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事例008 蕁麻疹にダイアコート軟膏の処方で査定【斬らレセプト シーズン4】

解説急性蕁麻疹の患者に、外用合成副腎皮質ホルモン剤に分類される「ジフロラゾン酢酸エステル(商品名:ダイアコート軟膏)」を処方したところ、A事由(医学的に適応と認められないもの)にて査定となりました。突合点検結果連絡票にての査定連絡でした。当院による責の有無を調べてみました。この連絡票を見落として毎月18日までに不一致申し出を行わないと、当院に責がない場合であっても、当院の診療報酬から相殺されてしまうからです。添付文書をみてみました。適応症には「固定蕁麻疹」はありますが、「蕁麻疹」はありません。薬効薬理では、外用合成副腎皮質ホルモン剤の抗炎症効果があります。医師に問い合わせたところ「膨疹」に有効なため使用したとのことでした。不一致申し出の準備を進めていたところ、『蕁麻疹診療ガイドライン2018』(日本皮膚科学会編)に、「外用合成副腎皮質ホルモン剤は、膨疹出現が抑制されることを期待し得るが、副作用の可能性を考慮すると一般的な蕁麻疹の治療用としては推奨されない」との記述をみつけました。過去の査定状況を見直したところ、同様の理由にて査定となった事例が複数あり、当院の責による査定であることが判明しました。医師には、効能または効果に「蕁麻疹」が記載されていないこと、蕁麻疹ガイドラインでは一般的に推奨されていないことが記載されていることをお示ししました。レセプトチェックシステムには、「蕁麻疹」に使用する場合は、「医学的必要性の記入が必須である」と注意コメントを追加登録して査定対策としました。

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ALK陽性NSCLCにおける術後アレクチニブ、安全性の評価は?(ALINA)/WCLC2024

 切除可能なALK融合遺伝子陽性非小細胞肺がん(NSCLC)患者を対象とした国際共同第III相試験「ALINA試験」では、術後補助療法としてアレクチニブを用いた場合、プラチナベースの化学療法を用いた場合と比較して、無病生存期間(DFS)を有意に改善したことが報告されている1)。この結果を基に、本邦でもアレクチニブの術後補助療法での使用が承認されているが、ALINA試験におけるアレクチニブの用量は600mg×2/日であり、本邦における進行・再発時の使用および術後補助療法の承認用量とは異なっている。2024年9月7~10日に米国・サンディエゴで開催された世界肺がん学会(WCLC2024)で、堀之内 秀仁氏(国立がん研究センター中央病院 呼吸器内科)がALINA試験の安全性について詳細データを発表した。・試験デザイン:国際共同第III相非盲検無作為化比較試験・対象:未治療の切除可能なStageIB〜IIIA(UICC/AJCC第7版)のALK融合遺伝子陽性NSCLC患者・試験群(アレクチニブ群):アレクチニブ600mg(1日2回、2年間または再発まで) 130例・対照群(化学療法群):シスプラチン(不耐の場合はカルボプラチンに変更可能)+ペメトレキセドまたはビノレルビンまたはゲムシタビン(3週ごと4サイクルまたは再発まで) 127例・評価項目:[主要評価項目]DFS[その他の評価項目]中枢神経系再発に対するDFS(CNS DFS)、全生存期間(OS)、安全性など 主な結果は以下のとおり。・治療期間中央値はアレクチニブ群23.9ヵ月、化学療法群2.1ヵ月であり、アレクチニブ群の安全性追跡期間が長かった。・Grade3/4の有害事象(AE)の発現割合は、アレクチニブ群30%、化学療法群31%であり、Grade5のAEはいずれの群にも認められなかった。・AEにより減量、中断に至った患者の割合はそれぞれアレクチニブ群で26%、27%、化学療法群で10%、18%であった。・AEにより治療中止に至った患者の割合はアレクチニブ群で5%、化学療法群で13%であった。・アレクチニブ群で多く認められたAEは、CPK上昇(43.0%)、便秘(42.2%)、ASTもしくはALT上昇(43.8%)、血中ビリルビン上昇(39.1%)などであり、最初の発現までの期間中央値は投与1ヵ月以内が多かった。また、これらのAEの多くはグレードが低く、アレクチニブの投与中止には至らなかった。・安全性プロファイルは、進行・再発時の使用において報告されているものと同様であった。 堀之内氏は、アレクチニブ群の治療期間の長さとAEの発現割合、治療中止に至った患者の割合に触れたうえで、忍容性は良好で安全性プロファイルは管理可能なものであるとし、今回の結果を「DFS改善のベネフィットと併せて、術後補助療法としてのアレクチニブの使用が重要な新規標準治療であることを支持するものである」とまとめた。

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不眠症と心血管リスクとの関連~メタ解析

 不眠症と心血管疾患(CVD)との関連性は、観察研究により示唆されているが、その原因やメカニズムは明らかになっていない。中国・The First Affiliated Hospital of Xinxiang Medical UniversityのXuejiao Zhang氏らは、不眠症とCVDの潜在的な因果関係を調査するため、システマティックメタレビューおよび観察研究のメタ解析とメンデルランダム化(MR)研究を組み合わせて分析を行った。Journal of Clinical Sleep Medicine誌オンライン版2024年8月21日号の報告。 2023年7月11日までに公表された英語論文をPubMed、Web of Science、Embaseより検索した。独立した2人の査読者により論文をスクリーニングし、潜在的なバイアスを最小限に抑えた。観察研究のメタ解析とMR研究により、不眠症と冠動脈疾患(CAD)、心房細動(AF)、心不全(HF)、心筋梗塞(MI)、高血圧(HTN)、脳卒中との関連性を評価した現在のエビデンスをまとめた。 主な結果は以下のとおり。・最終的な分析には、観察研究のメタ解析4件、MR研究9件を含めた。・観察研究のシステマティックメタレビューにより、不眠症は、AF、MI、HTNを含む多くのCVDの独立したリスク因子であることを裏付ける強力なエビデンスが得られた。・MR研究のメタ解析では、不眠症は、CAD、AF、HF、HTN、大動脈性脳卒中、虚血性脳卒中、原発性頭蓋内出血と潜在的な因果関係を有する可能性が示唆された。【CAD】オッズ比(OR):1.14、95%信頼区間(CI):1.10〜1.19、I2=97%【AF】OR:1.02、95%CI:1.01〜1.04、I2=94%【HF】OR:1.04、95%CI:1.03〜1.06、I2=97%【HTN】OR:1.16、95%CI:1.13〜1.18、I2=28%【大動脈性脳卒中】OR:1.14、95%CI:1.05〜1.24、I2=0%【虚血性脳卒中】OR:1.09、95%CI:1.03〜1.14、I2=60%【原発性頭蓋内出血】OR:1.16、95%CI:1.05〜1.27、I2=0%・不眠症と心原性脳塞栓症、小血管性脳卒中との因果関係を示唆するエビデンスは見当たらなかった。 著者らは「不眠症とCVDリスクとの間に因果関係のある可能性を裏付ける強力なエビデンスが得られた。不眠症の治療戦略は、CVD予防の有望なターゲットとなる可能性がある」と結論付けている。

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人間なら死んでしまうほどの高血糖にコウモリはどう対応している?

 コウモリの中には、人間なら死に至るほどの高血糖状態で生存している種がいる。これは、コウモリがどんな環境でも生き延びられるように適応してきた結果と考えられ、このような変化は糖尿病治療に役立つ可能性があるという。米ストワーズ医学研究所のJasmin Camacho氏らの研究の結果であり、詳細は「Nature Ecology & Evolution」に8月28日掲載された。同氏は、「ある種のコウモリの血糖値が、自然界でこれまで見られた中で最も高いことが分かった。その血糖値は哺乳類にとっては致命的で昏睡を引き起こすレベルだ。われわれは、これまであり得るとは思いもよらなかった事実を目にしている」と語っている。 Camacho氏らは29種のコウモリ、約200匹を捕獲し、昆虫や果物、花の蜜などの糖分を与え、血糖値を測定した。すると、ある種のコウモリは750mg/dL以上、あるいは測定可能範囲を超えて「high」とのみ表示されるほどの高値を示した。この研究の具体的な内容について、論文共著者の1人で同研究所のAndrea Bernal-Rivera氏は、「コウモリの体内で糖が吸収、貯蔵、利用されるプロセスが、摂取した糖の種類によってどのように異なるかを観察した」と説明している。 研究によりコウモリは、それぞれが置かれた環境の中で、得られる餌に適応して生き残るような戦略を進化させてきたことが示唆されたという。例えば3000万年前、新熱帯区(主に南米)に生息していたある種のコウモリは、昆虫だけを餌として生き延びていたが、その後、餌を変化させることで、多くの異なる種のコウモリへと進化した。その結果、餌は果物や花の蜜、肉、さらには他の動物の血液に至るまでに広がった。そして、それらを摂取した際に生じる血糖変動のコントロールに役立つ、さまざまな適応を遂げたと考えられるとのことだ。 Camacho氏によると、あるコウモリは血糖値を下げるためにインスリンシグナル伝達経路を発達させ、別のコウモリは高血糖状態に耐えられるように変化したという。そして「このような変化は、血糖値のコントロールが困難な糖尿病患者に見られる変化に似ている」としている。ほかにも、糖分を多く含む餌を摂取するコウモリは腸が長くなって、腸管の表面積も大きくなる傾向が見られた。また花の蜜を摂取するコウモリは血糖輸送を司る遺伝子が活性化していた。 この研究報告について、米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)のNadav Ahituv氏は、「餌の異なるさまざまなコウモリの代謝特性だけでなく、腸の形態、食性の適応に関わる可能性のあるタンパク質構造やゲノム領域の違いも明らかにした研究と言える」と論評。また、「これらのデータは、ヒトのさまざまな代謝性疾患に対する新たな治療法の開発につながる可能性がある」と付け加えている。

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HPV感染は男性の生殖機能を損なう可能性

 HPV(ヒトパピローマウイルス)は、ほぼ全例(95%)の子宮頸がんの原因であることから、これまで女性の健康問題と考えられてきた。しかし、男性にもHPVを恐れる理由と予防接種を受けるべき理由のあることが新たな研究で明らかになった。男性が高リスク型のHPVに感染すると、生殖機能が障害される可能性のあることが示されたのだ。国立コルドバ大学(アルゼンチン)化学学部教授のVirginia Rivero氏らによるこの研究結果は、「Frontiers in Cellular and Infection Microbiology」に8月23日掲載された。 HPVは高リスク型と低リスク型に分類され、前者は、子宮頸がんや陰茎がん、肛門がんなどのリスクを上昇させ得る。米疾病対策センター(CDC)は、性的に活発になってウイルスに曝露するリスクが高まる前にHPVワクチンを接種する方が効果が高いことから、9〜14歳の小児へのワクチン接種を推奨している。しかし、男子でのワクチン接種率は女子よりも低く、2022年の米国での接種率は、女子で約65%であったのに対し男子では約61%にとどまっていたという。 この研究では、205人の男性(年齢中央値35歳)を対象に、生殖器系での高リスク型または低リスク型HPV感染と精液の質、酸化ストレス、炎症との関連が検討された。Rivero氏らが対象者の精液サンプルを調べたところ、19.0%(39/205人)でHPV感染が確認された。陽性サンプルからHPVの遺伝子型を割り出すことができたのは27人で、うち20人(74.0%)は少なくとも1種類の高リスク型HPVに、7人(26.0%)は低リスク型HPVに感染していることが確認された。対象者のうち、HPVも含め尿路病原菌が確認されず、膿精液症のなかった43人を対照とした。 解析の結果、高リスク型HPV感染者でも低リスク型HPV感染者でも、WHOのガイドラインに基づいて評価した精液の質に有意な低下は認められなかった。しかし、高リスク型HPV感染者では低リスク型HPV感染者や対照と比べて、精子のアポトーシスや壊死が有意に多く、活性酸素種(ROS)陽性精子の割合も高いことが確認された。また、高リスク型HPV感染者と低リスク型HPV感染者の精液に顕著な炎症は認められず、さらに前者では予想外にも、対照と比べて精液中の白血球と炎症性サイトカイン(IL-6およびIL-1β)レベルが低いことも観察された。 Rivero氏は、「高リスク型HPVに感染した男性は、酸化ストレスと尿生殖器の局所的な免疫反応の低下により、死滅する精子が増加することが示された。この結果は、これらの男性では生殖機能が障害を受けている可能性があることを示唆している」と話している。 Rivero氏は、「われわれの研究は、高リスク型HPVが精子のDNAの質にどのように影響し、それが生殖機能と子孫の健康とどのように関わってくるのかについて、重要な問題を提起している」との考えを示す。その上で、「これらの影響の根底にある生物学的メカニズムの解明が必要だ。また、性感染症(STI)は極めて一般的であることから、われわれは、HPV感染と他のSTIの併発がこれらの結果に影響を及ぼすかどうかを調査することを計画している」と話している。

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騒音曝露は心臓の健康に影響を及ぼし心筋梗塞後のMACEリスクを高める

 ドイツとフランスの住民を対象にした2件の研究から、都会の騒音は心臓の健康に悪影響を及ぼす可能性のあることが明らかになった。これらの研究結果は、欧州心臓病学会年次総会(ESC Congress 2024、8月30日~9月2日、英ロンドン)で発表された。 1件目の研究は、ブレーメン心臓血管研究所(ドイツ)のHatim Kerniss氏らが、急性心筋梗塞(MI)によりブレーメン市の心臓センターに入院した50歳以下の患者430人を対象に実施したもの。研究グループが対象者の居住地の騒音レベルを調べたところ、これらの対象者は、同じ地域に居住する一般住民よりも高いレベルの騒音に曝露していることが判明した。また、糖尿病や喫煙などの従来の心血管疾患(CVD)リスク因子に関する評価指標(LIFE-CVD)のスコアから低リスクと判定されるMI患者では、スコアが高い人に比べて騒音レベルが有意に高いことも示された。 Kerniss氏は、「都会の騒音は、CVDのリスク因子として確定している因子が少ない若年層でのMIリスクを有意に増加させる可能性がある」とESCのニュースリリースの中で結論付けている。研究グループは、従来のリスク評価モデルでは、低リスクと考えられる若年層の心血管リスクを過小評価する可能性があると指摘。騒音曝露をモデルに組み込むことで、MIのリスクが高い若年層をより正確に特定でき、予防策や介入をより効果的に行うことができる可能性があるとの見方を示している。 2件目の研究は、ブルゴーニュ大学およびディジョン病院(フランス)のMarianne Zeller氏らが、フランスのMIに関するデータベース(RICO)を用いて、初発のMI後の患者における環境騒音の影響について検討したもの。対象は、急性MIによる入院後28日以上生存していた患者864人で、1年後の追跡調査の結果が分析された。 入院から1年後の時点で、19%の患者に主要心血管イベント(MACE;心臓突然死、心不全による再入院、MIの再発、緊急血行再建、脳卒中、狭心症/不安定狭心症)が生じていた。対象者の自宅の住所を基に騒音レベルを算出すると、平均騒音レベルは24時間を通して56.0dB、夜間で49.0dBと中程度であり、ヨーロッパの大部分の人口を代表する騒音曝露レベルであった。解析の結果、大気汚染や社会経済的レベルなどの他の因子に関わりなく、夜間の騒音レベルが10dB増加するごとにMACEリスクが25%増加することが明らかになった(ハザード比1.25、95%信頼区間1.09〜1.43)。 Zeller氏は、「これらのデータは、騒音曝露がMIの予後に影響を及ぼす可能性に関する初めての洞察となるものだ」と述べている。また同氏は、「より大規模な前向き研究によりこの結果が裏付けられれば、MIから回復した患者に対する治療の一環として、騒音低減に取り組むべきことが支持されるかもしれない」と話している。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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片頭痛は最初の兆候が現れたときのケアで抑制可能か

 片頭痛が始まる前の最初の兆候(プロドローム)が現れた時点で治療薬のubrogepantを使用すると、患者はほとんど症状を感じることなく普段通りの生活を送れる可能性のあることが、新たな臨床試験で明らかになった。Ubrogepantは、抗カルシトニン遺伝子関連ペプチド(calcitonin gene-related peptide;CGRP)受容体に結合し、痛みの伝達に重要な役割を果たしているCGRPを遮断することにより効果を発揮する。米アルバート・アインシュタイン医科大学のRichard Lipton氏らによるこの研究結果は、「Neurology」に8月28日掲載された。 Lipton氏は、「今回の結果に基づくと、片頭痛のプロドロームが現れた時点で患者にubrogepantによる治療を行うことで、片頭痛発作を初期段階で迅速に治療することができ、患者は不快感や混乱をほとんど感じることなく日常生活を送ることができる可能性がある。これは、片頭痛を持つ人の生活の質(QOL)の向上につながるかもしれない」と述べている。 この臨床試験では、片頭痛発作を月に2〜8回経験する18〜75歳の患者518人が対象とされた。対象者全員が、片頭痛が生じる1〜6時間以内にプロドロームとして、光や音に対する敏感さ、疲労感、首の痛みやこわばり、めまい、視覚前兆などを定期的に経験していた。試験では、対象者の2回の片頭痛のプロドロームに対して治療を行った。患者は、治療順序として、1回目のプロドロームにはプラセボ、2回目のプロドロームにはubrogepant 100mgによる治療を行う群と、その逆の順序で治療を行う群にランダムに割り付けられた。解析は477人を対象に行われた。片頭痛による日常的な活動への制限の程度は、対象者が5段階のリッカート尺度により、0(全く制限なし)から4(極端に制限されている)で評価した。 その結果、治療から24時後の時点で日常的な活動について「制限なし」と答えた対象者の割合は、ubrogepant 100mgによる治療を受けた場合には65.4%だった一方で、プラセボによる治療を受けた場合には47.8%にとどまることが明らかになった。Ubrogepant 100mgによる治療効果は、薬の投与後2時間で現れ、ubrogepantによる治療を受けた人ではプラセボによる治療を受けた人に比べて「制限なし」を報告する可能性が76%高かった(オッズ比1.76、95%信頼区間1.32〜2.35、P=0.0001)。 Lipton氏は、「片頭痛は世界的に最も患者数の多い病気の一つであるが、この症状に苦しむ非常に多くの人が治療を受けていないか、治療に満足していないことが報告されている」と話す。その上で、「片頭痛のプロドロームが現れたときのケアを改善することが、予後を改善する鍵になる可能性がある。この研究結果は、ubrogepantが、片頭痛を持つ人が普段通りに日常生活を送るのに役立つ可能性のあることを示唆している」と述べている。

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子どもの成績向上には知能だけでなく非認知能力も必要

 子どもが学業で良い成績を収めるために重要なのは知能だけではないことが、英ロンドン大学クイーン・メアリー校心理学分野のMargherita Malanchini氏らの研究で示された。良い成績を収めるためには、知能に加えて意欲や自己管理能力などの非認知能力も知能と同じくらい重要であることが、遺伝的データで示されたという。この研究結果は、「Nature Human Behaviour」に8月26日掲載された。 Malanchini氏は、「われわれの研究は、知能こそが優れた学業成績の主な要因であるとする長年の仮説に疑問を投げかけるものだ」と言う。その上で、「われわれは、根性や忍耐力、学問への関心、学ぶことに対する価値観などの非認知能力が優れた学業成績を予測する重要な因子であること、さらに、その影響力は、時の経過とともに徐々に強くなることを示す説得力のあるエビデンスを得た」と付け加えている。 この研究は、学業成績の追跡調査が行われた7~16歳のイングランドとウェールズの子ども1万人以上を対象としたもの。Malanchini氏らは対象者のDNAを分析し、それぞれの子どもが学校でどの程度の成績を収められるかを予測する多遺伝子リスクスコア(PRC)を構築した。 その結果について、論文の共著者である英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)のAndrea Allegrini氏は、「われわれは、非認知能力に関連する遺伝的な影響が小中学校時代の学業成績を予測すること、その予測能は年齢とともに徐々に強まることを突き止めた。例えば、7歳時から16歳時までにその影響力はほぼ2倍に高まっていた」とロンドン大学クイーン・メアリー校のニュースリリースの中で説明。「義務教育が終わる頃には、非認知能力に関連する遺伝的要因が、認知能力と同程度に学業成績を予測する上で重要になっていた」としている。 研究グループはさらに、兄弟姉妹の比較により、遺伝的要因とは別に、共通の家庭環境がどのように影響を与えているかを調べた。その結果についてAllegrini氏は、「家族全体のプロセスが重要な役割を果たす一方で、家族内でも、非認知的な遺伝的特徴が学業成績に与える影響が徐々に増すことが明白に示された。このことは、子どもが自分の性格や気質、能力に基づいて自らの学習経験を積極的に形成し、自分の強みを強化するフィードバックループが生まれている可能性を示唆している」と指摘している。 「これらの結果は、優秀な成績を収めるためには知能だけでは必ずしも十分ではなく、意欲や好奇心などの特性も大きな役割を果たすこと、また、その一部は遺伝的な要因にとどまらず、家庭や学校の環境にも左右されることを意味する」とMalanchini氏らは説明する。 Malanchini氏は、「われわれの教育システムは、これまで認知発達に重点が置かれてきた」と指摘。「今こそ重視すべき点を見直し、非認知能力を育むことも同等に重視すべきだ。それによって、あらゆる生徒にとって、より包括的かつ効果的な学習環境を作り出すことができる」と述べている。

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体重増加による血管への悪影響、年齢で異なる

 歳とともに体重が増えることによる血管への悪影響は60歳未満で顕著であり、60歳を超えると有意なリスク因子でなくなる可能性を示唆するデータが報告された。名古屋大学大学院医学系研究科産婦人科の田野翔氏、小谷友美氏らの研究結果であり、詳細は「Preventive Medicine Reports」7月号に掲載された。 BMIで評価される体重の増加が、動脈硬化性疾患のリスク因子であることは広く知られている。しかし、体重増加の影響力は人によって異なり、体重管理により大きなメリットを得られる集団の特徴は明らかでない。田野氏らは、動脈硬化の指標である心臓足首血管指数(CAVI)とBMIの変化との関連を検討することで、体重増加の影響が大きい集団の特定を試みた。 この研究は、愛知県で複数の医療施設を運営しているセントラルクリニックグループでの企業健診受診者データを用いて行われた。2015年から2019年(新型コロナウイルス感染症パンデミックにより人々のBMIなどに変化が生じる前)に年間BMI変化量を評価でき、かつ2019年にCAVIが測定されていた459人(男性71.9%)を解析対象とした。 459人中53人(11.5%)が、2019年時点のCAVIが9以上であり、動脈硬化の進展が疑われた。CAVI9以上/未満で比較すると、9以上の群は高齢で男性が多く、高血圧、脂質異常症、糖尿病などの動脈硬化リスク因子の保有率が高いという有意差が認められた。一方、BMIは2015年と2019年のいずれの時点でも有意差がなかった。ランダムフォレストモデルという統計学的手法により、CAVIが9以上であることに寄与する因子として、年齢が最も重要であり(重要度を表す値が17.09)、次いで脂質異常(総コレステロールが同7.86、HDL-コレステロールは7.04)で、その次が体重(現在〔2019年時点〕のBMIが6.09、年間BMI変化量が5.98)であることが分かった。 次に、交絡因子(年齢、性別、現在のBMI、年間BMI変化量、血圧、糖・脂質代謝指標など)の影響を調整し、2019年時点のCAVIと関連のある因子を重回帰分析で検討すると、独立した正の関連因子として、年齢と中性脂肪とともに、年間BMI変化量(β=0.09)が抽出された。反対に、独立した負の関連因子として、性別が女性であることと、現在のBMI(β=-0.34)が抽出された。 続いて年齢60歳未満/以上で層別化した上で、CAVI9以上に関連する因子を検討した。その結果、60歳未満の群では、年齢(調整オッズ比〔aOR〕1.32〔95%信頼区間1.15~1.52〕)以外では、年間BMI変化量(aOR11.98〔同1.13~126.27〕)のみが有意な関連因子として抽出された。性別や血清脂質および現在のBMIとの関連は有意でなかった。一方、60歳以上の群における有意な関連因子は年齢(aOR1.44〔同1.17~1.76〕)のみであり、現在のBMIや年間BMI変化量を含むその他の因子は独立した関連が示されなかった。なお、60歳以上における年齢の影響を性別に比較した場合、有意水準に至らないものの、女性の方がより大きな影響を及ぼしていた。 著者らは本研究で明らかになった主なポイントとして、第一にCAVIに最も影響を及ぼす因子は年齢であること、第二に年間BMI変化量はCAVIと正の関連があった一方で現在のBMIは負の関連があること、第三に60歳未満では年間BMI変化量がCAVI9以上の関連因子であるが60歳以上ではそうでないことを挙げている。中でも60歳未満で年間BMI変化量がCAVI高値の独立した関連因子であるという点は、肥満と動脈硬化進展に関する新たな知見だとしている。現在のBMIとCAVIとの関連が負であることについては、肥満が健康リスク因子であるにもかかわらず、生命予後に対して保護的に働くという、いわゆる「肥満パラドックス」を表しているのではないかと考察されている。 なお、本研究は観察研究のため、介入によって体重管理を行った場合にCAVI上昇が抑制されるかは不明なことなどが、解釈上の注意点として付記されている。

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ブレイクダンスで頭髪が薄くなる?【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第265回

ブレイクダンスで頭髪が薄くなる?パリオリンピック、盛り上がりましたね。個人的には、初めての種目だったブレイキンを楽しく見ることができました。残念ながら、次のロサンゼルスオリンピックでは、ブレイクダンスの本場の国というのにブレイキンはなくなるそうです。ヒップホップ文化の4大要素なのに…。さて、ブレイクダンスに関する医学論文はたくさんあります。この理由として、ダンス医学の雑誌(Journal of Dance Medicine & Science)の存在が大きいです。しかし、あえて王道のダンス医学誌から離れて、ブレイクダンスに関する論文を探すのが、通(つう)ってもんです。Monselise A, et al. Break dancing: a new risk factor for scarring hair loss. J Cutan Med Surg. 2011 May-Jun;15(3):177-179.これはありふれた男性型脱毛症(AGA)に見えた症例なのですが、実はそうでなかったという報告です。患者は、ブレイクダンスをしている男性で、得意技はヘッドスピンだったようで、そのため頭に過度な負荷がかかっていました。ブレイクダンスのときは帽子をかぶる人も多いと思いますが、地頭でダンスしている人もたまに見かけます。髪の毛が引っ張られて痛くないのかな…と思ってしまいます。頭でくるくる回っていたためか、このブレイクダンサーのAGAと思われる脱毛は、頭皮の生検によって、実は毛孔性苔癬であることがわかりました。よく生検しようと思いましたね。毛孔性苔癬は毛囊上皮の角化異常のような病態で、若い頃に上腕伸側や大腿にざらざらとした小丘疹が多発する、アレです。毛孔性苔癬毛孔性苔癬は放置していると、瘢痕化してしまい、不可逆的な脱毛になることがあります。そのため、もしブレイクダンサーがAGAに悩んでいる場合、「もしかして毛孔性苔癬かも」と考えるクセをつけておきましょう。ちなみに、ブレイクダンサーの外傷で一番多いのは、腕と肩とされています1)。パリオリンピックをきっかけにブレイキンを始めてみようと思った皆さんは、注意してください。1)Tsiouti N, et al. Injury Occurrence in Break DanceAn Online Cross-Sectional Cohort Study of Breakers. J Dance Med Sci. 2021 Mar 15;25(1):2-8.

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第229回 迫る自民党総裁選、立候補者の言い分は?(前編)

さて前回は立憲民主党代表選挙の立候補者が掲げる社会保障、医療・介護政策を取り上げた。となれば、いま一番熱い? 自由民主党(以下、自民党)の総裁選を取り上げないわけにはいかないだろう。自民党総裁選は、1955年の結党以来、今回で45回目。ちなみに現在のような推薦人制度に基づく立候補制となったのは1972年の第12回総裁選(田中角栄が当選)以降であり、これ以降で現在まで最も立候補者が多かった時は2008年の第38回と2012年第40回の5人である。しかし、今回は9人。形式的には派閥解消後初の総裁選ということもあってか、異様な賑わい、まるで東京都知事選化である。9人の立候補者を50音順に挙げると、石破 茂氏(67)、加藤 勝信氏(68)、上川 陽子氏(71)、小泉 進次郎氏(43)、河野 太郎氏(61)、小林 鷹之氏(49)、高市 早苗氏(63)、林 芳正氏(63)、茂木 敏充氏(68)。国会議員当選回数(参院も含む)は石破氏の12回が最多、次いで茂木氏の10回、河野氏と高市氏が9回、加藤氏と上川氏が7回、林氏が6回、小泉氏が5回、小林氏が4回。ちなみにこの中で世襲議員は、石破氏、加藤氏(娘婿として)、小泉氏、河野氏、林氏で過半数を占める。立候補者全員が閣僚経験者だが、小泉氏と小林氏は経験1回である。自民党で総裁を除く最高幹部である、幹事長、総務会長、政調会長という党三役経験者は、石破氏と茂木氏がともに幹事長・政調会長、加藤氏が総務会長、高市氏が政調会長の経験者である。総裁選立候補回数は石破氏が今回で最多タイの5回(同じ5回は小泉 純一郎氏)、河野氏が3回。両者とも第12回総裁選以降導入された決選投票方式で過去3回行われた決選投票経験者である。このようにしてみると、改めて、ベテランから若手まで幅広い候補者が並んだことがわかる。ちなみに自民党自体が総裁選特設ページを設けている。「THE MATCH」とややエンタメ化を意識したページで、各候補の政策は通常の一般選挙の選挙公報を模したような紙ペラ1枚が掲載されている。ちなみにこれとは別に各候補とも自前の総裁選特設ページを開設している。当然ながら、多くの候補は自前ページのほうの内容が充実している。ということでこの自前ページを前提に、自民党の特設ページや日本記者クラブが主催した総裁選立候補者の公開討論会なども参考にしながら、恒例の各候補の社会保障、医療・介護政策を見ていき、独断と偏見の評価も加えたい。なお、あまりに候補者が多過ぎるので、2回にわけてお届けしたい。となると、2回目は総裁選投票当日になってしまうが、9人全員を一気に紹介したら1万字超となるので、ご理解いただきたい。石破氏(鳥取1区選出)まず、石破氏の略歴だが、父親の石破 二郎氏は旧建設省事務次官を経て、鳥取県知事、自民党参院議員に当選し、旧自治相などを歴任した人物。旧三井銀行を経て、父の跡を継いで自民党から政界入りした。しかし、今の若年世代は知らないかもしれないが、1993年の宮澤 喜一内閣の政治改革停滞に伴い野党が提出した内閣不信任案決議に自民党議員のまま賛成票を投じた。直後の衆院選では党公認を得られなかったものの無所属で当選。その後、自民党の下野に伴い細川連立政権入りした、自民党離党組の羽田 孜氏・小沢 一郎氏らが率いる新生党に入党した。新生党が野党各党と新進党を結成した際にもそのまま同党に参加したが、安保政策の不一致から新進党を離党し、橋本 龍太郎氏が総裁の時の自民党に復党している。私が大学4年時、宮澤政権の崩壊直前に自民党若手政治家たちを代表した石破氏が、政治改革実現を訴えるために宮澤氏の私邸を訪問し、テレビカメラに囲まれていた映像が鮮烈に記憶に残っている。さてその石破氏の特設ページでは、「5つの『守る』」をキャッチフレーズに掲げている。その中の「03 国民を守る」に“社会保障制度改革”がある。以下に列挙する。従来の家族モデルを前提とした社会保障の在り方を脱却し、多様な人生の在り方、多様な人生の選択肢を実現できる柔軟な制度設計を行います。医療DXの推進により、ビッグデータも活用しつつ、予防と自己管理を主眼とした健康維持のための医療制度を構築し、医療費を適正化するとともに、遠隔医療の拡充、医師偏在の是正、健康寿命延伸、薬価制度の見直しなどに取り組み、国民一人一人に最適な医療の実現を目指します。併せて医療人材の処遇改善、医療機関の負担軽減にも取り組みます。国民が必要とする医薬品の安定供給を実現するため医薬品の原材料の確保にも万全を期します。子ども・子育て支援に加えて、結婚・出産支援にも重点を置き、結婚、出産、育児と一貫した支援で少子化対策を拡充します。一番目と最後の少子化対策を併せて考えると、少なくとも既存概念からやや脱却したリベラルな思考のようである。石破氏というと安全保障政策でやや保守的な政策が目立つとの印象を持つ人も少なくないようだが、一応そちらの分野も取材テーマである私からすると、石破氏の安全保障政策は徹底したリアリズムである。その意味で社会保障政策でもあくまで現在の社会状況に立脚している印象である。そして医療DXは誰もが言いそうだが、私個人の注目点は薬価制度見直しと医薬品安定供給に言及している点である。ちなみに医薬品安定供給については、自民党の特設ページの簡易版公報では削除されている。その意味では、この問題の優先度は高くないということか? やや皮肉的に言えば、安定供給で問題が生じていることを「知らないわけではないよ」という意思表示と解釈できるかもしれない。とはいっても、厚生族でもないのにこの問題を認識している点が、当選回数が多く政策通と呼ばれる石破氏らしいとも言える。そのためか、ほかの候補と比較しても石破氏の公報は文字で溢れかえったビジーなオジサンパワーポイントのごとしである。その意味では、石破氏は宮澤政権の崩壊前夜のあの時とまったく変わっていないのかもしれない。加藤氏(岡山3区)加藤氏は東大卒業後に旧大蔵省入り、退官後に当時自民党衆議院議員だった加藤 六月氏の秘書となり、同氏の娘と結婚して改姓。初の国政選挙では無所属で参院選に出馬するも落選。後に自民党の衆院選比例候補となるもこれも落選し、その後、ようやく比例区で当選した。途中からは小選挙区に転じ、今に至っている。議員当選後は一貫して厚生族畑を歩み続け、省庁再編による厚生労働省発足後、最多となる3度4代、厚労相に就任した(最長在職期間は初代厚労相の坂口 力氏)。さてその特設サイトでは「ニッポン総活躍 国民の所得倍増を柱とした8つのプラン」を掲げている。この中では「プラン3 こども・教育改革」で「三つのゼロ』給食費・こども 医療費・出産費負担ゼロの実現へも掲げているが、メインは「プラン4 社会保障改革」の人生100年を“健幸”で過ごせる社会保障改革である。以下、政策内容の原文である。2040年を見据え、必要な人に必要なサービスが提供され、能力に応じて負担し支えあう新たな仕組みを構築。医療・介護のDX推進、人材の確保や処遇改善、物価に連動した薬価の見直し、創薬推進と薬の安定供給、5大がん検診・生活習慣病健診・国民皆歯科健診の推進、多職種連携による医療・介護の充実、低年金者の年金水準改善など、人生100年を健やかに暮らせる“健幸”社会を実現。医療・介護・福祉職員などのさらなる処遇改善、医療・介護DXの推進などによる医療福祉人材の確保AIを活用した診断・診療強化による医療水準の向上地域において必要な医療が受けられる地域医療構想の推進保険給付と自己負担の組み合わせ方式(保険外併用療養)の活用による最先端医療の提供物価に連動した薬価の見直し、創薬の推進と薬の安定供給5大がん検診や生活習慣病検診の無償化、プッシュ型の保健指導国民皆歯科検診の導入栄養管理・口腔ケア・リハビリを含めた多職種連携による医療・介護の充実専門的支援も含めたメンタルヘルスの充実低年金者の年金水準改善私見ではざっと見ても、さすがはたたき上げの厚生族で元厚労相である。地域医療構想、薬価制度の見直しと医薬品安定供給、栄養管理・口腔ケア・リハビリの三位一体提供などへの言及など、かなりの玄人である。そして「保険外併用療養」という用語の使い方もまた絶妙である。この言葉、混合診療と混同されがちだが、基本的に解釈の違う言葉である。若手議員あたりが勢い余って混合診療と言ってしまい、あとで医師会関係者から叱られるポイントだったりする。ただし、玄人過ぎて、党員や下手をすると国会議員にも伝わるかどうかはやや懸念点である。また、個人的には地域医療構想の推進の中身が気になる。というのも、私個人は将来の適切な医療提供のためには病院再編は避けられないと考えているからだ。しかし、この点は日本医師会の会員内でも温度差があるので、そちらと関係が深い加藤氏はどう考えているのだろうか?また、冒頭ではさらっと言及した「プラン3 こども・教育改革」の中でこどもの死を予防するための検証制度(CDR)の促進も私自身は頷いた点である。少子化対策というと、すぐ「産めよ、増やせよ」になるが、まず今を生きている子供が不慮の死を迎えないよう予防措置を推進することも少子化対策ではないかと思っているからだ。実はこの視点が多くの政治家に欠けている。上川氏(静岡1区)今回の候補で最年長の上川氏。東大卒業後に三菱総合研究所研究員を経て、ハーバード大学で政治行政学修士号を取得。米・上院の民主党マックス・ボーカス議員の政策スタッフを務めた。1996年の衆院選に静岡1区から無所属で出馬して落選。その後、自民党に入党するも、2000年の衆院選では自民党公認が得られず、再度無所属で同区から出馬して初当選した。自民党公認候補がいながらの出馬強行と、その当選で自民党公認が落選したことで自民党を除名。2001年に復党した。上川氏の特設ページに掲げられたキャッチフレーズは「一緒に創りませんか 日本の新しい景色」と何ともほんわかとしている。関連する政策は『7つの政策の柱』の筆頭の「1. 新しい経済の景色を創りましょう!」で、成長産業の育成として7分野を挙げ、この中にバイオ、ヘルスケアを含んでいる。上川氏はこうした産業育成に向け、”『令和版産業構造ビジョン』を策定し、科学技術イノベーションと社会実装を飛躍させます“と宣言している。社会保障制度そのものについては「3. “誰一人取り残さない社会”の景色を創りましょう!」と題する項目で健康長寿日本への社会保障として以下の2点を掲げている。「令和の財政強靭化」を通じて、 国民皆保険制度、年金制度を堅持しますヘルスケアサービスを推進するほか、病に至る前の予防・健康増進、自立支援を強化し、「健康寿命」を延伸しますちなみに「令和の財政強靭化」とは、経済政策の中で言及しており、“世界・金融市場の信認を維持しながら、しなやかで力強く成長する『令和の財政強靭化』に乗り出します”との記述がある。なんともふわっとした「強靭化」である。日本記者クラブの公開討論会では「(社会保障制度が)持続可能になるためには、給付と負担の関係の見直しということは極めて重要であると認識をしております」と発言しているが、給付削減に重点を置くのか、負担増に重点を置くのか、給付削減と負担増を等分で行うのかは不明である。外交畑が得意とはいえ、衆院厚生労働委員会委員長の経験者でもあるので、もっと分厚い政策が欲しかったところである。小泉氏(神奈川11区)もはや説明も不要なほど、今回の総裁選の台風の目である小泉氏。変人とまで称された元首相・小泉 純一郎氏の次男である。関東学院大学卒業後、米コロンビア大学大学院に進学し、政治学修士号を取得。その後は米国戦略国際問題研究所(CSIS)研究員、純一郎氏の私設秘書を経て、2008年に純一郎氏の引退を受けてその地盤を引き継ぎ初当選し、今に至る。さて小泉氏の特設サイトで掲げるのは「決着 新時代の扉をあける」とのキャッチフレーズ。社会保障関連で掲げる政策は、自民党の特設サイトの公報、本人の特設サイト、出馬会見全文のいずれでも「社会保障」「医療」「介護」という言葉はゼロである。正直、目を疑って何度も読み返したがゼロである。大事な事なのでもう1度言うと、ゼロである。ちなみに前述の公開討論会では、進行の都合などもあるだろうが、やはり何も言及していない。新たに開設された本人のYouTubeチャンネルにアップされている街頭演説2本でも同様。いやいや、ライドシェア解禁よりもはるかに国民生活にとって重要なテーマではないだろうか?「若さ」「改革」という言葉が並び、加えてイケメンだと、こうも有利に事が運ぶのかと感心しきりである。河野氏(神奈川15区)河野氏は自民党総裁を務めながら首相にはなれなかった河野 洋平氏の長男。父・洋平氏は若き頃、ロッキード事件に失望して自民党を離党。新自由クラブを組織し、一時自民党が衆院で過半数割れになった時に同クラブとして連立を組むなどして政界のキャスティングボードを握ったが、後に自民党に復党している。河野氏自身は日本で大学を中退して渡米。米・ジョージタウン大学に進学して在学中は米・民主党の大統領選にボランティアで参加したり、交換留学生として共産圏時代のポーランドに渡るなど、どちらかというとリベラル思考である。大学を卒業して帰国後は富士ゼロックス(現・富士フイルムビジネスイノベーション)、日本端子(洋平氏が大株主、現社長は河野氏の弟)を経て、1996年の小選挙区比例代表制が初めて導入された衆院選で、洋平氏の選挙区が分割されたことを受けて出馬。ここで当選し、今に至る。河野氏の特設サイトで掲げられているキャッチフレーズは「有事の今こそ、河野太郎 国民と向き合う心。世界と渡り合う力」。まず、経済として「投資拡大ができる環境整備」を掲げ、“データに基づいた投資を行いやすくするために、地域におけるサービスの需要をオープンデータ化し、企業と共有しながら地域活性化につながる産業を創り出す(交通、医療・介護、教育、小売)”と産業面からの医療・介護支援を提言。さらに社会保障で第一に掲げているのが、「社会保険料が『現役世代の賃金課税』となっていることを改める」として、“『前期高齢者納付金』と『後期高齢者支援金』が現役世代に重くのしかかっていることを考慮して、応能負担の観点から世代間移転のあり方を検討する”としている。ここから察するに高齢世代に応分負担を求めて行く考えであろうことが想像できる。この問題は従来から各種審議会などでも指摘されていることで、最終的には政治決断でやるかやらないかだけの問題とも言えるかもしれない。これ以外では以下のようになる。社会課題が集中する厚労省を厚生と労働に分割し、それぞれ専任の大臣を設置する電子カルテ、電子処方箋の推進や、福祉施設の業務効率化など、医療・介護DXを更に進めることで、人手不足の中でも活力ある健康長寿社会を実現する医師確保計画の深化、医師の確保・育成、実効的な医師配置により、日本中どこでも確実に医療を受けられるようにする皆保険を維持しながら医療の高度化に対応するため民間医療保険を活用する心臓死からの臓器移植を増やす一番目の厚労省分割は、当時の省庁再編時に会社員記者として旧厚生省に出入りしていた立場として、なかば結論ありきで進められた雰囲気がありありだったと体感している。厚生行政と労働行政は、関連はあっても完全に別物であり、1つのゲージに犬と猫を同居させるやや無理ゲーのようなもの。また、厚生行政は国会会期中の対応が突出して多く、明らかに業務過多であり、私個人も分割して人員を強化すべきという立場である。医療DXは、ほかの候補よりもやや具体的だが、基本的に現在の施策のスピードアップ化と解釈できる。この辺に関連し、例のマイナ保険証推進での河野氏に役割について、日本記者クラブ主催の討論会では、記者との間でやや尖ったやり取りがあった。以下に引用する。 記者 突破力があるということでは、もうこれは自他共に認めるところでありましょう。ただマイナ保険証に一本化することを唐突に表明されたり、それから防衛大臣時代にイージス・アショアの問題で配備の中止をアメリカとまったく調整しないまま打ち出したりで、これに対していろんなご意見があります。突破力があるというばっかりに、悪い言い方をすると、自分を誇示すること、あまり異なる意見に耳を傾けないというそういう感じがあるんではないかという具合に思われている。このことについてどうお考えですか。河野氏(イージス・アショアについては省略)マイナ保険証についても、これは当時の厚労大臣、総務大臣、あるいは官房長官と調整をして、最終的に総理のご了解をいただいて、こういうふうにやっていこうということにしたわけでございますから、私が何か誇示をするというよりは、一番批判を浴びやすいところを私が記者会見などで受持ってお話を申し上げてきたというのが正しいところだと思います。またまた河野氏らしい受け答えではあるが、通称ブロック太郎と呼ばれるX(旧Twitter)でのブロック姿勢を眺め、若干やり過ぎと考えている私としては、これに通じる印象、どちらかというと質問した記者と同様の印象を受けてしまう。さて医師確保と民間医療保険の活用は既得権益の抵抗大は必至。とはいえ、ここはもっとも河野氏らしいと言える。詳細な考えはこの中では述べられていないが、もし総理になったら、どのような中身でどう進めるか? を間違うと、政権崩壊に繋がる危険性のある事案である。最後の心臓死からの移植増は、今回の河野氏の政策のなかで、正直、私がもっともナンセンスと思った点である。心臓死からの移植であれ、脳死からの移植であれ、提供はあくまで亡くなった本人の生前の意思か家族の承諾に基づくのが現在の法令上の規定。河野氏の主張は生前意思不明の場合の家族承諾をなくすということかもしれないが、人の内心に手を突っ込むということであり、「増やす」と宣言して増やせるものでもない。とりあえず今回はここまでにしておこう。

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緩和的鎮静に用いる薬剤【非専門医のための緩和ケアTips】第84回

緩和的鎮静に用いる薬剤「緩和的鎮静」とは、ほかの手段での苦痛緩和が難しく、意識レベルを低下させることでしか症状を和らげることができない場合に検討されるものです。その適応は慎重に議論される必要があります。では、実際に緩和的鎮静を実施する際には、何に注意すればよいのでしょうか?今回の質問肺がんの患者さんを訪問診療で担当していた時に、予後数日程度のタイミングで非常に呼吸困難が強い状態となりました。鎮静が必要と判断し、モルヒネの増量で対応したのですが、もっと良い対応があったのではないかと感じています。呼吸困難は在宅緩和ケアの継続を難しくする症状の1つであり、入院時でも鎮静をせざるを得ないことがしばしばです。そうした難しい症状の患者さんを終末期まで在宅で支えたこと、本当に頭が下がります。緩和的鎮静に用いられる薬剤の第1選択はミダゾラムです。日本緩和医療学会の『がん患者の治療抵抗性の苦痛と鎮静に関する基本的な考え方の手引き 2023年版』1)や各種書籍でもミダゾラムを推奨していることが多いですが、安全に使用できるのであれば、ほかのベンゾジアゼピンでも問題はありません。入手のしやすさや自分の慣れ具合も加味して選択します。さて、今回のご質問にある「モルヒネで鎮静」はどうなのでしょうか? これは実は「推奨されない」処方です。モルヒネはあくまでも“鎮痛”作用を期待して投与します。もちろん、投与量を増やせば“鎮静”作用も強まりますが、それは薬剤のメインの効果ではなく、副作用的な効果です。結果として副作用が懸念される投与量になる危険性があります。“鎮静”を主な薬理作用とするほかの薬剤がある中で、モルヒネを選択する理由がありません。緩和的鎮静を行うのは、症状が強く、厳密に意識レベルを見ながら投与量を調整しなければならない場面です。だからこそ、“鎮静”薬が推奨されるのです。同じ理由で、せん妄などに用いるハロペリドールなどの抗精神病薬を鎮静に使うことも推奨されません。緩和的鎮静では、「完全に意識を低下させて眠った状態」の前に、「意識を保ちながら、本人の許容できる程度に症状が軽減しないか試みる」ことが推奨されています。これは「調節型鎮静」と呼ばれ、鎮静薬を苦痛症状の程度に合わせて調整することに由来します。症状が和らいだ時点で意識が保てていれば、それ以上の鎮静薬投与は行いません。緩和的鎮静の目的は症状を和らげることであり、目的が達成されたのであれば、意識はあったほうが患者のQOLが保てる、という観点に基づいています。調節型鎮静はまだあまり知られていない方法なので、ぜひ前述した『がん患者の治療抵抗性の苦痛と鎮静に関する基本的な考え方の手引き 2023年版』中の「V章6 実際の投与方法と評価・ケア」の項に目を通してみてください。今回のTips今回のTips緩和的鎮静では、鎮静薬を調整して使うことが大切。1)日本緩和医療学会 ガイドライン統括委員会編. がん患者の治療抵抗性の苦痛と鎮静に関する基本的な考え方の手引き 2023年版. 金原出版;2023.

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9月20日 子供の成長啓発デー【今日は何の日?】

【9月20日 子供の成長啓発デー】〔由来〕内分泌疾患の患者や家族の支援団体で構成する国際組織“International Coalition of Organizations Supporting Endocrine Patients(ICOSEP)”が設立された日を記念し、2013(平成25)年に「子どもの成長啓発デー実行委員会」が制定。子どもの内分泌疾患に関する正しい知識の普及、内分泌疾患の早期発見・早期治療の促進、成長曲線の普及と利用促進を目的に啓発活動が行われている。関連コンテンツビタミンD依存症【希少疾病ライブラリ】週1回投与のヒト成長ホルモン製剤「ソグルーヤ皮下注5mg/10mg」【下平博士のDIノート】見分けづらい・見逃しやすい酵素欠損がもたらす疾患『ムコ多糖症』

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インフルワクチン接種と急性腎障害の関連~高齢者での検討

 インフルエンザワクチン接種後に急性腎障害(AKI)を発症した症例が報告されているが、その関連を示す集団レベルのエビデンスはない。韓国・Ewha Womans UniversityのHaerin Cho氏らによる大規模データベースを用いた自己対照ケースシリーズ研究の結果、インフルエンザワクチンの接種は65歳以上の高齢者のAKIリスク低下と関連することが明らかになった。Pharmacoepidemiology and Drug Safety誌2024年9月号掲載の報告より。 本研究では、韓国疾病管理庁の予防接種登録データと国民健康保険サービスの請求データを組み合わせた大規模データベースが使用された。ワクチン接種時に65歳以上で、2018~19年または2019~20年インフルエンザシーズン(それぞれ9月1日~翌4月30日まで)に、インフルエンザワクチンを1回以上接種し、接種後にAKIで入院した患者が対象。腎疾患の既往がある症例は除外された。 リスク期間をワクチン接種後1~28日、観察期間をインフルエンザの各流行シーズン、対照期間を接種前14日間およびリスク期間を除く観察期間として、自己対照ケースシリーズ研究を実施した。補正後発生率比(aIRR)は、条件付きポアソン回帰モデルを使用して、腎毒性を有する薬剤の使用とインフルエンザ感染による補正後、計算された。 主な結果は以下のとおり。・2018~19年と2019~20年のシーズンにインフルエンザワクチンを接種した722万2,439人が特定された。このうち、5万8,023例がAKIにより入院していた。・AKI入院患者のうち、腎疾患の既往がある症例、9月1日以前の発症例などが除外され、解析対象となったのは2018~19年:1万6,713例、2019~20年:1万6,272例であった。・リスク期間におけるaIRRは、2018~19年シーズン(aIRR:0.83、95%信頼区間[CI]:0.79~0.87)および2019~20年シーズン(aIRR:0.86、95%CI:0.82~0.90)のいずれにおいても、対照期間と比較して統計学的に有意に減少していた。 著者らは、今回の結果は台湾で行われた研究結果1)と一致しており、インフルエンザワクチン接種が高齢者のAKI予防に役立つ可能性が示唆されるとともに、高齢者への毎年のインフルエンザ予防接種推奨が裏付けられたとしている。一方、インフルエンザワクチンとAKIを関連付ける生物学的メカニズムを明らかにするには、さらなる研究が必要と指摘している。

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レビー小体型認知症に対する抗認知症薬の10年間フォローアップ調査

 スウェーデン・カロリンスカ研究所のHong Xu氏らは、レビー小体型認知症(DLB)に対するコリンエステラーゼ阻害薬(ChEI)とメマンチンの使用が、認知機能、主要心血管イベント、死亡率に及ぼす影響を評価した。Alzheimer's & Dementia誌オンライン版2024年8月23日号の報告。 対象は、スウェーデンの認知症レジストリより抽出したDLB患者1,095例。DLB診断90日以内にChEIまたはメマンチンを開始した場合と抗認知症薬を使用しない場合の認知機能の軌跡、主要心血管イベント、死亡リスクに及ぼす影響を評価した。分析には、治療確率逆重み付けを用いた。 主な結果は以下のとおり。・ChEIの使用は、メマンチンおよび抗認知症薬未使用と比較し、フォローアップ時の認知機能低下の有意な遅延が認められた。【ChEI使用】ミニメンタルステート検査(MMSE):−0.39ポイント/年、95%信頼区間(CI):−0.96~0.18【メマンチン使用】MMSE:−2.49ポイント/年、95%CI:−4.02~−0.97【抗認知症薬未使用】MMSE:−2.50ポイント/年、95%CI:−4.28~−0.73・治療群間で主要心血管イベントに差は認められなかった。・ChEIの使用は、DLB診断1年後の死亡リスク低下との関連が認められた(調整ハザード比:0.66、95%CI:0.46~0.94)。 著者らは「DLB患者に対するChEI治療の潜在的なベネフィットが明らかとなった。ChEI治療は、5年間のフォローアップ期間にわたり認知機能低下を抑制した。死亡リスクの低下は、最初の1年間で認められるものの、その効果は1年後以降には持続しないことが示唆された」としている。

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高悪性度のHR+/HER2-進行乳がん1次治療、化学療法と比べアベマシクリブ+ETが早期ORR良好(ABIGAIL)/ESMO2024

 予後不良の関連因子を有する、悪性度の高いホルモン受容体陽性HER2陰性(HR+/HER2-)進行乳がんに対する1次治療として、アベマシクリブと内分泌療法(ET)の併用は、化学療法に続いて同併用療法を実施する場合と比較して早期の奏効率(ORR)が高いことが示された。スペイン・Hospital San Juan de Dios de CordobaのJuan De la Haba Rodriguez氏は、非盲検無作為化多施設共同非劣性試験である第II相ABIGAIL試験の結果を、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2024)で報告した。・対象:高悪性度の基準(術後ET完了時の再発またはアロマターゼ阻害薬ベースのレジメン終了から36ヵ月以内、内臓転移、グレード3またはPgR陰性、LDH>1.5ULN)を1つ以上満たすHR+/HER2-進行乳がん患者(進行がんに対する治療歴なし、ECOG PS 0~1) ・試験群:アベマシクリブ(28日サイクルで1日2回、150mg)+レトロゾール(1日1回、2.5mg)またはフルベストラント(1、15、29日目、その後は月1回、500mg) 80例・対照群:パクリタキセル(28日サイクルで1、8、15日目、90mg/m2)を12週→アベマシクリブ+レトロゾールまたはフルベストラント 82例・評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央判定(BICR)による12週時点でのORR[副次評価項目]全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)、安全性など 主な結果は以下のとおり。・ベースライン時点での患者背景は両群でバランスがとれており、年齢中央値が試験群57歳vs.対照群60歳、ECOG PS 0が65% vs.64.3%、閉経後が68.7% vs.75.6%であった。・12週時点でのORRは試験群58.8% vs.対照群40.2%(オッズ比:2.11、95%信頼区間:1.13~3.96、p=0.0193)で、主要評価項目は達成された。・12週時点で、完全奏効(CR)はともに0%、部分奏効(PR)は試験群58.8% vs.対照群40.2%、安定(SD)は30.0% vs.45.2%、進行(PD)は1.2% vs.8.5%であった。・12週時点での試験治療下における有害事象(TEAE)は、両群でそれぞれ予測されたものであり、下痢(試験群68% vs.対照群23%)を除き、試験群でより良好または同等であった。 同試験は現在も進行中で、PFSを含むその他の副次評価項目や長期の有効性が評価される予定となっている。

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日本人の高リスクStage I NSCLCへの術前ニボルマブ(POTENTIAL)/ESMO2024

 Stage Iの非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対する免疫チェックポイント阻害薬の有用性に関するエビデンスは乏しい。そこで、再発リスクの高いStage IのNSCLC患者を対象として、ニボルマブ単剤による術前補助療法の有用性を検討する国内第II相試験「POTENTIAL試験」が実施された。津谷 康大氏(近畿大学医学部 外科学教室 呼吸器外科部門 主任教授)が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2024)において本試験の結果を発表した。・試験デザイン:多施設共同国内第II相試験・対象:再発リスクの高いStage I(充実型または充実成分径2~4cm)の日本人NSCLC患者52例(EGFR遺伝子変異、ALK融合遺伝子、ROS1融合遺伝子はいずれも陰性)・治療方法:ニボルマブ(240mg、2週ごと3サイクル)→肺葉切除+ND2a-1またはND2a-2郭清を術前補助療法最終投与日から10週以内に施行・評価項目:[主要評価項目]病理学的完全奏効(pCR)[副次評価項目]病理学的奏効(MPR)、画像判定による奏効率(ORR)、安全性など・解析計画:pCR率の90%信頼区間の下限値が10%を上回った場合に、主要評価項目を達成とした。 主な結果は以下のとおり。・対象患者の年齢中央値は71歳(範囲:53~82)、男性は78.8%(41例)であった。組織型は腺がん55.8%(29例)、扁平上皮がん42.3%(22例)、腺扁平上皮がん1.9%(1例)であり、T因子はT1bが15.4%(8例)、T1cが38.5%(20例)、T2aが46.2%(24例)であった。・52例全例が完全切除を達成した。・pCR率は23.1%(90%信頼区間[CI]:13.9~34.7)であり、主要評価項目を達成した。・MPR率は46.2%であった。・術前ニボルマブの画像判定によるORRは34.6%(CRは2例)であった。・追跡期間中央値33.7ヵ月時点において、3年無再発生存率は85.6%、3年全生存率は89.1%であった。・Grade3/4の治療関連有害事象は、13.5%(7例)に発現した。死亡に至った有害事象は1例に認められたが、治療との関連は否定された。 津谷氏は、本研究結果について「主要評価項目を達成し、新たな安全性に関するシグナルはみられなかった。再発リスクの高いStage IのNSCLC患者に対するニボルマブ単剤による術前補助療法の安全性と有効性が示された」とまとめた。

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β遮断薬長期服用MI既往患者、服薬の中断vs.継続/NEJM

 心筋梗塞既往の患者において、長期β遮断薬治療の中断は継続に対して非劣性が認められなかったことを、フランス・ソルボンヌ大学のJohanne Silvain氏らABYSS Investigators of the ACTION Study Groupが、「Assessment of BetaBlocker Interruption 1 Year after an Uncomplicated Myocardial Infarction on Safety and Symptomatic Cardiac Events Requiring Hospitalization trial:ABYSS試験」の結果、報告した。心筋梗塞後のβ遮断薬による治療については、適切な投与期間は不明である。合併症のない心筋梗塞既往患者において、副作用を軽減しQOLを改善するために、長期β遮断薬治療を中断することの有効性と安全性に関するデータが求められていた。NEJM誌オンライン版2024年8月30日号掲載の報告。約3,700例を、β遮断薬中断群と継続群に無作為化 ABYSS試験は、フランスの49施設で実施されたPROBE(Prospective Randomized Open-label Blinded End-Point)デザインの多施設共同非劣性試験である。 研究グループは、2018年8月28日~2022年9月12日、登録6ヵ月以上前に心筋梗塞既往でβ遮断薬の投与を受けており、左室駆出率が40%以上、過去6ヵ月以内の心血管イベントがない患者を、β遮断薬中断群または継続群に1対1の割合で無作為に割り付け、6ヵ月後、12ヵ月後、以降は最後の登録患者が1年以上の追跡を完了するまで毎年評価した。 主要エンドポイントは、死亡、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中または心血管疾患による入院の複合で、非劣性マージンはイベント発生率の群間差(中断群-継続群)の両側95%信頼区間(CI)の上限が3%ポイントとした。主な副次エンドポイントは、6ヵ月時および12ヵ月時のEuropean Quality of Life-5 Dimensions(EQ-5D)質問票スコアのベースラインからの変化量とした。 計3,698例が無作為化され、1,846例が中断群、1,852例が継続群に割り付けられた。平均(±SD)年齢は63.5±11歳、17.2%が女性で、心筋梗塞発症から無作為化までの期間中央値は2.9年(四分位範囲[IQR]:1.2~6.4)であった。主要複合エンドポイント、中断群の非劣性は確認されず 追跡期間中央値3.0年(IQR:2.0~4.0)において、主要エンドポイントの複合イベントは、中断群で23.8%(432/1812例)、継続群で21.1%(384/1821例)に発生した。群間差は2.8%ポイント(95%信頼区間[CI]:<0.1~5.5)、ハザード比は1.16(95%CI:1.01~1.33、非劣性のp=0.44)であり、中断群の継続群に対する非劣性は認められなかった。 最終追跡調査時におけるEQ-5Dスコアのベースラインからの変化量(平均±SD)は、中断群0.033±0.150、継続群で0.032±0.164であり(群間差:0.002、95%CI:-0.008~0.012)、中断によるQOLの改善は示されなかった。 なお、著者は研究の限界として、非盲検試験であること、1ヵ国のみで実施されたこと、潜在的なバイアスの可能性がある心血管イベントによる入院が主要エンドポイントに含まれていることなどを挙げている。

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二次性僧帽弁逆流症、TEER vs.僧帽弁手術/NEJM

 心不全および二次性僧帽弁逆流症を有する患者において、経カテーテルedge-to-edge修復術(transcatheter edge-to-edge repair:TEER)は、1年時の複合エンドポイント(死亡、心不全による入院、僧帽弁再治療、補助デバイス植込み、脳卒中)に関して、僧帽弁手術に対し非劣性であることが示された。ドイツ・ケルン大学のStephan Baldus氏らが、前向き多施設共同無作為化非劣性試験「Multicenter Mitral Valve Reconstruction for Advanced Insufficiency of Functional or Ischemic Origin trial:MATTERHORN試験」の結果を報告した。二次性僧帽弁逆流症を有する心不全患者に対する現在の推奨治療には、TEERおよび僧帽弁手術が含まれるが、この患者集団においてこれらの治療法を比較した無作為化試験のデータは不十分であった。NEJM誌オンライン版2024年8月31日号掲載の報告。外科的僧帽弁手術に対するTEERの非劣性を評価 研究グループは、2015年2月~2022年12月に、臨床的に重大な二次性僧帽弁逆流症を呈し、左室駆出率が20%以上、ガイドラインに従った薬物療法にもかかわらずNYHA心機能分類クラスII以上の心不全を有する患者を、TEER(介入群)または外科的僧帽弁修復術/置換術(手術群)に1対1の割合で無作為に割り付けた。 有効性の主要エンドポイントは、術後1年以内の死亡、心不全による入院、僧帽弁再治療、補助デバイス植込み、脳卒中の複合で、非劣性マージンは推定平均群間差の90%信頼区間(CI)の上限が17.5%ポイントとした。 安全性の主要エンドポイントは、術後30日以内の主要有害事象(死亡、心筋梗塞、大出血、脳卒中/一過性脳虚血発作、再入院、再インターベンションまたは非待機的心血管手術、腎不全、深部創感染、48時間超の機械的人工換気、外科手術を要する消化管合併症、心房細動の新規発症、敗血症、心内膜炎の複合)とした。主要エンドポイント、介入群16.7% vs.手術群22.5%で非劣性を確認 計210例が無作為化されたが、無作為化後に2例が同意を撤回し、ITT集団は介入群104例、手術群104例で構成された。患者の平均(±SD)年齢は70.5±7.9歳、39.9%が女性、平均左室駆出率は43.0±11.7%であった。 有効性の主要エンドポイントのイベントは、介入群ではデータが得られた96例中16例(16.7%)に、手術群では同89例中20例(22.5%)に発生し、推定平均群間差は-6%(95%CI:-17~6、非劣性のp<0.001)であった。 安全性の主要エンドポイントのイベントは、介入群では101例中15例(14.9%)に、手術群では93例中51例(54.8%)に発生した(推定平均群間差:-40%、95%CI:-51~-27、p<0.001)。

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愛情に関わる脳領域を科学的に証明

 愛情は脳のどこに存在するのだろうか。また何に対する愛情が最も強いのだろうか。機能的MRI(fMRI)を用いた新たな研究で、その答えが示唆された。それによると、愛情を感じているときには主に社会的手掛かりの処理に関連する脳領域が活性化し、最も強い脳活動を引き起こしたのは子どもに対する愛情であったという。アアルト大学(フィンランド)のParttyli Rinne氏らによるこの研究の詳細は、「Cerebral Cortex」に8月26日掲載された。 この研究は、6つの対象(恋人や配偶者、自分の子ども、友人、見知らぬ人、ペット、自然)に対する愛情に関する短い物語を聞き、それぞれについてじっくり考えている間の脳活動をfMRI検査により調査したもの。対象は、1人以上の子どもを持ち、愛情を注ぐ配偶者や恋人などがいることを報告した、28〜53歳の成人55人(平均年齢40.3歳、女性29人)だった。55人中27人はペットを飼っていた。 短い物語とは、例えば次のようなものである。「あなたは、生まれたばかりのわが子を初めて目にしています。赤ちゃんは柔らかく、健康で、元気いっぱいです。赤ちゃんの存在はあなたの人生で最大の驚きであり、赤ちゃんへの愛を感じています」「あなたが家のソファーでくつろいでいると、飼っている猫がやってきました。猫は、あなたの隣で丸くなり、眠たげに喉を鳴らしています。あなたはこの猫のことが大好きです」 fMRIによる観察の結果、愛情を感じているときの脳活動は、愛情を向ける対象によって異なるだけでなく、その対象が人間かそれ以外か(ペット、自然)によっても異なることが明らかになった。具体的には、人に対する愛情を感じているときには社会的認知機能に関わる脳領域が活性化し、また、愛情を注ぐ対象によって活性化の強さの異なることが示された。例えば、見知らぬ人に対する思いやりのような愛情を感じているときには、親密な関係を築いている相手に対する愛情を感じているときよりも脳の活性化が低かった。 脳が最も強く活性化したのは子どもに対する愛情を感じているときであり、その活性化の程度は他の脳領域にも影響を及ぼすほど強かった。Rinne氏は、「対象者に子どもに対する愛情を想像してもらった際には、脳の報酬系深部の線条体領域までが活性化した。これは、他の種類の愛情では見られなかった現象だ」と話す。 一方、自然やペットに対して愛情を感じているときには、脳の報酬系と視覚野が活性化するが、社会的認知機能に関わる領域は活性化しないことが示された。ただし、実際にペットを飼っている人がペットに対する愛情を感じているときには、ペットを飼っていない人に比べて社会的認知機能に関わる領域が有意に活性化していた。この結果についてRinne氏は、「ペットに対する愛情とそれに関連する脳活動の観察では、社会性と関係のある脳領域の活性の程度でその人がペットを飼っているかどうかを判断できることが分かった」と述べている。 Rinne氏は、「本研究によりわれわれは、これまでの研究よりも、さまざまな種類の愛情に関連する脳活動について、より包括的な知見を提供することができた」とアアルト大学のニュースリリースの中で述べている。

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