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デュピルマブ、中等症~重症喘息児の急性増悪を抑制/NEJM

 コントロール不良の中等症~重症喘息児の治療において、標準治療にデュピルマブ(インターロイキン-4受容体のαサブユニットを遮断する完全ヒトモノクローナル抗体)を追加すると、標準治療単独と比較して、急性増悪の発生が減少し、肺機能や喘息コントロールが改善することが、米国・ヴァンダービルト大学医療センターのLeonard B. Bacharier氏らが行った「Liberty Asthma VOYAGE試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2021年12月9日号で報告された。追加効果を評価する国際的な第III相試験 研究グループは、コントロール不良の中等症~重症喘息の小児の治療におけるデュピルマブの有効性と安全性の評価を目的に、国際的な二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験を実施した(SanofiとRegeneron Pharmaceuticalsの助成による)。 対象は、年齢6~11歳で、Global Initiative for Asthma(GINA)ガイドラインに基づき、コントロール不良の中等症~重症の喘息と診断された患児であった。 被験者は、デュピルマブ(体重≦30kgは100mg、>30kgは200mg)またはプラセボを、2週ごとに52週間、皮下投与する群に無作為に割り付けられた。すべての患児が、一定の用量の標準的な基礎治療を継続した。 主要エンドポイントは、重度の急性増悪の年間発生率。副次エンドポイントは、12週時の気管支拡張薬投与前の予測1秒量の割合(ppFEV1)と、24週時の質問者記入式の喘息管理質問票7(ACQ-7-IA)のスコアのベースラインからの変化などであった。 エンドポイントは、次の2つの主要有効性解析集団で評価された。(1)喘息の表現型が2型炎症(ベースラインの血中好酸球数≧150/mm3または呼気中一酸化窒素濃度≧20ppb)の患者、(2)ベースラインの血中好酸球数≧300/mm3の患者。有害事象プロファイルは許容範囲 408例が登録され、デュピルマブ群に273例、プラセボ群に135例が割り付けられた。2型炎症の集団は、デュピルマブ群236例(平均年齢8.9±1.6歳、男児64.4%)、プラセボ群114例(9.0±1.6歳、68.4%)であり、好酸球数≧300/mm3の集団は、それぞれ175例(8.9±1.6歳、66.3%)および84例(9.0±1.5歳、69.0%)であった。追跡期間中央値は365日だった。 2型炎症の集団における重度急性増悪の補正後年間発生率は、デュピルマブ群が0.31(95%信頼区間[CI]:0.22~0.42)と、プラセボ群の0.75(0.54~1.03)に比べ有意に低かった(デュピルマブ群の相対リスク減少率:59.3%、95%CI:39.5~72.6、p<0.001)。また、好酸球数≧300/mm3の集団でも、重度急性増悪の補正後年間発生率はデュピルマブ群で良好であった(0.24[95%CI:0.16~0.35]vs.0.67[0.47~0.95]、デュピルマブ群の相対リスク減少率:64.7%、95%CI:43.8~77.8、p<0.001)。 ppFEV1のベースラインから12週までの変化の平均値(±SE)は、デュピルマブ群は10.5±1.01ポイントであり、プラセボ群の5.3±1.4ポイントに比し有意に大きく(平均群間差:5.2ポイント、95%CI:2.1~8.3、p<0.001)、肺機能の改善が認められた。この効果は、2型炎症の集団(プラセボ群との最小二乗平均の差:5.2、95%CI:2.1~8.3)と好酸球数≧300/mm3の集団(同5.3、1.8~8.9)でほぼ同程度であった。 24週時におけるACQ-7-IAスコア(減少幅が大きいほど喘息コントロールが良好)のベースラインからの変化の最小二乗平均(±SE)は、2型炎症の集団ではデュピルマブ群は-1.33±0.05、プラセボ群は-1.00±0.07(プラセボ群との最小二乗平均の差:-0.33、95%CI:-0.50~-0.16)、好酸球数≧300/mm3の集団ではそれぞれ-1.34±0.06および-0.88±0.09(同-0.46、-0.67~-0.26)であり、いずれもデュピルマブ群で有意に優れた(双方ともp<0.001)。 52週の試験期間中に、有害事象はデュピルマブ群83.0%、プラセボ群79.9%で発現した。頻度の高い有害事象は、鼻咽頭炎(デュピルマブ群18.5%、プラセボ群21.6%)、上気道感染症(12.9%、13.4%)、咽頭炎(8.9%、10.4%)、インフルエンザ(7.4%、9.0%)などであり、注射部位反応による紅斑がそれぞれ12.9%および9.7%で認められた。重篤な有害事象の発現率は両群で同程度だった(4.8%、4.5%)。喘息の増悪による入院が、デュピルマブ群の4例(1.5%)でみられた。 著者は、「この年齢層における生物学的製剤の上乗せ治療に関する無作為化試験はほとんど行われていないが、今回の研究で、デュピルマブは臨床的に意義のある肺機能の改善効果をもたらすとともに、バイオマーカー主導型のアプローチの効用性が明らかとなった」としている。

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中等症~重症喘息へのitepekimabの有効性と安全性~第II相試験/NEJM

 中等症~重症の喘息患者において、抗IL-33モノクローナル抗体itepekimabはプラセボと比較し、喘息コントロール喪失を示すイベントの発生率を低下させ、肺機能を改善することが、米国・National Jewish HealthのMichael E. Wechsler氏らによる第II相の多施設共同無作為化二重盲検プラセボ比較対照試験で示された。itepekimabは、上流のアラーミンであるIL-33を標的とした新規開発中のモノクローナル抗体である。これまで、喘息患者におけるitepekimab単剤療法、あるいはデュピルマブとの併用療法の有効性と安全性は不明であった。NEJM誌2021年10月28日号掲載の報告。itepekimab単剤またはデュピルマブとの併用をプラセボと比較 研究グループは、吸入ステロイド薬と長時間作用性β刺激薬(LABA)の投与を受けている中等症~重症の成人喘息患者296例を、itepekimab(300mg)群、itepekimab+デュピルマブ併用療法(いずれも300mg)群、デュピルマブ(300mg)群、プラセボ群に、1対1対1対1の割合に無作為に割り付け、いずれも2週ごとに12週間皮下投与した。無作為化後、4週時にLABAを中止し、6~9週に吸入ステロイドを漸減した。 主要評価項目は、喘息コントロール喪失(Loss of asthma control:LOAC)を示すイベント(朝の最大呼気流量が2日連続でベースラインから30%以上減少、電子日誌で報告された短時間作用性β2刺激薬の追加吸入が2日連続でベースラインから6回以上増加、全身性ステロイド投与を要した喘息増悪、直近の吸入ステロイドの投与量が4倍以上増加、または喘息による入院または救急外来受診)で、itepekimab群または併用療法群をプラセボ群と比較した。 副次評価項目およびその他の評価項目は、肺機能、喘息コントロール、QOL、タイプ2バイオマーカー、安全性などであった。itepekimab単剤で喘息コントロール喪失のイベント発生率が低下し、肺機能が改善 12週間におけるLOACのイベント発生率は、itepekimab群22%、併用療法群27%、デュピルマブ群19%、プラセボ群41%であった。プラセボ群に対するオッズ比は、itepekimab群が0.42(95%信頼区間[CI]:0.20~0.88、p=0.02)、併用療法群が0.52(0.26~1.06、p=0.07)、デュピルマブ群が0.33(0.15~0.70)であった。 気管支拡張薬使用前の1秒量は、プラセボ群と比較しitepekimab群ならびにデュピルマブ群では増加したが、併用療法群では増加しなかった。itepekimabの投与により、プラセボ群と比較し喘息コントロールとQOLを改善し、平均血中好酸球数が著明に減少した。 有害事象の発現率は、itepekimab群70%、併用療法群70%、デュピルマブ群66%、プラセボ群70%と、4つの治療群で類似していた。

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閉塞性細気管支炎〔BO:Bronchiolitis obliterans〕

1 疾患概要■ 概念・定義閉塞性細気管支炎(Bronchiolitis obliterans:BO)の用語は、1901年にLangeによって初めて記述されたが、1973年にGosinkらによって瘢痕性の細気管支閉塞を来す病態として疾患概念が確立された。さまざまな病態を背景に、細気管支粘膜下から周辺の線維化・瘢痕化により細気管支内腔が閉塞し、肺野全体に散在性に広がることにより呼吸不全を来す疾患である。■ 疫学閉塞性細気管支炎は、乳幼児から高齢者までの男女に発症する希少疾患である。世界的にも疫学調査研究はなく有病率は不明であるが、わが国における全国調査では、2003年では287例、2011年では477例と報告されている。■ 病因閉塞性細気管支炎の原因として、有毒ガスの吸入、マイコプラズマやウイルス感染、ならびに薬剤との関連が報告されている。また、膠原病や自己免疫疾患への合併の報告が多く、とくに慢性関節リウマチに多い。特殊な例として、肺内で増殖性に広がる神経内分泌細胞の過形成に合併するもの、植物摂取によるもの(アマメシバ)、腫瘍随伴性天疱瘡への合併などその原因は多様である。原因不明の特発性症例の報告はまれであるが存在する。 近年、骨髄移植や心肺移植が盛んになるにつれ閉塞性細気管支炎の合併が報告され、これらの事実から何らかの免疫学的異常を背景に発症するものと考えられる。とくに心肺移植患者の長期予後を左右する重要な因子である。また、造血幹細胞移植においても長期生存移植患者のQOLを著しく悪化させる合併症である。■ 症状1)無症状期病初期には自覚症状や他覚症状がなく、早期の病変をみつけるには、現時点では肺機能検査のみが唯一の手段である。1秒量(FEV1.0)の低下を認めることから、肺移植患者ではFEV1.0とFEF25-75の低下が重症度の指標とされている。2)自覚症状期病変が広がることにより、乾性咳嗽や労作時呼吸困難が出現する。また、気管支喘息のような強制呼気時の連続性副雑音の自覚症状が現れることがある。3)進行期病勢が進むと細気管支閉塞部位より中枢の気管支拡張や繰り返す気道感染、胸腔内圧の上昇による気胸・縦隔気腫などを合併し、呼吸不全が進行する。■ 予後肺病変は不可逆的変化であるため、一般的に予後不良である。しかし、その経過はさまざまであり、(1)急激に発症し、急速に進行するもの、(2)急激に発症し病初期は急速に進行するが、その後安定した状態で肺機能を保つもの、(3)ゆっくりと発症し、慢性の経過で進行していくものがある。肺移植後5年までの閉塞性細気管支炎合併率は50~60%と報告されており、閉塞性細気管支炎発症後の5年生存率は30~40%と不良である。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)自覚症状や身体所見から診断することは困難である。胸部単純X線画像は、ほぼ正常か、わずかに過膨張を示すに過ぎず、CTにおいても病勢が進行しなければ、異常と捉えられる所見は乏しい。高分解能CT(High-resolution CT:HRCT)の吸気相・呼気相での空気捕らえ込み現象(air-trapping)が診断の助けとなる。肺血流シンチにおける多発性陰影欠損を認めることがあり、肺血栓塞栓症との鑑別が問題になる。しかし、同時に肺換気シンチを実施することにより、肺血流シンチと同一部位の多発性陰影欠損を認める。閉塞性細気管支炎の確定診断には組織診断が必要であるが、肺機能が悪く、外科的肺生検に適さない症例も多い。また、病変が斑紋状分布であることや、病変部位を画像で捉える手段がないことから、不十分な標本のサンプリングや切り出しでは、外科的肺生検でも時に組織診断ができないことがあるので注意が必要である。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)閉塞性細気管支炎の確立された治療法はなく、治療の目標は、細気管支での炎症を抑制し安定した状態に保つことである。■ 薬物療法骨髄移植や心肺移植、膠原病などの免疫学的背景を有する閉塞性細気管支炎に対しては、ステロイド薬や免疫抑制剤による免疫抑制強化が行われる。呼吸不全に対しては、慢性閉塞性肺疾患(COPD)に準じた治療が選択され、長時間作用性抗コリン薬(LAMA)、長時間作用性β2刺激薬(LABA)、吸入ステロイド薬(ICS)などが、自覚症状に合わせて用いられる。■ 在宅酸素療法労作時の低酸素血症を来たす場合には、慢性呼吸不全に対する保険適用に準じて在宅酸素療法が導入される。■ 手術療法内科的な治療にもかかわらず低酸素血症、高炭酸ガス血症、繰り返す気胸、呼吸機能障害が進行する場合で、年齢が55歳未満(両肺移植)、精神的に安定しており、本人と家族を含め移植医療を支える環境と協力体制が期待できる場合に肺移植の適応を検討する。4 今後の展望閉塞性細気管支炎は希少疾患であるが、骨髄移植や心肺移植をはじめ、移植医療が盛んになるにつれて発症の増加が予想される。また、自己免疫疾患や膠原病への合併症例や特発性症例の診断を確立していく上でも、今後の臨床情報の集積と早期診断・治療・予防に関する前向き研究を期待したい。5 主たる診療科呼吸器内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 閉塞性細気管支炎(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)厚生労働科学研究費補助金難治性疾患政策研究事業(びまん性肺疾患に関する調査研究班)(医療従事者向けのまとまった情報)1)長谷川好規. 日内会誌. 2011;100:772-776.2)Barker AF, et al. N Engl J Med. 2014;370:1820-1828.3)厚生労働科学研究費補助金難治性疾患政策研究事業「びまん性肺疾患に関する調査研究班」編. 難治性びまん性肺疾患診療の手引き.南江堂:2017.公開履歴初回2021年11月2日

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COVID-19の積極的疫学調査の最終報告/感染研

 国立感染症研究所は、9月27日に同研究所のホームページにおいて、「新型コロナウイルス感染症における積極的疫学調査の結果について(最終報告)」を公開した。 この報告は、感染症法(第15条第1項)に基づいた積極的疫学調査で集約された、各自治体・医療機関から寄せられた新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の退院患者の情報に関する最終報告である。 なお、「本情報は統一的に収集されたものではなく、各医療機関の退院サマリーの様式によるため解釈には注意が必要」と解析の読み方に注意を喚起している。調査は一定の情報が得られたことにより5月25日をもって停止している。【集計データ概要】・COVID-19患者数:770例・入院開始日:2020年1月25日~2021年5月6日・入院期間の中央値:12.0日・性別:男性440例(57%)/女性330例(43%)・年齢:中央値51.0歳(四分位範囲30.0-68.5歳)・基礎疾患の有無:有した症例は270例(35%)【発症時の症状】 多い順に発熱404例(52%)、呼吸器症状224例(29%)、倦怠感108例(14%)、頭痛63例(8%)、消化器症状45例(6%)、鼻汁31例(4%)、味覚異常26例(3%)、嗅覚異常24例(3%)、関節痛24例(3%)、筋肉痛11例(1%)の順だった。 入院時の症状は、発熱288例(37%)、呼吸器症状199例(26%)、倦怠感83例(11%)、消化器症状58例(8%)、味覚異常45例(6%)、頭痛46例(6%)、嗅覚異常43例(6%)、鼻汁28例(4%)、関節痛19例(2%)、筋肉痛6例(<1%)、意識障害1例(<1%)の順だった。 そのほか入院中、29例(4%)において合併症の記載があり、その内訳(重複を含む)は、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)14例(2%)、急性腎障害7例(<1%)、人工呼吸器関連肺炎4例(<1%)、播種性血管内凝固症候群(DIC)3例(<1%)、多臓器不全2例(<1%)、誤嚥性肺炎2例(<1%)、カテーテル関連血流感染2例(<1%)、細菌性肺炎1例(<1%)であり、このうち19例が死亡した。【画像所見】(※サイト本文では所見画像もリンクされている) 所見画像は、2名の放射線科医師によって、2020年9月時点で集められた396例の読影が行われた。 入院時(入院日の前後3日を含む期間)に胸部単純X線写真が撮像された168症例のうち、異常所見の認められた79症例(47%)について主な所見を示す。 網状粒状影、心拡大、浸潤影は60歳以上に多く認められた。異常所見は両側(81%)、末梢肺野(75%)、下肺野優位(92%)に分布した。一方、入院時にCT画像が撮像された269例のうち、異常所見の認められた182例(68%)について、異常所見が5肺葉に及んだものが67例(37%)、陰影のサイズは3cmから肺葉の50%未満を占める場合が94例(52%)と最も多かった。また、異常陰影は、両側肺野145例(80%)、末梢性178例(98%)に認められ、とくに右下葉152例(84%)、左下葉149例(82%)と下葉優位であるものの、上葉にも分布していた。陰影所見として、すりガラス陰影182例(100%)、気管支透亮像(air bronchogram)98例(54%)、気管支拡張90例(49%)、胸膜下線状影80例(44%)が多く認められた。また、入院時に胸部単純X線写真およびCT画像ともに撮像されていた161例において、CT画像で異常陰影を認めた症例で、胸部単純X線写真で異常陰影を認めた症例の割合は、両側陰影58/90(64%)、右肺野陰影69/98(70%)、左肺野陰影61/98(62%)であった。CT画像で異常陰影が末梢にあった症例のうち、胸部単純X線写真でも末梢に異常陰影を認めた症例は56/102(55%)であった。また、CT画像で異常所見が確認されなかった症例のうち、胸部単純X線写真で異常所見ありと診断された症例はごくわずかであった。死亡例11例に限ると、両側陰影10/11(91%)、右肺野陰影10/11(91%)、左肺野陰影11/11(100%)、末梢肺野陰影8/11(73%)であった。また、入院時に胸部単純X線写真を撮像し、その後死亡した15例のうち10例(67%)に心拡大が認められた。 これらの結果から、入院時の胸部単純X線写真で認められた両側・末梢優位の異常陰影はCT所見とおおむね同様であった。退院時死亡した重症例に限定すると、胸部単純X線写真で認められた異常陰影は、CT所見とより一致する傾向が認められ、さらに死亡例の多くが胸部単純X線写真で心拡大を呈していた。【治療など】 全770例のうち、対症療法ではなくCOVID-19への直接的な効果を期待して231例(30%)で抗ウイルス薬投与などの治療介入が行われていた。うち、新型コロナウイルス感染症診療の手引き(第5版)に記載され、日本国内で承認されている医薬品としてレムデシビルは24例、ステロイドは20例が投与されていた。酸素投与は107例(14%)に実施され、その投与方法は、マスク55例、カニューラ12例、リザーバーマスク13例、非侵襲的陽圧換気(NPPV)2例、人工呼吸器22例、体外式膜型人工肺(ECMO)3例であった。

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重症化リスクのある外来COVID-19に対し吸入ステロイドであるブデソニドが症状回復期間を3日短縮(解説:田中希宇人氏、山口佳寿博氏)

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ではエビデンスの乏しかった2020年初頭からサイトカインストームによる影響がいわれていたことや、COVID-19の重症例のCT所見では気管支拡張を伴うびまん性すりガラス陰影、いわゆるDAD(diffuse alveolar damage)パターンを呈していたことから実臨床ではステロイドによる加療を行っていた。2020年7月に英国から報告された大規模多施設ランダム化オープンラベル試験である『RECOVERY試験』のpreliminary reportが報告されてからCOVID-19の治療として適切にステロイド治療が使用されることとなった。『RECOVERY試験』では、デキサメタゾン6mgを10日間投与した群が標準治療群と比較して試験登録後28日での死亡率を有意に減少(21.6% vs.24.6%)させた(Horby P, et al. N Engl J Med. 2021;384:693-704. )。とくに人工呼吸管理を要した症例でデキサメタゾン投与群の死亡率が29.0%と、対照群の死亡率40.7%と比較して高い効果を認めた。ただし試験登録時に酸素を必要としなかった群では予後改善効果が認められず、実際の現場では酸素投与が必要な「中等症II」以上のCOVID-19に対して、デキサメタゾン6mgあるいは同力価のステロイド加療を行っている。 また日本感染症学会に「COVID-19肺炎初期~中期にシクレソニド吸入を使用し改善した3例」のケースシリーズが報告されたことから、吸入ステロイドであるシクレソニド(商品名:オルベスコ®)がCOVID-19の肺障害に有効である可能性が期待され、COVID-19に対する吸入ステロイドが話題となった。シクレソニドはin vitroで抗ウイルス薬であるロピナビルと同等以上のウイルス増殖防止効果を示していたことからその効果は期待されていたが、前述のケースシリーズを受けて厚生労働科学研究として本邦で行われたCOVID-19に対するシクレソニド吸入の有効性および安全性を検討した多施設共同第II相試験である『RACCO試験』でその効果は否定的という結果だった(国立国際医療研究センター 吸入ステロイド薬シクレソニドのCOVID-19を対象とした特定臨床研究結果速報について. 2020年12月23日)。本試験は90例の肺炎のない軽症COVID-19症例に対して、シクレソニド吸入群41例と対症療法群48例に割り付け肺炎の増悪率を評価した研究であるが、シクレソニド吸入群の肺炎増悪率が39%であり、対症療法群の19%と比較しリスク差0.20、リスク比2.08と有意差をもってシクレソニド吸入群の肺炎増悪率が高かったと結論付けられた。以降、無症状や軽症のCOVID-19に対するシクレソニド吸入は『新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 第5.3版』においても推奨されていない。 その他の吸入ステロイド薬としては、本論評でも取り上げるブデソニド吸入薬(商品名:パルミコート®)のCOVID-19に対する有効性が示唆されている。英国のオックスフォードシャーで行われた多施設共同オープンラベル第II相試験『STOIC試験』では、酸素が不要で入院を必要としない軽症COVID-19症例を対象にブデソニド吸入の効果が検証された(Ramakrishnan S, et al. Lancet Respir Med. 2021;9:763-772. )。本研究ではper-protocol集団およびITT集団におけるCOVID-19による救急受診や入院、自己申告での症状の回復までの日数、解熱薬が必要な日数などが評価された。結果、ブデソニド吸入群が通常治療群と比較して有意差をもってCOVID-19関連受診を低下(per-protocol集団:1% vs.14%、ITT集団:3% vs.15%)、症状の回復までの日数の短縮(7日vs.8日)、解熱剤が必要な日数の割合の減少(27% vs.50%)を認める結果であった。 本論評で取り上げた英国のオックスフォード大学Yu氏らの論文『PRINCIPLE試験』では、65歳以上あるいは併存症のある50歳以上のCOVID-19疑いの非入院症例4,700例を対象に行われた。結果は吸入ステロイドであるブデソニド吸入の14日間の投与で回復までの期間を通常治療群と比較して2.94日短縮した、とのことであった。本研究は英国のプライマリケア施設で実施され、ブデソニド吸入群への割り付けは2020年11月27日~2021日3月31日に行われた。 4,700例の被検者は通常治療群1,988例、通常治療+ブデソニド吸入群1,073例、通常治療+その他の治療群1,639例にランダムに割り付けられた。ブデソニド吸入は800μgを1日2回吸入し、最大14日間投与するという治療で、喘息でいう高用量の吸入ステロイド用量で行われた。症状回復までの期間推定値は被検者の自己申告が採用されたが、通常治療群14.7日に対してブデソニド吸入群11.8日と2.94日の短縮効果(ハザード比1.21)を認めている。同時に評価された入院や死亡については通常治療群8.8%、ブデソニド吸入群6.8%と2ポイントの低下を認めたが、優越性閾値を満たさない結果であった。 今までの吸入ステロイドの研究では主に明らかな肺炎のない症例や外来で管理できる症例に限った報告がほとんどであり、前述の『STOIC試験』においても酸素化の保たれている症例が対照となっている。本研究ではCOVID-19の重症化リスクである高齢者や併存症を有する症例が対照となっており、高リスク群に対する効果が示されたことは大変期待できる結果であった考えることができる。ただしCOPDに対する吸入ステロイドは新型コロナウイルスが気道上皮に感染する際に必要となるACE2受容体の発現を減少させ、COVID-19の感染予防に効果を示す(Finney L, et al. J Allergy Clin Immunol. 2021;147:510-519. )ことがいわれており、本研究でもブデソニド吸入群に現喫煙者や過去喫煙者が46%含まれていることや、喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)症例が9%含まれていることは差し引いて考える必要がある。そして吸入薬であり「タービュヘイラー」というデバイスを用いてブデソニドを投与する必要がある特性上、呼吸促拍している症例や人工呼吸管理がなされている症例に対してはこの治療が困難であることは言うまでもない。 また心配事として、重症度の高いCOPD症例に対する吸入ステロイドは肺炎のリスクが高まるという報告がある(Vogelmeier C, et al. N Engl J Med. 2011;364:1093-1103.、Crim C, et al. Ann Am Thorac Soc. 2015;12:27-34. )ことである。この論評で取り上げたYu氏らの論文では重篤な有害事象としてブデソニド吸入群で肋骨骨折とアルコールによる膵炎によるものの2例が有害事象として報告されており治療薬とはまったく関係ないものとされ、肺炎リスクの上昇は取り上げられていない。ただもともと吸入ステロイド薬であるブデソニドは、気管支喘息や閉塞性換気障害の程度の強いCOPDや増悪を繰り返すCOPDに使用されうる薬剤であり、ステロイドの煩雑な使用は吸入剤とはいえ呼吸器内科医としては一抹の不安は拭うことができない。 心配事の2つ目として吸入薬の適切な使用やアドヒアランスの面が挙げられる。この『PRINCIPLE試験』で用いられているブデソニド吸入は800μgを1日2回吸入、最大14日間であるが、症状の乏しいCOVID-19症例に、しかも普段吸入薬を使用していない症例に対しての治療であるので実臨床で治療薬が適切に使用できるかは考えるところがある。COVID-19症例や発熱症例に対して対面で時間をかけて吸入指導を行うことは非現実的なので、紙面やデジタルデバイスでの吸入指導を理解できる症例に治療選択肢は限られることになるであろう。 最後に本研究が評価されて吸入ステロイドであるブデソニドがコロナの治療薬として承認されたとしても、その適正使用に関しては慎重に行うべきであると考える。日本感染症学会に前述のシクレソニド吸入のケースシリーズが報告された際も、一部メディアで大々的に紹介され、一時的に本邦でもCOVID-19の症例や発熱症例に幅広く処方された期間がある。その期間に薬局からシクレソニドがなくなり、以前から喘息の治療で使用していた患者に処方ができないケースが散見されたことは、多くの呼吸器内科医が実臨床で困惑されたはずである。COVID-19の治療選択肢として検討されることは重要であるが、本来吸入ステロイドを処方すべき気管支喘息や増悪を繰り返すCOPD症例に薬剤が行き渡らないことは絶対に避けなければいけない。

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日本人高齢者における慢性疾患治療薬の使用と新規抗認知症薬使用との関連

 新たに抗認知症薬が使用された高齢者において、慢性疾患に対する治療薬の使用状況がその後の認知症発症に影響を及ぼすかについて、東京都健康長寿医療センターの半田 宣弘氏らが、調査を行った。BMJ Open誌2021年7月15日号の報告。 首都圏の患者を対象としたレトロスペクティブコホート研究を実施した。対象は、2012年4月~6月(バックグラウンド期間)に抗認知症薬を使用していなかった柏市在住の77歳以上の高齢者4万2,024人。主要アウトカムは、2015年3月までのフォローアップ期間中の新規抗認知症薬の使用とした。対象者は、年齢別に77~81歳(1群)、82~86歳(2群)、87~91歳(3群)、92歳以上(4群)に分類した。年齢、性別に加え、バックグラウンド期間に使用していた14セットの薬剤を共変量とし、Cox比例ハザードモデルを用いて分析した。 主な結果は以下のとおり。・134万5,457人月のフォローアップ期間中(平均:32.0±7.5ヵ月、中央値:35ヵ月)に新たに抗認知症薬を使用した患者は、2,365人(5.6%)であった。・12ヵ月間の新規抗認知症薬使用率は、1.9±0.1%(1群:0.9±0.1%、2群:2.1±0.1%、3群:3.2±0.2%、4群:3.6±0.3%、p<0.0001)であった。・高齢および女性に加え、以下の薬剤の使用は、新規抗認知症薬使用と有意な関連が認められた。 ●スタチン(HR:0.82、95%CI:0.73~0.92、p=0.001) ●降圧薬(HR:0.80、95%CI:0.71~0.85、p<0.0001) ●非ステロイド性気管支拡張薬(HR:0.72、95%CI:0.58~0.88、p=0.002) ●抗うつ薬(HR:1.79、95%CI:1.47~2.18、p<0.0001) ●脳卒中後の治療薬(HR:1.45、95%CI:1.16~1.82、p=0.002) ●インスリン(HR:1.34、95%CI:1.01~1.78、p=0.046) ●抗腫瘍薬(HR:1.12、95%CI:1.01~1.24、p=0.035) 著者らは「本レトロスペクティブコホート研究により、高齢者における慢性疾患に対する治療薬と新規抗認知症薬使用との関連が特定された。これらの結果は、実臨床における認知症の臨床診断や医療政策を立案するうえで役立つであろう」としている。

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tezepelumab、コントロール不良の重症喘息患者に有効/NEJM

 コントロール不良の重症喘息成人/思春期患者の治療において、胸腺間質性リンパ球新生因子(TSLP)のヒト型モノクローナル抗体であるtezepelumabはプラセボと比較して、喘息の増悪が少なく、肺機能や喘息コントロール、健康関連QOLの改善効果が良好であることが、英国・Royal Brompton HospitalのAndrew Menzies-Gow氏らが実施した「NAVIGATOR試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2021年5月13日号で報告された。18ヵ国297施設の無作為化プラセボ対照第III相試験 本研究は、18ヵ国297施設が参加した二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2017年11月~2020年9月の期間に行われた(AstraZenecaとAmgenの助成による)。 対象は、年齢12~80歳で喘息と診断され、スクリーニングの12ヵ月以上前の期間に、中~高用量の吸入グルココルチコイドの投与を受け、インフォームドコンセントの3ヵ月以上前の期間に、経口グルココルチコイドの有無を問わず、少なくとも1剤の長期管理薬の投与を受けていた患者であった。 被験者は、tezepelumab(210mg)の4週ごとの皮下投与を52週間行う群またはプラセボ群に無作為に割り付けられた。主要エンドポイントは、52週時の喘息増悪の年間発生率とした。 1,061例が無作為化の対象となった。tezepelumab群に529例、プラセボ群に532例が割り付けられ、それぞれ528例(平均年齢±SD 49.9±16.3歳、男性36.6%)および531例(49.0±15.9歳、36.5%)が有効性と安全性の評価に含まれた。好酸球数低値例でも年間発生率を抑制 喘息増悪の年間発生率は、tezepelumab群が0.93(95%信頼区間[CI]:0.80~1.07)で、プラセボ群の2.10(1.84~2.39)に比べ良好であった(率比:0.44、95%CI:0.37~0.53、p<0.001)。また、ベースラインの血中好酸球数が300/μL未満の患者における喘息増悪の年間発生率は、tezepelumab群が1.02(95%CI:0.84~1.23)、プラセボ群は1.73(1.46~2.05)であり、有意な差が認められた(率比:0.59、95%CI:0.46~0.75、p<0.001)。 tezepelumab群はプラセボ群に比べ、ベースラインから52週までの気管支拡張薬投与前の1秒量(FEV1)の変化(臨床的に意義のある最小変化量[MCID]:0.1L)が大きく改善された(0.23L vs.0.09L、群間差:0.13L、95%CI:0.08~0.18、p<0.001)。 さらに、tezepelumab群では、6項目喘息コントロール質問票(ACQ-6、0[障害なし]~6[最大限の障害]点、MCID:0.5点)のスコアのベースラインからの変化(最小二乗平均値:-1.55点vs.-1.22点、最小二乗平均値の差:-0.33点、95%CI:-0.46~-0.20、p<0.001)が良好で、喘息QOL質問票(AQLQ、1[最大限の障害]~7[障害なし]点、MCID:0.5点)のスコアの変化(1.49点vs.1.15点、0.34点、0.20~0.47、p<0.001)、および喘息症状日誌(ASD、0[症状なし]~4[起こりうる最悪の症状]点、MCID:0.5点)の週平均スコアの変化(-0.71点vs.-0.59点、-0.12点、-0.19~-0.04、p=0.002)についても、大幅に改善された。 有害事象は、tezepelumab群が77.1%、プラセボ群は80.8%で発現し、重篤な有害事象はそれぞれ9.8%および13.7%に認められた。有害事象で試験薬の投与を中止した患者は、tezepelumab群が2.1%、プラセボ群は3.6%だった。頻度の高い有害事象は、鼻咽頭炎、上気道感染症、頭痛、喘息などであった。重症感染症(8.7% vs.8.7%)や注射部位反応(3.6% vs.2.6%)の頻度は両群で同程度であり、治療関連のアナフィラキシー反応やギランバレー症候群はみられなかった。 著者は、「血中好酸球数と呼気中一酸化窒素(FENO)、IgEの値が同時に低下したことから、本薬は複数の炎症経路を抑制することが示唆される。TSLPの阻害は、2型サイトカイン(IL-4、IL-5、IL-13)を標的とするよりも、広範な生理学的効果をもたらす可能性がある」としている。

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オニマツ現る! ぶった斬りダメ処方せん

あのDr.國松淳和がついに「コモン」を「治療」を語る!前代未聞!同一人物による共著!?頭痛やめまい、腹痛など7つの症状・テーマ別に國松とオニマツのコンビがガチレビュー。オニマツパートでは具体的なカルテ・処方せんを例に出して超毒舌の痛快ダメ出し!國松パートでは薬の選び方・使い方を丁寧に解説。症状ごとに処方の考えかたを楽しく習得できる。片頭痛にトリプタン? 咳に気管支拡張薬? そんな「常識」は打ち破れ! こんな医学書、ほかにない! 神出鬼没のオニマツが本当に"効く"一流臨床医の処方せん、教えます。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    オニマツ現る! ぶった斬りダメ処方せん定価3,300円(税込)判型A5判頁数210頁発行2021年4月著者國松 淳和、オニマツ・ザ・ショーグン電子版でご購入の場合はこちら

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「メジコン」の名称の由来は?【薬剤の意外な名称由来】第24回

第24回 「メジコン」の名称の由来は?販売名メジコン®錠15mgメジコン®散10%メジコン®配合シロップ一般名(和名[命名法])1)メジコン錠15mg・メジコン散10%デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物(JAN)[日局]2)メジコン配合シロップデキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物(JAN)[日局]クレゾールスルホン酸カリウム(JAN)[局外規]効能又は効果(1)メジコン錠15mg・メジコン散10% 1.下記疾患に伴う咳嗽感冒、急性気管支炎、慢性気管支炎、気管支拡張症、肺炎、肺結核、上気道炎(咽喉頭炎、 鼻カタル) 2.気管支造影術及び気管支鏡検査時の咳嗽(2)メジコン配合シロップ下記疾患に伴う咳嗽及び喀痰喀出困難急性気管支炎、慢性気管支炎、感冒・上気道炎、肺結核、百日咳用法及び用量(1)メジコン錠15mg・メジコン散10%通常、成人にはデキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物として1回15~30 mgを 1日1~4回経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。(2)メジコン配合シロップ通常、成人には1日18~24 mL、8~14歳1日9~16mL、3ヵ月~7歳1日3~8 mLを3~4回に分割経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。警告内容とその理由該当しない禁忌内容とその理由(原則禁忌を含む)【禁忌(次の患者には投与しないこと)】1.本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者2.MAO阻害剤投与中の患者※本内容は2020年11月4日時点で公開されているインタビューフォームを基に作成しています。※副作用などの最新の情報については、インタビューフォームまたは添付文書をご確認ください。1)2019年12月改訂(改訂第14版)医薬品インタビューフォーム「メジコン®錠15mg、メジコン®散10%、メジコン®配合シロップ」2)シオノギ製薬:製品情報一覧

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喘息治療で初のLABA/LAMA/ICS配合吸入薬「エナジア吸入用カプセル中用量/高用量」【下平博士のDIノート】第60回

喘息治療で初のLABA/LAMA/ICS配合吸入薬「エナジア吸入用カプセル中用量/高用量」今回は、喘息治療薬「インダカテロール酢酸塩/グリコピロニウム臭化物/モメタゾンフランカルボン酸エステル(商品名:エナジア吸入用カプセル中用量/高用量、製造販売元:ノバルティス ファーマ)」を紹介します。本剤は1カプセル中にLABA/LAMA/ICSの3成分を配合しており、1日1回1吸入で良好な喘息コントロールが得られることが期待されています。<効能・効果>本剤は、気管支喘息(吸入ステロイド剤[ICS]と長時間作用性吸入β2刺激薬[LABA]、長時間作用性吸入抗コリン薬[LAMA]の併用が必要な場合)の適応で、2020年6月29日に承認され、2020年8月26日より発売されています。<用法・用量>通常、成人には中用量(インダカテロールとして150μg、グリコピロニウムとして50μg、モメタゾンフランカルボン酸エステルとして80μg)を1日1回1カプセル、本剤専用の吸入用器具(ブリーズヘラー)を用いて吸入します。なお、症状に応じて高用量(インダカテロールとして150μg、グリコピロニウムとして50μg、モメタゾンフランカルボン酸エステルとして160μg)を1日1回1カプセル吸入することもできます。<安全性>国際共同QVM149B2302試験および国内B1304試験で本剤が投与された日本人被験者において、主な副作用として発声障害(8.7%)が認められました(承認時)。なお、重大な副作用として、アナフィラキシー、重篤な血清カリウム値の低下、心房細動(いずれも頻度不明)が報告されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、長時間作用する気管支拡張薬を2種類と、ステロイド薬を1種類含んだ吸入薬です。毎日同じ時間帯に規則正しく吸入することで、喘息の症状を改善します。2.専用の吸入用器具にカプセルを1つセットし、両脇の緑色のボタンを押してカプセルに穴を開けてから吸入します。うまく吸入できていたら、カラカラというカプセルの回転音が鳴ります。3.吸入が終わった後は、カプセルや粉末に触れないように気を付けて捨ててください。カプセル内に粉末が残っている場合は、再度吸入を行ってください。4.声枯れや感染症を予防するため、吸入後は必ず上を向いてうがいをして、うがいが困難な場合は口腔内をすすいでください。その際、口に含んだ水を飲み込まないように気を付けてください。5.吸入開始後に、動悸、手足の震え、尿が出にくいなどの症状が現れた場合は、すぐに受診してください。<Shimo's eyes>本剤は、喘息治療吸入薬として世界で初めてのLABA/LAMA/ICS配合製剤です。『喘息予防・管理ガイドライン2018』において、治療ステップ3~4に該当する中用量または高用量ICS/LABAによる治療でも喘息コントロールが不十分な場合は、LAMAを追加することが治療選択肢の1つとして推奨されています。しかし、これまで喘息の適応を有するLABA/LAMA/ICS配合薬は販売されていませんでした。LABA/ICS配合薬の多くが1日2回吸入ですが、本剤は1日1回でLABA/LAMA/ICSの3成分を一度に吸入できるため、服薬アドヒアランスの向上が期待できます。また、複数の製剤を組み合わせて使用するよりも1日薬価が下がり、経済的負担が軽減できるというメリットもあります。専用の吸入器である「ブリーズヘラー」は、喘息治療薬として初めて適用されました。本吸入器は最大吸気流量が低下している患者でも比較的使用しやすいデバイスです。しかし、カプセルをセットする手間がかかり、カプセルの誤飲に注意する必要があります。主な副作用は発声障害なので、使用後のうがいを徹底することも大切です。本剤は、同時に発売された喘息治療配合薬「インダカテロール酢酸塩/モメタゾンフランカルボン酸エステル(商品名:アテキュラ)」にLAMA(グリコピロニウム)を加えたものです。本剤とはモメタゾンの用量が不一致ですが、効果発現が期待できるモメタゾンの粒子量としては同程度です。薬剤師にとっても、多種多様の吸入薬のデバイス操作と指導法を覚えるのは大変なことですが、2020年度の調剤報酬改定で「吸入薬指導加算」が導入されたように、薬剤師の活躍が期待されている分野です。治療方針の決定とデバイス選択は医師が行い、吸入指導は薬剤師が重要な担い手となるという密な病薬連携が吸入指導の成功の鍵になると考えられます。薬局では、処方医に指導・経過のフィードバックを細やかに行い、しっかりと情報共有することで、患者さんのよりよい治療継続を目指しましょう。参考1)PMDA 添付文書 エナジア吸入用カプセル中用量/エナジア吸入用カプセル高用量

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経口DPP-1阻害薬による気管支拡張症の増悪抑制について(解説:小林英夫氏)-1298

 本論文は気管支拡張症への経口DPP-1(dipeptidyl peptidase 1)阻害薬であるbrensocatib投与により、喀痰中好中球エラスターゼ活性のベースライン低下や臨床アウトカム(増悪)改善が得られたとする第II相試験結果である。DPP-4阻害薬なら糖尿病治療薬として市販されており耳なじみもあろうが、DPP-1阻害薬となると情報が少ないのではないだろうか。詳細説明は割愛するが、好中球エラスターゼなどの好中球セリンプロテアーゼ活性に関与する酵素(DPP-1)を阻害することで、喀痰中の酵素量や活性を低下させえるとのことである。いずれにしろ今後の第III相試験結果を待ちたい。 さて、なぜに昔の疾患と思われている気管支拡張症の検討なのであろうか。まず、気管支拡張症とは疾患名としてよりも、気管支が拡張しているという形態診断名であり、1980年代まではいまや消滅した気管支造影検査によって診断されていた。現在は高分解能CTによって気管支径が併走する肺動脈径の100%以上に拡大しているときに診断される。原因としては、先天性、肺疾患罹患後、免疫不全、アレルギー性疾患などと多岐にわたるが、原因不明(特発性)が最多とされる。気管支拡張症が一時期忘れられていた理由の一部として、筆者はびまん性汎細気管支炎(DPB)へのマクロライド療法の関与を想定する。DPBでは中葉・舌区を中心に気管支拡張合併が通常であり、さらに1980年代にはびまん性気管支拡張の大半はDPB由来ではないかとの本邦論文も発表されている。そのDPBは日本発のマクロライド療法により著減し、最近では希少疾患になろうとしていることから、気管支拡張症も追随して減少したのではと思っていた。 ところが近年、軽症例を含めると、想像以上に多数の潜在症例が埋もれているのではないかと欧米から報告され、気管支拡張症の国際的ガイドラインが刊行されている(Polverino E, et al. Eur Respir J. 2007;50:1700629.)。加えてmicrobiome(体内常在細菌叢とその遺伝情報)が多彩な慢性炎症性疾患の成立に関与しているのではないかという世界的関心の中、気管支拡張症も気道に存在するmicrobiomeが要因の1つではないかと推定されている。健康人の気道からは細菌は検出されないと教えられた世代にとって驚きの知見である。加えて、急増する非結核性抗酸菌症や、関節リウマチなどの免疫性炎症性疾患による気管支拡張症も呼吸器領域では注目の病態である。日本での罹患頻度の統計はないが、関節リウマチを母集団とすると30%もの合併があるという報告も見られ、新たな方法論の発展により気管支拡張症が見直されつつある。

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内科医も知っておきたい小児感染症の特殊性/日本感染症学会

 2020年8月に現地とオンラインのハイブリッド方式で開催された日本感染症学会学術講演会において、名古屋大学医学部附属病院の手塚 宜行氏(中央感染制御部)が「内科医も知っておきたい小児感染症の特殊性」とのテーマで発表を行った。 手塚氏によると、小児感染症が成人と異なる事項は、以下の4点に集約される。1)年齢(月齢)によってかかる病気が変わる2)ウイルス感染症が多い 3)検体採取が困難なケースが多い4)病勢の進行が速い さらに小児感染症を診るときのチェックリストとして使う「R(A)IMS」という概念を紹介。これは以下の4つの視点から診療するという考え方だ。・R(Risk):基礎疾患の有無・I(Infected organ):感染臓器・M(Microbiology):原因微生物・S(Severity):重症度年齢月齢による違いは非常に大きい 小児感染症のリスク判断基準において、基礎疾患の有無が重要となるのは成人と同様だが、小児特有なのが月齢年齢差による違いだ。例として1998~2007年の米国コホート研究による細菌性髄膜炎の起炎菌についての研究では、新生児ではGBS(B群溶血性連鎖球菌)が多いが、1~3カ月児では腸内細菌科細菌が増え、3カ月~3歳児では肺炎球菌の割合が高くなり、3歳~10歳児以上では大半が肺炎球菌になるなど、年齢に応じて起炎菌の発生頻度が劇的に変化することを紹介した。また、「1年に2回以上肺炎にかかる」「気管支拡張症を発症する」など10のワーニングサインにあてはまるときは、原発性免疫不全症が隠れている可能性があるため、注意して診察する必要がある。本人からの病歴聴取が困難なケースも 感染臓器については、病歴聴取と身体診察から推定する流れは成人と変わらないものの、本人から病歴聴取できないことが多い点、家族や保育園からの感染が多くSick contactの把握が非常に重要となる点が成人と異なり、母子手帳から予防接種歴や育児環境情報を把握することが肝要とした。身体診察においても本人が症状を訴えられないことが多いため、保護者の協力を得ることが大切となり、小児に特徴的な部位である大泉門・小泉門などから重要な所見が得られることも多いという。 さらに、小児で見つけにくい感染臓器としては、尿路感染症、固形臓器の膿瘍(急性巣状性細菌性腎炎など)、関節炎・骨髄炎(とくに乳児)、髄膜炎・脳膿瘍(とくに新生児・乳児)、副鼻腔炎、潜在性菌血症などがあり、こうした疾患は兆候から見つけることは難しく、「見つけに行く」姿勢で診察することが重要とした。中でも潜在性菌血症は成人ではほぼ見られないが、結合型ワクチン導入前は、生後3~36カ月の小児における局所的異常のない原因不明の39度以上の発熱がある症例の約3~5%に認められており、無治療の場合は髄膜炎に至る可能性もある。ワクチン導入後の症例数は減っているものの、可能性は頭に入れておくべきという。ウイルス由来が大半だが、注意すべき細菌も 小児疾患はウイルス由来が多いが、日本がほかの先進国に比べてワクチン導入が遅れるという、いわゆる「ワクチンギャップ」は解消されつつあり、多くの小児感染症がワクチンによって感染・重症化予防できることが実証されつつある。小児感染症で注意すべき細菌は多くはないが、肺炎球菌とインフルエンザ菌は成人と比べて想定頻度が極めて高く、百日咳菌は新生児・乳児において重症化し、致死的な場合もあるので注意が必要だという。一方、クロストリディオイデス・ディフィシル菌は、小児の場合には保菌しても発症しないことが多く、多くの場合検査も不要だ。重症化はバイタルサインよりも「見た目」重視で 重症度に関しては、小児のバイタルサインは月齢年齢での変化が大きく、正常値の幅も大きいため、外観や皮膚の色、呼吸といった「見た目」を重視すべきという。 手塚氏は「感染症診療の原則である『感染臓器・原因微生物・抗菌薬をセットで考える』ことは小児でも成人でも同じ。あとはここで紹介した小児特有の事項さえ抑えておけば、内科の先生でも問題なく診察できるはず」とまとめた。

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経口可逆的DPP-1阻害薬brensocatibが気管支拡張症の増悪を抑制/NEJM

 気管支拡張症患者において、brensocatib投与による好中球セリンプロテアーゼ活性の低下は気管支拡張症の臨床アウトカムを改善することが、英国・Ninewells Hospital and Medical SchoolのJames D. Chalmers氏らが行った、投与期間24週の第II相無作為化プラセボ対照用量範囲試験で示された。気管支拡張症患者は、好中球性炎症に関連すると考えられる増悪を頻繁に起こす。好中球エラスターゼなどの好中球セリンプロテアーゼの活性と数量は、ベースラインで気管支拡張症患者の喀痰中で増加し、さらに増悪によって増大することが知られる。brensocatib(INS1007)は、開発中の経口可逆的ジペプチジルペプチダーゼ1(DPP-1)阻害薬で、DPP-1は好中球セリンプロテアーゼの活性に関与する酵素である。NEJM誌オンライン版2020年9月7日号掲載の報告。brensocatib治療群とプラセボ投与群で初回増悪までの期間を評価 試験は14ヵ国116施設で行われ、被験者は、前年に少なくとも2回の増悪を呈した18~85歳の気管支拡張症患者であった。 研究グループは被験者を、プラセボ投与群、brensocatib 10mg群、brensocatib 25mg群に1対1対1の割合で無作為に割り付け、1日1回、24週間投与した。 初回増悪までの期間(主要エンドポイント)、増悪頻度(副次エンドポイント)、喀痰中の好中球エラスターゼ活性、および安全性を評価した。brensocatib治療群は初回増悪までの期間を有意に延長した 256例が無作為化を受け、87例がプラセボを、82例がbrensocatib 10mgを、87例が同25 mgをそれぞれ投与された。 初回増悪までの期間の25パーセンタイル値は、プラセボ群67日、brensocatib 10mg群134日、同25mg群96日であった。brensocatib治療群は、プラセボ群と比較して初回増悪までの期間が有意に延長した(10mg群対プラセボのp=0.03、25mg群対プラセボのp=0.04)。 brensocatib群とプラセボ群を比較した増悪に関する補正後ハザード比は、10mg群で0.58(95%信頼区間[CI]:0.35~0.95、p=0.03)、25mg群で0.62(95%CI:0.38~0.99、p=0.046)であった。プラセボ群と比較した発生率比は、10mg群0.64(95%CI:0.42~0.98、p=0.04)、25mg群0.75(95%CI:0.50~1.13、p=0.17)であった。 24週の治療期間中、brensocatib群はいずれの用量群とも喀痰中の好中球エラスターゼ活性のベースラインからの低下が認められた。なお、とくに注目される歯および皮膚の有害事象の発生は、プラセボと比べてbrensocatibの両用量群で高かった。

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喘息治療薬2剤の製造販売承認を取得/ノバルティス ファーマ

 ノバルティス ファーマ株式会社は、6月29日、LABA/LAMA/ICS配合喘息治療剤インダカテロール酢酸塩/グリコピロニウム臭化物/モメタゾンフランカルボン酸エステル(商品名:エナジア)とLABA/ICS配合喘息治療剤インダカテロール酢酸塩/モメタゾンフランカルボン酸エステル(同:アテキュラ)の製造販売承認を取得したと発表した。1日1回で3成分を同時に吸入 喘息は世界中で3億5,800万人(うちわが国では約800万人が罹患)の患者が推定され、症状がコントロール不十分な場合、個人的、健康的、経済的負担の点から重大な問題が生じるリスクが高くなる。また、症状コントロールが不十分な喘息患者は、疾患の重症度を軽視または過小評価する傾向があり、増悪、入院または死亡のリスクが高くなるという報告もある。そのため、治療法が合わない、経口ステロイド剤の安全性、生物学的製剤の不適応など喘息に対するアンメット・メディカル・ニーズはまだ多く存在する。今回承認された両剤は、こうした臨床現場からの要望に応えたもので単一吸入器による1日1回投与で3成分を同時に吸入でき、十分な喘息コントロールが得られるものと期待されている。スマホと連動し、患者の服薬状態もチェックできる 今回発売されたエナジアは、長時間作用性β2刺激剤(以下「LABA」という)のインダカテロール酢酸塩、長時間作用性抗コリン剤(以下「LAMA」という)のグリコピロニウム臭化物、吸入ステロイド剤(以下「ICS」という)のモメタゾンフランカルボン酸エステルのLABA/LAMA/ICS配合剤で、専用の吸入器「ブリーズヘラー」による1日1回投与で気管支拡張作用および抗炎症作用を発揮する。中用量および高用量の2規格ともにインダカテロールは150μg、グリコピロニウムは50μgを含有し、モメタゾンフランカルボン酸エステルはそれぞれ80μgおよび160μgを含有する。同じくアテキュラも、ブリーズヘラーを用いて1日1回投与するLABA/ICS配合剤で、低用量、中用量および高用量の3規格ともにインダカテロールは150μgを含有し、モメタゾンフランカルボン酸エステルはそれぞれ80μg、160μg、320μgを含有する。 また、特色として、両剤は日本で初めて吸入器に装着してスマートフォンと連動させ、日々の服薬記録や服薬リマインダー機能を持つブリーズヘラー用センサーにより医師を通じて提供される仕組みが付き、アドヒアランス向上などに役立てることができる。エナジアの概要製品名:「エナジア」(吸入用カプセル中用量/高用量)一般名:インダカテロール酢酸塩/グリコピロニウム臭化物/モメタゾンフランカルボン酸エステル効能または効果:気管支喘息(吸入ステロイド剤、長時間作用性吸入β2刺激剤および長時間作用性吸入抗コリン剤の併用が必要な場合)用法および用量:通常、成人にはエナジア吸入用カプセル中用量1回1カプセル(インダカテロールとして150μg、グリコピロニウムとして50μgおよびモメタゾンフランカルボン酸エステルとして80μg)を1日1回本剤専用の吸入用器具を用いて吸入する。なお、症状に応じてエナジア吸入用カプセル高用量1回1カプセル(インダカテロールとして150μg、グリコピロニウムとして50μgおよびモメタゾンフランカルボン酸エステルとして160μg)を1日1回本剤専用の吸入用器具を用いて吸入する。承認取得日:2020年6月29日製造販売:ノバルティス ファーマ株式会社なお、薬価・発売日は未定。アテキュラの概要製品名:「アテキュラ」(吸入用カプセル低用量/中用量/高用量)一般名:インダカテロール酢酸塩/モメタゾンフランカルボン酸エステル効能または効果:気管支喘息(吸入ステロイド剤および長時間作用性吸入β2刺激剤の併用が必要な場合)用法および用量:通常、成人にはアテキュラ吸入用カプセル低用量1回1カプセル(インダカテロールとして150μgおよびモメタゾンフランカルボン酸エステルとして80μg)を1日1回本剤専用の吸入用器具を用いて吸入する。なお、症状に応じて以下用量の1回1カプセルを1日1回本剤専用の吸入用器具を用いて吸入する。・アテキュラ吸入用カプセル中用量(インダカテロールとして150μgおよびモメタゾンフランカルボン酸エステルとして160μg)・アテキュラ吸入用カプセル高用量(インダカテロールとして150μgおよびモメタゾンフランカルボン酸エステルとして320μg)承認取得日:2020年6月29日製造販売:ノバルティス ファーマ株式会社なお、薬価・発売日は未定。

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ディスアナプシスは高齢者のCOPDリスクを増大/JAMA

 気道サイズと肺胞の大きさが不均衡のディスアナプシスは、高齢者の慢性閉塞性肺疾患(COPD)と有意に関連しており、肺の大きさに比して下気道樹径が小さいほどCOPDのリスクが大きいことも示された。米国・コロンビア大学のBenjamin M. Smith氏らが、2件のコホート試験と1件のケースコントロール試験を基に、後ろ向きコホート試験を行い明らかにしたもので、結果を踏まえて著者は、「ディスアナプシスはCOPDのリスク因子と思われる」とまとめている。COPDの主要なリスクとして喫煙があるが、COPDリスクの大部分は不明のままである。研究グループは、高齢者において、CT画像診断で確認したディスアナプシスがCOPDの発生およびCOPDにおける肺機能低下と関連しているかを調べる検討を行った。JAMA誌2020年6月9日号掲載の報告。ディスアナプシスと、COPD発症率やCOPD患者の肺機能低下との関連を検証 研究グループは、2010~18年に米国6ヵ所で行われた「アテローム性動脈硬化症の多民族研究(MESA)肺試験」(被験者数2,531例)と、2010~18年にカナダ9ヵ所で行われた「カナダコホート閉塞性肺疾患」(CanCOLD、被験者数1,272例)の2件のコミュニティーベースのサンプル、および2011~16年に米国12ヵ所で行われたCOPDのケースコントロール試験「COPDの部分母集団と中期アウトカム尺度に関する試験」(SPIROMICS、被験者数2,726例)を基に、後ろ向きコホート試験を行い、CT画像診断で確認したディスアナプシスと、高齢者のCOPD発症率や、COPD患者における肺機能低下との関連を検証した。 ディスアナプシスは、標準的な解剖学的部位19ヵ所で測定した幾何学的平均気道内腔を、肺容積で割り定量化した(気道/肺比)。 主要アウトカムはCOPDの発症率で、気管支拡張薬投与後の1秒率(FEV1:FVC)が0.70未満で、呼吸症状を伴う状態と定義した。副次アウトカムは、肺機能の縦断的変化だった。 全分析結果について、人口統計学的要因や標準的COPDリスク因子(喫煙や受動喫煙、職業性・環境汚染、喘息)で補正を行った。気道/肺比の格差、FEV1低下幅には関連せず MESA肺試験被験者2,531例の平均(SD)年齢は69歳(9)で、女性は1,334例(52.7%)だった。COPD患者は237例(9.4%)で、平均(SD)気道/肺比は0.033(0.004)、平均(SD)FEV1低下幅は-33mL/年(31)だった。COPDを有していなかった被験者2,294例において、追跡期間中央値6.2年の間に新たにCOPDを発症したのは、98例(4.3%)だった。 気道/肺比が最高四分位群の被験者と比べて、最低四分位群のCOPD発症率は有意に高率だった(1,000人年当たり9.8 vs.1.2、率比[RR]:8.12、95%信頼区間[CI]:3.81~17.27、率差:8.6/1,000人年、95%CI:7.1~9.2、p<0.001)。一方で、FEV1低下幅について有意差はみられなかった(−31 vs.−33mL/年、群間差:2mL/年、95%CI:-2~5、p=0.30)。 CanCOLD試験被験者1,272例の平均(SD)年齢は67歳(10)、女性は564例(44.3%)だった。追跡期間中央値3.1年の間にCOPDを発症したのは、113/752例(15.0%)、平均(SD)FEV1低下幅は-36mL/年(75)だった。 気道/肺比が最高四分位群の被験者と比べて、最低四分位群のCOPD発症率は有意に高率だった(1,000人年当たり80.6 vs.24.2、RR:3.33、95%CI:1.89~5.85、率差:56.4/1,000人年、95%CI:38.0~66.8、p<0.001)。一方で、FEV1低下幅について有意差はみられなかった(-34 vs.-36mL/年、群間差:1mL/年、95%CI:-15~16、p=0.97)。 SPIROMICS被験者のうち、追跡期間中央値2.1年でCOPDを発症したのは1,206例で、平均(SD)年齢は65歳(8)、女性は542例(44.9%)だった。そのうち気道/肺比が最低四分位群の平均(SD)FEV1低下幅は-37mL/年(15)で、MESA肺試験被験者の低下と有意差はなかった(p=0.98)。一方で、最高四分位群の低下幅は、MESA肺試験被験者の低下幅と比べて有意に大きく、低下が急速に起きていたことが判明した(-55mL/年[SD 16]、群間差:-17mL/年、95%CI:-32~-3、p=0.004)。

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COVID-19のCT所見、919例の系統的レビュー

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のCT画像の特徴についてさまざまな論文が公表されているが、まとまった文献レビューはまだない。今回、南カリフォルニア大学ケック医科大学のSana Salehi氏らが、PubMed、Embase(Elsevier)、Google Scholar、世界保健機関のデータベースから系統的に文献を検索、レビューし、その結果を報告した。American Journal of Roentgenology誌オンライン版2020年3月14日号に掲載。 主なレビュー結果は以下のとおり。・COVID-19の初期のCT画像では、すりガラス陰影(GGO)が両側肺野、多葉性に末梢または後部に分布し、主に下葉に見られた。・初期のCT画像で、GGOに浸潤影が重なった非定型の所見が少数の患者(主に高齢者)に見られた。・まれに中隔肥厚、気管支拡張症、胸膜肥厚、胸膜下病変が見られた(主に後期)。・胸水、心膜液、リンパ節腫脹、cavitation、CT Halo sign、気胸が疾患の進行とともにまれに見られることがある。・中期のCT画像では、GGOの数・大きさの増加、GGOの多巣性浸潤影への進行、中隔肥厚、crazy-paving pattern(すりガラス陰影内部に網状影を伴う所見)が見られ、症状発現後10日前後でCT所見が最も重症となった。・COVID-19患者がICUに移る最も多い原因は急性呼吸窮迫症候群であり、この患者集団の主な死因である。・臨床的改善に相当する画像所見は通常、発症後14日目以降に見られ、浸潤影が徐々に解消され、病変や関わる葉の数が減少する。

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ビレーズトリ:待望のICS/LAMA/LABA 3剤合剤が登場

吸入ステロイド薬(ICS)、長時間作用型抗コリン薬(LAMA)、長時間作用型β2刺激薬(LABA)の3剤合剤である慢性閉塞性肺疾患(COPD)治療薬ビレーズトリが、世界に先駆けて日本で承認された。COPDによる死亡が増加する中で、ビレーズトリは救世主となるのか。注目の薬剤にスポットを当てる。COPDの病態に合わせたデバイス、エアロスフィアLAMA/LABAの合剤の登場、ICS/LABA製剤のCOPDへの適応拡大など、ここ数年で選択肢が広がったCOPD治療だが、増悪を繰り返す患者は依然として多い。その中でも治療が継続できない患者が目立つのは大きな課題だ。とくに、服薬アドヒアランスの低さが目立っており、「タバコは継続できるのに治療を継続できない」という患者もいる。そのような状況で、LAMA、LABAの2剤の気管支拡張薬と、抗炎症作用のあるICSとの合剤であるビレーズトリが登場した。これまで2つのデバイスを持ち運び、扱う必要があった患者において、ビレーズトリを用いることで1つのデバイスでコントロールが可能になり、持ち運びや吸入手技の習得といった側面からアドヒアランスの改善につながる可能性ある。また、ビレーズトリは「エアロスフィア」と呼ばれる、加圧式定量噴霧吸入器(pMDI)を使用している、いわゆるエアゾール製剤である。この「エアロスフィア」はCOPD患者が吸入しやすい、病態に合わせたデバイスとなっている。COPDは高齢の患者が多数を占め、呼吸機能が低下している場合も多い。そのためビレーズトリには、吸入時に吸気量をあまり必要とせず、吸入の容易なpMDIが採用されている。また、薬剤を運ぶ担体は、肺全体に薬剤を届けるのに至適な大きさである粒子径(約3μm)となっている。このように3剤合剤である点とデバイスが特徴的なビレーズトリだが、薬理学的にも大きな特長がある。服薬アドヒアランス向上も可能か。患者が実感できる効果の高さと効果発現の速さビレーズトリの有効性と安全性が、第III相国際共同試験であるKRONOS試験において検討された。この試験では、中等症から最重症のCOPD患者1,899例を対象に、ビレーズトリと、LAMA/LABAの2剤配合剤であるビベスピ、シムビコートおよびPT009(ブデソニド・ホルモテロールフマル酸塩の配合剤)において、有効性、安全性が比較されている。ビレーズトリは、呼吸機能改善に関する主要評価項目9項目中の8項目を達成したうえ、ビベスピとの比較で、増悪の発現率を52%有意に低下させた。ガイドラインでもCOPD治療における増悪抑制の重要性が強調されているため、ビレーズトリの増悪抑制効果は非常に重要な特長といえるだろう。また投与1日目における効果発現までの時間は、吸入後5分と非常に速い効果発現が示された。効果発現が速いという特長は、薬剤を吸入する患者も実感しやすいものであるので、アドヒアランス向上につながると考えられる。ビレーズトリによるCOPD治療の将来展望ビレーズトリは、簡便な服薬と、高い効果と速い効果発現によって、これまで治療が進まなかったCOPD患者の服薬アドヒアランスを向上させ、治療を継続させられる可能性を持った薬剤である。COPDは診断・治療においても、他の呼吸器疾患との鑑別が難しいなどの課題があるが、ビレーズトリを用いた簡便で、かつ効果の高い治療法が登場した今、呼吸器非専門のかかりつけ医でCOPDの診断・治療が可能になれば、COPDの死亡者数増加に歯止めをかけられるのではないだろうか。

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COPDの3成分配合吸入エアゾール薬「ビレーズトリエアロスフィア56吸入」【下平博士のDIノート】第37回

COPDの3成分配合吸入エアゾール薬「ビレーズトリエアロスフィア56吸入」今回は、COPD治療薬「ブデソニド/グリコピロニウム臭化物/ホルモテロールフマル酸塩水和物製剤(商品名:ビレーズトリエアロスフィア56吸入)」を紹介します。本剤は、吸入薬を複数使用してもコントロールが不十分なCOPD患者に対し、治療効果とアドヒアランス双方の改善が期待されています。<効能・効果>本剤は、慢性閉塞性肺疾患(慢性気管支炎、肺気腫)の諸症状の緩解(吸入ステロイド薬、長時間作用性吸入抗コリン薬および長時間作用性吸入β2刺激薬の併用が必要な場合)の適応で、2019年6月18日に承認され、2019年9月4日より発売されています。<用法・用量>通常、成人には、1回2吸入(ブデソニドとして320μg、グリコピロニウムとして14.4μg、ホルモテロールフマル酸塩として9.6μg)を1日2回吸入投与します。<副作用>第III相試験(KRONOS試験、PT010007試験、PT010008試験)の併合成績において、本剤が投与された639例のうち、臨床検査値異常を含む副作用が126例(19.7%)において認められました。主な副作用は、発声障害(3.1%)、筋痙縮、口腔カンジダ症(各1.4%)、上気道感染(1.3%)などでした。なお、重大な副作用として、心房細動(0.2%)、重篤な血清カリウム値の低下(頻度不明)が報告されています。<患者さんへの指導例>1.本剤は、気管支を広げるとともに炎症を抑えることで、呼吸を楽にして身体の活動性を改善するCOPDの治療薬です。2.1日2回、1回2吸入を、毎日なるべく同じ時間帯に、よく振ってから吸入してください。3.声枯れや感染症を予防するため、吸入後は必ず数回うがいをしてください。4.吸入器の小窓には、20きざみでおおよその残り回数が示されています。小窓の中央に「0」が表示され、それ以上進まなくなったら使用を中止して、新しいものに交換してください。開封するときは、キャップを外し、よく振って1度空噴霧する、という一連の操作を4回繰り返してください。5.口の渇き、目のピントが合いにくい、尿が出にくい、動悸、手足の震えなどの症状が現れた場合は、すぐに受診してください。6.COPDの治療では禁煙が大切なので、薬物治療とともに禁煙を徹底しましょう。7.週1回、本体から薬剤の入った缶と吸入口のキャップを外してプラスチック部分(アクチュエーター)をぬるま湯で洗浄し、洗った後はよく乾かしてください。<Shimo's eyes>本剤は、吸入ステロイド薬(ICS)、長時間作用性抗コリン薬(LAMA)、長時間作用性β2刺激薬(LABA)の3成分が配合されたCOPD治療薬です。3成分配合のCOPD治療薬として、フルチカゾンフランカルボン酸エステル/ウメクリジニウム臭化物/ビランテロールトリフェニル酢酸塩ドライパウダーインヘラー(商品名:テリルジー100エリプタ)に続く2剤目となります。COPDの15~20%は喘息が合併していると見込まれているため、LAMAやLABAなどの気管支拡張薬だけでは症状のコントロールが難しい患者さんが少なくありません。本剤は、ICS/LABAやLAMA/LABAで治療していても症状が残存している患者さん、時折抗菌薬や経口ステロイド薬が必要となる患者さんなどで切り替えて使用することが想定されます。本剤はLAMA+LABA+ICSのトリプルセラピーを1剤で行うことができますが、3成分それぞれの薬剤に関する副作用には注意する必要があります。患者さんへ確認するポイントとしては、LAMAによる口渇、視調節障害、排尿困難、LABAによる不整脈、頭痛、手足の震え、ICSによる口腔カンジダ症などが挙げられます。本剤は、デバイスに世界で初めて「エアロスフィア」というpMDI(加圧噴霧式定量吸入器)が採用され、薬剤送達技術を駆使して調製された多孔性粒子が3種の薬剤を肺の末梢まで届けることが期待されています。pMDIなので、吸気力が低下している場合でも少ない負荷で吸入できますが、ボンベを押す力が弱い患者さんには吸入補助器具(プッシュサポーター)、ボンベを押すタイミングと吸入の同調が難しい患者さんにはスペーサー(エアロチャンバープラスなど)の使用を勧めましょう。COPD患者さんは、喫煙や加齢に伴う併存疾患の治療を並行していることが多く、アドヒアランスを向上させて治療を継続させることが重要です。COPD治療に、本剤のような3成分配合吸入薬を選択することで、患者さんの負担を増やさずに症状の改善およびアドヒアランスの向上を目指すことができるでしょう。

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アナフィラキシーには周囲の理解が必要

 2019年8月21日、マイランEPD合同会社は、9月1日の「防災の日」を前に「災害時の食物アレルギー対策とは」をテーマにしたアナフィラキシー啓発のメディアセミナーを開催した。セミナーでは、アナフィラキシー症状についての講演のほか、患児の親の声も紹介された。アナフィラキシーの原因、小児は食物、成人は昆虫 セミナーでは、佐藤さくら氏(国立病院機構相模原病院 臨床研究センター 病態総合研究部)を講師に迎え、「アナフィラキシーの基礎知識とガイドラインに基づく正しい治療法について」をテーマに講演を行った。 アナフィラキシーとは「短時間に全身に現れる激しい急性のアレルギー反応」とされ、その原因として抗菌薬やNSAIDsなどの医薬品、手術関連、ラテックス、昆虫、食物などがある。とくに小児では食物が本症の一番大きな誘因となる(65%)のに対し、成人では昆虫刺傷が一番大きな誘因となる(48%)というデータが欧州では報告されている1)。 日本アレルギー学会が行った「全国アナフィラキシー症例集積研究」(n=767、平均年齢6歳[3~21歳])によれば、本症の誘因は食物(68.1%)、医薬品(11.6%)、食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FDEIA:5.2%)の順で多く、誘因が食物の場合、牛乳(21.5%)、鶏卵(19.7%)、小麦(12.5%)の順で発生があったと報告されている。また、アナフィラキシーショックによる死亡は毎年60例前後(多い年は70例超)が報告されている。必要ならば早くアドレナリン筋注を 診断として次の3項目のいずれかに該当すればアナフィラキシーと診断する。1)皮膚症状(全身の発疹、瘙痒または紅斑)または粘膜症状(口唇・舌・口蓋垂の腫脹など)のいずれかが存在し、急速(数分~数時間以内)発現する症状で、かつ呼吸症状(呼吸困難、喘鳴など)、循環器症状(血圧低下、意識障害)の少なくとも1つを伴う2)一般的にアレルゲンとなりうるものへの曝露後、急速に(数分~数時間以内)発現する皮膚・粘膜症状(全身の発疹、瘙痒、紅潮、浮腫)、呼吸器症状(呼吸困難、喘鳴など)、循環器症状(血圧低下、意識障害)、持続する消化器症状(腹部疝痛、嘔吐)のうち、2つ以上を伴う3)当該患者におけるアレルゲンへの曝露後の急速な(数分~数時間以内)な血圧低下。具体的には、収縮期血圧の場合、平常時血圧の70%未満、または生後1~11ヵ月まで(<70mmHg)、1~10歳(<70mmHg+2×年齢)、11歳~成人(<90mmHg) 以上の診断のあとグレード1(軽症)、2(中等症)、3(重症)の重症度を評価2)し、それぞれのグレードに応じた治療が行われる。 グレード1(軽症)であれば抗ヒスタミン薬やβ2アドレナリン受容体刺激薬、ステロイド薬が選択されるが、即効性はない。グレード3(重症)ならアドレナリン筋肉注射(商品名:エピペンなど)の適応となる(ただしグレード2[中等症]でも過去に重篤な本症の既往がある、病状進行が激烈な場合、気管支拡張薬吸入で改善しない呼吸症状では適応となる)。 佐藤氏は、本症の診療では「初期対応が大切で、軽いうちから治療していくことが重要。エピペンの使用率が低く、使用に対する教育・啓発も必要」と説明を行った。災害時の食物アレルギーのリスクを最低限に抑えるために つぎに大規模災害とアナフィラキシーについて触れ、とくに食物アレルギー患者への対応が重要と指摘した。 災害時には、患者の誤食リスクの上昇、アレルギー対応食品の入手困難、症状発症時の治療薬不足、周囲の病気への理解不足などリスクが生じるため、さまざまな対応が必要となる。現在は、「避難所における良好な生活環境の確保に向けた取組指針」(平成25年8月内閣府作成)などが決められ、避難所にはアルファ米や特別ミルクなどの備蓄と配給上の配慮などが決められている。その一方で、熊本地震でのアレルギー対応食への取り組みについて自治体に聞いたアンケートでは、「十分取り組まれていた」がわずか3.1%など現場への浸透に課題があることも紹介された。 災害時の食物によるアナフィラキシーへの備えとして、地域公的機関での備蓄、ネットワーク作り、病気への理解、アレルギー情報の携帯、発症時の対応、炊き出し原材料の確認、アレルギー表示の確認、自宅での備蓄が必要であり、こうした情報は「アレルギーポータル」などのwebサイト、自治体の各種配布物に記されている。おわりに「こうした媒体で医療者も患者もよく学び、病気への理解を深めることが大切」と語り、佐藤氏は講演を終えた。 続いて、患者会代表の田野 成美氏が、実子の闘病経験を語り、親の目の届かない学校生活での不安や周囲の理解不足による発症の危険性、氾濫する診療情報などの問題点を指摘した。■参考「アレルギーポータル」(日本アレルギー学会)「アナフィラキシーってなあに.jp」(マイランEPD合同会社)

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国内初のICS/LAMA/LABAが1剤に配合されたCOPD治療薬「テリルジー100エリプタ14吸入用/30吸入用」【下平博士のDIノート】第27回

国内初のICS/LAMA/LABAが1剤に配合されたCOPD治療薬「テリルジー100エリプタ14吸入用/30吸入用」今回は、3成分配合の慢性閉塞性肺疾患(COPD)治療薬「フルチカゾンフランカルボン酸エステル/ウメクリジニウム臭化物/ビランテロールトリフェニル酢酸塩ドライパウダーインヘラー(商品名:テリルジー100エリプタ14吸入用/30吸入用)」を紹介します。本剤は、COPD患者の呼吸困難などの諸症状を1日1回の吸入で改善し、QOLの改善にも寄与することが期待されています。<効能・効果>本剤は、COPD(慢性気管支炎・肺気腫)における諸症状の緩解の適応で、2019年3月26日に承認され、2019年5月22日より発売されています。なお、本剤の使用は、吸入ステロイド薬(ICS)、長時間作用性抗コリン薬(LAMA)および長時間作用性β2刺激薬(LABA)の併用が必要な場合に限られます。<用法・用量>通常、成人には本剤1吸入(フルチカゾンフランカルボン酸エステルとして100μg、ウメクリジニウムとして62.5μgおよびビランテロールとして25μg)を1日1回投与します。<副作用>第III相国際共同試験(投与期間:52週)において、本剤が投与された総症例4,151例中485例(11.7%)に臨床検査値異常を含む副作用が報告されています。主なものは、口腔カンジダ症101例(2.4%)、肺炎45例(1.1%)、発声障害26例(0.6%)でした(承認時)。重大な副作用としてアナフィラキシー反応(頻度不明)、肺炎(1.1%)、心房細動(0.1%)が認められています。なお、ICSを長期で使用した場合、肺炎のリスクが高まる懸念があるため注意が必要です。<患者さんへの指導例>1.本剤は、気管支を拡張させる薬2種類と、炎症を抑える薬の計3種類が配合されているCOPDの治療薬です。2.1日1回の吸入で、持続的に気管支を広げるとともに炎症を抑えることで、呼吸を楽にして身体の活動性を改善します。3.毎日なるべく同じ時間帯に吸入し、1日1回を超えて吸入しないようにしてください。4.声がれや感染症を予防するため、吸入後はうがいをしてください。5.口の渇き、目のピントが合いにくい、尿が出にくい、動悸、手足の震えなどの症状が現れたらご連絡ください。6.COPDの治療では禁煙が大切なので、薬物治療と共に禁煙を徹底し、継続しましょう。7.薬のカバーを開けると吸入の準備が完了し、カウンターが減ります。必要以上に開け閉めすると、必要回数が吸入できなくなるため、吸入時以外はカバーを開けないでください。<Shimo's eyes>本剤は、国内初の3成分(吸入ステロイド薬[ICS]、長時間作用性抗コリン薬[LAMA]、長時間作用性β2刺激薬[LABA])が配合されたCOPD治療薬です。『COPD診断と治療のためのガイドライン2018[第5版]』において、安定期COPDの維持療法としては、気管支拡張薬のLAMA(あるいはLABA)を単剤で用い、効果不十分な場合はLAMA+LABAの併用が推奨されています。しかし、COPD患者の15~20%は喘息が合併していると見込まれており、その場合はICSを併用することとされています。なお、海外で報告されているGOLD2019レポートでは、LAMAもしくはLABAの単剤療法またはLAMA+LABAの併用療法を行っても増悪を繰り返す患者には、ICSの追加が有効な例もあるとされています。本剤は、COPD患者に対するLAMA+LABA+ICSのトリプルセラピーを1剤で行うことができますが、3成分それぞれの薬剤に関する副作用に注意する必要があります。患者さんへ確認するポイントとしては、LAMAによる口渇、視調節障害、排尿困難、LABAによる不整脈、頭痛、手足の震え、ICSによる口腔カンジダ症などが挙げられます。とくに、過量投与時には不整脈、心停止などの重篤な副作用が発現する恐れがあるため、服薬指導では吸入を忘れたときの対応などと併せて、1日に1回を超えて使用しないよう注意を促しましょう。COPD患者は、喫煙や加齢に伴う併存症に対する治療を行っていることが多く、安定期ではアドヒアランスが低下することがあります。COPDに加えて喘息の治療が必要な場合に、本剤のような3成分配合吸入薬を選択することで、症状の改善およびアドヒアランスの向上が期待できます。

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