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IGTからの糖尿病発症を4年防げば長期予後が改善する

 耐糖能異常(IGT)該当者が食事・運動療法によって糖尿病未発症の状態を4年間維持できれば、長期予後が改善することを示すデータが報告された。ただし、未発症期間が4年よりも短い場合、この効果は得られないという。中国医学科学院・北京協和医学院(中国)のXin Qian氏らの研究によるもので、詳細は「PLOS Medicine」に7月9日掲載された。 IGTなどの糖尿病予備群の状態から生活習慣を改善し糖尿病発症を防ぐことで、将来の合併症リスクが低下することは、既に複数の研究によって示されている。しかし、糖尿病発症を何年先延ばしにすればそのような効果を期待できるのかは、これまで明らかにされていない。そこでQian氏らは、中国・大慶市(Da Qing)在住のIGT該当者に対する6年間の食事・運動介入による糖尿病抑制効果を検討した「大慶糖尿病予防研究(DQDPS)」のデータを事後解析し、この点を検討した。 解析対象は、75gブドウ糖負荷試験によりIGTと判定されていた540人。これらDQDPS参加者は、食事療法群、運動療法群、食事療法と運動療法の併用群、および、どちらの介入も行わない対照群に割り付けられた。耐糖能は2年ごとに評価され、2年目に糖尿病と診断された人は13.0%、4年目では33.0%、6年目では48.9%だった。今回の研究ではDQDPS終了から30年間追跡し、死亡、心血管イベント、細小血管症というエンドポイントの発生で長期予後を比較した。 結果に影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、喫煙、BMI、血圧、血清脂質、血糖値、DQDPSにおける介入の割り付け、および降圧薬、脂質改善薬、血糖降下薬の処方)を調整後の解析で、IGTから糖尿病の発症までの期間が4年以上であった場合には、長期予後が良好であることが明らかになった。 例えば、4年目に糖尿病を発症していなかった人は発症していた人に比べて、全死亡のハザード比(HR)が0.74(95%信頼区間0.57~0.97)であり、心血管イベントはHR0.63、細小血管症はHR0.62であって、いずれも有意なリスク低下が観察された。心血管死リスクについては、4年目の糖尿病の有無では有意差がなかったが(HR0.84〔同0.58~1.22〕)、6年目にも糖尿病未発症だった人は有意に低リスクであった(HR0.56〔同0.39~0.81〕)。一方、2年目の糖尿病の有無での比較では、いずれのエンドポイントの発生率も、有意差が見られなかった。 この結果から著者らは、「IGTの人は糖尿病の発症を先延ばしするほど、長期的な健康状態が良くなることが示唆される。IGTから糖尿病の発症、および糖尿病関連の血管合併症を抑制するために、効果的な介入を検討すべきだ」と述べている。

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脳梗塞入院時の口腔状態が3カ月後の生活自立度と有意に関連

 脳梗塞で入院した時点の歯や歯肉、舌などの口腔状態が良くないほど、入院中に肺炎を発症したり、退院後に自立した生活が妨げられたりしやすいことを示すデータが報告された。広島大学大学院医系科学研究科脳神経内科学の江藤太氏、祢津智久氏らが、同大学病院の患者を対象に行った研究の結果であり、詳細は「Clinical Oral Investigations」に7月19日掲載された。 全身性疾患の予防や治療における口腔衛生の重要性に関するエビデンスが蓄積され、急性期病院の多くで入院中に口腔ケアが行われるようになってきた。ただし、脳梗塞発症時点の口腔状態と機能的転帰や院内肺炎リスクとの関連については不明点が残されていることから、祢津氏らはこれらの点について詳細な検討を行った。 2017年7月~2023年8月に脳梗塞急性期治療のため同院へ入院し、データ欠落がなく発症前の生活が自立していた(修正ランキンスケール〔mRS〕2点以下)連続247人を解析対象とした。口腔状態は、歯や歯肉だけでなく、舌や口唇、口内粘膜の状態、および含漱(うがい)ができるか否かなどの8項目を評価する指標(modified oral assessment grade;mOAG)で判定した。mOAGは同院の西裕美氏らが独自に開発した口腔衛生状態を表す指標で、0~24点の範囲にスコア化され、スコアが高いことは口腔状態の不良を意味する。 入院3カ月後のmRSの評価で、137人(55.5%)が転帰良好(スコア上限が2点〔仕事や活動に制限はあるが日常生活は自立している〕)、110人(44.5%)が転帰不良(スコア下限が3点〔食事やトイレなどは介助不要だが外出時には介助を要する〕)と判定された。入院時の口腔状態は、転帰良好群がmOAGスコアの中央値6点(四分位範囲5~7)、転帰不良群が11点(同10~14)で、後者が有意に高値(不良)だった(P<0.001)。 交絡因子(年齢、性別、BMI、喫煙・飲酒習慣、脳卒中の既往、併存疾患、入院前mRSスコア、神経学的重症度〔NIHSSスコア〕、発症から入院までの期間など)を調整した多変量解析の結果、入院時のmOAGスコアが予後不良に独立した関連のあることが明らかになった(1点高いごとにオッズ比〔OR〕1.31〔95%信頼区間1.17~1.48〕)。mOAGスコアで予後不良を予測する最適なカットオフ値は7であり、感度83.9%、特異度65.5%、予測能(AUC)0.821と計算された。またmOAGスコアが7点以上の場合、予後不良のオッズ比は4.26(2.14~8.66)だった。 入院中に肺炎を発症したのは13人(5.3%)だった。入院時の口腔状態は、肺炎非発症群がmOAGスコアの中央値6点(四分位範囲4~9)、肺炎発症群が10点(同8~12)で、後者が有意に高値(不良)だった(P<0.001)。 交絡因子を調整した多変量解析の結果、入院時のmOAGスコアが院内肺炎発症に独立した関連のあることが明らかになった(1点高いごとにOR1.21〔95%信頼区間1.07~1.38〕)。mOAGスコアで院内肺炎発症を予測する最適なカットオフ値は8であり、感度84.6%、特異度64.5%、AUC0.783と計算された。またmOAGスコアが8点以上の場合、院内肺炎発症のオッズ比は7.89(1.96~52.8)だった。 なお、同院では全入院患者に対して標準化されたプロトコルに基づく口腔ケアが実施されている。その結果、入院中にmOAGが2回評価されていた患者(159人)のうち91人は、mOAGスコアの改善を認めた。しかしこの改善と、3カ月後のmRSや院内肺炎発症率との関連は有意でなかった。その理由として、「mOAGが2回評価されていた患者は重症例が多かったためではないか」との考察が加えられている。 以上一連の結果を基に著者らは、「脳梗塞急性期のmOAGスコアは、院内肺炎リスクや3カ月後の機能的予後と独立して関連していた。脳梗塞患者の入院に際して、口腔状態の評価結果を医療従事者間で共有し、積極的な口腔衛生介入をすべきではないか」と述べている。

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表在性子宮内膜症でも卵巣がんリスクは増加、子宮内膜症サブタイプと卵巣がんリスクの研究(解説:前田裕斗氏)

 子宮内膜症、とくに卵巣チョコレートのう腫が卵巣がんの強いリスク因子であることは広く知られている。この研究ではこの事実を深掘りし、子宮内膜症のサブタイプ(表在性子宮内膜症[腹膜、子宮・卵管表面]、卵巣子宮内膜症[チョコレートのう腫]、深部浸潤性子宮内膜症[ダグラス窩、小腸、膀胱、仙骨子宮靭帯]、その他)など、および卵巣がんの組織型(I型[低異型度漿液性腺がん、類内膜腺がん、明細胞腺がん、粘液性腺がん]、II型[高異型度漿液性腺がん])の双方を考慮したリスク変化について報告している。統計的手法についても、参加者数の十分多い人口ベースのコホートであり、子宮内膜症の誤診可能性についても感度分析を行うなど、さまざまな配慮がなされている。 メインの結果となる子宮内膜症群での卵巣がん、とくにI型卵巣がんのリスク上昇はさもありなんという感じである(詳しい数値については別記事を参照されたい)。一方、本研究ならではの結果としてFigure2やSupplementary FileのeTable3,4に注目したい。子宮内膜症のサブタイプ別で見た際に、チョコレートのう腫を持たない深部子宮内膜症(aHR:18.76[95%信頼区間CI:10.78~32.66])、さらには表在性子宮内膜症(aHR:2.82[95%CI:2.27~3.51])であっても全卵巣がんのリスクが高まると報告されている。深部子宮内膜症の結果については信頼区間の幅が広く精度に問題はあるが、表在性でリスクが上がるのであれば深部病変でも上がると考えてよいだろう。 この結果は、臨床診断あるいは手術中偶発的に見つかった表在性内膜症でも低用量ピルやジエノゲストによる治療を行うことの利益を示唆している。ただし、この研究では低用量ピルなど薬の影響については考慮していないことから、表在性子宮内膜症についても低用量ピルなどの治療が卵巣がんの予防について効果があるのかについては、さらなる研究が求められる。

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第210回 在宅医療の看取り件数が急増、訪問看護も利用拡大、コロナ禍で在宅ケアが進展/慈恵医大

<先週の動き>1.在宅医療の看取り件数が急増、訪問看護も利用拡大、コロナ禍で在宅ケアが進展/慈恵医大2.2025年度専攻医募集数のシーリングは継続、シーリング逃れに対策を/厚労省3.大学病院の医師、残業時間の上限緩和申請は4割に、研究時間不足が課題/全国医学部長病院長会議4.医療訴訟の発生率、東京・大阪が高く、茨城、福島、岐阜などは低め/東邦大5.働き方改革の影響で9大学病院が医師派遣の取り止めや中止を検討/全国医学部長病院長会議6.「疲労回復」謳う美容医療、治療効果にエビデンスなし、クリニックを提訴/消費者機構日本1.在宅医療の看取り件数が急増、訪問看護も利用拡大、コロナ禍で在宅ケアが進展/慈恵医大新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、在宅医療における看取りが急増したことが、東京慈恵会医科大学の青木 拓也准教授らの研究で明らかになった。調査は、2020年4月の緊急事態宣言を境に、終末期医療の利用や自宅での看取りが急増したことを示している。病院での受診控えや面会制限が影響し、在宅でのケアが選ばれるケースが増えたと考えられる。研究チームは、厚生労働省のNDBデータベースを用いて2019~2022年にかけて在宅医療サービスの利用動向を分析。訪問診療に大きな変化はみられなかったが、往診や終末期医療は増加傾向にあった。また、訪問看護の利用件数も増加しており、とくに医療保険適用型の訪問看護費が過去10年間で5.4倍に増加していることが、共同通信の分析で明らかになった。利用者数が4倍近く増加したことに加え、1人当たりの費用も1.4倍に増えたことが、費用増加の主因とされる。医療保険適用型の増加幅は介護保険適用型を大幅に上回っており、入院患者の早期在宅復帰を促す政策や、医療保険には利用限度額がないことが背景にある。訪問看護を巡っては、精神科や難病患者を対象にした診療報酬の過剰請求が指摘されており、利益を目的にした一部事業者による制度の乱用が費用増加の一因とも考えられている。財務省はこの問題を医療財政の圧迫要因として問題視しており、今後の対策が注目される。参考1)自宅でのみとり急増 緊急事態宣言境に、終末期医療も 受診控え、面会制限影響か・慈恵医大など(時事通信)2)医療保険の訪問看護費5倍 10年間、1人当たりも増加(共同通信)2.2025年度専攻医募集数のシーリングは継続、シーリング逃れに対策を/厚労省厚生労働省は、9月9日に医師専門研修部会を開き、日本専門医機構が提案した2025年度の専攻医募集に関するシーリング案を審議し、特別地域連携プログラムにおける新要件を却下する方針を決定した。この結果、2024年度と同様のシーリングを継続することになった。新要件は、医師充足率が0.7以下(小児科は0.8以下)の都道府県で医師を1年以上派遣する案だったが、地域内での医師偏在を助長する恐れがあるとの意見が相次ぎ、採用を見送った。今後、1ヵ月以内に厚生労働大臣の意見として正式に日本専門医機構に伝達する予定。一方で、「シーリング逃れ」と呼ばれる問題が引き続き指摘されている。これは、シーリング対象外のプログラムが、実際にはシーリング対象地域で長期間の研修を行う形態を指し、その実態把握と報告が求められている。また、特別地域連携プログラムに関しては、地域偏在是正の実効性を検証し、今後の改良が提案される予定。厚労省は、医師偏在是正に向けた総合的対策を2024年末までに策定する予定であり、9月5日に開いた社会保障審議会・医療部会では、医師偏在是正に向けた対策を議論し、偏在是正のために若手医師だけに負担をかけるのではなく、即戦力となる40歳以上の医師に対する施策の強化が求められている。参考1)令和7年度専攻医募集におけるシーリング案に対する厚生労働大臣からの意見案(厚労省)2)医師偏在是正に向けた総合的な対策パッケージの骨子案について(同)3)2025年度プログラム募集専攻医シーリング数(案)(日本専門医機構)4)2025年度の新専門医目指す専攻医募集、「玉突き案」は却下、「シーリング逃れ」の実態を解明-医師専門研修部会(Gem Med)5)医師偏在対策の総合パッケージ策定に向け医療部会で議論スタート「若手医師による偏在対策はもう限界」、少数区域に中堅医師の派遣求める声も(日経メディカル)3.大学病院の医師、残業時間の上限緩和申請は4割に、研究時間不足が課題/全国医学部長病院長会議9月11日に全国医学部長病院長会議は、医師の働き方改革施行後の令和6年4月の状況について、大学病院の医師の働き方改革に関するアンケート調査結果を発表した。これによると、大学病院に勤務する医師のうち、時間外労働の上限緩和を申請した医師が4割に達したことが明らかになった。これは2024年4月に導入された医師の働き方改革に伴い、年間960時間の時間外労働上限が1,860時間に引き上げられる特例措置を活用した結果で、2022年の調査時の34%から増加している。調査は全国82の大学病院を対象に行われ、約4万2,000人の医師のうち41%が特例措置を申請していることが判明した。また、医師の約56%が週平均5時間以下の研究時間しか確保できていないことが指摘され、とくに20歳代の医師では96%がこの状況にある。若手医師が診療業務に追われ、十分な研究時間が確保できていない実態が浮き彫りとなり、医療の将来に重大な影響を及ぼす可能性があると懸念されている。一方、労働時間の短縮は徐々に進んでおり、週50時間未満で勤務する医師の割合は49.6%となり、2022年の調査よりも8.1ポイント増加している。複数主治医制の導入や業務の時間内完了を進める取り組みが功を奏しているが、週60時間以上働く医師が依然として3割を超えており、とくに外科や小児科での改善が求められている。また、大学病院の給与に関しては、20歳代医師の87%、30歳代では51%が年収500万円未満であることが明らかとなり、国立病院や一般医療機関と比べて低い水準にあることが問題視されている。働き方改革を進めるためには、ICTの活用やタスクシフトの推進が求められており、診療報酬による支援が必要とされている。参考1)大学病院の医師の働き方改革に関するアンケート調査結果2)医師の残業時間、4割が上限緩和申請 大学病院団体調べ(日経新聞)3)若手医師の研究時間が少なく「医療の将来に重大な影響」 医師の働き方改革で調査(産経新聞)4)週50時間未満勤務の大学病院医師49.6% 4月時点 22年7月から8.1ポイント増(CB news)4.医療訴訟の発生率、東京、大阪が高く、茨城、福島、岐阜などは低め/東邦大学東邦大学薬学部の平賀 秀明講師らの研究グループは、最高裁判所の協力を得て2005~2021年にかけて全国の地方裁判所に提訴された医事関係訴訟の都道府県別発生率を調査した結果、発生率に地域差があることを明らかにした。今後、地域ごとの医療安全対策や医療事故後の患者応対、訴訟実務における指針として活用されることが期待される。調査によると、人口100万人当たりの医事関係訴訟発生率が全国平均(6.30件/年)と比べて有意に高い地域は東京都(12.97件/年)および大阪府(10.99件/年)。逆に、発生率が有意に低い地域は茨城県(1.77件/年)、福島県(1.93件/年)、岐阜県(2.50件/年)など12地域に及ぶ。また、医療機関1,000施設当たりや医師・歯科医師1,000人当たりの発生率においても、東京と大阪が高く、茨城、福島、岐阜などでは低い傾向がみられた。この地域差の要因については、医療機関側の過誤が少ないことや、弁護士不足による訴訟へのアクセスの違いが影響している可能性が指摘され、追加解析が進められている。今後、地域ごとの実情に応じた医療訴訟対策が求められる。この研究は、2024年7月31日に『医療の質・安全学会誌』に公開された。参考1)最高裁判所の協力を得て医事関係訴訟の都道府県別発生率を調査~発生率における地域差の存在が明らかに~(東邦大学)2)東邦大学 医事関係訴訟の都道府県別発生率に地域差 東京、大阪が高く、茨城、福島、岐阜等12地域は低い(ミクスオンライン)5.働き方改革の影響で9大学病院が医師派遣の取り止めや中止を検討/全国医学部長病院長会議2024年4月に始まった医師の働き方改革により、全国9つの大学病院が他の医療機関への医師派遣を取りやめ、または中止を検討していることが明らかになった。この調査は、全国医学部長病院長会議が82の大学病院を対象に実施したアンケート結果から判明したもので、働き方改革に伴う時間外労働の制限が影響を及ぼしている。調査結果によると、82の大学病院のうち、9つの病院が派遣中止や検討をしており、24の病院では勤務体制の見直しが進められている。具体的には、勤務間インターバルの導入などにより、医師の負担軽減を図る取り組みが行われている。一方、53の病院では現時点でとくに派遣に関する変更はないとされている。働き方改革により、医師の労働時間は減少傾向にあるが、とくに若手医師は診療業務、教授クラスの医師は研究業務に影響が出ている。若手医師の78%が診療時間の増加を感じており、教授の66%が研究時間の減少を挙げている。これにより、研究の遅れや診療体制の見直しが必要となっている。全国医学部長病院長会議の相良 博典会長は、「大学病院は地域医療にとって重要な存在であり、派遣中止が広がれば医療崩壊のリスクが高まる」と懸念を表明。今後、国に対して待遇の改善や医師確保に向けた対策を求めていく考えを示している。医師派遣の中止や制限が進むことで、地域医療に大きな影響を与える可能性があり、早急な対応が求められている。参考1)大学病院の医師の働き方改革に関するアンケート調査結果(全国医学部長病院長会議)2)全国9大学病院 ほかの医療機関への医師派遣 取りやめ 中止検討(NHK)3)医師派遣の取りやめ・中止検討、大学病院1割超で 4月時点 AJMC調査(CB news)6.「疲労回復」謳う美容医療、治療効果にエビデンスなし、クリニックを提訴/消費者機構日本特定適格消費者団体「消費者機構日本」は9月10日、東京都渋谷区のクリニック「サカイクリニック62」を相手取り、同クリニックが提供する自由診療に関するインターネット広告の表示が景品表示法における「優良誤認表示」に該当するとして、広告の停止を求める訴訟を東京地裁に起こした。クリニックは「疲労回復」や「アンチエイジング」などの効能を謳ったが、これらの効果には医学的なエビデンスがなく、厚生労働省も安全性に関する注意喚起を行っていた。提訴の対象となったのは、点滴や温熱療法など8種類の治療法に関する広告で、これらに関する効果を裏付ける客観的な医学的証拠がないことが問題視された。とくに「エクソソーム点滴療法」などの治療法は、その安全性が確認されていないとされており、消費者団体は「このままの状態が続くことが患者の利益を損なう」と指摘している。この訴訟は、医療機関による広告が景品表示法違反に問われた初のケースとなる。自由診療は保険診療とは異なり、高額で提供されることが多く、効能のエビデンスが不十分なまま提供される治療が広がっている現状がある。今回の訴訟は、こうした問題を是正し、消費者の利益を保護する狙いがある。また、訴訟に至るまでの経緯として、消費者機構日本が、4月にクリニックへ広告の削除を要請したものの、クリニック側のウェブサイトの改修対応などが遅れたこと、そして、当初「来年に改訂予定」として広告の表示を続けていたが、最終的には削除作業を進めていることを公表した。今回のケースは、自由診療分野における医療広告の規制が緩く、消費者保護が不十分であることを示しているとされ、今後も消費者機構日本は、同様の訴訟を展開し、他の医療機関に対しても適切な表示を促す姿勢を示している。参考1)再生医療・免疫療法と称する自由診療行為を行う医療社団法人サカイクリニック62(渋谷区)に対し、インターネット上の広告表示が優良誤認表示に該当するとして差止請求訴訟を提起しました(消費者機構日本)2)医療広告で「疲労回復」効能なし 消費者団体が東京・渋谷のクリニック提訴(産経新聞)3)「アンチエイジング」「睡眠の質改善」…自社サイトで優良誤認表示にあたる表現があるとしてクリニック側を提訴 原告「自由診療分野はやりたい放題」(TBS)4)「自由診療は野放しになっている」 “ネット広告”が「優良誤認表示」に該当するとして、消費者団体が医療クリニックに差し止め請求(弁護士JPニュース)

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便通異常症 慢性下痢(10)食物起因性の下痢:馬肉【一目でわかる診療ビフォーアフター】Q123

便通異常症 慢性下痢(10)食物起因性の下痢:馬肉Q123鳥刺しやユッケなど、生で提供される肉料理による腸炎はしばしばメディアでも耳にする。熊本や福島でお馴染みの馬刺しをよくスーパーなどで見かけるが、馬肉による腸管感染症はないのだろうか?

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遺伝性大腸診療ガイドライン 2024年版

日進月歩の診断モダリティーに対応した遺伝性大腸診療の決定版遺伝性大腸診療に有益な情報を提供してきた本ガイドライン。2024年版では診療のアルゴリズムを記載しCQの位置付けを明確化。家族性大腸腺腫症におけるIntensive downstaging polypectomyやデスモイド腫瘍の新分類、リンチ症候群における免疫チェックポイント阻害薬のコンパニオン診断、CGPからの診断の流れなど、日進月歩の診断モダリティーに対応したガイドラインとなった。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する遺伝性大腸診療ガイドライン 2024年版定価2,970円(税込)判型B5判頁数184頁(図数:27枚・カラー図数:9枚)発行2024年7月編集大腸研究会ご購入(電子版)はこちらご購入(電子版)はこちら紙の書籍の購入はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら紙の書籍の購入はこちら

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炎症性腸疾患関連消化管腫瘍診療ガイドライン 2024年版

IBD関連消化管腫瘍のガイドラインが誕生!炎症性腸疾患(IBD)患者数は増加の一途をたどり、長期罹患患者では消化管が合併することが知られている。本ガイドラインではUC(潰瘍性大腸炎)関連消化管腫瘍とCD(クローン病)関連消化管腫瘍のそれぞれの解説に加え、計28のCQを最新のエビデンスに基づいて設定した。各施設からの貴重な切除標本や病理アトラスなどのカラー図も豊富に取り扱っており、まさに他の追随を許さないIBD関連消化管腫瘍診療に携わる医療者必携の1冊。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する炎症性腸疾患関連消化管腫瘍診療ガイドライン 2024年版定価3,850円(税込)判型B5判頁数152頁(図数:9枚・カラー図数:42枚)発行2024年7月編集大腸研究会ご購入(電子版)はこちらご購入(電子版)はこちら紙の書籍の購入はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら紙の書籍の購入はこちら

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SGLT2阻害薬とDPP-4阻害薬、食事や体重の変化の違い

 2型糖尿病患者におけるSGLT2阻害薬とDPP-4阻害薬によるエネルギー摂取量や糖尿病関連指標に対する影響の違いは不明である。今回、奈良県立医科大学附属病院臨床研究センターの五十川 雅裕氏らがカナグリフロジンとテネリグリプチンによるエネルギー摂取量と体重の変化を比較した結果、エネルギー摂取量への影響は逆で、体重についてはカナグリフロジンでのみ有意に減少した。BMC Endocrine Disorders誌2024年8月19日号に掲載。 本解析は日本人2型糖尿病患者においてカナグリフロジンとテネリグリプチンのメタボリックリスク因子に与える効果を比較したCANTABILE試験のサブ解析である。ヘモグロビンA1c(HbA1c)、エネルギー摂取量、体重などの糖尿病関連指標におけるベースラインから24週までの変化を、カナグリフロジン群(75例)とテネリグリプチン群(70例)で比較した。 主な結果は以下のとおり。・HbA1cは両群とも有意に低下した。・テネリグリプチン群では、エネルギー摂取量は有意に減少したが、体重に有意な変化はみられなかった。・カナグリフロジン群では、エネルギー摂取量は増加傾向だったが、体重は有意に減少した。 今回の結果から、著者らは「カナグリフロジンは、エネルギー摂取量が増加しても体重増加なしに血糖管理が可能であることが示唆された」としている。

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日本の女性医師によるPCI、治療成績は男性医師と比べて…

 日本の女性医師が行った経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の実施数やその内容、患者の予後について男性医師と比較した結果、院内死亡率は男女医師で有意差はなく、PCI成功率は女性医師のほうが高かったことを、湘南大磯病院/湘南鎌倉総合病院の高橋 佐枝子氏らが明らかにした。Journal of the American College of Cardiology: Asia誌2024年9月号掲載の報告。 インターベンション分野において、医師の男女格差は依然として世界的な懸念事項であり、女性医師が実施したPCIの結果を検討した広範な研究は限られている。そこで研究グループは、日本の女性医師によるPCIの実態を調べ、男性医師と比較検討するために後ろ向き観察研究を行った。 J-PCIレジストリーのデータベースを用いて、2019年1月1日~2021年12月31日にPCIを受けた連続患者を対象症例とした。主要評価項目は院内死亡率、副次評価項目はPCIの成功率であった。 主な結果は以下のとおり。・最終解析には、男性医師5,646人と女性医師447人によって実施された66万9,379件のPCI症例が含まれた。・研究期間中に、女性医師によって3万5,211件(全体の5.3%)のPCIが実施された。・女性医師が3年間に実施したPCIの中央値は57件(IQR:23~108)であり、男性医師が実施したPCI(中央値:92件、IQR:42~153)よりも有意に少なかった(p<0.001)。・女性医師は男性医師と比較して、急性冠症候群の症例が多く(40.1% vs.37.7%、p=0.004)、とくにST上昇型心筋梗塞の症例が多かった(20.2% vs.17.7%、p=0.001)。一方で、女性医師は男性医師よりも左主幹部病変(4.9% vs.5.9%、p<0.001)、ロータブレーターを使用した病変(3.5% vs.4.9%、p<0.001)は少なかった。・主要評価項目である院内死亡率は、女性医師が1.7%、男性医師が1.8%で有意差は認められなかった(オッズ比[OR]:0.880、95%信頼区間[CI]:0.774~1.00、p=0.052)。・副次評価項目であるPCIの成功率は、女性医師が97.8%、男性医師が97.2%であり、女性医師のほうが良好であった(OR:1.289、95%CI:1.149~1.447、p<0.001)。・多変量解析では、院内死亡率は男女医師で有意差はなかった(調整OR:0.896、95%CI:0.780~1.03、p=0.12)が、PCI不成功率は女性医師のほうが低かった(調整OR:0.806、95%CI:0.718~0.904、p<0.001)。

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NSCLCへの周術期デュルバルマブ、OS・DFSの改善は?(AEGEAN)/WCLC2024

 切除可能な非小細胞肺がん(NSCLC)において、術前補助化学療法に周術期デュルバルマブを上乗せすることで、無イベント生存期間(EFS)と病理学的完全奏効(pCR)を改善したことが、国際共同第III相試験「AEGEAN試験」のEFSの第1回中間解析およびpCRの最終解析において報告されている1)。2024年9月7~10日に米国・サンディエゴで開催された世界肺がん学会(WCLC2024)において、AEGEAN試験の事前に規定されたEFSの第2回中間解析、全生存期間(OS)および無病生存期間(DFS)の第1回中間解析の結果が報告された。EFSの第2回中間解析においても、引き続きEFSの改善傾向がみられ、DFSの臨床的に意義のある改善が認められた。また、OSについても改善傾向がみられた。米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのJohn V. Heymach氏が、本研究結果を発表した。・試験デザイン:国際共同第III相無作為化比較試験・対象:未治療の切除可能なStageIIA〜IIIB(AJCC第8版)のNSCLC患者・試験群(デュルバルマブ群):デュルバルマブ+プラチナ併用化学療法(3週ごと4サイクル)→手術→デュルバルマブ(4週ごと12サイクル) 400例・対照群(プラセボ群):プラセボ+プラチナ併用化学療法(3週ごと4サイクル)→手術→プラセボ(4週ごと12サイクル) 402例・評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央判定(BICR)に基づくEFS、pCR[主要な副次評価項目]病理学的奏効、BICRに基づくDFS、OS 主な結果は以下のとおり。・EFSの第2回中間解析時点において、すべての患者が試験治療を終了していた。・術後補助療法を開始した患者のうち、デュルバルマブ群の68.6%(166/242例)、プラセボ群の63.7%(151/237例)が治療を完遂した。・EFS中央値はデュルバルマブ群未到達、プラセボ群30.0ヵ月であり、デュルバルマブ群で引き続き改善する傾向がみられた(層別ハザード比[HR]:0.69、95%信頼区間[CI]:0.55~0.88)。3年EFS率は、それぞれ60.1%、47.9%であった。・術前補助化学療法に用いたプラチナ製剤別にEFSを比較すると、いずれのサブグループでもデュルバルマブ群が良好な傾向にあった。シスプラチンを用いたサブグループにおけるEFS中央値はデュルバルマブ群未到達、プラセボ群45.0ヵ月であり(HR:0.85、95%CI:0.35~0.93)、カルボプラチンを用いたサブグループでは、それぞれ未到達、26.2ヵ月であった(同:0.75、0.57~0.97)。・術後補助療法の有無別にEFSを比較すると、術後補助療法を受けたサブグループでデュルバルマブ群のベネフィットが大きい傾向にあった。術後補助療法を受けたサブグループにおけるEFS中央値は両群で未到達であり(HR:0.62、95%CI:0.44~0.86)、術後補助療法を受けていないサブグループでは、それぞれ5.1ヵ月、5.2ヵ月であった(同:0.83、0.60~1.14)。・pCR達成の有無別にEFSを比較すると、いずれのサブグループでもデュルバルマブ群が良好な傾向にあった。pCR達成のサブグループにおけるEFS中央値は両群で未到達であり(HR:0.73、95%CI:0.22~3.28)、pCR未達成のサブグループでは、それぞれ41.2ヵ月、25.9ヵ月であった(同:0.81、0.64~1.03)。・DFS中央値は両群で未到達であった(層別HR:0.66、95%CI:0.47~0.92、層別log-rank検定のp=0.0137)。デュルバルマブ群でDFSが改善する傾向にあったが、本解析における有意水準は0.0123であり、統計学的有意差は認められなかった。3年DFS率は、それぞれ71.2%、61.4%であった。・OS中央値は両群で未到達であった(層別HR:0.89、95%CI:0.70~1.14)。デュルバルマブ群でOSが改善する傾向にあり、3年OS率は、それぞれ67.1%、63.9%であった。なお、本解析時点におけるOSの成熟度は35.3%であった。・Grade3/4の治療関連有害事象は、試験期間全体ではデュルバルマブ群33.4%(134/401例)、プラセボ群33.4%(133/398例)に認められ、術後補助療法の期間中ではそれぞれ7.5%(20/266例)、3.5%(9/254例)に認められた。 Heymach氏は、本研究結果について「米国食品医薬品局(FDA)が切除可能なNSCLCの周術期の治療薬として承認したデュルバルマブが、切除可能なNSCLC患者の新たな治療選択肢の1つとなることを支持するものである」とまとめた。

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アルツハイマー病患者における第2世代抗精神病薬関連有害事象

 アルツハイマー病(AD)は、記憶障害、認知機能障害、神経精神症状などを引き起こす神経変性疾患である。ADの神経精神症状のマネジメントでは、第2世代抗精神病薬(SGA)が頻繁に使用されるが、AD患者に対するSGAの安全性プロファイルについては、詳しく調査する必要がある。中国・福建医科大学のJianxing Zhou氏らは、米国FDAの有害事象報告システム(FAERS)のデータベースより、薬物有害反応(ADR)を分析し、AD患者におけるSGAの安全性を評価した。The Annals of Pharmacotherapy誌オンライン版2024年8月20日号の報告。 2014~23年のFAERSデータを包括的に分析し、リスペリドン、クエチアピン、オランザピン、クロザピン、アリピプラゾールなどのSGAで治療されたAD患者のADRに焦点を当て評価を行った。Bayesian confidence propagation neural network(BCPNN)、ワイブル分析、PBPKモデルを用いて、記述的、不均衡性、時間、用量について分析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・SGAで治療を行ったAD患者1,289例において、最も一般的に報告されたADRは、神経系、胃腸系、心臓系の有害事象であった。・不均衡性分析では、心臓系、腎臓系、血管系において、有意な陽性シグナルが特定された。・クエチアピン、リスペリドン、オランザピンは、クロザピン、アリピプラゾールと比較し、陽性シグナルがより多かった。・時間分析では、心血管系ADRはランダムに発現するのに対し、腎臓系ADRは長期使用において増加することが示唆された。・用量分析では、SGAの少量投与は、心臓系、腎臓系、血管系の複数のADRリスクに影響を及ぼさないことが示唆された。 著者らは「AD患者に対しSGAを使用する際には、とくに心臓系、腎臓系のADRをモニタリングすることの重要性が示唆された。安全かつ合理的な薬物治療をサポートするためにも、より包括的な臨床データを組み込んだ研究が求められる」としている。

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若年発症大腸がん、主な要因は赤肉か

 近年、50歳以下で大腸がんを発症する若年発症大腸がん患者が増加傾向にあるが、赤肉や加工肉がその主な原因である可能性があるようだ。代謝産物と腸内微生物叢のデータ分析から、食事由来、中でも赤肉や加工肉に関連する代謝産物が若年発症大腸がんリスクの主な要因である可能性が示された。米クリーブランドクリニックのNaseer Sangwan氏らによるこの研究の詳細は、「NPJ Precision Oncology」に7月17日掲載された。 研究グループは過去の研究で、若年発症大腸がん患者と平均的な年齢で発症した大腸がん患者では代謝産物に違いがあることを明らかにしていた。また別の研究では、大腸がんの若年患者と高齢患者では腸内微生物叢に違いがあることが示されている。Sangwan氏は、これらの研究は、若年発症大腸がんの研究を進める上で多くの示唆をもたらしたが、がんリスクに関わる要因が増えることにより、研究結果の解釈やその後の計画も複雑になると指摘する。さらに、腸内微生物が代謝産物を消費して独自の代謝産物を生成するという代謝産物と腸内微生物叢の相互作用も、問題をさらに複雑化する。 そこでSangwan氏らは、AIアルゴリズムを構築して、若年発症大腸がん患者20人(以下、若年患者)と60歳以上で大腸がんを発症した患者44人(以下、高齢患者)を対象に、血漿のメタボローム解析と腫瘍組織の16S rRNAアンプリコンシーケンス解析による腸内微生物叢の解析を行った。 その結果、若年患者と高齢患者の間に観察された違いの多くは食生活の違いに起因することが明らかになった。具体的には、若年患者では高齢患者に比べて、アミノ酸の消化により生成される代謝産物であるアルギニンのレベルと、尿素回路に関連する代謝産物のレベルが高い傾向にあることが明らかになった。尿素回路は、体内でタンパク質が消化される過程で生成されたアンモニアが血液から濾過され、最終的に尿とともに排泄されるプロセスである。 これらの結果について研究グループは、「若年発症大腸がん患者のこれらの代謝産物レベルの上昇は、赤肉や加工肉の長期にわたる過剰摂取により説明できる可能性がある」との見方を示している。またSangwan氏は、「本研究結果は、若年発症大腸がんの主な要因が食事であることを明確に示している。リスクに関連する主な代謝産物はすでに判明しているのだから、今後はこの結果に沿って研究を進めていけばよいだろう」と話している。 研究グループは、本研究結果は良い知らせだとの見方を示す。なぜなら当初、研究グループは、大腸がんリスクを下げるためには腸内微生物叢を大幅に変える必要があると考えていたからだ。論文の上席著者であるクリーブランドクリニックの消化器がん専門医であるSuneel Kamath氏は、「腸内微生物叢を変えるのは非常に複雑な上に難しい。食生活の変更も容易なわけではないが、腸内微生物叢を変えることに比べるとはるかに容易だ」と話す。さらに、研究グループは、大腸がんの検査としても、便サンプルの遺伝子配列を調べて腸内微生物のレベルを確認するより血液検査で代謝産物を調べる方が簡単な可能性があることも利点の一つだと述べている。 研究グループは、次のステップとして、より大規模な大腸がん患者を対象に研究結果を検証する予定だとしている。また、食事や薬剤によって代謝産物のレベルを下げることが可能かどうかも検証したいと話している。

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新たな「血小板スコア」で脳卒中や心筋梗塞リスクを予測

 実験段階にある遺伝子検査によって、命に関わることもある血栓症のリスクを予測できる可能性のあることが、米ニューヨーク大学(NYU)グロスマン医科大学院心血管疾患予防センターのJeffrey Berger氏らの研究で示された。この新たな検査でスコアが高かった末梢動脈疾患(PAD)患者は、下肢血行再建術(足の閉塞した動脈を広げて血流を取り戻す治療)後の心筋梗塞や脳卒中、下肢切断のリスクが2倍以上であることが示されたという。この研究結果は、「Nature Communications」に8月20日掲載された。 この検査は、血小板の機能(反応性)が亢進状態であるかどうかを評価するもの。血小板は最も小さな血液細胞であり、傷ついた血管からの出血を検知すると凝集して血栓を形成する。本研究の背景情報によると、心臓専門医の間ではこれまで、一部の人で血小板機能が亢進し、心筋梗塞や脳卒中、PADなどを引き起こす血栓が形成されやすくなることが知られていた。しかし、血小板機能を調べるために日常的に行われている血小板凝集検査は、検査機関により結果が異なり、有用性は高くなかったという。 本研究ではまず、下肢血行再建術前にエピネフリン0.4μMを用いた血小板凝集能の測定を受けた254人のPAD患者を対象に、血小板機能の亢進と心筋梗塞や脳卒中、下肢切断の複合エンドポイント(MACLE)との関連が検討された。その結果、血小板機能亢進(凝集率60%超と定義)と判定された17.5%の患者での下肢血行再建術後30日以内のMACLEの発生リスクは、血小板機能亢進が認められなかった患者の2倍以上であることが明らかになった(37.2%対15.3%、HR 2.76、95%信頼区間1.5〜5.1)。 次にBerger氏らは、下肢血行再建術前に129人の患者(うち、血小板機能亢進が確認された患者は19人〔22.6%〕)から採取されていたサンプルを用いて血小板のRNAシーケンシングを行い、血小板機能亢進が認められなかった患者とは異なる451の遺伝子を特定した。その上で、バイオインフォマティクスを用いてこれらの遺伝的な差異に重み付けを行い、各患者の「Platelet Reactivity ExpreSsion Score(PRESS);血小板反応性発現スコア」を算出した。その上で、血小板機能亢進患者の特定について、このスコアの性能を評価したところ、PRESSは、PAD患者においても(交差検証によるROC曲線下面積〔AUC〕0.81、95%信頼区間0.68〜0.94)、健康な参加者の独立コホートにおいても(AUC 0.77、95%信頼区間0.75〜0.79)、良好に機能することが示された。さらに、別のPAD患者の集団でPRESSの精度を検証した。その結果、PRESSのスコアが中央値を上回っていた患者では、中央値を下回っていた患者と比べて心筋梗塞や脳卒中のリスクが90%有意に高いことが示された。 「われわれの研究の結果は、血小板を中心に据えた新しいスコアリングシステムによって、血小板機能亢進とそれに関連する心血管イベントのリスクを、高い信頼性をもって予測できることを示している」とBerger氏は言う。同氏らによると、この血小板のスコアによって、心筋梗塞のリスクが高い疾患のある人だけでなく、健康な人についても血小板機能亢進の有無を判定できるのだという。 Berger氏はこの新たな検査について、「抗血小板療法の対象を、同療法の恩恵を受ける可能性が最も高い、血小板機能亢進を伴う患者に限定する助けとなる可能性がある」と付言している。 Berger氏はNYUのニュースリリースの中で、「現在、医師は血小板の機能とは直接関係のない脂質異常症や高血圧などのリスク因子に基づいて、血小板の活性を阻害する薬剤であるアスピリンを処方している」と説明。しかし同氏らは、アスピリンにより危険な出血リスクが高まる可能性のあることを指摘している。 NYUランゴン医学・病理学部助教のTessa Barrett氏は、「現在の診療では、心筋梗塞や脳卒中の初発予防に抗血小板療法をルーチンで行うことは推奨されていない。しかし、血小板をベースとした検査によってリスクの最も高い患者や、抗血小板療法による心血管イベントの予防において最大の恩恵が見込める患者を特定できる可能性がある」と話し、「このスコアにより、心血管疾患リスク抑制の個別化が進展する可能性がある」との展望を示している。

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ヘルスケアへのAI導入に対して米国人は複雑な感情を抱いている

 スマートホームデバイスから娯楽やソーシャルメディアのアルゴリズムまで、今や人工知能(AI)は生活のさまざまな場面で使われているが、医療の現場での活用について人々はどう感じているのだろうか。米オハイオ州立大学ウェクスナー医療センターが8月21日に報告した、1,006人の米国人を対象にした新たな調査から、ほぼ7割以上の米国人が、ヘルスケア向上のために医療現場でもAIを活用すべきだと考えていることが明らかになった。 この調査により明らかになったことは、以下の通り。・75%の参加者は、AIはヒューマンエラーを最小限に抑えるのに役立つと考えている。・71%の参加者は、AIの活用による待ち時間の短縮を望んでいる。・70%の参加者は、診察中にAIがメモを取ることに抵抗がないと考えている。・66%の参加者は、AIが医療従事者のワークライフバランスを改善すると考えている。 その一方で、56%の参加者はヘルスケアにおけるAIの活用に対して多少の恐ろしさを感じており、70%の参加者はデータのプライバシー保護に対して懸念を抱いていることも明らかになった。 同医療センター最高医療情報責任者のRavi Tripathi氏は、「患者がデータのプライバシーとセキュリティーに懸念を抱いていることは承知しているが、われわれはこのテクノロジーを電子カルテと同じ基準で管理している」と述べている。 Tripathi氏らは、調査で明らかにされた問題のいくつかを検討するために、Microsoft社のアプリ「Dragon Ambient eXperience(DAX)Copilot」を試験的に導入した。このアプリは、会話型のアンビエントAIおよび生成型AIを用いて、医療従事者と患者の会話を、セキュリティーを確保しつつ聞き取って電子カルテに臨床記録の下書きを作成する。このアプリを使うことで、医療従事者は診察中に自身で入力する必要がなくなるため患者に集中でき、その後にAIが生成した記録を確認・編集することができる。 2024年1月中旬から3月中旬にかけて、プライマリケア医、循環器医、産婦人科医とadvanced practice provider(APP;医療の高い知識と技術を持ち、医師とともに患者の治療やケアを行う医療専門職)24人が、外来患者の了解を得た上で、このAIアプリを用いて診察の内容を記録した。診察が終わるとAIは1分足らずのうちにメモを整理して提示する準備を整える。 その結果についてTripathi氏は、「診察1回につき最大4分の時間の節約になることが分かった。その分、医師は患者と接し、教育を行い、今後の方針を理解してもらうことに時間を使える」と話す。同氏は続けて、「何人かの臨床医は以前のワークフローを好んだが、全体としては80%がパイロット試験を完了した。実際、8週間の試験期間中にアプリが診療に与えた影響はとても大きく、その後もAIソリューションを使い続けることを許可したほどだ」と述べている。 AIの支援に感銘を受けた医師の1人である、オハイオ州立大学の内科医であるHarrison Jackson氏は、「記録を残すことは必要だが、診察中の患者との対話の質を下げる原因となる。私は、『あなたよりもコンピューターと目を合わせる時間の方が長くて申し訳ない』と患者に謝罪するくらいだ」と話す。このAIアプリが作成した記録には、間違った代名詞や単語などの誤りも見られたが、見直す中ですぐに修正できるような内容だったという。 Jackson氏は、「このAIアプリを用いることで、患者一人一人と接する時間とアイコンタクトも増え、より質の高い時間を過ごせるようになった。私はしばしば、このAIプログラムが捉えることができるように、身体検査の内容を大きな声に出して述べるが、それが患者との良い会話を促すようだ」と語る。同氏はさらに「私の指導下で、レジデントにもこのテクノロジーを使わせているが、彼らの患者との対話の質や提示する治療計画の質が向上したのを実感している」とも話している。

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ChatGPT-4の眼関連の知識と推論能力は眼科専門医と同等

 人工知能(AI)の大規模言語モデル(LLM)の一つである「ChatGPT-4(以下、GPT-4)」は、眼関連の知識と臨床推論力という点で眼科専門医と同等レベルに達しつつあることを示すデータが報告された。英オックスフォード大学のArun James Thirunavukarasu氏らの研究によるもので、詳細は「PLOS Digital Health」に4月17日掲載された。 LLMは近年、目覚ましく進歩してきており、一部では臨床応用の試みも始まっている。眼科領域でもGPT-4の有用性を示唆する研究結果が既に存在するが、それらの研究では、そのようなGPT-4の知識の豊富さが臨床能力に直結するかという点が検討されておらず、かつ、検証に用いられた課題がLLMの開発段階で既にネット環境に存在しているという“contamination”(汚染)によって、能力を正しく評価できていない可能性が指摘される。そこでThirunavukarasu氏らは、英国眼科専門医フェローシップ(FRCOphth)試験の予想問題を利用した検証を行った。FRCOphthの試験の出題内容は眼科専門医の実践的スキルにとって重要であり、かつそれらの情報がネット環境に公開されていないため、LLMの機械学習に利用されにくい。 この研究は、2023年4月29日~5月10日に行われた。まず、GPT-3.5とGPT-4を347項目の質問に対する回答で比較したところ、正答率は前者の48.4%に対し後者は61.7%であり、有意に優れていることが確認された(P<0.01)。次に、質問項目数を模擬テストに利用された87問に絞り込み、GPT-3.5とGPT-4、およびChatGPT以外の2種類のLLM(LLaMA、PaLM 2)、5人の熟練した眼科医、眼科研修プログラム参加中の研修医3人、眼科研修を受けていない研修医2人で正答率を比較した。 まずLLMの結果に着目すると、GPT-4の正答率は69%であり、これはGPT-3.5の48%やLLaMAの32%、PaLM 2の56%よりも高値であって、GPT-3.5やLLaMAとの間には有意差が存在した(いずれもP<0.01)。PaLM 2との差は有意水準未満だった(P=0.09)。 一方、熟練した眼科医5人の正答率は中央値76%(範囲64~90)であり、GPT-4の成績はこの5人中3人と同等であって、2人より劣っていた。眼科研修医3人の正答率は59%(57~63)であり、GPT-4の成績はこの3人全員と同等だった。眼科研修を受けていない研修医2人の正答率は43%(41~44)であり、GPT-4の成績はこの両人に対して優れていた。 なお、テストの質問のタイプや内容別にLLMと人(医師)の回答とを比較した場合に、正答率が顕著に異なるような質問は特定されず(P>0.05)、LLMの知識や推論能力のレベルは眼科領域全般にわたり一定の水準に達していると考えられた。このほか、GPT-3.5とGPT-4について、それらの回答がどちらのものかという情報をマスクした上で、5人の眼科専門医が内容を評価した結果、5人全員がGPT-4の回答を高く評価した。 Thirunavukarasu氏らは、「LLMの眼科領域の知識と推論能力は専門医レベルに近づいている。眼科の専門医療へのアクセスが限られているような状況では、LLMの回答が役に立つのではないか。ただし、本格的な臨床応用の可能性を探るには、さらなる研究が求められる」と述べている。 なお、1人の著者は、網膜疾患を検出するためのディープラーニングシステムに関する特許を保有している。

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むくみとは、その原因は?

患者さん、それは…浮腫(むくみ) ですよ!浮腫(むくみ)とは「血管外の皮下組織に水分が過剰に溜まった状態」のことで、全身性のものと局所性(部分的)のものに分類されます。局所性とは手足の片側に、全身性とは顔・腕・足などの複数箇所にある場合を示します。以下のような症状はありませんか?□まぶたが重い/はれぼったい(とくに起床時)□手足がだるい□物が握りにくい□指輪が取れない□靴がきつくなった□急激に体重が増えた□腫れているところを押すと指の跡が残る◆むくみの原因はさまざま!・必ずしも腎臓が原因とは限らない・急に起こった片脚のむくみは、脚の静脈に血の塊ができてる可能性も・全身がむくんでいる場合には、全身の病気を考える・薬が原因でむくみが起こることがある・皮膚感染症にかかっている場合もある出典:日本臨床検査医学会.浮腫、外来を愉しむ攻める問診、MSDマニュアル監修:福島県立医科大学 会津医療センター 総合内科 山中 克郎氏Copyright © 2021 CareNet,Inc. All rights reserved.

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第228回 立憲民主党代表候補4人の医療政策、医療当事者は納得できる?

この9月は国内外で選挙に伴う候補者討論会が目白押しだ。日本では政権与党の自由民主党(以下、自民党)の総裁選挙と野党第一党の立憲民主党の代表選挙、国外ではアメリカ大統領選挙などである。本稿執筆時点では自民党総裁選挙以外の候補者討論会は終了した。毎度のこと、かつ本連載で最も読まれないと自覚している政治ネタ定期便として、いち早く選挙が始まった立憲民主党の各候補が掲げた社会保障・医療・介護関連政策を独断と偏見に基づく寸評も交えて取り上げてみたい。まず、今回の立候補者は現代表の泉 健太氏(50)、同党設立時の党首である枝野 幸男氏(60)、前身の旧民主党の政権獲得時の最後の首相だった野田 佳彦氏(67)、衆議院議員1期目の吉田 晴美氏(52)の4人である。本稿執筆時点で自民党総裁選への出馬を表明した候補もそうだが、それ以上に旧民主党・民進党の流れをくむ立憲民主党は、旧民主党時代も含めて今回の候補者4人中3人が党代表経験者で、やや批判的な意味で「毎度お馴染み…」と評される状況。衆参両院の議員数が自民党の半分以下とは言え、人材が乏しい印象は否めない。このうち枝野氏と野田氏は、通称55年体制と呼ばれる1955年以降続いた自民党政権が崩壊した1993年衆議院選挙で、当時の新党ブームの先陣を走っていた日本新党(代表:細川 護熙氏)が臨んだ初の衆議院選挙で初当選を果たした御仁。ちなみに自民党総裁選に出馬を表明した同党幹事長の茂木 敏充氏もこの時の日本新党当選組である。4人の候補者の経歴は大学卒業後、枝野氏は弁護士経験約5年、野田氏は松下政経塾やアルバイト生活を経て千葉県議、泉氏は旧民主党議員秘書を経て、それぞれ国政入りしている。この3人は半ば生粋の政治家に近い。吉田氏は大学卒業後にイギリスに留学して経営学修士号(MBA)を取得、職務経験として航空会社CA、コンサルタント会社、旧民主党政権期の法相秘書官、大学教員などを経て2021年の衆議院で初当選している。ちなみに略歴の中のコンサルタント会社とは、医療関係者にはそこそこ聞き覚えのあるKPMGヘルスケアジャパンである。さてまず4氏の社会保障政策に対する考え方は、9月7日に日本記者クラブ主催の討論会で概略が触れられている。まずこれを紹介する。野田氏野田政権で社会保障と税の一体改革をやりました。その精神は老後の不安、子育ての不安など国民が抱える不安が一番集中しているのが社会保障分野。この不安をなくし、社会保障の充実と安定を果たしていかなければいけない。そのために財源をいつまでも赤字国債に頼り、将来世代のポケットに手を突っ込んで賄っていくやり方は持続可能性がないとの判断から、消費税を充て併せて財政の健全化を図ることを目指しました。その後、十数年政権を離れている間、残念ながら社会保障改革が進んでない。だからもう1回、医療・介護含めて社会保障のあり方を全般的に見直し、法律上も予算会計上も社会保障費に充てられている消費税も含め財源の扱いに関する大きな議論をこれから党内挙げてやっていくべきではないかと思います。枝野氏社会保障負担という表現自体が財務省の土俵の上に乗せられてるんじゃないかと思います。実は従来型公共事業よりも社会福祉関連への投資のほうが、経済波及効果が大きい。今、日本で足りないのは介護職や保育士などの担い手。重労働のわりに低賃金だからです。国内の人件費に回したお金は、ほぼ国内や地方の消費に回ります。これは消費税の税収増にも繋がります。何よりも国内の消費が冷え込んでいるから、この30年間、日本経済は停滞してきました。賃金が上がらないから消費が停滞し、さらに国内消費に関連する投資も停滞してきた。この停滞に賃金アップは大きな力を与えることになります。経済政策のため借金しても公共事業をやってきたのならば、もっと波及効果が大きい社会福祉関連の人件費に充てる投資、負担ではなくて投資という意識でしっかりと充実させるべきだと私は思います。そうすればその分がきちんと戻ってきて、良い循環ができるはずです。社会福祉関連人件費に投資し、2~3年間、税収や国内消費の回復を見ながら進めていくべきだと思います。泉氏経済効果が語られることが少ない介護の分野でお金が回っていくようにしていかねばならないと思います。たとえば介護離職による経済損失は、多大なものがあります。介護が家庭に内部化されるほど、実は経済損失も大きい事実をわれわれは見なくてはいけない。介護の社会化に投資をし、働く人材の賃金を増やしていく。私は国会議員になる前にデイサービスのスタッフとして勤務し、周りがどんどん結婚退職をしていく中で仕事をしていました。やはり介護人材が集まって、多くの方々の面倒を見られるようにするためには、介護職員の待遇を上げていく。介護職員は地域で生活をしている方々が非常に多いので、彼らが地域で消費をする経済の循環が生まれてきます。これは地域経済の活性化にも繋がっていきます。吉田氏私はこの点(国民の不安)について、大きな二つの原因があると思います。1つは消費税が本当に社会保障に使われているのかという国民の皆さんの疑問があると思います。本当にそう使われているならば、負担をするという国民の皆さんも多いと思います。そのためには政治の信頼回復、言ったとおりに使っていると国民の皆さまに思ってもらえれば全然感じが違うのではないか。もう1つは少子化。労働力不足、消費の冷え込みは人にまつわるところから始まっていると思いますので、根本治療としての少子化対策が必要です。まず、概観すると、枝野氏と泉氏の考えはほぼ同一と言っていい。積極的な社会保障分野、とりわけ介護分野への積極的な財政出動策である。そしてこれは現時点で首相であり自民党総裁でもある岸田 文雄氏が首相就任時に掲げた「成長と分配の好循環による新しい日本型資本主義」ともほぼ同一である。吉田氏は少子化対策として教育の充実(無償化)を上げており、これも枝野、泉両氏と方向性が違うとはいえ積極的な財政出動策と言えるだろう。これに対し、野田氏は財政健全化も念頭に置いている。いわば財務省に近い考えでもある。枝野、泉、吉田氏との大枠での違いは、より現実を見据えなければならない財務相や首相を経験したことに起因するのかもしれない。それでは各氏のよりミクロな政策を見ていこうと思う。野田氏の想いまず、野田氏である。代表選挙の

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ラーメン店の行列に並ぶ人はお金持ちになれない!?【医師のためのお金の話】第84回

街中でよく見かける行列のできるラーメン店。店の前にたくさんの人が並んでいる光景を見ると、思わず並んでみたくなる人も多いのではないでしょうか。あれだけの行列ができるぐらいだから、きっとおいしいに違いない。しかし、ラーメン店の行列に並んでいると、お金持ちになれないと聞くとどうでしょうか。「何をバカなことを言っているんだ! ラーメン店の行列に並ぶのと、お金持ちになることに何の関係があるんだ?」という声が聞こえてきそうです。たしかに、一見すると何の関連性もなさそうですね。しかし、ラーメン店の行列に並ぶメンタリティは、投資に不向きです。その理由は、行列ができる理由と株式などで株価が高騰するメカニズムが同じだからです。嬉々としてラーメン店の行列に並ぶ人は、投資で高値掴みしてしまう可能性がとても高いと言えます。割高な株式や不動産に投資するとロクなことがありません。ラーメン店の行列に並んでいるとお金持ちになれない理由を考えてみましょう。行列に並ぶのはラーメンがおいしいから?ラーメン店で行列に並ぶのは、本当にその店のラーメンがおいしいからでしょうか。「SNSでインフルエンサーに紹介されたから」「テレビや雑誌で取り上げられたから」といった理由が多いのではないでしょうか。これだけ行列ができているのだから、きっとおいしいに違いないと思って並んでしまう人もいるかもしれません。これらの人に共通するのは、周囲に流されやすい性格です。たとえて言えば「赤信号みんなで渡れば怖くない」と同じ状況です。ラーメン店自身が行列をできやすくして、流行っている感じを演出することも珍しくありません。店の前に並んでいる行列が長くなるほど、ますますたくさんのお客さんが来店することを知っているからです。ラーメン店以外の業界でも、景況感を出すためのさまざまな取り組みが工夫されています。人気のあるところは間違いがないと思いがちだからです。しかし、本当に人気店は間違いないのでしょうか。集団心理が常に正しいとは限らないことに注意が必要でしょう。行列に並ぶメンタリティは投資に不向き行列と似たものの1つに、株式投資の人気銘柄が挙げられます。投資では、人気のあるモノが値上がりしやすいです。その典型例は、株式投資のストップ高でしょう。ストップ高とは、買い注文が多過ぎて取引が成立しない状況です。ニュースで素晴らしい内容が報道されると、「これは間違いない」「早く買わなければ」と皆が思って株式の買い注文が殺到します。もちろん、そのままさらに上昇し続ける銘柄もありますが、実態を伴っていないとストップ高後に急落することも珍しくありません。ストップ高の銘柄に飛びついたら、直後に急落し始めて大きな損失をくらったというのはよくある話です。不動産投資でも、1990年代前半までの土地神話とその後のバブル崩壊は似たような状況でした。いずれも高く買って安く売るのですから大幅な赤字です。このようなことを繰り返していると、投資で成功するのは至難の業ですね。ラーメン店の行列に並ぶのは、人気のある銘柄や割高な不動産に投資するのと同じ行為です。嬉々として行列に並ぶメンタリティの人は、投資に不向きと言えます。ブームには乗らず静観しようそれでは、ラーメン店の行列を見かけたらどうすればよいのでしょうか。もちろん、答えはやり過ごすに限ります。もしどうしてもその店のラーメンを食べたければ、ブームが去った後か、閑散とする時間帯に行きましょう。投資も同じです。不動産投資はややスパンが長いので難しい面はありますが、株式投資でブームの最中に飛びつくのは禁物です。たとえば、今話題の半導体銘柄。これらの銘柄群の未来は明るいように感じますが、投資の観点では危険な香りが漂っています。株価が永遠に上昇し続けることはありません。いずれかの時期には下落に転じます。しかも、ブームになるほど皆が注目している時期は、高値掴みになってしまう可能性が極めて高いです。このため、皆が注目している銘柄は、静観するに限ります。もちろん、そのままさらに上昇し続けて手の出ないところに行ってしまうケースがあるかもしれません。その時には縁がなかったと思って潔く諦めましょう。その銘柄を買わなかったからといって、今後の人生で二度とチャンスが訪れないわけではありませんから。投資全般で言えるのは、人と同じ行動をしていると負ける可能性が高いことです。「人の行く裏に道あり花の山」という投資格言があります。群集心理では、大きな成功は得られません。他人と反対のことをやった方がうまくいく場合が多いのです。ラーメン店の行列に並ぶのは、些細な行為に思えます。しかし、行列に並ぼうとする行動の裏側には、投資で高値掴みしてしまうメンタリティが隠されています。たかがラーメン店の行列とは思わず、人と同じことをしない姿勢を貫きたいものです。

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何はさておき記述統計 その8【「実践的」臨床研究入門】第47回

仮想データ・セットを用いて論文の表1を作成してみる前回は仮想データ・セットを用い、無料の統計解析ソフトであるEZR(Eazy R)の操作手順も交えて、変数の型とデータ・セット記述方法の使い分けについて解説しました(連載第46回参照)。今回は、前回同様に仮想データ・セットからEZRを操作して、表1(患者背景表)を実際に作成してみます。まず、下記の手順で仮想データ・セットをEZRに取り込みます。仮想データ・セットをダウンロードする※ダウンロードできない場合は、右クリックして「名前をつけてリンク先を保存」を選択してください。「ファイル」→「データのインポート」→「Excelのデータをインポート」次に、「グラフと表」→「サンプルの背景データのサマリー表の出力」を選択すると、下記のポップアップウィンドウが開きます。画像を拡大する上段の「群別する変数」とは、treatとしたカテゴリ変数(1;低たんぱく食厳格遵守群、0;低たんぱく食非厳格遵守群)でしたので、こちらを選択します(連載第46回参照)。中段の「カテゴリー変数」にはdm(糖尿病の有無)とsex(性別)を選択します(連載第46回参照)。前回、連続変数を記述する際にはまずヒストグラム(度数分布図)を描き、その分布がおおむね正規分布に近似しているかどうかを確認しましょう、と説明しました。UP(蛋白尿定量)は右に裾を引いたような非正規分布でしたので(連載第46回参照)、「連続変数(非正規分布)」として選択します。age(年齢)、albumin(血清アルブミン値)、eGFR、hemoglobin(ヘモグロビン値)、sbp(収縮期血圧)は「連続変数(正規分布)」とします。その他の設定はデフォルトのままでOKですが、下記の項目は以下のように変更してください。正規分布しない連続変数の範囲表示:四分位数範囲(Q1-Q3)※これは好みですので最小値と最大値のままでも可(連載第46回参照)。連続変数の表示の注釈を加える:Yes出力先:CSVファイル出力設定が完了したらOKをクリックしてみましょう。EZRの出力ウィンドウに下図の表が作成されたでしょうか。画像を拡大するtreat群別に下記のようにそれぞれの背景データのサマリーが表で示されています(連載第46回参照)。カテゴリ変数は群別に実数とその割合で連続変数(正規分布)は平均値(Mean)と標準偏差(SD)で連続変数(非正規分布)は中央値(Median)と四分位範囲(Inter-quartile range:IQR)でこの表はCSVファイルとしても出力されています。CSVファイルを英文論文の表1として使えるように成形したものを以下に示します。画像を拡大する可読性を高めるために、数値は四捨五入して有効数字3桁で丸めています。また、脚注(footnote)で略語をスペルアウトなどして、表だけで独立して理解できるように作成することが重要です。表1でp値を記載するかどうかですが、筆者はどちらかというと「記載しない派」です。なぜなら、表1の主な目的は、解析対象となった参加者の記述統計を示すことだからです。場合によっては、表1で異なる群間の比較を示すという意味合いもあることがあります。けれども、p値はあくまで統計的な有意性を示す指標であり、臨床的に意味のある差を示すものではないことに留意が必要です(連載第44回参照)。たとえば、今回作成した表1をみてみましょう。低たんぱく食厳格遵守群と低たんぱく食厳格非遵守群で、性別以外の患者背景にはいずれも統計学的有意差(p<0.05)がついています。両群間で年齢は4歳以上、糖尿病の有病割合は10%以上、収縮期血圧も5mmHg以上差があるので、これらの要因については臨床的にも意味がある差異なのかもしれません。しかし、血清アルブミン値やヘモグロビン値の1ポイントにも満たないわずかな差は臨床的に大きな意味を持つでしょうか。サンプルサイズがそこそこ大きい場合、臨床的にはごくわずかな差でも統計学的には有意差が出ることがあります。というわけで、筆者は投稿時点では表1にp値を示さないことが多いです。ただ、査読の段階でエディターやレビュワーからp値も記載するように指摘されることもあり、その際は素直に従います(笑)。

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アニメ「インサイド・ヘッド2」(その1)【なんで恥ずかしくなるの?なんで恥ずかしさは「ある」の?(社会的感情)】Part 1

今回のキーワード恥ずかしさ(羞恥心)悔しさ(後悔)うらやましさ(羨望)ねたましさ(嫉妬心)うぬぼれ(傲慢)誇り(自慢)あわれみ(同情)さげすみ(軽蔑)自分を恥ずかしく思う一方で、そうじゃない人をうらやましく思ったり…逆に自分はモテると思う一方で、そうじゃない人を気の毒に思ったり…このように、皆さんは人間関係で沸き起こる感情に日々とらわれていませんか? この感情は、社会的感情と呼ばれています。なぜこのような感情は出てくるのでしょうか? そもそもなぜこのような感情は「ある」のでしょうか?これらの答えを探るために、今回は、アニメ「インサイド・ヘッド2」を取り上げます。このアニメに新たに登場する「大人の感情」のキャラクターを通して、社会的感情の機能とその起源を掘り下げてみましょう。なお、すでに「インサイド・ヘッド1」の記事で、基本感情について解説しました。また、この続編記事では自由意志について解説しました。詳細は関連記事1、関連記事2をご覧ください。社会的感情の機能とは?インサイド・ヘッド1に引き続き、舞台は再びライリーの頭の中。そこでは、ヨロコビ、ビビリ、イカリ、ムカムカ、そしてカナシミの5つの感情のキャラクターたちが、変わらず彼女をずっと見守り続けていました。そんな中、ライリーが13歳になり思春期に入った時、さらに4つの「大人の感情」のキャラクターが現れます。それではまず、そのうちの2つの「大人の感情」のキャラクターの特徴を通して、私たちの社会的感情の機能をまとめてみましょう。(1)ハズカシ―羞恥心ハズカシは、大柄でショッキングピンクの色。パーカーを着ており、恥ずかしくなった際にはそのパーカーのフードで顔を隠す癖があります。ヨロコビと握手する時、緊張から手汗がかなりありました。ライリーがホッケー合宿で憧れの先輩ヴァルに初めて会った時、舞い上がってぎこちないダンスをしてしまいますが、この時にハズカシはライリーの顔を赤くさせます。この社会的感情は、まさに恥ずかしさ(羞恥心)です。顔を隠すのは、いわゆる「穴があったら入りたい」「その場から消えたい」という気持ちで、自己縮小感と呼ばれています1)。大柄なハズカシだからこそ、小さくなろうとするギャップがおもしろいです。これは、社会的な欲求の1つである、相手(社会)から好かれたいという愛情欲求(自己肯定感)が満たされていないことへの反応です。つまり、羞恥心とは、とくに見た目や立ち振る舞いなどのもともとの資質において、相手(集団)から受け入れられない状況への不快感です。逆に言えば、そうならないようにするため、相手に好かれるような見た目や立ち振る舞いをするようになります。これが、恥ずかしさの心理の機能です。恥ずかしさとよく似た社会的感情として、悔しさ(後悔)があります。これは、もう1つの社会的な欲求である、相手(社会)に期待されたいという承認欲求(自己効力感)が満たされないことへの反応です。とくに能力や努力において、相手(集団)から受け入れられない状況への不快感です。逆に言えば、そうならないようにするため、相手の期待に応えようと努力するようになります。これが、悔しさの心理の機能です。また、時として申し訳なさという罪悪感に発展します。たとえば、ライリーは更衣室で一緒にいた仲良しの友達とついはしゃいでしまい、気が抜けているとコーチに目を付けられたシーン。そのために、チームメンバー全員がラインダッシュさせられますが、その後にライリーはヴァルに謝りに行きます。これがまさに気が抜けていた後悔からの罪悪感です。この感情に特化したキャラクターは今回の映画には登場しておらず、この先で説明するシンパイが掛け持ちしていました。なお、恥ずかしさと悔しさは、得られないのが愛情欲求か承認欲求かという違いがありますが、日常的にはかぶっています。このシーンにしてもそうでしたが、一緒になって使われていることが多いです。(2)イイナー―羨望イイナーは、小柄で緑色。うるうるした大きな目で上目遣いをしており、まるで物欲しげな子犬のようです。ライリーがヴァルに初めて会った時、憧れのあまり、イイナーは、ヴァルのハイライトにしてある赤い髪にライリーの手を伸ばさせます。この社会的感情は、まさに「いいなあ」といううらやましさ(羨望)です。これは、相手の承認欲求が満たされていることへの反応です。相対的に言えば、自分の承認欲求が満たされていないことへの反応です。そうならないようにするため、期待に応えようと私たちは努力するようになります。これが、うらやましさの心理の機能です。そして、好感が伴えば、賞賛の心理に発展します。うらやましさとよく似た社会的感情として、ねたましさ(嫉妬心)があります。うらやましさは自分が持っていないもの(持つべきもの)を相手が持っていることへの反応であるのに対して、ねたましさは自分がもともと持っているもの(持つべきもの)を相手に取られることへの反応です。その多くがパートナーの愛情であることから、この記事では、わかりやすさを優先して、ねたましさは相手の愛情欲求が満たされてしまうことへの反応と分類します。同じく、この心理のおかげで、そうならないようにするために、パートナーなどの親しい人により好かれるかかわりをするようになります。これが、ねたましさの心理の機能です。うらやましさとねたましさの違いも、得られないのが愛情欲求か承認欲求かで分けましたが、実際はごっちゃになって使われることが多いです。ちなみに、うらやましさはポジティブなニュアンスがありますが、ねたましさはネガティブなニュアンスがあります。この点で、ねたましさのキャラクターは、今回の映画には登場していないのですが、名付けるとしたらイイナーに対して「ヤダナー」でしょう。ちょうど、仲良しの2人がライリーとは違う高校に揃って行くことを知った時の裏切られたような感情です。ねたましく、恨めしくも思うシーンですが、基本感情のカナシミが代わりに動こうとしていました。なお、ねたましさの心理の詳細については、関連記事3をご覧ください。次のページへ >>

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