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ドパミンD2/3受容体拮抗薬、統合失調症患者の脳白質を改善

 精神病症状は、統合失調症の中核症状だが、デンマーク・コペンハーゲン大学病院のBjorn H. Ebdrup氏らは、陽性症状は前頭皮質に投影している白質路の不規則性に起因するという最近の仮説を検証する目的で、拡散テンソル画像を用いた解析を行った。その結果、未治療の統合失調症患者では、白質の微細な障害が認められることを明らかにした。とくに陽性症状は前頭の神経線維束の整合性と関連しており、選択的ドパミンD2/3受容体拮抗薬が白質を修復する可能性が示唆されたという。結果を踏まえて、著者らは「ドパミンD2/3受容体拮抗薬の再ミエリン化作用をさらに検討する必要がある」とまとめている。Journal of Psychiatry Neuroscience誌オンライン版2015年11月24日号の掲載報告。 検討は2008年12月~11年7月に、未治療の初回エピソード統合失調症患者(患者群)38例と、年齢、性別などをマッチさせた健常者(対照群)38例を対象に行われた。被験者はベースラインで、3-T MRI拡散テンソル画像(DTI)の撮像と臨床評価を受けた。研究グループは、全脳的DTIデータを単位画素(ボクセル)ごとに解析するTBSS(tract-based spatial statistics)法と、解剖的関心領域について解析するROI(region of interest)法を用いて、異方性比率(fractional anisotropy:FA)値の群間差を評価した。その後、患者群はアミスルピドによる抗精神病薬単独療法を行い、投与6週後に再度検査を行った。 主な結果は以下のとおり。・試験を完了し解析対象となったのは、各群28例であった。・ベースラインでのTBSS解析において、患者群では右前視床放線、右帯状束、右下縦束および右皮質脊髄路(CT)のFA値が低下しており、右前視床放線のFA値が陽性症状と相関していた(z=2.64、p=0.008)。・ROI解析では、前頭の神経線維束、とくに右弓状束(z=2.83、p=0.005)および右上縦束(z=-3.31、p=0.001)のFA値と陽性症状の有意な関連が認められた。・投与6週間後において、陽性症状と前頭の神経線維束とのすべての相関は消失しており、前視床放線のFA値は対照群と比較して患者群で増加した(z=-4.92、p<0.001)。・アミスルピリドの投与量が、右皮質脊髄路におけるFA値の変化と正の相関を示した(t=2.52、p=0.019)。・なお、喫煙および物質乱用の既往歴は潜在的な交絡因子であった。また、白質に対するアミスルピリドの長期的な作用は評価されなかった。

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既治療PD-L1陽性NSCLCへのpembrolizumabの有効性を確認/Lancet

 既治療の進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者の治療において、pembrolizumabは標準治療に比べ全生存期間(OS)を延長し、良好なベネフィット・リスク比を有することが、米国・イェール大学医学大学院のRoy S Herbst氏らが行ったKEYNOTE-010試験で示された。免疫療法はNSCLCの新たな治療パラダイムであり、活性化B細胞やT細胞表面のPD-1受容体を標的とする免疫チェックポイント阻害薬が有望視されている。pembrolizumabは、PD-1に対するヒト型IgG4モノクローナル抗体であり、米国では第Ib相試験(KEYNOTE-001試験)のデータに基づき、プラチナ製剤ベースレジメンによる治療中または治療後に病勢が進行した転移性NSCLCの治療薬として迅速承認を取得している。Lancet誌オンライン版2015年12月18日号掲載の報告。2種の用量をドセタキセルと比較する第II/III相試験 KEYNOTE-010試験は、既治療のPD-L1(PD-1のリガンド)陽性NSCLCに対するpembrolizumabの有用性を評価する非盲検無作為化第II/III相試験(Merck & Co助成)。 対象は、年齢18歳以上、プラチナ製剤ベースの2剤併用療法やチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR変異陽性例、ALK転座陽性例)による治療後に病勢が進行し、PD-L1陽性(腫瘍細胞の1%以上にPD-L1が発現)と判定された進行NSCLCとした。 被験者は、pembrolizumab 2mg/kg、同10mg/kg、ドセタキセル75mg/m2をそれぞれ3週ごとに静脈内投与する群に無作為に割り付けられた。治療期間は24ヵ月であった。 主要評価項目は、全例および腫瘍細胞の50%以上にPD-L1の発現がみられる患者におけるOSおよび無増悪生存期間(PFS)とした。有意性の閾値は、OSがp<0.00825(片側検定)、PFSはp<0.001に設定した。 2013年8月28日~2015年2月27日に、日本を含む24ヵ国202施設に1,034例が登録され、pembrolizumab 2mg/kg群に345例、同10mg/kg群に346例、ドセタキセル群には343例が割り付けられた。それぞれ344例、346例、343例がITT解析の対象となり、そのうち139例、151例、152例がPD-L1≧50%であった。PD-L1≧50%ではOS、PFSとも有意に延長、高用量群でも有害事象が少ない 年齢中央値は、pembrolizumab 2mg/kg群と同10mg/kg群が63.0歳、ドセタキセル群は62.0歳であり、男性はそれぞれ62%、62%、61%であった。東アジア人が、19%、18%、18%含まれ、元喫煙者/喫煙者は81%、82%、78%、治療ライン数が3以上の患者は8%、10%、8%だった。 2015年9月30日までに521例が死亡した。OS中央値は、2mg/kg群が10.4ヵ月、10mg/kg群が12.7ヵ月、ドセタキセル群は8.5ヵ月であり、ドセタキセル群と比較して2mg/kg群が29%(ハザード比[HR]:0.71、95%信頼区間[CI]:0.58~0.88、p=0.0008)、10mg/kgは39%(0.61、0.49~0.75、p<0.0001)有意に延長した。 OSのサブグループ解析では、すべてのサブグループでpembrolizumab群(2群を統合)が良好であり、その多くで有意差が認められた。65歳以上、ECOG PS 0、扁平上皮がん、EGFR変異型では有意差がないのに対し、それぞれ65歳未満、ECOG PS 1、腺がん、EGFR野生型では有意差が認められた。 PFS中央値は、それぞれ3.9ヵ月、4.0ヵ月、4.0ヵ月であり、ドセタキセル群との比較で有意な差は認めなかった(2mg/kg群:p=0.07、10mg/kg群:p=0.004)。サブグループ解析では、女性、ECOG PS 0、EGFR変異型では有意差がなかったのに対し、それぞれ男性、ECOG PS 1、EGFR野生型ではpembrolizumab群(2群を統合)で有意に良好であったが、組織型による効果の差はなかった。 PD-L1≧50%の患者では、OS中央値が2mg/kg群で46%(14.9 vs.8.2ヵ月、HR:0.54、95%CI:0.38~0.77、p=0.0002)、10mg/kg群では50%(17.3 vs.8.2ヵ月、0.50、0.36~0.70、p<0.0001)有意に改善した。この集団では、PFS中央値も2mg/kg群で41%(5.0 vs.4.1ヵ月、0.59、0.44~0.78、p=0.0001)、10mg/kg群でも41%(5.2 vs.4.1ヵ月、0.59、0.45~0.78、p<0.0001)有意に改善した。 なお、PD-L1発現が1~49%の患者では、OSがpembrolizumab群(2群を統合)で有意に良好であった(HR:0.76、95%CI:0.60~0.96)が、PFSには差がなかった(1.04、0.85~1.27)。 有害事象の発現率は2mg/kg群が63%(215/339例)、10mg/kg群が66%(226/343例)、ドセタキセル群は81%(251/309例)であった。pembrolizumab群で頻度の高いものとして、食欲不振、疲労、悪心、皮疹が認められた(9~14%)。 pembrolizumabでとくに注意すべき有害事象では、甲状腺機能低下症、肺臓炎、甲状腺機能亢進症の頻度が高かった(4~8%)。 Grade3~5の治療関連有害事象の発現率は、2mg/kg群が13%(43/339例)、10mg/kg群が16%(55/343例)、ドセタキセル群は35%(109/309例)であり、pembrolizumab群で頻度が低かった。 著者は、「pembrolizumabは、プラチナ製剤ベースの治療後に病勢が進行したPD-L1陽性NSCLCの新たな治療選択肢であり、EGFR変異やALK転座のみられる患者にも適切な治療法である。PD-L1は、本薬によるベネフィットを得る可能性が高い患者を同定するバイオマーカーとして妥当と考えられる」としている。

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タバコでクモ膜下出血?!

え?タバコでクモ膜下出血?! 喫煙はクモ膜下出血の原因になりやすい!≪喫煙と疾病リスク≫倍3 非喫煙者と比べて喫煙者のリスクは…疾患 2リスク1脳卒中全体1.5倍脳梗塞1.9倍クモ膜下出血2.9倍2.9倍1.9倍1.5倍-非喫煙者脳卒中脳梗塞クモ膜下出血Shinton R, et al.BMJ.1989;298(6676):789-794 に基づいて作成喫煙により「脳動脈瘤」ができやすくなることが知られています社会医療法人敬愛会 ちばなクリニック 清水 隆裕氏Copyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.

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非浸潤性乳管がんでもアロマターゼ阻害薬は術後の選択肢に/Lancet

 非浸潤性乳管がん(DCIS)の閉経後女性における術後の再発予防では、アナストロゾールとタモキシフェンの効果に明確な差はなく、アナストロゾールは治療選択肢となりうることが、オーストラリア・ニューカッスル大学のJohn F Forbes氏らが行ったIBIS-II DCIS試験で示された。マンモグラフィ検診導入後の数十年間で、DCISの診断率は実質的に上昇しており、検診で検出される乳がんの約5分の1を占めるという。浸潤性乳がんの術後の再発予防では、第3世代アロマターゼ阻害薬はタモキシフェンよりも有効性が高いとされるが、DCISにおけるアナストロゾールの優越性は確証されていなかった。Lancet誌オンライン版2015年12月11日号掲載の報告。2剤の再発予防効果をプラセボ対照試験で比較 IBIS-II DCIS試験は、閉経後DCIS女性に対する術後の再発予防におけるアナストロゾールとタモキシフェンの有用性を評価する二重盲検プラセボ対照無作為化試験(英国がん研究所などの助成による)。 対象は、年齢40~70歳、エストロゲンもしくはプロゲステロン受容体が陽性で、割り付け前の6ヵ月以内にDCISと診断され、乳房温存術を施行された閉経後女性であった。1mm以内の微小浸潤がんは許容された。 被験者は、アナストロゾール(1mg/日)+プラセボ、またはタモキシフェン(20mg/日)+プラセボを5年間経口投与する群に無作為に割り付けられた。放射線照射は各施設の基準に従って施行することとした。 主要評価項目は、DCISの再発、対側乳房の新規病変などを含むすべての再発とした。治療割り付け情報は統計解析者だけに知らされ、データを解析に含めることへの同意を取り消した患者を除く、全割り付け対象患者を解析の対象とする修正ITT解析が行われた。 2003年3月3日~12年2月8日に、14ヵ国236施設に2,980例が登録され、アナストロゾール群に1,449例、タモキシフェン群には1,489例が割り付けられた。NSABP B-35試験と一致する結果 年齢はアナストロゾール群が60.4歳、タモキシフェン群は60.3歳、BMIは両群とも26.7、初潮年齢は両群とも13.0歳、第1子出産年齢は両群とも24.0歳であった(いずれも中央値)。喫煙者はそれぞれ34%、33%で、ホルモン補充療法は47%、44%、子宮摘出術は21%、22%が受けており、放射線照射は両群とも71%に施行された。腫瘍径は両群とも13mmだった。 フォローアップ期間中央値は7.2年(四分位範囲:5.6~8.9)であり、この間に144例(アナストロゾール群:67例[5%]、タモキシフェン群:77例[5%])が再発した。 年間再発率は、アナストロゾール群が0.64%、タモキシフェン群は0.72%であった(ハザード比[HR]:0.89、95%信頼区間[CI]:0.64~1.23、p=0.49)。アナストロゾール群はタモキシフェン群に対し非劣性であった(95%CIの上限値<1.25)が、優越性は認めなかった(p=0.49)。 Kaplan-Meier法による解析では、5年再発率はアナストロゾール群が2.5%、タモキシフェン群は3.0%、フォローアップ期間終了から10年後の再発率はそれぞれ6.6%、7.3%であった。 カットオフ日までに69例が死亡した(アナストロゾール群:33例、タモキシフェン群:36例)。死亡率に差はなく(HR:0.93、95%CI:0.58~1.50、p=0.78)、特定の死因の差も認めなかった。乳がん死は4例のみで、それぞれ1例、3例であった。 有害事象の発現率は、アナストロゾール群が91%(1,323例)、タモキシフェン群は93%(1,379例)であり、両群で類似していたが、副作用プロファイルには以下のような違いがみられた。 アナストロゾール群では、骨折(9 vs.7%、p=0.027)、筋骨格系イベント(64 vs.54%、p<0.0001)、脂質異常症(3 vs.1%、p<0.0001)、脳卒中(脳血管障害:1 vs.<1%、p=0.025、一過性脳虚血発作:1 vs.<1%、p=0.05)の頻度が高かった。 タモキシフェン群では、筋痙攣(2 vs.7%、p<0.0001)、婦人科がん(子宮内膜がん:1 vs.11例、p=0.0044、子宮がん:0 vs.5例、p=0.027)、婦人科症状/血管運動症状(ホットフラッシュ、膣乾燥など、61 vs.69%、p<0.0001)、深部静脈血栓(肺塞栓症は除外、<1 vs.1%、p=0.0011)が多くみられた。 著者は、「これらの結果は、類似の試験であるNSABP B-35試験と一致する。アナストロゾールはホルモン受容体陽性閉経後DCIS女性の治療選択肢であり、タモキシフェンが禁忌の場合は適切な治療法と考えられる」としている。

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喫煙で死亡リスクが上がる疾患

喫煙する女性は、さまざまな疾患の死亡リスクが高くなります<喫煙経験のない女性の死亡確率を1としたときの値>110203035.3慢性肺疾患21.4肺がん大動脈瘤腸間膜虚血口腔・咽頭がんなど冠動脈性心疾患アルコール性肝硬変膀胱がん食道がん肺炎脳血管疾患406.325.584.834.473.353.293.103.093.06※3以上の疾患を抜粋Pirie K, et al. Lancet. 2013;381:133-141.Copyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.

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ADHD発症にトリプトファンが関連か

 ノルウェー・ベルゲン大学のTore Ivar Malmei Aarsland氏らは、成人の注意欠如・多動症(ADHD)とトリプトファンおよびその代謝物の血清中濃度との関連を検討した。その結果、トリプトファン、キヌレン酸、キサンツレン酸、3-ヒドロキシアントラニル酸などの血清中濃度低値、およびコチニンの血清中濃度高値がADHDと有意に関連していたことを報告した。必須アミノ酸のトリプトファンは、主にキヌレニン経路によって異化される。一方で、慢性炎症状態およびうつ病や統合失調症などいくつかの神経精神障害において、循環血中キヌレニン濃度に変化が認められるとの報告があり、また候補遺伝子研究により、キヌレニン異化に関連する遺伝子とADHDとの関連が示唆されていた。さらに、ADHD患者はうつ病や不安をしばしば併存していることが報告されており、研究グループは、ノルウェーの成人ADHD患者および成人対照における血清キヌレニン濃度を検討した。Behavioral and Brain Functions誌2015年11月号の掲載報告。 成人ADHD患者133例と成人対照131例(18~40歳)において、トリプトファンおよび7種類のトリプトファン代謝物であるキヌレニン、キヌレン酸、アントラニル酸、3-ヒドロキシキヌレニン、キサンツレン酸、3-ヒドロキシアントラニル酸、キノリン酸の血清中濃度を比較した。リボフラビン(ビタミンB2)、総ビタミンB6およびニコチン代謝物コチニンについても測定した。質量分析法により血清サンプルを分析。患者および対照は、併存疾患と過去(幼少期)および現在のADHD症状について、Wender Utah Rating Scale(WURS)およびAdult ADHD Self-report Scale(ASRS)を用いて報告した。各代謝物の血清濃度別に、ADHD診断に対するオッズ比をロジスティック回帰により算出。さらに、スピアマン相関分析を用いて、トリプトファンおよびキヌレニンの血清中濃度とADHD症状スコアとの関連を検討した。 主な結果は以下のとおり。・トリプトファン(オッズ比:0.61、95%信頼区間:0.45~0.83)、キヌレン酸(0.73、0.53~0.99)、キサンツレン酸(0.65、0.48~0.89)、3-ヒドロキシアントラニル酸(0.63、0.46~0.85)の血清中低濃度、およびコチニン(7.17、4.37~12.58)の血清中高濃度は、いずれもADHDと有意に関連していた。・トリプトファン濃度で補正後、3-ヒドロキシアントラニル酸とコチニンのみ有意な関連がみられた。・喫煙と年齢で補正すると、トリプトファンおよびキヌレニンの低濃度は、総ASRSスコア高値および総WURSスコア高値と関連していた。・以上より、成人ADHD患者と成人対照とでは、トリプトファンおよびキヌレニンの血清中濃度に違いがある可能性が示唆された。・本知見においてADHDにおける慢性免疫活性は示されていないが、ADHDの発症機序および血清中濃度の相違による臨床的意義について、さらに探索を進めるべきと思われた。関連医療ニュース 9割の成人ADHD、小児期の病歴とは無関係 成人ADHDをどう見極める 2つのADHD治療薬、安全性の違いは

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幸せだと長生きするとは本当か?/Lancet

 幸福であることで寿命が伸びたり、ストレスによる苦痛が死亡を早めることはないとの研究結果が、オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学のBette Liu氏らにより報告された。幸福や、精神的負担感(ストレス)が少ない、落ち着いて、くつろぎ感(リラックス)のある生活は、死亡率を低下させることが示唆されている。一方、不幸は、喫煙、アルコールの過剰摂取、肥満、運動不足など、疾患の危険のある生活様式をもたらす可能性があるが、むしろ不健康が不幸の原因となる逆因果関係の重要性が指摘されており、これらの交絡因子で補正すると、不幸は死亡率の上昇とは関連しないとする研究もあり、統一的な見解は得られていないという。Lancet誌オンライン版2015年12月9日号掲載の報告。約72万人の女性で幸福が死亡に及ぼす影響を評価 研究グループは、Million Women Studyのデータを用いて、幸福やそれに関連する健康的な生活の主観的指標(ストレスが少ない、落ち着き、リラックス)が、逆因果関係や交絡因子を適切に考慮しても、直接的に死亡を低減するかとの疑問に答えるための検討を行った。 Million Women Study(http://www.millionwomenstudy.org/introduction/)は、女性のさまざまな健康問題の解決を目的とする英国の全国調査である。1996年5月1日~2001年12月31日に、イングランドおよびスコットランドの50~69歳の女性約130万人が登録され、電子記録により原因別の死亡の追跡調査が行われた。 被験者には、登録から3年後にベースラインの質問票が送付され、社会人口学的因子や生活様式のほか、健康状態、幸福、ストレス、落ち着き、リラックスに関する質問に、自己評価で回答するよう求められた。 ベースラインの質問票への回答時に心疾患、脳卒中、COPD、がんが認められなかった女性において、2012年1月1日までの死亡(全死因、虚血性心疾患、がん)について解析を行った。 Cox回帰を用いてベースラインの自己評価による健康状態と生活様式の因子で補正したうえで、「不幸」(幸福を感じる頻度が「ときどき」「ほとんど/まったくない」)と回答した女性の死亡率を、「ほとんどいつも幸福」と答えた女性と比較し、死亡の率比(RR)を算出した。 71万9,671例(年齢中央値:59歳、四分位範囲:55~63)が解析の対象となり、平均9.6年(SD 1.9)の追跡期間中に4%(3万1,531人)が死亡した。不健康は不幸をもたらすが、不幸で死亡率は上昇しない 「ほとんどいつも幸福」と答えた女性が39%(28万2,619人)、「たいていは幸福」が44%(31万5,874人)であり、「不幸」との回答は17%(12万1,178人)だった。 ベースライン時に自己評価による健康状態が「不良」または「普通」と答えた女性では、「不幸」と強い関連が認められた(補正RR:0.298、99%信頼区間[CI]:0.293~0.303)。 年齢、自己評価による健康状態、高血圧・糖尿病・喘息・関節炎・うつ状態・不安の治療、社会人口学的因子や生活様式因子(喫煙、窮乏、BMIなど)で補正すると、「不幸」は全死因死亡(「ほとんどいつも幸福」に対する「不幸」の補正RR:0.98、95%CI:0.94~1.01)、虚血性心疾患死(補正RR:0.97、95%CI:0.87~1.10)、がん死(補正RR:0.98、95%CI:0.93~1.02)とは関連しなかった。 ベースライン時に健康状態が「良好」「きわめて良好」と答えた女性では、「不幸」は虚血性心疾患死およびがん死とは関連がなかった。 また、健康状態が「良好」「きわめて良好」と答えた女性では、「ストレスがある」「リラックスできない」「落ち着かない」のいずれの場合でも、全死因死亡率が上昇することはなかった。 著者は、「中年女性では、不健康が不幸の原因となる可能性はある。これを考慮したうえで交絡因子で補正すると、幸福やストレスは、死亡に対し直接的に重大な影響は及ぼさない」と結論している。

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道路交通騒音でうつ病リスク増大

 交通騒音は、とくに都市部にて多くの人々に影響を与える。騒音はストレスやいらいらの原因となるが、騒音とうつ病との関連はあまり知られていない。ドイツ・エッセン大学病院のEster Orban氏らは、住宅道路の交通騒音と抑うつ症状の関連を調べるため、ドイツ住民ベース研究から5年間の追跡調査データを用い、検討を行った。その結果、住宅道路の交通騒音は抑うつリスクを増大させることが示唆された。Environmental health perspectives誌オンライン版2015年11月25日号の報告。 著者らは、Heinz Nixdorf Recall 研究の参加者で、ベースライン時(2000~03年)に抑うつ症状のない3,300人(45~75歳)のデータを分析した。抑うつ症状は、CES-D質問票の15項目(合計スコア17点以上)、抗うつ薬の投与に基づいて定義した。道路交通騒音は、European Parliament/Council Directive 2002/49/ECをモデルにした。騒音の高曝露は、1年間の24時間平均騒音レベルが55dB以上(A)と定義した。ロバスト推定ポアソン回帰は、相対リスク(RR)を推定するために使用した。潜在的な交絡因子調整のため、1)年齢、性別、社会的地位(SES)、自宅周辺のSESレベル、交通近接性、さらに2)BMIと喫煙、3)潜在的な交絡/中間因子である併存疾患と不眠症、で調整を行った。 主な結果は以下のとおり。・全体参加者の35.7%が、高いレベルの住宅交通騒音にさらされていた。・フォローアップ時(ベースラインから平均5.1年)、302人の参加者が高い抑うつ症状を有していた。曝露騒音レベル55未満に対する55超の調整後RRは1.29(95%CI:1.03~1.62、モデル1)であった。・潜在的な交絡/中間因子による調整は、結果を実質的に変化させなかった。・関連性は、ベースライン時に不眠を訴えた人で強く[RR 1.62(1.10~2.59) vs.1.21(0.94~1.57)]、教育年数13年以下の人においてのみ現れた[RR 1.43(1.10~1.85)vs.0.92(0.56~1.53):13年超]。関連医療ニュース 性別で異なる、睡眠障害とうつ病発症の関連:東京医大 魚をよく食べるほど、うつ病予防に:日医大 パートナーがうつ病だと伝染するのか  担当者へのご意見箱はこちら

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最も多く「いいね!」を集めたのはこれ!【2015年 Facebookいいね!年間ランキング】

2015年にCareNet.comに掲載した医療ニュースの中でFacebookの「いいね!」が多かった記事、トップ30を発表します。最新の医学情報はもちろん、飲食や睡眠にまつわるエビデンス、生活習慣とがんリスクなど、私たち自身の健康に関わるテーマの記事が多くランクインしました。1位音楽療法が不眠症に有用(2015/9/8)2位本当だった!? 血液型による性格の違い(2015/6/2)3位緑茶やコーヒーで胆道がんリスクは減少するか~日本のコホート研究(2015/11/12)4位かかりつけ機能を基に薬局を地域の健康窓口へ~「健康情報拠点薬局」第2回検討会(2015/6/24)5位膝OAに陸上運動療法は有効(2015/2/3)6位コーヒー摂取量と死亡リスク~日本人9万人の前向き研究(2015/5/11)7位なんと!血糖降下薬RCT論文の1/3は製薬会社社員とお抱え医師が作成(解説:桑島 巖氏)(2015/7/14)8位心房細動へのジゴキシン、死亡増大/Lancet(2015/3/30)9位脳梗塞の発症しやすい曜日(2015/4/3)10位片頭痛の頻度と強度、血清脂質と有意に相関(2015/10/13)11位周術期の音楽が術後の疼痛・不安を軽減/Lancet(2015/8/24)12位抗認知症薬の脳萎縮予防効果を確認:藤田保健衛生大(2015/8/13)13位新しいがん免疫療法、これまでと何が違う?~肺がん医療向上委員会(2015/8/4)14位少量飲酒でも発がんリスクは上昇する?/BMJ(2015/9/1)15位夫の喫煙で乳がんリスクが増大~高山スタディ(2015/2/9)16位心肺蘇生への市民介入で後遺症のない生存が増大/JAMA(2015/8/7)17位長時間労働は、冠動脈心疾患よりも脳卒中のリスクを高める/Lancet(2015/8/31)18位認知症患者への睡眠薬投与、骨折に注意(2015/7/1)19位腰痛は患者の心身を悪化させ医療費を増やす:日本発エビデンス(2015/3/27)20位肺がん患者が禁煙したときの延命効果は?(2015/7/2)21位社会生活の「生きにくさ」につながる大人のADHD(2015/9/16)22位唐辛子をほぼ毎日食べると死亡リスク低下/BMJ(2015/8/17)23位長時間労働は多量飲酒につながる/BMJ(2015/1/26)24位アルコール摂取とがんリスク、用量依存的に関連(2015/10/14)25位慢性疼痛 患者の性差を考慮した対処を(2015/5/1)26位脱毛症の人はあのリスクが上昇(2015/1/21)27位失明患者の視覚を回復、人工網膜システムが欧米で初承認(2015/8/26)28位統合失調症への集団精神療法、効果はどの程度か(2015/6/24)29位糖質制限食と糖尿病リスク:日本初の前向き研究(2015/2/27)30位魚をよく食べるほど、うつ病予防に:日医大(2015/7/1)

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ACS発症の糖尿病におけるリキシセナチド、心血管転帰への影響は?/NEJM

 2型糖尿病で急性冠症候群(ACS)を発症した患者に対し、GLP-1受容体作動薬リキシセナチド(商品名:リキスミア)を追加投与しても通常治療のみの場合と比べて、主要心血管イベントやその他重篤有害事象の発生率について有意な変化はみられなかった。米国ハーバード・メディカル・スクールのMarc A. Pfeffer氏らによる6,068例を対象とした多施設共同無作為化プラセボ対照試験ELIXAの結果、報告された。リキシセナチドなどGLP-1受容体作動薬は多くの国で2型糖尿病患者への血糖降下薬として承認されているが、これまで大規模な心血管アウトカム試験の報告はなかった。NEJM誌2015年12月3日号掲載の報告。49ヵ国で6,068例を対象に無作為化プラセボ対照試験 試験は2010年7月9日~13年8月2日に、49ヵ国で6,068例の患者を登録して行われた。被験者は、2型糖尿病で、無作為化前180日以内に心筋梗塞または不安定狭心症で入院歴のある患者で、通常治療に追加してリキシセナチドまたはプラセボを投与する群に無作為に割り付け、リキシセナチドのプラセボに対する非劣性(ハザード比の95%信頼区間上限値を1.3と定義)と優越性(同1.0と定義)を評価した。 主要エンドポイントは、心血管死・心筋梗塞・脳卒中・不安定狭心症による入院の複合であった。 両群の被験者特性は類似しており、リキシセナチド群(3,034例)は平均年齢59歳、65歳以上被験者比率33.1%、女性30.4%、糖尿病罹病期間9.2年、HbA1c値7.7%、BMI 30.1、喫煙者11.7%、指標ACS以前の心筋梗塞歴22.1%、無作為化時の病歴は高血圧75.6%、PCI 67.6%、心不全22.5%など。また収縮期血圧129mmHg、LDL-C値78.8mg/dL、確認されたACSイベントはSTEMIが44.5%、非STEMI 38.4%、不安定狭心症16.9%、ACSから無作為化までの期間は71.8日などの特性を有していた。主要心血管イベントの発生、プラセボに対する優越性は認められず 追跡期間は中央値25ヵ月であった。主要エンドポイントの発生は、リキシセナチド群406例(13.4%)、プラセボ群399例(13.2%)で(ハザード比[HR]:1.02、95%信頼区間[CI]:0.89~1.17)、リキシセナチドのプラセボに対する非劣性は確認されたが(p<0.001)、優越性は認められなかった(p=0.81)。また両群間で、追加エンドポイント指標の心不全による入院(リキシセナチド群のHR:0.96、95%CI:0.75~1.23)、全死因死亡(同:0.94、0.78~1.13)についても有意差は示されなかった。 一方で、リキシセナチドはプラセボと比べて、重篤有害事象の発生は高率ではなかった(20.6% vs.22.1%)。また重症低血糖、膵炎、膵腫瘍、アレルギー反応の発生率もプラセボと変わらなかった。

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わかる統計教室 第2回 リスク比(相対危険度)とオッズ比 セクション5

インデックスページへ戻る第2回 リスク比(相対危険度)とオッズ比セクション5 リスク比からの有意差検定セクション1 セクション2 セクション3 セクション4■リスク比やオッズ比の総仕上げ!これまでにリスク比やオッズ比は何を意味するのか、また、後ろ向き臨床研究では、オッズ比しか使えないことなどを学んできました。では、喫煙の有無による不整脈リスクの差が、母集団についてもいえるのかどうか、やはりp値を算出するしかないのでしょうか?各種調査で求められるリスクの差に、「統計学的な有意差があるかどうか、有意差検定をしたい」という場面は、よくあることだと思います。次の表17の分割表を例に、喫煙と非喫煙のリスクに差があるかを、有意差検定で調べてみましょう。まずは復習です。リスクやリスク比を表18のように算出してみましょう。喫煙者の不整脈リスクは75%、非喫煙者の不整脈リスクは42%で、リスク比は75÷42で1.8となります。次に、この表の各セルについて、次の計算をしてみましょう。「縦計×横計÷全数」です。「不整脈がある」の縦計は110、「喫煙」の横計は80、「全数」は200 なので、110×80÷200=44となります。同様に他のセルも計算していくと表19になります。この計算で求められた値は「期待度数」といいます。これに対し、表17 の人数を「実測度数」といいます。しかし、この言葉を覚える必要はありません。大切なことは、一体この計算で何をしたのか、ということです。実測度数は調査結果のことです。期待度数というのは、表17の喫煙者で不整脈がある人は60人との結果でしたが、60人が多いのか少ないのか、有意な差のある数値なのかどうかはわからないので、何か基準が必要となります。表19は、この基準となる表を作ったということです。表17(実測度数)と表19(期待度数)をみて、何かお気付きになりませんか? 2つの表の縦計と横計の値が同じになっていますね。ここで、期待度数から求められたリスクを計算してみましょう。表20では、喫煙、非喫煙のリスクは55%で同じになっています。不思議というか、面白いですね。実は、上記の期待度数の計算によって、実測度数の表の縦計、横計はそのままの値で、喫煙と非喫煙のリスクが同じになるような、4つのセルの値を求めているのです。先ほど、「基準がいる」と説明しましたが、要は、不整脈の割合が喫煙と非喫煙で差がない分割表を作ったわけです。大切なことは、「実測度数が、期待度数に近い値になっていれば有意差がない。離れていれば有意差がある」という考えなのです。■カイ2乗値とは何だろう?次の計算をしてみましょう。まず、実測度数と期待度数の差を2乗し、それを期待度数で割ってください。表21が求められた値です。得られた値を合計すると、5.82+3.88+7.11+4.74=21.5になります。この合計した値をカイ2乗値といいます。では、この値について説明していきましょう。この値がどのようなときに小さくなる、あるいは大きくなるかを調べてみます。調査結果が表22のようになったとしましょう。この表のカイ2乗値を表23と表24で求めてみてください。計算の結果、カイ2乗値はゼロになりました。つまり、喫煙と非喫煙のリスクがどちらも63%で同じです。リスクが同じ場合、カイ2乗値はゼロになります。両者のリスクに違いがあるほど、カイ2乗値は大きくなります。カイ2乗値の計算方法を覚える必要はありませんが、「両者のリスクに違いがあるほどカイ2乗値は大きくなる」ということを忘れないでください。それともう1つ、「カイ2乗値は統計学が決めた『3.84』より大きければ、母集団におけるリスクに差があると判断する」ことも、覚えておいてください。■サンプルサイズが小さいと有意差も出にくい!カイ2乗値はp値に変換することができます。p値はカイ2乗値が大きくなるほど小さくなる関係があります。カイ2乗値が3.84のとき、p値は0.05で、カイ2乗値が3.84より大きくなるにつれ、p値はゼロに近づいていきます。つまり、p値が0.05より小さければ、母集団のリスクに差があるといえるのです。ちなみに表21におけるカイ2乗値は21.5、この値に対するp値は0.0000になります。したがって、母集団における不整脈のリスクは、喫煙と非喫煙で差があるといえるのです。ここで1つ問題です。下の表25は表18の人数を10で割った表です。人数は少なくなりましたが、リスクの値、リスク比は表18と同じです。この表25について有意差検定をしたらどうなると思われますか?表25と表18のリスク比は同じなので、有意差判定の結果も同じだと思ってしまいます。しかし、それは間違いです。表25のカイ2乗値は2.15になります。表18の21.5より小さくなる。カイ2乗値はリスクの差だけでなく、サンプルサイズの影響も受けるのです。読者の皆さんも、ぜひ、表25のカイ2乗値を後で計算してみてください。サンプルサイズが小さいと、有意差が出にくいということが、おわかりになったと思います。ちなみに、表25のp値は0.1412で0.05より大きいので、サンプルサイズ20人からは母集団についてのリスクの差は、わからないということになります。■今回のポイント1)実測度数が期待度数に近い値になっていれば有意差がない。離れていれば有意差がある!2)カイ2乗値は統計学が決めた「3.84」より大きければ、母集団におけるリスクに差があると判断できる!3)サンプルサイズが小さいと有意差も出にくい!インデックスページへ戻る

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PCIは虚血性心疾患患者の長期生存に寄与するか/NEJM

 安定虚血性心疾患患者の初期管理において、至適な薬物療法に経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を併用しても、薬物療法単独に比べ長期的な生存率に差はないことが、米国・ニューヨーク退役軍人省健康管理ネットワークのSteven P Sedlis氏らが行ったCOURAGE試験の拡張調査で確認された。PCIは、ST上昇急性心筋梗塞患者の生存率を向上させ、非ST上昇心筋梗塞患者の長期生存を改善して早期および晩期の心イベントを低減することが示されている。一方、安定虚血性心疾患患者では、PCIは狭心症を軽減し、心筋虚血の領域を減少させるが、生存の改善を示した臨床試験はないという。NEJM誌2015年11月12日号掲載の報告。最長15年の追跡期間の拡張調査で生存率を評価 COURAGE試験では、1999年6月~2004年1月に、安定虚血性心疾患患者2,287例が、至適な薬物療法のみを行う群(薬物療法群)または至適薬物療法+PCIを施行する群(PCI群)に無作為に割り付けられた。 追跡期間中央値4.6年の時点で、全死因死亡と非致死的心筋梗塞の複合エンドポイントの発生率は、PCI群が19.0%、薬物療法群は18.5%であり、両群間に差を認めなかった(ハザード[HR]:1.05、95%信頼区間[CI]:0.87~1.27、p=0.62)(Boden WE, et al. N Engl J Med 2007; 356: 1503-1516)。 研究グループは今回、本試験の拡張調査を行い、最長15年追跡した患者の死亡率を報告した(VA Cooperative Studies Programの助成による)。 米国退役軍人省(VA)の医療施設およびVA以外の米国のいくつかの施設で本試験に参加した患者から、社会保障番号の使用許可を得て、元の試験の終了以降の生存を追跡した。 VAの全国的なCorporate Data Warehouseおよび全米死亡記録(National Death Index)を検索して、生存情報および全死因死亡の日付のデータを収集した。生存率はKaplan–Meier法で算出し、ベースラインの背景因子の群間の有意差はCox比例ハザードモデルを用いて補正した。全体の死亡率:PCI群25%、薬物療法群24% 拡張調査の生存情報は、1,211例(元の患者集団の53%)で得られた(PCI群:613例、薬物療法群:598例)。全体の患者の追跡期間中央値は6.2年(範囲:0~15)であり、生存の追跡の許可が得られた施設の患者の追跡期間中央値は11.9年(範囲:0~15)であった。 全体で2,287例中561例が死亡し、死亡率は25%であった。このうち、元の試験の追跡期間中の死亡が180例、拡張調査の追跡期間中は381例であった。 治療群別の死亡率は、PCI群が25%(284/1,149例)、薬物療法群は24%(277/1,138例)であり、未補正HRは0.98(95%CI:0.83~1.15、p=0.77)、補正HRは1.03(95%CI:0.83~1.21、p=0.76)であった。 拡張調査期間の死亡率はPCI群が41%(253/613例)、薬物療法群は42%(253/598例)であり、未補正HRは0.95(95%CI:0.79~1.13、p=0.53)であった。 拡張調査の有無、年齢(60歳以下、60歳超)、喫煙歴の有無、性別など11項目のサブグループ解析では、両群間に有意な差を認めたものはなかった。 著者は、「最長15年間の拡張追跡調査において、安定虚血性心疾患患者の初期治療戦略として、PCI+薬物療法と薬物療法単独の間に生存率の差を認めなかった」とまとめ、「これは、糖尿病と安定虚血性心疾患の双方を有する2,368例を5.3年間追跡したBARI 2D試験(PCI、CABG)の全死因死亡の結果と一致する」と指摘している。

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CKDリスクを予測する新たなバイオマーカーの可能性/NEJM

 可溶性ウロキナーゼ型プラスミノーゲンアクチベータ受容体(suPAR)の上昇は、ベースライン時の腎機能正常者において、慢性腎臓病(CKD)の発症および推定糸球体濾過量(eGFR)の加速度的な低下と有意に関連することが、米国・エモリー大学医学部のSalim S Hayek氏らの検討で示された。血漿中のsuPARの高値は、多様な病態の患者集団において、不良な臨床転帰や巣状分節性糸球体硬化症、糖尿病性腎症と関連することが知られている。これらの知見はまだ検証中であるが、腎臓病におけるsuPARの広範な役割が示唆されている。NEJM誌2015年11月12日号(オンライン版2015年11月5日号)掲載の報告。血漿suPAR値とCKD発症の関連を前向きコホート試験で評価 研究グループは、「血漿suPAR値はCKDの新規発症と関連する」との仮説を検証するために、心血管疾患患者を対象に大規模な前向きコホート試験を実施した(Abraham J and Phyllis Katz Foundationなどの助成による)。 2003~09年に、アトランタ市の3施設で心臓カテーテルを施行され、エモリー心血管バイオバンクに登録された3,683例(平均年齢63±12歳、男性65%、suPAR中央値3,040pg/mL)の血漿suPAR値を測定した。このうち2,292例(62%)で、登録時とフォローアップ期間中の受診時に腎機能の評価を行った。 suPAR値とベースラインのeGFR、eGFRの経時的変化、CKDの発症との関連につき、人口統計学的変量および臨床的変量で補正後に、線形混合モデルとCox回帰を用いて解析を行った。suPAR値の四分位数(Q1~Q4)別に、eGFRの変化およびCKDの発症の比較を行った。CKDは、eGFR<60mL/分/1.73m2と定義した。 ベースラインのsuPAR値が≧3,040pg/mL(中央値)の患者は、<3,040pg/mLの患者に比べ、年齢が高く、女性が多く、喫煙歴、高血圧、糖尿病、蛋白尿、冠動脈疾患、心筋梗塞歴の頻度が高く、高感度CRPが高値で、eGFRは低値であった(いずれもp<0.001)。CKD発症率が、Q3はQ1の2倍、Q4は3倍以上に ベースラインのsuPAR値が高い患者ほど、フォローアップ期間を通じてeGFR低下の程度が大きく、suPAR値が最大四分位群(Q4)の患者のeGFRの年間の変化が-4.2mL/分/1.73m2であったのに対し、最小四分位群(Q1)では-0.9mL/分/1.73m2であった(p<0.001)。 Q4のeGFRの年間の低下は、Q1およびQ2よりも大きく(いずれも、p<0.001)、Q3もQ1およびQ2に比べ年間の低下が大きかった(いずれも、p<0.001)。Q1とQ2、Q3とQ4の間には有意な差はなかった。 suPAR値関連のeGFRの低下は、ベースラインのeGFRが<60mL/分/1.73m2の患者では有意ではなく(-0.1%、95%信頼区間[CI]:-0.9~0.7)、≧60mL/分/1.73m2の患者では有意であり(-1.2%、95%CI:-1.8~-0.6)、これらの間には有意な差が認められた(交互作用検定:p<0.001)。 また、ベースラインのeGFRが低い患者ほどsuPAR値に関連するeGFRの変動が小さく、ベースライン時に正常(90~120mL/分/1.73m2)であった921例のsuPAR値関連eGFRの低下が最も大きかった(交互作用検定:p<0.001)。 一方、ベースラインのeGFRが≧60mL/分/1.73m2の1,335例におけるCKDの発症率は、suPAR値の四分位がQ1からQ4へ1段階ずつ上がるに従って有意に増加し(ハザード比[HR]:1.40、95%CI:1.26~1.55、p<0.001)、≧3,040pg/mLの患者は<3,040pg/mLに比べて約2倍高かった(HR:1.97、95%CI:1.53~2.54、p<0.001)。 また、suPAR値がQ1の患者に比べて、Q3の患者のCKD発症率は2倍(HR:2.00、95%CI:1.38~2.89、p<0.001)、Q4は3倍以上(HR:3.13、95%CI:2.11~4.65、p<0.001)に達し、Q4はQ3の約1.5倍であった(HR:1.51、95%CI:1.11~2.06、p=0.01)。 著者は、「suPAR高値は、ベースライン時の腎機能正常者においてCKDの発症およびeGFRの加速度的な低下とそれぞれ独立の関連を示した」とまとめ、「これらの結果は、suPARが、CKDのバイオマーカーとして不可欠の要件を満たすことを示唆する」と指摘している。

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高血圧治療中こそ禁煙が大事!

高血圧とタバコの関係 高血圧治療の目的は 動脈硬化を進めないこと、動脈硬化によって生じる脳卒中や、狭心症・心筋梗塞を予防することにあります。 喫煙は動脈硬化を促進します。高血圧治療禁 煙 高血圧治療と禁煙は、動脈硬化を予防するという点で共通しています。動脈硬化の予防高血圧治療中の方こそ、禁煙が大事です!社会医療法人敬愛会 ちばなクリニックCopyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.清水 隆裕氏

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どのような精神疾患患者でメタボリスクが高いのか

 統合失調症および関連精神障害、双極性障害や大うつ病性障害を有する患者のメタボリックシンドローム(MetS)およびその構成症状(肥満、高血圧、HDLコレステロール低値など)のリスクについて、ベルギー・ルーヴェン・カトリック大学のDavy Vancampfort氏らはシステマティックレビューとメタ解析を行った。その結果、重症の精神疾患を診断されたサブグループでは、MetSのリスクが同程度に上昇がみられることを明らかにした。著者らは、「これらの人には、ルーチンのスクリーニングと多職種専門家による内科的・行動マネジメントが必要である。また、治療選択の際には、個々人の抗精神病薬リスクを考慮しなければならない」と述べている。World Psychiatry誌2015年10月号の掲載報告。 研究グループは、MetSおよびその構成症状が心血管疾患を高度に予測するとして本検討を行った。主要目的は、統合失調症および関連精神障害、双極性障害、大うつ病性障害を有する人のMetSとその構成症状の有病率を調べ、人口統計学的変数および精神科薬物療法を考慮したうえで、異なる精神障害間で比較することであった。副次目的は、選択した精神障害を有する患者のMetS有病率を適合した一般集団(対照)と比較することであった。レビューは2人の著者が、2015年1月1日時点でMEDLINE、PsycARTICLESなどで論文を検索し、包含基準を満たした論文のデータをプールし分析した。 主な結果は以下のとおり。・429件の論文が検索され、198件が包含基準を満たした。最終サンプル比較対象の重症の精神疾患(SMI)患者は5万2,678例であった。平均年齢41.3歳、平均罹病期間は12.4年。喫煙頻度が報告されていたのは1万2,560例で、喫煙率は50.4%であった。平均BMIは27.3であった。・これらSMIのMetS有病率は、32.6%(95%信頼区間[CI]:30.8~34.4%)であった。・異なる精神障害間の有病率を比較した相対リスクのメタ解析では、統合失調症 vs.双極性障害(39.2% vs.35.5%、10試験、相対リスク[RR]:0.92、p=0.24)、また双極性障害 vs.大うつ病性障害(29.2% vs.34.0%、4試験、RR:0.87、p=0.64)における有意差は示されなかった。統合失調症 vs.大うつ病性障害の比較試験は2件のみで、メタ解析ができなかった。・最終の人口統計学的回帰モデルにおいて、高年齢、BMI高値が、有意なモデレーターであることが示された(z=-3.6、p=0.0003、r2=0.19)。・抗精神病薬治療を受けていた人は、未治療群と比較して、MetSリスクが有意に高かった(p<0.001)。・MetSリスクは、クロザピン、次いでオランザピン服用群で他の抗精神病薬服用群よりも有意に高かった。一方、アリピプラゾール服用群のリスクは、他の抗精神病薬(amisulprideを除く)よりも有意に低かった。・適合一般集団対照との比較において、SMI患者は、MetSリスクが有意に高かった(RR:1.58、95%CI:1.35~1.86、p<0.001)。また、MetS構成症状リスクは、高血圧(p=0.07)以外は有意に高かった。関連医療ニュース 抗精神病薬誘発性の体重増加に関連するオレキシン受容体 抗精神病薬による体重増加や代謝異常への有用な対処法は:慶應義塾大学 非定型うつ病ではメタボ合併頻度が高い:帝京大学  担当者へのご意見箱はこちら

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糖尿病治療中こそ禁煙が大事!

糖尿病とタバコの関係 喫煙により、インスリンの効きが悪くなること(インスリン抵抗性)が知られています。 現在は糖尿病でない方も、糖尿病になる可能性も上がります。 血管に負担がかかるため、腎機能障害が進みやすく透析になってしまう確率も上がります。2 糖尿病患者が喫煙をすると、喫煙をしない場合に対して死亡率が1.55倍に上昇するという結果が報告されました。1-糖尿病患者の死亡リスク1.55非喫煙喫煙者Pan A, et al. Circulation. 2015 Aug 26. [Epub ahead of print]糖尿病治療中の方こそ、禁煙が大事です!社会医療法人敬愛会 ちばなクリニックCopyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.清水 隆裕氏

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降圧目標120mmHg vs.140mmHgの結果:SPRINT/NEJM

 50歳以上で非糖尿病・心血管イベント高リスクの患者について、収縮期血圧目標120mmHg未満の厳格降圧療法が同140mmHg未満の標準降圧療法よりも、致死的・非致死的重大心血管イベントおよび全死因死亡の発生を有意に抑制したことが、米国ケース・ウェスタン・リザーブ大学のJackson T. Wright氏らによるSPRINT試験(米国立衛生研究所[NIH]助成)の結果、示された。一方、厳格降圧療法群では、低血圧症、失神、電解質異常、急性腎障害/腎不全といった重度有害事象の有意な増大がみられた。NEJM誌オンライン版2015年11月9日号掲載の報告。9,361例を対象に無作為化試験 本検討は、非糖尿病患者の心血管疾患の罹患および死亡を抑制するための至適降圧目標値を明らかにすることを目的に行われた。 被験者は、50歳以上、収縮期血圧130~180mmHg、心血管イベント高リスク(脳卒中以外の臨床的/不顕性心血管疾患、CKD、フラミンガム10年冠動脈疾患リスク15%以上、75歳以上のいずれか1つ以上に該当)を適格とした。糖尿病または脳卒中既往の患者は除外した。 2010年11月~2013年3月に9,361例を登録し、厳格降圧療法群(4,678例)、標準降圧療法群(4,683例)に無作為に割り付けて、当初3ヵ月間は月に1回、その後は3ヵ月ごとにフォローアップを行った。 主要アウトカムは、心筋梗塞、その他の急性冠症候群、脳卒中、心不全、またはあらゆる心血管死の複合とした。 両群のベースライン特性は類似していた。厳格降圧療法群について、平均年齢67.9歳、女性比36.0%、心血管疾患20.1%、CKD 28.4%、フラミンガム10年冠動脈疾患リスク15%以上61.4%、75歳以上28.2%、またベースライン血圧値139.7/78.2mmHg、非喫煙43.8%/元喫煙42.3%、BMI値29.9、降圧薬数1.8などであった。120mmHg群で主要複合アウトカム、全死因死亡の発生が有意に低値 試験は当初、平均追跡期間5年を予定していたが、中央値3.26年で厳格降圧療法群の主要複合アウトカム発生が有意に低いことが確認され、早期に中断となった。 両治療戦略による収縮期血圧値の差は、急速かつ持続的に認められた。追跡1年時点の評価における平均収縮期血圧値は、厳格降圧群121.4mmHg、標準群136.2mmHg、追跡期間中の平均値は121.5mmHg、134.6mmHgであった。平均降圧薬数は2.8、1.8であった。 主要複合アウトカム発生は、厳格降圧群1.65%/年、標準群2.19%/年で、厳格降圧療法による有意な抑制が確認された(ハザード比[HR]:0.75、95%信頼区間[CI]:0.64~0.89、p<0.001)。 全死因死亡の発生も、厳格降圧群(1.03%/年)が標準群(1.40%/年)よりも有意に低かった(HR:0.73、95%CI:0.60~0.90、p=0.003)。 重度有害事象の発生は、厳格降圧群1,793例(38.3%)、標準群1,736例(37.1%)で有意差はなかった(HR:1.04、p=0.25)。しかし、個別にみた場合に厳格降圧群で、低血圧症(2.4%、HR:1.67、p=0.001)、失神(2.3%、1.33、p=0.05)、電解質異常(3.1%、1.35、p=0.02)、急性腎障害/腎不全(4.1%、1.66、p<0.001)の発生頻度の有意な増大が認められた。転倒外傷(2.2%、0.95、p=0.71)、徐脈(1.9%、1.19、p=0.28)の有意差はみられなかった。また、これら重度有害事象の発生パターンの差は、75歳以上被験者についてみた場合も同様であった。

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日本COPDサミット~健康寿命延長に向けて変わるCOPD予防・治療の最前線~

 11月5日都内(文京区)にて、2015年度日本COPDサミットが開催された(主催:一般社団法人GOLD日本委員会/一般社団法人日本呼吸器学会/公益財団法人日本呼吸器財団)。 本年の世界COPDデーは11月18日であり、この日に向け、世界各国でさまざまな啓発イベントが実施されている。本サミットもその一環として企画された。 冒頭、三嶋 理晃氏(日本呼吸器学会 理事長)は、「各団体がタッグを組むことにより、インパクトある啓発活動につなげ、各メディア・自治体・医療関係者・一般市民への情報発信を高める後押しをする」と本サミットの目的を述べた。 以下、当日の講演内容を記載する。COPDはもはや肺だけの疾患ではない COPDはタバコの煙を主因とする閉塞性の肺疾患であるが、近年COPDは全身性の炎症疾患と考えられるようになってきた。実際、COPDは肺がん・肺炎・肺線維症などの肺疾患だけでなく、糖尿病、動脈硬化、骨粗鬆症、消化器病、うつ・記銘力低下などへの影響が報告されている。 この点について、長瀬 隆英氏(GOLD日本委員会 理事)は、なかでも糖尿病には注意が必要だと述べた。糖尿病患者がCOPDを併存すると生命予後が悪くなること1)、反対に、血糖コントロールが不良であると肺機能が有意に低下することが報告されているからである2)。しかしながら、COPDがさまざまな疾患に影響を及ぼす理由については、いまだ不明な点もあるため、今後さらなる研究が必要といえそうだ。受動喫煙は他人をむしばむ深刻な問題 受動喫煙のリスクについては、これまでも問題となってきた。加藤 徹氏(日本循環器学会禁煙推進委員会 幹事)は、「さらなる受動喫煙の問題は、分煙では防ぐことができない点である」と強調した。その理由は、「受動喫煙」の10%はPM2.5粒子成分(径<2.5μm)と同じくらいの非常に小さな粒子であるため、分煙してもドアなどの隙間から漏れ出るからである。さらに、この小さな粒子は、一度肺内に侵入すると肺胞の奥深くにまで到達し、一部は呼出されるが、大部分が湿った空気で膨張して居座り、悪さをする。仮に煙を直接吸わなかったとしても、喫煙後3~5分間は喫煙者からこれらの粒子が呼出されることがわかっているため、注意が必要である。 加藤氏は「喫煙をしなくても受動喫煙に曝露することで、心筋梗塞や脳卒中、喘息、COPDになりやすくなる」と述べ、屋内全面禁煙の重要性を強調した。すでに禁煙推進学術ネットワーク(2015年10月現在、27学会が参加)から2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて「受動喫煙防止条例」制定の要望書が東京都に提出されている。今後、受動喫煙を防止するための積極的な対策が望まれる。COPDで注意すべき3つの合併症 COPDではさまざまな合併症が存在するが、石井 芳樹氏(日本呼吸器財団 理事)は「肺がん、気腫合併肺線維症、喘息にはとくに注意が必要」と述べた。【肺がん】 COPDは喫煙とは独立した肺がん発症のリスク因子であり、10年間の肺がん発生率は約5倍にもなるという3)。さらに、COPD患者では、喫煙量が同等であっても肺がんによる死亡率が7倍も増加すると報告されている4)。これに対し加藤氏は、「早期にCOPDを発見し、禁煙をすることが死亡率を低下させるうえで何より重要」と述べた。【気腫合併肺線維症】 気腫合併肺線維症の特徴は、肺気腫による閉塞性障害と肺線維症による拘束性障害が合併すると、呼吸機能の異常が相殺されマスクされる点にあるという。2つの病態が重複することで一酸化炭素拡散能の低下がさらに増強され、低酸素血症や肺高血圧が悪化する。COPDは肺がんとの合併率が高いが、肺線維症が合併すると肺がん発症率がさらに高くなるため5)、慎重な経過観察が重要である。【喘息】 近年、COPDと喘息を合併する、オーバーラップ症候群が問題となっている。COPDと喘息は異なる病態の疾患であるが、咳、痰、息切れ、喘鳴など症状の鑑別が、とくに喫煙者と高齢者においては難しい。このオーバーラップ症候群は、年齢とともに合併率が増加するといわれている6)。喘息を合併することで、COPD単独の場合よりも増悪頻度は高くなり、重症な増悪も多くなるという7)。加藤氏は、それにもかかわらず喘息患者が喫煙をしているケースが散見される、として「とくに喘息患者では禁煙指導を徹底して、オーバーラップ症候群への進展を防ぐことが重要である」と述べた。COPDにおける地域医療連携のあり方 COPDの診断には呼吸機能検査が必須であるが、一般の開業医では難しいのが現状である。このことに関して、中野 恭幸氏(滋賀医科大学内科学講座 呼吸器内科 病院教授)は、「手間がかかる」、「検査時に大きな声を出さないといけない」、「数値が多すぎて理解が難しい」などを理由として挙げた。こうしたことも相まって、COPD患者の多くが未診断・未治療であることが問題となっているが、呼吸器専門医だけでは、多くのCOPD患者を管理することは難しい。 このような事態を受けて、滋賀県では数年前から地域医療連携への取り組みを始めた。専門医が病院で呼吸機能検査やCTを行い、その結果を基に標準的治療方針を決定し、その後は、一般開業医が担当する。さらに、急性増悪で入院が必要な際には専門医が引き受ける、などの体制を整えている。 しかしながら、専門医に紹介するときには、COPDがかなり進行している場合も多く、いかに早い段階で専門医に紹介するかが焦点となりそうだ。中野氏は「この取り組みは現在、大津市医師会で実施しているが、今後は滋賀県全体のパスになることが望まれる」と述べ、そのためには医師会主導で進めることも重要だとした。 その他、滋賀県では、医薬連携にも力を入れている。近年、COPDには、さまざまな吸入デバイスが登場し、デバイス指導がより一層重要な意味を持つようになった。そのため滋賀県では、地域の関係者が連携し、吸入療法の普及と質的向上を図ることを目的として、滋賀吸入療法連携フォーラム(SKR)が結成された。本フォーラムは年7~8回開催され、会場ではさまざまなデバイスに触れることができる。その他の医療従事者に対しても講習会を開くなどして、多職種でチームとなってCOPDに向き合う体制づくりを行っている。COPDにおける運動療法の役割 「重度のCOPD患者では、呼吸機能だけでなく、精神的な悪循環にも焦点を当て、QOLを重視することが大切」と黒澤 一氏(日本呼吸器学会 閉塞性肺疾患学術部会 部会長)は述べた。そのうえで、日本での普及が十分とはいえない呼吸リハビリテーション(運動療法)の有用性について触れた。 黒澤氏は「強化リハビリテーションにより筋肉がついたり、関節が柔らかくなることにより、体を動かすときの負荷が減り、呼吸機能的にも精神的にも余裕ができる」と述べた。しかしながら、問題は、強化リハビリテーションにより一時的に改善がみられても、飽きてしまい続かないケースが多いことだという。これらのことから、「負荷の大きいリハビリテーションではなく、活動的な生活習慣を送ることを意識すべき」と黒澤氏は述べた。そのうえで、自分のペースで動作をすることができるスポーツが有効として、例として「フライングディスク」を挙げた。フライングディスクを行うことによって、身体活動性が向上し身体機能の強化にもつながるという。さらに生きがいや仲間ができることによって前向きになり、呼吸機能にも良い影響が及ぶようだ。だが、この競技へのサポート体制はまだ十分ではなく、今後の課題と言えそうだ。 最後に、福地 義之助氏(GOLD日本委員会 代表理事)は、「今後COPDの一般国民への認知率向上を推し進めていくとともに、臨床医師の疾患に対する理解や診断・治療力の向上が必要である。さらに、COPDは全身に及ぶ疾患であることから、他の診療科との連携強化にも力を入れていく」と締めくくった。(ケアネット 鎌滝 真次)参考文献1)Gudmundsson, et al. Respir Res. 2006;7:109.2)Yeh HC, et al. Diabetes Care. 2008;31:741-746. 3)Skillrud DM, et al. Ann Intern Med. 1986;105:503-507. 4)Kuller LH, et al. Am J Epidemiol. 1990;132:265-274.5)Kitaguchi Y, et al. Respirology. 2010;15:265-271.6)Soriano JB, et al. Chest. 2003;124:474-481.7)Hardin M, et al. Respir Res. 2011;12:127.

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喫煙者の口腔は「水を入れた灰皿」

口の中は「水を入れた灰皿」≒ 水を張った灰皿にタバコをつけておくとどうなりますか?口の中はまるで… タバコで茶色に染まった水を飲んだことがありますか? 口の中には唾液がありますが、タバコを吸った後、その唾液はどこにいくのでしょうか? タバコで食道がんや胃がんが増えることが知られています。社会医療法人敬愛会 ちばなクリニックCopyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.清水 隆裕氏

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11月12日は患者さんと肺炎を話題に

 10月29日、ファイザー株式会社は、岩田 敏氏(慶應義塾大学医学部 感染症学教室 教授)を講師に迎え、「長寿社会ニッポンにおける感染症の潜在リスクと最新対策」をテーマにプレスセミナーを開催した。ワクチンで防ぐ感染症 男女ともに平均寿命が80歳を超えるなかで、今後いかに健康寿命を延伸させ、健康な期間を延ばしていくかが重要となる。その際、わが国の主な死亡原因が、悪性新生物、心疾患、肺炎、脳血管疾患と続くなかで、65歳以上の高齢者では、96.8%が肺炎で亡くなっていることから、肺炎をいかにワクチンなどで予防するかがカギとなる、と岩田氏は説明した。高齢者の半数以上がワクチン接種歴なし 実際、ワクチン接種がどのくらい浸透しているのかを調査した資料がある。同社が全国の60歳以上の男女、7,050人に実施した「全国47都道府県“大人の予防接種”意識調査」によれば、「成人になってワクチンを接種したことがあるか」との問いに、「ある」と回答した人が42.5%(n=2,998)、「ない」と回答した人が50.9%(n=3,585)と、高齢者の半数以上がワクチン接種を受けていない現実が明らかとなった。また、「ある」と回答した人が受けたワクチンの種類では、インフルエンザ(76.8%)が最も多く、次いで肺炎球菌感染症(50.1%)、次に風疹・麻疹(13.8%)となっていた。肺炎に一度かかると… 肺炎球菌の血清型は現在90種類以上が報告され、侵襲性肺炎球菌感染症では5歳未満の小児と65歳以上の高齢者に患者が多く分布している。そして、重要なことは、2013年4月~2014年8月まで肺炎での死亡例154例のうち112例が65歳以上の高齢者ということである(IASR資料より)。高齢者が肺炎にかかるとADLの低下を招き、心身機能の低下が起こる。その結果、廃用症候群が進み、嚥下機能が弱くなることで、さらに肺炎にかかるという負のスパイラルに入ると指摘する。高齢者にとっては、肺炎にかかること自体がリスクであり、これをいかに防ぐかが、長く健康に過ごすための課題となる。今できる対策はワクチンの早期接種 肺炎球菌に対し、わが国で接種できるワクチンは2種類ある。1つは、PCV13(商品名:プレベナー13)であり、もう1つはPPV23(同:ニューモバックスNP)である。 PCV13は、結合型ワクチンであり、適応年齢は2ヵ月以上6歳未満と65歳以上で、小児にも適応があるのが特徴。また、接種経路は小児であれば皮下に、成人であれば筋肉内となる。本ワクチンとプラセボを比較した市中肺炎の累積発症数の研究によれば、その効果は4年以上持続する1)。 PPV23は、多糖体ワクチンであり、適応年齢は2歳以上である。接種経路は筋肉内または皮下であり、昨年より施行されたわが国の65歳以上の高齢者への肺炎球菌ワクチンの定期接種の対象ワクチンである。インフルエンザワクチンとの両剤接種で軽症化の効果が報告されている2)。 前述の「“大人の予防接種”意識調査」によれば、「医師から肺炎球菌ワクチンの接種について詳しい説明を受けたいと思うか?」という問いに対し、「説明を受けたいと思う」と回答した人が66.6%(n=4,694)に上る一方、「受けたいと思わない」(18.1%/n=1,274)、「わからない」と回答した人も15.3%(n=1,082)おり、浸透度の足踏みが懸念されている。 肺炎のリスクは、5歳未満(とくに2歳未満)の小児と65歳以上の高齢者、そして、糖尿病、心疾患などの基礎疾患のある人、療養中で免疫力が低下している人、脾臓を摘出した人、喫煙をしている人などに高い。とくに高齢者は、前述の負のスパイラルにならないためにも、場合によっては定期接種を待たずに接種を受けさせることも大切だという。 最後に、「11月12日は『世界肺炎デー』である。こうした機会に、医療者と患者の間で肺炎やワクチンが話題になることで、さらに感染症予防が進むことが重要」とレクチャーを終えた。ファイザー株式会社の「“大人の予防接種”意識調査」はこちら。(ケアネット 稲川 進)関連コンテンツケアネット・ドットコム 特集「肺炎」はこちら。参考文献1)Bonten MJ, et al. N Engl J Med. 2015;372:1114-11252) Kawakami K, et al. Vaccine. 2010;28:7063-7069.

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