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ACC/AHAガイドラインの費用対効果を他ガイドラインと比較

 2013年改訂の米国心臓病学会/米国心臓協会(ACC/AHA)の脂質異常症管理ガイドラインでは、アテローム性心血管疾患の1次予防のためのスタチン使用の推奨が拡大されたが、その費用対効果について他のガイドラインとの比較はなされていない。今回、米国・マウントサイナイ医科大学のDavid J. Heller氏らが費用対効果を比較したところ、ACC/AHAガイドラインは、集団レベルでは男女共により多くの人々を治療し、より多くの命を救い、費用はATP IIIガイドラインより削減されると推計された。個人レベルではスタチンの長期使用から恩恵を受けるかどうかは、心血管リスクの程度よりも錠剤数の負担(pill burden)による負の効用(disutility)に大きく左右されるという。Circulation誌オンライン版2017年7月7日号に掲載。 本研究では、心血管疾患(CVD)Policy Modelを使用し、2016~25年の10年間で、ACC/AHAガイドラインを用いた場合の費用対効果について、現在の使用、Adult Treatment Panel III(ATP III)ガイドライン、45~74歳のすべての男性と55~74歳のすべての女性における中強度スタチンの使用と比較した。主要アウトカムは、増分費用効果比(ICER)および質調整生存年当たり10年間の治療必要数(NNT/QALY)とした。 主な結果は以下のとおり。・各々の方法は現状より大幅なベネフィットと正味の費用削減をもたらすと推定された。・ATP IIIガイドラインを完全に順守した場合、現状よりスタチン使用者が880万人多くなり、NNT/QALYは35である。・ACC/AHAガイドラインは、ATP IIIガイドラインよりもスタチン使用者が最大1,230万人多くなる可能性があり、限界NNT/QALYは68である。・45~74歳の男性と55~74歳の女性における中強度スタチン使用は、ACC/AHAガイドラインよりスタチン使用者が2,890万人多くなり、限界NNT/QALYは108である。・ベネフィットはすべての場合において女性より男性で大きい。・これらの結果はスタチン開始やスタチンの毒性に関するリスクの違いにより異なるが、日々の薬物使用(錠剤数の負担)による負の効用に大きく依存する。

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高力価スタチンで糖尿病発症リスク2.6倍

 脂質降下薬が糖尿病発症に関連するかどうか調べるために、日本大学薬学部の大場 延浩氏らが、脂質異常症の日本人労働者約7万例を対象とした後ろ向きコホート研究を実施した。その結果、糖尿病の臨床的危険因子の調整後も、スタチン使用により糖尿病発症リスクが1.9~2.6倍に増加したことが示された。BMJ open誌2017年6月30日号に掲載。 本研究は、大企業の日本人従業員とその扶養家族のうち、健康診断の臨床検査データから2005年1月1日~2011年3月31日に脂質異常症を発症した20~74歳が対象。脂質異常症の基準に当てはまった最初の日をindex dateと定義した。脂質降下薬を服用していた場合、またはindex date前6ヵ月間に糖尿病の診断や治療、糖尿病を示唆する検査結果(ヘモグロビンA1c≧6.5%もしくは空腹時血糖≧126mg/dL)が示されていた人は除外した。主要アウトカムは糖尿病の新規発症とした。 主な結果は以下のとおり。・脂質異常症6万8,620例が同定された。・平均追跡期間1.96年の間に、3,674例が脂質降下薬による治療を開始していた(低力価スタチン979例、高力価スタチン2,208例、フィブラート系薬487例)。・脂質降下薬の新規使用例3,674例のうち3,621例では、使用前にどの脂質降下薬も使用していない期間があった。・糖尿病の新規発症率は、スタチン非使用例の22.6例/1,000人年に対し、スタチン使用例では124.6例/1,000人年であった。・Cox比例ハザードモデルによる、交絡因子(健康診断での臨床データを含む)調整後のハザード比は、低力価スタチンで1.91(95%CI:1.38~2.64)、高力価スタチンで2.61(同:2.11~3.23)であった。

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CVDリスクを予測する最新QRISK3モデルを検証/BMJ

 心血管疾患(CVD)の10年リスクを予測するQRISK2に新規リスク因子を加えた新しいQRISK3リスク予測モデルが開発され、英国・ノッティンガム大学のJulia Hippisley-Cox氏らが検証結果を発表した。追加された臨床変数は、慢性腎臓病(CKD)、収縮期血圧(SBP)の変動性、片頭痛、ステロイド薬、全身性エリテマトーデス(SLE)、非定型抗精神病薬、重度の精神疾患および勃起障害で、これらを組み入れたQRISK3は、医師が心疾患や脳卒中のリスクを特定するのに役立つ可能性が示されたという。現在、英国のプライマリケアではQRISK2が広く活用されているが、QRISK2では完全には捉えられないリスク因子もあり、CVDリスクの過小評価につながる可能性が指摘されていた。BMJ誌2017年5月23日号掲載の報告。抽出コホート789万例、検証コホート267万例のデータから新モデルを作成・検証 研究グループは、英国のQResearchデータベースに参加している一般診療所1,309施設を、抽出コホート(981施設)と検証コホート(328施設)に無作為に割り付け、抽出コホートにおける25~84歳の患者789万例と、検証コホートの同267万例のデータを解析した。ベースラインでCVDがあり、スタチンが処方されている患者は除外された。 抽出コホートでは、Cox比例ハザードモデルを用い、男女別にリスク因子を検討し、10年リスク予測モデルを作成した。検討したリスク因子は、QRISK2ですでに含まれている因子(年齢、人種、貧困、SBP、BMI、総コレステロール/HDLコレステロール比、喫煙、冠動脈疾患の家族歴[60歳未満の1親等の親族]、1型糖尿病、2型糖尿病、治療中の高血圧、関節リウマチ、心房細動およびCKD[ステージ4、5])と、新規のリスク因子(CKD[ステージ3、4、5]、SBPの変動性[反復測定の標準偏差]、片頭痛、ステロイド薬、SLE、非定型抗精神病薬、重度の精神疾患およびHIV/AIDS、男性の勃起障害の診断または治療)であった。 検証コホートでは、男女別に、年齢、人種およびベースライン時の疾患の状態によるサブグループで適合度と予測能を評価した。評価項目は、一般診療、死亡および入院の3つのデータベースに記録されたCVD発症とした。最新QRISK3モデル、心血管疾患のリスク評価に有用 抽出コホートの5,080万観察人年において、36万3,565件のCVD発症例が特定された。 検討された新規リスク因子は、統計学的に有意なリスクの増大が示されなかったHIV/AIDSを除き、すべてモデルへの組み入れ基準を満たした。 新規リスク因子を追加したQRISK3モデルの測定能は良好で、また高い予測能を示した。QRISK3モデルのアルゴリズムにおいて、女性では、CVD診断までの時間のばらつきを示すR2値(高値ほどばらつきが大きいことを指す)は59.6%で、D統計量は2.48、C統計量は0.88であった(どちらも数値が高いほど予測能がよいことを表す)。また、男性ではそれぞれ、54.8%、2.26および0.86であった。全体としてQRISK3モデルのアルゴリズムの性能は、QRISK2と同等であった。

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高齢者にスタチンの1次予防効果はあるか~ALLHAT-LLT事後解析

 心血管疾患の1次予防としてスタチン治療が心血管疾患発症を減少させることが示唆されているが、全死亡率については知見が一致していない。また、75歳以上の高齢者に1次予防でのスタチン使用に関するエビデンスはほとんどない。今回、ALLHAT-LLTの事後解析の結果、中等症の高脂血症と高血圧症を有する高齢者での心血管疾患の1次予防として、プラバスタチンのベネフィットは認められず、また75歳以上では、有意ではないがプラバスタチン群で全死亡率が高い傾向があったことが報告された。JAMA internal medicine誌オンライン版2017年5月22日号に掲載。 本研究は、ALLHAT-LLT(Antihypertensive and Lipid-Lowering Treatment to Prevent Heart Attack Trial)のLipid-Lowering Trial(LLT)における、65~74歳と75歳以上に対する心血管疾患の1次予防のためのスタチン使用に関する研究で、アテローム性冠動脈疾患を有さなかった65歳以上の参加者について事後解析を実施した。ベースライン時にアテローム性冠動脈疾患を有さない高血圧症の外来患者2,867例について、プラバスタチン(40mg/日)群と通常治療群に分けて比較した。なお、ALLHAT-LLTは1994年2月~2002年3月に513施設で実施された。ALLHAT-LLTの主要アウトカムは全死亡率、副次アウトカムは原因別死亡率、非致死性心筋梗塞と致死的冠動脈疾患の複合(冠動脈疾患イベント)であった。 主な結果は以下のとおり。・プラバスタチン群は1,467例で、平均年齢(SD)は71.3(5.2)歳、女性が704例(48.0%)、通常治療群は1,400例で平均年齢は71.2(5.2)歳、女性が711例(50.8%)であった。・ベースライン時の平均LDLコレステロール値(SD)は、プラバスタチン群では147.7(19.8)mg/dL、通常治療群で147.6(19.4)mg/dLであり、6年後はプラバスタチン群で109.1(35.4)mg/dL、通常治療群で128.8(27.5)mg/dLであった。・6年後、プラバスタチン群で253例中42例(16.6%)が、また通常治療群で71.0%がどのスタチンも服用していなかった。・通常治療群に対するプラバスタチン群の全死亡のハザード比は、全体(65歳以上)で1.18(95%CI:0.97~1.42、p=0.09)、65~74歳で1.08(同:0.85~1.37、p=0.55)、75歳以上で1.34(同:0.98~1.84、p=0.07)であった。・冠動脈疾患の発症率については2群間で有意差はなかった。多変量回帰分析でも有意ではなく、治療群と年齢との間に有意な交互作用はなかった。

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スタチンによる筋肉痛はnocebo effect?(解説:興梠 貴英 氏)-682

 スタチンに限らず、副作用が出現しうることを知らされたために患者がその副作用ではないかと訴えることは日常よく経験するところである。この現象は古くから知られており、nocebo effectと名付けられているそうである。 さて、本論文はASCOT-LLAの二重盲検期間中とオープンラベル期間中の副作用報告率を比較して本当にnocebo effectがあったのかを調べたものである。 ASCOT-LLA試験の背景を解説すると、最初にASCOT-BPLAという2つの降圧薬レジメン(アテノロール+サイアザイド vs.アムロジピン+ペリンドプリル)間で心血管系イベント発生に違いがあるかを評価した試験が計画された。さらに、その被験者群の中で心血管系リスクは高いが血清LDL-コレステロールが高くない(6.5mmol/L以下)患者に対してスタチンの投与が心血管系イベントを抑制するかを評価する試験ASCOT-LLAが計画された。ASCOT-BPLAがPROBEデザインであったのに対して、ASCOT-LLAにおけるアトルバスタチンおよびプラセボ服用については二重盲検であった。結局、ASCOT-BPLA全体の1万9,342人中、基準を満たした1万0,305人がASCOT-LLAに割り当てられた(アトルバスタチン群5,168人、プラセボ群5,137人)。さらにASCOT-LLAではアトルバスタチン投与群において早期に有意に心血管系イベントを抑制することが示されたために、追跡期間中央値3.3年で早期終了となったのに対して、ASCOT-BPLAは計画よりは早まったものの追跡期間中央値5.5年まで継続した。この差の期間中はアトルバスタチンの服用がオープンラベルになり、本論文の解析の元データとなった。 データを解析した結果、二重盲検期間中のプラセボ、アトルバスタチンの筋肉関連副作用報告率はそれぞれ2.00%、2.03%とほぼ同じで有意差がなかったのに対し、オープンラベル期間ではアトルバスタチン非服用者で1.00%、アトルバスタチン服用者で1.26%で有意差がつく、という差が認められた。つまり、nocebo effectがあり、スタチンは実際には筋肉関連の副作用をあまり増やさないのではないか、ということが示された。一方でランダム割付試験における副作用報告は患者選択によって低く出る傾向がある、もしくは導入期間を設けることで不耐性の患者が最初から取り除かれている、という批判がされることがあるが、本論文では盲検期間とオープンラベル期間は同じ患者群であり、導入期間も設けられていないため、そうした批判は当たらない。ほかに勃起障害、不眠、認知機能に関する副作用の検討も行っているが、それらについてもアトルバスタチンによる悪影響を認めない、という結果であった。 本論文の結果はスタチンによる筋肉関連副作用はその多くがnocebo effectによるものかもしれないということを客観的に示した点で興味深いが、ASCOTがAnglo-Scandinavian Cardiac Outcomes Trialの頭文字から成り立っていることから分かるように、これが日本人にも当てはまるかどうかは確実なことは言えず、またわが国では患者が筋肉関連の副作用を訴えたときにはCPKを測定して実際の筋肉障害の有無も確認しつつ中止するかどうかを決めることになるのではないだろうか。本論文でもCPKに関する報告があればより興味深い結果が得られたかもしれない。

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スタチンのノセボ効果が明らかに/Lancet

 スタチン治療の有害事象について、いわゆる「ノセボ効果」が認められることが明らかにされた。英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのAjay Gupta氏らが、ASCOT-脂質低下療法(LLA)試験の二重盲検試験期と非盲検延長試験期の有害事象について解析した結果、盲検下ではみられなかったが非盲検下において、すなわち患者も医師もスタチン療法が実施されていると認識している場合にのみ、筋肉関連有害事象が過剰に報告されたという。これまで、無作為化二重盲検比較試験ではスタチン療法と有害事象との関連は示唆されていなかったが、観察研究では盲検試験に比べてさまざまな有害事象の増加が報告されていた。Lancet誌オンライン版2017年5月2日号掲載の報告。二重盲検試験期と非盲検延長試験期で、有害事象の発現を比較 研究グループは、ASCOT-降圧療法(BPLA)試験の対象者(40~79歳で、3つ以上の心血管危険因子を有し、心筋梗塞の既往歴がなく、狭心症未治療の高血圧患者)で、空腹時総コレステロール値6.5mmol/L以下、スタチンまたはフィブラート未使用者をASCOT-LLA試験に登録し、アトルバスタチン(10mg/日)群またはプラセボ群に無作為に割り付けた(二重盲検試験期)。アトルバスタチンの有効性が確認されたためASCOT-LLA試験は早期中止となり、その後はASCOT-BPLA試験が終了するまでアトルバスタチン(10mg/日)を非無作為化非盲検下で投与する延長試験を行った(非盲検延長試験期)。 有害事象はMedDRAを用いて分類し、事前に特定された注目すべき有害事象とされる筋肉関連、勃起障害、睡眠障害および認知障害の4つの有害事象について、全報告を評価者盲検下で判定するとともに、それ以外の有害事象を器官別大分類(SOC)にて解析した。有害事象発現率は、1年当たりの割合(%)として表示した。非盲検延長試験期で筋肉関連有害事象の発現が増加 二重盲検試験期は1998年2月~2002年12月で、解析対象は1万180例(アトルバスタチン群5,101例、プラセボ群5,079例)、追跡期間中央値は3.3年(IQR:2.7~3.7)、非盲検延長試験期は2002年12月~2005年6月で、解析対象は9,899例(アトルバスタチン使用者6,409例:65%、未使用者3,490例:35%)、追跡期間中央値は2.3年(IQR:2.2~2.4)であった。 二重盲検試験期では、アトルバスタチン群とプラセボ群とで筋肉関連有害事象(2.03% vs.2.00%、ハザード比[HR]:1.03、95%信頼区間[CI]:0.88~1.21、p=0.72)と、勃起障害(1.86% vs.2.14%、HR:0.88、95%CI:0.75~1.04、p=0.13)の発現率は同程度であったが、睡眠障害はアトルバスタチン群が有意に低かった(1.00% vs.1.46%、HR:0.69、95%CI:0.56~0.85、p=0.0005)。認知障害は発現例が少なく検出力不足であった(0.20% vs.0.22%、HR:0.94、95%CI:0.57~1.54、p=0.81)。同試験期で、有意差が認められたのは、腎および尿路障害(1.87% vs.1.51%、HR:1.23、95%CI:1.08~1.41、p=0.002)で、アトルバスタチン群で有意に高頻度であった。 一方、非盲検延長試験期では、スタチン使用者においてスタチン未使用者より筋肉関連有害事象の発現率が有意に増大した(1.26% vs.1.00%、HR:1.41、95%CI:1.10~1.79、p=0.006)。同様に、筋骨格系および結合組織障害(8.69% vs.7.45%、HR:1.17、95%CI:1.06~1.29、p=0.001)、また血液およびリンパ系障害(0.88% vs.0.64%、HR:1.40、95%CI:1.04~1.88、p=0.03)もスタチン使用者で多く、それ以外は両者で有意差は確認されなかった。 著者は、「今回の結果は、患者と医師の両方に対して、スタチンに関連するほとんどの有害事象は薬剤を服用したことによるものではないことを保証するものであり、スタチンの副作用を誇張する主張が公衆衛生に及ぼす有害な影響に対処する一助にすべきである」と述べている。

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冠動脈疾患発症および死亡の転帰に影響する独立危険因子としての体重変動(連続体重測定)の意義(解説:島田 俊夫 氏)-675

 過体重、肥満がさまざまな病気の危険因子になることはよく知られた事実である。しかし、その一方で肥満パラドックス1)に関する報告もあり、肥満が病気の発症、死亡に対して保護的に働く可能性を示唆する論文も散見されるが、最近では選択バイアスと交絡因子とで説明可能であるとの考えが主流である。また、健常人では体重変動が独立した心血管疾患危険因子になることはすでに報告されているが、これまでの対象とは異なり本研究においては心血管疾患を有し、LDLコレステロールが130mg/dL未満の患者を対象にしたTNT試験2,3)の事後解析に基づく臨床研究の成果として、NEJM誌2017年4月6日号に掲載された米国・ニューヨーク大学医学部Sripal Bangalore氏らの論文を取りあげコメントする。方法:アトルバスタチンを使った低比重リポタンパク(LDL)コレステロール低下の有効性と安全性を評価する新規標的治療(TNT)試験の事後解析が行われた。ベースライン時と追跡調査時に測定された体重から、個人内変動を計算した。主要エンドポイントは、全冠動脈イベント(冠動脈心疾患による死亡、非致死的心筋梗塞、心停止からの蘇生、血行再建、狭心症の複合)とし、副次的エンドポイントは、全心血管イベント(全冠動脈イベント、脳血管イベント、末梢血管疾患、心不全の複合)、死亡、心筋梗塞、脳卒中とした。結果:9,509例を対象として、危険因子、ベースライン脂質値、平均体重、体重変化で補正すると、体重変動(連続した変動測定値の平均とし、時間依存性の共変量として用いた)が1標準偏差(SD)増加するごとに、全冠動脈イベント(2,091件、ハザード比[HR]:1.04、95%信頼区間[CI]:1.01~1.07、p=0.01)、全心血管イベント(2,727件、HR:1.04、95%CI:1.02~1.07、p<0.001)、死亡(487件、HR:1.09、95%CI:1.07~1.12、p<0.001)のリスク上昇に関係していた。調整後モデルでは、体重変動の最高五分位群は、最低五分位群と比較して、冠動脈イベントのリスクが64%、心血管イベントのリスクが85%、死亡リスクが124%増加し、心筋梗塞リスクも117%、脳卒中リスクも136%、新規糖尿病リスクも78%、有意に増加した。コメント:本研究は冠動脈疾患を有する患者においても、これまでの危険因子と独立して、体重変動が大きくなると死亡率および心血管疾患イベントの発生率がさらに増加することを明らかにした。心血管疾患を有する場合にベースラインからの体重変動に大きな影響を与える恐れのある心不全に起因する体液貯留が体重変動にどれほど関与しているか気になるところであるが、今回の解析対象からNYHA class IIIおよびIVの心不全症例が前もって除外されているために体液貯留の関与は無視できると考えられた。体重変動をこれまでの冠動脈疾患や死亡の危険因子とは独立したリスクファクターとして受け止め、日常の体重測定の持つ意義を真摯に受け入れ、日々の体重測定を欠かさないよう生活の中での自己健康管理法の重点測定項目として心がけることが重要である。この論文は体重継続測定の臨床意義に新しい見方を加えた意義深い論文とみることもできるのではないか。参考文献1)Uretsky S, et al. Am J Med. 2007;120:863-70.2)LaRosa JC, et al. Am J Cardiol. 2007;100:747-52.3)Waters DD, et al. Am J Cardiol. 2004;93:154-158.

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製薬メーカーから弁当をもらうと処方が増える【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第90回

製薬メーカーから弁当をもらうと処方が増える ぱくたそより使用 医師であれば、誰しも一度は製薬会社から弁当をもらったことがあるでしょう。「弁当配るんでウチの薬よろしくデース」という、ただそれだけのものです。え? 私はそんな経験、一度もない? それは、確固たるポリシーをお持ちの方なのでしょうね、エラい! 製薬会社からの弁当についてはいろいろな意見があると思いますが、このコーナーではそんな堅苦しい話を論じるつもりはありません。2016年、JAMA Internal Medicine誌で話題になった論文がありました。どのウェブサイトでもあまり取り上げられていないのでここで紹介しましょう。 DeJong C, et al.Pharmaceutical Industry-Sponsored Meals and Physician Prescribing Patterns for Medicare Beneficiaries.JAMA Intern Med. 2016;176:1114-10.この論文は、製薬会社から弁当をもらったら処方が増えるかどうか調べた横断研究です。いろいろな意味でオソロシイ研究だ…。調査の対象となった薬剤はロスバスタチン(商品名クレストール)、ネビボロール(商品名ネビスター、日本未承認)、オルメサルタン(商品名オルメテック)、デスベンラファキシン(商品名プリスティーク、日本未承認)です。これら4剤を宣伝した製薬会社の弁当を食べた医師を明らかにし、その処方動向を調べました。アウトカムは、宣伝された薬剤と同クラスの代替薬との処方率の差です。28万人近い医師が4剤合計で6万件の食事提供を受けていました。平均的な値段は20ドル以下だそうで、そこまで高価な弁当というわけではなさそうです。私も弁当の相場なんてほとんど知りませんが…。さて、弁当提供回数が1回の場合、ほかの同クラスの薬剤と比較して4剤の処方頻度が高くなったそうです(ロスバスタチン=オッズ比[OR]:1.18、95%信頼区間[CI]:1.17~1.18、ネビボロール=OR:1.70、95%Cl :1.69~1.72、オルメサルタン=OR:1.52、95%Cl :1.51~1.53、デスベンラファキシン=OR:2.18、95%Cl :2.13~2.23)。弁当提供回数が増えたり、弁当の値段が20ドルを超えたりすると、さらに処方率が高くなったそうです。弁当回数依存性・金額依存性アリということです。「なんともケシカラン結果だ!」という声が聞こえてきそうですが、ごにょごにょと口ごもってしまう医師も多そうですね。結論としては、「製薬会社からの弁当によって処方が増加するという関連性はあるが、因果関係があるかどうかはわからない」と書かれています。うーむ、横断研究だから確かにそうだけど…。ちなみに、弁当を食べた医師の半数以上が医師免許を取ってから20年以上経ったベテランドクターです。インデックスページへ戻る

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循環器内科 米国臨床留学記 第20回

第20回 米国の電子カルテ事情日本でも電子カルテが一般的になっていますが、米国では電子カルテのことをElectrical Medical Record (EMR)と言います。今回は、米国におけるEMR事情について書いてみたいと思います。米国のEMRの特徴の1つとして、どこからでもアクセスできるというのが挙げられます。「今日は疲れたから、残りのカルテは家で書きます」といった感じで、インターネットで世界中のどこからでも電子カルテにアクセスできます。実際、私も帰国時に日本から米国の患者に処方したり、カルテをフォローしたりすることがあります。日本でも電子カルテが登場して久しいですが、インターネットを介して患者のカルテにアクセスするのはまだ一般的でないかもしれません。Medscapeのリポートによると、2016年の段階で91%の医師が電子カルテを使用しており、これは2012年の74%から比べても大幅な増加です。その中でも、41%と圧倒的なシェアを誇るのがEPICというシステムです。ほかのEMRと比べても、EPICはuser friendlyで使いやすく、日常臨床を強力にサポートしてくれます。私のいるカリフォルニア大学アーバイン校では、現在はEPICと異なるシステムを使っていますが、評判が悪いため、来年EPICに移行します。乱立していたEMRの会社も徐々に淘汰され、数社に絞られてきているようです。また、同じEMRシステムを使うと、異なる病院間でも情報が共有できるといったサービスもあります。以前いたオハイオ州のシンシナティーという町にはEPIC everywhereというシステムがあり、EPICを使っているシンシナティー市内すべての病院の情報が共有されていました。ほかの病院の情報に簡単にアクセスできると、無駄な検査を減らすことができます。EMRは、入院時に必要なオーダーを入れないとオーダーを完了できないシステムになっています。例えば、深部静脈血栓症(DVT)予防は、入院時に必須のオーダーセットに入っているため、オーダーせずに患者を入院させようとすると、ブロックサインが現れ、入院させることが難しくなっています。このようなシステムは日本の電子カルテにもあると思います。また、代表的なEMRのシステムには、ガイドラインに準じたクリニカルパスが組み込まれています。 主なものとしては、敗血症ショックセット、糖尿病ケトアシドーシス(DKA)セット、急性冠動脈症候群(ACS)セットなどが挙げられます。例えばACSで入院すると、ヘパリン、アスピリン、クロピドグレル、スタチン、β遮断薬をクリック1つで選択するだけですから、確かに処方し忘れなどは減ります。オーダーセットは非常に楽ですし、DKAなどは勝手に治療が進んでいき、うまくいけば入院時のワンオーダーで、ほぼ退院まで辿り着けるかもしれません。しかしながら、一方で医者が状況に応じて考えなければいけないことが減り、時には危険なことも起こります。患者の状態は、1人ずつ異なりますから、tailor madeな治療が必要になります。実際、DKAで入院した患者がDKAオーダーセットによる多量の生理食塩水で心不全を起こすというようなことは、何度も見てきました。このほか、EMRで問題となっているのは、いわゆる“copy and paste”です。デフォルトのカルテでは、正常の身体所見が自動的に表示されます。注意を怠ると、重度の弁膜症患者にもかかわらず「雑音がない」とか、心房細動なのに脈拍が“regular”などといった不適切な記載となります。実際に、このようなことはしょっちゅう見受けられます。他人のカルテをコピーすることも日常茶飯事なので、4日前に投与が終わったはずの抗生剤が、カルテの記載でいつまでも続いているということもあります。Medscapeの調査でも66%の医者が“copy and paste”を日常的に(時々から常に)使用しているとのことでした。外来でのEMRは、Review of System、服薬の情報、予防接種(インフルエンザ、肺炎球菌)、スクリーニング(大腸ファイバーなど)などをすべて入力しなければ、カルテを終了(診察を終了)できなくなっています。こうした項目を入力しないと医療点数(診療費)に関わってくるからです。その結果、EMRに追われてしまい、患者を見ないでひたすらコンピューターの画面を見て診療しているような状況に陥りがちです。こうなると、自分がEMRを操作しているのか、EMRに操作されているのかわからなくなります。いろいろな問題がありますが、EMRは日々進歩している印象があります。使い勝手は良いのですが、最終的には医者自身が頭を使わければ患者に不利益が被ることもあるため、注意が必要です。

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1次予防のスタチン対象、ガイドラインによる差を比較/JAMA

 スタチンによる動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)の1次予防が推奨される患者は、米国心臓病学会(ACC)/米国心臓協会(AHA)ガイドライン2013年版よりも、米国予防医療サービス対策委員会(USPSTF)の2016年版勧告を順守するほうが少なくなることが、米国・デューク大学のNeha J. Pagidipati氏らの検討で示された。ACC/AHAガイドラインで対象だが、USPSTF勧告では対象外となる集団の約半数は、比較的若年で高度の心血管疾患(CVD)リスクが長期に及ぶ者であることもわかった。研究の成果は、JAMA誌2017年4月18日号に掲載された。1次予防におけるスタチンの使用は、ガイドラインによって大きな差があることが知られている。USPSTFによる2016年の新勧告は、1つ以上のCVDリスク因子を有し、10年間CVDリスク≧10%の患者へのスタチンの使用を重視している。年齢40~75歳の3,416例で2つの適格基準を比較 研究グループは、米国の成人におけるASCVDの1次予防でのスタチン治療の適格基準に関して、USPSTFの2016年勧告とACC/AHAの2013年ガイドラインの比較を行った(デューク臨床研究所の助成による)。 2009~14年の米国国民健康栄養調査(NHANES)から、年齢40~75歳、総コレステロール(TC)値、LDL-C値、HDL-C値、収縮期血圧値のデータが入手可能で、トリグリセライド値≦400mg/dL、CVD(症候性の冠動脈疾患または虚血性脳卒中)の既往歴のない3,416例のデータを収集し、解析を行った。USPSTF勧告で15.8%、ACC/AHAガイドラインで24.3%増加 対象の年齢中央値は53歳(IQR:46~61)、53%が女性であった。21.5%(747例)が脂質低下薬の投与を受けていた。 USPSTF勧告を完全に当てはめると、スタチン治療を受ける集団が15.8%(95%信頼区間[CI]:14.0~17.5)増加した。これに対し、ACC/AHAガイドラインを完全に適用すると、スタチン治療の対象者は24.3%(22.3~26.3)増加した。 8.9%(95%CI:7.7~10.2)が、ACC/AHAガイドラインではスタチン治療が推奨されるが、USPSTF勧告では推奨されなかった。このうち55%が年齢40~59歳であった。この集団は、CVDの10年リスクの平均値は7.0%(6.5~7.5)と相対的に低かったが、30年リスクの平均値は34.6%(32.7~36.5)と高く、28%が糖尿病であった。

351.

眼圧と心血管薬の使用、関連せず

 眼圧は、血圧やほかの心血管リスク因子と関連していることがよく知られている。眼圧に対する全身性の心血管薬、とくに降圧薬の影響はいまだ論争の的であるが、非緑内障者では眼圧と心血管薬(とくにβ遮断薬)との間に関連はないことを、ドイツ・マインツ大学のRene Hohn氏らが、コホート研究にて明らかにした。著者は、「局所および全身性β遮断薬の長期のドリフト現象(drift phenomenon)が、この結果を説明するかもしれない」とまとめている。British Journal of Ophthalmology誌オンライン版2017年4月12日号掲載の報告。 研究グループは、ドイツ中西部の住民1万3,527例を対象とした前向き観察コホート研究(グーテンベルク健康研究)において、全身性の心血管薬の使用と眼圧との関連について検討した。 眼圧は、非接触圧平眼圧計で測定された。調査した薬剤の種類は、末梢血管拡張薬、利尿薬、β遮断薬、カルシウム拮抗薬、レニン・アンジオテンシン系阻害薬、硝酸薬、ほかの降圧薬、アスピリンおよびスタチンである。薬剤の使用と眼圧との関連について、多変量線形回帰分析を用いて解析した(p<0.0038)。なお、眼圧欠測例、眼圧低下点眼薬使用歴または眼手術既往歴のある参加者は解析から除外された。 主な結果は以下のとおり。・選択的β遮断薬も非選択的β遮断薬も、眼圧低下との間に統計学的に有意な関連は認められなかった(それぞれ、−0.12mmHg、p=0.054および−0.70mmHg、p=0.037)。・BMI、収縮期血圧および中心角膜厚を調整後、ACE阻害薬の使用と眼圧は関連しなかった(0.11mmHg、p=0.07)。

352.

スタチンで糖尿病患者の下肢切断リスクが低下

 主要な心血管イベントに対するスタチンの効果を裏付けるエビデンスはあるが、四肢のアウトカムにおける保護効果をみた研究はほとんどない。今回、台湾・国立陽明大学のChien-Yi Hsu氏らの観察コホート研究により、末梢動脈疾患(PAD)を有する2型糖尿病(DM)患者において、スタチン使用者では非使用者に比べて、下肢切断および心血管死のリスクが低いことがわかった。The Journal of clinical endocrinology and metabolism誌オンライン版2017年4月7日号に掲載。 本研究では、2000~11年までの台湾における全国DMデータベースを用い、DMとPADを有する20歳以上の患者6万9,332例を同定した。これらの患者を、スタチン使用者(1万1,409例)、スタチン以外の脂質低下薬使用者(4,430例)、非使用者(5万3,493例)の3群に分けた。主要アウトカムは下肢切断、副次的アウトカムは院内での心臓血管死および全死因死亡であった。 主な結果は以下のとおり。・スタチン使用者は非使用者に比べ、下肢切断率の低下(調整ハザード比[aHR]:0.75、95%CI:0.62~0.90)、院内心血管死亡の低下(aHR:0.78、95%CI:0.69~0.87)、全死因死亡の低下(aHR:0.73、95%CI:0.67~0.77)と関連していた。・傾向スコアマッチングによる分析において、下肢切断リスクに対するスタチンの効果は一致していた。・死亡の競合リスクを考慮した場合、スタチン使用者のみ、下肢切断リスクの低下(HR:0.77、95%CI:0.61~0.97)および心血管死の低下(HR:0.78、95%CI:0.68~0.89)と関連していた。

353.

CAD患者、体重増加で心血管イベント増加/NEJM

 冠動脈疾患(CAD)患者では、体重の変動は従来の心血管リスク因子とは独立に、死亡や心血管イベントの発生割合を高めることが、米国・ニューヨーク大学医学部のSripal Bangalore氏らが実施したTreating to New Targets(TNT)試験の事後解析で明らかとなった。研究の成果は、NEJM誌2017年4月6日号に掲載された。体重変動は、心血管疾患(CVD)のない患者の死亡や冠動脈イベントのリスク因子であることが知られているが、CAD患者のアウトカムへの影響は不明とされていた。 9,509例を低変動群と高変動群に分けて比較 TNT試験は、臨床的に明らかなCADを有し、LDLコレステロール(LDL-C)値が130mg/dL未満の患者1万1例を対象に、アトルバスタチン(商品名:リピトールほか)10mg/日と80mg/日の心血管イベントの発生を比較する無作為化試験である(Pfizer社の助成による)。今回の研究は、この試験の事後解析として、体重の変動と心血管イベントのリスクの関連を探索するために行われた。 体重変動は、個々の患者の各受診時の体重の変化と定義し、連続測定値の平均絶対差(average successive variability:ASV)を用いて評価した。 主要評価項目は冠動脈イベント(冠動脈性心疾患[CHD]による死亡、非致死的心筋梗塞、心停止からの蘇生、血行再建術、狭心症の複合エンドポイント)とし、副次評価項目は心血管イベント(冠動脈イベント、脳血管イベント、末梢血管疾患、心不全)、死亡、心筋梗塞、脳卒中であった。 9,509例が事後解析の適格基準を満たし、ベースラインの平均体重は84.7±15.4kgであった。初回から最後の体重測定までの期間中央値は4.7年、測定回数中央値は12回(範囲:2~14)だった。ASVによる体重変動中央値は1.76kgであり、中央値未満を低変動群、中央値以上を高変動群とした。 過体重・肥満の高変動例はリスクが高い ベースラインの背景因子は、低変動群は高変動群に比べ高齢で(年齢中央値:63.4 vs.60.4歳)、65歳以上の割合が高く(43.4 vs.32.6%)、男性の割合が低く(78.9 vs.83.2%)、平均体重が軽かった(79.4±12.6 vs.90.1±16.1kg)(すべてp<0.001)。 リスク因子、ベースラインの脂質値、平均体重、体重の変化で完全補正したモデルでは、体重変動(ASVで測定し、時間依存性共変量とした場合)が1SD(1.5~1.9kg)増加するごとに、冠動脈イベント(イベント数:2,091件、ハザード比[HR]:1.04、95%信頼区間[CI]:1.01~1.07、p=0.01)、心血管イベント(2,727件、1.04、1.02~1.07、p<0.001)、死亡(487件、1.09、1.07~1.12、p<0.001)のリスクが有意に増大し、心筋梗塞(HR:1.04、95%CI:0.98~1.09、p=0.17)および脳卒中(1.05、0.97~1.13、p=0.20)は、有意な差はないものの発生割合が増えていた。 五分位数による解析では、体重変動が第1五分位数(平均値:0.93kg)から第5五分位数(同:3.86kg)へと大きくなるに従って、冠動脈イベント、心血管イベント、死亡、心筋梗塞、脳卒中、新規糖尿病の発生割合が有意に増加した。また、第5五分位群は第1五分位群に比べ、冠動脈イベントのリスクが64%増加し(補正HR:1.64、95%CI:1.41~1.90)、心血管イベントは85%(1.85、1.62~2.11)、死亡は124%(2.24、1.74~2.89)、心筋梗塞は117%(2.17、1.59~2.97)、脳卒中は136%(2.36、1.56~3.58)、新規糖尿病は78%(1.78、1.32~2.40)増加した(すべてp<0.001)。 ベースラインの体重が標準の患者では、高変動群は低変動群よりも冠動脈イベントが発生した患者の割合が高かったものの有意差は認めなかった(19.8 vs.17.7%、p=0.17)のに対し、心血管イベントの割合は高変動群が有意に高かった(28.1 vs.23.4%、p=0.01)。一方、ベースライン時に過体重と肥満の患者は、冠動脈イベント(過体重例:24.4 vs.18.0%、肥満例:28.9 vs.22.2%)および心血管イベント(32.0 vs.22.9%、36.7 vs.28.4%)の発生割合が、いずれも高変動群で有意に高率であった(すべてp<0.001)。 著者は、「これらの関連性は、因果関係以外の原因による可能性がある」とし、「高度な体重変動は、より不良な予後をもたらす重篤な疾患がすでに存在することを示すマーカーとなる可能性がある」と指摘している。

354.

半数は目標値に達していなかったACS患者のLDL-C:EXPLORE-J試験

 2017年4月4日、サノフィ株式会社主催のメディアラウンドテーブルにて東邦大学 医療センター大橋病院 中村正人氏が、急性冠症候群(ACS)患者における脂質リスクとコントロールに関する前向き観察研究「EXPLORE-J試験」のベースラインデータについて紹介した。ACS患者の3割がスタチンを使用 EXPLORE-J試験は、2015年4月~2016年8月まで59施設から2,016例の登録が終了した。患者の平均年齢は66.0歳、男性が80.4%、BMIは24.2であった。ACSの病型はST上昇型心筋梗塞(STEMI)が61.8%、非ST上昇型心筋梗塞(NSTEMI)が16.1%、不安定狭心症が22.0%であった。危険因子は脂質異常症77.6%、高血圧72.9%、糖尿病34.7%、虚血性心疾患18.0%、現喫煙者37.8%、過去喫煙27.8%であった。26.9%がスタチンを服用(高力価スタチン服用は2.3%)していた。2次予防例の半数がLDL-C目標値100未満を達成できず ACS患者の入院時のLDL-C値(n=1,859)の分布をみると、対象者の平均値は121.7mg/dLであった。そのうち100未満は29.6%、FH診断の基準である180以上は7.9%であった。一方、虚血性心疾患の既往患者(n=333)のLDL-Cは103mg/dLであった。動脈硬化予防疾患ガイドラインの2次予防の管理目標値100未満の患者は52.0%であり、半数は目標値に達していなかった。 アキレス腱肥厚の測定結果(n=1,787)をみると、中央検定の中央値は6.7mm、基準値の9mm以上は6.4%であった。 家族歴を収集できた患者(n=1,412)から早発性冠動脈疾患の家族歴を調べた結果、家族歴はありは10%という結果だった。家族性高コレステロール血症(FH)の基準を満たす患者は3%、実臨床ではそれ以上か 本邦では、ヘテロ型FH が200~500人に1人、ホモ型FHは100万人に1人といわれているが、ASCを対象としたEXPLORE-Jでの結果はどうか、アキレス腱肥厚を利用した1,391例からの中間解析を行った。結果、成人FHの診断基準(1.未治療のLDL-C180以上、2.腱黄色腫、アキレス腱肥厚あるいは皮膚結節性黄色腫、3.FHまたは若年性冠動脈疾患の二親等以内の家族歴、のうち2項目以上該当)を満たす患者は全体で3.0%、55歳未満では5.9%であった。実際には、スタチンの服用で調査時すでにLDL-Cが低下している患者もあり、実臨床ではこれ以上のFH患者がいると推定される。ASC患者のLDL-C管理状況、病態は10年前と変わらず EXPLORE-Jでは、2008~09年に本邦で行ったPACIFIC試験と比較し、ASC患者のLDL-C管理状況、病態の変化を評価した。結果、LDL-C平均値120、6割というSTEMIの割合は、共にPACIFIC試験とほぼ同等で、10年前からほぼ変化していなかった。今後は絶対リスクの高い患者を明確にし、個別のLDL-C管理に LDL-C70でもイベントを起こす人がいる一方、110でもイベントを起こさない人がいる。年齢、喫煙、糖尿病など複合的な要因が関連してリスクは変わる。一律のLDL-C基準値を決めるにとどまらず、今後は絶対リスクが高い患者を明確にしていき、患者に個別化されていくべきだと、中村氏は述べた。

355.

PCSK9阻害薬bococizumab、抗薬物抗体発現で効果減/NEJM

 抗PCSK9(前駆蛋白変換酵素サブチリシン/ケキシン9型)モノクローナル抗体製剤bococizumabは、多くの患者で抗薬物抗体(ADA)の発現がみられ、そのためLDLコレステロール(LDL-C)の低下効果が経時的に減弱することが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のPaul M Ridker氏らが行ったSPIREプログラムと呼ばれる6件の国際的な臨床試験の統合解析で明らかとなった。ADA陰性例にも、相対的なLDL-C低下効果に大きなばらつきを認めたという。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2017年3月17日号に掲載された。完全ヒト型抗体であるアリロクマブやエボロクマブとは異なり、bococizumabはヒト型抗体であり、抗原と結合する相補性決定領域に約3%のネズミ由来のアミノ酸配列が残存するため、ADAの発現を誘導する可能性が指摘されている。bococizumabとプラセボを比較する6件の無作為化試験に登録された4,300例を対象 本研究は、bococizumab(150mgを2週ごとに皮下投与)とプラセボを比較する6件の無作為化試験に登録された脂質異常症患者4,300例を対象とした(Pfizer社の助成による)。6試験には、プラセボの代わりにアトルバスタチンを用いた試験が1件、bococizumabの用量が75mgの患者を含む試験が1件含まれた。 ベースラインの全体の平均年齢は61歳で、42%が女性であった。糖尿病が53%、喫煙者が18%、家族性高コレステロール血症が12%含まれた。99%がスタチン治療を受けていた。治療期間中に検出されたADAの有無別に、12週および52週時に脂質値の経時的な変化の評価を行った。1年時のbococizumab群はADA陽性率48%、16%を占めた高力価の患者は平均変化率が低かった 12週時に、bococizumab群のLDL-C値はベースラインに比べ54.2%低下、プラセボ群は1.0%増加し、群間の絶対差は-55.2%(95%信頼区間[CI]:-57.9~-52.6)と、bococizumab群が有意に優れた(p<0.001)。 12週時の総コレステロール(TC)値のベースラインからの変化の群間絶対差は-36.0%、非HDL-C値は-50.2%、トリグリセライド(TG)値は-14.2%、アポリポ蛋白B値は-49.5%、リポ蛋白(a)値は-28.9%と有意に低下し、HDL-C値は6.2%と有意に増加しており、いずれもbococizumab群が良好だった(すべてp<0.001)。 52週時のLDL-C値のベースラインからの変化の群間絶対差は-42.5%(95%CI:-47.3~-37.8)であり、bococizumab群が有意に優れた(p<0.001)が、12週時に比べるとLDL-C低下効果が減弱した。また、TC値(群間絶対差:-27.1%)、非HDL-C値(-37.7%)、TG値(-10.9%)、アポリポ蛋白B値(-37.3%)、リポ蛋白(a)値(-20.6%)、HDL-C値(4.6%)も、bococizumab群が有意に良好だった(すべてp<0.001)が、いずれも12週時に比し効果は減弱した。 一方、1年時にbococizumab群の48%にADAが検出され、そのほとんどが12週以降に発現していた。52週時のADAが低~中力価の患者のLDL-C値の平均変化率(-43.1%)は、ADA陰性例(-42.5%)とほぼ同じであった。これに対し、ADA陽性例の16%を占めた高力価の患者のLDL-C値の平均変化率(-30.7%)は低く、力価最高位10%の患者(-12.3%)では著明に低かった。また、ADA陽性例は力価が高い患者ほど、PCSK9値およびbococizumab濃度が経時的に減衰した。 12週時のbococizumab群のLDL-C値の低下効果は全体として大きかったが、まったく低下しなかった患者が4%、低下率50%未満が28%、50%以上は68%とばらつきが認められた。52週時には、ADA陽性例はそれぞれ10%、38%、ADA陽性例はそれぞれ10%、38%、52%であったが、ADA陰性例にも9%、31%、60%と同様のばらつきがみられた。 重大な心血管イベント(非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、心血管死、血行再建術)の発生率は、bococizumab群が2.5%(57例)、プラセボ群は2.7%(55例)であった(ハザード比[HR]:0.96、95%CI:0.66~1.39、p=0.83)。bococizumab群の最も頻度の高い有害事象は、注射部位反応(12.7/100人年)であり、次いで関節痛(4.4/100人年)、頭痛(3.0/100人年)であった。 著者は、「bococizumabの有害事象には免疫原性の影響があり、有効性に関する生物学的な反応は一定ではなく個々の患者での予測は困難である」としている。これらの知見に基づき、2016年11月1日、bococizumabの開発は中止となった。

356.

開発が中止されても抗PCSK9抗体によるLDL-コレステロール低下効果は有効性を示した!(解説:平山 篤志 氏)-663

 抗PCSK9モノクローナル抗体であるEvolocumabやAlirocumabは完全なヒト型であるが、Bococizumabはヒト型に90%類似した抗体であったために中和抗体が出現し、長期間の投与中に効果が減弱することから開発が中断された。 しかし、開発の中断が決定されるまでにLDL-コレステロール低下効果をみる6つの試験と有効性を検証する2つの臨床試験が進行しており、今回はそのLDL-コレステロール低下効果が発表された。150mgのBococizumabの投与により、12週間で54.2%の低下がみられたが、52週では低下効果は42.5%と減弱が認められた。これは、中和抗体が12週以後から認められるようになり、1年後には48%に認められるようになったためである。ただ、中和抗体の認めなかった患者においても、LDL-コレステロール低下効果に個々の患者でばらつきが認められることが報告された。 論文では触れられていないが、同時に発表された米国心臓病学会の会場では、ハイリスクの患者を対象にしたSPIRE 1とSPIRE 2試験の結果も報告された。スタチン投与下でもLDL-コレステロールが100mg/dL以上を対象としたSPIRE 2試験では、平均観察期間が12ヵ月と短い期間であったが、心血管イベントリスクのLDL-Cの低下が認められた群(おそらく中和抗体の出現の無かった群)で低下が有意に認められたことが報告され、直前の演題であったEvolocumabによるFOURIER試験と同様の結果を示した。LDL-コレステロールについては、この結果から“lower is better for longer”が証明されたことになり、ハイリスクの患者ではより厳格な脂質管理が要求されるであろう。

357.

PCSK9合成阻害薬、2回投与で半年後にLDL-C半減/NEJM

 前駆蛋白転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)遺伝子のメッセンジャーRNAを標的とする低分子干渉RNA(small interfering RNA:siRNA)であり、肝細胞でのPCSK9の合成を阻害するInclisiranの第II相試験(ORION-1)の中間解析の結果が、NEJM誌オンライン版2017年3月17日号に掲載された。LDLコレステロール(LDL-C)高値の心血管リスクが高い患者において、6種の投与法をプラセボと比較したところ、すべての投与法でPCSK9値とLDL-C値(180日時、240日時)がベースラインに比べ有意に低下したという。報告を行った英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのKausik K Ray氏らは、「肝でのPCSK9 mRNA合成の阻害は、PCSK9を標的とするモノクローナル抗体に代わる治療薬となる可能性があり、注射負担はほぼ確実に軽減されるだろう」と指摘している。6つの投与法と2つのプラセボを比較 本研究は、Inclisiranの異なる用量および投与回数による投与法の有効性を比較する二重盲検プラセボ対照無作為化第II相試験(Medicines Company社の助成による)。対象は、最大用量のスタチンの投与によっても、LDL-C値70mg/dL以上のアテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)およびLDL-C値100mg/dL以上のASCVD高リスクの患者497例であった。 被験者は、3つのInclisiran単回皮下投与群(200mg[60例]、300mg[61例]、500mg[65例])またはプラセボ群(65例)、および3つのInclisiranの2回(初回、90日後)皮下投与群(100mg[61例]、200mg[62例]、300mg[61例])またはプラセボ群(62例)にランダムに割り付けられた。 主要評価項目は、180日時のLDL-C値のベースラインからの変化であった。安全性の評価は210日時のデータを用いて行った。副次評価項目には180日時のPCSK9値の変化などが含まれた。LDL-C値が27.9~52.6%低下、300mg×2回の効果が最大 ベースラインの8群の平均年齢は62.0~65.2歳、男性が53~74%を占め、平均LDL-C値は117.8~138.8mg/dL、平均PCSK9値は394.2~460.3ng/mLであった。全体の73%がスタチン、31%がエゼチミブの投与を受けていた。 Inclisiranの投与を受けた患者は、LDL-C値とPCSK9値が用量依存性に低下した。180日時のLDL-C値の最小二乗平均値は、単回投与の200mg群が-27.9%、300mg群が-38.4%、500mg群が-41.9%であり、プラセボ群の2.1%に比べ、いずれも有意に低下した(すべてp<0.001)。また、2回投与の100mg群は-35.5%、200mg群は-44.9%、300mg群は-52.6%であり、プラセボ群の1.8%に比し、いずれも有意に低かった(すべてp<0.001)。180日時のLDL-C値が最も低下した300mg×2回投与群(52.6%低下)のLDL-C値50mg/dL未満の達成率は48%だった。 LDL-C値は、第1日の投与から30日後には、投与前に比べ6群で44.5~50.5%低下し、単回投与群はおおよそ60日まで、2回投与群は150日まで最低値が持続した。また、PCSK9値は、14日後には単回投与群で59.6~68.7%、30日後には66.2~74.0%低下し、60日、90日時もこの値がほぼ維持されており、180日には47.9~59.3%低下していた(プラセボ群との比較ですべてp<0.001)。 240日時のLDL-C値は、投与前に比べ単回投与群で28.2~36.6%、2回投与群で26.7~47.2%低下しており、PCSK9値は6群とも40%以上低下していた。また、6つのInclisiran群は、180日時の総コレステロール(TC)、非HDL-C、アポリポ蛋白Bが、プラセボ群に比べ有意に低下した(すべてp<0.001)。 有害事象は、Inclisiran群、プラセボ群とも76%に発現したが、そのうち95%が軽度~中等度(Grade 1/2)であった。重篤な有害事象の発現率は、Inclisiran群が11%、プラセボ群は8%であった。全体で最も頻度の高い有害事象は、筋肉痛、頭痛、疲労、鼻咽頭炎、背部痛、高血圧、下痢、めまいであり、Inclisiran群とプラセボ群に有意な差はなかった。注射部位反応は、単回投与群の4%、2回投与群の7%(6群で5%)にみられたが、プラセボ群には発現しなかった。 著者は、「患者のほとんどが欧州系の人種であり、今後、他の人種で同様の効果が得られるかを検討する必要がある」としている。

358.

PCSK9活性を長期的に低下させる夢のような薬が現実に!(解説:平山 篤志 氏)-662

 スタチンを服用していても十分なLDL-コレステロール低下効果がみられない一因として、PCSK9活性の亢進が原因であることが明らかにされ、PCSK9阻害薬としてモノクローナル抗体が薬剤として使用されるようになった。 この薬剤の1つであるエボロクマブを用いたFOURIER試験が発表され、心血管イベントを有意に低下させることと、安全性が担保されたことで、一気にLDL-コレステロール値の70mg/dLを超えることが求められるようになった。これらの薬剤は抗体であることで、2週あるいは4週に1回の投与での治療が可能になった。しかし、InclisiranはPCSK9の合成を抑制するRNA製剤で、投与後180日間のPCSK9活性の低下とLDL-コレステロール低下作用が明らかにされた薬剤である。今回は、このInclisiranの投与量と投与法の有効性を検討した試験である。 300mg、500mgのInclisiranの1回投与で、180日後のLDL-コレステロールはそれぞれ平均38.4%、41.9%の低下を認めた。さらに、300mgを初回と90日後に投与することで、LDL-コレステロールが180日後で52.6%の低下(平均LDL-Cレベル64.2mg/dLの低下)、240日後でもその低下効果(平均LDL-Cレベル58.9mg/dLの低下)が維持されることが明らかになった。また、対照群と比較しても重大な副作用は認められなかった。 わずか2回の注射で長期的なLDL-コレステロール低下効果がみられた。今回発表されたFOURIER試験の結果を考えても、Inclisiranによって長期間持続的にLDL-コレステロールを低下させることができれば、心血管イベント低下をリアルワールドでも実現できるようになるであろう。まさしく、夢のような薬剤が現実になった思いがする一方で、核酸医薬品が承認されるのか? 価格は? など、多くのことを考えていかねばならないだろう。

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スタチンで大腸がん死亡率が低下、では再発率は?

 大腸がんの予後に対するスタチンの影響について、がん特異的死亡率の低下が報告されているが、再発についての研究はほとんどない。今回、米国・エモリー大学のTimothy L. Lash氏らがデンマークの約2万人のコホートで検討したところ、スタチン使用は大腸がんの再発率の低下とは関連していなかったが、がん特異的死亡率の低下と関連していた。このことから、がんそのものに対するベネフィットはないことが示唆され、著者らは「心血管症状のない大腸がん患者にスタチンを処方する根拠はない」としている。American journal of epidemiology誌オンライン版2017年3月1日号に掲載。 著者らは、デンマークにおけるレジストリのデータを用いて、2001~11年にstage I~IIIの大腸がんと診断された2万1,152例を追跡し、がん再発率・がん特異的死亡率・全死因死亡率とその前年のスタチン使用との関連を推定した。 主な結果は以下のとおり。・大腸がんの再発5,036例、全死因死亡7,084例、大腸がんによる死亡4,066例を同定した。・潜在的な交絡因子の調整後、スタチン使用は大腸がんの再発と関連していなかったが(調整ハザード比[aHR]:1.01、95%CI:0.93~1.09)、大腸がんによる死亡リスクの低下(aHR:0.72、95%CI:0.65~0.79)と全死因死亡リスクの低下(aHR:0.72、95%CI:0.67~0.76)と関連していた。・スタチン使用はがん特異的死亡リスクの低下(aHR:0.83、95%CI:0.74~0.92)、がん以外の原因による死亡リスクの低下(aHR:0.78、95%CI:0.61~1.00)と関連していた。

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Cardiologistへの道@Stanford 第26回

第26回:ACC.17、FOURIER試験など話題の LCL-C関連発表キーワードエボロクマブFOURIER試験SPIRE1/2ORION1参考論文1)Sabatine MS, et al. Evolocumab and Clinical Outcomes in Patients with Cardiovascular Disease.N Engl J Med. 2017 Mar 17. [Epub ahead of print]2)Ridker PM, et al.  Lipid-Reduction Variability and Antidrug-Antibody Formation with Bococizumab. N Engl J Med. 2017 Mar 17. [Epub ahead of print]3)Ray KK, et al. Inclisiran in Patients at High Cardiovascular Risk with Elevated LDL Cholesterol. N Engl J Med. 2017 Mar 17.

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