サイト内検索|page:104

検索結果 合計:35100件 表示位置:2061 - 2080

2061.

大惨事はがんの診断数を減少させる

 自然災害やパンデミックなどの大惨事は、がんによる死者数の増加につながるかもしれない。新たな研究で、ハリケーン・イルマとハリケーン・マリアが2週間間隔でプエルトリコを襲った際に、同国での大腸がんの診断数が減少していたことが明らかになった。このような診断数の低下は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックの発生直後にも認められたという。プエルトリコ大学総合がんセンターのTonatiuh Suarez-Ramos氏らによるこの研究結果は、「Cancer」に4月14日掲載された。 米国領プエルトリコでは、2017年9月初旬に超大型ハリケーン・イルマが島の北を通過したわずか2週間後に、カテゴリー5の最強ハリケーン・マリアが上陸し、甚大な被害を出した。当時、稼働していた病院はほとんどなく、高い貧困率などが原因ですでに制限されていた医療へのアクセスがさらに悪化した。さらに2020年にはCOVID-19パンデミックが発生した。政府が実施した厳格なロックダウン政策は、感染の抑制には効果的だったが、医療サービスの利用低下につながった。 Suarez-Ramos氏らは、このような大規模イベント発生による医療システムの混乱により、プエルトリコで2番目に多いがんである大腸がんの検診へのアクセスが制限され、それががんの早期発見の妨げとなった可能性があるのではないかと考えた。それを調べるために同氏らは、プエルトリコ中央がん登録簿の2012年1月1日から2021年12月31日までのデータを入手し、ハリケーン・イルマとハリケーン・マリアおよびCOVID-19パンデミックの発生直後および発生期間中に大腸がんの診断数がどのように変化したかを調査した。 その結果、2つのハリケーンがプエルトリコを襲った2017年9月の大腸がんの診断数は82件だったことが明らかになった。ハリケーンがなかった場合に想定された診断数は161.4件であり、統計モデルにより、ハリケーンによる即時の影響として診断数が28.3件減少したと推定された(17.5%の減少に相当)。 一方、パンデミック発生に伴うロックダウン後(2020年4月)の大腸がん診断数は50件であった。ロックダウンがなかった場合に想定された診断数は162.5件であり、統計モデルにより、ロックダウンにより診断数は即時的に39.4件減少したと推定された(24.2%の減少に相当)。 2021年12月の研究終了時点でも、早期大腸がんの診断数と50~75歳での診断数は、想定される診断数に達していなかった。また、末期大腸がんの診断数と、50歳未満および76歳以上の診断数は、想定される診断数を上回っていた。 論文の筆頭著者であるSuarez-Ramos氏は、「これらの調査結果は、ハリケーンの襲来やパンデミックの発生により医療へのアクセスが制限されたことが原因でがんの発見が遅れ、患者の健康状態が悪化した可能性があることを示唆している」とニュースリリースの中で述べている。研究グループは、このようなスクリーニング検査の混乱により、「将来的には、大腸がんが進行してから検出される患者が増え、生存率が低下する可能性がある」と危惧を示している。 米国地質調査所によると、気候変動による気温上昇により、より激しい嵐や壊滅的な山火事の発生が増え、海面上昇も進んでいるという。論文の上席著者であるプエルトリコ大学のKaren Ortiz-Ortiz氏は、「医療制度はこうした災害下でも人々が必要ながんの検査を受けられる方法を見つけておく必要がある。われわれの最終的な目標は、危機的状況下でも医療システムの回復力とアクセス性を高めること、また、人々がより長くより健康的な生活を送れるように支援することだ」とニュースリリースの中で語っている。

2062.

医療現場でのコミュニケーションの問題はインシデントの主因

 医療現場でのコミュニケーションの問題は、患者の安全に関わるインシデント(以下、インシデント)の主因であることが、新たな研究で明らかになった。インシデントとは、ニアミスなど患者に実害がなかったものも実害があったものも含めた、標準的な医療から逸脱した行為や事態のことを指す。本研究では、コミュニケーションの問題のみを原因として生じたインシデントは13.2%に上ることが示されたという。英レスター大学医学部のJeremy Howick氏らによるこの研究結果は、「Annals of Internal Medicine」に4月15日掲載された。 Howick氏らは、論文データベースからコミュニケーションの問題が患者の安全に与える影響を定量的に評価した46件の研究を抽出して結果を統合し、医療従事者間(臨床スタッフ間および臨床スタッフと非臨床スタッフ間)、または医療従事者と患者・介護者間のコミュニケーションの問題が患者の安全に与える影響を検討した。これらの研究には総計6万7,826人の患者が含まれていた。 46件中4件の研究では、医療におけるコミュニケーションの問題がインシデントの唯一の原因として認められた割合を検討しており、その中央値は13.2%(四分位範囲6.1〜24.4%)だったことが示されていた。残る42件の研究では、コミュニケーションの問題がインシデントの一因であったかが、他の因子とともに検討されていた。それらの研究からは、中央値で24.0%(同12.0〜46.8%)のインシデントにコミュニケーションの問題が関与していることが明らかになった。 ある症例では、医師がビープ音を発しているポンプを止めるところを誤って心臓病の薬の点滴を止めてしまっていた。医師が看護師にそのことを伝えなかったため、その後、患者に危険な頻脈が生じたという。別の症例では、手術後の患者に腹痛が生じ、内出血の兆候である赤血球数の減少が認められたにもかかわらず、看護師から外科医にそのことが伝達されなかったため、患者が死亡していた。研究グループは、患者の死因となったこの内出血は予防できた可能性があると述べている。 Howick氏らは、「本研究結果は、医療従事者が同僚や患者などとの強い関係を築くために効果的なコミュニケーションスキルを身に付け維持することが、極めて重要であることを浮き彫りにしている」と述べている。 さらにHowick氏らは、このようなコミュニケーションの問題が発生する理由や患者を守るための改善策を解明するには、さらなる研究が必要だとしている。同氏らは、「コミュニケーションスキルの向上を目指す医療従事者は、患者の安全向上を目的としたコミュニケーション介入に関する公開報告書を読むと参考になるだろう。これらの報告書では、医療従事者間、そして医療従事者と患者間の言語コミュニケーションに対する標準化された介入アプローチが紹介されている。しかし、このような介入をさらに最適化・発展させ、患者安全の向上に最も効果的な介入を特定するには、さらなる研究が必要だ」と述べている。

2063.

DapaTAVI試験―構造的心疾患に対するSGLT2阻害薬の効果(解説:加藤貴雄氏)

 2025年ACCで発表されたDapaTAVI試験(Raposeiras-Roubin S, et al. N Engl J Med. 2025;392:1396-1405.)であるが、TAVI前に心不全および、中等度腎機能障害・糖尿病・左室駆出率低下のいずれかを持つ大動脈弁狭窄症患者が登録された試験である。左室駆出率<40%の患者は約18%で多くがHFmrEF/HFpEFの患者であり、平均年齢が82歳と高齢で、女性が約半数登録された。また、中等度~高度の左室肥大を伴う患者は約60%であった。 結果は、主要評価項目(全死亡または心不全増悪の複合エンドポイント)は、ダパグリフロジン追加群で有意に低い結果で、全死亡では有意な差がなく心不全増悪の差が主に結果に影響していた。主要な2次評価項目でも、心不全入院・心不全の緊急受診においてダパグリフロジン追加群で有意に低い結果であった。 試験結果を実臨床に生かすうえでのポイントは2点あり、1点目は、実臨床における大動脈弁狭窄症の患者層(高齢者・女性・左室肥大例)が登録され有効性を示した点である。安全性について、入院が必要もしくは敗血症につながる尿路感染症の頻度には差がなかったが、性器感染症・低血圧はダパグリフロジン追加群に多い結果であった点は、注意すべき点である。 2点目は、TAVI後の構造的異常として左室肥大がありNT-proBNPが5,300~6,300pg/mLと高い患者層で試験が開始され、心不全悪化を防止した点である。 SGLT2阻害薬は、心不全に対するガイドライン推奨薬の一角に位置付けられている薬剤であり、HFpEF/HFrEFに対する試験結果とも合致する。心不全の既往のある患者を除外した急性心筋梗塞患者対象のSGLT2阻害薬の試験(James S, et al. NEJM Evid. 2024;3:EVIDoa2300286., Butler J, et al. N Engl J Med. 2024;390:1455-1466.)では対照群も含めイベント率が低かった点を合わせて考えると、イベントを起こしやすい構造的心疾患を持つ、ハイリスクな患者へのしっかりとした薬剤の介入の必要性を示したと考えられる。

2064.

第261回 なぜ鳥居薬品を?塩野義製薬の買収戦略とは

製薬業界は世界的に見ると、再編が著しい業界である。いわゆる老舗の製薬企業同士の合併・買収という意味では、2020年の米国・アッヴィによるアイルランド・アラガンの買収が近年では最新の動きと言えるだろうが、欧米のメガファーマによるバイオベンチャー買収は日常茶飯事の出来事と言ってよい。これに対し日本の製薬企業でも、上位企業によるメガファーマ同様のバイオベンチャー買収が一昔前と比べて盛んになったことは事実だ。ただ、新薬開発能力のある製薬企業は売上高で4兆円超の武田薬品を筆頭に下は500億円規模まで約30社がひしめく、世界的に見ても稀なほど“過密”な業界でもある。このためアナリストなどからは、1990年代から判で押したように「国内再編が必至」と言われてきた。その中で国内の製薬企業同士の合併や経営統合などが盛んだったのが2005~07年にかけてである。藤沢薬品工業と山之内製薬によるアステラス製薬、第一製薬と三共による第一三共、大日本製薬と住友製薬による大日本住友製薬(現・住友ファーマ)、田辺製薬と三菱ウェルファーマによる田辺三菱製薬はいずれもこの時期に誕生している。上場製薬企業あるいは上場企業の製薬部門の合併で言うと、もっとも直近は2008年の協和発酵キリン(現・協和キリン)だろう。あれから15年間、国内製薬企業は“沈黙”を続けてきたが、それが突如破られた。ゴールデンウイーク明けのつい先日、5月7日に塩野義製薬が「日本たばこ産業(JT)の医薬事業を約1,600億円で買収する」と発表したのだ。JTと鳥居薬品の歴史JTの医薬事業というのはやや複雑な構造をしているが、それを解説する前にJTの沿革について簡単に触れておきたい。JTはかつてタバコ・塩・樟脳(しょうのう)※の専売事業を行っていた旧大蔵省外局の専売局が外郭団体・日本専売公社として分離独立し、それが1985年に民営化されて誕生した。すでに1962年に樟脳の専売制度は廃止され、民営化時点ではタバコと塩の専売事業を引き継いだが、塩の製造販売は1997年に自由化され、すでにJTの手を離れている。※クスノキの根や枝を蒸留して作られ、香料や医薬品、防虫剤、セルロイドなどの原料となる。ただ、民営化直後からたばこ事業の将来性には一定のネガティブな見通しは持っていたのだろう。民営化直後から事業開発本部を設置し、1990年7月までに同本部を改組し、医薬、食品などの事業部を新設。1993年9月には医薬事業の研究体制の充実・強化を目的に医薬総合研究所を設置した。ただ、衆目一致するように医薬、いわゆる製薬事業は自前での研究開発から製品化までのリードタイムは最短で10数年とかなり気の長い事業である。そうしたことも影響してか、1998年に同社は国内中堅製薬企業の鳥居薬品の発行済株式の過半数を、株式公開買付(TOB)により取得し、連結子会社化した。子会社化された鳥居薬品は国内製薬業界では中堅でやや影が薄いと感じる人も少なくないだろうが、1872年創業の老舗である。たぶん私と同世代の医療者は同社の名前から連想するのは膵炎治療薬のナファモスタット(商品名:フサンほか)や痛風・高尿酸血症治療薬のベンズブロマロン(商品名:ユリノームほか)だろうか? 近年では品薄で供給制限が続いているスギ花粉症の減感作療法薬であるシダキュアが有名である。JTによる買収後は、研究開発機能がJT側、製造・販売が鳥居薬品という形で集約化されていた。余談だが、私が専門誌の新人記者だった頃、当時の上司は“鳥居薬品は研究開発力が高く、将来の製薬企業再編のキーになる”ことを予言していた…。塩野義の買収計画さて、今回の塩野義によるJT医薬事業の買収は以下のようなスキームだ。現在、鳥居薬品の株式の54.78%はJTが保有し、残る45.22%が株式市場で売買されている。まず、塩野義はこの45.22%を2025年5月8日~6月18日までの期間、1株6,350円、総額約807億円でTOBする。これが終了した後に鳥居薬品のJT持ち株分を鳥居薬品自身が約700億円で取得し、9月までの完全子会社化を目指す。この後さらに2025年12月までにJT医薬事業は会社分割して54億円で塩野義、JTの米国・子会社のAkros Pharmaを36億円で塩野義の米国・子会社Shionogi Incがそれぞれ買収する。JTの医薬事業は塩野義に吸収されるが、米Akros Pharma社はShionogi Incの完全子会社となる。なぜJTを?今回の買収は、昨年、塩野義からJTに対しオファーがあったことから始まったという。会見後に塩野義製薬代表取締役社長の手代木 功氏にこの点を尋ねたところ、「ここ数年、低分子創薬領域でのメディシナルケミスト(創薬化学者)の確保を念頭に薬学部だけでなく、農学部など幅広い領域への浸透を図り、米国・カリフォルニア州サンディエゴに細菌感染症治療薬の研究開発拠点の開設も目指していた。しかし、昨年買収したキューペックス社でも人材確保が思うように進まなかった」とのこと。そうした中でメディシナルケミストの層が厚いJTグループに注目したのがきっかけだったと話した。また、手代木氏はJT・鳥居の研究開発拠点が横浜市と大阪府高槻市にあり、とくに後者は塩野義の研究開発拠点である大阪府豊中市に近いことも大きな利点だったと語った。実際、会見の中でも手代木氏は「(研究拠点の近さも)大きなリストラなく進められる。研究所勤務者は異動、転勤などに不慣れだが、ここも非常にフィットすると考えた」と強調した。この辺は、研究開発畑出身の手代木氏らしい考えでもある。一方のJT側は「近年、新薬創出のハードルが上昇しているうえに、グローバルメガファーマを中心に国際的な開発競争が激化している。当社グループの事業運営では、医薬事業の中長期的な成長が不透明な状況だった」(JT代表取締役副社長・嶋吉 耕史氏)、「JTプラス鳥居という体制でこのまま事業を継続するよりも、より早く、より大きく、より確実に事業を成長させることができるのではないかと考えられた」(鳥居薬品代表取締役社長・近藤 紳雅氏)と語った。このJTと鳥居薬品側の説明は、ある意味、当然とも言える。現在のメガファーマの年間研究開発費は上位で軽く1兆円を超え、日本トップで世界第14位の武田薬品ですら7,000億円。しかし、JT・鳥居薬品のそれはわずか30億円強である。ちなみに塩野義の年間研究開発費は1,000億円超である。もっともメガファーマとの研究開発費規模の違いは、メガファーマの多くが高分子の抗体医薬品に軸足を置いているのに対し、塩野義や鳥居は低分子化合物が中心であるという事情も考慮しなければならない。とはいえ、JT・鳥居に関しては成長のドライバーとなる新薬を生み出す源泉の規模がここまで異なると、もはや「小さくともキラリと光る」ですらおぼつかないと言っても過言ではないのが実状だろう。今後の成長戦略さて今後は買収をした塩野義側がこれを土台にどう成長していくか? という点に焦点が移る。同社は2023~30年度の中期経営計画「STS2030 Revision」で2030年度の売上高8,000億円を目標に掲げている。現在地は2024年3月期決算での4,351億円である。単純計算すると、今回の買収でここに約1,000億円が上乗せされるが、新薬創出の不確実さを踏まえれば、2030年の目標はかなりハードルが高いと言わざるを得ない。しかも、同社は感染症領域が主軸であるため、どうしても製品群が対象とする感染症そのものの流行に業績が左右される。こうしたこともあってか前述の中期経営計画では「新製品/新規事業拡大」を強調し、既存の感染症領域のみならずアンメッド創薬などポートフォリオ拡大を掲げてきた。今回、JT・鳥居を買収することでアレルゲン領域・皮膚疾患領域へとウイングを広げることは可能になった。国内製薬業界では従来から塩野義の営業力への評価は高いだけに、今回の買収で今後のJT・鳥居の製品群の売上高伸長が予想される。とくに鳥居側には現在需要に供給が追い付かずに出荷制限となっている前述のシダキュアがあり、皮膚領域では2020年に発売されたばかりだが業績が好調なアトピー性皮膚炎治療薬のJAK阻害薬の外用剤・デルゴシチニブ(商品名:コレクチム軟膏)もある。塩野義と言えば、アトピー性皮膚炎治療薬ではある種の定番とも言われるステロイド外用薬のベタメタゾン吉草酸エステル(商品名:リンデロンVクリームほか)を有している企業でもある。実際、手代木氏も会見で「皮膚領域は今でこそそこまで強くないものの、かつてはステロイド外用薬の企業として一世を風靡し、現状でもそれなりの取り扱いはあり、このあたりの営業のフィットも非常に良い」と述べた。とはいえ、現状の両社業績をベースにJT・鳥居の製品群に対する塩野義の営業力強化を折り込んでも今後2~3年先までは売上高6,000億円規模ぐらいが限界ではないだろうか? その意味では同社が8,000億円という目標に到達するには、今後上市される新製品の売上高をかなりポジティブに予想しても、もう一段の再編は必要になるかもしれない。一方、何度も手代木氏が強調した研究開発力の強化では、塩野義の100人プラスアルファというメディシナルケミスト数にJTグループの約80人が組み込まれ、「全盛期の数にもう一度戻れる」(手代木氏)ことを明らかにするとともに、自社の研究開発リソースでは強化が及ばなかった免疫領域・腎領域にも手が届くようになるとも語った。同時に手代木氏が会見の中で語ったのは買収に至るデューディリジェンスでわかったJTのAI創薬と探索研究のレベルの高さである。「AI創薬のプラットフォームは正直に言って当社よりはるかに上で、日本の中でも相当進化している。当社の人間が見させていただいてすぐにでも一緒にやりたいと言ったほど。また、JTはフェーズ2ぐらいでのメガカンパニーへのライセンス・アウトを念頭にどうやったらそれが可能か意識をした前臨床・初期臨床試験を進めている。この点では多分当社より上を行く」以前の本連載でも私自身は日本の製薬業界は低分子創薬の世界ですらもはや後進国になりつつあると指摘したが、今回、手代木氏は“新生”塩野義製薬について「“グローバルでNo.1の低分子創薬力”を有する製薬企業となる」と大きなビジョンを掲げた。今回の件が国内製薬企業の再編へのきっかけと低分子創薬の復権につながるのか? 慎重に見守っていきたいと思う。参考1)JT

2065.

ある呼吸法活用で禁煙継続(Dr.坂根のすぐ使える患者指導画集)

患者さん用画 いわみせいじCopyright© 2025 CareNet,Inc. All rights reserved.説明のポイント(医療スタッフ向け)診察室での会話医師患者禁煙、頑張っておられますね。いえいえ、自分の健康のためですから…。けど、たまに吸いたい衝動にかられて…。医師 なるほど。そんなときはどうされているんですか?患者 水を飲んだり、深呼吸をしたり、しているんですが…。医師 なるほど。それなら、いい呼吸法がありますよ!患者 それは、どんな方法ですか?(興味深々)医師 ちょっと、やってみましょうか。まずは、「ふぅー」と音を立てて口から息を完全に吐き出します。次に、口を閉じて、画 いわみせいじ鼻から息を吸いながら4つ数えます。そして、息を止めて7つ数えます。最後に、8つ数えながら、「ふぅー」と音を立てながら、ゆっくりと口から息を吐き出します。患者 これを何回くらいしたらいいですか?医師 1セットを4回で、ニコチン切れでタバコが吸いたくなる朝や寝る前など、1日に2回からスタートしてみて下さい。これは「4-7-8呼吸法」と呼ばれています。是非、「4(し)7(な)8(や)」かにやってみて下さい。(手で数字を示しながら)患者 はい、わかりました。頑張ってやってみます。(嬉しそうな顔)ポイント自己流の呼吸法ではなく、効果的な呼吸法について実演を交えて説明します。Copyright© 2025 CareNet,Inc. All rights reserved.

2066.

先生、気付けば億り人!? 賢く資産を増やす、医師のための新戦略とは【医師のためのお金の話】第92回

野村総合研究所のレポート「日本の富裕層・超富裕層は合計約165万世帯、純金融資産総額は約469兆円と推計」が話題です。レポートでは、株価上昇に伴い金融資産を増やした層が拡大して、富裕層・超富裕層ともに過去最高を記録したと報告されています。今回のレポートで注目すべきは「いつの間にか富裕層」と「スーパーパワーファミリー」という新たな層の出現です。「いつの間にか富裕層」という言葉は、桃井かおりさんのCMで有名になった「いつの間にか骨折」を連想して興味深く感じました。「いつの間にか富裕層」とは、従業員持株会、確定拠出年金、NISAなどの制度を活用して、運用資産が1億円を超えた層です。20年以上にわたる積み立て投資が、近年の株価上昇によって実を結んだ結果と言えるでしょう。この層の資産形成のポイントは、従来のような現金の貯蓄ではなく、株式などのリスク資産への投資を継続した点にあります。昨今の円安やインフレによる通貨価値の低下を考慮すれば、この戦略が有効であったことは明らかです。10年前には、株式の積み立て投資だけで1億円を超える資産を築く人が現れるとは想像もしていませんでした。私は、積み立て投資など可もなく不可もなしの投資方法だと考えていました。しかし、今回の結果で考えを改める必要性を感じています。米国に遅れること30年、日本にも「いつの間にか富裕層」が登場「いつの間にか富裕層」の出現は、日本においては新しい現象ですが、米国では30~40年前から見られました。私がこの事実を知ったのは、「となりの億万長者」(早川書房)という書籍を通してです。この本では、倹約を徹底して、貯蓄を継続することでミリオネアになった人々の事例が紹介されています。彼らは株式を中心に金融資産を運用して、長期保有を貫くことで、ミリオネアの仲間入りを果たしました。米国に遅れること約30年、日本でも同様の状況がようやく現実のものとなりました。そして、この現象は一時的なものではないと考えられます。円やドルなどの通貨は、インフレによって価値が低下し続けています。一方、株式は変動が大きいものの、長期的には根源的な価値を維持しやすい傾向にあります。したがって、超長期的な視点では、現金よりも株式投資による資産形成が合理的と言えるでしょう。日本は長らくデフレが続いた影響で、現金信仰が根強い国でした。しかし、昨今の株価上昇と円安によって、欧米型の資産形成が浸透しつつあることは、喜ばしい変化だと個人的には考えています。「スーパーパワーファミリー」は医師に多いが懸念点も野村総合研究所のレポートでは、「スーパーパワーファミリー」は、都市部に住む世帯年収3,000万円以上の共働き世帯と定義されています。20~30代は子育てや住宅ローンで経済的に苦労します。しかし、昇進や昇給によって40歳前後から急速に金融資産を増やして、50歳前後には富裕層になる可能性があります。生活コストを考慮すれば、地方でも、世帯年収1,000万円以上の共働き世帯は、60歳前後で富裕層となる可能性があります。いずれのパターンも、医師に類似性があると思います。すなわち、都市部に住む世帯年収3,000万円以上の共働き世帯は医師同士が結婚したパターン、地方の世帯年収1,000万円以上の共働き世帯は医師単独世帯のパターンと言えるでしょう。しかし「スーパーパワーファミリー」は消費性向が高く、不動産や高級消費財への支出が多い点が懸念されます。医師の多くは「スーパーパワーファミリー」に該当しますが、年収が高くても消費が多ければ、富裕層への道は遠のいてしまうでしょう。倹約と株式投資の継続が、資産形成の王道医師は、資産形成において非常に有利な立場にいます。しかし、消費性向が高いままでは、そのメリットを活かすことはできません。倹約を心掛け、株式投資を継続することで「いつの間にか富裕層」を目指すのが理想的です。一方、すでに「いつの間にか富裕層」の医師は、株式を長期保有した結果、富裕層になっただけであり、必ずしも金融リテラシーが高いわけではありません。幸運を維持するためには、資産形成に関する学習を始めることが重要です。医師は「いつの間にか富裕層」に到達した人、あるいは到達しうる人の割合が高いと予想されます。したがって、浪費しないように心掛けて株式の長期運用をしつつ、資産形成に関する学習を継続することが、将来的な経済基盤の強化につながるのではないでしょうか。

2067.

5月9日 呼吸の日【今日は何の日?】

【5月9日 呼吸の日】〔由来〕「よりよい呼吸」を考えること、「こ(5)きゅう(9)」(呼吸)と読む語呂合わせから日本呼吸器障害者情報センターが制定。一般市民を対象に肺の健康についての理解を深め、呼吸器疾患の早期発見とタバコの害などの知識普及と啓発を行っている。関連コンテンツタバコが吸いたいときの一呼吸が大事【患者指導画集 Part2】急性呼吸器感染症の5類位置付けに関するQ&A【患者説明用スライド】呼吸困難に対しては鎮静? モルヒネの増量?【非専門医のための緩和ケアTips】COPDの3剤配合薬、定量噴霧吸入器vs.ドライパウダー吸入器/BMJ急性呼吸不全、高流量経鼻酸素vs.非侵襲的人工換気/JAMA

2068.

次々と承認される抗アミロイド抗体、有効性に違いはあるか?

 近年、アルツハイマー病に対する抗アミロイド抗体の承認が加速している。しかし、抗アミロイド抗体の臨床的意義やリスク/ベネフィットプロファイルは、依然として明らかになっていない。他の治療法ではなく、抗アミロイド抗体を選択する根拠を確立するためにも、アルツハイマー病の異質性および抗アミロイド抗体の長期臨床データの不足は、課題である。スペイン・University of Castilla-La ManchaのDanko Jeremic氏らは、抗アミロイド抗体の有効性および安全性を評価し、比較するため、従来のペアワイズメタ解析ならびに第II相および第III相臨床試験の結果を用いたベイジアンネットワークメタ解析を実施した。また、本研究の目的を達成するため、研究者や臨床医が疾患進行や有害事象のベースラインリスクに関するさまざまな事前選択や仮定を組み込み、これらの治療法の相対的および絶対的なリスク/ベネフィットをリアルタイムに評価できる無料のWebアプリケーションAlzMeta.app 2.0を開発した。Journal of Medical Internet Research誌2025年4月7日号の報告。 PRISMA-NMAおよびGRADEガイドラインに従い、エビデンスの報告および確実性を評価した。2024年9月30日までに公表された臨床試験報告書は、PubMed、Google Scholar、臨床試験データベース(ClinicalTrials.govを含む)より検索した。孤発性アルツハイマー病患者数が20例未満、修正Jadadスコアが3未満の研究は分析から除外した。バイアスリスクの評価には、RoB-2ツールを用いた。相対リスク/ベネフィットは、リスク比および標準化平均差を算出し、すべてのアウトカムにおける信頼区間、信用区間、予測区間を算出した。有意な結果を得るため、介入効果は頻度主義およびベイズ主義の枠組みで順位付けし、その臨床的意義は、1,000人当たりの絶対リスク、広範な対照群に対する治療必要数(NNT)により評価した。 主な結果は以下のとおり。・2万1,236例を対象とした7つの治療法(バイアスリスクが低い、または多少の懸念のある研究26件)のうち、ドナネマブは、認知機能および機能的指標において最も高い評価を受けた。この評価は、aducanumabおよびレカネマブの約2倍の効果を示し、認知機能および機能の全般的な臨床的認知症尺度(CDR)ボックス合計スコアにおいて他の治療法よりも有意に有益であることが示唆された(NNT=10、95%信頼区間[CI]:8〜16)。・脳浮腫および微小出血については、ドナネマブ(NNT=8、95%CI:5~16)、aducanumab(NNT=10、95%CI: 6~17)、レカネマブ(NNT=14、95%CI:7~31)において臨床的に関連する脳浮腫リスクが認められ、ベネフィットを上回る可能性も示され、とくに注意が必要であることが明らかとなった。 著者らは「抗アミロイド抗体の中では、ドナネマブが最も有効であり、安全性プロファイルはaducanumabやレカネマブと同様であることが示された。しかし、より安全性の高い治療選択肢の必要性も浮き彫りとなった。これは、対象試験において頻繁な脳浮腫および微小出血による盲検化の解除ならびにCOVID-19パンデミックの影響により、潜在的なバイアスが生じている可能性がある」と結論付けている。

2069.

飲酒に起因するがんの死亡者数、20年で51%増

 アルコールに起因するがんによる死亡について、2000~21年で年齢調整死亡率(ASDR)は減少した一方、死亡者数は51%増加したことが、米国・Texas Tech University Health Sciences CenterのPojsakorn Danpanichkul氏らの研究により明らかになった。この傾向は社会人口統計学的指数(SDI)やがんの種類によってばらつきがみられた。Alimentary Pharmacology & Therapeutics誌オンライン版2025年4月27日号に掲載。 本研究では、Global Burden of Disease Study 2021を分析し、アルコールに起因するがんによる死亡者数とASDR、それらの2000~21年の年変化率(APC)を、SDIに基づく地域/国別、国の開発状況別に調べた。 主な結果は以下のとおり。・2021年における世界全体のアルコールに起因するがんによる死亡者数は34万3,370例で、2000年と比べ51%増加した。・アルコールに起因するがんは、すべてのがん死亡の3.5%であった。・アルコールに起因するがんのうち、がん死亡率が最も高いのは肝臓がん(27%)で、次いで食道がん(24%)、大腸がん(16%)の順となった。・2000~21年に、アルコールに起因するがんによるASDRは減少した(APC:-0.66%)。・地域別では、南アジアが最も急速にアルコールに起因するがんによるASDRが増加し、SDI別では低SDI国(APC:0.33%)と低~中SDI国(APC:1.58%)で上昇傾向を示した。・がんの種類別では、早期発症(15~49歳)の口唇がんおよび口腔がんのアルコールに起因するがんによるASDRが増加した(APC:0.40%)が、他のがんでは減少した。

2070.

レカネマブの有効性・安全性、アジア人の特徴は?~Clarity AD試験

 アルツハイマー病(AD)は高齢者における主要な健康問題の1つであり、アジア地域においては、急速な高齢化によりADの有病率が上昇すると予想されている。早期AD治療薬であるレカネマブ(商品名:レケンビ)は、複数の臨床試験において忍容性が良好であると示されているものの、アミロイド関連画像異常(ARIA)およびインフュージョンリアクション(IRR)の発現率が高いことが懸念されている1,2)。シンガポール国立大学のChristopher Chen氏らは、Clarity AD試験で無作為に割り付けられた1,795例のうち、アジア地域に居住する294例についてサブグループ解析を行った。The Journal of Prevention of Alzheimer's Disease誌2025年5月号掲載の報告。 Clarity AD試験は、早期AD患者を対象としてレカネマブの有効性や安全性を評価した試験である。多施設共同二重盲検プラセボ対照並行群間試験(コア試験)終了後、非盲検長期継続投与試験(OLE)も実施された。対象患者は、レカネマブ10mg/kg投与群と、プラセボ群に1:1で無作為に割り付けられ、隔週で18ヵ月間投与された。 主な結果は以下のとおり。・アジア地域集団における人口統計学的および疾患関連のベースライン特性は、平均体重が低いこと、ADによる軽度認知障害およびCDR-GS=0.5の割合がわずかに高いことを除き、全体集団と類似していた。・アジア地域集団におけるレカネマブの有効性は、主要評価項目、副次評価項目ともに全体集団と同様の傾向を示した。主要評価項目:CDR-SB(調整平均差:-0.349[95%信頼区間[CI]:-0.773~-0.076]、24%の進行抑制率)副次評価項目:アミロイドPET測定による脳内アミロイド蓄積(調整平均差:-72.2[95% CI:-84.1~-60.4])、ADAS-Cog14(調整平均差:-1.37[95%CI:-2.89~0.14])、ADCOMS(調整平均差:-0.05[95%CI:-0.10~-0.00])、ADCS-MCI-ADL(調整平均差:1.31[95%CI:-0.47~3.09])・有害事象の全体的な発現率は、プラセボ群とレカネマブ投与群で類似していた。有害事象のほとんどは軽度~中等度であり、主に、ARIA-H(脳出血)、ARIA-E(脳浮腫)、IRRであった。・アジア地域集団において、ARIA-E、IRR発現率はプラセボ群と比較しレカネマブ投与群で高く(ARIA-E:1.4%vs.6.2%、IRR:1.4%vs.12.3%)、全体集団と同様の傾向を示した。一方、ARIA-H発現率は、プラセボ群と比較しレカネマブ投与群で低かった(16.2%vs.14.4%)。・レカネマブ投与群において、ARIA-H、ARIA-E、IRR発現率は全体集団と比較しアジア地域集団で低かった(ARIA-H:17.3%vs.14.4%、ARIA-E:12.6%vs.6.2%、IRR:26.4%vs.12.3%)。 著者らは、「このアジア地域集団において、レカネマブの全体的な有効性、バイオマーカーの変化、安全性プロファイルは全体集団と一致しており、ベネフィット・リスクプロファイルは良好で、リスク管理も容易だった。アジア地域集団では、レカネマブ投与によるARIAおよびIRRの発現率は全体集団よりも低かったことが示された」と結論付けている。

2071.

小児期ワクチン接種率低下で、麻疹など再流行の可能性/JAMA

 小児期のワクチン接種率の低下は、ワクチンで予防可能な、かつて排除された感染症(eliminated infectious diseases)のアウトブレイクの頻度と規模を増加させ、最終的には再びエンデミック(endemic)レベルに戻る可能性があることが、米国・スタンフォード大学のMathew V. Kiang氏らによるシミュレーションモデルの解析の結果で明らかとなった。米国では、小児期のワクチン接種の普及により多くの感染症が排除されてきたが、近年、ワクチン接種率は低下傾向にあり、小児期のワクチン接種のスケジュールを縮小する政策議論も続いている。そのため、かつて排除された感染症の再流行が懸念されていた。著者は、「流行がエンデミックレベルに再び戻る時期と閾値は感染症によって大きく異なり、麻疹が最初にエンデミックレベルに戻る可能性が高く、現在のワクチン接種率でも対策が改善されなければその可能性がある」と指摘している。JAMA誌オンライン版2025年4月24日号掲載の報告。麻疹・風疹・ポリオ・ジフテリアの予防接種率低下と感染者数、シミュレーションモデルで推定 研究グループは、ワクチンで予防可能な4つの感染症(麻疹、風疹、ポリオ、ジフテリア)について、小児期のワクチン接種率が低下した場合の感染者数および感染関連合併症数を推定するシミュレーションモデルを構築し、米国50州とコロンビア特別区におけるこれら感染症の輸入(importation)と動的伝播(dynamic spread)を評価した。 このモデルは、人口動態、集団免疫状態、感染症の輸入リスクに関する地域別推定値に基づくデータを用いてパラメーター化され、25年間にわたる異なるワクチン接種率のシナリオを評価した。現在のワクチン接種率は、2004~23年のデータを用いた。 主要アウトカムは、米国の麻疹、風疹、ポリオ、ジフテリアの推定感染者数、副次アウトカムは感染関連合併症(麻疹後神経学的後遺症、先天性風疹症候群、麻痺性ポリオ、入院、死亡)の推定発生率、および感染症が再びエンデミックレベルとなる可能性とその時期とした。現在の接種率でも、麻疹が再びエンデミックレベルとなる可能性 シミュレーションモデルにおいて、現在の州レベルのワクチン接種率では、麻疹が再びエンデミックレベルとなる可能性は83%、エンデミックレベルとなるまでの平均期間は20.9年、25年間で推定感染者数は85万1,300例(95%不確実性区間[UI]:38万1,300~130万)に上ることが予想された。 麻疹・流行性耳下腺炎・風疹(MMR)ワクチン接種率が10%減少した場合、麻疹の感染者数は25年間で1,110万例(95%UI:1,010万~1,210万)となり、一方、接種率が5%増加した場合は5,800例(3,100~1万9,400)にとどまると予測された。 他の感染症については、現在のワクチン接種率ではエンデミックレベルとなる可能性は低いが、小児期の定期接種が50%減少した場合、25年間で麻疹5,120万例(95%UI:4,970万~5,250万)、風疹990万例(640万~1,300万)、ポリオ430万例(4~2,150万)、ジフテリア197例(1~1,000)が発生すると予測された。 この場合、エンデミックレベルとなるまでの期間は麻疹が4.9年(95%UI:4.3~5.6)、風疹は18.1年(17.0~19.6)であり、ポリオについてはエンデミックレベルとなる可能性は56%で、エンデミックレベルとなるまでの期間は19.6年(95%UI:4.0~24.7)と予測された。 なお、米国内での影響には大きなばらつきがみられた。

2072.

気管支拡張症、DPP-1阻害薬brensocatibが有用/NEJM

 気管支拡張症患者において、経口可逆的ジペプチジルペプチダーゼ1(DPP-1)阻害薬brensocatib 10mgまたは25mgの1日1回投与は、プラセボと比較して肺疾患増悪の発生率を低下させ、25mg群ではプラセボと比較して1秒量(FEV1)の低下が少ないことが、英国・ダンディー大学のJames D. Chalmers氏らASPEN Investigatorsが35ヵ国390施設で実施した第III相無作為化二重盲検比較試験「ASPEN試験」の結果で示された。気管支拡張症において好中球性炎症は増悪および病勢進行リスクの増大と関連しており、brensocatibは好中球性炎症の主要なメディエーターである好中球セリンプロテアーゼを標的としている。気管支拡張症成人患者を対象とした第II相試験では、brensocatib 10mgまたは25mgの1日1回24週間投与により、プラセボと比較して、初回増悪までの期間延長および増悪率の低下が示されていた。NEJM誌2025年4月24日号掲載の報告。肺疾患増悪発生率をbrensocatib 10mg群と25mg群、プラセボ群で比較 研究グループは、スクリーニング前12ヵ月間に少なくとも2回の増悪を呈しスクリーニング時のBMIが18.5以上の18~85歳(成人)、ならびにスクリーニング前12ヵ月間に少なくとも1回の増悪を呈しスクリーニング時の体重が30kg以上の12~17歳(青少年)の気管支拡張症患者を、brensocatib 10mg群、25mg群またはプラセボ群に、成人では1対1対1、青少年では2対2対1の割合で無作為に割り付け、1日1回投与した。 主要エンドポイントは52週間における年率換算した肺疾患増悪発生率(1年当たりのイベント数)であり、副次エンドポイントは階層的検定順序に基づいた、52週間における初回増悪までの期間、52週間無増悪の患者の割合、52週時の気管支拡張薬投与後のFEV1のベースラインからの変化量、重度肺疾患増悪の年率換算した発生率、およびQOLの変化(成人のみ)とした。brensocatib群で肺疾患増悪発生率が有意に低下 2020年11月~2023年3月に1,767例が無作為に割り付けられ、brensocatibまたはプラセボを投与された1,721例(成人1,680例、青少年41例)がITT集団となった(brensocatib 10mg群583例、25mg群575例、プラセボ群563例)。 年率換算した肺疾患増悪発生率は、brensocatib 10mg群1.02、25mg群1.04、プラセボ群1.29であり、プラセボ群に対する発生率比はbrensocatib 10mg群で0.79(95%信頼区間[CI]:0.68~0.92、補正後p=0.004)、25mg群で0.81(0.69~0.94、p=0.005)であった。 初回増悪までの期間のハザード比(HR)は、10mg群0.81(95%CI:0.70~0.95、補正後p=0.02)、25mg群0.83(0.70~0.97、p=0.04)であった。また、52週間無増悪の患者の割合は、brensocatib各群48.5%(10mg群283/583例、25mg群279/575例)に対しプラセボ群40.3%(227/563例)であり、HRは10mg群で1.20(95%CI:1.06~1.37、補正後p=0.02)、25mg群で1.18(1.04~1.34、p=0.04)であった。 52週時のFEV1のベースラインからの低下(平均値±標準誤差)は、brensocatib 10mg群50±9mL、25mg群24±10mL、プラセボ群62±9mLで、プラセボ群との最小二乗平均差は10mg群11mL(95%CI:-14~37、補正後p=0.38)、25mg群38mL(11~65、p=0.04)であった。 有害事象の発現率は、brensocatib群で過角化の発現率が高かったことを除き、両群で同様であった。

2073.

豚由来腎臓を移植されていた米国人女性から移植腎を摘出

 遺伝子編集された豚の腎臓を移植し透析治療が不要になっていた米国人女性が、拒絶反応を来し、移植腎摘出に至ったことが報じられた。移植手術から130日後のことであり、遺伝子編集された豚由来腎臓が人の体内で機能した最長記録となった。 この女性は、米国アラバマ州に住む53歳の女性、Towana Looneyさん。移植術と摘出術を行った米ニューヨーク大学ランゴン・ヘルスの発表によると、Looneyさんは現在、透析治療を再開している。 一連の手術の執刀医であるRobert Montgomery氏は、ニューヨークタイムズ紙に対して、「移植腎の摘出は、動物の臓器を人に使用するという『異種移植』の後退を意味するものではない。今回のケースは異種移植による治療を受けた患者の中で、最も長く臓器が機能した。新しい治療法の確立には時間を要する。ホームランを狙って一発で勝負がつくというものではなく、単打や二塁打を着実に積み重ねていく進歩が鍵となる」としている。 Looneyさんは、移植手術の予後に影響を与える可能性のある、ほかの病状を抱えていた。医師たちは、免疫抑制剤の投与量を増やすという積極的な治療を行えば、移植した腎臓を救うことができる可能性も考えたが、結局、Looneyさんと医療チームはそれを断念した。「一番重要なことは安全だった」とMontgomery氏は話す。 一方のLooneyさんも、「2016年以来初めて、透析治療の予定を気にせず、友人や家族と楽しい時間を過ごすことができた。この結果は誰もが望んでいたものではないが、豚の腎臓を移植後の130日間で、多くの知見が蓄積されたと確信している。そして、この経験が腎臓病克服を目指す多くの人々の助けとなり、希望を与えることを願っている」と語っている。 移植腎摘出に至った経緯は、移植後の経過観察で、Looneyさんの血液中のクレアチニンの上昇が認められたことに始まる。クレアチニンは血液中の老廃物で、通常は腎臓の働きによって体外に排泄され、血液中の濃度は一定程度以下に抑えられている。それが上昇しているということは、腎臓に問題が起こり始めている可能性が考えられた。 Looneyさんはいったんアラバマ州の病院に入院した後、ニューヨークへ飛行機で移動。改めて検査が行われ、拒絶反応の兆候が確認されて、結局、4月11日に摘出術が行われた。 移植に用いられた豚由来腎臓を開発したバイオテクノロジー企業であるUnited Therapeutics社は、拒絶反応が起こるまで移植腎は正常に機能していたと述べている。また同社はLooneyさんの勇気をたたえるとともに、豚腎臓移植の臨床試験を本年後半に開始することを公表した。この臨床試験は、当初は6人の患者を対象に開始し、その後50人にまで拡大する予定だという。 現在、米国では55万人以上が腎不全により透析治療に依存しており、約10万人が移植待機リストに登録されている。それに対して、昨年行われた腎移植は2万5,000件足らずだったとニューヨークタイムズ紙は報じている。

2074.

複数の食品添加物の相互作用が2型糖尿病リスクを高める

 ダイエット飲料や超加工食品に使われている添加物が、2型糖尿病のリスクを高めることを示唆するデータが報告された。フランス国立衛生医学研究所(INSERM)のMarie Payen de la Garanderie氏らの研究の結果であり、詳細は「PLOS Medicine」に4月8日掲載された。複数の添加物による相互作用が、リスク上昇に関与している可能性があるという。 約11万人を対象に行われたこの研究によると、人工甘味料入り飲料によく含まれている添加物の混合物(添加物の組み合わせ)は2型糖尿病のリスクを13%増加させ、同様にスナックなどの超加工食品に含まれている添加物の混合物は、リスクを8%増加させることが明らかになった。de la Garanderie氏は、「多くの製品に含まれているいくつかの添加物はしばしば同時に摂取されるが、そのような同時摂取が2型糖尿病のより高いリスクと関連していることが示唆される」と解説。「これらの添加物は修正可能なリスク因子といえ、2型糖尿病予防の新たな戦略への道を開く可能性がある」と付け加えている。 この研究では、フランスで行われている長期縦断疫学研究の参加者10万8,643人(平均年齢42.5±14.6歳、女性79.2%)を、平均7.7±4.6年間追跡したデータが解析に用いられた。参加者は、追跡開始時とその後は半年ごとに、3日間(連続していない平日2日と休日1日)、24時間の食事記録をつけ、追跡開始後最初の2年間のその記録を基に、食品添加物などの摂取量が評価された。 追跡期間中に1,131人が、新たに2型糖尿病と診断されていた。解析の結果、5種類の食品添加物混合物のうち2種類が、2型糖尿病発症リスクの有意な上昇と関連していた。その混合物の一つはダイエット飲料に使用されることのある添加物で、酸味料・酸度調整剤(クエン酸、リン酸、リンゴ酸など)、着色料(カラメル、アントシアニンなど)、甘味料(アスパルテーム、スクラロースなど)、乳化剤(ペクチン、グアーガムなど)、コーティング剤(カルナバワックス)で構成されていた。もう一つの混合物は、さまざまな超加工食品に使用されることのある添加物で、乳化剤(加工デンプンなど)、保存料(ソルビン酸カリウム)、着色料(クルクミン)で構成されていた。 研究者らは、「われわれの知る限り、この研究結果は、同時に摂取されることが多い食品添加物と2型糖尿病リスクに関する、初めての知見である」と述べている。ただし、「なぜこれらの添加物の混合物が2型糖尿病リスクを高めるのかを理解するには、さらなる研究が必要」とコメントしている。 de la Garanderie氏は、「因果関係を証明するには、この観察研究の結果だけでは不十分だ。とはいえ、実験室内で行われた最近の研究では、さまざまな添加物が相互に影響を及ぼし合う『カクテル効果』が発生する可能性が示唆されており、われわれの研究結果はそれと一致するものだ」と述べている。

2075.

高齢の心不全患者が感染症で再入院にいたる因子とは

 心不全(HF)患者の再入院は、患者の死亡率上昇だけでなく、医療機関に大きな経済的負担をもたらす。高齢HF患者では、しばしば感染症による再入院がみられるが、この度、高齢のHF患者における感染症関連の再入院にフレイルと腎機能の低下が関連しているという研究結果が報告された。徳島大学大学院医歯薬学研究部臨床薬学実務実習教育分野の川田敬氏らの研究によるもので、詳細は「Geriatrics & Gerontology International」に3月11日掲載された。 世界でも有数の高齢化社会を擁する日本では、高齢のHF患者が大幅に増加している。高齢者では免疫力が低下することから、高齢HF患者の感染症による再入院率も増加していくと考えられる。これまでの研究では60代や70代のHF患者に焦点が当てられてきたが、実臨床で増加している80代以上の高齢HF患者、特に感染症による再入院に関連する因子については調べられてこなかった。このような背景から、川田氏らは、高齢化が特に進む日本の高知県の急性肥大症性心不全レジストリ(Kochi YOSACOI Study)のデータを使用して、高齢HF患者の感染症による再入院に関連するリスク因子を特定した。 研究には、2017年5月から2019年12月の間に急性非代償性心不全(ADHF)でレジストリに登録された1,061名を含めた。この中から死亡した患者30名、左室駆出率、日本版フレイル基準(J-CHS)スコア、その他の検査結果などが欠落していた302名を除外し、729名を最終的な解析対象に含めた。 解析対象729名のHF患者の平均年齢は81歳(四分位範囲72.0~86.0)であった。患者は退院後2年間の追跡期間中に感染症関連の再入院を経験した121名(17%)と、感染症関連の再入院を経験しなかった患者608名に分けられた。 HF患者の感染症関連再入院に関連する因子はロジスティック回帰分析により決定した。その結果、独立した予測因子として、J-CHSスコア≧3(調整オッズ比1.83〔95%信頼区間1.18~2.83〕、P=0.007)が特定された。 次に感染症関連再入院の確率を予測するために、各患者について勾配ブースティング決定木(GBDT)モデルを構築した。GBDTモデルでは、J-CHSスコアの高さと推算糸球体濾過量(eGFR)の低下が、感染症関連再入院の増加を予測する最も重要な因子であり、それぞれ「スコア≧3」、「eGFR<35mL/min/1.73m2」の場合にリスクの増加が観察された。また、決定木分析より、感染症関連再入院のリスクは高(J-CHSスコア≧3)、中(J-CHSスコア<3、eGFR≦35.0)、低(J-CHSスコア<3、eGFR>35.0)に分類された。 本研究について著者らは、「本解析より、高齢のHF患者に発生する感染症関連の再入院は、フレイルの程度とeGFR値に関連することが示された。これらの知見は、医療提供者が高齢のHF患者の再入院リスクを適切に管理し、患者の転帰を改善するための貴重なインサイトを提供するものである」と述べた。 本研究の限界点については、観察研究でありワクチン接種などの交絡変数が考慮されていないこと、Kochi YOSACOI Studyには平均年齢81歳という高齢の患者集団が含まれており、HF患者全体に一般化することができないことなどを挙げた。

2076.

グローバルなリアルワールドエビデンスに期待(解説:田中希宇人氏/山口佳寿博氏)

 本研究は、進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者のうち、PD-L1陽性(TPS≧1%)でEGFR変異やALK転座がない症例を対象に、免疫チェックポイント阻害薬ペムブロリズマブと、新規の二重特異性抗体ivonescimab(PD-1+VEGFに対する抗体)の有効性と安全性を比較した多施設ランダム化第III相試験「HARMONi-2試験」の報告である。中間解析時点での主要評価項目は無増悪生存期間PFSで、ivonescimab群で有意に延長が認められた(中央値11.1ヵ月vs.5.8ヵ月、HR:0.51、p<0.0001)。このPFSの改善効果はPD-L1 TPS 1~49%、TPS≧50%、扁平上皮がん、非扁平上皮がんを含む主要なサブグループで一貫していた。また奏効率ORRはivonescimab群で50%、ペムブロリズマブ群で39%、病勢コントロール率DCRはそれぞれ90%と71%であった。重篤な免疫関連有害事象(irAE)は両群で同程度であり、高血圧や蛋白尿などのVEGFに関連する有害事象はivonescimab群でやや多いものの管理可能な範囲であった。とくにベバシズマブが従来禁忌とされてきた扁平上皮がんでも、出血性合併症の増加は認められなかった。 本研究の最大のメリットは、「免疫治療の単剤療法」においてペムブロリズマブを上回る有効性を示した点である。とくに、PD-L1 TPS 1~49%の集団で有効性を示した初の免疫単剤であること、扁平上皮がんにも使用可能な抗VEGF併用薬であること、速い奏効と高い病勢コントロール率の3点は肺がん診療において重要かつ実践的であると考えられる。 PD-L1陽性肺がんに対するペムブロリズマブの初回治療の効果を検証した「KEYNOTE-042試験」ではTPS 1~49%の患者でPFS延長は示されなかったが、本試験では同群に対してHR 0.54と有意なPFS延長を示した。これにより、これまで「PD-L1低発現群で免疫治療の単剤治療は避けるべき」とされてきた症例に対する新たな選択肢の可能性を示した。また従来血管新生阻害薬であるベバシズマブは出血リスクから扁平上皮がんでは禁忌とされていたが、ivonescimabは同様の抗VEGF作用を有しながら出血性合併症は問題とならなかった。扁平上皮がんの1stラインにおける免疫薬単剤治療の選択肢が広がる点は、臨床的に非常に有用と考えられる。そして本研究におけるivonescimab群の奏効までの期間中央値は1.5ヵ月であり、治療早期に効果を期待したい症例に有利に働く。 本研究の有用性は十分に示されていると考えられるが、日本の実臨床で活かすためにはまだまだ問題点がある。まずすべての症例が中国人であり、外的妥当性に課題がある。薬物代謝や腫瘍の特性、人種差を考慮すると、日本人を含むグローバルな症例に対して本研究と外挿するには慎重な姿勢が求められる。また現時点で評価期間が短く、OSは未成熟な点である。他の臨床試験でも同様であるがPFS延長=延命とは限らず、今回の中間解析ではPFSの延長がそのまま予後改善につながるかどうかは現時点では不明である。比較対象がペムブロリズマブ単剤であることも問題である。昨今の進行非小細胞肺がんの標準治療は、プラチナ製剤を含む化学療法と免疫治療を組み合わせる複合免疫療法がスタンダードである。グローバルな標準治療と乖離しており、本試験の比較対象がペムブロリズマブ単剤であることは、比較の「厳しさ」に欠ける可能性がある。 ivonescimab群では目立った免疫関連有害事象こそ認められないものの、Grade3以上の高血圧や蛋白尿といった抗VEGFに由来する有害事象は一定数認められた。実臨床では、とくに腎障害リスクのある症例や高齢者では慎重な管理が必要と考えられる。 さまざまな問題点が指摘される本研究であるが、扁平上皮肺がんやPD-L1低発現群など治療選択肢が限られる症例に対しては期待できる結果が報告された。今後のグローバルなリアルワールドエビデンスに期待が持てる新規薬剤となるのであろう。

2077.

深緑の季節、医学生への助言【Dr. 中島の 新・徒然草】(579)

五百七十九の段 深緑の季節、医学生への助言気持ちのいい毎日。花粉も最近は大したことありません。1年で最も爽やかな季節ですね。こういう日は洗濯日和!私もすっかり主夫になりました。さて、先日のこと。医学生が2人、病院見学にやって来ました。いうまでもなく、夏に行われるマッチング試験に備えてのこと。あちこちの病院を見ておき、どこを受験すべきか。それを考えるためです。面接試験の秘訣を伝授しながら、若者たちと話をするのも面白いもの。中島「面接試験でアピールすべきはガクチカだな」学生1、2「やっぱりガクチカですか!」ガクチカというのは「学生時代にチカラを入れていたこと」の略です。この専門用語が通じるのは、真面目に就職活動をしている証拠。中島「クラブ活動とかボランティアとか。なんならアルバイトでもいいぞ」学生1「僕は帰宅部なんで……」中島「何か他の人と違うことがあるだろう」学生1「強いて言えば、母子家庭ということくらいですかね」中島「それや!」どんなことでもアピール材料になります。中島「仕事から疲れて帰ってくるお母さんのために」学生1「はあ」中島「家事を引き受けているんだろ? 掃除・洗濯・炊事とか」学生1「いえ、掃除を少しやっているくらいですけど」中島「今からでもいいからやったれよ、お母さんのために」学生1「でも、家事はあんまり得意じゃないんで……」中島「面接試験のために3ヵ月間だけ頑張れよ」学生1「そんなインチキしていいんですか」中島「本当に実行したらインチキでも何でもないから」学生1「わかりました!」次は学生2です。中島「クラブ活動でいろいろと人間関係のトラブルがあっただろ」学生2「山ほどありました」中島「そいつをアピールしろ」学生2「トラブルがアピールになるんですか?」中島「それを乗り越えて今の自分があります、みたいに締めくくれ」学生2「なるほど、そうですね!」そもそも面接試験は何のためにあるのか?患者さんや職場の同僚との人間関係を上手く築けるかを見るためです。医学的知識や英語の能力は筆記試験で測定可能。でも、人柄や人間関係のスキルは対面で話してみないとわかりません。親子関係やクラブ活動は社会の縮図。まずは、そこで上手くやっているのか、が基本ですね。さすがに医学生は、一を聞いたら十を知ってくれます。中島「いくら人間関係とはいえ、彼女の話とかは出さないほうが無難だぞ」医学生1「確かに『彼女が5人います』と言ったりしたらマズイですね」中島「何っ、5人もいるのか?」医学生1「いるわけないじゃないですか!」中島「そんなことを言ったら絶対に落とされるからな、注意しろよ」医学生1、2「わかりました!」彼らと話をすると、最近の若者の動向がよくわかります。オンラインゲームに嵌まっていたとか、マラソン大会に出たとか。面接の指導を装って最新知識をアップデートするのもまた一興。夏のマッチング試験、彼らの健闘を祈りたいと思います。最後に1句五月晴れ 未来の医師に アドバイス

2078.

自ら「後医」となり学ぶ――セルフフィードバックのすすめ 【臨床留学通信 from Boston】第11回

自ら「後医」となり学ぶ――セルフフィードバックのすすめ2006年に医師となり、気が付けば今年で20年目を迎えました。研修医のときには想像もしていなかった年月が流れ、「もっと前もって計画して渡米しておけばよかった」と思うこともありますが、これもまた人生です。5月になると、いわゆる五月病とまではいかなくても、卒業直後で慣れない研修生活のなかで、何をすればよいのかわからず、気疲れから疲労困憊だったことをよく思い出します。当時は臨床研修制度が始まったばかりで、研修医の立ち位置が曖昧だったうえ、病院側にもシステムが十分に構築されていなかったことも要因だったかもしれません。私の所属していたさいたま市立病院が、2023年度のマッチングで全国1位となったのは、その後の指導医の先生方の試行錯誤と、研修後もスタッフとして活躍している同期たちの努力の賜物だと思います。19年にわたりさまざまな病院で勤務して感じるのは、国や病院、医師経験年数にかかわらず、「いかに日々を過ごすか」で大きな差が生まれるということです。そこで、新たに研修医、専修医となった方々に1つだけ伝えたいのが「セルフフィードバック」を意識してほしいということです。もちろん、ある程度までは上級医に教えてもらう必要がありますし、優秀な指導医がいれば事細かに教えてくれるかもしれません。しかし、それを「継続的な学び」に変えるには、その指導医と常に一緒にいなければならず、現実的ではありません。循環器医はなぜ心電図を読めるのか。それは単に心電図の教科書を読んでいるからだけではなく、膨大な心電図を1つずつcriteriaに従って読み、その心電図が最終的にどんな冠動脈造影や心エコーなのかを想像して読むからです。たとえば「対角枝が詰まっていたらこのような心電図になる」など、自らフィードバックします。聴診も同様で、雑音があったときに「このような弁膜症があるな」と想像し、心エコーの結果を確認して自らフィードバックをします。頸静脈の診察も、診察した後に心エコーや右心カテーテルを行った場合には、自分の計測したプレッシャーが合っているかを確認します。慣れない人には難しいIII音の聴診も、心エコーでE波の立ち上がりが早ければそれを裏付けるものだと思われますし、IV音は逆に高いA波の高さから確認が可能です。外科医の友人は「腹部CTが読めるようになったのは、CTを読んだ後に、実際にお腹を開けてどうなっているかをみて、CTに立ち返るから」と言っていました。また、救急外来で診た患者さんがその後どうなったか確認し、初期治療が適切だったかを確認するのも非常に良いフィードバックになります。「後医は名医」といわれますが、自らが「後医」となることで、見えてくるものも大きく違ってくるはずです。さらにいえば、自らが担当しなかった患者さんについても、検査結果や経過を追うことで、自分の経験の一部として蓄積することができます。手技についても、数をこなすことだけが重要なのではなく、他の人からトラブルシューティングを聞くことでも十分に学びとなります。研修病院ごとの違いはあるものの、ある程度の年数が経つと、「良い病院が良い医師を育てるとは限らない」ということも実感できるようになるのではないでしょうか。Column慶應義塾大学医学部の学生さんたち(なんと2年生!)が、ボストンを見学に訪れてくれました。臨床エリアに入るにはワクチン接種証明などの手続きが必要なため、今回はカフェでお茶をしただけでしたが、それでも留学とはどんなものかを肌で感じたいという意欲に、私も大いに刺激を受けました。彼らは、慶應の卒業生を中心に、ボストン在住の先輩たちを頼りに、さまざまな施設を訪ねて回ったそうです。マサチューセッツ総合病院の象徴でもあるBulfinch Buildingの前で写真を撮りました。画像を拡大する

2079.

副作用の徐脈性不整脈、QT延長症候群を考えよう(2)【モダトレ~ドリルで心電図と不整脈の薬を理解~】第2回

副作用の徐脈性不整脈、QT延長症候群を考えよう(2)QuestionCa拮抗薬のベラパミルが過度に作用し、房室結節の刺激伝導が完全に遮断されると心電図波形はどのようになるでしょうか?

2080.

第10回 年間10万人、CT検査の氾濫が生む“将来のがん”

近年、CT検査は診断能が飛躍的に向上し、急速に普及したため、米国では2023年に6,151万人に対し、約9,300万件もの検査が実施されました。人口当たりに直すと、1,000人当たり約280件となり、数字の大きさがより実感しやすいかもしれません。これは実際、世界でもトップレベルの頻度です。CT検査で用いられるX線は、細胞の損傷や遺伝子の突然変異を起こすのに十分なエネルギーを持つ「イオン化放射線」に分類され、「既知の発がん性物質」として扱われています。今回ご紹介するSmith-Bindman氏らの研究では、このCTの撮像回数から被曝量を割り出し、この被曝が米国国民の発がんにどの程度寄与するのかを推計しています1)。検査氾濫が招く10万件超のがんリスク彼らの研究モデルによれば、CT検査に伴うイオン化放射線による将来のがん発症数は、平均で年間約10万3,000件に上り、米国における年間新規がん診断の約5%を占めるという衝撃的な推計が行われました。子供では検査1件当たりのリスクが高くなるものの、検査件数そのものは成人に偏っているため、結果的に成人へのCT検査が総発がん数の約91%(約9万3,000件)を担うと報告されています。がんの内訳を見ると、肺がんが最も多く2万2,400件、次いで大腸がん、白血病、膀胱がんと続きます。女性では乳がんが5,700件と推計されました。部位別では、成人の腹部・骨盤部のCT検査が3,000万件(全検査の32%)実施され、それに由来するがんは3万7,500件と最も多く、続いて胸部CTが2,000万件(21%)で、将来のがんは2万1,500件と見積もられています。多様な分析を行ったうえでも、推計の総発がん数は8万~12万7,000件の範囲となり、推計値の不確実性を勘案しても、変わらず重要性の高い問題であると考察されています。この報告が重要なのは、単に「CTは放射線リスクを伴う」といった抽象的な議論ではなく、検査件数と年齢・部位別の実測の放射線量データを用いて、具体的な将来の発がん数を予測した点にあります。日本では――適正化への道標では、この結果を日本でどう受け止めればよいでしょうか。日本もOECD加盟国のなかでCT検査件数が常に上位にあり、米国ほどではないものの、検査回数も1人当たり高水準で推移しています。日本国内のNDBオープンデータに基づく推計では、例年人口1,000人当たり200~250件前後という高い水準です2,3)。今回の報告を参考にすると、日本で検査に伴う放射線発がんの潜在的負荷は決して無視できません。もちろんこれは、診断に必要とされる場合など、必要なCT検査をやめましょうという話ではありません。しかし、「一応、CTを撮っておきましょう」と必要性が曖昧な検査が行われていることも事実です。これについては、見直しが必要であることを改めて教えてくれる研究結果であったと思います。代替手段として超音波検査などで対応できたものもあるでしょう。また、可能な限り被曝を抑えた撮影条件を徹底し、検査部位を最小限に留めるなどの対策も重要です。結論として、本論文は「CT検査は命を救うが、利用過多は将来のがんを増やす」というトレードオフを定量的に示し、検査適正化と線量管理の徹底こそが利益と安全性の両立に不可欠であることを教えてくれます。医療者も患者も、急ぎでないCT検査の必要性を立ち止まって見極める意識がますます重要といえるのではないでしょうか。 1) Smith-Bindman R, et al. Projected Lifetime Cancer Risks From Current Computed Tomography Imaging. JAMA Intern Med. 2025 Apr 14. [Epub ahead of print] 2) Tsushima Y, et al. Radiation Exposure from CT Examinations in Japan. BMC Med Imaging. 2010;10:24. 3) 厚生労働省.【NDB】NDBオープンデータ.

検索結果 合計:35100件 表示位置:2061 - 2080