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事例11 インスリン(IRI)検査の査定【斬らレセプト】

解説2型糖尿病の在宅自己注射指導管理料算定中の患者に対して、糖尿病関連の諸検査を行ったところ、インスリン(IRI)検査が診療報酬支払基金よりC(医学的理由により不適当と判断されるもの)を理由に査定となった。事例の患者には在宅自己注射指導管理料が算定されている。体外からインスリンの補給を行っている患者であることがわかる。IRI検査は、血中のインスリンを測定する検査であって、自己分泌のインスリンであるかないかの区別はできない。したがって、インスリン治療をすでに開始している患者へのIRI検査は疑問であり、CPRが同時算定されていることもあって査定になったものであろう。事例の原因は、医学的判断ではなく検査項目がひとまとめに指定できるところにあった。セット項目に入っていても、必要が無いと判断された検査は、省いていただけるようお願いするとともに、セット項目を必要最小限に組み直して誤入力防止の対策とした。

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新薬の説明を例えで簡単に

患者さん用画 いわみせいじCopyright© 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.説明のポイント(医療スタッフ向け)診察室での会話患者 糖尿病の新しい薬が出たそうですね。医師 「DPP-4阻害薬」のことですね。患者 その薬はどんな薬なんですか?医師 糖尿病の飲み薬は今まで、5種類あったのですが、その中の2種類は膵臓を刺激してインスリンを出す薬で、よく効くのですが、食事の時間が遅れたりしたら低血糖になることがありました。患者 低血糖。それは怖いですね。医師 この新しい薬は、血糖を下げるインスリンというホルモンの出方をきめ細やかに調整してくれる薬なんです。画 いわみせいじ患者 インスリンの出方を調節?医師 つまり、蛇口から出る水をインスリンとすると、出しっぱなしになると低血糖になってしまいますが、この薬は血糖値が高い時はたくさん出してくれて、血糖値が低くなりはじめたら、蛇口を少し締めてくれます。患者 だから、高血糖にも低血糖になりにくいんですね。(納得した顔)ポイント水道の蛇口に例えることで、患者さんの理解が深まりますCopyright© 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.

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メトホルミンへの追加薬、インスリンはSU薬よりも予後が不良/JAMA

 メトホルミン単剤で治療を開始した糖尿病患者にインスリン製剤を追加投与すると、スルホニル尿素(SU)薬を追加した場合に比べ、非致死的心血管疾患や全死因死亡のリスクが高いことが、米国・ヴァンダービルト大学のChristianne L Roumie氏らの検討で示された。糖尿病治療では、メトホルミンのみではHbA1c≦7%の達成が難しく、追加薬を要することが多いが、適切な薬剤選択のエビデンスは少ない。医師は、良好な血糖コントロールや膵β細胞保護作用への期待から早期にインスリン製剤を導入する傾向が高まっているが、患者は体重増加や低血糖への懸念から導入を遅らせたがることが多いという。なお、同氏らはインスリン製剤のほうがリスクが低いとの仮説のもとで本研究を開始している。JAMA誌2014年6月11日号掲載の報告。追加薬の違いによる転帰の差を後ろ向きに解析 研究グループは、メトホルミンで治療を開始し無効となった糖尿病患者において、追加薬剤としてインスリン製剤を導入した場合とSU薬を使用した場合の転帰をレトロスペクティブに評価した。 退役軍人健康庁(VHA)、メディケア、国民死亡記録(NDI)のデータベースを使用し、2001~2008年の糖尿病患者のデータを抽出した。患者の背景因子に基づく傾向スコアマッチング法を用い、メトホルミン+インスリン群とメトホルミン+SU薬群に1対5の割合でマッチングした。 Cox比例ハザード周辺構造モデルを用いて、治療群間の複合転帰(非致死的急性心筋梗塞[AMI]、脳卒中による入院、全死因死亡)のリスクを比較した。AMIと脳卒中の頻度は同等、全死因死亡に大きな差 2001~2008年に17万8,341例がメトホルミンで治療を開始し、そのうち2,948例がインスリン製剤を、3万9,990例がSU薬を追加していた。傾向スコアマッチング法でメトホルミン+インスリン群の2,436例とメトホルミン+SU薬群の1万2,180例がマッチングされた。 両群ともに、薬剤追加時の年齢中央値は60歳、男性が95%であり、メトホルミン単剤の投与期間中央値は14ヵ月、HbA1c中央値は8.1%であった。薬剤追加後のフォローアップ期間中央値は14ヵ月。 イベント発生数は、メトホルミン+インスリン群が172件、メトホルミン+SU薬群は634件で、1,000人年当たりの頻度はそれぞれ42.7件、32.8件であり、インスリンを追加したほうが転帰が不良であった(補正ハザード比[aHR]:1.30、95%信頼区間[CI]:1.07~1.58、p=0.009)。 AMIと脳卒中の頻度は両群間で同等であったのに対し、全死因死亡がインスリン追加群で高頻度に発生していた。すなわち、AMI+脳卒中のイベント発生数はそれぞれ41件、229件で、1,000人年当たり10.2件、11.9件(aHR:0.88、95%CI:0.59~1.30、p=0.52)、全死因死亡はそれぞれ137件、444件で、1,000人年当たり33.7件、22.7件(aHR:1.44、95%CI:1.15~1.79、p=0.001)であった。 副次評価項目であるAMI、脳卒中による入院、心血管死の複合転帰のイベント発生数は、メトホルミン+インスリン群が54件、メトホルミン+SU薬群は258件で、1,000人年当たりの頻度はそれぞれ22.8件、22.5件と両群で同等だった(aHR:0.98、95%CI:0.71~1.34、p=0.87)。 著者は、「インスリン製剤の使用に関連するリスクの原因を解明するためにさらなる検討を要する」とし、「この知見は、経口投与が可能な患者ではインスリン製剤とSU薬の効果は同等とする勧告に疑問を投げかけるもの」と指摘している。

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肥満の閉塞性睡眠時無呼吸患者へのCPAP+減量介入の効果は?/NEJM

 肥満を伴う閉塞性睡眠時無呼吸患者の治療において、持続陽圧呼吸療法(CPAP)と減量介入の併用療法は、それぞれの単独療法に比べC反応性蛋白(CRP)値を改善しないことが、米国・ペンシルバニア大学のJulio A Chirinos氏らの検討で示された。肥満と閉塞性睡眠時無呼吸は併存する傾向があり、炎症やインスリン抵抗性、脂質異常症、高血圧との関連が知られているが、その因果関係は解明されていない。これまでに行われた心血管リスクに関する減量介入の試験に閉塞性睡眠時無呼吸患者は含まれておらず、CPAPの試験で肥満への介入を含むものはないという。NEJM誌2014年6月12日号掲載の報告。併用による増分効果を無作為化試験で評価 研究グループは、肥満を伴う閉塞性睡眠時無呼吸患者の治療におけるCPAP、減量介入、CPAP+減量介入の効果を比較する無作為化試験を実施した。対象は、BMI≧30、中等度~重度の閉塞性睡眠時無呼吸(無呼吸低呼吸指数[AHI]≧15回、AHI:睡眠1時間当たりの無呼吸、低呼吸の合計回数)、CRP>1.0mg/Lの患者とした。 CPAPは、個々の患者に合わせて機器を調整した後、毎晩施行した。減量介入は、週1回のカウンセリングを行い、カロリー摂取目標を体重114kg未満の患者は1,200~1,500kcal/日に、114kg以上の場合は1,500~1,800kcal/日に設定した。治療期間は24週であった。 ベースライン、8週、24週時に、CRP値(主要評価項目)、インスリン感受性(副次評価項目)、脂質値(同)、収縮期血圧(探索的評価項目)などを測定し、CPAPと減量介入の併用による各単独療法に対する増分効果の評価を行った。インスリン感受性の測定は、頻回採血ブドウ糖静注負荷試験で行った。CRP改善の増分効果はないが、厳格な治療遵守で収縮期血圧が改善 181例が登録され、併用群に62例(平均年齢49.0歳、男性53.2%、平均BMI 38.4、平均AHI 47.1回/時、高感度CRP中央値4.3mg/L)、CPAP群に58例(49.8歳、60.3%、39.8、41.2回/時、4.7mg/L)、減量群には61例(48.3歳、59%、38.1、39.7回/時、4.4mg/L)が割り付けられた。1回以上の評価が行われた146例が解析の対象となった。 24週の治療により、併用群と減量群ではCRP値(いずれもp<0.001)、インスリン抵抗性(p<0.001、p=0.01)、血清トリグリセライド(TG)値(p<0.001、p=0.03)が有意に改善したが、CPAP群ではこのような変化は認められなかった。収縮期血圧は3群のすべてで有意に低下した(併用群:p<0.001、CPAP群:p=0.02、減量群:p<0.007)。 併用群では、CPAP群や減量群に比べ、CRP値の有意な増分効果は認められなかったが、減量群ではCPAP群に比し有意に低下した(p=0.01)。また、併用群では、CPAP群に比べインスリン抵抗性(p=0.01)および血清TG値(p=0.046)が有意に改善したが、併用群と減量群には有意な差はなかった。 事前に規定されたアドヒアランスの基準を満たした90例(併用群:24例、CPAP群:39例、減量群:27例)を対象にper-protocol解析を行ったところ、併用群ではCPAP群、減量群に比べ、収縮期血圧(p<0.001、p=0.02)が有意に改善された。同様に、平均動脈圧も併用群が各単独群に比べ有意に改善した。 著者は、「CPAPと減量介入の併用によるCRP改善の増分効果は認めなかったが、併用レジメンの厳格な治療遵守により収縮期血圧で増分効果が得られる可能性がある」とまとめ、「肥満を伴う閉塞性睡眠時無呼吸患者の治療戦略では、減量介入が重要な要素であることが示唆される」と指摘している。

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「SGLT2阻害薬の適正使用を呼びかけるRecommendation」で副作用事例と対応策を公表

日本糖尿病学会「SGLT2阻害薬の適正使用に関する委員会」は、SGLT2阻害薬の発売開始から約1ヵ月の副作用報告を受け、6月13日に「SGLT2阻害薬の適正使用を呼びかけるRecommendation」を公表した。発表によると、報告された副作用として、当初予想された尿路・性器感染症に加え、重症低血糖、ケトアシドーシス、脳梗塞、全身性皮疹など重篤な副作用が発症しているとのことである。同委員会では、「現時点では必ずしも因果関係が明らかでないものも含まれている」としたうえで、「今の時点でこれらの副作用情報を広く共有することにより、今後、副作用のさらなる拡大を未然に防止することが必要と考えRecommendationと具体的副作用事例とその対策を報告した」としている。■Recommendation1.SU 薬などインスリン分泌促進薬やインスリンと併用する場合には、低血糖に十分留意して、それらの用量を減じる(方法については下記参照)。患者にも低血糖に関する教育を十分行うこと。2.高齢者への投与は、慎重に適応を考えたうえで開始する。発売から3ヵ月間に65歳以上の患者に投与する場合には、全例登録すること。3.脱水防止について患者への説明も含めて十分に対策を講じること。利尿薬との併用は推奨されない。4.発熱・下痢・嘔吐などがあるとき、ないしは食思不振で食事が十分摂れないような場合(シックデイ)には休薬する。5.本剤投与後、皮疹・紅斑などが認められた場合にはすみやかに投与を中止し、副作用報告を行うこと。6.尿路感染・性器感染については、適宜問診・検査を行って、発見に努めること。問診では質問紙の活用も推奨される。7.原則として、本剤はほかに2剤程度までの併用が当面推奨される。■副作用の事例と対策(抜粋)●重症低血糖24例(うち4例が重症例)の低血糖が報告され、多数の糖尿病薬を使用している患者にさらに追加されている場合が多くみられた。併用薬はSU薬、インスリンに加えて、ほかの作用機序の薬剤も含まれている。SGLT2阻害薬の添付文書にあるように、スルホニルウレア剤、速効型インスリン分泌促進剤またはインスリン製剤と同剤を併用する場合は、低血糖のリスクを軽減するためあらかじめスルホニルウレア剤などの併用剤の減量を検討する必要がある。とくに、SU薬にSGLT2阻害薬を併用する場合には、DPP-4阻害薬の場合に準じて、以下の通りSU薬の減量を検討することが必要。グリメピリド2mg/日を超えて使用している患者は2mg/日以下に減じるグリベンクラミド1.25mg/日を超えて使用している患者は1.25mg/日以下に減じるグリクラジド40mg/日を超えて使用している患者は40mg/日以下に減じる●ケトアシドーシス1例の報告例。本例では極端な糖質制限が行われていた。SGLT2阻害薬の投与に際し、インスリン分泌能が低下している症例への投与では、ケトアシドーシス発現に厳重な注意を図るとともに、同時に栄養不良状態、飢餓状態の患者や極端な糖質制限を行っている患者への投与ではケトアシドーシスを発現させうることに注意が必要。●脳梗塞3例(うち2例重篤、1例非重篤)の報告。脱水が脳梗塞発現に至りうることに改めて注意を喚起し、高齢者や利尿剤併用患者などの体液減少を起こしやすい患者に対するSGLT2阻害薬の投与は、十分な理由がある場合のみとし、とくに投与初期には体液減少に対する十分な観察と適切な水分補給を必ず行い、投与中はその注意を継続する。また、脱水がビグアナイド薬による乳酸アシドーシスの重大な危険因子であることに鑑み、ビグアナイド薬使用患者にSGLT2阻害薬を併用する場合には、脱水と乳酸アシドーシスに対する十分な注意が必要。参考「ビグアナイド薬の適正使用に関する委員会」からhttp://www.jds.or.jp/modules/important/index.php?page=article&storyid=20●全身性皮疹・紅斑全身性皮疹が7例(うち6例は重篤)の報告、全身紅斑または紅斑性皮疹が4例(うち3例が重篤)の報告。SGLT2阻害薬投与後、1~12日目で発症。SGLT2阻害薬との因果関係が疑われ、投与に際しては十分な注意が必要。SGLT2阻害薬の使用にあたっては、「適応を十分考慮したうえで、添付文書に示されている安全情報に十分な注意を払い、また、本Recommendationを十分に踏まえて、とくに安全性を最優先して適正使用されるべき」と注意を喚起している。●詳しくは、「SGLT2阻害薬の適正使用に関する委員会」からhttp://www.jds.or.jp/modules/important/index.php?page=article&storyid=48

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1年に1回自分の頑張りを振り返る

患者さん用1年に1回、世界糖尿病デー にこれまでの自分の頑張りを振り返りましょう!!画 いわみせいじCopyright© 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.説明のポイント(医療スタッフ向け)診察室での会話患者 昨日は東寺がブルーになっていました。あれは何ですか?医師 実は昨日は「世界糖尿病デー」なんです。患者 世界糖尿病デー?医師 そうです。11月14日は世界糖尿病デーなんです。患者 どうして、11月14日なんですか?画 いわみせいじ医師 11月14日はインスリンを発見したカナダ人のバンティング先生の生まれた日なんです。みんなで糖尿病を克服していこう、という日なんです。患者 そうなんですか。どうしてブルーなんですか?医師 ブルーは国連や空を象徴するブルーみたいですね。みんなで糖尿病を克服していこうということで、ブルーの輪がシンボルマークとなっています。患者 わかりました。私も頑張ってみます。ポイント「今日は何の日」などの話題から、療養指導の話が広がりますCopyright© 2014 CareNet,Inc. All rights reserved.

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エキスパートに聞く! 「SGLT2阻害薬」 パート1

日常診療で抱く疑問に、専門医がわかりやすく、コンパクトに回答するコーナーです。今回は「糖尿病診療」の中で今旬の話題である「SGLT2阻害薬」について、会員医師からの疑問にご回答いただきました。明日の診療から使えるコツをお届けします。1日に尿に排泄される糖は、約60g程度と聞いています。この量は血糖コントロールの改善に差が出てくるのでしょうか、ご教示ください。健常人では糸球体から180g/日(血糖値100mg/dLの場合)の糖が濾過されますが、血糖値が尿糖排泄閾値160~180mg/dLを超えない限り、近位尿細管に発現するSGLT2(再吸収の約90%を担う)とSGLT1(再吸収の約10%を担う)の働きによりほぼ100%再吸収されるため、尿糖排泄はみられません。一方、健常人にSGLT2阻害薬を投与すれば、SGLT1による糖再吸収能が高まり、尿糖排泄量は糸球体濾過量の1/3程度にとどまると考えられています。尿糖排泄量は、血糖管理状況と腎機能の影響を受けるため、2型糖尿病患者にSGLT2阻害薬を投与した場合、尿糖排泄量のバラツキは大きくなり、各薬剤の添付文書によれば、70~140g/日まで増加します。すなわち血糖値が高いほど、尿糖排泄量が多くなり、HbA1c低下量は大きくなります。このようにSGLT2阻害薬による血糖改善効果の程度は、腎機能が正常である限り、使用時のHbA1c値によって変わってきます。具体的な投与対象患者像について、また、投与を避けたほうがよい患者像について、ご教示ください。SGLT2阻害薬は尿糖排泄促進により血糖を改善するため、腎機能低下がない限り血糖を低下させます。また、体重減少、血圧低下、中性脂肪低下、HDL-コレステロール上昇、尿酸低下、糖毒性改善に伴うインスリン分泌能およびインスリン抵抗性の改善といった多面的効果も期待できます。その一方で、(1) 浸透圧利尿による多尿、頻尿、脱水、血圧低下、(2) 尿糖排泄増加に伴う尿路/性器感染症、(3) 糖新生促進によるケトン体増加、筋組織の萎縮など今後の臨床応用において留意すべき多くの点があります。各々の留意点として、(1) 口渇を感じにくい高齢者、腎機能低下例、利尿剤使用例、脳梗塞既往例、自律神経障害例、乳酸アシドーシス危険因子の保有例、(2) 尿路/性器感染症の既往例、とくに女性、(3) インスリン分泌能低下例(ケトアシドーシスリスク)、やせ、筋肉量が少ない例が挙げられます。つまり、最も適切な投与患者像は、非高齢の、罹病期間が比較的短い、肥満2型糖尿病例と考えられます。これらの患者においてもSU薬やインスリンとの併用時には低血糖発現に留意すべきで、あらかじめSU薬、インスリンを減量することを勧めます。コントロール不良例で使用する場合の注意点についてご教示ください。血糖管理不良例では尿糖排泄量が増加するため、SGLT2阻害薬の有効性は高くなります。しかし、血糖管理不良時には内因性インスリン分泌能を見極める必要があり、さらに頻尿、脱水などの副作用の頻度や重症度が高くなる可能性があるため注意が必要です。新規2型糖尿病患者の場合、肥満でインスリン非依存状態にあればよい適応です。しかし、非肥満例では糖新生に伴う骨格筋萎縮の懸念が強く、不適と考えます。すでに他剤が投与されているインスリン非依存例では、前投薬がインスリン製剤もしくはSU薬の場合は低血糖に、ビグアナイド薬の場合は乳酸アシドーシスに注意する必要があります。他剤の使用の有無にかかわらず、インスリン依存状態(体重減少例、ケトーシス例)ではケトアシドーシスに注意する必要があり、インスリン製剤を先行投与すべきです。SGLT2阻害薬のHbA1cの低下効果はどの程度でしょうか、ご教示ください。2014年6月18日現在、わが国ではイプラグリフロジン(商品名:スーグラ)、ダパグリフロジン(同:フォシーガ)、ルセオグリフロジン(同:ルセフィ)、トホグリフロジン(同:アプルウェイ/デベルザ)が発売、カナグリフロジンが発売準備中、エンパグリフロジンが承認申請中の状態です。一般にHbA1cの低下効果は、ベースラインHbA1c値に依存します。すなわちHbA1cが高い患者ほどよく下がります。わが国での臨床試験結果から、HbA1c8%程度に使用した場合、0.7~1.0%の低下が期待できると思われます。この効果は薬剤間で有効性に差はないものと思われます。単独療法での各SGLT2阻害薬のHbA1c改善効果は、52週時点で-0.6~0.67%と大きな差はありません。IC50で評価した各SGLT2阻害薬のSGLT2阻害活性が1.3~6.7nmol/Lと大きな違いがないことからも有効性に大差はないと考えられます。(高齢者の)浸透圧利尿による脱水の程度、およびその対処法や泌尿器科領域の感染症の頻度とその重症度について、ご教示ください。SGLT2阻害薬は尿糖排泄増加に伴う浸透圧利尿により尿量を増加させ、継続投与による尿量増加は200~600mL/日程度とされています。そのため、通常より約500mL/日多く飲水を行えば脱水を回避できると予想されます。継続投与による体液量関連指標の変化は、ヘマトクリット:+1%、尿素窒素:+1.5mg/dL、血清クレアチニン値:腎機能正常例-0.05mg/dL、中等度腎機能低下例+0.1mg/dL程度です。また、多尿、頻尿、口渇の発現率は、各々0~1%、2~5%、0~2%です。しかし、前述した値はあくまでも平均値であり、各々の値の標準偏差は大きいため、実地臨床で使用する場合には注意が必要であり、とくに口渇感を感じにくい高齢者、利尿剤使用例、血糖管理不良例では注意を要します。SGLT2阻害薬では、尿糖排泄増加による尿路や性器感染症が懸念されています。発現頻度は各々1~5%、1~7%で、重症度は軽症から中等症にとどまり、重症例は現時点で報告されていません。これらの多くは既往を有する例であり、とくに女性では注意が必要です。※エキスパートに聞く!「糖尿病」Q&A Part2はこちら

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「SGLT2阻害薬の適正使用を呼びかけるRecommendation」を公表

 日本糖尿病学会「SGLT2阻害薬の適正使用に関する委員会」は、SGLT2阻害薬の発売開始から約1ヵ月間の副作用報告を受けたことを踏まえ、6月13日に「SGLT2阻害薬の適正使用を呼びかけるRecommendation」を公表した。 発表によると、報告された副作用として、当初予想された尿路・性器感染症に加え、重症低血糖、ケトアシドーシス、脳梗塞、全身性皮疹など重篤な副作用が発症しているとのことである。 同委員会では、「現時点では必ずしも因果関係が明らかでないものも含まれている」としたうえで、「今の時点でこれらの副作用情報を広く共有することにより、今後、副作用のさらなる拡大を未然に防止することが必要と考えRecommendationと具体的副作用事例とその対策を報告した」としている。Recommendation 1. SU 薬等インスリン分泌促進薬やインスリンと併用する場合には、低血糖に十分留意して、それらの用量を減じる。患者にも低血糖に関する教育を十分行うこと。2. 高齢者への投与は、慎重に適応を考えたうえで開始する。発売から3ヵ月間に65歳以上の患者に投与する場合には、全例登録すること。3. 脱水防止について患者への説明も含めて十分に対策を講じること。利尿薬との併用は推奨されない。4. 発熱・下痢・嘔吐などがあるときないしは食思不振で食事が十分摂れないような場合(シックデイ)には休薬する。5. 本剤投与後、皮疹・紅斑などが認められた場合には速やかに投与を中止し、副作用報告を行うこと。6. 尿路感染・性器感染については、適宜問診・検査を行って、発見に努めること。問診では質問紙の活用も推奨される。7. 原則として、本剤はほかに2剤程度までの併用が当面推奨される。  さらに同委員会は、SGLT2阻害薬の使用にあたっては「適応を十分に考慮したうえで、添付文書に示されている安全情報に十分な注意を払い、また、本Recommendationを十分に踏まえて、とくに安全性を最優先して適正使用されるべき」と注意を喚起している。●詳しくは、「SGLT2阻害薬の適正使用に関する委員会」から■「SGLT2阻害薬」関連記事SGLT2阻害薬、CV/腎アウトカムへのベースライン特性の影響は/Lancet

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高力価スタチンが糖尿病発症リスクを増大させる/BMJ

 心血管疾患の二次予防治療としてのスタチン治療について、高力価スタチンのほうが低力価のものよりも、糖尿病の新規発症リスクが中程度だが増大することが報告された。カナダ・ブリティッシュコロンビア大学のColin R Dormuth氏らによる多施設共同観察研究の結果で、「臨床医は二次予防として高力価スタチンを使用する場合は、このリスクについて考慮すべきである」と提言している。スタチンが糖尿病の新規発症リスクを増大することは、先行研究のメタ解析で示されていたが(オッズ比1.09)、高力価vs. 低力価の比較によるリスク増大については確定していなかった。BMJ誌オンライン版2014年5月29日号掲載の報告より。40歳以上13万6,966例について、2年間服用中の発症率を比較 研究グループは共通分析プロトコルを用いて、8本の住民ベースコホート試験およびメタ解析を行った。試験データは、カナダの6行政区および2つの国際データベース(英国、米国)から組み込まれ、被験者は1997年1月1日~2011年3月31日に、新規にスタチン治療を開始した40歳以上の患者合計13万6,966例だった。 各コホート患者は、重大心血管イベントまたは処置のための入院治療後に新規にスタチンを処方された。これら患者についてコホート内症例対照分析にて、高力価スタチン使用患者と低力価スタチン使用患者の糖尿病発症を比較。条件付きロジスティック回帰分析にて、高力価vs. 低力価スタチン薬について服用期間別(2年以下、120日以下、120日超~365日以下、365日超~730日以下)に、糖尿病の新規発症率を算出し、メタ解析的手法にて全試験地点にわたる同発症への影響について評価した。 主要評価項目は、糖尿病新規発症による入院、またはインスリンあるいは経口血糖降下薬の処方とした。高力価のほうが1.15倍増大、リスクが最も高いのは処方開始4ヵ月間 スタチン使用開始2年以内の糖尿病発症率は、カナダ6行政区では2.12~3.40/100患者であった。米国データベースでは2.99/100患者、英国データベースでは1.95/100患者で、総計では13万6,966例のうち3,629例で糖尿病新規発症がみられた。 服用期間別の分析で、2年以内の糖尿病の新規発症率は、高力価スタチンのほうが低力価スタチンと比べて、有意に増大したことが観察された(率比1.15:95%信頼区間[CI]:1.05~1.26、p=0.003)。 その他の期間別では、120日(4ヵ月)以下が率比1.26(95%CI:1.07~1.47、p=0.004)と最も高かった。120日超~365日以下は1.19(同:1.02~1.38、p=0.03)、365日超~730日以下は1.08(同:0.93~1.25、p=0.33)だった。

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DYRK1Bは新規のヒトのメタボリックシンドローム原因遺伝子か?(コメンテーター:山下 静也 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(213)より-

米国Yale大学のKeramatiらは、ヒトのメタボリックシンドローム(MetS)関連遺伝子としてDYRK1Bの遺伝子変異をNEJMに報告した。 同グループはイラン人の3つの大家族において、中心性肥満、高血圧、糖尿病を有し、若年発症の冠動脈疾患の合併した家族を同定し、連鎖解析と全エクソーム配列決定によって、発端者からDYRK1Bの遺伝子突然変異であるDYRK1B R102C(102番目のアルギニン→システイン)変異を明らかにした。このDYRK1B R102C変異はgain-of-function変異で、ヘテロ接合体でもMetSの表現型を示す優性遺伝形式をとると考えられる。また、同グループは他の家系でDYRK1B H90P(90番目のヒスチジン→プロリン)変異もMetSの表現型を示すことを示した。 従来、ヒトMetSの関連遺伝子としては、これまでにレプチン、レプチン受容体、Melanocortin 4 receptor(MC4-R)、Proopiomelanocortin(POMC)、PCSK1、アディポネクチン、CD36などが報告されている。これらの遺伝子異常によって、ヒトでは高度肥満を呈する場合が多く、肥満関連の遺伝子異常ではあるものの、中心性肥満、高血圧、糖尿病などのMetSに特徴的な危険因子の遺伝的集積と、早発性冠動脈疾患を合併する遺伝子変異は本報告が初めてと考えられる。 では、なぜ、DYRK1Bの遺伝子のgain-of-function変異がMetSの表現型を引き起こすのであろうか? DYRK1Bは進化学的に保存されたprotein kinaseのグループであるDyrkファミリーに属する蛋白で、細胞の分化・生存や増殖に関与する。DYRK1Bはserine-threonine kinaseであり、マウスやヒトではユビキタスに発現する。DYRK1B遺伝子の発現は脂肪細胞の分化に伴って著しく増加する。脂肪形成過程では未分化の間葉系幹細胞から脂肪細胞への分化が起こる。DYRK1Bはsonic hedgehog(SHH)経路を抑制する結果、Wnt蛋白の発現を減らし、脂肪組織形成性のCCAAT/enhancer-binding proteinα(C/EBPα)やperoxisome proliferator-activated receptor γ(PPARγ)の発現を増加させ、これによって脂肪細胞への分化が促進されると考えられる。 したがって、DYRK1Bのgain-of-function変異は、本来のDYRK1Bよりもさらに脂肪細胞への分化を促進する活性が強いと考えられる。さらに、DYRK1Bは糖新生に重要な酵素であるglucose-6-phosphataseの活性を誘導することが知られているが、DYRK1Bのgain-of-function変異R102Cは、より強いglucose-6-phosphataseの活性の誘導効果を有することも示されている。このことから、変異を有する群での空腹時血糖の上昇は説明できよう。 日本人においても遺伝性MetSの家系が存在すると考えられるが、このDYRK1Bのgain-of-function変異がわが国でも発見されるのか否かは大変興味のあるところである。また、DYRK1BのR102C変異のキャリアの臨床像は、中心性肥満、2型糖尿病、早発性冠動脈疾患であるが、脂質異常症に関してはLDLコレステロールの高値傾向、トリグリセライド値の増加は示されているが、MetSの診断基準にも含まれる低HDLコレステロール血症の有無については記載がない。インスリン抵抗性に関するデータも示されておらず、内臓脂肪蓄積による症候性のMetSとの相違点があるのか否かについて、今後解明されることが期待される。

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1型糖尿病の約7割に皮膚疾患

 1型真性糖尿病患者の皮膚疾患に関するデータは十分ではない。インド・Postgraduate Institute of Medical Education and Research(PIMER)のSawatkar GU氏らは、同患者でみられる皮膚の症状の範囲を調べ、それらの症状と、罹病期間および長期血糖コントロールとの関連について検討した。British Journal of Dermatology誌オンライン版2014年4月28日号の掲載報告。 検討は、2011年7月~2012年6月に、事前に同意を得た500例の1型糖尿病患者を対象に行われ、臨床症状や関連試験を行った。統計的検定は、SPSS 16を使用して行われた。 主な結果は以下のとおり。・さまざまな皮膚の症状がみられ、糖尿病の罹病期間との関連性がみられた。・被験者500例のうち、339例(67.8%)が1つ以上の皮膚の症状を有していた。・患者の平均年齢は、16.9±6.9歳(範囲:1~25歳)、糖尿病の平均罹病期間は4.43±4.4年であった。・インスリンと関連した有害反応としての皮膚の症状は、リポハイパートロフィー(41%)、炎症後色素沈着(3%)、リポアトロフィー(0.6%)、黒色表皮腫(0.4%)の頻度が最も高かった。・また、関節可動域の制限(16.8%)、皮膚の硬化(15.8%)、強皮症様の皮膚の変化(10%)などもみられた。・患者の罹病期間が長いほど(4.4年超)、リポハイパートロフィー(p=0.000)、関節可動域の制限(p=0.000)、強皮症様の皮膚の変化(p=0.000)、糖尿病性皮膚障害(p=0.000)、黒色表皮腫(p=0.005)、スキンタグ(p=0.002)が有意に多くみられる傾向があった。・リポハイパートロフィー、関節可動域の制限、強皮症様の皮膚の変化は、血糖値との有意な関連も示された。・本検討により、若いアジア人の1型糖尿病患者では、皮膚に変化がみられることが一般的であることが示された。・患者、保護者への情報提供、教育およびカウンセリングと、医師における認識が、これら皮膚疾患の予防および早期治療の基本となる。

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CliPS -Clinical Presentation Stadium- @TOKYO2013

第1回「突然の片麻痺、構音障害」第2回「幸運にも彼女は肺炎になった」第3回「診断の目利きになる」第4回「Good Morning, NY!」第5回「不明熱」第6回「Ooops! I did it, again... 難しい呼吸困難の鑑別」第7回「Shock」第8回「外見の医療」第9回「What a good case!」第10回「首を動かすと電気が走る」第11回「木を診て森も診る」第12回「なぜキズを縫うのか」第13回「半年間にわたる間欠的な腹痛」第14回「高齢者高血圧管理におけるUnmet Medicak Needs: 『血圧変動』に対してどう考える?」第15回「患者満足度」第16回「ガイドラインって、そんなに大事ですか?」第17回「EBM or XBM?ーまれな疾患における診療方針決定の一例ー」第18回「原因不明を繰り返す発熱」第19回「脳卒中後の固定した麻痺 ―数年経過しても治療により改善するのか?―」第20回「眼科での恐怖の糖尿病」第21回「顔が赤くなるのは、すれてない証拠?」第22回「失神恐るるに足らず?」第23回「背部痛で救急搬送された82歳男性」第24回「免疫不全の患者さんが歩いてきた」第25回「初発痙攣にて搬送された 22歳女性  痙攣の鑑別に難渋した1例」【特典映像】魅せる!伝える!プレゼンの極意 『CliPS(Clinical Presentation Stadium)』は、限られた時間の中で、プレゼンター自身が経験した「とっておきの患者エピソード」や聞いた人が「きっと誰かに話したくなる」興味深い症例を「症例の面白さ(学び)」と「語りの妙(プレゼンスキル)」で魅せるプレゼンテーションの競演です。プレゼンターは、ケアネットでお馴染みの達人講師から若手医師・研修医まで。散りばめられたクリニカルパール。ツイストの効いたストーリー。ユーモアとウィットに富んだプレゼンの数々は、年齢、診療科にかかわりなく、医療者のハートをつかむことでしょう。あなたも『CliPS』の世界を楽しみ、学んで下さい!第1回「突然の片麻痺、構音障害」このタイトル『突然の片麻痺、構音障害』のような患者さんをみたとき、どのようなことを思い浮かべるでしょうか? おそらく診断は脳梗塞で良いだろうと。そして、治療計画、リハビリ、再発予防、介護状況など様々な側面にまで考えは及ぶでしょう。そういった様々な脳梗塞のマネージメントのうち、一番最初の診断のところでしていただきたい「あること」についてお話しします。患者さんの血液を採った時、一滴だけあることに使っていただきたいのです。第2回「幸運にも彼女は肺炎になった」近年、認知機能障害の患者さんに出会う機会は増えています。そして、その際にはしばしば「病歴のとりづらさ」や「診察への抵抗」に苦慮します。今回登場された伊藤先生も、正直言って、それらの患者さんには煩わしさや苦手意識を感じていたそうです。今回ご紹介する患者さんに出会うまでは・・・。治らないと思っていた病気が治るって素晴らしい!そんな症例です。第3回「診断の目利きになる」山中先生が日々の診断で気をつけていることはなんでしょうか?「はじめの1分間が何より大切」、「患者さんと眼の高さを合わせる」、「患者さんは本当のことを言ってくれない」、「キーワードから読み解く」、「診断の80%は問診による」、「典型的な症状をパッケージにして問う」など。診断の達人である山中先生の『攻める問診』メソッドの原点がここに表されています。患者さんの心をつかみ、効果的な病歴聴取や診察を行うためのさまざまなTIPSをご紹介いただきます。山中先生の話芸の素晴らしさにグイと引き込まれること必至です。第4回「Good Morning, NY!」岡田先生が、研修時代を過ごされたニューヨークでのお話。異国の病院で生き残るために、「日本人らしさ」と一貫した態度で信頼を勝ち得たそうです。2年目に出会った原因不明で発熱が続き、意識不明の患者さんとの感動的なエピソードを語っていただきます。第5回「不明熱」 不明熱をテーマに、膠原病科の岸本先生が、2ヶ月間も熱が下がらず、10kgの体重減、消化管に潰瘍、動脈瘤のある、36歳男性の症例をご紹介いただきます。学習的視点も踏まえた岸本先生の分かりやすいプレゼンテ-ションも必見です。第6回「Ooops! I did it, again... 難しい呼吸困難の鑑別」 呼吸困難をテーマに2つの症例を紹介いただきます。呼吸困難で典型的な疾患が心不全と肺炎。鑑別のキーポイントは、検査所見で十分でしょうか。一見ありふれた症例も、SOAPの順序を誤ると、、、非常に重要なメッセージが導き出されます。第7回「Shock」とびきり印象的なショックの症例を紹介します。イタリアンレストランに勤務されている61歳の男性。主訴は「気分が悪い」。ショック状態ですが、熱はなく、サチュレーションも正常。不思議なことに、毎年1回、同様の症状がでると。さて、この患者さんは?第8回「外見の医療」形成外科医の立場から人の「外見」という機能を語ります。顔の機能のうち「外見」という機能は、生命に直接関係ないものの、社会生活を営む上で需要な役割を果たしています。近い未来、「顔」の移植ということもあり得るのでしょうか?第9回「What a good case!」症例は29歳の女性。発熱と前胸部痛を主訴に見つかった肺多発結節影の症例。診断は?そして、採用された治療選択は?岡田先生の分かりやすいトークと意外性と重要な教訓に満ちたプレゼンテーションをお楽しみください。第10回「首を動かすと電気が走る」山中先生のかつて失敗して「痛い目」にあった症例です。60歳の男性で、主訴は「首を動かすと電気が走る」とのこと。しかし、発熱、耳が聞こえない、心雑音など異常箇所が増えていきます。せひ心に留めていただきたい教訓的なプレゼンテーションです。第11回「木を診て森も診る」46歳男性の糖尿病患者さん。 HbA1C が,この半年間で10.5%まで悪化。教育入院やインスリン導入を勧めるも、「それは出来ない」と強い拒絶。この背景にはいくつかの社会的・心理学的な要因があったのです。家庭医視点のプレゼンテーションです。第12回「なぜキズを縫うのか」なぜ傷を縫うのでしょうか? 額の傷を昨日縫合されたばかりの患者さんが紹介されてきたとき、菅原先生はすぐに抜糸をしてしまいました。なぜ?傷の治るメカニズムや、縫合のメリット/デメリットなどを形成外科のプロがわかりやすく解説します。第13回「半年間にわたる間欠的な腹痛」慢性的な下部腹痛の症例。半年前から明け方に臍周囲から下腹部の張るような痛みで覚醒するも、排便で症状は改善。内視鏡検査では大腸メラノーシスと痔を指摘されたのみで、身体所見も血液検査も異常なし。過敏性腸症候群?実際は・・・?第14回「高齢者高血圧管理におけるUnmet Medicak Needs: 『血圧変動』に対してどう考える?」高齢者の血圧の「日内変動」からいろいろなものが見えてくる。ある1ポイントの血圧だけでなく、幅広い視点からの血圧管理が必要。明日の高血圧治療にすぐに役立つプレゼンテーション!第15回「患者満足度」患者満足度にもっとも影響を与える因子は「医師」。その「医師」は患者満足度を上げるには、何をすればいいのでしょうか。岸本先生が研修医時代に学んだ心構えとは?第16回「ガイドラインって、そんなに大事ですか?」ガイドラインはどのくらい大切なのでしょうか。プラセボ効果の歴史を振り返りつつ、ガイドラインの背景にあるものに注目。第17回「EBM or XBM?ーまれな疾患における診療方針決定の一例ー」EBMだけでは対応できない稀なケースには、XBM(経験に基づく医療)で治療に臨まなければなりません。さて、今回の症例では?第18回「原因不明を繰り返す発熱」総合診療科の外来では「不明熱」の患者さんが多く訪れます。今回の「不明熱」に対して、記者出身の医師がしつこく問診を繰り返した結果、浮かび上がってきた答えは・・・。第19回「脳卒中後の固定した麻痺 ―数年経過しても治療により改善するのか?―」ボツリヌス療法と、経皮的電気刺激(TENS)とを併用して治療を行った症例についての報告です。さて、まったく動かすことのできなくなった患者さんの上肢には、どの程度の改善が見られたのでしょうか。第20回「眼科での恐怖の糖尿病」眼科医の視点から糖尿病を考えてみます。日本人の失明原因の第2位(1位の緑内障と僅差)が糖尿病網膜症となっています。内科医と眼科医の連携はまだまだ十分ではないと言えそうです。第21回「顔が赤くなるのは、すれてない証拠?」症例は70代男性の胸痛。1~2週間チクチクした鋭い痛みが一日中持続、緊急性は低そうです。検査をしても特徴的な所見に乏しく決め手に欠けました。さて、どんな疾患なのでしょう?実は大きなヒントがこの一見奇妙なタイトルに凝縮されているのです。第22回「失神恐るるに足らず?」患者が突然、目の前で意識を失って倒れたとします。まず一番最初に行うべきことは?「失神」は原因疾患によって予後が異なるため早期の正しい見極めが重要です。76歳女性の症例を題材に、日常臨床で遭遇する「失神」への対応を解説していただきます。第23回「背部痛で救急搬送された82歳男性」症例は82歳男性。背部痛を主訴に救急外来に搬送。しかしバイタルや検査では異常はなく痛み止めのみ処方。その一週間後に再び搬送された患者さんは激しい痛みを訴えているが、やはりバイタルは安定。ところが…。研修医時代の苦い経験を語ります。第24回「免疫不全の患者さんが歩いてきた」症例は59歳男性。悪性関節リウマチ、Caplan症候群という既往を持ち、強く免疫抑制をかけられている患者。発熱やだるさを主訴に歩いて外来受診。5日後、胸部CTで浸潤影があり入院。しかし肺炎を疑う呼吸器症状がありません。次に打つべき手とは?第25回「初発痙攣にて搬送された 22歳女性  痙攣の鑑別に難渋した1例」症例は22歳の女性。回転性めまいの後2分程度の初発痙攣があり救急搬送。診察・検査の結果、特記すべき所見はほぼ見あたらず、LAC5.1とやや上昇を認めるのみ。原因不明のまま「重篤な疾患はルールアウトされた」と判断。ところが全くの誤りでした。

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「適正使用を」-SGLT2阻害薬への想い-

 2014年4月17日、2型糖尿病治療薬のイプラグリフロジン(商品名:スーグラ錠25mg、同50mg)が発売された。イプラグリフロジンは日本初の選択的SGLT2阻害薬であり、糖尿病診療医からの注目も高い。そこで今回、アステラス製薬株式会社 本社担当者に話を聞いた。【SGLT2阻害薬への期待-低血糖リスク軽減と体重管理-】 2型糖尿病の治療は血糖管理を取り巻く諸問題に悩まされてきた。具体的には低血糖、体重増加などである。2014年、新たに登場した選択的SGLT2阻害薬イプラグリフロジンは、原尿からのグルコース再吸収に関わるSGLT2を選択的に阻害することで、余分なグルコースを尿から排泄させ血糖値を下げる。この作用はインスリン非依存的で、作用機序から低血糖が発現しにくいと考えられている。また、体重低下も期待されている。つまり「低血糖リスクの軽減」「体重コントロール」につながる薬といえる。【高齢者、女性、痩せ型、罹病期間の長い症例は注意】 しかし、新規作用機序の薬ゆえに安全性については慎重な判断が求められる。選択的SGLT2阻害薬全般にいえることだが、特に、浸透圧利尿による脱水、尿路・性器感染症、尿中ケトン体上昇には注意が必要である。この場を借りて、あらためて各項目について注意喚起をしたい。 「脱水」:高齢者、脳卒中リスク症例は避けるべきであり、とくに高齢者は脱水症状に気づきにくいことが考えられる。脱水を予防する為には、適度な水分摂取が必要となる。 「尿路・性器感染症」:日本国内での報告は海外よりも少ないものの、性器感染症はとくに女性で報告が多い。症状としてはかゆみやおりものがあるが、患者さん自ら訴え出るには抵抗感があるだろう。製薬会社提供の指導箋などをご活用いただくことで、患者さんの話しやすい環境作りの手助けになればと考えている。 「尿中ケトン体上昇」:インスリン分泌能が低下している場合、尿中ケトン体が上昇しやすい。インスリン分泌能が少ないと考えられる症例、たとえば、罹病期間が長い人や高用量のSU薬をすでに服用している人は注意が必要となる。 まとめると、高齢者、脳卒中リスク例、女性、痩せている方、罹病期間が長いなどインスリン分泌能が低下している方では注意が必要となる。【SGLT2阻害薬の投与を考慮すべき患者像は若く、太った患者】 以上のことを踏まえると、イプラグリフロジンの投与を考慮すべき患者像は若く、太っていて、罹病期間の短い方が望ましいといえる。太っている目安としては、いわゆるBMI 25以上の肥満傾向の患者が挙げられる。また、ベースラインの血糖値が高い方が効果を発揮しやすいとのデータから、投与前のHbA1c値が高い症例、具体的数値としては7.0%以上の場合、効果を発揮しやすいのではないかと考えている。【イプラグリフロジンは日本国内データと症例数が豊富】 イプラグリフロジンの血糖降下作用についても補足する。国内第III相試験の結果で、HbA1c変化量がイプラグリフロジン50mg投与でプラセボとの差が-1.24%と報告されており、優れた血糖降下作用が期待される。新薬ではあるが日本の治験データが多く、症例数が多いことが本剤の特徴である。ほかの経口血糖降下薬との併用試験についても二重盲検比較試験で実施した試験が多い。SU薬、BG薬、チアゾリジン薬の併用に関する3試験はいずれも二重盲検比較試験で実施されており、データのクオリティが高い。【SGLT2阻害薬は長期的に評価していただきたい】 現在、種々の選択的SGLT2阻害薬が登場し、各社が選択性、生物学的半減期、服薬コンプライアンスなどさまざまなメッセージを打ち出している。しかし、イプラグリフロジンも含め、いずれも臨床での使用はこれからであり、まずは適正使用を推進していきたいと考えている。乱暴な話だが、たとえば、80歳の痩せた女性や脳卒中のリスク症例への投与による予期せぬ副作用などが出てしまうことは新薬として望ましくない。だからこそ、SGLT2阻害薬のメリットが享受できる症例を選んでいただき、適正に判断をしていただけたらと願っている。また、使い方はさまざまだが、新患、既存薬への追加が望ましいと個人的には考えている。切り替えの場合、前薬のメリットがなくなる可能性がある。まずは、前述したような症例像へ、新規や追加といった形での処方を通じて、先生方の眼で「SGLT2阻害薬」という薬を評価いただきたいと考えている。【取材後記】 今回、印象深かったのは、アステラス製薬本社担当者の「SGLT2阻害薬の適正使用」を望む真摯な姿勢であった。新薬取材では得てして自社品のPRポイントを中心に語られることが多い。むろん、薬剤情報は重要だ。しかし、それ以上に適正な情報提供こそが製薬会社の責務であろう。安全性の部分へのコメントが多かった点に、命に関わる医薬品を販売する側としての正しい姿勢を感じた。今後、SGLT2 阻害薬の適正使用が進むことを期待している。

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本当にアリピプラゾールは代謝関連有害事象が少ないのか

 非定型抗精神病薬に伴う代謝異常は、薬剤の種類により異なるといわれている。非定型抗精神病薬と心血管疾患のリスク因子との関連を踏まえ、米国糖尿病学会(ADA)および米国精神医学会(APA)は、非定型抗精神病薬の中でもアリピプラゾールとジプラシドン(国内未承認)は代謝異常を生じにくいとのコンセンサスステートメントを発表した。今回、米国・ニューヨーク医科大学のLeslie Citrome氏らは、実臨床下におけるアリピプラゾールと他の非定型抗精神病薬の代謝関連有害事象リスクに関する検討を行った。Current Medical Research and Opinion誌オンライン版2014年3月26日号の掲載報告。 本検討において研究グループは、非定型抗精神病薬アリピプラゾールの治療を受けている成人患者の体重増加、脂質異常、血糖異常、糖尿病のリスクを検討した実臨床での研究(観察/自然的研究、オープンラベル研究など)を評価した。2000年1月1日~2011年10月4日までに報告された文献を対象とし、タイトルまたは抄録に「アリピプラゾール」「非定型」「糖」「インスリン」「コレステロール」「トリグリセリド」「糖尿病」「HbA1c」「体重」「BMI」「高脂血症」などの用語が含まれている論文をPubMedで検索した。 主な結果は以下のとおり。・アリピプラゾールと関連する代謝への影響を評価した22件のピアレビュー論文が抽出された。それら論文は、被験者15例の小規模観察研究から170万例を超える大規模データベースにわたった。・アリピプラゾールによる治療を受けた成人患者の体重増加、脂質異常、血糖異常および糖尿病発症リスクを評価した観察または自然的研究は13件、オープンラベル試験は9件あった。・アリピプラゾールは、その他の非定型抗精神病薬と比較して、体重増加および脂質異常に及ぼす影響が同等またはそれ以下であり、その程度は試験デザインに依存しているようであった。・さらに、アリピプラゾールはその他の非定型抗精神病薬の大半に比べ、糖尿病のリスクが少なかった。・無作為化比較試験のデータと、本レビューの所見は一致しており、アリピプラゾールは汎用されているその他の非定型抗精神病薬よりも、成人における代謝関連有害事象のリスクが少ない可能性が示唆された。所見は、ADA/APAのコンセンサスステートメントとも一致するものであった。 関連医療ニュース オランザピンの代謝異常、原因が明らかに:京都大学 抗精神病薬による体重増加や代謝異常への有用な対処法は:慶應義塾大学 最初の1年がピーク、抗精神病薬による体重増加と代謝異常

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抗精神病薬による体重増加や代謝異常への有用な対処法は:慶應義塾大学

 抗精神病薬に誘発される代謝異常の管理はしばしば困難であり、これらを軽減するうえで薬剤の併用は理にかなっているとされている。慶應義塾大学の水野 裕也氏らは、統合失調症患者における抗精神病薬誘発性の代謝異常に対する薬物療法の有効性を明らかにすることを目的とした、システマティックレビューとメタ解析を行った。その結果、各種薬剤の併用により体重増加およびその他の代謝異常の軽減が図られることが示され、なかでもメトホルミンは体重増加の軽減、インスリン抵抗性の改善、血清脂質の低下など代謝異常の是正に好ましい多彩な作用を示すことを報告した。Schizophrenia Bulletin誌オンライン版2014年3月17日号の掲載報告。 2013年11月までに公表された文献について、5つの電子データベースを用いて検索した。未公表の試験に関しては臨床試験登録により調査した。検索対象とした試験は、統合失調症患者を対象とした二重盲検無作為化プラセボ対照試験で、抗精神病薬に誘発される代謝異常に対する薬物併用の効果を主要アウトカムとしているものとした。検索した試験データから、被験者、介入、比較、アウトカムおよび試験デザインに関連する変数を抽出し分析した。主要アウトカムは体重変化とし、副次アウトカムは臨床的に意味のある体重変化、空腹時血糖値、HbA1c値、空腹時インスリン値、インスリン抵抗性、コレステロール値およびトリグリセリド値とした。 主な結果は以下のとおり。・メタ解析には、40試験、19の独自の介入を包含した。・体重に関して最も広範囲に検討されていたのはメトホルミンであり、プラセボと比較した体重の平均差は-3.17kg(95%CI:-4.44~-1.90kg)であった。・トピラマート、シブトラミン(国内未発売)、アリピプラゾ-ル、レボキセチン(国内未発売)のプール有効性解析においても、プラセボとの間に差がみられた。・メトホルミンとロシグリタゾン(国内未発売)は、インスリン抵抗性を改善した。・アリピプラゾール、メトホルミンおよびシブトラミンは、血清脂質を低下した。・統合失調症患者において、抗精神病薬に誘発される体重増加およびその他の代謝異常の軽減が、非薬物療法単独では不十分な場合、あるいは相対的に体重への影響がない抗精神病薬への切り替えができそうもない場合は、メトホルミンをファーストチョイスとした反作用の薬物療法を行うことが文献上では支持された。関連医療ニュース 抗精神病薬性の糖尿病、その機序とは オランザピンの代謝異常、原因が明らかに:京都大学 最初の1年がピーク、抗精神病薬による体重増加と代謝異常

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15)野球好きへのインスリン説明法【糖尿病患者指導画集】

患者さん用説明のポイント(医療スタッフ向け)■診察室での会話医師Aさんは、今までにインスリン注射を打ったことがありますか?患者ありません。そんなに私の糖尿病は悪いのですか?医師そうですね。今の血糖値のままでは合併症になるリスクが、かなり高まっていると思います。一度、インスリンで血糖を下げてみたらいいかと思います。患者インスリンを始めたら、一生打たなければならないんじゃないですか?医師そんなことはありませんよ。Aさんは野球がお好きでしたよね。患者そうですね。阪神ファンです。医師先発して、外人選手(外食)なんかにバカスカ打たれたピッチャーでも、インスリンがリリーフに入って、休ませると次の試合ではいいピッチングをすることがありますよね。患者なるほど。膵臓が先発、リリーフがインスリンということですか。医師そうですね。少し、膵臓を休ませてあげると、また、いい働きができると思いますよ。患者なるほど。膵臓を休ませるために、注射を打って暴飲暴食は止めるか。●ポイント患者さんが興味を持っていることに例えることで、理解度が高まります

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男性は適度な飲酒で糖尿病リスク減少?1日30gのアルコールで血中フェチュインAが低下

 インスリンシグナル伝達を阻害する肝臓由来の糖蛋白であるフェチュインAが、糖尿病リスクのバイオマーカーとして浮上している。適度なアルコール摂取がフェチュインA低下に関連しているが、臨床試験によるデータは不足していた。そこで、オランダのMichel M Joosten氏らは、適度なアルコール摂取がフェチュインA濃度を低下させるかどうかをオープンラベル無作為化クロスオーバー試験で検討した。その結果、男性では適度なアルコール摂取によりフェチュインAが低下した。ただし、この関連は女性では認められなかった。Diabetology & metabolic syndrome誌オンライン版2014年2月18日号に掲載。 著者らは、3種類のオープンラベル無作為化クロスオーバー試験を実施した。1)閉経後女性36人:1日250mLの白ワイン(アルコール量25g)または白ブドウジュースを6週間摂取2)閉経前女性24人:1日660mLのビール(アルコール量26g)またはノンアルコールビールを3週間摂取3)若年男性24人:1日100mLのウオッカ入りオレンジジュース(アルコール量30g)またはオレンジジュースのみを4週間摂取各試験期間後、空腹時の血液サンプルを採取し、データを分析した。 主な結果は以下のとおり。・血中フェチュインA濃度は、それぞれのアルコール摂取なし期間後と比べ、ウオッカ摂取後の男性で減少していた(平均±SEM:441±11から426±11μg/mL、p=0.02)が、ワイン摂取後の女性(448±17から437±17μg/mL、p=0.16)やビール摂取後の女性(498±15から492±15μg/mL、p=0.48)では変化がなかった。・事後検出力分析により、男性で認められた効果と同様の効果を検出するための統計的検出力は、閉経後女性で30%、閉経前女性で31%であることが示された。 男女での効果の差について、著者らは、介入期間が比較的短かったことや、女性での試験では統計的検出力が低かった可能性を挙げている。

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インスリン使用患者の実態が明らかに~早期の人ほど悪い血糖コントロール~

 2014年2月25日(火)都内にて、インスリン自己注射を行う2型糖尿病患者407名の意識調査をテーマにセミナーが開かれた(ノボ ノルディスク ファーマ株式会社主催)。演者である東京医科大学の小田原 雅人氏(内科学第三講座 主任教授)は、「血糖コントロールが悪い人ほど、罹病期間が短い」という調査結果を受け、早期からの積極的コントロールの必要性をあらためて強調した。 以下、セミナーの内容を記載する。【目標値は知っていても、達成できているのはたった3割】 調査結果をみると、自身の治療目標値を知っている人は約7割と予想よりも多かった。しかし、その目標値を達成できているのは約3割にすぎなかった。残り7割が目標値未達という治療の現状が浮かび上がった。血糖管理状況を詳しくみると、コントロール不良群でとくに空腹時血糖値が高い傾向にあり、基礎インスリンの投与量が不十分だった可能性がある。【合併症がない人ほど、血糖管理が不十分】 合併症の有無別のコントロール状況はどうだろうか。調査前はHbA1c値が高いほど合併症が多いと予想されたが、結果をみると、HbA1c値が高い群で合併症は少なかった。つまり、合併症がある患者さんは、自身で危機感を感じるためか結果として血糖値がコントロールされる傾向にあるということだ。また、コントロール不良群で罹病期間が短いこともわかった。罹病期間の短い患者さんは、コントロール不十分なまま放置されていることが想定される。罹病期間の短い、いわゆる早期の人ほど血糖コントロールが不十分という事実が明らかになったことで、より早期の厳格介入が必要と示唆される。【血糖管理が良好なほど、低血糖が気になる】 一方で、血糖コントロールが良好な群でもある課題がみえた。低血糖発現を気にする割合が不良群と比べ、高かったのだ。また、「高血糖と低血糖、どちらが気になるか?」という質問の回答をみると、高血糖、低血糖それぞれを選ぶ割合は全体で6:4であり、思いのほか低血糖の割合が高かった。血糖値が安定せずにバラつきがでる原因を患者さんに尋ねたところ、インスリンの種類、単位数、タイミングなどの製剤が原因と考える患者さんが約4割おり、その半数以上が低血糖発現を気にしていた。【基礎インスリンで、厳格な血糖管理と低血糖の不安を軽減】 今回の調査結果から、インスリン治療患者全般において、「基礎インスリン量不足の可能性」「管理不十分な人は、実は、合併症がなく罹病期間も短い傾向」「インスリン使用者の約4割が低血糖を気にしている」といったことが明らかになった。この結果を基に治療を考えると、罹病期間の短い人ほど、十分な基礎インスリンでコントロールを行い、コントロール後は低血糖の懸念を少なくするよう努めることが必要なようだ。 現状のインスリン療法では、「基礎インスリン」が低血糖を起こしにくい点で優れており、BOTの普及により初期導入におけるスタンダードインスリンとなっている。なかでも約1年前に発売されたインスリンデグルデク(商品名:トレシーバ)は、1日1回投与で夜間低血糖の発現頻度を高めずにHbA1cの低下が期待できるという特徴をもつ。小田原氏は「3月に長期処方解禁を迎えることで、よりデグルデクの使用機会が広がるのではないか」と期待を述べた。【編集後記】 講演では、DCCTの結果から重篤な夜間低血糖は睡眠中に多く起こっていることも紹介された。夜間低血糖が起こっても、目を覚まさない患者さんは存在するという。低血糖は自覚していれば対処が可能だが、対処できない場合もあるということだ。夜間に低血糖を起こしにくい基礎インスリン製剤は、これからもスタンダードインスリンとして評価され続けるのではないだろうか。

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