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症例発見法によるCOPD・喘息の早期診断、医療利用の低減に/NEJM

 未診断の慢性閉塞性肺疾患(COPD)または喘息の成人を特定するための症例発見法(case-finding method)によって呼吸器専門医の指示による治療を受けた患者は、通常治療の患者と比較して、その後の呼吸器疾患による医療利用が少なくなることが、カナダ・オタワ大学のShawn D. Aaron氏らUCAP Investigatorsが実施した「UCAP試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2024年5月19日号に掲載された。カナダ17施設の無作為化対照比較試験 研究グループは、未診断のCOPDまたは喘息を有する患者では、症例発見法を用いた早期の診断と治療により、呼吸器疾患に対する医療利用が低減し、健康アウトカムが改善するかを検証する目的で無作為化対照比較試験を実施し、2017年6月~2023年1月にカナダの17施設で参加者を登録した(カナダ保健研究機構[CIHR]の助成を受けた)。 症例発見法により、肺疾患の診断を受けていないが呼吸器症状を呈する成人を特定した。被験者を、ガイドラインに基づく治療を開始するよう指示された呼吸器専門医と喘息/COPD指導員による評価を受ける群(介入群)、またはプライマリケア医による通常治療を受ける群(通常治療群)に無作為に割り付けた。 主要アウトカムは、呼吸器疾患に対する参加者の自主的な医療利用の年間発生率とした。SGRQ、CAT、FEV1も良好 受診した3万8,353例中595例で未診断のCOPDまたは喘息を発見し、このうち508例を無作為化の対象とした。253例が介入群(平均年齢63.4[SD 13.4]歳、男性64%)、255例が通常治療群(62.8[13.6]歳、58%)に割り付けられた。 主要アウトカムのイベントの年間発生率は、通常治療群に比べ介入群で有意に低かった(0.53件vs.1.12件/人年、発生率比:0.48、95%信頼区間[CI]:0.36~0.63、p<0.001)。 St. George Respiratory Questionnaire(SGRQ、0~100点、点数が低いほど健康状態が良好)で評価した疾患特異的QOLは、通常治療群ではベースラインから6.8点低下したのに対し、介入群では10.2点の低下と良好であった(群間差:-3.5点、95%CI:-6.0~-0.9)。 COPD評価テスト(CAT、0~40点、点数が低いほど健康状態が良好)で評価した症状負担は、通常治療群ではベースラインから2.6点低下したのに比べ、介入群では3.8点低下し良好であった(群間差:-1.3点、95%CI:-2.4~-0.1)。 また、1秒量(FEV1)は、通常治療群ではベースラインから22mL増加したのに対し、介入群では119mLの増加であった(群間差:94mL、95%CI:50~138)。有害事象は両群で同程度 有害事象の発生は両群で同程度であり、介入群では21例に24件、通常治療群では14例に16件発生した。めまいや失神(スパイロメトリー検査による)、筋肉のけいれん(処方された呼吸器疾患治療薬による可能性がある)に関連するものが多かった。入院に至る重篤な有害事象は、介入群で5件、通常治療群で7件報告された。12ヵ月の追跡期間中に、介入群で2例(心停止、肺がん)、通常治療群で2例(心停止、肝不全)の死亡が発生した。 著者は、「この症例発見法は、多くの医療システムに導入可能であり、未診断のCOPDまたは喘息患者における診断と治療の改善に寄与する可能性がある」としている。

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島根県の呼吸器診療の未来を支えるクラウドファンディングを開始/島根大学

 島根大学医学部 呼吸器内科が中心となり「島根県の呼吸器診療の未来を支えるクラウドファンディング」を開始した。進む高齢化、不足する呼吸器専門医 島根は全国的にも高齢化が進んでいる県であり、令和4年の高齢化率は34.7%で全国第7位である1)。高齢者は免疫機能が低下していることもあり、感染症やがんなど呼吸器疾患の発症率も高い。それに対して、島根では全県的に呼吸器専門医が不足しており、地域によっては専門医がいないという深刻な状況だ。このまま地域の呼吸器専門医が不在の状態が続くと呼吸器診療体制が形成できず、早期診断、疾患予防の輪が広がらないとされる。 そのような中、島根大学医学部の呼吸器内科教授である礒部 威氏をプロジェクトリーダーとして、「呼吸器専門医の育成」「非専門医師の呼吸器疾患の知識向上」「一般の方むけの啓発」をサポートするクラウドファンディングがスタートした。難易度高い呼吸器専門メディカルスタッフの育成 高齢者は複数の慢性疾患を抱えていることが多い。高齢者が多い島根では「内科全般の知識を有する」呼吸器専門医の育成が重要な課題だ。また、呼吸器専門医の診療範囲は、感染症、がん、気管支喘息、睡眠時無呼吸症候群など多岐に及ぶ。専門性の維持・向上には、多くの専門資格の取得を目指してキャリアを積んでいく必要がある。 そのため、呼吸器専門医を目指すには、研修や学会への参加、自己研鑽が必要となる。医師の金銭的、時間的な負担は大きい。クラウドファンディングの資金で、県内の呼吸器研修医がアクセス可能なITを活用した講習会セミナーを開く予定だ。非専門医への呼吸器疾患を啓発して診療連携 呼吸器疾患は早期発見が重要となる。そのためには呼吸器専門医と非専門医の連携が重要である。非専門医の最新の呼吸器疾患の知識の補充は欠かせない。とはいえ、多忙な診療の中、専門外の知識を学習するのは容易ではない。クラウドファンディングで、非専門医が呼吸器疾患の情報をキャッチアップできるHPを作成する。呼吸器疾患の予防にカギとなる一般大衆の知識向上 呼吸器疾患は禁煙、ワクチン、検診など予防が効果的であり、一般大衆の疾患知識は予防に重要である。しかし、実際は呼吸器疾患やその予防について学ぶ機会はほとんどない。 また、高齢化が進む島根県においては、適正な医療を提供しQOLを向上するため「高齢者機能評価」の普及が重要である。 一般大衆の呼吸器疾患の予防医学や高齢者機能評価の必要性について知識を得る機会を増やすため、市民公開講座などの啓発活動もクラウドファンディングで集まった資金を使って積極的に行っていきたいという。・目標金額:400万円・資金使途:生涯教育支援費用、広報用HP作成、Zoom使用料 、啓発活動、事務局人件費・運営費、クラウドファンディング手数料 など

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食物アレルギーに対するオマリズマブ(解説:田中希宇人氏/山口佳寿博氏)

 食物アレルギーは食べ物に含まれるタンパク質がアレルゲンとなり、抗原特異的な免疫学的機序を介して生体にとって不利益な症状が惹起される現象と定義されている。食物アレルギーに関わるアレルゲンは、食べ物以外のこともあり、その侵入経路もさまざまであることが知られている。免疫学的機序によりIgE依存性と、非IgE依存性に分けられるが、IgE依存性食物アレルギーの多くは即時型反応を呈することが多い。IgE依存性食物アレルギーはいくつかの病型に分けられており、食物アレルギーの関与する乳児アトピー性皮膚炎、即時型症状、食物依存性運動誘発アナフィラキシー(food-dependent exercise-induced anaphylaxis:FDEIA)、口腔アレルギー症候群(oral allergy syndrome:OAS)に分類される(『食物アレルギー診療ガイドライン2021』)。 食物アレルギーによって皮膚、粘膜、呼吸器、消化器、神経、循環器など、さまざまな臓器に症状が現れる。それらの症状は臓器ごとに重症度分類を用いて評価し、重症度に基づいた治療が推奨されている。IgE依存性食物アレルギーのうち、FDEIAは複数臓器・全身性にアレルギー症状が出現し、いわゆるアナフィラキシーショックを引き起こす可能性が比較的高いことが知られている。食物アレルギーの原因食物は鶏卵・牛乳・小麦とされていたが、最新の調査「食物アレルギーに関連する食品表示に関する調査研究事業」の報告書では第3位にナッツ類が含まれる結果であった。一般的にナッツ類は種子が硬い殻で覆われたアーモンド・クルミ・カシューナッツ・マカダミアナッツなどが含まれ、マメ科のピーナッツは含まれない。この報告書では食物アレルギーの85%に皮膚症状、36%に呼吸器症状、31%に消化器症状を認めたとし、ショック症状は11%であった。 食物アレルギーは特定の食べ物を摂取することによりアレルギー症状が誘発され、特異的IgE抗体などの免疫学的機序を介することが確認できれば診断される。とくにアレルゲンの摂取と誘発される症状の関連を細かく問診することが重要であり、採血による特異的IgE抗体や皮膚プリックテストだけで食物除去を安易に指導しないことと『食物アレルギー診療ガイドライン2021』上は指摘している。 今回紹介する「OUtMATCH試験」は、複数の食物アレルギーに対するヒト化抗ヒトIgEモノクローナル抗体であるオマリズマブの有効性や安全性を見た報告である。複数の食物アレルギーを持つ1~55歳の180例を対象に、オマリズマブを16週投与してアレルゲンに対する反応閾値の改善効果が示された。本邦でオマリズマブは2024年4月現在、気管支喘息、季節性アレルギー性鼻炎、特発性の慢性蕁麻疹の3つの適応疾患がある。いずれも既存治療によるコントロールが難しい難治例や重症例に限るとされている。オマリズマブは血中遊離IgEのCε3に結合し、マスト細胞などに発現する高親和性IgE受容体とIgEの結合を阻害することにより効果を発揮する生物学的製剤である。IgEとの結合を抑えることにより、一連のI型アレルギー反応を抑制し、気管支喘息では気道粘膜内のIgE陽性細胞や高親和性IgE受容体陽性細胞の減少、末梢血中の好塩基球に存在する高親和性IgE受容体の発現も低下するとされている。気管支喘息に対する効果は8つのプラセボ比較試験のメタアナリシスで、増悪頻度を43%減少させることが報告されている(Rodrigo GJ, et al. Chest. 2011;139:28-35.)。別の報告では、1秒量、QOL、症状スコアやステロイドの減量、入院頻度の減少なども示されている(Alhossan A, et al. J Allergy Clin Immunol Pract. 2017;5:1362-1370.)。オマリズマブは長期使用例ほどQOL改善効果が得られ、5年以上の使用で経口ステロイドの減量や治療ステップダウンを達成できる症例が増えるとされている(Sposato B, et al. Pulm Pharmacol Ther. 2017;44:38-45.)。 本研究でのオマリズマブは体重と被検者のIgE値によって投与量が決められている。ピーナッツタンパクを1回600mg以上の摂取でアレルギー症状がない症例がオマリズマブ群で67%、プラセボ群で7%であった。副次評価項目でもカシューナッツ、牛乳、卵で評価されたが、同様のオマリズマブ群でアレルギー反応が出ない症例が有意に増加した。このピーナッツタンパク600mgはピーナッツ約2.5個分に相当するが、これは誤ってナッツ類を1~2個摂取してもアレルギー反応に耐えうることを示唆している。もちろん本研究が報告された後も、オマリズマブが投与されたとはいえ、自身に害を及ぼすアレルゲンは避ける必要があり、自己注射用アドレナリンは手放せない。また筆者らも指摘しているが、本研究は白人が60%以上含まれており、すべての人種での検討ではない。今回の「OUtMATCH試験」の結果を受け、米国FDAでは2024年2月にIgEに関連する食物アレルギーに対するオマリズマブを承認した。実臨床で幅広く多様な年齢や人種に対してこのオマリズマブを活用し、その結果を検討することが肝要である。

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最新ガイドライン準拠 小児科診断・治療指針 改訂第3版

専門領域を踏破する小児科診療のスタンダードを強力アップデート専門分野エキスパート370名の編集・執筆による小児科主要領域350テーマから成る全訂版。他科に比べエビデンスが不足している場面に遭遇することが多い小児科診療で、ガイドラインによる科学的根拠と専門医の経験を融合させた実践的な診断・治療指針。医学・医療の進歩とともに細分化・複雑化する小児科専門30領域を正確かつ簡潔にまとめ、処方例・実践例を挙げて紹介。自施設で対応できることを見極め、他施設・他科と協働するための新しい知識とスキルを提供。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する最新ガイドライン準拠 小児科診断・治療指針 改訂第3版定価30,250円(税込)判型B5判(並製)頁数1,216頁(写真・図・表:1,200点)発行2024年4月総編集加藤 元博(東京大学 教授)ご購入(電子版)はこちらご購入(電子版)はこちら紙の書籍の購入はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら紙の書籍の購入はこちら

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日本人の喘息患者に睡眠時無呼吸が多く見られる

 日本人の喘息患者を対象に、閉塞性睡眠時無呼吸(obstructive sleep apnea;OSA)の合併および臨床転帰を検討する研究が行われた。その結果、OSAの合併率は高く、特に重症OSAを有する人ほど喘息のコントロールや症状が悪いことが明らかとなった。これは川崎医科大学呼吸器内科学の小賀徹氏らによる研究結果であり、「Allergology International」に2月9日掲載された。著者らは、「喘息とOSAの合併は過小評価されている」として、臨床転帰を改善するためのOSAのスクリーニングを推奨している。 睡眠中に気道が閉塞することにより呼吸停止が起こるOSAでは、夜間のいびきや日中の眠気など、さまざまな症状が生じる。OSAのリスク因子の1つに肥満があるが、OSAは肥満のない人でも発症する。特に日本人は欧米人と比べてBMIが低いにもかかわらず、OSAの有病率は米国と日本で同程度と報告されている。 今回の研究は、2020年7月~2022年3月に、定期的に川崎医科大学附属病院を受診している喘息外来患者97人(平均年齢56.5±13.9歳、そのうち女性66人)を対象として行われた。患者は自宅での睡眠時の検査として携帯型モニターを装着。睡眠中の1時間あたりの無呼吸と低呼吸の回数から算出する呼吸イベント指数(respiratory event index;REI)により、OSAの有無や重症度が評価された。さらに、患者報告アウトカムとして、胃食道逆流症、日中の眠気や睡眠の質、喘息コントロール(Asthma Control Test;ACT)、咳嗽症状(Leicester Cough Questionnaire;LCQ)、呼吸器症状(COPD Assessment Test;CAT)、喘息の健康状態〔Asthma Health Questionnaire(AHQ)-33〕が評価された。 その結果、OSAなしの患者は19人(19.6%、平均41.3±13.9歳)、軽症OSAは40人(41.2%、59.0±12.0歳)、中等症OSAは24人(24.7%、61.8±10.7歳)、重症OSAは14人(14.4%、60.8±9.8歳)だった。患者の平均BMI(kg/m2)は、中等症OSA合併群で26.5±5.2、重症OSA合併群で27.8±4.4であり、OSAなし群の22.6±5.4と比べて有意に高かった。 国際的なガイドライン(Global Initiative for Asthma)に基づく喘息の治療ステップ(1~5)は、重症OSA合併群の方がOSAなし群と比べて有意に高かった(平均4.3±1.1対3.1±1.4)。しかし、肺機能やアレルギーの指標(FeNO、血清IgE、末梢血好酸球など)には、群間で有意な差は認められなかった。重症OSA合併群では、有意に喘息コントロールが悪く、症状・咳嗽も多く、健康状態も悪かった。 重症OSAと関連する因子を単変量ロジスティック回帰分析で検討すると、BMI、治療ステップと、患者報告アウトカムのうちACT、LCQ、CAT、AHQ-33の各スコアが有意な因子だった。次に多変量ロジスティック回帰を用いて、BMIを調整して解析した結果、治療ステップ、ACT、LCQ、CAT、AHQ-33は、BMIとは独立して、重症OSAの有意な予測因子であることが明らかとなった。 以上の結論として著者らは、「日本人の喘息患者において、中等症以上のOSAは多く見られた(39.1%)」と述べている。また、OSAのある人ほどBMIは高かったものの、重症OSAと喘息コントロールや症状・咳嗽・健康状態の悪化などとの関連は、BMIとは独立して有意であり、さらに、肺機能には群間で差がなかったことを挙げた上で、肥満や肺機能にとらわれず、喘息の患者報告アウトカムが不良であれば睡眠時無呼吸の評価を積極的に行うことの重要性を指摘している。

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ファセンラ、小児の難治性気管支喘息で製造販売承認(一部変更)取得/AZ

 アストラゼネカは、2024年3月26日付のプレスリリースで、ファセンラ皮下注30mg/10mg*シリンジ(一般名:ベンラリズマブ[遺伝子組換え])が、既存治療によっても喘息症状をコントロールできない、6歳以上の小児の難治の気管支喘息患者に対する治療薬として、日本で製造販売承認を取得したと発表した。*ファセンラ皮下注10mgシリンジの発売時期は未定 ファセンラは、ヒト化抗IL-5受容体αモノクローナル抗体製剤で、好酸球の表面に発現するインターロイキン-5受容体αに直接結合し、増強された抗体依存性細胞傷害活性によって好酸球を直接的に除去する。 既存治療によっても喘息症状をコントロールできない、小児の難治の気管支喘息患者に対する治療の新たな選択肢として、本剤は貢献できる薬剤になりうると期待される。

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咳が1年以上続く…、疑うべき疾患は?【乗り切れ!アレルギー症状の初診対応】第19回

咳が1年以上続く…、疑うべき疾患は?講師獨協医科大学医学部 小児科学 助教 高柳 文貴 氏獨協医科大学医学部 小児科学 教授 吉原 重美 氏【今回の症例】8歳女児。6歳の時に肺炎で入院歴があり、その後から長引く咳嗽、労作性の呼吸苦を呈している。気管支喘息を疑い、吸入ステロイド薬、ロイコトリエン受容体拮抗薬による加療を1年以上継続しているが、症状の改善を認めなかった。胸部レントゲン検査ではわずかに過膨張所見があり、胸部CTではモザイクパターンの浸潤影を認めていた。

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舌下免疫療法を長続きさせるコツは?【乗り切れ!アレルギー症状の初診対応】第18回

舌下免疫療法を長続きさせるコツは?講師あおぞら小児科 院長 立元 千帆 氏【今回の症例】12歳男児。以前から気管支喘息とアレルギー性鼻炎の診断を受けており、気管支喘息はほとんど発作が認められなくなってきたものの、アレルギー性鼻炎は年々症状が悪化傾向にある。そのため、舌下免疫療法を受けることにした。

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事例042 残廃棄注射薬剤の算定漏れ【斬らレセプト シーズン3】

解説事例では気管支喘息の小児にアンプル容器(略称「A」)に入ったアミノフィリン(商品名:ネオフィリン)が静注されています。ネオフィリン注を幼児に使用する場合には、体重に応じて比例投与が求められています。比例投与後に残された薬剤は衛生上の問題などから再使用できずに廃棄せざるを得ません。明確な規定はありませんが、こうした理由からアンプル単位で使用する薬剤は、全量を使用したものとみなしての請求が認められています。この場合には、かならず「残廃棄」「0.6A使用残廃棄」などと、残量を廃棄したコメントを付けなければなりません。なぜなら、体重などに応じた投与量が添付文書の適用範囲から外れていると判定された場合には、外れた範囲が査定になることがあるからです。ほかのアンプル入り医薬品も同様です。比例請求することは、誤りではありません。しかし、アンプル容器入りには高価な医薬品があります。認められた請求方法を確実に利用して、廃棄分もコスト回収することが医療機関にとっては大切なことです。医薬品にはアンプル容器入りのほかに複数回使用ができるバイアル、瓶などの容器があります。その場合も含めて、「使用後の残液は使用しない」「調整後は速やかに使用する」と添付文書に記載されている医薬品は、通知などで示された場合を除き、全量請求が認められます。医療費計算システムには、アンプルやバイアルなどの1本単位で全量請求が認められる注射用医薬品を抽出、比例計算が行われた場合には、注意喚起が表示されるように改修して算定漏れ対策としました。

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重症好酸球性喘息、ベンラリズマブでコントロール良好ならICSは削減可/Lancet

 ベンラリズマブでコントロール良好な重症好酸球性喘息患者では、毎日投与の吸入コルチコステロイド(ICS)を大幅に削減可能であることが、英国・キングス・カレッジ・ロンドンのDavid J. Jackson氏らによる、第IV相の多施設共同無作為化非盲検実薬対照試験「SHAMAL試験」の結果で示された。重症好酸球性喘息では、高用量のICSへの反応が不十分にもかかわらず、ICSの段階的強化がルーティンに行われている。生物学的製剤への反応が良好な患者では、ICSの用量低減が推奨されているが、これまで安全性を裏付けるエビデンスがほとんどなかった。Lancet誌オンライン版2023年12月7日号掲載の報告。ICS/ホルモテロールの漸減vs.維持を評価 SHAMAL試験は4ヵ国22施設で行われ、適格患者は、重症好酸球性喘息で5項目喘息コントロール質問票(ACQ-5)のスコアが1.5未満、スクリーニング前にベンラリズマブの投与を3回以上受けていた18歳以上の患者であった。 研究グループは患者を、低減群と参照群に3対1の割合で無作為化した。低減群は、ベンラリズマブ30mgを8週に1回+ICS/ホルモテロールのMART療法について、中用量の維持投与([ICS 200μg+ホルモテロール6μgの2噴霧を1日2回]+頓用[ICS 200μg+ホルモテロール6μg])で開始したものを、低用量の維持投与(ICS/ホルモテロールの1噴霧を1日2回+頓用)、さらに発作時のみICS/ホルモテロール投与の頓用へと漸減した。参照群は、ベンラリズマブ30mgを8週に1回+高用量ICS/ホルモテロール(1噴霧でブデソニド400μg+ホルモテロール12μg)2噴霧1日2回+サルブタモールの発作時頓用が維持投与された。漸減期間は32週間で、その後16週間を維持期間とした。 主要エンドポイントは、32週時点までにICS/ホルモテロール用量が低減した患者の割合であった。主要アウトカムは、低減群で評価し、安全性解析は、試験治療群に無作為化された全患者を対象に評価した。32週時点で漸減群の92%が低減を達成、61%が頓用のみに 2019年11月12日~2023年2月16日に、208例がスクリーニングを受けrun-in periodに登録。このうち168例(81%)が、低減群(125例[74%])と参照群(43例[26%])に無作為化された。 全体で、110例(92%)が、ICS/ホルモテロール用量を低減した。そのうち中用量への低減までが18例(15%)、低用量への低減が20例(17%)で、72例(61%)が頓用のみへ低減した。 患者113例(96%)において、48週まで低減は継続した。低減群の114例(91%)は、漸減期間中に増悪の報告はされなかった。 有害事象の発生頻度は両群で同程度であり、低減群91例(73%)、参照群35例(83%)であった。重篤な有害事象は17例報告され、低減群12例(10%)、参照群5例(12%)であった。死亡は報告されなかった。

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ダニ関連アレルギー(2)【一目でわかる診療ビフォーアフター】Q91

ダニ関連アレルギー(2)Q91気管支喘息既往の20歳男性。昼食後に全身の掻痒感、じんましん、咽頭違和感で救急搬送された。アナフィラキシーの診断でアドレナリン0.5mg筋注後、症状が落ち着いてきた。改めて、病歴を聴いたところ、昼食時にはお好み焼きを自宅で焼いて食べたとのことだった。過去にお好み焼きで同様の症状が出たことなく、使用した食材でも過去にアレルギーを起こしていないとのことだった。ほかに何を聞くと良いだろう。疑う疾患は?

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実臨床における喘息コントロールに生物学的製剤は有効か?/AZ

 アストラゼネカ(AZ)は2023年10月20日付のプレスリリースにて、日本における重症喘息の前向き観察研究であるPROSPECT studyの1年時解析から、実臨床における生物学的製剤の喘息コントロール改善効果が示されたことを発表した。本研究結果を踏まえて「本邦の実臨床でコントロール不良の重症喘息患者に対して適切に生物学的製剤を開始することで、疾病負荷を軽減できることが示された」としている。 重症喘息は頻回な増悪を繰り返し、著しい呼吸機能の低下、生活の質の低下を余儀なくされる。さらに、社会経済的な負担も大きく、その医療費は非重症喘息と比べて高いことが報告されている。複数のガイドラインで、コントロール不良の重症喘息患者に対して生物学的製剤の使用が推奨されているが、日本の実臨床における生物学的製剤の使用実態とその有用性はこれまで示されていなかった。 PROSPECT studyは、高用量吸入ステロイド剤とその他の長期管理薬を使用してもコントロール不良の成人(20歳以上)重症喘息患者を対象とする、国内34施設にて実施された追跡調査期間2年間の前向き観察試験である。主要評価項目は、試験登録12週間以内に生物学的製剤を開始した群(127例)と開始しなかった群(162例)における2年後の気管支拡張薬吸入後のFEV1※1(Forced Expiratory Volume in one second)のベースラインからの変化量の差と設定された。 今回のリリースでは、1年時解析の結果が発表された。 生物学的製剤開始群と非開始群における気管支拡張薬投与後の変化は以下のとおりであった(いずれもベースラインのリスク因子で調整)。・FEV1のベースラインからの変化量の差は130mL、p=0.007・喘息増悪発生率比は0.46、p=0.012・ACQ-5スコア※2のベースラインからの変化量の差は-0.67、p<0.001 本研究のScientific Advisory Committee委員長である、日本喘息学会理事長であり近畿大学病院病院長の東田 有智氏は、コントロール不良の重症喘息患者における疾病負荷と、適切な生物学的製剤の使用が推奨されながらも限定的である導入実態を振り返り、「この結果が、コントロール不良の重症喘息患者への生物学的製剤導入の治療機会の均てん化の促進に寄与することを願う」とコメントしている。※1 FEV1:1秒量(努力肺活量の1秒量)※2 ACQ-5スコア:5種類の症状(「夜間覚醒」「起床時の症状」「日常生活の制限」「息切れ」「喘鳴」)に関する質問から構成される喘息コントロール状態を評価する指標

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味覚障害に耐えられない症例に対する処方は注意せよ(解説:田中希宇人氏/山口佳寿博氏)

 ゲーファピキサント(商品名:リフヌア)は、選択的P2X3受容体拮抗薬である。P2X3受容体は気道に分布する迷走神経のC線維と呼ばれる求心性神経線維末端にあるATP依存性イオンチャネルである。C線維は炎症や化学物質に反応して活性化される。ATPは炎症により気道粘膜から放出され、シグナル伝達を介して咳嗽反応を惹起させる。ゲーファピキサントはP2X3受容体を介したATPシグナル伝達を遮断することにより、感覚神経の活性化や咳嗽の抑制効果が期待されている薬剤である。現在、慢性咳嗽の原因となりうる病歴・職業歴・環境要因・検査結果などを踏まえた包括的な診断に基づく十分な治療を行っても咳嗽が続く場合、いわゆる難治性の慢性咳嗽に適応となっている。実臨床下では、慢性咳嗽の症例に一般的な鎮咳薬や気管支拡張薬、吸入ステロイド薬が適切に使用されても改善が得られない場合に処方を検討する薬剤となっている。 2005年に亀井らにより咳嗽にP2X3が関与していることが示唆(Kamei J, et al. Eur J Pharmacol. 2005;528:158-161.)されて以来、ゲーファピキサントの開発が進んできた。国際共同第III相試験である「COUGH-1試験」では、治療抵抗性あるいは原因不明の慢性咳嗽症例732例を対象に、ゲーファピキサント15mg 1日2回群、45mg 1日2回群、プラセボの3群が比較検討された(McGarvey LP, et al. Lancet. 2022;399:909-923.)。主要評価項目としては有効性として12週での24時間当たりの咳嗽頻度が評価された。732例のうち、気管支喘息は40.7%、胃食道逆流症が40.5%、アレルギー性鼻炎が19.7%含まれた。主要評価項目である咳嗽頻度はゲーファピキサント45mg群でベースラインに1時間当たり28.5回認めていたものが、12週時点で14.4回に減少。プラセボ群に対する相対減少率も-18.45%と有意差をもって咳嗽頻度を改善したとされた。また24週時点でも評価された「COUGH-2試験」でも同様の結果が示された。 今回取り上げたKum氏らのCOUGH-1, 2試験を含むメタ解析でも、ゲーファピキサント45mg群はプラセボ群と比較し、覚醒時の咳嗽頻度を17.6%減少させ、咳嗽の重症度や咳嗽に起因するQOLも、わずかではあるが改善させるとの結果であった。実臨床においても、呼吸器内科医が詳細に問診をとり、診察を行い、各医療機関でできる検査を組み合わせて適切な診断や治療を行っても残ってしまう難治性咳嗽の症例は時々見掛けることがある。そのような症例に対し、奥の手としてゲーファピキサントが選択されることがある。ただ、もちろん他の治療や環境因子に介入しても改善しなかったしつこい咳嗽に対する処方なので、他の鎮咳薬などの治療選択肢と比べて劇的な効果への期待は難しいことが多い。COUGH-1, 2試験では「治療抵抗性あるいは原因不明の慢性咳嗽症例」が含まれているが、ゲーファピキサントがより効果的な症例は喘息なのか、COPDなのか、間質性肺炎なのか、はたまた他の慢性咳嗽の原因となりうる疾患なのか、そのあたりが今後の臨床試験で明らかになると、ゲーファピキサントの立ち位置がよりはっきりしてくるのだろう。 またCOUGH-1, 2試験の併合解析でも指摘されているが、味覚に関する有害事象が高いことが知られている。ゲーファピキサントの承認時資料によると、味覚に関連する有害事象の発現時期としては、中央値で2.0日、1週間以内に52.7%の方が味覚に関する異常を訴えるとされている。さらに気になるところは、有害事象の平均持続期間が200日以上と想像以上に長いことも指摘されている。Kum氏らの報告でも味覚関連有害事象が100人当たり32人増加するとされ、効果に比べて有害事象の懸念が考えられた。 ゲーファピキサントはあくまで症状に対する対症療法に位置付けられる薬剤であり、原疾患に対する薬剤ではない。実際の現場において、内科の短い診療時間で味覚に対するきめ細やかな対応は困難であることが予想されるため、できれば歯科/口腔外科や、看護スタッフ、薬剤師、栄養士などの介入があるとよいだろう。味覚に関する有害事象で困るようであれば、1日1回に減量する、一定期間薬剤を中止するなどの対応も必要となる。承認時資料によると、通常用量の1/3量のゲーファピキサント15mgでは味覚障害の有害事象の頻度は17.5%と報告されているので、投与量の減量は有効な手段の1つと考えられる。また、有害事象を起こしやすい、あるいは起こしにくい患者背景がわかると、処方を勧める1つのきっかけになると考える。 実臨床では、慢性咳嗽で一般的な治療で難治と考えられる症例に、ゲーファピキサントが考慮される。エビデンスのない領域であるが、肥満が問題となっている喘息症例で適切な治療を行っても咳嗽が残ってしまう症例に対し、ゲーファピキサントで咳嗽が抑えられ、食欲も制限されたら、もしかしたら喘息のコントロールも改善するかもしれない。ただし、味覚に関連する有害事象の発現で致命的になりうるような悪液質状態の肺がん症例や、るい痩が進んできているCOPDや間質性肺炎に対する慢性咳嗽に対しては、安易に処方することのないようにされたい。

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ICS/LABA使用喘息の40%超が効果不十分、咳嗽に注目を

 日本において2018年に実施された横断的調査National Health and Wellness Survey(NHWS)の結果から、吸入ステロイド薬(ICS)と長時間作用性β2刺激薬(LABA)の配合薬(ICS/LABA)に対するアドヒアランスが高い喘息患者であっても、そのうち約40%は、症状をコントロールできていないことが報告されている1)。そこで、長瀬 洋之氏(帝京大学医学部内科学講座 教授)らの研究グループは、ICS/LABAを適切に使用している喘息患者を対象として、喘息が健康関連QOLや労働生産性などに及ぼす影響を調べた。その結果、ICS/LABAで喘息コントロール不十分・不良の患者が45.2%存在し、コントロール良好の患者と比べて健康関連QOLが低下していた。また、咳嗽の重症度が健康関連QOLと相関していた。本研究結果は、Advances in Therapy誌オンライン版2023年9月12日号に掲載された。 ICS/LABAを4週間以上使用し、アドヒアランス良好であった20歳以上の喘息患者454例を対象に、インターネット調査を実施した。対象患者を喘息コントロールテスト(ACT)スコアに基づき、コントロール不十分・不良(19点以下)、コントロール良好(20点以上)に分類して評価した。主要評価項目はAsthma Health Questionnaire-33(AHQ-33)に基づく健康関連QOL(スコアが高いほど不良)であった。副次評価項目は日本語版レスター咳質問票(J-LCQ)に基づく咳嗽の重症度(スコアが高いほど良好)、Work Productivity and Activity Impairment Questionnaire(WPAI)-asthmaに基づく労働生産性であった。 主な結果は以下のとおり。・ICS/LABAを使用している喘息患者の45.2%(205/452例)がコントロール不十分・不良であった。・健康関連QOLは、コントロール不十分・不良群がコントロール良好群と比べて低かった(AHQ-33合計スコア:39.3点vs.11.5.点、p<0.0001)。喘息症状、喘息症状の増悪因子など、AHQ-33のすべてのドメインスコアがコントロール不十分・不良群で有意に悪化していた(いずれもp<0.0001)。・咳嗽の重症度は、コントロール不十分・不良群がコントロール良好群と比べて高かった(J-LCQ合計スコア:15.2点vs.19.1点、p<0.0001)。J-LCQの身体面、精神面、社会面のいずれのドメインスコアもコントロール不十分・不良群が有意に悪化していた(いずれもp<0.0001)。・咳嗽の症状を有している患者の割合は、コントロール良好群が22.1%(55/249例)であったのに対し、コントロール不十分・不良群は63.9%(131/205例)であった。・J-LCQ合計スコアはAHQ-33合計スコアと強い相関が認められ(r=-0.8020)、咳嗽が健康関連QOLに大きな影響を及ぼすことが示唆された。・労働生産性に関して、アブセンティーズム、プレゼンティーズム、総労働損失、日常生活における活動障害のいずれの項目についても、コントロール不十分・不良群がコントロール良好群と比べて有意に悪化していた(いずれもp<0.0001)。 本研究結果について、著者らは「ICS/LABAに対するアドヒアランスが良好であったにもかかわらず、喘息コントロールが不十分・不良であった喘息患者は、喘息コントロールが良好であった喘息患者と比べて、症状の負荷が大きく、健康関連QOLと労働生産性が損なわれていた。咳嗽症状は大きな負荷であり、健康関連QOLの低下との相関も認められたことから、咳嗽は喘息患者の個別化治療戦略における重要なマーカーの1つである可能性が示された」とまとめた。

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喘息の増悪発生に地域差/AZ

 アストラゼネカ(以下、AZ)は、喘息増悪の発生状況を地域別に検討した「Asthma heatmap研究」を実施し、喘息の増悪発生率に日本国内で地域差があることを初めて明らかにしたと発表した。本研究の結果を基に、地域の実情に即した喘息治療の適正化を目指した活動を実施していくとしている。 日本において、喘息に罹患している患者(小児を含む)は約800万人といわれている。喘息による死亡数は年々減少傾向にあり、2021年では1,038人と報告されている一方で、症状が残存する患者はいまだ残されており、患者の5~10%は従来の治療でコントロールできない重症喘息と推定されている。本研究では、複合アウトカム*で定義した喘息増悪が平均で100人年当たり39.87件生じており、その頻度に地域差があることが示された。都道府県別にみると、複合アウトカムに示された喘息増悪発生率は、最多の地域では最少の地域の6.7倍であった。*複合アウトカムの定義:入院、静注ステロイド、OCS(経口ステロイド:20mg以上/日の処方またはOCS10mg以上/日の増量)のすべて対象:基準日(2018年10月1日以前に喘息と診断され、かつ喘息関連薬を処方された最新の日)以前の1年間に4回以上ICS(吸入ステロイド)またはICS/LABAが処方されたICS継続投与喘息患者2万4,883例方法:保険データベースMedi-Scope(2016年10月1日~2019年12月31日までのデータ)を用いたレトロスペクティブコホート研究。フォローアップ期間(基準日以降の1年間)における地域別の喘息増悪発生率、およびベースライン期間(基準日以前の1年間)における患者背景因子と喘息増悪との関連を解析。 本研究結果から喘息増悪の地域差が明らかになったことを踏まえ、AZは日本呼吸器学会との共催、厚生労働省の後援の下、各地域で医師を対象とし、地域に根差した喘息増悪予防について検討するための講演会を順次実施している。講演会を地域別に行うことで、地域の特性に即した課題が医療関係者に共有され、治療の最適化や地域連携を通じての専門医への紹介等、地域の実情に根差した医療環境がより整うことを期待しているとし、今後、全国においてもオンラインにて全3回の講演会開催を予定している。AZは喘息領域において、適切な増悪予防と症状コントロールによって、患者が健康な人と変わらない生活を送ることを目指し、患者中心の医療へ今後も貢献していくとしている。

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小児喘息の罹患率や症状、居住環境が影響/JAMA

 米国都市部の貧困地域に居住する子供たちにおける、不釣り合いに高い喘息罹患率には、構造的人種主義が関与しているとされる。米国・ジョンズ・ホプキンズ大学ブルームバーグ公衆衛生大学院のCraig Evan Pollack氏らは、MAP研究において、住宅券(housing voucher)と低貧困地域への移住支援を提供する住宅移動プログラムへの参加が、小児の喘息罹患率や症状日数の低下をもたらすことを示した。研究の成果は、JAMA誌2023年5月16日号で報告された。ボルチモア郡の前向きコホート研究 MAP研究は、2016~20年に家族がBaltimore Regional Housing Partnership(BRHP)の住宅移動プログラムに参加した、持続型喘息を有する5~17歳の小児123例を対象とする前向きコホート研究である(米国国立環境健康科学研究所[NIEHS]の助成を受けた)。 ボルチモア郡の低貧困地域への引っ越しが、小児の喘息の増悪および症状に及ぼす影響を評価した。また、傾向スコアを用いて、Urban Environment and Childhood Asthma(URECA)の出生コホートに登録された小児とマッチングした解析も行われた。 123例の年齢中央値は8.4歳、58例(47.2%)が女児、120例(97.6%)が黒人であった。81%(89/110例)が引っ越し前は高貧困地域(貧困線を下回る家族が20%以上の地域)に居住しており、引っ越し後のデータが得られた小児のうち高貧困地域に住んでいたのは0.9%(1/106例)のみだった。傾向スコアマッチング解析でも、有意差を保持 このコホートにおいては、引っ越し前の3ヵ月間に、少なくとも1回の喘息の増悪がみられた患児は15.1%であったのに対し、引っ越し後は8.5%に低下し、補正後の引っ越し前後の差は-6.8ポイント(95%信頼区間[CI]:-11.9~1.7、p=0.009)と、有意な改善が認められた。 また、過去2週間の最大症状日数(患児が全身症状、活動性低下、夜間覚醒を訴えた最大の日数)は、引っ越し前が5.1日であったのに対し、引っ越し後は2.7日に減少し、補正後の引っ越し前後の差は-2.37日(95%CI:-3.14~-1.59、p<0.001)であり、有意な改善がみられた。 これらの結果と同様に、URECAデータを用いた傾向スコアマッチング解析でも、有意差が保たれていた。 さらに、社会的結束(social cohesion)、日中および夜間の近隣の安全性、都市のストレスなどのストレス指標は、いずれも引っ越しによって改善し、引っ越しと喘息増悪との関連の29~35%、引っ越しと症状発現の減少との関連の13~34%を、これらの指標が媒介すると推定された。 著者は、「政策立案者や臨床医が、1世紀以上に及ぶ住宅差別(housing discrimination)の遺産を抱える地域の家族を支援するプログラムを開発し検証する際に、これらの知見は子供の健康に有益な可能性を示唆するエビデンスとなる」としている。

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乳児期のRSV感染が小児喘息発症に関連/Lancet

 正期産の健常児で、生後1年目(乳児期)に重症呼吸器合胞体ウイルス(RSV)に感染していない場合は感染した場合と比較して、5歳時点の小児喘息の発生割合が大幅に低く、乳児期のRSV感染と小児喘息には年齢依存的な関連があることが、米国・ヴァンダービルト大学医療センターのChristian Rosas-Salazar氏らが実施した「INSPIRE試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2023年4月19日号で報告された。米国テネシー州の大規模な出生コホート研究 INSPIRE試験は、2012年6月~12月または2013年6月~12月に正期産で生まれた非低出生体重の健常児を対象とする大規模な住民ベースの出生コホート研究であり、米国テネシー州中部地域の11の小児科診療所で参加者の募集が行われた(米国国立衛生研究所[NIH]の助成を受けた)。 乳児期のRSV感染状況(感染なし・感染あり)を、受動的サーベイランスと能動的サーベイランスを併用して調査し、分子生物学的手法と血清学的手法によりウイルスを同定した。主要アウトカム(5歳時点の喘息)を前向きにフォローアップし、5年間のフォローアップを完了したすべての子供について解析が行われた。 1,946例(年齢中央値55日[四分位範囲[IQR]:16~78]、女児48%)が登録され、このうち1,741例(89%)で生後1年目のRSV感染状況のデータが得られた。乳児期に944例(54%)がRSVに感染し、797例は感染しなかった。RSV感染回避により、15%で喘息が予防 5歳時点で喘息を発症していた子供の割合は、RSV感染群が21%(139/670例)であったのに対し、RSV未感染群は16%(91/587例)と有意に低かった(p=0.016)。補正後リスク比は0.74(95%信頼区間[CI]:0.58~0.94、p=0.014)であり、乳児期のRSV感染回避によって予防可能な5歳時点の小児喘息の割合は15%(95%CI:2.2~26.8)と推定された。 また、子供の年齢で層別化したモデルでは、喘鳴の年間再発リスクは、1~4歳のいずれの時点においても、RSV感染群に比べRSV未感染群で低かったが、有意差は1歳時(p<0.0001)と2歳時(p=0.043)でのみ認められた。 アトピー型喘息を、5歳時の喘息と3歳時の空中アレルゲン感作で定義した場合、5歳時の非アトピー型喘息の頻度はRSV感染群に比べRSV未感染群で有意に低かった(p=0.010)が、アトピー型喘息との関連はなかった。また、アトピー型喘息を、医師が5歳までにアレルギー性鼻炎またはアトピー性皮膚炎と診断し、親によって報告された場合と定義しても、同様の結果であった。 著者は、「乳児期のRSV感染と小児喘息との因果関係を明確に示すには、初回RSV感染の予防、遅延、重症度の軽減が、喘息に及ぼす影響について検討する必要がある」としている。

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喘息診断で注目、タイプ2炎症バイオマーカーの手引き発刊/日本呼吸器学会

 タイプ2炎症は、主に2型ヘルパーT細胞(Th2細胞)や2型自然リンパ球(ILC2)が産生するIL-4、IL-5、IL-13などの2型サイトカインが作用する炎症である。気道・肺疾患と密接な関係にあり、診断や治療に直結する。とくに、生物学的製剤の治療選択や効果予測に重要な役割を果たすことから、近年注目を集めている。そのような背景から、「タイプ2炎症バイオマーカーの手引き」が2023年4月3日に発刊された1)。第63回日本呼吸器学会学術講演会において、本書の編集委員長を務めた松永 和人氏(山口大学大学院医学系研究科呼吸器・感染症内科学講座 教授)が「タイプ2炎症バイオマーカーが切り拓く未来」と題し、主に「喘息の診断と管理効率の向上」「疾患修飾による喘息寛解の展望」について、解説した。タイプ2気道炎症は喘息の診断、管理に有用 喘息の補助診断には、血中好酸球数、呼気NO濃度(FeNO)、IgEが有用である。そこで「タイプ2炎症バイオマーカーの手引き」では、血中好酸球数とFeNOについて、喘息の補助診断に関するカットオフ値が設定された1)。 血中好酸球数については、タイプ2炎症の有無を鑑別するカットオフ値が220cells/μLであったという報告2)、一般住民における75パーセンタイル値が210cells/μLであり、210cells/μL以上では喘息を有する割合が高かったという報告3)などがある。以上などから、喘息を疑う症状のある患者における、喘息の補助診断のカットオフ値は220cells/μL(喘息診断を支持)に設定された1)。詳細は、手引きを参照されたい。 FeNOについては、タイプ2炎症の有無を鑑別するカットオフ値が20ppbであったという報告2)、本邦で喘息患者と非喘息患者を鑑別する際のカットオフ値が22ppb(感度91%、特異度84%)であったという報告4)などがある。ただし、FeNO値22ppbを適用すると非喘息患者の約15%もこの範囲に当てはまってしまう。そこで、FeNO値37ppbを適用すると特異度は99%となる4)。以上などから、吸入ステロイド薬(ICS)未使用の喘息を疑う症状のある患者における、喘息の補助診断のカットオフ値は22ppb(喘息の可能性が高い)、35ppb(喘息診断の目安)に設定された1)。詳細は、手引きを参照されたい。 なお、血中好酸球数、FeNOを補助診断に用いる場合、いずれも最終的な喘息の診断は、治療による反応性、治療効果の再現性などの臨床経過や症状・呼吸機能の変動を含め総合的に判断する。 また、FeNOと血中好酸球数は喘息管理においても有用である。そこで「タイプ2炎症バイオマーカーの手引き」では、喘息管理における解釈に関するカットオフ値も設定された1)。 ICSによる治療前後のFeNOの変化と気流制限、気道過敏性には相関があり、治療効果予測への有用性が指摘されている5)。ICS/長時間作用性β2刺激薬(LABA)による治療中はFeNOが低下し、治療を中止するとFeNOが上昇することが報告されているため、FeNOによる炎症モニタリングは、アドヒアランスやステロイド抵抗性の評価にも有用とされる6)。また、現在の治療ステップにかかわらず、増悪歴やリスク因子(症状、呼吸機能など)に加えて血中好酸球数とFeNOが高値の患者では将来の増悪リスクが高いことが近年報告されている7)。 以上から、喘息管理におけるFeNOのカットオフ値は20ppb、35ppbに設定され、血中好酸球数のカットオフ値は150cells/μL、300cells/μLに設定された。症状がなく、これらに基づくタイプ2炎症が低レベルであれば、抗炎症治療は適切と考えられ、抗炎症薬の減量が考慮可能である。一方、高レベルであれば症状がなくとも、服薬アドヒアランス・吸入手技の不良や、抗炎症薬の減量で症状が悪化する可能性がある。また、現在の治療でも症状が続いており炎症が高レベルであれば、増悪や呼吸機能低下のリスクが高いため、抗炎症治療の強化が考慮される1)。詳細は、手引きを参照されたい。タイプ2炎症への早期介入で疾患修飾・喘息寛解の達成へ タイプ2炎症と気道機能障害は喘息の治療可能な臨床特性(Treatable Traits)であることが、近年提唱されている8)。とくに、タイプ2炎症型の重症喘息では、タイプ2炎症が強いほど喘息が重症化するという知見も得られている。重症喘息はICS抵抗性であることが多いことから、さまざまな生物学的製剤が開発され、使用可能となっている。 同じく複数の生物学的製剤の適応がある関節リウマチの治療戦略では、Bio-free-remission(生物学的製剤での早期介入によりdeep remission[臨床的寛解、機能的寛解、免疫学的寛解のすべて]を達成し、生物学的製剤なし、もしくは投与間隔を長くする)が目指されており、エビデンスも集積されつつある。しかし、重症喘息では生物学的製剤の中止に関する臨床研究のエビデンスが乏しいのが現状である。したがって、松永氏らの研究グループは、まず生物学的製剤による「疾患活動性の抑制」を達成し、「deep remission」を達成した患者ではBio-free-remissionを目指せる可能性を提唱している9)。 松永氏らの研究グループは1年間の生物学的製剤の使用により、喘息の臨床的寛解が69%、deep remissionが32%で達成できたこと、deep remissionが達成された患者の特徴は、早期かつ呼吸機能が保たれている段階での生物学的製剤の使用であったことを2023年4月に報告している10)。そのため、松永氏は「バイオマーカーを活用しながら、呼吸機能が保たれている患者に対して早期に生物学的製剤を導入し、疾患修飾をかけてほしい」と強調した。タイプ2炎症バイオマーカーの手引きはバイオマーカーと疾患を網羅 「タイプ2炎症バイオマーカーの手引き」は、タイプ2炎症のバイオマーカーとそれに関連する疾患を網羅した1冊となっている。松永氏は「さまざまな気道・肺疾患の診断や治療方針の決定に直結するため、タイプ2炎症が注目されている。本書は、実臨床の具体的な状況において簡便に活用できる臨床指針を提供することで、タイプ2炎症評価の適正な普及につなげ、気道・肺疾患のさらなる管理効率の向上を目指して作成したため、ぜひ活用いただきたい」とまとめた。タイプ2炎症バイオマーカーの手引き編集:タイプ2炎症バイオマーカーの手引き作成委員会/日本呼吸器学会肺生理専門委員会定価:3,190円(税込)発行日:2023年4月20日A4変型判・120頁■参考文献1)タイプ2炎症バイオマーカーの手引き作成委員会/日本呼吸器学会肺生理専門委員会編集. タイプ2炎症バイオマーカーの手引き. 南江堂;20232)McGrath KW, et al. Am J Respir Crit Care Med. 2012;185:612-619.3)Hartl S, et al. Eur Respir J 2020;55:1901874.4)Matsunaga K, et al. Allergol Int. 2011;60:331-337.5)Ichinose M, et al. Eur Respir J. 2000;15:248-253.6)Bardsley G, et al. Respir Res. 2018;19:133.7)Couillard S, et al. Thorax. 2022;77:199-202.8)Shaw DE, et al. Lancet Respir Med. 2021;9:786-794.9)Hamada K, et al. J Asthma Allergy. 2021;14:1463-1471.10)Oishi K, et al. J Clin Med. 2023;12:2900.

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手持ち不足の薬剤の処方依頼前に継続の必要性を再検討【うまくいく!処方提案プラクティス】第53回

 今回は、手持ちの薬がなくなって服薬ができていなかった症例を紹介します。患者さんの希望で処方依頼をするシチュエーションは多々ありますが、状態によっては継続ではなく中止を提案することもあります。治療効果を意識して体調の変化を確認しましょう。患者情報80歳、男性(施設入居)基礎疾患気管支喘息、慢性気管支炎、前立腺肥大症、高血圧症、緑内障、便秘症、アレルギー性鼻炎介護度要介護2服薬管理施設職員が管理処方内容1.アジルサルタン錠40mg 1錠 分1 朝食後2.タムスロシン錠0.2mg 1錠 分1 朝食後3.ミラベグロン錠25mg 1錠 分1 朝食後4.アンブロキソール徐放錠45mg 1錠 分1 朝食後5.ベポタスチン錠10mg 2錠 分2 朝夕食後6.モンテルカスト錠10mg 1錠 分1 就寝前7.酸化マグネシウム錠330mg 3錠 分3 毎食後8.センノシド錠12mg 2錠 分1 就寝前9.ヒアルロン酸点眼液0.1% 1日3回 両眼10.タフルプロスト点眼液0.015% 1日1回 両眼本症例のポイントこの患者さんは、施設入居から4日目に当薬局に訪問介入の依頼がありました。入居前は薬剤を自己管理していたようですが、過去の飲み忘れも含めて約1ヵ月半分の持参薬があり、用法ごとの残数もそろっていない状況でした(朝:42、昼:66、夕:58、就寝前:70日分)。気管支喘息の診断を受けていたとのことで、ブデソニド・ホルモテロールの空容器を持参していましたが、夜間は不安だからプロカテロール吸入薬も吸入したいので処方してもらいたいという患者さんからの依頼がありました。よくよく話を聞いてみると入居3週間前からブデソニド・ホルモテロールもプロカテロールも残薬がなくなっていて、手元にないと不安なので処方してほしいとのことでした。情報分析これまでの情報から私なりに分析してみました。まず、大量かつ不均等の持参薬から患者さんの服薬アドヒアランスは不良であることが想像できます。薬に対する依存度が強く、患者さんから医師にさまざまな薬を要望している様子もあったため、使用していた薬剤の種類と処方理由を明確にしておく必要があると考えました。なお、患者さんが要望している吸入薬はどちらも約1ヵ月間使用していませんでしたが、喘息発作などは起きていません。前医の診療情報書に目を通したところ、小児喘息や成人時期の喘息発作の経験はなかったものの、患者によると喘息の素因があるとのことで、感冒の際に希望があり処方しているという文面を確認することができました。患者さんはその後、長期間にわたって吸入薬を使用していました。基礎疾患にある気管支喘息の診断情報に疑問をもち、訪問診療医に相談することにしました。処方提案と経過患者さんとの初回面談から3日目に訪問診療医の初診があったため同行することにしました。診察前に、医師に初回面談時のやりとりを共有しました。入居前は服薬アドヒアランスが安定していなかったと考えられ、患者さんの希望から吸入薬が追加されている可能性があるものの、約1ヵ月間使用していなくても発作症状はないことなどを伝えました。医師からは、診察時に呼吸音や病状を確認し、診断の見直しをするという返答がありました。その結果、気管支喘息を積極的に疑う所見ではないので、このまま吸入薬をやめて様子をみようという判断になりました。その2週間後の診療でもその間の喘息発作は認められませんでした。患者さんからは、吸入の負担が減って精神的に楽になったと聞き、その後も状態が悪化することなく施設で穏やかに生活されています。

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