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喘息コントロールの確認【日常診療アップグレード】第20回

喘息コントロールの確認問題36歳男性。気管支喘息のため通院中である。ブデソニド/ホルモテロール吸入(商品名:シムビコート)を使用していて、喘息の症状は落ち着いている。喫煙の習慣はない。吸入器の使い方も問題がない。身体診察ではバイタルサインを含め異常なし。呼気一酸化窒素濃度(FeNO)を測定し、喘息のコントロールがうまくいっているかどうかを確かめた。

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喘息やCOPDの増悪に対する新たな治療法とは?

 英国、バンベリー在住のGeoffrey Pointingさん(77歳)は、喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)の増悪がもたらす苦痛を表現するのは難しいと話す。「正直なところ、増悪が起きているときは息をすることさえ困難で、どのように感じるのかを他人に伝えるのはかなり難しい」とPointingさんはニュースリリースの中で述べている。しかし、既存の注射薬により、こうした喘息やCOPDの増悪の恐ろしさを緩和できる可能性のあることが、新たな臨床試験で示された。「The Lancet Respiratory Medicine」に11月27日掲載された同試験では、咳や喘鳴、息苦しさ、痰などの呼吸器症状の軽減という点において、モノクローナル抗体のベンラリズマブがステロイド薬のプレドニゾロンよりも優れていることが明らかになった。論文の上席著者である英キングス・カレッジ・ロンドン(KCL)呼吸器科のMona Bafadhel氏は、「この薬は、喘息やCOPDの患者にとってゲームチェンジャーになる可能性がある」と期待を示している。 ベンラリズマブは、肺の炎症を促す好酸球と呼ばれる特定の白血球を標的としている。米食品医薬品局(FDA)は2017年、同薬を重症喘息の管理を目的とした薬として承認している。研究グループによると、好酸球性増悪は、COPDの急性増悪の最大30%、喘息発作の約50%を占めているという。このようなエピソードでは、肺内で好酸球を含む白血球が急増し、喘鳴、咳、胸部の圧迫感を引き起こす。このことを踏まえてBafadhel氏らは今回の臨床試験で、喘息とCOPDの発作に対するベンラリズマブの有効性を評価した。 対象とされた158人の喘息またはCOPD患者(平均年齢57歳、男性46%)は、急性増悪時(好酸球数が300cells/μL以上)に、以下の3群にランダムに割り付けられた。1)プレドニゾロン30mgを1日1回、5日間経口投与し、ベンラリズマブ100mgを1回皮下注射する群(ベンラリズマブ+プレドニゾロン群、52人)、2)プラセボを1日1回、5日間経口投与し、ベンラリズマブ100mgを1回皮下注射する群(ベンラリズマブ群、53人)、3)プレドニゾロン30mgを1日1回、5日間経口投与し、プラセボを1回皮下注射する群(プレドニゾロン群、53人)。 その結果、90日後の治療失敗率は、プレドニゾロン群で74%(39/53人)、ベンラリズマブ群とベンラリズマブ+プレドニゾロン群を合わせた群(統合ベンラリズマブ群)で45%(47/105人)であり、統計学的に統合ベンラリズマブ群はプレドニゾロン群よりも治療失敗率が有意に低いことが示された(オッズ比0.26、95%信頼区間0.13〜0.56、P=0.0005)。また、28日目に症状をVAS(視覚的アナログスケール)で評価したところ、統合ベンラリズマブ群がプレドニゾロン群よりも49mm(95%信頼区間14〜84mm、P=0.0065)高い改善を示し、ベンラリズマブの方が症状の改善に効果的であることが示された。いずれの群でも致死的な有害事象は発生せず、ベンラリズマブの忍容性は良好であることも確認された。 これらの結果を受けて研究グループは、「すでに喘息の治療薬として承認されている薬が、喘息やCOPDの増悪を抑える手段としてステロイド薬に代わるものとなる可能性がある」との見方を示している。 この臨床試験に参加したPointingさんは、ベンラリズマブは「素晴らしい薬」であると言う。「ステロイド薬の錠剤を使用していたときには副作用があり、初日の夜はよく眠れなかったが、今回の臨床試験では初日の夜から眠ることができ、何の問題もなく自分の生活を続けることができた」とPointingさんは振り返っている。 今回の臨床試験では、医療従事者がベンラリズマブの皮下注射を行ったが、家庭や診療所でも安全に投与できる可能性があるとBafadhel氏らは話している。なお、本試験はベンラリズマブを製造するAstraZeneca社の助成を受けて行われた。

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喘息予防・管理ガイドライン改訂、初のCQ策定/日本アレルギー学会

 2024年10月に『喘息予防・管理ガイドライン2024』(JGL2024)が発刊された。今回の改訂では初めて「Clinical Question(CQ)」が策定された。そこで、第73回日本アレルギー学会学術大会(10月18~20日)において、「JGL2024:Clinical Questionから喘息予防・管理ガイドラインを考える」というシンポジウムが開催された。本シンポジウムでは4つのCQが紹介された。ICSへの追加はLABAとLAMAどちらが有用? 「CQ3:成人喘息患者の長期管理において吸入ステロイド薬(ICS)のみでコントロール不良時には長時間作用性β2刺激薬(LABA)と長時間作用性抗コリン薬(LAMA)の追加はどちらが有用か?」について、谷村 和哉氏(奈良県立医科大学 呼吸器内科学講座)が解説した。 喘息の治療において、ICSの使用が基本となるが、ICS単剤で良好なコントロールが得られない場合も少なくない。JGL2024の治療ステップ2では、LABA、LAMA、ロイコトリエン受容体拮抗薬、テオフィリン徐放製剤のいずれか1剤をICSへ追加することが示されている1)。そのなかでも、一般的にICSへのLABAの追加が行われている。しかし、近年トリプル療法の有用性の報告、ICSとLAMAの併用による相乗効果の可能性の報告などから、LAMA追加が注目されており、LABAとLAMAの違いが話題となることがある。  そこで、ICS単剤でコントロール不十分な18歳以上の喘息患者を対象に、ICSへ追加する薬剤としてLABAとLAMAを比較した無作為化比較試験(RCT)について、既報のシステマティックレビュー(SR)2)のアップデートレビュー(UR)を実施した。 8試験の解析の結果、呼吸機能(PEF[ピークフロー]、トラフFEV1[1秒量] )についてはLAMAがLABAと比べて有意な改善を認め、QOL(Asthma Quality of Life Questionnaire[AQLQ])についてはLABAがLAMAと比べて有意な改善を認めたが、いずれも臨床的に意義のある差(MCID)には達しなかった。また、喘息コントロール、増悪、有害事象についてはLABAとLAMAに有意差はなく、同等であった。 以上から、「ICSへの追加治療としてLABAとLAMAはいずれも同等に推奨される(エビデンスの確実性:B[中])」という推奨となった1)。ただし、谷村氏は「ICS/LAMA合剤は上市されていないため、アドヒアランス・吸入手技向上の観点からはICS/LABAが優先されうると考える。個別の症状への効果などの観点から、LABAとLAMAを使い分けることについては議論の余地がある」と述べた。中用量以上のICSでコントロール良好例のステップダウンは? 「CQ4:成人喘息患者の長期管理において中用量以上のICSによりコントロール良好な状態が12週間以上経過した場合にICS減量は推奨されるか?」について、岡田 直樹氏(東海大学医学部 内科学系呼吸器内科学)が解説した。 高用量のICSの長期使用はステロイド関連有害事象のリスクとなることが知られ、国際的なガイドライン(GINA[Global initiative for asthma]2024)3)では、12週間コントロール良好であれば50~70%の減量が提案されている。しかし、適切なステップダウンの時期や方法、安全性については十分な検討がなされていないのが現状であった。 そこで、中用量以上のICSで12週間以上コントロール良好な喘息患者を対象に、ICSのステップダウンを検討したRCTについて、既報のSR4)のURを実施した。 抽出された7文献の解析の結果、ICSのステップダウンは経口ステロイド薬による治療を要する増悪を増加させず、喘息コントロールやQOLへの影響も認められなかった。単一の文献で入院を要する増悪は増加傾向にあったが、イベント数が少なく有意差はみられなかった。一方、重篤な有害事象やステロイド関連有害事象もイベント数が少なく、明らかな減少は認められなかった。 以上から、「中用量以上のICSでコントロール良好な場合はICS減量を行うことが提案される(エビデンスの確実性:C[弱])」という推奨となった1)。岡田氏は、今回の解析はすべての研究の観察期間が1年未満と短く、骨粗鬆症などの長期的なステロイド関連有害事象についての評価がなかったことに触れ、「長期的な高用量ICSの投与により、ステロイド関連有害事象のリスクが増加することも報告されているため、高用量ICSからのステップダウンにより、ステロイド関連有害事象の発現が低下することが期待される」と述べた。FeNOに基づく管理は有用か? 「CQ1:成人喘息患者の長期管理において呼気中一酸化窒素濃度(FeNO)に基づく管理は有用か?」について、鶴巻 寛朗氏(群馬大学医学部附属病院 呼吸器・アレルギー内科)が解説した。 FeNOは、喘息におけるタイプ2炎症の評価に有用であることが報告されている。FeNOは、未治療の喘息患者ではICSの効果予測因子であり、治療中の喘息患者では経年的な肺機能の低下や気道可逆性の低下、増悪の予測における有用性が報告されている。しかし、治療中の喘息におけるFeNOに基づく長期管理の有用性に関するエビデンスの集積は十分ではない。 そこで、臨床症状とFeNO(あるいはFeNOのみ)に基づいた喘息治療を実施したRCTについて、既報のSR5)のURを実施した。 対象となった文献は13件であった。解析の結果、FeNOに基づいた喘息管理は1回以上の増悪を経験した患者数、52週当たりの増悪回数を有意に低下させた。しかし、経口ステロイド薬を要する増悪や入院を要する増悪については有意差がみられず、呼吸機能の改善も得られなかった。症状やQOLについても有意差はみられなかった。ICSの投与量については、減少傾向にはあったが、有意差はみられなかった。 以上から、「FeNOに基づく管理を行うことが提案される(エビデンスの確実性:B[中])」という推奨となった1)。結語として、鶴巻氏は「FeNOに基づく長期管理は、増悪を起こす喘息患者には有用となる可能性があると考えられる」と述べた。喘息の長期管理薬としてのマクロライドの位置付けは? 「CQ5:成人喘息患者の長期管理においてマクロライド系抗菌薬の投与は有用か?」について、大西 広志氏(高知大学医学部 呼吸器・アレルギー内科)が解説した。 小児を含む喘息患者に対するマクロライド系抗菌薬の持続投与は、重度の増悪を減らし、症状を軽減することが、過去のSRおよびメタ解析によって報告されている6)。しかし、成人喘息に限った解析は報告されていない。 そこで、既報のSR6)から小児を対象とした研究や英語以外の文献などを除外し、成人喘息患者の長期管理におけるマクロライド系抗菌薬の有用性について検討した適格なRCTを抽出した。 採用された17文献の解析の結果、マクロライド系抗菌薬は、入院を要する増悪や重度の増悪を減少させず、呼吸機能も改善しなかった。Asthma Control Test(ACT)については、アジスロマイシン群で有意に改善したが、MCIDには達しなかった。同様にAsthma Control Questionnaire(ACQ)、AQLQもマクロライド系抗菌薬群で有意に改善したが、MCIDには達しなかった。 以上から、本解析の結論は「マクロライド系抗菌薬の持続投与は、喘息患者に有用な可能性はあるものの、長期管理に用いることを推奨できる十分なエビデンスはない」というものであった。これを踏まえて、JGL2024の推奨は「マクロライド系抗菌薬を長期管理の目的で投与しないことが提案される(エビデンスの確実性:C[弱])」となった1)。また、この結果を受けてJGL2024の「図6-5 難治例への対応のための生物学的製剤のフローチャート」における2型炎症の所見に乏しい喘息(Type2 low喘息)から、マクロライド系抗菌薬が削除された。■参考文献1)『喘息予防・管理ガイドライン2024』作成委員会 作成. 喘息予防・管理ガイドライン2024.協和企画;2024.2)Kew KM, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2015;2015:CD011438.3)Global Initiative for Asthma. Global Strategy for Asthma Management and Prevention, 2024. Updated May 20244)Crossingham I, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2017;2:CD011802.5)Petsky HL, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2016;11:CD011439.6)Undela K, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2021;11:CD002997.

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喘息は子どもの記憶能力に悪影響を及ぼす

 子どもの喘息は記憶能力の低下と関連し、特に、喘息を早期発症した子どもではその影響が顕著であることが、米カリフォルニア大学デービス校心と脳センターのSimona Ghetti氏らによる研究で示唆された。この研究結果は、「JAMA Network Open」に11月11日掲載された。Ghetti氏らは、「この研究は、子どもの喘息と記憶能力の問題との関連を示した初めてのものだ」と述べている。 米国では、子どもの喘息患者数は460万人程度と見積もられている。論文の筆頭著者である同大学デービス校心理学分野のNicholas J. Christopher-Hayes氏は、「幼少期は記憶能力、より一般的には認知能力が急速に向上する時期だ。子どもに喘息があると、その向上が遅れることが考えられる」と大学のニュースリリースで述べている。 この研究では、9歳から10歳の子ども約1万1,800人を登録して2015年に開始された、思春期脳認知発達(Adolescent Brain Cognitive Development;ABCD)研究の観察データを用いて、喘息が記憶能力に及ぼす影響が縦断的および横断的に検討された。 縦断的な分析では、喘息のある子どもおよび喘息のない子ども(対照群、平均年齢9.89歳、男子51%)237人ずつが対象とされた。喘息のある子どものうち、135人(平均年齢9.90歳、男子56%)は試験開始時に、102人(平均年齢9.88歳、女子53%)は2年後の追跡調査時に、親により喘息のあることが報告されていた(それぞれ、早期発症群、後期発症群)。分析の結果、主要評価項目としたエピソード記憶(個人が経験した出来事に関する記憶)は全体的に向上していたものの、早期発症群では対照群に比べてその向上率が有意に低かったことが明らかになった。後期発症群と対照群との間に有意な差は認められなかった。 横断的な分析では、研究期間のいずれかの時点で喘息があった子ども(1,031人、平均年齢11.99歳、男子57%)と喘息歴のない子ども(1,031人、平均年齢12.00歳、女子54%)が対象とされた。分析の結果、喘息のある子どもでは喘息のない子どもに比べて、エピソード記憶、副次評価項目とした処理速度、抑制力、注意力の全ての指標において、スコアが有意に低いことが示された。 こうした結果を受けてGhetti氏は、「この研究結果は、子どもの認知能力を低下させ得る原因として喘息を考慮することの重要性を強調している」と話す。同氏はさらに、「喘息だけでなく、糖尿病や心臓病などの慢性疾患が子どもの認知能力に問題が生じるリスクを上昇させ得ることに対する認識は高まりつつある。リスクを高める要因やその保護要因について理解する必要がある」と述べている。 研究グループは、本研究で認められたような記憶能力の低下は、長期的な影響を及ぼす可能性があるとの見方を示し、高齢者の喘息が、認知症やアルツハイマー病のリスク増大と関連付けられていることを指摘する。Christopher-Hayes氏は、「喘息は、子どもが大人になってから認知症のようなより深刻な病気を発症するリスクを高める可能性がある」と話す。研究グループはまた、このような記憶能力の低下は、喘息による長期にわたる炎症、あるいは喘息発作による脳への酸素供給の度重なる中断が原因となっている可能性があると推測している。

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Jmedmook94 今日の診療に活かせる 喘息・COPDポイント解説

今日から目の前の患者さんに活かせる!プライマリ・ケア医やジェネラリストの先生方が“今日の診療”において一歩ステップアップすることを目的とした、キュート先生こと田中 希宇人先生の著書がついに完成!喘息、COPDそれぞれについては国内外のガイドラインや治療の手引きなど数々の指針がありますが、何を参考にすれば? という若い先生の声も聞かれます。本書は、「今日から目の前の患者さんに活かせる」というコンセプトのもと、喘息とCOPDのポイントを1冊にまとめました。病態から診察、治療についてのキュート先生のわかりやすい解説に加え、長尾 大志先生、倉原 優先生、中島 啓先生など日本を代表する呼吸器内科の専門家が実臨床でのコツを伝授。キュート先生の質問に各先生が答えるQ&Aも必読です。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大するJmedmook94 今日の診療に活かせる 喘息・COPDポイント解説定価4,180円(税込)判型B5判頁数176頁発行2024年10月編著田中希宇人(日本鋼管病院呼吸器内科診療部長)ご購入はこちらご購入はこちら電子版でご購入の場合はこちら電子版でご購入の場合はこちら

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最近、疲れやすいんです…【漢方カンファレンス】第11回

最近、疲れやすいんです…以下の症例で考えられる処方をお答えください。(経過の項の「???」にあてはまる漢方薬を考えてみましょう)【今回の症例】50代男性主訴易疲労感、腰痛既往気管支喘息病歴1年前から易疲労感を自覚するようになった。仕事はできているが、疲れがなかなか抜けず休日はゴロゴロしている。また腰痛が悪化したこともあり趣味のゴルフがしばらくできていない。これまで健康診断や人間ドックで異常を指摘されたことはない。妻に漢方治療を勧められて受診した。現症身長174cm、体重64kg(BMI 22kg/m2)。体温36.2℃、血圧120/56mmHg、脈拍56回/分 整、呼吸数16回/分。身体所見に特記すべき異常はない。経過初診時「???」3包 分3を処方。(解答は本ページ下部をチェック!)1ヵ月後調子は変わらない。2ヵ月後なんとなく調子がよい。夜間尿の回数が減った。3ヵ月後久しぶりにゴルフができた。6ヵ月後腰痛が軽減している。問診・診察漢方医は以下に示す漢方診療のポイントに基づいて、今回の症例を以下のように考えます。【漢方診療のポイント】(1)病態は寒が主体(陰証)か、熱が主体(陽証)か?(冷えがあるか、温まると症状は改善するか、倦怠感は強いか、など)(2)虚実はどうか(症状の程度、脈・腹の力)(3)気血水の異常を考える(4)主症状や病名などのキーワードを手掛かりに絞り込む【問診】寒がりですか? 暑がりですか?体の冷えを自覚しますか?最近、寒がりになりました。下肢が冷えます。下肢はどこが冷えますか?とくに膝から下が冷えます。入浴では長くお湯に浸かるのが好きですか?冷房は好きですか?入浴時間は長いです。冷房は好きです。飲み物は温かい物と冷たい物のどちらを好みますか?のどは渇きませんか?1日どれくらい飲み物を摂っていますか?よくのどは渇きます。冷たい物をよく飲みます。1日およそ1.0L程度です。<ほかの随伴症状を確認>食欲はありますか?胃は弱くないですか?食欲はあります。胃は丈夫です。倦怠感はありますか?昼食後に眠くなりませんか?横になりたいほどきついですか?朝は調子が悪いですか?疲れやすいですが、いつも横になりたいほどではありません。昼食後に眠くなることはありません。朝は比較的調子がよいです。尿は1日に何回出ますか?夜間尿はありますか?便秘・下痢はありませんか?汗はよくかきますか?尿は1日7~8回で、夜間尿2~3回です。便秘・下痢はありません。汗はよくかきます。よく眠れますか?よく眠れますが、尿のために起きることが最近増えました。腰痛について教えてください。夜間安静時に痛みはありますか?入浴で温まると楽になりますか?動かすとベルトのあたりが痛みます。夜間に痛むことはありません。温まると痛みは軽減します。下肢はむくみますか?靴下の痕はつきませんか?はっきりむくむことはありませんが、夕方には靴下の痕がついています。ほかに気になるところはありませんか?最近、老眼が進んだ気がします。【診察】顔色は普通。脈診ではやや沈、強弱中間脈。また、舌は暗赤色、乾燥した白苔が中等量、舌下静脈の怒張あり、腹診では腹力は中等度、心窩部に抵抗あり。下腹部の腹力の低下あり。四肢末端に明らかな冷えはない。カンファレンス今回は50代前半男性の易疲労感、腰痛が主訴の症例ですね。寒がりになった、下肢、とくに膝下が冷える、入浴時間は長い、などから陰証が示唆されます。しかし触診では冷えを認めない、冷房が好き、横になりたいほどの倦怠感はないということからと強い冷えはないようです。そうだね。少なくとも少陰病でみられるような全身の冷え、倦怠感はないね。ただし、寒がりや下肢の冷えのほか、腰痛が入浴で温まると改善するということは、冷えの関与が考えられるね。入浴で痛みが軽減するかどうかも有用な情報になるのですね。少陰病ほど強い冷えはないとすると太陰病ですね。冷えの程度が軽いことから太陰病が考えやすいですね。虚実はどうでしょう?脈は強弱中間、腹力は中等度であることから虚実間と考えられます。そうですね。では漢方診療のポイント(3)の気血水の異常を考えましょう。疲れやすいというものの、食欲があって、昼食後の眠気はないということで気虚ということではなさそうです。朝調子が悪いという気欝の特徴もありません。血の異常(瘀血)では、舌暗赤色、舌下静脈の怒張でしょうか。倦怠感の漢方医学的鑑別が上手になりましたね。あとは、浮腫はないけれども下肢に靴下の痕がつくということを軽度の水毒(第9回「今回のポイント」の項参照)と考えてもよいでしょう。排尿異常も水毒とみなしますので、夜間頻尿も水毒と考えます。本症例では、易疲労感に加えて、瘀血や水毒の異常があるということですね。そのほかには、夜間頻尿、腰痛、老眼と現代医学的には複数の科に渡る症状が並んでいます。これらはすべて加齢に伴ってよく出現するものだと思うのですが…。漢方では加齢に伴って出現する症状をまとめて、加齢とともに腎の機能が衰えてくる「腎虚」(本ページ下部の「今回のポイント」の項参照)と考えて治療をするよ。そうすると本症例の夜間頻尿、下肢の冷え、腰痛、老眼などが一連の症状として考えることができますね。また、本症例の腹部の診察で、上腹部と比べて、下腹部の抵抗が弱いことを小腹不仁(しょうふくふじん)とよびます(写真)。これは腎虚を示唆する腹部の所見です。それでは本症例をまとめましょう。【漢方診療のポイント】(1)病態は寒が主体(陰証)か、熱が主体(陽証)か?寒がり、下肢(とくに膝下)が冷える、長湯できる、冷房が好き、冷水を好む、横になりたいほどの倦怠感はない脈:やや沈→陰証(太陰病)(2)虚実はどうか脈:強弱中間、腹力:中等度→虚実間(3)気血水の異常を考える疲れやすい→気虚?舌暗赤色、舌下静脈の怒張→瘀血下肢浮腫、夜間頻尿→水毒浮腫、夜間頻尿、腰痛、老眼→腎虚(4)主症状や病名などのキーワードを手掛かりに絞り込む下肢の冷え、小腹不仁解答・解説【解答】以上から本症例は、腎虚に対して用いる八味地黄丸(はちみじおうがん)を用いて治療しました。【解説】腎虚に対する治療薬が八味地黄丸です。もとの古典を参考に八味丸という名前で丸剤として製造するメーカーもあります。主に下半身の症状が多く、冷えはとくに膝下が冷えることが特徴です。腰痛、下肢痛、下肢のしびれなどのほか、排尿異常(とくに夜間頻尿)、下肢浮腫などが代表的な症状で、視力障害、聴力障害、精力減退なども含まれます。もちろん加齢に伴う症状ですから内服によりすべての症状が改善するとはいえませんが、じっくりと内服することで症状が軽減していくことはよく経験します。構成生薬では、地黄(じおう)、山茱萸(さんしゅゆ)、山薬(さんやく)が体を栄養・滋潤する作用があるとされ、そのほか利水作用のある沢瀉(たくしゃ)、茯苓(ぶくりょう)、駆瘀血作用のある牡丹皮(ぼたんぴ)に加え、体を温める附子(ぶし)などが含まれます。八味地黄丸は太陰病の虚証に適応となる漢方薬ですが、虚証の程度は軽く、虚実間からやや実証まで、幅広く適応になります。そのためひどく虚弱で胃が弱い人ではしばしば胃もたれすることがあるので注意が必要です。そのため食前ではなくあえて食後に内服する、あるいは減量して用いる場合もあります。八味地黄丸に牛膝(ごしつ)と車前子(しゃぜんし)が加わったものが牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)で浮腫が強い、しびれが強いなどの場合に用います。また、腎虚はあるものの冷えが目立たない症例では桂皮(けいひ)と附子を除いた六味丸(ろくみがん)という漢方薬もあります。八味地黄丸が適応となるのは、高齢者でも倦怠感や腰痛などのひどい症状があって困っている状態や施設で寝たきりの高齢者よりも、元気に外来通院してくる人というイメージです。また、内服して短期間に効果を実感できることは少なく、数ヵ月間じっくりと内服して、少しずつ症状が改善していくことが多いため、注意深く効果判定する必要があります。そのため効果判定として、夜間尿は回数として客観的に評価できるのでお勧めです。今回のポイント「腎虚」の解説生命活動を営む根源的エネルギーである気は「先天の気」と「後天の気」に分けられます。生まれた後は、呼吸や消化によって後天の気を取り入れることができます。一方、先天の気は、生まれながらの生命力というべきもので、「腎は先天の気を主(つかさど)る」といわれ、漢方医学的な腎に宿ります。腎は成長、発育、生殖能などと関連し、腎の働きは年齢とともに弱くなります。腎の機能が衰えてくることを腎虚といい、加齢に伴って出現する排尿異常、下半身の冷えや痛み、聴力障害、視覚障害、精力減退などをまとめて腎虚による症状と考えることができます。

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喘息・COPD好酸球性増悪へのベンラリズマブ、症状・治療失敗率を改善/ERS2024

 好酸球性増悪は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)増悪の30%、喘息増悪の50%を占めるとされている。治療には経口ステロイド薬(OCS)が用いられることがあるが、治療効果は短く、治療失敗率も高いという課題が存在する。そこで、好酸球を速やかに除去する作用を有するベンラリズマブの好酸球性増悪に対する効果を検討することを目的として、海外第II相無作為化比較試験「ABRA試験」が実施された。その結果、ベンラリズマブはOCSのプレドニゾロンと比較して、28日後における症状と90日後における治療失敗率を改善することが示された。2024年9月7~11日にオーストリア・ウィーンで開催された欧州呼吸器学会(ERS International Congress 2024)において、英国・オックスフォード大学のMona Bafadhel氏が報告した。・試験デザイン:海外第II相無作為化比較試験・対象:過去12ヵ月間に1回以上の増悪があり、好酸球性増悪(増悪時の好酸球数が300cells/μL以上)の認められる喘息またはCOPD患者・試験群1(ベンラリズマブ+プレドニゾロン群):ベンラリズマブ(100mg単回、皮下投与)+プレドニゾロン(30mg×5日、経口投与) 52例・試験群2(ベンラリズマブ群):ベンラリズマブ(同上) 53例・対照群(プレドニゾロン群):プレドニゾロン(同上) 53例・評価項目:[主要評価項目]28日後におけるVASで評価した症状、90日後における治療失敗率(死亡、入院、再治療)[副次評価項目]治療失敗までの期間、MRC息切れスケールで評価した息切れ、呼吸機能など なお、ベンラリズマブ+プレドニゾロン群とベンラリズマブ群を統合し(ベンラリズマブ統合群)、プレドニゾロン群との比較により評価した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者の内訳は、喘息が55.7%(88例)、COPDが32.2%(51例)、喘息とCOPDのオーバーラップが12.0%(19例)であった。・主要評価項目の28日後におけるVASで評価した症状のベースラインからの変化量(平均値)は、プレドニゾロン群が103であったのに対し、ベンラリズマブ統合群は152であり、ベンラリズマブ統合群が有意に改善した(p=0.006)。・28日後におけるVASで評価した症状のベースラインからの変化量のサブグループ解析において、ベンラリズマブ+プレドニゾロン群、ベンラリズマブ群はいずれもプレドニゾロン群と比べて有意に改善した(それぞれp=0.013、p=0.027)。・主要評価項目の90日後における治療失敗率は、プレドニゾロン群が73.6%(39例)であったのに対しベンラリズマブ統合群は45.2%(47例)であり、ベンラリズマブ統合群が有意に治療失敗率を改善した(オッズ比:0.264、95%信頼区間[CI]:0.125~0.556、p<0.001)。・90日後における治療失敗率のサブグループ解析において、ベンラリズマブ+プレドニゾロン群、ベンラリズマブ群はいずれもプレドニゾロン群と比べて有意に改善した(それぞれp<0.001、p=0.005)。・治療失敗までの期間は、ベンラリズマブ統合群がプレドニゾロン群と比べて有意に改善した(ハザード比:0.393、95%CI:0.252~0.612、p<0.001)。・28日後におけるMRCスケールの群間差は0.39(95%CI:0.08~0.69、p=0.013)であり、ベンラリズマブ統合群が有意に改善した。 本研究結果について、Bafadhel氏は「ベンラリズマブ単回投与は、好酸球性増悪に対する標準治療のプレドニゾロンに対し、優越性を示した」とまとめた。

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漫然使用のツロブテロールテープの処方意図を探って中止を提案【うまくいく!処方提案プラクティス】第61回

 今回は、長期使用されていたLABA貼付薬について疑問を抱き、スタッフ間の情報共有および医療連携を通じて中止を提案した事例を紹介します。患者さんが使用している薬剤の服用理由や開始の経緯が不明瞭な場合、改めて確認することが重要です。そうすることで、思わぬ漫然使用が明らかになることがあります。患者情報80歳、男性(施設入居)基礎疾患アルツハイマー型認知症、高血圧、前立腺肥大症、糖尿病介護度要介護2服薬管理施設職員が管理処方内容1.アムロジピン錠2.5mg 1錠 分1 朝食後2.ジスチグミン錠0.5mg 1錠 分1 朝食後3.タムスロシン錠0.2mg 1錠 分1 朝食後4.ダパグリフロジン錠10mg 1錠 分1 朝食後5.テネリグリプチン錠20mg 1錠 分1 朝食後6.メマンチン錠20mg 1錠 分1 夕食後7.レンボレキサント錠5mg 1錠 分1 就寝前8.ツロブテロールテープ2mg 1枚 14時貼付本症例のポイントこの患者さんは、約3ヵ月前に施設に入居しました。薬剤の自己管理能力が乏しく、投薬や管理は施設職員が行っていました。嚥下機能に問題はなく、食事量もムラがなかったため、経口血糖降下薬のシックデイに関する懸念もない状況でした。2週間に1回の施設訪問の際に服用状況のモニタリングを実施したところ、ツロブテロールテープの使用に疑問を感じました。ツロブテロールテープは、気管支喘息や急性・慢性気管支炎、肺気腫を適応疾患1)としていますが、この患者さんにはこれらの既往がなく、夜間の咳や呼吸困難感などの症状も認められませんでした。そこで、初回介入した担当薬剤師の記録を確認したところ、施設入居前にCOVID-19関連肺炎で入院していたことが判明しました。COVID-19関連肺炎の急性期症状緩和のために処方されたツロブテロールテープが、退院後も漫然と継続されていた可能性があります。現状の呼吸機能や自覚症状から治療負担を検討し、テープの中止を提案することにしました。医師への相談と経過医師の訪問診療に同席し、ツロブテロールテープが3ヵ月間使用されていることを伝え、気管支疾患の既往や症状緩和の目的があるかどうかを確認しました。医師からも該当疾患がないことを聴取し、やはりCOVID-19関連肺炎の急性期治療の一環として使用されていたと推察されました。長期的なLABA貼付薬の使用は適切ではないという医師の判断により、当日の昼からテープが中止となりました。介護士には意図を説明するとともに、念のため昼夜の症状モニタリングを依頼しました。その後、夜間の呼吸困難感や咳症状は現れずに1週間が経過しました。長期的な観察でも気道症状の変化はなく、ツロブテロールテープの完全中止に成功しました。1)ホクナリンテープ添付文書

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最近増加している好酸球性食道炎に生物学的製剤は有効か?(解説:上村直実氏)

 好酸球性消化管疾患は、食道・胃・十二指腸・小腸・大腸の消化管のいずれかに好酸球が浸潤して炎症を引き起こすアレルギー性疾患の総称であるが、確定診断が難しいことから比較的まれな疾患で厚生労働省の指定難病として告示されている。胸焼け、腹痛、下痢といったさまざまな消化器症状を引き起こすが、一般的には好酸球性食道炎と胃から大腸までのいずれかもしくは複数の部位に炎症の主座を有する好酸球性胃腸炎に大別されているが、最近の診療現場では好酸球性食道炎が増加している。つかえ感や胸焼けを慢性的に自覚する患者に対して行われる上部消化管内視鏡検査で、本疾患に特徴的な内視鏡所見である縦走溝や輪状溝および白苔を認めた際に行う生検組織を用いた組織学的検査により確定診断されるケースが多いが、健康診断や人間ドックなどで受けた内視鏡検査の際に偶然発見される無症状の症例も増加している。本疾患が気管支喘息などのアレルギー性疾患の合併率が高いことも、留意しておくべきである。 わが国における好酸球性食道炎に対する治療は、保険適用になっていないプロトンポンプ阻害薬やステロイド吸入薬の内服が使用される場合が多いが、それでも症状が改善しない場合は、全身性ステロイドの内服や原因として疑われる食材を除去する食事療法が行われている。以上の一般的治療でも症状が難治性の場合、海外では生物学的製剤の開発が進みつつある。難治性のアトピー性皮膚炎や気管支喘息および鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎の治療薬であるインターロイキンIL-4/IL-13のシグナル伝達を阻害する完全ヒト型モノクローナル抗体であるデュピルマブが、好酸球性食道炎に対しても承認されている。すなわち、2022年12月22日号のNEJM誌に掲載された国際共同試験の結果において、12歳以上の好酸球性食道炎患者を対象としたデュピルマブ週1回皮下投与は、組織学的寛解率を改善すると共に嚥下障害症状を軽減することが明らかとなり、さらに11歳以下の小児を対象とした第III相無作為化試験において組織学的所見の改善を認めた結果が、2024年6月27日号のNEJM誌に掲載されると同時に米国などで承認されている。 今回、好酸球を減少させる抗IL-5受容体αモノクローナル抗体であるベンラリズマブの有用性と安全性を検証した第III相多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験「MESSINA試験」の結果も、2024年6月27日号のNEJM誌で報告された。試験の結果、好酸球性食道炎に対し、ベンラリズマブはプラセボと比較して組織学的寛解率が有意に高かったものの、嚥下障害の症状に関しては有意な改善は認められなかった。以前の報告から、ベンラリズマブは血液、骨髄、肺、胃、食道組織における好酸球のほぼ完全な減少をもたらす薬剤であり、好酸球性食道炎の治療薬としても期待されたが、浸潤好酸球の減少が症状の改善につながらなかった結果から、今後、好酸球浸潤と症状発現の機序が残された課題と思われる。 現在、国内においてPPIや生物学的製剤も含めて好酸球性食道炎に対して保険適用となっている薬剤は皆無であるが、今後、増加傾向のあるアレルギー疾患である好酸球性食道炎の新たな知見に注目しておく必要があると思われた。

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COPD・喘息の早期診断の意義(解説:田中希宇人氏/山口佳寿博氏)

 COPD(chronic obstructive pulmonary disease:慢性閉塞性肺疾患)は2021年の統計で1万6,384例の死亡者数と報告されており、「健康日本21(第三次)」でもCOPDの死亡率減少が目標として掲げられている。気管支喘息も、年々死亡者数は減少しているとはいえ、同じく2021年の統計で1,038例の死亡者数とされており、ガイドラインでも「喘息死を回避する」ことが目標とされている。いずれも疾患による死亡を減少させるために、病院に通院していない、適切に診断されていないような症例をあぶり出していくことが重要と考えられている。しかしながら、疾患啓発や適正な診断は容易ではない。現在、COPD前段階ということで、「Pre COPD」や「PRISm」といった概念が提唱されている。閉塞性換気障害は認めないが画像上での肺気腫や呼吸器症状を認めるような「Pre COPD」や、同じく1秒率が閉塞性換気障害の定義を満たさないが、%1秒量が80%未満となるような「PRISm」であるが、それらの早期発見や診断、そして治療介入などが死亡率の減少に寄与しているかどうかについては明らかになっていない。 今回NEJM誌から取り上げるカナダ・オタワ大学からの「UCAP Investigators」が行った報告では、症例発見法を用いたCOPD・気管支喘息の診断と治療により、呼吸器疾患に対する医療の利用が低減することが示された。約3万8,000例の中から、595例の未診断のCOPD・喘息が発見され、介入群と通常治療群に分けられ、呼吸器疾患による医療利用の発生率が評価されている。ガイドラインによる治療を順守するような呼吸器専門医の介入により、被検者の医療利用は有意に低下することが報告された。早期診断・治療を受けることにより、SGRQスコアとCATスコアや1秒量が改善することが示され、症例の健康維持に寄与することが期待されている。また、早期診断することにより、自らの病状の理解や自己管理の重要性を認識することも重要と考えられる。 一見、病気はすべて早期発見・早期治療が良いように思われるが、いくつかの問題点も考えられる。1つは軽症や無症状の症例が診断されることにより、生命予後に寄与しない治療が施される可能性がある。診断された患者は不安や精神的・心理的なストレスを抱えることも懸念される。2つ目に、限りある医療資源を消費してしまうことが推測される。呼吸器専門医や呼吸器疾患に携わる医療者は本邦でも潤沢にいるわけではなく、呼吸器専門医が不在の医療機関も少なくない。より重症や難治例のために専門医の意義があるわけで、軽症例や無症状の症例に対してどこまで介入できるか、忙しい日本の臨床の現場では現実的ではない部分が大きい。3つ目には薬物療法の早期開始により、副作用リスクがメリットを上回る可能性も不安視される。とくに吸入ステロイドによる局所の感染症や糖尿病や骨粗鬆症のリスクは、長期使用となると見逃すことはできないのだろう。 いずれにしても症例発見法は簡便であり多くの医療機関で導入可能と筆者は訴えているが、COPD・喘息の早期診断・早期介入が医療利用の低減のみならず、長期予後や死亡率の減少などにつながるかどうか、より長期的な検討が必要なのだろう。

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スパイロなしでも胸部X線画像で呼吸機能が予測可能!?

 スパイロメトリーなどを用いた呼吸機能検査は、喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの呼吸器疾患の管理に不可欠な検査である。しかし、高齢者や小児などでは正確な評価が困難な場合がある。また、新型コロナウイルス感染症流行時には、感染リスクを考慮して実施が控えられるなど、実施が制限される場合もある。そこで、植田 大樹氏(大阪公立大学大学院医学研究科人工知能学 准教授)らの研究グループは、14万枚超の胸部X線画像をAIモデルの訓練・検証に使用して、胸部X線画像から呼吸機能を推定するAIモデルを開発した。その結果、本AIモデルによる呼吸機能の推定値は、実際の呼吸機能検査の測定値と非常に高い一致率を示した。本研究結果は、Lancet Digital Health誌オンライン版2024年7月8日号で報告された。 本研究では、2003~21年の期間に収集した胸部X線画像14万1,734枚を用いて、3施設でAIモデルの訓練・内部検証を実施し、2施設で外部検証を実施した。外部検証では、努力性肺活量(FVC)と1秒量(FEV1)について、AIモデルの推定値とスパイロメトリーによる呼吸機能検査の実測値を比較した。 主な結果は以下のとおり。・外部検証の2施設におけるFVCについて、AIモデルによる推定値と実測値には強い相関があり(それぞれr=0.91、0.90)、誤差は小さかった(いずれの施設も平均絶対誤差[MAE]=0.31L)。・同様に、FEV1についても推定値と実測値には強い相関があり(いずれの施設もr=0.91)、誤差は小さかった(それぞれMAE=0.28L、0.25L)。・予測値に対するFVC(%FVC)80%未満、予測値に対するFEV1(%FEV1)80%未満、1秒率(FEV1/FVC)70%未満についても、AIモデルは高い予測能を示した。それぞれに関する2施設のROC曲線のAUCは以下のとおり。 %FVC 80%未満:それぞれ0.88、0.85 %FEV1 80%未満:いずれの施設も0.87 FEV1/FVC 70%未満:それぞれ0.83、0.87 著者らは、本研究結果について「本研究で開発したAIモデルは、胸部X線画像から呼吸機能を高精度に推定できる可能性を世界で初めて示した。本AIモデルは、呼吸機能検査の実施が困難な患者に対し、呼吸機能評価の選択肢を増やすことが期待される。今後は、異なる集団や環境下での性能を確認するとともに、実際の診療で使用した際の効果や影響を慎重に見極めていく必要がある」とまとめた。

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事例003 モンテルカストナトリウムの査定【斬らレセプト シーズン4】

解説「急性気管支炎」の傷病名にてモンテルカストナトリウム(以下「同錠」)を処方したところ、D事由(告示・通知の算定要件に合致していないと認められるもの)で査定となりました。査定原因を調べるために、まずは添付文書を参照しました。同錠の効能・効果には「気管支喘息」と「アレルギー性鼻炎」が適応と記載されていました。作用機序をたどると、「体内物質ロイコトリエンの働きを抑える」とあり、気管支を広げたりアレルギー反応などを抑えたりすることを目的に、長期の服用が推奨される薬剤であることがわかります。したがって、喘息とは原因が異なる慢性ならびに急性の気管支炎には有用性が低いとして認められなかったものと推測できました。医師には経験値から有効性が認められていても、コンピュータチェックが進む今日では、添付文書の改訂がない限り査定対象となることを説明しました。薬剤処方システムには、病名を確認するアラートを表示させるようマスター設定を行い査定対策としました。

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アトピー性皮膚炎の症状を改善するレブリキズマブ発売/リリー

 日本イーライリリーは、アトピー性皮膚炎の治療薬である抗ヒトIL-13モノクローナル抗体製剤レブリキズマブ(商品名:イブグリース)を2024年5月31日より販売を開始した(製造販売承認日は2024年1月18日、薬価収載日は2024年4月17日)。このレブリキズマブの販売に合わせて、都内で「アトピー性皮膚炎患者さんの抱えるアンメットニーズおよび新たな選択肢」をテーマにメディアセミナーを開催した。 セミナーでは、皮膚科専門医によるアトピー性皮膚炎の現状と課題、患者さんの意識調査の結果、レブリキズマブの臨床試験について説明が行われた。アトピー性皮膚炎の患者さんは10人に1人の時代 「アトピー性皮膚炎患者さんのアンメットニーズについて」をテーマに中原 剛士氏(九州大学大学院 医学研究院 皮膚科学分野 教授)が、現在のアトピー性皮膚炎の診療状況や患者さんなどへのアンケート調査の結果を解説した。 日本アレルギー学会発行の『アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2021』の定義では、「アトピー性皮膚炎は、増悪・寛解を繰り返す、そう痒のある湿疹を主病変とする疾患であり、患者の多くはアトピー素因を持つ」とされ、アトピー素因は(1)家族歴・既往歴(気管支喘息、アレルギー性鼻炎・結膜炎、アトピー性皮膚炎のうちいずれか、あるいは複数の疾患)があること、または(2)IgE抗体を産生しやすい素因とされる。そして、最近の研究では免疫細胞が放出するサイトカインが痒みの情報伝達を担うことが解明され、サイトカインを抑止する治療薬の開発も行われている。 治療では、主流となるステロイドの外用薬のほか2008年に経口の免疫抑制剤、2018年には注射の生物学的製剤、2020年には経口・外用のJAK阻害薬、2022年には注射の生物学的製剤が承認され、今では全身療法の治療薬も開発され、発売されている。 疫学として10人に1人の患者さんが現在ではアトピー性皮膚炎と推定され、非常に身近な皮膚疾患となっている。症状の特徴として「強い痒みを伴う発疹」が1番の問題であり、この発疹が広がると患者さんは睡眠を妨げられる、皮膚をかくことで外見に赤みなどが目立つなどでQOLを著しく低下させる。これらの症状は、5歳くらいまでに患者さんの約80%に出現し、中でも乳児期の発症が多いとされている。 アトピー性皮膚炎の治療目標は、「症状がないか、あっても軽微で、日常生活に支障がなく、薬物療法もあまり必要としない状態に到達し、それを維持すること」であり、「このレベルに到達しない場合でも、症状が軽微ないし軽度で、日常生活に支障を来すような急な悪化が起こらない状態を維持すること」とされ、病状が安定した状態であれば、長期寛解を目指すこともできる。 そのためには、炎症に対する外用療法が行われるが、その際には「適切な強さの外用薬を、適切な量、適切な期間に外用する」の3つの要素が重要となる。治療では、大きく2つの時間の流れがある。最初に外用薬をしっかり速やかに使う「寛解導入」と皮膚の炎症を抑え、スキンケアと同時に皮膚の湿疹がない状態を維持する「寛解維持」に分かれるが、「コントロール不良」「使える治療薬の制限」「外用薬の塗布不足」などの事由で寛解維持が難しい患者さんも多く、課題となっている。アトピー性皮膚炎の患者さんの半数以上は現状の治療に満足していない 次に「アトピー性皮膚炎患者さんと一般生活者に対する意識調査」の結果について触れ、アトピー性皮膚炎患者が日常生活で困っていることや治療への満足度の結果などを報告した。この調査は、2024年1月にWEBにてアトピー性皮膚炎患者436人と一般生活者309人の合計745人に行われたもの。 主な調査結果は以下のとおり。・患者の平均発症年齢は8.3歳で9歳以下が67%だった。・患者さんが主に困っていることは、「塗り薬の塗布に時間がかかること」(33.5%)、「保湿に時間がかかる」(30.5%)、「塗り薬がべたつき不快」(29.4%)の順で多かった。・患者さんがアトピー性皮膚炎で諦めたことは、「素材を選ばす服を着用」(74%)、「プールや海に行く」(65%)、「ピアスなどのアクセサリーの着用」(65%)の順で多かった。・アトピー性皮膚炎の治療のための通院を多忙ゆえに先送りした患者さんは71%に上り、治療に使う時間がないほうがよいと考える患者さんは94.3%だった。・治療の満足度については、「(非常に・やや)満足している」と回答した患者さんは44%だった。・医師とのコミュニケーションの満足度では「(非常に・やや)満足している」と回答した患者さんは、生物学的製剤とJAK阻害薬を使用している患者さんで73%、生物学的製剤とJAK阻害薬を使用していない患者さんで54%と治療薬の違いにより回答割合が異なった。 最後に中原氏はアンケートの結果を踏まえ「アトピー性皮膚炎の患者さんは、きちんと通院し、医師と積極的に困りごとについてコミュニケーションをとることで、最適な治療の選択につなげてほしい」と語りレクチャーを終えた。4週間隔の投与で患者さんのQOLを改善する治療薬 「アトピー性皮膚炎治療の新たな選択肢イブグリースについて」をテーマに板倉 仁枝氏(日本イーライリリー 研究開発・メディカルアフェアーズ統括本部/医師)が、レブリキズマブの特徴と臨床試験の概要を説明した。 レブリキズマブは、アトピー性皮膚炎の中心的メディエーターであるIL-13に高親和性で結合するヒト化抗ヒトIL-13モノクローナル抗体。IL-13受容体複合体(IL-4Rα/IL-13Rα1)の形成を阻害することで、それを介したIL-13シグナル伝達を特異的に阻害し、アトピー性皮膚炎の病態形成を抑制する。通常、成人および12歳以上かつ体重40kg以上の小児に対し、初回および2週後に500mg、4週以降は250mgを2週間隔で皮下投与するが、患者の状態に応じ4週以降は250mgを4週間隔で皮下投与することもできる。なお、薬価は、250mgオートインジェクター、250mgシリンジともに6万1,520円となっている。 レブリキズマブの第III相の臨床試験は大きく6つの試験で構成され、とくに“ADhere J(KGAL)試験”では、わが国のアトピー性皮膚炎患者の導入期・維持期で局所コルチコステロイド(TCS)との併用療法での効果が評価された。本試験では、30日のスクリーニング期間後に導入期としてレブリキズマブ250mg 2週間隔(Q2W)+TCS(n=123)、同250mg4週間隔(Q4W)+TCS(n=81)、プラセボQ2W+TCS(n=82)の3群に分け16週間観察した。その後、維持期としてレブリキズマブ250mgQ2W+TCS(n=32)、同250mgQ4W+TCS(n=33)、同250mgQ4W+TCS(n=38)、プラセボQ2W+TCS(n=11)に分け、52週間の効果を評価した。 その結果、16週時のベースラインからのDLQIスコア*4ポイント以上の改善達成率は、プラセボ+TCS群(n=63)が20.6%だったのに対し、レブリキズマブ250mgQ4W+TCS群(n=60)が53.3%、同250mgQ2W+TCS群(n=96)が68.8%と有意に改善していた。 また、16~68週時のDLQIスコア4ポイント以上の改善維持割合は、レブリキズマブ250mgQ4W/Q4W+TCS(n=18)で72.2%、同250mgQ2W/Q2W+TCS(n=18)で77.8%、同250mgQ2W/Q4W+TCS(n=18)で83.3%だった。 安全性について、導入および維持期を通じて重篤な有害事象は3.6%で報告され、主な有害事象としては上咽頭炎、結膜炎、頭痛、発熱などが認められた。 板倉氏は最後に「レブリキズマブは、導入期からの効果と長期に持続する効果を通してアトピー性皮膚炎の症状のみならず治療負担の軽減に貢献できる新たな治療選択肢となる」と展望を語った。*DLQIスコアとは、皮膚疾患が患者のQOL(Quality of Life)に与える影響について評価する指標。10項目の質問からなり、30点満点で評価し、5点以上の改善は、臨床的に意義がある改善とされている。アトピー性皮膚炎、乾癬、慢性蕁麻疹などで使用される。

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SMART療法を処方される喘息患者は少ない

 吸入ステロイド薬(ICS)と長時間作用型β2刺激薬(LABA)の合剤を、喘息の長期管理薬としても発作発現時の治療薬としても用いる治療法をSMART(スマート)療法という。この治療法は、全米喘息教育予防プログラムと喘息グローバルイニシアチブのそれぞれのガイドラインで使用が推奨されている。しかし、新たな研究で、中等度から重度の成人喘息患者のうち、SMART療法が処方されているのはわずか15%程度に過ぎず、呼吸器およびアレルギー専門医の40%以上がこの治療法を採用していないことが明らかになった。米イエール大学医学部の呼吸器・集中治療医であるSandra Zaeh氏らによるこの研究結果は、米国胸部学会(ATS 2024、5月17〜22日、米サンディエゴ)で発表された。 米国でのSMART療法には、ICSのブデソニドと、即効性の気管支拡張作用を併せ持つLABAであるホルモテロール配合のシムビコートや、モメタゾン(ICS)とホルモテロール配合のDuleraなどがある。SMART療法が登場する以前の喘息のガイドラインでは、長期管理薬として1日2回のICSの使用に加え、発作時には短時間作用型β2刺激薬(SABA)のアルブテロールのようなレスキュー薬の使用が推奨されていた。その後、2021年までに米国のガイドラインが更新され、維持療法とレスキュー療法の両方の目的でSMART療法を用いることが推奨されるようになった。研究グループは、2種類の吸入薬を使い分ける従来の治療法と比べて、両薬剤を一つに配合したSMART療法は喘息の症状や発作を有意に軽減することが示されていると説明する。 この研究では、米国北東部のヘルスケアシステムの電子カルテを用いて、中等度から重度の喘息患者におけるSMART療法の処方動向が調査された。対象は、2021年1月から2023年8月の間に1回以上呼吸器・アレルギークリニックで診察を受け、長期管理薬としてICSとLABA、またはICSのみを処方されていた喘息患者1,502人(平均年齢48.6歳、女性75.2%)であった。 その結果、44%(656/1,502人)の患者にICSとホルモテロールが長期管理薬として処方されており、SMART療法として処方されていたのはわずか15%(219/1,502人)に過ぎないことが明らかになった。また、SMART療法が処方されていた患者の89%(195/219人)は、SABAも同時処方されていた。さらに、SMART療法は、高齢患者とメディケア受益者に処方されにくい傾向のあることも示された。 Zaeh氏は、「これらの結果は、現行の喘息管理ガイドラインが臨床医によって日常的に実施または採用されていないことを示唆している」と述べている。イエール大学医学部のZoe Zimmerman氏は、「医療提供者は、高齢患者に対して新しい吸入レジメンを試すことに消極的だ。特に、患者が何年も同じ吸入薬を使用している場合、その治療レジメンを変更することに抵抗を感じやすい」との見方を示す。 研究グループによると、過去の研究では、ガイドラインが医師に広く採用されるようになるまでには15年以上かかることが指摘されているという。Zaeh氏は、「今回の研究結果は、臨床医によるガイドラインの採用には時間がかかるという考えを補強するものだ」と話している。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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症例発見法によるCOPD・喘息の早期診断、医療利用の低減に/NEJM

 未診断の慢性閉塞性肺疾患(COPD)または喘息の成人を特定するための症例発見法(case-finding method)によって呼吸器専門医の指示による治療を受けた患者は、通常治療の患者と比較して、その後の呼吸器疾患による医療利用が少なくなることが、カナダ・オタワ大学のShawn D. Aaron氏らUCAP Investigatorsが実施した「UCAP試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2024年5月19日号に掲載された。カナダ17施設の無作為化対照比較試験 研究グループは、未診断のCOPDまたは喘息を有する患者では、症例発見法を用いた早期の診断と治療により、呼吸器疾患に対する医療利用が低減し、健康アウトカムが改善するかを検証する目的で無作為化対照比較試験を実施し、2017年6月~2023年1月にカナダの17施設で参加者を登録した(カナダ保健研究機構[CIHR]の助成を受けた)。 症例発見法により、肺疾患の診断を受けていないが呼吸器症状を呈する成人を特定した。被験者を、ガイドラインに基づく治療を開始するよう指示された呼吸器専門医と喘息/COPD指導員による評価を受ける群(介入群)、またはプライマリケア医による通常治療を受ける群(通常治療群)に無作為に割り付けた。 主要アウトカムは、呼吸器疾患に対する参加者の自主的な医療利用の年間発生率とした。SGRQ、CAT、FEV1も良好 受診した3万8,353例中595例で未診断のCOPDまたは喘息を発見し、このうち508例を無作為化の対象とした。253例が介入群(平均年齢63.4[SD 13.4]歳、男性64%)、255例が通常治療群(62.8[13.6]歳、58%)に割り付けられた。 主要アウトカムのイベントの年間発生率は、通常治療群に比べ介入群で有意に低かった(0.53件vs.1.12件/人年、発生率比:0.48、95%信頼区間[CI]:0.36~0.63、p<0.001)。 St. George Respiratory Questionnaire(SGRQ、0~100点、点数が低いほど健康状態が良好)で評価した疾患特異的QOLは、通常治療群ではベースラインから6.8点低下したのに対し、介入群では10.2点の低下と良好であった(群間差:-3.5点、95%CI:-6.0~-0.9)。 COPD評価テスト(CAT、0~40点、点数が低いほど健康状態が良好)で評価した症状負担は、通常治療群ではベースラインから2.6点低下したのに比べ、介入群では3.8点低下し良好であった(群間差:-1.3点、95%CI:-2.4~-0.1)。 また、1秒量(FEV1)は、通常治療群ではベースラインから22mL増加したのに対し、介入群では119mLの増加であった(群間差:94mL、95%CI:50~138)。有害事象は両群で同程度 有害事象の発生は両群で同程度であり、介入群では21例に24件、通常治療群では14例に16件発生した。めまいや失神(スパイロメトリー検査による)、筋肉のけいれん(処方された呼吸器疾患治療薬による可能性がある)に関連するものが多かった。入院に至る重篤な有害事象は、介入群で5件、通常治療群で7件報告された。12ヵ月の追跡期間中に、介入群で2例(心停止、肺がん)、通常治療群で2例(心停止、肝不全)の死亡が発生した。 著者は、「この症例発見法は、多くの医療システムに導入可能であり、未診断のCOPDまたは喘息患者における診断と治療の改善に寄与する可能性がある」としている。

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島根県の呼吸器診療の未来を支えるクラウドファンディングを開始/島根大学

 島根大学医学部 呼吸器内科が中心となり「島根県の呼吸器診療の未来を支えるクラウドファンディング」を開始した。進む高齢化、不足する呼吸器専門医 島根は全国的にも高齢化が進んでいる県であり、令和4年の高齢化率は34.7%で全国第7位である1)。高齢者は免疫機能が低下していることもあり、感染症やがんなど呼吸器疾患の発症率も高い。それに対して、島根では全県的に呼吸器専門医が不足しており、地域によっては専門医がいないという深刻な状況だ。このまま地域の呼吸器専門医が不在の状態が続くと呼吸器診療体制が形成できず、早期診断、疾患予防の輪が広がらないとされる。 そのような中、島根大学医学部の呼吸器内科教授である礒部 威氏をプロジェクトリーダーとして、「呼吸器専門医の育成」「非専門医師の呼吸器疾患の知識向上」「一般の方むけの啓発」をサポートするクラウドファンディングがスタートした。難易度高い呼吸器専門メディカルスタッフの育成 高齢者は複数の慢性疾患を抱えていることが多い。高齢者が多い島根では「内科全般の知識を有する」呼吸器専門医の育成が重要な課題だ。また、呼吸器専門医の診療範囲は、感染症、がん、気管支喘息、睡眠時無呼吸症候群など多岐に及ぶ。専門性の維持・向上には、多くの専門資格の取得を目指してキャリアを積んでいく必要がある。 そのため、呼吸器専門医を目指すには、研修や学会への参加、自己研鑽が必要となる。医師の金銭的、時間的な負担は大きい。クラウドファンディングの資金で、県内の呼吸器研修医がアクセス可能なITを活用した講習会セミナーを開く予定だ。非専門医への呼吸器疾患を啓発して診療連携 呼吸器疾患は早期発見が重要となる。そのためには呼吸器専門医と非専門医の連携が重要である。非専門医の最新の呼吸器疾患の知識の補充は欠かせない。とはいえ、多忙な診療の中、専門外の知識を学習するのは容易ではない。クラウドファンディングで、非専門医が呼吸器疾患の情報をキャッチアップできるHPを作成する。呼吸器疾患の予防にカギとなる一般大衆の知識向上 呼吸器疾患は禁煙、ワクチン、検診など予防が効果的であり、一般大衆の疾患知識は予防に重要である。しかし、実際は呼吸器疾患やその予防について学ぶ機会はほとんどない。 また、高齢化が進む島根県においては、適正な医療を提供しQOLを向上するため「高齢者機能評価」の普及が重要である。 一般大衆の呼吸器疾患の予防医学や高齢者機能評価の必要性について知識を得る機会を増やすため、市民公開講座などの啓発活動もクラウドファンディングで集まった資金を使って積極的に行っていきたいという。・目標金額:400万円・資金使途:生涯教育支援費用、広報用HP作成、Zoom使用料 、啓発活動、事務局人件費・運営費、クラウドファンディング手数料 など

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食物アレルギーに対するオマリズマブ(解説:田中希宇人氏/山口佳寿博氏)

 食物アレルギーは食べ物に含まれるタンパク質がアレルゲンとなり、抗原特異的な免疫学的機序を介して生体にとって不利益な症状が惹起される現象と定義されている。食物アレルギーに関わるアレルゲンは、食べ物以外のこともあり、その侵入経路もさまざまであることが知られている。免疫学的機序によりIgE依存性と、非IgE依存性に分けられるが、IgE依存性食物アレルギーの多くは即時型反応を呈することが多い。IgE依存性食物アレルギーはいくつかの病型に分けられており、食物アレルギーの関与する乳児アトピー性皮膚炎、即時型症状、食物依存性運動誘発アナフィラキシー(food-dependent exercise-induced anaphylaxis:FDEIA)、口腔アレルギー症候群(oral allergy syndrome:OAS)に分類される(『食物アレルギー診療ガイドライン2021』)。 食物アレルギーによって皮膚、粘膜、呼吸器、消化器、神経、循環器など、さまざまな臓器に症状が現れる。それらの症状は臓器ごとに重症度分類を用いて評価し、重症度に基づいた治療が推奨されている。IgE依存性食物アレルギーのうち、FDEIAは複数臓器・全身性にアレルギー症状が出現し、いわゆるアナフィラキシーショックを引き起こす可能性が比較的高いことが知られている。食物アレルギーの原因食物は鶏卵・牛乳・小麦とされていたが、最新の調査「食物アレルギーに関連する食品表示に関する調査研究事業」の報告書では第3位にナッツ類が含まれる結果であった。一般的にナッツ類は種子が硬い殻で覆われたアーモンド・クルミ・カシューナッツ・マカダミアナッツなどが含まれ、マメ科のピーナッツは含まれない。この報告書では食物アレルギーの85%に皮膚症状、36%に呼吸器症状、31%に消化器症状を認めたとし、ショック症状は11%であった。 食物アレルギーは特定の食べ物を摂取することによりアレルギー症状が誘発され、特異的IgE抗体などの免疫学的機序を介することが確認できれば診断される。とくにアレルゲンの摂取と誘発される症状の関連を細かく問診することが重要であり、採血による特異的IgE抗体や皮膚プリックテストだけで食物除去を安易に指導しないことと『食物アレルギー診療ガイドライン2021』上は指摘している。 今回紹介する「OUtMATCH試験」は、複数の食物アレルギーに対するヒト化抗ヒトIgEモノクローナル抗体であるオマリズマブの有効性や安全性を見た報告である。複数の食物アレルギーを持つ1~55歳の180例を対象に、オマリズマブを16週投与してアレルゲンに対する反応閾値の改善効果が示された。本邦でオマリズマブは2024年4月現在、気管支喘息、季節性アレルギー性鼻炎、特発性の慢性蕁麻疹の3つの適応疾患がある。いずれも既存治療によるコントロールが難しい難治例や重症例に限るとされている。オマリズマブは血中遊離IgEのCε3に結合し、マスト細胞などに発現する高親和性IgE受容体とIgEの結合を阻害することにより効果を発揮する生物学的製剤である。IgEとの結合を抑えることにより、一連のI型アレルギー反応を抑制し、気管支喘息では気道粘膜内のIgE陽性細胞や高親和性IgE受容体陽性細胞の減少、末梢血中の好塩基球に存在する高親和性IgE受容体の発現も低下するとされている。気管支喘息に対する効果は8つのプラセボ比較試験のメタアナリシスで、増悪頻度を43%減少させることが報告されている(Rodrigo GJ, et al. Chest. 2011;139:28-35.)。別の報告では、1秒量、QOL、症状スコアやステロイドの減量、入院頻度の減少なども示されている(Alhossan A, et al. J Allergy Clin Immunol Pract. 2017;5:1362-1370.)。オマリズマブは長期使用例ほどQOL改善効果が得られ、5年以上の使用で経口ステロイドの減量や治療ステップダウンを達成できる症例が増えるとされている(Sposato B, et al. Pulm Pharmacol Ther. 2017;44:38-45.)。 本研究でのオマリズマブは体重と被検者のIgE値によって投与量が決められている。ピーナッツタンパクを1回600mg以上の摂取でアレルギー症状がない症例がオマリズマブ群で67%、プラセボ群で7%であった。副次評価項目でもカシューナッツ、牛乳、卵で評価されたが、同様のオマリズマブ群でアレルギー反応が出ない症例が有意に増加した。このピーナッツタンパク600mgはピーナッツ約2.5個分に相当するが、これは誤ってナッツ類を1~2個摂取してもアレルギー反応に耐えうることを示唆している。もちろん本研究が報告された後も、オマリズマブが投与されたとはいえ、自身に害を及ぼすアレルゲンは避ける必要があり、自己注射用アドレナリンは手放せない。また筆者らも指摘しているが、本研究は白人が60%以上含まれており、すべての人種での検討ではない。今回の「OUtMATCH試験」の結果を受け、米国FDAでは2024年2月にIgEに関連する食物アレルギーに対するオマリズマブを承認した。実臨床で幅広く多様な年齢や人種に対してこのオマリズマブを活用し、その結果を検討することが肝要である。

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最新ガイドライン準拠 小児科診断・治療指針 改訂第3版

専門領域を踏破する小児科診療のスタンダードを強力アップデート専門分野エキスパート370名の編集・執筆による小児科主要領域350テーマから成る全訂版。他科に比べエビデンスが不足している場面に遭遇することが多い小児科診療で、ガイドラインによる科学的根拠と専門医の経験を融合させた実践的な診断・治療指針。医学・医療の進歩とともに細分化・複雑化する小児科専門30領域を正確かつ簡潔にまとめ、処方例・実践例を挙げて紹介。自施設で対応できることを見極め、他施設・他科と協働するための新しい知識とスキルを提供。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する最新ガイドライン準拠 小児科診断・治療指針 改訂第3版定価30,250円(税込)判型B5判(並製)頁数1,216頁(写真・図・表:1,200点)発行2024年4月総編集加藤 元博(東京大学 教授)ご購入(電子版)はこちらご購入(電子版)はこちら紙の書籍の購入はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら紙の書籍の購入はこちら

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日本人の喘息患者に睡眠時無呼吸が多く見られる

 日本人の喘息患者を対象に、閉塞性睡眠時無呼吸(obstructive sleep apnea;OSA)の合併および臨床転帰を検討する研究が行われた。その結果、OSAの合併率は高く、特に重症OSAを有する人ほど喘息のコントロールや症状が悪いことが明らかとなった。これは川崎医科大学呼吸器内科学の小賀徹氏らによる研究結果であり、「Allergology International」に2月9日掲載された。著者らは、「喘息とOSAの合併は過小評価されている」として、臨床転帰を改善するためのOSAのスクリーニングを推奨している。 睡眠中に気道が閉塞することにより呼吸停止が起こるOSAでは、夜間のいびきや日中の眠気など、さまざまな症状が生じる。OSAのリスク因子の1つに肥満があるが、OSAは肥満のない人でも発症する。特に日本人は欧米人と比べてBMIが低いにもかかわらず、OSAの有病率は米国と日本で同程度と報告されている。 今回の研究は、2020年7月~2022年3月に、定期的に川崎医科大学附属病院を受診している喘息外来患者97人(平均年齢56.5±13.9歳、そのうち女性66人)を対象として行われた。患者は自宅での睡眠時の検査として携帯型モニターを装着。睡眠中の1時間あたりの無呼吸と低呼吸の回数から算出する呼吸イベント指数(respiratory event index;REI)により、OSAの有無や重症度が評価された。さらに、患者報告アウトカムとして、胃食道逆流症、日中の眠気や睡眠の質、喘息コントロール(Asthma Control Test;ACT)、咳嗽症状(Leicester Cough Questionnaire;LCQ)、呼吸器症状(COPD Assessment Test;CAT)、喘息の健康状態〔Asthma Health Questionnaire(AHQ)-33〕が評価された。 その結果、OSAなしの患者は19人(19.6%、平均41.3±13.9歳)、軽症OSAは40人(41.2%、59.0±12.0歳)、中等症OSAは24人(24.7%、61.8±10.7歳)、重症OSAは14人(14.4%、60.8±9.8歳)だった。患者の平均BMI(kg/m2)は、中等症OSA合併群で26.5±5.2、重症OSA合併群で27.8±4.4であり、OSAなし群の22.6±5.4と比べて有意に高かった。 国際的なガイドライン(Global Initiative for Asthma)に基づく喘息の治療ステップ(1~5)は、重症OSA合併群の方がOSAなし群と比べて有意に高かった(平均4.3±1.1対3.1±1.4)。しかし、肺機能やアレルギーの指標(FeNO、血清IgE、末梢血好酸球など)には、群間で有意な差は認められなかった。重症OSA合併群では、有意に喘息コントロールが悪く、症状・咳嗽も多く、健康状態も悪かった。 重症OSAと関連する因子を単変量ロジスティック回帰分析で検討すると、BMI、治療ステップと、患者報告アウトカムのうちACT、LCQ、CAT、AHQ-33の各スコアが有意な因子だった。次に多変量ロジスティック回帰を用いて、BMIを調整して解析した結果、治療ステップ、ACT、LCQ、CAT、AHQ-33は、BMIとは独立して、重症OSAの有意な予測因子であることが明らかとなった。 以上の結論として著者らは、「日本人の喘息患者において、中等症以上のOSAは多く見られた(39.1%)」と述べている。また、OSAのある人ほどBMIは高かったものの、重症OSAと喘息コントロールや症状・咳嗽・健康状態の悪化などとの関連は、BMIとは独立して有意であり、さらに、肺機能には群間で差がなかったことを挙げた上で、肥満や肺機能にとらわれず、喘息の患者報告アウトカムが不良であれば睡眠時無呼吸の評価を積極的に行うことの重要性を指摘している。

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ファセンラ、小児の難治性気管支喘息で製造販売承認(一部変更)取得/AZ

 アストラゼネカは、2024年3月26日付のプレスリリースで、ファセンラ皮下注30mg/10mg*シリンジ(一般名:ベンラリズマブ[遺伝子組換え])が、既存治療によっても喘息症状をコントロールできない、6歳以上の小児の難治の気管支喘息患者に対する治療薬として、日本で製造販売承認を取得したと発表した。*ファセンラ皮下注10mgシリンジの発売時期は未定 ファセンラは、ヒト化抗IL-5受容体αモノクローナル抗体製剤で、好酸球の表面に発現するインターロイキン-5受容体αに直接結合し、増強された抗体依存性細胞傷害活性によって好酸球を直接的に除去する。 既存治療によっても喘息症状をコントロールできない、小児の難治の気管支喘息患者に対する治療の新たな選択肢として、本剤は貢献できる薬剤になりうると期待される。

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