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わかる統計教室 第2回 リスク比(相対危険度)とオッズ比 セクション3

インデックスページへ戻る第2回 リスク比(相対危険度)とオッズ比セクション3 オッズ比の使い道セクション1 セクション2※「■オッズ比で何がわかるのか」の内容を一部加筆・修正いたしました(2015年10月16日)。セクション2では、オッズ比でよく誤解される使い方やオッズ比の解釈を学習しました。読者の皆さんの中には、オッズ比の使い道があまりないのではないか、と考えてしまう方もいるかもしれません。確かにリスク比に比べ、オッズ比は理解しにくいのですが、実際には臨床研究でよくみられます。それでは、事例に沿って説明をしていきましょう。■オッズ比で何がわかるのか不整脈になる要因はいろいろありますが、ここでは仮に、喫煙の有無、飲酒の有無、性別、年代を取り上げ、どの要因が不整脈の有無に影響を及ぼしているかを調べることにします。表8は、それぞれの要因についての分割表、リスク比、オッズ比を示したものです。最初にリスクの差を求めてみましょう。喫煙の有無は80%-30%により50%、飲酒の有無は26.7%、性別は3.3%、年代は22.2%です。そして、その差が大きい要因ほど、不整脈の影響要因といえるわけです。次に、リスク比の順位はどうなっているでしょうか? 値が高い順からみてみましょう。喫煙の有無が2.67で1位、飲酒の有無が1.67 で2位、年代が1.33で3位、性別が1.07 で4位となります。では、オッズ比の順位はどうなっているでしょう? 1位は喫煙の有無、2位は年代、3位は飲酒の有無、4位は性別です。リスク比の順位とオッズ比の順位は一致していません。リスク比の値が大きければ、オッズ比の値も大きくなるという傾向はありますが、大小関係の順位は必ずしも一致しません。つまり、不整脈に影響を及ぼす要因の順序を付ける場合、オッズ比の順位の適用は好ましくありません。ただし、リスク比、オッズ比どちらも値が大きいほど不整脈の影響要因といえるので、順位付けが必要でない場合、リスク比、オッズ比、どちらを用いても構いません。リスク比のほうが使いやすいので、リスク比で解析することが多いのですが、臨床研究ではオッズ比を用いる人のほうが多いように思います。それは、影響要因であるかがわかれば目的を達成できるからでしょう。リスク比とオッズ比について、一度、今までの内容をまとめてみましょう。不整脈の影響要因であるかは、リスク比やとオッズ比の値の大小で把握できる。リスク比とオッズ比の順位は必ずしも一致しない。複数の影響要因があり、要因間の順位を把握する目的であれば、リスク比を使いオッズ比は使わない。リスクの倍率を比較したい場合はリスク比を適用する。表8の1番上の喫煙の有無と不整脈の有無の関係性について、オッズ比で解析した場合、オッズ比の値から「喫煙者が不整脈となるリスクは、非喫煙者に比べ9.33倍である」といってはいけない。これらを一言でまとめると、「オッズ比は、影響要因であるかを把握するだけで、複数要因の順位付けやリスクの倍率の把握には適用できない」ということになります。■理解しづらい「逆相関」を理解しやすくする方法下記の表9の分割表のリスク比、オッズ比をみてみましょう。表8との違いがおわかりになるでしょうか?表9は、喫煙と非喫煙のデータを入れ替えて表にしたものです。飲酒と非飲酒、男性と女性、60代と50代も同様です。表9の一番上の表について、どのように解釈できるのか説明していきましょう。リスクは、喫煙者のほうが非喫煙者に比べて小さくなっています。喫煙者が不整脈になるリスクは30%で、非喫煙者のリスクは80%なので、喫煙者のほうが50%リスクが低い。リスク比が0.38(30%÷80%)ということから、喫煙者が不整脈となるリスクは、非喫煙者に比べ0.38倍となります。表8は「喫煙者は非喫煙者に比べ、不整脈になりやすいという事例」でした。表9は、「(実際にはあり得ないですが)喫煙者は非喫煙者に比べ、不整脈になりにくいという事例」となります。喫煙と不整脈の関連性をみると、表8は「喫煙あり→不整脈あり」、「喫煙なし→不整脈なし」と通常考えられる関連ですが、表9では「喫煙あり→不整脈なし」、「喫煙なし→不整脈あり」という、通常ではあり得ない関連となってしまうのです。前者(表8)の関連を正の相関、後者(表9)を逆相関といいます。これらの表からわかるように、リスク比、オッズ比どちらも、正の相関の場合は1より大きく、逆相関の場合は1より小さくなっています。ここまでのところをまとめてみましょう。リスク比、オッズ比ともに値が1より大きくなるほど、喫煙者は非喫煙者に比べ、不整脈になる傾向が高まるといえます。このような関連性を「正の相関関係がある」といいます。リスク比、オッズ比とも値が1より小さくなるほど、喫煙者は非喫煙者に比べ、不整脈にならないという傾向が高まるといえます。このような関連性を「逆相関」といいます。つまり、表8の場合、リスク比は2.67>1で正の相関、すなわち、喫煙する人ほど不整脈になりやすい。表9の場合、リスク比は0.38<1で逆相関、すなわち、喫煙する人ほど不整脈になりにくい、ということになります。さて、理解はできたものの、リスク比が0.38倍というのが何か気になる、わかりにくいという方もいらっしゃるのではないでしょうか? 一般にはあり得ない表9の一番上の表の喫煙と非喫煙の位置を入れ替えた表10を作り、リスク比を計算してみましょう。このように、リスク比は1を上回りました。リスク比を解釈するとどうなるでしょうか? 非喫煙者は喫煙者に比べ2.67倍、不整脈になるといえます。表9の解釈、つまり「喫煙者は非喫煙者に比べ0.38倍、不整脈になる」と同じことになりますが、表10の表現のほうがわかりやすくなりますね。リスク比が1を下回った場合は、このような対応をお勧めいたします。次回は、なぜオッズ比が臨床研究で使われるのかを学びます。■今回のポイント1)オッズ比は、影響要因であるかを把握することでのみ活用できる!2)オッズ比は、複数要因の順位付けやリスクの倍率把握には適用できない!インデックスページへ戻る

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携帯メッセージでの生活習慣支援、LDL-C値改善に有効/JAMA

 冠動脈疾患患者に対し、携帯電話を活用した生活習慣に焦点を合わせたテキストメッセージサービス介入で、大半のLDL-C値が改善し、その他の心血管疾患リスク因子も大きく改善したことが報告された。オーストラリア・シドニー大学のClara K. Chow氏らが通常ケア介入と比較した無作為化試験Tobacco, Exercise and Diet Messages(TEXT ME)の結果、報告した。ただし、示された結果について著者は、「改善効果の期間や、臨床的アウトカムに結び付くのかどうかはなお不明である」と述べ、さらなる検討の必要性を指摘している。JAMA誌2015年9月22/29日号掲載の報告より。週4通6ヵ月の介入群 vs.通常ケア群の無作為化試験で評価 研究グループは、心血管リスク因子に関するテキストメッセージを携帯電話で送るという方法で、生活習慣に焦点を合わせた半カスタマイズ化された支援プログラムの効果を調べた。 試験は、オーストラリア、シドニーの3次機能病院1施設で2011年9月~13年11月に、単盲検並行群比較にて、710例を対象に行われた。被験者の平均年齢は58(SD 9.2)歳、男性82%、現在喫煙者が53%を占め、冠動脈性心疾患(CHD)を有していた(心筋梗塞既往または血管造影でCHD確認)。 被験者は、介入群(352例)と通常ケア群(358例)に無作為に割り付けられ、介入群には、通常ケアと、毎週4つのテキストメッセージが6ヵ月間送付された。テキストメッセージの内容は、生活習慣を変えるためのアドバイス、動機付けとなるリマインダー、支援を提供するものであった。 メッセージの送付はコンピュータシステムで自動化されていたが、対象被験者のベースライン特性(喫煙状況など)に合わせて選択して送られるようになっていた(双方向システムではない)。 主要エンドポイントは、6ヵ月時点のLDL-C値とした。副次エンドポイントは、収縮期血圧、BMI、身体活動度(MET)、喫煙状況などだった。介入群のLDL-C値5mg/dL有意に低下 結果、6ヵ月時点のLDL-C値は、介入群79mg/dL、通常ケア群84mg/dLで、介入群の有意が低下が認められた(差:5mg/dL、95%信頼区間[CI]:0~9、p=0.04)。 収縮期血圧は、128.2mmHg vs.135.8mmHg(差:7.6mmHg、95%CI:5.4~9.8、p<0.001)、BMIは29.0 vs.30.3(同:1.3、0.9~1.6、p<0.001)、METは936.1分/週 vs.642.7(同:293.4、102.0~484.8、p=0.003)、非喫煙者率は26.0%(88/339例) vs.42.9%(152/354例)(リスク比:0.61、95%CI:0.48~0.76、p<0.001)と、いずれも介入群が有意に低かった。 また、被験者の報告で、大半が、テキストメッセージが有用(91%)であり、わかりやすい(97%)と回答し、また送付頻度についても適切(86%)と回答していた。

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多発性硬化症〔MS : Multiple sclerosis〕、視神経脊髄炎〔NMO : Neuromyelitis optica〕

1 疾患概要■ 概念・定義中枢神経系(脳・脊髄・視神経)に多巣性の限局性脱髄病巣が時間的・空間的に多発する疾患。脱髄病巣はグリオーシスにより固くなるため、硬化症と呼ばれる。白質にも皮質にも脱髄が生じるほか、進行とともに神経細胞も減少する。個々の症例での経過、画像所見、治療反応性などの臨床的特徴や、病理組織学的にも多様性があり、単一疾患とは考えにくい状況である。実際に2005年の抗AQP4抗体の発見以来、Neuromyelitis optica(NMO)がMultiple sclerosis(MS)から分離される方向にある。■ 疫学MSに関しては地域差があり、高緯度地域ほど有病率が高い。北欧では人口10万人に50~100人程度の有病率であるが、日本では人口10万人あたり7~9人程度と推定され、次第に増加している。平均発病年齢は30歳前後である。MSは女性に多く、男女比は1:2~3程度である。NMOは、日本ではおおむねMSの1/4程度の有病率で、圧倒的に女性に多く(1:10程度)、平均発病年齢はMSより約5歳高い。人種差や地域差に関しては、大きな違いはないと考えられている。■ 病因MS、NMOともに、病巣にはリンパ球やマクロファージの浸潤があり、副腎皮質ステロイドにより炎症の早期鎮静化が可能なことなどから、自己免疫機序を介した炎症により脱髄が起こると考えられる。しかし、MSでは副腎皮質ステロイドにより再発が抑制できず、一般的には自己免疫疾患を悪化させるインターフェロンベータ(IFN-ß)がMSの再発抑制に有効である。また、いくつかの自己免疫疾患に著効する抗TNFα療法がMSには悪化因子であり、自己免疫機序としてもかなり特殊な病態である。一方、NMOでは、多くの例で抗AQP4抗体が存在し、IFN-ßに抵抗性で、時には悪化することもある。また、副腎皮質ステロイドにより再発が抑制できるなど、他の多くの自己免疫性疾患と類似の病態と思われる。MSは白人に最も多く、アジア人種では比較的少ない。アフリカの原住民ではさらにまれである。さらに一卵性双生児での研究からも、遺伝子の関与は明らかである。これまでにHLA-DRB1*1501が最も強い感受性因子であり、ゲノムワイド関連解析(GWAS)ではIL-7R、 IL-2RAをはじめ、100以上の疾患感受性遺伝子が報告されている。また、NMOはMSとは異なったHLAが強い疾患感受性遺伝子 (日本人ではHLA-DPB1*0501) となっている。一方、日本人やアフリカ原住民でも、有病率の高い地域に移住した場合、その発病頻度が高くなることが知られており、環境因子の関与も大きいと推定される。その他、ビタミンD不足、喫煙、EBV感染が危険因子とされている。■ 症状中枢神経系に起因するあらゆる症状が生じる。多いものとしては視力障害、複視、感覚障害、排尿障害、運動失調などがある。進行すれば健忘、記銘力障害、理解力低下などの皮質下認知症も生じる。また多幸症、抑うつ状態も生じるほか、一般的に疲労感も強い。MSに特徴的な症状・症候としては両側MLF症候群があり、これがみられたときには強くMSを疑う。その他、Lhermitte徴候(頸髄の脱髄病変による。頸部前屈時に電撃痛が背部から下肢にかけて走る)、painful tonic seizure(有痛性強直性痙攣)、Uhthoff現象(入浴や発熱で軸索伝導の障害が強まり、症状が一過性に悪化する)、視神経乳頭耳側蒼白(視神経萎縮の他覚所見)がある。再発時には症状は数日で完成し、その際に発熱などの全身症状はない。また、無治療でも寛解することが大きな特徴である。慢性進行型になると症状は緩徐進行となる。NMOでは、高度の視力障害と脊髄障害が特徴的であるが、時に大脳障害も生じる。また、脊髄障害の後遺症として、明瞭なレベルを示す感覚障害と、その部位の帯状の締め付け感や疼痛がしばしばみられる。1)発症、進行様式による分類(1)再発寛解型MS(relapsing- remitting MS: RRMS):再発と寛解を繰り返す(2)二次性進行型MS(secondary progressive MS: SPMS):最初は再発があったが、次第に再発がなくても障害が進行する経過を取るようになったもの(3)一次性進行型MS(primary progressive MS: PPMS):最初から進行性の経過をたどるもの。MRIがなければ脊髄小脳変性症や痙性対麻痺との鑑別が難しい。2)症状による分類(1)視神経脊髄型MS(OSMS):臨床的に視神経と脊髄の障害による症状のみを呈し、大脳、小脳の症状のないもの。ただし眼振などの軽微な脳幹症状はあってもよい。MRI所見はこの分類には用いられていないことに注意。この病型には大部分のNMOと、視神経病変と脊髄病変しか臨床症状を呈していないMSの両方が含まれることになる。(2)通常型MS(CMS):大脳や小脳を含む中枢神経系のさまざまな部位の障害に基づく症候を呈するものをいう。3)その他、未分類のMS(1)tumefactive MS脱髄巣が大きく、周辺に強い浮腫性変化を伴うことが特徴。しばしば脳腫瘍との鑑別が困難であり、進行が速い場合には生検が必要となることも少なくない。(2)バロー病(同心円硬化症)大脳白質に脱髄層と髄鞘保存層とが交互に層状になって同心円状の病変を形成する。以前はフィリピンに多くみられていた。4)前MS状態と考えられるもの(1)clinically isolated syndrome(CIS)中枢神経の1ヵ所以上の炎症性脱髄性病変によって生じた初発の神経症候。CISの時点で1個以上のMS様脳病変があれば、80%以上の症例で再発し、MSに移行するが、まったく脳病変がない場合は20%程度がMSに移行するにとどまる。この時期に疾患修飾薬を開始した場合、臨床的にMSへの進行が確実に遅くなることが、欧米での研究で明らかにされている。(2)radiologically isolated syndrome(RIS)MRIにより偶然発見された。MSに矛盾しない病変はあるが、症状が生じたことがない症例。2010年のMcDonald基準では、時間的、空間的多発性が証明されても、症状がなければMSと診断するには至らないとしている。■ 予後欧米白人では80~90%はRRMSで、10~20%はPPMSとされる。日本ではPPMSが約5%程度である。RRMSの約半数は15~20年の経過でSPMSとなる。平均寿命は一般人と変わらないか、10年程度の短縮で、生命予後はあまり悪くない。機能予後としては、約10年ほどで歩行に障害が生じ、20年ほどで杖歩行、その後車椅子になるとされるが、個人差が非常に大きい。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)MSでは「McDonald 2010年改訂MS診断基準」があり、臨床的な時間的、空間的多発性の証明を基本とし、MRIが補完する基準となっている。NMOでは、「Wingerchuk 2006年改訂NMO診断基準」が用いられる。また、MRIでの基準があり、BarkhofのMRI基準はMSらしい病変の基準、PatyのMRI基準はNMO診断基準で利用されている(図参照)。画像を拡大する画像を拡大する画像を拡大するNMOと同様の病態と考えられるが、臨床的には、NMO-IgG(抗AQP4抗体)陽性で、視神経炎のみ、あるいは脊髄炎のみの例や、抗AQP4抗体陽性で脳病変や脳幹、小脳のみで再発を繰り返す例などがあり、それらをNMO spectrum disorderと呼ぶこともある。■ 検査MSにおいては一般血液検査では炎症所見はなく、各種自己抗体も合併症がない限り異常はない。したがって、そのような検査は、各種疾患の除外、および自己免疫疾患を含めた再発抑制療法で悪化の可能性のある合併症のチェックと、再発抑制療法での副作用チェックの目的が大きい。髄液も多くは正常で、異常があっても軽微であることが特徴である。オリゴクローナルIgGバンド(OCB)の陽性率は欧米では90%を超えるが、日本人では約70%位である。MS特異的ではないが、IgG index高値は中枢神経系でのIgG産生、すなわち免疫反応が生じていることの指標となる。電気生理学的検査としては視覚誘発電位、体性感覚誘発電位、聴性脳幹反応、運動誘発電位があり、それぞれの検査対象神経伝導路の脱髄の程度に応じて異常を示す。MRIは最も鋭敏に病巣を検出できる方法である。MSの脱髄巣はMRIのT1強調で低または等信号、T2強調画像またはFLAIR画像で高信号域となる。急性期の病巣はガドリニウム(Gd)で増強される。脳室に接し、通常円形または楕円形で、楕円形の病巣の長軸は脳室に対し垂直である病変がMSの特徴であり、ovoid lesionと呼ばれる。このovoid lesionの検出には、矢状断FLAIRが最適であり、MSを疑った場合には必ず撮影するべきである。NMO病態では、CRP上昇や補体高値などの軽度の末梢血の全身性炎症反応を示すことがあるほか、大部分の症例で血清中に抗AQP-4抗体が検出される。抗体は治療により測定感度以下になることも多く、治療前の血清にて測定することが重要である。画像では、脊髄の中心灰白質を侵す3椎体以上の長大な連続性病変が特徴的とされる。また、他の自己免疫疾患の合併が多く、オリゴクローナルIgGバンドは陰性のことが多い。■ 鑑別疾患1)初発時あるいは再発の場合感染性疾患:ライム病、梅毒、硬膜外膿瘍、進行性多巣性白質脳症、単純ヘルペスウイルス性脊髄炎、HTLV-1関連脊髄炎炎症性疾患:神経サルコイドーシス、シェーグレン症候群、ベーチェット病、スイート病、全身性エリテマトーデス(SLE)、結節性動脈周囲炎、急性散在性脳脊髄炎、アトピー性脊髄炎血管障害:脳梗塞、脊髄硬膜外血腫、脊髄硬膜動静脈瘻(AVF)代謝性:ミトコンドリア病(MELAS)、ウェルニッケ脳症、リー脳症脊椎疾患:変形性頸椎症、椎間板ヘルニア眼科疾患:中心動脈閉塞症などの血管障害2)慢性進行型の場合変性疾患:脊髄小脳変性症、 痙性対麻痺感染性疾患:HTLV-I関連脊髄症/熱帯性痙性麻痺(HAM/TSP)代謝性疾患:副腎白質ジストロフィーなど脳外科疾患:脊髄空洞症、頭蓋底陥入症3 治療 (治験中・研究中のものも含む)急性増悪期、寛解期、進行期、それぞれに応じて治療法を選択する。■ 急性増悪期の治療迅速な炎症の鎮静化を行う。具体的には、MS、NMO両疾患とも、初発あるいは再発時の急性期には、できるだけ早くステロイド療法を行う。一般的にはメチルプレドニゾロン(商品名:ソル・メドロール/静注用)500mg~1,000mgを2~3時間かけ、点滴静注を3~5日間連続して行う。パルス療法後の経口ステロイドによる後療法を行う場合は、投与が長期にわたらないようにする。1回のパルス療法で症状の改善が乏しいときは、数日おいてパルス療法をさらに1~2クール追加したり、血液浄化療法を行うことを考慮する。■ 寛解期の治療再発の抑制を行う。再発の誘因としては、感染症、過労、ストレス、出産後などに比較的多くみられるため、できるだけ誘引を避けるように努める。ワクチン接種は再発の誘引とはならず、感染症の危険を減らすことができるため、とくに禁忌でない限り推奨される。その他、薬物療法による再発抑制が普及している。1)再発抑制法日本で使用できるものとしては、MSに関してはIFN-ß1a (同:アボネックス)、IFNß-1b (同:ベタフェロン)、フィンゴリモド(同:イムセラ、ジレニア)、ナタリズマブ(同:タイサブリ)がある。肝障害、自己免疫疾患の悪化、間質性肺炎、血球減少などに注意して使用する。また、NMOに使用した場合、悪化させる危険があり、慎重な病態の把握が重要である。(1)IFN-ß1a (アボネックス®) :1週間毎に筋注(2)IFN-ß1b (ベタフェロン®) :2日毎に皮下注どちらも再発率を約30%減少させ、MRIでの活動性病変を約60%抑制できる。(3)フィンゴリモド (イムセラ®、ジレニア®) :連日内服初期に徐脈性不整脈、突然死の危険があり、その他、感染症、黄斑浮腫、リンパ球の過度の減少などに注意して使用する。(4)ナタリズマブ(タイサブリ®) :4週毎に点滴静注約1,000例に1例で進行性多巣性白質脳症が生じるが、約7割の再発が抑制でき、有効性は高い。NMO病態ではIFN-ßやフィンゴリモドの効果については疑問があり、重篤な再発の誘引となる可能性も報告されている。したがって、ステロイド薬内服や免疫抑制薬(アザチオプリン 50~150mg/日 など)、もしくはその併用が勧められることが多い。この場合、できるだけ少量で維持したいが、抗AQP4抗体高値が必ずしも再発と結びつくわけでなく、治療効果と維持量決定の指標の開発が課題である。最近では、関節リウマチやキャッスルマン病に認可されているトシリズマブ(ヒト化抗IL-6受容体抗体/同:アクテムラ)が強い再発抑制効果を持つことが示され、期待されている。(5)その他の薬剤として以下のものがある。ミトキサントロン:用量依存性の不可逆的な心筋障害が必発であるため、投与可能期間が限定されるグラチラマー(同:コパキソン) :毎日皮下注射(欧米で認可され、わが国でも9月に製造販売承認取得)ONO-4641:フィンゴリモドに類似の薬剤(わが国で治験が進行中)ジメチルフマレート(BG12)(治験準備中)クラドリビン(治験準備中)アレムツズマブ(抗CD52抗体/同:マブキャンパス) (欧米で治験が進行中)リツキシマブ(抗CD20抗体/同:リツキサン) (欧米で治験が進行中)デシリズマブ(抗CD25抗体)(欧米で治験が進行中)テリフルノミド(同:オーバジオ)(欧米で治験が進行中)2)進行抑制一次進行型、二次進行型ともに、慢性進行性の経過を有意に抑制できる方法はない。骨髄移植でも再発は抑制できるが、進行は抑制できない。■ 慢性期の残存障害に対する対症療法疼痛はカルバマゼピン、ガバペンチン、プレガバリンその他抗うつ薬や抗てんかん薬が試されるが、しばしば難治性になる。そのような場合、ペインクリニックでの各種疼痛コントロール法の適用も考慮されるべきである。その他、痙性、不随意運動、排尿障害、疲労感、それぞれに対する薬物療法が挙げられる。4 今後の展望再発抑制に関しては、各種の疾患修飾療法の開発により、かなりの程度可能になっている。しかし、20~30%の患者では再発抑制効果が乏しいこともあり、さらに効果的な薬剤が求められる。慢性に進行するPPMS、SPMSでは、その病態に不明な点が多く、進行抑制方法がまったくないことが課題である。診断と分類に関して、抗AQP4抗体の発見以来、治療反応性や画像的特徴から、NMOがMSから分離される方向にあるが、今後も病態に特徴的なバイオマーカーによるMSの細分類が重要課題である。5 主たる診療科神経内科:診断確定、鑑別診断、急性期管理、寛解期の再発抑制療法、肢体不自由になった場合の障害者認定眼科:視力・視野などの病状評価、鑑別診断、治療の副作用のショック、視覚障害になった場合の障害者認定ペインクリニック:疼痛の対症療法泌尿器科:排尿障害の対症療法整形外科:肢体不自由になった場合の補助具などリハビリテーション科:リハビリテーション全般※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)公的助成情報難病情報センター(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)診療、研究に関する情報多発性硬化症治療ガイドライン2010(日本神経学会による医療従事者向けの治療ガイドライン)多発性硬化症治療ガイドライン2010追補版(上記の治療ガイドラインの追補版)患者会情報多発性硬化症友の会(MS患者ならびに患者家族の会)1)Polman CH, et al.Ann Neurol.2011;69:292-302.2)Wingerchuk DM, et al. Neurology.2006;66:1485-1489.3)日本神経学会/日本神経免疫学会/日本神経治療学会監修.「多発性硬化症治療ガイドライン」作成委員会編.多発性硬化症治療ガイドライン2010. 医学書院; 2010.公開履歴初回2013年03月07日更新2015年10月06日

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「やめたい気持ち」を探してみよう

「やめたい気持ち」を探してみようあなたの「タバコをやめたい気持ち」は、10点満点でいうと何点くらいでしょうか?絶対に死ぬまで吸い続けたい : 0点……どんなことをしてでも今すぐにやめたい:10点「タバコをやめたい気持ち」が0点ではない方…それはなぜでしょうか?タバコをやめたい気持ちが0点ではない理由を担当医にお話しください。社会医療法人敬愛会 ちばなクリニックCopyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.清水 隆裕氏

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カフェインとアスピリンの併用は頭痛の頻度を増加させない

 カフェインとアスピリンの併用は、アスピリン単独または鎮痛薬不使用と比較して頭痛の頻度を増加させないことが、ドイツ・エッセン大学病院のSara H. Schramm氏らによるドイツ・頭痛コンソーシアム研究において示された。カフェインと鎮痛薬の併用は、頭痛慢性化のリスクがあるとして議論の的となっていた。Pain誌2015年9月号の掲載報告。 研究グループは、18~65歳の一般住民が参加したドイツ・頭痛コンソーシアム研究において、カフェイン+アスピリン併用が、アスピリン単独と比較して片頭痛、緊張型頭痛および片頭痛+緊張型頭痛の頻度を増加させるかについて検討した。 ベースライン(2003~2007年:t0)、第1回追跡調査時(1.87±0.39年後:t1)、第2回追跡調査時(3.26±0.60年後:t2)に頭痛と鎮痛薬について調査し、t0で頭痛を有し、t0およびt2においてアスピリン単独、カフェイン+アスピリン服用または鎮痛薬不使用で頭痛頻度がわかっている人について解析した。 線形回帰法にて、頭痛頻度の変化量(Δt2-t0)を95%信頼区間[CI]値とともに推算して評価した。変化量は、性別、年齢、t1時点の鎮痛薬、飲酒、喫煙、BMI、教育レベル、t0時の頭痛頻度で補正を行い、鎮痛薬服用量に応じ、頭痛サブタイプに層別化して算出した。 主な結果は以下のとおり。・解析対象は509例(平均42.0±SD 11.8歳、女性56.0%、)であり、45.2%がアスピリン単独服用者、11.8%がカフェイン+アスピリン服用者、43.0%が鎮痛薬不使用者であった。・アスピリン単独服用者(41.3±10.9歳、女性59.6%)の頭痛頻度は、t0で2.8±3.1日/月、t2で3.6±4.1日/月であった。・カフェイン+アスピリン服用者(46.0±9.8歳、女性73.3%)の頭痛頻度は、t0で4.8±6.1日/ヵ月、t2で5.3±5.1日/ヵ月であった。・鎮痛薬不使用者(41.6±13.1歳、女性47.5%)の頭痛頻度は、t0で3.8±6.2日/月、t2で5.3±6.6日/月であった。・カフェイン+アスピリン服用者群において、アスピリン単独服用者群または鎮痛薬不使用者群と比較して頭痛頻度の増加は認められなかった。・アスピリン単独服用者群と比較したカフェイン+アスピリン服用者群の補正後頭痛頻度変化推定値は、全頭痛:-0.34日/月(95%信頼区間[CI]:-2.50~1.82)、片頭痛:-1.36日/月(95%CI:-4.76~2.03)、緊張型頭痛:-0.57日/月(同:-4.97~3.84)、片頭痛+緊張型頭痛:2.46日/月(同:-5.19~10.10)であった。・鎮痛薬不使用者群と比較したときの同推定値は、全頭痛:-2.24日/月(95%CI:-4.54~0.07)、片頭痛:-3.77日/月(同:-9.22~1.68)、緊張型頭痛:-4.68日/月(同:-9.62~0.27)、片頭痛+緊張型頭痛-3.22日/月(同:-10.16~3.71)であった。

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本当は怖い「低タール」タバコ

本当は怖い「低タール」タバコ 低タールタバコにしても疾病リスクは下がりません。 海外では「低タールタバコは健康への影響が少ないと誤信させた」として、タバコメーカーに損害賠償を命じる判決が出ています。【表示タール値と肺がん死リスク】(海外データ)40非喫煙を1としたときの肺がん死のリスク3030.521.6リス 20ク18.319.110 たばこ規制枠組み条約(FCTC)では「低タール」「マイルド」などの表示が禁止されています。そのため「マイルドセブン」は「メビウス」と名称が変更されました。1.00非喫煙中間タール高タール超高タール低タール(15~21mg)(22mg~)(~7mg) (8~14mg)タバコに含まれるタール量Harris JE, et al. BMJ.2004;328:72 に基づいて作成社会医療法人敬愛会 ちばなクリニックCopyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.清水 隆裕氏

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双極性障害の喫煙率、うつ病や統合失調症と比較すると

 米国・ケンタッキー大学のJames G Jackson氏らは、世界規模の論文複合解析を行い、双極性障害と喫煙との関連について調べた。その結果、双極性障害では一般集団と比べて現喫煙者が多いこと、喫煙経験(開始)が多い一方で、禁煙者は少ないことが明らかになった。また、双極性障害患者の喫煙行動の頻度は、うつ病と統合失調症の中間に位置し、統合失調症で最も高頻度であったなども示された。Bipolar Disorders誌オンライン版2015年8月4日号の掲載報告。 本検討で研究グループは、(1)双極性障害患者は、一般集団と比べて喫煙行動との関連が認められる、(2)双極性障害患者の喫煙行動率は、うつ病患者と統合失調症患者の中間程度である、との2つの仮説を立て検証した。PubMed検索または上席著者の論文コレクションから、成人喫煙者に関する論文56本を複合解析に組み込み、双極性障害患者 vs.対照群の現喫煙者、現喫煙の重度喫煙者、喫煙者だが禁煙中、喫煙経験者の各オッズ比(OR)と95%信頼区間[CI]値を算出し評価した。 主な結果は以下のとおり。・双極性障害vs.一般集団の現喫煙者の複合OR(16ヵ国51試験に基づく)は、3.5(95%CI:3.39~3.54)であった。・データは限定的であったが、禁煙者のORは0.34(95%CI:0.31~0.37)、喫煙経験者のORは3.6(95%CI:3.30~3.80)であった。・双極性障害 vs.統合失調症の現喫煙者の複合OR(10ヵ国20試験)は、0.76(95%CI:0.74~0.79)であった。・喫煙経験者は、統合失調症よりも双極性障害で少ないと言える(OR:0.83、95%CI:0.75~0.91)。・双極性障害 vs.うつ病の現喫煙者の複合OR(7ヵ国18試験)は、2.05(95%CI:2.00~2.10)であった。・喫煙経験者は、うつ病よりも双極性障害で多いと言える(OR:1.5、95%CI:1.40~1.70)。一方で禁煙者は、双極性障害のほうがうつ病よりも少ない可能性がある(OR:0.51、95%CI:0.45~0.59)。関連医療ニュース 統合失調症患者は、なぜ過度に喫煙するのか 精神疾患発症と喫煙の関連性 統合失調症と双極性障害、脳の違いはどこか  担当者へのご意見箱はこちら

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タバコの「低タール」表示は意味がない

「低タール」タバコのからくり 低タールとされるタバコは、フィルタの横に穴を開けて空気で希釈することで、測定値を下げています。 希釈されても、量は減りません。ウイスキーを水割りにすると薄くなりますが、体内に入るアルコールの量は変わらないのと同じことです。 パッケージに書かれているタール値(1mgなど)は、タバコ煙を機械で測定した値です。人体に入る量ではありません。タール値が低くても体内に入る量は変わらない!【タールの違いの仕組み】高タールタバコ低タールタバコ機械で吸引・測定した値がパッケージに表示されているタール値穴から空気が入り希釈される社会医療法人敬愛会 ちばなクリニックCopyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.清水 隆裕氏

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禁煙意思のない喫煙者での減煙治療の効果~最新のメタ解析

 禁煙意思のない喫煙者において、減煙治療は長期禁煙率を増加させるだろうか。中国人民解放軍総合病院のLei Wu氏らは、無作為化試験の論文を系統的にレビューしメタ解析を行った。その結果、禁煙意思のない喫煙者における完全な禁煙達成に、ニコチン置換療法(NRT)やバレニクリンの補助による減煙治療が有効であることが示唆された。International journal of environmental research and public health誌2015年8月25日号に掲載。 著者らは、PubMed、EMBASE、CENTRAL(Cochrane Central Register of Controlled Trials)で、禁煙意思のない喫煙者を対象とし、長期禁煙における減煙治療の効果を検討した無作為化比較試験を検索した。主要アウトカムは追跡期間最終時点の禁煙率である。ランダム効果モデルを用いて、プールした相対リスク(RR)および95%信頼区間(CI)を計算した。 主な結果は以下のとおり。・14試験7,981人の喫煙者を解析した。・禁煙意思のない喫煙者の長期禁煙率について、減煙支援+薬物治療では、減煙支援+プラセボ(RR:1.97、95%CI:1.44~2.7、I2:52%)や介入なし(RR:1.93、95%CI:1.41~2.64、I2:46%)に比べ、有意に増加したことがプール解析で示唆された。・バレニクリンまたはNRTを受けた喫煙者のサブグループにおいても、統計的に有意な差がみられた。・非NRT群(バレニクリン群、ブプロピオン群)において、中止に至った重篤な有害事象を認めた喫煙者の割合は、わずかな有意差であるが対照群よりも多かった。

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わかる統計教室 第2回 リスク比(相対危険度)とオッズ比 セクション2

インデックスページへ戻る第2回 リスク比(相対危険度)とオッズ比セクション2 よくあるオッズ比の間違った解釈セクション1はじめに、簡単な事例でオッズ比を勉強していきましょう。オッズは、競馬など賭け事でよく使われますので、勝負事の例で解説していきましょう。たとえば、スマホやパソコンにあるゲームを何でも良いので、5セットを1回として計2回やったとします。下の表5は、1回目と2回目のゲームの勝敗の成績を示したものです。ゲームの勝敗の成績を、仮に、セクション1で学んだ喫煙の有無と不整脈の有無との関係と同じ結果になるようにしました。では、オッズの説明をする前に、リスク比についてもう一度おさらいしておきましょう。この表5についてリスク比を求めて、表6でリスク比から何がいえるかを考えてみます。1回目の勝率は60%、2回目の勝率は20%、勝率の比、すなわちリスク比は、60%÷20%により3となります。リスク比から、1回目の勝率は2回目に比べ3倍であり、勝率をゲームの強さと考えると、1回目のゲームの強さは2回目に比べ3倍強いといえます。それでは、この成績表を用いてオッズ比について説明していきます。まず、1回目の勝数を2回目の勝数で割った値を「オッズ(Odds)」といいます。そして、1回目の負数を2回目の負数で割った値もオッズといいます。どちらもオッズというので混乱しそうになりますね。もう少し説明を続けます。勝数に着目すると、1回目の勝数(3勝)は2回目(1勝)に比べ3倍、すなわち、勝数オッズは3です。負数に着目すると、1回目の負数(2敗)は2回目(4敗)に比べ半分、すなわち、負数オッズは0.5となります。そして、ここからが大切なところですが、勝数オッズと負数オッズの比を「オッズ比(Odds Ratio)」というのです。オッズ比は3÷0.5で算出しますので、6となります。では、このオッズ比から、1回目の勝率が2回目に比べ6倍、1回目のゲームの強さは2回目の6倍だといってよいでしょうか?答えは間違い! 絶対ダメです。大間違いとなります! ここが、多くの方が陥るオッズ比の典型的な間違った解釈です。勝率(強さ)の比較は、リスク比でしかできないのです。では、オッズ比から何がわかるのでしょうか。実は、オッズ比の値が大きいとか、小さいといったことがわかるだけなのです。ですからオッズ比は、リスク比に比べ理解しにくく、そのため使い方に注意がとても必要となるのです。■オッズ比でわかるのは影響要因かどうかということ前回の表3の分割表を用い、喫煙の有無と不整脈の有無の事例について、リスク比とオッズ比を求めて、解釈してみましょう。リスク比とオッズ比を、下の表7にまとめてみました。喫煙者の不整脈のリスクが60%、非喫煙者の不整脈のリスクは20%、リスク比は60%÷ 20%で3となります。ですから、喫煙者が不整脈となるリスクは非喫煙者に比べ3倍であるといえます。次に、オッズ比を計算してみましょう。不整脈があるケースのオッズは、喫煙者が3、非喫煙者が1ですから、3÷1からオッズは3。不整脈がないケースのオッズは、喫煙者が2、非喫煙者が4のため、2÷4からオッズは0.5。これより、オッズ比は3÷0.5 で6となります。オッズ比の値は6と大きいので喫煙の有無は、不整脈の影響要因といえそうですが、絶対に間違ってはいけないのは、「喫煙者が不整脈となるリスクは、非喫煙者に比べ6倍だといってはいけない!」ということです。このように解説していくと、オッズ比はリスク比と比べるとあまり使い道がないように思われるかもしれません。しかし、実際の臨床研究の論文では、オッズ比はよく使われています。このように理解しにくいオッズ比が、なぜ臨床研究で使われているのか。それはそれなりに、オッズ比の活用法があるからということです。次回は、オッズ比を使うシーンを踏まえながら学習していきます。■今回のポイント1)オッズやオッズ比を算出して、「喫煙者は非喫煙者に比べ●倍、不整脈につながる」ということはいえない!2)オッズ比でわかるのは、影響要因かどうか、ということ!インデックスページへ戻る

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ニコチンガムの使い方

ニコチンガムの使い方ニコチンガムなんて効果がないと思い込んでいませんか?正しく使えば、禁煙成功率はニコチンパッチと比べても遜色がありません。 ニコチンガムは、普通のガムのようにかんではいけません。口の中に貼る「ニコチンパッチ」と考えてください。 口の中で何回かつぶして、柔らかくなったら頬の内側に貼り付けるイメージで口の中に残し、口の粘膜からニコチンを吸収させます。 添付文書に詳しい説明が書かれています。よく読んでから使い始めましょう。社会医療法人敬愛会 ちばなクリニックCopyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.清水 隆裕氏

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習慣飲酒が血糖状態を改善-日本の中年女性

 日本の中年女性において、アルコール摂取量と血糖状態は肥満症とは無関係に逆相関を示すことが、兵庫医科大学の下村 智子氏らによる研究で明らかになった。日本の中年女性は、飲酒することで心血管疾患の既知のリスク低下につながる可能性がある。Canadian journal of diabetes care誌オンライン版2015年8月12日号の報告。 最近の研究で、習慣飲酒は糖尿病のリスクを軽減することが示されている。しかし、アルコールと糖尿病の関係が肥満症の影響を受けるかどうかについては、いまだ明らかにされていない。本研究では、女性のアルコール摂取が血糖状態に影響を及ぼすのかについて検討した。 対象は、健康診断を受けた35~60歳の日本人女性1万8,352人。対象を、飲酒しない群、ときどき飲む群、毎日軽く飲む群(エタノール 22g以下/日)、毎日大量に飲む群(エタノール22g以上/日)の4群に分けて検討した。アルコール消費量とHbA1c値の関連は、年齢、喫煙歴、運動習慣で調整後、共分散およびロジスティック回帰分析を用いて検討した。 主な結果は以下のとおり。・HbA1c値は、飲酒しない群と比べて、ときどき飲む群、毎日軽く飲む群、毎日大量に飲む群で有意に低かった。・これらの逆相関は、肥満状態(BMI、ウエスト身長比)によって変化しなかった。・飲酒しない群に対する高血糖のオッズ比は、ときどき飲む群で0.82 [95%CI:0.73~0.92]と1.00の基準値よりも有意に低かった(p<0.01)。毎日軽く飲む群のオッズ比は0.61 [95%CI:0.44~0.85]、毎日大量に飲む群は0.66 [95%CI:0.50~0.88]であった。・以上のことから、35~60歳の日本人女性において、アルコール摂取は肥満状態と独立しており、アルコール摂取量と血糖状態は逆相関を示すことが示唆された。

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エストロゲン受容体の遺伝子多型と肺がんは関係するのか?

 エストロゲン受容体(ER)遺伝子の一塩基多型(SNP)は、非喫煙女性における肺腺がんリスクと関係することを、国立台湾大学医学院附属病院のKuan-Yu Chen氏らが報告した。Journal of thoracic oncology誌オンライン版2015年8月21日号の掲載報告。 これまでERの遺伝子多型と肺がんのリスクとの関係は、ほとんど研究されてこなかった。本研究の目的は、非喫煙女性における肺腺がんと関係するERの遺伝子多型を見つけることである。 本研究の対象は肺腺がんに罹患している非喫煙女性532人と健常女性532人。ESR1とESR2のSNPのデータはゲノムワイド関連解析により収集し、多変量補正ロジスティック回帰分析により、ESR1、ESR2のSNPと肺腺がんリスクとの関係性を調べた。発現量的形質遺伝子座(eQTL)分析により、エストロゲン受容体(ER)のSNPの機能的な役割を検討した。 主な結果は以下のとおり。・ESR1では、7 種類のSNPが同定され、このうちrs7753153 と rs985192 が肺腺がんリスクと関係していた。それぞれ、rs7753153(オッズ比[OR]:1.509、95%CI:1.168~1.950)、rs985192(OR:1.309、95%CI:1.001~1.712)。・ESR2では、 rs3020450のみが肺腺がんリスクと関係していた(OR:2.110、95%CI:1.007~4.422)。・ホルモン補充療法を受けたことがなく、肺腺がんリスクの高い遺伝子型を有する患者は、ホルモン補充療法を受けたことがあり、同遺伝子型を持たない患者と比べて、肺腺がんリスクが有意に高かった。rs7753153 GG(OR:2.133、95%CI:1.415~3.216)、rs985192 AA/AC (1.752、95%CI:1.109~2.768)、rs3020450 AG/GG(7.162、95%CI:1.608~31.90)。・rs7753153とrs9479122のリスク遺伝子型はESR1発現の減少と関連していた(それぞれ、p=0.0248、p=0.0251) 本研究結果より、非喫煙女性ではER遺伝子のSNPと肺腺がんリスクが関連していることがわかった。肺腺がんの発症には、ER遺伝子のSNPとホルモン補充療法の2つの因子が複合的に影響しており、このことは肺がんの発症における遺伝子環境の相互影響の重要性を示唆している。

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タバコの原材料は輸入品ばかり?!

タバコの原材料は輸入品ばかり?! 国内で流通しているタバコの日本のタバコ産業6割を占める国産タバコです国内の葉タバコ生産輸入の葉タバコが、原材料の2/3は輸入した(平成26年度)(平成26年度)葉タバコを使用しています。(平成26年度) たばこ規制枠組み条約(FCTC)17条では、政府によるタバコ農家の転業支援を義務付けています。 タバコ農家の生活守りたいのであれば、タバコの購入・喫煙を続けるのではなく、輸入制限と転業・転作支援を推進しましょう。耕作者:5,911戸生産高:約1.9万t輸入量:約5.8万t国産タバコ(JTによる製造独占)販売数量国内シェア1,074億本(平成26年度)59.9% (平成26年度)財務省資料より一部改変社会医療法人敬愛会 ちばなクリニックCopyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.清水 隆裕氏

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タバコとPM2.5

タバコとPM2.5PM2.5(μg/m3)【タバコによるPM2.5の汚染度合】1600… タバコは国内最大級のPM2.5発生源です700自由喫煙の居酒屋喫煙室不完全分煙の居酒屋(喫煙席)600 喫煙居酒屋のPM2.5濃度はもっとも数値が高かったときの北京なみタクシー内喫煙2人喫茶店500喫煙室緊急事態駅喫煙コーナー不完全分煙の居酒屋(禁煙席)400場外券売所 さらに、タバコの煙には人体に有害なガス成分が含まれています。完全分煙のファストフード店(喫煙席)300ファストフード店200大いに危険パチンコ店喫茶店PM2.5+有毒ガス100危険完全分煙のファストフード店(禁煙席)全面禁煙のコーヒー店日本禁煙学会資料より一部改変0社会医療法人敬愛会 ちばなクリニックCopyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.清水 隆裕氏

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「受動喫煙は有害ではない」その論文、本当?

「受動喫煙は有害ではない」その論文、本当?タバコ産業から金をもらっている研究者タバコ産業から金をもらっていない研究者受動喫煙は有害だという論文2編(6%)65編(87%)受動喫煙は有害とはいえないという論文29編(94%)10編(13%)調査期間 1980年~1995年Barnes DE, et al. JAMA.1998;279:1566-1570.タバコ産業から研究資金をもらっている学者が受動喫煙の害を否定する論文を書いている!社会医療法人敬愛会 ちばなクリニックCopyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.清水 隆裕氏

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思春期の電子タバコ使用が喫煙開始年齢を早める?/JAMA

 米国ロサンゼルスの高校生(14歳)を対象とした追跡調査の結果、eシガレット(電子タバコ)を吸ったことがあると回答した学生は、吸ったことがないと回答した学生と比べて、翌年中にタバコ(葉巻、水タバコを含む可燃性のもの)を吸い始める人が多い傾向が明らかになった。南カリフォルニア大学のAdam M. Leventhal氏らによる報告で、著者は「電子タバコ使用がタバコを吸い始めることと関連しているのかについて、さらなる調査研究が必要だ」と述べている。米国の若者の間では、電子タバコによるニコチン曝露がますます一般的になってきているという。JAMA誌2015年8月18日号掲載の報告より。ロサンゼルスの高校生2,530例を2年間追跡 検討は、タバコを吸ったことのない14歳の青少年の電子タバコ使用と、3つの可燃性タバコ製品(タバコ、葉巻、水タバコなど)の使用開始リスクとの関連を調べることが目的であった。 ロサンゼルスの高校40校が参加する学校ベースの長期追跡研究参加者の一部を対象に追跡調査を行い、ベースライン(2013年秋、9年生、平均年齢14.1歳)、6ヵ月後(2014年春、9年生)、12ヵ月後(2014年秋、10年生)に評価を行った。 ベースラインで可燃性タバコを吸ったことがないと報告し、6ヵ月、12ヵ月時点のフォローアップ評価が完了したロサンゼルスの公立高校10校2,530例(男子学生46.8%)のデータが分析に含まれた。 学生らは、各評価時点で自己報告サーベイを受け、学校内でのタバコ使用有無について報告。ベースラインでは、電子タバコの使用有無について報告した。 主要評価項目は、6ヵ月、12ヵ月時点の自己報告による、前6ヵ月間のあらゆるタバコの使用で、下記のように分類評価した。(1)あらゆる可燃性タバコ製品を使用(イエスorノー)、(2)可燃性のタバコを使用(イエスorノー)、(3)葉巻(イエスorノー)、(4)水タバコ(イエスorノー)、(5)何種類の可燃性タバコを使用したか(範囲:0~3)。電子タバコ使用者は、非使用者と比べて翌年のタバコ使用4.27倍 前6ヵ月間のあらゆる可燃性タバコ製品の使用は、ベースラインで電子タバコを吸ったことがあると回答した学生(222例)のほうが、吸わなかったと回答した学生(2,308例)よりも多く認められた。フォローアップ6ヵ月時の使用率は30.7% vs.8.1%、同群間差は22.7%(95%信頼区間[CI]:16.4~28.9%)であり、12ヵ月時は25.2% vs. 9.3%、群間差15.9%(同:10.0~21.8%)であった。 2年間の追跡期間において、ベースラインの電子タバコ使用は、あらゆる可燃性タバコ商品使用との関連尤度が高かった。非補正分析でのオッズ比(OR)は4.27(95%CI:3.19~5.71)であり、社会人口統計学的・環境リスク因子・喫煙の個人内リスク因子で補正後のORは2.73(95%CI:2.00~3.73)であった。 また、製品特異的分析の結果、ベースラインの電子タバコ使用との正の関連が、可燃性タバコ使用(OR:2.65、95%CI:1.73~4.05)、葉巻使用(4.85、3.38~6.96)、水タバコ使用(3.25、2.29~4.62)でみられた。複数種類使用との関連も強かった(4.26、3.16~5.74)。

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少量飲酒でも発がんリスクは上昇する?/BMJ

 米国人では、大量飲酒は何種かのがんリスクを上昇することが知られている。ハーバードTHチャン公衆衛生大学院のYin Cao氏らは今回、少量~中等量の飲酒(女性1日1杯、男性1日1~2杯)により、有意差はないものの発がんリスクがわずかに上昇することを確認した。一方で、喫煙と独立した飲酒の役割は明らかになっていない。米国では非喫煙者が増加しているが、先行研究で喫煙は、飲酒ががんに及ぼす影響を部分的に促進する可能性があることが示されているものの、非喫煙者に喫煙者に関する知見をそのまま当てはめることはできないという。BMJ誌オンライン版2015年8月18日号掲載の報告より。少量~中等量飲酒の非喫煙者のリスクを2つのコホート試験で検討 研究グループは、アルコール摂取量が少量~中等量の非喫煙者の発がんリスクを定量化し、飲酒パターンが発がんリスクに及ぼす影響を評価するために、米国で進行中の2つの前向きコホート試験のデータを解析した(米国国立衛生研究所[NIH]の助成による)。 米国看護師健康調査(Nurses’ Health Study:登録時30~55歳、1980年以降)および医療従事者追跡調査(Professionals Follow-up Study:登録時40~75歳、1986年以降)の参加者(女性:8万8,084例、男性:4万7,881例)の2010年までの追跡データを使用した。 1日アルコール摂取量(g/日)は、アルコール飲料のタイプ別に計算して合計量を算出し、6段階に分けた(非飲酒、0.1~4.9g/日、5~14.9g/日、15~29.9g/日、30~44.9g/日、45g以上/日)。少量~中等量のアルコール摂取とは、女性の場合は0.1~14.9g/日、男性は0.1~29.9g/日と定義した。 ビールは12オンス(355mL)でアルコール12.8g、ライト・ビールは12オンスで同11.3g、ワインは4オンス(118mL)で同11.0g(2006年に1杯分5オンス[148mL]に増量)、蒸留酒は標準量(44mL)で同14.0gとした。 がん全体のリスクのほか、アルコール関連がん(大腸がん、乳がん[女性]、口腔がん、咽頭がん、喉頭がん、肝がん、食道がん)のリスクについて評価を行った。 最長30年のフォローアップ期間中に、女性1万9,269例、男性7,571例(非進行性の前立腺がんを除く)ががんを発症した。ベースラインのアルコール摂取量中央値は、女性が1.8g/日、男性は5.6g/日であった。生涯非喫煙女性は1日1杯の飲酒で乳がんリスクが上昇 非飲酒群に比べ、女性の少量~中等量群のがん全体の相対リスク(RR)は、0.1~4.9g/日群が1.02(95%信頼区間[CI]:0.98~1.06)、5~14.9g/日群は1.04(95%CI:1.00~1.09)であった(傾向検定:p=0.12)。 同様に、男性では、0.1~4.9g/日群のRRが1.03(95%CI:0.96~1.11)、5~14.9g/日群が1.05(95%CI:0.97~1.12)、15~29.9g/日群は1.06(0.98~1.15)だった(傾向検定:p=0.31)。 少量~中等量群とがん全体の関連は、元喫煙者や生涯非喫煙者で類似していたが、中等量以上(30g/日以上)のアルコールを摂取する群では生涯非喫煙者よりも元喫煙者でがん全体のリスクがより高かった。 事前に定義されたアルコール関連がんのリスク上昇は、少量~中等量群の生涯非喫煙者の男性では明確ではなかった(傾向検定:p=0.18)が、5~14.9g/日群の生涯非喫煙女性ではアルコール関連がんのリスクが有意に上昇しており(RR:1.13、95%CI:1.06~1.20)、とくに乳がんのリスクが高かった。 より頻回の飲酒をする群や大量飲酒のエピソードのある群では、全体のアルコール摂取で補正後のがん全体のリスクは、男女ともにそれ以上増大することはなかった。 著者は、「少量~中等量のアルコール摂取者は男女ともに、がん全体のリスクがわずかに上昇していたが、有意ではなかった。1日に1~2杯の飲酒をする男性では、アルコール関連がんは主に喫煙者で発症しており、生涯非喫煙者のリスクははっきりしなかった。これに対し、1日に1杯の飲酒をする非喫煙女性ではアルコール関連がん(主に乳がん)のリスクが上昇していた」とまとめている。

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特発性肺線維症の死亡率は悪性腫瘍よりも高い

 日本ベーリンガーインゲルハイムは、特定疾患治療研究事業の対象疾患である「特発性肺線維症」(IPF)の治療薬ニンテダニブ(商品名:オフェブ)の製品記者発表会を、8月20日都内において行った。 ニンテダニブは、本年7月に製造販売を取得、今秋にも発売が予定されている治療薬で、特発性肺線維症では初めての分子標的薬となる。特発性肺線維症は特徴的な所見で気付 はじめに本間 栄氏(東邦大学医学部医学科 内科学講座呼吸器内科学分野 教授)が、「特発性肺線維症 -病態・疫学-」と題してレクチャーを行った。 特発性肺線維症は、肺胞壁などに炎症ができるため抗生物質、ステロイド、免疫抑制薬が効果を発揮しない治療抵抗性の難病である。 画像所見による診断では、X線単純所見で横隔膜の拳上が確認され、HRCT(高分解能胸部断層撮影)で胸膜下に蜂巣肺が確認されるのが特徴となる。また、臨床症状としては、慢性型労作性呼吸困難、乾性咳嗽、捻髪音(ベルクロ・ラ音)、ばち状指、胃食道酸逆流などが認められる。臨床経過で注意するポイントは、本症では急性増悪がみられ、わずか1年で呼吸不全に至る点である。 確定診断では、「特発性間質性肺炎診断のためのフローチャート」が使用され、原因不明のびまん性肺疾患をみたら、特発性肺線維症を疑いHRCT検査の施行、専門施設での診断などが望まれる。特発性肺線維症に喫煙をする高齢の男性は注意 特発性肺線維症の疫学として「北海道スタディ」より有病率は10万人当たり10.0人、わが国での推定患者数は1万3,000人程度と推定されている。男性に多く、中年以降の発症が多いのが特徴で、高齢化社会を背景に患者数は増加している。 予後について5年生存率でみた場合、肺がん(20%未満)に次いで悪く(20~40%未満)、死亡者数も増えている。また、わが国では患者の40%が「急性増悪」で亡くなっているほか、特発性肺線維症は発がん母地ともなり、30%程度の患者が肺がんへと進行する。 特発性肺線維症のリスクファクターは、患者関連因子と環境関連因子に分けられ、前者では、男性、高齢、喫煙、特定のウイルス(例:EBウイルス)、遺伝的素因、胃食道逆流などが挙げられ、後者では動物の粉塵曝露、鳥の飼育、理髪、金属や木材、石などの粉塵が挙げられる。問診などで社会歴も含め、よく聴取することが診断の助けとなる。特発性肺線維症治療の歴史 続いて、杉山 幸比古氏(自治医科大学 呼吸器内科 教授)が、「特発性肺線維症治療の現状と将来展望」と題して、解説を行った。 はじめに特発性肺線維症の病因として慢性的な刺激による肺胞上皮細胞傷害が、傷害の修復異常・線維化を引き起こすという考えに基づき、抗線維化薬の開発が行われた経緯などを説明した。 効果的な治療薬がない中で、吸入薬であるアセチルシステイン(商品名:ムコフィリン)は、導入薬としてながらく、安全かつ有害事象が少ない、安価な治療薬として使用されてきたことを紹介する一方で、経口薬で行われた海外の試験では効果が否定的とされたことと、ネブライザーでの吸入が必要なことで、コンプライアンスに問題があることを指摘した。 次に2008年に初めての抗線維化薬として登場したのが、ピルフェニドン(同:ピレスパ)であり、欧米で広く使用され、無増悪生存期間を延長し、呼吸機能の低下を抑制することが知られていると説明した。本剤の開発がきっかけとなり、世界的に抗線維化薬の開発が進んだ。特発性肺線維症に抗線維化薬で初めての分子標的薬 次に登場したのが、ニンテダニブ(同:オフェブ)である。ニンテダニブは、肺の線維化に関与する分子群受容体チロシンキナーゼを選択的に阻害する分子標的薬で、25ヵ国が参加した第II相試験では、用量依存的に努力性肺活量(FVC)の低下率を68.4%抑制し、急性増悪を有意に低下させたほか、QOLの有意な改善を認めたとする結果が報告された。また、第III相試験では、40歳以上の軽症~中等の特発性肺線維症患者、約1,000例について観察した結果、プラセボとの比較でFVCの年間減少率を約半分に抑える結果となった(-113.6% vs. -225.5%)。また、373日間の期間で初回急性増悪発現までの割合を観察した結果、ニンテダニブが1.9%(n=638)であるのに対し、プラセボでは5.7%(n=423)と急性増悪の発生を抑えることも報告された。 主な有害事象としては、下痢(62.4%)、悪心(24.5%)、鼻咽頭炎(13.6%)などが報告されている(n=638)。とくに下痢に関しては、対症療法として補液や止瀉薬の併用を行うか、さらに下痢が高度な場合は、ニンテダニブの中断または中止が考慮される。 今後は、国際ガイドラインでも推奨されているように広く適用があれば使用すべきと考えられるほか、がんとの併用療法も視野に入れた治療も考える必要がある。 最後に特発性肺線維症治療の展望と課題として、「線維化の機序のさらなる解明、急性増悪因子の解明とその予防、患者ごとに治療薬の使い分けと併用療法の研究、再生医療への取り組みなどが必要と考えられる」とレクチャーを終えた。

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わかる統計教室 第2回 リスク比(相対危険度)とオッズ比 セクション1

インデックスページへ戻る第2回 リスク比(相対危険度)とオッズ比皆さんは、以下のような調査データをみたとき、この調査の結果をどのように解釈していますか。シリーズ第2回では、ある状況下に置かれた人と置かれなかった人で、ある疾患と診断されるリスク比(相対危険度)と、リスク比とよく似た指標として用いられるオッズ比を取り上げます。リスク比、オッズ比とは何か、そしてその違いは何か、さらに有意差の算出方法をマスターし、データを正しく理解することを目標に、5つのセクションに分けて学習します。セクション1 分割表とリスク比■分割表を作るリスク比やオッズ比、そして有意差を算出するには、分割表を作成するところから始まります。今回も、「簡単」な事例で覚えていきましょう。それがマスターへの近道です。下表1は、10例の患者について、「不整脈の有無」「喫煙の有無」を調べたものです。データは、「喫煙」を1、「非喫煙」を0、不整脈が「ある」を1、「ない」を0としています。この表1から、不整脈について喫煙者と非喫煙者を比較したとき、両者に差があるかどうかを明らかにしてみましょう。この表1をただ眺めていても傾向がわからないので、まずは、このデータを喫煙の有無別、不整脈の有無別に並べ替えてみましょう。次に、この表2から何がわかるのかを考えてみましょう。まず喫煙者が5例、そのうち不整脈があるのは3例です。そして、非喫煙者は5例、そのうち不整脈があるのは1例です。次に、喫煙者の有無別に、不整脈のある割合を計算してみましょう。喫煙者における不整脈のある割合は3÷5で60%、非喫煙者における不整脈のある割合は1÷5で20%です。すると、不整脈のある割合は、喫煙者が60%、非喫煙者が20%で、喫煙者のほうが40%高いことがわかります。このことから、「喫煙者と非喫煙者を比較したとき、不整脈において差があるといえる」ということがわかるのです。ただし「差がある」かどうかは、有意差検定をする必要がありますが、それはこれからの話にしておきましょう。■分割表では左側に原因(喫煙など)、上側に結果(不整脈など)を書く!それでは、先ほど集計した結果を表にしてみてみましょう。下の表3のような表を分割表(contingency table)といいます。分割表を作成するときに大事なのは、行と列に入れる項目です。表3では、表の行(左側)に喫煙の有無、列(上側)に不整脈の有無としていますが、行と列を入れ替えて、表の行(左側)に不整脈の有無、列(上側)に喫煙の有無にすると表4になります。実は、この表4はダメな分割表です。なぜダメなのでしょう。因果関係を考える場合、原因と結果があります。原因と結果の関係を調べるために分割表を作る場合、行(左側)に原因、列(上側)に結果の項目を置くというルールがあります。この例では、最初の表3が正しい分割表ですので、注意してください!■リスク比とは?しっかり理解してほしい点は、この表3の「ある」を横計で割って得られた「割合」がリスクだということです。リスクとは、そのままの意味で「危険」や「恐れ」ということです。今回のケースでの“リスク”は、不整脈になる“危険”や“恐れ”が喫煙の有無によって、どの程度あるのかがわかる、ということです。では、リスクを喫煙者、非喫煙者でそれぞれ計算してみましょう。喫煙者が不整脈となるリスクは3÷5で60%、同様に非喫煙者が不整脈となるリスクは20%です。次に、リスクの差を計算してみましょう。60%-20%で40%なので、「リスクは喫煙者が非喫煙者を40%上回っている」ということがわかります。今度は、喫煙者のリスクを非喫煙者のリスクで割ってみましょう。60%÷20%で3になります。この値が「リスク比(Risk Ratio)」です。このようにリスク比は、とても簡単に求められますが、大切なことはリスク比の求め方ではなく、その解釈の仕方です。この例では、リスク比3ということから、「喫煙者が不整脈となるリスク(割合)は非喫煙者に比べ3倍である」と解釈できるということです。次回は、同じく簡単な事例を基に、間違った解釈をされることの多い「オッズ比」について解説します。今回のポイント1)分割表は左側に原因(喫煙など)、上側に結果(不整脈など)を書く!2)リスク比で大切なことは、その解釈の仕方!インデックスページへ戻る

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