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ロコモは、身体能力だけでなくうつ病とも関連する?

 ロコモティブシンドローム(LS)は、身体能力だけでなくうつ病の程度とも関係していることを愛知医科大学 運動療育センターの池本 竜則氏らが報告した。Journal of Orthopaedic Science誌オンライン版2016年2月10日号の掲載報告。 LSについての報告は最近増加しており、現在までに身体能力に関しての研究はなされてきたが、精神医学的評価を含めた研究はまれである。本研究では25-question geriatric locomotive function scale(GLFS-25)を用いて、LSの有無と重症度に関連する身体的および精神的パラメータを調査した。 対象は、同運動療育センターを利用している健康な60歳以上の高齢者150人で、事前に測定したGLFS-25カットオフ値(=16ポイント)から、LS群もしくは非LS群に割り付けられた。年齢、握力、timed-up-and-go test(TUG)、開眼片足立ち、背筋力、脚筋力、うつ病の程度、認知障害についてのパラメータは、Mann-Whitney U-test、および多重ロジスティック回帰分析を用いて比較検討した。 また、LS重症度と強い相関を示した変数は、多重線形回帰分析を用いて検討した。 主な結果は以下のとおり。・非LS群は110人(73%)で、LS群は40人であった。 ・LS群と非LS群間を比較分析したところ、年齢、握力、TUG、開眼片足立ち、背筋力、うつ病の程度において有意な差が認められた(p<0.006、Bonferroni補正)。・握力機能低下、TUG、片足立ち、うつ病の程度がLSに有意に関連していた(多重ロジスティック回帰分析)。・GLFS-25スコアに大きく寄与する要因は、TUGとうつ病の程度であった(多重線形回帰分析)。

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脳卒中後の課題指向型リハ、優越性示されず/JAMA

 脳卒中後、中等度の上肢後遺症が認められた患者のリハビリテーションについて、課題指向型リハビリテーションプログラム(Accelerated Skill Acquisition Program:ASAP)がもたらす機能回復は、従来型作業療法(usual and customary care:UCC)と比べて同等もしくは低いことが、米国・南カリフォルニア大学のCarolee J. Winstein氏らが361例を対象に行った無作為化試験ICAREの結果、明らかにされた。これまで早期リハビリ完了後の期間を対象に行われた2件の大規模臨床試験において、強度・回数を増した課題指向型リハビリを行うことで通常ケアと比べて機能回復が良好であることが示されていた。今回、研究グループは外来患者を対象に試験を行ったが、結果を踏まえて著者は、「課題指向型リハビリの優越性を支持しないものであった」とまとめている。JAMA誌2016年2月9日号掲載の報告。用量の異なる従来型作業療法とで比較 試験は単盲検にて、脳卒中後、運動機能に中等度の後遺症が認められた外来患者361例を対象に行われた。被験者は2009年6月~14年3月に7施設で1万1,051例についてスクリーニングを行って集められ、試験期間は44ヵ月間であった。 ASAPは基本原則に基づくプログラムで、機能障害にフォーカス、特異的課題、強度、必要度、自発性、患者中心などに留意し、1時間の介入を週3回10週間にわたって計30セッション行うというもの。 研究グループは被験者を、ASAPを行う群(119例)、ASAPと同量(30セッション)のUCCを行う群(DEUCC、120例)、UCCのモニタリングのみを行う群(UCC、122例)の3群に無作為に割り付け有効性を比較した。 主要アウトカムは、Wolf Motor Function Test(WMFT、平均15の上腕運動と手作業からなる)の時間スコアの12ヵ月間の変化(対数で評価)であった。副次アウトカムは、WMFT時間スコアの変化(臨床的に意義のある最小変化量[MCID]は19秒)、Stroke Impact Scale(SIS)上肢機能スコア(MCIDは17.8ポイント)が25ポイント以上改善した患者の割合などだった。12ヵ月間のWMFT時間スコアの変化に有意差なし 無作為化を受けた被験者361例(平均年齢60.7歳、男性56%、アフリカ系米国人42%、脳卒中発症後平均46日)のうち、12ヵ月間の主要アウトカム評価を完了したのは304例(84%)であった(ASAP群106例、DEUCC群109例、UCC群100例)。 主要アウトカムのintention-to-treat解析(361例対象)の結果、各群の平均スコアの変化は、ASAP群が2.2から1.4への変化(差:0.82)、DEUCC群は2.0から1.2(差:0.84)、UCC群は2.1から1.4(差:0.75)で、有意な群間差はみられなかった(ASAP vs.DEUCCは0.14、95%信頼区間[CI]:-0.05~0.33、p=0.16/ASAP vs.UCC:-0.01、-0.22~0.21、p=0.94/DEUCC vs.UCC:-0.14、-0.32~0.05、p=0.15)。 副次アウトカムについても、ASAP群のWMFT時間スコアの変化が-8.8秒、SIS改善患者割合73%、DEUCC群はそれぞれ-8.1秒、72%、UCC群は-7.2秒、69%だった。ASAP vs.DEUCCのWMFT時間スコア差は1.8秒(95%CI:-0.8~4.5秒、p=0.18)、SIS改善患者割合の差は1%(-12~13、p=0.54)、ASAP vs.UCCのWMFT時間スコア差は-0.6秒(-3.8~2.6秒、p=0.72)、SIS改善患者割合の差は4%(-9~16、p=0.48)、DEUCC vs.UCCのWMFT時間スコア差は-2.1秒(-4.5~0.3秒、p=0.08)、SIS改善患者割合の差は3%(-9~15、p=0.22)であった。 重篤有害事象(入院、脳卒中再発など)は患者109例で168件報告された。8例の患者は試験中止となっている。介入に関連した有害事象は2例で、高血圧、手首の骨折であった。

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カルシトニン製剤の働き

【骨粗鬆症】【治療薬】カルシトニン製剤について、教えてください骨粗鬆症の初期に使用します。骨を強くするとともに、痛みを和らげるお薬です。★注意顔が紅くなったり、ほてったら、先生に相談しましょう!監修:習志野台整形外科内科 院長 宮川一郎 氏Copyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.

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片麻痺の歩行訓練は「リズム感」が重要?

 リズム音を用いた運動訓練は片麻痺患者の歩行機能に好影響をもたらすことがわかった。「片麻痺(半身麻痺)」は脳卒中後、非常に多く見られる後遺症である。片麻痺患者は歩行の異常な運動特性・非対称性などの歩行障害を抱えており、歩行能力向上のための有用なリハビリテーション法が模索されている。そこで韓国・延世大学校医科大学のShin YK氏らは、リズミカルな音刺激(rhythmic auditory stimulation:RAS)を用いた歩行訓練の効果について研究を行い、RAS歩行訓練が動的歩行指数(GDIスコア)や股関節内転・膝の屈曲・足首の底屈における近位/遠位関節の運動的歩行パターンを有意に改善することを明らかにした。Yonsei Med J誌2015年11月号掲載の報告。 対象患者は脳性麻痺もしくは脳卒中と診断された片麻痺患者18例。RAS歩行訓練は、対象患者全員に1回30分を週3回のペースで4週間行われた。RASには電子ピアノの伴奏によるリズム音が用いられ、運動学的・時間空間的データは3次元動作解析システムを用いて収集・分析された。 主な結果は以下のとおり。・RAS歩行訓練は、GDIスコア、股関節内転・膝の屈曲・足首の底屈における近位/遠位関節の運動的歩行パターンを有意に改善した。また、片麻痺の患者における立脚相と遊脚相の時間的な非対称性を改善した。・RAS歩行訓練を行った脳卒中患者は遊脚中期の膝の屈曲・立脚終期の足首背屈において有意な運動的改善を証明した。・脳卒中患者のうち、亜急性期の患者は慢性期の患者と比較してGDIスコアの有意な向上が見られた。・Hoffer分類で「household ambulator(社会的活動に杖歩行と車いす移動を併用)」に分類される患者は、GDIスコアの改善とともに、骨盤の前方への傾き減少に有意な効果がみられた。・一方、「community ambulator(戸外、室内とも歩行可能)」に分類される患者は、遊脚中期の膝の屈曲・立脚終期の足首背屈が有意に増加した。 研究グループは、「RAS歩行訓練は、片麻痺患者の歩行パターンに有益な効果をもたらし、RASを用いた運動リハビリテーションの臨床的意義だけでなく、歩行機能に関わる特異的影響をもたらした」と結論付けている。【用語解説】  底屈:関節を足の裏(=足底)の方向に向ける運動 背屈:関節を足の甲(=足背)の側に向ける運動 立脚相:歩行の際、地面についている側の下肢 遊脚相:歩行の際、地面を離れて振り出されている側の下肢 遊脚中期:下肢が体幹の直下にあるとき 立脚終期:身体を支持脚より前へ運ぶとき

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収縮能が保たれた心不全(HFpEP)には生活習慣への介入が有効(解説:佐田 政隆 氏)-474

 心不全症状が認められるものの、左室収縮能が保持された心不全(heart failure with preserved ejection fraction:HFpEF)が、循環器診療において、現在非常に問題になっている。HFpEFは、心不全患者の約半数を占め、その予後は不良といわれている。 左室収縮能が低下した心不全(heart failure with reduced ejection fraction:HFrEF)に対しては、レニン・アンジオテンシン系阻害薬やβブロッカー、利尿薬が有効であることが確立している。HFpEFに対しても、これらの薬物を用いて大規模臨床研究がいくつも行われてきたが、有効性を示すエビデンスは得られていない。 一方、肥満や過体重が血管内皮機能を障害し、心不全のリスクとなることは以前から示唆されていた。しかし、減量がはたして心不全に有効であるかは、ほとんど臨床試験が行われておらず、心不全に関するガイドラインでも、ダイエットや運動といった生活習慣への介入は、HFpEFに対しては強く勧められてはいなかった。 本論文において、Wake Forest大学のグループは、60歳以上でBMIが30以上のHFpEF患者100例を、カロリー制限する群(n=24)、有酸素運動する群(n=26)、カロリー制限しかつ有酸素運動する群(n=25)、何も介入しないコントロール群(n=25)に分けた。 運動群では、運動処方に従い1時間の運動を監視下で週3回行った。カロリー制限群では、管理栄養士が考案した低カロリー食を3食食べた。体重は、20週間の治療介入で、有酸素運動群で4kg(3%)、カロリー制限群で7kg(7%)、両方を行う群で11kg(10%)、コントロール群で1kg(1%)減少した。主要評価項目である最大酸素摂取量は、運動群で1.2mL/kg/分、カロリー制限群で1.3mL/kg/分、両方行う群で2.5mL/kg/分、有意に増加した。 各種循環器疾患に対して、心臓リハビリテーションが予後を改善することが知られている。今まで有効な治療法がないとされてきたHFpEFに対しても、カロリー制限と有酸素運動が良いというエビデンスが、本研究によって得ることができた。 循環器疾患を持った患者には、生活習慣病に対して各種薬剤が大量に処方されることが往々にしてあるが、食事、運動など生活習慣への介入は基本である。しかし、食事療法、運動療法の大切さを患者に話してもなかなか実行が難しいことを経験する。本研究では専門家が指導することで、運動、ダイエットとも脱落例が少なく、88~100%と高い割合で介入を成功させている。 本研究で得られたエビデンスに基づき、食事、運動に介入して生活習慣を改善させるため、患者教育、支援の体制作りが重要になってくると思われる。

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筋萎縮性側索硬化症〔ALS : amyotrophic lateral sclerosis〕

1 疾患概要■ 概念・定義筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis:ALS)は、中年期以降に発症する上位運動ニューロンと下位運動ニューロンの両者が侵される疾患である。構音・嚥下筋、呼吸筋を含む全身の筋萎縮と脱力が進行性に認められ、呼吸補助を行わなければ平均2~4年で死に至る神経難病の1つである。従来ALSは運動神経系に限局した疾患とされ、主に日本から報告されてきた認知症を伴ったALS(ALS with dementia:ALS-D)は特殊な亜型と考えられていた。ところが近年、前頭側頭葉変性症(Frontotemporal lobar degeneration:FTLD)と病理所見、原因となる遺伝素因についての共通性が明らかとなり、ALSとFTLDを一連の疾患スペクトラムで捉えようとする考えが広まっている。■ 疫学2009年度の調査では、わが国におけるALSの発症率は、人口10万人当たり2.1~2.3人、有病率は10万人当たり9.7~10.1人とされ、ほぼ全世界で同じような数字を示し、人種差もないとされている。性別では、男性が女性に比して約1.3~1.5倍多く発症する。また、発症率は40歳代より上昇し、ピークは60~70歳代である。■ 病因ALSの約5~10%に家族歴が認められ、その多くが常染色体顕性(優性)遺伝を示す。常染色体顕性遺伝を示す家系の約20~30%は活性酸素を消去する酵素であるCu/Zn superoxide dismutase(SOD1)の遺伝子異常が原因と報告されている。この変異したSOD1遺伝子を強制発現したtransgenic mouseはALSと類似した神経症状を示すことから、変異SOD1が運動ニューロンの障害に働くことは間違いないが、その機序については明らかとなってはいない。SOD1以外の遺伝子座や原因遺伝子も次々に同定されてきているが、ALSの大多数を占める孤発例の原因についてはいまだ不明という状況である。病理で認められるユビキチン陽性封入体の本体としてTDP-43(transactive response DNA-binding protein 43 kDa)が同定され、病原蛋白質と想定されている。■ 症状上位と下位運動ニューロンが障害されるが、下記の症状がそれぞれの程度に応じて障害部位に認められる(表)。画像を拡大する上位運動ニューロンの障害巧緻運動の障害痙縮深部腱反射の亢進病的反射陽性(ホフマン反射、バビンスキー反射など)下位運動ニューロンの障害筋力低下筋萎縮筋緊張の低下筋線維束性収縮深部腱反射の減弱ないし消失また、前述したようにALSにおける認知機能障害が注目されるようになり、約半数の症例で何らかの障害を示すとされている。その特徴として、記銘力や見当識の障害は目立たず、行動異常、性格変化や意欲の低下、言語機能の低下として表れることが報告されている。ALSでは、眼球運動障害、膀胱直腸障害、感覚障害、褥創を来すことは少なく、陰性4徴候と呼ばれている。■ 分類上位・下位運動ニューロン徴候が四肢からみられ、体幹・脳神経領域に進展していく脊髄発症型(古典型)と、病初期に脳神経領域が強く障害され、四肢にはあまり目立たない球麻痺型(進行性球麻痺型)が病型の中核をなす。また、病初期には上位運動ニューロン徴候のみ、あるいは下位運動ニューロン徴候のみを示して進行性に悪化する症例があり、前者は原発性側索硬化症(primary lateral sclerosis:PLS)、後者は脊髄性進行性筋萎縮症(spinal progressive muscular atrophy:SPMA)あるいは単に進行性筋萎縮症(progressive muscular atrophy:PMA)と診断されてきた。これらの疾患が独立した一疾患単位であるのか、あるいはALSの亜型と考えるべきなのか議論がいまだにあり、結論は得られていない。■ 予後ALSの経過には、個々人での差異もかなりみられることに留意する必要があるが、一般的には、発症から死亡もしくは呼吸補助が必要となるまで平均2~4年とされている。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)ALSの診断は、構音障害や嚥下障害などの球麻痺症状を含む全身性、進行性の筋萎縮や脱力がみられるか、または筋電図検査において、広範な部位に脱神経所見が認められることにより診断される。画像検査においては後述するような所見が認められることもあるが、基本的には筋力低下や筋萎縮の原因となりうる脳幹や脊髄での圧迫、腫瘍病変などを除外する目的で行われる。なお、ALSの診断基準は診断感度を上げるための改定が行われており、改定El Escorial診断基準、Updated Awaji診断基準、Gold Coast診断基準などが出されている。表に示した診断基準は、改定El Escorial診断基準を取り入れながら,わが国において従来用いられてきた厚生労働省特定疾患神経変性疾患調査研究班の診断基準を改訂し、2003年度に神経変性疾患に関する研究班により作成されたものであり、指定難病の申請をする際に利用されている。1)針筋電図検査神経原性の場合、運動単位電位(muscle unit potential:MUP)の種類が減少し、高振幅、多相性のものが目立ち、干渉波が減少する。脱神経があると、安静時の検査で線維性収縮電位、陽性鋭波、線維束性収縮電位が認められる。脳幹領域、胸髄領域では各1筋、頸髄および腰仙髄領域では神経根支配と末梢神経支配の異なる2筋について検索を行うようにする。2)頭部MRIALSのMRI所見としては、T2強調画像における皮質脊髄路に沿った高信号域、中心溝を縁取るように線状の低信号領域などが報告されている。前者は皮質脊髄路における神経線維の変性・脱落、マクロファージの出現、グリオーシスによるものとされ、後者は鉄の沈着によるものと推定されている。いずれの所見もALSに特異的にみられるわけではなく、健常者でも同様の所見が認められるとの報告もある。現時点でALSに特異的なMRI所見はなく、筋萎縮や脱力を呈する他疾患を除外する目的で行われる。3)鑑別診断鑑別すべき疾患は先述の表の鑑別診断を参照。その他に鑑別すべき疾患として、ポリオ後症候群、重症筋無力症なども挙げられる。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ 薬物療法ALSでは治療に関する高いエビデンスは少なく、その薬物療法に関して、長らくグルタミン酸拮抗剤であるリルゾール(商品名:リルテック)が唯一という状況であった。しかし、2015年6月、フリーラジカル消去剤として脳梗塞の治療薬として使用されていたエダラボン(同:ラジカット)が、ALSの進行を遅らせることが証明され、治療薬として認可された。当初点滴薬のみであったが、2022年12月に経口薬の製造販売が承認された。リルゾールは、生存期間を平均3ヵ月延長するとされる。ALSと診断された方に治療薬として処方することが勧められるが、同時に、投与する前に患者には薬の効果は顕著ではないこと、肝機能障害、貧血、その他の副作用が生じる可能性があることを充分説明した上で同意を得て使用する。なお、努力性肺活量(%FVC)が60%を切っている患者への投与は、効果が期待できないとの理由で避けるべきである。一般的には、1回50mgを朝、夕食前に内服する。エダラボンのALSに関する進行抑制効果は、発症後2年以内で、呼吸機能が保たれている患者群において確認された。一方、ALS重症度分類4度以上、%FVCが70%未満に低下している症例での有効性は確認されていない。実際の臨床では、病期・状態にかかわらず、すべてのALS患者に投与可能とされているが、投与はALSの治療経験を持つ医師と連携しながら実施する。経口剤は、1日1回5mL(エダラボンとして105mg)を空腹時に投与する。投与期と休薬期を組み合わせた28日間を1クールとし、第1クールは14日間連続投与した後、14日間休薬する。第2クール以降は、14日間のうち10日間投与する投与期の後、14日間休薬し、以後同様のサイクルで投与を続ける。家族性ALSのうちで最も頻度の高いSOD1遺伝子変異を有する症例に対して、蛋白合成を抑制するアンチセンスヌクレオチドである「トフェルセン」の髄腔内投与が米国および欧州において認可された。ALSの機能評価スケールでの有意な改善は認められなかったが、髄液中のSOD1蛋白質濃度が低下し、血漿中のNfL濃度の低下が認められた。対症療法として、痙縮に対する理学療法、抗痙縮薬の投与などを行う。流涎に対して、抗コリン作用を有する三環系抗うつ薬などの効果が報告されている。ALS患者においてしばしば認められる強制泣き・笑いなどの情動調節障害に対しては、選択的セロトニン再取り込み阻害薬やセロトニン・ノルアドレナリン選択的再取り込み阻害薬で効果があるとされ、試みる価値がある。米国ではデキストロメトルファンとキニジンの合剤が承認されているが、わが国では未承認である。疼痛や精神不安、不眠に対しては、呼吸抑制などのリスクがあることを患者および家族に説明した上で、麻薬を含む鎮痛薬、抗不安薬、抗うつ薬などの積極的薬物治療を行うべきである。■ 呼吸管理ALSは、呼吸筋を含む全身筋の脱力を来す疾患で、呼吸補助を行わなければ呼吸不全がその死因となることが多い。すなわち適切な呼吸補助と全身管理を行えば長期の生存も期待できるが、その際問題になることとして、一度装着した呼吸器を外すことは現在のわが国では難しいこと、呼吸器を装着した患者が長期入院できる医療施設が限られるため、在宅での療養を選択せざるを得ず、患者家族の負担が過大となる点が挙げられる。呼吸補助に関しても、まずマスクを用いた非侵襲的な呼吸補助(non-invasive ventilation:NIV)を選択し、その後気管切開による侵襲的な呼吸補助(tracheotomy (and)invasive ventilation:TIV)へと変更する方法、最初から侵襲的呼吸補助を行うなどの選択が考えられる。呼吸補助が検討されるべき時期として目安となる基準を提示しているガイドラインもあるが、遅くとも呼吸障害に関連した臨床症状(呼吸苦、朝の頭痛、小声など)が認められた段階で開始するようにする。以前は%FVCが65%未満での導入が検討されていたが、より早期に導入することで生存期間が延長するとの報告もある。■ 栄養管理ALSでは、嚥下障害の進行により、栄養不良、脱水、誤飲などの危険にもさらされる。栄養状態が不良だと予後不良となることが報告されており、適切な栄養管理を行う必要がある。現在、経皮的胃瘻造設術(percutaneous endoscopic gastrostomy:PEG)が比較的安全に施行できることから、球麻痺症状のある患者では、窒息、誤飲の危険を回避するために早めにPEGを施行しておくことが勧められる。■ リハビリテーション比較的急速に進行する筋萎縮・脱力に対して、筋力増強あるいは維持を目的とした運動療法が有効か否かという疑問がある。現在でもこれに対する確かな答えはないが、定期的な軽い運動療法を施した群では、とくに運動療法を行わなかった群と比べて、有意性は認められないものの、一部のADL評価スケールで障害度が軽くなる傾向が報告されている。ただし一般的に筋力の改善は期待できない。強い運動強度を負荷することに関しては、逆に悪影響を及ぼした可能性を示唆するものが目立ち、積極的なリハビリを推奨することはできない。近年、ロボット・リハビリテーション医療が発展して装着型サイボーグ“Hybrid Assistive Limb”(商品名:HAL)が保険適用となり、歩行距離の延長、歩行システムの再構築に有用であるとの報告もある。4 今後の展望ここ数年、ALS患者より樹立したiPS細胞を利用した薬剤スクリーニングで、有効とされた薬剤をはじめとしたいくつかの薬剤の臨床試験が実施され、新たな薬剤として認可されるものがでることが期待される。また、10年ぶりにガイドラインの改定が行われ「筋萎縮性側索硬化症(ALS)診療ガイドライン 2023」が刊行された。5 主たる診療科脳神経内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)神経変性疾患に関する調査研究班(医療者向け診療、研究情報)JaCALS(医療者向け診療・研究情報)患者会情報日本ALS協会(患者とその家族会の情報)1)「筋萎縮性側索硬化症診療ガイドライン」作成委員会編集. 日本神経学会監修. 筋萎縮性側索硬化症(ALS)診療ガイドライン2023. 南江堂;2023.公開履歴初回2013年6月13日更新2016年1月19日更新2024年8月22日

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高齢視覚障害者のうつ、段階的ケアの長期効果を確認/BMJ

 うつ病や不安症がみられる高齢視覚障害者への、経過観察→ロービジョン施設セラピストによる自立支援指導等介入→かかりつけ医による治療という段階的ケアの長期有効性が、オランダ・アムステルダム自由大学医療センターのHilde P A van der Aa氏らによる、通常ケアと比較した多施設無作為化試験の結果、報告された。段階的ケアについては先行研究で、高齢視覚障害者のうつ症状を短期的に軽減することは示されていたが、長期的な効果について、また不安症に対するエビデンスは不足していた。今回の検討では約1年間にわたる介入を必要に応じて行い、2年時点で評価した結果だという。著者は、「本アプローチは、うつ病や不安症がみられる高齢視覚障害者の標準的な戦略(スクリーニング、モニタリング、介入、紹介)となりうるだろう」と述べている。BMJ誌オンライン版2015年11月23日号掲載の報告。4ステップ介入 vs.通常ケアのみの多施設無作為化試験 研究グループは、高齢視覚障害者(主に年齢関連の疾患による)に対し、通常ケアとの比較で段階的ケアが大うつ病性障害、気分変調症、不安障害の発症予防に有効か、またうつ病や不安症の改善に有効かを調べた。 50歳以上の265例を、段階的ケアプログラム+通常ケア群(131例)または通常ケアのみ群(134例)に無作為に割り付けた。 段階的ケアプログラムは4ステップから成り、第1ステップは研究者による経過観察期間(3ヵ月間)としベースラインと3ヵ月後に電話で約15分コンタクト、第2ステップはロービジョンリハビリテーションセンターの作業療法士(OT)による認知行動療法をベースとしたガイド下自立支援の提供(3ヵ月)、第3ステップは同センターのソーシャルワーカー(SW)、臨床心理士(psychologist)による問題解決療法の実施(3ヵ月)、第4ステップは、問題解決療法後もうつ病や不安症増大が認められる場合に、研究者が電話で患者とかかりつけ医を結び付ける介入を行った(患者に、かかりつけ医に紹介することを電話で連絡し、一方でかかりつけ医にさらなる治療や薬物療法の使用を検討するため患者と面談するよう電話で連絡。それぞれ電話は約15分間)。 主要アウトカムは、大うつ病性障害、気分変調症、および/または不安障害(パニック障害、広場恐怖症、社交不安症、全般性不安障害)の24ヵ月間の累積発生率。副次評価項目は、うつ症状、不安症、視覚関連QOL、健康関連QOL、視力喪失への適応の24ヵ月間の変化とした。うつ病等障害の24ヵ月累積発生率、介入群の相対リスク0.63 24ヵ月間の各障害累積発生率は、通常ケア群では62例(46%)に対し、段階的ケア群は38例(29%)であった。 介入は障害累積発生の減少と有意に関連しており(相対リスク:0.63、95%信頼区間[CI]:0.45~0.87、p=0.01)、イベントが発生するまでの時間(time to event)を考慮しても同関連は有意なままであった(補正後ハザード比:0.57、95%CI:0.35~0.93、p=0.02)。治療必要数(NNT)は、5.8(3.5~17.3)であった。 なお、検討では途中脱落率がかなり高かった(34.3%)が、2群間の割合に有意な差はなく、ステップ介入が通常ケアと変わらないものと受け入れられていることが示唆された。 一方で本試験では、レスポンダーが非レスポンダーよりも有意に若年であったことから(年齢差4.6歳、p<0.001)、著者は、「被験者はボランティアで本研究への参加を希望したが、一般的な高齢視覚障害者の代表とはいえない可能性がある」と指摘し、アウトカムの一般化についてはその点を差し引いて見なすべきとしている。

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球脊髄性筋萎縮症〔SBMA : Spinal and Bulbar Muscular Atrophy〕

1 疾患概要■ 概念・定義緩徐進行性の筋力低下・筋萎縮や球麻痺を示す成人発症の遺伝性運動ニューロン疾患である。単一遺伝子疾患であり、発症者には後述する原因遺伝子の異常を必ず認める。本疾患の病態にはテストステロンが深く関与しており、男性のみに発症する。国際名称はSpinal and Bulbar Muscular Atrophy(SBMA)であるが、報告者の名前からKennedy diseaseとも呼ばれる1)。わが国ではKennedy-Alter-Sung症候群と呼ばれることも多いが、本症は単一疾患であるため、症候群という表現は適切ではないとの意見もある。■ 疫学有病率は10万人あたり2人程度で、わが国の患者数は2,000~3,000人程度と推定されている。人種や地域による有病率の差は明らかではない。■ 病因X染色体上にあるアンドロゲン受容体(AR)遺伝子のCAG繰り返し配列の異常延長が原因である。正常では36以下の繰り返し数が、SBMA患者では38以上に延長している。このCAG繰り返し数が多いほど、早く発症する傾向が認められる。CAG繰り返しの異常延長の結果、構造異常を有する変異ARが生じる。この変異ARは男性ホルモン(テストステロン)依存性に下位運動ニューロンなどの核内に集積し、最終的には神経細胞死に至る。同様の遺伝子変異はハンチントン病や脊髄小脳変性症などの疾患でも認められ、CAGはグルタミンに翻訳されることから、これらの疾患はポリグルタミン病と総称される。SBMAでは他のポリグルタミン病とは異なり、世代を経るに従って発症が早くなる表現促進現象は軽度である。■ 症状1)神経症状初発症状として手指の振戦を自覚することが多く、しばしば筋力低下に先行する。四肢の筋力低下は30~60代で自覚され、下肢から始まることが多い。同じ時期に有痛性筋痙攣を認めることも多い。脳神経症状として代表的なものは、嚥下障害や構音障害などの球麻痺である。むせなどの嚥下障害の自覚がなくても、嚥下造影などで評価すると潜在的な嚥下障害を認めることが多い。喉頭痙攣による短時間の呼吸困難を自覚することもある。その他の脳神経症状として、顔面筋や舌の筋力低下・線維束性収縮を認める。線維束性収縮は安静時には軽度であるが、筋収縮時に著明となり、contraction fasciculationと呼ばれる。顔面や舌のほか、四肢近位部でも認められる。眼球運動障害は認めない。感覚系では下肢遠位部で振動覚の低下を認めることがある。腱反射は低下、消失し、Babinski徴候は一般に陰性である。小脳機能には異常を認めない。高次機能は保たれることが多いが、一部障害を認めるとした報告もある。2)随伴症状代表的な随伴症状として、女性化乳房を半数以上に認める。また、肝機能障害、耐糖能異常、高脂血症、高血圧症などをしばしば合併する。女性様皮膚変化、睾丸萎縮などを認めることもある。■ 分類とくに分類はされていない。同じ運動ニューロン疾患である筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis: ALS)は、球麻痺型など発症部位で分類することもあるが、SBMAでは一般的に行われていない。■ 予後四肢の筋力低下は緩徐に進行し、筋力低下の発症からおよそ15~20年の経過で、歩行に杖を必要としたり、車いすでの移動になったりすることが多い2)。進行に伴い球麻痺も高度となり、誤嚥性肺炎などの呼吸器感染が死因の大半を占める。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)厚生労働省の神経変性疾患に関する調査研究班が作成した診断基準を表に示す。家族歴がない症例の場合、特徴的な症状から臨床的な診断は可能だが、特定疾患の申請には遺伝子検査が必要となる。血液検査では、血清CKが異常高値を示す。また、血清クレアチニンは異常低値となることが多い。随伴症状に伴い、血液検査でもALT(GOT)やAST(GPT)、グルコース、HbA1c、総コレステロールの上昇などがしばしば認められる。髄液検査は正常である。筋電図では高振幅電位、interferenceの減少など神経原性変化を認める。感覚神経伝導検査において、活動電位の低下や誘発不能がみられることが多い3)。SBMA患者の約10%においてBrugada型心電図異常を認める報告がある4)。特に、失神の既往歴や突然死の家族歴がある症例では、検出率を上げるため右側胸部誘導を一肋間上げて、心電図を測定することが推奨される。病理学的には、下位運動ニューロンである脊髄の前角細胞および脳幹の神経核の神経細胞が変性・脱落するとともに5)、残存する神経細胞には核内封入体を認める6)。CAG繰り返しの異常延長によって生じる変異ARが、この核内封入体の主要構成成分である。筋生検では、小角化線維や群集萎縮といった神経原性変化が主体であるが、中心核の存在など筋原性変化も認める。鑑別診断として、ALSや脊髄性筋萎縮症(spinal muscular atrophy: SMA)の軽症型であるKugelberg-Welander病、多発性筋炎などがあげられる。とくに、進行性筋萎縮症(progressive muscular atrophy: PMA)と呼ばれる成人発症の下位運動ニューロン障害型の運動ニューロン疾患は、ALSよりも進行がやや遅いことがあり、SBMAとの鑑別が重要である。本症の臨床診断は、遺伝歴が明確で、本疾患に特徴的な身体所見を呈していれば比較的容易であるが、これらが不明瞭で鑑別診断が困難な症例では、遺伝子検査が有用である。現在、遺伝子検査は保険適用となっている。画像を拡大する3 治療 (治験中・研究中のものも含む)かつては男性ホルモンの補充療法や蛋白同化ステロイド投与、TRH療法などが試みられたこともあるが、これらの治療の有効性は確認されていない。現在のところ有効な治療法はなく、耐糖能異常や高脂血症などの合併症に対する対症療法が中心である。また、四肢の筋力低下に対する対症療法として、筋力維持のためのリハビリテーションを行うことも多い。球麻痺に対し、嚥下リハビリを行うこともある。これらのリハビリの具体的内容に関するエビデンスは確立されていない。重度の嚥下障害がある場合、胃瘻を造設するなどして経管栄養を導入する。呼吸障害が進行した症例では、NIPPVや気管切開を行ったうえでの人工呼吸管理が必要となるが、患者本人や家族に対するインフォームド・コンセントが重要となる。SBMAのモデルマウスを用いた研究によって、変異ARが下位運動ニューロンの核内に集積する病態が、男性ホルモン(テストステロン)依存性であることが解明された。テストステロンの分泌を抑制する目的でオスのSBMAモデルマウスに対して去勢術を施行したところ、核内に集積する変異ARの量は著しく減少し、運動障害などの神経症状が劇的に改善した。この治療効果は、黄体形成ホルモン刺激ホルモン(LHRH)アゴニストであるリュープロレリン酢酸塩(商品名:リュープリンほか)の投与による薬剤的去勢でも再現された7)。リュープロレリン酢酸塩は前立腺がんなどの治療薬として、すでに保険適用となっている薬剤であるため、SBMA患者で薬剤の有効性と安全性を検討するフェーズII試験が行われ、さらにフェーズIII試験に相当する医師主導治験(JASMITT)が実施された。その結果、リュープロレリン酢酸塩がSBMAの病態を反映するバイオマーカーとして重要な陰嚢皮膚における変異ARの核内集積を抑制するとともに、血清CKも低下させることが判明した8)。また、有意差は認めなかったものの嚥下機能の改善を示唆する結果が得られたため、追加の治験も実施され、今後の承認申請を目指している。リュープロレリン酢酸塩とは作用機序は異なるものの、男性ホルモン抑制作用をもつ5α還元酵素阻害薬であるデュタステリド(同:アボルブ)の臨床応用を目指した第II相試験が、アメリカで実施された。この試験でも嚥下機能などで改善傾向が示されるなど、前述したリュープロレリン酢酸塩の治験に近似した結果が得られたが、これも承認には至っていない9)。4 今後の展望最近では、SBMA患者からもiPS細胞が樹立され10)、治療薬のスクリーニングやSBMAの病態解明に寄与することが期待されている。また、マイクロRNAや片頭痛の治療に用いられるナラトリプタンもSBMAモデルマウスの表現型を改善することが報告されており、今後の臨床応用が期待されているが、具体的な臨床試験の計画には至っていない。5 主たる診療科神経内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究情報難病情報センター 球脊髄性筋萎縮症(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報SBMAの会(患者とその家族向けのまとまった情報)1)Kennedy WR, et al. Neurology.1968;18:671-680.2)Atsuta N, et al. Brain.2006;129:1446-1455.3)Suzuki K, et al. Brain.2008;131:229-239.4)Araki A, et al. Neurology.2014;82:1813-1821.5)Sobue G, et al. Brain.1989;112:209-232.6)Adachi H, et al. Brain.2005;128:659-670.7)Katsuno M, et al. Nat Med.2003;9:768-773.8)Katsuno M, et al. Lancet Neurol.2010;9:875-884.9)Fernandez-Rhodes LE, et al. Lancet Neurol.2011;10:140-147.10)Nihei Y, et al. J Biol Chem.2013;288:8043-8052.公開履歴初回2013年04月25日更新2015年11月17日

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日本COPDサミット~健康寿命延長に向けて変わるCOPD予防・治療の最前線~

 11月5日都内(文京区)にて、2015年度日本COPDサミットが開催された(主催:一般社団法人GOLD日本委員会/一般社団法人日本呼吸器学会/公益財団法人日本呼吸器財団)。 本年の世界COPDデーは11月18日であり、この日に向け、世界各国でさまざまな啓発イベントが実施されている。本サミットもその一環として企画された。 冒頭、三嶋 理晃氏(日本呼吸器学会 理事長)は、「各団体がタッグを組むことにより、インパクトある啓発活動につなげ、各メディア・自治体・医療関係者・一般市民への情報発信を高める後押しをする」と本サミットの目的を述べた。 以下、当日の講演内容を記載する。COPDはもはや肺だけの疾患ではない COPDはタバコの煙を主因とする閉塞性の肺疾患であるが、近年COPDは全身性の炎症疾患と考えられるようになってきた。実際、COPDは肺がん・肺炎・肺線維症などの肺疾患だけでなく、糖尿病、動脈硬化、骨粗鬆症、消化器病、うつ・記銘力低下などへの影響が報告されている。 この点について、長瀬 隆英氏(GOLD日本委員会 理事)は、なかでも糖尿病には注意が必要だと述べた。糖尿病患者がCOPDを併存すると生命予後が悪くなること1)、反対に、血糖コントロールが不良であると肺機能が有意に低下することが報告されているからである2)。しかしながら、COPDがさまざまな疾患に影響を及ぼす理由については、いまだ不明な点もあるため、今後さらなる研究が必要といえそうだ。受動喫煙は他人をむしばむ深刻な問題 受動喫煙のリスクについては、これまでも問題となってきた。加藤 徹氏(日本循環器学会禁煙推進委員会 幹事)は、「さらなる受動喫煙の問題は、分煙では防ぐことができない点である」と強調した。その理由は、「受動喫煙」の10%はPM2.5粒子成分(径<2.5μm)と同じくらいの非常に小さな粒子であるため、分煙してもドアなどの隙間から漏れ出るからである。さらに、この小さな粒子は、一度肺内に侵入すると肺胞の奥深くにまで到達し、一部は呼出されるが、大部分が湿った空気で膨張して居座り、悪さをする。仮に煙を直接吸わなかったとしても、喫煙後3~5分間は喫煙者からこれらの粒子が呼出されることがわかっているため、注意が必要である。 加藤氏は「喫煙をしなくても受動喫煙に曝露することで、心筋梗塞や脳卒中、喘息、COPDになりやすくなる」と述べ、屋内全面禁煙の重要性を強調した。すでに禁煙推進学術ネットワーク(2015年10月現在、27学会が参加)から2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて「受動喫煙防止条例」制定の要望書が東京都に提出されている。今後、受動喫煙を防止するための積極的な対策が望まれる。COPDで注意すべき3つの合併症 COPDではさまざまな合併症が存在するが、石井 芳樹氏(日本呼吸器財団 理事)は「肺がん、気腫合併肺線維症、喘息にはとくに注意が必要」と述べた。【肺がん】 COPDは喫煙とは独立した肺がん発症のリスク因子であり、10年間の肺がん発生率は約5倍にもなるという3)。さらに、COPD患者では、喫煙量が同等であっても肺がんによる死亡率が7倍も増加すると報告されている4)。これに対し加藤氏は、「早期にCOPDを発見し、禁煙をすることが死亡率を低下させるうえで何より重要」と述べた。【気腫合併肺線維症】 気腫合併肺線維症の特徴は、肺気腫による閉塞性障害と肺線維症による拘束性障害が合併すると、呼吸機能の異常が相殺されマスクされる点にあるという。2つの病態が重複することで一酸化炭素拡散能の低下がさらに増強され、低酸素血症や肺高血圧が悪化する。COPDは肺がんとの合併率が高いが、肺線維症が合併すると肺がん発症率がさらに高くなるため5)、慎重な経過観察が重要である。【喘息】 近年、COPDと喘息を合併する、オーバーラップ症候群が問題となっている。COPDと喘息は異なる病態の疾患であるが、咳、痰、息切れ、喘鳴など症状の鑑別が、とくに喫煙者と高齢者においては難しい。このオーバーラップ症候群は、年齢とともに合併率が増加するといわれている6)。喘息を合併することで、COPD単独の場合よりも増悪頻度は高くなり、重症な増悪も多くなるという7)。加藤氏は、それにもかかわらず喘息患者が喫煙をしているケースが散見される、として「とくに喘息患者では禁煙指導を徹底して、オーバーラップ症候群への進展を防ぐことが重要である」と述べた。COPDにおける地域医療連携のあり方 COPDの診断には呼吸機能検査が必須であるが、一般の開業医では難しいのが現状である。このことに関して、中野 恭幸氏(滋賀医科大学内科学講座 呼吸器内科 病院教授)は、「手間がかかる」、「検査時に大きな声を出さないといけない」、「数値が多すぎて理解が難しい」などを理由として挙げた。こうしたことも相まって、COPD患者の多くが未診断・未治療であることが問題となっているが、呼吸器専門医だけでは、多くのCOPD患者を管理することは難しい。 このような事態を受けて、滋賀県では数年前から地域医療連携への取り組みを始めた。専門医が病院で呼吸機能検査やCTを行い、その結果を基に標準的治療方針を決定し、その後は、一般開業医が担当する。さらに、急性増悪で入院が必要な際には専門医が引き受ける、などの体制を整えている。 しかしながら、専門医に紹介するときには、COPDがかなり進行している場合も多く、いかに早い段階で専門医に紹介するかが焦点となりそうだ。中野氏は「この取り組みは現在、大津市医師会で実施しているが、今後は滋賀県全体のパスになることが望まれる」と述べ、そのためには医師会主導で進めることも重要だとした。 その他、滋賀県では、医薬連携にも力を入れている。近年、COPDには、さまざまな吸入デバイスが登場し、デバイス指導がより一層重要な意味を持つようになった。そのため滋賀県では、地域の関係者が連携し、吸入療法の普及と質的向上を図ることを目的として、滋賀吸入療法連携フォーラム(SKR)が結成された。本フォーラムは年7~8回開催され、会場ではさまざまなデバイスに触れることができる。その他の医療従事者に対しても講習会を開くなどして、多職種でチームとなってCOPDに向き合う体制づくりを行っている。COPDにおける運動療法の役割 「重度のCOPD患者では、呼吸機能だけでなく、精神的な悪循環にも焦点を当て、QOLを重視することが大切」と黒澤 一氏(日本呼吸器学会 閉塞性肺疾患学術部会 部会長)は述べた。そのうえで、日本での普及が十分とはいえない呼吸リハビリテーション(運動療法)の有用性について触れた。 黒澤氏は「強化リハビリテーションにより筋肉がついたり、関節が柔らかくなることにより、体を動かすときの負荷が減り、呼吸機能的にも精神的にも余裕ができる」と述べた。しかしながら、問題は、強化リハビリテーションにより一時的に改善がみられても、飽きてしまい続かないケースが多いことだという。これらのことから、「負荷の大きいリハビリテーションではなく、活動的な生活習慣を送ることを意識すべき」と黒澤氏は述べた。そのうえで、自分のペースで動作をすることができるスポーツが有効として、例として「フライングディスク」を挙げた。フライングディスクを行うことによって、身体活動性が向上し身体機能の強化にもつながるという。さらに生きがいや仲間ができることによって前向きになり、呼吸機能にも良い影響が及ぶようだ。だが、この競技へのサポート体制はまだ十分ではなく、今後の課題と言えそうだ。 最後に、福地 義之助氏(GOLD日本委員会 代表理事)は、「今後COPDの一般国民への認知率向上を推し進めていくとともに、臨床医師の疾患に対する理解や診断・治療力の向上が必要である。さらに、COPDは全身に及ぶ疾患であることから、他の診療科との連携強化にも力を入れていく」と締めくくった。(ケアネット 鎌滝 真次)参考文献1)Gudmundsson, et al. Respir Res. 2006;7:109.2)Yeh HC, et al. Diabetes Care. 2008;31:741-746. 3)Skillrud DM, et al. Ann Intern Med. 1986;105:503-507. 4)Kuller LH, et al. Am J Epidemiol. 1990;132:265-274.5)Kitaguchi Y, et al. Respirology. 2010;15:265-271.6)Soriano JB, et al. Chest. 2003;124:474-481.7)Hardin M, et al. Respir Res. 2011;12:127.

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パーキンソン病への免荷歩行リハビリ どれほど有効?

 パーキンソン病患者のリハビリテーションの1つとして、機械で足元にかかる重みを軽減した状態で流れるベルトの上を歩行する「部分免荷トレッドミル歩行訓練(PWSTT)」がある。PWSTTのパーキンソン病患者における有用性はこれまで検討されてきたが、運動を行わない場合や、従来の歩行訓練を行った場合と比較した検証はない。このことから、米国イリノイ大学のMohan Ganesan氏らは前向きに研究を行い、運動を行わない群、従来の歩行訓練を行った群と比較して、PWSTを行った群で歩行能力指標が有意に改善することを明らかにした。Archives of physical medicine and rehabilitation誌2015年9月号掲載の報告。 研究グループは、安定量のドパミン受容体作動薬を使用中の特発性パーキンソン病患者60例(平均年齢58歳[SD 15±8.7])を、「歩行訓練を行わない群」「従来の歩行訓練群」「PWSTT群」(各群n=20)の3群に無作為に割り付けた。歩行訓練はどちらも1日30分、週4日間、4週間実施した。主要アウトカムは臨床的重症度と歩行能力指標とした。臨床的重症度はパーキンソン病統一スケール(UPDRS)とそのサブスコアで測定した。歩行能力指標は歩く速度・左右のステップの長さとその変動係数であり、2分間のトレッドミル歩行と10m歩行テストより測定・算出された。アウトカムは、ベースライン時および2週、4週時に評価した。 主な結果は以下のとおり。・「従来の歩行訓練群」と「PWSTT群」では、4週間の歩行訓練により、UPDRS総スコアの有意な改善が見られた。(ベースライン時 vs.4週時 各々p=0.03、p<0.001)・「PWSTT群」は、ベースラインと比較して、4週時においてすべてのUPDRSサブスコア、すべての歩行能力指標で有意な改善を示した。・「PWSTT群」は、「従来の歩行訓練群」と比較して、4週時にすべての歩行能力指標を有意に改善した。 研究グループは、「PWSTTは、パーキンソン病患者における臨床および歩行能力のアウトカムを改善するための有望な介入ツールだ」と結論付けている。

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カルシウム製剤について

【治療薬】カルシウム製剤について、教えてください【骨粗鬆症】牛乳が苦手、小魚が食べられないというカルシウムが不足しがちな人向けのお薬です。骨をつくるカルシウムを、お薬のかたちで補充します。監修:習志野台整形外科内科 院長 宮川一郎 氏Copyright © 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.

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