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スタチンでアジア人乳がん患者のがん死亡リスク低下

 スタチン製剤を服用しているアジア人の乳がん患者では、スタチンを服用していない乳がん患者と比べて、がん関連の死亡リスクが有意に低かったことを、台湾・国立成功大学のWei-Ting Chang氏らが明らかにした。なお、心血管疾患による死亡リスクには有意差はなかった。JAMA Network Open誌4月21日号掲載の報告。 スタチンは化学療法と併用することで、がんの進行や微小転移を抑制することが報告されていて、乳がんの再発リスクを低減させる可能性が示唆されている。しかし、欧米の乳がん患者とは異なり、アジアの乳がん患者は診断時の年齢が比較的若く、ほとんどが心血管リスク因子を有していないため、スタチンの服用によって生存率が改善するかどうかは不明である。そこで研究グループは、アジア人の乳がん患者において、スタチン使用とがんおよび心血管疾患による死亡リスクとの関連を後方視的に調査した。 本コホート研究の対象は、台湾の国民健康保険研究データベース(NHIRD)と国民がん登録を用いて、2012年1月~2017年12月までに乳がんと診断された女性患者1万4,902例で、乳がんの診断前6ヵ月以内にスタチンを服用した患者と、スタチンを服用していない患者を比較した。年齢、がんの進行度、抗がん剤治療、併存疾患、社会経済的状況、心血管系薬剤などを傾向スコアマッチング法で適合させ、解析は2022年6月~2023年2月に実施された。主要アウトカムは死亡(全死因、がん、心血管疾患、その他)で、副次的アウトカムは新規発症の急性心不全、急性心筋梗塞や虚血性脳卒中などの動脈イベント、深部静脈血栓症や肺塞栓症などの静脈イベントであった。平均追跡期間は4.10±2.96年であった。 主な結果は以下のとおり。・スタチン使用群7,451例(平均年齢64.3±9.4歳)とスタチン非使用群7,451例(平均年齢65.8±10.8歳)がマッチングされた。・非使用群と比較して、使用群では全死因死亡のリスクが有意に低かった(調整ハザード比[aHR]:0.83、95%信頼区間[CI]:0.77~0.91、p<0.001)。・がん関連死亡のリスクも、非使用群と比較して、使用群では有意に低かった(aHR:0.83、95%CI:0.75~0.92、p<0.001)。・心不全、動脈・静脈イベントなどの心血管疾患の発生は少数であり、使用群と非使用群で死亡リスクに有意差は認められなかった。・時間依存性解析でも、非使用群と比較して、使用群では全死因死亡(aHR:0.32、95%CI:0.28~0.36、p<0.001)およびがん関連死亡(aHR:0.28、95%CI:0.24~0.32、p<0.001)が有意に少なかった。・これらのリスクは、とくに高用量スタチンを服用している群でさらに低かった。 これらの結果より、研究グループは「アジア人の乳がん患者を対象としたこのコホート研究では、スタチンの使用は心血管疾患による死亡ではなく、がん関連の死亡リスクの低減と関連していた。今回の結果は、乳がん患者におけるスタチンの使用を支持するエビデンスとなるが、さらなるランダム化試験が必要である」とまとめた。

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CAR-T細胞療法はがん患者のQOLを向上させる

 CAR(キメラ抗原受容体)-T細胞療法と呼ばれる免疫系を強化する治療法は、特定のがん患者を長生きさせるだけでなく、QOL(生活の質)も高めることが、新たな研究で明らかにされた。米マサチューセッツ総合病院(MGH)の腫瘍学者Patrick Connor Johnson氏らが実施したこの研究の詳細は、「Blood Advances」に3月20日掲載された。 CAR-T細胞療法は、患者自身の血液から免疫細胞のT細胞を取り出し、がんを標的とするように遺伝子を改変した後に、再び患者に戻す治療法である。この治療法の対象となるのは、標準的な治療が奏効しない難治性の白血病やリンパ腫などの血液がんである。CAR-T細胞療法は、血液がん患者の治療に革命を起こした。進行した血液がん患者でも、この治療法によりがん細胞が一掃され、何年間もがんが再発することなく生存している人もいるくらいだ。その一方で、治療後の患者のQOLについての研究報告は限られている。 Johnson氏は、「CAR-T細胞療法は、がんを寛解に導くことができる一方で、約2週間の入院を必要とする集中治療法でもある。患者に重篤な副作用が生じないかを見張っておく必要もある」と説明する。CAR-T細胞療法で最も懸念される副作用は、サイトカイン放出症候群である。これは、患者の体内に戻されたT細胞からサイトカインと呼ばれる生理活性物質が大量に放出されることで、高熱、血圧の急激な低下、呼吸困難などが生じる状態であり、重症化すると命にも関わる。サイトカイン放出症候群以外にも、頭痛、錯乱、平衡感覚障害、会話困難など、神経系に問題が生じることもある〔免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(ICANS)〕。Johnson氏によると、こうした副作用はたいていの場合、治療開始後10日ほどで現れるという。 今回の研究では、CAR-T細胞療法を受けた患者100人を対象に、治療により患者のQOLや身体症状、精神的苦痛がどのように変化するのかを調べた。患者の平均年齢は66歳(範囲23〜90歳)で、男性が63%を占め、疾患はリンパ腫(71%)、多発性骨髄腫(28%)、B細胞性急性リンパ芽球性白血病(1%)であった。 その結果、56%の患者が完全奏効、24%の患者が部分奏効または最良部分奏効を達成した。全体で76%の患者にサイトカイン放出症候群が、また33%にICANSが生じた。T細胞の輸注から中央値14.5カ月(範囲0.4〜36カ月)の追跡期間中に、38%の患者が死亡した。患者のQOLスコアの中央値は治療開始から1週間でベースラインより低下したものの(77.9点→70.0点)、1カ月後にはベースラインレベルに回復した(76.0点)。その後、3カ月後と6カ月後にはスコアはさらに上昇し(同順で83.5点、83.7点)、平均的な米国人のQOLスコアと同等のレベルになっていた。 ただし、多くの患者には、治療から6カ月後でも身体症状と精神的苦痛が残っていた。Johnson氏によると、治療から6カ月後でも、臨床的に重大な不安、抑うつ、PTSDの症状が認められた患者の割合は、それぞれ22%、29%、22%であった。また、身体症状についても、67%の患者が、治療から6カ月が経過しても、痛みや疲労などの軽度から中等度の身体症状を訴えた。 Johnson氏は、「これらの問題が、がん、先行治療、またはCAR-T細胞療法のうちのどれと関連しているのかは不明だ。しかし、それらの"混合"である可能性が高い」との見方を示す。 米メモリアルスローン・ケタリングがんセンターの血液・腫瘍学者であるJae Park氏は、「この研究結果は、われわれの施設の患者が経験することと一致するようだ。入院の必要性、治療関連の副作用、感染症、輸血の必要性などにより、最初の30日間は、一般的に患者のQOLが急激に低下する。しかし、ほとんどの患者はこれらの副作用から回復し、幸いなことに、治療に反応する」と話す。そして、「CAR-T細胞療法に反応を示すなら、通常は、化学療法のような他の治療を見送ることができ、日常生活に戻ることができる」と付け加えている。 一方でPark氏は、「CAR-T細胞療法を受けた患者の多くが、治療後も長期にわたって身体症状と精神的な苦痛を持ち続けていることを認識し、その理由を解明する必要がある」とも述べている。

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日本におけるオミクロン対応2価ワクチンの有効性~多施設共同研究/感染症学会・化学療法学会

 2021年7月より新型コロナワクチンの有効性を長期的に評価するために開始された多施設共同サーベイランス研究「VERSUS study [Vaccine Effectiveness Real-time Surveillance for SARS-CoV-2]」1)の最新の結果について、4月28~30日に開催された第97回日本感染症学会総会・学術講演会/第71回日本化学療法学会学術集会合同学会にて、長崎大学の前田 遥氏が発表した。本結果により、国内の高齢者に対するオミクロン対応2価ワクチンの発症予防および入院予防の有効性が、国内の若年者および欧米のデータよりも高いことが示唆された。 本発表では、2022年9月末に国内で接種開始されたBA.1対応、および10月中旬に開始されたBA.4/5対応のモデルナ製またはファイザー製のオミクロン対応2価ワクチンの有効性について、2022年10月1日~2023年2月28日の期間における研究結果が報告された。オミクロン対応2価ワクチンの発症予防と入院予防に対する有効性をtest-negative designを用いた症例対照研究で評価した。発症予防の有効性については、全国10都府県15施設にて、新型コロナウイルス感染症を疑う症状で受診し、新型コロナウイルス検査を受けた16歳以上が対象となった。入院予防の有効性については、9都府県11施設にて、呼吸器感染症を疑う症状が2つ以上、または肺炎像を認め入院し、新型コロナウイルス検査を受けた16歳以上が対象となった。 主な結果は以下のとおり。【発症予防における有効性】・解析対象者は7,347例で、検査陽性3,304例、検査陰性4,043例。年齢中央値43歳(四分位範囲[IQR]:29~61)、男性3,410例(46.4%)、基礎疾患を有する人が1,969例(26.8%)であった。・対象者のワクチン接種歴は、ワクチン未接種10.0%、従来型ワクチンのみ接種(2回以上)46.2%、オミクロン対応2価ワクチン接種(14日以上経過)9.8%であった。・発症予防における未接種者と比較した場合のオミクロン対応2価ワクチンの有効性は、16~64歳では54.7%(95%信頼区間[CI]:40.3~65.6)、65歳以上では75.2%(54.4~86.5)であった。・発症予防におけるオミクロン対応2価ワクチンの相対的な有効性は、16~64歳において、従来型ワクチンのみ接種者(接種後4~6ヵ月経過)と比較した場合は27.2%(95%CI:3.1~45.3)、従来型ワクチンのみ接種者(接種後7ヵ月以上経過)と比較した場合は36.1%(18.6~49.9)、65歳以上において従来型ワクチンのみ接種者と比較した場合は34.0%(0.3~56.3)であった。【入院予防における有効性】・解析対象者は1,017例で、検査陽性306例、検査陰性711例。年齢中央値82歳(IQR:73~89)、男性617例(60.7%)、基礎疾患を有する人が753例(74.0%)であった。解析対象者の約90%が65歳以上であった。・対象者のワクチン接種歴は、ワクチン未接種11.9%、従来型ワクチンのみ接種(2回以上)30.1%、オミクロン対応2価ワクチン接種(14日以上経過)10.7%であった。・入院予防における未接種者と比較した場合のオミクロン対応2価ワクチン有効性は84.9%(95%CI:65.7~93.3)であった。・入院予防におけるオミクロン対応2価ワクチンの相対的な有効性は、従来型ワクチンのみ接種者(接種後4~6ヵ月経過)と比較した場合は50.4%(95%CI:-18.4~79.2)、従来型ワクチンのみ接種者(接種後7ヵ月以上経過)と比較した場合は57.4%(-3.3~82.4)であった。 前田氏は、本結果は米国や英国の報告と比較して、未接種者と比較したオミクロン対応2価ワクチンの有効性に関して、16~64歳の発症予防の有効性はほぼ同等であるが、高齢者の発症予防および入院予防の有効性はより高値であったとし、その要因として、国内の高齢者は、若者や欧米人よりも感染による抗体保有率が低いことが影響している可能性を指摘した。国内のデータは欧米と異なる可能性が示唆されるため、引き続き国内での検証が重要だとしている。

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非小細胞肺がん免疫併用療法の多施設共同臨床試験に係る現状と重要な注意事項について/国立がん研究センター

 日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)は、全国59施設で実施していた、未治療の進行・再発非小細胞肺がんに対する、化学療法+ペムブロリズマブ療法と化学療法+ニボルマブ+イピリムマブ療法の有効性比較第III相試験(JCOG2007試験、特定臨床研究)において、化学療法+ニボルマブ+イピリムマブ療法患者で、予期範囲を超える約7.4%(148例中11例)の治療関連死亡が認められたため、試験継続困難と判断して2023年3月30日に同試験を中止した、と発表した。 同試験は2021年4月~2022年4月に261例の患者を登録したが、化学療法+ニボルマブ+イピリムマブ療法において、9例(6.9%)に治療関連死亡(肺臓炎3例、サイトカイン放出症候群2例、敗血症1例、心筋炎2例、血球貪食症候群1例)が起きたため登録を一時停止。その後、治療関連死亡患者に多く見られる特徴を見いだし、登録規準を変更したうえで2022年10月3日に登録を再開したが、化学療法+ニボルマブ+イピリムマブ療法患者に新たな治療関連死亡が起きた。安全性を高めた変更後の登録の規準をもってしても防げなかった治療関連死亡と考え、2023年3月30日にこの試験の中止を決定した、としている。 現在、同試験以外でニボルマブ+イピリムマブ併用療法を受けている未治療進行・再発非小細胞肺がんの患者に対しては、治療の効果や副作用を勘案した慎重な判断が必要なため、自己判断で治療を中断せず、必ず主治医と相談するよう勧告している。 詳細は国立がん研究センタープレスリリースを参照

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RAS野生型左側大腸がんの1次治療、パニツムマブ併用でOS改善/JAMA

 RAS遺伝子野生型の転移を有する切除不能大腸がんの1次治療において、標準的な化学療法に抗EGFR抗体薬パニツムマブを併用すると、抗VEGF抗体薬ベバシズマブを併用した場合と比較して、原発巣が左側大腸の患者と、全患者(原発巣が左側または右側大腸)の双方で、全生存期間(OS)が有意に延長したことが、横浜市立大学附属市民総合医療センターの渡邉 純氏らが実施した「PARADIGM試験」で示された。研究の成果は、JAMA誌2023年4月18日号に掲載された。日本の197施設の第III相臨床試験 PARADIGM試験は、日本の197施設が参加した非盲検無作為化第III相臨床試験であり、2015年5月~2017年6月の期間に患者の登録が行われ、2022年1月にフォローアップが終了した(Takeda Pharmaceutical の助成を受けた)。 年齢20~79歳で、化学療法による治療歴がなく、全身状態が良好(ECOG PSスコア0/1)なKRAS/NRAS遺伝子野生型の転移を有する切除不能大腸がん患者が、標準化学療法(フルオロウラシル/l-ロイコボリン+オキサリプラチン[mFOLFOX6])に加え、パニツムマブまたはベバシズマブの投与を受ける群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。すべての薬剤の投与は14日ごとに行われた。 主要評価項目はOSであり、はじめに原発巣が左側大腸の患者で解析が行われ、有意差が認められた場合に、全患者の解析が実施された。PFSには差がない as-treated集団として、802例(年齢中央値66歳、女性35.2%)が登録された。パニツムマブ群に400例(原発巣:左側 312例[78%]、右側 84例[21%]、両側の複数病変 4例[1%])、ベバシズマブ群に402例(292例[73%]、103例[26%]、7例[2%])が割り付けられた。フォローアップ期間中央値は61ヵ月だった。 OS中央値は、原発巣が左側の患者では、パニツムマブ群が37.9ヵ月、ベバシズマブ群は34.3ヵ月(ハザード比[HR]:0.82、95.798%信頼区間[CI]:0.68~0.99、p=0.03)、全患者ではそれぞれ36.2ヵ月および31.3ヵ月(0.84、0.72~0.98、p=0.03)であり、いずれもパニツムマブ群で有意に延長した。 無増悪生存期間(PFS)中央値は、原発巣が左側の患者では、パニツムマブ群が13.1ヵ月、ベバシズマブ群は11.9ヵ月(HR:1.00、95%CI:0.83~1.20)、全患者ではそれぞれ12.2ヵ月および11.4ヵ月(1.05、0.90~1.24)であった。 奏効(完全奏効+部分奏効)率は、原発巣が左側の患者では、パニツムマブ群が80.2%、ベバシズマブ群は68.6%(群間差:11.2%、95%CI:4.4~17.9)、全患者ではそれぞれ74.9%および67.3%(7.7%、1.5~13.8)であり、奏効期間中央値は、原発巣が左側の患者では、それぞれ13.1ヵ月および11.2ヵ月(HR:0.86、95%CI:0.70~1.10)、全患者では11.9ヵ月および10.7ヵ月(0.89、0.74~1.06)であった。 また、治癒切除(R0)の割合は、原発巣が左側の患者では、パニツムマブ群が18.3%、ベバシズマブ群は11.6%(群間差:6.6%、95%CI:1.0~12.3)、全患者ではそれぞれ16.5%および10.9%(5.6%、1.0~10.3)だった。原発巣が右側の患者では全生存期間に差がない Grade3以上の有害事象は、パニツムマブ群が71.8%、ベバシズマブ群は64.9%、試験薬関連の重篤な有害事象はそれぞれ17.8%および10.8%、試験薬の投与中止をもたらした有害事象は23.8%および18.4%で発現した。 パニツムマブ群で頻度が高い有害事象として、にきび様皮膚炎(74.8% vs.3.2%)、爪周囲炎(52.0% vs.4.9%)、乾燥肌(46.0% vs.9.6%)、低マグネシウム血症(30.0% vs.1.7%)が、ベバシズマブ群で頻度の高い有害事象として、高血圧(1.7% vs.18.9%)、鼻出血(3.2% vs.19.9%)が認められ、末梢神経障害(70.8% vs.73.7%)と口内炎(61.6% vs.40.5%)は両群とも高頻度にみられた。 著者は、「サブグループ解析では、原発巣が右側の患者では両群間に全生存期間の有意な差は認められず、パニツムマブ群の全患者における全生存期間の有益性は主に原発巣が左側の患者で得られたと示唆された」と指摘し、「本試験では、左側腫瘍でも生存曲線は28ヵ月までは両群間に明確な差はなかったことから、左側と右側の腫瘍の差を説明する可能性があるBRAF、ERBB2(HER2)、マイクロサテライト不安定性などのバイオマーカーについて、さらに検討を進める必要がある」としている。

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早期乳がん、アントラサイクリン+タキサン併用が最も有効~メタ解析/Lancet

 乳がんの再発と死亡の減少にはアントラサイクリン系+タキサン系併用療法が最も有効であり、とくにアントラサイクリン系+タキサン系の累積投与量が多いレジメンで最大の効果を得られることが、英国・オックスフォード大学のJeremy Braybrooke氏らEarly Breast Cancer Trialists' Collaborative Group(EBCTCG)が行ったメタ解析で明らかにされた。早期乳がんに対するアントラサイクリン系+タキサン系併用療法は、化学療法を行わない場合と比較して生存を著明に改善するが、アントラサイクリン系薬剤の短期および長期の副作用に対する懸念から、アントラサイクリン系薬剤を含まないタキサン系レジメンの使用が増加しており、有効性が損なわれる可能性があった。 著者は、「示された結果は、臨床診療やガイドラインにおける最近のトレンドである非アントラサイクリン系化学療法、とくにドセタキセル+シクロホスファミドの4サイクルなどの短期レジメンに対して挑戦的である」と述べ、「本検討は、関連するほぼすべての臨床試験のデータをまとめており、個々の治療の決定、臨床ガイドライン、および将来の臨床試験のデザインに役立つ確かなエビデンスを提供するものである」とまとめている。Lancet誌2023年4月15日号掲載の報告。アントラサイクリン系およびタキサン系レジメンを評価した無作為化試験86件が対象 研究グループは、MEDLINE、Embase、Cochrane Library、学会抄録を含むデータベースを用いて、アントラサイクリン系およびタキサン系レジメンを評価したあらゆる言語の無作為化試験86件を特定(最終検索は2022年9月)。タキサン系レジメンとアントラサイクリン系レジメンを比較した無作為化試験の患者個人レベルのメタ解析を行い、本研究グループによる前回のメタ解析を更新するとともに、6つの関連比較に関して解析した。術後または術前補助療法の臨床試験は、2012年1月1日以前に開始されたものであれば対象とした。 主要アウトカムは、浸潤性乳がんの再発(遠隔、局所、対側乳房の新規原発)、乳がん死、再発を伴わない死亡、全死亡とし、log-rank解析により初回イベント率比(RR)と信頼区間(CI)を算出した。アントラサイクリン系+タキサン系同時併用が最も再発率が低い アントラサイクリン系を含むタキサン系レジメンとアントラサイクリン系を含まないタキサン系レジメンを比較した28件の臨床試験を特定し、23件を適格とした。そのうち15件について、計1万8,103例の女性の個人データが提供された。この15件すべてにおいて、アントラサイクリン系を含むタキサン系レジメンは、アントラサイクリン系を含まないタキサン系レジメンより、再発率が平均14%低かった(RR:0.86、95%CI:0.79~0.93、p=0.0004)。非乳がん死は増加しなかったが、治療を受けた女性700例当たり1例に急性骨髄性白血病の発症が認められた。 再発率が最も低かったのは、ドセタキセル+シクロホスファミドにアントラサイクリン系の同時併用と、同量のドセタキセル+シクロホスファミドを比較した場合であった(10年再発リスク:12.3% vs.21.0%、リスク差:8.7%[95%CI:4.5~12.9]、RR:0.58[95%CI:0.47~0.73]、p<0.0001)。このグループにおける10年乳がん死亡率は4.2%減少した(95%CI:0.4~8.1、p=0.0034)。 アントラサイクリン系+タキサン系の順次投与は、ドセタキセル+シクロホスファミドと比較して、再発リスクの有意な低下は認められなかった(RR:0.94、95%CI:0.83~1.06、p=0.30)。 アントラサイクリン系レジメンとタキサン系レジメンを比較した臨床試験については、44件の適格試験を特定し、このうち35件について計5万2,976例の女性の個人データが提供された。 アントラサイクリン系レジメンへのタキサン系薬剤の上乗せは、タキサン系薬剤を含まないアントラサイクリン系レジメン(アントラサイクリン系薬剤の累積投与量が同じ)と比較した場合は再発を有意に抑制したが(RR:0.87、95%CI:0.82~0.93、p<0.0001、1万1,167例)、対照群の非タキサン系薬剤の累積投与量をタキサン系薬剤の2倍量にした場合と比較すると再発率の有意な低下は認められなかった(RR:0.96、95%CI:0.90~1.03、p=0.27、1万4,620例)。 アントラサイクリン系レジメンとタキサン系レジメンの直接比較では、累積投与量が多く、投与強度が高いレジメンがより効果的であることが示された。アントラサイクリン系+タキサン系併用療法の再発抑制効果は、エストロゲン受容体陽性集団とエストロゲン受容体陰性集団で同様であり、年齢、リンパ節転移状態、腫瘍のサイズまたはグレードによって差は認められなかった。

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早期の転移性セミノーマ患者に対してはリンパ節切除が第一選択肢に?

 精巣がん患者のうち、初期の転移性セミノーマ患者では、化学療法や放射線療法は必要ではなく、後腹膜(腹膜の外側と腹壁の間の腔)にあるリンパ節の切除〔後腹膜リンパ節郭清術(RPLND)〕だけで十分であるという研究結果が報告された。研究論文の筆頭著者である、米南カリフォルニア大学ケック医学校の泌尿器科腫瘍医Siamak Daneshmand氏は、「試験対象者の大多数がRPLNDのみで治癒し、従来の化学療法や放射線療法に付随する毒性を回避できることが本研究で示された。われわれは、セミノーマに対するこの手術が、近い将来、治療ガイドラインに組み込まれることを確信している」と話している。研究の詳細は、「Journal of Clinical Oncology」に3月13日掲載された。 精巣がんは15〜35歳の若い男性に最も多く発生するがんであり、たいていの場合、治療可能である。精巣がんでは、まず精巣の摘出手術を行う。その後、腫瘍組織の病理組織検査により、セミノーマ(精上皮腫)と非セミノーマに分類した上で、それぞれに適した治療を行う。がんの転移が腹部大動脈と腹部大静脈周囲のリンパ節にとどまっている早期転移性(ステージ2)セミノーマに対しては通常、リンパ節のがんを化学療法と放射線療法により小さくしたり、がん細胞を死滅させたりする治療が行われる。RPLNDは、そのような治療が奏効しない際に実施されるが、転移性セミノーマに対する単独の治療法としては実施されていない。 しかし、化学療法や放射線療法は、心疾患や二次がんなどの長期的な副作用を伴う。この問題に対処するために、Daneshmand氏らは、後腹膜のリンパ節腫脹の程度が小さい(1〜3cm)セミノーマ患者55人を今回の試験に登録。ファーストライン治療としてRPLNDを実施し、その安全性と有効性を検討した。主要評価項目は、2年無増悪生存率とした。 その結果、RPLND後、中央値33カ月の追跡期間中に12人でがんが再発したが(再発率22%)、対象患者の81%は2年間がんが再発することなく生存していた。2年時点での全生存率は100%を達成した。がんが再発した10人には化学療法が、残る2人には再手術が行われた。最後の追跡調査時にこれらの再発患者は、病状が悪化することなく生存していた。安全性に関しては、短期的な合併症が4人に生じ、長期的な合併症として、切開ヘルニア(1人)と無射精(3人)が生じた。 Daneshmand氏は、「100%の全生存率は、手術後に再発した患者でも治癒可能であることを示唆している」とケック医学校のニュースリリースで、述べている。さらに同氏は、「早期の転移性セミノーマは、生存率が極めて高いものの、化学療法や放射線療法で治療した場合、治癒には高い犠牲を伴う可能性がある。それに対して手術による治療では、患者は治癒を見込めるだけでなく、闘病後の高いQOLを得ることもできるだろう」と述べている。

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術前デュルバルマブ・NAC併用+術後デュルバルマブによるNSCLCのEFS延長(AEGEAN)/AACR2023

 デュルバルマブを用いた術前・後レジメンが早期非小細胞肺がん(NSCLC)の無イベント生存期間(EFS)を有意に延長した。米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのJohn V. Heymatch氏が、米国がん研究協会年次総会(AACR 2023)で発表した、術前化学療法とデュルバルマブの術前・後補助療法の組み合わせを評価する第III相AEGEAN試験の結果である。・対象:手術予定のある未治療の切除可能なStage IIA〜IIIB(AJCC第8版)NSCLC・試験群:デュルバルマブ+プラチナベース化学療法(3週ごと4サイクル)→手術→デュルバルマブ(4週ごと12サイクル)(Dur群)・対照群:プラセボ+プラチナベース化学療法(3週ごと4サイクル)→手術→プラセボ(4週ごと12サイクル)(Chemo単独群)・評価項目:[主要評価項目]盲検化独立中央評価委員会(BICR)評価のEFS、病理学的完全奏効(pCR)[副次評価項目]主要な病理学的奏効(mPR)、BICR評価の無病生存期間、全生存期間 主な結果は以下のとおり。・EFS中央値(追跡期間中央値11.7ヵ月)はDur群未到達、Chemo単独群は25.9ヵ月であった(ハザード比[HR]:0.68、95%信頼区間[CI]:0.53〜0.88、p=0.003902)。・2年EFS率はDur群63.3%、Chemo単独群52.4%であった。・pCRはDur群の17.2%、Chemo単独群の4.3%で達成した(群間差:13.0%、95%CI:8.7〜17.6、p=0.000036)。・4サイクルの術前化学療法完遂率はDur群84.7%、Chemo単独群87.2%、手術完遂率はDur群77.6%、Chemo単独群76.7%、術後補助療法実施中はDur群23.2%、Chemo単独群23.5%で、いずれも両群で同等だった。・全Gradeの有害事象はDur群96.5%、Chemo単独群94.7%で発現し、全Gradeの免疫関連有害事象(irAE)はDur群の23.5%、Chemo単独群の9.8%で発現した。 発表者であるHeymatch氏は、術前・後のデュルバルマブ+術前化学療法は、切除可能なNSCLCにとって、可能性を有する新たな治療選択肢であると結論を述べている。

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進行転移胆道がんの1次治療、ペムブロリズマブ併用でOS改善(KEYNOTE-966)/Lancet

 未治療、切除不能な局所進行または転移のある胆道がんの1次治療として、ゲムシタビン+シスプラチンの標準化学療法と比較して、ペムブロリズマブを加えた併用療法は全生存期間(OS)を統計的に有意に改善したことが示された。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のRobin Kate Kelley氏らによる第III相二重盲検プラセボ対照無作為化比較試験「KEYNOTE-966試験」の結果で、著者は「標準化学療法+ペムブロリズマブの併用療法は、進行転移胆道がん患者の1次治療として新たな選択肢となる可能性がある」と述べている。Lancet誌オンライン版2023年4月16日号掲載の報告。ECOGパフォーマンスステータス0~1の18歳以上を対象に試験 KEYNOTE-966試験は、世界175ヵ所の医療センターで、未治療の切除不能な局所進行または転移のある胆道がんで、RECIST第1.1版に基づく測定が可能で、Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)のパフォーマンスステータスが0または1の18歳以上の患者を対象に行われた。 研究グループは被験者を1対1の割合で無作為に2群に分け、一方にはペムブロリズマブ200mg(3週ごとに静脈内投与、最大35サイクル)、もう一方にはプラセボを、標準化学療法のゲムシタビン(1,000mg/m2、3週ごとに1・8日目に静脈内投与)+シスプラチン(25mg/m2、3週ごと1・8日目に静脈内投与、最大8サイクル)と併用投与した。 無作為化は中央双方向音声応答システムを使い、試験地域、病期、原発部位により層別化した。 主要評価項目はOSで、ITT集団で評価した。副次評価項目は安全性で、治療を受けた集団で評価した。治療関連有害事象発生率、両群で同程度 2019年10月4日~2021年6月8日に1,564例がスクリーニングを受け、適格とされた1,069例が無作為化を受けた(ペムブロリズマブ併用群533例、プラセボ群536例)。最終解析時の追跡期間中央値は、25.6ヵ月(四分位範囲[IQR]:21.7~30.4)だった。 OS中央値は、ペムブロリズマブ併用群12.7ヵ月(95%信頼区間[CI]:11.5~13.6)、プラセボ群10.9ヵ月(9.9~11.6)だった(ハザード比[HR]:0.83、95%CI:0.72~0.95、片側検定のp=0.0034、有意性閾値のp=0.0200)。 治療集団におけるgrade3/4の有害事象発生は、ペムブロリズマブ併用群420/529例(79%)、プラセボ群400/534例(75%)だった。治療関連有害事象発生は、それぞれ369例(70%)、367例(69%)で、うちgrade3/4事例はそれぞれ31例(6%)、49例(9%)だった。また、治療関連有害事象による死亡は、それぞれ8例(2%)、3例(1%)だった。

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がん治療を続けるための悪液質治療 シリーズがん悪液質(10)【Oncologyインタビュー】第44回

出演:北海道大学病院 腫瘍センター化学療法部 CancerBoard部 小松 嘉人氏がん悪液質イコール終末期、不可逆的。このイメージが変わったと北海道大学の小松 嘉人氏は言う。変わった理由は何だったのか。また、がん治療を継続するために、がん悪液質を治療するという、同氏の考え方について解説いただいた。

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HER2+早期乳がんの術前化療、pCRは代替評価項目になり得るか/JCO

 病理学的完全奏効(pCR)は治療効果の確認と予後予測に有用であるものの、HER2陽性の早期乳がん患者に対する無イベント生存期間(EFS)および全生存期間(OS)の代替評価項目としては不適切であることを、ベルギー・International Drug Development InstituteのPierre Squifflet氏らが明らかにした。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2023年3月28日号掲載の報告。 臨床試験においてEFSやOSなどを主要評価項目とすると、結果が明らかになるまで長期間かかるため、pCRがしばしば用いられている。しかし、pCRをHER2陽性の早期乳がん患者におけるEFSおよびOSの代替評価項目とすることについては議論が続いている。 本研究は、HER2阻害薬による術前化学療法の有効性を調査したランダム化試験(登録100例以上、pCR/EFS/OSの記録あり、追跡期間中央値3年以上)の個々の患者データを取得して行われた。pCR(ypT0/Tis ypN0と定義)とEFSおよびOSの関連性を、患者レベルではオッズ比(OR)を用いて、試験レベルでは決定係数(R2)を用いて解析した。 主な結果は以下のとおり。・解析には11件のランダム化試験が組み込まれた(患者数3,980例、追跡期間中央値62ヵ月)。・患者レベルの関連性は、EFSのORが2.64(95%信頼区間[CI]:2.20~3.07)、OSのORが3.15(同:2.38~3.91)で強いものであった。・しかし、試験レベルの関連性は、EFSの未調整R2が0.23(95%CI:0~0.66)、OSの未調整R2が0.02(同:0~0.17)で弱いものであった。・ホルモン受容体陰性患者のみの場合、より厳格なpCRの定義(ypT0 ypN0)を用いた場合でサブグループ化した解析でも同様の結果であった。 これらの結果より、研究グループは「pCRは治療効果の確認と予後予測に有用である可能性はあるが、HER2陽性の手術可能な乳がん患者を対象とした術前化学療法の臨床試験において、pCRをEFSおよびOSの代替評価項目とすることはできない」とまとめた。

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添付文書改訂:フォシーガが左室駆出率にかかわらず使用可能に、アセトアミノフェンが疾患・症状の縛りなく使用可能に ほか【下平博士のDIノート】第119回

フォシーガ:左室駆出率にかかわらず使用可能に<対象薬剤>ダパグリフロジン(商品名:フォシーガ錠5mg/10mg、製造販売元:アストラゼネカ)<承認年月>2023年1月<改訂項目>[削除]効能・効果に関連する注意左室駆出率の保たれた慢性心不全における本薬の有効性および安全性は確立していないため、左室駆出率の低下した慢性心不全患者に投与すること。[追加]臨床成績左室駆出率の保たれた慢性心不全患者を対象とした国際共同第III相試験(DELIVER試験)の結果を追記。<Shimo's eyes>これまで、本剤は「左室駆出率の保たれた慢性心不全における本薬の有効性および安全性は確立していないため、左室駆出率の低下した慢性心不全患者に投与すること」とされていましたが、この記載は削除され、左室駆出率を問わず使用可能となりました。これは、左室駆出率が40%超の慢性心不全患者を対象に行われた国際共同第III相試験(DELIVER試験)の結果に基づいた変更です。なお、SGLT2阻害薬のエンパグリフロジン(商品名:ジャディアンス)も、2022年4月に左室駆出率にかかわらず使用可能となっています。アセトアミノフェン:疾患や症状の縛りなく「鎮痛」で使用可能に<対象薬剤>アセトアミノフェン製剤(商品名:カロナールほか)<承認年月>2023年2月<改訂項目>[削除]効能・効果下記の疾患ならびに症状の鎮痛頭痛、耳痛、症候性神経痛、腰痛症、筋肉痛、打撲痛、捻挫痛、月経痛、分娩後痛、がんによる疼痛、歯痛、歯科治療後の疼痛、変形性関節症[追加]効能・効果各種疾患および症状における鎮痛<Shimo's eyes>アセトアミノフェン製剤(カロナールほか)について、疾患や症状の縛りなく「鎮痛」の目的での使用が認められました。厚生労働省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」を踏まえた変更です。欧米の先進諸国で使用できる医療用医薬品がわが国では保険診療において使用できない「ドラッグラグ」解消の1つであり、効能または効果は疾患名の列挙ではなく「各種疾患および症状における鎮痛」とすることが適切とされました。シルガード9:2回接種が追加され、接種無料に<対象薬剤>組換え沈降9価ヒトパピローマウイルス様粒子ワクチン(酵母由来)(商品名:シルガード9水性懸濁筋注シリンジ、製造販売元:MSD)<承認年月>2023年3月<改訂項目>[追加]用法・用量9歳以上15歳未満の女性は、初回接種から6~12ヵ月の間隔を置いた合計2回の接種とすることができる。[追加]用法・用量に関連する注意9歳以上15歳未満の女性に合計2回の接種をする場合、13ヵ月後までに接種することが望ましい。なお、本剤の2回目の接種を初回接種から6ヵ月以上間隔を置いて実施できない場合、2回目の接種は初回接種から少なくとも5ヵ月以上間隔を置いて実施すること。2回目の接種が初回接種から5ヵ月後未満であった場合、3回目の接種を実施すること。この場合、3回目の接種は2回目の接種から少なくとも3ヵ月以上間隔を置いて実施すること。<Shimo's eyes>本剤は、わが国で3番目に発売されたHPVワクチンです。既存薬の1つである2価ワクチン(商品名:サーバリックス)は、子宮頸がんの主な原因となるHPV16型と18型の感染を、もう1つの既存薬である4価ワクチン(同:ガーダシル)は上記に加えて尖圭コンジローマなどの原因となる6型と11型の感染を予防します。本剤は、これら4つのHPV型に加えて、31型・33型・45型・52型・58型の感染も予防する9価のHPVワクチンです。本剤について、9歳以上15歳未満の女性に対する計2回接種の用法および用量を追加する一変承認が取得されました。これまでは計3回接種となっていましたが、接種回数が減ることで、ワクチン接種者や医療者の負担軽減が期待できます。また、既存の2価/4価ワクチンは定期接種の対象で、小学6年生~高校1年生相当の女子は公費助成によって無料で接種を受けることができますが、これまで本剤は任意接種で自費での接種でした。2023年3月7日の厚生労働省の厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会で、小学校6年生~15歳未満までに対する9価HPVワクチンの2回接種も、4月1日から定期接種化することが決定され、自費から公費接種に移行する準備が進められます。エンハーツ:HER2低発現乳がんにも使用可能に<対象薬剤>トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd、商品名:エンハーツ点滴静注用100mg、製造販売元:第一三共)<承認年月>2023年3月<追記項目>[追加]効能・効果化学療法歴のあるHER2低発現の手術不能または再発乳癌<Shimo's eyes>HER2低発現乳がんを標的にしたわが国初の治療薬となります。HER2低発現乳がんとはHER2陰性乳がんの新たな下位分類で、細胞膜上にHER2タンパクがある程度発現しているものの、HER2陽性に分類するほどの量ではない乳がんのことを指し、再発・転移のある乳がんの約50%を占めるとされます。本剤はこれまで有効な治療選択肢のなかったHER2低発現乳がんに対する薬剤となります。化学療法による前治療を受けたHER2低発現の乳がん患者を対象としたグローバル第III相臨床試験(DESTINY-Breast04)の結果に基づく申請となりました。この試験では、再発・転移のあるHER2低発現乳がん患者557例(494例はホルモン受容体[HR]陽性、63例人はHR陰性)が、3週間ごとにT-DXdを投与する群(373例)と、医師の選択した化学療法を受ける群(184例)にランダムに割り付けられました。その結果、エンハーツ投与群では、無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)のいずれにも改善が認められました。PFSとOSの中央値は、T-DXd投与群で9.9ヵ月と23.4ヵ月、医師の選択した化学療法群で5.1ヵ月と16.8ヵ月でした。なお、本適応追加に関連して、ロシュ・ダイアグノスティックスのがん組織または細胞中のHER2タンパク検出に用いる組織検査用腫瘍マーカーキット「ベンタナultraView パスウェーHER2(4B5)」が3月3日に一変承認され、HER2低発現の乳がん患者を対象とした本剤のコンパニオン診断薬として使用できることになりました。

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ニボルマブ+化学療法のNSCLCネオアジュバント、3年間の追跡でも持続的ベネフィット示す(CheckMate 816)/BMS

 ブリストル・マイヤーズ スクイブは、2023年3月30日、第III相CheckMate 816試験の3年間の追跡調査の結果を発表した。同結果では、切除可能な非小細胞肺がん(NSCLC)患者の術前補助療法として、ニボルマブとプラチナを含む化学療法の併用療法の3回投与が持続的な臨床ベネフィットを示した。 中央値41.4ヵ月の追跡調査における3年間の無イベント生存期間(EFS)率は、ニボルマブと化学療法の併用療法群で57%、化学療法単独群では43%であった(ハザード比[HR]:0.68、95%信頼区間[CI]:0.49〜0.93)。また、無作為割付け日から遠隔転移または死亡までの期間(TTDM)において、ニボルマブと化学療法の併用療法群は引き続き良好な結果を示し(HR:0.55、95%CI:0.39~0.78)、3年間のTTDM率は、ニボルマブと化学療法の併用療法群で71%、化学療法単独群では50%であった。 全生存期間(OS)のデータは未完成であったものの、ニボルマブと化学療法の併用療法による術前補助療法は、化学療法単独と比較して、引き続き良好な改善傾向が認められた(HR:0.62、99.34%CI:0.36〜1.05)。3年生存率は、ニボルマブと化学療法の併用療法による術前補助療法で78%、化学療法単独で64%であった。OSの解析は、引き続き実施される。 探索的解析には、外科的アプローチによるEFS、切除範囲または完全性によるEFS、およびベースライン時の腫瘍サンプルのRNAシーケンスに基づく4遺伝子(CD8A、CD274、STAT-1、LAG-3)の炎症シグネチャースコアによるEFSおよび病理学的完全奏効(pCR)が含まれた。ニボルマブと化学療法の併用療法群は、化学療法群と比較して、外科的アプローチや切除範囲にかかわらず、引き続き3年時EFSの改善を示している。ニボルマブと化学療法の併用療法群において、pCRが認められた患者は、認められなかった患者と比較して、ベースライン時の4遺伝子の炎症シグネチャースコアが高かった。また、ベースライン時の炎症スコアが高い患者は、低い患者と比べ、EFSが改善する傾向が見られた。 3年間の追跡調査における、ニボルマブと化学療法の併用療法の新たな安全性シグナルは認められていない。Grade3〜4の治療および手術関連有害事象の発現率は、ニボルマブと化学療法の併用療法群で、それぞれ36%および11%、化学療法群でそれぞれ38%および15%であった。

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新薬の登場で変わる? GIST治療【消化器がんインタビュー】第13回

第13回 新薬の登場で変わる? GIST治療出演:北海道大学病院 腫瘍センター化学療法部 CancerBoard部 小松 嘉人氏発見が難しく、予後不良な消化管間質腫瘍(GIST)。近年、新たな薬剤が登場し、治療が変化している。GIST治療の最新情報を、北海道大学の小松 嘉人氏に紹介いただいた。

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胃がん患者向けGLが19年ぶり改訂、2023年3月発表のエビデンスも反映

 2023年3月に「患者さんのための胃がん治療ガイドライン 2023年版」が発刊された。2004年版以来、19年ぶりの改訂となる。そこで、金原出版は2023年3月31日に、本ガイドラインの作成委員長を務めた寺島 雅典氏(静岡県立静岡がんセンター胃外科/副院長)を講師に迎え「胃がんの標準治療の今-開発の歴史と今後確立が予想されるエビデンス」をテーマにセミナーを開催した。患者さんに正しい情報へアクセスしてもらいたい 胃がんについては、2004年版を最後に患者さん向けのガイドラインが作成されていなかった。しかし、寺島氏は「患者さんがインターネットなどで目にする情報には不適切なものが多く、正しい情報にたどりつけない方も多い」と言う。そこで、「正しい情報を提供するには、患者さん向けのガイドラインが必要だと感じ、胃癌治療ガイドライン 第6版1)の内容を基に作成することにした」と述べた。 「患者さんのための胃がん治療ガイドライン 2023年版」は、第1章では「胃はどこにあるのか」といった基本的なことから、「胃がんはどのようながんか」「胃がんはどのように進展するか」といった内容まで、胃がんのことが総合的にわかるように作成されている。寺島氏は「この部分が患者さんへの説明に非常に役立つと考えている」と話した。第2章では、医師向けの「胃癌治療ガイドライン 第6版」の内容を患者さんがわかるように平易な言葉で説明されている。第3章では、患者さんが疑問に感じることについて、多くのQ&Aが用意されている。 本ガイドラインは患者団体からの意見も取り入れて作成されており、用語の解説を豊富に取り入れるなど、患者さんにとって理解しやすいように作成されているのも特徴である。胃がんの最新のエビデンスを反映 胃がんの外科的治療は目覚ましい進歩を遂げている。以前は、開腹手術が一般的で、進行がんの一部では拡大手術が推奨されていた。しかし、JCOG(日本臨床腫瘍研究グループ)胃がんグループの進行胃がんに対する臨床試験2-5)において、進行胃がんに対する外科手術の意義が見直され、侵襲を減らすことの重要性が注目されるようになった。そしてStageIの胃がんでは、腹腔鏡下胃切除が開腹胃切除と比べて、無再発生存期間に関して非劣性であるというエビデンス(JCOG0912)6)などを基に、腹腔鏡下胃切除が標準治療の1つとして推奨されるようになった1)。さらに、2023年3月にはStageII/IIIの胃がん患者を対象とした幽門側胃切除術に関する臨床試験(JLSSG0901)において、腹腔鏡下胃切除は開腹胃切除と比べて無再発生存期間が非劣性であったという結果が報告された7)。「患者さんのための胃がん治療ガイドライン 2023年版」では、この2023年3月発表のエビデンスも盛り込まれ、腹腔鏡下胃切除術の解説が掲載されている。また、さらに進歩したロボット支援手術も推奨される時代になっており、これについても本ガイドラインで解説されている。 薬物治療についても進歩が著しく、抗PD-L1抗体薬の使用が推奨され、今後も新しい分子標的治療薬が登場する予定である。そこで本ガイドラインでは、2021年発刊の「胃癌治療ガイドライン 第6版」の情報だけでなく、WEB速報版8)の内容も取り入れられている。具体的には「図30 推奨されるがん薬物療法」において、「HER2陰性の治癒切除不能な進行・再発胃がん/胃食道接合部がんにおけるニボルマブと化学療法を含む治療」が、1次化学療法の選択肢に追加されている。 そのような背景を踏まえて、「Q3 HER2、CPS、MSIって何ですか?」など、用語の解説も多く掲載されている。寺島氏は「患者さんが治療を理解・納得したうえで、医療者と治療方法を決めていく、Shared Decision Making(SDM)が極めて重要である」と述べ、本ガイドラインを活用してほしいと語った。ガイドライン普及のために 本ガイドラインの患者さんへの普及のために医療者に期待することを聞くと、寺島氏は、「看護師をはじめとするコメディカルの方も手に取って、理解を深めてほしい。そうすることで患者さんの説明もよくわかるようになるため、日々の業務に活用できると考えている。そして、コメディカルの方からも患者さんへこのガイドラインを紹介していただけるとありがたい」と述べた。 なお、金原出版では国立がん研究センター中央病院に、本邦初の医学書の自動販売機を設置し、がん患者さん向けのガイドラインを販売する取り組みを行っている。書籍紹介『患者さんのための胃がん治療ガイドライン 2023年版』■参考文献1)日本胃癌学会編集. 胃癌治療ガイドライン 医師用 2021年7月改訂 第6版. 金原出版;2021.2)Sasako M, et al. N Engl J Med. 2008;359:453-462.3)Sasako M, et al. Lancet Oncol. 2006;7:644-651.4)Sano T, et al. Ann Surg. 2017;265:277-283.5)Kurokawa Y, et al. Lancet Gastroenterol Hepatol. 2018;3:460-468.6)Katai H, et al. Lancet Gastroenterol Hepatol. 2020;5:142-151.7)Etoh T, et al. JAMA Surg. 2023 Mar 15. [Epub ahead of print]8)日本胃癌学会. 胃癌治療ガイドライン 医師用 第6版 学会WEB速報

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肺がん・上部消化器がん、オランザピンが食欲・体重を改善/JCO

 食欲減退は進行がん患者の30~80%にみられ、化学療法により悪化することがある。そこで、インド・Jawaharlal Institute of Postgraduate Medical Education and ResearchのLakshmi Sandhya氏らは、がん患者の化学療法に伴う消化器症状の改善に用いられるオランザピンについて、食欲亢進・体重増加効果を検討した。肺がん患者、上部消化器がん患者に対して、化学療法中に低用量のオランザピンを毎日投与することで、食欲亢進および体重増加が認められた。本研究結果は、Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2023年3月28日号に掲載された。 18歳以上で、未治療の進行または転移を有する胃がん患者(68例)、肺がん患者(43例)、肝がん・膵がん・胆道がん患者(13例)計124例を対象とした。対象患者を化学療法とともに低用量オランザピン(2.5g/日)を投与する群(オランザピン群)またはプラセボを投与する群に、1対1の割合で無作為に割り付け、12週間投与した。両群とも、標準的な栄養評価と食事のアドバイスを受けた。主要評価項目は、5%以上の体重増加が認められた患者の割合と食欲改善であった。食欲については、VAS(visual analog scale)およびFAACT ACS(Functional Assessment of Chronic Illness Therapy system of Quality-of-Life questionnaires Anorexia Cachexia subscale)で評価した。副次評価項目は、栄養状態の変化、QOL、化学療法の毒性であった。 主な結果は以下のとおり。・対象患者124例(年齢中央値:55歳[範囲:18~78]、オランザピン群63例、プラセボ群61例)のうち、112例(オランザピン群58例、プラセボ群54例)が解析可能であった。・5%以上の体重増加が認められた患者の割合は、プラセボ群が9%(5/54例)であったのに対し、オランザピン群は60%(35/58例)であり、オランザピン群で有意に高率であった(p<0.001)。・VASに基づく食欲改善が認められた患者の割合は、プラセボ群が13%(7/54例)であったのに対し、オランザピン群は43%(25/58例)であり、オランザピン群で有意に高率であった(p<0.001)。・FAACT ACSに基づく食欲改善(37点以上)が認められた患者の割合は、プラセボ群が4%(2/54例)であったのに対し、オランザピン群は22%(13/58例)であり、オランザピン群で有意に高率であった(p=0.004)。・オランザピン群では、栄養状態、QOLが良好であり、化学毒性も少なかった。 著者らは、「低用量オランザピンは、未治療患者におけるがん化学療法中の食欲と体重を改善する、安価かつ忍容性の高い治療である。低用量オランザピンには、栄養状態の改善やQOLの改善、化学療法の毒性の低減といった副次的なベネフィットもみられた」とまとめた。

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MMR正常を含む進行・再発子宮体がん、dostarlimab追加でPFS延長(RUBY)/NEJM

 原発性の進行または再発子宮体がんの治療において、標準化学療法+免疫チェックポイント阻害薬dostarlimabの併用は、標準化学療法単独と比較して、2年後の無増悪生存率が有意に高く、安全性プロファイルは個々の薬剤の既知のものと全般的に一致することが、デンマーク・コペンハーゲン大学病院のMansoor R. Mirza氏らが実施した「RUBY試験」で示された。研究結果は、NEJM誌オンライン版2023年3月27日号で報告された。19ヵ国113施設の無作為化プラセボ対照第III相試験 RUBY試験は、19ヵ国113施設が参加した二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2019年7月18日~2021年2月23日に患者のスクリーニングが行われた(GSKの助成を受けた)。 年齢18歳以上で、原発性のStageIII/IVまたは初回再発の子宮体がんの患者が、カルボプラチン+パクリタキセルによる標準化学療法に加え、dostarlimab(500mg)またはプラセボを3週ごとに6サイクル静脈内投与した後、dostarlimab(1,000mg)またはプラセボを単独で6週ごとに最長3年間投与する群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要評価項目は、担当医判定(RECIST ver1.1に基づく)による無増悪生存と、全生存であった。全生存率も、dMMR-MSI-H集団、全患者集団の双方で良好 494例が登録され、dostarlimab群に245例(年齢中央値64歳[四分位範囲[IQR]:41~81])、プラセボ群に249例(65歳[28~85])が割り付けられた。118例(23.9%)がミスマッチ修復機能欠損型(dMMR)の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)の腫瘍であり、dostarlimab群に53例(61歳[45~81])、プラセボ群に65例(66歳[39~85])が含まれた。 dMMR-MSI-H集団では、24ヵ月の時点における推定無増悪生存率は、dostarlimab群が61.4%(95%信頼区間[CI]:46.3~73.4)と、プラセボ群の15.7%(7.2~27.0)に比べ有意に優れた(ハザード比[HR]:0.28、95%CI:0.16~0.50、p<0.001)。 全患者集団における24ヵ月時の推定無増悪生存率は、dostarlimab群が36.1%(95%CI:29.3~42.9)であり、プラセボ群の18.1%(13.0~23.9)よりも有意に良好だった(HR:0.64、95%CI:0.51~0.80、p<0.001)。 また、dMMR-MSI-H集団の24ヵ月時の全生存率は、dostarlimab群が83.3%(95%CI:66.8~92.0)、プラセボ群は58.7%(43.4~71.2)であり、dostarlimab群で優れた(HR:0.30、95%CI:0.13~0.70)。 全患者集団の24ヵ月時の全生存率は、dostarlimab群が71.3%(95%CI:64.5~77.1)、プラセボ群は56.0%(48.9~62.5)と、dostarlimab群で高かった(HR:0.64、95%CI:0.46~0.87、p=0.0021)が、中止基準の有意水準(p=0.00177)は満たさなかった。 試験期間中に発現または悪化した有害事象のうち最も頻度が高かったのは、悪心(dostarlimab群53.9%、プラセボ群45.9%)、脱毛(53.5%、50.0%)、倦怠感(51.9%、54.5%)であった。Grade3以上の有害事象(70.5%、59.8%)、重篤な有害事象(37.8%、27.6%)の頻度は、プラセボ群よりもdostarlimab群で約10ポイント高かった。 著者は、「MMRとMSIの状態の検査は、子宮体がんにおける免疫チェックポイント阻害薬の使用の可能性について、予後因子と効果予測因子の双方で考慮されるため重要であり、本研究では、dMMR-MSI-H集団においてdostarlimab群で良好な無増悪生存率が得られた」と指摘している。

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乳がんの予後に糖尿病が影響

 糖尿病の女性は乳がん発症リスクが高いことが知られているが、乳がんの予後にも糖尿病の影響が及ぶ可能性を示唆する研究結果が報告された。糖尿病がある場合、無遠隔転移生存期間や全生存期間が有意に短いという。順天堂大学大学院医学研究科乳腺腫瘍学の戸邉綾貴子氏、堀本義哉氏らの研究によるもので、詳細は「Breast Care」10月発行号に掲載された。 糖尿病は多くのがんの発症リスクの高さと関連のあることが報告されており、そのメカニズムとして、インスリン抵抗性による高インスリン血症が、がんの発生を促すように働くことが想定されている。乳がんも糖尿病によって発症率が高くなるがんの一つ。ただ、乳がんの予後が糖尿病の有無によって異なるのか否かは明確になっていないことから、戸邉氏らはこの点を後方視的コホート研究により検討した。 2006~2018年に乳がんに対する根治的手術を受けた患者(遠隔転移のあるステージ4以外の患者)のうち、解析に必要なデータがそろっていて、経過を1年以上追跡可能だった322人を解析対象とした。このうち106人(33%)が糖尿病を有していた。糖尿病群は非糖尿病群に比べて高齢で(67.6対61.5歳)、BMIが高い(26.8対23.8)という有意差があった(いずれもP<0.001)。また、糖尿病群は腫瘍径の大きい患者の割合が高かった(5cm未満と以上の比がP=0.040)。ただし、女性ホルモン受容体(ER)陽性の割合やヒト上皮成長因子受容体2遺伝子(HER-2)陽性の割合、術後補助化学療法の施行率は有意差がなかった。 この対象に含まれていた、遠隔転移を起こし得る浸潤性乳がん患者296人を平均45カ月間(範囲2~147)追跡したところ、36人(12%)に遠隔転移が発生していた。そのうち16人が乳がんで死亡し、13人が乳がん以外の原因で死亡していた。 無遠隔転移生存期間(DMFS)に関連する因子を検討したところ、単変量解析では腫瘍径、リンパ節転移、ERの状態、術後補助化学療法の有無とともに、糖尿病が有意に関連していた。それらを独立変数とする多変量解析では、腫瘍径〔ハザード比(HR)4.68(95%信頼区間2.13~10.32)〕と糖尿病〔HR2.27(同1.05~5.02)〕という2項目が、DMFSの短縮に関連する独立した因子として抽出された。また、全生存期間(OS)については多変量解析の結果、ER陽性のみがOS延長に有意に関連する因子という結果だった〔HR0.14(0.06~0.36)〕。 次に、カプランマイヤー法でDMFSとOSを検討すると、糖尿病群はDMFSが有意に短く(P=0.036)、OSは有意差がなかった(P=0.115)。ただし、ER陰性のサブグループ解析では、DMFS(P=0.045)だけでなく、OS(P=0.029)も糖尿病群では有意に短いことが明らかになった。一方、ER陽性の場合は、DMFS、OSともに糖尿病の有無による有意差は見られなかった。 続いて、糖尿病患者群を乳がん診断時のHbA1c7.0%未満/以上で層別化して検討すると、DMFS(P=0.732)、OS(P=0.568)ともに、HbA1cの高低による有意差は認められなかった。 これらの結果を基に著者らは、「乳がん診断時に糖尿病を有していた患者は予後が悪く、特にER陰性の場合は予後への影響がより顕著だった」と総括している。また、糖尿病患者は予後が悪いにもかかわらず、HbA1cで層別化した検討ではDMFSやOSに有意差が示されなかったことから、「糖尿病の一次予防の重要性が再認識された」と考察を述べている。

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進行・再発子宮体がん、ペムブロリズマブ追加でMMRによらずPFS延長(NRG-GY018)/NEJM

 進行または再発子宮体がん患者において、標準化学療法+免疫チェックポイント阻害薬ペムブロリズマブの併用療法は、標準化学療法単独と比較して無増悪生存期間(PFS)が有意に延長し、有害事象の発現状況は両群とも予想どおりであったことが、米国・カリフォルニア大学のRamez N. Eskander氏らが実施した「NRG-GY018試験」で示された。研究結果は、NEJM誌オンライン版2023年3月27日号に掲載された。dMMRとpMMRで層別化した無作為化プラセボ対照試験 NRG-GY018試験は、4ヵ国(米国、カナダ、日本、韓国)の395施設が参加した二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2019年7月~2022年12月に患者の登録が行われた(米国国立がん研究所[NCI]などの助成を受けた)。 年齢18歳以上で、測定可能なStageIII/IVA、または測定可能病変の有無を問わずStageIVBあるいは再発病変を有し、新規に診断された子宮体がん患者が、標準化学療法であるパクリタキセル+カルボプラチンに加え、ペムブロリズマブまたはプラセボを投与する群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。なお、前回化学療法からの期間が12ヵ月以上の場合は組み入れ可能とした。 ペムブロリズマブとプラセボは、化学療法と併用で3週ごとに6サイクルを静脈内投与したのち、維持療法として単剤で6週ごとに最大14サイクルが投与された。被験者は、ミスマッチ修復機能欠損(dMMR)とミスマッチ修復機能正常(pMMR)の2つのコホートに層別化された。 主要評価項目は、2つのMMRコホートにおけるPFSとされた。中間解析は、dMMRコホートで少なくとも84件の死亡または進行のイベントが発生、およびpMMRコホートで少なくとも196件のイベントが発生した後に行うことが計画された。dMMRコホートでの無増悪生存率:74% vs.38% 816例が登録され、このうち225例がdMMRコホート、591例がpMMRコホートであり、有効性の解析には、それぞれ225例(ペムブロリズマブ群112例、プラセボ群113例)、588例(293例、295例)が含まれた。年齢中央値はdMMRコホートが66歳、pMMRコホートは65.5歳であり、前治療として化学療法を受けた患者がそれぞれ5.8%、25.3%、放射線治療が42.7%、39.6%、手術が90.2%、86.1%であった。 dMMRコホートでは、追跡期間中央値12ヵ月時点でのPFS中央値は、ペムブロリズマブ群が未到達(95%信頼区間[CI]:30.6~未到達)、プラセボ群は7.6ヵ月(6.4~9.9)であり、ペムブロリズマブ群で有意に長かった。Kaplan-Meier法により推定した無増悪生存率は、それぞれ74%、38%であり、病勢進行または死亡のリスクは、ペムブロリズマブ群がプラセボ群より70%低かった(ハザード比[HR]:0.30、95%CI:0.19~0.48、p<0.001)。 同様に、pMMRコホートの追跡期間中央値7.9ヵ月時点のPFS中央値は、ペムブロリズマブ群が13.1ヵ月(95%CI:10.5~18.8)、プラセボ群は8.7ヵ月(8.4~10.7)と、有意な差が認められた(HR:0.54、95%CI:0.41~0.71、p<0.001)。 有害事象の発現状況は、ペムブロリズマブ群、プラセボ群とも予想どおりであった。dMMRコホートでは、ペムブロリズマブ群98.2%、プラセボ群99.1%で有害事象が発現し、pMMRコホートではそれぞれ93.5%、93.4%で認められた。Grade3以上の有害事象は、dMMRコホートではペムブロリズマブ群63.3%、プラセボ群47.2%、pMMRコホートではそれぞれ55.1%、45.3%で発現した。 注目すべき有害事象(インフュージョンリアクション、甲状腺機能低下症、甲状腺機能亢進症、大腸炎、肺臓炎など)は、dMMRコホートではペムブロリズマブ群38.5%、プラセボ群26.4%、pMMRコホートではそれぞれ33.3%、19.7%で発現し、Grade3以上はdMMRコホートではペムブロリズマブ群8.3%、プラセボ群5.7%、pMMRコホートではそれぞれ3.6%、2.6%でみられた。 著者は、「これらのデータは、進行・再発子宮体がん患者の1次治療への免疫療法の導入が、MMRの状態や組織学的所見にかかわらず、腫瘍学的アウトカムの改善につながることを示唆するものである」としている。

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ペムブロリズマブ+化学療法、悪性胸膜中皮腫1次治療のOSを改善/MSD

 2023年3月10日、Merck社は切除不能な進行または転移のある悪性胸膜中皮腫の1次治療においてペムブロリズマブと化学療法の併用療法を評価する第II/III相CCTG IND.227/KEYNOTE-483試験で、主要評価項目の全生存期間(OS)を達成したことを発表した。 IND.227/KEYNOTE-483試験は、Canadian Cancer Trials Group(CCTG)が実施医療機関となり、National Cancer Institute of Naples(NCIN)およびIntergroupe Francophone de Cancerologie Thoracique(IFCT)と共同で実施する非盲検無作為化第II/III相試験である。同試験では切除不能な進行悪性胸膜中皮腫の治療においてペムブロリズマブと化学療法の併用療法を評価した。主要評価項目はOSで、副次評価項目は盲検下独立判定機関(BICR)が評価した無増悪生存期間(PFS)および客観的奏効率(ORR)のほか、安全性、生活の質(QoL)であった。 同試験の最終解析でペムブロリズマブと化学療法の併用療法群は、化学療法単独群と比較して統計学的に有意かつ臨床的に意味のあるOSの改善が認められた。本試験におけるペムブロリズマブと化学療法の併用療法の安全性プロファイルはこれまでに報告されている試験の結果と一貫していた。 悪性中皮腫は胸部、腹部、心臓、精巣など体の特定の部位を覆う膜に発生するがんで、2020年には世界で3万人以上が新たに診断され、2万6,000人以上が死亡したと推定されている。胸膜中皮腫は、悪性中皮腫の中で最も多く、約75%を占めている。悪性胸膜中皮腫は多くの場合進行が速く、5年生存率はわずか12%とされる。 この結果は、今後さまざまな腫瘍関連学会で発表するとともに、世界各国の規制当局へ承認申請する予定である。

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