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第20回 痛み診療のコツ・治療編(2)神経ブロック・その3【エキスパートが教える痛み診療のコツ】

第20回 痛み診療のコツ・治療編(2)神経ブロック・その3前回は、トリガーポイント(TP)ブロックに焦点を当てて解説しました。今回は、自律神経ブロックとしてよく知られる星状神経節ブロックについて説明したいと思います。星状神経節ブロックとは上部交感神経節(C3の高さ)、中部交感神経節(C6の高さ)、下部交感神経節(C7の高さ)が連鎖していますが、そのうち下部神経節と上胸部交感神経節が融合して星のような形態を呈しており、これを星状神経節と呼んでいます(図1)。これら一連の交感神経幹は、頭部、頸部、上肢を支配しています。画像を拡大する(1)星状神経節ブロックの適応疾患交感神経幹の支配領域から考慮して、片頭痛、群発頭痛、筋緊張性頭痛、不定型顔面痛、肩凝り、頸椎神経根症、帯状疱疹痛および帯状疱疹後神経痛などの頭頸部の疼痛疾患が適応になります。疼痛疾患ではありませんが、顔面神経麻痺、突発性難聴、多汗症なども適応になります。Burger病、Raynaud病、凍傷、塞栓などの上肢の循環不全に伴う痛みや、肩関節周囲炎、急性および慢性血栓性静脈炎、血栓性浮腫、術後リンパ性浮腫などの炎症・浮腫に伴う痛みなども適応になります。また、交感神経節ブロックですので、反射性交感神経萎縮症、カウザルギー、幻肢痛、断端痛も適応とされています。その他、アレルギー性鼻炎や喘息にも有効性が認められます。(2)星状神経節ブロックの実際患者さんに仰臥位を取ってもらいます。ブロックベッドであれば、頭部の部分を下げますが、通常のベッドであれば肩の下に薄い枕を入れて、首をやや伸展し、ごく軽く顎を前方に突き出していただきます。胸鎖関節より2.5cm上方、正中線より1.5cm外側を刺入点とします(図2)。使用する針は、2.5cm25Gを用います。星状神経節へのアプローチには、傍気管的接近法、前方的接近法及び後方的接近法があります。傍気管的接近法は、わかりやすく施行しやすいので、よく用いられます。具体的には、左手の示指と中指で総頸動脈を外側に引き寄せ、針を皮膚に直角に、総頸動脈と気管との間を通過するように刺入します。針先が第7頸椎横突起にぶつかったら、0.5cmほど引き戻し、吸引テストを十分に施行したうえで1%メピバカイン5mL注入します(図3)。画像を拡大する画像を拡大する(3)星状神経節ブロックの効果判定Horner症候群の発現でブロック効果がわかります。すなわち、眼球結膜の充血と流涙瞳孔縮小眼瞼下垂と眼裂狭小顔面や上肢の温感顔面や上肢の発汗減少鼻閉などが見られれば、ブロック効果が判定できます。(4)合併症気胸、胸痛 呼吸困難血管内注入による局所麻酔薬中毒でけいれんが生じる。クモ膜下腔注入による呼吸困難上喉頭神経麻痺による嗄声、嚥下困難、呼吸困難上腕神経叢麻痺喘息発作硬膜外ブロックなどが見られることがあります。そのため、少なくとも10分間は仰臥位を保ち、枕により頭部を高くします。少なくとも1時間は飲食を禁止します。両側ブロックは、同時には禁忌です。以上、星状神経節ブロックを取り上げ、その意義、適応、使用される薬物、合併症などについて述べました。痛みを有する患者さんに接しておられる先生方に少しでもお役に立てれば幸いです。次回は、知覚神経と交感神経を同時にブロックする、代表的で応用範囲の広い硬膜外ブロックについて解説します。1)花岡一雄監修. 疼痛コントロールのABC 日本医師会雑誌. 1998;S1042)花岡一雄他、ペインクリニック実践ハンドブック 南江堂 1994;10-15

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第18回 痛み診療のコツ・治療編(2)神経ブロック・その1【エキスパートが教える痛み診療のコツ】

第18回 痛み診療のコツ・治療編(2)神経ブロック・その1前回までは治療編(1)として、薬物療法について解説しました。今回は、神経ブロックに焦点を当てて説明していきたいと思います。神経ブロックとは神経ブロックとは、脳脊髄神経および神経節や神経叢、交感神経および神経節や神経叢に神経ブロック針を刺入して、神経に直接またはその近傍に局所麻酔薬や神経破壊薬を注入し、その薬物効果で神経の伝導機能を一時的あるいは永久的に遮断する方法です。また、神経を特殊な針を用いて高周波熱凝固し、同様に神経の伝導を遮断する方法も神経ブロックに含まれます。痛み治療における神経ブロックでは、外来患者さんの場合では運動機能を残し、痛覚のみをブロックする方法を選択します。手術時の神経麻酔(ブロック)と、この点において大いに異なります。神経ブロックの意義(1)診断的ブロック神経ブロックにより、痛みに関与する神経を診断することができます。この診断的ブロックそのものによっても痛み治療になります。(2)痛み伝導路の遮断当然のことながら、痛み伝導路の遮断によって痛みの緩和が得られます。局所麻酔薬による神経ブロックでは、効果は一時的なものと考えますが、繰り返し神経ブロックを施行することで、痛みのない時間を作ることが大切です。これにより、最初に述べた痛みの悪循環が断ち切られ、痛みから解放されます。(3)交感神経の遮断知覚神経のみならず、交感神経の遮断が生じると、当然ことながら、交感神経の過剰反応が緩和され、末梢血管が拡張し、末梢循環不全が解消されることで痛みが抑制されます。神経ブロックの種類通常よく用いられるのは、以下の種類です。脳神経ブロック:三叉神経末梢枝神経ブロック知覚神経ブロック:腕神経叢ブロック、肩甲上神経ブロック交感神経ブロック:星状神経節ブロック交感・知覚・運動神経ブロック:頸部・胸部・腰部・仙骨硬膜外ブロック などこのほか、比較的一般に施行されているのが、トリガーポイントブロックです。安全性が高く、それなりの鎮痛効果が得られます。神経ブロックの適応(1)有痛性疾患三叉神経痛や肋間神経痛などのいわゆる神経痛、末梢神経障害性疼痛、末梢循環障害性疼痛、がん性疼痛などが含まれます。(2)無痛性疾患本態性顔面神経麻痺、顔面けいれん、眼瞼けいれん、手掌多汗症、突発性難聴などが含まれます。神経ブロックに使用される薬物(1)局所麻酔薬リドカイン、メピバカイン、ブピバカイン、ロピバカイン、ボプスカイン、ジブカインなどがあります。効果持続時間が薬物によって異なりますので、ブロックの目的に合わせて使います。(2)神経破壊薬エタノール(99.5%)、フェノールグリセリン、フェノール水(7%)などを用います。(3)ステロイド神経の炎症や絞扼症状が強い場合には、水溶性ステロイド薬を局所麻酔薬に適量添加します。神経ブロックの合併症局所麻酔薬中毒、アナフイラキシーショック、神経損傷、血管内注入、などが見られることがあるので、ブロック後十分な観察が必要です。患者さんに対し、あらかじめ十分な説明をしておくと共に、万一、合併症が生じた場合の緊急蘇生器具などの準備が大切です。以上、神経ブロックを取り上げ、その意義、種類、適応、使用される薬物、合併症などについて述べました。痛みを有する患者さんに接しておられる読者の皆様に、少しでもお役に立てれば幸いです。次回は神経ブロックの実際についてさらに具体的に解説します。1)花岡一雄ほか監修. 痛みマネジメントupdate 日本医師会雑誌. 2014;143:S180-S181

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042)外来処置で試される発想力【Dr.デルぽんの診察室観察日記】

第42回 外来処置で試される発想力ゆるい皮膚科勤務医デルぽんです☆コロナ禍で一時減少した外来も元に戻りつつあり、日々忙しく過ごしております。先日のこと、片耳の粉瘤で受診した患者さんがいらっしゃいました。その場で処置が必要だったので、局所麻酔した後切開・洗浄し、圧迫固定したところまではよかったのですが…。帰り際に患者さんが、「これって、マスクはどうやって着けたらいいですか?」とひと言。なるほど、耳にガーゼを当てているため、マスクのゴム紐がかかりません。しかし、コロナ対策のためにも、帰宅時にマスクの着用はお願いしたいところ…。診察室にある物でなんとかできないだろうか? と少し考えた結果、ガーゼを紙縒(こより)のようにくるくるっと巻いて紐状にし、両側のマスクのゴム紐を頭の後ろで結わえることにしました。マスクの着け外しは、結んだガーゼごとスポッと頭の上を通してもらいます。長年皮膚科外来をやっていますが、マスクが着けられなくて困ったことはなかったので、今回の出来事はちょっと新鮮でした。外来処置の多い皮膚科では、毛髪の近い顔や、頭皮の傷など、部位によってはガーゼの留め方や圧迫の仕方を工夫しなければいけないときがあります。その場その場で臨機応変に対応しつつ、今後も経験値を増やしていきたい所存です。それでは、また~!

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乳がん術後再発、局所vs.全身麻酔で差なし/Lancet

 乳がんの根治的切除術時の麻酔法として、局所的な麻酔/鎮痛(傍脊椎ブロックとプロポフォール)は、全身麻酔(揮発性麻酔[セボフルラン]とオピオイド)と比較して、乳がんの再発を抑制しないことが、米国・クリーブランドクリニックのDaniel I. Sessler氏らBreast Cancer Recurrence Collaborationの検討で示された。研究の詳細は、Lancet誌オンライン版2019年10月20日号に掲載された。手術時のストレス応答、揮発性吸入麻酔の使用、鎮痛のためのオピオイドは、がん手術の周術期因子であり、いずれも再発に対する宿主防御を減弱させるという。一方、これらの因子はすべて、局所的な麻酔/鎮痛によって改善するとされている。8ヵ国13施設が参加、2つの仮説を検証する無作為化試験 研究グループは次の2つの仮説を立て、これを検証する目的で無作為化対照比較試験を行った(アイルランド・Sisk Healthcare Foundationなどの助成による)。 (1)傍脊椎ブロックとプロポフォールを用いた局所麻酔/鎮痛は、揮発性麻酔薬セボフルランとオピオイド鎮痛による全身麻酔に比べ、治癒が期待される根治的切除術後の乳がんの再発を抑制する(主要仮説)、(2)局所麻酔/鎮痛は、乳房の持続性の術後痛を低減する(副次仮説)。 8ヵ国(アルゼンチン、オーストリア、中国、ドイツ、アイルランド、ニュージーランド、シンガポール、米国)の13病院で、治癒が期待される根治的切除術(初回)を受ける乳がん女性(85歳未満)が登録され、局所麻酔/鎮痛を受ける群または全身麻酔を受ける群に無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは、局所または転移を有する乳がん再発とし、intention-to-treat解析を行った。副次アウトカムは、6ヵ月後と12ヵ月後の術後痛であった。再発率:10% vs.10%、1年後の術後痛:28% vs.27% 2007年1月30日~2018年1月18日の期間に、2,108例の女性が登録され、1,043例(平均年齢53[SD 12]歳)が局所麻酔/鎮痛群に、1,065例(53[11]歳)は全身麻酔群に割り付けられた。1,253例(59%)が北京市、404例(19%)がダブリン市、170例(8%)はウィーン市からの患者であった。 ベースラインの患者背景は両群間でバランスがよくとれていた。追跡期間中央値は、両群とも36ヵ月(IQR:24~49)だった。 乳がんの再発は、局所麻酔/鎮痛群が102例(10%)、全身麻酔群は111例(10%)で報告され、両群間に有意な差は認められなかった(補正後ハザード比[HR]:0.97、95%信頼区間[CI]:0.74~1.28、p=0.84)。 術後痛は、6ヵ月の時点では局所麻酔/鎮痛群が856例中442例(52%)、全身麻酔群では872例中456例(52%)で報告され、12ヵ月時にはそれぞれ854例中239例(28%)、852例中232例(27%)で報告された(全体の中間補正後オッズ比:1.00、95%CI:0.85~1.17、p=0.99)。 神経障害性の乳房痛の発生には麻酔術による差はなく、6ヵ月時には局所麻酔/鎮痛群が859例中87例(10%)、全身麻酔群は870例中89例(10%)で認められ、12ヵ月時はそれぞれ857例中57例(7%)、854例中57例(7%)にみられた。 著者は、「乳がん再発と術後痛に関しては、局所麻酔と全身麻酔のどちらを使用してもよい」としている。

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急性期虚血性脳卒中への翼口蓋神経節刺激は有益か/Lancet

 翼口蓋神経節(sphenopalatine ganglion:SPG)刺激療法は、血栓溶解療法の適応がなく、発症から8~24時間の急性期虚血性脳卒中の患者に対し安全に施行可能であり、とくに皮質病変を有する集団では機能アウトカムの改善をもたらす可能性があることが、イスラエル・Shaarei Zedek医療センターのNatan M. Bornstein氏らが行ったImpACT-24B試験で示された。研究の成果はLancet誌オンライン版2019年5月24日号に掲載された。SPG刺激は、前臨床研究において側副循環の血流増加、血液脳関門の安定化、梗塞サイズの縮小が報告され、ヒトでの無作為化パイロット試験では有益性をもたらす可能性が示唆されている。mRSの改善をシャム刺激と比較する無作為化試験 本研究は、18ヵ国73施設が参加した二重盲検シャム対照無作為化試験であり、2011年6月~2018年3月に患者登録が行われた(BrainsGateの助成による)。 対象は、年齢が男性40~80歳、女性40~85歳で、再灌流療法が施行されておらず、発症から8~24時間の前方循環系急性期虚血性脳卒中の患者であった。被験者は、SPG刺激またはシャム刺激を行う群に無作為に割り付けられた。SPG刺激は、画像ガイドシステムを用い、局所麻酔下に神経刺激電極(長さ23mm、直径2mm)をSPG近傍の翼口蓋管に植え込み、1日4時間、5日間施行された。 有効性の主要エンドポイントは、3ヵ月後の修正Rankinスケール(mRS)スコアの期待値を超える改善とした。ベースラインのNIH脳卒中スケール(NIHSS)スコア、年齢、脳卒中部位(左脳/右脳)によって事前に規定された予後モデルに基づくmRSの期待値と比較して1点以上低かった場合を、期待値を超える改善と定義した。このエンドポイントは、修正intention-to-treat(mITT)集団および確認された皮質病変(CCI)を有する集団で解析を行った。 安全性の主要エンドポイントは、3ヵ月時のすべての重篤な有害事象(SAE)、植え込み/除去に関連するSAE、刺激に関連するSAE、神経症状増悪(発症から10日以内の神経学的イベントに関連するNIHSSスコアの4点以上の上昇)、および死亡であった。CCI集団で、刺激の強さと主要エンドポイントに逆U字型用量反応関係 1,000例(mITT集団、年齢中央値70歳[IQR:63~77]、女性51%)が1回以上の治療を受けた(SPG刺激群481例、シャム刺激群519例)。CCI集団は520例(71歳[64~77]、49%)で、SPG刺激群244例、シャム刺激群276例だった。 mITT集団では、3ヵ月時の身体機能が期待値よりも改善した患者の割合は、SPG刺激群が49%(234/481例)と、シャム刺激群の45%(236/519例)よりも高かったが、有意差は認めなかった(オッズ比[OR]:1.14、95%信頼区間[CI]:0.89~1.46、p=0.31)。一方、CCI集団では、期待値よりも改善した患者の割合は、SPG刺激群が50%(121/244例)であり、シャム刺激群の40%(110/276例)に比べ有意に優れた(1.48、1.05~2.10、p=0.0258)。 CCI集団におけるSPG刺激の強さと主要エンドポイントには、逆U字型の用量反応関係が認められた。すなわち、良好なアウトカムを示した患者の割合は、低強度の40%から中強度では70%に上昇したが、高強度では40%へと、低強度と同じ割合に低下した(p=0.0034)。 mRS 0~2の割合(mITT集団:p=0.47、CCI集団:p=0.06)、mRS 0~3の割合(p=0.13、p=0.01)、脳卒中関連QOL(SIS-16、p=0.23、p=0.01)、機能障害関連QOL(UW-mRS、p=0.24、p=0.05)にも、CCI集団ではSPG刺激群で良好な傾向が認められた。 死亡率(SPG刺激群14.2% vs.シャム刺激群12.3%、p=0.38)およびSAE(全体:30.0% vs.28.1%、p=0.50、植え込み/除去関連:0.6% vs.0.0%、p=0.09、刺激関連SAE:0.6% vs.0.4%、p=0.68、神経症状増悪:7.6% vs.6.6%、p=0.49)には、両群に差はみられなかった。 著者は、「これらの知見は、CCIを有する急性期虚血性脳卒中患者の治療における、SPG刺激療法の臨床導入を支持するものである」としている。

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愚痴を言うべからず【Dr. 中島の 新・徒然草】(223)

二百二十三の段 愚痴を言うべからず前回、「日本に来るやつは全員大阪城で転んでウチに来るんか!」と余計なことを言ってしまいましたが、そのせいかバチが当たりました。今回はフランス人のオジサンです。石垣にのぼって写真を撮ろうとして転倒したとかで、ERに担ぎ込まれてきました。再び国際親善です。・ボンジュール(こんにちは)・ジュスィファティゲ(疲れちまったよ)・ジュテーム(愛してる)私の知っているフランス語はこの3つだけ。乏しいとはいえ、日仏友好のためにありったけの知識を動員してコミュニケーションを図りました。言うまでもないことですが、使ったのは前二者だけです。中島「ボンジュール! ジュスィファティゲ」オジサン「ジュフフフフ(そう聞こえた)」中島「すみませーん。フランス語わかりませーん」私がフランス語をしゃべれると思ったのか、オジサンはいろいろ訴えてました。でも、なにがなにやらさっぱり分かりません。そこで同行してきた通訳の女性に助けてもらうことにしました。中島「とにかく、これは縫った方がきれいに治ると思います」通訳「わかりました」病院スタッフ「処置の間、奥様と通訳の方は外に出ていてくださーい」中島「ちょっと待った。通訳が居なくてどないするねん!」病院スタッフ「?」このオジサンも言葉の通じない人に囲まれて処置されるのだから、1つ1つ説明してあげないと不安でしょう。中島「処置する時には、その都度、説明するので、横で通訳をお願いします」通訳「わかりました」わかったと言いつつ、通訳さんは顔を背けたままです。どうも血が苦手な人のようでした。中島「まずは局所麻酔をしまーす」通訳「ジュジュジュジュジュ」オジサン「OK、OK」中島「針はできるだけ細いのを使って痛くないようにします」通訳「ジュフジュフジュフ」オジサン「サンキュー、サンキュー」中島「(皮膚をつまんで)これ、痛いですか?」通訳「ジュフフジュフフ?」オジサン「ジュフフのフ」通訳「痛くないそうです」中島「じゃあ、2針ほど縫いますね」通訳「ジュフフ、ドゥ、フフ」中島「ちょっと予定が変わって4針になりました」通訳「フジュフフフフ」オジサン「サンキュー、サンキュー」というわけで処置は何とか済みました。後は例によって診断書です。ここは医学の世界の共通言語である英語で適当に済ませました。2018年5月〇日、このジェントルマンは転倒して前額部と右肘と右下腿を打撲した。我々はそれぞれの創部を水で洗った。前額部の切創は4針縫った。1週間後に抜糸する必要がある。抗菌薬は、〇〇を△△mg、8時間毎に3日間服用するよう処方した。まったく愛想のない診断書ですが、必要な情報は入れたつもりです。診断書を完成させてオジサン夫婦と通訳さんに見てもらいました。3人とも英語をしゃべるのは苦手だけど、書いたものはよく分かるようで、確認のための質問も的確です。最後にオジサンと握手をして一件落着。ホッとしたけど疲れました。毎週のように国際親善していますが、せめて各国語で「大阪にようこそ。日本旅行を楽しんでいますか?」くらいのことを言って周囲をびっくりさせたいですね。最後に1句愚痴言うと 仕事が増えて ジュスィファティゲ(疲れちまったよ)

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言葉は通じなくとも【Dr. 中島の 新・徒然草】(215)

二百十五の段 言葉は通じなくとも午後遅く、突然、ERから電話がかかってきました。顔の挫創の患者さんの処置をしたいので見て欲しい、というものです。パタパタと用事を済ませてからERに行くと、顔にガーゼを乗せた男性がストレッチャーの上に寝ていました。若いモンが慌ててプレゼンテーションします。若者「中国人です」中島「観光客?」若者「そうです。転倒して顔面を打ったそうです。何かにつまずいたということで、気を失って倒れたわけではありません」中島「なるほど。ところで言葉は通じるわけ?」若者「いやあ、日本語も英語もだめみたいです」中島「あらら」ガーゼをとって傷を確認しました。スッパリ切れていて、2~3針は縫った方が良さそうです。若者「一応、傷口は生食で洗っておきました」中島「問題は、縫うことをどうやって説明するかやな」50代の中国人男性は大人しく寝ていましたが、とにかく安心させてあげようと思い話しかけました。中島「ニーハオ」男性「ニーハウ」中島「Do you speak English?」男性「No, No」男性のしゃべっているのが北京語か広東語かよくわかりませんが、こちらとの共通言語というのがまったくないので困ってしまいました。こうなったら筆談しかありません。以下、【 】内が紙に書いた漢字です。中島【2縫合 or 3縫合】男性「OK, OK」私が紙に書いて見せると、男性はじっと読んでいます。意味が通じたのかうなずいています。中島「リャン or サン」 男性「OK, OK」私の英語+麻雀中国語という無茶苦茶な会話も一応通じました。というか、通じたような気がします。再び筆談へ。中島【局所麻酔薬】男性「OK, OK」話し言葉は違っていても書き言葉は共通。漢字は偉大です。ただ、男性はチラッと見て理解するのではなく、5秒くらいかけて理解しているようでした。確か中国の漢字にも繁体字とか簡体字とかあって、日本語の漢字とずいぶん違っているはずです。時間がかかってもわかればそれで良し。中島【注射】男性「Thank you」というわけで、何とか縫合にこぎつけました。患者さんが日本語を理解しないのをいいことに、熱血指導です。中島「おいおい、1回針を外に出せよ」若者「はいっ」中島「左右で同じ距離を取らないとアカンがな」若者「はいっ」中島「結紮をそんなに締めるな。後で皮膚が腫れた時にネクるかもしれんやろ」「ネクる」というのは necrosis から来ていて、「壊死する」という意味でわれわれは使っています。大阪以外でも通じるのかな。中島「左手の糸を長めに持て。その方が器械結びをやりやすいんや」若者「あっ、そうか」というわけで、無事に処置が終わりました。もしこの会話を全部理解できていたら、患者さんの方もさぞかし不安だったでしょうね。若者「この人、すぐに帰国するらしいです」中島「ということは、抜糸は中国でするのか」若者「だから紹介状がいると思うんですよ」中島「えっ?」若者 「先生、中国語で書けますか」できるわけないがな。知ってて聞くなよ。中島「よっしゃ、ERに来たついでに紹介状も書いとこか」若者「ホンマに書けるんですか!」中島「そんなモン、英語で書くに決まっとるやろ」若者「英語でもいいんでしょうか」中島「いくら中国でも、ドクターは英語できるぞ」医師の世界でもたいていの国の人は日本人より英語は上手です。もし通じなかったとしたら、多くの場合、こちらの英語力のせいでしょう。処置の終わった中国人患者さんは、心から感謝しているようで、われわれに何度もお礼を言ってくれました。筆談ができれば中国人が相手でも何とか乗り切れそう、というのが今回の診療での収穫です。ただ、最近の中国人観光客の多さを考えれば、われわれも中国語会話を学んだ方がいいのかもしれません。色々ありましたが最後に1句共通の 言語がなくても 漢字あり

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魔法のパッチで子供の注射の怖さを軽減

 2017年12月5日、佐藤製薬株式会社は、外用局所麻酔剤のリドカイン・プロピトカイン配合貼付剤(商品名:エムラパッチ)の発売を前に、「注射の痛みに我慢は必要ですか?」をテーマとしたメディアセミナーを開催した。 セミナーでは、「痛み」の概要と小児の痛みのケアについてディスカッションが行われた。なお、同貼付剤は12月13日に発売された(薬価251.60円/1枚)。子供のころの痛みは記憶として大きくなる はじめに同社代表取締役社長の佐藤 誠一氏があいさつし、医薬マーケティング部による製品説明の後、基調講演が行われた。 基調講演では、加藤 実氏(日本大学医学部麻酔科学系麻酔科学分野 診療教授)が、「その『医療の痛み』は本当に必要ですか?~痛みが無くなっても痛みの影響は終わらない~」をテーマに、主に小児における「痛み」の診療について現状や課題を語った。 痛みとは、組織の実質的あるいは潜在的な傷害に結びつくか、このような傷害を表す言葉を使って述べられる不快な感覚、情動体験と定義される。それは主観的な体験であり、患者本人にしかわからない。しかし痛みは、たとえば手術前の麻酔のように、予防することもできる。それにもかかわらず、1980年代までは新生児や小児への痛みの対応はなおざりだったという。 それは、新生児は痛みを感じにくいと思われていたからであり、1980年代後半に報告された論文以降、大きく変化した。すなわち新生児は、痛みの抑制系が未発達ゆえに痛みを感じやすく、新生児の外科的処置時には、成人同様、局所麻酔薬や全身麻酔薬を使用し、減量および中止も成人と同じ基準で行うべきという考えに変化した1)。 さらに小児期での痛みの体験は、一時的なものではなく成長後にも影響を与え、中枢性感作、不安・恐怖など記憶を介した認知を獲得する。たとえば、小児期の機能的な腹痛は、成人後の慢性痛リスクを増加させるという報告もあるという2)。局所麻酔を行い、痛みを中枢神経に伝えないようにすることは、痛みや恐怖から脳を守ることにつながると同氏は説明する。小児の痛みをマネジメントする時代へ 小児の痛みの予防について、まず小児が怖がる痛みの代表に、予防接種、採血、点滴などの注射が挙げられる。現在わが国では、こうした痛みを医療者も患者も「仕方がない」「一時的」「我慢できる」などの理由で、まだ看過しているのが現状だと、加藤氏は問題を指摘する。一方、欧米では、先述の理由から積極的に痛みのマネジメントについて取り組みが行われ、たとえばカナダでは「小児のためのワクチン摂取の痛みのマネジメント(Pain Management During Immunizations for Children)」が作成され、ガイドラインによって痛みの軽減が図られている3)。また、世界保健機関(WHO)も「ワクチン接種時の痛みの軽減についての提言」を2015年に発表するなど、世界的な動きが示されている。 加藤氏は講演のまとめとして、「小児の医療における痛みへの対応が向上するには時間がかかるかもしれないが、防げる痛みを防ぎ、子供を痛みから守る医療を一緒に目指そう」と、小児医療に関わる人々へ向け抱負を述べた。痛みの軽減だけではない患児へのメリット 引き続き、「子どもたちが怖がらずに済む医療へ」をテーマに、先の演者の加藤氏に加え、富澤 大輔氏(国立成育医療研究センター 小児がんセンター 血液腫瘍科 医長)、平田 美佳氏(聖路加国際病院 小児総合医療センター 小児看護専門看護師)によるディスカッションが行われた。 「小児期の疼痛対策の必要性」について、医療者だけでなく患児の親も持つ「痛みは仕方がない」という思い込みから、ケアがされていない現状であるという。わが国は我慢の文化であり、薬も使わない、痛みの弊害に目が向けられない状態が続いている。海外(英国)を例に平田氏は、「10年以上前から子供の痛みのケアが行われ、エムラクリームのような局所麻酔クリームを日常的に使用し、子供たちの間では『マジック・クリーム』の愛称で親しまれ、注射などの処置の前に塗布する習慣ができていた」と説明した。また、「病院での工夫」としては、「患児の疑問に答え、希望に沿うようにしているほか、事前におもちゃの注射器を見せて、準備をさせることも不安軽減に大事だと考えている。注射などの際は、患児の集中力を分散させる環境作りや処置後のフォローを行い、ケースによっては、エムラクリームなどの情報提供をしている」と同氏は付け加えた。 次に、「小児がんの治療の現場」を富澤氏が語った。「診療の中で、患児に痛みを伴う検査や治療が多いのが現状。痛みへのケアがないと、患児は診療に消極的になってしまうので、親を良いサポーターにする努力が医療者側には必要であり、同時に痛みに対する親の意識を変える必要性もある。注射への配慮としては、不必要な検査は避け、患児に痛みを除く方法もあることを説明しておく必要がある。急性リンパ性白血病(ALL)でのエムラクリームを使用したコントロール研究では、局所麻酔下だと患児の動きがなく、心拍数も変わらないという報告もある4)。これは大事な点で、ALL治療の予後にも影響することなので、治療時の患児の動きを抑えることは重要だと考える」と、同氏は実臨床をもとに説明した。患児の痛みのケアには医療者と社会の認知が必要 最後に、各演者が医療者へのメッセージを述べた。平田氏は「血友病の患児がエムラクリームのおかげで、治療を在宅で行えるようになり、表情が明るくなった。患児の感じる痛みを今後もマネジメントしていきたい」と事例を挙げて語り、富澤氏は「小児科は比較的患児の痛みケアが進んでいる分野だが、一般的に多くの医療者は患児の痛みのケアやこうした製剤を知らない。患児の親が医療者に適用を依頼するケースもあり、わが国も欧米並みに知識の普及と診療使用を考え、実践する必要がある」と見解を述べた。 最後に加藤氏は、「痛みをなくすには、体と心の両方の治療が必要で、エムラクリームのように痛みを軽減するツールがあるのに使われていないのが問題。医師への啓発だけではなく、いかに一般社会に広く浸透させるかが今後の課題」と問題を提起し、ディスカッションを終えた。■参考佐藤製薬株式会社 ニュースリリース「エムラパッチ」新発売のご案内(PDF)

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高感度心筋トロポニンT、非心臓手術後の死亡と関連/JAMA

 非心臓手術施行例では、術後3日間の高感度心筋トロポニンT(hsTnT)のピーク値が30日死亡リスクと関連することが、カナダ・マックマスター大学のP.J.Devereaux氏らが行ったVISION試験で示された。心筋虚血の臨床所見がみられない場合でも、hsTnT値上昇は30日死亡と関連したという。研究の成果は、JAMA誌2017年4月25日号に掲載された。非心臓手術後心筋障害(myocardial injury after noncardiac surgery:MINS)は、術後30日以内に発症した心筋虚血に起因する心筋障害と定義され、死亡との独立の関連が確認されている。非高感度心筋トロポニンTアッセイに基づくMINSの診断基準が確立されているが、米国食品医薬品局(FDA)は最近、hsTnTの使用を承認し、世界的に多くの病院でhsTnTアッセイが用いられている。13ヵ国の2万例以上を対象とする前向きコホート試験 本研究は、非心臓手術時の周術期hsTnT値と、術後30日死亡および心筋障害との関連を検討する前向きコホート試験であり、13ヵ国23施設の参加の下、2008年10月に開始され2013年12月にフォローアップを終了した(Roche Diagnostics社など60件以上の助成を受けた)。 年齢45歳以上、全身または局所麻酔下に非心臓手術を受け、術後1晩以上入院した患者2万1,842例が対象となった。術後6~12時間にhsTnT値を測定し、1日1回、3日間の測定が行われた。 修正Mazumdarアプローチ(hsTnT値の閾値を探索する反復的プロセス)を用いて、独立して30日死亡と関連し、補正ハザード比(HR)≧3.0、30日死亡率≧3%を満たす、予後予測に重要な術後hsTnTの閾値の最低値を確定した。 また、MINSの診断基準を明らかにするために、診断には術後hsTnT値上昇とともに、30日死亡に関連する心筋虚血の臨床所見(虚血性症状または心電図所見)が必要かを確定する回帰分析を行った。hsTnT値≧20ng/L、絶対値≧5ng/L上昇で死亡リスク増大 対象の平均年齢は63.1(SD 10.7)歳、49.1%が女性であった。術後30日以内に266例(1.2%、95%信頼区間[CI]:1.1~1.4)が死亡した。 多変量解析では、参照群(ピークhsTnT値<5ng/L)と比較して、術後ピークhsTnT値20~<65ng/L、同65~<1,000ng/L、同≧1,000ng/Lの群の30日死亡率は、それぞれ3.0%(123/4,049例、95%CI:2.6~3.6%)、9.1%(102/1,118例、95%CI:7.6~11.0)、29.6%(16/54例、95%CI:19.1~42.8)であり、補正後HRは23.63(95%CI:10.32~54.09)、70.34(95%CI:30.60~161.71)、227.01(95%CI:87.35~589.92)と、ピーク値が上昇するほど死亡リスクが高くなった。 hsTnT値の変化の絶対値≧5ng/Lの上昇は、30日死亡リスクの増大と関連が認められた(補正HR:4.69、95%CI:3.52~6.25)。また、虚血の臨床所見のない場合でも、術後hsTnT値上昇(術後ピークhsTnT値20~<65ng/Lの群のうち絶対値で≧5ng/L上昇した例および≧65ng/L群)は30日死亡と関連した(補正後HR:3.20、95%CI:2.37~4.32)。MINSを発症した3,904例のうち、3,633例(93.1%、95%CI:92.2~93.8)には虚血性症状がみられなかった。 著者は、「術後ピークhsTnT値≧20ng/LおよびhsTnT値の絶対値で≧5ng/Lの上昇が、30日死亡リスクの上昇と関連した」とまとめ、「これらの知見に基づき、MINSの診断基準は、虚血の臨床所見を要さない心筋虚血(非虚血性の病因のエビデンスはない)の結果と判定される術後hsTnT値の上昇であり、MINSは重大な心血管合併症リスクの増加と関連した」としている。

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Dr.林の笑劇的救急問答12

第1回 創傷処置1 まずは洗おう!そうしよう! 第2回 創傷処置2 痛くない注射 第3回 高血糖救急1 腹痛なら胃腸炎?それダメ!第4回 高血糖救急2 インスリン一発!それダメ! シーズン12下巻のテーマは 「創傷処置」と「高血糖救急」。創傷処置:外傷の患者に行う創処置は、できるだけ“痛くなく”するのは当然!とDr.林。閉鎖療法や縫合の基本、動物咬傷、痛くない局所麻酔注射、釣り針の抜き方、など実演映像を交えて、“痛くない”処置のコツを伝授! 高血糖救急:腹痛の患者に安易に“胃腸炎”というゴミ箱診断していませんか?DKAの患者にインスリンを一発!していませんか?誰もがついやってしまいがちな診療にDr.林が待ったをかけます!高血糖救急でのピットフォールを中心に徹底レクチャー!第1回 創傷処置1 まずは洗おう!そうしよう!創処置の基本は創洗浄!創洗浄の水は滅菌水である必要はないんです!むしろ水道水のほうが感染率が低いというデータも。そう、大切なのは洗い方なのです。また、閉鎖療法や縫合の基本、そして動物咬傷などの感染が懸念される傷についても、エビデンスを提示しながら、正しい創傷処置について解説します。第2回 創傷処置2 痛くない注射 救急や外来に訪れる外傷の患者に行う創処置は、できるだけ“痛くなく”するのは当然!とDr.林。今回は、痛くない局所麻酔注射、皮下ブロック、釣り針の抜き方、停留針、指輪の外し方などを、実演画像を交えて、コツを伝授!患者さんのためにしっかりとマスターしてください!第3回 高血糖救急1 腹痛なら胃腸炎?それダメ!腹痛を主訴に来た患者さんに“胃腸炎”というゴミ箱診断をしていませんか?ウイルス性の胃腸炎は嘔気・嘔吐・下痢の三拍子そろって初めて診断できるものです。解剖学的に説明のつかない腹痛というものはたくさんあります。糖尿病性ケトアシドーシスでの腹痛もその一つ。腹痛を主訴に受診した患者さんの場合には、必ず鑑別疾患にあげましょう!だれもが陥りやすいピットフォールを爆笑症例ドラマとDr.林の講義で確認しましょう!そうすれば決して忘れることはないでしょう。第4回 高血糖救急2 インスリン一発!それダメ!DKAの患者さんが救急搬送!さあ、あなたならどうしますか?インスリンを一発!いやいや、それは絶対ダメです!まずは慌てずゆっくり脱水の補正を行いましょう。脱水の補正の仕方によっては、脳浮腫などの合併症を起こすことも考えられます。どのように補正していくか、まだ教科書にも載っていない最新の話題“Dallas protocol”も取り入れながら、解説します。DKAの患者にやること、そして絶対にやってはいけないことを明確にわかりやすく、Dr.林ならではの講義でお届けします。

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本質を突いた言葉【Dr. 中島の 新・徒然草】(135)

百三十五の段 本質を突いた言葉交通事故で救命センターに担ぎ込まれてきたある中年男性のお話です。最初こそ瀕死の重傷だったものの、回復するにつれて元の性格が出てきました。主治医や看護師さんの言うことにまったく耳を貸さないばかりか、勝手に病院を抜け出したりしていました。本人によれば、「1億円とか2億円とかの取引があるんで自分が立ち会わんとアカンのや!」ということですが、真偽のほどは不明です。というか、そもそも「取引」って何なんでしょうかね?で、この患者さん、半ば事故退院のような形で自宅に帰りました。後に残されたのは、対応に疲れ切った病棟スタッフのみ。ところが、こんな人に限って慢性硬膜下血腫ができてしまったのです。再度入院して手術となると大変です。五苓散を処方して外来で粘ったのですが、毎週CTを撮影するたびに血腫は拡大していきました。ある日、「これはいよいよ手術するしかないか」と思いつつ、診察室のモニターでCTを眺めていると、件の患者さんがいきなりドアを開けて診察室に入ってきました。患者「めっちゃ増えとるやん!」中島「増えているといったら増えているんですけど」一目見て血腫の増大に気付いたようです。患者「やっぱり手術すんの? いつ?」中島「手術室の混み具合によるけど、午後3時以降かな」患者「今日か! ほな嫁を呼ぶわ」いきなり携帯に向かって怒鳴り始めました。患者「おい、何しとるんや! 入院になってもたんや、早よ来い」思った事がそのまま口から出てくる人のようです。患者「入院してた時に先生らの言うこと守らんかったからかな?」中島「あんまり関係ないと思いますけどね」医師たるもの、ここで「うむ、その通りだ」と言うぐらいの腹芸ができるべきなのですけど、私も別の意味で思ったことがそのまま口から出てくる人間だったようです。そして手術室。ついに怖れていたことが起こってしまいました。患者「何すんねん、しばくぞー!」担当医「これは局所麻酔薬ですからね」患者「アホーッ、痛いやないか」中途半端な量の鎮静薬で抑制がとれてしまったせいか、手術室で大暴れです。中島「ちょっと、手を握っていてくれるか」看護師「はい」そう言いつつ、ふと、手術室の片隅に突っ立って見学している医学生に気付きました。貴重な戦力の手術室ナースより、彼に手を握ってもらうほうがよっぽど適材適所です。交代してもらおうとしたその時、手術室に患者さんの声が響き渡りました。患者「これは女の手ェか!」中島「そや!」すかさず返事をすると、患者さんは安心したのか、看護師さんの手を握ったまま急におとなしくなってしまいました。そんなこんなで何とか手術を終えることができ、翌日には無事に退院となりました。それにしても「女の手ェか!」とは……。危急存亡のフチに立たされた人間の、まさに人生の本質を突いた言葉です。握っていたのが男子学生の手で、しかも「すみません。男の手です」などと正直に返事していたら、大変なことになっていたでしょう。危なかった。最後に1句握った手 女か否かが 大切や!

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乳幼児期の全身麻酔、2歳時の神経発達への影響は/Lancet

 生後60週未満の乳幼児に対するセボフルランによる全身麻酔は、意識下局所麻酔と比べ、2歳時点における神経発達アウトカムへの影響は認められなかったことが報告された。オーストラリア・Murdoch Childrens Research InstituteのAndrew J. Davidson氏らが行った、無作為化比較試験の副次評価項目で示された。Lancet誌オンライン版2015年10月23日号掲載の報告より。オーストラリア、イタリアなど7ヵ国28病院で試験 研究グループは、2007年2月9日~13年1月31日にかけて、オーストラリア、イタリア、米国など7ヵ国28ヵ所の病院を通じて、生後60週未満で、胎在週数26週を超えてから生まれ、鼠径ヘルニア縫合術を受けた幼児722例を対象に試験を行った。 無作為に2群に分け、一方には意識下局所麻酔を(363例)、もう一方にはセボフルランによる全身麻酔を行った(359例)。 主要評価項目は、5歳時点でのウェクスラー就学前・小学生知能評価尺度第3版(WPPSI-III)スコアだった。今回の報告では、副次的評価項目の2歳時点でのベイリー乳幼児発達尺度第3版の認知機能複合スコアが発表された。全身麻酔時間中央値は54分 被験者のうちアウトカムが得られたのは、局所麻酔群が238例、全身麻酔群が294例だった。 2歳時点でのベイリー乳幼児発達尺度認知機能複合スコア平均値は、局所麻酔群が98.6(SD:14.2)、全身麻酔群が98.2(同:14.7)で、両群の差は0.169(95%信頼区間:-2.30~2.64)と同等だった。 なお、全身麻酔群の麻酔時間中央値は54分だった。

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タバコを吸いやすくさせる添加物

タバコを吸いやすくする添加物 メンソール粘膜への局所麻酔作用で熱感を軽減し、煙を吸いやすくする。 砂糖燃焼で生じる「アセトアルデヒド」がニコチン急性毒性による自覚症状を緩和し、ニコチン吸入をしやすくする。砂糖メンソール成分のミントココア末アンモニア ココア末燃焼で生じる「テオブロミン」による気管支拡張作用で煙を吸いやすくする。カフェインにも同様の作用があることが知られている。 アンモニアニコチンはアルカリ性環境で吸収されやすく、酸性環境では吸収されにくい。アンモニアは粘膜をアルカリ性にし、ニコチンの吸収を早くする。「タバコは、単に葉っぱを紙で巻いたものではない。死ぬまでやめられないように巧妙に開発された製品なのだ」(2000年 WHO世界禁煙デー)社会医療法人敬愛会 ちばなクリニックCopyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.清水 隆裕氏

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巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎)〔GCA : giant cell arteritis〕

1 疾患概要■ 概念・定義巨細胞性動脈炎(giant cell arteritis:GCA)は、大動脈とその分枝の中~大型動脈に起こる肉芽腫性血管炎である。頸動脈の頭蓋外の動脈(とくに側頭動脈)が好発部位のため、以前は、側頭動脈炎(temporal arteritis:TA)といわれた。発症年齢の多くは50歳より高齢であり、しばしばリウマチ性多発筋痛症(PMR)を合併する。1890年HunchingtonらがTAの症例を報告し、1931年にHortonらがTAの臨床像や病理学的特徴を発表したことからTAとしての古い臨床概念が確立し、また、TAは“Horton’s disease”とも呼ばれてきた。その後1941年Gilmoreが病理学上、巨細胞を認めることから“giant cell chronic arteritis”の名称が提唱された。この報告により「巨細胞性動脈炎(GCA)」の概念が確立された。GCAは側頭動脈にも病変を認めるが、GCAのすべての症例が側頭動脈を傷害するものではない。また、他の血管炎であっても側頭動脈を障害することがある。このためTAよりもGCAの名称を使用することが推奨されている。■ 疫学 1997年の厚生省研究班の疫学調査の報告は、TA(GCA)の患者は人口10万人当たり、690人(95%CI:400~980)しか存在せず、50歳以上では1.48人(95%CI: 0.86~2.10)である。人口10万人当たりの50歳以上の住民のGCA発症率は、米国で200人、スペインで60人であり、わが国ではTA(GCA)は少ない。このときの本邦のTA(GCA)の臨床症状は欧米の症例と比べ、PMRは28.2%(欧米40~80%)、顎跛行は14.8%(8~50%)、失明は6.5%(15~27%)、脳梗塞は12.1%(27.4%)と重篤な症状はやや少ない傾向であった。米国カリフォルニア州での報告では、コーカシアンは31症例に対して、アジア人は1例しか検出されなかった。中国やアラブ民族でもGCAはまれである。スカンジナビアや北欧出身の家系に多いことが知られている。■ 病因病因は不明であるが、環境因子よりも遺伝因子が強く関与するものと考えられる。GCAと関連が深い遺伝子は、HLA-DRB1*0401、HLA-DRB1*0404が報告され、約60%のGCA症例においてどちらかの遺伝子を有する。わが国の一般人口にはこの2つの遺伝子保持者は少ないため、GCAが少ないことが推定される。■ 症状全身の炎症によって起こる症状と、個別の血管が詰まって起こる症状の2つに分けられる。 1)全身炎症症状発熱、倦怠感、易疲労感、体重減少、筋肉痛、関節痛などの非特異的な全身症状を伴うので、高齢者の鑑別診断には注意を要する。2)血管症状(1)頸部動脈:片側の頭痛、これまでに経験したことがないタイプの頭痛、食べ物を噛んでいるうちに、顎が痛くなって噛み続けられなくなる(間歇性下顎痛:jaw claudication)、側頭動脈の圧痛や拍動頸部痛、下顎痛、舌潰瘍など。(2)眼動脈:複視、片側(両側)の視力低下・失明など。(3)脳動脈:めまい、半身の麻痺、脳梗塞など。(4)大動脈:背部痛、解離性大動脈瘤など。(5)鎖骨下動脈:脈が触れにくい、血圧に左右差、腕の痛みなど。(6)冠動脈:狭心症、胸部痛、心筋梗塞など。(7)大腿・下腿動脈:間歇性跛行、下腿潰瘍など。3)合併症約30%にPMRを合併する。高齢者に起こる急性発症型の両側性の頸・肩、腰の硬直感、疼痛を示す。■ 分類側頭動脈や頭蓋内動脈の血管炎を呈する従来の側頭動脈炎を“Cranial GCA”、大型動脈に病変が認められるGCAを“Large-vessel GCA”とする分類法が提唱されている。大動脈を侵襲するGCAは、以前、高安動脈炎の高齢化発症として報告されていた経緯がある。GCA全体では“Cranial GCA”が75%である。“Large-vessel GCA”の中では、大動脈を罹患する型が57%、大腿動脈を罹患する型が43%と報告されている(図)。画像を拡大する■ 予後1998年の厚生省全国疫学調査では、治癒・軽快例は87.9%であり、生命予後は不良ではない。しかし、下記のように患者のQOLを著しく阻害する合併症がある。1)各血管の虚血による後遺症:失明(約10%)、脳梗塞、心筋梗塞など。2)大動脈瘤、その他の動脈瘤:解離・破裂の危険性に注意を要する。3)治療関連合併症:活動性制御に難渋する例では、ステロイドなどの免疫抑制療法を反復せねばならず、治療関連合併症(感染症、病的骨折、骨壊死など)で臓器や関連の合併症にてQOLが不良になる。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)1990年米国リウマチ学会分類基準に準じる。5項目のうち3項目を満足する場合、GCAと分類する(感度93.5、特異度91.2%)。厚生労働省の特定疾患個人調査票(2015年1月)は、この基準にほぼ準拠している。5項目のうち3項目を満足する場合に、GCAと診断される(表1)。画像を拡大する■ 検査1)血液検査炎症データ:白血球増加、赤沈亢進、CRP上昇、症候性貧血など。CRP赤沈は疾患活動性を反映する。2)眼底検査必須である。虚血性視神経症では、視神経乳頭の虚血性混濁浮腫と、網膜の綿花様白斑(軟性白斑)を認める。3)動脈生検適応:大量ステロイドなどのリスクの高い免疫抑制治療の適応を決めるために、病理学的検討を行うべきである。ただし、進行性の視力障害など、臨床経過から治療を急ぐべきと判断される場合は、ステロイド治療開始を優先し、側頭動脈生検が治療開始の後でもかまわない。側頭動脈生検の実際:症状が強いほうの側頭動脈を局所麻酔下で2cm以上切除する。0.5mmの連続切片を観察する。病理組織像:中型・大型動脈における(1)肉芽腫性動脈炎(炎症細胞浸潤+多核巨細胞+壊死像)、(2)中膜と内膜を画する内弾性板の破壊、(3)著明な内膜肥厚、(4)進行期には内腔の血栓性閉塞を認める。病変は分節状に分布する(skip lesion)。動脈生検で巨細胞を認めないこともある。4)画像検査(1)血管エコー:側頭動脈周囲の“dark halo”(浮腫性変化)はGCAに特異的である。(2)MRアンギオグラフィー(MRA):非侵襲的である。頭蓋領域および頭蓋領域外の中型・大型動脈の評価が可能である。(3)造影CT/3D-CT:解像度でMRAに優る。全身の血管の評価が可能である。3次元構築により病変の把握が容易である。高齢者・腎機能低下者には注意すること。(4)血管造影:最も解像度が高いが、侵襲的である。高齢者・腎機能低下者には注意すること。(5)PET-CT(2015年1月現在、保険適用なし):質的検査である。血管壁への18FDGの取り込みは、血管の炎症を反映する。ただし動脈硬化性病変でもhotになることがある。5)心エコー・心電図など:心合併症のスクリーニングを要する。■ 鑑別診断1)高安動脈炎(Takayasu arteritis:TAK)欧米では高安動脈炎とGCAを1つのスペクトラムの中にある疾患で、発症年齢の約50歳という違いだけで分類するという考えが提案されている。しかし、両疾患の臨床的特徴は、高安動脈炎がより若年発症で、女性の比率が高く(約1:9)、肺動脈病変・腎動脈病変・大動脈の狭窄病変が高頻度にみられ、PMRの合併はみられず、潰瘍性大腸炎の合併が多く、HLA-B*52と関連する。また、受診時年齢と真の発症年齢に開きがある症例もあるので注意を要する。現時点では発症年齢のみで分けるのではなく、それぞれGCAとTAKは1990年米国リウマチ学会分類基準を参考にすることになる。2)動脈硬化症動脈硬化症は、各動脈の閉塞・虚血を来しうる。しかし、新規頭痛、顎跛行、血液炎症データなどの臨床的特徴が異なる。GCAと動脈硬化症は共存しうる。3)感染性大動脈瘤(サルモネラ、ブドウ球菌、結核など)、心血管梅毒細菌学的検査などの感染症の検索を十分に行う。4)膠原病に合併する大動脈炎など(表2)画像を拡大する3 治療 (治験中・研究中のものも含む)治療の目標は、(1)全身炎症症状の改善、(2)臓器不全の抑制、(3)血管病変の進展抑制である。ステロイド(PSL)は強い抗炎症作用を有し、GCAにおいて最も確実な治療効果を示す標準治療薬である。■ 急性期ステロイド初期量:PSL 1mg/kg/日が標準とされるが、症状・合併症に応じて適切な投与量を選択すること。2006~2007年度の診療ガイドラインでは、下記のように推奨されている。とくに、高齢者には圧迫骨折合併に注意する必要がある。1)眼症状・中枢神経症状・脳神経症状がない場合:PSL 30~40 mg/日。2)上記のいずれかがある場合:PSL 1mg/kg/日。■ 慢性期ステロイド漸減:初期量のステロイドにより症状・所見の改善を認めたら、初期量をトータルで2~4週間継続したのちに、症状・赤沈・CRPなどを指標として、ステロイドを漸減する。2006~2007年度の診療ガイドラインにおける漸減速度を示す。1)PSL換算20mg/日以上のとき:2週ごとに10mgずつ漸減する。2)PSL換算10~20mg/日のとき:2週ごとに2.5mgずつ漸減する。3)PSL換算10mg/日以下のとき:4週ごとに1mgずつ、維持量まで漸減する。重症例や活動性マーカーが遷延する例では、もう少しゆっくり漸減する。■ 寛解期ステロイド維持量:維持量とは、疾患の再燃を抑制する必要最小限の用量である。2006~2007年度の診療ガイドラインでは、GCAへのステロイド維持量はPSL換算10mg/日以下とし、通常、ステロイドは中止できるとされている。しかし、GCAの再燃例がみられる場合もあり、GCAに合併するPMRはステロイド減量により再燃しやすい。■ 増悪期ステロイドの再増量:再燃を認めたら、通常、ステロイドを再増量する。標的となる臓器病変、血管病変の進展度、炎症所見の強度を検討し、(1)初期量でやり直す、(2)50%増量、(3)わずかな増量から選択する。免疫抑制薬併用の適応:免疫抑制薬はステロイドとの併用によって相乗効果を発揮するため、下記の場合に免疫抑制薬をステロイドと併用する。1)ステロイド効果が不十分な場合2)易再燃性によりステロイド減量が困難な場合免疫抑制薬の種類:メトトレキサート、アザチオプリン、シクロスポリン、シクロホスファミドなど。■ 経過中に注意すべき合併症予後に関わる虚血性視神経症、脳動脈病変、冠動脈病変、大動脈瘤などに注意する。1)抗血小板薬脳心血管病変を伴うGCA患者の病変進展の予防目的で抗血小板薬が用いられる。少量アスピリンがGCA患者の脳血管イベントおよび失明のリスクを低下させたという報告がある。禁忌事項がない限り併用する。2)血管内治療/血管外科手術(1)各動脈の高度狭窄ないし閉塞により、重度の虚血症状を来す場合、血管内治療によるステント術か、バイパスグラフトなどによる血管外科手術が適応となる。(2)大動脈瘤やその他の動脈瘤に破裂・解離の危険がある場合も、血管外科手術の適応となる。4 今後の展望関節リウマチに保険適用がある生物学的製剤を、GCAに応用する試みがなされている(2015年1月現在、保険適用なし)。米国GiACTA試験(トシリズマブ)、米国AGATA試験(アバタセプト)などの治験が行われている。わが国では、トシリズマブの大型血管炎に対する治験が進行している。5 主たる診療科リウマチ科・膠原病内科、循環器内科、眼科、脳神経外科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 巨細胞性動脈炎(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)今日の臨床サポート 巨細胞性動脈炎(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)J-STAGE(日本臨床免疫学会会誌) 巨細胞性動脈炎(医療従事者向けのまとまった情報)2006-2007年度合同研究班による血管炎症候群の診療ガイドライン(GCAについては1285~1288参照)(医療従事者向けのまとまった情報)1)Jennette JC, et al. Arthritis Rheum. 2013;65:1-11.2)Grayson PC, et al. Ann Rheum Dis. 2012;71:1329-1334.3)Maksimowicz-Mckinnon k,et al. Medicine. 2009;88:221-226.4)Luqmani R. Curr Opin Cardiol. 2012;27:578-584.5)Kermani TA, et al. Curr Opin Rheumatol. 2011;23:38-42.

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事例62 トリガーポイント注射の査定【斬らレセプト】

解説事例では、左手の痛みにドゥクルバン腱鞘炎と診断。L104 トリガーポイント注射を施行したところ、B事由(医学的に過剰・重複と認められるものをさす: 過剰)を理由に、腱鞘周囲注射(G000 筋肉内注射を準用)に査定となった。トリガーポイント注射の留意事項には、「圧痛点に局所麻酔剤あるいは局所麻酔剤を主剤とする薬剤を注射する手技(後略)」とある。ここで注意すべきは、ドゥクルバン腱鞘炎の圧痛点は腱鞘であり、腱鞘に対する注射には「腱鞘周囲注射」と「腱鞘内注射」の項目が明確に設定されていることである。よって、トリガーポイント注射の算定では、過剰請求であると判断されたものである。さらに、腱鞘炎に対してあえてトリガーポイント注射を算定したのは、腱鞘内に針先が入っていないことを示すと判断され、腱鞘内注射ではなく腱鞘周囲注射に査定となったものであろう。同じような手技・行為であっても、施行する部位によって報酬項目が異なる場合があることに留意が必要である。

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慢性脳卒中に期待、神経幹細胞治療

 2015年3月19日、日本再生医療学会総会にて、米国・スタンフォード大学 脳神経外科 教授であるGary Steinberg氏が「Stem cell therapy for stroke(脳卒中の幹細胞治療)」と題して講演した。注目される脳卒中の神経幹細胞治療 脳卒中は世界の死因の第2位である。脳卒中は身体機能障害の主な原因であり、脳卒中による機能欠損には治療法がない。そのようななか、新たな治療法として神経幹細胞治療が注目を浴びている。神経幹細胞は多くの脳卒中の動物モデルの実験が行われ、栄養因子や成長因子、その他のタンパク質や分子を分泌し、生来からある脳の回復機能の強化により神経機能の再生に作用することが確認されている。多くの試験が行われており、ClinicalTrials.govによると現在17の幹細胞による虚血性脳卒中治療の臨床試験が進行中である。これらの試験では、種々の細胞由来の幹細胞が用いられ、さまざまな臨床ステージで行われている。投与経路も静脈、動脈、頭蓋内、クモ膜下(腔)内など多彩である。良好な結果を残した慢性脳卒中の臨床試験 Steinberg氏が紹介した臨床試験の中から、間葉系細胞由来の細胞医薬SB623の臨床試験の結果を紹介する。SB623はヒト間葉系細胞にNotch1遺伝子を導入した神経再生細胞である。脳卒中動物モデルでの神経再生作用と安全性が認められ、米国食品医薬品局(FDA)から治験を許可され、昨年試験を完了している。ちなみに、動物実験でシクロスポリンを使用せずに効果が認められたことから、臨床試験での免疫抑制薬の使用が除外されている。 このPhase I/IIa臨床試験はスタンフォード大学とピッツバーグ大学の共同で行われた。被験者は18~75歳の脳卒中患者18人。NIH脳卒中リスクスコア7以上。脳卒中発症後6ヵ月~36ヵ月経過し身体機能障害を有する。1次評価項目は安全性と神経学的機能改善効果で、投与6ヵ月から2年間評価される。投与は1回、局所麻酔下で随腔内の卒中部位の周囲に直接注入される。 有害事象の結果をみると、頭痛など軽度のものが多くを占めた。重度は硬膜下血腫、TIA(16ヵ月後)など4件。硬膜下血腫は移植の外科的手技によるもので、それ以外は細胞由来のものはみられなかった。サイトカイン(TNF-α、IL-6、IFN-γ)および細胞ドナーのHLA抗原に対する抗体レベルにも変化はみられなかった。 神経学的機能改善効果をみると、ESS(欧州脳卒中スコア)がベースラインに比べ、移植1ヵ月後で有意に改善(p=0.0024)、その後も改善は続き1年後も有意な改善を示していた(p=0.0012)。2年後の現在もその状況は続いている。その他、NIH脳卒中スコア、Fugl-Meyerスコアなどの神経機能評価指標も同様の結果を示している。 また、Steinberg氏は統計的な結果に加え、2人の有効例について患者のビデオを交え紹介した。2人とも重度な身体機能障害が2年以上続いていた症例だが、SB623投与1日目に上肢の運動がみられるなど運動機能に変化がみられる。その改善効果は1年後も持続してみられ、現在も改善は続いている。長年にわたり脳卒中に携わっている同氏も信じられないほどの驚きだったという。 治療前後の被験者の脳MRI画像をみると、1週間後に脳卒中所見ではないFLAIRシグナルが前運動野にみられる。シグナルは一過性で2ヵ月後には消失するが、この治療初期のFLAIRシグナルのサイズと神経学的改善が有意に相関することが明らかになった(p=0.016)。加えて、投与後に損傷部位の反対側の感覚運動皮質に出現するFDG PETの活性上昇が、NIH脳卒中スコアの改善と有意に相関していた(p=0.043)。「この試験の結果から、骨髄由来の間質細胞SB623による慢性脳卒中の治療は安全で実現可能な治療であろう」と同氏は述べた。脳卒中における神経幹細胞治療の今後 脳卒中における幹細胞治療はまだ初期段階であり、解決すべき多くの課題もある。しかし、将来期待できる治療法であり、今後は対照群を置いた臨床試験がより重要になるであろう。

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薬剤性アナフィラキシー

概説 アナフィラキシーのtrigger(誘因)は蜂毒、食物、薬剤、運動など多彩であり、頻度が最も高いものは食物である。それに対し、アナフィラキシーによる死亡例に限ると、最も多い誘因は薬剤である。薬剤がアナフィラキシーを起こす場合には、投与直後から症状を生じ重症化しやすい(誘因に曝露されてから速やかにアナフィラキシーを発症するほど、重症化しやすいという一般的傾向がある)ということに加えて、過去に既往がなく不意打ちの形で生じるため、アドレナリン自己注射薬を携帯していないことがほとんどであるという特徴がある。 欧米の疫学調査においても、薬剤性アナフィラキシーによる死亡例は漸増傾向にあり、これは、世界的に薬剤が多様化し、薬剤総数が増加の一途をたどっていることが背景に挙げられている。薬剤によりアナフィラキシーを起こさないのは水と塩分くらいのものであり、われわれが処方する薬剤や日常の処置で曝露される物質(薬剤としては認識されない、皮膚消毒液、ラテックス、器具の消毒薬の残留にも配慮する)は無数に存在する。常識的なことであるが、必要性が曖昧な処置は行わない・薬剤は投与しないことが基本姿勢として重要である。 発症機序と分類 IgEが関与するI型反応が典型的であるが、X線造影剤やNSAIDsなどはIgEが通常関与することなくアナフィラキシーを起こす。従来は、前者(IgEが関与するもの)をアナフィラキシー、後者(IgEが関与しないもの)をアナフィラキシー様反応(anaphylactoid reaction)と呼んだが、世界的な趨勢で両者ともアナフィラキシーと呼ばれるようになってきており、日本アレルギー学会の「アナフィラキシーガイドライン1)」でもこの立場をとっている。今でもアナフィラキシーとアナフィラキシー様反応に区別する方法が用いられることはあるが、将来的にはアナフィラキシーの診断名の下でアレルギー性(IgEが関与するもの・IgE以外の免疫機構が関与するものに分けられる)、非アレルギー性に大別される方向に向かうと考えられる。 たとえば、ペニシリンとNSAIDを内服してアナフィラキシーを発症した場合、従来はアナフィラキシー(様)反応とまず診断し、後日の精査で原因がペニシリンであればアナフィラキシー、NSAIDであればアナフィラキシー様反応と診断名を書き換えていたが、「様反応」を用いないことにしておけば、救急診療で付けられたアナフィラキシーの診断名は、後日原因薬が特定されても書き換えられることなく、踏襲されていくことになる。 診療上の注意点アナフィラキシー発症時は、原因の可能性がある薬剤の中止(たとえば、点滴投与中の抗菌薬を中止し、薬剤を含まない輸液に変更する)とアドレナリン筋注を行い、循環と呼吸の状態を把握する。アナフィラキシーから回復後、あるいは既往を有する患者に対しては、再発を回避するよう、適切な指導を行う。「アナフィラキシーガイドライン」では誘因となる医薬品として、抗菌薬、解熱鎮痛薬(NSAIDs等)、抗腫瘍薬、局所麻酔薬、筋弛緩薬、造影剤、輸血等、生物学的製剤、アレルゲン免疫療法を挙げ、これらによるアナフィラキシーの特徴を簡潔に述べるとともに、手術中に生ずるアナフィラキシーの主な誘因(とくに筋弛緩薬、抗菌薬、ラテックス)にも触れているので、それらに関してはガイドラインを参照されたい。実地診療に当たっておられる先生方に留意していただきたいこととしては、以下のものが挙げられる。 内服薬を誘因とするアナフィラキシーについては、複数薬剤が誘因に挙げられ、病歴だけでは特定に至らないことが多い。また、食後に内服した場合、食事内容が誘因である可能性も念頭に置く必要がある。 医療処置に伴ってアナフィラキシーを発症した場合には、ラテックスが原因候補の1つに挙げられることが多い。ラテックスおよび交差反応性のあるシラカンバ、ハンノキ花粉の特異的IgEは、どの医師においても測定が可能であり参考になる(診断が確定するわけではないが)。 アナフィラキシーの発症前に投与された薬剤、摂取した食品と摂取時刻、症状の経過を、詳細に患者に記録しておいていただくことが重要。この情報は誘因の特定に大変に役立つ。 誘因の特定や安全に使用可能な薬剤の選定、あえて誘因となった薬剤を使わざるを得ない(脱感作が必要)といった場面では、ぜひアレルギー専門医に紹介いただきたい。アレルギー専門医にとって薬剤アレルギーへの対応は時間と労力を要するのだが、薬剤性アナフィラキシーは患者のQOLのためにも、生命予後のためにも重要な疾患であることは昔から一貫している。なお、薬剤を用いた即時型皮膚反応検査(プリックテストや皮内テスト)は、IgEが関与する反応において有用性が高いが、アナフィラキシーを起こした患者に不用意に行うとアナフィラキシーを誘発する可能性があるため、外来ですぐに施行できるわけではないことをご承知おきいただきたい。1)日本アレルギー学会監修.Anaphylaxis対策特別委員会編.アナフィラキシーガイドライン.日本アレルギー学会;2014.

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Dr.みやざきの鼠径ヘルニア手術テクニックコレクション

第1回 鼠径部ヘルニアの診断と分類 第2回 鼠径部の臨床解剖 第3回 手術手技の種類と術式選択の基準 第4回 鼠径部ヘルニア手術の術前・術後管理 第5回 鼠径部ヘルニア手術の麻酔法 第6回 手術手技の実際(1)高位結紮術第7回 手術手技の実際(2)Mesh-plug法第8回 手術手技の実際(3)Lichtenstein法第9回 手術手技の実際(4)UHS法第10回 手術手技の実際(5)Direct Kugel Patch法第11回 手術手技の実際(6)大腿ヘルニア手術第12回 手術手技の実際(7)女性の鼠径ヘルニア手術 手術の中で最も件数の多い手術の一つである鼠径ヘルニア修復術。「研修医やレジデントなどが行う初歩的な手術」と思っていませんか?しかし、侮るなかれ!鼠径部は解剖が複雑、手術手技は多種多様と、ヘルニア修復術を完全に理解するのは実は非常に難しいのです!そこで、日本でも有数の鼠径部ヘルニアの手術件数を誇るDr.みやざきこと宮崎恭介氏が講師として登場!鼠径ヘルニア症例数はなんと10年で4300例!この経験に裏打ちされた手術テクニックを余すことなくお見せいたします。臨床解剖、麻酔、術後管理、そして様々な手術手技-高位結紮術、プラグ法、DK法、UHS法、リヒテンシュタイン法、そして大腿ヘルニア、女性の鼠径ヘルニアなどなど、知りたかった、見たかった内容が網羅されています。こんなにたくさんの症例を、多様な手技を、見ることができるものはほかにはありません。しかも手術映像・画像は術者目線!明日からの手術が大きく変わります!第1回 鼠径部ヘルニアの診断と分類 鼠径ヘルニア修復術を理解する上でまず知っておかなければならないことは、鼠径部の解剖、ヘルニアの種類と分類、そして診断方法です。第1回では、鼠径ヘルニアの分類と、その診断方法について解説します。 診断の際は必ず立位で行うこと、そして大腿ヘルニアを見逃さないこと、この2つをおさえておきましょう。第2回 鼠径部の臨床解剖 鼠径ヘルニア手術を行うにあたっては、鼠径部の解剖の理解が重要なのは当然ですが、完全に理解することは難しいと言われています。 鼠径部の解剖をシェーマや写真などで理解したとしても、実際の手術現場では役に立たない事を経験した方も多いでしょう。それは鼠径部の構造が立体的であること、連続する組織(膜)でも部位によって名称が異なる場合があるからです。 そこで、今回は、鼠径部の臨床解剖ーすなわち術者として鼠径部を見た際の解剖をしっかりと理解していきます。最初のポイントは皮膚切開から。皮膚切開ひとつで、こんなにも視野が違います!第3回 手術手技の種類と術式選択の基準 鼠径ヘルニア修復術の手技は、多種多様。 ヘルニアの位置や大きさ、性別や年齢、既往など、術式を決めるための要素はたくさんあるなかで、患者さんにとって、そして、術者にとってよりよい手術手技は一体何か?様々な手術手技を行うヘルニアのスペシャリストはこうやって術式を決めている! 第4回 鼠径部ヘルニア手術の術前・術後管理鼠径ヘルニア手術は嵌頓例以外は手術の緊急性はありません。無理に患者さんへ手術を薦めず、患者さん自信が、手術を決意するまで待つことが大切です。さて、いざ手術となった場合、鼠径ヘルニア修復術の術前と術後の管理はどうすればよいのでしょうか?実は、鼠径ヘルニア手術の術前には特別な管理はほとんど不要です。Dr.みやざき曰く「抗凝固薬服用中、抗血小板療法中の患者でさえも、内服継続のままでも十分に手術可能。」はてさて本当に可能かどうか、どうすれば可能なのか、みていきましょう。また、術後では、「出血」「漿液腫」「SSI」「再発」「慢性疼痛」などが合併症として考えられますが、これらは起こった場合にどう対応するではなくて、「起こさない」ことが重要です。そのために何をするべきかを知り、実践してみましょう。第5回 鼠径部ヘルニア手術の麻酔法 鼠径ヘルニア修復術の麻酔は、日帰りの場合と、入院の場合と異なります。麻酔の3要素は鎮静(意識の消失)、鎮痛(痛みの除去)、筋弛緩(体動の防止)。この3つすべてを、麻酔するのが、麻酔科医による麻酔、すなわち外科医にとって最も手術を行いやすい麻酔です。入院手術の場合は、この麻酔方法で行います。しかし、日帰り手術の際は、筋弛緩は必要ありませし、意識があってもかまいません。鎮痛と鎮静を患者さんに与える手術侵襲を少しだけ上回る麻酔をかけてあげればよいのです。静脈麻酔、局所麻酔、硬膜外麻酔、気管挿管などの様々な麻酔を組み合わせ、術式、患者さんの年齢、BMI、嵌頓の有無等に合わせた麻酔方法を行っています。この回ではそれぞれの詳しい方法を解説します。第6回 手術手技の実際(1) 高位結紮術さて、いよいよ手術手技の実際に入っていきます。最初は高位結紮術です。高位結紮術は、内鼠径輪のみを閉鎖するというシンプルな術式ですが、他の手術手技の基本となる手技です、ここでしっかりと習得しておきましょう。高位結紮術は、若年男性や若年女性のⅠ-1型間接鼠径ヘルニアが適応となります。術者目線の手術映像を見ながら、実際の手術手技を体験し、習得してください。第7回 手術手技の実際(2) Mesh-plug法手術手技の実際:第2回はMesh-plug法です。Mesh-plug法はメッシュプラグでヘルニア門を閉鎖し、オンレイパッチで鼠径管後壁を補強するという術式です。鼠径ヘルニア修復術の中で日本で一番行われている手術法で、シンプルな術式ですが、一歩間違うと術後の疼痛や再発などを引き起こすことがあります。これらの合併症をいかに防止するかは、すべて手術手技にかかっています。そのコツをヘルニアスペシャリストのテクニックから学んでください。第8回 手術手技の実際(3) Lichtenstein法手術手技の実際:第3回はLichtenstein法です。リヒテンシュタイン法はヘルニア門を高位結紮術で閉鎖し、鼠径管後壁をメッシュで補強する術式です。日本においては、それほど多くの症例が行われているわけではありませんが、EHS(the European Hernia Society)の鼠径ヘルニアの診療ガイドラインではLichtenstein法が推奨されているように欧米では第一選択の術式となっています。Dr.みやざきは、腹膜前腔の剥離操作がないことから下腹部手術既往のある間接鼠径ヘルニアを適応としています。メッシュ固定による疼痛を予防するために縫合固定の必要のないメッシュを用いることも1つのポイントです。第9回 手術手技の実際(4) UHS法手術手技の実際:第4回はUHS法です。UHS法は、UHS(Ultlapro® Hernia System )というメッシュを使用して行う術式で、インレイメッシュ法、プラグ法、、リヒテンシュタイン法を1つにした欲張りな術式です。コネクターでヘルニア門を閉鎖し、アンダーレイパッチ、オンレイパッチで鼠径管後壁を挟み込むように補強します。Ⅰ-3型巨大陰嚢内ヘルニア以外の鼠径ヘルニアすべてが適応となります。メッシュ固定による疼痛を予防するためにオンレイメッシュは縫合固定しないこともポイントです。第10回 手術手技の実際(5) Direct Kugel Patch法手術手技の実際:第5回はDirect Kugel Patch法です。Direct Kugel Patch法はインレイメッシュ法の1つで、形状記憶リングにより、腹膜前腔への展開が容易な術式です。ヘルニア門の閉鎖をダイレクトクーゲル®パッチで行い、オンレイパッチは、鼠径管後壁の補強としてオプションとして使用します。ダイレクトクーゲル®パッチで筋恥骨孔すべてを覆うことができ、すべての鼠径部ヘルニアに適応しています。今回は、間接鼠径ヘルニア、直接鼠径ヘルニアともに実際の手術症例を術者目線の映像で提示します。第11回 手術手技の実際(6) 大腿ヘルニア手術大腿ヘルニア手術を解説します。大腿ヘルニアの術式は大きく、2つに分けることができます。1つは鼠径法、そしてもう1つが大腿法です。鼠径法は、鼠径靭帯の上からアプローチし、筋恥骨孔すべてを覆う方法で、大腿法は鼠径靭帯の下からアプローチし、大腿輪のみ閉鎖する方法となります。男性の大腿ヘルニアは症例としては稀ですが、他の鼠径ヘルニアを合併することが多いため鼠径法を適応とし、女性の大腿ヘルニアは、鼠径ヘルニアの合併がほとんどないため、大腿輪のみの閉鎖を行う大腿法を適応としています。本番組では、いずれの方法も術者目線の映像でご覧いただけます。第12回 手術手技の実際(7) 女性の鼠径ヘルニア手術鼠径ヘルニア手術テクニックコレクションの最終回は「女性の鼠径ヘルニア手術」です。女性の鼠径ヘルニアは、男性に比べると症例が少ないため、マニュアルや手順書などでも取り上げられる機会が非常に少ないようです。そのため、学習したり、修得したりする機会が少なく、重要なポイントを見落としてしまうことも。本番組では、見落とされがちなポイントを実際の症例に照らしあわせて解説し、その後、手術映像で手術手技を学んでいただきます。女性の鼠径部ヘルニアを診る場合に気をつけなければならないポイントは2つ。鼠径部ヘルニアの発生頻度と若年女性の鼠径ヘルニアです。そして、そのKey wordは大腿ヘルニアとNuck管嚢腫です。

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腰椎椎間板ヘルニアに有効な局所麻酔

 腰椎椎間板ヘルニアまたは神経根痛に対する硬膜外注射の投与経路には椎間孔、椎弓間および仙骨部があるが、最近のシステマティックレビューではこれら3つの投与経路で有意な差はないことが報告されている。米国・ルイビル大学のLaxmaiah Manchikanti氏らは、経椎間孔硬膜外注射による局所麻酔薬の有効性を検討する無作為化二重盲検比較試験を行った。その結果、椎間板ヘルニアまたは神経根炎を有する患者において局所麻酔薬の経椎間孔硬膜外注射はステロイドの有無にかかわらず有効で、ステロイド併用の優越性はないことが明らかになったと報告している。Pain Physician誌2014年7・8月号の掲載報告。 慢性腰痛および下肢痛を有する椎間板ヘルニアおよび神経根炎患者120例を、次の2群に無作為化した。 局所麻酔薬単独群:防腐剤無添加1%リドカイン1.5mL+塩化ナトリウム0.5mL ステロイド併用群:1%リドカイン+ベタメタゾン3mgまたは0.5mL 主要評価項目は、疼痛(数値的評価スケールによる)および機能(オスウェストリー障害指標[ODI 2.0]による)の有意な改善(スコアの50%以上改善)であった。 主な結果は以下のとおり。・2年後に有意な改善がみられたのは、局所麻酔薬単独群65%、ステロイド併用群57%であった。・投与後初期に3週間以上の症状緩和が得られた反応者のうち、局所麻酔薬単独群では80%が有意な改善を認めた。一方でステロイド併用群では73%であった。

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変性脊椎すべり症の腰痛にPRF法が有効

 変性脊椎すべり症は、椎間関節由来の腰痛症の原因としてよく知られている。イラン・Shahid Beheshti University of Medical SciencesのMasoud Hashemi氏らは、変性脊椎すべり症患者における椎間関節性腰痛に対し、C神経線維への疼痛伝達を遮断するパルス高周波法(PRF)が、ステロイド+局所麻酔薬注射より腰痛軽減と機能改善に優れる可能性があることを示した。European Spine Journal誌オンライン版2014年7月6日号の掲載報告。 対象は、椎間関節性腰痛を有する変性脊椎すべり症患者80例で、PRF群およびステロイド群(トリアムシノロン+ブピバカイン)に無作為に割付けた。 治療開始3、6および12ヵ月後に、腰痛(数値的評価スケール〔NRS〕による)、Oswestry Disability Index(ODI)、満足度および鎮痛薬摂取量を評価した。 主な結果は以下のとおり。・PRF群では、ステロイド群と比較して6ヵ月後の腰痛が有意に軽度であった。・PRF群におけるODIは、治療前75.6±14.3%、6ヵ月後19.3±9.5%であった(p=0.001)。・ODIは、12週後および6ヵ月後においてPRF群がステロイド群より有意に低かったが(各評価時点でp=0.022およびp=0.03)、6週後は有意差を認めなかった(p=0.31)。・鎮痛薬を必要としなかった患者の割合は、PRF群で有意に高かった(log-rank検定によるp=0.001)。

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