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オミクロン株流行中の5~11歳へのワクチン接種、実際の有効性は?/NEJM

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)オミクロン変異株流行中における、5~11歳へのmRNAワクチンBNT162b2(ファイザー製)の2回接種は、SARS-CoV-2感染および症候性新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対し中程度の保護効果を示したことが、イスラエル・Clalit Research InstituteのChandra J. Cohen-Stavi氏らによる検討で示された。これまでオミクロン変異株流行中の5~11歳への、BNT162b2ワクチンのリアルワールドでの有効性に関するエビデンスは限定的だった。NEJM誌オンライン版2022年6月29日号掲載の報告。13万6,127例を対象に、SARS-CoV-2感染・症候性COVID-19への有効性を検証 研究グループは、イスラエル最大の医療ケア組織のデータを基に、2021年11月23日以降にBNT162b2ワクチン接種を受けた5~11歳の小児を特定。ワクチン非接種の小児とマッチングし、オミクロン変異株流行中にBNT162b2ワクチン接種を受けた小児における、1回目および2回目接種後のSARS-CoV-2感染と症候性COVID-19に対する有効性を推定した。 両群の2022年1月7日までの累積アウトカム発生について、Kaplan-Meier推定法で推定し、ワクチン有効性を1-リスク比で算出した。また、年齢サブグループ別のワクチン有効性も推定した。 試験期間中にワクチンを受けた試験適格児は13万6,127例、マッチドワクチン非接種児は9万4,728例だった。有効性は5~6歳が10~11歳より高い傾向 記録されたSARS-CoV-2感染に対するBNT162b2ワクチンの推定有効率は、1回目接種後14~27日で17%(95%信頼区間[CI]:7~25)、2回目接種後7~21日で51%(39~61)だった。 2回目接種後7~21日に記録されたSARS-CoV-2感染に関する両群の絶対リスク差は、1,905件(95%CI:1,294~2,440)/10万人、症候性COVID-19については同599件(296~897)/10万人だった。 症候性COVID-19に対するBNT162b2のワクチン有効率は、1回目接種後14~27日で18%(95%CI:-2~34)、2回目接種後7~21日で48%(29~63)だった。 年齢サブグループ別にみた傾向として、10~11歳と高年齢グループに比べ、5~6歳と低年齢グループのほうが、ワクチン有効性が高かった。2回目接種後7~21日に記録されたSARS-CoV-2感染への有効率は38%(95%CI:18~53)vs.68%(43~84)、同じく症候性COVID-19への有効率は36%(0~61)vs.69%(30~91)だった。

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酸素療法を伴う/伴わない中等度のCOVID-19肺炎患者におけるファビピラビル、カモスタット、およびシクレソニドの併用療法 第III相ランダム化比較試験(解説:寺田教彦氏)

オリジナルニュース中等症コロナ肺炎、ファビピラビル+カモスタット+シクレソニドで入院期間短縮/国内第III相試験(2022/06/15掲載) 本研究は中等症のCOVID-19肺炎患者におけるファビピラビル、カモスタット、およびシクレソニドの併用療法を評価した論文であり、2020年11月11日から2021年5月31日までに登録された本邦でのCOVID-19罹患患者を対象としている。登録患者は121人で、56人が単独療法、61人が併用療法だった。 本研究では、経口ファビピラビルにカモスタットとシクレソニドを併用することで安全性の懸念なしに入院期間の短縮ができたことが示されたが、本論文の結果が本邦のCOVID-19治療に与える影響は小さいと考えられる。理由を以下に示す。 まず、執筆時点での中等症のCOVID-19肺炎患者に対する治療とそのエビデンスを確認する。本邦ではCOVID-19に対する薬物治療の考え方 第13.1版等にも記載があるように、抗ウイルス薬としてレムデシビルを投与し、臨床病態によっては(酸素投与がある場合に)抗炎症薬としてデキサメタゾンやバリシチニブの投与が行われている。このうち、デキサメタゾンはRECOVERY 試験(Horby P, et al. N Engl J Med. 2021;384:693-704.)で、世界で初めてCOVID-19患者治療で有意な改善を、バリシチニブもレムデシビルとの併用下で臨床的な改善が報告されている(Kalil A, et al. N Engl J Med. 2021;384:795-807.)。レムデシビルに関しては、中等症のCOVID-19に対する単剤治療での有意な臨床的アウトカムは見いだしがたいが、発症早期の患者に投与することで臨床的なアウトカムや死亡率を低下させた報告があり、抗ウイルス効果は期待されるだろう(Gottlieb RL, et al. N Engl J Med. 2022;386:305-315.)。そして、ステロイドを投与する患者に関しては、先行して抗ウイルス薬を投与したほうが臨床症状の改善が早くなり、重症化率を低下させるという報告がある(Shionoya Y, et al. PLoS One. 2021;16:e0256977.)ことを加味すると、COVID-19の酸素需要がある患者には、ステロイドなどの抗炎症薬の投与が望ましく、レムデシビルも抗炎症薬とともに投与することがよいだろう。 さて、本研究に戻る。本研究が開始された時期は、COVID-19に対する確立された治療薬はなく、各国で有効性が期待される薬剤を探っている状況だった。本研究で対象となった薬剤の、ファビピラビル、カモスタットとシクレソニドについて整理する。 ファビピラビルは本邦で開発され、新型又は再興型インフルエンザウイルス感染症に対する承認があり備蓄されていた抗ウイルス薬である。COVID-19が流行した初期に期待された治療法の1つであったが、本邦で実施された多施設無作為化オープンラベル試験でも早期のCRP陰性化や解熱傾向は見られたものの、有意差には達しておらず(Doi Y, et al. Antimicrob Agents Chemother. 2020;64:e01897-20.)、現時点でCOVID-19の標準治療に位置づけられてはいない。 シクレソニドもCOVID-19の治療で有効性が期待されていた薬剤である。本研究と患者対象が一致したデータではないが、国内のランダム化比較試験ではシクレソニド投与群で肺炎増悪が多く(https://www.ncgm.go.jp/pressrelease/2020/20201223_1.html)、臨床的な改善を示すことができなかった。カモスタットも臨床的改善までの日数やICU滞在期間の短縮、死亡率などの改善を示すことができず、現時点で臨床的に常用されている薬剤ではない(Gunst JD, et al. EClinicalMedicine. 2021;35:100849)。 本研究は、作用機序の異なる薬剤を組み合わせることで臨床的な効果が向上することを期待していたが、シクレソニドやカモスタットは個々の薬剤としては、明らかなデータの改善を示す研究はなく、併用による相加あるいは相乗効果の薬理学的な背景も記載はない。本文に記載があるように、サンプルサイズも小さく安全性のプロファイルに懸念が残る点、hard clinical primary outcome(臨床的に客観性の高い主要評価項目)が採用されていないという点といった問題があり、これらの併用薬の有効性を示すためには、より大規模の人数で、標準治療群とhard clinical primary outcomeについて比較をすることが望ましいだろう。 本研究結果は、現在のCOVID-19診療に与える影響は小さいと考えるが、本邦における感染症研究という観点からは、同研究が発表された意義は大きいと考える。 パンデミックを起こした感染症の臨床研究は、早期に有効な治療法を見いだすことが望ましく、速やかな臨床研究の実施が望ましいが、臨床研究を実施するには医師だけではなく、多くの職種の協力や適切なモニタリング、参加者の協力などの資金とともに環境整備が必要となる。本研究のようにパンデミック下での前向き研究実施には、労力と研究が遂行できる環境、それらの下準備が求められる。 新規感染症に対する創薬を行う場合は、適切な臨床試験のもとで適正な薬剤の評価が行われることが重要であり、本邦でも新規感染症に対する創薬を行うためには、このような臨床研究ができる環境をさらに整備してゆくべきであろう。 COVID-19診療について振り返ってみると、ワクチン接種や重症化リスクの高い患者に対する治療薬の整備により、重症化率、致死率はこの2年間で大きく減少しているが、未だに終息はしていない。重症化リスクの高くはない患者さんでも、症状の早期緩和、Long COVID罹患率の低下、他者への感染リスクを低下させるなどの社会生活を円滑に進めるための薬剤が期待されており、これらの問題を解決する薬剤が開発されることを期待したい。ただ、本邦ではワクチン接種も進んでおり、オミクロン株流行下でも、重症化率や死亡率は低下し、急性期症状持続期間も短縮していたことを考えると、オミクロン株で抗ウイルス薬の有効性を評価する場合には工夫が必要かもしれない。COVID-19の比較対象にしばしば出されるインフルエンザも抗ウイルス薬があるが、インフルエンザに対する抗ウイルス薬は発症後48時間以内に内服しなければ症状などの有意な改善が望めないように、急性期症状持続期間が短縮しているオミクロン株で治療効果を評価する場合は、速やかな抗ウイルス薬投与ができる環境で評価を行わないと臨床症状の改善で有意差を確認することは難しいかもしれない。 今後は、新型コロナウイルス・オミクロン株に対する抗ウイルス薬の評価が行われることになると考えるが、ウイルスの特徴も踏まえた上で、臨床現場でどのような患者さんに、どのように用いることで、どのような効果を期待するのかを適切に捉えた臨床試験を組み立て、評価を行うことがとくに望まれると考える。

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今冬にインフル流行の懸念、ワクチンを強く推奨/日本ワクチン学会

 近年、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行により、季節性インフルエンザは影を潜めることになった。しかし、2022-23シーズンはインフルエンザの流行が懸念されている。その理由として、北半球の流行予測をする指標となる南半球のオーストラリアにおいて、2022年4月中旬以降からインフルエンザの流行が報告されているからである。そこで、日本ワクチン学会(理事長:岡田 賢司)は、6月23日に同学会のホームページで、「2022-23 シーズンの季節性インフルエンザワクチンの接種に関する日本ワクチン学会の見解」を公開した。 本見解では、2022-23シーズンのインフルエンザワクチン接種を強く推奨し、とくに接種が推奨される方に、確実にインフルエンザワクチンが接種可能な体制を早期に準備しておくことが重要と示している。2022-23シーズンのインフルエンザ流行の懸念 2021-22シーズンのわが国のインフルエンザ流行状況と感染者は、報告総数は753人(2020-21シーズンは1,107人)でCOVID-19の流行以前と比べると明らかに流行の規模は小さいものの、2022-23シーズンではインフルエンザに対する感受性者のさらなる増加が危惧されるとともに、海外から日本への渡航制限解除の影響による感染者数の増加が懸念される。 今後、インフルエンザが3シーズンぶりに流行した場合、死亡者や重症者の増大、またCOVID-19と時期を同じくして流行することなどによって、医療負荷の増大が心配されるとしている。 また、オーストラリアにおけるインフルエンザ流行状況(2022年6月5日現在)として、インフルエンザ様疾患の報告例が2022年3月以降、増加が報告され、4月中旬から確認されたインフルエンザの週ごとの報告数は、過去5年間の平均を超えている。また、5〜19歳の年齢層と5歳未満の子どもが最も高い報告率であることも示されている。2022-23シーズンのインフルエンザワクチン接種について 学会は「インフルエンザの罹患率や死亡率を低下させるため、生後6ヵ月以上のすべての人に対するインフルエンザワクチンの接種を推奨する」としている。1)日本における2022-23シーズンのインフルエンザHAワクチン インフルエンザHAワクチンは、4価ワクチンであり、2021-22シーズンからA/H3N2株とB/ビクトリア系統株の2株が変更となった。・A型株 A/ビクトリア/1/2020(IVR−217)(H1N1) A/ダーウィン/9/2021(SAN−010)(H3N2)・B型株 B/プーケット/3073/2013(山形系統) B/オーストリア/1359417/2021(BVR−26)(ビクトリア系統)2)特に接種が推奨される方・定期接種対象者:65歳以上の方、60~64歳で、心臓、腎臓、呼吸器の機能に障害があり身の回りの生活を極度に制限される方、60~64歳で、ヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能に障害があり、日常生活がほとんど不可能な方・医療従事者、エッセンシャルワーカー:急性期後や長期療養施設のスタッフを含む医療従事者、薬局スタッフ、その他重要インフラの業務従事者の方・インフルエンザの合併症のリスクが高い方:生後6ヵ月以上5歳未満の乳幼児、神経疾患のある子ども、妊娠中の方、その他特定の基礎疾患を持つ方3)接種回数と接種間隔・13歳以上の方は、原則1回接種。ただし、医師が特に必要と認める場合は、1〜4週の間隔で2回接種。・生後6ヵ月以上13歳未満の小児は2〜4週の間隔で2回接種。ただし、世界保健機関(WHO)は、ワクチン(不活化ワクチンに限る)の用法において、9歳以上の小児および健康成人に対しては「1回注射」が適切である旨、見解を示し、米国予防接種諮問委員会(US-ACIP)も、9歳以上の者は「1回注射」とする旨を示している。何らかの事情で2回の接種機会が得られない場合でも少なくとも1回は接種し、未接種のまま、インフルエンザシーズンを迎えないことを推奨する。ワクチンの有効性と安全性1)有効性 現行のインフルエンザワクチン製造において、インフルエンザウイルスの流行株とワクチン株の一致率は毎年異なるために、インフルエンザワクチン推定有効率において年次差がみられる。そのため、インフルエンザワクチンを接種すればインフルエンザに絶対にかからない、というものではなく、インフルエンザの発病予防、発病後の重症化や死亡を予防することに関しては、一定の効果があるとされる。(国内における研究報告)・65歳以上の高齢者福祉施設に入所している高齢者については34〜55%の発病を阻止し、82%の死亡を阻止する効果があった・6歳未満の小児を対象とした2013/14〜2017/18シーズンの研究では、発病防止に対するインフルエンザワクチンの有効率は41〜63%と報告・3歳未満の小児を対象とした2018/19〜2019/20シーズンの研究では、発病防止に対するインフルエンザワクチンの有効率は42〜62%と報告2)安全性 インフルエンザワクチン接種後には、注射部位の発赤、痛み、腫れなどの局所反応や、発熱、悪寒、頭痛、倦怠感、関節痛、筋肉痛などの全身反応を含む副反応が出現する可能性がある。これらの副反応は、通常、2〜3日以内に消失。また、重い副反応の報告がまれにあるが、報告された副反応の原因がワクチン接種によるものかどうかは、必ずしも明確ではない。インフルエンザワクチンの接種後に報告された副反応が疑われる症状などについては、順次評価が行われ公表される。 日本ワクチン学会では、「今冬の国民の感染症対策と医療体制の維持のため、2022-23シーズンのインフルエンザワクチン接種について、強く推奨いたします」と提言し、「確実にインフルエンザワクチンが接種可能な体制を、早期に準備しておくことが重要」と記している。

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第107回 医師が臨床工学技士に縫合を指示、医師法違反に当たるか?

<先週の動き>1.医師が臨床工学技士に縫合を指示、医師法違反に当たるか?2.新型コロナウイルスの新規感染者数、再び増加傾向に/厚労省3.コロナの影響で国保と後期高齢者医療広域連合は大幅黒字/厚労省4.100倍のモルヒネ処方、業務上過失致死の疑いで医師と薬剤師を書類送検5.在宅医銃殺事件のふじみ野市、「殺意や危険を感じた」スタッフが複数6.部下を眠らせ自宅に連れ込んだ美容CL院長、強制わいせつ容疑で逮捕1.医師が臨床工学技士に縫合を指示、医師法違反に当たるか?千葉市立海浜病院で昨年7月、医師の指示により医師免許を持たない臨床工学技士に皮膚縫合の一部を行わせたことが明らかとなった。同院によれば、問題が起きたのは心臓ペースメーカーの部品交換手術で、当技士はペースメーカーの動作確認のため手術に参加。執刀医は「自分の指導下であれば問題ないと思った」と話している。2022年1月、市に匿名の情報提供があったことから発覚。同院は速やかに事実確認を行い、外部の有識者を交えて医療事故検討委員会での検討を行い、当事者である技士と縫合を指示した執刀医の2人に訓告処分を行った。病院全体で改善と再発防止に向けた取り組みを進めている。医師法は医師資格を持たない者の医療行為を禁じているが、市は「違法行為には当たらない」との認識を示している。なお、患者への身体的な影響はなく、同院は3月に患者本人への説明・謝罪を行っている。(参考)医師免許ない臨床工学技士、手術で皮膚縫合(読売新聞)医師資格ないのに手術の縫合 千葉市立病院で、健康面被害なし(中日新聞)医師以外の医療従事者による業務範囲を超えた医療行為について(市立海浜病院)2.新型コロナウイルスの新規感染者数、再び増加傾向に/厚労省厚生労働省は、6月30日に第89回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードを開催した。新規感染者数の今週先週比は1.17と「全国的に上昇傾向に転じた」とされ、今後の短期的な予測では、大都市を中心に感染者数のさらなる増加が見込まれる。年代別で見ても、おおむねすべての年代で微増となっており、療養者数および重症者数は緩やかな増加に転じている。なお、病床使用率は総じて低水準にあり、死亡者数は減少傾向にある。今後、これまでのワクチン接種などによる免疫効果が徐々に下がっていくことや、7月以降は夏休みなどで人との接触機会が増えること、オミクロン株の「BA.5」が国内でも主流になる可能性があることなどから、医療体制への影響も含め注視する必要がある。60歳以上に対する4回目ワクチン接種の加速のほか、基本的な感染対策を徹底することなどが呼びかけられた。(参考)新規感染者数「全国的に上昇傾向に転じた」コロナアドバイザリーボード分析・評価(CB news)新型コロナ“全国で増加 BA.5で感染拡大の懸念も”専門家会合(NHK)第89回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード3.コロナの影響で国保と後期高齢者医療広域連合は大幅黒字/厚労省厚労省は2020年度の国民健康保険の財政状況を発表した。新型コロナウイルスの感染拡大以降、医療機関に支払われる保険給付費が減少したため、支出は前年度比3.5%減少して保険料収入を下回った。これにより単年度の実質収支は+2,054億円と過去最大の黒字となった。同時に2020年度の後期高齢者医療制度の財政状況についても公表し、収支は前年度より4,600億円あまり増加し、8,219億円の黒字となっている。(参考)市町村国保でも2020年度はコロナ感染症の影響で大幅黒字、積立金は1兆3257億円に増加―厚労省(Gem Med)後期高齢者医療広域連合、8,200億円超の黒字 20年度 受診控えで保険給付費大幅減、厚労省(CB news)4.100倍のモルヒネ処方、業務上過失致死の疑いで医師と薬剤師を書類送検必要とされる量の100倍のモルヒネを誤って処方し、高齢患者をモルヒネ中毒死させたとして、警視庁は、武蔵国分寺公園クリニックの女性医師と調剤にあたった薬剤師を業務上過失致死容疑にて書類送検した。患者は93歳の男性で、昨年2月に呼吸困難のためクリニックの在宅診療を受け、この医師からモルヒネの内服薬を処方された。薬剤師から渡された薬を服用したところ、約1週間後にモルヒネ中毒により死亡した。クリニックによれば、遺族とはすでに示談が成立しており、また事故の詳細については 一般社団法人 日本医療安全調査機構(医療事故調査・支援センター)に詳細な報告書を提出している。(参考)93歳に必要量100倍のモルヒネ処方 容疑の医師と薬剤師書類送検(朝日新聞)モルヒネ中毒で男性死亡 業務上過失致死の疑い 医師ら書類送検(NHK)報道の件について(武蔵国分寺公園クリニック)5.在宅医銃殺事件のふじみ野市、「殺意や危険を感じた」スタッフが複数埼玉県ふじみ野市で、今年1月に患者家族が在宅医療を担当していた医師を射殺した事件で、さいたま地検は1日、容疑者を殺人や殺人未遂などの罪で起訴した。この事件を受け、地元の東入間医師会が在宅医療や訪問介護を行っている事業所を対象に調査した結果、介護従事者への殺意をほのめかす家族に遭遇したり、包丁を向けられるなど危険を感じたことがあるという回答が複数寄せられていたことが判明した。在宅医療や介護の安全を確実に守るため、行政命令の規定や罰則が必要とする意見も上がっている。(参考)在宅医療や介護で「危険感じた」医師ら殺傷事件受け調査 埼玉(NHK)医師殺害の罪、男起訴 埼玉の立てこもりで地検(日経新聞)6.部下を眠らせ自宅に連れ込んだ美容CL院長、強制わいせつ容疑で逮捕美容整形クリニックの女性職員が、上司に当たる医師に睡眠薬を飲まされて自宅でわいせつ行為を受けたとして、警視庁捜査1課は準強制性交等とわいせつ目的略取の疑いで「ミッドクリニック」の院長を逮捕した。女性職員が院長と会食した後、院長の自宅に連れこまれ、わいせつ行為を受けたと警視庁に相談して被害が発覚した。被害者の体内からは睡眠薬の成分が検出されている。竹沢容疑者の周辺からは警察に同様の被害相談があり、同課が調べている。(参考)部下に睡眠薬飲ませわいせつ 容疑で美容外科医逮捕(産経新聞)部下に睡眠薬でわいせつ行為か 美容整形クリニック院長を逮捕(NHK)

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2価RSVpreFワクチン、第IIa相チャレンジ試験で有効性を確認/NEJM

 2価の呼吸器多核体ウイルス(RSV)融合前F蛋白ベース(RSVpreF)のワクチンはプラセボと比較して、症候性のRSV感染やウイルス排出の予防効果が高く、安全性に関する明らかな懸念も認めないことが、ドイツ・Pfizer PharmaのBeate Schmoele-Thoma氏らの検討で示された。研究の成果は、NEJM誌2022年6月23日号で報告された。ワクチン接種後にウイルスを鼻腔内投与 本研究は、2価RSVpreFワクチンの有効性と安全性の評価を目的に、単施設で行われた探索的なRSVチャレンジ試験(二重盲検無作為化プラセボ対照第IIa相試験)である(米国Pfizerの助成を受けた)。 健康な成人(年齢18~50歳)が対象とされ、2価RSVpreFワクチン(120μg、アジュバントは含有されていない)の単回筋肉内注射を受ける群またはプラセボ群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。これらの参加者は、ワクチンまたはプラセボの接種から約28日の時点で、RSV-A Memphis 37bチャレンジウイルスを鼻腔内に投与され、隔離室で12日間の観察を受けた。 ウイルスの投与を受けた参加者は、ウイルス投与から28日後にフォローアップのために受診し、ワクチン注射から6ヵ月後(ウイルス投与から155日目)に最後の受診をした。 プロトコルで事前に規定された主要エンドポイントは、(1)症候性RSV感染(逆転写酵素定量的ポリメラーゼ連鎖反応[RT-qPCR]検査でウイルスRNAが少なくとも2日連続で検出)が確定され、3つのカテゴリー(上気道、下気道、全身)のうち2つ以上で重症度を問わない臨床症状が1つ以上みられるか、または1つ以上のカテゴリーでGrade2の臨床症状がみられる、(2)ウイルス投与後1日目から退院までの総症状スコア、(3)RT-qPCR検査で測定された鼻腔洗浄液検体中のRSVウイルス量のウイルス投与後2日目から退院(12日目)までの曲線下面積(AUC)とされた。ワクチン有効率86.7%、重篤・重度の有害事象はない 70例が登録され、ワクチン群に35例(スクリーニング時の年齢中央値24歳[範囲19~47]、女性10例[29%])、プラセボ群にも35例(26歳[20~50]、10例[29%])が割り付けられた。計画どおり、このうち62例(89%、両群31例ずつ)がRSV-A Memphis 37bを鼻腔内に投与され、60例が隔離観察期間を完了した。 チャレンジウイルスの投与を受けた参加者における、症候性RSV感染(ウイルスRNAの2日以上連続の検出で確定)の予防に関するワクチンの有効率は、86.7%(95%信頼区間[CI]:53.8~96.5)であった。症候性感染は、ワクチン群が6%(2/31例)、プラセボ群は48%(15/31例)で発現した。 ウイルス投与後2~12日目までのRT-qPCR検査で測定したRSVウイルス量のAUC(時間×log10コピー/mL)中央値は、ワクチン群が0.0(IQR:0.0~19.0)、プラセボ群は96.7(0.0~675.3)であった。 ワクチン群では症状の発現期間と重症度の双方で防御効果が認められ、総症状スコアの幾何平均の和は、ワクチン群の2.1に対しプラセボ群は10.8だった(比:0.26、95%CI:0.12~0.56)。 一方、RT-qPCR検査またはウイルス培養による有効性のエンドポイントの定義に基づくと、ワクチン群で症候性感染は認められず、プラセボ群で症候性感染が確定されるまでの期間中央値はRT-qPCR検査が3.3日(IQR:2.9~4.8)、ウイルス培養は4.8日(3.8~5.3)であった。また、RT-qPCR検査で定量化可能なウイルスが検出されたワクチン群8例におけるウイルス排出は、症状の有無にかかわらず、ウイルス投与後に初めてウイルスDNAが検出されてから、24時間以内にほぼ限定されていた。 免疫原性の評価では、ワクチンまたはプラセボ注射後約28日の時点でのウイルス投与直前におけるRSV-A中和抗体価のベースラインからの幾何平均上昇倍率は、ワクチン群が20.5倍(95%CI:16.6~25.3)、プラセボ群は1.1倍(0.9~1.3)で、RSV-B中和抗体価の幾何平均上昇倍率はそれぞれ20.3倍(15.6~26.4)および1.0倍(0.9~1.1)であった。 ワクチンまたはプラセボ注射後7日までに、ワクチン群が14%(5/35例)、プラセボ群は6%(2/33人)で局所反応が報告された。ワクチン群の局所反応はすべて軽度であった。最も頻度の高い局所反応は注射部位の痛みだった(ワクチン群5例、プラセボ群1例)。全身性のイベントは、ワクチン群が18例(51%)、プラセボ群は11例(33%)で発現し、疲労/倦怠感の頻度が高かった(ワクチン群14例[40%]、プラセボ群10例[30%])が、いずれも軽度であった。38℃以上の発熱は認めなかった。 注射後28日以内に、ワクチン群が34%(12/35例)、プラセボ群は29%(10/35例)で、合計25件の有害事象が発現した。1件(顎下リンパ節腫脹、ワクチン注射後26日目に発現し53日目に消退)が、ワクチン関連と判定された。ワクチン群で試験中止の原因となった有害事象が2件(検査で新型コロナウイルス感染症が陽性と心電図でQT間隔延長が1件ずつ)認められたが、いずれも試験薬との関連はないと判定された。28日までに、重篤または重度の有害事象の報告はなかった。 著者は、「これらの知見は、今後、第III相試験でRSVpreFワクチンの有効性の評価を行うことを支持するものである」としている。

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オミクロン株BA.4/BA.5、BA.2より免疫逃避しやすい?/NEJM

 現在、米国ではオミクロン株BA.2.12.1、南アフリカではBA.4やBA.5といった、新たな系統への置き換わりが進んでいる。米国・ベス・イスラエル・ディーコネス医療センターのNicole P. Hachmann氏らが、ワクチン接種者とCOVID-19既感染者において、オミクロン株BA.1、BA.2、BA.2.12.1、BA.4、BA.5に対する中和抗体価を測定したところ、BA.2.12.1、BA.4、BA.5といった新系統の亜種が、ワクチンと感染による免疫から逃避する可能性があることが示された。本結果は、NEJM誌オンライン版2022年6月22日号のCORRESPONDENCEに掲載された。 本研究では、ファイザー製ワクチンを2回接種し、その後ブースター接種した27例と、オミクロン株BA.1またはBA.2に感染した27例において、パンデミック初期に米国で初めて分離された従来株(WA1/2020株)、およびオミクロン株BA.1、BA.2、BA.2.12.1、BA.4、BA.5に対する中和抗体価を測定し、その中央値が求められた。なお、BA.4とBA.5はスパイク蛋白の配列が同一である。 主な結果は以下のとおり。・ワクチン接種群において、6ヵ月後の中和抗体価は、WA1/2020株に対して124U/mLであったが、すべてのオミクロン株亜種に対しては20U/mL未満であった。ブースター接種2週間後の中和抗体価は、WA1/2020株に対して5,783U/mL、BA.1に対して900U/mL、BA.2に対して829U/mL、新系統のBA.2.12.1に対して410U/mL、BA.4またはBA.5に対して275U/mLとなり、いずれもブースター接種後は中和抗体価が大きく増加した。しかし、WA1/2020株に対する中和抗体価と比較すると、BA.1やBA.2は6~7分の1に低下している一方で、BA.2.12.1は14分の1、BA.4とBA.5は21分の1に中和抗体価が大幅に低下している。・オミクロン株BA.1またはBA.2の既感染群の中和抗体価は、WA1/2020株に対して1万1,050U/mL、BA.1に対して1,740U/mL、BA.2に対して1,910U/mL、BA.2.12.1に対して1,150U/mL、BA.4またはBA.5に対して590U/mLであった。WA1/2020株に対する中和抗体価と比較すると、BA.1は6.4の1、BA.2は5.8分の1、BA.2.12.1は9.6分の1、BA.4とBA.5は18.7分の1に低下している。 本研究の結果、オミクロン株新系統のBA.2.12.1、BA.4、BA.5は、現在日本で主流のBA.2よりも、ワクチン接種と感染による免疫から逃避しやすいことが示された。ワクチン接種や、BA.1やBA.2の感染既往のある集団においても、BA.2.12.1、BA.4、BA.5への感染が増加する可能性が考えられる。

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第115回 参院選、コロナ対策で正論を打ち出したのは思いもよらぬあの政党!?

東北北部を除いて全国で梅雨明けし、恐ろしいほどの暑さに襲われている。正直、関東甲信越の梅雨明けの第一報を聞いた時は「今年梅雨というほど雨降ったっけ?冗談だろう」と思わずにはいられなかったのが本音である。さてそんな夏をさらに暑いというか暑苦しくさせているものがある。6月23日に公示された参議院議員選挙である。屋外を歩いていると、5分もせずに汗びっしょりになるなか、街宣カーから候補者が張り上げる声を聞くのは申し訳ないがやや苦痛である。だが、それでもつい耳を傾けてしまう自分がいる。ということで、たぶん本連載で最も読まれないであろう毎度恒例の参議院選挙の各党の政策について、衆議院選挙で各党が掲げた政策も参照(第78回、第79回、第85回)しながら、批判的吟味を加えて紹介したいと思う。まず、政党と言っても中小政党まで含むと数多くの政党が存在するため、今回も参議院に現有議席を持つ政党(会派は除く)に絞る。また、医療・福祉関連はなかなかに幅が広いので、ややポストコロナ感が見えてきた中での新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)対策に限定する。まずは、政権与党筆頭の自民党。掲げている新型コロナ対策は(1)ワクチン接種の推進(2)検査能力の拡充(3)臨時の医療施設等も含めた保健医療体制の強化(4)国産の飲み薬をはじめとする治療薬や国産ワクチンの確保(5)将来の危機に備えた司令塔機能の強化(6)本格的な移動の回復等に向けた交通機関等の感染防止対策や空港・港湾の万全な水際対策与党ということもあり、基本的には現在政府が推進している政策を提示している感が強い。厳しく言えば特徴らしい特徴がない。もっともこのうちの(5)については該当する内閣感染症危機管理庁の新設が決まった。これは昨年12月の国会での岸田首相の所信表明演説で「これまでの新型コロナ対応を徹底的に検証します。その上で、来年の6月までに、感染症危機などの健康危機に迅速・的確に対応するため、司令塔機能の強化を含めた、抜本的体制強化策を取りまとめます」と語ったのを実現したモノだ。その意味では公約通りとも言えるが、この点がやや「あざとい」のはお気づきの方もいると思う。まず、所信表明にある新型コロナ対応の徹底検証とは、「新型コロナウイルス感染症対応に関する有識者会議」での議論のことだ。同会議は新型コロナ対策・健康危機管理担当大臣に下に4月に設置が決定。実際の会合は5月上旬に始まり、わずか5回の会合のみで報告書をまとめている。2年にわたる政府の新型コロナ対策をわずか1ヵ月で検証するのは「徹底的」とは言えない。この報告書が6月15日に発表され、その日の夕方、岸田首相は「内閣感染症危機管理庁」の新設を発表している。しかも、6月は前々から日程が決まっていた今回の参議院選挙がある。要は選挙をにらんでバックキャスティングでモノを決めただけである。この件では国立感染症研究所と国立国際医療研究センターの統合による日本版CDC(アメリカ疾病予防管理センター)の創設も謳われたが、私が知っている国立感染症研究所のある職員は「寝耳に水。こちらにはまったく話がなかったんで、所内ではてんやわんやになりました」と話していた。良くも悪くも政治主導ということである。その意味では「仏に魂を入れられるかどうか」が今後のカギを握る。最後の「移動の回復と万全な水際対策」はかなり矛盾した方針である。最近では世界中で感染報告が増加しているサル痘が隣国の韓国でも確認され、日本にとっても上陸は「いつ?」ということになりつつある。水際対策を強化すれば、入国時の検疫やそのほか諸々の規制を強化しなければならず、人流の回復には障害になる。自民党と連立を組む公明党が掲げるのは、以下の3本柱。(1)新たな危機管理体制の確立(2)国産ワクチン・治療薬の開発・実用化(3)新型コロナウイルス感染症の後遺症対策前者2つは自民党の政策とほぼ同様のもので、やはり与党らしいともいえる。前回衆議院選では病床確保や検査拡充をかなり訴えていたが、それらが消えて(1)となり、(2)と(3)は前回の衆議院選から同様だが、(3)は同党が掲げているオリジナルな政策である。また、この件は現在の新型コロナ対策の中では政策的対応としてやや抜け落ちているテーマでもある。さらに同党は中小政党とはいえ与党である。これをどのように実現させるのかについては医療関係者も注視しておいて良いポイントと言えるだろう。余談だが、前回の政策を比較のため検索したら、前回衆議院選の政策集が公式ホームページから削除されていたのは公明党のみである。さてここからは野党である。最大野党の立憲民主党が掲げている新型コロナ対策は以下の通りだ。コロナ対策について国が司令塔機能を発揮できる法改正重症化リスクが高い人などが確実に医療を受けられる「コロナかかりつけ医」制度創設水際対策を徹底し、必要な時に誰でもすぐに受けられるPCR検査体制の確立政府の対策を専門的見地から客観的に検証する「コロナ対策調査委員会」の国会への設置国内でワクチン・治療薬の開発の支援体制強化COVAXファシリティへの拠出拡大を含め、コロナ対策における国際社会の取り組みへの貢献前回はほぼ1番目の司令塔強化のみが同党の新型コロナ政策だったが、今回は激増した。与党の自民党・公明党との明確な違いは「コロナかかりつけ医」制度である。新型コロナだけで、かかりつけ医というとやや突飛に見えるが、実は立憲民主党は「日常からの健康管理・相談や総合的な医療提供(プライマリ・ケア)機能を持つかかりつけ医を『家庭医』と位置付ける『日本版家庭医制度』の創設も掲げている。奇しくも政府が先ごろ閣議決定した「骨太方針2022」では「かかりつけ医」の制度化を謳っているが、自民党の強力な支援団体である日本医師会はこれに反対の立場である。立憲民主党のこの政策は珍しく政府与党の方針と親和性が高い。立憲民主党のこの政策に対する本気度は不明だが、かかりつけ医の制度化を囲む政府与党、最大野党、日本医師会の関係性がどのようになるかは気になるところだ。そして野党の中では、前回の衆議院選で改選前から3倍超も議席を伸ばした日本維新の会は、前回衆議院選では12項目もの政策を掲げ、その多くが病床確保策だったが、今回は「感染症法を改正し、治療やワクチンにかかる費用は無償を継続しながら、新型コロナウイルス感染症の感染症上の位置付けを5類感染症とする」ことをほぼ1点突破で訴えている。この辺はややうがった見方をすると、インターネット上で「新型コロナの5類相当への引き下げ」という声が少なくないことを意識したネットポピュリズムにも映る。ご存じのように新型コロナは当初感染症法では、入院勧告が可能で、治療費が公費負担になる指定感染症として同法2類相当と政令で定め、2021年2月の同法改正では1〜5類とは別の「新型インフルエンザ等感染症」に指定された。現時点では基本は全数報告で、濃厚接触者の追跡、外出自粛要請などにも根拠を与えている。確かにオミクロン株による感染が主流になってからは、感染者が激増する一方で多くが軽症であるため、現在の位置付けは保健所などを含めた地方自治体行政の中では、さまざまな局面で負担が大きいと言える。日本維新の会の政策は、5類相当になった場合に患者にとって最大のデメリットである治療費公費負担が維持できる5類相当を感染症法の改正によって実現しようとするもの。この辺にもややポピュリズム臭が漂う。もっとも新型コロナの5類相当を求める人では、新型コロナパンデミックで顕在化した診療体制の脆弱さを基に「オミクロン株は多くが軽症だから、5類相当のインフルエンザと同じくその辺のクリニックでも診察できるようにすれば良い」という主張が多く見受けられる。しかし、このウイルスはクラスターを起こしやすいという点が極めて特徴的で、今でも医療機関や高齢者施設でのクラスター発生報告は後を絶たない。そうした中で法的に5類にしたとしても、市中の幅広い医療機関が新型コロナの診療を始めるとはとても思えない。この点を踏まえてどのような形にするかは、この政策主張だけではまったく見えないのが実際のところだ。前回の衆議院選挙で議席が微増した国民民主党は前回同様の「コロナ三策」を掲げている。第3策は直接医療とは関係のない経済支援策だが、第1策が「検査の拡充『見つける』」、第2策が「感染拡大の防止『抑える』」が医療的な新型コロナ対策で、前回10項目あった第2策は6項目に整理された。当時はデルタ株での第5波収束直後ということもあり、今回消えた項目は病床や治療薬の確保や検疫強化の話が中心だ。この第2策の中で新設とも言えるのが「マスク着用の見直し」だが、官房長官発言などで屋外での感染リスクが低い局面でのマスク不要の発言を受けてもなお市中の動きは鈍い。政治からの発信のみでここが変わるかは疑問なところではある。そして第1策は前回の衆議院選とまったく変わらない。端的に言えば家庭と市中で無料検査を拡大し、感染者を見つけ出してセルフケアで感染拡大の抑止につなげることやワクチン接種歴や検査陰性データのデジタル証明の普及を謳っている。しかし、軽症者が多く、感染拡大スピードが速いオミクロン株対応では、この政策は時代遅れと言っても過言ではない。「もう少し真面目に政策を作ってください」と言いたくなるのは厳しすぎるだろうか。一方、全体的に革新色の強い日本共産党と社会民主党の政策を見てみたい。日本共産党は立憲民主党と同様にかなり多項目の政策を掲げている。高齢者施設、医療機関などでの頻回検査を国の責任で実施感染者や疑いのある人が十分な検査と医療を受けられるよう地域医療への支援を強化ワクチンの有効性・安全性の情報発信を国が前面に立って行い、希望者への安全・迅速な接種を推進地域医療構想に基づく急性期病床削減計画を中止し、拡充に切替感染症病床、救急・救命体制への国の予算を2倍にし、ICU(集中治療室)支援制度を新設し、設置数を2倍に政府が進める医師の削減計画を中止し、「臨時増員措置」を継続保健所予算を2倍にし、保健所数も職員数も増員国立感染症研究所・地方衛生研究所の研究予算を10倍化最後の3つは前回衆議院選時と変わらずだが、未だどこに予算根拠があるのかは不明である。検査体制については「『いつでも、誰でも、無料で』という大規模・頻回・無料のPCR検査を行います」「職場、学校、保育所、幼稚園、家庭などでの自主検査を大規模かつ無料で行えるように、国が思い切った補助を行います」からは変化し、検査の重点を医療機関と高齢者施設に絞り込んだところには進化が見える。一方、注目点は新型コロナワクチンについて「ワクチンの有効性・安全性の情報発信を国が前面に立って行い」としている点だ。やや概念的にも思えるが、新型コロナでのワクチン政策は有効性への限界から現在曲がり角に達している。そこに新規感染者での接種歴区分に関して厚生労働省が雑な集計をしていたことが明らかになり、現在はワクチン不信がピークとも言える社会状況である。その意味で日本共産党のこの主張では与野党が協力体制を敷いても良いケースと言えないだろうか。社民党の新型コロナ対応では非常時の病床確保の観点から、2019年に厚生労働省が診療実績などに基づき再編の必要性も検討すべきとして提示した公立・公的病院436ヵ所のリスト撤回を求めるという前回同様の1本柱である。これは前回も触れたが、日本国内では従来から医療機関の幅広い分布が、逆に医師などのソフトの面での薄い配置を招き、結果として医療の質の地域間格差を生んでいる側面がある。この環境でこの政策を掲げ続けるならば、もうひと捻りが必要ではないだろうか。また、医療という幅広い領域で病床削減反対のみを掲げ続けるのも新鮮味はない。「ブレない」がウリらしい同党だが、もう少し良い意味で「ブレて」欲しいものである。国政選挙では時に台風の目になっているれいわ新選組は、前回衆議院選ではやはり検査拡大やエッセンシャルワーカーへの手当拡充を訴えていたが、今回は、新型コロナの新しい変異種に限らず、まったく新しい感染症の登場に備える感染症が拡大する恐れがある場合は災害に指定し徹底した補償を実施感染症と災害の対策司令塔としての防災庁の設置緊急時に向けて平時からの病床安定確保、国による医師・看護師、保健師など人材の増員など、保守政党や革新政党が掲げる概念的な政策を足して2で割ったような大人しさ。最後にNHK党。一般にはややおちゃらけた政党のように思われ、なおかつNHKに関する政策のみで前回は新型コロナ対策が見当たらなかったが、今回は以下のような政策を掲げている。屋外など感染リスクの低い状況での積極的なマスク外しの奨励検査の意義を考慮した上で、無駄な検査や害となりうる検査拡充に警鐘を鳴らす日本版 CDC 創設日本版 ACIP (ワクチン接種に関する諮問委員会)制度の導入米国などで導入されているナース・プラクティショナー制度導入国民民主党のところで同党が掲げる検査拡充を批判的に評価したが、それはオミクロン株のような感染力が強く、重症化もしにくいウイルスで検査を拡充すれば無駄に無症状者などを拾い上げ、結局この感染症の対策を厄介するからである。その意味でNHK党の政策は正論である。また、そのほかでもアメリカのACIP(Advisory Committee on Immunization Practices)の日本版やナース・プラクティショナー導入を掲げるなど、「あれれ、どうした?」という感じだ。誰か新たなブレーンが入ったのだろうか? いずれにせよ一番変化があったのがこの党である。もっともテストで0点だった生徒が、急に20点になったようなものかもしれない。さて皆さん、今回はどのような選択をしますか?

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ASCO2022 レポート 血液腫瘍

レポーター紹介今年のASCO 2022の年次総会も、COVID-19の影響で、昨年のASCO 2021に引き続き、ハイブリッド開催となりました。その恩恵を受けて、昨年と同様に、米国・シカゴまで行かずに、通常の病院業務をしながら、業務の合間に、時差も気にせず、オンデマンドで注目演題を聴講したり、発表スライドを閲覧したりすることができました。それらの演題の中から、今年も10の演題を選んで、発表内容をレポートしたいと思います。以下に、悪性リンパ腫(慢性リンパ性白血病含む)関連5演題、多発性骨髄腫関連3演題、白血病関連2演題を紹介します。悪性リンパ腫(慢性リンパ性白血病含む)関連First-line brentuximab vedotin plus chemotherapy to improve overall survival in patients with stage III/IV classical Hodgkin lymphoma: An updated analysis of ECHELON-1.  (Abstract #7503)ECHELON-1試験は、初発の進行期ホジキンリンパ腫患者を対象に、これまでの標準治療のABVD療法と、ブレンツキシマブベドチンとブレオマイシンを入れ替えたA-AVD療法を比較した第III相比較試験で、これまでの発表にて、A-AVD療法がABVD療法と比較し、PFSの延長効果が示されていた。今回の発表では、追跡期間の中央値が73ヵ月(約6年)の時点で、A-AVD療法の、OSについての優位性も示された(6年時点のOS:[A-AVD療法:93.9%、ABVD療法:89.4%]) (HR:0.590、95%信頼区間[CI]:0.396~0.879、p=0.009)。サブグループ解析では、IPSが4~7の患者、Stage IVの患者、節外病変が2以上の患者など、予後不良と思われる患者において、有意にA-AVD療法がABVD療法よりもOSを延長した。2次がんの発症率も、23例と32例で、A-AVD療法で少なかった。ホジキンリンパ腫については、これまで、ABVD療法に対し、OSでの優位性を示した治療法はなかったが、A-AVD療法が初めてABVD療法にOSで優ったことが示された歴史的試験結果となった。Glofitamab in patients with relapsed/refractory (R/R) diffuse large B-cell lymphoma (DLBCL) and >2 prior therapies: Pivotal phase II expansion results. (Abstract #7500)R/R DLBCL患者に対し、近年、CD19-CAR-T細胞治療やポラツズマブベドチン(ADC)などの新薬が登場し、治療成績は良くなったが、それらの治療にても再発・難治となる場合もあり、さらなる新薬の開発が望まれている。本発表では、CD20とCD3(2対1の比率)に対する二重抗体薬のglofitamabの第II相試験(21日サイクルにて、最大12サイクルまでの固定期間治療であり、サイクル1のDay1には、CRS軽減のため、オビヌツズマブを投与し、Day8に2.5mg、Day15に10mgを投与、サイクル2以降はDay1に30mgを投与する)の結果が報告された。154例の2ライン以上の前治療歴(リツキシマブの治療歴を含む)のあるR/R DLBCL患者が対象となった(59.7%が3ライン以上、33.1%がCAR-T治療を受けていた)。主要評価項目のCR率は39.4%であり、副次評価項目のORRは51.6%であった。また、CAR-T治療歴のある、なしでのCR率は、それぞれ35%と42%であった。CR維持率は12ヵ月時点で77.6%であった。CRSは63%に認めたが、うち59%はG1~2であり、ほとんどがサイクル2までに認められた。glofitamabは、CAR-T既治療例を含むR/R DLBCLに対する新たな治療薬として期待できる。Influence of racial and ethnic identity on overall survival in patients with chronic lymphocytic lymphoma. (Abstract #7508)CLLは、西欧諸国では頻度の多い疾患であるが、アフリカやアジアでは少なく、発症率や予後に、人種差が影響するかどうかは、明らかではなかった。本発表では、National Cancer Databaseに2004~18年に登録されたアメリカのCLL患者を解析している。9万7,804例のうち、8万8,680例(90.7%)が白人、7,391例(7.6%)が黒人、2,478例(2.6%)がヒスパニック、613例(0.6%)がアジア人であった。今回は、この中で、白人と黒人を比較している。黒人の方が、診断時の年齢が66歳(vs.70歳)と若く、合併症を有する割合も27.9%(vs.21.3%)と多かった。さらに、次の項目(女性患者、非保険加入者、低所得者)の割合が黒人で多かった。また、CLLの治療を、診断時すぐに開始された割合も35.9%(vs.23.6%)と多く、OSは短い(中央値:7.00年vs.9.14年)ことがわかった。CLLの病態に人種差がどのように影響しているかは不明だが、経済力の差などが、診断時期や治療法の選択にも影響している可能性もあり、それがOSの差に反映していると思われる。GEMSTONE-201: Preplanned primary analysis of a multicenter, single-arm, phase 2 study of sugemalimab (suge) in patients (pts) with relapsed or refractory extranodal natural killer/T cell lymphoma (R/R ENKTL). (Abstract #7501)R/R ENKTLの予後はきわめて不良である(OS中央値は7ヵ月未満、1年OSは20%未満)。本試験では、R/R ENKTLに対する抗PDL1抗体薬(sugemalimab)の第II相試験(GEMSTONE-201試験)の最初の解析結果が報告された(追跡期間の中央値が13.4ヵ月時点)。対象となった患者は、80例(年齢中央値:48歳、男性:64%、前治療が2ライン以上:49%、前治療に抵抗性:46%)であり、Suge 1,200mgを3週に1回投与し、最長24ヵ月投与した。主要評価項目のORRは、46.2%であった。また、副次評価項目のCR率は、37.2%であり、12ヵ月時点のDORは、86%であった。探索的評価項目の全生存率は、12ヵ月時点で68.6%であった。G3以上の有害事象は39%(治療薬関連は16%、そのうち重篤な有害事象は6.3%)でみられ、最も高頻度にみられたirAEは、甲状腺機能低下症が16%にみられた。R/R ENKTLに対する抗PDL1抗体薬は、その有効性と安全性のバランスから期待できる治療薬と考える。Primary results from the double-blind, placebo-controlled, phase III SHINE study of ibrutinib in combination with bendamustine-rituximab (BR) and R maintenance as a first-line treatment for older patients with mantle cell lymphoma (MCL). Abstract #LBA7502初発の自家移植非適応の高齢MCL患者(65歳以上)に対するBRX6サイクル+R維持療法(2ヵ月ごと2年間)と、その治療に最初からイブルチニブ560mg(or プラセボ)を上乗せし、イブルチニブ(or プラセボ)は、PDあるいは毒性中止となるまで継続する治療を比較した第III相比較試験のSHINE試験の結果がLate break abstractとして報告され、同日のNEJM誌にPublishされた。イブルチニブ群259例とプラセボ群260例が治療を受けた。主要評価項目のPFSの中央値は、80.6と52.9ヵ月であり、HR:0.75(0.59~0.96)と有意にイブルチニブを併用した治療で約2年のPFSの延長がみられた。ハイリスク症例(BlastoidタイプあるいはTP53変異あり)でも、イブルチニブ群でPFSが良い傾向にあったが、症例数が少なく、有意差は認めなかった。TTNTもHR:0.48(0.34~0.66)でイブルチニブ群で延長がみられた。イブルチニブ群では、G3/4の有害事象として、出血(3.5%)、心房細動(3.9%)、高血圧(8.5%)、関節痛(1.2%)を認めた。ただし、OSについては、HR:1.07(0.81~1.40)で差を認めていない。SHINE試験で、初めて、初発の高齢MCL患者に対するイブルチニブの有用性(併用効果)が示され、今後、標準治療の変更が見込まれる結果となった。多発性骨髄腫関連Major risk factors associated with severe COVID-19 outcomes in patients with multiple myeloma: Report from the National COVID-19 Cohort Collaborative (N3C). (Abstract #8008)NCATS’ National COVID Cohort Collaborative (N3C)のデータベースを用い、MM患者におけるCOVID-19の重症化のリスクを解析している。本データベースには、2万6,064例のMM患者が登録(うちCOVID-19 陽性は8,588例)されていた。多変量解析によって、肺疾患、腎疾患の既往は重症化のリスクであったが、糖尿病、高血圧は有意なリスクとはならなかった。喫煙は、むしろリスクが低い傾向があった。造血幹細胞移植、COVID-19ワクチン接種は有意に重症化リスクを下げた。一方、IMiDs、PI、デキサメサゾン治療は死亡リスクを上昇させたが、ダラツムマブ治療はリスクとはならなかった。1.93%のMM患者がCOVID-19感染10日以内に、4.47%のMM患者が30日以内に死亡した。本発表は、世界での最大級のデータベースを解析したものであり、COVID-19流行下のMM診療に役立つと思われる。Teclistamab, a B-cell maturation antigen (BCMA) x CD3 bispecific antibody, in patients with relapsed/refractory multiple myeloma (RRMM): Updated efficacy and safety results from MajesTEC-1. (Abstract #8007)BCMAとCD3に対する二重抗体薬 teclistamabの第I/II相MajesTEC-1試験の最新のデータが発表された。対象となった患者165例(第I相:40例、第II相:125例)は、前治療のライン数が5(2~14)で74%が4ライン以上であった。また、78%がトリプルクラス抵抗性、30%がペンタドラッグ抵抗性であり、90%が最後の治療に抵抗性の状態であった。Tecは、1.5mg/kgを週1回、皮下注で投与する方法が推奨用量であった。有効性の評価では、ORRは63%で、VGPR以上は58.8%、CR以上は39.4%であった。DORの中央値は18.4ヵ月、12ヵ月時点のDORは68.5%であり、CR以上が得られた患者では80.1%であった。PFSの中央値は11.3ヵ月、OSの中央値は18.3ヵ月であった。有害事象については、CRSは、72.1%でみられたが、G3は1例(0.6%)でG4/5はなかった。CRS発現は2日目(1~6)にみられ、2日間(1~9)続いた。治療関連死は5例(COVID-19 2例、肺炎1例、肝不全1例、PML1例)、AEによる減量は1例だけであった(21サイクル目)。BCMAを標的とするCAR-T療法よりは効果が落ちるものの、Off the shelfの薬剤であり、大いに期待される。Daratumumab carfilzomib lenalidomide and dexamethasone as induction therapy in high-risk, transplant-eligible patients with newly diagnosed myeloma: Results of the phase 2 study IFM 2018-04. (Abstract #8002)フランスのグループ(IFM)で実施されたHigh riskの染色体異常(CA)(t[4;14]、 del[17p]、 t[14;16]のいずれか)を有する移植適応のある初発MM患者を対象としたDara-KRD(6サイクル)+Auto(MEL200)+Dara-KRD(4サイクル)+2回目Auto(MEL200)+Dara-Len維持療法(2年)の第II相試験(IFN 2018-04試験)の寛解導入Dara-KRD治療の結果が報告された。50例の患者がエントリーされた。Del(17p)が20例、t(4;14)が26例、t(14;16)が10例、Gain(1q)は25例、前記の2以上のCAを有しているのは34例であった。46例が6サイクル完遂でき、2例はAE(COVID-19感染と腫瘍崩壊症候群)で中止、2例はPD中止となった。6例が2回Auto分のPBSCHに失敗したため、Dara-KRD(3サイクル)後にPBSCHを実施したところ、全例、PBSCHに成功した。ORRは96%、VGPR以上は91%、MRD測定(NGS)を行った37例中、MRD陰性であったのは、62%であった。今後、この治療法は続きがあるが、寛解導入部分の有効性、安全性は評価できると考える。白血病関連Overall survival by IDH2 mutant allele (R140 or R172) in patients with late-stage mutant-IDH2 relapsed or refractory acute myeloid leukemia treated with enasidenib or conventional care regimens in the phase 3 IDHENTIFY trial. (Abstract #7005)AMLにおいて、8~19%の症例で、IDH2遺伝子変異がみられ、IDH2遺伝子変異には、R140Q変異(75%)とR172K変異(25%)がある。変異IDH2阻害剤のenasidenibは、IDH2遺伝子変異を有する高齢R/R AML患者に対し、通常の治療(AZA、CA少量、BSC)と比較しOSの延長は認められなかった(IDHENTIFY試験)。今回の解析では、R140変異とR172変異に分けて解析している。R140と比較し、R172では併存する変異遺伝子の数が、少なかった。また、R140ではSRSF2、FLT3、NPM1、RUNX1遺伝子の変異を伴うのが多かったが、R172では、DNMT3A、TP53の変異が多かった。このことが影響したためか、R140では、OSに差を認めなかったが、R172においては、有意に、enasidenibが、通常治療よりもOSを延長した(14.6ヵ月 vs.7.8ヵ月)。遺伝子変異に基づいた治療法の選択は今後、ますます重要になると思われ、興味深い発表と考える。Efficacy and safety results from ASCEMBL, a phase 3 study of asciminib versus bosutinib (BOS) in patients (pts) with chronic myeloid leukemia in chronic phase (CML-CP) after >2 prior tyrosine kinase inhibitors (TKIs): Week 96 update.  (Abstract #7004)2ライン以上のTKIによる前治療歴があり、それらのTKI治療に抵抗性・不耐容のCML患者に対し、従来のTKIが結合するATP結合サイトとは異なるミリストイルポケットを標的とするasciminibとボスチニブを比較した第III相試験のASCEMBL試験のフォローアップデータが発表された。最初の解析時点から16.5ヵ月経過した2.3年時点での結果である。157例がasciminib、76例がボスチニブに割り付けられ、84例(53.5%)と15例(19.7%)が治療継続しており、治療効果不十分のため中止となった症例は、38例(24.2%)と27例(35.5%)であった。96週時点のMMR率(副次評価項目)は、37.6%と15.8%であり、有意にasciminibが優れていた(主要評価項目の24週時点のMMR率は25.5%と13.2%であった)。内服期間の中央値も23.7ヵ月と7.0ヵ月で、asciminibが長かった。asciminibでボスチニブよりも多くみられたAEは、血小板減少であり、ボスチニブでみられる下痢、嘔気・嘔吐、皮疹、肝障害は、明らかに少なかった。今回の結果から、asciminibは、既存のTKIに抵抗性・不耐容のCML患者の長く継続できる新たな治療薬として、再認識され、現在、日本でも保険適用で使用可能となった。おわりに以上、ASCO 2022で発表された血液腫瘍領域の演題の中から10演題を紹介しました。昨年のASCO 2021でも10演題を紹介いたしましたが、今年も昨年と同様に、どの演題も今後の治療を変えていくような結果であるように思いました。来年以降も現地開催に加えてWEB開催を継続してもらえるならば、ASCO 2023にオンライン参加をしたいと考えています。(でも、もう少し参加費を安くしてほしい、特に、円安の今日この頃(笑))

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追加接種のタイミング、6ヵ月以上でより高い有効性か

 ワクチンの種類や2回目接種からの間隔の長さによって、オミクロン株に対する3回目接種の有効性は異なるのか? スペイン・公衆衛生研究所のSusana Monge氏らは、全国規模の住民登録データを用いて、オミクロン株が優勢な期間におけるワクチン有効率をいくつかのサブグループごとに推定。結果をThe Lancet Infectious Diseases誌オンライン版2022年6月2日号で報告した。 本研究では、スペインの3つの全国的な人口登録(ワクチン接種登録、検査結果登録、および国民健康システム登録)からのデータをリンクさせて、ワクチン初回シリーズ(mRNAワクチンおよびアストラゼネカ製ワクチンは2回、ヤンセン製ワクチンは1回)をフォローアップ開始の3ヵ月前までに完了した40歳以上の個人を選択した。パンデミックの開始以降、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染したことがある者(検査陽性者)は含まない。 2022年1月3日から2月6日までの毎日、mRNAワクチンの追加接種者と対照者を、性別、年齢層、郵便番号、ワクチンの種類、2回目接種からの経過時間、および以前の検査回数でマッチさせた。Kaplan-Meier法を使用して、リスク比(RR)とリスク差による群間比較を行った。ワクチン有効率は、1からRRを引いたものとして計算された。 主な結果は以下の通り。・311万1,159人ずつのマッチさせたペアが解析対象。・初回シリーズのワクチンの種類は、ファイザー製が78.4%、モデルナ製が11.8%、アストラゼネカ製が7.6%、ヤンセン製が2.2%。追加接種は、ファイザー製が26.6%、モデルナ製が73.4%だった。・全体として、追加接種後7~34日目までの推定有効率は51.3%(95%信頼区間[CI]:50.2~52.4)だった。・追加接種の種類ごとにみた推定有効率は、モデルナ製が52.5%(51.3~53.7)、ファイザー製が46.2%(43.5~48.7)だった。・初回シリーズの種類ごとにみた推定有効率は、アストラゼネカ製が58.6%(55.5~61.6)、モデルナ製が55.3%(52.3~58.2)、ファイザー製が49.7%(48.3~51.1)、ヤンセン製が48.0%(42.5~53.7)だった。・初回シリーズ後151~180日に追加接種した場合の推定有効率は43.6%(40.0~47.1)、180日を超えて追加接種した場合は52.2%(51.0~53.3)だった。 著者らは、追加接種のオミクロン株に対する推定有効率はファイザー製と比較してモデルナ製で高く、また初回シリーズ完了後追加接種までの時間とともに推定有効率が増加したとまとめている。ただし一方で、推定有効率がより間隔を空けた場合と比べやや低いとしても、オミクロン株感染が拡大している中での接種は可能な限り早い段階で感染を減らすという側面から正当化されるかもしれないと考察している。

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妊娠中のコロナワクチン2回接種、生後6ヵ月未満児の入院を半減/NEJM

 妊娠中に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のmRNAワクチンを2回接種することにより、生後6ヵ月未満の乳児におけるCOVID-19による入院および重症化のリスクが低減することが、米国・ヴァンダービルト大学医療センターのNatasha B. Halasa氏らが実施した検査陰性デザインによる症例対照研究の結果、示された。生後6ヵ月未満児はCOVID-19の合併症のリスクが高いが、ワクチン接種の対象とはならない。妊娠中の母親がCOVID-19ワクチンを接種することで新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対する抗体が経胎盤移行し、乳児にCOVID-19に対する防御を与える可能性が示唆されていた。NEJM誌オンライン版2022年6月22日号掲載の報告。COVID-19で入院した乳児とCOVID-19以外で入院した乳児を比較 研究グループは、Overcoming COVID-19ネットワークに登録されている米国22州30の小児病院において、2021年7月1日~2022年3月8日の期間に、SARS-CoV-2のPCR検査陽性または抗原検査陽性でCOVID-19により入院した生後6ヵ月未満の乳児(症例群)、ならびに症例群とマッチさせた(入院日が症例児の入院日の前後4週以内)SARS-CoV-2陰性でCOVID-19以外により入院した乳児(対照群)を特定し、母親のワクチン接種の有効性を解析した。 母親のワクチン接種は、妊娠中にBNT162b2(ファイザー製)またはmRNA-1273(モデルナ製)ワクチンを2回接種していることとした(妊娠前に1回目を接種し妊娠中に2回目を接種した母親は解析対象に含む)。 試験期間全体、B.1.617.2(デルタ)変異株の流行期(2021年7月1日~12月18日)およびB.1.1.259(オミクロン)変異株の流行期(2021年12月19日~2022年3月8日)に分け、乳児のCOVID-19による入院に対する母親のワクチン接種の有効性について、母親のワクチン接種のオッズ比を症例群と対照群とで比較することにより推定した。妊娠中のワクチン2回接種完了、乳児のCOVID-19入院に対する有効率は試験期間全体で52% 解析対象は、症例群537例(デルタ期181例、オミクロン期356例)、対照群512例(両群とも月齢中央値は2ヵ月)。妊娠中にワクチン2回接種を完了した母親から生まれた乳児は、症例群で16%(87/537例)、対照群で29%(147/512例)であった。 症例群では、113例(21%)がICUで治療を受け、そのうち64例(12%)は人工呼吸器装着または血管作動薬の投与を受けた。2例がCOVID-19により死亡したが、2例とも母親は妊娠中にワクチン接種を受けていなかった。 乳児のCOVID-19による入院に対する母親のワクチン接種の有効性は、試験期間全体で52%(95%信頼区間[CI]:33~65)、デルタ期で80%(95%CI:60~90)、オミクロン期で38%(95%CI:8~58)であった。母親のワクチン接種が妊娠20週以降に行われた場合の有効性は69%(95%CI:50~80)、妊娠初期(20週以前)の場合は38%(95%CI:3~60)であった。

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第118回 サル痘はなぜ同性愛男性に多いのか? / デルタ株に比べてオミクロン株のlong COVIDは生じ難い

サル痘の流行はいまのところ世界の緊急事態ではないと世界保健機関(WHO)は先週土曜日に判断しましたが1,2)、今春5月6日に最初の感染が確認された英国では増え続けています。同国では今月23日までの数日で117人の感染が新たに見つかって5月6日以降これまでに千人に迫る910人にサル痘が認められています3)。性別が判明している861人のほぼ全員(99%)は男性で、女性は5例のみです。男性の中でもサル痘をとくに被っているのはすでに報じられているとおりゲイ、バイセクシャル、男性とセックスする男性であり、詳しく調査されたイングランドのサル痘患者321人中308人(96%)がそういった同性愛男性でした4)。それら321人の半数を超える174人(54%)は先立つ1年間に性感染症(STI)を生じており、およそ3人に1人(32%;102/308人)は性交渉相手が先立つ3ヵ月間に10人以上いました。すなわちSTI伝播持続の後ろ盾である行ったり来たりの性交渉の循環(interconnected sexual network)がサル痘伝播の温床ともなっているようです。最近medRxivに掲載された解析でも過度に多数との交わりがある一握りが存在する性交渉事情が同性愛男性界隈でのサル痘流行持続を招いているらしいと示唆されています5,6)。その解析によると同性愛男性以外でサル痘が続くことはまずなさそうですが、有効な手立てや振る舞いの変化がなければ世界の同性愛男性の1万人超に及ぶ大規模なサル痘流行が続く恐れがあります。そうならないようにするには患者との接触者を同定してワクチンを接種するなどの対策が必要です。また、性交渉相手が多い同性愛男性に向けて説明し、支援を提供することがそういった感染予防対策を補完するでしょう5)。デルタ株に比べてオミクロン株感染のCOVID-19罹患後症状は生じ難い新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)オミクロン株が優勢の頃の感染者の方がその前のデルタ株優勢の頃の感染者に比べて疲労感、息切れ、集中困難、関節痛などの感染後長患い(COVID-19罹患後症状)の発生率が低くて済んでいました7-9)。Zoe社が開発した携帯通信端末(スマートフォン)アプリ・COVID Symptom Studyの使用者から集めた情報を使った観察試験の結果です。試験にはまずは健康な人が参加し、その後の症状やCOVID-19検査結果がスマートフォンアプリを使って記録されました。Lancet誌に掲載された今回の解析はワクチン接種後のPCR検査か抗原検査で感染が判明し、その感染判明から少なくとも28日間にアプリに少なくとも週1回の入力があった英国の被験者を対象としました。感染開始(start of acute COVID-19)から4週間以上続く症状が同国のガイドラインに基づいてCOVID-19罹患後症状(long COVID)と判断され、去年暮れから今春のオミクロン株優勢の頃(2021年12月20日~2022年3月9日)に感染した5万6,003人のCOVID-19罹患後症状の割合はおよそ20人に1人の4.5%(2,501/5万6,003人)でした。一方、デルタ株優勢の頃(2021年6月1日~2021年11月27日)に感染した4万1,361人のCOVID-19罹患後症状の割合はオミクロン株感染者のおよそ2倍の10.8%(4,469/4万1,361人)であり、年齢やワクチン接種からの期間に応じたCOVID-19罹患後症状発現率はオミクロン株感染者の方がデルタ株感染者より24~50%低いという結果となりました。しかしだからといってオミクロン株感染罹患後症状の患者数は少なくて済むというわけにはいきません。というのもオミクロン株感染者は多いからです。周知のとおりオミクロン株感染はより伝播しやすく、オミクロン株感染が英国で恐らく最多になった今春3月26日の新規COVID-19発症数は実に35万人を超えると推定されており、COVID-19罹患後症状患者は必然的に今後増えると著者は言っています7)。参考1)WHO says monkeypox is not yet a health emergency / Reuters2)Meeting of the International Health Regulations (2005) Emergency Committee regarding the multi-country monkeypox outbreak / WHO3)Monkeypox outbreak: epidemiological overview, 24 June 2022. gov.uk4)Investigation into monkeypox outbreak in England: technical briefing 2. gov.uk5)Heavy-tailed sexual contact networks and the epidemiology of monkeypox outbreak in non-endemic regions, May 2022. medRxiv. June 13, 20226)Why the monkeypox outbreak is mostly affecting men who have sex with men / Science7)Antonelli M, et al. Lancet. 2022 Jun 18;399:2263-2264.8)Long COVID risk less during Omicron compared to Delta / King’s College London9)Long Covid grows less likely / Science

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多発性骨髄腫患者におけるCOVID-19重症化のリスク因子の検討/ASCO2022

 米国立衛生研究所(NIH)のNational COVID Cohort Collaborative(N3C)データベースを用いた解析により、肺疾患および腎疾患の既往、がん治療などが多発性骨髄腫患者のCOVID-19重症化リスクを高めることが示された。米国・Auburn大学のAmit Kumar Mitra氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2022)で報告した。 高齢者に発症頻度が高い形質細胞腫瘍である多発性骨髄腫は、しばしば免疫不全を呈することから、COVID-19の重症化リスクを高める可能性がある。同研究では、NIHのNational Center for Advancing Translational Sciences(NCATS)が主導する全国一元公開データベースであるN3Cのデータセットを使用し、多発性骨髄腫患者のCOVID-19の重要化や死亡に関連するリスク因子について解析を行った。・対象:N3Cデータセットに登録された多発性骨髄腫患者26,064例の中で、COVID-19陽性が確認された8,588例・方法:多変量解析により多発性骨髄腫患者のCOVID-19重症化および死亡のリスク因子を検討・評価項目:COVID-19重症化、死亡に関するリスク因子 主な結果は以下のとおり。・対象患者の年齢(中央値)は65.9歳、46.8%が女性であり、喫煙歴は25.0%にみられ、腎疾患、肺疾患、糖尿病の既往歴はそれぞれ26.7%、19.8%、27.0%であった。・対象患者の55.8%は入院または救急搬送を要し、12.2%は入院中に急性腎障害を発症、3.2%は人工呼吸器を装着した。また、COVID-19の重症度については、17.8%が軽症(うち3.7%が救急搬送)、18.3%が中等度、0.9%が重症であり、6.7%がCOVID-19により死亡した。・ロジスティック回帰分析からは、肺疾患や腎疾患の既往、多発性骨髄腫のStage(中等度~重度)などがCOVID-19の重症化リスクを高め、ワクチン接種が重症化リスクを低下させていた。また、糖尿病の既往や多発性骨髄腫のStage(中等度~重度)などが死亡リスクを高め、ワクチン接種は死亡リスクも減少させていた。なお、喫煙歴はいずれのリスクとも相関していなかった。・多発性骨髄腫の治療との関連については、免疫調節薬、プロテアソーム阻害薬、デキサメタゾンがCOVID-19の重症化リスクを高め、プロテアソーム阻害薬は死亡のリスクも高めていた。一方で、骨髄移植はCOVID-19の重症化および死亡のリスクを低下させていた。

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生後6ヵ月以上へのモデルナ製とファイザー製コロナワクチンを承認/FDA

 米国食品医薬品局(FDA)は2022年6月17日付のプレスリリースで、生後6ヵ月以上の小児に対して、モデルナ製とファイザー製の新型コロナワクチンについて緊急使用許可(EUA)したことを発表した。5歳未満への新型コロナワクチンの接種が許可されたのはこれが世界初となる。 モデルナ製ワクチン(商品名:スパイクバックス)は、米国でこれまで18歳以上の成人のみに使用が許可されていたが、今回の承認で、生後6ヵ月以上のすべての小児に対して使用が可能となり、それぞれの年齢層に合わせた用量を、初回シリーズとして1ヵ月間隔で2回投与する。年齢層別の1回の用量は、生後6ヵ月~5歳では25μg(0.25mL)、6~11歳では50μg(0.5mL)、12~17歳では100μg(0.5mL)となっている。また、免疫不全のある小児については、2回目の少なくとも1ヵ月後に3回目を投与することができる。 モデルナ製ワクチンについて、米国とカナダで実施された無作為化盲検プラセボ対照臨床試験によると、各年齢層で上記と同量のワクチンを2回接種した小児を、18~25歳のワクチンを2回接種した成人と比較したところ、成人と同等の免疫反応が確認された。また、COVID-19の既往がない6ヵ月~5歳約5,400例、および12~17歳340例において、2回目の接種から14日以降のCOVID-19に対する予防効果は、6~23ヵ月では50.6%、2~5歳では36.8%、12~17歳においては93.3%の有効性が示された。 すべての小児年齢層で安全性と忍容性が確認されており、死亡例や心筋炎・心膜炎を発症した例は報告されていない。ワクチンの副反応として、生後6ヵ月~5歳で最も多く報告された局所症状は、注射部位の痛み、発赤、腫脹、発熱、注射をした腕(または大腿部)のリンパ節の腫脹・圧痛だった。生後6~36ヵ月の年少児では、神経過敏/泣く、眠気、食欲不振、37ヵ月~5歳の年長児では、疲労、頭痛、筋肉痛、悪寒、吐き気・嘔吐、関節のこわばりなどが多く報告された。6~17歳では、注射部位の痛み、発赤、腫脹、疲労感、頭痛、筋肉痛、悪寒、関節痛、注射と同じ腕のリンパ節の腫れ、吐き気と嘔吐、発熱などの副反応が報告された。 一方、ファイザー製ワクチン(商品名:コミナティ)については、すでに5~17歳に対する3回の接種が承認されていた。今回承認された6ヵ月~4歳へのワクチン接種では、初回シリーズとして用量3μg(0.2mL)を3回行い、最初の2回の投与は3週間間隔で投与し、3回目は2回目の少なくとも8週間後に投与することとなっている。 Pfizer(米国)の同日付のプレスリリースによると、ファイザー製ワクチンについて、6ヵ月~4歳の小児4,526人を対象とした第II/III相無作為化比較試験結果において、オミクロン株流行期に、2回目の接種から少なくとも2ヵ月後に3回目の3μgの接種によって、ワクチンによる強い免疫反応が確認され、プラセボ群と同様の安全性も認められたという。本試験でのSARS-CoV-2に対する中和幾何平均抗体価(GMT)は、3回目の接種から1ヵ月後で、2~4歳では1,535.2(95%信頼区間[CI]:1,388.2~1,697.8)、6~23ヵ月では1,406.5(95%CI:1,211.3~1,633.1)であり、両年齢層で30μgを2回接種した16~25歳と同等の抗体反応が確認された。 本ワクチンの副反応については、6ヵ月~4歳の小児において3回目の投与後少なくとも2ヵ月間追跡し、神経過敏、食欲不振、発熱と痛み、圧痛、発赤、注射部位の腫脹が最も多く報告されたという。

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抗体陽性率95%でもオミクロン株流行/JAMA

 米国・疾病対策センター(CDC)のJefferson M. Jones氏らによる献血検体での調査の結果、感染由来およびワクチン由来を合わせた抗体陽性率は2021年12月には94.7%に達していたことがわかった。それにもかかわらず、2022年初めにオミクロン変異株の記録的なレベルの感染と再感染が報告された。これには、オミクロン変異株の感染性や免疫逃避変異の増加、ワクチンや感染による免疫の低下が関係している。著者らは「抗体陽性率が高い状況においても、変異株は広く感染を引き起こす能力があることから、感染からの防御を最大化するために追加接種を含めたワクチン接種は価値がある」としている。JAMA誌オンライン版2022年6月13日号のリサーチレターに掲載。 本研究では、米国の全50州、ワシントンD.C.、プエルトリコを含む66研究地域の16歳以上の献血者の血清について、総免疫グロブリンアッセイでスパイク抗体(感染由来)とヌクレオカプシド抗体(感染由来とワクチン由来の複合)を調べ、2021年12月の抗体陽性率および5月から12月までの変化を、年齢、性別、人種、民族、地域別に推定した。また、2021年1月~12月の感染由来の抗体陽性率の増加をワクチン接種率と比較した。ワクチン完全接種の定義は、mRNAワクチン2回以上接種もしくはヤンセン製ワクチン1回以上接種とした。 主な結果は以下のとおり。・2021年5月から12月までに、感染由来の抗体陽性率は20.2%(95%CI:19.9~20.6)から28.8%(同:28.4~29.2)に増加し、感染由来とワクチン由来を合わせた抗体陽性率は83.3%(同:82.9~83.7)から94.7%(同:94.5~94.9)に増加した。・2021年12月の感染由来の抗体陽性率は16~29歳で最も高く40.0%(同:38.9~41.0)だった。・2021年12月31日時点の各調査地域の18歳以上のワクチン完全接種率と2021年の1年間における感染由来の抗体陽性率の増加は逆相関を示した(傾き:-0.32、p<0.001)。感染由来の抗体陽性率の増加は、完全接種率が80%を超える地域では10.64%(同:10.62~10.66)であるのに対し、60%未満の地域では19.84%(同:19.82~19.86)と高かった。

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6~17歳におけるAZ製ワクチンの安全性と免疫原性/Lancet

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンChAdOx1 nCoV-19(AZD1222、アストラゼネカ製)は、6~17歳の小児において忍容性と免疫原性が高く、成人を対象とした第III相試験で示された高い有効性と関連する抗体濃度と同程度の抗体を誘導することができ、安全性に関する懸念は認められなかった。英国・チャーチル病院のGrace Li氏らが、英国の4施設で実施した第II相単盲検無作為化比較試験「COV006試験」の結果を報告した。COVID-19ワクチンについては、小児および若年者への接種を推奨している国もあるが、18歳未満におけるCOVID-19ワクチンの免疫反応に関するデータは成人と比較して十分ではなかった。Lancet誌オンライン版2022年6月11日号掲載の報告。2回目接種4週後と12週後(実際は16週後)の2群を設定 研究グループは、慢性呼吸器疾患および検査で確認されたCOVID-19の既往がなく、莢膜B群髄膜炎菌ワクチン(対照)未接種の6~17歳の健康小児を、AZD1222(ウイルス粒子量5×1010)を28日間隔、対照ワクチンを28日間隔、AZD1222を84日間隔、対照ワクチンを84日間隔でそれぞれ2回接種する群に、4対1対4対1の割合で無作為に割り付け筋肉内投与した。 参加者は年齢で層別化され、12~17歳群が6~11歳群より先に登録された。試験期間中に30歳未満へのAZD1222接種制限が導入されたため、28日間隔群に割り付けられた12~17歳の参加者のみが、計画された間隔(28日目)でAZD1222接種を受けた。残りの参加者は112日目に2回目の接種を受けた。 主要評価項目は、安全性解析対象集団(試験薬を少なくとも1回投与されたすべての参加者)における安全性と忍容性であった。副次評価項目は免疫原性で、ベースラインでSARS-CoV-2(ヌクレオカプシドタンパク質)血清陰性者およびワクチン2回接種者を対象に評価した。 2021年2月15日~4月2日の間に、262例がAZD1222群(211例[28日間隔群105例、84日間隔群106例])または対照群(51例[26例、25例])に割り付けられた(12~17歳150例[57%]、6~11歳112例[43%]、英国のワクチン接種方針の変更により予定人数に達する前に低年齢層の募集を終了)。AZD1222の若年層28日間隔群の1例が、初回接種前に同意を取り下げた。2回目接種後抗体価、6~11歳16週後>12~17歳16週後>12~17歳4週後の順で高い AZD1222群において、局所性および全身性の特定有害事象(solicited adverse event)は、初回接種後7日目までで210例中169例(80%)に、2回目接種後で193例中146例(76%)に認められた。 AZD1222接種に関連する重篤な有害事象は、データカットオフ日(2021年10月28日)までに報告されなかった。また、いずれかの接種後28日までの非特定有害事象の発現頻度は40%(83/210例、計128件)であった。 AZD1222の6~11歳群で、初回接種後1日目のGrade4の発熱(40.2℃)が1例報告されたが、24時間以内に消失した。AZD1222接種あるいは対照ワクチン接種でよくみられた有害事象は、疼痛および圧痛であった。 全参加者262例中20例(8%)は血清データを入手できず、血清データのある242例中14例(6%)はベースライン時に血清陽性であった。AZD1222群のベースライン時血清陰性者において、2回目接種後28日目の抗SARS-CoV-2 IgG抗体濃度および中和抗体濃度(IC50)(いずれも幾何平均値)は、投与間隔が長い(112日)12~17歳群ではそれぞれ73,371 AU/mL[95%CI:58,685~91,733]および299[95%CI:230~390])であり、投与間隔が短い(28日)12~17歳群(それぞれ4万3,280 AU/mL[95%CI:3万5,852~5万2,246]および150[95%CI:116~194])と比較して高かった。 2回目接種後の液性免疫応答は同じ投与間隔が長い(112日)群でも、6~11歳群が12~17歳群より高かった(幾何平均比:抗SARS-CoV-2 IgG抗体1.48[95%CI:1.07~2.07]、中和抗体2.96[95%CI:1.89~4.62])。また、細胞性免疫応答(IFN-γ ELISpot法)は、すべての年齢群および間隔群においてAZD1222の1回目接種後にピークに達し、2回目接種後もベースラインより高く維持された。

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第114回 コロナ治療薬の「緊急承認」、日米における決定的な違いとは

ほっとしたと言うのが正直なところだ。厚生労働省の薬食審・医薬品第二部会は22日、塩野義製薬が製造販売を申請していた新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)治療薬候補で3CLプロテアーゼ阻害薬の「エンシトレルビル (商品名:ゾコーバ)」の緊急承認審議で当座の承認を見送ったというニュースについてである。従来の国内の新薬承認制度は、通常の承認に加え、条件付き早期承認制度、コロナ禍で何度も発動されてきた特例承認制度があったが、今年5月の医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)改正で緊急承認制度が新設された。今回のエンシトレルビルはこの緊急承認制度を初めて利用したものだった。当初は今年2月に条件付き早期承認制度を使って承認申請が行われたが、緊急承認制度の新設に伴いこちらの制度適応に切り替えられた。この1件は週刊誌の記者などから、「塩野義の件は特例承認で対応できないのですか?」と聞かれることが多い。しかし、読者の皆さんもご存じかと思うが、結論から言えば「イエスでもあり、ノーでもある」が正解である。特例承認は薬機法第14 条の3の第1項で定めた(1)疾病のまん延防止等のために緊急の使用が必要、(2)当該医薬品の使用以外に適切な方法がない、(3)海外で販売等が認められている、の3要件を満たすことが条件となる。ちなみに(3)については、正式な製造承認ではない米食品医薬品局(FDA)の緊急使用許可(EUA)なども該当する。内資系製薬企業の多くにとって、特例承認制度は決定的に「不利」な部分がある。具体的には(3)だ。もしエンシトレルビルが日本に先んじて海外で何らかの形で承認されていれば、制度活用は可能である。しかし、日本より先に海外で承認を取れるようなパワー、具体的には海外で大規模臨床試験を迅速に実施できる体制がある内資系製薬企業は、かなりひいき目に見てようやく武田薬品が該当するくらいである。つまり内資系製薬企業にとって特例承認制度は「絵に描いた餅」である。では当初、塩野義製薬が目指した条件付き早期承認制度はどうか? これは以下の4条件すべてを満たすことが求められる。致死的疾患、進行が不可逆的で日常生活に著しい影響を及ぼす疾患、その他も含め総合的に評価して適応疾患が重篤既存の治療法、予防法または診断法がない、あるいは有効性、安全性、肉体的・精神的な患者負担の観点から、既存の治療法、予防法または診断法よりも医療上の有用性が優れている検証的臨床試験(すなわち第III相試験)が実施困難、実施可能でも患者数が少ないことなどで実施に相当期間を要する検証的臨床試験以外の臨床試験などの成績により、一定の有効性、安全性が示されている4条件を注意深く見ればわかるが、塩野義製薬によるエンシトレルビルに関する条件付き早期承認制度を通じた申請は、そもそもがかなりの拡大解釈、言ってしまえば「無理筋」である。まずこの制度が想定している疾患は、パンデミックを引き起こす感染症のような緊急性のある疾患よりはむしろ希少疾患であり、新型コロナは限りなくシロ(該当しない)に近いグレーである。しかも、新型コロナの経口治療薬は塩野義製薬による申請時点で、モルヌピラビル(商品名:ラゲブリオ)、ニルマトレルビル/リトナビル(同:パキロビッド)が存在している。そして何よりも決定的なのは本連載第101回でも触れたように、第IIb相臨床試験で有意なウイルス量の減少は認められたものの、総合的な臨床症状改善(12症状スコア)では有意差は認められていない。後者については重症化しにくいオミクロン株感染者、かつ重症化リスクの有無は関係無しで行われた試験であるため、それでも同株に特徴的な呼吸器症状部分だけでは有意差があった点を考慮すべきとの意見もあるが、それはやや我田引水である。その意味では新設された緊急承認制度は、ほぼFDAのEUAのようなもので少なくとも申請条件だけでみれば現在のエンシトレルビルにとっては好都合だ。まず特例承認制度で必須の海外での承認は不要である。既存の治療法などの有無についても、ご丁寧にも「対象患者の重症度や投与方法等が同一であっても、作用機序が異なる場合には、既承認薬が効果不十分である患者に対する有効性が期待できる可能性があるため、臨床的に必要であると判断できる場合がある」と厚生労働省の通知に記載されている。また、条件付き早期承認では第III相以前の試験で「一定の有効性、安全性が示される」ことが必須だが、緊急承認制度は安全性については条件付き早期承認制度と同基準であるものの、有効性は既存のデータや医学的知見から、合理的に推定できれば良い。ウイルス量の減少は確認されながら、臨床症状改善では有意差が認められたとは言い難い、現状「いまいち感」のエンシトレルビルにとってはまさに救世主的な制度だ。踏み込んで言えば、エンシトレルビルのためのような制度と言っても良い。しかし、冒頭で触れたように22日の審議では承認は先送りとなった。審議会では「今は流行が落ち着いているが、今後第7波や新たな変異株が登場する懸念もあるなかで、治療の選択肢を持っておくことは重要」「ウイルス量が減少すれば、実効再生産数が小さくなることが期待できる」と前向きなコメントがあった一方、「ウイルス量を減せても、臨床症状の改善は示されていないような曖昧な状況でこの薬を使うのはどうなのか」「経口薬は3つ目、プロテアーゼ阻害薬としても2つ目で緊急承認制度の要件を満たしていると言えるのか」と消極的な意見もあり、結論を得るに至らなかったという。私自身は今回の緊急承認制度について、日本になかったFDAのEUAとほぼ同等の緊急時に即した制度ができたという点では喜ばしいとは考えている。もっとも緊急承認制度とEUAは同じ仮免許でも抱えている社会背景が違う点では悩ましいとも考えている。というのも緊急承認制度は薬機法第14条の2の2の第1項で「その適正な使用の確保のために必要な条件及び2年を超えない範囲内の期限を付して」承認を与えることができるとし、この期限について同条第3項で「1年を超えない範囲内において延長することができる」と定めている。単純に言えば、2年以内、遅くとも3年未満で第III相臨床試験の結果を提出せよということだ。一見それほど高くないハードルにも思えそうだが、そうとは言い切れない。ファイザーの新型コロナワクチン(同:コミナティ)はアメリカを中心とする地域で、わずか4ヵ月程度で4万人を超える第III相試験の被検者を集めることができた。また、新型コロナパンデミック当初の2020年3月、FDAは抗マラリア薬のクロロキン、ヒドロキシクロロキンに新型コロナ治療薬としてのEUAを与えながら、わずか3ヵ月弱でそれを取り消している。大規模臨床試験の結果が短期間で得られたからである。しかし、日本の臨床試験環境はアメリカとはまったく違う。日本の製薬企業のパワーと日本の臨床試験に対する国民意識を考えれば、疾患の種類にかかわらず2年で第III相試験の結果を得るのはなかなか厳しいのではないだろうか。つまり日本では、緊急承認された治療薬は最悪2年前後の期間を目一杯現場で使用したうえで、最終的に「有効性は認められませんでした」という結果もありうる。しかも、過去に使われた薬剤費はかなりの部分を公的に負担する。その意味で実は緊急承認制度とは謳っていてもかなり慎重な議論が必要だろう。こうした懸念を持っているからこそ、今回の審議の結果を一定の安堵感を持って受け止めている。むしろこの薬については現在進行中と言われる試験結果を待ち、それがボジティブだった時に満を持して登場して欲しいと切に願う。

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mRNAワクチン後の心筋炎/心膜炎リスク、何回目が高いか/Lancet

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のmRNAワクチン接種後に、稀ではあるが心筋炎または心膜炎のリスク増加が認められ、とくに18~25歳の男性で2回目接種後に最も高いことが、米国食品医薬品局(FDA)のHui-Lee Wong氏らによる後ろ向きコホート研究で示された。米国の医療保険請求データベースを用い、mRNA-1273(モデルナ製)とBNT162b2(ファイザー製)の接種後における心筋炎または心膜炎のリスクを定量的に直接比較した。これまで、いくつかの受動的サーベイランスシステムにより、とくに若年男性において、COVID-19 mRNAワクチン接種後の心筋炎または心膜炎のリスク増加が報告されていた。著者は、「今回の結果は、mRNA-1273とBNT162b2との間に統計学的に有意なリスク差があることを示していないが、差が存在する可能性は除外されるべきではない。また、ベネフィット-リスクプロファイルに従い、いずれかのmRNAワクチンの接種は引き続き支持される」とまとめている。Lancet誌2022年6月11日号掲載の報告。大規模医療保険請求データベースを用いて心筋炎/心膜炎とワクチンとの関連を解析 研究グループは、米国の4つの医療保険請求データベース(Optum、HealthCore、Blue Health Intelligence、CVS Health)を用い、後ろ向きコホート研究を行った。対象は、COVID-19 mRNAワクチン(BNT162b2またはmRNA-1273)を1回以上接種し、初回接種時の年齢が18~64歳のすべての個人で、国際疾病分類(ICD)コードを用いて、ワクチン接種後1~7日に発症した心筋炎または心膜炎を特定した。 心筋炎または心膜炎と各ワクチンとの関連を評価するため、ワクチン接種後の心筋炎または心膜炎の発生率(観察値:O)と、ワクチン非接種時の心筋炎または心膜炎の発生率の代理として、同データベースの過去(ワクチンが提供される1年前の2019年)のコホートから推定された発生率(期待値:E)を比較した。また、多変量ポアソン回帰モデルを用い、ワクチンの製品別の発生率と、mRNA-1273とBNT162b2を比較した発生率比(IRR)を推定し、メタ解析によりデータベースごとの発生率とIRRを統合した。18~25歳の男性で高リスクだが、製品別で心筋炎/心膜炎の発生に有意差なし 2020年12月18日~2021年12月25日の間に、18~64歳の1,514万8,369人がワクチン接種(BNT162b2が1,691万2,716回、mRNA-1273が1,063万1,554回)を受けた。 ワクチン接種後の心筋炎または心膜炎あるいはその両方が、計411例確認された。411例の背景(各データベースにおける割合)は、18~25歳が33~42%、男性が58~73%であった。 18~25歳の男性において、統合発生率は2回目接種後が最も高く、発生率(10万人日当たり)は、BNT162b2で1.71(95%信頼区間[CI]:1.31~2.23)、mRNA-1273で2.17(1.55~3.04)であった。 また、18~25歳の男性において、mRNA-1273のあらゆる接種回数後の心筋炎または心膜炎の発生率は、BNT162b2の同発生率と比較して有意差は認められなかった(統合補正後IRR:1.43、95%CI:0.88~2.34)。BNT162b2接種者と比較したmRNA-1273接種者の心筋炎または心膜炎の過剰リスクは、100万回接種当たり27.80(95%CI:-21.88~77.48)であった。

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ヤンセン製の新型コロナワクチン国内承認、公的接種での対象とせず

 ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)の医薬品部門であるヤンセンファーマは、6月20日付のプレスリリースで、同社製の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンについて、18歳以上を対象として、厚生労働省より製造販売承認を取得したことを発表した。一般名はコロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチン(遺伝子組換えアデノウイルスベクター)、販売名はジェコビデン筋注。国内で承認を得た5種類目のワクチンとなる。ヤンセンファーマのワクチン・ジェコビデン筋注は、公的接種の対象とはせず、接種希望者は自費で接種することが想定されている。ヤンセンファーマ製ワクチンは米国ではFDAが使用制限を発表 ヤンセンファーマ製の本ワクチンは、すでに承認済みのアストラゼネカ製と同じウイルスベクターワクチンで、海外第III相臨床試験のENSEMBLE試験において、単回接種でのCOVID-19に対する予防効果および安全性が確認されている。海外第III相臨床試験のENSEMBLE2試験では、ヤンセンファーマ製の本ワクチンを初回接種2ヵ月後に追加接種時の予防効果および安全性を評価し、予防効果が改善され、追加接種しても単回接種時と同様の安全性の結果を獲得できることが示された。国内で実施された第I相COV1002試験では、ヤンセンファーマ製の本ワクチンの日本人に対しての安全性および免疫原性を確認し、海外試験と同様の免疫原性および安全性の結果を獲得しているという。<ヤンセンファーマ製COVID-19ワクチンの添付文書情報>用法及び用量通常、1回0.5mLを筋肉内に接種する。用法及び用量に関連する注意接種対象者18歳以上の者。追加免疫1. 通常、本剤の初回接種から少なくとも2ヵ月経過した後に2回目の接種を行うことができる。SARS-CoV-2の流行状況や個々の背景因子等を踏まえ、ベネフィットとリスクを考慮し、追加免疫の要否を判断すること。2. 初回免疫として他のSARS-CoV-2ワクチンを接種した者に追加免疫として本剤を接種した場合の有効性及び安全性は確立していない。 一方、米国ではヤンセンファーマ製の本ワクチンは2021年2月27日に、米国食品医薬局(FDA)により緊急使用許可が承認されていたが、FDAと米国疾病予防管理センター(CDC)の継続した調査の結果、ワクチン投与の約1~2週間後に深刻な血小板減少を伴う血栓症(TTS)発症リスクがあると判断された。そのため、2022年5月5日、FDAはヤンセンファーマ製のワクチンについて、18歳以上かつ、他社製のワクチンにアクセス不可能あるいは臨床上適切でないと判断された場合、接種希望者に限り承認するとして、使用制限を発表した。調査結果によると、TTSの報告率はワクチン投与100万回当たり3.23例、TTSによる死亡の報告率は100万回当たり0.48例であるとし、COVID-19の予防というヤンセンファーマ製の本ワクチンのベネフィットは、リスクを上回っているとFDAは判断しているという。

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オミクロン株症候性感染の予防、既感染+3回接種が高い効果/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン(BNT162b2[ファイザー製]、mRNA-1273[モデルナ製])接種やオミクロン変異株(B.1.1.529)以外への既感染、およびその両者(ハイブリッド免疫)を有する場合、オミクロン変異株亜種のBA.1/BA.2感染による重症化の予防効果について、識別可能な違いはないことが示された。症候性感染に対する予防効果は、既感染+最近のブースター接種からなるハイブリッド免疫が最も強力だったという。Weill Cornell Medicine-QatarのHeba N. Altarawneh氏らが、カタール国内で行った診断陰性ケースコントロール試験の結果で、NEJM誌オンライン版2022年6月15日号で発表された。2021年12月~2022年2月、カタール国内で試験 研究グループは、2021年12月23日~2022年2月21日にカタール国内でマッチド診断陰性ケースコントロール試験を行い、COVID-19ワクチン(BNT162b2またはmRNA-1273)接種や、オミクロン変異株以前の変異株への感染による自然免疫、およびハイブリッド免疫(既感染+ワクチン接種)による、症候性オミクロン変異株感染および重症・重篤・致死的COVID-19に対する有効性を検証した。既感染+3回接種のハイブリッド免疫、有効性77.3% カタール国内でワクチン接種が開始された2020年12月23日から試験終了の2022年2月21日までに、BNT162b2ワクチンの2回以上接種者は130万6,862人、3回接種者は34万1,438人で、3回目接種日の中央値は2021年12月25日、2回目と3回目の接種間隔の中央値は251日(四分位範囲:233~274)だった。また、同mRNA-1273の2回接種者は89万3,671人、3回接種者は13万5,050人で、3回目接種日の中央値は2022年1月12日、2回目と3回目の接種間隔の中央値は236日(四分位範囲:213~260)だった。 既感染のみの、オミクロン変異株亜種BA.2系統への症候性感染に対する有効性は、46.1%(95%信頼区間[CI]:39.5~51.9)だった。一方で非感染・BNT162b2ワクチン2回接種の同有効性はほとんど認められなかった(-1.1%、95%CI:-7.1~4.6)。ただし、その多くが2回目接種後6ヵ月超を経過した被験者だった。 非感染・BNT162b2ワクチン3回接種の同有効性は52.2%(95%CI:48.1~55.9)だったが、既感染+BNT162b2ワクチン2回接種の有効性は55.1%(50.9~58.9)、既感染+BNT162b2ワクチン3回接種では77.3%(72.4~81.4)だった。 既感染のみ、BNT162b2ワクチンのみ、ハイブリッド免疫のいずれも、重症・重篤・致死的オミクロン変異株BA.2系統への感染に対して、70%超の高い予防効果を示した。同様の結果は、対オミクロン変異株BA.1系統への感染や、mRNA-1273ワクチンについても認められた。

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第114回 コロナ新対策決定、協定結んだ医療機関は患者受け入れ義務化、罰則規定も

岸田首相がコロナ新対策公表こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。この連載を読んでくれている友人から、今度は「今年はコロナ関連の話題も少ないね」と言われました。確かに、少ない、というかほとんど書いていません。お正月の回で、独自の“楽観論”を書いたところ、不思議なことにコロナが収束に向かい始めたので、少々ウオッチを怠っていたのがその理由です。そんな“楽観論”から約半年、先週、岸田 文雄首相が、新型コロナをはじめとする感染症に対する新対策を公表しました。参議院選挙を睨んだパフォーマンスと見る向きもありますが、それなりにこれまでの反省点を踏まえた内容になっています。今回は新対策に盛り込まれた医療提供体制の改革案について書いてみたいと思います。一元的に感染症対策を行う内閣感染症危機管理庁を新設岸田首相は6月15日、通常国会の閉会を受けて首相官邸で記者会見を行い、新型コロナウイルスを含む今後の感染症に対応する「内閣感染症危機管理庁」を内閣官房に設置し、司令塔機能を強化することを表明しました。内閣感染症危機管理庁は、感染症の危機に備えて「首相のリーダーシップの下、一元的に感染症対策を行う」組織で、同庁の下で平時から感染症に備え、有事の際は物資調達などを担う関係省庁の職員を同庁の指揮下に置き、一元的な対策を行うとしています。またトップには「感染症危機管理監」(仮称)が置かれる予定です。新型コロナ対応は現在、内閣官房の「新型コロナウイルス感染症等感染症対策推進室」と、厚労省の「新型コロナ感染症対策推進本部」の2つの司令塔があり、その連携のまずさが度々問題視されてきました。たとえば「ワクチン・検査パッケージ」を陰性証明に使うかどうかや、ワクチンの3回目接種時期を巡っては、内閣官房と厚労省の考え方の違いが表面化し、政策決定にも支障が出ていました。両者を統括した形の内閣感染症危機管理庁の設置は、省庁をまたぐ縦割りの弊害を解消し、一体的に対応できる体制を構築するためのものだと言えます。感染研と国際医療研究センターを統合し「日本版CDC」にさらに、厚労省における平時からの感染症対応能力も強化されます。各局にまたがる感染症対応、危機管理の部署を統合して「感染症対策部」を新設するとしています。さらに「感染症に関する科学的知見の基盤・拠点となる新たな専門家組織」も一元化するため、研究機関である国立感染症研究所と、高度な治療・研究の拠点である国立国際医療研究センターを統合、米疾病対策センター(CDC)をモデルとした、いわゆる「日本版CDC」を厚労省の下に創設するとしています。危機管理組織や専門家組織の一元化は望ましいことです。ただ、気になる点もあります。一点目は、統合後の組織の位置づけです。米国では感染症研究や臨床試験の主な担い手は米国立衛生研究所(NIH)であり、疾病の情報掌握とそれらが発生した時の公衆衛生対策等が主な役割であるCDCではありません。国立国際医療研究センターの現在の機能はどちらかと言えばNIH的と考えられるので、「日本版CDC」というコンセプトでよいのかどうか疑問が残ります。もう一点は、東京大学医学部のジッツ色が濃い国立国際医療研究センターが、感染症研究の中心になることで、研究分野の主導権や研究費の獲得を巡って大学間で軋轢が生じたりしないかということです。そのあたり現場の調整は意外に大変そうです。「医療機関とあらかじめ協定を締結する仕組みに法的根拠を与える」重症患者受け入れから、市中での検査体制まで、コロナ禍で最もその脆弱性が浮き彫りになった医療提供体制についても、病床確保の面で踏み込んだ改革が行われます。岸田首相は会見で、「本日の有識者会議の報告を受け止め、昨年の総裁選で約束したとおり、国・地方が医療資源の確保等についてより強い権限を持てるよう法改正を行う。医療体制については、11月の『全体像(次の感染拡大に向けた安心確保のための取り組みの全体像)』で導入した医療機関とあらかじめ協定を締結する仕組みなどについて、法的根拠を与えることでさらに強化する。地域の拠点病院に協定締結義務を課すなど、平時から必要な医療提供体制を確保し、有事にこれが確実に回ることを担保する」と語りました。「かかりつけ医機能が発揮される制度整備が重要」と有識者会議政府の「新型コロナウイルス感染症対応に関する有識者会議」(座長:永井 良三・自治医科大学長)も同じ15日に報告書1)をまとめ、首相会見の直前に公表しており、その内容を踏まえて岸田首相は医療提供体制の改革案を述べたわけです。そもそも、有識者会議報告書があって、政府がそれを参考に政策立案、参院選前に公表という筋道が必要だったため、有識者会議の議論はかなり拙速気味に行われたようです(会議自体は5月から4回開催、5回目に報告書)。ただ、報告書自体は、以下のようにしごく真っ当な指摘をしています。「感染症危機時に実際に病床を確保するために必要な対応など実際の具体的な運用に関して、感染症法に基づく予防計画や医療法に基づく医療計画との連携ができていなかった」と法整備の不備を指摘、「各地域で個々の入院医療機関が果たすべき役割が明示されておらず、医療機関の協力を担保するための措置もなく、現場は要請に基づいて対応せざるを得なかった」として、現場でのさまざまなドタバタぶりを例示しています。その上で、病院については、「各地域で平時より、医療機能の分化、感染症危機時の役割分担の明確化を図るとともに、健康危機管理を担当する医師及び看護師を養成してネットワーク化」することを提案しました。さらに、かかりつけの医療機関(とくに外来、訪問診療等を行う医療機関)についても、「各地域で平時より、感染症危機時の役割分担を明確化し、それに沿って研修の実施やオンライン診療・服薬指導の普及に取り組むなど、役割・責任を果たすこととした上で、感染症危機時には、国民が必要とする場面で確実に外来医療や訪問診療等を受診できるよう、法的対応を含めた仕組みづくりが必要である。今後、さらに進んでかかりつけ医機能が発揮される制度整備を行うことが重要である」と提言しました。特定機能病院や公立・公的病院には協定締結の義務岸田首相の記者会見から2日後の6月17日、政府は新型コロナウイルス感染症対策本部において、内閣感染症危機管理庁などを新設することや、病床確保を確実にするため国・地方の権限を強化する方針を盛り込んだ「新型コロナウイルス感染症に関するこれまでの取組を踏まえた次の感染症危機に備えるための対応の方向性」2)を正式決定しました。感染症法の改正に向けて本格的な検討に入り、秋の臨時国会に法案提出する予定とのことです。明らかになった「方向性」でとくに注目されるのは、有事の病床確保のために協定の締結を求める点です。具体的には、都道府県が医療機関との間で協定を結び、病床や外来医療を感染者の急増時などに提供できるようにするとのことです。協定の仕組みは法律(感染症法)で定め、地域医療の拠点となる特定機能病院や公立・公的病院には協定締結の義務を課すとのことです。有事に医療機関が協定に従うようにするため、協定の履行状況を公表するほか、特定機能病院については承認の取り消しも視野に入れるとしています。また、自宅・宿泊療養者等への医療提供についても、医療機関との間で協定を締結するとしています。「協力を求め」て「勧告」するくらいでは病院は動かない新型コロナの感染が急増していた昨年、本連載でも国の病床確保策の不十分さについて度々書いてきました。2021年4月21日掲載回では、2021年2月に改正された感染症法(第16条の2)に基づき、奈良県が民間病院を含む県内全ての75病院に病床確保や患者の受け入れを要請したニュースを取り上げました。昨年の感染症法改正では、コロナ病床の確保を目的に、国や地方自治体の権限を強化しました。同法第16条の2は「厚生労働大臣又は都道府県知事等は、緊急の必要があると認めるときは、医療関係者・民間等の検査機関等に必要な協力を求め、その上で、当該協力の求めに正当な理由がなく応じなかったときは勧告することができる(正当な理由がなく勧告に従わない場合は公表することができる)こととすること」となっています。しかし、結局、この動きが全国に広いがることはありませんでした。「必要な協力を求め」て「勧告」するくらいでは病院は動かないことが証明されたのです。次に予定される感染症法等の改正は、明らかにこれに懲りての対応と考えられます。協定の締結を特定機能病院に義務付け、承認取り消しという罰則も想定されています。また、特定機能病院以外の医療機関との協定についても罰則の導入が検討される模様です。罰則導入は、「お願い」ベースでは思うように動かなかった日本の医療機関に対し、ちゃんと動いてもらうための最後手段と言えます。しかし、こうした政府の動きに対し、日本医師会の中川 俊男会長(既にレームダックですが)は6月15日の記者会見で「強制的に病床を確保せよという仕組みは、地域医療にとって決していいことではない」と語ったそうです。罰則規定には、今後新体制となる日本医師会含め、医療関係団体からの反対も予想されますが、昨年の感染症法改正が病床確保にまったく役にも立たなかったことを考えると、次こそ有事に実効性のある改正を期待したいものです。参考1)新型コロナウイルス感染症へのこれまでの取組を踏まえた次の感染症危機に向けた中長期的な課題について/新型コロナウイルス感染症対応に関する有識者会議2)新型コロナウイルス感染症に関するこれまでの取組を踏まえた次の感染症危機に備えるための対応の方向性/新型コロナウイルス感染症対策本部

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