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これからの医療制度の在り方を探る

 3月12日都内において、第6回医療法学シンポジウム(主催:医療法学研究会)が「少子高齢化社会を乗り越える医療制度の実現に向けて」をテーマに開催された。シンポジウムでは、さまざまな分野のエキスパートが、将来の医療制度の在り方について議論した。これからの医療制度、健康政策の在り方 「2035のビジョンがなぜ必要か」をテーマに渋谷 健司氏(東京大学大学院医学系研究科国際保健政策学教室教授)が、先ごろ提言書としてまとめられた「保健医療2035」の概要を説明した。 「保健医療2035」は、わが国の社会保障制度を長期的な視点で見直し、現行制度の持続、維持を超えて、社会システムとしての保健医療を再構築することを目的に、研究者、臨床医、民間など多彩な委員が集まり、まとめあげられたものである。 最終目標は「世界最高水準の健康、医療が享受でき、安心、満足、納得を得ることができる持続可能な保健医療システムを構築することで、世界の繁栄にも貢献する」としている。この基本理念として、「公正・公平、自律連帯、日本と世界の繁栄と共生をはかる」を定め、施策実現のために厚生労働省内にプロジェクト推進本部が設置された。「今後、この提言書をベースにさらに社会的な議論を深め、実行性のあるものとしていく」と語った。健康日本21で目指す社会 「健康日本21 エビデンスに基づいた医療政策決定」をテーマに、羽鳥 裕氏(日本医師会常任理事、稲門医師会会長)が、日本医師会の推進するこれからの健康社会へ取り組みについて説明した。 厚生労働省が実施した「(第1次)健康日本21」は、目標到達度約6割で終了した。現在、第2次(2013年開始)が進行中である。そして、10年後に目指す姿として子供も成人も希望が持てる社会、高齢者が生きがいを持てる社会、健康格差の縮小する社会などが謳われている。現在、65歳以上の高齢者が国民総医療費の55.5%を享受する中で、持続可能な制度を探るため、どのような負担配分がよいか議論が必要だと問題を提起した。 健康面では国民の3大リスクとして、喫煙、高血圧、運動不足が示されている。これらは、国民各自で改善できるリスクであり、今後これらリスクを減らす取り組みが必要であるという。 そうした環境の中で医師会では、(1)かかりつけ医機能の推進(地域の医師が地域医療を底上げするシステム)と(2)日医健診標準フォーマットの導入(蓄積されたデータを地域医療などで役立てるもの)で地域・職域への支援を行うことにより、超少子高齢化社会の日本の医療システムモデルを作っていくと説明した。高齢化社会を悩ます認知症 「認知症患者ケアと終末期の実際」をテーマに、灰田 宗孝氏(東海大学理事、東海大学医療技術短期大学学長、稲門医師会副会長)が講演を行った。 講演では、主に「高齢者の認知症」を取り上げ、その診療のポイントから家族、社会に与える問題を概説した。 認知症は、日常使わなくなった機能から病的に衰える疾患であり、進展すると日常の機能も障害される。そのため1日でも早く進展を止めることが重要である。現在、アルツハイマー型認知症とレビー小体型認知症の2疾患の治療薬に保険適用が認められている。認知症では、病中期から患者の看護や介護で多大な負担が生じるため、早期に診断し治療を開始することにより、進行を遅らせ少しでも良い状態を持続させることで、患者のみならず患者家族、社会的負担をいかに軽減させるかが重要だと語る。「今では成年後見制度などの種々のサポート制度もあるため、積極的な診療とともに活用してほしい」とレクチャーを終えた。社会保障と医療について議論の整理を 「医療経済学と向き合う」をテーマに、中田 善規氏(帝京大学大学院公衆衛生学研究科 教授)が、経済的な側面から医療について講演を行った。 はじめに医療保険・年金は福祉(公的扶助)ではないという結論を示し、論点を整理した。医療保険や年金は、必ず出資者がいて、その集めた出資金(掛け金)に応じて、適正配分されるものであるため、社会的に騒がれているような財政に関する諸問題と混同してはいけないという。 (民間も含めて)医療保険は、将来起こるかもしれない不安へのリスクヘッジであり、これは国民健康保険も同様である。相互扶助や隣人愛、救貧ではないため保険料を納めていない人は何も享受できない(これは年金制度も同様)。そのため、掛け金が出資される限り、本来的に制度は維持できると説明した。ただ、保険・年金に公的扶助の機能を持たせると非効率的になる。社会保障と社会保険はきちんと分けて議論されるべきであり、貧困者には保険・年金ではなく、公的扶助の面を充実させるべきであると問題を提起した。高齢者をめぐる法的問題 「医療法学における視点」として大磯 義一郎氏(浜松医科大学法学教授、日本医科大学 医療管理学客員教授、帝京大学医療情報システム研究センター客員教授、稲門医師会理事)が、高齢者にまつわる法的問題をレクチャーした。 終末期に関連する問題として「安楽死」と「尊厳死」がある。とくに尊厳死については、現在拠るべき法律がないため、司法も判断に苦慮している。これは司法ではなく、立法論の問題であり、現在も模索されているという。また、最近増加している高齢者虐待をはじめとする「高齢者(とくに認知症患者)を取り巻く諸問題」にも言及し、高齢者への虐待は年々報告数が増加し、介護疲れなどの理由が多く介護側の疲弊がみられると述べ、その防止の対策も待たれると指摘した。 次に高齢者の徘徊などにより起こった事件・事故の責任について、本年3月1日に最高裁判所で出された認知症患者の事故に関する損賠賠償請求事件の判例を例に挙げ説明を行った。民法上、認知症患者は責任無能力者とみなされ、事件・事故の賠償責任は負わないとされているが、その法定監督義務者は賠償責任を負う可能性があることを指摘。最高裁判所の見解では、「日常の看護などの態様を公平の見地から判断して決める」としているが、この判断が、今後介護などの萎縮につながらないよう制度や仕組み作りをする必要があると語った。また、個人レベルでは、徘徊保険などに任意加入することで、個人の賠償責任を回避することができる(これは認知症患者を預かる施設なども同様)と対応策を提案した。今後、個人や特定施設だけに過度な責任が押し付けられないよう、責任負担の公平化、手続きの明確化や任意保険加入の推進、未加入者へのサポートなど総合的な施策が求められると問題点を指摘した。終末期の現場から 「アドバンス・ケア・プランニング(ACP)の実践 静岡県西部の現在と未来」をテーマに井上 真智子氏(浜松医科大学地域家庭医療学講座特任教授)が、終末期の話題を提供した。 ACPとは、「いかに慢性期の高齢者の看取りを行うか」というもので、現在静岡県西部地域で行われている。あるアンケートによれば、「死」について考えることは約7割が賛成している一方で、準備をしている人は少なく、半数が終末期ケアの希望を配偶者に話していないという(英国 Dying Matters調べ)。そのため、家族、友人、主治医などに終末期の医療や介護ケアについて事前に話し合っておくことは重要である。 実際、自宅での看取り事例を示しつつ、「死の直前に病院から在宅に移行する患者も多い。できれば患者の事前指示書を家族に伝え知らせておくことが大事で、指示書は患者と定期的に見直すことも相互理解につながる」と運用のポイントを語った。 ACPの活動が、人生の最終段階における医療の在り方に与える影響は、これから検証が必要となるが、明らかに看取り後の患者家族の満足度は高くなっているという。「今後は、ACPの実践をチームスタッフと地域住民が共同して、さらに推進することを目指す」とレクチャーを結んだ。 最後に演者全員が登壇し、これからの高齢者医療と医療制度をテーマにパネルディスカッションが行われ、「保健医療2035」、「健康日本21」を基に、高齢化社会で必要な論点の整理(終末期の在り方、認知症への対応、医療者の労働環境、医療経済)などが話し合われた。

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化学放射線療法適応の頭頸部がん、PET-CT監視の効果は/NEJM

 化学放射線療法が適応の頭頸部がん患者の頸部リンパ節転移の治療において、PET-CTによる注意深い監視(PET-CT-guided surveillance:PET-CT監視)は、事前に予定された頸部郭清術(planned neck dissection:planned ND)に比べ予後は劣らないことが、英国・バーミンガム大学のHisham Mehanna氏らPET-NECK Trial Management Groupの検討で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2016年3月23日号に掲載された。頸部リンパ節転移の管理では、前向き無作為化試験が行われていないため、種々の対処法が採られているという。planned NDは、予後の改善効果が示唆されているが、不要な手術や合併症のリスクを伴う。PET-CTは、メタ解析で良好な陰性予測値(94.5~96.0%)が報告されており、不要な手術の適応を抑制し、合併症を回避できる可能性がある。PET-CT監視の有用性を無作為化非劣性試験で評価 研究グループは、化学放射線療法適応の頭頸部がんの頸部リンパ節転移に対する治療において、PET-CT監視とplanned NDを比較する前向き無作為化非劣性試験を行った(英国国立健康研究機構[NIHR]医療技術評価プログラムなどの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、Stage N2/N3のリンパ節転移を有する中咽頭、下咽頭、喉頭、口腔、原発巣不明の頭頸部の扁平上皮がんで、化学放射線療法の適応と判定された患者であった。 被験者は、化学放射線療法施行後にPET-CT監視を12週行う群、またはplanned NDの前後のいずれかに化学放射線療法を実施する群に無作為に割り付けられた。PET-CT監視群のうち、PET-CTで完全奏効が確証されないか、境界的と判定された患者には4週以内にplanned NDが行われた。 主要評価項目は、全生存期間(OS)であった。 2007年10月~12年8月までに、英国の37施設に564例が登録され、PET-CT監視群に282例、planned ND群にも282例が割り付けられた。約80%で頸部郭清術が不要に、費用対効果も優れる 平均年齢はPET-CT監視群が57.6±7.5歳、planned ND群は58.2±8.1歳で、男性がそれぞれ79.1%、84.0%を占めた。全体の84%が中咽頭がんで、79%がN2a/N2bであり、74%が喫煙者/元喫煙者であった。また、75%が、がんの原因がヒトパピローマウイルス(HPV)であることの指標であるp16蛋白が陽性であった。 頸部郭清術は、PET-CT監視群が54例に行われたのに対し、planned ND群は221例に施行された。合併症の発生率は、それぞれ42%、38%とほぼ同等であった。 2年OSは、PET-CT監視群が84.9%(95%信頼区間[CI]:80.7~89.1)、planned ND群は81.5%(同:76.9~86.3)であった。死亡のハザード比(HR)は0.92(同:0.65~1.32)とPET-CT監視群でわずかに良好であり、planned ND群に対する非劣性が示された(95%CIの上限値<1.50、p=0.004)。 疾患特異的死亡率や他の原因による死亡率も両群間に有意な差はみられなかった(それぞれ、p=0.80、p=0.41)。また、p16陽性例(HR:0.74、95%CI:0.40~1.37)および陰性例(同:0.98、0.58~1.66)のいずれにおいても、両群間にOSの差は認めなかった。 重篤な有害事象は、PET-CT監視群が113例、planned ND群は169例に発現した。また、EORTC QLQ-C30による全般的健康状態(global health status)スコアは、6ヵ月時はPET-CT監視群のほうが良好であった(p=0.03)が、この差は12ヵ月時には小さくなり(p=0.09)、24ヵ月時には消失した(p=0.85)。 試験期間中の1例当たりの医療費は、PET-CT監視群がplanned ND群よりも1,492ポンド(約2,190米ドル)安価であった。 著者は、「両群のOSはほぼ同等であったが、PET-CT監視群では約80%の患者で頸部郭清術が不要となり、郭清術の遅延による不利益もなく、費用対効果が優れていた。HPV陽性例と陰性例の効果は同じであった」としている。

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禁煙なんて、もっと先の話!?

禁煙なんて、もっと先の話!? あなたがタバコを吸い始めたきっかけは、単なる“好奇心”や“反抗心”など、ごく軽い気持ちからではなかったでしょうか。そして20年後… そんなきっかけでも、いったん習慣になってしまえば、タバコの持つ中毒性により、いずれ止めたいと思っても、簡単には止められなくなるのです。 そうなる前に、思い切って今、禁煙を始めてみませんか?「若者にとってタバコを吸い始めるという行為は、象徴的な意味もあります。すなわち『オレはもうおふくろべったりのガキじゃねえ。タフで、命知らずで、イケてる…』といった具合です。いずれにせよ、こうした心理的な動機づけが薄れていったとしても、今度はタバコの薬理学的な作用が働くようになり、禁煙は困難になるわけです。」(日経BP社刊『悪魔のマーケティング タバコ産業が語った真実』より引用)社会医療法人敬愛会 ちばなクリニックCopyright © 2016 CareNet,Inc. All rights reserved.清水 隆裕氏

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糖尿病網膜症と夜間頻尿が相関

 日本人の2型糖尿病患者を対象とした研究で、細小血管合併症のうち糖尿病網膜症が、夜間頻尿と独立して関連していたことを、愛媛大学の古川 慎哉氏らが報告した。愛媛県内の関連病院による多施設共同研究(道後Study)において、2型糖尿病患者の細小血管合併症と夜間頻尿の関連を検討した結果、明らかになった。Urology誌オンライン版2016年3月16日号に掲載。 本研究では、日本人の2型糖尿病患者731例に自記式質問票を用いて情報を収集。オッズ比は、性別、年齢、BMI、糖尿病罹病期間、現在の喫煙状況、現在の飲酒状況、高血圧、脳卒中、虚血性心疾患、HbA1cで調整した。なお、診断は以下に従い判断した。・夜間頻尿:「夜寝てから朝起きるまでに、排尿するために通常何回起きますか?」という質問に1回以上と回答した場合・糖尿病神経障害:「神経症状」「アキレス腱反射消失」「振動覚異常」のうち2項目以上を満たした場合・糖尿病腎症:「推算糸球体濾過量(eGFR)30mL/分/1.73m2未満」あるいは「尿アルブミン/Cr比34mg/mmolCr以上」、もしくはどちらも該当した場合・糖尿病網膜症:眼科専門医により診断 主な結果は以下のとおり。・夜間頻尿の有病率は80.4%であった。・糖尿病網膜症と夜間頻尿との独立した正の相関が示された(調整オッズ比2.39、95%CI:1.08~6.11)。・糖尿病腎症と糖尿病神経障害は夜間頻尿と関連がみられなかった。

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遺伝子検査は生活習慣の改善に結び付くのか?/BMJ

 遺伝子検査が手軽に広く行われるようになる中、疾患リスクに関するDNAベースの推定情報の提供が、キーとなる保健行動(喫煙、食事、運動)変化の動機づけになるといわれるようになっているが、本当に期待できるのか。英国・ケンブリッジ大学のGareth J Hollands氏らが、同関連についてシステマティックレビューとメタ解析により調べた結果、そのような期待を支持するエビデンスは見つからなかったと報告した。同様の命題を掲げた検討は、2010年にMarteau TM氏らがCochraneレビューにて行い、「支持するエビデンスがない」と報告している1)。今回のHollands氏らの報告は、Marteau TM氏らの報告をアップデートしたもので、既存の7試験に11試験を加えて分析を行った結果であった。BMJ誌オンライン版2016年3月15日号掲載の報告。18試験を包含し、禁煙、食事、運動など7行動について分析 レビューは2015年2月25日時点で、MEDLINE、Embase、PsycINFO、CINAHL、Cochrane Central Register of Controlled Trialsを検索して行われた。引用論文の検索なども行った。 包含試験の適格条件は、無作為化または準無作為化試験で、疾患リスクが行動変容によって減少可能であると、DNAベースの疾患リスクの推定情報を受けていた成人被験者の1群が含まれている試験とした。また、具体的なリスク減少の行動変容を含む試験を適格とした。 主要アウトカムは、行動変容の実行性とし、副次アウトカムは、行動変容への動機づけ、うつや不安の程度とした。 レビューにより、18試験を分析に組み込んだ。これら試験では、7つの行動に関するアウトカムが報告されていた。このうち禁煙は6試験・2,663例、食事については7試験・1,784例、運動は6試験・1,704例であった。DNAベースのリスク推定情報の提供で生活習慣が変化とのエビデンスはない メタ解析の結果、DNAベースのリスク推定の情報提供は、禁煙(オッズ比[OR]:0.92、95%信頼区間[CI]:0.63~1.35、p=0.67)、食事(標準化平均差:0.12、95%CI:-0.00~0.24、p=0.05)、運動(同:-0.03、-0.13~0.08、p=0.62)に有意な影響を与えていなかった。 また、その他の行動(アルコール摂取、薬物使用、日焼け対策、スクリーニングや行動変容サポートプログラムの受診・受講)に関しても影響はみられなかった。行動の動機づけへの影響もみられず、情報提供により、うつや不安などの有害事象がみられたということもなかった。 サブグループ解析で、リスクをもたらす遺伝子型の情報提供が、提供しなかった場合と比べて、行動に影響を及ぼすという明白なエビデンスは得られなかった。 著者は、包含した試験についてバイアスリスクが高く不透明な点が多く、また、エビデンスの質が概して低かったと指摘したうえで、「DNAベースの推定リスクの情報提供が、行動変容をもたらすという期待を支持するエビデンスはない」と述べ、「今回の検討の結果は、一般的で複合的な疾患リスクを減らす行動変容の動機づけになるということを根拠に遺伝子検査を利用したり、リスクをもたらす遺伝子型の探索を行うことを支持しないものである」とまとめている。参考文献1)Marteau TM, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2010 Oct 6: CD007275.

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タバコと肺がんは関係ない!?

タバコと肺がんは関係ない!?米国の喫煙者と肺がん死の関係(本)(人/10万人当たり)5000---1004500--- 904000--- 803500-たとえば…グラフのこの部分だけ抜き出したメディアの報道がありました。-- 703000-1人当たりのタバコ消費量-- 602500--- 50男性の肺がん死亡率2000--- 402000-1990-1980-1970-1960-1900-01950-女性の肺がん死亡率 -- 101940-500-タバコ消費量は減っているのに肺がん死亡率は増えている!?-- 201930-1000-1920--- 301910-1500-0(年)喫煙と肺がんは関係ない!?グラフの一部分だけでは正確な情報とはいえません!グラフを都合良く切り出し、誤解を広めるようなメディアの説明に惑わされてはいけません!社会医療法人敬愛会 ちばなクリニックCopyright © 2016 CareNet,Inc. All rights reserved.清水 隆裕氏

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発表! 1人ライザップの途中経過【Dr. 中島の 新・徒然草】(111)

百十一の段 発表! 1人ライザップの途中経過以前、60代にしてライザップで腹筋を割った知人に触発され、自らもダイエットを開始したことを述べました。その名も「1人ライザップ」です。ライザップを知らない人のために、世に知られているところを紹介すると、キャッチフレーズは「結果にコミットする」パーソナルトレーニングジムである1人では続かない人のためのマンツーマンコーチ会費は2ヵ月で30万円以上と高い2ヵ月で10kg近く痩せている人が多い有名人がコマーシャルで割れた腹筋を見せつけているといったところです。で、私も腹筋を割りたいとは思ったのですが、とにかく高い! それに2ヵ月で腹筋を割るなんて、ちと不自然というか、体に悪そう。というわけで、誰でもできる1人ライザップを始めたのがちょうど2ヵ月前です。その結果、体重は2ヵ月で4.3kg減!腹筋はまだ割れていない。腹囲は……測っていなかったでも、ベルトの穴が1つ狭くなったような。まあまあの結果です。方法はこんな感じ。カロリー摂取を抑える。間食をやめ腹八分目にするゆるい筋トレを行う体重計でモニタリングするたったこれだけです。とはいえ、実行する過程で方法論についていろいろ考えさせられたのは事実です。たとえば、間食をやめる、というところ。そう簡単には実行できません。最近、私を訪ねて来たお客さんが、ラスクを手土産に持って来てくれたのですが、そのカロリーたるや1枚120kcalもあります。これを運動で消費しようとしたら、3kmも歩かねばなりません。ラスクを食べて3km歩くか、歩かない代わりにラスクを我慢するか? どちらが楽かといえば圧倒的に後者が楽なのですが、意志の弱い私は……歩かないうえに、ラスクを食べてしまう情けない毎日になってしまいました。机の引き出しに何枚もラスクが入っている状況を考えれば、当然の結果です。なので、外来の冷蔵庫かどこか、自分にとってアクセスの悪いところにラスクを持っていき、皆さんで食べてもらえばいいわけです。自分も外来診察の最中、ひょいパクッと1枚くらいは食べてしまうかもしれませんが、それは許容範囲というものでしょう。そういえば40代男性の外来患者さんで、毎日夕食後にアイスクリームを食べている人がおられます。この方は独身なので、ガミガミ言われる相手もおらず、結果としてかなり栄養の行きわたった体形となっています。中島「そのアイスクリームをやめることはできませんか?」患者「でも、これだけが僕の楽しみなんです」中島「せめて減らすとか?」患者「無理ですよ」なんだか喫煙者に禁煙を迫っている気分ですね。そこで、こんなアドバイスを。中島「アイスクリームのカロリーを歩いて消費するなら7kmくらいですよ」患者「そんなに?」中島「だから夕食を食べるときは、後のアイスクリーム分を空けておいたらどうですか」患者「少な目に食べるんですか」中島「そうです。ちょっと少ないな、と思う程度に食べて10分休憩です」患者「……」中島「少し休むと満腹感が出てくるので、その時点でアイスクリームを食べるか、少し先延ばしにするか、考えたらどうでしょうか」患者「それならできるかも」中島「腹一杯食べて、その後、アイスクリームまで詰め込んでいたら、いくらなんでもマズイでしょ」患者「そうですね」私も人様に説教するだけでなく、自分でも頑張らなくてはなりません。また2ヵ月後に結果を報告しましょう。最後に1句ちょっと待て その1枚が 命とり

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抗PD-L1抗体atezolizumab、既治療NSCLCのOS延長/Lancet

 既治療の非小細胞肺がん(NSCLC)の治療において、新規免疫チェックポイント阻害薬atezolizumabは、ドセタキセル(商品名:タキソテールほか)に比べ予後が良好であることが、米国・カイザーパーマネンテ医療センターのLouis Fehrenbacher氏らが行ったPOPLAR試験で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2016年3月9日号に掲載された。ニボルマブやペムブロリズマブがT細胞上のPD-1を標的とするのに対し、atezolizumabは腫瘍細胞および腫瘍浸潤免疫細胞上に発現しているPD-L1(PD-1のリガンド)に対するヒト型IgG1モノクローナル抗体で、T細胞上のPD-1だけでなくB7.1(CD80)との結合を阻害する。それゆえ、T細胞活性化阻害作用の抑制効果が抗PD-1抗体よりも高い可能性があり、またPD-L2とPD-1の相互作用には影響しないことから、免疫系の恒常性への影響を回避できると考えられている。ドセタキセルと比較する無作為化第II相試験 POPLAR試験は、既治療のNSCLC患者においてatezolizumabとドセタキセルの有用性を比較し、PD-L1発現レベルを評価する非盲検無作為化第II相試験(F Hoffmann-La Roche/Genentech社の助成による)。 対象は、プラチナ製剤による化学療法後に病勢が進行したNSCLCで、全身状態(ECOG PS)が0/1、測定可能病変(RECIST ver.1.1)を有する患者であった。 被験者は、腫瘍浸潤免疫細胞上のPD-L1の状態、組織型、前治療レジメン数で層別化され、atezolizumab(1,200mg、静脈内投与)またはドセタキセル(75mg/m2、静脈内投与)を3週ごとに投与する群に無作為に割り付けられた。 免疫組織化学(IHC)検査に基づき、腫瘍細胞上のPD-L1(TC3:≧50%、TC2:5~50%、TC1:1~5%、TC0:<1%)および腫瘍浸潤免疫細胞上のPD-L1(IC3:≧10%、IC2:5~10%、IC1:1~5%、IC0:<1%)をスコア化した。 主要評価項目は全生存期間(OS)とし、探索的解析としてバイオマーカーの評価を行った。 2013年8月5日~14年3月31日までに、13ヵ国61施設に287例が登録された。atezolizumab群に144例、ドセタキセル群には143例が割り付けられ、それぞれ142例、135例が1回以上の投与を受けた。OS中央値:約3ヵ月延長、PD-L1発現率が高いほど良好 年齢中央値は両群とも62歳、男性はatezolizumab群が65%、ドセタキセル群は53%であり、喫煙者/元喫煙者がそれぞれ81%、80%、前治療レジメン数は1が65%、67%、2が35%、33%だった。 OS中央値はatezolizumab群が12.6ヵ月であり、ドセタキセル群の9.7ヵ月に比べ有意に延長した(ハザード比[HR]:0.73、95%信頼区間[CI]:0.53~0.99、p=0.04)。 また、OS中央値はPD-L1の発現率が高い患者ほど良好であった(TC3またはIC3=HR:0.49[0.22~1.07]、p=0.068/TC2/3またはIC2/3=HR:0.54[0.33~0.89]、p=0.014/TC1/2/3またはIC1/2/3=HR:0.59[0.40~0.85]、p=0.005/TC0およびIC0=HR:1.04[0.62~1.75]、p=0.871)。 既存免疫(エフェクターT細胞およびインターフェロン-γの関連遺伝子発現≧中央値で定義)を有する患者の探索的解析では、atezolizumab群のOS中央値が有意に改善された(HR:0.43、95%CI:0.24~0.77)。 atezolizumab群で頻度の高い全原因有害事象として、食欲減退、呼吸困難、悪心、下痢、発熱などが認められ、免疫関連有害事象としてAST上昇(4%)、ALT上昇(4%)、肺臓炎(3%)、腸炎(1%)、肝炎(1%)がみられた。 治療関連有害事象の発現率は、atezolizumab群が67%、ドセタキセル群は88%であった。有害事象による治療中止は、atezolizumab群が8%(11例)、ドセタキセル群は22%(30例)、Grade 3/4の治療関連有害事象はそれぞれ11%(16例)、39%(52例)であり、atezolizumab群で少なかった。治療関連死はatezolizumab群が<1%(1例:心不全)、ドセタキセル群は2%(3例:敗血症、急性呼吸窮迫症候群、原因不明)だった。 著者は、「atezolizumabはドセタキセルに比べ既治療のNSCLC患者の予後を改善した」とまとめ、「PD-L1の発現は、atezolizumabのベネフィットを予測するバイオマーカーとなる可能性が示唆される」と指摘している。

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タバコによる死者は年間600万人

タバコによる死者は年間600万人!タバコが原因とみられる疾患のため死亡する人の数は、全世界で600万人/年間WHO(世界保健機構)推計虐殺されたヨーロッパのユダヤ人のための記念碑(通称:ホロコースト記念碑、ドイツ・ベルリン)これは、第2次世界大戦でナチス・ドイツが迫害、大量虐殺したユダヤ人の数に匹敵します。社会医療法人敬愛会 ちばなクリニックCopyright © 2016 CareNet,Inc. All rights reserved.清水 隆裕氏

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ハミガキ頻度が糖尿病・脂質異常症の有病率と関連

 生活習慣を考慮して、歯磨きの頻度の低さは、糖尿病や脂質異常症の高い有病率と関連することが、虎の門病院の桑原 政成氏らの研究で明らかになった。歯磨き習慣は、口腔衛生の改善だけでなく、全身性疾患の予防のために有益であると考えられる。BMJ Open誌2016年1月14日号の報告。 本研究は、心血管疾患のリスク因子である高血圧症、糖尿病、脂質異常症、高尿酸血症、慢性腎臓病と歯磨きとの関連を明確にすることを目的に、聖路加国際病院予防医学センターで2004年1月から10年6月まで実施された大規模、単一施設、横断研究である。 対象は、健康診断を受けた8万5,866人(男性:49.0%、平均47.0±11.5歳)。「毎食後」、「少なくとも1日1回」、「1日1回未満」の3群の基準に従って歯磨き習慣を調べた。歯磨き頻度ごとのオッズ比は、二項ロジスティック回帰を用い、年齢、性別、BMI、生活習慣、喫煙、飲酒、歩行時間、睡眠時間で調整後、高血圧症、糖尿病、脂質異常症、高尿酸血症、慢性腎臓病の有病率から算出した。 主な結果は以下のとおり。・各心血管疾患リスク因子の有病率は以下であった(毎食後群、少なくとも1日1回群、1日1回未満群)。高血圧症  (13.3%、17.9%、31.0%)糖尿病   (3.1%、5.3%、17.4%)脂質異常症 (29.0%、42.1%、60.3%)高尿酸血症 (8.6%、17.5%、27.2%)慢性腎臓病 (3.8%、3.1%、8.3%)・「1日1回未満群」は、「毎食後群」よりも糖尿病(オッズ比:2.03、95%CI:1.29~3.21)および脂質異常症(オッズ比:1.50、95%CI:1.06~2.14)の有病率が有意に高かった。高血圧症、高尿酸血症、慢性腎臓病の有病率は、歯磨き頻度によって有意な差を認めなかった。

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生活習慣病予防プログラム、40年の成果/BMJ

 冠動脈疾患の主要かつ古典的なリスク因子である喫煙・脂質異常症・高血圧症(3リスク)を低減することを目的とした集団ベース介入の1次予防プログラムは、疾患発症や死亡の低下に寄与する有効な手段なのか。フィンランド国立健康福祉研究所のPekka Jousilahti氏らが、同国東部住民を対象とした40年にわたる観察研究(FINRISK研究)の結果、同プログラムが冠動脈疾患死の低下に寄与したことを確認したと報告した。また、高リスクの人への2次予防および急性冠症候群の治療の介入についても分析し、それらが付加的ベネフィットをもたらしたことも確認されたという。BMJ誌オンライン版2016年3月1日号掲載の報告より。喫煙・脂質異常症・高血圧症への介入による変化と死亡への影響を調査 フィンランドでは、1950年代から食事や生活習慣の変化に伴い、冠動脈疾患死亡率の上昇がみられ、60年代後半には世界で最も同死亡率が高い国となった。とくに働き盛り世代の東部住民男性で高率だったという。そこで72年から冠動脈疾患予防プロジェクトをスタート。その主目的は、働き盛り世代男性の3リスクを低減するというもので、地域保健活動を介し行動変容を促すこと、および高リスクの人のスクリーニングと薬物治療をサポートするというものであった。 研究グループは94年に、介入の成果を評価。20年(72~92年)の間に死亡率は低下し、リスク因子の変化が寄与したことを報告している。 今回、同一サンプルを対象に、その後の20年間の冠動脈疾患死亡の傾向を調べ、3リスクの影響を調べた。 FINRISK研究(1972~2012年)の参加者は、30~59歳のフィンランド東部住民男女3万4,525例であった。 主要評価項目は、年齢で標準化した冠動脈疾患の予測死亡率と実際の死亡率であった。予測変化を、リスク因子データ(72年から5年ごと計9回行われたサーベイ対象集団から集めたデータ)を用いたロジスティック回帰分析で算出。実死亡率を、National Causes of Death Registerから入手し分析した。直近10年の冠動脈疾患死低下、約3分の2は3リスク低減が寄与 40年の間、2007~12年に血清コレステロール値が男女共わずかに上昇していたことを除けば、3リスクの値は低下した。男性の3リスクデータは、1972年当時は喫煙52.6%、血清総コレステロール(TC)値6.77mmol/L、収縮期血圧(SBP)値147.1mmHgであったが、2012年には29.3%、5.44mmol/L、135.9mmHgにいずれも低下した。女性については、喫煙者はもともと70年代は非常に少なく11.4%であった。2002年に22%まで上昇したが、その後は低下し12年は19.4%であった。TC値は6.69から5.30mmol/Lに、SBP値は149.2から129.1mmHgに低下した。 1969-72~2012年の間に、35~64歳住民の冠動脈疾患死亡率は、男性が82%減少(10万人当たり643例から118例)、女性が84%減少(同114例から17例)していた。 研究開始当初10年間で、3リスク因子の変化が、実死亡率の低下に寄与したことが確認された。また80年代中旬以降は、予測死亡率よりも実死亡率が下回った。 直近10年のデータの分析から、死亡減少の約3分の2(男性69%、女性66%)は3リスクの変化によるもので、残る3分の1がその他の要因であることが確認されたという。 これらの結果を踏まえて著者は、「集団ベース介入の1次予防プログラムにより、冠動脈疾患の疾病負荷および死亡は低減可能である。高リスクの人の2次予防や急性冠症候群の治療が、付加的ベネフィットをもたらす」と結論している。

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タバコ有害説は江戸時代から!?

タバコの害は400年以上前から知られていた!? 日本にタバコが伝来したのは安土桃山時代。ポルトガル人宣教師らが持ち込んだといわれています。タバコを吸う人を初めてみた当時の日本人は「南蛮人は腹の中で火を焚いている」と思ったそうです。 1605年に国内で初の禁煙令が出されたという記録があります。以後、江戸時代には何度も「禁煙令」が出されています。 1713年、儒学者もタバコの害に言及しています。「烟草(タバコ)は性毒あり。烟(けむり)をふくみて、眩(めま)ひ倒るる事あり。習へば大なる害なく、少しは益ありといへ共、損多し。病をなす事あり。又火災のうれひあり。習へばくせになり、むさぼりて、後には止めがたし。事多くなり、いたつがはしく家僕を労す。初めよりふくまざるにしかず。貧民は費多し」「タバコには毒性がある。(中略)知ってしまうと癖になり、次から次へと吸い、そうなってしまうと止められなくなる。(中略)初めから喫煙しないのが良い」(貝原益軒『養生訓』より)社会医療法人敬愛会 ちばなクリニック 清水 隆裕氏Copyright © 2016 CareNet,Inc. All rights reserved.

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子供の喘息・アトピーは在胎期間に関連する

 子供の喘息とアトピー性皮膚炎は、在胎期間と関係するのだろうか。フィンランドで、早産児における7歳までの喘息治療および喘息とアトピー性皮膚炎による入院の必要性を評価する目的で、全国登録研究が行われた。その結果、前期/後期早産(32~36週)児では、正期産児よりも学齢期の喘息リスクが高いこと、一方でアトピー性皮膚炎による入院リスクは低いことが明らかになった。European Journal of Pediatrics誌オンライン版2016年2月22日号掲載の報告。 本調査は、1991~2008年の間にフィンランドで生まれた子供101万8,302人を対象に行われた。在胎期間に応じて、以下の4つのカテゴリに分類し、この分類に基づき、7歳時までの各疾患の罹患との相関を評価した。・超早産(32週未満、very preterm;VP)・前期早産(32~33週、moderately preterm;MP)・後期早産(34~36週、late preterm;LP)・正期産(37週以降、term control;term) 主な結果は以下のとおり。・喘息の薬物治療は、在胎期間が短い子供ほど多く受けていた(VP>MP>LP>term、それぞれ15.4%、8.0%、5.7%、3.8%)。・喘息による入院も同様の傾向が見られた(VP>MP>LP>term、20.1%、10.6%、7.3%、4.8%)。・MPおよび・LPにおける喘息の薬物治療が生じるリスクは、子供の性別(男児がより高リスク)、妊娠中の喫煙歴、妊娠糖尿病、人口呼吸器による加療などにより予測することができた。・アトピー性皮膚炎による入院は、在胎期間が長くなるほどリスクが高まった(term>LP>MP、罹患率は5.2%、4.7%、4.2%)。

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喫煙が不妊・早期閉経につながる

喫煙が不妊・早期閉経につながる?! 喫煙により、不妊・早期閉経の可能性が高まります。 受動喫煙に曝されている女性も同様です。喫煙経験・受動喫煙がない女性に比べて…喫煙経験者は受動喫煙者*は1.14倍不妊の確率が高い!1.18倍喫煙経験者は 21.7ヵ月閉経が早い!受動喫煙者*は 13.0ヵ月*喫煙者と10年以上同居しているなど、高レベルの受動喫煙に曝されている女性Hyland A, et al. Tob Control. 2015 Dec 14. [Epub ahead of print]Copyright © 2016 CareNet, Inc. All rights reserved.

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Vol. 4 No. 3 ACC/AHA 脂質管理ガイドラインコントロバーシー その経緯と現在の考え

荒井 秀典 氏国立長寿医療研究センターはじめに米国のNHLBI(National Heart, Lung, and Blood Institute)が中心となって作成したNCEP-ATP III(National Cholesterol Education Program-Adult Treatment Panel)のガイドラインが2001年に発表され、そのガイドラインが2004年に改訂された。心筋梗塞、脳卒中などの動脈硬化性疾患の予防のための脂質管理に関しては、本ガイドラインが作成された米国だけでなく、アジアを含め多くの国々で脂質管理のガイドラインとして使われてきたと思われる。2008年頃よりNCEP-ATP IIIの改訂版であるNCEP-ATP-IV作成に向けた作業が行われていたが、結局NHLBIはその作成を断念せざるをえなかったと聞く。その後、American College of Cardiology(ACC)とAmerican Heart Association(AHA)という米国を代表する循環器の学会が、NHLBIと共同で動脈硬化性心血管疾患(atherosclerotic cardiovascular disease:ASCVD)のリスクを減少させるための脂質異常症治療に関するガイドラインを2013年11月に発表した1)。そのガイドラインは、これまでのガイドラインから180度転換を図るものであった。ACC/AHAガイドラインは、脂質異常症に関する3つのcritical questions(CQ)に対する回答の形で作成されており、質の高いrandomized controlled trial(RCT)とメタ解析の論文を中心に系統的にレビューし、作成された。したがって、フォローアップ期間の短いRCTやRCTのサブ解析などは採用されていない。ACC/AHAガイドラインは、これまで数多く実施されてきたスタチンによるRCTおよびそのメタ解析の結果をもとに脂質管理の指針が出された結果となっている。このため、実臨床とは解離したガイドラインとの批判もある。メタ解析についてはCholesterol Treatment Trialists' collaborationなどのメタ解析の結果から2-4)、ハイリスク群における高用量スタチンを推奨するガイドラインとなっている。スタチンによるASCVD発症予防効果が期待できる4つのグループを同定設定されたCQに対してシステマティックレビューを行った結果、スタチン治療による多くの心血管イベント抑制を示すエビデンスおよびそのメタ解析より、治療が有益と判断される以下の4つの患者群が同定された。その4つの患者群とは、「ASCVDを有する患者(2次予防患者)」、「LDL-コレステロール(LDL-C)が190mg/dL以上の患者(続発性は除く)」、「LDL-Cが70~189mg/dLで40~75歳のASCVD既往のない糖尿病患者」、「LDL-Cが70~189mg/dL、ASCVD既往も糖尿病もない40~75歳で、10年間のASCVDリスクが7.5%以上(10年のASCVD発症リスクはPooled Cohort Equationsによる計算に基づく)の患者」である。治療方針は、図に示すようなアルゴリズムに従って決定される。まず、2次予防で75歳以下の患者に対しては高用量スタチンによる治療を行うべきであり、76歳以上の患者には中用量スタチンによる治療を行う。1次予防においては、家族性高コレステロール血症など極めて冠動脈疾患の発症リスクの高い原発性高脂血症に対する治療の必要性から、LDL-Cが190mg/dL以上で21歳以上であれば、高用量スタチン治療を行う。わが国のガイドラインにおいてもLDL-Cが180mg/dL以上ある場合には家族性高コレステロール血症の可能性が強くなるため、スタチン治療を考慮すべきであるとしているが、家族性高コレステロール血症でなければ、高用量スタチン治療を推奨しているわけではない。次に40歳から75歳までの糖尿病患者は1型、2型を問わずスタチン治療が推奨されている。なかでも10年間のASCVD発症リスクが7.5%以上の患者においては高用量スタチンが、それ以外では中用量スタチンによる治療が推奨される。4つめのグループとしては、2次予防でもLDL-C 190mg/dL以上でも糖尿病でもなくても、10年のASCVD発症リスクが7.5%以上の群であり、この基準を満たす場合にはスタチン治療の適用となる(表)。このように、治療方針決定のための判断材料としては、10年間のASCVD発症リスクを用いる以外は理解しやすく、治療を行う医師は高用量か中用量のスタチンを選べばよいということで、decision makingが容易となっている。図 動脈硬化性疾患予防のためのスタチン治療の推奨画像を拡大する表 高用量、中用量スタチンの治療対象画像を拡大するLDL-Cおよびnon HDL-Cの管理目標値は設定しない本ガイドラインでは、LDL-Cやnon HDL-Cの管理目標値を設定せず、図に示すように高用量(50%以上のLDL-C低下)あるいは中用量(30~50%のLDL-C低下)のスタチンによる治療が推奨されている。その理由は特定のLDL-Cを目標として(例えば、130mg/dL未満と100mg/dL未満でどちらのグループでよりイベント発症が少ないかなど)比較をしたRCTがないからであると説明されている。わが国の動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012年版でも20~30%のLDL-C低下を目標とすることも考慮すると記載されており、LDL-Cの管理目標値を決定するに足るエビデンスは現状ではないことに関して異論はないが、日本の実臨床の場では管理目標値があったほうが治療しやすく、アドヒアランスを維持するためには管理目標値が必要であると考えている。したがって、動脈硬化性疾患予防ガイドラインにあるようにLDL-Cの管理目標値を考慮しながら治療にあたるというのがより実際的ではなかろうか。なお、動脈硬化性疾患予防ガイドラインではLDL-Cの管理目標を設定しているが、“脂質管理目標値は到達努力目標値である”ことも認識すべきである。すなわち、100%その値をクリアすることを求めているわけではない。また、ASCVD予防のための脂質低下治療に関しては、高用量、中用量のスタチンのみが推奨されているが、わが国の保険診療では認められていない用量が推奨されている。非常にリスクが高い場合には、高用量スタチンが選択されるであろうが、日本で認められている最大用量のスタチンを用いることになるであろう。さらに、スタチン以外の薬剤でASCVDの発症リスクを有意に減少させる、あるいはスタチンとの併用で相加的なリスク減少が得られるとのエビデンスは得られなかったとされているが、JELISやACCORD Lipidのサブ解析などのエビデンスも考慮し、わが国のガイドラインでは、スタチン以外の薬剤の使用についても妥当としている。1次予防のための包括的リスク評価本ガイドラインにおいては、米国における5つのコホート研究10年のASCVD発症リスクはPooled Cohort Equationsによる計算に基づく。年齢、性別、人種(アフリカ系アメリカ人かそれ以外)、総コレステロール、HDL-C、収縮期血圧、降圧剤内服の有無、喫煙の有無、糖尿病の有無により、その患者の10年間のASCVD発症リスクが計算される。また、生涯リスクも計算される。しかしながら、このリスクチャートをアジア人に適用することは、リスクの過大評価につながることは容易に想像できる。すでに欧米人の解析でも、NCEP-ATP IIIを適用した場合と比べて、スタチンの治療対象となる患者がかなり増加するとの試算もある。例えば、60歳以上の高齢者はほとんどがスタチンによる治療対象となるといわれている。このようにスタチン治療の適応範囲を広げることは、日本人における動脈硬化性疾患発症リスクを考えても現実的ではない。現在わが国のガイドラインでは、NIPPON DATA80を元にしたリスクチャートを用いており、これが日本人のリスク予測には妥当と考えている。ただ、死亡がエンドポイントとなっているため、今後は発症をエンドポイントとしたリスク評価手法を検討していく必要性はあろう。なおこのガイドラインでは、当然ではあるが、スタチン治療を開始する前に患者とのdiscussionが必要であると述べられており、正しい方向性である。安全性への配慮本ガイドラインでは、採用したRCTの成績に基づいて安全性に関する推奨を行っているが、特にスタチンによる糖尿病の新規発症、筋症(CK上昇を伴わないケースも多い)、認知機能低下などである。スタチンによる糖尿病の新規発症に関してはメタ解析の結果も発表されており、明らかであるが、スタチンによる心血管イベント抑制効果をしのぐものではない。また、メタ解析の結果からスタチンによる糖尿病の新規発症は用量依存性であり、スタチンの用量が少ない日本においては糖尿病の新規発症が欧米に比べ低いことが予想できる。スタチンによる糖尿病の新規発症のメカニズムは十分に明らかになっておらず、今後の検討課題である。バイオマーカーや非侵襲性検査の役割本ガイドラインにおいて、すでに述べたように年齢、性別、人種、総コレステロール、HDL-C、収縮期血圧、降圧剤内服の有無、喫煙の有無、糖尿病の有無が主要な危険因子であり、これらの危険因子により計算された10年間のASCVD発症リスクが7.5%未満の際に、高感度CRP、冠動脈のカルシウムスコア、ankle brachial index(ABI)などのバイオマーカーあるいは非侵襲性検査を用いることも考慮してよいとなっているが、そもそも慢性腎臓病(CKD)がリスクとしてカウントされておらず、日本でよく使用されている頸動脈エコーについてもエビデンスの欠如から採用されていない。頸動脈エコーについては、もちろん症例を選ぶべきではあろうが、治療の意欲やアドヒアランスを考えると有用な検査であろう。もちろん、エビデンスの蓄積をさらに進めるべきである。脂質異常症ガイドラインの今後の方向性本ガイドライン作成委員は、本ガイドラインがASCVD抑制のみにフォーカスしたガイドラインであり、脂質異常症の包括的なマネジメントのためのガイドラインではないことは認めている。したがって、今後実施すべき臨床試験について以下のように記載している。すなわち、高TG血症の治療はどうすべきか、non HDL-Cを治療ターゲットとできるか、アポB、Lp(a)、LDL粒子数などのマーカーがリスク評価に使えるか、治療方針決定のための最もよい非侵襲検査はなにか、生涯ASCVDリスクは使えるか、心不全や透析患者のなかでスタチンの恩恵を受けることができるのはどのようなグループか、スタチンによる新規糖尿病発症の長期的な影響はどうなのか、RCTから除外されているグループ(HIV患者、臓器移植患者)へのスタチンの効果はどうなのか、などである。いずれも重要なテーマであるが、RCTにそぐわないものもあり、観察研究などの結果もガイドラインに反映させるべきであろう。まとめ今回のACC/AHAガイドラインの特徴の1つは、脂質管理目標値を設定しないことである。ACC/AHAガイドラインにおける治療指針はスタチンによるRCTのみに基づいているため、LDL-Cを中心とした管理のみが強調されている点は注意が必要であり、レムナントなど他の脂質マーカーにも着目して、残余リスクの管理を考慮しながら治療にあたるべきである。今後、ガイドラインの作成は、ACC/AHAガイドラインのようにRCTのみをベースとしたものになる可能性が高いが、時間、コストなどの問題を考えると観察研究などのエビデンスもある程度は取り入れながら、ガイドラインの作成を行うことが現実的ではないかと思われる。文献1)Stone NJ et al. 2013 ACC/AHA guideline on the treatment of blood cholesterol to reduce atherosclerotic cardiovascular risk in adults: a report of the American College of Cardiology/American Heart Association Task Force on Practice Guidelines. Circulation 2014; 129: S1-45.2)Baigent C et al. Efficacy and safety of cholesterol-lowering treatment: prospective meta-analysis of data from 90,056 participants in 14 randomised trials of statins. Lancet 2005; 366: 1267-1278.3)Cholesterol Treatment Trialists' (CTT) Collaboration et al. Efficacy and safety of more intensive lowering of LDL cholesterol: a meta-analysis of data from 170,000 participants in 26 randomised trials. Lancet 2010; 376: 1670-1681.4)Cholesterol Treatment Trialists' (CTT) Collaborators et al. The effects of lowering LDL cholesterol with statin therapy in people at low risk of vascular disease: meta-analysis of individual data from 27 randomised trials. Lancet 2012; 380: 581-590.

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インクレチン製剤で膵がんリスクは増大するか/BMJ

 糖尿病治療薬であるインクレチン製剤による膵がんの発症リスクは、スルホニル尿素(SU)薬と変わらないことが、カナダ・マギル大学のLaurent Azoulay氏らが行ったCNODES試験で確認された。研究の成果は、BMJ誌オンライン版2016年2月17日号に掲載された。インクレチン製剤は低血糖のリスクが低く、体重への好ましい作用があるが、膵がんとの関連が示唆されている。インクレチン製剤の膵がんリスクについては、これまでに6件の観察研究があるが、結果は相反するものであり、方法論上の欠陥の指摘もあるという。97万例以上を追跡し、コホート内症例対照研究で関連を評価 CNODES試験は、2型糖尿病患者の治療におけるインクレチン製剤とその膵がんリスクの関連を検証する国際的な多施設共同コホート研究(カナダ保健省健康研究所の助成による)。 カナダ、米国、英国の6施設が参加し、2007年1月1日~13年6月30日の間に抗糖尿病薬による治療を開始した97万2,384例が解析の対象となった。 各参加施設においてコホート内症例対照研究を行った。膵がん発症例に対し、性別、年齢、登録日、糖尿病治療期間、フォローアップ期間をマッチさせた対照を最大20例まで設定した。 SU薬と比較したインクレチン製剤の膵がん発症のハザード比(OR)および95%信頼区間(CI)を推算した。また、薬剤のクラス別(DPP-4阻害薬、GLP-1受容体作動薬)および使用期間別(累積使用期間、治療開始後期間)の膵がんリスクの評価を行った。 DPP-4阻害薬はリナグリプチン、シタグリプチン、ビルダグリプチン、サキサグリプチンが、GLP-1受容体作動薬にはエキセナチド、リラグルチドが含まれた。使用期間が長くなると、リスクが低下する傾向に 全体(97万2,384例)の平均年齢は56.9歳、男性が50.9%含まれた。各施設のフォローアップ期間中央値は1.3~2.8年であり、全体のフォローアップ期間は202万4,441人年だった。 この間に、1,221例が新規に膵がんを発症した(粗発症率:0.60/1,000人年)。背景因子をマッチさせた対照は2万2,298例であった。 対照群に比べ、膵がん群は肥満が少なかったが、糖尿病のコントロール不良やアルコール関連疾患を有する患者が多く、喫煙歴や急性/慢性膵炎歴を有する症例も多かった。 SU薬の使用例はインクレチン製剤使用例よりも年齢が若く、治療期間が長く、肥満の頻度が高く、HbA1c値が高かった。また、インクレチン製剤使用例は、細小血管合併症の診断例が少なかった。膵炎の既往例は両薬剤で同等だった。 SU薬と比較したインクレチン製剤の膵がん発症の補正HRは1.02(95%CI:0.84~1.23)であり、有意な差を認めなかった。また、SU薬に比べて、DPP-4阻害薬(補正HR:1.02、95%CI:0.84~1.24)およびGLP-1受容体作動薬(1.13、0.38~3.38)の膵がん発症リスクは、いずれも同等であった。 累積使用期間が1年未満の症例では、インクレチン製剤で膵がんリスクが増大したが有意ではなかった(補正HR:1.53、95%CI:0.93~2.51)。これに対し、有意差はないものの、投与期間が1~1.9年の症例ではリスクが低下し(1.07、0.82~1.39)、2年以上の症例ではむしろインクレチン製剤のほうがリスクは低くなった(0.62、0.36~1.07)。 治療開始後期間についても、インクレチン製剤の膵がんリスクに有意な影響はなかった(1~1.9年=HR:1.06、95%CI:0.86~1.31、2年以上:0.93、0.60~1.45)。 個々のインクレチン製剤についても、同様の知見が得られた。 著者は、「インクレチン製剤に起因するがんが潜在している可能性があるため監視を継続する必要があるが、これらの知見によりインクレチン製剤の安全性が再確認された」としている。

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コーヒーと膀胱がんリスク~わが国のコホート研究

 コーヒー摂取と膀胱がんリスクの関連について、最近の疫学的研究の結果は一致していない。東北大学の杉山 賢明氏らは、宮城県で実施された2つのコホート研究(宮城県コホート研究、大崎コホート研究)のプール解析により、コーヒー摂取と膀胱がん罹患率との関連を調べた。その結果、コーヒー摂取と膀胱がんリスクの間に有意な逆相関が示された。European journal of cancer prevention誌オンライン版2016年2月12日号に掲載。 著者らは、宮城県コホート研究では1990年、大崎コホート研究では1994年に、コーヒー摂取頻度と他の生活習慣因子についての自記式質問票調査を実施した。 主な結果は以下のとおり。・宮城県コホート研究は17.6年、大崎コホート研究は13.3年の間に、両コホートで7万3,346人を追跡し、膀胱がんを274例同定した。・コーヒーを時々飲む人、1日1~2杯飲む人、1日3杯以上飲む人において、まったく飲まない人に対する膀胱がん罹患率の多変量調整ハザード比(95%信頼区間)は、それぞれ1.22(0.90~1.66)、0.88(0.61~1.26)、0.56(0.32~0.99)であった(傾向のp=0.04)。・この逆相関は、喫煙状況による層別化後も認められた。

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薬物使用と精神疾患発症との関連

 いくつかの研究において、思春期のマリファナ使用が、統合失調症の早期発症を予測することを示唆されており、これは重要な予後指標となる。しかし、多くの調査において、薬物使用と疾患発症の明確な時間関係を正確に立証できていなかった。米国・エリモー大学のMary E Kelley氏らは、この関連を明らかにするため、検討を行った。Schizophrenia research誌オンライン版2016年1月16日号の報告。 6つの精神科ユニットより、初回エピソード精神疾患患者247例を登録し、そのうち210例の患者から、生涯のマリファナ、アルコール、タバコの使用および前駆症状と発症年齢に関する情報を収集した。発症前使用のさまざまな因子が精神疾患発症に及ぼす影響について、ハザード比(HR)を定量化するため、Cox回帰(生存)分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・発症前5年間のマリファナ使用の増加(たとえば、非使用~毎日使用)は、発症リスク上昇の高い予測因子であった(HR 3.6、p<0.0005)。・時間特性測定の分析によると、アルコール、タバコの同時使用で調整後、毎日のマリファナ使用は発症率を約2倍にした(HR 2.2、p<0.0005)。・これまでの研究を踏まえ、マリファナの累積使用は、性別や家族歴とは関係なく、精神疾患発症率の増加と関連していることが示された。これはおそらく、マリファナ開始時の年齢が本コホートにおける発症率と関連しているためだと思われる。関連医療ニュース アルコール依存症治療に期待される抗てんかん薬 統合失調症のカフェイン依存、喫煙との関連に注意 青年期からの適切な対策で精神疾患の発症予防は可能か

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標準対強化禁煙薬物治療の初ガチンコ。非盲検比較試験結果によると禁煙率は同等!(解説:島田 俊夫 氏)-482

禁煙薬物標準治療と強化治療の禁煙率は同等 深刻な喫煙による健康被害のために、薬物治療を徹底的に比較評価することは禁煙率改善上重要である。2016年1月26日発行のJAMA誌に掲載された米国・ウイスコンシン大学公衆衛生学部門のTimothy B. Baker氏らは、禁煙治療に関心を持つ成人に対して、ニコチンパッチ、バレニクリン、併用ニコチン代替治療(C-NRT:ニコチンパッチ+ニコチントローチ)を使って12週間薬物治療後、26週、52週後の禁煙率を生化学的検査により裏付けた結果から評価し、3群間に有意差は認めなかったと報告した。禁煙薬物治療初ガチンコの非盲検無作為化比較試験 ニコチンパッチ単独を除く、2種類の禁煙強化薬物治療、C-NRTとバレニクリンによる禁煙強化療法が、標準治療より優れているようにみられてきた。バレニクリン治療とC-NRTは費用面、処方の必要性、およびスクリーニングと継続モニタリングの強さの点で異なっている。そこで、米国ウイスコンシン州マジソンとミルウォーキーの喫煙者1,086例を対象に非盲検無作為化臨床試験を実施した。喫煙者は12週間禁煙薬物治療を受けるため、3群中のいずれかの群に非盲検でランダムに割り付けられた。(1)ニコチンパッチ単独群(n=241)、(2)バレニクリン単独群(n=424)、(3)C-NRT群(n=421)。 この期間に6回のカウンセリングが実施され、主要評価項目は呼気一酸化炭素濃度測定により裏付けられた自己申告7日間禁煙率、副次評価項目は自己申告による初回禁煙、26週後の禁煙維持率、4、12、52週時点での7日間禁煙率とした。 26週での禁煙率はニコチンパッチ群23%、バレニクリン群24%、C-NRT群27%、また52週での禁煙率はニコチンパッチ群21%、バレニクリン群19%、 C-NRT群20%で、いずれの群間においても有意差は認めなかった。研究対象となった薬物治療は、すべて忍容性の高い治療薬であったが、バレニクリン治療はニコチンパッチ治療に比べて、鮮明な夢、不眠、嘔気、便秘、眠気、および消化不良といった有害事象をより多く引き起こした。本研究からのメッセージ 本研究は、バレニクリン治療とC-NRT薬物治療法を最初に直接比較した研究であり、研究の持つ意義は大きい。著者らは薬物投与終了後26週、52週での禁煙評価項目のいずれにおいても、これら3群間薬物治療に有意差を認めず、これまでの禁煙強化療法の優位性に関して疑問を投じた。本研究は、禁煙強化療法の優位性をうのみにせず、また否定することなく真実を明らかにすることの必要性について言及している。

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食品からのフラボノイド摂取は体重管理に有用か/BMJ

 フラボノイド(とくにフラボノール、フラバン-3-オール、アントシアニン、フラボノイドポリマー)を豊富に含む、リンゴ、西洋なし、ベリー類、ピーマンなどの果物や野菜を多く食べることは、体重管理に有用であることを、米国・ハーバード大学公衆衛生大学院のMonica L Bertoia氏らが、3つの大規模前向きコホート研究、合わせて約12万4,000人を最長24年追跡したデータを解析し、明らかにした。フラボノイドは天然に存在する生理活性化合物で、果物や野菜に含まれている。これまで、果物や野菜類の摂取量が多いと体重が増加しにくいことや、緑茶に含まれるフラボノイドが脂肪吸収の減少とエネルギー消費の増加などに関与していることが報告されていた。しかし、体重の減少に関する研究の多くは、緑茶で発見されたフラバン-3-オールに関するもので、試験参加人数も限られていた。著者は、「今回の研究成果は、肥満の予防や肥満の悪影響リスクを低減する食事摂取基準の見直しに役立つ可能性がある」とまとめている。BMJ誌オンライン版、2016年1月28日号掲載の報告。米国の医療従事者12万4,086人を24年間追跡したデータを解析 研究グループは、医療従事者追跡調査(HPFS、1986年開始)、看護師健康調査(NHS、1976年開始)およびNHS II(1989年開始)の参加者のうち、ベースラインで慢性疾患(肥満、糖尿病、がん、心血管疾患など)の既往歴がなく65歳未満など基準を満たした計12万4,086人(HPFS:男性2万525人、NHS:女性3万9,423人、NHS II:女性6万4,138人)を対象として、1986年から2011年まで4年間ごとの体重変化量と、同期間における7種類のフラボノイド(フラバノン、アントシアニン、フラバン-3-オール、プロアントシアニジン、フラボノイドポリマー、フラボノール、フラボン)の摂取量変化との関連を、多変量一般化線形回帰モデルにて解析した。 体重の変化量は、2年ごとに行われた健康状態などに関するアンケート調査に基づき算出。また、フラボノイド摂取量の変化(1標準偏差/日)は4年ごとに行われた半定量的食物摂取頻度調査を基に、食品のフラボノイド含有量とプロアントシアニジンに関する米国農務省のデータベースを用いて算出した。フラボノイド摂取量が多いと体重は増えない 食事、喫煙状況、身体活動など生活習慣に関連する因子を補正後、フラボンとフラバノンを除く5種類のフラボノイドについて、摂取量の増加が、わずかだが体重の減少と関連していた。とくにアントシアニン、フラボノイドポリマー、フラボノールで関連が強く、アントシアニンの場合、摂取量増加が10mg/日で体重変化量は-0.23(95%信頼区間:-0.30~-0.15)ポンド(1ポンド=約0.45kg)、同様にフラボノイドポリマーは138mg/日増で-0.18(-0.28~-0.08)ポンド、フラボノールは7mg/日増で-0.16(-0.26~-0.06)ポンドであった。食物繊維を追加補正後は、アントシアニン、プロアントシアニジンおよびフラボノイドポリマーのみ有意な関連が認められた。 著者は「体重の減少はわずか(<0.5kg)であったが、健康状態の改善に役立つ可能性がある」とし、「大部分の米国人は、毎日果物は1カップ未満、野菜は2カップ未満しか摂取していないが、健康ベネフィットを享受するには、果物は2カップ、野菜は2.5カップに増やすとよいだろう」と指摘している。

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