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第133回 医療計画に「新興感染症」の追加を検討/厚労省

<先週の動き>1.医療計画に「新興感染症」の追加を検討/厚労省2.「5類」見直しで大規模接種会場の縮小・閉鎖へ/政府3.新型コロナウイルス感染拡大、介護施設の経営を直撃/厚労省4.介護施設は面会制限の緩和、「対面での面会」の再開を/厚労省5.外国人患者の受け入れマニュアルを更新/厚労省6.宿日直許可、去年は1,369件と急増/厚労省1.医療計画に「新興感染症」の追加を検討/厚労省厚生労働省は2月2日に「第8次医療計画に関する検討会」を開催し、従来は5事業の医療計画に「新興感染症対応」を6事業目に加えることを検討した。今回の議論にあたって、新興感染症発生・まん延時における医療提供体制確保に関する数値目標の設定にあたっては、新型コロナウイルス感染症対応の実績を参考として、感染症の流行初期の入院対応医療機関を500施設、外来対応医療機関を1,500施設程度整備する方針を示した。厚生労働省は令和6年4月に施行される改正感染症法および医療法のため、令和5年度中に各都道府県で予防計画および医療計画を策定する必要があるため、できる限り早く議論のまとめを行う方針。(参考)6事業目(新興感染症対応)について(厚労省)次なる新興感染症に対応するため、流行初期の入院対応医療機関500施設、外来対応医療機関を1,500施設程度整備-第8次医療計画検討会(Gem Med)2.「5類」見直しで大規模接種会場の縮小・閉鎖へ/政府政府の新型コロナウイルスの「5類」への引き下げを受けて、防衛省は大規模接種会場の縮小・閉鎖の検討を開始した。今月中旬にも方向性を決め、3月から順次縮小、閉鎖を検討するとみられる。また、大阪府も1月31日に新型コロナウイルス対策本部会議を開き、ワクチンの大規模接種会場「心斎橋接種センター」を3月末に廃止する方針を決めた。合わせて重症者向けの臨時施設も閉鎖する方針。(参考)ワクチン大規模接種会場の縮小・閉鎖を検討 防衛省、来月にも(朝日新聞)大阪府、大規模接種会場を閉鎖へ コロナ重症センターも(日経新聞)3.新型コロナウイルス感染拡大、介護施設の経営を直撃/厚労省厚生労働省は、1日、介護施設・事業所の経営状況を把握する調査(介護事業経営概況調査)の最新の結果を公表した。コロナ禍や人件費増が影響を受けて、通所系サービスの収支の悪化が目立つ内容となっている。利益率をみると、通常規模以上の通所介護は昨年度の利益率1.0%と、前年度に比べてマイナス2.8ポイント低下していた、これは新型コロナウイルスの感染拡大で利用者の利用控えによるものと考えられる。また、人手不足を背景に人件費高騰や感染対策の費用も影響を受け、介護報酬引き上げがあったものの、経費増がそれを上回った形となった。(参考)第36回社会保障審議会介護給付費分科会介護事業経営調査委員会(厚労省)通所介護の収支が悪化 コロナ禍や人件費増が影響 利益率が低下=厚労省調査(ケアマネドットコム)2021年度介護報酬の後、人件費増により介護事業所・施設の経営状況は悪化傾向―介護事業経営調査委員会(Gem Med)赤字の老健が3分の1に、21年度 赤字割合、2年間で12ポイント増(CB news)4.介護施設は面会制限の緩和、「対面での面会」の再開を/厚労省厚生労働省は、新型コロナウイルス感染拡大で、家族との面会制限を行っている高齢者施設に対して、面会の機会の減少により心身の健康への影響が懸念されるとして、高齢者施設などでの面会の再開・推進を図るために職員向けに、面会を積極的に実施する施設の事例や実施方法などを情報発信する動画およびリーフレットを作成した。厚生労働省は、実際に面会を行っている施設での工夫や取組事例、面会を行う際に気を付けたいポイントをまとめ、活用して、対面での面会の再開を求めている。(参考)高齢者施設入所者の心身の健康を確保するため、十分な感染対策の下「対面での面会」の再開・推進を-厚労省(Gem Med)高齢者施設等における面会の再開・推進にかかる高齢者施設等の職員向け動画及びリーフレットについて(厚労省)高齢者施設における面会の実施に関する取組について(同)5.外国人患者の受け入れマニュアルを更新/厚労省厚生労働省は、新型コロナウイルスの感染の拡大が沈静化するとともに、訪日外国人旅行者が今後、増えるとして「外国人患者の受入れのための医療機関向けマニュアル」を更新して公表した。マニュアルの改定には「厚生労働省訪日外国人旅行者等に対する医療の提供に関する検討会」の議論を踏まえ、医療機関における外国人患者の受け入れの環境整備に役立てるよう取りまとめられた。自見はなこ参議院議員によれば「訪日外国人観光客の約4%が日本滞在中に医療機関を受診するが、全体の約3割が民間医療保険非加入であり、外国人患者を受け入れた病院の約2割が未払いを経験という厚労省の調査結果もある」と言う。現在では、健康保険法の改正が行われ、訪日外国人の未払いの医療費がある場合に再入国させないようにする措置や、在留している外国人労働者が健康保険料の未払いがあった場合は在留資格の更新は許可しないようになっている。東京都は厚生労働省委託事業で「訪日外国人受診者医療費未払情報の報告に関する説明会」を2月17日に全国の保険医療機関を対象にオンラインで開催し、訪日外国人受診者による医療費不払い防止のための、「不払い情報報告システム」について情報提供を行う予定。(参考)「外国人患者の受入れのための医療機関向けマニュアル」(厚労省)外国人への適切な医療提供と保険制度維持へ 打った手と残った課題―自見はなこ氏が講演(Medical Note)「訪日外国人受診者医療費未払情報の報告に関する説明会(第6回)」について(東京都)自見はなこ参議院議員ツイッターアカウント6.宿日直許可、去年は1,369件と急増/厚労省厚生労働省によると、2022年の医師の宿日直許可が1,369件と増加していることが明らかになった。2024年4月から勤務医の時間外労働の上限が原則、年960時間となるため、救急医療を担う急性期病院だけではなく、外部から当直医の派遣を受けている医療機関も派遣元となる大学病院での労働時間と合わせて上限規制の対象となるため、受け入れている医療機関は対応を迫られている形だ。厚生労働省は、宿日直許可申請をサポートするため、各都道府県に医療勤務環境改善支援センターを設置しており、早期の申請を働きかけている。(参考)医療機関における宿日直許可 ~申請の前に~(厚労省)医師の宿日直許可取得、昨年は1,369件へ大幅増 厚労省(MEDIFAX)「医師の働き方改革」で手術や救急に支障が及ぶ訳(東洋経済オンライン)

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オミクロン株BF.7、BQ.1.1、XBB.1に対するワクチンの効果は?/NEJM

 2月2日に発表された東京都新型コロナウイルス感染症モニタリング会議・分析資料によると、これまで主流だったオミクロン株BA.5から、BQ.1.1やBF.7に置き換わりが進んでいる1)。海外では、インドやシンガポールなどのアジア諸国でXBB系統の勢力も拡大している。米国・ベス・イスラエル・ディーコネス医療センターのJessica Miller氏らの研究グループは、1価およびBA.4/5対応2価のmRNA新型コロナワクチンを追加接種した被験者において、これらの新たな変異型についてワクチンの効果を評価したところ、BA.5と比較して、BQ.1.1やXBB.1に対するワクチンによって獲得できる中和抗体価が、著しく低いことが示された。本結果は、NEJM誌オンライン版2023年1月18日号のCORRESPONDENCEに掲載された。 本研究では、まず2021年に3回目接種としてファイザーの1価ワクチンを接種した16例(年齢中央値34歳)について、中和抗体値を評価した。次に、中央値でワクチンを3回接種したことのある被験者33例に対して、2022年に追加接種として1価ワクチンを接種した15例(年齢中央値50歳、ファイザー5例、モデルナ10例)、追加接種として2価ワクチンを接種した18例(年齢中央値42歳、ファイザー8例、モデルナ10例)について、中和抗体価を評価した。2022年に追加接種した2群については、33%にSARS-CoV-2オミクロン株の感染既往の記録があり、そのほかの大半の被験者も感染していた可能性がある。 主な結果は以下のとおり。・2021年に1価ワクチンを追加接種した群では、接種前の中和抗体価は、BA.5、BF.7、BQ.1.1、XBB.1のそれぞれに対して実質的にほぼなかったが、接種後の中和抗体価の中央値は、BA.5に対して887、BF.7に対して595、BQ.1.1に対してはBA.5より3倍低い261、XBB.1に対しては8倍低い105だった。・2022年に1価ワクチンを追加接種した群では、接種前の中和抗体価は、BA.5に対して184、BF.7に対して167、BQ.1.1に対して49、XBB.1に対して28であった。接種後の中和抗体価は、BA.5に対して2,829、BF.7に対してBA.5とほぼ同等の2,276、BQ.1.1に対してはBA.5より7倍低い406、XBB.1に対しては17倍低い170であった。・2022年に2価ワクチンを追加接種した群では、接種前の中和抗体価は、BA.5に対して212、BF.7に対して131、BQ.1.1に対して45、XBB.1に対して20以下であった。接種後の中和抗体価は、BA.5に対して3,693、BF.7に対して2,399、BQ.1.1に対してはBA.5より7倍低い508、XBB.1に対しては21倍低い175であった。 本結果により、1価および2価ワクチンの追加接種により、BA.5と比較して、BF.7に対しては若干劣るがほぼ同等の中和抗体を獲得していたが、一方で、BQ.1.1やXBB.1に対しては既存のmRNAワクチンの有効性が低下していることが明らかになった。加えて著者らは、ワクチンによる重症化予防効果はCD8 T細胞応答に依拠する可能性があることを示唆している。

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第145回 これが患者のリアル、ワクチンマニアもコロナ感染!?村上氏のヒヤヒヤ実記(後編)

―2023年1月3日(火)午前6時前に目が覚める。就寝中かなり寝汗をかいたことは寝間着代わりにしているTシャツの首元がじっとりと湿っていることでわかった。昨日と比べ、頭はすっきりしている。検温すると、37.2℃。だいぶ下がった。タイミングよく娘から「おにぎりとみそ汁」という朝食オーダーが届いたので、いつものようにマスクを両面テープで顔面に密着させた状態で、一番近いコンビニに買い出しに行く。ここは有人レジと無人レジが離れていて、人と距離が取れることが利点だ。部屋に電子レンジもあるのでみそ汁の温めも店員に頼まなくて済む。朝食を置き配して、シャワーを浴びる。出発約束時刻は8:45。まず私がホテルの出口から数メートル先まで行き、それから娘にLINEで部屋を出るように連絡し、その後は距離を取ってついてくるよう指示した。ホテルの出口に現れた娘はジャンプしながらこちらに手を振っている。思えば壁一つ隔てた場所にいながら、約3日間、顔を合わせていなかった。私も手を振り返すが、この3日間の療養で相当体力を奪われたのか、転倒しそうなほど体がふらついた。とりあえず前を向いてスタスタと歩き出す。後ろからはかすかに娘のものらしい足音が聞こえる。途中、小さな公園を通過した時、「うわー、カラス」と叫びながら娘が私のほぼ真後ろに距離を詰めてきた。娘は幼児期からカラスが大嫌いだ。距離が近過ぎる。私は微量でも娘の方向に飛沫が向かうことを避けるため、振り返らずに「おとうに近寄り過ぎない」とやや大きめの声で言い渡した。足音がやや遠ざかった。そこから2分ほど歩いたところで歩道が大幅に広くなる。すると、娘が私の真横にかなり距離を取って並んだ。マスク越しにニコニコしている。その手があったか。まもなく地下道の入り口。私はそのまま娘のほうを向かずに地下道入り口を指さして、「わかるね?」というと、「うん」という声とともに娘が私の前方に走り出て地下道の入り口を目指し始めた。その場に立ち止まっていると、娘は入り口で立ち止まって振り返った。私が手を振ると、それに応え、娘は地下道の中に消えていった。私は方向転換してホテルに戻って検温。36.7℃。少し休憩してから、件のクリニックに向かった。到着したのは開院5分前。中の電気がついており、ガラス越しに看護師らしい女性職員がマスクに加え、フェイスシールドで防護している姿が見えた。まだ、受診者は誰も来ていない模様。ガラス越しに目が合ったその女性が入り口まで出てきて「村上さんですか?」と尋ねてきた。はいと答えると、そのまま室内に案内され、手指消毒の指示。「来る前に検温はしました?」と尋ねられたので、朝6時と直前の体温を告げると、そのまま「こちらへ」と誘導される。診察室の表記のあるドアの前を通り過ぎ、女性がその先の小さめのドアを開けた。物品置き場のような間取りだ。中にはパソコン(PC)を置いた机を前にマスクとフェイスシールドを着用したB医師が着席していた。「どうですか、お加減は?」と尋ねられた。私はまだ微熱状態ではあるものの、今朝はかなり改善している感じがすること、咽頭痛はそれほど感じなくなったが、その代わり痰が絡むようになったと伝えた。B医師が「まず口の中を診ますね」と言いながら開口を指示してきた。複数回、顔の角度を変えながら咽頭の様子を見ている。それが終わると、パルスオキシメーターを私の指に挟んだ。数値は99%。B医師が「ちなみにコロナワクチンは何回接種していますか?」と尋ねてきた。そういえば、昨日のやり取りではその話はしていなかった。オミクロン株対応ワクチンも含め、4回接種が完了している旨、最後の接種が12月27日、これまでの接種ワクチンの種類(私はファイザー→ファイザー→モデルナ→モデルナ2価[BA.4/5対応])、4回目接種直前にスパイクタンパク抗体価検査を実施したことを伝えると、B医師が「うわっ、抗体価がかなり高いですね」と目を見開いてこっちを凝視した。加えてインフルエンザ(以下、インフル)ワクチンも接種済みと伝えた。「抗原検査が4回連続陰性だったことや、コロナのスパイクタンパク抗体価の高さ、インフルワクチン接種済みといったことを考えると、ただの風邪の可能性も十分にあります。ただ、最近うちを受診した発熱患者で、いわゆるただの風邪は1割程度とかなり少ないです。また現状の感染状況や症状を伺う限り、コロナの可能性は十分あり得ます。娘さんの受験も心配でしょうから、コロナとインフルの検査はしてみましょう」鼻出しマスク状態で、綿棒2本でそれぞれ鼻の奥をゴリゴリ。2本目が終了したところでくしゃみが出そうになり、慌てて鼻までマスクを覆い、下を向いてマスクを手で押さえながらくしゃみ。B医師にお詫びをしながらふと机の上に目をやると、消毒用アルコールのボトルが目に入ったので、使わせてくださいとお願いすると、「どうぞ」と私のそばに置いてくれた。私がノズル近くに左手を差し出し、右ひじでポンプを押すと、「ああ、そういうの気を付けているんですね」と笑われる。誰が触るかわからない手押し式の場合、私は常にポンプを肘押ししている。B医師が「インフルは迅速キットなのでもうじき結果がわかります。コロナのPCRは明日の遅くとも夕方には判明すると思います」と告げられた。実は明日はホテルのチェックアウト予定日。チェックアウト時間は午前11時だ。もし、コロナと判明した場合、発症日が12月30日なので療養解除は1月6日。私はなんとかホテルに事情を説明して、あと2泊はしなければならない。可能ならば明日午前11時までに結果を知りたいが、新年早々に診察をしてくれたB医師に無理は言えない。とりあえずPCR検査結果を待つこと、インフルの検査結果はこのまままっすぐホテルに戻ってから電話で尋ねることにしてクリニックを後にした。ホテルに戻るや否やB医師から電話があり、インフルは陰性だったことを告げられる。「発症からかなり経っての検査で陰性なのでインフルの可能性はほぼないと思います」とのこと。さらに早ければ明日午前にはPCR検査の結果もわかるだろうとの話だった。そのまま机に座ってPCに向かい仕事。娘には出発前にPayPayを1,000円分送り、昼は予備校近くのコンビニで何か買うように指示していた。まずは娘と私の洗濯に着手。その間は仕事。この日はほとんど苦痛なく仕事が進められる。ただ、今日は机を使っているので、昨日のような室内を即席乾燥室として使うことはできない。幸い今日の洗濯物は厚手のものはないので、貧乏性は引っ込めて館内のコインランドリーの乾燥機を1時間使うことにした。遅くとも明日には仕上げなければならない原稿があるので、時々水分を摂りながら一気に進めた。気が付くと午後3時を過ぎていた。そこで買い置きのインスタントラーメンをすすって、再び仕事に勤しんだ。午後6時過ぎに原稿のめどがつく。一気にどっと脱力感に襲われる。まだ、本調子ではない。娘は自習室が閉まる夜9時までは予備校にいるはず。そこからの時間計算で午後9時10分前後に朝に見送った地下道付近で待ち合わせる旨をLINEでメッセージしてから、タイマーをかけて横になった。目を覚ましたのは9時5分過ぎ。慌ててホテルを出て小走りで待ち合わせ場所に向かうが息が上がる。ということで小走りは止めてゆっくり歩いた。待ち合わせ場所にはすでに娘が到着していた。通常こういう時は「遅い」とブツクサ言われるのだが、今日は何も言われなかった。朝と同じく私が先行したが、ピンクのネオンが輝く時間になっていたので、朝よりは距離は詰めることにした。途中のコンビニの前で私は立ち止まり、無言で店内を指さした。娘が近づいてくるのに合わせて私は入り口から遠ざかり、娘も心得たように店内に消えていった。今日は肉系の弁当を買ってくるだろうか?まもなく娘が買い物袋入りの弁当をぶら下げて戻ってきた。それを確認してホテルに向かって歩き始めた。ホテルの入り口が見えてきたので、私は小走りにそこを通り過ぎて距離を置き、入り口を指さして「先に」とだけ告げた。娘が入っていったのを確認してから5分後に、私も部屋に戻った。LINEでメッセージすると、やはり買ってきたのは肉系弁当。体調不良でもこういうところは勘が働く。娘にはインフルは陰性だったこと、明日にはPCR検査の結果がわかることを告げた。娘からは荷物をどうするかとの問い。そうそれが問題なのだ。娘は勉強道具と宿泊に必要な諸々の物品を持ってきている。チェックイン時は宿泊用の物品が入ったスポーツバッグを私が運んで先に手続きを済ませていた。小柄な娘が一人で持つのはかなり大変な量と大きさである。さてどうしようかと悩んでいると、娘からはスポーツバッグの中身はすぐには必要ないので、数日後でも家に届けばいいという。もし私が陽性だった場合はここに6日まで泊まり、後日に荷物を渡すことが決定する。もっとも留まることが決定した場合、このホテルに空きがあるか、それをホテルが許容してくれるかは未解決だ。まあ、その時に考えるしかないと腹をくくった。宿泊予約サイトで見ると、明日以降は3部屋ほど空きがある。それが埋まらないことを願いつつ就寝。―2023年1月4日(水)朝5時半過ぎに目が覚める。検温すると36.5℃。体調も良いと感じる。念のため部屋の片づけを始めると、娘から朝食のオーダー。今日は調理パンと洋風スープ。はいはい。いつものようにコンビニへ。この時間はほとんど人が歩いていない。周りへの影響を考えると非常に気が楽である。娘の部屋の前に行くと、すでにスポーツバッグが置いてあった。朝食の置き配をし、代わりにスポーツバッグを持って自分の部屋に入り、そのまま片づけを続ける。7時半にそれを終え、今度はこの日提出予定の原稿の再チェック。8時過ぎにそれも終えると、ちょうど娘からのLINE。娘「今日も送ってくれる?」私「もう道は分かるでしょ」娘「わかるけど」私「けど?」娘「カラス」ああ、またそこか。合格した大学を蹴ってまで浪人を選ぶ度胸がありながら、カラスの何が怖いと言いたくなるが、ぐっとこらえる。昨日のように送っていくことにした。昨日と同じく予定時刻に距離を置いてホテルの前で待ち合わせてまた地下道へ。今日の娘は過度に近づいては来ない。地下道入り口で別れ、私は部屋に戻って用意していた原稿を送信。その後はこの間、十分とは言えなかった各種ニュースのチェックに。午前10時を過ぎたあたりで、B医師から電話に着信。B医師「おはようございます。検査結果出ました。陰性でした」安堵のあまり言葉が逆に出なくなる。B医師が続けた。B医師「まあ、結果としては今どき珍しいただの風邪ということですね。アハハ。ただの風邪にはワクチンありませんから」私  「とはいえ、偽陰性の可能性がないわけではないですよね」と問うとB医師「理論上はそうですが、それを言い出したらきりがないですよ。いずれにせよまだ本調子ではないですよね。お大事になさってください」と告げられ電話が終わった。私は机上に残っていたPCの電源を切ってチェックアウトした。ホテルを出たところで娘にコロナ陰性だったことをLINEで報告した。自分の荷物を背負い、娘のスポーツバッグを肩に掛け、駅の改札に到着。しかし、ここで余計な考えが頭に浮かぶ。もし偽陰性だったら、と。数分考え、自分の事務所まで、距離にして約3.5kmを歩くことにした。しかし、病み上がりの体にはこれがかなりハード。途中休み休みで結局、1時間10分かかった。事務所で体重計に乗ってみる。58.5kg。宿泊当日朝の計測から-2.5kg。58kg台を目にするのは何年ぶりだろう。結局、1時間ほど休んで自宅に娘の荷物を運びこみ、私は念には念を入れ、週末の日曜日夕刻まで事務所で“籠城”することにした。この間、水とペヤングソース焼きそばのみの生活。日曜日の夕刻には体重は60kgまで戻っていた。こうして年末からのコロナ疑惑はようやく終了した。

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オミクロン株対応2価ワクチン、中和活性の比較/NEJM

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のオミクロン株は変異を続け、さまざまな亜型を増やしている。そこで、SARS-CoV-2のオミクロン株BA.4/5(BA.4とBA.5は同一のスパイクタンパクを有する)と起源株の、それぞれのスパイクタンパク質をコードするmRNAを含有する2価ワクチンが開発され、世界各国で使用され始めている。しかし、オミクロン株の亜型の中には、ワクチンによって得られた免疫や、感染によって得られた免疫を回避し得るスパイクタンパク質の変異を蓄積しているものもある。そこで、米国・テキサス大学のJing Zou氏らは、BA.4/5対応2価ワクチンによるオミクロン株の各系統に対する中和活性を評価し、いずれの系統に対しても、従来型ワクチンと比べて高い中和活性が得られたことをNEJM誌オンライン版2023年1月25日号のCORRESPONDENCEで報告した。 ファイザー製従来型ワクチン(BNT162b2)を3回接種した55歳以上の成人で、3回目接種から6.6ヵ月後に従来型ワクチン(30μg)を接種した38人(1価ワクチン群)、約11ヵ月後にBA.4/5対応2価ワクチン(起源株15μg+BA.4/5株15μg)を接種した40人(2価ワクチン群)について、4回目接種当日と1ヵ月後の中和活性を比較した。また、SARS-CoV-2の感染歴の有無別にも比較した。中和活性の比較は、オミクロン株の各系統(BA.4/5、BA.4.6、BA.2.75.2、BQ.1.1、XBB.1)およびUSA-WA1/2020株のスパイクタンパク質について行われた。中和活性の評価には、フォーカス減少法による中和試験で50%のウイルスを中和する血清希釈の逆数(FRNT50)を用い、幾何平均抗体価を算出して接種1ヵ月後における接種日からの幾何平均抗体価増加倍率を比較した。 結果は以下のとおり。<感染歴なしの接種1ヵ月後の中和活性の変化(1価vs.2価)>USA-WA1/2020:4.4倍vs.9.9倍(群間比2.3倍)BA.4/5:3.0倍vs.26.4倍(群間比8.8倍)BA.4.6:2.5倍vs.22.2倍(群間比8.9倍)BA.2.75.2:2.0倍vs.8.4倍(群間比4.2倍)BQ1.1:1.5倍vs.12.6倍(群間比8.4倍)XBB.1:1.3倍vs.4.7倍(群間比3.6倍)<感染歴ありの接種1ヵ月後の中和活性の変化(1価vs.2価)>USA-WA1/2020:2.0倍vs.3.5倍(群間比1.8倍)BA.4/5:2.8倍vs.6.7倍(群間比2.4倍)BA.4.6:2.1倍vs.5.6倍(群間比2.7倍)BA.2.75.2:2.1倍vs.5.3倍(群間比2.5倍)BQ1.1:2.2倍vs.6.0倍(群間比2.7倍)XBB.1:1.8倍vs.4.9倍(群間比2.7倍) 本論文の著者らは、今回の結果について以下のようにまとめている。・BA.4/5対応2価ワクチンは、SARS-CoV-2感染歴にかかわらず、4回目のブースター接種では、従来型ワクチンと比べて、BA.5の亜型(BA.4.6, BQ.1.1, XBB.1)およびBA.2の亜型(BA.2.75.2)に対して高い中和活性を誘発することが示された。・4回目のブースター接種後、SARS-CoV-2感染歴ありの被験者は感染歴なしの被験者と比べて、中和活性が高かった。・1価ワクチン群と2価ワクチン群の中和活性の差は、SARS-CoV-2感染歴なしの被験者のほうが感染歴ありの被験者と比べて大きかった。・BA.4/5対応2価ワクチンは、従来型よりも免疫原性が高く、現在流行しているオミクロン株の各系統に対してより幅広い反応を示すことを示唆する。

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新型コロナウイルス感染症に対する経口治療薬の比較試験(ニルマトレルビル/リトナビルとVV116)(解説:寺田教彦氏)

 本研究は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)重症化リスクの高い軽症~中等症患者を対象とした、標準治療薬ニルマトレルビル/リトナビルと新規薬剤VV116との比較試験である。 ニルマトレルビル/リトナビルは、オミクロン株流行下におけるワクチン接種者やCOVID-19罹患歴のある患者を含んだ研究でも、重症化リスクの軽減が報告され(オミクロン株流行中のニルマトレルビルによるCOVID-19の重症化転帰)、本邦の薬物治療の考え方(COVID-19に対する薬物治療の考え方 第15版[2022年11月22日])やNIHのCOVID-19治療ガイドライン(Prioritization of Anti-SARS-CoV-2 Therapies for the Treatment and Prevention of COVID-19 When There Are Logistical or Supply Constraints Last Updated: December 1, 2022)でも重症化リスクのある軽症~中等症患者に対して推奨される薬剤である。しかし、リトナビルは相互作用が多く、重症化リスクがある高齢者や高血圧患者で併用注意や併用禁忌の薬剤を内服していることがあり、本邦では十分に活用されていないことも指摘されている。 新規薬剤のVV116はレムデシビルの経口類似体で、主要な薬物代謝酵素や薬物トランスポーターを阻害せず、他剤との相互作用は起こしづらいと考えられている薬剤である。 本研究では、重症化リスクの高い軽症~中等症のCOVID-19成人患者でVV116投与群は、ニルマトレルビル/リトナビル投与群と比較して、持続的な臨床的回復までの期間について非劣性、かつ副作用が少なかった。 VV116は、今後COVID-19の治療に用いられる可能性のある薬剤ではあるが、本研究結果のみでは、COVID-19治療に用いる根拠は乏しいと私は考えている。理由としては、本研究の主要評価項目が、持続的な臨床回復までの期間となっていることである。本文中では、ニルマトレルビル/リトナビルはWHOガイドラインで重症化リスクの高い軽症~中等症患者に推奨されているために比較群としたが、同薬剤が各国のガイドラインで推奨されている根拠は、ニルマトレルビル/リトナビルの投与により、入院・死亡などの重症化リスクが有意に軽減したことにある。limitationにも記載があるが、本研究では重症化・死亡率低下の点で有効性を評価することができておらず、VV116がニルマトレルビル/リトナビルと比較して副作用が少なかったとしても、投薬により得られるメリットがなければ推奨する根拠は乏しいだろう。ニルマトレルビル/リトナビルは、COVID-19に対して有効な抗ウイルス薬なので、投薬により持続的な臨床的回復が速やかになる可能性はあるが、私の知る限りは、ニルマトレルビル/リトナビルの投与により持続的な臨床回復までの期間が早期になったことを示す大規模研究はない。本研究ではプラセボ群もないため、重症化リスクの高い軽症~中等症のCOVID-19成人患者に対して、VV116を投与すると、COVID-19の自然経過と比較して有意に持続的な臨床的回復までの期間を短縮するとは言えないと考える。 重症化予防効果の確認はlimitationで別の試験で評価を行う予定であることが記載されている。レムデシビルは、重症化リスクのある患者の入院・死亡リスクを軽減したことが証明されており(Gottlieb RL, et al. N Engl J Med. 2022;386:305-315.)、VV116はこの経口類似体であるため、同様に重症化予防は期待されうるが、本薬剤の評価はこの結果を待ちたいと考える。 その他に、本研究を本邦の臨床現場に当てはめる場合に気になったこととしては、ワクチン接種がある。本研究では、ワクチン接種者も参加していることを特徴としている。ただし、本研究のワクチン接種者は、どのワクチンを、いつ、何回接種したかが不明である。ワクチンの種類や、接種時期、接種回数は、持続的な臨床的回復までの期間や重症化リスクに寄与する可能性があり、重症化予防効果の試験では同内容も確認できることを期待したい。 最後に、2023年1月時点、本邦で使用されている経口抗ウイルス薬の目的を整理する。ニルマトレルビル/リトナビル、モルヌピラビル、エンシトレルビルの薬剤の中で、ニルマトレルビル/リトナビル、モルヌピラビルは、重症化リスクのある患者に対して重症化予防目的に投薬が行われている。対して、エンシトレルビルの重症化予防効果は証明されておらず、重症化リスクのない患者の早期症状改善目的に投薬されるが、重症化リスクのある患者には前者の2剤を使用することが推奨されている。 しかし、今後のCOVID-19の流行株の特徴や社会情勢によっては、抗ウイルス薬に求められる役割は、重症化予防効果や症状の早期改善のみではなく、後遺症リスクの軽減、場合によっては濃厚接触後の発症予防になる可能性もあるだろう。 VV116は、相互作用のある薬剤が少なく、比較的副作用も少ない薬剤と考えられ、臨床現場で使用しやすい可能性がある。本研究からは、同薬剤を用いることで患者が得られる効果ははっきりしなかったと考えるが、今後発表される研究結果によっては、有望な抗COVID-19薬となりうるだろう。また、VV116以外にもレムデシビルの経口類似体薬が開発されており、今後の研究成果を期待したい。

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コロナ2価ワクチンブースター、入院/死亡抑制効果は従来ワクチンの2倍/NEJM

 2022年8月31日、米食品医薬品局(FDA)は、起源株由来のスパイクタンパク質を含むmRNAとオミクロン変異株BA.4/5株由来のスパイクタンパク質を含むモデルナおよびファイザー製の2価ワクチンを、1次接種またはブースター接種後少なくとも2ヵ月以降のブースター接種用に緊急使用できるように承認した。FDAの承認は、これら2種類の2価ワクチンの非臨床データ、オミクロン変異株BA.1系統のmRNAを含む2価ワクチンの安全性と免疫原性のデータ、および1価ワクチンの安全性と有効性のデータに基づいて行われたものである。9月1日以降、この2種類の2価mRNAワクチンは、米国やその他の国々で、12歳以上の人のブースター接種用として、1価ワクチンに代わって使用されている。今回、オミクロン変異株BA.4.6、BA.5、BQ.1、BQ.1.1による重症感染に対するこれら2価ワクチンの有効性についての大規模コホート研究のデータが、NEJM誌オンライン版2023年1月25日号のCORRESPONDENCEに掲載された。2価ワクチンによるブースター接種の入院/死亡抑制効果は、従来ワクチンによるブースター接種の2倍以上だった。 米国・Gillings School of Global Public HealthのDan-Yu Lin氏らによる本研究は、同グループによる先行研究のデータを使って行われた。2022年9月1日~12月8日に2価ワクチンでブースター接種が行われた99日間と、それ以前の2022年5月25日~8月31日の1価ワクチンでブースター接種が行われた99日間の新たなデータを解析した。入院または死亡に至る感染を重症と定義し、1価・2価ワクチンの1回目のブースター接種における有効性を評価した。 主な結果は以下のとおり。・5月25日~8月31日に、対象者624万2,259人中29万2,659人が1価ワクチンのブースター接種を受けた。この期間に発生したCOVID-19関連入院報告の61/1,896例、死亡報告の23/690例が1価ワクチンのブースター接種後に発生した。・9月1日~11月3日に、対象者628万3,483人中107万136人が2価ワクチンのブースター接種を受け、この期間に発生したCOVID-19関連入院報告の57/1,093例、死亡報告の17/514例が2価ワクチンのブースター接種後に発生した。・ブースター効果は約4週間でピークに達し、その後低下した。12歳以上の全参加者において、ブースター接種後の15~99日目の入院を伴う重症感染に対するワクチンの有効性は、1価ワクチン25.2%(95%信頼区間[CI]:-0.2~44.2)、2価ワクチン58.7%(95%CI:43.7~69.8)、その差は33.5ポイント(95%CI:2.9~62.1)であった。・入院または死亡に至る重症感染に対するワクチンの有効性は、1価ワクチン24.9%(95%CI:1.4~42.8)、2価ワクチン61.8%(95%CI:48.2~71.8)、その差は36.9ポイント(95%CI:12.6~64.3)だった。

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Long COVID、軽症であれば1年以内にほぼ解消/BMJ

 軽症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者では、いくつかのlong COVID(COVID-19の罹患後症状、いわゆる後遺症)のリスクが高いが、その多くは診断から1年以内に解消されており、小児は成人に比べ症状が少なく、性別は後遺症のリスクにほとんど影響していないことが、イスラエル・KI Research InstituteのBarak Mizrahi氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2023年1月11日号で報告された。イスラエルの全国的な後ろ向きコホート研究 研究グループは、軽症SARS-CoV-2感染者における感染から1年間のlong COVIDによる臨床的な罹患後症状(後遺症)の発現状況を明らかにし、年齢や性別、変異株、ワクチン接種状況との関連を評価する目的で、後ろ向きコホート研究を行った(特定の研究助成は受けていない)。 解析には、イスラエルの全国規模の医療機関から得られた電子医療記録(EMR)が用いられた。対象は、2020年3月1日~2021年10月1日の期間に、ポリメラーゼ連鎖反応法によるSARS-CoV-2検査を受けたMaccabi Healthcare Servicesの会員191万3,234人であった。 エビデンスに基づく70のlong COVIDアウトカムのリスクについて、年齢と性別で調整し、SARS-CoV-2変異株で層別化したうえで、未入院のSARS-CoV-2感染者(29万9,870人、年齢中央値25歳、女性50.6%)と、マッチさせた非感染者(29万9,870人、25歳、50.6%)を比較した。 リスクの評価には、感染初期(30~180日)および後期(180~360日)におけるハザード比(HR)と、1万人当たりのリスク差が用いられた。ブレークスルー感染例で呼吸困難のリスクが低い 感染初期と後期の双方で、COVID-19感染との関連でリスク増加が認められたlong COVIDとして、次が挙げられた。・嗅覚/味覚障害初期 HR:4.59(95%信頼区間[CI]:3.63~5.80)、リスク差:19.6(95%CI:16.9~22.4)後期 2.96(2.29~3.82)、11.0(8.5~13.6)・認知障害初期 1.85(1.58~2.17)、12.8(9.6~16.1)後期 1.69(1.45~1.96)、13.3(9.4~17.3)・呼吸困難初期 1.79(1.68~1.90)、85.7(76.9~94.5)後期 1.30(1.22~1.38)、35.4(26.3~44.6)・衰弱初期 1.78(1.69~1.88)、108.5(98.4~118.6)後期 1.30(1.22~1.37)、50.2(39.4~61.1)・動悸初期 1.49(1.35~1.64)、22.1(16.8~27.4)後期 1.16(1.05~1.27)、8.3(2.4~14.1)・連鎖球菌扁桃炎初期 1.18(1.09~1.28)、13.4(6.8~19.9)後期 1.12(1.05~1.20)、16.6(7.4~25.9)・めまい初期 1.14(1.06~1.23)、11.4(4.7~18.1)後期 1.17(1.09~1.26)、16.7(8.6~24.8) 感染初期にのみリスクが上昇したlong COVIDは、呼吸器疾患(HR:2.4[95%CI:1.67~3.44]、リスク差:3.7[2.3~5.3])、抜け毛(1.75[1.59~1.93]、31.6[26.2~36.9])、胸痛(1.41[1.33~1.49]、56.3[47.0~65.7])、筋肉痛(1.24[1.15~1.35]、17.5[11.2~23.8])、咳嗽(1.09[1.04~1.14]、22.2[9.7~34.6])などであった。 ワクチン未接種者の感染初期に、女性で抜け毛のリスク(女性のHR:2.09[95%CI:1.86~2.35]、男性のHR:0.9[0.80~1.17])が高かったことを除き、他の症状のHRは男女でほぼ同等であった。小児は成人に比べ感染初期の症状が少なく、これらの症状も後期にはほとんどが解消された。SARS-CoV-2変異株全体で、long COVIDの発現状況に一貫性が認められた。また、ワクチン接種者のうちブレークスルー感染例では、未接種者と比較して、呼吸困難(HR:1.58、95%CI:1.18~2.12)のリスクが低く、他の症状のリスクは同程度であった。 著者は、「COVID-19感染症の世界的流行の当初からlong COVIDが危惧されてきたが、軽症の経過をたどった患者の罹患後症状は、その多くが数ヵ月間残存した後、1年以内に正常化することが確認された。これは、軽症例の大部分は重症化や長期的な慢性化には至らず、医療従事者に継続的に加わる負担は小さいことを示唆する」としている。

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ワクチン未接種のコロナ感染、急性期の死亡リスク80倍超

 中国・香港大学のEric Yuk Fai Wan氏らの研究グループは、英国のデータベースを用いて、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の心血管疾患(CVD)発症リスクや全死亡リスクに及ぼす短期的および長期的な影響を検討した。その結果、ワクチン未接種のCOVID-19感染は急性期(感染から21日後まで)のCVD発症リスク、全死亡リスクを大きく上昇させ、これらのリスクは最長18ヵ月間の追跡においても上昇していた。Cardiovascular Research誌2023年1月19日号に掲載の報告。 英国において2020年3月~11月にCOVID-19に感染した患者7,584例(感染群)を感染から最長18ヵ月後まで前向きに追跡した。年齢と性別をマッチングさせた同時期の非感染対照7万5,790人(同時期対照群)、2018年3月~11月の非感染対照7万5,774人(過去対照群)とCVD発症リスク、全死亡リスクなどを急性期と急性期後(感染から22日後以降)に分けて比較した。解析にあたり、傾向スコア分析の拡張版であるMarginal Mean Weighting through Stratification(MMWS)法を用いて、年齢、性別、喫煙習慣、糖尿病の既往、高血圧症の既往、民族などを調整した。なお、英国では2020年3月~11月において使用可能な新型コロナウイルスワクチンは存在しなかったため、本試験の対象者はワクチン未接種であった。 主な結果は以下のとおり。・急性期の主要なCVD(心不全、脳卒中、冠動脈心疾患)発症リスクは、感染群が同時期対照群の4.3倍(ハザード比[HR]:4.3、95%信頼区間[CI]:2.6~6.9)、過去対照群の5.0倍(HR:5.0、95%CI:3.0~8.1)であった。・急性期において、脳卒中、心房細動、深部静脈血栓症(DVT)のリスクも感染群が同時期対照群(それぞれ9.7倍、7.5倍、22.1倍)および過去対照群(それぞれ5.0倍、5.9倍、10.5倍)と比べて高かった。・急性期の全死亡リスクは、感染群が同時期対照群の81.1倍(HR:81.1、95%CI:58.5~112.4)、過去対照群の67.5倍(HR:67.5、95%CI:49.9~91.1)であった。・急性期後の主要なCVD発症リスクは、感染群が同時期対照群の1.4倍(HR:1.4、95%CI:1.2~1.8)、過去対照群の1.3倍(HR:1.3、95%CI:1.1~1.6)であった。・急性期後の全死亡リスクは、感染群が同時期対照群の5.0倍(HR:5.0、95%CI:4.3~5.8)、過去対照群の4.5倍(HR:4.5、95%CI:3.9~5.2)であった。・感染群において、急性期には有意な上昇がみられなかった心膜炎発症リスクが急性期後では上昇していた。急性期後の心膜炎発症リスクは、感染群が同時期対照群の4.6倍(HR:4.6、95%CI:2.7~7.7)、過去対照群の4.5倍(HR:4.5、95%CI:2.7~7.7)であった)。 本論文の著者らは、今回の結果についてワクチン接種を受けたコホートにおける結果との比較が必要としながらも、「COVID-19患者はCVD発症リスクや全死亡リスクが上昇し、これらのリスクは回復から1年後まで上昇したままであったことから、COVID-19感染後および回復後におけるCVDの徴候や症状の継続的なモニタリングが有益であろう」とまとめている。

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2価ワクチンの情報など追加、コロナワクチンに関する提言(第6版)公開/日本感染症学会

 日本感染症学会(理事長:四柳 宏氏[東京大学医科学研究所附属病院長])は、1月25日に同学会のホームページで「COVID-19ワクチンに関する提言」の第6版を公開した。 今回の第6版では、主にオミクロン株対応ワクチンに関する追加情報、新しく適応追加となったウイルスベクターワクチン、組み換えタンパク質ワクチンに関する有効性と安全性の内容が改訂され、本年5月に予定されている5類への引き下げを前に、「接種を希望する人が接種の機会を失わないよう合わせて周知する必要がある」と一層の接種への取り組みを求めている。主な改訂点・「2.mRNAワクチン」の「2)有効性について」g)2価(起源株/オミクロン株BA.4-5)ワクチンの有効性h)5~11歳への接種の有効性i)6ヵ月~4歳への接種の有効性・「2.mRNAワクチン」の「3)安全性」a)初回免疫(2回接種)の安全性c)4回目接種の安全性e)2価(起源株/オミクロン株BA.5)ワクチンの安全性f)5~11歳への接種の安全性g)6ヵ月~4歳への接種の安全性・「3.ウイルスベクターワクチン」の「3)ヤンセンファーマのジェコビデン筋注」a)有効性b)安全性・「4.組換えタンパク質ワクチン」の「ノババックスのヌバキソビッド筋注」a)有効性b)安全性・「5.特定の状況での接種」1)妊婦への接種2)基礎疾患を有する者や免疫不全者への接種・「6.COVID-19ワクチンの開発状況と今後」主に改訂された表表10 6ヵ月~4歳における3回目接種1ヵ月後の起源株に対する中和抗体価と抗体応答率表11 6ヵ月~4歳における3 回目接種前後のオミクロン株BA.1に対する中和抗体価表12 オミクロン株流行期の6ヵ月~4歳の臨床試験における3回目接種1週後の発症予防効果表19 わが国におけるmRNAワクチン4回目接種の18歳以上のコホート調査における有害事象表41 COVID-19ワクチンの開発状況と最近の動き

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第132回 新型コロナウイルス5類へ移行は5月8日に/政府

<先週の動き>1.新型コロナウイルス5類へ移行は5月8日に/政府2.救急隊員の負担軽減のため、労務管理の適正化を通知/消防庁3.電子処方箋が全国で運用開始、医療機関の対応は?4.国内初の経口中絶薬、専門部会で承認を了承、妊娠9週までが対象/厚労省5.全国の医療機関で電子カルテ情報の共有システムの整備に向けて議論/厚労省6.無断外出の患者の自殺、遺族の逆転敗訴確定/最高裁1.新型コロナウイルス5類へ移行は5月8日に/政府政府は1月27日に、新型コロナウイルス感染症対策本部を開き、5月の連休明けの8日から新型コロナウイルス感染症の感染症法上の分類を現行の「2類相当」から季節性インフルエンザと同じ「5類」とすることを決定した。なお、イベントの収容上限は1月27日から撤廃することにした。政府は、「5類」への移行時期について、医療現場や自治体の準備、国民への周知に一定の時間が必要のため、大型連休後が適切と判断した。また、ワクチン接種の無料接種については今年3月末までの期限だったが、政府は4月以降も無料接種を継続する方針だ。今後、3月までに病床確保補助金や発熱外来の診療報酬の上乗せなどの公費負担の見直しについて検討を行う。(参考)新型コロナウイルス感染症対策本部(内閣府)第70回厚生科学審議会感染症部会(厚労省)コロナ5類、5月8日移行を決定 イベント上限撤廃は先行(日経新聞)コロナ「5類」の医療費や医療体制 3月上旬めどに具体的方針(NHK)診療報酬の特例段階的見直しへ、5類移行で病床確保料も、3月上旬めどに方針(CB news)2.救急隊員の負担軽減のため、労務管理の適正化を通知/消防庁総務省消防庁は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による救急出動件数が過去最多を更新し、救急搬送困難事案の発生が高い水準であることなどによって、救急現場の労務負担が増大しているとして、救急隊員の適正な労務管理のさらなる徹底を求める通知を1月25日付で各都道府県に対して発出した。この通知は、昨年12月に東京都内で、救急隊員の居眠り運転で救急車の横転事故が発生したことを反映したものとみられる。また、消防庁はこれに先立つ1月23日に令和4年度の『消防白書』を公表しており、この中で、救急現場におけるマイナンバーカードの活用によって、救急隊員が傷病者の医療情報把握のスピードアップ化や搬送時の活用への検討も取り上げており、業務の負担改善などに取り組みたいとしている。(参考)「救急隊員の負担軽減を」総務省消防庁が全国の消防に要請 救急車の居眠り事故受け(産経新聞)救急隊員の適正な労務管理の徹底について(通知)(消防庁)『令和4年版消防白書』(同)マイナンバーカード活用で搬送先選定しやすくなる 2022年版消防白書、傷病者の負担軽減も(CB news)3.電子処方箋が全国で運用開始、医療機関の対応は?医療機関で発行される処方箋を電子化して、薬局へオンラインで届ける「電子処方箋」システムが1月26日から本格的に運用が開始された。政府は補助金を用いてマイナンバーのリーダーの設置を進めたが、対応する医療機関は6病院と10診療所と伸び悩んでいる。今後、政府はマイナンバーの普及を通して医療機関と薬局での対応を進め、患者の処方歴を一元管理することで薬の重複や併用禁忌薬の処方を未然に防ぎ、適切な服薬に繋げたいとしている。なお、電子処方箋の発行には医師資格証(HPKIカード)が必要であり、医師会を通して発行申請を受け付けている。厚生労働省は、1月26日の電子処方箋の運用開始について、処方・調剤データを電子処方箋管理サービスで送受していれば、紙の処方箋を発行しても電子処方箋の運用を開始したと認める通知を行い、普及を進めたいとしている。(参考)「電子処方箋」きょうから運用開始 “適切な服薬”に期待(NHK)電子処方箋、1月15日時点での対応は「全国で6病院・10クリニック・162薬局」にとどまる(Gem Med)【電子処方箋】「まずは紙の処方箋発行/受付」の運用周知(ドラビズ On-line)医師資格証(HPKIカード)新規お申込み(日本医師会)4.国内初の経口中絶薬、専門部会で承認を了承、妊娠9週までが対象/厚労省厚生労働省は薬事・食品衛生審議会(薬事・食品衛生審議会医薬品第1部会)を1月27日に開催し、経口投与の人工妊娠中絶薬・メフィーゴパック(一般名:ミフェプリストン/ミソプロストール)の承認について審議した。その結果、承認はされたものの「社会的関心が高く、慎重な審議が必要」として、パブリックコメントを実施した上で、薬事分科会で承認の可否を再審議することになった。承認されれば国内初の経口中絶薬となり、従来の中絶手術より、女性への負担が少なくなる。海外では70以上の国と地域で承認されており、世界保健機関(WHO)は安全な中絶方法として推奨している。なお、処方にあたっては母体保護法指定医のもと、妊娠9週以内に使用する。公的保険の対象外となる見通し。(参考)国内初「飲む中絶薬」の承認「差し支えない」…厚労省専門部会(読売新聞)国内初の経口中絶薬、専門部会が承認了承 妊娠9週までが対象(毎日新聞)5.全国の医療機関で電子カルテ情報の共有システムの整備に向けて議論/厚労省厚生労働省は、「健康・医療・介護情報利活用検討会」の医療情報ネットワークの基盤に関するワーキンググループを1月27日に開催した。患者自身や全国の医療機関で、電子カルテ情報を閲覧可能にするシステム(電子カルテ情報交換サービス)の検討を行っているが、電子カルテ情報には個人情報が多く含まれるため、共有などにあたっては「患者の同意取得」が大前提となる。このほか本人同意の仕組み、電子的に文書情報を発行したときの患者への伝達方法、医療機関などにおける電子カルテ情報の閲覧についても検討を行っている。今後、患者自身で閲覧・利用される情報について管理できることを担保した上で、海外での同意取得の仕組みや電子処方箋の仕組みなどを踏まえ、国民の仕組みへの理解を得つつ、なるべく現場の負担を軽減する方向で整理を進めることになった。(参考)第6回健康・医療・介護情報利活用検討会 医療情報ネットワークの基盤に関するワーキンググループ(厚労省)全国の医療機関や患者自身で「電子カルテ情報を共有」する仕組み、患者同意をどの場面でどう取得すべきか―医療情報ネットワーク基盤WG(1)(Gem Med)厚生労働省、全国的な電子カルテ情報共有基盤について試案提示 年度末までに仕様まとめる方針(Med IT Tech )6.無断外出の精神科患者の自殺、患者遺族が逆転敗訴/最高裁香川県の県立病院に入院していた男性が病院を無断で外出し、自殺したことをめぐって、自殺の原因は病院の管理が不十分であったとして、遺族が香川県に対して損害賠償を求めていた裁判について、1月27日に最高裁は、県に賠償を命じた2審の判決を取り消し、遺族の訴えを退けた。判決によると2010年7月、丸亀市の香川県立丸亀病院に統合失調症で入院していた男性(当時38歳)が、病院を無断で外出して、近くのマンションから飛び降り自殺していた。2審の高松高裁では、病院側の事前説明がされていなかったほか、無断外出の防止にセンサーの装着がなかったことから香川県に対して5,700万円の損害賠償を求めていたが、27日の最高裁の判決では、センサー装着などは必要ではなく、医師の判断で外出許可を判断して自殺防止を図っていたと指摘した。(参考)入院中無断外出し自殺 遺族が県訴えた裁判 最高裁 訴え退ける(NHK)無断外出で自死…「病院の説明違反」否定 最高裁で遺族が逆転敗訴(朝日新聞)

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BA.4/5対応ワクチンの中和抗体価とT細胞応答/NEJM

 2022年8月末に米国食品医薬品局(FDA)が緊急使用許可し、その後、日本の厚生労働省でも特例承認されたモデルナ製とファイザー製のオミクロン株BA.4/5対応2価ワクチンについて、米国・ベス・イスラエル・ディーコネス医療センターのAi-ris Y. Collier氏らの研究グループが、これらのワクチンの追加接種における免疫原性について検証した。その結果、追加接種によって中和抗体価は著しく上昇するが、T細胞応答は実質的に増大しないことが示され、過去の抗原曝露による免疫の刷り込みの影響が示唆された。本結果は、NEJM誌オンライン版2023年1月11日号のCORRESPONDENCEに掲載された。 本研究では、中央値でワクチンを3回接種したことのある被験者33例に対して、追加接種として1価ワクチンを接種した15例(年齢中央値50歳、ファイザー5例、モデルナ10例)と、追加接種として2価ワクチンを接種した18例(年齢中央値42歳、ファイザー8例、モデルナ10例)について、免疫応答を評価した。1価ワクチン群と2価ワクチン群共に33%の被験者がオミクロン株流行期にSARS-CoV-2陽性記録があり、また、2022年の夏から秋にかけてBA.5が感染拡大していたことから、そのほかの被験者の大多数も追加接種前にハイブリッド免疫を獲得していたと考えられている。 主な結果は以下のとおり。・1価ワクチンもしくは2価ワクチンの追加接種によって、起源株、BA.1、BA.2、BA.5のいずれに対する中和抗体価も上昇した。・起源株に対する中和抗体価(中央値)は、1価ワクチンの追加接種によって5,197から21,507(4倍)に、2価ワクチンの追加接種によって3,633から40,515(11倍)に上昇した。・BA.5に対する中和抗体価(中央値)は、1価ワクチンの追加接種によって184から2,829(15倍)に、2価ワクチンの追加接種によって212から3,693(17倍)に上昇した。・BA.5に対するCD8+T細胞応答(中央値)は、1価ワクチンの追加接種によって0.027%から0.048%(1.8倍)に、2価ワクチンの追加接種によって0.024%から0.046%(1.9倍)に増加した。・BA.5に対するCD4+T細胞応答(中央値)は、1価ワクチンの追加接種によって0.060%から0.130%(2.1倍)に、2価ワクチンの追加接種によって0.051%から0.072%(1.4倍)に増加した。・BA.5に対するメモリーB細胞応答(中央値)は、1価ワクチンの追加接種で0.079%、2価ワクチンの追加接種で0.091%であった。 本結果により、1価ワクチンおよび2価ワクチンによる追加接種によって、中和抗体価は著しく上昇するが、T細胞応答は実質的に増大しないことが示された。BA.5に対する中和抗体価は、2価ワクチンのほうが1価ワクチンの1.3倍となり、やや優位な結果となった。本結果は、過去の抗原曝露による免疫の刷り込みが、ウイルスの変異に対する強固な免疫の誘導に大きな課題をもたらす可能性を示唆している。

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フルボキサミン、軽~中等症コロナの症状回復期間を短縮せず/JAMA

 軽症~中等症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)外来患者において、フルボキサミン50mgの1日2回10日間投与はプラセボと比較し回復までの期間を改善しないことが、無作為化二重盲検プラセボ対照プラットフォーム試験「ACTIV-6試験」の結果、示された。米国・Weill Cornell MedicineのMatthew W. McCarthy氏らが報告した。著者は、「軽症~中等症のCOVID-19患者に対して、50mg1日2回10日間のフルボキサミン投与は支持されない」とまとめている。JAMA誌2023年1月24日号掲載の報告。外来患者で、持続的回復までの期間をフルボキサミンvs.プラセボで評価 ACTIV(Accelerating COVID-19 Therapeutic Interventions and Vaccines)-6試験は、軽症~中等症のCOVID-19外来患者における既存治療転用を評価するようデザインされた完全遠隔法による分散型臨床試験で、参加者の募集は2021年6月11日に開始され、現在も継続中である。 研究グループは、米国の91施設において、SARS-CoV-2感染確認後10日以内で、COVID-19の症状(疲労、呼吸困難、発熱、咳、吐き気、嘔吐、下痢、体の痛み、悪寒、頭痛、喉の痛み、鼻の症状、味覚・嗅覚の異常のいずれか)のうち2つ以上が発現してから7日以内の、30歳以上の外来患者を、フルボキサミン(50mgを1日2回10日間投与)群またはプラセボ群に無作為に割り付けた。 主要アウトカムは持続的回復までの期間(少なくとも3日間連続して症状がないことと定義)、副次アウトカムは28日目までの入院・救急外来(urgent care)受診・救急診療部(emergency department)受診・死亡の複合、28日死亡率、28日目までの入院または死亡などを含む7項目とした。持続的回復までの期間は12日vs.13日、有意差なし 2021年8月6日~2022年5月27日の期間に、計1,331例(年齢中央値47歳[四分位範囲[IQR]:38~57]、女性57%、SARS-CoV-2ワクチン2回以上接種67%)が無作為化され、このうち1,288例(フルボキサミン群674例、プラセボ群614例)が試験を完遂した。 持続的回復までの期間の中央値は、フルボキサミン群12日(IQR:11~14)、プラセボ群13日(IQR:12~13)であり、持続的回復までの期間の改善に関するハザード比(HR、HR>1が有益であることを示す)は0.96(95%信用区間[CrI]:0.86~1.06、事後解析のp=0.21)であった。 28日目までの入院・救急外来受診・救急診療部受診・死亡の複合イベントは、フルボキサミン群で26例(3.9%)、プラセボ群で23例(3.8%)確認された(HR:1.1、95%CrI:0.5~1.8、事後解析のp=0.35)。28日目までの入院はフルボキサミン群1例、プラセボ群2例で、いずれの群も死亡例はなかった。 試験薬を少なくとも1回服用した患者において、有害事象の発現率はフルボキサミン群4.7%(29/615例)、プラセボ群5.3%(30/565例)であった。

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第144回 これが患者のリアル、ワクチンマニアもコロナ感染!?村上氏のヒヤヒヤ実記(中編)

―2023年1月2日(月)深夜に38℃超の熱を記録して以来、時折、体のほてりで目が覚める。そのたびに体温を測ろうと思うが、気力が湧いてこない。朝6時過ぎ、娘が求めるパンとスープを買いに出るが、かなりフラフラである。嫌な予感がしたので、この時、娘が昼に食べたがるだろうと予想したパスタも購入して戻り、パンとスープは置き配にし、パスタを自室の冷蔵庫にしまうと、そのままベッドに倒れこんだ。目が覚めたのは午前11時過ぎ。気力を振り絞って検温した結果に驚く。38.9℃。ここ最近見たこともない数字だ。私の発熱の最高記録は20代前半の頃の39.8℃。この時はバックパッカーとして旅行中にエジプトのカイロでかなり重い肺炎にかかり、日本大使館のご助力で、人生初しかも2週間の入院をカイロで経験している。ちなみに当時のことで、鮮明に記憶しているのは、ベッドサイドに置かれた紙袋入りの自分の胸部X線写真。右肺の下から3分の1程度、左肺の4分の1程度が真っ白。様子を見に来た日本大使館の医務官がそれを見て「ありゃりゃ」と言いながら病状を説明してくれた。退院後、成田空港からまっすぐ実家に向かい、父親のかかりつけ医にそれを見せたところ、「えっ、この状態なのに2週間で退院したの? 僕ならあと1週間は入院させるなあ。オリンピックだ。オリンピック」と言われた。私がきょとんとしていると「まあ4年に1回くらいしか見ない、結構重い肺炎だよ」と告げられた。あの時も辛かったが、当時はまだ20代前半。それから30年経った今、38.9℃があの時よりも辛く感じる。しかし、発汗やだるさは少ないと思いながら、食事も水分も十分に取っていなかったことに気付く。部屋の冷蔵庫を開けると、そこには大みそかに娘と一緒に食べようと買い込んだ2人分のミニおせち。消費期限は今晩まで。結局、自分1人で食べることにした。部屋に備え付けの電子レンジでレトルトのご飯を温め、冷蔵庫の中で冷え冷えとなったおせち料理をつまむ。途中で2個ずつある各料理を丁寧に1個ずつ食べていたことに気付いたが、そんな必要はなかった。固めのごぼうの煮物を噛みながら「何やっているんだろう」とふと思った。幸い味覚障害はないが、うまいともまずいとも思えない。最後に500mLのペットボトルのお茶を一気飲み。喉に引っ掛けたわけでもないのに、その直後から咳も出始めた。咳をするたびに咽頭が強烈に痛む。朝食後は廊下に置かれた娘の衣服をピックアップして1階のコインランドリーで洗濯する時間である。しんどすぎるが、行くしかない。再びマスクの上下に両面テープを張り、部屋を出て娘の部屋のドアノブに下げられた洗濯物と自分の洗濯物を持って1階に降りた。幸いほかの人は誰もいない。加えて部屋の外では運よく咳も出ない。洗濯機に洗剤と洗濯物を放り込んで部屋に戻り、洗濯が終わる約40分後にスマホのタイマーをかけ、靴だけを脱ぎ、再びベッドに横になる。うとうとしているとタイマーがなり始めた。また、階下に降り、今度は30分100円の乾燥機に洗濯物を入れ替え、また部屋へ。すると、娘から「お昼はパスタが食べたい」と。ビンゴだ。部屋の電子レンジで温め、すぐに袋に入れて娘の部屋のドアノブにかける。この時、猛烈に咳が出た。慌てて部屋に戻り、LINEで「いまパスタを置き配したけど、おとう(娘は私をこう呼ぶ)がいま廊下で咳をしてしまったので10分ほど待ってから取ること」とメッセージを送った。廊下は狭く、お世辞にも換気がよいとは言えないからだ。部屋に戻ってから再度検温をする。38.6℃。念のため4回目となる抗原検査をやってみる。左右の鼻腔の奥を綿棒でこすると、くしゃみが出た。検体を流し込んでもコントロールのほうしか線は浮き上がらない。本当に新型コロナではないのか? とするとインフルエンザ?それともただの風邪?悩みに悩んで正月早々ではあるが、SNSのメッセージ機能を使って知り合いのA医師にコンタクトを取った。すぐに既読がつき、「どうしたの?」と返信。こちらの状況をメッセージに打ち込むが、発熱で頭がぼーっとしているのでその作業自体が苦痛である。音声電話機能で話せないかと提案すると、即OKの返事が来た。私から連絡してこちらの状況を伝えた。すると、「うーん、抗原検査が4日間連続陰性とはいえ、症状や今の感染流行の状況を考えればやっぱり疑いはあるよね。自分の患者が同じような状況なら念のため検査するね」との反応。私は基本的に表面的には重症化リスク因子が少ないし、安易な受診で外来ひっ迫させるのは心苦しいと告げた。ちなみにこの時点で保有していた解熱鎮痛薬は服用していない。当たり前の生体反応である発熱を無理に薬で抑え込みたくはない。まだ、もう少しは頑張れる。そんなこともこの医師には伝えた。しかし、「村上さんは50代だし、娘さんの受験も考えると、大事をとって受診して白黒はっきりさせたほうが安心じゃないですか? 幸い村上さんが今いる辺りで開業している友人がいるから連絡してあげるよ」と言われる。三が日も明けてないのにそれは気が引けると言ったが、「いや、気軽に連絡取れる仲だから。ちょっと待ってて。とりあえずお大事にね」と言って電話が切れた。電話が切れた直後、洗濯物を乾燥機から取り込まなければならないことに気づく。急いで階下に降り、乾燥機の中に手を入れるとまだ生乾き。ため息が出る。市中のコインランドリーならば30分かからずに乾くのにと思う。初日にここの乾燥機で洗濯物を完全に乾燥できるまで2時間、合計400円もかかった。娘の衣服は2組しかないが、今日のはかなり乾きにくい厚手のもの。ホテルから徒歩10分弱のところにコインランドリーがあることは知っているが、そこまで歩いて行ける状態ではなさそうだし、乾燥中はコインランドリー内で待機せねばならず、そこで他人に感染させるなどはあってはならない。かといって400円も使いたくない。とりあえず生乾きの洗濯物を持って部屋に戻ると、SNSの電話機能で着信があったことに気づく。先ほどの医師が連絡を取ると言っていた友人のB医師だった。まず、メッセージ機能で受信できなかったことを詫び、折り返しても良いかと尋ねた。すぐに既読がつき、「ええ大丈夫です」との返信。さっそく電話をして自己紹介をすると、「A先生から話は聞いています。場所も近いようですし、明日からうちは診療する予定なので受診されます?」との申し出。こちらが遠慮気味に可能か尋ねると、「新年一発目なので朝に来ていただければ、たぶん即診察できると思いますよ」とのことで、翌朝9時半の受診が決定した。2人の医師の迅速な対応に感謝しかない。とりあえず自分の体のほうはどうにか方向性は見えてきた。そうすると、気になるのが生乾きの洗濯物だ。宿泊先の部屋の間取りはユニットバスを囲むようにL字型の構造。Lの長辺にベッドと部屋の出入り口があり、短辺側にユニットバスの入り口、机、さらに壁上部にエアコンがあった。そうだ!と思い付き、自分のバッグを開け、何かの時に役に立つと思って持ち歩いていた大型の半透明ビニール袋を2つを取り出した。これと両面テープを使って短辺部分を閉鎖空間とする。そこに娘の洗濯物をハンガーでつるし、エアコンの風量を最大にして即席乾燥室を作った。これは乾燥の効率もあるが、何よりベッド付近で私が横になっている際に頻繁に咳をしていることで浮遊しているであろうエアロゾルが娘の衣服に付着することを恐れたからだ。もっとも咳は止まっているわけではないので、換気のために部屋の窓を全開にして、ベッドにもぐりこんだ。外からの冷気は、布団にくるまることでなんとか我慢できる範囲に収まった。相変わらず体は火照った感じだ。原稿執筆は難しいが文字を読めるので、そのままスマートフォンでニュースをチェックする。1時間ほどして、咳をしないように我慢しながら閉鎖空間内に入り、ユニットバスでの手洗いと手拭き後、洗濯物に触った。乾いている。それを持参していた未使用のスーパーの買い物袋に入れて封をし、廊下に出て娘の部屋のドアノブにかけた。部屋に戻り、LINEで娘に洗濯物を戻した旨を伝えたメッセージが既読になったことを確認すると、そのまま眠りに落ちてしまった。再び目を覚ましたのは午後7時過ぎに娘からのLINEメッセージの着信があった時だ。夕飯のリクエストである。「海鮮丼」とある。え? コンビニにあったっけ? 寿司ならあった記憶があるが、すぐに思い浮かばない。とりあえずネットで検索してみる。どうやら近所にあるコンビニチェーンにはそれに近い物がありそうだ。ホテルから最短距離にあるコンビニチェーンなので行ってみたが、海鮮丼はなく、寿司のみ。店外に出て娘にLINEで「海鮮丼はないので、寿司でもいい?」とメッセージする。屋外の人気のないところに移動して返信を待つが反応はない。発熱による火照りのせいか徐々に視界がぐらぐらしてくる。10分過ぎても返信はない。LINEの音声通話で呼び出すが、反応なし。18分経過してようやく返信があり、寿司で落ち着いた。寿司を買って帰るも足元はフラフラ。部屋のあるフロアに付くと寿司の一部が容器内で横倒しになっていた。置き配をしてから部屋に戻り、検温すると38.6℃。食欲はなかったが、レトルトパックのカレーとご飯を用意して、作業のようにもくもくと口に放り込んでから、ベッドにもぐりこんだ。9時半過ぎにじんわりと汗ばんでいることに気づいて目を覚ますと、数分前に娘からLINEメッセージが着信していたことに気付く。曰く「明日、この近くの自習室に行きたい」。娘が在籍している予備校の校舎と今いるホテルは電車での移動が必要だが、最寄り駅近くにも別校舎があり、在籍校舎が異なっても自習室は使える。そしてこのメッセージは「送ってくれ」という意味も含んでいるのは父親としてはすぐわかった。しかし、10分強は歩かねばならず、最短距離を採用すると空間的に密な地下道を通過しなければならない。ただ、地下道の入り口までは開放的な屋外で、正月三が日ならば、通常よりも人通りは少ないだろう。娘は地下道入り口から先の道はわかる。自習室が開くのは午前9時だが、席を確保するには、9時ちょうどには到着しなければならない。私が予約した診察は9時半だが、クリニックはホテルからは徒歩5分ほど。ということで娘には地下道入り口までの条件で送っていくことを承諾した。そして原稿を書かねばと思い、椅子に座ってパソコン(PC)に向かったが、やはり30分が限界。結局、またベッドに横になるしかなかった。(次回に続く)

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腎移植後のコロナワクチン3回目接種、抗体陽性率は71%/名大

 大きな手術後の患者に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチンを接種した場合、抗体価にどのような変化があるのだろうか。この疑問に藤枝 久美子氏(名古屋大学大学院医学系研究科腎臓内科学)らの研究グループは、腎移植後の患者における新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対するワクチン2回接種後から3回接種後の抗体価の変化を調査した。その結果、3回目のワクチン接種により抗体獲得率が上昇し、腎移植後の患者におけるワクチン追加接種の重要性が示された。ワクチンに差異なく、3回接種での抗体陽性は71% 腎臓移植後、免疫抑制剤を内服している患者などは、SARS-CoV-2 mRNAワクチン接種後の抗体獲得率が低くなることが海外から報告されている一方で、わが国ではドナー不足からの生体腎移植、ABO血液型不適合腎移植などが行われ諸外国と環境が異なっている。 研究グループの前回の報告では、わが国の腎移植後の患者のSARS-CoV-2 mRNAワクチン2回接種後3週間〜3ヵ月の抗体獲得率は、健康成人や海外の腎移植後の患者と比較して低い値だった。このような背景から、わが国と諸外国との抗体獲得率の違いや、抗体価の推移、ワクチンの追加接種の必要性について明らかにすることが目的。 主な結果は以下のとおり。1)患者背景と抗体獲得率の推移 SARS-CoV-2 mRNAワクチンを3回接種した62例の移植レシピエント(男性40例、女性22例)について調査。ワクチン3回目接種時の年齢中央値は54歳(四分位範囲[IQR]、49~67歳)、移植時の年齢中央値は50歳(IQR:38~58歳)。移植からワクチン接種までの期間の中央値は84ヵ月(IQR:34~154ヵ月)。BMIの中央値は22.9(IQR:21.4~26.2)、eGFRの中央値は42.8mL/分/1.73m2(IQR:34.1~51.4mL/分/1.73m2)。ワクチン2回接種後3週間〜3ヵ月で抗体陽性と判定されたのは45%で、ワクチン2回接種後5〜6ヵ月で抗体陽性と判定されたのは50%だった。ワクチン2回接種5~6ヵ月後に抗体が陰転化したものはは1例、陽転化したものは4例だった。また、ワクチン3回目接種後3週間〜3ヵ月で抗体陽性と判定されたのは71%と大幅に増加した。2)ワクチンの種類による抗体獲得率の比較 ファイザー製のワクチンのみを接種した患者、モデルナ製のワクチンのみを接種した患者、ファイザー製とモデルナ製の両方を接種した患者の比較を行った。その結果、接種した抗体の種類や組み合わせによる抗体獲得率の違いは認められなかった。3)抗体獲得に関連する要因の検討 統計学的な手法を用いて抗体獲得に関連する因子を検討した結果、さまざまな要因を統計学的に調整しても、BMIとeGFRが抗体獲得率と有意な相関があることが示唆された。 同研究グループは、今回の研究を受けて「わが国の腎移植後の患者において、SARS-CoV-2ワクチン3回接種により抗体獲得率が上昇することが示された。4回目以降の接種も進んでいるため、今後はワクチンの追加接種による抗体価の変化や時間が経つにつれて抗体の力価がどう変化していくのかを調べる必要がある」と展望を示している。

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第29回 新型コロナワクチンは年1回の接種へ?

FDA(米国食品医薬品局)が先陣を切るかFDA(米国食品医薬品局)の本決定はまだですが(この記事が出る日に話し合われる予定)、新型コロナワクチンは、インフルエンザと同じく、健康な人は年1回の接種にする方針のようです。ただし、高齢者、子供の一部、免疫が低下している人については年2回の接種となる見込みです。基本的に2価ワクチンが勧奨される見込みです。年1回接種にするとしても、いつの変異ウイルスに合わせてワクチンを改変していくのか難しいところですが、mRNAワクチンはそういった改変を速やかに行えるメリットがあり、たとえば春~夏に流行した変異ウイルスに合わせて秋に接種などのような形が想定されています。エビデンスがあるというよりも、そういう落としどころでウィズコロナしましょうという側面が強く、年1回がベストとは限りません。今後の研究によっては、全員年2回のほうがよいというデータが出てくるかもしれません。FDAが勧奨するであろう2価ワクチンを提供しているのは、現在ファイザー社とモデルナ社の2社だけになると思われます。もう他の企業は追随できませんね、差が付いてしまった。XBB.1.5は日本ではまれご存じのとおりワクチンの感染予防効果は経時的に減衰していきますが、現在接種されているオミクロン株対応の2価ワクチンは、とりわけ高齢者では高い入院予防効果を有しています。イスラエルにおける65歳以上の高齢者に対するオミクロン株対応ワクチンは、入院予防効果81%、死亡予防効果86%と報告されています1)。オミクロン株対応ワクチンを追加接種しても、XBB.1株は免疫逃避が従来株やBA.5株よりかなり高いことが報告されています2)。また、中和活性についても従来株、BA.2系統、BA.5系統よりも顕著に低いことがわかっています3)。中和抗体の上昇が期待できるとされつつも3,4)、基本的にmRNAワクチンの改変が必要とされている状況です。XBB.1.5株は現在アメリカで猛威を振るっていますが、日本でもXBB.1.5株がいつか優勢になってくるかもしれません(図)。画像を拡大する図. ゲノム解析結果の推移(週別)(東京都新型コロナウイルス感染症モニタリング会議・分析資料より5))mRNAワクチンは、新型コロナとインフルエンザの両方に適用可能な技術であるため、将来的には1本のワクチンで両方を予防できるなんて時代が来るかもしれませんね。参考文献・参考サイト1)Arbel R, et al. Effectiveness of the Bivalent mRNA Vaccine in Preventing Severe COVID-19 Outcomes: An Observational Cohort Study. Preprints with The Lancet. 2023 Jan 3.2)Miller J, et al. Substantial Neutralization Escape by SARS-CoV-2 Omicron Variants BQ.1.1 and XBB.1. N Engl J Med. 2023 Jan 18. [Epub ahead of print]3)Uraki R, et al. Humoral immune evasion of the omicron subvariants BQ.1.1 and XBB. Lancet Infect Dis. 2023 Jan;23(1):30-32.4)Davis-Gardner ME, et al. Neutralization against BA.2.75.2, BQ.1.1, and XBB from mRNA Bivalent Booster. N Engl J Med. 2023 Jan 12;388(2):183-185.5)東京都新型コロナウイルス感染症モニタリング会議・分析資料 変異株調査(令和5年1月19日12時時点)

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オミクロン株対応2価ワクチン、4回目接種の有用性は?/NEJM

 1価・2価のオミクロン株(B.1.1.529)BA.1系統対応BNT162b2(ファイザー製)ワクチンは、BNT162b2ワクチン(30μg)と同様の安全性プロファイルを有し、祖先株とオミクロン株BA.1系統に対して顕著な中和反応を示した。また、程度は低いものの、オミクロン株亜系統のBA.4、BA.5、BA.2.75も中和した。米国・アイオワ大学のPatricia Winokur氏らが、BNT162b2ワクチン30μgを3回接種した55歳超1,846例を対象にした無作為化比較試験で明らかにし、NEJM誌2023年1月19日号で発表した。BA.1対応1価・2価ワクチンとBNT162b2を30μgまたは60μgで比較 研究グループは、進行中の第III相試験で、BNT162b2ワクチン30μgを3回接種した55歳超を無作為化し、BNT162b2(30μgまたは60μg)、B.1.1.529変異株(オミクロン株)BA.1系統対応BNT162b2(BA.1対応1価ワクチン、30μgまたは60μg)、BA.1対応2価ワクチンを30μg(BNT162b2 15μg+BA.1対応1価ワクチン15μg)または60μg(BNT162b2 30μg+BA.1対応1価ワクチン30μg)をブースター投与した。 本試験の主要目的は、BA.1対応ワクチンの、BNT162b2(30μg)に対する優越性(対BA.1の50%中和抗体価[NT50]について)と非劣性(血清反応について)の評価。副次目的は、祖先株に対する中和活性について、BA.1対応2価ワクチンのBNT162b2(30μg)に対する非劣性の評価だった。 探索的データ解析を行い、オミクロン株の亜系統BA.4、BA.5、BA.2.75に対する免疫応答も評価した。BA.1対応2価ワクチン、祖先株に対しBNT162b2(30μg)と比べ非劣性 1,846例が無作為化を受けた(年齢中央値67歳、男性49.5%、白人86.6%)。 ワクチン接種後1ヵ月時点で、BA.1対応2価ワクチン(30μg/60μg)とBA.1対応1価ワクチン(60μg)は、BA.1に対し、BNT162b2(30μg)より優れた中和活性を示した。NT50幾何平均比(GMR)は、それぞれ1.56(95%信頼区間[CI]:1.17~2.08)、1.97(1.45~2.68)、3.15(2.38~4.16)だった。 また、BA.1対応2価ワクチン(両用量とも)とBA.1対応1価ワクチン(60μg)は、対BA.1血清反応についても、BNT162b2(30μg)に対し非劣性を示した。群間差(%)は10.9~29.1ポイントに及んだ。 BA.1対応2価ワクチン(両用量とも)は、祖先株に対する中和活性について、BNT162b2(30μg)に対し非劣性だった。NT50GMRは30μgが0.99(95%CI:0.82~1.20)、60μgが1.30(1.07~1.58)だった。 BA.4-BA.5、BA.2.75に対する中和抗体価は、BA.1対応2価ワクチン30μgが、BNT162b2(30μg)より数値が高かった。 安全性プロファイルについては、BA.1対応1価ワクチン、2価ワクチンのいずれの用量も、BNT162b2(30μg)と同様だった。有害事象の発生頻度は、BA.1対応1価ワクチン30μg群(8.5%)とBA.1対応2価ワクチン60μg群(10.4%)が、その他の群(3.6~6.6%)より高率だった。

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妊婦の罹患・死亡リスク、オミクロン株優勢中に増大/Lancet

 新型コロナウイルスのオミクロン株が懸念される変異株となった半年間について調べたところ、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の診断を受けた妊婦は、MMMI(maternal morbidity and mortality index、妊婦の罹患率・死亡率指数)リスクが増大していたことが明らかにされた。とくに、ワクチン未接種の重症COVID-19妊婦で、同リスク増大はより顕著だった。また、COVID-19の重症合併症に対するワクチンの有効性は、完全接種(2回またはAd26.COV2.Sワクチン1回)で48%と高かった。英国・オックスフォード大学のJose Villar氏らが、4,618人の妊婦を対象に行った大規模前向き観察試験「INTERCOVID-2022試験」の結果で、Lancet誌オンライン版2023年1月17日号で発表された。18ヵ国41病院を通じて試験 INTERCOVID-2022試験は、18ヵ国41病院を通じて行われ、リアルタイムPCR検査でCOVID-19が確定した妊婦1人について、COVID-19と診断されていない2人の妊婦(マッチングなし)を、同時かつ連続的に対照として被験者に加えた。母親と新生児について、退院まで追跡した。 主要アウトカムは、MMMIとSNMI(severe neonatal morbidity index、重度新生児罹患率指数)、SPMMI(severe perinatal morbidity and mortality index、重度周産期罹患率・死亡率指数)だった。 ワクチン有効性は、母体リスクプロファイルで補正し推算した。COVID-19妊婦、MMMIリスクは1.16倍、ワクチン非接種では1.36倍 世界保健機関(WHO)がオミクロン株に対する懸念を表明した2021年11月27日から、2022年6月30日までに4,618人の妊婦を被験者として登録した。うち、1,545人(33%)がCOVID-19と診断され(中央値:妊娠36.7週)、3,073人(67%)はCOVID-19と診断されなかった。 COVID-19群は対照群に比べ、MMMIリスク(相対リスク[RR]:1.16(95%信頼区間[CI]:1.03~1.31)、SPMMIリスク(1.21、1.00~1.46)の増大が認められた。SNMIについては、COVID-19群の対照群に対する増大が認められたが(1.23、0.88~1.71)、95%CI下限値は1を下回っていた。 COVID-19群でワクチン非接種の妊婦は、MMMIリスクのさらなる増大が認められた(RR:1.36、95%CI:1.12~1.65)。 重症COVID-19の妊婦は、重度母体合併症リスク(RR:2.51、95%CI:1.84~3.43)、周産期合併症リスク(1.84、1.02~3.34)、他科への紹介・集中治療室(ICU)入室・死亡のいずれかの発生リスク(11.83、6.67~20.97)の総合的なリスク増大がみられた。ワクチン非接種で重症COVID-19の妊婦は、MMMIリスク(RR:2.88、95%CI:2.02~4.12)と、他科への紹介・ICU入室・死亡のいずれかの発生リスク(20.82、10.44~41.54)の増大がみられた。 被験者のうちCOVID-19ワクチンを1回以上接種していた女性は2,886例(63%)で、完全接種またはブースター接種(3回またはAd26.COV2.Sワクチン2回)は2,476例(54%)だった。 他科への紹介・ICU入室・死亡のいずれかの発生に関するワクチン有効性(全ワクチン統合)は、ワクチン完全接種妊婦が48%(95%CI:22~65)、ブースター接種妊婦が76%(47~89)だった。COVID-19診断妊婦の同有効性は、それぞれ74%(48~87)、91%(65~98)だった。

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コロナワクチンの免疫応答、年齢による違い/京大iPS細胞研究所

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対するワクチンの個人差・年齢差を検討したところ、65歳以上の高齢者ではワクチン接種後のT細胞応答の立ち上がりが遅い一方、収束は早いという特徴があることを、京都大学iPS細胞研究所の城 憲秀氏らによる共同研究グループが明らかにした。Nature Aging誌 2023年1月12日掲載の報告。 一般に加齢とともに免疫機能が低下することはよく知られているが、T細胞が生体内で刺激を受けた際の応答が加齢によってどのように、またどの程度変化するかは不明であった。そこで研究グループは、ワクチン接種後のT細胞応答や抗体産生、副反応との関連を調査した。 対象は、ファイザー製のSARS-CoV-2mRNAワクチン(BNT162b2)を2回接種した65歳以上の高齢者109人(年齢中央値71歳[範囲:65~81歳]、男性56人)と、65歳未満の成人107人(年齢中央値43歳[同:23~63歳]、男性43人)の計216人であった。血液の採取は、ワクチン接種前、1回目接種から約2週間後、2回目接種から約2週間後、1回目接種の約3ヵ月後の計4回行った。 主な結果は以下のとおり。・SARS-CoV-2のスパイクタンパク質受容体結合ドメインに対するIgG抗体価は、両群ともにワクチン2回接種後に大幅な上昇が見られた。しかし、抗体価のピークの中央値は、成人群で27,200AU mL-1、高齢者群で18,200AU mL-1であり、高齢者群では約40%低かった。・ワクチン特異的ヘルパーT細胞は、両群ともに1回目の接種で大きく増加し、2回目の接種後も同程度を保ち、3ヵ月後に減少した。高齢者群では1回目接種後の増加が成人群よりも少なかったが、2回目接種後に同程度となり、3ヵ月後には再び成人群よりも少なくなった。・2回目接種後の局所的な副反応(接種部位の疼痛)は、高齢者群と成人群で同程度であったが、全身性の副反応(発熱、倦怠感、頭痛)は成人群で有意に多かった。ただし、高齢者群では、解熱鎮痛薬を服用している割合が高かった。・年齢にかかわらず、2回目接種後に38℃以上の発熱があった人では、1回目接種後のT細胞応答と2回目接種後のIgG抗体価が高かった。・ワクチン特異的Th1細胞における、T細胞活性化を抑制するPD-1の発現量は、両群ともに2回目接種後にピークを迎えたが、高齢者群では成人群と比べて有意に多かった。また、PD-1の発現量が多い高齢者では、キラーT細胞の誘導が低い傾向にあり、免疫反応にブレーキがかかりやすくなっている可能性が示唆された。 研究グループは、これらの結果から「高齢者群では、T細胞応答の立ち上がりが遅く、収束が早いことが明らかになった。本研究は、高い有効性を持つワクチンの開発と、高齢者に適したワクチン接種スケジュールの立案に役立つ可能性がある」とまとめた。

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第131回 新型コロナウイルス、4月以降に「5類」に移行へ/政府

<先週の動き>1.新型コロナウイルス、4月以降に「5類」に移行へ/政府2.処方の見返りに奨学寄付金を求めた元教授に有罪判決/三重3.全国の都道府県がん拠点病院、地域がん拠点病院を新たに指定/厚労省4.オンライン資格確認の導入のさらなる促進を/厚労省5.東工大と医科歯科大、統合後の新名称は「東京科学大学」に6.サイバー攻撃の共有・公表ガイダンスをパブリックコメント募集/内閣府1.新型コロナウイルス、4月以降に「5類」に移行へ/政府岸田総理は、感染症法で現在「2類相当」として取り扱っている新型コロナウイルスについて重症化率が2022年夏時点で60歳未満が0.01%、80歳以上でも1.86%と季節性インフルエンザ並みになったとして、麻疹や風疹と同じ「5類」扱いとする方針を固めた。今後は、一般の医療機関でも新型コロナウイルスの患者の受け入れは可能としている。厚生労働省では、ワクチンの公費負担での接種対象を高齢者とするほか屋内でのマスク着用のあり方など、今後の方針について検討を開始している。来週には、専門家からなる厚生科学審議会で今後の方針について議論を行う。(参考)新型コロナ 今春「5類」移行検討 公費負担など本格議論へ(NHK)コロナ「5類」移行、5月の連休前後案も…ワクチン公費負担は高齢者ら限定検討 (読売新聞)コロナ、今春にも「5類」に 首相指示、公費負担縮小へ マスク着用「見直す」(日経新聞)2.処方の見返りに奨学寄付金を求めた元教授に有罪判決/三重三重大学附属病院の臨床麻酔部において、薬の処方の見返りに、奨学寄付金を受け取ったことで、第三者供賄罪と詐欺罪に問われた元教授の被告に対して、1月19日津地方裁判所は、懲役2年6ヵ月、執行猶予4年の判決を言い渡した。判決によれば、2018年3月に、被告に対して小野薬品工業の薬剤「オノアクト」を大量に発注するように依頼された見返りに、被告が代表を務める一般社団法人に現金200万円を振り込ませた疑い。さらに、2019年から2020年には、手術患者60人あまりに対して、この薬剤を使用したように装って、未投薬にもかかわらず、約82万円の診療報酬を詐取した。被告は、この他に元講師と共謀して日本光電工業(東京都)の医療機器納入で便宜供与の見返りに、一般社団法人の口座に寄付金名目で200万円を振り込ませていた。(参考)三重大病院元教授に有罪判決 薬剤納入で供賄と詐欺罪 地裁判決(毎日新聞)病院汚職200万円は「賄賂」 地裁判決 三重大元教授有罪(読売新聞)三重大病院汚職事件 元教授に執行猶予付き有罪判決(NHK)3.全国の都道府県がん拠点病院、地域がん拠点病院を新たに指定/厚労省厚生労働省は1月19日に「がん診療連携拠点病院等の指定に関する検討会」を開催し、昨年「がん診療提供体制のあり方に関する検討会」からの提言を踏まえて定められた、がん診療連携拠点病院等の整備指針に基づき、2023年4月から「がん診療連携病院」を新たに指定することとした。全国の都道府県がん診療連携拠点病院は一般型49施設、特例型2施設、地域がん診療連携拠点病院は一般型325施設などが指定される見込み。検討会の意見を踏ませて、加藤厚労大臣が指定の手続きを行い、本年4月1日から新たながん診療拠点として指定される。なお、一部の病院では指定要件を充足していないため指定を見送ることも検討されたが、充足の見込みがたっておらず「空白医療圏」となってしまうため指定となった病院もみられた。(参考)都道府県がん拠点病院51施設、地域がん拠点病院350施設など、本年(2023年)4月1日から新指定-がん拠点病院指定検討会(Gem Med)第22回がん診療連携拠点病院等の指定に関する検討会(厚労省)がん診療連携拠点病院の指定要件(同)4.オンライン資格確認の導入のさらなる促進を/厚労省厚生労働省は、1月16日に社会保障審議会医療保険部会を開催し、オンライン資格確認などシステムについて討議を行った。今年4月に施行される保険医療機関・薬局のオンライン資格確認導入の義務化について、令和4年度末時点で「現在紙レセプトでの請求が認められている医療機関・薬局」については、やむを得ない事情があるとして、期限付きの経過措置を設けられたが、猶予期間の延長について、保険者らからは延長を懸念する声が上がった。医療機関・薬局でのオンライン資格確認システムの導入は、顔認証付きカードリーダー申込数は、義務化対象施設では97.7%と高いものの、準備完了は義務化対象施設でも52.6%と伸び悩みがみられていることが明らかになった。国としては、来年秋には、現行の健康保険証がマイナンバーカードに1本化されることもあり、令和5年3月末までのさらなる導入の加速化を図りたいとしている。(参考)第162回社会保障審議会医療保険部会(厚労省)マイナカード、進まぬ活用 医療、免許どうなるか(産経新聞)オンライン資格確認、電子処方箋など医療DXの推進には国民の理解が不可欠、十分かつ丁寧な広報に力を入れよ-社保審・医療保険部会(Gem Med)オンライン資格確認の導入猶予、延長をけん制 社保審・部会で複数委員(CB news)5.東工大と医科歯科大、統合後の新名称は「東京科学大学」に東京工業大学と東京医科歯科大学が2024年に統合されるのを受けて、大学側は新たな大学の名称を「東京科学大学(英語表記:Institute of Science Tokyo)」とすることを1月19日に発表した。両大学は新大学の目指す姿として、「両大学の尖った研究をさらに推進」、「部局などを超えて連携協働し『コンバージェンス・サイエンス』を展開」、「総合知に基づき未来を切り拓く高度専門人材の輩出」、「イノベーションを生み出す多様性、包摂性、公平性を持つ文化」を謳っており、できる限り早期の統合を目指して、今月中に大学設置・学校法人審議会へ提出することを決定している。(参考)新大学名称を「東京科学大学(仮称)」として 大学設置・学校法人審議会への提出を決定(東京医科歯科大学)東工大・医科歯科大、統合後の新名称「東京科学大学」に(日経新聞)東京科学大「皆が覚えられる名に」「親しみが大事」…「工業」「医科」使用も見送り(読売新聞)「東京科学大学」正式発表、略称は「科学大」…英語「Institute of Science Tokyo」(同)6.サイバー攻撃の共有・公表ガイダンスをパブリックコメント募集/内閣府内閣官房内閣サイバーセキュリティセンターは、近年、サイバー攻撃の脅威の高まりを受けて、被害を受けた組織が攻撃の内容や被害情報について外部に共有するためのガイダンス案を作成し、現在パブリックコメントを募集している。日本病院会の相澤会長は、1月17日の定例記者会見で、サイバーセキュリティに関する責任の範囲について統一基準を明確化するとともに費用負担について国側に求める方針を明らかにした。今後、日本病院会はサイバー攻撃に対する対応について、厚生労働省に対して提言をまとめたいとしている。なお、パブリックコメントは1月30日が締切となっている。(参考)「サイバー攻撃被害に係る情報の共有・公表ガイダンス(案)」に関する意見募集について(内閣府)サイバー攻撃被害「枠組み超えた情報連携が必要」内閣官房がガイダンス案公表、フローやFAQも(CB news)サイバーセキュリティ対策における医療機関・ベンダー等の間の責任分解、現場に委ねず、国が「統一方針」示すべき?日病・相澤会長(Gem Med)

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COPDガイドライン改訂―未診断者の早期発見と適切な管理を目指して

 COPDは、日本全体で約500万人を超える患者がいると見積もられており、多くの非専門医が診療している疾患である。そこで、疾患概念や病態、診断、治療について非専門医にもわかりやすく解説する「COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン第6版」が2022年6月24日に刊行された。本ガイドラインは、2018年版からの4年ぶりの改訂で、大きな変更点としてMindsに準拠した形で安定期COPD治療に関する15のクリニカルクエスチョン(CQ)を設定したことが挙げられる。本ガイドライン作成委員会の委員長を務めた柴田 陽光氏(福島県立医科大学呼吸器内科学講座 教授)に改訂点や日常診療におけるCOPD診断・治療のポイントについて、話を聞いた。未診断のCOPD患者を発見するために COPD患者は、なかなか症状を訴えないことが多いという。柴田氏は、「高齢の方は『歳だから、あるいはタバコを吸っているから仕方がない』と考えていたり、無意識のうちに身体活動レベルを落としていて、息切れを感じなくなっていたりすることもある」と話す。そのような背景から、未診断のままの患者が存在し、診断がつく時点ではかなり進行していることも多い。そこで第6版では、「風邪が治りにくい」「風邪の症状が強い」などの増悪期の症状や、気道感染時の症状で医療機関を受診したときが診断の契機となることなどを強調した。 COPDの確定診断には呼吸機能検査が必要であるが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響や設備の問題で実施が難しい場合も多い。その場合は「長期の喫煙歴と息切れがあり、咳や痰などの慢性的な症状が併存し、他疾患を否定できればCOPDの可能性がかなり高い。病診連携などを活用して画像診断を実施し、肺気腫を発見してほしい」と述べた。また、呼吸機能検査が難しい場合の診断について、日本呼吸器学会では「COVID-19流行期日常診療における慢性閉塞性肺疾患(COPD)の作業診断と管理手順」を公表しており、本ガイドラインにも掲載されているので参照されたい。管理目標と安定期の治療 第6版では、COPDの管理目標に「疾患進行の抑制および健康寿命の延長」が追加された。その背景として、「疾患進行抑制の最大の要素である禁煙の重要性を強調したい」、「何らかの症状を抱えていたり、生活に不自由を感じていたりする患者の多いCOPDでは、健康寿命に影響を及ぼすフレイルに陥らないようにして、健康寿命を延ばすことの重要性を強調したい」という意図があると、柴田氏は述べた。 安定期の治療について、第6版では「安定期COPD管理のアルゴリズム」が喘息病態の合併例と非合併例に分けて記載された。柴田氏は「COPD患者の約4分の1が喘息を合併し、喘息合併例では吸入ステロイド薬(ICS)が治療の基本となるため、治療の入り口を分けた」と解説する。具体的には、日頃からの息切れと慢性的な咳・痰がある場合、喘息非合併例では「長時間作用性抗コリン薬(LAMA)あるいは長時間作用性β2刺激薬(LABA)」、喘息合併例では「ICS+LABAあるいはICS+LAMA」から治療を開始し、症状の悪化あるいは増悪がみられる場合、喘息非合併例では「LAMA+LABA(テオフィリン・喀痰調整薬の追加)」、喘息合併例では「ICS+LABA+LAMA(テオフィリン・喀痰調整薬の追加)」にステップアップする。 喘息非合併例では、頻回の増悪かつ末梢好酸球数増多がみられる患者には「LAMA+LABA+ICS」の使用を考慮する。なお、喘息非合併の安定期COPD治療は、LAMAまたはLABAの単剤で始めなければならないというわけではなく、「CAT(COPDアセスメントテスト)が20点以上やmMRC(modified British Medical Research Council)グレード2以上といった症状の強い患者は、LAMA+LABAで治療を開始しても問題ない。詳細はCQ5を参照してほしい」と述べた。 安定期の治療について、第6版では15個のCQが設定された。その中で「強く推奨する」となったのは、「LAMAによる治療(CQ2)」「禁煙(CQ10)」「肺炎球菌ワクチン(CQ11)」「呼吸リハビリテーション(CQ12)」の4つである。とくに「呼吸リハビリテーション」について、柴田氏は「エビデンスレベルが高く、強く推奨するという結果になったことは、まだまだ普及が進んでいない呼吸リハビリテーションを普及させるという観点から、非常に意義のあることだと考えている」と話した。 COVID-19流行期における注意点として、「COPD患者は新型コロナウイルスに感染すると重症化しやすいため、感染対策が重要となるが、身体活動性を落とさないよう定期的な運動は続けてほしい。薬物療法については、ICSを使用していてもCOVID-19の重症化リスクは上昇しないため、現在の治療を継続することが重要」とした。診断・治療共に積極的な病診連携の活用を 第6版では、病診連携の項でプライマリケア医と呼吸器専門医の役割を詳細に解説している。柴田氏は、非専門医に期待する役割について「COPD治療の基本である禁煙の徹底、併存症の管理、インフルエンザや新型コロナのワクチンに加えて肺炎球菌ワクチン接種を行ってほしい」と述べた。加えて、「COPD患者の肺がんの年間発生率は2%ともいわれるため、願わくは年1回など定期的な低線量CTを実施してほしい」とも述べた。一方、呼吸器専門医については、「呼吸機能検査を実施して診断の入口となることや、治療をしていても増悪を繰り返すような管理の難しい患者の治療、呼吸リハビリテーションの実施といった役割を期待する」と話し、病診連携を活用して呼吸器専門医に紹介してほしいと強調した。 また、COPDの薬物治療は吸入療法が中心となるため、適切な吸入指導が欠かせない。しかし、吸入薬の取り扱いや指導に不慣れな医師もいるだろう。そこで活用してほしいのが、病薬連携だという。柴田氏は「薬剤服用歴管理指導料吸入薬指導加算が算定できるため、吸入薬の取り扱いに慣れている薬局の薬剤師に、吸入指導を依頼することも可能だ。デバイスについては、患者によって向き・不向きがあり、処方変更が必要になることもあるため、病薬連携が重要となる」と述べた。COPD患者の発見と積極的な介入を 柴田氏は、非専門医の先生方へ「皆さんの思っている以上にCOPD患者は多い。70歳以上の高齢男性では4人に1人が何らかの気流閉塞があることが知られており、高血圧や循環器疾患の3人に1人はCOPDというデータもある。高齢で糖尿病を有し喫煙歴のある患者にもCOPDが多い。このような患者をどんどん発見して、治療介入してほしい。その際、本ガイドラインを活用してほしい」とメッセージを送った。COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン第6版定価:4,950円(税込)判型:A4変型判頁数:312頁発行:2022年6月編集:日本呼吸器学会COPDガイドライン第6版作成委員会発行:メディカルレビュー社

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