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事例036 在宅半固形栄養経管栄養法指導管理料/在宅経管栄養法用栄養管セット加算の査定【斬らレセプト シーズン3】

解説在宅にて療養中の患者に行っていた「C105-3 在宅半固形栄養経管栄養法指導管理料(以下「同管理料」)」と「C162 在宅経管栄養法用栄養管セット加算(以下「同加算」)」が、D事由(告示・通知の算定要件に合致していないと認められるもの)を適用されて査定になりました。「同管理料」には、「最初に算定した日から起算して1年を限度」と算定期間が定められています。初回算定日2022年5月11日に照らし合わせると、「同管理料」を算定した5月17日は1年を少し超えるために査定となったものと推測できます。レセプト担当者に確認したところ、「指導料関連は暦月で1回が基本とされているために同月中であれば算定可能と考えて、レセプトチェックシステムのエラーを外して請求した」とのことでした。算定期限を表す文言に「○○から」が含まれている場合には、○○が算定起算日となり、○○の前日までが算定期限、事例では、5月10日が算定期限になることを伝えました。算定期限後は使用する薬剤により「C105 在宅成分栄養経管栄養法指導管理料」、もしくは「C109 在宅寝たきり患者処置指導管理料」の算定が可能であることも伝えました。コンピュータによる審査ではバッサリと査定となります。算定可能な指導管理料への復活査定はありませんでした。なお、「同加算」も「同管理料」の査定に伴い算定要件を満たさなくなるために芋づる式に査定となったものです。あらかじめ算定期限を超えた場合に、何を算定するべきかを検討しておけば良かったと悔やまれる事例となりました。

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回復期リハビリテーション病棟でのせん妄に対する向精神薬の減量

 川崎こころ病院の植松 拓也氏らは、同施設の回復期リハビリテーション病棟に転院してくる患者さんの多くが、急性期病棟入院時にせん妄に対する向精神薬処方が行われている現状を踏まえ、精神科医、薬剤師、リハビリテーション医が協力し、向精神薬減量への取り組みを行った。その結果から、急性期病棟で処方されている向精神薬の種類および用量を回復期リハビリテーション病棟で減量できる可能性があることを報告した。Neuropsychopharmacology Reports誌オンライン版2023年10月26日号の報告。 対象は、2021年4月~2022年3月に川崎こころ病院の回復期リハビリテーション病棟を退院した患者88例。診療記録より基本的情報および向精神薬処方状況を抽出した。 主な結果は以下のとおり。・入院時に向精神薬が処方されていた患者は55例(62.5%)であり、処方薬は2種類(中央値)であった。・退院時に向精神薬が処方されていた患者は41例、処方薬は1種類(中央値)へと有意な減少が認められた(p<0.05)。・入院時と比較した退院時の向精神薬処方量は、レンボレキサントは有意に高かったものの、抗精神病薬、ベンゾジアゼピン/非ベンゾジアゼピン系睡眠薬、抗うつ薬、スボレキサント、ラメルテオン、バルプロ酸ナトリウムの処方は有意に低下した(p<0.05)。 著者らは、「この研究では患者数が限られており、患者の特性の違いによる選択バイアスが否定できないため、さらなる検討が必要である」としている。

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外来通院治療中の肺がんにおける悪液質合併、初診時で5割超、治療開始が遅れるとさらに増加/日本肺癌学会

 外来通院中の肺がん患者の5割超が初診時に悪液質を合併しており、その割合は治療開始までの期間が長いほど増加するとの研究結果が示された。関西医科大学の勝島 詩恵氏が第64回日本肺癌学会学術集会で発表した、外来通院肺がん患者における悪液質の後ろ向き観察研究のデータである。 がん悪液質は進行がんの多くに合併し、化学療法の効果を下げ、有害事象の発現を増加させる。また、悪液質は進行すると不可逆的かつ治療抵抗性になるため、早期からの介入が推奨される。しかし、臨床現場における悪液質の病状判断は難しく、必ずしも早期介入が実現しているとは言えない。 同大学では外来通院がん患者に特化した、がんリハビリテーション外来である「フレイル外来」を実施している。勝島氏らは、同外来を2020年11月〜22年11月に受診した肺がん患者を後ろ向きに解析した。 主な結果は以下のとおり。・フレイル外来初診時の肺がん患者(76例)における悪液質の合併は55.3%(42例)であった。・悪液質の発症と関連する項目はMNA(Mini Nutritional Assessment Score、p<0.001)とIPAQ(International Physical Activity Questionnaire、p=0.026)であった。つまり、低活動と低栄養が独立した関連因子であることが明らかになった。<悪液質の有無による比較>・フレイル外来初診時からの生存日数を悪液質の有無で比較すると、悪液質あり群は、なし群に比べ有意に予後不良であった(p=0.012)・悪液質がない状態で治療開始した患者では病勢制御率、初回治療完遂率ともに100%であった。一方、悪液質がある状態で治療開始した患者では、病勢制御率66.7%、初回治療完遂率58.3%であり、悪液質の合併は、治療効果とともに治療完遂率に悪影響を及ぼすことが示された。<初診から治療開始までの期間:早期群[45日未満]と遅延群[45日以上]による比較>・早期群では、初診時と治療開始時の悪液質合併割合に変化はなかったが(初診時61%→治療開始時61%)、遅延群では初診時から治療開始時にかけて増加しており(37%→87%)、初診から治療開始までの時間が長いほど悪液質の発症が高まる傾向にあった。 勝島氏は、がん悪液質の予防、とくに診断から治療開始までの空白期間での介入は、化学療法の有効活用にとっても重要であること、そして、がん悪液質の予防には多職種が有機的に関わって患者の身体活動量や栄養状態を維持することが欠かせないと述べた。

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医師の英語学習、どのくらいお金と時間をかけている?/1,000人アンケート

 英語で学会発表を行ったり、外国人患者を診療したりするために、英語は医師にとって欠かせないスキルとなっている。英語を学ぶ主な目的や学習方法といった医師の英語学習状況を把握するため、会員医師1,021人を対象に『医師の英語学習に関するアンケート』を9月21日に実施した。年代別の傾向をみるため、20~60代以上の各年代を約200人ずつ調査した。その結果、英語学習に最も費用と時間をかけているのは30代であることなどが明らかとなった。海外学会への参加頻度から、おすすめの英語系YouTubeチャンネルや語学学習アプリなど、学習に役立つツールまで、英語学習に関するさまざまな意見が寄せられた。医師全体の18%が海外学会に参加 「Q1. 2022~23年、どれくらい海外学会に参加しましたか?(参加形式は発表・聴講を問わない、オンラインでの参加も含む)」という設問では、年代別に海外学会への参加の実態を聞いた。全体で18%が1回以上参加していた。 年代別で1回以上の参加率が高い順に、30代(24%)、40代(23%)、20代(17%)、50代(14%)、60代以上(12%)であった。一方、20~50代では、期間中1回の参加の割合が最も多くを占めていたが、60代以上は、3回以上参加した割合が最も多かった(7%)。診療科別の海外学会参加率(1回以上)では、参加率が高い順に、皮膚科(39%)、血液内科(36%)、放射線科(30%)、腎臓内科(29%)、リハビリテーション科(27%)であった。医師が英語を学ぶ目的、年代が低いほど研究、高いほど臨床を重視 「Q2. 医療業務やキャリアアップに関わるもので、英語を学ぶ目的は?(当てはまるものを3つ選択)」の設問では9つの選択肢を設け、多い順に「医学論文を投稿するため」(39%)、僅差で「外国人患者を診療するため」(39%)、続いて「英語の学会発表を聴くため」(31%)、「外国人医療者とコミュニケーションを取るため」(26%)、「英語で学会発表を行うため」(26%)であった。 医師が英語を学ぶ目的については、年代別で傾向が分かれた。目的別で最も多い年代は、「医学論文を投稿するため」は20代、「英語で学会発表を行うため」は30代、「外国人患者を診療するため」は60代、「外国人医療者とコミュニケーションを取るため」は50代となり、年代が低いほど研究に関わる目的の割合が高く、年齢が高いほど臨床に関わる目的が高くなった。英語学習に最も時間とコストをかけている医師は30代 「Q3. 現在行っている英語学習法は?(当てはまるものすべて選択)」では、選択肢を12個設け、多い順に「英語論文を読む」(47%)、「YouTube、Podcast」(21%)、「勤務先の抄読会」(14%)、「市販のテキストやラジオ」(13%)、「英語のドラマや映画、小説」(12%)、「英語学習アプリ」(10%)となった。30代と40代では、「YouTube、Podcast」、「英語学習アプリ」の割合が多く、60代以上では、「市販のテキストやラジオ」、「英語の映画やドラマ、小説」が多かった。 「Q4. 英語学習に月間かける費用は?」の設問では、費用をかけていない医師の割合が71%と大半を占め、次いで「1円以上、5,000円未満」が20%であった。「Q5. 英語を学習する頻度は?」の設問では、英語を学習する習慣のある医師が60%であった。学習の頻度は、多い順に「週に1日」(26%)、「週に2、3日」(15%)、「毎日」(10%)、「週に4~6日」(9%)であった。30代が英語学習に費用をかけている割合が最も多く(33%)、学習する習慣のある医師も最も多かった(67%)。医師がおすすめする英語学習法 Q6では、自由回答として、おすすめの英語学習法やサービス名、そのほか英語学習に関する意見を聞いた。回答者から寄せられた意見、おすすめの学習法、英語系YouTubeチャンネル、語学学習アプリなどは以下のとおり。【YouTube】・あいうえおフォニックスは発音や英語表現を簡単にテンポよく解説してくれる。(総合診療科・30代)・英語学習系YouTuberのタロサック。(総合診療科・30代)・もりてつという塾講師のYouTubeが参考になる。(総合診療科・40代)・フレンズ英会話はおすすめです。(腫瘍科・50代)・Kevin's Englishは楽しいです。(産婦人科・60代)【アプリ・オンラインツール】・ChatGPTは活用している。(小児科・40代)・スピーク、ELSA、mikanというアプリがおすすめ。(放射線科・20代)・スタディサプリ。(消化器内科・30代)・NHKの語学講座アプリ。無料で複数回復習ができる。(小児科・40代)・Duolingo。(皮膚科・40代)・HiNative(ネイティブにチャットで質問できるアプリ)。(呼吸器内科・40代)・DMM英会話で毎日外国の人と話し、振り返りをしている。あとはアプリで単語を覚えたり、発音の練習などしている。(循環器内科・30代)【ニュース】・ワシントンポストやニューヨークタイムズの動画ニュースを聞く。(小児科・40代)・CNN English Express。(消化器外科・50代)・BBCのPodcast。(腎臓内科・30代)【論文・学会】・ひたすら論文を書いています。(総合診療科・30代)・英文抄録を読む。(内科・60代)・好きなジャンルの講演を聴く。(血液内科・40代)・NEJMやJAMAのPodcast。(循環器内科・60代)【その他、独自の工夫】・IELTSを受けている。(臨床研修医・20代)・駅で電車を待っている間や、外を歩いているときに英語で独り言を呟いてみる。(消化器内科・40代)・歌詞を覚えて歌う。(消化器外科・50代)・子供用アニメは英語がそれほど難しくなくとっつきやすい。(泌尿器科・50代)・医療系の英語ドラマで、英語の字幕を見ながら英語で聞いて、言葉を復唱する。海外留学の経験からも、これが一番の勉強法だと思います。(内科・50代)【英語が使えてよかったこと】・突然海外からの患者が来た時に、対応できるので信頼度が上がる。(小児科・20代)・英語論文を書く時間がかからない。(整形外科・30代)・外資系の産業医活動ができた。海外出張に参加できた。(精神科・50代)・日々の絶え間ない学習が有効とわかったのが良かった。(その他・60代)アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中。医師の英語学習、おすすめの学習ツールは?/医師1,000人アンケート

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運動するのも緩和ケア?【非専門医のための緩和ケアTips】第61回

第61回 運動するのも緩和ケア?緩和ケアの専門家として、時々聞かれるのが「運動療法ってどんなことをするのですか?」というトピックです。確かに緩和ケアの教科書を見ると書いてありますからね。今回は緩和ケアにおける運動療法を考えてみましょう。今回の質問外来で診ているがん患者さん。痛みなどの身体症状は抑えられているのですが、不眠があり、気分も晴れないとのことです。こういった方に運動を勧めることをどう思われますか?外来通院されている患者さんに、少しでもできることがないかと考える姿勢が非常に伝わってくる質問ですね。まず、緩和ケア領域における運動療法についての一般論を共有します。がん患者への運動療法は世界的に議論され、研究領域の1つでもあります。その効果としては、倦怠感などの苦痛症状の緩和、身体機能やQOLの向上などが期待されています。運動の内容としては、日本緩和医療学会の編集による『がんの補完代替療法クリニカル・エビデンス(2016年版)』(金原出版)に、これまでのエビデンスをまとめた推奨事項が記載されています。これによると「一般に成人(18~64歳)に対して、中等度の身体活動を週150分、高強度の有酸素運動を週75分、中~高強度の抵抗運動を週2回以上、行うことが推奨されている」(学会サイトから無料で閲覧可)。このように、緩和ケア領域における運動療法には一定の効果が期待できるわけですが、実践するうえでの注意点は何でしょう?それは、「適応」と「安全」です。「適応」としては、運動療法を検討している患者さんの症状や苦痛に対するアセスメントが重要です。今回の相談のケースでは、患者さんの気分の落ち込みがうつ病の症状かを考慮する必要があるでしょう。また、不眠も運動による改善が期待できますが、そもそもの不眠の原因を取り除くことも必要です。次に「安全」についてです。健康な人も同様ですが、がん患者であればなおさら過度な運動は禁物です。高齢の患者さんには持病のある人も多く、さらに安全に配慮する必要があります。骨転移のあるがん患者さんが転倒して骨折する、というのはよくあるケースですが、運動療法中に骨折すれば管理上の問題にもなります。そのほか、化学療法中の患者さんであれば、発熱や吐き気といった副作用が出ている時期や、骨髄抑制の期間中の運動は避けたほうがよいでしょう。以上、緩和ケア領域における運動療法を検討しました。「適応」と「安全」をしっかり考えながら、ケアに運動を取り込みましょう。今回のTips今回のTips緩和ケア領域の運動療法は、「適応」と「安全」を考えるのがポイント!

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身長低下が20代から4cm以上、椎体骨折を疑う/日本整形外科学会

 日本整形外科学会(日整会)は、10月8日の「骨と関節の日」にちなみメディア向けセミナーを都内で開催した。「骨と関節の日」は、ホネのホは十と八に分かれること、「体育の日」に近く、骨の健康にふさわしい季節であることから1994年に日整会が制定し、全国で記念日に関連してさまざまなイベントなどが開催されている。 セミナーでは、日整会の今後の取り組みや骨粗鬆症による椎体骨折についての講演などが行われた。2026年の設立100周年、2027年の総会第100回に向けて はじめに同学会理事長の中島 康晴氏(九州大学整形外科 教授)が、学会活動の概要と今後の展望を説明した。 整形外科は、運動器障害の予防と診療に携わり、加齢による変性疾患、骨折などの外傷、骨・軟部腫瘍、骨粗鬆症、関節リウマチなどを診療領域としている。とくに運動器の障害は、要介護・要支援の原因の約25%を占め、超高齢社会のわが国では喫緊の課題となっている。そこで日整会では、「ロコモティブシンドローム(ロコモ)の概念」を提唱し、運動器障害のリスクを訴えてきた。その結果「健康日本21(第3次)」では「生活機能の維持・向上」に「ロコモの減少」「骨粗鬆症健診受診率の向上」が盛り込まれるようになった。 また、日整会では、2020年4月より「日整会症例レジストリー(JOANR)」という運動器疾患の手術に関する大規模データベースを構築。わが国の運動器疾患手術数、種類などを解析する事業も行っており、2021年の取りまとめとして、97万2,525例の手術のうち、1番多かった手術は「大腿骨近位部骨接合」(10万6,326例)、次に「人工膝関節」(7万7,675例)、次に「人工股関節」(6万6,219例)だったと報告した。 日整会は、2026年に学会創立100年を、27年には第100回総会を迎えることからプロモーション動画と特別のロゴを紹介。中島氏はこれからもさまざまな活動を続けていくと述べた。約5人に1人が椎体骨折の患者 講演では「骨粗鬆症による脆弱性脊椎骨折とロコモ~整形外科医の役割~」をテーマに宮腰 尚久氏(秋田大学大学院整形外科学講座 教授)が、骨粗鬆症による椎体骨折についてレクチャーを行った。 わが国の骨粗鬆症患者は1,590万例とされ、生じやすい部位として上腕骨、脊椎、手首、大腿骨頸部などが知られている。 骨粗鬆症は代謝性骨疾患であり、運動器疾患を招く。同様に運動器疾患を招くものとして「ロコモ」がある。 ロコモは、運動器障害のために移動機能が低下した状態をいう。近年の健康な人と骨減少症・骨粗鬆症における筋量サルコペニアの有病率を調べた研究報告によれば骨粗鬆症とサルコペニアは合併しやすいことが判明し、骨粗鬆症とサルコぺニアを合わせた「オステオサルコペニア」という概念も生まれている1)。 骨粗鬆症と生命予後の関連について調べた研究では、大腿骨の骨折のほかに椎体骨折も生命予後に影響することがわかっている2)。 多くの椎体に骨折が生じると脊柱後弯変形が生じ身長が低下する。これにより、胃食道逆流症、腰背部痛、身体機能の低下、バランス障害による易転倒などが起こり、永続的なQOLの低下を引き起こす。 椎体骨折は男女ともに骨粗鬆症でもっとも頻発する骨折であり、その発生率は80歳の女性で10万人当たり3,000例(年3%程度)といわれている3)。 椎体骨折の有病率について、わが国の男女(40歳以上)で21.8%、欧州の男女(50歳以上)で20%、カナダ・アメリカで20~23%と報告され、わが国では約5人に1人が椎体骨折を有するとされる。身長低下が20代から4cm以上の場合は椎体骨折を疑う 椎体骨折の診断で簡易に推定できる方法として、壁を背に立って壁と後頭部にすき間があれば骨折の可能性があること、肋骨最下端と骨盤の間に2横指以下であれば骨折の可能性があることを紹介。また、若いとき(25歳くらい)からの身長が4cm以上、閉経後3年間の身長低下が2cm以上あった場合も骨折の可能性があることを説明した。 治療では装具療法、外科的手術(例:椎体形成術や後方固定術やその両方など)が行われている。 椎体骨折の予防では2つの療法を示し、はじめに薬物療法として、活性型ビタミンD3薬、ビスホスホネート薬、選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)、副甲状腺ホルモン薬、副甲状腺ホルモン関連蛋白薬、抗RANKL抗体薬、抗スクレロスチン抗体薬があり、次の骨折へつなげないためにもまず薬物治療を開始することが大切だと指摘した。もう1つの骨折予防としては、運動療法があり、うつぶせ寝による等尺性背筋運動(関節を動かさずに筋肉に力を入れる運動)などが勧められ、その効果はメタアナリスでも改善効果が示されている4)。ただ、脊柱後弯変形やうつ伏せになれない人などには禁忌となるので注意が必要である。 また、高齢者の転倒防止のためにはロコモの予防も重要であり、日整会が勧めている片脚立ちやスクワットなども日々の暮らしの中で取り入れてもらいたいと語った。そのほか、日常生活でも注意が必要であり、椎体は屈曲時に潰される可能性があるので高齢女性では、家事労働や雪国ならば雪かきなどで体の態勢に気を付けることが重要であり、普段から意識して背筋を伸ばし、よい姿勢を保つことが大切だと指摘する。骨粗鬆症健診率の向上が課題 終わりに骨粗鬆症における整形外科の役割にも触れ、女性は40代で1次予防を、50代で2次予防のために検診し、きちんとしたその時々の対応をすることが必要と述べた。しかし、わが国の骨粗鬆症健診率は2020年で4.5%と低く、いかに社会的に周知・啓発をしていくかが今後の課題となっている。日整会では、ポスター掲示などで社会に対して働きかけを行っていくと展望を語り、レクチャーを終えた。

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交通事故診療における後遺障害診断書の記載法

ケアネットをご覧の皆さま、こんにちは。整形外科医の濱口 裕之です。今回は交通事故診療のキモと言える診断書の書き方をお伝えしましょう。交通事故の診断書は本当にうっとうしい…。そのように感じている方が多いと思います。何を隠そう、私もその1人。毎月やって来る自賠責様式の診断書に加えて、最後には後遺障害診断書という大物(?)が控えています。日常診療が忙しいと、思わずやっつけ仕事で診断書を作成してしまいそうですね。しかし、ちょっと待ってください。診断書の記載内容次第では、患者さんの運命を大きく変えてしまう可能性があります。運命を変えるってそんな大袈裟な…。しかし、自賠責保険の後遺障害等級審査は醜状を除くと書類審査のみで、どんなに重い後遺症があっても本人を直接診ることはありません。しかも、参考にするのは以下の資料のみ。いかに医師が作成する診断書の影響が大きいかを理解してもらえることでしょう。診断書後遺障害診断書診療報酬明細書(レセプト)画像検査結果交通事故証明書、車両の修理費用明細などこれらの資料の中でも後遺障害診断書や診断書は、画像検査結果とならんで最も重視される資料です。後遺障害診断書や診断書の記載内容によって、後遺障害等級が審査されます。注意して記載しないと、患者さんにトンデモない不利益を与えてしまうのです。自賠責様式の診断書の記載法毎月提出する自賠責様式の診断書は非常にシンプルな形式です。この診断書で注意するべき点は傷病名(図1赤枠)です。交通事故では、たくさんの傷病名が付けられる症例が多いです。傷病名が4個以上になると記載するのが億劫になりますね。このため、あまり重要そうでない傷病名は記載しなくてもよいかなと思いがちです。しかし、傷病名を省略すると、後々患者さんに大きな不利益を与えてしまう原因になりかねません。自賠責保険は「いつから」「どの部位」の治療を開始しているのかを重要視します。いくら患者さんが痛みを訴えていても、毎月提出する自賠責様式の診断書に傷病名が記載されていないと「なかった」ことにされてしまいます。このため、診察した部位の傷病名はすべて記載する必要があります。もう1つの注意点は「症状の経過・治療の内容および今後の見通し」の欄です。この欄には、身体所見や画像検査結果をシンプルに記載しましょう(図1青枠)。一方「症状は軽快している」などの表現はできるだけ避けるべきです。その理由は、自賠責保険が「症状は軽快している=後遺症はない」と判断するからです。ほとんどの症例は経時的に症状が軽快するので、このように記載しても問題なさそうに思えます。しかし、自賠責保険は言葉尻をとらえて非該当にするため注意が必要です。図1 自賠責様式の診断書画像を拡大する後遺障害診断書の記載法後遺障害診断書記載の注意点も自賠責様式の診断書と同じです。傷病名は1つ残さず記載するようにしましょう。仮に毎月提出する診断書に傷病名を記載していても、肝心の後遺障害診断書に記載されていなければ、後遺障害審査の俎上に載りません。後遺障害診断書では関節機能障害(図2赤枠)の記載も重要です。自賠責保険では関節可動域は他動運動での計測が原則です。自動運動が採用されるのは麻痺や腱断裂のみです。高度の痛みを訴える症例では自動運動が採用されるそうですが、私もほとんど経験がありません。傷害内容の増悪・緩解の見通し欄(図2青枠)の記載にも注意しましょう。この欄は最後に記載する部分ですが、最もトラブルが発生しやすいです。この欄では「症状固定と考える」と記載しましょう。間違っても「改善の見込みあり」などと記載してはいけません。もし改善の見込みありと記載すると、患者さんは後遺障害にほとんど認定されません。自賠責保険は言葉尻をとらえます。症状が改善するのであれば後遺障害ではないと揚げ足を取られてしまうのです。そもそも後遺障害診断書を作成するのは、治療によっても症状の改善が得られなくなった時点です。このため、改善の見込みがあれば症状固定ではありません。まだ後遺障害診断書を作成するべきではないのです。図2 後遺障害診断書画像を拡大する

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重度の精神疾患に対する入院リハビリテーションの有用性

 精神疾患や気分障害は、重度の機能障害、早期死亡リスク、社会的および経済的負担と関連している。イタリア・"G. D'Annunzio" UniversityのStefania Chiappini氏らは、統合失調症スペクトラム障害患者と気分障害患者を対象に、イタリアの精神科入院施設で実施された心理社会的、心理的、リハビリテーション的な介入の有効性を評価した。その結果、重度の精神疾患患者に対する入院リハビリテーション介入は、効果的かつ有用である可能性が示唆された。Neuropsychiatric Disease and Treatment誌2023年8月30日号の報告。 本件は、イタリア・ローマの精神科病院であるVilla Maria Piaにおいて、2022年に実施されたレトロスペクティブ観察研究である。ICD-9-CMで統合失調症スペクトラム障害および気分障害と診断された患者を対象に、入院時と治療終了時に簡易精神症状評価尺度(BPRS)および機能の全体的評価尺度(GAF)を用いて評価を行った。介入には、学術的チームが関与して行われ、個人および集団による介入を分析に含めた。群間の連続変数の比較は、独立サンプルによるt検定を用い、変数間の相関はスピアマン相関係数を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・研究対象患者数は141例(平均年齢:51.3±12.4歳、男性患者:73例、女性患者:68例)であった。・心理社会的介入およびリハビリテーション介入に積極的に参加した患者は85例(60.3%)であり、参加していない患者と比較し、退院時に機能や症状の改善が認められた(delta GAFは、心理社会的介入に参加した参加者において有意に高かった。t=-2.095、p=0.038)。・介入回数/入院日数を指標とし分析すると、心理社会的介入の頻度は、活動に参加したサンプルにおける患者の機能の改善と正の相関が認められた(r=0.272、p=0.012)。とくに、心理療法(r=0.202、p=0.017)と集団サポート(r=0.188、p=0.025)において、顕著であった。・統合失調症スペクトラム障害(37例)と気分障害(48例)をそれぞれ評価すると、GAFの改善と心理社会的介入との正の相関は、統合失調症スペクトラム障害のみで認められた。・BPRSに関しては、全体または疾患別において、これらの相関が認められなかった。 著者らは「重度の精神疾患患者に対する入院リハビリテーション介入の長期的なQOL、社会機能への効果を明らかにするためには、さらなる調査が求められる」としている。

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10月4日 徒歩の日【今日は何の日?】

【10月4日 徒歩の日】〔由来〕「と(10)four(4)」(徒歩)の語呂合わせから、日常生活で歩く習慣を付け、健康になることを目的に、「徒歩を楽しむ会」(宮崎県宮崎市)が2004(平成16)年に制定。関連コンテンツあの偉人もしていた?犬と一緒にダイエット【患者指導画集 Part2】おすすめの運動は何ですか?【患者説明用スライド】健康維持に必要な1日の最小歩数は?~メタ解析エネルギー消費量が高い歩き方/BMJ高齢者では1日の歩数が睡眠効率と正の相関―大分大学

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適切な運動でがん患者の死亡リスク25%減、がん種別にみると?/JCO

 がんと運動の関係について、さまざまな研究がなされているが、大規模な集団において、がん種横断的に長期間観察した研究結果は報告されていない。そこで、米国・メモリアルスローンケタリングがんセンターのJessica A. Lavery氏らの研究グループは、がん種横断的に1万1,480例のがん患者を対象として、がんと診断された後の運動習慣と死亡リスクの関係を調べた。その結果、適切な運動を行っていた患者は非運動患者と比べて、全生存期間中央値が5年延長し、全死亡リスクが25%低下した。本研究結果は、Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2023年8月31日号に掲載された。 前立腺がん、肺がん、大腸がん、卵巣がんのスクリーニング研究(Prostate, Lung, Colorectal and Ovarian [PLCO] Cancer Screening Trial)に参加したがん患者1万1,480例(11がん種)を対象とした。対象患者のがんと診断された後の運動の頻度と死亡の関係を検討した。運動について、米国のガイドラインの基準(中強度以上の運動を週4日以上×平均30分以上および/または高強度の運動を週2回以上×平均20分以上)を満たす患者(適切な運動群)と基準未満の患者(非運動群)の2群に分類し、比較した。主要評価項目は全死亡、副次評価項目はがん死亡、非がん死亡であった。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値16年時点において、死亡が認められたのは4,665例であった。内訳は、がん死亡が1,940例、非がん死亡が2,725例であった。・全生存期間中央値は、適切な運動群が19年であったのに対し、非運動群は14年であった。・多変量解析の結果、適切な運動群は非運動群と比べて、全死亡リスクが有意に25%低下した(ハザード比[HR]:0.75、95%信頼区間[CI]:0.70~0.80)。・また、適切な運動群は非運動群と比べて、がん死亡リスク(HR:0.79、95%CI:0.72~0.88)と非がん死亡リスク(HR:0.72、95%CI:0.66~0.78)が有意に低下した。・がん種別のサブグループ解析において、全死亡リスクの有意な低下が認められたがん種は、以下のとおりであった。 -子宮体がん(HR:0.41、95%CI:0.24~0.72) -腎がん(同:0.50、0.31~0.81) -頭頸部がん(同:0.62、0.40~0.96) -血液がん(同:0.72、0.59~0.89) -乳がん(同:0.76、0.63~0.91) -前立腺がん(同:0.78、0.70~0.86)・一方、適切な運動群でがん死亡リスクの有意な低下が認められたがん種は、腎がん(HR:0.34、95%CI:0.15~0.75)、頭頸部がん(HR:0.49、95%CI:0.25~0.96)のみであった。

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交通事故診療で困ることとその対応(2)

ケアネットをご覧の皆さま、こんにちは。整形外科医の濱口 裕之です。前回の「交通事故診療で困ることとその対応」はいかがでしたでしょうか?やっぱり交通事故診療は面倒くさいとか言わないでくださいね。それでは、今回も交通事故診療の疑問にお答えしましょう!自分の患者さんが、どのような基準で後遺障害に認定されるのかわかりません。後遺障害診断書をしっかり記載したのに非該当になって、患者さんに愚痴られたことがあります自賠責保険の後遺障害認定基準はブラックボックスであり、詳細は公開されていません。このため、自分の患者さんが後遺障害に認定されるか否かを正確に予測するのはほぼ不可能です。これまで、私たちのグループは、全国から寄せられる数千例に及ぶ事案に取り組んできました。それらの事案を分析した結果、自賠責保険は以下の認定基準にしたがって後遺障害の審査を行っていると推察されます。事故の規模症状の一貫性通院頻度適切な専門科の受診の程度身体所見と画像所見の一致の程度症状固定までの期間患者さんが受傷した部位ごとに細かい認定基準があるため、私たちのように年間約1,000例もの症例に取り組んでいても、正確に後遺障害等級を予測できるわけではありません。このため、自分の患者さんの後遺障害等級を予測するのは困難だと割り切りましょう。事故と症状の因果関係が疑わしい患者さんをときどき見かけます。単なる外傷性頸部症候群(頸椎捻挫)なのに、めまい、耳鳴、目のかすみなどの訴えは理解できません交通事故での外傷性頸部症候群(頸椎捻挫)といえば、首の痛みを想像する人が多いと思います。確かに、外傷性頸部症候群の症状として最も多いのは、後頸部から腕にかけての痛みやしびれです。しかし、外傷性頸部症候群では、めまい、耳鳴、目のかすみ、目の疲れなど自律神経失調症の症状を併発する症例があります。外傷の影響で交感神経が刺激されて前庭迷路の血流が減少します。これによって、めまいや耳鳴が起きるといわれています。外傷性頸部症候群に自律神経失調症が合併した状態を、バレリュー症候群と呼びます。バレリュー症候群は、整形外科医の間でさえ一般的な傷病とは言い難いです。しかし、交通事故診療では比較的よく見かける傷病です。患者さんがめまい、耳鳴、目のかすみ、目の疲れなどを訴えると、精神疾患や詐病を連想しがちです。しかし、外傷性頸部症候群では、一定の確率で自律神経失調症を併発します。バレリュー症候群である可能性を念頭に置いて診療しましょう。症状固定の時に、治療終了となることに対して患者さんが納得しなくて困っています。症状固定とは、治療してもそれ以上改善しない状態を指します。具体的には、消炎鎮痛剤の服用やリハビリテーションにより一過性に軽快するものの、すぐ元に戻ってしまう状態です。症状が一進一退になれば、症状固定の時期と思って良いでしょう。症状固定は医学的な概念ではなく、損害保険会社や裁判で慣習的に使われている用語です。そのため、患者さんだけでなく医師が症状固定の意味を正確に理解していなくても不思議ではありません。自賠責保険は、すべての交通事故被害者が完治するとは考えていません。治療効果がなくなった時点で治療を終了し、後遺症に対しては後遺障害を認定して救済します。限りある保険料収入を最大限有効活用することで、公的な利益を追求しています。そのため、治療しても根本的に改善する可能性がなくなったにもかかわらず、延々と治療を続けることには問題があります。患者さんの立場では、交通事故に巻き込まれて後遺症を負ったので、完全に治るまで補償して欲しいと思いがちです。症状固定に納得しない患者さんには、自賠責保険の公的な存在意義を説明するしかないと思います。なお、症状固定しても自賠責保険での治療が終了するだけです。健康保険で症状緩和の治療を続けられることは申し伝えましょう。診断書へ絶対に記載してはいけない事項は何でしょうか?自賠責保険は、醜状などの一部を除いて、すべて書類審査です。したがって、医師が作成した診断書は、患者さんの後遺障害認定に極めて大きな影響を及ぼします。そのため、診断書は自賠責保険のルールに則って記載する必要があります。そうは言っても、特別に勉強する必要はなく、普通の感覚で診断書を作成すればよいでしょう。ただし後遺障害診断書の左下にある「障害内容の増悪・緩解の見通し」については、慎重に記載する必要があります。この欄に、症状は改善する見込みがあるなどと記載すると、患者さんは確実に後遺障害非該当になります。そもそも、症状固定の定義は「治療してもそれ以上改善しない状態」です。症状が改善する見込みがあるのなら、まだ症状固定ではありません。症状固定は医学用語ではないので、多くの医師が症状固定の定義を知らないのは当然といえるでしょう。だからといって、患者さんに不利益になることをあえて記載する理由はありません。主治医として、この点だけは知っておいて損はないと思います。自覚症状だけで他覚所見が乏しい場合の対応はどうすればよいのでしょうか?交通事故診療で最も多い外傷性頸部症候群では、他覚所見に乏しい症例が多いです。身体所見や画像所見と比較して症状の訴えの強い患者さんを診ると、どうしても詐病が頭をよぎります。しかし、私たちの数千例に及ぶ経験では、交通事故診療で明らかに詐病と思われる症例は、さほど多くないのが実情です。たしかに、外傷性頸部症候群では自覚症状だけで他覚所見が乏しい症例は多いですが、彼らが全員ウソをついているわけではありません。単に現在の医療水準では、画像検査などで痛みなどの症状の原因を捉えきれていないだけだと考えるべきでしょう。私たち医師ができることは、客観的に診療することだけです。詐病が強く疑われるケースを除けば、粛々と治療を続けることが望まれます。

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筋肉痛はタンパク質摂取で抑えられない

 レジスタンス運動(筋肉に繰り返し負荷をかける運動)の前後にタンパク質を摂取することは、運動後の回復とトレーニング効果を高める一般的な戦略である。一方、タンパク質摂取が運動誘発性筋損傷(EIMD:いわゆる筋肉痛)を抑制できるのかについて調査した、英国・ダーラム大学のAlice G. Pearson氏らによるシステマティックレビューの結果が、European Journal of Clinical Nutrition誌2023年8月号に掲載された。筋肉痛はタンパク質摂取群と対照群で有意差はなかった 研究者らはPubMed、SPORTDiscus、Web of Scienceで2021年3月までの関連論文を検索し、運動後の各時点(24時間未満、24時間、48時間、72時間、96時間)におけるタンパク質摂取の効果と、EIMDを計る間接的マーカーのヘッジズ効果量(ES)を算出した。 タンパク質摂取が筋肉痛を抑制できるのかについて調査した主な結果は以下のとおり。・システマティックレビューに含まれた29の研究は45の試験からなり、うち26の研究と40の試験が1つ以上のメタアナリシスに含まれた。計763例が対象となり、うち94%が若年男性であった。・等尺性随意最大筋力は96時間後(ES:0.563、95%信頼区間[CI]:0.232~0.894)および、等速性随意最大筋力は24時間後(0.639、95%CI:0.116~1.162)、48時間後(0.447、95%CI:0.104~0.790)、72時間後(0.569、95%CI:0.136~1.002)の各時点において、タンパク質摂取による筋力低下の抑制効果が認められた。・クレアチンキナーゼ濃度は、48時間(0.836、95%CI:-0.001~1.673)および72時間(1.335、95%CI:0.294~2.376)時点において、タンパク質摂取群は対照群よりも低下していた。・一方、筋肉痛については、タンパク質摂取群と対照群に有意差はなかった。 著者らは「運動前後のタンパク質摂取は、最大筋力の維持とクレアチンキナーゼ濃度の低下に役立つが、筋肉痛を軽減することはできなかった」としている。

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病院機能評価「医療安全」への対策強化で「カルテレビュー」導入へ

 最近では紙カルテ(診療録)から電子カルテへの普及が進み、病院のみならずクリニックでの導入も多くみられるようになった。また、国が推進するマイナンバーカードによる健康保険証には、個人のカルテ情報の搭載も予定され、いつでも、どこでも自分のカルテが読める時代が期待されている。そんなカルテは、医療事故などが発生した場合、真っ先に調査が行われる患者や患者遺族、医療機関などにとって事故と結果の因果関係を証明する大切な資料となるが、カルテの中身の記載については個々の医師の判断に任されている。 今般、日本医療機能評価機構は、「医療安全」の対策強化を目的に、病院機能評価の「カルテレビュー」の強化を行った。従来よりも多数の症例のカルテについてチェックをされることになる。本稿では特別寄稿として病院機能評価の受審を2022年に受けたばかりの井上 雅博氏(稲沢市民病院 内科)が、「カルテレビュー」への対応について述べる。医療事故で顕在化したカルテの不備 先日、兵庫県の神戸徳洲会病院で心臓カテーテル検査や治療後に複数の患者の死亡が発生し、第三者を交えた医療事故調査が決まりました。さらに神戸市が8月28日に、病院に対して行政指導を行いました。●参考記事カテーテル処置後死亡 神戸市“安全管理体制に複数の問題点”(NHK/7月28日)カテーテル治療後に死亡相次ぐ神戸徳洲会病院 市が行政指導へ カルテに記載なし、実質一人で業務か(神戸新聞/7月28日)神戸徳洲会病院への医療安全管理体制に関する行政指導の実施(神戸市/8月28日) 事故の報道で当初から問題とされていたのは、患者の急変などがあったにも関わらず、診療にあたっていた医師によるカルテ記載が十分ではないことでした。 事故露見のきっかけは、今年の1月から赴任した医師の施行したカテーテル手術後に、死亡事例や容体悪化した症例が多発していたにもかかわらず、病院側が再発防止や医療安全のために検証に取り組んでこなかったため、匿名による内部告発で発覚となりました。 カルテの記載は医師法24条1項には「医師は、診療をしたときは、遅滞なく診療に関する事項を診療録に記載しなければならない」と定められているように義務となっています。残念ながら、この医師は毎日のカルテ記載を怠っていただけでなく、病状が急変して死亡された患者についても記載がなく、今回のような指導へとつながってしまいました。 患者安全の確立のためにも、診療にあたる医師による患者や家族への同意説明の内容や臨床経過についてはカルテへの記載が必須事項とされています。 医療事故が発生したときに問題となるのは、医療事故に遭われた患者の治療経過や処置など、具体的に行った医療の内容、さらには事故発生後の経過について記載が不十分であると、カルテ開示を求められた場合、患者側に医療不信を引き起こし医療訴訟につながるということです。 医療事故の解析や再発防止策の立案にカルテ記載は必要であることは言うまでもないですが、「説明と同意」が必須の時代に、十分な同意取得がないまま侵襲性の高い医療行為や手術が実施された場合、今回の事例のように、地方厚生局や自治体などの行政側からも指導が下されることになります。また、最近では、説明同意文書以外にも、インフォームドコンセントの取得時に医師や看護師からの説明を受けた患者や家族の理解度についてもカルテ記載に必要とされてきています。病院機能評価でもカルテ記載の内容を問う時代に 今年の4月から新たに日本病院機能評価機構による病院機能評価も新しいバージョン3.0が導入されました。従来はサーベイヤーが審査するのは当日に選ばれた病棟の退院患者の症例のカルテの中から、実際に1症例を外来から入院、手術や検査、そして退院など一連の流れを審査側に説明してチェックを受けていたものが、カルテの記載内容について「定常状態」を確認するため、ランダムに選ばれたカルテを5症例ほど連続して確認することになりました。 日本医療機能評価機構は、医療機関が質の高い医療を提供するのを支援するために1997年から全国の病院に対し医療機能評価を行っています。2023年7月時点で2,000病院が認定病院となっていますが、これは全国の病床の約4割を認定病院の病床が占めており、ほぼ急性期病院の大半が網羅されています。 この25年で、幾度ものバージョンアップを通して評価項目・評価方法の見直しを行ってきました。今回の新しいバージョンでは、全国の受審病院に対して、これまでのサーベイヤーの審査に際しては、カルテの記載が充実している先生のいわゆる「チャンピオンカルテ」を用意しておけば間に合っていたものが、すべての入院患者について「カルテ記載の充実」を求めていることです。 すでに大学病院や高度急性期病院では医師、看護師、薬剤師、栄養士、セラピストなど、多職種からなるチームで医療が行われています。新しいバージョンの病院機能評価では、これを一般病院に対して実践を求めることになりました。詳しくは病院機能評価機構の説明資料(新しい病院機能評価[3rdG:Ver.3.0]の運用開始について)を参照ください。 この中で、従来は大学病院など「一般病院3」だけで実施されてきた「カルテレビュー」が、機能評価を受審するすべての病院で実施されることになりました。 患者・家族への説明や同意文書の不備の有無のチェックだけではなく、複数のカルテ記載から診療・ケアの適切性、説明と同意の適切性、カルテ記載の定常状態などを確認するために、病院における日々の診療内容、患者・家族への説明についての理解度の評価など記載が求められます。 今までのように特定のカルテだけではなく、入院患者の全員について入院から退院までのカルテが審査対象とされるため、退院後2週間以内のサマリーの作成だけではなく、従来は、個別の医師のカルテ記載についてまではあまり立ち入っていなかったのを、病院側が診療録管理委員会などを通して監督・指導しなければならなくなっています。 さらにカルテレビューの導入に合わせて、バージョン3.0では、400床以上の【区分4】、200~399床【区分3】の病院では、医療安全・感染対策ラウンドが実施され、情報伝達エラーの防止策や医薬品の安全管理や誤認対策、ハイリスクな医療行為の実施にあたっての院内ルールの規定など、細かくチェックをするものとなっています。 これまでのような小手先での対策ではなく、医師が病院の全職員と共に医療安全のためにしっかりとした対策を講じていく必要が出てきたと思います。 病院機能評価は、救急体制充実加算や回復期リハビリテーション病棟入院料1の加算を受けるためには病院機能評価や第三者評価が条件となっているものが複数あり、避けて通れなくなっています(病院機能評価が影響する診療報酬や施設基準等について)。 医療機能評価を受審するにあたっては、病院側はカルテ記載をしっかりと医師に積極的に働きかける必要があり、新入職員の研修医や中途入職の医師に対してもカルテ記載について導入教育を行う必要が出てきていると思われます。 今年の4月から新バージョンの運用開始に伴い、大学病院以外でもカルテレビューが行われており、対策が急がれます。●参考資料機能種別版評価項目(3rdG:Ver.3.0)の機能種別と評価項目について3rdG:Ver.3.0の訪問審査当日の進行について病院機能評価が関連する診療報酬や制度等について

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交通事故診療で困ることとその対応(1)

ケアネットをご覧の皆さま、はじめまして。整形外科医の濱口 裕之と申します。交通事故絡みの診療って面倒くさいなぁ…。きっと、そう思っている方が多いことでしょう。何を隠そう私もその1人です。そんな私が、交通事故診療についてお話しする機会をいただきました。その理由は、私が日本で最もたくさんの交通事故患者さんに関わっている医師だからです。一体どれぐらいの数の患者さんかって? ナントその数、年間1,000症例!これほどたくさんの交通事故患者さんに関わっている理由は、勤務医をしながら2016年に創業した弁護士向けの会社にあります。主に交通事故の後遺障害認定サポートを行っており、整形外科医が代表を務める会社としては業界最大手となりました。全国の弁護士や保険会社から毎日たくさんの相談を受けているので、交通事故診療の疑問や悩みなら何でもござれというワケです。そこで今回は、交通事故診療に携わる医師のよくあるお悩みについて回答していきます。どうかご笑覧いただきますようお願い申し上げます。接骨院との併診を希望する患者が多くて困っています。医療機関と接骨院との併診を認めてよいのでしょうか?接骨院は、柔道整復師が施術を行う施設で、整骨院とも呼ばれています。もちろん、接骨院は医療機関ではありません。1998年に柔道整復師養成校設立の規制が緩和されたため、接骨院の数はコンビニエンスストアと同じぐらいにまで増加しました。熾烈な生存競争を勝ち抜くため、接骨院は交通事故患者さんの取り込みに躍起になっています。夜間営業や日祝日営業は当たり前なので、交通事故患者さんは通いやすい接骨院に流れがちです。もちろん、患者さんが接骨院に行くのは自由です。しかし、医療機関と並行して通っていると、いくつかの不具合が発生します。よく見かけるのが、「なか飛ばし」と呼ばれる初診時と症状固定時だけ医療機関を受診して、その間は接骨院に通うパターンです。なか飛ばしでは、医師には診察していない期間の経過がわからないので、症状固定時の症状が事故によるものか否かがわかりません。このため、後遺障害診断書作成が困難になります。なか飛ばしよりもさらに対応が難しいのは「経過後初診」です。受傷してから一度も医療機関を受診せずに接骨院に行ってしまい、症状固定時期に初めて医療機関を受診するパターンです。症状と事故との因果関係がまったくわからないので後遺障害診断書を書けません。また、接骨院にいくら頻回に通っても、一定頻度の医療機関受診がなければ後遺障害に認定されません。接骨院との併診を希望する患者さんには、接骨院併診のデメリットを説明した上で選択してもらうことをお勧めします。どのタイミングで治療終了にするのでしょうか? 症状固定の時期の判断が難しいです症状固定とは、症状が依然として残っているものの、治療を行ってもこれ以上症状が良くならない状態です。症状固定は治癒と混同されがちですが、両者はまったく異なります。治癒は、文字どおり治った状態なので症状はありません。一方、症状固定はリハビリテーションや薬物療法で一時的には症状が改善しても、治療を止めると症状がぶり返してしまう一進一退の状態です。日常診療で症状固定を考えるべきタイミングは、治療していても効果がなくなってきたなと感じる時期です。症状固定と言うと症状がなくなった状態を連想しがちですが、そうではありません。症状がまだ残っているからと言って、治療効果が不十分になったにもかかわらず、漫然と治療を続けることは厳に慎むべきでしょう。もちろん、症状固定したら治療も終了しなければいけないわけではありません。あくまでも自賠責保険での治療を終了するだけです。患者さんの希望があれば、症状の緩和を目的として、健康保険を使用して治療を続けることは可能です。受傷して間もないのに全治までの期間の判断を求められることがあります。何故、保険会社は全治までの期間をすぐに知りたがるのでしょうか?受傷後早期にもかかわらず、保険会社が全治までの期間の判断を求めるケースは、大きく2つに分けられます。1つ目は、保険会社の決算期の関係で備金計上を迫られているケースです。備金とは、決算日までに発生した事故に支払うために積み立てる準備金です。備金計上にはある程度の正確さが要求されるので、保険会社の担当者は全治までのおおよその期間を知りたいと思うのです。2つ目は、保険会社が患者さんの症状や医療機関の治療内容について疑念を抱いているケースです。具体的には、軽い事故にもかかわらず、ほぼ毎日通院しているケースなどが挙げられます。保険会社は詐病や過剰診療の可能性を念頭に置いて調査します。後遺障害診断書の記載内容の書き換え要求があって、患者さんや担当弁護士と揉めることがあります。どのように対応すればよいのでしょうか?最近、交通事故診療の現場に弁護士が介入するケースが増えています。その理由は、自動車保険の弁護士費用特約が普及しているからです。弁護士費用特約とは、交通事故に遭った際に、弁護士に委任する費用を補償してくれる特約です。患者さんの立場では、経験豊富な弁護士に依頼できるので、多くの人が加入しています。弁護士の立場では、弁護士費用特約が附帯されていると費用の取りはぐれがありません。このため、多くの弁護士が交通事故患者さんから受任しようと躍起になっています。弁護士報酬は成功報酬部分が大きいので、患者さんが後遺障害に認定されるように、あの手この手を使います。このため、後遺障害認定に大きな影響を及ぼす後遺障害診断書の書き換え要求をする弁護士が後を絶ちません。後遺障害診断書の書き換え要求があった場合には、自賠責保険の記載ルールから逸脱している場合は追記や修正に応じるべきでしょう。たとえば、関節可動域について他動を記載せず、自動しか記載していないケースです。一方、症状固定日をもう少し後にして欲しいなどの医学的根拠が不明瞭な書き換え要求には応じる必要はありません。あくまでも医師としての専門的な診断を優先しましょう。

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筋トレは方法次第で1日3秒、週3日で効果あり!?

 「筋力トレーニングはつらいので嫌い」という人は、少なくないだろう。しかし1日3秒、週3日で効果があるとしたらどうだろうか。新潟医療福祉大学とオーストラリア・Edith Cowan Universityの研究グループは、1日3秒、週3日の全力の伸張性収縮(重りをゆっくりと降ろすなどの運動)を4週間実施することで、筋力が増加することを明らかにした。本研究結果は、吉田 麗玖氏(間庭整形外科医院)らによってEuropean Journal of Applied Physiology誌オンライン版2023年7月28日号で報告された。 健康な大学生26人を対象として、全力の伸張性収縮を1日3秒、週2日実施する群(週2日群)と1日3秒、週3日実施する群(週3日群)に均等に割り付け、4週間のトレーニングを実施した。4週間のトレーニング前後における短縮性収縮、等尺性収縮、伸張性収縮時の随時最大筋力の変化を群間比較した。また、上腕二頭筋、上腕筋の筋厚の変化も比較した。これらの結果は、先行研究において1日3秒、週5日のトレーニングを4週間実施した群(週5日群)1)とも比較した。 主な結果は以下のとおり。・週2日群は、随時最大筋力に有意な変化はみられなかった。・週3日群は、短縮性収縮および伸張性収縮時の随時最大筋力が有意に増加した(それぞれ2.5%、3.9%、いずれもp<0.05)。・週5日群は、短縮性収縮および伸張性収縮時の随時最大筋力が有意に増加し(それぞれ12.8%、12.2%)、増加の大きさは週3日群よりも大きかった(いずれもp<0.05)。・上腕二頭筋、上腕筋の筋厚に有意な変化は認められなかった。 本研究結果について、著者らは「1日3秒の全力の伸張性収縮によって筋力増加効果を得るためには、少なくとも週3日のトレーニングが必要であり、1週間当たりのトレーニング日数が多いほど、大きな筋力増加効果が得られることが示唆された」とまとめた。

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日本人アルツハイマー病患者の日常生活に影響を及ぼすリスク因子

 日常生活動作(ADL)を維持することは、アルツハイマー病(AD)患者およびその介護者にとって非常に重要な問題である。エーザイの赤田 圭史氏らは、日本人AD患者の診断時のADLレベルおよび長期(3年以内)治療中のADL低下と関連するリスク因子を明らかにするため、本検討を行った。その結果、低い体格指数(BMI)、脳卒中、骨折を伴う日本人AD患者では、ADL低下リスクが高いことから、これらリスク因子を有する患者では、ADLを維持するためのリハビリテーションなどの適切な介入が求められることを報告した。Journal of Alzheimer's Disease誌オンライン版2023年6月30日号の報告。 日本の健康保険請求データベースより、AD患者の医療記録をレトロスペクティブに分析し、ADLレベルおよびADL低下と関連するリスク因子を特定した。ADLの評価には、バーゼルインデックス(BI)を用いた。ADL低下のリスク因子は、年齢とBIによる傾向スコアマッチングを用いて、ADL維持群と低下群を比較することにより、性別ごとに分析した。 主な結果は以下のとおり。・対象は、日本人AD患者1万6,799例(診断時の平均年齢:83.6歳、女性の割合:61.5%)。・女性患者は、男性患者と比較し、高齢(84.6歳vs.81.9歳、p<0.001)、低BI(46.8 vs.57.6、p<0.001)、低BMI(21.0kg/m2 vs.21.7 kg/m2、p<0.001)であった。・BI60以下の障害は、80歳以上で増加がみられ、女性のほうが有意に高かった。・入浴および身だしなみにおける障害が最も頻繁に認められた。・男性のADL低下は、BMI21.5 kg/m2未満、脳卒中、大腿骨近位部骨折と有意に関連しており、高脂血症との逆相関が認められた。・女性のADL低下は、BMI21.5 kg/m2未満、椎体骨折、大腿骨近位部骨折と有意に関連しており、腰痛との逆相関が認められた。

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男性機能の維持にも、テストステロン増加に最適な運動/日本抗加齢医学会

 いくつになっても男性機能を維持させたい、死亡リスクを減らしたい、というのは多くの男性の願いではないだろうか―。「老若男女の抗加齢 from womb to tomb」をテーマに掲げ、第23回日本抗加齢医学会総会が6月9~11日に開催された。そのシンポジウムにて前田 清司氏(早稲田大学 スポーツ科学学術院 教授)が『有酸素運動とテストステロン』と題し、肥満者のテストステロン増加につながる方法、男性機能を維持するのに適した運動について紹介した。肥満者のテストステロン増加に運動が影響、男性機能には… 近年、国内の死因別死亡数では心血管疾患や脳血管疾患が上位を占めているが、肥満者(BMI≧25)が増加することでこの死因が押し上げられることが示唆されている1)。そのため、肥満者を減らせば心・脳血管疾患も減少傾向に転じる可能性がある。 そこで、前田氏はこの課題解決としてテストステロン濃度に着目。ある研究2)によると肥満者ではテストステロン濃度が低下し、またある研究3)ではテストステロンは血管機能(動脈スティフネスや中心血圧)に保護的に作用することが報告されている。加えて、テストステロン増加がさまざまな疾患リスク減少に寄与する4)ことも報告されている。以上の報告から同氏らは、肥満者ではテストステロン値が低下し、その結果、心血管リスクが上昇していると仮説を立て、肥満者において、食事・運動介入による心血管やテストステロン濃度への影響を調査した。 本研究ではまず、肥満者を対象に生活習慣の改善介入(食事と運動の併用介入)を3ヵ月間実施した。有酸素性運動は3回/週(1回あたり90分、内訳:ストレッチ10~15分、有酸素性運動40~60分、整理運動20~30分)行った。食事法には四群点数法を導入し、1食あたり560kcal程度、1日1,680kcal程度の摂取とし、1回/週の週間食事指導、食事記録に基づいた個別指導が行われた。続いて、肥満者を運動群(n=49)、食事群(n=28)、併用群(n=56)の3群に割付け、食習慣と運動習慣のどちらがよりテストステロン値に影響を与えるかを調査した。なお、併用群ではいずれもの介入がなされた。さらに、運動能力の男性機能やテストステロンへの影響を調べるために筋力(握力)と持久力(最大酸素摂取量)の関係性についても解析した。 主な結果は以下のとおり。・食事と運動の併用介入による減量後に、動脈スティフネスと中心血圧はともに低下した。また、介入後のテストステロン濃度の増加が大きいほど脈波伝播速度で評価した動脈スティフネスの低下は大きく、中心血圧の低下も大きかった。・運動群、食事群、併用群のそれぞれの効果を検討した際の体重変化は、運動群で2kg、食事群で8kg、併用群で12kgの減量がみられ、併用群が最も効果的であった。ただし、単独介入を比較すると、食事群のほうが運動群より効果が高かった(-9.8% vs.-2.5%、p<0.01)。・食事群と運動群でテストステロン濃度の増加率をみると、それぞれ3.8%、17.8%の増加(p<0.05)で、テストステロンの増加には運動療法が重要であった。・運動強度は、高強度の身体活動量(早歩きや軽いジョギング)の増加とテストステロンの増加に有意な関係性がみられた。・持久力および筋力が高いと勃起機能が高く、有酸素性運動はAMSスコア(男性更年期症状の自己評価による点数)を改善することから、有酸素性運動かつ筋力トレーニングが男性機能に有用であった。 以上の結果より、同氏は「体重減少だけをみると食事介入が影響するが、テストステロン濃度の増加には有酸素性運動が、とくに少し強度が高めの早歩きや軽いジョギングなどの運動が有用であることが示唆された。また、男性機能の維持には筋力、持久力を高く保つことが重要で、とくに軽いジョギングや自体重での筋力トレーニングなどの運動療法の実施が重要」と発表した。

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双極性障害患者の入院期間に影響を及ぼす要因

 双極性障害患者の入院期間やそれに影響を及ぼす因子を特定するため、 中国・首都医科大学のXiaoning Shi氏らは、本検討を行った。その結果、入院期間の長い双極性障害患者は、自殺リスクが高く、複雑な多剤併用が行われていた。入院期間を短縮するためには、うつ病エピソードの適切な管理と機能的リハビリテーションが有用な可能性がある。Frontiers in Psychiatry誌2023年5月19日号の報告。 双極I型障害またはII型障害患者を対象に多施設共同観察コホート研究を実施した。2013年2月~2014年6月に中国6都市、7施設より募集した外来患者520例を、継続的なサンプリングパターンを用いてフォローアップ調査を行った。本研究は、12ヵ月のレトロスペクティブ期間と9ヵ月のプロスペクティブ期間で構成された。対象患者の人口統計学的特徴および臨床的特徴を収集した。入院期間(プロスペクティブ期間の入院日数)の影響を及ぼす因子の分析には、ポアソン回帰を用い、入院期間(レトロスペクティブおよびプロスペクティブ期間)の分析には、線形回帰分析を用いた。性別、年齢、教育年数、職業的地位、在留資格、精神疾患の家族歴、薬物乱用の併存、不安障害の併存、自殺企図の回数(レトロスペクティブおよびプロスペクティブ期間での発生回数)、初回エピソード特性、双極性障害のタイプ(I型またはII型)を変数として用いた。 主な結果は以下のとおり。・ポアソン回帰分析では、入院期間と相関が認められた因子は、自殺企図の回数(発生率[IRR]:1.20、p<0.001)、抗精神病薬の使用(IRR:0.62、p=0.011)、抗うつ薬の使用(IRR:0.56、p<0.001)であった。・線形回帰分析では、うつ病エピソード期間の長期化や機能低下と関連する可能性のある双極II型障害(β:0.28、p=0.005)および失業(β:0.16、p=0.039)は、長期入院との関連が認められた。・自殺企図の回数と短期入院との間に関連傾向が認められた(β:-0.21、p=0.007)。・自殺リスクの高い患者では、治療が不十分、コンプラインアンス不良の傾向があるため、入院中に適切に評価し、治療を行う必要がある。

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