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妊娠中期のケトン体濃度が高いと産後うつリスクが高い

 妊娠中期の血清ケトン体濃度が、産後うつリスクの予測マーカーとなり得る可能性が報告された。北海道大学大学院医学院産婦人科の馬詰武氏、能代究氏らの研究によるもので、詳細は「Nutrients」に2月2日掲載された。 国内の妊産婦の死亡原因のトップは自殺であり、その原因の一つとして、産後うつの影響が少なくないと考えられている。うつ病を含む精神・神経疾患のリスク因子として栄養状態が挙げられ、脂質をエネルギー源として利用する際に産生されるケトン体が中枢神経系に有益である可能性が、基礎研究から示されている。また、妊娠中には悪阻(つわり)の影響で低血糖傾向になりやすいが、ケトン体の一種である3-ヒドロキシ酪酸が低血糖に伴う神経細胞のアポトーシスを抑制するという報告がある。さらに、3-ヒドロキシ酪酸はアルツハイマー病やパーキンソン病の進行を抑制する可能性が報告されているほか、てんかんの治療法としては古くからケトン産生食(糖質制限食)による食事療法が行われている。 また、妊娠中のケトン体濃度は従来、つわりのある妊娠初期に高値になると言われていたが、馬詰氏らが行った以前の研究では、妊娠の後期になるほど高値になることが確認されている。以上の知見をベースとして同氏らは今回、妊娠中期以降のケトン体濃度が高いことが、産後うつリスクを抑制するのではないかとの仮説を立て、以下の検討を行った。 研究対象は、2021年1~6月に札幌市内の産科クリニック(単施設)で出産が予定されていた妊婦のうち、年齢が20歳以上の日本人で、妊娠36週以降に出産した女性126人。帝王切開による出産、多胎妊娠、妊娠前のうつ病の既往、他院への転院、データ欠落などの該当者を除外し、99人を解析対象とした。血清ケトン体は、妊娠中期(26.4±0.7週)と妊娠後期(34.8±0.5週)、および産後1日目と1カ月後(31.9±3.6日後)に測定。そのほか、産後うつリスクに関連する可能性のある、ビタミンD、甲状腺機能、鉄代謝を把握した。産後うつの評価には、エジンバラ産後うつ質問票(EPDS)を用い、また、母親の子どもに対する愛着を、標準化された評価指標(maternal-fetal bonding score)で把握した。 解析対象者の主な特徴は、年齢30.3±3.9歳、初産婦が53%、BMI21.0±2.4で、妊娠期間は39.3±0.8週。総ケトン体は妊娠中期が33.4μmol/L、後期が75.6μmol/L、産後1日は33.2μmol/L、1カ月後は48.0μmol/Lと推移。EPDSスコアは産後3日が3.39±3.1、1カ月後は2.85±3.0であり、産後1カ月時点で7人(7.1%)が、産後うつのカットオフ値(9点)以上だった。 産後1カ月時点でEPDSスコア9点以上だった群とその他の群を比較すると、年齢やBMI、妊娠期間、児の出生時体重には有意差がなかった。その一方、妊娠中期のケトン体(総ケトン体、3-ヒドロキシ酪酸、アセト酢酸)はいずれも、EPDS9点以上の群が有意に高値だった(全てP<0.001)。ただし、妊娠後期や産後1日、1カ月後のケトン体レベルには有意差がなかった。また、ビタミンD〔25(OH)D〕、甲状腺機能(TSH、チロキシン)、鉄代謝(フェリチン、血清鉄、TIBC)は、妊娠中から産後にかけて全ての時点で有意差がなかった。 このほかに、産後3日のEPDSスコアと1カ月時点のその値は有意な正の相関があることや(r=0.534、P<0.001)、母親の子どもに対する愛着とEPDSスコアが正相関すること〔産後3日はr=0.384、1カ月後はr=0.550(ともにP<0.001)〕も明らかになった。 著者らは、これらの結果について、「妊娠中のケトン体レベルは以前の研究と同様に妊娠の経過とともに上昇していた。一方、妊娠中期にケトン体レベルが高いことは、産後うつリスクの高さと正相関することが示され、この点は研究仮説と正反対の結果だった」と総括。その上で、「この関連のメカニズムは不明であるものの、妊娠中期のケトン体レベルから産後うつリスクの予測が可能なのではないか」と結論付けている。なお、ビタミンDレベルと産後うつリスクとの関連が認められなかった点については、「研究期間が新型コロナウイルス感染症パンデミック中であり、妊婦の外出頻度が少ないために日光曝露が減り、ビタミンDレベルに差が生じにくい状況だったことが、結果に影響を及ぼしている可能性もある」と考察している。

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片頭痛患者の血清尿酸値は痛みの強さに影響しているのか

 プリン体の最終代謝産物である尿酸は、抗酸化物質として作用し、酸化ストレスと関連している。血清尿酸(SUA)は、アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病、多発性硬化症などの神経変性疾患の病因と関連している可能性が報告されている。しかし、片頭痛とSUAレベルとの関連を評価した研究は、これまでほとんどなかった。トルコ・Istanbul Basaksehir Cam ve Sakura City HospitalのYavuz Altunkaynak氏らは、片頭痛患者の痛みの特徴とSUAレベルとの関係を調査し、頭痛発作中および頭痛がない期間における片頭痛患者のSUAレベルを対照群と比較検討した。その結果、片頭痛患者の発作中と発作がない期間のSUAレベルの差は、痛みの強さと正の相関を示していることが報告された。Medicine誌2023年2月3日号の報告。 片頭痛患者78例、病院職員よりランダムに抽出した健康な対照群78例を対象に、プロスペクティブ横断研究を実施した。頭痛の特徴(発作持続時間、痛みの強さ、頻度)および社会人口統計学的特徴を収集した。片頭痛患者では頭痛発作中および頭痛がない期間の2回、対照群では1回、SUAレベルを測定した。 主な結果は以下のとおり。・片頭痛患者における頭痛がない期間のSUAレベルは対照群より高かったが、その差は統計学的に有意ではなかった。・頭痛発作中および頭痛がない期間のSUAレベルの変化に、性差は認められなかった。・年齢、片頭痛の持続時間、頻度、間隔と痛みの強さの関連を調査したところ、女性の片頭痛患者においてSUAレベルの差は痛みの強さと弱い相関が認められ(p<0.05、R>0.250)、男性の片頭痛患者では中程度の相関が認められた(p<0.05、R>0.516)。・頭痛がない期間と比較した頭痛発作中のSUAレベルの差に痛みの強さとの正の相関が認められたことから、SUAはその抗酸化作用により片頭痛に関与している可能性が示唆された。

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AD治療薬lecanemab、ARIAやQOL解析結果をAD/PD学会で発表/エーザイ・バイオジェン

 エーザイとバイオジェン・インクは3月31日付のプレスリリースにて、同社の早期アルツハイマー病(AD)治療薬の抗アミロイドβ(Aβ)プロトフィブリル抗体lecanemabについて、第III相試験「Clarity AD試験」における最新の解析結果を、スウェーデンのイェーテボリで3月28日~4月1日に開催の第17回アルツハイマー・パーキンソン病学会(AD/PD2023)にて発表したことを報告した。lecanemab投与群では、プラセボ群よりアミロイド関連画像異常(ARIA)の発現率が増加したが、抗血小板薬や抗凝固薬の使用によるARIAの発現頻度は上昇せず、ARIA-H単独の発現パターンはプラセボ群と同様だったことが明らかとなり、QOLの結果からは、lecanemab治療が被験者と介護者に有意義なベネフィットをもたらすことが示された。 早期AD患者1,795例(lecanemab群:898例[10mg/kg体重、2週ごとに静脈内投与]、プラセボ群:897例)を対象とした第III相無作為化比較試験「Clarity AD試験」において、主要評価項目ならびにすべての重要な副次評価項目を統計学的に高度に有意な結果をもって達成しており、その結果はNEJM誌2023年1月5日号に掲載されている1)。 AD/PD2023では、本試験における抗血小板薬/抗凝固薬使用とARIA(ARIA-E:浮腫/浸出、およびARIA-H:脳微小出血、脳表ヘモジデリン沈着、直径1cmを超える脳出血)の発現、ARIA-H単独の発現、介護者負担、健康関連QOLに関する最新の結果が発表された。 主な結果は以下のとおり。ARIAが発現した被験者における抗血小板薬/抗凝固薬使用の評価・lecanemab群は、プラセボ群よりARIAの発現率が増加した。・プラセボ群におけるARIA発現率は、抗血小板薬使用の場合9.7%、抗凝固薬(抗凝固薬のみまたは抗血栓薬との併用)使用の場合10.8%、未使用8.9%だった。抗血小板薬や抗凝固薬を使用した場合は、未使用と比較してわずかに高くなった。・lecanemab群におけるARIA発現率は、抗血小板薬使用の場合17.9%、抗凝固薬使用の場合13.3%、未使用21.8%だった。抗血小板薬や抗凝固薬を使用した場合は、未使用と比較して若干低くなった。・ARIA-Eの発現率は以下のとおり。 -抗血小板薬を使用した場合は、lecanemab群10.4%、プラセボ群0.84%。 -抗凝固薬を使用した場合は、lecanemab群4.8%、プラセボ群2.7%。 -未使用の場合は、lecanemab群13.1%、プラセボ群1.5%。・lecanemab群で直径1cmを超える脳内出血が観察された症例が報告された。ARIA-H単独(ARIA-Eを伴わないARIA-H)発現事象・ARIA-H(ARIA-Eを伴うARIA-H、およびARIA-H単独)の発現率は、lecanemab群17.3%、プラセボ群9.0%だった。・ARIA-H単独の発現率は、lecanemab群8.9%、プラセボ投与群7.8%で同程度だった。・ARIA-Eを伴うARIA-Hの多くは、ARIA-E発現と同時期である治療初期に発現するが、ARIA-H単独は、lecanemab群、プラセボ群ともに、18ヵ月の治療期間中に分散して発現した。・アポリポタンパク質Eε4(ApoEε4)とARIA-H単独の発現の関係性については、プラセボ群では非保有者3.8%、ヘテロ接合体保有者7.3%、ホモ接合体保有者18.0%、lecanemab群では非保有者8.3%、ヘテロ接合体保有者8.4%、ホモ接合体保有者12.1%だったが、ApoEε4ステータスはARIA-Hの発現時期には影響しなかった。・lecanemab群のARIA-H単独の発現パターンは、プラセボ投与群と同様だった。健康関連QOLに関する解析結果・被験者の健康関連QOL(HRQoL)として、ベースライン時と投与開始後6ヵ月ごとに、European Quality of Life-5 Dimensions(EQ-5D-5L)とQuality of Life in AD(QOL-AD)の指標により測定した。QOL-ADは介護者による評価も行った。6ヵ月ごとに介護者に対してZarit Burden Interviewを実施した。・lecanemab投与18ヵ月時点での被験者のEQ-5D-5LとQOL-ADのベースラインからの調整後平均変化量は、プラセボ群と比較して、それぞれ49%、56%の悪化抑制を示した。・介護者のZarit Burden InterviewとQOL-ADは、lecanemab投与18ヵ月時点でそれぞれ38%、23%の悪化抑制を示した。・これらの評価結果はApoEε4遺伝子型によらず一貫していた。

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アルツハイマー病薬が抜毛症と皮膚むしり症の症状軽減か

 アルツハイマー型認知症の治療薬として長年にわたり使用されているメマンチンが、抜毛症や皮膚むしり症の症状の軽減に役立つ可能性が、米シカゴ大学精神科学・行動神経科学教授のJon Grant氏らが実施した臨床試験で示された。同試験では、メマンチンが投与された抜毛症や皮膚むしり症の患者の5人中3人で症状の改善が認められたという。詳細は、「The American Journal of Psychiatry」に2月22日掲載された。 Grant氏によると、抜毛症と皮膚むしり症の米国での有病率は3~4%と推定されているという。これらの疾患の患者は、髪の毛などの自分の体毛を引き抜く、あるいは自分の皮膚をむしることがやめられず、実際に体を傷つけるまでそうした行為を続けてしまう人も多い。 米クリーブランドクリニックの情報によると、メマンチンには、脳内に最も多く存在する神経伝達物質の一つであるグルタミン酸の活性を阻害する働きがある。脳内のグルタミン酸の量が過剰になると、神経細胞が過度に興奮する。この状態は、アルツハイマー型認知症やパーキンソン病、ルー・ゲーリック病(筋萎縮性側索硬化症)、多発性硬化症などの疾患に関与していると考えられている。このほか、グルタミン酸は気分障害や強迫性障害(OCD)との関連も示唆されている。 米国では、メマンチンは中等度~重度のアルツハイマー病型認知症の治療薬として、2003年に米食品医薬品局(FDA)に認可された。現在は、そのジェネリック薬も利用可能である。しかし、一部の精神科医は、OCDの治療薬としてメマンチンを適応外処方することがある。Grant氏は、「OCDは、抜毛症や皮膚むしり症と親類のような関係にある疾患だ」と説明する。このことから同氏は、グルタミン酸に影響を及ぼすメマンチンのようなアルツハイマー型認知症の治療薬が、抜毛症や皮膚むしり症の治療に有効なのではないかと考えた。 そこでGrant氏らは、抜毛症や皮膚むしり症の成人患者100人(女性86人、平均年齢31.4歳)を今回の臨床試験に登録し、8週間にわたってメマンチン(10〜20mg/日)を投与する群とプラセボを投与する群にランダムに割り付けた。このうちの79人が試験を完了した。その結果、症状が「大きく改善、または極めて大きく改善」した患者の割合は、プラセボ群ではわずか8.3%(3/36人)であったのに対して、メマンチン群では60.5%(26/43人)に達した。ただし、皮膚をむしったり体毛を引き抜いたりする行為を完全にやめることができた患者の割合は、プラセボ群で1人、メマンチン群でも6人にとどまっていた。 この結果についてGrant氏は、「メマンチンによって皮膚をむしるなどの行為は減ったが、完全にそれをやめられた患者は多くはなかった。ゆえに、同薬にはある程度の効果はあるが、完璧ではないのかもしれない」との見方を示している。 またGrant氏は、「今回の臨床試験で得られたポジティブな結果は、これらの疾患へのグルタミン酸の関与を示したものだと言える。ただし、最善の治療法を見出すためには、今後さらなる研究が必要だ」と話す。その上で同氏は、「格好のスタート地点となる研究結果が得られたと考えている」と前向きな姿勢を示し、今後の検討課題として、メマンチンの使用量の増量、効果が得られやすい患者の特定、あるいは他の薬剤や行動療法との併用などを考慮する必要性に言及している。 一方、米ニューヨーク・プレスビテリアン病院およびワイル・コーネル・メディスン精神科学教授のKatharine Phillips氏も、グルタミン酸をコントロールすることが抜毛症や皮膚むしり症の治療の鍵となる可能性があるとの見方を示す。同氏自身も、実際にこれらの疾患の治療でメマンチンを使用することがあるという。 Phillips氏は、「私にとってメマンチンは、抜毛症と皮膚むしり症に対して使用する2種類のファーストライン治療薬のうちの一つだ。これらのグルタミン酸調節薬は、特に強迫観念や反復的な強迫行動を特徴とする障害に対して有用な可能性がある」と説明。また、抜毛症や皮膚むしり症に対する効果が証明されている習慣逆転法にメマンチンを組み合わせる治療法も考えられるとしている。

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認知症になってから何年生きられるのか?【外来で役立つ!認知症Topics】第3回

認知症臨床の場において、「あるある質問」として代表的なものには、筆者の場合、3つある。まずアルツハイマー病と認知症が同じか否かというもの。次に遺伝性の有無と、では自分は?という質問。そして今回のテーマ、「認知症になってから何年生きられるか?」という質問である。長年この問題に関して、正解とまでは言わずとも、エビデンスがしっかりした答えを知りたいと思ってきた。またこの質問の意図はそう単純ではない。長生きを望む人もあれば、逆に…という場合もありうる。今さらではあるが、2021年にLancet Healthy Longevity誌1)で優れたメタアナリシスが報告されていることを知り、丁寧に読んだ。その概要を臨床の場を鑑みながら解説する。メタアナリシスでの認知症平均余命まずメタアナリシスの素材となったのは、78の研究である。ここでは6.3万人余りの認知症があった人、15.2万人余りの認知症がなかった人のコントロールデータが扱われた。なお原因疾患はアルツハイマー病、血管性認知症、レビー小体型認知症と前頭側頭葉変性症である。アウトカムとして、まずあらゆる原因による「死亡率:mortality rate」、すなわち一定期間における死亡者数を総人口で割った値が用いられた。次に、認知症の診断もしくは発症から亡くなるまでの年数も用いられた。まず認知症全体としての死亡率は、認知症のない者に比べて5.9倍も高い。また全体では、発症の平均年齢が68.1±7.0歳、診断された年齢は72.7±5.9歳、初発から死亡までが7.3±2.3年。さらに診断から死亡までが4.8±2.0年となされている。全体の3分の2を占めるアルツハイマー病では、初発から死亡まで7.6±2.1年、診断から死亡までが5.8±2.0年になっている。つまりアルツハイマー病の診断がついた患者さんやその家族から「余命は何年か?」の質問を受けたなら、4~8年程度と答えることになる。もっとも本論文の対象は、われわれが対応する患者さんの年齢より、少し若いかなという印象がある。最も生命予後が良い/悪い認知症性疾患は?さて注目すべきは、4つの認知症性疾患の中でアルツハイマー病の生命予後が一番良いという結果である。逆にレビー小体型認知症(パーキンソン病に伴う認知症を含む)では、認知症のなかったコントロールに比べて、死亡率は17.88倍も高く、4つの認知症性疾患の中で最悪である。アルツハイマー病に比べても余命は1.12年も短い。その理由として以下に述べられている。1つには幻覚や妄想などの精神症状を伴うことである。それにより危険行為や衝動性に結び付きやすいことをよく経験する。また従来のデータでも示されてきたように、認知症性疾患のなかで、認知機能の低下率が大きく、合併疾患の割合が高く、QOLも悪いとされる。こうしたものが高い死亡率に結び付いているのではと考察している。確かにと納得できる。次に血管性認知症は、アルツハイマー病に比べて、死亡率が1.26倍高く、余命は1.33年短い。恐らくは心血管系の問題が大きく寄与していると考えられている。さらに前頭側頭葉変性症も生命予後は良くない。その理由として、運動障害に注目した面白い報告がある。近年よく知られるようになったが、前頭側頭型認知症では、パーキンソニズム、錐体外路徴候などによる運動障害を示す例が少なくない。さらにジストニアや失行も見られる。筆者はこれらによる転倒・転落を経験してきた。一方で、ある程度以上進むと、いわゆる早食いや詰め込み食いも見られることがある。こうしたことによる窒息や誤嚥性肺炎が死亡率を高めていると考察されている。自分の臨床経験では、このような突然死の多くは、盗んだり隠れたりして食べていたのである。治療のためにも早期受診が不可欠以上について、論文の著者らは注目していないが、いくつか感想がある。まず初発から診断までに、4年余りかかっているという結果である。疾患修復薬が前駆期・早期なら有用かと期待されるようになった今日、これでは治療の好機を逃してしまう。早期受診の重要性を再度認識する。次に自分が対応するアルツハイマー病の患者さんに限っても、何年経ってもほとんど変わらない人もいるが、1年以内に急速に悪化してしまう人もいる。こうしたケースはrapidly progressive Alzheimer diseaseと呼ばれることもあり、認知機能のみならず生命予後も不良である。そして現場では、主治医である筆者がその責任を厳しく問われることもある。けれども遺伝子、併存疾患、または症候学等からみて、この急速悪化群の関連因子はまだ定まっていない。こうしたsubtypeの予想も臨床的には不可欠な観点だろう。終わりに。アルツハイマー病以外の認知症性疾患に対しては、今のところこれという薬物治療法はない。それだけにこれらの疾患のある人に対する治療の場では、上に示した余命を短縮させてしまう因子に注意を払い、少しでもQOLが高く健やかな生活を実現する努力がこれまで以上に望まれる。参考1)Liang CS, et al. Mortality rates in Alzheimer's disease and non-Alzheimer's dementias: a systematic review and meta-analysis. Lancet Healthy Longev. 2021;2:e479-e488.

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パーキンソン病の淡蒼球超音波アブレーション試験(解説:内山真一郎氏)

 淡蒼球内節の片側超音波アブレーションの非盲検試験では、パーキンソン病の運動症状を軽減する効果があった。本試験では、運動障害またはジスキネジアを有するパーキンソン病患者94例を3対1の比率で無作為割り付けし、休薬時において症状の強い側と反対側に対する超音波アブレーションを疑似手技と比較した。 一次評価項目は、パーキンソン病の運動障害重症度尺度であるMDS-UPDRS IIIまたはジスキネジア重症度尺度であるUDysRSの3ヵ月後の服薬中での3点以上の低下であった。実治療群で反応があった割合は69%であり、対照群の32%より有意に多かった。実治療群でみられた副作用は、構音障害、歩行障害、味覚脱失、視覚障害、顔面麻痺などであった。主要な外科療法として行われている脳深部刺激療法も同様の効果があるが、開頭を必要とし、頭蓋内出血や感染症のリスクがあり、拒否する患者もいる。FDAは内科的治療に反応しにくくなった本態性振戦や振戦優位型のパーキンソン病に視床超音波アブレーションを承認している。本治療法の有効性と安全性を確立するにはより長期の大規模な試験が必要である。

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パーキンソン病、片側淡蒼球内節の集束超音波で運動機能改善/NEJM

 パーキンソン病患者に対する片側淡蒼球内節の集束超音波アブレーション(FUSA)は、3ヵ月後に運動機能やジスキネジアが改善した患者の割合が高かったものの、有害事象を伴った。米国・University of North CarolinaのVibhor Krishna氏らが北米、アジアおよび欧州の16施設で実施した無作為化二重盲検シャム対照比較試験の結果を報告した。片側淡蒼球内節のFUSAは、ジスキネジアや運動変動のあるパーキンソン病患者を対象とした小規模の非盲検試験において有効性が示唆されていた。著者は、「パーキンソン病患者におけるFUSAの有効性と安全性を明らかにするためには、より長期の大規模臨床試験が必要である」とまとめている。NEJM誌2023年2月23日号掲載の報告。FUSA群とシャム群に無作為化、3ヵ月後の改善を評価 研究グループは、UK Brain Bank基準で特発性パーキンソン病と診断され、投薬オフ状態でジスキネジアまたは運動変動と運動障害を有する30歳以上の患者を、淡蒼球内節のMRガイド下FUSA群またはシャム(対照)群に3対1の割合で無作為に割り付け、患者の利き手側または運動障害が大きい側と反対側に投薬オフ状態で治療を行った。 適格基準は、MDS-UPDRSパートIII(運動)スコアが投薬オン状態に対してオフ状態では30%以上減少で定義されるレボドパ反応性を有し、MDS-UPDRSパートIIIスコアが20以上で、ジスキネジアまたは運動変動の運動障害があり(投薬オン状態でMDS-UPDRS項目4.2スコアが2以上、またはMDS-UPDRS項目4.4スコアが2以上)、パーキンソン治療薬を30日以上安定投与されている患者とした。 主要アウトカムは、治療後3ヵ月時点の改善(投薬オフ状態での治療側のMDS-UPDRSパートIII[運動]スコアまたは投薬オン状態でのジスキネジア評価スケール[UDysRS]のスコアのいずれかがベースラインから3点以上減少で定義)。副次アウトカムはMDS-UPDRSの各項目スコアのベースラインから3ヵ月時点までの変化であった。 3ヵ月間の二重盲検期の後、12ヵ月時まで非盲検期を継続した。治療3ヵ月後に運動症状が改善した患者の割合はFUSA群69%、シャム群32% 94例が登録され、FUSA群に69例、シャム群に25例が割り付けられた。このうち治療を受けたそれぞれ68例および24例を安全性解析対象集団、3ヵ月後の主要評価を完遂した65例(94%)および22例(88%)を修正intention-to-treat集団とした。 治療後3ヵ月時点で改善した患者は、FUSA群で65例中45例(69%)、シャム群で22例中7例(32%)であった(群間差:37ポイント、95%信頼区間[CI]:15~60、p=0.003)。 FUSA群の改善例45例のうち、MDS-UPDRSパートIIIスコアのみが3点以上減少した患者は19例(29%)、UDysRSスコアのみが3点以上減少した患者は8例(12%)、両スコアとも3点以上減少した患者が18例(28%)であった。一方、シャム群の改善例7例のうち、6例はMDS-UPDRSパートIIIスコアのみが3点以上減少し、1例は両スコアとも3点以上減少した。 副次アウトカムは、概して主要アウトカムと同様の結果であった。 FUSA群において、3ヵ月時点で改善した45例のうち12ヵ月時点で評価し得たのは39例で、このうち30例は改善が続いていた。 FUSA群における淡蒼球破壊術関連有害事象は、構音障害、歩行障害、味覚障害、視覚障害および顔面筋力低下であった。

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血管性認知症やパーキンソン病認知症と尿酸値との関連~メタ解析

 中国・Shenyang Medical CollegeのQian Li氏らは、尿酸値と血管性認知症(VaD)およびパーキンソン病認知症(PDD)との関連を調査するため、メタ解析を実施した。その結果、尿酸値はPDDとの関連が認められたが、VaDとは認められなかった。著者らは、本研究がVaDやPDDの病態生理に関する知識を強化し、予防や治療戦略の開発促進に役立つことが期待されるとしている。Neurological Sciences誌オンライン版2023年1月24日号の報告。 2022年5月までに公表された関連研究を、PubMed、Embase、Web of Science、Cochrane Collaboration Databaseより検索した。プール分析、感度分析、出版バイアスの評価を実施した。すべての分析にSTATA 16を用いた。 主な結果は以下のとおり。・12件の研究より2,097例を分析に含めた。・プール分析では、尿酸値はVaDとの関連は認められなかったが(WMD:-10.99μmol/L、 95%信頼区間[CI]:-48.05~26.07、 p=0.561)、PDDとは関連が認められた(WMD:-25.22μmol/L、95%CI:-43.47~-6.97、p=0.007)。・感度分析および出版バイアスの評価において、統計学的に安定性および信頼性が認められた。

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「当事者にも目を向けて」―レビー小体型認知症の多様な症状

 2023年1月17日、住友ファーマ主催のレビー小体型認知症(DLB)に関するプレスセミナーが開催され、大阪大学大学院医学系研究科 精神医学教室 教授の池田 学氏から「第2の認知症、レビー小体型認知症(DLB)の多彩な症状と治療法の進歩」について、近畿大学医学部 精神神経科学教室 主任教授 橋本 衛氏からは「当事者に目を向けた診療のすすめと当事者、介護者、主治医に伝えたいこと」について語られた。 多様な症状を示し、アルツハイマー型認知症と比べてケアが難しいDLBでは、当事者、介護者、主治医の3者の理解が深まることで、当事者のQOL向上と介護者の負担軽減が期待される。DLBの臨床症状 DLBは、進行性の認知機能障害や幻視、妄想、パーキンソニズム、便秘や低血圧などの自律神経障害など、きわめて多様な臨床症状を示す。これらの症状は同時に起こることも多い。これらを踏まえて池田氏は、「DLBにはさまざまな症状があるということを知り、認知機能障害以外の症状にも目を向けないと、患者さんが早期に受診しても見落とす可能性がある」と、主治医がDLBの臨床症状を把握する重要性について訴えた。DLBの薬物治療、ケアのポイント さらに池田氏は、「DLBの薬物治療では、症状に合わせて、抗認知症薬、抗パーキンソン病薬、抗精神病薬などが用いられているが、いずれも副作用の発現や症状の悪化を引き起こす可能性があり、慎重に使用すべきである。ただ、副作用を避けながらの薬物治療は難しく、家庭では安全を保てない場合もあるため、必要に応じて入院や入所も積極的に考慮してほしい」と述べた。当事者の意向を尊重した認知症医療 従来のDLB治療では、当事者は認知症に対して自覚はなく、自分から症状を適切に判断して訴えることはできないという思い込みから、当事者不在の医療が行われることがあった。このことから橋本氏は、「当事者の半数以上は自分の治療ニーズを伝えることができる。また、当事者主体の医療・介護等の徹底について、厚生労働省の新オレンジプラン(認知症施策推進総合戦略)でも掲げられている。介護者だけではなく、当事者にもっと目を向けた診療を心掛ける必要がある」と強調した。当事者と介護者の治療ニーズと主治医の理解度 当事者と介護者が困っている症状は多岐にわたるため、専門医であってもその症状を完璧に把握することは難しい。とくに、自律神経障害、睡眠障害は見逃されやすい。橋本氏は、「DLBの症状を理解したうえで、当事者や介護者は治療ニーズをしっかりと主治医に伝え、主治医は両者の治療ニーズにしっかりと目を向けることで、当事者の意向を尊重する診療が広まっていくことを期待している」と講演を締めくくった。

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統合失調症・うつ病の頓服を含む退院時処方~EGUIDEプロジェクト

 さまざまなガイドラインにおいて、統合失調症やうつ病の薬物治療では、単剤療法が推奨されている。定期処方による治療はいくつかの研究で報告されているが、頓服使用を含む薬物療法に関する報告は十分ではない。北里大学の姜 善貴氏らは、頓服使用を含む薬物療法の内容を評価し、定期処方との関連を明らかにするため、本研究を実施した。その結果、向精神薬の頓服使用を考慮すると、統合失調症およびうつ病に対する退院時の薬物治療において単剤療法率および他の向精神薬未使用率は減少することが報告された。著者らは、高い単剤療法率および定期処方での他の向精神薬の未使用は、向精神薬の頓服使用の減少につながる可能性があるとしている。Annals of General Psychiatry誌2022年12月26日号の報告。 「精神科医療の普及と教育に対するガイドラインの効果に関する研究(EGUIDEプロジェクト)」のデータを用いて、退院時における薬物カテゴリごとの向精神薬の頓服使用の有無を調査し、その割合を診断疾患別に評価した。統合失調症患者における退院時の抗精神病薬単剤療法率および他の向精神薬未使用率、うつ病患者における退院時の抗うつ薬単剤療法率および他の向精神薬未使用率を、向精神薬の頓服使用を含む定期処方ごとに医療の質指標(QI)として算出した。各診断疾患における定期処方のQI値、定期処方と頓服使用を含む処方のQI比を算出するため、スピアマン順位相関係数を用いた。 主な結果は以下のとおり。・退院時の向精神薬の頓服使用率は、統合失調症で28.7%、うつ病で30.4%であり、診断疾患による有意な差は認められなかった。・薬物カテゴリごとの頓服使用率は、統合失調症では抗精神病薬と抗パーキンソン薬が有意に高く、うつ病では抗不安薬と催眠鎮静薬が有意に高かった。・QIは、両疾患ともに、定期処方よりも頓服使用を含む退院時処方で低かった。・定期処方のQI値と、定期処方と頓服使用を含む処方のQI比との間に、正の相関が認められた。

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アルツハイマー病症状の進行抑制にDBSが有用な可能性

 以前よりアルツハイマー病患者の記憶力の維持に対する脳深部刺激療法(DBS)の有効性が検討されているが、この治療アプローチの向上につながり得る新たな研究結果を、米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院のAndreas Horn氏らが、「Nature Communications」12月14日号に報告した。 DBSは脳の特定の部位に電極を埋め込み、電気刺激を加えることで異常な脳活動を抑制する治療法だ。埋め込まれた電極は、皮下に留置された電線を介してパルス発生器につながれる。パルス発生器はペースメーカーのようなデバイスで、胸部の皮下に埋め込まれ、脳内の電極に自動的に電気パルスを送るようにプログラムされている。DBSは、一般的には安全な治療法と考えられている。しかし、埋め込み手術にはある程度のリスクを伴う。また、時間の経過とともにDBSシステムを構成する機器が正しい位置からずれたり、壊れたりする可能性もある。 DBSは、すでにてんかんやパーキンソン病、強迫性障害などいくつかの疾患に対する確立された治療法となっているが、アルツハイマー病に対する有効性も検討され始めている。これまでに報告された研究では、脳弓と呼ばれる脳領域が刺激を与えるターゲットだった。神経線維の束で構成される脳弓は、脳の記憶回路で重要な領域だ。軽度のアルツハイマー病患者では脳弓に損傷のあることが報告されており、異常を来した回路の機能をDBSによって改善できる可能性に期待が寄せられている。しかし、実際にDBSによって記憶力の低下を遅らせることができたとする報告がある一方で、そのような効果は認められなかったとする報告もあり、研究間で意見は一致していない。 このような状況の中でHorn氏らは、電極の留置場所の違いが相反する研究結果を生んだ一因ではないかと考えた。そこで、軽度アルツハイマー病に対してDBSを施行する臨床試験に参加した46人の患者のデータを解析して、DBSによる刺激部位と治療への反応に関連があるかどうかを調べた。 Horn氏は当初、電気刺激を加える「スイートスポット」を見つけられるかどうかについては懐疑的だったが、結果的にそれを発見した。例えば、脳弓と情動や行動の反応に関わる分界条床核の間にDBSによる刺激を与えた場合に高い治療効果を得られることが分かったのだ。そこで、初期解析には含まれなかった18人の患者を対象にこの解析結果を検証したところ、DBSの電極を留置した場所によって治療効果を予測できることが確認された。 Horn氏は、DBSでの刺激対象となる脳内の部位を正確な場所に絞ることが最終的な目標だと説明し、「われわれが提案しているのは新たな治療戦略ではなく、精度を高めた治療戦略である」と述べている。ただし、「今後、DBSの精度がどれだけ向上したとしても、アルツハイマー病を治癒に導くことはできないだろう」と強調し、「われわれが望んでいるのは、患者が良好なQOLを維持できる期間を延ばすことだ」としている。 現時点ではアルツハイマー病の治療法としてのDBSはまだ研究段階にあるため、アルツハイマー病患者がDBSを受けるには臨床試験に参加する必要がある。現在、軽度アルツハイマー病患者を対象にDBSの有効性を1年かけて評価する、より大規模な臨床試験、ADvance IIが進行中だ。同試験への参加施設の一つである米テキサス大学健康科学センターのGabriel de Erausquin氏も、Horn氏らの研究の結果がDBSによる治療でターゲットを絞るのに役立つ可能性があるとの見解を示し、この研究結果がアルツハイマー病患者に対するDBSの有効性を高めることにつながれば、「大きな意味がある」と話している。なお、de Erausquin氏は今回のHorn氏らの研究には関与していない。 De Erausquin氏はまた、Horn氏と同様、DBSがアルツハイマー病の治癒をもたらす治療法ではない点を強調している。De Erausquin氏は、アルツハイマー病患者が通常たどる経過として機能が低下し続けることを指摘し、機能低下の進行を抑えられるようになることに期待を示している。

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パーキンソン病に鉄のキレート剤は有効か?(解説:内山真一郎氏)

 パーキンソン病では黒質線条体ニューロンの鉄濃度が上昇しており、酸化ストレスや細胞死に関与していると考えられる。実際、初期の研究では鉄のキレート剤であるdeferiproneがパーキンソン病患者の鉄濃度を減少させることが示唆されているが、その効果については不明であった。FAIR PARK-II試験はドーパミン製剤をまだ投与されていない、パーキンソン病と新規に診断された372例においてdeferiproneの有効性と安全性を評価した第II相プラセボ対照無作為化比較試験であった。36週の観察期間においてプラセボ投与群と比べてdeferiprone投与群ではMRIで黒質線条体の鉄濃度は低下したが、パーキンソン病の評価スコア(MDS-UPDRS)が悪化したという否定的な結果であった。鉄はチロシン水酸化酵素に対するコファクターとしてドーパミン合成、ミトコンドリアの酸化的リン酸化、酸素輸送に関与しているという側面もあるので、パーキンソン病症状が悪化したのはdeferiproneがチロシン水酸化酵素の活性を低下させたためかもしれない。

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レビー小体型認知症の初期症状の特徴

 レビー小体型認知症(DLB)は、神経変性疾患による認知症のうち2番目に多いとされる。レビー小体型認知症は認知機能障害の変動を特徴としているが、認知機能症状が出現する前に、急速眼球運動、睡眠行動障害、精神症状、自律神経症状、パーキンソン症状などが認められることが多い。そのため、レビー小体型認知症の初期段階では他疾患と診断されることも少なくない。中国・天津医科大学のMin Fei氏らは、レビー小体型認知症の初期症状の特徴を調査し、レビー小体型認知症の早期診断に必要な手掛かりを得ようと試みた。その結果、レビー小体型認知症患者の初期症状は性別や年齢により違いが認められた。著者らは、レビー小体型認知症の初期症状を理解することでより正確な診断が可能となるであろうとまとめている。Frontiers in Neurology誌2022年10月12日号の報告。レビー小体型認知症の初期症状で睡眠行動障害は女性よりも男性で多い 対象は、2015年9月~2021年3月にTianjin Huanhu Hospitalの認知症外来を受診したレビー小体型認知症が疑われる患者239例。すべての患者の初期症状をレトロスペクティブに調査した。初期症状の発症時期も併せて評価した。 レビー小体型認知症の初期症状の特徴を調査した主な結果は以下のとおり。・レビー小体型認知症患者の初期症状は、以下の順で認められた。 ●記憶障害:53.9% ●精神症状:34.7% ●睡眠行動障害:20.9% ●パーキンソン症状:15.1% ●自律神経症状:10.1%・レビー小体型認知症患者の初期症状は、性別や年齢により有意な違いが認められた。・睡眠行動障害は女性よりも男性で多く、幻覚や幻聴は男性よりも女性で多かった。

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早期パーキンソン病へのdeferiprone、疾患進行に有効か?/NEJM

 レボドパ製剤による治療歴がなく、ドパミン作動薬の投与が予定されていない早期パーキンソン病患者において、deferiproneによる36週間の治療はプラセボと比較して、パーキンソン病の臨床的な悪化が認められたことが、フランス・リール大学のDavid Devos氏らにより欧州の23施設で実施された医師主導の第II相無作為化二重盲検比較試験「FAIR PARK II試験」の結果、示された。パーキンソン病患者では黒質の鉄量増加が認められており、疾患の病態生理に寄与している可能性が示唆されている。鉄キレート剤のdeferiproneは、パーキンソン病患者の黒質線条体の鉄量を減少させることが、初期の研究で示されていたが、疾患進行に対する有効性は不明であった。NEJM誌2022年12月1日号掲載の報告。deferiproneを36週間投与、MDS-UPDRS総スコアの変化量を評価 研究グループは、新たにパーキンソン病と診断され、レボドパ製剤の投与歴がない18歳以上の患者を、deferiprone(1回15mg/kg)群またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付け、1日2回36週間経口投与した。症状のコントロールのために必要と判断された場合を除き、ドパミン作動薬は投与しないこととした。 主要評価項目は、運動障害疾患学会・改訂版パーキンソン病統一スケール(MDS-UPDRS)の総スコア(範囲:0~260点、スコアが高いほど障害が大きい)の36週時のベースラインからの変化量であった。 副次評価項目は、36週または40週時のMDS-UPDRSパートIIおよびIIIのスコア、パートIIとIIIの合計スコアであった。探索的評価項目は、MDS-UPDRSパートIのスコア、モントリオール認知評価(MoCA)スコア、パーキンソン病質問票(PDQ-39)で評価した疾患関連QOL、MRIを用いて評価した脳内鉄量などとした。 2016年2月~2019年12月に372例が登録され、deferiprone群186例、プラセボ群186例に割り付けられた。36週時の平均MDS-UPDRS総スコア、deferiprone群で15.6点悪化 ドパミン作動薬の治療導入につながる症状の進行は、deferiprone群22.0%、プラセボ群2.7%で確認された。 ベースラインの平均MDS-UPDRS総スコアは、deferiprone群34.3点、プラセボ群33.2点であり、36週時までにそれぞれ15.6点および6.3点増加(悪化)した(群間差:9.3点、95%信頼区間[CI]:6.3~12.2、p<0.001)。 MDS-UPDRSパートI、IIおよびIIIのスコア、パートIIとIIIの合計スコア、PDQ-39スコアのベースラインからの変化量は、プラセボ群よりdeferiprone群で大きかった(悪化)。また、黒質線条体における鉄量は、プラセボ群と比較してdeferiprone群でベースラインより大きく減少していた。 重篤な有害事象は、deferiprone群で9.7%、プラセボ群で4.8%に認められ、無顆粒球症はdeferiprone群でのみ2例、好中球減少症はそれぞれ3例および1例であった。

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遺伝子変異がパーキンソン病の生存期間予測に有用

 パーキンソン病における遺伝子変異が、患者の生存期間に関連することが報告された。ソルボンヌ大学パリ脳研究所(フランス)のAymeric Lanore氏らが、欧州神経学会(EAN2022、6月25~28日、オーストリア・ウィーン)で発表したもの。 Lanore氏らは、多施設コホートのパーキンソン患者を対象に、SNCA、LRRK2、PRKN、GBA変異を有する患者の生存期間を、いずれの変異もない患者(対照群)と比較。対象とした2,037人中、890人が追跡期間中に死亡した。 年齢、性別、発症から初診までの期間で調整した多変量解析の結果、LRRK2またはPRKN変異を有する患者では、対照群に比べ生存期間が長く〔死亡ハザード比(HR)はそれぞれ0.5、0.42〕、SNCAまたはGBA変異がある患者では、生存期間が短いことが判明した(死亡HRはそれぞれ10.20、1.36)。 Lanore氏は、「今回の研究結果は、パーキンソン病の進行を促進する因子について理解を深めるのに役立つだけでなく、がん患者が予後を告げられるのと同様に、パーキンソン病においても医師が患者と予測される余命について率直に話し合うことを可能にするかもしれない。これにより、患者は、治療と残された時間について自分自身で決定を下すことができる」と述べている。

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レビー小体病の睡眠障害~システマティックレビュー

 レビー小体病(LBD)は、レビー小体型認知症(DLB)とパーキンソン病型認知症(PDD)の両方を含む疾患である。LBDでは、睡眠の質の低下、日中の過度な眠気(EDS)、急速眼球運動行動障害(RBD)などの睡眠障害が高頻度で認められるにもかかわらず、他の認知症との比較研究は十分に行われていない。英国・ノーザンブリア大学のGreg J. Elder氏らは、LBDの睡眠障害の特性を調査し、睡眠障害に対する治療研究の効果、将来の研究に必要な具体性および方向性を明らかにするため、システマティックレビューを実施した。その結果、LBD患者は、高頻度に睡眠障害を合併しており、主観的な睡眠の質の低下、EDS、RBDなどが他の認知症患者よりも多く、より重度であることを報告した。International Journal of Geriatric Psychiatry誌2022年10月号の報告。 2022年6月10日までに英語で公表された研究をPubMed、PSYCArticlesデータベースより検索した。本研究は、PRISMAガイドラインに従って実施された。 主な結果は以下のとおり。・全文レビュー後、70件の研究が含まれた。・主観的な睡眠に焦点を当てた研究が20件、RBD関連が14件、EDS関連が8件、客観的な睡眠に焦点を当てた研究が7件、概日リズム障害関連が1件であった。・治療に関連する18件の研究の大部分は、薬理学的介入であった(12件)。また、非盲検試験は8件あり、研究の質は低~中程度であった。・多くの研究(55件)は、DLB患者のみで構成されていた。・研究の不均一性が大きく、メタ解析には至らなかった。・LBD患者の90%は、1つ以上の睡眠障害を有している可能性が示唆された。・LBD患者は、他の認知症患者と比較し、主観的な睡眠の質の低下、EDS、RBDの頻度が高く、より重度であることが示唆された。

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犬は人間のストレスも嗅ぎ分けられる

 犬に鋭い嗅覚があることはよく知られているが、英クイーンズ大学ベルファストのClara Wilson氏らの研究から、犬は、人間が吐いた息や汗に含まれるストレスのにおいまで嗅ぎ分けられることが明らかになった。この研究結果は、「PLOS ONE」9月28日号に発表された。 今回の研究の背景についてWilson氏は、「犬には驚くほど優れた嗅覚がある。これまでの研究でも、血糖値の変動など人間の体内の変化をにおいのみから検知する能力が犬に備わっていることが示されていた。しかし、心的経験に関わるにおいを検知する能力に関しては、ほとんど検討されてこなかった」と説明する。 これまで、犬はがんやパーキンソン病、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を嗅ぎ分けられることが示されているが、Wilson氏らは今回、犬が音声や視覚的な手がかりではなく、においから人間の心理状態を検知できるのかどうかを調べた。 研究には4頭の犬(平均年齢2.25歳)が参加した。4頭のうちの2頭は救助犬で、1頭はラーチャー、もう1頭はテリア、残る2頭は子犬の頃から同じ飼い主に育てられたコッカプーとコッカースパニエルだった。Wilson氏らは参加者36人に、ストレスを誘発する暗算の課題に取り組んでもらい、課題の前と課題終了後に参加者の汗と呼気のサンプルを採取した(ベースラインサンプル、ストレスサンプル)。また、参加者には自分のストレスレベルを自己評価してもらった。さらに、参加者の血圧と心拍の測定も行い、いずれも上昇していた場合のサンプルのみを研究に使用した。 実験は、ベースラインサンプル、ストレスサンプルに加え、未使用のサンプル採取用のガーゼ(ブランクサンプル)を用いて、2つのフェーズからなるセッションを、4頭の犬で合計36回実施された。セッションは、フェーズ1で、参加者から採取したストレスサンプル1点とブランクサンプル2点を提示してストレスサンプルを検知できるかを10回観察し、次のフェーズ2で、同一の参加者から採取したストレスサンプルとベースラインサンプル、およびブランクサンプルを1点ずつ提示して、ストレスサンプルを検知できるかを20回試すという内容であった。 実験室や現場では、犬は隠された爆弾のにおいを検知して知らせることができることが示されている。Wilson氏は、「今回の実験は、とてもよく似た複数のにおいサンプルから該当するものを選ぶという点で、爆弾検知などとは異なる」と話す。 実験の結果、4頭の犬のストレスサンプル検知の正確度には、90.00%から96.88%までの幅があったが、2つのフェーズを組み合わせた正確度は93.75%であることが明らかになった。 Wilson氏は今後の研究で、犬がストレスのにおいからどのような感情を認識するのかをテーマにする可能性を示唆している。また、今回の研究結果は、現在は視覚的な手がかりを使って訓練が行われている不安や心的外傷後ストレス障害(PTSD)の患者の介助犬にも活用できる可能性があるとしている。 Wilson氏は、「この研究によって、“人間の最良の友”である犬に驚くべき能力があることを裏付けるエビデンスがまた増えることになった」と話す。そして、「犬がにおいだけを頼りに人間の何を理解できるのかを調べるというのは、今まさに進展しつつある研究領域である」と付け加えている。

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認知症患者の死亡率に対するコリンエステラーゼ阻害薬の影響~システマティックレビュー

 コリンエステラーゼ阻害薬(ChEI)は、神経活動だけでなく心血管系への作用も有していることから、死亡率に影響を及ぼす可能性がある。フランス・ソルボンヌ大学のCeline Truong氏らは、ChEIによる治療が認知症患者の死亡率を改善するかを検討した。その結果、認知症患者に対するChEIの長期治療とすべての原因による死亡リスク低下との関連が認められ、そのエビデンスの質は中~高であることが示唆された。著者らは、これらの調査結果は、認知症患者に対するChEI治療の決定に影響を与える可能性があるとしている。Neurology誌オンライン版2022年9月12日号の報告。 2021年11月までに公表された文献をPubMed、EMBASE、Cochrane CENTRAL、ClinicalTrials.gov、ICRTPより検索し、レビュー、ガイドライン、これらに含まれる研究の参考文献をスクリーニングした。あらゆるタイプの認知症患者を対象に、ChEIによる治療とプラセボまたは通常治療との比較を6ヵ月以上実施した、バイアスリスクのより低いランダム化比較試験(RCT)および非RCTを分析に含めた。2人の独立した研究者により、研究の包含およびバイアスリスクを評価し、事前に規定されたフォーマットに従いデータを抽出した。研究者間の不一致事項については、ディスカッションおよびコンセンサスにより解決した。すべての原因による死亡および心血管死に関するデータは、粗死亡率または多変量調整ハザード比(HR)として測定し、ランダム効果モデルを用いてプールした。集積されたデータは、逐次解析(trial sequential analysis:TSA)を用いて評価した。なお、本研究はPRISMAガイドラインに従って実施した。 主な結果は以下のとおり。・選択基準を満たした研究は、24件(7万9,153例)であった(RCT:12件、コホート研究:12件、平均フォローアップ期間:6~120ヵ月、アルツハイマー型認知症:13件、パーキンソン病認知症:1件、血管性認知症:1件、あらゆるタイプの認知症:9件)。・対照患者のプールされたすべての原因による死亡リスクは、100人年当たり15.1人であった。・ChEIによる治療は、すべての原因による死亡リスクの低下と関連が認められた(未調整RR:0.74[95%CI:0.66~0.84]、調整済みHR:0.77[95%信頼区間[CI]:0.70~0.84]、エビデンスの質:中~高)。・本結果は、いくつかの感度分析によりRCT、非RCTにおいて一貫性が認められた。・認知症のタイプ、年齢、各薬剤、認知症の重症度によるサブグループにおいても、差は認められなかった。・心血管死についてのデータは少なかったが(RCT:3件、コホート研究:2件、9,182例、エビデンスの質:低~中)、ChEIで治療された患者でリスクは低かった(未調整RR:0.61[95%CI:0.40~0.93]、調整済みHR:0.47[95%CI:0.32~0.68])。・TSAでは、すべての原因による死亡のアウトカムは確実性が高かったが、心血管死のリスクについてはそうではなかった。

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事例009 エクセグラン錠の査定【斬らレセプト シーズン3】

解説事例では、旅行中のパーキンソン病患者からの受診の求めに応じ、ゾニサミド(一般名)にて処方、エクセグラン錠(商品名)を調剤したところ、C事由(医学的理由による不適当)にて査定となりました。増減点内容欄には、「ゾニサミドをパーキンソン病(本剤の承認外効能・効果)の治療目的で投与する場合には、パーキンソン病の効能・効果を有する製剤(トレリーフ)を用法・用量どおりに投与すること」と記載がありました。エクセグラン錠の添付文書を確認してみました。「抗てんかん剤」としての効能または効果しか記載はありません。同様にトレリーフの添付文書も確認してみました。用量は異なりますが、一般名は同じゾニサミドでした。こちらはパーキンソン病治療薬として認められています。薬価も大きく異なることから、用量を同じくした処方・調剤であれば、エクセグラン錠にもパーキンソン病の適用があると考えられていたようでした。そして、エクセグラン錠の添付文書「15.その他の注意」の最後には「パーキンソン病患者(承認外効能・効果)」と念押しのような記載がありました。医師も承認外使用であることをご存じではありましたが、点数が小さいとはいえ査定には変わりありません。また、医療安全上の問題にもなりかねないため、処方システムなどでアラートが表示された場合には対応いただくか、アラートに対する医学上必要性のコメントを注記いただくようにお願いをしました。

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錠剤の効果をすぐに得るには服用姿勢が重要

 錠剤を飲むなら、体の右側を下にした状態で寝て飲むのが良いかもしれない。米ジョンズ・ホプキンス大学教授のRajat Mittal氏らは、錠剤を服用するときの姿勢が体内での薬の吸収に与える影響について調べるため、コンピューターモデルを用いた研究を実施。右側を下にした横臥位で錠剤を飲んだ場合、立位で飲んだ場合と比べて錠剤が胃の最奥部に到達して分解されるまでの時間が2.3倍速いことが示されたとする結果を、「Physics of Fluids」に8月9日発表した。 ほとんどの錠剤は、飲み込んだ後、胃から腸へと排出されてから効果が現れる。このことはすでに研究者の間でも知られていた。このことから、胃の一番奥の幽門洞と呼ばれる部分により早く到達した錠剤ほど分解も早く、また、そこから小腸の入口部分にある十二指腸へと排出されるのも早いことが予測される。錠剤を幽門洞により早く到達させるには、重力と胃の非対称性を利用できるような姿勢を取る必要がある。 Mittal氏らは今回、薬剤を服用する際の姿勢と胃運動がバイオアベイラビリティ(投与された薬物が全身循環に到達して作用する割合)に与える影響を、StomachSimと呼ばれるモデルを用いて検討した。StomachSimは、飲み込んだ食べ物や薬が胃の中で消化される様子をシミュレーションするために、物理学や生体力学、流体力学に基づいて作られたモデルである。薬剤を服用する姿勢として、体の右側を下にした横臥位に加え、左側を下にした横臥位、直立位、仰臥位で比較検討した。 その結果、驚くべきことに、右側を下にした横臥位では、服用した錠剤が分解されるまでにかかる時間は10分であったが、直立位の場合では23分、左側を下にした横臥位の場合では100分以上かかることが明らかになった。仰臥位で服用した錠剤の分解にかかる時間は、直立位で服用した場合と同程度であった。 Mittal氏は、「錠剤の吸収率に姿勢がこれほど大きな影響を与えているとは、われわれにとって大変な驚きだった」と振り返る。そして、「これまで、自分の錠剤の飲み方が正しいのか、あるいは間違っているのかといったことを考えたことがなかった。しかし今後は、確実に錠剤を飲むたびに考慮することになるだろう」と話している。 Mittal氏はまた、同大学のニュースリリースの中で、「高齢で座って過ごすことが多い人や寝たきりの人にとって、薬を飲むときに左右のどちらを下にするかは大きな影響をもたらす可能性がある」と述べている。 一方、研究論文の筆頭著者で同大学のJae Ho "Mike" Lee氏は、胃の状態のわずかな変化が飲み込んだ物の分解に大きな影響を与え得ると指摘する。例えば、糖尿病やパーキンソン病といった疾患が原因で胃の機能がベストの状態にないと、錠剤の分解に影響が及び、その影響の大きさは姿勢の違いによる影響と同程度であるという。 研究グループは、今後は胃の生体力学的な変化が体内での薬剤の吸収に与える影響について予測を試みる研究などを計画していると話している。

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