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がん関連適応の肝切除、トラネキサム酸で周術期合併症が増加/JAMA

 がん関連適応の肝切除を受ける患者において、トラネキサム酸は出血または輸血を減少させず周術期合併症を増加させることが示された。カナダ・Sunnybrook Health Sciences CentreのPaul J. Karanicolas氏らHPB CONCEPT Teamが、多施設共同無作為化プラセボ対照試験「HeLiX試験」の結果を報告した。トラネキサム酸は多くの種類の手術で出血および輸血を減少させることが知られているが、がん関連適応の肝切除を受ける患者における有効性は明らかにされていなかった。JAMA誌オンライン版2024年8月19日号掲載の報告。プラセボ対照無作為化試験で術後7日間の赤血球輸血を評価 研究グループは、トラネキサム酸がプラセボとの比較において肝切除後7日間の赤血球輸血を減らすか否かを調べた。2014年12月1日~2022年11月8日に、肝胆膵手術専門の3次医療センター(カナダ10施設、米国1施設)で被験者を募り、術前麻酔開始時にトラネキサム酸(1gボーラス投与後、8時間かけて1gを点滴投与)またはマッチングプラセボを投与し90日間追跡調査した。 主要アウトカムは、術後7日以内の赤血球輸血とした。 適格基準を満たし試験参加に同意したがん関連適応の肝切除を受けるボランティア患者1,384例が無作為化を受けた。被験者、手術担当医、データ収集者は割り付けについて盲検化された。輸血発生と術中の出血量に有意差なし、合併症はトラネキサム酸群で高率 主要解析には被験者1,245例が組み入れられた(トラネキサム酸群619例、プラセボ群626例)。平均年齢は63.2歳、女性39.8%、大腸がん肝転移の診断患者56.1%で、周術期の特性は群間で類似していた。 赤血球輸血は、トラネキサム酸群16.3%(101例)、プラセボ群14.5%(91例)で発生した(オッズ比[OR]:1.15[95%信頼区間[CI]:0.84~1.56]、p=0.38、絶対群間差:2%[95%CI:-2~6])。 手術中の出血量(トラネキサム酸群817.3mL、プラセボ群836.7mL、p=0.75)、7日間の推定総出血量(それぞれ1,504.0mL、1,551.2mL、p=0.38)はいずれも両群間で同程度であった。 トラネキサム酸投与を受けた被験者は、プラセボ投与を受けた患者と比較して、合併症の発現頻度が有意に高かった(OR:1.28[95%CI:1.02~1.60]、p=0.03)。静脈血栓塞栓症の発現頻度に有意差は認められなかった(OR:1.68[95%CI:0.95~3.07]、p=0.08)。

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非喫煙者の42%に肺がんと関連する肺結節所見

 45歳以上の非喫煙者(喫煙未経験者と元喫煙者)1万人以上を対象にした研究で、42.0%もの人に肺がんと関連する可能性のある肺結節が1つ以上認められたことが報告された。非喫煙者の肺がんリスクは、通常は低いと考えられている。この論文の上席著者を務めたフローニンゲン大学医療センター(オランダ)心胸部画像診断科教授のRozemarijn Vliegenthart氏は、「この数字は予想以上に高く、喫煙者のハイリスク集団で報告されている肺結節の発生率に近いものだった」と述べている。この研究の詳細は、「Radiology」に8月13日掲載された。 研究グループの説明によると、胸部CT検査で肺結節が見つかるのは珍しいことではなく、肺がんの高リスク集団においては初期肺がんの兆候である可能性が高い。また、肺結節の発生率とサイズに関する過去の研究の大半は、ヘビースモーカーの肺がん検診データに基づくものであり、現在の肺結節の管理に関する推奨のほとんどもこの集団をベースにしている。そのため、低リスク集団において肺結節が見つかった場合に現在のガイドラインに準拠すると、不必要な追加検査の実施につながる恐れもあるという。 Vliegenthart氏らは今回の研究で、45歳以上の非喫煙者1万431人(平均年齢60.4歳、女性56.6%、喫煙未経験者46.1%、元喫煙者53.9%)を対象に、肺結節の発生率とサイズの分布を年齢と性別ごとに調査した。 その結果、対象者の42.0%(4,377人、男性47.5%、女性37.7%)に1つ以上の肺結節が確認され、この割合は年齢とともに上昇することが明らかになった。また、臨床的に意味のある肺結節(結節サイズが6〜8mm以上)が認められた対象者の割合は11.1%で、この割合も年齢とともに上昇していた。さらに、男性の方が女性よりも肺結節が見つかる確率と複数の結節を持っている確率が高いことも示された。 ただしVliegenthart氏は、「これらの肺結節のほとんどは、がんではなかった。これらの非喫煙者での肺がん発症率は0.3%と極めて低く、発見された臨床的に意味のある結節や対応が必要とされる結節のほとんどが良性であることを示唆している」とフローニンゲン大学のニュースリリースで述べている。それでも、これらの結節が見つかった場合には、現行のがん検診ガイドラインに従った追加検査と診察が必要となる。 研究グループは、欧米諸国では喫煙者が減少傾向にあることに言及した上で、「肺がん検診のガイドラインを更新することが重要だ」との考えを示している。またVliegenthart氏は、「このような喫煙者の減少傾向に鑑みると、非喫煙者の肺結節に関する基礎的かつ包括的なデータを提供した今回の研究結果の重要性が増す」とニュースリリースの中で述べている。 なお、米国肺協会(ALA)によれば、肺結節はがん以外にも、大気汚染、関節リウマチのような慢性炎症性疾患、結核のような感染症によっても引き起こされるという。また、非喫煙者の肺結節は、交通事故や健康問題でX線検査やCT検査を受けたときに偶然、発見されることが多いという。

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緑内障患者では皮膚カロテノイドレベルが認知機能と関連している

 強力な抗酸化作用を持つカロテノイドの体内レベルが低いことが、緑内障患者の認知機能低下と関連がある可能性を示すデータが報告された。島根大学医学部眼科学講座の谷戸正樹氏らが、皮膚で非侵襲的に測定したカロテノイドレベルと認知機能テストの結果との関連を解析した結果であり、詳細は「Current Issues in Molecular Biology」に7月3日掲載された。 緑内障は視神経の障害によって視野の不可逆的な異常が進行する疾患で、高齢化を背景に患者数が増加しており、国内の失明原因のトップを占めている。認知症も高齢化を背景に患者数が増加しており、両者ともに神経変性疾患であるという共通点があって、発症や進行に活性酸素の関与が想定されている。一方、野菜や果物に豊富に含まれているカロテノイドは強い抗酸化作用があり、これらの神経変性疾患に対して保護的に働く可能性が示唆されている。とはいえ、体内のカロテノイドの測定には採血が必要なこともあり、眼科領域での研究はあまり進んでいない。しかし近年、反射分光法を用いて体内のカロテノイドを皮膚レベルで測定する技術が確立され、新たな展開を迎えている。 谷戸氏らはこの測定法を用いて、緑内障患者のカロテノイドレベルと認知機能や眼科所見との関係性を検討した。解析対象は、同大学医学部附属病院眼科外来の緑内障患者406人(812眼)。緑内障以外の眼底疾患が併存している患者は除外されている。主な特徴は、平均年齢が79.5±7.6歳、男性56.2%で、病型は約6割(57.6%)が原発開放隅角緑内障であった。皮膚カロテノイド(SC)レベルは0~1,200au(任意単位)の間で評価され、研究参加者の平均は325.1±19.3auだった。 認知症のスクリーニングに用いられているMini-Cogというテストで、5点中2点以下の場合を「認知症の疑いあり(陽性)」と判定したところ、28人(6.9%)がこれに該当した。認知症の疑いの陽性群と陰性群を比較すると、年齢は陽性群が高く有意差が認められ(79.5±7.6対69.0±11.3歳、P<0.0001)、SCレベルも前者が低値という有意差が認められた(269.5±86.5対329.2±120.4au、P=0.01)。性別の分布やBMI、血圧、喫煙者率などには有意差がなかった。陽性群の眼科所見(56眼)を陰性群(756眼)と比較すると、陽性群は眼圧が高く、視力と視野感度は低く、有水晶体眼が少ない(白内障手術後が多い)という有意差が認められた。緑内障のタイプの分布は差がなかった。 次に、SCレベルを従属変数として混合回帰モデルで検討した結果、現喫煙、心拍数高値とともに、認知症の疑いが陽性であることが、SCレベルが低いことの独立した関連因子として特定された。反対に女性であることはSCレベルが高いことの独立した正の関連因子として特定された。年齢やBMI、血圧、視力、視野感度などは、SCレベルの独立した関連因子ではなかった。 続いて視野感度を従属変数とする検討を施行。その結果、眼圧高値、有水晶体眼、眼科手術の既往などとともに、認知症の疑いが陽性であることが、視野感度の独立した負の関連因子として特定された。年齢や性別、現喫煙、BMI、血圧、心拍数、およびSCレベルは、視野感度の独立した関連因子ではなかった。 著者らは本研究が横断的デザインで行われているという限界点を述べた上で、「緑内障患者において、Mini-Cogで評価した認知機能の低下がSCレベルの低下と関連していた。これは、認知機能低下抑制のため、カロテノイドレベルを維持するという戦略に潜在的なメリットがあることを示唆している」と総括している。一方、本研究ではカロテノイドの視野感度に対する保護的作用は示唆されなかったが、カロテノイドの神経保護作用の報告もあることから、「さらなる研究が求められる」としている。

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めまい(BPPV以外)【いざというとき役立つ!救急処置おさらい帳】第18回

前回は良性発作性頭位めまい症(BPPV)の患者さんの対応を紹介しました。今回は、続きとしてBPPV以外のめまいの対応を紹介します。再度STANDINGアルゴリズムを見てください(図1)。図1 STANDINGアルゴリズム画像を拡大する頭位変換でめまいが誘発されず、継続して眼振がある(Spontaneous)症例を提示します。私は自発性眼振は在宅や施設では経験がないので、救急外来に運ばれてきた症例を提示します。<症例>68歳、女性主訴めまい現病歴朝起床時から、ふわふわする感じがあった。その後、次第に回転性めまいとなり増悪。めまいのため体動困難となり救急要請。既往歴高血圧、高脂血症BP:132/80、HR:84、SPO2:99%(室内気)身体所見めまいが強くて開眼や診察が困難ではステップを追って診察してみましょう。(1)まずは治療を行うこの患者さんのようにめまい症状が強いと、独歩で受診したり、施設内で診察したりすることが難しいため救急搬送となります。こういった場合、私は治療と検査を優先します。まず「目を開けたらめまいがする」という病歴の時点でBPPVの可能性は否定的で、中枢性めまいと末梢性めまいを鑑別することが重要です。めまいや悪心が強い場合は満足に診察できません。まず治療を行いましょう。末梢性めまいに対する治療は多数あります。その中で比較的エビデンスがあるのが、抗ヒスタミン薬とメトクロプラミドであり、点滴静注を実施します1)。頭部CTはどうするか悩みますが、私は基本的に撮影しています。まともに診察ができない状況ですので脳出血が否定できないためです。この患者さんはCT撮影で出血は否定され、薬が効いてきたのか開眼できるようになりました。(2)眼振の方向(Nystagmus direction)を確認眼振ですが、基本的に1.方向交代性、2.垂直成分の有無、を評価します。私は、前庭神経障害による眼振の発生機序を説明する際に、林 寛之先生のSTEP beyond resident2)を基にした図を用いています(図2)。図2 眼振の発生機序画像を拡大する図に示すように前庭神経は左右から眼球を押しています。左が障害されると、正中を保てなくなり左に寄ります。しかし、正中を見るために右へ素早く戻る、それが右水平方向性の眼振となります。前庭神経が障害された場合、垂直成分はありません。また、両側同時に障害されることはないため、振り子のように左右均等に出たり、時間によって眼振の向きが変わったりすることもありません。この患者さんの眼振は右水平方向性の眼振で垂直成分はなく、方向交代もありませんでした。よって、左の前庭神経障害が疑われます。(3)Head impulse testよく勘違いされるのですが、Head impulse testを問題なく実施できた場合、「中枢性の可能性がある」となります。図3をみてください。図3 Head impulse test(Aはスムーズに行えており、Bは遅れている)画像を拡大する指を示して正中を注視してもらいながら、頭部を右に回旋します。すると眼球が左に動きます。もし右の前庭神経障害があれば、眼球を左へ動かす動きが障害されてしまい眼球の運動がやや遅れます。Head impulse testの問題なく行えれば前庭神経の障害ではないため「中枢性の可能性が高い」(図3のA)となり、少し遅れる場合は前庭神経の障害がありそうで「末梢性の可能性が高い」(図3のB)となります。この遅れは非常に微細で、Slowカメラなどを用いて撮影する必要があります。一度YouTubeなどでHead impulse testを見てみてださい。(4)立って歩けるか確認最後が問題なく歩けるかどうか? です。これは体感失調の有無を評価しています。「最後の最後に歩けるかどうかかよ~」と思うかもしれませんがかなり重要です。小脳梗塞を生じている患者さんはまともに歩けません。これを評価するためには「めまいで歩けない状態から改善する」必要がありますので、早期のめまい治療を実施しています。本症例はHead impulse testをするときには症状が大分改善していて、問題なく歩けました。何らかの末梢性めまいとして帰宅とし、症状が続くようであれば耳鼻科受診を勧めました。2回にわたってめまいの対処法を紹介しました。めまいは苦手意識が高い人が多く、MRIがないと不安になります。これらの内容が少しでも役に立てばと思います。 1)Muncie HL, et al. Am Fam Physician. 2017;95:154-162.2)林 寛之. Step Beyond Resident 3. 羊土社;2006.

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寄り道編(8)ハチ毒へのアンモニア【臨床力に差がつく 医薬トリビア】第57回

※当コーナーは、宮川泰宏先生の著書「臨床力に差がつく 薬学トリビア」の内容を株式会社じほうより許諾をいただき、一部抜粋・改変して掲載しております。今回は、月刊薬事61巻11号「臨床ですぐに使える薬学トリビア」の内容と併せて一部抜粋・改変し、紹介します。寄り道編(8)ハチ毒へのアンモニアQuestionハチに刺された時に、アンモニア水を塗れば解毒できる?

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押さえておきたい「合理的配慮」のポイント【実践!産業医のしごと】

押さえておきたい「合理的配慮」のポイント2016(平成28)年4月より、改正障害者雇用促進法が施行され、雇用分野における「合理的配慮」の提供が義務とされました。合理的配慮とは、障害のある人が障害のない人と同じように保障されるとともに、教育や就業、その他社会生活において平等に参加できるように周囲が配慮することを指します。現在、すでに法の施行から8年が経過していますが、合理的配慮は職場において十分に浸透したとはいえない状況にあります。合理的配慮への対応が不十分な職場がある一方で、合理的配慮の求めにどこまでも対応しようとして苦慮する職場もあるようです。産業医は合理的配慮に直接関わる立場ではないものの、仕事と人を適合させることが役割です。働く人の専門家の立場として意見を述べ、必要に応じて主治医との連携、職場や人事等も含めた、関係者間の調整的なハブの立場として関わることが求められています。今回は、合理的配慮について解説していきます。職場における合理的配慮は、仕事に支障となる障壁を解消する措置である合理的配慮の概念は米国の発祥で、障害を理由とする差別を禁止した連邦法である「障害を持つアメリカ人法(Americans with Disabilities Act:ADA)」の制定を機に広まります。法学者の長谷川 珠子氏によると、ADAにおける合理的配慮は、「障害」を持ち、かつ当該職務に対して「適格性」を有する人を適用(保護)の対象としています1)。「適格性」とは、合理的配慮があれば(あるいはなくとも)「職務の本質的機能」の遂行ができる人を指し、合理的配慮があっても「当該職務の本質的機能」を遂行できない人は、障害者であっても保護の対象とはならない、とされています。ジョブ型の雇用である米国らしい法律ともいえますが、合理的配慮とは、仕事をするために障壁となっている事柄に関して必要かつ適切な調整を行うこと、と捉えるのが基本です。日本で厚生労働省が制定した「合理的配慮指針」2)では、合理的配慮の説明として「障害者である労働者の有する能力の有効な発揮の支障となっている事情を改善するために事業主が講ずべき…(中略)…措置」と記載されています。基本的な考え方は米国と大きく変わらず、合理的配慮とは働くために必要な合理性がある配慮であり、障壁のために本来のパフォーマンスを発揮できない場合には調整を行う必要がある、という考え方です。実際にあった職場における合理的配慮の申し出合理的配慮の申し出があった場合に、企業はどのように合意を形成していくのが望ましいのでしょうか。下記は、私が担当する企業で、精神障害を持つ方から合理的配慮の申し出があったケースです。過集中の傾向があり、業務中に疲労がたまったときは、自由に休憩させてほしい。不安が高まるため、納期のない自分のペースでできる仕事を担当したい。過去のトラウマを思い出すため、仕事でミスをしても厳しく指導しないでほしい。合理的配慮を進める際に、カギとなるのは対話です。何が障壁となるかは、当事者である本人にしかわかりません。精神障害の場合、さらに個別性は高く、画一的な配慮はまったく意味をなさないこともあります。また、すべての要求に応じようとすると、職場に負担がかかり、公正性の観点からも問題が生じることがあります。結局のところ、必要なステップを踏みながら、関係者の間で建設的に対話をする以外の方法はありません。合意形成のステップ配慮する事柄を決めるための合意形成のステップを示します。以下の流れで進めていきます。1)当事者からの意思表明(申し出)2)希望や理由を聞き取りながら職場と本人で話し合いを行う3)過度な負担(設備、費用等)とならない範囲で対応を検討する4)職場で対応できる内容を本人に伝え、理由も説明する5)お互いに合意した配慮を実施する6)定期的にその内容や程度について見直し・改善をする対話を通じて、職場と当事者の理解を深め、双方に納得感がある合意が得られることが重要です。また配慮が困難な場合でも、対話を尽くし、代替案が取れないか等、互いに納得できるプロセスを経るように意識しましょう。先ほどの例で挙げたケースは対話の結果、以下の内容で合意を得ました。  合理的配慮の例画像を拡大する「合理的配慮」は記録に残して、定期的に見直す合理的配慮の内容に合意した際は、確認書として記録に残すことが重要です。その際に必要なのは以下の4点です。1)従業員側の希望する配慮とその理由2)企業側が実施できない配慮とその理由3)対話によって決定した合意的配慮の事柄4)本人および企業側の署名合理的配慮は、上司の異動や組織変更などがあっても継続するように留意します。また、環境や業務の変化によって必要とする配慮が変わることもあるため、定期的に見直すようにしましょう。合理的配慮が浸透している職場は、すべての人が働きやすい合理的配慮が浸透している職場は、障害の有無にかかわらず、すべての労働者にとって働きやすい職場であるはずです。働く人の障壁を排除することによって能力を発揮でき、仕事のパフォーマンスが向上します。合理的配慮とは個別性への対応であり、産業医はときに組織の潤滑油となり、労働者と企業側の間に立つ専門家としての機能が求められています。合理的配慮を理解し、安心して働ける職場を支援しましょう。参考文献・参考サイト1)アメリカにおける「合理的配慮」について/日本学術振興会 長谷川珠子 2)合理的配慮指針(平成27年厚生労働省告示第117号)/厚生労働省

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第228回 パワハラの訴えを撤回させようとまたパワハラ 札幌医大教授が今年2回目の懲戒処分で停職合計8ヵ月に

台風10号の大雨で北陸新幹線経由が注目こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。台風10号には皆さんほとほと参ったのではないでしょうか。大雨に見舞われた地域の方々だけではなく、出張や旅行などで“東海道”や“山陽道”を移動しようとする人も大変だったようです。飛行機や東海道新幹線が止まる中、関西方面から関東へは、まず福井の敦賀に出て、北陸新幹線経由で東京に向かう、というルートが注目されていました。JR西日本も北陸新幹線と特急列車サンダーバード(大阪から敦賀への特急列車)を増発するほどでした。これからも台風などによって似た気象状況は頻繁に起きそうです。皆さんもこの迂回ルート、頭の片隅に入れておくといいかもしれません。パワハラを断固として認めずあくまでも「必要な指導だった」と兵庫県知事断続的な雨が続いたこの週末、私はMLBのドジャース戦や、兵庫県の斎藤 元彦知事のパワハラの疑いなどを告発する文書をめぐって開かれた県議会調査特別委員会(百条委員会)のライブ中継を観るなどして時間を潰しました。証人尋問での斎藤知事の受け答えで感心したのは、「パワハラをしていた」を断固として認めないその意志の強さです。あくまでも「必要な指導だった」と無表情で言ってのける鉄面皮振りは、ホラー映画を観ているようでした。さらに、委員から「出張先で玄関の20メートルほど手前で公用車を降りて歩かされ、出迎えた職員らをどなり散らしたのは事実か」問われたのに対し、「歩かされたことを怒ったのではなく、円滑な車の進入経路を確保していなかったことを注意した」と説明していたのにも驚きました。それにしても、百条委員会の委員たち(各党の県議会議員)はちょっと追及が甘過ぎますね。誰も知事を追い詰め、しどろもどろにさせることができませんでした。各紙報道によれば、百条委員会終了後、報道陣から進退を問われた斎藤知事は「知事としての仕事を果たすのが私の責任」と続投の意思を改めて表明、「職員からの人望や信頼感が1ミリもないということはないと思っている。信頼関係を再構築する」と話したとのことです。信頼感が“ミリ単位”かつ、レームダック状態となりそうな斎藤知事で、今後の兵庫県政は大丈夫なのでしょうか。心配になります。札幌医科大パワハラ事件で2回目の懲戒処分ということで、今回は8月に各紙で報道された、札幌医科大学(札幌市)におけるパワハラ問題について書いてみたいと思います。札幌医科大は8月8日、今年5月に教員2人にパワハラなどをしたとして停職3ヵ月になった50代男性教授について、処分直前の4月、同教授が被害を訴えたと推測した相手に対して申し出を撤回するよう求めていたことがわかったとして、新たに停職5ヵ月の処分を行いました。停職期間は計8ヵ月となりました。さらに、この教授の処分軽減のために動いていた50歳代の准教授も停職 1ヵ月の処分を受けました。パワハラで就業環境を害したほか、アカハラも行い研究、教育環境を害したこの教授については、昨年に複数人からハラスメント被害の申し出があり、大学側は調査の結果その事実を認定し、今年5月29日に停職3ヵ月の処分を行ったばかりでした。このときの処分は、「所属する教員2名に対して、パワーハラスメントを行い、就業環境を害したほか、うち1名に対してはアカデミックハラスメントも行い、研究、教育環境を害した」(同大プレスリリースより)ことが理由でした。部下を呼び出し処分の撤回・軽減に向けた嘆願書作成に協力するよう強く要請今回のパワハラは、5月の処分が下る前、調査が進んでいる段階で起きていました。同大学が8月8日に出したプレスリリースの「職員の懲戒処分について」によれば、「4月、当該教授は、自らの懲戒処分を軽減するため、ハラスメントの申出人と類推した教室員に対し、ハラスメントの申出の有無を尋ねるなどの不利益な取扱いを行ったほか、ハラスメントの申出の撤回を求めるなどのパワー・ハラスメントを行った」とのことです。一方、准教授については、「現状の教室体制を維持するため、当該教室員に対し、ハラスメントに係る証言内容等を確認するなどの不利益な取扱いを行ったほか、当該教授の懲戒処分への反証の協力を求めるパワー・ハラスメントを行った」とのことです。端的に言えば、ハラスメントの申出人と思われる部下を呼び出し、申し出をしたかどうかを問い詰め、処分の撤回・軽減に向けた嘆願書の作成に協力するよう強く要請した、ということです。しかし、大学によれば、この「申し出人だと思われる部下」はハラスメントを訴え、認定された2人とは別の人物だったとのことです。教授と准教授は要請する相手を間違ってしまったようです。なお、8月9日付の東京読売新聞によれば、教授の代理人弁護士は同紙の取材に対し、「教授はパワハラをしておらず今回も事実誤認がある。処分内容も重すぎで、社会的相当性を逸脱した懲戒権の乱用だ」と話したとのことです。嘆願書作成への協力要請に応じず、一連のやり取りの証拠を大学に提出北海道の経済誌『財界さっぽろ』8月号(7月15日発行)は、「法廷闘争に発展も…札幌医科大学、名物教授パワハラ停職の波紋」と題する記事を掲載、事件の経緯をより詳細に報じています。同記事によれば、処分を受けた教授は「がん治療においては世界的エキスパート」で「全国ネットの人気テレビ番組でも取り上げられたこともある」X氏です。X氏のパワハラを大学に申し立てたのは同じ医局に所属する3人の医師で、計30件のパワハラの申し立てたとのことです。しかし、学内調査の結果、最終的にパワハラの被害者として認定されたのは2人、6ケースでした。「医者を辞めろ」と怒鳴りつけたり、新規患者の担当や手術を行わせないようにしたり、学位論文の作成を意図的に妨害したりしたことなどがパワハラと認定されました。今年5月の処分は、この2人に対するパワハラが認定された結果として下されたものでした。しかし、処分前、調査の過程では3人の申し立てが検討されていました。それを知ったX氏が准教授とともに、学内調査で最終的に認定されなかったもう1人の医師を呼び出し、処分の撤回や嘆願書作成に協力するよう求めたというのです。この医師はその要請に応じず、一連のやり取りの証拠を大学に提出、それが2回目の処分につながったというのが真相のようです。同記事によれば、「(5月の)処分発表後、X氏は弁護士を通じて、裁判所に停職撤回の仮処分命令を申し立てた。しかし、審査の結果この申し立ては却下された」とのことです。有名ドキュメンタリー番組に登場の医師X氏は、関西地方の私立医大を卒業後、国立大学医学部の医局に入局。複数病院の勤務などを経て、40代で札幌医大の教授に就任しました。手術支援ロボットを駆使した手術で脚光を浴び、NHKや民放の有名なドキュメンタリー番組などでロボット手術のエキスパートとして取り上げられたこともあります。つまり、X氏は札幌医大にとってはまさにスター医師だったわけです。ただ、『財界さっぽろ』の記事は、「目立つ教授だけに最新機材を自分の科にどんどん導入し、他科とのパワーバランスが崩れるようなもこともあったようです」、「外部の人間には人当たりが良いが、就任当初からハラスメント気質があったようです」といった関係者の言葉を紹介しています。何年にもわたるパワハラの積み重ねが、被害者たちの怒りに火を付けるこの連載でも、「第104回 パワハラ事件に大甘の医療界、旭川医大、大津市民の幕引きの背後に感じた“バーター”の存在」、「第154回 日本はパワハラ、セクハラ、性犯罪に鈍感、寛容すぎる?WHO葛西氏解任が日本に迫る意識改造とは?(前編)」、「第227回 東京女子医大第三者委員会報告書を読む(後編)『“マイクロマネジメント”』と評された岩本氏が招いた『どん底のどん底』より深い“底”」などで、医療界におけるパワハラについて書いてきました。共通するのは、パワハラを行う人間は、1回、2回のパワハラが問題になるのではなく、何年にもわたるパワハラの積み重ねが、被害者たちの怒りに火を付け、内部告発などにつながっているという点です。それはあたかも、コップにポツリ、ポツリと溜まった水がある時点で満杯となって溢れ出すかのようです。パワハラを行う人の多くは相手の気持ちを慮ることをしないので、限界を超えてしまったことに気付きません。結果、告発された時はすでに手遅れ、ということになります。「第154回」でも書きましたが、欧米先進国では、パワハラやセクハラについては表沙汰になった(訴えられた、告発された)段階でほぼアウト、というのが常識です。そもそも複数の人間から告発された段階で、仕事の能力以前にその人の人間性やリーダシップに疑問符が付けられてしまいます。そうした意味では、札幌医大の教授も、兵庫県知事も、人の上に立つ人間ということでは、法律以前の問題としてすでにアウトと言えるのかもしれません。

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高齢のCKD患者、タンパク質制限は本当に必要?

 軽度または中等度の慢性腎臓病(CKD)を有する高齢者におけるタンパク質摂取量と全死亡率を調査した結果、タンパク質摂取量が多いほど死亡リスクが低く、タンパク質摂取の利点が欠点を上回る可能性があることを、スウェーデン・カロリンスカ研究所のAdrian Carballo-Casla氏らが明らかにした。JAMA Network Open誌2024年8月1日号掲載の報告。 健康な高齢者では健康を維持するために一定のタンパク質を摂取することが推奨されているが、CKD患者ではCKDのステージ進行を抑制することを目的として、タンパク質摂取量を制限することが推奨されている。しかし、軽度または中等度のCKDを有する高齢者のタンパク質摂取を制限した場合の全般的な健康への影響については十分なエビデンスが得られていない。 そこで研究グループは、60歳以上の地域在住成人で構成されたスウェーデンおよびスペインの3つのコホート研究の縦断的データを統合し、国際腎臓病ガイドライン機構(KDIGO)の分類によるCKDステージ1~3の高齢者における総タンパク質、動物性タンパク質、植物性タンパク質の摂取量と10年全死亡率との関連性を推定し、その結果をCKDを有さない高齢者(対照群)の結果と比較した。参加者は2001年3月~2017年6月に募集され、最長で2024年1月まで追跡された。食事や死亡率に関する情報がない参加者、CKDステージが4または5の参加者、腎代替療法を受けている参加者、および腎移植を受けた参加者は除外された。 タンパク質摂取量は、食事歴および食物摂取頻度調査票により推定された。穀物、豆類、ナッツ類、その他の植物由来のタンパク質は植物性タンパク質とみなされ、乳製品、肉、卵、魚類、その他の動物由来のタンパク質は動物性タンパク質とみなされた。Cox比例ハザードモデルを用いて、タンパク質摂取量と死亡率の関連性についてハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を推定した。 主な結果は以下のとおり。●合計1万4,399例(CKD群:4,789例、対照群:9,610例)が解析に含まれた。CKD群は女性が2,726例(56.9%)、平均年齢が78.0(SD 7.2)歳であった。追跡期間中に、両群合わせて1,468例が死亡した。●CKD群では、総タンパク質摂取量が多いほど死亡リスクが低くなることが示された。 ・1.00g/kg/日vs.0.80g/kg/日のHR 0.88(95%CI:0.79~0.98) ・1.20g/kg/日vs.0.80g/kg/日のHR 0.79(95%CI:0.66~0.95) ・1.40g/kg/日vs.0.80g/kg/日のHR 0.73(95%CI:0.57~0.92) ・1.60g/kg/日vs.0.80g/kg/日のHR 0.67(95%CI:0.51~0.89)●CKD群の各タンパク質摂取量0.20g/kg/日増加当たりの死亡のHRは、総タンパク質、動物性タンパク質、植物性タンパク質で同等であった。 ・総タンパク質のHR 0.92(95%CI:0.86~0.98) ・動物性タンパク質のHR 0.88(95%CI:0.81~0.95) ・植物性タンパク質のHR 0.80(95%CI:0.65~0.98)●CKD群の総タンパク質摂取量0.20g/kg/日増加当たりの死亡のHRは、75歳未満でも75歳以上でも同等であった(相互作用のp=0.51)。 ・75歳未満のHR 0.94(95%CI:0.85~1.04) ・75歳以上のHR 0.91(95%CI:0.85~0.98)●総タンパク質摂取量と死亡率との逆相関は、対照群のほうがCKD群よりも大きかった(相互作用のp=0.02)。 ・CKD群のHR 0.92(95%CI:0.86~0.98) ・対照群のHR 0.85(95%CI:0.79~0.92) これらの結果より、研究グループは「高齢者を対象としたこのマルチコホート研究では、総タンパク質、動物性タンパク質、植物性タンパク質の摂取量が多いほど、CKD患者の死亡リスクが低いことが示された。CKDを有さない人では関連性がより強く、軽度または中等度のCKDを有する高齢者ではタンパク質摂取の利点が欠点を上回る可能性があることを示唆している」とまとめた。

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アトピー性皮膚炎へのデュピルマブ、5年有効性・安全性は?

 デュピルマブで治療を受けたアトピー性皮膚炎患者を最長5年追跡調査したコホート研究において、デュピルマブの臨床的有効性は維持された。一方で3分の2の患者は3週ごとまたは4週ごとの投与量に漸減し、23.8%の患者が治療を中止した。治療中止の主な理由は有害事象、無効であった。これまで日常診療でのアドピー性皮膚炎に対するデュピルマブの、長期の有効性と安全性に関するデータは限られていた。オランダ・ユトレヒト大学医療センターのCeleste M. Boesjes氏らが、JAMA Dermatology誌オンライン版2024年8月7日号で報告した。 研究グループは、日常診療で最長5年間治療を受けたアトピー性皮膚炎の小児、成人および高齢者における、デュピルマブ治療の臨床的有効性と治療中止の理由を評価する前向き多施設コホート研究を行った。 BioDayレジストリ(オランダの大学病院4施設とその他10施設で登録)を用いて、2017年10月~2022年12月にデュピルマブによる治療を受けたすべての年齢のアトピー性皮膚炎患者を特定し、研究対象とした。 臨床的有効性は、小児(18歳未満)、成人(18~64歳)、高齢者(65歳以上)で層別化を行い、Eczema Area and Severity Index(EASI)、Investigator Global Assessment(IGA)、そう痒Numeric Rating Scale(NRS)で評価した。さらに、TARC値、好酸球数などを評価。デュピルマブを中止した患者について、中止の理由を評価した。 主な結果は以下のとおり。・計1,286例のアトピー性皮膚炎患者(年齢中央値38歳[四分位範囲[IQR]:26~54]、男性726例[56.6%])がデュピルマブによる治療を受けた(小児130例、成人1,025例、高齢者131例)。・追跡期間中央値は87.5ヵ月(IQR:32.0~157.0)。・ほとんどの患者が最長5年の治療期間にわたりアトピー性皮膚炎のコントロールを維持しており、EASIが7以下の患者は78.6~92.3%、そう痒NRSが4以下の患者は72.2~88.2%であった。・全患者の最大70.5%の投与間隔が延長し、ほとんどが300mgの3週ごとまたは4週ごと投与となっていた。・治療開始5年後、EASIスコア平均値は2.7(95%信頼区間[CI]:1.2~4.2)、そう痒NRS平均値は3.5(2.7~4.3)であった。・EASI、IGAについて、観察期間を通じて年齢群間に統計学的有意差がみられたが、その差(52週時点でEASIは0.3~1.6、IGAは0.12~0.26)は非常に小さかった。そう痒NRSについては、統計学的有意差はみられなかった。・TARC中央値は、1,751pg/mL(95%CI:1,614~1,900)から治療開始6ヵ月で390pg/mL(368~413)へ大幅に低下し、低値を維持した。・好酸球数中央値は16週まで一時的に上昇したが、その後は経時的に統計学的有意な低下がみられた。・合計306例(23.8%)がデュピルマブを中止し、中止までの期間中央値は54.0週(IQR:29.0~110.0)であった。多く報告された中止の理由は、有害事象98例(7.6%)、無効85例(6.6%)であった。41例(3.2%)がデュピルマブ投与を再開し、これらの患者の大半で奏効が認められた。

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ペムブロリズマブ、非小細胞肺がん術前・術後補助療法に承認/MSD

 MSDは2024年8月28日、抗PD-1抗体ペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)について、非小細胞肺がん(NSCLC)における術前・術後補助療法の国内製造販売承認事項一部変更の承認を取得したと発表。 今回の承認は、臨床病期II、IIIAまたはIIIB(T3-4N2、UICC/AJCC 第8版)の周術期NSCLC患者797例(日本人82例を含む)を対象とした、国際共同第III相試験であるKEYNOTE-671試験の結果に基づいている。同試験において、ペムブロリズマブ・化学療法併用による術前療法とペムブロリズマブ術後療法の組み合わせは、化学療法による術前補助療法とプラセボの術後療法の組み合わせと比較して、全生存期間(OS)および無イベント生存期間(EFS)を有意に延長した(OS HR:0.72、95%信頼区間[CI]:0.56~0.93、p=0.00517、EFS HR:0.58、95%CI:0.46~0.72、p<0.001)1)。 安全性解析対象例396例中383例(96.7%)(日本人39例含む)に副作用が認められた。主な副作用(20%以上)は、悪心216例(54.5%)、好中球数減少169例(42.7%)、貧血143例(36.1%)、白血球数減少111例(28.0%)、疲労108例(27.3%)、便秘107例(27.0%)および食欲減退92例(23.2%)であった。

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日本の実臨床における統合失調症に対するアセナピンの治療継続予測因子

 統合失調症における薬物療法の継続率は、薬剤の種類や年齢、罹病期間などの患者関連因子により影響を受け、変動する。関西医科大学の嶽北 佳輝氏らは、特殊な製剤特性を有するアセナピン舌下錠における治療継続率の予測因子を明らかにするため、リアルワールドデータを用いた分析を行った。Annals of General Psychiatry誌2024年8月2日号の報告。 日本におけるアセナピンの市販後調査で収集した3,236件のリアルワールドデータを用いて、分析を行った。多変量ロジスティック回帰分析を用いて、主要アウトカムである薬物治療継続率に関連する患者関連因子を特定した後、さらに生存分析を用いて評価した。副次的アウトカムは、有害事象の発生とした。 主な結果は以下のとおり。・多変量ロジスティック回帰分析では、アセナピンの治療継続に対する有意な予測因子が特定された。・とくに、クロルプロマジン(CP)換算量が600mg/日超、罹病期間が25年以上であることなどが、患者関連因子に含まれた。・継続率は、全体で40.6%であったが、CP換算量が600mg/日超の場合は46.3%、罹病期間が25年以上の場合は47.9%であった。・注目すべきは、両方の因子を有する患者では、アセナピン継続率は52.5%と最も高かった。 著者らは「アセナピン舌下錠の治療継続を予測する患者関連因子は、他の抗精神病薬とは異なり、薬剤の特性により治療継続に関連する因子に違いがあることが示唆された。さまざまな抗精神病薬の治療継続に関連する予測因子を解明することは、統合失調症治療においてきわめて重要であり、患者個々の特性に合わせた治療介入の実現に役立つであろう」とまとめている。

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幻覚成分シロシビンの抑うつ作用を抗うつ薬と比較/BMJ

 抑うつ症状に対するサイケデリックス薬による介入のうち、高用量のシロシビンの投与を受けた患者は、抗うつ薬(エスシタロプラム)の試験においてプラセボを投与された患者と比較して、抑うつ症状の改善において良好な反応を示すものの効果量は小さいことが、台湾・義守大学のTien-Wei Hsu氏らの調査で示された。研究の詳細はBMJ誌2024年8月21日号に掲載された。5剤の経口単剤療法のベイズ流ネットワークメタ解析 研究グループは、抑うつ症状を有する患者において、4つのサイケデリックス薬またはエスシタロプラム(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)を用いた経口単剤療法の有効性と受容性を、盲検化の失敗による効果の過大評価の可能性を考慮して比較することを目的に、文献の系統的レビューとベイズ流ネットワークメタ解析を行った(台湾国家科学技術委員会[NSTC]の助成を受けた)。 2023年10月12日の時点で医学関連データベースに登録された文献を検索した。対象は、抑うつ症状を有する成人患者を対象としたサイケデリックス薬またはエスシタロプラムに関する無作為化対照比較試験とした。サイケデリックス薬は、3,4-メチレンジオキシメタンフェタミン(MDMA)、リゼルグ酸ジエチルアミド(LSD)、シロシビン、アヤワスカのいずれかで、抗うつ薬を併用しない経口単剤療法とした。 主要アウトカムは、17項目のハミルトンうつ病評価尺度(HAMD-17)で評価した抑うつ状態の変化であった。推定バイアスを回避するために、プラセボ反応をサイケデリックス薬と抗うつ薬の試験で区別した。プラセボ反応はサイケデリックス薬の試験で低い サイケデリックス薬の試験におけるプラセボ反応は、エスシタロプラムを用いた抗うつ薬の試験におけるプラセボ反応に比べて低かった(平均差:-3.90、95%信用区間[CrI]:-7.10~-0.96)。 サイケデリックス薬の試験の多くでは、プラセボに比べサイケデリックス薬で抑うつ症状の改善効果が高かったが、エスシタロプラムを用いた抗うつ薬の試験のプラセボと比較して効果が優れたのは高用量シロシビンのみだった(平均差:6.45、95%CrI:3.19~9.41)。 一方、参照群をサイケデリックス薬の試験のプラセボ反応から抗うつ薬の試験に変更すると、高用量シロシビンの効果量(標準化平均差)は「大きい(0.88)」から「小さい(0.31)」へ低下した。高用量シロシビンの効果は2つの用量の抗うつ薬より高い 高用量シロシビンの相対的な効果は、エスシタロプラム10mg(平均差:4.66、95%CrI:1.36~7.74、標準化平均差:0.22)および同20mg(4.69、1.64~7.54、0.24)のいずれよりも高かった。 プラセボに比べて、サイケデリックス薬やエスシタロプラムで投与中止や重度有害事象の頻度が高かった介入(高用量、低用量、超低用量など)はなかった。 著者は、「高用量シロシビンは、抑うつ症状の治療に有効である可能性があるが、本研究のデザインはサイケデリックス薬の有効性を過大評価していると考えられる」と述べるとともに、「高用量シロシビンの標準化平均差は、現在の抗うつ薬と同程度であり、効果量は小さいことが示唆される」としている。

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非スタチン系脂質低下薬も肝臓がんリスクを低下させる?

 スタチン系薬剤が肝臓がんリスクを低下させることは過去の研究で判明しているが、新たな研究で、少なくとも1つの非スタチン系脂質低下薬にも肝臓がんリスクを低下させる効果がある可能性が示唆された。米国立がん研究所のKatherine McGlynn氏らによるこの研究結果は、「Cancer」に7月29日掲載された。 McGlynn氏らは、英国のClinical Practice Research Datalink(CPRD)から抽出した、原発性肝臓がん患者3,719人と、これと年齢、性別、診療歴、CPRD参加歴に加えて、糖尿病または慢性肝疾患の有無を一致させた対照1万4,876人を対象に、非スタチン系脂質低下薬と肝臓がんリスクとの関連を検討した。対象とした非スタチン系脂質低下薬は、コレステロール吸収抑制薬、胆汁酸再吸収抑制薬、フィブラート系薬、ナイアシン、オメガ3脂肪酸であった。 その結果、コレステロール吸収抑制薬の使用歴は肝臓がんリスクの低下と有意に関連することが示された(オッズ比0.69、95%信頼区間0.50〜0.96)。コレステロール吸収抑制薬の使用時期で分けて検討したところ、過去の使用者では有意なリスク低下が認められたが(同0.52、0.33〜0.83)、現在の使用者でのリスク低下は有意ではなかった(同0.92、0.59〜1.42)。2型糖尿病や慢性肝疾患の有無に基づく解析でも同様の結果が得られた(2型糖尿病:同0.46、0.22〜0.97、慢性肝疾患:同0.53、0.30〜0.96)。また、予期された通り、スタチン系薬剤の使用歴も肝臓がんリスクの有意な低下と関連していた(同0.65、0.58〜0.74)。 その一方で、胆汁酸再吸収抑制薬については、全体的な解析では肝臓がんリスクの増加との関連が認められたが(同5.31、3.534〜7.97)、2型糖尿病と慢性肝疾患の有無に基づく解析では一貫した結果が得られなかった。また、フィブラート系薬、ナイアシン、オメガ3脂肪酸と肝臓がんリスクとの間に有意な関連は認められなかった。 McGlynn氏は、「非スタチン系脂質低下薬が肝臓がんリスクに及ぼす影響を検討した研究はほとんどないため、本研究結果が他の集団においても再現されるのかを確かめる必要がある。もし他の研究でも確認されれば、われわれが得た知見は、肝臓がん予防に関する研究で役立つ可能性がある」と「Cancer」誌のニュースリリースで述べている。

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肺炎の診断の半数以上は後に変更される

 肺炎の診断を誤る医師は少なくないようだ。肺炎の診断について、初期診断と退院時の診断が一致していないケースは半数以上に上ることが、200万件以上の入院データの解析から明らかになった。これは、肺炎症例の半数以上で、肺炎の初期診断が誤診であり最終的に別の病気の診断が下されたか、あるいは初期診断時に肺炎が見逃されていたかのどちらかであることを意味する。米ユタ・ヘルス大学のBarbara Jones氏らによるこの研究結果は、「Annals of Internal Medicine」に8月6日掲載された。Jones氏は、「肺炎は、明確に診断できる疾患のように見えるかもしれないが、実際には、肺炎に似た他の病気と混同されて診断されているケースがかなりの割合を占める」と述べている。 今回の研究では、全米118カ所の退役軍人(VA)医療センターの238万3,899件の医療記録を用いて、救急外来(ED)から入院した患者の間で肺炎の初期診断と退院時の診断、および放射線学的診断が一致するかどうかを人工知能(AI)に解析させた。また、臨床メモに記された診断の不確実性や患者の疾患の重症度、治療内容、および転帰についても比較した。 その結果、全体の13.3%が初期診断または退院時に肺炎と診断され、肺炎の治療を受けていたことが明らかになった。このうち、9.1%は初期診断で肺炎、10.0%は退院時に肺炎と診断されていた。初期診断と退院時の診断の不一致度は57%に上った。また、初期の胸部画像で肺炎の兆候が認められ、退院時に肺炎と診断された患者のうち、33%は初期診断で肺炎と診断されていなかった。一方、肺炎の初期診断を受けた患者のうち、36%は退院時に肺炎と診断されておらず、21%は初期の胸部画像で肺炎の兆候が確認されていなかった。 臨床メモには、診断に対する不確実性に関する言及が随所で見られ、EDの診療メモでは58%、退院時の診療メモでは48%で不確実性について言及されていた。治療として、27%の患者が利尿薬、36%がコルチコステロイド、10%が抗菌薬、コルチコステロイド、および利尿薬を入院後24時間以内に投与されていた。さらに、初期診断と退院時の診断が一致していなかった患者では、臨床メモの中に不確実性に関する言及が多く見られ、追加の治療を受けることも多かったが、他の患者と比べて病状が特に悪化していたわけではなかった。初期診断と退院時の診断が一致した患者に比べて、診断が不一致だった患者のうち、初期診断で肺炎が見過ごされていた患者でのみ、30日死亡率が有意に上昇していた(10.6%対14.4%)。 こうした結果を受けてJones氏は、「医師も患者も、肺炎は診断が難しい疾患であることを肝に銘じ、柔軟に治療を進めるべきだ」と述べている。同氏はさらに、「患者も臨床医も回復に注意を払い、治療を施しても症状が軽快しない場合には、肺炎という診断に疑問を持つ必要がある」とユタ・ヘルス大学のニュースリリースで述べている。

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マイコプラズマ肺炎ってどんな病気?

マイコプラズマ肺炎ってどんな病気?• マイコプラズマ肺炎は、「肺炎マイコプラズマ」という細菌に感染することによって起こります• 14歳以下で多く報告されていますが、大人もかかることがあります• 感染後2~3週間の潜伏期間があり、発熱や倦怠感(だるさ)、頭痛、咳などの症状がみられます(咳は少し遅れて始まることもあります)• 咳は熱が下がった後も長期にわたって(3~4週間)続くのが特徴です• 多くの場合は気管支炎ですみ、軽い症状が続きますが、一部の人は肺炎になったり重症化することもあるので、注意が必要です治療法は?•他の人にうつさないようにするには?抗菌薬により治療します※ただし、大人で肺炎を伴わない気管支炎であれば、抗菌薬治療は行わないことが推奨されています•咳が長引くなどの症状があるときは、医療機関で診察を受けましょう出典:厚生労働省「マイコプラズマ肺炎」•感染した人の咳のしぶき(飛沫)を吸い込んだり、身近で接触したりすることにより感染します•流水と石けんによる手洗いが大切です•タオルの共用はしないようにしましょう•咳の症状がある場合には、マスクを着用するなど咳エチケットを心がけましょうCopyright © 2024 CareNet,Inc. All rights reserved.

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英語で「1日にタバコを何本吸いますか」は?【1分★医療英語】第146回

第146回 英語で「1日にタバコを何本吸いますか」は?《例文1》Do you use any tobacco products?(何かタバコ製品を使用していますか?)《例文2》Are you interested in quitting smoking?(禁煙に興味がありますか?)《解説》英語での「タバコ」。日本語同様に“tobacco”と言いたくなるかもしれませんが、“tobacco”はタバコの原料の葉そのものを指すことが一般的で、多くの人が使用している「紙で巻かれたタバコ製品」を指す単語は“cigarette”です。発音は「スィガレット」のような感じです。「タバコを吸いますか?」は“Do you smoke cigarettes?”といい、問診でよく使うフレーズです。また、“tobacco products”は、葉巻や自分で作る紙巻きタバコ、電子タバコなどを広く含む意味で使われることが多く、タバコ製品の使用について広く聞きたい場合は、“Do you use any tobacco products, such as e-cigarettes?”(電子タバコのようなタバコ製品を何か使用していますか?)という聞き方も有効です。なお、禁煙は「やめる」を意味する“quit”という単語を用いて、“quit smoking”といいます。講師紹介

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貧血改善も期待できる骨髄線維症薬「オムジャラ錠100mg/150mg/200mg」【最新!DI情報】第22回

貧血改善も期待できる骨髄線維症薬「オムジャラ錠100mg/150mg/200mg」今回は、ヤヌスキナーゼ(JAK)/アクチビンA受容体1型(ACVR1)阻害薬「モメロチニブ塩酸塩水和物(商品名:オムジャラ錠100mg/150mg/200mg、製造販売元:グラクソ・スミスクライン)」を紹介します。本剤は約10年ぶりの骨髄線維症の新薬であり、抗腫瘍効果だけでなく、貧血改善効果も示すことが期待されています。<効能・効果>骨髄線維症の適応で、2024年6月24日に製造販売承認を取得し、同年8月15日より発売されています。<用法・用量>通常、成人にはモメロチニブとして200mgを1日1回経口投与します。なお、患者の状態により適宜減量します。<安全性>重大な副作用として、感染症(2.3%)、骨髄抑制(血小板減少症[18.3%]、貧血[5.8%]、好中球減少症[4.7%]など)、肝機能障害(6.4%)、間質性肺疾患(頻度不明)があります。その他の副作用として、悪心(10%以上)、ビタミンB1欠乏、頭痛、浮動性めまい、錯感覚、末梢性ニューロパチー、回転性めまい、霧視、低血圧、潮紅、咳嗽、下痢、腹痛、嘔吐、便秘、四肢痛、関節痛、疲労、無力症(いずれも1%以上~10%未満)、失神、血腫、発熱、挫傷(いずれも1%未満)があります。<患者さんへの指導例>1.この薬は、骨髄線維症にかかわるタンパク質(JAK)の働きを選択的に阻害することにより、脾臓の腫れ(脾腫)を縮小します。また、骨髄線維症に伴う貧血にかかわるタンパク質(ACVR1)の働きを選択的に阻害することにより、血液中の鉄分を増やして造血を促します。2.体の抵抗力が弱まり、感染症(発熱、寒気、体がだるいなど)にかかりやすくなることがあります。人ごみを避けるなど、感染症にかからないように気をつけてください。3.帯状疱疹が現れることがあります。初期症状が現れた場合は、ただちに医師に連絡してください。4.妊婦または妊娠している可能性がある人は医師に相談してください。5.セント・ジョーンズ・ワートを含有する食品は、この薬の効果を下げる可能性があるので、控えてください。<ここがポイント!>骨髄線維症(MF)は、骨髄に広範な線維化を来す疾患の総称であり、脾臓の腫れ、貧血および血小板減少症を含む血液細胞の産生異常、サイトカインの過剰産生による全身性炎症がみられる血液がんです。MFの罹患期間中に高度な貧血や血小板減少が生じると、輸血を含む追加の支持療法が必要となり、輸血依存の患者の予後は悪く、生存期間が短縮されることが示されています。モメロチニブは日本における約10年ぶりとなるMF治療の新薬です。ヤヌスキナーゼ(JAK)1およびJAK2阻害による腫瘍増殖抑制作用に加え、アクチビンA受容体1型(ACVR1)阻害による造血作用を有しています。既存薬であるルキソリチニブ(商品名:ジャカビ錠)では骨髄抑制による貧血が高頻度で認められますが、モメロチニブはACVR1阻害作用により、MF治療の重要な課題である貧血に対する効果も期待できます。JAK阻害薬による治療歴のないMF患者を対象とした国際共同第III相試験(SIMPLIFY-1試験)において、24週時の脾臓容積がベースラインから35%以上縮小した患者の割合(SRR)は、モメロチニブ群で26.5%、ルキソリチニブ群で29.5%、非劣性の群間差は9%(95%信頼区間[CI]:2~16、p=0.014)であり、両側95%CIの下限が0を上回ったため、ルキソリチニブに対する非劣性を示しました。日本人集団では、24週時のSRRはモメロチニブ群で50.0%、ルキソリチニブ群で44.4%でした。一方、24週時の輸血非依存割合では、モメロチニブ群で66.5%、ルキソリチニブ群で49.3%、割合の群間差は18%(95%CI:9~26、p<0.001:名目上のp値)でした。

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芍薬甘草湯が効かないこむら返り【漢方カンファレンス】第8回

芍薬甘草湯が効かないこむら返り以下の症例で考えられる処方をお答えください。(経過の項の「???」にあてはまる漢方薬を考えてみましょう)【今回の症例】70代男性主訴こむら返り、大腿の筋肉痛既往高血圧、糖尿病で内服治療生活歴喫煙(-)、飲酒(+)、散歩と体操を毎日行っている。病歴数年前から夜間を中心にこむら返りがある。ほぼ毎晩、寝返りを契機に両下腿に起こる。前医で芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)の処方を受けたが無効。普段から腰痛や大腿の筋肉痛がある。X年6月に受診した。現症身長159cm、体重61kg(BMI 24kg/m2)。体温36.2℃、血圧142/96mmHg、脈拍70回/分 整、呼吸数20回/分。身体所見では大腿神経進展テストで両側大腿四頭筋の短縮を認めた。経過初診時「???」3包 分3を処方。(解答は本ページ下部をチェック!)2週間後こむら返りの回数が減った。1ヵ月後こむら返りがなくなった。4ヵ月後大腿の筋肉痛が軽減して、以前よりよく歩けるようになった。問診・診察漢方医は以下に示す漢方診療のポイントに基づいて、今回の症例を以下のように考えます。【漢方診療のポイント】(1)病態は寒が主体(陰証)か、熱が主体(陽証)か?(冷えがあるか、温まると症状は改善するか、倦怠感は強いか、など)(2)虚実はどうか(症状の程度、脈・腹の力)(3)気血水の異常を考える(4)主症状や病名などのキーワードを手掛かりに絞り込む【問診】寒がりですか? 暑がりですか?体の冷えを自覚しますか?のぼせはありませんか?暑がりで冷えはありません。のぼせることはありませんが、赤ら顔だとよくいわれます。こむら返りはいつ起こりやすいですか?夜間や明け方に多いです。どんな日に多いですか?寒い日や雨天に多くないですか?天候は関係ありません。よく運動した日に多いです。入浴では長くお湯に浸かるのが好きですか?冷房は好きですか?入浴は短いほうです。冷房は好きです。飲み物は温かい物と冷たい物のどちらを好みますか?のどは渇きませんか?1日どれくらい飲み物を摂っていますか?温かい物、冷たい物どちらも飲みます。のどは渇きません。飲水は1日1.0L程度です。<ほかの随伴症状を確認>疲れやすいですか?横になりたいほどの倦怠感はありますか?倦怠感はなく、毎日散歩をしています。食欲はありますか?食欲はあります。尿は1日に何回出ますか?夜間尿はありますか?便秘・下痢はありませんか?尿は6~7回で、夜間尿は1回くらいです。便はほぼ毎日出ます。抜け毛が多くないですか?皮膚が乾燥しやすいですか?目が疲れやすくないですか?足はむくみやすいですか?抜け毛は多くありません。乾燥肌です。目はすぐに疲れます。足のむくみはありません。ほかに困っている症状はありますか?足の筋肉、とくに太ももがいつもこわばっているような感じで痛みがあります。また、腰痛があります。【診察】顔色はやや赤ら顔。脈診では浮沈間、強弱中間であった。また、舌は暗赤色、舌下静脈の怒張があり、乾燥した白色の舌苔が、軽度付着していた。腹診では腹力は中等度、腹直筋の緊張を認めた。触診では四肢に明らかな冷えはなく、皮膚は乾燥傾向であった。カンファレンスこむら返りには芍薬甘草湯が有名ですね。しかし今回の症例では芍薬甘草湯が無効です…。そういう場面でこそ漢方医の腕の見せどころだね!芍薬甘草湯の服用方法が気になります。まれに芍薬甘草湯が3包 分3で処方されていることをみかけます。芍薬甘草湯は甘草(かんぞう)が多く含まれる(3包中6.0g)ことから、偽アルドステロン症のリスクが高いですね。副作用の恐れから芍薬甘草湯の使用は1包 分1で頓服にとどめておくのが無難です。たしかに自分の診療でも「よく効いたので芍薬甘草湯が欲しい」と希望されることが多いのですが、偽アルドステロン症のリスクが気になってしまいます。そのようなケースではほかの漢方薬を予防薬として用いて芍薬甘草湯の使用量が減らせるとよいね。こむら返りは現代医学的には有痛性の筋けいれんですが、漢方ではどのように考えたらよいか、漢方診療のポイントの順にみていきましょう。問診では、暑がり、長風呂はしない、冷たい飲み物を好む、強い倦怠感はないなどから、「陽証」です。陰証を示唆する所見は乏しいため、陽証でよいですね。六病位ではどうでしょう?太陽病(悪寒・発熱など。第4回「今回のポイント」の項参照)や陽明病(腹満・便秘など)を示唆する所見はないので少陽病(第6回「今回のポイント」の項参照)です。いいですね!慢性疾患で明らかな冷えがなければ少陽病といわれます。では虚実はどうですか?脈の反発力は中等度、腹力も中等度であることから「虚実間」です。気血水の異常はどうでしょう?浮腫はなくて、雨天で悪化することもないので、水毒は目立ちません。血に関しては、男性なので月経は関係ないし…。本症例からは元気な高齢者のイメージが浮かびますね。先生の言うように水毒はなさそうです。瘀血に関しては、男性の場合、舌下静脈の怒張、歯肉の暗赤、臍周囲の圧痛などで判断します。また、痔の既往をたずねることも有用です。本症例では舌色が暗赤色で舌下静脈の怒張もあるので、瘀血はあると考えてよいでしょう。漢方ではこむら返りを、筋の働きが弱くなって起こると考えて、生体内の赤い液体「血」が量的に不足した病態(血虚)で起こるとまず考えるよ(血虚については本ページ下部の「今回のポイント」の項参照)。芍薬甘草湯も血虚を改善する漢方薬に分類されることもあるんだ。ほかの血虚の症状をたずねるために皮膚の乾燥、脱毛、目の疲れを問診で確認しているのですね! 本症例では、こむら返り以外にも皮膚の乾燥や目が疲れやすいといった症状があります。そうですね。本症例では陰陽は陽証、気血水では血虚や瘀血が主体の病態といえますね。本症例をまとめましょう。【漢方診療のポイント】(1)病態は寒が主体(陰証)か、熱が主体(陽証)か?暑がり、長風呂できない、倦怠感なし、冷房、冷たい飲み物を好む脈:浮沈間→少陽病(2)虚実はどうか脈:強弱中間、腹力:中等度→虚実間(3)気血水の異常を考える舌の暗赤色、舌下静脈の怒張→瘀血こむら返り、皮膚が乾燥、目が疲れる→血虚(4)主症状や病名などのキーワードを手掛かりに絞り込む大腿のこわばりと筋肉痛、腰痛解答・解説【解答】本症例は、血虚で痛みを伴う場合に用いる疎経活血湯(そけいかっけつとう)で治療しました。【解説】血虚に対する基本処方は四物湯(しもつとう)です。四物湯は、当帰(とうき)、川芎(せんきゅう)、芍薬(しゃくやく)、地黄(じおう)で構成されます。こむら返りを含む血虚の症状に対して、四物湯そのもので治療することもありますが、四物湯を含む漢方薬をその他の症状、徴候に応じて使い分けます。疎経活血湯は四物湯の4つの生薬に加えて駆瘀血作用、利水作用、鎮痛作用のある生薬が加わった構成です。疎経活血湯は、足腰が痛いとか筋肉痛があるときに用います。痛みは左優位であることが多く、疎経活血湯の典型例では、診察時に左右の肋骨や大腿を押すと、左側の方が痛いといいます。また、痩せ気味、赤ら顔といった特徴があるとされます。腰痛、坐骨神経痛、変形性膝関節症などの慢性の痛みを生じる疾患に対して用いる漢方薬です。さらに、当科では芍薬甘草湯が無効のこむら返りに対する疎経活血湯の有用性を報告1,2)しており、こむら返りの予防薬として用いることもあります。登山で考えると、芍薬甘草湯は即効性があるため、山登り中にこむら返りが起こったら芍薬甘草湯、山登り前の予防薬として疎経活血湯といった感じで活用するとよいですね。今回のポイント「血虚」の解説漢方では生体内を循環する赤い液体を「血」といい、血液およびその働きを含めた概念と考えます。血は生体の物質的側面を支えるとされています。血が量的に不足した病態が「血虚」です。血虚では、こむら返りのほか、皮膚の乾燥、赤ぎれ、眼精疲労、集中力の低下、脱毛が多い、爪が割れやすい、過少月経などの症状が出現します。また血虚の原因として、成長に見合った血の生成ができない、消耗性疾患や出血で血の消費が増大する、薬剤、放射線などにより血の生成が障害されるなどがあげられます。よい例として、悪性腫瘍における化学・放射線治療中の状態があがります。脱毛、皮膚の枯燥、爪が割れる、しびれ感などが出現することが多く、腫瘍自体とその治療により消耗して血虚に陥りやすいと考えることができます。また血虚は、血の流通障害である瘀血と合併することも多く、瘀血と血虚の治療が同時に必要な場合もあります。参考文献1)田原英一ほか. 日東医誌. 2011;62:660-663.2)土倉潤一郎ほか. 日東医誌. 2017;68:40-46.

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第230回 肥満症治療薬セマグルチドでコロナ死亡が減少

肥満症治療薬セマグルチドでコロナ死亡が減少ノボ ノルディスク ファーマの肥満症治療薬のGLP-1受容体作動薬セマグルチド2.4mg皮下注(商品名:ウゴービ)と新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染症(COVID-19)による死亡率低下との関連が第III相SELECT試験の長期経過解析で示されました1)。SELECT試験の被験者の割り振りは、COVID-19流行開始前の2018年10月に始まって2021年3月まで続き、被験者の受診は2023年6月29日に完了しました。すなわち同試験の期間はCOVID-19流行の最悪期である2020年3月~2022年3月の約2年間をすっかり含みます。SELECT試験には、太っていて(BMIが27以上)心血管疾患の既往があるものの糖尿病ではない45歳以上の1万7,604例が参加しました。それら被験者の選択基準は図らずも後に判明するCOVID-19重症化リスクが高い集団の特徴とかぶるものでした。よってSELECT試験のデータは、COVID-19重症化リスクが高い人のSARS-CoV-2感染後の経過がセマグルチドでどう変わるかを調べるのに好都合です。そこでハーバード大学関連のブリガム・アンド・ウィメンズ病院の研究者らはSELECT試験の被験者の半数の経過が3.3年間に達した時点までのデータを解析し、COVID-19の経過にセマグルチド投与がどう影響したかなどを検討しました。昨年の11月にNEJM誌にすでに報告されているとおり、心血管が原因の死亡率(心血管死亡率)はセマグルチド投与群のほうがプラセボ投与群に比べて低かったものの、p値は0.05を超える0.07で有意ではありませんでした2,3)。それゆえ他の副次転帰の検定はなされませんでしたが、あらゆる死亡の発生率(全死亡率)はセマグルチド投与群のほうが19%低く、そのハザード比0.81の95%信頼区間は有望なことに1未満に収まる0.71~0.93でした。そしてCOVID-19死亡率も全死亡率と同様にセマグルチド投与群のほうが低いことが今回の解析で示されました。セマグルチド投与患者はプラセボ群と同程度にSARS-CoV-2に感染しました。しかしSARS-CoV-2感染したセマグルチド投与患者のほうがSARS-CoV-2感染したプラセボ投与患者に比べてCOVID-19死亡をより免れており、その発生率はセマグルチド投与群のほうがプラセボ群より34%低くて済んでいました。また、SARS-CoV-2感染者の深刻なCOVID-19関連有害事象の発生率もセマグルチド投与群のほうがプラセボ群に比べて低いことが示されました(それぞれ2.6%と3.1%、p=0.04)。感染症による死亡率もセマグルチド投与群のほうがプラセボ群に比べて低くて済んでいました。それらの効果のメカニズムは不明です。体重の大幅な減少と重度のCOVID-19合併症が少なくて済むことの関連が肥満手術患者の観察試験で示されていることなどから察するに、セマグルチドの感染症死亡予防は体重減少のおかげらしいと著者は言っています1)。いずれにせよさらなる試験での検証が必要です。また、他の同種の薬の試験で新たな発見を得られそうです4)。参考1)Scirica BM, et al. J Am Coll Cardiol. 2024 Aug 27. [Epub ahead of print] 2)Lincoff AM, et al. N Engl J Med. 2023;389:2221-2232.3)Novo Nordisk A/S: Semaglutide 2.4 mg (Wegovy) cardiovascular outcomes data presented at American Heart Association Scientific Sessions and simultaneously published in New England Journal of Medicine. 4)Brigham-led study finds weight loss drug semaglutide reduced COVID-19 related deaths during the pandemic / Eurekalert

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非専門医も知っておきたい鼠径部ヘルニア治療~ガイドライン改訂

 外科医にとっての登竜門とも言えるが、奥も深いとされるヘルニア手術。その診療指針である『鼠径部ヘルニア診療ガイドライン2024 第2版』が5月に発刊された。治療は外科手術が中心となるものの、鼠径部ヘルニアは日常診療で遭遇しやすい疾患の1つであるため、非専門医も治療動向については知っておきたい領域だろう。そこで今回、ガイドライン作成検討委員会委員長を務めた井谷 史嗣氏(広島市民病院 外科上席主任部長)にガイドライン(GL)の改訂点や非専門医も知っておきたい内容について話を聞いた。 本GLは、大腿ヘルニアを含む鼠径部ヘルニアと小児分野を広くカバーした初版(2015年版)の特徴を継承しつつ全面改訂されたもので、井谷氏は「Mindsの作成マニュアル基準に則りメタアナリシスを行いエビデンスレベルの高いものを作成した」と説明、本GLの特徴として以下の3つを挙げた。<今回の主な改訂点>(1)鼠径部切開法に関して、ヨーロッパヘルニア学会(EHS)のGLにまとめられていないMesh plug法やKugel法などにも言及(CQ7-1~3、p.30~35)(2)CQとしてはデータが不足するも、臨床上、重要な課題と考えられるものをコラムとして掲載(CQ1-1~2-1、p.16~18ほか)(3)初版では初回Lichtenstein法において軽量メッシュが推奨されていたが、今回はどちらか一方を強く推奨することはできないと記載(CQ12-1、p.45)成人鼠径ヘルニア発症における危険因子 鼠径部ヘルニアの発症因子について、本GLのClinical Question(CQ)1-1『成人鼠径ヘルニア発症における危険因子は何か?』(p.16)によると、明確なエビデンスはなく推奨の方向性やエビデンスの確実性は明示していないが、男性、高齢、白人、鼠径ヘルニアの家族歴が挙げられている。また、既往歴としてはヘルニアの病歴、食道裂孔ヘルニア、慢性咳嗽、慢性閉塞性肺疾患、前立腺全摘除術、前立腺肥大症などの下部尿路機能障害、腹膜透析などが、生活歴としては、肉体労働の量、飲酒歴、喫煙歴が報告されている。 同様に成人大腿ヘルニア発症の危険因子について、教科書的には高齢でやせ型、多産の女性に多いと記されているが、指示する明確なエビデンスがないとしている(CQ2-1、p.18)。リスクと隣り合わせ、鼠径部ヘルニア術 鼠径部ヘルニアの治療は今も外科的手術が一般的であり、リスクが少ない患者であれば高齢者でも同意の下で実施する。一方、無症候性の場合には手術および経過観察の双方が許容される(CQ5-1、p.26)。鼠径部ヘルニアの発症ピークは小児あるいは70代以降であるが、「腹筋を使うようなスポーツをする人、仕事で重い荷物を扱う人では発症しやすく注意が必要。また、無症候であってもトイレの際に気張りにくい場合などには手術が考慮される」とコメントした。 鼠径部ヘルニア、大腿ヘルニア共に術式は鼠径部切開法か腹腔鏡手術を選択するが、現在の腹腔鏡手術の普及率は2021年のNational Clinical Database (NCD)1)よると6割に上る。それぞれの推奨度についてはCQ7-1~CQ9-1(p.30~40)を参照されたい。一方、鼠径部ヘルニア手術の課題として、同氏は「本治療は外科手術の基本であるものの、良性疾患であるがゆえに再発した際の言い訳がきかず、術後に神経損傷などによる慢性疼痛を発症した場合には医療訴訟にもなりかねない。現在は内視鏡手術が普及してきたので鼠径部解剖がよりわかりやすくなったが、単純ではないため手術は非常に奥が深いものと言える。にもかかわらず、急患が来院した場合にはヘルニア専門外の医師の対応も必要となる分野」と、専門を問わず知識を持っておく必要性について言及し、「若手・非専門医にも鼠径部ヘルニアに興味を持ってもらい、一定レベルに達する教育・指導を普及させていきたい。まずは外科医の皆さまには本GLのCQすべてに目を通してもらいたい」とコメントした。 現在、日本ヘルニア学会は鼠径部ヘルニア診療に関する研究、教育および診療の向上を目的として、鼠径部ヘルニア修得医認定制度の整備を進めており、本年は11月30日まで応募を受け付けている。脱腸ベルトは使っていい?その効果は? 鼠径部ヘルニアはちまたでは“脱腸”と表現され、新聞広告などで「脱腸ベルト(ヘルニアバンド)」なるものが販売されているため、これに関する問い合わせを受ける医師もいるのではないだろうか。GLではこれについて言及していないが、同氏は「治療目的としての効果は得られない。しかし、手術までの待機期間(1~2ヵ月)に痛みを軽減する目的での利用は問題ない」と述べ、「みやざき外科・ヘルニアクリニックの宮崎 恭介氏によると、自己判断で購入し長年使っている方がいるのが実情で、そのような方から問い合わせがあるという。脱腸ベルトを長年使用している方には圧迫による瘢痕組織ができるため、初発ヘルニアでも再発ヘルニアのような癒着があり、手術がしづらくなるため推奨はせず、 “脱腸ベルトを使ってもヘルニアは治りません。治すためには手術しかありません”と説明されている」とのコメントであった。 最後に同氏は「今後、本GLは英文化を検討しているが、内容は外科医を対象としたCQに偏っている。外科医以外の医師の参考にもなるような鼠径部ヘルニアの総論的な視点を含むCQも必要といった声が寄せられているので、これを今後の課題としていく」と締めくくった。

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