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切除可能非小細胞肺がんに対する 術前・後ペムブロリズマブ、無イベント生存期間を改善(KEYNOTE-671)/MSD

 Merck社は2023年3月1日、Stage II、IIIA、IIIB(T3-4N2)の切除可能な非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対する周術期療法としてのペムブロリズマブを評価する第III相KEYNOTE-671試験において、2つの主要評価項目のうち無イベント生存期間(EFS)を達成したことを発表した。周術期療法レジメンには術前補助療法(ネオアジュバント療法)とそれに続く術後補助療法(アジュバント療法)が含まれる。 KEYNOTE-671試験は、上記NSCLC患者を対象とした、無作為化二重盲検第III相試験。786例の登録患者を以下のいずれかの群に、1:1に無作為に割り付けた。・試験群:術前補助療法としてペムブロリズマブ(200mgを3週ごと最大4サイクル)+化学療法(シスプラチン+ゲムシタビンまたはペメトレキセド)、その後術後補助療法としてペムブロリズマブ(200mgを3週ごと最大13サイクル)・対照群:術前補助療法としてプラセボ(3週ごと最大4サイクル)+化学療法(シスプラチン+ゲムシタビンまたはペメトレキセド)、その後術後補助療法としてプラセボ(3週ごと最大13サイクル) 主要評価項目はEFS、全生存期間(OS)、副次評価項目は病理学的完全奏効(pCR)、主要な病理学的奏効(mPR)などであった。 試験の結果、プラセボ群と比較して、ペムブロリズマブ群で統計学的に有意かつ臨床的に意味のあるEFSの改善が認められた。副次評価項目であるpCRおよびmPRについても統計学的に有意な改善が認められている。この結果は今後の医学学会で発表する予定。 この試験データに基づき、Stage II、IIIA、IIIB(T3-4N2)の切除可能NSCLCのプラチナ化学療法との併用による術前補助療法と、その後の単独療法による術後補助療法として、ペムブロリズマブの生物製剤承認一部変更申請(sBLA)が米国食品医薬品局(FDA)に受理された。審査完了予定日は2023年10月16日。

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免疫チェックポイント阻害薬の開始後6日目に出現した全身倦怠感【見落とさない!がんの心毒性】第18回

※本症例は、実臨床のエピソードに基づく架空のモデル症例です。あくまで臨床医学教育の普及を目的とした情報提供であり、すべての症例が類似の症状経過を示すわけではありません。2014年9月のニボルマブの販売開始から8年半が経過した2023年2月現在、本邦では6種類の免疫チェックポイント阻害薬(ICIs:immune checkpoint inhibitors)が承認されています。これまで、再発、遠隔転移、難治性、切除不能のがん症例に対しては、悪性黒色腫を皮切りに、肺、消化管、乳腺、腎・尿路、子宮、リンパ腫、頭頚部、原発不明のがんに承認されてきました。近年は根治性を高め、再発・転移を予防する目的で、悪性黒色腫、腎細胞がん、非小細胞肺がん、トリプルネガティブ乳がんにおいて適応が拡大しています。ICIsは今やがん薬物療法における標準治療薬の地位を確立しつつあります。一方で、思いがけない副作用で大変な思いをする患者さんもいます。今回、その一例をご紹介しましょう。《今回の症例》70代・男性。進行期食道がんに対し、ペムブロリズマブ、シスプラチンおよび5-FUによる化学療法開始後6日目に嘔気と全身倦怠感を訴えた。既往歴特記すべきことなし。現症血圧80/56mmHg、脈拍110/分・整、体温35.5℃、SpO2 96%(室内気)、冷汗をかいている。心音でIII音を聴取する。呼吸音に異常はない。腹部は平坦・軟で、圧痛はない。下腿浮腫は認めない。検査所見[血液検査]白血球 1万1,500/μL、赤血球466万/μL、ヘモグロビン15.3g/dL、血小板36.1万/μL[血液生化学]総蛋白6.1g/dL、アルブミン2.7g/dL、AST 21U/L、ALT 17U/L、LDH 139U/L、総ビリルビン0.6 mg/dL、CPK 314U/L(正常値59~248U/L)、Na 131mEq/L、K 5.0mEq/L、Cl 97mEq/L、クレアチニン 0.95mg/dL、尿素窒素21mg/dL、CRP 2.16mg/dL、SCC 6.6ng/mL(正常値2.0ng/mL未満)、心筋トロポニンI 178pg/mL(正常値26.2pg/mL未満)、NT-proBNP 1,560pg/mL(心不全除外のカットオフ値125pg/mL未満)、血糖値180mg/dL、TSH 2.5μU/mL、FT4 1.3ng/dL、コルチゾール 23.6μg/dL(正常値6.2~18.0μg/dL)治療開始前と心不全発症時の12誘導心電図と、発症時の経胸壁心エコー図(左室長軸像)を以下に示す。治療開始前と心不全発症時の12誘導心電図画像を拡大する発症時の経胸壁エコー図(左室長軸像)画像を拡大する※所見(1)~(3)は解説をご覧ください【問題】本症例は免疫関連有害事象(irAE:immune-related Adverse Events)による急性心不全と診断された。本症例のirAEついて正しいものを選べ。a.患者数は増加傾向にある。b.ICIs投与後1ヵ月以内の発症はまれである。c.本症例の心電図には予後不良の所見を認める。d.本症例の心エコー図所見は当irAEのほとんどの症例で認められる。e.診断したら速やかにステロイドパルス療法を開始する。今日、がん薬物療法においてICIsは多くのがん種で標準治療薬としての地位を確立しています。適応は進行がんのみならず術後補助化学療法にも拡大してきており、近い将来、がん患者の40%以上が免疫療法の対象となる可能性が指摘されています10)。早期発見、ICIs中止、かつステロイドパルス療法が救命のポイントですが、一部の医師だけによる場当たり的な対応には限界があります。“がん治療に携わる医師が心筋炎を疑い、循環器医が遅滞なく診断をし、速やかに患者をICUに収容し、厳重な循環監視(または補助)下でステロイドパルス療法を開始する”という、複数の診療科間と病院間の連携体制を事前に確立しておく必要があります11)。腫瘍循環器領域を担う医師は、ICIs関連心筋炎患者の救命のための連携体制を構築すべく、リーダーシップを発揮することが期待されています。心筋炎の検査体制が整備されるにつれ、きちんと診断される患者が増え、適切な治療により本疾患による死亡率が低下することを期待しましょう。1)Mahmood SS, et al. J Am Coll Cardiol. 2018;71:1755-1764.2)Furukawa A, et al. J Cardiol. 2023;81:63-67.3)Salem JE, et al. Lancet Oncol. 2018;19:1579-1589.4)Hasegawa S, et al. Pharmacoepidemiol Drug Saf. 2020;29:1279-1294.5)Lyon AR, et al. Eur Heart J. 2022:43:4229-4361. 6)Power JR, et al. Circulation. 2021;144:1521-1523. 7)Awadalla M, et al. J Am Coll Cardiol. 2020;75:467-478. 8)Zhang L, et al. Circulation. 2020;141:2031-2034.9)Axelrod ML, et al. Nature. 2022;611:818-826.10)Haslam A, et al. JAMA Netw Open. 2019;2:e192535.11)大倉裕二ほか. 新潟県医師会報2023年2月号. 診療科の垣根を越えてノベル心筋炎に備える.講師紹介

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胆道がんのアンメットニーズ充足へ、デュルバルマブ適応追加/AZ

 アストラゼネカは、抗PD-L1抗体デュルバルマブ(商品名:イミフィンジ)が2022年12月23日に「治癒切除不能な胆道癌」「切除不能な肝細胞癌」「切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」を適応症とした承認を取得したことを受け、「進行胆道がん治療におけるイミフィンジの役割とは~免疫チェックポイント阻害剤による胆道がん治療の変革~」をテーマとして、2023年2月7日にメディアセミナーを開催した。 胆道がんの1年間の罹患数は2万2,201例(2018年)、死亡数は1万7,773例(2020年)と報告されている1)。一般的に、胆道がんは予後不良であり、手術による切除例や切除不能例を含めた胆道がん全体での5年生存率は、20~30%とされている1)。多くの場合、胆道がんは進行期になってから診断され、遠隔転移が認められてから診断される割合は全体の4割に上るという報告もある2)。また、遠隔転移のある場合、1年生存率は14~16%と非常に予後が悪いことも報告されている3)。このように、胆道がんはアンメットメディカルニーズの高いがんといえる。 セミナーの前半では、アストラゼネカが実施した「胆道がん患者調査」の結果4)について、調査を監修した古瀬 純司氏(神奈川県立がんセンター総長)が解説した。セミナーの後半では、古瀬氏が「胆道がんに対する治療選択と薬物療法」をテーマとして、胆道がんの薬物治療の変遷や、治癒切除不能な胆道がん患者を対象にデュルバルマブの有用性を検証した国際共同第III相試験「TOPAZ-1試験」を中心に解説した。胆道がんの認知度向上が早期発見・支援には重要 アストラゼネカは、胆道がん患者の診断~治療の過程での経験や治療に伴う生活の変化を明らかにすることを目的として、全国の胆道がん患者203例を対象にアンケート調査を実施した4)。 胆道がんの年間罹患数は2万2,201例(2018年)と報告されているが1)、胆道がん患者調査では、胆道がん患者の80%は診断される前に胆道がんを知らなかったという。このように胆道がんの認知度が低いこと、胆道がんには特徴的な症状が乏しいことから、「体調の変化があって自ら受診した」ことで診断がついた患者の割合は34%にとどまった。実際に、診断される前の症状として多く挙げられたものは、「みぞおちや右わき腹の痛み(36%)」「食欲不振(34%)」「体重減少(33%)」であり、いずれも胆道がんに特徴的な症状ではなかった。胆道がんに多いとされる「黄疸」を挙げた割合は25%であった。また、体調の変化があってから1週間以内に受診した患者の割合は25%にとどまり、1週間以上経過してから受診した理由として「重大な病気だとは思わなかった(52%)」「普段の生活に影響がない程度だった(45%)」が多く挙げられ、早期診断の難しさを反映する結果であった。 早期診断に向けて、古瀬氏は「胆道がんに多い黄疸の症状に気付いたらすぐに受診してほしい。消化器症状が出たときには胃の異常を疑うだけでなく、患者が『膵臓がん、胆道がんはないでしょうか』と医師に聞くくらい、胆道がんの認知を向上させたい」と語った。 胆道がんの認知度の低さは、早期発見の障壁となるだけでなく、患者が病気について周囲に知らせることや治療についての困りごとの相談の障壁にもなる。胆道がん患者調査において、胆道がんと診断されたことを身近な人に知らせることの障壁となった理由として多く挙げられたものは、「相手が胆道がんという病気をあまり知らなかった(35%)」「胆道がんがどのような疾患か説明するのが難しかった(28%)」「相手に説明できるほど自分自身が胆道がんについて理解できていなかった(26%)」であり、認知度の低さに関する理由が上位を占めた。 古瀬氏は、本調査結果についての結論を以下のとおりまとめた。・胆道がんは初期症状や特有の症状に乏しく、受診につながりにくいため早期発見の取り組みが必要である。・セカンドオピニオン、治療内容について、患者はとくに情報を求めている。・治療のみならず、日常生活の変化を支える情報提供・サポート体制が必要である。・胆道がんの認知度の低さが、患者の周囲への打ち明けにくさにつながるため、疾患の認知度向上が重要である。デュルバルマブが胆道がん1次治療の新たな選択肢に 本邦の胆道癌診療ガイドラインおよび肝内胆管癌ガイドラインでは、切除不能胆道がん、切除不能肝内胆管がんに対する1次治療の薬物療法として、「ゲムシタビン+シスプラチン併用療法」「ゲムシタビン+S-1併用療法」「ゲムシタビン+シスプラチン+S-1併用療法」が推奨されている5,6)。2019年以降、免疫チェックポイント阻害薬・がんゲノム医療の時代となってきたが、これまで胆道がんにおける免疫チェックポイント阻害薬は、2次治療以降の位置付けであった。そこで、新たな1次治療の開発が行われており、その1つが治癒切除不能な胆道がん患者を対象にデュルバルマブの有用性を検証した、国際共同第III相試験「TOPAZ-1試験」である。デュルバルマブは、本試験の結果をもとに「治癒切除不能な胆道癌」を適応症とした承認を取得している。 TOPAZ-1試験7-9)は、治癒切除不能な胆道がん患者685例を対象に、1次治療として「デュルバルマブ+ゲムシタビン+シスプラチン(デュルバルマブ+GC群)」または「プラセボ+ゲムシタビン+シスプラチン(プラセボ+GC群)」に1:1に無作為に割り付け、3週間間隔で最大8サイクル投与し、その後デュルバルマブまたはプラセボを4週間間隔で、疾患進行または許容できない毒性が認められるまで投与した試験である。主要評価項目は全生存期間(OS)、主要な副次評価項目は無増悪生存期間(PFS)であった。その他の副次評価項目として、客観的奏効率(ORR)、奏効期間(DoR)などが評価された。 有効性について、中間解析時においてデュルバルマブ+GC群はプラセボ+GC群に比べて、OSが有意に延長し、優越性が検証された(OS中央値:12.8ヵ月vs.11.5ヵ月、ハザード比[HR]:0.80、95%信頼区間[CI]:0.66~0.97、p=0.021[両側有意水準0.0300])。24ヵ月時点の全生存率は、デュルバルマブ+GC群24.9%、プラセボ+GC群10.4%であった。ORRはそれぞれ26.7%、18.7%であり、デュルバルマブ+GC群が有意に高率であった(オッズ比:1.60、95%CI:1.11~2.31、p=0.011)。奏効が認められた患者のDoR中央値はそれぞれ6.4ヵ月、6.2ヵ月であった。12ヵ月以上奏効が持続した患者の割合はそれぞれ26.1%、15.0%であった。 安全性に関して、Grade3または4の有害事象の発現率はそれぞれ73.7%、79.2%であった。この結果について、古瀬氏は「デュルバルマブ上乗せにより懸念される有害事象はなかった」と述べた。ただし、「免疫チェックポイント阻害薬に共通することとして、免疫介在性有害事象が認められる。一つひとつの事象の頻度は高くないが、注意が必要である」とも述べた。 米国のNCCNガイドライン第5版には、すでに「デュルバルマブ+GC療法」が切除不能な胆道がんに対するpreferred regimensの1つとして記載されており10)、古瀬氏は「本邦のガイドラインも改訂作業に入っており、遠からず掲載されるだろう」と語った。■参考文献1)公益財団法人がん研究振興財団. がんの統計20222)九州大学病院がんセンター. 九州大学病院のがん診療 胆道がん3)大阪国際がんセンター. 胆のう・肝外胆管がん4)アストラゼネカの「胆道がん患者調査」で判明、胆道がんの認知度の低さが周囲に病気を知らせることや困りごとを相談するハードルになっている5)日本肝胆膵外科学会、胆道癌診療ガイドライン作成委員会編. エビデンスに基づいた胆道癌診療ガイドライン 改訂第3版. 医学図書出版;2019.6)日本肝癌研究会編. 肝内胆管癌診療ガイドライン 2021年版. 金原出版;2020.7)承認時評価資料:Imfinzi社内資料(一次治療の進行胆道癌患者を対象とした国際共同第III相試験[TOPAZ-1試験]、2021)8)承認時評価資料:Imfinzi社内資料(一次治療の進行胆道癌患者を対象とした国際共同第III相試験[TOPAZ-1試験]:日本人集団、2021)9)Oh DY, et al. NEJM Evid. 2022;1:1-11.10)National Comprehensive Cancer Network. NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology Hepatobiliary Cancers Version 5, 2022

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ペムブロリズマブ+化学療法による胆道がん1次治療、生存期間を延長(KEYNOTE-966)/Merck

 2023年1月25日、Merck社は、第III相KEYNOTE-966試験の最終解析結果を公表。ペムブロリズマブと標準化学療法(ゲムシタビンおよびシスプラチン)の併用は、進行または切除不能な胆道がんの1次治療において全生存期間(OS)を統計学的に有意に改善した。また、同試験におけるペムブロリズマブの安全性プロファイルは、これまでの試験の結果と一貫していた。 この結果については、今後さまざまな腫瘍関連学会で発表するとともに、各国の規制当局へ承認申請する予定。 KEYNOTE-966試験は、進行または切除不能な胆道がんの1次治療としてペムブロリズマブ+ゲムシタビン・シスプラチン併用を、プラセボ+ゲムシタビン・シスプラチン併用と比較する無作為化二重盲検第III相試験である。主要評価項目はOSで、副次評価項目は無増悪生存期間、客観的奏効率、奏効期間、安全性などであった。 胆道がんは肝臓がんの15%を占め、毎年21万1,000例が世界で新たに胆道がんと診断され、17万4,000例が死亡すると推定されている。胆道がんの予後は非常に不良で、5年生存率は5〜15%と報告されている。

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2022年のプラクティスチェンジ【Oncology主要トピックス2022 泌尿器がん編】【Oncologyインタビュー】第42回

2022年に発表、論文化された泌尿器がんの重要トピックを国立がん研究センター東病院 腫瘍内科 近藤千紘氏が一挙に解説。今年の泌尿器がんにおけるプラクティスチェンジの要点がわかる。2022年のプラクティスチェンジ進行腎がんにおける標準治療は、免疫チェックポイント阻害薬 (ICI) の併用療法およびICIと血管新生阻害チロシンキナーゼ阻害薬 (TKI) の併用療法が主流になっている。2022年2月に、4種類目のICI+TKI療法である、ペムブロリズマブ+レンバチニブが適応承認となり、日常診療で用いられるようになった。この試験結果で、これまでの標準治療であったスニチニブと比較を行ったICI+TKI療法はすべて主要評価項目を達成したことになり、プラクティスチェンジとなったと結論付けられる。【CLEAR試験:307/KEYNOTE-581試験】また、腎がん領域では初となる術後薬物療法のペムブロリズマブが8月24日に保険適応を取得した。腎がんの術後薬物療法の開発は、TKIやmTOR阻害薬でこれまで評価されてきた。これらの薬剤は長期投与に伴う有害事象が問題となり、減量、中止をやむなくされることもあり、主要評価項目の無再発生存割合 (DFS)の延長は達成できても全生存割合 (OS)の改善までは示されず、各国で適応を取得するまでには至らなかった。ペムブロリズマブは、ICIで術後薬物療法の意義を検証した初の第III相試験であったが、DFSの延長という主要評価項目の達成のみで、保険適応を取得した。TKI単独療法と異なり、有害事象が比較的軽度であったことや、対象となる患者選択に成功した試験の結果を反映していると考えられる。【KEYNOTE-564試験】尿路上皮がんにおいて、ICIによる術後薬物療法として初となるニボルマブの保険適応が3月28日に承認された。尿路上皮がんのICIは、進行再発の2次治療としてペムブロリズマブが、1次治療のプラチナ併用化学療法後の維持療法としてアベルマブがすでに標準治療となっており、今回の保険承認は、さらに前の段階である術後における再発抑制効果を示したという薬物療法の歴史的な進歩の結果といえる。【CheckMate 274試験】非筋層浸潤性膀胱がんの術前化学療法では、長らくMVAC療法が無治療に比べてOSを改善する治療のエビデンスがあるとされてきた。しかしながら、毒性の強さには問題があることから、進行再発症例にて用いられるゲムシタビン+シスプラチン (GC)療法を用いることもガイドライン上では勧められてきた。進行再発症例におけるエビデンスとして、dose-dense MVAC療法は、MVAC療法に比べて安全性が高まり、病理学的奏効(pCR)割合が増加する治療法として注目され、術前化学療法での役割を期待された。2022年3月にJournal of Clinical Oncologyに出版された、筋層非浸潤性膀胱がんにおける術前療法としてのdose-dense MVAC(dd-MVAC)療法とGC療法のランダム化比較第III相試験の結果は、術前化学療法を考えさせられる重要なエビデンスであった。【VESPER試験:GETUG/AFU V05試験】【CLEAR試験; 307/KEYNOTE-581試験】1)2)CLEAR試験は、進行淡明細胞腎細胞がん患者を対象にレンバチニブ+ペムブロリズマブ併用療法(Len+Pem)および、レンバチニブ+エベロリムス併用療法(Len+Eve)をスニチニブ単剤(Sun)と比較するランダム化比較第III相試験であり、1069例の対象症例が各群に1:1:1でランダム化割付された。主要評価項目は独立中央画像判定による無増悪生存期間(PFS)であり、2つの試験治療群のSunに対するハザード比(HR)は0.714と設定されていた。Len+Pemには90%の検出力および両側α=0.045を、Len+Eveには70%の検出力および両側α=0.0049で統計設定された。3群に割り付けられた患者背景に偏りはなく、Len+Pem群のIMDC予後因子分類ではFavorable/Intermediate/Poor riskに27.0/63.9/9.0%が含まれていた。PFS中央値は、Len+Pem群は23.9ヵ月、Len+Eve群は14.7ヵ月、Sun群は9.2ヵ月であり、Len+Pem群のSun群に対するHRは0.39(95%信頼区間[CI]:0.32~0.49、p<0.001)、Len+Eve群のSun群に対するHRは0.65(95%CI:0.53~0.80、p<0.001)であり、いずれも優越性が示された。Key Secondary endpointのOSにもαが配分されており、中間解析時点においてLen+Pem群でα=0.0227、Len+Eve群でα=0.0320が優越性の基準とされていた。観察期間中央値26.6ヵ月の時点のOS中央値は、Len+Pem群 到達せず、Len+Eve群 到達せず、Sun群 30.7ヵ月であり、Len+Pem群のSun群に対するHRは0.66 (95%CI:0.49~0.88、p<0.001)、Len+Eve群のSun群に対するHRは1.15(95% CI:0.88~1.50、p<0.30)であり、Len+Pem群のみ優越性が示された。客観的奏効割合(ORR)は、Len+Pem群で71.0%、Sun群で36.1%であり、奏効期間中央値はそれぞれ25.8ヵ月および14.6ヵ月であった。安全性において、Grade3以上の重篤な有害事象がLen+Pem群は82.4%、Sun群は71.8%であったが、プレドニゾロン換算で40mg以上のステロイド使用は15%と比較的少ない印象の結果となっている。【KEYNOTE-564試験】3)4)この試験は、腎がん術後で再発ハイリスクの定義にあてはまる症例を、ペムブロリズマブあるいはプラセボで1年間治療を行い、主要評価項目はDFS、HR:0.67を片側α=0.025、検出力95%で検証する統計設定であった。また1回目の中間解析において、α=0.0114を消費することとしていた。報告は、1回目の中間解析、観察期間中央値24.1ヵ月時点のものである。994人の患者が2群にランダムに割り付けられた。再発ハイリスクの定義は、T2で核異型度4あるいは肉腫様分化あり、T3以上、N1、転移巣切除後(M1 NED)であったが、実際のペムブロリズマブ群の患者背景はintermediate-to-highリスクのT2-3N0M0が86.1%、high riskのT4あるいはN1が8.1%、M1 NEDが5.8%であり、プラセボ群もほぼ同等の割合であった。DFSは両群ともに中央値に到達しなかったが、HR:0.68(95%CI:0.53~0.87、p=0.002)であり、ペムブロリズマブはプラセボと比較し再発のリスクを32%減少した。OSの結果はイベント数が少なく比較は困難であった。安全性に関し、重篤な有害事象はペムブロリズマブ群で32.4%、プラセボ群で17.7%とペムブロリズマブ群で多く認めたが、死亡はそれぞれ0.4%と0.2%と大きな差はなかった。なお、観察期間中央値30.1ヵ月時点のアップデートの結果が報告されたが、intermediate-to-highリスクのHRは0.68(95%CI:0.52~0.89)、highリスクのHRは0.60(95%CI:0.33~1.10)、M1 NEDのHRは0.28(95%CI:0.12~0.66)であり、いずれのリスクでも効果は十分ありそうだが、とくにM1 NEDにおいては治療の意義が大きいことが示唆される結果であった。【CheckMate 274試験】5)この試験は、筋層浸潤性尿路上皮がんの術後薬物療法として、ニボルマブとプラセボを比較したランダム化第III相試験であり、主要評価項目をDFSとし全体集団とPD-L1陽性(腫瘍のPD-L1発現;TPSで1%以上と定義)集団の両者に設定した。全体集団において、87%の検出力で両側α=0.025としHR:0.72、PD-L1陽性集団において、80%の検出力で両側α=0.025としHR:0.61を検証する統計設定となっていた。1回目の中間解析で全体集団ではα=0.01784、PD-L1陽性集団ではα=0.01282を消費することがあらかじめ決められていた。1回目の中間解析において、709例の患者がランダムに2群に割り付けられ、PD-L1陽性は282例であった。観察期間中央値は20.9ヵ月の時点であったが、全体集団のDFS中央値はニボルマブ群で20.8ヵ月、プラセボ群で10.8ヵ月であり、HR:0.70(95%CI:0.55~0.90)、p<0.001であった。またPD-L1陽性集団においては、HR:0.55(98.72%CI:0.35~0.85)、p<0.001と良好な結果を示した。なおOSの結果は現時点で報告はない。安全性においては、重篤な有害事象はニボルマブ群で42.7%、プラセボ群で36.8%であったが、新たなシグナルは認められなかった。本試験は、術後のニボルマブを検証した試験であったが、これまでの術後治療の試験にはない広い対象症例を含んでいた。シスプラチンに適格となる筋層浸潤膀胱がんでは術前化学療法(NAC)を行うことが標準であるため、このような集団では術後にypT2以上の残存病変がある場合に本試験に適格となった。一方シスプラチンに不適格となる筋層浸潤膀胱がんでは、NACのエビデンスはないため手術をまず行い、術後にカルボプラチンを含む化学療法を行うことを検討する。また上部尿路がんは術前の組織診断や病期診断が困難であるため、まず手術を選択することが多い。これらの手術先行症例においては、pT3以上であった場合にこの試験の対象となった。日常診療において、ニボルマブを必要な患者に届けるためには、術前からの治療計画を医療者だけでなく患者にも共有し、適切に治療を進めることが大切と思われる。【VESPER試験; GETUG/AFU V05試験】6)7)フランスで行われた周術期化学療法のランダム化比較第III相試験である。転移のない筋層浸潤性膀胱がんの患者をDose-dense MVAC療法(メトトレキサート30mg/m2 day1、ビンブラスチン3mg/m2 day2、ドキソルビシン30mg/m2 day2、シスプラチン70mg/m2 day2、G-CSF day3~9、2週ごと)6サイクルと、GC療法(ゲムシタビン1250mg/m2 day1、8、シスプラチン70mg/m2 day1、3週ごと)4サイクルの2群にランダムに割り付け、術前の症例は化学療法後に膀胱全摘術を行い、術後の症例は膀胱全摘後に化学療法を行った。主要評価項目は3年PFSであった。493例がランダム化され、PFS中央値はddMVAC群で64%、GC群で56%、HRは0.77(95%CI:0.57~1.02)、p=0.066であり、ネガティブな結果であった。副次評価項目であるpCR割合は、ddMVAC群で42%、GC群で36%(p=0.20)、OSはimmatureな段階ではあるが、ddMVAC群に良好な傾向(HR:0.74、95%CI:0.47~0.92)を認めていた。安全性では、重篤なものは両群同等であったが、ddMVAC群で多かったのは、貧血と無力症、消化器毒性であった。手術関連の合併症はGC群で20例、ddMVAC群で14例であった。NACかAdjuvantかを層別化因子に設定していたが、患者背景はAdjuvant症例においてリンパ節転移陽性がGC群73%、ddMVAC群60%、NAC症例ではcT4がGC群1.8%、ddMVAC群4.1%などと偏りがみられた。3年PFSにおける予後因子の多変量解析において、術前後の選択と化学療法の違いにinteractionがあったことから、Adjuvant症例とNAC症例は区別して検討することが望ましいと判明した。NAC症例においては、3年PFSはddMVAC群で66%、GC群で56%、HR:0.70(95%CI:0.51~0.96)、p=0.025であった。この結果を受けて米国National Comprehensive Cancer Network(NCCN)ガイドラインでは、ddMVAC療法をPreferred regimenに指定した。このレジメンを実際に適用する場合には、本試験に登録された患者背景から、63歳前後(最高でも68歳まで)であることも考慮して十分な副作用対策を講じる必要があると考える。参考1)Motzer R, Alekseev B, Rha SY, et al. Lenvatinib plus Pembrolizumab or Everolimus for Advanced Renal Cell Carcinoma. N Engl J Med 2021, 384:1289.2)Motzer R, Alekseev B, Rha SY, et al. Lenvatinib plus Pembrolizumab or Everolimus for Advanced Renal Cell Carcinoma. N Engl J Med 2021, 384:1289.3)Choueiri TK, Tomczak P, Park SH, et al. Adjuvant Pembrolizumab after Nephrectomy in Renal-Cell Carcinoma. N Engl J Med 2021, 385:683.4)Powles T, Tomczak P, Park SH, et al. Pembrolizumab versus placebo as post-nephrectomy adjuvant therapy for clear cell renal cell carcinoma (KEYNOTE-564): 30-month follow-up analysis of a multicentre, randomised, double-blind, placebo-controlled, phase 3 trial. Lancet Oncol 2022,23:1133.5)Bajorin DF, Witjes JA, Gschwend JE, et al. Adjuvant Nivolumab versus Placebo in Muscle-Invasive Urothelial Carcinoma. N Engl J Med 2021, 384:2102.6)Pfister C, Gravis G, Fléchon A, et al. Dose-Dense Methotrexate, Vinblastine, Doxorubicin, and Cisplatin or Gemcitabine and Cisplatin as Perioperative Chemotherapy for Patients With Nonmetastatic Muscle-Invasive Bladder Cancer: Results of the GETUG-AFU V05 VESPER Trial. J Clin Oncol 2022, 40:2013.7)NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology, Bladder Cancer. Version 2.2022

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2022年の消化器がん薬物療法の進歩を振り返る!【Oncology主要トピックス2022 消化器がん編】【消化器がんインタビュー】第12回

がんに対する薬物療法の開発は日進月歩の勢いで進んでおり、新たなエビデンスが日々生み出されている。かつて、消化器がんに対する薬物療法は、選択肢やその治療効果が限定的であったが、近年では分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬が実臨床に導入され、さらには抗体薬物複合体も標準治療に組み込まれるなど、目覚ましい進歩を遂げている。2022年はCheckMate 648試験を皮切りに、消化器がん薬物療法に関する学会発表や論文を含め多くの新知見が報告された印象的な1年であった。本稿ではその中でも実臨床に直結し得るインパクトのあった報告を、がん種ごとにまとめて概説する。がん種ごとのエビデンス1. 食道がん・CheckMate 648試験(Doki Y, et al. N Engl J Med 2022;386:449-462.)CheckMate 648試験は、未治療の根治切除不能な進行・再発食道扁平上皮がんを対象に、シスプラチン+5-FU(CF)療法を対照として、CFとニボルマブ併用療法の優越性、ニボルマブとイピリムマブ併用療法の優越性を検証した国際共同第III相試験である。主要評価項目はPD-L1陽性(TPS≧1)例における全生存期間(OS)と無増悪生存期間(PFS)と設定された。本試験には970例が登録され、PD-L1陽性例におけるOS中央値はCF療法群が9.1ヵ月、ニボルマブ併用群が15.4ヵ月と優越性(ハザード比[HR]:0.54、95%信頼区間[CI]:0.37~0.80、p

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アテゾリズマブのNSCLCアジュバント、日本人でも有効(IMpower010)/日本肺癌学会

 非小細胞肺がん(NSCLC)に対するアテゾリズマブの術後補助療法は、日本人においても良好な成績を示した。 第63回日本肺癌学会学術集会で、静岡県立静岡がんセンターの釼持 広知氏が、アテゾリズマブ術後補助療法の第III相試験IMpower010の日本人サブセットを発表している。内容の一部は、Cancer Science誌2022年9月5日号で発表されたものである。・対象:UICC/AJCC第7版定義のStageIB~IIIAのNSCLC、手術後にシスプラチンベースの補助化学療法(最大4サイクル)を受けた1,005例・試験群:アテゾリズマブ1,200mg/日3週ごと16サイクルまたは1年・対照群:BSC・評価項目[主要評価項目]治験医師評価による階層的無病生存期間(DFS):(1)PD-L1 TC≧1% StageII~IIIA集団、(2)StageII~IIIA全集団、(3)ITT(StageIB~IIIA全無作為化)集団[副次評価項目]ITT集団の全生存期間(OS)、PD-L1 TC≧50% StageII~IIIA集団のDFS、全集団の3年・5年DFS 主な結果は以下のとおり。・日本人は149例が登録され、無作為化割り付け対象は117例、そのうちアテゾリズマブ群は59例、BSCは58例であった。・PD-L1≧1%のStageII~IIIAのDFSはアテゾリズマブ群未到達、BSC群31.4ヵ月であり、アテゾリズマブによる改善傾向が観察された(ハザード比[HR]:0.52、95%信頼区間[CI]:0.25〜1.08)。・OS中央値は、アテゾリズマブ群、BSC群ともに未到達で、HRは0.41(95%CI:0.41〜1.04)であった。・データカットオフ日(2021年1月21日)にアテゾリズマブの治療を完遂(3週ごと16サイクル)した患者は59例中35例であった。・アテゾリズマブのGrade3/4治療関連有害事象(TRAE)16%で発現した。頻度の高いアテゾリズマブのTRAEは皮疹、肝炎、肺臓炎などであった。肺臓炎の発現は10.7%、Grade3/4の発現はない。 発表者の釼持氏は、今回の成績を評価しつつも、長期にわたり患者のQOLを下げるirAEの可能性などを考慮し、長期データに注目すべきだと結んだ。

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がん薬物療法時の腎障害診療ガイドライン2022、利用者の意見反映

 『がん薬物療法時の腎障害診療ガイドライン』が6年ぶりに改訂された。2016年の初版から分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬による治療の知見が増えたことや腎障害にはさまざまな分野の医師が関与することを踏まえ、4学会(日本腎臓学会、日本癌治療学会、日本臨床腫瘍学会、日本腎臓病薬物療法学会)が合同で改訂に携わった。 本書は背景疑問を明確に定義する目的で16の「総説」が新たに記載されている。また、実用性を考慮して全体を「第1章 がん薬物療法対象患者の腎機能評価」(治療前)、「第2章 腎機能障害患者に対するがん薬物療法の適応と投与方法」(治療前)、「第3章 がん薬物療法による腎障害への対策」(治療中)、「第4章 がんサバイバーのCKD治療」(治療後)の4章にまとめている。とくに第4章は今回新たに追加されたが、がんサバイバーの長期予後が改善される中で臨床的意義を考慮したものだ。2022版のクリニカルクエスチョン(CQ)※総説はここでは割愛■第1章 がん薬物療法対象患者の腎機能評価CQ 1 がん患者の腎機能(GFR)評価に推算式を使用することは推奨されるか?CQ 2 シスプラチンなどの抗がん薬によるAKIの早期診断に新規AKIバイオマーカーによる評価は推奨されるか?CQ 3 がん薬物療法前に水腎症を認めた場合、尿管ステント留置または腎瘻造設を行うことは推奨されるか?■第2章 腎機能障害患者に対するがん薬物療法の適応と投与方法CQ 4 透析患者に対する免疫チェックポイント阻害薬の使用は推奨されるか?CQ 5 腎移植患者に対する免疫チェックポイント阻害薬の使用は推奨されるか?■第3章 がん薬物療法による腎障害への対策CQ 6 成人におけるシスプラチン投与時の腎機能障害を軽減するために推奨される補液方法は何か?CQ 7 蛋白尿を有する、または既往がある患者において血管新生阻害薬の投与は推奨されるか?CQ 8 抗EGFR抗体薬の投与を受けている患者が低Mg血症を発症した場合、Mgの追加補充は推奨されるか?CQ 9 免疫チェックポイント阻害薬による腎障害の治療に使用するステロイド薬の投与を、腎機能の正常化後に中止することは推奨されるか?CQ 10 免疫チェックポイント阻害薬投与に伴う腎障害が回復した後、再投与は治療として推奨されるか?■第4章 がんサバイバーのCKD治療CQ 11 がんサバイバーの腎性貧血に対するエリスロポエチン刺激薬投与は推奨されるか?アンケート結果で見る、認知度・活用度が低かった3つのCQ 本書を発刊するにあたり、日本腎臓学会、日本がんサポーティブケア学会、日本医療薬学会、日本臨床腫瘍学会、日本癌治療学会の5学会は初版(2016年版)の使用に関する実態調査報告を行っている。回答者は1,466人で、学会別で見ると、日本腎臓学会から264人(アンケート実施時の会員数:約1万人)、日本臨床腫瘍学会から166人(同:9,276人)、日本癌治療学会から107人(同:1万6,838人)、日本医療薬学会から829人(同:1万3,750人)、日本がんサポーティブケア学会から25人(同:約1,000人)、そのほかの学会より74人の回答が得られた。 なかでも、認知度が低かった3つを以下に挙げる。これらは腎臓病学領域での認知度はそれぞれ、63.1%、69.7%、62.0%であったのに対し、薬学領域での認知度はそれぞれ52.9%、51.9%、39.5%。腫瘍学領域での認知度はそれぞれ49.5%、56.5%、43.2%と比較的低値に留まった。(1)CQ2:がん患者AKI(急性腎障害)のバイオマーカー(2)CQ14:CDDP(シスプラチン)直後の透析(3)CQ16:抗がん剤TMA(血栓性微小血管症)に対するPE(血漿交換) 認知度・活用度の低いCQが存在する理由の1つとして、「CQの汎用性の高さに比して、実用性に関しては当時十分に普及していなかった」と可能性を挙げおり、たとえば「CQ2は認知度55.2%、活用度59.8%とともに低値である。抗がん薬によるAKI予測は汎用性の高いテーマではあるが、2016年のガイドライン時点では、代表的なバイオマーカーである尿NGAL、尿KIM-1、NephroCheck(R)[尿中TIMP-2とIGFBP7の濃度の積]が保険適用外であった。しかし、尿NGAL(好中球ゼラチナーゼ結合性リポカリン)が2017年2月1日に保険適用となり、バイオマーカーの実用性が認識されてきた。加えて、エビデンスを評価できる論文も増加してきたことから、今回あらためてシステマティックレビューを行い、positive clinical utility index(CUI)が0.782でgood(0.64以上0.81未満)、negative CUIも0.915でexcellent(0.81以上)と高い評価が得られたことを、2022年のガイドラインで記載している」としている。 本ガイドラインに対する要望として最も多かったのは「腎機能低下時の抗がん薬の用量調整に関して具体的に記載してほしい」という意見であったそうで、「本調査結果を今後のガイドライン改訂に活かし、より実用的なガイドラインとして発展させていくことが重要」としている。

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食道癌診療ガイドライン2022改訂、日本発エビデンスで治療戦略が大きく変更

 2022年9月に「食道癌診療ガイドライン」が刊行された。2002年に「食道癌治療ガイドライン」が発刊されてから20年、前版から5年振りの改訂となる。 10月に行われた日本癌治療学会の北川 雄光氏(慶應義塾大学・食道癌治療ガイドライン検討委員会委員長)の講演「食道癌集学的治療のこれまで、これから」、浜本 康夫氏(慶應義塾大学・腫瘍センター)による教育講演「食道扁平上皮がんに対する薬物療法」を参考として、食道癌診療ガイドライン2022年版の主な変更点をまとめた。食道癌診療ガイドライン2022年版で大きく変更のあったCQ 食道がんは他の消化器がんと比べて薬物療法において使用できる薬剤の種類が限られており、近年まで切除可能症例については外科手術を基軸として、化学療法や放射線療法を用いた周術期治療が主に術前治療として行われてきた。しかし、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)が登場し、この3年ほどのあいだに大幅に治療戦略幅が広がってきた。そこには日本発のエビデンスも大きな役割を果たしている。今回の食道癌診療ガイドライン2022年版の改訂において、とくに大きく変更のあったクリニカルクエスチョン(CQ)は以下のとおり。CQ8:cStageII、III食道癌に対して手術療法を中心とした治療を行う場合、術前化学療法、術前化学放射線療法のどちらを推奨するか?→ cStageII、III食道癌に対して手術療法を中心とした治療を行う場合、DCF3剤併用術前療法を強く推奨する。 切除可能局所進行食道がんの術前療法としては、日本ではシスプラチン+5-FU(CF療法)が長らく標準療法であったが、欧米においては化学放射線療法が標準療法となっている。日本と海外では術式や組織型が異なるため、海外の臨床試験の結果をそのまま受け入れるのは難しいと考えられていた。一方、CF療法にドセタキセルを加えたDCF療法が頭頸部がんなどで有望な効果を示しており、術前療法としてのCF vs. DCF vs. CF+放射線(RT)療法の3つを比較したJCOG1109(NExT)試験が計画され、今年初めに結果が報告された。 NExT試験の結果は、CF群の3年生存率62.6%に対してDCF群は72.1%と10%近く上回り、CF群とCF+RT群には統計学的な有意差は示されない、というものだった。徹底的な郭清を行う日本の外科手術においては術前の強い化学療法が有効性を示す、という治療戦略の正しさを世界に示す結果となった。DCF群では遠隔転移が少ない一方で、CF+RT群では他病死が多く、放射線治療による晩期障害が他病死につながっている可能性が指摘されている。CQ9:cStageII、III食道癌に術前補助療法+手術療法を行った場合、術後補助療法を推奨するか?→ 1)cStageII、IIIの食道癌に対して、術前化学放射線療法および手術を行い、根治切除が得られるも病理学的完全奏効が得られない場合、組織型や腫瘍細胞におけるPD-L1の発現によらず、術後ニボルマブ療法を行うことを強く推奨する。→ 2)cStageII、IIIの食道癌に対して、術前化学療法および手術を行い、根治切除が得られるも病理学的完全奏効が得られない場合、術後ニボルマブ療法については、現時点で推奨を決定することができない。 1)は2020年に発表されたCheckMate-577試験の結果を受けたもの。術前化学放射線療法後に切除を行った食道がんまたは胃食道接合部がんに対するニボルマブの効果を見た試験であり、主要評価項目である無病生存期間(DCF)はニボルマブ群で22.4ヵ月(95%信頼区間[CI]:16.6~34.0)、プラセボ群で11.0ヵ月(95%CI:8.3~14.3)と、ニボルマブ群の優越性が示された。ニボルマブの有効性は組織型にも拠らないという結果だった。 2)の術前化学療法+術後のニボルマブ投与の有用性は準拠するエビデンスがない状態で、日本の標準療法が術前DCF療法であることを考えると、ここは早急にエビデンスの確立が求められる部分だ。CQ15:切除不能進行・再発食道癌に対して一次治療として化学療法は何を推奨するか?→ 1)切除不能進行・再発食道癌に対して一次治療として、ペムブロリズマブ+シスプラチン+5-FU療法を行うことを強く推奨する。→ 2)切除不能進行・再発食道癌に対して一次治療として、ニボルマブ+シスプラチン+5-FU療法もしくはニボルマブ+イピリムマブ療法を行うことを強く推奨するが、患者の全身状態および、PD-L1発現状況(TPS)、忍容性等を考慮する。 近年、二次化学療法においてICIの有用性が示され、一次療法においても検討が行われている。1)はKEYNOTE-590試験の結果を受けたもので、749例を対象に初回治療としてのペムブロリズマブの有効性を見た試験おいて、扁平上皮がんかつCPS>10の患者集団における全生存期間(OS)中央値は、ペムブロリズマブ群13.9ヵ月(95%CI:11.1~17.7)に対して、プラセボ群8.8ヵ月(95%CI:7.8~10.5)であり、ペムブロリズマブ併用群の優越性が示された。 2)はCheckMate-648試験の結果を受けたもので、登録患者970例はニボルマブ+化学療法群、ニボルマブ+イピリムマブ群、化学療法単独群に1:1:1で割り付けられた。ニボルマブ+化学療法群の無増悪生存期間(PFS)中央値は、TPS≧1集団において6.9ヵ月(95%CI:5.7~8.3)であり、化学療法単独群の4.4ヵ月(95%CI:2.9~5.8)を有意に上回ったが、全ランダム化集団においては有意差を認めなかった。 食道がんも他のがん種と同様に、外科手術中心の時代から化学療法に加えて放射線療法やICIも組み合わせた集学的・個別化医療の時代に突入しており、今後はロボット支援手術によるさらなる低侵襲化や合併症の軽減によって長期予後を狙うことなどに焦点が当てられている。また、食道癌診療ガイドライン2022版の改訂にあわせ、『食道癌取扱い規約』も12版に改訂されている。『食道癌診療ガイドライン 2022年版 第5版』編集:日本食道学会定価:3,520円(税込)発行:2022年9月B5判・176頁・図数:19枚・カラー図数:13枚

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既治療のEGFR陽性扁平上皮NSCLCに対するsintilimab+ベバシズマブ+化学療法の有用性(ORIENT-31)/ESMO2022

 EGFR-TKI治療歴のあるEGFR陽性の扁平上皮非小細胞肺がん(Sq NSCLC)患者に対して、抗PD-1抗体sintilimab、ベバシズマブバイオシミラー、化学療法の併用療法は化学療法に比べて無増悪生存期間(PFS)を延長した。第III相試験ORIENT-31の第2回中間解析結果として、中国・上海交通大学のShun Lu氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO2022)で報告した。・対象: EGFR-TKI治療歴のあるEGFR陽性のSq NSCLC患者・試験群(1):sintilimab+IBI305(ベバシズマブバイオシミラー)+ペメトレキセド+シスプラチン(158例)・試験群(2):sintilimab+ペメトレキセド+シスプラチン(158例)・対照群:ペメトレキセド+シスプラチン(160例)・評価項目:[主要評価項目]PFS[副次評価項目]客観的奏効率(ORR)、病勢コントロール率(DCR)、奏効期間(DoR) 主な結果は以下のとおり。・中央値13.1ヵ月の追跡期間において、試験群(1)、試験群(2)、対照群のPFS中央値はそれぞれ7.2ヵ月、5.5ヵ月、4.3ヵ月であり、試験群(2)は対照群に対してPFSを有意に改善していた(ハザード比:0.72、95%信頼区間[CI]:0.55〜0.95、p=0.0181)。なお、試験群(1)の対照群に対するPFS改善効果については、1回目の中間解析で報告済み。・試験群(1)、試験群(2)、対照群のORRはそれぞれ48.1%、34.8%、29.4%であった。・試験群(1)、試験群(2)、対照群のDCRはそれぞれ86.1%、81.6%、75.6%であった。・試験群(1)、試験群(2)、対照群のDoR中央値はそれぞれ8.5ヵ月、7.4ヵ月、5.7ヵ月であった。・Grade3以上の有害事象は、試験群(1)、試験群(2)、対照群のそれぞれ59.5%、46.2%、56.9%に認められた。 Lu氏は今回の結果について、「EGFR-TKI治療歴のあるEGFR陽性のSq NSCLC患者に対して、抗VEGF抗体の有無にかかわらず、白金系抗がん剤に抗PD-1抗体を併用することでPFSが改善することが示唆された」とまとめた。

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デュルバルマブ+化学療法、進行胆道がんに米国で承認/アストラゼネカ

 アストラゼネカは2022年9月12日、局所進行または転移のある胆道がん(BTC)の成人患者の治療薬として、デュルバルマブ(製品名:イミフィンジ)と化学療法(ゲムシタビン+シスプラチン)との併用療法が、米国で承認されたことを発表した。 米国食品医薬品局(FDA)による今回の承認は、転移のあるBTC患者685例を対象とした、第III相無作為化二重盲検プラセボ対照国際多施設共同試験TOPAZ-1の結果に基づいている。 TOPAZ-1試験の中間解析では、デュルバルマブと化学療法の併用により、化学療法単独と比べて死亡リスクが20%低下することが示された(ハザード比[HR]:0.80、95%信頼区間[CI]:0.66〜0.97、p=0.021)。治療開始から2年後の生存率は、デュルバルマブと化学療法の併用療法で25%、化学療法単独で10%と推定された。結果は、PD-L1の発現状況や腫瘍の原発部位にかかわらず、事前に規定されたすべてのサブグループで一致していた。 米国では毎年約2万3千人がBTCと診断されている。BTCの患者の予後は不良で、5年生存率は約5〜15%である。

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デュルバルマブ+tremelimumab+化学療法は長期フォローアップ後でも、NSCLC1次治療の予後改善を維持(POSEIDON)/ESMO2022

 転移のある非小細胞肺がん(NSCLC)に対する1次治療としての、デュルバルマブとtremelimumabと化学療法の併用効果に関する長期フォローアップの結果が、米国・Sarah Cannon Research InstituteのMelissa Johnson氏から欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2022)で発表された。 これは、2021年に発表のあった第III相の国際共同オープンラベルのPOSEIDON試験の観察期間中央値4年を超えるフォローアップの結果である。・対象:未治療のEGFR/ALK野生型の転移のあるNSCLC症例・試験群: -DurTre群:デュルバルマブ+tremelimumab+化学療法→デュルバルマブ+tremelimumab(338例) -Dur群:デュルバルマブ+化学療法→デュルバルマブ(338例)・対照群:化学療法(CT群:337例) 化学療法は、ゲムシタビン+シスプラチン、カルボプラチン+ペメトレキセド、nabパクリタキセル+カルボプラチンなど・評価項目[主要評価項目]Dur群対CT群における無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)[副次評価項目]DurTre群対CT群におけるPFS、OSなど 主な結果は以下のとおり。・データカットオフ(2022年3月)時点の観察期間中央値は46.5ヵ月であった。・OS中央値はDurTre群で14.0ヵ月、CT群で11.7ヵ月、ハザード比(HR)は0.75(95%信頼区間[CI]:0.63~0.88)、Dur群ではOS中央値13.3ヵ月、HRは0.84(95%CI:0.71~0.99)であった。3年OS率はDurTre群25.0%、Dur群20.7%、CT群13.6%であった。・病理組織型別では、非扁平上皮がんのOS中央値はDurTre群17.2ヵ月、CT群13.1ヵ月でHRは0.68(95%CI:0.55~0.85)であった。Dur群ではOS中央値14.8ヵ月、HRは0.80(95%CI:0.64~0.98)だった。・STK11変異は87例に認められ、DurTre群対CT群のOS HRは0.62(95%CI:0.34~1.12)で、Dur群のOS HRは1.06(95%CI:0.61~1.89)であった。3年時OS率はDurTre群25.8%、Tre群14.7%、CT群4.5%であった。・KRAS変異は182例で、DurTre群のOSのHRは0.55(95%CI:0.36~0.85)で、Dur群のOS HR:0.78(95%CI:0.52~1.16)であった。3年OS率は、DurTre群40.0%、Dur群26.1%、CT群15.8%であった。・KEAP1変異は29例で、DurTre群のOSのHRは0.43(95%CI:0.16~1.25)、Dur群ではHR:0.77(95%CI:0.31~2.15)だった。・長期のフォローアップにおいても新たなる安全性の懸念は報告されなかった。 最後に演者は「今回の追跡結果においてもOSの優位性は変わらず認められ、種々の遺伝子変異や病理組織型においても、デュルバルマブ+tremelimumab+化学療法の有用性が確認され、今後このレジメンが、NSCLCの1次治療の選択肢となり得る」と述べた。

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シスプラチン不適応の進行尿路上皮がんの1次治療ペムブロリズマブ+エンホルツマブ・ベドチンは有望(EV-103)/ESMO2022

 シスプラチン不適応の局所進行または転移のある尿路上皮がんに(mUC)対する1次治療として、ペムブロリズマブとエンホルツマブ・ベドチン(EV)の併用療法に関する報告が、米国・Memorial Sloan Kettering Cancer CenterのJonathan E. Rosenberg氏から、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2022)で発表された。 これは第Ib/II相のEV-103試験(KEYNOTE-869試験)の中から、第II相部分のコホートKの解析結果発表である。・対象:前治療歴のないシスプラチン不適応のmUC症例・試験群:ペムブロリズマブ(day1)+EV(day1、8)3週ごと(Pem群:76例)・対照群:EV(day1、8)2週ごと(EV群:73例)・評価項目:[主要評価項目]独立評価委員会による奏効率(ORR)[副次評価項目]主治医判定によるORR、奏効期間(DOR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、安全性など 主な結果は以下のとおり。・患者背景は、年齢中央値は71~74歳、両群とも8割に内臓転移があり、PD-L1発現CPS 10以上は4割であった。シスプラチン不適応の主な理由は、両群ともに6割が腎機能障害だった。・データカットオフ(2022年6月)時点でPem群の32.5%、EV群の10.8%が治療継続中であり、投与サイクル数中央値はPem群11.0、EV群8.0であった。・Pem群のORRは64.5%(CR:10.5%)でEV群は45.2%(CR:4.1%)であった。奏効までの期間中央値は両群共に2.07ヵ月であった。・Pem群では、97.1%で腫瘍縮小が認められ、その効果はPD-L1の発現状態(CPS10以上/10未満)と相関はなく、ネクチン-4の発現レベルとの関連性もなかった。・DOR中央値はPem群未到達、EV群13.2ヵ月、12ヵ月以上の奏効期間を示した症例はPem群で65.4%、EV群で56.3%であった。・PFS中央値はPem群未到達、EV群8.0ヵ月、12ヵ月PFS率は55.1%と35.8%であった。・OS中央値はPem群22.3ヵ月、EV群21.7ヵ月であった。12ヵ月OS率は80.7%と70.7%だった。・Grade3以上の有害事象はPem群の63.2%、EV群の47.9%に発現し、重篤なものは、23.7%と15.1%であった。多く認められた有害事象は、倦怠感、末梢神経障害、皮膚障害、脱毛などで、とくにGrade3以上の皮膚障害がPem群の21.1%、EV群の8.2%に発現した。 演者は「現在ペムブロリズマブとEV併用の第III相試験が3本進行中であり、この両剤の併用療法はシスプラチン不適応のmUC症例への可能性を示唆している」と結んだ。

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NSCLC術後補助療法 ペメトレキセド+シスプラチンはビノレルビン+シスプラチンと同様のOS(JIPANG)/ESMO2022

 完全切除を受けた非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)に対する術後化学療法として、ペメトレキセド+シスプラチン療法とビノレルビン+シスプラチン療法の無再発生存期間(RFS)と全生存期間(OS)に関する最終結果を、国立がん研究センター東病院の葉清隆氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2022)で発表した。 これは日本で実施された第III相試験であるJIPANG試験の最終解析報告であり、すでにRFSと忍容性については報告がなされている。・対象:Stage II~IIIAで完全切除を受けた非扁平上皮NSCLC症例・試験群:ペメトレキセド+シスプラチン(PC群) ・対照群:ビノレルビン+シスプラチン(VC群)両群ともに3週ごとに4サイクルまで投与・評価項目:[主要評価項目]RFS[副次評価項目]OS、治療完遂率、毒性 主な結果は以下のとおり。・2012年3月〜2016年8月に登録された783例が解析対象となった(PC群389例、VC群394例)。・病期はStage IIIAがPC群53.0%、VC群52.5%、EGFR変異陽性(EGFR+)はそれぞれ24.9%と24.1%であった。・観察期間中央値72.7ヵ月時点でのRFS中央値はPC群が43.4ヵ月、VC群が37.5ヵ月で、ハザード比(HR)は0.95(95%信頼区間[CI]:0.79~1.14)であった。5年時RFS率は、PC群44.9%、VC群42.6%であった。・観察期間中央値77.3ヵ月時点でのOS中央値は両群ともに未到達で、HRは1.03(95%CI:0.80~1.32)であった。5年時OS率はPC群が75.0%、VC群が75.6%であった。・OSのサブグループ解析において、EGFR+グループではVC群が良好で(HR:1.93、95%CI:1.13~3.28)、Stage IIIAグループにおいてもVC群が良好(HR:1.43、95%CI:1.03~1.98)であった。また、Stage IIグループではPC群が良好(HR:0.63、95%CI:0.41~0.95)であった。・Grade3以上の有害事象は、PC群47%、VC群89%であった。・主な再発部位はリンパ節(35~39%)と肺(29~41%)であり、脳転移はEGFR+グループでPC群30.3%、VC群18.6%、EGFR野生型グループではPC群18.6%、VC群27.5%であった。

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アテゾリズマブによるNSCLCアジュバントのOS中間解析(IMpower010)/WCLC2022

 完全切除非小細胞肺がん(NSCLC)におけるアテゾリズマブの術後補助療法を評価した第III相非盲検試験IMpower010の全生存期間(OS)の中間解析が発表された。PD-L1≧1%のStage II〜IIIA集団において、アテゾリズマブはBSCよりも良好な傾向を示した。IMpower010のOS中間解析はPD-L1≧1%でアテゾリズマブが良好 中間解析でアテゾリズマブの術後補助療法はStage II~IIIAの無病生存期間(DFS)を有意に改善に改善した。しかし、前回の中間分析の時点ではOSは未達成であった。世界肺癌学会(WCLC2022)では、OSと安全性の評価がスペイン・Vall d’Hebron大学病院のE.Felip氏から発表された。・対象:UICC/AJCC第7版定義のStage IB~IIIAのNSCLC、手術後にシスプラチンベースの補助化学療法(最大4サイクル)を受けた1,005例・試験群:アテゾリズマブ1,200mg/日3週ごと16サイクルまたは1年・対照群:BSC・評価項目[主要評価項目]治験医師評価による階層的DFS:(1)PD-L1 TC≧1% Stage II~IIIA集団、(2)Stage II~IIIA全集団、(3)ITT(Stage IB~IIIA全無作為化)集団[副次評価項目]ITT集団の全生存期間(OS)、PD-L1 TC≧50% Stage II~IIIA集団のDFS、全集団の3年・5年DFS IMpower010のOS中間解析の主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値は45.3ヵ月であった(データカットオフ2022年4月18日)。・PD-L1 TC≧1%のStage II~IIIA集団におけるOS中央値は、アテゾリズマブ群、BSC群とも未到達、36ヵ月OSはそれぞれ82.1%と78.9%であった(HR:0.71、95%CI:0.49~1.03)・全無作為化集団(Stage II〜IIIA)のOS中央値は、アテゾリズマブ群、BSC群とも未到達(HR:0.95、95%CI:0.74〜1.24)であった。・OSのサブグループ解析では、ほとんどの項目でアテゾリズマブが良好であった。・PD-L1発現別にみると、PD-L1≧50%のHRは0.43(95%CI:0.49~10.78)、1~49%のHRは0.95(95%CI:0.59~1.54)、PD-L1<1%のHRは1.36(95%CI:0.93~1.99)であった。・追跡期間を追加しても安全性プロファイルに変化はなかった。

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エンホルツマブ ベドチン+ぺムブロリズマブの尿路上皮がん1次治療が良好な結果示す(EV-103)/アステラス

 アステラスは、Seagenと共同で開発を進めている抗体-薬物複合体(ADC)であるエンホルツマブ ベドチン(一般名:パドセブ)について、第Ib/II相EV-103試験(KEYNOTE-869試験)のコホートKで良好なトップライン結果が得られたと発表した。 EV-103試験コホートKは、切除不能な局所進行性または転移のある尿路上皮がんで、シスプラチン不適応の患者における1次治療として、エンホルツマブ ベドチン単剤とペムブロリズマブ併用を評価する無作為化試験。 コホートKの主要評価項目である盲検下独立中央評価(BICR)の客観的奏効率(ORR)は、併用群で64.5%(95%信頼区間[CI]:52.7~75.1)であった。BICR評価の奏効期間中央値は未到達であった。有効性および安全性は、全体としてEV-103試験での既知のものと一致していた。試験結果は今後開催される学会で発表する予定である。

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liso-cel、再発・難治性大細胞型B細胞リンパ腫の2次治療に有効か?/Lancet

 早期再発または難治性の大細胞型B細胞リンパ腫(LBCL)の2次治療において、CD19を標的とするキメラ抗原受容体(CAR)-T細胞療法リソカブタゲン マラルユーセル(liso-cel)は従来の標準治療と比較して、無イベント生存期間を約8ヵ月延長することが、米国・コロラド大学がんセンターのManali Kamdar氏らが進めている「TRANSFORM試験」の中間解析で示された。安全性に関する新たな懸念は認めなかったという。研究の成果は、Lancet誌2022年6月18日号に掲載された。47施設の無作為化第III相試験の中間解析 TRANSFORMは、再発・難治性LBCLの2次治療におけるliso-celの有効性と安全性の評価を目的とする非盲検無作為化第III相試験であり、2018年10月23日~2020年12月8日の期間に、米国、欧州、日本の47施設で参加者のスクリーニングが行われた(CelgeneとBristol-Myers Squibb Companyの助成を受けた)。この試験は進行中で、今回は中間解析の結果が報告された。 対象は、年齢18~75歳、1次治療に抵抗性、またはアンスラサイクリン系薬剤と抗CD20モノクローナル抗体を含む1次治療で初回奏効が得られてから12ヵ月以内に再発したLBCLで、全身状態の指標であるEastern Cooperative Oncology Group performance status(ECOG PS)のスコアが0または1、自家造血幹細胞移植(HSCT)の適応があり、Lugano基準(2014年)でPET陽性の病変を有する患者であった。 被験者は、liso-celの投与群または標準治療を受ける群に1対1の割合で無作為に割り付けられた。liso-cel群は、リンパ球除去化学療法(フルダラビン+シクロホスファミド)を3日間受けたのち、総用量100×106 CAR+T細胞を目標に、CD8+とCD4+のCAR+T細胞を2回連続で静脈内投与された。 標準治療群は、救援免疫化学療法として、担当医の裁量でR-DHAP(リツキシマブ+デキサメタゾン+シタラビン+シスプラチン)、R-ICE(リツキシマブ+イホスファミド+エトポシド+カルボプラチン)、R-GDP(リツキシマブ+デキサメタゾン+ゲムシタビン+シスプラチン)のうちいずれか1つを3サイクル施行され、このうち奏効(完全奏効、部分奏効)が得られた患者が、大量化学療法(カルムスチン+エトポシド+シタラビン+メルファラン)を1サイクルと自家HSCTを受けた。 主要エンドポイント、は無イベント生存期間とされた。奏効の評価は、独立の審査委員会がLugano基準(2014年)を用いて行った。完全奏効割合や無増悪生存期間も良好 184例が登録され、liso-cel群に92例(年齢中央値60歳[IQR:53.5~67.5]、女性52%)、標準治療群にも92例(58.0歳[42.0~65.0]、34%)が割り付けられた。多くの患者(160例[87%])が、びまん性LBCL(DLBCL)(DLBCL-NOSまたは濾胞性リンパ腫からの形質転換が117例[64%])あるいは高悪性度B細胞リンパ腫(43例[23%])であり、135例(73%)は1次治療に抵抗性、61例(33%)は65歳以上で、73例(40%)はsAAIPI≧2であった。追跡期間中央値は6.2ヵ月(IQR:4.4~11.5)だった。 無イベント生存期間中央値は、liso-cel群が10.1ヵ月(95%信頼区間[CI]:6.1~未到達)と、標準治療群の2.3ヵ月(2.2~4.3)に比べ有意に改善された(層別ハザード比:0.35、95%CI:0.23~0.53、層別Cox比例ハザードモデルの片側検定のp<0.0001)。 完全奏効割合(66% vs.39%、p<0.0001)、無増悪生存期間中央値(14.8ヵ月vs.5.7ヵ月、p=0.0001)、全生存期間中央値(未到達vs.16.4ヵ月、p=0.026)は、いずれもliso-cel群で良好であった。 最も頻度の高いGrade3以上の有害事象は、好中球数減少(liso-cel群80%[74/92例]vs.標準治療群51%[46/91例])、貧血(49%[45例]vs.49%[45例])、血小板減少(49%[45例]vs. 64%[58例])、遷延性血球減少(43%[40例]vs.3%[3例])であった。liso-cel群で、とくに注目すべき有害事象として、CAR-T細胞療法関連のGrade3のサイトカイン放出症候群が1%(1例)、神経学的事象が4%(4例)で発現した(Grade4、5は認めなかった)。 試験薬投与下の有害事象(無作為化の日から最終投与後90日までに発現または悪化した有害事象)のうち重篤な事象は、liso-cel群で48%(44例)、標準治療群で48%(44例)に認められた。2次治療におけるliso-celの安全性に関する新たな懸念は確認されなかった。また、治療関連死は、liso-cel群ではみられず、標準治療群では1例(敗血症)で認められた。 著者は、「これらの結果は、早期再発または難治性のLBCL患者における、新たな2次治療の推奨レジメンとして、liso-celを支持するものである」としている。

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転移尿路上皮がんに対するカボザンチニブとアテゾリズマブの併用療法は有用である可能性(COSMIC 021)/ASCO 2022

 転移のある手術不能の尿路上皮がん(mUC)に対するカボザンチニブとアテゾリズマブの併用療法の有効性と安全性の初期データが、米国臨床腫瘍学会年次総会(2022 ASCO Annual Meeting)において米国・City of Hope Comprehensive Cancer CenterのSumanta Pal氏より報告された。 これは、前立腺がんや腎がん、肺がんなども対象にしたカボザンチニブ+アテゾリズマブ併用療法の国際共同の第I相b試験COSMIC-021の結果で、今回はmUCの3つのコホートの解析結果である。・対象:未治療のmUCである下記の3つのコホート コホート3:シスプラチン不適応の症例(30例:C3) コホート4:シスプラチンに適応の症例(30例:C4) コホート5:免疫チェックポイント阻害剤既治療でチロシンキナーゼ阻害剤未治療の症例(31例:C5)・介入:カボザンチニブ40mg/日連日+アテゾリズマブ1,200mg 3週ごと・評価項目: [主要評価項目]主治医判定による奏効率(ORR) [副次評価項目]安全性 [探索的評価項目]奏功期間(DoR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS) 主な結果は以下のとおり。・2021年11月時点での追跡期間中央値は、C3で27.9ヵ月、C4、C5でそれぞれ19.1ヵ月と32.9ヵ月であった。・ORRはC3で20%(CR3%を含む)、C4で30%(CR7%)、C5で10%(CRなし)であった。・DoR中央値は、C3で7.1ヵ月、C4で未到達、C5で4.1ヵ月であった。・PFS中央値は、C3で5.6ヵ月、C4で7.8ヵ月、C5で3.0ヵ月であった。・OS中央値は、C3で14.3ヵ月、C4で13.5ヵ月、C5で8.2ヵ月であった。・有害事象によるカボザンチニブの減量はC3で43%に、C4で27%に、C5では35%に認められた。同様にアテゾリズマブの投与延期は、それぞれ63%、40%、52%に認められた。・治療関連の有害事象で両剤とも投与中止となったのは、C3で13%、C4で17%、C5で19%であった。・Grade3以上の有害事象は、C3で63%に、C4で43%に、C5で45%に発現した。Grade3以上の全身倦怠感はC3で3%、C4で3%、C5で6%、有症候性肝炎はそれぞれ0%、7%、3%、膵炎は13%、10%、6%であった。

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頭頸部癌診療ガイドライン 2022年版

治療法の変化や新知見に対応した改訂版。実臨床を強くサポート!頭頸部癌診療の指針となる診療ガイドラインの改訂第4版。化学放射線療法、センチネルリンパ節生検、術後の放射線治療に併用するシスプラチンの投与法、再発転移例へのfirst lineの薬物療法など、近年の重要な臨床試験結果や、遺伝子情報に基づく個別化治療の知見について対応している。新項目として治療各論に「嗅神経芽細胞腫」、CQに「緩和ケア」が追加された。解説項目、CQともにさらに充実した、実臨床を強くサポートする1冊。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    頭頸部癌診療ガイドライン 2022年版定価3,960円(税込)判型B5判頁数252頁・図数:11枚発行2022年5月編集日本頭頸部癌学会電子版でご購入の場合はこちら

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選択的NK1受容体拮抗型制吐剤、アロカリス点滴静注235mg新発売/大鵬薬品

 大鵬薬品工業は、2022年5月30日に選択的NK1受容体拮抗型制吐剤である「アロカリス点滴静注235mg」の販売を開始した。 本剤は、抗悪性腫瘍剤投与後の悪心、嘔吐の予防を目的に開発された選択的NK1受容体拮抗型制吐剤であり、活性本体であるネツピタントに変換されるリン酸化プロドラッグ製剤(注射剤)である。高度催吐性抗悪性腫瘍剤(シスプラチン)投与患者を対象に、パロノセトロンおよびデキサメタゾン併用下で、本剤とホスアプレピタントの有効性および安全性を比較した第III相試験(CONSOLE)の結果に基づき、2022年3月に製造販売承認を取得している。アロカリス点滴静注235mg製品概要・製品名:アロカリス®点滴静注235mg・一般名:ホスネツピタント塩化物塩酸塩・効能または効果:抗悪性腫瘍剤(シスプラチン等)投与に伴う消化器症状(悪心、嘔吐)(遅発期を含む)・用法および用量:他の制吐剤との併用において、通常、成人にはホスネツピタントとして235mgを抗悪性腫瘍剤投与1日目に1回、点滴静注する。・製造販売承認日:2022年3月28日・薬価収載日:2022年5月25日・発売日:2022年5月30日・薬価:11,276円/バイアル・包装:5バイアル・製造販売元:大鵬薬品工業株式会社

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