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膝前十字靱帯断裂の急性期は、まずリハビリを

米国では毎年20万件以上の膝前十字靱帯(ACL)再建手術が行われ、直接医療費は約30億ドルに上ると推計されるが、ACL再建が他の治療に比べて優れているとのエビデンスは、質の高い無作為化試験によっても明らかにはなっていない。ACL断裂は、若年者の活動性に重大な損傷をもたらすため、特にスポーツ愛好者・選手は、スポーツ再開を望み断裂修復こそが最良であるとみなし手術を受けるが、治療の中心はあくまで保存療法(体系的リハビリテーション)である。ただし現状では必ずしもリハビリは行われていない。そこで、スウェーデンのランド大学臨床科学整形学部門のRichard B. Frobell氏らは、ACL断裂の至適な治療戦略に関する検討を行った。NEJM誌2010年7月22日号掲載より。リハビリ+早期ACL再建 vs.リハビリ+必要に応じたACL再建Frobell氏らが検討した治療戦略は、体系的リハビリテーション+早期ACL再建(早期再建術群)と、体系的リハビリテーション+必要に応じて行うACL再建(待機的再建術群)の2つで、無作為化試験にて行われた。対象は急性期のACL断裂を有した活動的な若年者121例。主要アウトカムは、ベースラインから2年時点までの、KOOS(Knee Injury and Osteoarthritis Outcome Score)の、4つのサブスケール(疼痛、症状、スポーツ・レクリエーション時の機能、膝に関係するQOL)の平均スコア(0~100;点が高いほど良好)の変化とした。副次アウトカムには、KOOSのサブスケール5つすべて(前述+ADL機能)、SF-36健康調査票の結果、Tegner Activity Scaleスコアを含んだ。2年時の主要アウトカムの差は0.2ポイント早期再建術群に割り付けられた被験者62例のうち、1例は手術を受けなかった。一方、待機的再建術群に割り付けられた被験者59例は、手術を受けたのは23例で、36例はリハビリテーションのみで手術は必要としなかった。KOOS(4)の平均スコアの変化は、2年時点で、早期再建術群が39.2ポイント、待機的再建術群が39.4ポイントで、両群の絶対差は0.2ポイント(95%信頼区間:-6.5~6.8、P=0.96)だった。副次アウトカムについても、両群治療戦略間に有意な違いは認められなかった。有害事象は両群で同等に認められた。実際に行われた治療に基づき分析した結果も同様だった。これらからFrobell氏は、「ACL断裂を有した活動的な若年者では、リハビリ+早期ACL再建術の治療戦略が、リハビリ+必要に応じたACL再建術の治療戦略と比べ、優れているとは認められなかった。また後者の治療戦略を取ることで、再建手術がかなり減った」と結論している。(医療ライター:武藤まき)

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足首捻挫時は、安静よりも運動療法

4年に一度のサッカーの祭典W杯が間もなく始まる。そのサッカー選手でも頻度が高い、足首捻挫の治療について、受傷後は安静、アイシング、加圧、固定をするよりも、すぐに運動療法を始めた方が、短期間で機能が快復することが報告された。イギリス・北アイルランドのUlster大学健康科学校健康・リハビリテーション科学研究所のChris M Bleakley氏らが、無作為化試験を行い明らかにした。BMJ誌2010年5月22日号(オンライン版2010年5月10日号)掲載より。101例の急性足首捻挫患者を無作為化し16週間追跡Bleakley氏らは、2007年7月~2008年8月に大学病院の救急外来もしくはスポーツ外傷クリニックを受診した、急性(受傷後7日未満)足首関節捻挫グレード1、2の101例の患者を対象に、アウトカムの評価者盲検無作為化試験を行った。被験者は、すぐに運動療法の介入を受ける群(運動群、50例、平均25.3歳)か、標準的ケア(安静、アイシング、加圧、固定)の介入を受ける群(標準群、51例、26.6歳)に無作為に割り付けられた。主要評価項目は、下肢機能スケールを用いた足首関節機能の自覚状態。副次評価項目は、基線および傷害後1、2、3、4週時点の、安静時と運動時の疼痛、腫脹の程度、身体活動度だった。足首関節機能、再受傷率の評価は、16週時点で行われた。治療効果は一貫して運動群に治療効果は一貫して、運動群の方が認められた(P=0.0077)。1週時点での両群間の治療効果の差は5.28(98.75%信頼区間:0.31~10.26、P=0.008)、2週時点では4.92(同:0.27~9.57、P=0.0083)だった。活動レベルは、いずれの測定時点でも運動群で有意に高かった。歩行時間は運動群1.6時間に対し、標準群は1.2時間、歩数は同7,886歩対5,621歩、軽い運動時間は76分対53分。安静時・運動時疼痛および腫脹について、群間差は認められなかった。再受傷率は4%だった(両群とも2例)。

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外傷性脳障害後の1年間、患者の半分以上が大うつ病性障害を発症

外傷性脳障害を負った人の半数以上が、その後1年間に大うつ病性障害(MDD)を発症していることがわかった。なかでも、障害を負った時点やそれ以前にMDD歴のある人が、障害後の発症リスクが高かった。米国ワシントン大学リハビリテーション部門のCharles H. Bombardier氏らが、外傷性脳障害を負った500人超について調べ明らかにしたもので、JAMA誌2010年5月19日号で発表した。53.1%がMDD発症、事故当時MDDの人はリスクが1.6倍同氏らは、2001年6月~2005年3月にかけて、中等度から重度の外傷性脳障害で入院した559人について、事故発生後1、6、8、10、12ヵ月時点に、それぞれ電話によるインタビューを行った。その結果、いずれかの調査でMDDの症状が認められたのは、全体の53.1%にあたる297人に上った。MDD発症率は、事故1ヵ月後が31%、同6ヵ月後が21%だった。なかでも、事故当時にMDDを有していた人は、事故後1年間の同発症リスクが大きく、リスク比は1.62(95%信頼区間:1.37~1.91)だった。事故当時はMDDを有していなかったが、それ以前にMDD歴のある人の同リスク比も高く、1.54(同:1.31~1.82)だった。MDD発症者の不安障害リスクはそうでない人の約9倍また、年齢が60歳以上だと、18~29歳に比べ、事故後1年間のMDD発症リスクは小さく、リスク比は0.61(同:0.44~0.83)だった。一方、アルコール依存症歴のある人の同リスクは大きく、リスク比は1.34(同:1.14~1.57)だった。事故後1年間にMDDを発症した人の不安障害の発症率は60%で、MDDを発症しなかった人の同7%に比べ、リスク比は8.77倍(同:5.56~13.83)にも上った。なお、MDDを発症した人のうち、抗うつ薬の処方やカウンセリングを受けたのは、44%にとどまっていた。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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急性期、回復期では約6割の医師が地域連携は進んだと評価、一方で維持期では4割未満にとどまる

ファイザー株式会社は5月21日、脳卒中治療に携わる急性期、回復期、維持期の医師359人を対象に実施した「脳卒中治療に関する意識調査」の結果を発表した。それによると、急性期病院との連携を、半数以上の回復期、維持期の医師が「満足」「まあ満足」と回答している。一方、回復期病院との連携は、急性期、維持期ともに3割程度の回答だった。また一般診療所との連携では、急性期、回復期の医師は2割程度と、連携の満足度に差が見られた。自治体との地域連携に対しては、「満足」「まあ満足」の回答が1割程度にとどまり、さらに維持期での脳卒中地域連携クリティカルパスの使用率は36.9%と、急性期(57.0%)、回復期(69.8%)と差がある結果となった。 t-PAの実施に関しては、急性期医師(脳神経外科・神経内科・救急・ICUなど)が勤務する医療機関の83.1%が「t-PAを実施している」と回答する一方、200床未満の病院になるとt-PA実施の割合は50.0%にとどまった。このほか、回復期の医師(リハビリテーション科・整形外科など)の75.4%は、脳卒中患者の自宅復帰率は「50%程度以上」と回答。しかし、「70%程度以上」とすると、44.3%にとどまった。 また、維持期の医師(内科・循環器内科など)の半数以上が、脳卒中既往患者が「必要なリハビリをあまり受けていない/受けていない」と回答し、さらに維持期の医師の半数以上が、自身の脳卒中既往患者の服薬アドヒアランスが70%未満と感じ、50%未満と回答とした医師も3割いた。 ●詳細はプレスリリースへhttp://www.pfizer.co.jp/pfizer/company/press/2010/2010_05_21.html

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脳卒中後後遺症に対するリハビリは、人的リハビリが最も優れる

脳卒中後後遺症を有する患者には効果的なリハビリテーション療法が必要とされるが、近年開発が進む、ロボット工学を活用したリハビリ・アシスト装置の効果は? 本論は、上肢後遺症患者のために開発された「MIT-Manus robotic system」(Interactive Motion Technologies社製)の運動機能改善効果を、通常ケアや強化訓練療法との比較で検討したもので、米国プロヴィデンス退役軍人医療センターのAlbert C. Lo氏らが行った。NEJM誌2010年5月13日号(オンライン版2010年4月16日号)掲載より。脳卒中後6ヵ月以上、中等度~重度の上肢後遺症患者を対象に無作為化試験試験は多施設共同無作為化試験で、脳卒中後6ヵ月以上、上肢に中等度から重度の後遺症が残っている患者127例を対象に行われた。被験者は無作為に、(1)ロボットアシスト療法を受ける群(49例)、(2)強化リハビリ療法を受ける群(ストレッチ、肩関節の安定化のための運動、腕の運動、機能回復のための作業療法など、50例)、(3)通常ケアを受ける群(医学管理、必要に応じた外来受診、数例でリハビリサービスの利用、28例)に割り付けられた。(1)と(2)は、同様のスケジュール、運動メニュー・強度となるよう調整され、12週間にわたって、1セッション1時間以上の療法を、36回受けた。主要評価項目は、12週時点での、Fugl-Meyer評価法(Fugl-Meyer Assessment of Sensorimotor Recovery after Stroke)による運動機能スコアの変化とした。副次評価項目は、Wolf Motor Function Test、およびStroke Impact Scaleで評価した。また36週時点で治療効果の2次解析が行われた。通常ケアよりは効果がありそうだが…結果、Fugl-Meyer評価法による、12週時点でのロボットアシスト療法群の患者の運動機能は、通常ケア群よりも改善していた(スコア差:2.17ポイント、95%信頼区間:-0.23~4.58)。しかし有意差は認められなかった。一方、強化リハビリ療法群と比べるとロボットアシスト療法群の改善は劣っていた(同:-0.14ポイント、-2.94~2.65)。しかしこちらも有意差は認められなかった。なおStroke Impact Scaleでの検討では、ロボットアシスト療法群は通常ケア群よりも有意な改善が認められた(同:7.64ポイント、2.03~13.24)。36週時点の2次解析では、ロボットアシスト療法群の改善は、通常ケア群よりも有意な改善が認められた。両群のFugl-Meyer評価法によるスコア差は2.88ポイント、Wolf Motor評価法による時間差は-8.10秒だった。強化リハビリ療法群とは有意差は認められなかった。重度有害事象は報告されていない。(医療ライター:武藤まき)

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教授 中村正人先生の答え

循環器内科での後期研修について初期研修1年目の者です。循環器内科に興味を持ち始めたのですが、循環器内科といっても幅が広く、心臓血管カテーテル以外にも多くの専門領域があると思います。大橋病院ではどのような体制で診療や研究を行うのでしょうか?入局してくるレジデントは、ある程度専門領域を決めて来るのでしょうか?少し場違いな質問ですが御教授願います。ご指摘のごとく、循環器の診療はカテーテル検査のみでなく、心臓超音波、心臓CT、核医学など画像評価、不整脈、心不全、リハビリテーションなど幅広い知識、経験が必要です。このため我々の診療科では初年度1年間は、画像診断、不整脈、心臓血管カテーテルをローテーションで勉強するシステムを構築しています。その間は、当該領域専門の医師の指導下で関係する検査、関係する疾患の診療を行います。その後に、自分の専門領域を決定します。従って、最初から自分の専門を決めてこられる人は多くありません。ローテーションで回っている間に興味を覚えさらに勉強したいと思った領域を選択する人が多いと言えます。大学では、主として自分の専門領域の診療、研究を行いますが、大学からの出張先ではオールラウンドな診療を行うこととなります。なお、近年自分の専門領域と他科との関わりの中での研究の必要性も高まっています。なお、我々の診療科は循環器として勉強を始める前に消火器科、腎臓内科、呼吸器科を研修するシステムを採用しています。他診療科との連携について先生のコメントの中に「他診療科との連携も重要となります。」とありますが、最近ではどのような科との連携が増えてきたのでしょうか?また、先生が他診療科との連携において最も重視されていること、ご苦労などございましたら教えて下さい。今日、診療はどんどん専門に特化していく方向ですが、複雑化、重症化すればするほど、また長期成績を見据えた治療を考えれば考えるほど他科の先生との連携は避けられなくなってきます。緊急で冠動脈バイパス術をお願いすることはほとんど皆無となりましたが、大動脈弁疾患、大動脈疾患の合併が増加、心臓血管外科の先生との連携は必須です。冠動脈インターベンションの40%以上は糖尿病症例です。糖尿病における冠動脈インターベンションの成績改善には糖尿病の管理は不可欠です。また、数%は透析症例であり、造影剤を用いる検査であるため、造影剤腎症の問題は避けて通ることはできません。今日、アテローム血栓症の概念が提唱されるようになりました。冠動脈と同様な病変は脳血管、頸動脈、腎動脈、下肢動脈と全身に及び、冠動脈の管理のみでは不十分であると考えられています。冠動脈インターベンションの経験はこれら動脈病変の治療において非常に有益です。しかし、頸動脈の治療においては脳外科の先生との連携が重要ですし、下肢閉塞性動脈硬化症の治療において、とくに重症虚血肢の症例では創傷治癒の診療をお願いする形成外科の先生、foot careチームとの連携が必須となります。たとえ、下肢の血流を再開のみでは本病態の改善が得られないからです。TASCにおいても多診療科の連携の重要性が述べられています。しかし、大学病院など大きな病院ではこれら診療科が縦割であり、横の連携が機能しにくい傾向があると指摘されています。専門化の弊害といえます。幸い、当院ではその垣根が低く、多くの先生に協力を得ながら診療を行っています。研修について記事拝見しました。研修で全国を回っていらっしゃることを初めて知りました。研修の内容をもう少し詳しくお聞きしたいです。(研修日程や内容、参加者数、参加者層、講師の先生のことなど。)また、先生の研修に参加することは可能でしょうか?このような機会はあまりないかと思いますので是非教えて頂きたいと思っております。年2回春と秋に土、日曜日の2日間行っています。場所は、郡山、神奈川、神戸、宮崎の4か所を持ち回りで行っています。井上直人先生、村松俊哉先生、横井宏佳先生、私の4名で実施しています。当初4名で実施しましたが、2回目以降は各地域の近隣の経験豊かな先生方に講師として協力していただき実施しています。これまでに7回行われ、次回は神戸で10月に実施予定です。対象は初心者の先生方。これから冠動脈形成術を始める、始めたばかりの先生方であり、基本的、標準的な実技をトレーニングしようとするものです。開催地区近隣の先生の参加が多いのが実情ですが、全国から参加可能です。参加者は20‐30名程度で4つのグループに分かれていただき、ローテーションで動物を用いたカテーテルのトレーニング(ガイドワイヤーの曲げ方、挿入、ステントの留置、バルーンの挿入、抜去、IVUSの操作)。コンピューターによるシィミレーション、モデルを用いたロータブレーターの手技などのトレーニングが行われます。実技を中心とした研修ですが、講義による座学も行われます。また、夜には困った、悩んだ症例をもちよりみなで議論、親交を深めております。アドバンスコースは年2回、土曜日の一日コースで及川先生、矢島先生、小川先生、濱崎先生と東京の先生に協力していただき、動物モデルで実施しています。10名前後の少数の研修で、人数の関係もあり東京限定で実施しています。これら研修は非常に体力を要し疲労しますが、若い先生の情熱を感じ、昔の自分達を思い出し、終了するたびにやめられないと企画者一同実感しております。薬剤溶出ステントの副作用について以前、薬剤溶出ステントの副作用について話題になったかと思いますが、現在はどのようになっているのでしょうか?欧米に比べると日本の副作用発生率は少ないとの発表もあったようですが、最前線にいらっしゃる先生のお考えをお聞きしたいです。宜しくお願いします。本邦でも、この種のステントが登場して5年を経過しました。この間、多くの成績が報告され、薬剤溶出ステントは揺るぎないものとなっています。しかし、現在のステントの問題点も指摘され、さらなる改善が望まれています。このデバイスの最大の利点は再狭窄を著しく軽減させたことにあります。ステントにても克服できなかった再狭窄の問題が解決に向け大きく前進しました。糖尿病、小血管など従来のステントで成績に限界があった病変、病態におけるインパクトが最大です。一方、従来のステントでは経験しないような留置後1年以降に生じるステント血栓症が新たな問題として浮かび上がりました。このため、チエノピリジン系の抗血小板薬、アスピリンの2剤の抗血小板薬を長期に服薬することが推奨されています。一方、これら薬剤による出血性リスクの懸念もあり、長期服薬の是非が問われています。この合併症の原因は依然として不詳ですが、解決すべく新たなデバイス開発がなされています。薬剤溶出ステントはステント、コーティング、薬剤の3者で構成されていますが、コーティング、最終的にはステントが溶けてなくなるようなデバイスもすでに臨床で試みられています。先生が指摘されたように、上記の合併症は幸いなことに諸外国に比し本邦では極めて低率であることが報告されています。この理由も定かではありません。幾つかの要因が指摘されています。人種差による血小板機能の差異、薬剤コンプライアンスの差異、血管内超音波を用いた治療手技の差異などです。実臨床では個々の症例で原因は異なっているものと考えられ、本邦の成績が良いのは複合的な作用の結果であろうと推測されます。いずれにしても、デバイスは有効性、安全性の両面が重要であり、このテーマは永遠に追求されていくものと思われます。カテーテルを極めるには?医大に通っています。心臓を悪くして亡くなった者がいるので、心臓血管カテーテルに大変興味があります。先生のように、カテーテルを極めるには、どのような進路や経験を積めば良いのでしょうか?心臓血管カテーテルは急速な進歩であり、これは我々の予想を大きく上回るものでした。まさに、成熟期を迎えたと言えます。幸いなことにこれら進歩を眼のあたりにしながら今日まで診療をすることができました。これらかの先生は今日の診療が当たりまえの位置からスタートするわけですから大変であろうと思います。まず、実技に入る前に清書を読むことをお勧めします。歴史を知ることは、今日の問題点が何故あるのか、どのような模索がされてきたかを理解することにつながります。広い視野が重要で、今後非常に参考になるでしょう。絶対的なルールはありませんが、次に大切なポイントはカテーテル検査を好きになることです。この領域は経験がものをいうことは否めませんから一歩、一歩、着実に前進するしかありません。手技は感覚的な要素も含まれるため、見て盗むといった古典的な手法が依然として必要になります。助手、または聴講者としてみているときも、つねに何故?その理論的背景は、自分ならどうするといった心構えが重要と思います。漠然と時間が過ぎていくのではなく、一例一例が重要です。その意味で色々なオプション、引きだしをもつことができるか、それを実践できるかが重要です。良い上司、環境は重要でしょうが、入ってみないと現状はわからないものです。多くの施設を訪問し、多くの先生の意見を聞いてみるのがよいと思います。その中で何か感じるものがあれば、あとは自分の努力で前進は可能です。昔より、勉強する機会、環境は非常に増えたと思います。狭心症患者に「カテーテル治療」と「バイパス手術」の選択について説明する時の注意点私はクリニックに勤めている医師ですが、近隣に住む、狭心症で大学病院にかかっている方から「カテーテル治療」と「バイパス手術」の選択について相談を受けました。患者の状態によって違うとは思いますが、せめて一般的なメリット、デメリット、再発率などを説明してあげたいと思っております。教科書通りの説明は本を読めばできるのですが、先生の御経験に基づいた注意点やポイントなどありましたら教えて頂ければと思います。両治療の差異は侵襲性と再血行再建の必要性にあります。両者に生命予後の点では差がないことが示されています。冠動脈形成術は、侵襲性が低く1-2時間で手技が終了、2-3日で退院可能です。死亡リスクは1%未満で、社会復帰も早期に可能です。最大のアキレス腱は再狭窄がある一定の頻度で生じることです。しかし、この問題も薬剤溶出ステントが登場して著しく軽減、数%となっています。このため、薬剤溶出ステントが汎用されていますが、この種のステントで治療した場合ステント血栓症を防止するためアスピリン、チエノピリジン系抗血小板薬2剤長期服薬が必須です。服薬アドヒアランスが低い患者さんには不向きと言えます。また、冠動脈形成術は局所の治療であるため、治療部位以外のイベントは回避困難であり、厳格なリスク管理が重要です。一方、冠動脈バイパス術は全身麻酔を要し、初期の侵襲性は高く、死亡リスクは1-3%、脳卒中、開胸に伴う合併症、麻酔に伴いトラブルなどのリスクが若干あります。一回で治療を完結できる可能性が高く、グラフトされた末梢での心血管事故防止効果も期待できます。初期に開存が得られ長期的な開存が期待できます(グラフトの種類により差異がある)。他に両治療戦略を選択する重要なポイントに病変形態、合併疾患の有無があります。病変形態が冠動脈インターベンション治療に向いているか否かの判断が極めて重要です。この事実は最近の臨床試験でも示されています。また、腎機能障害があれば複数回のカテーテル治療は腎機能を悪化させるリスクとなります。高齢者では合併症のリスクが高く、最も重要な病変のみ治療を行い薬物で補完することも戦略となります。穿刺部合併症心臓カテーテル検査を始めて3年目なのですが、穿刺部合併症を最近数例件しました。具体的には浅腸骨回旋動脈の穿孔や、血腫、仮性動脈、動静脈瘻を経験しました。 こういった合併症を防ぐために、普段どういったところに注意されていますか? Femoral Punctureでは穿刺部位は透視で大腿骨頭の位置を確認して刺していますが、シースを挿入する前のワイヤー操作はやはりほとんど透視しながらやった方が良いのでしょうか?仮性動脈瘤はlower punctureで合併しやすく、逆にhigher punctureは腹腔穿刺になるため大腿動脈穿刺において穿刺部位は極めて重要です。これは比較的狭い範囲です。先生が実施しているように透視で大腿骨頭の位置を確認することは重要です。当院では全例実施しています。今後も必ず実施してください。大腿骨頭の下縁以下、上縁以上は避けることになります。穿刺はsingle wall punctureが良いとされています。すなわち、血管の後壁を突き抜けないように動脈の前壁のみを穿刺する手法です。当院では外筒のないアルゴンニードルを使用しています。なお、この穿刺針とラジフォーカスは相性が悪く、スプリングワイヤーを用います。その後穿刺針にガイドワイヤーを挿入します。透視を見ながらの挿入は行っておりませんが、ゆっくり挿入し、抵抗を感じた場合必ず透視で確認を行います。この際にラジフィーカスを用いないのは、迷入しても気づきにくいからです。透視で迷入が確認された場合、検査後造影にて確認を行えば確実です。上記の理由でラジフォーカスを用いる場合は透視下で挿入する方が安全でしょう。静脈は動脈の内側に伴走していますが、血管の蛇行などで上下に重なっていることもあります。止血手技も重要です。Learning curveがあり、ある程度の経験が必要です。とくに高度肥満の人、高齢者、大動脈弁閉鎖不全症など脈圧が高い人は要注意です。皮膚の穿刺点と血管の穿刺点は高さが異なること、拍動を感じながら圧迫することなどが重要であり、single wall punctureが望ましく, lower punctureは止血困難な要因となります。どこに問題があったか、自問してみましょう。しかし、実際には動脈穿刺に伴う合併症はある一定の頻度で合併し得るものです。合併症は早期に見つけること、そのためには疑うことが肝要です。PCIにおけるステントの選択に関してPCIにおけるステントの選択ですが、私は、3mm以上の血管に対してはエンデバースプリント、2mm代の小血管に対してはCypher select、AMIに関してはDriver stentという選択をしております。ザイエンスが登場し、遠隔期の成績の良さはよくわかるのですが、メリットである通過性に関してもエンデバースプリントでことたりますし、ザイエンスのデリバリーバルーンのドッグボーン、コンプライアンスが良すぎるバルーン、ウイギング現象を考えるといまいちザイエンスの使い勝手が悪い気がします。中村先生は、ステント選択に関して何かいいポイントはありませんか?ぜひ教えてください。ステントの成績に関する報告は多数ありますが。これらの報告を実臨床にどのように生かすかが個々の医師に託された仕事であろうと思います。比較試験は限られた対象における検討であり、レジストリーデータは実臨床に近い対象になりますが、バイアスのかかった対象であり、近年はやりのマッチングを行っても比較試験と同等の意味をもたせるには限界があります。最近の臨床試験における各デバイスの差異は数%以内のものであり、基本的に大きな差異はないと言えるでしょう。薬剤の臨床試験と極めて類似して来ました。従って、どのステントを選ぶかは、そのステントの何を生かそうとして選択したかという点に尽きます。抗血小板薬長期服薬困難であるか、ステントのプラットフームが重要な病変であるか、通過性が重要な病変であるかなど個々に適したものを選択すればよいと思います。大切な点は、適切な拡張術で良好なステント拡張を得ることです。この点で、使いなれたステントを用いると予想された結果が得られやすいということは言えるでしょう。さてザイエンスです。ご指摘のごとくコンプライアンスが高く、留意が必要です。特に2.5mmはコンプライアンスが高く、サイズを間違えないことが重要です。また、taper vesselでは近位に合わせたサイズを選択すると危険です。この点先生の意見に賛成です。私は高圧をかけず、低圧で長時間拡張後にステント内を高圧拡張行うようにしています。ステントの特徴はむしろマウントされているバルーンの性能とステントの相性によって決定されるといって過言でありません。従って各ステントにあった拡張を行うことが重要です。それは個々の先生の流儀と相性があるかもしれません。以上のごとく、病変、病態にあったステントを選択し、そのステントにあった拡張術(edge損傷なくステント面積を得る)を行うのが良いと考えています。予後50歳男性心筋梗塞発症15時間後に心カテ施行。1枝は凝固が強く、完全閉塞だが微小な側副血行あり。ヘパリン治療にて24時間経過、バイタルは安定、軽度左室肥大あり。今後の予後予測は?外科適応の指標などあればご教示下さい。ポイントは50歳と若年、1枝病変完全閉塞の2点にあります。本例の梗塞部位は不明ですが、初回梗塞の1枝病変で血行動態が安定しており、高齢でない点から予後は良好、機械的合併症発生のリスクは低いものと予想されます。本例は15時間経過した梗塞例で、側副路の発達が不良な完全閉塞であったとのことから、壊死はすでに完成しているものと推測され、このためこの時点で再灌流による心筋救済のメリットは小さいものと推測されます。結果としての梗塞サイズ、残存心機能が予後を規定します。再灌流が得られていないので梗塞後のリモデリング防止が重要となります。さて、慢性期に1枝完全閉塞であった場合の血行再建の適応は残存虚血の有無、病変部位によって決定されます。虚血がない、または小さい場合は薬物で管理。虚血が残存する場合、バイパス術、PCIなどの血行再建が必要になります。両者の別は病変形態、部位によって決定されます。冠動脈バイパス術は本例が主幹部、LADの近位部にあり、病変形態がPCIに不向きな場合に考慮されます。なお、急性期に完全閉塞であっても自然に再疎通し開存していることが少なくありません。従って、退院前に再造影することをおすすめします。教授 中村正人先生「カテーテルの歴史とともに30年、最先端治療の場で」

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整形外科手術後の創閉鎖、ステープルは縫合糸より感染リスクが高い

整形外科手術後の創閉鎖にステープルを用いると、縫合糸に比べ感染リスクが3倍以上にもなり、特に大腿骨頸部手術時は4倍以上に達することが、イギリスNorfolk and Norwich大学病院のToby O Smith氏らによるメタ解析で示された。加速的リハビリテーションの進歩や入院日数短縮に向け外科医への圧力が増すに伴い、皮膚閉鎖法はその重要性を増しているという。整形外科医は手術創の閉鎖に金属ステープルとナイロン縫合糸を主に使用しているが、下肢関節形成術、再建術、外傷固定などを施行後の創閉鎖の方法としていずれが優れるかについては相反する知見が存在する。BMJ誌2010年4月3日号(オンライン版2010年3月16日号)掲載の報告。創閉鎖後の表在性感染のリスクを評価するメタ解析研究グループは、整形外科手術後の創閉鎖にステープルあるいは縫合糸を用いた場合の臨床予後を比較するメタ解析を実施した。Medline、CINAHL、AMED、Embase、Scopus、Cochrane Libraryなどのデータベースを検索し、審査を受けていない論文や1950~2009年までのすべての言語で書かれた論文も調査し、引用文献にも当たった。2名の研究者が別個に論文の適格性を評価した。各論文の試験方法の質やデータの抽出にも2名の研究者が別個に当たった。解析用の最終データは合議で決めた。主要評価項目は、閉鎖後の創部の表在性感染とした。感染防止には縫合糸を使用すべき、ステープルの使用は再検討を6つの論文に参加した683例(縫合糸332例、ステープル351例)が解析の対象となった。術後の創部の表在性感染の発症リスクは、ステープルが縫合糸の3倍以上であった(ハザード比:3.83、95%信頼区間:1.38~10.68、p=0.01)。大腿骨頸部手術に限定してサブグループ解析を行ったところ、ステープルの創部感染リスクは縫合糸の4倍以上に達した(ハザード比:4.79、95%信頼区間:1.24~18.47、p=0.002)炎症、創分泌物、創離開、壊死、アレルギー反応の発症については両群間に有意な差を認めなかった。対象となった試験には、症例数が少ない、統計パワーが不十分、割り付け法が非盲検などの限界があり、試験法の質が許容範囲にあったのは1試験のみであった。著者は、「整形外科手術後の創閉鎖にステープルを用いると、縫合糸に比べ創部の感染リスクが有意に増大し、特に大腿骨頸部手術を受けた患者でリスクが著明に高かった」と結論し、「試験法に限界がある論文に基づくエビデンスではあるものの、大腿骨頸部や膝の手術創の閉鎖にステープルは推奨できない。創閉鎖へのステープル使用については再検討を勧めるが、この問題の解決には信頼性の高い無作為化試験の実施が必須である」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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新型インフルエンザに注意すべき疾患は ―重症化しやすいCOPD患者―

2009年11月4日、大手町ファーストスクエアにて開催されたCOPD(慢性閉塞性肺疾患)プレスセミナー(主催:日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社/ファイザー株式会社)で、日本医科大学呼吸器内科教授、同大学呼吸ケアクリニック所長の木田厚瑞氏が「新型インフルエンザとCOPD」について講演を行った。COPDは呼吸機能が進行的に低下する疾患である。感染や大気汚染が原因で症状が短期間で悪化すること、つまり増悪が生じると、呼吸機能が急激に低下して、元の状態に戻れない。また、COPDが増悪した場合、患者の多くは入院が必要となる。さらに、増悪の回数が増えると、生命予後が悪くなることもわかってきている。重篤な増悪、入院率・死亡率を減少させるために、ガイドラインでは、COPD患者へのインフルエンザワクチン接種が求められている。また、2009年10月2日現在の厚生労働省の発表において、COPDは新型インフルエンザのワクチン優先接種対象疾患として取り上げられている。第19回日本呼吸ケア・リハビリテーション学会学術集会の会長でもある木田氏は、10月31日に開催した日本呼吸器学会、日本呼吸ケア・リハビリテーション学会合同緊急シンポジウム「新型インフルエンザ 重症化からの脱却」のエッセンスを紹介した。それによると、新型インフルエンザの重症者には、COPDや喘息などの慢性呼吸器疾患を持っていることが多いことが挙げられる。そのうち、若年者では喘息が、高齢者ではCOPDが重症化のリスク因子となる。そのほか、日ごろの慢性呼吸器疾患の治療が不十分である場合に、悪化しやすいこともわかってきた。また、問題点として、COPDは潜在患者が多く、こうした潜在患者はCOPDとして診断されていないために、ワクチンの優先接種者にならないことなどが挙げられる。木田氏は、潜在患者が500万人以上いるにもかかわらず、約22万人しか診断・治療されていないことに危機感を抱き、新型インフルエンザによるCOPD患者の重症化を防ぐためにも、潜在患者を1日でも早く診断し、治療を開始するべきであることを訴えた。(ケアネット 呉 晨/吉田 直子)

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乳がんホルモン剤治療中の患者さんへ 関節痛を解消するストレッチ運動を動画で紹介

アストラゼネカ株式会社は1日、乳がんになりホルモン剤で治療中あるいは治療を始める患者に向けて、関節痛を改善する関節痛体操の動画配信を開始した。この動画は、同社が運営する乳がん啓発サイト「乳がん.jp(http://www.nyugan.jp)」の新コンテンツで、痛みがある場合の(1)ボールストレッチ (2)痛みがある場合のストレッチ、痛みがない場合の(1)ボールストレッチ(2)どこでもストレッチ(3)じっくりストレッチが紹介されている。監修は、宮良球一郎氏(宮良クリニック院長)、蔵下要氏(浦添総合病院乳腺外科医長)、亀山成子氏(浦添総合病院 リハビリテーション科)。詳細はプレスリリースへhttp://www.astrazeneca.co.jp/activity/press/2009/09_09_02.html

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札医大発のベンチャーが5月からリハビリ教室を本格展開

札幌医科大学と産業技術総合研究所の研究成果を生かすベンチャー企業「株式会社アフィオ afio」は、4月に運動機器の販売を始めたのに続き、理学療法士が指導し、ひざの痛みを解消する運動教室を5月から本格展開する。2009年1月より変形性膝関節症などによって日常生活は十分に自立しているものの膝関節に痛みや不安をかかえる人々を対象にしたひざイタ予防運動教室を開始、また4月からリハビリテーションデバイス「キネステージ Kinestage」の販売を開始している。さらに5月から開始するひざイタ予防運動教室の参加者を募集中で、その他にも随時さまざまなイベントを計画、健康増進、スポーツ医科学、リハビリテーション、ITを通して皆様の健康に関わる予防医学の普及に努めるための活動を展開していくという。発表はこちらhttp://web.sapmed.ac.jp/cgi-bin/WebObjects/WeblockCore.woa/wa/showReportItem?id=195

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リハビリ介入は認知症患者には効果が乏しい

要介護高齢者へのリハビリプログラムの効果について、認知機能正常な場合はわずかだが効果は認められるが、認知機能低下が認められる高齢者にはベネフィットがないことが、オークランド大学(ニュージーランド)のNgaire Kerse氏らによって報告された。BMJ誌2008年10月18日号(オンライン版2008年10月9日号)より。41ヵ所の施設入所者対象に集団無作為化試験Kerse氏らは、長期療養施設に入所する要介護高齢者へのリハビリプログラム実施が、機能・QOL・転倒改善に効果があるかを、集団無作為化試験にて1年間追跡調査し検討した。対象としたのはニュージーランドにある41ヵ所の軽度要介護入所施設。試験参加者は65歳以上682例で、このうち330例は、老人看護専門看護師によって改善目標の設定と、個別ADL活動プログラムが提供され、日々の介入がヘルスケア・アシスタントによって提供された。352例は、施設介護を受け続けた。主要評価項目は、機能・QOL・転倒指標の変化について。機能は、LLFDI(生命機能低下と能力障害指標)、EMS(高齢者可動スケール:スコア16以下の割合)、FICSIT-4(平衡機能検査指標:直立10秒以上の割合)、TUG(timed up and go検査:秒)の変化を、QOLはLSI(生活満足度指標:判定スコア最大20)、EuroQol(判定スコア最大12)の変化を、転倒は12ヵ月の転倒回数の変化を評価した。副次評価項目は、抑うつ症状と入院とした。認知機能が正常な入所者にはわずかだがベネフィットがある試験を完了した入所者は437例(70%)だった。全体的にプログラム介入の影響は認められなかったが、介入群の中で、認知機能障害のある入所者と比べて認知機能が正常な入所者は全体的に機能の維持(LLFDIによる総合的な機能評価、P=0.024)、下肢機能の維持(LLFDIによる下肢機能評価、P=0.015)が認められた。また介入群で認知機能障害のある入所者では、うつ病の可能性が増大することが認められた。その他の転帰については両群間で差異はなかった。Kerse氏は、「施設に入所する要介護高齢者に対する機能改善のリハビリテーションプログラムは、認知機能が正常であれば多少なりとも影響はあるが、認知機能が低下した入所者にとってベネフィットはない」と結論している。

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乳がんの最新治療を講演

2008年9月3日、都内で大鵬薬品主催のオンコロジーセミナーが開催された。その中で聖路加国際病院 中村清吾氏、日本医科大学 芳賀駿介氏、坂元記念クリニック 坂元吾偉氏の3氏がそれぞれの立場で最新の乳がん診療の情報について解説した。聖路加国際病院 ブレストセンター長 中村清吾氏乳がんの治療はがん細胞の増殖メカニズムが解明されTargeted Therapyへ移行した。中でもハーセプチンは乳がんの20%に見られるHER2陽性症例の標準治療である。加えて、術後の患者でも半数の再発を予防することが報告され、本邦でも本年2月から術後補助療法の適応が認められている。一方、乳がん学会でも班研究を実施しているTriple Negative乳がん(ER感受性-、PgR感受性-、HER2-)では、通常の抗がん剤が無効という症例もあり課題が残る病型である。そのような中、血管新生阻害薬であるアバスチンは再発乳がんの再発抑制に関し良好な結果が報告されるなど、Triple Negative乳がんのキードラッグとしても期待される。日本での乳がんへの保険適応も早期に望まれる。その他、新たな分子標的治療薬ラパチニブなどが登場する。ホルモン感受性、HER2、血管新生阻害薬、他の分子標的治療薬など選択肢が増え、個別化治療はより細密化してくると考えられる。また、化学療法適応の指標として21種の遺伝子の組み合わせにより再発リスクを評価するOncotypeDXという遺伝子検査法について紹介した。この検査は、同じステージの乳がんでもリスクの重度度を識別し、化学療法の実施の意思決定ツールとなる。米国で爆発的に普及、保険未承認ではあるが日本でも幾つかの先進施設で用いられている。日本医科大学 乳腺科 芳賀駿介氏乳がんにおけるリンパ節郭清は、その後の治療の指標となる。しかし、郭清によるリンパ浮腫、上肢内側知覚障害、術後のリハビリテーションなど患者さんへの負担とともに入院期間も増加する。そこで不要な腋下リンパ節郭清を省略するためセンチネルリンパ節生検が実施されるようになってきている。乳がん学会認定施設でのアンケートの結果、87%の施設がセンチネルリンパ生検を実施、行っていない施設でも殆どが実施したいと考えていることがわかった。センチネルリンパ節生検の実施により患者さんの身体的負担の軽減と医療費の削減の双方が実現できる。この手段を保険承認させるため乳がん学会では多施設協同試験を実施し、試験結果を厚生労働省に提出する。中間報告は9月の乳がん学会にて報告予定である。坂元記念クリニック 乳腺病理アカデミー 坂元吾偉氏乳がんの確定診断は病理組織診断である。実は、治療を受ける前に本当に乳がんなのかを確認することが重要であるともいえる。乳腺病理には経験が必要である。また、他のがんとの細胞異型の尺度の違い、乳管腺腫などの新たな疾患概念、組織型だけでも39、亜型も含めると100以上という病型の多彩さなどから乳腺病理は非常に難しいものであるといえる。最近は針生検の普及から検体が小さくなり更に難易度が上昇している。しかし、日本の病理医は米国の1/5というのが現状。病理専門医のいない施設は多く見られ、患者さんだけなく、臨床医さらには病理医も困惑している状況である。乳腺病理医の確保が乳がん治療における非常に重要な課題といえる。経験ある病理医であればリスクを分けることができる。実際、St.Gallen Conferences 2007での7つのリスクカテゴリーのうち6つは病理診断の結果で明らかになるものであり、病理医の適切な診断により適切な治療が可能になる。そのような中、坂元氏は坂元記念クリニックを設立した。08年4月から病理診断科が標榜可能になったため、乳腺病理を唯一標榜。精度の高い乳腺病理診断を目指し、臨床医病理医に正しい情報を提供することを目的とする。坂元氏は、乳腺病理診断が正しく行われることは社会全体にとっても有益であると考えると語った。《参考リンク》第16回日本乳癌学会総会http://www.jbcs.gr.jp/meeting/soukai.html坂元記念クリニックhttp://www.a-bp.net/index.html(ケアネット 細田雅之)

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エビデンスある高齢者の転倒防止対策を普及させよう

米国エール大学医学部のMary E. Tinetti氏らは、「転倒は高齢者によくみられる一般的な病的状態である。またその効果的な予防対策は明らかになっているにもかかわらず、十分に活用されていない」として、コネティカット州において、地域医療や看護・介護関係者に転倒防止対策を採るよう介入を行った。結果、転倒関連の外傷を減らすことができたと報告している。NEJM誌2008年7月17日号より。介入で投薬量減少やバランス・歩行訓練などを推奨調査は非無作為化デザインにより、プライマリ・ケア医師の臨床実践が変わるように介入した「介入地域」と、介入しなかった「通常ケア地域」で、転倒による外傷の発生率を比較した。介入の内容は、医師および在宅看護・外来リハビリテーション・高齢者施設に勤務するスタッフに対して、転倒予防の効果的リスクアセスメントと戦略(例えば投薬量の減少、バランス・歩行訓練)の採用を奨励することだった。転帰は、転倒による重症外傷(股関節等の骨折、頭部外傷、関節脱臼)の発生率と、70歳以上の転倒による医療サービス利用(千人年当たり)とした。介入は2001~2004年に行い、2004~2006年に評価した。重症外傷発生率、医療利用率比ともに低下介入前における、転倒による重症外傷の補正発生率(千人年当たり)は、「通常ケア地域」で31.2、「介入地域」では31.9だったが、評価期間中の補正発生率は、「通常ケア地域」の31.4から「介入地域」は28.6へ低下(補正率比0.91、95%ベイズ信用区間:0.88~0.94)。介入前と評価期間を比較すると、転倒関連の医療利用率(千人年当たり)は、「通常ケア地域」では68.1から83.3へ上昇したが、「介入地域」では70.7から74.2への上昇にとどまった(補正率比:0.89、95%信頼区間:0.86~0.92)。今回の試験で介入を受けた医師の比率は、62%(プライマリ・ケア診療所212ヵ所中131ヵ所)から100%(在宅医療機関26ヵ所すべて)まで幅があった。以上を踏まえTinetti氏は、「転倒防止に関するエビデンスの普及と、臨床実践を変える介入を組み合わせて行うことが、高齢者の転倒による外傷を減らすことを可能とする」と結論した。(武藤まき:医療ライター)

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多因子転倒防止プログラムは短期入院では効果なし

高齢者転倒予防の多因子転倒防止プログラムの有効性について、入院期間が長期にわたる亜急性期およびリハビリテーション病棟での研究報告はあるが、入院期間が短い高齢者病棟においてもプログラムは有効なのか。シドニー大学のRobert G Cumming氏らが調査を行った。BMJオンライン版2008年3月10日付公表、本誌は2008年4月5日号で収載された。シドニーの12病院、平均入院期間7日、3,999例(平均年齢79歳)を対象本研究はクラスタ無作為化試験の手法で、シドニー(オーストラリア)にある12病院、24の高齢者介護病棟を対象に行われた。参加した患者は3,999例、平均年齢79歳、平均入院期間中央値は7日。介入病棟および対照病棟の転倒発生率および患者特性の基線値はほぼ同一である。介入病棟では看護師と理学療法士が転倒リスク評価、スタッフおよび患者指導、投与薬の評価、ベッド周りや病棟環境の改善、運動プログラムの提供、スタッフが必要と判断した患者にアラーム設置といった多因子の介入が提供された。介入量・期間は週25時間・計3ヵ月。主要評価項目は入院期間中に起きた転倒。介入病棟と対照病棟に転倒率の違い認められず全体として転倒は追跡期間中381件起きた。介入病棟と対照病棟との間に、転倒率の違いは認められなかった。発生減少率はそれぞれ、9.26/1,000ベッド日、9.20/1,000ベッド日(P=0.96)。個々の入院期間、過去の転倒率補正後のインシデント率は0.96(95%信頼区間:0.72~1.28)だった。このためCumming氏は、「多因子転倒防止プログラムは、比較的短期入院の高齢者病棟では効果的ではなかった」と結論づけた。

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ADL集中型作業療法は脳卒中発症後の活動性低下を防止する

リハビリテーションは脳卒中発症後の日常生活動作(ADL)を改善することが示されているが、作業療法の有用性は明らかでない。また、これまでの脳卒中後の作業療法に関するレビューは、個々の患者の活動性の評価が十分ではなかった。 そこで、Lynn Legg氏(イギリス・グラスゴー大学王立病院NHSトラスト老年医学)らは、脳卒中発症後のADLに重点を置いた作業療法による機能回復の改善効果について検討した研究の系統的レビューとメタ解析を行った。BMJ誌9月27日付オンライン版、11月3日付本誌掲載の報告。解析対象はADL集中型作業療法の評価を行っている試験Cochrane stroke group trials register、文献データベース、手作業による調査などから選択基準を満たす無作為化対照比較試験を抽出し、系統的なレビューとメタ解析を実施した。選択基準は、作業療法の効果を個々の患者のADL訓練に重点を置いて評価していること、すなわち脳卒中患者に対する作業療法のターゲットが作業遂行能力である研究とした。オリジナルデータは試験の報告者から得た。2名の研究者が独立に各試験の方法論の質を評価し、見解が異なる場合は協議により解決した。パフォーマンスが改善、不良なアウトカムのリスクが減少9試験の1,258例が対象となった。ADL集中型作業療法を受けた群は、介入なしあるいは通常のケアを受けた群に比べパフォーマンススコアが有意に増大した(p=0.001)。また、ADL集中型作業療法群は、不良なアウトカム(死亡、ADL低下あるいはADL依存)のリスクが有意に減少した(オッズ比:0.67、p=0.003)。Legg氏は、「ADL集中型作業療法は脳卒中発症後の患者のパフォーマンスを改善し、ADL低下のリスクを減少させる有効な介入法である」と結論し、「すべての脳卒中患者がADL集中型作業療法を利用できるようにすべき」と指摘している。(菅野 守:医学ライター)

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人工膝関節形成術後の運動物理療法は短期的ベネフィットもたらす

イギリスでは、変形性関節症(OA)は高齢者における身体機能障害の最大の原因であり、55歳以上の10%が疼痛を伴うOAに罹患しているという。OAに対する整形外科的な処置は一般に人工膝関節形成術が行われるが、術後退院しての物理療法をルーチンに行うアプローチの可否は不明である。 バーミンガム大学プライマリケア/一般診療科のCatherine J Minns Lowe氏らは、初回の待機的人工膝関節形成術施行後のOA患者における運動に基づく物理療法の効果について検討を行った。BMJ誌9月20日付オンライン版、10月20日付本誌掲載の報告。機能的日常生活動作などにつき系統的レビューとメタ解析を実施8つのデータベースを検索し、2つの専門誌および1つの専門誌に掲載されたカンファレンス記録集を手作業で調査した。初回の待機的人工膝関節形成術施行後に病院を退院したOA患者を対象に、運動に基づく物理療法による介入と標準的な物理療法を比較、あるいはレビューの判定基準を満たす2つの運動物理療法介入を比較した無作為化対照比較試験について系統的なレビューを行った。評価項目は、機能的日常生活動作、歩行、QOL、筋力、膝関節の可動域とした。固定効果モデル、加重平均差、標準効果量、不均質性検査を用いて報告形式による統合(narrative synthesis)およびメタ解析を実施した。運動物理療法の短期的効果を確認同定された6つの試験のうち5試験がメタ解析の基準を満たした。術後3および4ヵ月における身体機能に対する標準効果量は、小~中等度の範囲で機能的運動物理療法群が良好であった。また、術後3および4ヵ月における膝関節の可動域およびQOLの加重平均差も、小~中等度の範囲で機能的運動物理療法群が良好であった。これら短期的に認められた運動物理療法による治療効果は、1年後には確認できなかった。長期的なベネフィットは確認できずLowe氏は、「初回の待機的人工膝関節形成術の退院後における運動を基本とした機能的運動物理療法は、短期的にはベネフィットをもたらすが、効果量は最大でも中等度であり、1年後にはベネフィットは消失した」と結論している。一方、同氏は「運動物理療法の効果は1年後にはなくなるとのエビデンスは結論的なものではない」としたうえで、「脳卒中後のリハビリテーションで、特定の機能の直接的な訓練に焦点を絞った運動プログラムの有効性が示されており、同様の方法論に基づく人工膝関節形成術後の簡易な運動物理療法介入の1年後の効果を検討する試験が進行中である」と付記している。(菅野 守:医学ライター)

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