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よく笑う人にはオーラルフレイルが少ない

 笑う頻度が高い人にはオーラルフレイルが少ないことが明らかになった。福島県立医科大学医学部疫学講座の舟久保徳美氏、大平哲也氏らの研究によるもので、詳細は「Scientific Reports」に11月5日掲載された。 近年、笑うことが心身の健康に良いことを示唆するエビデンスが徐々に増えていて、例えば笑う頻度の高い人は心疾患や生活習慣病が少ないことが報告されている。一方、オーラルフレイルは、心身のストレス耐性が低下した要介護予備群である「フレイル」のうち、特に口腔機能が低下した状態を指す。オーラルフレイルでは食べ物の咀嚼や嚥下が困難になることなどによって、身体的フレイルのリスク上昇を含む全身の健康に負の影響が生じる。舟久保氏らは、このオーラルフレイル(以下、OFと省略)にも笑う頻度が関連している可能性を想定し、福島県楢葉町の住民を対象とする横断研究を行った。 2020~2021年の住民健診に参加した年齢60~79歳の1,717人のうち、研究参加への同意を得られ、データ欠落のない916人(平均年齢68.4±5.0歳、男性46.2%)を解析対象とした。両年度とも参加していた人については2020年度のデータを使用した。OFの評価には、「硬い食べ物を食べるのが困難か?」など8項目の質問から成る精度検証済みの質問票(Oral Frailty Index-8;OFI-8)を使用。そのスコアに基づき、OFなしが40.3%、プレオーラルフレイル(OFの予備群〔POF〕)が18.2%、OFが41.5%と判定された。笑いの頻度については、「声を出して笑う頻度は?」という質問で評価。ほぼ毎日が40.8%、週に1~5回が43.3%、月に1~3回が11.1%、ほとんどないが4.9%だった。 笑う頻度が「週1回未満」の群を基準として、年齢と性別の影響を調整した解析(モデル1)の結果、笑う頻度がほぼ毎日の群にはOFが有意に少なく(オッズ比〔OR〕0.38〔95%信頼区間0.26~0.57〕)、頻度が週に1~5回の群もOFが少なかった(OR0.51〔同0.35~0.76〕)。調整因子に、喫煙・飲酒・運動習慣、身体的フレイル、高血圧・糖尿病の既往を追加した解析(モデル2)では、笑う頻度が週に1~5回の群についてはOFとの関連の有意性が消失したが(OR0.66〔0.43~1.02〕)、頻度がほぼ毎日の群では引き続きOFが有意に少ないという関連が認められた(OR0.54〔0.34~0.86〕)。 モデル2において、笑う頻度以外に、抑うつ症状がないこともOFに対する負の有意な関連因子だった(「抑うつ症状あり」を基準とするOR0.39〔0.25~0.61〕)。その一方、高齢(1歳高齢であるごとにOR1.08〔1.05~1.11〕)、女性(OR1.74〔1.14~2.65〕)、喫煙(現喫煙がOR2.63〔1.57~4.40〕、過去喫煙がOR1.75〔1.15~2.66〕)、飲酒(毎日がOR1.70〔1.15~2.51〕、機会飲酒は非有意)は、正の有意な関連因子として特定された。運動習慣や地域活動への参加は、モデル1では有意な負の関連が認められたが、モデル2では非有意となった。 著者らは、本研究が新型コロナウイルスパンデミック中に実施されたことが結果に影響を及ぼしている可能性を否定できないといった限界点を挙げた上で、「交絡因子を調整後、毎日笑うことと抑うつ症状がないことが、OFの少なさと関連していた。公衆衛生戦略として、社会的なコミュニケーションを拡大して人々が声を出して笑える頻度を増やし、抑うつのリスクを抑制することが、フレイル予防・改善を通じて健康寿命を延伸する可能性があるのではないか」と述べている。

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ワクチン接種後の免疫抑制療法患者のリスクを抗体の有無で評価(解説:栗原宏氏)

本研究のまとめ・免疫抑制療法患者において、抗SARS-CoV-2スパイク抗体(抗S Ab)陽性者は感染・入院リスクが低い・感染リスク要因:年齢が若い(18~64歳)、子供との同居、感染対策の実施・入院リスク要因:併存疾患の存在強み(Strong Points)・3つの異なる免疫抑制患者群におけるCOVID-19リスクを大規模データで解析・抗S Abの有無と感染・重症化リスクの関連を明確化・実臨床データとリンクし、健康アウトカムに関する実証的な証拠を提供限界(Limitations)・因果関係ではなく相関関係の分析に留まる・治療介入(抗ウイルス薬、モノクローナル抗体)の影響が不明確・ワクチンの種類や接種時期の詳細な分析が不足・行動要因(マスク着用、社会的距離)の影響が考慮されていない可能性 本研究は、免疫抑制患者におけるSARS-CoV-2スパイク抗体の有無が、感染および入院率にどのような影響を与えるかを評価する約2万人規模のコホート研究である。 免疫抑制療法では、ワクチン接種後の免疫応答が低下する可能性があり、COVID-19感染リスクが高いと考えられる。 英国の全国疾病登録データを用い、以下の3つの免疫抑制患者群において抗体の影響を評価した。1)固形臓器移植(SOT)2)まれな自己免疫性リウマチ疾患(RAIRD)3)リンパ系悪性腫瘍(lymphoid malignancies)主な結果と臨床的意義 いずれの群でも、抗体陽性者のCOVID-19感染率・入院率は、年齢・人種・既存疾患などを調整しても有意に低かった。より具体的には、抗体陰性者の感染リスクは1.5〜1.8倍、入院リスクは2.5〜3.5倍高かった。 これらの結果から、免疫抑制患者に対し抗体検査を活用することで、高リスク群を特定し、追加ワクチン接種や早期治療などの対応を提供できる可能性が示唆された。 しかし、本研究は相関関係の分析に留まるため、・「抗体ができやすい人=健康状態が良く感染リスクが低い」・「抗体ができにくい人=強力な免疫抑制療法を受けており感染・重症化リスクが高い」といった因果関係の逆転の可能性も考慮する必要がある。 また、本研究では、ワクチンの種類・接種回数の影響、抗体価の高低、行動習慣(通勤・外出頻度)の影響は評価されていない。感染リスク要因の考察 感染リスク要因として、年齢が若いこと、子供との同居、感染対策の実施が挙げられた。「感染対策をしている人の感染リスクが高い」という結果は直感的に意外だが、これは 「感染リスクが高い人ほど対策をしているが、免疫が弱いため、それでも感染しやすい」という背景を反映しているという可能性がある。 本研究は、免疫抑制患者における抗S Abの有無とCOVID-19感染・入院リスクの相関を示し、免疫抑制患者のCOVID-19管理戦略を考えるうえで重要な知見を提供していると考えられる。

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コロナとインフル、臨床的特徴の違い~100論文のメタ解析

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)とインフルエンザの鑑別診断の指針とすべく、中国・China-Japan Union Hospital of Jilin UniversityのYingying Han氏らがそれぞれの臨床的特徴をメタ解析で検討した。その結果、患者背景、症状、検査所見、併存疾患にいくつかの相違がみられた。さらにCOVID-19患者ではより多くの医療資源を必要とし、臨床転帰も悪い患者が多いことが示された。NPJ Primary Care Respiratory Medicine誌2025年1月28日号に掲載。 著者らは、PubMed、Embase、Web of Scienceで論文検索し、Stata 14.0でランダム効果モデルを用いてメタ解析を行った。COVID-19患者22万6,913例とインフルエンザ患者20万1,617例を含む100の論文が対象となった。 主な結果は以下のとおり。・COVID-19はインフルエンザと比較して、男性に多く(オッズ比[OR]:1.46、95%信頼区間[CI]:1.23~1.74)、肥満度が高い人に多かった(平均差[MD]:1.43、95%CI:1.09~1.77)。・COVID-19患者はインフルエンザ患者と比べて、現在喫煙者の割合が低かった(OR:0.25、95%CI:0.18~0.33)。・COVID-19患者はインフルエンザ患者と比べて、入院期間(MD:3.20、95%CI:2.58~3.82)およびICU入院(MD:3.10、95%CI:1.44~4.76)が長く、人工呼吸を必要とする頻度が高く(OR:2.30、95%CI:1.77~3.00)、死亡率が高かった(OR:2.22、95%CI:1.93~2.55)。・インフルエンザ患者はCOVID-19患者より、上気道症状がより顕著で、併存疾患の割合が高かった。

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コロナワクチン、免疫抑制患者への接種継続は必要か?/Lancet

 英国・NHS Blood and TransplantのLisa Mumford氏らは、英国の全国疾病登録を用いた前向きコホート研究において、免疫抑制状態にあるすべての人は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の予防戦略を継続的に受ける必要があることを示した。英国では、免疫が脆弱と考えられる人々に対し、年2回のCOVID-19ワクチンブースター接種が推奨されている。著者らは、3回以上のワクチン接種を受けた免疫抑制状態にある患者において、抗SARS-CoV-2スパイク蛋白IgG抗体(抗S抗体)と感染リスクおよび感染の重症度との関連を集団レベルで調査した。結果を踏まえて著者は、「大規模に実施可能な抗S抗体の評価は、免疫抑制状態にある人々のうち最もリスクの高い人々を特定可能で、さらなる個別化予防戦略のメカニズムを提供するものである」とまとめている。Lancet誌2025年1月25日号掲載の報告。固形臓器移植、希少自己免疫性リウマチ性疾患、リンパ系悪性腫瘍患者を対象に評価 研究グループは、英国の全国疾病登録を用いて固形臓器移植(SOT)患者、希少自己免疫性リウマチ性疾患(RAIRD)患者、リンパ系悪性腫瘍患者を特定して研究への参加者を募集した。抗S抗体のラテラルフロー検査を行うとともに社会人口学的および臨床的特性に関するアンケート調査を実施した後、英国国民保健サービス(NHS)のデータを用いて6ヵ月の追跡調査を行った。 アウトカムは、SARS-CoV-2感染およびCOVID-19関連入院とした。SARS-CoV-2感染は主に英国健康安全保障庁(UKHSA)のデータを用いて特定し、COVID-19による入院および治療に関する記録で補完した。COVID-19関連入院は、検査陽性から14日以内の入院と定義した。抗S抗体陽性、COVID-19の感染や入院のリスク低下と関連 2021年12月7日~2022年6月26日に登録された適格患者2万1,575例を解析対象とした(SOT患者8,466例、RAIRD患者6,516例、リンパ系悪性腫瘍患者6,593例)。 抗S抗体陽性率は、SOT患者77.0%(6,519/8,466例)、RAIRD患者85.9%(5,594/6,516例)、リンパ系悪性腫瘍患者79.3%(5,227/6,593例)であった。 抗S抗体検査後6ヵ月間のSARS-CoV-2感染は、全体で3,907例(18.1%)に認められ、COVID-19関連入院は556例(2.6%)に発生した。そのうち17例(<0.1%)が感染後28日以内に死亡した。 感染率は社会人口学的および臨床的特性によって異なるが、多変量補正解析の結果、抗S抗体の検出は感染発生率の低下と独立して関連しており、発生率比(IRR)はSOT患者集団で0.69(95%信頼区間[CI]:0.65~0.73)、RAIRD患者集団で0.57(0.49~0.67)、リンパ系悪性腫瘍患者集団で0.62(0.54~0.71)であった。 また、抗S抗体陽性はCOVID-19関連入院のリスク低下とも関連しており、IRRはSOT患者集団で0.40(95%CI:0.35~0.46)、RAIRD患者集団で0.32(0.22~0.46)、リンパ系悪性腫瘍患者集団で0.41(0.29~0.58)であった。

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軽症例が多かった2023年の救急搬送の現状/消防庁

 総務省消防庁は、1月24日に「令和6年版 救急・救助の現況」を公表した。2023(令和5)年の救急出動件数(消防防災ヘリコプターを含む)は764万987件、搬送人員は664万3,379人だった。また、現場到着所要時間*1の平均は約10.0分だった。1)救急出動件数および搬送人員 救急出動件数は全体で764万987件(対前年比40万8,869件増、5.7%増)、搬送人員は664万3,379人(対前年比42万4,080人増、6.8%増)で前年と比較して救急出動件数、搬送人員ともに増加した。そのうち救急車による救急出動件数は763万8,558件(対前年比40万8,986件増、5.7%増)、搬送人員は664万1,420人(対前年比42万4,137人増、6.8%増)で救急出動件数、搬送人員ともに前年と比較して増加した。2)事故種別の救急出動件数および搬送人員 救急車による救急出動件数の内訳を事故種別ごとにみると、「急病」が517万4,494件(対前年比28万9,864件増、5.9%増)、「一般負傷」が118万5,397件(対前年比8万4,116件増、7.6%増)、「転院搬送」が55万6,367件(対前年比1万9,008件増、3.5%増)の順で多かった。また、事故種別ごとの搬送人員をみると、「急病」が449万5,904人(対前年比30万9,454人増、7.4%増)、「一般負傷」が105万9,922人(対前年比7万3,964人増、7.5%増)、「転院搬送」が55万2,422人(対前年比2万206人増、3.8%増)の順で多かった。 過去20年における事故種別の搬送人員と構成比の5年ごとの推移では、事故種別ごとの救急出動件数と同様に、「急病」と「一般負傷」が増加していた。3)年齢区分別の搬送人員 救急車による搬送人員の内訳を年齢区分別にみると、「高齢者」が409万3,552人(対前年比23万399人増、6.0%増)、「成人」が196万8,232人(対前年比10万5,844人増、5.7%増)、「乳幼児」が33万6,047人(対前年比6万1,907人増、22.6%増)の順で多かった。とくに高齢者では、65~74歳が93万627人(構成比14.0%)、75~84歳が155万3,433人(構成比23.4%)、85歳以上が160万9,492人(構成比24.2%)と年齢が上がるほど増加していた。4)傷病程度別の搬送人員 救急車による搬送人員の内訳を傷病程度別にみると、「軽症(外来診療)」が321万8,832人(対前年比27万8,726人増、9.5%増)、「中等症(入院診療)」が285万622人(対前年比14万7,825人増、5.5%増)、「重症(長期入院)」が48万1,993人(対前年比1,042人増、0.2%増)の順で多かった。また、過去20年における傷病程度別の搬送人員と構成比の5年ごとの推移をみると、「軽症(外来診療)」の構成比は減少しているが搬送人員は増加しており、「中等症(入院診療)」は搬送人員、構成比ともに増加していた。5)救急車による現場到着所要時間および病院収容所要時間 救急車による現場到着所要時間*1の平均は約10.0分(前年約10.3分)となっており、新型コロナ流行前の2019年の8.7分と比べ、約1.3分延伸していた。また、病院収容所要時間*2の平均は約45.6分(前年約47.2分)となっており、2019年の39.5分と比べ、約6.1分延伸していた。*1 現場到着所要時間:119番通報を受けてから現場に到着するまでに要した時間*2 病院収容所要時間:119番通報を受けてから医師に引き継ぐまでに要した時間

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COVID-19パンデミック前後で医療の利用状況が大きく変化

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック前後で、国内医療機関の利用状況が大きく変わったことが明らかになった。全国的に入院患者の減少傾向が続いているという。慶應義塾大学グローバルリサーチインスティテュートの野村周平氏、東京海洋大学の田上悠太氏、東京大学のカオ・アルトン・クアン氏らの研究の結果であり、詳細は「Healthcare」に11月19日掲載された。著者らは、「入院患者数の減少は通常の状況下では医療システムの効率化の観点からポジティブに捉えられる可能性がある一方で、パンデミック期間中には超過死亡も観測されていることから、入院患者数の減少による国民の健康への潜在的な影響も排除できない」としている。 COVID-19パンデミックが世界中の医療体制に多大なインパクトを与えたことは明らかで、影響の大きさを詳細に検証した論文も既に多数報告されている。ただし、パンデミック収束後の実態に関する研究は多くない。また、日本は他の先進国と異なり、パンデミック初期には患者数が少なかったものの、オミクロン株が主流になって以降に患者数が顕著に増加するというやや特異な影響が現れた。これらを背景として野村氏らは、パンデミック以前の2012年1月から2023年11月までの厚生労働省「病院報告」の月次データを用いて、パンデミックによって国内の医療機関の利用状況がどのように変わったかを検討した。 「病院報告」では、一般病床、精神病床、感染症病床、療養病床などの病床種類別の入院患者数や利用率、在院日数などが月ごとに報告されている。これらのうち本研究では、パンデミックが医療に与えた間接的な影響(COVID-19治療以外の医療)に焦点を当てるという意図から、一般病床と精神病床のデータを解析対象とした。解析には、準ポアソン回帰モデルという手法を用いた。 まず、一般病床に関する解析結果を見ると、入院患者数はパンデミック以前から経年的に減少傾向にあった。これは、病院から地域(在宅や療養型施設)へという政策の推進によるものと考えられる。しかし、パンデミックが始まった2020年3月以降の入院患者数は、パンデミック以前の減少傾向から予測される患者数を有意に下回り、解析対象期間の最終月である2023年11月まで有意に少ない状態が続いていた。例えば、2023年の一般病床の1日平均在院患者数は62万6,450人で、パンデミック前の2017~2019年の67万9,092人と比較して、7.8%少なかった。月当たりの新規入院患者数についても、パンデミック以降は予測値より有意に少ない月が多く発生し、約10%減少していた。 病床数も2021年以降に減少傾向が見られたが、その変化は入院患者数の減少速度より緩徐であり、絶対数の減少幅は1%未満だった。病床数がわずかな減少で入院患者数は大きく減少した結果として、病床利用率は、パンデミック前の2017~2019年の平均が73.5%であるのに対して、パンデミック以降の2020~2022年は67.5%と、6パーセントポイント低下していた。 次に、精神病床について見ると、一般病床と同様、パンデミック前から入院患者数が経年的に減少傾向にあったが、パンデミック発生後には以前の減少傾向から予測される患者数を有意に下回り、解析対象期間の最終月である2023年11月まで有意に少ない状態が、ほぼ連続していた。また、新規入院患者数についても、パンデミック以降は予測値より有意に少ない月が多く発生し、約8%減少していた。病床利用率は、パンデミック前の2017~2019年が平均85.6%であったのに対し、2023年には81.3%へと5.3パーセントポイント低下していた。 これらの解析の結果として著者らは、「COVID-19パンデミックは国内の医療機関の利用状況を根本的に変え、その影響は世界保健機関(WHO)が2023年5月に緊急事態宣言を終了した後も続いている」と総括している。また、国内においてパンデミック後期にCOVID-19以外の超過死亡が報告されていたことに関連して、入院患者数の減少が国民の健康アウトカムに潜在的な影響を及ぼしていた可能性を指摘。「脱施設化や長期ケアの地域医療への移行を進める中で、政策立案者は医療提供パターンの変化を注意深くモニタリングし、適切な医療アクセスの確保に注意を払う必要がある」と付け加えている。

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血液検査でワクチン効果の持続期間が予測できる?

 幼少期に受けた予防接種が、麻疹(はしか)や流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)から、われわれの身を守り続けている一方、インフルエンザワクチンは、毎年接種する必要がある。このように、あるワクチンが数十年にわたり抗体を産生するように免疫機能を誘導する一方で、他のワクチンは数カ月しか効果が持続しない理由については、免疫学の大きな謎とされてきた。米スタンフォード大学医学部の微生物学・免疫学教授で主任研究員のBali Pulendran氏らの最新の研究により、その理由の一端が解明され、ワクチン効果の持続期間を予測できる血液検査の可能性が示唆された。 Pulendran氏は同大学が発表したニュースリリースで、「われわれの研究では、ワクチン接種後数日以内に現れる特徴的な分子パターンを特定することにより、ワクチン反応の持続期間を予測できる可能性が示唆された」と述べている。同氏らの研究結果は、「Nature Immunology」に1月2日掲載された。研究グループの説明によると、ワクチン効果の持続性は血液凝固に関与する巨核球と呼ばれる血小板の前駆細胞と密接な関係があることが示されたという。 この研究では、H5N1型鳥インフルエンザワクチンを接種した健常なボランティア50人を対象に追跡調査を行った。ワクチン接種後100日間の間に血液サンプルを12回採取し、各被験者の免疫反応に関連する全ての遺伝子、タンパク質、抗体を解析した。 その結果、ワクチンの接種から数カ月後の抗体反応の強さと、血小板に含まれる巨核球由来のRNA小片の量に正の相関があることが示された。血小板は、骨髄に存在する巨核球から分離された後、血流に乗って全身に運ばれる。この過程で、血小板中には巨核球由来のRNAの一部が含まれる。 研究グループはさらに、巨核球がワクチン効果の持続性に関係していることを証明するため、実験用マウスに鳥インフルエンザワクチンとトロンボポエチン(TPO)を投与した。TPOには骨髄内の活性化した巨核球の数を増やす働きがある。その結果、TPOを投与したマウスでは、2カ月以内に鳥インフルエンザに対する抗体産生量が6倍に増加したことが確認された。追加の研究で、巨核球が、抗体産生を担う骨髄細胞の生存を助ける物質を生成していることも判明した。 研究グループは、また、季節性インフルエンザ、黄熱病、マラリア、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)など7種類の感染症に対するワクチンを接種した244人のデータを収集解析した。その結果、いずれのワクチンにおいても、巨核球活性化の兆候が抗体産生期間の延長と関連していることが示された。 この結果は、巨核球の活性化を評価することで、どのワクチンの効果がより長く持続するか、またどのワクチン接種者がより長期にわたり免疫反応を持続できるかを予測できる可能性を示している。研究グループは、ワクチンによる巨核球の活性化レベルの違いを解明するため、さらなる研究を予定しているという。その研究から得られる知見は、より効果的で長期間効果が持続するワクチンの開発に貢献する可能性がある。 Pulendran氏は、「巨核球の活性化をターゲットとした簡易なPCR検査法が開発されれば、追加接種が必要な時期が予測できるため、個々人に個別化されたワクチン接種スケジュールを立てることも可能になるのではないか」と述べている。また、同氏はワクチン効果の持続期間は多くの複雑な要因に影響される可能性が高く、巨核球の役割はその全体像を構成する一部分にすぎないのではないかと付言している。

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第227回 救急搬送が逼迫、現場到着は10分超と過去2番目の長さ/消防庁

<先週の動き>1.救急搬送が逼迫、現場到着は10分超と過去2番目の長さ/消防庁2.医学部定員、2027年度以降削減へ、医師偏在対策と並行し適正化/厚労省3.電子処方箋の導入低迷、病院導入わずか4%、普及目標を見直し/厚労省4.医療崩壊の危機迫る、物価高騰で7~8割の病院が赤字に/日本医師会5.出生数70万人割れに、少子化対策は根本的な見直しへ/厚労省6.栗原市の3病院で1,300万円超未払い 給与計算の誤り/宮城県1.救急搬送が逼迫、現場到着は10分超と過去2番目の長さ/消防庁救急搬送体制の逼迫が深刻化している。総務省消防庁が1月24日発表した2023年の救急車現場到着時間は、全国平均で約10分と過去2番目の長さとなった。一方、横浜市消防局の発表によると、2024年の市内の救急出動件数は25万6,481件、搬送人員は20万7,472人と、いずれも過去最多を更新。高齢化の進展と救急隊員不足が影を落としている。同庁によると、2023年の全国の救急出動件数は763万8,558件、搬送人員は664万1,420人でいずれも過去最多。現場到着時間が10分以上20分未満だったケースは全体の39.9%、20分以上かかったケースも4.2%に上った。同庁では「出動件数の増加で、最寄りの救急隊が現場に向かえないケースが増えている」と分析。救急車を呼ぶべきか迷った場合は、電話相談窓口「#7119」の利用を呼びかけている。先の横浜市でも状況は深刻だ。2024年の救急出動は1日平均701件で、市民15人に1人が救急車を利用した計算になる。搬送人員を年代別にみると、65歳以上の高齢者は12万1,349人と増加傾向にある一方、65歳未満は減少。高齢者の転倒や、体温変化に気付きにくいことなどが要因とみられる。市消防局は「高齢化社会の影響で、今後も同様の傾向が続くと見込まれる」と警鐘を鳴らす。救急搬送の遅れは、一刻を争う患者の救命に影響を及ぼす可能性がある。横浜市では、救急車の適正利用を促すため、緊急性や受診の必要性をチェックできる「横浜市救急受診ガイド」の活用や、「#7119」への相談を推奨している。専門家は「救急隊員の増員や病院の受け入れ態勢強化など、抜本的な対策が必要だ」と指摘。高齢化社会が進む中、救急搬送体制の充実が喫緊の課題となっている。参考1)令和6年版 救急・救助の現況(消防庁)2)救急車の到着平均10.0分 23年、過去2番目の長さ(日経新聞)3)横浜市内で2024年 救急出場、搬送人員ともに3年連続で最多更新(タウンニュース)2.医学部定員、2027年度以降削減へ、医師偏在対策と並行し適正化/厚労省厚生労働省は、2027年度から大学医学部の入学定員を削減する方針を固めた。将来的に医師過剰が予測される一方、地域間の医師偏在は依然として深刻な状況だ。定員削減による地域医療への影響を抑えつつ、医師需給バランスの適正化と地域偏在の解消を両立させるという難しい舵取りが求められる。1月21日に行われた厚労省の検討会では、2027年度の医学部定員について、「地域における医師確保への大きな影響が生じない範囲で適正化を図る」方向性が了承された。背景には、少子高齢化に伴う人口減少がある。現在の医学部定員は、2008年度以降増加を続け、2024年度は9,403人に達している。これは、主に地方の医師不足を解消するために設けられた「臨時定員」によるものだ。しかし、このまま推移すると、将来的には医師が過剰となり、医療費の増加や医師の給与減、医療の質低下などが懸念される。一方で、地域によっては依然として医師不足が深刻で、とくに地方では病院の医師不足が深刻化している。厚労省は、地域医療への影響を最小限に抑えながら定員削減を進めるため、医師の地域定着を促進するための対策を強化する方針だ。具体的には、卒業後に一定期間、医師不足地域で働くことを義務付ける「地域枠」を、各大学の恒久定員に組み込むように促す。また、地域枠以外の学生に対しても、地域医療の重要性を啓発する教育や、地域医療現場での研修機会の提供などを通して、地域定着を促す。2025年度の医学部定員は、2024年度比10人減の9,393人となる。2026年度は、2024年度の定員を超えない範囲で設定される。2027年度以降の具体的な削減規模は、今後の検討会で議論される。医学部定員の削減は、大学の経営や地域医療に大きな影響を与える可能性があり、厚労省では、関係者と連携し、慎重に進めていく必要がある。参考1)第9回医師養成過程を通じた医師の偏在対策等に関する検討会(厚労省)2)医学部臨時定員、25年度は10人減の975人 群馬・新潟のみ増加(CB news)3)2027年度の医学部入学定員、医師の地域定着進めながら、「地域に大きな影響が生じない」範囲で適正化(漸減)を図る-医師偏在対策検討会(Gem Med)3.電子処方箋の導入低迷、病院導入わずか4%、普及目標を見直し/厚労省厚生労働省は、1月23日に社会保障審議会医療保険部会を開き、医療機関における電子処方箋の導入が大幅に遅れていることを受け、2025年3月末としていた導入目標の見直しを決定した。新たな目標は、今年夏をめどに設定される予定だ。電子処方箋は、マイナンバーカードを活用し、医療機関と薬局の間で薬の処方情報を電子的に共有するシステム。政府は、2023年1月の運用開始以降、普及促進を図ってきたが、医療機関側の導入は低調に推移している。厚労省によると、1月12日時点の導入率は、病院で3.9%、医科診療所で9.9%、歯科診療所で1.7%にとどまる。一方、薬局では63.2%と比較的普及が進んでいる。導入が遅れている要因としては、医療機関側のシステム改修に伴う費用負担や、電子処方箋のメリットに対する認識不足などが挙げられる。また、周辺の医療機関や薬局で導入が進まない「お見合い状態」も普及を阻害する一因となっているようだ。厚労省は、導入促進に向けた取り組みを強化するため、医療機関への個別フォローアップや導入支援策の拡充、システムベンダーへの早期導入・開発要請などを実施する方針。電子処方箋は、患者の過去の処方薬をデータ上で確認できるため、重複投薬や飲み合わせによる副作用のリスクを低減できる。また、災害時などでもオンライン診療と組み合わせることで、薬の受け取りをスムーズに行えるなどのメリットがある。その一方で、昨年12月には、薬局側で医薬品名が誤表示されるトラブルが発生し、システムが一時停止する事態も起きた。厚労省は、システムの安全性確保にも取り組みながら、電子処方箋の普及促進を目指していく考えだ。参考1)第192回社会保障審議会医療保険部会(厚労省)2)電子処方箋、病院導入4% 「ニーズ感じない」 厚労省、目標見直し(朝日新聞)3)電子処方箋の導入率、医療機関では2025年3月末でも「1割に届かない」見込み、目標を見直し、診療報酬対応も検討へ-社保審・医療保険部会(Gem Med)4.医療崩壊の危機迫る 物価高騰で7~8割の病院が赤字に/日本医師会医療機関の経営危機が深刻化し、2024年の倒産・廃業件数は過去最多の786件に達したことが帝国データバンクの調査で明らかになった。背景には、物価高騰や人件費上昇に対し、診療報酬の改定が追いついていない現状がある。日本医師会の松本 吉郎会長は、「今期は7~8割の病院が赤字になるか、赤字がさらに拡大する」と危機感を表明。2025年の春闘で「賃上げ率5%以上」が目標とされている中、「とても5%を出せる状況にはない」と指摘し、26年度の診療報酬改定で物価・賃金上昇への対応を求めた。病院団体も、厚生労働大臣に対し、「緊急的な財政支援や物価・賃金上昇に対応できる診療報酬制度の導入」などを要望。物価高騰や人件費上昇により病院の収支は大幅に悪化しており、このままでは経営破綻が続出すると警鐘を鳴らしている。医療機関の倒産・廃業増加は、医療提供体制の崩壊に繋がりかねない。とくに地方では、病院の休廃業により地域医療が逼迫するケースが増加。医師不足や高齢化も深刻化しており、地域住民の医療へのアクセスが困難になる可能性も懸念されている。政府は、病院建設向けローンの返済期間を最長39年に延長するなどの支援策を打ち出しているが、抜本的な解決には至っていない。医療機関の経営安定化には、診療報酬制度の見直しや、医療費負担の適正化、病院経営の効率化など、多角的な対策が必要となる。参考1)医療機関の倒産・休廃業解散動向調査(2024年)(帝国データバンク)2)日医・松本会長「7、8割の病院が恐らく赤字に」骨太に「報酬改定で対応」記載目指す(CB news)3)病院経営は危機に瀕しており、「緊急的な財政支援」「物価・賃金上昇に対応できる診療報酬」などを実施せよ-5病院団体(Gem Med)4)医療機関の倒産や休廃業、昨年最多786件…コロナ禍後の行動変化や物価高騰・経営者の高齢化で(読売新聞)5.出生数70万人割れに、少子化対策は根本的な見直しへ/厚労省厚生労働省が1月24日発表した人口動態統計速報値によると、2024年1~11月の出生数は前年同期比5.1%減の66万1,577人となり、年間出生数が初めて70万人を割り込む可能性が強まった。少子化は近年加速しており、2019年に90万人を、2022年に80万人を割り込んだ。2023年は統計開始以来最少の72万7,277人を記録し、このままのペースで推移すると、2024年の出生数は70万人を下回ると予想される。この深刻な状況は、物価高による子育てへの経済的不安や未婚化・晩婚化の進行、新型コロナウイルス禍による結婚減少などが要因とみられる。さらに、ニッセイ基礎研究所の分析によると、少子化の進行速度は地域によって異なり、とくに東北地方などの地方圏では深刻化している。少子化対策として、これまで多くの自治体が出生率向上を目標に掲げてきたが、同研究所は「出生率の低さと少子化速度に相関関係はない」と指摘する。背景には、東京圏への若年女性の流出による「社会減」がある。地方圏では、雇用機会の不足や賃金の低さなどから、若い女性が就職を機に都市部へ流出。その結果、地方では結婚や出産の機会が減少し、少子化が加速するという悪循環に陥っている。このため、少子化の根本的な原因に対処する必要があることを強調している。具体的には、若年女性の雇用問題や、結婚・出産を希望する人々への経済的支援、子育てしやすい環境作りなどが課題として挙げられる。政府は少子化対策に力を入れているものの、出生数の減少に歯止めがかからない状況だ。社会構造の変化に対応した、より効果的な対策が求められている。参考1)人口動態統計速報[令和6年11月分](厚労省)2)2013~23年 都道府県出生減(少子化)ランキング/合計特殊出生率との相関は「なし」(ニッセイ基礎研究所)3)出生数、初の70万人割れへ 24年、1~11月は66万人(共同通信)6.栗原市の3病院で1,300万円超未払い 給与計算の誤り/宮城県宮城県栗原市の3つの市立病院で、医師や看護師らに対する時間外手当などの未払いが明らかになった。2024年4~10月分の未払い額はのべ720人、総額1,343万円に上る。同様の事案は、昨年8月に大崎市民病院で発覚しており、公立病院における給与計算の誤りが改めて浮き彫りとなった。栗原市によると、時間外手当などを算出する際、診療手当や研究手当などを基礎賃金から除外していたことが原因。これは、国家公務員の給与体系を参考にしているためとみられる。しかし、国家公務員には適用されない労働基準法が地方公務員には適用されるため、今回の未払いは法令違反となる。栗原市は未払い分を12月にすでに支給し、11月分からは正しい算出方法で支払っているという。また、合併した2005年から算出方法に誤りがあったとして、今後、労働基準監督署と相談し、過去の未払い分についても検討していく方針。大崎市民病院の事案を受け、大分県立病院でも同様の未払いが発覚している。全国的に国家公務員の給与体系を参考にしている地方自治体は少なくないとみられ、未払い問題が他地域にも広がる可能性がある。専門家は、地方公務員への労働基準法の適用について、周知徹底の必要性を指摘。また、給与計算システムの見直しや、担当職員の研修など、再発防止に向けた取り組み強化を求めている。参考1)栗原市の3つの市立病院で時間外勤務手当など未払い(NHK)2)公立病院でまた残業代の未払い発覚 国家公務員の制度参照が原因か(朝日新聞)

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第246回 WHOが封じ込めてきた“ある感染症”、アメリカの脱退で水の泡か?

1月20日、アメリカではドナルド・トランプ氏がついに第47代大統領に就任した。就任前から大統領令を乱発するだろうと予想されていたが、就任当日いきなり世界保健機関(WHO)から脱退することを定めた大統領令に署名した。もっともご存じのように、トランプ大統領のWHO脱退宣言は今回が初めてではない。前回の第45代大統領期(2017~2021)の2020年4月、新型コロナウイルス感染症に関連し、WHOが意図して中国寄りの姿勢をとっていると批判。その姿勢が対応の遅れと全世界的なパンデミックを招いたとして同年7月、1年後の2021年7月にWHOから脱退する大統領令に署名した。だが、この年に行われた大統領選でジョー・バイデン氏に敗退し、翌2021年1月にバイデン大統領が就任すると、トランプ氏によるWHO脱退の大統領令は即刻撤回され、実現には至らなかった。ちなみに、なぜトランプ氏の大統領令が1年後の脱退だったかというと、1948年に米国連邦議会上下両院合同会議で採択されたWHOからの脱退については、1年前の通告と分担金の支払いを終えることが条件となっていたからだ。さすがのトランプ氏も過去の決議を破ることまではできなかったということだ。しかし、今回はこれから4年の大統領任期があるため、脱退が現実のモノとなるのは必至の情勢である。トランプ大統領が新型コロナ対応でWHOの姿勢を非難した根拠となったのが、2019年12月末という早い段階で台湾当局がWHOに提供していた中国・武漢での新型コロナ発生状況の文書だ。2020年4月に台湾当局はこの文書を公開したが、そこには確認された患者が隔離措置を受けていると記述されていた。これについてWHOは「ヒトからヒトへの感染について言及はなかった」とし、一方の台湾当局は「隔離措置を受けているという情報からヒト・ヒト感染は容易に想像できたはず」と主張。ほぼ水掛け論となっている。結果責任だけを問うならば、少なくとも3月までパンデミック宣言を行わなかったWHOの危機意識は適切でなかったと言えるが、実のところ当時のトランプ大統領も新型コロナの脅威を意図的に軽視していたことは、後に米紙ワシントン・ポストの編集委員であるボブ・ウッドワード氏が本人にインタビューして出版した書籍で明らかにされている。そもそも2020年2月段階では中国の対応を半ば評価していたトランプ大統領が“豹変”するのは、アメリカに感染が拡大して大混乱となった2020年4月以降で、どうみても他責である。アメリカのWHO脱退が招く問題さて今回、アメリカのWHO脱退が現実になると、まず予算が直撃を受ける。WHOの予算は各国の分担金と任意の拠出金などから構成されているが、アメリカから提供された資金は22~23年時を見ると予算総額の約15%にあたる12億8,400万ドル(日本円でおよそ2,000億円)。これがなくなると多方面に影響が出ると考えられるが、その際たるものとして個人的に危惧するのが、「ポリオウイルス封じ込めのための世界的行動計画(GAP)」への影響である。GAPはWHOでもっとも多くの予算がつぎ込まれている事業の1つだ。すでにポリオ撲滅に関しては、ほぼ最終段階にきている。現時点で野生株ポリオウイルス(1型)の常在国はアフガニスタンとパキスタンの2ヵ国のみ。2022年の両国での野生株による発症確認はアフガニスタンが2例、パキスタンが20例で、ほかにこの地域から伝播したとみられる症例がアフリカのモザンビークやマラウイでごく少数確認されたのみ。むしろ全世界的に見ると、現在は生ワクチン由来のウイルス株による感染確認のほうが多く報告されている。このため現在のポリオ撲滅作戦は常在2ヵ国での封じ込めと各国での不活化ワクチンへの切替えや保管中の不要なウイルス株の廃棄に移行している。しかし、ここでの不安要素は少なくない。まず、常在国のアフガニスタンは今も政情不安定で、疫学データの信頼性にも疑問符が付く。さらにワクチン株の感染者が多数報告されている中部・南部アフリカの各国は、公衆衛生関連の行政機関はまだ脆弱である。その意味でいずれも先進国が提供する資金と人材は欠かせない。こうした最終局面でアメリカの資金がWHOに入らなくなれば、GAPが行う事業は先細りしかねない。そんなこんなもあり、私自身は胸騒ぎがしてならないし、今後ポリオの感染動向は今まで以上に注視していこうと考えている。

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第226回 インフルエンザ流行深刻化、医療現場は逼迫 子供の脳症にも注意/厚労省

<先週の動き>1.インフルエンザ流行深刻化、医療現場は逼迫 子供の脳症にも注意/厚労省2.新型コロナ感染拡大に歯止めかからず、5年間で死者13万人、高齢者が96%/厚労省3.民間病院に300億円超の財政支援、物価高騰や人件費上昇に対応/東京都4.東京女子医大元理事長を逮捕 1億円超の背任容疑で/東京女子医大5.カテーテル治療後死亡の10件、病院側は医療事故を否定/神戸徳洲会病院6.2度の救急受診も適切な対応取らず後遺障害、病院に5,000万円賠償命令/彦根市立病院1.インフルエンザ流行深刻化、医療現場は逼迫 子供の脳症にも注意/厚労省現在、全国的にインフルエンザが流行し、医療現場は逼迫した状況にある。国立感染症研究所のデータによると、2024年12月29日までの1週間の感染者数は、1医療機関当たり64.39人と過去最多を記録した。年末年始を挟んで感染者数は減少したものの、依然として高い水準で推移しており、予断を許さない状況となっている。今冬の流行の要因として、コロナ禍でインフルエンザの流行が抑制されていたことにより、集団免疫が低下していることが考えられている。とくに、コロナ禍の間に生まれた0~4歳の抗体保有率が低いという調査結果も出ており、今後の感染拡大が懸念されている。現在流行しているウイルスは、2009年に「新型」として流行した「A型」(H1N1)だが、2月以降は「B型」が広がる可能性もあり、型が異なると再度感染する恐れもある。インフルエンザの感染拡大を受け、厚生労働省は治療薬の在庫状況を公表した。1月12日時点で、全国の医療機関における治療薬の在庫は約1,110万人分あり、当面の需要に対応できる見込み。ただし、インフルエンザ治療薬のオセルタミビル(商品名:タミフル ドライシロップ)は供給不足の状態が続いており、厚労省は、同カプセルを調整して使用する場合には「院内製剤加算を算定できる」という見解を示している。インフルエンザの流行により、救急搬送が困難な事例も増加している。群馬県では、1月第2週(6~12日)の救急搬送困難事案が過去最多の159件に上った。また、インフルエンザ患者の増加により、多くの医療機関で病床が逼迫しており、東京都や島根県では、一部の病院で入院制限を行うなど、医療体制に影響が出ている。小児では、インフルエンザ脳症の発症に注意が必要である。けいれんや意識障害、異常行動などがみられる場合は、速やかに医療機関を受診する必要がある。また、高齢者や基礎疾患を持つ患者においても、インフルエンザは重症化のリスクが高いため、注意が必要。インフルエンザの流行は、今後もしばらく続く可能性があり、専門家は、今からでもワクチン接種などを推奨している。参考1)インフルエンザ流行レベルマップ 第2週(国立感染症研究所)2)2025年1月17日 直近1ヶ月間の通常流通用抗インフルエンザウイルス薬の供給状況について[1月12日時点](厚労省)3)インフルエンザ感染者、2週ぶり増加…現在流行の「A型」に続き2月以降は「B型」広がる可能性(読売新聞)4)子どものインフルエンザ脳症に注意を 意識障害や異常行動、重症化も(朝日新聞)5)「一気に増えた」インフル入院 コロナも増加、病院「高齢者に脅威」(同)6)インフルで病床逼迫 救急搬送困難最多159件、状況深刻 群馬県内(上毛新聞)7)インフル流行でタミフルドライシロップ等不足、タミフルカプセル調整使用で【院内製剤加算】等認める(Gem Med)2.新型コロナ感染拡大に歯止めかからず、5年間で死者13万人、高齢者が96%/厚労省新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の患者が再び増加傾向にある。厚生労働省によると、1月12日までの1週間における定点1医療機関当たりの患者報告数は7.08人で、前の週から1.33倍に増加した。新規感染者数が増加するのは2週ぶりで、全国的な流行期に入ってから患者数が増加するのは4週連続。都道府県別では、岩手県が12.82人と最も多く、次いで宮城県(11.99人)、徳島県(11.51人)と続いている。1月12日までの1週間に、新たに入院した患者数は2,889人で、前の週と比べて295人増えた。厚労省は、冬休みが終わったことで、学校などで感染がさらに広がる恐れもあるとして、引き続き対策の徹底を呼びかけている。COVID-19の感染者が国内で初めて確認されてから、1月15日で5年になる。この5年間で、感染者数は7,000万人以上、死者は13万人に上ると推計され、このうち96%が高齢者となっている。専門家は、COVID-19は依然として脅威であり、高齢者や基礎疾患を持つ人にとってはとくに危険であると指摘している。また、若い人でも後遺症のリスクがあることから、引き続き感染対策を継続する必要があると呼びかけている。具体的には、手洗い、マスクの着用、咳エチケットなどの基本的な感染対策に加え、ワクチン接種も有効な予防策となる。参考1)新型コロナ患者数 前の週の1.33倍に 厚労省“対策徹底を”(NHK)2)新型コロナ患者が前週比1.6倍増 約3.5万人に-定点報告数は3割増の7.08人 厚労省(CB news)3)新型コロナ国内初確認から5年、死者13万人・高齢者が96%(読売新聞)3.民間病院に300億円超の財政支援、物価高騰や人件費上昇に対応/東京都東京都は、2025年度予算案に、都内の全民間病院を対象とした総額321億円の財政支援を盛り込む方針を固めた。コロナ禍後の病院経営は、物価高や人件費の上昇、患者数の減少により厳しさを増しており、医療提供体制の安定確保が課題となっている。都は、都内に約600あるすべての民間病院に対し、入院患者1人当たり1日580円を給付するほか、高齢患者の受け入れや小児科、産科、救急医療の体制確保に対する支援を行う。1病院当たりの給付額は最大で2億円に達する見込みで、いずれの支援も1~3年間の時限措置となる。小池 百合子知事は、「本来は国が診療報酬の改定などで対応すべきものだが、緊急的、臨時的な対応として都内の物価を考慮した支援を行う」と述べている。病院経営は、物価高騰による光熱費や食材費の増加、人手不足による人件費の上昇、コロナ禍の収束後も続く患者の受診控えなどにより、悪化の一途をたどっており、都病院協会のアンケート調査によると、2023年度上半期に赤字だった都内の病院は49.2%に上り、前年同期より17.2ポイント上昇していた。こうした環境を踏まえ都は、安定的な医療体制を支えるには、民間病院への早急な財政支援が不可欠と判断し、今回の財政支援を決定した。高齢化が進む中、医療需要は増加が見込まれる一方、医療従事者の不足や病院の経営難など、医療提供体制の維持には多くの課題がある。都では、今回の財政支援により、医療機関の経営安定化を支援し、都民への医療提供体制の確保を目指すとしている。参考1)東京都 物価高騰対策等で民間病院に321億円支援 来年度予算は約9兆1,500億円(テレビ朝日)2)東京都、都内の全民間病院に総額300億円超の財政支援へ…医療提供体制の安定確保へ(読売新聞)4.東京女子医大元理事長を逮捕 1億円超の背任容疑で/東京女子医大東京女子医科大学元理事長の岩本 絹子容疑者(78)が、大学の資金約1億1,700万円を不正に流用したとして、1月13日に背任容疑で警視庁に逮捕された。岩本容疑者は、2014年に副理事長に、2019年には理事長に就任し、大学病院で起きた医療事故の影響で赤字に転落した大学の経営再建を主導した。しかし、その過程で、人事や経理などの権限を集中させ、「女帝」と呼ばれるほどの強権的な体制を築き、不透明な資金運用を行っていた疑いが持たれている。具体的には、2018年7月~2020年2月にかけて、新校舎建設工事を巡り、1級建築士の男性に実態のないアドバイザー業務の報酬として、大学に約1億1,700万円を支払わせ、その一部が岩本容疑者に還流していたとみられている。警視庁は、2023年3月に大学関係者から告発を受け捜査を開始し、2024年3月には大学本部や岩本容疑者の自宅などを家宅捜索した。その後、押収した資料などを分析した結果、今回の逮捕に至った。大学側は、岩本容疑者の逮捕を受け、謝罪し、再発防止に努めるとしている。警視庁では、岩本容疑者が、大学に他にも損害を与えた疑いがあるとみて、捜査を進めている。参考1)元理事長の逮捕について(東京女子医大)2)東京女子医大の岩本絹子元理事長を逮捕、新校舎工事で不正支出疑い 費用の一部還流か(産経新聞)3)東京女子医科大 元理事長 足立区の病院建設でも5,000万円還流か(NHK)4)岩本絹子容疑者が「5,000万円狙い」で東京女子医大理事会で「工作」(東京新聞)5)東京女子医大元理事長、不正資金送金用の専用口座作らせる…3,700万円自身に還流(読売新聞)5.カテーテル治療後死亡の10件、病院側は医療事故を否定/神戸徳洲会病院神戸徳洲会病院は、カテーテル治療後に患者が死亡した事例など10件について、外部専門家を含む院内検証の結果、医療事故には該当しないと発表した。同病院では2023年1月以降、カテーテル治療後に患者が死亡するなどの事例が12件発生し、うち3件は医療過誤と認められていた。今回検証された10件のうち9件は死亡事例だったが、病院側は「カテーテル検査や治療が死亡の原因になったものはない」と結論付けた。また、治療中に冠動脈損傷の合併症を引き起こした1件についても、処置は適切だったとしている。その一方で、患者や家族への説明が不十分だったことや、医師1人で治療方針を決めていた体制などについては問題があったと認めた。また、残る2件については、第三者による調査などを行い、引き続き医療事故に当たるかどうか検証を進めるとしている。検証対象のうち、唯一の生存例である80代女性は、カテーテル手術後に血管損傷が起こり、術後は息苦しさに襲われたと証言している。病院側は報告書で、血管損傷について「合併症として想定されるもの」と結論付けたが、女性は病院の説明に納得していない様子。カテーテルの専門医は、女性の血管損傷について「合併症は非常にまれで、あっても血がにじむ程度。医師は明らかに訓練不足」と指摘し、報告書でその点への言及がないことを問題視している。神戸徳洲会病院では、2023年7月に循環器内科の男性医師が関わったカテーテル治療後、複数の患者が死亡していたことが発覚し、神戸市から改善命令を受けていた。その後、病院側は改善計画を提出しているが、今回の検証結果を受け、さらなる改善が必要となる可能性もある。参考1)調査報告 循環器内科カテーテル治療・検査に関する事例(神戸徳洲会病院)2)神戸徳洲会病院_カテーテル検査治療個別検証報告(同)3)神戸徳洲会病院 カテーテル治療10件“医療事故にあたらず”(NHK)4)死亡など10件「事故あたらず」…神戸徳洲会がカテーテル報告書公表(読売新聞)5)神戸徳洲会病院、10件「医療事故該当せず」患者死亡問題で見解公表(産経新聞)6.2度の救急受診も適切な対応取らず後遺障害、病院に5,000万円賠償命令/彦根市立病院彦根市立病院(滋賀県彦根市)で2019年、頭痛を訴えて2度にわたり救急受診した高齢女性に対し、医師が適切な検査を行わなかったため、慢性硬膜下血腫の診断が遅れ、女性に高度意識障害などの後遺症が残ったとして、大津地裁は1月17日、彦根市におよそ5,000万円の損害賠償を命じる判決を言い渡した。女性は2度の受診時に「今までに経験したことがない頭痛」などと訴えていたが、医師は鎮痛剤などを処方し、帰宅させていた。2度目の受診の翌日、女性は意識障害を起こして救急搬送され、慢性硬膜下血腫などと診断されて手術を受けたが、後遺症が残ったという。判決で、大津地裁の池田 聡介裁判長は、女性が訴えていた症状や服用していた薬などから、医師は脳の病気などを疑うべきだったと指摘。遅くとも2度目の受診時にCT検査などを行っていれば、後遺症を回避できた可能性が高いとして、病院側の過失を認めた。女性は提訴後の2022年に老衰で死亡しており、遺族が訴訟を引き継いでいた。彦根市立病院は、「判決文が届いていないため、現時点ではコメントを差し控えます」としている。参考1)頭痛で受診した高齢女性めぐり病院運営する市に賠償命令 大津地裁「後遺症、回避できた可能性高い」(京都新聞)2)市に5,000万円賠償命令 彦根市立病院、診断ミスで重い後遺症 地裁(毎日新聞)

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第245回 レプリコンワクチンを求め上京した知人、その理由と副反応の状況は?

前回も触れた新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)に対する次世代mRNAワクチンのコスタイベだが、インターネット上でネガティブな情報が氾濫する一方、逆にこのワクチンを接種したいと希望する一般人もいる。もっとも現在のコスタイベは1バイアルが16回接種分であり、接種前調整で生理食塩水10mLに溶解して6時間以内に使い切らねばならない。つまり医療機関側がこのワクチンを使おうとすると、あらかじめ16人という大人数を集めておかねばならないのだ。これは大規模医療機関でも至難の業である。実は私も次の接種ではこれを選択しようと思っており、コスタイベの接種希望者をほぼ常時募集しているある医療機関を知っている。しかし、インターネット隆盛のこの時代でも一般人がこのワクチン選択をするならば、多くは“接種可能な医療機関探し”という入口で壁にぶち当たるのが常である。とりわけコスタイベの場合、昨秋からスタートした定期接種から対象ワクチンに加わったばかりで、1バイアル16回接種分を棚上げしても、医療機関の多くは使い慣れたファイザー製やモデルナ製を選択しがちである。さらに前回でも触れたように、このワクチンに対する懐疑派の人たちがこのワクチンを接種しようとする医療機関に嫌がらせを行ってしまうため、余計に医療機関側は奥手になってしまうだろう。実は秋冬接種が始まった昨年10月、私はある人から「コスタイベを接種したいが、医療機関が見つからず難渋している」と相談を受けた。実はこの方は、以前に本連載で取り上げた、仙台市内からさいたま市まで新幹線代をかけて新型コロナワクチンを接種しに行った大学教員のA氏だ。A氏は結局、私が知っていたコスタイベ接種可能な医療機関で無事接種を終えた。ということで、再びA氏に接種に至る経緯から、接種終了後までの話を聞いてみた。SNS炎上をきっかけにコスタイベを希望まず、A氏は以前の本連載で紹介したように2024年6月に任意接種で新型コロナワクチンを接種。この時から「半年に1度くらいの頻度で接種できれば」と漠然と考えていたという。そうした中で10月初旬、“コスタイベは比較的長期間、高い抗体価が持続する”というLancet Infectious Diseases誌に公表された論文1)を目にした。畑違いではあるが、英語論文を読み慣れているA氏は、それならばコスタイベを接種しようと思い立った。「実はコスタイベに興味を持ったきっかけは、むしろ懐疑的な人たちがSNS上で騒いでいたことがきっかけなんですよ。彼らが『効果が長い間残る』と書いていて、自分の場合は新型コロナワクチンを定期的に受けたいと思っていたので、効果が長く続くなら逆にありがたいと思ったんです。そこで医師や研究者の方の発信を辿って、割と簡単に(前述の)論文1)にたどり着いたというわけです。その意味では懐疑的な人たちの情報発信は私にとっては、逆効果でしたね(笑)」A氏は早速ネット上で接種可能な医療機関を検索。コスタイベ接種希望者を募っていた都内のクリニックをみつけ、仮予約をした。仮予約とは、16人の接種希望者が集まり次第実施の最終決定ということである。当時をA氏は次のように振り返る。「反対派の嫌がらせを避けるため、接種希望者同士でまるで違法薬物の裏取引のように、ネットで隠語や非公開のダイレクトメッセージで接種の情報をやりとりしているのが稀有な経験でした」実際、定期接種の開始当時、私もX(旧Twitter)などを見ていたが、新型コロナワクチンの接種情報を積極的に発信しているインフルエンサー的なアカウントでは、明らかにコスタイベを指すと思われる「あれ」という用語が盛んに使われていた。しかし、ここで災難が起こった。まさに前回の連載でも触れたようにコスタイベ接種を公言したこのクリニックに嫌がらせが殺到し始めたのだ。このため、A氏の仮予約翌日にクリニック側のホームページはコスタイベ接種の予約受付中止を宣言。同時に接種そのものを中止することを示唆するお知らせを掲載し、コスタイベ接種の試みは半ばふりだしに戻ってしまった。対応施設の検索から接種まで2週間しかし、ここからA氏は本領を発揮。新たなコスタイベの接種可能な医療機関を見つけるべく、仙台市の新型コロナウイルスワクチン定期接種登録医療機関に片っ端から問い合わせの電話を入れたという。「最初は仙台市役所にコンタクトを取りましたが、すでに仙台市新型コロナウイルスワクチン接種専用コールセンターは廃止されたので、仙台市総合コールセンター『杜の都おしえてコール』に電話をしました。ですが、定期接種登録医療機関が掲載されていることは教えてもらえましたが、個別医療機関で採用しているワクチンの種類はわかりませんとのことでした」結果的に休診日などで不通も含め約200件に連絡したが、コスタイベの取り扱いは皆無だった。ちなみにこの約200件の発信履歴は、取材時にA氏に見せてもらっている。「医療機関の受付がコスタイベという商品名を知らないことも多く、コスタイベという単語を聞き取ってもらえないことも当たり前でした。結局、『そちらで接種できるコロナワクチンの種類はなんですか』と聞くのが一番早いとわかりましたが、多くはファイザーかモデルナ、時に第一三共や武田薬品のワクチンが打てる医療機関はありましたが、コスタイベを接種できる医療機関はありませんでした」最終的に、私が教えた医療機関に仮予約し、状況確認の連絡をしたところ「このペースなら多分ほぼ確実に16人の枠は埋まるでしょう」と言われ、最終的に10月16日にこの医療機関へ16人の接種希望者が集まったことから、最終意志確認の電話連絡を経て正式予約となり、10月22日に接種となった。10月22日、A氏は新幹線で上京。当該医療機関には午後1時半ごろに窓口に顔を出した。目の前には複数の診察室があり、A氏がしばらくして入るよう指示を受けたのは、そのうちただ1つ担当医の名札が下げられていない診察室だった。診察室に入ると、担当医からワクチン接種前の問診を受け、A氏が「これを打ちたくて仙台から来ました」と話を振ると、担当医からは「住所を見て、あれ?って思いました」と返答された。副反応、他剤と比べると?接種後の副反応について、A氏は最初に接種したモデルナ製ワクチンでは、「翌日に38.5℃の発熱なのにつらくない」という不思議な体験をし、以後はファイザー製を選択して強い副反応はほとんど経験してこなかったそうだが、今回のコスタイベではどうだったのか? あくまで個人的な感想として次のように語った。「翌日に1時間弱、寒気を感じたのと、接種部位が数日間、少しズキズキした程度で終わりました」前回の任意接種よりは接種医療機関探しは楽だったものの、「今回はコスタイベを選ぼうとしたことで自ら苦労してしまった」と苦笑いするA氏。前回の接種のきっかけとなった新型コロナ感染後の後遺症とみられる咳喘息は、今は小康状態。そして以前は年1回、風邪を引いた直後に使用する程度だった吸入薬は、現在も毎日1回の使用を続けている。参考1)Oda Y, et al. Lancet Infect Dis. 2024;24:e729-e731.

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いざお見合いへ!オンラインvs.対面【アラサー女医の婚活カルテ】第6回

アラサー内科医のこん野かつ美です☆前回は、結婚相談所(以下、相談所)での婚活の事前準備についてご紹介しました。今回は、実際のお見合いでの経験をシェアしたいと思います。「長期戦」となったマイ婚活プロフィールページを見て、双方が「会ってみたい」と思えば、いよいよ次のステップ、すなわち「お見合い」に進みます。大手の「連盟」(連盟については第3回参照)であるIBJが発行した「2023年度版 成婚白書」を見てみましょう。「年齢別『お見合い数』比較」では、成婚に至った女性のお見合い数(中央値)は、25~29歳の場合は9.0回、30~34歳の場合は11.0回だったそうです1)。では、私自身のお見合い回数はどうだったか…というと、なんと自分自身も驚きの「31回」でした!婚活の「活動期間」としても、成婚に至った女性の「在籍日数」(中央値)が25~29歳が205.0日、30~34歳が252.0日であるのに対し、「約1年半」でしたから、同年代に比べて長めだったことがわかります。われながら、よく頑張ったものです。ちまたの婚活マニュアルや、SNS上の「婚活アドバイザー」たちは、短期間での成婚を推奨する傾向があるようです。年齢が上がれば上がるほど成婚しづらくなるため、「とにかく誰かと結婚すること」を最優先に考えるのであれば、私の活動は褒められたものではないでしょう。しかし、前回にも触れたように、私は結婚相手に求める条件が比較的多く、「とにかく結婚したい」というよりは「結婚はあくまで人生の通過点。子どもは欲しいけれど、合わない相手と無理して結婚するよりは、独身のままのほうが良い」と思っていました。また、相手を医師に限定せずに活動しており、相手よりも私のほうが高年収である場合、「合わない相手と結婚して、その後離婚したら、財産分与で多額のお金を支払う羽目になる」という懸念も、頭の片隅にありました(笑)。そのため、夫と出会うまで、結果的に長期戦の婚活をすることになりました。「オンラインお見合い」は使いよう婚活業界では、2020年、日本結婚相手紹介サービス協議会がコロナ禍を考慮して「『オンライン』で出来ることは、『オンライン』で実施しましょう」との声明2)を出したことで、多くの連盟・相談所でオンラインお見合いが活発化しました。私も、活動開始当初はオンラインお見合いを多く活用していました。私なりに、オンラインお見合いと、対面のお見合いとを比較してみます。オンラインのメリットオンラインお見合いのメリットその1は、「感染の心配がない」ことです。職業柄、コロナに感染したら欠勤などで周りに迷惑を掛けてしまいますし、患者さんを感染させてしまったともなれば大問題ですから、オンラインお見合いの仕組みがあって助かりました。メリットその2は、「移動の手間・交通費やお茶代がかからない」ことです。オンコールがない休日に、30分程度の短いインターバルを置いて、同じ日に複数件のお見合いを組んだこともありました(精神的に疲れるのであまりお勧めはしませんが……)。メリットその3は、「遠方の人とも会える」ことです。前回触れたように、私にとって「将来的に同じ県内で生活できること」が結婚相手に求める条件の1つだったため、基本的には遠方在住の方とお会いすることはあまりありませんでしたが、ありがたいことに「成婚すればこん野さんの職場近くに移住してもよい」と言ってくれる方が時々いて、何度かお見合いしました。一番遠かったのは、なんとシンガポール在住の方でした!(ご縁はありませんでしたが…)。オンラインお見合いのデメリット一方、私が思うオンラインお見合いの最大のデメリットは、対面で会うときに比べて「お相手の雰囲気がわかりづらい」ことです。オンラインお見合いは、対面のお見合いに比べて、次のステップである「仮交際」に進む確率が高い、という記事3)を読みましたが、おそらくオンラインお見合いでは、完全に「なし」と判定したお相手以外は、いったん「交際希望」を出す場合が多いのではないかと思います。私の場合も、オンラインお見合いで「あり」か「なし」かの判断に迷ったら、取りあえず仮交際に進んでみて、仮交際のデート1回目で判断する場合が多かったです。結果として、直接会うよりも時間が取られることが多いと感じます。デメリットその2は、「回線トラブルが起こりうる」ことでした。一度、お相手が予定時刻を30分過ぎてもお見合いのオンラインミーティングに入室してこなかったことがありました。後日、回線トラブルだったので日程の再設定をとの依頼が来ましたが、トラブル時の対応力もその方の一面だと思ったので、お断りしました。デメリットその3は、「追加料金が発生しうる」ことでした。お相手の相談所のシステム次第では、オンラインお見合いの場合、1回当たり数千円の追加料金が徴収されることがあったようで、お見合い後にお断りする際、申し訳ない気持ちになりました。上記のようなメリット、デメリットを踏まえ、オンラインお見合いと対面でのお見合いを使い分けると良いと思います。おまけ~オンラインお見合いのコツ余談ですが、オンラインお見合いの際は、画面に映る印象がとても大切ですから、服装やメイクだけではなく、部屋の調光やインテリアにも気を配ると良いようです。私は、顔を明るく照らしてくれる、いわゆる「女優ライト」を活用していました。学会のWeb発表などでも使えるので、なかなか良い買い物でした。いかがでしたか?今回は、筆者自身のお見合い回数や、オンラインお見合いと対面でのお見合いの比較について書きました。次回も引き続き、お見合いでの体験談をお届けしたいと思います。お楽しみに。参考1)成婚白書/IBJ1)新型コロナウイルス感染症拡大防止に向けた結婚相手紹介サービス業界ガイドライン/JMIC 1)「オンラインお見合い」で約半数が仮交際へ。IBJ日本結婚相談所連盟、自宅での婚活を支援。/IBJ

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第130回 年始、「肺炎」大暴れ

歴史的流行ご存じのとおり、今年のインフルエンザ感染者数は想像を超えるレベルに達しています。抗インフルエンザ薬が出荷調整を強いられています。2025年第1週になってようやく報告数が減りましたが、年末年始で正しい統計が取れているかどうかはよくわからないです1)。とりあえず、このままピークアウトしてくれると助かるところです。ただ、不気味なのは、数は多くないものの新型コロナウイルスが暗躍していることです。「当院かかりつけの患者さまで、39度の発熱で来られました」というコールを、この2週間で何度受けたことか。そんなとき、まず頭に浮かぶのはインフルエンザ。しかし、同時に新型コロナの検査もすると、意外にも新型コロナが陽性になることがあります。症状だけでは、もはや判別が難しいという現実を痛感しています。さらに、「左右両肺に肺炎があるので紹介させていただきます」といった紹介状を持って来院する患者さんも急増中です。胸部CTを撮影してみると、細気管支炎パターンが見られ、「これはマイコプラズマか?」と疑って迅速検査をしても陰性。代わりに肺炎球菌尿中抗原が陽性、さらに血液培養からも肺炎球菌が検出されるケースがありました。ダマシか!この年末年始の呼吸器臨床を端的に表すと、「肺炎大暴れ」です。インフルエンザも過去こんなに肺炎の頻度は高くなかったのに、感染中も感染後も肺炎を起こす事例が多いです。新型コロナも相変わらず器質化肺炎みたいなのをよく起こす。そして、そのほかの肺炎も多い。細菌性肺炎や膿胸も多い。もともと冬はこういった呼吸器感染症が多かったとは思います。だがしかし、いかんせん度が過ぎておる。ワシャこんな呼吸器臨床を約20年経験した記憶がないぞ。「感染症の波」は、いったい何が理由なのか?この異常事態の背景には、何があるのでしょうか。コロナ禍で国全体が感染対策に力を入れていた時期と比べると、確かに感染対策は甘めではあります。交絡要因が多いので、これによって感染症が増えているか判然としませんが、感染対策の緩和と感染症の流行には一定の相関がみられているのは確かです。長期間にわたってウイルス曝露が減り、免疫防御機能が低下するという「免疫負債説」を耳にしていましたが、新型コロナ流行から4年が経過し、むしろ「免疫窃盗」されているという考え方が主流でしょうか。感染症免疫は神々の住まう領域であり、言及するとフルボッコの懸念があるため、この議論はやめておきます。昨年のように二峰性の流行曲線になる可能性はありつつも、インフルエンザはさすがにピークアウトすると予想されます。しかし、新型コロナもマイコプラズマも含めて、呼吸器感染症に関してはまだ予断を許しません。今シーズンは新型コロナのワクチン接種率が低いことも懸念材料です。自己負担額が高いため、接種を見送る人が増えました。当院の職員も、接種率がかなり落ちました。いずれ混合ワクチンとなり、安価となればインフルエンザと同時に接種していく時代が来るかもしれません。ちなみに、年末年始に「中国でヒトメタニューモウイルスが流行している」という報道がありましたが、冬季に流行しやすいウイルスで、それほど肺炎合併例も多くなく、世界保健機関(WHO)も「異常な感染拡大はない、過度に恐れる必要はない」とコメントしています2)。参考文献・参考サイト1)厚生労働省:インフルエンザ・新型コロナウイルス感染症の定点当たり報告数の推移(2025年1月14日)2)WHO:Trends of acute respiratory infection, including human metapneumovirus, in the Northern Hemisphere(2025 Jan 25)

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第225回 インフルエンザ猛威! 過去最多の感染者数で救急搬送困難事例が多発/厚労省

<先週の動き>1.インフルエンザ猛威! 過去最多の感染者数で救急搬送困難事例が多発/厚労省2.インフル治療薬不足が深刻化「過剰発注控えて」協力要請/厚労省3.2040年、医師の高齢化で自治体2割が「診療所なし」/厚労省4.高齢化社会の岐路、2040年の介護について検討開始/厚労省5.病院船で災害医療を強化、推進計画案パブコメ開始/政府6.看護師による不適切処置示唆のSNS投稿疑惑 病院が内部調査/千葉大1.インフルエンザ猛威! 過去最多の感染者数で救急搬送困難事例が多発/厚労省年末年始にかけて、インフルエンザと新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の患者が急増し、医療現場が逼迫している。とくに、救急搬送の困難事例が増加しており、患者の受け入れ先がみつからないケースが相次いでいる。厚生労働省によると、昨年12月23~29日の1週間に報告されたインフルエンザの患者数は、1医療機関当たり64.39人と、過去10年で最多を記録した。全国的に警報レベルを超えており、専門家はさらなる感染拡大を懸念している。COVID-19も増加傾向にあり、昨年12月23~29日の新規感染者数は、1定点当たり7.01人と、5週連続で増加している。感染拡大の影響で、発熱などを訴える患者が急増し、救急要請が殺到している。名古屋市では、12月の救急出動件数が過去最多を更新。救急車の稼働率が80%を超える「救急隊逼迫アラート」が頻繁に発令され、1月6日には稼働率が一時的に100%に達し、出動可能な救急車がない時間帯もあったという。救急搬送の困難事例が増加している背景には、医療従事者不足や病床不足など、医療体制の脆弱さがある。インフルエンザやCOVID-19だけでなく、他の疾患や怪我など、救急搬送が必要な患者は常に発生している。医療現場の逼迫を解消するためには、政府による医療体制の強化、国民一人ひとりの感染予防対策の徹底、そして、救急車の適切な利用などが求められる。参考1)全国インフルエンザ患者数 統計開始以来最多に(NHK)2)全国インフル定点報告64.39人、現行統計で最多 感染者数は30万人超え 厚労省(CB news)3)インフルエンザ流行、全国の感染者数が過去最多…タミフル後発薬は生産追いつかず供給停止(読売新聞)4)「救急搬送困難事案」も急増 ひっきりなしに鳴り続ける119番通報 名古屋(名古屋テレビ)5)インフルエンザの流行状況(東京都 2024-2025年シーズン)2.インフル治療薬不足が深刻化「過剰発注控えて」協力要請/厚労省インフルエンザの流行拡大を受け、治療薬の供給が逼迫し、各社が対応に追われている。沢井製薬は1月8日、インフルエンザ治療薬オセルタミビル(商品名:タミフル)の後発薬の供給を一時停止すると発表した。12月からの急激な流行拡大で需要が想定を上回り、生産が追いついていないためだ。カプセルは2月上旬、ドライシロップは1月下旬に供給を再開する予定という。厚生労働省は8日、タミフル後発薬の供給停止を受け、医療機関や薬局に対し、過剰な発注を控え、他社製品や代替薬への処方変更などを検討するよう要請した。中外製薬も9日、タミフルの先発品の一部を限定出荷すると発表した。昨年末以降、増産を続けてきたものの、製造が追いつかない状況だという。原料の入手が難しくなっていることなどから、増産分が今シーズンに間に合うか現時点では不明だという。塩野義製薬も9日、インフルエンザ治療薬バロキサビル マルボキシル(商品名:ゾフルーザ)の供給調整を始めると発表した。他社製品の供給状況などを踏まえ、限定出荷などの措置を講じることで、過剰発注を防ぎ、市中での適正在庫の維持を目指す。インフルエンザは12月中旬頃から感染が急拡大しており、治療薬の供給不足が長期化すれば、患者の治療に影響が出る可能性もある。参考1)オセルタミビルリン酸塩製剤の適正な使用と発注について(厚労省)2)厚労省が「過剰発注控えて」と協力要請 タミフルのジェネリック一時供給停止で(産経新聞)3)中外製薬のタミフル、一部で限定出荷に インフルエンザの急激な流行拡大うけ(産経新聞)4)塩野義、インフルエンザ治療薬の供給調整 過剰発注防ぐ(日経新聞)3.2040年、医師の高齢化で自治体2割が「診療所なし」/厚労省2025年は「団塊の世代」が全員75歳以上の後期高齢者となる年であり、医療現場では大きな変化が予想されている。高齢化の進展に伴い、在宅医療や救急搬送の需要増加が見込まれる一方で、医師不足が深刻化し、地域医療の維持が困難になる可能性が高まっている。厚生労働省の推計によると、75歳以上の患者数は2025年には1日当たり7万9,000人と、2020年と比べて1万人以上増加する見通しだ。救急搬送される75歳以上の高齢者も、2025年には1ヵ月当たり28万人と、2020年と比較し4万2,000人増加すると予測されている。また、医師の高齢化も進み、2040年には市区町村の2割で診療所がゼロになる可能性があるという。厚労省の試算では、医師が75歳で引退すると仮定した場合、診療所のない自治体数は2040年に342となり、全国約1,700自治体の2割に相当する。医師不足は、とくに地方部で深刻化している。青森県佐井村や埼玉県東秩父村のように、常駐医師のいない状態が続く地域も少なくない。医師不足が解消されなければ、高齢者が住み慣れた地域で医療を受け続けることが難しくなり、医療崩壊につながる可能性もある。地域医療を維持するためには、医師の確保が急務である。国は、地域医療構想に基づき、在宅医療や高齢者救急への対応強化、医療機関と介護施設の連携強化などを推進しているが、医師不足は深刻であり、抜本的な対策が必要とされている。参考1)高齢化 “2025年問題” 在宅医療や救急搬送の体制構築が課題に(NHK)2)自治体2割が「診療所なし」 2040年試算、医師高齢化響く(日経新聞)4.高齢化社会の岐路、2040年の介護について検討開始/厚労省厚生労働省は1月9日、「2040年に向けたサービス提供体制等のあり方」検討会を立ち上げ、初会合を開いた。2040年に高齢者数がピークを迎える中、地域の実情に応じた介護サービスの提供体制や人材確保策を検討するのが狙い。検討会では、都市部、中山間地域、一般市といった地域特性に応じたサービス提供モデルの構築、介護人材の確保・定着、テクノロジー活用による生産性向上、経営支援、介護予防など、幅広い論点について議論が行われる。具体的には、中山間・人口減少地域では、介護ニーズの減少と人材不足に対応するため、介護報酬や人員基準の柔軟化、補助金などの財政支援の必要性が指摘されている。一方、都市部では増加する介護ニーズに対応するために新たなサービス提供体制の構築が課題となっている。今後不足するとみられる介護人材の確保・定着には、処遇改善の強化として、介護職員の賃金向上、キャリアアップ支援、働きがいのある職場環境作りなどが課題として、検討される。さらに外国人材の活用やICT・AIなどのテクノロジー活用による生産性向上も重要なテーマとなる。そのほか介護事業所の経営支援のほか、事業者間の連携、事業所の大規模化、職場環境改善などを促進するためのインセンティブや相談窓口の設置など具体的な支援策を検討する。検討会は今後、先進的な取り組みを行う自治体や事業者へのヒアリングなどを実施しながら、2025年春頃をめどに中間取りまとめを行う予定。この中間取りまとめは、今後の介護保険制度改正や2027年度の介護報酬改定に活用される。参考1)第1回「2040年に向けたサービス提供体制等のあり方」検討会(厚労省)2)2040年の介護制度を議論 厚労省が検討会(日経新聞)3)「2040年問題」議論開始 高齢者数ピークも介護人材不足 厚労省(朝日新聞)4)少子高齢化が地域ごとにバラバラに進む「2040年」見据え、介護サービス提供や介護人材確保などの在り方を考える-厚労省検討会(Gem Med)5)介護の大規模化インセンティブ付与へ 春ごろ中間まとめ 厚労省・新検討会(CB news)5.病院船で災害医療を強化、推進計画案パブコメ開始/政府政府は1月8日、災害時などに海上で医療活動を行う「病院船」の活用に向けた推進計画案を公表し、パブリックコメントの募集を開始した。締め切りは1月20日。病院船は、大規模災害発生時に被災地で医療を提供する船舶のことで、昨年6月に施行された「病院船の活用促進に関する法律」に基づき、政府は年内をめどに病院船の整備計画を策定する方針。推進計画案では、病院船の役割として、被災地における医療提供機能の補完、医療従事者や物資の輸送、被災者の避難などを挙げている。また、船舶の確保については、当面の間、民間事業者の協力を得て、民間の既存船舶を活用する方向性を示している。具体的には、民間船舶に医療機材を積み込み、災害時に被災地へ派遣する。政府はDMAT(災害派遣医療チーム)や日本赤十字社救護班、JMAT(日本医師会災害医療チーム)などと連携し、医療従事者の確保や保健医療福祉調整本部への支援を行うとしている。病院船の活用は、東日本大震災以降、たびたび議論されてきた。大規模災害発生時に、陸上の医療機関の被災やアクセスが困難になった場合でも、海路を通じて医療を提供できるという利点がある。具体的な活用イメージは以下の通り。発災直後~72時間:沖合で活動し、被災地から脱出する透析患者や入院患者などを搬送する「脱出船」としての役割を担う。発災後1週間~1ヵ月:被災地付近の港に接岸し、現地で救護活動を行う「救護船」としての役割を担う。亜急性期・慢性期:陸上機能の回復に伴い、船舶での医療活動ニーズが低下する。課題としては、被災地から離れた場所への移送に対する患者の同意取得、救護船へのアクセス確保などがある。一方で、病院船の建造・維持費や医療従事者の確保、平時における活用方法などが問題点として挙げられている。政府は、これらの問題点を解決しながら、病院船の活用を進めていく方針。今回のパブリックコメント募集では、推進計画案に対する意見を広く国民から募り、計画に反映させることで、より実効性の高いものにすることを目指している。参考1)災害時等における船舶を活用した医療提供体制の整備の推進に関する計画(案)に関する意見募集について(内閣府)2)船舶活用医療推進本部(内閣官房)3)病院船、体制整備推進計画案でパブコメ 政府(MEDIFAX)4)病院船、25年度に運用開始へ 岸田首相が計画づくり指示(日経新聞)6.看護師による不適切処置示唆のSNS投稿疑惑 病院が内部調査/千葉大千葉大学医学部附属病院(千葉市中央区)の看護師が、患者への不適切な処置を示唆する内容をX(旧ツイッター)に投稿していた疑惑が浮上し、病院が内部調査に乗り出している。問題の投稿は2023年秋頃から確認されていたとされ、「インシデントを隠蔽している」「薬を捨てている」「褥瘡を発生させた」など、患者の安全を脅かすような内容が含まれていた。また、所属する科の医師への暴言もあったという。これらの投稿は、看護師を名乗る匿名アカウントから発信されていた。アカウントは現在削除されているが、投稿内容から同病院の看護師によるものと疑われている。病院側は1月6日に不適切な投稿を把握し、事実関係の確認を開始。8日には大鳥 精司病院長名で「現在、事実関係などを調査中です。今後、調査結果を踏まえ、病院として適切に対応してまいります」とのコメントをホームページに掲載した。10日には、調査対象となっている職員に自宅待機を命じたことを明らかにした。病院は、SNSでの個人的な情報発信を禁止していないものの、院内ガイドラインで責任ある投稿を求めている。今回の件を受け、病院側は改めて職員への注意喚起を行うとともに、再発防止に向けた対策を検討する方針。この問題は、患者の安全確保や病院への信頼に関わる重大な事態であり、調査の行方が注目される。参考1)当院に関する「X」の投稿について(第2報)2)患者への不適切な処置を示唆するSNS投稿? 千葉大病院が内部調査(朝日新聞)3)千葉大学病院 “不適切処置”投稿の可能性ある職員 自宅待機に(NHK)4)千葉大医学部附属病院めぐる看護師のX不適切投稿疑惑、調査対象の職員に「自宅待機を命じた」「まだ断定できる事実はなく」(ZAKZAK)5)「薬を患者に飲ませず捨てている」千葉大病院関係者がXに不適切投稿か 内部調査を実施(産経新聞)

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第244回 レプリコンワクチン懐疑派に共通することは?

2025年、本年もよろしくお願いいたします。さて年内最後の本連載でも触れたが、通称レプリコンワクチンと呼ばれるMeiji Seikaファルマの新型コロナウイルス感染症に対する次世代mRNAワクチン「コスタイベ」に関して、同社は12月25日付で、立憲民主党の衆議院議員・原口 一博氏に対して名誉棄損に基づく1,000万円の損害賠償を求める提訴に踏み切った。原口氏がX(旧Twitter)、YouTube、ニコニコ生放送、著書「プランデミック戦争 作られたパンデミック」で、コスタイベに関し事実に基づかない情報を発信・拡散していることを同社に対する名誉棄損と捉え、法的措置に踏み切ったものだ。同社はすでに2024年10月9日に原口氏に警告書を送付したものの、それに対して原口氏からは「衆院選挙後の国会で論点を明らかにしたい」という旨の回答しか得られず、その後も同様の発信を続けていることから提訴に踏み切ったとしている。今回の名誉毀損にあたる発言の類型同日開催された記者会見では、今回の提訴を担当する三浦法律事務所の弁護士・松田 誠司氏より、名誉棄損と考える発言の類型について、(1)Meiji Seikaファルマを731部隊になぞらえた発言、(2)コスタイベの審査過程を不公正とする発言、(3)コスタイベを生物兵器とする発言、(4)Meiji Seikaファルマが人体実験を行っているとの発言、の4つが挙げられた。軽く解説すると、731部隊とは旧帝国陸軍の関東軍防疫給水部の通称名であり、同部隊は生物兵器の研究開発と一部実戦使用を行い、その過程で捕虜などを利用した生体実験を行っていたことで知られる。類型(4)の人体実験とは、いわゆる臨床試験のことではなく、731部隊の生体実験のようなネガティブな意味での発言を指す。また、松田氏はMeiji Seikaファルマが被った損害は、有形損害が迷惑電話対応(損害120万円)、推定のコスタイベ利益損害(同55億6,000万円)、無形損害が原口氏のSNS上での発信による会社の名誉侵害と説明。「無形損害は1,000万円を下らない」(松田氏)とも語り、これら損害の一部として1,000万円を請求するとした。推定損害額に対して請求額がかなり低いことについて、同社代表取締役社長の小林 大吉郎氏は「今回の訴訟の目的は金銭ではない。あくまで意見・論評を超えた発言を法廷でつまびらかにして、名誉回復を図りたいというのが主な目的」と語った。さてこの会見では、小林氏よりコスタイベに懐疑的な人たちが行う抗議と称した活動の一端が明らかにされた。ワクチン懐疑派が行った具体的な抗議活動明らかにされたのは、懐疑派がX上にアップした治験施設一覧を基にしたと思われる6施設に対する嫌がらせのメール送付、電話、封書投函、Googleマップへの書き込み。そして、コスタイベの接種実施をホームページ(HP)上で明らかにした3医療機関に対する嫌がらせや誹謗中傷の電話殺到、SNSでの誹謗中傷の拡散、Googleマップへの低評価入力による診療への悪影響やHP閉鎖など。また、同社の本社前では頻繁に抗議活動が行われているが、同社の看板に「明治セイカファルマ、死ね バーカ!!」「殺人ワクチン ふざけるな」(原文ママ)などの付箋が張られた写真も示された。なお、原口氏はコスタイベの治験について具体的に「殺人に近い行為」とまで表現している。今回、提訴に至った経緯について小林氏が次のように説明した。長くなるが全文掲載する。なお、発言内の( )は私個人による補足である。「コロナワクチン開発に関わった医学専門家・研究者、接種に当たる多くの善意の医師、真摯に業務に取り組む社員、これはもう一般市民なんですよ、国民なんですよ。原口氏は相当な影響力があって、何十万人という(SNS)フォロワーがいる中で、こういったことを繰り返し拡散しているんですね。ワクチン反対派の活動のリーダー役となっているわけですけれども、そういったことによって実際こういった人たちは業務を妨げられ、精神的に大きな打撃を受けている。百歩譲って何か不正があったとか、データに瑕疵があったとかならば、何か言われるのは理解できますが、まったく瑕疵のない開発行為について、こういったことが繰り返される。実は承認を取ったときに若い研究者、開発者が本当に喜んだんですよ。情熱をもってやった行為ですから。ところが、殺人行為だとか原爆だと言われて、その人たちにも家族がいるわけですね。そういうことも考えますと、このまま放置できないというところまで来てしまったと。提訴をすることについては、極めて消極的だったんです。当初は。」個人的な印象を率直に言うと、SNS上でコスタイベに懐疑的な発信をする人の中には、その情報の審議は別にして強い信念に基づくと見受けられる人もいる反面、野次馬感覚でこのムーブメントに乗っかっていると思われる人も見受けられる。そうした“野次馬”は10年後には、コスタイベのことなど忘れて、ほかのことにかまけて、自分たちの行動によって傷付けられた人たちのことなぞ、おそらく忘れているだろう。私がそう思うのは実体験があるからだ。ワクチン懐疑派の一部は「何かを批判していたい」だけかつて「放射能瓦礫」なる言葉が流布されたことを覚えている人はいるだろうか?東日本大震災の時、主要な被災地域である岩手県、宮城県、福島県では津波被害などに伴い膨大な瓦礫が発生した。そしてご存じのように同震災では、東京電力・福島第一原発事故が起こり、同原発から漏れ出た放射性物質が風によって広範な地域に降り落ちた。こうした放射性物質の量は、地域によって濃淡があり、岩手県や宮城県の大部分の自治体では大きな問題になるほどではなかった。しかし、一部の人達は被災地で発生した瓦礫の多くもこうした放射性物質で濃厚に汚染されたと主張し、一部の人が「放射能瓦礫」と呼んだのである。この件は被災により廃棄物処理能力が大きく低下した被災自治体の支援策として、他の地域でその一部を焼却処分する広域瓦礫処理策が浮上すると、問題として顕在化した。東京都をはじめ実際に瓦礫処理を受け入れた自治体もあったが、一部では反対派が瓦礫を運搬する車両の通行をブロックするなどの妨害行為も発生した。被災自治体出身者の私はこの件に怒りと悔しさを覚え、当時一部の反対派とXでやり合ったことがある。あれから10年以上が過ぎたが、この間、瓦礫処理を請け負った被災地外の自治体で何か問題が起きたであろうか? 答えは否だ。最近、当時やり合った複数のXアカウントを覗いてみたが、あの時のことなぞどこ吹く風である。しかも、その一部は今コスタイベ批判を行っている。率直に言って、呆れるほかない。彼らはあの当時、私が感じた怒りと悔しさ、そして今回の小林氏が訴えた精神的打撃を受けた関係者のことを何と思っているのだろう?そして野次馬感覚とまでは言えないものの、コスタイベについてシェディングなる現象を訴え、それを証明するデータがないと主張する医師の一部では、自院のHPでほかのワクチン接種は行っていることがわかるケースもある。既存のワクチンでは承認に際し、彼らが主張するようなシェディングが起きないことを証明するデータ提出を製薬企業は行っていないし、規制当局もそのようなデータは求めていない。にもかかわらず、コスタイベのみにそれを証明せよなどと言うのは、もはや“信念”ではなく狂気である。言葉は悪いのを承知で言うならば、今回の件でコスタイベの危険性を声高に主張する面々は、私には“知ったかぶりの自己顕示”にしか映らないのである。

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コロナ罹患後症状、研究指標をアップデート/JAMA

 米国・スタンフォード大学のLinda N. Geng氏らは、米国国立衛生研究所(NIH)によるRECOVER(Researching COVID to Enhance Recovery)Initiativeの一環であるRECOVER-Adult studyにおいて、追加の参加者のデータを含めた最新解析を行い、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染後の持続的な症状であるLong COVID(LC)の研究指標を報告した。著者は、「LCの理解が進むに従って指標の継続的な改善が必要で、LC研究指標2023年版を更新した2024年版は、研究者がLCとその症状サブタイプを分類するのに役立つ」とまとめている。JAMA誌オンライン版2024年12月18日号掲載の報告。追加参加者を含めRECOVER成人コホートのデータを解析 研究グループは、米国およびプエルトリコの83施設において、SARS-CoV-2感染歴の有無にかかわらず18歳以上の成人を登録し、90日ごとに症状について調査した。 感染歴がある場合は、初回SARS-CoV-2感染から4.5ヵ月後以降に少なくとも1回来院しており、再感染から30日以内ではない者とした。 研究の対象とした来院期間は、2021年10月~2024年3月であった。 主要アウトカムはLCの有無と参加者が報告した52の症状で、LASSO回帰を用いた重み付けロジスティック回帰分析により、LCを特定する症状と各症状のスコアを算出した。2024年版では11症状で評価 解析対象は1万3,647例(SARS-CoV-2感染が確認されている人1万1,743例、感染歴が確認されていない人1,904例)で、年齢中央値は45歳(四分位範囲:34~69)、73%が女性であった。 LC研究指標2024年版では、2023年版で特定された12症状から3つの症状(性的欲求・性機能の変化、消化管症状、異常行動)が除外され、2つの症状(息切れ、いびきまたは睡眠時無呼吸)が追加された。その結果、LC研究指標は労作後倦怠感、疲労、ブレインフォグ、浮動性めまい、動悸、嗅覚・味覚の喪失または変化、口渇、慢性咳嗽、胸痛、息切れ、いびきまたは睡眠時無呼吸の11症状となった。 また、重度のLC症状を有する患者を特定するためのスコアの閾値は11点以上であった。 LC研究指標2024年版では、既知のSARS-CoV-2感染歴がある参加者の20%、既知の感染歴がない参加者の4%が「LCの可能性が高い」と分類され(2023年版ではそれぞれ21%、5%)、既知の感染歴がある参加者の39%が、2024年版で新たに追加されたカテゴリーである「LCの可能性あり」(スコアが1以上11未満)と分類された。 クラスター分析の結果、生活の質(QOL)を追跡するLC症状サブタイプとして、嗅覚または味覚の変化(サブタイプ1)、慢性咳嗽(サブタイプ2)、ブレインフォグ(サブタイプ3)、動悸(サブタイプ4)、労作後倦怠感・めまい・消化器症状(サブタイプ5)の5つが特定された。その中で、多系統症状で負荷の大きいサブタイプ5は、他のサブタイプよりも、QOL、身体の健康、日常機能が悪いと報告する頻度が高かった。

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急性呼吸不全、高流量経鼻酸素vs.非侵襲的人工換気/JAMA

 急性呼吸不全患者への呼吸支持療法として、高流量経鼻酸素療法(HFNO)は非侵襲的人工換気(NIV)に対して非劣性なのか。ブラジル・Hcor Research InstituteのAlexandre Biasi CavalcantiらRENOVATE Investigators and the BRICNet Authorsは、急性呼吸不全患者を原因で5群に層別化して、無作為化非劣性検証試験「RENOVATE試験」を行い、4群(免疫不全の低酸素血症、呼吸性アシドーシスを来したCOPD増悪、急性心原性肺水腫[ACPE]、低酸素血症を伴うCOVID-19)について非劣性が示されたことを報告した。ただし、サンプルサイズや感度分析の観点から結果は限定的であるとしている。急性呼吸不全患者の呼吸支持療法として、HFNOとNIVはいずれも一般的に用いられている。JAMA誌オンライン版2024年12月10日号掲載の報告。ブラジルの33病院で実施、5群で7日以内の気管内挿管または死亡を評価 試験は2019年11月~2023年11月にブラジルの33病院で行われ、急性呼吸不全を呈し入院した18歳以上の患者を5群に層別化し、7日時点の気管内挿管または死亡の発生率について、HFNOのNIVに対する非劣性を検証した。5群の内訳は、(1)非免疫不全の低酸素血症群、(2)免疫不全の低酸素血症群、(3)呼吸性アシドーシスを来したCOPD増悪群、(4)ACPE群、(5)低酸素血症を伴うCOVID-19群(2023年6月26日に試験プロトコールに追加)であった。最終フォローアップは2024年4月26日。 主要アウトカムは、7日以内の気管内挿管または死亡で、患者群間の動的利用(dynamic borrowing)法を用いた階層ベイズモデルで評価した。非劣性は、オッズ比(OR)が1.55未満となる事後確率(NPP)が0.992以上と定義された。低酸素血症を伴うCOVID-19群でHFNOの非劣性を検証 1,800例が登録・無作為化され、1,766例(平均年齢64[SD 17]歳、女性707例[40%])が試験を完了した(HFNO群883例、NIV群883例)。 主要アウトカムの発生率は、HFNO群39%(344/883例)、NIV群38%(336/883例)であった。 非免疫不全の低酸素血症群では、主要アウトカムの発生率はHFNO群57.1%(16/28例)、NIV群36.4%(8/22例)であった。同患者の登録は無益性により途中で中止され、最終ORは1.07(95%信用区間[CrI]:0.81~1.39)、非劣性のNPPは0.989であった。 免疫不全の低酸素血症群では、主要アウトカムの発生率はHFNO群32.5%(81/249例)、NIV群33.1%(78/236例)であった(OR:1.02[95%CrI:0.81~1.26]、NPP:0.999)。 ACPE群では、主要アウトカムの発生率はHFNO群10.3%(14/136例)、NIV群21.3%(29/136例)であった(OR:0.97[95%CrI:0.73~1.23]、NPP:0.997)。 低酸素血症を伴うCOVID-19群では、主要アウトカムの発生率はHFNO群51.3%(223/435例)、NIV群47.0%(210/447例)であった(OR:1.13[95%CrI:0.94~1.38]、NPP:0.997)。 呼吸性アシドーシスを来したCOPD増悪群では、主要アウトカムの発生率はHFNO群28.6%(10/35例)、NIV群26.2%(11/42例)であった(OR:1.05[95%CrI:0.79~1.36]、NPP:0.992)。 しかしながら、5群にわたる動的利用法を用いない事後解析では、呼吸性アシドーシスを来したCOPD増悪群、免疫不全の低酸素血症群、ACPE群でいくつかの質的に異なる結果が示された。著者は、「これら患者群についてはさらなる試験が必要」としている。 重篤な有害事象の発現率は、HFNO群(9.4%)とNIV群(9.9%)で同程度であった。

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第223回 押さえておきたい令和7年度スタートの「かかりつけ医機能報告制度」と「新たな地域医療構想」

毎週、さまざまな医療ニュースをお届けしていますが、今回は、これまでの厚生労働省の政策から、今後の医療のあり方などを考えてみたいと思います。2025年は、団塊の世代が全員75歳以上となり、全人口の18%が後期高齢者となる超高齢社会の節目となる年です。15年前の2010年には、死亡者数は119.7万人でしたが、高齢化の進展により死亡者数はさらに増加すると予想されていました(2023年には157.6万人)。全日本病院協会の「病院のあり方に関する報告書」に目を通すと、当時から人口減少・少子高齢社会の急速な進展で、生産年齢人口、労働力人口の減少で看護師や介護職員の不足が予見されていました。このため、政府は平成26年(2014年)に医療介護総合確保促進法を制定し、都道府県において、病床の機能ごとの将来の必要量など、地域の医療提供体制について、二次医療圏ごとに将来のあるべき姿として「地域医療構想」を策定して、バランスのとれた医療機能の分化・連携を進めてきました。成功したかのように思えた政府の計画人口動態などから、「医療需要は2025年がピークとなり、その後は減少傾向、介護需要は2035年がピーク」と導き出されましたが、東京や大阪など大都市圏では介護需要のピークが2040年になるなど地域差も見出されました。さらに入院医療においては「肺炎、骨折、脳卒中・虚血性心疾患、がん、糖尿病」が、外来医療では「循環器系疾患、筋骨格系疾患、神経系疾患、眼および付属器疾患」で患者数の増加が見込まれました。「病院のあり方に関する報告書(2015-2016年版)」では、2015年当時の病床数は125.1万床でしたが、「2025年の時点で152万床程度の病床が必要」との予測から、「病院のベッド数の不足などから死に場所に困る者が年間50万人にも上るのでは」と懸念されていました(当時は看取りの場が病院・診療所が約8割と大半を占めていたため)。このため、厚労省は平成26年(2014年)に医療法を改正し、2025年に向けて地域医療構想の実現を、各都道府県に働きかけてきました。毎年、病床を有する医療機関に対して、病床機能報告を行わせて、医療機関は病棟単位で現在の病床機能と今後の方向性などの報告を行い、それを地域の実情に応じて病床機能の転換、再編などについて協議をしてきました。あわせて、一般病床において医療資源投入量の少ない患者の在宅医療や介護施設への移行などを通じて、2025年に119.1万床となることを目標としていました。結果として、「病床機能報告上の病床数について、2015年から2023年にかけて、125.1万床から119.2万床になり、2025年の必要病床数である119.1万床と同程度の水準」となり、「2025年の必要病床数の方向性に沿って、全体として地域医療構想の進捗が認められる」とほぼ成功したと判断しています。一方、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染爆発で明らかになったように、感染患者の急増によって、救急医療がパンクしたのは事実ですが、政府がこのときに行った規制改革でICTなどを用いた遠隔診療の普及、ナーシングホームでの在宅医による看取りなどが急増したのも事実です。このため、COVID-19が落ち着いた現在では、むしろ患者不足によって病床稼働率が低下し、多くの医療機関や介護施設が赤字に苦しんでいます。病院や介護施設では、患者や利用者が減少しても、看護師やリハビリ職員などの専門職を簡単には解雇できないため、人件費の負担が大きくなり、経営状況の悪化に拍車をかけているのです。労働力不足の中での医療の未来図今後は、人口構造がさらに変化して後期高齢者が増え、労働者が不足する中で、医療や介護の担い手に対するニーズは増え続けるのにかかわらず、弾力的な対応ができません。COVID-19の流行が落ち着いた現在、厚労省は2040年に向けて新たな地域医療構想を策定するため、検討会での議論を経て、12月18日に「新たな地域医療構想に関するとりまとめ」が公表されました。2024年の骨太の方針に沿った形で「2040年頃を見据えて、医療・介護の複合ニーズを抱える85歳以上人口の増大や現役世代の減少等に対応できるよう、地域医療構想の対象範囲について、かかりつけ医機能や在宅医療、医療・介護連携、人材確保等を含めた地域の医療提供体制全体に拡大するとともに、病床機能の分化・連携に加えて、医療機関機能の明確化、都道府県の責務・権限や市町村の役割、財政支援の在り方等について、法制上の措置を含めて検討を行い、2024年末までに結論を得る」とされています。具体的には、さらなる医療機関の機能分化や連携強化、在宅医療の推進、ICTの活用のほか、アドバンス・ケア・プランニング(ACP)取組みの推進が含まれます。とくにACPについては2024年の診療報酬改定で、入院料の通則に人生の最終段階における意思決定支援と身体的拘束の最小化の取り組みを要件化しています。通則に盛り込まれたということは、実施しなければ、入院料の算定は認めないということであり、多くの入院医療機関は対応が必須となります。かかりつけ医機能報告制度の趣旨と狙いこの「新たな地域医療構想」に向けて用いられるのが、「かかりつけ医機能報告制度」です。これについては、12月22日に開催された「日本在宅療養支援病院連絡協議会」の第2回研究会(2024年12月22日)で、厚労省の高宮 裕介氏(大臣官房参事官救急・周産期・災害医療等、医療提供体制改革担当)の基調講演「かかりつけ医機能報告制度について」がYouTubeで公開されています。解説を聞きましたが、非常に詳細でわかりやすかったので視聴をお勧めします。この中でわかったことは、かかりつけ医機能の報告自体が目的ではなく、報告の結果を基に地域の協議の場で、医療関係者や自治体などともに在宅医療や時間外対応などの対応のほか、介護施設との連携などが図られることが理解できました。現在、在宅医療を行っている在宅医療機関としては、在宅療養支援診療所と在宅療養支援病院がありますが、最近は後者が増えており2,021施設になりました。日本全国で病院数は8,097施設なので、約25%は在宅医療を実施しており、今後も在宅医療ニーズが増えるのに応じて、急性期病院であっても中小規模の病院がさらに在宅医療に参入することが予想されます。日本在宅療養支援病院連絡協議会は、病院勤務医には馴染みがない訪問診療について、会員向けに在宅医療塾のほか、訪問栄養食事指導の講習会などを行うとのことです。ぜひご参考にされてください。2024年もご愛読ありがとうございました。また、2025年もよろしくお願いします。参考1)新たな地域医療構想に関するとりまとめ(厚労省)2)かかりつけ医機能報告制度(同)3)かかりつけ医機能報告制度について研修・説明会(同)4)地域医療構想に関する主な経緯や都道府県の責務の明確化等に係る取組・支援等(同)5)病院のあり方に関する報告書[2015-2016年版](全日病)6)日本在宅療養支援病院連絡協議会

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第243回 レプリコンワクチンのデマが現場にも忍び寄る?あるアンケートで明らかに

通称レプリコンワクチンと呼ばれるMeiji Seikaファルマの新型コロナウイルス感染症に対する次世代mRNAワクチン「コスタイベ」に関して、同社は12月25日、立憲民主党の衆議院議員・原口 一博氏を提訴する方針を明らかにした。この件についての詳細は、後日に改めて述べるが、近年SNS上では一部のワクチン懐疑論者が否定的な情報を拡散しており、その影響が実際に現れている別の事例を目にした。福祉施設入所者の接種状況とその理由12月10日に開催された東京都医師会の定例会見で、東京都老人保健施設協会が行ったインフルエンザワクチンと新型コロナワクチンの接種状況に関する緊急調査の結果1)が報告された。調査は都内の介護老人保健施設184施設を対象に行われ、11月28日に1回目、12月9日に2回目が実施され、回答率はそれぞれ49.5%、46.3%だった。それによると、入所者を対象にインフルエンザワクチンを接種した(予定も含む)施設は99%にのぼったのに対し、新型コロナワクチンに関しては81%に留まった。職員を対象とすると、インフルエンザワクチンは82%、新型コロナワクチンは40%とさらに大きな差が開いた。また、2回目の調査では入所者や職員のワクチン接種希望割合を聴取しており、インフルエンザワクチンでは、入所者の希望割合が「7割以上」だった施設は最多の49%、次いで「6割」が25%なのに対し、新型コロナワクチンでは最多が「3割未満」の31%、次いで「3割」が23%だった。ここでもインフルエンザワクチンに比べ、新型コロナワクチンでは明らかに接種に消極的な実態が浮かび上がった。入所者へ新型コロナワクチン接種を実施しない施設に、施設として実施しない理由を尋ねた結果、「体制不足」が35%、「安全性が心配」が15%、「その他」が50%だった。理由の自由記述では、「ワクチン費用が高い、補助金がない」「施設長(医師)の判断」「家族より心配との声」「コスト面と希望者が少ない」「インフルエンザ接種を優先、コロナは1月以降の実施予定」「独立型老健施設での接種は実費になる」「区からの接種券が使用できないので、家族に他の医療機関で接種してもらっている」「外出した際に病院・クリニックで接種してもらっている」「入所前に接種している」などが挙げられた。自由記述を概観すると、施設側としてはやはり体制の問題、とりわけ自治体発行の接種券が施設での集団接種の場合は使いにくいという事情が大きく影響しているとみられる。同時に見逃せないのは、「家族より心配との声」に代表されるような安全性への過度な不安が15%もあることだ。一方、新型コロナワクチン接種を実施する施設で、入所者が接種を希望しない理由を尋ねた結果、「安全性が心配」が33%、「費用負担」が30%、「その他」が37%と、安全性の問題がやや多かった。これに関連する自由記述は「家族の意向」「以前接種後(に)体調を悪くした」「『何回も打ったからいい』という方もいて以前より危機感が薄くなった様子」「使用ワクチンを『コスタイベ』と案内したところネット情報等で不安視し見合わせた家族が多数あり」「必要性を感じない」「罹患した方や、3~4回接種後から実施していない方などが多い印象」「効果が懐疑的という声あり」「自治体とのやり取りの手間」「外部と接触がないので、もう必要ないと思う」「施設で実施すると実費になり高額になるため」「流行していないから」だった。危機感が薄れているとともに、安全性について懐疑的あるいは恐怖を感じる人が少なくない印象だ。しかも、ここでまさに明らかになったように「コスタイベ」を不安視する家族の声で接種を希望しない入所者がいる現実は、外から眺めている私たちが思っていた以上に深刻と言えそうだ。また、職員に対するワクチン接種実施状況については、インフルエンザワクチンでは「原則として全員」が51%、「希望者のみ」が47%、「実施しない」が2%に対し、新型コロナワクチンでは「実施しない」が52%、「希望者のみ」が48%と、やはりここでもインフルエンザワクチンと新型コロナワクチンの差が明確になっている。新型コロナワクチン接種に対する施設側の意見、要望に関する自由記述もあり、その内容を以下にすべて列挙する。「コロナワクチンは無料と有料があり混乱」「できれば高齢者は無料にしてほしい」「65歳未満のコロナワクチンの費用が高すぎる」「65歳未満のコロナワクチンが今回から全額自己負担となり、高額であることから見合わせる職員が大部分。インフルエンザは年齢問わず自己負担額が低いため施設が職員へワクチン接種をすすめ易い」「各市町村によって手続きや費用が違って事務が煩雑、国に一本化してほしい」「コロナワクチンは高額のため希望しない職員が多い」「5類となり、施設負担(手技含む)特に経済的な問題が発生しており、今後、施設実施できない方向」「自治体に確認する手間がかかる為スムーズにいかない」「集団生活の場であり、より多くの方が接種することが望ましいかと思うが、やはり希望しない方に強制する必要もないと考えている」「施設職員に対してコロナワクチンの助成をして欲しい」「2種混合ワクチンがあると良い。高齢者施設では医療関連の手間をかけられない」このように見てみると、施設側やその職員が新型コロナワクチン接種に積極的とは言えない現実については、定期接種対象の高齢者でも一部費用負担が発生してこれが自治体によって異なること、自立型老健施設が主体の集団接種は施設側に費用負担が発生すること、65歳未満で基礎疾患がない職員などの場合は1回1万5,000円前後の高額な接種費用が全額自己負担など、制度や経済的な問題が主な理由と言える。ただ、接種対象の高齢者側が接種を希望しない理由では、新型コロナワクチンの安全性に関する、有体に言えばデマの“汚染”がすでに見過ごせない程度、浸透していることもわかる。もっとも一般論として考えると(アンコンシャスバイアスかもしれないが)、老健に入所している高齢者でSNS上のデマを直接目にしている人は少数派ではないだろうか。実際、ある程度限られた情報ではあるものの、自由記述を見ると安全性への懸念の表明元は入所者からよりも家族からのほうが多そうである。このようにしてみると、コスタイベを含む新型コロナのmRNAワクチンに関するデマは、もはやエコーチェンバーの枠を超え、現場にも迫りつつあるのだと改めて実感している。ちなみに今回、私の連載のご意見・ご質問欄を通じて介護職の方から「レプリコンワクチンはファイザー、モデルナのmRNAワクチンと同程度の安全性をもつと考えていいのでしょうか?」との問い合わせを受けたが、これに対する私の答えは「国内第III相試験の結果を見る限り、同程度と言えます。私は次回の新型コロナワクチン接種ではコスタイベを選択するつもりです」となる。参考1)東京都医師会定期記者会見(令和6年12月10日):令和6年秋冬の新型コロナワクチン定期接種の状況-東京都老人保健施設協会緊急調査結果から-

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診療所のマイナ保険証利用率は10%未満の施設が約7割/日医

 日本医師会(会長:松本 吉郎氏[松本皮膚科形成外科医院 理事長・院長])は、定例会見を開催し、年末年始の感染症対策ならびに診療所における医療DXに係る緊急調査の結果について説明を行った。 初めに松本氏が、会員医療機関の経営逼迫に対し政府などへの要望、医師偏在対策への提案など、この1年の医師会のさまざまな事業を振り返った。続いて「年末年始の感染症対策等について」として副会長の釜萢 敏氏(小泉小児科医院 院長)が、この数週間で急増しているインフルエンザ流行への対策、同時に新型コロナウイルス感染症への対応について説明した。とくにインフルエンザの迅速診断キットが外来などの現場で不足していることに触れ、医師会として厚生労働省に要望を出していること、臨床現場では特定のメーカーのキットだけでなく、融通できるキットを使用して診断を行ってもらいたいと語った。また、予防対策として「『マスク着用、手指衛生とうがい、換気の実施』は、従来どおり行ってもらいたい」と述べた。診療所のDXのカギは人材育成と政府の支援 「診療所における医療DXに係る緊急調査の結果」について、担当常任理事の長島 公之氏(長島整形外科院長)が概要を説明した。 冒頭、先般の電子処方箋の不具合による発行停止に触れ、「健康被害発生を防ぐために万全を期してほしい。不具合の解消までの再開延期は妥当だが、今後こうした事態が発生しないようにお願いしたい。そのために医師会も支援・協力をする」と語った。 次に今回行われた医療DXに係る緊急調査の結果の内容について説明した。 本アンケートは、医療DX推進が拙速に進められると医療提供体制に混乱や支障が生じるという懸念、医療DX推進体制整備加算の電子処方箋導入に関する施設基準の経過措置が令和7(2025)年3月31日までであること、診療所での医療DXの取り組みについての調査は今まで行われていないことから、実態や負担感について緊急調査を実施したもの。 調査は、2024年9月20日~10月4日まで無作為に抽出した医師会員の診療所管理者(院長)1万人にWebで行い、うち4,454人(回答率44.5%)から回答を得た。回答年齢階層はほぼ均等で、内科、眼科、小児科の順で回答が多かった。1)マイナ保険証について マイナ保険証の利用率は低迷。調査では、利用率(レセプト件数ベース)が10%未満の施設が全体の約7割を占めた。また、医療DX推進体制整備加算の令和7(2025)年1月から予定されている施設基準(10%以上)を満たせない施設が多かった。傾向として院長の年齢が高い施設や小児科(患児のカードが作成されていない)などで利用率がさらに低い傾向だった。2)電子処方箋について 電子処方箋を導入済みで運用中は4.6%、導入済みだが未運用が9.9%で、導入率は計14.5%で低迷。医療DX推進体制整備加算の経過措置(~令和7年3月末)後の施設基準を満たす施設はごく一部に止まっていた。未運用の理由は「地域の薬局や医療機関が未運用である」が多く、課題として地域が一体となって推進することが求められた。また、電子処方箋を導入していない理由は、「システム費用面の負担が大きい」が58.3%、「導入のメリットを感じない」が52.5%、「ICTに詳しい人材の不足」が40.4%だった。3)電子カルテ・電子カルテ情報共有サービスについて 電子カルテの使用割合は62.6%であった。院長の年齢階層が高いほど使用率が下がるが、70歳以上の階層でも41.4%が使用していた。これは、回答者がICTに慣れた医師が多い可能性もあり、偏りには留意が必要。また、電子カルテ情報共有サービスについては、診療中にネットワーク上の患者情報をみることは難しいという意見が約4割を占めた。有事の際の利用など認識度は低く、現時点では内容が十分に周知されていない状況だった。4)医療DXに係る課題について(1)ICT人材不足と医師の作業負担 ICTの知識がある人材が不足していると回答した施設は9割強にのぼった。64.1%の施設では医師が診療のかたわらにシステム対応を行っており、システム対応の作業負担は大きいことがうかがえた。(2)システム費用負担 電子カルテとレセコンを合わせると高額なシステム費用を負担している施設が多く、95%の施設はシステム費用の負担を感じていた。国や自治体からの補助金や診療報酬上の十分な手当がないと、医療DXの推進は困難な状況だった。5)まとめ・診療所は規模が小さく、ICT対応に係る負担感が大きい。ICT人材は不足し、システム事業者に払う費用負担は重荷となっている。・医療DXの推進には、国の全面的な支援が必要で、現場の実情に即した診療報酬上の手当てと、補助金の検討が求められる。その際、単純な平均値だけではなく分布を踏まえて対応すべきである。・ステークホールダーが多い中、効果的な情報提供が不可欠であり、システム事業者対応に伴う作業負担の軽減、高齢の医師などへの支援も求められる。・医療DXはわが国の患者・国民により良い医療を提供するためのきわめて重要な取り組みである。災害時に患者の診療情報を閲覧できるなど、わかりやすい説明を現場に提供し、急がず、丁寧に進めることが肝要である。・医師会においても高齢の医師を含む地域の医師・医療機関に寄り添い、情報提供と支援を今後も行っていく。 以上の内容を踏まえ長島氏は、医療のDX化は必要であり、推進を認めつつも、政府による義務化や強制には難色を示し、「医療機関も患者もDX化で取りこぼしのないように援助・支援を行うべきである。さまざまな診療報酬の加算も期限を設けるのではなく、実情を考慮してもらいたい」と語り、説明を終えた。

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