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新規結核ワクチンの有効性示せず:MVA85A 020 Trial Study/Lancet

 開発中の新規結核ワクチンMVA85Aは、BCG接種歴のある幼児において良好な安全性を示したものの、予想に反して結核の予防効果はほとんどないことが、南アフリカ共和国・ケープタウン大学のMichele D Tameris氏の検討で示された。2011年の世界の結核患者数は約870万人で、約140万人が結核が原因で死亡している。南アフリカのような流行地では、BCGが広く普及しているにもかかわらず、幼児、小児の結核発症率がきわめて高く、ワクチンの改良が喫緊の課題とされる。MVA85AはBCGの予防効果を増強するようデザインされ、結核の予防に重要と考えられる抗体特異的Th1細胞およびTh17細胞を誘導することが確認されているという。Lancet誌オンライン版2013年2月4日号掲載の報告。安全性、有効性を無作為化第IIb相試験で評価 MVA85A 020 Trial Studyは、幼児における結核およびMycobacterium tuberculosis感染に対するMVA85Aの安全性、免疫原性、有効性を評価する二重盲検プラセボ対照無作為化第IIb相試験。 BCGワクチン接種歴があり、HIVに感染していない健康な幼児(生後4~6ヵ月)を対象とした。これらの幼児を、MVA85Aを皮内接種する群またはプラセボ群に無作為に割り付けた。3ヵ月ごとに最長37ヵ月のフォローアップを行った。 主要評価項目は安全性(有害事象および重篤な有害事象の発現)とし、ワクチン接種群の有効率の評価も行った。有効性の評価項目として、微生物学的、X線画像上、臨床的な判定基準に基づく結核の発症率およびM tuberculosis感染(抗体陽性化)の検討を行った。結核発症に対する有効率17.3%、感染に対する有効率-3.8% 2009年7月15日~2011年5月4日までに2,797人が登録され、MVA85Aワクチン接種群に1,399人が、プラセボ群には1,398人(2人が接種を受けなかった)が割り付けられた。per-protocol集団のフォローアップ期間中央値は24.6ヵ月で、両群間に有意な差はなかった。ワクチン接種群の1,399人(生後146.6日、男児51%)、プラセボ群の1,395人(同:145.7日、51%)が解析の対象となった。 局所的有害事象の発生率はワクチン群で多かった[89%(1,251/1,399人)vs 45%(628/1,396人)]が、全身性の有害事象[80%(1,120/1,399人)vs 76%(1,059/1,396人)]や重篤な有害事象の発生率に差は認めなかった[18%(257/1,399人)vs 18%(258/1,396人)]。これら515人の幼児にみられた648件の重篤な有害事象はMVA85Aワクチンとは無関係だった。 ワクチン群の結核の発症率は2%(32/1,399人)で、これは100人年当たり1.15〔95%信頼区間(CI):0.79~1.62〕に相当した。M tuberculosis感染率は13%(178/1,398人、95%CI:11.0~14.6)であった。 これに対し、対照群の結核発症率は3%(39/1,395人)で、100人年当たり1.39(95%CI:1.00~1.91)、感染率は12%(171/1,394人、同:10.6~14.1)だった。 結核の発症に対するワクチン接種の有効率は17.3%(95%CI:-31.9~48.2)、M tuberculosis感染に対する有効率は-3.8%(同:-28.1~15.9)であった。 著者は、「MVA85Aワクチンは良好な忍容性を示し、細胞性免疫反応も誘導したが、結核の発症およびM tuberculosis感染の抑制効果はほとんどなかった」と結論し、「現行の結核ワクチンの候補選定のパラメータは不適切な可能性があり、試験のデザインや遂行の仕方をも含め、本試験の教訓は今後のワクチン開発にとって重要である」と指摘している。

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エンテロウイルス71ワクチン、第2相試験で免疫原性、安全性を確認/Lancet

 エンテロウイルス71(EV71)ワクチンについて、第2相無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果、乳幼児に対する免疫原性と安全性を確認したことを中国・江蘇省疾病管理予防センターのFeng-Cai Zhu氏らが報告した。EV71は1969年に米国カリフォルニアで初めて報告された腸管ウイルスで、その後14ヵ国以上(日本も含む)から報告が寄せられている。とくに中国では過去に3度重大流行が発生し2009年には255人超が死亡したという。今回検討されたワクチンは、中国Beijing Vigoo Biologicalが開発したアラムアジュバンドワクチン製剤で、第1相試験で臨床的に認容性のある安全性プロファイルと免疫原性が示唆されたことを受けて本試験が行われた。Lancet誌オンライン版2013年1月24日号掲載報告より。生後6~36ヵ月の乳幼児を対象に無作為化二重盲検プラセボ対照試験 EV71ワクチンの第2相試験は、江蘇省東海県の1施設で、生後6~36ヵ月の健康な男女児を適格被験者として行われた。 被験児を無作為に5群[アラムアジュバントEV71ワクチン160U、320U、640U群と、非アジュバントワクチン群、プラセボ(アラムアジュバントのみ含有)群]に、SAS9.1ブロックランダムリストを用いて割り付けた。無作為化情報は、被験児および試験担当者には知らされなかった。 主要エンドポイントは、56日時点での幾何平均抗体価(GMTs)で、プロトコルに基づき解析が行われた。320Uアラムアジュバント製剤が最適 無作為化された被験児は1,200例で、各接種群には240例ずつ(乳児:6~11ヵ月齢児120例、幼児:12~36ヵ月齢児120例)が割り付けられた。そのうち試験を完了したのは1,106例であった。被験児のドロップアウトは、同意が得られなかったことと血液サンプル提供の拒否が主な理由であった。 解析の結果、乳児640U接種群が56日時点のGMTsが最も高値であった(742.2、95%CI:577.3~954.3)。次いで乳児320U接種群が続いた(497.9、383.1~647.0)。 幼児では320U接種群が最も高値であった(1,383.2、1,037.3~1,844.5)。 全体では、ワクチン接種群が非接種群よりもGMTs値が有意に高値であった(p<0.0001)。 ベースラインで血清陰性であった被験児のサブグループについて、640U接種を受けた乳児および幼児の両群が56日時点のGMTsが最も高値であった(乳児:522.8、403.9~676.6、幼児:708.4、524.1~957.6)。次いで320U接種群であった(乳児:358.2、280.5~457.5、幼児:498.0、383.4~646.9)。 安全性について、1,200例のうち549例(45.8%)が1つ以上の注射部位あるいは全身性の副反応を報告したが、副反応発生率は接種群間で有意な差はみられなかった(p=0.36)。ただし硬結発生率について、640Uアジュバントワクチン接種群が非アジュバントと比較して有意に高率であった(p=0.001)。 以上を踏まえて著者は、「EV71ワクチンの免疫原性、安全性、製剤の生産性が確認された。おそらく第3相試験には320Uアラムアジュバント製剤が最も適しているであろう」と結論している。

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妊娠中のH1N1インフルエンザワクチン接種、発症リスクを7割減/NEJM

 妊娠中の2009インフルエンザA(H1N1)ウイルス感染症パンデミックの罹患は、胎児死亡リスクを約2倍増大する一方、妊娠中に同ワクチンを投与した人では、インフルエンザを発症した人の割合は約7割少なかったことが報告された。ノルウェーのNorwegian Institute of Public HealthのSiri E. Haberg氏らが、H1N1ウイルスが流行した2009~2010年に妊娠中だった女性12万人弱について行った試験で明らかにしたもので、NEJM誌2013年1月24日号(オンライン版2013年1月16日号)で発表した。2009パンデミックでは、ワクチン接種後に胎児死亡が散発的に報告されたことで、妊婦へのワクチン接種の安全性について懸念が持ち上がっていた。胎児死亡率は1,000児中4.9児 研究グループは、ノルウェーの全国登録名簿などを用いて、2009~2010年に妊娠中だった11万7,347例について調査を行った。被験者のインフルエンザワクチン接種の有無、出産アウトカム、パンデミック前後や期間中の状況などについて調べ、Cox回帰モデルを用いて、H1N1ウイルス感染やワクチン接種と胎児死亡率についての関連を分析した。 その結果、胎児の死亡は570例で、胎児死亡率は1,000例中4.9だった。被験者のうち単胎妊娠は11万3,331人で、そのうち胎児の死亡は492例(1,000例中4.3)だった。妊婦のワクチン投与で発症リスクは7割減、胎児死亡リスク減少では有意差みられず パンデミック期間中に妊娠第2・第3期だった妊婦は4万6,491例で、そのうちインフルエンザワクチン接種を受けた人の割合は54%だった。 妊娠中のインフルエンザワクチン投与は、インフルエンザ発症率を約7割減少した(補正後ハザード比:0.30、95%信頼区間:0.25~0.34)。 妊婦のうちインフルエンザの臨床的診断を受けた人では、胎児死亡率は約2倍に増大した(補正後ハザード比:1.91、同:1.07~3.41)。 妊娠中のワクチン投与によって、胎児死亡リスクは減少する傾向が認められたものの、有意差は認めらなかった(補正後ハザード比:0.88、同:0.66~1.17)。 これらの結果を踏まえて著者は、「ワクチン接種自体は胎児死亡とは関係がない。むしろパンデミック期間中のインフルエンザ関連の胎児死亡リスクを低減する可能性がある」と結論した。

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「ヒヤリ・ハット」、先生は報告してますか?記名or匿名?電子or紙?実態大公開

診療中、検査中、手術中、「おっと危ない」と心のなかでつぶやいたこと、ありませんか?「ひょっとしてとんでもない事態になっていたかも」と大汗をかいても、喉元過ぎれば…でまた繰り返してしまったり。最近は「とにかく報告をあげろ」という病院も増えているようですが、果たして防止策につながっているのか?責任追及や懲罰は?具体的なエピソードと共に、一挙公開します!コメントはこちら結果概要3人に1人が月に一度以上ヒヤリ・ハットを経験、最も多いシーンは『薬剤の処方・投与』日々の診療でのヒヤリ・ハットの経験頻度について尋ねたところ、『週に一度』(5.7%)『月に一度』(26.3%)を合わせ3人に1人が月に一度以上は何らかの形でヒヤリ・ハットに遭遇していると回答。一方『なし』とした医師は全体の14.4%。内容別では『薬剤の処方・投与』『治療・処置』『転倒・転落』と続くが、「報告は形式的で成果が上がっていない。誤薬と転倒のみが表立っていて、もっと問題視すべき事象は表に出ないまま」「報告数を増やすため些細なものも報告している」などの他、「“報告すること”が目的化してしまい、有効な対策の検討にはつながっていない」といった声も挙がった。経験医師の約6割が『報告しないことがある』、最も多い理由は『レポート作成が手間』そうしたケースに遭遇した場合の報告の有無について尋ねると、全体の41.1%が『全て報告する』と回答。その他の医師の“報告しない理由”として、『レポート作成に手間がかかるため』46.0%、次いで『院内に報告の仕組みがないため』『報告しても事故予防に役立たないと思うため』と続く。『責任追及される、評価・懲罰に関わるため』とした医師は全体の2.2%。しかしその内訳は勤務施設によって異なり、診療所・クリニックにおいては『報告の仕組みがない』が約6割に上った。報告システムの電子化進むが、「かえって面倒」との声も施設の報告体制・安全対策として、4割近い医師が『スタッフ用マニュアル』『定期会議での検討・分析』『研修・セミナー』があると回答。当事者を明らかにするか否かについては、『記名式』35.5%、『匿名式』17.2%であった。報告手段については『紙ベース』44.9%、『電子化された報告システム』32.3%となったが、電子化システムの導入について施設別に見ると、一般の病院では26.5%だったのに対し、参加登録申請医療機関では60.2%、報告義務医療機関では70.1%となった。しかし前述の“報告しない理由”で『レポート作成が手間』とした医師は、報告義務医療機関では66.3%に上り「紙ベースの時のほうが報告しやすかった」「面倒なシステムだと、文化以前の段階で敬遠されてしまう」といった声も見られた。設問詳細ヒヤリ・ハットおよびその報告についてお尋ねします。昨年12月21日のCB医療介護ニュースによると、『日本医療機能評価機構は20日、今年7-9月の四半期に報告を受けた医療事故情報が、同機構が医療事故情報収集・分析・提供事業を始めた2004年10月以降で最多の814件だったことを明らかにした。(中略)同機構によると、9月末現在、報告が義務付けられている国立病院や特定機能病院など「報告義務対象医療機関」は273施設で、自主的に事業に参加している「参加登録申請医療機関」は637施設。7-9月は、157施設の報告義務対象医療機関から計726件、29施設の参加登録申請医療機関から計88件が報告された。同機構の担当者は、前年の報告数が約2800件に上ったことや、今回、四半期としての記録を更新したことから、「事故を報告する文化が定着しつつあるのではないか」と話している(略)』とのこと。医療事故につながる事例として「ヒヤリ・ハット」あるいは「インシデント」があります。日本医療機能評価機構による「ヒヤリ・ハット」の定義は以下です。(1)医療に誤りがあったが、患者に実施される前に発見された事例。(2)誤った医療が実施されたが、患者への影響が認められなかった事例または軽微な処置・治療を要した事例。ただし、軽微な処置・治療とは、消毒、湿布、鎮痛剤投与等とする。(3)誤った医療が実施されたが、患者への影響が不明な事例。そこで先生にお尋ねします。Q1.日々の診療におけるヒヤリ・ハットのご経験について過去1年間で最も近い頻度をお選び下さい。週に一度月に一度半年に一度年に一度なし(Q1で「なし」を選んだ方以外)Q2.どのような場面でヒヤリ・ハットを経験しましたか?当てはまること全てをお選び下さい。治療・処置薬剤の処方・投与ドレーン・チューブ類の使用転倒・転落検査医療機器の使用輸血その他(Q1で「なし」を選んだ方以外)Q3.経験したヒヤリ・ハットへの報告の有無についてお答え下さい。全て報告している報告しないことがある全く報告しない(Q3「全て報告している」を選んだ方以外)Q4.報告しない理由について最も当てはまるものをお選び下さい。レポート作成等に手間がかかるため責任追及されるあるいは評価・懲罰に関わるため報告しても事故予防に役立たないと思うため院内に報告の仕組みがないためその他Q5.ご勤務施設のヒヤリ・ハット報告体制、および医療安全対策について当てはまることを全てお選び下さい。電子化された報告システムを導入している報告書は紙ベースである報告は匿名式である報告は記名式である報告されたヒヤリ・ハットに関し定期的な会議にて検討・分析している報告件数・内容などが集計され院内に発表される医療安全に関わる研修・セミナーを実施しているスタッフ用医療安全マニュアルがある上記全て当てはまらないQ6. コメントをお願いします(具体的なエピソード、防止策、報告に関する勤務施設内での対応方針、報告したことによる評価・責任追及・懲罰の有無、その他ご意見など何でも結構です)F1. 先生が勤務されている施設を以下からお選び下さい。おわかりにならない先生は「上記以外」からお選び下さい。「報告義務医療機関」とは国立高度専門医療センター及び国立ハンセン病療養所独立行政法人国立病院機構の開設する病院学校教育法に基づく大学の付属施設である病院(病院分院を除く)特定機能病院「参加登録申請医療機関」とは上記以外で医療事故情報収集等事業の参加に希望する医療機関報告義務医療機関参加登録申請医療機関上記以外の病院(20床以上)上記以外の一般診療所・クリニック(19床以下)その他F2. 年代F3. 診療科2013年1月17日(木)~18日(金)実施有効回答数1,000件調査対象CareNet.com会員コメント抜粋(一部割愛、簡略化しておりますことをご了承下さい)「報告自体が医師の負荷を増しているのが悩ましい」(40代,内科,上記以外の病院)「同じような失敗が性懲りもなく繰り返されるが、対策を立てると減少する事例、患者サイドの要因が大きくなかなか減少しない事例がある。」(40代,脳神経外科,上記以外の病院)「報告システムはあるが形式的で結局なにも成果があがっていない。 誤薬と転倒のみが表立っていてもっと問題とするべき事項は表に出ないまま終わっている」(50代,神経内科,報告義務医療機関)「薬剤名の間違い(電子カルテで上下の段にある薬を誤って処方してしまう)がほとんど」(60代以上,耳鼻咽喉科,上記以外の一般診療所・クリニック)「他職種のヒヤリハットであっても、全て医師が患者や家族に説明する体制になっていてなんとなく腑に落ちないときがある」(40代,精神・神経科,上記以外の病院)「どの程度から報告したらよいか悩むことがある。今回、報告しなかったのは子どもが診察室の椅子で暴れて落ちそうになったことであり、ヒヤリハットの定義に当てはまらないと思われるが、転落してケガをしたら報告しなくてはならない。小児科であり、今回と同様のことをすべて報告していたらきりがない。以前の病院では、名前を伏せたレポートを冊子化しており、“こんなことが起こりうるのか”“このように注意したらよいのか”など参考になることがあった。レポートを提出することで注意されたり非難されたりしたことは一切なかったので、その環境はレポートを提出しやすくなるので大切」(60代以上,小児科,上記以外の病院)「ただ単に報告するだけでは、重大事故は防げないと思う。重大事故が既に過去に生じているから「ヒヤリ・ハット」と認識できるのであり、それだけでは新たな重大事故防止に不十分であると思うからです。報告することが目的のように勘違いされている風潮があります。重大事故を想像・想定する一歩進めたKYT(危険予知トレーニング)をもっと重視するべき」(50代,外科,上記以外の病院)「エピソードの報告があっても、原因・対応策の真剣な取り組みが見られないし、指導する者が居ない」(60代以上,内科,上記以外の一般診療所・クリニック)「医師は本来業務が煩雑で、ヒヤリ・ハットが多いが、忙しすぎていちいち報告できないのが現状」(40代,内科,上記以外の病院)「インシデント・アクシデントの報告は病院にとって宝であり、原則責任追及や懲罰はなく、特に発見者や対応策の提示者には表彰があります。」(40代,内科,上記以外の病院)「ピリン禁忌の患者にピリン系薬剤を処方し薬剤師より注意された。」(40代,内科,上記以外の一般診療所・クリニック)「電子カルテを最近導入したが,処方の際に小数点が落ちてしまったり,前回処方をコピーしようとして 前々回の処方をコピーしたりすることがある。電子カルテの操作性や,日付順に記載内容が表示されない など,電子カルテそのもののできが悪いとしか言いようがない。」(50代,小児科,報告義務医療機関)「昔なら問題にすらならないようなことまで、問題にされる傾向である。」(50代,内科,上記以外の一般診療所・クリニック)「事故を起こした個人の責任とせず、組織で再発防止を考える最近の流れに、大いに賛成しています。 昔は、ひどかった・・・。」(40代,内科,上記以外の一般診療所・クリニック)「ミスは誰にでもあるので、個人的な責任を問わないという姿勢も大事だとは思うが、明らかにミスを繰り返す傾向のある人もいる。その人に対して、どう対応すればいいのか?」(50代,小児科,上記以外の病院)「事故を報告する文化の醸成が重要、文化のないところにシステムを構築しても機能しないのではないかと思う。それと、報告システムの手間の軽減策、あまりに面倒なシステムだと、それが足かせとなって文化以前の段階で敬遠されてしまう。」(50代,消化器科,報告義務医療機関)「後日、重要なものについては医療安全管理室から事情聴取がある。」(60代以上,麻酔科,その他)「codeblueの館内放送が流れない部屋があったり、ブレーキの壊れた車椅子で院外に出た患者が危うく交通事故に合いそうになったりなど。」(60代以上,救急医療科,その他)「対策はしても責任追及はしない。あまりに報告が少ない部署は、むしろ要注意。」(50代,整形外科,上記以外の病院)「オカーレンスレポートを提出した事がありますが、某教授から退職するように強要されました。責任を追及しないなんて全くの嘘ですので。」(50代,循環器科,上記以外の一般診療所・クリニック)「責任追及ではないので、報告することで病院機能改善の方向に向かうと考えている。」(50代,耳鼻咽喉科,参加登録申請医療機関)「自身も含めインシデント・アクシデントの報告・連絡・相談は思うように行かない・・というのが実感」(40代,内科,上記以外の病院)「玄関前が凍結しており、患者が転倒することがあった。打撲程度であり、患者家族にも理解をしてもらえた。それ以後、翌朝凍結が予想されるときには診察終了時に玄関前に凍結防止剤(塩)を散布し、朝には湯をかけて凍結転倒しないよう配慮している。」(50代,内科,上記以外の一般診療所・クリニック)「報告件数・内容などが集計され院内に発表され対策会議にて再発予防策を策定しています。」(50代,泌尿器科,上記以外の病院)「自分自身、規格違いの内服薬の誤処方、静注薬の過量投与などを起こしたことがあるが、インシデントが起きたことを患者に説明すると、院長名の文書で具体的な改善策を求められ、患者側の意識が以前より高くなっていると感じる。当院ではレベル3b以上では、緊急に医療安全管理委員会が開かれて対応を協議している。報告は原則として安全管理システムの向上を目的としており、当事者の責任追及や懲罰はなされないのが通常の対応であるが、分析によって明らかに当事者個人の対応に問題があった場合はあり得る。」(50代,小児科,参加登録申請医療機関)「以前勤めていた病院で、手術中のエピソード(腰椎麻酔下での血圧低下と一過性の呼吸抑制のため一時術野から手をおろし対応)を報告したら、現場を知らない事務方に医療事故対応をとられる寸前のところだった。県立大野病院の事件の直後の頃である。ヒヤリ・ハットの報告も大事だが、関わるすべての人にきちんと責任をもってもらいたい。」(40代,産婦人科,上記以外の一般診療所・クリニック)「絶対ベッド上安静の患者(認知症なし)が勝手にベッドから降りようとして転倒した。 少ないスタッフでの看護にも限界あり。」(40代,整形外科,上記以外の病院)「外来での処方忘れや、看護師への細かい指示の行違い等、報告しているとキリがない。これらを無くすることは現実的には無理だと思う。 報告すべき事例と、しなくても良い事例の線引きが困難である。 」(40代,循環器科,報告義務医療機関)「ヒヤリハットの範囲が不明確である。処方での入力ミス(非危険薬):用法用量などがキーの入力ミスで 入力後気づく、あるいは薬剤師からの疑義解釈で気づくなどの場合、ヒヤリハットといえるか必ずしも明確でない(手書きでは起こらないことが電カルでは頻繁に起こる)。」(60代以上,リウマチ科,上記以外の病院)「電子カルテシルテムの様式が煩雑でハードルが高い」(50代,眼科,参加登録申請医療機関)「無床クリニックでの安全体制って、皆様いかが取り組んでいらっしゃるのか、知りたいところです。」(40代,内科,上記以外の一般診療所・クリニック)「研修医は直属の上司がはっきりしないため、報告システムが確立していない。」(30代以下,内科,報告義務医療機関)「よく似た名前の患者は、呼名で確認しても患者がハイと返事するので困った。番号で呼ぶのが良いかもしれない。」(50代,腎臓内科,上記以外の病院)「定期的に発信していかないと、報告数が減少してしまいます。報告者への責任や懲罰はありませんが、個別にはいろいろともめる原因になっているようです。」(40代,産婦人科,参加登録申請医療機関)「日常業務に差し支えのない程度の簡単な報告様式にするか、事務が書いてくれるなどしてくれるといいのだが。」(30代以下,産婦人科,報告義務医療機関)「外来処方時の日数間違えなどは登録していません。 入院中の点滴オーダー忘れや検査で有害事象が起きたときはすべて報告しています。」(30代以下,循環器科,その他)「当院では報告しても周囲に報告やお知らせなどせず、反映されていない」(40代,整形外科,報告義務医療機関)「もっと簡単なフォーマットになっていればいいと思います。」(40代,その他,報告義務医療機関)「うちの施設では、犯人探しになってしまうことが多い」(40代,呼吸器科,上記以外の病院)「電子カルテになって、電子化された報告システムになったが、紙ベースのときの方が報告しやすかった」(50代,外科,上記以外の病院)「懲罰はないが、あまりにひどい場合には依願退職した人もいる。」(60代以上,放射線科,参加登録申請医療機関)「報告による評価・責任追及・懲罰の有無はないとされているが、長期的に見た場合、全くヒヤリハット報告がない医師と、正直にすべて報告した医師とで、本当に評価の差が無いのか不安。」(30代以下,小児科,その他)「報告はある程度保存したあとは、残さないというルールでなければ報告は増えないと思います。」(40代,整形外科,上記以外の病院)「どこの病院でも医師からのインシデントレポート(ヒヤリ・ハット)は少ない。関係者が複数の場合、だれが報告を上げるかでも病院幹部の考え方が違っており統一されていない点が問題である。医療評価機構などが報告数を上げることを目的にしているように医師には思えてくるのではないか?真の医療の質の向上に結びついているという実感がないことが多いため報告しない可能性が高いと思う。」(50代,小児科,参加登録申請医療機関)「安全に対する対策費の増額が必要であるが、現状の医療環境の中で捻出が困難」(50代,消化器科,その他)「ワクチンの打ち間違えは痛かった。院長である以上、スタッフ全員に目を配らなければ。」(50代,小児科,上記以外の一般診療所・クリニック)「看護師による誤投薬で責任を取らされたことがあり腑に落ちない」(30代以下,呼吸器科,上記以外の病院)「処方箋の記入間違いがどうしても減らず困っています。」(50代,内科,参加登録申請医療機関)「医者は基本的にインシデント報告をしない人が多い気がします」(30代以下,精神・神経科,報告義務医療機関)「報告により責任追及は行われないことになっているが、誰が見ても防げる単純なミスなどはみっともないと思われるのは通常。どこまでを報告範囲とすべきか、決まっていないものもあり、手術時間の延長についても報告されない場合とされる場合がある」(40代,外科,報告義務医療機関)「MRM委員会と事例検討会が毎月開催されています。」(40代,呼吸器科,その他)「ヒューマンエラーは決してゼロにはならないとの観点から、ヒヤリハットの報告システムは重要と考える。しかし、報告したことや情報を収集したことで満足し、業務内容の改善等に生かされないのであれば意味がない。」(40代,血液内科,報告義務医療機関)「外来診察で高度の認知症のある別の患者が入室したことがあったが、診察終了までそれに気がつきませんでした。」(30代以下,皮膚科,報告義務医療機関)「病院首脳でヒヤリハット会議に出席しているメンバーに、ヒヤリハット事例の常連メンバーがおり、会議自体が形骸化している」(40代,内科,参加登録申請医療機関)「医師からの報告が少ないので、数字を増やすため、些細なものも報告している」(50代,内科,上記以外の一般診療所・クリニック)「報告しても、防ぐ手立てがないものが多い。今後、お互いに気をつけましょうで終わってしまう。」(50代,精神・神経科,上記以外の病院)

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新型インフルエンザワクチン、てんかん発作のリスクを増大しない/BMJ

 パンデミックA/H1N1インフルエンザ、いわゆる新型インフルエンザのワクチンについて、てんかん発作のリスクを増大するエビデンスはみられなかったことが、スウェーデン・カロリンスカ研究所のLisen Arnheim-Dahlstrom氏らによる検証の結果、報告された。同ワクチンについては先行研究で、ギラン・バレー症候群など神経学的イベントのリスク増大およびナルコレプシーのリスク増大の可能性が報告されていた。また、百日咳ワクチンの接種後のてんかん発作が報告されており、研究グループは、新型インフルエンザワクチンのてんかん発作リスクの増大について調査した。BMJ誌2013年1月5日号(オンライン版2012年12月18日号)掲載より。てんかんあり・なし含む接種者37万人超について調査 研究グループは自己対照ケースシリーズ研究にて、新型インフルエンザの単価AS03アジュバンドワクチン(商品名:パンデムリックス〔国内未承認〕)のてんかん発作リスクを評価した。 評価の対象は、スウェーデンの3つの州(人口約75万人)で2009年10月~2010年5月にワクチン接種を受けた、てんかんの有無を問わない37万3,398人(0~106歳、年齢中央値41.2歳)だった。 それらのうち、接種前90日間および接種後90日間に、入院患者あるいは外来患者としててんかん発作を診断された人を調べた。エンドポイントは、てんかん発作を主病として入院または外来治療を受けたこととした。 評価は、ワクチン接種後のてんかん発作の発生率とワクチン接種前後の2つの期間におけるてんかん発作の発生とを比較して算出した推定エフェクト相対発生率にて行った。てんかん既往者のリスクも、増大はみられず 試験期間中にてんかん発作を認めた人は859人だった。 1~7日のリスク期間中(1日目がワクチン接種日)において、てんかん既往者の発作のリスク増大は認められなかった(相対発生率:1.01、95%信頼区間:0.74~1.39)。 また、非既往者の発作リスクの有意な低下は認められなかった(同:0.67、0.27~1.65)。 8~30日のリスク期間においては、非既往の人の発作リスクの有意な増大はみられず(同:1.11、0.73~1.70)、既往者のリスクは増大しなかった(同:1.00、0.83~1.21)。

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エキスパートが質問に回答「インフルエンザ診療」その2

CareNet.comでは12月のインフルエンザ特集を配信にあたり、会員の先生よりインフルエンザ診療に関する質問を募集しました。その中から、多く寄せられた質問に対し、岡部信彦先生にご回答いただきました。インフルエンザ脳症の早期発見のポイントについて教えてください。インフルエンザ様症状が発現後、比較的早い時期における“意味不明な言動を起こす”“意識状態に異常がみられる(呼んでも反応が鈍いなど)”という症状は、急性脳症を疑う重要なポイントといえるでしょう。もちろん、痙攣や重度の意識障害も、本症を疑う大きなポイントです。インフルエンザに伴う発熱について、解熱に積極的に介入していくべきか教えてください。インフルエンザの発熱は基本的には自然経過で解熱するため、解熱剤を使用しないというのも選択しうる一つの方法だと思います。しかし、一般的には患者さんの辛さや不安、全身状態の一時的な改善などを目的として使用することのほうが多いと思います。その際、小児に関しては、アスピリンなどのサリチル酸系解熱薬はライ症候群発症のきっかけとなる可能性があり、ジクロフェナクナトリウムやメフェナム酸などのNSAIDsについては急性脳症発症者での予後を悪化させる可能性があるため、原則として使用しないという注意を遵守していただきたいと思います。商品名だとわかりにくいことがあるため、一般名を必ず確認するようにしてください。インフルエンザ治療後、職場に出勤する時期の目安は、どのように考えたらよいでしょうか?成人の場合は仕事などの関係上、学校や幼稚園・保育園などのようにはいかないと思いますが、少なくとも解熱しているかどうかの確認は必要です。また、解熱後はウイルス量は減少しますが、他人に感染させうる程度のウイルスは暫くは排泄される可能性があるため、発症(発熱)から5日程度経過し、かつ解熱から2日経過するくらいまでは、マスクや手洗いなどで他人にうつさないようにすることを指導していただければと思います。新型インフルエンザが発生した場合の一般診療所で行うべき防御手段について、スタッフやその家族を守る観点から教えてください。新型インフルエンザが発生した場合、その病原性、感染力については最新の情報を得ることが最も重要です。その程度によって対応は異なりますが、少なくても平常時から、感染対策におけるスタンダード・プレコーション(標準予防策)を、いつでもとれるように準備しておくことが重要です。それをレベルアップするか、レベルダウンするかは状況によって異なりますので、まずは最新の情報を入手してください。日本のインフルエンザの診療水準や予防への取り組みは、諸外国と比較した場合どの程度の水準なのでしょうか? また、どのような特徴があるのでしょうか?診療水準に関しては、インフルエンザ迅速診断キットで丁寧に診断し、抗インフルエンザ薬を豊富に使用するなど世界でも最上位にあるといえるでしょう。インフルエンザワクチンについても、アメリカには及ばないものの、わが国の関心は世界でも最も高いレベルに位置します。また、わが国における医療機関へのアクセスの良さは、やはりトップクラスであり、重症例の早期発見や早期治療に大きく結び付いていることでしょう。とはいえ、その利点は一方では軽症患者が夜昼となく外来および救急医療機関に集中することにもなり、解決すべき問題点としてあげられます。

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Dr.中野のこどものみかたNEO

第1回「小児気管支喘息最前線 ! 」第2回「使ってみよう ! こどもに漢方」第3回「ワクチン(1) Hib,肺炎球菌」第4回「ワクチン(2) 子宮頸癌の予防ワクチンとHPV」 第1回「小児気管支喘息最前線 ! 」他科領域で“最も難しい”、“なるべくなら回避したい”とされる小児科。小児の特異性は成人を診ることが多い医師にはどうしても判断しにくいものです。このシリーズでは、一般内科医の「診断はどうすれば良いのか?」「治療薬の処方は?」などの疑問に小児科専門医が答えるQ&A形式でわかりやすくお伝えしていきます。新米ママでもある馬杉先生が臨床現場の生の声をぶつけます。2008 年に改訂されたガイドラインを基軸に、現在の小児・乳児の気管支喘息の診断や治療、そして保護者への具体的な指導内容とその方法を徹底的に解説します。医師のみならず薬剤師や看護師など、小児と保護者に接する機会のある全ての医療従事者にご覧いただける内容です。第2回「使ってみよう ! こどもに漢方」最近では一般の医師でも漢方を処方したり、西洋薬と併用使用したりするケースが増えてきましたが、逆に情報通の保護者から漢方処方を依頼されることもあるのではないでしょうか。夜泣きや疳の虫、引きつけなど小さなこどもに多くみられる特有の症状。病気とはいえないがママ達には大変なストレス ! 漢方はそんな症状にズバリ著効することが多々あるのです。もちろん、嘔吐や下痢、発熱、くしゃみ鼻水といった一般的な症候によく効く漢方薬もあります。比較的小児に用い易い漢方処方を取り上げ、症例に沿って紹介します。大流行したノロウイルス感染症に効果のある「五散」のほか、「抑肝散」の母子同服という裏ワザ、そして服薬指導も行います。苦手意識をもたずに先ずは実践してみてください。第3回「ワクチン(1) Hib,肺炎球菌」Hib(インフルエンザ菌b型)と肺炎球菌(7価混合型)の2 種のワクチンについて学習します。Hib も肺炎球菌も、細菌性髄膜炎や中耳炎、肺炎、ときには菌血症といった非常に深刻な感染症を引き起こす菌。こどもが保育園などに通い始めると1年あまりで保菌率が飛躍的に上昇します。そのため家族に高齢者がいれば飛沫感染で影響を及ぼすこともあります。これらのワクチンは、世界的には非常にポピュラーでありWHO でも定期接種が勧められていながら日本では認知度も接種率も低かったのですが、2011 年度から公費助成での接種が始まりました。公衆衛生や集団免疫の観点からも、小児科医だけでなく全ての医師と医療従事者がきちんと知っておく必要がありますので、この機会に是非ワクチンの知識を身につけてください !第4回「ワクチン(2) 子宮頸癌の予防ワクチンとHPV」第4回は小児疾患ではなく、子宮頸がんとそのワクチンについて学習します。近年急増傾向にあり、特に20 代から30 代女性の罹患と発症が問題となっています。子宮頸がんは、ヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルス感染症によって引き起こされ、日本では成人女性の実に4 割以上がHPV に感染しているという驚くべき感染症です。タイプによっては予後が非常に悪く発症後の死亡率も高いため「Mother killer」と呼ばれています。にも関わらず日本では定期検診受診率が低くワクチンに関しても浸透しておらず、医師を含む医療従事者の間でさえ認知度が高いとはいえませんでした。しかし、2009 年12月から一般の医療機関でワクチン接種が可能となり、国と市町村の公費助成がはじまったため、婦人科以外で問合せを受ける可能性もあります。ワクチンで予防可能ながんをよく知り、その重要性を患者さんに啓蒙できるようになることが、これからの医療には求められるのではないでしょうか。

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百日咳ワクチン対策の「コクーン戦略」は限界がある?

 オーストラリア・シドニー大学のK.E. Wiley氏らは、小児ワクチン戦略の「コクーン(繭)戦略」に関して、生後6ヵ月未満の年少の乳児における百日咳の感染源を調べ、接種対象者についてエビデンス情報のレビューを行った。コクーン戦略は、ワクチンが疾患等により接種できない小児の代わりに、近親者に接種を行い繭に包まれた状態として感染を防御するというものである。著者は、百日咳の重症罹患率が最も高い年少の乳児について、感染源を明確にすることは、近親者の誰にワクチン接種を行うのが有効であるかを決定する最も重要かつ唯一の因子であるとして本検討を行った。Vaccine誌オンライン版2012年11月29日号の掲載報告。 研究グループは、高所得国の生後6ヵ月未満の乳児に焦点をあて、百日咳の感染源の特定と、それら報告データおよび要約の質について評価した。対象報告は、MEDLINEとEMBASEのオンラインデータベース、および関連文献リストから研究報告を検索して解析に組み込んだ。 研究の質はSTROBE(Strengthening the Reporting of Observational Studies in Epidemiology)ステートメントに基づき標準化された基準で評価し、最も質の高い報告データを用いて、感染源別に百日咳症例の推定割合をプールして評価した。 主な結果は以下のとおり。・選択基準を満たし解析に組み込まれたのは、9件の研究報告であった。7件は入院した6ヵ月未満児の接触者についてのデータを含んでいた。症例の定義と接触確認の方法には、ばらつきがあった。・感染源として最も多く同定されたのは家族で、母親が39%(95%CI:33~45)、父親が16%(同:12~21)、祖父母5%(同:2~10)であった。・兄弟姉妹は16~43%、非家族接触者は4~22%と、ばらつきがあった。・また、症例のうち32~52%は、感染源が特定できなかった。・無症候性の百日咳感染が、評価をした近親者のうち8~13%で認められた。・以上の結果は、より幼い乳児の重症疾患予防について、母親への百日咳ワクチン接種が最も効果が高い可能性があることを示し、次いで父親、補助的に祖父母に行うことが効果的であること示すものであった。・兄弟姉妹に関しては重要性にばらつきがあった。最近のデータではワクチン接種を受けた子どもの漸減免疫を考慮しており、さらなる検証が必要である。・非家族感染源についてもかなり文書化されており、これは乳児の重症疾患予防のためのコクーン戦略の潜在的な限界を強調するものであった。

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小児急性胃腸炎動向からみえたノロウイルスワクチン開発の鍵

 長崎大学大学院のHoa Tran TN氏らは、小児(18歳以下)の急性散発性胃腸炎におけるノロウイルス遺伝子型分布を明らかにするため、2000年以降の発表論文のシステマティックレビューを行った。その結果、直近10年でGII.4、GII.3が大勢を占めるようになっており、その背景には世界的なGII.4変異型の出現があること、またノロウイルスはロタウイルス感染胃腸炎の減少と相反する形で小児急性胃腸炎での重要度を増している傾向が認められることなどを報告した。著者は、有効なノロウイルスワクチン開発には、GII.4、GII.3株に対する獲得免疫の提供が欠かせないとまとめている。Journal of Clinical Virology誌オンライン版2012年12月4日号の掲載報告。 ノロウイルスは世界的な流行性または散発性急性胃腸炎の原因である。研究グループは、過去20年間、感度の高い分子診断技術の開発がノロウイルス分子疫学の解明に革命をもたらしたものの、ノロウイルス株タイプと散発性胃腸炎との関連については十分に解明されていないとして、ノロウイルスの疫学的解析を行った。 2000年以降に行われた試験報告についてシステマティックレビューを行い、散発性急性胃腸炎の小児(18歳以下)におけるノロウイルス遺伝子型の分布状況を明らかにした。 主な結果は以下のとおり。・遺伝子グループでみるとGIIの占める割合が最も高く、すべての散発的な感染症のうち96%を占めていた。・遺伝子型でみるとGII.4の分布が最も優勢で、カプシド遺伝子型では70%を、ポリメラーゼ遺伝子型では60%を占めていた。次いで、GII.3(カプシド遺伝子型で16%)、GII.b(ポリメラーゼ遺伝子型で14%)であった。・最も頻度の高い組換え型ORF1.ORF2インター遺伝子型は、GII.3カプシド遺伝子型との結合によるGII.b、GII.12およびGII.4ポリメラーゼ遺伝子型で、同定されたすべての遺伝子型の19%を占めていた。・ここ10年間は、GII.4の突然変異の分布が勝っていた。現在までにGII.4/2002、GII.4/2004、GII.4/2006b、GII.4/2008、GII.4/2006bと続いてきている。・直近10年間の小児の散発性急性胃腸炎では、遺伝子型GII.4、GII.3の分布が優勢であった。その動きは、GII.4変異型ノロウイルスの世界的な出現で最も顕著であった。・小児予防接種プログラムの導入に伴ってロタウイルス疾患負荷が減少するに従い、相対的にノロウイルスが小児急性胃腸炎の原因における重要度を増している可能性がうかがえた。・有効なノロウイルスワクチン開発には、カプシド遺伝子型GII.4、GII.3株に対する獲得免疫提供が必要である。

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医療施設におけるインフルエンザの予防と治療

1 流行に備えた感染対策インフルエンザ対策は、本格的な流行が始まる前に開始する。平素の感染対策活動に加え、流行前に職員に対するインフルエンザ感染対策に関する啓発活動を強化する。また、施設内で患者発生を早期に探知できる体制を構築しておく。職員もインフルエンザ様症状を認めた場合はただちに当該部署に届けて欠勤するなどのルールを作っておく。その他重要な点を以下に示す。(1)ワクチン接種ワクチン接種はインフルエンザ感染対策の基本である。患者に対し、予防接種の意義、有効性、副反応の可能性を十分に説明して同意を得たうえで、禁忌者を除き積極的にワクチンを接種する。とくに65歳以上の者、および60歳以上65歳未満の者であって心臓、腎臓もしくは呼吸器の機能またはHIV感染による免疫機能障害を有する者に対するワクチン接種は、予防接種法上定期接種と位置付けられている。医療施設の職員にも、禁忌者を除き積極的にワクチン接種を勧める。(2)ウイルスの持ち込みリスクの低減流行期間中、ウイルスは医療施設外からもたらされるため、ウイルス持ち込みのリスクを低減する工夫が必要となる。インフルエンザ様症状を呈する者が面会などの目的で施設内に入ることは、必要に応じて制限する。そのため施設の入口にポスターを掲示したり、家族等にはあらかじめ説明しておくなどして、事前に理解を得ておく。施設に入る前に擦り込み式アルコール消毒薬の使用を求めることも必要である。2 流行開始後の感染対策インフルエンザ患者に対しては、まず良質かつ適切な医療の提供が基本となる。治療については後述するので、ここでは医療施設内でインフルエンザが発生した後の対応について述べる。(1)速やかな患者の隔離施設内でインフルエンザ様患者が発生した場合は、迅速診断キットを活用して診断を行う。発症早期には偽陰性となる場合があるので、キットの結果が陰性であっても、臨床的に疑われる場合はインフルエンザとして扱う。患者はただちに個室に隔離し、できるだけ個室内で過ごすように指示する。個室が確保できない場合は、患者とその他の患者をカーテン等で遮蔽する、ベッド等の間隔を2メートル程度空ける、患者との同室者について、入居者の全身状態を考慮しつつサージカルマスクの着用を勧める、といった次善の策も提案されている。患者が複数いる場合は、同型のインフルエンザ患者を同室に集めることも検討する。(2)飛沫感染予防策とその他の予防策職員が患者の部屋に入る場合はサージカルマスクを着用する。インフルエンザ患者がやむを得ず部屋を出る場合は、サージカルマスクを着用させる。インフルエンザの感染対策では通常、空気予防対策は不要であるが、サクションチューブで喀痰を吸引する時や、緊急で心肺蘇生を行う場合などは、N95マスクなどの高性能マスクの着用も勧められる。飛沫予防策として、インフルエンザを発症してから7日間もしくは発熱や呼吸器症状が消散してから24時間のどちらか長い方が経過するまで継続することが推奨されている。(3)患者への抗ウイルス薬の予防投与CDCは、施設内で72時間以内に2名以上のインフルエンザ様患者が発生した場合や、1名のインフルエンザ確定患者が発生した場合は、入所者への抗ウイルス薬の予防投与を勧めている。日本感染症学会は、インフルエンザ患者に接触した患者には、承諾を得たうえで、ワクチン接種歴にかかわらずオセルタミビルかザナミビルによる予防投与を開始すべきであるとしている。予防投与の範囲は、原則的にはインフルエンザ発症者の同室者とする。なお、現時点でペラミビルとラニナミビルには予防投与の適応は無い。(4)職員への予防投与CDCは、医療施設の職員についても、ワクチン未接種者については抗ウイルス薬の予防投与を検討すべきであるとしている。日本感染症学会は、職員は本来健康なので抗ウイルス薬の予防投与は原則として必要ではなく、発症した場合の早期治療開始でよいとしている。しかし、施設内での流行伝搬に職員が関与していると考えられる場合、とくに職員の間でインフルエンザ発症が続く場合は、職員にも予防投与が必要であるとしている。3 インフルエンザの治療-抗インフルエンザウイルス薬-ここでは主に抗ウイルス薬について述べる。現在わが国で使用可能な抗インフルエンザウイルス薬は、アマンタジン、ザナミビル水和物、オセルタミビルリン酸塩、ペラミビル水和物、ラニナミビルオクタン酸エステル水和物の5種類である。そのうちアマンタジンはA型ウイルスにのみ有効であることと、ほとんどの流行株が耐性化していること、ならびに副作用の問題などから使用機会は少なく、現在は主としてノイラミニダーゼ阻害薬が使用される。以下に各薬の特徴をまとめた。ザナミビル水和物(商品名:リレンザ)は、吸入で用いるノイラミニダーゼ阻害薬である。通常インフルエンザウイルスは主に上気道~気管で増殖するため、非常に高濃度のザナミビルが感染局所に到達する。副作用として、まれではあるが吸入に伴い気道攣縮を誘発する可能性がある。これまでにザナミビルでは耐性ウイルスの出現はほとんど報告されていない。オセルタミビルリン酸塩(同:タミフル)は、内服のノイラミニダーゼ阻害薬である。消化管から吸収され、肝でエステラーゼにより加水分解され活性体に変換される。ペラミビル水和物(同:ラピアクタ点滴用)は、1回の点滴静注でA型およびB型インフルエンザウイルス感染症に対して有効性を示す。点滴静注であるため確実に血中に移行し長時間効果を表す。ラニナミビルオクタン酸エステル水和物(同:イナビル吸入粉末剤)の特徴は、初回の吸入のみで完結する点で、服薬中断や服薬忘れの懸念が無い。以上の薬剤をどのように使い分けるかは、臨床的に大きな課題である。社団法人日本感染症学会の提言などが参考になる。文献(1)CDC. Prevention strategies for seasonal influenza in healthcare settings. http://www.cdc.gov/flu/professionals/infectioncontrol/healthcaresettings.htm(2)CDC. Interim guidance for influenza outbreak management in long-term care facilities. http://www.cdc.gov/flu/professionals/infectioncontrol/ltc-facility-guidance.htm(3)厚生労働省健康局結核感染症課、日本医師会感染症危機管理対策室.インフルエンザ施設内感染予防の手引き 平成23年11月改訂.http://dl.med.or.jp/dl-med/influenza/infl_tebiki23.pdf(4)社団法人日本感染症学会.社団法人日本感染症学会提言2012~インフルエンザ病院内感染対策の考え方について~(高齢者施設を含めて).http://www.kansensho.or.jp/influenza/pdf/1208_teigen.pdf(5)Fiore AE, et al. MMWR.Recomm Rep.2011;60 : 1-24.

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エキスパートが質問に回答「インフルエンザ診療」その1

CareNet.comでは12月のインフルエンザ特集を配信にあたり、会員の先生よりインフルエンザ診療に関する質問を募集しました。その中から、多く寄せられた質問に対し、岡部信彦先生にご回答いただきました。成人のインフルエンザワクチン接種について、推奨される接種時期を教えてください。インフルエンザ流行時には抗体をすでに持っていないと予防にならないため、10月下旬から12月中旬までに接種しておくことが望ましいといえます。妊婦へのインフルエンザワクチン接種で注意する点を教えてください。ワクチンは不活化ワクチンなので、妊婦が接種しても直接的な影響はないと考えられています。また、これまで接種により胎児に影響があったというデータもありません。ただし、妊娠の初期段階は不安定な状態であり、インフルエンザワクチン接種の有無にかかわらず、流産など妊娠経過に異常を来しやすい時期です。よって、この点について妊婦さんには十分な説明が必要だと思います。インフルエンザ予防におけるマスク、うがい、手洗い、加湿器などの実際の効果とその根拠について教えてください。身近なインフルエンザ予防については、次のように考えています。マスク:ウイルスをブロックするのであればN95のマスクが有効です。しかし一般生活の中では使い勝手が悪く、実際的ではないでしょう。飛沫感染予防という点では、医療現場ではサージカルマスク、一般の方であれば不織布製マスクが使いやすいと思います。うがい:うがい施行群で上気道感染症全般の頻度が低いというデータがみられますが、インフルエンザウイルス感染について明らかな有効性が示されたデータはないように思います。しかし、口腔内の湿潤を保ち、清浄にするという意味では有効であろうと思います。手洗い:手洗いでインフルエンザ感染が減少したとういうエビデンスは多くないと思いますが、上気道感染症全体の頻度が低下したというデータがあります。手洗いは感染症予防の基本であり、日常の一般的な予防手段として、身につけておきたいことだと思います。加湿器:湿度が高い方がウイルスの広がりを抑えるというデータもあるようですが、これによってインフルエンザウイルスが激減したというデータはないと思います。しかし、加湿することで口腔内や気管のコンディションが良くなることから、気道感染症全体の感染機会を下げるという効果はあると考えられます。インフルエンザ迅速診断キットでは陰性だが、症状からインフルエンザが疑われる場合、すぐに抗インフルエンザ薬を使用した方がよいのでしょうか? とくに小児の対応をお願いします。インフルエンザ迅速診断キットで陰性であってもインフルエンザに感染していることは十分考えられます。迅速診断キットの感度は、キットそのものの性能のほかにも、検体を得るタイミングや手技、つまりそこに含まれるウイルス量に影響されます。一般的には、発症初期の検査ではウイルスが検出されず陰性になることも少なからずあり、やはり診断は、症状や検査、周辺の疫学情報などを考慮した総合的な判断が必要であろうかと思います。つまり、インフルエンザの可能性が高いと思われたら、必ずしもインフルエンザ迅速診断キットに100%頼る必要はありません。これは成人でも小児でも同様です。インフルエンザ迅速診断キット検査で陽性になるのは、発熱出現後何時間くらいでしょうか? 目安があれば教えてください。キットの種類によっても異なりますが、おおむね発熱後12時間あるいは5日以内が陽性結果を得られやすい時期の目安となります。

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ロタウイルス胃腸炎の世界的な季節性パターンを明らかにするには?

 米国疾病管理予防センター(CDC)のManish M. Patel氏らは、ロタウイルス胃腸炎発生の世界的な季節性パターンの分布図作成を目的に、ワクチンが広く導入される以前の発生に関する報告論文をレビューした。しかし、統一的な説明が可能である季節性のパターンは認められず、国の所得レベルが多少ではあるが、他の因子よりも季節性疾患であることを示す予測因子であることが明らかになったという。Pediatric Infectious Disease Journalオンライン版2012年11月28日号の掲載報告。 研究グループは、1995年以降に発表された下痢症状を伴う小児におけるロタウイルス検出を報告した研究をレビューした。 季節性有病率と局地性(地理的、国の発展度、緯度別にみたロタウイルス陽性下痢症状の発生割合を月平均でプロットしたもの)との関連性を評価した。線形回帰分析にてロタウイルスの季節性を指し示す可能性のある変数を同定した。 主な結果は以下のとおり。・世界6大地域の状況を示す合計99件の研究報告をレビューした。・国の所得レベルが低レベルまたは低~中レベルの国では、高レベルの国よりも、ロタウイルス胃腸炎が年間を通して発生しているとのエビデンスが顕著であった。・所得が高レベルの国では、ロタウイルス胃腸炎は季節性である可能性が高かった。・国の発展レベルは、地理的な位置や気候よりも、季節性の強さを示す有意な予測因子であった(p=0.001)。・一方で、地理的、緯度、開発程度が同程度の国でも、ロタウイルス胃腸炎について明確に異なる季節性パターンがみられ、ロタウイルス胃腸炎の季節性のバリエーションについて、単一の統一された見解を示すことのできる可能性は低いと思われた。・以上の結果を踏まえて著者は、「さらに、異なる設定のもと、季節性パターンにおけるロタウイルスワクチン接種の効果について研究を進めることで、ロタウイルス胃腸炎の世界的な季節性を指し示す因子の解明に寄与する可能性がある」と結論した。

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肺炎球菌ワクチン導入後10年、依然として高い小児科開業医の急性中耳炎負荷

 急性中耳炎(AOM)の発生率は、地域性や試験デザイン・報告・設定の違いにより、国によって異なる。たとえば、米国では肺炎球菌ワクチン(PCV)導入後10年で同発生率が低下したものの、依然として高いことが報告されている。イタリア・ミラノ大学のPaola Marchisio氏らは、欧州ではやや低いが研究報告自体が少なく、イタリアのデータがきわめて少ないことから、同国の小児科開業医が認めたAOMの発生率を評価した。また、小児科開業医によるAOMの診断法についても調べた。BMC Pediatricsオンライン版2012年11月29日号の掲載報告。 イタリアの6歳未満児は全員、国民健康保健サービスの一環として小児科開業医に登録される。研究グループは、その小児科データベースのデータを2次解析し、小児科開業医が認めたAOMの発生率について評価した(/100人・年で算出した全AOM、単発AOM、再発AOM発生率を評価)。また、AOMをどのように診断しているかについても調べた。 AMOエピソードは、患者の日記で確認した。 主な結果は以下のとおり。・2003年1月~2007年12月の間の0~6歳児9万2,373人(男児52.1%)、累計22万7,361人・年が追跡された。・AOMエピソードがみられたのは、2万3,039人(24.9%)で、全エピソードは3万8,241件(単発エピソード94.6%、再発エピソード5.4%)であった。・5年間の、AOM全発生率は16.8/100人・年(95%CI:16.7~16.9)、単発AOM発生率は15.9/100人・年(同:15.7~16.1)、再発AOM発生率は0.9/100人・年(同:0.9~0.9)であった。・年間発生率はわずかだが継続的に、減少の傾向が認められた(年率変化:-4.6%、95%CI:-5.3~-3.9)。・AOM発生率は年齢により異なり、3~4歳児での発生がピークであった(22.2/100人・年、95%CI:21.8~22.7)。・大多数のAOMエピソード(96.3%、3万6,842/3万8,241例)は、耳鏡(static otoscope)で診断していた。気密耳鏡(pneumatic otoscope)の利用は3.7%のみであった。・AOMは、イタリアの小児科開業医システムにとって相当な負担となっていることが示された。・AOMの診断について教育的なプログラムが必要である。また、PCV導入拡大と関連してAOM発生率をモニターするさらなる研究が求められる。

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インフルエンザ流行の立ち上がりをSHARE…MLインフルエンザ流行前線情報DB

MLインフルエンザ流行前線情報DB http://ml-flu.children.jp(以下ML-flu)は医師が参加するメーリングリスト(以下ML)で有志を募り、インフルエンザ症例をインターネット上のデータベースに自主的に報告し、日本全国および各地のインフルエンザの流行を迅速に周知するプロジェクトであり、2000-01シーズンから13シーズン運用している。多忙な臨床の傍ら、プロジェクトを発足させ、現在も運営業務を行っている西藤成雄氏にプロジェクト発足の経緯と現状を聞いた。MLインフルエンザ流行前線情報DB開始の経緯従来から国立感染症研究所では流行状況を把握するため各地域の医療機関の定点観測による感染症発生動向調査週報(以下IDWR)を配信していますが、その集計結果が診療現場に届くには10日から2週間ほど要しています。感染症の流行阻止には早期の対策が重要であり、インフルエンザのような立ち上がりの早い感染症では課題を残していました。そのような中、2000年に国立感染症研究所感染症情報センターの砂川富正先生はML上でインフルエンザ症例を報告して流行情報を共有しようと呼びかけられました。時代はWeb拡大の折、MLを通じて診療の情報交換を行うようになっていました。インフルエンザ診療においては、迅速診断キットや最初の抗インフルエンザ薬アマンタジン(シンメトレル)が発売され、大きな転換期を迎えていました。当時は、国立感染症研究所のサーベイランスも臨床的診断であり、砂川先生のインフルエンザ迅速診断を用いた症例報告の提案は確実なインフルエンザの検出状況を共有できる素晴らしいものでした。砂川先生の呼びかけに対し小児科医が報告しだしましたが、当初は毎日報告された症例を、砂川先生が夜間に集計して公開するというものでした。そのやり取りをみていて、報告数が増え数百件というレベルになると対応できなくなるので、それに特化したwebデータベースを作りませんかと私から提案させていただきました。当時開発していたオンライン喘息日誌を応用してインフルエンザの広がりがわかるよう日本地図に表示し、喘息日誌のゾーン分けに習い流行数に応じた色分けを盛り込み、岐阜県医師会で運用されていたインフルエンザWebサイトを参考にして、直接webページに入力し自動的に集計されるシステムを作りました。画像を拡大するML-fluのトップページ日本地図に色分けされた流行情報が表示されるhttp://ml-flu.children.jp/こうしたユニークさのためか、提案はすぐに受け入れられました。そして、データベースが完成したのち、砂川先生を通し有志医師に登録を呼びかけていただきました。呼びかけは日本小児科電子メールカンファレンス(JPMLC) (代表:日本大学医学部社会医学系医療管理学分野 根東義明 先生)、小児科フリートークML (Ped-ft)(代表:たからぎ医院・東京都渋谷区 宝樹真理 先生)、さらに私が行っている内科医主体のFlu-DBのMLに対して行いました。小児科医MLの2つの会員数は計5,000名を超え、小児科専門医なら1/3をカバーする大きなネットワークです。2004年までは私だけでシステム開発をしていましたが、それ以降は谷口清洲先生(元 国立感染症研究所感染症情報センター第一室長)の研究班に参加させていただき、現在まで研究と開発・運営を続けてきました。ML-flu参加者・報告数の推移有志医師数はスタートから280~400名程度で運営しています、2009年が最も多く、その後は、300名程度の先生に情報提供いただいています。近年、報告件数が増えており2011-12シーズンは7万5千例以上の症例が登録されました。これは報告者一人当たりにすると年間260例以上の報告件数となります。運営を重ねていくにつれ感染症に関心が高い医師に数多く参加いただいているようです。 ML-fluはリアルタイムで流行の立ち上がりを知らせる事を大切な目的としていますので、必ずしも感染者数の定量性は、正しいとは考えておりませんでした。しかし、自主的に報告するML-fluが実際の流行をどの程度正しく反映するのか調査してみました。ML-fluの報告推移とIDWRの報告を重ね合わせてみたところ、非常に強い相関を示すことがわかりました。ML-fluとIDWRとの報告数推移の決定係数(R2)は運用開始した2000-01シーズンから1シーズンを除き0.9以上であり、最近2シーズンは0.99以上となっています。画像を拡大するML-fluとIDWRのデータの相関は高いML-fluの機能・特徴まず日本の全国集計がリアルタイムで見られることが大きな特徴です。これは短い期間で感染が拡大するインフルエンザにとっては非常に有効です。また、集められたデータを様々な断面で分析できることも特徴だといえます。報告数推移、タイプ(A/B)別割合、男女比、年齢分布、薬剤の使用割合などがわかります。報告数推移については直近3ヵ月、1ヵ月、2週間のデータが得られ、リアルタイムで流行の傾向を把握することができます。また、全国集計だけではなく、地域別集計地域も行っており、47都道府県のすべてが集計・分析されているとともに、各都道府県の市町村レベルの情報も地図とグラフで表されます。上記はML-fluに参加しなくても得られる機能ですが、参加登録する事によって有志医師には、より多くのメリットが得られます。参加登録するには、前述のJPMLC、 Ped-ft、Flu-DBのMLに参加します。参加いただくと報告用のURLやパスワードが送られて、ウイルス分離状況、ワクチン接種状況に加え、登録されたすべての症例の詳細が閲覧できます。また、ユニークなサービスとしてMyData機能があります。これは症例報告した有志医師ごとにアカウントを設けて、ご自身が登録した症例がすべてご覧になれるというもので、自施設のインフルエンザの報告数推移やタイプ別の分析など全国集計と同じ分析が可能です。つまり、自施設のインフルエンザ診療が統計処理されたデータとして得られる訳で、診療における強力なツールとなると思います。データはExcel形式でダウンロードできるので、臨床の分析や研究に利用できます。自施設の検出状況をランダムパスを発生させたURLに表示も可能で、自施設のホームページからリンクを張り、インフルエンザの検出状況として通院される患者さんに周知する、といった利用も可能です。また、メールによる集計結果の配信が日・週単位で届きます。ここには報告例数の他に、感染症関連のトピックスが配信されています。このように、私自身が臨床を行っているなかで、欲しいと思う機能はすべてMyDataという機能に実装しました。画像を拡大するML-fluのデータはXMLで書き出すことが可能である今までの活動の中で役に立ったエピソード09-10シーズンはGW明けから、ML-fluでA型の割合が急増していました。新型インフルエンザの早期察知かと思ったのですが、調べてみるとA/香港型による学級閉鎖など季節性インフルエンザの報告によるものでした。早期察知はできなかったももの、新型インフルエンザを本邦で最初に報告した医師は、プロジェクトの有志であり、その症例はML-fluに登録されていました。手軽に報告できる機能や1年を通したリマインドが、発見後すぐの報告をもたらしたエピソードだと思います。また、ML-fluによって未知のインフルエンザの振る舞いが把握できました。未知の感染症では、臨床症状、重症度なども分かりません。これらに対応するためには、定型の入力フォームを事前に準備することはできません。そこでML-fluでは症例入力ページを通常症例(軽症例)と特異症例(重症例)に分け、重症例を文章で書き込むというシステムにしていました。ML-fluには感染症に関心が高い臨床医が多く、その先生方の重症例報告とそこに書き込む文章は多くの情報を提示してくれます。H1N1pdm09感染が主だった09-10シーズンは重症例数をみると、過去のシーズンに比べ重症例の報告が圧倒的に多いことがわかりました。インフルエンザ1000件当たりの重症例の件数は1.82件、前年は 0.22件だったので約9倍重症例が多かったことになります。ちなみに、翌年は0.82件と平年通りになっています。つまり、H1N1pdm09は重症度が高かったということが把握できたのです。とはいえ、一人の臨床医にすると、重症例の印象は年間1例入院が出たかな?という小さなものです。それが数万という症例情報が入る事で違いが分かるのです。また、症状について重症例報告の書き込みからキーワードを分析してみると、09-10シーズンでは呼吸器症状に関する記載が他シーズンよりも特異的に高いということもわかりました。このように重症度や臨床症状といった新型インフルエンザの振る舞いを捉えていくことができたのも一つのエピソードです。ML-fluの今後の上手な活用方法ML-fluでは各都道府県のデータも市町村単位で集計表示されます。地域単位で参加していただければ、すぐにでもその地域の流行状況を共有することができます。都道府県・市町村にインフルエンザのローカルサーベイランスがない場合など、ご活用いただたくのもよい方法だと思います。ML-fluにはXMLによる生データ書き出し機能も備えておりますので、流行状況をご自身のwebサイトに表示していただくこともできます。また、前述のようにMyDataを活用し自分のサイトに自院のデータを掲示するのもよいでしょう。ご自身の医療機関におけるインフルエンザの検出情報は、患者さんにとって最も身近で確かなインフルエンザの流行情報となります。とはいえ、日集計を読んで流行情報を臨床に役立てていただくだけでも立派な活用だと考えております。視聴者の先生へメッセージ有志の先生が多いほど、より流行を正確に提供できます。また地域の偏りを無くすためにも、一人でも多くの有志の先生を募集しております。インフルエンザの流行の立ち上がりを知らせ合う事はもちろんですが、「これはもしかすると」ということを知らせあう事もとても大事です。専門外の先生方にも気軽に参加していただければと思います。現在、オンラインサーベイは乱立の状態です。各ローカルサーベイもにXMLを盛り込んでいただければ、データ連携が実現し、各都道府県の生データを集めて一晩で全国集計を出すことも可能です。実際、石川県のローカルサーベイランスと連携しており、石川県のローカルサーベイに入力すると同時にML-fluに記録される仕組みが成立しています。将来的には、感染症情報交換規約を作って各都道府県のローカルサーベイと連携をしていければと考えています。オンラインサーベイランスの展望ML-fluのシステムはさらに、RSウイルスオンラインサーベイや百日咳発生データベースなどに転用されている。そのような中、西藤氏はITによる感染症サーベイランスの「症候群サーベイランス」としての可能性を期待している。そして、Ml-fluで文字の情報からインフルエンザ情報が把握できることが明らかになったことから、新たなインフルエンザサーベイランスとしてツイッター「tweetflu」http://tweetflu.jpを立ち上げた。これは、twitter機能を利用して"インフルエンザ"が含まれるツイートを取り出すものである。患者さんがそのまま入力するため、医師の入力というタイムラグがない。まさにリアルタイム集計といえる。このサイトでは、ツイートを全国集計し、日本地図上で流行の分布を、そしてツイート数に応じた色分けで流行の度合いを表わしている。さらに、時系列グラフで流行の傾向をも把握できる。ツイート数の集計データも、厚生省の報告と相関のあるML-fluと相関しているという分析データもある。この新しい試みの展開に期待したい。「tweetflu」http://tweetflu.jp

1937.

少量、安全接種が可能な貼付パッチ式のロタウイルスワクチンの可能性

 米国疾病予防管理センター(CDC)のSungsil Moon氏らは、極微針パッチ(microneedle patch)を用いた皮下注射による、ロタウイルスワクチン予防接種の可能性についてマウスを用いた試験で検討を行った。皮下注予防接種(skin immunization)は天然痘や結核など多数の感染症で効果が認められているが、接種が難しい。一方、極微針パッチは、貼付式で接種が容易であり、その点で有望視されている。Vaccine誌オンライン版2012年11月19日号の掲載報告。 研究グループは、不活化ロタウイルス・ワクチン(IRV)の皮下ワクチン接種において、接種容易な極微針(MN)パッチの活用についてマウス試験で評価(接種効果と投与量)を行った。 6グループのメスの純系BALB/cマウスを対象に、5μgまたは0.5μgのIRVをコーティングしたMNパッチ、または各量IRVを筋肉内注射によりそれぞれ1回接種を行った。その後、0日、10日、28日時点で採血を行った。 主な結果は以下のとおり。・ロタウイルス特異的IgGは、MNパッチ群、筋肉内注射群いずれも、時間の経過とともに血清内レベルが上昇した。・IgG値と中和活性は、筋肉内注射群よりもMNパッチ群で概してより高かった。0.5μg MNパッチ群は、5μg筋肉内注射群とIgG上昇についてはほぼ匹敵、またはより高く、投与量が節約できることを示した。・陰性対照である無抗原のMNパッチを貼り付けたマウスでは、いかなるIgGをも有していなかった。・MNパッチによる予防接種は、筋肉内注射によるものと同程度以上の効果があり、脾臓由来樹状細胞の免疫誘導が示された。・試験によって、MNパッチでは筋肉内注射よりも少ない量のIRVで免疫を得られる可能性が示された。MNパッチは、世界中の子どもが、より安全で効果的なロタウイルスワクチンを受けるための開発戦略として有望視される。

1940.

小児の百日咳発症にみられたDTaPワクチン防御効果の漸減/JAMA

 米国・カリフォルニア州では2010年に、60歳以上で大規模な百日咳の流行が発生した。疾患負荷は、3種混合(DTaP)ワクチン接種率が高率であったにもかかわらず7~10歳の年齢層で顕著に大きく、ワクチンによる防御効果が漸減する可能性が示された。そこで米国疾病予防管理センター(CDC)のLara K. Misegades氏らは、百日咳発症とDTaPワクチンの5回目までの接種との関連についてケースコントロールによる評価を行った。JAMA誌2012年11月28日号掲載より。4~10歳症例682例についてケースコントロール ケースコントロールは、カリフォルニア州の15郡を対象に、症例は、2010年1月~12月14日に報告があった4~10歳児の百日咳の症例(疑い例含む)682例について行われた。対照群は2,016例で症例が報告されたクリニックで治療を受けた同一年齢群で、症例1例につきコントロール3例を設定した。ワクチン接種歴は、カルテと予防接種レジストリから入手した。 主要アウトカムは、(1)百日咳と5回接種シリーズのDTaPワクチンとの関連オッズ比(OR)、(2)百日咳とDTaPワクチン5回接種完了までの期間(<12、12~23、24~35、36~47、48~59、≧60ヵ月)との関連ORであった。 ORの算出はロジスティック回帰分析を用いて郡、主治医ごとに算出し、ワクチンの有効性(VE)は、(1-OR)×100%で推定値を算出した。発症オッズ比は、5回接種完了から時間が経つほど増大 症例では53例(7.8%)が、対照群では19例(0.9%)が、百日咳を含むあらゆるワクチンを受けていなかった。 対照群と比較して、百日咳の発症オッズ比は、DTaPワクチン接種5回をすべて受けた患児でより低かった[OR:0.11、95%CI:0.06~0.21(推定VE:88.7%、95%CI:79.4~93.8)]。 DTaPワクチン接種回数で階層化した場合、百日咳を発症した患児は対照群と比較して、12ヵ月までに5回投与を完了した割合が低い傾向がみられた[19例(2.8%)vs. 354例(17.6%)、OR:0.02、95%CI:0.01~0.04(推定VE:98.1%、95%CI:96.1~99.1)]。 この関連はワクチン接種から時間が経つほど顕著で、5回目投与から時間が経つほどORは増大した。 60歳以上の症例は231例(33.9%)、対照群288例(14.3%)で、ORは0.29[95%CI:0.15~0.54(推定VE:71.2%、95%CI:45.8~84.8)]だった。推定VEは、DTaPワクチン5回目接種以後、毎年減少していた。 以上を踏まえて著者は、「カリフォルニア15の郡の小児における、百日咳発症は、対照群との比較で、DTaPワクチン5回接種シリーズを受けている子どものほうが低かった。最後の接種から時間が経つほど百日発症との関連オッズ比は増大していた。このことは、最後の接種以降、推定ワクチン効果は毎年漸減していることと一致する」と結論している。

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