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高強度の運動は空腹感を抑制する?

 ランニングや水泳などの心拍数が上がるような高強度の運動は、早歩きやアクティブヨガなどのより低強度の運動よりも、食欲増進に関連するホルモンであるグレリンの抑制に効果的であることが、新たな研究で明らかになった。このような高強度の運動がもたらす効果は、男性よりも女性で顕著なことも示唆されたという。米バージニア大学医学部のKara Anderson氏らによるこの研究の詳細は、「Journal of the Endocrine Society」11月号に掲載された。 グレリンには、アシル化グレリン(AG)と非アシル化グレリン(DAG)という2つの形態が存在し、体内で、エネルギーバランス、食欲、血糖値、免疫機能、睡眠、記憶などに広範囲にわたって影響を及ぼすことが明らかにされている。グレリンはまた、急な運動により濃度が変動することも示されている。しかし、運動強度がグレリンレベルと食欲に与える影響についてのデータは限られている上に、そうした研究は主に男性のみを対象にしたものだという。 今回の研究では、8人の男性(平均年齢43.1±10.9歳、平均BMI 22.2±1.7)と6人の女性(平均年齢32.2±11.1歳、平均BMI 22.7±1.0)を対象に、運動強度と性別がグレリンレベルと食欲に与える影響が検討された。対象者には、まず、負荷を最大強度まで段階的に増やすエルゴメータ試験を実施して、乳酸値と最大酸素摂取量(VO2peak)を測定した。その後、その結果を基に、個々人のレベルに合った3種類の強度(運動なし、中強度:乳酸が急激に増え始める乳酸性閾値までの強度、高強度:乳酸性閾値とVO2peakの出力差の75%に当たる強度)を設定し、ランダムな順で行ってもらった。空腹感については、視覚アナログスケールで評価してもらった。 その結果、男女ともに、高強度の運動後では、中強度の運動後や運動をしなかった場合と比べてDAGレベルが有意に低下することが明らかになった。女性ではさらに、高強度の運動後にAGレベルについても有意に低下することが確認された。また、中強度の運動後には、運動をしなかった場合と比べて空腹感が有意に上昇していた。 こうした結果を受けて研究グループは、「中強度の運動では、グレリンレベルは変化しないか純増につながることが分かった」と述べ、「グレリンレベルの抑制には、乳酸性閾値を超える運動が必要なのかもしれない」との見方を示している。 Anderson氏は、「運動は『薬』と考えるべきであり、その『投与量』は個人の目標に基づいてカスタマイズされるべきだ」とJournal of the Endocrine Society誌のニュースリリースの中で述べている。同氏は、「われわれの研究は、高強度の運動が食欲抑制に重要な役割を果たす可能性を示唆するものであり、これは特に、減量プログラムの一環として有用だと考えられる」と述べている。

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パンデミック中は国内在留外国人の自殺率も高まった

 国内に暮らす外国人の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック中の自殺率に関するデータが報告された。外国人もパンデミックとともに自殺率が上昇したこと、男性においてはそのような変化が日本人よりも長く続いていたことなどが明らかにされている。筑波大学医学医療系ヘルスサービスリサーチ分野と国立国際医療研究センターグローバルヘルス政策研究センターの共同研究で、谷口雄大氏、田宮菜奈子氏、磯博康氏らによる論文が「International Journal for Equity in Health」に7月31日掲載された。 日本は世界的に見て自殺率が高いことが知られている。またCOVID-19パンデミック中に自殺率の上昇が認められた、数少ない国の一つでもある。一方、外国人の自殺率がパンデミックの影響を受けたのか否かは明らかにされていない。外国人は社会経済的な不平等にさらされやすく、医療アクセスの問題も抱えていることが多いため、パンデミック発生によって日本人よりも強い負荷が生じていた可能性がある。これらを背景として谷口氏らは、パンデミック中の国内在留外国人の自殺率がどのように変化したのかを、日本人と対比しながら詳細に検討した。 2016~2021年の厚生労働省「人口動態調査」の個票データから、自殺による死亡に関するデータを取得。年齢、性別、国籍の情報が欠落している人を除外したところ、この間の自殺者数は、日本人が12万1,610人(うち女性31.2%)、外国人は1,431人(同37.5%)だった。年齢については日本人男性が中央値52歳(四分位範囲38~68)、日本人女性は同55歳(39~72)、外国人男性は48歳(31~63)、外国人女性は50歳(35~63)だった。本研究では四半期ごとの自殺率を、人口に占める自殺者数の割合で表し、パンデミック前の対照期間(2016~2018年)の自殺率の変動との差分(difference-in-differences;DD)を算出することで、パンデミックの影響を推定した。 四半期ごとの自殺率を日本人と外国人で比較すると、男性と女性の双方において、常に日本人の自殺率の方が高値で推移していた。この差は、自殺率が高かった高年齢層の割合が、日本人で高かったことが一因と考えられる。年齢で層別化(40歳未満、40~59歳、60歳以上)して解析した結果、59歳以下の層において日本人と外国人との自殺率の差が顕著だった。 国籍別に見ると、パンデミック前より自殺率が高いことが報告されていた韓国・朝鮮籍の人では、ほかの国籍の外国人や日本人よりも高い自殺率で推移し、特に60歳以上の男性で顕著に高値だった。なお、韓国・朝鮮籍の自殺者数は、外国人自殺者の過半数(男性50.4%、女性51.1%)を占めていた。 ところで、パンデミック発生とともに国内の自殺率はいったん低下し、その後、反転して高値となったことが知られている。日本人におけるパンデミック初期の自殺率低下は、危機的状況における社会的な連帯感の高まり、労働時間の減少、政府による給付金などが背景にあるのではないかと推測されているが、外国人は、それらの恩恵を受けにくかった可能性がある。実際に本研究でも、2020年第2四半期のDDは、日本人の方が外国人よりも有意に低かった。 例えば、対照期間と比較した場合の同四半期の男性の自殺率は、日本人ではDD-0.90(95%信頼区間-1.12~-0.68)と統計学的に有意に低下したのに対して、外国人は0.97(同0.096~1.85)と有意に上昇しており、日本人と在留外国人の自殺率の推移の差を示すDDの差(difference-in-difference-in-differences;DDD)が1.87(1.20~2.54)と有意だった。女性においても、同四半期の日本人では自殺率が有意に低下した一方、外国人では有意な変化が認められず、DDDは1.23(0.51~1.94)と有意だった。 また、日本人男性における自殺率は2021年第3四半期以降、対照期間と有意でないレベルに低下した一方、外国人男性の自殺率は有意な上昇が続き、同年第4四半期のDDDは1.48(0.81~2.15)と有意であり、パンデミックの影響が日本人よりも長期間続いていた可能性が考えられた。なお、女性のDDDについては2021年以降、日本人と在留外国人の間で有意な差を認めなかった。 著者らは、「COVID-19パンデミック中、全体として在留外国人と日本人の双方で自殺率の上昇が見られた。初期には日本人では自殺率の低下が観察されたが外国人では見られず、また外国人男性の自殺率は2021年末まで高止まりしていた。われわれの研究結果は、パンデミックのような状況においては、社会経済的に脆弱な集団に対して適切なメンタルヘルスサポートが必要なことを示唆している」と総括。また、パンデミック中に外国人男性、特に、失業率が高かったと報告されている韓国・朝鮮籍の男性において自殺率が特に上昇していたことを指摘し、「適切な雇用機会の確保も重要」と述べている。

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新型コロナ感染中の運転は交通事故のリスク【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第269回

新型コロナ感染中の運転は交通事故のリスク疾患によっては、罹病中に運転することが交通事故のリスクとされるものがあります。たとえば、糖尿病でインスリン治療を受けている人は、無自覚低血糖によって運転の支障を来すことがあります。そのため、運転免許証の取得や更新時に虚偽申告をした場合の罰則規定が設けられています。運転前に血糖測定を行うように指導することが重要です。発熱していて、医療機関を受診する場合、公共交通機関を使うと他人に感染を広げてしまうので、自家用車を自分で運転して受診する人が多いでしょう。しかし、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)については、どうも交通事故のリスクが高くなるようで…。Erdik B, et al. Driving Under the Cognitive Influence of COVID-19: Exploring the Impact of Acute SARS-CoV-2 Infection on Road Safety. Neurology, 2024;103 (7_Supplement_1):S46-S47.この論文は、COVID-19の急性発症と交通事故数の関連性を調査したものです。2020~22年のデータを用いて、米国7州での交通事故記録とCOVID-19の統計を比較分析しました。結果、急性のCOVID-19と交通事故増加の関連性が観察されました(オッズ比:1.5)。つまり、急性期のCOVID-19で運転すると、交通事故のリスクが高くなるということです。ちなみに、この交通事故リスクは、飲酒運転やてんかんを持っている場合のリスクと同程度であったと考察されています。これを受けて筆者らは、COVID-19は、その後の後遺症(Long COVID)だけでなく、急性期の交通事故リスクを高める可能性があると指摘しています。熱があればそりゃしんどいだろうと思いますが、機序としてはウイルスの神経系への影響とも述べられています。医療従事者は、COVID-19の患者を診療する際、認知・運転の低下の可能性を考慮する必要があります。できるなら、家族が運転する車で来院いただきたいところですね。

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第237回 伝説の弁護士「無罪請負人」登場!入札妨害事件の決着つくか

その人の姿を間近で見たのは約四半世紀ぶりだった。11月12日午後1時15分過ぎの札幌高裁805号法廷。以前、本連載で触れたKKR札幌医療センターの敷地内薬局に絡む公契約関係競売入札妨害罪の控訴審初公判を傍聴取材するため、私はその場にいた。この事件はKKR札幌医療センター(以下、同センター)の敷地内薬局の整備を巡る公募型プロポーザル方式の企画競争入札時に、同センター事務部長が保険薬局チェーン・アイン薬局を展開するアインファーマシーズ(以下、アイン)に有利に働くよう競合他社の提案内容を漏洩し、アイン側に企画提案書の提出期限後の再提案を打診、アイン側がこれに応じて2度も企画提案書を再提出し、優先交渉権を獲得したことが刑法第96条の6第1項で定める公の競売や入札での公正さを欠く偽計として罪に問われたものである。最終的に4月18日の判決で、元事務部長に懲役1年・執行猶予3年(求刑懲役1年)、アイン元社長と元取締役にそれぞれ懲役6ヵ月・執行猶予2年(求刑懲役10ヵ月)を言い渡した。ただし、アイン側の2被告は判決を不服として5月1日付で札幌高裁に控訴した。さて、控訴審初公判当日は午後1時半開廷予定で、20分ほど前に記者や一般傍聴人は入廷を許された。一般傍聴人は20数人ほど。それから間もなく傍聴席後方がざわついていることに気付いて振り返ると、傍聴席右端の通路にスーツに身を包んだ10人超の男性の一団がおり、そのうちの2人だけがマスクを着用していた。控訴した両被告だ。残りは弁護人だろうと予想はついた。ただ、一審で両被告の弁護人は合計で5人程度だったにもかかわらず、この日の弁護人は10人にまで膨れ上がっていた。意外な人物現る一団がぞろぞろと被告席に向かって歩き出した際、先頭を歩いていた傍目にもわかるほどの白髪交じりの男性の姿が目に入り、私はギョッとした。この日は矯正なしの裸眼0.2の視力だったが、それでもこの白髪の男性が誰かはすぐわかった。弁護士の弘中 惇一郎氏だ。ロス疑惑銃撃事件の三浦 和義氏、薬害エイズ事件の安部 英氏、障害者郵便制度悪用事件の村木 厚子氏、そして陸山会事件で小沢 一郎氏の弁護人を担当し、無罪を勝ち取った通称「無罪請負人」だ。最近では、金融商品取引法違反で逮捕、特別背任で追起訴された日産自動車のカルロス・ゴーン被告の弁護人を務め、保釈を勝ち取るものの、ゴーン被告が保釈中にレバノンに逃亡するという事件に巻き込まれてしまっている。弘中氏が無罪を勝ち取った刑事裁判は10数件と言われるが、刑事裁判の99%が有罪になる日本では極めて突出した実績である。私は1990年代後半に開かれた薬害エイズ事件の傍聴取材中、何度も弘中氏を目にしていた。同事件は検察が力を入れていたことは明らかで、常に検察官3~4人が出廷していたが、それを相手に一歩も引くことなく、反対尋問を行っていたことは強く印象に残っている。同じ薬害エイズ事件では安倍氏とは別に旧厚生省ルートとして事件当時の旧厚生省薬務局生物製剤課長の松村 明仁氏も逮捕され、最終的に有罪が確定している。私はそちらの裁判も傍聴していたが、松村氏の弁護人が行う被告人や証人に対する尋問は、常に検察官による反対尋問で完膚なきまで論破され、弘中氏のそれとは対照的だった。今回の一審について個人的な印象を述べると、アイン側両被告の弁護人の態度はやや異様に映った。そもそも刑事事件の場合、被告側弁護人はメディアに対して雄弁ではなくとも、一定程度接触してくれることが多い。報道により検察側に有利な空気を作らせないためだ。ところが一審のアイン側弁護人のメディアに対する態度は異様なほど頑なだった。審理後の記者のぶら下がりは可能な限り避け、こちらの名刺を受け取ることもなく、所属法律事務所などを決して明かすことはなかった。被告周辺の関係者にも弁護人に関する情報は徹底したかん口令が敷かれていた様子で、関係者にその辺を尋ねると「ごめん。その件は勘弁して」とまで言われるほど。そうした中で、「無罪請負人」として名高い弘中氏を新たに選任したことは被告側の控訴審に対する本気度の高さをうかがわせた。弘中氏の反対尋問、事実を崩すのか午後1時半、開廷。被告人の人定質問後、裁判長から弁護人側への確認が行われた際、アイン元社長である被告の主任弁護人として補足説明に立った弘中氏は、競争入札が適さないゆえに行われる随意契約の1種である企画競争が、競争入札に当たるという一審判決や検察の認識は矛盾している旨を主張。しかし、弁護人側が求めた追加証拠の採用、証人尋問、被告人質問、事実取り調べの請求ついて、検察官が「必要性もなく、特段止むを得ない事情があるとも考えられない」と却下を要求。裁判長も同様の判断をし、無罪請負人の登場にもかかわらず、見せ場はほとんどなく、約10分で即日結審。来年1月28日の判決言い渡しが決まった。結審後、記者が弁護人を追いかける中、弘中氏がただ一人で小雨がぱらつく中での囲み取材に応じた。控訴趣意書でも一審で両被告弁護人が展開した企画競争は一般的な競争入札に当たらないとの主張で無罪を求めていると説明した。また、同様の主張を展開する立命館大学法科大学院教授の大下 英希氏によると、この件に関する鑑定意見書をあらかじめ提出し、大下氏と両被告に加え、元代表取締役の業務状況を知るアイン社員1人の尋問を求めていたという。もっとも「意見書の提出により、なぜこれが競争入札に当たらないかの論理自体は裁判所にお伝えしているので、これで目的の半分以上は達している」との見立ても語った。そのうえで弘中氏は「競争入札関係は判例が少なく、本件が有罪になろうとも無罪になろうともこれからの実務に与える影響は大きい」との見解を示した。もし「本件が有罪になれば、最高裁…」と記者の1人が問いかけると、弘中氏は次のようにきっぱり言い切った。「もちろんです。当然です」もっとも上告はかなり狭き門である。おおむね上告受理申し立てが認められるのは2%弱。98%は門前払いである。さらにここを通過しても約8割は上告棄却である。上告受理申し立てが認められてから最終判断が下るまでは平均で7~10ヵ月。いずれにせよ、この件は来年中には決着がつく見込みだ。

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資産1億円を築くのは難しくない!? 資産そのものより重要なものとは【医師のためのお金の話】第86回

突然ですが、あなたは1億円以上の資産を所有しているでしょうか? 「資産1億円なんてとんでもない!」「株式投資や不動産投資で大成功した人や大きな会社を所有している人しか資産1億円は無理でしょ」と思う人が多いのではないでしょうか。一般的に、医師は高額所得者に分類されますが、資産1億円以上を所有している人はそれほど多くないと思います。もしかしたら、住宅ローンや教育費の支払いがキツくて、月末の給料日が待ち遠しい人がいるかもしれません。じつは、方法論さえ知っていれば、資産1億円を所有する「お金持ち」になるのは意外と難しくありません。しかし問題の本質は、資産1億円を所有することではありません。最も重要なのは1億円の所有ではなく、独力で資産1億円を築ける人間になることです。たとえば、宝くじで1億円を当てた人や、親から1億円の遺産を譲り受けた人は、一晩にして資産1億円になります。しかし彼らは資産を独力で築く能力がないため、1億円の資産がそれ以上増える可能性は極めて低いです。最初の1億円を乗り越えると次の1億円は楽になる私の経験では、最初の1億円を築くのは非常に難しく時間がかかりました。2002年に資産形成を始めてから、純資産が1億円を超えたのは2009年のことです。延々と河原に石を積み上げるような作業を続けた結果、およそ7年かけて1億円を築いたことになります。しかし、次の1億円は5年で築きました。さらに次の1億円は2年で達成というように、1億円をつくる期間がどんどん短くなっていきます。そして直近では、たった6ヵ月で1億円を突破するようになりました。最初の1億円を築くのは非常に骨が折れて難しいですが、次の1億円は放っておいても自動的に稼げるようになったのです。つまり、資産1億円を築ける人間になるということは、2億円や3億円も簡単に集められる人間になるということです。資産1億円を築ける能力を獲得すると、失業や投資で失敗しても、しばらく経てば立ち直れる可能性が高いです。資産1億円を築ける能力を獲得すると、1億円を失うことに対する恐怖がなくなります。その結果、投資や起業に対して、よりアグレッシブになれるのです。資産1億円を築くのに必要な習慣は節約ゼロから資産1億円を築いた人の習慣で特徴的なのものは、節約だと思います。叩き上げでお金持ちになった人ほど、1円も粗末に扱わないものです。日常の買い物でも無駄遣いをせずに、できるだけ節約します。私の例では、これまでレグラス、メルセデスベンツEクラス、ランドクルーザーと乗り継いできました。最初のレグラスは新車で購入しましたが、それ以外はすべて中古車です。しかも、中古車販売業者を通さずに、知人から直接購入しています。さすがに私の例は少し極端かもしれませんが、このようにして支出を削って貯めたお金を、細心の注意を払って投資に回します。そして投資から得られた収益を再投資することによって、雪だるま式に資産を増やしていくのです。資産1億円を築く方法は、株式や不動産投資、そして起業などたくさんあります。これらを習得せずして資産1億円は難しいでしょう。しかし、それらに共通するのは節約の習慣です。節約によってタネ銭を貯める習慣なくして、資産1億円を築くのは難しいと思います。もちろん、生活の質を度外視した極端な節約は推奨されません。コストパフォーマンスを考えながら、できるだけ支出を抑えて賢い買い物をすることが重要です。資産1億円への道は日々の節約から。その上で、自分なりの資産1億円を築く能力を獲得しましょう。

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腫瘍循環器学と不易流行【見落とさない!がんの心毒性】第30回(最終回)

連載終了にあたりある日、医療・医学情報サイトCareNet.comの編集者から腫瘍循環器学に関する連載をしませんかという企画をいただきました。そしてその内容はインターネット情報サイトを活用して、腫瘍循環器専門医のみならず一般の循環器医や腫瘍医の先生、メディカルスタッフの皆さんに腫瘍循環器学をわかりやすく理解していただくため、というものでした。この頃は、大阪府立成人病センター循環器内科において腫瘍循環器外来が開始して以来10年が経過した時点であり、日本腫瘍循環器学会が発足したばかりの時期でもありました。タイムリーな企画だなと考え、腫瘍循環器医として第一線で活躍されておられる大倉 裕二先生、草場 仁志先生、志賀 太郎先生をお誘いして本連載を開始することにいたしました。当初は2年間の予定でしたので、最初の1年は総論(第1回~第11回)、その後は症例中心に連載を行うことにいたしました(第12回~第28回)。途中CareNet.com読者の皆さまにアンケートを行う試みも行いました1,2)。症例報告については、当初の4名に加え多くのエキスパートの先生にご参加いただき、実際に先生方がご経験された症例などを元に原稿を作成していただきました。その結果、3年半、合計30回の連載企画になりました。今回は、最終回としてこれまでの3年間を振り返りながら腫瘍循環器学の現在と将来についてまとめさせていただきます。古くて新しいアントラサイクリン系抗がん剤まず取り上げたのは、最も古くから存在する抗がん剤の一つであるアントラサイクリン系抗がん剤でした。1970年代に報告されたアントラサイクリン心筋症こそが、腫瘍循環器領域で最初に報告された心血管合併症(心血管毒性)であり、大倉先生に第2回『見つかる時代から見つける時代へ』で執筆いただきました。それは「アントラサイクリン心不全は3回予防できる」と名言を残した素晴らしい内容でした。循環器医なら全員が知っているはずのアントラサイクリン心筋症ですが、その病態や管理については意外と知られておりません。第15回 化学療法中に心室期外収縮頻発!対応は?第17回 造血幹細胞移植後に心不全を発症した症例第21回 がん化学療法中に発症した肺塞栓症、がん治療医と循環器医が協力して行うべき適切な管理は?さらにアントラサイクリン系抗がん剤と同様に、以前から投与されている殺細胞性抗がん剤について、以下の回で取り上げられました。第22回 フッ化ピリミジン系薬剤投与による胸痛発作症例第25回 膵がん治療中に造影CTで偶然肺塞栓を発見!適切な対応は第26回 増加する化学療法患者-機転の利いた専攻医の検査オーダー第28回 膵がん患者に合併する静脈血栓塞栓症への対応法この古くて新しい抗がん剤については、第17回で取り上げましたように、がん治療が終了した後もがんサバイバーにおける晩期合併症としても大変注目されています。そして、乳がん領域で最も予後が不良であったトリプルネガティブ症例に対する最も新しい治療の一つとしてその有効性が明らかとなっています3)。腫瘍循環器学の始まりは分子標的薬から腫瘍循環器学は2000年になり登場した分子標的薬とそれに伴い出現する心血管毒性が報告されてから急激な発展を遂げています。第3回『HER2阻害薬の心毒性、そのリスク因子や管理は?』で取り上げたHER2阻害薬は、米国・MDアンダーソンがんセンターにおいて世界最初に開設されたOnco-Cardiology Unitのきっかけになったがん治療薬です。当時は副作用が少なく有効性の高い夢のような薬として登場いたしましたが、アントラサイクリンとの併用により高頻度で心毒性が出現(HERA試験)4)したことで、腫瘍循環器領域に注目が集まりました。HER2阻害薬は第3回で解説があるように、その可逆性には二面性があり腫瘍循環器的にも注意が必要な薬剤です。そして、現在最も多く投与されている分子標的薬である血管新生阻害薬について、以下の回で触れています。第4回 VEGFR-TKIの心毒性、注意すべきは治療開始○ヵ月第14回 深掘りしてみよう!ベバシズマブ併用化学療法このほか、第12回、第19回 と本連載でも多く取り上げられています。血管新生阻害薬は高血圧、心不全、血栓症など多くの心血管毒性に注意が必要な薬剤であり、Onco-Hypertension領域におけるがん治療関連高血圧の原因薬剤としても注目されています5)。古くて新しいがん関連血栓症がんと血栓症は、1800年代にトルーソー(Trousseau)らにより「がんと血栓症」が報告されて以来、トルーソー症候群という概念で古くから存在しています。そして現在は血管新生阻害薬などのがん治療薬の進歩に伴い、がん治療に伴う血栓症の頻度が急速に増加してきたことで、がん関連血栓症(CAT:cancer associated thrombosis)という新しい概念が生まれてきました(図1)6)。(図1)画像を拡大する本企画では第8回 がんと血栓症、好発するがん種とリスク因子は?第20回 静脈血栓塞栓症治療中の肺動脈塞栓を伴う右室内腫瘤の治療方針第21回 がん化学療法中に発症した肺塞栓症、がん治療医と循環器医が協力して行うべき適切な管理は?第23回 静脈血栓塞栓症の治療に難渋した肺がんの一例(前編)第24回 静脈血栓塞栓症の治療に難渋した肺がんの一例(後編)第25回 膵がん治療中に造影CTで偶然肺塞栓を発見!適切な対応は第28回 膵がん患者に合併する静脈血栓塞栓症への対応法で、症例クイズとして数多く取り上げています。また、本疾患概念などについては、第9回『不安に感じる心毒性とは?ー読者アンケートの結果から』や第26回『増加する化学療法患者-機転の利いた専攻医の検査オーダー』でも触れられています。そのほかのがん治療古くて新しいがん治療には、放射線療法そしてホルモン療法が挙げられます。第7回『進化する放射線治療に取り残されてる?new RTの心毒性対策とは』、そして第11回『免疫チェックポイント阻害薬、放射線治療の心毒性、どう回避する?』に放射線関連心機能障害(RACD:Radiation Associated Cardiovascular diseases)が取り上げられました。さらに、ホルモン療法は第16回 がん患者に出現した呼吸困難、見落としがちな疾患は?第27回 アンドロゲン遮断療法後に狭心症を発症した症例にて症例提示がなされています。一方、最も新しいがん治療である免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の登場はがん診療にパラダイムシフトを起こしています。ICIに関連した連載は、第5回 免疫チェックポイント阻害薬:“予後に影響大”の心筋炎を防ぐには?第11回 免疫チェックポイント阻害薬、放射線治療の心毒性、どう回避する?第18回 免疫チェックポイント阻害薬の開始後6日目に出現した全身倦怠感第29回 irAE心筋炎の原因の一つに新たな知見が!!と計4回に登場します。また、第6回『新治療が心臓にやさしいとは限らない~Onco-Cardiologyの一路平安~』には、副作用に関するコメントとして、心毒性と腫瘍循環器医が知っておかねばならない副作用情報の読み方がまとめられており、ぜひとも再読してみてください。今後の腫瘍循環器学ニッチな学際領域であった腫瘍循環器学はいまや世界的に多くの研究がなされるようになり、各学会でステートメントやガイドラインが作成されています。本邦では、本連載が始まった後Onco-Cardiologyガイドラインが作成され、現在もトランスレーショナルリサーチや臨床研究がなされており、多くのエビデンスが明らかとなってきています。このような背景の元で、2025年10月に大阪千里ライフサイエンスセンターにおいて第8回日本腫瘍循環器学会学術集会(大会長 向井 幹夫)が開催されます。テーマを「不易流行* がんと循環器:古くて新しい関係」としており、本連載をお読みになられた方にはぜひ学術集会にご参加いただき、一緒に討論いたしましょう。*精選版 日本国語大辞典 第二版より:蕉風俳諧の理念の一つ。新しみを求めてたえず変化する流行性にこそ永遠に変わることのない不易の本質があり、不易と流行とは根元において一つであるとし、それは風雅の誠に根ざすものだとする。芭蕉自身が説いた例は見られないが向井 去来、服部 土芳らの門人たちの俳論において展開された。今回、連載の編集にご協力いただきました3名の先生、そして連載をお願いした腫瘍循環器医の先生方に御礼申し上げます。そして、本連載を読んでいただきました読者の皆さまと共に更なるご発展を祈念いたします。最後にCareNet.com連載について最初から担当いただき、適切なアドバイスをいただきましたケアネット社ならびに担当された土井様に深謝いたします。監修向井 幹夫(大阪がん循環器病予防センター 副所長)編集大倉 裕二(新潟県立がんセンター腫瘍循環器科 部長)草場 仁志(国家公務員共済組合連合会 浜の町病院 腫瘍内科部長)志賀 太郎(がん研究会有明病院腫瘍循環器・循環器内科 部長)向井 幹夫著者大倉 裕二、加藤 浩、北原 康行、草場 仁志、塩山 渉、志賀 太郎、鈴木 崇仁、竹村 弘司、田尻 和子、田中 善宏、田辺 裕子、津端 由佳里、深田 光敬、藤野 晋、向井 幹夫、森山 祥平、吉野 真樹(50音順、敬称略)1)向井幹夫ほか. がん診療医が不安に感じる心毒性ーCareNet.comのアンケート調査よりー. 第5回日本腫瘍循環器学会学術集会.2)志賀太郎ほか. JOCS創設7年目の今、腫瘍医、循環器医、それぞれの意識は〜インターネットを用いた「余命期間と侵襲的循環器治療」に対するアンケート調査結果〜. 第7回日本腫瘍循環器学会学術集会.3)Schmid P, et al. N Engl J Med. 2022;386:556-567.4)Piccart-Gebhart MJ et al. N Engl J Med. 2005;353:1659-1672.5)Minegishi S et al. Hypertension 2023;80:e123-e124.6)Mukai M et al. J Cardiol. 2018;72:89-93.講師紹介

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乳がん患者の妊娠・出産のためのタモキシフェン中断についてステートメント公表/日本がん・生殖医療学会

 日本がん・生殖医療学会では10月30日、「乳患者の妊娠・出産のためのタモキシフェン内服中断、そして最終投与からの望ましい避妊期間についてのステートメント」を公表した。2023年に初回報告されたPOSITIVE試験の結果に基づき、「一定期間タモキシフェンを内服したのちに、最長2年として内服を中断して妊娠・出産を試みる場合、短期的な予後への影響はないものと考えられる」とし、最終投与からの望ましい避妊期間について以下のように推奨をまとめている。 「本学会としては、タモキシフェンの内服を中断し自然妊娠を試みたり採卵したりする場合、最終投与からの望ましい避妊期間を、添付文書に従い9ヵ月とすることを推奨する。しかし、タモキシフェン内服前に妊孕性温存療法として採卵され、体外で凍結保存された胚や未受精卵を用いて妊娠を試みる場合は、すでに遺伝毒性は回避されているため、最終投与からの望ましい避妊期間は発生毒性のみを考慮し、3ヵ月とすることは許容されると考える。また妊娠・出産後や中断が2年を超えた場合には、速やかにタモキシフェンの内服を再開することを強く推奨する」 ステートメントでは、POSITIVE試験の主な結果および2023年3月に厚生労働省から発出された「医薬品投与に関する避妊の必要性等に関するガイダンス」、タモキシフェンの添付文書改訂についての概要も示されている。

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改訂GLに追加のNSCLCへのニボルマブ+化学療法+ベバシズマブ、OS・PFS最終解析結果(TASUKI-52)/日本肺学会

 非扁平上皮非小細胞肺がん(Non-Sq NSCLC)の1次治療における、プラチナ製剤を含む化学療法+ベバシズマブへのニボルマブ上乗せの有用性を評価した国際共同第III相試験「TASUKI-52試験」の最終解析の結果が、第65回日本肺学会学術集会で中川 和彦氏(近畿大学病院 がんセンター長)により報告された。すでにニボルマブ上乗せにより無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)が改善することが報告されており1)、この結果を基に『肺診療ガイドライン2024年版』のCQ64~66に本試験のレジメンが追加されていた2)。試験デザイン:国際共同第III相無作為化比較試験(日本、韓国、台湾で実施)対象:EGFR遺伝子変異、ALK融合遺伝子、ROS1融合遺伝子がいずれも陰性で、StageIIIB/IVの未治療Non-Sq NSCLC患者550例(日本人:371例)試験群(ニボルマブ群):ニボルマブ(360mg)+カルボプラチン(AUC 6)+パクリタキセル(200mg/m2)+ベバシズマブ(15mg/kg)を3週ごと最大6サイクル→ニボルマブ+ベバシズマブ 275例(日本人:188例)対照群(プラセボ群):プラセボ+カルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブを3週ごと最大6サイクル→プラセボ+ベバシズマブ 275例(日本人:183例)評価項目:[主要評価項目]独立画像判定委員会(IRRC)判定によるPFS[副次評価項目]OS、奏効割合(ORR)、治験担当医師評価によるPFS、安全性など 主な結果は以下のとおり。・両群間の患者背景はバランスがとれており、年齢中央値は66歳、女性の割合は約25%であった。・OS中央値は、ニボルマブ群31.6ヵ月、プラセボ群24.7ヵ月であり、ニボルマブ群が有意に良好であった(ハザード比[HR]:0.71、95%信頼区間[CI]:0.58~0.88、p=0.0013)。4年OS率は、それぞれ34.7%、22.1%であった。・OSのサブグループ解析において、骨転移を有する集団(HR:1.01)以外はニボルマブ群が良好な傾向にあった。・PD-L1発現状況別にみた各群のOS中央値(HR、95%CI)は以下のとおりであった。 -PD-L1<1%:28.5ヵ月vs.23.8ヵ月(HR:0.78、95%CI:0.58~1.06) -PD-L1 1~49%:31.2ヵ月vs.22.7ヵ月(HR:0.63、95%CI:0.43~0.91) -PD-L1≧50%:33.4ヵ月vs.26.6ヵ月(HR:0.73、95%CI:0.48~1.10)・ベースライン時の脳転移の有無別にみた各群のOS中央値(HR、95%CI)は以下のとおりであった。 -脳転移あり:41.8ヵ月vs.25.3ヵ月(HR:0.77、95%CI:0.42~1.39) -脳転移なし:31.2ヵ月vs.24.7ヵ月(HR:0.71、95%CI:0.57~0.88)・4年追跡時の治験担当医師評価によるPFS中央値は、ニボルマブ群9.9ヵ月、プラセボ群8.2ヵ月であり、ニボルマブ群が有意に良好であった(HR:0.61、95%CI:0.50~0.74、p<0.0001)。4年PFS率は、それぞれ13.7%、3.3%であった。・4年生存の有無別に背景因子を比較すると、ニボルマブ群における4年生存の因子として、年齢65歳以下、骨転移なしが挙げられた。・ニボルマブ群の4年生存例におけるORRは87.3%、4年奏効持続割合は43.9%であった。・ニボルマブ群の4年生存例では、後治療を受けていない割合が41.8%であった。ニボルマブ群の後治療を受けた患者のうち、放射線療法を受けた割合は39.1%、手術を受けた割合は6.5%であった。・Grade3/4の治療関連有害事象はニボルマブ群76.2%、プラセボ群74.9%に発現した。安全性に関する新たなシグナルはみられなかった。

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EPA製剤など、重大な副作用に「心房細動、心房粗動」追加/厚労省

 2024年11月13日、厚生労働省はイコサペント酸エチルならびにオメガ-3脂肪酸エチルの添付文書の改訂指示を発出した。重大な副作用の項に「心房細動、心房粗動」の追記がなされる。 今回、イコサペント酸エチル、オメガ-3脂肪酸エチル投与後の心房細動、心房粗動に関連する公表文献を評価、専門委員の意見も聴取した結果、心房細動または心房粗動のリスク増加を示唆する報告1-3)があることから、使用上の注意を改訂することが適切と判断された。 対象医薬品は以下のとおり。◯イコサペント酸エチル(商品名:エパデールカプセル300、同S300、同S600、同S900、エパデールEMカプセル2gなど)◯オメガ-3脂肪酸エチル(ロトリガ粒状カプセル2g)<重大な副作用>心房細動、心房粗動イコサペント酸エチル(4g/日)の海外臨床試験において、入院を要する心房細動または心房粗動のリスク増加が認められたとの報告がある。また、イコサペント酸エチルを含むオメガ-3脂肪酸の国内外臨床試験において、心房細動のリスク増加が認められたとの報告がある。注)高脂血症において本剤の承認された1日最高用量は、2,700mgである※※300mg・600mg・900mg製剤にのみ記載

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自殺リスク、曜日や祝日との関連は?/BMJ

 ほとんどの国では自殺リスクは月曜日に最も高く、元日に増加するが、週末やクリスマスでは国や地域によって異なることを、韓国・釜山大学のWhanhee Lee氏らが、Multi-City Multi-Country(MCC)Collaborative Research Networkのデータベースを用いた解析の結果を、報告した。これまでの研究では、自殺リスクは曜日によって異なることが報告されているが、研究対象地域が限定され、方法論的枠組みが不均一であったため、結果の一般化には限界があった。BMJ誌2024年10月23日号掲載の報告。26ヵ国740地点、約170万件の自殺について解析 研究グループは、MCC Collaborative Research Networkのデータベースを用い、1971年1月1日~2019年12月31日における26ヵ国740地点の自殺のデータを収集した(国によってデータの期間は異なる)。 各国の各地点における1日当たりの自殺者数を合計して国別の1日当たりの自殺者数とし、曜日および3つの祝日(元日、クリスマス、その他の国民の祝日)と自殺との関連を解析した。 合計170万1,286件の自殺が解析に組み込まれた。月曜と元日は、ほとんどの国で自殺リスクが高い 研究期間中、10万人当たりの自殺率が高かったのは韓国(26.7)、南アフリカ(24.2)、日本(24.0)、エストニア(22.6)であった。 平日(月~金曜日)の自殺リスクは、すべての国で月曜日が最も高く、相対リスク(相対参照:水曜日)はコスタリカの1.02(95%信頼区間[CI]:0.95~1.10)からチリの1.17(1.09~1.25)の範囲にわたっていた。 週末(土~日曜日)の自殺リスクは国によって異なり、北米、アジア、欧州のほとんどの国では平日より低い(1週間のうちで最も低い)一方で、中南米、南アフリカ、フィンランドでは平日より高かった。 また自殺リスクは、ほとんどの国において元日で顕著に増加することが示された。相対リスクは日本の0.93(95%CI:0.75~1.14)からチリの1.93(1.31~2.85)の範囲にわたっていた。一方、クリスマス当日の自殺リスクは国によって異なっていた。相対リスクはスイスの0.54(0.39~0.76)から南アフリカの1.89(1.01~3.56)の範囲にわたり、中南米と南アフリカではわずかに増加するが、北米と欧州ではわずかに減少することが認められた。 その他の国の祝日当日の自殺リスクは、ほとんどの国で減少することが認められた。相対リスクは英国の0.80(95%CI:0.71~0.89)からチリの1.14(0.97~1.35)の範囲であったが、とくに中南米で祝日の1~2日後に、わずかだがリスクが増すことが認められた。

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薬物療法を要する院外心停止者の血管アクセス、骨髄路vs.静脈路/NEJM

 薬物療法を要する院外心停止成人患者において、骨髄路確保戦略を用いても静脈路確保戦略を用いた場合と比べて、30日生存率は高くならなかった。英国・ウォーリック大学のKeith Couper氏らPARAMEDIC-3 Collaboratorsが、英国の11の救急医療システムで実施したプラグマティックな無作為化非盲検試験「PARAMEDIC-3試験」の結果を報告した。院外心停止患者の場合、アドレナリン(エピネフリン)などの薬剤の有効性は投与時間によって大きく左右される。骨髄内投与は静脈内投与より迅速な薬剤投与が可能であるが、臨床アウトカムへの影響は不明であった。NEJM誌オンライン版2024年10月31日号掲載の報告。骨髄路群と静脈路群に無作為化、30日生存率を比較 研究グループは、2021年11月~2024年7月に英国の11の救急医療システムにおいて、院外心停止となり救急救命士による心肺蘇生中に薬剤投与のため血管アクセスが必要となった成人患者を、骨髄路群または静脈路群に1対1の割合で無作為に割り付けた。割り付けは、施設で層別化し封筒法が用いられた。 主要アウトカムは30日生存率、副次アウトカムは無作為化後の自己心拍再開、退院時の良好な神経学的アウトカム(修正Rankinスケールスコア[スコア範囲:0~6、高スコアほど障害が大きいことを示す]が3以下)などであった。多重性の補正は行わなかった。30日生存率は、4.5% vs.5.1%で有意差なし 計1万723例がスクリーニングされ、6,096例が無作為化された。このうち14例が誤って無作為化されており、解析対象は6,082例(骨髄路群3,040例、静脈路群3,042例)であった。本試験は、6,096例が登録された時点で、2回目の正式な中間解析を行う前に早期中止となった。 30日生存率は、骨髄路群が4.5%(137/3,030例)、静脈路群が5.1%(155/3034例)で、補正後オッズ比(OR)は0.94(95%信頼区間[CI]:0.68~1.32、p=0.74)であった。 退院時の良好な神経学的アウトカムは、骨髄路群が2,994例中80例(2.7%)、静脈路群が2,986例中85例(2.8%)で認められた(補正後OR:0.91、95%CI:0.57~1.47)。 あらゆる時点で自己心拍再開が得られた患者は、骨髄路群が3,031例中1,092例(36.0%)、静脈路群が3,035例中1,186例(39.1%)であった(補正後OR:0.86、95%CI:0.76~0.97)。試験期間中の有害事象は、骨髄路群で1件(特定の活動中の軽度下肢痛)が報告された。 なお、著者は、蘇生処置の質に関するデータは収集していないこと、病院での蘇生後のケアに関するプロトコールの作成や情報収集はしていないこと、病院外での救急医療従事者の盲検化はできなかったこと、などを研究の限界として挙げている。

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日本の頭痛外来受診患者、頭痛の種類や特徴は?

 頭痛外来を受診した患者に関する単一施設研究の報告は行われているものの、日本で実施された多施設共同研究は、これまでほとんどなかった。静岡赤十字病院の今井 昇氏らは、日本において頭痛外来を受診した患者の臨床的特徴、頭痛の種類、重症度、精神疾患の併存について多施設分析を実施し、ギャップを埋めることを目指し、本研究を実施した。Clinical Neurology and Neurosurgery誌オンライン版2024年10月15日号の報告。 3ヵ所の頭痛外来を受診した頭痛患者2,378例を対象に、臨床的特徴をプロスペクティブに評価した。視覚的アナログスケール(VAS)などのベースライン時の人口統計学的特徴、7項目の一般化不安障害質問票(GAD-7)やこころとからだの質問票(PHQ-9)などの精神疾患の評価を行った。頭痛の種類は、片頭痛、緊張型頭痛、三叉神経・自律神経性頭痛(TAC)、その他の一次性頭痛疾患、二次性頭痛に分類した。頭痛の種類間でのパラメータを比較するため、必要に応じてKruskal-Wallis検定または共分散分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・最も多かった頭痛の種類は、片頭痛(78.8%)であり、次いで緊張型頭痛(12.2%)、二次性頭痛(5.5%)、その他の一次性頭痛疾患(2.1%)、TAC(1.6%)であった。・片頭痛患者は、初診時の年齢が他の頭痛患者よりも有意に若年であった。【片頭痛】年齢中央値:32.0歳【緊張型頭痛】年齢中央値:47.0歳【二次性頭痛】年齢中央値:39.0歳【その他の一次性頭痛疾患】年齢中央値:49.5歳【TAC】年齢中央値:47.0歳・TAC患者は、重症度と精神症状が最も重度であり、VAS(p<0.001)、GAD-7(p=0.019)、PHQ-9(p<0.001)のスコア中央値が、他の頭痛患者よりも有意に高かった。【TAC】VAS:90.0、GAD-7:7.0、PHQ-9:7.5【片頭痛】VAS:70.0、GAD-7:5.0、PHQ-9:5.0【緊張型頭痛】VAS:50.0、GAD-7:4.0、PHQ-9:4.0【その他の一次性頭痛疾患】VAS:65.0、GAD-7:4.0、PHQ-9:3.5【二次性頭痛】VAS:60.0、GAD-7:3.0、PHQ-9:3.5 著者らは「頭痛外来を受診した患者の多くは、片頭痛患者であった。TAC患者は、他の頭痛患者よりも頭痛の重症度および精神症状が有意に高いことが確認された」とまとめている。

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自宅で行う脳刺激療法がうつ病の症状を軽減

 自宅で行う脳刺激療法により、中等度から重度のうつ病を安全かつ効果的に治療できることが、米テキサス大学マクガバン医学部精神医学部長のJair Soares氏らが実施した臨床試験で示された。Soares氏らによると、経頭蓋直流電気刺激(tDCS)と呼ばれる非侵襲的な脳刺激療法は、治療反応率とうつ病寛解率においてシャム刺激よりも優れていたという。この研究結果は、「Nature Medicine」に10月21日掲載された。Soares氏は、「この研究結果は、気分障害に苦しむ患者に、近い将来、革新的な治療法が利用可能になるかもしれないという希望をもたらすものだ」と述べている。 Soares氏らは、ハミルトンうつ病評価尺度(HDRS)での評価で重症度が中等度以上と判定された18歳以上のうつ病患者174人(平均年齢38.3±10.92歳、女性120人)を対象に、自宅で10週間にわたって行うtDCSの有効性を、シャム刺激との比較で検討するランダム化比較試験を実施した。対象者は、脳に本物の電気刺激を受ける群(介入群)とシャム刺激を受ける群(対照群)にランダムに割り付けられた。試験で使用したtDCSは、うつ病患者で活動低下が頻繁に認められる背外側前頭前野をターゲットに、2つの電極を通して0.5〜2mAの弱い電流を流すもので、患者が自分で行うことができる。介入群に割り付けられた対象者は、自宅で1回30分の刺激を、最初の3週間は週5回、その後の7週間は週3回受けた。 その結果、10週間後のHDRSスコアは、介入群では9.41点低下したのに対し、対照群では7.14点の低下にとどまっており、介入群では対照群に比べてうつ病の症状が有意に軽減したことが明らかになった。また、HDRSでの評価に基づくと、介入群の臨床反応性は対照群よりも有意に高く、治療反応率は、介入群で58.3%、対照群で37.8%であった。うつ病寛解率は、同順で44.9%と21.8%であった。 論文の上席著者である、英キングス・カレッジ・ロンドン(KCL)情動神経科学・心理療法分野教授のCynthia Fu氏は、「うつ病の負担を強く感じているのは、今現在、症状と闘っている世界中の2億8000万人の人々だ。抗うつ薬とセラピーを組み合わせた治療は、多くの人において効果的ではあるが、薬は日常生活に支障を来す副作用を伴い得る」と話す。その上で同氏は、「われわれの研究は、tDCSが、治療を必要としているうつ病患者にとって治療の第一選択になる可能性があることを証明した」と付け加えている。なお、本研究は、tDCSで使う刺激装置の製造元であるFlow Neuroscience社から資金提供を受けて実施された。

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超低出生体重児の動脈管開存症に対するカテーテル治療の短期予後は外科手術よりわずかに良好

 米国では、出生体重700g以上の動脈管開存症(PDA)に対するカテーテルによる閉塞器具が2019年に承認され、PDAに対するカテーテル治療は2018年の29.8%から2022年の71.7%へと増加している。こうした中、カテーテル治療を受けた児の短期予後は、外科手術を受けた児よりもわずかに良好であったとする研究結果が、「Pediatrics」8月号に掲載された論文で明らかにされた。 米バーモント大学のBrianna F. Leahy氏らは、2018年1月1日から2022年12月31日の間に米国の726カ所の病院でPDAに対する侵襲的な治療(カテーテル治療または外科手術)を受けた超低出生体重(VLBW)児(体重401~1,500g、または在胎週数22~29週で出生)を対象として、これら2つの治療法それぞれの短期予後について調査した。予後は、生存、入院期間、生存者の体重Zスコアの変化、早産関連の合併症(気管支肺異形成症、遅発型感染症、未熟児網膜症、壊死性腸炎または限局性腸穿孔、脳室内出血)、および退院後に必要となる医学的処置(胃瘻チューブ、各種酸素吸入、気管切開、在宅用心肺モニター;以下「退院支援」)とした。 研究対象期間に生まれた21万6,267人のVLBW児のうち、上記基準を満たしたのは4万1,976人であった。そのほとんど(96.3%、4万428人)は薬物治療を受けていた。カテーテル治療を受け、外科手術を受けなかったのは3,393人(カテーテル治療群)、外科手術を受け、カテーテル治療を受けなかったのは2,978人(外科手術群)であった。 一般化推定方程式により在胎週数、在胎不当過小(SGA)児、母親の高血圧、院内出生児/院外出生児、病院内でのクラスタリング効果で調整して解析すると、カテーテル治療群は外科手術群に比べて、生存する可能性の高いことが示された(調整リスク比1.03、95%信頼区間1.02〜1.04)。入院期間(同1.00、0.97〜1.03)、早産関連の合併症(同1.00、0.98〜1.01)、退院支援(同0.94、0.89〜1.01)については、両群の間に有意差は認められなかった。 対象者のうち、出生体重700g以上で2020~2022年生まれの児だけについて解析を行ったところ、生存と退院支援については同様の結果であったが(生存:同1.02、1.00〜1.04、退院支援:同0.90、0.81〜1.01)、カテーテル治療群では外科手術群よりも早産関連の合併症が生じにくく(同0.95、0.93〜0.98)、入院期間も短かった(同0.95、0.90〜0.99)。 著者らは、「PDAに対するカテーテル治療を受けたVLBW児の生存、早産関連の合併症、入院期間などの短期予後は、外科手術を受けたVLBW児よりもわずかに良好であると思われる。しかし、今回の研究は後ろ向きの観察研究であって、重要な臨床の因子であっても含まれていないものが多くあることから、今回統計学的に算出された結果は、新生児の臨床的な状況に照らして慎重に解釈すべきだ」と述べている。

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ChatGPTの活用法いろいろ【Dr. 中島の 新・徒然草】(555)

五百五十五の段 ChatGPTの活用法いろいろ日本の衆院選に続いて米国大統領選も終わり、4年ぶりに共和党のドナルド・トランプ前大統領が返り咲きました。次に何を言い出すやら予測不能なトランプ大統領のこと。果たして今後の4年間、日本はどんな影響を受けることになるのでしょうか?さて、先日オンライン講演会の演者をしました。「ChatGPTを使った英会話上達法」という演題です。主催者によれば、普段の聴衆とは少し違ったメンツが集まったとのこと。皆さん、それぞれに英語では苦労しているのでしょう。私はChatGPTのパソコン版とスマホ版を使っての上達法を紹介しました。とくにスマホを使った実演は、見ていた人たちには随分なインパクトを与えたようです。早速その場でアプリをダウンロードした人もおられました。さて、講演会の後は恒例のフリートークです。それぞれの人が自分のChatGPT活用法を紹介しており、いろいろと参考になりました。1つ目。某医療機関のリハビリ担当者。患者さん向けにポスターやパンフレットを作成しているのですが、そのタイトルをChatGPTに考えてもらうというもの。3つほど考えてもらって、その中から選ぶそうです。私もこの「新・徒然草」のタイトルをChatGPTに考えてもらうことがあります。ただ、私の場合は20個ほど考えてもらい、その候補をさらに組み合わせて作っています。2つ目は推薦状です。誰かの昇進や異動に伴う推薦状は、何をどう書いていいやらさっぱりわかりません。そこでChatGPTに下書きさせるという先生がおられました。氏名や簡単な経歴、被推薦者の長所などの情報を入れて「貴院の○○というポジションに相応しい人物だ」という形での推薦状作成です。すると「おいおい、ちょっと誉めすぎと違うか」としか思えないようなものが出来てきたのだとか。で、念のため推薦される本人に見せてみると頷きながら読み、「ありがとうございます。まあ、こんなものでしょうね」みたいな反応だったそうです。決して「先生、これは誉めすぎですよ!」という反応ではなかったとか。さすがにそのまま提出するのも憚られたので、現実的な方向に軌道修正したそうです。3つ目は患者さんの質問に対する回答。外来で診ている患者さんからは、思わぬ質問が来ることがあります。たとえば、検査結果をプリントしてお渡しした時に「○○が異常値なのですが、どうしてでしょうか?」など。「基準値の上限をちょっと超えているくらい気にしなくていいのに」と言っても、納得しない人が大勢おられます。そこでChatGPTに「病気がないのに○○の検査結果が基準値をわずかに上回っている場合、どのような原因が考えられますか?」と尋ねると、即座に10個ほどの原因らしきものを挙げてくれます。たとえば喫煙加齢炎症性疾患や慢性疾患良性疾患妊娠やその他の一時的状態食生活や一時的な要因薬剤の影響遺伝的要因女性のホルモンバランスの異常一過性の自己免疫反応などですね。「病気がないのに」とわざわざ断っているのに、炎症性疾患、慢性疾患、良性疾患などを挙げるのがChatGPTらしいところですが、そこは大目に見ておきましょう。また、「遺伝的要因」などと言うと、余計に患者さんを心配させてしまいます。ここは「体質」と言ったほうが無難でしょうね。4つ目は英文校正です。何か英語の論文や文書を作成した時の校正は、皆さんそれぞれに工夫しておられることと思います。ネイティブによる英文校正サービスを使っている先生も何人かおられましたが、人力ではいくら速くても数時間から数日のタイムラグができてしまいます。その点、ChatGPTは瞬時に校正してくれるので、役立つことこの上ないのが正直なところ。とくに、どういう理由でこの部分を直したのかも教えてくれるところが親切です。しかも、同じ部分を修正したとしても、そのたびに何度でも校正可能。これは大変ありがたい機能で、いわば親切で忍耐強いバイリンガルが、24時間そばにいてくれるみたいなものです。ただ、ChatGPTも使いようです。フリートークでのディスカッションでは、英会話におけるスピーキングは確かにChatGPTで鍛えてもらうことはできるけれども、リスニングはどうなのか、ということがありました。これについては誰からもいいアイデアが出ませんでした。私自身も現在は模索中です。ただChatGPT自身の進化、そしてユーザー側の使い方の工夫も相まって、近いうちに効果的なリスニングの向上法が見いだされるのではないかと期待しております。最後に1句立冬や もはや友達 AIは

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酒さ〔Rosacea〕・鼻瘤〔Rhinophyma〕

1 疾患概要■ 定義酒さは20歳代以降に好発し、顔面中央部の前額・眉間部、鼻部、頬部(中央寄り)、頤部に、紅斑・潮紅や毛細血管拡張による赤ら顔を来す疾患である。■ 疫学白人(コーカソイド)では5~10%程度までとする報告が欧米の地域からなされている。アジア人(モンゴロイド)では数~20%程度までの報告がある。日本人の酒さの罹患率の正確なデータはないが、自覚していない軽症例を含めると0.5~1%程度の罹患率が見込まれる。■ 病因酒さに一元的な病因は存在しない。酒さの病理組織学的病変の主体は、脂腺性毛包周囲の真皮内にあり、脂腺性毛包を取り囲む炎症と毛細血管拡張を来す。コーカソイドを祖先に持つ集団でのゲノムワイド関連解析(GWAS)調査では酒さ発症に遺伝的背景の示唆がある1)。後天的要因として、環境因子からの自然免疫機構・抗菌ペプチドの過活性化2,3)や肥満細胞の関与する皮膚炎症の遷延化4)、末梢神経応答などの関与する知覚過敏や血管拡張反応などが病態形成に関与することが示されている。■ 症状・分類酒さの皮疹は眉間部、鼻部・鼻周囲、頬部、頤部の顔面中央部に主として分布する。まれに頸部や前胸部、上背部の脂腺性毛包の分布部に皮疹が拡大することもある。酒さは主たる症候・個疹性状に基づいて、紅斑血管拡張型酒さ、丘疹膿疱型酒さ、瘤腫型酒さ・鼻瘤、眼型酒さの4病型・サブタイプに分類される。1)紅斑血管拡張型酒さ脂腺性毛包周囲の紅斑と毛細血管の拡張を主症候とし、酒さの中で最も頻度が高い病型である。寒暖差などの気温変化、紫外線を含む日光曝露、運動や香辛料の効いた食餌などの顔面血流が変化する状況で、火照りや顔の熱感などの自覚症状が悪化する。2)丘疹膿疱型酒さ尋常性ざ瘡と類似の丘疹や膿疱が頬部、眉間部、頤部などに出現する。背景に紅斑血管拡張型酒さにみられる紅斑や毛細血管拡張を併存することも多い。尋常性ざ瘡と異なり、丘疹膿疱型酒さには面皰は存在しないが、酒さと尋常性ざ瘡が合併する患者もあり得る。尋常性ざ瘡との鑑別には面皰の有無に加えて、寒暖差による火照り感や熱感などの外界変化による自覚症状の変動を確認するとよい。3)瘤腫型酒さ・鼻瘤皮下の炎症に伴って肉芽腫形成や線維化を来す病型である。とくに、鼻部に病変を来すことが多く、「鼻瘤」という症候名・病名でも知られている。頬部の丘疹膿疱型酒さを合併することがまれではない。紅斑毛細血管拡張型酒さや丘疹膿疱型酒さは女性患者の受診者が多いが、瘤腫型酒さ・鼻瘤では男女比は1対1である5)。4)眼型酒さ眼瞼縁のマイボーム腺周囲炎症・機能不全を主たる病態とし、初期症状は、眼瞼縁睫毛部周囲の紅斑と毛細血管拡張、そして眼瞼結膜の充血や血管拡張である。自覚症状として眼球や眼瞼の刺激感や流涙を訴えることが多い。眼型酒さのほとんどは、他の酒さ病型に併存しており、酒さの眼合併症という捉え方もされる。■ 予後生命予後は良い。紅斑血管拡張型酒さの毛孔周囲炎症と毛細血管拡張の改善には数年を要する。丘疹膿疱型酒さの丘疹・膿疱症状は、3~6ヵ月程度の治療で改善が期待できる。瘤腫型酒さ・鼻瘤は鼻形態の変形程度に併せて、抗炎症療法から手術療法までが選択されるが、症候の安定には数年を要する。眼型酒さの炎症症状(結膜炎や結膜充血)は3~6ヵ月程度の治療で改善が期待できる。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)酒さの診断のための特定の検査方法はなく、皮疹性状や分布、臨床経過から総合的に酒さを診断する。酒さ患者にはアトピー素因やアレルギー素因を有する患者が20~40%ほど含まれており、特異的IgE検査(VIEW39など)を行い、増悪因子の回避に努める5)。アレルギー性接触皮膚炎の併存が疑われる場合にはパッチテスト(貼布試験)を考慮する。酒さ病変部では、毛包虫が増えていることがあり、毛包虫の確認には皮膚擦過試料の検鏡検査を行う。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)酒さの治療では、主たる症候を見極めて治療計画を立てる。一般的には、抗炎症作用を有する治療薬で酒さの脂腺性毛孔周囲の紅斑、丘疹、膿疱の治療を3~6ヵ月程度行う。炎症性皮疹のコントロールの後に、器質的変化による毛細血管拡張や、瘤腫や鼻瘤にみられる線維化と形態変形に対する治療を計画する。酒さ症候は、生活環境や併存症によっても症状の増悪が起こる5,6)。酒さの再燃や増悪の予防には、患者毎の増悪因子や環境要因に沿った生活指導と肌質に合わせたスキンケアが重要である。■ 丘疹膿疱型酒さに対する抗炎症外用薬・内服薬1)メトロニダゾール外用薬欧米では、メトロニダゾール外用薬(商品名:ロゼックスゲル)が酒さの抗炎症薬として1980年代から使用されている7,8)。わが国でも2022年に国際的酒さ標準治療薬の1つであるメトロニダゾール外用薬0.75%が酒さに対して保険適用が拡大された9)。メトロニダゾール外用薬は、その炎症反応抑制効果から丘疹膿疱型酒さにみられる炎症性皮疹の丘疹と膿疱の抑制効果、脂腺性毛包周囲の炎症による紅斑に対して改善効果が期待できる。2)イオウ・カンフルローションイオウ・カンフルローションは、わが国では1970年代から発売されざ瘡と酒さに対して保険適用がある。ただ、イオウ・カンフルローションの保険適用は、わが国での酒さ患者を対象とした臨床試験に基づいた承認経過の記録が見当たらず、現代のガイドライン評価基準に則した本邦での良質なエビデンスはない。イオウ・カンフルローションは、エタノールを含んでおり、皮脂と角層内水分の少ない乾燥肌の患者に用いると、乾燥感や肌荒れ感が強くなる場合がある。イオウ・カンフルローション懸濁液は、淡黄色で塗布により肌色調が黄色調となることがある。肌色調が気になる患者には、上澄み液だけを用いるなどの工夫をする。3)テトラサイクリン系抗菌薬ドキシサイクリンは、丘疹膿疱型酒さの炎症性皮疹(丘疹、膿疱)に有効である。酒さ専用内服薬としてドキシサイクリンの低用量徐放性内服薬が欧米では承認されている。ミノサイクリンは、ドキシサイクリン低用量徐放性内服薬と同等の効果が示されているが、間質性肺炎や皮膚色素沈着などの副作用から、長期服用時に留意が必要である10)。■ 紅斑毛細血管拡張型酒さに対する治療紅斑毛細血管拡張型酒さの主たる症候は、毛細血管の拡張に伴う紅斑や一過性潮紅である。治療には拡張した毛細血管を縮小させる治療を行う。パルス色素レーザー(pulsed dye laser:PDL)[595nm]、Nd:YAGレーザー[1,064nm]、Intense pulsed light (IPL)が、酒さの毛細血管拡張と紅斑を有意に減少させることが報告されている。これらのレーザー・光線治療は酒さに対しては保険適用外である。4 今後の展望2022年にメトロニダゾールが酒さに対して保険適用となり、わが国でも酒さ標準治療薬が入手できるようになった。酒さの診断名登録が増えており、医療関係者と患者ともに酒さ・赤ら顔に対する認知度の増加傾向が感じられる。しかしながら、潮紅や毛細血管拡張を主体とする紅斑毛細血管拡張型酒さに対する保険適用の治療方法は十分ではなく、今後の治験や臨床試験が期待される。5 主たる診療科皮膚科顔面の丘疹・膿疱を主たる皮疹形態とする疾患の多くは皮膚表面の表皮の疾患ではなく、真皮における炎症、肉芽腫性疾患、感染症、腫瘍性疾患である可能性が高い。皮膚炎症性疾患に頻用されるステロイド外用薬は、これらの疾患に効果がないばかりか、悪化させることがしばしば経験される。酒さは、ステロイドで悪化する代表的な皮膚疾患であり、安易なステロイド使用が患者と医療者の双方にとって望ましくない経過につながる。顔面に赤ら顔や丘疹や膿疱をみかける症例は、ステロイドなどの使用の前に鑑別疾患を十分に考慮する必要があるし、判断に迷う場合には外用薬を処方する前に速やかに皮膚科専門医にコンサルタントすることをお勧めする。※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報酒さナビ(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)National Rosacea Society(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)American Acne and Rosacea Society(医療従事者向けのまとまった情報、米国の本症の診療サイト)1)Aponte JL, et al. Hum Mol Genet. 2018;27:2762-2772.2)Yamasaki K, et al. Nat Med. 2007;13:975-980.3)Yamasaki K, et al. J Invest Dermatol. 2011;131:688-697.4)Muto Y, et al. J Invest Dermatol. 2014;134:2728-2736.5)Wada-Irimada M, et al. J Dermatol. 2022;49:519-524.6)Yamasaki K, et al. J Dermatol. 2022;49:1221-1227.7)Nielsen PG. Br J Dermatol. 1983;109:63-66.8)Nielsen PG. Br J Dermatol. 1983;108:327-332.9)Miyachi Y, et al. J Dermatol. 2022;49:330-340.10)van der Linden MMD, et al. Br J Dermatol. 2017;176:1465-1474.公開履歴初回2024年11月14日

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11月14日 アンチエイジングの日【今日は何の日?】

【11月14日 アンチエイジングの日】〔由来〕「いい(11)とし(14)」(良い歳)と読む語呂合わせから、アンチエイジングネットワークが2007年に制定。生活習慣病を予防する予防医学の定着と、年齢を経ても「見た目の若さ」を保ち続ける方法の認知拡大が目的。関連コンテンツ“抗加齢医学”の実学創造~北里 柴三郎博士の思いを継いで~週どのくらい身体を動かすと良い?[成人編]【患者説明用スライド】コーヒーの成分トリゴネリンが老化に伴う筋肉消耗を防ぐ【バイオの火曜日】男性機能の維持にも、テストステロン増加に最適な運動/日本抗加齢医学会手引き改訂で診断基準に変化、テストステロン補充療法/日本メンズヘルス医学会

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epilepsy(てんかん)【病名のルーツはどこから?英語で学ぶ医学用語】第15回

言葉の由来「てんかん」の英名は“epilepsy”(エピレプシー)といいます。この言葉は、ギリシャ語の“epilambanein”(取りつかれる)から派生したもので、古代ギリシャの魔術的な信仰を反映しています。当時、てんかんは悪霊に取りつかれて起こると考えられていたようです1)。そして、この言葉は、ラテン語を経て現代の英語にまで引き継がれています。言葉にも現れているとおり、古代から中世にかけて、てんかんの患者は不浄や悪と見なされており、てんかんに関連した差別も生み出されました。てんかんの発作も悪霊によるものと信じられていたため、治療として儀式やおはらいが行われました。18世紀に入って、てんかんが脳の異常な電気活動によるものであるという認識が広まり、現代の医学では、てんかんは脳の神経細胞の異常な放電が原因であることが明らかになっています。併せて覚えよう! 周辺単語けいれんseizure神経内科neurology異常な電気活動abnormal electrical activity抗てんかん薬antiepileptic drugs(AED)脳波electroencephalogram(EEG)この病気、英語で説明できますか?Epilepsy is a neurological disorder characterized by recurrent seizures caused by abnormal electrical activity in the brain. Seizures can vary in intensity and frequency and may include convulsions or loss of consciousness.参考1)Patel P, et al. Epilepsia Open. 2020;5:22-35.講師紹介

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第122回 人間はもうかなわない、AIの医師国家試験正答率98%超

o1-previewOpenAI社のChatGPTで私がよく使っているモデルの1つに、o1-preview1)というものがあります。複雑な推論を実行するために強化学習で訓練された新しいAIモデルで、選択する際も「高度な推論」とわざわざ明記されています。さて、推論といえば、臨床推論ですよね。この推論のプロであるo1-previewに医師国家試験を解かせたらどうなるか、という興味深い研究が行われました2)。人間の皆さん、悲報です。われわれはもうAIには勝てません。正答率98%超研究では主に2つの重要なベンチマークテストが使用されました。1つは医療分野の知識を評価する1,273問の多肢選択式問題セット「MedQA」です。このMedQAテストにおいて、モデルの進化による著しい性能向上が確認されました。医療特化型の初期モデルであるPubMedBERTは38.1%という低い正答率でしたが、GPT-3.5で60.2%まで向上し、GPT-4では86.1%に達しました。その後、Medpromptというプロンプト技術を使用したGPT-4は90.2%まで性能を引き上げることができ、さらにGoogleのMed-Geminiは91.1%を達成しました。そして最新のo1-previewは、プロンプトエンジニアリングを使用せずとも96.0%という驚異的な正答率を示しています。もう1つの重要なベンチマークは、日本の2024年2月実施の医師国家試験から作成された「JMLE-2024」です。これは275問から構成される新しいテストセットで、とくに重要なのは、この試験がモデルの知識カットオフ日以降に実施されたものという点です。このJMLE-2024において、o1-previewは98.2%というきわめて高い正答率を達成しました。この結果は、モデルが単に学習データを記憶しているだけでなく、真の推論能力を持っていることを示唆しています。さらに、日本語での出題にもかかわらずこのような高い正答率を達成したことは、言語の壁を越えた知識理解と推論能力の証拠となっています。やべえ!もう勝てねえ!ただ、今回の研究は、画像を含む問題や複数の正解がある問題を除外しています。私たちが悩むのは、単一問題よりも、複数回答がある問題ですよね。なので、まだきっとわれわれにも勝機はあるはず…、に違いない!参考文献・参考サイト1)Introducing OpenAI o1-preview. 2024 Sep 12.2)Nori H, et al. From Medprompt to o1: Exploration of Run-Time Strategies for Medical Challenge Problems and Beyond. arXiv:2411.03590v1 [cs.CL] 06 Nov 2024.

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