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脳梗塞治療と心筋梗塞治療の類似性と相違(解説:後藤信哉氏)

 今の若い世代の循環器内科医にとって、心筋梗塞に対する再灌流療法は冠動脈インターベンションであろう。1986年から循環器内科医をしている筆者は、心筋梗塞治療に血栓溶解療法が主流になりそうな時代があったことを知っている。血栓溶解療法には内因系のプラスミノーゲンをプラスミンに転換することにより、線溶効果を狙う。ヒトの身体はバランスが取れているので、線溶を亢進させれば、体内の血栓性も亢進する。血栓溶解療法には血小板、凝固系を阻害する抗血栓療法の併用が必須である。われわれは1980~90年代に多数の抗凝固薬、抗血小板薬の併用を試してきた。 脳梗塞治療では血管インターベンションが血栓溶解療法を完全に置換してはいない。本研究でも血栓溶解療法施行時の併用療法が比較された。心筋梗塞後も、当初は抗血小板併用療法が試された。本研究でもチカグレロルを早期から開始する抗血小板併用療法にて予後が改善されたと報告されている。 チカグレロルの用量として循環器と同様90mg bidが選択されている。急性冠症候群では国際共同試験では90mg bidがクロピドグレルよりも有効とされた。しかし、日本などの東アジアではglobal試験の優越性を確認できなかった(Goto S, et al. Circulation Journal. 2015;79:2452-2460.)。本試験は中国にて施行されたがglobal doseが選択されたのは興味深い。 出血合併症から考えれば線溶療法より冠動脈インターベンションが優れていることが心筋梗塞では示されている。抗血小板薬併用療法も、出血合併症リスクが循環器では強調されている。現在、脳領域は1980~90年代の循環器内科を追いかけているようだが、脳梗塞治療も心筋梗塞治療同様カテーテルインターベンションの時代になるのか? いつまでも線溶療法の時代が持続するのか? 興味深く見守りたい。

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止まらない鼻出血の処置【日常診療アップグレード】第57回

止まらない鼻出血の処置問題60歳女性。2時間前から鼻出血が出現したため、救急室を受診した。自宅で鼻腔にティッシュを入れ止血を試みたが、出血は止まらなかった。いままで出血傾向を認めたことはない。既往歴は高血圧とアレルギー性鼻炎である。リシノプリルとフルチカゾン点鼻薬の処方を受けている。バイタルサインは正常である。両側の鼻孔は血液が付着し、左鼻孔から血液が落下している。咽頭の奥に少量の血液を確認できる。前鼻腔パッキングで止血を試みた。

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久しぶりの学会【Dr. 中島の 新・徒然草】(632)

六百三十二の段 久しぶりの学会暑くなってきました。昔の大阪医療センターには「冷房を入れるのは7月になってから」という謎ルールがあったと記憶しています。が、地球温暖化のせいか、そうも言ってられなくなりました。今は一定の気温を超えたら5月でも冷房が入るようになっています。当然といえば当然の話ですね。さて、春の学会シーズン。久しぶりに全国規模の学会に出席しました。会場が京都なので、日帰り出張の繰り返しです。もう朝から晩まで参加する体力もなくなってしまったので、途中から出席して途中で帰る毎日。今回から、京都までの行き帰りには新幹線を使うようになりました。新大阪・京都間は新幹線を使うとわずか13分!隣の駅なので、こだまに乗ってものぞみに乗ってもあまり時間は変わりません。なんといっても体力的に楽です。これが在来線だと25分前後かかるので、近距離であっても新幹線の威力は絶大でした。というわけで、京都に行くなら新幹線一択という気がします。話を戻しましょう。今回出席した日本脳神経外科コングレス総会の使命の1つは、若手脳外科医の教育です。とくに、夏の専門医試験に備えて受験生が勉強する場を提供する、というのが今も昔も変わらぬパターン。ところが、診断にしても治療にしても学問が進み過ぎてしまったのか、とにかく難しい!自分が30数年前に受験した時の10倍くらいの知識量が必要なんじゃないかと思わされました。考えてみれば、各演者はその道のトップなのだから、講演内容が難しいのは当たり前ですね。一方、案外面白かったのが他領域の話です。認知症のBPSDに対する治療とか、消化器外科のロボット手術とか。「へえー!」と思わされることがたくさんありました。たとえば消化器外科におけるバイポーラの使い方。私は皮弁の止血の時なんかは「パチン」「パチン」と音が出るまで景気よく通電していましたが、理屈の上では音の出る直前で通電を止めるのが正しいのだそうです。パチンと音がした時点で組織が破砕されてしまうので、止血効果が劣るのだとか。知らなかった。どうもすみません。ただ、自らの手術を振り返ってみるに、顕微鏡手術の時は慎重に少しずつ通電して音はさせていませんでした。つまり、繊細な部位では無意識に正しい使用法を実行していたことになります。よかった!こういった基本的なことでも、まだまだ知らなかったことがいっぱい。あらためて「勉強こそ人生最大の道楽」と思った次第です。これからも近場の学会にはできるだけ出席しようと思います。最後に1句 夏の京 賢くなったぞ またひとつ

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入院患者の静脈血栓塞栓症予防【医療訴訟の争点】第21回

症例入院患者については、原疾患や手術そのほかの治療との関係で、診療科を問わず、肺血栓塞栓症の発症リスクがあるため、予防についても意識を払った対応がされている。本稿では、精神科入院患者に対する身体拘束下における肺血栓塞栓症(PTE)の予防義務の有無が争われた大阪高裁令和7年3月26日判決を紹介する。<登場人物>患者(P3)精神疾患を有する入院患者(肥満[BMI≧30]に該当)原告患者の母(唯一の相続人)被告大学医学部附属病院(国立大学法人)事案の概要は以下の通りである。平成29年(2017年)2月15日P3、精神症状の増悪により、被告病院に入院。入院後、精神科において薬物療法などが開始され、経過観察が行われた。2月中旬~5月下旬入院継続中、P3にはカタトニア様症状(強い緊張状態、反応低下など)が認められ、症状の増悪と改善を繰り返していた。向精神薬の投与が行われる一方、活動性の低下や脱水傾向などもみられていた。5月29日P3は精神症状の悪化により興奮・不穏状態が強まり、自傷他害のおそれがあると判断された。このため、保護室に隔離の上、四肢拘束を含む身体拘束が開始された。同日以降、看護師はバイタルサイン、呼吸状態、末梢循環(浮腫、皮膚色)、下肢の状態などの観察を、行動制限時フローシートなどに基づき継続的に実施した。もっとも、この時点で、Dダイマー検査や下肢静脈エコー検査といった客観的検査は実施されなかった。5月30日身体拘束の継続の要否についてカンファレンスが実施され、拘束継続の必要性が確認された。一方、拘束期間が長期化するかについては、この時点で明確な見通しは立っていなかった。5月31日午前P3は依然として拘束下にあり、自発的な運動は乏しい状態であった。医師は、血栓予防の観点から、同日午前11時頃、弾性ストッキングの装着を指示し、これが実施された。もっとも、体位変換の積極的実施、IPC(間欠的空気圧迫法)、抗凝固薬投与といったほかの予防措置は行われていなかった。また、同日午前までの時点においても、下肢の腫脹、発赤、疼痛など、深部静脈血栓症(DVT)を疑わせる症候は認められていなかった。午後2時頃看護師が訪室したところ、P3は反応が乏しく、呼吸・脈拍の異常が疑われる状態で発見された。午後2時20分頃スタットコールがなされ、医療スタッフが集結し、心肺蘇生措置(胸骨圧迫など)が開始された。なお、最初の異常指摘から蘇生開始までの時間は長くても約6分程度であったと認定されている。午後2時38分頃蘇生継続中の状態で院内搬送がなされたが、回復には至らなかった。同日P3死亡。 実際の裁判結果本件の第一審(神戸地裁)は、P3の死因を呼吸停止(呼吸不全)と認定し、呼吸管理義務違反を肯定して一部認容した。これに対し、被告病院が控訴し、原告も附帯控訴*を提起した。控訴審では、死因が急性肺血栓塞栓症(PTE)であるとの新たな主張がなされたほか、身体拘束後のVTE予防義務違反、検査義務違反などの主張も追加され、以下のような注意義務違反の有無が争われた。*控訴された側が、自身もより有利な内容へと一審判決を変更することを求めて控訴すること血液検査義務違反抗精神病薬の副作用防止義務違反呼吸管理義務違反救急対応義務違反PTE予防義務違反(控訴審で追加)VTE早期発見のための検査義務違反(控訴審で追加)控訴審(大阪高裁)は、P3の死因は急性PTEであると認定した上で、原告(患者家族)の主張する被告の注意義務違反をいずれも否定し、原告の請求を全面的に棄却した。控訴審で追加されたPTE予防義務違反とVTE早期発見のための検査義務違反を取り上げる。裁判所の判断1)P3の死因について詳細はこちら控訴審は、死因究明におけるAi(Autopsy imaging、死亡時画像診断)を用いた画像診断を行う第三者的医療機関として設立された一般財団法人Ai情報センターが作成したAi診断の報告書において、P3が心肺停止になってから1時間強後である5月31日午後3時35分頃に撮影された単純CT画像に、両側肺門部の肺動脈内に凝血塊を示唆する軽度高吸収が認められ、これらが肺動脈左右分岐部を横断するようにして連続していることから、P3の死因はPTEと考える旨の意見が述べられていることなどを踏まえ、P3の死因を「急性PTE」と認定した。2)PTE予防義務違反について詳細はこちら原告は、身体拘束開始後にVTEリスク評価を行い、体位変換、早期離床、弾性ストッキング、IPC、ヘパリンなどの予防策を講ずべき義務を主張した。しかし裁判所は、以下の点を指摘し、「控訴人病院スタッフである医師が、P3に対し、5月29日午後4時45分に体幹部及び両上肢を拘束したが、下肢拘束はせず、その時点ではVTEのリスクが高いとは判断せずに、積極的な運動(マッサージ、他動的な足関節運動など)、弾性ストッキング、IPC法または低用量未分割ヘパリンなどの予防法を取らず、それから48時間が経過する前である5月31日午前11時6分頃に、下肢を自発的に動かせないことから、DVTのリスクが高いと判断して弾性ストッキングの装着を指示したが、ほかの予防法を取らなかったことが、大学医学部の附属病院という控訴人病院の性格などの諸般の事情を考慮しても、当時の控訴人病院スタッフの医師に要求される医療水準に反すると認めることはできない」として、急性PTEの発症を回避するための予防策を取るべき注意義務違反があったとは認められないとした。5月29日以降、カタトニアにより下肢が不動化した状態にあったP3のDVTのリスクは客観的には相当に高かったといえ、P3が急性PTEにより死亡したのも、そのようなリスクが現実化したものと考えるのが自然であること日本血栓止血学会のガイドラインおよび研究班ガイドラインに挙げられたVTEの危険因子で、P3が該当するのは肥満だけであり、この場合の推奨予防法は「早期離床及び積極的な運動」であること72時間以上の身体拘束がVTEのリスクを高めるとの記載がある文献もあり、被告病院も含め、48時間以上の安静の必要をリスク評価の前提とする医療機関が多い中、P3につき5月29日の拘束開始時点やその翌日のカンファレンスにおいて、48時間以上の拘束が必要であると判断されていないこと平成29年当時、ほかの医療機関においても、ベッド上で拘束する場合は、高リスクとして薬物予防あるいはIPC法を考慮することにはなっていなかったこと弾性ストッキング、IPC法及び薬物療法(低用量未分割ヘパリン)には、それぞれ副作用などのリスクがある上、弾性ストッキングやIPC法には、PTEの発症リスクが高いことが保険適用の条件となっていること被告病院では、P3の身体拘束後、生体モニターシステムを用いた測定をするとともに、行動制限時フローシートなどに従い、看護師が末梢循環状態や皮膚状態を継続的に観察しており、症候性DVTの臨床症状である浮腫や皮膚色の変化の有無なども確認されていたが、症候性DVTを疑わせる所見は認められていないこと3)VTE早期発見のための検査義務違反について詳細はこちら原告は、身体拘束時などにDダイマー測定や下肢エコーを行うべきと主張したが、裁判所は、以下の点を指摘し、「医師がP3に対し、身体拘束時から5月31日の弾性ストッキングの装着開始指示時点までの間において、Dダイマー検査などを実施しなかったことが、控訴人病院の性格などの諸般の事情を考慮しても、当時の控訴人病院スタッフの医師に要求される医療水準に反すると認めることはできず、控訴人病院スタッフに、被控訴人主張の注意義務違反があったとは認められない」とした。Dダイマー検査などの実施は、学会予防指針では“身体拘束の解除の際に、場合によりDダイマーなどのスクリーニングを行う”と記載するに止まること大病院では入院時や身体拘束時にDダイマーを測定するとなっているが、病院の規模などからすると、これらの病院において実施されている予防措置が直ちに被告病院における注意義務の内容となると解することはできないことVTEの予防法などを定めるに当たって、Dダイマー検査などについて記載していないか、IPC法を行う症例の場合やDVTの可能性が高い患者またはDVTの臨床症状が疑われる患者に限って実施するという医療機関もあることDダイマー検査については、血栓症の発症リスクの高い症例についてのみ手術前のスクリーニング検査の保険適用がなされ、DVTリスクが高くない限り、患者に対するスクリーニングとしてDダイマー検査などを行うことに否定的な見解もあること被告病院では、下肢の不動化が認められた後は、弾性ストッキングを装着して予防法を取っており、その装着時を含め、DVTを疑わせる所見が存したとは認められないこと注意ポイント解説本件は、控訴審で提出されたAi画像診断の報告書に基づきP3の死因がPTEと認定された上で、その予防義務違反の有無が争われ、本判決は、患者側の主張する予防義務違反をいずれも否定した。PTEは突発的に発症し、救命困難な場合も多いため、その予防を実施しているかが重要となる。本件当時のガイドラインやほかの医療機関での予防の実施状況を踏まえた判断をしているが、本判決でも「平成30年時点の報告を前提にすると、ベッド上で拘束する場合は、高リスクとして薬物予防かIPC法を考慮することになっているが、平成29年5月当時、控訴人病院が、規模も異なるq1病院(注:他自治体が開設・運営する大規模な精神病院)の上記基準に従い、運用すべきであったとはいえない」としているように、ガイドラインの内容はアップデートされるものである。同様に、本判決が、被告病院では実施していない予防措置を実施している他院が存在していることについて「病院の規模などからすると、これらの病院において実施されている予防措置が直ちに控訴人における注意義務の内容となると解することはできない」としていることに表れているとおり、予防のために実施する対応内容については、医療機関の規模などによっても異なる。したがって、本判決と同様の対応をしていれば、予防措置が履行されているとして義務違反が否定されることになるとは限らない点に留意する必要がある。医療者の視点本件は、精神科における身体拘束中のPTE予防と検査のあり方が問われた事例です。裁判所は、当時のガイドラインや病院の規模を考慮し、Dダイマー検査や下肢静脈エコー検査、IPC法などの画一的な実施義務を否定しました。これは、予防策に伴う副作用リスクや患者ごとの状況を総合的に評価する、実際の臨床現場の感覚と合致しています。実臨床において、自傷他害の恐れがある興奮・不穏状態の患者の安全を確保するためには、身体拘束を実施せざるを得ない場面が多々あります。しかし、そのような患者に対して、PTE予防のための弾性ストッキングやIPC法を装着することは容易ではありません。不快感からさらなる不穏を招くリスクがあるためです。また、採血や長時間を要するエコー検査を安全に実施することも物理的に困難なケースが少なくありません。このようなジレンマの中で身を守るためには、入院時や拘束開始時にVTEのリスク評価をしっかり行うことが大事です。その上で、患者の状態に応じて早期離床や下肢の運動など、可能な予防策を選択してください。もし不穏などの理由で積極的な予防策や検査が困難な場合は、下肢の腫脹や色調変化などの継続的な観察を行い、その結果や「なぜ検査・処置ができないのか」という理由をカルテに詳細に記録しておくことを心がけると良いでしょう。Take home messagePTEは突発的に発症し、救命困難な場合があるため、裁判においては、然るべき予防措置を取っていたかが問題となる VTE予防はリスク評価に基づいて個別判断がなされるが、ガイドラインや同種医療機関での実施状況が、予防措置義務の履行がなされていたかの判断基準となるキーワード肺血栓塞栓症(PTE)/静脈血栓塞栓症(VTE)/身体拘束/予防義務/医療水準

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虚血性脳卒中の2次予防、asundexian追加が有効性示す/NEJM

 非心原塞栓性虚血性脳卒中または高リスク一過性脳虚血発作(TIA)発症後72時間以内の患者において、血液凝固第XI因子(FXI)阻害薬asundexianの1日1回50mg経口投与は、抗血小板療法との併用下でプラセボと比較し大出血のリスクを増加させることなく、虚血性脳卒中および主要心血管イベントのリスクを有意に低下させることが、カナダ・McMaster UniversityのMukul Sharma氏らOCEANIC-STROKE Investigatorsが実施した「OCEANIC-STROKE試験」で示された。NEJM誌2026年4月16日号掲載の報告。37ヵ国702施設で第III相試験を実施 OCEANIC-STROKE試験は、日本を含む37ヵ国702施設で実施された国際共同無作為化二重盲検プラセボ対照イベント主導型第III相試験で、対象は非心原塞栓性虚血性脳卒中または高リスクTIA発症後72時間以内の2剤併用または単剤による抗血小板療法が予定されている18歳以上の患者であった。 虚血性脳卒中はNIHSSスコア(範囲0~42:高スコアほど重症)が15以下、高リスクTIAはABCD2スコア(範囲0~7:高スコアほど高リスク)が6または7と定義された。また、すべての患者は、急性非ラクナ梗塞の画像所見、冠動脈疾患・末梢血管疾患または50%以上の頸動脈狭窄の既往歴、脳血管アテローム性動脈硬化の画像所見のいずれか1つ以上を満たしていることとし、心房細動の既往歴または抗凝固療法の適応となる病態を有する患者などは除外した。 研究グループは、適格患者をasundexian(1日1回50mg経口投与、経管投与も可)群またはプラセボ群に無作為に割り付け、予定されていた抗血小板療法に加えて投与した。 有効性の主要アウトカムは虚血性脳卒中発症、副次アウトカムはすべての脳卒中(虚血性または出血性)、心血管死・心筋梗塞・脳卒中の複合、全死亡・心筋梗塞・脳卒中の複合など、安全性の主要アウトカムは国際血栓止血学会(ISTH)の定義による大出血であった。虚血性脳卒中およびすべての脳卒中が26%有意に減少、大出血は増加せず 2023年1月~2025年2月に1万2,578例がスクリーニングを受け、1万2,327例が無作為化された(asundexian群6,162例、プラセボ群6,165例)。 無作為化後の追跡期間中央値567日(四分位範囲:377~729)において、虚血性脳卒中はasundexian群で384例(6.2%)、プラセボ群で518例(8.4%)に発生した(原因別ハザード比[csHR]:0.74、95%信頼区間[CI]:0.65~0.84、層別log-rank検定のp<0.001)。 asundexian群およびプラセボ群で、すべての脳卒中はそれぞれ404例(6.6%)、545例(8.8%)(csHR:0.74、95%CI:0.65~0.84、層別log-rank検定のp<0.001)、心血管死・心筋梗塞・脳卒中の複合イベントは568例(9.2%)、685例(11.1%)(0.83、0.74~0.92、p<0.001)、全死因死亡・心筋梗塞・脳卒中の複合イベントは649例(10.5%)、757例(12.3%)(0.85、0.77~0.95、p=0.003)に発生した。 大出血は、asundexian群で1.9%(117/6,124例)、プラセボ群で1.7%(107/6,130例)に認められた(csHR:1.10、95%CI:0.85~1.44、層別log-rank検定のp=0.46)。有害事象の発現割合はasundexian群69.3%、プラセボ群70.1%であり、重篤な有害事象の発現割合はそれぞれ19.2%および19.5%であった。

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GERD診療ガイドライン改訂へ、P-CABの位置付け見直しなどが柱/日本消化器病学会

 現在、胃食道逆流症(GERD)診療ガイドラインの改訂作業が進行中であり、2026年4月にはパブリックコメント版が公開された。改訂版の刊行に先立ち、第112回日本消化器病学会総会(2026年4月16日~18日、福井・石川)においてGERD診療ガイドラインに関するパネルディスカッションが行われた。改訂の基本方針 本改訂では、診療の実用性向上を重視し、治療戦略や疾患概念の整理が図られている。基本方針は“シンプルで使いやすいガイドラインへ”である。2021年版ガイドラインでは、軽症・重症の区分に加え、プロトンポンプ阻害薬(PPI)とカリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB)の併用的な位置付けにより、フローチャートが複雑化していた。今回の改訂では、フローチャートを一本化することで、消化器専門医以外の医師にも理解しやすいシンプルな構成にすることを目指している。最重要課題はP-CABの位置付け見直し 本改訂の最重要課題は、P-CABであるボノプラザンの位置付けの再評価である。その背景として、ボノプラザン発売から10年が経過したことによるエビデンスの蓄積、ボノプラザン自体の強力な酸分泌抑制効果などが挙げられる。 これらを踏まえ、GERD治療をP-CAB中心に再編することや「第一選択薬は何か」というCQの再設定が提案されている。 一方、非びらん性胃食道逆流症(NERD)については保険適用の観点からPPIを中心とする方向性が示されている。治療期間と維持療法の明確化 薬物療法の長期使用に伴う有害事象への懸念を踏まえ、投与期間の明確化も重要な論点となっている。軽症例では4〜8週で休薬を検討するなど、具体的な目安が提示される見込みである。また、漸減やアルギン酸製剤の併用によるリバウンド抑制などは、今後の課題として整理される予定である。新規トピックと診療領域の拡張 今回の改訂では、保険適用拡大に対応するため、内視鏡的逆流防止術や胃上性おくび、PPI抵抗性GERDの診断戦略なども注目領域として取り上げられる予定である。とくに内視鏡的治療は独立した章として詳述される見込みであり、注目度の高さがうかがえる。今後の予定 改訂作業は2025年1月に開始され、相互査読、コンセンサス形成、評価委員会レビューを経て、現在はパブリックコメント段階にある。多くのステートメントは高い合意率を得ており、パブリックコメントを踏まえ、より実用性の高いガイドラインが完成することが期待される。

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最適な輸液ルート選択の考え方 その壱【ケースで学ぶ輸液オーダー】第2回

最適な輸液ルート選択の考え方 その壱これから集中治療を行う患者さんに対して、「どこから、何のために、どんなルートを確保するのが安全か」ということをあまり考えずに、先輩医師のやり方を見てなんとなく慣習で選んでいたということは少なくないかもしれません。今一度、輸液ルート選択の思考回路を一緒に整理してみましょう。症例肺炎によるI型呼吸不全、敗血症性ショックでICUに入室した患者さんに対応するよう、指導医とともに緊急呼び出しされた初期研修医A君。酸素10L/分(マスク)、両側肘正中皮静脈から18Gを1本ずつ確保、両側とも細胞外液補充液を急速投与中、それでも血圧80/40mmHg、脈拍120/分、呼吸回数30回/分、SpO2 88%、ショックと低酸素血症が持続しています。迅速導入気管挿管(rapid sequence intubation)を行い、人工呼吸管理となりました。指導医は「あとは頼んだよ」と言って去っていきました。挿管後、患者さんは強い体動を認め、上肢をばたつかせています。ショックの治療と並行して持続的な鎮静・鎮痛が必要です。併存症に糖尿病があり血糖800mg/dL、さらに播種性血管内凝固症候群(DIC)も合併しています。さて、A君は次に何を行うべきでしょうか?考えかたの整理集中治療では、複数の薬剤・輸液を同時並行で安全に投与する必要があります。想定される投与内容は、ショックに対する細胞外液補充液・昇圧薬、人工呼吸中の鎮静薬・鎮痛薬、抗菌薬、維持輸液(将来的に栄養輸液に移行する可能性あり)、インスリンなどです。ここで大切なことが3つあります。1. 流量変動の影響を受けてはいけない薬剤がある例:昇圧薬、鎮静薬・鎮痛薬、インスリン持続投与などこれらは流量が変わると、血圧や鎮静レベル、血糖値が一気に変動するため、急速に注入するラインと同じラインにすべきではありません。2. 配合変化がありうる例:オメプラゾール、セフトリアキソン、アミオダロンなど他剤との混合で沈殿・失活が起こる薬剤があるため、不明な場合は必ず薬剤師に相談しましょう。ちなみに輸血と同一ラインで流せるのは生理食塩液のみです。3. 末梢で理論上可能でも現実的ではないことがある理論上、すべて末梢静脈から投与可能な薬剤でも、必要な薬剤が多すぎて、メイン点滴ルートの側管などを駆使しても現実的にすべて末梢から行えない場合もあります。その場合は、ルートの本数かせぎに複数のルーメンを持つトリプルやクワッドルーメンの中心静脈カテーテル挿入が必要です。中心静脈カテーテル挿入の主な適応は、(1)末梢静脈の確保困難、(2)薬剤の多剤併用、(3)刺激性、腐食性、高浸透圧性の薬剤投与(抗がん剤、昇圧薬、50%ブドウ糖、高カロリー輸液など)、(4)血行動態のモニタリング(スワンガンツカテーテル挿入、中心静脈圧測定などの圧モニター)です。本症例は、(2)多剤併用、(3)昇圧薬投与が該当します。本症例の対応本症例には以下の輸液、薬剤の投与が必要です。ショック:細胞外液補充液、ノルアドレナリン人工呼吸中の鎮静、鎮痛:プロポフォール、フェンタニル敗血症:抗菌薬維持輸液(将来的に中心静脈栄養に移行する可能性あり)インスリン(持続投与)本患者は強い体動を認めているため、現在の両側肘静脈ラインは今にも抜けそうで不安定であり、流量管理が困難かつ薬剤が組織侵襲性のある薬剤を投与すると血管外へ漏出する恐れがあります。以上から、組織侵襲性のある薬剤や一定の流量で投与すべき薬剤を複数かつ安全に投与する目的で、マルチルーメン中心静脈カテーテル挿入が必須です。中心静脈カテーテルの挿入部位はさまざまでそれぞれ長所・短所がありますが、本症例はDICを合併していることから止血の確実性が重要であり、動脈誤穿刺時の圧迫止血の容易さを考えると、内頸静脈または大腿静脈が有利です。ただし、清潔性・感染管理・将来の離床を考えると、右内頸静脈が第1選択となることも多いでしょう。もちろん、超緊急時は理想に固執せずに最も得意な部位から確実に挿入することも許容されます。図1 中心静脈カテーテル各挿入部位の利点、欠点1)画像を拡大する本症例はベテランICUナースによって図2で示す投与経路が組み立てられました。医師が投与経路の組み立てを自ら行うことはまれですが、たとえば昇圧薬、鎮静薬や鎮痛薬、時間をかけて静注する必要のある薬剤にグループ分けするなど、看護師が多くの薬剤を限られたルートからいかに工夫して投与しているか、そのオキテに着目するのは勉強になります。図2 本症例における輸液・薬剤投与経路の実際2)画像を拡大する目的に見合う最適な輸液ルートやカテーテルを選択しましょう。混ぜても大丈夫?注射薬は単独での使用を想定し開発されていますが、臨床現場では輸液バッグやルート内で配合されて投与される場合が多く、配合変化の危険が存在します。配合変化とは、2種類以上の注射薬を混合した際に生じる変化であり、物理的配合変化(例:混濁・沈殿)と化学的配合変化(例:有効成分の力価低下)に分けられます。配合変化による影響としては、力価の低下やルート閉塞、まれではありますが国外において死亡例が報告されています3)。ICUでは複数の静注薬を限られたルートの中で同時投与せざるを得ない状況があります。そのため、最適なルート選択をする上で配合変化の有無の確認は欠かせません。施設によっては配合変化表を作成し、ICUに配置していると思います。ルート選択の際に活用することにより、配合変化の頻度を下げる可能性が報告されており4)、有用なツールです。最後に、ルート管理において注射薬から内服薬への変更や不要な薬剤の中止を検討することも大事な視点になります。安易に継続処方とせず、薬剤の投与方法についても検討するようにしましょう。図3 (左)坂総合病院ICUの配合変化の問い合わせ記録集、(右)坂総合病院救急室の配合変化の有無の一覧表画像を拡大する1)Marino PL. ICUブック第4版. MEDSI;2015.p15-33.2)濱野繁. 10薬剤投与. In:道又元裕. これならわかるICU看護:照林社;2018.p.159.3)セフトリアキソンナトリウム 添付文書4)Kondo M, et al. J Nippon Med Sch. 2022;89:227-232.

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重度外傷患者への搬送時輸血、全血vs.成分輸血/NEJM

 生命を脅かす外傷性出血が認められる患者において、病院到着前の2単位の全血輸血は標準治療の成分輸血と比べて、24時間以内の死亡または大量輸血のリスク低下に関する優越性は示されなかったことが、英国・Royal Centre for Defence MedicineのJason E. Smith氏らSWiFT Trial Groupによる大規模臨床試験で示された。安全性プロファイルも両者で類似していた。重度の出血の管理は、近年では全血輸血が支持を得ているが、臨床的有効性および安全性を大規模臨床試験で評価したデータは不足していた。NEJM誌オンライン版2026年3月17日号掲載の報告。無作為化後24時間以内の全死因死亡または大量輸血を評価 研究グループは、イングランドにある10ヵ所の航空救急サービス(医師およびコメディカル臨床チームで構成)で、プラグマティックな第III相多施設共同非盲検無作為化優越性試験を行った。重度の外傷性出血を起こし、参加施設の航空救急サービスによって病院に搬送された患者は、病院到着前に全血輸血(最大2単位)を受ける群または標準治療(赤血球および血漿をそれぞれ最大2単位)を受ける群に無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは、無作為化後24時間以内の全死因死亡または大量輸血(血液成分または製剤輸血を10単位以上)の複合とした。評価項目イベントは全血輸血群48.7%、標準治療群47.7% 2022年12月~2024年9月に942例が無作為化された。非外傷性出血または外傷性心停止の患者を除外し、主要解析の対象は修正ITT解析集団のうち、データが利用可能であった616例とした(全血輸血群314例、標準治療群302例)。被験者のベースライン特性は両群でバランスが取れ、大半が男性(75.5%)で、大部分が鈍的外傷(71.3%)であり、英国における重度外傷患者集団をおおむね代表する特徴を有していた。年齢中央値は全血輸血群38歳(四分位範囲:25~58)、標準治療群35歳(24~57)。 主要アウトカムのイベントは、全血輸血群48.7%、標準治療群47.7%で報告された(相対リスク:1.02、95%信頼区間:0.80~1.31、p=0.84)。 すべての評価時点(無作為化後6時間、24時間、30日後、90日後)の全死因死亡、また大量輸血およびその他の副次アウトカムの発現も両群で同程度にみられた。 プロトロンビン時間が正常範囲を超えていたのは、全血輸血群40.7%、標準治療群30.5%であった。重篤な有害事象の発現は、標準治療群(37例)が全血輸血群(31例)よりも多かった。血栓性イベントの発現は、両群で同程度であった。

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細胞外液補充液と維持輸液【ケースで学ぶ輸液オーダー】第1回

細胞外液補充液と維持輸液研修医が病院で初めて自らオーダーを立てる薬剤はおそらく点滴でしょう。いろいろな種類があり戸惑うかもしれませんが、原則は難しくありません。オーダーを受けた看護師から「輸液、わかってないな」と呆れられないよう、今一度原則を確認しましょう。症例洗面器約1杯分の鮮血を吐いた患者さんが救急搬入され、指導医とともに緊急で呼び出しされた初期研修医A君。指導医が緊急上部消化管内視鏡検査で出血性胃潰瘍と診断し、確実な止血処置を実施しました。現在の輸液内容は、救急科初療医が開始した細胞外液補充液(以下「外液」)です。治療終了時のバイタルサインは血圧120/60mmHg、脈拍90/分、ヘモグロビン値は正常範囲でした。「食事は明日からにしよう。じゃ、輸液オーダーは頼んだよ」と言って指導医は去っていきました。A君は翌日まで外液を継続する指示を出しました。このままでよいでしょうか。考えかたの整理輸液は「目的」によって以下の2つに整理できます1)。出血時など循環血漿量の補充外液絶食中の水分、電解質、糖の補充維持輸液イメージ的には、血液の代わりが外液、ごはんの代わりが維持輸液です。止血が得られ、循環動態が安定した時点で「失血に対する輸液」は役目を終えています。出血分を補えたら、止血後も外液を続ける理由はありません。一方、絶食が続く患者にブドウ糖を含まない輸液だけを投与すると、飢餓状態による低血糖を回避するために蛋白異化が進んでしまいます2)。図1 外液、維持輸液の組成の違いと輸液時の体液分画における分布画像を拡大する細胞内外を比較すると、細胞外はNaが多く、細胞内はKが多いのがポイントです。輸液の組成上、理論的には外液は細胞外へ、維持輸液は細胞内外へ分布するため役割が異なります。本症例の対応本症例では、出血は止血済み、バイタル安定、経口摂取は翌日から再開が予定されています。したがって、外液は減量・終了、維持輸液へ切り替えが妥当です。一方、止血されていたとしてもそれまでの出血量が多く、外液の投与量が出血量に追いついていなければ、維持輸液に並行して外液も投与すべきです。図2 臨床現場でよく見られる輸液療法の流れ画像を拡大する輸液は漫然と「昨日と同じ」にせず、目的を考えてオーダーしましょう。初期輸液は「とりあえずの輸液」英国のNICEガイドラインでは、routine maintenanceの目的の輸液組成には、25~30mL/kg/日の水分、1mmol/kg/日のNa、K、Cl、50~100g/日の糖(5%ブドウ糖液)が必要とされています3)。本邦で絶食時に頻用される維持輸液の3号液は合計2,000mL投与することにより、成人男性の1日の必要水分、電解質、最低限のブドウ糖を補える設定になっています4)。しかし、これら維持輸液のNa濃度は外液よりも低く、医原性の低Na血症が懸念されるため、海外ではNa濃度が外液並みの5%糖含有等張液の使用を提案する5)意見があります。こちらは3号液よりもK濃度が著しく低いため、長期の継続には低K血症に注意が必要です。いずれにしても初期輸液は居酒屋のお通し的立場の「とりあえずの輸液」と割り切り、数日間以上の絶食が予測される場合は、漫然と同じ輸液メニューを続けずに、電解質異常のチェックや補正、本格的な栄養輸液への移行を怠らないようにしましょう。輸液においては初回で満点を目指さず、追試上等と考えて大丈夫です。1)森本康裕. 【総論】輸液の基本のキ 輸液の調節をしてみよう. In:森本康裕. レジデントノート:羊土社;2017.p505-509.2)Gamble JL, et al. 水と電解質. 医歯薬出版;1957.p134-147.3)National Institute for Health and Care Excellence(NICE):Intravenous fluid therapy in adults in hospital. London4)室井延之. 静脈栄養剤の種類と組成、特徴. In:日本臨床栄養代謝学会. JSPENテキストブック:南江堂;2021.p.288-289.5)Moritz ML, et al. N Engl J Med. 2015;373:1350-1360.

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第307回 『脳外科医竹田くん』のモデルとなった脳外科医、民事に続き刑事裁判でも有罪となったポイントとは

民事裁判では被告と市に約8,800万円の賠償命じ、確定こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)、日本、残念でした。北米、中南米のチームが本気を出してMLBの選手をそろえてくると、そうは簡単に勝てないということですね。井端 弘和監督の采配を批判する声もあるようですが、歴代監督と比較するのはちょっと酷ではないかと思います。あと、今季からMLBに行く村上 宗隆、岡本 和真両選手が少々心配になりました。興味深かったのは、Netflixの日本ラウンドの配信を日本テレビが制作面で手伝っていたことです。ヒーローインタビューも日本テレビのアナウンサーが担当していましたし⋯⋯(各試合の実況は民放・NHKのOBアナウンサーも務めていました)。3月11日付の朝日新聞は「独占されたWBC 焦るTV局」と題する記事を掲載、日本テレビの制作受託について「(テレビ局は)『下請けに転落した』との指摘もある」と書いています。野球に限らず、ボクシングやサッカーなどのビッグゲームの放映権料が高騰しています。テレビ局が無料で放送する形態は、今後日本においても衰退していくでしょう。コロナ禍がオンライン会議を爆発的に普及・定着させたように、今回のWBCは日本で「スポーツは生“配信”」という新たなスタンダードが定着するきっかけになったイベントとして記憶されるかもしれません。さて今回は、漫画『脳外科医 竹田くん』のモデルとなった脳外科医、松井 宏樹被告(47)が業務上過失傷害罪に問われた裁判で、先週有罪判決が出たので、それについて書いてみたいと思います。民事裁判においては、2024年8月、被害女性とその家族が松井被告と赤穂市に損害賠償を求めて提訴。神戸地裁姫路支部は2025年5月に「注意義務違反の程度は著しい」として被告と市に約8,800万円の賠償を命じ、判決は1審で確定しています。このケースのように医療過誤で刑事責任まで問われるのは異例のことで、その判決に注目が集まっていました。業務上過失傷害罪で禁錮1年、執行猶予3年の判決兵庫県赤穂市の赤穂市民病院で2020年、女性患者(81)の手術中に脊髄神経をドリルで誤って切断し後遺障害を負わせたとして業務上過失傷害罪に問われた松井被告に対し、神戸地裁姫路支部は3月12日、禁錮1年、執行猶予3年(求刑禁錮1年6ヵ月)の判決を言い渡しました。朝日新聞等の報道によれば、佐藤 洋幸裁判長は「(患者は)一生治ることのない下半身不随に陥った」と結果の重大性を指摘、「罰金刑の選択を相当とする事案とは到底言えない」と量刑理由について述べたとのことです。判決によると、松井被告は2020年1月、執刀医として女性患者の腰椎(ようつい)を手術した際、止血が不十分で患部の目視が難しい状態にもかかわらず、漫然と医療用ドリルを作動させ、神経の一部を切断。患者に両足まひなど全治不能の障害を負わせたとのことです。判決は、手術中の出血で「(患部の)視認性が確保できなくなっていた」とし、被告は「(ドリルの使用を止める)基本的な注意義務を怠った」と認定しました。その一方で、「経験の乏しい被告をバックアップするチームが機能していなかった面は否めない」、「被告が医師として就労することが事実上不可能な状態で社会的制裁も受けている」として刑の執行は猶予されました。赤穂市民病院によれば、松井被告が2019~20年に関わった手術で、医療事故が8件発生しています。このうち手術で女性に重度の障害を負わせた件について、神戸地検姫路支部は2024年12月に松井被告を業務上過失傷害罪で在宅起訴、今年2月から公判がスタートしていました。時効まで残り1ヵ月を切ったタイミングでの在宅起訴この事件や松井被告については、本連載でも「第173回 兵庫で起こった2つの“事件”を考察する(前編) 神戸徳洲会病院カテーテル事故と『脳外科医 竹田くん』」、「第246回 美容外科医献体写真をSNS投稿、“脳外科医竹田くん”のモデルが書類送検、年末の2つの出来事から考える医師のプロフェッショナル・オートノミー」、「第250回 『脳外科医 竹田くん』の作者声明文と“フジテレビの第三者委員会設置で改めて考える、医療界の第三者機関、医療事故調査・支援センターが抱える“アキレス腱”(後編)」などで取り上げてきました。第246回では、2020年1月に業務上の注意義務を怠り、誤って神経を一部切断して患者に重い後遺障害を負わせたとして、2024年12月に松井被告が業務上過失傷害罪で在宅起訴されたニュースを取り上げました。松井被告は別の70代女性患者に対する手術で起こした医療事故でも業務上過失傷害容疑で書類送検されましたが、神戸地検姫路支部は2024年9月に不起訴としていました。今回有罪判決を受けた事件での在宅起訴は、時効(業務上過失傷害罪は5年)まで残り1ヵ月を切ったタイミングでした。赤穂民報は「検察幹部は『複数の専門医の意見を聴くなど慎重に捜査を進めた。結果の重大性などを鑑みて起訴の判断に至った』と語った」と報じました。漫画「脳外科医 竹田くん」の作者が医療過誤の被害者の親族であることを公表そして第250回では、手術などでミスを繰り返す外科医を描き話題を集めた漫画「脳外科医 竹田くん」の作者が、在宅起訴から40日後の2025年2月5日、同漫画のサイトで声明文を発表し、「私(漫画作者)は、赤穂市民病院 脳神経外科で2019年から2020年にかけて複数発生した医療事故のうち、2020年1月22日に起きた医療過誤の被害者の親族です」と自身の背景を明らかにしたニュースを取り上げました。『脳外科医 竹田くん』で描かれる医療事故や医師の世界のリアリティは医療界でもかねてから話題になっていましたが、作者が被害者の親族であったことに誰もが驚きました。作者は制作の動機として、赤穂市民病院で多数の医療事故が起こっていたにもかかわらず、「病院は混乱し、対応に追われ、医療事故についての適切な検証や調査を行おうとしない様子を目の当たりにしました。2022年6月にようやく病院記者会見が開かれましたが、その内容は真相究明とはほど遠いものでした。私は、一連の医療事故の真相が究明されないまま事件の記憶が風化すれば、また新たな犠牲者が生まれてしまうのではないか、といった強い危機感を抱き、葛藤の末、どうにかしてこの問題を社会に伝えたいと考えるようになりました」と、病院の事故対応のひどさ、お粗末さを指摘していました。医療裁判において「ここまで条件がそろう事案はほとんどない」と元大阪地検検事の弁護士今回の判決後、女性の親族の代理人を務める若宮 隆幸弁護士らが姫路市内で記者会見を開きました。大阪読売新聞等の報道によれば、若宮弁護士は親族のコメントとして「公判で反省する松井医師の姿を期待したが、他責的な発言や自己弁護を繰り返し、平然とうそを並べ立てる態度に絶望した」と読み上げました。さらに同弁護士は「医療事故の刑事事件は少なく、有罪判決は非常にまれ。結果の重大性を鑑みると適正な判決」と評価したとのことです。医療過誤が刑事裁判となり、有罪判決が出るのはまれとされています。刑事司法の医療現場への過度の介入は医療現場に萎縮効果をもたらしかねないため、よほどの注意義務違反が認められない限り、業務上過失致死傷罪とならないのです。ですから、悪質で事件性が高いケースであっても、和解もしくは民事裁判で損害賠償を求めるだけで医療過誤事件は収束してしまうことが大半です。では、今回、刑事裁判で「有罪」となった理由はいったい何だったのでしょうか。この裁判を取り上げた3月13日放送のテレビ朝日系「羽鳥慎一モーニングショー」において、元大阪地検検事で弁護士の亀井 正貴氏は、次の4つのポイントを挙げていました。1.重過失にあたる初歩的なミス(本人も認めている)2.手術の内容が保全され証拠が明白3.被害者の処罰感情が強い4.漫画が社会的な関心を生み出し捜査機関への圧力となった亀井氏によれば、医療裁判において「ここまで条件がそろう事案はほとんどない」そうです。今回の裁判を契機として、医療過誤事件における証拠保全の動きや、被害者や被害者家族による社会へのアピールが今まで以上に強まるかもしれません。なお、医師は罰金以上の刑が確定した場合、原則として、3年以内の医業停止や医師免許の取り消しなどの行政処分を受けることになります。判決後、女性の親族は「医療過誤で奪われた母の体の自由や失われた時間が戻ることは二度とない。厳しい行政処分を強く要望する」とのコメントを出しています。

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第286回 OTC類似薬に追加負担、出産実質無償化 医療保険改革法案を閣議決定/政府

<先週の動き> 1.OTC類似薬に追加負担、出産実質無償化 医療保険改革法案を閣議決定/政府 2.小児医療センターで何が起きたのか 髄腔内注射で死亡発生/埼玉県 3.大学病院機能強化事業77校決定 収賄事件で東大対象外/文科省 4.赤穂市民病院の元執刀医に禁錮1年、執行猶予3年の有罪判決/神戸地裁 5.リハビリ病院で799件不正請求 2027年4月に保険医療機関指定取り消し/北海道 6.再生医療投与中に60代女性死亡、都内のクリニックに緊急停止命令/厚労省 1.OTC類似薬に追加負担、出産実質無償化 医療保険改革法案を閣議決定/政府政府は3月13日、健康保険法などの改正を柱とする医療保険制度改革法案を閣議決定した。現役世代の社会保険料負担の上昇抑制と、限られた医療財源の効率的配分を目的としたもので、OTC類似薬への追加負担導入や正常分娩の実質無償化などを盛り込んだ。主な柱は、「OTC類似薬の追加負担導入」「後期高齢者医療で金融所得を保険料や窓口負担に反映」「正常分娩の実質無償化」「高額療養費制度見直し時の長期療養患者への配慮」の4点。OTC類似薬とは、市販薬と成分や効果が似た処方薬で、77成分・約1,100品目が対象と想定される。政府は薬剤費の25%を追加負担とする方向で検討しており、子供やがん・難病患者、長期療養者、低所得者には配慮措置を設ける方針。また、後期高齢者医療では、これまで十分反映されてこなかった配当などの金融所得を把握し、保険料や窓口負担に反映させることで、負担能力に応じた公平化を図る。その一方で、正常分娩については全国一律の基本単価を設定し、保険給付と現金給付を組み合わせて妊婦の自己負担を軽減する。出産費用の地域差や施設間格差の是正も狙う。ただ、薬剤自己負担の見直しなどによる保険料軽減効果は1人当たり月183円程度との試算もあり、がん患者団体や野党は「重症患者や子育て世代に負担が集中する」と反発している。医療現場では、患者説明や処方行動、産科施設の経営や地域医療への影響など、制度改正の実務的な影響を注視する必要がある。 参考 1) 現在検討している医療保険制度改革についての考え方(厚労省) 2) 【OTC類似薬の自維合意】薬剤費の25%の上乗せされる薬剤(77成分1,100品目)(保団連) 3) 健康保険法など改正案決定 OTC類似薬に追加負担、75歳以上の医療費は金融所得反映(産経新聞) 4) 健保法改正案が閣議決定 OTC類似薬に追加負担 分娩、保険適用で無償に(日経新聞) 5) 市販薬と成分・効果似る「OTC類似薬」は患者が追加負担、健康保険法など改正案を閣議決定(読売新聞) 6) ロキソニンやアレグラなど1,100品目、27年3月から患者追加負担…厚労省が「OTC類似薬」提示(同) 7) “出産の無償化”法案が閣議決定 分娩1件の単価設定 分娩施設に直接支給へ 妊婦の負担軽減・現金支給も(FNNプライムオンライン) 2.小児医療センターで何が起きたのか 髄腔内注射で死亡発生/埼玉県埼玉県立小児医療センターで、白血病治療のため抗がん剤の髄腔内注射を受けた3人に重篤な神経障害が生じ、10代男性1人が死亡、10歳未満の男児と別の10代男性2人が重体となっている。3人はいずれも2025年1月、3月、10月に治療を受け、歩行困難や大腿部痛、全身まひなどを発症した。病院は2025年11月に髄腔内注射を中止し、外部有識者を含む調査対策委員会を設置。髄液検査の結果、本来この治療で使用しない抗がん剤のビンクリスチンが3人全員から検出され、原因薬剤の可能性が高いと判断した。ビンクリスチンは、白血病や悪性リンパ腫に用いる一方で、強い神経毒性があり髄腔内投与は禁止されている。世界でも誤投与事例が報告され、わが国でも2021年に静岡県内で同種の事故が起きていた。今回の髄腔内注射自体は、小児急性リンパ性白血病で中枢神経再発を防ぐ標準治療で、通常は慎重な管理のもと行われる。調剤室は3重のセキュリティー管理下にあり、薬剤は鍵付き保管庫で厳重保管、調剤・運搬・投与も複数職種で確認していたとされ、記録上も使用形跡や手順上の明確な不備は確認されていない。このため病院は事故と事件の両面を視野に3月10日に県警へ届け出た。当初病院側は1例目、2例目は副作用として捉えていたが、3例目を受け「9ヵ月で3回は異常」と判断して本格的な調査に着手した。上野 賢一郎厚生労働大臣はさいたま市と連携して対応する考えを示し、埼玉県も原因究明と医療安全の徹底、患者家族への説明を求めている。同センターは、県内小児高度医療の中核施設で、2024年には延べ512人、2025年も中止までに427人が髄腔内注射を受けていた。専門家からは「通常では考えられない」との声が出ており、同様の治療を受ける患者家族への不安対応も課題となっている。 参考 1) 小児医療センターにおける髄腔内注射治療後の重篤な神経症状の発症について(埼玉県立小児医療センター) 2) 髄くう内注射で患者が神経症状 病院 “3回は異常”で調査(NHK) 3) 埼玉県立小児医療センターで抗がん剤の髄腔内注射を受けた10代男性死亡、2人に重度の後遺症(読売新聞) 4) 小児医療センター、抗がん剤手順に「落ち度なし」「事件事故両面の可能性」(同) 5) 3重セキュリティーの調剤室、鍵付き保管庫、分単位の調剤記録…抗がん剤で患者死亡は「考えられない事態」(東京新聞) 6) 埼玉県立小児医療センターの患者死亡「市と連携し対応」厚労相(NHK) 7) 埼玉県立小児医療センター死亡問題 県「重く受け止める」 早期究明を要請(東京新聞) 3.大学病院機能強化事業77校決定 収賄事件で東大対象外/文科省文部科学省は3月11日、大学病院の教育・研究基盤の強化を支援する「大学病院機能強化推進事業」の対象として国公私立77大学を選定したと発表した。物価高や人件費上昇などで経営環境が悪化する大学病院を支援するため、2025年度補正予算で349億円を計上し、最先端医療機器の整備や人材育成、研究体制の強化などに対し1大学当たり最大5億円を補助する。医学部を持つ81大学のうち78の大学が申請したが、東京大学は唯一選定されなかった。その理由として大学院医学系研究科の元教授らが収賄容疑で逮捕・起訴された事件を受け、医学部・附属病院の組織風土改革や病院長のマネジメント体制など具体的な改革案が示されていない点が問題視された。また、九州大学は病院長が出張旅費の不正支出問題で辞任したことを踏まえ、交付額が3割減額された。選定委員会は、大学病院が高度医療の提供や医師養成、地域医療の中核を担う一方で、近年は経営悪化が進んでいると指摘している。また、各大学が提出した改革プランや自治体との連携体制、設備整備計画などを審査し、選定したとしている。大学病院を巡っては高度医療と教育研究を担う役割が大きいだけに、今回の選定結果は経営改革やコンプライアンス体制の重要性を示すものとなった。 参考 1) 大学病院機能強化推進事業(経営環境の改善に資する教育研究基盤の充実)の選定結果について(文科省) 2) 文科省の大学病院支援事業、東京大学選ばれず 汚職事件が影響(日経新聞) 3) 国の大学病院支援に東京大学のみ選ばれず 元教授らの収賄事件が影響(朝日新聞) 4) 大学病院機能強化事業、東大以外77大学を選定…文科省(リセマム) 4.赤穂市民病院の元執刀医に禁錮1年、執行猶予3年の有罪判決/神戸地裁兵庫県の赤穂市民病院で2020年、腰椎手術中に81歳女性患者の脊髄神経を医療用ドリルで切断し重い後遺障害を負わせたとして、業務上過失傷害罪に問われた元執刀医に対し、神戸地裁姫路支部は3月12日、禁錮1年、執行猶予3年の有罪判決を言い渡した。判決では、止血が不十分で術野の視認性が確保できないまま、ドリル操作を続けた点について、「止血に努めるのは基本中の基本」であり、基本的注意義務違反は明白だと指摘。患者は下半身不随や膀胱直腸障害、強い疼痛など全治不能の障害を負っており、「罰金刑にとどまる事案ではない」とした。その一方で、助手を務めた上級医が手術を止めず、経験の浅い術者を支えるチームが機能していなかったことや、被告が事実上医師として就労困難で社会的制裁を受けている事情を踏まえ、執行猶予を付けた。同病院では、同医師が関与した手術で計8件の医療事故が判明しており、本件はウェブ漫画『脳外科医竹田くん』を通じても広く知られた。被害者家族は判決後、「奪われた身体の自由と時間は戻らない」と厳しい処分を求め、代理人は医道審議会での免許取り消しも検討すべきだと訴えた。赤穂市は判決を厳粛に受け止め、医療安全体制の強化と再発防止に取り組むとしている。民事訴訟ではすでに市と元医師に約8,900万円の賠償を命じる判決が確定している。今回の刑事判決は、個人の手技上の過失だけでなく、指導・監督体制やインシデント把握後の組織対応も含めて医療安全を問い直す事案として受け止められている。被害者側は、通常の医療事故の刑事事件化拡大には慎重姿勢を示しつつも、本件は「基本中の基本」を欠いた特異な事案だと強調。判決を1つの節目としながらも、再発防止と信頼回復を求める声はなお強い。また、病院事業管理者は経営悪化の責任を取って3月末で辞任する意向を示しており、病院運営全体への影響も広がっている。 参考 1) 赤穂の患者神経切断、元執刀医に有罪 目視困難でもドリル操作(日経新聞) 2) 手術中ドリルで神経切断、半身不随に 医師に禁錮1年・執行猶予3年(朝日新聞) 3) 手術中に神経切断 元赤穂市民病院医師に執行猶予付き有罪判決(NHK) 4) 経営責任取り今月末で辞任 高原秀典・病院事業管理者(赤穂民報) 5.リハビリ病院で799件不正請求 2027年4月に保険医療機関指定取り消し/北海道北海道厚生局は3月11日、札幌市西区の平和リハビリテーション病院(160床)について、診療報酬の不正請求を理由に、保険医療機関の指定を2027年4月1日付で取り消すと発表した。確認された不正請求は2024年3~9月診療分までの799件、総額約1億8千万円に上る。厚生局によると、同院は療養病棟入院基本料1の施設基準である看護職員や看護補助者の配置数を満たしていないことを認識しながら、必要な変更届を出さないまま、同基本料や夜間看護加算、療養病棟療養環境加算1、医療安全対策加算2、感染対策向上加算3などを請求していた。開設者からの報告を受けた厚生局は、個別指導後に監査へ移行し、2025年3月から9月に計5回の監査を実施して不正を認定した。同病院を運営する医療法人社団静和会は謝罪し、保険指定取り消し後は運営継続が困難になるとして、地域医療への影響を避けるため、札幌市南区の医療法人社団CHCPヘルスケアシステムへの事業譲渡に向け調整を進める方針だと公表した。病院側は、内部監査で不正請求を把握したとし、「意図的ではなく管理不足が原因」と説明しているが、厚生局は保険診療の根幹を揺るがす重大事案と判断した。同院は内科、整形外科を標榜し、病床稼働率は9割超という。療養病床の看護配置や加算算定は慢性期医療の収益基盤に直結するだけに、届出基準と実態の乖離を放置した責任は重い。事業譲渡まで診療は継続する方針で、患者受け入れ体制を維持しながら信頼回復と再発防止策の具体化が求められる。慢性期病院を巡っては、人員確保難が続くが、基準未達のまま算定することは認められず、今後は法人統治とコンプライアンス体制の立て直しが焦点となる。 参考 1) 診療報酬不正請求799件 札幌の病院指定取り消し-来年4月1日付(CB news) 2) 札幌・平和リハビリテーション病院、保険指定取り消し 27年4月 診療報酬1億8千万円不正受給(北海道新聞) 3) 札幌市の病院が不正請求1億8,000万円 保険医療機関指定取り消し(毎日新聞) 6.再生医療投与中に60代女性死亡、銀座のクリニックに緊急停止命令/厚労省東京都中央区の「医療法人ネオポリス診療所銀座クリニック」で自由診療の再生医療を受けた外国籍の60代女性が死亡し、厚生労働省は2026年3月13日、再生医療安全性確保法に基づき同クリニックなどに業務の一時停止を命じる緊急命令を出した。女性は10日、慢性的な痛みの改善を目的として、自身の脂肪から採取した幹細胞を培養し、静脈内に投与する治療を受けていたが、投与中に容体が急変し、救急搬送中に心肺停止となり、搬送先の医療機関で死亡が確認された。死因は現時点で不明で、厚労省は原因究明を進めている。治療に用いられた細胞は、京都市の「JASC京都幹細胞培養センター」と韓国・ソウルの「RBio幹細胞培養センター」で製造されていた。厚労省は国内施設である京都のセンターに対して細胞製造の一時停止を命じ、韓国の施設には日本向けの出荷停止を要請した。さらに同施設の細胞加工物を使用している国内の医療機関にも使用中止を求めている。再生医療を巡っては、2025年8月にも都内の別のクリニックで患者が死亡する事案が発生しており、今回の緊急命令は2例目となる。厚労省は、再生医療を提供する医療機関に対し、救急対応体制の整備や法令順守の徹底を求める通知も出しており、自由診療の再生医療の安全管理のあり方が改めて問われている。今後、厚労省は立ち入り調査などを含め、治療の安全性や運用体制の実態解明を進める方針だ。 参考 1) 再生医療等の安全性の確保等に関する法律に基づく緊急命令について(厚労省) 2) 再生医療で60代女性死亡 銀座のクリニックなどに業務一時停止の緊急命令 厚労省(時事通信) 3) 都内クリニックで再生医療受けた60代女性が死亡…死因は不明、厚労省が医療提供一時停止の緊急命令(読売新聞) 4) 自由診療の細胞投与で死亡 厚労省、東京の診療所に治療提供停止命令(日経新聞)

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神経血管老化の予防戦略、農業や園芸が有効な可能性は

 農業または園芸活動は、健康維持や生活習慣病の予防に効果的である可能性のあるシンプルな戦略である。しかし、脳卒中や認知症などの神経血管老化に関連する疾患の発症に対する予防効果は、依然としてよくわかっていなかった。久留米大学の菊池 清志氏らは、定期的な農業または園芸における身体活動(AGPA)の神経血管老化に対する予防効果とその根底にあるメカニズムについて、2つのアプローチを用いて包括的に調査した。Frontiers in Aging Neuroscience誌2025年12月2日号の報告。 男子学生12人(平均年齢:22±1歳)を対象に、管理された条件下で実施した40分間の介入(安静、サイクリング、模擬AGPA)の前後における動脈硬化度、認知機能(フランカーテストおよびストループテスト)、循環血中バイオマーカー(例:プラスミン・α2プラスミンインヒビター複合体、一酸化窒素、脳由来神経栄養因子)を評価する実験研究を行った。また、横断研究を実施し、入院中の高齢者161例(平均年齢:78±5歳、AGPA群:79例、対照群:82例)を登録し、脳卒中の既往、認知機能、MRI所見を評価した。 主な結果は以下のとおり。・実験研究において、模擬AGPAは動脈硬化を減少させ、実行機能を改善し、循環血中のプラスミン・α2プラスミンインヒビター複合体、一酸化窒素、脳由来神経栄養因子を増加させることが明らかとなった。・脳組織への血流減少および脳卒中の有病率に起因する脳MRIによる大脳白質高信号域は、AGPA群で対照群よりも低く、改訂長谷川式認知症スケールによる認知スコアも高値であった。 著者らは「高齢者における定期的なAGPAは、神経血管老化の遅延マーカーと関連していることが示唆された。AGPAは、一般的な身体活動に関連する効果とAGPAに特異的な効果の両方をもたらす可能性がある。さらに、身体活動単独と同等、あるいはそれ以上の効果が期待できる。したがって、習慣的なAGPAは、神経血管老化の効果的な予防戦略となる可能性がある」と結論付けている。

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出血と血栓のジレンマの問題は本当に根深いね(解説:後藤信哉氏)

 組織因子と血液凝固第VII因子は止血に重要な役割を演じる。遺伝子組み換え第VII因子(rFVIIa)は各種出血性疾患に対して止血効果を示した。本研究では発症後2時間以内の頭蓋内出血を対象として、rFVIIaの有効性を検証したランダム化比較試験である。 発症後2時間以内の脳梗塞症例を選定するのも難しい。本試験では626例のランダム化比較試験を試行するために、3,288例のスクリーニングが必要になっている。頭蓋内の出血がrFVIIaの使用により止血したか否かを検証するのは容易ではない。画像診断による血腫の増大、臨床症状などを間接的指標とせざるを得ない。 本研究では画像を用いた血腫の増大速度はrFVIIaの使用により遅くなった。しかし、出血の逆の合併症としての致死的な血栓イベントがrFVIIaにより増加してしまった。自分が頭蓋内出血したとしても、致死的血栓イベントリスクが増えるかもしれないとなるとrFVIIaを受けようとは思えない。出血と血栓のジレンマは本当に厄介な問題だと思う。

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術後の状態管理(術後出血は大丈夫?)【医療訴訟の争点】第19回

症例PCI(経皮的冠動脈形成術)は虚血性心疾患に対する標準的治療として広く行われている一方、穿刺部合併症や後腹膜出血など、まれではあるが致命的となり得る合併症も知られている。本稿では、PCI後に循環動態の破綻を来し、最終的に死亡に至った症例について、出血性ショックの見落としが争われた東京地裁令和6年12月26日判決を紹介する。<登場人物>患者75歳・女性原告患者の夫および子2名(相続人)被告地方自治体(市立病院を開設)被告医師ら循環器内科医(PCI担当医)事案の概要は以下の通りである。平成30年10月24日胸部圧迫感を主訴として被告病院内科外来を受診。労作性狭心症が疑われ、循環器内科へ紹介。10月26日循環器内科の医師1が診察。11月6日冠動脈造影検査および左心室造影検査を実施。その結果、左前下行枝に99%の高度狭窄が認められ、抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)によりアスピリンおよびプラスグレルの内服開始。薬物療法のみでは不十分と判断され、PCIが予定。11月13日12時19分本件PCIの開始13時19分本件PCIの終了11月14日5時15分死亡 【本件PCI施行中の経過】平成30年11月13日正午過ぎより、右大腿動脈アプローチによりPCIが開始された。穿刺が2~3回試みられた後、6Frのロングシースが挿入された。手技中、患者は急性冠閉塞を来し、意識レベル低下、血圧測定不能となるなど心原性ショックの状態に陥った。これに対し、被告医師らは酸素投与、輸液負荷、昇圧剤投与を行い、バルーン拡張により冠血流を再開させた。循環動態は一旦改善し、左前下行枝に薬剤溶出性ステントが留置された。最終造影では血流良好であり、穿刺部には止血デバイスが使用され、PCIは終了した。PCI施行中の詳細はこちら 12時19分本件PCIの開始12時25分医師2が本件患者の右鼠径部から右大腿動脈を2、3回穿刺したが血管内に挿入できなかったため、医師3に交代し、医師3が、本件患者の右大腿動脈内に太さ6Frのロングシースを挿入。ヘパリン5,000単位が投与。12時55分本件患者の意識レベルが低下し、声掛けや痛み刺激に反応がなく、血圧は測定不能、SpO2は90%、心拍数は68で、急性冠閉塞を発症し、心原性ショックとなる。12時56分酸素マスクによる4L/分の酸素投与および輸液全開投与を開始し、医師3は、本件患者の左前下行枝7番狭窄部位を2回バルーン拡張。12時59分5mL/時で昇圧剤(塩酸ドパミン注キット)の投与を開始。本件患者は、声掛けに対して反応して会話が成立し、全身に発汗が著明にみられる状態。13時頃心拍数112、血圧84/57mmHg、SpO2は100%。13時3分左前下行枝7番に薬剤溶出性ステントを挿入。13時9分冠動脈造影により左前下行枝7番の血流が良好であり、急性冠閉塞などの所見は認められないことを確認。13時12分大腿動脈穿刺部止血デバイスを挿入して穿刺部を止血。13時18分心拍数90、血圧141/63mmHg、SpO2は100%。13時19分本件PCIの終了【本件PCI後の経過】PCI終了後、患者はHCUへ移動したが、その後、再び頻脈と血圧低下を認めるようになった。心電図ではST低下や虚血性変化が出現し、被告医師らは、急性ステント血栓症やNo reflow(造影剤の流れが血液の代わりに冠動脈中を占拠することによって、実質的には血流がなくなる状態)など、再度の心原性イベントを疑った。この時点でのHb値は明らかな低下を示しておらず、穿刺部にも明らかな血腫や出血所見は確認されなかった。そこで、循環動態不安定の原因精査のため、再度冠動脈造影が行われたが、ステントは開存しており、急性冠閉塞は否定された。さらに、腹部大動脈から腸骨動脈、大腿動脈近位部にかけて血管造影が行われたものの、造影剤の血管外漏出など、明確な出血所見は認められなかった。また、心エコー検査では心嚢液貯留はなく、壁運動も保たれており、心タンポナーデは否定的と評価された。Hb値も午後4時49分時点で12.4g/dLと基準範囲内であった。これらの所見を踏まえ、被告医師らは、出血性ショックよりも、頻脈性不整脈を背景とした心原性ショックの可能性が高いと判断し、循環補助を目的としてIABPを導入した。しかし、IABP導入後も循環動態は安定せず、昇圧剤投与が継続された。夜間以降も頻脈と低血圧は遷延し、翌未明には意識障害が進行、心停止に至った。蘇生処置が行われたものの、平成30年11月14日午前5時15分、死亡が確認された。PCI後の詳細な経過はこちら 11月13日13時19分本件PCIの終了13時29分HCU(高度治療室)に移動し、昇圧剤(塩酸ドパミン注キット)は5mL/時で継続13時42分血圧98/56mmHgであり、13時43分の12誘導心電図検査(ECG)の結果、STの低下14時39分12誘導ECGの結果、心拍数125で洞性頻脈、ST変化、急性心筋梗塞波形および外側心筋障害。医師1は、医師2らと本件患者の血圧低下の原因について検討し、本件施術中に冠動脈に血流低下が生じたことおよびHCU入室後の12誘導ECGの結果ST低下が出現したことから、急性ステント血栓症の可能性があると判断し、同日中に再度、冠動脈造影検査(CAG)を実施し、血圧を調整するために大動脈内バルーンパンピング(IABP)を留置する方針とした。14時56分血圧55/40mmHgであったため、医師1は、昇圧剤を6mL/時に増量し、15時頃には7mL/時に、15時15分頃には8mL/時に増量するとともに、15時10分頃にヘパリンの投与を開始。15時29分12誘導ECGの結果、心拍数156で洞性頻脈、下壁心内膜障害疑い。医師1は、本件患者の心筋虚血が進行している可能性があると判断16時6分心拍数148、血圧69/48mmHg、呼吸数24であり、16時30分頃に3mL/時で昇圧剤(ノルアドレナリン)の投与が開始されたが、16時31分頃には、心拍数155、血圧65/36mmHg、呼吸数20、16時44分頃には、心拍数154、血圧70/49mmHg。16時45分簡易心エコー検査を実施。可視範囲内では心臓壁運動は良好であり、心嚢液の貯留はみられなかった。16時49分Hb値は12.4g/dL。17時30分血圧71/49mmHg、呼吸数24であり、12誘導ECGの結果、心拍数153で洞性頻脈、ST異常、下壁心内膜障害疑い、心筋虚血疑い。医師1は、心タンポナーデや後腹膜出血によるショックの可能性は低く、心エコー検査の結果からすると、ポンプ失調の可能性も低いところ、単に洞性頻脈に伴う血圧低下の可能性もあるが、本件施術後のno flowなどの可能性もあり再検すべきであると考えた。18時12分左冠動脈造影を実施したが、急性冠閉塞の所見は認めず。医師1らは、「本件患者がステント血栓症による心原性ショックを発症したものではない」と判断した。18時15分頃までに右冠動脈、腹部大動脈、腸骨動脈および大腿動脈近位部の造影を行ったところ、活動性のある出血や出血点は確認されなかった。医師1らは、後腹膜出血による出血性ショックを生じているのではなく、頻脈性不整脈による心原性ショックを生じているものと考えた。18時26分IABPを挿入し、駆動を開始。18時40分脈拍152、血圧62/38mmHg、午後6時45分頃には、脈拍155、血圧68/24mmHg、午後6時50分頃には、脈拍153、血圧90/29mmHg。医師1は、頻拍の原因として心房粗動が疑われることから、夜間はrate controlで経過観察とし、頻拍が持続すれば除細動も考慮することとした。19時シース固定部位に少量の出血が認められたが、シース固定部および穿刺部に出血などの異常はみられなかった。19時49分12誘導ECGの結果、心拍数154、洞性頻脈であり、ST異常がみられた。20時Hb値10.921時57分腸骨大腿動脈造影を施行。その結果、造影剤の血管外漏出像は認めず、医師1は、有意なHb値の低下もないため、出血性ショックも否定的であることから、遷延するショックの原因は頻脈以外に挙げることはできないと考えた。22時30分オーグメンテーション圧(IABPバルーン拡張期圧)低下のアラームが鳴り、本件患者は胸部症状がみられ、嘔吐。22時40分心拍数126、血圧72/43mmHg(観血)11月14日3時07分オーグメンテーション圧低下アラームが鳴り、呼吸下顎様となり、意識レベルはJCS 2に低下、心拍数100台、血圧50/29mmHg(観血)へと低下3時16分意識レベルJCS 3(-300:痛み刺激に反応しない状態)3時31分心静止状態となったため心臓マッサージが開始5時15分死亡【病理解剖および医療事故調査・支援センターの評価】本件患者の死後実施された病理解剖では、両側大腿動脈周囲から後腹膜に連続する広範な出血が認められ、明確な血管損傷部位は特定できなかった。医療事故調査・支援センターは、病理検査の結果を踏まえ、微小血管からの持続的出血が抗血栓療法の影響で止血されず、出血性ショックに至ったと評価した。実際の裁判結果本件では、原告らは、本件患者が、本件施術中から穿刺部を中心とした微小出血が持続したことにより平成30年11月13日14時40分頃に出血性ショックを生じ、それ以降死亡に至るまで出血性ショックの状態が遷延していたことを前提とし、被告病院の医師らについて、〔1〕14時40分の時点、〔2〕16時49分の時点、〔3〕18時12分の時点、および〔4〕20時の時点において、本件患者の心原性ショックのみならず、出血性ショックを疑い、CT検査または腹部エコーによる検査で出血の有無を確認し、出血性ショックを診断の上、ヘパリンを中止し、輸液・輸血や出血点の治療を行う義務があったにもかかわらず、これを怠った旨を主張した。裁判所は、以下の点を指摘し、「本件患者が、午後2時40分頃に出血性ショックを生じ、以後、出血性ショックの状態が続いていたと認めることはできない」として原告らの主張はその前提を欠くと判断した。出血性ショックにおいて血圧低下が生じるのは、重度の循環血液量減少(血液量の40%超え)が起きている場合であるから、仮に、14時40分以降の低血圧が、14時40分頃に生じた出血性ショックによるものであるとすれば、本件施術の実施(大腿動脈穿刺を開始した12時25分頃)から14時40分頃までの約2時間前後の間に血液量の40%を超える出血があったことになる。しかし、18時15分頃に行われた腹部大動脈、腸骨動脈および大腿動脈近位部の造影検査の結果、活動性のある出血や出血点は確認されておらず、病理解剖の結果からも、出血部位は同定できず、本件施術による穿刺部や周囲小血管からの微小出血が、施術に伴う抗血栓療法の影響で凝固せずに長時間持続したため、大量出血に至ったと考えられるとされていること本件患者のHb値は、16時49分頃には12.4g/dLとまだ基準値内にとどまっており、20時に至っても10.9と被告病院において設定されている下限値(11.6)をわずかに下回る程度で、急性出血に対する外科的適応として輸血を必要とする値にも達していなかったこと本件患者に約2時間前後の間に重度の循環血液量減少が生じるほどの急激かつ大量の出血が生じたのであれば、出血からHb値の低下までに時間差があるとしてもHb値は急激に低下するはずであるが、本件PCI以降、16時49分頃に12.4g/dL、20時頃に10.9と緩やかに低下しており、14時40分までに出血性ショックを惹起させる大量の出血があったことと整合しないことまた、裁判所は、原告らの主張する各時点における検査義務について、それぞれ以下の点を指摘し、いずれも「CT検査または腹部エコー検査を行うべき義務を負っていたとは認められない」と判断した。1)14時40分の時点について14時40分頃、ショック症状と矛盾しない低血圧および頻脈が出現していたものの、ほかに出血性ショックや後腹膜出血を疑わせる症状はみられていないこと本件PCI中の12時55分頃に急性冠閉塞を発症し、心原性ショックをきたしたことやHCU入室後の12誘導ECGの結果からすると、14時40分頃に生じたショック症状も心原性ショックである可能性は十分にあり得たこと上記のことから、被告医師らが、急性ステント血栓症の可能性があると考えたことが不合理とはいえないこと2)16時49分の時点について16時49分の時点においてもHb値は12.4g/dLと基準値の範囲内であったこと14時40分頃と同様に、低血圧と頻脈以外に出血性ショックや後腹膜出血を疑わせる症状はみられていないこと16時45分頃に簡易心臓エコー検査を行った結果、心タンポナーデの可能性は低いと判断しているものの、未だ急性ステント血栓症の可能性は否定されていないこと3)18時12分の時点について被告医師らは、18時12分の左冠動脈造影検査に引き続いて、18時15分頃までに右冠動脈、腹部大動脈、腸骨動脈および大腿動脈近位部の造影を行っており、同検査で活動性のある出血や出血点は確認されていないこと本件PCIから14時40分頃までの約2時間前後で後腹膜出血により低血圧に陥るほどの重度の出血性ショックに陥ったのであれば、活動性のある出血や出血点が造影検査で確認できないほど微小であるとは考え難いことからすると、医師らが、この造影検査の結果を踏まえて、本件患者が後腹膜出血による出血性ショックを生じているのではないと判断したことは不合理とは言い難いこと4)20時の時点について本件患者のHb値は、20時頃には、基準値をやや下回る10.9となっているが、これ自体は輸血を要するような値ではないこと本件PCI以降、Hb値は16時49分頃に12.4g/dL、20時頃に10.9と緩やかに低下しているものの、低血圧が生じるとされる重度の循環血液量減少が生じていると疑わせるような著しい低下はみられていないこと。むしろ、この時点では、3回の観血的処置による出血や輸液の投与により血液が希釈されたことにより生じたHb値の低下である可能性も否定できないこと18時15分頃の右冠動脈、腹部大動脈、腸骨動脈および大腿動脈近位部の造影検査において、後腹膜出血が生じていることを示す活動性のある出血や出血点は確認されなかったこと同時点までに穿刺部やその周辺に血腫を疑わせる腫脹等の異常がみられず、本件患者が後腹膜出血の症状である頑固な背部痛および腰部痛を訴えていなかったこと上記からすると、医師らが、Hb値の低下が出血性ショックによるものであると判断しなかったことが不合理であるとまでは言い難いこと注意ポイント解説本稿も、第17回と同様にショックが問題となったケースであるが、本判決の特徴は、結果として死因が出血性ショックであったにもかかわらず、診療過程での判断が過失とはされなかった点にある。本件で裁判所が過失と判断しなかったのは、以下の点による。診療当時のHb値が出血性ショックを惹起させる大量出血と整合しない推移であったことPCI後(PCI中の急性冠閉塞を含む)であったこと診療経過に鑑みて心原性のショックであることが十分に疑われる状況であったこと後腹膜出血を疑わせる所見がなかったことこのため、Hb値が出血性ショックを惹起させる大量出血と整合するものであったり、後腹膜出血を疑わせる所見があったりする場合には、異なる結論となり得たことに留意する必要がある。同様に、そもそも診療中に原因を探る検査がほとんど行われていない場合、原因探求のための検査を怠り漫然と対応したとして過失(注意義務違反)が認められる可能性があることにも留意する必要がある。なお、本件では、被告病院の院内調査委員会が詳細な検討を経て作成した報告書において、医師の過失を認める記述がなされており、原告らは、この報告書に基づく被告医師らの過失を主張していた。これについて裁判所は、以下のとおり判示し、この報告書に基づいて過失を認めることはできないとした。「本件報告書は、調査の目的が“医療安全の確保であり、個々の責任を追及するためのものではない”とされているとおり、患者の死亡の原因究明や将来における安全性の高い医療の提供確保の観点から作成されたものであって、被告病院の医師に法的に過失があるか否かという観点から作成されたものではない。本件報告書の内容からしても、後方視的にみて、本件患者の後腹膜出血を疑うべき積極的所見がなくても、Hb値が低下しているのであるからCT検査を行う必要があったとするにとどまるものであり、被告病院の医師らによる診療行為について、その当時の具体的な状況および医療水準に照らし、前方視的にみて注意義務違反があったと評価するものではない。そうである以上、本件報告書の記載をもって被告病院の医師に過失があると認めることはできないことは明らかである」過失については、後方視的に評価するものではなく、診療時点に認識できた事実に基づいて前方視的に評価すべきであるという原則を確認するものであるが、この点が確認されたことは、然るべき事故原因の調査報告がなされ安全性の高い医療提供に寄与する(責任逃れのための調査報告書が作成されることを回避できる)ものであり、意義がある。医療者の視点PCI後の循環動態不安定において、「心原性ショック」と「出血性ショック」の鑑別は実臨床でも常に悩ましい問題です。本件のように術中に急性冠閉塞の既往がある場合、術者はまずステント血栓症などの心原性要因を除外することに全力を注ぎます。抗血栓療法を中断すれば致死的な転帰に直結するため、出血源が特定できない段階での判断は極めて困難です。今回の判決で注目すべきは、裁判所が「急性出血におけるHb値低下のタイムラグ」という生理学的現象を正しく認定した点です。実臨床において、急激な出血であっても直後の採血データには反映されないことは常識ですが、これが司法の場でも認められた意義は大きいです。また、IABP駆動中の不安定な患者をCT室へ搬送するリスクとベネフィットの天秤についても、現場の判断が尊重されました。さらに、院内事故調査委員会が再発防止の観点から「過失」を認める記載をしていても、裁判所はこれを後方視的な評価として法的責任とは切り離しました。これは、医療安全文化の醸成と法的紛争を混同すべきではないという重要なメッセージであり、われわれが萎縮せずに検証を行うための支えとなる判断です。本判決は、結果のみにとらわれず、その時々の臨床判断のプロセスが正当に評価されることを示しており、日々の診療において、なぜその判断に至ったか、という思考過程を記録に残すことの重要性を再認識させてくれます。Take home messagePCI後の循環不全では、心原性ショックと出血性ショックの鑑別が常に問題となる急性出血ではHb低下が遅れることがあるが、その時点の数値と所見に基づく判断の合理性が評価される結果的に重篤な合併症が判明しても、当時の臨床判断が医学的に説明可能であれば、注意義務違反とはされない場合があるキーワードPCI、後腹膜出血、出血性ショック、心原性ショック、Hb値、IABP

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発症2時間以内の脳出血、活性型第VII因子の有用性は?/Lancet

 発症から2時間以内の脳内出血(ICH)患者の治療において、遺伝子組換え活性型第VII因子(rFVIIa)製剤の投与はプラセボと比較して、機能的アウトカムを改善せず、血腫の拡大を有意に抑制したものの、生命を脅かす血栓塞栓性合併症のリスクがわずかに上昇することが、米国・ University of CincinnatiのJoseph P. Broderick氏らFASTEST Investigatorsによる「FASTEST試験」の結果で示された。ICHでは、出血量に比例して重大な障害と死亡のリスクが増加し、出血の拡大は症状発現から2~3時間以内に生じるとされる。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2026年2月4日号に掲載された。6ヵ国の無作為化プラセボ対照第III相試験 FASTEST試験は、6ヵ国(日本、北米、欧州)の93施設で実施した二重盲検無作為化プラセボ対照アダプティブ第III相試験であり、2021年12月~2025年10月に参加者を登録した(米国国立神経疾患・脳卒中研究所[NINDS]などの助成を受けた)。 対象は、年齢18~80歳、ICH(出血量2~60mL)を発症し、片側側脳室の3分の2未満または両側側脳室の3分の1未満の脳室内出血(IVH)を認め、グラスゴー・コーマ・スケールスコア8点以上で、脳卒中発症時または最終健常確認時から2時間以内に試験薬の投与を受けた患者とした。 被験者は、rFVIIa(80μg/kg)を投与する群(介入群)またはプラセボ群に、1対1の割合で無作為に割り付けられ、2分間で静脈内投与された。 主要アウトカムは、ITT集団における180日時点での機能的アウトカム(修正Rankinスケール[mRS]スコア[0~2点、3点、4~6点])とした。安全性の主要アウトカムは、無作為化集団における4日以内に発生した生命を脅かす血栓塞栓性イベント(急性心筋梗塞、急性脳梗塞、急性肺塞栓症)であった。 本試験は、2回目の中間解析時に、事前に規定された無益性による中止基準を満たしたため、NINDSと独立データ安全監視委員会(DSMB)の勧告を受けて患者登録を中止した。発症から投薬までの平均時間は100分 626例(平均年齢61[SD 12]歳、女性216例[35%])を登録し、介入群に328例、プラセボ群に298例を割り付けた。ベースラインの平均ICH量は16.7(SD 14.6)mL、平均IVH量は1.5(SD 5.1)mL、NIHSSスコア中央値は13点(四分位範囲:8~17)であり、脳卒中発症から試験薬投与までの平均時間は100(SD 22)分だった。 ITT集団における180日時のmRS 0~2点の達成率は、介入群が46%(151/328例)、プラセボ群は45%(134/298例)と、両群間に有意な差を認めなかった(オッズ比[OR]:1.09、95%信頼区間[CI]:0.79~1.51]、p=0.61)。日本人(介入群144例、プラセボ群132例)のORは1.40(95%CI:0.86~2.29)と有意差はないものの介入群で良好な傾向がみられた。 4日以内の生命を脅かす血栓塞栓性合併症の発生率は、プラセボ群が1%(4/298例)であったのに対し、介入群は<5%(15/328例)と有意に高かった(相対リスク:3.41、95%CI:1.14~10.15、p=0.020)。 また、ICH量のベースラインから24時間後までの増加分は、プラセボ群に比べ介入群で有意に少なく(-3.68mL、95%CI:-5.40~-1.94、p=0.0011)、同様にICH+IVH量の増加分も介入群で有意に少なかった(-5.23mL、-7.64~-2.8、p=0.0011)。スポットサイン、90分以内の投与で止血効果が高い傾向 主要アウトカムのサブグループ解析では、ベースラインの造影CT検査でスポットサインを認めた患者(OR:1.86、95%CI:0.94~3.68)および最終健常確認時から90分以内に試験薬の投与を受けた患者(1.82、0.98~3.40)において、プラセボ群に比べ介入群でアウトカムが良好である傾向を認めた。 著者は、「rFVIIaの止血効果は、出血が持続している可能性が高い患者(90分以内に治療を受けた患者、造影CTでスポットサインを確認した患者)に集中していた」「機能的アウトカムの改善に必要となる出血拡大の抑制量は、先行研究で示された3~4mLではなく、少なくとも6~12mLであると示唆される」としている。現在、持続性出血のリスクが最も高い患者におけるrFVIIaの有効性の評価を目的とする臨床試験(FASTEST 2試験)が進行中だという。

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第282回 初診は据え置き、再診は実質3点増、2026年度改定の全体像明らかに/中医協

<先週の動き> 1.初診は据え置き、再診は実質3点増、2026年度改定の全体像明らかに/中医協 2.末期腎不全も緩和ケア対象に、診療報酬改定で/厚労省 3.在宅医療にメス 頻回訪問を抑制、報酬体系を大幅見直し/厚労省 4.急性期A・B新設で何が変わる? 入院基本料再編の全体像/厚労省 5.ナースコールからランサムウェアが侵入、患者情報1万人流出/日医大武蔵小杉病院 6.医療行為が刑事裁判に 赤穂市民病院手術事故、指導体制も争点/神戸地裁 1.初診は据え置き、再診は実質3点増、2026年度改定の全体像明らかに/中医協中央社会保険医療協議会(中医協)は2月13日、2026年度診療報酬改定の内容を決定した。物価高騰と人件費上昇への対応を最重要課題に位置付け、診療報酬本体は3.09%引き上げられる。内訳は賃上げ対応1.70%、物価対応1.29%で、30年ぶりに「賃金・物価」を正面から評価する改定となった。外来では、初診料(291点)は据え置く一方で、再診料は1点引き上げられて76点とし、新設の「物価対応料」により初診・再診とも2点(20円)が加算される。これにより再診時は合計3点増となる。訪問診療でも物価対応料が上乗せとなり、いずれも1日単位で算定が可能とされた。さらに、今後の物価上昇を見据え、2027年6月以降は物価対応料を原則2倍とする方針が示されている。賃上げを実施する医療機関を評価する「ベースアップ評価料」も拡充される。外来・在宅では、初診時17点、再診時4点を基本とし、すでに賃上げを行っている医療機関ではより高い点数が付く。入院ベースアップ評価料も最大250点まで拡大され、医師・看護師に加え、事務職員や看護補助者など幅広い職種を対象に処遇改善を促す設計となった。2027年度には評価水準をさらに引き上げる。今回の改定の特徴は、外来よりも入院医療を厚く評価する点にある。急性期一般入院料は機能に応じて約8~11%引き上げられ、救急搬送件数や全身麻酔手術件数など実績を重視した評価体系が導入される。多職種協働体制を評価する新加算や、救急・外科医療体制を支援する加算も相次いで新設され、地域の急性期拠点を明確に選別する方向性が打ち出された。その一方で、入院時の食費は1食40円、光熱水費は1日60円引き上げられ、患者負担は増加する。医療DXでは、生成AIの活用を前提に医師事務作業補助体制加算の人員基準を柔軟化するなど、実績と効率化を重視する評価が強まった。総じて2026年度改定は、「賃上げを実行する医療機関」「急性期・救急機能を担う病院」「DXで生産性を高める施設」を重点的に評価する構造となった。算定の可否により病院経営への影響差は大きく、各医療機関には自院の機能定位と戦略的な届出判断が求められる。 参考 1) 個別改定項目について(厚労省) 2) 物価高・賃上げ対応で初診・再診料ともに引き上げへ…中医協が診療報酬改定内容を決定(読売新聞) 3) 物価高に対応、初診2点・再診3点引き上げ 26年度診療報酬改定、入院評価を重点化(CB news) 4) 診療報酬加算引き上げへ 中医協が改定案答申 患者窓口負担も増(NHK) 2.末期腎不全も緩和ケア対象に、診療報酬改定で/厚労省2026年度診療報酬改定で、緩和ケアの評価対象が大きく見直される。これまで診療報酬上、主にがん患者に限られてきた緩和ケアについて、末期の腎不全患者や呼吸器疾患が新たに対象に加えられることが決まった。ただし、「緩和ケア病棟」の入院料としては末期腎不全のみであり、末期呼吸器疾患は緩和ケア診療加算・外来緩和ケア管理料で算定可能となった。背景には、がん以外の疾患では十分な緩和ケアが提供されてこなかったという課題がある。とりわけ、人工透析を中断した末期腎不全患者は、呼吸困難や意識障害、強い吐き気などの重い症状に直面することが多く、苦痛緩和の必要性が指摘されてきた。今回の改定では、透析療法の開始や継続が困難な終末期の腎不全患者を、診療報酬上も正式に緩和ケアの対象として位置付ける。あわせて、高齢者を中心に問題となっている多剤服用や重複投薬への対策も強化される。病棟に勤務する薬剤師が、転院・退院時に服薬状況や副作用リスクについて患者や家族に指導した実績を適切に評価する仕組みを整える。さらに、在宅医療では医師と薬剤師が同時に訪問し服薬指導を行った場合、半年に1回3,000円を算定できる「訪問診療薬剤師同時指導料」が新設される。国の調査では、半数近くが飲み忘れや飲み残しによる残薬を自宅に保管しているとされ、60歳以上でとくに多い傾向が確認されている。処方・調剤時に残薬を確認し、調剤量を調整する取り組みを評価することで、患者の安全確保と医療費の適正化につなげる狙い。厚生労働省は、6月からの改定施行を通じ、がん以外の疾患も含めた幅広い終末期医療と薬物療法の質向上を後押ししたいとしている。 参考 1) 末期腎不全患者を緩和ケア対象に 残薬対策も 26年度診療報酬改定(毎日新聞) 2) 緩和ケアの診療報酬 末期の腎不全患者など対象の方針 中医協(NHK) 3.在宅医療にメス 頻回訪問を抑制、報酬体系を大幅見直し/厚労省2月13日に答申された、2026年度診療報酬改定では、在宅医療、とりわけ訪問看護や訪問診療を巡る報酬体系が大きく見直される。焦点となっているのは、高齢者住宅や有料老人ホームに併設された訪問看護ステーションによる「頻回訪問」や、いわゆるホスピス型住宅での過剰請求への対応だ。厚生労働省は、同一建物で多数の入居者に短時間・高頻度で訪問看護を行い、高額な報酬を得ている事例が増えているとして、包括的な評価方式を導入する。ホスピス型住宅では、従来の出来高払いに代えて定額制の包括払いを新設し、1人当たり月80~90万円に上るケースがあった報酬水準は、最大でも45万円程度に抑えられる。出来高払いを選択した場合でも、多人数への頻回訪問では報酬が引き下げられ、20分未満の訪問は算定不可となる。訪問診療についても、必要性の乏しい頻回訪問を抑制する方向が示された。要介護度や重症度の低い患者への月2回以上の訪問は原則とせず、月1回を標準と位置付ける。がんなど重症患者の割合が低い医療機関では、管理料を低い区分に制限する仕組みとし、通院可能な患者は外来対応へ誘導する。24時間往診体制の評価も、自院完結型か他院連携型かで差を設け、実質的な関与が乏しい場合の報酬を抑える。さらに、在宅医療を担う病院・診療所には、災害時の業務継続計画(BCP)の策定が施設基準として義務化される。新規開設は2026年度から、既存施設も2027年5月末までに策定が求められ、地域の訪問看護や介護事業者、行政との連携を前提とする。今回の改定では、在宅医療の「量」から「質」への転換を明確にし、高齢者の囲い込みや過剰な医療提供を抑制する一方で、真に必要な在宅・終末期医療の持続可能性を確保する狙いがある。 参考 1) 「ホスピス型住宅」報酬引き下げ 訪問看護、厚労省6月から(共同通信) 2) 在宅医療「もうけすぎ」にメス 診療報酬見直し、高齢者囲い込み防止(日経新聞) 3) 高齢者住まい等への頻回訪問に包括評価を導入(日経メディカル) 4) 在宅医療巡り病院・診療所にBCP策定義務化へ…厚労省、災害時の地域連携促す(読売新聞) 4.急性期A・B新設で何が変わる? 急性期医療の拠点化と実績重視/厚労省2026年度診療報酬改定では、急性期病院の入院基本料が大きく再編され、急性期医療の拠点化と実績重視の姿勢が鮮明になった。最大の特徴は、新たに創設された「急性期病院一般入院料A・B」である。急性期Aは1日1930点と、従来の急性期一般1より56点高く設定され、地域の基幹病院としての役割を強く評価する。急性期Bは1,643点だが、多職種7対1体制を整え「看護・多職種協働加算2(255点)」を算定すれば1,898点となり、急性期一般1を上回る水準に達する。従来の急性期一般入院料(1~6)も軒並み引き上げられ、とくに急性期一般1は1,874点へと大幅に増点された。結果として点数序列は「急性期A、次いで多職種体制を整えた急性期B、その下に急性期一般1」という構図が明確になった。単なる看護配置だけでなく、多職種協働体制の整備が収益に直結する設計となっている。さらに、総合入院体制加算と急性期充実体制加算を統合した「急性期総合体制加算」が新設された。最上位区分では入院7日以内に530点が上乗せされて、救急・高度医療を担う病院への重点配分が強化される。加えて、物価高への対応として入院でも物価対応料が加算され、2027年以降は原則倍増する見通し。今回の改定は、急性期病院に対し「どの機能を担い、どの水準を目指すのか」という戦略的選択を迫る内容であり、届出の有無が経営に大きな差を生む改定となった。 参考 1) 急性期Aは1,930点、多職種7対1急性期Bは1,898点、急性期1と多職種7対1急性期4は1,874点(Gem Med) 2) 地域包括医療病棟を「3,367-3,066点」の6区分に細分化、ADL低下割合などの基準柔軟化も(同) 3) 2026年度診療報酬改定の詳細が決定 急性期の病院機能を報酬で明確化へ(日経メディカル) 5.ナースコールからランサムウェアが侵入、患者情報1万人流出/日医大武蔵小杉病院日本医科大学武蔵小杉病院(川崎市、372床)は2月13日、ランサムウェアによるサイバー攻撃を受け、患者約1万人分の個人情報が外部に流出したと公表した。流出したのは氏名、性別、住所、電話番号、生年月日、患者IDなどで、病名・病歴や電子カルテ、クレジットカード情報の漏洩は現時点で確認されていない。攻撃者は身代金として1億ドル(約150億円)を要求しているが、病院側は支払いに応じない方針を示している。病院によると、2月9日午前1時50分頃、病棟のナースコール端末が正常に作動しなくなり、システム障害が発覚。調査の結果、ナースコール用サーバーがランサムウェアに感染していたことが判明した。侵入経路は、医療機器保守用に設置されていたVPN装置とみられ、パスワード管理が脆弱だった可能性があるという。11日には攻撃者側とみられるサイト上で、患者情報の一部流出が確認された。診療体制への直接的な影響はなく、外来・入院・救急はいずれも通常通り継続している。ただし、ナースコールは完全復旧に至っておらず、看護師の増員や病室巡回の強化で安全確保を図っている。同院は、厚生労働省や文部科学省に報告し、神奈川県警に被害届を提出。対象患者には個別通知を開始し、相談窓口も設置した。今回の事案は、医療機関における周辺システムやVPN管理の脆弱性が、診療データ以外からも大規模な情報漏洩につながり得ることを示した。医療DXが進む中、電子カルテ以外を含むシステム全体のセキュリティ点検、BCPやインシデント対応体制の再確認が、改めて医療現場に突き付けられている。 参考 1) 当院へのサイバー攻撃による個人情報漏洩に関するご報告とお詫び(第日本医科大学武蔵小杉病院) 2) 患者1万人分の個人情報漏洩 日医大武蔵小杉病院にサイバー攻撃(朝日新聞) 3) 日本医科大武蔵小杉病院にサイバー攻撃 患者約1万人の情報漏洩(日経新聞) 4) またもVPNからランサム被害、日本医科大学武蔵小杉病院で約1万人の情報漏洩(日経クロステック) 6.医療行為が刑事裁判に 赤穂市民病院手術事故、指導体制も争点/神戸地裁兵庫県赤穂市民病院で2020年1月、腰椎手術中に患者の神経を損傷し重い後遺障害を負わせたとして、当時の執刀医の男性(47)が業務上過失傷害罪に問われた事件で、神戸地裁姫路支部は2月9日、初公判を開いた。被告は起訴内容をおおむね認め、「詳細は被告人質問で答える」と述べ、弁護側も「罪が成立することは争わない」とした。医師の医療行為が刑事裁判で審理されるのは異例とされる。起訴状などによると、被告は女性患者(80)の腰椎の一部を切除する手術で、出血が多く患部の視認が困難な状況にもかかわらず十分な止血を行わず、威力の高い医療用ドリルで骨を削る操作を継続。誤って神経(脊髄・馬尾周辺)を切断し、両下肢麻痺など全治不能の後遺障害を負わせたとされる。検察側は、「科長から止血を促されても血を吸引しただけで手技を続けた」と指摘し、「事故は容易に予見できた」と過失の程度を強調した。その一方で、弁護側は「手術は1人で遂行できず、経験の浅い被告だけに責任を負わせるのは相当でない」と主張。証人として出廷した指導医は止血を勧めたが執刀を止めなかった経緯を説明し、「1分1秒でも早く交代していればよかった」と後悔を口にした。この事故を巡っては民事でも、被告と赤穂市に約8,800~8,900万円の賠償を命じた判決が確定している。病院側は医療過誤と認定。被告が着任後約半年で関与した手術で医療事故が複数(後遺障害8件、計11件とも報道)起き、2人が死亡したとされる点も、管理体制を含めた再発防止策が問われている。公判では証拠として手術映像も法廷で取り調べられ、被害者側親族が被害者参加制度で出廷した。今後、被告人質問や求刑・弁論を経て結審する見通しで、量刑判断とともに、指導医の関与や病院の教育・監督体制が争点となる。医療安全と人材育成の両面で、現場に突き付けられた課題は重い。 参考 1) 赤穂市民病院の医療過誤 執刀医の男、起訴内容認める 神戸地裁姫路支部で初公判(神戸新聞) 2) 手術で重い障害残る医療過誤…業務上過失傷害罪の初公判で赤穂市民病院の元医師認める(読売新聞) 3) 市民病院医療事故多発 被告医師「私一人だけ悪いとなるのはおかしい」(赤穂民報)

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第293回 クマ外傷、その種類や標準化された治療法とは

INDEXクマが狙うのは、ほぼ顔外傷の種類や特異性創傷部位の評価と必要な処置創部感染の原因菌と予防対策具体的な外科治療の実際薬物療法に漢方が標準化さて、前回は昨今話題のクマ外傷被害についてCiNii検索で抽出した2000年以降の16論文と秋田大学医学部救急・集中治療医学講座教授の中永 士師明(なかえ はじめ)氏の編著『クマ外傷 クマージェンシー・メディシン』(以下、クマージェンシー)をもとに疫学についてまとめた。今回もこれらの出典から、クマ外傷の病態と治療についてまとめてみた。クマが狙うのは、ほぼ顔岩手医科大学(50例)、秋田大学(13例)、新潟大学(10例)、山梨県立中央病院(9例)の主な臨床報告では、クマによる外傷の部位はいずれも顔面が90%以上(秋田大学の報告は「頭頸部を含む顔面」)で、次いで上肢が多い(38~77%)。この外傷部位の特徴は、ツキノワグマが攻撃時に後足で立ち上がり、発達した前足の鋭い爪でヒトを殴打する攻撃スタイルに起因すると考えられている。ツキノワグマの体長(頭胴長)は120~145cm、前足、後足とも約15cm。ほぼ完全に後足で立ち上がって前足を上げれば、全長150~175cmとなり、前足がちょうどヒトの顔面付近に位置する格好になるため、顔面の受傷の多さは理解しやすいだろう。一方、顔面に次いで上肢が多いのは、ヒトがとっさに顔や頭を守ろうとする防御行動によるものと報告されている。ちなみにクマージェンシーで紹介されている2023年に秋田大学医学部附属病院高度救命救急センターに搬送された20例では、受傷部位はやはり顔面が90%、上肢が70%、頭部が60%と前出の報告とほぼ同様だが、下肢が40%と記述されている。下肢の受傷理由についての記述はないが、おそらくは第1撃で顔面や上肢を受傷し、逃げようとしたところを追いすがられた結果と考えるのが自然だろう。外傷の種類や特異性クマ外傷は鋭い爪による軟部組織損傷(鋭的外傷)とパワーの強い打撃による骨折(鈍的外傷)に大別される。ツキノワグマの爪は、木登りに適した鋭く内側に曲がったかぎ状(フック状)となっており、長さは通常3〜5cmほど。クマージェンシーでは「一見、小さな外傷に見えても内部構造を破壊させることで大きな障害を残すことがある」と記述している。軟部組織のどこを受傷したかは、クマの爪が当たった場所に依存するが、各論文などでは眼球破裂・脱出、涙小管断裂、顔面神経損傷、耳下腺管断裂などが報告されている。また、鋭い爪の影響でごく一部では上口唇動脈、腋窩動脈、上腕動脈に達する損傷が認められることがあるという。さらに爪による攻撃は、皮膚に平行な強い力が加わることで、皮膚が広範囲に剥がされる「剥脱創」となることがあり、この場合は重度の出血を伴い、致命的となりうることを参照論文では指摘している。一方、ツキノワグマは体重60〜100kgで、動作が秒速10~15mとも言われるため、ここから算出される一打の打撃エネルギー量は、約400〜1,300ジュール(J) と言われている。これに対する比較対照を並べると、プロボクサーのパンチ一打が 約300〜500J、日本の警察の9mm口径の拳銃弾命中時が約500Jと推定されるため、その強大さは桁違いである。骨を破壊するエネルギー量がおおむね1,000Jと言われるので、当然ながら受傷者の一部では骨折が生じる。実際、参照論文を見ると、顔面への受傷例のおおむね半数以上で顔面での骨折が認められ、とくに眼窩、頬骨、鼻骨、鼻篩骨といった顔面中央部(中顔面)に多発。これ以外では頭蓋骨、下顎骨、歯槽骨などの骨折、さらに防御行動による四肢・体幹での尺骨や肋骨、肘関節などの骨折も報告されている。新潟大学の報告では、クマ外傷による骨折には特有のパターンがあることが指摘されている。これは通常の顔面骨の骨折では、顔表面から内側、すなわち頭蓋骨内部方向に陥没する骨折がほとんどなのに対し、クマ外傷では顔面骨が外側に引き出されるようなベクトルで骨折が生じることがあるとしている。これはおそらくクマによる打撃の際にめり込んだ前出のかぎ状の爪を引き抜く際に生じたものだろう。クマ外傷はこのように多発外傷であるため、全身に影響を及ぼし、動脈損傷では大量出血による出血性ショック、口腔内の持続的な出血や粉砕された顔面骨などによる気道閉塞、硬膜下血腫といった頭蓋内損傷など重篤な合併症を引き起こす危険性がある。参照論文中でも出血性ショックは10~23%で報告され、秋田大学の報告13例のうち7例で気道閉塞の危険性があるとして気道確保のため気管切開が行われている。創傷部位の評価と必要な処置前出のような受傷状況を踏まえ、参照論文のうち複数論文では、クマ外傷では交通事故や高所からの墜落のような高エネルギー外傷に準じた初期対応、具体的にはクマ外傷の患者の搬送がわかった段階で、気道確保、止血と大量輸血・輸液の準備が必要と強調している。そのうえで搬送後は、頭頸部や四肢・体幹の受傷や組織損傷の状況を注意深く評価することを求めている。とくに前出のようにクマ外傷では見た目の傷が小さくとも深部組織を破壊していることがあるため、参照論文の中ではこの点の評価を怠らないよう注意喚起しているものが少なくない。また、クマ外傷では創部感染のリスクが高いため、創部の十分な洗浄とデブリードマンが推奨されている。参照論文を見ると、洗浄で使う生理食塩水の量は症例によっては5,000~10,000mLとかなり大量である。また、クマージェンシーでは、表面上の傷が小さいものの深部まで達している四肢の外傷では、傷口からの注水だけでは洗浄が不十分として、目視で深部まで確認できる皮膚の追加切開を推奨している。創部感染の原因菌と予防対策実際の創部感染発生率は、今回の参照論文で確認した範囲では20~33.3%。クマージェンシーに記述されている13例では21.1%で、おおむねクマ外傷被害者の3~5人に1人の発生率である。ちなみにこの数字は搬送時に予防的抗菌薬投与などをほぼ全例で行ったうえの数字であり、個人的には驚きを禁じ得ない。創部感染の原因菌については、クマージェンシーでは4分の1の症例で同定され、主にセラチア菌(グラム陰性桿菌)と腸球菌(通性嫌気性グラム陽性菌)だったと報告している。参照論文で原因菌が特定されたケースでもこの2種類が散見されるが、そのほかにもグラム陽性菌であるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)やA群レンサ球菌が検出された報告もある。こうしたこともあり、予防的抗菌薬投与では、嫌気性菌種を広くカバーするβラクタマーゼ阻害薬配合抗菌薬(ピペラシリン・タゾバクタムやアンピシリン・スルバクタム)が使われていることが多いようだ。もっともクマージェンシーではβラクタマーゼ阻害薬を含む場合と含まない場合の抗菌薬投与を比較し、創部感染発生率に差はないと報告している。また、岩手県の50例でも同様の検討を行い、βラクタマーゼ阻害薬の有無で創部感染発生率に有意差(p=0.08)はなかったものの、βラクタマーゼ阻害薬を含む群での感染発生率が9.1%に対し、含まない群では28.5%で、βラクタマーゼ阻害薬を投与したほうが感染発生率は低い傾向があると記述している。また、クマの爪や創部が土壌などで汚染されることを考慮し、ほぼすべての症例で破傷風トキソイドと抗破傷風人免疫グロブリンの投与が行われており、少なくとも参照論文とクマージェンシーでは破傷風発症事例はない。破傷風トキソイドを含む三種混合(DTP)ワクチンの日本での定期接種化が1968年であり、前回紹介したように受傷者はそれより以前に生まれた高齢者が多いことなどを考えれば、必要な措置なのだろう。具体的な外科治療の実際実際の治療は外科的なものがほとんどだが、損傷が多岐にわたるため、複数の専門診療科による連携手術が必要となるのは必定である。ここでは主な外科的治療の概略を紹介する。顔面骨骨折では、前出のような特有の外側に転位した骨片の有無を考慮し、観血的整復固定術が行われる。次に、動脈損傷、顔面神経損傷、涙小管断裂は即時再建が原則である。クマージェンシーでは鼻周辺の組織が噛みちぎられた事例として、路上に残されていた被害者の組織が持ち込まれ、再接合が行われた様子が写真とともに紹介されている。このため、同書では救急隊員が取るべき対応として、汚染の有無にかかわらず回収できる軟部組織はできるだけ回収して病院に持参するよう勧めている。素人には背筋が凍り付くような話である。ただ、完全な組織の欠損で機能回復や審美性を考慮した再建術が行われたケースでは、参照論文を見る限り、複数回の手術が長いものでは受傷から1年半後くらいまで行われている。歯や広範な歯槽骨欠損では、骨移植を併用した歯科インプラント治療が行われた事例も報告されている。このケースでは受傷6ヵ月後に骨移植術が実施され、さらにその6ヵ月後にインプラント埋入術が施行されている。薬物療法に漢方が標準化一方、抗菌薬の予防投与を除くと、治療で薬物を処方したケースは少ない。新潟県でのドクターヘリ搬送例で出血を抑えることを目的としたトラネキサム酸、山形県の症例で喉頭浮腫予防を目的としたデキサメタゾン、岐阜県の症例で後頭部や上腕の縫合を行わなかった創部に感染予防目的で処方されたゲンタマイシン(外用薬)ぐらいしか見当たらない。ただ、クマージェンシーでは秋田大学による漢方薬処方という興味深い事例を紹介している。具体的には鎮痛目的で打撲の痛みなどに使われる「治打撲一方」や感染防止目的での抗菌薬と「排膿散及湯」の併用である。治打撲一方の使用では1日で痛みが取れた著効例もあったという。また、排膿散及湯の併用は2024年から標準化している模様だ。しかしながら、このような難治療を経ても、視力障害、顔面神経麻痺、唾液や涙が止まらない、口腔機能低下などの後遺症に悩まされるケースは少なくないという。結局のところ、何よりもクマに遭遇しない予防措置が重要ということだろう。

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血液凝固因子第XI因子を阻害すればよいというものではない?(解説:後藤信哉氏)

 バイオベンチャーの技術の進歩はすさまじい。ヒトを構成する各種分子の構造と機能は詳細に解明され、分子の構造と機能に基づいた阻害薬も多数開発された。血液凝固第X因子阻害薬はビジネス的に大成功した。しかし、止血に必須の機能を担う第X因子の阻害では、重篤な出血イベントリスクの増加が不可避であった。第XI因子の止血における役割は補助的である。第XI因子の阻害により出血しない抗凝固薬ができる可能性を目指して開発が進んでいる。第XI因子の酵素活性の阻害抗体と、第XI因子の活性化を阻害する抗体の効果が臨床的に試された。 本研究は薬剤開発の第II相研究として施行された。静脈血栓の形成における第XI因子の酵素活性の阻害抗体と、第XI因子の活性化を阻害する抗体の効果を、標準治療であるエノキサパリンと比較した。2つの第II相試験の結果は、第XI因子の酵素活性の阻害抗体、第XI因子の活性化を阻害する抗体ともに抗凝固効果を発現することを示した。 本研究は、生体機能において機能発現の明確になっているタンパク質の機能を阻害するメカニズムの異なる抗体を複数作製して、臨床的に薬効を検証することにより生体分子の発現メカニズムの妥当性を検証する研究として価値がある。臨床試験により分子メカニズムの解明も可能となることを示唆した研究として価値が大きい。

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大阪大学医学部 血液・腫瘍内科学【大学医局紹介~がん診療編】

保仙 直毅 氏(教授)福島 健太郎 氏(准教授)菅 真紀子 氏(医員)講座の基本情報医局独自の取り組み・特徴大阪大学血液・腫瘍内科学の最大の特徴は“多様性”にあると思います。現在、大学には30人程度、関連施設を含めると100人を超える医局員が在籍しておりますが、それぞれ皆異なった志向、価値観、ライフスタイルを有しており、お互いに異なるそれらを尊重しながら協力して臨床・研究・教育に臨んでいます。これは人数が多いからこそできることで、より人の和を広げるよう、いろいろな人を柔軟に受け入れています。現在では新入医局員の半数以上が他学の出身者で、皆のびのびとやっていると思います。今後医局をどのように発展させていきたいか今のまま、どんどん人が加わって、皆が自由に活躍していただけば何よりです。ただ、全体としては臨床でも研究でも大きな仕事を成し遂げられるようにまとめていきたいと思います。医師の育成方針受験秀才から脱却して、「なぜかと問いかける血液内科医」になっていただくようにと思っています。治せる病気はきちんと治せるようになるのはもちろんのことですが、治らない病気は「なぜ治らないのだろう」と考えられるようになってほしいと思います。力を入れている治療/研究テーマ白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫をはじめとする血液悪性疾患は「不治の病」として長く知られてきましたが、治療の進歩や支持療法の強化により長期の生存、治癒が見込める病気になりつつあります。私たちの医局では、血液悪性疾患の標準治療はもちろん、新規薬剤の臨床試験(治験)に積極的に参加し国内外の診療をリードしております。またここ数年来で実臨床で使用できるようになった細胞療法、CAR-T療法により再発・難治の悪性リンパ腫・急性リンパ芽球性白血病の患者さんが長期生存できる可能性が高まってきました。さらには、当科で開発された新規細胞療法がいちはやく臨床使用できるよう、早期臨床試験(First in Human、Phase1)を行っています。このように新規の治療を臨床の場で体験し、その開発に携わり安全性や効果、注意すべき有害事象を深く学ぶことは、次世代の患者さんの治療に役立つことになり、さらには現状の治療の問題点を認識することができます。医局の雰囲気、魅力当医局では子育て世代の先生方も多く、業務のオン・オフは明確に分けられるようにしており、ワークライフバランスを保ちつつ、キャリアパスを積んでいくことができます。また各種専門医・指導医を各自の希望に合わせて取得できるよう、幅広く症例を経験することが可能です。私たちと一緒に、未来のがん治療を創っていきませんか?同医局を選んだ理由長崎大学での学生時代に血液内科の魅力を知り、卒業後は大阪大学の初期研修プログラムで血液・腫瘍内科の研修を受けました。造血幹細胞移植を含む高度な診療や最新の臨床研究への参加、研究室と病棟が連携し患者検体を迅速に解析できる環境は魅力的で、また厳しい状況にある患者さんに真摯に向き合いながらも、前向きにかつ楽しそうに診療に取り組む先生方の姿に触れ、自分もここで学びたいと入局を決めました。出身大学や経歴の異なる多くの先生方が所属して活躍しており、多様なキャリアを尊重する柔軟な医局の風土にも惹かれました。現在学んでいること市中病院で研鑽を積んだ後に大学院へ進学し、現在は白血病に対する新規細胞療法の研究に携わっています。自ら計画を立案し実験を重ね、新たな知見を築いていく過程は非常に刺激的で、臨床を離れて研究に没頭できた時間は医師として大きな財産となりました。研究を通じて細胞療法の可能性と限界を学び、今後の治療開発に必要な視点を養えたことは臨床医としても得難い経験だったと感じています。今後のキャリアプラン研究を継続するため海外留学に向けた準備を進めています。将来的にはトランスレーショナル・リサーチを軸に、造血器腫瘍に対する新たな治療開発を前進させる一助となれるよう臨床・研究の双方から研鑽を積んでいきたいと考えています。大阪大学大学院医学系研究科 血液・腫瘍内科学住所〒565-0871 大阪府吹田市山田丘2-2問い合わせ先ikyoku@bldon.med.osaka-u.ac.jp医局ホームページ大阪大学大学院医学系研究科 血液・腫瘍内科学専門医取得実績のある学会日本内科学会日本血液学会日本臨床腫瘍学会日本血栓止血学会日本輸血・細胞治療学会日本造血・免疫細胞療法学会日本がん治療認定医機構研修プログラムの特徴(1)臨床・研究ともに自身の希望に合わせたキャリアプランをサポートしております。(2)子育てに配慮した働き方支援をしております。(3)内科専門医、血液専門医、造血・免疫細胞療法学会認定医など資格取得を研修当初から視野においたプログラムを支援しております。詳細はこちら

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非小細胞肺がん、アミバンタマブ・ラゼルチニブ併用における予防的抗凝固療法に関する合同ステートメント/日本臨床腫瘍学会ほか

 日本臨床腫瘍学会、日本腫瘍循環器学会、日本循環器学会、日本肺癌学会、日本癌治療学会、日本血栓止血学会、日本静脈学会は2025年12月8日、非小細胞肺がん(NSCLC)のアミバンタマブ・ラゼルチニブ併用療法における予防的抗凝固療法の適正使用に関する合同ステートメントを発表した。 EGFR遺伝子変異陽性の切除不能進行・再発NSCLCに対する新たな治療戦略として二重特異性モノクローナル抗体であるアミバンタマブと第3世代EGFR-TKIラゼルチニブの併用療法が臨床導入された。アミバンタマブ・ラゼルチニブ併用療法では、静脈血栓塞栓症(VTE)の発症が高頻度であることが国内外の臨床試験により報告されている。このためVTE発症予防を目的として、併用療法開始後4ヵ月間にわたる直接経口抗凝固薬アピキサバンの投与が2025年3月27日付で厚生労働省保険局医療課により承認された。 しかし、本邦における診療ガイドラインでは外来化学療法時の抗がん薬によるVTE発症の予防目的で施行される抗凝固療法において推奨する抗凝固薬に関する記載がなく、同時にアミバンタマブ・ラゼルチニブ併用療法治療中のNSCLC患者に対するアピキサバンの臨床的経験は限られているのが現状である。そこで、今回承認された新たながん治療法を安全かつ適正に導入するために、患者の安全性を最優先に考慮する必要があることから本ステートメントが発出された。ステートメント 「EGFR変異陽性の進行・再発NSCLCに対してアミバンタマブ・ラゼルチニブ併用療法を施行する患者において、静脈血栓塞栓症予防を目的としてアピキサバン2.5mgを1日2回、4ヵ月間投与する。活動性悪性腫瘍症例に対しアピキサバンによる予防的抗凝固療法を施行するにあたり日本人では血中濃度が高くなることが知られているが、アピキサバン2.5mg1日2回投与の出血リスクについては安全性が確認されていない。そこで出血(ISTH基準の大出血*)などの重篤な合併症を生じるリスクを理解した上で、使用薬の特性、投与方法、薬剤相互作用を考慮した慎重な対応が必要である。そして、これらの治療は抗凝固療法に精通した腫瘍循環器医(循環器医)等と連携の取れる体制の下で実施されることが望ましい。」*:ISTH基準の大出血:実質的な障害をもたらす出血(脳出血、消化管出血、関節内出血など)、失明に至る眼内出血、2単位以上の輸血を要する出血

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