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1.

国内DOAC研究が色濃く反映!肺血栓塞栓症・深部静脈血栓症ガイドライン改訂/日本循環器学会

 『2025年改訂版 肺血栓塞栓症・深部静脈血栓症および肺高血圧症ガイドライン』が3月28~30日に開催された第89回日本循環器学会学術集会の会期中に発刊され、本学術集会プログラム「ガイドラインに学ぶ2」において田村 雄一氏(国際医療福祉大学医学部 循環器内科学 教授/国際医療福祉大学三田病院 肺高血圧症センター)が改訂点を解説した。本稿では肺血栓塞栓症・深部静脈血栓症の項について触れる。DOACの国内エビデンスの功績、ガイドラインへ反映 静脈血栓塞栓症(VTE)と肺高血圧症(PH)の治療には、直接経口抗凝固薬(DOAC)の使用や急性期から慢性期疾患へ移行していくことに留意しながら患者評価を行う点が共通している。そのため、今回よりVTEの慢性期疾患への移行についての注意喚起のために、「肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断、治療、予防に関するガイドライン」「肺高血圧症治療ガイドライン」「慢性肺動脈血栓塞栓症に対するballoon pulmonary angioplastyの適応と実施法に関するステートメント」の3つが統合された。 肺血栓塞栓症(PTE)・深部静脈血栓症(DVT)のガイドライン改訂は2018年3月以来の7年ぶりで、当時は抗凝固療法におけるDOACのエビデンスが不足していたが、この7年の歳月を経て、DOACを用いたVTEの治療は飛躍的に進歩。DOAC単独での外来治療、誘因のないVTEや担がん患者の管理、長期治療などの国内の結果が明らかになり、改訂に大きく反映された。田村氏は、「本ガイドラインは、循環器専門医のみならず、呼吸器科、膠原病内科など多彩な診療科の協力の基に作成された。本領域は日本からのエビデンスが多いため、本邦独自の診断・治療アルゴリズムと推奨を検討した」とコメントした。VTE予後予測、PESIスコアや誘因因子評価を推奨 四肢の深筋膜より深部を走行する深部静脈に生じた血栓症を示すDVTと深部静脈血栓が遊離し肺動脈へ流入することで発症するPTEを、一連の疾患群と捉えてVTEと総称する。これらの予後に関しては推奨表2「VTEの予後に関する推奨とエビデンスレベル」(p.20)に示され、とくに急性期PTEでは治療方針の検討のために、近年普及している肺塞栓症重症度指数(PESI)ならびにsPESIを用いた患者層別化が推奨された(推奨クラスIIa、エビデンスレベルB)。また、国内の観察研究JAVA(Japan VTE Treatment Registry)やCOMMAND VTE Registryに基づくVTE再発予後についてもガイドライン内に示されている(p.21-22)。前者の研究によると、ワルファリン治療中のVTE再発率は2.8例/100患者・年であったが、治療終了後には8.1例/100患者・年に増加したという。そして、後者の研究からは、VTE診断後1年時点での再発率は、一過性の誘因のある患者群では4.6%、誘因のない患者群では3.1%、活動性のがんの患者群では11.8%であることが明らかになった。PTE診断と治療、判断に悩む中リスク群を拾えるように 急性PTEの診断については、「低血圧やショックがみられる場合には早期にヘパリン投与を考慮する、検査前臨床的確率を推定する際にWellsスコアあるいはジュネーブスコアを用いる、ルールアウトにはDダイマー測定を行う、最終的な確定診断にゴールドスタンダードの造影CT検査/緊急時の心エコー評価、ECMO導入後診断は肺動脈造影も考慮する(p.32)」と述べた。重症度別治療戦略については、前ガイドラインで曖昧であった2つの指標を挙げ、「右心機能不全では(1)右室/左室比が0.9 or 1.0以上、(2)右室自由壁運動低下、(3)三尖弁逆流血流速上昇を、心臓バイオマーカーについてはトロポニンI/TやBNP/NT-proBNPの評価を明確化したことで、判断が難しい中リスク群における血栓溶解療法と抗凝固療法との切り分けができるフローを作成した(p.36)」と解説。治療開始後の血栓溶解療法に関する推奨においては、「循環動態の悪化徴候がみられた場合には、血栓溶解療法を考慮する」点が追記(p.39)されたことにも触れた。 PTEの治療については、DOAC3剤の大規模臨床試験によるエビデンスが多数そろったことでDOACによるVTE治療は推奨クラスI、エビデンスレベルAが示され(p.40)、「低リスク群で“入院理由がない、家族や社会的サポートがある、医療機関の受診が容易である”といった条件がそろえば、DOACによる外来治療も可能となったことも非常に大きな改訂点」と説明した。DVT治療、中枢型と末梢型でアプローチに違い DVTにおいてもPTE同様に検査前臨床的確率の推定や下肢静脈超音波検査/造影CT検査を実施するが、今回の改訂ポイントは「中枢性・末梢性で治療アプローチが異なる点を明確に定義した」ことだと同氏は説明。「中枢性DVTの場合は初期(0~7日)または維持治療期(8日~3ヵ月)に関しては、PTE同様にワルファリンとDOACの使用とともに、すべての中枢性DVTに対して、抗凝固薬の禁忌や継続困難な出血がない場合には少なくとも3ヵ月の抗凝固療法を行うことが推奨されている(いずれも推奨クラスI、エビデンスレベルA、p.47)。一方で、末梢型DVTにおいては、「画一的な抗凝固療法を推奨するものではなく、症候性で治療を行う場合には3ヵ月までの治療を原則とし、無症候性でも活動性がん合併の患者においてはリスクベネフィットを考慮しながらの抗凝固療法が推奨される(推奨クラスIIb、エビデンスレベルB)」と説明した。カテ治療、血栓溶解薬併用と非併用に大別 急性PTEに対するカテーテル治療は、末梢でのコントロールが難渋する例、国内でのデバイスラグなども考慮したうえで、血栓溶解薬併用と非併用に大別している。非併用について、「全身血栓溶解療法が禁忌、無効あるいは抗凝固療法禁忌の高リスクPTEに対し、熟練した術者、専門施設にて血栓溶解薬非併用カテーテル治療を行うことを考慮する。また、抗凝固療法により病態が悪化し、全身血栓溶解療法が禁忌の中リスク急性PTEに対し、熟練した術者、専門施設にて血栓溶解薬非併用カテーテル治療を行うことを考慮する(いずれも推奨クラスIIa、エビデンスレベルC)」と示されている。 このほか、冒頭で触れた慢性疾患への移行については「慢性期疾患患者が急性期VTEを発症することもあるが、PTEが血栓後症候群(PTS)へ、DVTがPTS(血栓後症候群)へ移行するリスクを念頭に治療を行い、発症3~6ヵ月後の評価の必要性を提示していること(推奨表3、p.22)が示された。またCOVID-19での血栓症として、中等症I以下では画一的な抗凝固療法は推奨しない(推奨表1:推奨クラスIII[No benefit]、エビデンスレベルB)ことについて触れた。 最後に同氏は「誘因のないVTEや持続性の誘因によるVTEに対する抗凝固療法の長期投与の際に、未承認ではあるが長期的なリスクベネフィットを考慮したDOACの減量投与などを、今後の課題として検討していきたい」とコメントした。(ケアネット 土井 舞子)そのほかのJCS2025記事はこちら

2.

抗凝固薬―長期投与は減量でよい?(解説:後藤信哉氏)

 深部静脈血栓症の症例への予防的抗凝固薬の投与期間は確定されていない。さじ加減を重視する日本の臨床家として「長期投与するなら減量で!」と考える医師は多いと思う。一般に血栓症の再発リスクは時間とともに低減するから、減量して長期投与することは正しそうに思う。 それでもランダム化比較試験にて自分の直感を検証したいと考える欧米人が、本研究を施行した。欧米のDOACはアピキサバンとリバーロキサバンが標準なのでアピキサバン (2.5mg twice daily) と リバーロキサバン(10mg once daily)を比較した。静脈血栓症の発症から1~2年経過すれば血栓イベントリスクは十分に低下している。減量しても静脈血栓症の再発リスクは増えなかった(ハザード比[HR]:1.32、95%信頼区間[CI]:0.67~2.60)。重篤な出血リスクは減少した(HR:0.61、95%CI:0.48~0.79)。仮説検証試験として結論が出たわけではないが、医師の直感的判断を支持する試験結果であった。

3.

避妊法による脳卒中や心筋梗塞のリスクをどのように回避することができるのか?(解説:三浦伸一郎氏)

 避妊法の条件は、確実であり、方法が簡便で長期間使用できること、経費が少なくて済み、副作用が少ないことなどが挙げられる。経口避妊薬には、ホルモン剤としてプロゲスチンとエストロゲンの混合型とプロゲスチン単独のものがある。ホルモン避妊法による深部静脈血栓症や肺塞栓症の発生率は、エストロゲン投与量が増加すると上昇することが知られている。エストロゲンやプロゲステロンの投与では、フィブリノゲンなどの凝固因子が増加し、凝固抑制因子が減少することにより凝固系が亢進する。 最近、ホルモン避妊法による虚血性脳卒中や心筋梗塞のリスクに関する前向きコホート研究の結果が報告された1)。これまで、ホルモン避妊法が心血管疾患リスクに悪影響を与えるとの報告はあったが、このコホート研究では、避妊法の違いによりリスクが異なっていることが検証され、従来の複合経口避妊薬やプロゲスチン単剤避妊法ではリスクが高かった。一方、レボノルゲストレル放出子宮内避妊具は、リスク増加と関連しておらず、今後の安全な避妊法として期待されるものであった。 現在、日本では、ホルモン避妊法が多く使用されている。しかし避妊教育が少なく、避妊のリスクとベネフィットを理解できる機会を増やし、多くの選択肢を知ってもらう必要がある。このYonisらの研究は、レボノルゲストレル放出子宮内避妊具という新たな選択肢をもたらした。安全な方法をより普及させる必要があるとともに、ホルモン避妊法についての再教育も必要と思われる。

4.

再発高リスクのVTE患者、DOACは減量可能か?/Lancet

 再発リスクが高く長期の抗凝固療法が必要な静脈血栓塞栓症(VTE)患者において、直接経口抗凝固薬(DOAC)の減量投与は全量投与に対して、非劣性基準を満たさなかった。しかしながら両投与群ともVTEの再発率は低く、減量投与群のほうが臨床的に重要な出血が大幅に減少し、減量投与は治療選択肢として支持可能なことが示されたという。フランス・Centre Hospitalier Universitaire BrestのFrancis Couturaud氏らRENOVE Investigatorsが、多施設共同無作為化非盲検エンドポイント盲検化非劣性試験「RENOVE試験」の結果を報告した。再発リスクが高くDOACの長期投与が適応のVTE患者において、その最適な投与量は明らかになっていなかった。結果を踏まえて著者は、「さらなる試験を行い、抗凝固薬の減量投与をすべきではないサブグループを特定する必要があるだろう」と述べている。Lancet誌2025年3月1日号掲載の報告。減量投与群vs.全量投与群、症候性VTEの再発を評価 RENOVE試験は、フランスの47病院で行われた。急性症候性VTE(肺塞栓症または近位深部静脈血栓症)を呈し、長期の抗凝固薬療法が適応で連続6~24ヵ月の抗凝固薬全量投与を受けた18歳以上の外来患者を適格とした。適格患者は、初発の特発性VTE、再発VTE、持続性リスク因子の存在、その他の再発リスクが高いと考えられる臨床的状態のいずれかに分類された。 被験者は、双方向ウェブ応答システムを用いた中央無作為化法により、減量投与群(アピキサバン2.5mgを1日2回またはリバーロキサバン10mgを1日1回)または全量投与群(アピキサバン5mgを1日2回またはリバーロキサバン20mgを1日1回)に、無作為に1対1の割合で割り付けられた。コンピュータ乱数生成ジェネレーターを用いたシーケンス生成法でブロックサイズの差異のバランスを取り、無作為化では試験施設、DOACの種類、抗血小板薬による層別化を行った。試験担当医師および被験者は治療割り付けを盲検化されなかった。VTEの再発、臨床的に重要な出血、全死因死亡は治療割り付けを盲検化された独立委員会によって判定された。 主要アウトカムは、治療期間中に判定された症候性VTEの再発(致死的または非致死的な肺塞栓症もしくは孤立性の近位深部静脈血栓症などを含む)であった(非劣性マージンは、ハザード比[HR]の95%信頼区間[CI]の上限が1.7、検出力90%に設定)。重要な副次アウトカムは、治療期間中に判定された重大な出血(国際血栓止血学会[ISTH]の基準に従い定義)または臨床的に重要な非重大出血、および治療期間中に判定されたVTEの再発、重大な出血または臨床的に重要な非重大出血の複合とした。主要アウトカムと最初の2つの副次アウトカムは、階層的に評価した。VTEの5年累積発生率は減量投与群2.2%、全量投与群1.8%で非劣性は認められず 2017年11月2日~2022年7月6日に2,768例が登録され、減量投与群(1,383例)または全量投与群(1,385例)に無作為化された。970例(35.0%)が女性、1,797例(65.0%)が男性で、1例(<0.1%)は性別が報告されていなかった。追跡期間中央値は37.1ヵ月(四分位範囲[IQR]:24.0~48.3)。 症候性VTEの再発は、減量投与群で19/1,383例(5年累積発生率2.2%[95%CI:1.1~3.3])、全量投与群で15/1,385例(1.8%[0.8~2.7])に報告された(補正後HR:1.32[95%CI:0.67~2.60]、絶対群間差:0.40%[95%CI:-1.05~1.85]、非劣性のp=0.23)。 重大または臨床的に重要な出血は、減量投与群で96/1,383例(5年累積発生率9.9%[95%CI:7.7~12.1])、全量投与群で154/1,385例(15.2%[12.8~17.6])に報告された(補正後HR:0.61[95%CI:0.48~0.79])。 有害事象の発現は、減量投与群で1,136/1,383例(82.1%)、全量投与群で1,150/1,385例(83.0%)に報告された。Grade3~5の重篤な有害事象の発現はそれぞれ374/1,383例(27.0%)、420/1,385例(30.3%)であった。試験期間中の死亡はそれぞれ35/1,383例(5年累積死亡率4.3%[95%CI:2.6~6.0])、54/1,385例(6.1%[4.3~8.0])であった。

5.

CKDを伴う関節リウマチにおけるJAK阻害薬の安全性・有効性

 虎の門病院腎センター内科・リウマチ膠原病科の吉村 祐輔氏らが慢性腎臓病(CKD)を伴う関節リウマチ(RA)患者におけるJAK阻害薬の有効性・安全性を評価し、腎機能が低下した患者における薬剤継続率を明らかにした。また、推算糸球体濾過量(eGFR)が30mL/分/1.73m2未満の患者については、帯状疱疹や深部静脈血栓症(DVT)の可能性を考慮する必要があることも示唆した。Rheumatology誌2025年1月25日号掲載の報告。 研究者らは、2013~22年にJAK阻害薬を新規処方されたRA患者216例について、多施設共同観察研究を実施。腎機能に応じたJAK阻害薬の減量ならびに禁忌については添付文書に従い、患者を腎機能とJAK阻害薬の各薬剤で分類した。主要評価項目は24ヵ月間の薬剤継続率で、副次評価項目は関節リウマチの疾患活動性評価の指標の1つであるDAS28-CRPの変化、プレドニゾロン投与量、およびJAK阻害薬の中止理由だった。 主な結果は以下のとおり。・eGFR(mL/分/1.73m2)を60以上、30~60、30未満に分類した。・eGFR分類ごとの24ヵ月薬剤継続率は、全JAK阻害薬では46.0%、44.1%、47.1%で、トファシチニブは55.9%、53.3%、66.7%だった。また、バリシチニブ*は64.2%、42.0%で、ペフィシチニブは36.4%、44.1%、40.0%であった。・腎機能が低下したグループでも、薬剤継続率は維持された(調整ハザード比:1.14、95%信頼区間:0.81~1.62、p=0.45)。・JAK阻害薬開始後6ヵ月で、患者のDAS28-CRPは低下し、プレドニゾロンの投与量も減少した。・帯状疱疹とDVTの発生率はeGFR30未満のグループで高かったものの、統計学的に有意ではなかった。・eGFR30未満は、JAK阻害薬の無効または感染による中止の危険因子ではなかった。*バリシチニブはeGFR30未満への投与は禁忌 同グループは2024年に生物学的製剤についてもCKD合併RA患者に対する安全性・有効性を報告している1)。今回のJAK阻害薬の報告とあわせて、メトトレキサートや非ステロイド性抗炎症薬の使用が制限されるCKD合併RA患者に対して、生物学的製剤、JAK阻害薬いずれもの安全性・有効性を示したことになる。

6.

非機器的早期運動療法はDVT発生率を低減【論文から学ぶ看護の新常識】第1回

非機器的早期運動療法はDVT発生率を低減非機器的早期運動療法は、入院患者における深部静脈血栓症(DVT)の発生率を低減する効果があることが示された。Julia Raya-Benitez氏らによる研究で、International Journal of Nursing Studies誌の2025年1月号に掲載された。入院患者における深部静脈血栓症発生率低減のための非機器的早期運動療法の有効性:システマティックレビューとメタアナリシス研究グループは、非機器的早期運動療法のDVT発生率低減効果を、システマティックレビューとメタアナリシスで評価した。7つのランダム化比較試験(RCT)が含まれ、対象者は1,774例。主要な評価指標をDVTの発生率とし、全身的、局所的、遠隔的な非機器的早期運動療法の有効性を比較した。研究の結果、非機器的早期運動療法は、通常ケアと比較してDVT発生率を有意に低下させた(リスク比[RR]:0.55、95%信頼区間[CI]:0.41~0.73、p<0.0001)。とくに、全身的運動療法(RR:0.54、95%CI:0.38~0.78、p=0.001)および遠隔運動療法(RR:0.25、95%CI:0.07~0.86、p=0.03)が効果的であることが確認された。一方で、局所運動療法は、通常ケアとの比較で統計的に有意な効果は示されなかった(RR:0.68、95%CI:0.42~1.12、p=0.13)。運動は1日2~3回、各セッション10~30分程度で行われ、実施期間は6日から6週間だった。この方法は患者のDVT予防だけでなく、入院期間の短縮や合併症のリスク低減にも効果があることが期待されている。看護では最高峰の雑誌への投稿です。非機器的早期運動療法とは、特別な機器を使わずに行う運動療法を指し、本研究では患者が入院してから24時間以内に開始されるものと定義されています。これはまさに急性期における看護師の介入時期と方法に合致しているといえます。この療法には3つの種類があります。まず1つ目は、足首の屈伸などリスク部位周辺を動かす局所運動療法です。静脈ポンプ作用を活性化して血流を直接促進する効果が見込まれます。次に、歩行訓練など全身を動かす全身的運動療法があります。これは血液循環を改善し、心拍出量を増やして血流の停滞を防ぐ効果が期待できます。最後に、上肢や体幹のストレッチのようにリスク部位以外を動かす遠隔運動療法があります。こちらは間接的に全身の血流を増加させる可能性があります。本研究では、こうした運動の効果がデータによって裏づけられ、とくに全身的運動療法や遠隔運動療法がDVTの予防に有効であることが示されました。つまり、足首などのリスクの高い部位を十分に動かせない場合でも、全身的あるいは遠隔の運動を取り入れることで同様の効果が得られるため、ベッドサイドでも実用性の高い介入法といえます。一方で、今回解析対象の文献には、疼痛管理など複合的介入を行っているものも含まれており、今後さらに質の高い研究が求められます。ただし少なくとも本研究の結果をみる限り、看護師が日常的に実施している関節可動域訓練などの非機器的早期運動療法の重要性を再確認するものといえます。論文はこちらRaya-Benitez J, et al. Int J Nurs Stud. 2025;161:104917.

7.

立位時間を増やすだけでは心臓の健康は改善しない

 健康のことを考えて、スタンディングデスクを導入して座位時間を減らすことを考えている人もいるかもしれない。しかし、手首に特殊な動作モニターを装着した8万3,000人以上の英国成人を対象とした新たな研究において、座位時間を立位時間に変えても、実際の動きや運動を伴わない限り、心血管の健康へのメリットはないことが明らかになった。シドニー大学(オーストラリア)チャールズ・パーキンス・センターのマッケンジー・ウェアラブル研究ハブのMatthew Ahmadi氏らによるこの研究結果は、「International Journal of Epidemiology」に10月16日掲載された。 研究グループは、長時間の立位は、実際には心臓に悪影響を及ぼし、静脈瘤や深部静脈血栓症(DVT)などの発症リスクを上昇させる可能性があるとしている。Ahmadi氏は、「重要な点は、長時間立ち続けても座位時間の長い生活習慣は相殺されず、むしろ、循環器系の健康という点では、一部の人には危険をもたらす可能性があるということだ」と述べている。 今回の研究では、UKバイオバンク参加者8万3,013人(平均年齢61.3±7.8歳、女性55.6%)の加速度計のデータを用いて、毎日の座位時間、立位時間、静止時間(座位時間と立位時間を合わせたもの)と、心血管疾患(冠動脈性心疾患、心不全、脳卒中)および起立性循環器疾患(起立性低血圧、静脈瘤、慢性静脈不全、静脈潰瘍)の発症との関連が調査された。活動量計のデータを基に、参加者の立位時間、座位時間、および静止時間を推定した。 平均6.9年の追跡期間中に、6,829件の心血管疾患と、2,042件の起立性循環器疾患が発生していた。起立性循環器疾患のリスクは、1日の静止時間が12時間を超えると1時間当たり平均22%(ハザード比0.22、95%信頼区間0.16〜0.29)、1日の座位時間が10時間を超えると1時間当たり平均26%(同0.26、0.18〜0.36)、1日の立位時間が2時間を超えると30分当たり11%(同0.11、0.05〜0.18)上昇していた。心血管疾患のハザード比は、1日の静止時間が12時間を超えると1時間当たり平均13%(同0.13、0.10〜0.16)、1日の座位時間が12時間を超えると1時間当たり平均15%(同0.15、同0.11〜0.19)上昇していた。一方、立位時間と心血管疾患リスクとの間に有意な関連は認められなかった。 Ahmadi氏は、「本研究により、立位時間が増えても、長期的には心血管の健康の改善にはつながらず、むしろ循環器系の問題のリスクが上昇することが分かった」と話す。また、研究グループは、「この結果は、スタンディングデスクの使用をやめて座位に戻すべきことを意味するものではない。そうではなく、1日の中で体を動かす時間を増やす必要があることを示すものだ」と述べている。 論文の上席著者である、シドニー大学チャールズ・パーキンス・センターのマッケンジー・ウェアラブル研究ハブのEmmanuel Stamatakis氏は、「日常的に長時間座っている人にとって、1日を通して、ちょっとした動きをたくさん取り入れたり、計画的に運動を行ったりすることは、心血管疾患のリスクを低減するための良い方法かもしれない」と話す。そして、「定期的に休憩を取る、歩き回る、ウォーキングミーティングを行う、階段を使う、長距離を運転する際には定期的に休憩を取る、昼休みを利用してデスクから離れて体を動かす、などを心がけると良い」とアドバイスしている。 なお、研究グループが2024年初めに発表した研究によると、1日の座位時間が11時間を超える人でも、1日わずか6分の高強度の運動、または30分の中強度から高強度の運動を行うだけで心血管疾患リスクを軽減できることが明らかにされている。

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事例011 狭心症にアピキサバン(エリキュース)錠で査定【斬らレセプト シーズン4】

解説狭心症などの疾患でフォロー中の患者に投与していたアピキサバン(商品名:エリキュース錠)がC事由(医学的理由による不適当)で査定になりました。査定理由を調べるために添付文書を参照しました。効能・効果には、「非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制」、「静脈血栓塞栓症(深部静脈血栓症及び肺血栓塞栓症)の治療及び再発抑制」と記載されています。今回の事例をみると、レセプトに記載された病名のみでは、全身性塞栓症や深部静脈血栓塞栓を発症しているもしくは発症抑制が必要な状態にあることが読み取れません。したがって、保険適用が認められていない「予防的投与ではないか」とみなされ、C事由を適用されて査定になったものと推測できます。アピキサバンは経口抗凝固薬です。血液検査などにて発症抑制が必要な状態にあって、アピキサバンの錠剤投与が必要と判断された場合、レセプトに原疾患のみならず経口抗凝固薬を必要とする病名が必須となります。査定対策として、レセプトチェックシステムに傷病名の確認を促すように設定を見直しました。

9.

中心静脈カテーテルのガイドワイヤーを2年間放置されていた男性【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第268回

中心静脈カテーテルのガイドワイヤーを2年間放置されていた男性「これってただの医療過誤では…」と思われる症例が、ときに医学論文化されていることがあります。日本だと、さすがに中心静脈カテーテル(CVC)のガイドワイヤーを長期間放置したら、ニュースになるでしょう…。Chatzelas DA, et al. Surgical Removal of a Long-Forgotten, Retained Intravascular Foreign Body: A Case Report and Literature Review. Vasc Specialist Int. 2024 Jul 17:40:25.82歳の男性患者が2021年9月に大腸がんの手術を受けました。手術中に右内頸静脈からCVCが挿入されましたが、その際にガイドワイヤーが体内に残されたことに気付かれませんでした。内頸静脈のガイドワイヤー、ということは右房・右室に向かって入っていたのでしょうが、2年後の2023年10月、CT検査でなんと右大腿静脈から上大静脈まで伸びるガイドワイヤーが残っていることが発見されました。こっわ…!幸いにも患者さんには症状がなく、深部静脈血栓症などの血栓徴候もありませんでした。局所麻酔下で外科的に異物を除去することが決定され、右大腿静脈を切開し、鉗子を使用してガイドワイヤーを慎重に引き抜きました。透視検査で残存するガイドワイヤー断片が残っていないことを確認し、静脈造影でも出血がないことを確認しました。患者さんは術後早期に退院しました。その後、1ヵ月後、6ヵ月後のフォローアップでも、とくに異常はなかったそうです。めでたし、めでたし。ん?…いや…、めでたいのか…?CVCで使用するガイドワイヤー紛失は、基本的にまれです。というか、ガイドワイヤーの先端をつかむことに神経を集中させているので、紛失などあってはならないものです。残置されたガイドワイヤーは、不整脈、血管損傷、血栓塞栓症、感染、心臓穿孔、心タンポナーデなどの重篤な合併症を引き起こす可能性があるため、基本的には緊急的に処置されるべきものです。この症例の問題は、ガイドワイヤーを置き忘れたことだけでなく、大腸がんの術後なのに2年間画像フォローされたことがなかったという点でしょうか。

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抗凝固薬の服用理由の仮説を立てて中止提案、そのまま続いていたら…【うまくいく!処方提案プラクティス】第62回

 今回は、直接経口抗凝固薬(DOAC)の服薬理由を検討し、医師との連携によって中止した事例を紹介します。心房細動や脳梗塞の2次予防で服薬しているケースでは、出血リスクなどで一時的に中止できることはあるかと思います。皆さんは新患対応時に、服用薬の理由をどのように確認していますか? 現病歴や既往歴など情報収集を丁寧に行うことで、エンドポイントや目標ラインに合わせて治療を最適化することが可能です。患者情報90歳、女性(施設入居)基礎疾患認知症(病型は不明)、右大腿骨近位部骨折介護度要介護2服薬管理施設職員が管理処方内容1.エドキサバン錠30mg 1錠 分1 朝食後2.アセトアミノフェン錠200mg 6錠 分3 毎食後本症例のポイントこの患者さんは右大腿骨頸部骨折の手術後にリハビリ調整なども完了して施設入居となりました。持参薬確認と契約のタイミングが合ったため、訪問時に施設スタッフに情報連携をとりました。施設スタッフからは、施設内は歩行器補助を利用しながら移動していて、さらに夜間にベッドから滑り落ちることが続いていると聴取しました。転倒・転落のリスクがあることから抗凝固薬の出血リスクが懸念されます。入居時の情報連携文書としては、診療情報提供書と看護サマリがありましたが、エドキサバンの服用理由がなく、基礎疾患にある右大腿骨遠位部の骨折後の疼痛コントロールのためにアセトアミノフェンの服用を続けていることだけが記録されていました。服用理由の不明な抗凝固薬が“もやもやポイント”であったことから、仮説として近位部骨折手術時に深部静脈血栓症を予防するためにDOACを服用開始したのではないかと想定しました。大腿骨近位部骨折は、深部静脈血栓症の高リスク群に位置付けられている1)ことから、DOACによる抗凝固療法の予防内服が推奨されています。投与期間は、手術後12時間を経過し、出血がないことを確認して11〜14日間の経口投与が推奨1)されており、15日間以上投与した場合の有効性および安全性は検討されていません。この患者さんは施設入居1ヵ月前に手術をしており、15日を超えて服用している状況であることから、仮説どおりの深部静脈血栓症の予防投与であれば有効性・安全性の観点からも中止してよいのではないかと考えました。医師への相談と経過訪問診療時に医師に同席し、エドキサバン服用理由について前医からの情報提供などがあったかどうか確認しました。前医からのDOAC服用理由についての詳細な情報提供がなく、心房細動の既往もないので疑問に思っていたと医師から返答がありました。そこで医師と協力し、入院していた医療機関に問い合わせを行ったところ、薬剤部担当者から深部静脈血栓症予防が終了せずにそのまま服用を続けていたことが発覚しました。前医からは、術後の血管エコーなどの結果からもDOAC終了で問題ないとの返答があり、エドキサバンは終了することとなりました。患者さんは疼痛も安定していたこともあり(可動時の膝関節周りの疼痛なし:NRS0/10)、医師と相談してアセトアミノフェン200mg 4錠 分2 朝夕食後のみに減量することとなりました。1週間後のモニタリングで疼痛悪化はなく、体動時の疼痛もなかったことから、1週間後の診察で再度医師に相談してアセトアミノフェンは頓用に変更しました。その後、疼痛増悪や頓用の使用もなく経過安定しています。1)日本循環器学会編. 肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断、治療、予防に関するガイドライン(2017年改訂版)

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術後の静脈血栓塞栓リスク、最も高いがんは?

 がん手術後の静脈血栓塞栓のリスク増加を、がん種別に評価した研究結果が発表された。スウェーデン・カロリンスカ研究所のJohan Bjorklund氏らによる本研究結果は、JAMA Network Open誌2024年2月2日号に掲載された。 本試験は1998~2016年のスウェーデンの全人口データを用いた後ろ向きコホート研究であった。膀胱がん、乳がん、大腸がん、婦人科がん、腎臓・上部尿路上皮がん、肺がん、前立腺がん、胃・食道がんの8種のがんで手術を受けた全患者を、非がんの一般集団と1対10の割合でマッチさせた。データは2023年2月13日~12月5日に解析された。 主要アウトカムは、術後1年以内の静脈血栓塞栓イベントの発生率であった。1年以内のイベントの絶対リスクおよびリスク差、退院後イベントの時間依存性変数を調整したハザード比(HR)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・がん手術群は計43万2,218例で、年齢中央値67歳(四分位範囲[IQR]:58~75歳)、女性68.7%だった。非がん対照群は400万9,343例で、年齢中央値66歳(IQR:57~74歳)、女性69.3%であった。・静脈血栓塞栓症の1年累積リスクは、すべてのがん手術群で対照群よりも高かった。がん種別にみたリスク差は、膀胱がん2.69パーセントポイント(95%信頼区間[CI]:2.33~3.05)、乳がん0.59(0.55~0.63)、大腸がん1.57(1.50~1.65)、婦人科がん1.32(1.22~1.41)、腎臓・上部尿路がん1.38(1.21~1.55)、肺がん2.61(2.34~2.89)、前立腺がん0.57(0.49~0.66)、胃・食道がん2.13(1.89~2.38%)であった。・1年HRは、肺がんで最も高かった(HR:8.89、95%CI:5.97~13.22)。・がん手術群の静脈血栓塞栓リスクは、退院直後にピークに達し、60~90日後にはおおむねプラトーになった。術後30日時点では乳がんを除くすべてのがん手術群におけるHRは対照群の10~30倍だったが、30日を過ぎるとHRはプラトーに達した。しかしながら、前立腺がんを除いて対照群のレベルにまで達することはなかった。深部静脈血栓症についても同様の結果だった。 研究者らは「がん手術群は静脈血栓塞栓症の1年累積リスクが統計学的に有意に増加しており、手術に伴う最初の増加がプラトーになるまでの期間はがん種によって異なることが示唆された。静脈血栓塞栓イベント予防における過剰治療と過小治療の両方を避けるために、手術外傷、疾患の重症度、および全身化学療法への曝露を考慮して、個別のリスク評価と予防策が必要である」としている。

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ダークチョコレートはCVDリスクを低減させる?

 ダークチョコレートの摂取と12種類の心血管疾患(CVD)のリスクとの間に因果関係があるかどうかをメンデルランダム化解析で検討した結果、ダークチョコレート摂取により本態性高血圧症のリスクが有意に低減した一方で、そのほかのCVDでは因果関係は認められなかったことを、中国・Shaoxing People's HospitalのJuntao Yang氏らが明らかにした。Scientific Reports誌2024年1月10日号掲載の報告。 ダークチョコレートには、フラバノールやメチルキサンチンなどの身体に有益とされる成分が豊富に含まれていて、小規模のランダム化比較試験では心血管系に良好な影響を与えたことが報告されている。しかし、ダークチョコレート摂取がCVDリスクと関連するかどうかは確立されていない。そこで研究グループは、ダークチョコレートの摂取とCVDリスクとの因果関係を調べるために、メンデルランダム化解析を実施した。 ダークチョコレートの摂取量に関するゲノムワイド関連研究(GWAS)のデータは英国バイオバンクより抽出した(6万4,945例)。CVDのデータは、冠動脈疾患(症例:18万1,522例、対照:98万4,168例)、心房細動(6万620例、97万216例)、心不全(4万7,309例、93万14例)、脳卒中(4万585例、40万6,111例)、本態性高血圧症(9万2,462例、26万5,626例)、非リウマチ性弁膜症(2万772例、28万6,109例)、非虚血性心筋症(9,926例、30万3,607例)、一過性脳虚血発作(1万8,398例、34万2,294例)、静脈血栓塞栓症(1万9,372例、35万7,905例)、心筋梗塞(2万4,185例、31万3,400例)、下肢の深部静脈血栓症(9,109例、32万4,121例)の研究から収集した。主なアプローチとして、逆分散加重(IVW)を用いた固定効果モデルを用い、感度分析によって結果の頑健性を評価した。 主な結果は以下のとおり。●ダークチョコレートの摂取は、本態性高血圧症のリスク低減と有意に関連した(オッズ比[OR]=0.73、95%信頼区間[CI]:0.60~0.88、p=1.06×10-3)。●静脈血栓塞栓症のリスク低減との関連も示唆されたが、因果関係はエビデンス不足のため立証できなかった(OR:0.69、95%CI:0.50~0.96、p=2.81×10-2)。●ほかの10種類のCVDとの間に因果関係は認められなかった。 ・心不全 OR:0.93、95%CI:0.63~1.35、p=0.69 ・冠動脈疾患 OR:0.96、95%CI:0.78~1.17、p=0.65 ・心筋梗塞 OR:0.78、95%CI:0.43~1.41、p=0.41 ・心房細動 OR:1.14、95%CI:0.86~1.52、p=0.35 ・非リウマチ性弁膜症 OR:0.81、95%CI:0.55~1.19、p=0.28 ・非虚血性心筋症 OR:0.99、95%CI:0.63~1.57、p=0.98 ・下肢深部静脈血栓症 OR:0.65、95%CI:0.41~1.04、p=7.26×10-2 ・脳卒中 OR:1.26、95%CI:0.89~1.79、p=0.19 ・虚血性脳卒中 OR:1.15、95%CI:0.72~1.83、p=0.55 ・一過性脳虚血発作 OR:0.83、95%CI:0.55~1.24、p=0.36 これらの結果より、研究グループは「本研究はダークチョコレートの摂取と本態性高血圧症のリスク低下との間に因果関係があることを証明するものであり、本態性高血圧症の予防に重要な示唆を与えるものである」とまとめた。

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能登半島地震に対するJMATの対応/日医

 日本医師会常任理事の細川 秀一氏が、2024年1月31日の定例記者会見で、1月1日に発生した能登半島地震に対する日本医師会の最新の対応状況を報告した。 日本医師会は、1月30日時点でJMATととして金沢市に6チーム、七尾市に2チーム、穴水町に6チーム、志賀町に3チーム、能登町に3チーム、輪島市に3チーム、珠洲市に4チーム、金沢以南に11チーム、そのほかの地域に2チームを派遣していて、これまでに派遣した延べ人数は3,490人にのぼるという。これらの人数には、統括やロジスティクスを担うチーム、深部静脈血栓症などの治療を行う専門チームも含まれている。 細川氏は、今後は可能な限り同じ都道府県の医師会が、同じ地域の診療所や避難所に対して継続的にチームを派遣する体制にするという予定を示した。そこで1月30日に、能登北部に12チーム、能登中部に3チーム、金沢以南に7チーム、調整本部に3チームの合計25チームを毎日派遣する体制を組んでいくことを各都道府県の医師会に伝え、チーム編成の協力を要請した。 現地のJMAT調整本部では、2月より、地域の医師で構成するJMATを能登北部などに派遣する構想があるという。これに対して細川氏は、ベテランのかかりつけ医がサポートを強化することで被災者の健康を守り、ひいては災害関連死を防ぐことにつながっていくと期待を寄せた。 最後に、能登北部の交通状態が解消すれば、地域の医師や看護師などで編成するチームを相当数派遣できるようになると考えるが、それまでは重装JMAT(自己完結による活動歴のある隊員が含まれる医療救護班で構成した重装備のチーム)の派遣を続けていく必要があるという見解を示すとともに、現場の調整本部・支部の判断を尊重しつつ、厚生労働省とも連携していくとまとめた。

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膵がん患者に合併する静脈血栓塞栓症への対応法【見落とさない!がんの心毒性】第28回

※本症例は、患者さんのプライバシーに配慮し一部改変を加えております。あくまで臨床医学教育の普及を目的とした情報提供であり、すべての症例が類似の症状経過を示すわけではありません。《今回の症例》年齢・性別60代・女性既往歴虫垂炎術後服用歴テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム(ティーエスワン配合OD錠T20)(2錠分2 朝夕食後)、クエン酸第一鉄Na錠50mg(1錠分1 朝食後)、ランソプラゾールOD錠15(1錠分1 朝食後)喫煙歴なし現病歴X年10月に食欲不振と食後嘔吐を主訴に消化器内科を受診した。腹部骨盤部造影CTで十二指腸水平脚の圧排を伴う膵鈎部がんおよび多発肝転移を認め、上部消化管内視鏡で十二指腸水平脚に腫瘍の直接浸潤に伴う潰瘍性病変を認めた(写真1、2)。画像を拡大する進行膵鈎部がん(T4,N1,M1 StageIVb)と診断し、十二指腸ステントを挿入し、同年11月に化学療法(ゲムシタビン[GEM]単剤)を開始した。その後、食欲は改善し、同年12月に退院した。外来で同化学療法計4クールを施行したが、X+1年3月にはPD判定となり、同月よりTS-1単剤での化学療法に変更となった(Performance Status[PS]3)。同年5月に、突然の呼吸困難を主訴に救急外来を受診し、バイタルは体温36.5℃、脈拍数111/分、血圧93/56mmHg、SpO2 94%(室内気)で、左下腿浮腫を認めた。血液検査でDダイマー46μg/mL、BNP 217pg/mLと上昇し、心エコー図検査で右室拡大によるD-shapeを認めた。造影CTで両側肺塞栓症(pulmonary embolism:PE)、両下肢深部静脈血栓症(deep vein thrombosis:DVT)と診断し、入院となった(写真3)。画像を拡大する循環器内科と連携し、入院時Hb 8.3mg/dLと貧血を認めたことから、出血リスクを考慮し、未分画ヘパリン10,000単位/日の低用量で抗凝固療法を開始した。入院2日目に明らかな吐下血は認めなかったものの、Hb 6.7mg/dLと貧血の悪化を認めた。【問題】下記のうち、この患者の静脈血栓塞栓症(venous thromboembolism:VTE)管理の方針や膵がん患者に合併するVTEに関する文章として正しいものはどれか。a.日本において膵がん患者におけるVTE予防目的に、低分子ヘパリン(LMWH)皮下注や直接経口抗凝固薬(DOAC)の予防投与が保険承認されている。b.本症例におけるVTEの初期治療として、DOAC単剤による抗凝固療法がより適切である。c.本症例では抗凝固療法の開始後、貧血の悪化を認めたが、明らかな出血事象が確認されない限り、抗凝固療法は継続すべきである。d.進行膵がんは診断後、3ヵ月以内のVTE発症が多く、定期的なDダイマー測定がVTEの診断に有用である。まとめ膵がん患者では予防的抗凝固療法による生存期間延長の利益について、一定の見解は得られていない。自施設の日本人の膵がん患者432名を対象とした検討では、膵がん診断後の生存期間は、VTE群と非VTE群で有意差はなかった。膵がん自体の予後が不良で、VTEの発症は予後悪化に寄与しない可能性がある5)。しかし、VTEはひとたび発症すると致命的な病態となり得ることや、他臓器のがんではVTE発症により生存期間が短縮するという研究が多いため、今後、膵がん治療・患者管理の進歩により、VTE発症の生命予後への影響が明確化する可能性ある。1)Khorana AA, et al. Cancer. 2013;119:648-655.2)Schunemann HJ, et al. Lancet Haematol. 2020;7:e746-755.3)Wang Y, et al. Hematology. 2020;25:63-70.4)Maraveyas A, et al. Eur J Cancer. 2012;48:1283-1292.5)Suzuki T, et al. Clin Appl Thromb Hemost. 2021;27:1-6.講師紹介

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増加する化学療法患者-機転の利いた専攻医の検査オーダー【見落とさない!がんの心毒性】第26回

※本症例は、患者さんのプライバシーに配慮し一部改変を加えております。あくまで臨床医学教育の普及を目的とした情報提供であり、すべての症例が類似の症状経過を示すわけではありません。《今回の症例》年齢・性別70代・女性(BMI:26.2)既往歴高血圧症、2型糖尿病(HbA1c:8.0%)、脂質異常症服用歴アジルサルタン、メトホルミン塩酸塩、ロスバスタチンカルシウム臨床経過進行食道がん(cT3r,N2,M0:StageIIIA)にて術前補助化学療法を1コース受けた。化学療法のレジメンはドセタキセル・シスプラチン・5-fluorouracil(DCF)である。なお、初診時のDダイマーは2.6μg/mLで、下肢静脈エコー検査と胸腹部骨盤部の造影CTでは静脈血栓症は認めていない。CTにて(誤嚥性)肺炎や食道がんの穿孔による縦隔炎の所見はなかった。2コース目のDCF療法の開始予定日の朝に37.8℃の微熱を認めた。以下が上部消化管内視鏡画像である。胸部進行食道がんを認める。画像を拡大する以下が当日朝の採血結果である(表)。(表)画像を拡大する【問題】この患者への抗がん剤投与の是非に関し、専攻医がオーダーしていたために病態を把握できた項目が存在した。それは何か?a.プロカルシトニンb.SARS-CoV-2のPCR検査c.Dダイマーd.βD-グルカンe.NT-proBNP筆者コメント本邦のガイドラインには1)、「がん薬物療法は、静脈血栓塞栓症の発症再発リスクを高めると考えられ、Wellsスコアなどの検査前臨床的確率の評価システムを起点とするVTE診断のアルゴリズムに除外診断としてDダイマーが組み込まれているものの、がん薬物療法に伴う凝固線溶系に関連するバイオマーカーに特化したものではない。がん薬物療法に伴う静脈血栓症の診療において、凝固線溶系バイオマーカーの有用性に関してはいくつかの報告があるものの、十分なエビデンスの集積はなく今後の検討課題である」と記されている。一方で、「がん患者は、初診時と入院もしくは化学療法開始・変更のたびにリスク因子、バイオマーカー(Dダイマーなど)などでVTEの評価を推奨する」というASCO Clinical Practice Giudeline Updateの推奨も存在する2)。静脈血栓症の症状として「発熱」は報告されており3)、欧米のデータでは、実際に肺塞栓症(PE)発症患者の14~68%で発熱を認め、発熱を伴う深部静脈血栓症(DVT)患者の30日死亡率は、発熱を伴わない患者の2倍になることも報告されている4)。このほか、可溶性フィブリンモノマー複合体定量検査値は、食道がん周術期においても中央値は正常値内を推移することが報告されており、その異常高値はmassiveな血栓症の指標になる可能性もある5)。がん関連血栓症の成因として、(1)患者関連因子、(2)がん関連因子、(3)治療関連因子が2022年のESC Guidelines on cardio-oncologyに記載された6)。今後一層のがん患者の生存率向上とともに、本症例のようなケースが増加すると思われる。1)日本臨床腫瘍学会・日本腫瘍循環器学会編. Onco-cardiologyガイドライン. 南江堂;2023. p.56-58.2)Key NS, et al. J Clin Oncol. 2023;41:3063-30713)Endo M, et al. Int J Surg Case Rep. 2022;92:106836. 4)Barba R, et al. J Thromb Thrombolysis. 2011;32:288–292.5)Tanaka Y, et al. Anticancer Res. 2019;39:2615-2625.6)Lyon AR, et al. Eur Heart J. 2022;43:4229-4361.講師紹介

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CAD患者へのスタチン、種類による長期アウトカムの差は?/BMJ

 冠動脈疾患(CAD)成人患者においてロスバスタチンvs.アトルバスタチンは、3年時点の全死因死亡、心筋梗塞、脳卒中または冠動脈血行再建術の複合に関して有効性は同等であった。ロスバスタチンはアトルバスタチンと比較し、LDLコレステロール(LDL-C)値の低下に対して有効性が高かったが、糖尿病治療薬を必要とする糖尿病の新規発症および白内障手術のリスクが上昇した。韓国・延世大学校医科大学のYong-Joon Lee氏らが、韓国の病院12施設で実施した多施設共同無作為化非盲検試験「Low-Density Lipoprotein Cholesterol-Targeting Statin Therapy Versus Intensity-Based Statin Therapy in Patients With Coronary Artery Disease trial:LODESTAR試験」の2次解析結果を報告した。LDL-Cの低下作用はスタチンの種類によって異なり、冠動脈疾患患者におけるロスバスタチンとアトルバスタチンの長期的な有効性および安全性を直接比較した無作為化試験はほとんどなかった。BMJ誌2023年10月18日号掲載の報告。CAD患者4,400例をロスバスタチン群とアトルバスタチン群に無作為化 研究グループは2016年9月~2019年11月に、冠動脈疾患を有する19歳以上の患者4,400例を、2×2要因デザイン法を用いて、ロスバスタチン群(2,204例)またはアトルバスタチン群(2,196例)に無作為に割り付けた。 主要アウトカムは、3年時点の全死因死亡・心筋梗塞・脳卒中・冠動脈血行再建術の複合で、副次アウトカムは安全性(糖尿病の新規発症、心不全による入院、深部静脈血栓症または肺塞栓症、末梢動脈疾患に対する血管内血行再建術、大動脈インターベンションまたは手術、末期腎不全、不耐容による試験薬の中止、白内障手術、および臨床検査値異常の複合)とした。3年時点の複合アウトカム、両群で同等 4,400例中4,341例(98.7%)が試験を完遂した。3年時点の試験薬の1日投与量(平均±SD)は、ロスバスタチン群17.1±5.2mg、アトルバスタチン群36.0±12.8mgであった(p<0.001)。 主要アウトカムの複合イベントは、ロスバスタチン群で189例(8.7%)、アトルバスタチン群で178例(8.2%)に確認され、ハザード比(HR)は1.06(95%信頼区間[CI]:0.86~1.30、p=0.58)であった。 投与期間中のLDLコレステロール値(平均±SD)は、ロスバスタチン群1.8±0.5mmol/L、アトルバスタチン群1.9±0.5mmol/Lであった(p<0.001)。 ロスバスタチン群はアトルバスタチン群と比較し、糖尿病治療薬の導入を要する糖尿病の新規発症率(7.2% vs.5.3%、HR:1.39[95%CI:1.03~1.87]、p=0.03)、ならびに白内障手術発生率(2.5% vs.1.5%、1.66[1.07~2.58]、p=0.02)が有意に高かった。その他の安全性エンドポイントは、両群で差は確認されなかった。

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生殖年齢女性はNSAIDでVTEリスク増、ホルモン避妊薬併用でさらに増/BMJ

 生殖年齢15~49歳の女性において、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)の使用は静脈血栓塞栓症(VTE)と正の関連性があることが示された。また、NSAID非使用時と比較した使用時のイベント数は、低リスク/リスクなしのホルモン避妊薬併用時と比べて、高/中リスクのホルモン避妊薬の併用時に有意に増加したことも示された。デンマーク・コペンハーゲン大学のAmani Meaidi氏らが、同国在住の女性約203万人を対象に行った全国コホート試験の結果で、著者は「NSAIDとホルモン避妊薬の両者の使用が必要な女性には、適切なアドバイスが必要である」と述べている。BMJ誌2023年9月6日号掲載の報告。デンマーク在住の約203万人を対象にコホート試験 研究グループは、1996~2017年にデンマークに在住しており、静脈・動脈血栓症、がん、血小板増加症、子宮全摘出術、両側卵巣摘出術、不妊手術、不妊治療の病歴がない15~49歳の女性202万9,065人を対象にコホート試験を行い、ホルモン避妊薬とNSAIDの併用がVTEリスクに与える影響を検証した。 主要アウトカムは、下肢深部静脈血栓症または肺血栓塞栓症の初回退院時診断とした。ホルモン避妊薬非使用群4件/10万人、高リスクホルモン避妊薬併用群23件/10万人 202万9,065人の女性を延べ2,100万人年追跡した期間において、VTEイベントの発生は8,710件だった。 NSAID非使用者と比べ、NSAID使用者のVTEの補正後発生率比は、ホルモン避妊薬の非使用者では7.2(95%信頼区間[CI]:6.0~8.5)だったが、高リスクホルモン避妊薬使用者では11.0(9.6~12.6)、中リスクホルモン避妊薬使用者では7.9(5.9~10.6)、低リスク/リスクなしホルモン避妊薬使用者は4.5(2.6~8.1)だった。 NSAID非使用者と比較したNSAID治療開始後1週間における10万人当たりのVTEイベント発生件数は、ホルモン避妊薬非使用群では4件(95%CI:3~5)だったが、高リスクホルモン避妊薬併用群では23件(19~27)だった。中リスクホルモン避妊薬併用群は11件(7~15)、低リスク/リスクなしホルモン避妊薬併用群は3件(0~5)だった。

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乾癬の治療法を徹底解説!:日野皮フ科医院 院長 日野 亮介氏

このコンテンツでは、乾癬の治療法について解説していきます。日常診療のアップデートに、ぜひご活用ください。講師紹介多くの乾癬患者さんたちからは、「ずっと同じ薬ばっかりで良くならない」というお声を多く頂きます。乾癬の治療は塗り薬しかない、と思っておられる方も多いかもしれません。しかし、そうではありません。乾癬は治療に苦労する皮膚疾患でありますが、ここ10年ほどで大変多くの治療薬が出てきました。皮膚の症状は大半の方でコントロール可能になりました。今、患者さんの乾癬はどんな状態でしょうか?患者さんのライフスタイルに応じて、適切な治療方針を選ぶための参考にしていただけると幸いです。治療がうまくいかないとき、マンネリ化したときに、次の一手を考えるヒントになってくれると思っております。このページでは、乾癬について保険適用のある治療について解説しています。乾癬には尋常性乾癬、乾癬性関節炎(関節症性乾癬)、乾癬性紅皮症、汎発性膿疱性乾癬、滴状乾癬の5種類があります。薬によって適用が異なりますので、ご注意ください。1.外用薬2.経口薬3.光線療法4.顆粒球吸着除去療法5.生物学的製剤まとめ参考文献1.外用薬2.経口薬3.光線療法4.顆粒球吸着除去療法5.生物学的製剤まとめ参考文献1.外用薬1-1.ステロイド外用薬ステロイド外用薬は皮膚疾患に幅広く使われていますが、もちろん乾癬にも有効です。今のところ、乾癬に一番多く使われているお薬です。多くの乾癬患者さんは、一度は塗ったことがあると思います。ステロイドは昔からある薬ですが、ここにも進歩があります。ステロイド外用薬の弱点は長期に使うと副作用が出てくる点なのですが、それを和らげるための手だてとしてシャンプーになっている薬が出ました。コムクロシャンプー(一般名:クロベタゾールプロピオン酸エステル)というもので、15分だけつける、という方法を用いて副作用を減らす工夫がなされています。また、シャンプーは薬を塗りにくい頭という場所の特性を生かした大変興味深い方法です。なお、ステロイドの飲み薬は乾癬には通常使用しません。長期的なステロイド外用薬の副作用を避けるためにも、ステロイド外用薬単体での長期的な治療は避ける必要があります。治療が長引いてきた場合は方法を見直しましょう。1-2.ビタミンD3外用薬乾癬患者さんの塗り薬で、一番大切なのはビタミンD3です。効果が出てくるまで時間がかかりますが、一度改善すると再発しにくいこと、長期間塗っても副作用が出にくいことが大切なポイントです。ただし、大量に塗ると血液中のカルシウムが増え過ぎて二日酔いのような症状(高カルシウム血症)が出る可能性がありますので、注意が必要です。皮膚の増殖を抑えるのが主な効き目ですが、IL-17という乾癬の皮膚症状に重要な役割を果たすタンパクを作りにくくすることにも役立ちます。1日2回塗ることが推奨されています。カルシポトリオール(商品名:ドボネックス):軟膏マキサカルシトール(商品名:オキサロール):軟膏、ローションタカルシトール(商品名:ボンアルファハイ):軟膏、ローションタカルシトール(商品名:ボンアルファ):軟膏、ローション、クリーム1-3.配合外用薬配合外用薬も、ここ10年の進歩の1つです。ステロイドとビタミンD3の2つを配合させた薬がデビューし、乾癬の治療に幅広く使われるようになりました。昔は、ステロイド外用薬とビタミンD3外用薬を薬局で混ぜてもらって処方されることが多かったと思います。お薬の性質上、単純に混ぜるだけでは効果が落ちてしまいます。そのため、ステロイドとビタミンD3の両方を使いたい場合は、重ねて塗るか、両方とも特殊な製法で配合した塗り薬を使う必要があります。乾癬の塗り薬が効かない人は、まず混ぜた薬を使っていないか確認する必要があります。国内では、現在2種類の配合外用薬が使用可能です。カルシポトリオール水和物/ベタメタゾンジプロピオン酸エステル(商品名:ドボベット):軟膏、ゲル、フォームゲル剤があるので頭皮の中に塗るのにも向いています。頭皮の中に塗る際は、意外にベタつくことに注意が必要です。また、フォーム剤もデビューしました。フォーム剤は塗りやすさから海外で多く使われているようです。上手に使わないと飛び散るので注意が必要です。マキサカルシトール/ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル(商品名:マーデュオックス):軟膏ページTOPへ2.経口薬2-1.アプレミラスト(商品名:オテズラ)PDE4(ホスホジエステラーゼ4)という酵素をブロックする薬です。頭痛、吐き気、下痢などの副作用が最初に出ることが多いので、お薬に体を慣らしていくためのスターターパックがあります。副作用は使っていくうちに慣れてくることが多いです。長期的に内服すると体重減少の副作用もあります。効果はゆっくり出てくるので、焦らず使用することが大切です。痒みや関節の痛みにも効果があります。注射薬のような劇的な効果ではないですが、症状が軽くなるので塗り薬を塗るのが面倒な方や小さなぶつぶつがたくさん出ている方には向いています。当院では小さなぶつぶつがたくさん出て塗りにくい方、頭のぶつぶつやかさぶたが治りにくい方、少し関節が痛い方、手足に分厚いかさぶたができて治りにくい方などに使っています。また、生物学的製剤の治療が終了した、もしくは何らかの理由で中断せざるを得なかった方にも使用できます。腎機能が低下している方は、半分の量で内服する必要があります。2-2.シクロスポリン(商品名:ネオーラル)乾癬が出てくるのに重要な働きをするT細胞の働きを抑える薬です。効果は比較的速やかで、量を多くすると生物学的製剤に近いくらいの効果を得ることもできます。ただし、血圧上昇などの副作用があることは注意が必要です。長期間内服すると、腎臓にダメージが起こります。海外のガイドラインでは1年程度の服用にとどめるように勧められています。これらの理由もあり、定期的な血液検査を必要としています。2-3.メトトレキサート(商品名:リウマトレックス)リウマチではよく使われている薬ではありますが、乾癬でも最近保険適用になりました。リウマトレックスだけがジェネリックも含め乾癬に保険適用となっています。日本皮膚科学会の生物学的製剤使用承認施設でのみ乾癬に使用できます。妊娠計画の少なくとも3ヵ月前から男性、女性とも内服を中断しなければなりません。腎機能障害のある方には使用できません。副作用対策として葉酸製剤を内服することがあります。2-4.エトレチナート(商品名:チガソン)エトレチナートはビタミンA誘導体であり、免疫を落とさないことにより光線療法との併用が可能です。表皮細胞の異常増殖を抑えてくれることで効果を発揮します。唇が荒れる、手足の皮がむける、皮膚が薄くなるなどの副作用があります。催奇形性といって、お腹の赤ちゃんに奇形を起こす副作用が報告されています。そのため女性は服用中止後2年間、男性は半年間避妊することが必要になります。2-5.ウパダシチニブ(商品名:リンヴォック)乾癬性関節炎(関節症性乾癬)に適応があります。JAK(ヤヌスキナーゼ)阻害薬という新しいメカニズムの治療薬です。もともと関節リウマチの治療薬として使用されていました。皮膚にも効果があります。15mg錠を1日1回内服します。帯状疱疹のリスクが高まることが知られていますので、この治療薬を検討されている方には事前に帯状疱疹ワクチンの接種を強くお勧めしています。深部静脈血栓症、肺塞栓症といった血栓のリスクが高まります。そのための注意が必要になります。また、生物学的製剤と同様に事前に結核の検査をする必要があります。2-6.デュークラバシチニブ(商品名:ソーティクツ)2022年11月デビューの内服薬です。既存治療で効果不十分な尋常性乾癬、乾癬性紅皮症、膿疱性乾癬に適応があります。比較的副作用の少ない薬ですが、TYK2という分子をブロックするJAK阻害薬というジャンルに入っているため、日本皮膚科学会の分子標的薬使用承認施設のみで投与可能となっています。成人にはデュークラバシチニブとして1回6mgを1日1回経口投与します。ページTOPへ3.光線療法治療の位置付けとしては、寛解導入、すなわち週2~3回程度の細かい間隔で照射し、ぶつぶつをできるだけ消失させるのを最初の目的としています。効果が出て皮膚症状が寛解したら間隔をのばしていく、ないしは中止します。ナローバンドUVBは発がん性が上昇するリスクは今のところ報告されていません。しかし、紫外線であるため、ダラダラと継続して無駄な照射をしないように気を付けることも大切です。ページTOPへ4.顆粒球吸着除去療法アダカラムという特殊な体外循環装置を使い、白血球の一部である、活性化した顆粒球を取り除く方法です。膿疱性乾癬に保険適用があります。薬剤の投与をしないため、妊娠中でも実施できます。ページTOPへ5.生物学的製剤乾癬の治療は、2010年に生物学的製剤が使えるようになってから劇的に変化しました。今までの治療で効果がなかった患者さんも、この薬の投与を開始してから皮膚や関節の症状と無縁の生活を送れるようになってきました。このように非常によく効く薬なのですが、大変高額です。そのため、高額療養費制度の理解や活用も大切になってきます。どんどん薬剤の開発が進み、10年で10種類以上のお薬が乾癬に対して使えるようになってきました。生物学的製剤が使えない方、注意が必要な方活動性の結核を含む重い感染症がある方は使用できませんので、事前にしっかりと検査を行い、必要な対処を行ってから投与する必要があります。また、悪性腫瘍のある方は投与禁忌ではありませんが、投与に当たっては(がん治療の)主治医としっかり相談・確認して慎重に進めなければなりません。現在、乾癬に使える生物学的製剤だけで、こんなにたくさんの種類があります(2023年9月現在)。画像を拡大する(各薬剤の電子添付文書を基にケアネット作成)5-1.TNF-α阻害薬TNF-αというタンパクをブロックする薬です。TNF-αは体のあちこちで作られ、乾癬を悪化させていきます。内臓脂肪からも作られます。メタボ気味の人は内臓脂肪からのTNF-αが増えてきます。すると、インスリン抵抗性といって血糖が上がりやすい状態になってしまうこともあります。これをブロックすることで、全身のさまざまな炎症を抑えてくれることも期待されています。また、関節炎にも効果が高いです。乾癬性関節炎(関節症性乾癬)の症状が進行すると骨びらんという骨へのダメージが来るのですが、TNF-α阻害薬は骨破壊を抑え、回復させてくれる効果が期待できます。インフリキシマブ(商品名:レミケード)唯一、これだけが点滴で投与する薬です。効果不十分時に増量ないし投与期間を短縮することが可能です。アダリムマブ(商品名:ヒュミラ)2週間に1回皮下注射する薬です。効果不十分時に増量することが可能です。シリンジだけでなく、ペン型の注射器具があるため自己注射が簡単に行えます。セルトリズマブ ペゴル(商品名:シムジア)この薬剤は製法が特殊であり、胎盤をお薬が通過しにくいことがわかっています。そのため唯一、妊娠中でも使える生物学的製剤です。TNF-α阻害薬が使えない人うっ血性心不全のある方多発性硬化症などの脱髄性疾患をお持ちの方TNF-α阻害薬はどんな人に向いている?乾癬性関節炎(関節症性乾癬)で、とくに関節の症状が強い人メタボ気味の人炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病)の既往がある人体重が重い人インフリキシマブは体重1kg当たり5mgの量を投与します。体重がかなり重い方は十分な薬剤量を行きわたらせるためにインフリキシマブを選択することがあります。5-2.IL-23阻害薬IL-12/23 p40阻害薬のウステキヌマブ(商品名:ステラーラ)が最初に出ました。IL-23はp40とp19というタンパクが合体しているものです。p40はIL-12という別のタンパクにも含まれている構造のため、IL-12/23 p40阻害薬は乾癬に関係のない細胞の働きも弱めてしまいます。そこで、ウステキヌマブ以降に出た次世代型のIL-23阻害薬は、p19をブロックすることでよりピンポイントな効き目を実現させています。すべての薬剤にある特長は、効果が持続しやすい、投与間隔が長いという点、副作用が少ないことです。ウステキヌマブ(商品名:ステラーラ)2011年から使用されている薬剤です。効果不十分な場合に増量できるのが特徴です。グセルクマブ(商品名:トレムフィア)掌蹠膿疱症にも適応があります。維持投与期は8週間に1回の投与を行います。リサンキズマブ(商品名:スキリージ)維持投与期は12週間に1回という長さが魅力です。チルドラキズマブ(商品名:イルミア)尋常性乾癬のみに適応があります。この薬剤も維持投与期は12週間に1回です。IL-23阻害薬はどんな人に向いている?治りにくい尋常性乾癬の方仕事が忙しくて通院が大変な方自分で注射を打つのが怖い方5-3.IL-17阻害薬IL-17とは乾癬を発症させるのに大変重要な役割を果たすタンパクです。IL-17にはIL-17AからFまでの6つのサブファミリーがあります。とくにIL-17ファミリーの中で乾癬の成り立ちに重要な役割を果たすタンパクが、IL-17AとIL-17Fです。治療効果が早く出ること、そして4種類の薬剤それぞれ非常に高い効果が得られることが特長です。セクキヌマブ、イキセキズマブ、ブロダルマブは維持投与期に自己注射をすることが可能です。セクキヌマブ(商品名:コセンティクス)最初の1ヵ月に毎週注射をすることで効果を早く出せることが特長です。完全ヒト型抗体であり、中和抗体が出にくいのが特徴です。成人には300mgを投与しますが、状況により減量が可能です。生物学的製剤の中で唯一小児にも適応があります。通常、6歳以上の小児にはセクキヌマブ(遺伝子組換え)として、体重50kg未満の患者には1回75mgを、体重50kg以上の患者には1回150mgを皮下投与します。なお、体重50kg以上の患者では、状態に応じて1回300mgを投与することができます。イキセキズマブ(商品名:トルツ)IL-17Aを阻害します。薬剤の特長として高い治療効果が早期から出てくることが多いです。効果がいまひとつだったり、安定しなかったりするとき、つまり使用開始後12週時点で効果不十分な場合には、投与期間を短縮することが可能です。乾癬の皮膚や関節症状が強い方、安定しない方に向いています。ブロダルマブ(商品名:ルミセフ)この薬剤は、乾癬の治療薬ではIL-17の受容体であるIL-17RAをブロックする薬です。そのため、IL-17A、IL-17A/F、IL-17C、IL-17E、IL-17Fが受容体に結合するのをブロックすることができます。皮膚症状に対しては、かなり有効性が期待できる薬剤です。ビメキズマブ(商品名:ビンゼレックス)IL-17A、IL-17Fをブロックできる薬剤です。尋常性乾癬、乾癬性紅皮症、膿疱性乾癬に適応があります。乾癬性関節炎(関節症性乾癬)には適応がありません。今までの治療でうまくいかなかった人でも鋭い効果を出すことが期待されています。IL-17阻害薬が使えない方炎症性腸疾患のある方IL-17は腸管のバリア機能を保つために重要な役割を果たします。炎症性腸疾患のある方は、IL-17をブロックすることで悪化する可能性があります。真菌感染症のある方IL-17は真菌(カビ)の防御に大切な働きをします。そのため、これらの感染症がある方は、IL-17をブロックすることで悪化させてしまう可能性があります。IL-17阻害薬はどんな人に向いている?皮膚の症状がかなり重度な方自分で注射を打てる方素早い効果を期待している方5-4.IL-36受容体阻害薬スペソリマブ(商品名:スペビゴ)抗IL-36受容体抗体であるスペソリマブが主成分です。膿疱性乾癬における急性症状の改善、という適応で保険収載されました。投与開始1週後に有意な膿疱の減少、12週後には84.4%の患者で膿疱が消失という劇的な効果を呈することが知られています。ページTOPへまとめ乾癬の治療薬、治療法はたくさんあることがおわかりいただけたと思います。乾癬の治療に絶対の正解はありませんが、いろいろな治し方を知り、治療方針を決めていく参考になればと思っております。乾癬の治療薬は、まだたくさん開発されています。内服薬(RORγtインバースアゴニスト)、外用薬(アリル炭化水素受容体モジュレーター)などが治験中です。今後も多くの治療選択肢ができることで、乾癬患者さんたちの未来は明るくなっていくのではと期待しています。1)森田明理ほか. 乾癬の光線療法ガイドライン. 日皮会誌. 2016;126:1239-1262.2)佐伯秀久ほか. 乾癬における生物学的製剤の使用ガイダンス(2022年版). 日皮会誌. 2022;132:2271-2296.3)各薬剤の電子添付文書

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ファイザーとモデルナ、高齢者により安全なワクチンはどっち?

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)mRNAワクチンの安全性と有効性は、モデルナ社製ワクチンでもファイザー社製ワクチンでも高いとされている。しかし、高齢者におけるワクチン接種後の有害事象の発生という点では、軍配はモデルナ社製ワクチンに上がるとする研究結果が報告された。米ブラウン大学公衆衛生大学院、老年学・ヘルスケア研究センターのDaniel Harris氏らが米国立老化研究所の資金提供を受けて実施した研究で、詳細は、「JAMA Network Open」に8月2日掲載された。 Harris氏は、「COVID-19にまつわる有害事象の発生リスクは、新型コロナウイルスに自然感染した場合の方が、mRNAワクチンを接種した場合よりもはるかに高い。しかし、世界人口の70%以上が何らかのCOVID-19ワクチンを接種した今となっては、ワクチンの供給についてさほど心配する必要はない」と説明する。そして、現時点で必要とされているのは、どのワクチンを接種するかを決める際の判断材料となる、ワクチンの安全性と有効性に関する詳細な情報だと強調する。 今回の研究でHarris氏らは、mRNAワクチンの1回目接種を終えた、66歳以上の出来高払い方式のメディケア受益者638万8,196人(平均年齢76.3歳、女性59.4%)を対象に、モデルナ社製ワクチンとファイザー社製ワクチン接種後の有害事象の発生について比較を行った。対象者の38.1%はプレフレイル(フレイル前段階)、6.0%はフレイルと判定されていた。また、339万704人がファイザー社製ワクチンを、299万7,492人がモデルナ社製ワクチンを接種していた。有害事象としては、深部静脈血栓症、肺塞栓症、血小板減少性紫斑病、ギラン・バレー症候群、急性心筋梗塞など12種類について検討した。 検討した12種類の有害事象の発生率は全て1%以下であり、最も高かったのは深部静脈血栓症の0.27%と肺塞栓症の0.23%であった。あらゆる因子を調整したモデルを用いた解析からは、モデルナ社製ワクチンの方が肺塞栓症リスクが4%低く、また、血栓塞栓症の複合(急性心筋梗塞、深部静脈血栓症、出血性脳卒中、非出血性脳卒中、肺塞栓症)のリスクも2%低いことが示された。モデルナ社製ワクチンはさらに、COVID-19と診断されるリスクがファイザー社製ワクチンよりも14%低かった。ただし、このようなリスク低下は、フレイルと判定された人では6%にとどまっていた。 Harris氏は、「この研究結果は、公衆衛生の専門家が、フレイルのある人も含めた高齢者にとって、どのmRNAワクチンが望ましいかを検討する上で役に立つ」と話す。同氏はまた、健康に慢性的な問題を抱えていることの多い高齢者は、臨床試験から除外されることが多いことを指摘し、「介護施設に入居している高齢者ではCOVID-19の重症化リスクが高いことを考えると、高齢者でのワクチンの安全性と有効性を調べることは極めて重要である」としている。 では、なぜモデルナ社製ワクチンの方が、わずかではあるが有害事象の発生リスクが低かったのか。Harris氏は、「安全性と有効性は相互に関連している。モデルナ社製ワクチンを接種した患者の方が、ファイザー社製ワクチンを接種した人よりも肺塞栓症やその他の有害事象のリスクがわずかに低かったのは、モデルナ社製ワクチンの方がCOVID-19罹患リスクを低減させる効果が高いことに起因する可能性がある」と話している。 ただし、この研究では、有害事象の発生リスクの違いが、安全性または有効性のどちらに起因するのかについて、結論付けることはできなかった。また、本研究で検討されたのはmRNAワクチンの初回投与後についてだけであり、研究グループは、さらなる研究が必要だとしている。

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静脈血栓塞栓症の治療に難渋した肺がんの一例(後編)【見落とさない!がんの心毒性】第24回

※本症例は、患者さんのプライバシーに配慮し一部改変を加えております。あくまで臨床医学教育の普及を目的とした情報提供であり、すべての症例が類似の症状経過を示すわけではありません。前回は、深部静脈血栓塞栓症に対する治療選択、がん関連血栓塞栓症のリスクとして注目すべき患者背景について解説を行いました。今回は同じ症例でのDVT治療継続における問題点を考えてみましょう。《今回の症例》年齢・性別30代・男性既往歴なし併存症健康診断で高血圧症、脂質異常症を指摘され経過観察喫煙歴なし現病歴発熱と咳嗽が出現し、かかりつけ医で吸入薬や経口ステロイド剤が処方されたが改善せず。腹痛が出現し、総合病院を紹介され受診した。胸部~骨盤部造影CTで右下葉に結節影と縦隔リンパ節腫大、肝臓に腫瘤影を認めた。肝生検の結果、原発性肺腺がんcT1cN3M1c(肝転移) stage IVB、ALK融合遺伝子陽性と診断した。右下肢の疼痛と浮腫があり下肢静脈エコーを実施したところ両側深部静脈血栓塞栓症(deep vein thrombosis:DVT)を認めた。肺がんに伴う咳嗽以外に呼吸器症状なし、胸部造影CTでも肺塞栓症(pulmonary embolism:PE)は認めなかった。体重65kg、肝・腎機能問題なし、血圧132/84 mmHg、脈拍数82回/min。肺がんに対する一次治療としてアレクチニブの投与を開始した。画像所見を図1に、採血データを表1に示す。(図1)中枢性DVT診断時の画像所見画像を拡大する(表1)診断時の血液検査所見画像を拡大するアレクチニブと直接作用型経口抗凝固薬(direct oral anticoagulant:DOAC)の内服を継続したが、6ヵ月後に心膜播種・胸膜播種の出現と肝転移・縦隔リンパ節転移の増悪を認めた。ALK阻害薬の効果持続が短期間であったことから、がん治療について、ALK阻害薬から細胞傷害性抗がん薬への変更を提案したが本人が希望しなかった。よって、ALK阻害薬をアレクチニブからロルラチニブへ変更した。深部静脈血栓症(Venous Thromboembolism:VTE)に関しては悪化を認めなかったためDOACは変更せず内服を継続した。その後、肺がんの病勢は小康状態を保っていたが、1ヵ月後に胸部レントゲン写真で左下肺野にすりガラス陰影が出現し、造影CTを実施したところ新規に左下葉肺動脈のPEを認めた(図2)。(図2)PE発症時の画像所見画像を拡大する【問題】DOAC内服中にVTEが増悪した場合、どのような対応を行うか?1)Farge D, et al. Lancet Oncol. 2022;23:e334-e347.講師紹介

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