を感知してDNA修復経路活性化することに与します。NBS1 K388乳酸化はその複合体・MRE11-RAD50-NBS1(MRN)の形成やDNA二本鎖切断部位での相同組換え修復タンパク質の蓄積に不可欠なことが今回の研究で示唆されました。LDHAやNBS1 K388乳酸化を頼りとするのは胃がんに限ったことではないようです。がんと正常組織の遺伝子発現のデータベースGene Expression Profiling Interactive Analysis(GEPIA)を調べたところ、LDHAの発現は胃がんを初め膵がん、肺がん、卵巣がんで有意に上昇していました。続く胃がん患者94例の検討で、LDHAやNBS1 K388乳酸化が盛んなことは実際により有害らしいと示唆されました。検体を解析したところ、LDHAが多いほどNBS1 K388はより乳酸化されており、LDHAやNBS1 K388乳酸化がより多い患者は少ない患者に比べてだいぶ短命でした。今回の結果を受け、治療抵抗性胃がん患者への化学療法の効果がスチリペントールで復活するかどうかを調べる臨床試験が早くも発足しています。スチリペントールはてんかんの治療に長く使われており、ヒトでもマウスと同様の効果があるならがん治療としての利用がより早く実現しそう、と著者の1人Axel Behrens氏は言っています2)。参考1)Chen H, et al. Nature. 2024;631:663-669.2)Epilepsy drug could keep chemotherapy for stomach cancer working for longer / Institute of Cancer Research

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麻酔科「麻酔維持期はアタマを使え!」【臨床実習を味わうケアネット動画Café】第8回

動画解説臨床研修サポートプログラムの研修医のための麻酔科ベーシックより、鈴木昭広先生の「麻酔維持期はアタマを使え!」を鑑賞します。実は民谷先生の研修時代の指導医である鈴木先生。軽妙でわかりやすいレクチャーでは医師としての心得も学べます。

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早老症の寿命延長に寄与する治療薬ロナファルニブ発売/アンジェス

 アンジェスは、小児早老症であるハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群(HGPS)とプロセシング不全性プロジェロイド・ラミノパチー(PDPL)の治療薬であるロナファルニブ(商品名:ゾキンヴィ)の発売に伴い、都内でプレスセミナーを開催した。 HGPSとPDPLは、致死性の遺伝的早老症の希少疾病であり、若い時点から死亡率が加速度的に上昇する疾患。これらの疾患では、深刻な成長障害、強皮症に似た皮膚症状などを来す。 ロナファルニブは、2023年3月に厚生労働省により希少疾病医薬品に指定され、2024年1月に国内製造販売承認を取得、同年4月に薬価基準に収載され、同年5月27日に発売された。 プレスセミナーでは、これら疾患と治療薬の概要が講演されたほか、ムコ多糖症や脊髄性筋萎縮症などを対象に衛生検査事業を同社が開始することが発表された。全世界で200例程度の患者・患児が存在 はじめに井原 健二氏(大分大学医学部医学科長 小児科学講座 教授)が、「HGPS/PDPL:病態・疫学・歴史と未来」をテーマに、主に疾患の概要について説明を行った。 ヒトは、小児期の発育(成長・発達・成熟)と成人期の老化(衰退・退行・退縮)の各要素により一生を終える。HGPS/PDPLなどの早老症は、老化の3要素が小児期から起こる疾患であり、発症年齢から先天性、乳児型、若年/成人型に分類される。 主な徴候としては、白髪・脱毛、難聴、白内障、強皮症様の皮膚症状、脂肪異栄養症、2型糖尿病、骨粗鬆症、動脈硬化および脳血管疾患などがある。また、100以上の症候群が報告され、乳児で発症すれば乳児早老症(コケイン症候群)、成人で発症すれば成人早老症(ウェルナー症候群)と発症年代の違いにより病名も変わってくる。 中でもHGPSは、出生児400万人に1人の発症とされ、患児は全世界に140例程度と推定されている。発症要因はLMNA遺伝子の病的変異が9割で、生後1年以内に発育不全、生後1~3年で特徴的な顔貌(下顎形成不全など)と早老徴候がみられ、平均余命は14.5歳。HGPSの老化には、Lamin A遺伝子の異常スプライシングによる翻訳時の欠失が知られ、異常ラミンが細胞核の物理的損傷や染色体クロマチン構造の異常を引き起こし、これらが病的変化の原因になることが判明している。また、核ラミナの変異が原因の遺伝性疾患であるラミノパチーはイコールで早老症ではなく、筋ジストロフィーや拡張型心筋症などもあり、これらの1つに早老症があるとされる。その代表疾患がHGPSであり、PDPLであるという。PDPL患者は、全世界で50例程度と推定され、生命予後は少し長く成人期まで生きることができる。 HGPSとPDPLの診断では、診察・問診後に遺伝子検査が必須となり、その結果遺伝子変異などの態様により分類される。 臨床症状としては、HGPSを例にとると「低身長(<3パーセンタイルなど)」、「不均衡な大頭などの顔の特徴」、「乳歯の萌出・脱落遅延などの歯科所見」、「さまざまな色素沈着などの皮膚所見」、「全禿頭や眉毛の喪失などの毛髪所見」、「末節の骨溶解などの骨格筋所見」、「細く甲高い声」などの症状がみられる。これらを大症状、小症状、遺伝学的検査の3つの組み合わせで確定または推定と診断される。医療者でも小児早老症の認知度は75%程度 HGPSとPDPLの疾患啓発については、「GeneReviews日本語版」や「プロジェリアハンドブック(日本語版)」などで医療者へ行っており、今後も医療者向けに2025年の診断基準の改訂情報や検査の高度化(血漿プロジェリン測定)を発信していくという。 また、啓発活動の一環として、「小児遺伝子疾患の診療経験・学習機会について」を医師51人に調査したアンケート結果を報告した。・「医学生時代に小児遺伝子疾患について学んだか」について聞いたところ、「はい」が53%、「いいえ/覚えていない」が47%だった。・「小児遺伝子疾患である早老症を知っているか」について聞いたところ、「はい」が75%、「いいえ」が25%だった。・「早老症のうちHGPS/PDPLなどの疾患群を知っているか」を聞いたところ、「はい」が27%、「いいえ」が73%だった。・「小児遺伝子疾患の診療で困ったこと」(複数回答)では、「治療に困った」が19人、「診断に困った」が18人と回答した医師が多かった。 まだ、医療者の中でも広く知られていないHGPSとPDPLの疾患啓発は、今後も続けられる。寿命の延伸に期待されるロナフェルニブ 「HGPSの治療の実際、および治療薬の登場により何が変わるのか?」をテーマに松尾 宗明氏(佐賀大学医学部小児科学 教授)が、HGPSの治療の概要やロナファルニブ登場の意義などを説明した。 はじめに自験例としてHGPSの患児について、生後3ヵ月で皮膚の硬化を主訴に診療を受けた症例を紹介した。その後、患児はHGPSが疑われ、生後5ヵ月でアメリカでの遺伝子検査により確定診断された。以降は、対症療法が行なわれ、10歳にときに無償提供プログラムでロナファルニブ単剤が投与され、現在も存命という。 ロナファルニブの作用機序は、核膜の構造・機能を損なうファルネシル化された変異タンパク質(核の不安定化と早期老化を惹起)の蓄積を阻害することで死亡率を低下させ、生存期間を延長する。 臨床試験では、HGPSおよびPDPLを対象としたロナファルニブの観察コホート生存試験が行われ、ロナファルニブ投与被験者は未治療対照と比較して、平均生存期間が4.327年延長した(平均9.647年vs.5.320年、名目上のp<0.0001、層別log-rank検定)。また、死亡率はロナファルニブ投与群で38.7%(24/62例)、未治療対照群で59.7%(37/62例)で、ハザード比は0.28(95%信頼区間:0.154~0.521)だった。HGPSおよびPDPLでの死亡原因は、動脈硬化の進行が一番多く、治療薬の効果として血管の硬化を抑えている可能性が示唆された。 用法・用量は、通常、ロナファルニブとして開始用量115mg/m2(体表面積)を1日2回、朝夕の食事中または食直後に経口投与し、4ヵ月後に維持用量150mg/m2(体表面積)を1日2回、朝夕の食事中または食直後に経口投与する(なお、患者の状態に応じて適宜減量する)。 主な副作用では、嘔気・嘔吐、下痢などの消化器症状が多く、とくに最初の4ヵ月に多いが、次第に慣れていくという。また、肝機能障害も初期に出現しやすく、QT延長もみられる場合もある。そのほか、潜在的なリスクとして、骨髄抑制、腎機能障害、眼障害、電解質異常も散見されるので注意しつつ処方する必要がある。 松尾氏はロナファルニブの登場により、「心血管系の合併症(脳血管障害を含む)の発症抑制」、「患者QOLの向上」、「延命効果」、「国内の患者さんへの適切な診断・治療の提供」などが変化すると期待をみせた。その一方で、「外観、体格など骨格系の問題、関節拘縮などに対する効果は乏しいこと」、「心血管系に対する効果もまだ限定的であること」、「心血管系の合併症(脳血管障害を含む)の管理」、「延命に伴う新たな問題(老化進行による予期せぬ合併症)」などが今後解決すべき課題と語り、講演を終えた。

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コーヒーや紅茶の摂取と認知症リスク~メタ解析

 コーヒー、紅茶、カフェイン摂取と認知症およびアルツハイマー病リスクとの関連性は、限定的で相反する結果が示されている。中国・汕頭大学のFengjuan Li氏らは、これらの関連性を明らかにするため、潜在的な用量反応関係を定量化することを目指し、メタ解析を実施した。Food & Function誌2024年8月12日号の報告。 2024年6月11日までの公表されたコホート研究を、PubMed、EMBASE、Web of Scienceより検索した。ランダム効果モデルを用いて、プールされた相対リスク(RR)および95%信頼区間(CI)を算出した。用量反応関係の評価には、制限付き3次スプラインを用いた。バイアスリスクの評価には、GRADE(Grading of Recommendations Assessment Development and Evaluation)ツールを用いた。 主な結果は以下のとおり。・38件のコホート研究より、合計75万1,824人(認知症:1万3,017人、アルツハイマー病:1万7,341人)の対象者が抽出された。・認知症の場合、紅茶、コーヒー、カフェイン摂取の最低群と比較した最高群のプールされたRRは、次のとおりであった。【紅茶】RR:0.84、95%CI:0.74~0.96、6件、確実性:低い【コーヒー】RR:0.95、95%CI:0.87~1.02、9件、確実性:低い【カフェイン】RR:0.94、95%CI:0.70~1.25、5件、確実性:低い・同様に、アルツハイマー病のプールされたRRは、次のとおりであった。【紅茶】RR:0.93、95%CI:0.87~1.00、6件、確実性:低い【コーヒー】RR:1.01、95%CI:0.90~1.12、10件、確実性:低い【カフェイン】RR:1.34、95%CI:1.04~1.74、2件、確実性:非常に低い・用量反応分析では、コーヒー摂取量と認知症リスクとの間に、非線形関係が認められ(Poverall=0.04、Pnonlinear=0.01)、1日当たり1~3杯のコーヒー摂取と認知症リスクとの保護的な関連が示唆された。・紅茶の摂取量と認知症リスクとの間には、線形関係が認められ、紅茶の摂取量が1日1杯増加するごとに認知症リスクの有意な低下が認められた(RR:0.96、95%CI:0.94~0.99、Poverall=0.01、Pnonlinear=0.68)。 著者らは「紅茶の摂取量増加は、認知症およびアルツハイマー病リスクの低下と関連しており、コーヒーでは非線形の関連が認められた。これは、認知症予防に関する公衆衛生の推奨事項を裏付けている」とまとめている。

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臨床意思決定支援システム導入で、プライマリケアでの降圧治療が改善/BMJ

 中国のプライマリケアでは、通常治療と比較して臨床意思決定支援システム(clinical decision support system:CDSS)の導入により、ガイドラインに沿った適切な降圧治療の実践が改善され、結果として血圧の緩やかな低下をもたらしたことから、CDSSは安全かつ効率的に高血圧に対するよりよい治療を提供するための有望なアプローチであることが、中国・National Clinical Research Centre for Cardiovascular DiseasesのJiali Song氏らLIGHT Collaborative Groupが実施した「LIGHT試験」で示された。研究の成果は、BMJ誌2024年7月23日号で報告された。中国の94プライマリケア施設でのクラスター無作為化試験 LIGHT試験は、中国の4つの都市部地域の94施設で実施した実践的な非盲検クラスター無作為化試験であり、2019年8月~2021年に患者を登録した(Chinese Academy of Medical Sciences innovation fund for medical scienceなどの助成を受けた)。 94のプライマリケア施設のうち、46施設をCDSSを受ける群に、48施設を通常治療を受ける群(対照)に無作為に割り付けた。CDSS群では、電子健康記録(EHR)に基づき、降圧薬の開始、漸増、切り換えについて特定のガイドラインに準拠したレジメンを患者に推奨し、通常治療群では同じEHRを用いるが、CDSSを使用せずに通常治療を行った。 対象は、ACE阻害薬またはARB、β遮断薬、カルシウム拮抗薬、利尿薬のうち0~2種類のクラスの降圧薬を使用し、収縮期血圧<180mmHg、拡張期血圧<110mmHgの高血圧患者であった。 主要アウトカムは、高血圧関連の受診のうちガイドラインに準拠した適切な治療が行われた割合とした。適切な治療が行われた受診の割合が15.2%高い 1万2,137例を登録した。CDSS群が5,755例(総受診回数2万3,113回)、通常治療群は6,382例(2万7,868回)であった。全体の平均年齢は61(SD 13)歳、42.5%が女性だった。平均収縮期血圧は134.1(SD 14.8)mmHgで、92.3%が少なくとも1種類のクラスの降圧薬を使用していた。 追跡期間中央値11.6ヵ月の時点で、適切な治療が行われた受診の割合は、通常治療群が62.2%(1万7,328/2万7,868回)であったのに対し、CDSS群は77.8%(1万7,975/2万3,113回)と有意に優れた(絶対群間差:15.2%ポイント[95%信頼区間[CI]:10.7~19.8、p<0.001]、オッズ比:2.17[95%CI:1.75~2.69、p<0.001])。<140/90mmHg達成割合も良好な傾向 最終受診時の収縮期血圧は、通常治療群がベースラインから0.3mmHg上昇したのに比べ、CDSS群は1.5mmHg低下し、その差は-1.6mmHg(95%CI:-2.7~-0.5)とCDSS群で有意に良好であった(p=0.006)。また、血圧コントロール率(最終受診時の<140/90mmHgの達成割合)は、CDSS群が69.0%(3,415/4,952回)、通常治療群は64.6%(3,778/5,845回)であり、群間差は4.4%ポイント(95%CI:-0.7~9.5、p=0.07)だった。 患者報告による降圧薬治療関連の有害事象はまれであり、発現頻度は両群間で同程度であった。 著者は、「CDSSは、高血圧に対する質の高い治療へのアクセスと公平性を改善するための、低コストで効率的、かつ拡張性に優れ、持続可能な手段として機能する可能性がある」と述べ、「高血圧の管理にCDSSを用いる戦略は、とくに中国のような心血管疾患の負担が大きく、医療資源に制約のある地域にとって、質の高い高血圧治療を効率的かつ安全に提供する有望なアプローチになると考えられる」としている。

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