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エーラス・ダンロス症候群〔EDS:Ehlers-Danlos syndrome〕

1 疾患概要■ 概念・定義エーラス・ダンロス症候群(Ehlers-Danlos syndrome:EDS)は、皮膚・関節の過伸展性、各種組織の脆弱性を特徴とする遺伝性結合組織疾患の総称である。■ 疫学EDS全体としての頻度は1/5,000人程度と推定されている。古典型EDSでは1/2万人、関節過可動型EDSでは1/5,000~2万人、血管型EDSでは1/5~25万人、後側弯型EDSでは1/10万人とされる。それ以外の病型ではさらに頻度は低くまれとなる。詳しい病型は後述する。■ 病因コラーゲン分子、もしくは修飾酵素の遺伝子変異などにより発症する。古典型EDSはV型コラーゲン遺伝子変異、血管型EDSはIII型コラーゲン遺伝子変異によるdominant negative効果またはハプロ不全に基づき発症する。筋拘縮型EDSでは、デルマタン4-0-硫酸基転移酵素-1またはデルマタン硫酸エピメラ-ゼの欠損に基づき、代表的なデルマタン硫酸(DS)含有プロテオグリカンであるデコリンのグリコサミノグリカン鎖の組成が変化し(DSの消失、コンドロイチン硫酸への置換)、デコリンが媒介するコラーゲン細線維のassembly不全を来すことによって進行性の結合組織脆弱性を生じる。関節過可動型EDSでは、いまだ原因遺伝子は同定されていない。■ 症状EDSの各病型の臨床症状は、後述する表2の診断基準のとおりである。血管型EDSでは、薄く透けて見える皮膚、易出血性、特徴的な顔貌、動脈・腸管・子宮の脆弱性を特徴とする。血管破裂・解離、腸管破裂、臓器破裂は70%の成人例における初発症状となる(平均年齢23歳)。新生児期には、内反足、先天性股関節脱臼を、小児期には鼠径ヘルニア、気胸、反復性関節脱臼・亜脱臼を合併しうる。妊婦では分娩前後の動脈・子宮破裂により、死亡する危険性がある(~12%)。古典型EDSでは、滑らかでベルベット様の皮膚、過伸展性、脆弱性が目立ち、創傷治癒が遅れ瘢痕が薄く伸展する(萎縮性瘢痕:シガレットペーパー様と称される)。また、縫合部位は離開しやすい。肩、膝蓋骨、指、股、橈骨、鎖骨などが容易に脱臼するが、自然整復または自力で整復できることが多い。運動発達遅延を伴う筋緊張低下、易疲労性、筋攣縮、易出血性がみられることがある。妊婦は前期破水・早産(罹患胎児の場合)、会陰裂傷、分娩後の子宮・膀胱脱を生じうる。関節過可動型EDSでは、皮膚の過伸展性は正常もしくは軽度であるが、関節過伸展性が顕著であり、脱臼・亜脱臼の頻度も高い。変形性関節症もよくみられる。関節痛を含めた慢性疼痛が深刻であり、身体的・精神的な障害となりうる。しばしば胃炎、胃食道逆流、過敏性腸症候群といった消化器合併症を呈する。筋拘縮型EDSでは、先天性多発関節拘縮(内転母指、内反足)、顔貌上の特徴、内臓や眼の先天異常など先天異常関連症状、そして、皮膚の脆弱性、関節の易脱臼性、足・脊椎の変形、巨大皮下血腫、大腸憩室など進行性の結合組織疾患脆弱性関連症状を呈する。■ 分類1998年に発表された国際命名法により、6つの主病型に分類されてきたが,近年新たな病型がその生化学的・遺伝学的基盤とともに報告されており、2017年に新たな国際分類が定められ13の病型に分類された(表1)。表1 2017年に発表された新たなEDSの国際分類画像を拡大する■ 予後予後は各病型によりさまざまである。血管型EDSでは生涯を通じて易出血性を呈する。20歳までに25%の症例が、40歳までに80%の症例が深刻な合併症を発症し、死亡年齢の中央値は48歳とされる。とくに誘因もなく突然発症し、突然死、脳卒中、急性腹症、ショックといった形で現れることも多い。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)診断では、表2に示したEDSの各病型の診断基準を参照されたい。関節過可動型EDSを除きいずれの病型でも、最終診断には分子遺伝学的検査が必須となってくる。関節過可動性の評価としては、Beightonの基準を用いる。(1)小指の他動的背屈>90°(片側1点)、(2)母指が他動的に前腕につく(片側1点)、(3)肘の過伸展>10°(片側1点)、(4)膝の過伸展>10°(片側1点)、(5)前屈で手掌が床につく(1点)(計9点中5点以上で関節過可動性ありと判断)。表2 EDS各病型の診断基準画像を拡大する画像を拡大する画像を拡大する画像を拡大する画像を拡大する画像を拡大する3 治療 (治験中・研究中のものも含む)各病型に共通している診療のポイントは、医療者(関係各科、救急)と患者・家族が疾患についてあらゆる情報を共有し、起こりうる合併症の早期発見・早期治療を行うことである。病型にもよるが皮膚裂傷や関節過伸展性・脆弱性に対しては、激しい運動を控えサポーターなどで保護を行う。関節過可動型EDSでは、関節保護の理学療法、補装具の使用、鎮痛薬投与なども必要であり、重症患者では身体障害や難治性疼痛への負担に配慮した心理カウンセリング、抗うつ薬の投与などの対応が必要な時もある。血管型EDSでは動脈合併症予防のためセリプロロール(商品名:セレクトール)投与を考慮する。急性の動脈病変(瘤、解離)が生じた場合、可能な限り保存的に対処するが、病状が進行する場合は、血管内治療を考慮する。手術を行う場合は、血管および組織脆弱性を考慮し、細心の注意が必要になる。患者の妊娠はハイリスクであり、カップルに対し十分な情報提供を行ったうえで、心臓血管外科のバックアップができる施設において、陣痛開始前のコントロールされた分娩(おそらくは帝王切開のほうが安全)を行う。古典型EDSの裂傷の予防対策として、小児で皮膚裂傷を予防するためには、前頭部、膝、頸部を保護する。縫合に際しては、張力をかけない、できれば2層で縫合するなど十分注意を払う。さらに瘢痕を広げないよう、抜糸までの期間を通常の2倍程度に延ばす、テープで補強するなどの工夫が必要となる。また、遺伝カウンセリングについてふれると、これは「臨床遺伝専門医を中心に認定遺伝カウンセラー、担当医、看護・心理職種が協力して、患者自身または家族の遺伝に関する問題を抱える患者を対象に、臨床情報の収集に基づき正確な診断と発症・再発リスク評価を行い、わかりやすく遺伝に関する状況の整理と疾患に関する情報提供を行うこと、同時に患者が遺伝に関連したさまざまな負担に、その人らしく向き合い、現実的な意思決定を行っていけるような継続的な心理社会的支援を行うことを含んだ診療行為」とされる。EDSの病型は常染色体優性遺伝が多く、この場合、本症と診断されることは、患者自身が難治性疾患であることに加え、次世代が罹患する確率が50%であることを示すものである。また、稀少病型の多くは常染色体劣性遺伝であり、発症者の同胞への再発率は25%とされる。診断の時点、家族計画の相談が出た時点など診療の局面で、遺伝子医療部門への紹介を考慮したい。4 今後の展望次世代シークエンスを活用した、網羅的な遺伝学的検査の運用が始まっている。現在、唯一原因遺伝子が同定されていない関節過可動型EDSの原因遺伝子同定に向けた研究が進行中である。5 主たる診療科小児科、皮膚科、整形外科、循環器内科、心臓血管外科、消化器内科、消化器外科、眼科、耳鼻咽喉科、泌尿器科、リハビリテーション科、麻酔科(ペインクリニック)、リウマチ科、救急科、遺伝子医療部門など関与する診療科は多岐にわたる。各科との連携が重要である。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター エーラス・ダンロス症候群(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)小児慢性特定疾病情報センター エーラス・ダンロス(Ehlers-Danlos)症候群(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)Gene Reviews(医療従事者向けの研究情報:英文のみ)Gene Review Japan(医療従事者向けの研究情報。血管型、古典型、関節可動型について詳細説明あり)患者会情報日本エーラスダンロス症候群協会(友の会)(患者とその家族および支援者の会)公開履歴初回2019年5月14日

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父親が高齢、早産児や妊娠糖尿病が増大/BMJ

 父親が高齢であることにより、母親の妊娠糖尿病とともに、子供の早産、低出生時体重などが増加することが、米国・スタンフォード大学のYash S. Khandwala氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2018年10月31日号に掲載された。米国では、父親の平均年齢が過去40年間上昇してきた。高齢の母親においては、不妊、妊娠糖尿病、妊娠高血圧腎症、帝王切開による分娩に関して広範囲の調査が行われているが、出生時のアウトカムに及ぼす高齢の父親の影響はほとんど知られていないという。最近の研究では、高齢男性の精子におけるエピジェネティックな変化が、胎盤や胚の発育に悪影響を及ぼす可能性が示唆されている。父親の年齢の影響を評価する後ろ向きコホート研究 研究グループは、父親の高い年齢が、母親および子供の出生時のアウトカムに及ぼす影響をレトロスペクティブに評価する住民ベースのコホート研究を行った(研究助成は受けていない)。 解析には、2007~16年の期間に記録された生児出生4,052万9,905件のデータを用いた。 新生児の主要アウトカムは、早産(妊娠期間<37週)、低出生時体重(<2,500g)、出生後5分時Apgarスコア(<8)、新生児集中治療室(NICU)入室、分娩後の抗菌薬を要する状態、痙攣(発作)とした。母親の主要アウトカムは、妊娠糖尿病および妊娠高血圧腎症であった。また、副次アウトカムとして、予防可能な出生時イベントの評価を行った。父親が45歳未満で、早産13.2%、妊娠糖尿病18.2%を予防 調査対象の期間中(2007~2016年)に、父親の平均年齢は30.0歳から31.2歳に上昇した。 父親の年齢が上昇するに従って、新生児の早産、低出生時体重、低Apgarスコアのリスクが増加した。 母親の年齢で補正すると、父親が45歳以上の時に出生した子供は、父親が25~34歳の子供に比べ、妊娠期間とは独立して早産のオッズが14%高く(補正後オッズ比[OR]:1.14、99%信頼区間[CI]:1.13~1.15)、痙攣のオッズが18%高かった(1.18、0.97~1.44)。 パートナーが最も高齢(≧55歳)の母親は、パートナーが25~34歳の母親に比べ、妊娠糖尿病のオッズが34%高かった(OR:1.34、99%CI:1.29~1.38)。 父親が若い場合に予防可能と考えられるイベントの検討では、父親が45歳未満の子供は、父親が45歳以上の子供に比べ、早産が13.2%(95%CI:12.5~13.9)少なかった。同様に、低出生時体重は14.5%(13.6~15.4)、低Apgarスコアは5.9%(4.5~7.2)、NICU入室は15.1%(14.2~15.9)、抗菌薬の使用は6.2%(4.4~8.0)、痙攣は19.9%(2.9~36.7)少なかった。 また、パートナーが45歳未満の母親は、パートナーが45歳以上の母親に比べ、妊娠糖尿病が18.2%(17.5~18.9)少なく、妊娠高血圧腎症は3.9%(2.8~5.0)少なかった。 著者は、「米国では、高齢の父親は相対的に少ないと考えられ、現時点の人口レベルでの影響はわずかだが、前世代を通じた高齢の父親の増加に伴い、出生時のアウトカムや公衆衛生への影響を評価する調査の継続が求められる」としている。

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新診断基準による妊娠糖尿病(GDM)の診断は出産後の母親の糖代謝異常と関連する(解説:住谷哲氏)-932

 HAPO(Hyperglycemia and adverse pregnancy outcomes)研究の結果を受けてIADPSG (International Association of Diabetes and Pregnancy Study Groups)は妊娠糖尿病(GDM)診断基準を2010年に発表した1)。わが国においてもその発表を受けて、ただちに日本糖尿病学会、日本産科婦人科学会および日本糖尿病・妊娠学会がそれに基づいた診断基準を発表した。診断基準そのものは3学会で同一であったが微妙な文言の差異があったために現場に少なからぬ混乱を生じたが、2015年に統一見解が発表された2)。GDMの診断基準は「75gOGTTにおいて、(1)空腹時血糖値92mg/dL以上、(2)1時間値180mg/dL以上、(3)2時間値153mg/dL以上のいずれか1点を満たした場合」とされている(ただし妊娠中の明らかな糖尿病[overt diabetes in pregnancy]は除く)。 HAPO研究におけるprimary outcomesは児の出生時体重が90パーセンタイル以上、初回帝王切開率、新生児低血糖、臍帯血C-ペプチドが90パーセンタイル以上であったが、IADPSGでの協議を経てHAPOでのコントロール群(全例を7群に分けた際に最も血糖値の低いカテゴリー)と比較してprimary outcomesのオッズ比が1.75倍になる血糖値(92-180-153)がカットオフ値として採用された3)。このことからわかるように新診断基準は出生児の合併症の減少を目的として採択され、この基準によるGDMの診断が母親のその後の糖代謝異常とどのように関連するかは不明であった。 以前からGDMの母親が健常人と比較してその後に糖代謝異常を発症しやすいことは知られていた。本研究ではHAPO研究に参加した母児を対象として、GDMと診断された患者のその後の糖代謝異常(2型糖尿病および前糖尿病[prediabetes])および児の肥満(childhood adiposity)の発症を平均11.4年間にわたり追跡した。その結果、糖代謝異常の発症は非GDMに対してオッズ比[OR]:3.44(95%信頼区間[CI]:2.85~4.14)、リスク差:25.7%(95%CI:21.7~29.7)で有意に増加していた。児の肥満は母親の妊娠中のBMIに影響されるので、それで調整するとOR:1.21(95%CI:1.00~1.46)、リスク差は3.7%(95%CI:-0.16~7.5)で有意な増加は認められなかった。 日本産科婦人科学会の検討では、新診断基準採用により、わが国のGDM頻度は全妊婦に75gOGTTを実施した場合には、以前の診断基準による2.92%から12.08%へと4.1倍に急増するとされている4)。母児の周産期合併症を予防するために妊娠中の血糖管理を適切に実施することはもとより重要であるが、GDM妊婦はその後の糖代謝異常発症のハイリスクグループであることを再認識して診療する必要があるだろう。■参考1)HAPO Study Cooperative Research Group. N Engl J Med. 2008;358:1991-2002.2)平松祐司ほか. 糖尿病. 2015;58:801-803.3)International Association of Diabetes and Pregnancy Study Groups Consensus Panel. Diabetes Care. 2010;33:676-682.4)増本由美. 糖尿病と妊娠. 2010;10:88-91.

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陣痛緩和にレミフェンタニル自己調節鎮痛法が有用/Lancet

 陣痛時の疼痛緩和において、静脈内レミフェンタニル自己調節鎮痛法(PCA)は、ペチジンの筋肉内投与に比べ、硬膜外麻酔への変更を要する女性が少ないことが、英国・シェフィールド大学のMatthew J. A. Wilson氏らの検討「RESPITE試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2018年8月25日号に掲載された。陣痛の緩和のためにペチジン筋注を受けた女性の約3分の1が、その後に硬膜外麻酔を要し、良好な疼痛緩和が得られるものの、器械的経膣分娩のリスクが増加する。陣痛時のレミフェンタニルPCAはペチジンの代替法とされるが、十分には普及していないという。英国の14施設で401例を登録 本研究は、英国の14の産科病棟が参加した多施設共同非盲検無作為化対照比較試験(英国国立健康研究所[NIHR]の助成による)。 対象は、妊娠期間37週以上、胎児が単胎・頭位で陣痛がみられ、オピオイドによる疼痛緩和を希望する16歳以上の女性であった。被験者は、レミフェンタニルPCA(必要に応じて40μgをボーラス投与、次回投与までのロックアウト時間は2分)またはペチジン筋注(4時間ごとに100mgを投与、24時間で最大400mg)を行う群に無作為に割り付けられた。 主要評価項目は、試験登録後に硬膜外麻酔を受けた女性の割合とした。また、視覚アナログスケール(VAS、0点:痛みなし、100点:最も強い痛み)を用いて、30分ごとに疼痛緩和効果を評価した。 2014年5月13日~2016年9月2日の期間に401例の女性が登録され、レミフェンタニルPCA群に201例、ペチジン筋注群には200例が割り付けられた。硬膜外麻酔への変更が半減、緩和効果も良好 実際に試験薬の投与を受けたのは、レミフェンタニルPCA群が186例(93%)、ペチジン筋注群は154例(77%)であった。投与を受けない主な理由は、投与が可能になる前に出産(レミフェンタニルPCA群12例、ペチジン筋注群17例)、無作為化直後のオピオイド投与前に、母親が硬膜外麻酔を要すると決断(ペチジン筋注群22例)などであった。同意を取り消したペチジン筋注群の1例を除く400例がintention-to-treat解析の対象となった。 無作為化時の平均年齢は、レミフェンタニルPCA群が29.4歳(SD 6.1)、ペチジン筋注群は29.3歳(6.1)、白人がそれぞれ73%、79%で、未経産婦が60%、59%だった。 硬膜外麻酔への変更の割合は、レミフェンタニルPCA群が19%(39/201例)と、ペチジン筋注群の41%(81/199例)に比べ有意に低かった(リスク比[RR]:0.48、95%信頼区間[CI]:0.34~0.66、p<0.0001)。 VAS疼痛スコア中央値は、レミフェンタニルPCA群がペチジン筋注群よりも13.91点(95%CI:-21.40~-6.43)低下し、有意な差が認められた(p=0.0003)。VAS疼痛スコアの最高点の差には、有意差はなかった(平均差:-4.44点、95%CI:-10.93~2.05、p=0.18)。 分娩様式には、両群間に有意な差が認められた(p=0.02)。鉗子、吸引による器械的分娩の割合は、レミフェンタニルPCA群が15%と、ペチジン筋注群の26%に比べ有意に低かった(RR:0.59、95%CI:0.40~0.88、p=0.008)。帝王切開の割合は両群とも21%だった。呼吸抑制および過鎮静は両群間に差はなく、いずれもまれだった。 新生児はすべて、出生後5分時のApgarスコアが4点以上であった。蘇生を要する新生児の割合にも差はみられなかった(レミフェンタニルPCA群:10%、ペチジン筋注群:11%)。 母親の満足度は、9項目中2項目でレミフェンタニルPCA群のほうが有意に良好で(「陣痛中の疼痛緩和は有効だった」:p=0.0003、「陣痛の疼痛緩和に満足した」:p=0.0003)、他の項目には差がなかった。また、試験薬に直接起因する重篤な有害事象や薬物反応は認めなかった。 著者は、「本試験で得られたエビデンスは、分娩時の女性の標準治療としてのペチジンに疑問を呈し、陣痛時のオピオイドベースの疼痛緩和に関して、根本的な再評価を迫るものである」と指摘している。

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「血友病周産期管理指針」の意義と狙い

 2017年11月2日、バイオベラティブ・ジャパン株式会社は、希少血液疾患の啓発事業の一環として、都内でメディアセミナーを開催した。セミナーでは、血友病に関連する周産期管理について、その背景と指針作成の目的などが語られた。血友病保因者妊婦の出産は、母体と新生児にリスク セミナーでは、講師に瀧 正志氏(聖マリアンナ医科大学 小児科学 特任教授)を迎え、「血友病周産期管理の重要性~血友病保因者妊婦・血友病新生児の出血回避に向けての取り組み~」をテーマにレクチャーが行われた。 一般的に新生児の頭蓋内出血は0.05%、血友病の頭部出血(頭蓋内外)は3.5~5.5%とされ、血友病および同保因者の母親からの出産では、リスクが高いことが知られている。 実際、瀧氏が自院で早期新生児の出血に関する検討を行ったところ、93例の血友病患者のうち13例で分娩に関連した出血があったという。その特徴として、全例が経腟分娩で、7例に吸引・鉗子分娩がなされていた。また、9例で赤血球輸血を行い、2例で重篤な神経学的後遺症を認め、1例で緊急硬膜下血種除去を行ったという1)。別の研究で血友病保因者である母体の状況をみてみると、凝固因子活性が非保因者(1.02 IU/mL)と比較して0.60 IU/mLと低く、手術後の相対危険度は保因者では高いとされる2)。 こうした状況を踏まえ、母体であるホモ接合体血友病の妊婦および保因者妊婦と、血友病新生児および保因者新生児の出血をできるだけ回避し、出血症状を伴う場合は早期に適切な治療を図る目的で、「ホモ接合体血友病妊婦および保因者妊婦の管理指針」と「血友病新生児および保因者新生児の管理指針」の2つからなる『エキスパートの意見に基づく血友病周産期管理指針 2017年版』が作成された。血友病患者、保因者の周産期における注意点を網羅 「ホモ接合体血友病妊婦および保因者妊婦の管理指針」では、主にヘテロ接合体保因者に関して記述され(ホモ接合体血友病は女性にまれ)、妊娠管理では産科、本症に詳しい内科医、小児科医、麻酔科医が連携し、集学的医療チームとしてケアに当たるべきであるとしている。また、妊娠中の予防的補充療法では、血友病Aは定期的な活性値測定のほか、必要により第VIII因子製剤の補充療法を行うこと、血友病Bでは第IX因子活性値の有意な上昇がみられない一部の保因者には第IX因子製剤の補充療法が必要だとされている。そのほか、妊娠中の血中モニタリング、分娩計画の立案(必要により紹介・移送)が必要とされ、分娩方法では経腟分娩の場合はできる限り自然分娩としながらも、胎児に血友病または保因者である可能性が排除できない場合は、吸引、鉗子、遷延分娩は避けることが望ましいとしている。帝王切開分娩への切り替えは、早期に判断する。とくに瀧氏は、私見としながら「予定帝王切開分娩」について言及し、「麻酔、出血量など母体への負担は増加するものの、血友病児の頭蓋内出血リスクの減少、止血管理の容易性、分娩スタッフのスケジュール対応の面からも考慮すべきだ」と示唆した。 分娩・産褥期の至適血中レベルについては、経腟分娩で血中第VIII因子、第IX因子活性値ともに50%以上維持(帝王切開では80%以上)が示され、この値を下回る場合は予防的補充療法の施行が記述されている。妊娠中のデスモプレシンの使用では、妊娠高血圧症候群合併例への使用は避けるべきとし、使用する場合は水分や電解質管理を慎重に行う必要があるとしている。血友病および保因者新生児のフォローを網羅 「血友病新生児および保因者新生児の管理指針」では、出生前の一般的な取り扱いとして、母体および新生児に出血リスクが増すような手技を最小限にするよう呼び掛けている。 新生児の血友病診断では、出生後に臍帯血を用い速やかに診断を行うとともに、第VIII因子、第IX因子の活性値を測定する。また、孤発例の見逃しを避けるために、疑いのある新生児のAPTTの測定、延長時には第VIII因子、第IX因子の活性値の測定も行うとしている。 血友病新生児の止血管理では、製剤投与中の凝固因子活性のモニタリングとインヒビター出現の有無の確認および、確定診断後に欠損または欠乏している凝固因子の製剤投与への切り替えが示されている。そして、出生後に脳内出血を臨床的に強く疑う場合は凝固因子製剤をただちに投与し、確定診断のために頭部超音波検査、脳MRIやCT検査を行う。 凝固因子製剤の予防投与は、自然分娩や帝王切開分娩では一般的に行わない。しかし、分娩外傷、吸引、鉗子分娩などのリスクの高い分娩では、診断後に短期間の予防投与を考慮し、早産児にも状況に応じて行うとしている。 血友病患児への予防接種については、原則として筋肉注射は避けるべきとし、ルーチンの予防接種の皮下注射は禁忌事項がない限り行うことが望ましいとしている。 最後に瀧氏は、本指針の目的を「血友病、血友病保因者の妊婦・新生児の出血をできる限り回避し、出血症状を伴う場合には早期に適切な止血治療を図ることにある」と繰り返すとともに、「血友病保因者は『ハイリスク妊婦である』という認識を医療従事者は共有し、周産期管理を行ってもらいたい」と期待を述べ、レクチャーを終えた。■参考1)長江千愛 ほか. 日産婦新生児血液. 2017;26:61-69.2)Plug I, et al. Blood. 2006;108:52-56.■関連記事希少疾病ライブラリ 血友病

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CDC「手術部位感染予防のためのガイドライン」18年ぶりの改訂

 米国疾病管理予防センター(CDC)は、「手術部位感染予防のためのガイドライン」を1999年以来18年ぶりに改訂し、エビデンスに基づく勧告を発表した。手術部位感染治療のための人的および財政的負担の増加を背景に、専門家の意見を基に作成された1999年版から、エビデンスベースの新たなガイドラインに改訂された。著者らは「これらの勧告に基づく手術戦略を用いることで、手術部位感染のおよそ半分が予防可能と推定される」と記している。手術部位感染予防のためのガイドラインはコアセクションと人工関節置換術セクションで構成 CDCの医療感染管理諮問委員会(HICPAC)は、1998年から2014年4月の間に発表された論文を対象にシステマティックレビューを実施し、5,000超の関連論文を特定。さらにスクリーニングを行った結果、170の論文を抽出し、エビデンスを評価・分類した。 新しい手術部位感染予防のためのガイドラインは、外科手術全般の手術部位感染予防のための勧告(30件)を含む「コアセクション」と人工関節置換術に適用される勧告(12件)を含む「人工関節置換術セクション」によって構成されている。 改訂された手術部位感染予防のためのガイドラインで更新された勧告の中で主なものは以下のとおり。・手術前、少なくとも手術前夜には、患者は石けん(抗菌性もしくは非抗菌性)または消毒薬を用いたシャワーや入浴(全身)をすべきである。・予防抗菌薬は、公開されている臨床実践ガイドラインに基づいた適用のときのみに投与する。そして、切開が行われるときに、血清および組織における抗菌薬の殺菌濃度が確保されるタイミングで投与する。・帝王切開においては、皮膚切開の前に適切な予防抗菌薬を投与する。・術前の皮膚処置は、禁忌の場合を除き、アルコール系消毒薬を使用して行う。・清潔および準清潔手術では、手術室内で閉創した後はドレーンが留置されていても、予防抗菌薬を追加投与しない。・手術部位感染予防のために、外科切開部に抗菌薬の局所的な適用は行わない。・周術期の血糖コントロールを実施し、すべての患者で血糖の目標レベルを200mg/dL未満として、正常体温を維持する。・全身麻酔を受けており気管内挿管がある正常な肺機能を有する患者では、手術中および手術直後の抜管後に、吸入酸素濃度を増加させる。・手術部位感染予防のために、手術患者への必要な血液製剤の輸血を控える必要はない。 新しい手術部位感染予防のためのガイドラインはJAMA surgeryオンライン版2017年5月3日号に掲載された。

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アジスロマイシン追加で緊急帝王切開の母体感染リスク低減/NEJM

 緊急帝王切開時の標準的な予防的抗菌薬投与に、抗菌スペクトルを拡大するためにアジスロマイシンを追加すると、術後の母体の感染リスクが低減することが、米国・アラバマ大学バーミングハム校のAlan T N Tita氏らが行ったC/SOAP試験で示された。研究の成果は、NEJM誌2016年9月29日号に掲載された。米国では、妊娠関連感染症は母親の死因の第4位を占めており、母体感染は入院期間を延長し、医療費を増加させる。帝王切開は最もよく行われる手術手技であり、子宮内膜炎や創感染を含む手術部位感染率は経膣分娩の5~10倍に達するという。2,000例以上の妊婦のプラセボ対照無作為化試験 C/SOAPは、緊急帝王切開を受ける女性において、標準的な予防的抗菌薬投与に、抗菌スペクトラムを拡大するためにアジスロマイシンを併用するアプローチの有用性を評価するプラグマティックな二重盲検プラセボ対照無作為化試験(Eunice Kennedy Shriver米国国立小児保健発達研究所の助成による)。 対象は、妊娠24週以降の単胎妊娠で、分娩時または破水後に緊急帝王切開が施行された女性であった。 被験者は、アジスロマイシン500mgを静脈内投与する群またはプラセボを投与する群に無作為に割り付けられた。すべての妊婦が、各施設のプロトコルに従って、切開の前または切開後可及的速やかに、標準的な予防的抗菌薬投与(セファゾリン)を受けた。 主要アウトカムは、術後6週以内に発生した子宮内膜炎、創感染、その他の感染症(腹腔または骨盤内膿瘍、敗血症、血栓性静脈炎、腎盂腎炎、肺炎、髄膜炎)であった。 2011年4月~2014年11月に、米国の14施設に2,013例の妊婦が登録され、アジスロマイシン群に1,019例、プラセボ群には994例が割り付けられた。主要アウトカムがほぼ半減、新生児の有害なアウトカムは増加せず 平均年齢は、アジスロマイシン群が28.2±6.1歳、プラセボ群は28.4±6.5歳であった。妊娠中の喫煙者がアジスロマイシン群でわずかに少なかった(9.5 vs.12.3%)が、これ以外の背景因子は両群で類似していた。帝王切開の手技関連の因子にも両群に差はなかった。 主要アウトカムの発生率は、アジスロマイシン群が6.1%(62/1,019例)と、プラセボ群の12.0%(119/994例)に比べ有意に良好であった(相対リスク[RR]:0.51、95%信頼区間[CI]:0.38~0.68、p<0.001)。 子宮内膜炎(3.8 vs.6.1%、RR:0.62、95%CI:0.42~0.92、p=0.02)および創感染(2.4 vs.6.6%、0.35、0.22~0.56、p<0.001)では有意な差が認められ、その他の感染症(0.3 vs.0.6%、0.49、0.12~1.94、p=0.34)には差はみられなかった。 副次複合アウトカムである新生児の死亡および合併症の発生率は、アジスロマイシン群が14.3%(146/1,019例)、プラセボ群は13.6%(135/994例)であり、差を認めなかった(RR:1.05、95%CI:0.85~1.31、p=0.63)。 母体の重篤な有害事象の発現率は、アジスロマイシン群が有意に低く(1.5 vs.2.9%、RR:0.50、95%CI:0.27~0.94、p=0.03)、新生児の重篤な有害事象には差がなかった(0.7 vs.0.5%、1.37、0.43~4.29、p=0.77)。 著者は、「抗菌スペクトラムの拡大を目的とするアジスロマイシンの追加により、新生児の有害なアウトカムを増加させることなく、母体の感染症が低減し、医療リソースの使用が抑制された」としている。

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妊娠糖尿病の診断、至適な血糖値とは?/BMJ

 妊婦では、血糖値の上昇に応じて臨床的に重要な周産期の有害なアウトカムのリスクが全般的に増加するが、このリスク増大の明確な閾値はみられないことが、英国・ブラッドフォード健康研究所のDiane Farrar氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2016年9月13日号に掲載された。妊娠糖尿病では、有害な周産期アウトカムが拡大するリスクが増大し、母子の長期的な健康に影響を及ぼす可能性がある。治療により、これらのアウトカムのリスクは軽減するが、妊娠糖尿病を定義する至適な血糖値の閾値は明らかにされていないという。高リスク女性を同定する閾値の確立を目指して 研究グループは、妊婦における血糖値と有害な周産期アウトカムの関連を評価し、有害な周産期アウトカムのリスクが高い女性を同定する明確な閾値の確立を目的に、文献を系統的にレビューし、メタ解析を行った(英国国立健康研究所[NIHR]などの助成による)。 MedlineやEmbaseなどの医学データベースに、2014年10月までに登録された文献を検索した。選出された論文と、2つの出生コホート研究のデータを統合した。 経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)または経口ブドウ糖チャレンジ試験(OGCT)を受け、1つ以上の有害な周産期アウトカムのデータを有する妊婦を含む試験を対象とした。妊娠糖尿病と診断された女性や、既存の糖尿病を有する女性は、治療を受けている可能性があり、血糖値とアウトカムの自然な関連に影響を及ぼす可能性があるため除外した。 各文献から、空腹時および糖負荷後1時間と2時間時のOGTT(75g、100g)、OGCT(50g)のデータを抽出した。また、陣痛の誘発、帝王切開、器械分娩、妊娠高血圧症候群(PIH)、妊娠高血圧腎症、巨大児、不当重量体重、早産、出生時損傷、新生児低血糖に関するデータを収集した。有害なアウトカムとの関連は空腹時血糖値のほうが強力 23件の試験の25報の論文と、2つのコホート研究の参加者のデータが解析に含まれ、最大20万7,172人の妊婦が解析の対象となった(検査やアウトカムによって、妊婦の人数にばらつきがみられた)。ほとんどの試験が、バイアスのリスクは低いと判定された。 帝王切開、陣痛の誘発、不当重量体重、巨大児、肩甲難産は、すべての検査で血糖値の全範囲を通じて正の線形関係が認められ、閾値効果の明確なエビデンスは得られなかった。 全般的に、血糖値と有害なアウトカムの関連は、糖負荷後よりも空腹時のほうが強力であった。たとえば、不当重量体重のリスクについては、空腹時血糖値の1mmol/L上昇ごとのオッズ比(OR)が2.15(95%信頼区間[CI]:1.60~2.91)であったのに対し、75gOGTT 2時間値の1mmol/L上昇ごとのORは1.20(95%CI:1.13~1.28)であった。 これらのパターンは、アジア、南太平洋地域、欧州、北米および国際的な試験を通じて認められたが、サハラ以南のアフリカではこのようなエビデンスはなく、低/中所得国のエビデンスもほとんど認めなかった。 著者は、「リスク増大の明確な血糖値閾値の欠如は、妊娠糖尿病の診断の閾値に関する決定には、ある程度恣意的な要素が含まれることを意味する。今後、妊娠糖尿病診断の血糖値の閾値を周産期および長期的なアウトカムに適用する際の、臨床効果および費用対効果の検討を行う必要がある」としている。

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1型糖尿病の夜間クローズドループ療法、妊婦にも有効/NEJM

 1型糖尿病の妊婦では、自動化された夜間クローズドループ療法は、センサー付きのインスリンポンプ(sensor-augmented pump:SAP)療法よりも良好な血糖コントロールをもたらすことが、英国・ケンブリッジ大学のZoe A Stewart氏らの検討で示された。研究の成果は、NEJM誌2016年8月18日号に掲載された。妊娠中の1型糖尿病の合併症として、先天性異常、死産、新生児の死亡、早産、巨大児の発生率が増加する。妊娠していない1型糖尿病患者の血糖コントロールでは、クローズドループ療法がSAP療法よりも優れることが報告されているが、妊婦における効果や安全性、実行可能性のデータは十分でないという。2つのデバイスをクロスオーバー試験で評価 研究グループは、1型糖尿病妊婦の血糖コントロールにおける2つのデバイスの有用性を比較する非盲検無作為化クロスオーバー試験を行った(英国国立健康研究所[NIHR]などの助成による)。 16例が、クローズドループ療法(介入)とSAP療法(対照)をランダムな順序で4週間行った。引き続き、継続期には14例が昼夜ともクローズドループ療法を行い、分娩まで継続した。 主要評価項目は、夜間血糖値が目標範囲内(63~140mg/dL[3.5~7.8 mmol/L])にある時間の割合であった。 ベースラインの16例の平均年齢は34.1±4.6歳、平均BMIは29.7±5.7、平均糖化ヘモグロビン値は6.8±0.6%、平均糖尿病罹病期間は23.6±7.2年であった。夜間目標血糖値達成率が改善、重度低血糖は発現せず 夜間血糖値が目標範囲内の時間の割合は、クローズドループ療法が74.7%であり、SAP療法の59.5%よりも高かった(絶対差:15.2ポイント、95%信頼区間[CI]:6.1~24.2、p=0.002)。また、夜間の平均血糖値は、クローズドループ療法が119mg/dL(6.6mmol/L)と、SAP療法の133mg/dL(7.4mmol/L)に比べ低かった(p=0.009)。 血糖値が目標範囲より低い時間の割合(クローズドループ療法:1.3 vs.SAP療法:1.9%、p=0.28)、インスリン投与量(59.8 vs.58.2U/日、p=0.67)、有害事象(全体で26件、そのうち14件が皮膚反応)の発現率は、2つの治療法に有意な差を認めなかった。 継続期(出産前の入院、陣痛、分娩を含め最長で14.6週)では、血糖値が目標範囲内の時間の割合は68.7%であり、平均血糖値は126mg/dL(7.0mmol/L)であった。 第三者の介助を要する重度の低血糖エピソードは、4週の無作為化期間とその後の昼夜継続期間のいずれにも発現しなかった。 妊娠期間中央値は36.9週であり、帝王切開が15例で行われた。37週未満の分娩は7例であった。胎児の肺成熟のための母体へのグルココルチコイド投与が6例で行われた。 出生時体重中央値は3,588gであった。12例が新生児集中治療室に入室し、新生児低血糖で11例がブドウ糖を投与された。 著者は、「これらの知見は、クローズドループ療法はSAP療法に比べ、低血糖エピソードやインスリン投与量を増加させずに血糖コントロールを改善するとの最近の研究結果を裏付けるものであり、妊婦の血糖コントロールは妊婦以外とほぼ同じであった」とし、「おそらく、妊娠中の厳格な目標血糖値の維持に対する、妊婦の強い動機付けを反映している」と指摘している。

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35歳以上の妊婦に分娩誘発は有害か/NEJM

 高年齢妊婦では帝王切開の頻度が高いが、35歳以上の初産妊婦に対し妊娠39週での分娩誘発は、待機的管理と比べて、帝王切開率へ有意な影響をもたらすことはなく、また母体および新生児への短期的有害作用も及ぼさないことが明らかにされた。英国・ノッティンガム大学のKate F. Walker氏らが無作為化試験の結果、報告した。35歳以上の妊婦では、より若い妊婦の場合と比べて正期産における死産リスクが高い。一方で、分娩誘発によりそのリスクは低下可能だが、帝王切開リスクが上昇する可能性が示唆されていた。NEJM誌2016年3月3日号掲載の報告。619例を対象に待機的管理群と比較した無作為化試験で評価 試験は2012年8月~15年3月に、英国内の38ヵ所のNHS病院と、1ヵ所のPrimary Care Trustの施設で、35歳以上の初妊婦619例を集めて行われた。 被験者を無作為に2群に割り付けて、一方には妊娠39週0日~6日の間に分娩誘発を行い(分娩誘発群)、もう一方には待機的管理(自然陣痛の発来まで待機、もしくは医学的処置による誘発が必要と判断されるまで)を行った(待機的管理群)。 主要アウトカムは、帝王切開とした。試験は、分娩誘発の死産に対する影響を評価するようデザインされてはおらず、検出力も有していなかった。帝王切開率に有意差なし、母体・新生児の有害転帰への影響も有意差みられず 無作為化された619例を含めたintention-to-treat解析の結果、両群間で、帝王切開を受けた妊婦の割合に有意な差はみられなかった。分娩誘発群98/304例(32%)、待機的管理群103/314例(33%)で、相対リスク(RR)は0.99(95%信頼区間[CI]:0.87~1.14)であった。 また、鉗子・吸引分娩が行われた妊婦の割合についても有意差はみられなかった。分娩誘発群115/304例(38%)、待機的管理群104/314例(33%)、RRは1.30(95%CI:0.96~1.77)であった。 母体あるいは新生児の死亡の報告はなかった。出産経験に関することや母体や新生児の有害転帰の頻度についても有意差はみられなかった。

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予定帝王切開児は喘息や死亡リスクがわずかに高い/JAMA

 予定帝王切開分娩児は、経腟分娩児と比べて、5歳時点における入院またはサルブタモール吸入薬(商品名:サルタノールインヘラーほか)投与を要する喘息の絶対リスク、およびフォローアップ期間中(21歳時点)の全死因死亡の絶対リスクがわずかだが高いことが、英国・アバディーン大学のMairead Black氏らによる検討の結果、明らかにされた。予定帝王切開分娩は世界的に顕著な割合を占めており、予定・予定外を合わせると50%に達する国・地域もあることが報告されている。観察研究で、帝王切開分娩児は小児期の疾病リスクが高いことが示唆されているが、それらはキーとなる交絡因子が考慮されておらず、また予定帝王切開分娩児の、新生児期以降の死亡リスクに関する報告はなかったという。JAMA誌2015年12月1日号掲載の報告。スコットランド32万1,287例、予定帝王切開 vs.予定外帝王切開、経膣分娩で比較 研究グループは、1993~2007年にスコットランドで生まれた第1子単体児32万1,287例を対象に、2015年2月までフォローアップを行い、予定帝王切開分娩と小児期の健康問題や死亡との関連を調べた。初回妊娠の予定帝王切開分娩と、予定外帝王切開分娩および経膣分娩を比較した。 主要アウトカムは、入院を要した喘息とした。副次アウトカムは、5歳時点のサルブタモール吸入薬処方、5歳時点の肥満、フォローアップ中の炎症性腸疾患(IBD)、1型糖尿病、がん、死亡などであった。予定 vs.予定外は同等、vs.経膣の喘息1.13~1.22倍、死亡1.41倍 本解析における対象の内訳は、予定帝王切開分娩児1万2,355例(3.8%)、予定外帝王切開分娩児5万6,015例(17.4%)、経膣分娩児25万2,917例(78.7%)であった。 予定外帝王切開分娩児との比較で、予定帝王切開分娩児に、入院を要した喘息、5歳時点のサルブタモール吸入薬処方、5歳時点の肥満、IBD、がん、死亡のリスクの有意差はみられなかった。しかし、1型糖尿病リスクの増大がみられた(0.66% vs.0.44%、差:0.22%、95%信頼区間[CI]:0.13~0.31%、補正後ハザード比[HR]:1.35、95%CI:1.05~1.75)。 経膣分娩児との比較では、予定帝王切開分娩児に、入院を要した喘息(3.73% vs.3.41%、差:0.32%、95%CI:0.21~0.42%、補正後HR:1.22、95%CI:1.11~1.34)、5歳時点のサルブタモール吸入薬処方(10.34% vs.9.62%、差:0.72%、95%CI:0.36~1.07%、補正後HR:1.13、95%CI:1.01~1.26)、死亡(0.40% vs.0.32%、差:0.08%、95%CI:0.02~1.00%、補正後HR:1.41、95%CI:1.05~1.90)のリスク増大がみられた。5歳時点の肥満、IBD、1型糖尿病、がんのリスクについて有意差はみられなかった。 これらの結果について著者は、「さらなる調査を行い、観察された関連の因果関係を明らかにする必要がある」と述べている。

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入院医療費が高額な医師ほど訴訟リスクは低い/BMJ

 同じ専門科の中で医療資源の使用(入院医療費)が高額の医師のほうが、低額の医師に比べ、翌年の医療過誤訴訟の発生リスクが低い傾向にあることが明らかにされた。産科婦人科については、帝王切開実施率が高い医師ほど、同訴訟リスクが低かった。米国・ハーバード大学医学校のAnupam B. Jena氏らが、約2万5,000人の医師について行った観察試験の結果、報告した。先行研究で、多くの医師が自衛的医療を行っていることが明らかになっていたが、医療資源の使用と医療過誤訴訟リスクとの関連については検討されていなかった。BMJ誌オンライン版2015年11月4日号掲載の報告より。7つの専門科における入院医療費データを調査 研究グループは2000~09年にかけて、フロリダ州の急性期病院入院データを用い、7つの専門科担当医(内科、内科各専門、家庭医、小児科、一般外科、外科各専門、産科婦人科)について、使用した医療資源(入院医療費)が高額なほど、翌年の医療過誤申し立て件数が少ない傾向がみられるかを調べた。入院医療費は五分位に層別化して評価。患者の特性、併存疾患、診断名について補正を行った。 調査では、医師2万4,637人、延べ15万4,725人年、入院1,835万2,391件、医師に対する医療過誤訴訟数4,342件(2.8%/医師年)のデータが得られ分析した。専門科を問わず、入院医療費が高額なほど訴訟リスクは低い 結果、専門科を問わず平均入院医療費が高額な医師ほど、医療過誤で訴えられるリスクが少ない傾向が認められた。 具体的には、内科医の医療過誤訴訟発生率は、平均入院医療費が最も低い第1五分位(入院1件当たり1万9,725ドル)群では1.5%(95%信頼区間:1.2~1.7)だったのに対し、最も高い第5五分位(同3万9,379ドル)群は0.3%(同:0.2~0.5)だった。同様に、内科各専門医は1.7%(入院1件当たり2万3,626ドル)と0.2%(4万6,654ドル)、家庭医は0.5%(1万3,809ドル)と0.2%(3万5,305ドル)、小児科医は0.7%(9,121ドル)と0.1%(1万9,916ドル)、一般外科医は2.3%(2万5,141ドル)と0.4%(5万1,987ドル)、外科各専門医は1.7%(2万6,979ドル)と0.1%(6万1,907ドル)、産科婦人科医は1.9%(8,653ドル)と0.4%(1万8,162ドル)だった。 産科婦人科では、帝王切開が医師の自衛的医療の影響を受けると考えられており、帝王切開件数と翌年の医療過誤件数との関連を調べた。 その結果、リスク補正後の帝王切開年間実施率が高い医師のほうが、翌年の医療過誤訴訟の発生率が低かった。具体的には、年間実施が最も少ない第1五分位(実施率5.1%)群では5.7%であり、最も多い第5五分位(31.6%)群では2.7%だった。

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子宮鏡下避妊法のベネフィットとリスク/BMJ

 子宮鏡下避妊法(hysteroscopic sterilization)は腹腔鏡下避妊(laparoscopic sterilization)法と比べて、望まない妊娠リスクは同程度だが、再手術リスクが10倍以上高いことが、米国・コーネル大学医学部のJialin Mao氏らによる観察コホート研究の結果、報告された。数十年間、女性の永久避妊法は腹腔鏡下両側卵管結紮術がプライマリな方法として行われてきたが、低侵襲な方法として医療器具Essureを用いて行う子宮鏡下避妊法が開発された。欧州では2001年に、米国では2002年に承認されているが、米国FDAには承認以来、望まない妊娠や子宮外妊娠、再手術など数千件の有害事象が報告され、2014年には訴訟も起きているという。しかし、これまでEssure子宮鏡下避妊法の安全性、有効性に関して、卵管結紮術と比較した報告はほとんどなかった。BMJ誌オンライン版2015年10月13日号掲載の報告。2005~13年ニューヨーク州住民ベースでEssure子宮鏡下法 vs.腹腔鏡下法 検討は、Essure子宮鏡下避妊法の安全性と有効性を、大規模包括的な州コホートで腹腔鏡下避妊法と比較した住民ベースコホート研究であった。ニューヨーク州の日帰り手術施設で、2005~13年に子宮鏡下法および腹腔鏡下法を含む避妊法を複数回受けている女性を対象とした。 主要評価項目は、術後30日以内の安全性イベント、1年以内の望まない妊娠と再手術とした。患者特性およびその他交絡因子を補正後、病院クラスター混合モデルを用いて、30日アウトカムと1年アウトカムを比較した。再手術までの期間は、frailty時間事象分析法を用いて評価した。望まない妊娠リスクオッズ比0.84、再手術リスクオッズ比10.16 対象期間中、子宮鏡下法を受けた患者は8,048例、腹腔鏡下法を受けた患者は4万4,278例が特定された。同期間中、子宮鏡下法は45例(2005年)から1,231例(2013年)へと有意に増大していた(p<0.01)。一方、腹腔鏡下法は同7,852例から3,517例に減少していた。子宮鏡下法を受けた患者は腹腔鏡下法を受けた患者と比べて、高年齢で(40歳以上25.2% vs.20.5%、p<0.01)、骨盤内炎症性疾患歴(10.3% vs.7.2%、p<0.01)、重大腹部手術歴(9.4% vs.7.9%、p<0.01)、帝王切開歴(23.2% vs.15.4%、p<0.01)を有する傾向がみられた。 術後1年時点で、子宮鏡下法は腹腔鏡下法と比較して、望まない妊娠リスクは高くなかったが(オッズ比[OR]:0.84、95%信頼区間[CI]:0.63~1.12)、再手術リスクについて大幅な増大が認められた(OR:10.16、95%CI:7.47~13.81)。 結果を踏まえて著者は、「両避妊法のベネフィットとリスクについて患者と十分に話し合い、患者が情報に基づく意思決定ができるようにしなければならい」と提言している。

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てんかんの妊婦、流産や帝王切開のリスク増大/Lancet

 てんかんを持つ妊婦は、てんかんのない妊婦に比べ、自然流産リスクは約1.5倍、分娩誘発は約1.7倍、帝王切開は約1.4倍に増大するなど、妊娠合併症や新生児合併症リスクが増加することが明らかにされた。アルゼンチン・Centro Rosarino de Estudios PerinatalesのLuz Viale氏らが、てんかんを持つ妊婦を対象に行った38件の観察試験のシステマティックレビューとメタ解析の結果、報告した。Lancet誌オンライン版2015年8月25日号掲載の報告。1990年1月~2015年1月発表の観察試験についてレビュー 研究グループは、MEDLINE、Embase、Cochrane、AMED、CINAHLのデータベースを基に、1990年1月~2015年1月に発表された、てんかんを持つ妊婦を対象に行った観察試験で、妊娠合併症や新生児合併症リスクについて評価を行ったものについて、システマティックレビューとメタ解析を行った。論文言語、試験地域は問わず、また時期(出産前、分娩時、出産後)を問わず出産に伴う合併症リスクを評価。Newcastle-Ottawaスケールを用いて、試験の方法論的な質、コホートの選択・比較でのリスクバイアス、アウトカムなどを評価した。 先天性奇形を除き、妊娠合併症や致死的合併症のリスクについて、てんかんのない妊婦と比較した。また抗てんかん薬を服用するてんかん女性についてサブグループ解析も行った。ランダム効果メタ解析法を用いてオッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)を算出し評価した。分娩前出血は約1.5倍、出産後出血は1.3倍、妊娠高血圧症は1.4倍に 7,050件の試験のうち、38試験(被験者妊婦合計283万7,325例)について分析を行った。 結果、てんかんを持つ妊婦は、てんかんのない妊婦に比べ、自然流産リスクは1.54倍だった(OR:1.54、95%CI:1.02~2.32、I2=67%)。同様に、分娩前出血(同:1.49、1.01~2.20、I2=37%)、出産後出血(同:1.29、1.13~1.49、I2=41%)、妊娠高血圧症(同:1.37、1.21~1.55、I2=23%)、分娩誘発(同:1.67、1.31~2.11、I2=64%)、帝王切開(同:1.40、1.23~1.58、I2=66%)、37週未満の早産(同:1.16、1.01~1.34、I2=64%)、胎児成長遅滞(同:1.26、1.20~1.33、I2=1%)のいずれも、てんかんを持つ妊婦は、てんかんのない妊婦に比べ、リスクが高かった。 なお、34週未満の早産や妊娠糖尿病、胎児死亡・死産などのリスクは、てんかんを持つ妊婦で増加しなかった。 また、てんかんを持つ妊婦における抗てんかん薬曝露と母体・胎児のアウトカムの関連については11試験(93万4,443例)で検討されていた。曝露群のほうが分娩後出血、分娩誘発のオッズ比は有意に高かったが、帝王切開、分娩前出血、自然流産、37週未満の早産、またあらゆる高血圧症との関連は認められなかった。また、曝露の有無での胎児死亡・死産との有意な関連は認められなかった。 著者は、「妊婦において、てんかん、抗てんかん薬曝露と有害転帰との間には、わずかだが重大な関連がある。てんかんを持つ女性へのカウンセリング時には、このリスクの増大を、頭の隅に置いて向き合わなくてはならない」と述べている。

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巨大児出産、分娩誘発のほうが安全?/Lancet

 巨大児出産が疑われる場合には、自然分娩よりも分娩誘発を行うほうが肩甲難産や関連疾患のリスクを低下することが、スイス・ジュネーブ大学のMichel Boulvain氏による無作為化試験の結果、示された。分娩誘発は、帝王切開となるリスクを増大することなく自然経腟分娩の尤度を改善することも示されたという。結果を踏まえて著者は、「早期分娩誘発の影響とバランスをみながら検討すべきである」とまとめている。巨大児については、肩甲難産のリスクが高いことが知られている。Lancet誌オンライン版2015年4月8日号掲載の報告より。フランス、スイス、ベルギーの19施設で無作為化試験 研究グループは、妊娠期間に比して大きい過体重児(large-for-date fetuses)の出産について、肩甲難産およびその他の新生児および母体疾患の予防に関して、分娩誘発と自然分娩を比較した。 検討は2002年10月1日~2009年1月1日に、フランス、スイス、ベルギーの19ヵ所の3次医療機能センターで行われた。 対象は、単体児を妊娠しており、在胎児の体重が95パーセンタイル値(36週時3,500g、37週時3,700g、38週時3,900g)超と推定される妊婦を適格とし、妊娠期間37~38週目に3日以内に、分娩誘発を行う群または自然分娩とする群に、無作為に割り付けた。無作為化は施設単位で行われ、被験者と看護者には割り付け情報はマスクされなかった。 主要アウトカムは、臨床的に顕著であった肩甲難産、鎖骨骨折、腕神経叢損傷、頭蓋内出血、死亡の複合とした。分娩誘発群、肩甲難産発生が有意に低下、自然経腟分娩の可能性上昇 分娩誘発群に409例、自然分娩群に413例が割り付けられ、それぞれ、最終解析には407例、411例が組み込まれた。出生児の平均体重は、分娩誘発群3,831(SD 324)g、自然分娩群4,118(SD 392)gであった。 分析の結果、肩甲難産または関連疾患の発生は、分娩誘発群8例、自然分娩群25例で、前者の有意なリスク低下が認められた(相対リスク[RR]:0.32、95%信頼区間[CI]:0.15~0.71、p=0.004)。 腕神経叢損傷、頭蓋内出血、死亡については両群で発生がみられなかった。 自然経腟分娩の尤度は、分娩誘発群のほうが自然分娩群よりも高かった(59% vs. 52%、RR:1.14、95%CI:1.01~1.29)。なお、帝王切開(28% vs. 32%)や新生児罹患について、両群間で有意な差はみられなかった。

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非重症妊娠高血圧、早期分娩は早計か?/Lancet

 妊娠34~37週、非重症の妊娠高血圧症候群の妊婦について、早期の分娩は母体の有害アウトカムリスクを、わずかだが減少する可能性がある一方、新生児呼吸窮迫症候群(respiratory distress syndrome:RDS)のリスクが有意に増大することが示された。オランダ・フローニンゲン大学のKim Broekhuijsen氏らが非盲検無作為化試験HYPITAT-IIの結果、報告した。結果を踏まえて著者は「ルーチンな早期分娩が正しいとはいえない」と述べ、臨床症状の悪化がみられるまで待機的モニタリング戦略を考慮すべきであるとまとめている。Lancet誌オンライン版2015年3月24日号掲載の報告より。24時間以内出産の早期分娩群と37週出産の待機的モニタリングで検討 HYPITAT-II試験は、2009年3月1日~2013年2月21日に、オランダ国内7ヵ所の大学病院と44ヵ所の非大学病院で行われた。妊娠34~37週の非重症妊娠高血圧症候群の女性を、陣痛誘発または帝王切開で24時間以内に出産する群(早期分娩群)と、妊娠37週で出産することを意図する群(待機的モニタリング群)の2群に無作為に割り付けて検討した。 主要アウトカムは、有害母体アウトカム(血栓塞栓性疾患、肺水腫、子癇、HELLP症候群、胎盤剥離または妊産婦死亡)と新生児呼吸窮迫症候群の複合であった。早期分娩群の複合母体転帰はわずかに減少も、新生児のRDSが有意に増大 893例の女性が試験への参加を依頼され、703例が登録されて無作為に早期分娩群352例、待機的モニタリング群351例に割り付けられた。 主要複合母体アウトカムの発生は、早期分娩群4/352例(1.1%)、モニタリング群11/351例(3.1%)であった(相対リスク[RR]:0.36、95%信頼区間[CI]:0.12~1.11、p=0.069)。 新生児呼吸窮迫症候群と診断されたのは、それぞれ20/352例(5.7%)、6/351例(1.7%)で、早期分娩群の有意な増大が認められた(RR:3.3、95%CI:1.4~8.2、p=0.005)。 母体および周産期死亡の発生はなかった。

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未来を担う医療系学生(34)

宮本 紗代さん慶應義塾大学看護医療学部 3年希望進路:産科Thank you!コメント10歳年下の妹が生まれる時、帝王切開に臨むお母さんがすごくかっこよくて、自分もお母さんを支えるために何かしたいって思いました。そのための仕事が看護師なんだって気付いたのは中学のときですね。看護師になるからには、進路はもちろん産婦人科。尊敬する助産師さんは山本詩子先生と川島みどり先生。私も素敵な先輩たちの背中を見ながら沢山のことを吸収して、女性の助けになれる看護師になっていきたいです!撮影:田里弐裸衣

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エボラ、赤道アフリカと西アフリカは別種/NEJM

 西アフリカで大規模に広がり続けるエボラウイルス病(EVD)の流行の一方で、赤道アフリカのコンゴ民主共和国で7回目のEVDアウトブレイクが報告されたのは、2014年7月26日のことだった。ガボン共和国・世界保健機関(WHO)研究協力センターのGael D Maganga氏らは、これら近接する2つの地域における同時期のアウトブレイクの関連を調査した。その結果、赤道アフリカのエボラウイルスは西アフリカとは異なることが判明したという。NEJM誌オンライン版2014年10月15日号掲載の報告より。サルから感染した妊婦と接触した医療者が感染源に 研究グループは、標準的なWHOのウイルス性出血熱臨床調査票を用いて、コンゴ民主共和国における疫学および臨床データを収集した。患者は、EVDに関して、「感染が疑われる(suspected)」「感染の疑いが濃厚(probable)」「感染確定(confirmed)」「非感染(non-EVD)」のいずれかに分類された。 個々の患者の接触者を追跡することで感染源の同定を試みた。また、採取された血液サンプルを用いて、特異的なRT-PCR法による診断を行い、ウイルス単離、ゲノム・シーケンシング、系統樹解析を実施した。 今回のEVDアウトブレイクは、同国Equateur州Boende市(人口約4万5,000人)近郊のInkanamongo村(首都キンシャサから直線距離で北西に約700km)で始まり、この地域に限定されていた。最初の感染例(index case)は同村に住む妊婦で、夫が見つけたサル(種は不明)の死体を解体したところ、2014年7月26日に発症し、8月11日に死亡した。 その後、1名の医師を含む4名の医療従事者が、妊婦と胎児を別個に埋葬するという現地の慣習に基づき、死亡した妊婦の帝王切開を行ったところ全員が感染し、死亡した。これらの医療従事者が、その後の感染源となっていた。死亡率74%、潜伏期間16日、迅速な対応で早期終息か 2014年7月26日~10月7日までに、感染疑い3例、感染濃厚28例、確定38例の69例(医療従事者8例を含む)が報告された。男性が33例、女性は36例で、21~60歳が80%を占めた。感染疑いの3例は、のちに非感染であることが判明している。感染濃厚例と確定例のうち49例(男性21例、女性28例、5歳未満の3例を含む)が死亡し、死亡率は74%(49/66例)だった。 EVD患者との接触から発症までの期間中央値は16日(3~27日)で、西アフリカの状況と類似していた。死亡例のうち32例の解析では、発症から死亡までの期間中央値は11日(1~30日)であった。8例の医療従事者(感染濃厚4例、確定4例)はすべて死亡している。 非感染例に比べ感染濃厚例および確定例で頻度の高い症状として、発熱、頭痛、下痢、悪心・嘔吐、疲労感、食欲不振、筋肉痛、嚥下困難、結膜炎、血便および血液の混じる吐瀉物が認められた。 index case以外は、すべてヒト-ヒト感染であった。アウトブレイクの最初の24日間にEVDと診断された29例のうち21例は、index caseと身体的またはその体液に接触していた。6回の発生のピークがみられ、8月17~24日の週の報告例数が最も多く、その後は急速に減少。10月7日の時点で、10月4日を最後に感染の報告はない。 また、index caseと接触した21例を除いた場合の平均再生産症例数(reproduction number、1人の感染者が再生産する2次感染者数)は0.84であり、感染持続の閾値である1を下回ったことから、今後、感染は終息に向かうと予測された。 一方、ゲノム・シーケンシングでは、今回のアウトブレイクの原因ウイルスは1995年にザイール(現在のコンゴ民主共和国)のKikwit地区で発生したアウトブレイクの原因ウイルスとの遺伝学的同一性が99.2%で、現在西アフリカで進行中のアウトブレイクで同定されたウイルスとの遺伝学的同一性は96.8%であったことから、これらは別種のウイルスであると考えられた。 著者は、赤道アフリカのアウトブレイクが西アフリカよりも小規模であった理由のうち最も説得力のある要因として、(1)西アフリカとは対照的に、遠隔の森林地帯であり、人口密度が低く、交通機関が未発達でヒト間の接触が少なく時間もかかる地域であること、(2)過去6回のEVD流行の経験があり準備が整っていたため、対応が迅速で効果的であった点を挙げている。関連記事 発見者ピーター ピオットが語るエボラの今 エボラ出血熱 対策に成功し終息が宣言された国も エボラ出血熱の最新報告-国立国際医療研究センターメディアセミナー

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子宮移植による生児出産、世界初の成功例/Lancet

 先天的に無子宮の35歳の女性に、61歳の女性の子宮を移植し生児出産に成功したとの報告が、Lancet誌オンライン版2014年10月5日号に掲載された。報告を行ったのはスウェーデン・イェーテボリ大学のMats Brannstrom氏らのチームで、子宮移植後の生児出産としては初めての成功例だという。子宮移植は、無子宮または非機能性子宮に起因する絶対的な不妊の第一選の治療法で、これまでに世界で11件のヒト子宮移植が試みられている。ロキタンスキー症候群女性に閉経後女性の子宮を移植 子宮移植を受けたのは、ロキタンスキー症候群によるミュラー管無発生のため先天的に子宮を欠いた35歳の女性。移植術は、子宮を原因とする絶対的不妊の女性9例を対象とする臨床試験の一環として2013年、イェーテボリ市のSahlgrenska大学病院で行われた。 子宮のドナーは2度の経産歴(26および29歳時に経膣分娩)のある61歳の生存女性(非喫煙者、BMI 20、約7年前に閉経)で、レシピエントとは家族ぐるみの友人であった。 移植に先立って、レシピエントとパートナーによる体外受精が実施され、11個の受精卵(胚)が凍結保存された。 レシピエントとドナーは、移植術後、実質的に無事に回復した。レシピエントは、術後43日目に最初の月経に至り、その後は規則正しい周期(中央値32日、26~36日)で継続した。妊娠31週5日目、妊娠高血圧腎症にて帝王切開 レシピエントは、術後1年目に最初の胚移植(1個の受精卵)を受け妊娠した。免疫抑制薬3剤(タクロリムス、アザチオプリン、コルチコステロイド)の投与が開始され、妊娠期間を通じて継続投与された。子宮頸部生検で、3回の軽度拒絶反応(9日、2ヵ月28日、6ヵ月24日、すべて臨床症状なし)が認められたが、いずれもコルチコステロイド投与で回復した。 胎児発育パラメータ(大腿骨長、児頭大横径、腹部径、体重など)や、子宮動脈および臍帯動脈の血流は、妊娠期間を通じて正常であった。妊娠31週5日目、妊婦は妊娠高血圧腎症[血圧180/120mmHg、軽度頭痛、蛋白尿(尿中アルブミン18mg/L)、血小板数の低下(96×109/L)]を来し同病院産科に入院となった。 入院後10時間頃から陣痛回数が増加し始め、分娩監視装置(cardiotocography)で胎児心拍と陣痛の異常が認められた。その後、異常パターンが繰り返されたため、入院から16時間の時点で帝王切開を行った。 体重1,775g(在胎週数の正常体重)、アプガースコア正常(9、9、10点)の男児が誕生した。新生児の状態は良好で、光線治療のみでroom airにて管理が行われた。母親の状態も良好であり、血圧は自然に正常化しそれ以上の治療を必要としなかった。帝王切開後3日目に退院し、その後は外来通院でフォローアップを行っている。 著者は、「今回の初めての生児出産例は、子宮が原因の絶対的不妊の若い女性に対する治療としての、子宮移植の可能性を世界に向けて開くもの」とする一方で、「不妊治療としての子宮移植の有効性は確立されておらず、この女性も参加した進行中の臨床試験が光明を投じる可能性はあるが、医学的および心理学的なリスクがあることも事実である」と指摘している。

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妊婦への百日咳ワクチン接種は安全か/BMJ

 妊娠第3三半期の妊婦に対し百日咳ワクチンを接種しても、非接種妊婦に比べて死産のリスクは増大しないことが、英国医薬品庁(MHRA)のKatherine Donegan氏らの検討で示された。グラム陰性桿菌である百日咳菌(Bordetella pertussis)に起因する百日咳は、初期症状は比較的軽いものの、とくに3ヵ月未満の幼児に重篤で致死的な合併症を引き起こす可能性がある。米国では、市販後調査で安全性に関する懸念が払拭された2011年以降、妊婦への接種が推奨されているが、接種率は現在も低迷しており、安全性に関するエビデンスは限られたものだという。BMJ誌オンライン版2014年7月11日号掲載の報告。妊婦への接種の安全性をコホート研究で評価 研究グループは、英国における妊婦に対する百日咳ワクチン接種の安全性を評価する観察的コホート研究を実施した。年齢中央値30歳のワクチン接種妊婦と背景因子をマッチさせた非接種妊婦の転帰を比較した。 妊婦、ワクチン接種、妊娠関連有害事象のデータの収集にはClinical Practice Research Datalink(CPRD)を用いた。CPRDには英国の650以上のプライマリ・ケア関連データベースが参画し、全国の1,250万例以上の患者データが登録されている。 妊婦の有害事象は妊娠中の診療記録で同定し、子供の有害事象はCPRDの母子関連データで確認した。 主要評価項目は死産(妊娠24週以降の子宮内死亡)とした。接種後の死産率:0.19 vs. 0.23%、新生児死亡率:0.03 vs. 0.03% 30歳の妊婦2万74人が百日咳ワクチンの接種を受け、1万7,560人(87%)で接種後28日以上のフォローアップが行われた。このうち1万3,371人(76%)で在胎期間の予測が可能であり、ワクチン接種時の在胎期間中央値は31週だった。 ワクチン接種群の接種後2週以内の短期的な死産リスクは、非接種群に比べ増大していなかった(死産件数:接種群5件vs. 非接種群7.2件、率比:0.69、95%信頼区間[CI]:0.23~1.62)。 フォローアップ期間が44週以上のワクチン接種妊婦は6,185人(年齢中央値30歳、接種時の在胎期間中央値33週)であった。これら接種群の分娩までの期間は、非接種群との間に有意な差はみられなかった(全体の在胎期間中央値:40週、ハザード比:1.00、95%CI:0.97~1.02)。 ワクチン接種群における全体の死産率は0.19%(12/6,185人、出産500件当たり約1件)であり、非接種群の0.23%(42/1万8,523人)との間に有意な差は認めなかった(率比:0.85、95%CI:0.45~1.61)。 出生7日以内の新生児死亡(発生率:0.03 vs. 0.03%、率比:1.00、95%CI:0.20~4.95)、妊娠高血圧腎症/妊娠高血圧(同:0.36%vs. 0.29%、1.22、0.74~2.01)、前置胎盤(同:0.03%vs. 0.08%、0.40、0.09~1.75)、子宮内発育遅延/低出生時体重/体重<2,500g(同:2.04%vs. 1.68%、1.20、0.98~1.48)のほか、帝王切開、分娩後出血などにも、両群間に有意な差はなかった。 ワクチン接種後の母体死亡、分娩前出血、子宮破裂、胎盤早期剥離、前置血管、胎児機能不全、新生児腎不全は認めなかった。 著者は、「妊娠第3三半期のワクチン接種により、短期的および接種後の全妊娠期間を通じて、死産のリスクは増大しなかった」とまとめ、「本研究は、妊婦に対する百日咳ワクチン接種の安全性に関する初めての大規模観察試験であり、ワクチン接種に関わる医療従事者にとって有益で、ワクチン接種関連の施策の立案に資すると考えられる」と指摘している。

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