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5年後の2024年4月から、医師においても時間外労働規制が適用される見通しとなっており、枠組みについての議論が大詰めを迎えています。将来的にさらなる削減を目指しつつも、まずは著しい過重労働を軽減するという方向性で議論が進んでいますが、現場の先生方はどのように受け止めているのでしょうか。ケアネットでは、CareNet.com会員医師約1,000人に、その実情と提示されている案への意見をお聞きしました。コメントはこちら結果概要約半数が時間外労働は週7時間と回答、一方で週40時間超えも厚生労働省「医師の働き方改革に関する検討会」では、大きく分けて下記3つの上限水準案が示されている(2018年3月13日現在):原則「月45時間・年360時間」臨時的な必要がある場合に「月100時間未満・年960時間以下」特例(指定医療機関および集中的な技能習得が必要な医師)では「月100時間未満・年1,860時間以下」このうち、現状の時間外労働時間がどの枠組みに当てはまるかについて聞いたところ、47.1%の医師が一般労働者と同様の水準である「月45時間・年360時間(≒週7時間)」と回答した。一方で、「月100時間未満・年960時間以下(≒週20時間)」の医師が34.3%、「月100時間未満・年1,860時間以下(≒週40時間)」の医師が12.1%、それを超える医師も6.5%おり、半数強の医師で長時間労働の実態がうかがえる結果となった。画像を拡大する年代別にその割合をみると、若い世代で長時間労働が多くなり、週7時間程度と回答したのは20代で25.8%、30代で36.6%に留まっている。50代以降では、6割以上の医師が週7時間程度と回答している。画像を拡大するまた、勤務先の救急体制別にみると、三次救急医療機関勤務の医師では42.6%が週20時間、そして33.1%が週40時間あるいはそれを超えると回答し、重症患者を受け入れる現場でとくに負担がかかっている状況がみられる。一方で、二次・三次救急医療機関以外でも、一定数長時間の時間外労働のある医師がいることがうかがえる。画像を拡大する時間外労働規制の現案に対し、賛成/反対が半数ずつ現在提案されている上限規制の枠組みに対し、賛成(どちらかといえば賛成を含む)が48%、反対(どちらかといえば反対を含む)が52%と、会員医師の意見は半分に割れる結果となった。回答理由について、賛成派からは「妥当なところ」「まずは始めてみるべきだと思うから」など、とにかく一歩踏み出すことを評価する声が上がった。反対派からは、「過労死ラインを超えるのはおかしい」「特例がそのうち当たり前とされるようになる」など、長時間労働が容認される可能性に対する懸念の声が多く上がっている。画像を拡大する現状の時間外労働が長くなるほど、反対意見が多くなる傾向がみられた(“どちらかといえば反対”を含めると、48.7%<51.7%<60.5%<60.6%)。時間外労働が週40時間あるいはそれを超えると回答した医師のうち、賛成派では「多忙すぎる」「体がきつい」など、限界を感じていることがうかがえるコメントが寄せられている。また、「事務仕事を除くことができれば実現可能」「コンビニ受診などの意識改革がなければ業務削減できずサービス残業になる」など、上限時間規制だけに留まることなく、タスクシフトや受診者側の意識改革などの実行を求める声が上がった。反対派では、「地方ではあり得ない。医師がほとんどいないのに無理」「時間制限するならば、同レベルの医師をその分増やさないと到底現場が回らない」など現状の人員だけでは実現不可能とする声や、「臨時的な必要」という言葉のあいまいさを危惧する意見が上がっている。また、今回の働き方改革により本来一番大きく労働環境が改善されるべき年1,860時間を超える医師において、反対意見が33.3%と最も多くなっている。しかしその理由としては、「さすがに長すぎる」という意見がある一方で、「医療の質が落ちる」「抑制されると部門の運営ができない」など、医療現場の切実な状況や医療の質に対する懸念を反映した意見が上がった。画像を拡大する年代別にみると、とくに20~30代の若い世代で賛成意見を反対意見が上回り、60代以上では56%が賛成・どちらかといえば賛成と答えている。画像を拡大する時間外規制にアルバイトの勤務時間も含まれることを、75%が「知らなかった」と回答アルバイトの勤務時間が、上記時間外規制の時間内に含まれることについては、75%と多くの医師が認識していなかった。「アルバイト時間を制限されると困る」「若手のバイト医師がいなくては病院が回らない」など、現実問題として医師自身の生活や病院運営を支えていることを訴える声が上がっている。画像を拡大するコメント抜粋(一部割愛、簡略化しておりますことをご了承ください)賛成意見[スタートには妥当]原則を規定しないと、働き方改革は進まない今回をきっかけに医師の労働時間管理を進めるべき現実的な内容で、今後段階的に改善を図る上で適当な水準と思われる意欲ある労働には上記の時間が妥当当直=時間外なので、月45時間では病院が機能しないから[現場の疲弊に対策は待ったなし]働きすぎで疲弊している医師が多い規制しないと医師が体力的に疲弊し、モチベーションが落ち医療の質低下につながる現場が回らなくなることを国に気づいてもらい、もっと根本的な原因対策のきっかけに[集中的な技能習得の必要性]短期間に集中的に練習したほうが、技術習得は早いキャリアが浅いうちは進んで働くケースが許容され、それに見合った給与をもらうべき[支払いなしの残業時間はなくすべき]上限があろうがなかろうが実質勤務時間は変わらないので、時間外勤務を給与に反映させられるほうがいい下手に上限時間が短いと、事務で時間外労働を勝手に削るという現状がまかり通ってしまう[並行して時間規制以外の対策を]窓口徴収額を上げる、救急車有料化などの対策が望まれる。費用が安ければ需要を喚起するのは当然で、不要な受診を増やしているのは間違いないコンビニ受診などが減らない限り業務量は減らせない働き方だけを変えても問題解決にならず、病院の受診方法など根本的に変えないと無理応召義務があるから年360時間以内など不可能反対意見[1,860時間への懸念]1,860時間までなら働かせてよいという認識になってしまいそうだから前年度の勤務時間が1,860時間以上の医師に限るなどの条件が必要『臨時的な必要』が拡大解釈されて、結局は急性期病院勤務の医師の多くが過剰な残業を余儀なくされる規制を作ることには賛成。時間枠が広すぎて反対特例とはいえ、過労死基準をはるかに超える上限規制は意味がない善意につけこむ形で長時間労働が行われている現状なのに、さらにそこに法的根拠を与えるのは危険[応召義務についての議論が不十分]患者の容体によって仕事が左右されるのが医師の宿命だし、時間外勤務時間が超過しているから診察しないは通らない誤解を招きうる応召義務は撤廃すべき[科や地域による偏在解消が先決]人員適正配置といったバックアップなしに議論しても意味がない人がいない。休診時間が増えれば救急が大変になる過疎地域での臨床に問題が起こる[サービス残業が増えるという懸念]タイムカード上の操作が行われ、超勤手当がつかなくなるかもしれない医師の少ない当地方では、制限がかかっても働かざるを得ない状況も生じうる。結局無償で働かされることになる上限を決めても仕事が減るわけではない。サービス残業になるだけ1,860時間分時間外手当が支給されるとは思えない時間外割増賃金の支払義務の定めなしに時間上限だけ決めるのは良くない[インセンティブを効果的に設ける必要性]給料をもっと上げて救急医を増やすべき当直代に+αとして診療1人/入院1件あたりなどでインセンティブを設けるべき基本給が低く、残業代が入らなくなるなら、大学の基本給を上げてからするべきまずは大学病院医師の待遇改善に取り組む必要がある設問詳細Q1.勤務先の病院についてお教えください一次救急医療機関(軽症・帰宅可能患者対応、休日夜間急患センター)二次救急医療機関(中等症~重症・一般病棟入院患者対応、当番制)三次救急医療機関(重症~危篤・ICU入院患者対応、救命救急センター)それ以外Q2.時間外労働時間について、検討会で示されている下記枠組みのうち、先生はどちらにあてはまりますか※1日8時間・週40時間(=5日)勤務を基準として、当直を含む時間外労働時間の合計としてあてはまるものを選択ください月45時間未満・年360時間以下(≒週7時間)月100時間未満・年960時間以下(≒週20時間)月100時間未満・年1,860時間以下(≒週40時間)上記を超えるQ3.時間外上限規制について現状提案されている、原則「月45時間・年360時間」、臨時的な必要がある場合に「月100時間未満・年960時間以下」、特例として指定された医療機関(および一定期間集中的な技能習得が必要な医師)では「月100時間未満・年1,860時間以下」に、賛成ですか?反対ですか?賛成どちらかといえば賛成どちらかといえば反対反対Q4.Q3の回答について理由をお教えください(自由記述)Q5.上記には「アルバイトの勤務時間も含まれる」ことを知っていましたか?知っていた知らなかった画像を拡大する