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心房細動の脳卒中予防に左心耳閉鎖術が有効/JAMA

 非弁膜症性心房細動(AF)への経皮的左心耳(LAA)閉鎖術は、脳卒中、全身性塞栓症、心血管死の複合エンドポイントについてワルファリン療法に対し非劣性であり、心血管死や全死因死亡を有意に抑制することが、米国・マウントサイナイ医科大学のVivek Y Reddy氏らが行ったPROTECT AF試験で示された。ワルファリンはAF患者の脳卒中予防に有効だが、狭い治療プロファイル、生涯にわたる凝固モニタリングの必要性、他剤や食事との相互作用という制限がある。LAAはAF患者における血栓の好発部位であり、これを機械的に閉鎖するアプローチ(WATCHMANデバイス)の開発が進められている。JAMA誌2014年11月19日号掲載の報告。機械的閉鎖術による局所療法の有用性を評価 PROTECT AF試験は、非弁膜症性AF患者の心血管イベントの予防における経皮的LAA閉鎖術による局所療法の、ワルファリンによる全身療法に対する非劣性および優越性を検証する非盲検無作為化試験。患者登録期間は2005年2月~2008年6月で、すでに平均フォローアップ期間18ヵ月および2.3年の結果が報告されており、今回は3.8年(2012年10月時点)の長期データの解析が行われた。 対象は、年齢18歳以上の非弁膜症性AFで、CHADS2スコア≧1、ワルファリンの長期投与を要する患者であった。被験者は、経食道的心エコーガイド下にLAA閉鎖術を施行後に45日間ワルファリン+アスピリンを投与する群またはワルファリン(目標国際標準比:2~3)を恒久的に投与する群(対照群)に無作為に割り付けられた。 主要評価項目は、脳卒中、全身性塞栓症、心血管死/原因不明死の複合エンドポイントとした。非劣性のベイズ事後確率を97.5%以上、優越性のベイズ事後確率を95%以上に設定した。 欧米の59施設に707例が登録され、LAA閉鎖術群に463例、ワルファリン群には244例が割り付けられた。平均年齢はLAA閉鎖術群が71.7歳、ワルファリン群は72.7歳、男性はそれぞれ70.4%、70.1%で、平均CHADS2スコアは2.2、2.3であった。ベースラインの脳卒中のリスク因子としては、高血圧がそれぞれ89.6%、90.2%、75歳以上が41.0%、47.1%、虚血性脳卒中/一過性脳虚血発作(TIA)の既往歴が17.7%、20.1%に認められた。複合エンドポイントが40%、心血管死が60%減少 複合エンドポイントの発生率は、LAA閉鎖術群が8.4%(39/463例、2.3/100人年)、ワルファリン群は13.9%(34/244例、3.8/100人年)であった(率比[RR]:0.60、95%確信区間[CI]:0.41~1.05)。非劣性の事後確率は>99.9%、優越性の事後確率は96.0%であり、いずれも事前に規定された判定基準を満たした。 全脳卒中の発生率は、LAA閉鎖術群が5.6%(26/463例、1.5/100人年)、ワルファリン群は8.2%(20/244例、2.2/100人年)であり(RR:0.68、95%CI:0.42~1.37)、非劣性(事後確率>99%)が確認された。このうち出血性脳卒中の発生率は、それぞれ0.6%(3/463例)、4.0%(10/244例)であり(0.15、0.03~0.49)、非劣性(>99%)および優越性(99%)が確認されたのに対し、虚血性脳卒中は5.2%(24/463例)、4.1%(10/244例)であり(1.26、0.72~3.28)、両群に差はみられなかった。 また、LAA閉鎖術群はワルファリン群に比べ、心血管死(3.7%[17/463例] vs. 9.0%[22/244例]、1.0/100人年 vs. 2.4/100人年、ハザード比[HR]:0.40、95%CI:0.21~0.75、p=0.005)および全死因死亡(12.3%[57/466例] vs. 18.0%[44/244例]、3.2/100人年 vs. 4.8/100人年、HR:0.66、95%CI:0.45~0.98、p=0.04)の発生率が有意に低い値を示した。 安全性の複合エンドポイント[頭蓋内出血、輸血を要する出血、LAA閉鎖術群では手技に関連するイベント(介入を要する心膜液浸出など)も含む]の発生率は、LAA閉鎖術群が3.6/100人年、ワルファリン群は3.1/100人年(RR:1.17、95%CI:0.78~1.95)で、事後確率は98.0%であり、非劣性基準を満たした。 LAA閉鎖術群で重篤な心膜液浸出が22例(4.8%)にみられたが、いずれも周術期(デバイス装着後7日間)に発生した。大出血はLAA閉鎖術群が22例(4.8%、7日以降が19例[4.1%])、ワルファリン群は18例(7.4%)に認められた。 著者は、絶対リスク減少率は、複合エンドポイントが1.5%、心血管死が1.4%、全死因死亡は5.7%であるが、死亡に関するエンドポイントには不確実性が残る。LAA閉鎖術群では早期の合併症の頻度が高かったが、長期的な安全性プロファイルは2つの治療群で類似していたとまとめている。

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アリスミアのツボ Q15

Q15新規抗凝固薬が3種類もあるのですが、同じでしょうか? 異なるならどのような考え方で臨めばよいのでしょうか?私は、「同じではない。異なる」と思っています。※当該質問は2014年8月にいただいたものです。現在の状況とは異なりますのでご了承ください。添付文書をみても大きく異なるARBなどのように「クラス」といわれる薬物があります。小さな違いはあるにせよ、大きな違いがないからそのように呼ばれるのでしょう。新規抗凝固薬は「NOAC」と呼ばれるので、あたかもクラスのようです。しかし、それぞれの添付文書をみてみましょう。禁忌も異なれば、用法用量も異なれば、用量選択も異なれば、慎重投与対象や薬物相互作用も異なっています。各新規抗凝固薬を用いた大規模臨床試験の結果も異質性があるのですが、そんなことを考えなくても添付文書がこれらの薬物は明らかに大きく異なることを教えてくれています。大規模臨床試験の結果をつぶさにみても迷路にはまる異なるのであれば、どれがベストの薬かと考えたくなり、臨床効果を検討した大規模臨床試験の成績をみて、対照薬であるワルファリン群との優越性や非劣性に注目したくなります。私もそのような時期がありましたが、結局迷路にはまるだけでした。ワルファリン群というのが曲者で、それぞれの試験で微妙に目標となるPT-INRが異なったり、コントロールの質が異なったり・・・。ワルファリン群というと1つの群のようですが実に種々雑多なものの寄せ集めです。寄せ集めを標準として、間接的にNOAC同士を比較してもナンセンスでしょう。そもそも、ベストなNOACというものはないのですから・・・。重要なのは「価値観」と「薬物の強み」それ以来開き直りました。患者が何を望んでいるか、自分が患者に何をしてあげたいかから出発することにしました。それが価値観です。患者によって異なるはずですが、NOACを用いる際の価値観は、「脳梗塞をできるだけ少なくしたい」、「大出血をできるだけ少なくしたい」、「薬物アドヒアランスをできるだけ上げたい」、「患者が支払う窓口コストをできるだけ下げたい」の4つぐらいでしょう。そして、この4つをすべて満たす薬物はないのですから、どれが最も重要かという点で、患者と医師が価値観の共有をすべきだと思います。患者が「先生にお任せします」という場合は、自分が最も重要だと思うところを伝え共有してもらうのです。価値観が決まれば薬の選択は容易もちろん、患者の背景因子(たとえば腎機能)によって、使える薬が限定されてしまう場合がありますが、そのときはそれを使うしかありません。しかし、そのような限定条件がないのであれば・・・、価値観が薬物を決定してくれると思います。「脳梗塞をできるだけ少なく・・・」ダビガトラン 150 mg 1日2回「大出血をできるだけ少なく・・・」腎機能低下例ではアピキサバン(用量は添付文書に沿う)腎機能良好例では ダビガトラン 110 mg1日2回「服薬アドヒアランスをできるだけ高く・・・」リバーロキサバン(用量は添付文書に沿う)「窓口コストをできるだけ低く・・・」ワルファリン異論や反論はもちろんあるでしょう。あくまでも、私はこう考え、こうしているということを紹介しました。そして、このように考えるようになってから、患者の価値観は実に人によってさまざまであるということも知りました。

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ダビガトランの試験成績、実臨床で再現されるか

 ダビガトラン(商品名:プラザキサ)はワルファリン(商品名:ワーファリンほか)と比べ、脳卒中と頭蓋内出血の発症を減少させる一方、消化管出血を増加させることが、長期臨床試験RE-LY trialで示されている。しかしながら、臨床試験の結果が実臨床には合致しないかもしれない。 そこで、FDA医薬品評価研究センターのDavid J. Graham氏らは、高齢のメディケア加入者におけるワルファリンとダビガトランの比較研究を行った。Circulation誌オンライン版2014年10月30日号の掲載報告。 対象は、メディケア加入した非弁膜症性心房細動患者で、ワルファリンあるいはダビガトランを新規に投与した65歳以上の13万4,414人で、2010年10月から2012年12月に試験登録された。その中から、傾向スコアを合致させたコホート3万7,587人を追跡した。ダビガトラン群は1万8,205人年、ワルファリン群は1万9,382人年であった。 主要評価項目は、虚血性脳卒中、頭蓋内および消化管の大出血、急性心筋梗塞の発症。副次的評価項目は、入院を要する出血、死亡率だった。 主な結果は以下の通り。・2,715の主要評価項目のイベントが発生した(虚血性脳卒中475例、大出血合併症1,628例、急性心筋梗塞612例)。以下、ワルファリンと比較し、・虚血性脳卒中の発症はダビガトランで有意に低かった(HR 0.80、95% CI 0.67~0.96、p=0.02)。・大出血の包括発現率は差がなかった(HR 0.97、95%CI 0.88~1.07、p=0.50)。・消化管出血の発現率は有意にダビガトランで高かった(HR 1.28、95% CI 1.14~1.44、p<0.001)。・頭蓋内出血の発現率はダビガトランで有意に低かった(HR 0.34、95%CI 0.26~0.46、p<0.001)。・死亡率はダビガトランで有意に低かった(HR 0.86、95%CI 0.77~0.96、p=0.006)。・急性心筋梗塞の発症率は差がなかった(HR 0.92、95%CI 0.78~1.08、p=0.29)。 ちなみに、ダビガトラン150mg/日投与のサブグループでは、頭蓋内出血以外が有意な減少以外に差は認められなかった。 この研究では、高齢の非弁膜症性心房細動患者において、ワルファリンと比べダビガトランでは、虚血性脳卒中および頭蓋内出血リスクを有意に抑制、一方、消化管の大出血リスクの有意な上昇が認められた。この研究で示されたリスクの傾向と大きさは、前述の大規模試験RE-LY trialと同様であった。

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エキスパートに聞く!「血栓症」Q&A Part4

CareNet.comでは特集「内科医のための血栓症エッセンス」を配信するにあたって、会員の先生方から血栓症診療に関する質問を募集しました。その中から、静脈血栓症に対する質問に対し、東邦大学 医療センター佐倉病院 循環器内科 清水一寛先生に回答いただきました。高齢者の深部静脈血栓症の治療の第一選択は、ワルファリンが適切でしょうか?まず、静脈血栓症を診断した場合は介入するメリットとデメリットを考えます。考慮すべき要素としては、活動性のがんがあれば余命や全身状態です。また、寝たきりや認知症も、介入する場合は慎重にメリットとデメリットについて家族と相談してください。上記は、薬剤の臨床適応を決める治験では除外基準に相当しています。抗凝固療法は出血のリスクを併せ持つため、治療開始の際は一考が必要です。治療する場合、現状では経口剤の第一選択はワルファリンです。治療域が狭いために、頻回の血液検査での微調整を要します。アジア人では脳出血を増加させることもわかっています。最近、静脈血栓症の治療適応になった新規経口抗凝固薬(NOAC)として、エドキサバン(商品名:リクシアナ)があります。使用の際は、添付文書に従った使用をしてください。ワルファリンの使用中の患者で、PT-INRがなかなか延長しない場合はどうすべきでしょう?まず、ちゃんと服薬しているかの確認が必要で、高齢者の場合は薬の管理にご家族にも協力してもらいましょう。また、栄養指導で、食事状態を再確認することも大切です。それでもワルファリンが効きにくい場合ですが、ワルファリン抵抗性という概念があります。これは、酵素活性の問題で、時々いるのですが、8mg、9mg、10mgといった大量のワルファリン投与を必要とします。ワルファリン抵抗性の場合、大量のワルファリンを処方するのが怖いかもしれませんが、こまめに血液検査をしながら、その人の適正量を見つけてあげてください。※エキスパートに聞く!「血栓症」Q&A Part3はこちら

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エキスパートに聞く!「血栓症」Q&A Part3

CareNet.comでは特集「内科医のための血栓症エッセンス」を配信するにあたって、会員の先生方から血栓症診療に関する質問を募集しました。その中から、静脈血栓症に対する質問に対し、東邦大学 医療センター佐倉病院 循環器内科 清水一寛先生に回答いただきました。プライマリ・ケア医が可能な深部静脈血栓症の診断方法について教えてください。深部静脈血栓症ですが、足が腫れたり痛んだりすることが多いですが、症状がないこともあります。診断するうえでまず大事なことは、血栓症を疑うことです。診察手技としては、ホーマンズ徴候というものがあります。膝を伸展した状態で足首を背屈することにより誘発されるふくらはぎの不快感をみるものですが、感度も特異度もあまり高くなく、これだけで診断するのは危険です。血液検査でのDダイマーは有用で、検査値が陰性の場合、99%以上の確率で血栓症を否定できることが過去にLancet誌から報告されており、日常臨床の場で頻用されています。鑑別疾患で、頻度が高いのは蜂窩織炎と浮腫みです。蜂窩織炎は皮膚の発赤・腫脹・熱感があり、WBCの上昇を認めます。皮膚科の先生に相談されることをお勧めします。われわれの診療科に依頼があった場合は、下肢静脈超音波で症状の原因となる血栓症がないことを確認して、皮膚科の先生に診察をお願いしています。浮腫みの原因はさまざまで、全身性の問題の場合は両下肢にリンパ浮腫所見を認めることが多いです。深部静脈血栓症は、下大静脈が閉塞した場合は両下肢に影響が及びますが、多くの場合、血栓症が原因で、両側に同時に症状が出現することはまれです。いずれにせよ、最終的な診断には下肢静脈超音波やCT検査が必要になりますので、症状から深部静脈血栓症を疑ったり、鑑別疾患の1つに上がったりした場合は、総合的に対応可能な施設へ紹介してください。深部静脈血栓症の予防について、弾性ストッキングや適度なリハビリなどが考えられるが、どう対処しているか教えてください。19世紀に、ドイツのウィルヒョウ先生が、血栓ができやすくなる状態として、(1)血液の流れが滞る(2)血管壁に傷がつく(3)血液の凝固能が高まるという「ウィルヒョウの三徴」を唱えられ、この概念は現在でも使われています。入院生活では、自分の居住空間がベッド1つですから、おのずと活動度が低下しがちです。まず大事なことは、必要以上に安静にさせないことです。食事やトイレは移動にもってこいですから早め早めに安静度を上げていってください。ふくらはぎのヒラメ静脈は、血栓の好発部位ですが、筋肉の収縮により、ヒラメ筋静脈内にたまった血液が押し出されて流れていきます。飛行機に乗ると備え付けのパンフレットに下肢の運動のアドバイスがありますが、理由はそのためです。弾性ストッキングは、加圧により血管拡張物質や血栓溶解物質が血管内皮細胞から分泌されるそうです。入院が必要な方は血栓ができやすい状態にあるということを念頭に予防に努めてください。肺塞栓症は慢性と急性で、診断方法、とくに問診や身体所見や血液検査などに違いはありますか?急性の肺塞栓症の場合、突然の呼吸困難を足掛かりに、肺塞栓症が鑑別にあがれば血液検査でDダイマーを確認し、二次線溶が現在起こっているかを評価します。血液ガスやSpO2モニターでは低酸素の確認をします。心電図や心臓超音波では、右心負荷所見の有無の確認をします。レントゲンでは、肺動脈の拡張のほか、気胸や肺炎、心拡大の有無の確認を行います。最終的には、造影CT検査で確定診断に辿り着くことになりますが、この一連の流れは比較的容易です。病院において、上記はほぼ同時進行で進みます。難しいのは、慢性の場合です。すでにDダイマーは正常のことが多く、症状としては労作時の息切れで、医師は心不全や慢性呼吸器疾患を考えてしまいがちです。BNPも上昇していることが多く、心電図では右心負荷所見がみられることもあります。こういった場合では、肺血流シンチグラフィーが有用です。血流欠損所見で診断に至ることもあります。原因不明の肺高血圧をみた場合は、鑑別診断の1つとして慢性の肺血栓塞栓症も考えてみてください。※エキスパートに聞く!「血栓症」Q&A Part4はこちら

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Dr.みやざきの鼠径ヘルニア手術テクニックコレクション

第1回 鼠径部ヘルニアの診断と分類 第2回 鼠径部の臨床解剖 第3回 手術手技の種類と術式選択の基準 第4回 鼠径部ヘルニア手術の術前・術後管理 第5回 鼠径部ヘルニア手術の麻酔法 第6回 手術手技の実際(1)高位結紮術第7回 手術手技の実際(2)Mesh-plug法第8回 手術手技の実際(3)Lichtenstein法第9回 手術手技の実際(4)UHS法第10回 手術手技の実際(5)Direct Kugel Patch法第11回 手術手技の実際(6)大腿ヘルニア手術第12回 手術手技の実際(7)女性の鼠径ヘルニア手術 手術の中で最も件数の多い手術の一つである鼠径ヘルニア修復術。「研修医やレジデントなどが行う初歩的な手術」と思っていませんか?しかし、侮るなかれ!鼠径部は解剖が複雑、手術手技は多種多様と、ヘルニア修復術を完全に理解するのは実は非常に難しいのです!そこで、日本でも有数の鼠径部ヘルニアの手術件数を誇るDr.みやざきこと宮崎恭介氏が講師として登場!鼠径ヘルニア症例数はなんと10年で4300例!この経験に裏打ちされた手術テクニックを余すことなくお見せいたします。臨床解剖、麻酔、術後管理、そして様々な手術手技-高位結紮術、プラグ法、DK法、UHS法、リヒテンシュタイン法、そして大腿ヘルニア、女性の鼠径ヘルニアなどなど、知りたかった、見たかった内容が網羅されています。こんなにたくさんの症例を、多様な手技を、見ることができるものはほかにはありません。しかも手術映像・画像は術者目線!明日からの手術が大きく変わります!第1回 鼠径部ヘルニアの診断と分類 鼠径ヘルニア修復術を理解する上でまず知っておかなければならないことは、鼠径部の解剖、ヘルニアの種類と分類、そして診断方法です。第1回では、鼠径ヘルニアの分類と、その診断方法について解説します。 診断の際は必ず立位で行うこと、そして大腿ヘルニアを見逃さないこと、この2つをおさえておきましょう。第2回 鼠径部の臨床解剖 鼠径ヘルニア手術を行うにあたっては、鼠径部の解剖の理解が重要なのは当然ですが、完全に理解することは難しいと言われています。 鼠径部の解剖をシェーマや写真などで理解したとしても、実際の手術現場では役に立たない事を経験した方も多いでしょう。それは鼠径部の構造が立体的であること、連続する組織(膜)でも部位によって名称が異なる場合があるからです。 そこで、今回は、鼠径部の臨床解剖ーすなわち術者として鼠径部を見た際の解剖をしっかりと理解していきます。最初のポイントは皮膚切開から。皮膚切開ひとつで、こんなにも視野が違います!第3回 手術手技の種類と術式選択の基準 鼠径ヘルニア修復術の手技は、多種多様。 ヘルニアの位置や大きさ、性別や年齢、既往など、術式を決めるための要素はたくさんあるなかで、患者さんにとって、そして、術者にとってよりよい手術手技は一体何か?様々な手術手技を行うヘルニアのスペシャリストはこうやって術式を決めている! 第4回 鼠径部ヘルニア手術の術前・術後管理鼠径ヘルニア手術は嵌頓例以外は手術の緊急性はありません。無理に患者さんへ手術を薦めず、患者さん自信が、手術を決意するまで待つことが大切です。さて、いざ手術となった場合、鼠径ヘルニア修復術の術前と術後の管理はどうすればよいのでしょうか?実は、鼠径ヘルニア手術の術前には特別な管理はほとんど不要です。Dr.みやざき曰く「抗凝固薬服用中、抗血小板療法中の患者でさえも、内服継続のままでも十分に手術可能。」はてさて本当に可能かどうか、どうすれば可能なのか、みていきましょう。また、術後では、「出血」「漿液腫」「SSI」「再発」「慢性疼痛」などが合併症として考えられますが、これらは起こった場合にどう対応するではなくて、「起こさない」ことが重要です。そのために何をするべきかを知り、実践してみましょう。第5回 鼠径部ヘルニア手術の麻酔法 鼠径ヘルニア修復術の麻酔は、日帰りの場合と、入院の場合と異なります。麻酔の3要素は鎮静(意識の消失)、鎮痛(痛みの除去)、筋弛緩(体動の防止)。この3つすべてを、麻酔するのが、麻酔科医による麻酔、すなわち外科医にとって最も手術を行いやすい麻酔です。入院手術の場合は、この麻酔方法で行います。しかし、日帰り手術の際は、筋弛緩は必要ありませし、意識があってもかまいません。鎮痛と鎮静を患者さんに与える手術侵襲を少しだけ上回る麻酔をかけてあげればよいのです。静脈麻酔、局所麻酔、硬膜外麻酔、気管挿管などの様々な麻酔を組み合わせ、術式、患者さんの年齢、BMI、嵌頓の有無等に合わせた麻酔方法を行っています。この回ではそれぞれの詳しい方法を解説します。第6回 手術手技の実際(1) 高位結紮術さて、いよいよ手術手技の実際に入っていきます。最初は高位結紮術です。高位結紮術は、内鼠径輪のみを閉鎖するというシンプルな術式ですが、他の手術手技の基本となる手技です、ここでしっかりと習得しておきましょう。高位結紮術は、若年男性や若年女性のⅠ-1型間接鼠径ヘルニアが適応となります。術者目線の手術映像を見ながら、実際の手術手技を体験し、習得してください。第7回 手術手技の実際(2) Mesh-plug法手術手技の実際:第2回はMesh-plug法です。Mesh-plug法はメッシュプラグでヘルニア門を閉鎖し、オンレイパッチで鼠径管後壁を補強するという術式です。鼠径ヘルニア修復術の中で日本で一番行われている手術法で、シンプルな術式ですが、一歩間違うと術後の疼痛や再発などを引き起こすことがあります。これらの合併症をいかに防止するかは、すべて手術手技にかかっています。そのコツをヘルニアスペシャリストのテクニックから学んでください。第8回 手術手技の実際(3) Lichtenstein法手術手技の実際:第3回はLichtenstein法です。リヒテンシュタイン法はヘルニア門を高位結紮術で閉鎖し、鼠径管後壁をメッシュで補強する術式です。日本においては、それほど多くの症例が行われているわけではありませんが、EHS(the European Hernia Society)の鼠径ヘルニアの診療ガイドラインではLichtenstein法が推奨されているように欧米では第一選択の術式となっています。Dr.みやざきは、腹膜前腔の剥離操作がないことから下腹部手術既往のある間接鼠径ヘルニアを適応としています。メッシュ固定による疼痛を予防するために縫合固定の必要のないメッシュを用いることも1つのポイントです。第9回 手術手技の実際(4) UHS法手術手技の実際:第4回はUHS法です。UHS法は、UHS(Ultlapro® Hernia System )というメッシュを使用して行う術式で、インレイメッシュ法、プラグ法、、リヒテンシュタイン法を1つにした欲張りな術式です。コネクターでヘルニア門を閉鎖し、アンダーレイパッチ、オンレイパッチで鼠径管後壁を挟み込むように補強します。Ⅰ-3型巨大陰嚢内ヘルニア以外の鼠径ヘルニアすべてが適応となります。メッシュ固定による疼痛を予防するためにオンレイメッシュは縫合固定しないこともポイントです。第10回 手術手技の実際(5) Direct Kugel Patch法手術手技の実際:第5回はDirect Kugel Patch法です。Direct Kugel Patch法はインレイメッシュ法の1つで、形状記憶リングにより、腹膜前腔への展開が容易な術式です。ヘルニア門の閉鎖をダイレクトクーゲル®パッチで行い、オンレイパッチは、鼠径管後壁の補強としてオプションとして使用します。ダイレクトクーゲル®パッチで筋恥骨孔すべてを覆うことができ、すべての鼠径部ヘルニアに適応しています。今回は、間接鼠径ヘルニア、直接鼠径ヘルニアともに実際の手術症例を術者目線の映像で提示します。第11回 手術手技の実際(6) 大腿ヘルニア手術大腿ヘルニア手術を解説します。大腿ヘルニアの術式は大きく、2つに分けることができます。1つは鼠径法、そしてもう1つが大腿法です。鼠径法は、鼠径靭帯の上からアプローチし、筋恥骨孔すべてを覆う方法で、大腿法は鼠径靭帯の下からアプローチし、大腿輪のみ閉鎖する方法となります。男性の大腿ヘルニアは症例としては稀ですが、他の鼠径ヘルニアを合併することが多いため鼠径法を適応とし、女性の大腿ヘルニアは、鼠径ヘルニアの合併がほとんどないため、大腿輪のみの閉鎖を行う大腿法を適応としています。本番組では、いずれの方法も術者目線の映像でご覧いただけます。第12回 手術手技の実際(7) 女性の鼠径ヘルニア手術鼠径ヘルニア手術テクニックコレクションの最終回は「女性の鼠径ヘルニア手術」です。女性の鼠径ヘルニアは、男性に比べると症例が少ないため、マニュアルや手順書などでも取り上げられる機会が非常に少ないようです。そのため、学習したり、修得したりする機会が少なく、重要なポイントを見落としてしまうことも。本番組では、見落とされがちなポイントを実際の症例に照らしあわせて解説し、その後、手術映像で手術手技を学んでいただきます。女性の鼠径部ヘルニアを診る場合に気をつけなければならないポイントは2つ。鼠径部ヘルニアの発生頻度と若年女性の鼠径ヘルニアです。そして、そのKey wordは大腿ヘルニアとNuck管嚢腫です。

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静脈血栓塞栓症

※タイトルを選ぶとお好きなチャプターからご覧いただけます。深部静脈血栓症、肺塞栓症、血栓塞栓性肺高血圧症など増加している静脈血栓塞栓症について、基礎知識から最新の治療まで実症例のイメージング画像を交え、静脈血栓のスペシャリスト、東邦大学医療センター佐倉病院 循環器内科 清水一寛氏が解説する。チャプター1.血栓症の基礎知識2.疾患を知る3.静脈血栓塞栓症の治療

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50~69歳の若年者大動脈弁置換における人工弁は、生体弁のほうが機械弁よりも妥当(reasonable)な選択肢か?(解説:許 俊鋭 氏)-269

日本循環器学会ガイドライン1)では、血栓塞栓の危険因子を持たない65歳以上の大動脈弁人工弁置換患者に対して生体弁の使用が推奨されている(クラス1)。逆にこれまで60歳以下の若年者に対する生体弁の使用は、ワーファリンコントロールが禁忌症例や妊娠・出産を希望する女性に適応が限定されてきた。 本論文では、ニューヨーク州在住の50~69歳の若年者大動脈弁置換症例を対象に生体弁と機械弁治療成績を後ろ向きに比較し、15年生存および脳卒中については両群間で有意差がなく、再手術率は高かったものの大出血合併率は生体弁症例で低いことから、50~69歳の若年者大動脈弁置換における人工弁は、生体弁のほうが機械弁よりも妥当(reasonable)な選択肢であると結論している。すなわち再手術率と大出血合併率をtrade-offの関係とみなし、治療成績が同等であるがゆえに、生体弁を若年者大動脈弁置換症例に使用することを推奨すると結論しているのである。 しかし、この論文の主張がそのまま日本の患者さんに当てはまるかどうかは十分検討する必要がある。一番大きな問題は、本論文でも指摘されているように15年再手術累積発生率は生体弁群が有意に高率(12.1% vs. 6.9%)とされる点である。 生体弁再手術の大部分は人工弁の構造的劣化に起因するものと考えられるが、論文には再手術要因については記載されていない。日本循環器学会ガイドラインでまとめられた構造的劣化に関する集計(表1)では、60歳未満の生体弁構造的劣化発生率(100%-非発生率)は24.6~45.6%であり、65歳未満では20.6~65.3%であった。若年者ほど構造的劣化発生率は高くなり、生体弁構造的劣化期間は12~20年程度推定される1)。 もちろん近年、再人工弁置換手術成績の向上には目覚ましいものがある2)。しかし、2005~2008年の日本心臓血管データベース機構のデータ分析3)では高齢者ほど初回大動脈弁単弁置換手術でも手術死亡率および合併症率は高い(表2)。 また、少し古いデータではあるが、再人工弁置換手術の手術死亡率は高齢者ほど著しく高くなる(表3)という報告4),5) もあり、高齢になっての再人工弁置換手術は回避できるに越したことはない。 高齢化が著しい日本で、50歳台の若年者に生体弁人工弁置換を行う場合、1回以上の再手術を前提として考える必要があり、生涯を通じての手術リスクならびに医療経済から見て妥当かどうか十分検討する必要があろう。 また、本論文では大出血合併率(6.6% vs. 13.0%)は生体弁患者で低い結果が出ているが、国民皆保険下にある日本のような長期にわたる人工弁置換後の綿密なワーファリンコントロールが米国で実施可能かどうかなど医療を取り巻く社会環境も大出血合併率に大きな影響を与えている可能性があり、十分に配慮しなければならない。 今後、さらに耐久性のよい生体弁の開発が期待されると同時に、On-X弁のように機械弁の標準レベル(PT-INR 2.0~3.0)よりも軽いレベル(PT-INR 1.5~2.0)のワーファリンコントロールでよいとされる抗血栓性に優れた機械弁の開発により、大出血合併症の問題も解決される可能性が高い。

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急性静脈血栓塞栓症(VTE)の治療戦略―4万5,000症例メタ解析(解説:中澤 達 氏)-267

急性静脈血栓塞栓症(VTE)の治療戦略について、8つの抗凝固療法の有効性、安全性について検討した結果、低分子量ヘパリン(LMWH)+ビタミンK拮抗薬療法との比較で他の療法に統計的な有意差はなかったが、有効性が最も小さいのは非分画ヘパリン(UFH)+ビタミンK拮抗薬であり、安全性ではリバーロキサバン、アピキサバンの出血リスクが最も低かったことが明らかにされた。 比較検討されたのは、LMWH+ビタミンK拮抗薬、UFH+ビタミンK拮抗薬、フォンダパリヌクス+ビタミンK拮抗薬、LMWH+ダビガトラン、LMWH+エドキサバン、リバーロキサバン、アピキサバン、LMWH単独の8つの抗凝固療法であった 2014年2月28日時点でMEDLINE、EMBASEを用いた系統的論文検索とエビデンスベースの論文レビューを実行。VTEの再発率、重大出血を報告していた無作為化試験を試験適格とした。2人のレビュワーがそれぞれ患者数、追跡期間、アウトカムなどの試験データを抽出しネットワークメタ解析にてプールし分析した。 発表論文1,197件が特定され、45試験、4万4,989例のデータが解析に組み込まれた。主要臨床および安全性アウトカムは、VTE再発と重大出血とした。 LMWH+ビタミンK拮抗薬と比較して、UFH+ビタミンK拮抗薬がVTE再発リスクの増大との関連がみられた(ハザード比[HR]:1.42、95%信用区間[CrI]:1.15~1.79)。治療3ヵ月間のVTE再発率は、LMWH+ビタミンK拮抗薬1.30%(95%CrI:1.02~1.62%)、UFH+ビタミンK拮抗薬群が1.84%(同:1.33~2.51%)であった。 一方、重大出血リスクは、LMWH+ビタミンK拮抗薬よりも、リバーロキサバン(HR:0.55、95%CrI:0.35~0.89)、アピキサバン(同:0.31、0.15~0.62)が低かった。治療3ヵ月間の重大出血発生率は、リバーロキサバン0.49%(95%CrI:0.29~0.85%)、アピキサバン0.28%(同:0.14~0.50%)、LMWH+ビタミンK拮抗薬0.89%(同:0.66~1.16%)であった。 これまで、いずれの治療戦略が最も有効および安全であるかについてのガイダンスは存在していなかった。メタ解析は、フォローアップ期間や登録患者が均一でないなど解釈には限界があるが、この検討は4万5,000症例という最大規模で、アウトカムはガイドラインに則り有症状の静脈血栓症再発と出血合併症であるので、ある程度は真実であると考えられる。有効性が最も小さいのはUFH+ビタミンK拮抗薬であったが、皮肉なことに臨床では重症肺梗塞には一般的に用いられている。 すでに「心房細動治療(薬物)ガイドライン(2013年改訂版)」では、新規抗凝固薬が第一選択となった。とくにCHADS2 1点では推奨がダビガトラン、アピキサバンでワルファリンは考慮可となっている。新規抗凝固薬はワルファリンの約20倍の薬価であるため、今後はcost-effectivenessかつ、採血や食事制限から解放されるという患者満足度の検討も必要であろう。●cost-saving=健康アウトカムが改善されるだけでなく、医療費抑制効果もある医療サービス●cost-effective=お金はかかる(医療費抑制効果はない)が、それと比較して得られる健康メリットが大きい医療サービス●cost-ineffective=お金がかかり、それにより得られる健康メリットが小さい医療サービス

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抗血栓薬服用患者への消化器内視鏡診療

※タイトルを選ぶとお好きなチャプターからご覧いただけます。抗血栓薬服用患者に対する消化器内視鏡診療の際、抗血栓薬を継続するか休薬するか、迷われたことはないだろうか?血栓塞栓症の予防効果のエビデンス集積に伴い、抗血栓薬の臨床使用が増加している現在。出血リスクである消化器内視鏡を抗血栓薬服用患者に行う際、どう対応すればよいのか?2012年に改訂された日本消化器内視鏡学会ガイドラインの内容とともに近年のエビデンスを踏まえ解説する。チャプター(順次公開)1.消化器内視鏡診療の歴史2.消化器内視鏡診療における出血リスクと血栓症リスクの考察3.2012年日本消化器内視鏡学会ガイドライン

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ワルファリン管理に対するPT-INR迅速検査の重要性が高まる

本邦では、心原性脳塞栓症をはじめとする脳塞栓症が増加している。それとともに、抗凝固薬の使用機会は増加している。抗凝固薬の中でもワルファリンは長年にわたり臨床で使われ、脳塞栓症の発症リスク減少のエビデンスを有する基本薬である。反面、その出血リスクなどから過小使用が問題となっており、ワルファリンのモニタリング指標であるPT-INRを至適治療域内へコントロールしなければならない。今回は、PT-INRを診療現場で簡便に測定できるPOCT(Point Of Care Testing)機器コアグチェックを用いた迅速測定の有用性について、製造元および販売元であるロシュ・ダイアグノスティックス株式会社、エーディア株式会社に聞いた。そこには、単なる検査に留まらないメリットがあった。PT-INRの測定環境と高まるニーズ2013年12月、日本循環器学会より「心房細動治療(薬物)ガイドライン(2013年改訂版)」が発表された。新ガイドラインでは、NOAC(Non vitamin K antagonist Oral Anticoagulants)を新たに追加し、CHADS2スコアに応じて推奨度とエビデンスが示されている。CHADS2スコア2点以上の場合は、ワルファリンが推奨されている。これらの患者は、塞栓リスク、出血リスクともに高いといわれ、きめ細かな服薬調整が必要となる。日本循環器学会や日本血栓止血学会も、ワルファリンを有効かつ安全に使うため、モニタリング指標PT-INRの測定を推奨しており、その重要性はますます高まっていくと考えられる。通常、院内に検査室を持たないクリニック等では、PT-INRを外注検査で測定しているケースが多い。外注検査の場合、検査結果が得られるまでに時間がかかる。そのため検査結果のフィードバックのために、患者に再来院させるという負担を強いることもある。簡単、短時間、どこでも測れるPT-INRそのようななか、コアグチェックは2007年PT-INRをその場で測定できるPOCT機器として発売された。一般医療機器としては、XSとXSプラスの2種類が承認されている。いずれの機種も、メモリー機能を備えており(XSで300件、XSプラスで2,000件)、患者の経時的な測定数値を確認することができる。また、電池での使用が可能なため、さまざまな状況や場所で使用できる。一般医療機器としては、コアグチェックXSとコアグチェックXSプラスがある。ほかに植込型補助人工心臓(非拍動流型)装着患者の血液凝固能自己測定用にXSパーソナルがある。(写真提供:ロシュ・ダイアグノスティック株式会社、エーディア株式会社)測定方法はいたって簡単である。専用のテストストリップを機器に挿入し、10μLの血液を滴下するだけでPT-INRを測定できる。検査結果は開始から約1分で得ることができる。操作は、専用のテストストリップを挿入、血液(10μL)をテストストリップに滴下すると、自動的に測定が始まる。検査結果は開始から約1分で得られる。コアグチェックは、キャリブレーションの手間がなく、試薬有効期限警告などエラー防止機能も備わっている。また、院内検査、外注検査との良好な相関が得られており、正確性についても高い評価を受けている。コアグチェックXS測定手技を動画で紹介7’05”(動画提供:エーディア株式会社)PT-INR迅速測定がもたらすメリットワルファリンの効果には、個人差があるといわれ、食事、併用薬、体調変化、生活状況でも変動する。たとえば外注検査の場合、検査結果が得られるまでに時間がかかるため、出血傾向などのリスクがあっても、速やかな投与量の調整が難しい。コアグチェックを用いたPOCTにより、受診時に適切な指示を出すことが可能となり、より厳密で質の高いワルファリン管理が期待できる。実際にコアグチェックを使用している医師はどう感じているのだろうか。使用者の意見には、“使いやすい”、“その場で結果がみられて便利”など、好評なものが多いようだ。また、電池使用でどこでも測定可能なので、最近では訪問診療で用いるケースも増えているという。さらに、医師が前回値と現在値を確認の上、診察してくれることで、患者のワルファリン服用への理解が深まり、アドヒアランスも向上するといった恩恵もあるという。アドヒアランス不良は重大な問題であり、そういう観点からも大きなメリットがあるようだ。加えて、その場で測定し結果を説明してくれることで、患者の医師への評判があがるケースもみられる。コアグチェック導入によりワルファリン管理が向上した実際に外来診療でコアグチェックを活用することにより、PT-INR管理が向上したエビデンスが報告されている1)。この試験は、大阪府内の外来クリニック8施設を対象に、POCT導入前後のTTR(Time in Therapeutic Range:治療域内時間)をレトロスペクティブに比較検討したものである。その結果、TTRは、導入前の51.9%から69.3%へと改善された。内訳をみると、INR治療域を上回った時間はPOCT導入前後で同程度、INR治療域を下回った時間はPOCT導入後有意に改善された。つまり、出血イベントの危険性を増やすことなく、血栓イベントの予防効果の改善が示された。画像を拡大する画像を拡大するPOCT導入後のTTRは、導入前に比べ有意に改善(51.9% vs. 69.3%, p

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心房細動患者PCI後の抗凝固療法と 抗血栓療法併用の現状と問題点

※タイトルを選ぶとお好きなチャプターからご覧いただけます。PCI後のステントでは血小板を主体とする動脈血栓、心房細動による血栓塞栓症では静脈血栓をケアする。では心房細動合併患者のPCI後はどうすべきか?永年にわたり議論を呼ぶこの話題について、本年9月の欧州心臓病学会(ESC2014)での発表内容を含め最新の情報を北里大学 循環器内科学 教授 阿古 潤哉氏がレビューする。 チャプター(順次公開)1.Af患者PCI後の血栓症2.Triple therapyは必要か?3.ワルファリンはどこまで効かせる?4.NOACは?5.BMS vs DES?6.1年後はOACのみか、OAC+APTか?

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アリスミアのツボ 第3回

Q7症状のない上室・心室期外収縮は、どの程度まで経過観察すべきでしょうか。心機能が正常ならば経過観察しない、という考え方ではどうでしょうか。私は基本的に心機能が正常である限り、期外収縮の経過観察をしていません。これには異論や反論があるかもしれません。心房期外収縮の場合「心房期外収縮の頻発は、放置するとやがて無症状の心房細動に発展してしまうのではないか?」という不安。これはそのとおりだと思います。しかし、問題はその発生確率だと思うのです。一見健康者で、心房期外収縮頻発が見られた例での心房細動の発生確率は、年間約1.5%とされています。これをどう見るか……人によって異なるかもしれません。心房期外収縮例をすべて経過観察しようとするのは、間違いではないのですが効率性に劣る気がします。これを行うための外来診療の時間があれば、もっと有意義な(もっと重篤な疾患をもつ患者のケアに)使えばよいのではないでしょうか。もちろん例外があります。心原性脳梗塞のようだけれども心房細動が見つかっていない患者、心房細動がひとたびもし生じてしまえば脳梗塞のリスクがきわめて高いという患者では、心房期外収縮の頻発を経過観察する価値が高まるでしょう。ただし、これらの患者の経過観察としての適切な方法はまだ誰も知りません。心室期外収縮の場合「心室期外収縮の頻発は、やがて心機能低下を引き起こしてしまうのではないか?」という不安。これもその可能性はあると思います。ただし、どのような発生確率が見込めるのかという確かな数字がない以上、そして基本的に予後はよいという情報がある以上、効率性という意味で経過観察の価値が低いと感じてしまうのです。脳梗塞とは異なり、心機能低下はirreversibleではありません。健康診断をきちんと受けることを指導する、というような経過観察でもよいのではないでしょうか。Q8発作性心房細動に対する抗不整脈薬の用い方について教えてください。安全性重視という考え方で、患者の意向次第で減量や中止も随時可能専門家の現場での用い方「抗不整脈薬の使い方がわからない。ガイドラインや教科書と、循環器内科医の実臨床での使い方がかなり違う気がする」というご意見もありました。抗不整脈薬は諸刃の剣と言われることから、どうしても経験則が幅を利かせているのが実情です。ESCの心房細動ガイドラインで書かれていることESCの心房細動ガイドラインにはこの抗不整脈薬の使い方の原則が書かれているので、それを引用しておきましょう。1)抗不整脈薬治療は症状を軽減する目的で行うものである2)抗不整脈薬で洞調律を維持する効果は“modest”である3)抗不整脈薬治療は心房細動の再発をなくすものでなく、減らすことで臨床的には成功と考えるべきだろう4)1つの抗不整脈薬が効果のない場合、他の抗不整脈薬が効果を示すことがあるかもしれない5)抗不整脈薬による新たな不整脈の出現、心外性副作用はしばしば生じる6)抗不整脈薬の選別は効果よりもまず安全性を指針とすべきである私の使い方私の臨床現場での用い方はこれを基本にしています。たとえば、抗不整脈薬をいつ始めて、いつ中止するのかについての一定の見解はないのですが、患者が心房細動の症状で困っている時に開始し(1参照)、その際あらかじめ発作が完全に消失するものではないことを伝え(2、3参照)、症状が軽くなればいつでも薬物の減量をトライし、症状に困らなくなればいつでも中止をトライする(6参照)、ということを基本にしています。もちろん、減量や中止によって患者が困るようになれば、また再開することはたびたびです(むしろ、そのほうが多いかもしれません)。ただ、これを行うことで患者が薬物の効果を実感してくれることもアドヒアランスを高めると思っています。Q9NOACをどのように開始すべきでしょうか?ワルファリン時代とまったく異なる抗凝固療法のやり方を会得する必要がありますワルファリン時代に染みついた慣習心房細動の脳卒中予防には抗凝固療法が必要です。抗凝固療法の仕方…これについては、あまりにもワルファリンを使用してきた歴史が長く、ワルファリン時代のやり方が身に染みついてしまっていることを私自身が痛感しました。そこで、ワルファリン時代とは異なるNOACによる抗凝固療法の私のやり方をまとめておきます。1)心房細動初診患者では(脳卒中の一次予防ならば)その日のうちに抗凝固療法を始めない。ワルファリン時代は初診患者で脳卒中予防の説明をして、ワルファリン1.5~2mg/dayをその日から開始していました。しかし、NOACでは危なっかしくてできないですね。初診日は、脳卒中に関する啓蒙、年齢、体重の把握、血清Cr、Hbの採血をするだけにしています。クリアチニンクリアランスを把握してから抗凝固療法はするものと考え、次の外来から(つまりクレアチニンクリアランスが手に入ってから)NOACを処方します。次回の外来までに脳卒中になってしまうのでは……と不安に思う方がおられるかもしれませんが、所詮ワルファリン時代も初診時に処方する少量のワルファリン量ではそもそも効いていませんでした。NOACを初診日に処方すると禁忌症例に処方してしまう可能性があり、こちらのほうが危険でしょう。また、貧血のある患者にNOACを処方するのも危険です。今まさに、じわじわとどこからか出血しているのかもしれないからです。2)2週間以内の出血に関する問診とHbのチェックを忘れないワルファリン時代はゆっくりと抗凝固がなされ、しかもPT-INRによる処方量決定のためたびたび外来受診が行われるので、出血のケアは自然になされやすい環境にありました。しかし、長期処方が可能なNOACは大出血直前の気付きの機会を減らしています。そこで、私は、NOAC処方時には必ず2週間以内に受診してもらい、皮下出血、タール便の有無を聞き、必ずHbをチェックすることにしています。2週間でHbが明らかに減少していれば、どこからか出血していることになるからです。逆にHb値に変化がなければ安心できます。3)バイオマーカーはどうする?ワルファリン時代のPT-INRというモニタリングはなくなりました。では何もチェックしていないかというと、私は、ダビガトランではaPTT、リバーロキサバンとアピキサバンではPTをチェックしています。固定用量の薬物では必ず効きすぎの患者が、わずかといえども存在しているからです。ただし、これはモニタリングではありません。処方後2週間以内の外来で、Hbと一緒にバイオマーカーを一度採血するのです。バイオマーカーについては「あまり見かけないほど高い値である」ことがなければ、それで良しとしています。その後の採血ですが、クレアチニンクリアランスを高齢者では年に4回程度、若年者では年に1、2回チェックしますが、それと同時にこれらのバイオマーカーもチェックしています。NOACのバイオマーカーはモニタリングではなく、あくまでもチェックにすぎないのです。

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血栓症の病態と抗血栓薬の基礎

※タイトルを選ぶとお好きなチャプターからご覧いただけます。新たな抗血小板薬および抗凝固薬が続々と登場している近年。これらを有効に活用するためには、血栓症の病態とそれに対応する薬剤のメカニズムを把握する必要がある。今回は止血のメカニズムから抗血栓薬の基本までを血液のスペシャリスト北里大学 医学部 血液内科学 宮崎浩二氏が解説する。チャプター(順次公開)1.止血のメカニズム2.病的血栓症3.動・静脈血栓のちがい4.抗血栓薬の基本覚えておくと便利な抗血栓薬(PDF) :宮崎浩二氏監修

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