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CareNet座談会 「高齢者の肺炎診療 ~新しい肺炎球菌ワクチンで変わる高齢者肺炎予防~」

<座長><出席者>高齢者肺炎の現状と肺炎球菌ワクチンの重要性賀来(座長) 本日は、感染症の専門の先生方にお集まりいただき、高齢者の肺炎の現状と新しい肺炎球菌ワクチンについて伺います。私どもは東日本大震災後の感染症について解析しており、災害後の集団感染リスクから被災者を守る必要性を感じています。震災後に東北大学病院に入院した感染症患者は、高齢者の誤嚥性肺炎を含めた市中肺炎などの呼吸器感染症が67%を占め、肺炎の原因菌の25.8%が肺炎球菌であり(図1)1)、肺炎球菌ワクチン接種による肺炎発症予防の重要性を感じました。図1 東北大学病院における震災関連感染症の解析画像を拡大するはじめに、高齢者における肺炎球菌感染症対策の重要性について伺います。門田 肺炎はわが国の死因の第3位の疾患であり、死亡者の大半を高齢者が占める現状がありますが、なかでも肺炎球菌による肺炎が多く、65歳以上の市中肺炎入院患者を対象とした検討では肺炎球菌が約30%を占めることが報告されています2)。また、生命を脅かす重篤な疾患である髄膜炎や敗血症などの侵襲性肺炎球菌感染症も高齢者に多く起こりますので、肺炎球菌感染症の予防はきわめて重要です。三鴨 高齢者ではさまざまな基礎疾患を有することが多く、それらが肺炎リスクを高めていると考えられます。例えば、糖尿病患者では白血球の貪食能、殺菌能の低下により、感染症リスクが高まると考えられます。また、脳梗塞や一過性脳虚血発作の後遺症がある場合は、誤嚥が関連する肺炎のリスクが高いと考えられます。さらに、高齢者に対する治療を考えると、腎機能低下例が多いために抗菌薬療法を十分に行えない可能性があります。腎機能や肝機能に留意した治療が求められるのが高齢者の特徴です。賀来(座長) 誤嚥は肺炎の要因になりますが、そこでも原因菌として肺炎球菌は重要でしょうか。門田 誤嚥の疑いのある高齢者の肺炎において肺炎球菌が26%を占めていたという報告もあり3)、意外に多いことが明らかになりつつあります。三鴨 とくに不顕性誤嚥(睡眠中に無意識のうちに唾液などが気道に入る)があると誤嚥性肺炎のリスクが高まり、免疫機能の低下が加わることでさらにリスクが増加します。肺炎球菌が意外に多いことを考えると、やはり肺炎球菌ワクチンによる予防が重要となります。また、高齢者の基礎疾患と肺炎リスクは関連があると考えられますので、高齢者全員にワクチンを接種するユニバーサルワクチネーションの考え方が重要です。高齢者肺炎の診断と病態の特徴賀来(座長) 次に、高齢者肺炎の診断と病態の特徴について伺います。門田 高齢者肺炎において注意していただきたいのは、細菌性肺炎であっても白血球数が上昇しない場合があること、また、症状が潜在性の場合があることです。典型的な症状がなくとも、食欲減退・不活発・会話の欠如などがあり、肺炎が疑われる場合には早めに胸部画像検査をしていただきたいです。三鴨 高齢者の肺炎で、もう1つ臨床上重要な点は、不顕性誤嚥があると肺炎を繰り返す例が多いことです。門田 肺炎を繰り返すと、抗菌薬治療を繰り返すことで耐性菌が出現するリスクも高まります。三鴨 おっしゃるとおりです。そのため、私たちは高齢者の肺炎患者に対しては退院時に積極的に肺炎球菌ワクチンを接種するようにしています。新しい肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13)のエビデンス賀来(座長) これまで高齢者に対しては肺炎球菌多糖体ワクチン(PPV)が用いられてきましたが、先頃、小児において使用実績の高い肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13)が成人(65歳以上)に対しても適応が認められ、選択肢が広がりました。この新しいワクチンの特徴と期待されるメリットについて伺います。門田 PPVは肺炎球菌の莢膜多糖体を抗原とするワクチンですが、PCV13は莢膜多糖体にキャリアタンパクを結合させたワクチンであり、免疫原性が高いことが特徴です(図2)。図2 多糖体ワクチンと結合型ワクチンにより誘導される免疫応答の概略画像を拡大するキャリアタンパクを結合することでB細胞のみならずT細胞を活性化することが可能であり、免疫応答の惹起に加え、メモリーB細胞を介した免疫記憶の確立が期待できます。賀来(座長) これらの特徴は臨床試験からも確認されているのでしょうか。三鴨 国内における第III相試験4)では、肺炎球菌ワクチン未接種の65歳以上の日本人高齢者764例を対象として、従来のPPVを対照群とする非劣性試験が実施されました。接種1ヵ月後のオプソニン化貪食活性(OPA)を比較した結果、両ワクチンに共通する12種類の血清型のいずれについてもPCV13はPPVに対して非劣性を示しました。このうち9血清型についてはPCV13におけるOPAの有意な上昇が認められ、PCV13の免疫原性が示されました(図3)。図3 ワクチン血清型別OPA*幾何平均力価比画像を拡大する一方、海外における第III相試験5)では、1回目にPCV13またはPPVを接種し、その3~4年後にPPVを再接種した場合のOPAの上がり方を検討しており、PCV13を接種した群における再接種時の免疫応答からPCV13による免疫記憶の確立が示されています(図4)。この結果から、1回目にPCV13を接種すると、PCV13に続いて2回目に接種されるワクチンの免疫応答も増大すると考えられ、今後、両ワクチンの特性を活かして接種スケジュールを検討する際の参考にできると思います。図4 肺炎球菌ワクチンの2回目接種前後のワクチン血清型別OPA画像を拡大する高齢者に対する肺炎球菌ワクチン接種の今後の展望賀来(座長) PCV13が高齢者にも使用可能になったことにより肺炎球菌感染症の予防にさらなる期待がもたれます。今後、高齢者へのワクチン接種をさらに普及させるうえでどのような方策が必要でしょうか。門田 日本呼吸器学会では「ストップ肺炎キャンペーン」を展開しており、一般向け・医療従事者向けの冊子をWebでも公開しています6)。今後、呼吸器科のみならず他科の先生方にも肺炎予防の重要性を周知し、他疾患領域の学会とも連携して取り組む必要があると思います。三鴨 糖尿病やリウマチでは、新薬の登場により治療成績が向上していますが、その一方で感染症リスクが高まる場合もあるため、高齢者の感染症予防に対する関心が高まっています。こうした面からも肺炎球菌ワクチン接種の意義を訴求していけると思います。また、ワクチンの普及には行政の役割も重要です。2014年10月から、65歳以上を対象に成人用肺炎球菌ワクチンが定期接種化されました(表1)。国の制度では5年間で順次接種することになっていますが、私はすべての高齢者に接種することが望ましいと考えています。そのため、居住地である岐阜市の市長がワクチン接種の公費助成に力を入れる方針を示していることを知り、この地域に居を構えるアカデミアの一人として肺炎球菌ワクチンについて提言を行いました(表2)。その結果、岐阜市では本年度に65歳以上全員を接種対象として予算を組んでくれました。高齢者医療はこうした比較的小規模な枠組みからも改善でき、非常に重要な動向であると思っています。賀来(座長) 本日は、高齢者に対する肺炎球菌ワクチンの現状と今後の展望について詳細にお話を伺うことができました。皆さま、ありがとうございました。表1 65歳以上の成人用肺炎球菌ワクチン定期接種(B型)の経過措置を含めた接種対象年齢画像を拡大する表2 肺炎球菌ワクチンについての提言画像を拡大する参考文献1)賀来 満夫. 日本内科学会雑誌. 2014; 103: 572-580.2)石田 直. Infection Control. 2005; 14: 645-649.3)Ishida T, et al. Intern Med. 2012; 51: 2537-2544. 4)ファイザー(株) 社内資料 国内第Ⅲ相試験(非劣性試験、未接種者、B1851088試験).5)Jackson LA, et al. Vaccine. 31; 2013: 3594-3602.6)日本呼吸器学会ホームページ PCV13についての詳細は製品添付文書をご覧ください。

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エボラ熱“最後の1人まで終わらない”と発見者ピオット氏

 2014年10月30日、グローバルヘルス技術振興基金(GHIT Fund)メディアセミナーが開催され、エボラウイルス発見者の1人であるロンドン大学衛生熱帯医学大学院学長 ピーター・ピオット氏が「エボラ出血熱やその他の感染症への対応と課題」について講演した。今回は、記者との質疑応答をレポートする。前回記事(「発見者ピーターピオットが語るエボラの今」はこちら)今までのアウトブレイクとの違いは? 今回の死者は約5,000人となり(会見時:2014年10月30日)、1976年の発見以降の38年間におけるエボラによる死者数の3倍に達する。これまでのアウトブレイクは非常に限定的なものであった。ところが、今回は、医療システムの崩壊、政府への信用欠如、対応の遅れなど、さまざまな要素が合わさり、流行を制御不能にした。また、医療従事者に悪影響を及ぼし、医療システムの崩壊を招いている。このように社会全体に与えている影響を鑑みると、大規模な国際的取り組みは喫緊の課題といえよう。事態は好転しているのか? 国際的協力が進み、社会の認知が改善したことで良い刺激が出てきているが、国によって状況は異なる。シエラレオネでは流行はまだ悪化している。リベリアでは一部の地域で沈静化のサインが出てきている。実際の社会での拡大阻止を実現できるのは、国際的援助ではなく、地域の人間の活動である。リベリアでは、伝統的指導者が、(死者の身体を拭くという)埋葬の方法を変えるべき、と発言するなど新たな動きが出てきた。これは非常に重要なことだ。 個人的な楽観的シナリオではあるが、クリスマスまでには緩やかな減少が各地にみられるかもしれない。防御服を着ても医療従事者の感染が起こっているが? 防御服を脱ぐ時が問題である。エボラウイルスは死亡患者の身体にも非常に多く生存する。嘔吐、下痢、出血などがその原因だ。死亡者の身体でも2~3日は感染性が高い状態が続き、患者の寝ていたシーツやテーブルの上などでも数時間生存する。ウイルスは口、鼻、結膜などから侵入する。防護服を脱ぐ際、過って患者や死亡者の体液がついた防御服に触れ、その手で瞼や鼻をさわるなどして感染を起こす。そのため、国境なき医師団など熟練した組織では現在、防御服の脱衣を監督下で行っている。中国、日本への拡大リスク 伝播は世界中どの国でも起こりうるが、中国での危険性は高いといえる。現在、何千人という中国人労働者がアフリカ大陸にいる。人の渡航は止めることはできない。中国人労働者がエボラを本国に持ち帰ることも、逆にアフリカ人が中国にウイルスを持ち込む可能性もある。だが、ここで最も大きな問題は医療機関の感染制御の質なのである。SARSの経験で徐々に改善されているものの、中国の公の病院の感染制御レベルはまだ低い。そういう意味で、中国は脆弱性が高いと考えられる。 一方、日本は衛生面、感染制御とも基準を満たしている。だが、同じレベルにある米国テキサスでも死者が発生していることからも安全とはいえない。この時期に、国全体でより良い感染制御の訓練を加速すべきである。これは一部の指定された病院だけでなく、すべての病院が対象となるべきだ。エボラウイルス治療薬、ワクチンの開発 現在は患者の隔離、生命維持、水分補給、接触者の検疫措置、環境改善などの原始的な形でしか封じ込めはできない。そのようななか、富士フイルムグループの富山化学工業のインフルエンザ治療薬アビガン錠がエボラ治療薬として認められた。エボラに対する効果はヒトでは確認されていないが(マウスでは確認済み)、WHOは本疾患の死亡率を鑑みこの判断を下した。現在、用量設定試験が進行中である。そのほかにも幾つかの治療薬が開発されつつある。また、ワクチンも開発されつつある。現在の混乱した状況では効果確認は容易ではないが、いつくかの候補があり、うち1つのワクチンで第I相試験が行われている。 エボラの大きな問題は、他者に感染させる危険がある最後の1人がいなくなるまで終わらないことである。実際、ギニアでは一旦沈静化したにもかかわらず1人の有名人に集まった葬儀参加者から感染が再拡大している。つまり、患者が1人いれば流行が再燃するには十分なのである。この点が他の感染症とは大きく違うところである。そして、これは同時に今後も全面的な取り組みが必要であることを意味する、とピオット氏は強調した。グローバルヘルス技術振興基金 GHIT Fund(Global Health Innovative Technology Fund):開発途上国に蔓延する感染症制圧に必要不可欠な医薬品、ワクチン、診断薬の研究開発および製品化の支援を目的とし、官・企業・市民がパートナーシップを組み資金を拠出して設立したグローバルヘルスR&Dに特化した基金。途上国の最貧困層が必要とする医薬品・ワクチン・診断薬の研究開発・製品化に向け活動している。

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米J&J エボラワクチン生産拡大を発表 2億ドル投入

 米国ジョンソン・エンド・ジョンソン(以下、米J&J)は22日(現地時間)、同社の医薬品部門であるヤンセンファーマシューティカル(以下、米ヤンセン)で開発中のエボラワクチン計画の加速と生産の大幅拡大に向けて最高2億ドルの投入を決定したと発表した。日本のヤンセン ファーマ株式会社が30日に報告した。米J&Jは、世界保健機関(WHO)、国立アレルギー感染病研究所(NIAID)をはじめとする米国の主な関係機関、政府、公共衛生機関と、ワクチン製剤の臨床試験、開発、生産、配布で協力体制にある。 ワクチン製剤はアメリカ国立衛生研究所(NIH)との共同研究で発見されたもので、米ヤンセンの予防ワクチンとデンマークのバイオ企業Bavarian Nordic社のワクチンを混合したもの。この混合ワクチンは前臨床試験で有望な結果が得られ、現在、ヨーロッパ、アメリカ、アフリカの健康な被験者を対象として安全性と免疫原性を調べる試験が1月初旬から予定されている。米ヤンセンは、2015年に100万回分以上のワクチン製剤の生産を目指しており、そのうち25万回分は2015年5月までに幅広く臨床試験で用いられる予定とのこと。詳細はヤンセン ファーマのプレスリリースへ

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髄膜炎ワクチン、費用対効果は?/BMJ

 英国・ブリストル大学のHannah Christensen氏らは、髄膜炎菌血清群Bワクチン「Bexsero」接種導入の費用対効果について、英国民0~99歳を接種対象としたモデル研究の再評価を行った。結果、乳児への定期接種が最も効果がある短期的戦略であり低費用で費用対効果があるとしたうえで、長期的戦略の可能性として、乳児と青年への接種プログラムが大幅な症例削減につながることを報告した。同ワクチンは欧州で2013年1月に承認され、英国では同年7月にJoint Committee on Vaccination and Immunisationが、先行研究から費用対効果があるとして導入を助言。それに対し、導入を呼びかけてきた慈善団体や臨床医、研究者や政治家から費用対効果について十分な再検証を求める声が上がり本検討が行われたという。BMJ誌オンライン版2014年10月9日号掲載の報告。モデル研究で、ワクチン導入の費用対効果を検証 研究グループは、Bexsero接種導入の疫学的および経済的影響の予測と、英国ワクチンポリシーに情報を提供するため、数学・経済モデルを用いた検討を行った。 0~99歳の英国民集団を対象に、伝播力モデルを使ったシミュレーションによりワクチン戦略の影響を調べた。モデルには最新エビデンスのワクチン特性、疾病負荷、治療コスト、訴訟コスト、疾患により損失したQOLをパラメータとして含み、また家族やネットワークメンバーへの影響なども含んだ。ワクチン接種の健康への影響は、回避症例および獲得QALYにより評価した。 主要評価項目は、ワクチン接種導入による、回避症例と獲得QALY当たりのコスト。QALY獲得に要する接種プログラムの費用が2万ポンド未満の場合に費用対効果があるとした。乳児定期接種は5年で26.3%減、乳児・青年接種は30年後に51.8%減の可能性も 結果、短期的には、乳児への定期接種が最も症例の減少が大きかった(最初の5年間で回避症例は26.3%)。この戦略は費用対効果も認められ、接種にかかる費用は1回3ポンドで、良好な仮定(接種率88%の場合、保菌に対する効果は30%、疾患に対する効果は95%など)およびQOL調整因子がもたらされる可能性があった。 長期的には、乳児および青年への組み合わせ接種プログラムが、接種により髄膜菌伝播を阻害できれば、より多くの症例を予防できることが示された(30年後に51.8%)。接種にかかる費用は1回4ポンドで費用対効果も認められた。 なお、保菌率を30%まで減らした場合、青年期の予防接種のみで良好な戦略的経済効果が得られるが、十分な症例減少には20年以上を要することも示されたという。 これらの結果を踏まえて著者は、「乳児の定期接種が最も有効な短期的戦略であり、費用も低く費用対効果がある」としたうえで、「もしワクチン接種が思春期の保菌を減少すれば、乳児と青年へのワクチン接種の組み合わせが長期的には大幅な症例の減少をもたらすものとなり、費用対効果も他と負けない可能性がある」と述べている。

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新たな鳥インフルエンザワクチン Anhuiの免疫原性/JAMA

 米国・ワシントン大学医学部のRobert B. Belshe氏らは無作為化試験にて、最新の鳥インフルエンザA(H5N1)ウイルス株であるA/Anhui/01/2005(安徽株)を抗原株とした不活化インフルエンザワクチンの免疫原性と安全性を評価した。被験者は、米国FDAが新型インフルエンザのパンデミックワクチンとして承認している、A/Vietnam/1203/2004(ベトナム株)ワクチン(90μg、アジュバント非添加、2回接種)を1年前に接種した人であった。また同ワクチン未接種者に対する安徽株ワクチン(MF59アジュバント添加・非添加)の評価を行った。JAMA誌2014年10月8日号掲載の報告より。ベトナム株接種者に安徽株を接種、また未接種者へ安徽株を接種し評価 アジュバント非添加のインフルエンザA(H5N1)ワクチンであるベトナム株ワクチンは、免疫原性が低いことが示されていた。しかし、その接種により接種者に免疫プライミング(免疫記憶を誘導する効果)がもたらされ、新たなH5型鳥インフルエンザワクチンの単回接種により二次抗体反応(ブースター効果)を示す可能性が示唆されていた。そこで本検討では、安徽株ワクチンの追加接種による接種免疫プライミングを評価すること、そしてベトナム株ワクチン未接種者に対する安徽株ワクチンの用量反応効果を調べることを目的とした。 試験は米国内8クリニックにて、1年前にベトナム株ワクチンを接種した72例と、未接種の565例の健康成人(18~49歳)を対象に行われた。被験者登録は2010年6月に開始され、2011年10月まで追跡した。 ベトナム株ワクチン接種者72例は、ベトナム株接種回数1回または2回の2群を、安徽株ワクチン(3.75μg)のMF59アジュバント添加・非添加別に分けた計4群に無作為に割り付けられ評価された。 一方、ベトナム株ワクチン未接種群565例は、5種の安徽株ワクチンの抗原用量設定に加えMF59アジュバント添加の有無、およびプラセボの合計10接種群に無作為に割り付けられ評価された(安徽株3.75μg、7.5μg、15μg、45μgは各々アジュバント添加・非添加群、90μgはアジュバント非添加群のみ)。 主要免疫原性アウトカムは、最終接種後1ヵ月(28日)時点および6ヵ月(180日)時点の赤血球凝集抑制反応(HI)検査による抗体価であった。主要安全性アウトカムは、0日、7日時点で評価した局所および全身性の有害事象と、重大有害事象とした。ベトナム株の免疫プライミングを確認 ベトナム株ワクチン接種者は、安徽株ワクチンによる1回接種で二次抗体反応を示したことが確認された。28日時点で1:40以上のHI抗体価を示したのは21~50%であった。しかし、HI抗体価達成者(1:40以上)が、ベトナム株1回接種群ではアジュバント添加群で高率だったのに対し、2回接種群ではアジュバント非添加群で高率であるなど、アジュバント添加の効果については、関連性が確認されなかった。 ワクチン未接種者への検討からは、アジュバント添加安徽株ワクチンは7.5μg量が適量であることが示された(幾何平均抗体価[GMT]:63.3、95%信頼区間[CI]:43.0~93.1)。アジュバント非添加の同ワクチンでは用量依存的に抗原反応は高まり、最大用量90μg群で最も高かったものの、GMTは28.5(95%CI:19.7~41.2)であった。 局所または全身性反応は、安徽株ワクチン7.5μgアジュバント添加群でそれぞれ78%(40/51例)、49%(25/51例)であったのに対し、同90μg群アジュバント非添加はそれぞれ88%(50/57例)、51%(29/57例)であった。 なお、概して抗体半減期は短く、全接種群のHI抗体価は180日時点までに1:20未満に低下していた。

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H7N9ワクチン、安全性と効果/JAMA

 鳥インフルエンザA/上海/2/13(H7N9)ワクチンの安全性と免疫原性について、MF59アジュバント有無の4つの抗原用量を比較した第II相多施設共同二重盲検無作為化試験の結果が発表された。米国・エモリー大学医学部のMark J. Mulligan氏らによる検討の結果、最小用量3.75μg+MF59アジュバントの2回接種(0、21日)群において、42日時点の抗体陽転率は59%であったことが報告された。鳥インフルエンザH7N9は、2013年に中国で確認された新型の鳥インフルエンザウイルスで、家禽には問題なかったが、ヒトでは重症肺炎を引き起こし、同国では入院率67%、死亡率33%に達した。WHOには2014年6月27日時点で、検査確認症例450例のうち165例の死亡(36.6%)が報告されているという。JAMA誌2014年10月8日号掲載の報告より。7つの接種群を設定し検討 H7N9不活化ウイルスワクチンの安全性と免疫原性を評価した試験は、米国内4施設で19~64歳700例を登録して行われた。2013年9月に開始され、フォローアップは6ヵ月間であり、2014年5月に完了した。 被験者は、抗原用量、MF59アジュバント有無別に設定された7つの接種群(接種回数は2回[0、21日])に割り付けられ評価を受けた。(1)3.75μg+MF59アジュバント(100例)、(2)7.5μg+MF59アジュバント(99例)、(3)15μg+MF59アジュバント(100例)、(4)15μg+1回目のみMF59アジュバントあり(101例)、(5)15μg+2回目のみMF59アジュバントあり(100例)、(6)2回とも15μgのみ(101例)、(7)2回とも45μgのみ(99例)。 主要評価項目は、42日時点の赤血球凝集抑制反応(HI)検査法による抗体価40以上または抗体陽転(定義:抗体価40以上への増大率が4倍以上)の達成割合とした。ワクチン関連の重大有害事象は13ヵ月間、接種後症状は7日間調べた。3.75μg+MF59アジュバント2回接種が有望 HI抗体価は、非アジュバント接種群はいずれも低値であった。 一方、42日時点の、3.75μg+MF59アジュバントのH7N9ワクチン2回接種群の抗体陽転率は59%(95%信頼区間[CI]:48~68%)であった。抗体陽転率のピークは29日時点で62%(95%CI:52~72%)だった。また同接種群の42日時点のGMTは33.0(95%CI:24.7~44.1)であった。 抗原用量が増えても、免疫獲得効果の増大は認められなかった。 中和抗体価分析では、3.75μg+MF59アジュバント接種群の42日時点の抗体陽転率は82%(95%CI:73~89%)、GMTは81.4(95%CI:66.6~99.5)であった。 一方、抗原用量15μg+MF59アジュバントあり群について、42日時点の抗体陽転率は、接種1回目のみアジュバントあり群35%、2回ともアジュバントあり群47%で、両群間の統計的有意差は認められなかった(p=0.10)。 季節性インフルエンザワクチン接種者および高齢者については、弱毒化が認められた。 ワクチン関連の重大有害事象は報告されなかった。接種後7日間に報告された症状は概して軽度なもので、最も多かったのはアジュバントあり群の被験者で認められた接種部位に関する症状であった。 なお今回の結果について著者は、3.75μg+MF59アジュバント2回接種の潜在的価値を評価した上で、試験は42日以降の抗体価データがないこと、また臨床アウトカムの報告がないことから限定的なものであるとまとめている。

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肛門性器疣贅の治療、ワクチンvs. 従来療法

 肛門性器疣贅(Anogenital Warts:AGW)の治療について、病巣内Mycobacterium w(Mw)ワクチン接種と従来療法である5%イミキモドクリーム塗布を比較した無作為化試験の結果、HPV-6に対する有効性は同等であることなどが示された。インド・All India Institute of Medical SciencesのPankaj Kumar氏らによる報告で、これまで両者の比較は行われておらず、有効性のエビデンスは不確かであった。今回の結果を踏まえて著者は、「有効性と安全性は両治療で同等である」とまとめている。JAMA Dermatology誌2014年10月号(オンライン版2014年8月6日号)の掲載報告。 検討は、二重盲検無作為化臨床試験にてニューデリーで2009年2月から2012年7月に行われた。フォローアップは3ヵ月間行われた。 159例のAGW患者をスクリーニングし、89例を無作為に割り付け、一方には5%イミキモドクリーム塗布とプラセボ接種を(44例)、もう一方にはMwワクチン接種とプラセボクリーム塗布を行った(45例)。 主要エンドポイントは、可視によるAGWの臨床的治癒とし、副次評価は、AGWの表面積の縮小割合、HPV-6およびHPV-11のウイルス量減少などであった。 主な結果は以下のとおり。・intention-to-treat解析において、イミキモド群患者59%(26例)、Mw群患者の67%(30例)が、完全な治癒を達成した(p=0.52)。・高リスク遺伝子型を含む18のHPV遺伝子型が検出されたが、治療群間で有意差はなかった(すべてのp>0.05)。・Mw群は、HPV-6およびHPV-11の平均ウイルス量が、有意に低下した(p=0.003、p=0.03)。・しかし、イミキモド群は、HPV-6のみ有意に低下した(p=0.01)。・フォローアップ3ヵ月時点で完全に治癒し重大有害イベントのなかった患者では、AGWの再発はみられなかった。

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世界中で急拡大 「デング熱」の最新知見

 今夏、日本国内で、海外渡航歴がないにもかかわらずデング熱を発症した患者が発見された。日本国内での感染は1940年代前半の流行以来、実に約70年ぶりであり、患者数は158人に上った(2014年10月14日現在)。全世界では、現在25億人以上がデング熱流行地で生活している。そして、年間5,000万人以上がデング熱を発症しており、近年急速な広がりをみせている。 今回、デング熱に関する世界中の最新知見を、キューバのペドロ・コウリ熱帯医学研究所のMaria G Guzman氏らがまとめた。Lancet誌オンライン版2014年9月12日号の掲載報告。●世界中で急速な広がりをみせるデング熱 デングウイルスは過去20~30年間で、国内そして国境を越えて急速な広がりを見せており、今日では、蚊が媒介するウイルス性疾患の中で、最も流行し急速に拡大する疾患と考えられている。 デングウイルスは4つの抗原型(DENV1-4)に分類され、ヒトスジシマカを媒介として感染する。感染地域の広がりや感染例の増加、疾患の重症化に伴い、デング熱は社会的・経済的に重大な影響を持つ公衆衛生上の問題に発展してきた。●デング熱の発生率は過去50年で30倍に デング熱は、南アジアやアメリカ、大西洋、アフリカ、東地中海沿岸地域など100以上の国でみられる風土病であり、その発生率は過去50年間で30倍にも増加している。2013年の研究結果によると、年間3.9億人の感染者が発生し、そのうち、はっきりとした症状がみられたのは9,600万人であった(感染者数は2012年WHO予測の3倍以上)。●世界ではどのような策が講じられているか 現在、デング熱には有効な治療薬が存在しないため、対症療法を行っているのが現状である。そのため、世界各国で、デングウイルス学・病因学・免疫学の研究、抗ウイルス薬・ワクチンの研究・開発が行われてきた。さらに、デング熱のコントロールと予防に対して明らかに効果がある新たなベクターコントロール戦略が立案されるなど、各国で対策が進められている。しかし、このような対策が世界中で行われているにもかかわらず、実用化には至っていないのが現状である。●デング熱流行阻止に向け国際的な結束を 世界中でデング熱の予防・治療に対する基礎研究や橋渡し研究が行われてきた結果、確かに情報は蓄積されてきた。しかし、その一方で、デング熱の流行は依然として世界的な広がりをみせている。今後の流行を阻止するためにも、さらなる努力が求められる。 WHOによるデング熱予防・コントロールの世界的戦略では、2012年から2020年にかけて、少なくとも罹患率を25%、死亡率を50%減らすことを目標としている。しかし、この目標を達成するためには、デング熱の重大さを世界各国が真摯に受け止め、政府機関・地域社会・国際組織などが結束する必要がある。 以上が著者らによりまとめられた、デング熱の最新知見である。わが国でも、政府が定期的な情報発信や、徹底した予防・制御に努めたこともあり、次第にデング熱の流行は収まりを見せている。しかし、世界中でデング熱が急増している現状を鑑みると、来年も流行する可能性は否定できない。今後、デング熱に対し、国を挙げて何らかの対策を講じていく必要があるであろう。

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デング熱での解熱剤に注意~厚労省がガイドライン配布

 9月16日、厚生労働省より全国の地方公共団体の衛生主管部局宛てに「デング熱診療ガイドライン(第1版)」が配布された。本ガイドラインは、全国で131名(9月17日現在)の患者が確認されている中で、一般医療機関への問い合わせも多いことから、9月3日に公開された診療マニュアルの内容を刷新し、あらためて作成されたものである。■妊婦、乳幼児、高齢者は重症化のリスク因子 ガイドラインは、デング熱の概要、症状・所見、診断、治療、予防、参考文献、図表の順で記載されている。 すでに多くのメディアで報道されているように、デング熱の臨床経過について通常は1週間前後の経過で回復すること、典型症状は急激な発熱、発疹、頭痛、骨関節痛、嘔気・嘔吐などであることなどの説明が記されている。 注意すべきは、一部の患者が経過中に重症型デングを呈することである。とくにリスク因子としては、妊婦、乳幼児、高齢者、糖尿病、腎不全などがあり、これらの患者では、経過観察でショック、呼吸不全、出血症状、臓器障害がないかどうかの注意が必要となる(なお1999年以降、日本国内で発症した同疾患での死亡者は記録されていない)。■解熱剤はアセトアミノフェンを推奨 デング熱では上記の症状のほか、血液検査で血小板減少、白血球減少が認められる。確定診断では、ウイルス分離やPCR法によるウイルス遺伝子の検出などが用いられるのは、既知のとおりである。症状を認めた時点で、必要に応じ、適切な治療が可能な医療機関への紹介が必要となる。 また、治療では、有効なウイルス薬はなく、輸液などによる対症療法が行われる。その際に投与する解熱剤について、アスピリンは出血傾向やアシドーシスを助長するため使用するべきでなく、同じくイブプロフェンなどの非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)も胃炎、出血を助長するために使用すべきではないとされている。投与する解熱剤としては、アセトアミノフェンなどが推奨されている。■医療者は診療時にも注意 デング熱には現時点で有効なワクチンがないため、有効な予防対策は蚊に刺されないことである。外出の際は、露出の少ない服装で虫よけスプレーなどによる対策を講じることになる。 1つ注意が必要なことは、患者診療時の医療者への感染である。疑わしい患者の診療時に針刺し事故などの血液曝露で感染する危険があるため、十分に注意するよう促している。 また、患者が出血を伴う場合には、医療従事者は不透過性のガウンおよび手袋を着用し、体液や血液による眼の汚染のリスクがある場合にはアイゴーグルなどで眼を保護する、としている。詳しくは厚生労働省 報道発表資料デング熱、患者さんに聞かれたら・・・

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HPV16/18型ワクチン、感染歴ある成人にも有効/Lancet

 25歳以上の女性においても、ヒトパピローマウイルス(HPV)16/18型AS04アジュバントワクチンは、31/45型を含むHPV感染および子宮頸部病変に対し効果を発揮することが、オーストラリア・テレソン小児健康リサーチ研究所のS Rachel Skinner氏らが行ったVIVIANE試験で示された。HPV予防ワクチンの主な対象は思春期の少女であるが、すでにHPV 6/11/16/18型ワクチンは成人女性(24~45歳)にも有効との知見がある。発がん性のあるHPVは16/18/45/31/33型が約85%を占めるが、感染歴のある成人女性は新たなパートナーから以前とは異なる型のHPVに感染する可能性が高いという。Lancet誌オンライン版2014年9月2日号掲載の報告。感染/病変歴ありを含む集団の中間解析 VIVIANE試験は、成人女性に対するHPV 16/18型ワクチンの有効性、安全性、免疫原性の評価を行う進行中の多施設共同二重盲検無作為化対照比較第III相試験。今回、中間解析が行われた。 25歳以上の健常女性が、地域、年齢層、HPV DNA検査、細胞診などを考慮して、HPV 16/18型ワクチンを接種する群または対照群に無作為に割り付けられた。26~35歳と36~45歳が約45%ずつ、46歳以上が約10%となるように登録を行った。各年齢層に、15%を上限にHPV感染または病変の罹患歴のある女性を含めた。 主要評価項目は、6ヵ月時のHPV 16/18型感染または前がん病変(Grade 1以上の子宮頸部上皮内異形成:CIN 1+)に対するワクチンの効果とした。有効性の主要解析はaccording-to-protocol(ATP)集団(全3回のワクチン接種、ベースラインの細胞診でHPV陰性または軽度病変、HPV病変歴なし)で行い、副次解析にはワクチン効果の対象外の発がん性HPV型に対する効果を含めた。平均フォローアップ期間は全ワクチン集団が44.3ヵ月、ATP集団は40.3ヵ月であった。良好な交差防御的効果、Grade 3の注射部位疼痛14% 本試験には12ヵ国が参加した。2006年2月16日に患者登録を開始し、今回の解析の最終受診日は2010年12月10日であった。全ワクチン集団は5,752例(ワクチン群:2,881例、対照群:2,871例)で、そのうちATP集団は4,505例(2,264例、2,241例)であり、HPV感染/病変歴ありが705例(345例、360例)含まれた。 ATP集団全体における6ヵ月後のHPV 16/18型の持続感染またはCIN+の抑制率は81.1%(97.7%信頼区間[CI]:52.1~94.0%)であった。26~35歳では83.5%(同:45.0~96.8%)、36~45歳では77.2%(同:2.8~96.9%)であったが、45歳以上では感染例がなく評価不能であった。 ATP集団の6ヵ月後のHPV 16/18型による意義不明な異型扁平上皮細胞(ASC-US+)の抑制率も93.7%(97.7%CI:71.5~99.5%)と良好であった。また、交差防御的な効果として、HPV 31型(抑制率:79.1%、97.7%CI:27.6~95.9%)およびHPV 45型(同:76.9%、18.5~95.6%)に対する抑制作用が確認された。 全ワクチン集団における6ヵ月後のHPV 16/18型の持続感染またはCIN+の抑制率は43.9%(97.7%CI:23.9~59.0%)、HPV感染/病変歴ありの集団では49.9%(同:-0.3~76.2%)であった。 接種後7日間以内に、注射部位の特定有害事象がワクチン群の85%(2,443/2,881例)にみられ、対照群の67%(1,910/2,871例)に比べ頻度が高かった。このうちGrade 3(正常な身体活動が不能)の疼痛はそれぞれ14%(394例)、3%(88例)に発現した。 重篤な有害事象は、ワクチン群の10%(285/2,881例)、対照群の9%(267/2,871例)に認められ、このうちそれぞれ5例(<1%)、8例(<1%)がワクチン関連と考えられた。17例(ワクチン群:14例、対照群:3例)が死亡したが、ワクチン関連死はなかった。 著者は、「この中間解析の知見は、HPV感染歴のある女性を含む25歳以上の女性にも、本ワクチンはベネフィットをもたらす可能性があるとの見解を支持するもの」と指摘している。

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蚊に刺されないことが最大の予防

 9月11日(木)、都内にて「蚊でうつる感染症~都心のデングを考える」と題し、国立国際医療研究センターメディアセミナーが開催された。今回のセミナーでは、「蚊」にフォーカスを当て、昨今問題となっているデング熱の診療や、蚊が媒介する感染症であるマラリアや日本脳炎などについてミニレクチャーが行われた。■例年100例は報告されるデング熱 はじめに「デング熱について」と題し、怱那 賢志氏(国立国際医療研究センター/国際感染症センター)が、その概要と診療・予防について説明した。 デング熱ウイルスは血清型で4つに分類され、ヤブカであるネッタイシマカとヒトスジシマカの媒介により感染する。前者はわが国に生息していないが、後者は東北地方北部まで生息域を広げており、今後も感染拡大が懸念される。毎年わが国では100例程度の感染が報告されているが、今回の流行はそれが例年になく拡大したものであり、これまでハワイや台湾でも類似の事例が観察されているとのことである。■診断は「時・場所・人」に着目 デング熱の症状としては、高熱、頭痛、関節痛、筋肉痛、下痢、嘔気・嘔吐などが挙げられる。重篤な合併症はないものの、高熱のため倦怠感が強く入院するケースが多いのが特徴である。 本症では皮疹なども見られるが、これは熱が下がる頃に見られ、病初期には観察されないことが多いとのこと。検査所見では、白血球、血小板減少が特異的に観察されるが、初診時には目立たないことが多く、CRPはあまり上昇しない。 確定診断については、時系列に3段階の検査があり、発症初期(1~5日目)では遺伝子検査、解熱前後期(4日目~)ではIgM抗体検査、回復期(7日目~)ではIgG抗体検査により診断がなされる。診断のポイントとしては、病状の精査のほか、とくに蚊に刺された「時・場所・人」に注目して診断することが大切だという。■虫よけで感染防止 治療は、有効な薬剤がないために支持療法が中心となる。とくに血圧、脈圧の低下時は輸液をしっかりと行い、出血症状や重症化のサインを見逃さないようにすることが重要。また、解熱前後の期間(発症から4~7日)は、とくに重症化する危険があるために、慎重な経過観察を行う必要がある。 デング熱予防対策としては、「防蚊対策」をしっかりすることが大切で、蚊に刺されないために、「肌の露出の少ない服装での外出」、「2時間おきに虫よけスプレーを使用する」、「窓を開けて寝ない」など日常生活で簡単にできるアドバイスを伝え、レクチャーを終えた。■ワクチンで予防できる熱帯の感染症 引き続き、怱那氏より「蚊が媒介する感染症」として「マラリア」「日本脳炎」「黄熱」の各疾患の概要が述べられた。 とくにマラリアは、アフリカなどへの渡航の際に注意を要する疾患であり、潜伏期間が長いのが特徴。渡航者には事前に予防内服薬を服用するよう勧めたほか、医療者に対しては診療に際して「マラリア診断・治療アルゴリズム 第3.1版」などを参考にしてほしいと述べた。 また、「日本脳炎」はわが国で予防接種の空白期があることから、この期間のキャッチアップを含めた対策を、「黄熱」は感染の可能性のある地域・国へ渡航する予定があればワクチン接種が入国の条件となっている場合もあるため、事前の接種を念頭に置いてほしいとレクチャーを終了した。デング熱、患者さんに聞かれたら・・・MDQA特別編 デング熱の疑いでどこまで検査するか【緊急Q&A】〔9/19まで募集〕

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高齢者に対する高用量インフルエンザワクチンの有効性(解説:小金丸 博 氏)-238

高齢者では若年成人と比較して、インフルエンザワクチン接種後に誘導される抗体価が低いと報告されている。そこで米国では、2009年に通常の4倍量の抗原を含む高用量インフルエンザワクチンが、65歳以上の高齢者を対象に認可された。高用量ワクチン接種により高い抗体価が得られることは報告されていたが、インフルエンザ様疾患の発症を減らすことができるかどうかはわかっていなかった。 本研究は、高用量インフルエンザワクチンの有効性を調べるために行った第IIIb-IV相多施設共同無作為化二重盲検実薬対照試験である。 米国とカナダの126施設で、2011~12年と2012~13年の北半球でのインフルエンザ流行期に実施された。65歳以上の成人3万1,989例を、高用量インフルエンザワクチン接種群(株あたりの赤血球凝集素:60μg)と標準量インフルエンザワクチン接種群(同15μg)に分けて、インフルエンザの発生数、重篤な有害事象の数、ワクチン接種後の抗体価などを検討した。ワクチン接種後に、あらかじめ規定しておいたインフルエンザ様症状が現れた患者を抽出し、培養あるいはPCR法を用いて確定診断した。 インフルエンザと確定診断されたのは、高用量接種群228例(1.4%)、標準量接種群301例(1.9%)だった(relative efficacy:24.2%、95%信頼区間:9.7~36.5%)。1回以上の重篤な有害事象の報告数は、高用量接種群1,323例(8.3%)、標準量接種群1,442例(9.0%)だった(relative risk:0.92、95%信頼区間:0.85~0.99)。 ただし、高用量接種群では重篤な有害事象として、外転神経麻痺、下痢による低容量性ショック、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)を1例ずつ認めた。ワクチン接種28日後の感染防御抗体保有率(HAI抗体価1:40以上)は、高用量接種群98.5%、標準量接種群93.7%と4.8ポイントの差(95%信頼区間:4.1~5.5ポイント)があり、過去の報告同様、高用量接種群で有意に高かった。 本研究では、65歳以上の高齢者において、高用量インフルエンザワクチンは標準量ワクチンより、インフルエンザの発症をより多く予防できる可能性が示された。高用量ワクチンに変更することで、標準量ワクチンを接種していた場合に発症するインフルエンザの約1/4を予防できると考察されている。 一般的に、高齢者におけるインフルエンザワクチンの発症予防効果は60%程度であり、高用量ワクチンを接種することで発症予防効果を高めることができる意義は大きいと考える。さらに、高用量インフルエンザワクチンには、インフルエンザによる入院や、肺炎などの合併症の予防効果も期待されている。本試験の結果を受けて、米国の予防接種諮問委員会(ACIP)の勧告がどう変わるか注目したい。 本邦では高用量インフルエンザワクチンは認可されておらず、一般診療で使用することは難しいのが現状である。国内で高用量インフルエンザワクチン導入の動きがあるかにも注目したい。

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エボラ出血熱の最新報告-国立国際医療研究センターメディアセミナー

 9月3日(水)、都内にて「西アフリカのエボラ出血熱ウイルス流行と国際社会の課題」と題し、国立国際医療研究センターメディアセミナーが開催された。今回のセミナーでは、実際に現地リベリアで患者の診療や医療従事者への指導を担当した医師も講演し、最新の情報が伝えられた。※画像は、出国時の体温検査(画像提供:国立国際医療研究センター 加藤 康幸氏)対応は1類感染症の疾患 「日本の医療機関における備え、感染対策の基礎」と題し、堀 成美氏(国立国際医療研究センター)が、わが国の感染症対策の概要について説明を行った。 エボラ出血熱は、感染症法上1類感染症として取り扱われており、特定の医療機関で診療を行うこと、また、現在、患者発生に備えて、厚生労働省検疫所や自治体と共同して感染症患者の移送などの訓練を行っていると述べた。ワクチン開発の現状 次に、「ワクチン、治療の現状と課題」をテーマに西條 政幸氏(国立感染症研究所)が、現在のワクチン開発の状況を説明した。 本格的なワクチン開発は、1995年のエボラ出血熱アウトブレイクより行われた。当初は、同疾患に罹患し回復した患者の血液輸血という、中和抗体投与療法から開始された。現在、ウイルス増殖を抑制する抗ウイルス薬T-705と中和活性を有する抗体製剤であるZMappが開発され、サルやマウスによる治験が行われている。 T-705は早い段階の投与で効果を発揮し、マウスについて感染6日後の投与では死亡例がなかったのに対し、8日後の投与では約半数が死亡する結果であったという。また、ZMappは、サルについて感染5日後に投与した群はすべて回復が認められたのに対し、コントロール群では8日以内にすべて死亡したことが報告された。 西條氏はワクチンの特徴として、感染を予防するものではなく、あくまで体内でのウイルス増殖を抑え、重症化を防ぐために使用されるものであることを強調した。 今後のワクチン使用の問題点としては、ヒトへの有効性のほか、安全性、情報開示などさまざまなことが挙げられると提起した。 また最後に、西アフリカの感染拡大について触れ、「ウイルスそのものに変化は見られないものの、感染拡大の阻止には苦慮している。拡大の阻止には、さらなる住民への教育、広報、医療機関への資材の提供などが期待される」と説明した。疾患への知識不足がさらなる感染を招く 続いて、「リベリアにおけるエボラ対策支援活動から」をテーマに、実際にリベリアで活動した加藤 康幸氏(国立国際医療研究センター)が最新情報を紹介した。 リベリアは、乾季のある熱帯雨林気候に属し、人口約420万人。今回の感染拡大は内戦後、国連による平和維持状態が続いている中で起こったものである。 エボラ出血熱は、現在5種類が特定されており、今回の流行はその中でも最強のザイール型と呼ばれているもの。首都を含む広範囲の感染拡大は、新興感染症では世界が初めて経験する事態で、WHO予測では2万人の感染者が予想されているという。 WHOによればエボラ出血熱は、人-人感染でうつり、2~21日で症状を発現、生存率は47%という特徴をもつ。そして、加藤氏によれば、現地では看護をする患者家族や医療スタッフへの感染例が多いとのことである。 典型症状は、出血よりも発熱、下痢と嘔吐であり、現地では、マラリアが通年で流行していることもあり、初期診断時に発熱症状の患者の鑑別診断に苦慮しているとのこと。確定診断は、PCR法による診断が行われ、現地では疑い例の段階で治療・隔離ユニットに収容される。 流行を抑えるためには、隔離と検疫が重要で、現地でも対策が取られているが、医療システムが崩壊していることもあり、順調には進んでいない。そんな中で、さまざまな国、機関の支援により医療の再構築がなされており、今回の支援活動では、感染防止の教育、発熱外来の設置、治療ユニットの設置などが行われた。 現地では、患者の1割が医療従事者であることから、医療従事者の感染防護としては、ガウンなどを重層する国境なき医師団の対策を採用している。また、始業時の体温チェック、バディ体制での病室入室時の防護服チェックなど、万全の態勢を期して臨んでいることなどが紹介された。 治療に関しては、エンピリック治療として抗マラリア薬や抗菌薬の投与が、支持療法として点滴、輸血などが行われている。さらに、疾患啓発や感染防止教育のために、回復患者が医療機関を巡回する取り組みが行われているそうである。 今後の課題として、エボラ出血熱について現地住民への理解の促進、現地の医療システムの復旧、政府などへの信頼性の回復、孤立化による物資不足の解消などが待たれる、と講演を終えた。詳しくは次のサイトをご参照ください。 国立感染症研究所 エボラ出血熱  厚生労働省 感染症法に基づく医師の届け出のお願い

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若者への新規髄膜炎ワクチンの効果/Lancet

 4価髄膜炎菌結合型(MenACWY-CRM)ワクチンとB群血清型(4CMenB)ワクチンについて、接種後1ヵ月時点で両群間の髄膜炎菌保菌率に有意差はみられず、接種後1年間の保菌率も低下したことが示された。英国・サウサンプトン大学のRobert C Read氏らによる観察者盲検第III相無作為化試験の結果、報告された。著者は、「広範な接種導入により、伝播が抑制される可能性がある」とまとめている。Lancet誌オンライン版2014年8月19日号掲載の報告より。MenACWY-CRM vs. 4CMenB vs. 日本脳炎ワクチンで検討 髄膜炎菌結合型ワクチンは、個人に対する保護効果だけでなく、伝播の遮断による集団保護効果がもたらされる可能性がある。研究グループは、18~24歳集団について、MenACWY-CRM、4CMenBワクチンの伝播に対する効果を評価した。 試験は2010年9月21日~12月21日に、大学生2,954例を1対1対1の割合で、MenACWY-CRMワクチン接種群(988例)、4CMenBワクチン接種群(979例)、対照として日本脳炎ワクチン接種群(987例)に無作為に割り付けて検討した。接種は1ヵ月間に2回(MenACWY-CRMの2回目はプラセボを接種)行われた。被験者とアウトカム評価者は接種割り付けについてマスキングされた。 髄膜炎菌の保有について、接種前とその後1年間に5回にわたり口咽頭スワブ採取で分離確認した。 主要アウトカムは、各ワクチン接種後1ヵ月の保菌率。副次アウトカムは、主要解析後、試験終了時までの各時点で評価比較した保菌率などだった。副反応や有害事象は試験終了までモニターした。 解析は、修正intention-to-treat集団にて行い、試験登録し試験ワクチンの接種を受け、ベースライン時以降に1回以上スワブ検査を受けた被験者を含めた。日本脳炎ワクチンと比べ2種とも接種後3ヵ月以降の保菌率有意に低下 解析には、MenACWY-CRMワクチン接種群983例、4CMenBワクチン接種群974例、対照群984例が組み込まれた。 試験開始時の髄膜菌保菌率はそれぞれ34%、33%、31%だった。1ヵ月時点の保菌率は、対照群と4CMenB群(オッズ比1.2、95%信頼区間[CI]:0.8~1.7)、またはMenACWY-CRM群(同:0.9、0.6~1.3)の間に有意差はみられなかった。 しかし2回接種後3ヵ月以降に、4CMenB群では対照群と比べて、すべての髄膜炎菌株の保菌率に有意な低下がみられた(低下率18.2%、95%CI:3.4~30.8%)。また、BCWY莢膜群(同26.6%、10.5~39.9%)、CWY莢膜群(同29.6%、8.1~46.0%)、CWY血清群(同28.5%、2.8~47.5%)についても同様に低下がみられた。 対照群と比べた同様の保菌率の有意な低下は、MenACWY-CRM群でもみられた。Y血清群については39.0%(95%CI:17.3~55.0%)、CWY血清群は36.2%(同:15.6~51.7%)の低下が認められた。 一過性の注射部位の痛みと筋痛が4CMenBで増大したが、試験ワクチンに対する忍容性は概して良好であった。安全性に対する懸念は示されなかった。

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高齢者へのインフルワクチン、高用量で効果増/NEJM

 65歳以上高齢者への高用量3価不活化インフルエンザワクチン(IIV3-HD)接種は、標準量同ワクチン(IIV3-SD)接種に比べ、インフルエンザ様疾患の予防効果が高く、抗体反応の誘導は有意に高いことが示された。米国・ピッツバーグ大学のCarlos A. DiazGranados氏らが約3万2,000例の高齢者を対象に行った第IIIb~IV相臨床試験の結果、報告した。これまでの報告で、抗体反応が向上することは報告されていた。NEJM誌8月14日号掲載の報告より。株当たり赤血球凝集素60μgの高用量ワクチンを投与 研究グループは、米国・カナダ126ヵ所の研究施設で、3万1,989例の65歳以上を対象に、多施設共同無作為化二重盲検試験を行った。試験では、株当たりの赤血球凝集素が60μgのIIV3-HD接種と、同15μgのIIV3-SD接種の、インフルエンザ予防効果を比較。被験者を無作為に2群に分け、一方の群にはIIV3-HDを(1万5,991例)、もう一方にはIIV3-SD(1万5,998例)を接種した。 北半球インフルエンザ流行期2011~2012年シーズンと2012~2013年シーズンに、相対的有効性、効果、重篤な有害事象などの安全性、免疫原性を評価。疾患調査期間は毎年4月30日までで、被験者はその間、呼吸器症状が発生した場合には報告し、また電話による週1~2回の追跡調査を受けた。高用量群の標準量群に対する相対的有効性は24.2%、安全性は同等 事前に規定した、インフルエンザ様疾患の発症が確認されたのは、IIV3-HD群は228例(1.4%)、IIV3- SD群は301例(1.9%)だった(相対的有効性:24.2%、95%信頼区間:9.7~36.5%)。 調査期間中に1回以上の重篤有害事象が発生したのは、IIV3-HD群の1,323例(8.3%)、IIV3-SD群の1,442例(9%)だった(相対リスク:0.92、同:0.85~0.99)。 ワクチン接種後28日のHAI抗体価と血清抗体保有率(HAI抗体価が1対40以上だった人の割合)は、IIV3-HD群で有意に高かった。

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妊婦への百日咳ワクチン接種は安全か/BMJ

 妊娠第3三半期の妊婦に対し百日咳ワクチンを接種しても、非接種妊婦に比べて死産のリスクは増大しないことが、英国医薬品庁(MHRA)のKatherine Donegan氏らの検討で示された。グラム陰性桿菌である百日咳菌(Bordetella pertussis)に起因する百日咳は、初期症状は比較的軽いものの、とくに3ヵ月未満の幼児に重篤で致死的な合併症を引き起こす可能性がある。米国では、市販後調査で安全性に関する懸念が払拭された2011年以降、妊婦への接種が推奨されているが、接種率は現在も低迷しており、安全性に関するエビデンスは限られたものだという。BMJ誌オンライン版2014年7月11日号掲載の報告。妊婦への接種の安全性をコホート研究で評価 研究グループは、英国における妊婦に対する百日咳ワクチン接種の安全性を評価する観察的コホート研究を実施した。年齢中央値30歳のワクチン接種妊婦と背景因子をマッチさせた非接種妊婦の転帰を比較した。 妊婦、ワクチン接種、妊娠関連有害事象のデータの収集にはClinical Practice Research Datalink(CPRD)を用いた。CPRDには英国の650以上のプライマリ・ケア関連データベースが参画し、全国の1,250万例以上の患者データが登録されている。 妊婦の有害事象は妊娠中の診療記録で同定し、子供の有害事象はCPRDの母子関連データで確認した。 主要評価項目は死産(妊娠24週以降の子宮内死亡)とした。接種後の死産率:0.19 vs. 0.23%、新生児死亡率:0.03 vs. 0.03% 30歳の妊婦2万74人が百日咳ワクチンの接種を受け、1万7,560人(87%)で接種後28日以上のフォローアップが行われた。このうち1万3,371人(76%)で在胎期間の予測が可能であり、ワクチン接種時の在胎期間中央値は31週だった。 ワクチン接種群の接種後2週以内の短期的な死産リスクは、非接種群に比べ増大していなかった(死産件数:接種群5件vs. 非接種群7.2件、率比:0.69、95%信頼区間[CI]:0.23~1.62)。 フォローアップ期間が44週以上のワクチン接種妊婦は6,185人(年齢中央値30歳、接種時の在胎期間中央値33週)であった。これら接種群の分娩までの期間は、非接種群との間に有意な差はみられなかった(全体の在胎期間中央値:40週、ハザード比:1.00、95%CI:0.97~1.02)。 ワクチン接種群における全体の死産率は0.19%(12/6,185人、出産500件当たり約1件)であり、非接種群の0.23%(42/1万8,523人)との間に有意な差は認めなかった(率比:0.85、95%CI:0.45~1.61)。 出生7日以内の新生児死亡(発生率:0.03 vs. 0.03%、率比:1.00、95%CI:0.20~4.95)、妊娠高血圧腎症/妊娠高血圧(同:0.36%vs. 0.29%、1.22、0.74~2.01)、前置胎盤(同:0.03%vs. 0.08%、0.40、0.09~1.75)、子宮内発育遅延/低出生時体重/体重<2,500g(同:2.04%vs. 1.68%、1.20、0.98~1.48)のほか、帝王切開、分娩後出血などにも、両群間に有意な差はなかった。 ワクチン接種後の母体死亡、分娩前出血、子宮破裂、胎盤早期剥離、前置血管、胎児機能不全、新生児腎不全は認めなかった。 著者は、「妊娠第3三半期のワクチン接種により、短期的および接種後の全妊娠期間を通じて、死産のリスクは増大しなかった」とまとめ、「本研究は、妊婦に対する百日咳ワクチン接種の安全性に関する初めての大規模観察試験であり、ワクチン接種に関わる医療従事者にとって有益で、ワクチン接種関連の施策の立案に資すると考えられる」と指摘している。

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いぼの治療にMMRワクチンが有効

 疣贅(ゆうぜい=いぼ)へのMMRワクチンを用いた病巣内免疫療法は、忍容性があり効果的であることが、韓国・朝鮮大学校医学部のC. H. Na氏らによる検討の結果、示された。現状で有用な疣贅治療は、冷凍療法、レーザー治療、電気外科治療、角質溶解薬の局所塗布などがあるが、痛みを伴うことが多く治療部位が瘢痕となる可能性がある。一方で近年、皮膚反応検査の抗原やワクチンを用いた病巣内免疫療法が疣贅治療に有効であることが示されていた。Clinical and Experimental Dermatology誌2014年7月号の掲載報告。 研究グループは、疣贅の新たな病巣内免疫療法として、MMRワクチンを用いた治療法の有効性を評価する後ろ向き検討を行った。 さまざまなタイプの疣贅を有する136例を登録し、2年間にわたって評価。患者は、2週間に1回、計6回にわたって治療を受けた。 治療反応は、疣贅の大きさ、数の減少を3段階で分類し評価した。また、完全奏効(CR)を再発で確認。写真とカルテで臨床評価を行った。 主な結果は以下のとおり。・被験者136例の半数(51.5%)が、疣贅の大きさ・数について50%超の減少を認めた。・被験者の46.7%が異なる部位に疣贅が拡散していたが、良好な治療反応を示した。・一般的な疣贅は、その他のタイプの疣贅と比べて治療反応が有意に高率であった(p<0.05)。しかし、有効であることを示すその他の臨床変数は認められなかった。・ほとんどすべての患者は接種時に軽度の痛みを報告したが、その他の副作用はほとんど観察されなかった。・CRが確認された患者のうち、6ヵ月後に疣贅再発を呈したのはわずかに5.6%であった。・著者は、「痛みに敏感で副作用を心配する一般的な疣贅患者には、MMRワクチンを用いた病巣内免疫療法が、忍容性があり有効であることを提案する」とまとめている。・「治療反応は、接種回数を増やすことで改善する」としている。

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百日咳ブースターワクチン、思春期接種も必要?/BMJ

 英国では2001年に、就学前の百日咳ブースターワクチン接種が導入され、導入前には長引く咳でプライマリ・ケアを受診した学齢児の37%で、百日咳が見つかっていた。しかし導入後もいまだに5人に1人(20%)の割合で百日咳が見つかることが、オックスフォード大学Kay Wang氏らによる5~15歳児を対象とした前向きコホート研究の結果、明らかにされた。著者は、「ワクチン接種を完了した小児においても臨床的に重大な咳が起きる可能性が示された」と述べ、「今回の結果は、思春期における百日咳ブースターワクチン接種の必要性を考えるべきであることを知らしめるものとなるだろう」とまとめている。BMJ誌オンライン版2014年6月24日号掲載の報告より。2~8週間の長引く咳で受診した5~15歳の279例について検討 Wang氏らは、百日咳ブースターワクチン導入後の、プライマリ・ケアを長引く咳で受診した学齢児における百日咳の有病率と臨床的重症度を調べるため、前向きコホート研究を行った。 対象は、2010年11月~2012年12月に、テムズバレーの22人の一般医(GP)を受診し、2~8週間の持続性の咳を有していた5~15歳の279例であった。重篤な基礎疾患や、免疫不全症または免疫が低下、他の臨床試験に関与、および1年以内に百日咳ブースターワクチンを接種していた人は、評価から除外した。 主要評価項目は、最近の百日咳感染のエビデンスで、経口流体での抗百日咳毒素IgG力価が70単位以上の場合とした。咳の頻度は検査で百日咳が確認された6例の小児で測定された。ワクチン接種完了児の18%で最近の感染が確認、接種後7年以上でリスクは3倍 結果、56例(20%、95%信頼区間[CI]:16~25%)の小児において、最近の百日咳感染のエビデンスが確認された。そのうち39例はワクチン接種を完了しており、これらはワクチン接種完了児215例の18%(95%CI:13~24%)に該当した。 百日咳リスクは、就学前ブースターワクチン後7年未満だった小児(発生例:20/171例、12%、95%CI:7~17%)よりも、7年以上経っていた小児(同:21/53例、40%、26~54%)のほうが3倍高かった。 一方で百日咳リスクは、就学前に5回投与されていた群と3回投与されていた群では同程度であった(5回接種群に対する率比:1.14、95%CI:0.64~2.03)。 咳の頻度を検討した6例のうち、4例で24時間で400回超の咳が測定された。

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インフルエンザワクチン接種、無針注射器の時代に?/Lancet

 インフルエンザワクチン接種について、新たに開発された無針ジェット式注射器「Stratis」による接種と、通常の有針注射器による接種を比較した結果、免疫原性に関して前者の非劣性が示されたことが報告された。同注射器を開発した米国・PharmaJet社のLinda McAllister氏らによる非劣性無作為化試験の結果で、安全性プロファイルは臨床的に許容可能なものだった。接種部位反応が通常注射器を使用した場合よりも高率だったが、著者は「Stratisは、三価インフルエンザワクチンの代替接種法となりうる」とまとめている。Lancet誌オンライン版2014年5月30日号掲載の報告より。有針注射器との無作為化比較試験で、三価ワクチンの免疫原性を評価 試験は、コロラド大学ヘルスシステム内の4つの従業員クリニックで、健康成人(18~64歳)を対象に行われた。被験者は各クリニックで三価不活化インフルエンザワクチン「Afluria」の1回接種を受ける際に、無針ジェット式注射器か有針注射器で接種を受け、免疫原性について評価された。無作為化は、コンピュータにより100例単位で計画された。試験の性質上、試験参加者の盲検化は行われなかった。 免疫原性の評価は、ワクチンに含まれる3つのインフルエンザウイルス株について血漿中の血球凝集抑制抗体価を測定して行った。 主要エンドポイントは、3株の特異的な幾何平均抗体価(GMT)および血清抗体陽転率の6つとした。 無針ジェット式注射器の有針注射器に対する非劣性の定義は、GMTの95%信頼区間[CI]の上限値が1.5未満である場合、および血清抗体陽転率の同値が10ポイント未満である場合とした。両群の比較は、t検定試験にて評価した。3株のGMT、血清抗体陽転率とも非劣性を確認 試験は北半球の2012~2013インフルエンザシーズン中に、1,250例の被験者を、無針ジェット式注射器接種群(627例)、有針注射器群(623例)に無作為に割り付けて行われた。 intention-to-treat分析には、2つの血清サンプルを得られた全患者(無針ジェット式注射器接種群575例、有針注射器群574例)が組み込まれた。 結果、無針ジェット式注射器接種群の有針注射器群に対するAfluria免疫原性は、6つの共通主要エンドポイントについてすべて非劣性であることが示された。 無針ジェット式注射器接種群のGMTの非劣性達成値は、A/H1N1株が1.10、A/H3N2株が1.17、B株が1.04だった。 血清抗体陽転率についてはそれぞれ、A/H1N1株が6.0%、A/H3N2株が7.0%、B株が5.7%だった。 接種部位反応の即時の報告(0~6日)は、無針ジェット式注射器接種群で有意に多かったが(p<0.001)、大部分はグレード1、2で3日以内に治癒していた。28日以内の1回以上の有害事象の自己申告の頻度は、無針ジェット式注射器接種群14.4%、有針注射器群は10.8%であった(p=0.06)。頻度が高かったのは、注射部位の発赤(1.4%vs. 0)、血腫(1.8%vs. 0.2%)、頭痛(3.7%vs. 2.2%)、のどの痛み(0.5%vs. 1.0%)だった。有害イベントにより試験を中断した被験者はいなかった。 なお被験者のうち3例で重大有害イベントが記録されたが、試験に関連していなかった。

1900.

帯状疱疹のリスク増大要因が判明、若年ほど要注意/BMJ

 帯状疱疹リスクは、関節リウマチ、炎症性腸疾患(IBD)、COPD、喘息などの疾患を有している人では増大し、概して年齢が若い人でリスクが大きいことが明らかにされた。英国・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のHarriet J Forbes氏らが、2000~2011年の同国で帯状疱疹と診断された14万4,959例を対象とした症例対照研究を行い明らかにした。英国では2013年より新たに、高齢者のみを対象とした帯状疱疹ワクチンの接種キャンペーンが始められたが、これまで帯状疱疹リスクを定量化した大規模な検討は行われていなかったという。BMJ誌オンライン版2014年5月13日号掲載の報告より。英国14万4,959症例を、年齢別に疾患リスクとの関連を分析 最近の文献報告において、帯状疱疹のリスクが一部の疾患で増大すること、および若い人のリスクが高い可能性が示唆され、研究グループは、年齢別に影響があると思われる帯状疱疹のリスク因子の定量化を試みた。具体的には、英国プライマリ・ケアのデータベースであるClinical Practice Research Datalinkを活用して症例対照研究を行った。 2000~2011年に帯状疱疹と診断された14万4,959例と、年齢・性別・診療状況で適合した対照54万9,336例を特定し、年齢ごとの各リスク因子と帯状疱疹との関連の強さを、条件付きロジスティック回帰分析にて補正後オッズ比(OR)を求めて評価した。関節リウマチ患者は1.46倍、相対的に疾患のある若い人でリスクが高い 症例群と対照群の年齢中央値は、62歳であった。 分析の結果、帯状疱疹リスクの増大因子として、関節リウマチ(2.1%vs. 1.5%、補正後OR:1.46、99%信頼区間:1.38~1.55)、IBD(1.3%vs. 0.9%、同:1.36、1.26~1.46)、COPD(4.7%vs. 3.7%、同:1.32、1.27~1.37)、喘息(7.1%vs. 5.8%、同:1.21:1.17~1.25)、慢性腎臓病(6.0%vs. 5.4%、同:1.14、1.09~1.18)、うつ病(4.7%vs. 4.0%、1.15、1.10~1.20)が認められた。 糖尿病との関連は部分的で、1型では関連がみられたが(0.3%vs. 0.2%、同:1.27、1.07~1.50)、2型では関連はみられなかった(7.1%vs. 6.9%、同:1.01、0.98~1.04)。 また年齢別(50歳未満、50~59歳、60~69歳、70歳以上)でみると、若年の患者でリスクが高いことがみてとれた。たとえば、関節リウマチ患者の補正後ORは、50歳未満では1.69であったが、70歳以上では1.41となっていた。 帯状疱疹のリスクが最も高かったのは、帯状疱疹ワクチンの接種が非適格である重度の免疫抑制状態患者の患者で、リンパ腫患者の補正後ORは3.90(99%CI:3.21~4.74)、骨髄腫2.16(同:1.84~2.53)などとなっていた。 以上のように、疾患を有している人では帯状疱疹のリスクが増大することが判明した。また概して、リスクの増大は若年者でより高いことが明らかになった。 これらの結果を踏まえて著者は、「現在推奨されているワクチン接種は、帯状疱疹リスクが高い人には禁忌であることが明らかになった。まった、これらの人々にはリスクを抑制するための別の戦略が必要であることが明確になった」とまとめている。

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