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切除可能NSCLC、周術期ペムブロリズマブの追加が有効(KEYNOTE-671)/Lancet

 未治療の切除可能な早期非小細胞肺がん(NSCLC)の治療において、術前化学療法単独と比較し、術前ペムブロリズマブ+化学療法と術後ペムブロリズマブ療法を行う周術期アプローチは、3年全生存率が有意に優れ、無イベント生存期間が延長し、安全性プロファイルも良好であることが、カナダ・マギル大学ヘルスセンターのJonathan D. Spicer氏らが実施した「KEYNOTE-671試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2024年9月28日号で報告された。国際的な無作為化プラセボ対照第III相試験 KEYNOTE-671試験は、日本を含む世界189施設で実施した二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2018年5月~2021年12月に参加者の無作為化を行った(Merck Sharp & Dohmeの助成を受けた)。 年齢18歳以上、未治療の切除可能なStageII、IIIA、IIIB(N2)のNSCLCで、全身状態はECOG PSが0または1の患者を対象とした。 術前にペムブロリズマブ(200mg、3週ごとに静脈内投与)+シスプラチンベースの化学療法を4サイクル行った後に手術を施行し、術後ペムブロリズマブ(200mg、3週ごとに静脈内投与)療法を13サイクル行う群(ペムブロリズマブ群)、または術前にプラセボ(3週ごとに静脈内投与)+シスプラチンベースの化学療法を4サイクル行った後に手術を施行し、術後にプラセボ(3週ごとに静脈内投与)を13サイクル投与する群(プラセボ群)に、1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要評価項目は2つで、ITT集団における全生存期間(無作為化から全死因による死亡までの期間)および無イベント生存期間(無作為化から、予定された手術を不可能にする局所進行、手術時の切除不能腫瘍の存在、RECIST version 1.1に基づく担当医評価の病勢進行または再発、全死因死亡、いずれかが最初に発生するまでの期間)とした。全生存期間中央値は未到達 797例を登録し、ペムブロリズマブ群に397例(年齢中央値63歳、女性118例[30%]、東アジア人123例[31%])、プラセボ群に400例(64歳、116例[29%]、121例[30%])を割り付けた。2回目の中間解析時の追跡期間中央値は36.6ヵ月だった。 Kaplan-Meier法による36ヵ月全生存率は、プラセボ群が64%であったのに対し、ペムブロリズマブ群は71%と有意に優れた(ハザード比[HR]:0.72、95%信頼区間[CI]:0.56~0.93、p=0.0052[片側])。全生存期間中央値は、ペムブロリズマブ群では未到達であり、プラセボ群では52.4ヵ月であった。 また、無イベント生存期間中央値は、プラセボ群の18.3ヵ月に比べ、ペムブロリズマブ群では47.2ヵ月と延長した(HR:0.59、95%CI:0.48~0.72)。新たな安全性シグナルの出現はない as-treated集団の解析では、治療関連有害事象はペムブロリズマブ群で97%(383/396例)、プラセボ群で95%(381/399例)に認めた。Grade3以上の治療関連有害事象は、ペムブロリズマブ群で45%(179例)、プラセボ群で38%(151例)に、重篤な治療関連有害事象はそれぞれ18%(73例)および15%(58例)に発現した。 ペムブロリズマブ群では、死亡に至った治療関連有害事象が1%(4例)(心房細動、免疫介在性肺疾患、肺炎、心臓突然死、各1例)、すべての治療の中止に至った治療関連有害事象が14%(54例)で発生した。免疫介在性有害事象およびインフュージョンリアクションは、ペムブロリズマブ群で26%(103例)にみられた。 著者は、「周術期ペムブロリズマブの効果に関する有益性は、健康関連QOLの長期的な低下を伴わず、新たな安全性シグナルは出現しなかったことである」とし、「これらの知見は、切除可能なStageII~IIIB(N2)NSCLCに対する術前化学療法への周術期ペムブロリズマブの追加は、標準治療の選択肢となる可能性があることを支持するものである」と述べている。

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肺がん診療のリアル

肺がん診療の現在(リアル)がわかる! 肺がん診療が面白くなる!!呼吸器専門医・がん治療認定医である経験豊富な著者が実際に肺がん患者さんに対して行っている診療を1冊の書籍にまとめました。本書は著者が発信している肺がん患者さん向けのYouTube『呼吸器ドクターNの肺がんチャンネル』とも連動しており、QRコードで関連動画に簡単にアクセスできます。本書とあわせて動画をご視聴いただくと、肺がん診療についてさらに理解を深めていただくことができるはずです。本書を通じて肺がん診療のリアルを感じてください。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する肺がん診療のリアル定価4,950円(税込)判型A5判頁数250頁発行2024年10月著者野口 哲男(市立長浜病院呼吸器内科/呼吸器ドクターN)ご購入はこちらご購入はこちら

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ESMO2024レポート 消化器がん

レポーター紹介本年、スペインのバルセロナで欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2024)が、現地時間9月13~17日にハイブリッド開催で行われた。注目の演題が多数報告されていたが、今回は消化器がん(消化管がん)の注目演題について、実臨床に影響してきそうなものを含め、いくつか取り上げていきたい。胃がんと食道胃接合部がん、術前化学放射線療法は有用性を示せず(TOPGEAR試験)LBA58 - A randomized phase III trial of perioperative chemotherapy (periop CT) with or without preoperative chemoradiotherapy (preop CRT) for resectable gastric cancer (AGITG TOPGEAR): Final results from an intergroup trial of AGITG, TROG, EORTC and CCTG.TOPGEAR試験は、切除可能胃がんもしくは食道胃接合部がんに対して、周術期化学療法群(3サイクルのECF療法もしくは4サイクルのFLOT療法を術前・術後に行う)と術前化学療法群(2サイクルのECF療法もしくは3サイクルのFLOT療法を行った後、5-FU静注+45Gy/25照射の術前化学放射線療法を施行し、術後化学療法は術前と同じものを行う)を比較した第III相試験である。術前化学放射線療法の優越性を検証する試験であり、主要評価項目は全生存期間(OS)で、副次評価項目は無増悪生存期間(PFS)、病理学的完全奏効率(pCR rate)、毒性と手術合併症およびQOLであった。2009年9月~2021年5月に15ヵ国70施設から574例が登録され、周術期化学療法群に288例、術前化学放射線療法群に286例が登録された。患者背景はT3/4が88%、リンパ節転移ありもしくは不明が61~62%およびECF使用例が67%、FLOT使用例が33%であった。pCR率は16.8% vs.8.0%と術前化学放射線療法群で有意に高かったが(p<0.0001)、R0切除率は92.4% vs.87.7%で有意差を認めなかった(p=0.09)。術後化学療法を受けられた症例は全ランダム化群で比較すると、56% vs.66%と術前化学放射線療法群で有意に低かった(p=0.01)。術前化学放射線療法群と周術期化学療法群で比較すると、OSは46.4ヵ月vs.49.4ヵ月(ハザード比[HR]:1.05、p=0.70)で術前化学放射線療法の優越性は示せず、5年OS率も44.4% vs.45.7%であった。PFSも31.4ヵ月vs.31.8ヵ月(HR:0.98、p=0.86)で優越性は示せなかった。サブグループ解析においても、とくに術前化学放射線療法の有効なグループははっきりしなかった。以上の結果より、切除可能な胃がんもしくは食道胃接合部がんに対して術前化学放射線療法の有効性は証明できなかった。今後は、化学療法+免疫チェックポイント阻害薬の周術期試験の結果が待たれるところである。HER2陽性胃がんに対する化学療法+トラスツズマブ+ペムブロリズマブ、OSを延長(KEYNOTE-811試験)1400O - Final overall survival for the phase III, KEYNOTE-811 study of pembrolizumab plus trastuzumab and chemotherapy for HER2+ advanced, unresectable or metastatic G/GEJ adenocarcinoma.KEYNOTE-811試験はHER2陽性胃がんに対する1次治療として化学療法+トラスツズマブにペムブロリズマブの上乗せ効果を検証するプラセボ使用ランダム化第III相試験で、奏効率などのデータはすでに報告されていた。今回はOSの最終解析結果が報告された。698例がランダム化され、350例がペムブロリズマブ群に、348例がプラセボ群に登録された。OSはペムブロリズマブ群vs.プラセボ群で20.0ヵ月vs.16.8ヵ月と、有意に延長した(HR:0.80、p=0.0040)。PFSも10.0ヵ月vs.8.1ヵ月(HR:0.73)、奏効率も72.6% vs.60.1%と、ペムブロリズマブ群で良好であった。サブグループ解析では、PD-L1発現がCPS1以上の場合にはOSが20.1 vs.15.7ヵ月(HR:0.79)、PFSが10.9 vs.7.3ヵ月(HR:0.72)かつ奏効率が73.2% vs.58.4%とより良好な結果であったのに対し、CPS1未満ではOSが18.2ヵ月vs.20.4ヵ月(HR:1.10)かつPFSが9.5ヵ月vs.9.5ヵ月(HR:0.99)と、ペムブロリズマブの効果が弱まる傾向があった。CPS1未満は本試験では15%に認められており、現在欧米ではHER2陽性かつPD-L1がCPS1以上の症例に対してペムブロリズマブの使用が推奨されているが、本邦でどのような条件で保険承認されるのかが注目される。肛門管がんに新たな治療選択肢の可能性が現れる(POD1UM-303試験)LBA2 - POD1UM-303/InterAACT 2: Phase III study of retifanlimab with carboplatin-paclitaxel (c-p) in patients (Pts) with inoperable locally recurrent or metastatic squamous cell carcinoma of the anal canal (SCAC) not previously treated with systemic chemotherapy (Chemo).肛門管の扁平上皮がんに対しては、局所進行例でマイトマイシン+5-FU+放射線療法が行われることが多かったが、切除不能局所再発例や転移を有する症例に対する標準治療は長らく確立されていなかった。今回、カルボプラチン+パクリタキセルを標準治療とし、抗PD-1抗体薬であるretifanlimabの上乗せ効果を検証する二重盲検プラセボランダム化第III相試験が行われ、その結果が報告された。主要評価項目はPFS、副次評価項目がOSであった。2024年4月までに308例が登録され、retifanlimab群に154例とプラセボ群に154例が登録された。年齢中央値は62歳で女性が72%、HIV感染陽性が4%、36%が肝転移を有していた。主要評価項目であるPFSは9.30ヵ月vs.7.39ヵ月とretifanlimab群で有意に延長を認めた(HR:0.63、p=0.0006)。OSは29.2ヵ月vs.23.0ヵ月、奏効率は55.8% vs.44.2%であった。本試験はPFSの観察期間中央値が約7ヵ月かつOSの観察期間中央値が約14ヵ月程度とまだ短い試験であるが、希少がんである肛門管がんの全身化学療法の標準治療はエビデンスに乏しいのが現状であった。本試験のディスカッサントも触れていたが、カルボプラチン+パクリタキセル+プラセボ群の治療成績は、従来の5-FU+シスプラチンと比較して良好であった。患者や医療者にとって、カルボプラチン+パクリタキセルおよびカルボプラチン+パクリタキセル+retifanlimabは有望な治療になりうると考えられ、本邦でも使用可能になることが待たれる状況である。局所進行直腸がんに対する臓器温存治療の可能性(NO-CUT試験)509O - Total neoadjuvant treatment (TNT) with non-operative management (NOM) for proficient mismatch repair locally advanced rectal cancer (pMMR LARC): First results of NO-CUT trial.現在、局所進行直腸がんに対する化学療法と放射線療法を用いたTotal Neoadjuvant Therapy(TNT)は、非常に重要な戦略として世界中で研究が進んでいる。TNTを行った後に臨床的完全奏効(cCR)となった症例では、切除を避けて手術なしの経過観察であるNon Operative Monitoring(NOM)に持ち込める可能性も示唆されている。今回、pMMR局所進行直腸がんに対してTNTを行いcCRとなった症例に対して無遠隔再発生存期間(DRFS)を損なわないかを検証し、かつ腫瘍および血液のマルチオミクス解析を行う単群第II相試験であるNO-CUT試験の初回報告が行われた。4つのがんセンターからcT3-4N0/cTxN1-2の下部/中部pMMR局所進行直腸がん症例を対象に、4サイクルのCAPOX療法に続いて5週間にわたる化学放射線療法(カペシタビン+IMRT)を行うTNTが実施された。主要評価項目は30ヵ月の無遠隔再発生存率で、副次評価項目はpCR率、NOM群における臓器温存率であった。TNT終了後、cCRパラメータに基づくプロトコルアルゴリズム(Siena S, et al. ASCO 2023.)に従って、患者は手術群またはNOM群に割り付けられた。2018~24年に、180例がTNTを受け、164例(91%)がプロトコルどおりに治療を完了し、46例(25.5%)がpCRを達成し、NOMに割り当てられた。治療効果がincomplete response(IR)であった群(134例)では手術が行われた。30ヵ月無遠隔再発生存率はNOM群で96.9%と主要評価項目を達成した。IR群も含めた全体集団での30ヵ月無遠隔再発生存率は77%であった。NOM群の臓器温存率は85%で、局所再発は46例中7例発生し、全症例で救済手術が行われた。局所再発はすべて治療後4~18ヵ月で発生した。2024年4月1日時点で、12例の死亡(6.6%)が報告された(有害事象1例、腫瘍関連9例、その他2例)。マルチオミクス相関解析が進行中で、TNT後のctDNAはcCR例では8%で陽性であったがそれ以外では31%で陽性であり、陽性例では有意に遠隔転移再発が多く認められた。またTNTでpCRに至らなかった症例の手術後のctDNA陽性例で有意に遠隔転移再発が多いことも報告された。治療前の検体解析ではRNAシーケンスに基づく白血球スコアはcCRと関連し、Paneth細胞様表現型(CRIS-E)は遠隔転移再発と関連した。本結果より、TNTによるcCRを得られた症例では臓器温存の可能性が示唆された。本試験はまだ初回報告であること、本邦でも局所進行直腸がんに対する複数のTNTの試験が進行していることから、これらの結果が明らかになり、本邦で適切に患者に届けられる時代が来ることが待ち望まれる。MSI-H(dMMR)結腸がんの術前イピリムマブ+ニボルマブ(NICHE-2試験)LBA24 - Neoadjuvant immunotherapy in locally advanced MMR-deficient colon cancer: 3-year disease-free survival from NICHE-2.MSI-High(dMMR)の直腸がんについては、術前治療が非常に奏効することが複数報告されている。結腸がんについては転移のあるdMMR結腸がんにおいて免疫チェックポイント阻害薬の有用性が報告されており、本邦でも現在切除不能dMMR結腸がんの1次治療の標準治療はペムブロリズマブであり、今後イピリムマブ+ニボルマブの登場が待たれている状況である。NICHE-2試験は局所進行dMMR結腸がんに対する術前治療としてのイピリムマブ+ニボルマブ療法の有効性を探索する単群第II相試験であり、1コース目にイピリムマブ+ニボルマブを行い、2コース目にニボルマブ単剤療法を行った後、手術を行う試験デザインである。主要評価項目は安全性と3年無病生存(DFS)率、副次評価項目はpCR率、translational research・ctDNAの変動であった。すでに高い病理学的奏効率と安全性が報告されていたが、今回3年DFS率とctDNAのデータが報告された。115例が登録され、女性が58%、T4が65%でT4bが29%、リンパ節転移ありが67%かつ33%がLynch症候群といった対象であった。既報のとおりpCR率は68%であり、3年DFS率は100%であった。ctDNAは治療前の段階では92%で陽性であったが、1コース後に45%が陰性となり、2コース後には83%が陰性となった。術前の段階でctDNA陽性であった16例のうち、術後のリンパ節転移が陽性であったのは14例中8例であった。また、術後のctDNAを用いたminimal residual diseaseの探索では、全例がctDNA陰性であった。本試験より局所進行dMMR結腸がんにおいて、イピリムマブ+ニボルマブは非常に魅力的な結果であった。本試験は2コースで術前治療が終わり、手術まで6週と定義されており、短期間で有効性が示されていることも魅力である。ESMO2024では同様の局所進行dMMR結腸がんに対してペムブロリズマブの有効性を探索したIMHOTEP試験や、ニボルマブ+relatlimab(抗LAG-3抗体)の併用療法の有効性を探索したNICHE-3試験も報告があった。局所進行MSI-H結腸がんの術前治療としての免疫チェックポイント阻害薬の有効性はおそらく確実であるが、どの対象にどの薬剤をどの期間使用するのがよいのかは、今後の研究が待たれる状況である。

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pMMR/MSS大腸がん、免疫検査陽性例はペムブロリズマブ上乗せが奏効(POCHI)/ESMO2024

 pMMR(ミスマッチ修復機能正常)およびMSS(マイクロサテライト安定性)の転移大腸がん(mCRC)は免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の効果が低いとされ、現在の1次治療は化学療法と分子標的薬となっている。一方、pMMR/MSS 大腸がんの約15%は腫瘍浸潤リンパ球(TIL)高値であり、ICIの感受性がある可能性がある。さらにオキサリプラチンなどの化学療法によって誘導される免疫原性細胞死や、ベバシズマブなどの血管新生阻害薬による免疫調整によってICIの有効性が高まる可能性もある。 こうした背景から、免疫検査で陽性だった切除不能pMMR/MSS mCRC患者を対象に、1次治療としてのCAPOX+ベバシズマブにペムブロリズマブを上乗せするレジメンの有効性を評価するPOCHI試験が計画された。欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2024)でフランス・ポワティエ大学病院のDavid Tougeron氏が本試験の暫定の解析結果を発表した。・試験デザイン:多施設単群第II相試験・対象:切除不能、未治療のpMMR/MSS mCRC、2つの免疫検査(ImmunoscoreとTuLiS)で少なくとも1つが高値で陽性。PS 0~1・試験群:CAPOX+ベバシズマブ(7.5mg/kg)+ペムブロリズマブ(200mg/kg)、3週ごと・評価項目:[主要評価項目]10ヵ月時点での無増悪生存期間(PFS) [副次評価項目]全生存期間(OS)、病勢コントロール率(DCR)、奏効率(ORR)、奏効期間(DoR)、安全性 主な結果は以下のとおり。・2021年4月~2024年8月、41施設で196例がスクリーニングされ、36例(18%)が少なくとも1つの免疫スコアが陽性となり、登録された(TuLiSが28例、Immunoscoreが8例[うち両検査陽性が6例])。解析対象となったのは30例だった。・年齢中央値67歳、男性が63%、ECOG PS 0が87%、患者背景は右側原発腫瘍が40%、RAS変異が63%、肺転移が33%、肝転移が50%などであった。・治療期間中央値は9.5ヵ月、追跡期間中央値は21ヵ月、13例が治療中であった。・PFS、OSのデータは共に未成熟だが、速報値として12ヵ月時点のPFS率は51.5%であり、主要評価項目(10ヵ月時点のPFS率70%以上と設定)は満たされなかった。一方、DCRは100%、ORRは74%(22例)で、うち完全奏効が17%(5例)だった。DoRの中央値は10ヵ月であった。・21例(70%)の患者に少なくとも1つのGrade3~4の治療関連有害事象を認めた。毒性による死亡は認められなかった。治療関連有害事象で薬剤投与が中止された患者は3例(10%)で、うち2例はペムブロリズマブ関連の毒性(溶血性貧血と疲労/食欲不振)だった。・TuLiSスコアとOSのあいだに相関性は認められなかった。 Tougeron氏は「POCHI試験の暫定的な結果は、免疫応答高値のpMMR/MSS mCRC患者に対し、標準レジメンであるCAPOX+ベバシズマブと併用したペムブロリズマブの良好な安全性プロファイルと高い有効性を示している。17%の完全奏効と100%のDCRという印象的な結果は、今後ランダム化第III相試験でさらに評価する価値がある」としている。

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ESMO2024レポート 泌尿器科腫瘍

レポーター紹介欧州臨床腫瘍学会(European Society of Medical Oncology:ESMO)は臨床腫瘍学の国際学会では米国臨床腫瘍学会(ASCO)と並ぶ最大規模のイベントで、2024年はスペインのバルセロナにおいて9月13~17日の5日間の日程で開催された。ASCOが毎年シカゴで行われるのに対し、ESMOは欧州の各国で開催されるのが参加者のモチベーションにつながっているのか、年々演題の質が上がってきている印象である。2~4日目に最優秀演題の発表としてPresidential Symposiumが設けられ、12演題中泌尿器からは2演題(尿路上皮がんと前立腺がん)が選出された。口演発表は、Proffered PapersとMini Oralsの発表形式があり、日本からHigh grade pT1筋層非浸潤膀胱がんに対するBCG膀胱内注入療法のランダム化比較第III相試験であるJCOG1019試験も報告された。円安の影響(9月13日時点の1ユーロ=160.88円)で渡航費がかさむ今日この頃、ESMOはオンライン参加で節約をしたが、今年もPractice Changingな話題が豊富だっただけに、「現地参加したかった!」のが本音である。Presidential Symposium#LBA1 Ra223とエンザルタミドの併用療法は骨転移を有する去勢抵抗性前立腺がんのrPFSとOSを延長(PEACE-III試験)A randomized multicenter open label phase III trial comparing enzalutamide vs a combination of Radium-223 (Ra223) and enzalutamide in asymptomatic or mildly symptomatic patients with bone metastatic castration-resistant prostate cancer (mCRPC): First results of EORTC-GUCG 1333/PEACE-3塩化ラジウム223(Ra223)はカルシウム類似物質として骨転移巣を標的とし、崩壊時にα線を放出する放射線内用療法の治療薬で、ALSYMPCA試験において生存期間の延長が示され、日本でも2016年より臨床導入されている。近年は、新規ホルモン薬であるエンザルタミド(ENZ)やアビラテロンなどが転移のある去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)治療の主流となり、また非転移去勢抵抗性前立腺がん(m0CRPC)治療においては、アパルタミドやダロルタミドも標準治療となったことから、その使用状況は変化している。PEACE-3試験は、骨転移のあるmCRPC、無症状か軽症状、Performance Status(PS)0~1で臓器転移のない症例を対象とし、Ra223(55kBq/kgの静注、4週ごと、6サイクル)とENZ(160mg経口、連日)の併用と、ENZ単独を比較したランダム化比較第III相試験で、主要評価項目は画像上の無増悪生存(rPFS)であった。骨修飾薬は必須(119例集積後より)としていた。rPFSは片側α=0.025、β=0.10とし、ハザード比[HR]=0.68を検出するのに283イベントを必要とした。主要な副次評価項目として全生存(OS)を設定し、片側α=0.0034(中間解析)、0.0248(最終解析)でHR=0.75を検出するのに299イベントを必要とした。Ra223+ENZ群222例、ENZ群224例が登録され、ドセタキセル既治療は両群約30%、アビラテロン既治療は2~3%、骨以外の病変を有する症例は33~35%であり、バランスがとれていた。観察期間中央値42.2ヵ月時点のrPFS中央値はRa223+ENZ群で19.4ヵ月、ENZ群で16.4ヵ月(HR:0.69、95%信頼区間[CI]:0.54~0.87、p=0.0009)であり、併用群で有意な延長を認めた。OSは80%のイベント数での中間解析であったが、中央値はRa223+ENZ群で42.3ヵ月、ENZ群で35.0ヵ月(HR:0.69、95%CI:0.52~0.90、p=0.0031)であり、有意な延長を認めた。安全性では、治療関連の重篤な有害事象はRa223+ENZ群で28%、ENZ群で19%とわずかな増加を認めた。とくに注目されていた骨折は5.1%と1.3%、貧血は4.6%と2.2%、好中球減少は4.6%と0%の結果であった。演者のGillessen氏は、この結果によってmCRPCの1次治療の選択肢としてRa223+ENZが新たなオプションとなった、と締めくくった。日本のRa223の適応症は「骨転移のある去勢抵抗性前立腺がん」であり、本試験の対象患者となっている。CRPCでの新規ホルモン薬は標準治療であり、骨折リスクの増加を考慮してRa223との併用は回避すべき、と考えられてきたが、本試験のように骨修飾薬の併用を徹底すれば、ENZとの併用に関しては比較的安全で有効性も期待できることが読み取れる。日本の臨床現場にとっても日常診療を変える重要な報告であった。Presidential Symposium#LBA5 筋層浸潤膀胱がんに対する術前デュルバルマブ+化学療法と根治的膀胱全摘術および術後デュルバルマブはEFS、OSを延長(NIAGARA試験)A randomized phase III trial of neoadjuvant durvalumab plus chemotherapy followed by radical cystectomy and adjuvant durvalumab in muscle-invasive bladder cancer (NIAGARA)筋層浸潤膀胱がんの標準治療は、根治的膀胱全摘術と周術期のプラチナ併用化学療法+/-術後免疫チェックポイント阻害薬であるが、術前から免疫チェックポイント阻害薬を加えることの意義は検証されていなかった。NIAGARA試験は、シスプラチン適格となる筋層浸潤膀胱がん(cT2-T4aN0/1M0)を対象として行われた国際共同ランダム化比較第III相試験で、根治的膀胱全摘術前にゲムシタビン+シスプラチン(GC)療法4サイクルとGC+デュルバルマブ4サイクルにランダム化し、試験治療群では術後デュルバルマブを8サイクル行う治療が設定された。2つの主要評価項目として無イベント生存(EFS)および病理学的完全奏効(pCR)、主要な副次評価項目にOSが設定された。統計計画として、両側α=0.05が、pCRに0.001、EFSに0.049として割り振られ、いずれかが達成されればPositiveと判断するとされた。EFSが有意の場合、αはリサイクルされOSの検証にあてられる。GC+デュルバルマブ群は533例、GC群は530例の登録となり、手術はそれぞれ470例、446例で実施された。デュルバルマブの術後療法が開始された383例のうち、終了したのは288例であった。患者背景は、両群にアジア人を30%弱含み、腎機能良好(クレアチニンクリアランス60mL/min以上)はいずれも81%、リンパ節転移陽性例は5~6%であり、両群均等であった。追跡期間中央値42.3ヵ月時点のEFS中央値は、GC+デュルバルマブ群で「到達せず」、GC群で46.1ヵ月(HR:0.68、95%CI:0.56~0.82、p<0.0001)であった。pCR割合は33.8%と25.8%(オッズ比:1.49、95%CI:1.14~1.96、p=0.0038)で統計学的にNegativeと2022年に報告されていたが、再解析により37.3%と27.5%(オッズ:1.60、95%CI:1.23~2.06、p=0.0005)と、有意差ありと判断される数値であった。OS中央値は両群ともに「到達せず」であり、2年OSではGC+デュルバルマブ群で82.2%、GC群で75.2%、HR:0.75(95%CI:0.59~0.93、p=0.0106)であった。有害事象は、重篤なもので69%と68%と両群に差を認めず、膀胱全摘なしに関連したものは両群ともに1%、手術延期に関連したものは2%と1%であり、術前化学療法(NAC)の増強による悪影響は少ないという結果であった。シスプラチン適格の筋層浸潤膀胱がんにおいては、周術期のGC療法に加えてデュルバルマブを用いることが新たな標準治療と考えられる、とPowles氏は報告した。この報告のディスカッサントはワシントン大学のPetros Grivas氏であり、免疫チェックポイント阻害薬の位置付けの解釈の難しさを指摘した。現在の標準治療である術後ニボルマブ療法の対象は、NAC後はpT2以上の残存腫瘍がある症例である。NIAGARA試験では、pCRとなった3分の1の症例にもデュルバルマブの術後療法が行われているため、バイオマーカーによる追加検討を求めた。とはいえ、NIAGARA試験は日本も参加して行われた第III相試験であり、近い将来薬剤承認が認められれば、日常診療が刷新されるだろう。Proffered Paper session#LBA73 免疫療法を含む1~2ライン既治療の転移のある腎細胞がんに対するニボルマブ+tivozanib併用療法はPFS、OS延長を示せず (TiNivo-2試験)Tivozanib-nivolumab vs tivozanib monotherapy in patients with renal cell carcinoma (RCC) following 1 or 2 prior therapies including an immune checkpoint inhibitor (ICI): Results of the phase III TiNivo-2 studytivozanib(Tiv)は経口血管新生阻害薬であり、ニボルマブ(Niv)との併用は第I/II相試験で有効性と安全性が確認されている。TiNivo-2試験は、免疫チェックポイント阻害薬既治療で、転移のある腎細胞がんを対象にTiv+Niv併用療法とTiv単剤とを比較したランダム化比較第III相試験である。併用療法では、Tivは0.89mgを3週間内服1週間休薬としNiv 480mg静注と併用し、単独療法ではTiv 1.34mgを3週間内服1週間休薬で投与するデザインであり、主要評価項目は中央判定のPFSであった。Tiv+Niv群は171例、Tiv群には172例が登録され、患者背景は年齢中央値63~64歳、アジア人は含まれず、IMDCリスク分類はFavorable/Intermediate/Poorが18/66~67/16%、既治療ライン数は1/2Lが61~65/35~39%でありバランスがとれていた。PFS中央値はTiv+Niv群で5.7ヵ月、Tiv群で7.4ヵ月、HR:1.10(95%CI:0.84~1.43)、p=0.49であり、有意差を認めなかった。OS中央値は17.7ヵ月と22.1ヵ月、HR:1.00(95%CI:0.68~1.46)、p=0.9868であった。Tiv+Niv群とTiv群の有害事象(All grade)は、倦怠感で29%と40%、下痢で30%と36%、嘔気で16%と28%、甲状腺機能低下症で9%と15%であり、血管新生阻害薬の用量による有害事象がTiv群に多く発現していた。Tiv+Niv群に多かったのは、貧血(17%と9%)と掻痒症(16%と6%)であった。Choueiri氏は、TiNivo-2試験はアテゾリズマブ+カボザンチニブとカボザンチニブを比較したCONTACT-03試験と同様にNegativeな結果であったことから、2次治療がPD-1抗体であっても免疫チェックポイント阻害薬の継続使用は勧められない、と締めくくった。本試験の対象症例の詳細を確認すると、「1~2ライン以内に免疫チェックポイント阻害薬使用歴があり、前治療から6ヵ月以内の症例」が適格となっていた。日常診療では、再発リスクの高い限局性腎がん術後はペムブロリズマブで1年間術後治療を行うのが標準となっている。再発後の治療選択肢として、「免疫チェックポイント阻害薬を用いるべきかどうか」は重要な臨床疑問であったが、本試験とCONTACT-03試験の結果から、重要なのは免疫チェックポイント阻害薬ではなく血管新生阻害薬の単剤を十分量で用いることである、と結論付けてもよさそうである。Mini Oral Session#LBA68 転移性去勢感受性前立腺がんに対するダロルタミド+ADTはrPFSを延長 (ARANOTE試験)Efficacy and safety of darolutamide plus androgen-deprivation therapy (ADT) in patients with metastatic hormone-sensitive prostate cancer (mHSPC) from the phase III ARANOTE trial転移のある去勢感受性前立腺がん(mHSPC)の1次治療は、ARASENS試験においてドセタキセル(DTX)+アンドロゲン除去療法(ADT)と比較し、ダロルタミド(Daro)+DTX+ADTがOS延長を示したことから、日本でも承認され日常診療で使用されている。ESMO2024で発表されたARANOTE試験は、同じmHSPCを対象として行われた国際共同ランダム化比較第III相試験で、プラセボ+ADTとDaro+ADTを比較するデザインとなっている。主要評価項目は中央判定のrPFSであった。Daro+ADT群とプラセボ+ADT群に2:1にランダム化され、それぞれ446例と223例が登録され、アジア人(日本は含まれず、中国とインドが主体)は両群に約30%含まれていた。腫瘍量はHigh-volumeが約70%、de-novo転移の症例が71~75%であり、バランスのとれた患者背景であった。rPFS中央値は、Daro+ADT群で「到達せず」、プラセボ+ADT群で25.0ヵ月(HR:0.54、95%CI:0.41~0.71、p<0.0001)であった。サブグループ解析では、High-volume/Low-volumeでのHRはそれぞれ0.60(95%CI:0.44~0.80)/0.30(95%CI:0.15~0.60)であり、点推定値はLow volumeで小さい結果となった。有害事象は、明らかに併用療法で増強するものは認められなかった。これらの結果から、Saad氏は、DTXを使用しないDaro+ADTもmHSPCの標準治療の1つであると結論付けた。ARANOTE試験は日本が含まれなかった試験ではあるが、日本のダロルタミドの保険適用も変更されることを期待したい。とはいえ、High-volume症例にはDaro+DTX+ADTとすべきかDaro+ADTでよいのか、回答可能な臨床試験は行われておらず、日常診療には解決しない疑問が残っている。

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高リスク局所進行子宮頸がん、ペムブロリズマブ+同時化学放射線療法がOS改善/Lancet

 新規に診断された高リスクの局所進行子宮頸がん患者において、ペムブロリズマブ+同時化学放射線療法(CCRT)は、CCRT単独と比較して全生存期間(OS)を有意に延長したことが、「ENGOT-cx11/GOG-3047/KEYNOTE-A18試験」で明らかとなった。イタリア・Fondazione Policlinico Universitario A Gemelli IRCCS and Catholic University of Sacred HeartのDomenica Lorusso氏らENGOT-cx11/GOG-3047/KEYNOTE-A18 investigatorsが、第2回中間解析の結果を報告した。本試験の第1回中間解析では、ペムブロリズマブ+CCRTにより、無増悪生存期間(PFS)の統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善が示されていた。著者は、先の中間解析の結果も踏まえ、「本研究の結果は、この患者集団に対する新しい標準治療として免疫化学放射線療法を支持するものである」とまとめている。Lancet誌オンライン版2024年9月14日号掲載の報告。第2回中間解析は、OSを評価 本試験は、日本を含むアジア、オーストラリア、欧州、北米、南米の計30ヵ国176施設で実施されている無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験で、現在も進行中である。 研究グループは、18歳以上で新規に診断された高リスク(リンパ節転移陽性でFIGO 2014 StageIB2~IIB、またはリンパ節転移を問わずStageIII~IVA)の局所進行子宮頸がんで、前治療歴がなくECOG PSが0~1の患者を、ペムブロリズマブ+CCRT群(ペムブロリズマブ群)と、プラセボ+CCRT群(プラセボ群)に1対1の割合で無作為に割り付けた。 ペムブロリズマブは、1回200mgを3週間間隔で5サイクル投与した後、400mgを6週間間隔で15サイクル投与。CCRTは、シスプラチン(40mg/m2)を週1回5週(または6週)投与に加え、外照射と小線源療法を行った。ペムブロリズマブ、プラセボ、シスプラチンは静脈内投与した。 患者は無作為化時に、計画された外照射の種類(強度変調放射線治療[IMRT]/回転型強度変調放射線治療[VMAT]vs.非IMRT/非VMAT)、スクリーニング時の子宮頸がんの病期(リンパ節転移陽性のFIGO 2014 StageIB2~IIB vs.III~IVA)、計画された全放射線治療(外照射+小線源)の線量(70Gy未満vs.70Gy以上[2Gy換算等価線量])により層別化された。 主要評価項目は、治験責任医師の判定によるRECIST 1.1に基づくPFS、または病勢進行が疑われる場合の病理組織学的検査によるPFS、およびOSで、副次評価項目は安全性などであった。3年OS率は82.6% vs.74.8%で、ペムブロリズマブ併用の優越性を確認 2020年6月9日~2022年12月15日に、計1,060例がペムブロリズマブ群(529例)およびプラセボ群(531例)に割り付けられた。 プロトコールで規定された2回目の中間解析(データカットオフ日:2024年1月8日)の結果、追跡期間中央値29.9ヵ月(四分位範囲:23.3~34.3)において、死亡はペムブロリズマブ群で75例、プラセボ群で109例に認められた。OS中央値は両群とも未到達であり、36ヵ月OS率はペムブロリズマブ群で82.6%(95%信頼区間[CI]:78.4~86.1)、プラセボ群で74.8%(70.1~78.8)であった。死亡のハザード比は0.67(95%CI:0.50~0.90、片側のp=0.0040[有意水準:片側0.01026])であった。 ペムブロリズマブ群では528例中413例(78%)、プラセボ群では530例中371例(70%)にGrade3以上の有害事象が認められた。主なGrade3以上の有害事象は、貧血、白血球数減少、好中球数減少であった。免疫介在性有害事象は、ペムブロリズマブ群で528例中206例(39%)、プラセボ群で530例中90例(17%)に発現した。

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筋層浸潤性尿路上皮がん、術後ペムブロリズマブでDFS改善/NEJM

 膀胱全摘除術後の高リスク筋層浸潤性尿路上皮がんの治療において、経過観察と比較してPD-1阻害薬ペムブロリズマブによる補助療法は、無病生存期間(DFS)を有意に延長し、有害事象プロファイルは既報と一致し安全性に関する新たな懸念は認めないことが、米国国立がん研究所のAndrea B. Apolo氏らが実施した「AMBASSADOR試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2024年9月15日号に掲載された。米国の無作為化第III相試験 AMBASSADOR試験は、米国の246施設で実施した医師主導型の非盲検無作為化第III相試験であり、患者の登録を2017年9月に開始し、高リスク筋層浸潤性尿路上皮がん患者への術後ニボルマブ療法が米国食品医薬品局の承認を得た2021年8月に早期中止した(米国国立がん研究所などの助成を受けた)。 高リスク筋層浸潤性尿路上皮がんと診断され膀胱全摘除術を受けた患者702例(予定登録者数[734例]の96%)を登録し、術後補助療法としてペムブロリズマブ(200mg、3週ごと、静脈内投与)を1年間投与する群に354例(年齢中央値69歳、女性23.4%)、経過観察群に348例(68歳、27.3%)を無作為に割り付けた。 主要複合評価項目は、ITT集団におけるDFS(無作為化の日から病勢進行または全死因死亡の日までの期間)と全生存(無作為化の日から全死因死亡の日までの期間)とし、いずれかが経過観察群に比べ、ペムブロリズマブ群で有意に延長した場合に試験は成功と判定した。3年生存率には差がない DFSの追跡期間中央値は44.8ヵ月(ペムブロリズマブ群45.7ヵ月、経過観察群40.5ヵ月)であった。ITT集団におけるDFS中央値は、経過観察群が14.2ヵ月(95%信頼区間[CI]:11.0~20.2)であったのに対し、ペムブロリズマブ群は29.6ヵ月(20.0~40.7)と有意に延長した(病勢進行または死亡のハザード比[HR]:0.73、95%CI:0.59~0.90、両側のp=0.003)。 主な副次評価項目であるPD-L1陰性腫瘍を有する患者のDFS中央値は、ペムブロリズマブ群が17.3ヵ月、経過観察群は9.0ヵ月であり(HR:0.71、95%CI:0.53~0.95)、PD-L1陽性腫瘍を有する患者のDFS中央値はそれぞれ36.9ヵ月および21.0ヵ月であった(0.81、0.61~1.08)。 また、追跡期間中央値が両群とも36.9ヵ月の時点での2回目の中間解析では、ペムブロリズマブ群で131例、経過観察群で126例が死亡し、ITT集団における3年生存率はそれぞれ60.8%および61.9%だった(死亡のHR:0.98、95%CI:0.76~1.26)。治療関連有害事象は26.4%に 治療との関連性を問わないGrade3以上の有害事象は、ペムブロリズマブ群で50.6%、経過観察群で31.6%に発現した。 ペムブロリズマブ群では、87例(26.4%)に治療関連の有害事象を認め、頻度が高かった全グレードの有害事象は疲労(47.3%)、そう痒(22.4%)、下痢(20.6%)、甲状腺機能低下症(20.0%)であった。Grade5(死亡)の有害事象は5例(呼吸不全1例、多臓器不全1例、敗血症1例、原因不明2例)が報告された。 経過観察群では、報告された最も頻度が高かった全グレードの有害事象は、疲労(56.1%)、腹痛(33.1%)、末梢感覚神経障害(25.0%)、関節痛(24.7%)であった。Grade5の有害事象は15例だった。 著者は、「PD-L1の状態は予後予測因子であったが、無病生存に関する有益性を予測するものではなかったため、PD-L1をペムブロリズマブによる術後補助療法の患者選択に用いるべきではない」と述べている。なお、「死亡は、全生存の最終解析に必要な数の80%しか発生しておらず、2回目の中間解析で有効性の境界値を超えていないため、全生存期間データの最終解析は行っていない」という。

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高齢NSCLCへのICI、化学療法の併用を検討すべき集団は?(NEJ057)/ESMO2024

 75歳以上の進行・再発NSCLC患者を対象とした後ろ向きコホート研究(NEJ057)において、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)+化学療法はICI単剤と比較して、全生存期間(OS)と無増悪生存期間(PFS)を改善せず、Grade3以上の免疫関連有害事象の発現を増加させたことが報告されている1)。本研究の詳細な解析が実施され、PD-L1低発現(TPS 1~49%)かつ肺免疫予後指標(LIPI:Lung Immune Prognostic Index)が中間/不良の集団では、ICI+化学療法がICI単剤と比較してPFSとOSを改善したことが報告された。本庄 統氏(札幌南三条病院 呼吸器内科)が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2024)において本研究結果を発表した。・試験デザイン:多施設(58施設)後ろ向きコホート研究・対象:未治療の75歳以上の進行・再発NSCLC患者のうち、ICI+化学療法、ICI単剤、プラチナダブレット、単剤化学療法のいずれかで治療を開始した1,245例(初回治療に分子標的薬を使用した患者とEGFR遺伝子変異ALK融合遺伝子を有する患者は除外)・評価項目:OS、PFS、安全性など 今回は、ICI+化学療法またはICI単剤で治療を開始したPD-L1陽性(TPS≧1%)のNSCLC患者をPD-L1高発現(TPS≧50%)、PD-L1低発現(TPS 1~49%)に分けて解析した。また、対象患者をLIPI良好(好中球/リンパ球比[NLR]≦3かつLDHが基準値上限以下)、中間(NLR>3またはLDHが基準値上限超)、不良(NLR>3かつLDHが基準値上限超)に分類した。 今回報告された主な結果は以下のとおり。・解析対象患者(600例)の内訳は、PD-L1高発現61%(364例)、PD-L1低発現39%(236例)であり、LIPI良好40%(238例)、LIPI中間/不良60%(362例)であった。・PD-L1低発現かつLIPI中間/不良の集団において、OS中央値はICI+化学療法群18.3ヵ月、ICI単剤群8.6ヵ月であり、ICI+化学療法群がOSを改善した(ハザード比[HR]:0.56、95%信頼区間[CI]:0.36~0.86)。・PD-L1低発現かつLIPI中間/不良の集団において、PFS中央値はICI+化学療法群7.8ヵ月、ICI単剤群3.3ヵ月であり、ICI+化学療法群がPFSも改善した(HR:0.56、95%CI:0.39~0.81)。・PD-L1低発現かつLIPI良好の集団では、ICI+化学療法群のOS(HR:1.66、95%CI:0.82~3.36)、PFS(同:1.18、0.71~1.95)の改善は認められなかった。・PD-L1高発現の集団では、LIPIによるICI+化学療法群とICI単剤群のPFS、OSの違いはみられなかった。 本研究結果について、本庄氏らの研究グループは「高齢のNSCLC患者へのICI治療において、化学療法の併用のベネフィットが得られる患者の特定にLIPIが有用である可能性が示唆された」とまとめた。

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肛門扁平上皮がん1次治療、新規抗PD-1抗体上乗せが有用(POD1UM-30)/ESMO2024

 肛門管扁平上皮がん(SCAC)は、肛門がんの主要なリスク因子であるHPVウイルス感染の増加などを背景に、患者が増加傾向にある。新たな抗PD-1抗体であるretifanlimab単剤療法は、化学療法で進行したSCAC患者において抗腫瘍活性を示すことが報告されている1)。未治療の進行SCAC患者を対象に、retifanlimabの標準化学療法への追加投与を評価するPOD1UM-303試験が行われ、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2024)Presidential Symposiumで、英国・Royal Marsden HospitalのSheela Rao氏が初回解析結果を発表した。・試験デザイン:第III相二重盲検比較試験・対象:手術不適、化学療法未治療の局所再発/転移SCAC患者・試験群:retifanlimab 500mgを4週ごと(最長1年)+標準化学療法(カルボプラチン+パクリタキセル、6サイクル)・対照群(プラセボ群):プラセボ+標準化学療法、PD後のクロスオーバー可・評価項目:[主要評価項目]無増悪生存期間(PFS)[副次評価項目]全生存期間(OS)、奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、安全性など 主な結果は以下のとおり。・2020年11月~2023年7月に308例(試験群154例、プラセボ群154例)が登録された。年齢中央値は62(SD 29~86)歳、72%が女性、87%が白人、4%がHIV陽性、36%が肝転移あり、90%がPD-L1≧1だった。・PFS中央値は、試験群9.3ヵ月(95%信頼区間[CI]:7.5~11.3)に対し、プラセボ群は7.4ヵ月(95%CI:7.1~7.7)で、試験群が有意に良好な結果だった(ハザード比[HR]:0.63、95%CI:0.47~0.84、p=0.0006)。・OSは未成熟であるものの、試験群29.2ヵ月に対しプラセボ群23.0ヵ月と、試験群で改善傾向が認められた。クロスオーバー群のOSはプラセボ群とほぼ変わらない結果だった。・ORRは試験群55.8%に対してプラセボ群44.2%、DOR中央値は14.0ヵ月と7.2ヵ月だった。・Grade3以上の治療関連有害事象は試験群83.1%、プラセボ群75.0%に発生した。うちGrade5はそれぞれ2.6%(4例)、0.7%(1例)だった。Grade3以上で多かったものは好中球減少症(35.1%と29.6%)、貧血(19.5%と20.4%)などだった。 Rao氏は「本試験は転移SCACにおける最大規模のランダム化試験であり、標準化学療法に比べてretifanlimab併用の有効性を示した。安全性シグナルもこれまでの免疫チェックポイント阻害薬の併用療法と一致していた。retifanlimabと化学療法の併用は、進行SCAC患者の新たな標準治療となる可能性がある」とまとめた。 ディスカッサントを務めたドイツ・シャリテー病院のDominik P. Modest氏は「retifanlimab群におけるPFSのハザード比は非常に良好で、しかも早い段階から効果が出ているのが印象的な結果だ。一方、クロスオーバー群はretifanlimabのベネフィットを受けておらず、投与が遅いと効果が出ない可能性もある。本試験のOSや、ニボルマブの化学療法への上乗せ効果を検討したEA2176試験などの結果を見て、さらに検証する必要があるだろう」とした。 retifanlimabは米国・インサイトが開発したPD-1阻害薬で、米国では再発性局所進行メルケル細胞がんに対して承認されている。また、今回のPOD1UM-30試験には日本の施設も参加している。

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サシツズマブ ゴビテカン、トリプルネガティブ乳がんに承認/ギリアド

 ギリアド・サイエンシズは2024年9月24日、化学療法歴のある手術不能または再発のホルモン受容体陰性かつHER2陰性(トリプルネガティブ)乳がんの治療薬として、TROP-2を標的とする抗体薬物複合体(ADC)であるサシツズマブ ゴビテカン(商品名:トロデルビ)の日本における製造販売承認を取得したと発表した。 今回の承認は、2つ以上の化学療法歴のある手術不能または再発のトリプルネガティブ乳がん患者を対象にサシツズマブ ゴビテカンと医師選択治療の有効性と安全性を比較した海外での第III相臨床試験(ASCENT)と、2つ以上の化学療法歴のある手術不能または再発のトリプルネガティブ乳がん患者を対象にサシツズマブ ゴビテカンの有効性と安全性を評価した国内の第II相臨床試験(ASCENT-J02)の結果に基づくものである。 トリプルネガティブ乳がんは、転移・再発を起こしやすく、予後不良とされる。近年使用可能になった免疫チェックポイント阻害薬のほかに、新しい治療選択肢の登場が待たれていた。

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第233回 コロナワクチンとがん免疫治療患者の生存改善が関連/ESMO2024

コロナワクチンとがん免疫治療患者の生存改善が関連/ESMO2024がん患者は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を生じ易いことが知られます。幸い、がん患者の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチン接種の安全性はおおむね良好です。いまや可能な限り必要とされるがん患者のSARS-CoV-2ワクチン接種が、その本来のCOVID-19予防効果に加えて、なんとがん治療の効果向上という思わぬ恩恵ももたらしうることが、今月13~17日にスペインのバルセロナで開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2024)での報告で示唆されました1)。報告したのは米国屈指のがん研究所であるテキサス大学MDアンダーソンがんセンターのAdam J. Grippin氏です。Grippin氏らは今回の報告に先立ち、mRNAワクチンがその標的抗原はどうあれ、腫瘍のPD-L1発現を増やして抗PD-L1薬などの免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の効果を高めうることを、げっ歯類での検討で見出していました。そこでGrippin氏らはCOVID-19予防mRNAワクチンがPD-L1発現を促すことでICIが腫瘍により付け入りやすくなるのではないかと考え、StageIII/IVの進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者2,406例や転移黒色腫患者757例などの記録を使ってその仮説を検証しました。予想どおり、SARS-CoV-2 mRNAワクチン接種から100日以内のNSCLC患者の腫瘍では、PD-L1がより発現していました。また、5千例強(5,524例)の病理報告の検討でもSARS-CoV-2 mRNAワクチン接種とPD-L1を擁する腫瘍細胞の割合の55%上昇が関連しました。SARS-CoV-2 mRNAワクチンとICI治療効果の関連も予想どおりの結果となりました。ICIが投与されたNSCLC患者群のうち、その開始100日以内にSARS-CoV-2 mRNAワクチンを接種していた患者は、そうでない患者に比べて全生存期間(OS)がより長く(それぞれ1,120日と558日)、より多くが3年間を生きて迎えることができました(3年OS率はそれぞれ57.2%と30.7%)。一方、ICI非治療の患者の生存へのSARS-COV-2 mRNAワクチン接種の影響はありませんでした。黒色腫患者でも同様の結果が得られており、ICI治療開始100日以内のSARS-COV-2 mRNAワクチン接種はOS、無転移生存期間、無増悪生存期間の改善と関連しました。SARS-COV-2 mRNAワクチンはPD-L1発現亢進と黒色腫やNSCLC患者のICI治療後の生存改善と関連したとGrippin氏らは結論しています。Grippin氏らの研究はmRNAワクチンに的を絞ったものですが、昨年9月に中国のチームが報告した解析結果では、mRNA以外のSARS-CoV-2ワクチン接種とICI治療を受けたNSCLC患者の生存改善の関連が認められています2)。不活化ワクチン2種(BBIBP-CorVとCoronaVac)を主とするSARS-CoV-2ワクチンを接種してICI治療を受けたNSCLC患者は非接種群に比べてより長生きしました。中国からの別の2つの報告でもmRNA以外のSARS-CoV-2ワクチンのICIの効果を高める作用が示唆されています。それらの1つでは抗PD-1抗体camrelizumab治療患者2,048人が検討され、BBIBP-CorV接種と全奏効率(ORR)や病勢コントロール率(DCR)が高いことが関連しました3)。ただし年齢、性別、がんの病期や種類、合併症、全身状態指標(ECOG)を一致させたBBIBP-CorV接種群530例と非接種群530例のORRやDCRの比較では有意差はありませんでした。同じ研究者らによる翌年の別の報告では、抗PD-1薬で治療された上咽頭がん患者1,537例が調べられ、CoronaVac接種とORRやDCRの向上が関連しました4)。参考1)Association of SARS-COV-2 mRNA vaccines with tumor PD-L1 expression and clinical responses to immune checkpoint blockade / ESMO Congress 20242)Qian Y, et al. Infect Agent Cancer. 2023;18:50.3)Mei Q, et al. J Immunother Cancer. 2022;10:e004157.4)Hua YJ, et al. Ann Oncol. 2023;34:121-123.

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日本人の高リスクStage I NSCLCへの術前ニボルマブ(POTENTIAL)/ESMO2024

 Stage Iの非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対する免疫チェックポイント阻害薬の有用性に関するエビデンスは乏しい。そこで、再発リスクの高いStage IのNSCLC患者を対象として、ニボルマブ単剤による術前補助療法の有用性を検討する国内第II相試験「POTENTIAL試験」が実施された。津谷 康大氏(近畿大学医学部 外科学教室 呼吸器外科部門 主任教授)が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2024)において本試験の結果を発表した。・試験デザイン:多施設共同国内第II相試験・対象:再発リスクの高いStage I(充実型または充実成分径2~4cm)の日本人NSCLC患者52例(EGFR遺伝子変異、ALK融合遺伝子、ROS1融合遺伝子はいずれも陰性)・治療方法:ニボルマブ(240mg、2週ごと3サイクル)→肺葉切除+ND2a-1またはND2a-2郭清を術前補助療法最終投与日から10週以内に施行・評価項目:[主要評価項目]病理学的完全奏効(pCR)[副次評価項目]病理学的奏効(MPR)、画像判定による奏効率(ORR)、安全性など・解析計画:pCR率の90%信頼区間の下限値が10%を上回った場合に、主要評価項目を達成とした。 主な結果は以下のとおり。・対象患者の年齢中央値は71歳(範囲:53~82)、男性は78.8%(41例)であった。組織型は腺がん55.8%(29例)、扁平上皮がん42.3%(22例)、腺扁平上皮がん1.9%(1例)であり、T因子はT1bが15.4%(8例)、T1cが38.5%(20例)、T2aが46.2%(24例)であった。・52例全例が完全切除を達成した。・pCR率は23.1%(90%信頼区間[CI]:13.9~34.7)であり、主要評価項目を達成した。・MPR率は46.2%であった。・術前ニボルマブの画像判定によるORRは34.6%(CRは2例)であった。・追跡期間中央値33.7ヵ月時点において、3年無再発生存率は85.6%、3年全生存率は89.1%であった。・Grade3/4の治療関連有害事象は、13.5%(7例)に発現した。死亡に至った有害事象は1例に認められたが、治療との関連は否定された。 津谷氏は、本研究結果について「主要評価項目を達成し、新たな安全性に関するシグナルはみられなかった。再発リスクの高いStage IのNSCLC患者に対するニボルマブ単剤による術前補助療法の安全性と有効性が示された」とまとめた。

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遺伝性大腸癌診療ガイドライン 2024年版

日進月歩の診断モダリティーに対応した遺伝性大腸癌診療の決定版遺伝性大腸癌診療に有益な情報を提供してきた本ガイドライン。2024年版では診療のアルゴリズムを記載しCQの位置付けを明確化。家族性大腸腺腫症におけるIntensive downstaging polypectomyやデスモイド腫瘍の新分類、リンチ症候群における免疫チェックポイント阻害薬のコンパニオン診断、CGPからの診断の流れなど、日進月歩の診断モダリティーに対応したガイドラインとなった。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する遺伝性大腸癌診療ガイドライン 2024年版定価2,970円(税込)判型B5判頁数184頁(図数:27枚・カラー図数:9枚)発行2024年7月編集大腸癌研究会ご購入(電子版)はこちらご購入(電子版)はこちら紙の書籍の購入はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら紙の書籍の購入はこちら

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切除可能NSCLCへのニボルマブ、術前術後vs.術前(CheckMate 77T vs.816)/WCLC2024

 切除可能な非小細胞肺がん(NSCLC)の薬物療法について、術前および術後にニボルマブを用いた治療を受けた患者は、術前のみニボルマブを用いた治療を受けた患者と比較して、無イベント生存期間(EFS)が良好であることが示唆された。術前および術後にニボルマブを用いたCheckMate 77T試験、術前のみニボルマブを用いたCheckMate 816試験の個別被験者データ(IPD:Individual Patient-level Data)の解析により示された。米国・ジョンズ・ホプキンス大学Bloomberg-Kimmel Institute for Cancer ImmunotherapyのPatrick M. Forde氏が、2024年9月7~10日に米国・サンディエゴで開催された世界肺がん学会(WCLC2024)で本研究結果を発表した。 本研究は、CheckMate 77T試験(ニボルマブ+化学療法[3週ごと4サイクル]→手術→ニボルマブ[4週ごと1年間])またはCheckMate 816試験(ニボルマブ+化学療法[3週ごと3サイクル]→手術)に参加した患者のIPDを用いて実施した。評価項目は根治手術後のEFSとした。解析には傾向スコアマッチングの手法を用い、平均処置効果(ATE:Average Treatment Effect)の重み付け、治療群における平均処置効果(ATT:Average Treatment effect on the Treated)の重み付けを行った。 主な結果は以下のとおり。・CheckMate 77T試験に参加した139例(術前術後群)、CheckMate 816試験に参加した147例(術前群)が、今回の解析の対象となった。・根治手術後のEFSは、術前術後群が術前群と比較して良好であった。解析方法別のハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)は以下のとおり。 ATEの重み付け:0.61、0.39~0.97 ATTの重み付け:0.56、0.35~0.90 重み付けなし:0.59、0.38~0.92・根治手術後のEFSを病理学的完全奏効(pCR)の有無別にみると、いずれのサブグループでも術前術後群が良好な傾向にあったが、pCR未達成のサブグループでベネフィットが大きいことが示唆された。HRおよび95%CIは以下のとおり。 pCR達成:0.58、0.14~2.40 pCR未達成:0.65、0.40~1.06・根治手術後のEFSをPD-L1発現レベル別にみると、いずれのサブグループでも術前術後群が良好な傾向にあったが、PD-L1<1%のサブグループでベネフィットが大きいことが示唆された。HRおよび95%CIは以下のとおり。 PD-L1<1%:0.51、0.28~0.93 PD-L1≧1%:0.86、0.44~1.70・根治手術後のEFSをベースライン時のStage別にみると、全体集団と同様に術前術後群が良好な傾向がみられた。HRおよび95%CIは以下のとおり。 StageIB~II:0.53、0.25~1.11 StageIII:0.63、0.37~1.07・安全性は両群間で同様であった。Grade3~4の治療関連有害事象は術前術後群27%(38例)、術前群35%(52例)に発現し、中止に至った治療関連有害事象はそれぞれ6%(9例)、5%(8例)に発現した。

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ICI関連心筋炎の発見・治療・管理に腫瘍循環器医の協力を/腫瘍循環器学会

 頻度は低いが、発現すれば重篤な状態になりえる免疫チェックポイント阻害薬(ICI)による免疫関連有害事象としての心筋炎(irAE心筋炎)。大阪大学の吉波 哲大氏が第7回日本腫瘍循環器学会学術集会でirAE心筋炎における問題点を挙げ、腫瘍循環器医の協力を呼びかけた。致死率20%を超えるirAE心筋炎 ICIは今や固形がんの治療に必須の薬剤となった。一方、ICIの適用拡大と共に免疫関連有害事象(irAE)の発症リスクも増加する。心臓に関連するirAEは心筋炎、非炎症性左室機能不全、心外膜炎、伝導障害など多岐にわたる。その中でもirAE心筋炎は、発現すると一両日中に、心不全、コントロール困難な不整脈を併発し、致死的な状況に追い込まれることもある1)。 irAE心筋炎はICIにより活性化したT細胞が心筋に浸潤し、心筋を傷害するために起こるとされる。irAE心筋炎の発現は1%前後であるが2)、死亡率は20%を超え、通常の心筋炎をはるかに上回る3)。とくに女性(調整オッズ比[aOR]:0.44、95%信頼区間[CI]:0.38〜0.51、p<0.01)、75歳以上(aOR:0.19、95%CI:0.14〜0.28、p<0.01)、ICI同士の併用(aOR:1.93、95%CI:1.19〜3.12、p=0.08)ではリスクが高い2)。irAE心筋炎の頻度は低いものの、ICIの適応拡大とともに遭遇機会は増えていると考えられる。irAE心筋炎発現時期はICI開始後30日程度(日本のデータでは18〜28日、米国のデータでは中央値34日)と報告されている4、5)。定期モニタリングとステロイドによる治療が原則 わが国のOnco-CardiologyガイドラインではirAE心筋炎スクリーニングに、心電図、トロポニンT、NT-pro BNP、NLR(好中球・リンパ球比)、CRPのモニタリングが有効な可能性を挙げている(FRQ6-1)。吉波氏も、月1回程度行うICIの定期モニタリング時にトロポニンT、NT-pro BNPなどの検査(リスクがあれば心電図)をすべきと提案する。また、irAE心筋炎に対するステロイド治療については、使用すべき種類・投与経路・用量は定まっていないものの、有用な可能性があるとしている(BQ6-2)。irAE心筋炎を管理してICI治療を実施するために腫瘍循環器医の協力を ICIのがん治療に対する影響は大きく、もはや固形がんでは必須の薬剤だ。ペムブロリズマブは周術期化学療法に併用することでトリプルネガティブ乳がんの再発リスクを37%低下させ6)、アテゾリズマブは化学療法に併用することでStageIVもしくは再発非小細胞肺がんの12ヵ月無増悪生存割合を約2倍にする7)。 「治りたい、長生きしたい」という患者の希望を実現するために、腫瘍診療医はirAE心筋炎を危惧しながらもICIを使っている。「irAE心筋炎の発見・治療・管理にぜひとも腫瘍循環器医の協力をお願いしたい」と吉波氏は訴える。■参考1)三浦理. 新潟がんセンター病院医誌. 2024;62:45-48.2)Zamami Y, et al. JAMA Oncol. 2019;5:1635-1637.3)Wang DY, et al. JAMA Oncol. 2018;4:1721-1728.4)Mahmood SS, et al. J Am Coll Cardiol. 2018;71:1755-1764.5)Hasegawa S, et al. Pharmacoepidemiol Drug Saf. 2020;29:1279-1294.6)Schmid P, et al. N Engl J Med. 2022;386:556-567.7)Socinski MA, et al. N Engl J Med. 2018;378:2288-2301.

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Guardant360CDx、EGFR exon20挿入変異肺がんに対するamivantamab+化学療法のコンパニオン診断として承認/ガーダントヘルス

 ガーダントヘルスジャパンは2024年8月26日、リキッドバイオプシー検査Guardant360 CDx がん遺伝子パネル(Guardant360 CDx)について、Johnson&Johnson(法人名:ヤンセンファーマ)が申請中の「EGFR遺伝子エクソン20挿入変異を有する手術不能又は再発非小細胞肺癌(NSCLC)」に対するamivantamabと化学療法の併用療法に関するコンパニオン診断として承認を取得したと発表。 肺がんは世界において罹患率や死亡率が高いがんの1つであり、NSCLCは全肺がんの約80〜85%を占めている。日本を含む東アジアにおける実臨床データのレトロスペクティブ解析では、NSCLC患者から約2.4%のEGFR遺伝子エクソン20挿入変異がGuardant360 CDxによって検出されている。 Guardant360 CDxは、2022年3月に承認された進行固形がん患者を対象とする包括的がん遺伝子パネル検査である。74のがん関連遺伝子を一度に調べると同時に、国内で承認された複数のがん治療薬に対するコンパニオン診断機能を併せ持つ。 Guardant360 CDx は下記のコンパニオン診断として承認されている。・KRAS G12C:(非小細胞肺がん)ソトラシブ・HER2 変異:(非小細胞肺がん)トラスツズマブ デルクステカン・EGFRエクソン20挿入変異:(非小細胞肺がん)amivantamab・BRAF V600E変異:(結腸・直腸がん)エンコラフェニブ、ビニメチニブおよびセツキシマブ・BRAF V600E変異:(結腸・直腸がん)エンコラフェニブおよびセツキシマブ・HER2コピー数異常:(結腸・直腸がん)トラスツズマブおよびペルツズマブ・KRAS/NRAS野生型:(結腸・直腸がん)セツキシマブ、パニツムマブ・MSI-High:(結腸・直腸がん)ニボルマブ・MSI-High:(固形がん)ペムブロリズマブ■関連記事フェスゴ配合皮下注発売でHER2陽性乳がん・大腸がんへの投与時間短縮に期待/中外

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既治療の淡明細胞型腎細胞がん、belzutifan vs.エベロリムス(LITESPARK-005)/NEJM

 免疫チェックポイント阻害薬と血管新生阻害薬による治療歴のある進行淡明細胞型腎細胞がん患者の治療において、エベロリムスと比較して低酸素誘導因子2α阻害薬belzutifanは、無増悪生存率と客観的奏効率を有意に改善し、新たな安全性シグナルの発現はみられないことが、米国・ダナファーバーがん研究所のToni K. Choueiri氏らLITESPARK-005 Investigatorsが実施した「LITESPARK-005試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2024年8月22・29日号で報告された。世界147施設の無作為化実薬対照第III相試験 LITESPARK-005試験は、世界6地域(日本を含む)の147施設で実施した非盲検無作為化実薬対照第III相試験であり、2020年3月~2022年1月の期間に参加者の無作為化を行った(Merck Sharp and Dohmeの助成を受けた)。 年齢18歳以上、StageIVの淡明細胞型腎細胞がんと診断され、プログラム細胞死1(PD-1)阻害薬またはプログラム細胞死リガンド1(PD-L1)阻害薬と、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)受容体チロシンキナーゼ阻害薬(VEGFR-TKI)の逐次投与または同時併用投与を受けた後に、病勢が進行した患者を対象とした。 被験者を、belzutifan 120mgまたはエベロリムス10mgを1日1回、経口投与する群に1対1の割合で無作為に割り付け、病勢進行または許容できない毒性が発現するまで継続投与した。 主要評価項目は、無増悪生存期間と全生存期間とした。主な副次評価項目は、客観的奏効(確定された完全奏効または部分奏効)であった。18ヵ月時の生存率に差はない 746例を登録し、374例をbelzutifan群(年齢中央値62.0歳、男性79.4%)、372例をエベロリムス群(63.0歳、76.3%)に割り付けた。全体の43.3%が2ライン、42.8%が3ラインの前治療を受けていた。 初回中間解析(追跡期間中央値18.4ヵ月)の時点で、無増悪生存期間中央値は両群とも5.6ヵ月であり、18ヵ月時に生存しているか、病勢が進行していない患者の割合は、エベロリムス群が8.3%であったのに対し、belzutifan群は24.0%と有意に優れた(両側p=0.002[事前に規定された有意性の基準を満たす])。 2回目の中間解析(追跡期間中央値25.7ヵ月)の時点における全生存期間中央値は、belzutifan群が21.4ヵ月、エベロリムス群は18.1ヵ月であり、18ヵ月時の生存率はそれぞれ55.2%および50.6%と両群間に差を認めなかった(ハザード比[HR]:0.88、95%信頼区間[CI]:0.73~1.07、両側のp=0.20[事前に規定された有意性の基準を満たさない])。両群とも約6割でGrade3以上の有害事象が発現 客観的奏効率は、エベロリムス群が3.5%(95%CI:1.9~5.9)であったのに対し、belzutifan群は21.9%(17.8~26.5)と有意に優れた(p<0.001[事前に規定された有意性の基準を満たす])。 Grade3以上の有害事象は、belzutifan群の61.8%(Grade5は3.5%)、エベロリムス群の62.5%(5.3%)で発現した。投与中止の原因となった有害事象は、それぞれ5.9%および14.7%でみられた。 著者は、「本試験は、有効な治療メカニズムとして低酸素誘導因子2αの阻害を導入し、免疫チェックポイント阻害薬と血管新生阻害薬の両方の治療を受けた進行腎細胞がん患者の治療選択肢として、belzutifanを確立した」としている。現在、belzutifanを含む併用療法と他の治療法を比較する研究が進行中だという。

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自己免疫疾患を有するがん患者、ICIによるirAEリスクは?

 自己免疫疾患を有するがん患者では、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の投与によって免疫関連有害事象(irAE)が発現する割合は高いものの、これらは軽度で管理可能であり、がんへの反応性には影響がなかったことを、米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのMaria A. Lopez-Olivo氏らが明らかにした。European Journal of Cancer誌2024年8月号掲載の報告。 自己免疫疾患を有するがん患者は、ICIのランダム化比較試験から除外されていることが多い。そこで研究グループは、自己免疫疾患の既往があり、ICIを投与されたがん患者を含む観察試験と非対照試験のシステマティックレビューおよびメタ解析を実施し、新規イベントや自己免疫疾患の再燃を含むirAEの発現率、irAEによる入院・死亡などを調査した。 研究グループは、5つの電子データベースを2023年11月まで検索した。研究の選択、データ収集、質の評価は2人の研究者によって独立して行われた。 主な結果は以下のとおり。・解析には、95件の研究から、がんおよび自己免疫疾患の既往を有する2万3,897例が組み込まれた。がん種で多かったのは肺がん(30.7%)、皮膚がん(15.7%)であった。・自己免疫疾患のある患者は、自己免疫疾患のない患者と比較して、irAEの発現率が高かった(相対リスク:1.3、95%信頼区間[CI]:1.0~1.6)。・すべてのirAEの統合発現率(自己免疫疾患の再燃または新規イベント)は61%(95%CI:54~68)で、自己免疫疾患の再燃は36%(95%CI:30~43)、新規のirAE発現は23%(95%CI:16~30)であった。・自己免疫疾患が再燃した患者の半数はGrade3未満であり、乾癬/乾癬性関節炎(39%)、炎症性腸疾患(37%)、関節リウマチ(36%)の患者で多かった。・irAEが発現した患者の32%は入院を必要とし、irAEの治療として72%にコルチコステロイドが用いられた。irAEによる死亡率は0.07%であった。・自己免疫疾患のある患者とない患者の間で、ICIに対するがんの反応性に統計的な有意差は認められなかった。 研究グループは「これらの結果から、ICIは自己免疫疾患を有するがん患者にも使用可能であることが示唆されるが、患者の3分の1以上が自己免疫疾患の再燃を経験したり、入院を必要としたりするため、注意深いモニタリングが必要である。これらの知見は、がん専門医がモニタリングと管理の戦略を改善し、ICI治療の利点を最大化しつつリスクを最小化するための重要な基盤となるものである」とまとめた。

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