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急性呼吸不全のICU入院患者に標準化した多面的リハビリテーションの早期介入を行うと入院期間を短縮できるのか?(解説:山本 寛 氏)-572

 急性呼吸不全の患者の予後は不良であり、もし生存しても身体機能の低下が待っている。こうした患者の身体機能を維持するためには、患者ごとに異なるアプローチが必要なことも多い。これまでにも、ICU入院患者に対する身体リハが入院期間を短縮したり、身体機能を改善させたりといった効果が報告されてはいるが、異論もあるところである。標準化された多面的なリハビリテーションによる早期介入が、ICUに入室した急性呼吸不全の患者の転帰を改善させるかもしれないと考えた著者らは、急性呼吸不全患者に対して、標準化された多面的なリハビリテーション(Standardized rehabilitation therapy;SRT)で早期介入を行った場合と、通常のICUケアを行った場合とを比較検討した。 試験デザインは、単施設(Wake Forest Baptist Medical Center, NC)、ランダム化比較試験である。ICUで機械的人工換気を要する急性呼吸不全の患者300例(平均58歳、うち女性が55%)をSRT群(n=150)と通常ケアを受ける群(n=150)とにランダムに割り付けた。試験期間は2009年10月から2014年5月までで、6ヵ月の観察期間が設定されている。 SRT群の患者には、退院までの毎日、他動的関節可動域訓練、理学療法、漸増抵抗訓練を行った。通常ケア群の患者には、平日のみ、とくに臨床チームから依頼があった場合のみ理学療法を行った。SRT群では、中央値で8.0日(IQR;5.0~14.0)の他動的関節可動域訓練、5.0日(IQR;3.0~8.0)の理学療法、3.0日(IQR;1.0~5.0)の漸増抵抗訓練が行われた。通常ケア群に対する理学療法施行日数の中央値は、1.0日(IQR;0.0~8.0)であった。 ICU在室中、退院後2、4、6ヵ月後の各ポイントで、評価者盲検で各種のテストが行われた。主要評価項目は、入院期間(hospital length of stay;LOS)に設定された。副次的評価項目は人工呼吸器装着期間、ICU入室日数、簡易身体能力バッテリー(Short Physical Performance Battery;SPPB)スコア、健康関連QOL(36-item Short-Form Health Survey;SF-36)、日常生活の困難さを評価する指標となるFunctional Performance Inventory(FPI)スコア、認知機能を評価するMini-Mental State Examination(MMSE)、握力、ハンドヘルド・ダイナモメーターで測定した筋力であった。 結果であるが、SRT群のLOSは10日(IQR;6~17)、通常ケア群のLOSも10日(IQR;7~16)であり、両群間で有意差を認めなかった(median difference 0 [95%CI:−1.5~3]、p=0.41)。人工呼吸器装着期間やICU入室期間にも差がなかった。6ヵ月後の握力にも差はなく(difference 2.0kg [95%CI:−1.3~5.4]、p=0.23)、ハンドヘルド・ダイナモメーターで測定した筋力も有意な差を認めなかった(difference 0.4lb [95%CI:−2.9~3.7]、p=0.82)。SF-36でみたphysical health(difference 3.4 [95%CI:−0.02~7.0]、p=0.05)、mental health(difference 2.4 [95%CI:−1.2~6.0]、p=0.19)、さらにMMSEでみた認知機能についても有意差を認めなかった(difference 0.6 [95%CI:−0.2~1.4]、p=0.17)。一方、SPPBスコア(difference 1.1 [95%CI:0.04~2.1]、p=0.04)、SF-36の身体機能スケール(difference 12.2 [95%CI:3.8~20.7]、p=0.001)、FPIスコア(difference 0.2 [95%CI:0.04~0.4]、p=0.02)のいずれも、6ヵ月後のフォローアップ時点で比べるとSRT群のほうが有意に良好な結果であった。 以上から著者らは、急性呼吸不全で入院した患者に対しては、標準化した多面的リハビリテーションによる早期介入を行っても入院期間の短縮にはつながらないと結論している。 通常ケア群では、入院期間のわずか12%の日数しか身体リハビリを行っておらず、漸増抵抗訓練に至ってはまったく行っていない。しかも、SRT群と違って平日しかリハビリの介入がなされていない。にもかかわらず、SRTを行っても入院期間を短縮できなかったのはなぜなのか? 6ヵ月後のフォローで、副次的評価項目のSPPBスコア、SF-36(physical)、FPIスコアのいずれも良好だったことから、critical care領域での効果を探る際に、その長期効果を主要評価項目に設定した臨床試験を計画する価値は、今後ありそうである。 また、著者らも指摘していることだが、フォローアップ期間の脱落者が24%もいることは問題である。試験開始に当たり、脱落率を10%と予想してサンプル数を設定しているのだから、結果の解釈には当然バイアスを与えてしまう。脱落の理由は論文上で明確に記載すべきである。単施設で行われた研究である点も、本研究の限界といえる。著者らは“no clinical difference”としているが、SRT群では基礎肺疾患を有する患者がやや多い点も気になるところである(SRT群34.0%、通常ケア群30.7%)。著者らが示したSupplement dataによると、 長期フォローができなかった、基礎肺疾患のある患者の割合はSRT群で36.4%、通常ケア群で17.4%と、SRT群で多いようにみえる。基礎肺疾患のある患者がSRT群に多かったことがnegative studyとなった一因かもしれないし、またそうした患者の長期フォローができなかったことで、結果的にSRT群の長期フォローアップ後の結果を良好にみえるのかもしれない。また、ICU入院中の鎮静プロトコルがまちまちであった。人工呼吸器装着中の鎮静は必要だが、早期リハビリテーションの介入効果に影響を与える可能性がある。最近、通販などで話題になっているEMSのような手法が有効かどうかについても、今後検討されるかもしれない。

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てんかん治療のゴールとは

 てんかんの主症状である「てんかん発作」は適切な治療により、多くの患者で抑制が可能となる。しかし、患者が就学・就労をはじめとした普通の暮らしをしていくためには発作の管理だけでなく、患者の「リカバリー」をサポートすることが必要だ。 「リカバリー」を実現するためにはどのような治療・支援が必要だろうか。2016年7月12日に開催された「てんかん患者さんのリカバリー」と題したプレスセミナーの内容から考えていく。(大塚製薬株式会社・ユーシービージャパン株式会社共催、講師:医療法人福智会 すずかけクリニック 院長 福智 寿彦 氏)リカバリーの難しさ 18歳以上のてんかん患者を対象としたアンケート調査(平成19年 日本てんかん協会調べ)では、約75%の人が就労していないことが明らかとなっている。なぜ患者の就労は難しいのだろうか。 その要因には「てんかん発作」の影響が大きい。直接仕事に支障がなくても職場で発作を起こすことから解雇される、発作への対応方法が分からないから受け入れられないなど、たった年に1回発作が起こる人であっても、企業側は受け入れをためらうことがある。また、発作のときに休まざるをえないことで肩身が狭いといった患者側の悩みもある。患者が抱える発作以外の“困難” このように「てんかん発作」の存在は就労に大きな影響を及ぼすが、就労を阻害する要因は発作以外にもある。たとえば、抗てんかん薬による副作用、発作時の周囲の反応による傷つき体験、過保護な親子関係、周囲からの偏見なども要因となる。患者のリカバリーを実現するためには、このような『発作消失』以外の要素に目を向ける必要がある。 そして、講師の福智氏は「発作をなくす・抑制することはリカバリーの十分条件ではない」と語る。薬物・外科治療によって発作抑制が可能になっても、その治療により副作用が発現することで、患者の人生の何かを犠牲にするリスクがある。患者一人ひとりの人生を見つめ、犠牲になるものは本人の望む人生においてどの程度重要視されるべきかを考えることは重要だ。本人が自分らしい生き方を実現できるようになる支援こそが、リカバリーの目指すべき姿である。リカバリー支援を実現するために また、福智氏は「社会、医療従事者、家族、そして自分自身による偏見がある限り、発作を減らすだけでは患者の社会参加は進まない。疾患啓発活動も治療の一環として行おうという動きがある」と話す。 福智氏が運営委員長を務める「全国てんかんリハビリテーション研究会」では、てんかん啓発キャンペーン「パープルデー」の日本での運営を担っている。「パープルデー」とは、3月26日を記念日とした全国同時開催のてんかん啓発キャンペーンだ。紫色を身に着け、てんかんを持つ人へ応援のメッセージを発信する。誰もが気軽に、楽しく参加することを目指しており、これまでにはゲストにアイドルを誘致した啓発イベントの開催、紫色の公式Tシャツを身に着け皇居の周りをランニングする「皇居RUN」の開催などを行っている。こうしたイベントを通して、世界各国でてんかんの正しい情報が広まっていく。またこのようなサポートは、患者や家族が病気を乗り越え、社会へ復帰していくための力となっていく。 てんかん患者のリカバリーを実現するには、患者がどのようなことに苦しんでいるかを医療従事者、社会がより理解を深めていくことが重要となる。リカバリーをサポートする治療・活動がさらに充実し、一人でも多くのてんかん患者がよりよい人生を送ることが望まれる。

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転倒しやすい場所を覚える

【骨粗鬆症】【転倒防止対策】転びやすい場所、注意する場所を教えてください●家の内外の転びやすい場所とその特徴を覚えましょう!●特に床が濡れている(例.お風呂場、雨上りのマンホールなど)階段や段差(例.駐車場の車止め、部屋の仕切りなど)地面が不安定(例.路上のデコボコなど)こうした場所は特に注意してください。監修:習志野台整形外科内科 院長 宮川一郎 氏Copyright © 2016 CareNet,Inc. All rights reserved.

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転倒防止、靴選びは慎重に

【骨粗鬆症】【転倒防止対策】転ばないために、注意することを教えてください靴がブカブカかかとがない足の裏が平らでない●転ばないように、靴は慎重に選びましょう!足の大きさに合わない(サイズ違い)つまずきやすい(つっかけ、草履など)バランスを崩しやすい(ハイヒールなど)これらの靴やサンダル、はき物はダメ!!監修:習志野台整形外科内科 院長 宮川一郎 氏Copyright © 2016 CareNet,Inc. All rights reserved.

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急性呼吸不全のICU入院患者に早期リハビリは有効?/JAMA

 急性呼吸不全で人工呼吸器を要するICU入室患者に対し、早期からリハビリ療法を行っても、ICU通常治療を行った場合に比べ、入院期間の短縮にはつながらなかった。米国・ケンタッキー大学のPeter E. Morris氏らが、300例を対象に行った無作為化比較試験の結果、明らかにした。JAMA誌2016年6月28日号掲載の報告。人工呼吸器使用日数やICU入院日数、SPPBスコアなども比較 研究グループは2009年10月~2014年5月にかけて、単施設(ノースカロライナ州にあるウェイクフォレスト・バプティスト医療センター)にて、急性呼吸不全で人工呼吸器を要する患者300例を対象に無作為化比較試験を行った。被験者を無作為に2群に分け、一方には標準化したリハビリ療法(SRT)を毎日実施。もう一方の対照群には通常のICUにおける治療を行い、臨床チームから要請があった場合にのみ平日に理学療法を行った。SRT群には、受動的関節可動域訓練(実施日数中央値:8.0日)、理学療法(同:5.0日)、筋力増強訓練(同:3.0日)を行った。対照群の理学療法実施日数中央値は、1.0日だった。 主要評価項目は、入院期間だった。副次的評価項目は、人工呼吸器使用日数やICU入室日数、身体能力を評価するSPPB(Short Physical Performance Battery、簡易身体能力バッテリー)スコア、健康関連QOLの尺度であるSF-36(36-item Short-Form Health Surveys)スコア、日常生活難易度を評価するFPI(Functional Performance Inventory)スコア、認知機能を評価するMMSE(Mini-Mental State Examination)スコア、握力・ハンドヘルド・ダイナモメーター測定力だった。  両群ともICU退室時および退院時、2、4、6ヵ月時に、評価者盲検テストを受けた。6ヵ月後のSPPB・SF-36身体機能スコアではSRT群が高値 被験者の平均年齢は58歳、うち女性は55%だった。入院日数の中央値は、対照群が10日(四分位範囲:7~16)に対し、SRT群も10日(同:6~17)と同等だった(p=0.41)。人工呼吸器使用日数やICU入院日数についても、両群で有意差はなかった。 6ヵ月後の握力(p=0.23)やハンドヘルド・ダイナモメーター測定力(p=0.82)、SF-36身体スコア(p=0.05)、SF-36メンタルヘルススコア(p=0.19)、MMSEスコア(p=0.17)のいずれについても、両群で同等だった。 一方で、6ヵ月後のSPPBスコアは、SRT群が対照群より有意に高かった(群間差:1.1、p=0.04)。SF-36身体機能スコア(群間差:12.2、p=0.001)、FPIスコア(群間較差:0.2、p=0.02)についても、SRT群が対照群より有意に高かった。

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日常生活でできる運動はあるの?

【運動療法】日常生活でできる運動を教えてください【骨粗鬆症】料理、洗濯、掃除などの日常家事も立派な運動になります!また、普段の生活で、なるべく階段を使うことも、運動になります。意識的に体を動かして、骨を鍛えましょう。監修:習志野台整形外科内科 院長 宮川一郎 氏Copyright © 2016 CareNet,Inc. All rights reserved.

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Wii Sportsは脳卒中のリハビリになりうるか?【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第70回

Wii Sportsは脳卒中のリハビリになりうるか? >Wii(Wikipediaより使用) 長らく任天堂のゲーム機として君臨してきたWii Uですが、2018年3月期に生産を終える可能性があるとされています。次はNXという新しいハードウェアを発売するようです。 Adie K, et al. Does the use of Nintendo Wii SportsTM improve arm function? Trial of WiiTM in Stroke: A randomized controlled trial and economics analysis. Clin Rehabil. 2016 Mar 14. [Epub ahead of print] この研究の目的は、任天堂Wiiのソフト「Wii Sports」が、脳卒中後の上肢の機能のリハビリテーションになりうるかどうかを検討した、多施設共同ランダム化比較試験です。脳卒中後リハビリテーションは在宅ベースで実施され、Wiiも自宅でやってもらいました。参加したのは、24~90歳の脳卒中後に上肢の脱力がみられた240人の患者さんです。彼らを、自宅で毎日Wiiをやってもらう群、あるいは上肢エクササイズをやってもらう群にランダムに割り付けました。プライマリアウトカムは、ランダム化から6週間目の上肢機能としました(ARAT:アクションリサーチアームテスト)。また、QOLや6ヵ月後の上肢機能なども調べました。209人(87.1%)がこの試験を完遂しました。さて、結果はどうだったでしょうか。残念ながら、Wiiは上肢エクササイズには勝てませんでした。プライマリアウトカムに有意差はみられなかったのです(ARAT平均差-1.7、95%信頼区間-3.9~0.5、 p=0.12)。QOLや長期上肢機能にも有意差はありませんでした。Wii Sportsは上肢エクササイズと同等の効果があるものの、コストがかかるという結論になってしまいました。うーむ、ザンネン…。インデックスページへ戻る

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高齢者の「噛む力」と死亡リスク

 70歳時の最大咬合力は、日本人高齢男性における全死因死亡率と独立して関連することが、新潟大学の岩崎 正則氏らによる研究で明らかになった。この研究データは、口腔機能と高齢者の健康との関連についての追加エビデンスになりうる。Journal of oral rehabilitation誌オンライン版2016年4月15日号の報告。 高齢者における口腔機能が死亡率に及ぼす影響に関して、情報は限られている。そこで著者らは、口腔機能、最大咬合力の客観的尺度が高齢者の死亡率と関連しているかどうかを検証するため、13年間追跡する前向きコホート研究を行った。 対象は、ベースライン時に70歳であった日本人559人(男性282人、女性277人)。ベースライン時に健康診断・歯科検診・アンケート調査を行い、電子記録装置(Occlusal Force-Meter GM10)を用いて最大咬合力を測定した。その後、生命状態を確認するために13年間フォローアップ調査を行った。性別で層別化し、Cox比例ハザード回帰モデルを用いて、最大咬合力の三分位間で生存率を比較した。 主な結果は以下のとおり。・13年間で111人が死亡した(男性82人、女性29人)。・単変量解析の結果、男性において最大咬合力の最低群は、最高群と比較して全死因死亡リスクが増加していた(ハザード比[HR] 1.94、95%CI:1.13~3.34)。この関連は、交絡因子の調整後も有意であった(調整HR 1.84、95%CI:1.07~3.19)。・逆に、女性においては、最大咬合力と全死因死亡率との間に関連は認められなかった。

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運動は効果あるの?

【運動療法】運動の効果について、教えてください運動前【骨粗鬆症】運動後運動は、骨量の維持や増加に役立ちます!毎日できそうな、自分に合った運動を見つけ、継続しましょう(その際、少し息があがるくらいの運動が良い効果をうみます。脈拍は1分間に110~130くらいが目安です)。監修:習志野台整形外科内科 院長 宮川一郎 氏Copyright © 2016 CareNet,Inc. All rights reserved.

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気管支内コイル治療は重症肺気腫患者の運動耐容能を改善させるのか?(解説:山本 寛 氏)-549

 本研究は、肺気腫に対する気管支内コイル治療の効果と安全性を検討するため、2012年12月から2015年11月まで、北米21施設、欧州5施設が参加して315例を対象に行われた。患者は、ガイドラインに準拠した通常ケア(呼吸器リハビリテーション、気管支拡張薬の投与)のみを行う群(n=157)と、これに加えて両側気管支内にコイル治療を行う群(n=158)とに無作為に割り付けている。コイル治療群では、2回の治療を4ヵ月間隔で行い、1肺葉当たり10から14個のコイルを気管支鏡を用いて埋め込んだ。治療前と治療12ヵ月後の6分間歩行距離の変化を主要評価項目とし、6分間歩行距離の改善割合、SGRQ (St. George’s Respiratory Questionnaire)を用いたQOL(Quality of Life)の変化、そして1秒量の変化率がそれぞれ副次評価項目として設定されている。 その結果、6分間歩行距離の12ヵ月間での変化量はコイル治療群で+10.3m、通常ケア群で-7.6mであった。その群間差は14.6m(97.5%CI:0.4m~∞、片側p値:0.02)であり、有意にコイル治療群で優れていた。1秒量の変化率は中央値で7.0%(97.5%CI:3.4%~∞、片側p値0.01)であり、やはりコイル治療群で大きな改善が示された。SGRQスコアの群間差は-8.9ポイント(97.5%CI:-∞~-6.3ポイント、片側p値<0.001)で、コイル治療群において有意な改善が示された。 一方、コイル治療群において主要な合併症が34.8%も発生している。通常ケア群においては19.1%であり、コイル治療群では有意に合併症の頻度が高かった(p=0.002)。コイル治療群では、肺炎が20%(通常ケア群では4.5%)、気胸が9.7%(通常ケア群では0.6%)とそれぞれ有意に高頻度に認められた。 以上の結果から、肺気腫患者に対する気管支内コイル治療が、6分間歩行距離やQOL、肺機能の改善に有効であると結論することは早計である。主たる評価項目である6分間歩行距離の改善はわずかであり、設定されたMCID(minimal clinical important difference)=29mを超えるものではない。しかも、重大な合併症の頻度も高く、長期的な効果についても不明である。 しかし、本研究には残気量が予測値の225%以上という高度のair trappingを示す肺気腫症例が多く(235例)登録されている。探索的評価項目のうち、残気量と残気率に関しては、コイル治療を行うことによってそれぞれ0.31Lの減少、3.5%の減少が得られている。サブグループ解析の結果、air trappingが225%以上と高度で、heterogeneousな気腫症例においては、6分間歩行距離で+29.1m、1秒量で+12.3%、SGRQで-10.1ポイントと、臨床的にも意味のある効果が示されている。今後は、本治療法の長期効果についての追加報告がなされること、またheterogeneousな気腫分布を示す、air trappingが高度な肺気腫を調査対象としたランダム化比較試験が行われることが期待される。

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重症肺気腫、両側気管支内コイル治療で運動耐性が向上/JAMA

 重症エアトラッピングが認められる肺気腫患者に対し、気管支拡張薬などによる標準的治療に加え両側気管支内コイル治療を行うと、標準的治療のみに比べ、6分間歩行などのアウトカムの改善に有効であることが判明した。一方で、重篤合併症の発生率は、コイル治療群で高かった。米国・ピッツバーグ大学のFrank C. Sciurba氏らが、315例を対象に行った無作為化比較試験の結果、報告した。結果を踏まえて著者は、さらなる検討を行い、健康アウトカムへの長期的影響を調べる必要があるとまとめている。JAMA誌2016年5月24・31日号(オンライン版2016年5月15日号)掲載の報告。12ヵ月後の6分間歩行距離の変化を比較 研究グループは2012年12月~2015年11月にかけて、北米21ヵ所、欧州5ヵ所の医療機関を通じて、重症エアトラッピングが認められる肺気腫患者315例を対象に、無作為化比較試験を行った。 被験者を無作為に2群に分け、一方の157例には肺リハビリテーションや気管支拡張薬を含むガイドラインに則した標準的治療を、もう一方の158例には標準的治療に加え両側気管支内コイル治療をそれぞれ行い、アウトカムを比較した。気管支内コイル治療では、4ヵ月間隔で2回の連続的処置を行い、一肺葉に気管支鏡で10~14コイルを装着した。 主要評価項目は、ベースラインから12ヵ月後の6分間歩行距離の絶対差だった。副次評価項目は、6分間歩行改善率、呼吸器疾患に関するQOL指標「St George’s Respiratory Questionnaire」(SGRQ)の変化幅、1秒量(FEV1)のベースラインからの改善幅それぞれに関する群間差などだった。 被験者の平均年齢は64歳、女性は52%だった。6分間歩行距離の改善、コイル治療群が標準治療群より14.6m延長 12ヵ月の追跡を終えたのは、被験者のうち90%だった。 その結果、6分間歩行距離のベースラインからの改善は、標準治療群が-7.6mだったのに対し、コイル治療群は10.3mと、群間差は14.6mだった(Hodges-Lehmann推定97.5%信頼区間:0.4~∞、片側検定p=0.02)。 6分間歩行距離の改善が25m以上だったのは、通常治療群が26.9%に対し、コイル治療群では40.0%と、有意に高率だった(オッズ比:1.8、同:1.1~∞)。補正前群間差は11.8%だった(片側検定p=0.01)。 FEV1中央値変化の群間差は7.0%、SGRQ変化の群間差は-8.9ポイントと、いずれもコイル治療群で有意な改善が認められた(いずれもp<0.001)。 一方で、入院を要する肺炎などの重篤な合併症の発生率は、通常治療群19.1%に対しコイル治療群は34.8%と有意に高率だった(p=0.002)。 その他の重篤有害作用としては、肺炎が4.5%、20%、気胸が0.6%、9.7%と、いずれもコイル治療群で高率だった。

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特発性拡張型心筋症〔DCM : idiopathic dilated cardiomyopathy〕

1 疾患概要■ 概念・定義拡張型心筋症(idiopathic dilated cardiomyopathy: DCM)は、左室の拡張とびまん性の収縮障害を特徴とする進行性の心筋疾患である。心不全の急性増悪を繰り返し、やがて、ポンプ失調や致死性不整脈により死に至る。心筋症類似の病像を呈するが、病因が明らかで特定できるもの(虚血性心筋症や高血圧性心筋症など)、全身疾患との関連が濃厚なもの(心サルコイドーシスや心アミロイドーシスなど)は特定心筋症と呼ばれ、DCMに含めない。■ 疫学厚生省特発性心筋症調査研究班による1999年の調査では、わが国における推計患者数は約1万7,700人、有病率は人口10万人あたり14.0人、発症率は人口10万人あたり3.6人/年とされる。男女比は2.5:1で男性に多く、年齢分布は小児から高齢者まで幅広い。■ 病因DCMの病因は一様ではない。一部のDCMの発症には、遺伝子異常、ウイルス感染、自己免疫機序が関与すると考えられているが、その多くがいまだ不明である。1)遺伝子異常DCMの20~30%程度に家族性発症を認めるが、孤発例でも遺伝要因が関与するものもある。心機能に関与するどのシグナル伝達経路が障害を受けても発症しうると考えられており、心筋のサルコメア構成蛋白や細胞骨格蛋白をコードする遺伝子異常だけでなく、Caハンドリング関連蛋白異常の報告もある。2)ウイルス感染心筋生検検体の約半数に、何らかのウイルスゲノムが検出される。コクサッキーウイルス、アデノウイルス、C型肝炎ウイルスなどのウイルスの持続感染が原因の1つとして示唆されている。3)自己免疫機序βアドレナリン受容体抗体や抗Caチャネル抗体といったさまざまな抗心筋自己抗体が、患者血清に存在することが判明した。DCMの発症・進展に自己免疫機序が関与する可能性が指摘されている。■ 症状本疾患に疾患特異的な症状はない。初期には無症状のことが多いが、病状の進行につれて、労作時息切れ、易疲労感、四肢冷感などの左心不全症状を認めるようになり、運動耐容能は低下する。また、動悸、心悸亢進、胸部不快感といった頻脈・不整脈に伴う症状を訴えることもある。一般には、低心拍出所見よりもうっ血所見が前景に立つことが多い。両心不全へ至ると、全身浮腫、頸静脈怒張、腹水などの右心不全症状が目立つようになる。右心機能が高度に低下している重症例では、左心への灌流低下から、肺うっ血所見を欠落する例があり、重症度判断に注意を要する。■ 予後一般に、DCMは進行性の心筋疾患であり、予後は不良とされる。5年生存率は、1980年代には54%と低かったが、最近では70~80%にまで改善したとの報告もある。標準的心不全治療法が確立し、ACE阻害薬、β遮断薬、抗アルドステロン薬といった心筋保護薬の導入率向上がその主たる要因と考えられている。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)DCMの診断は、特定心筋症の除外診断を基本とすることから、二次性心筋症を確実に除外することがDCMの診断に直結する。■ 身体所見一般に、収縮期血圧は低値を示すことが多く、脈圧は小さい。聴診所見では、心尖拍動の左方偏移、ギャロップリズム(III・IV音)、心雑音および肺ラ音の聴取が重要である。■ 胸部X線多くの症例で心陰影は拡大するが、心胸郭比は低圧系心腔の大きさに依存するため、正常心胸郭比による本疾患の除外はできない。心不全増悪期には、肺うっ血像や胸水貯留を認める。Kerley B line、peribronchial cuffingが、肺間質浮腫所見として有名である。■ 心電図疾患特異度の高い心電図所見はない。ST-T異常、異常Q波、QRS幅延長、左室側高電位、脚ブロック、心室内伝導障害など、心筋病変を反映した多彩な心電図異常を呈する。また、心筋障害が高度になると、不整脈を高頻度に認めうる。■ 血液生化学検査心不全の重症度を反映し、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)や脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)およびその前駆体N末端フラグメントであるNT-proBNPの上昇を認める。また、交感神経活性の指標である血中カテコラミンや微小心筋障害を示唆するとされる高感度トロポニンも上昇する。低心拍出状態が進行すると、腎うっ血、肝うっ血を反映し、クレアチニンやビリルビン値の上昇を認める。■ 心エコー検査通常、びまん性左室収縮障害を認め、駆出率は40%以下となる。心リモデリングの進行に伴い、左室内腔は拡張し、テザリングや弁輪拡大から機能性僧帽弁逆流の進行をみる。最近では、僧帽弁流入血流や組織ドップラー法を用いた拡張能の評価、組織ストレイン法を用いた収縮同期性の評価など、より詳細な検討が可能になっている。■ 心臓MRI検査シネMRIによる左室容積や駆出率計測は、信頼度が高い。ガドリニウムを用いた心筋遅延造影パターンの違いによるDCMと虚血性心筋症との鑑別が報告されており、心筋中層に遅延造影効果を認めるDCM症例では、心イベントの発生率が高く、予後不良とされる。■ 心筋シンチグラフィ123I-MIBGシンチグラフィによる交感神経機能評価では、後期像での心臓集積(H/M比)の低下や洗い出し率の亢進を認める。201Tlあるいは99mTc製剤を用いた心筋シンチグラフィでは、patchy appearanceと呼ばれる小欠損像を認め、その分布は、冠動脈支配に一致しない。心電図同期心筋SPECTを用いて、左室容積や駆出率も計測可能である。■ 心臓カテーテル検査冠動脈造影は、冠血管疾患、虚血性心筋症の除外を目的として施行される。血行動態の評価目的に、左室内圧測定や左室造影による心収縮能評価、肺動脈カテーテルを用いた右心カテーテル検査も行われる。左室収縮能(最大微分左室圧: dP/dtmax)の低下、左室拡張末期圧・肺動脈楔入圧の上昇、心拍出量低下を認める。■ 心筋生検DCMに特異的な病理組織学的変化は確立されていない。典型的には、心筋細胞の肥大、変性、脱落と間質の線維化を認める。心筋炎や心サルコイドーシス、心ファブリー病などの特定心筋症の除外目的に行われることも多い。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)DCMに対する根本的な治療法は確立していない。そのため、(1) 心不全、(2) 不整脈、(3) 血栓予防を治療の根幹とする。左室駆出率の低下を認めるため、収縮機能障害を伴う心不全の治療指針に準拠する。■ 心不全の治療1)心不全の生活指導生活習慣の是正を基本とする。適切な水分・塩分摂取量および栄養摂取量の教育、適切な運動の推奨、禁煙、感染予防などが指導すべきポイントとされる。2)薬物療法収縮機能障害を伴う心不全の治療指針に準拠し、薬剤を選択する。心臓のリバースリモデリングおよび長期予後改善効果を期待し、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬あるいはアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)といったレニン・アンジオテンシン系(RAS)阻害薬とβ遮断薬、抗アルドステロン薬を導入する。原則として、β遮断薬は、カルベジロールあるいはビソプロロールを用い、忍容性のある限り、少量より漸増する。さらに、うっ血症状に応じて、利尿薬の調節を行う。急性増悪期には、入院下に、強心薬・血管拡張薬といったより高度な点滴治療を行う。3)非薬物療法(1)心室再同期療法(CRT)左脚ブロックなど、心室の収縮同期不全を認める症例に対し、心室再同期療法が行われる。除細動機能を内蔵したデバイス(CRT-D)も普及している。心拍出量の増加や肺動脈楔入圧の低下、僧帽弁逆流の減少といった急性期効果だけでなく、慢性期効果としての心筋逆リモデリング、予後改善が報告されている。CRTによる治療効果の乏しい症例(non-responder)も一定の割合で存在することが明らかになっており、その見極めが課題となっている。(2)陽圧呼吸療法、ASVわが国では、心不全患者に対するASV(adaptive servo ventilation)換気モード陽圧呼吸療法の有用性が多く報告されており、自律神経活性の改善、不整脈の減少、運動耐容能およびQOLの向上、心および腎機能の改善などが期待されている。しかし、海外で行われた大規模臨床試験ではこれを疑問視する研究結果も出ており、いまだ議論の余地を残す。(3)心臓リハビリテーション“包括的心臓リハビリテーション”の概念のもと、運動のみならず、薬剤、栄養、介護など各領域からの多職種介入による全人的心不全管理が急速に普及している。(4)和温療法遠赤外線均等温乾式サウナを用いた低温サウナ療法が、心不全患者に有用であるとの報告がある。心拍出量の増加、前負荷軽減、肺動脈楔入圧の低下といった急性効果のみならず、慢性効果として、末梢血管内皮機能の改善、心室性不整脈の減少も報告されている。(5)僧帽弁形成術・置換術、左室容積縮小術高度の僧帽弁逆流を伴うDCM例では、僧帽弁外科的手術を考慮する。しかしながら、その有効性は議論の余地を残すところであり、左室容積縮小術の1つに有名なバチスタ手術があるが、中長期的に心不全再増悪が多いことから、最近は推奨されない。(6)左室補助人工心臓(LVAD)重症心不全患者において、心臓移植までの橋渡し治療、血行動態の安定を目的として、LVAD装着が考慮されうる。2011年以降、わが国でも植込型LVADが使用可能となり、装着患者のQOLが格段に向上した。現在、植込型LVAD装着下に長期生存を目指す“destination therapy”の是非に関する議論も始まっており、今後、重症心不全治療の選択肢の1つとして臨床の場に登場する日も近いかもしれない。しかし、ここには医学的見地のみならず、医療倫理や医療経済、日本人の死生観も大きく関わっており、解決すべき課題も多い。(7)心臓移植重症心不全患者の生命予後を改善する究極の治療法である。わが国における原疾患のトップはDCMである。不治の末期的状態にあり、長期または繰り返し入院治療を必要とする心不全、β遮断薬およびACE阻害薬を含む従来の治療法ではNYHA3度ないし4度から改善しない心不全、現存するいかなる治療法でも無効な致死的重症不整脈を有する症例が適応となる。(8)緩和医療高齢化社会の進行につれ、有効な治療効果の得られない末期心不全患者へのサポーティブケアが、近年注目されつつある。このような患者のエンドオブライフに関し、今後、多職種での議論・検討を重ねていく必要がある。■ 不整脈の治療致死性不整脈の同定と予防が重要となる。DCMによる心筋障害を基盤として発生し、心不全増悪期により出現しやすい。また、電解質異常も発生要因の1つである。そのため、心不全そのものの治療や不整脈誘発因子の是正が必要である。DCMにおける不整脈治療には、アミオダロンがよく使用される。カテーテルアブレーションが選択されることもあるが、確実に突然死を予防できる治療手段は植込型除細動器(ICD)であり、症候性持続性心室頻拍や心室細動既往を有する心不全患者の二次予防あるいは一部の心不全患者の一次予防を目的として適応が検討される。また、心房細動も高率に合併する。これまでリズムコントロールとレートコントロールで死亡率に差はないと考えられてきたが、近年これを否定するメタアナリシス結果もでており、さらなる研究結果が待たれる。■ 血栓予防治療非弁膜症性心房細動合併例では、ワルファリンのみならず、新規経口抗凝固薬の使用が考慮される。また、左室駆出率30%以下の低心機能例では、心腔内血栓の予防目的に抗凝固療法が望ましいとされるが、新規経口抗凝固薬の適応はなく、ワルファリンが選択される。4 今後の展望現在のところ、確立された根本治療法のないDCMにおける究極の治療法は、心臓移植であるが、わが国では、深刻なドナー不足により汎用性の高い治療法としての普及にはほど遠い。そのため、自己の細胞あるいは組織を用いた心筋再生治療の研究・臨床応用が進められている。しかしながら、安全な再生医療の確立には、倫理面などクリアすべき課題も多く、医用工学技術を応用した高性能・小型化した人工機器の開発研究も進められている。5 主たる診療科循環器内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 特発性拡張型心筋症(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)1)友池仁暢ほか. 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン. 循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2009−2010年度合同研究班報告).2)奥村貴裕, 室原豊明. 希少疾患/難病の診断・治療と製品開発. 技術情報協会; 2012:pp1041-1049.3)奥村貴裕. 心不全のすべて.診断と治療(増刊号).診断と治療社;2015:103.pp.259-265.4)松崎益徳ほか. 慢性心不全治療ガイドライン(2010年改訂版).循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2009年度合同研究班報告).5)許俊鋭ほか. 重症心不全に対する植込型補助人工心臓治療ガイドライン.日本循環器学会/日本心臓血管外科学会合同ガイドライン(2011-2012年度合同研究班報告).公開履歴初回2014年11月27日更新2016年05月31日

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「食べる」ことは高齢者には大問題

 5月9日、日本老年医学会は、6月に開催される「第58回 日本老年医学会学術集会」を前にプレスセミナーを都内で開催した。セミナーでは、同会の活動状況、学術集会の概要が説明されるとともに、「高齢者の低栄養、咀嚼機能、嚥下障害」の3つのテーマについて、レクチャーが行われた。 はじめに学会理事長の楽木 宏実氏(大阪大学大学院医学系研究科老年病・循環器内科学 教授)が、学会の活動を報告。「フレイル」(高齢者における健常な状態と要介護状態の中間の状態)の概念を社会に普及させる活動のほか、先日の熊本地震へ支援として行った「一般救護者用 災害時高齢者医療マニュアル」の配布活動などについて説明した。 続いて、学術集会会長の森本 茂人氏(金沢医科大学高齢医学科 主任教授)が、6月8日より金沢市で開催される学術集会(テーマ「地域で創る健康長寿と老年医学」)について、諸学会との共催シンポジウムの内容や高齢者診療のディベートセッションの概要を説明した。意外に見落とされている高齢者の栄養問題 講演では、葛谷 雅文氏(名古屋大学大学院医学系研究科地域在宅医療学・老年科学 教授)が、「地域高齢者の栄養に関する諸問題」をテーマに、低栄養が高齢者の生命予後に及ぼすリスクについて説明した。 現代人のライフステージでは、加齢などが原因でだいたい約70歳前後で体重は減少に転じていく。この体重減少に低栄養状態が加わるとフレイル、サルコペニア、転倒・骨折、感染症などのリスクが高まっていくという。 高齢者の体重減少・低栄養の要因としては、社会的要因(独居、介護不足など)、疾病ならびに薬剤(臓器不全や摂食・嚥下障害、薬の副作用など)、加齢(食欲低下など)、精神・心理的要因(うつ、認知機能障害など)、その他(一般健康情報のミスリードなど)が考えられている。 低栄養状態になった場合、どのようなリスクが高まるのか。KAIDEC Study(n=1,142)によれば、要介護度が上昇するにつれ、低栄養を示すスコアである簡易栄養状態評価表(MNA®-SF)の数値が上昇すること、摂食・嚥下障害重症度分類(DSS)で問題ありとされる割合も増えることが示唆されている。また、栄養不良の高齢者は、生命予後、入院、施設入所のいずれの項目でもリスクが高く、肥満者よりも健康障害を起こしやすいことが示唆されているという。 現在、平均寿命と健康寿命の差の縮小を目指して、さまざまな施策が、医療・介護の面で行われている。厚生労働省の調査によれば、介護が必要となる原因の半数は老年症候群関連であり、その2番目にフレイルが挙げられている。そのため、フレイル予防が、健康寿命延長につながる。 フレイルは、(1)歩行速度(2)握力(3)体重減少(4)倦怠感(5)活動度などで評価される。フレイルの有症率は、年齢とともに増加する。時にはサルコペニアなどと合併していることもあり、高齢者の筋肉を維持し、減少させないことが重要である。予防・介入方法としては、レジスタント運動や、低栄養を予防する食事(とくにタンパク質、アミノ酸、ビタミンDなどを十分に摂取)が必要とされる。 葛谷氏は、「高齢者医療の現場では、栄養への問題意識は医療者・患者ともにまだ希薄である。高齢者の低栄養対策では、75歳前後ではフレイルの予防、85歳前後では要介護状態での低栄養といった2つの局面を考える必要がある。医療者はこれらに意識を向け、栄養不良を予防することで救える高齢者を見逃してはならない」とレクチャーを結んだ。実は高度な運動能が必要な「咀嚼」 次に、「咀嚼」について菊谷 武氏(日本歯科大学 教授/口腔リハビリテーション多摩クリニック 院長)が、「咀嚼機能が支える高齢長寿社会」をテーマに口腔リハビリテーションの視点から講演を行った。 厚生労働省の歯科疾患実態調査によれば、2011年時点の80歳で28歯中20歯以上を残している高齢者は全体の25.1%と報告され、年々その数は増加しているという。歯の状態は低栄養発症リスクにも関係し、義歯(入れ歯)咬合維持群はそのリスクが1.7倍、咬合崩壊群では3.2倍になるという。また、窒息の発症をエンドポイントに調べた研究(n=486)によれば、3年間で51例に発症し、その独立した危険因子として、臼歯部(奥歯)の咬合不良、認知機能の低下、食事の自立が示唆されている。 要介護高齢者の歯科受診状況は、定期的に歯科受診をしている人はわずか15%、過去3ヵ月に症状があって受診が10%、受診していないは75%にも上っており、適切な口腔の診療や指導を受けていない実態が示された。 食事の摂取で重要な働きをする咀嚼は、口腔の巧みな運動能と関連しており、咀嚼力は「咬合支持×口の力強さ、巧みな動き×認知機能」で機能する。咀嚼は、歯の本数だけでなく、舌の機能と運動能に関係し、運動能が弱まると、食物を一塊として飲み込めず、窒息のリスクが高くなる。また、菊谷氏らが行った摂食状況、摂食形態実態調査によれば、自己の摂食嚥下機能に合致した食事をしている高齢者は32%であり、残り68%はリスクを抱えたまま食事をしている実態が示された。 最後に「咀嚼を運動機能と捉えた場合、要介護高齢者は、舌圧が低く、機能訓練の必要がある。口腔サルコペニアを防止する取り組みが大切であり、継続した歯科診療や口腔リハビリテーションが必要」とレクチャーを終えた。嚥下障害は地域連携で対応 最後に、嚥下障害が起こすリスクとその対応について、藤谷 順子氏(国立研究開発法人国立国際医療研究センターリハビリテーション科医長)が、「在宅高齢者の嚥下障害とその対応」と題して解説を行った。 食事は、高齢者の楽しみの1つであり、外出などの生活行動とも直結するほか、健康維持、疾病予防にも大切な役割を果たしている。現在、嚥下障害をもつ高齢者は、一般医療機関(病棟)で14.7%、老人保健施設で29.5%、訪問看護ステーションで17.7%にも上り、嚥下障害に起因する誤嚥性肺炎が問題となっている。誤嚥性肺炎は、年間30万人が罹患していると推定され、治療後の経過は自宅退院が43%、医療・介護施設が37%、死亡が20%となっている1)。 問題は、退院時のADLであり、自立して食事できる人が全体の33%、自立歩行できる人が24%と、一度でも罹患すると自宅退院者でも要介護状態になりやすいことが示唆されている2)。また、高齢になればなるほど嚥下の力が落ちていき、飲み込んだつもりで窒息する、誤嚥が多いことも報告された。 咀嚼・嚥下機能低下による誤嚥性肺炎予防のためには、嚥下機能などの早期検査、在宅などでのリハビリテーション訓練の実施が求められ、これらは健康寿命を延ばすためにも重要となる。 とくに在宅高齢者の嚥下障害対応としては、軽度であれば地域で行われている啓発活動や介護事業、機能改善や低栄養の予防を図る対応、専門家の利用が望ましい。また、嚥下障害があれば、基幹病院などを巻き込んだ地域包括ケア(例:新宿ごっくんプロジェクト)などが必要とされる。 最後に藤谷氏は、「嚥下リハビリテーションの基本は、現在の嚥下能力でもおいしく食べる機会を持ち、食べることにハンデがあってもできるだけQOLの高い生活を送れるようにすること。下り坂でも、その時々でできることを、外来などでも指導していってもらいたい」と理念を述べ、レクチャーを終了した。参考文献1)山脇正永.総合リハ.2009;37:105-109.2)Yagi M, et al. Geriatr Gerontol Int.2015 Oct 13.[Epub ahead of print]関連リンク第58回 日本老年医学会学術総会高齢者災害医療支援新宿ごっくんプロジェクト~摂食嚥下機能支援~(嚥下観察シートなど書式あり)

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ビタミンKを含む食材は何

【骨粗鬆症】【食事療法】ビタミンKの入っている食材を、教えてくださいビタミンKは、カルシウムの定着を助ける栄養素です。納豆のほか、ホウレンソウ、アシタバなど軟弱野菜(収穫後鮮度が早く落ちる野菜)にも、多く含まれています!監修:習志野台整形外科内科 院長 宮川一郎 氏Copyright © 2016 CareNet,Inc. All rights reserved.

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タンパク質を含む食材は何

【骨粗鬆症】【食事療法】タンパク質の入っている食材を、教えてくださいタンパク質は、骨を作るコラーゲンのもととなります。肉、魚、牛乳・乳製品、大豆・大豆製品など敬遠せず、毎日摂るように心がけましょう!監修:習志野台整形外科内科 院長 宮川一郎 氏Copyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.

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封入体筋炎〔sIBM : Sporadic Inclusion Body Myositis〕

1 疾患概要■ 概念・定義封入体筋炎は中高年に発症する、特発性の筋疾患である。左右非対称の筋力低下と筋萎縮が大腿四頭筋や手指・手首屈筋にみられる。骨格筋には、縁取り空胞と呼ばれる特徴的な組織変化を生じ、炎症細胞浸潤を伴う。免疫学的治療に反応せず、かえって増悪することもある。嚥下障害や転倒・骨折に注意が必要である。■ 疫学厚生労働省難治性疾患克服研究事業「封入体筋炎(IBM)の臨床病理学的調査および診断基準の精度向上に関する研究」班(研究代表者:青木正志、平成22-23年度)および「希少難治性筋疾患に関する調査研究」班(研究代表者:青木正志、平成24-27年度)による調査では、日本には1,000~1,500人の封入体筋炎患者がいると考えられる。研究協力施設の146例の検討により男女比は1.4:1で男性にやや多く、初発年齢は64.4±8.6歳、初発症状は74%が大腿四頭筋の脱力による階段登りなどの障害であった。嚥下障害は23%にみられ、生命予後を左右する要因の1つである。顕著な左右差は、27%の症例でみられた。認知機能低下が明らかな症例はなかった。深部腱反射は正常または軽度低下する。約15%の封入体筋炎患者には全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、強皮症、サルコイドーシスなどの自己免疫性の異常が存在するが、多発筋炎や皮膚筋炎と異なり、肺病変、悪性腫瘍の発生頻度上昇などは指摘されていない。血清のクレアチンキナーゼ(CK)値は正常か軽度の上昇にとどまり、通常は正常上限の10倍程度までとされる。研究班の調査ではCK値の平均は511.2±368.1 IU/Lで2,000 IU/Lを超える症例はまれであった。約20%の封入体筋炎患者は、抗核抗体が陽性とされるが、いわゆる筋炎特異的抗体は陰性である。■ 病因封入体筋炎の病態機序は不明である。筋病理学的に観察される縁取り空胞が蛋白分解経路の異常など変性の関与を、また細胞浸潤が炎症の関与を想起させるものの、変性と炎症のどちらが一次的でどちらが副次的なのかも明らかになってはいない。変性の機序の証拠としては、免疫染色でAβ蛋白、Aβ前駆蛋白(β-APP)、リン酸化タウ、プリオン蛋白、アポリポプロテイン E、α1-アンチキモトリプシン、ユビキチンやニューロフィラメントが縁取り空胞内に沈着していることが挙げられる。β-APPを筋特異的に過剰発現させたモデルマウスでは筋変性や封入体の形成がみられることも、この仮説を支持している。しかしながら、多発筋炎や皮膚筋炎の患者生検筋でもβ-APPが沈着していることから疾患特異性は高くない。筋線維の恒常性の維持は、蛋白合成と分解の微妙なバランスの上に成り立っていると想像される。封入体筋炎の病態として、Aβ仮説のようにある特定の蛋白が発現増強し、分解能力を超える可能性も考えられるが、一方で蛋白分解系が破綻し、異常蛋白が蓄積するという機序も考えられる。蛋白分解経路に重要なユビキチンE3リガーゼの1つであるRING Finger Protein 5(RNF5)の過剰発現マウスでは、筋萎縮と筋線維内の封入体形成が観察されている。骨格筋特異的にオートファジーを欠損させたマウスでは、ユビキチンE3リガーゼの発現上昇や筋変性・萎縮がみられることも報告されている。封入体筋炎の骨格筋に、家族性筋萎縮性側索硬化症(ALS)の原因遺伝子産物であるTDP-43およびFUS/TLSが蓄積することも観察されている。TDP-43陽性線維は、封入体筋炎患者の生検筋線維の25~32.5%と高頻度に検出され、その頻度は封入体筋炎の病理学的指標とされてきた縁取り空胞やAβ陽性線維よりも高頻度である。家族性ALS関連蛋白の蓄積は、縁取り空胞を伴う筋疾患に共通する病理学的変化であり、封入体筋炎に対する疾患特異性は低いと考えられてきている。ユビキチン結合蛋白であるp62は、TDP-43以上の頻度で封入体筋炎の筋線維に染色性が認められる。近年、骨パジェット病と前頭側頭型認知症を伴う封入体性ミオパチーの家族例において、蛋白分解系の重要な分子であるVCPの遺伝子異常が見出されたが、このVCPも蛋白分解経路の重要な因子である。蛋白分解経路の異常は、封入体筋炎の病態の重要な機序と考えられる。封入体筋炎の病態として、炎症の関与も以前より検討されてきた。炎症細胞に包囲されている筋線維の割合は、縁取り空胞やアミロイド沈着を呈する筋線維よりも頻度が高いことから、炎症の寄与も少なくないと考えられる。ムンプスウイルスの持続感染は否定されたが、HIVやHTLV-1感染者やポリオ後遺症の患者で封入体筋炎に類似した病理所見がみられる。マイクロアレイやマイクロダイセクションを用いた検討では、CD138陽性の形質細胞のクローナルな増殖が、封入体筋炎患者の筋に観察され、形質細胞の関与も示されている。炎症細胞のクローナルな増殖は、細胞障害性T細胞が介する自己免疫性疾患である可能性を示唆している。ただ、封入体筋炎は、臨床場面で免疫抑制薬の反応に乏しいことから、炎症が病態の根本であるとは考えにくい。また、多発筋炎でも観察される現象であることから、疾患特異的な現象とも言いがたい。封入体筋炎は、親子や兄妹で発症したという報告も散見され、HLAなど遺伝的背景が推定されているが、元来は孤発性の疾患である。■ 症状封入体筋炎は慢性進行性で、主に50歳以上に発症する筋疾患であり、初発症状から5年以上診断がつかない例も多い。多発筋炎・皮膚筋炎が女性に多いのと対照的に、封入体筋炎は男性にやや多い。非対称性の筋脱力と筋萎縮が大腿四頭筋や手指・手首屈筋にみられる。肩の外転筋よりも手指・手首屈筋が弱く、膝伸展や足首背屈が股関節屈曲よりも弱いことが多い。■ 分類診断基準を参照されたい。■ 予後多くの症例では四肢・体幹筋の筋力低下や嚥下障害の進行により、5~10年で車いす生活となる。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)1975年にBohanとPeterは炎症性筋疾患の診断基準を提唱したが、当時は封入体筋炎という概念が十分に確立されていなかった。1995年にGriggsにより封入体筋炎の診断基準が提唱され、2007年のNeedhamらの診断基準とともに国際的に広く用いられている。前述の難治性疾患克服研究事業の研究班では、全国の後ろ向き調査を基に、国内外の文献を検討し、診断基準を見直した(表)。本診断基準は、日本神経学会および日本小児神経学会から承認も受けている。表 封入体筋炎(Inclusion Body Myositis:IBM)診断基準(2013)(厚労省難治性疾患克服研究事業:希少難治性筋疾患に関する調査研究班)診断に有用な特徴A.臨床的特徴a.他の部位に比して大腿四頭筋または手指屈筋(とくに深指屈筋)が侵される進行性の筋力低下および筋萎縮b.筋力低下は数ヵ月以上の経過で緩徐に進行する※多くは発症後5年前後で日常生活に支障を来す。数週間で歩行不能などの急性の経過はとらない。c.発症年齢は40歳以上d.安静時の血清CK値は2,000 IU/Lを超えない(以下は参考所見)嚥下障害がみられる針筋電図では随意収縮時の早期動員(急速動員)、線維自発電位/陽性鋭波/(複合反復放電)の存在などの筋原性変化(注:高振幅長持続時間多相性の神経原性を思わせる運動単位電位が高頻度にみられることに注意)B.筋生検所見筋内鞘への単核球浸潤を伴っており、かつ以下の所見を認めるa.縁取り空胞を伴う筋線維b.非壊死線維への単核球の侵入や単核球による包囲(以下は参考所見)筋線維の壊死・再生免疫染色が可能なら非壊死線維への単核細胞浸潤は主にCD8陽性T細胞形態学的に正常な筋線維におけるMHC classⅠ発現筋線維内のユビキチン陽性封入体とアミロイド沈着過剰リン酸化tau、p62/SQSTM1、TDP43陽性封入体の存在COX染色陰性の筋線維:年齢に比して高頻度(電子顕微鏡にて)核や細胞質における15~18nmのフィラメント状封入体の存在合併しうる病態HIV、HTLV-I、C型肝炎ウイルス感染症除外すべき疾患縁取り空胞を伴う筋疾患※(眼咽頭型筋ジストロフィー・縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチー・多発筋炎を含む)他の炎症性筋疾患(多発筋炎・皮膚筋炎)筋萎縮性側索硬化症などの運動ニューロン病※Myofibrillar myopathy(FHL1、Desmin、Filamin-C、Myotilin、BAG3、ZASP、Plectin変異例)やBecker型筋ジストロフィーも縁取り空胞が出現しうるので鑑別として念頭に入れる。特に家族性の場合は検討を要する。診断カテゴリー:診断には筋生検の施行が必須であるDefinite Aのa-dおよびBのa、bの全てを満たすものProbable Aのa-dおよびBのa、bのうち、いずれか5項目を満たすものPossible Aのa-dのみ満たすもの(筋生検でBのa、bのいずれもみられないもの)注封入体筋炎の診断基準は国際的に議論がなされており、歴史的にいくつもの診断基準が提案されている。本診断基準は専門医のみならず、内科医一般に広くIBMの存在を知ってもらうことを目指し、より簡便で偽陰性の少ない項目を診断基準項目として重視した。免疫染色の各項目に関しては感度・特異度が評価未確定であり参考所見とした。ヘテロな疾患群であることを念頭に置き、臨床治験の際は最新の知見を考慮して組み入れを行う必要がある。臨床的特徴として、「a.他の部位に比して大腿四頭筋または手指屈筋(とくに深指屈筋)が侵される進行性の筋力低下および筋萎縮」、「b.筋力低下は数ヵ月以上の経過で緩徐に進行する」とし、多くは発症後5年前後で日常生活に支障を来すことを勘案した。「数週間で歩行不能」などの急性の経過はとらず、診断には病歴の聴取が重要である。また、遺伝性異常を伴う筋疾患を除外するために「c.発症年齢は40歳以上である」とした。そして、慢性の経過を反映し「d.安静時の血清CK値は2,000 IU/Lを超えない」とした。さらに診断には筋生検が必須であるとし、「筋内鞘への単核球浸潤を伴っており」、かつ「a.縁取り空胞を伴う筋線維」、「b.非壊死線維への単核球の侵入や単核球による包囲」がみられるものとした。これらの臨床的特徴・病理所見の6項目すべてがみられる場合を確実例、臨床的特徴がみられるが、病理所見のいずれかを欠く場合を疑い例、病理所見が伴わないものを可能性あり、とした。欧米で取り入れられている免疫染色や電顕所見に関しては、縁取り空胞の持つ意義と同様と考え、診断基準には含めなかった。封入体筋炎の診断の際には、臨床経過が重要な要素であり、中高齢の慢性進行性の筋疾患では常に念頭に置くべきである。封入体筋炎症例の一部は病期が早いことにより、また不適切な筋標本採取部位などによって、特徴的な封入体を確認することができず、診断確定に至らない場合があると考えられる。最近、cN1Aに対する自己抗体との関連性が報告されているが、今後、病態解明の進展に伴い疾患マーカーが確立されることが望ましい。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)封入体筋炎の治療は確立されていない。ほとんどの例でステロイドの効果はみられない。CK値が減少したとしても、筋力が長期にわたって維持される例は少ない。免疫グロブリン大量静注療法(IVIg)は、封入体筋炎に対し、とくに嚥下に関して限定的な効果を示す例がある。しかし、対照試験では、一般的な症状の改善はわずかで、統計学的な有意差は得られず、治療前後の筋生検所見の改善のみが報告されている。根本的な治療がない現状では、運動療法・作業療法などのリハビリテーション、歩行時の膝折れ防止や杖などの装具の活用も有効である。さらに合併症として、致死的になる可能性のある嚥下の問題に関しては、食事内容の適宜変更や胃瘻造設などが検討される。バルーンカテーテルによる輪状咽頭部拡張法(バルーン拡張法)も封入体筋炎患者での嚥下障害改善に有効な可能性がある。4 今後の展望マイオスタチンの筋萎縮シグナル阻害を目的とした、アクチビンIIB受容体拮抗剤のBYM338を用いた臨床試験もわが国で行われている。5 主たる診療科神経内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 封入体筋炎(医療従事者向けのまとまった情報)希少難治性筋疾患に関する調査研究班班員名簿(27年度)(医療従事者向けのまとまった情報)厚生労働省のホームページ 指定難病 封入体筋炎の概要・診断基準(医療従事者向けのまとまった情報)1)青木正志編、内野誠監修. 筋疾患診療ハンドブック. 中外医学社; 2013: p.75-82.公開履歴初回2014年02月06日更新2016年05月03日

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気を付けたい食事のポイント

【食事療法】食事のポイントについて、教えてください【骨粗鬆症】骨を作る成分、カルシウムとタンパク質を含む食品をバランスよく、規則正しく摂ることが大切です。痩せすぎは、骨粗鬆症の原因ともなりますので、無理なダイエットは止めましょう!監修:習志野台整形外科内科 院長 宮川一郎 氏Copyright © 2015 CareNet,Inc. All rights reserved.

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