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急性期病院の経営層が救急搬送受入件数や手術が必要な患者数を増やすことを今まで以上に重要視こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。3月の本連載で心配していたシカゴ・ホワイトソックスの村上 宗隆選手、トロント・ブルージェイズの岡本 和真選手ですが、絶不調から脱する兆しが見えてきました。とくに村上選手は4月19日(現地時間)、3試合連続となる8号本塁打を放ちました。同日に岡本選手は4打数2安打3打点(3号ソロ含む)と2試合連続でマルチ安打を記録しました。2人とも速球に加え、チェンジアップなどの変化球に苦労していましたが、対応できるようになってきたようです。考えるに、村上選手はアメリカン・リーグ最弱のホワイトソックスに入団してよかったのかもしれません。エリート揃いの有名球団ならすぐに控えに回されていたでしょう。「最初から背伸びをしすぎない」ことが異質の環境に適応するうえでの秘訣だということが、村上選手の例からもわかります。さて今回は、2026年度診療報酬改定を機に、各地で救急患者や急性期患者の獲得競争が今まで以上に激化しそうな気配ですので、それについて書いてみたいと思います。地域の急性期病院で働いている方は、経営層が救急搬送受入件数や手術が必要な患者数を増やすことを、今まで以上に重要視しはじめたことに気付いたのではないでしょうか。その大きな原因は、2026年度診療報酬改定で新設される「急性期病院一般入院基本料」です。医療メディアも各地の急性期病院の対応について詳細に報じるようになってきました。「新たな地域医療構想」での「急性期拠点機能」を想定した「急性期病院A一般入院料」「第303回 病院と診療所で『メリハリ』に違いが出た2026年度診療報酬改定、病院は急性期病院一般入院基本料新設、地域包括医療病棟入院料大幅見直しなどで地域医療構想後押しへ」でも書きましたが、「急性期病院一般入院基本料」について、改めておさらいしておきましょう。2026年度改定の病院に関する項目の最大の注目点は、2027年度からの新たな地域医療構想を見据え、急性期を担う病院機能の明確化を推し進める内容となったことです。中でも、地域ごとの病院単位の急性期機能を確保するため、2区分の急性期病院一般入院基本料(急性期病院A:看護配置7対1、1日1,930点、同B:看護配置10対1、1日1,643点)が新設されたことで、地域の病院機能の役割分担の動きが加速しています。2040年を見据えた「新たな地域医療構想」では、医療機関機能が「急性期拠点機能」「高齢者救急・地域急性期機能」「在宅医療等連携機能」「専門等機能」の4つに分類されます。このうち、「急性期拠点機能」を有する病院は「人口20万~30万人ごとに1拠点」が目安とされています。新設される2区分の急性期病院一般入院基本料のうち、「急性期病院A一般入院料」はまさにそうした「急性期拠点機能」の病院を想定した点数と言えます。また、入院料の加算である「急性期総合体制加算」と「地域医療体制確保加算2」、手術料の加算である「外科医療確保特別加算」も同趣旨の点数と言えます。救急搬送件数と全身麻酔手術件数が要件に「急性期病院A一般入院料」の主な要件は、「救急搬送件数:年2,000件以上」「全身麻酔手術件数:年1,200件以上」などで、入院患者数の10%以上の数の常勤医師の配置が求められます。病院全体として急性期医療への特化が必要で、地域包括医療病棟や地域包括ケア病棟入院料とのケアミックスは認められません。一方、「急性期病院B一般入院料」の主な要件は、第二次救急医療機関または認定救急病院で、以下の4要件のうちいずれかを満たす必要があります。1.救急搬送件数:年間1,500件以上2.救急搬送500件以上かつ全身麻酔手術500件以上3.人口20万人未満地域で二次医療圏内の搬送件数最大かつ1,000件以上4.離島医療圏で最大の救急搬送件数地域包括医療病棟とのケアミックスは認められません(地域包括ケア病棟入院料との併存は可能)。従来からある急性期一般入院基本料1〜6は今後整理が進むとの見方も最大のポイントは、これまでの入院料のように病棟単位ではなく、医療機関の機能に着目した病院単位での入院料となっていることです。さらに、病院内で多様な機能の病棟を併存させるケアミックスにも制限がかけられています。ちなみに、厚生労働省の「令和8年度診療報酬改定の概要」資料の中の「急性期における評価の見直し」の項には、「地域で病院が果たしている救急搬送の受入や手術等の急性期機能に着目し、地域ごとの急性期の病院機能を確保する観点から、病院の機能に着目した急性期病院一般入院基本料を新設」と記されています。「新たな地域医療構想」の医療機関機能を想定した点数であることは、この文面からもわかります。新しい診療報酬が適用される6月から、急性期病院は実績などに応じて「急性期病院一般入院基本料」または従来の「急性期一般入院基本料」を選ぶことになります。ただ、新たな地域医療構想を推し進めていく上で、病院単位での入院料の普及・定着が必要なことから、次期改定以降に急性期一般入院基本料1〜6は整理が進む、という見方が専らです。つまり、今後、急性期病院として生き残っていくためには、「急性期病院A一般入院料」か「急性期病院B一般入院料」の選択は必須と言えるのです。「急性期病院B一般入院料」は「新たな地域医療構想」における「高齢者救急・地域急性期機能」に近いイメージ「急性期病院A一般入院料」は、高度な救急・手術実績を持つ病院向けで、主に都市部における急性期拠点機能を想定していると考えられます。一方、「急性期病院B一般入院料」は、主に人口減少地域などで急性期医療を担う病院を対象としていると考えられます。「新たな地域医療構想」における「高齢者救急・地域急性期機能」に近いイメージと言えるでしょう。なお、「急性期病院B一般入院料」の基本点数は1,643点(看護10対1)と低めですが、新設の看護・多職種協働加算(255点)を取ることで収益性が向上し、従来の「急性期一般入院料1」(1,874点、看護7対1)を上回って1,898点となる設計です。“背伸び”をしてきた“なんちゃって急性期病院”は急性期医療の現場から退場へ「急性期病院一般入院基本料」の要件からも明らかなように、救急搬送件数が取得のカギとなります。A/Bいずれも多数の救急患者が必要となり、病床過剰地域では病院間で救急患者の争奪戦が繰り広げられることになります。とくに競争が厳しくなりそうなのが、人口20万人以下の医療圏です。「急性期病院B 一般入院料」の要件の中には「人口20万人未満地域で二次医療圏内の搬送件数最大かつ1,000件以上」があり、この場合、搬送件数最大の1病院のみが対象となるからです。圏域内に同等の病院が2病院以上あり、どこも救急搬送件数が1,000件に達していなければ、争奪戦は避けられません。なお、救急患者数は入院料の施設基準の肝でもある重症度、医療・看護必要度の指数算出のために新たに設けられた「救急患者応需係数」(1床当たり年間救急件数×0.005)にも影響します。そうしたことも競争に拍車をかけるでしょう。「急性期病院一般入院基本料」の新設と、従来からの「急性期一般入院料」の整理によって、これまで“背伸び”をしてきた“なんちゃって急性期病院”」はほどなく淘汰され、急性期医療の現場から退場を余儀なくされるでしょう。では実際に、今ある各地の急性期病院はどんな動きを見せ始めているのでしょうか。(この項続く)