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CareNetパス利用規約

[アカウント登録]をクリックすることで、CareNetパス利用規約並びに当社の個人情報保護方針および個人情報保護規定(https://www.carenet.com/info/personal.html 参照)が適用されることに同意するものとします。CareNetパス利用規約CareNetパス利用規約(以下「本規約」といいます)は、株式会社ケアネット(以下「当社」 といいます)が提供する「CareNetパス」サービスおよびこれに関連するサービス(以下「本サービス」といいます)のご利用に際し、適用されます。本サービスのご利用前によくお読み頂き、同意のうえ、ご利用ください。第1条(本規約、本サービスの目的等)1.本規約は、本サービスの提供条件について、当社とサービス利用者との間の権利義務を定めることを目的とします。サービス利用者は、当社所定の登録手続において、本規約に同意するものとします。サービス利用者は、本サービスをご利用いただくことを以って、本規約に同意したものとみなされるものとし、本規約が改訂された場合も同様とします。2.本サービスは、当社およびサービス関連事業者(以下に定義します。当社およびサービス関連事業者を総称して「サービス提供者」といいます)が提供する情報提供サービスを利用する際に要求される認証について、CareNet.com会員IDによる認証連携サービス CareNetパスを通じて、サービス利用者の情報提供サービスへのアクセスの容易性・利便性を高めることを主な目的としています。3.サービス提供者が提供する情報提供サービスに対する責任は、これを提供する事業者が負います。また、これを提供する事業者が定める利用規約その他の条件が適用されることがあります。4.サービス利用者は、CareNetパス利用、ならびに情報提供サービスの利用および解析のため、サービス利用者の登録情報、ユーザー情報がサービス提供者により取得され、利用されることに同意します。これらの情報は、情報提供サービスの提供(サービス利用者が利用する情報提供サービス中に特定の医療関係者にしか提供できない情報が含まれるため、その確認のために使用されます)、情報提供サービスの品質向上、サービス提供者による解析・分析、その他サービス利用者から個別に同意を取得している目的のために利用します。なお、これらの情報が個人情報保護法に定める個人情報に該当する場合、サービス提供者は常に同法およびその下位法令に従い、取り扱いを行うものとします。第2条(定義)本規約において使用する以下の用語は、各々以下に定める意味を有するものとします。(1)「サービス利用者」とは、本サービスを利用する自然人をいい、医療関係者(医師・看護師・薬剤師など)及び医薬関係者をいいます。(2)「ユーザー」とは、当社所定のユーザー登録手続を経て、当社がユーザー登録および本サービスの利用を承認した者をいいます。(3)「CareNet.com会員ID」は、当社の提供するサービスへの利用登録時に、また新規登録の場合には本サービスの利用の登録時にサービス利用者が設定したメールアドレスまたは会員識別用の固有の文字列をいいます。(4)「メールサービス」とは、本サービスの一環として当社がサービス利用者に対して、電子メールを用いて、サービスの広告、宣伝をお送りすることです。(5)「登録情報」とは、サービス利用者が当社の提供するサービスへの利用登録(更新登録を含む)時に、また新規登録の場合には本サービスの利用の登録時に、当社に提供を行った氏名、メールアドレス、勤務先、勤務先所在地、診療科、職種等の情報のことです。(6)「ユーザー情報」とは、情報提供サービスの利用状況(ログイン・連携解除日時)、メールサービスの利用履歴、その他ユーザーの本サービスの利用内容、利用履歴のことです。本サービスに関するCookie等の情報を含みます。(7)「MDB」とは、株式会社日本アルトマークの運営する日本全国の医療施設や薬局・薬店およびそこに従事する医療従事者の情報を内容とするメディカルデータベースをいいます(MDBに関するご案内、お問い合わせは下記のWebサイトをご覧ください。https://www.ultmarc.co.jp/mdb/index.html(8)「サービス関連事業者」とは、本サービスの登録・サインインにより提供されるサービスの運営事業者、株式会社日本アルトマーク、MDB会員のことです。第3条(サービス利用者の資格・認証・責任等)1.当社は、ユーザー登録を希望する者が以下の各号のいずれかの事由に該当すると判断した場合に、登録を拒否することがあります。またその理由について一切開示義務を負いません。(1)登録情報につき事実と異なる内容があった場合(2)暴力団、暴力団員、右翼団体、反社会的勢力その他これに準ずる者(以下「反社会的勢力等」といいます)または関与者(3)過去当社との契約に違反した者またはその関係者(4)過去本サービスの登録抹消を受けた者(5)本サービスの提供が適当でない者と当社が判断した場合2.本サービスはサービス利用者の本人認証のため、CareNet.com登録会員情報にて本人確認手続きを行います。サービス提供内容は、本人認証の状況により変わる場合があります。3.サービス利用者は、CareNet.com会員IDを第三者に知られないようにサービス利用者の責任において十分注意して管理するものとします。またパスワードは、生年月日、電話番号など他人に推測されやすいものを避けて設定し、定期的に変更するものとします。サービス利用者のCareNet.com会員IDおよびパスワードの管理不十分、使用上の過誤、第三者の使用等によって生じた損害に関する責任はサービス利用者が負うものとし、当社は一切の責任を負いません。4.サービス利用者は、CareNet.com会員IDおよびパスワードについて、以下の各号に掲げる行為を行ってはならないものとします。(1)CareNet.com会員IDおよびパスワードを第三者に利用させ、または貸与、譲渡、名義変更、売買等行うこと(2)他のサービス利用者のIDまたはパスワードを利用する行為その他第三者に成りすます行為を行うこと。サービス利用者のIDおよびパスワードが入力された上で、本サービスのご利用がなされた場合、当社は、本サービスのご利用がサービス利用者ご本人によりなされたものであるとみなします。5.サービス利用者は、本サービスの利用にあたり、以下の各号のいずれかに該当する行為または該当するおそれがある行為をしてはなりません。(1)本規約に違反する行為(2)法令または公序良俗に違反する行為(3)サービス利用者が所属する業界団体の内部規則等に違反する行為(4)複数のユーザー登録を行うこと(5)本サービスのネットワークまたはシステム等に過度な負荷をかける行為、当社のネットワークまたはシステム等に不正にアクセスする、または不正なアクセスを試みる行為その他本サービスの運営を妨害するおそれのある行為(6)第三者に不利益、不快感を与える行為その他不適切な行為(7)前各号の行為を直接または間接に惹起し、または容易にする行為第4条(通知)1.本サービスの利用に関して、当社はサービス利用者に対し、メール等で通知を送信することができます。2.サービス利用者が通知を受け取れないこと等により、当社からの指示や警告を見落とした場合、当社は責任を一切負わないものとします。第5条(登録情報の変更等) サービス利用者は、当社所定の方法で当社に通知することにより、サービス提供者の情報提供サービスとの連携を解除することができます。第6条(登録抹消) サービス利用者が以下の各事由の一に定める事由に該当する恐れがある場合、当社は、サービス利用者に通知することなく利用停止または登録抹消することができます。(1)本規約に反する場合(2)登録情報が事実と異なる場合(3)その他当社が必要と判断した場合第7条(個人情報の取扱い)1.サービス利用者は以下に同意するものとします。(1)サービス利用者の個人情報について、本規約に特段の定めがある場合を除き、当社の個人情報保護方針および個人情報保護規定の定めにより取り扱うこと。(https://www.carenet.com/info/personal.html 参照)(2)当社が登録情報、ユーザー情報を取得すること。サービス関連事業者もまた登録情報、ユーザー情報を取得する、提供を受ける、または当社と共同利用することがあること。(3)当社がメールサービスを行うこと(4)当社が本サービス上で、サービス利用者に応じた広告、宣伝を行うこと(5)当社が、登録情報、ユーザー情報をサービス関連事業者に対して、提供すること2.サービス利用者がメールサービスの停止を希望する場合、所定の手続きにおいて、配信停止を申込するものとします。サービス利用者の停止申し込みの処理を当社が完了した時点で有効とし、その後のメールサービスを停止します。3.当社は、登録情報、ユーザー情報を、個人を識別できない形での統計情報として、利用することがあります。4.当社は、登録情報、ユーザー情報を、個人情報保護法に従い、同法上の匿名加工情報とした上で、第三者に提供することがあります。第8条(サービスの停止) 当社は、以下のいずれかに該当する場合には、サービス利用者に事前に通知することなく、本サービスの全部または一部の提供を停止することができるものとします。(1)本件システムの点検または保守作業を行う場合(2)本件システムの不調等または不可抗力により、本サービスの全部または一部の提供が困難となった場合(3)その他、当社が停止を必要と判断した場合第9条(本サービスの変更、終了)当社は、当社の都合により、本サービスの全部または一部を変更、または提供を終了することができます。当社が本サービスの提供を終了する場合、当社は事前に告知するものとします。第10条(免責)1.前二条の場合や利用不能、サービス利用者の登録の抹消、本サービスの利用による登録データの消失または機器の故障もしくは損傷その他本サービスに関してサービス利用者が被った損害(以下「サービス利用者損害」といいます)について、当社は賠償する責任を一切負いません。2.サービス利用者はご自身のすべてのコンテンツを維持、バックアップおよび保護する責任を負うものとします。サービス利用者のコンテンツの維持、バックアップおよび復元にかかる費用について、当社は一切責任を負いません。3.サービス利用者と当社の本サービスの利用に関する契約が消費者契約法に定める消費者契約に該当し、当社が責任を負う場合であっても、当社は、サービス利用者の損害につき、過去12ヶ月間にサービス利用者が当社に支払った対価の金額を超えて賠償する責任を負わないものとします。また、付随的損害、間接損害、特別損害、将来の損害および逸失利益にかかる損害については、賠償する責任を負いません。4.当社は、本サービスがサービス利用者の特定の目的に適合すること、期待する機能・商品的価値・正確性・有用性を有すること、サービス利用者による本サービスの利用がサービス利用者に適用される法令または業界団体の内部規則等に適合すること、および不具合が生じないことについて、何ら保証するものではありません。5.本サービスに関連してサービス利用者と他のサービス利用者または第三者との間において生じた取引、連絡、紛争等については、当社は一切責任を負いません。第11条(準拠法および管轄)本規約の準拠法は日本法とし、東京地方裁判所を第一審の専属合意管轄裁判所とします。第12条(本規約の変更等)当社は、本規約を変更できるものとします。当社は、本規約を変更した場合には、サービス利用者に当該変更内容を通知または公表するものとします。当該変更内容の通知または公表後、サービス利用者が本サービスを利用した場合には、サービス利用者は、本規約の変更に同意したものとみなします。2025年(令和7年)1月1日制定・施行

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化学療法誘発性末梢神経障害の克服に向けた包括的マネジメントの最前線/日本臨床腫瘍学会

 2025年3月6~8日に第22回日本臨床腫瘍学会学術集会が開催され、8日の緩和ケアに関するシンポジウムでは、「化学療法誘発性末梢神経障害のマネジメント」をテーマに5つの講演が行われた。化学療法誘発性末梢神経障害(chemotherapy-induced peripheral neuropathy:CIPN)は、抗がん剤投与中から投与終了後、長期にわたって患者のQOLに影響を及ぼすものの、いまだ有効な治療の確立に至っていない。そこで、司会の柳原 一広氏(関西電力病院 腫瘍内科)と乾 友浩氏(徳島大学病院 がん診療連携センター)の進行の下、患者のサバイバーシップ支援につなげることを目的としたトピックスが紹介された。CIPN予防戦略の現状と今後の研究開発への期待 まず、CIPNの予防に関する最新エビデンスが、華井 明子氏(千葉大学大学院 情報学研究院)より紹介された。『がん薬物療法に伴う末梢神経障害診療ガイドライン2023年版』には、CIPNを誘起する化学療法薬の使用に際し、予防として推奨できるものはないと記載されている。また、抗がん剤の種類によっては投与しないことを推奨する薬剤もあり、状況に応じて運動や冷却の実施が推奨されるものの、強く推奨できる治療法はない。そのため、多くの患者が苦しんでいる現状が指摘された。 こうした中、手足を冷却または圧迫して局所の循環血流量を低下させることで、抗がん剤をがん細胞に到達させつつ、手足には到達させない戦略がCIPN予防に有効とのエビデンスが散見されており、冷却がやや優位との成績が最近示された。「ただし、冷却の効果は抗がん剤投与中に最大限発揮されるので、投与後数時間経過して出現する症状には効果がない」と、同氏は説明した。 なお、がん治療中の運動は、心肺機能や筋力、患者報告アウトカムなどを改善するとのエビデンスが確立しているため、有酸素運動や筋力トレーニングが推奨されている。一方、CIPN予防における運動の実施は、本ガイドラインでは推奨の強さ・エビデンスの確実性ともに弱い。同氏は、「それでも治療前のプレハビリテーションにより体力・予備力を高めておくことは有効」とした。また、予防ではなく、CIPN発現例に対する治療であるが、バランス運動、筋力トレーニングおよびストレッチは、いずれも長期的には実施のメリットが大きいとの研究成果が紹介された。 「CIPNの頻度は抗がん剤の種類はもちろん、評価の時期・指標によっても異なり、患者の生活状況や主観が大きく影響する。そのため、評価方法の標準化がCIPN予防/治療戦略の開発につながるだろう。また、運動プログラムのエビデンスは増え続けていることから、ガイドラインの次期改訂では推奨が変わる可能性もある」と、同氏は期待を示した。CIPN治療戦略と実臨床への橋渡しに向けた取り組み 次に、CIPNの治療に関する動向が吉田 陽一郎氏(福岡大学病院 医療情報・データサイエンスセンター 消化器外科)より解説された。『がん薬物療法に伴う末梢神経障害診療ガイドライン 2023年版』で薬物療法として推奨されている薬剤は1剤のみであり、予防ではなく治療のみでの使用が可能となっている。同氏はその根拠となった論文と共に、最新のシステマティックレビュー論文に触れ、「エビデンスが不十分で、本ガイドラインにおける推奨の強さは弱い。CIPNの予防や治療の領域では、プラセボが心理的な影響だけでなく、生理的な変化をもたらすことが知られているため、プラセボ効果を含めたデザインの下で臨床試験を実施することが望まれる」と述べた。 こうした中、わが国ではCIPN症状が出現した際に投与する薬剤のアンケート調査が、『がん薬物療法に伴う末梢神経障害マネジメントの手引き 2017年版』の公表前後(2015年および2019年)に実施され、使用薬剤の変化が報告されている。近く再調査が行われる予定で、より現実的なマネジメントの理解につながるとのことである。さらに同氏は、わが国の臨床試験の状況や課題点などを説明するとともに、日本がんサポーティブケア学会 神経障害部会が取り組んでいるCIPNに関する教育動画について、「詳細は日本がんサポーティブケア学会のホームページに近日掲載予定で、2025年5月に開催される同学会の学術集会でも告知予定」と紹介した。がんサバイバーのCIPNに対する鍼灸治療の可能性 わが国では年間100万例ががんに罹患し、治療後も慢性疼痛、とくにCIPNを訴える患者が増えている。石木 寛人氏(国立がん研究センター中央病院 緩和医療科)は、「乳がんの場合、年間9万例の発症者のうち、5年生存率が90%で、その半数が痛みを抱えているとすれば、毎年約4万例の慢性疼痛患者が発生する。現状では各種鎮痛薬による薬物療法が推奨されているが、痛みの原因を根本的に解決する治療ではないため、非薬物療法のニーズは高まっている」と指摘。 このような背景もあり、同氏が所属する診療科では1980年代から鍼灸治療を緩和ケアの一環として提供してきた。治療は刺入鍼、非刺入鍼、台座灸、ホットパックを組み合わせ、標治法(症状部位の循環改善を促す局所治療)と本治法(体力賦活を図る全身調整)により、CIPNでは週1回30分、3ヵ月間の施術を基本とし、施術後に患者が自宅で行うセルフケア指導も治療に含まれる。 同院では、こうした鍼灸治療の乳がん患者における有用性を検証する前向き介入試験を2022年より実施しており、「結果は2025年6月の米国臨床腫瘍学会(ASCO)で発表予定」と、同氏は紹介した。さらに現在、多施設ランダム化比較試験を準備中で、乳がん診療科と鍼灸治療提供施設とのネットワーク作りとして、各施設や学会、企業などと月1回のオンラインミーティングを実施。「円滑な共同研究のためには、まずは互いの人となりや専門性を理解し、強固な連携体制を築いていくことが重要」と強調した。また、鍼灸師が医療機関に出向いて技術交流を行うなど、現場レベルでの連携も進んでいるという。 これに加え、学会やWebセミナーでの交流会、学術団体同士の相互理解を深める取り組みなど、さまざまな普及活動を進めており、「CIPNに苦しむ患者への新たな治療選択肢を提供できる日は近づいている」と、同氏は意欲を示した。CIPNマネジメントにおける医療機器の現状と課題 久保 絵美氏(国立がんセンター東病院 緩和医療科)によると、CIPNのマネジメントには医療機器の活用が重要になるという。ただし、「日・米・欧のガイドラインでCIPN予防/治療における冷却療法や圧迫療法、その他治療法の推奨の強さやエビデンスの質は異なる」と指摘。米国食品医薬品局(FDA)に承認されている機器が紹介されるも一定の評価は得られず、今後も引き続き検証が必要とされた。 一方、内因性疼痛抑制系の賦活や神経成長因子の調整、抗炎症作用などにより複合的に鎮痛をもたらす交番磁界治療器の有効性が、前臨床試験と共に、同氏が研究責任医師として担当した臨床試験で検討されている。それによると、CIPNの原因となる抗がん剤投与終了後1年以上経過した症状固定患者のtingling(ピリピリ・チクチク)やnumbness(感覚の低下)に関して、一定の効果が示唆され保険収載に至っている。 同氏は、「医療機器によるCIPNマネジメントは発展途上で、エビデンス不足が課題である。そのため、前臨床データの拡充と共に、治療効果のさらなる検証は必須」と強調した。脳の神経回路の変化に起因する“痛覚変調性疼痛”の理解と治療戦略 痛みには侵害受容性疼痛、神経障害性疼痛に加え、これまで心因性疼痛や非器質的疼痛と呼ばれていた痛覚変調性疼痛がある。川居 利有氏(がん研究会 有明病院 腫瘍精神科)は、「痛覚変調性疼痛はCIPNに付随するものである。たとえば、3ヵ月を超えるような抗がん剤投与後からの手足のしびれ、強い倦怠感、浅眠、めまい・耳鳴り、食欲低下や、抗がん剤投与終了後も症状が改善せずに遷延・悪化すること、また、不安が強くなり、症状に執着し訴えが執拗になることがある。このような患者に遭遇したことはないだろうか」と問い掛けた。 これは脳神経の可塑的変化により発症、維持される慢性痛で、痛み過敏、睡眠障害、疲労、集中困難、破局思考などを伴う。神経可塑性とは、脳の神経が外部刺激により伝達効率を変化させる能力で、学習や記憶に深く関わる一方、慢性痛では脳の感覚-識別系が抑制され、情動-報酬系、認知-制御系が活性化する。この状態が進むと痛みに対する不安や苦痛が増すばかりか、痛みを軽減する下行性制御系、いわゆるプラセボ回路の機能が低下し、痛みへの自己調節が困難となる。これが不安症や強迫症、治療への期待感の喪失、医療への不信感などにつながるという。 同氏は、「CIPNは長期間に持続し、そこに神経の可塑的変化による痛覚変調性疼痛が追加されることで、痛みはもとより、うつ病や不安症、自律神経症状も加わり、感情調節機能不全に陥る」と説明。また、「CIPNの慢性化では過敏症状の併発に注意し、急激な症状変化の有無についての詳細な問診が大切である。この状態は単なる“気のせい”ではなく、長期間の心理社会的問題などの蓄積による機能障害が原因」とし、「治療には患者との信頼関係の構築が不可欠で、とくに慢性化したケースでは患者の背景や過去の経験に配慮する必要がある。睡眠や心理的ケアは治療上重要なため、心療内科や精神科への適切な紹介が推奨される。CIPNそのものは治らないが、QOL改善には過敏症状のマネジメントが大切」と結んだ。

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第234回 乳腺外科医事件で無罪判決、医師は司法とメディアに憤りを表明/東京高裁

<先週の動き>1.乳腺外科医事件で無罪判決、医師は司法とメディアに憤りを表明/東京高裁2.全国6割の病院が赤字経営、病院団体が診療報酬改定の見直しを要請3.医師国試合格率92.3%、女性割合が過去最高-新卒100%は4校/厚労省4.電子カルテ情報共有サービス始動、2025年度本格運用へ/厚労省5.急増する訪問看護、請求適正化へ指導体制を強化/厚労省6.病床適正化進む長崎、大学病院が1割削減しハイケアユニットを新設/長崎大1.乳腺外科医事件で無罪判決、医師は司法とメディアに憤りを表明/東京高裁2025年3月12日、東京高裁は、手術後に女性患者に対する準強制わいせつ罪を問う事件で、被告である乳腺外科医師に対し、2度目の無罪判決を言い渡した。この判決は、同医師が2016年に女性の胸をなめたとされる事件に関するもので、東京地裁と高裁の1・2審判決を踏襲し、検察の控訴を棄却した。同医師は、逮捕から6年以上を経て、ようやく無罪判決を得た。事件の背景には、女性患者が麻酔から覚醒する際に発生したせん妄による幻覚の可能性が指摘されている。東京高裁は、この幻覚が被害を訴える証拠として否定できないことを認めた。また、DNA鑑定に関しても、唾液の付着に関する疑念があり、医師がわいせつ行為を行った証明は不十分とされた。これにより、無罪判決が支持された。同医師は、判決後に記者会見を開き、警察や検察の過剰な信頼と誤った決定が、自らの生活と家族に与えた影響を強く批判した。弁護団は、無罪判決が遅すぎることを指摘し、医師の無罪確定までの苦悩を強調した。また、医師の間で職業的な萎縮が広がり、とくに乳腺外科を避ける傾向が強まる中、患者への影響を懸念する意見も出された。今回の法的な遅延は、裁判所が適切に判断を下さなかったことが原因であり、無罪判決を再度上訴できる現行制度に対する疑問も提起された。とくに、無罪判決後の検察の控訴が理不尽であり、米英のように無罪判決に対して控訴を許可しない制度の導入が必要だとする意見もみられた。参考1)乳腺外科医に再び無罪判決 「患者の胸なめたと断定できず」 東京高裁、差し戻し審(産経新聞)2)無罪の乳腺外科医「長かった」「強い憤り」 事件で「医師萎縮」の指摘も(産経新聞)3)ふたたび「無罪」になった乳腺外科医、捜査機関やマスコミに憤り「生活や仕事そして家族を奪われた」(弁護士ドットコム)4)乳腺外科医事件に再び無罪判決 弁護団は「遅すぎる」と批判 「長くて辛い日々だった」と医師(ジャーナリスト・江川紹子)2.全国6割の病院が赤字経営、病院団体が診療報酬改定の見直しを要請昨年春の診療報酬改定後、全国の病院の経営が急速に悪化し、6割以上が赤字に陥っていることが明らかになった。日本医師会と6つの病院団体が実施した調査によると、2024年6~11月までの経常利益が赤字の病院は61.2%に達し、前年同期比で10.4ポイント増加。補助金を除いた医業利益でも69.0%が赤字となり、前年から4.2ポイント悪化した。経営悪化の主因は、物価や人件費の上昇に診療報酬が追いついていないことだ。調査では、水道光熱費が前年同期比3.1%増、院内清掃などの委託費が4.2%増と報告された。給与費も2.7%増加しており、多くの病院が経費の増加に対応しきれず、経営難に陥っている。とくに、病床利用率が90%を超えなければ黒字化できない病院もあり、持続的な医療提供が困難な状況。この危機的状況を受け、日本医師会と6つの病院団体は3月12日、合同声明を発表し、診療報酬の見直しを政府に求めた。2026年度の診療報酬改定に向けて、物価や賃金の上昇を反映できる仕組みを導入する必要があると主張。補助金による短期的な支援にとどまらず、中長期的な医療費の適正配分を求めた。日本医療法人協会の太田 圭洋副会長は「病床を満床にしなければ経営が成り立たないのは異常な状況。地域の病院が突然閉鎖する危機が迫っている」と警鐘を鳴らした。また、全国自治体病院協議会の野村 幸博副会長は「公立病院では人事院勧告による賃上げが求められ、さらに経営が厳しくなっている」と述べ、自治体病院の窮状を訴えた。調査では、2024年6~11月の医業収益が前年同期比1.9%増加している一方で、給与費や光熱費の増加がそれを上回り、多くの病院が赤字に転落していることが判明。このままでは、地域医療の維持が困難になると懸念されている。病院団体は、診療報酬を適正に改定し、賃金や物価の変動に即応できる仕組みを導入することが不可欠だと指摘。日本医師会の松本 吉郎会長は「このままでは、ある日突然病院が地域から消えてしまう。国民の命と健康を守るため、診療報酬の見直しは急務だ」と強調した。今回の調査結果を受け、政府・与党内でも支援策の検討が進むとみられるが、財政的な制約の中でどのような対策を講じるかが課題である。地域医療崩壊を防ぐため、迅速かつ具体的な対応が求められている。参考1)【緊急調査】2024年度診療報酬改定後の病院経営状況調査の結果等について(日本医師会)2)“全国6割以上の病院が赤字” 調査団体「地域医療は崩壊寸前」(NHK)3)「地域から医療機関なくなる」と医師会が危機感…病院の6割超が赤字、診療報酬改定で経営難(読売新聞)4)2024年度改定後、病床利用率上昇も医業利益率と経常利益率は悪化(日経ヘルスケア)5)日医と6病院団体が声明 26年度診療報酬改定「物価・賃金上昇対応の仕組みを」地域医療崩壊に危機感(ミクスオンライン)3.医師国試合格率92.3%、女性割合が過去最高-新卒100%は4校/厚労省厚生労働省は3月14日、第119回医師国家試験の合格状況を発表した。受験者1万282人に対し、合格者は9,486人で、合格率は92.3%だった。前年の92.4%から0.1ポイント減少したものの、過去10年で2番目に高い合格率となった。新卒者の合格者数は9,029人、合格率は95.0%で、2年連続で9,000人を上回った。男女別の合格率は、男性が91.8%、女性が93.1%と、女性の合格率が上回った。合格者に占める女性の割合は36.3%と過去最多を記録した。学校別では、国際医療福祉大学医学部が新卒・既卒ともに合格率100.0%を達成した。新卒合格率100.0%は、同大学のほか、福井大学医学部、金沢大学医薬保健学域、三重大学医学部の計4校だった。一方、同日に発表された第118回歯科医師国家試験の合格率は70.3%で、前年の66.1%から4.2ポイント増加した。参考1)第119回医師国家試験の合格発表について(厚労省)2)医師国家試験、合格率92.3% 新卒合格者は2年連続で9千人上回る(CB news)3)医師国家試験2025、国際医療福祉大100%合格…学校別合格率(リセマム)4.電子カルテ情報共有サービス始動、2025年度本格運用へ/厚労省厚生労働省は健康・医療・介護情報利活用検討会の「医療等情報利活用ワーキンググループ」を3月13日に開催し、電子カルテ情報共有サービスについて2025年度中の本格運用を目指し、モデル事業が開始することとした。まず、愛知県の藤田医科大学病院を中心に試験運用が始まり、全国の医療機関や患者が電子カルテ情報を共有できる仕組みが構築される。モデル事業では、運用上の課題を明確化し、とくに「病名」情報の取り扱いについて慎重にルールを策定する必要がある。患者が自身のカルテ情報を閲覧できる一方で、未告知や診断過程の誤解を防ぐための設定が求められている。これに伴い、医療現場の負担や患者との信頼関係の維持を考慮し、慎重な運用が必要とされる。また、患者の同意に関する法的根拠が未確立であるため、現段階では個人情報保護法に基づき、医療機関と支払基金間の委託契約を通じて対応することになった。さらに、情報共有の推進と並行し、サイバーセキュリティ対策の強化も求められており、来年度の対策チェックリストが策定された。モデル事業の結果を踏まえた運用ルールの確立が、全国展開の成功の鍵となる。拙速な導入は、医療現場や患者の不安を招き、DX推進の障害になりかねないため、慎重かつ丁寧な議論が求められる。参考1)第24回健康・医療・介護情報利活用検討会医療等情報利活用ワーキンググループ(厚労省)2)電子カルテ情報共有サービスの検討事項について(同)3)電子カルテ情報共有サービスのモデル事業、まず藤田医大病院中心に開始、「病名」の取り扱いルールなども検討-医療等情報利活用ワーキング(Gem Med)5.急増する訪問看護、請求適正化へ指導体制を強化/厚労省厚生労働省は、3月12日に開かれた中央社会保険医療協議会(中医協)において、訪問看護ステーションの監視体制を強化する方針を発表した。広域で運営する事業者や診療報酬の高額請求を行う事業所を対象に指導を強化し、4月以降に新たな指導の枠組みを導入する。背景には、訪問看護の急増と、それに伴う高額請求の増加がある。厚労省によると、訪問看護ステーションの数は直近5年間で約1.5倍に増加。とくに、年間請求額が2億5千万円以上の事業所は12.8倍に急増した。また、1件当たりの請求額が50万円以上の事業所も7倍に増えている。これらの増加に対し、厚労省は「不適切な請求が行われている可能性がある」とし、監査体制の強化に踏み切った。新たな指導体制では、地方厚生局と都道府県に加え、厚労省本省も関与。これにより、複数都道府県で運営される大規模事業者への監査を強化する。さらに、請求額の多い事業所を選定し、適正な請求方法を指導する。また、eラーニングによる集団指導を検討し、訪問看護ステーション全体の適正化を図る。訪問看護は、重度患者の在宅療養支援など重要な役割を担う。その一方で、末期がん患者向けの高額報酬を悪用し、必要以上の訪問回数を請求するケースも指摘されている。厚労省は「利用者の状態に応じた適正なサービス提供を促すため、新たな監査体制を整備する」としている。参考1)訪問看護ステーションの指導監査について(厚労省)2)厚労省、訪問看護の指導監査強化 広域や高額請求の事業者が対象(共同通信)3)訪問看護の「指導」を強化へ 高額請求、不適切なケースも 厚労省(朝日新聞)4)高額請求の訪看事業所に「教育的指導」へ 来年度の早期から 厚労省(CB news)6.病床適正化進む長崎、大学病院が1割削減しハイケアユニットを新設/長崎大長崎大学病院(長崎市)は、4月1日より一般病床を現在の827床から98床削減し、729床とする方針を発表した。新型コロナウイルス感染症拡大以降、同院の入院患者数は4年間で2万5千人以上減少し、病床の稼働率も低下。さらに、県の地域医療構想では2025年度における長崎地区の高度急性期病床数が651床と推計され、同病院を含む5医療機関の予定病床数908床を大幅に上回ることから、病床数の適正化が求められていた。また、病院経営の効率化も背景にある。文部科学省によると、大学病院が100床規模で病床を削減するのは全国的にも極めて珍しいが、病床削減による補助金の活用により経営改善も視野に入れている。病床削減と同時に、同院では集中治療室(ICU)と一般病床の中間に位置する「ハイケアユニット(HCU)」8床を新設。急変のリスクが高い患者を受け入れ、より手厚い医療提供を行う体制を整える。また、削減後のスペースを活用し、理学療法士らを増員し、超急性期のリハビリテーション強化を進める方針だ。長崎市内では、長崎みなとメディカルセンターも、2月に30床の削減を実施するなど、地域の医療機関で病床適正化が進んでいる。県医療政策課は「地域の病床数は十分に確保されており、大きな問題はない」としているが、今後も少子高齢化による医療需要の変化に応じた病院経営の見直しが求められる。参考1)長崎大学病院 需要の低下で98床削減へ 経営改善の狙いも(NHK)2)長崎大学病院 一般病床を1割削減…来月から「機能適正化」、患者数減少など背景(長崎新聞)3)長崎大学病院も来月から病床を1割超削減 メディカルセンターに続き…原因は?(長崎文化放送)

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映画「クワイエットルームにようこそ」(その5)【ということはこれをすれば医療保護入院は廃止する前に廃れる!(扶養義務の縮小)】Part 3

医療保護入院が廃止されると何が困るの? その対策は?医療保護入院が廃止されることによって、人権侵害が改善され、精神障害者の自立が促進され、医療費が大幅に削減できることがわかりました。一方で、そうすることで、どんなリスクがあるのでしょうか? そして、どんな対策を講じることができるでしょうか?大きく3つ挙げてみましょう。(1)急性期の患者に治療介入ができなくなる1つ目は、これまで医療保護入院をしていた急性期の患者への治療介入ができなくなると懸念されることです。確かにそのとおりです。そうならないようにするための対策として、措置入院に新たに「急性期症状による自立不全」という要件を追加することができます。措置入院なので、家族同意はなくなり、利害関係のない精神科医(精神保健指定医)2名による判断になり公正になります。ちなみに、これはヨーロッパをはじめとする諸外国に近いやり方です2)。ただし、医療保護入院の患者がいなくなった分、その穴埋めとして、今度は措置入院の患者が長く入院させられる可能性が懸念されます。この対策として、人権擁護の具体的な判断基準や入院期間の期限を明文化する必要があります。そのためにまずは、精神保健福祉法第1条の文言は以下のように、さらに変える必要があります。現在:「…精神障害者の権利の擁護を図りつつ、その医療及び保護を行い、…」↓廃止後:「…精神障害者の権利を擁護して、その医療を行い、…」この変更で最も重要なポイントは、「保護」という言葉を削除することです。保護という言葉は、この言葉の名のもとに、子供扱いして自由を制限するパターナリズム(父権主義)の象徴であり、医療保護入院を担保するためのキーワードであったからです。また、「権利を擁護して」とシンプルに表記せずに「権利の擁護を図りつつ」などと回りくどく表記していたのは、医療保護入院と人権擁護がそもそも矛盾するために、それを避けて、表向きに両立させるためであったこともうかがえます。そして、この変更を踏まえて、精神医療審査会は基本的に精神保健指定医1名と司法関係者(弁護士など)1名による聞き取り調査にすることです。これが、可能な理由として、医療保護入院が廃止されたことで強制入院の患者数は激減しているからです。そして、精神科医も余っているからです。また、異職種の専門家の2人体制にして、同業者の馴れ合いを防ぐ必要もあります。(2)身辺自立が難しい慢性期の患者の行き場がなくなる2つ目は、もともと医療保護入院をしていた患者の中で、摂食や排泄などの身辺自立が難しい慢性期の患者の行き場がなくなると懸念されることです。確かに、そう思う保守的な人はいるでしょう。そうならないようにするための対策として、まずは本人の同意による任意入院に切り替えることです。また、精神科病院をグループホーム(共同生活援助)に機能変更することです。なお、それでも最終的に精神科病院の大半はダウンサイジングや閉院することを迫られるでしょう。その流れをつくるためにも、医療保護入院はいきなり廃止させるのではなく、徐々に廃れさせる必要があります。精神科病院はすでに一定の役割を終えており、社会構造の変化として、仕方のないことです。そして、人権侵害を招く強制入院ビジネスはこれ以上あってはならないことです。(3)地域社会の治安が不安定になる3つ目は、もともと医療保護入院をしていた患者の多くが地域に戻ってくることで、地域社会の治安が不安定になると懸念されることです。確かに、そう思う保守的な人はいるでしょう。そうならないようにするための対策として、浮いた医療費によって、訪問医療、訪問看護、訪問介護(ヘルパー)などにより人数や時間をかけて、地域社会でのサポート体制を欧州諸国のレベルまでに拡充させることができます。「クワイエットルームにようこそ」から「クワイエットルールにさようなら」へラストシーンで、明日香は退院して病院の外を出て、初めて病院の外観を知ります。そして、救急車のサイレンが近づき、先に退院した同室の患者がまた戻ってきたのを見てしまいます。明日香が自由を手に入れたことを俯瞰して噛みしめている様子をうまく描いています。彼女は「クワイエットルーム」(精神科病院への入院)という体験を経て自己成長しました。同時に、日本の社会も、権威主義から自由と平等の価値観(民主主義)へと自己成長しつつあります。その過渡期であるからこそ、さまざまな社会問題が浮き彫りになっているとも言えます。この映画は、それを象徴しているように見えてきます。まさに、「クワイエットルームにようこそ」(権威主義)から、「クワイエットルームにさようなら」(民主主義)です。私たちの多くが、権威に抵抗して自由になる明日香に感動するのも、鎌倉時代から続いた直系家族(権威主義)よりも、原始の時代に続いていた核家族(民主主義)の方が圧倒的に長く、その文化進化に適応した遺伝子進化がまだ残っているからでしょう。遺伝子進化が何万世代も繰り返してちょっとずつ変化するのに対して、文化進化は情報化などの技術革新などによって数世代の間でも大きく変化します。これを踏まえると、精神科病院の関係者は利害関係があるため限界はありますが、精神科病院に直接関わらない医療関係者をはじめ一般の人たちが、この情報化社会で、扶養義務、医療保護入院についてどんどん発信していくことで、より良い社会を目指すことができるのではないでしょうか?一昔前は、がん告知を本人ではなく家族だけにしていました。今ではまったく考えられません。それと同じことが今起きています。「家族の同意で強制入院できるなんて…そんなこと今ではまったく考えられません」と言える未来がすぐ近くに来ているように思われます。1)「生活保護と扶養義務」p.30、p.41、p.99、p.108:近畿弁護士会連合会編、民事法研究会、20142)「医療保護入院」p.40、p76:精神医療、批評社、2020<< 前のページへ

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患者本人にがん告知する?しない?-医療者間の意見対立【こんなときどうする?高齢者診療】第9回

CareNeTVスクール「Dr.樋口の老年医学オンラインサロン」で2024年12月に扱ったテーマ「医療者間のコンフリクト:医療者間の意見の対立をよりよいゴールに導くコツ」から、高齢者診療に役立つトピックをお届けします。専門性の違う職種が集まる医療チームで、意見の対立(コンフリクト)は避けられない課題です。 “対立がないことは調和ではなく無関心だ”という言葉が示すように、対立は避けるべき悪ではなく、チームがそのトピックに強い関心を持っていることの現れです。意見の対立を患者へのよりよいケアを提供するチャンスに変える方法を一緒に学んでいきましょう。コンフリクトをチャンスに変えるコンフリクトとは「複数の人が関与し、何らかの意思決定、医療行為が必要な患者の検査・治療・ケアに関する異なる意見・要求の存在、対立とそれにまつわる不和、人間関係の緊張」を指します。この内容は、大きく以下の3つに分類することができます。(1)タスク何をすべきかに関する意見の対立(2)プロセス誰がどのように役割を果たすか、認知や解釈に関する対立※同じ物事に対峙していても、考え方はさまざまであることから生じる(3)エモーション感情の対立や不一致。優越感、劣等感、満足、後悔など以下のケースが3つのコンフリクトのどれにあてはまるか想像してみてください。症例70歳男性 肺がんステージIII 家族は息子1人・娘2人場面カンファレンスメンバー看護師、医師どのような対話がされた?:看護師は「家族が本人への告知を望んでいない」と報告し、家族の意向に沿うべきと提案。一方、医師は「治療方針を決めるために本人に告知すべき」と主張し意見が対立。コンフリクトを解消する3つの鍵このケースでは、告知するか否かというタスクで対立していると考えられます。同時に現状の解釈の相違や背後にある感情的な対立も想定できます。対立要素を想定できたら、ディスカッションしやすいよう関係性を整えましょう。関係性調整のキーポイントは、共通目標・共通知識・相互尊重の3つです。共通目標の再確認医療チームの共通目標は「患者に最善の利益を提供すること」ことのはずです。この患者にとって何が大切か、最善か(Matters Most)をチームで改めて共有し直し、話し合いの土台を作ります。共通知識・認知の整備次に、全員が同じ情報を持っている状態を作ります。加えて情報の解釈がどのようなものであるかの共有も必要です。ある職種だけが知っていてほかの職種は知らない情報がないか、また同じ情報に関して解釈の相違がないかを確認します。職種間での情報格差や解釈の違いの存在に注意を払いましょう。相互尊重の姿勢自分の専門性や個人的な価値観に基づいて意見を押し付けていないか振り返りましょう。他職種の専門性や立場を尊重することで、感情的な緊張を和らげることができます。DESC法でわかりやすく伝える共通目標・共通知識・相互尊重の3つができたら、最後に話し方の型を使います。ここでのお勧めはDESC法。コンフリクト場面以外でもさまざまなタイミングで使える有用な型です。具体的に見ていきましょう。DESC法Describe状況を説明するExpress自分の感情も含めて伝えるSpecify具体的な提案を行うConsequences提案によって想定する結果を示すはじめに現在の状況を説明し(Describe)、次に意見の背景にある不安、焦り、心配などとともに懸念事項を共有します。Expressでは感情も含めて伝えることがポイントです。それらを踏まえて具体的な治療・ケアを提案し(Specify)、最後にそれによって得られる結果を示します(Consequences)。これにより、各人の現状・提案・結果を踏まえたディスカッションがしやすくなります。今回のケースでDESC法を使って医師として発言すると、例えばこのような言い方になります。「患者は肺がんステージIIIですが、ご家族は告知を希望していないとのことです。一方で、患者本人の自分自身の健康・医学的情報の共有や告知などへの希望は十分把握できていません。患者には状況を知る権利があり、治療方針が本人の意思と一致しないことを懸念しています。ご本人に情報共有の希望や共有する際の方法などを確認し、本人が知りたい場合には家族と調整して情報を共有したいと思います。希望しない場合には、希望しない理由や、それでも知っておきたいことなどを確認して、家族の意向に沿って治療を進める方向で考えることを提案します。」いかがでしょうか?最後に、今回のケースを通じて次の問いかけを考えてみてください。自分の現場で同様の対立が起きたら、どのように対応しますか?共通目標・共通知識・相互尊重の3つをどのように実践できますか?DESC法を使うことで、どのように対話を進められるでしょうか?これらをシミュレーションすることで対立をチャンスに変えるヒントが見つかるはずです。ぜひ、一緒に練習していきましょう! よくある意見の対立症例はオンラインサロンでオンラインサロンメンバー限定の講義では、サロンメンバーが体験したコンフリクト2例をもとにどのような対応が可能かディスカッションしています。また、綿貫聡氏(東京都立多摩総合医療センター救急・総合診療科医長)を迎えた対談動画で、診断エラーを減らす方法の学びもご覧いただけます。

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第235回 麻酔薬を巡る2つのトピック、アナペイン注供給不足と芸人にプロポフォール使用の配信番組で麻酔科学会大忙し(前編)

東京女子医大新学長に国際医療福祉大の山中寿教授こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。同窓会組織・至誠会と学校法人の不適切な資金支出や、寄付金を重視する推薦入試や人事のあり方などが問題視され、8月に前任理事長が解任された東京女子医大ですが、10月18日に理事会が開かれ、理事会の全理事と監事が辞任、新しい学長には国際医療福祉大の山中 寿教授(70)が選任されました。東京女子医大については、本連載でも「第226回 東京女子医大 第三者委員会報告書を読む(前編)『金銭に対する強い執着心』のワンマン理事長、『いずれ辞任するが、今ではない』と最後に抗うも解任」などで度々書いてきましたが、結局、経営陣は総入れ替えになりそうです。新しく学長に就任した山中氏はリウマチ学の権威で、1983年から東京女子医大に在籍、2003~18年には同大附属の膠原病リウマチ痛風センターなどで教授を務めていました。どういった経緯で山中氏が選ばれたのかは不明ですが、女子医大の内実をよく知り、かつ同大病院の名物センターの一つ、膠原病リウマチ痛風センターを切り盛りしていた実績が買われたのでしょう。山中氏は国際医療福祉大の教授であり、同大関連の医療法人財団順和会山王メディカルセンターの院長でもありました。国際医療福祉大が、厚生労働省官僚の主要“天下り先”であることを考えると、国、厚生労働省の意向も少なからず反映されたのかもしれません。70歳という年齢はやや行き過ぎている感は否めませんが、正常かつ公正な大学運営が行われることを期待したいと思います。供給不足が社会問題化していたアナペイン注に不足解消の兆しさて今回は麻酔薬を巡るトピックを2つ紹介します。まずは、6月以降限定出荷が続き、供給不足が社会問題化していた局所麻酔薬のアナペイン注(一般名:ロピバカイン塩酸塩水和物)ですが、不足解消の兆しが見えてきました。アナペイン注の供給不足については、10月2日付のNHKニュースでも大きく報じられました。同ニュースは、「国立がん研究センター中央病院では、がんの手術にアナペインを使っています。ところが出荷制限でことし6月ごろから減少し始め、8月になってからはほとんど入荷しなくなりました。このため臨床試験や大腸がんの手術に使用を限定しているということです」と報じ、さらに「産婦人科の中には出産の際に麻酔で陣痛を抑える無痛分べんに応じきれなくなることを心配する声も聞かれます」と、市中の産科での混乱も伝えていました。そのアナペイン注ですが、製造販売元のサンドは10月9日、「アナペイン注2mg/mL」について「10月8日、製造所追加の承認を取得いたしました」と、翌9日には「アナペイン注7.5mg/mL」について「10月9日、製造所追加の承認を取得いたしました」と発表しました。いずれも初回出荷に向けた最終確認、調整に入っているとのことです。なお、「アナペイン注10mg/mL」については製造所追加の承認取得の手続きを進めているとのことです。また、福岡 資麿厚生労働大臣は10月8日の閣議後会見で、「アナペイン注」の限定出荷が続いている現状を踏まえ、今年8月に薬事承認されたテルモの後発品が年内にも供給開始される見込みだと説明しました。海外生産のリスクを回避しようと国内生産に切り替えようとしたことが裏目にそもそもなぜ、アナペイン注は供給不足に陥ったのでしょうか。サンドは5月に出した「アナペイン注2mg/mL,7.5mg/mL,10mg/mL(10管、1バッグ)供給に関するお詫びとご案内」で、「製造委託先変更に伴う、逸脱による製造遅延が発生し、調査および品質・安全確保のために製造を停止しております」と理由を説明していました。NHKなどの報道によれば、製造を行っている関連会社が製造所を海外から国内に移そうとしたところ技術移転に時間がかかることが明らかになり、国内製造を延期せざるを得なくなったとのことです。海外で製造される医薬品が海外の工場などの事情で供給不足に陥った事例については、本連載でも「第74回 膵がん治療に欠かせないアブラキサン10月供給停止へ、学会、患者会が他工場製品の緊急承認要望」で取り上げました。このときは、米国の1工場の不具合により、進行膵がんの1次化学療法薬として使われるアブラキサンが供給停止となった問題を取り上げ、海外製造に依存するリスクについて書きました。しかし、今回のアナペイン注は、そうしたリスク回避のため国内生産に切り替えようとしたことが裏目に出たわけです。企業の経営戦略は間違ってはいないものの、詰めが甘かったということでしょう。「逸脱による製造遅延」の「逸脱」って?サンドの「お詫びとご案内」に出てくる「逸脱による製造遅延」の「逸脱」は日常あまり聞かない単語です。これは、「医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令(通称GMP省令)」で定めた製造手順から「逸脱」しており、製造工場が承認されなかったことを意味します。「アナペイン注2mg/mL」と「アナペイン注7.5mg/mL」については「逸脱」は解決され、製造所の承認も得たとのことなので、現場の医療機関はあとは出荷が軌道に乗るのを待てばいい、ということになります。なお、日本麻酔科学会は「長時間作用性局所麻酔薬が安定供給されるまでの対応について」1)という告知で、日本産科麻酔学会は「理事長メッセージ」2)で、アナペイン注が安定供給されるまでの対応策として、使用の優先順位を策定することやほかの鎮痛方法の検討などを推奨しています。もうしばらくは、学会の提言に従って麻酔薬を使うしかなさそうです。麻酔科学会が配信バラエティ番組で安易にプロポフォールが使われたことを強く非難ところで、日本麻酔科学会は「アナペイン注7.5mg/mL」の製造所追加の承認取得を同学会のサイトで会員に伝えた同じ10月16日、別件の興味深い理事長声明を出しています。「静脈麻酔薬プロポフォールの不適切使用について」と題されたその声明3)は、「10月14日配信開始の番組において、 プロポフォールが内視鏡クリニックを舞台に使用され、何らかの外科的処置を必要としない人物を意図的に朦朧状態にするという内容が含まれていることを知り、深い憂慮を抱いております」として、配信されたバラエティ番組で芸能人に対して安易にプロポフォールが使われたことを強く非難してしています。調べてみると、麻酔科学会が問題視したのは、Amazon Prime Videoで10月14日から配信が始まった番組「KILLAH KUTS(キラーカッツ)」中の1エピソード、「EPISODE2 麻酔ダイイングメッセージ」でした(この項続く)。参考1)長時間作用性局所麻酔薬が安定供給されるまでの対応について/日本麻酔科学会2)理事長メッセージ/日本産科麻酔学会3)静脈麻酔薬プロポフォールの不適切使用について/日本麻酔科学会

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余命を問われたら?【もったいない患者対応】第14回

余命を問われたら?登場人物<今回の症例>60歳男性腹痛を主訴に精査された結果、胃がん、肝転移、腹膜播種が判明化学療法を行う予定になった<説明の後、患者さんから質問をされました>先生、私の余命はどのくらいなのでしょうか?そうですね。およそ10ヵ月くらいでしょうか。えぇっ! 1年も生きられないのですか…。残念ですが、StageIVの胃がんですと、手術で取ることもできませんので、なかなか予後は厳しいですね。そうですか…。~数日後~先生から余命10ヵ月だと言われて本人がふさぎ込んでいます。長く生きられないなら化学療法を受けても無駄だから、治療はやめたいと言っています。そんな…。10ヵ月といっても人によって違いますから…。先生の説明が悪かったんじゃないですか? 本人はもう意欲をなくしています。【POINT】切除不能の胃がん患者さんに、唐廻先生は唐突に余命を聞かれ、思わず具体的な数字だけを返答してしまいました。患者さんはその短さに驚き、治療意欲を喪失。化学療法を始めるのが難しくなっています。本来であれば、化学療法を行うことで少しでも生存期間を延長できたはず。唐廻先生の責任は重大ですね。“余命”に関する質問にはかなり慎重に答える必要があるとくに悪性腫瘍の患者さんからは、余命を聞かれることが多いと思います。テレビドラマや小説などで「余命○ヵ月」という言葉をよく聞くため、医師は“余命”をある程度正確に言い当てられると考える患者さんは多いのです。しかし、余命を尋ねられたときは、かなり慎重に返答する必要があります。説明不足だと、今回のような事態になりかねません。「生存期間中央値」「5年生存率」は、個々の症例に当てはめることはできないまず、余命としてなんらかの数字を伝えるなら、該当するのは「生存期間中央値」か「5年生存率(疾患によっては「3年」や「10年」も)」になるのが一般的でしょう。生存期間中央値は、同じ進行度の患者さんの生存期間を並べたとき、ちょうど中央にくる値のことです。一方、5年生存率は、同じ進行度の患者さんを追跡したとき、5年後に何%の人が生存しているかを示す値ですね。いずれも、過去の臨床試験などのデータを参照すれば得られる数字ですが、個々の患者さんが生きられる期間や生きている確率を推測したものではありません。StageIVの胃がんの生存期間中央値が10ヵ月だったとしても、「目の前の胃がん患者さんの生きられる期間が10ヵ月だ」という意味ではありません。あくまで中央値ですから、それより長く生きた人もいれば、短くしか生きられなかった人もいるでしょう。同じStageIVであっても、1ヵ所の肝転移を有する胃がんもあれば、多数の肝転移に加え腹膜播種で腹水が貯留している状態の胃がんもあります。それぞれで予後が同じはずがありません。治療がどの程度効果を示すかによっても予後は変わってくるでしょうし、個々の患者さんがどんな併存疾患をもっているかによっても、治療成績は変わってきます。患者さんに余命を聞かれたときは、以上のことをすべて説明し、「余命を推測することがいかに難しいか」をきちんと理解していただく必要があります。質問の意図までよく考えるまた、余命を尋ねられたときは、患者さんが「なぜ余命を知りたいと思ったのか」まで踏み込んで考える必要があります。たとえば、「余命がとても短いなら、効果の高さより副作用が少ない治療を選びたい」といった気持ちがあるのであれば、患者さんはできる限りQOLを落としたくないと考えているのかもしれません。ではQOLを落としたくない理由はなんでしょうか?「子供の結婚式に元気な姿で参列したい」「妻と海外旅行に行きたい」「会社経営をしていて、まだ現場を離れられない」そんな背景があるなら、それを治療方針に反映させなくてはなりません。「どんな治療を受けたいと思っているのか」「どんな人生を送りたいと考えているのか」といった思いが、“余命への疑問”の背後に隠れている可能性があるのです。そのためには、ご本人だけでなく、ご家族の考えも知っておかねばなりません。このように、安易に予後を数字だけで伝えても、まったくもって説明不足だということがおわかりいただけるかと思います。これでワンランクアップ!先生、私の余命はどのくらいなのでしょうか?テレビなどで余命という言葉をよく聞きますが、実は医師が余命を言い当てることはできないんです※1。私自身、これまで患者さんに「余命何ヵ月です」というような告知をしたことはありませんよ。いまからその理由を説明したいと思いますが、その前に、〇〇さんがなぜ余命について知りたいのか、教えていただけませんか?※2※1:「余命」に関する誤解は丁寧に解こう。※2:余命を知りたい理由までしっかり聞く。

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英語で「オブラートに包む」は?【1分★医療英語】第145回

第145回 英語で「オブラートに包む」は?《例文1》I did not sugarcoat anything when I obtained informed consent.(インフォームドコンセントを得た際には、まったくオブラートに包まず話しました)《例文2》I will be always honest with you.(私は、常にあなたに対して正直に接します)《解説》医療現場では、患者に対してがん診断などの重大な告知をすることがあります。その状況でよく使われる日本語の表現に「オブラートに包んで話す」があります。この表現を英語に訳すのは難しいと思われるかもしれませんが、実は適切な類似語があり、感覚的にはほぼ直訳することが可能です。“sugarcoat”という英語表現は、「砂糖で物質の表面をコーティングする」ことを意味し、苦い薬を飲みやすくするために使用される動詞です。そのため、“sugarcoat”は「受け入れ難い内容を、直接的でない言い方で伝える」という意味もあります。一方、オブラートはゼラチン質の薄い膜で、苦い薬を包んで飲みやすくするために使われることから、日本語の「オブラートに包む」という表現の由来となっています。単語自体は異なりますが、その由来は驚くほど類似しています。ほかの類似表現としては、“be honest with someone”があります。直訳すると、「相手に対して正直である」という意味です。講師紹介

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第220回 コロナ第11波に反しワクチンが打てない!?その最大原因は…

新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)ワクチンの特例臨時接種が今年3月末で終了し、2024年4月以降は65歳以上の高齢者と基礎疾患を有する60~64歳が秋冬1回の定期接種、そのほかの人は任意接種となる1)のは周知のことだ。現在は秋冬の定期接種に向けての準備期間となるが、実はこの時期、新型コロナワクチン“難民”が出現している。コロナワクチン難民?私がこのことを知ったのは6月に入ってすぐだ。友人から何の脈絡もなく「ちょっと教えてほしいんだけど、コロナの予防接種って任意になってからできるとこが少ないの? 仙台の人なんだけど、病院や行政や医師会に聞いてもみつからなくて埼玉で接種したって…」とのメッセージが送られてきた。今だから明かすと、この時は多忙だったことに加え、極めて特殊事例か最悪はガセネタだと思って既読スルーしてしまった。もっとも特例臨時接種終了後、接種可能な医療機関が減少するであろうことは容易に想像がついた。ご存じのように新型コロナのmRNAワクチンは保管管理に手間がかかる。現在、国内で承認されているのは、ファイザーのコミナティ、モデルナのスパイクバックス、第一三共のダイチロナの3種類。このうちコミナティとスパイクバックスは、出荷時は超低温で冷凍され、2~8℃の冷蔵庫で解凍後の保存可能期間はコミナティが10週間、スパイクバックスが30日間。いずれも再冷凍は不可だ。ダイチロナは冷蔵保存が可能で保管可能期間は7ヵ月とコミナティやスパイクバックスよりは扱いやすい。そして、1バイアル当たりはコミナティが6回接種分、スパイクバックスが10~20回接種分、ダイチロナは2回接種分で、1度針を刺したバイアルはコミナティ、スパイクバックスでは12時間以内、ダイチロナは24時間以内に使い切らねばならない。要はそれだけの接種希望者を一度に集めなければ、残りは廃棄になり、医療機関側はその分の損失を被るだけになる。この点を解決すべく、コミナティに関しては5月中旬に1人用バイアルが登場したばかりだ。とはいえ、まさか東北地方の首都と言ってもいい仙台で、新型コロナワクチンを接種できない事態はあるはずがないと思っていた。実際、友人からのメッセージにも「あれだけたくさんあったはずのワクチンがないって」との記述があったが、私も同じ考えだったのだ。しかし、数日後、たまたまこの友人と直接会う機会があり、そこで話を聞いて一定の信憑性があると感じた。大元の情報提供者は私の地元である仙台に在住。たまたま、以前の本連載で触れた父親が使い始めた車椅子の操作を確認するため帰省する予定だったので、実際に話を聞いてみることにした。任意接種できる場所、どこにもみつからない!情報提供者のAさんは40代の大学教員。20年ほど前から風邪をひくと咳が1~2ヵ月続く体質で、仙台に住み始めてから呼吸器科を受診し、咳喘息の診断を受けている。このため年1回ぐらいの頻度でステロイド吸入薬を頓用していたが、コロナ禍中にユニバーサルマスクが社会全体に浸透したおかげで、2020年以降は咳喘息の症状をほとんど経験しなかったという。新型コロナワクチンに関しては、いわゆる自己申告の基礎疾患保有者として優先接種対象となり、昨年9月に6回目の接種を終了していた。しかし、今年2月にAさんの子供の学校で新型コロナが大流行し、自身も家庭内感染をしてから事態は一変。新型コロナの主な症状が治まった後も咳の症状はひかない。しかも、「大きめの声を出すと、咳が止まらなくなる。ひどいときは喋れないぐらい」(Aさん)まで症状が悪化したそうだ。受診した医療機関で新型コロナ感染や咳喘息の既往を伝えたところ、診察した医師から「半年くらい症状が続くと思われます」と即答された。いわゆる後遺症である。私が話を聞いたのは6月下旬だったが、取材中にも一度ひどく咳込んで水を口にし、ステロイド薬も1日1回は吸入しなければならなくなっていた。二度と感染したくないと思ったAさんは3月中旬から新型コロナワクチンの任意接種ができそうな医療機関を探し始めた。しかし、当時はいくら検索しても、見つかるのは同月末の特例臨時接種終了の告知ばかり。厚生労働省にも直接連絡を取ってみたが、「任意接種できる医療機関の情報はとりまとめていないので、各医療機関に個別に問い合わせてください」との返答で、かかりつけの呼吸器内科も、今後、任意接種を自院で行うかは未定とのことだった。一旦は諦めたA氏だったが、コミナティの1人用バイアルが5月中旬にも承認の見通しと報じられていたため、5月のゴールデン・ウイーク中から再び接種可能な施設を探すために医療機関へ問い合わせを始めた。仙台市内の大学附属病院、公立・公的病院から順に電話で問い合わせ、いずれも「接種は行っていない」との回答を受けたという。その後は呼吸器内科がありそうな病院・クリニック、特例臨時接種時に接種を行っていた病院・クリニックなどにも電話をかけ続けたAさん曰く、「『盛ってませんか?』と言われることもあるが、100軒以上は電話した」という。しかし、仙台市内でこの時期、任意接種可能な医療機関はついに見つからなかった。Aさんはこのほかにも宮城県庁、仙台市役所、宮城県と仙台市の医師会にも問い合わせたが、いずれも「現時点で任意接種できる医療機関はわからず、そうした情報をとりまとめてもいない。とりあえずご意見は承るが、現時点で任意接種対応医療機関情報をとりまとめる予定はない」という趣旨の回答しか得られなかった。新型コロナワクチン求め、問い合わせ窓口巡りまた、ファイザー、モデルナ両社の一般向け相談窓口にも問い合わせをしたが、接種可能な医療機関情報の公表について、ファイザーは「まだそういう予定はない」、モデルナは「検討中」との回答。そして嬉しいことにモデルナ社への問い合わせ時に秋田県由利本荘市が同市内で任意接種可能な医療機関名の一覧をホームページ(HP)で公表していたことを知った。Aさんは仙台から車で由利本荘市に行くことも念頭に、HPに掲載されていた各医療機関に問い合わせたが、いずれの医療機関もこの時点では接種を始めていないことがわかった。そこでAさんは由利本荘市健康福祉部健康づくり課に連絡を取り、市外在住者であることを伝えたうえでリストの更新を要請した。その甲斐があってか、現在は同HPでは各医療機関の任意接種開始時期が記載されている。この時点でほぼ万事休すかに思われた。AさんはX(旧Twitter)でワクチン接種医療機関をまとめているアカウントをウォッチし、東京都内で何軒か任意接種が可能な医療機関は見つけてはいたが、いずれも東京駅からはさらに電車で1時間は要する場所。「これでは接種に行くのはほぼ1日がかりになる」と思っていた矢先、X上で偶然、新幹線で大宮まで約1時間、そこから在来線に乗り換えて10分ほどで行ける埼玉県さいたま市浦和区で接種可能なクリニックを発見した。同クリニックのHPで接種可能なことを確認して予約を入れ、仙台から新幹線で現地に向かい無事接種することができた。ワクチンの接種料金は1万6,000円。これに仙台から浦和までの新幹線と在来線の往復料金が2万1,000円強。合計4万円弱の費用がかかった。なんとも高価な接種となったが、多くの人にとってはそこまでの対応はほぼ不可能だ。こんなにも苦労したAさんだが、現在はモデルナだけが接種可能な医療機関を公表している2)など状況はやや改善している。そこでmRNAワクチンを供給する3社に私自身が今回の事例を説明し、各社の対応について問い合わせてみた。任意接種可能な医療機関について、各社の対応まず、モデルナ社によると、接種可能医療機関の公表は5月下旬にスタート。その経緯について、同社のコミュニケーションズ&メディア担当者は「どの施設でワクチン接種できるのか情報がなく困っている患者さんやご家族は多く、コールセンターへの問い合わせも多くあったため」と回答した。現時点では掲載に同意した医療機関のみ公開しており、「当社サイトを経由して、ワクチンを接種できたとの声もいただいている」という。ファイザーの広報部門は「当社への問い合わせの詳細な内容は回答できないが、ワクチン接種医療機関がみつけられず、困っている人が一部にいることなどは認識している。現時点では、一般人に医療用医薬品の宣伝を禁じる広告規制なども鑑み、接種可能医療機関の検索システムなどはHPに設けてはいない。ただ、接種希望者への適切な情報伝達は社としても重視をしており、その実現のために現在さまざまな可能性を検討中」とのこと。第一三共のコーポレートコミュニケーション部広報グループは「一般の方から当社相談窓口に接種医療機関などに関する問い合わせをいただいている事実はあるが、現時点で接種可能な医療機関リストなどを公開する予定はない」という。ちなみに広告規制との兼ね合いについて、すでに接種医療機関を公表しているモデルナに重ねて問い合わせしたところ、「社内の必要な承認プロセスと厚生労働省への確認も経たうえで公開している」とのことだった。今回、接種に至るまで驚くほど苦労したAさんに改めてこの事態をどう考えるかを尋ねたところ、次のような答えが返ってきた。「何よりもまず、行政や医師会がきちんと動いてほしい。私がネット上を見る限り、今現在も接種希望者は一定数いる。私は強い接種希望があったから、埼玉県まで接種に行ったが、多くの人が同じことはできない。任意接種と言いつつ、地域によっては事実上接種不可能という現状は問題だと思う」少なくとも今回のような事例は、行政、医師会、製薬企業のそれぞれが単独で解決できるコトではないのは確かである。参考1)厚生労働省:新型コロナワクチンについて2))モデルナワクチン接種医療機関一覧

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日本BDが血培ボトル出荷調整、学会が対応を注意喚起

 日本ベクトン・ディッキンソンは7月3日のリリースにて、「BDバクテック血液培養ボトル」8製品を出荷調整することを発表した。米国本社より、供給元からの同製品の原材料であるプラスチックボトルの供給に3ヵ月程度の遅延が発生したため、今後の製造と出荷が通常時の50%程度に制限される見込みであるとの報告があり、当面の間、世界的にすべての需要を満たすことが困難な状況となった。本報告を受けて、日本臨床微生物学会と日本感染症学会は同日、医療機関側でも出荷調整の数ヵ月間を大きな混乱なく診療ができるように、対応について告知した。 両学会は、「特にこのような情報を受け取った場合、自分の病院だけはなんとか十分量を確保しようとする動きが出てきますが、それが病院間のアンバランスを生み、極端に血液培養ボトルが不足する医療機関が生じかねない状況を生んでしまいます。そのため、国内の医療機関が歩調を合わせて被害を少なくするため、下記の点について会員の皆様に徹底をお願いします」と注意を促している。 両学会による注意喚起は以下のとおり。1. 血液培養ボトルの発注量の適正化 これまで発注していたレベル以上の発注や在庫の確保を目的とした発注については、極力控えていただくようお願いします。2. 血液培養の対象の見直し 血液培養の対象となる優先順位から考えて、菌血症・敗血症患者への2セット採取は必要と考えます。ただし、その一方で、菌血症の陰性化確認は対象を限定するか1セットでの採取はやむを得ないと思われます。また、状態が比較的安定している患者や他の培養検査で原因菌の検索が可能と思われるような患者においては、血液培養の対象からはずすこともご検討ください。3. 院内ルールの設定と周知の徹底 各医療期間によって血液培養の実施状況は異なるため、各施設に応じた院内ルールを決めていただく必要があります。現在よりも半数程度に血液培養を抑えるために、どの部分を減らせるかについては微生物検査室やASTなどで相談していただき、妥当な院内ルールの案をご検討ください。そしてそのルールが守られるよう院内における周知徹底をお願いします。

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映画「チャーリーとチョコレート工場」【夢の国は「中毒」の国!?その「悪夢」とは?(嗜癖症)】Part 1

今回のキーワード嗜癖(アディクション)物質の嗜癖症行動の嗜癖症人間関係の嗜癖症嗜癖症スペクトラム子育て(家庭環境)の違いテーマパークお祭り皆さんはテーマパークが好きですか? とくに子供は大好きですよね。おいしいお菓子やすてきなグッズが至るところに並べられ、乗り物は選びたい放題。そして歌とダンスのパレードにキャストからのおもてなし。まさに夢の国。子供も大人も楽しめる、ザ・エンターテイメントです。そんなところにはずっといたい! でも、もし本当にずっといたら、どうなるでしょうか?今回は、嗜癖(しへき)をテーマに、映画「チャーリーとチョコレート工場」を取り上げます。この映画を通して、精神医学の視点から、嗜癖症について掘り下げます。そして、何ごともハマりすぎることはとくに子供に有害である理由を解説します。そこから、この映画の教訓を一緒に導いてみましょう。4人の子供たちはすでに何にハマってる?-3つの嗜癖チョコレート職人ウォンカが作ったチョコレートは世界中で大人気。しかし、彼のチョコレート工場の中は完全非公開であり、謎に満ちていました。そんなある日、彼は以下の告知を出します。「工場見学に5人の子供をご招待します。金色の招待チケットが、世界中で売られているどれかのチョコレートの包み紙の中にそれぞれ1枚ずつ、全部で5枚入っています。さらにそのうちの1人は想像を絶する特別な賞品がもらえます。」世界中がチケット争奪で大騒ぎとなる中、運良く引き当てた5人の子供が工場見学に揃ってやってきます。まず、そのうちの4人がすでにハマっていることを通して、嗜癖を大きく3つに分けてみましょう。なお、嗜癖(しへき)(アディクション)とは、嗜好の癖、つまり嗜んで好きになり癖(習慣)になる状態で、依存のより広い概念として現在心療内科・精神科で使われるようになっています。日常会話では「ハマる」「病みつき」「〇〇中毒」と言い換えられます。(1)チョコレートにハマる―物質の嗜癖1人目のオーガスタスは、大のチョコレート好きの食いしん坊。小学生にして、すでに体格は大人並みの肥満体形です。1つ目の嗜癖は、何かを体に摂取することにハマる、つまり物質の嗜癖です。これは、チョコレートなどの食べ物のほかに、アルコール、コーヒー、タバコ、ドラッグ(薬物)などが挙げられます。(2)買い物またはゲームにハマる―行動の嗜癖2人目のベルーカは、お金持ちで何でも自分のものにしたがる欲しがり屋さん。経営者である父親の財力によって、小学生にして手に入れられないものはありません。招待チケットも、父親のチョコレートの買い占めによって手に入れました。また、3人目のマイクは、激しい戦闘ゲームにハマる中学生のゲーマー。大勢のテレビリポーターの前でもゲームをやめずに「死ね!ぶっ殺す!」と叫び、知ったかぶりで反抗的でした。2つ目の嗜癖は、何かをすることにハマる、つまり行動の嗜癖です。これは、買い物(浪費癖)やゲームのほかに、ギャンブル、コレクション(収集癖)、抜毛癖、美容形成(醜形恐怖)、自傷行為(情緒不安定)、万引き(窃盗癖)、性癖、ポルノ(セックス)などが挙げられます。(3)ちやほやされることにハマる―人間関係の嗜癖4人目のバイオレットは、ガム噛みの世界ジュニアチャンピオン。部屋中にいくつものトロフィーが飾られています。テレビレポーターたちの前でも、世界記録挑戦中のためにガムを噛み続け、「私が一番」「私が特賞をもらう」と勝つことにこだわります。3つ目の嗜癖は、人と何かでかかわることにハマる、つまり人間関係の嗜癖です。これは、ちやほやされること(承認)のほかに、バッシング、虚言癖、世話好き(共依存)、甘え癖(依存)、支配すること(モラルハラスメント・DV)などが挙げられます。次のページへ >>

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第191回 医師の地域偏在解消へ、財務省の提案に日医が反発/財政制度分科会

<先週の動き>1.医師の地域偏在解消へ、財務省の提案に日医が反発/財政制度分科会2.急増する医療機関の倒産・休廃業、背景に後継者問題/帝国データバンク3.退院前の指導不足で市民病院が逆転敗訴、約7,500万円の賠償命令/名古屋高裁4.患者受診せずがん告知が1年以上遅れ、大腸がんステージ進行/神戸市立医療センター5.医療機器メーカーとの癒着疑惑、整形外科医逮捕/東京労災病院6.元理事長への不正な麻薬処方、元副学長が医師法違反の疑い/日本大学1.医師の地域偏在解消へ、財務省の提案に日医が反発/財政制度分科会財務省は、4月16日に財政制度分科会を開き、この中で少子化対策のほか医師の偏在問題について議論を行った。2020年の医学部定員を前提とした厚生労働省の将来推計では、2029年ごろにマクロでは医師需給が均衡し、医師の供給過剰が見込まれ、今後は医学部の定員の適正化が必要と指摘された。現状のままでは大都市部において、医師や診療所数が過剰となり、地方はそれらが過小のまま続くとして、診療所の偏在是正のために都市部での新規開業を規制し、診療所が不足している地域での診療報酬の単価を引き上げることを提案した。これは地域や診療科ごとに医師の定員があるヨーロッパのシステムを参考にしている。武見 敬三厚労大臣は、今後の医師の偏在対策を「骨太の方針」に組み込み、具体的な方向性を年末までに示すと述べた。日本医師会は財務省提案に強く反対しており、医師の偏在は人口分布に起因する問題であり、診療報酬での調整は不適切であると主張している。さらに医師会は、地域枠など既存の対策を強化することが先決であるとしている。また、厚労省も地域医療の将来の姿や偏りの見直しを議論するために「新たな地域医療構想等に関する検討会」(座長:遠藤 久夫氏[学習院大学長])を立ち上げて議論を開始している。文部科学省も、医学部の特別枠を通じて医師を地方に派遣する新たなプログラムを提案し、これにより地域医療に貢献する医師の養成を目指している。これにより大学病院から地域への医師派遣を容易にし、地域医療の充実を図りたいとしている。これらの提案と議論は、わが国の医療システムの将来に重大な影響を与える可能性があり、医師の偏在解消を目指す一連の施策が、どのように進展するかが注目されている。参考1)こども・高齢化 財政制度分科会(財務省)2)第2回新たな地域医療構想等に関する検討会 資料(厚労省)3)医師の都市集中、解消探る 過剰地域の報酬下げ/開業規制 財制審提言(日経新聞)4)過剰地域の診療報酬下げ「受け入れられない」 医師会長(同)5)医師偏在問題、「都市部で開業規制を」と財務省提言 医師会は反発(朝日新聞)6)医師の偏在解消で「大学特別枠」、文科省が試案 大学病院から地域への派遣強化(CB news)2.急増する医療機関の倒産・休廃業、背景に後継者問題/帝国データバンクわが国の医療機関の休廃業・解散件数が2023年度(2023年4月~2024年3月)に過去最多の709件に達し、過去10年で2.3倍となった。そのうち診療所が23年度は580件と全体の8割超を占めていることが帝国データバンクの調査で明らかになった。医療機関の倒産・休廃業数は前年の517件から大幅に増加していた。同様に、歯科医院も110件と過去最多を記録。同社によれば、経営者の高齢化と後継者不在が主な原因であり、今後もこの傾向は続くと予測されている。また、2023年度には医療機関の倒産件数も過去最多を更新し、55件が報告された。これは2009年度の45件を上回る数であり、診療所と歯科医院がそれぞれ28件と24件で過去最多を更新している。これらの倒産は法的な手続きを経て確認されたもので、高齢経営者の健康問題などが倒産につながるケースもみられている。日本医師会の「医業承継実態調査」では、診療所の約半数が後継者不在と答えており、帝国データバンクの企業概要ファイルによると、2024年には診療所経営者のボリュームゾーンが65~77歳となっている。この高齢化が顕著な中で、診療所はコンビニの約2倍の数が存在し、狭い市場での競争が熾烈を極めている。こうした状況は、医療機関の持続可能性に深刻な影響を及ぼしており、とくに地域医療にも影響が出ている可能性がある。今後、後継者問題の解決や高齢経営者の支援策を強化することが急務となる。参考1)医療機関の「休廃業・解散」 動向調査(2023年度)(帝国データバンク)2)医療機関の休廃業・解散が過去最多、昨年度 計709件、診療所が8割超(CB news)3.退院前の指導不足で市民病院が逆転敗訴、約7,500万円の賠償命令/名古屋高裁気道確保のため「カニューレ」を装着していた6ヵ月の女児が、退院後に低酸素脳症を発症し、3歳で亡くなった事件について、名古屋高等裁判所は1審の判決を覆し、一宮市に約7,500万円の賠償支払いを命じた。裁判では、一宮市立市民病院が退院時の必要な救命処置の指導を怠ったことが問題視された。女児は、喉頭の組織が軟弱で、気管が塞がりやすく呼吸がしづらい「喉頭軟化症」であり、気管カニューレを必要としていた。入院中には装着器具が外れる事故が3回発生していたが、これについて病院側から十分な説明や指導が行われていなかったとされている。両親は当初、原因を自分たちに求めていたが、裁判を通じて同病院の責任が明らかになり、「娘の無念を晴らせた」と安堵の声を上げた。同病院は「判決文が届いていないので、現時点ではコメントを差し控える」と述べている。この判決は、医師の指導義務違反を問題視した点で重要な意義を持つ。代理人弁護士の森下 泰幸氏は、「気管カニューレが外れる事故は全国で相次いでおり、今回の判決を受け、退院時には必ず救命方法などの指導を全国の病院で徹底してもらいたい」と訴えている。この判決により、今後の医療機関における指導・教育のあり方に影響を与えると考えられる。参考1)“医師は指導義務怠る” 1審と逆 市に賠償命令 名古屋高裁(NHK)2)愛知・一宮市に7,400万円賠償命令 呼吸用器具の事故後に女児死亡(朝日新聞)3)気道確保の重要性など説明せず、3歳女児死亡 遺族が逆転勝訴(毎日新聞)4.患者受診せずがん告知が1年以上遅れ、大腸がんステージ進行/神戸市立医療センター神戸市立医療センター中央市民病院は、60代の男性患者が大腸がんと診断されたにもかかわらず、診断結果の告知が1年2ヵ月遅れるという重大なミスを病院側が公表した。2022年8月に内視鏡検査を受けた男性は、翌月に大腸がんと診断されたが、結果を説明するために予定していた受診日に来院しなかったため告知が行われなかった。その後も男性は、別の科で定期的に通院していたが、告知されなかったため治療開始が遅れ、男性のがんはステージ1からステージ3bまで進行していた。この事実が明らかになったのは、男性が2023年11月に別の疾患で入院し、脳神経内科の医師がカルテを確認したときであった。同病院では、未受診患者を管理するリストがあり、通常は診療終了後にリストから外されるが、今回の重大案件では、男性がリストから誤って外されていた可能性が指摘されている。この案件を受け、同病院では未受診の患者の管理方法を見直し、ルールの明文化を進めている。この重大案件は、病院内の情報管理システムの改善の必要性を浮き彫りにした。同病院は男性と補償についての協議を行っており、病院側は公式に謝罪している。参考1)大腸がんと診断された患者に1年2ヵ月告知忘れる…その間にステージ「1」から「3b」に進行(読売新聞)2)がん告知日に患者来院せず…そのまま1年超、ステージ3に 病院謝罪(朝日新聞)5.医療機器メーカーとの癒着疑惑、整形外科医逮捕/東京労災病院東京労災病院の整形外科副部長の医師(41歳)が、特定の医療機器メーカーの製品を使用することで現金約50万円の賄賂を受け取ったとして逮捕された。この事件では、逮捕された医師が同僚にも同じメーカーの製品の使用を勧め、それにより得たポイントを自身の利益に変換していたことが判明している。また、医師は医療機器の選定に影響を与えたとされ、医師が受け取ったポイントは現金に交換可能で、飲食代などの領収書を提出することで換金されていたと報じられている。警視庁は、このほかにも余罪があるか捜査を進めており、このスキームがどれほど広範に及んでいたのか、また、その影響についても調べている。贈収賄に関与したHOYA Technosurgical社および親会社HOYA社は、捜査に協力する姿勢を示している。同病院は再発防止策を講じ、職員の倫理教育を強化すると公表している。参考1)東京労災病院 医師を収賄容疑で逮捕 製品巡り50万円受け取りか(NHK)2)他の医師使用分も見返り収受 部下に贈賄側企業製品を推奨か 東京労災病院の汚職事件・警視庁(時事通信)3)東京労災病院副部長を収賄容疑で逮捕 「ポイント制」で業者から現金(朝日新聞)4)当院職員の逮捕について(東京労災病院)6.元理事長への不正な麻薬処方、元副学長が医師法違反の疑い/日本大学日本大学の「不正事案洗い出しのための特別調査委員会」は、元理事長の田中 英寿氏(故人)への医療用麻薬モルヒネを含む痛み止めの不正処方について報告した。田中氏は2021年8月~2022年4月にかけて、元副学長だった主治医により、医師3人を介して7回にわたり痛み止めが処方された。しかし、これらの処方はいずれも診療記録がなく、実際の診察は行われていなかった。調査委員会によれば、田中氏に処方された薬の診療記録は電子カルテシステムに一切残されておらず、元副学長は診療の有無について守秘義務を理由に説明を拒否。また、元副学長や関連医師は、田中氏の自宅で診療行為を行っていたが、これに関する記録も存在しなかった。医師法では、診療行為を行った場合、病名や治療内容をカルテに記載することが義務付けられており、違反した場合には罰則が科されている。調査委は元副学長の医師法違反の可能性が高いと結論付け、「厳格に管理すべき医療用麻薬が不適切に処方されていた悪質性は高い」と指摘している。同大学は監督官庁との協議を待っている状態で、元副学長からの回答は得られていない。参考1)日大の田中英寿・元理事長にモルヒネ処方、診察記録なし…主治医の元副学長は守秘義務理由に説明せず(読売新聞)

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第181回 大学病院への“甘さ”感じる文科省「今後の医学教育の在り方に関する検討会」中間取りまとめ、“暴走”する大学病院への歯止めは?

大学病院、と言えば『白い巨塔』こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。9月29日、NHKBSプレミアムで映画『白い巨塔』を放映していました。山崎 豊子が1965年に発表した小説『白い巨塔』を原作に、山本 薩夫監督が1966年に映画化した日本の医療映画の金字塔とも言うべき名作です。国立浪速大学付属病院第一外科助教授、財前 五郎を演じたのは今はなき亡き田宮 二郎。録画して久しぶりに観直したのですが、圧倒的な存在感を放つ田宮 二郎の財前のほか、東教授(東野 英治郎)、鵜飼医学部長(小沢 栄太郎)、船尾教授(滝沢 修)、財前の義父(石山 健二郎)ら希代の名優たちの演技を改めて堪能できました(石山 健二郎演じる大阪の開業医が笑えます)。『白い巨塔』と言えば、唐沢 寿明主演のフジテレビのドラマ『白い巨塔』(それでも20年前、2003年の作品です)も有名ですが、俳優の存在感では映画版が一枚も二枚も上手ですね。小説発表から60 年近くの時が経ち、手術の術式や病院のありようなど大きく様変わりしている部分があるとはいえ、根底に流れる医療問題は現代とあまり変わっていません。大学病院の持つ閉鎖性・独善性、大学教授の持つ権力、医局制、医師と患者関係、がん告知の問題……など、半世紀以上も前に『白い巨塔』が提示した医療問題のほとんどが今でもそのまま残っていることに驚かされました。ということで今回は大学病院の改革について書いてみたいと思います。来年から始まる医師の働き方改革が、医学部の教育・研究や、大学病院のあり方にも大きな影響を及ぼすであろうことなどを背景に、今年5月から検討を進めてきた文部科学省の「今後の医学教育の在り方に関する検討会」(座長=永井 良三・自治医科大学長)が9月11日、第5回の会合を開き、大学病院改革に向けた議論の「中間取りまとめ案」を大筋で了承、9月29日に文科省は「中間取りまとめ」として正式に公表しました1)。診療、教育、研究機能を維持するための「改革プラン」策定求める「中間取りまとめ」では、医師の働き方改革が始動しても診療、教育、研究の各機能を維持していくために、個々の大学病院の実情に応じた「改革プラン」を策定する必要性が明記されました。総務省が進める公立病院改革のように、近い将来、国が大学病院に対しても改革プランの策定を義務付けることになるのです。1973年、第2次田中 角栄内閣の元で閣議決定された「一県一医大構想」から半世紀、加速度的に進む人口減少や来年度から本格実施となる医師の働き方改革などを背景に、近い将来に「一県一医大」という枠組みすらなくなってしまうかもしれません。今後、改革プラン策定のガイドラインが作られますが、その具体的な内容は年明け頃から議論が再開される予定、とのことです。「国は支援の方策を検討し、大学病院の魅力をさらに高める取り組みを後押しすることが必要」「中間取りまとめ案」は、大学病院が、働き方改革を進めながら、医師派遣を含めた診療機能を確保しつつ、教育・研究機能の維持に取り組むことが課題だとして、1)診療規模の拡大と経常利益率の低減、2)教育・研究時間の減少、3)医師の時間外・休日労働の上限規制の適用、の3点を指摘、「国は、大学病院が医学教育・研究を牽引し、高度で専門的な医療を提供し続けるために、支援の方策を検討することが必要。また、国は若手医師が大学病院で働きたいと思えるような、大学病院の魅力をさらに高める取り組みを後押しすることが必要」としました。「地域の実情に応じて改革を進め、その機能を発揮できる持続可能な大学病院経営に取り組む必要」改革の全体の方向性としては、医師の働き方改革の推進と大学病院の機能を両立させるため、「自治体や地域の医療機関とも連携し、大学病院の運営、人員、教育・研究・診療、財務など、その実情に応じた改革」、「国は、大学病院に大学本部とも一体となった改革プランの策定を促すとともに、プランの内容に応じた支援を行うこと」、「高度で専門的な医療の提供や医師派遣等による地域の医療提供体制への貢献など、大学病院の機能を適切に評価し支援すること」などを挙げています。その上で、「具体的な取り組みの方向性」として、1)運営に関する項目(地域の医療機関との役割分担・機能分化、など)、2)人員に関する項目(大学病院の医師の勤務環境の改善、など)、3)教育・研究・診療に関する項目(研究マインドの醸成の取り組みや創薬・医療機器開発など起業家教育を推進、など)を具体的に提示し、持続可能な大学病院経営のため、「大学病院は、地域の実情に応じて上記のような改革を進め、その機能を発揮できる持続可能な大学病院経営に取り組む必要」があるとしています。病院収益増や、大学教官のポスト増産を第一目的 に“暴走”する大学病院も以上は、「中間取りまとめ案」の「概要」の内容を紹介したものですが、9月29日に公表された「中間取りまとめ」の本編(19ページもある)を読んだところ、総花的で大学病院に対して少々「甘い」印象を持ちました。本編前段には、「未曽有の困難に直面する中であっても、大学病院は、その機能を将来にわたって維持していかなければならない。国は、大学病院を取り巻く状況が危機的であり、一刻の猶予も許されないこと、また、仮に大学病院がその機能を維持できない事態が生じれば社会的損失は計り知れず、我が国の医療そのものの崩壊を招来しかねないことを十分に認識する必要がある」と、大仰な言葉が並んでいます。しかし、実際、未曾有のコロナ禍にあって、当初、コロナ患者をまったく受け入れようとしなかった大学病院があったことを考えると、ちょっと言い過ぎでは、と感じてしまいます。加えて、「中間取りまとめ」では、国立、公立、私立など設立母体の違いや、大学病院本院と分院の違いについてはほとんど言及されていない点も気になりました。私立医大の中には、積極的な分院展開を行っているところがあります。多数の付属病院をつくり、トータルの病床数や教授ポストを増やす戦略です。同じことは公立の大学病院についても言えます。たとえば名古屋市立大学は、名古屋市立の病院を同大学の付属にすることで、現在、本院の名古屋市立大学病院と合わせて計5病院、2,173床という国公立大学病院では最大規模の病院群を形成するまでになっています。規模拡大による病院収益増や、大学教官のポスト増を第一目的に、傍から見て“暴走”とも取れる拡大戦略を図る大学病院が、地域の民間病院の経営に深刻な影響を及ぼしつつあるとも聞いたことがあります。研究・教育は二の次に、自分の大学や関連病院のことだけしか考えない大学病院は、果たして「その機能を維持できない事態が生じれば社会的損失は計り知れず、我が国の医療そのものの崩壊を招来しかねない」存在なのでしょうか。「自治体や地域の医療機関等の関係者による合意の下で、地域の医療機能の集約化等に取り組むことが重要」かつてある病院経営者が、「地域医療構想調整会議に大学病院は出てこないんだよね」と不満を漏らしているのを聞いたことがあります。医療圏において患者供給の最上流に位置するにもかかわらず、地域医療構想には無関心、かつほぼ“無縁”だった大学病院ですが、これからはさすがに地域医療を意識した経営が求められることになるでしょう。「中間取りまとめ」では、そうした唯我独尊でやってきた大学病院への反省からか、これからの大学病院と地域医療との関わりについて、次のように地域の医療機関や行政との積極的な対話の必要性を指摘しています。「2025年問題以降は、ほとんどの地域で高度急性期病床及び急性期病床の需要は減少する見込みであり、大学病院が担う役割等に鑑みれば、(中略)今後、大学病院が担う診療規模の拡大は現実的ではない」、「今後の医療需要が減少していく地域においては、大学病院をはじめ自治体や地域の医療機関等の関係者による合意の下で、地域の医療機能の集約化等に取り組むことが重要であるが、その際、大学病院において教育・研究に従事する人材を確保し、教育・研究機能を維持・発展させるために、都道府県の意見も聴きながら大学病院がその中核的な役割を果たすことを通じて、地域の医療提供体制の再構築を進めることも検討すべきである」。確かに、これまで大学病院と地域の医療機関との対話の機会は少なかったようです。医師や患者の“供給元”でもあることから、地域の医療機関が大学病院に対して強くモノを言えない、という事情もあるようです。そう考えると、「今後の医学教育の在り方に関する検討会」で、大学病院の在り方や、改革プラン策定の検討を行う際には、地域医療構想の担当官庁である厚生労働省も入るべきだと思うのですが、皆さんどう考えますか?大学の教授は財前教授のころと比べると相当割に合わない仕事になったところで、映画『白い巨塔』が描くのは、「一県一医大構想」が推し進められる以前、旧帝国大学医学部が権勢を誇り、医学部教授の権力も凄まじく大きかった時代の医学部の姿です。医学部教授の数が大幅に増え、製薬企業等から大学への研究費や奨学寄付金の給付が厳格化され、さらにはパワハラ、アカハラがすぐに事件化される現在、教育、研究だけではなく大学病院の経営にまで目を配らなければならない大学病院の教授は、財前教授のころと比べると相当割に合わない仕事になったと言えるでしょう。それでも、「教授を目指す!」という若手医師がいなくならないのはなぜでしょう。「教授」という肩書が魅力的なのか、はたまた昔より小さくなったとはいえ「権力」に惹かれるのか。そのあたり、人間の欲望自体は『白い巨塔』公開時からほとんど変わっていないようです。参考1)今後の医学教育の在り方に関する検討会 中間取りまとめについて/文部科学省

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近畿直撃! 台風7号【Dr. 中島の 新・徒然草】(490)

四百九十の段 近畿直撃! 台風7号私が子供の頃の台風というのは、9月にまとめてやって来るものでした。でも、最近は8月とか、場合によっては7月に来たりしています。で、今回の台風7号(ラン)は2023年のお盆の近畿地方を直撃!前日の8月14日の天気図を見ていると、巨大な円が紀伊半島の南に迫っていました。この後、台風がどういう進路をとっても大阪は円の中に入ってしまいます。飛行機は当然のこと、電車も早々に運休を宣言しました。また、多くの医療機関も翌日の外来診療中止を告知しています。が、大阪医療センターはとくに外来診療中止ということはしていません。8月14日はなるべく早く帰るように、と全職員にお達しがあった程度です。そこで、私も早めに帰ったのですが……耳に入って来るニュースでは「8月15日に予想される風速は○○メートルで、これはトラックが横転する強さです」などと言っています。これでは出勤できないんじゃないか、と心配になってきました。女房も同じことを考えていたのか「あんた、晩御飯を食べたら病院に行ったら?」と言います。確かに、そのほうが無難かもしれません。出勤の時に暴風雨だったら大変だし。ということで、夕食の後に風呂に入ってから家を出ました。2日分の下着と非常食を持っての再出勤です。病院に着いたのは午後9時頃でしょうか?翌日に備えて、作業服姿の職員たちがバタバタしていました。幸いロッカーには自分用のスクラブがあったので、それを着て寝ました。8月14日の夜は、時おり雨や風が強くなる程度で何ともありませんでした。そして翌朝午前5時前に、台風7号が潮岬に上陸。この時点では、病院の窓から見える範囲では雨は降っておらず。その代わり、ものすごい勢いで雲が東から西に流されていました。いよいよ雨風が強くなってきたのは、外来が始まる午前9時頃。こりゃあ、外来患者さんはゼロか、それに近いな、と思っていました。そんな天候の中でも、外来にやって来る人は来ます。「無茶苦茶雨が降っていました」とか「傘をさす必要もなかった」とか、患者さんの言うことはさまざまでした。時間帯でも大きな違いがあったようです。でも、公共交通機関が止まっていたせいか、病院の駐車場が満車だったのだとか。台風は13時頃に明石市に再上陸して、20時頃に日本海に抜けました。所によっては大変な豪雨だったみたいです。私自身は午後から休みだったので、雨の降り具合を見ながら車で病院を出ました。道路はどこもガラガラ。ニュースで見るような倒木とか落ちた看板とかも見当たりません。すでに片付けられていたのでしょうか。で、自宅に戻ってから女房から聞いた話。8月14日から15日にかけては、目の前の木が倒れそうな風が一晩中吹いていたとか。15日になっても暴風雨がやまず、出勤なんかできたものじゃなかったそうです。でも、外来診察のある先生方は、暴風雨の中を車で出勤してきたとのこと。偉いとも言えますが、無謀でもあります。そうやって無理に出勤しても、外来患者さんは1人いるかどうか。同じ大阪府でも、大阪市内中心部と北摂ではずいぶん様子が違っていたようです。私自身は前夜から出勤していて良かったと思います。15日朝だったら、出勤できなかったかもしれません。むしろ前夜から病院にいたせいか、いろいろな書類仕事が一気に片付きました。ということで、2023年のお盆に近畿地方を襲った台風7号。大型過ぎるせいか、翌8月16日になっても台風一過の青空とはならず、相変わらず曇り空です。昭和時代は台風に備えて、前日から大勢で会社に泊まり込むのがニュースになっていました。でも令和の現在、仕事のために無理しなくなったのも、一種の働き方改革かもしれません。それだけ時代が進んだのでしょうね。最後に1句台風に 対抗するな 無理するな

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がん医療におけるコミュニケーションのガイドライン【非専門医のための緩和ケアTips】第55回

第55回 がん医療におけるコミュニケーションのガイドライン緩和ケアの臨床を構成する要素のうち、かなりの部分を占めるのがコミュニケーションです。大きなテーマとしては「病名告知などの悪い知らせをどう伝えるか」というものがありますし、日々の業務では「さりげない言葉掛けがケアにつながる」ことを実感します。コミュニケーションの重要性は誰しも認めるところですが、自分でスキルアップするのが難しい分野でもあります。今日の質問緩和ケアに取り組んでいて、日々難しく感じるのがコミュニケーションです。自分なりに工夫はしてきたのですが、系統的に勉強したことがありません。臨床に即した、参考になるものはないでしょうか?最近は医学部教育においてもコミュニケーションについて学ぶ機会が増えているようですが、やはり臨床経験を通じて学ぶことが多いのは、この領域です。一方、ある程度経験を積むとフィードバックをくれる人がいなくなり、独り善がりになりがちな部分でもあります。そんなときに参考になるのが、『がん医療における患者-医療者間のコミュニケーションガイドライン2022年版』です。日本サイコオンコロジー学会と日本がんサポーティブケア学会が編集し、2022年に初めて出版されました。「コミュニケーションにもガイドラインがあるの?」と思った方がいるかもしれません。緩和ケアの分野ではコミュニケーションに関する研究は重要で、コミュニケーション技法の開発も行われています。このガイドラインでは、臨床疑問(CQ)に対する推奨がエビデンスと共に明示されています。がん診療におけるコミュニケーションにおけるCQとは、どのようなものがあるのでしょうか? ガイドラインから一部を抜粋してみましょう。根治不能のがん患者に対して抗がん治療の話をするのに、「根治不能である」ことを患者が認識できるようはっきりと伝えることは推奨されるか?進行・再発がん患者に、予測される余命を伝えることは推奨されるか?医師ががんに関連する重要な話し合いのコミュニケーション技術研修(CST)を受けることは推奨されるか?こういったCQに対し、現状のエビデンスの紹介と、それに基づく推奨が示されます。遭遇するであろう難しい状況に対するCQから、コミュニケーション技術に対する教育・研修の効果に関するCQまで、幅広く扱われています。がん疾患を持つ患者さんを対象としていますが、非がん疾患の患者さんのケアにも使える部分が大きいと思います。気になった方はぜひ手に取ってみてください。今回のTips今回のTips患者コミュニケーションに悩んだら、ガイドラインを見てみましょう。

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第140回 厚労省の動画が3週間で656万回再生!いったい何が流れた?

もうあと1週間足らずで2022年も終わりとなる。結局この1年もほぼ新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)で明けて暮れた1年だったと個人的には感じている。とはいえ昨年末以来、流行株が見かけ上、重症化率の低いオミクロン株の亜系統内で続いていることもあってか、ぱっと見の市中の様子はかなりコロナ禍以前に近づいていると感じている。敢えて「見かけ上」と記載したのは、ここ1ヵ月ほどでワクチン未接種の知人・友人が感染し、入院の上で酸素吸入にまで至った事例を複数知っているからである。その意味でワクチンの効果はある意味凄いものだと改めて感じている。そんな中、つい先日仕事が深夜0時を超える時間まで及んだ際、コンビニエンスストアに行くついでに、最寄り駅周辺を散策した。すると日中には見えなかったコロナ禍前後のわずかな変化が見えてきた。現在は飲食店への営業自粛要請もなくなったこともあって、午前0時を過ぎても営業している飲食店はあるが、その数は確実に減っている。少なくともコロナ禍以前、この周辺では0時過ぎまで営業していた飲食店は、私が知っている範囲でも10軒以上はあった。ところが先日確認した範囲では3軒のみ。ちょうど第7波から第8波の間に珍しく夜の早い時間に仕事のめどがつき、馴染みの飲食店に顔を出したが、その店も従来は午前1時までだった営業時間を午前0時までに短縮していた。従業員は「最近は皆さん来る時間も早いし、帰るのも早いですよ。客単価も以前の6割程度。もう遅くまで開けていてもコストばかりかかって」と、ぼやいていた。確かに私自身のことで言っても夜間の飲酒飲食は激減している。とくに今は大学受験生の娘を抱えていることもあり、今後2月末までは今まで以上に外出の飲食を控えることになるだろう。さて世の変化というところでやや驚いたものがある。それは半月ほど前から厚生労働省(以下、厚労省)が流し始めた屋外のマスク原則不要を告知するCMだ。ごくごく当たり前の内容ではあるが、わずか30秒の動画の構成はわかりやすく、失礼ながら厚労省が主導して製作したCMとしてはよくできている。同省のYouTubeチャンネルはさまざまな動画がアップされているが、再生回数が1,000回未満のものがほとんど。しかし、この動画だけは再生回数656万回と群を抜いている。ざっと同省配信動画の再生回数を眺め回してみたが、たぶん2022年に配信された動画の中では再生回数トップである。そもそも、このマスク問題はコロナ禍当初、かなり変動幅の大きいものだったと個人的には理解している。コロナ禍以前のマスクの位置付けとは、明らかに呼吸器感染症が疑われる症状を有する人が着用するもので、現在のようなユニバーサルマスクの考え方は標準的なものではなかったはずである。しかし、新型コロナの場合は症状発症前に二次感染を引き起こしていること、感染経路のほとんどが飛沫感染でマスクに一定の感染リスク低減効果があるなどのエビデンスが徐々に積み上げられたことで現在のような形になっている。かくいう私も2020年春くらいまではユニバーサルマスクには懐疑的だったが、今ではこの考えを改めている。もっとも考えを改めた後でも、明らかに感染リスクが低いであろう屋外(ただし、アーケード内や明らかな人混み、信号待ちで人が集合している場合などは除く)ではマスクを外していた。さてこのマスク問題、昨今のSNS上などでは新型コロナ関連の大きな話題の一つでもある。その中核は非医療従事者からの「いつまでこんなものを続けているのか」的な声が多くを占め、一見するとその声は日増しに大きくなっているようにも映る。ひょっとすると前述の厚労省のCMもそうした声を意識したものかもしれない。ちなみに私がこのCMに「驚いた」のは個人的な印象としての出来栄えの良さもあるが、厚労省が敢えてこれを出したということである。一般大衆に比べて無びゅう性を気にするお役所や専門家は、規制・推奨の強化は比較的得意だが、その逆は苦手である。それらを緩和した結果生じる問題に対して詰め腹を切らされかねないからだ。しかも、一般人とは概してこうしたお役所や専門家が発する言葉を自分に都合よく解釈しがちである。今年5月に前厚労相の後藤 茂之氏が閣議後の記者会見で「屋外でも身体的距離を置いた場合は、もともと『外してよい』との考えだったが、国民に十分に伝わっていなかった」と発言した直後、私は旧知の医師から愚痴をこぼされた。「定期受診の患者がいきなりノーマスクで来院して、マスクをしてくださいと話すと、『いや、厚生労働大臣がマスクは要らないって言ってたでしょ』と返される。それも特定の人に限ったことではなく、ポチポチと増えて一時的に対応に苦慮した」こうした事例を経験した医療従事者は少なからずいるのではないだろうか? ちなみに後藤氏は当時、これからは国民にこの点を丁寧に説明していきたいとの意向を示したが、そのような説明があった記憶は少なくとも私はない。腰が重いはずの厚労省が、この問題について前向きな対応を始めたことは一定の前進と言えるが、現状を鑑みる限り、一般国民の多くが期待するであろう日常生活でマスク着用が不要はまだ先のことだろう。そのためには新型コロナウイルスが一層弱毒化するか、有効性がより高く有効期間がより長いワクチンが開発・上市されることが必要だろうと考えられるからだ。むしろ私は次に来る「ポストコロナ時代」とは「メリハリのある感染対策ができる社会」と考えている。このマスク問題が代表例であり、感染リスクの高い局面では着用する、逆に感染リスクが低い局面では外しても良いという場面の切替である。これは昨今の教育現場で進む黙食の緩和も同様だろう。換気などの一定の感染対策をしたうえで黙食を緩和することが完全に誤りとは言えない(医療従事者を除けば、行動規制のない現在、夜間の飲酒飲食する大人は黙食とは無縁である以上、子どものみに規制的に対応する理由はある種薄弱である)。もっともこれも局面ごとの判断が必要である。具体的には小児での新型コロナワクチン接種完了者が4人に1人と留まる現状を考えれば、感染拡大期には黙食にする、感染拡大収束期には黙食を緩和するというメリハリである。その意味で、来る2023年はポストコロナ時代を念頭に社会全体がメリハリのついた感染対策を行える社会になって欲しいと切に願いながら、2022年最後の本連載を終えたいと思う。また、本連載は私への意見・要望窓口を設けていることもあり、読者の皆さんからは、本当にさまざまな角度からご意見を頂戴している。なるべくそれにお答えしようとは思っているものの、すべてのご意見を記事に反映できていないことについてはこの場を借りてお詫びしたい。それに懲りずこの1年間、私にお付き合いいただき誠にありがとうございました。来年も宜しくお願いいたします。

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論文検索で困惑…医療略語が複数存在する疾患【知って得する!?医療略語】第22回

第22回 論文検索で困惑…医療略語が複数存在する疾患ITPの和訳がよく分かりません。教えてください。ITPには現在「特発性血小板減少性紫斑病」「免疫性血小板減少性紫斑病」「免疫性血小板減少症」の3つの和訳が存在するようです。≪医療略語アプリ「ポケットブレイン」より≫【略語】    ITP【日本語/英字】特発性血小板減少性紫斑病/idiopathic thrombocytopenic purpura免疫性血小板減少性紫斑病/immune thrombocytopenic purpura免疫性血小板減少症/immune thrombocytopenia【分野】    血液【診療科】   血液内科・小児科【関連】    ―実際のアプリの検索画面はこちら※「ポケットブレイン」は医療略語を読み解くためのもので、略語の使用を促すものではありません。筆者が学生の頃、血小板減少疾患であるITPは、特発性血小板減少性紫斑病(idiopathic thrombocytopenic purpura)と覚えました。しかし、近年ITPが「免疫性血小板減少性紫斑病:immune thrombocytopenic purpura」と訳されているのを見かけるようになりました。医師国家試験関連の参考書を参照しても、ITPは「免疫性血小板減少性紫斑病」で記載されています。ITPの和訳は変更されたのでしょうか。調べてみると、成人特発性血小板減少性紫斑病治療の参照ガイド2019改訂版1)が存在します。また難病情報センターの登録難病の病名2)も特発性血小板減少性紫斑病となっています。一方、小児免疫性血小板減少症診療ガイドライン2022年版というものも存在し、小児慢性特定疾病情報センターのサイトを見ると、免疫性血小板減少性紫斑病が告示病名3)となっています。また同サイトによれば、ITPは血小板減少があっても必ずしも紫斑を伴わないため「紫斑病」は除き、免疫性血小板減少症(immune thrombocytopenia: ITP)と表記するとの記載があります。しかし、それぞれの資料で疾患概要を調べてみると、特発性血小板減少性紫斑病、免疫性血小板減少性紫斑病、免疫性血小板減少症は、同一の疾患です。ちなみに厚生労働省保険局が運営する傷病名マスター4)には、「特発性血小板減少性紫斑病」は存在しますが、「免疫性血小板減少性紫斑病」は登録されていません。ITPと同じように、同一疾患(病態)に複数の病名が存在して困惑するのが血球貪食症候群(hemophagocytic lymphohistiocytosis:HPS)、血球貪食性リンパ組織球症 (hemophagocytic lymphohistiocytosis:HLH)です5)。医学的知見の集積で、より適切な病名に変更されていくことに異義はありません。しかし、同一の疾患や病態に複数の病名が併存することは、少なからず混乱を生じます。まず、それぞれの病名で一見すると別疾患のように誤解を生じます。また、学会発表や論文作成をする時にどちらの用語を用いれば良いか迷いますし、症例集積などの臨床研究や文献検索においても支障を来すと考えられます。昨今注目される医療データ活用の観点でも、同一疾患に複数の病名が存在することは、医療データの活用を阻害しかねません。この問題は日本に医療用語の整備、統一病名変更を告知する組織がないことが原因だと思います。学会の垣根を越えて、用語の統一が図られることを切に願います。1)成人特発性血小板減少性紫斑病治療の参照ガイド 2019改訂版2)難病情報センター:特発性血小板減少性紫斑病(指定難病63)3)小児慢性特定疾病情報センター:免疫性血小板減少性紫斑病4)厚生労働省保険局:診療報酬情報提供サービス5)熊倉 俊一. 血栓止血誌. 2008;19:210-215.

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第113回 医学的に解決できないもの-抗HIV薬の発展から問われる課題

ここまで進化したのか。あるニュースを私はそんな思いで見つめている。先日薬価収載された抗HIV薬初の長時間作用型注射製剤のカボテグラビル(商品名:ボカブリア)とリルピビリン(同:リカムビス)の承認と薬価収載に関するニュースだ。多くの方がご存じのように、HIV感染症は1980年代から1990年代半ばまで「不治の病」だった。過去にも触れたが、私が専門誌記者になったのはまさにこの頃だ。しかし、1990年代半ば以降に確立された作用機序が異なる複数の抗HIV薬を併用するHAART(highly active anti-retroviral therapy)療法により、もはや多くの感染者にとってコントロール可能な慢性感染症となっている。とはいえHAART療法の確立直後は、薬剤耐性やウイルス量増加を回避するため、服用回数が異なる複数の経口抗HIV薬を忘れることなく服用することが患者にとっての至上命題。しかも、初期のHAART療法の中で主流として使われていた抗HIVプロテアーゼ阻害薬のインジナビル(同:クリキシバン)は、腎結石の副作用頻度が高かったため、服用者は毎日1.5Lの水分摂取が必要だった。当時、取材で知り合ったあるHIV感染者と話した際、私が「少なくとも死の病ではなくなる可能性が高くなりましたね」と口にしたら、本人は頷きながらもそのまま無言になり、自分が持っていたカバンのチャックを開け、それを黙って私に差し出したことがある。かばんの中には水をつめたラベルのない500mLのペットボトルが3本入っていた。私は「ああ、副作用を防ぐための水ですね」と答えたが、本人はほぼ無表情で黙ったままだった。私自身は尿酸値が高い傾向があるため、現在は必死になって1日2Lの水分を摂取しているが、これが実はかなりの苦痛である。そうした今になって初めて、あの時のこの感染者が無言で私に伝えようとしていたメッセージが分かる気がする。その後、HAART療法は個々の薬剤成分そのものが副作用の少ないものに置き換わり、さらに合剤化が進んだ。現在ではほとんどの感染者が1日1回の服用のみで医学的には非感染者と変わらない生活が送れるようになっている。もっとも感染者にとって毎日の服薬を怠らないよう気を付けることや服薬のたびにHIV感染を自覚させられるストレスは残されている。そうした中で今回上市されたカボテグラビルとリルピビリンの併用筋注で感染者のこうしたストレスはより緩和される可能性が高まっている。臨床試験で判明している結果では、経口薬で血中のHIVが検出限界以下になった後、この2剤を1ヵ月あるいは2ヵ月間隔で筋注すれば、毎日経口薬を服用するのと同レベルの臨床効果が得られる。有害事象も疼痛などの注射部位反応は8割以上に認められるものの、薬剤関連の全身性の有害事象は頭痛、発熱が5%程度の人に起こるぐらいだ。少なくとも服薬のたびにHIV感染を自覚させられる苦痛という観点に立てば、それは今回の両薬の登場で60分の1~30分の1に減少することになる。これ自体は極めて画期的なことだと私自身も思う。もっともこうした慢性疾患特有の医学的課題が1つ1つクリアされればされるほど、残された課題の壁は高くなるとも感じている。まず、医学的に残された最大の課題は感染者の誰しもが望むであろう根治だ。これについては、血液がんを併発して骨髄移植を受けたHIV感染者で、ほぼ根治と言って良い事例が世界で3人確認されている。少なくともHIV根治が実現可能性の低い夢とは言えなくなっているのは確かだろう。ただし、ただでさえ適応が限られ、治療時の死亡リスクも高い骨髄移植を誰にでも行うわけにはいかない。HIV感染者すべてに適応可能な簡便な治療法の実現という意味ではまだ道は遠いと言わざるを得ない。こうした「遠い道程」のなかで感染者が抱えるであろう心理的負担は医学のみでは解決不可能と言って良い。日本国内では2018年に医療機関がHIV感染を事前告知しなかったソーシャルワーカーの内定取り消しを行い、そのことが法廷の場に持ち込まれて敗訴するなど、まだまだ根深い偏見・差別があることが白日の下にさらされている。また、こうした社会状況なども背景にあるのだろうが、HIV感染者での精神疾患併発率は一般集団と比べても高いとの報告もある。残念ながらこうした差別、偏見を解消する医学的手段はこの世にはない。その意味で約30年間、HIV治療を横目で眺め続けてきた私は、大きな一歩を目の当たりに感動しながらも、これからこの社会全体がクリアしなければならない急峻な絶壁のほうも考えてしまいやや悶々としているのが現状なのである。

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「診療所、知人に売るから大丈夫」、それ本当に大丈夫??【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第40回

第40回 「診療所、知人に売るから大丈夫」、それ本当に大丈夫??漫画・イラスト:かたぎりもとこ「知人の医師に売ることにしたので、御社に依頼する必要がなくなりました」私たちが医業承継サービスを提供していると、一定の頻度で、こうした一言を売り手側の先生から言われます。しかし一方で、少し時間が経つと、「知人との話が破談したので、相手探しを再開してほしい」という展開になることも、また多くあります。この連載でも繰り返しお伝えしているように、医業承継は専門性が高く、難易度の高い取り組みです。多くの方は「相手探しだけが難しく、これをクリアすれば後は引き継ぐだけ」と考えていますが、実際には相手探しに加え、「引き継ぐまでに要するタスク」が膨大にあり、豊富な知識を要するため、ここにも多くの壁があるのです。具体的には、下記のようなものが「壁」となります。「譲渡額の根拠」を買い手に説明する「譲渡する資産」について買い手と合意する「引き継ぎ期間」を買い手と合意する「スタッフに譲渡を告知するタイミング」を決める「不動産オーナー」に承継について説明し、合意を得る「最終契約書」を作成し、買い手と合意を得るたとえば、スタッフに告知するタイミングを間違えると、スタッフ側の不安が募り、最終契約書の締結前に多くのスタッフが退職意向を示した結果、スタッフの雇用継続を前提としていた買い手側が辞退する、ということにつながります。医業承継は相手探しだけが難しいわけでなく、引き継ぎ完了までには多くの壁があり、それらを専門家不在で進めることは高いリスクが伴います。

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造影剤お役立ち情報サイト「Contrast ColleGE」開設【ご案内】

 ケアネットは、オンラインでのエンゲージメントに特化した新プラットフォーム「DXPlus」を用いて、GEヘルスケアファーマ提供のもと、放射線科の医師や医療従事者を対象とした造影剤に関するお役立ち情報サイト「Contrast ColleGE」を公開した。 本サイトは「集まって学び、解決する」をキーワードに、トップランナーの先生方による症例紹介コンテンツなどを掲載するライブラリコーナーや、造影剤に関する疑問やその答えが一覧ですぐに見つかるように工夫されたQ&Aコーナー、GEヘルスケアファーマの講演会などの告知をするイベントコーナーなどを充実させ、造影剤で困ったら「Contrast ColleGE」というブランディングを目的にスタートした。 今後は、提供元の「機器と造影剤のGE」の強みを活かしたシームレスな情報発信や、双方向コミュニケーション機能などの実装を通し、医療現場に寄り添った新しい価値を「Contrast ColleGE」から提供していく。「Contrast ColleGE」はこちらから※Contrast ColleGEは、CareNet.com会員ID(メールアドレス)のみでサイト利用登録が完了します。

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