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重症敗血症へのβ-ラクタム系薬投与、持続と間欠の比較(BLING III)/JAMA

 重症敗血症患者に対するβ-ラクタム系抗菌薬による治療では、間欠投与と比較して持続投与は、90日の時点での死亡率に有意差を認めないことが、オーストラリア・Royal Brisbane and Women's HospitalのJoel M. Dulhunty氏らが実施した「BLING III試験」で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2024年6月12日号で報告された。7ヵ国104のICUで無作為化第III相試験 BLING III試験は、7ヵ国の104の集中治療室(ICU)で実施した非盲検無作為化第III相試験であり、2018年3月~2023年1月に参加者を登録し、2023年4月に90日間の追跡を完了した(オーストラリア・国立保健医療研究評議会などの助成を受けた)。 年齢18歳以上、ICUに入室し、無作為化前の24時間以内にタゾバクタム・ピペラシリンまたはメロペネムの投与を開始した敗血症患者7,031例(平均年齢59[SD 16]歳、女性35%)を登録し、処方された抗菌薬を持続静注する群に3,498例、間欠静注する群(対照群)に3,533例を無作為に割り付け、担当医が決定した期間またはICU退室のいずれか早い期日まで投与した。 主要アウトカムは、無作為化から90日以内の全死因死亡とした。90日死亡率、持続投与群24.9% vs.間欠投与群26.8%で有意差なし 最も頻度の高い主要感染部位は肺(4,181例、59.5%)で、次いで腹腔内(916例、13.0%)、血液(562例、8.0%)、泌尿器(380例、5.4%)の順であった。投与期間中央値は、持続投与群が5.8日(四分位範囲[IQR]:3.1~10.2)、間欠投与群は5.7日(3.1~10.3)だった。 90日以内に、持続投与群の3,474例中864例(24.9%)、間欠投与群の3,507例中939例(26.8%)が死亡し(絶対群間差:-1.9%[95%信頼区間[CI]:-4.9~1.1]、オッズ比[OR]:0.91[95%CI:0.81~1.01])、両群間に有意な差を認めなかった(p=0.08)。 事前に定義した5つのサブグループ(肺感染[あり、なし]、β-ラクタム系抗菌薬の種類[タゾバクタム・ピペラシリン、メロペネム]、年齢[65歳未満、65歳以上]、性別、APACHE IIスコア[25点未満、25点以上])のいずれにおいても、90日死亡率に関して持続投与群と間欠投与群に有意な差はなかった。臨床的治癒率は持続投与群で良好 副次アウトカムである14日の時点までに臨床的治癒を達成した患者は、間欠投与群が3,491例中1,744例(50.0%)であったのに対し、持続投与群は3,467例中1,930例(55.7%)と有意に良好であった(絶対群間差:5.7%[95%CI:2.4~9.1]、OR:1.26[95%CI:1.15~1.38]、p<0.001)。 また、他の3つの副次アウトカム(14日以内の新規感染/菌定着/多剤耐性菌またはClostridioides difficile感染、全死因によるICU内死亡、全死因による院内死亡)は、いずれも両群間に有意な差を認めなかった。 有害事象は、持続投与群で10件(0.3%)、間欠投与群で6件(0.2%)発生した。このうち重篤な有害事象は持続投与群の1件で認めた脳症で、誤嚥性肺炎と心停止をもたらし、敗血症性ショックで死亡した。このイベントは、担当医によってメロペネムに関連する可能性があると評価された。 著者は、「効果推定値のCIには、この患者集団におけるβ-ラクタム系抗菌薬の持続投与には重要な効果がない可能性と、臨床的に重要な有益性がある可能性の両方が含まれる」としている。

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軽い健康問題なら薬剤師による治療が低コストの選択肢に

 薬剤師が軽症の疾患を治療できるようにすることで、患者の治療費を抑えられるとともに、より多くの人が医療にアクセスできるようになり、何百万ドルもの医療費を削減できる可能性のあることが、米ワシントン州立大学薬物療法学准教授のJulie Akers氏らの研究で示された。研究結果は、「ClinicoEconomics and Outcomes Research」に5月3日掲載された。 この研究で検討の対象となった米ワシントン州では、1979年以降、医師から特定の医薬品を処方および投与する許可を得た薬剤師には、患者を治療する法的権利が認められている。薬剤師はその教育の一環として、日常的によく見られる疾患の臨床評価の研修を受けており、OTC医薬品(市販薬)で治療可能な疾患についての助言を行っている。薬剤師が関与できるレベルをさらに上げて、患者を治療する権利である「処方権」を与えれば、薬剤師は、OTC医薬品では不十分な場合に医療用医薬品を処方することも可能になる。 Akers氏らは今回の研究で、2016~2019年にワシントン州の46の薬局で計175人の薬剤師から治療を受けた496人の患者のデータを分析した。同氏らは、患者が薬局を受診した30日後に追跡調査を行い、治療効果を評価した。次に、同様の疾患で診療所や緊急医療クリニック(urgent care clinic)、救急救命室(ER)を受診し、医師による治療を受けた患者の保険データと比較した。患者が治療を求めた原因として最も多かったのは、避妊、喘息、尿路感染症、アレルギー、頭痛の順であった。 その結果、検討したほぼ全ての軽症疾患で、薬局での治療が有効であることが明らかになった。また、軽症疾患は、診療所や緊急医療クリニックの医師が治療するよりも薬局で治療した方が、治療費が平均で約278ドル(1ドル155円換算で約4万3,000円)低くなると推定された。具体的な例を挙げると、合併症のない尿路感染症に対して抗菌薬による治療を行った場合の平均的な費用は、診療所の医師による治療では約121ドル(同約1万8,800円)、ERでの治療では約963ドル(同約14万9,300円)であったが、薬局での治療であれば30ドル(同約4,700円)だった。本研究の3年間の調査期間において、通常の医療機関で治療された全ての軽症疾患が地域の薬剤師によって治療されていた場合、医療費は推定2300万ドル(同約36億5500万円)節約できたものと推算された。 こうした結果を踏まえた上でAkers氏らは、「薬剤師に軽症疾患を治療する権限を与えることは、農村部などの医師へのアクセスが限られている地域に恩恵をもたらす可能性がある」と結論付けている。 Akers氏は、「薬剤師は、特に地域の外来医療において、われわれの州および国が抱える医療アクセスの問題の一部に実行可能な解決策をもたらす」と言う。その上で、「薬剤師はこの仕事ができるように訓練を受け、それを行う資格を持っているが、残念なことに十分に活用されていない場合が多い。しかし薬剤師は、患者がいかに早く医療にアクセスできるかに大きな影響を与え得る。患者が早い段階で医療にアクセスできれば、疾患の複雑化や進行を最小限に抑えられる可能性がある」と付け加えている。 Akers氏はさらに、「われわれは、治療へのアクセスが得られずに苦労している患者が徐々に増えていくのを目の当たりにしている。過去数十年の間、緊急医療クリニックや救急外来などでの医療サービスが不必要な患者がそうしたサービスを利用するのを見てきた」と言う。もし、より多くの州、あるいは連邦政府がこのアプローチを受け入れれば、人々は、薬局でワクチンを接種するのと同じように、この種の医療サービスも薬局に期待できるようになるのではないかとの展望をAkers氏らは示している。 今後の研究では、薬局の医療費請求への移行の支援について検討する予定であるという。Akers氏らは、そのような支援があれば経済的に治療費の自己負担が難しい人々の医療へのアクセスが大幅に向上する可能性があるとの見方を示している。

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急性膵炎の管理にエビデンスに基づく推奨事項を提起、米ACG

 急性膵炎(AP)患者の管理について、エビデンスに基づく推奨が示された臨床ガイドラインが、米国消化器病学会(ACG)発行の「The American Journal of Gastroenterology」3月号に掲載された。 米ニューヨーク州立大学ブルックリン校のScott Tenner氏らは、膵臓の急性炎症と定義されるAPの管理について論じている。 著者らは、APは不均一な疾患であり、患者によって進行が異なることを指摘している。ほとんどの患者は数日間症状が続くが、約20%の患者は、膵壊死と臓器不全の一方または両方を含む合併症を経験する。AP患者には、胆道原性膵炎を評価するための経腹超音波検査が推奨され、特発性AP患者には、追加の診断的評価が推奨される。患者には、輸液蘇生を中等度の強度で実施することが推奨される。静脈路からの輸液蘇生には、生理食塩水よりも、乳酸リンゲル液が推奨される。胆管炎を伴わない急性胆道原性膵炎では、早期の内視鏡的逆行性胆管膵管造影よりも、薬剤治療が推奨される。重度のAP患者には、予防抗菌薬を使用しないことが推奨される。感染性膵壊死が疑われる患者には、穿刺吸引は推奨されない。軽度のAP患者には、従来の絶食の手法よりも、患者が許容できれば経口摂取の早期開始(24~48時間以内)が推奨される。軽度のAP患者には、流動食から固形食へと段階的に進める手法よりも、初回からの低脂肪固形食の経口摂取が推奨される。 著者らは、「さらなる研究が必要であるが、感染壊死が認められた患者には緊急手術が必要である、という考え方はもはや妥当ではない」と述べている。

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長期間、精液を静注していた男性【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第259回

長期間、精液を静注していた男性ある男性が激しい背中の疼痛で受診しました。3日前に重たいものを持ち上げてから、痛いとのこと。しかし、彼の腕はなぜか化膿性に腫脹していました。蜂窩織炎です。…あれ、痛いのは背中じゃないんですか?「いやいや、話せば長いのですが、実は私、精液を注射していまして…」という、まったくエキセントリックな論文を紹介しましょう。Dunne L, et al.“Semenly” Harmless Back Pain: An Unusual Presentation of a Subcutaneous Abscess. Ir Med J. 2019 Jan 15;112(1):857.病歴をよくよく聴いてみると、腰痛はずっと前からあったようです。3日前から悪化したわけではなく、慢性腰痛があったということです。そして、この症状に対して彼は約18ヵ月にもわたって、毎月1回、腕に精液を静注していたようです。繰り返します。腕に精液を静注していたのです…ッ!…ちょっと何言ってるかわからないですが、話を進めましょう。今回腕の蜂窩織炎が悪化したのは、静注だけでなく筋肉のほうにも精液を追加投与したからではないかとのこと。腰痛も気になっていたでしょうが、おそらくこちらの腕のほうが気掛かりだったに違いありません。いやしかし、そもそも、なぜ精液を自己注射しようとしたのか。地域にこういった民間療法があるわけではなく、何らかのポリシーで精液を注射することで腰痛が治ると信じていたようです。今回の症例報告の著者は、過去の文献で精液を静注して皮下膿瘍・蜂窩織炎を発症した症例がないか調べたようですが、残念ながら1例もありませんでした。そりゃそうや!その後、彼は精液ではなく抗菌薬を静注され、事なきを得ました。やれやれです。というわけで、エビデンスのない民間療法はダメだよ、という啓蒙になっています。

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重症敗血症へのβ-ラクタム系薬、持続投与vs.間欠投与~メタ解析/JAMA

 敗血症または敗血症性ショックでICUに入院中の重症成人患者において、β-ラクタム系抗菌薬の持続点滴投与は間欠点滴投与と比較し、90日死亡リスクの低下と関連していることが、オーストラリア・クイーンズランド大学のMohd H. Abdul-Aziz氏らによるシステマティック・レビューとメタ解析の結果で示された。β-ラクタム系抗菌薬の持続点滴投与が、敗血症または敗血症性ショックの重症成人患者において臨床的に重要な転帰を改善するかどうかはわかっていなかった。著者は、「今回の結果は、臨床医が敗血症および敗血症性ショックの管理における標準治療として持続点滴投与を考慮すべきことを示している」とまとめている。JAMA誌オンライン版2024年6月12日号掲載の報告。システマティックレビューとメタ解析で、90日全死亡率を比較 研究グループは、敗血症または敗血症性ショックの重症成人患者を対象にβ-ラクタム系抗菌薬の持続点滴投与と間欠点滴投与を比較した無作為化臨床試験について、データベース開始から2024年5月2日までに公表された論文を、言語を問わずMEDLINE(PubMed経由)、CINAHL、Embase、Cochrane Central Register of Controlled TrialsおよびClinicalTrials.govを用いて検索した。 2人の研究者が独立してデータ抽出を行い、バイアスリスクを評価。エビデンスの確実性は、GRADEアプローチを用いて評価した。主要統計的手法としてベイジアンフレームワークを、二次的手法として頻度論的フレームワークを用いた。解析にはランダム効果モデルを用い、リスク比または平均差としてプール推定値を求めた。 主要アウトカムは90日全死因死亡率、副次アウトカムはICU死亡率、臨床的治癒率などであった。持続点滴投与で90日全死因死亡リスクが低下、エビデンスの確実性は高い 敗血症または敗血症性ショックの重症成人9,108例を含む計18件の無作為化試験が解析に組み入れられた。全体の患者背景は、年齢中央値54歳(四分位範囲[IQR]:48~57)、男性5,961例(65%)であった。18試験のうち17試験(9,014例)より主要アウトカムのデータが提供された。 β-ラクタム系抗菌薬の間欠点滴投与と比較して持続点滴投与の90日全死因死亡率のリスク比は0.86(95%信用区間[CrI]:0.72~0.98、I2=21.5%、エビデンスの確実性:高)であり、持続点滴投与が90日全死因死亡率の低下と関連している事後確率は99.1%であった。 β-ラクタム系抗菌薬の持続点滴投与は、ICU死亡リスクの低下(リスク比:0.84、95%CrI:0.70~0.97、エビデンスの確実性:高)および臨床的治癒率の増加(リスク比:1.16、95%CrI:1.07~1.31、エビデンスの確実性:中)とも関連していた。

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病院受診すべき尿の色

あなたの尿はどんな色?今すぐ病院へ!状態特徴疑う病気要注意正常茶~オレンジ色トマトジュース様の赤色やや赤みカフェオレ色やや白色濁った黄色ほぼ無色透明薄黄色~黄色〇―◎◎〇〇ーー色にごり早めに受診を胆汁が出ている状態。泡も黄色ければ「ビリルビン尿」「血尿」*「膿尿」**または「血尿」*感染症により炎症が出ている状態「膿尿」**尿酸が尿中に出ている状態「希釈尿」健康な状態胆汁は便への排泄:〇尿への排泄:×出血部位や出血量で濃淡が変化糖尿病性腎症などで腎臓の細胞が傷付いている可能性抗菌薬治療が必要リン酸塩炭酸塩シュウ酸塩などの結晶が出ることもある血中の尿酸が増えると生じる原因は水分、アルコールの多量摂取摂取水分量食事内容服用薬などで濃淡差脱水状態は「濃縮尿」匂いは弱い尿路感染症結石糖尿病ー痛風尿崩症肝機能障害結石胆道閉塞膀胱がん尿路感染症による出血尿路感染症尿路結石*血尿とは、尿に血液(赤血球)が混ざっている状態の尿のこと。**膿尿とは、尿に白血球が出ている状態の尿のこと。白血球の量で、にごり度合いが変化する。尿の色を見る場合、毎朝一番の早朝尿をチェックしましょう。最も色が濃くなるので変化を見つけやすいです。出典:高橋 悟氏,高野 秀樹(監修). 主婦の友社. 2019. 尿の健康手帖監修:高橋 悟氏(日本大学医学部泌尿器科学系 主任教授)、菅野 希氏(日本大学医学部附属板橋病院 臨床検査部尿検査室)写真:ケアネット撮影Copyright © 2024 CareNet,Inc. All rights reserved.

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発熱性好中球減少症に対するグラム陽性菌をカバーする抗菌薬の追加の適応【1分間で学べる感染症】第5回

画像を拡大するTake home message発熱性好中球減少症に対するグラム陽性菌をカバーする抗菌薬の追加の適応を7つ覚えよう。発熱性好中球減少症は対応が遅れると致死率が高いため、迅速な対応が求められます。入院中の患者の場合、基本的には緑膿菌のカバーを含めた広域抗菌薬の投与が初期治療として推奨されていますが、それに加えてグラム陽性菌に対するカバーを追加するかどうかは悩みどころです。そこで、今回はガイドラインで推奨されている以下の7つの適応を理解するようにしましょう。1)血行力学的不安定または重症敗血症の場合2)血液培養からグラム陽性菌が陽性の場合3)メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、バンコマイシン耐性腸球菌 (VRE)、ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)の保菌がある場合4)重症粘膜障害(フルオロキノロン系抗菌薬予防内服)の場合5)皮膚軟部組織感染症を有する場合6)カテーテル関連感染症を臨床的に疑う場合7)画像上、肺炎が存在する場合上記のうち、1)2)に関してはとくに疑問なく理解できると思います。3)に関しては、患者のこれまでの記録をカルテで確認することで、そのリスクを判断します。4)5)6)に関しては、身体診察でこれらを疑う場合には、すぐに追加を検討します。6)はカテーテル局所の発赤や腫脹、疼痛などがあれば容易に判断できますが、血液培養が陽性となるまでわからないこともあるため注意が必要です。7)に関してはMRSAによる肺炎を懸念しての推奨です。グラム陽性菌をカバーする抗菌薬の追加の適応に関しては、上記7つをまずは理解したうえで、その後のde-escalationを行うタイミングや継続の有無に関しては、その後の臨床経過や検査結果から総合的に判断しましょう。1)Freifeld AG, et al. Clin Infect Dis. 2011;52:e56-e93.

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リウマチ性心疾患、低中所得国で死亡率が高い/JAMA

 リウマチ性心疾患(RHD)成人患者の死亡率は高く、弁膜症の重症度と関連しており、一方で弁手術と弁形成術は死亡率の大きな低下と関連していることを、インド・All India Institute of Medical SciencesのGanesan Karthikeyan氏らが、国際多施設共同前向き観察研究「INVICTUS試験」の結果で報告した。RHDは、低中所得国において依然として公衆衛生上の問題となっているが、複数の流行国で患者を登録した大規模研究はほとんどなかった。今回の結果を受けて著者は、「抗菌薬による予防と抗凝固療法を中心とした現在のアプローチに加え、外科的治療とインターベンション治療へのアクセスを改善する必要性が高まっている」とまとめている。JAMA誌オンライン版2024年6月5日号掲載の報告。24ヵ国のRHD患者約1万4千例の予後を前向きに調査 研究グループは、RHDが流行中の低中所得国24ヵ国の138施設において、心エコー検査により臨床的にRHDが確認され同意が得られた18歳以上の成人患者を連続登録し、6ヵ月ごとに対面または電話で追跡調査を行い、1年ごとに対面で評価した。 主要アウトカムは全死因死亡、副次アウトカムは死因別死亡、心不全(HF)による入院、脳卒中、感染性心内膜炎、リウマチ熱の再発などであった。アウトカムは、世界銀行グループ加盟国の最新の所得水準別分類(低所得国[LICs]、低中所得国[LMICs]、高中所得国[UMICs]、高所得国[中東、北アフリカ]、北米、南アジア、サハラ以南)に基づきイベント発生率を分析し、多変量Cox回帰モデルを使用して死亡の予測因子を同定した。 2016年8月~2022年5月に、計1万3,696例のRHD患者が登録された。2,769例(20%)がLICs(エチオピア、マラウイ、モザンビーク、ネパール、ルワンダ、タンザニア、ウガンダ)、8,453例(62%)がLMICs(カメルーン、エジプト、インド、ケニア、ニジェール、パキスタン、フィリピン、スーダン、ザンビア、ジンバブエ)、2,474例(18%)がUMICs(ボツワナ、ブラジル、中国、カザフスタン、メキシコ、パラグアイ、南アフリカ共和国)であった。全体の平均年齢は43.2歳、女性が72%であった。死亡率は14.2%、その約7割は血管死 観察期間中央値3.2年(4万1,478人年)において、1万2,967例(94.7%)の生命予後に関するデータが入手可能であった。 全体で1,943例(14.2%、4.7%/人年)が死亡した。死亡例の67.5%(1,312例)は血管死で、主にHF(667例)または心臓突然死(352例)であった。 観察期間中、弁手術を受けた患者は少なく(604例、4.4%)、HFによる入院(805例、5.9%、年間発生頻度2.0%)も低値であった。また、非致死的脳卒中(年間発生頻度0.6%)、感染性心内膜炎(0.07%)、リウマチ熱の再発(0.02%)もまれであった。 死亡リスクの増加と関連していた因子は、うっ血性心不全(ハザード比[HR]:1.68、95%信頼区間[CI]:1.50~1.87、p<0.001)、肺高血圧症(1.52、1.37~1.69、p<0.001)、心房細動(1.30、1.15~1.46、p<0.001)など重症弁膜症のマーカーであった。一方、観察期間中の弁手術(0.23、0.12~0.44、p<0.001)や弁形成術(0.24、0.06~0.95、p=0.042)は死亡リスクの低下と関連していた。 患者レベルの因子を調整した後、国の所得水準が高いことが死亡率の低下と関連していることが認められた。

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小児急性中耳炎診療ガイドライン 2024年版 第5版

大幅アップデートの最新版登場!6年ぶりの改訂となる2024年版では、以下多くのアップデートがなされています。肺炎球菌結合型ワクチン(PCV)のエビデンスの強化や、従来からの抗菌薬適正使用に基づいた一部抗菌薬の用量・選択候補薬の見直し、軽症・中等症・重症のアルゴリズムを合体した「アルゴリズムのまとめ」の追加、重症度判定などの参考用の鼓膜画像の更新など、本ガイドラインの「中耳炎診療の基本を伝える」使命に則った大改訂版となりました。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する小児急性中耳炎診療ガイドライン 2024年版 第5版定価2,860円(税込)判型B5判頁数116頁(図数:4枚、カラー図数:2枚)発行2024年5月編集日本耳科学会日本小児耳鼻咽喉科学会日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会ご購入(電子版)はこちらご購入(電子版)はこちら紙の書籍の購入はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら紙の書籍の購入はこちら

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日本における市中感染と院内感染の罹患率と死亡率~全国7千万例超のデータ

 細菌および真菌感染症の罹患率や死亡率の現状と年次傾向について、市中感染と院内感染の観点から報告した研究はほとんどない。今回、千葉大学の高橋 希氏らが日本の全国保険請求データベースに登録された7千万例超の入院患者のデータを調べたところ、院内死亡率は院内感染のほうが市中感染よりも有意に高かったが、両群とも死亡率は低下傾向であることが示された。BMC Infectious Diseases誌2024年5月23日号に掲載。 著者らは、全国保険請求データベースから、2010年1月~2019年12月に入院し培養検査が実施され抗菌薬が投与された患者を抽出し、罹患率と院内死亡率の年次推移を患者の年齢で4群に分けて算出し評価した。 主な結果は以下のとおり。・7,396万2,409例の入院患者のうち、市中感染は9.7%、院内感染は4.7%であった。これらの罹患率は両群とも経年的に増加する傾向にあった。・感染症で入院した患者のうち、85歳以上では有意な増加(市中感染:+1.04%/年、院内感染:+0.94%/年、p<0.001)がみられたが、64歳以下では有意な減少(市中感染:-1.63%/年、院内感染:-0.94%/年、p<0.001)がみられた。・院内死亡率は、市中感染より院内感染で有意に高かった(市中感染:8.3%、院内感染:14.5%、調整平均差:4.7%)。・院内感染群は、臓器サポートや患者当たりの医療費が高く、入院期間も長かった。・死亡率は両群で減少傾向が認められた(市中感染:-0.53%/年、院内感染:-0.72%/年、p<0.001)。 今回の日本の大規模請求データベースの解析から、とくに85 歳以上において市中感染と院内感染の両方で入院が増加傾向にあること、院内感染は高齢社会の入院患者にとって大きな負担となっていることが示された。

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治療方針をなかなか選んでくれない患者さんへの対応は?【もったいない患者対応】第7回

登場人物<今回の症例>20代女性右下腹部痛で来院腹部造影CTで軽度の虫垂腫大と周囲の脂肪織濃度上昇あり<軽症の急性虫垂炎を疑ったため、治療方針を相談することに>いかがでしょうか?虫垂が腫れているようです。急性虫垂炎、いわゆる「盲腸」ですね。盲腸ですか! どうすればいいんでしょう?軽い虫垂炎なので、手術で虫垂を切除する方法もありますし、抗菌薬で治療する方法もありますよ。どうしよう…悩みます。どちらがいいんでしょうか?どちらにもメリット、デメリットはありますから、どちらがいい、ということはないんです。治療を選択するのは患者さんですので、お好きなほうをお選びください。その選択を私たちは尊重しますよ。(こちらで誘導して何かあったらこっちの責任だしな…)うーん…。【POINT】軽症虫垂炎の患者さんに、手術と保存的治療(抗菌薬投与)の2つの選択肢を提案していますね。唐廻先生はインフォームドコンセントの重要性に思考を巡らせ、「患者さんが主体的に治療を選択すべき」という考えから、治療について十分な説明をしたうえで患者さんに選択を委ねています。ところが、患者さんは悩み込んでしまい、なかなか選べません。こんなとき、どうすればいいのでしょうか?“選択をお手伝いする”という意識をもつかつて、医師が主体的に治療方針を決め、患者はその判断にすべてを委ねればよい、という考え方が一般的な時代がありました。現在はこうした考え方は“医療パターナリズム”と揶揄されていますし、インフォームドコンセント、すなわち、患者は医療行為について十分な説明を受けたうえで、自由意志に基づいて治療方針について合意するのが大切だということは、大学の講義でも学んできたでしょう。ところが、こうした“患者主体”という考え方は、患者さんに選択を完全に委ね、医師はその選択に関して責任を負わない、といった間違った発想に行き着くことがあります。カルテでも、ことさらに「患者さんが希望したため、この治療を選択した」と強調するような記載を見ることもあります。しかし、医療の専門家ではない患者さんにとっては、「選択権があっても選択できない」というのが実情でしょう。逆に、専門的知識をもつ医師だからこそ、“選択のお手伝い”をする必要があります。患者さんの状況に応じて選択をサポートする治療選択肢が複数あり、どちらかが優れているという明らかなエビデンスがないときは、まずそれぞれのメリット、デメリットをきちんと説明し、「科学的データに照らすといずれにも優劣がない」ことを強調します。そのうえで患者さんに選択を委ねますが、選択に難渋しているときは、専門的知識を使ってその選択をサポートします。たとえば仕事や介護、子育てをしている人は時間的な制約があるので、通院期間や入院の有無などが気になるかと思います。費用を気にする患者さんもいますし、既往や服薬状況によって副作用などのリスクも変わります。また、時間的に余裕がある場合は、いますぐに決めずに少し考える時間を設けたり、ご家族と相談する機会を設けたりすることも可能であることを伝えます。このようにして、医療者と患者さんが価値観を共有し、一緒に治療方針を決めていく過程を、近年ではShared Decision Making(SDM)と呼ぶこともあります。今回の例で重要なのは、まずは各治療選択肢を完全に等価であるとして提示するのではなく、(1)総合的に判断して推奨できる案を提示したうえで、(2)その案を採用しなくてもよいことを明示し、代替案を提示するという方向性が望ましいと考えます。病態に応じてケースバイケースなので、こうした手法が適用できない場合もあるとは思いますが、たとえば今回のようなケースでは次のような説明がいいでしょう。これでワンランクアップ!いかがでしょうか?虫垂が腫れているようです。急性虫垂炎、いわゆる「盲腸」ですね。盲腸ですか!どうすればいいんでしょう?軽い虫垂炎なので、手術で虫垂を切除する方法もありますし、抗菌薬で治療する方法もありますよ(ここで両方のメリット、デメリットを説明)※1。※1:まずはここを丁寧にどうしよう……悩みます。どちらがいいんでしょうか?どちらにもメリット、デメリットがありますから、どちらがいい、という確実なデータはないんです。ただ、抗菌薬の効果が乏しかったときは、いずれにしても手術が必要になります※2。また、お仕事でお忙しい〇〇さんのような方の場合※3、抗菌薬治療だと通院期間が長引いて仕事を休まなければならない日が多くなる可能性があります。一方、手術だと何も問題なければ数日の入院で済みます。その点を考えると、手術のほうがメリットは大きいかもしれません※4。もちろん、手術をせずに抗菌薬で炎症を抑えることもできますし※5、リスクをご理解いただいたうえで抗菌薬治療を希望されるのであれば、それでもまったくかまいません。いかがでしょうか?※2:その治療方針を選んだときの具体的な見通しを伝える。※3:患者さんの生活スタイルを考慮した提案も大事。※4:まずは推奨できる案を提案する。※5:他の選択肢のフォローもあると、患者さんの意思が入りやすい。そうですか。それでしたら、手術をお願いしたいと思います。

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INSPIRE Pneumonia Trial:肺炎に対する抗菌薬選択改善を促すオーダーエントリーシステム(解説:小金丸博氏)

 肺炎は入院を要する最も一般的な感染症であり、米国では毎年150万人以上の成人が肺炎で入院している。肺炎で入院した患者の約半数で不必要に広域なスペクトラムの抗菌薬を投与されていると推定されており、広域抗菌薬の過剰使用を抑制するための効果的な戦略を特定することが求められている。 今回、患者ごとの多剤耐性菌感染リスク推定値を提供するコンピュータ化されたプロバイダーオーダーエントリー(CPOE)システムが、非重症肺炎で入院した患者における経験的広域抗菌薬の使用を減らすことができるかを検討したランダム化比較試験の結果がJAMA誌オンライン版2024年4月19日号に報告された。CPOE介入群では通常の抗菌薬適正使用支援に加えて、多剤耐性菌による肺炎のリスクが10%未満と推定された症例に対して標準的なスペクトラムの抗菌薬を推奨した。また臨床医に対して教育とフィードバックも同時に行った(有効と考えられる複数の方法を組み合わせて行うバンドルといわれる戦略を採用)。その結果、入院最初の3日間の広域抗菌薬の投与日数は通常介入群と比較して28.4%減少した(リスク比:0.72、95%信頼区間:0.66~0.78)。両群においてICU転室までの日数や入院期間に関して差を認めず、安全に広域抗菌薬の使用を抑制できることが示された。 これまで肺炎に対する抗菌薬処方を改善する戦略は、微生物検査の結果が得られて患者の状態が安定した後に、抗菌薬の投与期間を短縮するか、または広域抗菌薬を狭域抗菌薬に変更することに焦点が当てられてきた。しかし、そのような戦略では微生物検査の結果が得られる前に使用された不必要な広域抗菌薬には対処できていなかった。広域抗菌薬に短期間曝露しただけでも、多剤耐性菌感染症、クロストリディオイデス・ディフィシル感染症、その他の抗菌薬に関連した副作用のリスクが高まる可能性がある。本試験は、微生物検査の結果が得られる前に広域抗菌薬の使用を減らすことに焦点を当てているのが新しい視点である。 肺炎で入院する患者のほとんどは、緑膿菌や多剤耐性菌をカバーしない標準的なスペクトラムの抗菌薬で安全に治療できると考えられるが、耐性菌に感染している可能性があるという懸念から広域抗菌薬を選択してしまう臨床医も多く存在する。CPOEシステムを導入することによって、おそらく臨床医が人口全体における薬剤耐性菌の感染リスクが比較的低いことをより明確に認識できるようになり、最初の抗菌薬の選択が広域から標準スペクトラムの抗菌薬へ変更された。本試験では、多剤耐性菌感染症の「低リスク」に分類するための閾値が10%未満に設定されたが、適切な閾値ははっきりしていないと思われる。耐性菌による肺炎のリスクが低い患者をリアルタイムで特定することによって広域抗菌薬の投与が減少する可能性があり、本試験で有効性が示されたCPOEシステムによる介入の効果を本邦でも評価されることを期待したい。

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第217回 耐性菌阻止のみならず耐性を破りさえする化合物を発見

耐性菌阻止のみならず耐性を破りさえする化合物を発見細菌の抗菌薬に対する耐性を防ぎ、さらには耐性をすでに獲得した細菌への抗菌薬の効果をも復活させうる化合物を英国オックスフォード大学のチームが生み出しました1,2)。抗菌薬の手に負えない細菌(薬剤耐性菌)が世界で増えていることは、人類の健康や発展を脅かす一大事の1つです。よくある感染症の多くがますます治療困難になっており、薬剤耐性菌を直接の原因として年間127万例が死亡しています3)。間接的なものも含めるとその数は4倍ほどの495万例にも上り、新たな抗菌薬の開発なしではそれら薬剤耐性菌を発端とする死亡例は今後増加の一途をたどるとみられています。細菌が抗菌薬への耐性を獲得する仕組みの1つは、それら細菌の遺伝配列に新たな変異が生じることです。フルオロキノロンなどの抗菌薬は細菌DNAを傷つけることで細菌を死なせます。DNAが傷つけられた細菌はその傷を修復して変異を増やすSOS反応と呼ばれる経路を発動します。SOS反応は酵素複合体AddABやRecBCDを皮切りに始まります。前者のAddABは主にグラム陽性細菌に備わり、後者のRecBCDはグラム陰性細菌にあります。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)を用いた研究によると、AddABは感染、変異を増やすDNA修復、薬剤耐性に携わります。配列がわかっている細菌のほとんど(約95%)がAddABかRecBCDのいずれかを保有しており、AddABやRecBCDの阻害薬は細菌全般に広く効きそうです。また、都合がよいことに哺乳類にRecBCDやAddABに似通う相同配列は見つかっておらず、それらの阻害薬のヒトへの影響は少なくて済みそうです。AddAB/RecBCD阻害薬の報告はすでにいくつかあり、2019年に発見が報告されたIMP-1700という名称の化合物はその1つで、MRSAのSOS反応をいくらか阻害することが確認されています。オックスフォード大学のチームはIMP-1700の加工品一揃いを作り、フルオロキノロン抗菌薬であるシプロフロキサシンと一緒にMRSAにそれらを投与して効果のほどを検討しました。その検討が実を結び、DNA損傷を促進しつつシプロフロキサシン耐性出現を阻害する化合物OXF-077が見つかりました。シプロフロキサシンやその他の抗菌薬とOXF-077を組み合わせると、それらの抗菌薬はより少ない量でMRSAの増殖を阻害できました。また、シプロフロキサシンとOXF-077の組み合わせは耐性出現を有意に抑制し、SOS反応の阻害薬で細菌の薬剤耐性を抑制しうることが初めて証明されました。OXF-077は耐性抑制にとどまらず、耐性をすでに獲得してしまっている細菌への抗菌薬の効果を復活させる役割もあります。シプロフロキサシンの耐性を獲得した細菌にOXF-077と共にシプロフロキサシンを与えたところ、シプロフロキサシンの効果が非耐性細菌への効果と同程度に回復しました。薬剤耐性菌の世界的な脅威に対抗する細菌DNA修復/SOS反応阻害薬の今後の開発にOXF-077が役立つだろうと著者は結論しています。参考1)Bradbury JD, et al. Chemical Science. 2024 May 16. [Epub ahead of print]2)New molecule found to suppress bacterial antibiotic resistance evolution / University of Oxford 3)Antimicrobial Resistance Collaborators. Lancet. 2022;399:629-655.

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ビソプロロール併用、COPDの治療を要する増悪を低減せず/JAMA

 増悪リスクの高い慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者の治療において、β1選択性β遮断薬ビソプロロールの追加はプラセボと比較して、経口コルチコステロイド、抗菌薬、あるいはこれら両方による治療を要するCOPD増悪の回数を抑制しないことが、英国・リバプール熱帯医学校のGraham Devereux氏らが実施した「BICS試験」で示された。研究の詳細は、JAMA誌オンライン版2024年5月19日号で報告された。英国76施設の無作為化プラセボ対照比較試験 BICS試験は、英国の76施設(プライマリケア施設45、二次医療施設31)で実施した二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験であり、2018年10月~2022年5月に参加者を登録した(英国国立衛生研究所[NIHR]医療技術評価[HTA]プログラムの助成を受けた)。 スパイロメトリーで中等度以上の気流閉塞(1秒量[FEV1]/努力性肺活量<0.7、FEV1の予測値に対する実測値の割合<80%)を認め、過去12ヵ月間に経口コルチコステロイド、抗菌薬、あるいはこれら両方による治療を要するCOPD増悪が2回以上発現したCOPD患者519例を登録し、ビソプロロール群に261例、プラセボ群に258例を割り付けた。患者はそれまで受けていたCOPD治療を継続した。 ビソプロロールは、1日1.25mgから経口投与を開始し、標準化されたプロトコールを用いて、4期の投与期間中に忍容性に応じて最大用量5mg/日まで漸増した。 主要アウトカムは、1年間の投与期間中における経口コルチコステロイド、抗菌薬、あるいはこれら両方による治療を要するCOPD増悪の発生(患者報告による)とした。増悪までの期間、増悪による入院、全死因死亡にも差はない 本試験は当初1,574例を登録する予定であったが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行により2020年3月16日~2021年7月31日の間は患者の募集を中断した。解析の対象となった515例(平均[SD]年齢68[7.9]歳、男性274例[53%]、平均FEV1 50.1%)のうち、514例(99.8%)で主要アウトカムのデータが得られ、371例(72.0%)が試験薬の服用を1年間継続した。 1年の試験期間中に治療を要するCOPD増悪は、ビソプロロール群では526件発生し、平均年間発生回数は2.03件/年であり、プラセボ群ではそれぞれ513件、2.01件/年であった。補正後発生率比(IRR)は0.97(95%信頼区間[CI]:0.84~1.13)と、両群間に有意差を認めなかった(p=0.72)。 初回COPD増悪までの期間中央値(ビソプロロール群96.0日vs.プラセボ群70.0日、補正後ハザード比[HR]:0.94、95%CI:0.78~1.16、p=0.60)、COPD増悪による入院(補正後IRR:1.00、95%CI:0.67~1.50)、COPD以外の原因による入院(1.47、0.88~2.55)、全死因死亡(0.77、0.34~1.73)にも、両群間に有意な差はなかった。重篤な有害事象の発現は同程度 重篤な有害事象を発現した患者は両群で同程度であった(ビソプロロール群14.5%[37/255例]vs.14.3%[36/251例])。また、ビソプロロール群では、呼吸器系の有害反応の増加を認めなかった(9.8%[25/255例]vs.12.3%[31/251例])。最も多かった試験薬の投与中止の理由は、臓器分類コード「呼吸器、胸郭、縦隔の障害」であり、頻度は両群で同程度だった(4.6%[12/259例]vs.6.3%[16/256例])。 著者は、「COVID-19の世界的な流行による参加者の募集の中断と資金不足により、予定よりはるかに少ない患者しか登録できなかったこと、28%の患者が試験薬の使用を中止した点などが本試験の限界である」と述べたうえで、「今回の結果は、COPD患者におけるビソプロロールの臨床的有用性を否定するものであったが、他の治療法との併用や特定の患者群に対する効果について検討を進める必要がある」としている。

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高齢者診療の困ったを解決するヒントは「老年医学」にあり!【こんなときどうする?高齢者診療】第1回

今回のテーマは、「なぜ今、老年医学が必要なのか?」です。このような症例に出会ったことはありませんか?85歳女性。自宅独居。糖尿病、高血圧、冠動脈疾患の既往有。呼吸苦を主訴に救急外来を受診。肺炎と診断し入院にて抗菌薬加療。肺炎の治療は適切に行われ呼吸苦症状も改善したが、自力歩行・経口摂取が困難になり自宅への帰宅不可能に。適切な診断と治療をして疾患は治ったにもかかわらず状況が悪化してしまう-高齢者診療でよく遭遇する場面かもしれません。老年医学はこうしたジレンマに向かい合うきっかけを提供し、すべての高齢者に対してQOLの維持・向上を図ること、また同時に心や体のさまざまな症状をコントロールするために体系化された学問です。老年医学の原則とアプローチ(「型」)を実践することで、困難事例に解決の糸口をみつけることができるようになります。老年医学の原則:コモンなことはコモンに起きる-老年症候群と多疾患併存日本における平均寿命と健康寿命はいずれも延伸していますが、平均寿命と健康寿命のギャップは医療の進歩にも関わらず顕著には短縮しておらず、女性で約12年、男性で約7~8年あります。1)この期間に多くの高齢者が抱える問題が2つあります。ひとつは老年症候群。たとえば記憶力の低下や抑うつ、転倒や失禁などの認知・身体機能の低下など、高齢者にコモンに起きる症状・兆候を「老年症候群」と総称します。もうひとつは、多疾患併存(multimorbidity)です。年齢に比例して併存疾患の数が多くなり、60歳以降では約20%が3つ以上の疾患を有しているという調査があります。2)高齢者の治療やケアをする場合、老年症候群と多疾患併存があるという前提で診察やケアにあたることが大切です。老年医学の型:5つのM老年症候群があり、多疾患併存状態にある高齢者の診療は、疾患の診断-治療という線形思考で解決しないことがほとんどです。そこで、複雑な状況を俯瞰するために「5つのM」というフレームを使います。要素は、大切なこと(Matters most)、薬(Medicine)、認知機能・こころ(Mind)、身体機能(Mobility)、複雑性・落としどころ(Multi-complexity)の5つです。今回のケースを5つのMを使って考えてみましょう。ポイントはMatters mostから考え始めること。「生きがい」・「大切なこと」といったことでもよいのですが、「今、患者/家族にとって一番の困りごとは何か、肺炎を治療した先の日々の生活に期待することは何か?」を入院加療の時点で考えられると、行うべき介入がさまざまな角度から検討できるようになります。今回のケースでは、肺炎治療後に自宅に帰り、自立した生活をできる限り続けることがゴールだったと考えてみましょう。そうすると、肺炎治療に加えて1人で歩行するための筋力維持が必要だと気付くでしょう。また筋力を維持するためには栄養状態にも気を配らなければなりません。それに気付けば理学療法士や管理栄養士など、その分野の専門職に相談するという選択肢もあります。また、肺炎治療中の絶対安静や絶食は、筋力や栄養状態の維持を同時に叶えるために適切な選択だろうか?本当に必要なのだろうか?と立ち止まって考えることもできます。しかし命に係わるかもしれない肺炎の治療は優先事項のひとつですから、落としどころとして、安静期間をできる限り短くできないか検討する、あるいはリハビリテーションの開始を早める、誤嚥のリスクを見極めて経口摂取を早期から進めていく、といった選択肢が出てくるかもしれません。100%正しい選択肢はありません。ですが5つのMで全体像を俯瞰すると、目の前の患者に対して、提供できる医療やケアの条件の中で、患者のゴールに近づく落としどころや優先順位を考えることができます。高齢者にかかわるすべての医療者で情報収集し共有する今回のケースでは、例として理学療法士や管理栄養士を出しましたが、その他にもさまざまな専門職が高齢者の医療に携わっています。医師は診断・治療といった医学的介入を職業の専門性として持つ一方で、患者とコミュニケーションできる時間が少ないために十分な「患者―医師関係」が構築しにくく、患者・家族が本当に大切にしていることが届きにくい場合があります。そのため、協働できる多職種の方とともに患者の情報を得る、そして彼らの専門性を活かして介入の方法やその分量のバランスをとること、落としどころを見つけることが医師に求められるスキルのひとつです。参考1)内閣府.令和5年度版高齢社会白書(全体版).第1章第2節高齢期の暮らしの動向.2)Miguel J. Divo,et al. Eur Respir J. 2014; 44(4): 1055–1068.

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外用抗菌薬の鼻腔内塗布でウイルス感染を防御?

 抗菌薬のネオマイシンを鼻の中に塗布することで、呼吸器系に侵入したウイルスを撃退できる可能性があるようだ。新たな研究で、鼻腔内にネオマイシンを塗布された実験動物が、新型コロナウイルスとインフルエンザウイルスの強毒株の両方に対して強力な免疫反応を示すことが確認された。さらに、このアプローチはヒトでも有効である可能性も示されたという。米イェール大学医学部免疫生物学部門教授の岩崎明子氏らによるこの研究結果は、「Proceedings of the National Academy of Sciences(PNAS)」に4月22日掲載された。 岩崎氏らによると、新型コロナウイルスは2024年2月時点で、世界で約7億7450万人に感染し、690万人を死亡させたという。一方、インフルエンザウイルスは、年間500万人の重症患者と50万人の死者を出している。 これらのウイルスに感染した際には、一般的には経口または静脈注射による治療を行って、ウイルスの脅威と闘う。これらは、感染の進行を止めることに重点を置いたアプローチだ。しかし研究グループは、鼻に焦点を当てた治療アプローチの方が、ウイルスが肺に広がって肺炎のような命を脅かす病気を引き起こす前にウイルスを食い止められる可能性がはるかに高いのではないかと考えている。 今回の研究では、まず、マウスを使った実験でこの考えを検証した。マウスの鼻腔内にネオマイシンを投与したところ、鼻粘膜上皮細胞でIFN誘導遺伝子(ISG)の発現が促されることが確認された。ISGの発現は、ネオマイシン投与後1日目から確認されるほど迅速だった。そこで、マウスを新型コロナウイルスやインフルエンザウイルスに曝露させたところ、感染に対して有意な保護効果を示すことが確認された。さらに、ゴールデンハムスターを用いた実験では、ネオマイシンの鼻腔内投与が接触による新型コロナウイルスの伝播を強力に抑制することも示された。 次に、健康なヒトを対象に、鼻腔内にネオマイシンを主成分とするNeosporin(ネオスポリン)軟膏を塗布する治療を行ったところ、この治療法に対する忍容性は高く、参加者の一部で鼻粘膜上皮細胞でのISG発現が効果的に誘導されていることが確認された。 岩崎氏は、「これはわくわくするような発見だ。市販の安価な外用抗菌薬が、人体を刺激して抗ウイルス反応を活性化させることができるのだ」と話している。なお、米国立衛生研究所(NIH)によれば、Neosporinは、抗菌薬のネオマイシン、バシトラシン、およびポリミキシンBを含有する。 岩崎氏は、「今回の研究結果は、この安価で広く知られている抗菌薬を最適化することで、ヒトにおけるウイルス性疾患の発生やその蔓延を予防できる可能性があることを示唆している。このアプローチは、宿主に直接作用するため、どんなウイルスであろうと効果が期待できるはずだ」と話している。

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「抗生物質ください!」にはどう対応すべき?【もったいない患者対応】第6回

「抗生物質ください!」にはどう対応すべき?登場人物<今回の症例>28歳男性。生来健康今日からの37℃台の発熱、咳嗽、喀痰、咽頭痛あり身体所見上、咽頭の軽度発赤を認める<診察の結果、経過観察で十分な急性上気道炎のようです>やっぱり風邪でしょうか?そうですね。風邪だと思います。そうですか。仕事が忙しくて、風邪をひいている場合じゃないんです。とにかく早く治したいので、抗生物質をください。抗生物質は風邪には効きませんよ?でも以前、抗生物質を飲んだら次の日にすっきり風邪が治ったことがあったんです。今日は抗生物質をもらいに来たんです。処方してください。…わかりました。では処方しましょうか。【POINT】若くて生来健康な患者さんの、受診当日からの上気道症状と微熱。上気道炎として、まずは対症療法のみで経過観察してもよさそうな症例です。患者さんから抗菌薬の処方を希望された唐廻先生は、それが不要であることを伝えますが、患者さんに強く迫られて根負けしてしまいました。このようなケース、どう対応すればよかったのでしょうか? デメリットをきちんと説明していますか?患者さんのなかには、何か目に見える形で治療してもらわないと満足できない、という方が一定数います。「治療の必要なし。経過観察可能」と判断されると、「医師は何もしてくれなかった」と思ってしまうのです。なかには、今回のケースのように「風邪には抗菌薬が効く」という間違った医学知識を自らの体験から信じている患者さんも多くいます。こういう方に、無治療経過観察が望ましいことはなかなか理解してもらえません。今回の唐廻先生のように、早々と患者さんの希望どおりに対応してしまうほうが医師にとっては楽です。しかし、医学的に不要な治療を患者さんの希望に合わせて行ってしまうと、患者さんに副作用リスクだけを与えることになります。また、必要のない治療を行うことにより、かえって病態が修飾されるので、精査が必要なまれな病気が隠れていたとき、その発見が遅れるリスクもあるでしょう。もちろん、不要な医療行為は医療経済的な観点からも望ましくありません。唐廻先生のように安易に処方せず、まずは治療が不要であることをきちんと説明することが大切です。一方で、十分な説明なしに処方を断ってしまうのも問題です。満足できなかった患者さんは、自分が望む治療を提供してくれるところを探し、結局別の病院を受診するかもしれないからです。これは、患者さんにとって有益とはいえません。では、治療が不要であることをどのように伝えればよいでしょうか?「なぜ処方できないのか」を明確に伝えようまず、医学的根拠を可能な限りわかりやすく伝えるよう努力すべきです。たとえば今回の抗菌薬に関する説明であれば、まず、風邪の原因はほとんどがウイルス感染である。抗菌薬は細菌をやっつける薬であって、ウイルスをやっつける薬ではないので、風邪には効果がないこと抗菌薬には吐き気や下痢、アレルギーのようなリスクがあり、効果が期待できないうえに副作用のリスクだけを負うのは割に合わないことを説明します。あくまでも個人的な意見“ではない”こともポイント次に、「治療は必要ない」という結論が「個人の主観的判断」によって得られたものではなく、ガイドライン上の記載や学会・公的機関の見解、過去の大規模な臨床試験のデータなど、客観的なエビデンスに基づくものであることを伝えるのがよいでしょう。風邪に抗菌薬を使用することは、メリットよりデメリットのほうが圧倒的に大きいため、厚生労働省が発行した「抗微生物薬適正使用の手引き」に「感冒に対しては、抗菌薬投与を行わないことを推奨する」と明記されていることをかいつまんで説明する、という形がおすすめです。もっと簡単に説明したい場合は、「近年は○○をするのが一般的です」「〇〇されています」「多くの医師が○○しています」のように、自分の主観“以外”のところに拠り所があるというニュアンスを伝えると効果的です。かかりつけの患者さんなど、長年の付き合いで信頼関係ができている場合とは違って、患者さんが医師と初めて会うときは「目の前の医師を本当に信頼していいだろうか」と不安になるものです。そのため、客観的な知見を拠り所にしたほうが、患者さんは安心する可能性が高いはずです。こうした根拠をわかりやすく説明できるよう、準備しておきましょう。もちろん、風邪から肺炎に発展するなど、本当に抗菌薬が必要な病態に発展する可能性はあります。こうしたケースで、患者さんが「抗菌薬を使用しなかったことが原因ではないか」と疑うことのないよう、今後の見通しや再受診のタイミングを伝えておくことも大切です。点滴やうがい薬も誤解が多い風邪は誰もが何度もかかる病気なので、「こういう風に治したい」という強い希望をもつ患者さんは多いと感じます。たとえば、「風邪は点滴で治る」と思い込んでいる人もいますし、ヨード液(商品名:イソジンなど)のうがい薬が風邪予防につながると信じている人もいます。患者さんにこうした希望がある場合、完全に否定するのではなく、それぞれのデメリットや拠り所となるエビデンスを説明したうえで判断してもらいます。点滴であれば、デメリットとして末梢ルート確保に伴う感染リスクや神経障害などのリスク長時間病院に滞在することによる体調悪化のリスク補液に伴う循環器系への負担をきちんと説明する必要があります。ヨード液については、「ヨード液よりも水うがいのほうが風邪予防や症状の緩和につながる」といった客観的なエビデンス1)があることを説明するとよいでしょう。これでワンランクアップ!やっぱり風邪でしょうか?そうですね。風邪だと思います。そうですか。仕事が忙しくて、風邪をひいている場合じゃないんです。とにかく早く治したいので、抗生物質をください。風邪の原因はほとんどが細菌ではなくウイルスです。抗生物質は細菌をやっつける薬なので、ウイルスをやっつけることはできません※1。風邪に効果は期待できないうえに副作用のリスクもある※2ので、今回は使わないほうがいいと思います。風邪に抗生物質を希望する患者さんが多いので、厚労省からも「風邪に対して抗生物質を使わないことを推奨する」という通達が出ているんですよ※3。抗生物質なしで一旦経過をみませんか※4。もちろん症状が悪化したときは風邪とは異なる別の病気を併発している可能性もありますので、そのときは必ずもう一度受診してくださいね。※1:ここを誤解している患者さんは多い。※2:あくまで患者さんの不利益になることを強調する。※3:客観的な意見を伝えると納得してもらいやすい。※4:一度猶予をもらうのも手。参考1)Satomura K, et al. Am J Prev Med. 2005;29:302-303.

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第215回 高脂肪食とがんを関連付ける腸内細菌を発見

高脂肪食とがんを関連付ける腸内細菌を発見肥満ががんの進展を促すことに寄与しているらしい腸内細菌を中国の研究チームが発見しました。乳がんの新たな治療手段を導く可能性を秘めたその結果によると、高脂肪食はマウスの腸のデスルホビブリオ(Desulfovibrio)属の細菌を増やし、それが免疫系を抑制してがんの増殖が亢進します。研究成果は中国の広東省の広州にある病院(SunYat-Sen Memorial Hospital)の乳がん外科医Erwei Song氏らの手によるもので、今月始めにPNAS誌に掲載されました1)。Song氏らは、BMI値が高い肥満の乳がん患者の生存率が低いことをまず確認したうえで、乳がん患者の腸内細菌の検討を始めました。同病院の治療開始前の乳がん患者61例の検体を調べたところ、肥満の目安としたBMI値24以上の女性の腸にはBMI値が24未満の女性に比べてデスルホビブリオ細菌がより多く認められました。続いてマウスを使ってデスルホビブリオ細菌とがんを関連付けうる仕組みが調べられました。ヒトの肥満を模すものとしてしばしば使われる高脂肪食マウスには肥満の乳がん女性と同様にデスルホビブリオ細菌が多く、免疫系を抑制することで知られる骨髄由来抑制細胞(MDSC)の増加も認められました。よってデスルホビブリオ細菌が多いことと免疫系の抑制は関連すると示唆され、どうやらその関連にアミノ酸の1つであるロイシンが寄与していることが続く検討で示されました。高脂肪食マウスの腸内微生物叢はロイシンを多く放ち、血中にはロイシンが多く巡っていました。そのロイシンがmTORC1経路を活性化してMDSCの生成を誘うことが突き止められ、デスルホビブリオ細菌を死なす抗菌薬をマウスに投与したところ、ロイシンとMDSCのどちらも正常水準に落ち着きました。ヒトでもどうやら同様なことが乳がん患者から採取した血液検体の検討で示唆されました。その検討の結果、BMI値が24以上の肥満水準であることは高脂肪食マウスと同様にロイシンやMDSCがより多いことと関連しました。以上の結果によると高脂肪食の恩恵にあずかるデスルホビブリオ細菌のせいでロイシンが過剰に作られ、その結果MDSCが急増して免疫系が抑制されてがんの増殖が許されてしまうようです。腸の細菌は地域や食事によって異なり、腸内細菌研究の結果は調べた集団が違うと一致しないことがよくあります2)。よって今回と同様の仕組みが他の集団でも認められるかどうかを今後調べる必要があります。もし高脂肪食が招くがんの進行にデスルホビブリオ細菌を発端とする免疫抑制が確かに関連しているなら、その経路を断ち切る新たな乳がん治療の道が開けそうです。参考1)Chen J, et al. Proc Natl Acad Sci USA. 2024;121:e2306776121.2)Gut microbes linked to fatty diet drive tumour growth / Nature

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抗菌薬は咳の持続期間や重症度の軽減に効果なし

 咳の治療薬として医師により抗菌薬が処方されることがある。しかし、たとえ細菌感染が原因で生じた咳であっても、抗菌薬により咳の重症度や持続期間は軽減しない可能性が新たな研究で明らかにされた。米ジョージタウン大学医学部家庭医学分野教授のDaniel Merenstein氏らによるこの研究の詳細は、「Journal of General Internal Medicine」に4月15日掲載された。 Merenstein氏は、「咳の原因である下気道感染症は悪化して危険な状態になることがあり、罹患者の3%から5%は肺炎に苦しめられる」と説明する。同氏は、「しかし、全ての患者が初診時にレントゲン検査を受けられるわけではない。それが、臨床医がいまだに患者に細菌感染の証拠がないにもかかわらず抗菌薬を処方し続けている理由なのかもしれない」とジョージタウン大学のニュースリリースの中で述べている。 今回の研究では、咳または下気道感染症に一致する症状を理由に米国のプライマリケア施設または急病診療所を受診した患者718人のデータを用いて、抗菌薬の使用が下気道感染症の罹患期間や重症度に及ぼす影響を検討した。データには、対象患者の人口統計学的属性や併存疾患、症状、48種類の呼吸器病原体(ウイルス、細菌)に関するPCR検査の結果が含まれていた。 ベースライン時に対象患者の29%が抗菌薬を、7%が抗ウイルス薬を処方されていた。最も頻繁に処方されていた抗菌薬は、アモキシシリン/クラブラン酸、アジスロマイシン、ドキシサイクリン、アモキシシリンであった。このような抗菌薬を処方された患者とされなかった患者を比較した結果、抗菌薬に咳の持続期間や重症度を軽減する効果は認められないことが示された。 研究グループはさらに、検査で細菌感染が確認された患者を対象に、抗菌薬を使用した場合と使用しなかった場合での転帰を比較した。その結果、下気道感染症が治癒するまでの期間は両群とも約17日間であったことが判明した。 研究グループは、「抗菌薬の過剰使用は、危険な細菌が抗菌薬に対する耐性を獲得するリスクを高める」との懸念を示す。論文の上席著者である米ジョージア大学公衆衛生学部教授のMark Ebell氏は、「医師は、下気道感染症の中に細菌性下気道感染症が占める割合を知ってはいるが、おそらくは過大評価しているのだろう。また、ウイルス感染と細菌感染を区別する自身の能力についても過大評価していると思われる」と話す。 一方、Merenstein氏は、「この研究は、咳に関するさらなる研究の必要性を強調するものだ。咳が深刻な問題の指標になり得ることは分かっている。咳は、外来受診の理由として最も多く、年間の受診件数は、外来では約300万件、救急外来では約400万件以上に上る」と話す。その上で同氏は、「重篤な咳の症状とその適切な治療法は、おそらくはランダム化比較試験によりもっと詳しく研究される必要がある。なぜなら、今回の研究は観察研究であり、また、2012年頃からこの問題を研究したランダム化比較試験は実施されていないからだ」と述べている。

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知見のupdateを絶えず重ね続ける【国試のトリセツ】第40回

§3 decision making知見のupdateを絶えず重ね続けるQuestion〈111G57〉82歳の女性。肺炎で入院中である。抗菌薬が投与され肺炎の症状は軽快していたが、3日前から頻回の水様下痢が続いている。高血圧症で内服治療中である。意識は清明。体温37.6℃。脈拍76/分、整。血圧138/78mmHg。腹部は平坦、軟。下腹部に軽い圧痛を認める。血液所見赤血球380万、Hb12.0g/dL、Ht 36%、白血球9,800、血小板26万。腹部X線写真で異常所見を認めない。便中Clostridium difficileトキシン陽性。この患者に有効と考えられる薬剤はどれか。2つ選べ。(a)バンコマイシン(b)クリンダマイシン(c)エリスロマイシン(d)メトロニダゾール(e)ベンジルペニシリン(ペニシリンG)※2016年に、Clostridium difficileはClostridioides difficileに名称が変更されました。第111回医師国家試験は2017年に実施されましたが、まだ以前のままの表記になっています。以降の解説では、このupdateを汲み、新しい表記で統一します。Lawson PA, et al:Reclassification of Clostridium difficile as Clostridioides difficile(Hall and O’Toole 1935) Prevot 1938. Anaerobe, 40:95-99, 2016

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