サイト内検索|page:8

検索結果 合計:823件 表示位置:141 - 160

141.

トレンド・トーク:新たな治療薬の登場で、胃がん1次治療はどう変わる?(2)【消化器がんインタビュー】第14回

第14回 トレンド・トーク:新たな治療薬の登場で、胃がん1次治療はどう変わる?(2)出演:岐阜大学医学部附属 がんセンター 牧山 明資氏ニボルマブを含むレジメンが承認されたHER2陰性切除不能胃がんの1次治療。今後もペムブロリズマブ、抗CLDN18.2抗体zolbetuximabも選択肢として加わる可能性がある。HER2陰性胃がんの1次治療はどう変わっていくのか?3名のエキスパートに聞いた。

142.

非小細胞肺がん周術期内科と外科でDiscussion【肺がんインタビュー】 第97回

第97回 非小細胞肺がん周術期内科と外科でDiscussionニボルマブの術前補助療法が適応追加となり非小細胞肺がんの周術期治療は新時代を迎える。これら新治療の優れた有効性を生かすためには、診療科の枠を超えたコンセンサスが必要となる。今回は日本の肺がん治療における内科と外科のオピニオンリーダーに症例を基に議論いただいた。出演<ファシリテーター>近畿大学 光冨 徹哉氏(兼プレゼンター)<パネリスト>(五十音順)国立がん研究センター東病院 青景 圭樹氏静岡県立静岡がんセンター 釼持 広知氏国立がん研究センター中央病院 堀之内 秀仁氏(兼プレゼンター)北九州市立医療センター 松原 太一氏

143.

トレンド・トーク:新たな治療薬の登場で、胃がん1次治療はどう変わる?(1)【消化器がんインタビュー】第14回

第14回 トレンド・トーク:新たな治療薬の登場で、胃がん1次治療はどう変わる?(1)出演:一宮西病院 腫瘍内科 松本 俊彦氏ニボルマブを含むレジメンが承認されたHER2陰性切除不能胃がんの1次治療。今後もペムブロリズマブ、抗CLDN18.2抗体zolbetuximabも選択肢として加わる可能性がある。HER2陰性胃がんの1次治療はどう変わっていくのか?3名のエキスパートに聞いた。

144.

高リスクHER2+乳がん、術前療法へのアテゾリズマブ追加でpCR改善は(APTneo)/SABCS2023

 HER2陽性高リスク乳がんに対する術前補助療法として、トラスツズマブ(H)+ペルツズマブ(P)+化学療法は標準治療となっている。また、抗HER2療法に対する免疫系の寄与を示すデータが報告され、免疫チェックポイント阻害薬と抗HER2抗体の組み合わせが裏付けられている。イタリア・Fondazione MichelangeloのLuca Gianni氏らは、HP+化学療法へのアテゾリズマブ(±アントラサイクリン)の追加を評価することを目的として、第III相APTneo試験を実施。サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2023)で病理学的完全奏効(pCR)についてのデータを報告した。・対象:HER2陽性の切除可能または局所進行乳がん患者(化学療法未治療)・試験群AC+アテゾリズマブ併用群:AC(ドキソルビシン+シクロホスファミド)+アテゾリズマブ(1,200mg 3週ごと静脈内投与)×3サイクル→HPCT(トラスツズマブ+ペルツズマブ+カルボプラチン+パクリタキセル)+アテゾリズマブ×3サイクル→手術→HP+アテゾリズマブ 218例アテゾリズマブ併用群:HPCT+アテゾリズマブ×6サイクル→手術→HP+アテゾリズマブ 220例・対照群:HPCT×6サイクル→手術→HP 223例・評価項目:[主要評価項目]試験群vs.対照群の無イベント生存期間(EFS)[副次評価項目]pCR、忍容性、予測マーカーの評価など 主な結果は以下のとおり。・ベースラインにおける患者特性は3群でバランスがとれており、年齢中央値は49~50歳、局所進行乳がんは44.1~45.3%、PD-L1陽性は29.8~30.9%、ホルモン受容体陽性は61.0~69.1%であった。・副次評価項目のpCR率は、対照群52.0%に対し試験群57.8%で有意な改善はみられなかった(p=0.091)。AC+アテゾリズマブ併用群のpCR率は61.9%で対照群と比較して有意に改善したが(p=0.022)、アテゾリズマブ併用群のpCR率(53.6%)と比較して有意な差はみられなかった(p=0.089)。・重篤な有害事象(SAE)は、対照群で6.8%、試験群で14.1%に発生した。AC療法による血液毒性のため、アテゾリズマブ併用群(11.6%)よりもAC+アテゾリズマブ併用群(16.7%)で頻度が高かった。・免疫関連のSAEはAC+アテゾリズマブ併用群で4.7%、アテゾリズマブ併用群で7.8%と頻度が高いわけではなく、臨床的にコントロール可能なものであった。 Gianni氏は、「HER2陽性の早期高リスクおよび局所進行乳がん患者において、HP+化学療法へのアテゾリズマブの追加は、数値としてpCR率の5.8%増加が確認されたものの統計学的有意差は得られなかった。探索的解析において、AC+アテゾリズマブ併用群におけるpCR率は統計学的に有意に高いことが示されており、アントラサイクリンの直接効果あるいはアテゾリズマブによるAC療法の機構的増強のいずれかが示唆されるのではないか」と結論付けている。同試験はEFSの解析まで現在も進行中。

145.

TN乳がん術前免疫化療前・後のニボルマブ単剤、pCRに有意差なし(BCT1902/IBCSG 61-20 Neo-N)/SABCS2023

 StageI~IIBのトリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者に対して、12週間のニボルマブ+非アンスラサイクリン系抗がん剤の術前免疫化学療法の前または後にニボルマブ単剤治療を組み合わせた第II相BCT1902/IBCSG 61-20 Neo-N試験の結果、ニボルマブ単剤治療の順番にかかわらず有望な病理学的完全奏効(pCR)率を示したことを、オーストラリア・Newcastle大学のNicholas Zdenkowski氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2023、12月5~9日)で発表した。 これまで、早期TNBC患者に対する抗PD-L1抗体薬+化学療法の術前免疫化学療法では、すべての薬剤を同時に開始するよりも、抗PD-L1抗体薬を先行して投与したほうがより良好なpCRが得られたという報告1)がある。pCRは良好な予後と関連し、化学療法の期間の短縮が期待されていることから、研究グループはTNBC患者に対するニボルマブ単剤とニボルマブ+化学療法併用の治療戦略を明らかにするために研究を行った。・対象:StageI~IIBのTNBC患者 108例・試験群:ニボルマブ(240mg、2週間)→ニボルマブ(360mg、21日ごと)+カルボプラチン(AUC5、21日ごと)+パクリタキセル(80mg/m2、21日ごとの1・8・15日目)を4サイクル→手術【ニボ先行群:53例】・対照群:ニボルマブ(360mg、21日ごと)+カルボプラチン(AUC5、21日ごと)+パクリタキセル(80mg/m2、21日ごとの1・8・15日目)を4サイクル→ニボルマブ(240mg)→手術【ニボ後行群:55例】・評価項目:[主要評価項目]pCR(ypT0/Tis ypN0)[副次評価項目]腫瘍残存率(RCB)、安全性、PD-L1陽性(≧1%)集団および腫瘍浸潤リンパ球(TIL)高値(≧30%)集団におけるpCR、無イベント生存期間(EFS)・層別化因子:年齢(40歳未満/以上) 主な結果は以下のとおり。・2020年7月~2022年4月に110例が両群に無作為に割り付けられ、治療を開始した108例が解析対象となった。追跡期間中央値は12ヵ月であった。・ベースライン時のニボ先行群およびニボ後行群の患者特性は、年齢40歳未満が26%/16%、閉経周辺期が53%/55%、StageIが34%/35%、TIL高値が34%/33%、PLD1陽性が43%/51%、Ki67中央値がそれぞれ70%であった。・pCR率は全体で53%(90%信頼区間:44~61)、ニボ先行群は51%(39~63)、ニボ後行群は55%(43~66)で、ニボルマブ単剤治療の先行によるpCRの優位性は認められなかった。・PD-L1発現状況によるpCR率は、陽性集団では71%、陰性集団では33%であった。・TIL値によるpCR率は、高値集団では67%、低値集団では47%であった。・全体のRCB 0~1の割合は69%で、ニボ先行群は64%、ニボ後行群は73%であった。・忍容性は良好で、新たな安全性シグナルは認められなかった。・EFSは未成熟であった。

146.

再発・進行子宮頸がん、アテゾリズマブ+ベバシズマブ+化学療法がOS・PFS改善(BEATcc)/Lancet

 転移、治療抵抗性、再発のいずれかを有する子宮頸がんにおいて、ベバシズマブ+プラチナ製剤を含む化学療法へのアテゾリズマブの上乗せは、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)ともに有意に延長することが、スペイン・バルデブロン腫瘍学研究所のAna Oaknin氏らが行った研究者主導の第III相無作為化非盲検試験「BEATcc試験」の結果で示された。転移のあるまたは再発の子宮頸がんに対しては、GOG240試験でベバシズマブ+化学療法が標準的な1次治療として確立されており、今回のBEATcc試験(ENGOT-Cx10/GEICO 68-C/JGOG1084/GOG-3030)ではこれに加えて免疫チェックポイント阻害薬の上乗せを評価した。結果を踏まえて著者は、アテゾリズマブの追加について「1次治療の新たな選択肢と見なすべきである」としている。Lancet誌オンライン版2023年12月1日号掲載の報告。日本、欧州、米国の医療機関92ヵ所で試験 BEATcc試験は、日本、欧州、米国の医療機関92ヵ所で行われた。対象は測定可能な病変を有し、転移(StageIVB)、治療抵抗性、再発のいずれかを認める子宮頸がんで、未治療、手術・放射線療法が非適応の18歳以上の患者であった。 被験者は1対1の割合で無作為に2群に分けられ、標準療法(シスプラチン50mg/m2またはカルボプラチンAUC5、パクリタキセル175mg/m2、ベバシズマブ15mg/kg、いずれも3週ごとに投与)、または標準療法にアテゾリズマブ1,200mg(3週ごとに投与)を上乗せするアテゾリズマブ併用療法を受けた。病勢進行、許容できない毒性、患者の離脱もしくは死亡まで治療を継続した。併用化学放射線療法歴の有無、組織学的分類(扁平上皮がん、腺扁平上皮がんを含む腺がん)、プラチナ製剤(シスプラチン、カルボプラチン)で層別化した。 主要評価項目は2つで、RECISTに基づく治験責任医師評価のPFSと、ITT集団におけるOSとした。PFS中央値、標準療法群10.4ヵ月、アテゾリズマブ併用群13.7ヵ月 2018年10月8日~2021年8月20日に、適格性の評価を受けた519例中410例が試験に登録された(アテゾリズマブ併用群206例、標準療法群204例)。ベースラインでの両群の特性は類似しており、年齢中央値はアテゾリズマブ併用群51.0歳(四分位範囲[IQR]:43.0~60.0)、標準療法群52.5歳(43.5~61.0)、ECOG PS0は67%と63%であった。また、410例のうち263例(64%)が手術の有無にかかわらず化学療法既往で、90例(22%)が試験登録時にStageIVBであった。日本人の参加は、アテゾリズマブ併用群30例(15%)、標準療法群26例(13%)。 主要解析のデータカットオフ時点(2023年7月17日)で、全集団の追跡期間中央値は32.9ヵ月(95%信頼区間[CI]:31.2~34.6)。同時点のPFS中央値は、アテゾリズマブ併用群13.7ヵ月(95%CI:12.3~16.6)、標準療法群10.4ヵ月(9.7~11.7)だった(ハザード比[HR]:0.62、95%CI:0.49~0.78、p<0.0001)。 また、中間解析(データカットオフ時点)でのOS中央値は、アテゾリズマブ併用群32.1ヵ月(95%CI:25.3~36.8)、標準療法群22.8ヵ月(20.3~28.0)だった(HR:0.68、95%CI:0.52~0.88、p=0.0046)。 Grade3以上の有害事象の発現は、アテゾリズマブ併用群79%、標準療法群75%。アテゾリズマブ併用群で発現増大が認められた有害事象は、Grade1~2の下痢、関節痛、発熱、発疹だった。

147.

HER2陽性胃がん・食道胃接合部腺がんの初期治療における免疫チェックポイント阻害薬と標準化学療法併用の有効性(解説:上村直実氏)

 手術不能な胃がん・食道胃接合部腺がんに対する薬物療法として、20年以上前から5-FUを代表とするフッ化ピリミジン系薬剤とシスプラチンやオキサリプラチンなどのプラチナ系薬剤の併用療法(FP療法)が標準的化学療法となっていた。その後、細胞増殖に関わるHER2遺伝子の有無による分類がなされ、HER2陽性の胃がん・食道胃接合部腺がんに対するFP療法に抗HER2抗体であるトラスツズマブを加えたレジメンが標準治療として確立している。 一方、最近、免疫チェックポイント阻害薬の登場に伴って、手術不能な消化器がんに対する薬物療法が大きく様変わりしており、切除不能なHER2陰性胃がんに対しては、FP療法に免疫チェックポイント阻害薬であるニボルマブやペムブロリズマブを加えた3剤併用治療が標準治療レジメンとして確立しつつある。今回は、HER2陽性の胃がん・食道胃接合部腺がんに対して、標準治療であるトラスツズマブ+FP療法に抗PD-1抗体ペムブロリズマブを併用する有用性を検証する試験結果が、2023年10月16日のLancet誌オンライン版に掲載された。この報告は中間解析であるが、ペムブロリズマブ群の無増悪生存期間がプラセボ群に比べて有意に延長された結果が示されている。なお、本試験は継続中であり、厳密に言えば、今後の最終結果を待つ必要もあるが、切除不能胃がんに対する1次治療に免疫チェックポイント阻害薬を含むレジメンが一般的になるものと思われた。 最後に、本年の3月、zolbetuximabに関する論文に対するコメントでも指摘したのだが、臨床現場では、通常の胃がんと食道胃接合部腺がんの両者は浸潤様式や発育速度において異なる生物学的特性を有することが多いことが知られていることから、両疾患をひとまとめにするのではなく、適切な臨床研究デザインによる精緻なエビデンスが期待される。

148.

治療歴のあるHER2+転移乳がん、アベルマブ追加でPFS改善(AVIATOR/TBCRC045)/SABCS2023

 治療歴のあるHER2+転移乳がんに対して、標準治療である化学療法+トラスツズマブに、抗PD-L1抗体であるアベルマブを追加することで無増悪生存期間(PFS)が有意に改善することが示された。一方、化学療法+トラスツズマブ+アベルマブに、4-1BBアゴニストであるutomilumabを追加してもPFSの改善はみられなかった。米国・Dana-Farber Cancer InstituteのAdrienne G. Waks氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2023)で発表した。 本試験は、HER2+転移乳がんに対して、化学療法+トラスツズマブにアベルマブおよびutomilumabを併用した場合の有効性と安全性を検討した無作為化第II相試験である。・対象:トラスツズマブ/ペルツズマブ/T-DM1の治療歴がある進行HER2+乳がん(ビノレルビン/免疫チェックポイント阻害薬の治療歴がある患者は除外)100例・試験方法:ビノレルビン+トラスツズマブ(NH)群、ビノレルビン+トラスツズマブ+アベルマブ(NHA)群、ビノレルビン+トラスツズマブ+アベルマブ+utomilumab(NHAU)群に1:2:2で無作為に割り付け・評価項目:[主要評価項目]PFS[副次評価項目]全奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、安全性/忍容性※当初、NHA群とNH群、NHAU群とNHA群で比較予定だったが、2021年utomilumabの開発が中止され、中間無益性解析でNHAU群のNHA群に対するPFSのハザード比(HR)が1.14(p=0.32)であったことからNHAU群を終了した。 主な結果は以下のとおり。・NHA群(45例)は NH群(18例)に比べて PFS を有意に改善し(HR:0.56、90%信頼区間[CI]:0.31~0.91、片側log rank検定p=0.025)、中央値はNH群2.0ヵ月、NHA群3.8ヵ月だった。・ORRは、NH群11.1%に対してNHA群20.0%、DOR中央値は、NH群が評価不能、NHA群が15.8ヵ月だった。・患者全体において、治療前の腫瘍浸潤リンパ球(TIL)が10%以上の患者では10%未満の患者よりPFSが良好な傾向を示した(HR:0.55、90%CI:0.29~1.04)。一方、PD-L1 CPSが1以上と1未満でPFSに差はみられなかった(HR:0.77、90%CI:0.43~1.36)。・Grade3/4の試験治療下における有害事象(TEAE)は、NH群61.1%、NHA群62.2%とほぼ同等だった。NHA群でGrade3の免疫関連有害事象が2例発現した(副腎機能不全、AST上昇)。予期しないTEAEは認められなかった。 Waks氏は「治療歴のあるHER2+転移乳がんに対する免疫チェックポイント阻害のさらなる研究が必要」と述べた。

149.

第189回 エクソソーム療法で死亡事故?日本再生医療学会が規制を求める中、真偽不明の“噂”が拡散し再生医療業界混乱中

生成AIを活用して作った 「ブラック・ジャック」の新作が発表こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。先週(11月23日)発売の週刊少年チャンピオンに、「ブラック・ジャック」の新作が発表されました。手塚治虫の漫画、「ブラック・ジャック」については、1ヵ月前、本連載の「第185回 六本木で開催中の『ブラック・ジャック展』で考えた、“黒い医者”たちと医療・医師の普遍性」でも取り上げました。この時、OpenAIの「GPT-4」やStability AIの「Stable Diffusion」などの生成AIを活用して「ブラック・ジャック」の新作を制作する試みが進行中だと書いたのですが、その新作がいよいよ発表されたのです。ということで、週刊少年チャンピオンを買おうと近所の書店に出掛けたのですが、どこにもありません。近所のコンビニも数軒覗いたのですが、やはり在庫がありません。書店もコンビニも、少年誌で置いてあったのは少年ジャンプと少年マガジンばかり。発行部数・流通量が少ない雑誌はこうまで手に入りにくいものかと驚いた次第です。ちなみに漫画雑誌の新刊はアマゾンでは冊子版は流通しておらず、電子版(Kindle)でしか読めないようです。半ば諦めていたところ、たまたま出先のコンビニに飲み物を買いに入ったところ、1冊だけ週刊少年チャンピオンが残っており、なんとか現物を入手することができました。「ブラック・ジャック」掲載を見越して発行部数や流通量にもAIを活用してほしかった…、と思いました。手塚 治虫氏の長男、手塚 眞氏が中心となった「TEZUKA2023プロジェクト」による「ブラック・ジャック」の新作、「機械の心臓-Heartbeat Mark II」(33ページの読み切り)ですが、大学のAI研究者や有名映画監督も入った大プロジェクトの割に、作品はこの程度かと少々肩透かしをくらった、というのが正直な感想です。AIといえども、やはり“神様”には勝てないのだな、と思った次第です。エクソソーム療法、「将来的には何らかの規制下に置かれることが望ましい」と日本再生医療学会が提言さて、今回は、一部で話題となっている「エクソソーム療法」について書いてみたいと思います。11月10日の厚生労働省の再生医療等評価部会で、日本再生医療学会はエクソソーム療法が美容クリニックなどの自由診療で広がっている現状を踏まえ、「将来的には何らかの規制下に置かれることが望ましい」と提言しました。「エクソソーム療法で死亡例が出ている」といった情報も一部に流れているようです。この情報はデマの可能性もあり、業界は混乱に陥っています。美容やアンチエイジングを目的に他家細胞由来の細胞培養上清液やエクソソームを自由診療で投与エクソソームは、直径100nm程度の細胞外小胞(EVs:Extracellular Vesicles)と呼ばれるものの1種です。EVsは細胞が分泌する物質で、組織の再生を促す成長因子や細胞間の情報伝達物質を含んだエクソソームなどからなっており、医療分野での活用が期待されています。国内でも、美容やアンチエイジングを目的に、他家細胞由来の細胞培養上清液や、上清液から抽出したとされるエクソソームを自由診療で投与する医療機関が増えています。これらを通称「エクソソーム療法」と呼んでいます。もっとも、有効性や安全性が確認され、治療法として承認されているものはまだありません。インターネットで「エクソソーム療法」を検索すると、数多くの自由診療クリニックがヒットします。それらのクリニックでは、エクソソームを含んだ幹細胞由来の細胞培養上清液やエクソソームについて、皮膚の再生、創傷治癒の促進、老化防止、疲労回復、ED(勃起不全)改善などに効果ありと、まるで万能の不老薬のように宣伝しています。再生医療等安全性確保法の対象外のため提供計画の提出、副作用などの報告の義務なし11月10日の厚生労働省の再生医療評価部会で、日本再生医療学会の岡野 栄之理事長(慶應義塾大学医学部 生理学教室 教授)は、「再生医療という名目で、多くのクリニック等で自由診療として行われている現状や、感染症のリスク等を鑑み、製造過程等を含めて、将来的には何らかの規制下に置かれることが望ましい」と主張しました。同学会は、2023年10月27日、「再生医療等のリスク分類・法の適用除外範囲の見直しに関する提言」を行い、エクソソームを含むEVsを再生医療新法の対象とするよう提言していますが、それを改めて再生医療評価部会の場ででも訴えたわけです。背景には、老化防止をうたう美容クリニックなどにおいて自由診療によるエクソソーム療法が急拡大していることがあります。現状、日本では細胞培養上清液やエクソソームは細胞断片であり、細胞には当たらないと整理されており、再生医療等の安全性の確保等に関する法律(再生医療等安全性確保法)の対象外となっています。同法が施行されたのは2014年、主に自由診療でがん免疫療法(自家の免疫細胞を培養し投与)を行っていた医療機関における安全性確保のためでした。この時はEVsによる治療自体がまだ認知されておらず、規制対象にはなりませんでした。そのため、現在、細胞培養上清液やエクソソームを医療機関で投与する際、同法で定められた認定再生医療等委員会の審査や再生医療等提供計画の提出、副作用の報告といった煩雑な手続きは課せられません。これがエクソソーム療法の急拡大につながっているわけです。「交差汚染管理が不十分な場合などに敗血症等重篤な事故を引き起こす可能性がある」しかし、EVsは、「主に細胞から調製されるという点において細胞加工物と類似のリスクを有しており、交差汚染管理が不十分な場合などに敗血症等重篤な事故を引き起こす可能性がある」(再生医療等評価部会・岡野氏資料より)ことから、日本再生医療学会は「科学的根拠に基づき、グローバルスタンダードに則ったEVs治療の開発を進めるために、産学官の協力が必要である。EVsの定義、効能、品質管理に基づいた安心、安全なEVsの治療応用のガイドライン作成は急務であり、その為に、何らかの班研究あるいはワーキング・グループ等を構築し、問題点の精査が必要」と提言したわけです。再生医療抗加齢学会が「幹細胞培養上清液を使用した治療に関し、患者が死亡するという事象が発生したという情報に接しております」と公表ところで、日本再生医療学会がエクソソーム療法の規制の必要性を求める2週間ほど前、「エクソソーム投与後に死亡」との情報が一部に流れ、関係者が色めき立ちました。情報の出どころは再生医療抗加齢学会。10月11日、同学会の森下 竜一理事長(大阪大学大学院 医学系研究科臨床遺伝子治療学寄付講座 教授)が、同学会のウェブサイトで「幹細胞培養上清液に関する死亡事例の発生について」というタイトルで声明を出したのです。声明は、「当学会では、幹細胞培養上清液を使用した治療に関し、患者が死亡するという事象が発生したという情報に接しております」として、「幹細胞培養上清液及びエクソソームの静脈投与につきましては、医療水準として未確立の療法であり、その有効性・安全性について、エビデンスに基づく十分な検討をお願いいたします」と注意喚起をしました。前述したように、エクソソーム療法は再生医療等安全性確保法の対象外のため、仮に死亡事例が発生しても医療機関は同法に則って報告する義務はありません。ということは、そうした事例を国が把握することもできません。ということで、関連学会が注意喚起することはそれなりに意味のあることです。11月9日付のリスファクスも再生医療抗加齢学会の死亡事案の声明を受け、「エクソソーム創薬、死亡事案で規制急務」というニュースを掲載しています。ただ、その記事では、「学会は本紙に『事案』は会員外の施設と回答し、詳細や施設名は開示していない」としています。「死亡例」は本当にあったのか?噂になった医療機関、学会、厚労省も否定学会が「死亡するという事象が発生したという情報に接しております」と公表したにもかかわらず、どこの施設での事象かわからないという状況は、再生医療やエクソソーム療法に携わる関係者に少なからぬ混乱を巻き起こしているようです。「死亡はデマではないか?」という声も聞こえてきます。11月15日付の日経バイオテクは「『エクソソームの投与後に死亡』の噂を追う」と記事を掲載しています。同記事は、「同学会(再生医療抗加齢学会)によれば、学会の会員や会員企業は死亡事例に関係しておらず、外部から寄せられた情報だと言います。噂で名前が挙がっている自由診療の医療機関や、自由診療でエクソソームの投与を手掛ける医師などにも当たってみましたが、『そうした事例は無い』『全く知らない』と否定されました。(中略)。さらに、日本再生医療学会も、本誌に対して『死亡事故があったとは考えていない』とコメント。厚生労働省の関係者も『正直、分からないというのが本音だ。情報の出所が把握できていない』と話していました」と書き、取材時点で死亡事例の情報は確認できなかったとしています。学会同士の対立説、関連企業に対する牽制説も仮に「死亡」がガセ情報だとしたら、一体背後で何が起こっているのでしょうか。真偽のほどはわかりませんが、日本再生医療学会の関係者と再生医療抗加齢学会の関係者の対立説や、幹細胞培養上清液やエクソソームを製造する企業(学会幹部が株を保有している企業もあると聞きます)への牽制説も流れているようです。エクソソーム療法の規制や注意喚起が必要だ、という点は理解できます。しかし、仮にも学会という組織が情報の裏も取らないで「死亡するという事象が発生したという情報に接しております」と公表することは、無責任過ぎるのではないでしょうか。無用な混乱は、再生医療に携わる医療機関や企業の信頼性にも影響します。再生医療抗加齢学会は早急に「死亡情報」の“エビデンス”を開示するべきです。もし虚偽情報だったなら、早急に訂正を出すべきではないでしょうか。

150.

ESMO2023 レポート 肺がん

レポーター紹介2023年のESMOはスペインのマドリードで開催されました。昨年・一昨年以上に参加人数が多かったようで、ポストコロナ時代の学会として大変盛況でした。さて、肺がん領域においてはPractice Changeにつながる可能性の高い重要な演題が多く発表されました。とくに、ここ2年間で劇的に進歩した肺がん周術期治療やEGFR・RETなどのdriver mutation陽性の進行例に対する新たな知見が複数報告されております。今回はその中から、7つの演題を取り上げ概括したいと思います。CheckMate77T試験切除可能なIIA~IIIB(N2)期の非小細胞肺がんを対象として、術前の化学療法を標準治療として、術前のニボルマブ+化学療法および術後のニボルマブ療法の優越性を検証した無作為化比較第III相試験である。CheckMate816試験を基に現在保険承認されている術前のニボルマブ+化学療法に術後1年間のニボルマブ療法を加えた、いわゆるサンドイッチレジメンである。主要評価項目は中央判定での無イベント生存期間(EFS)で、副次評価項目は中央判定での病理学的完全奏効(pCR)、中央判定での病理学的奏効(MPR)、全生存期間(OS)、安全性プロファイルが設定されていた。患者背景として、病期やPD-L1発現などはCheckMate816試験と同様であった。主要評価項目の結果としては、CheckMate816試験やほかのサンドイッチレジメンと同様にEFSを有意に延長し(ハザード比:0.58、95%信頼区間[CI]:0.42~0.81)、副次評価項目であるpCRやMPRも化学療法と比較して有意に良好であった(pCR:25.3% vs.4.7%、MPR:35.4% vs.12.1%)。EFSのサブ解析を見ても、おおむねどの集団においてもニボルマブ併用群で良好な結果であった。また、ほかのサンドイッチレジメンと同様にpCRやMPR別でのEFSの解析も行われ、こちらも今までと同様にpCRやMPRの有無でEFSに大きな差が認められた。安全性のデータも報告されたが、目新しい有害事象(AE)の報告はなく、過去の周術期ICIのレジメンと同様であった。本レジメンも将来的に保険承認されると予想されるが、ほかのペムブロリズマブやデュルバルマブなどのサンドイッチレジメンとの差別化が図れるようなデータは今回の報告からは見られなかった。ALINA試験本年のASCOで、EGFR遺伝子変異陽性肺がん完全切除例に対するオシメルチニブによる術後補助療法が、プラセボと比較してOSを有意に延長したことが大きな話題となったが、ESMOではALK遺伝子転座陽性非小細胞肺がんに対するアレクチニブの術後補助療法の有効性が報告された。UICC-7版でのIB~IIIA期のALK陽性非小細胞肺がんが対象で、標準治療であるプラチナ併用化学療法による補助療法に対するアレクチニブを2年間内服する術後補助療法の有効性を検証する無作為化比較第III 相試験である。主要評価項目は無病生存期間(DFS)で、副次評価項目はCNSのDFS、OS、安全性であった。主要評価項目はII~IIIA期で評価された後、ITT集団を対象として階層的に評価されるデザインであった。257例が登録されており、アジア人が約半数でIIIA期が約半数登録された試験であった。主要評価項目であるII~IIIA期DFSは、標準治療と比較してアレクチニブ群のハザード比は0.24(95% CI:0.13~0.45)であり、ITT集団を対象とした解析でもハザード比は0.24(95% CI:0.13~0.43)と、ともに主要評価項目を達成した。サブ解析でもほぼすべての集団でアレクチニブ群のDFSが良好であった。副次評価項目の1つであるCNSのDFSも、アレクチニブ群は標準治療と比較してハザード比は0.22(95%CI:0.08~0.58)と良好であった。再発後の治療はアレクチニブ群の約半数、標準治療群では約75%でALK-TKIが投与されており、今回の発表のデータカットオフ時点ではOSのイベントはわずか6例しか認められなかった。安全性は、Grade3以上は30%で治療関連の死亡は認められなかった。主なAEは、CPK上昇(約40%)、便秘(約40%)、AST上昇・ALT上昇(約40%前後)と、過去のALEX試験やJ-ALEX試験と同様のプロファイルであった。今回、DFSの良好な結果が報告されたが、オシメルチニブと同様にOSの延長にも寄与するかが今後期待される。ただ、ALK陽性肺がんの予後を考えると、数年後まで結果は出てこない可能性が高い。今回の結果からは、今後バイオマーカーの結果によって周術期治療戦略も進行期と同様に細分化されると考えられる。MARIPOSA試験EGFR遺伝子変異陽性の進行・再発非小細胞肺がんに対する1次治療として確立しているオシメルチニブを標準治療とした、無作為化比較第III相試験である。試験治療群はEGFRとMETの二重特異性抗体であるamivantamabと第3世代EGFR-TKIであるlazertinibの2剤併用療法もしくはlazertinib単剤の3群の比較試験で、主要評価項目はamivantamab・lazertinib併用療法のオシメルチニブに対する中央判定によるPFSであった。 1,074例が登録され、amivantamab・lazertinib併用療法、オシメルチニブ療法、lazertinib療法に、それぞれ2:2:1に割り付けられた。EGFR変異の種別はExon19欠失が60%でL858R点変異が40%、約40%が脳転移を有していた。主要評価項目のPFSはamivantamab・lazertinib併用群で中央値23.7ヵ月、オシメルチニブ群で中央値16.6ヵ月、ハザード比0.70(95%CI:0.58~0.85)と、amivantamab・lazertinib併用群のオシメルチニブに対するPFS延長効果が証明され、主要評価項目を達成した。サブ解析では、おおむねどの集団においてもamivantamab・lazertinib併用群で良好な結果であったが、65歳以上の集団ではハザード比1.06であった。奏効率(ORR)は併用群およびオシメルチニブ群ともに約85%で、OSは今回の中間解析時点では2年時点で5%約の差(75% vs.69%)で併用群が良好であった。有効性について有望な結果が得られたamivantamab・lazertinib併用群であったが、AEが強く発現する点に注意する必要がある。Grade3以上のAEは75%で、皮膚障害・粘膜障害についてもGrade3以上がamivantamab・lazertinib併用群で強く発現していた。さらに特筆すべきは静脈血栓症(VTE)で、オシメルチニブ群の9%と比較して併用群では37%と高く、発症時期は中央値で84日と比較的早期に発症することが特徴である。現在実施されているamivantamab・lazertinib併用の治験では、治療開始後4ヵ月間は予防的抗凝固療法が推奨されているとのことであった。今回、オシメルチニブに対するPFS延長を示したamivantamab・lazertinib併用療法であるが、AEが強く発現する点から、個人的には今後オシメルチニブに完全に置き換わるよりは、使い分けが重要となってくると予想する。MARIPOSA-2試験先述したMARIPOSA試験と同じセッションで発表された本試験は、オシメルチニブに対して病勢増悪を来したEGFR遺伝子変異陽性例を対象として、カルボプラチン+ペメトレキセドによる化学療法を標準治療として、amivantamab+lazertinib+化学療法の4剤併用療法もしくはamivantamab+化学療法の3剤併用療法の3群に割り付ける無作為化比較第III相試験で、657例が登録された。主要評価項目は中央判定による4剤併用療法と化学療法を比較するPFSと、3剤併用療法と化学療法を比較したPFSである。登録前のオシメルチニブは、70%が1次治療、30%が2次治療で投与されていた。主要評価項目のPFSの結果は、4剤併用療法群の中央値が8.3ヵ月、3剤併用療法群の中央値が6.3ヵ月、化学療法群の中央値が4.2ヵ月で、それぞれハザード比が0.44(95%CI:0.35~0.56)、0.48(95%CI:0.36~0.64)と、4剤併用療法、3剤併用療法ともに化学療法に対する有意なPFS延長効果を証明した。サブ解析においても、すべての集団でPFSは良好な結果であった。ORRは両群63%程度(化学療法は36%)で頭蓋内のPFSも両群とも良好であった(4剤併用:12.8ヵ月、3剤併用:12.5ヵ月、化学療法:8.3ヵ月)。AEは先述したMARIPOSA試験同様に注意すべき点である。とくにlazertinibを加えた4剤併用療法では、Grade3以上のAEは92%、治療関連死亡は5%に認めた。3剤併用療法はGrade3以上のAEが72%であった。なかでも好中球減少や血小板減少などの血球減少は多く見られ、吐き気や倦怠感、食欲不振といった自覚症状として出てくるAEも4剤併用療法や3剤併用療法で多く認められた。血球減少が多く見られたことから、4剤併用療法のレジメンが見直され、lazertinibはカルボプラチン終了後に開始となるレジメンにmodifyされた。この修正後のレジメンの有効性・安全性データは今後評価予定となっている。今回、オシメルチニブ後の治療として有望な結果が得られたが、効果と安全性のバランスを考えると3剤併用療法がより使いやすい印象はある。先述したMARIPOSA試験と併せて、EGFR遺伝子変異陽性の最適な治療シークエンスが今後検討されることであろう。LIBRETTO-431試験本試験は肺腺がんの1~2%に認められるRET融合遺伝子陽性の非扁平上皮非小細胞肺がんを対象として、RET阻害薬であるセルペルカチニブを試験治療として、カルボプラチン+ペメトレキセド(+ペムブロリズマブ:investigator choice)療法を標準治療とした無作為化比較第III相試験である。標準治療群に割り付けられても病勢増悪後にセルペルカチニブにクロスオーバーが可能な試験である。主要評価項目は中央判定によるPFSであった。PFSはITT集団とITT-pembrolizumab(ITT-P)集団という2つの対象で評価された。261例が2:1に割り付けられた。約20%に脳転移を認め、40%強がPD-L1発現を認めた。主要評価項目であるPFSはITT-P集団でハザード比0.465(95%CI:0.309~0.699)、ITT集団で0.482(95%CI:0.331~0.700)と、規定された2つの集団でセルペルカチニブのPFSの有意な延長効果が証明された。サブ解析ではPD-L1陰性例よりも陽性例で良好な結果であった。セルペルカチニブのORRは83.7%(標準治療群:65.1%)、頭蓋内のORRも82.4%(標準治療群:58.3%)と、ともに良好な結果であった。CNS転移の累積発生率で見ても、12ヵ月時点で標準治療群が約20%であるのに対して、セルペルカチニブ群は5.5%とCNS転移をしっかりと抑えていることが示された。AEについては、セルペルカチニブの承認の元になった第I/II相試験であるLIBRETTO-001試験と同様のプロファイルであった。Grade3以上のAEは約70%に認められ、頻度の高いAEはAST上昇(Grade3以上13%)、ALT上昇(Grade3以上22%)、高血圧(Grade3以20%)、下痢(Grade3以上:1%)であった。約80%の症例でセルペルカチニブの用量変更が必要であったことも特筆すべきことである。今回の第III試験の報告で、RET融合遺伝子陽性例の1次治療としてセルペルカチニブは確立したものとなったと考える。本試験の結果は発表と同時にNew England Journal of Medicine誌にpublishされたことも報告された。TROPION-Lung01試験既治療の進行・再発非小細胞肺がんを対象として、ドセタキセル療法を標準治療としたdatopotamab deruxtecan(Dato-DXd)の優越性を検証する無作為化比較第III相試験である。Dato-DXdはTROP2を標的とした抗体薬物複合体である。EGFRやALKなどのdriver mutationを有する症例について、標的治療およびプラチナ併用化学療法(+ICI)の治療を終えた症例であれば組み込むことは可能であった。主要評価項目は中央判定によるPFSとOSであった。604例が1:1に割り付けられ、非扁平上皮がんが約80%、EGFR遺伝子変異陽性例は約15%登録されていた。主要評価項目のPFSはDato-DXd群で中央値が4.4ヵ月、ドセタキセル群で中央値が3.7ヵ月、ハザード比は0.75(95%CI:0.62~0.91)とDato-DXdの有意なPFS延長効果が示された。ORRはDato-DXd群は26.4%、ドセタキセル群では12.8%と、こちらもDato-DXd群で良好であった。PFSのサブ解析で特筆すべきは組織型での差であった。非扁平上皮がんではDato-DXd群のハザード比が0.63であったのに対して、扁平上皮がんでは1.38と組織型でDato-DXd療法の有効性が異なることが示唆された。今回の中間解析時点でのOSはDato-DXd vs.ドセタキセルで0.90(95%CI:0.72~1.13)であり、今後のフォローアップデータが待たれるところである。治療期間の中央値はDato-DXdが4.2ヵ月、ドセタキセルは2.8ヵ月であった。Dato-DXdのAEについて、Grade3以上のAEは25%、減量を要した症例の割合は20%と、どちらもドセタキセルと比較して低い傾向にあった。頻度の多いAEは口内炎(47%)、吐き気(34%)、脱毛(32%)であった。またDato-DXdに特徴的なAEとしてドライアイや流涙などの眼関連のAEが19%に発生した。また、ILDは8%で、7例(2%)にILDによる治療関連死亡が発生したことも注意すべきAEとして取り上げたい。これらの結果から、既治療の非扁平上皮がんに対してDato-DXdが重要な治療選択肢になりうると結論付けられた。ACHILLES/TORG1834試験最後に、本邦からの重要な第III相試験の報告を紹介する。TORGを中心に全国の臨床試験グループが参加して行われたインターグループスタディであるACHILLES試験の結果が、新潟県立がんセンター新潟病院の三浦 理氏より報告された。本試験は、EGFR遺伝子変異の中でExon19欠失もしくはL858R点変異を除く、いわゆるuncommon変異を有する未治療例を対象として、標準治療をプラチナ+ペメトレキセド、試験治療をアファチニブとして、PFSを主要評価項目に設定した無作為化比較試験である。109例が登録され、標準治療群とアファチニブ群に1:2に割り付けられた。変異の種類としてはG719Xが約40%と最も多く、L861Qが約18%であった。複数のuncommon変異を同時に有するcompound変異は約30%であった。ベースの脳転移は約30%に認めた。主要評価項目のPFSはアファチニブ群の中央値が10.6ヵ月、標準治療群では5.7ヵ月で、ハザード比は0.422(95%CI:0.256~0.694)であり、アファチニブの有意なPFS延長効果が示された。ORRはアファチニブで61.4%、標準治療で47.1%とアファチニブで良好であった。安全性は過去のLUX-Lung試験と同様のプロファイルであった。uncommon変異に対する初めての第III相試験であり、OSの結果が待たれるところであるが、同対象への標準治療としてアファチニブの地位はほかのEGFR-TKIよりリードしたものと考える。終わりに今回のESMOでは、取り上げた演題以外にもMini Oralやポスター発表で非常に興味深い発表が多かったです。今回のレポートが、多くの先生の臨床にお役に立てれば幸いです。

151.

ESMO2023 レポート 消化器がん

レポーター紹介本年、スペインのマドリードで欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)が、現地時間10月20日~24日にハイブリッド開催で行われた。日本の先生からの演題も多数報告されていたが、今回は消化器がんの注目演題について、いくつか取り上げていきたい。胃がん周術期の免疫チェックポイント阻害薬#LBA74Pembrolizumab plus chemotherapy vs chemotherapy as neoadjuvant and adjuvant therapy in locally-advanced gastric and gastroesophageal junction cancer:The Phase III KEYNOTE-585 study本試験は、T3以上の深達度もしくはリンパ節転移陽性と診断を受けた胃がんもしくは食道胃接合部がんに対する周術期治療として、術前・術後に化学療法+プラセボを3コースずつ行った後にプラセボを3週ごと11コース行う標準治療群と、術前・術後に化学療法+ペムブロリズマブ併用を3コースずつ行った後にペムブロリズマブを3週ごと11コース行う試験治療群を比較するランダム化二重盲検第III相試験である。国立がん研究センター東病院の設楽 紘平先生により結果が報告された。化学療法は、カペシタビン+シスプラチンまたは5-FU+シスプラチンを用いたメインコホートとFLOT療法を用いるFLOTコホートがあり、主要評価項目は全体の病理学的完全奏効(pCR)と無イベント生存期間(EFS)、メインコホートの全生存期間(OS)、FLOTコホートの安全性であった。全体で1,254例が登録され、メインコホートのペムブロリズマブ群402例とプラセボ群402例、FLOTコホートのペムブロリズマブ群100例とプラセボ群103例が登録された。メインコホートではアジアから約50%が登録され、PD-L1のCPS1以上は約75%、MSI-Hが約10%、StageIIIが約75%およびカペシタビン+シスプラチンが約75%であった。メインコホートのpCR率は、ペムブロリズマブ群の12.9%に対しプラセボ群では2.0%と、有意にペムブロリズマブ群で良好であった(p<0.0001)。pCR率のサブグループ解析では、PD-L1のCPS1未満でペムブロリズマブ群のpCR改善率が悪い傾向があり(4.2%の上乗せ)、MSI-H群ではペムブロリズマブ群のpCR率が有意に高かった(37.1%の上乗せ)。EFS中央値はペムブロリズマブ群で44.4ヵ月、プラセボ群で25.3ヵ月であり、事前に設定された統計設定を達成できなかった(HR:0.81、p=0.0198)。OS中央値はペムブロリズマブ群で60.7ヵ月、プラセボ群で58.0ヵ月であった(HR:0.90)。メインコホート+FLOTコホートにおける解析では、EFS中央値がペムブロリズマブ群で45.8ヵ月、プラセボ群で25.7ヵ月(HR:0.81)、OS中央値はペムブロリズマブ群で60.7ヵ月、プラセボ群で58.0ヵ月であった(HR:0.93)。重篤な毒性は全体では両群に有意差はなく、Grade3~4の免疫関連有害事象とインフュージョン・リアクションはペムブロリズマブ群で多い傾向があった。#LBA73Pathological complete response (pCR) to durvalumab plus 5-fluorouracil, leucovorin, oxaliplatin and docetaxel (FLOT) in resectable gastric and gastroesophageal junction cancer (GC/GEJC): interim results of the global, phase III MATTERHORN study本試験は、StageII、IIIおよびIVAの診断を受けた胃がんもしくは食道胃接合部がんに対する周術期治療として、FLOT+プラセボ療法4コース後に手術を行い、術後FLOT+プラセボ4コース施行後プラセボを4週ごと10サイクル追加する標準治療群に対し、術前および術後のFLOT療法に対するデュルバルマブを上乗せし、終了後デュルバルマブを4週ごと行う試験治療群の優越性を検証したランダム化二重盲検第III相試験である。主要評価項目はEFS、副次評価項目は中央判定のpCR率、OSであり、今回は副次評価項目であるpCR率が報告された。日本を含む20ヵ国から948例が登録され、474例がFLOT+デュルバルマブ群に、474例がFLOT+プラセボ群に登録された。デュルバルマブ群では91%で手術が行われ、87%が切除を完遂し86%が術後化学療法を施行、プラセボ群では91%で手術が行われ、85%が切除を完遂し86%が術後化学療法を施行された。患者背景は両群で偏りがなく、胃がんが約70%で食道胃接合部がんは約30%、T1~2/T3/T4が約10%/約65%/約25%、臨床的リンパ節転移陽性が約70%、病理はdiffuse typeが約20%、PD-L1発現(腫瘍における発現)は≦1%が約90%であった。副次評価項目である中央判定pCR率はデュルバルマブ群で19%、プラセボ群で7%と12%の上乗せとなり、統計学的有意差を認めた(オッズ比[OR]:3.08、95%信頼区間[CI]:2.03~4.67、p<0.00001)。pCRとnear pCRを合わせた改善率はデュルバルマブ群で27%、プラセボ群で14%と、13%の上乗せがあり、統計学的に有意な改善を認めた(OR:2.19、95%CI:1.58~3.04、p<0.00001)。サブグループ解析では全体にデュルバルマブ群で良好であったが、PD-L1発現1%未満の群ではpCR率の差が少ない傾向にあった。手術の完遂率・R0切除率・術式・リンパ節郭清の割合は両群で差がなかった。安全性に関しては両群とも新規の有害事象(AE)は認められなかった。周術期のFLOT療法にアテゾリズマブの上乗せを検証するDANTE試験がASCO2022で、中国で行われた周術期capeOX/SOXにtoripalimabの上乗せを検証する試験がASCO2023で報告され、tumor regression grade rate(TRG rate)という病理学的効果を見る指標が改善する可能性が示唆されている。今回、2つの周術期の大規模第III相試験が報告され、術前治療における免疫チェックポイント阻害薬の併用はpCR率を改善することが報告された。しかし、KEYNOTE-585試験では、ほかの主要評価項目であるEFSは統計学的に改善せず、OSもほぼ同等であった。今まで大規模第III相試験で、免疫チェックポイント阻害薬の追加でEFSやOSを改善した報告はなく、胃がん周術期の免疫チェックポイント阻害薬が予後を改善するかはまだ明らかではない。MATTERHORN試験の今後の解析や他研究を含め、PD-L1やMSIを含む、さらなるバイオマーカー研究が待たれる。HER2陽性進行胃がん1次治療へのペムブロリズマブ#1511OPembrolizumab plus trastuzumab and chemotherapy for HER2+ metastatic gastric or gastroesophageal junction (mG/GEJ) adenocarcinoma: Survival results from the phase III, randomized, double-blind, placebo-controlled KEYNOTE-811 studyKEYNOTE-811試験はHER2陽性の切除不能進行胃がんを対象に、標準治療である化学療法+トラスツズマブに対するペムブロリズマブの上乗せを検証する、プラセボ対照ランダム化二重盲検第III相試験である。2021年9月に副次評価項目の1つである奏効率(ORR)に関する報告がNature誌に掲載され、標準治療群の51.9%に対してペムブロリズマブの併用で74.4%と、22.5%の上乗せと統計学的有意差を認めていた。今回、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)とOSについて第3回中間解析(追跡期間中央値:38.5ヵ月)の報告がなされた。698例が、ペムブロリズマブ群350例、ブラセボ群348例に割り付けられた。第2回中間解析における全体集団においてペムブロリズマブ群はプラセボ群に対してPFS(10.0ヵ月vs.8.1ヵ月)に有意な改善を認めた(HR:0.73、p=0.0002)。PD-L1が≦1の症例においては、さらなる改善傾向を認めた(10.9ヵ月vs.7.3ヵ月、HR:0.71)。第3回中間解析の結果が示され、全体集団におけるOSは20.0ヵ月vs.16.8ヵ月(HR:0.84)であったが、統計学的なp値は示されなかった。PD-L1≦1の症例においては、PFSと同様にOSも改善傾向を認めた(20.0ヵ月vs.15.7ヵ月、HR:0.81)。まだイベントが少なく、OSは追加解析中である。ORRは73% vs.60%でありペムブロリズマブ群で13%の上乗せを認めた。今回の検討で、OSは全体集団で統計学的有意な改善を示さなかった。しかし、ORRの改善や、PFSは全体集団で有意な改善を認め、OSもPD-L1≦1症例では良好な結果が報告された。しかし、Lancet誌で論文化された結果を見ると、第2回中間解析でOSの延長は統計学的有意差を示せなかった。またディスカッションで述べられていたが、PD-L1がCPS1未満では、逆にペムブロリズマブ群でOSが不良であったことが示されている。以上よりEUではPD-L1 CPS1以上においてのみペムブロリズマブ併用が承認され、米国FDAも同様の基準に承認が変更されている。本邦ではまだ保険適用外であるが、治療効果が高いレジメンであり、承認されればHER2陽性胃がんの1次治療が大きく変化する。今後、本邦での承認の可否や承認された場合の適応条件を含め注目される。MSI-H胃がん1次治療のイピリブマブ+ニボルマブ#1513MOA Phase II study of Nivolumab plus low dose Ipilimumab as 1st line therapy in patients with advanced gastric or esophago-gastric junction MSI-H tumor:First results of the NO LIMIT study (WJOG13320G/CA209-7W7)本研究は本邦で行われた、MSI-High切除不能進行再発胃がんに対する1次治療としてのイピリムマブ+ニボルマブ(Ipi/Nivo)の有効性と安全性を探索した単群第II相試験である。主要評価項目はORR、副次評価項目は病勢コントロール率(DCR)、PFS、OS、奏効期間(DOR)、安全性であり、今回、主要評価項目であるORRの結果が愛知県がんセンター薬物療法部の室 圭先生より報告された。スクリーニング試験であるWJOG13320GPS試験が並行して行われており、2020年11月~2022年8月の期間に国内75施設から進行胃がん935例がスクリーニングされた。そのうちMSI-Highと診断された症例のうち29例が本試験に登録された。3例が完全奏効、15例が部分奏効を達成し、ORRは62.1%(95%CI:42.3~79.3)で事前の統計学的設定に達し、主要評価項目を達成した。DCRは79.3%、追跡期間中央値9.0ヵ月時点のPFS中央値は13.8ヵ月(95%CI:13.7~未達)、DORとOSは未到達、12ヵ月PFS率は73%、OS率は80%であった。Grade3のAEが11例、Grade4が1例発現したが、治療関連死は認めず、既存の研究と異なるAEは認めなかった。21例で治療が中止され、治療中止の最も多い理由はAE(13例)であった。進行胃がんの中でおよそ5%といわれるMSI-Highを対象にしており、スクリーニング研究を含め、本邦の多くの先生が協力して完遂されたことにまずは拍手を送りたい試験である。既報のCheckMate 649試験でもMSI-High群では免疫チェックポイント阻害薬の併用効果がきわめて高いことが知られており、MSI-Highは胃がん1次治療前の治療選択に重要なバイオマーカーであると考えられる。また、Ipi/Nivoは食道がんにおけるCheckMate 648試験でも長期生存につながる症例が他治療より多い可能性が示唆されており、胃がんにおいてもそのような対象があるかもしれない。もちろんIpi/Nivoは胃がんにおいて本邦では保険適用外であるが、本研究の長期フォローアップの結果やバイオマーカーの解析結果が期待される。RAS/BRAF野生型+左側原発大腸がんのm-FOLFOXIRI+セツキシマブ#555MOModified (m)-FOLFOXIRI plus cetuximab treatment and predictive clinical factors for RAS/BRAF wild-type and left-sided metastatic colorectal cancer (mCRC):The DEEPER trial (JACCRO CC-13)本試験は本邦で行われた大規模なランダム化第II相試験である。主要評価項目であるDpR(最大腫瘍縮小率)はASCO2021で有意な改善が報告されている。今回、聖マリアンナ医科大学腫瘍内科講座の砂川 優先生よりRAS/BRAF野生型かつ左側のサブグループ解析結果が報告された。RAS/BRAF野生型、左側の大腸がんにおいてDpRとPFSはいずれもm-FOLFOXIRI+セツキシマブ群においてm-FOLFOXIRI+ベバシズマブ群より良好であった(DpR中央値: 59.2% vs.47.5%、p=0.0017、PFS:14.5ヵ月vs.11.9ヵ月、HR:0.71、p=0.032)。またPFSにおけるサブグループ解析では男性、R0/1切除ができなかった症例、および肝限局以外の症例においてセツキシマブ群で良好な傾向があった。とくに肝限局転移例ではPFSは両群で有意差を認めなかった(14.5ヵ月vs.15.5ヵ月、HR:0.86、p=0.62)ものの、それ以外ではセツキシマブ群でPFSの改善を認めた(15.1ヵ月vs.11.4ヵ月、HR:0.63、p=0.015)。今回のサブグループ解析は、本邦の実臨床における実際と合致した対象で、期待できる効果が示された。深い奏効が期待できるため、個人的には詳細なゲノム検査が困難な、若いRAS/BRAF野生型大腸がん症例に期待したい治療である。次回のガイドラインの記載が注目される。KRAS G12C変異大腸がんへのソトラシブ+パニツムマブ#LBA10 Sotorasib plus panitumumab versus standard-of-care for chemorefractory KRAS G12C-mutated metastatic colorectal cancer (mCRC):CodeBreak 300 phase III study肺がんなどを中心に、新たに注目されているバイオマーカーであるKRAS G12Cに対する治療開発が進んでいる。大腸がんでは約3%の症例でKRAS G12C変異を認めるといわれており、ソトラシブ+パニツムマブは先行する第I相試験でORRが30%と期待できる結果を示していた。今回、1レジメン以上の治療を受けたKRAS G12C変異陽性切除不能進行再発大腸がんに対して、ソトラシブ+パニツムマブと標準治療(トリフルリジン・チピラシルもしくはレゴラフェニブ)を比較する第III相試験の結果が報告された。主要評価項目はPFS、主な副次評価項目はORRとOSで、160例がソトラシブ960mg/日+パニツムマブ(53例)と、ソトラシブ240mg/日+パニツムマブ(53例)、そして標準治療(54例)に1対1対1で割り付けられた。約90%が2レジメン以上、オキサリプラチン、フッ化ピリミジン、イリノテカン、血管新生阻害薬による治療を受けていた。主要評価項目であるPFSはソトラシブ960mg群、ソトラシブ240mg群、標準治療群でそれぞれ5.6ヵ月(HR:0.49、p=0.006)vs.3.9ヵ月(HR:0.58、p=0.03)vs.2.2ヵ月であり、ソトラシブ群で有意に改善を認めた。ORRはそれぞれ26% vs.6% vs.0%であり、ベースラインよりも腫瘍が縮小した症例の割合は81% vs.57% vs.20%であった。OSはイベント発生数がまだ約40%と未達で、8.1ヵ月vs.7.7ヵ月vs.7.8ヵ月であった。主なGrade3以上の毒性はソトラシブ群でざ瘡様皮疹(960mg群11% vs.240mg群4%)、皮疹(6% vs.2%)、下痢(4% vs.6%)、低マグネシウム血症(6% vs.8%)であり、標準治療群では好中球減少(24%)、貧血(6%)、嘔気(2%)であった。研究者らは、KRAS G12C変異を有する大腸がんに対してソトラシブ960mg/日+パニツムマブが新しい標準治療になる可能性があると結論付け、本結果はNEJM誌にも掲載された。PFSやORRは期待できる結果を示しているが、肺がんではソトラシブ単剤で28.1~37.1%のORRが報告されており、大腸がんではパニツムマブ併用ながら、やや劣る奏効である。またOSはそれほど差がなく、標準治療群でソトラシブをクロスオーバーして使用しているのかなど、後治療の影響があるのかも含めた長期フォローの結果が待たれる。いずれにせよ、希少な対象の薬剤であり、本邦でも早期にKRAS G12C変異陽性大腸がん患者に届けられるようになることが期待される。転移膵がん1次療法、ゲムシタビン+nab-パクリタキセル#1616ONab-paclitaxel plus gemcitabine versus modified FOLFIRINOX or S-IROX in metastatic or recurrent pancreatic cancer (JCOG1611, GENERATE):A multicentred, randomized, open-label, three-arm, phase II/III trial切除不能進行膵がんにおける1次化学療法の標準治療は(modified)FOLFIRINOX療法とゲムシタビン+nab-パクリタキセル(GnP)療法であるが、直接比較した大規模第III相試験はいまだなかった。今回、本邦でmFOLFIRINOX療法とGnP療法およびS-IROX療法(S-1、イリノテカン、オキサリプラチン)を比較する第II/III相試験であるGENERATE試験(JCOG1611)が行われ、国立がん研究センター中央病院の大場 彬博先生より結果が報告された。主要評価項目はOS、副次評価項目はPFS、ORRおよび安全性であった。PS0~1の症例を対象に、2019年4月~2023年3月に国内45施設から527例が登録され、GnP群(176例)、mFOLFIRINOX群(175例)、S-IROX群(176例)に1対1対1で割り付けられた。主要評価項目のOSはGnP群17.1ヵ月、mFOLFIRINOX群14.0ヵ月(HR:1.31、95%CI:0.97~1.77)、S-IROX群13.6ヵ月(HR:1.35、95%CI:1.00~1.82)であった。中間解析にて最終解析における優越性達成予測確率はmFOLFIRINOX群0.73%、S-IROX群0.48%とGnP群を上回る可能性がほとんどないため、本試験は中止となった。PFSはGnP群6.7ヵ月、mFOLFIRINOX群5.8ヵ月(HR:1.15、95%CI:0.91~1.45)、S-IROX群6.7ヵ月(HR:1.07、95%CI:0.84~1.35)、ORRはGnP群35.4%、mFOLFIRINOX群32.4%、S-IROX群42.4%であった。Grade3以上のAEで多かったものは好中球減少症で、GnP群60%、mFOLFIRINOX群52%、S-IROX群39%で認められた。食欲不振(5% vs.23% vs.28%)、下痢(1% vs.9% vs.23%)は、GnP群よりもmFOLFIRINOX群、S-IROX群で多く認められた。本研究は膵がんの実臨床に対する非常に重要な試験であり、今回の結果を鑑みると本邦における切除不能膵がんに対する1次治療の標準治療はGnP療法であると考えられる。本邦の現状では1次治療でGnP療法を行い、2次治療でナノリポソーマルイリノテカン+5-FU+レボホリナートを行うことが推奨されているが、2023年のASCOでナノリポソームイリノテカンを使ったNALIRIFOX療法のGnP療法に対する優越性が報告されている。本邦ではNALIRIFOX療法は保険適用外であるが、今後本邦での承認を含めた状況が注目される。

152.

NSCLCへのニボルマブ+イピリムマブ±化学療法、実臨床の安全性・有効性は?(LIGHT-NING)/日本肺癌学会

 進行・再発非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療として、2020年11月にニボルマブ+イピリムマブ±化学療法が保険適用となり、実臨床でも使用されている。また、国際共同第III相試験CheckMate 9LA試験、CheckMate 227試験の有効性の成績は、非常に少数例ではあるものの日本人集団が全体集団よりも良好な傾向にあった一方、Grade3以上の治療関連有害事象(TRAE)の発現割合は、日本人集団が全体集団よりも高い傾向にあったことが報告されている。そこで、ニボルマブ+イピリムマブ+化学療法(CheckMate 9LAレジメン)、ニボルマブ+イピリムマブ(CheckMate 227レジメン)を使用した患者のリアルワールドデータを収集するLIGHT-NING試験が実施された。本試験の第3回中間解析の結果について、山口 哲平氏(愛知県がんセンター呼吸器内科部)が第64回日本肺癌学会学術集会で発表した。試験デザイン:後ろ向き観察研究対象:未治療の進行・再発NSCLC患者525例試験群1:ニボルマブ(360mgを3週ごと)+イピリムマブ(1mg/kgを6週ごと)+化学療法(3週ごと、2サイクル)(CM 9LA群:308例)試験群2:ニボルマブ(240mgを隔週または360mgを3週ごと)+イピリムマブ(1mg/kgを6週ごと)(CM 227群:217例)評価項目:[主要評価項目]治療状況、全生存期間(OS)、Grade3以上の免疫関連有害事象(irAE)、治療中止に至ったTRAEなど[副次評価項目]irAEの発現時期とirAEに対する治療内容および症状改善までの期間、irAEの有効性への影響など 主な結果は以下のとおり。・対象患者の年齢中央値は70歳、女性が18.7%、PS 0~1/2/3以上が89.1%/6.5%/1.5%、扁平上皮がんが27.0%、PD-L1発現状況が1%未満/1~49%/50%以上/不明は46.5%/34.7%/9.1%/9.7%であった。・治療別にみた年齢中央値はCM 9LA群が67歳、CM 227群が73歳、75歳以上の割合はそれぞれ11.7%、40.1%であり、高齢の患者では化学療法を含まないニボルマブ+イピリムマブが多く選択される傾向にあった。・解析時点において、イピリムマブのみを中止した患者の割合は2.5%、ニボルマブとイピリムマブの両剤を中止した患者の割合は85.3%で、イピリムマブ中止の内訳は病勢進行が43.6%、有害事象が38.3%、その他が5.9%であった。・Grade3/4のTRAEは40.2%(CM 9LA群:49.7%、CM 227群:26.7%)に発現し、いずれかの薬剤の中止に至ったTRAEは37.9%(それぞれ41.9%、32.3%)に発現した。・治療関連死は3.4%(CM 9LA群:3.6%[11例]、CM 227群:3.2%[7例])に認められ、間質性肺疾患(9例)が最も多かった。・OS中央値は、CM 9LA群が24.3ヵ月、CM 227群が21.9ヵ月であり、1年OS率はそれぞれ69.1%、62.8%であった。・無増悪生存期間(PFS)中央値は、CM 9LA群が6.4ヵ月、CM 227群が6.2ヵ月であり、1年PFS率はそれぞれ32.2%、37.5%であった。・医師判定に基づく奏効率は、39.6%(CM 9LA群:40.7%、CM 227群:37.8%)であった。 本結果について、山口氏は「安全性に関する新たなシグナルは観察されず、安全性プロファイルはCheckMate 9LA、227試験と同様であった。治療関連死の原因としては肺臓炎関連が多かった。有効性に関して、CM 9LA群とCM 227群は同様の結果であり、PD-L1発現割合によっても治療効果に大きな差はみられなかった」とまとめた。

153.

既治療の小細胞肺がんへのtarlatamab、奏効率40%/NEJM

 既治療の小細胞肺がん(SCLC)患者の治療において、tarlatamabは持続的な奏効を伴う抗腫瘍活性を発揮し、生存アウトカムも良好であり、新たな安全性シグナルは確認されなかったことが、韓国・成均館大学校のMyung-Ju Ahn氏らが実施した「DeLLphi-301試験」で示された。tarlatamabは、がん細胞上のδ様リガンド3(DLL3)とT細胞上のCD3を標的とする二重特異性T細胞誘導(BiTE)分子で、DLL3とCD3の両方に結合することでT細胞をがん細胞へと誘導し、がん細胞の溶解をもたらす標的免疫療法である。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2023年10月20日号で報告された。3つのパートから成る国際的な第II相試験 DeLLphi-301試験は、日本を含む17ヵ国56施設が参加した非盲検第II相試験であり、2021年12月~2023年5月の期間に患者の登録を行った(Amgenの助成を受けた)。 対象は、年齢18歳以上、SCLCと診断され、プラチナ製剤ベースの治療と少なくとも1つの他の治療を受け、全身状態が良好な患者(ECOG PSのGrade0または1)であった。 本試験は3つのパートで構成された。パート1では176例を登録し、tarlatamab 10mg(88例)または100mg(88例)を静脈内投与する群に無作為に割り付けた。パート2では、事前に規定されたパート1の中間解析の結果に基づいて選択されたtarlatamabの用量に患者を登録した(10mgを選択し12例を登録)。パート3では34例を登録し、tarlatamabの安全性を評価した。 全例に対しサイクル1の1日目にtarlatamab 1mgを、8日目および15日目に10mgまたは100mgを投与し、その後、28日を1サイクルとして病勢が進行するまで各用量を2週ごとに投与した(1サイクルに2回の投与)。 主要評価項目は奏効(完全奏効[CR]+部分奏効[PR])率とし、RECIST version 1.1に基づき、盲検下独立中央判定で評価した。10mg群で奏効率40%、全生存期間中央値14.3ヵ月 全体で220例がtarlatamabの投与を受けた。前治療ライン数の中央値は2であった。抗腫瘍活性と生存の評価の対象となった188例(パート1、2)の追跡期間中央値は、tarlatamab 10mg群(100例、年齢中央値64.0歳、男性72%)が10.6ヵ月、同100mg群(88例、62.0歳、70%)は10.3ヵ月だった。 奏効は、10mg群では100例中40例(40%、97.5%信頼区間[CI]:29~52)、100mg群は88例中28例(32%、21~44)で達成され、CRはそれぞれ1例、7例で得られた。 奏効が達成された68例中40例(59%)で奏効期間は6ヵ月以上に達しており、20例(29%)では9ヵ月以上であった。また、データカットオフ日(2023年6月27日)の時点で、10mg群の40例中22例(55%)、100mg群の28例中16例(57%)で奏効が持続していた。 無増悪生存期間中央値は、10mg群が4.9ヵ月(95%CI:2.9~6.7)、100mg群は3.9ヵ月(2.6~4.4)であった。また、全生存期間中央値は、10mg群が14.3ヵ月(10.8~評価不能[NE])、100mg群はNE(12.4~NE)であり、9ヵ月の時点での推定全生存率はそれぞれ68%、66%だった。 最も頻度の高い有害事象は、サイトカイン放出症候群(10mg群51%、100mg群61%)、食欲減退(29%、44%)、発熱(35%、33%)、便秘(27%、25%)、貧血(26%、25%)であった。サイトカイン放出症候群は、主としてサイクル1の期間中に発現し、ほとんどの患者がGrade1または2であった。Grade3のサイトカイン放出症候群は、100mg群で6%に発生したのに対し、10mg群では1%と頻度が低かった。 免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(ICANS)とその関連の神経イベントは、10mg群の11例(8%)と100mg群の24例(28%)で発生し、Grade3以上は10mg群では認めず、100mg群では4例(5%)にみられた。治療関連有害事象によるtarlatamabの投与中止の割合は、両群とも3%と低かった。 著者は、「40%という奏効率は、主要評価項目としての既存対照(historical control)の基準である15%をはるかに上回る。現在、SCLCの3次治療以降の治療法は承認されておらず、本試験の結果は、3次治療以降の実臨床研究の観点から好ましいものと考えられる」としている。現在、既治療の進展型SCLC患者において、tarlatamab(10mg、2週ごと)を標準治療と比較する第III相試験(DeLLphi-304試験)が進行中だという。

154.

CheckMate試験の日本語版プレーン・ランゲージ・サマリーが公開/小野・BMS

 小野薬品工業とブリストル・マイヤーズ スクイブは、抗PD-1抗体「オプジーボ(一般名:ニボルマブ)点滴静注」の3つの臨床試験結果に関するPlain Language Summary of Publication(PLS)の日本語版がFuture Oncology誌に掲載されたことを発表した。 PLSとは、臨床試験結果や医学論文などの情報を、専門家以外の人でも理解しやすいように平易な言葉で要約した文書で、PLSを受け入れる国際ジャーナルの増加に伴い、近年、世界的にその出版数が増加している。 今回、小野薬品工業とブリストル・マイヤーズ スクイブは、下記3つの第III相臨床試験に関するPLSの日本語翻訳サポートを行った。・CheckMate 816試験:切除可能な非小細胞肺がん患者を対象に、術前補助療法としてニボルマブと化学療法の併用療法を評価した臨床試験PLS日本語版・CheckMate 649試験:未治療の切除不能な進行・再発の胃がん、胃食道接合部がん、食道腺がん患者を対象に、ニボルマブと化学療法の併用療法を評価した臨床試験PLS日本語版・CheckMate 274試験:根治的切除術を受けた筋層浸潤性尿路上皮がん患者を対象に、術後補助療法としてニボルマブを評価した臨床試験PLS日本語版 掲載されたPLSは、単純に元となった論文を簡素化した内容ではなく、疾患の基礎情報や専門用語の解説、薬の基本的な作用機序などについてもまとめられている。また、文書全体にイラストやピクトグラムを用い、治療の意義や結果の解釈なども含めて、QA形式でわかりやすく解説されている。 いずれもオープンアクセスになっており、専門家以外が情報を確認したり、医療関係者が患者への説明に使用したりすることで、治療の理解や選択に役立つと考えられる。 なお、小野薬品工業とブリストル・マイヤーズ スクイブは、国際ジャーナルに掲載された主要な第III相臨床試験のPLSについて、今後も日本語翻訳のサポートを行っていくとしている。

155.

HIF-2α阻害薬belzutifan、エベロリムスと比較して進行腎細胞がんのPFS改善(LITESPARK-005)/ESMO2023

 免疫チェックポイント阻害薬とVEGFチロシンキナーゼ阻害薬(VEGF-TKI)を含む治療歴のある進行淡明細胞型腎細胞がん(ccRCC)において、経口HIF-2α阻害薬belzutifanがエベロリムスと比較して無増悪生存期間(PFS)を有意に改善し、増悪または死亡のリスクを25%低減した。日本を含む世界172施設で実施された第III相LITESPARK-005試験の結果を、フランス・Gustave RoussyのLaurence Albiges氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)で報告した。HIF-2α阻害薬belzutifan群でOS中央値が良好な傾向・対象:抗PD-1/PD-L1抗体とVEGF-TKIを含む1~3レジメンの治療歴のある、切除不能・局所進行または転移を有するccRCC患者(Karnofsky performance statusスコア70%以上)・試験群(belzutifan群):belzutifan(120mg、1日1回経口投与) 374例・対照群(エベロリムス群):エベロリムス(10mg、1日1回経口投与) 372例・評価項目:[主要評価項目]全生存期間(OS)、盲検下独立中央判定(BICR)によるPFS[副次評価項目]BICRによる奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、安全性など・層別化因子:IMDC分類(低リスク/中リスク/高リスク)、VEGF/VEGFR-TKI治療歴(1/2~3) HIF-2α阻害薬belzutifanとエベロリムスを比較した主な結果は以下のとおり。・ベースライン時における年齢中央値はbelzutifan群62歳vs.エベロリムス群63歳、IMDC分類は低リスク:21.1% vs.22.3%/中リスク:66.6% vs.65.6%/高リスク:12.3% vs.12.1%、VEGF/VEGFR-TKI治療歴は2~3ラインが50.0% vs.48.9%を占めた。・1回目の中間解析(追跡期間中央値18.4ヵ月)における、BICRによるPFS中央値は、belzutifan群5.6ヵ月(95%信頼区間[CI]:3.8~6.5) vs.エベロリムス群5.6ヵ月(95%CI:4.8~5.8)で、belzutifan群で有意に改善した(ハザード比[HR]:0.75、95%CI:0.63~0.90、p<0.001)。OS中央値は21.0ヵ月(95%CI:17.2~24.3) vs.17.2ヵ月(95%CI:15.3~19.0)でbelzutifan群で良好な傾向がみられ(HR:0.87、95%CI:0.71~1.07、p=0.096)、解析は継続中。ORRは21.9% vs.3.5%とbelzutifan群で有意に高かった(p<0.00001)。・2回目の中間解析(追跡期間中央値25.7月)における、PFS、OS、ORRは1回目の中間解析結果と一致していた。またDOR中央値は、19.5ヵ月vs.13.7ヵ月でbelzutifan群で良好だった。・Grade3以上の治療関連有害事象発生率は38.7% vs.39.4%で、belzutifan群で新たな安全性プロファイルは報告されていない。・患者報告アウトカムであるFKSI-DRSおよびQLQ-C30はともにbelzutifan群で良好だった。 ディスカッサントを務めた英国・St George's University HospitalsのLisa Pickering氏は、約50%の患者に2~3ラインのVEGF-TKI治療歴があり、80%近い患者がIMDC分類で中~高リスクであったことに触れ、OSの最終解析結果を待ちたいが、プラクティス・チェンジングな試験となることを期待すると述べた。HIF-2α阻害薬belzutifanについては、1次治療、2次治療、そして術後補助療法における第III相試験が進行中。

156.

ESMO2023 レポート 乳がん

レポーター紹介はじめにESMO Congress2023が10月20日から24日の間、スペイン・マドリードで開催されました。155の国から3万3,000人以上の参加者があり、2,600演題を超える研究成果が発表されました。今年は、非常に重要なPhase3試験の結果が数多く報告され、今後の診療に影響を与える興味深い結果も多く報告されました。今回は乳がん領域で、非常に話題となったいくつかの演題をピックアップして今後の展望を考えてみたいと思います。周術期乳がん演題1)ホルモン受容体陽性(HR+)HER2陰性(HER2-)乳がん今年は、術前化学療法を行うようなHR+/HER2-乳がんに対して、周術期に免疫チェックポイント阻害薬を使用するランダム化比較第III相試験が2つ報告されました(CheckMate 7FL試験とKEYNOTE-756試験)。いずれも、主要評価項目である病理学的完全奏効割合(pCR[ypT0/is ypN0])については、免疫チェックポイント阻害薬併用によって向上することが示されました。CheckMate 7FL試験(NCT04109066、LBA20)本試験では、新規発症のER陽性(ER+)/HER2-乳がん(病期T1c~2、N1~2個またはT3~4、N0~2個、Grade2[かつER 1~10%]またはGrade3[かつER≧1%])と診断された早期乳がん患者521例が組み入れられました。患者は抗PD-1抗体のニボルマブ群またはプラセボ群に無作為に割り付けられました。術前化学療法相では、患者はニボルマブまたはプラセボとパクリタキセルの併用投与を受け、次いでニボルマブまたはプラセボとAC療法の併用投与を受けました。ニボルマブ360mgを3週ごとに、または240mgを2週ごとに投与されました。手術後、両群の患者は、治験責任医師が選択した内分泌療法を受けました。ニボルマブ投与群では、術後治療としてニボルマブ480mgを4週ごとに7サイクル投与されています。全体として、ニボルマブ群では89%、プラセボ群では91%の患者が手術を受けました。結果として、pCR率はニボルマブ群で24.5%、プラセボ群で13.8%(オッズ比[OR]:2.05、95%信頼区間[CI]:1.29~3.27、p=0.0021)であり、統計学的に有意な改善を示しました。とくに、SP142のPD-L1陽性(IC≧1)患者のpCR率はニボルマブ群で44.3%、プラセボ群で20.2%(OR:3.11、95%CI:1.58~6.11)であり、24.1%の差を認めました。KEYNOTE-756試験(NCT03725059、LBA21)本試験では、新規発症のER+/HER2-乳がん(病期T1c~2かつN1~2個、またはT3~4かつN0~2個、Grade3、中央判定)と診断された早期乳がん患者1,278例が組み入れられ、抗PD-1抗体のペムブロリズマブ群またはプラセボ群に無作為に割り付けられました。術前化学療法相では、患者はペムブロリズマブまたはプラセボとパクリタキセルの併用投与を受け、次いでペムブロリズマブまたはプラセボとAC療法またはEC療法の併用投与を受けました。手術後、患者はペムブロリズマブ200mgまたはプラセボを3週間ごとに6ヵ月間投与され、内分泌療法を最長10年間受け、適応があれば放射線療法を受けました。本試験の2つの主要評価項目は、ITT集団における最終手術時pCR(ypT0/TisおよびypN0)割合、およびITT集団における治験責任医師評価による無イベント生存期間(EFS)でした。主要評価項目のpCR割合は、ペムブロリズマブ群24.3%、プラセボ群15.6%であり、統計学的に有意な改善を示しました(推定差:8.5%[95%CI:4.2~12.8]、p=0.00005)。とくに、75%程度を占める22C3のPD-L1陽性(CPS≧1)患者において、pCR割合の差は9.8%(95%CI:4.4~15.2)であり、PD-L1陰性(CPS2)トリプルネガティブ乳がん NeoTRIP試験(NCT002620280、LBA19)NeoTRIP試験は、TNBC患者を、nab-パクリタキセルとカルボプラチンを8サイクル投与する群(化学療法群)とnab-パクリタキセルとカルボプラチンにアテゾリズマブを追加投与する群(アテゾリズマブ群)に無作為に割り付けた試験です。主要評価項目はEFS、副次評価項目はpCR割合で、以前にpCR割合のみが報告されていました。ITT解析において、アテゾリズマブ投与後のpCR割合(48.6%)は、アテゾリズマブ非投与(44.4%;OR:1.18、95%CI:0.74~1.89、p=0.48)と比較して統計学的有意な改善を認めませんでした。多変量解析では、PD-L1発現の有無がpCR率に最も影響する因子でした(OR:2.08)4)。今回発表のあった、追跡期間中央値54ヵ月後のEFS率は、アテゾリズマブ非投与の化学療法単独群74.9%に対してアテゾリズマブ+化学療法群70.6%でした(HR: 1.076、95%CI:0.670~1.731)。このため、主要評価項目のEFSも統計学的有意差を示せなかったという結果でした。アテゾリズマブを使用した術前抗がん剤として、IMpassion 031試験はpCRの改善は認めましたが、DFSやOSは検討できない症例数で、ESMO BC2023における報告では、明らかな有意差を示していませんでした。一方で、KEYNOTE-522の結果は、前述の通りペムブロリズマブ追加でpCRも改善して、EFSも改善していましたので、真逆の結果でした。NeoTRIP試験のKEYNOTE-522試験と異なる点は、術後療法では免疫チェックポイント阻害薬を使用しないこと、術前抗がん剤治療として免疫チェックポイント阻害薬の併用ではアントラサイクリン系薬剤は使用しないこと、異なる免疫チェックポイント阻害薬を使用していることがありましたが、どのくらいこういった要素が影響するかは定かではありません。転移・再発乳がん演題1)HR+/HER2-乳がん TROPION-Breast01試験(NCT05104866、LBA11)本試験では、手術不能または転移を有するHR+/HER2-(IHC 0、IHC 1+またはIHC 2+、ISH陰性)乳がん患者732例が組み入れられました。ECOG PS 0~1、内分泌療法で進行を認め内分泌療法が適さない患者であり、全身化学療法を1~2ライン受けた患者が対象となっています。患者は、datopotamab deruxtecan(Dato-DXd)(6mg/kgを1日目に投与、3週おき)を投与する群、または医師が選択した化学療法(エリブリン、ビノレルビン、カペシタビン、ゲムシタビン)を投与する群に1:1で無作為に割り付けられました。主要評価項目は、RECISTv1.1に基づく盲検下独立中央判定(BICR)による無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)でした。本試験の結果、BICRによるPFS中央値はDato-DXd群6.9ヵ月、医師選択化学療法群4.9ヵ月、HR0.63(95% CI:0.52~0.76、p<0.0001)と、有意にDato-DXd群のPFSが良好でした。奏効割合はDato-DXd群36.4%、医師選択化学療法群22.9%でした。OSについては、イベントが不十分な状況でしたが、Dato-DXd群で良好な傾向が認められ、HR0.84(95% CI:0.62~1.14)でした。治療関連有害事象(TRAE)はDato-DXd群で94%、医師選択化学療法群で86%に発生したのですが、Grade 3以上のTRAE割合は、Dato-DXd群で21%対医師選択化学療法群で45%と、Dato-DXd群で低い頻度でした。また、薬剤関連の間質性肺疾患はDato-DXd群で3%、ただしほとんどがGrade 1か2でした。画像を拡大するこれまでにHR+/HER2-(低発現)乳がんに対するランダム化比較第III相試験で、有効性を検証した抗体薬物複合体(ADC:antibody drug conjugate)は3つ目ということになります。HER2低発現に対するT-DXdはすでに保険適用となっていますが、Destiny Breast 04試験の結果、2次治療以降の症例でPFS、OSが医師選択化学療法よりも良好であることが示されています。ESMOではOSのupdate結果が報告され、HR陽性群のT-DXd群の成績は、OS中央値が23.9ヵ月で、HR0.69(95%CI:0.55~0.87)と、これまでの報告の有効性が維持されていました。また、TROP2に対するADCとして、sacituzumab govitecan(SG)があり、こちらもTROPiCS-02試験の結果、PFS、OSが医師選択化学療法よりも良好であることが示されています。SGは2023年10月時点で、まだ日本では承認されていませんが、将来的に承認されることが期待されている薬剤です。実臨床ではまだDato-DXdは使用できませんが、仮にこれら3剤が使用可能な場合のHR陽性HER2陰性乳がんのADCシークエンスはどうなるでしょうか。いずれにせよ、臨床試験で組み入れられた症例はTROPION-Breast01とDestiny Breast04試験は1~2ラインの抗がん剤治療歴がある患者、TROPiCS-02試験は全身化学療法を2~4ライン受けた患者が対象でした。このため、2次治療以降のADCシークエンスが検討されます。HER2低発現であればOS改善効果が証明されている現状では、T-DXdが2次治療では優先されると思います。さらに、3次治療となればSGのほうはOS改善効果が証明されているので、同じTROP2のADCではSGの方が優先されると思います。一方で、HER2 0の症例では、現時点ではT-DXdは使用されませんので、2次治療での有効性はDato-DXdが優先され、3次治療でSGが検討されるのかと考えます。今後、現在進行中のDESTINY-Breast06試験の結果により、1次治療や、HER2 0の症例でのT-DXdの有効性が報告されることが期待されます。さらに、ADCのシークエンスが本当に臨床試験通り有効か? という点は非常に議論されているところですので、今後のリアルワールドデータや、臨床研究の結果が待たれます。2)トリプルネガティブ乳がん BEGONIA試験(NCT03742102、379MO)BEGONIA試験は、進行転移トリプルネガティブ乳がん患者として化学療法歴がない患者を対象とした、デュルバルマブとその他の薬剤との併用療法の有効性を複数のコホートで検討するPhaseIb/II試験です。いくつもの試験治療群がありますが、Dato-DXdと抗PD-L1療法であるデュルバルマブの併用療法を検討したアーム7の有効性と安全性については、昨年2022年のサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS)において、7.2ヵ月のフォローアップ中央値の結果として報告されていました。PD-L1発現が低い症例が53例(86.9%) (Tumor Area Positivity1)von Minckwitz G, et al. J Clin Oncol. 2012;30:1796-804.2)Masuda J, et al. J Immunother Cancer. 2023;11:e007126.3)Jerusalem G, et al. Breast. 2023;72:103580.4)Gianni L, et al. Ann Oncol. 2022;33:534-543.5)Modi S, et al. N Engl J Med. 2022;387:9-20.6)Rugo HS, et al. J Clin Oncol. 2022;40:3365-3376.7)Rugo HS, et al. Lancet. 2023;402:1423-1433.

157.

EGFR exon20挿入変異にamivantamab+化学療法(PAPILLON)/ESMO2023

 EGFR exon20挿入変異陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)に対する、EGFR・MET二重特異性抗体amivantamabと化学療法の併用を評価する国際無作為化比較第III相試験PAPILLONの結果を、フランス・キューリー研究所のNicolas Girard氏が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)で発表した。 未治療のEGFR exon20挿入変異陽性のNSCLCの治療成績は芳しくなく、全生存期間(OS)中央値は16〜24ヵ月である。同バリアントは、従来のEGFR-TKIに対する感受性がなく、免疫チェックポイント阻害薬もベネフィットを示せていない。・対象:未治療のEGFR exon20挿入変異陽性NSCLC・試験群:amivantamab+化学療法(amivantamab群、153例)・対照群:化学療法(化学療法群、155例)・評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央判定(BICR)評価の無増悪生存期間(PFS)[副次評価項目]奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、OS、PFS2、安全性など 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値は14.9ヵ月であった。・BICR評価のPFS中央値はamivantamab群11.4ヵ月、化学療法群6.7ヵ月で、amivantamab群で有意に延長した(ハザード比[HR]:0.395、95%信頼区間[CI]:0.30~0.53、p<0.0001)。12ヵ月PFSはそれぞれ48%と13%、18ヵ月PFSはそれぞれ31%と3%であった。・すべてのPFSサブグループにおいて、amivantamab群が良好であった。・BICR評価のORRはamivantamab群73%、化学療法群47%であった(オッズ比[OR]:3.0、95%CI:1.8〜4.8、p<0.0001)。・DOR中央値はamivantamab群9.7ヵ月、化学療法群4.4ヵ月であった。・PFS2中央値はamivantamab群未到達、化学療法群17.2ヵ月で、amivantamab群で有意に延長した(HR:0.493、95%CI:0.32〜0.76、p=0.001)。・OS中央値は未到達であった(HR:0.675、95%CI:0.42〜1.09、p=0.106)。・OS中央値はamivantamab群未到達、化学療法群24.4ヵ月であった(HR:0.675、95%CI:0.42〜1.09、p=0.106)。 Girard氏は、この試験の結果から、EGFR exon20挿入変異NSCLCに対するamivantamab+化学療法の1次治療は新たな標準治療であることを示した、と述べた。

158.

ER+/HER2-乳がんの術前ニボルマブ、pCRを有意に改善(CheckMate 7FL)/ESMO2023

 高リスクのER陽性(+)/HER2陰性(-)早期乳がん患者を対象とした第III相CheckMate 7FL試験の結果、術前化学療法および術後内分泌療法にニボルマブを上乗せすることで、病理学的完全奏効(pCR)率が有意に改善し、さらにPD-L1陽性集団ではより良好であったことを、オーストラリア・Peter MacCallum Cancer CentreのSherene Loi氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)で報告した。・対象:ER+/HER2-、T1c~2 cN1~2またはT3~4 cN0~2、Grade2(かつER 1~10%)またはGrade3(かつER≧1%)の新たに診断された乳がん患者 510例・試験群(ニボルマブ群):ニボルマブ(3週ごと)+パクリタキセル(毎週)→ニボルマブ+AC療法(隔週または3週ごと)→手術→ニボルマブ(4週ごと)+内分泌療法 257例・対照群(プラセボ群):プラセボ+パクリタキセル→プラセボ+AC療法→手術→プラセボ+内分泌療法 253例・評価項目:[主要評価項目]pCR(ypT0/is ypN0)[副次評価項目]PD-L1陽性集団のpCR、全体およびPD-L1陽性集団の腫瘍残存率(RCB)、安全性・層別化因子:PD-L1発現状況、Grade、腋窩リンパ節転移、AC療法の投与スケジュール 2022年4月に主要評価項目は修正ITT集団のpCR率のみに修正され、PD-L1陽性集団のpCR率は副次評価項目となった。今回がCheckMate 7FL試験結果の初報告で、全体およびPD-L1陽性集団のpCRとRCBが報告された。 主な結果は以下のとおり。・ニボルマブ群およびプラセボ群の年齢中央値は50歳/51歳、Grade3が98%/99%以上、StageIII期が46%/42%、PD-L1 IC≧1%が34%/33%、腋窩リンパ節転移陽性が80%/79%で、両群でバランスがとれていた。・修正ITT集団全体のpCR率は、ニボルマブ群24.5%、プラセボ群13.8%で、ニボルマブ群が有意に高かった(調整差10.5%[95%信頼区間[CI]:4.0~16.9]、オッズ比[OR]:2.05、p=0.0021)。・PD-L1陽性集団におけるpCR率は、ニボルマブ群44.3%、プラセボ群20.2%(調整差:24.1%[95%CI:10.7~37.5]、OR:3.11)であった。なお、PD-L1陰性集団では14.2%/10.7%であった。・リンパ節転移の有無、Stage、年齢、AC療法の治療スケジュールにかかわらずニボルマブ群のほうがpCR率は良好であった。・全体におけるRCB 0~1の割合は、ニボルマブ群30.7%、プラセボ群21.3%(調整差:9.2%[95%CI:2.0~16.5]、OR:1.65)であった。・PD-L1陽性集団におけるRCB 0~1の割合は、ニボルマブ群54.5%、プラセボ群26.2%(調整差:28.5%[95%CI:14.6~42.4]、OR:3.49)であった。・Grade3以上の治療関連有害事象は、ニボルマブ群35%、プラセボ群32%に発現し、安全性プロファイルは既報と一致していた。免疫介在性有害事象はニボルマブ群のほうが多かった。ニボルマブ群では死亡が2例(肺炎、肝炎)認められた。 これらの結果より、Loi氏は「高リスクのER+/HER2-早期乳がん患者の術前化学療法にニボルマブを追加することで、pCRは10.5%改善するとともにRCB 0~1率も9.2%改善した。この恩恵はPD-L1陽性集団でより大きかった。安全性プロファイルはこれまでと同様で、新たな有害事象は報告されなかった」としたうえで「バイオマーカーに関する追加データは今後の学会で発表する予定である」とまとめた。

159.

胃がん1次治療、周術期ペムブロリズマブはEFS延長せず(KEYNOTE-585)/ESMO2023

 切除可能な局所進行胃・胃食道接合部(G/GEJ)がん患者における免疫チェックポイント阻害薬の開発が進められているが、今年の米国臨床腫瘍学会(ASCO 2023)において術後療法にニボルマブの上乗せを検証したATTRACTION-5試験では上乗せ効果は示されなかった。同じくG/GEJがん患者を対象として、術前術後の化学療法にペムブロリズマブの上乗せ効果を検証した無作為化二重盲検第III相KEYNOTE-585試験においても、無イベント生存期間(EFS)に有意な延長はみられなかったことがすでに報告されている。本試験の詳細について、国立がん研究センター東病院の設楽 紘平氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)で発表した。・対象:未治療の局所進行、切除可能G/GEJがん、PS0~1・試験群(メインコホート):術前にペムブロリズマブ200mg+化学療法(シスプラチン+カペシタビンまたはシスプラチン+5-FU)を3サイクル、術後にペムブロリズマブ+化学療法を3サイクル実施、さらにペムブロリズマブ単剤を最大11サイクル投与(ペムブロ群)・対照群:術前・術後にプラセボ+化学療法、さらにプラセボ単剤投与(プラセボ群)・評価項目:[主要評価項目]病理学的完全奏効率(pCR率)、EFS、全生存期間(OS)[副次評価項目]安全性 主な結果は以下のとおり。・804例が登録され、ペムブロ群とプラセボ群に1対1で割り付けられた。追跡期間中央値は47.7ヵ月だった。アジア人47%、欧米人26%、その他27%だった。・pCR率はペムブロ群で12.9%(95%信頼区間[CI]:9.8~16.6)、プラセボ群で2.0%(95%CI:0.9~3.9)だった。・EFSはペムブロ群で改善したが(中央値44.4ヵ月vs.25.3ヵ月、HR:0.81、95%CI:0.67~0.99、p=0.0198)、わずかな差であったものの、事前に規定された有意差を示すには至らなかった。・OS中央値はペムブロ群で60.7ヵ月、プラセボ群で58.0ヵ月で、有意差はなかった。・Grade3以上の薬物関連有害事象はペムブロ群で64%、プラセボ群で63%で発生した。 設楽氏は「未治療の局所進行切除可能G/GEJがん患者において、周術期のペムブロ+化学療法は残念ながらEFSに有意な改善はみられなかったが、pCR率は大幅に改善した。周術期における免疫チェックポイント阻害薬の有効性を確かめるためには、さらなる研究が必要だ」とした。 続いて発表された、本試験同様に胃がん周術期の免疫チェックポイント阻害薬投与を検討するMATTERHORN試験(術前化学療法にデュルバルマブ上乗せ)がポジティブな結果となったことを踏まえ、発表後のディスカッションでは、差異が出た要因や適切な化学療法の種類、恩恵を受ける患者の特性などについて、盛んな議論が交わされた。

160.

ニボルマブベースの非小細胞肺がん周術期レジメンが有効性示す(CheckMate 77T)/ESMO2023

 切除可能非小細胞肺がん(NSCLC)におけるニボルマブベースの周術期レジメンが良好な結果を示した。 欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)において米国・MDアンダーソンがんセンターのTina Cascone氏が発表した、同集団に対する術前ニボルマブ+化学療法、術後ニボルマブを評価する無作為化二重盲検第III相CheckMate 77T試験の中間解析の結果である。・対象:切除可能なStageIIA〜IIIB (American Joint Committee on Cancer[AJCC]第8版) のNSCLC・試験群:ニボルマブ360mg 3週ごと+プラチナダブレット化学療法 3週ごと4サイクル→手術→ニボルマブ480mg 4週ごと1年間(NIVO+化学療法/NIVO群、n=229)・対照群:プラチナダブレット化学療法 3週ごと4サイクル→手術→プラセボ4週ごと1年間(化学療法/PBO群、n=232)評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央判定(BICR)評価の無イベント生存期間(EFS)[副次評価項目]病理学的完全奏効(pCR)および主要な病理学的奏効(MPR)(ともに盲検下独立病理学審査[BIPR]評価)、全生存期間(OS)、安全性など 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値は25.4ヵ月であった。・BICR評価のEFS中央値は、NIVO+化学療法/NIVO群は未到達、化学療法/PBO群は18.4ヵ月で、NIVO+化学療法/NIVO群で有意に改善していた(ハザード比[HR]:0.58、97.36%信頼区間[CI]:0.42〜0.81、p=0.00025)。・12ヵ月EFS率はNIVO+化学療法/NIVO群73%、化学療法/PBO群59%、18ヵ月EFS率はそれぞれ70%と50%であった。・BIPR評価のpCR率はNIVO+化学療法/NIVO群25.3%、化学療法/PBO群4.7%(オッズ比[OR]:6.64、95%CI:3.40〜12.97)、BIPR評価のMPR率はそれそれ35.4%と12.1%であった(OR:4.01 、95%CI:2.48〜6.49)。・全期間における全Gradeの治療関連有害事象(TRAE)は、NIVO+化学療法/NIVO群の89%、化学療法/PBO群の87%に発現した。術前期間のTRAE発現はそれぞれ86%と85%、術後期間のTRAE発現はそれぞれ50%と30%であった。 Cascone氏は、CheckMate 77T試験の結果は、ニボルマブベースの周術期レジメンが切除可能NSCLCにとって有望な新しい治療選択肢であることを支持するものだと結んだ。

検索結果 合計:823件 表示位置:141 - 160