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心アミロイドーシス〔CA:cardiac amyloidosis〕

1 疾患概要■ 定義心アミロイドーシスは、心臓間質に線維状の異常蛋白質であるアミロイドが沈着し、形態的、機能的な異常を来す病態をいう。本症は、心肥大、拡張障害を主体とする心不全を来す進行性の予後不良な二次性心筋症である。■ 分類全身性アミロイドーシスは30種類以上のアミロイド前駆蛋白質が同定されているが、心アミロイドーシスは、免疫グロブリン遊離軽鎖(免疫グロブリン性アミロイドーシス:AL)とトランスサイレチン(トランスサイレチンアミロイドーシス:ATTR)の2つに大別される。ATTRはさらに、トランスサイレチン遺伝子に病的変異のない野生型ATTR(ATTRwt)と、病的変異がある遺伝性ATTR(ATTRv)に分けられる。■ 疫学1)ATTRATTRwtは男性に多く、高齢発症である。病理学的には、80歳を超える高齢者の剖検で12~25%と決して少なくない頻度で、心臓にアミロイドが沈着していることが知られていた。近年、99mTc-PYPシンチグラフィーの画像診断によって、ATTRの診断症例数が飛躍的に増加し、さまざまな心疾患に潜在していることが明らかになっている。収縮能の保たれた心不全(HFpEF)患者の約13%、TAVI治療を受けた大動脈弁狭窄症患者の約16%、壮年以降に診断された肥大型心筋症患者の9%がATTRだと報告されている。2)AL米国では人口100万人当たりの発症頻度は9.7~14人/年、有病率は40.5人/年と報告されている。■ 病因1)ATTR肝臓で産生されるトランスサイレチンは本来4量体で安定化する輸送蛋白質であるが、遺伝子変異や加齢性変化によって不安定化すると、乖離した単量体として重合・凝集しアミロイド線維を形成する。2)ALアミロイドは異常形質細胞により産生されたモノクローナルな免疫グロブリン自由軽鎖のミスフォールディングに由来する。遺伝子配列・遺伝子変異や蛋白質分解などがアミロイド線維の形成性や沈着臓器に影響する。■ 症状病型に関わらず心アミロイドーシスは、左室機能低下(主に拡張障害)、左室肥大、刺激伝導系障害、不整脈(心房細動)を来す。進行例では低血圧を認める。1)ATTRATTRwtは障害臓器が限定的で、心病変が主体である。また、腱靱帯に沈着する傾向があるため、整形外科疾患を高率に合併し、特に手根管症候群は心症状に先行する心外病変(6.1±4.6年)として重要である。心症状の他、末梢神経障害・自律神経障害、眼症状、消化管症状などを認めた場合はATTRvの可能性を積極的に検討する。2)ALAL心アミロイドーシスは、ATTRと比較して非常に進行が速く、重症化しやすい。腎臓も障害臓器として重要で、重症例は透析も必要となる。■ 予後1)ATTR予後は、約3.5~5年と報告されているが、近年、疾患修飾薬が登場し、予後の改善が期待されている。2)AL心病変の有無が予後を規定し、TnT、BNP、FLCなどで予後が層別化され、最も進行したステージの生存期間は約半年とされている。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)はじめに図1に早期診断のためのRed flagと診断フローチャートを示す。近年、99mTc-PYPシンチグラフィーが、ATTR心アミロイドーシスにおいて心臓に強い集積像(grade2以上)を示すことが明らかとなり、その高い診断特異度と陽性的中率を有することから国際的にも有用な診断ツールとなっている。わが国の診断基準も刷新され、従来の病理学的にアミロイド沈着と前駆蛋白を同定する診断を「definite診断」とする一方、生検をせずに99mTc-PYPシンチグラフィーの陽性所見とM蛋白陰性をもってATTRの診断とする「probable診断」が新たに加わった。心アミロイドーシスを疑うきっかけとして心エコーは最適な検査の1つである。心肥大、弁・中隔の肥厚、拡張障害、心嚢液貯留といった古典的な特徴の他に、左室心尖部を除くlongitudinal strainの低下(apical sparing)が、心アミロイドーシスに特異的な所見として近年、鑑別に用いられている。また、心臓MRIも左室心内膜下全周性の遅延造影像や、T1 mappingにおけるnative T1およびECV(extracellular volume)の高値が本症を疑う重要な所見となる。図1 心アミロイドーシス早期診断のためのRed flagと診断フローチャート画像を拡大する3 治療 (治験中・研究中のものも含む)現在、心アミロイドーシスの各病型に対して有効な固有の治療手段が存在する(図2)。図2 心アミロイドーシスに対する現在の治療選択肢画像を拡大する1)トランスサイレチン4量体安定化薬タファミジスタファミジス(商品名:ビンダケル)は、トランスサイレチンに結合し4量体構造を安定化させATTRの進行を抑制する薬剤である。国際多施設共同III相試験で、全死因死亡率および心血管関連入院の頻度を有意に抑制し、ADL低下、心不全のQOLも改善することが示された。サブ解析で、NYHAIII度の心不全よりNYHAI~II度の軽症な心不全で、タファミジス投与によるイベント抑制の効果が明確に認められたため、ガイドラインではNYHA I~II度について推奨クラスIIaとなっている。現在、ATTR心アミロイドーシスに対して承認された唯一の疾患修飾薬となっている。2)核酸医薬パチシラン、ブトリシランパチシラン(同:オンパットロ)は、遺伝子サイレンシングの技術を応用したTTRmRNAを標的とする世界初のsiRNA製剤である。本剤は、トランスサイレチンを産生する肝臓に作用し、TTRmRNAをknock downすることで、血中トランスサイレチン濃度を約80%低下させる。ATTRv患者に対して行われた第III相試験で、末梢神経障害の有意な改善を認め、サブ解析で左室壁厚の減少、左室longitudinal strain、心拍出量、左室拡張末期容積、NT-proBNPの悪化を抑制することが示された。現在、次世代siRNA製剤ブトリシラン(同:アムヴトラ)も開発され、3ヵ月の皮下注射でknock downによる効果が持続する。パチシラン、ブトリシランともに家族性アミロイドポリニューロパチーに対して承認されている。3)ヒト抗CD38モノクロナール抗体ダラツムマブALアミロイドーシスの進行した心病変に対して十分な成績が期待できる化学療法はこれまで存在しなかったが、2021年7月ヒト抗CD38モノクロナール抗体ダラツムマブ(同:ダラザレックス)を含む4剤化学療法Dara-CyBorD療法(ダラツムマブ、シクロフォスファミド、ボルテゾミブ、デキサメタゾン)の有効性・安全性が明らかとなった。この4剤化学療法は、速やかな血液学的反応と高い寛解導入率によって、優れた臓器改善効果を得られることが示された。心病変の改善は6ヵ月で42%(vs.CyBorD22%)と飛躍的に向上し、現在Dara-CyBorD療法はALアミロイドーシスに対する標準治療となっている。4 今後の展望siRNA製剤やアンチセンスオリゴといった核酸医薬が、野生型を含めたATTR心アミロイドーシスに対して有効性・安全性を示すか検証する治験が複数実施されており、適応の拡大が期待されている。また、アミロイド線維の除去を目的とした抗体医薬(アミロイドブレーカー)の開発も進んでおり、AL、ATTRそれぞれで治験が行われている。近年、骨髄腫治療の発展は目覚ましく、ALに対してもその恩恵がもたらされることが予想される。特にCAR-T療法や二重特異性(bi-specific)抗体などの免疫細胞療法の応用が期待される。5 主たる診療科どの病型も心病変は循環器内科が診療に携わる。ALに対する幹細胞移植や化学治療は血液内科が行う。障害臓器に応じて、神経内科、腎臓内科、整形外科など多くの科が診療に関わる。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報「アミロイドーシス調査研究班」(厚生労働省)ホームページ(医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報道しるべの会(ATTRv患者家族会)(患者向けのまとまった情報)1)北岡裕章ほか. 日本循環器学会「心アミロイドーシス診療ガイドライン」2020年版.2)Gillmore JD, et al. Circulation. 2016;133:2404-2412.3)Maurer MS, et al. N Engl J Med. 2018;379:1007-1016.4)Adams D, et al. N Engl J Med. 2018;379:11-21.5)Kastritis E, et al. N Engl J Med. 2021;385:46-58.6)Inomata T,et al. ESC Heart Fail. 2021;8:2647-2659.公開履歴初回2023年5月30日

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がん化学療法中に発症した肺塞栓症、がん治療医と循環器医が協力して行うべき適切な管理は?【見落とさない!がんの心毒性】第21回

※本症例は、実臨床のエピソードに基づく架空のモデル症例です。あくまで臨床医学教育の普及を目的とした情報提供であり、すべての症例が類似の症状経過を示すわけではありません。《今回の症例》年齢・性別30代・男性主訴右下腿の腫脹・疼痛現病歴とくに既往症はなく、生来健康であった。陰嚢腫大を契機に右精巣腫瘍を指摘された。高位精巣摘除術で非セミノーマの診断となり、術後の血液検査で腫瘍マーカーの上昇(LDH、hCG-β、AFP)と、造影CT検査で領域リンパ節と傍大動脈リンパ節の多発転移(最大径4cm)、多発肺転移(最大径3cm)を指摘された。右精巣腫瘍(胚細胞腫瘍・非セミノーマ)、TNM分類はT2N2M1aS1、ステージIIIA、IGCCC分類の予後良好群と診断された。化学療法は腫瘍内科医が担当することとなった。腫瘍内科医は症例患者のステージ、リスク分類から、標準治療であるBEP療法 (ブレオマイシン、エトポシド、シスプラチン) 3コースを行う方針とした。BEP療法2コース後、腫瘍マーカーは正常範囲内まで改善したが、発熱性好中球減少症(FN:febrile neutropenia)や消化器毒性、倦怠感など化学療法に伴う有害事象があり、入院中も臥床時間が長い傾向にあった。1コース目でFNを発症したため、2コース目は二次予防的にG-CSF製剤を使用した。3コース目開始前日に右下腿の腫脹・疼痛の訴えがあり、血液検査を実施したところD-dimerが9.5μg/mLと高値であった。右下腿の腓腹筋の把握痛を認めたため、腫瘍内科医は深部静脈血栓症(DVT:deep vein thrombosis)を疑い下肢静脈超音波検査を行ったところ、右大腿〜膝窩静脈に比較的新鮮と思われる血栓(中枢型DVT)を認めた。バイタルサインに問題はなく、呼吸困難や胸痛の訴えはなかったが、造影CT画像検査で左右の肺動脈に塞栓がみられ、肺塞栓症(PE:pulmonary embolism)も合併していることがわかった。多発リンパ節転移、多発肺転移は化学療法導入前より縮小傾向にあり、リンパ節転移はいずれも短径1cm未満、肺転移も長径2cm未満となっており、化学療法は奏効していると思われた。【問題1】本症例の患者がDVT/PEを発症した原因や誘因について、正しいと思われる選択肢を3つ選んでください。a.長期臥床や骨盤リンパ節転移による下肢静脈の圧排による血流停滞が血栓形成の誘因となった。b.シスプラチンは一般的に血栓塞栓症のリスクが高い抗がん剤とされている。c.ブレオマイシンは一般的に血栓塞栓症のリスクが高い抗がん剤とされている。d.固形がんにおける化学療法中のDVTの発症頻度はがん種によって差があり、胚細胞腫瘍は比較的リスクが高いがん種である。e.化学療法による有害事象対策のための支持療法に使用する薬剤は血栓塞栓症のリスクにはならない。腫瘍内科医は本症例の患者におけるDVT/PEの治療について、循環器内科医にコンサルトした。心電図検査、心臓超音波検査で右室負荷所見は認めず、循環動態は保たれていると判断した。腫瘍内科医と循環器医で協議し、治療方針について検討を行った。【問題2】本症例の治療方針について、不適切な選択肢を1つ選んでください。a.腎機能や体重を確認し、経口薬であるDOACs(direct oral anticoagulants)でDVT/PEの治療を開始した。b.抗凝固薬を開始してもDVTが軽快せず、PEが悪化した場合に致死的になるリスクが高いと思われる場合はIVCフィルターを検討する方針とした。c.腫瘍マーカーの値やCTの結果から、胚細胞腫瘍の病勢はコントロールできているため、DVT/PEの治療を優先し、血栓・塞栓が画像上完全に消失したことを確認してから化学療法を再開する方針とした。d.化学療法がDVT/PEの誘因になった可能性は否定できないが、抗凝固薬を開始してDVT/PEの明らかな増悪がなければBEP療法の3コース目は減量せずに実施する方針とした。e.化学療法後に残存腫瘍に対する外科的切除術を行う可能性があるため、DVT/PEの治療状況や心機能の評価は循環器内科医が併診しながら慎重に経過を観察した。<Take home message>血管新生阻害薬やHER2阻害薬などの分子標的薬、または免疫チェックポイント阻害薬における循環器領域の有害事象が腫瘍循環器領域でのトピックになっているが、いわゆる抗がん剤(殺細胞性抗がん剤)でも腫瘍循環器的プロブレムがみられることがある。それぞれの薬剤における頻度・致死性の高い有害事象を理解することは、腫瘍内科医、循環器内科医の双方にとって重要である。腫瘍内科医は「がんの治療は詳しいが、循環器の治療はよくわからない」。一方で、循環器内科医は「循環器の治療は詳しいが、がんの治療はよくわからない」。腫瘍内科医と循環器内科医が密に連携し、それぞれの専門領域の観点からベストと思われる対応を目指すことが、腫瘍循環器的プロブレムのより良い管理にとって必要である。1)Seng S, et al. J Clin Oncol. 2012;30:4416-4426.2)Oppelt P, et al. Vasc Med. 2015;20:153-161.3)Piketty AC, et al. Br J Cancer. 2005;93:909-914.4)Lauritsen J, et al. J Clin Oncol. 2020;38:584-592.5)Haddad TC, et al. Thromb Res. 2006;118:555-568.6)Khorana AA, et al. Cancer. 2005;104:2822-2829.7)Raskob GE, et al. N Engl J Med. 2018;378:615-624.8)Agnelli G, et al. N Engl J Med. 2020;382:1599-1607.9)Young AM, et al. J Clin Oncol. 2018;36:2017-2023.10)Empowering urologists to provide the best possible care:Testicular Cancer11)Motzer RJ, et al. Cancer. 1990;66:857-861. 12)Mulder FI, et al. Blood. 2021;137:1959-1969.講師紹介

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TTF-1は肺腺がんにおけるICI+化学療法の効果予測因子となるか/日本呼吸器学会

 肺腺がんに対する免疫チェックポイント阻害薬(ICI)+化学療法の効果予測因子として、TTF‐1(Thyroid transcription factor-1)の可能性が研究されている。 TTF-1は甲状腺・肺・脳で認められる遺伝子調節タンパクである。肺腺がんにおいても、TTF−1との研究が報告されている。 肺腺がんではTTF-1陽性が多く60〜80%を占め、陰性は20〜40%である。TTF-1陽性例に比べ、陰性例は予後不良であるとされる。また、TTF-1の発現の有無は、化学療法薬ペメトレキセドの効果に影響を及ぼすとの報告がある。しかし、肺腺がんにおける、ICIとペメトレキセドを含む化学療法との併用療法とTTF-1発現の関係については十分に研究されていない。第63回日本呼吸器学会学術講演会でも、肺腺がんとTTF-1の関係を検討した研究がいくつか報告された。TTF-1は肺腺がんに対するICI+化学療法の効果予測因子 肺腺がんにおける、TTF-1のICI+化学療法の効果予測因子として可能性を検討した多施設後方視的研究が行われた。その結果を、兵庫県立淡路医療センターの桐生 辰徳氏が発表した。対象はICI+化学療法を施行した再発進行肺腺がん患者101例で、免疫染色強度と腫瘍細胞割合で陽性と陰性に分けて検討した。 研究の結果、奏効率(ORR)はTTF-1陽性では51.7%、陰性では35.7%であった(p=0.141)。無増悪生存期間(PFS)中央値は陽性では7.6ヵ月、陰性では6.4ヵ月であった(p=0.056)。さらにICI+化学療法を、ペメトレキセド使用レジメンとタキサン使用レジメンに分けて検討した。ペメトレキセド使用群のPFS中央値は、TTF-1陽性例で8.5ヵ月、陰性例では5.3ヵ月であった(p=0.005)。一方、タキサン使用群のPFS中央値は、陽性例で7.3ヵ月、陰性例では6.4ヵ月であった(p=0.587)。 陽性と陰性のORRおよびPFSの結果から、TTF-1は肺腺がんにおけるICI+化学療法の効果予測因子である可能性が示された。また、ペメトレキセドを使用したICI+化学療法レジメンではTTF-1陰性例で抗腫瘍活性が低い可能性が示唆され、タキサンを使用したICI+化学療法レジメンでは陽性と陰性での差が少なかった。肺腺がんに対するペメトレキセド・ICI併用レジメンの抗腫瘍効果とTTF-1発現 ペメトレキセドは肺腺がんの治療において欠かせない化学療法薬だが、上記研究で傾向がみられるように、TTF-1陽性例に比べ、陰性例で効果が劣る可能性が示唆されている。 日本医科大学の高嶋 紗衣氏は、自施設の肺腺がん症例において、ペメトレキセドを使用したICI+化学療法レジメンとTTF-1発現の関係を後方視的に研究した。2016〜22年に日本医科大学において、肺腺がんと診断されTTF-1染色を行った後、化学療法を行った333例のうち、ペメトレキセド+プラチナ化学療法+ICIレジメンを施行した患者46例で、TTF-1発現別に予後と治療効果を検討している。 研究の結果、ORRはTTF-1陽性で51.4%、陰性では22.2%、全生存期間中央値は陽性で30.1ヵ月、陰性では6.53ヵ月であった(p=0.08)。 上記の桐生氏の発表および従来の報告同様、ペメトレキセド+プラチナ化学療法は、ICI併用においてもTTF-1陰性肺腺がんでは抗腫瘍効果が低い傾向が示された。ただし、「今回の試験では、TTF-1陰性の症例が少ないことは大きなlimitationであり、今後の追加研究が必要だ」と高嶋氏は述べた。

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進行乳がんへのHER3-DXd、効果予測因子は?(ICARUS-BREAST01)/ESMO BREAST 2023

 HR+/HER2-の進行乳がん患者に対し、HER3を標的としたpatritumab deruxtecan(HER3-DXd)を投与した第II相ICARUS-BREAST01試験において、ベースライン時のHER3+の血中循環腫瘍細胞(CTC)数が多い患者、または1サイクル目でHER3+のCTC数が大きく減少した患者では、治療反応が早期に得られやすい傾向にあったことを、フランス・Gustave RoussyのBarbara Pistilli氏が欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer 2023、5月11~13日)で報告した。 これまで、HER3+の再発/転移乳がん患者(HR+/HER2-、HER2+、トリプルネガティブ)に対する第I/II相U31402-A-J101試験において、HER3-DXdの有効性と安全性が示されている。この有用性はすべてのサブタイプで同様であり、HER3-DXdはHER3の発現量にあまり依存しない可能性が示唆されており、HER3-DXdに対する反応性/抵抗性のバイオマーカーは不明である。 そこで、本試験は複数治療歴のあるHR+/HER2-進行乳がん患者におけるHER3-DXdの予測因子を明らかにすることを目的として現在行われている。データカットオフは2023年2月15日で、今回は3ヵ月奏効率と安全性データが報告された。なお、IHCでのHER3発現状況の登録は、2022年4月21日より削除された。・対象:CDK4/6阻害薬+内分泌療法歴、1ラインの化学療法歴のあるHR+/HER2-またはHER2低発現の進行乳がん(切除不能の局所進行もしくは転移を有する乳がん)患者・試験群:HER3-DXd 5.6mg/kg 3週間ごとに静脈内投与(治療前、治療中、治療終了時に腫瘍生検) ・評価項目:[主要評価項目]奏効率[副次評価項目]無増悪生存期間、奏効期間、クリニカルベネフィット率、全生存期間、安全性 主な結果は以下のとおり。・データカットオフの時点で85例の患者が試験に参加し、うち56例が評価可能であった。・ベースライン時の患者特性は、年齢中央値56歳(範囲:28~82歳)、全例が女性、HER3+が51.8%、前治療のライン数中央値2(範囲:1~4)、HER3-DXdのサイクル数中央値8(範囲:1~20)であった。・3ヵ月奏効率は、部分奏効が28.6%(16例)、病勢安定が53.6%(30例)、進行が17.8%(10例)であった。・HER3-DXd投与1~2サイクル後に、主にHER3+のCTC数の中央値が減少した。・HER3-のCTC数と治療効果に関連はなく、病勢進行時もHER3-のCTC数の増加はみられなかった。・ベースライン時のHER3+のCTC数が多い患者、または1サイクル目でHER3+のCTC数が大きく減少した患者では、治療反応が早期に得られやすい傾向にあったが、統計学的な有意差は認められなかった。・治療関連有害事象(TRAE)は100%に生じ、多かったものは疲労89.3%、悪心75.0%、下痢46.4%、脱毛44.6、便秘26.8%であった。Grade3以上のTRAEは48.2%で、疲労14.3%、悪心3.6%、下痢3.6%、便秘5.3%であった。間質性肺疾患は1例(1.8%)報告された。 ICARUS BREAST01試験は現在も進行中であり、さらなる有効性と効果予測因子の解析が行われる予定である。

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膵頭十二指腸切除後の手術部位感染予防、TAZ/PIPCが有用/JAMA

 適応症を問わず、開腹による膵頭十二指腸切除術後の手術部位感染(SSI)の予防において、セフォキシチン(国内販売中止)と比較して、広域スペクトラム抗菌薬ピペラシリン・タゾバクタムは、術後30日の時点でのSSIの発生率を有意に抑制し、術後の敗血症や膵液瘻の発生頻度も低いことが、米国・スローン・ケタリング記念がんセンターのMichael I. D'Angelica氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2023年5月9日号に掲載された。北米のレジストリ連携型非盲検多施設無作為化第III相試験 本研究は、レジストリ連携の実践的な非盲検多施設無作為化第III相試験であり、2017年11月~2021年8月の期間に、米国とカナダの26施設(外科医86人)で患者の登録が行われた(米国NIH/NCIがんセンター研究支援助成などの助成を受けた)。 年齢18歳以上で、適応症を問わず待機的な開腹膵頭十二指腸切除術を受けた患者が、ピペラシリン・タゾバクタム(各施設の基準に従い3.375または4.5g、静脈内投与)またはセフォキシチン(2g、静脈内投与、対照)の投与を受ける群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。試験薬は、切開開始から60分以内に初回投与が行われ、手術終了まで2~4時間ごとに追加投与され、術後は24時間以内に投与を終えることとされた。 主要アウトカムは、術後30日以内のSSIの発現であった。30日死亡率、臨床的に重要な術後の膵液瘻、敗血症の発生などが、副次アウトカムに含まれた。 本試験は、事前に規定された中止基準に従い、2回目の中間解析により有効中止となった。30日死亡率には差がない 778例が登録され、ピペラシリン・タゾバクタム群に378例(年齢中央値66.8歳、男性61.6%)、セフォキシチン群に400例(68.0歳、55.8%)が割り付けられた。456例(58.6%)が術前に胆管ステントを留置され、273例(35.1%)が術前化学療法もしくは放射線療法を、488例(62.7%)が膵がんの切除術を受けていた。 30日の時点におけるSSIの発生率は、セフォキシチン群が32.8%(131/400例)であったのに対し、ピペラシリン・タゾバクタム群は19.8%(75/378例)と有意に低かった(絶対群間差:-13.0%[95%信頼区間[CI]:-19.1~-6.9]、オッズ比:0.51[95%CI:0.38~0.68]、p<0.001)。 術後の敗血症(4.2% vs.7.5%、群間差:-3.3%[95%CI:-6.6~0.0]、p=0.02)および臨床的に重要な術後の膵液瘻(12.7% vs.19.0%、-6.3%[-11.4~-1.2]、p=0.03)の発生率は、いずれもピペラシリン・タゾバクタム群で有意に低かった。 一方、30日死亡率(1.3% vs.2.5%、群間差:-1.2%[95%CI:-3.1~0.7]、p=0.32)には、両群間に有意な差はみられなかった。 著者は、「術後SSIリスクの低減は、術前の胆道ステント留置の有無にかかわらず認められた。本試験の結果は、開腹膵頭十二指腸切除術後のSSI予防における標準治療としてのピペラシリン・タゾバクタムの使用を支持する」としている。

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EGFR陽性NSCLCの1次治療、オシメルチニブ+化学療法が単剤と比べてPFS延長(FLAURA2)/AZ

 アストラゼネカは、2023年5月18日付のプレスリリースにおいて、オシメルチニブ(商品名:タグリッソ)の国際共同第III相無作為化比較試験(FLAURA2試験)の結果を発表した。EGFR遺伝子変異陽性の進行・転移非小細胞肺がん(NSCLC)に対するオシメルチニブと化学療法の併用は、オシメルチニブ単剤と比べて無増悪生存期間(PFS)を有意に改善した。・対象:EGFR遺伝子変異陽性(ex19del/L858R)のStageIIIB~IVの未治療NSCLC患者586例・試験群(オシメルチニブ+化学療法群):オシメルチニブ80mg/日+化学療法(ペメトレキセド500mg/m2+シスプラチン75mg/m2またはカルボプラチンAUC 5[3週ごと4サイクル])→オシメルチニブ80mg/日+ペメトレキセド500mg/m2(3週ごと)・対照群(オシメルチニブ群):オシメルチニブ80mg/日・評価項目:[主要評価項目]RECIST 1.1に基づくPFS[副次評価項目]全生存期間(OS)、奏効率など 主要評価項目であるPFSについて、最終解析が行われた。今回の解析において、オシメルチニブ+化学療法群はオシメルチニブ群と比べて、PFSの統計学的有意かつ臨床的に意義のある改善を示した。安全性の結果および有害事象により投与中止至った患者の割合は、各薬剤の確立されたプロファイルと一貫していた。なお、今回の解析時点ではOSについてのイベント数が不十分であったため、今後の解析時に評価が行われる予定。

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HER2低発現進行乳がんへのT-DXd、ER低発現でもPFS・OS延長(DESTINY-Breast04)/ESMO BREAST 2023

 第III相DESTINY-Breast04試験のサブグループ解析の結果、HER2低発現(IHC法でER陽性細胞が1~10%)で、エストロゲン受容体(ER)低発現の切除不能または転移のある乳がん患者(MBC)において、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)が医師選択化学療法(TPC)よりも無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)を有意に改善し、その結果はER陰性(IHC法でER陽性細胞が0%)患者と同様であったことを、英国・エディンバラ大学のDavid A. Cameron氏が欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer 2023、5月11~13日)で報告した。 ASCO2022のプレナリーセッションで、HER2低発現のMBC患者に対するDESTINY-Breast04試験の結果が報告されており、ホルモン受容体(HR)の発現状況にかかわらずT-DXd群ではPFSおよびOSが有意に延長したことが示されている。今回のサブグループ解析では、ER低発現の患者における有効性と安全性の探索的解析が行われた(データカットオフ:2022年1月11日)。<DESTINY-Breast04試験 サブグループ解析>・対象:1~2ラインの化学療法歴があり、HER2低発現(IHCスコア1+またはIHCスコア2+かつISH-)のMBC患者110例(ER陰性[0%]58例、ER低発現[1~10%]52例)・試験群(T-DXd群):T-DXdを3週間間隔で5.4mg/kg投与 75例・対照群(TPC群):カペシタビン、エリブリン、ゲムシタビン、パクリタキセル、nab-パクリタキセルから選択 35例・評価項目:[主要評価項目]HR陽性患者の盲検下独立中央評価委員会(BICR)によるPFS[副次評価項目]全患者のBICRによるPFS、HR陽性患者および全患者のOSなど 主な結果は以下のとおり。●サブグループ解析には110例が組み込まれた(括弧内は順に年齢中央値、化学療法歴が1ラインの割合、CDK4/6阻害薬による治療歴ありの割合)。- ER陰性:T-DXd群40例(58.9歳、40.0%、5.0%)、TPC群18例(55.9歳、27.8%、0%)- ER低発現:T-DXd群35例(57.6歳、60.0%、62.9%)、TPC群17例(47.1%、52.9%)●PFS中央値は、T-DXd群がTPC群よりも良好であった。- ER陰性:T-DXd群8.5ヵ月(95%信頼区間[CI]:4.3~11.7)vs.TPC群2.9ヵ月(95%CI:1.4~5.1)、ハザード比[HR]:0.46(95%CI:0.24~0.89)- ER低発現:T-DXd群8.4ヵ月(95%CI:5.6~12.2)vs.TPC群2.6ヵ月(95%CI:1.2~4.6)、HR:0.24(95%CI:0.12~0.48)●OS中央値も、T-DXd群ではTPC群よりも良好であった。- ER陰性:T-DXd群18.2ヵ月(95%CI:13.6~NE)vs.TPC群8.3ヵ月(95%CI:5.6~20.6)、HR:0.48(95%CI:0.24~0.95)- ER低発現:T-DXd群20.0ヵ月(95%CI:13.5~NE)vs.TPC群10.2ヵ月(95%CI:7.8~14.5)、HR:0.35(95%CI:0.16~0.75)●確定奏効率も、T-DXd群ではTPC群よりも良好であった。- ER陰性:T-DXd群50.0%(95%CI:33.8~66.2)vs.TPC群16.7%(95%CI:3.6~41.4)- ER低発現:T-DXd群57.1%(95%CI:39.4~73.7)vs.TPC群5.9%(95%CI:0.1~28.7)●T-DXd群においてGradeを問わず多く発現した治療関連有害事象(TRAE)は、悪心(77.3%)、嘔吐(40.0%)、疲労(37.3%)、食欲低下(34.7%)、脱毛(33.3%)、便秘(33.3%)、貧血(30.7%)、下痢(29.3%)、トランスアミナーゼ値上昇(26.7%)などで、これまで得られていた結果と一致していた。Grade3以上のTRAEは、T-DXd群では53.3%(40例)、TPC群では75.0%(24例)に生じた。

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進行CLLの1次治療、ベネトクラクス併用療法vs.免疫化学療法/NEJM

 進行慢性リンパ性白血病(CLL)で全身状態が良好な患者(すなわち併存病態の負担が少ない患者:fit patient)の1次治療として、ベネトクラクス+抗CD20抗体オビヌツズマブの併用療法は、イブルチニブ併用の有無にかかわらず、免疫化学療法よりも優れることが、ドイツ・ケルン大学のBarbara Eichhorst氏らによる第III相非盲検無作為化試験で示された。これまでに、同患者への1次治療としてのベネトクラクスと抗CD20抗体の併用について評価した無作為化試験は行われていなかった。NEJM誌2023年5月11日号掲載の報告。15ヵ月時点の微小残存病変陰性とPFSを評価 試験はGerman CLL Study Group、HOVON CLL Study Group、Nordic CLL Study Groupによって行われ、欧州9ヵ国とイスラエルの159ヵ所で実施された。 研究グループは、TP53変異陰性の全身状態が良好なCLL患者を1対1対1対1の割合で無作為に4群に割り付け、(1)6サイクル免疫化学療法(フルダラビン+シクロホスファミド+リツキシマブ、またはベンダムスチン+リツキシマブ)、(2)12サイクルのベネトクラクス+リツキシマブの投与、(3)ベネトクラクス+オビヌツズマブの投与、(4)ベネトクラクス+オビヌツズマブ+イブルチニブの投与をそれぞれ行った。イブルチニブは、微小残存病変が2回連続して検出不能(陰性)後は中止し、そうでない場合は延長可能とした。 主要評価項目は、15ヵ月時点でのフローサイトメトリーで評価した微小残存病変の陰性(感度が<10-4[すなわちCLL細胞が1万個中1未満])および無増悪生存期間(PFS)であった。微小残存病変陰性、免疫化学療法群52.0%、ベネトクラクス+オビヌツズマブ群86.5% 2016年12月13日~2019年10月13日に、合計926例が4群に無作為化された(免疫化学療法群229例、ベネトクラクス+リツキシマブ群237例、ベネトクラクス+オビヌツズマブ群229例、ベネトクラクス+オビヌツズマブ+イブルチニブ群231例)。 15ヵ月時点で、微小残存病変陰性であった患者の割合は、免疫化学療法群(52.0%、97.5%信頼区間[CI]:44.4~59.5)と比べて、ベネトクラクス+オビヌツズマブ群(86.5%、80.6~91.1)、ベネトクラクス+オビヌツズマブ+イブルチニブ群(92.2%、87.3~95.7)の両群で、統計学的に有意に高率であった(両群比較のp<0.001)。ベネトクラクス+リツキシマブ群は高率であったが有意ではなかった(57.0%、49.5~64.2、p=0.32)。 3年PFS率は、ベネトクラクス+オビヌツズマブ+イブルチニブ群90.5%、免疫化学療法群75.5%であった(病勢進行または死亡に関するハザード比[HR]:0.32、97.5%CI:0.19~0.54、p<0.001)。また、3年時のPFSはベネトクラクス+オビヌツズマブ群でも有意に高率であった(87.7%、HR:0.42[97.5%CI:0.26~0.68]、p<0.001)が、ベネトクラクス+リツキシマブ群は高率ではあったが有意ではなかった(80.8%、0.79[0.53~1.18]、p=0.18)。 Grade3/4の感染症が、免疫化学療法群(18.5%)およびベネトクラクス+オビヌツズマブ+イブルチニブ群(21.2%)で、ベネトクラクス+リツキシマブ群(10.5%)やベネトクラクス+オビヌツズマブ群(13.2%)よりも多くみられた。

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早期TN乳がん、術前後のアテゾリズマブ追加でEFS・DFS・OS改善(IMpassion031)/ESMO BREAST 2023

 未治療の早期トリプルネガティブ(TN)乳がんにおける術前化学療法へのアテゾリズマブ追加および術後のアテゾリズマブ投与の有用性を検討した第III相IMpassion031試験の最終解析で、副次評価項目である無イベント生存期間(EFS)、無病生存期間(DFS)、全生存期間(OS)の改善が示された。また探索的解析から、手術時に病理学的完全奏効(pCR)が得られた患者は予後良好なこと、pCRが得られず血中循環腫瘍DNA(ctDNA)が残存していた患者は予後不良なことが示された。ブラジル・Hospital Sao Lucas da PUCRSのCarlos H. Barrios氏が欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer 2023、5月11~13日)で報告した。 本試験の主要評価項目であるpCR率については、PD-L1の有無(SP142によるIC:1%未満vs.1%以上)にかかわらず、アテゾリズマブ群が57.6%とプラセボ群(41.1%)に比べて有意に(p=0.0044)改善したことが報告されている。今回は、副次評価項目であるEFS、DFS、OS、安全性について最後の患者登録から3年後の最終解析と探索的バイオマーカー解析について報告された。・対象:原発巣が2cmを超える未治療のStageII~IIIの早期TN乳がん患者333例・試験群(アテゾリズマブ群、165例):術前にアテゾリズマブ(840mg、2週ごと)+nab-パクリタキセル(毎週)12週間投与後、アテゾリズマブ+ドキソルビシン+シクロホスファミド(2週ごと)8週間投与。術後、アテゾリズマブ(1,200mg、3週ごと)を11サイクル実施・対照群(プラセボ群、168例):術前にプラセボ+nab-パクリタキセル12週間投与後、プラセボ+ドキソルビシン+シクロホスファミド8週間投与し手術を実施(両群ともpCR未達の患者は、術後補助化学療法を許容) 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値40ヵ月前後(アテゾリズマブ群40.3ヵ月、プラセボ群39.4ヵ月)における最終解析において、pCRが得られず術後補助化学療法を受けたのは、アテゾリズマブ群70例中14例(20%)、プラセボ群99例中33例(33%)であった。・ITT集団におけるEFSのハザード比(HR)は0.76(95%信頼区間[CI]:0.47~1.21)で、PD-L1陽性(IC 1%以上)の患者では0.56(同:0.26~1.20)であった。・DFSのHRは0.76(95%CI:0.44~1.30)で、PD-L1患者では0.57(同:0.23~1.43)であった。・OSのHRは0.56(95%CI:0.30~1.04)で、PD-L1陽性患者では0.71(同:0.26~1.91)であった。・pCR状況別のEFSの探索的解析では、pCRが得られた患者では両群共に長期のEFSが良好であったが、pCRが得られなかった患者では両群共にEFSが不良で、pCRが長期予後を大きく左右していた。・アテゾリズマブにおける新たな安全性シグナルや治療関連死はみられなかった。・ctDNAにおける探索的解析によると、ctDNA陽性率はベースラインの94%から手術時に12%と減少し、ctDNA消失率はアテゾリズマブ群89%、プラセボ群86%と両群で同様だった。消失しなかった患者はpCRが得られなかった。・手術時にpCRが得られずctDNAが陽性だった患者はDFS、OSが不良だったが、アテゾリズマブ群でOSの数値的な改善がみられた(HR:0.31、95%CI:0.03~2.67)。 Barrios氏は「早期TN乳がんに対して、術前化学療法へのアテゾリズマブ追加で有意なpCRベネフィットが得られ、EFS、DFS、OSの改善につながった」とした。

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既治療大腸がん、FTD/TPIへのベバシズマブ上乗せでOS延長/NEJM

 切除不能な進行・再発大腸がん患者において、トリフルリジン・チピラシル(FTD/TPI)+ベバシズマブ併用療法はFTD/TPI単独療法と比較して、全生存期間(OS)を延長することが確認された。オーストリア・ウィーン医科大学のGerald W. Prager氏らが、13ヵ国87施設で実施された第III相無作為化非盲検実薬対照比較試験「SUNLIGHT試験」の結果を報告した。これまでの第III相試験において、FTD/TPIは転移のある大腸がん患者のOSを延長することが示されていた。また、第II相単群および無作為化試験の予備データから、ベバシズマブにFTD/TPIを追加することで生存期間が延長する可能性が示唆されていた。NEJM誌2023年5月4日号掲載の報告。FTD/TPI+ベバシズマブvs.FTD/TPI単独でOSを比較 研究グループは、2レジメン以下の化学療法歴がある切除不能な進行・再発の結腸・直腸腺がんで、ECOG PSが0または1の18歳以上の成人患者を、FTD/TPI+ベバシズマブ群(FTD/TPI併用群)またはFTD/TPI単独群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。割り付けは、地域(北米、欧州、その他の地域)、最初の転移診断からの期間(18ヵ月未満、18ヵ月以上)、RAS状態(野生型、変異型)により層別化された。 主要評価項目はOS、副次評価項目は治験責任医師評価による無増悪生存期間(PFS)、全奏効率(ORR)およびECOG PSが0または1から2以上に悪化するまでの期間を含む安全性とした。FTD/TPI併用群10.8ヵ月vs.単独群7.5ヵ月、OSが有意に延長 2020年11月25日~2022年2月18日の期間に492例が割り付けられた(FTD/TPI併用群246例、単独群246例)。 OS中央値は、FTD/TPI併用群10.8ヵ月、単独群7.5ヵ月であり、死亡のハザード比(HR)は0.61(95%信頼区間[CI]:0.49~0.77、層別log-rank検定のp<0.001)で、FTD/TPI併用群においてOSが有意に延長したことが認められた。6ヵ月全生存率はFTD/TPI併用群77%、単独群61%、12ヵ月全生存率はそれぞれ43%、30%であった。 PFS中央値はFTD/TPI併用群5.6ヵ月、単独群2.4ヵ月(HR:0.44、95%CI:0.36~0.54、p<0.001)、ORRはそれぞれ6.1%(95%CI:3.5~9.9)、1.2%(95%CI:0.3~3.5)であった。 両群で発現頻度が高かった有害事象は、好中球減少症(FTD/TPI併用群62.2%、単独群51.2%)、悪心(それぞれ37.0%、27.2%)、貧血(28.9%、31.7%)であった。治療に関連した死亡の報告はなかった。ECOG PSが0または1から2以上に悪化するまでの期間の中央値は、FTD/TPI併用群9.3ヵ月、単独群6.3ヵ月(HR:0.54、95%CI:0.43~0.67)であった。

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間質性肺炎合併肺癌の薬物療法、改訂GLの推奨は?/日本呼吸器学会

 間質性肺炎(IP)には肺癌が合併することが多く、IP合併肺癌に対する治療は急性増悪を引き起こすことが問題になる。近年、肺癌の薬物療法は免疫チェックポイント阻害薬(ICI)が主流となり、IP合併肺癌に対する薬物療法について、さまざまな検討がなされている。2023年4月に改訂された特発性肺線維症の治療ガイドライン2023(改訂第2版)では、これらのエビデンスを基に、合併肺癌に関して新たに3つのCQ(クリニカルクエスチョン)が設定され、合計6つとなった。合併肺癌に関するCQと関連するエビデンスについて、岸 一馬氏(東邦大学医学部内科学講座 呼吸器内科学分野 教授)が第63回日本呼吸器学会学術講演会で解説した。改訂GLの合併肺癌に関するCQと推奨 特発性肺線維症の治療ガイドライン2023(改訂第2版)は、慢性期、急性増悪、合併肺癌、肺高血圧症、進行期の5つのセクションで構成され、今回から肺高血圧症と進行期が追加された。合併肺癌に関するCQは3つ追加された(CQ20-1、20-2、21)1)。 IP合併肺癌のCQとポイントは以下のとおり。CQ17:IPF(特発性肺線維症)を含むIP合併肺癌患者に外科治療は推奨されるか? 方向性:行うことを提案(一部の患者には合理的でない可能性がある) 推奨の強さ:2(弱) エビデンスの強さ:C(低) 本邦において、IP合併例肺癌手術例の予後を調べた研究では、StageIAであっても5年生存率が59%にとどまっていたことが報告されている2)。その理由として、術後急性増悪による死亡の多さがある。IP合併肺癌1,763例を対象とした後ろ向き研究では、急性増悪が9.3%に発現し、死亡率は43.9%であった3)。術後急性増悪のリスク因子からリスク予測モデルが作成され、その有用性を検討した前向きコホート研究REVEAL-IP Studyが実施された。その結果、術後急性増悪は1,094例中71例(6.5%)に発現し、そのうち39.4%が死亡したが、後ろ向き研究時よりも改善傾向にあった。CQ18:IPFを含むIP合併肺癌患者に術後急性増悪の予防投薬は推奨されるか? 方向性:行わないことを提案(一部の患者には合理的でない可能性がある) 推奨の強さ:2(弱) エビデンスの強さ:C(低) 本邦において、ステロイドなどの術前予防投薬を行っても術後急性増悪の発現率は低下しないことが報告されている3)。その後、少数例の検討ではあるがピルフェニドンが術後急性増悪の発現リスクを低下させることが報告され、現在IPF合併肺癌患者を対象として周術期ピルフェニドン治療の有用性を検討する無作為化比較試験が実施されている4)。CQ19:IPFを含むIP合併肺癌患者に細胞傷害性抗がん薬は推奨されるか? 方向性:行うことを提案(一部の患者には合理的でない可能性がある) 推奨の強さ:2(弱) エビデンスの強さ:C(低) 本邦において、IP合併非小細胞肺癌(NSCLC)に対する初回化学療法の前向き試験が複数実施されており、急性増悪の頻度は12%以内で、近年は全生存期間中央値(MST)が15ヵ月を超えている。また、2022年12月には、化学療法とBest Supportive Care(BSC)を後ろ向きに比較した研究結果が報告された。傾向スコアマッチングを行っても、化学療法群はBSC群と比較して全生存期間(OS)が有意に延長した5)。CQ20-1:IPFを含むIP合併肺癌患者に血管新生阻害に関与する分子標的治療薬は推奨されるか? 方向性:行うことを提案(一部の患者には合理的でない可能性がある) 推奨の強さ:2 エビデンスの強さ:D(非常に低) エビデンスは少ないものの、化学療法にベバシズマブを上乗せしても急性増悪の発現は増加せず、無増悪生存期間(PFS)を延長する傾向が報告されている。また、推奨の決定に関するシステマティックレビューには含まれなかったが、世界で初めてIPF合併NSCLCを対象にニンテダニブの化学療法への上乗せ効果を検討した国内第III相無作為化比較試験(J-SONIC試験)の結果が本邦から報告された。主要評価項目の無イベント生存率(EFS)について、化学療法+ニンテダニブ群は化学療法群と比較して有意差は認められなかったが、奏効率(ORR)は化学療法群が56.0%であったのに対し、化学療法+ニンテダニブ群は69.0%と有意に高かった(p<0.05)。また、PFSについて、中央値は化学療法群が5.5ヵ月であったのに対し、化学療法+ニンテダニブ群は6.2ヵ月であり、有意に延長した(ハザード比:0.68、95%信頼区間[CI]:0.50~0.92)。OSについては、全体では両群間に有意差はなかったが、非扁平上皮NSCLC、GAP StageIのサブグループにおいて、化学療法+ニンテダニブ群が有意に改善した。急性増悪の頻度は、化学療法群1.6%、化学療法+ニンテダニブ群4.1%、全体でも2.9%と低かった6)。CQ20-2:IPFを含むIP合併肺癌患者にドライバー遺伝子変異に対する分子標的治療薬は推奨されるか? 方向性:行わないことを提案または推奨 推奨の強さ:現段階では結論付けない エビデンスの強さ:D(非常に低) 推奨の強さについて、現段階では結論付けないとされた。これについては、パネル委員の全員が投与しないことを提案または推奨したが、一定の基準に達しなかったため、推奨の強さは決定されなかった。このような推奨となった一因として、日本人の肺癌患者を対象としてゲフィチニブと化学療法を比較した試験において、ゲフィチニブ群で間質性肺疾患(ILD)の頻度が高く(ゲフィチニブ群4.0%、化学療法群2.1%、オッズ比[OR]:3.2)、ILDによる死亡率が30%を超えたことなどが挙げられる7)。CQ21:IPFを含むIP合併肺癌患者に免疫チェックポイント阻害薬は推奨されるか? 方向性:行わないことを提案(一部の患者には合理的でない可能性がある) 推奨の強さ:2 エビデンスの強さ:D(非常に低) IP合併肺癌に対するICIの効果を検討したメタ解析の結果が報告されている。10試験(ILDのある患者179例)が対象となり、そのうち8試験が本邦の報告であった。ORRについて、ILDのある群(34%)はILDのない群(24%)と比較して有意に良好であった(OR:1.99、95%CI:1.31~3.00)。一方、ILDのある群は免疫関連有害事象(irAE)の発現率が有意に高率であった(OR:3.23、95%CI:2.06~5.06)。ICIによる肺臓炎についても、ILDのある群(全Grade:27%、Grade3以上:15%)はILDのない群(同10%、4%)と比較して有意に高率であった(OR:2.91、95%CI:1.47~5.74)8)。また、びまん性肺疾患に関する調査研究班は、IP合併肺癌におけるICIの薬剤性肺障害に関する後ろ向き研究を実施した。その結果、200例が対象となり、薬剤性肺障害は30.5%に認められた(Grade3以上:15.5%、Grade5:4.5%)。多変量解析の結果、重篤な薬剤性肺障害の危険因子として、IPFあり、IP診断時のSP-D(肺サーファクタントプロテインD)値高値、ICI投与前のCRP値高値が同定された。また、irAEが発現した患者はPFSとOSが有意に良好であり、IP非合併NSCLCにおける過去の報告と一致していた。IP合併肺癌に関する現状のまとめ 岸氏は、IP合併肺癌に関する現状について、以下のようにまとめた。・日本からIP合併肺癌に関するステートメントと特発性肺線維症の治療ガイドライン2023(改訂第2版)が発刊された。・IP合併肺癌の発生予防、治療による急性増悪に関して抗線維化薬の有用性が報告された。・IP合併進行NSCLCに対してカルボプラチン+タキサン、小細胞肺癌(SCLC)に対してプラチナ製剤+エトポシドは標準治療と考えられる。・IP合併肺癌に対するICIにより約30%に薬剤性肺障害が生じるが、比較的良好な治療成績が報告されている。・IP合併肺癌の治療は、リスクとベネフィットを慎重に検討し、患者の希望も踏まえて決定することが重要である。特発性肺線維症の治療ガイドライン2023(改訂第2版)編集:「特発性肺線維症の治療ガイドライン」作成委員会定価:3,300円(税込)発行年月:2023年4月判型:A4頁数:140頁■参考文献1)「特発性肺線維症の治療ガイドライン」作成委員会編集. 特発性肺線維症の治療ガイドライン2023(改訂第2版). 南江堂;20232)Sato T, et al. J Thorac Cardiovasc Surg. 2015;149:64-70.3)Sato T, et al. J Thorac Cardiovasc Surg. 2014;147:1604-1611.4)Sakairi Y, et al. J Thorac Dis. 2023;15:1489-1493.5)Miyamoto A, et al. Respir Investig. 2023;61:284-295.6)Otsubo K, et al. Eur Respir J. 2022;60:2200380.7)Kudoh S, et al. Am J Respir Crit Care Med. 2008;177:1348-1357.8)Zhang M, et al. Chest. 2022;161:1675-1686.

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コロナ罹患の医療者、療養期間5日では短過ぎる?/感染症学会・化学療法学会

 5月8日の新型コロナウイルス感染症の5類移行に伴い、罹患者の療養期間について、これまで有症状者は発症日から7日間経過し、症状が軽快し24時間経過した場合に解除可能であったものが、5日間まで短縮された。しかし、とくに免疫不全者のいる医療機関では院内感染予防のため、罹患した職員の就業可能日について慎重な検討が行われている。大阪医科薬科大学病院感染対策室の浮村 聡氏らの研究チームは、新型コロナに罹患した医療従事者を対象に、発症もしくは検査陽性から7日目に定量PCR検査を実施し、Ct値でウイルスの感染力を評価し、自宅療養期間の妥当性を検証した。4月28~30日に開催された第97回日本感染症学会総会・学術講演会/第71回日本化学療法学会学術集会合同学会にて浮村氏が発表した。 同病院では、NEJM誌の論文1)で示されたデータに基づいて、新型コロナ罹患による隔離解除基準をCt値30以上と設定している。2022年8月18日~11月11日の期間において、新型コロナに罹患した医療従事者に対し、就業開始前に定量PCR検査を行った。検査実施日は発症日を0日とし、調査開始当初は10日目以降に、調査途中の9月7日から国の定める基準が変更となったため7日目以降に、Ct値30を超えるまで再検査を行った。 主な結果は以下のとおり。・無症候性感染者で10日目にCt値30を超え就業可能と判断できたのは79.1%(235/297例)、7日目にCt値30を超えたのは78%(33/42例)であった。・有症状者で7日目にCt値30を超えたのは25.6%(11/43例)、諸事情から8日目に初回検査となった14例では62%(9/14例)がCt値30を超えた。 本結果により、有症状者では発症日から7日目に25.6%しか就業可能と判断できず、有症状者の隔離期間は7日間では短いことが示された。同病院では、感染者が増加した状態では、再検査による感染対策室の業務逼迫の恐れがあり、本結果を踏まえて、再検査の確実性が期待される8日目を初回の検査日とするのが妥当と考え、有症状者の初回検査日を8日目、無症状者を7日目に変更した。その後、さらに検査業務の緩和のため、Ct値25未満の者のみ再検査を要する体制に変更した。 5類移行後について、職員の自宅待機期間は短縮の方向で対応し、業務復帰のためのPCR検査は廃止する一方で、症状が軽快する臨床経過の評価と、N95マスク装着による感染対策の強化や、院内感染につながりやすい業務について把握し、そのような業務内容の再考が必要だとしている。

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小細胞肺がんに対するICI+化学療法は、高齢患者でも治療選択肢/日本呼吸器学会

 小細胞肺がん(SCLC)の治療選択肢となっている免疫チェックポイント阻害薬(ICI)+化学療法は、高齢患者においても有効な選択肢である可能性が示された。日本医科大学千葉北総病院の清水 理光氏が第63回日本呼吸器学会学術講演会で発表した。 高齢化が進むわが国では、SCLCにおいても75歳以上の高齢患者が増加している。しかし、これらの患者集団に関する検討は十分ではない。清水氏らは、75歳以上の進展型小細胞肺がん(ES-SCLC)に対するICI+化学療法の有効性と安全性を検討した。2019年8月〜2023年3月に、同施設で1次治療にICI+化学療法を受けたES-SCLC患者を、後方視的に観察している。主要評価項目は無増悪生存期間(PFS)。75歳以上(n=8)と75歳未満(n=10)に分けて解析した。 主な結果は以下のとおり。・PFS中央値は、75歳以上群で197日、75歳未満群では267日であった(p=0.394、95%信頼区間[CI]:95.7〜420.1)。・全生存期間(OS)中央値は、75歳以上群で500日超、75歳未満群では339日であった(p=0.359、95%CI:294.1〜370.9)。・ICI+化学療法のレジメン別のPFSは、デュルバルマブ+化学療法群で152日、アテゾリズマブ+化学療法群では197日超であった(p=0.812、95%CI:99.2〜294.8)。・奏効率は75歳以上群で50%、75歳未満群では60%であった。・Grade3以上の有害事象は、75歳以上群の50%、75歳未満群では60%に発現した(t-value=0.102)。 75歳以上の高齢者のES-SCLCに対するICI+化学療法は75歳未満と比較して奏効率、安全性ともに統計学的に有意な差はみられなかった。また、少数の解析ではあるがICIレジメン間でのPFSについても差は認められなかった。清水氏は、75歳以上の高齢者のES-SCLCにおいてもICI+化学療法は有効な選択肢となると述べている。

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進行TN乳がんへのペムブロリズマブ+化療、臨床的有用性が得られ化療中止した例やimAE発現例でも有効(KEYNOTE-355)/ESMO BREAST 2023

 手術不能な局所再発または転移・再発トリプルネガティブ(TN)乳がんの1次治療においてペムブロリズマブ+化学療法をプラセボ+化学療法と比較した第III相KEYNOTE-355試験の探索的解析の結果、ペムブロリズマブ+化学療法により臨床的有用性が得られた患者でペムブロリズマブの最終投与前に化学療法を中止した患者、また免疫介在性有害事象(imAE)発現患者において、CPSにかかわらず、無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)が改善したことが示された。米国・UCSF Helen Diller Family Comprehensive Cancer Center のHope S. Rugo氏が欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer 2023、5月11~13日)で報告した。 本試験では、PD-L1 CPS 10以上の患者において、ペムブロリズマブ+化学療法により統計学的に有意かつ臨床的に意味のあるPFSとOSの改善が示されたことが報告されている。今回は、ペムブロリズマブ+化学療法を受け完全奏効(CR)もしくは部分奏効(PR)を達成または病勢安定(SD)を24週以上持続した患者、すなわち臨床的有用性が得られた患者のうちペムブロリズマブ最終投与前21日より前に化学療法を中止した患者におけるPFSとOSを評価した。さらに、ペムブロリズマブ+化学療法を受けた患者でimAEが1件以上発現した患者においても評価した。・対象:PD-L1陽性の手術不能な局所再発もしくは転移・再発TN乳がん(ECOG PS 0/1)・試験群:ペムブロリズマブ(200mg、3週ごと)+化学療法(ナブパクリタキセル、パクリタキセル、ゲムシタビン/カルボプラチンのうちいずれか)・対照群:プラセボ+化学療法 今回の探索的解析における主な結果は以下のとおり。・2021年6月15日のデータカットオフ時点で、ペムブロリズマブ+化学療法の治療を受け臨床的有用性が得られた患者において、ペムブロリズマブ投与中止前に化学療法を中止した患者および全体でのペムブロリズマブ投与期間中央値、化学療法期間中央値、PFS中央値、OS中央値は、順に以下のとおりで、CPSに関係なくPFS、OSとも上回っていた。- 治療を受けた全患者 化学療法中止例(92例):14.1ヵ月 6.0ヵ月 14.5ヵ月 32.9ヵ月 全体(317例)     : 9.4ヵ月 7.9ヵ月 11.6ヵ月 26.4ヵ月- CPS 1以上の患者 化学療法中止例(70例):15.3ヵ月 5.9ヵ月 18.7ヵ月 34.5ヵ月 全体(249例)     : 9.4ヵ月 8.2ヵ月 11.7ヵ月 26.6ヵ月- CPS 10以上の患者 化学療法中止例(46例):20.8ヵ月 6.8ヵ月 36.7ヵ月 未到達 全体(143例)     :11.1ヵ月 8.5ヵ月 14.4ヵ月 34.4ヵ月・imAE発現患者および全体におけるペムブロリズマブ投与期間中央値、化学療法期間中央値、PFS中央値、OS中央値は、順に以下のとおりで、imAE発現患者でPFS、OSとも上回っていた。- 治療を受けた全患者 imAE発現例(149例):8.8ヵ月 7.2ヵ月 9.7ヵ月 23.9ヵ月 全体(562例)    :5.6ヵ月 5.1ヵ月 7.5ヵ月 17.2ヵ月- CPS 1以上の患者 imAE発現例(109例):8.8ヵ月 7.3ヵ月 9.8ヵ月 26.3ヵ月 全体(421例)    :5.9ヵ月 5.1ヵ月 7.6ヵ月 17.6ヵ月- CPS 10以上の患者 imAE発現例(64例):10.4ヵ月 8.4ヵ月 11.8ヵ月 35.6ヵ月 全体(219例)   : 7.6ヵ月 5.8ヵ月  9.7ヵ月 22.8ヵ月 今回の解析から、ペムブロリズマブ+化学療法で臨床的有用性が得られた患者において、PD-L1発現レベルにかかわらず、化学療法中止後もペムブロリズマブは有用であることが示唆された。この結果から、Rugo氏は「臨床的有用性が得られて化学療法を中止した患者において、ペムブロリズマブ継続が適している」とした。

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FDAが血液がん患者に対する臍帯血ベースの細胞療法Omisirgeを承認

 米食品医薬品局(FDA)は4月17日、骨髄機能廃絶療法後の血液がん患者における感染症リスクを低減するために、大幅に改良された同種臍帯血ベースの細胞療法であるOmisirge(一般名omidubicel-onlv)を承認した。対象は、放射線療法や化学療法などの骨髄機能廃絶療法後に臍帯血移植を予定している12歳以上の血液がん患者。 難治性の血液がんでは、一般的に、化学療法や放射線療法などによる移植前処置により患者の造血幹細胞を死滅させた後に、健康な造血幹細胞を移植してがんの完治を目指す治療(造血幹細胞移植)が行われる。しかし、移植前処置は患者の免疫機能も弱めてしまうため、時に命に関わる重度の感染症が生じるリスクも高くなる。 Omisirgeは、ドナーの臍帯血から採取した造血幹細胞をニコチンアミドで処理・培養したもので構成され、単回静脈内投与される。造血幹細胞は、事前にスクリーニングされたドナー由来のもので、投与量は患者ごとに異なる。 今回の承認は、12〜65歳の血液がん患者125人を対象にOmisirgeの移植と臍帯血移植後の患者の免疫機能を比較した多施設共同ランダム化比較試験のデータに基づいている。Omisirge移植群では、87%が治療後12日(中央値)で好中球の回復を達成したのに対し、臍帯血移植群では83%が好中球の回復に治療後22日(中央値)かかっていた。移植後100日以内に細菌または真菌の感染が見られたのは、Omisirge移植群の39%に対し、臍帯血移植群では60%であった。 一方でFDAは、Omisirgeによる治療では重篤な副作用が報告されており、この治療法を使う際にはリスクとベネフィットを評価する必要があると述べている。具体的には、承認済みの臍帯由来製剤と同様に、Omisirgeのラベルには、インフュージョンリアクション、移植片対宿主病(GvHD)、生着症候群(非感染性の発熱と発疹を特徴とする)、生着不全についての枠囲み警告が表示されている。また、最もよく生じる副作用として、感染症、GvHD、およびインフュージョンリアクションが挙げられている。 FDA生物製剤評価研究センター(CBER)のディレクターであるPeter Marks氏はFDAのニュースリリースで、「今回の承認により、血液がん患者における細胞療法は大きく進歩した。白血球の機能回復を早めることで、造血幹細胞移植に伴い重篤な感染症が生じるリスクを低下することができる」と述べている。

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高齢NSCLCにおけるKEYNOTE-189とIMpower130の比較/日本呼吸器学会

 70歳以上の非小細胞肺がん(NSCLC)における、2つの免疫チェックポイント阻害薬(ICI)+化学療法レジメンは同等の有効性を示すが、安全性プロファイルは異なることが示された。日本医科大学付属病院の戸塚 猛大氏が第63回日本呼吸器学会学術講演会で発表した。 ICI+化学療法はNSCLCの標準治療の1つである。NSCLCでは高齢患者の占める割合が多い。しかし、70歳以上の高齢NSCLCにおける治療の有効性や安全性は十分に検討されているとは言えない。戸塚氏らは同施設において、ICI+化学療法を受けた非扁平上皮NSCLC患者のデータを後ろ向きに収集し、70歳以上のNSCLCにおけるKEYNOTE-189レジメン(n=26)とIMpower130レジメン(n=13)の有効性と安全性を検討した。 主な結果は以下のとおり。・無増悪生存期間(PFS)はKEYNOTE-189レジメンは6.5ヵ月、IMpower130レジメンは8.1ヵ月であった(p=0.531)。・全生存期間(OS)はKEYNOTE-189レジメンは32.9ヵ月、IMpower130レジメンは22.9ヵ月であった(p=0.862)。・安全性プロファイルは両群で違う傾向にあり、Grade2以上の肺臓炎およびGrade2以上の腎障害の発現は、KEYNOTE-189レジメンでみられたが、IMpower130レジメンでは認められなかった。一方、Grade3以上の血液毒性はKEYNOTE-189レジメンに比べIMpower130レジメンで多くみられた。 70歳以上の非扁平上皮NSCLCにおいて、KEYNOTE-189レジメンとIMpower130レジメンの有効性には差は認められなかった。一方、有害事象の内容は異なることから戸塚氏は、安全性プロファイルを考慮して治療選択を行うべきだとの結論を示している。

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AI耐性HR+進行乳がんへのcapivasertib上乗せによるPFS改善、サブグループ解析結果(CAPItello-291)/ESMO BREAST 2023

 アロマターゼ阻害薬(AI)耐性のホルモン受容体陽性(HR+)HER2陰性(HER2-)進行乳がん(切除不能の局所進行乳がんもしくは転移・再発乳がん)に対するフルベストラントへのAKT阻害薬capivasertibの上乗せ効果を検討した第III相CAPItello-291試験。その探索的サブグループ解析の結果、CDK4/6阻害薬治療歴、進行がんへの化学療法歴、肝転移の有無にかかわらず、一貫した無増悪生存期間(PFS)の改善が示された。英国・The Royal Marsden Hospital-ChelseaのNicholas Turner氏が欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer 2023、5月11~13日)で報告した。 本試験の主要評価項目である全体集団およびAKT経路に変異のある集団におけるPFSの結果は、2022年のサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2022)で報告されている(全体集団でのハザード比[HR]:0.60、AKT経路変異集団でのHR:0.50)。また、全生存期間(OS)はimmatureではあるが、全体集団でのHRが0.74、AKT経路変異集団のHRが0.69であった。今回は事前に計画された探索的サブグループ解析の結果が報告された(データカットオフ:2022年8月15日)。・対象:男性もしくは閉経前/後の女性のHR+/HER2-の進行乳がん患者(AI投与中/後に再発・進行、進行がんに対して2ライン以下の内分泌療法・1ライン以下の化学療法、CDK4/6阻害薬治療歴ありも許容、SERD・mTOR阻害薬・PI3K阻害薬・AKT阻害薬の治療歴は不可、HbA1c 8.0%未満)・試験群(capi群):capivasertib(400mg1日2回、4日間投与、3日間休薬)+フルベストラント(500mg) 355例・対照群(プラセボ群):プラセボ+フルベストラント 353例・評価項目:[主要評価項目]全体集団およびAKT経路(PIK3CA、AKT1、PTENのいずれか1つ以上)に変異のある患者集団におけるPFS[副次評価項目]全体集団およびAKT経路に変異のある患者集団におけるOS、奏効率(ORR)など[サブグループ]CDK4/6阻害薬治療歴の有無、進行がんへの化学療法歴の有無、ベースラインにおける肝転移の有無 今回のサブグループ解析における主な結果は以下のとおり。・全体集団における各群のPFS中央値および調整HR(95%信頼区間)は以下のとおり。- CDK4/6阻害薬治療歴 あり:capi群5.5ヵ月、プラセボ群2.6ヵ月、0.59(0.48~0.72) なし:capi群10.9ヵ月、プラセボ群7.2ヵ月、0.64(0.45~0.90)- 進行がんへの化学療法歴 あり:capi群3.8ヵ月、プラセボ群2.1ヵ月、0.55(0.36~0.82) なし:capi群7.3ヵ月、プラセボ群3.7ヵ月、0.62(0.51~0.75)- 肝転移 あり:capi群3.8ヵ月、プラセボ群1.9ヵ月、0.61(0.48~0.78) なし:capi群9.2ヵ月、プラセボ群5.5ヵ月、0.60(0.48~0.76)・CDK4/6阻害薬治療期間について12ヵ月未満と12ヵ月以上で層別解析した結果、治療期間によらずcapi群が有効であることが確認された。 Turner氏は「フルベストラント単剤の有効性は低く、CDK4/6阻害薬投与後のアンメットニーズを浮き彫りにした。capivasertib+フルベストラントは、CDK4/6阻害薬の使用有無にかかわらず、AI投与中もしくは後に進行したHR+進行乳がんに対する治療選択肢となる可能性がある」とした。

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入院前のコロナスクリーニングPCR検査、変異株流行初期に有用か/感染症学会・化学療法学会

 入院時のスクリーニング検査としてのSARS-CoV-2 RT PCRは、院内感染予防や全身麻酔・手術などの侵襲による患者の重症化予防に有用とされる一方、陽性率の低さや所要時間、コストなどの問題が指摘されており、新型コロナの5類感染症移行に伴い、今後の検査の緩和について議論が行われている。京都府立医科大学附属病院の山本 千恵氏らの研究チームにより予定入院前スクリーニング検査としてのSARS-CoV-2 RT PCRについて検討が行われ、その結果、とくに各変異株の流行初期において院内感染の予防に効果的であった可能性が示唆された。4月28~30日に開催された第97回日本感染症学会総会・学術講演会/第71回日本化学療法学会学術集会合同学会にて山本氏が発表した。入院前コロナスクリーニングPCR検査陽性率は0.44% 本研究では、2020年10月12日~2022年6月23日に予定入院した患者のべ1万4,754例を対象に、予定入院前5日以内に鼻咽頭拭い液によるコロナスクリーニングPCR検査を施行し、結果について診療録を参照し、後ろ向き調査を行った。発熱などの有症状者、緊急入院例、転院症例、濃厚接触者となっている者は対象から除外した。 入院前コロナスクリーニングPCR検査について検討した主な結果は以下のとおり。・対象者の年齢中央値は65歳(範囲0~99歳)。全期間の入院前コロナスクリーニングPCR検査陽性率は0.44%(64/1万4,574例)であった。・PCR陽性者の年齢中央値は55歳、陰性者は65歳であり、陽性者のほうが有意に低値であった。・PCR陽性率の推移をみると、従来株流行期(2020年10月~2021年3月)では0.28%、アルファ株流行期(2021年3~7月)では0.16%、デルタ株流行期(2021年7~12月)では0.21%、オミクロン株流行期(2021年12月~2022年6月)では0.90%となり、オミクロン株流行期が最も高値であった。・PCR陽性者のCt値の分布をみると、いずれの株も流行の初期ではCt値が35未満(急性期感染を示唆)の比率が多く、流行後期になるとCt値が35以上の比率が増加した。・PCR陽性者のうち、入院時コロナPCR検査施行前にCOVID-19罹患歴がある既感染者が50%(32/64例)を占めた。既感染者の発症または診断から入院時のRT PCR検査を施行するまでの日数の中央値は29日(範囲10~105日)であった。・濃厚接触者はPCR検査の対象外としているが、罹患歴のない32例のうち、検査後に濃厚接触者であることが判明したPCR陽性者が21.9%(7/32例)存在した。 山本氏は本結果について、「流行状況によりPCR陽性率に変動が認められ、とくに各変異株の流行初期において、院内感染予防に寄与していた可能性が示唆された。さらにCOVID-19既感染者かつ再感染が否定的な患者において入院前コロナスクリーニングPCR検査は不要である可能性があり、接触歴の確認は引き続き重要であると考えられる」とまとめた。

219.

FLT3-ITD変異陽性AML、キザルチニブは新たな治療選択肢/Lancet

 新規に診断されたFLT3-ITD変異陽性急性骨髄性白血病(AML)の患者(18~75歳)において、化学療法へのキザルチニブ追加による地固め療法後、最長3年間のキザルチニブ単独療法が、同種造血幹細胞移植(allo-HCT)の有無を問わず全生存期間(OS)の改善に結び付いたことを、米国・デュークがん研究所のHarry P. Erba氏らが「QuANTUM-First試験」の結果から報告した。FLT3-ITD変異陽性AML患者の予後は不良である。キザルチニブは非常に強力な選択的2型FLT3阻害薬(経口薬)で、化学療法との併用で、新規診断のFLT3-ITD変異陽性AML患者に対する抗腫瘍活性が、許容できる安全性プロファイルと共に示されていた。今回の結果を踏まえて著者は、「QuANTUM-First試験の結果に基づき、キザルチニブは新規診断のFLT3-ITD変異陽性AML成人患者における、新しい、効果的かつ、概して忍容性が良好な治療選択肢となりうることが示された」とまとめている。Lancet誌オンライン版2023年4月25日号掲載の報告。化学療法と併用で寛解導入・地固め療法後、単剤維持療法を最長3年間継続 QuANTUM-First試験は、欧州、北米、アジア、オーストラリア、南米の26ヵ国193病院で行われた第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験。キザルチニブのOSへの有効性について、化学療法との併用による寛解導入・地固め療法後、単剤維持療法を行い、対プラセボで比較検討した。 研究グループは、適格基準を満たした新規診断のFLT3-ITD変異陽性AML患者(18~75歳)を、試験地域、年齢、診断時の白血球数で層別化し、双方向Web音声応答システムを用いて、1対1の割合でキザルチニブ群またはプラセボ群に割り付けた。患者、研究者、資金提供者、受託研究機関は治療の割り付けをマスキングされた。 寛解導入療法は標準的な7+3導入レジメンで、シタラビン100mg/m2/日(または施設や地域標準に基づき200mg/m2/日を許可)持続静脈内投与(1~7日目)とアントラサイクリン(ダウノルビシン60mg/m2/日またはイダルビシン12mg/m2/日)静脈内投与(1、2、3日目)後、キザルチニブ40mgまたはプラセボを1日1回、8日目から開始し14日間経口投与した。 完全寛解および、血球数回復または血小板数回復が不完全な完全寛解の患者は、高用量シタラビン+キザルチニブ(1日1回40mgを経口投与)またはプラセボ、allo-HCT、またはその両方による標準的な地固め療法を受け、その後にキザルチニブまたはプラセボの単剤療法を最長3年間継続した。 主要評価項目はOSで、無作為化からあらゆる原因による死亡までの期間で定義し、intention-to-treat集団で評価した。安全性は、キザルチニブまたはプラセボの投与を、少なくとも1回受けた全患者で評価した。対プラセボのOSに関するハザード比0.78で有意な延長を確認 2016年9月27日~2019年8月14日に、AML患者3,468例がスクリーニングを受け、FLT3-ITD変異陽性であった539例(男性294例[55%]、女性245例[45%])がキザルチニブ群(268例)またはプラセボ群(271例)に無作為化された。キザルチニブ群148/268例(55%)とプラセボ群168/271例(62%)が試験を中途で終了し、主に死亡(133/148例[90%]、158/168例[94%])、または同意撤回(12/148例[9%]、9/168例[5%])のためであった。年齢中央値は56歳(範囲:20~75、四分位範囲[IQR]:46.0~65.0)。 追跡期間中央値39.2ヵ月(IQR:31.9~45.8)の時点で、OS中央値はキザルチニブ群31.9ヵ月(95%信頼区間[CI]:21.0~推定不能[NE])、プラセボ群15.1ヵ月(13.2~26.2)であった(ハザード比[HR]:0.78、95%CI:0.62~0.98、p=0.032)。 有害事象を1回以上有した患者の割合(キザルチニブ群264/265例[100%]、プラセボ群265/268例[99%])、Grade3以上の有害事象を1つ有した患者の割合(244/265例[92%]、240/268例[90%])は、いずれも両群で同程度であった。最も多くみられたGrade3/4の有害事象は、両群では発熱性好中球減少症、低カリウム血症、肺炎であり、キザルチニブ群では好中球減少症であった。

220.

KMT2A-r ALL乳児、化学療法+ブリナツモマブでDFS改善/NEJM

 新規に診断されたKMT2A再構成陽性急性リンパ芽球性白血病(KMT2A-r ALL)の乳児において、Interfant-06試験の化学療法へのブリナツモマブ追加投与は、Interfant-06試験のヒストリカルコントロールと比較し安全で有効性も高いことが確認された。オランダ・Princess Maxima Center for Pediatric OncologyのInge M. van der Sluis氏らが、多施設共同前向き単群第II相試験の結果を報告した。乳児のKMT2A-r ALLは、3年無イベント生存率が40%未満の進行性疾患で、多くが治療中に再発する。その再発率は、診断後1年以内で3分の2、2年以内では90%である。化学療法が強化されたにもかかわらず、この20数年、アウトカムは改善されていなかった。NEJM誌2023年4月27日号掲載の報告。1歳未満児を対象に、導入療法後ブリナツモマブを4週間投与 研究グループは、2018年7月~2021年7月に9ヵ国12施設にて、新たにKMT2A-r ALLと診断された1歳未満の乳児30例を登録し、Interfant-06試験で用いた導入療法を1ヵ月行った後、1コースのブリナツモマブ(体表面積1m2当たり15μg/日、4週間持続注入)を追加し、その後、Interfant-06プロトコールに従ってプロトコールIB(シクロホスファミド、シタラビン、メルカプトプリン)、MARMA(高用量シタラビン、高用量メトトレキサート、メルカプトプリン、アスパラギナーゼ)、OCTADAD(ビンクリスチン、デキサメタゾン、アスパラギナーゼ、ダウノルビシン、thioguanine、シタラビン、シクロホスファミド)、および維持療法(メルカプトプリン、メトトレキサート)を連続して行った。 主要評価項目は、臨床的に意義のある毒性(ブリナツモマブに起因する可能性のある、または確実に起因する毒性、およびブリナツモマブ投与中止または死亡に至った毒性と定義)、副次評価項目は微小残存病変(MRD)反応を含む抗白血病活性などであった。有害事象について評価し、有害事象のデータはブリナツモマブ注入開始から次のプロトコールIBの開始まで収集した。アウトカムに関するデータは、Interfant-06試験のヒストリカルコントロールと比較した。ブリナツモマブ投与終了時93%がMRD陰性または低値、2年全生存率は93.3% 追跡調査期間中央値は26.3ヵ月(範囲:3.9~48.2)で、30例全例がブリナツモマブ4週間投与を完了した。 主要評価項目の毒性イベントは発現しなかった。重篤な有害事象は9例に10件報告された(発熱4件、感染症4件、高血圧1件、嘔吐1件)。毒性プロファイルは、より年齢の高い患者で報告されたものと類似していた。 ブリナツモマブ投与終了時、30例中28例(93%)がMRD陰性(16例)またはMRD低値(<5×10-4、正常細胞1万個当たり白血病細胞5個未満)であった。化学療法を継続した全例が、その後の治療期間中にMRD陰性となった。 2年無病生存率は81.6%(95%信頼区間[CI]:60.8~92.0)、2年全生存率は93.3%(95%CI:75.9~98.3)であった。Interfant-06試験のヒストリカルコントロール(本試験の適格基準を満たし、導入療法終了時のMRDに関するデータが得られた214例)における2年無病生存率および2年全生存率は、49.4%(95%CI:42.5~56.0)および65.8%(95%CI:58.9~71.8)であった。

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