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衝撃を加えた運動が高齢者の骨密度低下を抑制

 運動や日常生活の中で骨にわずかな衝撃を与えるだけで、加齢に伴う骨密度(BMD)の低下を抑制できる可能性のあることが、ユヴァスキュラ大学(フィンランド)のTuuli Suominen氏らによる研究で示唆された。大腿骨頸部と呼ばれる股関節の重要部位に焦点を当てて運動による介入の効果を検討したこの研究の詳細は、「Bone」1月号に掲載された。 加齢に伴い運動量は減り、それとともに骨密度や骨の健全性(integrity)は低下する。加齢に伴う骨の強度の低下はある程度は避けられない現象だが、高齢になっても運動を行うことで骨の強度を維持し、その低下速度を遅らせることができる可能性はある。それを確かめるため、Suominen氏らは、座位行動の多い70歳以上の男女299人(平均年齢74±4歳、女性58%)を対象に1年間にわたる運動介入の効果を検討した研究(PASSWORD試験)のデータを用いて、運動と骨の強度との関連を検討した。 対象者は、筋力、持久力、バランス、柔軟性の改善に焦点を当てた1年間の運動プログラムに取り組んでいた。試験開始時と介入から6カ月後に、対象者が平均6.6日、1日14時間にわたって装着した活動量計での測定結果を基に、1日当たりの骨形成指数平均スコア(骨の形成につながる活動を指数化したもの)、受けた衝撃(低・中・高強度)の回数や活動の強度(座位、軽度・中強度〜強度の身体活動)を評価した。また、試験開始時と12カ月後に、DXA法(二重X線吸収法)で大腿骨頸部のBMDを測定し、大腿骨近位部の構造力学的解析により骨の断面積(CSA)と断面係数を算出した。論文の共著者である同大学のTiina Savikangas氏は、「短時間の身体活動でも骨格には大きな影響を与える可能性があるため、われわれは個々の衝撃の回数と強度の観点からも運動について調べた」と同大学のニュースリリースで説明している。 試験参加者は介入開始から6カ月時点で、測定したあらゆる活動量が増えた一方で、座位時間は減っていた。また、介入終了時には、BMDは0.4%低下していたが、CSAは維持され、断面係数はわずかに増加していた。介入開始から6カ月時点で計測した身体活動の指標のうち、骨形成指数、高強度の衝撃、中強度〜高強度の身体活動と、12カ月間でのBMDの変化との間には正の相関が認められ、身体活動の強度が高いほど、BMDの低下は抑制されることが示唆された。 こうした結果を受けてSuominen氏は、「骨密度の低下を抑える上で鍵となるのは身体活動の強度と衝撃の強さだ。例えば、ランニングや早歩きをした人での方が、普通のペースで歩いた人よりも効果がはるかに高かった」と話す。同氏は、「高強度の身体活動は、早歩きや階段の昇降などの形で日常生活の中に少しずつ取り入れることが可能だ。ジャンプのような衝撃を加えるには、実際にジャンプしなくても、まずつま先立ちになり、それからかかとを落とせばよい」と話す。そして、「70代や80代であっても、このような運動を日課に加えることは容易だ」と付け加えている。

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第182回 診療報酬改定を答申、賃上げの実現を主眼とするも医療費抑制も視野に/中医協

<先週の動き>1.診療報酬改定を答申、賃上げの実現を主眼とするも医療費抑制も視野に/中医協2.「地域包括医療病棟」を新設、病床再編で高齢者救急患者の受け皿を開設/厚労省3.医療DXを診療報酬改定でさらに推進、マイナ保険証の普及促進で患者負担増/厚労省4. 医療機関の倒産件数は高水準のまま横ばい、負債総額は過去最大を記録/帝国データバンク5.リピーター医師、透析治療せずに患者が死亡、遺族が病院に訴え/大阪6.昇圧薬の補充遅延で患者が死亡、神戸徳洲会病院の安全体制問題が再び問題に/兵庫1.診療報酬改定を答申、賃上げの実現を主眼とするも医療費抑制も視野に/中医協厚生労働省は、2月14日に中央社会保険医療協議会(中医協)の総会を開き、2024年度の診療報酬改定について答申を行った。今回の診療報酬改定は、医療従事者の賃上げを進めつつ、医療費抑制という2つの目標を達成しようとする「メリハリ」のある内容を特徴としている。とくに生活習慣病に関する管理料の適正化が注目されている。これにより医療費の国費負担の一部抑制が図られたが、全体抑制額は200億円に止まり、医療費全体の増大傾向に対する根本的な解決には至っていないとする声もある。今回の改定により、医療従事者への賃上げが実施され、とくに40歳未満の勤務医や看護職員、薬剤師らの待遇改善が図られている。これには、外来・在宅ベースアップ評価料の新設や初診料、再診料の増額などが含まれている。しかし、生活習慣病に関する報酬の適正化には、糖尿病や高血圧、脂質異常症を特定疾患療養管理料の対象から除外するなどの措置が含まれ、これによりプライマリケアを提供する開業医の収入に影響が出る可能性がある。また、介護報酬の改定では、訪問介護の基本報酬が削減される一方で、介護職員の賃上げを目的とした加算の設定が行われた。しかし、小規模事業者からは報酬減による経営の危機やサービス提供能力の低下が懸念されている。精神科訪問看護に関しても、報酬の取得条件が厳格化され、不正や過剰請求への対策が強化された。参考1)中央社会保険医療協議会(第584回) 総会(厚労省)2)「めりはり」ある診療報酬改定、武見厚労相が総括 生活習慣病の管理料など適正化(CB news)3)開業医の改革道半ば 診療報酬改定 医療費の国費負担12兆円 200億円抑制、生活習慣病が軸(日経新聞)4)訪問介護 異例の報酬削減 小規模事業者、撤退の危機(東京新聞)2.「地域包括医療病棟」を新設、病床再編で高齢者救急患者の受け皿を開設/厚労省2024年度の診療報酬改定のうち、入院診療では、高齢者救急患者への対応強化を目的とした「地域包括医療病棟入院料」の新設が注目されている。厚生労働省は、以前から急性期一般入院料1(旧7対1病床)の病床削減が進まないことを問題視しており、急性期病床の削減のため急性期一般入院料1の平均在院日数を16日以内にすることで、病床の再編を病院に促している。厚労省は、後期高齢者が増加するのに合わせて、病気の治療に加えて、早期のリハビリや栄養管理で身体機能の低下を抑え、退院支援を行う目的で1日当たり3,050点の「地域包括医療病棟」を新たに設けた。看護配置は「10対1」で、リハビリテーションや栄養管理、口腔管理を含む包括的なサービス提供が施設基準の条件。地域包括医療病棟の要件としては、平均在院日数は21日以内、在宅復帰率が8割以上としているほか、特定機能病院や急性期充実体制加算を届け出ている高度急性期病院は算定できないなど制限も設けられている。地域包括医療病棟の新設で、急性期医療の機能分化を促進し、中小病院などに少なくない影響が及ぶ可能性があり、地域医療への影響が大きくなると予想されている。今回の改定により、地域包括医療病棟が高齢者救急の受け皿として機能強化されることが期待されているが、急性期医療の再編や地域医療提供体制の整備と連携が今後の課題となる。参考1)令和6年度診療報酬改定について(厚労省)2)厚労省 早期のリハビリで退院を支援する病棟新設を後押しへ(NHK)3)24年度改定 急性期の機能分化へ「地域包括医療病棟入院料」新設 中小病院など地域医療への影響大きく(ミクスオンライン)4)地域包括医療病棟入院料を新設 10対1看護配置、急性期一般入院料からの転換が進むか(日経メディカル)5)地域包括医療病棟入院料は3,050点 リハ・栄養・口腔連携加算80点、24年度改定(CB news)3.医療DXを診療報酬改定でさらに推進、マイナ保険証の普及促進で患者負担増/厚労省2024年度の診療報酬改定では、医療従事者の賃上げを支援し、医療のデジタル化(医療DX)を推進するための複数の措置が導入された。とくに、マイナンバーカードを活用した「マイナ保険証」の利用促進が後押しされ、救急搬送時の情報確認などに活用される方針だ。しかし、このデジタル化推進は患者の負担増につながり、障害者団体からは現行の健康保険証廃止に対する懸念の声が上がっている。新たに設けられる「医療DX推進体制整備加算」により、マイナ保険証や電子処方箋の利用を促進する医療機関に対して、初診時に80円、歯科で60円、調剤で40円が加算され、患者の自己負担が増加する。また、政府は、救急搬送時にマイナ保険証を用いることで、患者かかりつけ医や服薬歴などの情報を迅速に確認し、効率的な救命活動をする計画を立てている。一方で、障害者団体は、マイナ保険証の1本化により、支援が必要な障害者が置き去りにされる恐れがあると指摘し、現行の保険証も残すべきだと訴えている。政府は、現行の健康保険証を2024年12月に原則廃止し、マイナ保険証への完全移行を計画しており、利用率の向上に努めているが、現在の利用率は4.29%と低調。今回の改定で、医療DXの推進やマイナ保険証の普及に向けた取り組みが強化されるが、患者負担の増加や障害者の利便性の問題など、新たな課題も提起されている。参考1)マイナ保険証の利用促進なども後押し 診療報酬改定 患者は負担増に(朝日新聞)2)マイナ保険証、救急搬送時に活用へ 服薬歴など確認(日経新聞)3)マイナ保険証への一本化で障害者が置き去りに…「誰のためのデジタル化か」当事者団体が国会議員に訴え(東京新聞)4.医療機関の倒産件数は高水準のまま横ばい、負債総額は過去最大を記録/帝国データバンク2023年、医療機関の倒産件数は41件で、前年と同数だったが、負債総額は253億7,200万円と過去10年で最大となったことが、帝国データバンクの調査で明らかとなった。この負債総額の増加は、大きな負債を抱えていた「八千代病院」(八千代市)などを運営する医療法人社団心和会(負債132億円)と「東京プラス歯科矯正歯科」などを運営していた医療法人社団友伸會(負債37億円)の影響が大きい。倒産した医療機関のうち、「病院」が3件、「診療所」が23件、「歯科医院」が15件で、大部分が5億円未満の負債。帝国データバンクは、2024年も医療機関の倒産が高水準で推移すると予想しており、とくに診療所では経営者の高齢化や健康問題が影響し、過剰債務などを理由に法的整理を選択するケースが増える可能性を指摘している。参考1)病院などの「医療機関」、倒産が2年連続で40件超え 今後は診療所の動向に注目(ITmedia)2)帝国データバンク 2024年 1月報(帝国データバンク)5.リピーター医師、透析治療せずに患者が死亡、遺族が病院に訴え/大阪透析治療を受けていた90歳男性が、新型コロナウイルス感染で転院したにもかかわらず、必要な治療を受けられずに死亡した事件で、遺族が病院運営法人に約5,000万円の損害賠償を求めて大阪地裁に提訴した。男性は、大阪府内のクリニックで週3回の透析治療を受けていたが、新型コロナウイルス陽性と診断された後、同系列の医誠会病院に転院した。転院後は抗ウイルス薬のみ投与され、透析治療は一切行われなかったとされている。数日後に男性は、窒息による低酸素脳症で死亡した。遺族は病院が透析治療可能であるとクリニックに返答し、クリニックが診療情報を引き継いだにもかかわらず治療が行われなかったと主張している。問題は、過去に赤穂市民病院で医療過誤を含む複数の医療事故に関与し、依願退職した後に医誠会病院へ転職した40代の男性医師が関与した可能性があり、この医師は患者の透析治療が必要であるにもかかわらず、適切な対応を怠ったとされている。遺族は、医師の初動対応の不備と病院の管理体制の欠如が死に直結したと主張し、医療法人「医誠会」に対し約5,000万円の損害賠償を求めている。この訴訟は、医療機関の責任と医師個人の過去の問題が患者の命にどのような影響を及ぼしたかという点で、病院側の安全体制の責任を問いかけている。遺族は、真実を求めるとともに、同様の悲劇が再発しないよう医療機関の体制改善を訴えている。参考1)腎不全で透析治療の男性 新型コロナ陽性で転院するも透析治療されず死亡 遺族が約5,000万円の賠償を求め病院側を提訴 大阪地裁(MBS)2)元市民病院脳外科医 転職先でも医療トラブル 透析治療せず患者死亡か(赤穂民報)6.昇圧薬の補充遅延で患者が死亡、神戸徳洲会病院の安全体制問題が再び問題に/兵庫神戸徳洲会病院(神戸市垂水区)で今年1月、心肺停止状態から回復した90代の男性患者が、昇圧薬が切れた直後に死亡していたことが判明した。報道によると、患者に投与していた昇圧薬が切れた直後、薬剤の補充が準備されておらず、必要な治療が提供されなかったため、薬が切れた直後に患者は亡くなった。病院側は「死期を早めた可能性がある」として家族に謝罪し、神戸市は医療安全体制に不備がなかったか調査を行っている。同院は、去年カテーテル治療後の患者死亡事案や適切な治療が行われず糖尿病患者が亡くなった事案が発覚しており、医療安全体制の問題で神戸市から行政指導を受けていた。今回の事案を受け、神戸市は改善命令を出す方針であり、病院は救急患者の受け入れを一時中止し、院内で原因調査と適切な対応を進めている。参考1)神戸徳洲会病院 投与の薬剤追加されず その後 患者死亡(NHK)2)薬剤の補充分なく、薬切れた直後に90歳代患者が死亡…神戸徳洲会病院「死期早めた可能性」(読売新聞)3)神戸徳洲会病院、薬剤の追加を怠り患者が死亡 警告音が鳴り、家族が訴えるも対応されず(神戸新聞)

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「進行がんだから仕方がない」は使わない ~外来通院の進行がん患者へのリハビリテーション~【Oncologyインタビュー】第45回

出演:関西医科大学 呼吸器腫瘍内科学講座 勝島 詩恵氏「進行がんだから仕方がない」。がん医療の現場で何げなく使ってしまう言葉ではないだろうか。この言葉を考え直す時期が来ているようだ。外来通院の進行がん患者へのリハビリテーション介入という新たな挑戦が始まっている。関西医科大学の勝島 詩恵氏に聞いた。進行がん患者治療の課題に立ち向かう外来通院がん患者は増加している。その反面、治療に適応するための対策は追いついていないという。外来通院ができるがん患者は、基本的に全身状態(PS)良好で身体機能が維持されているはずだが、実際は問題を抱えているケースが多い。外来通院が可能な状態であっても、進行がん患者である以上、薬物だけで治療は成立しない。患者の栄養状態、身体機能、精神面の安定があってこそ、より良いがん診療ができる。外来通院がん患者に対して、これから始まる、あるいは現在行っている治療に適合させるための介入(リハビリテーション)が必要だと考え、2020年、関西医科大学附属病院は「フレイル外来」を立ち上げた。多職種が連携した介入を実現大学病院などのハイボリュームセンターでは、連日100人を超える外来化学療法患者が受診する施設も珍しくない。そのため、主治医の診察から治療(点滴)開始まで、長い待ち時間が生じ、患者の大きな負担となっている。フレイル外来は、その待ち時間を有効利用する。患者は化学療法外来主治医の診療終了後、フレイル外来を受診する。化学療法レジメンに合わせて、月1~2回の通院が通常である。関西医科大学附属病院のフレイル外来では、腫瘍内科医(勝島氏)が診察を行い、患者の治療内容、副作用や経過などの理解を深める。それ以外にも、食欲不振や体重減少が強い患者には、栄養士への栄養指導の依頼や治療薬に関する主治医への相談を行う。介護保険申請を行っている患者や通院が困難となってきた患者には、デイケアや訪問リハビリテーションの紹介、精神的ケアや症状緩和が必要な患者には緩和ケア科と連携したサポートを行う。フレイル外来には、立ち上げからの3年間で360人の患者が紹介されている。外来の認知度と共に患者は増え、現在は月100人の患者がフレイル外来を受診する。呼吸器、消化器、乳腺などが主体であったが、最近は血液内科から造血幹細胞移植後の患者の紹介も多い。「外来の認知度が上がるにつれ、紹介が増えており、確実なニーズの増加を実感している」と勝島氏は述べる。病勢進行していなくても、半数以上が悪液質を合併していた勝島氏らは、フレイル外来を受診する進行再発肺がん患者の調査を実施した。定期的に外来通院にて化学療法を受ける肺癌患者は基本的にPS良好で、病勢もコントロールされているはずの外来患者だが、フレイル外来初診時、過半数(55.2%)が悪液質を合併していた1)。また、化学療法を受ける進行再発がん患者の悪液質は、低栄養状態、低身体活動が悪液質の臨床的特徴、もしくは、悪液質の特徴として独立した因子として抽出された。低身体活動については、10分以上続けて行う身体活動を評価する「IPAQ*」で評価できたが、従来のPSでは拾い上げられなかった1)。「医師が判断するPSは実際の活動量と乖離している可能性があるため、PSだけで判断すると危険」と勝島氏は言う。*IPAQ(International Physical Activity Questionnaire、国際標準化身体活動質問票):1週間における高強度および中等度の身体活動を行う日数および時間を質問する。治療成績向上、鍵は治療開始までの期間と悪液質の早期予防また、勝島らは、近年肺癌診療において、病期診断、病理診断に一定の時間を要し、その間に身体機能が落ちる患者がいることに着目して調査を行った。初診から治療開始までの期間が長いほど悪液質発症が高まる傾向が明らかになった。初診から治療開始までが45日以上の群では、治療開始までに悪液質発症が増加したが(初診時37%→治療開始時87%)、45日未満の群では増加しなかった(61%→61%)。悪液質の存在は化学療法の効果に悪影響を及ぼすことも示されている。悪液がない患者では、初回化学療法の病勢コントロール率(DCR)は100%、初回治療完遂率も100%であった。一方、悪液質がある患者での初回化学療法のDCRは66.7%、初回治療完遂率は58.7%と、有意差はないものの、悪液質がない患者よりも悪い傾向であった。しかし、悪液質の合併については、医療者も患者も危機意識は低い。勝島氏によれば、がんの確定診断を受けながら、治療開始までの待機期間にPSが悪化し、抗がん剤治療が受けられなくなってしまったケースも少なくないという。悪液質は決してがん終末期の病態ではなく、がん治療の早期にも現れ、抗がん剤治療に悪影響を及ぼす。迅速な診断と介入で、いかに悪液質がない状態で化学療法を実施できるかが、がん治療成功の鍵を握るといえる。これらの研究結果について勝島氏は、「多くの医療者が何となく気付いていたこと。少し全貌が明らかになった」と言う。がんリハビリテーションの質的なメリット進行再発がんリハビリテーションの真のエンドポイントは定まっていない。治療を行ったとしても最終的には病勢が進行する。そのため、体重や身体機能などの量的なエンドポイントは、いずれ達成できなくなってしまう。一方、フレイル外来通院患者の中には、病勢が進行しても受診を希望する患者も多い。そのため、進行再発がん患者へのリハビリテーションは、量的な効果だけでなく、質的な効果を持つのではないかという仮説を立てた。そして、フレイル外来通院患者に、リハビリテーションでの経験について、半構造化面接法によるインタビューを行った。その結果、がんリハビリテーションに取り組むことで、フレイル外来通院患者は「身体機能改善に対する期待感」「変化を客観的に把握できる安心感」「自分の存在意義の再確認」といったポジティブな経験をし、根治不能な進行がんとの付き合い方を見いだしていることがわかった2)。現時点でできることとはいえ、すべての施設で関西医科大学のような取り組みができるわけではない。そのような中、医療者ができることは何だろうか。まず、悪液質に対する危機意識を高めるべきだと勝島氏は強調する。また、医療者と共に患者の理解も重要だ。治療医の言葉は患者に大きな影響を与える。治療医から患者への「どれだけ動けて、痩せずに治療を受けられるか、で抗がん剤の効果も変わってくる」などの一言で、患者の理解も深まるという。多職種連携の最初の一石は医師しか投じられない。モチベーションが高い理学療法士や看護師は多いが、医師からの紹介がないと動くことはできないことも多い。勝島氏は「治療医から発信するがん悪液質診療を形作るべき」と述べる。前向き試験の取り組み前述の先行試験から、悪液質は初回治療前からでも存在し得ること、治療に悪影響を及ぼすことが明らかとなった。勝島氏らは、次の段階として前向き試験を実施し、初回治療前からの運動・栄養療法が進行再発がんにおける悪液質の発症を抑制し、がん治療に良い効果を生み出すか否かを検証する予定である。今回の試験は治療前から介入するため、少なくとも化学療法の影響を受けない。交絡因子として化学療法の影響を受けないことから、がんリハビリテーションの効果をより純粋に評価できる可能性があるという。外来がんリハビリテーションの診療報酬獲得に結び付ける現在は、患者も医療者も、治療中の体重減少や身体機能低下の重要性について認識不足で、介入も遅れがちである。実際、フレイル外来には、痩せきって身体機能が落ちてから紹介されるケースも少なくないという。早期からのリハビリテーションの重要性を医療者が認識することで、治療効果が乏しくなる前に介入できる。勝島氏は、「痩せて筋力もない患者が、化学療法という大きな剣を無理やり持たされている状況が悪液質。それに対し、早期から多職種が介入して、身体機能や栄養状態、精神面を維持してもらうことで、大きな剣をしっかり振りかざすことができる」とし、「われわれの研究によって、運動療法・栄養療法という低コストの介入が、進行がん治療に寄与することが証明できれば、最終的には外来がんリハビリテーションの診療報酬獲得に結び付くかもしれない」と述べた。画像を拡大する画像を拡大する(ケアネット 細田 雅之)参考1)Katsushima U, et al. Jpn J Clin Oncol. 2024 Jan 11. [Epub ahead of print]2)勝島 詩恵ほか. Palliative Care Research.2022;17:127-134.

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フレイル、「やせが多い」「タンパク質摂取が重要」は誤解?

 人生100年時代といわれ、90歳を迎える人の割合は女性では約50%ともされている。そのなかで、老衰が死因の第3位となっており1)、老衰の予防が重要となっている。また、要介護状態への移行の原因の約80%はフレイルであり、フレイルの予防が注目されている。 そこで、2024年1月26日(腸内フローラの日)に、青森県りんご対策協議会が「いま注目の“健康・長寿”における食と腸内細菌の役割 腸内細菌叢におけるりんごの生体調節機能に関する研究報告」と題したイベントを開催した。そのなかで、内藤 裕二氏(京都府立医科大学大学院 医学研究科 教授)が「京丹後長寿研究から見えてきたフレイルの現状~食と腸内細菌の役割~」をテーマに、日本有数の長寿地域とされる京丹後市で実施している京丹後長寿コホート研究から得られた最新知見を紹介した。フレイルの4つのリスク因子、やせではなく肥満がリスク 内藤氏はフレイルのリスク因子は、大きく分けて4つあることを紹介した。1つ目は「代謝」で、糖尿病や高血圧症、がんの既往歴、肥満などが含まれる。実際に、京丹後市のフレイルの人にはやせている人はほとんどいないとのことである。2つ目は「睡眠」で、睡眠時間ではなく睡眠の質が重要とのことだ。3つ目は「運動」で、日常的な身体活動度の低さがリスク因子になっているという。4つ目は「環境」で、これには食事、薬剤、居住地などが含まれる。このなかで、内藤氏は運動と食事の重要性を強調した。高タンパク質食はフレイルの予防にならない!? 厚生労働省が公開している「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、65歳以上の高齢者のフレイルやサルコペニアの発症予防には、少なくとも1g/kg/日以上のタンパク質摂取が望ましいとしている2)。しかし、内藤氏はこれだけでは不十分であると指摘した。高齢者の高タンパク質食は、サルコペニアの発症予防にならないどころか発症のリスクとなっているという報告もあり3)、単純にタンパク質を多く摂取すればよいわけではないことを強調した。フレイル予防に有用な栄養素とは? 内藤氏は、京丹後長寿コホート研究でフレイルと非フレイルを比較した結果を報告した(未発表データ)。3大栄養素(タンパク質、脂質、炭水化物)について検討した結果、フレイルの有無によって脂質や炭水化物の摂取量には差がなく、タンパク質についても植物性タンパク質がフレイル群でわずかに少ないのみであった。しかし、6大栄養素(3大栄養素+ミネラル、ビタミン、食物繊維)に範囲を広げて比較すると、フレイル群はカリウムやマグネシウム、ビタミンB群、食物繊維の摂取が少なかった。また、食物繊維を多く含む食品のなかで、その他野菜(非緑黄色野菜)や豆類の摂取がフレイル群で少なかったことも明らかになった。 京丹後長寿コホート研究では、食物繊維の摂取が腸内細菌叢にも影響することもわかってきた。食物繊維の摂取と酪酸産生菌として知られるEubacterium eligensの量に相関が認められたのである。Eubacterium eligensの誘導に重要な食物繊維はペクチンであり4)、内藤氏は「りんごにはペクチンが多く含まれており、フレイル群で不足していたカリウムやマグネシウムも多く含まれているので、フレイル予防に役立つのではないか」と述べた。 食物繊維について、現在の日本人の食事摂取基準2)では成人男性(18~64歳)は21g/日以上、15~64歳の女性は18g/日以上が摂取目標値とされている。しかし、最新の世界保健機関(WHO)の基準では、10歳以上の男女は天然由来の食物繊維を25g/日摂取することが推奨されているため5)、内藤氏は「日本が世界基準に遅れをとっていることを認識してほしい」と述べた。

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肩関節脱臼のリハビリテーション、理学療法は有効か?/BMJ

 外傷性肩関節前方脱臼の急性期リハビリテーションにおいて、自己管理を支援する助言のみを受けた患者と比較して、助言に加えて個々の患者の病態に合わせて調整した理学療法を行っても、6ヵ月後の肩関節機能は改善せず、合併症プロファイルは両群で同程度であることが、英国・ブリストル大学のRebecca S. Kearney氏らが実施した「ARTISAN試験」で示された。研究の詳細は、BMJ誌2024年1月17日号で報告された。英国41施設の無作為化対照比較試験 ARTISAN試験は、英国の国民保健サービス(NHS)トラストが運営する41施設で実施した実践的な無作為化対照比較試験であり、2018年11月~2022年3月に参加者を募集した(英国国立衛生研究所[NIHR]の助成を受けた)。 X線所見で初発の外傷性肩関節前方脱臼と確定し、非手術的に管理されている成人患者482例(平均年齢44.9[SD 19.6]歳、女性34%)を登録した。両肩脱臼や神経血管合併症がみられる患者、外科的治療が考慮されている患者は除外した。 全患者で、負傷した腕にスリングを装着し、自己管理のための助言(1回)を行った。その後、この助言以外の介入は行わないが、回復しない場合に自己申告で理学療法を選択するための連絡先の提供を受ける群(助言単独群、240例)、または追加介入として個々の患者の病態に合わせて調整した理学療法(1回最大30分、最長4ヵ月)を受ける群(助言+理学療法群、242例)に、無作為に割り付けた。  主要アウトカムは、割り付け日から6ヵ月後のオックスフォード肩関節不安定性スコア(Oxford shoulder instability score)(0~48点、点数が高いほど機能が良好)とした。6週、3ヵ月の時点でも有意差はない 354例(73%)がオックスフォード肩関節不安定性スコアの評価を完了した(助言単独群180例、助言+理学療法群174例)。合計96人の理学療法士が介入を行った。 6ヵ月の時点でのITT集団におけるオックスフォード肩関節不安定性スコアの平均値は、助言単独群が36.2(SD 10.7)点、助言+理学療法群は38.4(SD 9.2)点であり、両群間に有意な差を認めなかった(補正後群間差:1.5点、95%信頼区間[CI]:-0.3~3.5、p=0.11)。 6週(助言単独群23.3[SD 10.4]点vs.助言+理学療法群24.4[SD 9.9]点、補正後群間差:0.7点、95%CI:-1.0~2.4、p=0.44)および3ヵ月(30.0[SD 11.4]点vs.32.2[SD 10.4]点、1.6点、-0.5~3.6、p=0.13)の時点でも、オックスフォード肩関節不安定性スコアに関して両群間に有意差はなかった。QuickDASH、EQ-5D-5Lにも差はない 6ヵ月時のQuickDASH(disabilities of the arm, shoulder and hand[DASH]の短縮版、0~100点、点数が高いほど機能障害が重度)(助言単独群14.4[SD 17.5]点vs.助言+理学療法群12.7[SD 16.9]点、補正後群間差:0.8点、95%CI:-4.0~2.5、p=0.65)および健康関連QOL(EQ-5D-5L、-0.594~1点、点数が高いほど健康状態が良好)(0.797[SD 0.217]点vs.0.815[SD 0.183]点、0.010点、-0.026~0.047、p=0.59)も、両群間に差はみられなかった。 事前に予測した合併症のプロファイルは、以下のとおり両群間で類似しており、肩腱板断裂(助言単独群9% vs.助言+理学療法群9%、p=0.87)、圧迫骨折(3% vs.2%、p=0.26)、肩関節再脱臼(3% vs.1%、p=0.22)、凍結肩(五十肩)(1% vs.3%、p=0.34)、神経損傷(<1% vs.0%、p=1.00)の発生率は、いずれも有意差を認めなかった。 著者は、「個別に調整された理学療法プログラムは有効ではないと知ることで、臨床医と患者は、手術を行わないリハビリテーションの最良のアプローチについて、エビデンスに基づいた話し合いを行うことができるだろう。今後は、自己管理戦略の最適化に向けた研究が求められる」としている。

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第179回 コロナ第10波とインフルエンザが同時流行、警戒を呼びかける/厚労省

<先週の動き>1.コロナ第10波とインフルエンザが同時流行、警戒を呼びかける/厚労省2.診療報酬改定、医療従事者の処遇改善とともに入院基本料・初診料を引き上げへ/厚労省3.岸田首相、認知症施策推進本部で認知症対策の強化を指示/政府4.小児とAYA世代のがん患者の10年後の生存率が明らかに/国立がん研究センター5.新型コロナ後も続く少子化、2023年出生数が大幅減/厚労省6.労災認定された過労死自殺の遺族が病院に2億円超の賠償請求/兵庫1.コロナ第10波とインフルエンザが同時流行、警戒を呼びかける/厚労省厚生労働省の発表によると、新型コロナウイルスの新規感染者数が9週連続で増加していることが明らかになった。1月15日~21日の間に約5,000の定点医療機関から報告された新規感染者数は計6万268人で、1定点当たり12.23人となり、前週の8.96人から約1.36倍に増加した。入院患者数も昨年末の約2倍に増加している。都道府県別では、福島県が最多で18.99人、茨城県が18.33人、愛知県が17.33人と続いている。東京都は8.33人、大阪府は7.96人、福岡県は10.40人。新規入院患者数は3,462人で、前週から600人増加したが、集中治療室(ICU)に入院している患者数は115人で、前週より21人減少。季節性インフルエンザの新規感染者数も増加しており、1定点当たり17.72人となっている。専門家は「新型コロナはすでに冬の流行期に入っており、『第10波』入り」を指摘している。参考1)「コロナ第10波に入った」の声…インフルと同時流行(読売新聞)2)全国のコロナ感染者数、9週連続で増加 入院患者は昨年末の2倍に(朝日新聞)3)新型コロナ インフルエンザ ともに患者数増加 感染対策徹底を(NHK)2.診療報酬改定、医療従事者の処遇改善とともに入院基本料・初診料を引き上げへ/厚労省厚生労働省は、1月26日に中央社会保険医療協議会(中医協)総会を開催し、来年度の診療報酬改定で入院基本料の引き上げを決定した。今回の改定の主な目的は、40歳未満の勤務医や事務職員の賃上げを実現すること。また、医療従事者の処遇改善や日常的な感染防止対策の原資として、初診料や再診料の引き上げも含んでいる。入院基本料の見直しでは、栄養管理体制の基準の明確化、患者意思決定支援の推進、身体的拘束の最小化などが求められている。今回の改定により、国費ベースで約800億円の財源が確保され、医療行為の対価に当たる本体部分が0.88%引き上げられる。そのうち、0.61%分の財源は看護職員や病院薬剤師、コメディカルの賃上げに充てられ、2024年度に2.5%、2025年度に2.0%のベースアップが行われる。また、40歳未満の勤務医や薬局に勤務する薬剤師、事務職員らの賃上げに0.28%分程度の財源が回される予定。急性期入院医療に関しては、急性期充実体制加算や総合入院体制加算の要件が厳格化され、急性期病棟のリハビリテーション、口腔管理、栄養管理の充実に向けた新加算が評価される。同時に、DPC(診断群分類)参加基準も厳格化され、基礎係数の見直しが行われる。参考1)個別改定項目(その1)について(厚労省)2)入院基本料引き上げへ、若手勤務医らの賃上げで 初・再診料もアップ 24年度診療報酬改定(CB news)3)急性期充実・総合入院体制加算の要件厳格化、急性期病棟のリハ・口腔・栄養管理を新加算で評価、DPC参加基準厳格化-中医協総会(1)(Gem Med)4)若手勤務医や事務員等の処遇改善は「入院料や初再診料アップ」で対応、「点数増が処遇改善につながったか」の検証は?-中医協総会(2)(同)3.岸田首相、認知症施策推進本部で認知症対策の強化を指示/政府2024年1月26日、政府は認知症対策に関する国の基本計画を策定するため、「認知症施策推進本部」の初会合を開催した。岸田 文雄首相は、認知症の当事者やその家族から意見を聞き、今秋に計画を策定することを目指している。岸田首相は、認知症になり得るすべての人々が尊重され、支え合いながら共生する活力ある社会の実現を強調した。この基本計画では、認知症の人々が尊厳と希望を持って暮らせるようにするための基本理念を定めている。政府は、認知症の人々と共生できる社会環境の整備、認知症の予防、治療薬の開発などについて議論し、関連施策をまとめる予定。また、岸田首相は、認知症と共に希望を持って生きる新しい認知症観の理解促進の重要性を指摘し、高齢者の生活課題への取り組みに生かすことを強調した。参考1)岸田首相 認知症対策強化へ “政府一丸で必要な取り組みを”(NHK)2)認知症基本計画、今秋策定へ 推進本部が初会合-政府(時事通信)3)認知症の人との共生、今秋めどに基本計画策定 施策推進本部が初会合(朝日新聞)4.小児とAYA世代のがん患者の10年後の生存率が明らかに/国立がん研究センター国立がん研究センターは、2011年にがんと診断された小児(0~14歳)とAYA世代(15~39歳)の患者の10年後の生存率を初めて集計し、公表した(この結果は全国341施設の約36万例のデータを基にしている)。小児がんの生存率は比較的高く、とくに白血病の10年生存率は86.2%、脳腫瘍は71.5%で、5年生存率と比べて大きな低下はみられなかった。AYA世代では、がんの種類によって生存率に差があり、乳がんの10年生存率は83.5%、脳・脊髄腫瘍は77.8%となった。子宮頸部・子宮がんの10年生存率は87.2%で、大きく低下していないことが確認された。全体のがん患者の10年生存率は実測で46%、がんの影響を直接的に計算した生存率は53.5%だった。研究者は、「小児がん患者の長期の予後が良いことを示すデータが乏しかったが、この研究で裏付けられた」と指摘している。また、「AYA世代のがん患者には、がんの種類や年齢に応じたきめ細かいケアが必要である」と強調している。参考1)院内がん登録2022年登録例集計 公表 2022年のがん診療連携拠点病院等におけるがん診療の状況(国立研究開発法人 国立がん研究センター)2)がん診断の0~39歳 10年後の生存率を初集計 “実感”裏付け(毎日新聞)3)小児がん、10年生存70~90% 初の集計、大人より高い傾向(日経新聞)4)小児・「AYA世代」 がん患者 10年後の生存率 初公表(NHK)5.新型コロナ後も続く少子化、2023年出生数が大幅減/厚労省厚生労働省がまとめた人口動態統計速報によると、2023年1月~11月までの日本の出生数が69万6,886人に減少し、前年同期比で5.3%の減少を記録したことが明らかになった。これは2004年以降で初めて70万人を下回る数値であり、2023年通年の出生数は過去最少となる見通し。同期間の婚姻件数も前年比5.6%減の45万1,769組と減少し、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響による出会いの機会減少が一因とされる。しかし、COVID-19が感染症法上の5類に移行した後も婚姻件数の回復はみられない。一方で、死亡数は1.4%増の144万4,146人となり、自然増減はマイナス74万7,260人に達した。出生数の減少と高齢化の進行により、わが国の人口減少が進んでいる。政府は2024年度から3年間で少子化対策を強化し、出生減に歯止めをかける計画を立てている。これには児童手当や育児休業給付の拡充が含まれ、26年度までに年3.6兆円の予算が確保される予定。参考1)2023年の出生数、過去最少か 1~11月出生数69万6千人(産経新聞)2)23年1~11月までの出生数が70万人割れ(CB news)3)23年1~11月の出生数、69.6万人 前年同期比5.3%減(日経新聞)6.労災認定された過労死自殺の遺族が病院に2億円超の賠償請求/兵庫2024年1月27日、兵庫県神戸市の甲南医療センターに勤務していた26歳の医師、高島 晨伍さんが自殺した事件に関して、遺族が病院の院長らに対し、2億3,000万円余りの損害賠償を求める民事訴訟を起こすことが報道で明らかになった。高島さんは亡くなる直前まで100日間連続で勤務し、亡くなる直前の1ヵ月間の時間外労働は207時間余りだった。西宮労働基準監督署は「極度の長時間労働により精神障害を発症し自殺した」として、すでに労災認定をしている。遺族によると、高島さんの両親は運営法人「甲南会」と具 英成院長を相手取り、過重労働を知っていたにも関わらず是正措置をとらなかったため自殺したと主張している。また、この事件の発生前に他の若手医師も過酷な勤務状況を訴えていたが、病院幹部は「僕ら昔の世代の人間やから…意識が違う」と述べ、適切な対応がなされていなかったことも明らかになっている。参考1)100連勤・月200時間超の時間外労働で若手医師が自殺 病院の院長らに2億3,000万円余りの損害賠償求め来週にも提訴へ(MBS)

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つらい咳症状への対応【非専門医のための緩和ケアTips】第68回

第68回 つらい咳症状への対応肺がんや呼吸器疾患などの代表的な症状である咳。ご本人のつらさはもちろん、周りで見ているのもつらい症状です。緩和するために、どういったことができるのでしょうか?今日の質問外来の肺がん終末期患者さん、咳が最もつらい症状のようです。咳込み始めるとなかなか止まらず、眠れないときもあるそうです。一般的な咳止め薬は処方しているのですが、ほかにできることはないでしょうか?緩和ケアの専門家として、もう少し症状の和らぐ薬ができてほしいと思う症状の1つが咳です。私も時々、上気道炎などの後に咳が長引くことがありますが、本当につらいものです。日中の咳は、仕事にまったく集中できなくなってしまいますし、夜間に咳がでると眠れないですよね。慢性の呼吸器疾患や肺がんのような病態による咳の苦しさは、想像もしたくないです。また、咳の難しい点が、ご質問のように咳止め薬を処方しても症状の改善が乏しいところです。細菌性肺炎のような感染症や、心不全のような病態であれば、それぞれに合わせた治療が基本となります。一方、進行した肺がんのように治療が難しい場合は、対症療法としての薬物療法やケアが中心になります。薬物療法は、デキストロメトルファンのような鎮咳薬を用いますが、効果が十分でない場合は、悪性腫瘍が原因であればオピオイドを用いる場合も多いです。コデイン、モルヒネを中心に使っていることが多いと思います。オピオイドの適切な投与量は確立していないものの、呼吸困難に準じて投与するエキスパートが多いでしょう。薬以外の対処としては、呼吸リハビリテーションが1つの選択肢です。気道を刺激しないように呼吸をゆっくり行う練習や、咳き込んだ後の息を整える練習などが効果を発揮する場合があります。そのほか、乾性咳嗽はアメやハチミツなどの甘いものを摂取したり、吸入などで喉などが乾燥しないようにしたりします。「何かをしたらすぐ改善した」というケースはあまりないのですが、いろいろな対処法を知っておくことは重要です。患者や家族にとって、医療者が悩みながら一緒に対処を考えてくれた、ということも大切なのだと思います。私も悩みながら対応しています。難しい症状である咳、皆さんはどのようにされているでしょうか?今回のTips今回のTips咳は難しい症状の1つ。薬が効きにくいので、薬以外の対応も工夫しながら取り組みましょう。

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過去1年に転倒、骨折リスクがより高いのは男性?女性?

 転倒するとその後の骨折リスクが上昇することはよく知られている。今回、オーストラリア・Australian Catholic UniversityのLiesbeth Vandenput氏らが、日本のコホートを含む46の前向きコホートにおけるデータの国際的なメタ解析で、転倒歴とその後の骨折リスクとの関連、性別、年齢、追跡期間、骨密度との関連について評価した。その結果、男女とも骨密度にかかわらず、過去1年間の転倒歴が骨折リスクを上昇させ、また女性より男性のほうがリスクが高まることが示唆された。Osteoporosis International誌オンライン版2024年1月17日号に掲載。 本研究は、46の前向きコホートから得られた90万6,359人の男女(女性が66.9%)を対象とした。転倒歴は、43コホートでは過去1年間の転倒と定義され、残りの3コホートでは質問構成が異なっていた。転倒歴と骨折(すべての臨床的骨折、骨粗鬆症性骨折、主要骨粗鬆症性骨折、大腿骨近位部骨折)リスクとの関連は、各コホートで性別ごとにポアソン回帰モデルの拡張を用いて検討し、次いで重み付けベータ係数のランダム効果メタ解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・過去1年間の転倒は21.4%で報告された。910万2,207人年の追跡期間中に8万7,352件の臨床的骨折が発生し、うち1万9,509件は大腿骨近位部骨折であった。・転倒歴は、女性(ハザード比[HR]:1.42、95%信頼区間[CI]:1.33~1.51)と男性(HR:1.53、95%CI:1.41~1.67)のいずれにおいても、すべての臨床的骨折のリスク増加と有意に関連していた。骨粗鬆症性骨折、主要骨粗鬆症性骨折、大腿骨近位部骨折についてもHRは同程度であった。・転倒歴と骨折リスクとの関連は男女で有意に異なり、男性のほうが女性より予測値が高かった。たとえば、骨粗鬆症性骨折のHRは、男性が1.53(95%CI:1.27~1.84)、女性が1.32(95%CI:1.20~1.45)だった(交互作用のp=0.013)。・骨折リスクにおける転倒と骨密度との交互作用は認められなかった。・男女とも転倒歴が増えるごとに主要骨粗鬆症性骨折のリスクが増加した。

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口腔健康状態が誤嚥性肺炎の入院期間に影響/東京医科歯科大

 誤嚥性肺炎などでは、転帰に患者の口腔健康状態が関係することがよく知られている。それでは、その影響がさらにどのように作用するのであろうか。東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科摂食嚥下リハビリテーション学分野の山口 浩平氏らの研究グループは、誤嚥性肺炎高齢患者の入院時口腔健康状態が院内転帰に及ぼす影響を前向きコホート研究で実施し、結果を報告した。口腔健康状態の悪い患者の入院期間は長くなる可能性があるというものだった。European Geriatric Medicine誌オンライン版2024年1月12日号の報告。誤嚥性肺炎では口腔内の健康状態も重要 高齢の誤嚥性肺炎患者で、入院時の口腔衛生状態が入院中の転帰に及ぼす影響と、入院中に口腔衛生状態がどのように変化するかを調査した。 対象は、誤嚥性肺炎と診断され急性期病院に入院した65歳以上の患者であった。患者の基本的健康情報、入院期間(LOS)、口腔健康評価ツール(OHAT)、機能的口腔摂取尺度(FOIS)、肺炎重症度指数および臨床的虚弱度尺度スコアを記録した。患者をOHATスコアの中央値に基づいて2群に分け、群間変化を時間関数として解析し、LOS、退院時のFOISスコア、入院時のOHATスコアの関係を重回帰分析にて検討した。 主な結果は以下のとおり。・89例(52例が男性、平均年齢84.8±7.9歳)のうち75例が退院した。・口腔衛生状態はOHATによる初回評価後3週間にわたり毎週測定され、スコアの中央値は7点で、有意な群間差が認められた。・OHATスコアは両群とも入院期間を通じて改善した。・入院時のOHATスコアは、LOSと独立して関連していた(B=5.51、p=0.009)。 山口氏は「入院時の口腔衛生状態の不良は入院期間の延長と関連していた。高OHAT群と低OHAT群の両方でOHATスコアの改善が認められた。口腔健康状態は、誤嚥性肺炎の発症予防および治療において重要」と結論付けている。

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第193回 両親の老老介護で思い知る「地域包括ケアシステムって何?」

今回はやや私事で恐縮だが、医療・介護を考える上で見逃せないと思う事態を現在進行形で経験しているので、それについて触れてみたい。80代後半の私の両親は今も健在で、実家で暮らしている。周囲の同世代では両親ともにすでに他界しているケースも少なくない中では、無事生きていること自体がありがたい。しかし、年齢からもわかるように当然ながら完全な健康体ではない。とくに父親は軽度認知障害(MCI)持ちである。現状は物が覚えにくくなり、私や母親が言ったこともすぐ忘れるが、本人も十分自覚があり、「最近の仕事? 物忘れ。ガハハハ」と口にするほどだ。むしろ物忘れには周囲も本人もある程度慣れてきている。そして、かれこれ7~8年前くらいから歩行がかなり遅くなり、リハビリに通っている。一時は周囲が「もう歩けなくなるのでは?」と危惧するほどだったが、リハビリのおかげで持ち直した。とはいえ、やはり周囲と比べれば歩みがかなりゆっくりで、時にシルバーカーを使う。現在の歩行状況はシルバーカーなしでは約5分おき、シルバーカー利用でも約8~9分おきに休憩を取らねばならない。現在1人で出歩くのは、シルバーカーを使いながら自宅近所を散歩する時ぐらいである。ところが父親は元来賑やかな繁華街が好きな人だ。性格的に陰キャ(陰気なキャラクター)で自分から何かのアクションを起こすタイプではないのだが、何となく賑やかなところ、具体的にはガラス越しに繁華街の賑わいが見える飲食店などで食事をしたり、お茶をしたりするのが好きなのである。父親が私や姉を訪ねて東京にふらりと出てくることができた時代は、人通りの多い市中のオープンエアのカフェを利用したがるのが常だった。しかし、前述のような状況なので、現在は繁華街に出かける際には母親の付き添いが必要だ。母親も市街地でのイベントなどを検索し、土日になると父親を繁華街周辺に連れ出し、喜ぶ父親の写真をLINEで送ってくる。そんな母親が先日、珍しく「本心ではイライラして仕方がないが、我慢している」という趣旨の愚痴をこぼしてきた。何かというと、繁華街から戻る最中、父親が5分おきにベンチなどに腰を掛けて休憩を取ることに付き合うのが疲れて仕方がないということなのだ。まだ普通に歩くことができる母親にとっては、一般成人ならば徒歩15分くらいの距離の移動に1時間以上かかることはかなりのストレスだろう。ここは無視してはならぬと思い、仕事の手を止め、必死にLINEでやり取りを続けた。そうした中で母親から出てきたのが、「適当な軽量の車椅子はないものだろうかね?」という話だった。要は折り畳みで軽量の車椅子を父親と外出するときに持ち歩き、父親が休みたいと言い出した時にそれをさっと展開して父親を乗せて母親が介助し、また父親が歩きたいと言えば、その時はまた折りたたむというような使い方ができるものである。そうすれば父親の休みたいという願望と母親のストレス解消の一石二鳥になる。正直、母親が介護疲れで倒れるのは私も望まない。ということで、いつもは物ぐさで知られている自分も動き出した。偶然、身近に使わない車椅子を保有する人がいたので、まずはそれを譲ってもらったが、自走もできるかなりの重量のものだったので、今母親が求めているものとは異なった。なんせ80代半ば過ぎの老老介護で、細腕の母親が申し訳程度の折り畳みができるだけの10kg超の車椅子を扱えるわけがない。そこで年末年始に実家に戻ったついでに、地元の介護ショップを覗いてみることにした。ところがここでまず大きな壁にぶち当たった。東北地方の首都と呼ばれる街だが、インターネット検索で見つかるめぼしい介護用品ショップは10店舗程度。そのうちアクセスが良い百貨店内の店舗2ヵ所に行ってみたが、あるのはシルバーカーか自走式車椅子という左右両翼のような典型的商品のみ。うち1店舗にはかろうじて重量10kgちょうどの軽量折り畳み車椅子が展示してあった。私の感覚では十分軽いと思ったが、後日母親が1人で訪ねて触ってみたところ、本人にとってはまだ重いとのことだった。これよりも約2kg軽いタイプは、カタログ上では見せられたが、あくまで「購入前提の取り寄せになる」という。車椅子の場合、使用する人、介助者双方にとっての使いやすさのバランスが重要であり、実機に触れることなしに購入は考えられない。そこでやむなく私がその車椅子の発売元に連絡を取ったところ、私の地元の県にある2ヵ所の大手介護ショップを挙げ、そこからの依頼があればデモ機を貸し出せるとのこと。一瞬、光明が見えた感じだったが、教えられたショップはともに郊外型ショッピングセンターのように、鉄道駅から徒歩15分以上とアクセスが悪い。父親はもともと車の運転が好きな人だったが、今のような徴候が見え始めた5年ほど前に運転免許証を返納。母親と私は元来ペーパードライバーである。「ショップ最寄り駅からタクシーを使えば?」という声も聞こえてきそうだが、それは首都圏などの感覚。この2件のショップの最寄り駅は、駅前に客待ちタクシーがいない駅なのだ。かといって父親の歩みに合わせて、真冬に老夫婦が1時間以上かけてショップまで歩くのは明らかに無理がある。繁華街と違って休憩できるベンチも途中にはないだろう。結局、母親は車が出せそうな知人に連絡を取った。今回、改めて痛感させられたのが、首都圏とその他の地方都市の差。そして介護サービス・商品のグラデーションの少なさである。父親のような、健康と病気の合間のような状態の人に使いやすいサービス、老老介護を前提にしたサービスはまだまだ少ない。もちろん今は社会全体が超高齢化社会というマインドに移行していく過渡期なのだから、そうなのだろう。しかし、長らく「重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される地域包括ケアシステム」というフレーズを耳にタコができるほど聞かされてきた身からすると、今回の経験で改めて「地域包括ケアシステムって何?」と思ってしまうのだ。

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第196回 コロナ後遺症の原因と思しきミトコンドリア異常を同定

コロナ後遺症の原因と思しきミトコンドリア異常を同定新型コロナウイルス感染症(COVID-19)罹患後症状(long COVID)の1つである疲労の根本原因と思しきミトコンドリア機能低下が被験者46例の試験で示唆されました1)。試験にはlong COVID患者25例と新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染したものの完全に回復した21例(回復例)が参加しました。心身を急に働かせた後の疲労や痛みの悪化はlong COVIDを特徴づける症状の1つである労作後倦怠感(post-exertional malaise:PEM)と関連します。試験ではPEMを誘発する15分間の自転車こぎ運動を被験者にあえて課しました。long COVID患者は自転車こぎの後に症状の悪化を呈し、筋肉組織を調べたところミトコンドリア異常が認められました。long COVID患者のミトコンドリアは回復例に比べて働きが悪く、エネルギー生成が劣りました。一方、long COVID患者の心臓や肺の機能に異常はなく、それらの異常によって長患いが生じているわけではなさそうです。また、SARS-CoV-2が居続けることがlong COVIDの原因の1つと想定されていますが、今回の研究で調べた筋肉組織にSARS-CoV-2のはびこりは見られませんでした。SARS-CoV-2に特有のヌクレオカプシドタンパク質の筋肉組織での検出はlong COVID患者と回復例で似たり寄ったりで、SARS-CoV-2残存もlong COVIDのPEMの発現や運動能力の原因ではなさそうです。ということはSARS-CoV-2残存以外の何かがlong COVID患者のミトコンドリア異常に寄与しているようであり、そのような異常をもたらす分子経路を今後調べる必要があります。long COVID患者のミトコンドリア異常はほかの研究でも示されています。昨年9月に報告されたlong COVID患者11例の検討結果では今回の報告と同様にミトコンドリア機能の指標の低下が認められました2)。また、ミトコンドリアの量や新生の指標の低下も観察されています。今回の試験の被験者は少なく、別の集団でも同じ結果になるかどうかを調べる必要があります。とはいえlong COVID患者の疲労はれっきとした生理的要因に基づくことはどうやら確からしく、生理作用に基づく適切な治療の研究がいまや可能になったと今回の研究の著者は言っています3)。long COVID患者の運動は許容範囲に抑えるべき自転車こぎ運動をしたlong COVID被験者が疲労の悪化や認知症状などのPEM症状を被ったことが示すように、long COVID患者の運動は有益とは限りません。ウォーキングなどで体調を維持することは好ましいですが、運動のしすぎで病状の悪化を招いては元も子もありません。そうならないように患者は許容範囲の運動量を各自あらかじめ設定し、病状を悪化させない程度の軽い運動を心がけるとよいようです3)。参考1)Appelman B, et al. Nat Commun. 2024;15:17. [Epub ahead of print]2)Colosio M, et al. J Appl Physiol(1985). 2023;135:902-917. 3)Tiredness experienced by Long-COVID patients has a physical cause / Eurekalert

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余韻が欲しかった!【Dr. 中島の 新・徒然草】(507)

五百七の段 余韻が欲しかった!前々回、プロ野球の阪神タイガースの勝ち負けと体調が連動している患者さんの話をしました。先日、その患者さんが脳外科外来にお見えになったので、早速、体調について尋ねてみたわけです。タイガースの優勝で絶好調ではないかと思って。ところが意外なことに……患者「いやあ、最悪ですわ」中島「なんでですか。タイガースが優勝したんだから絶好調でしょう」患者「あっさり勝ってしまいましたからね」そんなにあっさり勝ったかな?調べてみると、2023年の日本シリーズはオリックス・バファローズに対して4勝3敗でした。到底「あっさり」ではありません。そうしてみると、この患者さんの言う「あっさり」はペナントレースの話でしょうか?確かに阪神タイガースは、2位の広島カープに対して11.5ゲーム差の圧勝。日本シリーズ出場を決めるクライマックスシリーズのファイナルステージでも、広島カープに対して4勝0敗のストレート勝ちなので、「あっさり」と言ってもいいのかもしれません。患者「日本シリーズでタイガースが優勝してから2日間くらいは調子良かったんですけどね」中島「ほら、やっぱり絶好調だったじゃないですか!」患者「その後に余韻がありませんでした」中島「それ、贅沢過ぎますよ」この患者さんによれば、もっとハラハラしたかったそうです。中島「御堂筋のパレードも、午前中のオリックスよりも午後のタイガースのほうが盛り上がったみたいですね」患者「残念なことに嫁はんの七回忌の法要があって、パレードを見に行けなかったんです」そりゃあ法要のほうが優先でしょ、普通は。中島「オリックスのほうは何回もリーグ優勝しているんで、ファンの方も慣れてしまって盛り上がりに欠けたのかも」患者「あんなのはね、たまたまこの3年間勝っているだけで大したことないんですよ」それ、無茶苦茶や!パ・リーグで3年連続優勝して、昨年は日本一にもなっているオリックスに対して失礼極まりない発言。タイガースの日本一は38年ぶり、リーグ優勝に限っても前回は18年前です。中島「そんな強気なことを言っていいんですか。タイガースの次の優勝は15年先か、ひょっとしたら20年先じゃないですか?」患者「そうなんですよ。次はもう生きていないと思います(泣)」この患者さん、もう突っ込みどころが多過ぎます。私自身、プロ野球はとくにどこのファンというわけではありません。でも、患者さんとの共通の話題を持つという意味で、タイガースの動向には気を付けておいたほうがよさそうですね。最後に1句優勝の 余韻が欲しい タイガース

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医師が医師に薦める、今年買ってよかったモノ【CareNet.com会員アンケート結果発表】

歴史的な物価上昇が続いた2023年。こんなときだからこそ、良い商品にお金を使っていきたいものではないでしょうか。CareNet.comの会員医師1,000人に、「今年買ってよかったモノ」をお聞きしました。先生方のおススメコメントとともにご紹介します。1.掃除機、洗濯機、トースターなど家電のおススメは?【家電部門】2.パソコンやスマホ、イヤホンなど周辺機器のおススメは?【PC&ガジェット部門】3.電気自動車?ハイブリット車?それとも…?【自動車部門】4.寝具、キッチン用品など、さまざまなおススメ商品【その他】5.番外編:サブスクや宅配サービスのおススメ1.掃除機、洗濯機、トースターなど家電のおススメは?【家電部門】[掃除機]ルンバ「j9+はゴミの収集も自動(消化器外科、30代)」「勝手に掃除してくれてゴミも収集してくれて、時短になる(内科、60代)」「すごく性能が良く、いつもベッドの下まできれいになっている(消化器外科、30代)」ダイソン「あまり汚れてないと思ったところでもかなり埃が吸えている(内科、30代)」「モップがけもできて大変良い(消化器内科、60代)」「吸引力が違う(精神科、30代)」シャーク「ハンディクリーナー:ごみ捨てが簡単で細かいところまで掃除が行いやすい(整形外科、40代)」「スティック型掃除機:コードレスで置場所もとらない(その他、50代)」その他メーカー「シャープ コードレス掃除機(最上位機種):ダイソンを使っていたが、シャープは音も静かで軽くて、吸引力も変わらなかった(心臓血管外科、50代)」「パナソニック ルーロ:スマホから操作できる(消化器内科、30代)」「エコバックス DEEBOT T20 OMNI:毎日帰るときれいな床が保たれていて最高(神経内科、30代)」[ドラム式洗濯乾燥機/乾燥機]「パナソニック:仕上がりがフワフワと口コミで見て購入したが本当だった。乾燥機つき洗濯機は乾燥がしっかりできるかが問題だが、満足できるレベル(内科、40代)」「東芝:圧倒的に生活が楽になった(臨床研修医、20代)」「アクア:コスパが良い(内科、40代)」「リンナイ 乾太くん:ガス式乾燥機は時短!(整形外科、40代)」[空気清浄機]「Airdog mini portable:車内の換気がすばらしかった(その他、50代)」「シャープ 加湿空気清浄機プラズマクラスター:今年ぜんそくにかかったが空気清浄機で改善した気がする(脳神経外科、30代)」[調理家電]トースター「アラジン:表面がカリッとしてめちゃくちゃ美味しく温まる(耳鼻咽喉科、40代)/立ち上がりが早い(呼吸器内科、60代)」「バルミューダ:パンがおいしく焼ける(血液内科、30代)」オーブンレンジ「バルミューダ:日々楽しい(心臓血管外科、50代)」「パナソニックビストロ:賢すぎる(臨床研修医、20代)」その他「Toffy ホットサンドメーカー:簡単においしいホットサンドが作れる(内科、60代)」「ソーダストリーム:家で気軽に炭酸が飲める(内科、20代)」「デロンギ コーヒーメーカー:おいしい(放射線科、30代)/エスプレッソメーカー:自宅で手軽にカフェラテが飲め、買ってよかった(小児科、30代)」「シャープ ヘルシオホットクック:発酵食品から煮物、煮込み料理まで料理の幅が広がる(皮膚科、40代)」「パナソニック ホームベーカリーSDMDX4:自宅でおいしいパンが焼ける(産婦人科、30代)」[その他]「ソニー 有機ELテレビ(BRAVIA):画像がきれい(泌尿器科、50代)」「パナソニック15V型ハイビジョンポータブル液晶テレビ(プライベート・ビエラ):家じゅう持ち歩けて便利(呼吸器内科、50代)」「ブラウン 電動歯ブラシOral-B:強力に汚れを落としてくれる(内科、40代)」「フィリップス 電動歯ブラシ:時短になる(小児科、30代)」「パナソニック ヘアドライヤーナノケアEH-NA0J:コンパクトなのに速乾・大風量で、熱くなり過ぎず、潤いを保った毛質をkeepできるすぐれもの(脳神経外科、50代)」2.パソコンやスマホ、イヤホンなど周辺機器のおススメは?【PC&ガジェット部門】[パソコン]「MacBook Air:見た目がおしゃれで使い心地が良い(内科、50代)」「MacBook Pro:早い(消化器外科、40代)/おしゃれで高機能(精神科、40代)」「Mac mini:小型で性能が良く、価格も適切(血液内科、70代以上)」「マイクロソフト Surface Go 3:軽くて持ち運びしやすい。スライド作りにもweb講演聞くのにもネット見るのにも、wifi環境があれば使えてとても便利(リハビリテーション科、50代)」「パナソニック Let's note:壊れにくく優秀(小児科、60代)」「NEC LavieA23:Web会議に使用しやすいデスクトップを購入。オールインワン型で非常にコンパクトであり、かなりハイスペック(腎臓内科、40代)」「dynabook:毎日使用するものは高くても最新のものを買うと満足度がとても高い(外科、30代)」[スマートフォン]「iPhone15:写真がきれい(糖尿病・代謝・内分泌内科、30代)/快適(消化器内科、50代)」「iPhone15pro:カメラ、操作性が格段に向上(脳神経外科、60代)/散々な評判に反して、熱くならないし、電池持ちもよいし、ProMotionテクノロジーも想像以上に良い(放射線科、40代)/写真が誰でも超きれいにとれる(内科、60代)」「iPhone15ProMAX:カメラの5倍ズームで写真を撮る楽しみが倍増する(麻酔科、30代)」「iPhone SE3:コスパがよい(消化器内科、40代)」「Xperia:7年ぶりに機種変更したが、スピードも使い勝手も断然良い(精神科、50代」[タブレット]「iPad mini 6:携帯性と性能が良い(消化器内科、60代)」「iPad Pro:使い勝手がよく、作業がはかどる。モチベーションも上がる(小児科、30代)」「Amazon Fire:セールで買ったから安かったし、使い勝手も良い(整形外科、40代)」「Androidのタブレット:ほとんどの作業はこれですんでしまうので、最近Windowsはいらないかなと思うようになった(外科、50代)」[イヤホン・ヘッドホン]「AirPods Pro(第2世代):低音の出がすごい(眼科、70代以上)」「OpenComm骨伝導イヤホン:骨伝導なので耳が痛くならず、周囲の環境にも注意を払える(放射線科、30代)」「オーディオテクニカ 骨伝導イヤホンATHCC500BT:待合室のような静かな環境で聴くのに最適(その他、50代)」「Anker Bluetooth5.0ワイヤレスヘッドホンSoundcoreLifeQ20+:性能が良かった(神経内科、50代)」[その他]「Apple Watch:体を動かすこと、睡眠を取ることを意識するようになった(眼科、50代)/スマホからの離脱ができる(腎臓内科、20代)/生活が便利になった(内科、20代)」「Google Chromecast:テレビでのプレゼンに便利(精神科、40代)」「Amazon Alexa:声だけでライトの点灯消灯、テレビ・エアコン・扇風機のオンオフ、カーテンの開け閉めまでらくちんになった。リモコンがほとんど不要になりサイドテーブルが広く使えるようになった(放射線科、60代)」「GERCEO モバイルバッテリー(GERCEOHP8):複数の充電方法に対応しており、日常でも災害発生時でも役立つ(麻酔科、40代)」「エレコム パッド型iPhone充電器:iPhoneにわざわざケーブルを刺す必要がなく非常に重宝(整形外科、30代)」「EXARM ZETA モニターライト:買ってから目が疲れにくくなった(小児科、40代)」「ロジクールマウス:一度使うとやめられない(放射線科、40代)」「おもいでばこ:写真や動画の保管、整理に非常に便利。ふるさと納税の商品にある(膠原病・リウマチ科、30代)」「RayCue DisplayPortHDMI変換アダプタ:PCからモニタへ接続するDsubケーブルがごつくて邪魔でネジ止めが面倒。PCのモニタ出力からHDMIに変換して通常のHDMIケーブルで自在に接続できる(整形外科、70代以上)」3.電気自動車?ハイブリット車?それとも…?【自動車部門】[トヨタ]「シエンタ:多人数で乗ることができて燃費が良い(消化器外科、60代)」「ヤリス クロス:比較的安価で安全装備が充実(糖尿病・代謝・内分泌内科、60代)」「ノア:子連れには最適なファミリーカー(麻酔科、30代)」「プリウスの新車:安全装備が充実(消化器外科、60代)」[日産]「アリア:加速や走行性、静寂性が素晴らしい(内科、60代)」「サクラ:通勤の足に最高です(神経内科、50代)」「セレナ:運転が楽(糖尿病・代謝・内分泌内科、30代)」[他メーカー]「スバル レガシィアウトバック:いい車です(整形外科、50代)/とてもいい車です(内科、50代)」「スバル XV:オートクルーズ機能がとても良い。運転の負担が軽減された(臨床研修医、40代)」「マツダ CX8:6~7人乗りのSUV。国産車SUVの中で唯一まともに座れる3列目。インテリアの質感は国産SUVの中でも有数の出来。希少なディーゼルエンジンがある(循環器内科、40代)」「ホンダ フィット:エコカーでしっかりしていて満足(産婦人科、50代)」「メルセデス・ベンツ 新型Cセダン:ISGで電動化された(内科、60代)」「BMW X3:燃費良く静粛(小児科、60代)」「TESLA ModelX:多少値は張るものの優れた性能と唯一性がある(形成外科、30代)」「フォルクスワーゲン Golf GTI:加速の良さ、日常の走行の安定(脳神経外科、50代)」「ポルシェ 911:楽しい(糖尿病・代謝・内分泌内科、50代)」「ロータス エミーラ:ロータス最後の純ガソリンスポーツカー(脳神経外科、50代)」4.寝具、キッチン用品など、さまざまなおススメ商品【その他】[寝具など]「エマ・スリープ マットレス:睡眠の質が格段に上がった(糖尿病・代謝・内分泌内科、20代)」「コアラマットレス:寝心地がよい(内科、40代)」「トゥルースリーパー プレミアベッドマットレス:A社ポイントで入手したが、畳でも布団より快適(内科、60代)」「DryCool 高密凸凹ウレタンマットレス:反発性強いマットで、睡眠の質が上がった(糖尿病・代謝・内分泌内科、30代)」「西川 マットレス:大谷翔平も選んだ寝心地の良さ(循環器内科、40代)」「西川 オーダー枕:肩こりが解消され、毎晩眠ることが楽しみになった(精神科、30代)」「シルクの枕カバー:当直中も枕カバーを付け替えるだけで良い睡眠になる(内科、20代)」「リライブシャツ:途中で目が覚めることなく眠れる(皮膚科、30代)」[その他]「レンジメート:干物もギョーザもステーキも嘘みたいにうまくできる。片付けも楽。忙しい先生方にはうってつけと思う(整形外科、50代)」「ルピシア 茶こしマグモンポット:日々忙しい中でもおいしい紅茶を手軽に味わえる時間が今の癒し。食洗機も使える(精神科、20代)」「タイガー 真空断熱炭酸ボトル(MKB-T048):炭酸、食洗器対応ながらシンプルな構造で、炭酸以外の普段使いにも良い(整形外科、50代)」「松徳硝子 うすはりタンブラー:飲み物が美味しく飲める(皮膚科、20代)」「SHINfilter ステンレスコーヒーフィルター:コーヒーの味の変化に驚かされる(小児科、40代)」「ロールシュライファー 包丁研ぎ:自炊する必要に迫られた時の相棒(ナイフ)の手入れに最適!(総合診療科、60代)」「パナソニック LEDネックライト:薄暗いところでの書類の記載等、細かい作業の際手元だけを照らしてくれるため、周囲に影響が少なく非常に便利(総合診療科、50代)」「SUWADA クラシックつめ切り:ニッパー式だが、切れ味が全然違う(精神科、50代)」「リファ ファインバブル:よく落ちる(内科、50代)」5.番外編:サブスクや宅配サービスのおススメ「Kindle Unlimited:好きな漫画がかなり読める、当直の暇つぶしになる(耳鼻咽喉科、40代)」「nosh 冷凍宅配おかず:冷凍食品だが、バランスがいい(臨床研修医、20代)/手軽においしいご飯が食べられる(臨床研修医、20代)」「ワタミの宅食 あっとごはん:子育てを機にはじめたが、とても便利で楽!(眼科、30代)」アンケート概要アンケート名『2023年を総まとめ!今年の漢字と他の医師にも薦めたい今年の購入品をお聞かせください』実施日   2023年11月8日~15日調査方法  インターネット対象    CareNet.com医師会員有効回答数 1,029件

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1日8,000歩!【Dr. 中島の 新・徒然草】(506)

五百六の段 1日8,000歩!急に寒くなりましたね。外をウォーキングしよう、と思っても寒過ぎて歩けたものではありません。それだけでなく、夜は暗いし危ないし。イヤホンでYouTubeなんか聴きながら歩いていると、後ろから自転車が来るのに気付かなかったりします。雨なんか降っていたら、わざわざ傘をさしてまで歩く人はいないでしょう。ところが何と、画期的な方法を思い付きました。家の中を歩くのです。「家の中を歩くって、中島先生。どんな豪邸に住んでいるんですか?」と言われそうですが、普通のマンションですよ、ウチは。ただ、リビングと台所と自分の部屋を1周すると、ちょうど100歩くらいになるわけです。同じ方向に歩くと目が回るので、右回りと左回りを足して100歩というわけですけどね。で、目標を1日8,000歩とかにしておき、帰宅した時に5,000歩程度だと、後の3,000歩分を歩きます。家の中を歩くメリットは沢山あります。いつでも開始でき、いつでも終了できる着替える必要なく、そのまま歩くことが可能後ろから急に自転車が来ることもない寒くないし暑くない雨が降っても平気イヤホンでYouTubeを聴きながらでもOK「家の中を3,000歩も歩けるのか?」と思う方もおられることと思います。が、やってみたらわかりますが、案外、簡単に歩けます。だいたい1,000歩で10分ほどかかるので、3,000歩なら30分。これを2分割して20分+休憩+10分くらいにすればあっさり達成できます。デメリットがあるとすれば、歩いているところを家人に目撃されることくらいでしょうか。女房にはすっかり「ヘンな人」と思われているようですが、そのくらい思われてこそ物事は成就するってもんです。あと、YouTubeで英語ニュースを聴くとか医学系のお勉強チャンネルを聴くとかすれば、歩いている時間も無駄になりません。まさしく一石二鳥ですね。もちろん歩きながら静かに1日を振り返ってみるのも良いかと思います。患者さんには「運動しましょう、歩きましょう」と言いながら、自らはまったく実行できていない先生方。自宅ウォーキングは運動不足対策に効果絶大!よかったらお試しください。最後に1句真冬でも 室内歩けば 健康だ

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心臓リハビリテーションでCABG後の死亡リスク低下

 冠動脈バイパス手術(CABG)後の患者では、心臓リハビリテーション(CR)の利用により、退院後2年以内の死亡リスクが低下するという研究結果が「Annals of Thoracic Surgery」に6月29日掲載された。 CRは冠動脈血行再建術を受けた患者に対し、転帰改善を目的として外来で提供される監督下の運動リハビリテーションプログラムである。しかし、CABG後の患者に対するCRの実臨床での長期転帰データは十分には得られていない。そこで、米ミシガン大学アナーバー校のTyler M. Bauer氏らは、米ミシガン州におけるメディケア出来高払い請求登録と診療データを紐付け、2015年1月1日~2019年9月30日に同州内の33施設において単独CABGを受けて生存退院した患者を特定。退院後1年以内にCRを利用した患者と利用しなかった患者の間で、退院後2年以内の死亡リスクが異なるか否かを比較した。また、CRの利用セッション数のカテゴリによる違いも検討した。 解析では、まず、患者因子と病院ごとのランダム切片を調整した混合効果ロジスティック回帰により、CR利用に影響する要因を定量化した。次に、CR利用群と非利用群、および利用セッション数のカテゴリ間で、2年死亡率を算出。未調整、多変量調整、逆確率治療重み付け(IPTW)ロジスティック回帰モデルにより、CR利用と関連することが判明したベースライン時の患者因子を調整し、死亡率の変化を推定した。 解析の結果、CABGを受けた対象患者6,412人(平均71.16歳、女性28.85%)のうち、3,848人(60.0%)がCRを利用していた。CR利用群の利用セッション数は平均23.2回であり、米国心臓協会(AHA)などが推奨する36回のセッションを完了した患者は770人(12.0%)に留まった。CRへの紹介率は病院により48.9%から100%までの幅があったが、中央値は98.0%だった。実際の利用率にも病院により26.8%から80.5%までの幅があった。退院後のCR利用を予測する患者因子として、高齢、待機手術、自宅への退院(長期療養施設と比較)、入院期間の短さなどが挙げられた。 CR利用群では非利用群と比較して、未調整の2年死亡率が有意に低かった(3.7%対13.1%、9.4%減、95%信頼区間10.8~7.9、P<0.001)。IPTW解析をしても、同様の効果が認められた(4.8%減、95%信頼区間6.0~3.5、P<0.001)。さらにCR利用セッション数別に見ると、0回の患者では2年死亡率が13.1%だったのに対し、1~11回の患者では5.2%となり、12~23回で3.9%、24~35回で3.3%、全36回完了で2.7%となった。 Bauer氏は、「今回のデータから、CRの利用が2年死亡率の低下に関連することが示唆された。今後の質向上の取り組みでは、CRへの登録と完了が不十分となる根本原因を特定し、それに対処することを検討すべきである」と結論付けている。

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事例036 在宅半固形栄養経管栄養法指導管理料/在宅経管栄養法用栄養管セット加算の査定【斬らレセプト シーズン3】

解説在宅にて療養中の患者に行っていた「C105-3 在宅半固形栄養経管栄養法指導管理料(以下「同管理料」)」と「C162 在宅経管栄養法用栄養管セット加算(以下「同加算」)」が、D事由(告示・通知の算定要件に合致していないと認められるもの)を適用されて査定になりました。「同管理料」には、「最初に算定した日から起算して1年を限度」と算定期間が定められています。初回算定日2022年5月11日に照らし合わせると、「同管理料」を算定した5月17日は1年を少し超えるために査定となったものと推測できます。レセプト担当者に確認したところ、「指導料関連は暦月で1回が基本とされているために同月中であれば算定可能と考えて、レセプトチェックシステムのエラーを外して請求した」とのことでした。算定期限を表す文言に「○○から」が含まれている場合には、○○が算定起算日となり、○○の前日までが算定期限、事例では、5月10日が算定期限になることを伝えました。算定期限後は使用する薬剤により「C105 在宅成分栄養経管栄養法指導管理料」、もしくは「C109 在宅寝たきり患者処置指導管理料」の算定が可能であることも伝えました。コンピュータによる審査ではバッサリと査定となります。算定可能な指導管理料への復活査定はありませんでした。なお、「同加算」も「同管理料」の査定に伴い算定要件を満たさなくなるために芋づる式に査定となったものです。あらかじめ算定期限を超えた場合に、何を算定するべきかを検討しておけば良かったと悔やまれる事例となりました。

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回復期リハビリテーション病棟でのせん妄に対する向精神薬の減量

 川崎こころ病院の植松 拓也氏らは、同施設の回復期リハビリテーション病棟に転院してくる患者さんの多くが、急性期病棟入院時にせん妄に対する向精神薬処方が行われている現状を踏まえ、精神科医、薬剤師、リハビリテーション医が協力し、向精神薬減量への取り組みを行った。その結果から、急性期病棟で処方されている向精神薬の種類および用量を回復期リハビリテーション病棟で減量できる可能性があることを報告した。Neuropsychopharmacology Reports誌オンライン版2023年10月26日号の報告。 対象は、2021年4月~2022年3月に川崎こころ病院の回復期リハビリテーション病棟を退院した患者88例。診療記録より基本的情報および向精神薬処方状況を抽出した。 主な結果は以下のとおり。・入院時に向精神薬が処方されていた患者は55例(62.5%)であり、処方薬は2種類(中央値)であった。・退院時に向精神薬が処方されていた患者は41例、処方薬は1種類(中央値)へと有意な減少が認められた(p<0.05)。・入院時と比較した退院時の向精神薬処方量は、レンボレキサントは有意に高かったものの、抗精神病薬、ベンゾジアゼピン/非ベンゾジアゼピン系睡眠薬、抗うつ薬、スボレキサント、ラメルテオン、バルプロ酸ナトリウムの処方は有意に低下した(p<0.05)。 著者らは、「この研究では患者数が限られており、患者の特性の違いによる選択バイアスが否定できないため、さらなる検討が必要である」としている。

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