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いぼの治療にMMRワクチンが有効

 疣贅(ゆうぜい=いぼ)へのMMRワクチンを用いた病巣内免疫療法は、忍容性があり効果的であることが、韓国・朝鮮大学校医学部のC. H. Na氏らによる検討の結果、示された。現状で有用な疣贅治療は、冷凍療法、レーザー治療、電気外科治療、角質溶解薬の局所塗布などがあるが、痛みを伴うことが多く治療部位が瘢痕となる可能性がある。一方で近年、皮膚反応検査の抗原やワクチンを用いた病巣内免疫療法が疣贅治療に有効であることが示されていた。Clinical and Experimental Dermatology誌2014年7月号の掲載報告。 研究グループは、疣贅の新たな病巣内免疫療法として、MMRワクチンを用いた治療法の有効性を評価する後ろ向き検討を行った。 さまざまなタイプの疣贅を有する136例を登録し、2年間にわたって評価。患者は、2週間に1回、計6回にわたって治療を受けた。 治療反応は、疣贅の大きさ、数の減少を3段階で分類し評価した。また、完全奏効(CR)を再発で確認。写真とカルテで臨床評価を行った。 主な結果は以下のとおり。・被験者136例の半数(51.5%)が、疣贅の大きさ・数について50%超の減少を認めた。・被験者の46.7%が異なる部位に疣贅が拡散していたが、良好な治療反応を示した。・一般的な疣贅は、その他のタイプの疣贅と比べて治療反応が有意に高率であった(p<0.05)。しかし、有効であることを示すその他の臨床変数は認められなかった。・ほとんどすべての患者は接種時に軽度の痛みを報告したが、その他の副作用はほとんど観察されなかった。・CRが確認された患者のうち、6ヵ月後に疣贅再発を呈したのはわずかに5.6%であった。・著者は、「痛みに敏感で副作用を心配する一般的な疣贅患者には、MMRワクチンを用いた病巣内免疫療法が、忍容性があり有効であることを提案する」とまとめている。・「治療反応は、接種回数を増やすことで改善する」としている。

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百日咳ブースターワクチン、思春期接種も必要?/BMJ

 英国では2001年に、就学前の百日咳ブースターワクチン接種が導入され、導入前には長引く咳でプライマリ・ケアを受診した学齢児の37%で、百日咳が見つかっていた。しかし導入後もいまだに5人に1人(20%)の割合で百日咳が見つかることが、オックスフォード大学Kay Wang氏らによる5~15歳児を対象とした前向きコホート研究の結果、明らかにされた。著者は、「ワクチン接種を完了した小児においても臨床的に重大な咳が起きる可能性が示された」と述べ、「今回の結果は、思春期における百日咳ブースターワクチン接種の必要性を考えるべきであることを知らしめるものとなるだろう」とまとめている。BMJ誌オンライン版2014年6月24日号掲載の報告より。2~8週間の長引く咳で受診した5~15歳の279例について検討 Wang氏らは、百日咳ブースターワクチン導入後の、プライマリ・ケアを長引く咳で受診した学齢児における百日咳の有病率と臨床的重症度を調べるため、前向きコホート研究を行った。 対象は、2010年11月~2012年12月に、テムズバレーの22人の一般医(GP)を受診し、2~8週間の持続性の咳を有していた5~15歳の279例であった。重篤な基礎疾患や、免疫不全症または免疫が低下、他の臨床試験に関与、および1年以内に百日咳ブースターワクチンを接種していた人は、評価から除外した。 主要評価項目は、最近の百日咳感染のエビデンスで、経口流体での抗百日咳毒素IgG力価が70単位以上の場合とした。咳の頻度は検査で百日咳が確認された6例の小児で測定された。ワクチン接種完了児の18%で最近の感染が確認、接種後7年以上でリスクは3倍 結果、56例(20%、95%信頼区間[CI]:16~25%)の小児において、最近の百日咳感染のエビデンスが確認された。そのうち39例はワクチン接種を完了しており、これらはワクチン接種完了児215例の18%(95%CI:13~24%)に該当した。 百日咳リスクは、就学前ブースターワクチン後7年未満だった小児(発生例:20/171例、12%、95%CI:7~17%)よりも、7年以上経っていた小児(同:21/53例、40%、26~54%)のほうが3倍高かった。 一方で百日咳リスクは、就学前に5回投与されていた群と3回投与されていた群では同程度であった(5回接種群に対する率比:1.14、95%CI:0.64~2.03)。 咳の頻度を検討した6例のうち、4例で24時間で400回超の咳が測定された。

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インフルエンザワクチン接種、無針注射器の時代に?/Lancet

 インフルエンザワクチン接種について、新たに開発された無針ジェット式注射器「Stratis」による接種と、通常の有針注射器による接種を比較した結果、免疫原性に関して前者の非劣性が示されたことが報告された。同注射器を開発した米国・PharmaJet社のLinda McAllister氏らによる非劣性無作為化試験の結果で、安全性プロファイルは臨床的に許容可能なものだった。接種部位反応が通常注射器を使用した場合よりも高率だったが、著者は「Stratisは、三価インフルエンザワクチンの代替接種法となりうる」とまとめている。Lancet誌オンライン版2014年5月30日号掲載の報告より。有針注射器との無作為化比較試験で、三価ワクチンの免疫原性を評価 試験は、コロラド大学ヘルスシステム内の4つの従業員クリニックで、健康成人(18~64歳)を対象に行われた。被験者は各クリニックで三価不活化インフルエンザワクチン「Afluria」の1回接種を受ける際に、無針ジェット式注射器か有針注射器で接種を受け、免疫原性について評価された。無作為化は、コンピュータにより100例単位で計画された。試験の性質上、試験参加者の盲検化は行われなかった。 免疫原性の評価は、ワクチンに含まれる3つのインフルエンザウイルス株について血漿中の血球凝集抑制抗体価を測定して行った。 主要エンドポイントは、3株の特異的な幾何平均抗体価(GMT)および血清抗体陽転率の6つとした。 無針ジェット式注射器の有針注射器に対する非劣性の定義は、GMTの95%信頼区間[CI]の上限値が1.5未満である場合、および血清抗体陽転率の同値が10ポイント未満である場合とした。両群の比較は、t検定試験にて評価した。3株のGMT、血清抗体陽転率とも非劣性を確認 試験は北半球の2012~2013インフルエンザシーズン中に、1,250例の被験者を、無針ジェット式注射器接種群(627例)、有針注射器群(623例)に無作為に割り付けて行われた。 intention-to-treat分析には、2つの血清サンプルを得られた全患者(無針ジェット式注射器接種群575例、有針注射器群574例)が組み込まれた。 結果、無針ジェット式注射器接種群の有針注射器群に対するAfluria免疫原性は、6つの共通主要エンドポイントについてすべて非劣性であることが示された。 無針ジェット式注射器接種群のGMTの非劣性達成値は、A/H1N1株が1.10、A/H3N2株が1.17、B株が1.04だった。 血清抗体陽転率についてはそれぞれ、A/H1N1株が6.0%、A/H3N2株が7.0%、B株が5.7%だった。 接種部位反応の即時の報告(0~6日)は、無針ジェット式注射器接種群で有意に多かったが(p<0.001)、大部分はグレード1、2で3日以内に治癒していた。28日以内の1回以上の有害事象の自己申告の頻度は、無針ジェット式注射器接種群14.4%、有針注射器群は10.8%であった(p=0.06)。頻度が高かったのは、注射部位の発赤(1.4%vs. 0)、血腫(1.8%vs. 0.2%)、頭痛(3.7%vs. 2.2%)、のどの痛み(0.5%vs. 1.0%)だった。有害イベントにより試験を中断した被験者はいなかった。 なお被験者のうち3例で重大有害イベントが記録されたが、試験に関連していなかった。

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帯状疱疹のリスク増大要因が判明、若年ほど要注意/BMJ

 帯状疱疹リスクは、関節リウマチ、炎症性腸疾患(IBD)、COPD、喘息などの疾患を有している人では増大し、概して年齢が若い人でリスクが大きいことが明らかにされた。英国・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のHarriet J Forbes氏らが、2000~2011年の同国で帯状疱疹と診断された14万4,959例を対象とした症例対照研究を行い明らかにした。英国では2013年より新たに、高齢者のみを対象とした帯状疱疹ワクチンの接種キャンペーンが始められたが、これまで帯状疱疹リスクを定量化した大規模な検討は行われていなかったという。BMJ誌オンライン版2014年5月13日号掲載の報告より。英国14万4,959症例を、年齢別に疾患リスクとの関連を分析 最近の文献報告において、帯状疱疹のリスクが一部の疾患で増大すること、および若い人のリスクが高い可能性が示唆され、研究グループは、年齢別に影響があると思われる帯状疱疹のリスク因子の定量化を試みた。具体的には、英国プライマリ・ケアのデータベースであるClinical Practice Research Datalinkを活用して症例対照研究を行った。 2000~2011年に帯状疱疹と診断された14万4,959例と、年齢・性別・診療状況で適合した対照54万9,336例を特定し、年齢ごとの各リスク因子と帯状疱疹との関連の強さを、条件付きロジスティック回帰分析にて補正後オッズ比(OR)を求めて評価した。関節リウマチ患者は1.46倍、相対的に疾患のある若い人でリスクが高い 症例群と対照群の年齢中央値は、62歳であった。 分析の結果、帯状疱疹リスクの増大因子として、関節リウマチ(2.1%vs. 1.5%、補正後OR:1.46、99%信頼区間:1.38~1.55)、IBD(1.3%vs. 0.9%、同:1.36、1.26~1.46)、COPD(4.7%vs. 3.7%、同:1.32、1.27~1.37)、喘息(7.1%vs. 5.8%、同:1.21:1.17~1.25)、慢性腎臓病(6.0%vs. 5.4%、同:1.14、1.09~1.18)、うつ病(4.7%vs. 4.0%、1.15、1.10~1.20)が認められた。 糖尿病との関連は部分的で、1型では関連がみられたが(0.3%vs. 0.2%、同:1.27、1.07~1.50)、2型では関連はみられなかった(7.1%vs. 6.9%、同:1.01、0.98~1.04)。 また年齢別(50歳未満、50~59歳、60~69歳、70歳以上)でみると、若年の患者でリスクが高いことがみてとれた。たとえば、関節リウマチ患者の補正後ORは、50歳未満では1.69であったが、70歳以上では1.41となっていた。 帯状疱疹のリスクが最も高かったのは、帯状疱疹ワクチンの接種が非適格である重度の免疫抑制状態患者の患者で、リンパ腫患者の補正後ORは3.90(99%CI:3.21~4.74)、骨髄腫2.16(同:1.84~2.53)などとなっていた。 以上のように、疾患を有している人では帯状疱疹のリスクが増大することが判明した。また概して、リスクの増大は若年者でより高いことが明らかになった。 これらの結果を踏まえて著者は、「現在推奨されているワクチン接種は、帯状疱疹リスクが高い人には禁忌であることが明らかになった。まった、これらの人々にはリスクを抑制するための別の戦略が必要であることが明確になった」とまとめている。

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ここから始めよう!みんなのワクチンプラクティス ~今こそ実践!医療者がやらなくて誰がやるのだ~

第1回 ワクチンプラクティスって何?第2回 学ぶべき4つのVとは?第3回 その打ち方は正しいのか? Vaccinological principle (1)第4回 ルールに沿って、しかし速やかに第5回 本当の重要性を知る B型肝炎、ヒブ/小児肺炎球菌 Vaccine formulation & VPD (1)第6回 子供だけに必要なわけじゃない 破傷風、百日咳 Vaccine formulation & VPD (2)第7回 軽んじてはいけない 麻疹・風疹、日本脳炎 Vaccine formulation & VPD (3)第8回 知られざる合併症 水痘、ムンプス Vaccine formulation & VPD (4)第9回 誤解されている HPV、成人肺炎球菌 Vaccine formulation & VPD (5)第10回 教科書には載っていない Vaccinee第11回 4Vで3Cを実践しよう(1) Common schedule & Catch-up schedule第12回 4Vで3Cを実践しよう(2) Communication on vaccine 肺炎球菌、ヒブワクチンが定期接種化されるなど、改善の兆しを見せる日本のワクチン事情ですが、先進国から比べればまだまだ不十分な状況に変わりはありません。正しいワクチン接種によって、多くの小児の命が救われ、麻痺や難聴などの高度障害を減らせるのです。にもかかわらず、接種率の低さ、任意接種扱いのままのワクチンが複数あること、Tdapなどのブースターワクチンの未整備など、問題は山積みです。こういった状況でありながら医学部ではワクチンを単独の教科として時間配分することは少なく、ワクチンに不安を感じる母親とのコミュニケーションが図れず、臨床現場で戸惑うこともあるのではないでしょうか?このコンテンツでは同時接種の可否、接種間隔、望ましい投与経路、副反応、疫学状況や救済制度はどうなっているか、などの問いに一つずつ触れています。現場で悩む医師の拠り所となるべく、正しいワクチンの知識を分かりやすく解説。患者さんの不安を払拭するためのコミュニケーションスキルアップの実演もあります。第1回 ワクチンプラクティスって何?今までワクチンのことを系統立てて学んだことはありますか?ワクチンプラクティスとは積極的にワクチンの正しい知識を学び、積極的に必要なワクチンの提案とコミュニケーション、そして接種を行うことです。このワクチンプラクティスには3つの要素(3C)があります。この3Cを知ることで母子手帳の空欄を埋めるだけという受け身から脱却し、正しいワクチンプラクティスを実践することが出来るのです。第2回 学ぶべき4つのVとは?ワクチンプラクティスを行うためには、どんな知識が必要なのでしょう?学習領域は膨大です。4つのVで整理して考えましょう。 すなわち、Vaccinological principle(ワクチン学の原則)、Vaccine formulation(個別のワクチン製剤)、VPD(ワクチンで予防可能な疾患ワクチンで予防可能な疾患)、そしてVaccinee(ワクチンの被接種者)です。これらを総合的に理解することで、正しいワクチンプラクティスを行うことが出来るのです。第3回 その打ち方は正しいのか? Vaccinological principle (1)ワクチンの投与経路、異なるワクチン同士の投与間隔、同時接種。これらについては日本だけのルールも存在し、正しく理解されてないことが多くあります。ワクチン学的に何が正しいのか理解し、臨床現場ではどう対応すべきか学びましょう。第4回 ルールに沿って、しかし速やかに接種禁忌や副反応、その対応法を知っておきましょう。また、接種注意や見合わせについては、海外のプラクティスとかけ離れた独自の「日本ルール」があります。これらを踏まえておくとどのようなプラクティスを実践すれば良いのかがわかります。第5回 本当の重要性を知る B型肝炎、ヒブ/小児肺炎球菌 Vaccine formulation & VPD (1) B型肝炎ワクチンは水平感染や性行為感染症を防ぐ有効策です。ヒブ/小児肺炎球菌ワクチンは、侵襲性の感染症を防ぐだけでなく、日常診療でも非常に重要な意味を持ちます。個別のワクチンの重要性を理解することでワクチンプラクティスの幅が広がります。第6回 子供だけに必要なわけじゃない 破傷風、百日咳 Vaccine formulation & VPD (2) 10年ごとのブースターが必要な破傷風。ある年齢以上の方は基礎免疫も有していません。また、新生児には致命的な百日咳から小さな命を守るために周りの人々がその免疫を持つ必要があります。成人でもDPTに工夫を施し、ブースター接種を行いましょう。第7回 軽んじてはいけない 麻疹・風疹、日本脳炎 Vaccine formulation & VPD (3)海外では麻疹・風疹の排除達成国が多数ありますが、日本ではワクチン接種率が低いなどの理由で未だに流行し、後遺症で苦しむ方がいます。また日本脳炎の発症は稀ですが、予後は極めて不良です。しかしいずれもワクチン接種を行えば予防可能なVPDなのです。第8回 知られざる合併症 水痘、ムンプス Vaccine formulation & VPD (4)水痘やムンプスは「罹って免疫をつける疾患」ではありません。水痘の感染力は強く、小児病棟の閉鎖が容易に起こります。ムンプスによる難聴は年間3000例発生し、予後も極めて不良です。ワクチンプラクティスで発症を予防し、その誤解を解きましょう。第9回 誤解されている HPV、成人肺炎球菌 Vaccine formulation & VPD (5) その名称から誤解を生むワクチンがあります。いわゆる子宮頸癌ワクチンは未だ子宮頸癌を減らしたというエビデンスがありませんし、成人肺炎球菌ワクチンも市中肺炎の発症を減らせるわけではありません。接種と同時に正しい知識を伝えることが重要です。第10回 教科書には載っていない Vaccinee ワクチンは年齢で一律に打てばいいわけではありません。VPDの感染リスクや、その考え方等を理解しましょう。これらは被接種者で異なり、教科書には載っていません。コミュニケーションを図って情報を集め、正しいワクチンプラクティスを実践しましょう。第11回 4Vで3Cを実践しよう(1) Common schedule & Catch-up schedule接種が必要なワクチンは多数存在します。接種スケジュールを立てる際は早見表を上手に活用しましょう。また、キャッチアップスケジュールを立てる場合際には被接種者ごとにVPDの感染リスクや、ワクチンに対する本人やその保護者の考え方にも耳を傾けることが必要です。4Vを学んでいれば、スケジュールの立案などは恐れるに足りません。第12回 4Vで3Cを実践しよう(2) Communication on vaccineテーマはコミュニケーション。ワクチン接種には必須となります。「詳しい知識がない」、「偏った考えを持っている」、「忌避しようとする方」に対しては非常にデリケートなコミュニケーションが要求されます。まずは正しい知識を伝え、疑問や不安に真摯に応えていきましょう。ワクチンを忌避する保護者の方たちには、「願っているのは子供の健康である」という共通の基盤をもとにコミュニケーションを取り続けることが重要です。

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麻疹の流行、どう対応する

今年に入り患者数の増加が目立つ麻疹について、国立国際医療研究センター感染症内科/国際感染症センターの忽那賢志氏に、流行の現状と医療者の対応について聞いた。麻疹流行の現状本年第1~8週までの麻疹患者数は199例(2013年12月30日~2014年2月23日)と、すでに昨年1年間の麻疹患者数を超えている。昨年同期比では3.3倍と、季節性を考慮しても大きな増加である。この傾向は、昨年11月頃よりあらわれているという。麻疹は昨年からフィリピンで流行しているが、フィリピンから帰国感染者がわが国での流行の発端となっている。そこから拡大し、現在では海外渡航歴のない感染者も多い。参考:国立感染症研究所IDWRhttp://www.nih.go.jp/niid/ja/measles-m/measles-idwrc.html日本人における麻疹の問題日本人には麻疹の抗体がない方、あっても不十分な方は少なくないという。その原因のひとつは麻疹ワクチンの接種率である。麻疹ワクチンは、MMRワクチンの副作用の影響を受け、1990年代に接種率が減少している。また、ワクチン接種回数の問題もある。麻疹ワクチンは1976年に定期接種となったが、当初は1回接種であった。1回接種の場合、5%程度の方に抗体ができない、あるいは出来ても成人になって抗体が減衰することがある。2006年に麻疹ワクチンは2回接種となったものの接種率は高くなく、生涯ワクチン接種が1回で麻疹に罹患歴がないなど、麻疹ウイルスに対して免疫を持ってない成人が、わが国では7万人いるといわれる。麻疹はわが国における非常に重要な医療問題の一つだと忽那氏は訴える。麻疹の感染力は非常に強く、インフルエンザの約8倍、風疹の約2倍である(基本再生産数に基づく)。また、重症化することが多く、発展途上国では現在も年間50万人以上が死亡する。わが国でも、年間20~30人の麻疹関連死がある。さらに、肺炎、脳炎・脳症などの合併症を伴うこともあり予後も不良である。医療者の対応このような中、医療者はどう対応すべきであろうか。麻疹患者の受診に備え、忽那氏はいくつかの留意点を挙げた。医療者自身に麻疹の抗体があるか確認する麻疹(疑い)患者の診療は抗体のある医療者が行う当然のことではあるが、医療者自身が抗体価を測定し、基準値に達していなければワクチンを接種するべきである。ワクチン接種しても抗体価が上がらない方もいるが、これまでに1回しか接種していないのであれば、2回接種するべきであろう。疑い患者であっても陰圧個室で診察する麻疹は空気感染で伝播するため、周囲の患者さんや医療者に感染することも十分考えられる。疑い患者であっても隔離して陰圧個室で診療すべきである。東南アジア渡航歴があり発熱・上気道症状を呈している患者では麻疹を鑑別に加える麻疹は初期段階では診断が付けにくいケースもあるという。麻疹初期には発熱や上気道炎症状やといった症状(カタル症状)が出現するものの、皮疹が発現せず、数日後に皮疹が出てはじめて麻疹とわかることもある。このカタル症状の病期であっても感染力は強いため、皮疹が確認できなくとも、東南アジアなど麻疹が発生している国の渡航歴があり発熱がある場合は鑑別のひとつとして考えるべきである。また国内でも麻疹は増えており、渡航歴のない患者でも麻疹を疑う閾値を低くしておく必要がある。麻疹罹患歴があっても疑わしければ確認する幼少期の麻疹の診断は臨床症状のみに基いてで行っていることが多い。そのため、たとえ患者さんが麻疹の既往を訴えても、実際には麻疹ではなく風疹やその他の感染症であったということも考えられる。過去の罹患歴があるという場合も臨床的に麻疹が疑われる場合は、感染者との接触、ワクチン接種歴などを確認し、他の診断が確定するまでは麻疹として対応するのが望ましい。東南アジアでの麻疹は拡大し、現在はベトナムでも流行しているという。今後のわが国での大流行を防ぐためにも、流行の動向に留意しておくべきであろう。

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de novo B型肝炎の心配は?HBV感染既往RA患者への生物学的製剤投与

 B型肝炎ウイルス(HBV)の感染既往があり、生物学的疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs)を投与している慢性関節リウマチ(RA)患者のHBV再活性化率を検討したところ、5.3%に再活性化を認めたものの、重症肝炎に至った症例はなかったことが、自治医科大学の中村 潤氏らによる研究で明らかになった。このことから、生物学的DMARDsは、HBV感染既往のあるRA患者にとって、安全に使用可能な薬剤であると考えられる。International journal of rheumatic diseases誌オンライン版2014年4月4日号の報告。 HBV感染既往者へ免疫抑制剤や抗がん剤などを投与すると、HBVと宿主の免疫学的均衡が破綻し、HBV再活性化を起こすことがある。HBV再活性化により発症したB型肝炎は重症化しやすく、致死的な転帰に至る(de novo B型肝炎)。 本研究では、自治医科大学附属病院 アレルギー・リウマチ科において、2010年7月から2012年12月まで生物学的DMARDsで治療を行ったHBV感染既往のあるRA患者をレトロスペクティブに検討し、HBV再活性化率を調査した。B型肝炎コア抗原とB型肝炎表面抗原、またはそのどちらかの抗体を持つ患者を「HBV感染既往あり」とし、それらの患者のカルテからHBV-DNA値を含む臨床データを取得して分析した。 主な結果は以下のとおり。・試験期間中、生物学的DMARDsによる治療を行ったRA患者は251例であった。・HBVワクチン接種を行った6例、HBV表面抗原陽性の1例は試験から除外した。・残りの244例中、57例の患者(23.4%)にHBVの感染既往を認めた。・この57例を、2ヵ月~27ヵ月(中央値18ヵ月)追跡し、HBV-DNAの検査を2~27回(中央値7回)行った。・HBV-DNAは、3例(5.3%)の患者(トシリズマブ投与の2例、エタネルセプト投与の1例)で検出されたが、3例ともHBV-DNA値は定量限界を下回っていた(< 2.1 log copies/mL)。・3例とも生物学的DMARDsの投与を継続し、肝機能正常を維持したところ、HBV-DNA値は数ヵ月以内に再び陰性となった。

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肝炎「検査無料」「高い治癒率」「医療費助成」認知度高めて

 2014年4月23日(水)、ヤンセンファーマ株式会社主催の「肝炎の検査・治療、医療現場の現状に関するメディアセミナー」が開催された。まず、同社政府機関・医療政策 日本担当のブルース J. エルズワース氏より、全国1万5,000人を対象とした肝炎ウイルスについての全国意識調査の結果が発表された。本調査は、日本における肝炎ウイルス検査率の向上、抗ウイルス療法の普及、医療費助成の認知を促進することを目的として行われたものであり、その結果、日本におけるウイルス検査率の低さ、早期治療による完治率や治療費助成についての認知度の低さなどが浮き彫りになった。 その後、武蔵野赤十字病院 副院長の泉 並木氏、広島大学の田中 純子氏よりC型肝炎の現状や治療について語られ、「最近の治療は、短期間で高い治癒率が見込め、医療費助成も受けられる。積極的に肝炎ウイルス検査を受け、陽性であればすぐに治療を始めてほしい」と訴えた。日本の肝がん死亡者を減らしたい 日本には、B型およびC型肝炎ウイルスの患者・感染者は370万人いると推定されている(B型肝炎:約110~140万人/C型肝炎:約190~230万人)。また、日本における肝がん死亡者数は、2010年時点で約3.3万人であり、その約80%はC型肝炎ウイルス、約10%はB型肝炎ウイルスの持続感染に起因しているという。C型肝炎の感染予防対策として、2002年から全国の地方自治体で無料検診が行われ、一定の成果が上がっているものの、自身の感染に気づいていないと考えられる感染者は約80万人と推定されている。B型肝炎の対策としては、1986年からB型肝炎キャリアの妊婦から生まれる新生児へのワクチン接種が開始され、キャリア率が0.04%にまで低下したものの、依然として課題が残されている。肝炎の検査率、治療率に影響を与える要素とは このような状況のもと、日本における疾患や検査、治療などの認識の実態を把握し、肝炎ウイルス検査の受検率や肝炎ウイルスの治療率に影響を与える要素を探ることを目的として、同社は2013年11月15日から20日まで、一般国民1万5,003人を対象としたインターネット調査を行った。対象者の構成は、日本全国および都道府県レベルにおいて性別、年齢(20代、30代、40代、50代、60歳以上)の項目で代表性が保たれるように設計された。検査を受けたことがない53%、受けたが自覚なし23% 調査した1万5,003人のうち、53%が肝炎ウイルス検査を受けたことがないと回答した。検査を受けていない主な理由は、「とくに理由なし」、「自分は感染していないと思うから」、「定期健康診断や人間ドックの検査項目に入っていないから」とのことであった。また、23%は外科手術や出産などの際に肝炎ウイルス検査を受けたと考えられるが、受検の自覚がなく、関心の低さが浮き彫りになった。肝炎ウイルス検査を受けていない人に聞いた、受けてみたいと思うきっかけとしては、「無料検査の知らせが送られてきたら」、「定期健康診断や人間ドックのついでに検査できれば」といった意見が多かった。肝炎の治療費、治療期間、治癒率に対する不安がある 肝炎の治療を積極的に受けるようになるきっかけとしては、「治療費の個人負担額が安い」、「仕事や家事を休まずに治療ができる」、「治療により完治する確率が高い」といった項目を選んだ人が多かった。また、肝炎の治療が格段に進歩し、完治する確率が高くなっていることについて、76%もの人が認識していなかった。さらに、肝炎治療費の公費補助制度の存在を認知していない人は90%にのぼった。検査が無料であることを知らない 行政の取り組みとして、肝炎ウイルス検査を無料実施していることに関する認知度はわずか13%であった。しかし、無料検査の周知や啓発活動、肝炎ウイルスに関する国民の正しい理解の促進に向けた取り組み、感染が疑われる人に対するフォローアップについては、80%以上がとても重要であると回答した。まとめ 日本の肝がん死亡者を減らすには、まず、肝炎ウイルス検査の受検率を向上させなければならない。とはいえ、「自分には関係ない」と考える人が多いなか、関心を高めるのは難しい。やはり、定期健診の際に検査が受けられるようになると、状況は大きく変わるのではないだろうか。もちろん、検査の結果、感染が判明した場合は、自覚症状がなくても必ず医療機関を受診することが重要である。現在の肝炎治療は大きく進歩し、短期間で高い治癒率が見込めるうえ、公費補助制度もある。「高い治療費は払えない」、「副作用も心配だし、長い間治療しても完治しないのでは?」といった懸念を持ち、治療をためらっている人がいたら、ぜひ、助言していただきたい。関連記事 2013年11月にC型肝炎治療ガイドラインが大幅改訂―新薬登場で

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EV71ワクチン、乳幼児の手足口病に効果、中国発/NEJM

 中国で開発されたエンテロウイルス71(EV71)ワクチンの、乳幼児における手足口病またはヘルパンギーナに対する有効性、安全性および免疫原性について、中国疾病予防管理センター(CDC)のFengcai Zhu氏らが、第III相多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果を発表した。プラセボ群との比較で、ワクチンの有効率は94.8%と有意に高く、一方で重篤な有害事象の発生は同程度であり、接種後56日時点で2回接種により98.8%に免疫応答が認められたことを報告した。またEV71関連疾患の入院、および神経合併症を伴う手足口病については100%の予防効果が認められたという。著者は、「乳幼児におけるEV71関連の手足口病またはヘルパンギーナは、EV71ワクチン接種によって予防された」と結論づけている。NEJM誌2014年2月27日号掲載の報告より。健康な6~35ヵ月齢1万7例対象に第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験 試験は2012年1月に、江蘇省の3県・35地点で、健康な乳幼児(6~35ヵ月齢)1万7例を登録して行われた。研究グループは対象児を無作為に2群に分け、一方の群にはEV71ワクチンを、もう一方の群にはプラセボを、28日間隔で2回接種(筋注)し、12ヵ月間にわたりサーベイランスを行った。 主要エンドポイントは、EV71関連の手足口病またはヘルパンギーナの発生だった。ワクチン有効率94.8%、入院・神経合併症は100%予防 intention-to-treat分析の結果、サーベイランス期間12ヵ月間のEV71関連疾患の発生率は、ワクチン接種群0.3%(13/5,041例)、プラセボ群2.1%(106/5,028例)だった。 EV71関連の手足口病またはヘルパンギーナに対するワクチンの有効率は94.8%(95%信頼区間[CI]:87.2~97.9%、p<0.001)、EV71関連入院(0例対24例)、神経合併症を伴う手足口病(0例対8例)に対しては、同100%(95%CI:83.7~100%、42.6~100%)であった。 重大有害事象は、ワクチン接種群2.2%(111/5,044例)、プラセボ群2.6%(131/5,033例)の発生であった。 免疫原性について検討したサブグループ(1,291例)において、2回接種により56日時点で参加者の98.8%で抗EV71免疫応答が誘発された。抗EV71中和抗体力価1:16が、EV71関連の手足口病またはヘルパンギーナの予防と関連していた。

1890.

アジア発、ロタウイルスワクチン定期接種化へのエビデンス

 台湾・国家衛生研究院のWan-Chi Chang氏らは、新生児への2種のロタウイルスワクチン(ロタリックス、ロタテック)接種の有効性について、定期接種導入検討のための情報提供を目的とした症例対照研究を行った。その結果、両ワクチンとも重症急性ロタウイルス胃腸炎に対してすぐれた予防効果を示し、3歳未満時の急性胃腸炎による入院コストを大幅に減らす可能性があることなどを報告した。著者は、「今回の報告は、台湾およびその他アジア諸国の政策立案者に知らせるべきものであり、ロタウイルスワクチン定期接種化に向けた意思決定に役立つものである」とまとめている。Pediatric Infectious Disease Journal誌2014年3月号の掲載報告。 台湾では現在、ロタウイルスワクチンは、ロタリックスとロタテックの2種類が上市されているが定期接種の推奨はされていない。研究グループは、定期接種導入の有益性について政策立案者に情報提供をすることを目的に、台湾新生児における同ワクチンの重症急性ロタウイルス胃腸炎に対する有効性を調べた。 2009年5月~2011年4月に、台湾国内3地点(北・中・南部)の病院サーベイランスに基づく症例対照研究を行った。ロタウイルス胃腸炎であることが検査確認された生後8~35ヵ月齢の入院患児を症例とし、年齢を一致させた対照と、ワクチン接種歴について予防接種カードまたは入院記録により確認し、ワクチンの有効性を算出((1-ワクチン接種オッズ比)×100%)した。 おもな結果は以下のとおり。・2年の間に急性胃腸炎で入院した8~35ヵ月齢児は1,280例であった。そのうち、ロタウイルス陽性であった児(症例群)は184例(14%)であった。残る1,096例のロタウイル陰性児群と、さらに1,183例の非急性胃腸炎患児群から、症例群と年齢を一致させた対照群(904例、909例)を特定し評価を行った。・ロタウイルス陽性群184例のうち、ロタウイルスワクチン接種児は3例(1.6%)で、いずれもロタリックス2回接種例であった。・また、ロタリックス2回接種例は、ロタウイルス陰性児群では14.9%、非急性胃腸炎患児群では18.9%であった。ロタウイルス胃腸炎による入院に対する両群におけるロタリックス2回接種の推定有効率は90.4%(95%CI:70.3~98.1%)、92.5%(同:77.1~98.5%)であった。・ロタテック3回接種例は、ロタウイルス陰性児群では10.6%、非急性胃腸炎患児群では12.0%であった。ロタウイルス胃腸炎による入院に対する両群におけるロタテック3回接種の推定有効率は96.8%(同:82.3~100.0%)、97.1%(同:84.0~100.0%)であった。

1891.

MMR生ワクチンは不活化混合ワクチンより全感染症入院を減少/JAMA

 麻疹・流行性耳下腺炎・風疹(MMR)生ワクチン接種は、最新のワクチンである不活化混合ワクチン(DTaP-IPV-Hib)接種と比べて、全感染症入院の減少と関連することが示された。デンマーク・Statens Serum Institute社のSigne Sphirup氏らがデンマークの小児コホートを対象とした分析の結果、報告した。これまで、低所得国において、生ワクチンMMR接種が麻疹以外の感染症死亡率を低下したことが報告されている。研究グループは、「そのような非特異的なワクチン効果が、高所得国における小児の健康についても重要な意味をもたらす可能性がある」として検討を行った。JAMA誌2014年2月26日号掲載の報告より。デンマーク小児集団についてDTaP-IPV-Hib接種との感染症入院発生率比を検討 生ワクチンMMR接種と感染症入院率減少との関連を調べる検討は、1997~2006年に生まれたデンマーク小児集団を対象とする住民ベースコホート研究にて、11ヵ月齢~2歳時までフォローアップ(最終2008年8月31日)して行われた。デンマーク全国レジスターに記録されているワクチン接種日、入院データを入手し分析に用いた。 主要評価項目は、MMRと最新のワクチンであるDTaP-IPV-Hibとの比較による、あらゆる感染症の入院発生率比(IRR)だった。また、MMR接種後のリスク、リスク差、感染症入院1例予防に必要なMMR接種例数(NNV)を算出した。 対象小児は計49万5,987人だった。MMR接種群、非接種群との発生率比は0.86~0.87 あらゆる感染症タイプで入院した小児は、50万9,427人年中5万6,889人だった(100人年当たり11.2例)。 推奨スケジュール(DTaP-IPV-Hibは3、5、12ヵ月齢時に3回、MMRは15ヵ月齢時に1回)どおりにワクチン接種を受けた小児は45万6,043人で、このうちDTaP-IPV-Hib 3回接種後にMMRを接種した群のほうが、DTaP-IPV-Hib 3回接種のみ群よりも、全感染症入院の発生率が低かった。発生率は100人年当たり8.9例vs. 12.4例、補正後IRRは0.86(95%信頼区間[CI]:0.84~0.88)だった。 接種スケジュールが前後していた小児(DTaP-IPV-Hib 2回後にMMR、MMR後にDTaP-IPV-Hib 3回)は1万9,219人いた。このうち、DTaP-IPV-Hib 2回接種後にMMRを接種した群は、MMR非接種(DTaP-IPV-Hib 2回のみ)群と比較して、全感染症入院の発生率は低かった(発生率9.9 vs. 15.1、補正後IRR:0.87、95%CI:0.80~0.95)。しかし、MMR後にDTaP-IPV-Hib 3回接種を受けた小児(1,981人)は、全感染症入院が有意に増大した(DTaP-IPV-Hib 2回後にMMR接種群と比較した補正後IRR:1.62、95%CI:1.28~2.05)。 16~24ヵ月齢での感染症入院のリスクは、MMR接種群は4.6%、同非接種群は5.1%だった。リスク差は、0.5ポイント(95%CI:0.4~0.6)、16ヵ月齢前におけるNNVは201例(95%CI:159~272)であった。 結果を踏まえて著者は、「デンマーク小児集団において、生ワクチンMMR接種は最新のワクチンDTaP-IPV-Hib接種と比べて、全感染症入院の減少と関連していた。他の高所得国集団でも同様の所見が認められるかを検討する必要がある」とまとめている。

1892.

水痘予防にはMMRV 2回接種を支持/Lancet

 チェコ共和国・フラデツ・クラーロヴェー大学病院のRoman Prymula氏らは、水痘の発症予防について、麻疹・ムンプス・風疹・水痘ワクチン(MMRV)2回接種と、単価水痘ワクチン1回接種の有効性を比較する無作為化対照試験を欧州10ヵ国の協力を得て行った。その結果、あらゆる型の水痘予防を確実なものとするためにもMMRVの2回接種を支持する結果が得られたことを報告した。今日、水痘発症率は、水痘ワクチンを“ルーチン”で行っている国では激減している。予防は単価ワクチンもしくはMMRVの接種にて可能であり、今回、研究グループは、どちらが有用かを比較検証した。Lancet誌オンライン版2014年1月29日号掲載の報告より。欧州10ヵ国でMMRV 2回、MMR+V、MMR 2回の有効性を比較 試験は、多施設共同無作為化かつ観察者盲検にて、水痘の風土病がみられるヨーロッパの10ヵ国(チェコ共和国、ギリシャ、イタリア、リトアニア、ノルウェー、ポーランド、ルーマニア、ロシア、スロバキア、スウェーデン)にて行われた。 生後12~22ヵ月の健常児を無作為に3対3対1の割合で、42日間で(1)MMRV 2回接種(MMRV群)、(2)1回目にMMR接種、2回目に単価水痘ワクチン接種(MMR+V群)、(3)MMR 2回接種(MMR群:対照群)に割り付けて検討した。 被験児と保護者はすべてのアウトカムについて個別に評価を受け、またデータの評価や解析に関係するスポンサースタッフは治療割付について知らされなかった。 主要有効性エンドポイントは、2回接種後の42日目から第1フェーズの試験終了時点までに確認された水痘の発症(水痘帯状疱疹ウイルスDNAの検出または疫学的関連性で判定)であった。症例は重症度により分類し、有効性の解析はパープロトコル解析によって行われた。安全性の解析には1回以上接種を受けたすべての被験児を含めた。 2005年9月1日~2006年5月10日に、5,803例(平均年齢14.2ヵ月、SD 2.5)が、ワクチン接種を受けた。2回接種MMRVの有効性94.9%、中等度~重症例には99.5% 有効性解析コホートには5,285例が組み込まれた。平均追跡期間はMMRV群36ヵ月(SD 8.8)、MMR+V群36ヵ月(8.5)、MMR群は35ヵ月(8.9)であった。 水痘発症例は、MMRV群37例、MMR+V群243例、MMR群201例が確認された。2回発症例は、3例(全例MMR+V群)でみられた。 中等度~重症の水痘発症例は、MMRV群で2例であったが、MMR+V群では37例が報告された(1例は初回軽症例の2回発症例)。MMR群は117例であった。 すべての水痘に対する2回接種MMRVの有効性は、94.9%(97.5%信頼区間[CI]:92.4~96.6%)であり、中等度~重症の水痘に対しては99.5%(同:97.5~99.9%)であった。 一方、すべての水痘に対する1回接種単価水痘ワクチンの有効性は、65.4%(同:57.2~72.1%)で、事後解析にて評価した中等度~重症の水痘に対する有効性は90.7%(同:85.9~93.9%)であった。 全接種群で最も頻度が高かった有害イベントは、注射部位の発赤であった(被験者のうち最高25%で報告)。 また、1回接種後15日以内に38℃以上の発熱を報告したのは、MMRV群57.4%(95%CI:53.9~60.9%)、MMR+V群44.5%(同:41.0~48.1%)、MMR群39.8%(同:33.8~46.1%)だった。 ワクチン接種に関連していると思われる重大有害イベントは、8件報告された(MMRV群3例、MMR+V群4例、MMR群1例)。全例、試験期間内に治癒した。 以上から著者は、「試験の結果は、あらゆる水痘疾患からの保護を確実なものとするために、短期間の2回接種水痘ワクチンによる予防接種を支持するものである」と結論している。

1893.

4価ワクチンでインフルエンザの予防率をどれくらい向上できるか/NEJM

 B型の2株(ビクトリア系、山形系)を含めた不活化インフルエンザ4価ワクチン(quadrivalent influenza vaccine:QIV)の有効性に関する、3~8歳児5,000例超を対象とした第3相無作為化対照試験の結果が発表された。ワクチン有効率は全体で59.3%、中等症~重症例では74.2%であったことなどが示された。試験を実施・報告したレバノン・アメリカン大学ベイルート病院のVarsha K. Jain氏らは、「QIVはインフルエンザA型とB型を予防する際に有効であることが示された」と結論している。インフルエンザワクチンはWHOではA型2株とB型1株の3価製剤を推奨し、日本でも採用されている。しかし、B型について2株が混合流行する傾向が続いており、4価製剤が開発された。米国では今シーズンから4価が導入されているという(http://www.nih.go.jp/niid/ja/iasr-sp/2257-related-articles/related-articles-405/4099-dj4053.html)。NEJM誌オンライン版2013年12月11日号掲載の報告より。3~8歳児5,168例を対象に無作為化試験 小児(3~8歳)のインフルエンザA型またはB型の予防に関するQIVの有効性を検討した無作為化試験は、多国間の15施設(バングラディシュ、ドミニカ共和国、ホンジュラス、レバノン、パナマ、フィリピン、タイ、トルコ)で行われた。各国で登録された被験児は、QIVを接種する群とコントロールとしてA型肝炎ワクチンを接種する群(以下、対照群)に無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは、リアルタイムPCR(rt-PCR)法で確認されたインフルエンザA型またはB型で、副次エンドポイントは、rt-PCR確認の中等症~重症のインフルエンザと、rt-PCR陽性のインフルエンザウイルス培養株であった。 ワクチンの有効性と日常生活または医療サービス利用への影響に関する評価を、全ワクチン接種コホート群(計5,168例、各群2,584例)、パー・プロトコルコホート群(QIV群2,379例、対照群2,398例)について行った(平均年齢5.4歳、男女ほぼ同数)。全接種コホートでのQIV有効率59.3%、中等症~重症例では74.2% 被験児登録は2010年12月に開始され、インフルエンザ様疾患(37.8℃以上の発熱、咳・咽頭痛・鼻水・鼻閉のうち1つ以上の症状と定義)の発症に関するサーベイランスが6ヵ月以上、2011年10月まで行われた。疾患発症児は発症から14日間日記による記録が行われた。 結果、全ワクチン接種コホートにおけるインフルエンザ様疾患発生は、QIV群563例(422児)、対照群657例(507児)であった。rt-PCR確認インフルエンザの発生は、QIV群62例(2.40%)、対照群148例(5.73%)で、QIV有効率は59.3%(95%信頼区間[CI]:45.2~69.7)であることが示された。培養確認インフルエンザに対する効果は59.1%(97.5%CI:41.2~71.5)であった。 同コホートで中等症~重症であったrt-PCR確認インフルエンザ例についてみると、罹患率はQIV群16例(0.62%)、対照群61例(2.36%)で、QIV有効率は74.2%(97.5%CI:51.5~86.2)であった。 パー・プロトコル群では、QIV有効率は55.4%(95%CI:39.1~67.3)、培養確認インフルエンザに対する効果は55.9%(97.5%CI:35.4~69.9)であった。また、同コホートでの中等症~重症例の有効率は、73.1%(97.5%CI:47.1~86.3)だった。 QIVは対照と比較して、39℃超の発熱および下気道疾患のリスク抑制と関連していた。パー・プロトコル群における相対リスクはそれぞれ、0.29(95%CI:0.16~0.56)、0.20(同:0.04~0.92)だった。 QIVは、4株すべてについて免疫獲得を達成した(接種後6ヵ月時80~90%超)。 重篤な有害イベントの発生は、QIV群36例(1.4%)、対照群24例(0.9%)だった。

1894.

ロタウイルスワクチン、乳児けいれん発作に予防効果

 ロタウイルスワクチンを完全接種(RV5を3回またはRV1を2回)した乳児は、非接種児と比較して、けいれん発作リスクが統計的に有意に低下(初発けいれん発作リスクの18%低下、1年間の全けいれん発作リスクの21%低下)したことが明らかになった。米国国立予防接種・呼吸器疾患センター(NCIRD)のDaniel C. Payne氏らが、2006~2009年のVaccine Safety Datalink(VSD)登録の乳児25万人のデータを後ろ向きに分析し報告した。著者は、「今回示された乳児けいれん発作の減少は、ロタウイルスワクチン関連ベネフィットである、下痢による入院の予防効果を補完するものである」とまとめている。Clinical Infectious Disease誌オンライン版2013年11月20日号の掲載報告。 ロタウイルス胃腸炎とけいれん発作については、同胃腸炎入院児の7%がけいれん発作を経験していたとの報告(カナダの多施設共同研究1,359人)や、ロタウイルス関連のけいれん発作で入院した児のうち18%が少なくとも1日ICUに入室した(米国1施設5年間の後ろ向き研究)など、関連があることが報告されている。同けいれん発作は24時間に1回超と頻度が高い一方、無熱性が特徴である。 研究グループは、ロタウイルスワクチン接種が、けいれん発作による入院あるいは救急外来受診について予防効果を有するかどうかについて検討した。 対象は、2006年2月28日(ロタウイルスワクチンが米国で承認された日)以降に生まれ、2009年11月までにVSDに登録された乳児であった。ロタウイルスワクチンの最終接種日以降4~55週間追跡し、その間のけいれん発作発生率を、接種状況(完全接種と非接種)で比較した。 予防効果の経時的変化を明らかにするため、けいれん発作発生までの時間をCox比例ハザードモデルを用いて分析し、接種状況で比較した追跡期間中の相対的けいれん発作発生率を検討した。 主な結果は以下のとおり。・分析には、VSD登録児25万601例が組み込まれた。そのうち、ロタウイルスワクチンの完全接種群は18万6,502人(74.4%)、非接種群は6万4,099人(25.6%)であった。・けいれん発作発生率は、ロタウイルスワクチン接種状況と統計的に有意に関連していた。けいれん発作発生のうち、ロタウイルス胃腸炎シーズン(1~6月)の発生割合は、非接種群55%に対し、ワクチン接種群は48~49%であった(p=0.023)。・共変量(VSD登録地域、最終接種時年齢、性、けいれん発作発生月)で補正後、ロタウイルスワクチン接種による統計的に有意な予防効果が、初発けいれん発作(対非接種群とのリスク比[RR]:0.82、95%信頼区間[CI]:0.73~0.91)、全けいれん発作(同:0.79、95%CI:0.71~0.88)のいずれについても認められた。

1895.

インフルエンザワクチンに心血管イベント抑制効果(コメンテーター:西山 信一郎 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(144)より-

従来からインフルエンザ感染が心血管イベントに関連することが指摘されていた。 今回著者らは3つの医学データベースを用いて、質が高いと判定した無作為試験の論文を検索し、6,735例を対象にメタ解析を行った。対象の内訳は平均年齢67歳、女性51.3%、心疾患の既往歴を有するもの36.2%で、平均追跡期間は7.9ヵ月であった。 その結果、1年以内の複合心血管イベントの発生率は、インフルエンザワクチン施行群が2.9%と、非施行群の4.7%に比べて36%有意に低かった。さらに割り付け前1年以内にACSの既往歴のある患者と既往のない安定した患者で比較すると、安定した患者ではインフルエンザワクチン接種により有意な複合心血管イベントの抑制効果は見られなかったのに対し、ACS既往歴のある患者では複合心血管イベントが55%低下していた。 今回の検討では、ワクチン接種施行の有無で1年以内の心血管死および全死亡には有意の差を認めていないが、心筋梗塞や脳卒中など、非致死的な個々のエンドポイントの評価はなされていない。 現在わが国でも、インフルエンザに罹患すると重症化しやすい心臓の機能に障害のある患者には、インフルエンザワクチンの摂取が勧められているが、今回の結果を参照すると、心機能が低下していなくても、ACSの既往を有するなど高リスクと考えられる患者には積極的にワクチン接種を勧めるのがよいと考える。

1896.

インフルエンザワクチン接種者で心血管イベント減少/JAMA

 心血管疾患リスクの高い患者に対するインフルエンザワクチンの接種により、心血管イベントが抑制されることが、カナダ・トロント大学のJacob A Udell氏らの検討で示された。非古典的な心血管リスク因子のうち、気道感染症の原因となるインフルエンザやインフルエンザ様感染が、致死的および非致死的なアテローム血栓性イベントと関連することが指摘されている。また、インフルエンザワクチン接種により心血管イベントが抑制されることが、いくつかの疫学試験で示唆されている。JAMA誌2013年10月23日号掲載の報告。心血管イベント予防効果をメタ解析で評価 研究グループは、インフルエンザワクチンによる心血管イベントの予防効果を検証するために、文献を系統的にレビューし、メタ解析を行った。対象は、高い心血管疾患リスクを有する患者においてインフルエンザワクチン接種とプラセボまたは対照を比較した無作為化試験で、有効性あるいは安全性のイベントとしての心血管アウトカムについて報告している論文とした。 3つの医学データベース(MEDLINE、EMBASE、Cochrane Library Central Register of Controlled Trials)を用いて、2013年までに発表された無作為化試験の論文を検索した。選出された論文から、2名の研究者が別個に、試験デザイン、ベースラインの患者背景、アウトカム、安全性などのデータを抽出した。無作為化、割り付け情報のマスク、盲検法、フォローアップの完全性に関する適切な方法の記述がある論文を質の高い試験と判定した。 複合心血管イベント(心筋梗塞による死亡または入院、不安定狭心症、脳卒中、心不全、緊急冠動脈血行再建術)、心血管死、全死因死亡について、ランダム効果モデルを用いてMantel-Haenszel法によりリスク比(RR)および95%信頼区間(CI)を算出した。また、割り付け前の1年以内の急性冠症候群(ACS)の有無で層別化した。複合心血管イベントが有意に36%低下 発表済みの5試験と未発表の1試験に参加した6,735例(ワクチン群3,373例、プラセボ/対照群3,362例)が解析の対象となった。全体の患者背景は、平均年齢67歳、女性51.3%、心疾患の既往歴36.2%で、平均フォローアップ期間は7.9ヵ月であった。 発表済みの5試験の解析では、1年以内の複合心血管イベントの発症率はインフルエンザワクチン群が2.9%(95/3,238例)であり、プラセボ/対照群の4.7%(151/3,231例)に比べ有意に低かった(RR:0.64、95%CI:0.48~0.86、p=0.003)。 ACSの既往歴のある患者では、インフルエンザワクチン接種による複合心血管イベントの抑制効果が認められた(RR:0.45、95%CI:0.32~0.63、p<0.001)が、既往歴のない患者では有意な抑制効果はみられず(0.94、0.55~1.61、p=0.82)、ACSによる交互作用が示唆された(交互作用検定:p=0.02)。 1年以内の心血管死(ワクチン群1.3% vs プラセボ/対照群1.7%、RR:0.81、95%CI:0.36~1.83、p=0.61)および全死因死亡(1.9 vs 2.1%、0.85、0.45~1.61、p=0.62)には有意な差はみられなかった。 未発表の1試験のデータを加えても、結果は同様であった。 著者は、「インフルエンザワクチン接種により、心血管疾患のリスクが高い患者において有害な心血管イベントのリスクが低下した」と結論し、「これらの知見を検証し、心筋梗塞や脳卒中などの個々の心血管エンドポイントを評価するために、適切なパワーを備えた大規模な多施設共同試験を行う必要がある」と指摘している。

1897.

新生児のアトピーにビタミンAとBCGが関与?

 アトピー性皮膚炎またはアトピー性疾患に関して、接種時期が早期か否かにかかわらずBCGワクチンの有意な影響はなかったが、新生児へのビタミンA補給はアトピー性皮膚炎の増加と関連していることが、無作為化比較試験の長期追跡調査の結果、明らかになった。また調査ではBCG瘢痕があることとアトピー性皮膚炎減少との関連も明らかになったという。オーストラリア・Indepth NetworkのN. Kiraly氏らが報告した。Allergy誌2013年9月号(オンライン版2013年8月31日号)の掲載報告。 最近の報告で、ワクチン接種や微量栄養素補給などの免疫原性介入が、アトピー感作やアトピー性疾患に影響を及ぼす可能性があるというエビデンスが示唆されていた。そこで研究グループは、無作為化試験の長期追跡調査から、新生児へのBCG接種、ビタミンA補給、その他のワクチン接種が小児期のアトピー性皮膚炎に影響を及ぼすかについて評価を行った。 試験は、アフリカ西部のギニアビサウで行われた。BCG接種については、低体重出生児を早期接種群(介入群)または後期接種群(通常群)に無作為化し、さらにサブグループについて2×2要因配置でビタミンAまたはプラセボの補給群に無作為に割り付けた。 被験者は3~9歳時まで追跡し評価した。主要アウトカムは、皮膚プリックテスト結果3mm以上を定義としたアトピー性皮膚炎の発症とした。副次アウトカムは、湿疹、喘息、食物アレルギーの症状が認められたこととした。 主な結果は以下のとおり。・281例の小児が、評価が有効な皮膚プリックテストを受けた。そのうち14%(39/281例)でアトピー性皮膚炎が認められた。・BCGの接種時期の違いによるアトピー性皮膚炎発症の有意差はみられなかった(OR:0.71、95%CI:0.34~1.47)。・BCG瘢痕を有する小児では、アトピー性皮膚炎の有意な減少が認められた(同:0.42、0.19~0.94)。・ビタミンA補給は、アトピー性皮膚炎増大と関連していた(同:2.88、1.26~6.58)。とくにBCGを同時投与された例での関連が大きかった(同:5.99、1.99~18.1、ビタミンA補給とBCGの相互作用のp=0.09)。・BCG接種はアトピー性疾患と関連していなかった。しかしビタミンA補給は、過去12ヵ月以内の喘息オッズ比増大と関連していた(同:2.45、1.20~4.96)。

1898.

A群髄膜炎の新ワクチン、集団接種で罹患率94%低下/Lancet

 A群髄膜炎菌-破傷風トキソイド結合型ワクチン(PsA-TT)の集団接種は、A群髄膜炎の罹患率を9割以上減少させ非常に有効であることが、チャド・Centre de Support en Sante InternationalのD. M. Daugla氏らにより報告された。PsA-TTは、サハラ砂漠以南のワクチン開発プロジェクトにより開発された。2009年にインドで承認され2010年にはWHOによる安全性と免疫原性の事前承認を得て、現在“アフリカ髄膜炎ベルト地帯”で、本研究にも資金を提供しているビル&メリンダ・ゲイツ財団などの支援の下、接種キャンペーンが展開されているという。Lancet誌オンライン版2013年9月12日号掲載の報告より。PsA-TT接種キャンペーン実施地域で髄膜炎罹患率94%減少 Daugla氏らは、2009年1月~2012年6月のチャドの全国データから、PsA-TT接種キャンペーンの前後におけるA群髄膜炎の罹患率について調べ、同接種の効果について分析した。ワクチン接種キャンペーンを実施した地域では、より綿密な調査を行った。髄膜炎菌は脳脊髄液または中咽頭スワブから採取し、通常微生物・分子法で検査を行った。 2011年12月に10日間にわたって行われたPsA-TT接種キャンペーン中に同接種を受けた人は、チャドの首都N’Djamena周辺の3地域で約180万人(1~29歳)に上った。 分析の結果、2012年の髄膜炎流行期間の髄膜炎罹患率は、大規模なPsA-TT接種プログラムを実施しなかった地域では、10万人当たり43.8(人口870万人中3,809人)だったのに対し、同接種キャンペーンを行った3地域では、10万人当たり2.48(人口230万人中57人)と、粗罹患率で94%の減少(p<0.0001)、罹患率比は0.096(95%信頼区間[CI]:0.046~0.198)と、大幅な減少が認められた。接種都市ではA群血清型髄膜炎の報告例なし、周辺農村地域でも有意に減少 また同3地域ではA群血清型髄膜炎の報告例はなく、さらに首都に近い農村地域では、A群血清型髄膜炎が、ワクチン接種2~4ヵ月前には4,278人中32人(0.75%)に認められたが、ワクチン接種4~6ヵ月後には5,001人中わずか1人だった(補正後オッズ比:0.019、95%CI:0.002~0.138、p<0.0001)。 同研究グループは、「PsA-TTはA群血清型の侵襲性髄膜炎に対し非常に高い効果が認められた」と結論したうえで、「効果の持続期間についてさらなる研究が必要だ」とまとめている。

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インフルエンザのリスク因子、エビデンスが弱い/BMJ

 インフルエンザ関連合併症のリスク因子を定義するエビデンスのレベルは低いことが、カナダ・マックマスター大学のDominik Mertz氏らによるシステマティックレビューの結果、明らかにされた。インフルエンザ発症において一部の患者集団では合併症の併発や重症化するリスクが報告され、ハイリスク集団にワクチン接種を優先する勧告がWHOおよび世界各国で行われている。しかし、これまで同集団を定義するエビデンスの質について包括的かつシステマティックなレビューは行われていなかったという。BMJ誌オンライン版2013年8月23日号掲載の報告より。234論文61万例データをメタ解析 研究グループは、季節性またはパンデミック・インフルエンザ患者における重症アウトカムのリスク因子の評価を目的にシステマティックレビューを行った。 Medline、Embase、CINAHL、Global Health、Cochrane Central Register of Controlled Trialsをデータソースに、2011年3月までに公表された論文について検索し、インフルエンザの罹患者でリスク因子とアウトカム(死亡、人工呼吸器装着、入院、ICU入室、肺炎、複合アウトカムなど)の組み合せについて興味深い報告がされていた観察研究を選定した。 エビデンスの評価は、バイアスリスクを評価するNewcastle-Ottawaスケールによる評価と、GRADEフレームワークを用いて行った。 検索の結果、6万3,537論文の中から、包含基準を満たした234論文、61万782例分のデータを特定し解析に組み込んだ。いかなるリスク因子もエビデンスレベルが低い 解析の結果、インフルエンザの重症アウトカムに関するリスク因子のエビデンス支持は、Newcastle-Ottawaスケール評価で限界値から0の範囲であった。これはとくに、2009H1N1パンデミック以外のデータおよび季節性インフルエンザの研究データが、相対的に不足していたことと関連していた。 また、公表論文は、検出力の不足と交絡因子についての補正の不足などが広範囲に及んでおり、解析には限りがあった。たとえば、補正後推定リスク値が得られたのは260試験のうち39例(15%)で、そのうちリスク因子とアウトカムの比較のデータが得られたのは5%のみにとどまった。 エビデンスのレベルは「いかなるリスク因子」においても低かった。死亡のオッズ比は、パンデミック・インフルエンザ2.77(95%信頼区間[CI]:1.90~4.05)、季節性インフルエンザ2.04(同:1.74~2.39)だった。同様に、肥満症については、パンデミック2.74(同:1.56~4.80)、季節性30.1(同:1.17~773.12)、心血管疾患は同2.92(1.76~4.86)と1.97(1.06~3.67)、神経筋疾患は同2.68(1.91~3.75)と3.21(1.84~5.58)だった。 その他のすべてのリスク因子に関してもエビデンスレベルは非常に低かった。よく言われる妊娠や民族性の性質をリスク因子として同定することはできなかった。一方で、分娩後4週未満の女性において、パンデミック・インフルエンザの死亡リスクが有意に高いことが認められた(4.43、1.24~15.81)。 上記の結果を踏まえて著者は、「インフルエンザ関連の合併症に関するリスク因子を支持するエビデンスレベルは低く、よく言われる妊婦や民族性のリスク因子もリスク因子として確認することはできなかった。厳密で十分検出力のある研究が必要である」と結論している。

1900.

米国における7価結合型肺炎球菌ワクチンの効果を検証(コメンテーター:小金丸 博 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(127)より-

米国では、2000年に乳幼児に対する7価結合型肺炎球菌ワクチン(PCV7)が導入され、侵襲性肺炎球菌感染症は大幅に減少した。しかし、ワクチンに含まれない血清型による肺炎球菌感染症の増加が報告され、PCV7の有効性が持続しているかどうか懸念されていた。 本論文は、米国のNationwide Inpatient Sample databaseを用いて、肺炎が原因の年間入院率を、ワクチン導入前(1997~1999年)と導入後(2007~2009年)で比較検討した研究である。その結果、2歳未満の小児の入院件数は、10万小児あたり555.1件(95%信頼区間:445.1~657.1)減少しており、年間4万7,000件の入院減少と推計された。また、85歳以上の成人の入院件数も、10万人あたり1300.8件(同:984.0~1617.6)減少しており、年間7万3,000件の入院減少に結びついたと推計された。18~39歳、65~74歳、75~84歳の年齢グループの入院件数は、それぞれ10万人あたり8.4件、85.3件、359.8件減少していた。全体の入院件数は、10万人当たり54.8件(同:41.0~68.5)減少しており、年間16万8,000件の入院減少と推計された。 本論文のポイントの1つは、PCV7の効果が約10年後にも持続していた点である。ワクチンに含まれない血清型による肺炎球菌感染症の増加が報告されているが、それでもワクチンの役割を十分果たしていたといえる結果である。諸外国では、カバーできる血清型の数を増やした13価結合型肺炎球菌ワクチン(PCV13)へ移行し、成人への適応拡大も行われており、さらなる肺炎球菌感染症の減少が期待できる。 もう1つのポイントは、ワクチンを接種した小児のみならず、接種していない成人(とくに高齢者)の肺炎入院率をも減少させている点である。理由としては、ワクチンを接種した小児での鼻咽頭の保菌率が低下することで、成人への伝播が減少するためと考えられている。成人における肺炎入院率の減少は、喫煙率の減少、インフルエンザワクチンの接種増加などの要素もあるかもしれないが、PCV7の寄与する部分の方が大きいだろうと考察されている。 本邦では、PCV7は2010年に認可され、2013年4月から小児の定期接種のワクチンとなった。将来的にはPCV13への移行が決定しており、小児の定期接種化、成人への適応拡大などの議論が進んでいる。諸外国と比較するとワクチンの導入が遅れているが、今後、本邦でも侵襲性肺炎球菌感染症の減少が期待される。

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