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内分泌療法後の転移乳がん、T-DXdがPFSを有意に改善(DESTINY-Breast06)/NEJM

 内分泌療法を1ライン以上受けた、ホルモン受容体(HR)陽性かつHER2低発現またはHER2超低発現の転移を有する乳がん患者において、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)は医師選択の化学療法と比較し無増悪生存期間(PFS)を有意に延長し、新たな安全性シグナルは確認されなかった。米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校のAditya Bardia氏らDESTINY-Breast06 Trial Investigatorsが多施設共同無作為化非盲検第III相試験「DESTINY-Breast06試験」の結果を報告した。内分泌療法後の進行に対し、従来の化学療法の有効性は限定的となっている。T-DXdは、化学療法歴のあるHER2低発現の転移を有する乳がんに対する有効性が示されていた。NEJM誌オンライン版2024年9月15日号掲載の報告。主要評価項目はHER2低発現集団におけるPFS 研究グループは、324施設において、HR陽性かつHER2低発現またはHER2超低発現の転移を有する乳がんに対する内分泌療法で、病勢進行が認められた成人患者をT-DXd群または医師選択の化学療法群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 被験者の適格基準は、進行または転移乳がんに対する化学療法歴がなく、2ライン以上の内分泌療法で病勢進行が認められた患者、術後補助内分泌療法の開始から24ヵ月以内に病勢進行した患者、または内分泌療法とCDK4/6阻害薬による1次治療の開始から6ヵ月以内に病勢進行が認められた患者であった。 HER2低発現は、免疫組織化学染色(IHC)で1+または2+、in situハイブリダイゼーション(ISH)陰性と定義し、HER2超低発現は膜染色を伴うIHC 0(>0および<1+)と定義した。 主要評価項目は、HER2低発現集団における盲検下独立中央判定(BICR)によるRECIST 1.1に基づくPFS、副次評価項目はBICRによるITT集団(無作為化されたすべての患者、すなわちHER2低発現およびHER2超低発現集団)におけるPFS、ならびにHER2低発現集団およびITT集団における全生存期間(OS)、安全性などであった。HER2低発現集団におけるPFS中央値はT-DXd群13.2ヵ月、化学療法群8.1ヵ月 2020年8月20日~2024年3月18日の間に、計866例がT-DXd群(436例)および化学療法群(430例)に割り付けられた。化学療法群では、カペシタビンが59.8%、nab-パクリタキセルが24.4%、パクリタキセルが15.8%であった。HER2低発現集団は713例、HER2超低発現集団は153例であった。 HER2低発現集団において、PFS中央値はT-DXd群13.2ヵ月(95%信頼区間[CI]:11.4~15.2)、化学療法群8.1ヵ月(7.0~9.0)であり、T-DXd群が有意に延長した(病勢進行または死亡のハザード比:0.62、95%CI:0.51~0.74、p<0.001)。この結果は、ITT集団、ならびにHER2超低発現集団においても一致していた。 OSについては、データが未成熟であった。 Grade3以上の有害事象は、T-DXd群で52.8%、化学療法群で44.4%に発現した。間質性肺疾患または肺炎は、それぞれ49例(11.3%、3例はGrade5)、1例(0.2%、Grade2)に認められた。

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入院中の高齢者におけるせん妄が長期的な認知症リスクに及ぼす影響

 これまでの研究において、せん妄と認知症との関連性が示唆されているが、その多くは術後環境においての検討である。韓国・亜洲大学のGyubeom Hwang氏らは、幅広いリアルワールドデータを活用し、入院患者におけるせん妄とその後の認知症との関連を評価するため、レトロスペクティブコホート研究を実施した。The American Journal of Geriatric Psychiatry誌オンライン版2024年8月21日号の報告。 韓国の医療機関9施設より抽出された60歳以上の入院患者1,197万475例を対象に、分析を行った。せん妄の有無を特定し、傾向スコアマッチング(PSM)を用いて比較可能なグループを作成した。10年間の縦断分析を行うため、Cox比例ハザードモデルを用いた。ハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を算出した。すべての結果を集約し、メタ解析を実施した。さまざまなサブグループ解析および感度分析を実施し、各条件における結果の一貫性を評価した。 主な結果は以下のとおり。・1:1のPSM後、せん妄群および非せん妄群で合計4万7,306例がマッチングされた。・両群とも年齢中央値は75〜79歳、女性の割合は43.1%であった。・せん妄群は、非せん妄群と比較し、すべての原因による認知症リスクが有意に高かった(HR:2.70、95%CI:2.27〜3.20)。・認知症サブグループにおいても、せん妄群は、非せん妄群と比較し、認知症の発症リスクが高かった。【すべての原因による認知症または軽度認知障害】HR:2.46、95%CI:2.10〜2.88【アルツハイマー病】HR:2.74、95%CI:2.40〜3.13【血管性認知症】HR:2.55、95%CI:2.07〜3.13・これらのパターンは、すべてのサブグループおよび感度分析において、一貫していた。 著者らは「せん妄は、いずれの認知症タイプにおいてもリスクを有意に高めることが明らかとなった。これらの結果は、せん妄の早期発見および早期介入の重要性を示唆している」とし「せん妄と認知症とのメカニズムを明らかにするためには、さらなる研究が求められる」と結論付けている。

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重症インフルエンザに対する抗ウイルス薬の有効性(解説:小金丸博氏)

 入院を要する重症インフルエンザに対する抗ウイルス薬の有効性を評価したシステマティックレビューとネットワークメタ解析の結果が、Lancet誌2024年8月24日号に報告された。評価対象としたアウトカムは、症状改善までの期間、入院期間、ICU入院、侵襲的機械換気への移行、機械換気の期間、死亡、退院先、抗ウイルス薬耐性の発現、有害事象、治療関連有害事象、重篤な有害事象に設定された。季節性インフルエンザによる入院期間は、オセルタミビル(平均群間差:-1.63日、95%信頼区間:-2.81~-0.45)およびペラミビル(-1.73日、-3.33~-0.13)投与において有意な短縮を認めたものの、エビデンスの確実性は「低(low)」であった。ランダム化比較試験のデータが乏しく、死亡率など重要な患者の転帰に及ぼす効果について確実性の高いエビデンスは得られなかった。 インフルエンザは入院を要するウイルス性呼吸器感染症の重要な原因である。季節性インフルエンザの入院患者は、重症肺炎、呼吸不全、多臓器不全、二次的な細菌感染症などの合併症を発症し、死亡につながる可能性がある。インフルエンザで入院した成人の致死率は4~8%程度であるが、新型インフルエンザによるパンデミックの際や免疫不全の患者では致死率が高くなる場合がある(10~15%以上)。したがって、重症インフルエンザに対する効果的な治療法を特定することは、公衆衛生上重要な課題である。 ノイラミニダーゼ阻害薬などの抗ウイルス薬は、重症インフルエンザ患者に対して投与することが推奨されている。過去に報告されたシステマティックレビューとメタ解析では、ノイラミニダーゼ阻害薬による早期治療は、治療が遅れたり治療しなかった場合と比較して、死亡率の低下や入院期間の短縮につながる可能性があることが示唆されていた。ただし、重症インフルエンザに対して利用可能なすべての抗ウイルス薬治療を評価したネットワークメタ解析はなく、最適な抗ウイルス薬は不明であった。 本研究では8件のランダム化比較試験がシステマティックレビューに含まれ、そのうち6件がネットワークメタ解析の対象となった。重症インフルエンザで入院した患者において、オセルタミビルとペラミビルは標準治療またはプラセボと比較して入院期間を短縮する可能性が示されたが、含まれているランダム化比較試験の数が少なくデータが不足していたため、証拠の確実性は低いものであった。同様の理由で、すべての抗ウイルス薬が死亡率やその他の重要な患者の転帰に及ぼす影響を正確に評価することは困難であった。そのため、重症インフルエンザ患者に対する抗ウイルス薬の有効性を精密に評価するためには、十分な検出力を持つ臨床試験を行う必要があると述べられている。 本研究のLimitationとして、二次性細菌感染症やインフルエンザのタイプ(A型、B型)が結果に与える影響を評価することができなかったことや、小児および高齢者に対する抗ウイルス薬の有効性を検討できなかったことが挙げられる。また、本研究では重症インフルエンザ患者を対象としており、われわれが日常で診療することが多い外来レベルのインフルエンザ患者に対する抗ウイルス薬の有効性については言及できない。

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病気が潜んでいる“ふるえ”とは

患者さん、それは…ふるえ かもしれません!「ふるえ」とは、医学用語で振戦(しんせん)とも呼ばれます。主に手足、頭、声で起こります。寒さや緊張などのように生理現象で生じるものもあれば、パーキンソン病や本態性振戦という病気が原因で生じるものもあるので、以下のことが該当するか確認してみましょう。●いつ、症状が表れますか?□安静時 □ある一定の姿勢を保持した状態●症状が出るのは、どの部位ですか?□手指□声(のど)□頭部□動作時(箸やペンを持つ…)□顔面□足□体幹◆ある病気が潜んでいる“手のふるえ”は…• 安静時に手がふるえれば、パーキンソン病を疑います• 手のふるえで字がうまく書けないときは、本態性振戦であることが多いです• 甲状腺機能亢進症や尿毒症を発症していると、手がふるえます出典:今日の治療指針2020、MSDマニュアルプロフェッショナル版_振戦監修:福島県立医科大学 会津医療センター 総合内科 山中 克郎氏Copyright © 2022 CareNet,Inc. All rights reserved.

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第230回 迫る自民党総裁選、立候補者の言い分は?(後編)

自民党総裁選は本日、ついに投開票が行われ、新総裁が決定する。与党の自民党と公明党が衆参両院の過半数を占めている現状では、当然ながら自民党総裁=日本国総理大臣となる。巷の報道では、議員票や党員・党友票、都道府県連票の票読みが行われているが、今回は上位2人による決選投票が確実視されているだけに、その段階で一気に票読みの困難度が増す。とりわけ自民党の総裁選は過去から権謀術数が渦巻く世界だ。現在の推薦人制による立候補となった1972年以降、決選投票となったのは3回。初めての決選投票は、1972年の田中 角栄氏vs. 福田 赳夫氏。第1回投票では第1位の田中氏と第2位の福田氏はわずか6票差だったが、決選投票では票差が92票まで開き、田中氏が総裁に選出された。残る2回のうち1回は2012年。この時は党員・党友票の過半数を獲得した石破 茂氏が1回目で安倍 晋三氏に58票もの差をつけて1位となったが、決選投票では逆に安倍氏が石破氏を19票上回り、逆転で総裁となった。ちなみに1972年以前の自民党でも決選投票が2回あり、1956年の初の決選投票では同じく1回目の1位、2位の逆転が起きた。この時勝利したのは石橋 湛山氏、逆転負けを帰したのは“昭和の妖怪”の異名を持つ安倍氏の祖父・岸 信介氏である。最も直近の決選投票は前回2021年の総裁選で1位の岸田 文雄氏と2位の河野 太郎氏の1回目の票差はわずか1票。これが決選投票では87票差となり、岸田氏が勝利した。このように概観するだけでも自民党総裁選は魔物である。さて誰が当選するのか? 前回紹介しきれなかった自民党総裁選候補者(五十音順)である小林 鷹之氏、高市 早苗氏、林 芳正氏、茂木 敏充氏の社会保障、医療・介護政策を独断と偏見の評価も交えながら紹介する。小林氏(千葉2区)今回、真っ先に出馬表明した小林氏だが、閣僚経験があるとはいえ、最も世間的には知名度が低かったのではないだろうか? 小林氏は東大法学部卒業後、旧大蔵省に入省。2010年に退官し、自民党の候補者公募に応募して2012年の衆議院で初当選して現在に至っている。大蔵省・財務省在籍中にはハーバード大学ケネディ行政大学院に留学し、公共政策学修士号を取得している。小林氏の特設ページでは、「世界をリードする国へ」をキャッチフレーズに掲げている。政策については直ちに取り組む3本柱とこれも含めたより詳細な7項目ごとの政策を披露している。前者では“02.暮らしを明るく:中間層「ど真ん中」の所得向上を実現”として以下の2点を挙げている。地方や若者も多く従事する介護・看護・保育従事者の賃上げ(「物価を超える処遇改善ルール」導入)。若年層の保険料負担軽減を図る「第3の道」の具体化。「社会保障未来会議(仮称)」立ち上げ。介護関係者などの賃上げは、ほかの候補者も挙げているが「物価を超える処遇改善ルール」とより具体的なのは小林氏だけである。もっとも現在の物価高騰を考えれば、介護報酬改定などでは相当な引き上げが必要になる。後者については小林氏の特設ページの7項目のうちの「V. 教育・こども・社会保障」では以下のように記述している(下線は筆者によるもの)。「社会保障未来会議(仮称)では、(1)データに基づく人的物的資源の適正配分、(2)ロボット、AI、アプリ等による健康管理、(3)健診・予防・リハビリ・フレイル対策・軽度認知症対策などの「健康づくり」とその行動や成果へのインセンティブ付与、(4)DX による効果的・効率的なサービスの提供を通じた費用の抑制に資する取組、などを通した医療・介護需要の低減を進めます。あらゆるアイデアをすべて俎上に載せ、国民の皆様とともに広く社会保障制度を考え、方向性を共有して、新たな時代の社会保障制度を作り上げます」DX(Digital Transformation)、EBPM(Evidence based policy making、エビデンスに基づく政策立案)、PHR(Personal Health Record)などを通じて、まずは需要そのものを適正化したいということらしい。もっとも日本記者クラブの候補者討論会では、「若い世代の社会保険料の軽減を主張していますが、財源はどこにあるんですか。結局、一定以上の所得・資産のある高齢者に負担を求める、かなり抵抗が強い方向になると思いますが、そういった覚悟はありますか」と問われたのに対し、前述の社会保障未来会議の説明を平たく語っただけでスルーしてしまっている。高齢者の負担増に関しては今の時点で単にかわしたか、あるいは念頭にあるからこそ敢えてかわしたかのどちらかではないだろうか? (ちなみに私は高齢者の負担増に反対ではない)この項では、ほかに以下のような政策を列挙している。家族等にとって大きな不安の源となる現役世代の怪我や疾病に対しサポート体制を築き、医療サービスの面からも現役世代を支えます。また、DXやイノベーションを通じ、健康医療分野でも世界をリードします。医師の地域偏在と診療科偏在を是正し医療へのアクセスを確保していきます。また、公的サービスの安定供給を前提に、医療法人等の経営改革も進めます。医療・介護・障害福祉等の人材確保を進めます。地域特性に応じた地域包括ケア体制を確立し、住み慣れた場所で生き生きと暮らせる社会の実現を目指します。あらゆるがん対策や研究支援を分野横断で進めると共に、腎疾患、アレルギー疾患等の重症化予防、移植手術の利用推進等に努めます。このなかで個人的に注目したのは2番目である。「医師・診療科の偏在是正」「医療法人等の改革」は若さゆえに繰り出せるパワーワードだろうか? これに手を突っ込めば、医療界、とりわけ日本医師会からの最強度の抵抗を受けることを小林氏は承知して言っているのか定かではない。むしろ、具体的にこれらをどのように実現したいかの詳細があれば、ぜひ聞いてみたいものである。また、これらとは別に「II.経済」では“創薬産業の競争力強化”を掲げ、そこでは「官民の連携を強化し、創薬のエコシステムと政府の司令塔機能を強化します。医療・介護分野のヘルスケアスタートアップを大胆に支援します。『ゲノミクスジャパン』を早期に構築し、ゲノム医療で世界と伍する創薬産業にします」と記述している。これについては7月30日に岸田首相の肝入りで開催された「創薬エコシステムサミット」に酷似した政策である。同サミットは医薬品産業を成長産業と位置付け、必要な予算を確保し、国内外から優れた人材や資金を集結させることで、日本を世界の人々に貢献できる『創薬の地』としていくというものだ。政策の大枠について異論はないが、現行では国際レベルと大きく差が開いた日本の創薬力を引き上げるのは容易ではない。また、コロナ禍中に開催された2020年4月3日の衆議院厚生労働委員会での小林氏の質疑を読むと、新型コロナウイルス感染症のワクチン、治療薬の国産を強く促しているが、失礼ながら製薬業界の現在地に対する理解はやや甘いようである。高市氏(奈良2区)意外と知られていないようだが、高市氏はもともと野党出身の政治家である。神戸大学経営学部経営学科卒業後、松下政経塾に入塾し、その資金提供を受けて米・民主党下院議員のもとで研修を積み、帰国後は日本経済短期大学(後の亜細亜大学短期大学部)助手に就任するとともに、テレビ朝日、フジテレビの番組でキャスターを務めた。テレビ朝日の番組では立憲民主党の前参院議員の蓮舫氏、フジテレビでは日本維新の会の参院議員の石井 苗子氏も同じ番組のキャスターだったのは、今となればなんと因果な巡り合わせかと思う。1992年の参院選・奈良県選挙区で自民党に公認申請をするも公認は得られず、無所属で出馬して落選。翌1993年には中選挙区時代の衆院選奈良全県区から再び無所属で出馬して初当選した。高市氏の当選時は折しも自民党が下野し、細川 護熙政権が発足した時期である。その後高市氏は、自民党を離党した柿澤弘治氏らが結党した自由党に参加。さらに非自民の自由改革連合(代表:海部 俊樹元首相)、新進党を経て、96年に新進党を離党して自民党に入党している。これまで衆院選は9選しているが、自民党入党以降は小選挙区で2度落選している(うち1度は比例復活)。さて安倍 晋三氏の秘蔵っ子とも言われるほど、自民党内でも保守色の強い政治家として知られる高市氏だが、特設サイトでは「日本列島を、強く豊かに。」とのスローガンを掲げている。このスローガンの下、総合的な国力を強化するための6項目のポリシーを掲げており、全体として経済、安全保障に関する高市氏の思考が背骨となっている印象だ。このため社会保障、医療・介護に関する政策もいくつかの項目に散らばっている。政策集を読むと、明らかにもっとも注力しているのは、ポリシー01の「大胆な『危機管理投資』と『成長投資』で、『安全・安心』の確保と『強い経済』を実現。」である。端的に言うと、積極的な財政出動で経済浮揚を図るという考え。そもそもご本人は昨今の日本銀行による利上げを「アホやと思う」とまでこき落としているほど積極財政論者である。そしてポリシー01では、さらに6つの詳細プランを提唱。プラン05の「健康医療安全保障の構築」では、以下のような政策が箇条書きで示されている。国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)が実施している「革新的がん医療実用化研究事業」「スマートバイオ創薬等研究支援事業」「医療機器開発推進研究事業」を促進します。AMEDが支援してきたiPS細胞由来の心筋細胞移植の臨床試験が大きく前進しました。「再生・細胞医療、遺伝子治療分野」における研究開発を推進し、その成果を早期に患者の皆様にお届けできるよう、取り組んでまいります。今後のパンデミックに備えるべき「重点感染症」の見直しと医薬品等の対応手段確保のための研究開発支援、有事において大規模臨床試験を実施できる体制の構築、緊急承認については新たな感染症発生時の薬事承認プロセスの迅速化に資する準備を進めます。CBRNEテロ(化学・生物・核・放射線兵器や爆発物を用いたテロ)の対策を検討する専門家組織を創設します。テロに悪用された微生物・化学物質などの特定と拮抗薬やターニケット(止血用の緊縛バンド)の使用が迅速に行われる体制の構築方法を検討します。「国民皆歯科健診」の完全実施に加え、PHRの活用と、「予防医療」や「未病」の取組へのインセンティブを組み込んだ制度設計を検討します。また、プラン06「成長投資の強化」では“工業製品、環境、エネルギー、食料、健康・医療など適用分野が広く、経済安全保障の強化にもつながる『バイオ分野の事業化・普及』に向けた取組を促進します”と謳っている。概観すると、成長が見込めそうな分野への財政出動を通じた徹底投資とそれに伴う製品の国産強化という方針だ。実はこの政策を列挙する前に「ワクチンや医薬品の開発・生産は、海外情勢に左右されてはならず、安全保障に関わる課題です。原材料・生産ノウハウ・人材を国内で完結できる体制を構築します」との基本的考えを示している。この辺は高市氏の保守色の強さを如実に表している。現在、世界水準からはかなり立ち遅れつつある創薬・バイオを安全保障の観点から捉えて強化する方針そのものに異論はない。むしろ日本に欠けているのは、安全保障の観点である。ただ、創薬・バイオは消費・貢献対象の多くが民生分野であり、安全保障視点が過度だと、逆に産業発展を阻害する面もある。また、コロナ禍での国政選挙の際の各政党の政策でも批判してきたことだが、創薬・バイオ技術のグローバル化が進展する今、国産にこだわり過ぎれば、国内での技術開発や社会還元はスピーディーさを欠く結果となる。ポリシー02「『全世代の安心感』を、日本の活力に。」で掲げているのは以下。私は、生涯にわたってホルモンバランス変化の影響を受けやすい女性の健康をサポートする施策の検討に平成25年に着手し、ようやく令和6年度新規事業として「『女性の健康』ナショナルセンター機能の構築」が開始されました。女性特有の疾患や不調について、予防・病態解明・治療・社会啓発の取組を推進します。人手不足の中でも就労時間調整の一因となっている「年収の壁」と「在職老齢年金制度」を大胆に見直し、「働く意欲を阻害しない制度」へと改革します。高齢者だけではなく、現役世代も将来に年金を受け取ることを踏まえ、年金に対する課税の見直しを検討します。物価が上昇する中で年金の手取りが減らないよう、公的年金等控除額の拡大を提案します。国民年金受給額と生活保護受給額の逆転現象を解消するため、低年金と生活保護の問題を一体的に捉えた新たな制度の在り方を検討します。ここに見える年金政策では、既存の制度内で負担と給付のバランスを取るというよりは、給付の拡充とそれによる消費拡大のほうに重点を置いているようだ。その意味で、高市氏は社会保障制度改革も経済政策の一環として捉える思考がほかの候補と比べても極度に強い「経済バカ一代」のような印象である。林氏(山口3区)旧大蔵相・旧厚生相を務めた林 義郎氏の長男。祖父・高祖父も衆院議員歴がある政治一家育ち。東大法学部卒業後、三井物産、サンデン交通(林家のファミリー企業)、山口合同ガスを経てハーバード大学ケネディ・スクールに入学、米・下院議員のスタッフや米・上院議員のアシスタントを経験した。父・義郎氏の大蔵相就任に伴い大学院を休学して帰国し、大臣秘書官を務めた(後に復学、修了した)。1995年の参院選で自民党公認として山口県選挙区で初当選し、同選挙区で連続5回当選。2021年の衆院選で鞍替えして当選。衆院議員としてはまだ1期目である。特設サイトでは「人にやさしい政治。」のキャッチフレーズの下で3つの安心を掲げる。このうちの1つ「底上げによる格差是正と、生活環境の改善・地域活性化を通じた、少子化対策」として「医療・介護DXの推進や医療・介護・福祉人材の処遇改善、医薬品の安定供給、医師の偏在是正、大学病院の派遣機能強化、歯科保健医療提供体制の構築、看護師確保対策などを推進します」と謳っている。概ねほかの候補と共通する政策だが、石破氏と同じく数少ない医薬品安定供給を掲げているほか、林氏の政策にのみ見られるのが「大学病院の派遣機能強化」である。もっとも後者に関して、そのためにどのようにするのかはわからない。また、日本記者クラブでの討論会では、林氏が出馬表明時にマイナ保険証に関して「皆さん納得の上でスムーズに移行してもらうための必要な検討をしたい」と述べたことの意味を問われた。以下は林氏の回答の要約である。林氏廃止という言葉でお伝えをしていたが、実際は新しい切り替えがなくなるということ。紙の保険証は12月3日以降、次の期限までは使え、その期限後は希望すれば資格確認書が発行される。聞くところによると、(資格確認証は)今の保険証とほぼ同じようなものであるとのことなので、私は廃止と言わずに新規発行がなくなることを丁寧に説明するだけで、かなりの不安は解消するのではないかと思っている。いや果たしてそうだろうか? デジタル慣れしていない高齢者などはそうかもしれないだろうが、若年者でマイナ保険証を躊躇する層は、これまでに明らかになったずさんな個人情報管理を問題視しているのが多数のように感じるのだが。この辺はやや危機感に欠けている印象は拭えない。茂木氏(栃木5区)東大経済学部卒業後、丸紅、読売新聞、マッキンゼー社を経て政界入りした茂木氏。政界入り前にはハーバード大学ケネディ行政大学院に留学し、行政学修士号も取得している。以前の立憲民主党代表選の時も触れたが、政界入りは政治改革を掲げた元熊本県知事の細川 護熙氏が立ち上げた日本新党を通じてであり、この時の当選同期が今回の立憲民主党代表に選出された元首相の野田 佳彦氏、野田氏と同代表選で決選投票を戦った枝野 幸男氏である(ほかに日本新党の当選同期は東京都知事の小池 百合子氏、名古屋市長の河村 たかし氏など)。日本新党が解党して新進党に合流した時に無所属となり、その後、自民党に入党して現在に至る。世間的には必ずしも知名度は高くないが、閣僚経験数は実は石破氏や高市氏よりも多い(もっともその多くは内閣府特命担当大臣ではあるが)。今回は「経済再生を、実行へ」をキャッチフレーズに掲げ、その下で6つの実行プランを掲げている。特設サイトを見ると、実行プラン3として「『人生100年時代』の社会保障改革 年齢ではなく経済力に応じた公平な負担へ」を謳っている。茂木氏の各実行プランは「何をする?」「具体的にどうする」の順で目指す政策の概念と具体的な施策を開示している点が特徴だ。実行プラン3の「何をする?」では、デジタル化で個々人の立場に応じた負担と給付へ。“余力のある人には払ってもらい、困難な人への負担軽減と支援拡大”。あらゆる世代が活躍し、生きがいを実感できる社会へ」とし、「具体的にどうする」では以下の3項目を列挙している。社会保障分野にデジタルを完全導入。“標準世帯”から“個々人のデータ”に基づく、負担と給付へ(標準報酬月額の上限も見直し)。在職老齢年金制度の見直しによる中高年層の労働意欲向上。給付手段の簡素化(スマホ搭載のマイナンバーカードにキャッシュレス決済機能を付与し、ここへの給付を可能に)。要はデジタル化で国民個々人の所得状況をガラス張りにし、そのデータを基に応分の負担を求めるということ。カッコ内でさらりと標準報酬月額上限の見直しに触れているが、前段で「余力のある人には払ってもらい」と書いている以上、上限見直しとは上限の引き下げ、すなわち高額所得者や高齢者を中心に保険料負担の引き上げを想定していると思われる。同時に年金の見直しの「中高年層の労働意欲向上」も聞こえを良くしただけで、素直に解釈すれば、給付開始年齢の引き上げや給付水準の引き下げで“労働意欲を持たざるを得ない”状況にするということではないだろうか?いずれにせよある程度“物は言い様”は確かだが、総理総裁を目指そうとするならば、それなりに意図していること臆せず表現する度胸も必要だと思うのだが…。さてさて9候補も紹介するとなると、なかなか骨が折れる。現時点での各社報道によると、上位3人は石破氏、小泉氏、高市氏だという。いずれにせよこの記事公開後、半日も経たずに日本の首相が決まることになる。

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釣った魚を食べて救急搬送、何の中毒?【これって「食」中毒?】第5回

今回の症例年齢・性別47歳・男性患者情報特記すべき既往歴や生活歴はない。東京湾内で遊漁船に乗ってカワハギ釣りをしていたところ、たまたま皮に針掛かりして釣れた魚(写真1)を持ち帰った。カワハギと一緒に肉と肝(写真2)を取り出し、薄造りや肝和えなどにして19時頃に食べた。20時頃より口唇および舌のしびれ感が生じた。次第にしびれ感が全身に広がり、身体に力が入らず起き上がることも困難となった。さらに、呼吸困難も出現したところを21時半頃に帰宅した妻が発見して救急要請した。21時45分に救急隊が現場到着した際の呼吸は微弱で、著しいチアノーゼを認めたため、バッグバルブマスクにより換気(酸素6L/分)され、22時10分に救急センターに搬送された。画像を拡大する初診時は呼吸停止、バッグバルブマスク換気下でSpO2 99%、血圧162/92mmHg、心拍数124bpm(整)、瞳孔:左右6.0mm(同大)、対光反射(-)、体温36.4℃であった。呼名および疼痛にまったく反応せず、全身の筋肉は弛緩し、腱反射は消失していた。また、眼球は固定していた。直ちに気管挿管および人工呼吸器管理が施行された。検査値・画像所見頭部CTおよび血液検査では、軽度の乳酸アシドーシス以外の異常所見を認めなかった。問題

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肛門扁平上皮がん1次治療、新規抗PD-1抗体上乗せが有用(POD1UM-30)/ESMO2024

 肛門管扁平上皮がん(SCAC)は、肛門がんの主要なリスク因子であるHPVウイルス感染の増加などを背景に、患者が増加傾向にある。新たな抗PD-1抗体であるretifanlimab単剤療法は、化学療法で進行したSCAC患者において抗腫瘍活性を示すことが報告されている1)。未治療の進行SCAC患者を対象に、retifanlimabの標準化学療法への追加投与を評価するPOD1UM-303試験が行われ、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2024)Presidential Symposiumで、英国・Royal Marsden HospitalのSheela Rao氏が初回解析結果を発表した。・試験デザイン:第III相二重盲検比較試験・対象:手術不適、化学療法未治療の局所再発/転移SCAC患者・試験群:retifanlimab 500mgを4週ごと(最長1年)+標準化学療法(カルボプラチン+パクリタキセル、6サイクル)・対照群(プラセボ群):プラセボ+標準化学療法、PD後のクロスオーバー可・評価項目:[主要評価項目]無増悪生存期間(PFS)[副次評価項目]全生存期間(OS)、奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、安全性など 主な結果は以下のとおり。・2020年11月~2023年7月に308例(試験群154例、プラセボ群154例)が登録された。年齢中央値は62(SD 29~86)歳、72%が女性、87%が白人、4%がHIV陽性、36%が肝転移あり、90%がPD-L1≧1だった。・PFS中央値は、試験群9.3ヵ月(95%信頼区間[CI]:7.5~11.3)に対し、プラセボ群は7.4ヵ月(95%CI:7.1~7.7)で、試験群が有意に良好な結果だった(ハザード比[HR]:0.63、95%CI:0.47~0.84、p=0.0006)。・OSは未成熟であるものの、試験群29.2ヵ月に対しプラセボ群23.0ヵ月と、試験群で改善傾向が認められた。クロスオーバー群のOSはプラセボ群とほぼ変わらない結果だった。・ORRは試験群55.8%に対してプラセボ群44.2%、DOR中央値は14.0ヵ月と7.2ヵ月だった。・Grade3以上の治療関連有害事象は試験群83.1%、プラセボ群75.0%に発生した。うちGrade5はそれぞれ2.6%(4例)、0.7%(1例)だった。Grade3以上で多かったものは好中球減少症(35.1%と29.6%)、貧血(19.5%と20.4%)などだった。 Rao氏は「本試験は転移SCACにおける最大規模のランダム化試験であり、標準化学療法に比べてretifanlimab併用の有効性を示した。安全性シグナルもこれまでの免疫チェックポイント阻害薬の併用療法と一致していた。retifanlimabと化学療法の併用は、進行SCAC患者の新たな標準治療となる可能性がある」とまとめた。 ディスカッサントを務めたドイツ・シャリテー病院のDominik P. Modest氏は「retifanlimab群におけるPFSのハザード比は非常に良好で、しかも早い段階から効果が出ているのが印象的な結果だ。一方、クロスオーバー群はretifanlimabのベネフィットを受けておらず、投与が遅いと効果が出ない可能性もある。本試験のOSや、ニボルマブの化学療法への上乗せ効果を検討したEA2176試験などの結果を見て、さらに検証する必要があるだろう」とした。 retifanlimabは米国・インサイトが開発したPD-1阻害薬で、米国では再発性局所進行メルケル細胞がんに対して承認されている。また、今回のPOD1UM-30試験には日本の施設も参加している。

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患者満足度向上対策をクリニックの6割が実施/医師1,000人アンケート

 クリニックや病院などの医療機関を受診する際、どのような基準で選択するのだろう。いつもの「かかりつけ医」ならともかく、新しい医療機関を受診する場合、最近では、WEB上での「口コミ」なども参考にしている患者さんも多い。医療機関、とくにクリニックなどでは、この口コミを良くするために、さまざまな対策を実施している。そこで、今回0~19床に所属する会員医師1,000人に自院の患者満足度向上対策やその課題について聞いた。患者満足度向上の対策を行っているクリニックは6割弱 質問1で「自院で患者満足度を向上させる対策を実施しているか」(単回答)を聞いたところ、全体回答で「している」が58%、「していない」が42%と約6割弱のクリニックで患者満足度向上対策の実施を行っていた。年代別では、40代(66%)が1番多く実施し、60代以上(52%)で1番少なかった。 質問2で「実際に行った『診療に関する対策』」(複数回答)を聞いたところ、全体回答で「病状説明をわかりやすくする」(497人)、「急患への積極的な対応」(495人)、「予約制の実施」(430人)の順番で回答が多かった。 年代別では、20・30代では「急患への積極的な対応」、40代では「予約制の実施」、50代と60代以上では「病状説明をわかりやすくする」が1番多かった。目下の悩みは「人不足」、「患者満足度をはかる尺度がないこと」など 質問3で「実際に行った『診療以外の対策』」(複数回答)について聞いたところ、全体回答で実施していることは「自院サイト開設とこまめな更新」と「トイレなど診療室以外の清掃の徹底」(229人)が同順位で多く、次に「患者用の駐車場スペースの確保」(218人)が多かった。また、「していない」(380人)が全体数では1番多く、診療以外の対策は積極的にされていないことがわかった。そのほかの対策では「院内処方」や「カフェの開設」などの対策がされていた。 年代別では、20・30代、40代、50代では「自院サイト開設とこまめな更新」、60代以上では「トイレなど診療室以外の清掃の徹底」が実施項目で1番多かったが、「していない」が全年代を通じて1番多かった。 質問4で「満足度向上対策で苦労した・していること」(複数回答)について聞いたところ、全体で「とくにない」(398人)、「担当人員の不足」(193人)、同順位で「患者満足度をはかる尺度がない」「どの程度(期間や資金など)まで対策を講じればいいかわからない」(181人)の順で多かった。そのほかの項目では「ネットが使えない高齢者の問題」や「医師側の教育」などが課題として挙げられていた。 年代別では、全年代に共通して「とくにない」が1番多く、「患者満足度をはかる尺度がない」が次に共通して多かった。 質問5で「患者満足度対策に関連して印象深いこと・忘れられないことなど、エピソード」(自由回答)を聞いたところ以下のような回答が寄せられた(一部抜粋)。【実際に実施した/している患者満足度向上対策】・定期的なアンケート調査で患者意向を確認している〔小児科/50代〕・待合室での混み方で椅子の配置を変更した〔内科/50代〕・多くの患者さんは自身や家族のことなどの情報を話したがっているので、時間があれば傾聴する〔腎臓内科/70代〕・足に手が届かない高齢女性の足爪処置などはやってあげるとすごく喜ばれる。患者満足度向上には役立つ〔内科/60代〕【患者さんからの厳しい評価】・発熱外来で時間外や事前電話なしで来院する若い患者さんからGoogleの口コミで苦情を書かれる〔呼吸器内科/40代〕・身に覚えのないことで、口コミで低評価をつけられる〔皮膚科/50代〕【今後の課題】・待合室に病気に関する冊子やパンフレットを数種類置いても、来院者のほとんどが持っていかない〔内科/60代〕・長年通院し、良好な関係を保っていたと思っていた患者さんが突然他院に通院したりすると、何が不満だったのかわからなくなる〔内科/60代〕アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中。医師1,000人アンケート クリニックの患者満足向上対策について

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アミバンタマブ、化学療法との併用でEGFRエクソン20挿入変異陽性肺がんに承認/ヤンセン

 Johnson & Johnson (法人名:ヤンセンファーマ)は2024年9月24日、アミバンタマブ(商品名:ライブリバント)と化学療法(カルボプラチンおよびペメトレキセド)の併用療法について、「EGFR遺伝子エクソン20挿入変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺(NSCLC)」の効能又は効果で、日本における製造販売承認を取得したと発表。 今回の承認は、化学療法歴のないEGFR遺伝子エクソン20挿入変異陽性の切除不能な進行・再発のNSCLC患者を対象に、アミバンタマブと化学療法との併用による有効性と安全性を化学療法群と比較する第III相PAPILLON試験の結果に基づくものである。 同試験では、アミバンタマブと化学療法併用(ACP)群の無増悪生存期間(PFS)が、化学療法(CP)群と比較し統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善を示し、主要評価項目を達成した。PFS中央値はACP群で11.37ヵ月、CP群で6.70ヵ月であった(ハザード比:0.395、95%信頼区間:0.296~0.528、p<0.0001)。ACP群はCP群と比較し、より深い奏効と持続的な奏効に関与し、高い奏効率および長い奏効期間を示した。アミバンタマブと化学療法の併用療法に関する安全性プロファイルは、それぞれの安全性プロファイルと一貫していた。  エクソン20挿入変異はNSCLCにおける最も一般的なドライバー遺伝子変異であるEGFR遺伝子の変異の中で3番目に多いことが知られている。また、実臨床におけるEGFRエクソン20挿入変異患者の5年生存率は8%と、エクソン19欠失またはL858R変異患者の19%と比べ低く、アンメット・メディカル・ニーズの高い領域である。

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サシツズマブ ゴビテカン、トリプルネガティブ乳がんに承認/ギリアド

 ギリアド・サイエンシズは2024年9月24日、化学療法歴のある手術不能または再発のホルモン受容体陰性かつHER2陰性(トリプルネガティブ)乳がんの治療薬として、TROP-2を標的とする抗体薬物複合体(ADC)であるサシツズマブ ゴビテカン(商品名:トロデルビ)の日本における製造販売承認を取得したと発表した。 今回の承認は、2つ以上の化学療法歴のある手術不能または再発のトリプルネガティブ乳がん患者を対象にサシツズマブ ゴビテカンと医師選択治療の有効性と安全性を比較した海外での第III相臨床試験(ASCENT)と、2つ以上の化学療法歴のある手術不能または再発のトリプルネガティブ乳がん患者を対象にサシツズマブ ゴビテカンの有効性と安全性を評価した国内の第II相臨床試験(ASCENT-J02)の結果に基づくものである。 トリプルネガティブ乳がんは、転移・再発を起こしやすく、予後不良とされる。近年使用可能になった免疫チェックポイント阻害薬のほかに、新しい治療選択肢の登場が待たれていた。

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日本人治療抵抗性うつ病に対するケタミン治療の有用性~二重盲検ランダム化比較試験

 治療抵抗性うつ病(TRD)に対しケタミンが抗うつ効果をもたらすことは、北米や欧州各国から頻繁に報告されているが、アジア人患者におけるエビデンスは、これまで十分ではなかった。慶應義塾大学の大谷 洋平氏らは、日本人TRD患者におけるケタミン静脈内投与の有効性および安全性を評価するため、二重盲検ランダム化プラセボ対照試験を実施した。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2024年8月30日号の報告。 TRDの日本人患者34例を対象に、ケタミン群(0.5mg/kg)またはプラセボ群にランダムに割り付け、2週間にわたり週2回、40分間静脈内投与を行った。主要アウトカムは、ベースラインから治療終了までのMontgomery Asbergうつ病評価尺度(MADRS)合計スコアの変化とした。副次的アウトカムは、その他のうつ病症状スコア、寛解率、治療反応率、部分反応率などであった。また、ベースライン時の臨床人口統計学的特性とMADRS合計スコアの変化との関連も調査した。 主な結果は以下のとおり。・ITT解析では、両群間でMADRS合計スコアの減少に有意な差は認められなかったが(−8.1±10.0 vs.−2.5±5.2、t [32]=2.02、p=0.052)、per-protocol解析では、ケタミン群はプラセボ群よりも、MADRS合計スコアの有意な減少が認められた(−9.1±10.2 vs.−2.7±5.3、t [29]=2.22、p=0.034)。・その他のアウトカムは、両群間で差は認められなかった。・ケタミン群はプラセボ群よりも有害事象の発現が多かったが、重篤な有害事象は報告されなかった。・ベースライン時のMADRS合計スコアが高い、およびBMIが高い場合、MADRS合計スコアの減少は大きかった。 著者らは「日本人TRD患者において、ケタミン静脈内投与は、プラセボよりも優れており、多様な民族におけるTRD患者の抑うつ症状軽減に対するケタミンの有用性が示唆された」と結論付けている。

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転移を有するホルモン感受性前立腺がん、ダロルタミド+ADTがrPFS改善(ARANOTE)/ESMO2024

 転移を有するホルモン感受性前立腺がん(mHSPC)に対して、ダロルタミド+アンドロゲン遮断療法(ADT)の併用療法が、プラセボ+ADTと比較して画像上の無増悪生存期間(rPFS)の有意な改善を示した。カナダ・モントリオール大学のFred Saad氏が、国際共同第III相ARANOTE試験の結果を、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2024)で報告した。同患者に対しては、第III相ARASENS試験において、ダロルタミドをADT+ドセタキセルに加えた併用療法が、ADT+ドセタキセルと比較して全生存期間(OS)を有意に改善している。・対象: mHSPC患者(ECOG PS 0~2)・試験群(ダロルタミド+ADT群):ダロルタミド(1日2回、600mg)+ADT 446例・対照群(プラセボ+ADT群):プラセボ+ADT 223例・評価項目:[主要評価項目]中央判定によるrPFS[副次評価項目]OS、次の抗がん剤治療開始までの期間、mCRPCまでの期間、前立腺特異抗原(PSA)増悪までの期間、PSA不検出率(<0.2ng/mL)、疼痛増悪までの期間(BPI-SF)、安全性・層別化因子:内臓転移、局所療法の有無 主な結果は以下のとおり。・ベースライン特性は両群でおおむね一致しており、年齢中央値はともに70歳、アジア人がダロルタミド+ADT群32.3% vs.プラセボ+ADT群29.1%、PSA中央値が21.4ng/mL vs. 21.2ng/mL、初回診断時に転移あり(de novo)が71.1% vs.75.3%、CHAARTED試験の高腫瘍量に該当したのが70.6% vs.70.4%、内臓転移ありが11.9% vs.12.1%、局所療法歴ありがともに17.9%であった。・2024年6月7日のデータカットオフ時点におけるrPFS中央値は、ダロルタミド+ADT群未到達 vs.プラセボ+ADT群25.0ヵ月(ハザード比[HR]:0.54、95%信頼区間[CI]:0.41~0.71、p<0.0001)であった。・rPFSのサブグループ解析の結果、すべてのサブグループでダロルタミド+ADT群における一貫したベネフィットがみられた。・副次評価項目についても、すべての項目でダロルタミド+ADT群で優位な傾向がみられ、層別HRはOSが0.81(95%CI:0.59~1.12)、次の抗がん剤治療開始までの期間が0.40(0.29~0.56)、mCRPCまでの期間が0.40(0.32~0.51)、PSA増悪までの期間が0.31(0.23~0.41)、疼痛増悪までの期間が0.72(0.54~0.96)であった(OSのデータは未成熟)。・治療中に発現した有害事象(TEAE)の発生状況は同様であり、Grade3/4はダロルタミド+ADT群30.8% vs.プラセボ+ADT群30.3%、Grade5は4.7% vs.5.4%で発生した。・治療期間中央値はダロルタミド+ADT群24.2ヵ月 vs.プラセボ+ADT群17.3ヵ月であった。試験薬の中止につながるTEAEは、6.1% vs.9.0%で発生した。 Saad氏は、ドセタキセルを使用しないダロルタミド+ADT併用療法が、mHSPC患者の治療選択肢の1つとなるだろうと結論付けている。ディスカッサントを務めたオランダ・Radboud University Medical CenterのNiven Mehra氏は、本試験の対象とならなかった機能的に脆弱な集団における有効性についてのデータも求められるとし、ドセタキセルやアビラテロン、エンザルタミドに適応のなかった集団における本療法の有効性を評価する、進行中のPEACE-6試験の結果に注目したいとコメントした。

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複雑病変へのPCI、OCTガイドvs.血管造影ガイド/Lancet

 複雑病変に対し薬剤溶出ステント(DES)の留置が必要な患者において、光干渉断層撮影(OCT)ガイド下の経皮的冠動脈インターベンション(PCI)は血管造影ガイド下PCIと比較し、1年後の主要有害心血管イベント(MACE)の発生率が有意に低下した。韓国・延世大学校のSung-Jin Hong氏らが、同国20病院で実施した医師主導の無作為化非盲検優越性試験「Optical Coherence Tomography-guided Coronary Intervention in Patients with Complex Lesions trial:OCCUPI試験」の結果を報告した。PCI施行中にOCTは詳細な画像情報を提供するが、こうした画像診断技術の臨床的有用性は不明であった。Lancet誌2024年9月14日号掲載の報告。DESによるPCI施行予定患者を無作為化、1年後のMACEを評価 研究グループは、DESによるPCIが適応と判断された19~85歳の患者を登録してスクリーニングを行い、1つ以上の複雑病変を有する患者をOCTガイド下PCI群(OCT群)またはOCTを用いない血管造影ガイド下PCI群(血管造影群)に1対1の割合で無作為に割り付けた。 複雑病変の定義は、急性心筋梗塞、慢性完全閉塞、long lesion(ステント長≧28mm)、石灰化病変、分岐部病変、非保護の左主幹部病変、小血管疾患(血管径<2.5mm)、冠動脈内血栓、ステント血栓症、ステント内再狭窄、バイパスグラフト病変であった。 アウトカム評価者は割り付けについて盲検化されたが、患者、追跡調査の医療従事者、データ解析者は盲検化されなかった。PCIは、エベロリムス溶出ステントを用いて従来の標準的方法に従って実施された。 主要アウトカムは、PCI施行1年後のMACE(心臓死、心筋梗塞、ステント血栓症、虚血による標的血管血行再建の複合)で、ITT解析を行い、優越性のマージンはハザード比1.0とした。MACE発生率、OCT群5% vs.血管造影群7%、ハザード比は0.62 2019年1月9日~2022年9月22日に、複雑病変へのDESによるPCIを必要とする患者1,604例が無作為化された(OCT群803例、血管造影群801例)。患者背景は、1,290例(80%)が男性、314例(20%)が女性で、無作為化時の平均年齢は64歳(四分位範囲:57~70)であった。1,588例(99%)が1年間の追跡調査を完了した。 主要アウトカムのイベントは、OCT群で803例中37例(5%)、血管造影群で801例中59例(7%)に発生した。絶対群間差は-2.8%(95%信頼区間[CI]:-5.1~-0.4)、ハザード比は0.62(95%CI:0.41~0.93)であり、有意差が認められた(p=0.023)。 副次アウトカムの脳卒中、出血イベント(BARC出血基準タイプ3または5)、造影剤誘発性腎症の発生率に、両群間で有意差はなかった。 なお、著者は、追跡期間が短いこと、完全な盲検化が困難であったこと、血管造影ガイド下PCIは術者の経験に影響される可能性があること、韓国のみで実施されたことなどを研究の限界として挙げている。

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早期TN乳がんの術前・術後ペムブロリズマブ、最終OS結果(KEYNOTE-522)/NEJM

 高リスク早期トリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者において、ペムブロリズマブ+化学療法による術前補助療法およびペムブロリズマブ単独による術後補助療法は、術前化学療法単独と比較して、全生存期間(OS)を有意に延長した。英国・ロンドン大学クイーン・メアリー校のPeter Schmid氏らKEYNOTE-522 Investigatorsが、21ヵ国181施設で実施された国際共同無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験「KEYNOTE-522試験」の結果を報告した。KEYNOTE-522試験では、プラチナ製剤を含む化学療法にペムブロリズマブを追加することで、病理学的完全奏効(pCR)率と無イベント生存期間(EFS)が有意に改善することが示されており、今回はOSについての最終結果が報告された。NEJM誌オンライン版2024年9月15日号掲載の報告。術前・術後ペムブロリズマブ併用の有効性をプラセボ併用と比較 研究グループは、未治療の高リスク早期TNBC患者(T1c N1-2またはT2-4 N0-2、ECOG PS 0~1)を、ペムブロリズマブ+化学療法群とプラセボ+化学療法群に2対1の割合で無作為に割り付けた。 術前補助療法として、ペムブロリズマブ+化学療法群では、ペムブロリズマブ(200mg、3週ごと)+パクリタキセル(80mg/m2、週1回)+カルボプラチン(AUC 1.5、週1回またはAUC 5、3週ごと)を4サイクル、その後ペムブロリズマブ+シクロホスファミド(600mg/m2)+ドキソルビシン(60mg/m2)またはエピルビシン(90mg/m2)を3週ごと4サイクル投与し、プラセボ+化学療法群ではペムブロリズマブの代わりにプラセボを上記化学療法とともに投与した。 根治手術後は術後補助療法として、適応があれば放射線療法を行うとともに、それぞれペムブロリズマブまたはプラセボを3週ごと9サイクル投与した。 主要評価項目は、pCR率およびEFS、副次評価項目はOSで、ITT解析を行った。5年OS率は86.6% vs.81.7% 2017年3月~2018年9月に計1,174例が無作為化された(ペムブロリズマブ+化学療法群784例、プラセボ+化学療法群390例)。 計画されていた今回の第7回中間解析(データカットオフ日:2024年3月22日)における追跡期間中央値は75.1ヵ月(範囲:65.9~84.0)で、死亡はペムブロリズマブ+化学療法群で115例(14.7%)、プラセボ+化学療法群で85例(21.8%)に認められた。 5年OS率は、ペムブロリズマブ+化学療法群が86.6%(95%信頼区間[CI]:84.0~88.8)、プラセボ+化学療法群は81.7%(95%CI:77.5~85.2)であり、ペムブロリズマブ+化学療法群においてOSの有意な延長が認められた(p=0.002、層別log-rank検定、有意水準α=0.00503)。 有害事象については、これまでに報告されているペムブロリズマブおよび化学療法の安全性プロファイルと一致していた。

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HFpEFに2番目のエビデンスが登場―非ステロイド系MRAの時代が来るのか?(解説:絹川弘一郎氏)

 ESC2024はHFpEFの新たなエビデンスの幕開けとなった。HFpEFに対する臨床試験はCHARM-preserved、PEP-CHF、TOPCAT、PARAGONと有意差を検出できず、エビデンスのある薬剤はないという時代が続いた。 CHARM-preservedはプラセボ群の一部にACE阻害薬が入っていてなお、プライマリーエンドポイントの有意差0.051と大健闘したものの2003年時点ではmortality benefitがない薬剤なんて顧みられず、PEP-CHFはペリンドプリルは1年後まで順調に予後改善していたのにプラセボ群にACE阻害薬を投与される例が相次ぎ、2年後には予後改善効果消失、TOPCATはロシア、ジョージアの患者のほとんどがおそらくCOPDでイベントが異常に少なく、かつ実薬群に割り付けられてもカンレノ酸を血中で検出できない例がロシア人で多発したなど試験のqualityが低かった、PARAGONではなぜか対照にプラセボでなくARBの高用量を選んでしまうなど、数々の不運または不思議が重なってきた。 その後ここ数年でSGLT2阻害薬がHFmrEF/HFpEFにもmortality benefitこそ示せなかったが心不全入院の抑制は明らかにあることがわかり、初のHFpEFに対するエビデンスとなったことは記憶に新しい。今回のFinearts-HF試験は、スピロノラクトンやエプレレノンと異なる非ステロイド骨格を有するMRA、フィネレノンがHFmrEF/HFpEFを対象に検討された。ここで、ステロイド骨格のMRAとフィネレノンとの相違の可能性について、まず説明する。 アルドステロンが結合したミネラルコルチコイド受容体は、cofactorをリクルートしながら核内に入って転写因子として炎症や線維化を誘導する遺伝子の5’-regionに結合して、心臓や腎臓の臓器障害を招くとされてきた。ステロイド骨格のMRAではアルドステロンを拮抗的に阻害するものの、ミネラルコルチコイド受容体がcofactorをリクルートすることは抑制できず、わずかながらではあっても炎症や線維化を促進してしまうことが知られている。このことがステロイド系MRAに腎保護作用が明確には認めづらい原因かといわれてきた。 一方、フィネレノンはもともとCa拮抗薬の骨格から開発された非ステロイド系MRAであり、cofactorのリクルートはなく、アルドステロン依存性の遺伝子発現はほぼ完全にブロックされるといわれている。FIDELIO-DKD試験ですでに示されているように糖尿病の合併があるCKDに限定されているとはいえ、フィネレノンには腎保護作用が明確にある。さらに、フィネレノンの体内分布はステロイド系MRAに比較して腎臓より心臓に多く分布しているようであり、腎臓の副作用である高カリウム血症が少なくなるのではないかという期待があった。このような背景においてHFmrEF/HFpEF患者を対象に、心不全入院の総数と心血管死亡の複合エンドポイントの抑制をプライマリーとして達成したことはSGLT2阻害薬に続く快挙である。カプランマイヤー曲線はSGLT2阻害薬並みに早期分離があり、フィネレノン20mgをDKDに使用している現状では血圧や尿量にさほどの変化を感じないが、早期に効果があるということは、やはり血行動態的に作用しているとしか考えられず、40mgでの降圧や利尿に対する効果を今一度検証する必要があると感じた。またかというか、HFpEFでは心血管死亡の発症率が低いため、mortalityに差がついていないが、これはもともと6,000人2年の規模の試験では当初から狙えないことが明らかなので、もうあまりこの点をいうのはやめたほうがいいかと思われる。 ちなみに死亡のエンドポイントで事前に有意差を出すための症例数を計算すると、1万5,000人必要だそうである。しかし、高カリウム血症の頻度は依然として多く、非ステロイド系MRAとしての期待は裏切られた格好になっている。もっとも、プロトコル上、eGFR>60の症例にはターゲット40mg、eGFR<60ではターゲット20mgとなっており、腎機能の低い症例に高カリウムが多いのか、むしろ高用量にした場合に一定程度高カリウムになっているのか、など細かい解析は今後出てくる予定である。腎保護の観点でもAKIはむしろフィネレノンで多いという結果であり、DKDで認められたeGFR slopeの差などがHFpEFでどうなのかも今後明らかになるであろう。このように、現状では非ステロイド系という差別化にはいまだ明確なデータはないようであり、それもあってTOPCAT Americasとのメタ解析が出てしまうことで、MRA一般にHFpEFに対するクラスエフェクトでI/Aというような主張も米国のcardiologistから出ている。 しかし、前述のようにいかにロシア、ジョージアの症例エントリーやその後のマネジメントに問題があったとはいえ、いいとこ取りで試験結果を解釈するようになればもう前向きプラセボ対照RCTの強みは消失しているとしかいえず、あくまでもTOPCAT全体の結果で解釈すべきで、ここまで長年そういう立場で各国ガイドラインにも記述されてきたものを、FINEARTS-HF試験の助けでスピロノラクトンの評価が一変するというのは、さすがに多大なコストと時間と手間をかけた製薬企業に残酷過ぎると思う。 少なくともFINEARTS-HF試験の結果をIIa/B-Rと評価したうえで、今後フィネレノン自体がHFrEFにも有効であるのか、または第III相試験中の他の非ステロイド系MRAの結果がどうであるかなどを合わせて、本当に非ステロイド系MRAが既存のステロイド系MRAに取って代わるかの結論には、まだ数年の猶予は必要であろうか。

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定年後の人生、いろいろ【Dr. 中島の 新・徒然草】(548)

五百四十八の段 定年後の人生、いろいろ「暑さ寒さも彼岸まで」とはよく言ったもので、大阪では本当に秋分の日から涼しくなりました。もはやエアコンも不要で、夜なんかは寒いくらいです。ついに灼熱の夏が終わったという感じですね。さて、今回は医学部のクラス会の話。前回行われたのが2019年、コロナ直前でした。半年後に新型コロナという大変な災厄が降りかかってくるとは、誰一人想像していなかったあの夏から5年。1984年卒業のわれわれは、実にクラスの約3分の1が集合しました。最初は黙祷から始まります。合計7人の級友たちの名前が読み上げられ、黙祷を行いました。医学部を卒業して早や40年、われわれの多くは定年前後ですが、学士入学の人だと70代も珍しくありません。宴会の合間に、1人ずつ前に立って1分間スピーチをしましたが、それぞれに興味深いものがありました。まずは今でも現役バリバリの人。「もう70歳になりますが、ウン十億円の借金を背負って病院経営をしており、年間1,600件の手術のうちの400件は自分でやっています」「新薬を開発して動物実験もうまくいったので、ヒトを対象にした治験を目論んでいます」「すごい!」の一言ですね。一方、もう余生だという人もいます。「定年退職した後、亡くなった両親の家の中を片付けたり、庭の手入れをしたりする毎日です」「ぼちぼちクリニックを終わりにして、8人の孫の成長を見守る生活を送りたいと思っています」開業した人たちは「もう疲れた」と言っている人が多かった印象がありました。また、「今が一番!」という人も。「去年から勤め始めた病院には片道30分の自転車通勤をしていて、若い時より健康になりました」「定年退職して今年の4月から別の病院ですが、仕事量は半分で給料は1.5倍になりました。皆に大切にしてもらっている今が一番幸せです」健康とか幸せとか、素晴らしいですね。変わったところでは……「学生時代にやっていた合気道の稽古を再開しました」「大学を退官したら、地域の子供たちに生物学を教える予定です」「地下アイドルの推し活をしています。サイリウムを振りながら声を出すのは健康にもいいですよ」ちなみにサイリウムというのは光る棒のことで、YouTubeで「ヲタ芸」を検索すれば一目でわかる動画が大量に出てきます。ということで、それぞれの第2の人生。とくに定年前後の読者の皆さまの参考になるかと思って、紹介させていただきました。最後に1句夏過ぎて 振り返りたる 40年

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下垂体性PRL分泌亢進症

1 疾患概要■ 定義希少疾病である「下垂体性プロラクチン(PRL)分泌亢進症」(指定難病74)は表1の診断基準にある「1の1)の(1)~(3)」のうち1項目以上を満たし、1の2)を満たし、2の鑑別疾患を除外したもの」と定義される。すなわち、表2-1-1)のPRL産生腫瘍(プロラクチノーマ)が本疾患に該当する(表2)。表1 下垂体性PRL分泌亢進症の診断基準<診断基準>1.主要項目1)主症候(1)女性:月経不順・無月経、不妊、乳汁分泌のうち1項目以上(2)男性:性欲低下、インポテンス、女性化乳房、乳汁分泌のうち1項目以上(3)男女共通:頭痛、視力視野障害(器質的視床下部・下垂体病変による症状)のうち1項目以上2)検査所見血中PRLの上昇*2.鑑別診断薬剤服用によるPRL分泌過剰、原発性甲状腺機能低下症、視床下部・下垂体茎病変、先端巨大症(PRL同時産生)、マクロプロラクチン血症、慢性腎不全、胸壁疾患、異所性PRL産生腫瘍3.診断のカテゴリーDefinite:1の1)の(1)~(3)のうち1項目以上を満たし、1の2)を満たし、2の鑑別疾患を除外したもの*血中PRLは睡眠、ストレス、性交や運動などに影響されるため、複数回測定して、いずれも施設基準値以上であることを確認する。マクロプロラクチノーマにおけるPRLの免疫測定においてフック効果(過剰量のPRLが、添加した抗体の結合能を妨げ、見かけ上PRL値が低くなること)に注意すること。難病情報センター 下垂体性PRL分泌亢進症より引用表2 高PRL血症を来す病態1.下垂体病変1)PRL 産生腫瘍(プロラクチノーマ)2)先端巨大症(GH-PRL同時産生腫瘍)2.視床下部・下垂体茎病変1)機能性2)器質性(1)腫瘍(頭蓋咽頭腫・ラトケ嚢胞・胚細胞腫・非機能性腫瘍・ランゲルハンス細胞組織球症など)(2)炎症・肉芽腫(下垂体炎・サルコイドーシスなど)(3)血管障害(出血・梗塞)(4)外傷3.薬物服用(腫瘍以外で最も多い原因は薬剤である。詳細は表3を参照)4.原発性甲状腺機能低下症5.マクロプロラクチン血症*6.他の原因1)慢性腎不全2)胸壁疾患(外傷、火傷、湿疹など)3)異所性PRL産生腫瘍*PRLに対する自己抗体とPRLの複合体形成による。高PRL血症の15~25%に存在し、高PRL血症による症候を認めない。診断には、ゲルろ過クロマトグラフィー法、ポリエチレングリコール(PEG)法、抗IgG抗体法を用いて高分子化したPRLを証明する。(間脳下垂体機能障害と先天性腎性尿崩症および関連疾患の診療ガイドライン作成委員会、「間脳下垂体機能障害に関する調査研究」班、日本内分泌学会 編. 間脳下垂体機能障害と先天性腎性尿崩症および関連疾患の診療ガイドライン2023年版. 日内分泌会誌. 2023;99:1-171.より引用・作成)■ 疫学平成11(1999)年度の厚生労働省研究班による全国調査では、1998年1年間の推定受療患者数が、PRL産生腫瘍を含むPRL分泌過剰症で1万2,400人と報告されている1)。2005~2008年の脳腫瘍統計によると、原発性脳腫瘍のうち、下垂体腫瘍は19%であり、非機能性が57%、機能性が43%(PRL産生は12%)であった2)。PRL産生腫瘍は、男女比は1:3.6と女性に多く、男性では大きい腫瘍サイズで診断されることが多い1)。発症年齢は、女性では21~40歳に多く、男性では20~60歳にかけて認められる1)。■ 病因下垂体腫瘍によるPRL産生亢進が本症の病因である。■ 症状先述の表1-1の主症候(1)、(2)に記した高プロラクチン血症による症状と、(3)に記した下垂体腫瘍による症状が認められる。高プロラクチン血症の状態では視床下部でのキスペプチン分泌が減少し、性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)ニューロン(ゴナドトロピンニューロン)からのGnRHの脈動的分泌が抑制される。その結果、性腺刺激ホルモンおよび性ホルモンの分泌異常が生じて種々の症状が出現する。■ 予後脳腫瘍統計の追跡調査によると、2005~2008年のPRL産生腫瘍の5年生存率(および5年無増悪生存率)は98.7%(94.8%)だった2)。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)間脳下垂体機能障害に関する調査研究班が策定した本症の診断基準は先述の表1を参照していただきたい。本症は高PRL血症を呈するが、高PRL血症は先述の表2に記された種々の病態によっても生じるため鑑別を要する。高PRL血症の病態把握のためにはPRLの分泌調節を知っておくことが重要である。PRLは下垂体前葉に存在するPRL産生細胞より分泌される。視床下部から分泌されるドパミンは、下垂体門脈を介して下垂体に直接流入し、PRL分泌を抑制的に調節している。また、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)はPRL放出因子の1つである。高PRL血症の原因として、下垂体病変、視床下部・下垂体病変、薬剤、原発性甲状腺機能低下症、マクロプロラクチン血症、その他(慢性腎不全、胸壁疾患、異所性PRL産生腫瘍)が挙げられる(表2)。下垂体病変では、PRL 産生腫瘍(プロラクチノーマ)と先端巨大症(GH-PRL同時産生腫瘍)によるPRL分泌亢進が認められる。視床下部・下垂体病変では、視床下部のドパミン産生低下あるいは下垂体門脈から下垂体へのドパミンの輸送障害を介したPRL分泌抑制の減弱によってPRL分泌が亢進する。薬剤性では、ドパミンD2受容体受容体拮抗薬、ドパミン産生抑制作用のある降圧薬、ドパミン活性の抑制作用があるエストロゲンなどによりPRL分泌が亢進する(表3)。原発性甲状腺機能低下症では、甲状腺ホルモンの低下により視床下部のTRH産生が亢進し、TRHによるPRL分泌亢進が生じる。表3 高PRL血症を来す薬剤画像を拡大する3 治療下垂体性PRL分泌亢進症の治療は、ドパミン作動薬による薬物療法が第1選択であり、PRL値の低下効果および腫瘍縮小効果が期待される3)。具体的には、カベルゴリン、ブロモクリプチン、テルグリドを使用する。カベルゴリンまたはブロモクリプチンを用いる。カベルゴリンの場合、週1回就寝前、0.25mg/回より開始し、PRL値により漸増する(上限は1mg/回)。ブロモクリプチンの場合、2.5mg/回、夕食後より開始しPRL値により5~7.5mg/日、分2~3に漸増する4)。注意すべき点としてドパミン作動薬には、嘔気、嘔吐、起立性低血圧に加え、病的賭博、病的性欲亢進、強迫性購買、暴食などを呈する衝動制御障害が報告されており、本障害を認めた場合、ドパミン作動薬の減量または投与中止を考慮する必要がある4)。また、患者および家族などに上記衝動制御障害の可能性について説明しておく。カベルゴリンを高用量で長期間投与する場合(週2.5mgを超える場合)には、心臓弁膜症の発生に注意する必要があり、心エコーで評価を行う。ドパミン作動薬は胎盤を通過するため、妊娠判明時に薬物療法を中止することが勧められる。薬物療法中止により腫瘍が増大する可能性があるため、妊娠前に腫瘍縮小、規則的月経発来まで薬物治療を行う。薬物療法に抵抗性の場合や副作用で服薬できない場合は、外科的治療を選択する。外科治療後には髄液鼻漏(髄膜炎)を来す可能性があることに注意する。4 今後の展望薬物治療が第1選択である本症において、薬物治療を終了する基準を明らかにすることが重要である。2011年に発表された米国内分泌学会のガイドラインでは、「最低2年間ドパミン作動薬にて治療され、血中PRLの上昇がなく、頭部MRI所見で上腫瘍残存を認めない場合、注意深い臨床的、生化学的な経過観察の下で、ドパミン作動薬の減量、中止ができる可能性がある」と記されている5)。しかしながら、ドパミン作動薬を中止すると血中PRL の再上昇を認める場合も多い。わが国の診療ガイドラインでは、「薬物療法の最少量で血中PRL値が正常に維持され、画像上腫瘍が認められなくなったミクロプロラクチノーマ(微小PRL産生腫瘍)の場合、薬物療法の中止を提案する。【推奨の強さ:弱(合意率100%)、エビデンスレベル:C】」4となっており、今後のエビンデンスの構築が期待される。5 主たる診療科内分泌内科、脳神経外科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 下垂体性PRL分泌亢進症(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)間脳下垂体機能障害に関する調査研究(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)1)難病情報センター 下垂体性PRL分泌亢進症2)横山徹爾. 下垂体疾患診療マニュアル 改訂第3版. 診断と治療社;2021.p.96-100.3)日本内分泌学会・日本糖尿病学会 編集. 内分泌代謝・糖尿病内科領域専門医研修ガイドブック. 診断と治療社;2023.p.5-30.4)間脳下垂体機能障害と先天性腎性尿崩症および関連疾患の診療ガイドライン作成委員会、「間脳下垂体機能障害に関する調査研究」班、日本内分泌学会 編. 間脳下垂体機能障害と先天性腎性尿崩症および関連疾患の診療ガイドライン2023年版. 日内分泌会誌. 2023;99:1-171.5)Melmed S, et al. J Clin Endocrinol Metab. 2011;96:273-288.公開履歴初回2024年9月26日

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第115回 レプリコンワクチンの誹謗中傷、許されるのか?

炎上する「レプリコンワクチン」10月から始まる新型コロナワクチン接種。その中でも注目を集めているのが、Meiji Seika ファルマが開発した次世代mRNAワクチン、通称「レプリコンワクチン」です。しかし、このワクチンを巡り、SNSではさまざまな議論が巻き起こっています。立場を明確にしておきますが、エビデンスもしっかりそろえたうえで承認となっているので、個人的には懸念していません。気になる点があるとすれば、このワクチンは1瓶で16人分の設定になっているため、個人接種よりも集団接種に向いている仕様だということです。さて、「レプリコン」というなじみのない名前が原因なのか、SNSではフルボッコで叩かれているように思います。思い出してみてください、メッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンが登場したときも、RNAという言葉に対して「遺伝子が改変されるのでは?」といった誤解や不安が広がったことがありました。この手の不安や誤解に敏感な人たちが、コロナ禍を通して浮かび上がってきました。私がかつて尊敬していた医師でさえも、いつの間にか反ワクチン派に転じ、「ワクチン後遺症にイベルメクチンを」という主張を繰り返すようになりました。また、大学時代の恩師も、今年に入ってから「ワクチンはむしろ薬害だ」という発言をするようになり、驚きを隠せません。とくに懸念すべきは、こうした陰謀論を広めるのがただのSNSインフルエンサーではなく、政治家もその一部にいるということです。彼らはワクチンの仕組みを十分に理解していなくても、人々に納得感を与える発信力を持っています。販売元への誹謗中傷レプリコンとは「自己増幅能」と言う意味です。細胞内でRNAが増殖するため、少量投与によって新型コロナの免疫が引き出されるという仕組みです。タンパクを作り出すのであって、ウイルスそのものが増殖するわけではありません。そもそも、これを言い出すと、じゃあ生ワクチンはどうなるんだということになりますので…。いずれにしても生ワクチンとはまったく異なるもので、従来のmRNAワクチンよりも少ない成分量で高い中和抗体価を維持できる次世代型のmRNAワクチンと言えます。注射部位のmRNAは投与してから8日以降で急速に低下することから、安全性にはほとんど問題ないとされています。レプリコンワクチンによってウイルスが体外に放出されることに反対するコメントを出している団体もありますが、医学的にはワクチンを接種したことで他者に何か影響が起こるということは、起こりません。Meiji Seika ファルマも明確にこの現象を否定しています。「もう薬害」「周囲へ感染を広げる兵器」「原爆と同じ人を殺すもの」といった販売元に対する度が過ぎた誹謗中傷は、個人的には訴訟されるリスクを天秤にかけたほうがよいのでは…とも感じます。

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既治療のHER2変異陽性NSCLC、zongertinibが約7割に奏効(Beamion LUNG-1)/WCLC2024

 HER2遺伝子変異陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)に対するzongertinibの有望な結果が報告された。HER2遺伝子変異はNSCLC患者の約2~4%に認められ、脳転移が生じることが多く、予後は不良であるとされている。zongertinibはHER2チロシンキナーゼドメイン選択的に共有結合するHER2チロシンキナーゼ阻害薬である。zongertinibの用量探索および安全性・有効性を検討する国際共同第Ia/Ib相試験「Beamion LUNG-1試験」が実施され、第Ib相の既治療のHER2遺伝子変異(チロシンキナーゼドメインの変異)陽性コホートにおける結果が、2024年9月7~10日に米国・サンディエゴで開催された世界肺がん学会(WCLC2024)で報告された。今回の報告では、zongertinib 1日1回120mgによる治療を受けた患者の66.7%に奏効が認められ、忍容性も高かった。オランダがん研究所のGerrina Ruiter氏が本研究結果を発表した。 本試験は第Ia相と第Ib相で構成され、第Ia相の結果から1日1回120mg、240mgの用量が選択された。今回は、プラチナ併用化学療法による治療歴のある(抗体薬物複合体による治療は除外)HER2遺伝子変異(チロシンキナーゼドメインの変異)陽性NSCLC患者を対象とした、第Ib相のコホート1の結果が報告された。コホート1では、zongertinibを1日1回120mg投与する群(120mg群)、240mg投与する群(240mg群)に1対1の割合で無作為に割り付けた。中間解析により1日1回120mgの用量が選択され、中間解析以降の組み入れ患者には、1日1回120mgの用量で投与した。有効性の主要評価項目は中央判定による奏効率(ORR)で、期待値を30%とした。 主な結果は以下のとおり。・データカットオフ時点(2024年5月23日)において、zongertinibによる治療を受けたのは132例であり(120mg群:75例、240mg群:57例)、有効性に関する追跡期間中央値は約13週間であった。・前治療ライン数が1ラインの割合は120mg群56%(42例)、240mg群49%(28例)であり、2ラインはそれぞれ16%(12例)、28%(16例)、3ライン以上はそれぞれ28%(21例)、23%(13例)であった。ベースライン時に脳転移を有していた割合はそれぞれ37%(28例)、46%(26例)であった。・Grade3以上の治療関連有害事象(TRAE)は120mg群17%(13例)、240mg群19%(11例)に発現したが、死亡に至ったTRAEは認められなかった。減量に至った有害事象(AE)の発現率は全体の11%(14例)であったが、治療中止に至ったAEの発現率は3%(4例)と低かった。・有効性の主要評価項目である中央判定によるORRは、120mg群全体(75例)で66.7%であり(期待値30%に対する片側p<0.0001)、主要評価項目を達成した。腫瘍縮小はzongertinibによる治療を受けた患者全体の94%(124例)に認められた。・120mg群、240mg群に無作為に1対1の割合で割り付けられた患者における中央判定によるORRは、120mg群72.4%(42例)、240mg群78.2%(43例)であり、完全奏効(CR)はそれぞれ1例、2例に認められた。病勢コントロール率はそれぞれ94.8%(55例)、100%(55例)であった。・頭蓋内ORRは、120mg群33%(9例)、240mg群40%(10例)であり、CRはそれぞれ4例、5例に認められた。 Ruiter氏は、本研究結果について「zongertinibは、脳転移を有する患者も含む既治療のHER2遺伝子変異(チロシンキナーゼドメインの変異)陽性NSCLC患者において、統計学的有意かつ臨床的に意義のある抗腫瘍活性を示した。治療関連死は認められず、減量や中止に至ったAEの発現も少なく、zongertinibの忍容性は非常に高かった」とまとめた。なお、HER2遺伝子変異(チロシンキナーゼドメインの変異)陽性のNSCLCに対する1次治療として、zongertinibと標準治療を比較する国際共同第III相無作為化比較試験「Beamion LUNG-2試験」が実施されており、現在患者を組み入れ中である。

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