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自宅でできる大腸がん検査で大腸がんの死亡リスクが低減

 自宅で採取した便検体を用いる免疫学的便潜血検査(fecal immunochemical test;FIT)により、大腸がんによる死亡リスクを33%低減できることが、新たな研究で示された。FITは、大腸がんまたは前がん病変の可能性がある大腸ポリープの兆候である便中の血液を抗体で検出する検査法だ。論文の筆頭著者である、米オハイオ州立大学医学部教授のChyke Doubeni氏は、平均的なリスクの人をスクリーニングするためには、年に1回のFITによる大腸がん検診が、「10年ごとの大腸内視鏡検査と同程度に機能する」と述べている。この研究の詳細は、「JAMA Network Open」に7月19日掲載された。 Doubeni氏は、「本研究結果を受け、患者とその臨床医は、自信を持ってこの非侵襲的な検査を大腸がん検診に使用できるようになるだろう。また、大腸がん検診率が非常に低い、医療サービスが十分に行き届いていない地域社会において、FITを効果的に用いる方法を見つけることにもつながるはずだ」と同大学のニュースリリースの中で述べている。 Doubeni氏は、「大腸がん検診のゴールドスタンダードは大腸内視鏡検査だが、この検査に抵抗を覚える人もいる」と話す。大腸内視鏡検査では、患者は鎮静剤を投与され、カメラ付きの細いチューブを直腸に挿入して腸の内壁を観察する。同氏は、「大腸がんは、検診を受けることで、最も初期の前がん病変を発見できることが何十年も前から知られている。しかし、45~75歳の米国人のうち大腸がん検診を受診しているのはわずか60%程度に過ぎない」と話す。一方、FITは、自宅というプライバシーの保たれた場所で便を採取できる。採取した便検体は、検査機関に送って分析してもらう。 今回の研究では、2002年から2017年の間に自宅でのFITによる大腸がん検診を受けた米カイザー・パーマネンテの患者1万711人(60〜69歳32.9%、女性47.8%)のデータを用いて、FITによる大腸がん検診と大腸がんによる死亡リスクとの関連を評価した。1万711人のうちの1,103人は大腸がん症例、9,608人は症例と年齢、性別、健康保険加入期間、居住地域を一致させた対照だった。 その結果、FITによる大腸がん検診を1回以上受けることは、大腸がんによる死亡リスクの33%の低下(調整オッズ比0.67、95%信頼区間0.59〜0.76)、左側の大腸がんによる死亡リスクの42%の低下(同0.58、0.48〜0.71)と関連することが明らかになった。FITと右側の大腸がんによる死亡リスクとの間に関連は認められなかった。なお、大腸がん啓発団体であるFight Colorectal Cancerによれば、左側の大腸がんの発生頻度は右側の大腸がんよりもはるかに高いという。 さらに、FITによる大腸がん検診は、ほとんどの人種/民族において大腸がんによる死亡リスクの有意な低下と関連し、リスクは、アジア系では63%、黒人では42%、白人では30%低下する可能性が示された。ヒスパニック系でも死亡リスクは22%低下していたが、統計学的に有意ではなかった。 論文の共著者である、米カイザー・パーマネンテ北カリフォルニアのDouglas Corley氏は、「過去数年間にFITによる大腸がん検診を1回以上受けた人を対象にした本研究により、FITが効果的なツールであることが確認された。長い目で見ると、FITを推奨通りに毎年受けることで、大腸がんによる死亡リスクは本研究で示された数字以上に低下することが期待される」と話す。 一方、Doubeni氏は、FITで異常な結果が判明した人は遅滞なくフォローアップの大腸内視鏡検査を受けることが重要であると強調している。

22.

大腸内視鏡検査の陰性後の検査間隔は長くできる

 大腸がんの家族歴がなく、最初の大腸内視鏡検査で陰性所見が得られた人では、大腸内視鏡検査の実施間隔を長くすることは安全であり、不必要な大腸内視鏡検査を回避できるようだという研究結果が、「JAMA Oncology」に5月2日掲載された。 ドイツがん研究センター(ドイツ)のQunfeng Liang氏らは、最初の大腸内視鏡検査で大腸がんの陰性所見が得られた場合、何年後に2回目の大腸内視鏡検査を実施できるかを評価した。検査陰性(曝露)群には、大腸がんの家族歴がなく、1990年から2016年の間に45~69歳で最初の大腸内視鏡検査を受け、大腸がんの陰性所見が得られた人11万74人が含まれた。対照群は、曝露群と性別や誕生年、基準年齢が一致し、追跡期間中に大腸内視鏡検査を受けなかった、または大腸内視鏡検査を受けて大腸がんの診断に至った人198万1,332人が含まれた。 最初の大腸内視鏡検査で大腸がんの陰性所見が得られた人を、最長29年間追跡した結果、大腸がんの発症が484件、大腸がん特異的死亡が112件認められた。15年間の大腸がんリスクおよび大腸がん特異的死亡リスクは、曝露群ではマッチさせた対照群より有意に低かった。最初の大腸内視鏡検査で陰性所見が得られてから15年後の10年標準化罹患比(SIR)は0.72、10年標準化死亡比(SMR)は0.55であった。大腸内視鏡検査の実施間隔を10年から15年へと延長すると、1,000人当たり2件の大腸がん診断を早期発見できず、1件の大腸がん特異的死亡を防げない可能性があり、一方で1,000件の大腸内視鏡検査を回避できる可能性が示された。 著者らは「大腸内視鏡検査の実施間隔を長くすることは、不必要な侵襲的検査を避ける上で有益な可能性がある」と述べている。

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併診依頼後のフォローは必要?【医療訴訟の争点】第2回

症例総合病院においては、他診療科に併診(コンサルテーション)依頼を出すことがあるが、その進捗状況や結果を確認し、精査が滞らないようにする義務が争われた横浜地裁令和3年12月15日判決(併診依頼時は平成18年)を紹介する。争点は多岐にわたるが、併診依頼の進捗確認・精査の点に絞ることとする。<登場人物>患者66歳(併診依頼時)・男性平成13年右鼠径部脂肪摘出術(複数の腫瘤摘出)原告患者の妻・子被告総合病院の泌尿器科医(併診依頼元医師)同病院の消化器内科医(併診依頼先医師)事案の概要は以下の通りである。平成18年7月排尿困難を主訴に被告病院の泌尿器科を受診。右腹部に腫瘤を触知。8月3日腹部CT検査。骨盤腔内の後腹膜部と腸間膜部に脂肪肉腫と考えられる腫瘤を確認。8月11日CT結果を踏まえ、泌尿器科医は、消化器内科に併診依頼。9月4日消化器内科にて大腸内視鏡検査を実施。9月19日消化器内科医が、消化器内科では一度終診とする旨の返書。平成20年3月5日右陰嚢部の腫瘤を自覚し、被告病院泌尿器科受診。腹部エコー検査にて、右精索部にゴルフボール大の腫瘤を2個確認。3月11日右高位精巣摘除術実施。病理検査の結果、摘出された腫瘤病変は脱分化型脂肪肉腫と診断。4月22日他院にて、大網、腸間膜、後腹膜腫瘍摘出術実施。病理検査の結果、脱分化型脂肪肉腫と診断。平成21年7月14日他院にて、脂肪肉腫の切除を目的とする開腹手術を受けるも、開腹時に脂肪肉腫の腹膜播種が確認されたため根治不能と判断され、バイパス術を受けて手術終了。平成22年6月15日脂肪肉腫に起因した腎不全が直接死因となり、死亡。実際の裁判結果裁判所は、「併診対象となった事象の性質や、併診結果が併診元の方針に与える影響の程度等によっては、併診元において、報告返書の到着を待つのみでは足りない場合があるというべき」とした上で、(1)腸間膜部の腫瘤が比較的稀少な疾患で、その精査を行うべき診療科が消化器内科であることが確立していたとは言えず、その後の検査、治療の方針の検討を併診先の医師に委ねる状況にあったとは言い難いこと(2)泌尿器科医自身が、消化器内科の併診結果を泌尿器科での治療方針にも影響し得る重要事項と位置付け、腸間膜部腫瘤の良悪性の鑑別を優先させる趣旨で併診依頼を作成していたこと(3)脂肪肉腫は、早期の発見・治療が求められる疾患であり、泌尿器科医もその認識があったことの事情を指摘し、併診依頼をした泌尿器科医は「本件腸間膜部腫瘤の精査が滞らないように配慮すべき注意義務を負っていた」として、腸間膜部腫瘤の関係で何らの措置が講じられていなかったことに対し、注意義務違反を認めた。なお、併診依頼先の消化器内科医師の責任については、裁判所は、「本件併診願が作成された当時、MRI検査や生検によって、腸間膜部腫瘤の精査を速やかに行う必要があった」としつつも、「注意義務があると言えるためには、腸間膜部の腫瘤の精査を行うべき診療科が消化器内科であることが臨床医学の実践として確立しているか、または被告病院における診療体制として確立していることが必要」とし、当時、腸間膜部の腫瘤の精査を行うべき診療科が消化器内科であることが確立していたとは認められないとし、消化器内科医師に腸間膜部腫瘤の精査を実施すべき注意義務を否定した。注意ポイント解説本件は、泌尿器科医が、消化器内科の併診結果を泌尿器科での治療方針にも影響し得る重要事項と位置付け、腸間膜部腫瘤の良悪性の鑑別を優先させる趣旨で「下腹部触診にて腫瘤触れCTを撮ったところ、直径5cm程度の腸間膜の腫瘍があるようでした。お忙しいところ恐縮ですが、御高診よろしくお願い申し上げます」「内科の予定がついたら当科の予定を組みたいと存じます」として併診を依頼した事案であった。また、泌尿器科医は腸間膜部腫瘤が早期の発見・治療が求められる疾患である可能性を認識していた。そのような事情があるにもかかわらず、消化器内科では、本件腸間膜部腫瘤そのものの精査は消化器内科の診療領域には属さないと考え、併診依頼をした腸間膜部腫瘤の精査とは直接関連する検査とは言えない大腸内視鏡検査が行われたのみであった。そして、その後、約1年半の期間、患者の腹部を精査する検査が行われなかった。本件は、具体的に腸間膜の腫瘍を指摘した上での併診依頼がなされたものの、併診依頼先の消化器内科が診療領域外と判断し、依頼の趣旨に沿う検査がなされなかった。そして、当時の「臨床医学の実践」として、腸間膜部腫瘤の精査は消化器内科に委ねることが確立していたとも言えなかったため、併診依頼先の消化器内科医の注意義務が否定された一方で、併診依頼元の泌尿器科医に、併診依頼をした腸間膜部腫瘤の精査が滞らないように配慮すべき注意義務が認められた。どの診療科が精査・治療を行うかについて確立していない症状・所見・疾患については、併診依頼元の医師としては、依頼先がきちんと精査をすることを期待して併診依頼している。しかし、併診依頼先の医師としては、自らの診療対象外と認識している場合や、ピンポイントの検査のみで十分と考えている場合もある。その場合、併診依頼先で行われた検査が、併診依頼元の医師が鑑別等を期待した疾患の精査として不十分な場合もありうる。このような場合、併診依頼元の医師に、然るべき精査・治療が行われるようフォロー対応する義務があることを認めた判決であった。他方、精査・治療対象の疾患について、併診依頼先の診療科において精査・治療することが「臨床医学の実践」として確立している場合は、併診依頼先において然るべき精査・治療を行う義務があることとなる。なお、精査・鑑別対象の疾患について、併診依頼先の診療科に関する文献に記載があるということだけでは、併診依頼先において精査・治療を行うべきとは言えない点に注意を要する。医療者の視点昨今では、専門分野が細分化されているため、自身の専門分野以外の疾患については、他科コンサルト/併診依頼する場合が多いです。そのような場合、つい併診依頼元の医師は「こちらの患者さんはコンサルトしたからもう大丈夫」と思いがちです。また、併診依頼先の医師においては、「主科は併診依頼元の医師だから、自分の科の領域の検査のみ行えれば十分」と考えがちです。お互いに診療を相手任せにしてしまうことで、患者さんに不利益が生じるリスクがあります。本件は腸間膜部腫瘤という稀な疾患ですが、自身が担当した患者さんについては、コンサルトした後も経過をフォローする必要があります。また、コンサルトを受けた場合においても、自身の診療によって患者さんが抱えていた問題が解決したかどうか等、確認することが重要です。Take home message対象の症状・所見・疾患の精査・治療を自らの診療科で行えない場合において、他の診療科に併診を依頼するとき、併診依頼先の診療科において然るべき精査・治療が行われるようフォローする必要がある。キーワード臨床医学の実践とは医師の責任の根拠となる注意義務違反(過失)は、「診療当時のいわゆる臨床医学の実践における医療水準」を基準に判断される。この「臨床医学の実践における医療水準」は、医療機関の性格、その所在する地域の医療環境の特性等によって違いがありうるものであるが、大まかに言えば「診療当時、類似の規模・特性の医療機関において行われていること」が医療水準となる。このため、文献に記載があるからと言ってもそれが当然に「臨床医学の実践における医療水準」となるものではない。また、診療ガイドラインも、各ガイドラインの目的・性格、成立過程や普及の程度、記載されている具体的な診療方法のエビデンスレベルや推奨度等にそれぞれ違いがあるため、あくまで策定当時の「臨床医学の実践における医療水準」を判断する際のひとつの資料と位置付けられるものである(ガイドラインの記載内容が、当然に「臨床医学の実践における医療水準」となるものではない)。

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便検査異常所見から6カ月以内の大腸内視鏡追跡検査率は低い

 大腸がん(CRC)のスクリーニング便検査(SBT)で異常があった後、6カ月以内に大腸内視鏡の追跡検査を受ける成人は半数以下であるとする研究結果が、「JAMA Network Open」に3月25日掲載された。 米国医師会(AMA)のElizabeth L. Ciemins氏らは、CRCのSBTで異常が認められた後6カ月以内の大腸内視鏡追跡検査に関する、品質評価指標を開発し検証するため、後ろ向き品質改善研究を実施した。データベース研究で6カ月以内の大腸内視鏡追跡検査率を求めるため、米国の医療機関(HCO)38カ所でCRCの初回SBTを受け、異常所見のあった50~75歳の成人を観察した。 解析の結果、38カ所のHCOにおける対象成人2万581人のうち、47.9%がCRCのSBTで異常結果が出た後6カ月以内に、大腸内視鏡追跡検査を受けていた。HCO間で有意差が見られた。大腸内視鏡追跡検査の受診率が有意に低かったのは、黒人患者(37.1%)とメディケアまたはメディケイドの保険に加入している患者(それぞれ49.2%、39.2%)であった。SBTの異常所見から6カ月以内の追跡検査率を測る品質評価指標は、実行性、有効性、信頼性があると判断された。信頼性統計はHCO間で中央値94.5%であった。 著者らは、「SBTの使用は全体として検診率を向上させるかもしれないが、CRCを診断するためには、理想的にはできるだけ早く、どんなに遅くとも異常な検査結果が出た後6カ月以内に、大腸内視鏡検査で追跡しなければならない」と述べている。 なお1人の著者が、エグザクトサイエンス社との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。

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大腸がん検診、検査方法の選択肢提示で受診率が向上

 患者に大腸がんの検査方法の選択肢を与えることで、検診を受ける患者数が2倍以上に増えたとする研究結果が報告された。米ペンシルベニア大学医学部のShivan Mehta氏らによるこの研究結果は、「Clinical Gastroenterology and Hepatology」に4月30日掲載された。 研究グループの説明によると、大腸がん検診は現在、リスクレベルが平均的な人には45歳からの受診が推奨されているが、大腸がんの既往歴や家族歴がある人は、より早い時期から検診を受けなければならない可能性もあるという。 大腸がん検診で使われる大腸内視鏡検査(コロノスコピー)は、侵襲的ではあるが時間とともにがん化する可能性のある前がん性のポリープを除去することができる。大腸内視鏡検査は10年に1回の頻度で受けることが推奨されているが、その代わりに免疫学的便潜血検査(FIT)を年に1回受けるという選択肢もある。これは、便検体の中に血液が含まれていないかどうかを調べる検査だ。便中の潜血は、大腸がんの初期症状である可能性があり、陽性と判定された場合は大腸内視鏡検査を受ける必要がある。 Mehta氏らは今回、ランダム化比較試験を実施し、患者に大腸がん検診の選択肢を提示することで、大腸内視鏡検査のみを提示した場合と比べて検診受診率が向上するのかどうかを検討した。対象者は、大腸がん検診を推奨通りに受けていない、ペンシルベニア州の地域医療センターの患者738人(平均年齢58.7歳、48.6%がメディケイド受益者)。研究グループによると、この医療センターでの大腸がん検診の受診率はわずか約22%であり、米国での平均受診率(72%)からかけ離れているという。 対象患者は、大腸がん検診の方法として、1)大腸内視鏡検査のみを提示される群、2)大腸内視鏡検査かFITのどちらかを患者が選択できる(アクティブチョイス)群、3)FITのみを提示される群の3群に1対1対1の割合でランダムに割り付けられた。対象患者には、検診受診を勧める手紙と該当者にはFIT用のキットが送付され、その2カ月後と3〜5カ月後にリマインダーのテキストメッセージまたは自動音声が送られた。 その結果、試験開始から6カ月後の時点で大腸がん検診を受けた患者の割合は、大腸内視鏡検査のみの群で5.6%、アクティブチョイス群で12.8%、FITのみの群で11.3%であることが明らかになった。大腸内視鏡のみの群と比べた検診受診率の絶対差は、アクティブチョイス群で7.1%、FITのみの群で5.7%であった。 研究グループは、患者に単純な選択肢を提供することで大腸がん検診の受診率が向上したが、選択肢の数をさらに増やすことが、検診受診者のさらなる増加につながる可能性があるとの考えを示している。 以上のように有望な結果は得られたものの、未解決の問題が残されている。Mehta氏は、「新型コロナウイルス感染症のパンデミック中にがん検診の実施が減り、現在はその回復途上にあることや、若年層へのスクリーニング推奨の拡大により、全国的に大腸内視鏡検査へのアクセス問題が存在することは確かであり、とりわけ地域医療センターの患者はより大きな影響を受ける可能性がある」と話す。その上で同氏は、「大腸内視鏡検査は、スクリーニング、症状の診断、FIT後のフォローアップ検査のためのツールとして重要だが、スクリーニング率を向上させたいのであれば、より低侵襲な選択肢を患者に提供することを考えるべきだ」と付け加えている。

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大腸がん、血中遊離DNA測定でスクリーニング可/NEJM

 血液中の遊離DNA(cell-free DNA:cfDNA)測定をベースとした大腸がん検査は、平均的な大腸がんリスクを有するスクリーニング集団において、大腸がんの検出感度83%、進行新生物に対する特異度90%、進行前がん病変の検出感度13%であったことが、米国・マサチューセッツ総合病院・ハーバード大学医学部のDaniel C. Chung氏らによる「Evaluation of the ctDNA LUNAR Test in an Average Patient Screening Episode:ECLIPSE試験」の結果で示された。大腸がんは米国の成人において3番目に多いがんで、早期発見により関連死の90%以上を予防でき、複数の検査が利用可能であるにもかかわらず、検診対象者の3分の1以上は検診を受けていない。血液を用いた大腸がん検査は、検診の受診率を向上させ、大腸がんの早期発見と関連死亡率の低下に寄与する可能性があった。今回の結果を踏まえて著者は、「45歳未満の大腸がん発生率が増加していることから、スクリーニング年齢を広げるために、血液ベースの検査戦略の潜在的な臨床的および医療経済的効果を明らかにすることが待たれる」と述べている。NEJM誌2024年3月14日号掲載の報告。約2万人を登録、7,861例を解析 研究グループは、大腸がんスクリーニングの対象集団におけるcfDNA血液検査の性能特性を評価する目的で本試験を実施した。2019年10月~2022年9月に米国の265施設において、同意取得時の年齢が45~84歳、大腸がんの平均的なリスクがあり、大腸内視鏡による定期検診を受けている計2万2,877例を登録し、登録日に血液検体を採取した後、60日以内に大腸内視鏡検査を実施した。血液検体は、中央検査施設にて盲検下でcfDNA解析が行われた。 主要アウトカムは、大腸がん検出の感度と、進行新生物(大腸がんまたは進行前がん病変)に対する特異度の2つで、大腸内視鏡検査の参照標準と比較した。副次アウトカムは、進行前がん病変検出の感度であった。 登録者2万2,877例から1万258例を無作為に抽出し、臨床検証コホートとした。このうち、cfDNA血液検査および大腸内視鏡検査を完遂し、適格であった7,861例が解析対象となった。cfDNA血液検査の大腸がん検出感度83.1%、進行新生物に対する特異度89.6% 大腸内視鏡検査で大腸がんが検出された参加者65例のうち、54例(83.1%)がcfDNA血液検査陽性、11例(16.9%)が陰性であったことから、cfDNA血液検査の大腸がん検出感度は83.1%(95%信頼区間[CI]:72.2~90.3)であり、95%CIの下限値はFDAが承認した他の大腸がん検査で確立された65%の許容基準を超えていた。 StageI、IIまたはIIIの大腸がんに対する感度は87.5%(95%CI:75.3~94.1)、進行前がん病変に対する感度は13.2%(95%CI:11.3~15.3)であった。 大腸内視鏡検査で進行新生物が確認されなかった参加者のうち、cfDNA血液検査陰性は89.6%、陽性は10.4%であったことから、進行新生物に対する特異度は89.6%(95%CI:88.8~90.3)であり、95%CIの下限値は事前に規定された許容基準の85%を超えていた。 大腸内視鏡検査が陰性(大腸がん、進行前がん病変、非進行前がん病変が認められなかったと定義)であった参加者の89.9%はcfDNA血液検査が陰性であり、偽陽性率は10.1%、新生物なしに対する特異度は89.9%(95%CI:89.0~90.7)であった。

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大腸がんスクリーニング、次世代便DNA検査の精度は?/NEJM

 次世代マルチターゲット便DNA検査は、大腸がんおよび進行前がん病変の検出感度が免疫便潜血検査(FIT)より高かったものの、特異度は低かった。米国・インディアナ大学医学校のThomas F. Imperiale氏らが、全米186施設で実施した「BLUE-C試験」の結果を報告した。次世代マルチターゲット便DNA検査は、DNA分子マーカーおよびヘモグロビン値の評価を含む、大腸がんスクリーニングの主に特異度を改善させるために開発されたものであった。NEJM誌2024年3月14日号掲載の報告。主要アウトカムは、大腸がんに対する感度と進行新生物に対する特異度 研究グループは、大腸がんスクリーニングのための内視鏡検査を受ける予定の40歳以上の無症状の成人を登録し、大腸内視鏡検査を受ける前に便検体を郵送してもらい、次世代マルチターゲット便DNA検査(Exact Sciences)ならびにFITを実施した。大腸内視鏡検査は、便検体採取後180日以内に実施された場合に評価対象とした。 主要評価項目は、大腸がんに対するマルチターゲット便DNA検査の感度と、進行新生物(大腸がんまたは進行前がん病変)に対する特異度とした。感度は、検査結果陽性者のうち大腸がんであった人の割合、特異度は進行新生物が認められなかった人のうち検査結果が陰性であった人の割合と定義した。進行前がん病変は、最長径1cm以上の腺腫または無茎性鋸歯状病変、絨毛状の組織学的特徴を伴う病変、高度異形成などを対象に含んだ。 副次評価項目は、進行前がん病変に対する感度、非腫瘍性所見または大腸内視鏡検査陰性に対する特異度、マルチターゲット便DNA検査と市販のFITの大腸がん、および進行前がん病変に対する感度の比較などとした。次世代検査vs.FITの大腸がんの感度、93.9% vs.67.3% 2019年11月15日~2023年1月5日に、2万6,758例が登録され、このうち2万176例が完全評価可能例であった。 解析対象2万176例のうち、大腸がんは98例(0.5%)、進行前がん病変は2,144例(10.6%)、非進行性腺腫は6,973例(34.6%)が有していた。残る1万961例は、非腫瘍性所見3,451例(17.1%)もしくは大腸内視鏡検査陰性7,510例(37.2%)であった。 マルチターゲット便DNA検査で大腸がんが特定されたのは98例中92例で、感度は93.9%(95%信頼区間[CI]:87.1~97.7)であった。進行新生物に対する特異度は90.6%(95%CI:90.1~91.0)であり、進行前がん病変に対する感度は43.4%(41.3~45.6)、非腫瘍性所見または大腸内視鏡検査陰性に対する特異度は92.7%(92.2~93.1)であった。 一方、FITの感度は、大腸がんが67.3%(95%CI:57.1~76.5)、進行前がん病変が23.3%(21.5~25.2)で、進行新生物に関する特異度は94.8%(95%CI:94.4~95.1)、非腫瘍性所見または大腸内視鏡検査陰性については95.7%(95.3~96.1)であった。 次世代マルチターゲット便DNA検査はFITと比較して、大腸がんおよび進行前がん病変の検出に関して感度が高かったが(いずれもp<0.001)、進行新生物に対する特異度はFITより低かった(p<0.001)。 有害事象の発現は確認されなかった。

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マルチターゲットFITで大腸がんの検出能が向上

 大腸がん検診で広く用いられている免疫学的便潜血検査(fecal immunochemical test;FIT)よりも大腸ポリープの検出に優れた便検査の開発に関する研究成果を、オランダの研究グループが「The Lancet Oncology」に2月9日発表した。論文の上席著者であるオランダがん研究所のGerrit Meijer氏は、「現行のFITは良く機能しているが、改善の余地がある。われわれは、大腸ポリープが腫瘍となって浸潤する前の前がん病変の段階で検出できるようにしたいのだ。そうすれば、手術をせずとも大腸内視鏡検査の際にそのようなポリープを摘出することができる」と話す。 毎年、世界中で190万人もの人が大腸がんの診断を受け、93万5,000人が大腸がんにより死亡していると推定されている。大腸がんは早期に発見されれば治癒も見込めるがんである。 多くの国で実施されている大腸がん検診では、FITが採用されている。FITは、血液成分のヒトヘモグロビンに結合する抗体を利用して、便中の肉眼では確認できない微量の血液を検出する検査であるが、進行腺腫などの前がん病変の検出能は最適とは言えない。 今回開発された新たな検査法は、ヘモグロビンに加えて、2種類のタンパク質(炎症の指標であるカルプロテクチン、セルピンファミリーFメンバー2)を測定する、マルチターゲットFIT(multitarget FIT;mtFIT)と呼ぶものである。Meijer氏らは、オランダの大腸がん検診プログラムへの参加者1万3,187人(55〜75歳、男性50.3%)からFIT用とmtFIT用の糞便サンプルを提供してもらい、2種類の検査の性能を比較した。 その結果、advanced neoplasia(進行新生物)に対する陽性率はmtFITで9.11%、FITで4.08%、検出率は前者で2.27%、後者で1.21%であった。また、大腸がん検出率は、mtFITで0.20%、FITで0.17%、進行腺腫検出率は同順で1.64%と0.86%、進行鋸歯状ポリープの検出率は0.43%と0.17%であった。 さらに、オランダでのFIT検査のカットオフ値に基づくと、mtFITを用いた大腸がん検診により、現行のFITによる検診と比べて大腸がんの罹患率が21%、関連する死亡率が18%低下する可能性も示された。Meijer氏は、カットオフ値をオランダよりも低く設定している国では、この数字はさらに低くなる可能性があるとし、その場合、大腸がん症例が少なくとも5%、大腸がんによる死亡率は少なくとも4%減少すると推定している。その上で、「いずれにせよ、mtFITの費用対効果が高いことに変わりはない」と述べている。 ただし、この検査法を臨床の現場で使うにはもう少し時間がかかりそうだ。Meijer氏は、「次の重要なステップは、ヨーロッパの診断検査ガイドラインに従ってこの検査を製品として工業規模で生産することだ」と話している。そのための新会社としてCRCbioscreen社がすでに設立済みであるという。

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大腸がんスクリーニングのための多標的便RNA検査―便潜血反応と比較して(解説:上村直実氏)

 大腸がんは肺がんの次にがん死亡者数が多い疾患であり、世界的に早期発見のための検診が盛んに行われている。通常、1次検診では免疫学的便潜血検査(FIT)を用いた判定法が頻用されているが、さらに精度の高い検査法が探求されている。 今回、大腸内視鏡検査を行った症例8,000人以上を対象として、便中の多標的RNA検査(ColoSense)とFIT両群の感度と特異度を比較した無作為比較試験の結果が、2023年11月のJAMA誌に掲載された。大腸がんおよび進行腺腫に対するColoSenseの感度がFITに比べて有意に高い結果であり、著者らは、今後、通常のFITに代わりうる検査法として期待されると結論付けている(*欧米と日本における大腸がんの定義は少し異なっており、日本における病理診断では粘膜内がんと診断される病変は、欧米ではがんではなく進行腺腫とされることに注意が必要である)。 大腸がんは早期発見により90%以上が完治可能な疾患であることから、便を用いた1次検診から精密検査の内視鏡検査へ誘導する方法が整備されると、大腸がんの死亡者数が激減することが予測できる。今回の論文のように1次検診の精度は確かに重要であるが、同じくらい重要な課題が検査の受検率である。わが国の厚生労働省白書等によると、FITの受検率は50%弱であり、そのうち便潜血陽性で要精密検査となるのが約7%(全体の3.5%)で、このうち約70%が精密検査である大腸内視鏡検査を受けている。 なお、大腸がんが発見されるのは全体の0.1〜0.2%とされているが、このうち7割が早期がんで根治可能であると報告されている。今回の便中RNAを調べる方法など精度の高い遺伝子検査が次々と開発されることが予測されるが、検診という性格上、費用対効果が非常に重要であり、今後、多面的な評価が必要になると思われる。 最後に、検診による大腸がんの早期発見が大腸がん死亡率の低下に寄与することは確かであり、わが国で必要な課題は1次検診の受検率50%の引き上げ、要精密検査者の内視鏡検査受検率の向上が必要であり、そのために国民に対する啓蒙活動が重要と思われた。

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2023年、読んでよかった!「この医学書」/会員医師アンケート

2023年も多くの医学書が刊行されました。CareNet.comでは、会員医師1,000人(内科、循環器科、呼吸器科、消化器科、精神科/心療内科・各200人)に、「今年読んでよかった医学書」についてアンケートを実施しました(今年刊行された本に限らず、今年読んだ本であればOK)。アンケートでは「ご自身の専門分野でよかった本」「専門分野以外でよかった本」を1冊ずつ、理由も添えて挙げてもらいました。本記事では、複数の医師から名前の挙がった書籍を、お薦めコメントと共に紹介します(アンケート実施日:12月5日)。ぜひ、年末年始の読書の参考にしてください。内科幅広いテーマの書籍が「専門分野」として挙げられた内科。『今日の治療薬』(南江堂)、『ハリソン内科学』(メディカル・サイエンス・インターナショナル)、『当直医マニュアル』(医歯薬出版)といった「ド定番」のほか、糖尿病治療に関する書籍と「日本内科学会雑誌」を挙げる人が目立ちました。『ジェネラリストのための内科外来マニュアル 第3版』(金城 光代ほか[編]、医学書院、2023年)内科外来のトップマニュアルが6年ぶりの改訂。内科医以外からも多くの推薦がありました。●推薦コメント「外来診療に役立った」「疾患別に緊急性や重症度などを考えさせるように導く内容となっていて面白い」『胃炎の京都分類 改訂第3版』(春間 賢[監修]、日本メディカルセンター、2023年)多くの画像で胃炎を解説する定番書の改訂第3版。●推薦コメント「慢性胃炎に対する内視鏡的・肉眼的考察により、これまでの慢性胃炎の概念を体系化した書物」「臨床に生かせる」『内科学 第12版』(矢崎 義雄・小室 一成[編]、朝倉書店、2022年)初版は1977年、病態生理を中心に内科的疾患の最新の知見を集大成した改訂12版。●推薦コメント「鉄板です」「ザ・定番と思われるため」循環器科内科医からも多くの推薦があった『ジェネラリストのための内科外来マニュアル』のほか、個別テーマでは心電図、PCIを扱った書籍が多く挙げられました。『循環とは何か? 虜になる循環の生理学』(中村 謙介[著]、三輪書店、2020年)難解な循環の生理学を、深くかつわかりやすく解説。●推薦コメント「面白い」「知識の整理になった」『PCIで使い倒す IVUS徹底活用術 改訂第2版』(本江 純子[編]、メジカルビュー社、2020年)「もっとこうしたらIVUSをより有効に活用できる」という手順・方法などを、実例と共に解説。●推薦コメント「IVUSの基本的な読影やトラブルシューティングなど、理論的にわかりやすかった」「説明がわかりやすく、実践的」『心不全治療薬の考え方,使い方 改訂2版』(齋藤 秀輝ほか[編]、中外医学社、2023年)心不全治療薬の整理のほか、使い分けや未知の事柄も追記した実践的な書の改訂版。●推薦コメント「いつも参考にしています」「心不全治療薬の“革命”を経て…、U40新世代が作り上げるバイブル」呼吸器科「間質性肺炎」「肺がん」「喘息」「気管支鏡」「人工呼吸」「咳」など、「専門」とする書籍テーマのバリエーションが多様だった呼吸器科。回答者によってさまざまな疾患に対応していることが垣間見える結果となりました。『ポケット呼吸器診療2023』(倉原 優[著]、シーニュ、2023年)CareNet.comの連載でもおなじみの倉原氏による定番の一冊の最新版。●推薦コメント「毎年非常に詳しく書かれているから」「ガイドラインや最新の治療薬のアップデートを記憶するのに役立つ」「呼吸器診療のtipsがコンパクトにまとめられている」『誤嚥性肺炎の主治医力』(飛野 和則[監修]、吉松 由貴[著]、南山堂、2021年)飯塚病院 呼吸器内科の著者らによる誤嚥性肺炎診療の実践書。●推薦コメント「気を付けるポイントを再認識した」「読みやすく、わかりやすかった」『抗菌薬の考え方,使い方 ver.5』(岩田 健太郎[著]、中外医学社、2022年)未曽有のコロナ禍を経て、新たに刊行された改訂版。●推薦コメント「大学の授業で習うべき重要な内容」「基本的な抗菌薬の知識を臨床の面から解説してある」「普段何気なく使用している抗菌薬の使用方法を見直すきっかけになった」消化器科内科医からも多く挙げられた『胃炎の京都分類 改訂第3版』のほか、医学誌「胃と腸」や『胃と腸アトラス』を「基本知識、専門知識がよくわかる」「読影の参考になる」「症例問題集が面白く勉強になる」と推薦する声が目立ちました。『専門医のための消化器病学 第3版』(下瀬川 徹ほか[監修]、医学書院、2021年)消化器専門医が知っておきたい最新知見を各領域のエキスパートが解説。●推薦コメント「内容が新しくてよい」「専門医として知っておくべき内容がまとめてあり、わかりやすい」「網羅的に消化器病の知識が記されており、教科書兼辞書として重宝している」『カール先生の大腸内視鏡挿入術 第2版』(軽部 友明[著]、日本医事新報社、2020年)内視鏡手技をテーマとした書籍が多いなか、内視鏡挿入のテクニックを動画付きで解説した本書を挙げる人が目立ちました。●推薦コメント「図が豊富」「基本的な内容が理解できた」「わかりやすく、新しい発見があった」『患者背景とサイトカインプロファイルから導く IBD治療薬 処方の最適解』(杉本 健[著]、南江堂、2023年)炎症性腸疾患(IBD)の治療薬について、著者独自の観点から患者ごとの最適解の考え方を提供。●推薦コメント「目から鱗でした」「わかりやすく、的確な具体例もある」精神科/心療内科他科と比較して同じ本を選択した回答者が多く、刊行から時間が経過した本も多く選ばれる傾向がありました。『精神診療プラチナマニュアル 第2版』(松崎 朝樹[著]、メディカル・サイエンス・インターナショナル、2020年)精神診療に必要かつ不可欠な内容をハンディサイズに収載。●推薦コメント「ノイヘレン(新人)時代にこういった入門書があればよかった。今でも復習に役立つ」「内容がわかりやすくまとまっている」「最新の話題が記載されている」『[新版]精神科治療の覚書』(中井 久夫[著]、日本評論社、2014年)「医者ができる最大の処方は希望である」。精神科医のみならず、すべての臨床医に向けられた基本の書。●推薦コメント「読みやすい」「改めて読み直してみて、初心を思い出せた」『カプラン臨床精神医学テキスト 第3版』(井上 令一[著・監修]、メディカル・サイエンス・インターナショナル、2016年)DSM-5準拠、高評と信頼を得た最高峰のテキストの改訂版。●推薦コメント「精神科医が学ぶことがおおむね網羅されている」「DSM-5に準じ体系化されていて、たくさんの疾患が網羅されている」「精神科専門医試験もここから多く出ていた」専門も専門外も!「信頼のシリーズ」アンケートの設問では「事典やガイドライン、医学雑誌以外の本を推薦ください」と条件を付けたものの、医師にとって最も身近であるこれらの書籍や、医学生・研修医、非専門医、コメディカルを対象とした定番シリーズを挙げる方も多くいました。「極論で語る」シリーズ(丸善出版)●推薦コメント「循環器疾患についてメカニズムと対応方法をわかりやすく解説してくれる」(『極論で語る循環器内科』/循環器科)、「体液コントロールにおける腎臓の視点を取り入れることができる」(『極論で語る腎臓内科』/循環器科)「病気がみえる」シリーズ(メディックメディア)●推薦コメント「看護学校の講師をしていますが、初心に返ることができた」(循環器科)、「基礎の確認になった」(循環器科)「レジデントのための」シリーズ(日本医事新報社)●推薦コメント「内科診療の疑問をEBMの側面でまとめてくれている」(『レジデントのための 内科診断の道標』/精神科)、「実臨床に即しており、非常にわかりやすい」(『レジデントのための これだけ輸液』/呼吸器科)どの科も必須「このテーマ」新型コロナウイルス感染症が収まり切らないなか、「専門外」の良書としてどの科の医師からも名前が挙がった本には、感染症をテーマとするものが多数ありました。『レジデントのための感染症診療マニュアル 第4版』(青木 眞[著]、医学書院、2020年)初版から20年。読み継がれてきた「感染症診療のバイブル」の最新版。●推薦コメント「抗菌薬の選択に参考となる」(呼吸器科)『感染症プラチナマニュアル Ver.8 2023-2024』(岡 秀昭[著]、メディカル・サイエンス・インターナショナル、2023年)2015年初版、ベストセラー「感染症診療マニュアル」の改訂第8版。●推薦コメント「実臨床に即しており、非常にわかりやすい」(呼吸器科)キラリと光る「新定番」絶対数としてはさほど多くないものの、最近刊行された注目の書籍が、複数の科の医師から「専門外の好著」として名前が挙がりました。『誰も教えてくれなかった皮疹の診かた・考えかた』(松田 光弘[著]、医学書院、2022年)皮膚科疾患のロジックが身に付く、フローチャートを用いた解説が好評の一冊。●推薦コメント「皮膚科が苦手だったが、まさに目からウロコ」(内科)、「皮疹を診る際の皮膚科医の思考過程がよくわかる」(内科)、「他科の医師でも皮疹診療についての基本がわかる」(呼吸器科)『世界一わかりやすい 筋肉のつながり図鑑』(きまた りょう[著]、KADOKAWA、2023年)100点以上のオールカラーイラストで筋肉のつながり・仕組みを平易に解説した一般書のベストセラー。●推薦コメント「筋肉の解剖学的特徴がわかりやすい」(内科)、「イラストがよい、わかりやすい」(消化器科)『心電図ハンター 心電図×非循環器医』(増井 伸高[著]、中外医学社、2016年)非循環器医をターゲットに、即座に判断できない微妙な症例を集め、心電図判読のコツを紹介。●推薦コメント「実際の臨床の場面を想定した形での判断基準などがわかりやすい」(内科)、「知りたいことがコンパクトにまとめてある」(呼吸器科)こんな本も! 医師ならではの一冊医学書以外でも、医師ならではの視点から、熱のこもったコメントと共に寄せられた本がありました。『蘭学事始』(杉田 玄白[著]、緒方 富雄[校註]、岩波文庫、1959年)江戸後期、杉田 玄白が著した蘭学創始期の回想録。●推薦コメント「印象に残った」(呼吸器科)『医療現場の行動経済学 すれ違う医者と患者』(大竹 文雄・平井 啓[編著]、東洋経済新報社、2018年)●推薦コメント「インフォームドコンセントからSDMになり、なんとなく感じていた違和感が、行動経済学的な考え方によりすっきりした」(消化器科)『嫌われる勇気』(岸見 一郎・古賀 史健[著]、ダイヤモンド社、2013年)アドラー心理学を解説する、100万部突破のベストセラー。●推薦コメント「承認欲求に気付くことができた」(循環器科)『わたしが誰かわからない ヤングケアラーを探す旅』(中村 佑子[著]、医学書院、2023年)●推薦コメント「一体ヤングケアラーとは誰なのか。世界をどのように感受していて、具体的に何に困っているのか。取材はドキメンタリーを読むようだ」(消化器科)

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錠剤サイズのデバイスで心拍数などをモニタリングする研究が前進

 新たな「ハイテク錠剤」によって体内でバイタルサインのモニタリングを安全に行えることが、米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院の消化器内科医で米マサチューセッツ工科大学(MIT)機械工学分野のGiovanni Traverso氏らの研究で示された。この研究結果は、「Device」11月17日号に発表された。 このバイタル・モニタリング・ピル(以下、VMピル)は、呼吸や心拍に伴う体内のわずかな振動を追跡することで機能するデバイスだ。もし、VMピルを飲み込んだ人の呼吸が止まれば、VMピルはそれを検知することができる。そのため、VMピルからオピオイド過剰摂取のリスクがある患者の情報をリアルタイムで得られる可能性もあるという。 Traverso氏は、「入院することなくさまざまな疾患の診断やモニタリングができるようになれば、患者は医療にアクセスしやすくなり、治療のサポートにもつながる」と話す。Traverso氏らは今回の研究の背景情報を説明する中で、VMピルのようなインジェスティブルデバイス(経口摂取型デバイス)は、ペースメーカーのような植込み型デバイスとは異なり、外科的処置が不要なため使いやすいと説明している。現在、多くのインジェスティブルデバイスが開発段階にある。その一例として、通常であれば病院で鎮静薬を使用する必要のある大腸内視鏡検査に錠剤サイズのインジェスティブルカメラが用いられている。 論文の共著者で、マサチューセッツ州に本社を置く医療機器開発企業のCelero Systems社の創立者でもあるBenjamin Pless氏は、「医師がこれらのカプセルを処方し、患者はそれを飲み込むだけで良いというのが、インジェスティブルデバイス使用の考え方だ。患者は錠剤を飲むことに慣れている。また、インジェスティブルデバイスを使う方が、従来の医療処置を行うよりもコストを大幅に抑えられる」と説明している。 研究グループは、麻酔をかけたブタの胃にVMピルを入れ、呼吸停止をもたらす量のフェンタニル(鎮痛薬)を投与し、ヒトがフェンタニルを過剰摂取した際に起こるのと似た状態を作り出した。その結果、VMピルはブタの呼吸数を測定して研究グループに警告を発したため、研究グループは過剰摂取からブタを回復させることができた。 VMピルをヒトに使う試験も行われた。この試験では、米ウェストバージニア大学で睡眠時無呼吸の検査対象者10人に、VMピルを飲み込んでもらった。睡眠時無呼吸は、睡眠中に呼吸の一時的な停止と再開を繰り返す疾患だ。バイタルサインをモニタリングするデバイスで異常が検出された場合には、実験室で眠っている間に対象者を観察する必要があるため、診断が難しい疾患と見なされている。Pless氏は、「われわれはオピオイドの安全性に関心を持っていたため、オピオイドによる呼吸抑制と同じ症状がよく生じる睡眠時無呼吸に着目した」と説明している。 その結果、VMピルは飲み込んだ人の呼吸停止を検出し、呼吸数のモニタリングの全体的な正確性は92.7%であることが示された。また、心拍数のモニタリングの正確性は96.2%で、VMピルは数日以内に安全に排出された。 論文の上席著者で米ウェストバージニア大学ロックフェラー神経科学研究所のAli Rezai氏は、「これらの測定値の精度と相関性は、われわれが睡眠実験室で行った、臨床的にゴールドスタンダードとされる方法による研究と比べても優れていた。ワイヤーやリード線を使わず、医療技術者も必要とせず、患者の重要なバイタルサインを遠隔で監視するVMピルの機能は、クリニックや病院ではなく、通常の環境で患者のモニタリングを行う道を開く可能性がある」と付け加えている。 なお、現バージョンのVMピルは約1日をかけて体内を通過するが、Traverso氏は、「より長期間のモニタリングを行うために、体内により長くとどまるようVMピルを改良できるだろう」と話している。

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大腸がんの新しい非侵襲的検査、便潜血より良好な検出感度/JAMA

 マルチターゲット便中RNA(mt-sRNA)検査(ColoSense)は、大腸がんおよび進行腺腫の検出感度が高く、従来の免疫便潜血検査(FIT)と比較し感度を有意に改善することが認められた。また、大腸内視鏡検査で病変が認められない特異度は、既存の非侵襲的な分子スクリーニング検査と同等であった。米国・ワシントン大学のErica K. Barnell氏らが、医療機器クラスIIIとしての承認申請を行うために、平均的リスクの45歳以上を対象に実施された盲検化第III相試験「CRC-PREVENT試験」の結果を報告した。JAMA誌2023年11月14日号掲載の報告。分散型臨床試験により約1.4万人を登録、8,920例を解析 研究グループは、オンラインのソーシャルメディアを用いて参加者の募集活動を行い、2021年6月~2022年6月の間に、米国の49州において分散型ナースコールセンターを介し、平均的な大腸がんのリスクがある45歳以上の計1万4,263例を登録した。 登録された参加者には便検体採取キットを提供し、便検体採取後72時間以内に採取キットを中央検査施設に送付してもらい、その後、地域の内視鏡センターで大腸内視鏡検査を受けてもらった(内視鏡医は盲検下で検査を実施)。 便検体は、従来FIT、便中の8種類のRNA転写物濃度、および自己報告の喫煙状況を組み込んだmt-sRNA検査を行い、結果(陽性または陰性)を判定した。 主要アウトカムは、大腸がんおよび進行腺腫の検出に対するmt-sRNA検査の感度、および大腸内視鏡検査で病変が認められない場合の特異度とした。 登録された1万4,263例のうち、mt-sRNA検査および大腸内視鏡検査をいずれも完遂し、適格であった8,920例が解析対象となった。mt-sRNA検査の大腸がん検出感度は94.4%、特異度は87.9% 8,920例(平均年齢55歳[年齢範囲:45~90]、女性60%、アジア系4%、黒人11%、ヒスパニック系7%)のうち、36例(0.40%)に大腸がん、606例(6.8%)に進行腺腫が認められた。 mt-sRNA検査の大腸がん検出感度は94.4%(95%信頼区間[CI]:81~99)、進行腺腫検出感度は45.9%(95%CI:42~50)、大腸内視鏡検査で病変が認められない場合の特異度は87.9%(95%CI:87~89)であった。 mt-sRNA検査はFITと比較し、大腸がん(94.4% vs.77.8%、McNemarのp=0.01)および進行腺腫(45.9% vs.28.9%、McNemarのp<0.001)の感度が有意に高かった。

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慢性便秘症ガイドライン改訂、非専門医向けに診療フローチャート

 慢性便秘症は、2010年代にルビプロストン(商品名:アミティーザ)、リナクロチド(同:リンゼス)、エロビキシバット(同:グーフィス)、ポリエチレングリコール(PEG)製剤(同:モビコール)、ラクツロース(同:ラグノス)といった新たな治療薬が開発されている。このように、治療の進歩とエビデンスの蓄積が進む慢性便秘症について、約6年ぶりにガイドラインが改訂され、『便通異常症診療ガイドライン2023―慢性便秘症』が2023年7月に発刊された。そこで、便通異常症診療ガイドラインの作成委員長を務める伊原 栄吉氏(九州大学大学院医学研究院 病態制御内科学)に改訂のポイントを聞いた。新たな慢性便秘症のガイドライン作成が求められていた 慢性便秘症は、QOLが低下するだけでなく、長期生命予後に影響するコモンディジーズである1)。慢性便秘症には、結腸運動機能(便の運搬機能)障害(排便回数減少型)と直腸肛門機能(便の排泄機能)障害(排便困難型)の2つの病態が存在するため、病態に基づいた治療が必要となる。また、2010年代には新たな慢性便秘症治療薬が複数開発されており、これらのエビデンスをまとめ、非専門医向けに診療フローチャートを作成する必要があった。さらに、オピオイド誘発性便秘症の治療法も明らかにする必要もあった。これらの背景から、新たな慢性便秘症のガイドラインの作成が求められており、今回『便通異常症診療ガイドライン2023―慢性便秘症』が作成された。また、便秘は下痢と表裏一体であることから、慢性下痢症のガイドラインも新しく作成することになり、『便通異常症診療ガイドライン』という形で、「慢性便秘症」と「慢性下痢症」に分けて作成された。便通異常症診療ガイドライン2023にフローチャート 慢性便秘症には、上述のとおり「排便回数減少型」と「排便困難型」の2つの病態が存在する。伊原氏は「前版の慢性便秘症診療ガイドライン20172)では、排便困難型に重点が置かれていたため、バランスを取った便秘の定義を作成する必要があった」と述べた。そこで、今回の便通異常症診療ガイドライン改訂では、これら2つの病態が考慮され、便秘は「本来排泄すべき糞便が大腸内に滞ることによる兎糞状便・硬便、排便回数の減少や、糞便を快適に排泄できないことによる過度な怒責、残便感、直腸肛門の閉塞感、排便困難感を認める状態(下線部が排便回数減少型に該当)」と新たに定義された。また、慢性便秘症は「慢性的に続く便秘のために日常生活に支障をきたしたり、身体にも種々の支障をきたしうる病態」と定義された。なお、便秘は状態名であり、(慢性)便秘症は疾患名である。つまり、「便秘のために日常生活に支障をきたしているものが便秘症(疾患)である」と伊原氏は述べた。 今回の便通異常症診療ガイドラインの診断基準は、前版の『慢性便秘症診療ガイドライン2017』に準じており、内容には変更がない。しかし、ここでも「排便回数減少型」と「排便困難型」の2つの病態が考慮され、従来の6項目が排便中核症状(排便回数減少型に相当)と排便周辺症状(排便困難型に相当)に分けて記載された。 慢性便秘症の診療について、今回の便通異常症診療ガイドライン2023ではフローチャートが作成されている。そこにも記載されているが、腫瘍性疾患や炎症性疾患が隠れている可能性もあるため、警告症状や徴候の有無を調べることの重要性を伊原氏は強調した。「警告症状にあてはまるものがあれば、大腸内視鏡検査などを実施してほしい。そこで、機能性便秘症であることがわかってから、慢性便秘症の治療に進んでいただきたい」と述べた。警告症状・徴候の詳細については、便通異常症診療ガイドライン2023の「CQ4-1:慢性便秘症における警告症状・徴候は何か?(p.55)」を参考にされたい。フローチャートで診療の流れが明確に、刺激性下剤はオンデマンド治療 伊原氏によると、機能性便秘症の多くが排便回数減少型であるという。そこで、排便回数減少型の治療について解説いただいた。 便秘症の治療薬について、今回の便通異常症診療ガイドライン2023で強い推奨(エビデンスレベルA)となったのは、「浸透圧性下剤(塩類下剤、糖類下剤、高分子化合物[PEG])」「上皮機能変容薬(ルビプロストン、リナクロチド)」「胆汁酸トランスポーター阻害薬(エロビキシバット)」であった。そこで、これらの薬剤を中心に機能性便秘症治療のフローチャートが作成された。ここでの基本的な治療の流れは「生活習慣の改善→浸透圧性下剤→上皮機能変容薬または胆汁酸トランスポーター阻害薬」である。エビデンスが十分でないと判断された「プロバイオティクス」「膨張性下剤」「消化管運動機能改善薬」「漢方薬」は代替・補助治療薬として記載され、「刺激性下剤」「外用薬(坐剤、浣腸)、摘便」はオンデマンド治療であることが明記された。また、このフローチャートは、2023年5月にAmerican Gastroenterological Association(AGA)およびAmerican College of Gastroenterology(ACG)によって発表された『AGA/ACG Clinical Practice Guideline3)』と細かな違いはあるものの、おおむね同様の内容となっている。 新規作用機序の治療薬の使い分けについても、関心が高いのではないだろうか。そこで、今回の便通異常症診療ガイドライン2023では「FRQ 5-1:ルビプロストン、リナクロチド、エロビキシバットを用いるべき臨床的特徴は何か?(p103、104)」が設定された。回答は「ルビプロストン、リナクロチド、エロビキシバットを用いるべき臨床的特徴は明らかになっておらず、今後のさらなる検討が必要と考えられる」となっており、ガイドライン上では便秘症治療薬の使い分けについて明確には示されなかった。しかし、「少しずつわかってきたこともある」と伊原氏は述べた。「ルビプロストンは若い女性で嘔気が起こりやすいため、若い女性にはエロビキシバットやPEG製剤を選択する」「痛みを伴う便秘症にはリナクロチドを選択する」「PPIを用いている患者は酸化マグネシウムの効果が落ちること、ルビプロストンには粘膜バリアを修復する機能があることから、NSAIDsやPPIを服用している患者にはルビプロストンを選択する」「糖尿病患者など、腸の運動が落ちている可能性がある患者には、腸の運動を亢進させるエロビキシバットを選択する」といった便秘症治療薬の使い分けも考えられるとのことである。ただし、「実際に使用して、効果を判定しながら治療を行ってほしい」とも述べた。 今回、オピオイド誘発性便秘症に対する治療のフローチャートも作成された。ガイドラインには「オピオイド誘発性便秘症が疑われる患者には、浸透圧性下剤、刺激性下剤、ナルデメジン、ルビプロストンが有効である」と記載されているが、伊原氏は「ナルデメジンについては、オピオイドの副作用としての便秘に対する効果はあるが、それ以外の機能性便秘症には効果がないので、どちらが主体の便秘症であるか考えて選択する必要がある」と付け加えた。詳細については、便通異常症診療ガイドライン2023の「CQ5-4:オピオイド誘発性便秘症に対する治療法は何か?(p.101)」と「フローチャート5」を参考にされたい。便通異常症診療ガイドライン2023に慢性便秘症の病態評価 慢性便秘症の病態評価において、放射線不透過マーカー法やMRI/CTの有用性が報告されており、今回の便通異常症診療ガイドライン2023にも取り上げられている(CQ4-3、4-4)。しかし、日常診療での実施は難しいのが現状である。そこで、注目されるのが直腸エコー検査(CQ4-2)であると伊原氏は述べた。「直腸エコーで直腸内に便の貯留がみられない場合は直腸感覚閾値の異常、柔らかい便がみられた場合は便排出障害、三日月状の固い便がみられた場合は坐剤や摘便により改善する可能性が考えられる」と解説した。また、「浣腸を行う前に直腸エコーを行うことで、浣腸の必要性がわかるのではないか」とも述べた。 また、病態評価について「病態評価が難しい現状にあるため、症状分類で構わないので『排便回数減少型』『排便困難型』の分類を行い、排便困難型で症状が重い場合は直腸視診や直腸エコーを実施してほしい。そこで明らかな便排出障害が認められる場合は、専門医への紹介を検討していただきたい」とまとめた。便通異常症診療ガイドライン2023改訂ポイントのまとめ 伊原氏は、今回の便通異常症診療ガイドライン2023改訂のポイントを以下のようにまとめた。(1)便秘と慢性便秘症の定義を改訂した(状態名を便秘、病態[疾患名]を[慢性]便秘症とした)(2)「病態(疾患名)」は、「症」を語尾につけることで、病気ではない「状態名」と区別した(3)定義、分類、診断、治療とすべてにわたり、便が直腸へ運搬できない結腸運動機能障害型(排便回数減少型)、直腸に貯留した便が排泄できない直腸肛門機能障害型(排便困難型)の2つの病態を念頭にいれて作成した(4)慢性便秘症の病態評価において直腸エコー(便秘エコー)の有用性を初めて記載した(5)オピオイド誘発性便秘症の治療法を初めて記載した(6)診療のフローチャートを初めて作成した

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検診で寿命が延びるがんは?

 一般的に行われているがん検診により、寿命が延びるのかどうかは不明である。今回、ノルウェー・オスロ大学のMichael Bretthauer氏らが、乳がん検診のマンモグラフィ、大腸がん検診の大腸内視鏡検査・S状結腸鏡検査・便潜血検査、肺がん検診の肺CT検査、前立腺がん検診のPSA検査の6種類の検診について、検診を受けた群と受けなかった群で全生存率と推定寿命を比較した無作為化試験をメタ解析した結果、寿命が有意に増加したのはS状結腸鏡検査による大腸がん検診のみであったことがわかった。JAMA Internal Medicine誌オンライン版2023年8月28日号に掲載。 一般的に使用されている上記の6種類のがん検診について、検診を受けた群と受けなかった群を9年以上追跡し、全死亡率および推定寿命を比較した無作為化試験の系統的レビューおよびメタ解析を実施した。論文の検索はMEDLINEおよびCochrane libraryデータベースで2022年10月12日まで実施した。検診を受けた群と受けなかった群でみられた生存期間の差を検診による寿命の増加とし、各検診による寿命の増加日数と95%信頼区間(CI)をメタ解析または単一の無作為化試験から算出した。 主な結果は以下のとおり。・計211万1,958人が対象となった。・追跡期間中央値は、CT検査、PSA検査、大腸内視鏡検査で10年、マンモグラフィで13年、S状結腸鏡検査、便潜血検査で15年であった。・検診で寿命に有意な増加がみられたのはS状結腸鏡検査のみであった(110日、95%CI:0~274日)。・マンモグラフィ(0日、95%CI:-190~237日)、PSA検査(37日、95%CI:-37~73日)、大腸内視鏡検査(37日、95%CI:-146~146日)、毎年または隔年の便潜血検査(0日、95%CI:-70.7~70.7日)、肺CT検査(107日、95%CI:-286~430日)において有意差はみられなかった。 著者らは「このメタ解析の結果から、現在のエビデンスでは、S状結腸鏡検査による大腸がん検診を除き、一般的ながん検診による寿命延長を証明できないことが示唆された」としている。

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検査時間帯で異なる大腸内視鏡の精度、解決策は?

 大腸内視鏡検査は、前がん性ポリープの発見・除去により、大腸がんの発生と死亡の減少に寄与する。大腸内視鏡検査において、腺腫発見率(ADR)が重要な指標であり、ADRが1%増加するごとに、大腸がんの発生リスクは3%低下するという報告がある1)。しかし、武漢大学人民病院のZihua Lu氏らの研究によると、大腸内視鏡検査の精度が時間と共に低下し、ADRが低下することが明らかになった。また、ADRの低下を抑制するためには、人工知能(AI)を用いた大腸内視鏡検査支援システムの導入が有用であることも示された。JAMA Network Open誌2023年1月31日掲載の報告。 本研究は、武漢大学人民病院における2つの前向きランダム化比較試験についての2次解析である。2019年6月18日~9月6日(試験1)、2020年7月1日~10月15日(試験2)において、大腸内視鏡検査を受けた患者をAI補助群または非補助群のいずれかに無作為に割り付けた。対象患者は、2試験合計で1,780例(年齢[平均値±SD]48.61±13.35歳、女性47.02%)であった。 本研究では、終日大腸内視鏡検査を実施した医師の検査を対象とした。午前を13時以前、午後を13時以降と定義し、大腸内視鏡検査の終了時間に基づいて検査を半日の「前半(8時~10時59分、13時~14時59分)」と「後半(11時~12時59分、15時~16時59分)」に分類し、ADRをAI補助の有無別に比較した。 主な結果は以下のとおり。・半日の前半に大腸内視鏡検査を受けたのは1,041例(58.48%)で、内訳は非補助群357例(34.29%)、AI補助群684例(65.71%)であった。後半に大腸内視鏡検査を受けたのは739例(41.52%)で、内訳は非補助群263例(35.59%)、AI補助群476例(64.41%)であった。・非補助群では、半日の前半のADRが13.73%であったのに対し、後半では5.70%と有意に低下した(オッズ比[OR]:2.42、95%信頼区間[CI]:1.31~4.47、p=0.005)。・AI補助群では、半日の前半と後半で統計学的有意差は認められなかった(22.95% vs.22.06%、OR:0.96、95%CI:0.71~1.29、p=0.78)。・非補助群では、時間の経過とともにADRが低下する傾向にあり、12時台、16時台のADRはそれぞれ2.99%、0%であった。一方、AI補助群の12時台、16時台のADRはそれぞれ20.22%、24.32%であった。・AI補助群は、非補助群と比べて半日の前半(22.95% vs.13.73%、OR:1.60、95%CI:1.10~2.34、p=0.01)と後半(22.06% vs.5.70%、OR:3.81、95%CI:2.10~6.91、p<0.001)のいずれにおいてもADRが有意に高かったが、半日の前半と比べて、後半においてADRの増加に関する良好な支援能力を示した。 本論文の著者らは、半日の後半においてAIがより良好な支援能力を発揮したことを指摘するとともに、「AIの活用により、時間による大腸内視鏡検査の精度低下を克服し、大腸内視鏡検査の精度と均質性を維持できることが示唆された」とまとめている。

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大腸内視鏡検診が大腸がんおよび関連死亡のリスクに及ぼす影響(解説:上村直実氏)

 日本人のがんの中で罹患者数が最も多く、死亡者数でも胃がんを抜いて肺がんに次いで第2位となっている大腸がんの集団検診における大腸内視鏡検査(CS)の有用性を検討するために、欧州4ヵ国において施行された国際的多施設共同の無作為化比較試験(RCT)の結果がNEJM誌に発表された。 一般住民を対象としたRCTの結果、CSを勧奨された群(勧奨群)は通常診療群に比べて、10年以上追跡調査した後の大腸がん発症リスクがわずかに低下するものの大腸がんによる死亡リスクには差がなく、一見すると日本の常識からは考えにくい成績である。ただし、実際にCSを受けたのは勧奨群のうち42%のみであるが、勧奨者全員が実際にCSを受けた場合の効果を推定する調整分析では、大腸がんのリスクは1.22%から0.84%に、大腸がん関連死のリスクは0.30%から0.15%に減少することが追記されており、リスク低下のためにはCS受診率が重要であることが示されている。 欧米の研究結果を解釈する際、大腸の検査法に関する評価が日本と異なることを知っておく必要がある。欧米では全大腸を観察できるCSの有用性は評価されるものの、糞便検査やS状結腸鏡検査(SS)に比べて侵襲性が高く、患者への負担が大きく、より多くの臨床資源を必要とする短所が強調される傾向にあり、最近になってCSに置き換わりつつあるものの、長い間、米国の内視鏡検診の主流は負担の少ないSSであった。 検診の評価で最も重要な死亡率の低下に関する報告では、日本の大腸がん死亡率が年々増加しているのに対して、米国では近年、死亡率の低下を認めている事実が重要である。わが国における一般的な大腸がん検診は便潜血陽性者に対してCSを勧奨する方法であるが、便潜血の受診率は検診対象住民の20%前後であり、その中の5%程度とされる便潜血陽性者のうちCS受診率は約半数のみである。一方米国は、糞便検査もしくはCSを選択できる大腸がん検診受診率は70%である。すなわち、検診受診率が非常に低率であることが、日本における大腸がん死亡率が低下しない大きな要因と思われる。 本研究結果から学ぶべき点は、大腸内視鏡検査自体は大腸がんの発見に対して最も有効な検査法であるが、1次検診の受診率および精密検査受診率が非常に重要であることを数字で明らかにした点である。わが国の胃がん検診や大腸がん検診に内視鏡が導入されつつあるが、侵襲性をはじめとする受診者の負担や検査にかかる臨床資源を考慮した慎重な評価も重要であるが、なんといっても検診受診率の向上すなわち国民の意識改革と行政による政策の改善が必要と思われる。

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内視鏡での大腸がん検診、がんリスクを減らせるか/NEJM

 大腸がんのスクリーニングとして大腸内視鏡検査を勧められた集団は、スクリーニングを受けなかった集団と比較して、10年後の大腸がんによる死亡リスクには大きな差はなかったが、大腸がんの発症リスクが18%低下したことが、ノルウェー・オスロ大学のMichael Bretthauer氏らが実施した「NordICC試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2022年10月9日号で報告された。4ヵ国の実践的な無作為化試験 NordICC試験は、大腸内視鏡によるスクリーニング検査が大腸がんのリスクを改善するかの検証を目的とする実践的な多施設共同無作為化試験であり、2009年6月~2014年6月の期間に、4ヵ国(ポーランド、ノルウェー、スウェーデン、オランダ)で参加者が募集された(ノルウェー研究評議会[RCN]などの助成を受けた)。この報告では、オランダを除く3ヵ国のデータの解析結果が示された。 対象は、4ヵ国の1つに居住する年齢55~64歳の健康な男女で、過去に大腸がんの診断およびスクリーニング検査を受けたことがない集団であった。被験者は、大腸内視鏡によるスクリーニング検査の勧奨を受ける群(勧奨群)、または勧奨およびスクリーニングを受けない群(通常治療群)に、1対2の割合で無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは大腸がんおよび大腸がんによる死亡のリスクとされ、副次エンドポイントは全死因死亡であった。1人の大腸がん予防の勧奨必要数は455人 8万4,585人(年齢中央値59歳、男性50.1%)が解析に含まれた。勧奨群に2万8,220人、通常治療群に5万6,365人が割り付けられた。勧奨群のうち実際にスクリーニングを受けたのは1万1,843人(42.0%)であった。追跡期間中央値は10.0年。 ポリープ切除後の大出血が15例(0.13%)で発現した。大腸内視鏡後30日以内に、腸管穿孔およびスクリーニング関連死はみられなかった。 大腸がんと診断されたのは、勧奨群が259人、通常治療群は622人であった。intention-to-screen解析では、10年の時点での大腸がんのリスクは、勧奨群が0.98%、通常治療群は1.20%であり、勧奨群で18%のリスク低下が認められた(率比:0.82、95%信頼区間[CI]:0.70~0.93)。 また、1人の大腸がんの予防に要するスクリーニングの勧奨必要数(number needed to invite)は455人(95%CI:270~1,429)だった。 10年時までの大腸がんによる死亡リスクは、勧奨群が0.28%(72人)、通常治療群は0.31%(157人)であった(リスク比:0.90、95%CI:0.64~1.16)。全死因死亡のリスクは、それぞれ11.03%および11.04%だった(リスク比:0.99、95%CI:0.96~1.04)。 著者は、「今回の結果は、大腸がんの予防のための大腸内視鏡によるスクリーニングの有効性を定量的に示すものであり、これにより、意思決定を行う者はがんのスクリーニングや保健サービスのための医療資源の優先順位を適切に決めることが可能になると考えられる」とし、「大腸内視鏡によるスクリーニングの効果を完全に把握するには、より長期の追跡調査が必要だろう」と指摘している。

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大腸内視鏡、医師の腺腫検出率と検査後がんリスクが相関/JAMA

 大腸内視鏡検査は、大腸腺腫検出率(ADR)が高い医師が行うと、検出率の値の広い範囲にわたって、大腸内視鏡検査後の大腸がん(PCCRC)のリスクが有意に低く、PCCRCによる死亡も少ないことが、米国・Kaiser Permanente Bernard J. Tyson School of MedicineのJoanne E. Schottinger氏らの調査で示された。研究の成果は、JAMA誌2022年6月7日号で報告された。米国73.5万例と医師383人の後ろ向きコホート研究 研究グループは、医師の大腸内視鏡によるADRと、PCCRCおよびPCCRCによる死亡との関連を評価する目的で、米国の3つの大規模ヘルスケアシステム(カイザーパーマネンテ北カリフォルニア[KPNC]、カイザーパーマネンテ南カリフォルニア[KPSC]、カイザーパーマネンテワシントン[KPWA])の統合データを用いて後ろ向きコホート研究を行った(米国国立がん研究所[NCI]のPopulation-based Research to Optimize the Screening Process[PROSPR]IIの助成を受けた)。 2011年1月~2017年6月の期間に、3つのヘルスケアシステム傘下の43ヵ所の内視鏡センターに所属する、383人の医師(100件以上の大腸内視鏡検査の経験があり、スクリーニング検査として年間25件以上を行っている)による大腸内視鏡検査でがんが検出されなかった、50~75歳の患者73万5,396例が解析に含まれた。 これら大腸内視鏡でがんが陰性であった患者の、暦年で前年のスクリーニング検査に基づき、各患者の担当医の腺腫検出率を調べた。腺腫検出率は、統計解析では連続変数として定義され、記述的解析では中央値と同じかより高い値または中央値未満の2つに分けられた。 主要アウトカムはPCCRCであり、検査の陰性結果(大腸内視鏡のすべての適応)から少なくとも6ヵ月以降に診断され、がん登録で確定された大腸腺がんとされた。副次アウトカムは、PCCRCによる死亡などであった。ADRの高い医師の患者はPCCRCのリスクが有意に低い 73万5,396例の陰性の大腸内視鏡検査85万2,624件のうち、44万0,352件(51.6%)は女性患者で、全体の年齢中央値は61.4歳(IQR:55.5~67.2)であり、追跡期間中央値は3.25年(IQR:1.56~5.01)であった。243万5,707人年の追跡期間に、PCCRCが619件、PCCRC関連死は36件認められた。 ADRの高い医師の患者は、ADRの値の広い範囲において、PCCRC(ADRの1%上昇ごとのハザード比[HR]:0.97、95%信頼区間[CI]:0.96~0.98)のリスクが有意に低く、3つのヘルスケアシステム地域別にみた場合も、すべてで有意な関連が認められた(KPNC:ADRの1%上昇ごとのHR:0.97[95%CI:0.96~0.98]、KPSC:0.97[0.96~0.99]、KPWA:0.96[0.93~0.99])。 また、ADRが中央値(28.3%)未満に比べ中央値以上の医師では、PCCRCのリスクが有意に低かった(1万人年当たり1.79例vs.3.10例、7年のリスクの絶対差:1万件の検査陰性当たり-12.2件[95%CI:-10.3~-13.4]、HR:0.61[95%CI:0.52~0.73])。 さらに、PCCRCのリスクは男性(ADRの1%上昇ごとのHR:0.97、95%CI:0.96~0.98)および女性(0.98、0.97~0.99)のいずれにおいても、高ADR医師の患者で有意に抑制され、性差による交互作用は認められず(pinteraction=0.18)、人種や民族によるリスクの差もなかった(pinteraction=0.60)。 一方、PCCRC関連死(ADRの1%上昇ごとのHR:0.95、95%CI:0.92~0.99)のリスクも、ADRの高い医師の患者で有意に低かった。また、ADRが中央値未満に比べ中央値以上の医師では、PCCRC関連死のリスクが抑制されていた(1万人年当たり0.05例vs.0.22例、7年のリスクの絶対差:1万件の検査陰性当たり-1.2件[95%CI:-0.80~-1.69]、HR:0.26[95%CI:0.11~0.65])。 著者は、「これらの知見は、大腸内視鏡検査の質の評価における推奨目標の設定に有益な情報をもたらす可能性がある」としている。

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事例045 大腸内視鏡検査でマグコロールの入力ミスで査定【斬らレセプト シーズン2】

解説大腸内視鏡検査前の腸管内容物の排出を目的に投与したクエン酸マグネシウム(商品名:マグコロール)がB事由(医学的に過剰・重複と認められるものをさす)にて査定となりました。内容をみて、「やってしまった!」という査定でした。この医療機関のマグコロール処方の流れは、院内システムの都合上、医師に院内頓服扱いで大腸内視鏡前処置のコメントを付けて入力していただき、薬剤部から患者に服用方法の説明をしてお渡しするとしています。今回も医師は手順通り1包を処方されていました。そして、会計上では医療費請求に正しく反映させなければならないため、頓服の欄から検査用の薬剤の欄に手動で入力修正を行う運用としていました。このときに担当者は、薬剤の規格欄に「50g1包」とあったため、単位数を「1g」と思い込み、入力欄に「50」を入力してしまったようです。入力修正は医療費請求において必須の手順のため、「1g」あたりの入力なのか「1本」や「1袋」の入力なのか、規格単位数の誤りに細心の注意をはらうように常々伝えています。逆に、点眼薬や注射薬など「mL」や「g」単位で入力しなければならないものを「本、筒」単位で入力すると大きな請求漏れにつながります。入力単位の誤りをシステムで判定させようとすると、膨大な数の登録が必要となります。年に1回もあってはならないことですが、費用対効果を考えた今後の対策として会計入力時の確認と、レセプト点検時の目視点検の強化、ならびに薬剤部における払出数とレセプト請求数の比較検証で乗り切ることとしました。

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便秘からがんを疑うアラームサインを読み取る【Dr.山中の攻める!問診3step】第6回

第6回 便秘からがんを疑うアラームサインを読み取る―Key Point―大腸がんを疑うアラームサインに注意しよう薬剤が便秘の原因となっていることは多い下剤を処方する際、「酸化マグネシウム」は腎機能低下時に高マグネシウム血症を起こすので要注意!症例:76歳男性主訴)排便困難現病歴)12日前から便が突然出なくなった。4日前に近医で浣腸をしてもらったが排便なし。酸化マグネシウムと大腸刺激性下剤の処方を受けたが、やはり排便がないため当院を受診した。嘔吐はあるが腹痛はない。既往歴)老人性難聴薬剤歴)定期内服薬なし生活歴)たばこ:10本/日 x 55年間、酒:1合/日身体所見)意識清明、体温36.7℃、血圧120/50mmHg、心拍数92/分、SpO2:95%[室内気]直腸診を施行したところ、肛門から8cm、12時方向にカリフラワー様の約4×4cmの腫瘤を触知し易出血性であった。結局、直腸癌と診断され人工肛門増設のため緊急手術となった。大腸イレウスは珍しいが、穿孔すれば腹膜炎となるので緊急処置が必要となることも念頭に入れておくべき。◆今回おさえておくべき臨床背景はコチラ!大腸がんを疑うアラームサイン1) ―大腸がんの可能性はないのか鉄欠乏性貧血体重減少便潜血陽性血便便の狭小化高齢者の急性便秘大腸がんの家族歴50歳以上で大腸内視鏡検査を受けたことがない【STEP1】患者の症状に関する理解不足を解消させよう【STEP2】二次性の便秘を考える薬剤は二次性便秘の最大の原因である。薬剤歴の正確な聴取が大切である便秘を起こす薬剤2)3)はこちら降圧薬(カルシウム拮抗薬、利尿薬)、麻薬抗コリン薬(ブチルスコポラミン、抗うつ薬、抗精神病薬、抗パーキンソン病薬)抗ヒスタミン薬、NSAIDs、鉄剤高齢者の鉄欠乏性貧血は消化管の悪性腫瘍をまず考える便の狭小化+腹痛+液状便はS状結腸から直腸にかけての高度狭窄が示唆される症状である。大腸内視鏡の前処置で腸閉塞や腸管穿孔をきたす可能性があるため、腹部レントゲン検査と腹部CT検査を検査前にオーダーする甲状腺機能低下症、自律神経障害を起こす糖尿病やパーキンソン症候群、低カリウム血症、高カルシウム血症、うつ病、妊娠は便秘の原因となる【STEP3】治療1)を検討しよう毎日排便がないのは異常であるというイメージが TVコマーシャルなどによって作られているが、週に3回または1日3回の排便は正常である週3回以上排便があれば、病的ではないことを伝える。水分と食物繊維を十分にとる。朝食後15分間はトイレに座り、力まずに排便するよう指導する。改善がなければ、ポリエチレングリコール(商品名:モビコール)または酸化マグネシウムを処方する。酸化マグネシウムは腎機能低下時に高マグネシウム血症(嘔気・嘔吐、血圧低下、徐脈、筋力低下、意識障害)を起こす。効果が不十分ならルビプロストン(商品名:アミティーザ)を少量から検討する。大腸刺激性薬剤(センノシド、ピコスルファート)は習慣性や依存性が強いので頓用で用いる<参考文献・資料>1)山中 克郎企画. 総合診療 ヤブ化を防ぐ!総合診療基本のき. 医学書院.2019. p.1089-1091.(中野弘康 便秘)2)John P, et al. MKSAP18 Gastroenterology and Hepatology. 2018 .p.35-38.3)日本消化器病学会関連研究会 慢性便秘の診断・治療研究会編. 慢性便秘症診療ガイドライン. 2017.

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