サイト内検索|page:8

検索結果 合計:856件 表示位置:141 - 160

141.

メトロニダゾール処方の際の5つの副作用【1分間で学べる感染症】第23回

画像を拡大するTake home messageメトロニダゾールを使用する際には、神経症状を含む5つの重要な副作用を覚えておこう。メトロニダゾールは、嫌気性菌や原虫感染症に対して広く使用される抗菌薬です。しかしその使用に伴っては、いくつかの重大な副作用が報告されています。とくに、長期間の使用に関連する神経学的副作用には注意が必要です。今回は、メトロニダゾールの代表的な5つの副作用について解説します。1. 消化器症状メトロニダゾールの副作用として一般的なものに、消化器症状があります。とくに悪心や嘔気が約12%の患者に発生します。2. 味覚変化(金属味)メトロニダゾールの服用により、口の中で金属のような味覚異常を来すことがあります。これは約15%にみられるもので、食欲低下につながる患者さんも少なくありません。3. 脳症メトロニダゾールは中枢神経系に影響を及ぼすことがあり、とくに長期使用や高用量投与において脳症を引き起こすことがあります。典型的な症状には、運動失調、構音障害、めまい、混乱などが含まれます。MRI検査では、小脳歯状核にT2高信号が認められることがあります。メトロニダゾール使用中に小脳症状を来した場合は、メトロニダゾール脳症を疑う必要があります。4. 末梢神経障害メトロニダゾールの長期使用により、末梢神経障害を引き起こすことがあります。手足のしびれが最も頻度が高い神経学的症状です。多くの場合、薬剤の中止により症状は改善しますが、不可逆的なケースも報告されており、注意が必要です。5. ジスルフィラム様反応メトロニダゾールはアルコールと併用すると、ジスルフィラム様反応(顔面紅潮、頭痛、悪心、嘔吐など)を引き起こすことがあります。メトロニダゾール服用中はアルコール摂取を避けるよう指導することが重要です。以上、メトロニダゾールは一般的に安全に使用される抗菌薬ですが、上記の5つの副作用を念頭に置いておく必要があります。長期的な使用による影響はもちろんですが、なかには短期使用でも脳症や末梢神経障害を来す報告もあるため、注意が必要です。1)Daneman N, et al. Clin Infect Dis. 2021;72:2095-2100.2)Matsuo T, et al. Int J Infect Dis. 2019;89:112-115.3)Sobel R, et al. Expert Opin Pharmacother. 2015;16:1109-1115.4)Karrar HR, et al. J Pharma Res Int. 2021;33:307-317.

142.

「H. pylori感染の診断と治療のガイドライン」改訂のポイント/日本胃癌学会

 2024年10月に「H. pylori感染の診断と治療のガイドライン」(日本ヘリコバクター学会ガイドライン作成委員会 編)が8年ぶりに改訂された。2000年の初版から4回の改訂を重ね、2024年版は第5版となる。2009年の改訂版ではH. pylori感染症の疾患概念が提起され、慢性胃炎患者に対する除菌が保険適用される契機となった。今回のH. pylori感染の診断と治療のガイドライン2024年版は初めてMindsのガイドライン作成マニュアルに準拠して作成され、「1)総論、2)診断、3)治療、4)胃がん予防―成人、5)胃がん予防―未成年」という章立てで、CQ(クリニカル・クエスチョン)、BQ(バックグラウンド・クエスチョン)、FRQ(フューチャー・リサーチ・クエスチョン)から構成されている。ガイドラインでペニシリンアレルギーなどの特殊な除菌治療の流れを明確に 感染診断と除菌治療に関わる医師に向けた「H. pylori感染の診断と治療のガイドライン」の改訂ポイントとしては、「3)治療」の章の冒頭にフローチャートが追加され、通常の1~3次治療の流れとペニシリンアレルギーなどの特殊な除菌治療の流れが明確になった。また、 これまで標準的な1次除菌はプロトンポンプ阻害薬(PPI)もしくはカリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB)にβ-ラクタム系抗菌薬アモキシシリンとクラリスロマイシンを加えた3剤併用療法だったが、 これまでにPPIベースの3剤併用療法に比してP-CABベースの3剤併用療法の除菌率が高いというエビデンスが集積したことを踏まえ、 本ガイドラインではP-CABであるボノプラザンを軸にした3剤併用療法が推奨となっている。 胃がん診療医や内科医が患者から聞かれることの多いH. pylori検査と胃がん予防効果の関連については「H. pylori感染の診断と治療のガイドライン」にどのように記載されているか。2025年3月12~14日に行われた第97回日本胃癌学会ではヘリコバクター学会との合同シンポジウムが行われ、本ガイドライン作成委員会委員長を務めた青森県総合健診センター所長の下山 克氏が胃がん診療医向けに「H. pylori感染の診断と治療のガイドライン2024改訂版の『胃がん予防』」と題した発表を行い、「4)胃がん予防―成人」の項目を中心に改訂点やポイントを紹介した。CQ3-1 無症候一般住民への血清抗H. pylori抗体検査and(/or)ペプシノゲン(PG)検査は、胃がん予防に役立つか?A. 無症候一般住民への血清H. pylori抗体検査andペプシノゲン(PG)検査によるリスク層別化検査は胃がん予防効果が期待されるが、エビデンス不足のため現時点での推奨提示は困難である。――エビデンスが不十分な場合、CQ自体をなくすことが多いが、重要な設問であるためにあえてCQとして残し、現状を解説することとした。実際、韓国のガイドラインでは同様の内容がガイドラインに掲載されなかった。H. pylori感染未検査者を対象とし、血清H. pylori抗体検査と除菌の胃がん死亡抑制効果を長期にみた研究は少なく、現状では推奨は出せないという判断となった。CQ3-2 血清抗H. pylori抗体検査and(/orペプシノゲン)検査は胃がん予防のため毎年必要か?A. 胃がん予防のために血清抗H. pylori抗体検査およびペプシノゲン(PG)検査を毎年行うことは推奨しない。【推奨の強さ:強い、エビデンスの確実性:C】――職域の健診、人間ドックで毎年検査を受けているケースがしばしばあるが、多くの場合、H. pylori感染の確認・除菌が伴っておらず、正しい運用を徹底させることが基本となる。複数回測定することが胃がん予防につながるというエビデンスはなく、コスト面からも毎年の検査のような、繰り返すだけの実施は推奨されない。 また、血清抗体検査に関する注意点としては、測定キットの種類に違いがあることだ。少し前まではEIA法(Eプレート)が多く使われていたが、現在ではコストや利便性に勝るラテックス法が主流となっている。問題は測定法により抗体価の分布が異なることで、ラテックス法ではEプレートに比べてカットオフ以上の中に未感染者、既感染者が相当数含まれる。除菌後6年間の検査陽性率の推移を見ても、ラテックス法では6年後でも4割近くが陽性となるが、EIA法ではわずか2%程度だ。胃がんリスク検診においてはEIA法では分類基準となる抗体価として「陰性高値」を設定しているが、ラテックス法で陰性高値を設定することは誤りであることに留意してほしい。ガイドラインにPPIやP-CABを使用している場合の感染診断・除菌判定の考え方CQ3-3 一般住民への胃がん検診(X線、内視鏡検査)は胃がん診断だけでなく、一次予防に役立つか?A. 胃がん検診はH. pylori感染診断としても有用であり、一次予防効果が期待できるが、今後の検証が必要であり、現時点での推奨提示は困難である。――胃がん検診は、世界的に日本(X線、内視鏡検査)と韓国(内視鏡)でのみ行われている。胃がん検診が1次予防の役割も果たすのは、H. pylori感染胃炎患者を発見し、除菌治療につなげることである。H. pylori感染胃炎患者のほとんどが無症状で、H. pyloriの検査を受ける機会が少ないことから、健康な人が受ける胃がん検診とその画像は、感染の有無を知る貴重な機会となる。日本消化器がん検診学会では「胃X線検診のための読影判定区分」を公開しており、精検不要症例でもH. pylori感染が疑われる場合は「カテゴリー2」として区分し、必要に応じてH. pylori感染検査や除菌治療の情報提供などを行うよう推奨している1)。このように胃がん検診は一次予防効果が期待されるものの、現時点で胃がん死亡を減少させるというエビデンスは確立しておらず、今後の検証が必要な分野である。BQ1-4 内視鏡画像はH. pylori現感染の診断に有用か?A. 内視鏡画像によりH. pylori感染状態を分類できるため、現感染の診断に有用である。BQ1-5 胃X線画像はH. pylori現感染の診断に有用か?A. 胃X線画像はH. pylori現感染の診断に有用である。ただし、既感染胃の増加や、自己免疫性胃炎、PPI関連胃症の混在の可能性を考慮する必要がある。――H. pylori抗体検査の前提となる厚生労働省の指針では、胃がん検診の対象となるのは50歳以上(40歳以上も可)とされているにもかかわらず、一部の市町村や、少なくない企業健診では25~35歳から実施されている。胃がん罹患率が低い世代では、被曝をはじめとする検査のデメリットがメリットを上回ってしまう可能性がある。少なくとも胃がん検診がH. pylori感染の発見、除菌につながるものでなければならない。さらに内視鏡検査でH. pylori感染が診断されない、という問題もある。内視鏡検査で胃粘膜の状態を評価しない、要精査となった場合の内視鏡検査でもチェックされた部位のみを観察して胃粘膜を評価しない、といった意識での検査ではH. pylori感染が見落とされ、長い年月を経てからようやく診断されることもある。この点については内視鏡医の意識改革も期待したい。いずれにせよ、H. pylori感染の診断と除菌による慢性胃炎の治療と胃がんの一次予防が基本となる。BQ1-6 PPIやP-CABを使用している場合に感染診断・除菌判定は可能か?A. 尿素呼気試験(UBT)、迅速ウレアーゼ試験(RUT)、血清ペプシノゲン(PG)濃度はPPI、P-CABの影響を受けるので検査の2週間前から休薬して実施する。その他の診断法はPPI内服のまま実施できる。――以前はPPIを使用しているとほとんどの検査ができない状況だったが、その根拠となっていたエビデンスが古いもので、国内の現状に当てはまらない部分があった。PPIの影響を受けるエビデンスがある検査を挙げ、それ以外は実施可能であることを明記した。学会からの働きかけで、昨年10月には厚労省からガイドラインで実施可能とする検査についてはPPI内服中も検査の費用を算定できる旨の通達も出ている。 下山氏は「新ガイドラインでは、抗体検査に関するエビデンスなどの一般的な事項から、PPIと検査の関連など、新たなエビデンスを反映した項目までを網羅した。近年注目されているH. pylori以外のHelicobacteriについても触れている。ぜひガイドラインで最新の情報をキャッチアップしてほしい」とまとめた。

143.

再発を繰り返す女性の膀胱炎【日常診療アップグレード】第26回

再発を繰り返す女性の膀胱炎問題35歳女性が繰り返す頻尿と残尿感、排尿時痛のため受診した。抗菌薬を飲むとすぐにこれらの症状は改善する。2年前から膀胱炎様症状がよく起こるようになり、昨年は3回このような症状があった。妊娠はしていない。診察時には症状はない。身体所見はとくに異常を認めない。ニューキノロン系抗菌薬を7日間処方し、膀胱炎症状が出現したらすぐに内服するよう指導した。

144.

臨床に即した『MRSA感染症の診療ガイドライン2024』、主な改訂点は?

 2013年に『MRSA感染症の治療ガイドライン』第1版が公表され、前回の2019年版から4年ぶり、4回目の改訂となる2024年版では、『MRSA感染症の診療ガイドライン』に名称が変更された1)。国内の医療機関におけるMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)の検出率は以前より低下してきているが、依然としてMRSAは多剤耐性菌のなかで最も遭遇する頻度の高い菌種であり、近年では従来の院内感染型から市中感染型のMRSA感染症が優位となってきている。そのため、個々の病態把握や、検査や診断、抗MRSA薬の投与判断と最適な投与方法を含め、適切な診療を行うことの重要性が増している。本ガイドライン作成委員長の光武 耕太郎氏(埼玉医科大学国際医療センター感染症科・感染制御科 教授)が2024年の第98回日本感染症学会学術講演会 第72回日本化学療法学会総会 合同学会で発表した講演を基に、本記事はガイドラインの主な改訂点についてまとめた。 厚生労働省院内感染対策サーベイランス事業(JANIS)の検査部門(入院検体)の2023年報では、MRSAの分離率は中央値として5.95%を示し、耐性菌の中で最も高い割合であった2)。がん患者や維持透析患者などのICU患者では、多剤耐性菌の血流感染症による死亡率が高く、MRSA感染症の死亡率は約20%とされる。 2024年版の改訂点の特徴として、臨床に即したガイドラインをめざし、従来の叙述的な内容に加えてクリニカル・クエスチョン(CQ)方式を採用し、13のCQを記載して、より臨床を意識した構成となっている。第V章の「疾患別抗MRSA薬の選択と使用」では、疾患別に11の各論で網羅的に扱い、とくに整形外科領域(骨・関節感染症)では、3つのCQで詳細に解説している。光武氏は、本ガイドラインではCQに対する推奨やエビデンスの度合いをサマリーで端的に示しているが、Literature reviewにて膨大な文献を検討したプロセスを詳細に記載しているので、各読者がとくに関心の高い項目についてはぜひ目を通してほしいと語った。 光武氏は本ガイドラインに記載されたCQのうち、以下の7項目について解説した。CQ1. MRSA感染症の迅速診断(含む核酸検査)は推奨されるか・推奨:MRSA菌血症が疑われる場合、迅速診断を行うことを提案する。・推奨の強さ:弱く推奨する(提案する)・エビデンス総体の確実性:C(弱い) 血液培養でグラム陽性ブドウ状球菌もしくは黄色ブドウ球菌が検出された患者において、MRSA迅速同定検査は従来の同定感受性検査と比較し、死亡率や入院期間を改善しないが、適切な治療(標的治療)までの期間を短縮する可能性がある。皮膚軟部組織感染症における死亡率に関しては、1件の観察研究において、疾患関連死亡率は迅速検査群が有意に低い(オッズ比[OR]:0.25、95%信頼区間[CI]:0.07~0.81)とする報告がある3)。CQ4. ダプトマイシンの高容量投与(>6mg/kg)は必要か・推奨:MRSAを含むブドウ球菌等により菌血症、感染性心内膜炎患者に対して、高用量投与(>6mg/kg)はCK上昇発生率を考慮したうえで、その投与を弱く推奨する。・推奨の強さ:弱く推奨する・エビデンス総体の確実性:B(中程度) 今回実施されたメタ解析により、複雑性菌血症および感染性心内膜症患者では、標準投与群(4~6mg/kg)のほうが、高容量投与群(>6mg/kg)よりも有意に治療成功率が低いとする結果が示された(複雑性菌血症のOR:0.48[95%CI:0.30~0.76]、感染性心内膜症のOR:0.50[95%CI:0.30~0.82])4)。そのため、病態によっては最初から高用量投与することが推奨される。CQ5. 肺炎症例の喀痰からMRSAが分離されたら抗MRSA薬を投与すべきか・推奨:一律には投与しないことを提案するが、MRSAのみが単独で検出された肺炎では抗MRSA薬投与の必要性を検討してもよい。・推奨の強さ:実施しないことを弱く推奨する・エビデンス総体の確実性:D(非常に弱い) 肺炎症例に対して、かつてはバンコマイシンを投与することがあったが、抗MRSA薬を投与することによる死亡率改善効果は認められなかったため、一律に投与しないことが提案されている(死亡リスク比:1.67[95%CI:0.65~4.30、p=0.18、2=39%])。一方で、MRSAのみが単独検出された肺炎で、とくに人工呼吸器関連肺炎(VAP)はMSSA肺炎と比較して死亡率が高い可能性があるため、グラム染色を活用しながら抗MRSA薬投与を検討する余地がある。CQ7. 血流感染においてリネゾリドは第1選択となりうるか・推奨:MRSA菌血症において、リネゾリドやバンコマイシンやダプトマイシンと同等の第1選択とすることを弱く推奨する(提案する)。・推奨の強さ:弱く推奨する(提案する)・エビデンス総体の確実性:C(弱い) MRSA菌血症に対するリネゾリド投与例は、バンコマイシン、テイコプラニン、ダプトマイシン投与例と比較し、全死因死亡率等の治療成功率において非劣性を示す結果であり、第1選択となりうる(エビデンスC)。ただし実臨床では、リネゾリド投与期間中の血小板減少発現によって投与中止や変更を余儀なくされる症例が少なくない。とくに維持透析患者を含む腎機能障害者では、血中リネゾリド濃度が高値となり、血小板減少が高率となるため、注意が必要だ。CQ8. 整形外科手術でバンコマイシンパウダーの局所散布は手術部位感染(SSI)予防に有効か・推奨:整形外科手術でSSI予防を目的としたルーチンの局所バンコマイシン散布を実施しないことを弱く推奨する。・推奨の強さ:実施しないことを弱く推奨する・エビデンス総体の確実性:D(非常に弱い) 局所バンコマイシン散布は実臨床にて行われてきたものではあるが、今回実施されたメタ解析の結果、推奨しない理由として以下の項目が挙げられた。1. 全SSIの予防効果を認めない(エビデンスD)2. インプラントを用いる手術でも、SSI予防効果は認められない(エビデンスD)3. グラム陽性球菌に伴うSSIを予防する可能性はある(エビデンスC)4. SSI予防を目的とした局所バンコマイシン散布の、MRSA-SSI予防効果は明らかでない(エビデンスD)CQ11. 耐性グラム陽性菌感染症が疑われる新生児へのリネゾリドの投与は推奨されるか・推奨:バンコマイシン投与が困難な例に対してリネゾリドを投与することを弱く推奨する。・推奨の強さ:弱く推奨する・エビデンス総体の確実性:C(弱い) リネゾリドは新生児・早期乳児・NICUで管理中の小児におけるMRSAや耐性グラム陽性球菌感染症の治療薬として考慮される。バンコマイシンの使用が困難な状況では使用は現実的とされる。新生児へのリネゾリドの投与を弱く推奨する理由として以下の項目が挙げられた。1. リネゾリドの有効性は、バンコマイシン投与の有効性と比較して差を認めなかった(エビデンスC)2. リネゾリド投与後の有害事象発生率は、バンコマイシンと比較して差を認めなかった(エビデンスC)。リネゾリド投与例では血小板減少を認めることがあり注意が必要。出生時の在胎週数が低い児に、その傾向がより強いCQ13. 抗MRSA薬と他の抗菌薬(β-ラクタム系薬、ST合剤、リファンピシン)の併用は推奨されるか・推奨:心内膜炎を含む菌血症において、バンコマイシンもしくはダプトマイシンとβ-ラクタム系薬の併用を、症例に応じ弱く推奨する(提案する)。その他の併用はエビデンスが限定的であり、明確な推奨はできない。・推奨の強さ:弱く推奨する(提案する)・エビデンス総体の確実性B(中程度) 基本は単剤治療を行い、感染巣/ソースコントロールが重要となるが、抗MRSA薬の効果がみられない場合がある。バンコマイシンの最小発育阻止濃度(MIC)=2µg/mLを示すMRSAの菌血症に対し、高用量のダプトマイシン+ST合剤(スルファメトキサゾール/トリメトプリム)併用により、臨床的改善および微生物学的改善が期待される(エビデンスB)。バンコマイシンもしくはダプトマイシン+β-ラクタム系薬併用は、菌血症の持続時間や発生は減少させるものの死亡率に差はない。バンコマイシンもしくはダプトマイシン+リファンピシン併用は、血流感染症で死亡者数、細菌学的失敗率、再発率に差はなかった。 光武氏は最後に、抗MRSA薬の現状ついて述べた。日本では未承認だが、第5世代セフェム系抗菌薬のceftaroline、ceftobiprole、oritavancin、dalbavancin、omadacycline、delafloxacinといったものが、海外ではすでに使用されているという。現時点では実臨床での使用は難しいが、モノクローナル抗体製剤、バクテリオファージ、Lysinsの研究も進められている。また、MRSA治療にAIを導入する試みも各国から数多く報告されており5)、アップデートが必要な状況となっているという。 本ガイドラインは、日本化学療法学会のウェブサイトから購入することができる。

145.

細菌性膣症、男性パートナーの治療で再発予防/NEJM

 細菌性膣症は生殖可能年齢の女性の約3分の1に認められ、再発は一般的である。細菌性膣症の原因菌のパートナー間での感染エビデンスは、半面で男性パートナーへの治療が治癒を高めることも示唆することから、オーストラリア・モナシュ大学のLenka A. Vodstrcil氏らStepUp Teamは、一夫一婦関係にあるカップルを対象とした非盲検無作為化比較試験を行い、細菌性膣症の女性への治療に加えて、男性パートナーに対して経口および局所抗菌薬治療を行うことにより、12週間以内の細菌性膣症の再発率が標準治療と比べて低下したことを報告した。NEJM誌2025年3月6日号掲載の報告。一夫一婦関係のカップルをパートナー治療群または女性のみ治療群に無作為化 試験は2019年4月~2023年11月に、オーストラリアの3州で展開する2つの性の健康サービス(sexual health services)および3つの家族計画サービス(family-planning services)の施設で行われた。 一夫一婦関係にあるカップルを1対1の割合でパートナー治療群(女性とその男性パートナーに治療)または対照群(女性のみに治療)に無作為に割り付けた。パートナー治療群では、女性は初回治療として推奨される抗菌薬の投与を受け、男性パートナーは経口および局所の抗菌薬治療(メトロニダゾール400mg錠の投与および2%クリンダマイシン クリームの陰茎皮膚への塗布、いずれも1日2回を7日間)を受けた。対照群では、基材を問わずクリーム塗布による陰茎部の細菌叢構成の変化への懸念から、女性にのみ初回抗菌薬治療を行った。再発の絶対リスク差、パートナー治療群が-2.6例/人年で有意差 81組のカップルがパートナー治療群に、83組のカップルが対照群に無作為化された。 試験はデータおよび安全性モニタリング委員会の判断によって、150組が12週の追跡調査完了後に、女性のみの治療が女性および男性パートナー両者への治療に対して劣性であったため中止された。 修正ITT集団において、12週間以内の細菌性腟症の再発はパートナー治療群の女性で24/69例(35%、再発率1.6例/人年[95%信頼区間[CI]:1.1~2.4])、対照群の女性で43/68例(63%、4.2例/人年[3.2~5.7])であった。再発の絶対リスク差は-2.6例/人年(95%CI:-4.0~-1.2)であった(p<0.001)。 治療を受けた男性における有害事象は、悪心、頭痛、金属味などが報告された。

146.

Fusobacterium necrophorum【1分間で学べる感染症】第22回

画像を拡大するTake home messageFusobacterium necrophorumは、嫌気性のグラム陰性桿菌でLemierre症候群の原因菌として重要である。今回は、多彩な病状と重篤な病態を引き起こす可能性のあるFusobacterium necrophorumに関して一緒に学んでいきましょう。Fusobacterium necrophorumとはFusobacterium属は、偏性嫌気性のグラム陰性桿菌で、口腔内を中心に消化管や女性の生殖器に常在しています。グラム染色では長桿菌またはフィラメント状を呈することが多いです。Fusobacterium属の中でもFusobacterium necrophorumはとくに病原性が強く、壊死性・血栓形成性の感染症を引き起こしやすいとされています。どんな感染症を引き起こすかFusobacterium necrophorumは、咽頭炎を契機に内頸静脈血栓性静脈炎を引き起こすLemierre症候群の原因菌として知られていますが、それ以外にも歯周膿瘍や扁桃周囲膿瘍、肝膿瘍や脳膿瘍などの播種性転移性病変を合併することがあります。Lemierre症候群とはLemierre症候群とは、敗血症性内頸静脈血栓性静脈炎のことを指します。一般的に健康な成人に好発し、咽頭炎に続発して発症します。Fusobacterium necrophorumによる血流感染に伴い、両側化膿性肺塞栓症や時には化膿性関節炎、肝膿瘍、脳膿瘍などを合併することもあります。稀にFusobacterium necrophorum以外にA群β溶血性連鎖球菌やS. anginosus group、Porphyromonasなど、ほかの嫌気性菌や腸内細菌などが原因のこともあります。薬剤感受性・治療のポイントFusobacterium属は、β-ラクタマーゼを産生する株が4~23%と一定の割合で存在することが報告されています。また、メトロニダゾールには一般的に感受性を示し、マクロライド系(アジスロマイシンなど)やアミノグリコシド系には耐性を示すことが知られています。したがって、第1選択としては、アンピシリン・スルバクタム、タゾバクタム・ピペラシリン、またはカルバペネム系が推奨されます。またメトロニダゾールも検討されます。膿瘍形成の大きさによっては上記の抗菌薬に加え、外科的ドレナージ術を並行して行うことも重要です。Fusobacterium necrophorumは壊死性感染を引き起こすこともあります。健康な若年成人の咽頭炎後の頸部痛、敗血症を診たらLemierre症候群を疑い、血液培養を採取し、速やかに抗菌薬治療を開始することが重要です。1)Holm K, et al. Anaerobe. 2016;42:89-97.2)Nygren D, et al. Clin Microbiol Infect. 2020;26:1089.e7-1089.e12.

147.

高齢の市中肺炎、セフトリアキソンvs.スルバクタム・アンピシリン

 高齢者の市中肺炎の初期対応として、嫌気性菌をカバーするスルバクタム・アンピシリン(SBT/ABPC)などが用いられることがある。しかし、カナダの市中誤嚥性肺炎患者を対象とした多施設後ろ向きコホート研究では、嫌気性菌カバーは院内死亡リスクを低下させず、C. difficile大腸炎リスクを上昇させたことが報告されている1)。そこで、山本 舜悟氏(大阪大学)らの研究グループは、市中肺炎により入院した65歳以上の患者を対象としたデータベース研究を実施し、セフトリアキソン(CTRX)とSBT/ABPCを比較した。その結果、SBT/ABPCのほうがCTRXよりも院内死亡率が高かった。本研究結果は、Open Forum Infectious Diseases誌2025年3月5日号に掲載された。 研究グループは、健康・医療・教育情報評価推進機構が管理するデータベースを用いて、2010~23年に市中肺炎により入院した65歳以上の患者のうち、初期治療としてCTRXまたはSBT/ABPCを用いた患者2万6,633例を抽出した。CTRX群とSBT/ABPC群の比較にはtarget trial emulationのデザインを用いた。主要評価項目は院内死亡率とし、副次評価項目はC. difficile感染症(CDI)の発生率とした。逆確率重み付け法を用いて、両群の調整リスク差(aRD)、調整オッズ比(aOR)、それらの95%信頼区間(CI)を推定することで評価した。 主な結果は以下のとおり。・CTRX群は1万1,727例、SBT/ABPC群は1万4,906例であった。・院内死亡率はCTRX群9.0%、SBT/ABPC群10.5%であり、SBT/ABPC群が高かった(aRD[95%CI]:1.5%[0.7~2.4]、aOR[95%CI]:1.19[1.08~1.31])。・CDIの発生率はCTRX群0.4%、SBT/ABPC群0.6%であり、SBT/ABPC群が高い傾向にあった(aRD[95%CI]:0.2%[0.0~0.4]、aOR[95%CI]:1.45[0.99~2.11])。・誤嚥リスク因子を1つ以上有する集団を対象としたサブグループ解析において、院内死亡率はCTRX群11.5%、SBT/ABPC群14.2%であり、SBT/ABPC群が高かった(aOR[95%CI]:1.27[1.14~1.40])。・同様に、誤嚥リスク因子を1つ以上有する集団のCDIの発生率はCTRX群0.5%、SBT/ABPC群0.8%であり、SBT/ABPC群が高い傾向にあった(aOR[95%CI]:1.52[1.00~2.31])。 本研究結果について、著者らは「膿胸や肺膿瘍などの嫌気性菌の関与が明らかな場合を除き、高齢の市中肺炎患者に対する初期治療として、嫌気性菌カバーする抗菌薬の使用は避けるべきである可能性が示された」とまとめた。

148.

認知症の急速悪化、服用中の薬剤が引き金に?【外来で役立つ!認知症Topics】第27回

認知症の急速進行性患者(Rapid Decliner)少なからぬ認知症の患者さん、とくにアルツハイマー病(AD)患者の外来治療は長期にわたりがちで、2年や3年はざら、時には10年ということもある。そうした中で、この病気が進行していくスピード感というものがだんだんとわかってくる。ところが、「なぜこんなにも急速に悪化するのか」という驚きと、主治医としての後ろめたさを感じてしまうような症例を少なからず経験する。こうした患者さんは、医学的には急速進行性患者(Rapid Decliner:RD)と呼ばれる。急速進行性認知症とは、本来プリオン病をプロトタイプとするが、プリオン病との鑑別で最も多いのは急速進行性のADだとされる。このようなケースでは、本人というよりも主たる介護者が、そのことを嘆かれ、治療の変更や転医などを相談されることもある。しかし担当医として容易にはお答えができず、忸怩たる思いを経験する。また新薬の治験のようにADの経過を評価する際にもRDはしばしば問題になる。というのは、こうした新薬の効果は、多くの場合、わずかなものである。そこに一般的な患者の経過から飛び抜けて悪化を示すケースがあると、「結果解析ではこうしたRDを例外として対象から除外するのか?」などの統計解析上の取り扱いが問題になると聞く。急速進行性アルツハイマー病(RD AD)の定義さて急速進行性AD(RD AD)の定義では、MMSEのような認知機能評価尺度の点数悪化や発症から死亡に至るまでの時間により示されることが多い。RD ADの定義として、MMSEの年間点の得点低下が6点以上とするものが多い1)。一般的には年間低下率は、2~3点とされるから、その倍以上である。また普通は7~8年とされるADの生存期間だが、RD ADでは、それが2年以内とされることも多い2)。つまり約3~4分の1程度も短命である。このようなRD ADを予測する要因としては、合併症として、血管性要因、高血圧、高脂血症、糖尿病、肥満などがある。また慢性的な心不全や閉塞性肺疾患の関与も注目されてきた。しかしいずれも確立していない。さらに一般的には若年性が悪いと思われがちだが、必ずしもそうではない。バイオマーカーでは、脳脊髄液中の総タウ、リン酸化タウの高値は予測要因の可能性があるとされる。多くの遺伝子多型も研究報告されてきた。最もよく知られた遺伝子多型のAPOEだが、この役割については賛否両論ある。以上をまとめると、RD ADの予測要因として確立したものはなさそうである。RD ADの症状:体力低下、BPSD、IADLの障害もっとも実臨床の場面でRD ADが持つ意味は上記のような医学的な定義とは少し異なる。つまり体力低下、認知症にみられる行動および神経心理学的な症状(BPSD)や道具的ADL(Instrumental Activity of Daily Living:IADL)の障害などが急速に進んで日常生活の維持が困難になって、急速進行が事例化するケースが多いと思う。たとえば、大腿骨頸部骨折や各種の肺炎後に衰弱が急に進むという訴えがある。IADLでは、排泄の後始末ができない・汚れたおむつで便器を詰まらせる、着衣失行など衣類が着られなくなった、などが多い。またBPSDでは、多くの介護者にとって、幻視や幻聴、そして妄想の出現はショックが大きい。つまり家族介護者は、認知機能の低下というよりは、衰弱やIADLの低下、衰弱や幻覚妄想による言動のように、目に見える変化が急速な悪化と感じやすい。服用中の薬剤が急速悪化の引き金にさて問題は、こうしたケースへの対応である。これには2つのポイントがある。まず診断の見直しという基本の確認である。ここでは必要に応じてセカンドピニオンも考慮すべきである。次にRDの危険因子とされた要因を点検することである。とくに注目すべきは、服用薬剤の副作用だろう。診断の見直しでは、まずビタミンB群、梅毒やHIVを含む血液検査はしておきたい。新たな脳血管障害などが加わった可能性もあるからCTやMRI等の脳画像の再検査も考慮する。また脳脊髄液検査や脳波検査も、感染症やプリオン病などの可能性を踏まえてやっておきたい。高度検査では、遺伝学的な検査、また悪性腫瘍の合併を考慮してWhole body PET-CTが必要になるケースもあるだろう。さらに炎症系の関りも視野に入れて、専門医との相談に基づいて、抗炎症治療による治療的診断として、イムノグロブリン、高用量ステロイドなどの投与もありうる。いずれにせよこれらでは、躊躇なくセカンドオピニオンが求められる。危険視の中でも、服用薬剤が重要である。まず向精神薬がある程以上に長期間にわたって投与されていれば、これらが心身の機能にも生命予後にも悪影響を及ぼす可能性がある。なお向精神薬には、抗精神病薬、抗うつ薬、睡眠薬、抗不安薬のほかに、抗てんかん薬、抗パーキンソン薬などが含まれる。とりわけ、他科から処方されている薬剤は案外盲点かもしれない。他科の担当医はご自分の領域の治療薬に精通されていても、それが認知症に及ぼす影響まではあまり注意されていないかもしれない。それだけに「おくすり手帳」などを見せてもらう必要がある。さまざまな薬剤の中でも、とくに抗コリン薬は要注意である。これは過活動性膀胱の治療薬など泌尿器科用薬剤、循環器用薬剤に多い。またヒスタミンH2受容体拮抗薬、ステロイド、非ステロイド性抗炎症薬、循環器系治療薬、抗菌薬などにも目配りが求められる。参考1)Soto ME, et al. Rapid cognitive decline in Alzheimer's disease. Consensus paper. J Nutr Health Aging. 2008;12:703-713. 2)Harmann P, Zerr I. Rapidly progressive dementias – aetiologies, diagnosis. Nat Rev Neurol. 2022;18:363-376.

149.

リファンピシン耐性キノロン感性結核に対する経口抗菌薬(解説:寺田教彦氏)

 結核は、依然として世界的な公衆衛生の問題であり、2023年WHO世界結核対策報告書によると、2022年には約1,060万人が結核を発症し、130万人が死亡したとされる。結核治療を困難にする要因の1つに薬剤耐性結核(MDR/RR-TB)があり、今回の対象であるリファンピシン耐性結核は、毎年約41万人が罹患すると推定されている。このうち治療を受けたのは40%にすぎず、その治療成功率は65%にとどまっている(WHO. Global tuberculosis report 2023.)。これは、従来のレジメンが18~24ヵ月と治療期間が長く、アミノグリコシド系やポリペプチド系の注射製剤が含まれ、副作用の問題もあったためと考えられる。 2016年から2017年にかけて、本研究(endTB試験)を含めた3つの多国籍ランダム化比較試験(STREAM2試験、TB-PRACTECAL試験)が開始され、リファンピシン耐性結核に対する6ヵ月または9ヵ月の全経口短期レジメンの安全性と有効性が評価された。 本研究は、15歳以上のリファンピシン耐性・フルオロキノロン感性の結核患者を対象に、ベダキリン(B)、デラマニド(D)、リネゾリド(L)、レボフロキサシン(Lfx)またはモキシフロキサシン(M)、クロファジミン(C)、ピラジナミド(Z)から成る5つの併用レジメン(BLMZ、BCLLfxZ、BDLLfxZ、DCLLfxZ、DCMZ)と、当時のWHOガイドラインに準拠した標準治療群の計6つの治療群を比較した。その結果、3つのレジメンが標準治療に対して非劣性を示した(詳細は「リファンピシン耐性/キノロン感受性結核に有効な経口レジメンは?/NEJM」参照)。 WHOは2024年8月に発表したKey updates to the treatment of drug-resistant tuberculosis: rapid communication, June 2024において、本試験(endTB)の結果を解釈し、内容を更新している。ガイドライン開発グループの解釈では、フルオロキノロン感受性が確認されたMDR/RR-TB患者において、BLMZ、BLLfxCZ、BDLLfxZの3種類の9ヵ月全経口レジメンは、長期(≧18ヵ月)レジメンの代替として効果的かつ安全に使用できるが、DCLLfxZおよびDCMZレジメンは治療失敗・再発率および獲得耐性率が高いため推奨されないとされた。そのため、WHOはフルオロキノロン感性MDR/RR-TB患者に対し、9ヵ月の全経口レジメン(優先順位:BLMZ>BLLfxCZ>BDLLfxZ)を従来の長期レジメンに代わる選択肢の1つとして提案した(条件付き推奨、エビデンスの確実性は非常に低い)。 本研究のレジメンは小児用製剤もあり、妊娠中の使用も検討可能である。今後、2025年のWHOガイドライン改訂にも反映され、より多くの患者に適用可能な治療法の1つとなることが期待される。

150.

事例019 外来感染対策向上加算の算定(続き)【斬らレセプト シーズン4】

解説前回の「事例18 外来感染対策向上加算の算定」に引き続いて、今回も同じテーマの追加事項を解説いたします。外来感染対策向上加算(以下「同加算」)にかかる「協定指定医療機関」の指定を受けているものと見做す経過措置は、2025年1月に終了しました。同加算を新規で届け出る場合には、医療機関所在地の都道府県知事による指定を受けてから、「様式1の4 外来感染対策向上加算に係る届出書添付書類」を届け出ることが必要となります。様式の5項目に対して、記載にかかる質問が多いことから現時点での具体的要件を紹介します。1項目目「院内感染管理者」は、専任であって週1回以上感染対策にかかる院内巡回を行う必要があります。年2回の感染対策にかかる院内研修も必要です。これらは書面で記録を残す必要があります。院長自らが就任されてもよいですが、雇用している看護師などの医療有資格者を選任することもできます。2項目目「抗菌薬適正使用のための方策」は、地域医師会において準備されている手引きに沿っての実践と、連携医療機関から助言を受けている内容の記載が必要です。3項目目「連携保険医療機関名又は地域の医師会」は、感染向上対策加算1の届出医療機関と直接に連携の了解を得て書面を交わすか、地域医師会に相談をお願いします。4項目目「発熱患者等への対応」は、車内待機や発熱患者を時間で分離するなどの対応が記入されていれば要件を満たすとされています。5項目目「新興感染症の発生・まん延時の対応」は、所在地の感染症対策課から指定を受けたことがホームページに掲載された以降にチェックを入れて届け出ることができます。そのほか、各項目と同時に提出する付随書類のひな型は地域医師会に準備されていますので地域医師会への問い合わせなどお願いします。

151.

クランベリーって意味あるの? ─再発予防に使える薬剤、その他について─【とことん極める!腎盂腎炎】第13回

クランベリーって意味あるの? ─再発予防に使える薬剤、その他について─Teaching point(1)クランベリーが尿路感染症を予防するという研究結果はたしかに存在するが、確固たるものではない(2)本人の嗜好と経済的事情が許すならクランベリージュースを飲用してもらってもよい(3)クランベリージュース以外の尿路感染症の予防方法を知っておく《症例》28歳女性、独身、百貨店の販売員。これまでに何度も排尿時痛や頻尿などの症状で近医受診歴があり、「膀胱炎」と診断され、その都度、経口抗菌薬の処方を受け治療されている。昼前から排尿時痛があり、「いつもと同じ」膀胱炎だろうと思って経過をみていたところ、夕方にかけて倦怠感とともに37.5℃の発熱を認めるようになったため当院の時間外外来を受診した。来院時38.0℃の発熱あり。左肋骨脊柱角に圧痛(CVA叩打痛)を認める。血液検査:WBC 12,000/μL(Neu 85%)、CRP 3.5mg/dLと炎症反応上昇あり。尿検査:WBC(+++)、亜硝酸塩(+)。一般的身体所見、血算・生化学検査では、それ以外の特記所見に乏しい。1.クランベリーとは?クランベリーとはツツジ科スノキ属ツルコケモモ亜属(Oxycoccos)に属する常緑低木の総称であり、Vaccinium oxycoccus(ツルコケモモ)、V. macrocarpon(オオミツルコケモモ)、V. microcarpum(ヒメツルコケモモ)、V. erythrocarpum(アクシバ)の4種類がある。北米原産三大フルーツの1つである酸味の強い果実は、菓子やジャム、そしてジュースによく加工され食用される。古くから尿路感染症予防の民間療法として使用されており、1920年代にはその効果は尿路の酸性化による結果と考えられていたが、クランベリーに含まれるA型プロアントシアニジンという物質がどうやら尿路上皮への細菌の付着を阻害しているらしいということが1980年代に明らかにされた1)。またクランベリーに含まれるD-マンノースもまた、細菌と結合することで尿路上皮への菌の付着を抑制することが知られている。2.クランベリーは尿路感染を予防するのか?クランベリーが尿路感染やその再発を予防するのかというテーマについては、これまで数多くの研究がなされてきた。まず、有効成分の1つである先述のD-マンノースを内服することが再発性尿路感染症の発生率が低下させると、ランダム化比較試験で証明されている2)。クランベリーそのものに関しては、プラセボに比して予防に効果的という結果が得られた研究もあれば、影響を与えないとする研究結果もあり、議論が分かれているところである。系統的レビューによるメタアナリシスでも報告によって異なった結論が得られており、たとえば2012年に合計1,616例の研究結果をまとめたメタアナリシスではクランベリー製品は有意に尿路感染の再発を減らすと報告している3)。半年間の飲用によるリスク比0.6、治療必要数(NNT)は11と推算されている。一方で、同じ2012年にアップデートされたコクランレビューでは4,473例が対象になっているが、プラセボや無治療に比してクランベリー製品は尿路感染症を減らすことはしないとし、尿路感染症予防としてのクランベリージュース飲用は推奨しないと結論づけられた4)。しかし2023年にアップデートされたバージョンでは、50件の研究から合計8,857例がレビューの対象となり、メタ解析の結果、クランベリー製品の摂取によって尿路感染リスクが有意に低減する(相対リスク:0.70、95%信頼区間:0.58~0.84)ことが明らかにされた。とくに、再発性尿路感染症の女性、小児、尿路カテーテル留置状態など尿路感染リスクを有する患者において低減するとされ、逆に、施設入所の高齢者、妊婦などでは有意差は得られなかった5)。わが国で行われたクランベリージュースもしくはプラセボ飲料125mLを毎日眠前に24週間内服して比較した多施設共同・ランダム化二重盲検試験の結果では、50歳以上の集団を対象としたサブ解析では有意な再発抑制効果がクランベリージュースに認められた(ただし、若年層の組み入れが少なかったためか全体解析では有意差が出なかった)6)。尿路感染症の再発歴がある患者が比較的多く含まれたことも有意差がついた要因の1つと考えられ、そうしたことを踏まえると、再発リスクが高い集団においてはクランベリージュースの感染予防の効果がある可能性があると思われる。米国・FDAも、尿路感染既往がある女性が摂取した際に感染症の再発リスクが低下する可能性があるとクランベリーサプリの製品ラベルへ掲載することを2020年に許可しており、日本の厚生労働省公式の情報発信サイトにもそのことが掲載されている7)。再発性の膀胱炎の最終手段として抗菌薬投与が選択されることもあるが、耐性菌のリスクの観点からも導入しやすい日常生活への指導からしっかりと介入していくことは大切である。生活へのアプローチは一人ひとりの事情もあるので、本人の生活について丁寧に聴取し生活に合わせた指導内容を一緒に考えていくことは、プライマリ・ケア医の重要な役割である。3.クランベリー摂取の副作用大量に摂取した場合、とくに低年齢児では嘔気や下痢を招く可能性がある。また、シュウ酸結石を生じるリスクになるともいわれている。しかし一般的には安全と考えられており7)、日本の研究でもクランベリー飲用の有害事象としては107人中1人のみ、初回飲用後の強いやけど感を自覚しただけであった6)。先に紹介したレビューでも、最頻の副作用は胃もたれなどの消化器症状であったが、対照群に比較して有意に増加はしなかった5)。クランベリー摂取により問題となる副作用はあまりないと思われ、そうすると、クランベリーを尿路感染再発予防目的で飲用するべきかどうかは、本人の嗜好や経済的余裕などによって決まると思われる。4.クランベリー以外での再発予防とくに女性では尿路感染症を繰り返す症例があるが、そうした再発例に対しては、飲水励行の推奨や排便後の清拭方法の指導(肛門部に付着する細菌の尿路への移行を防ぐために尿道口から肛門に向けて拭く)に代表される行動療法が推奨される(第11回参照)。それでも無効な場合は予防的抗菌薬投与の適応になりえ、数ヵ月から年単位で継続する方法と、性交渉後にのみ服薬する方法が一般的である。性交渉後に急性単純性膀胱炎を起こすことはよく知られており、抗菌薬の連日投与でなくても、セファレキシン、ST合剤、フルオロキノロンなどを性交渉後の単回内服するだけでも尿路感染症の予防に有効であることが示されている8)。再発性尿路感染症を呈する高齢者においても、予防的抗菌薬の内服が尿路感染症の発症予防に効果があるとされている9)。また、閉経後の女性では局所エストロゲン療法が尿路感染の再発予防に有効であるといわれている10)。《症例(その後)》腎盂腎炎と診断し、血液・尿培養採取のうえで、点滴抗菌薬加療を開始して入院とした。翌日には解熱、入院5日後に血液検査での炎症反応のpeak outと血液培養からの菌発育がないことを確認でき、尿培養から感受性良好な大腸菌(Escherichia coli)が同定されたため、内服抗菌薬にスイッチして退院とする方針とした。これまでに何度も膀胱炎になっているとのことで、再発性の尿路感染症と考えてリスク因子がないか確認したところ、販売員をしているため日中の尿回数を減らすべく、出勤日は飲水量を減らすように心がけているということであった。尿量・尿回数の減少が尿路感染症のリスクになるため飲水励行が勧められること、度重なる抗菌薬加療が将来的な耐性菌の出現を招くことによる弊害、会陰部を清潔に保つことが重要であることの説明に加え、排便後の清拭方法の一般的な指導を退院時に行った。クランベリージュースは話題には出してみたものの、ベリー系果実はあまりお好きではないとのだったので強くお勧めはしなかった。それでもなお尿路感染を繰り返すようであれば、さらなる予防策を講じる必要があると判断して、3ヵ月後に確認したところ、その後、膀胱炎症状はなく経過しているということであり終診とした。1)Howell AB, et al. Phytochemistry. 2005;66:2281-2291.2)Kranjcec B, et al. World J Urol. 2014;32:79-84.3)Wang CH, et al. Arch Intern Med. 2012;172:988-996.4)Jepson RG, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2012;10:CD001321.5)Williams G, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2023;4:CD001321.6)Takahashi S, et al. J Infect Chemother. 2013;19:112-117.7)厚生労働省eJIM(イージム:「統合医療」情報発信サイト):「クランベリー」8)日本排尿機能学会, 日本泌尿器科学会 編. 女性下部尿路症状診療ガイドライン[第2版]. リッチヒルメディカル;2019.9)Ahmed H, et al. Age Ageing. 2019;48:228-234.10)Chen YY, et al. Int Urogynecol J. 2021;32:17-25.

152.

Cutibacterium acnes(C. acnes)【1分間で学べる感染症】第21回

画像を拡大するTake home messageC. acnesは整形外科(とくに肩関節、脊椎)や脳神経外科の人工物(インプラント)関連感染症の重要な原因菌であり、診断には長期間の培養や複数検体での確認が必要となる。Cutibacterium acnes(C. acnes)は、以前はPropionibacterium acnesとも呼ばれ、プロピオン酸を産生、尋常性ざ瘡の一般的な病原体であり、皮膚の常在菌として知られています。整形外科領域や脳神経外科領域において人工物(インプラント)関連感染症の重要な原因菌として注目されています。とくに人工関節や骨折治療用のインプラント、脳神経外科術後のシャント感染や頭蓋インプラント関連感染症で本菌が手術部位感染症(SSI)の一因として重要視されており、診断が困難なケースも少なくありません。微生物・培養C. acnesは嫌気性グラム陽性桿菌であり、非運動性です。主に皮脂腺や毛包に常在しています。C. acnesは短期間(数日)の培養では検出されない可能性があるため、整形外科および脳神経外科領域のインプラント関連感染を疑う場合は、10~14日の長期間培養が推奨されます。全体の陽性報告のうち、4日目までに血液培養で陽性となるのは25%と報告されています。さらに、C. acnesは手術部位の皮膚常在菌として混入する可能性があるため、診断根拠を強めるためには、複数検体からの培養結果が重要になります。症状・臨床所見術中に皮膚表面からインプラントへ移行し、バイオフィルムを形成することで持続的な感染を引き起こすことが特徴です。しばしばコンタミネーションとされますが、整形外科領域ではとくに肩関節や脊椎のインプラント関連感染症での関与が多く、脳神経外科領域では脳脊髄液シャント、リザーバー、脳深部刺激装置などのインプラントに関連した感染症が報告されています。そのほかにも血管系(人工弁、ペースメーカー)、乳房インプラント関連感染なども重要です。C. acnesによる感染症は発症が遅く、慢性的な経過をたどることが特徴です。薬剤感受性・治療C. acnesはβ-ラクタム系全般(ペニシリン系:ペニシリンG、アンピシリン、セファロスポリン系:セファゾリン、セフトリアキソン)のほか、バンコマイシン、ダプトマイシン、クリンダマイシン、ドキシサイクリンなど、さまざまな抗菌薬に感受性を有します。一方で、メトロニダゾールには耐性を示します。バイオフィルム形成のため、それぞれの病態に応じた長期間の抗菌薬投与とデブリードマン・人工物の抜去などの外科的介入が必要になることが多くあります。このようにC. acnesは皮脂腺や毛包に常在し、臨床的にコンタミネーションの場合が多い一方、整形外科(とくに肩関節、脊椎)や脳外科術後を中心としたインプラント関連では真の起因菌になることも多いため、注意が必要です。臨床状況と培養結果を総合して判断することが重要です。1)Boman J, et al. Eur J Clin Microbiol Infect Dis. 2022;41:1029-1037.2)Ransom EM, et al. J Clin Microbiol. 2021;59:e02459-20.3)Piggott DA, et al. Open Forum Infect Dis. 2015;3:ofv191.

153.

生理食塩水での口腔ケアは、ICU死亡率を低減【論文から学ぶ看護の新常識】第5回

生理食塩水での口腔ケアは、ICU死亡率を低減集中治療室(ICU)にて機械的人工呼吸管理を行っている患者に、口腔ケアで酸化剤を使用することは人工呼吸器関連肺炎(VAP)の発症を抑え、生理食塩水の使用ではICU死亡率を低下させる効果が示された。Qianqian He氏らの研究で、Australian Critical Care誌2025年1月号に掲載された。集中治療室患者における人工呼吸器関連の転帰と死亡率に対するさまざまなマウスウォッシュの効果:ネットワークメタアナリシス研究グループは、ICUにおける機械的人工呼吸管理患者に対する異なるマウスウォッシュの効果と安全性を、VAPの発生率、ICU死亡率、人工呼吸器装着期間、および大腸菌定着率を指標に比較評価した。PubMed、Web of Science、Embase、Cochrane Libraryを検索し、生理食塩水、クロルヘキシジン(CHX)、重炭酸ナトリウム、酸化剤、ハーブ抽出物、ポビドンヨード(PI)を比較したランダム化比較試験(RCT)を対象とした。14件のランダム化比較試験(RCT)に登録された1,644人のICU患者(平均年齢57.86歳、男性58.73%)が対象となった。評価項目は、VAP発生率、ICU死亡率、人工呼吸器装着期間、大腸菌の定着率。統計手法は、Rソフトウェアを用いたネットワークメタアナリシスで、異質性はI2検定で評価され、優越率は累積順位曲線下面積(SUCRA)で推定された。主な結果は以下のとおり。VAP発生率:酸化剤はVAP発生率を低減する傾向を示した(リスク比[RR]:0.24、95%信頼区間[CI]:0.05~1.10)。ICU死亡率:生理食塩水はICU死亡率を有意に低下させた(RR:0.18、95%CI:0.04~0.88)。CHXやPIはICU死亡率に有意な影響を与えなかった。人工呼吸器装着期間:CHXおよびPIは人工呼吸器装着期間に有意な影響を与えなかった。大腸菌定着率:すべての介入群で統計的有意差は観察されなかった。クロルヘキシジンなどの抗菌性マウスウォッシュは、ICU患者に対して潜在的なリスクを伴う可能性がある。一方で、酸化剤は比較的安全であると考えられる。また、生理食塩水はICU死亡率を有意に低下させる有望な選択肢として示唆された。今後は、より大規模で高品質なRCTが必要である。この論文は、ICU患者における異なるマウスウォッシュの効果を比較検討したネットワークメタアナリシスです。特に、人工呼吸器関連肺炎の発生率、ICU死亡率、人工呼吸器装着期間、大腸菌定着率に焦点を当てています。まず、最も注目すべきは生理食塩水に関する結果です。これまで生理食塩水は「標準的で無害な選択肢」にすぎず、口腔内に殺菌する成分が入っていたほうがよいという考えが強かったと思います。しかし、今回の研究では、生理食塩水の使用はICU死亡率を有意に低下させることが示されました。これは、抗菌薬を使用しないことで副作用を回避しつつ、安全に口腔ケアを行える点で重要な知見かと思います。論文での考察としては、生理食塩水は、抗菌性マウスウォッシュと比較すると口腔内の自然な細菌叢のバランスを崩さず、維持に貢献すると考えられるとされています。一方で、よく使用されるクロルヘキシジンやポビドンヨードについては、注意が必要です。日本国内では、クロルヘキシジンを海外のように高い濃度で口腔内へ使用することはできません。そのため、主流になっていくことはないかと思いますが、クロルヘキシジンは心臓外科手術後の患者には効果的である可能性がある一方、非心臓外科患者では死亡リスクが増加する可能性が示されています。また、味覚障害や歯の変色といった副作用があることも臨床現場では無視できません。次に、過酸化水素いわゆるオキシドールなどの酸化剤の効果も見逃せません。酸化剤は人工呼吸器関連肺炎の発生率を抑制する可能性があることが示唆されており、特にクロルヘキシジンの副作用を軽減する効果も期待されています。これにより、患者の快適性や口腔ケアの継続性が向上する可能性があります。しかし、臨床に看護師主導で酸化剤のマウスウォッシュを導入するのはハードルが高い印象です。これらをまとめると、すぐに導入でき、また日頃からも行われている、生理食塩水での口腔ケアは「意外とよい」と言えるでしょう。論文はこちらHe Q, et al. Aust Crit Care. 2025;38(1):101095.

154.

世界初、遺伝子編集ブタ腎臓の異種移植は成功か/NEJM

 米国・マサチューセッツ総合病院の河合 達郎氏らは、遺伝子編集ブタ腎臓をヒトへ移植した世界初の症例について報告した。症例は、62歳男性で、2型糖尿病による末期腎不全のため69の遺伝子編集が施されたブタ腎臓が移植された。移植された腎臓は直ちに機能し、クレアチニン値は速やかに低下して透析は不要となった。しかし、腎機能は維持されていたものの、移植から52日目に、予期しない心臓突然死を来した。剖検では、重度の冠動脈疾患と心室の瘢痕化が認められたが、明らかな移植腎の拒絶反応は認められなかった。著者は、「今回の結果は、末期腎不全患者への移植アクセスを拡大するため、遺伝子編集ブタ腎臓異種移植の臨床応用を支持するものである」とまとめている。NEJM誌オンライン版2025年2月7日号掲載の報告。69の遺伝子編集を組み込んだブタ腎臓を2型糖尿病による末期腎不全患者に移植 移植に用いたブタ(Yucatanミニブタ)は、3つの主要な糖鎖抗原を除去し、7つのヒト遺伝子(TNFAIP3、HMOX1、CD47、CD46、CD55、THBD、EPCR)を導入して過剰発現させ、ブタ内在性レトロウイルスを不活性化するなど、計69の遺伝子編集を組み込んだ。 レシピエントは、2型糖尿病による末期腎不全の62歳男性であった。心筋梗塞、副甲状腺摘出術が既往で、2018年に献腎移植を受けたが、2023年5月にBKウイルス感染および糖尿病性腎症の再発により移植腎が機能不全となり、血液透析中であった。 マサチューセッツ総合病院の集学的チームによる包括的評価と、独立した精神科医および倫理委員会による評価を経て、移植を実施した。 免疫抑制療法は、前臨床研究に基づき、抗胸腺細胞グロブリン(ウサギ)、リツキシマブ、Fc修飾抗CD154モノクローナル抗体(tegoprubart)および抗C5抗体(ラブリズマブ)、タクロリムス、ミコフェノール酸とprednisoneを併用した。移植腎は機能していたが、糖尿病性虚血性心筋症に伴う不整脈で心臓突然死 移植手術は、冷虚血時間4時間38分で終了した。移植したブタ腎臓は移植後5分以内に尿を産生し、最初の48時間で6L超に達した。その後、尿量は1日1.5~2Lで安定した。患者の血漿クレアチニン値は、術前の11.8mg/dLから術後6日目には2.2mg/dLに低下した。 術後8日目に血漿クレアチニンが2.9mg/dLに上昇し、発熱、圧痛、尿量の減少を認めたが、感染症の検査は陰性であった。抗体介在性拒絶反応が疑われたため、メチルプレドニゾロン、トシリズマブを投与した。投与前の腎生検で、急性T細胞介在性拒絶反応(Banffグレード2A)が確認された。 術後9日目および10日目にメチルプレドニゾロンおよび抗胸腺細胞グロブリンを投与し、タクロリムスとミコフェノール酸を増量し、さらに補体C3阻害薬のペグセタコプランを投与した。トシリズマブの追加投与は行わなかった。その後、患者の尿量は増加し、血漿クレアチニン値は低下した。 術後18日目、血漿クレアチニン値2.5mg/dLで退院した。34日目に再び上昇したが、水分補給により1.57mg/dLまで低下した。推算糸球体濾過量(eGFR)は40~50mL/分/1.73m2であった。 術後25日目に皮下創感染症が発生し、外科的に一部切開するとともに、抗菌薬(リネゾリド、メロペネム)の投与を開始し、排膿ドレナージを実施した。緑膿菌陽性の後腹膜貯留液が排出された。切開は37日目に閉鎖し、2週間培養陰性および腹部CTにより貯留液の消失が確認されことから、51日目にドレーンを抜去した。 術後51日目、患者は外来を受診した。水分摂取量が少なく血漿クレアチニン値が2.7mg/dLと比較的高値であったため、補液を実施した。それ以外は、うっ血性心不全の症状はなく、身体所見も腎臓超音波検査でも異常は認められなかった。血圧、心拍数、呼吸数もすべて正常であった。 しかし、夕方に突然、呼吸困難に陥り、蘇生に努めたが術後52日目に亡くなった。剖検の結果、重度のびまん性冠動脈疾患を伴う心臓肥大、びまん性左室線維化などが認められ、これらはすべて糖尿病性虚血性心筋症によるものと考えられた。急性心筋梗塞、肺塞栓症、肺炎、他の臓器の炎症または薬物毒性は認められなかったことから、重症虚血性心筋症に伴う不整脈による心臓突然死と結論付けられている。

155.

非代償性肝硬変、スタチン+抗菌薬併用療法は有効か/JAMA

 スタチンは肝硬変患者の門脈圧を低下させ、肝硬変合併症のリスクを軽減し、生存期間を延長する可能性が示唆されており、広域スペクトル抗菌薬であるリファキシミンは肝性脳症の再発リスクを低下させ、肝硬変患者にみられる腸内細菌叢の顕著な異常を改善することが知られている。スペイン・バルセロナ病院のElisa Pose氏らLIVERHOPE Consortiumは、「LIVERHOPE試験」において、非代償性肝硬変患者の慢性肝不全の急性増悪(acute-on-chronic liver failure:ACLF)の予防では、プラセボと比較してシンバスタチン+リファキシミンの併用療法はその発生率を抑制せず、肝硬変の合併症や有害事象の頻度は同程度であることを示した。研究の詳細は、JAMA誌オンライン版2025年2月5日号で報告された。欧州14病院のプラセボ対照第III相試験 LIVERHOPE試験は、非代償性肝硬変患者におけるシンバスタチン+リファキシミン併用療法の有用性の評価を目的とする二重盲検プラセボ対照第III相試験であり、2019年1月~2022年12月に欧州の14病院で患者を登録した(Horizon 20/20 programの助成を受けた)。 年齢18歳以上で、肝硬変合併症の発症リスクが高く死亡率も高いとされるChild-Pugh分類のBまたはCの非代償性肝硬変と診断された患者を対象とした。被験者を、標準治療に加え、シンバスタチン(20mg/日)+リファキシミン(1,200mg/日)の投与を受ける群、またはプラセボ群に無作為に割り付け、12ヵ月間投与した。 主要エンドポイントは、欧州肝臓学会/慢性肝不全(EASL-CLIF)の定義によるACLFの判定基準を満たす臓器不全を伴う肝硬変の重症合併症の発現とした。肝硬変の合併症の頻度も同程度 237例(平均年齢57歳、男性72%、アルコール性肝硬変80%、Child-Pugh分類B 194例、同C 43例)を登録し、シンバスタチン+リファキシミン群に117例、プラセボ群に120例を割り付けた。追跡期間中央値は両群とも365日だった。 少なくとも1回のACLFを発症した患者は、シンバスタチン+リファキシミン群が21例(17.9%)、プラセボ群は17例(14.2%)であり、ハザード比(HR)は1.23(95%信頼区間[CI]:0.65~2.34)と両群間に有意な差を認めなかった(p=0.52)。 副次アウトカムである肝移植または死亡例は、シンバスタチン+リファキシミン群で22例(18.8%、肝移植5例、死亡17例)、プラセボ群で29例(24.2%、肝移植12例、死亡17例)であった(HR:0.75、95%CI:0.43~1.32、p=0.32)。また、肝硬変の合併症(腹水[新規、増悪]、細菌感染、肝性脳症、急性腎障害、消化管出血)は、それぞれ50例(42.7%)および55例(45.8%)に発現した(HR:0.93、95%CI:0.63~1.36、p=0.70)。シンバスタチン+リファキシミン群でのみ横紋筋融解症が3例 有害事象の発生率は両群で同程度であった(シンバスタチン+リファキシミン群426件[101例、86.3%]vs.プラセボ群419件[100例、83.3%]、p=0.59)。有害事象の種類別の解析でも、両群間に頻度の差があるものはなかった。 重篤な有害事象(シンバスタチン+リファキシミン群44例[37.6%]vs.プラセボ群 50例[41.7%]、p=0.79)および致死的有害事象(17例[14.5%]vs.17例[14.2%]、p>0.99)についても、発生率は両群で同程度だった。注目すべき点として、横紋筋融解症が、プラセボ群ではみられなかったのに対し、シンバスタチン+リファキシミン群で3例(2.6%)に認めたことが挙げられる。 著者は、「シンバスタチンとリファキシミンの併用療法は、肝機能検査所見、腎機能検査所見、肝機能障害の重症度の指標であるModel for End-Stage Liver Disease(MELD)スコアも改善しなかった」「今回の結果は、肝性脳症の再発予防以外の目的で、肝硬変患者の管理にリファキシミンを使用することを支持しない」「本研究の参加者は中等度~重度の肝機能障害を伴う肝硬変であり、これらの知見が、進行度の低い肝硬変患者にも当てはまるかは不明である」としている。

156.

抗菌薬による虫垂炎治療、虫垂切除の回避率は?~メタ解析

 個々の患者データを用いたメタ解析の結果、急性虫垂炎に対する抗菌薬治療によって、最初の1年間で約3分の2の患者が虫垂切除を回避できたものの、虫垂結石を伴う場合は合併症のリスクが高まったことを、オランダ・アムステルダム大学のJochem C. G. Scheijmans氏らが明らかにした。Lancet Gastroenterology & Hepatology誌2025年3月号掲載の報告。 これまでのランダム化比較試験によって、合併症のない急性虫垂炎に対する抗菌薬は、虫垂切除術に代わる効果的で安全な治療とされている。しかし、これらの試験はそれぞれの包含基準が異なり、アウトカムや合併症の定義も異なっている。そこで研究グループは、個々の患者データのメタ解析を実施し、虫垂切除術と比較した抗菌薬治療の安全性と有効性を評価した。 PubMed、Embase、Cochrane Central Register of Controlled Trialsをデータベースの開設から2023年6月6日まで検索し、画像診断で急性虫垂炎が確認された成人(18歳以上)の治療として、虫垂切除術と抗菌薬治療を比較したランダム化比較試験を抽出した。合併症に関する1年間の追跡データがない試験は除外した。主要アウトカムは1年間の合併症発生率とし、重要な副次アウトカムは1年間の虫垂切除率であった。 主な結果は以下のとおり。・887件の論文がスクリーニングされ、8件が組み入れ対象となり、そのうち6件のランダム化比較試験の2,101例が解析対象となった。抗菌薬群は1,050例、虫垂切除術群は1,051例であった。・1年間の追跡期間で合併症が認められたのは、抗菌薬群57例(5.4%)、虫垂切除術群87例(8.3%)であった(オッズ比[OR]:0.49[95%信頼区間[CI]:0.20~1.20]、リスク差:-4.5%ポイント[95%CI:-11.6~2.6])。・介入前の画像診断で虫垂結石を認めた集団では、抗菌薬群のほうが虫垂切除術群よりも合併症リスクが高かった(193例中29例[15.0%]vs.190例中12例[6.3%]、OR:2.82[95%CI:1.11~7.18]、リスク差:13.2%ポイント[95%CI:2.3~24.2])。・抗菌薬群で虫垂切除術を受けたのは356例(33.9%)であった。・抗菌薬群の虫垂結石を認めた集団で虫垂切除術を受けたのは193例中94例(48.7%)と多かった一方、抗菌薬群の虫垂結石を認めなかった集団では857例中262例(30.6%)であった。 研究グループは、「これらのデータは、共同意思決定(Shared Decision Making)における重要な要素となるだろう」とまとめた。

157.

sepsis(敗血症)【病名のルーツはどこから?英語で学ぶ医学用語】第20回

言葉の由来「敗血症」は英語で“sepsis”といいます。日本の臨床現場でもよく用いられるため、なじみのある人も多いかもしれません。この言葉は「腐敗、物質の分解」を意味する古代ギリシャ語の“sepsis(「e」はeにサーカムフレックス)”に由来するという説が一般的です。紀元前4世紀という大昔に、すでにヒポクラテスが“sepsis”を医学的な概念として用いていたことが記録に残っているといいます。ほかの医学用語と比べても、殊に歴史の深い言葉であることがわかります。それほどまでに歴史のある病名ですが、長年統一された定義があったわけではなく、地域や医師それぞれが思い思いの定義で使っている、という状況でした。ようやく1991年にロジャー・ボーンらがSCCM-ACCP(米国集中治療医学会-米国臨床薬学会)会議にて敗血症の統一的な定義をつくることを提唱し、「Sepsis」という国際的なガイドラインが策定されました。以降も改訂が繰り返されていますが、厳密な疾患の定義や診断基準が規定されています。併せて覚えよう! 周辺単語全身性炎症反応症候群systemic inflammatory response syndrome(SIRS)多臓器不全multiple organ failure抗菌薬antibiotics感染源管理source control敗血症性ショックseptic shockこの病気、英語で説明できますか?Sepsis is a life-threatening condition caused by the body's extreme immune response to an infection. It leads to systemic inflammation, organ dysfunction, and can progress to septic shock if not treated promptly.講師紹介

158.

尿路感染を起こしやすいリスクファクターへの介入【とことん極める!腎盂腎炎】第12回

尿路感染を起こしやすいリスクファクターへの介入Teaching point(1)急性期治療のみではなく前立腺肥大や神経因性膀胱などによる複雑性尿路感染症の原因にアプローチできるようになる(2)排尿障害を来す薬剤を把握し内服調整できるようになる《症例1》72歳、男性。発熱を主訴に救急外来を受診し、急性腎盂腎炎の診断で入院となった。抗菌薬加療で経過良好、尿培養で感受性良好な大腸菌が同定されたため経口スイッチし退院の日取りを計画していた。チームカンファレンスで再発予防のアセスメントについて指導医から質問された。《症例2》66歳、男性。下腹部痛、尿意切迫感を主訴に救急外来を受診した。腹部超音波検査で膀胱内尿貯留著明であり、導尿で800mL程度の排尿を認めた。前立腺肥大による尿閉を考えバルーン留置で帰宅、泌尿器科受診の方針としていた。今回急に尿閉に至った原因がないのか追加で問診するように指導医から提案された。はじめに腎盂腎炎を繰り返す場合や男性の尿路感染症では背景疾患の検索、治療が再発予防に重要である。本項では前立腺肥大や神経因性膀胱についての対応、排尿障害を来す薬剤についてまとめる。まず、排尿障害と治療を理解するために、前立腺と膀胱に関与する酵素と受容体、その作用について図に示す。排尿筋は副交感神経によるコリン刺激で収縮、尿道括約筋にはα1受容体が分布しており、α1刺激で収縮する。また、β3受容体も分布しておりβ3刺激で弛緩する。β3受容体は膀胱の平滑筋細胞にも広く分布しており、β3刺激で膀胱を弛緩させる。図 前立腺と膀胱に関与する酵素と受容体画像を拡大する1.前立腺肥大男性は解剖学的に尿路感染症を起こしにくいが、60歳以上から大幅に増加し女性と頻度が変わらなくなる。これは前立腺肥大の有病率の増加が大きく影響する1)。肥大していても症状を自覚していないこともあるので注意しよう。症状は国際前立腺症状スコア(IPSS)とQOLスコアを使用し聴取する2)。薬物療法として推奨グレードA2)であるα1遮断薬、5α還元酵素阻害薬とPDE5阻害薬を処方例とともに表1で解説する。生活指導(多飲・コーヒー・アルコールを含む水分を控える、膀胱訓練・促し排尿、刺激性食物の制限、排尿障害を来す薬情提供、排便コントロール、適度な運動、長時間の坐位や下半身の冷えを避ける)も症状改善に有効である2)。2.神経因性膀胱神経因性膀胱では、上流の原因検索と排尿機能廃絶のレッテルを早期に貼らないことが大事な2点であると筆者は考える。中枢神経障害(脳血管障害、脊髄疾患、神経変性疾患など)、末梢神経障害(骨盤内手術による直接的障害、帯状疱疹などの感染症や糖尿病性ニューロパチー)で分けて考える。機能からも、蓄尿機能と排尿機能のどちらに障害を来しているのか評価するが、両者を合併することも多い。薬物治療は蓄尿障害であれば抗コリン薬などが用いられ、排尿障害であればコリン作動薬やα1受容体遮断薬が用いられる(表1)。 表1 前立腺肥大症治療薬、神経因性膀胱治療薬の特徴と処方例画像を拡大する薬剤で奏功しない場合でも、尿道バルーンカテーテル留置はQOLの低下や感染リスクを伴うことから、間欠的自己導尿が対応可能か考慮しよう。臥位では腹圧をかけにくいため排尿姿勢の確認も大切である。急性期の状態を脱し、全身状態、ADLの改善とともに排泄機能も改善するため、看護師やリハビリを含めた多職種で協力して経時的に評価を行っていくことを忘れてはならない。看護記録の「自尿なし」という記載のみで排尿機能廃絶というレッテルを貼らないようにしよう。3.薬剤による排尿障害薬剤も排尿障害の原因となり、尿閉の原因の2~10%程度といわれている6,7)。抗コリン作用のある薬剤、α刺激のある薬剤、β遮断作用のある薬剤で尿閉が生じる。プロスタグランジンも排尿筋の収縮を促すため、合成を阻害するNSAIDsも原因となる8)。カルシウム拮抗薬も排尿筋弛緩により尿閉を来す。過活動性膀胱に対して使用されるβ3作動薬のミラベグロンで排尿障害となり尿路感染症の原因となる例もしばしば経験する。急性尿閉の原因がかぜ薬であったというケースは読者のみなさんも経験があるだろう。総合感冒薬には第1世代抗ヒスタミン薬やプソイドエフェドリンが含まれるものがあり、かぜに対して安易に処方された薬剤の結果で尿閉を来してしまうのである。排尿障害の原因検索という観点と自身の処方薬で排尿障害を起こさないためにも排尿障害を起こし得る薬剤(表2)9)を知っておこう。表2 排尿障害を来す薬剤リスト画像を拡大する《症例1(その後)》担当看護師に夜の様子を確認すると夜間頻尿があり排尿のために数回目覚めていた。IPSSを評価したところ16点、前立腺体積は42mLで中等症の前立腺肥大症が疑われた。退院後外来で泌尿器科を受診し前立腺肥大症と診断、タムスロシン処方開始となり夜間頻尿は改善し尿路感染症の再発も認めなかった。《症例2(その後)》追加問診で1週間前に感冒のため市販の総合感冒薬を内服していたことが判明した。抗ヒスタミン薬が含まれており抗コリン作用による薬剤性の急性尿閉と考えられた。感冒は改善しており薬剤の中止、バルーン留置し翌日の泌尿器科を受診した。前立腺肥大症が背景にあることが判明したが、内服中止後はバルーンを抜去しても自尿が得られたとのことであった。1)Sarma AV, Wei JT. N Engl J Med. 2012;367:248-257.2)日本泌尿器科学会 編. 男性下部尿路症状・前立腺肥大症診療ガイドライン リッチヒルメディカル;2017.3)Fisher E, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2014;2014:CD006744.4)National Institute for health and care excellence. Lower urinary tract symptoms in men:management. 2010.5)Tsukamoto T, et al. Int J Urol. 2009;16:745-750.6)Tesfaye S, et al. N Engl J Med. 2005;352:341-350.7)Choong S, Emberton M. BJU Int. 2000;85:186-201.8)Verhamme KM, et al. Drug Saf. 2008;31:373-388.9)Barrisford GW, Steele GS. Acute urinary retention. UpToDate.(最終閲覧日:2021年)

159.

市中肺炎、ステロイドを検討すべき患者は?

 市中肺炎(CAP)は、過剰な炎症反応が死亡と関連することから、ステロイドの併用が有効である可能性が指摘されている。そこで、複数の無作為化比較試験(RCT)やシステマティックレビュー・メタ解析が実施されているが、ステロイドの併用による死亡率への影響については議論が続いている。そのような背景から、オランダ・エラスムス大学医療センターのJim M. Smit氏らの研究グループは、CAPによる入院患者を対象としたRCTの個別患者データ(IPD)を用いたメタ解析を実施し、ステロイドの併用の30日死亡率への影響を評価した。その結果、ステロイドの併用により30日死亡率が低下し、とくにCRP高値の患者集団で有用である可能性が示された。本研究結果は、Lancet Respiratory Medicine誌オンライン版2025年1月29日号に掲載された。 CAPにより入院した患者を対象に、ステロイド併用の有用性を検討した8つのRCTを抽出した。これらのRCTのIPDを用いてメタ解析を実施した。主要評価項目は30日死亡率とし、抗菌薬にステロイドを併用した群(ステロイド群)と抗菌薬にプラセボを併用した群(プラセボ群)を比較した。CRPや肺炎重症度(PSI)スコアなどによる治療効果の異質性も検討した。 主な結果は以下のとおり。・解析対象は、8つのRCTの対象患者3,224例であった。・30日死亡率は、ステロイド群6.6%(106/1,618例)、プラセボ群8.7%(140/1,606例)であり、ステロイド群が有意に低かった(オッズ比[OR]:0.72、95%信頼区間[CI]:0.56~0.94)。・CRP 204mg/L以下の集団における30日死亡率は、ステロイド群13.0%(46/355例)、プラセボ群13.2%(49/370例)であり、両群間に差はみられなかった(OR:0.98、95%CI:0.63~1.50)。・CRP 204mg/L超の集団における30日死亡率は、ステロイド群6.1%(20/329例)、プラセボ群13.0%(39/301例)であり、ステロイド群が低かった(OR:0.43、95%CI:0.25~0.76)。・PSIスコア(クラスI~III vs.クラスIV/V)による治療効果の差はみられなかった。・ステロイド群では、高血糖の発現(OR:2.50、95%CI:1.63~3.83、p<0.0001)、再入院(OR:1.95、95%CI:1.24~3.07、p=0.0038)が多かった。 本研究結果について、著者らは「CAPによる入院患者において、CRP高値の場合はステロイドの併用を考慮すべきであることが示唆された」と考察した。

160.

適切な感染症管理が認知症のリスクを下げる

 認知症は本人だけでなく介護者にも深刻な苦痛をもたらす疾患であり、世界での認知症による経済的損失は推定1兆ドル(1ドル155円換算で約155兆円)を超えるという。しかし、現在のところ、認知症に対する治療は対症療法のみであり、根本療法の開発が待たれる。そんな中、英ケンブリッジ大学医学部精神科のBenjamin Underwood氏らの最新の研究で、感染症の予防や治療が認知症を予防する重要な手段となり得ることが示唆された。 Underwood氏によると、「過去の認知症患者に関する報告を解析した結果、ワクチン、抗菌薬、抗ウイルス薬、抗炎症薬の使用は、いずれも認知症リスクの低下と関連していることが判明した」という。この研究結果は、同氏を筆頭著者として、「Alzheimer's & Dementia: Translational Research & Clinical Interventions」に1月21日掲載された。 認知症の治療薬開発には各製薬企業が注力しているものの、根本的な治療につながる薬剤は誕生していない。このような背景から、認知症以外の疾患に使用されている既存の薬剤を、認知症治療薬に転用する研究が注目を集めている。この方法の場合、薬剤投与時の安全性がすでに確認されているので、臨床試験のプロセスが大幅に短縮される可能性がある。 Underwood氏らは、1億3000万人以上の個人、100万症例以上の症例を含む14の研究を対象としたシステマティックレビューを行い、他の疾患で使用される薬剤の認知症治療薬への転用可能性について検討を行った。 文献検索には、MEDLINE、Embase、PsycINFOのデータベースを用いた。包括条件は、成人における処方薬の使用と標準化された基準に基づいて診断された全原因認知症、およびそのサブタイプの発症との関連を検討した文献とした。また、認知症の発症に関連する薬剤(降圧薬、抗精神病薬、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬など)と認知症リスクとの関連を調べている文献は除外した。 検索の結果、4,194件の文献がヒットし、2人の査読者の独立したスクリーニングにより、最終的に14件の文献が抽出された。対象の文献で薬剤と認知症リスクとの関連を調べた結果、ワクチン、抗菌薬、抗ウイルス薬、抗炎症薬が認知症リスクの低減に関連していることが明らかになった。一方、糖尿病治療薬、ビタミン剤・サプリメント、抗精神病薬は認知症リスクの増加と関連していた。また、降圧薬と抗うつ薬については、結果に一貫性がなく、発症リスクとの関連について明確に結論付けられなかった。 Underwood氏は、「認知症の原因として、ウイルスや細菌による感染症が原因であるという仮説が提唱されており、それは今回得られたデータからも裏付けられている。これらの膨大なデータセットを統合することで、どの薬剤を最初に試すべきかを判断するための重要な証拠が得られる。これにより、認知症の新しい治療法を見つけ出し、患者への提供プロセスを加速できることを期待する」と述べた。 また、ケンブリッジ大学と共同で研究を主導した英エクセター大学のIlianna Lourida氏は、ケンブリッジ大学のプレスリリースの中で、「特定の薬剤が認知症リスクの変化と関連しているからといって、それが必ずしも認知症を引き起こす、あるいは実際に認知症に効くということを意味するわけではない。全ての薬にはベネフィットとリスクがあることを念頭に置くことが重要である」と付け加えている。

検索結果 合計:856件 表示位置:141 - 160