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FGM導入で患者も主治医もWin-Win【令和時代の糖尿病診療】第3回

第3回 FGM導入で患者も主治医もWin-Win令和時代の糖尿病診療として、今回は薬剤ではなく、器機の面から考えてみる。糖尿病は生活習慣病の代表選手でもあり、治療の根源は食事や運動など生活習慣の改善にあるが、そもそも「生活習慣病とは何ぞや?」というと、「食習慣、運動習慣、休養、喫煙、飲酒などの生活習慣が、その発症・進行に関与する疾患群」と定義される。裏を返せば、生活習慣を改善すれば良くなる見込みのある疾患であり、今回取り上げるFGM(Flash Glucose Monitoring)は、血糖値を連続的に「見える化」することにより、生活習慣の改善をサポートできる画期的な器機だ。従来の血糖自己測定(Self-Monitoring of Blood Glucose、以下SMBGと略す)は、穿刺針で指先から採血しその時点の血糖値を測定するものだが、FGMとは、上腕後部に着けたセンサーに服の上からリーダー(読取機)をかざすだけで、瞬時に血糖値を確認できるものである。正確には、FGMは血糖値ではなく間質液のグルコース濃度を測っているのだが、補正のために自己穿刺して血糖測定をする必要もないので、極めてシンプルに血糖管理ができる。センサーは最長14日間、自動的に毎分測定し記録し続ける(なお、最長8時間おきのスキャンが必要)ので、リーダーをかざした瞬間だけでなく、経時的な血糖推移も簡単に知ることができる。すなわち点が線になるのだ。図1:血糖グラフは「点」から「線」へ画像を拡大するこのメカニズムをご存じの方は、「CGM(Continuous Glucose Monitoring)との違いは?」という疑問にぶつかるかと思う。一言で表すならば、FGMはCGMの一種であり、間欠式スキャンCGM(intermittently scanned CGM:is-CGM)とも呼ばれる。リーダーをセンサーにかざした“瞬間”の皮下グルコース値を読み取る点から、“Flash”と名付けられた。患者が意図してセンサーにリーダーをかざすことで、現在から後ろ向きにグルコース値を認識する(一般的に、5~10分遅れて血液中のグルコース濃度が反映するとされる)。なお、CGMの中でもリアルタイムCGMはbluetoothで接続されるため、リーダーをかざす必要はない。FGM器機は、2017年に発売後まもなく保険適用され、さらに進化して2020年2月にはスマートフォンでも血糖値スキャンができるようになった。ここまで読んでいただき、少しでも興味を持っていただけたであろうか。「この手の器機は所詮専門医が使用するマニアックなもの」と決めつけてはいないだろうか? しかし、答えは「No」で、保険上では「糖尿病の治療に関し、専門の知識および5年以上の経験を有する常勤の医師または当該専門の医師の指導の下で糖尿病の治療を実施する医師が、間欠スキャン式持続血糖測定器を使用して血糖管理を行った場合に算定する」とある。対象は「強化インスリン療法を行っているもの、または強化インスリン療法を行った後に混合型インスリン製剤を1日2回以上使用しているもの」とされ、1型糖尿病でも2型糖尿病でも適応可能となっている。これにより、SMBGを行っているならばFGMを使用できない施設はほとんどないと言っていいのではないだろうか?FGMを装着後、劇的に血糖コントロールが改善した2例前置きはこのくらいにして、臨床現場での実例を見てみよう。まずは、小児発症の1型糖尿病で罹病歴27年の女性である。SMBGをきちんと行っているものの、HbA1cは7%台後半で変わらない状況であった。3年ほど前にFGMを装着したところ、インスリンを増量することもなくみるみるHbA1cが6%台後半まで下がり、なおかつ低血糖の頻度も減り非常に安定した。「子供のときは毎回針で指を刺して血を出すのが本当に痛くて嫌だったが、これ(FGM)になってからはいつでもどこでも測れるし、何よりも痛くない。時代は変わったなあ!」と、しみじみとご本人から語られたときは目頭が熱くなった。このときの言葉は今でも忘れられない。次に、2型糖尿病で強化インスリン療法を行っている60代女性のHbA1cを示す。図2:2型糖尿病:罹病歴21年(合併症:神経障害馬場分類1度[軽度]・網膜症[右A0:左A1」・腎症第1期)画像を拡大するどこからFGMが開始になったかは疑う余地もなかろう。これだけ劇的に下がったのは、薬剤を変えたわけでもインスリン量を増やしたわけでもなく、FGMを装着しただけである。患者は以前からSMBGを行っていたがさぼりがちで、測定結果も診察時には「忘れた」と言って持って来ないことが多々あった。そんな方が、スマホ対応のFGMを着けてからは多い時で1日に40回以上も測定したのである。最初は「先生に血糖値がすべてばれてしまう」と少し困惑気味だったが、聞くとゲーム感覚で楽しんでいるようで、どのようなものを食べると血糖値が高くなるとか、よく運動をすると血糖値がうそのように下がるなどとうれしそうに話してくれた。血糖変動が手に取るようにわかることで、行動変容が生まれたケースである。今後は薬剤の減量を検討しており、これがまた患者のいい動機付けになると考えられる。我々の施設では、強化インスリン療法施行中の2型糖尿病患者について、FGM導入は血糖コントロールのみならず、身体活動や治療満足度の改善にもベネフィットをもたらしたことも報告している1)。FGMデータを読むうえで重要な「AGP」と「TIR」それでは、実際のFGMデータ(AGPレポート)を見てみよう。図3:AGPレポート画像を拡大するここで2つのキーワード、AGP(Ambulatory Glucose Profile)とTIR(Time in Range)を以下に解説するので、ぜひ覚えていただきたい。これらは、HbA1cを補完する臨床目標およびアウトカム評価指標として、2019年6月にInternational Consensusで推奨されたものである2)。CGM/FGMの測定は1回の測定期間を2週間として、その間に得られたデータの70%以上を使用して解析すること解析にはAGPの手法を用いること血糖コントロール指標として、70~180mg/dLを治療域(Target Range)とし、この範囲内の測定回数または時間をTIR、治療域より低値域をTBR(Time Below Range)、高値域をTAR(Time Above Range)と定義する糖尿病リソースガイド3)より一部引用AGPについて、日々の血糖値を連続的に見ることができるのは言うまでもないが、FGM測定データの解析に用いられているAGPレポートとは「測定期間のグルコース値の要約」で、記録した数日間にわたる血糖変動の傾向が、一つのグラフとして示される。図4:AGPレポートの読み方《AGPレポートから読み取れる内容》1)24時間の平均血糖値2)24時間の血糖変動幅(i)中央値曲線(実線):中央値曲線の上下動が大きい箇所は、1日の中で血糖変動が大きい時間帯であることを示している。(ii)25%タイル曲線~75%タイル曲線(青色帯):各時間帯で、たとえば10日間のうち5日間はこの範囲内に血糖値が入る(50%の確率)。(iii)10%タイル曲線~90%タイル曲線(水色帯):各時間帯で、たとえば10日間のうち8日間はこの範囲内に血糖値が入る(80%の確率)。3)食後血糖の平均上昇幅このようにAGPで解析すると、1日のうちで低血糖/高血糖となる可能性の高い時間帯や血糖値の変動が大きい時間帯などが視覚的に確認でき、これを活用することで、血糖変動の幅や目標範囲との差、低血糖/高血糖の可能性の有無などについて把握しやすくなる。次にTIRとは、1日のうち血糖値が目標範囲内で過ごせた時間を表したもので、異なる糖尿病患者群のそれぞれで標準的なCGMの目標値が決められている。図5:異なる糖尿病患者群におけるCGMの目標値画像を拡大するこれらの指標に基づき、2型糖尿病患者を対象にした研究では、重症度に基づく糖尿病網膜症(DR)の有病率はTIR四分位の上昇とともに減少し、DRの重症度はTIR四分位数と逆相関を示した4)、TIRは大血管合併症の代替指標である頸動脈内膜中膜肥厚度と関連した5)など多くの論文が出され、有用性が実証されている。FGMによるAGPレポートを見るメリットとして、糖尿病のさまざまな合併症を防ぐため、24時間の血糖値がどのように変動しているか、つまり「血糖トレンド」に注目することが重要とされ、それをしっかり理解できると、下記のような点に関し、患者の状態が確認しやすくなる。(1)食後高血糖(血糖値スパイク)の有無(2)夜間低血糖や暁現象の有無(3)HbA1cの値だけではわからない、「血糖コントロールの質」などさらに今後の方向性として、コロナ禍などで対面診療ができない場合でのオンライン診療なども視野に入るかと思われる。FGM導入で患者も主治医もWin-Winいろいろと利便性ばかり述べてきたが、もちろん限界もある。装着を避けるべき患者像は、血糖値に振り回され、血糖ありきで生活習慣の改善がおろそかになってしまうような患者(たとえば血糖値が高いときインスリンを多く打ち過ぎて低血糖を繰り返す、あるいは補食し過ぎて高血糖になり悪化するケースなど)や、逆にせっかく装着しても、興味がなく規定の時間内に測定しない人や血糖値を他人に見られるのを非常に嫌がる患者などには、決して無理強いするものではない(医療機関でしか測定データを確認できない器機もあるにはあるが…)。また、皮膚に直接貼付するため、かぶれやすい患者などでは着けられない場合もある。いずれにせよ、患者の適性を考慮して使用することで行動変容につながり、薬剤以上の素晴らしい効果が期待できることをぜひ体験していただきたい。これを機に、糖尿病診療にFGMを活用すべく、まずは自身から行動変容を試みてはいかがだろうか。1)Ida S, et al. J Diabetes Res. 2020 Apr 9;2020:9463648.2)Battelino T, et al. Diabetes Care. 2019;42:1593-1603.3)糖尿病リソースガイド 糖尿病治療におけるTime in Range(TIR)の重要性と血糖トレンドの活用4)Lu J, et al. Diabetes Care. 2018;41:2370-2376.5)Jingyi Lu, et.al. Diabetes Technol Ther. 2020 Feb;22:72-78.

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「フィアスプ」の名称の由来は?【薬剤の意外な名称由来】第77回

第77回 「フィアスプ」の名称の由来は?販売名フィアスプ®注フレックスタッチ®フィアスプ®注ペンフィル®フィアスプ®注100単位/mL一般名(和名[命名法])インスリン アスパルト(遺伝子組換え)(JAN)効能又は効果インスリン療法が適応となる糖尿病用法及び用量画像を拡大する警告内容とその理由設定されていない禁忌内容とその理由禁忌(次の患者には投与しないこと)1.低血糖症状を呈している患者2.本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者※本内容は2021年11月10日時点で公開されているインタビューフォームを基に作成しています。※副作用などの最新の情報については、インタビューフォームまたは添付文書をご確認ください。1)2020年6月改訂(第2版)医薬品インタビューフォーム「フィアスプ®注フレックスタッチ®・フィアスプ®注ペンフィル®・フィアスプ®注100単位/mL」2)Novo Nordisk Pro:製品情報

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「ランタスXR」の名称の由来は?【薬剤の意外な名称由来】第76回

第76回 「ランタスXR」の名称の由来は?販売名ランタス®XR注 ソロスター®一般名(和名[命名法])インスリン グラルギン(遺伝子組換え)(JAN)効能又は効果インスリン療法が適応となる糖尿病用法及び用量通常、成人では、初期は1日1回4~20単位を皮下注射するが、ときに他のインスリン製剤を併用することがある。注射時刻は毎日一定とする。投与量は、患者の症状及び検査所見に応じて増減する。なお、その他のインスリン製剤の投与量を含めた維持量は、通常1日4~80単位である。ただし、必要により上記用量を超えて使用することがある。警告内容とその理由設定されていない禁忌内容とその理由禁忌(次の患者には投与しないこと)1.低血糖症状を呈している患者2.本剤の成分又は他のインスリン グラルギン製剤に対し過敏症の既往歴のある患者※本内容は2021年11月3日時点で公開されているインタビューフォームを基に作成しています。※副作用などの最新の情報については、インタビューフォームまたは添付文書をご確認ください。1)2021年2月改訂(第8版)医薬品インタビューフォーム「ランタス®XR注 ソロスター®」2)サノフィe-MR:製品情報

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tirzepatideの効果、心血管高リスク2型DMでは?/Lancet

 心血管リスクが高い2型糖尿病患者において、デュアルGIP/GLP-1受容体作動薬tirzepatideの週1回投与は、インスリン グラルギンと比較し52週時点のHbA1c値低下について優越性が示され、低血糖の発現頻度も低く、心血管リスクの増加は認められないことが示された。イタリア・ピサ大学のStefano Del Prato氏らが、心血管への安全性評価に重点をおいた第III相無作為化非盲検並行群間比較試験「SURPASS-4試験」の結果を報告した。Lancet誌オンライン版2021年10月18日号掲載の報告。tirzepatideの3用量(5、10、15mg)とインスリン グラルギンを比較 試験は、14ヵ国、187施設において実施された。適格患者は、メトホルミン、SU薬、SGLT2阻害薬のいずれかの単独または併用投与による治療を受けており、ベースラインのHbA1c値が7.5~10.5%、BMI値25以上、過去3ヵ月間の体重が安定している2型糖尿病の成人患者で、心血管リスクが高い患者とした。心血管リスクが高い患者とは、冠動脈・末梢動脈・脳血管疾患の既往がある患者、または慢性腎臓病の既往がある50歳以上の患者で、推定糸球体濾過量(eGFR)が60mL/分/1.73m2未満またはうっ血性心不全(NYHA心機能分類クラスII/III)の既往がある患者と定義した。 研究グループは、被験者をtirzepatideの5mg群、10mg群、15mg群またはインスリン グラルギン(100U/mL)群に1対1対1対3の割合で無作為に割り付け、tirzepatideは週1回、インスリン グラルギンは1日1回皮下投与した。tirzepatideは2.5mgより投与を開始し、設定用量まで4週ごとに2.5mgずつ増量した。インスリン グラルギンは10U/日で開始し、自己報告による空腹時血糖値が100mg/dL未満に達するまで漸増した。52週間投与した時点で有効性の主要評価項目について解析し、その後、心血管疾患に関する追加データを収集するため最大で52週間の追加治療を行った。 有効性の主要評価項目はベースラインから52週までのHbA1c値の変化量で、tirzepatide(10mg、15mg)のインスリン グラルギンに対する非劣性(非劣性マージン 0.3%)および優越性を検証した。安全性として、心血管死、心筋梗塞、脳卒中および不安定狭心症による入院の複合エンドポイント(MACE-4)についても評価した。10、15mg群で血糖降下作用の非劣性・優越性を確認、心血管リスクに差はなし 2018年11月20日~2019年12月30日に、3,045例がスクリーニングされ、2,002例が無作為に割り付けられた。治験薬の投与を1回以上受けた修正ITT集団は1,995例で、tirzepatide 5mg群329例(17%)、10mg群328例(16%)、15mg群338例(17%)、インスリン グラルギン群1,000例(50%)であった。 52週時点におけるHbA1c値のベースラインからの変化量(最小二乗平均値±SE)は、tirzepatide 10mg群-2.43±0.053%、15mg群−2.58±0.053%、グラルギン群-1.44±0.030%であった。グラルギン群に対する推定治療差は、10mg群で−0.99%(97.5%CI:−1.13~−0.86)、15mg群で−1.14%(97.5%CI:−1.28~−1.00)であり、非劣性および優越性が確認された。 有害事象については、tirzepatide群で悪心(12~23%)、下痢(13~22%)、食欲不振(9~11%)、嘔吐(5~9%)の発現頻度がグラルギン群(それぞれ2%、4%、<1%、<2%)より高かったが、ほとんどが軽症~中等度で、用量漸増期に生じた。低血糖(血糖値<54mg/dLまたは重症)の発現頻度は、tirzepatide群(6~9%)がグラルギン群(19%)より低く、とくにSU薬を用いていない患者で顕著であった(tirzepatide群1~3%、グラルギン群16%)。 MACE-4のイベントは全体で109例に認められた。tirzepatide 5mg群19例(6%)、10mg群17例(5%)、15mg群11例(3%)で、tirzepatide群合計で47例(5%)、インスリン グラルギン群では62例(6%)であった。tirzepatide群のグラルギン群に対するMACE-4イベントのハザード比は0.74(95%信頼区間:0.51~1.08)であり、MACE-4のリスク増加は認められなかった。試験期間中の死亡はtirzepatide群で25例(3%)、グラルギン群で35例(4%)、計60例確認されたが、いずれも試験薬との関連性はないと判定された。

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「トルリシティ」の名称の由来は?【薬剤の意外な名称由来】第75回

第75回 「トルリシティ」の名称の由来は?販売名トルリシティ®皮下注0.75mg アテオス®一般名(和名[命名法])デュラグルチド(遺伝子組換え)(JAN)効能又は効果2型糖尿病用法及び用量通常、成人には、デュラグルチド(遺伝子組換え)として、0.75 mgを週に1回、皮下注射する。警告内容とその理由設定されていない禁忌内容とその理由禁忌(次の患者には投与しないこと)1.本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者2.糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡又は前昏睡、1型糖尿病の患者[インスリン製剤による速やかな治療が必須となるので、本剤を投与すべきでない。] 3. 重症感染症、手術等の緊急の場合[インスリン製剤による血糖管理が望まれるので、本剤の投与は適さない。]※本内容は2021年10月27日時点で公開されているインタビューフォームを基に作成しています。※副作用などの最新の情報については、インタビューフォームまたは添付文書をご確認ください。1)2021年3月改訂(第9版)医薬品インタビューフォーム「トルリシティ®皮下注0.75mgアテオス®」2)Lillymedical.jp:製品情報

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デュアルGIP/GLP-1受容体作動薬tirzepatideの血糖降下作用および体重減少作用は基礎インスリン デグルデクより優れている(解説:住谷哲氏)

 SURPASS-3はデュアルGIP/GLP-1受容体作動薬tirzepatideの臨床開発プログラムSURPASS seriesの一つであり、基礎インスリンであるデグルデクとのhead-to-head試験である。2018年にADA/EASDの血糖管理アルゴリズムがGLP-1受容体作動薬を最初に投与すべき注射薬として推奨するまでは、経口血糖降下薬のみで目標とする血糖コントロールが達成できない場合には基礎インスリンの投与がgold standardであった。特に持効型インスリンであるグラルギンの登場後は、BOT(basal-supported oral therapy)として広く一般臨床でも用いられるようになっている。 tirzepatideは5mg、10mg、15mgの3用量が設定され、2.5mg/週から開始し4週ごとに増量された。一方デグルデクは10単位/日から開始し、treat-to-target法により自己血糖測定による空腹時血糖値FBG<90mg/dLを目標として1週間ごとに増量された。デグルデクは毎日投与であるがtirzepatideは週1回投与であり、maskingは不可能であるため試験デザインはopen-labelである。 結果は、主要評価項目である52週後のHbA1c低下量は、3用量のすべてにおいてデグルデク群に対する優越性が示された。副次評価項目である体重減少量も、HbA1cと同様に3用量のすべてにおいてデグルデク群に対する優越性が示された。さらにHbA1c<7.0%、HbA1c<6.5%、HbA1c<5.7%の達成率も、tirzepatideの3用量のすべてにおいてデグルデク群よりも有意に高値であった。treat-to-target法を用いたことにより、FBGについては、5mg投与群ではデグルデク群に比して有意に高値であったが、10mgおよび15mg群ではデグルデク群との間に有意差は認められなかった。この結果から予想されるように、血糖日内変動における食後2時間後血糖値は、3用量のすべてにおいてデグルデク群よりも有意に低値であった。有害事象についても、<54mg/dLの低血糖の頻度は3用量のすべてにおいてデグルデク群よりも少なかった。 経口血糖降下薬の多剤併用療法でも目標血糖値が達成されない患者において、次のステップとして基礎インスリン投与によるBOTが開始されることは現在でも少なくない。現時点でBOTは次第にGLP-1受容体作動薬に置き換わりつつあるが、近い将来デュアルGIP/GLP-1受容体作動薬がGLP-1受容体作動薬に置き換わるのも現実的になってきたと思われる。

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第80回 COVID-19入院患者の半数に高血糖~脂肪細胞ホルモンの減少が寄与?

糖尿病の主徴である高血糖は炎症や感染に対抗する免疫の低下と関連し、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行の早くからその重症化要因の一つと認識されていました。その逆に、COVID-19は糖尿病と無縁だった人の高血糖と関連することも最近になって知られるようになっています。米国でCOVID-19が流行りはじめたころの数ヵ月間(2020年3月1日~5月15日)にCOVID-19と診断されてニューヨーク州の病院に入院したおよそ4千人(3,854人)を調べたところ、実におよそ半数(49.7%)に高血糖が生じていました1,2)。高血糖だと予後はより不良で、正常血糖の患者に比べて重度呼吸器不全・急性呼吸窮迫症候群(ARDS)は9倍、人工呼吸器使用は15倍、死亡は3倍多いことと関連しました。高血糖はCOVID-19以外の重度肺機能不全でも認められ、インフルエンザや細菌性肺炎などのCOVID-19以外の病態によるARDS患者とCOVID-19と関連するARDS患者の高血糖の割合は似たようなものでした。しかし高血糖の仕組みには違いがあり、前者ではインスリンを作るβ細胞の死や機能不全がどうやら主因であるのに対し、COVID-19と関連するARDS患者の高血糖は主にインスリン抵抗性によって生じていました。インスリン抵抗性はインスリンが出回っているにもかかわらずそれに反応できなくなることで生じます。COVID-19患者のインスリン抵抗性の原因を探るべく糖調節ホルモンを調べたところ血液中のアディポネクチンがひどく減っていました。アディポネクチンは脂肪細胞で作られるホルモンであり、インスリンへの反応を高めて糖尿病を生じにくくする役割を担います。SARS-CoV-2はヒトやマウスの脂肪細胞に感染可能であり、じかに脂肪細胞に手を下してアディポネクチン生成を妨害しているのかもしれません。SARS-CoV-2が脂肪細胞に影響を及ぼしうることはハムスターへの感染実験で示されています。SARS-CoV-2をハムスターに感染させたところウイルスに対抗する遺伝子が脂肪組織で強く発現し、アディポネクチンの発現が減じました。糖の扱いや糖尿病とCOVID-19を結びつける仕組みのさらなる把握にSARS-CoV-2感染ハムスターは今後重宝されるでしょう。今回の研究は治療の可能性も示唆しています。たとえばピオグリタゾンなどのアディポネクチン生成を増やすチアゾリジンジオン糖尿病薬は高血糖を伴うCOVID-19の治療に役立つかもしれません2)。メトホルミンなどの他のインスリン感受性亢進薬で糖代謝を底上げしてインスリン投与を回避することも期待できそうです1)。安全性や効果を調べる今後の試験でそれら薬剤のCOVID-19治療での価値が定まるでしょう。参考1)Reiterer M, et al.Cell Metab. 2021 Sep 16:S1550-4131,00428-9.2)COVID-19 may trigger hyperglycemia and worsen disease by harming fat cells / Eurekalert

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SGLT2阻害薬は主役か?それとも脇役か?【令和時代の糖尿病診療】第2回

第2回 SGLT2阻害薬は主役か?それとも脇役か?前回のGLP-1受容体作動薬に続き、今回はSGLT2阻害薬について、実話と私見に基づき述べていく。この薬剤もまた、生誕7年とまだまだ若い経口糖尿病治療薬である。発売当初は「尿に糖を捨てるだけの単純な薬」と認識され、糖尿病専門医の間でもあまり評価はされず、期待もされていない薬剤だったと記憶している。1つ、この薬剤があまり浸透していなかったためか、当時の面白いエピソードがあるので紹介させていただく。SGLT2阻害薬を服用中の患者さんで、会社の健康診断を受けた際、当然のことながら尿糖4+という結果が出た。本人はこの薬剤を飲んでいることを医師に告げたが、「“血糖コントロール不良”と言われた」と私に笑顔で伝えてくれた。さらに、本薬剤については私どもの施設でも、1型糖尿病への適応追加に関して治験を行ったが、専門医がいる病棟でも、ケトアシドーシスを恐れて参加しない施設が多く見られたという話があったくらいである。現在は経口薬として、α-GI薬に続いてSGLT2阻害薬の一部が1型糖尿病に適応追加を取得し、予想以上にいい効果が発揮されている。それどころか、昨年末に心不全に対する適応も加わり、さらには今年8月に透析予防の観点から現在大きな問題となっている慢性腎臓病(以下、CKDと略す)の適応まで追加になった。まさに、マルチな効能を兼ね備えた薬剤で、合併症を見据えた治療が可能になり、狭義の血糖降下薬を超えたとも言えるかもしれない。いろいろと話題の尽きない薬剤であるが、今回の話を進める中で、さらにいくつか述べていこうと思う。重要な3つのポイント:適応患者の選択、使い分け、心不全に対する効果ある日、恩師からの電話でSGLT2阻害薬について質問があった。内容は3点。(1)どのような患者がいい適応か?(2)多くの種類(国内承認は6成分)があるが、使い分けはどのようにしているのか?(3)循環器の先生が心不全に効果があると言っているがどのようなものか? といったもの。これらの質問に対し、答えた内容を順に紹介する。(1)どのような患者がいい適応か?これを語るには、まず分類・作用機序から簡単に確認する必要がある。SGLT2阻害薬は、糖尿病治療ガイド2020-20211)の中でインスリン分泌非促進系に分類され、主な作用としては腎臓でのブドウ糖再吸収阻害による尿中ブドウ糖排泄促進である。そして特徴として、単剤では低血糖を起こしにくく、体重減少効果があり(なお食欲増進に注意、詳しくは後述)、主な副作用として、性器・尿路感染症、脱水、皮疹、ケトーシスが知られている。使用上の注意として、「1型糖尿病患者において、一部製剤はインスリンと併用可能」「eGFR30未満の重度腎機能障害の患者では、血糖降下作用は期待できない」と記載され、さらには、主なエビデンスとして「心・腎の保護効果」「心不全の抑制効果」が示されている。上記からおのずと見えてくるいい適応症例は、「低血糖を起こしたくない肥満(とくに内臓肥満、いわゆるメタボ)で、尿路感染症がなく、腎機能が比較的保たれ脱水を引き起こしにくい患者」すなわち、(食事時間の不規則な)メタボ型の若年~中高年糖尿病患者ということになる。なお、それ以外の患者さんには使用できないのか? というと、そういうわけでもない。が、絶対に使用してはいけないのは、寝たきりの高齢者で水分もあまり摂れず、食事量も少ないインスリン分泌の落ち込んだ血糖コントロール不良の患者である。同様に、下痢や嘔吐で食事が摂れないシックデイや、脱水のときに服薬継続した場合は危険なため、処方する際はあらかじめ、休薬する条件をしっかり伝えておく必要がある。なぜならば、正常血糖ケトアシドーシスを起こすリスクがあるからである。これは、SGLT2阻害薬が上市されてからクローズアップされた医学用語であり、日本糖尿病協会からも「SGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendation」として出されている。また、本薬剤は、膵臓からのグルカゴン分泌を促進し、腎臓からの3-hydroxybutyrateとアセトアセテートの分泌を減少させることによりケトーシスのリスクを増大させるともいわれている2)。とくに経験年数の長い医師は、血糖値100mg/dL台でケトアシドーシスが起こるなんて今まで考えたこともない病態であろう。馴染みが薄いかもしれないが、現実にあちらこちらで起こっていて、決して頻度の低い珍しい病態ではないことを理解していただきたい。そして、内科以外の先生方にもぜひ覚えておいてほしい。また、たとえいい適応症例であったとしても、使用する際に重々注意してほしいことは、決して“痩せる薬”であることを前面に押し出し過ぎないことである。図1:エネルギー摂取量を減少させたときの体重の変化(理論計算結果)画像を拡大する薬の効果があっても、生活改善なくして体重は減らない。また、食事制限をしたとしても、現体重に合わせて目標を強化していかなくては、上記グラフのように1年あまりで下げ止まってしまうと考えられる。しかし、患者さんは、自分に都合のいいように考えるため、「(薬で痩せるなら)これでいくらでも食べられる」と勘違いして過食に走り、体重が落ちるどころかさらに増えてしまい、血糖コントロールが悪化する事態も起こりうる。そうなってしまうと、この薬剤に期待する効果が十分に得られないだけでなく、中止後のさらなる体重増加、血糖コントロール悪化につながる恐れまである。処方時には、食欲増進作用を併せ持つことに対する注意をぜひ伝えていただきたい。(2)薬の使い分けはどのようにしているのか?(class effectはあるのか?)この質問の答えとしては、SGLT1/2の受容体選択性や作用時間などで差異をつけ、いろいろな議論もあると思うが、私見として大差はないと考えている。副作用として、皮疹や下痢の頻度には若干の差があるが…。その中で、半減期と尿量に関して興味深い報告を1つ紹介する。入院中の2型糖尿病患者36例を対象に、トホグリフロジン20mg(商品名:アプルウェイ、デベルザ)を朝1回追加投与することで、日中の尿量は増加するものの、夜間の尿量増加はわずかにとどまり、夜間就寝中のQOLを損なうことは少ないことが示唆された3)。トホグリフロジンはSGLT2阻害薬のなかでは半減期が5.4時間と最も短く、健康成人に対する朝1回単回投与試験でも、夜間の尿糖排泄は少ないことが示されている4)。このような結果から、日中に比し、夜間の尿量増加が少なかったことは、トホグリフロジンの半減期が短いことによると推察される。夜間の尿意で眠れないといった患者さんには本剤の選択がいいかもしれない。表1:SGLT2阻害薬の作用持続時間画像を拡大する(3)心不全に対する効果ここに関しては私の出る幕ではないが、驚くべきことに昨年11月にダパグリフロジンが慢性心不全の標準治療に対する効能・効果の追加承認を取得した。この承認は、2型糖尿病合併の有無にかかわらず左室駆出率が低下した心不全(HFrEF)を対象とした第III相DAPA-HF試験5)の良好な結果に基づいている。表2:DAPA-HF試験の主要評価項目(複合アウトカム)心不全悪化イベント発生(入院または心不全による緊急来院)までの期間または心血管死画像を拡大するさらには、糖尿病患者に多いといわれている左室駆出率の保たれた心不全(HFpEF)に対するエンパグリフロジンの有効性を検討した、EMPEROR-Preserved試験において、主要評価項目(心血管死亡または心不全による入院の初回イベント)の発生リスクは、エンパグリフロジン投与群で有意に抑制されたという。以上のことから、SGLT2阻害薬はこれからさらに、循環器内科の先生方にも注目されると思われる。SGLT2阻害薬は主役か? それとも脇役か?ここまで述べたように、SGLT2阻害薬は血糖降下作用を持つ糖尿病治療薬としてのみならず、心不全・CKDの治療薬としても認められたことは記憶に新しい。いずれの病態も糖尿病の重大な合併症であり、第1回(前回)の図3「2型糖尿病における血糖降下薬:総括的アプローチ(ADA2021)6)」でも提示ししたごとく、動脈硬化性心血管疾患やCKDの合併または高リスクの場合は、メトホルミンとは独立して検討すると記載されており、まさに主役になれそうな勢いのある薬剤である。しかし、わが国において高齢者糖尿病が急増している中で、今回示したとおり適正な症例を選ぶ能力も身に着けていただく必要があり、決して万能薬ではないことを最後に付け加えたい。私個人の意見として、この薬剤の立ち位置は“名脇役”ということにさせていただこう。1)日本糖尿病学会編・著. 糖尿病治療ガイド2020-2021. 文光堂;2020.2)A Pfutzner, et al. Endocrine. 2017;56:212-216.3)大工原 裕之. 診療と新薬. 2017;54:25-28.「SGLT2阻害薬投与前後の血糖ならびに尿量変化について」4)Hashimoto Y, et al. BMC Endocr Disord. 2020;20:98.5)John J V McMurray, et al. N Engl J Med. 2019;381:1995-2008.6)American Diabetes Association. Diabetes Care. 2021;44(Suppl 1):S111-S124.

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イメグリミンが2型糖尿病治療の新薬として発売/大日本住友製薬・POXEL

 POXEL社および提携先の大日本住友製薬 株式会社は、2型糖尿病を適応症とする治療薬イメグリミン塩酸塩(商品名:ツイミーグ錠 500mg)を2021年9月16日に発売した。イメグリミンは2型糖尿病の治療パラダイムほぼすべての段階で候補となる可能性 イメグリミンは、2型糖尿病を治療するための、独自の2つの作用機序を有するファーストインクラスの薬剤。単剤および他の血糖降下療法レジメンへの追加療法として承認されている。 両社が共同で実施した “TIMES”(Trials of IMeglimin for Efficacy and Safety)プログラムを含む多数の前臨床試験および臨床試験の良好な結果に基づいて、今年6月に厚生労働省から承認されたことを受け 、今回のイメグリミンの発売となった。 TIMESプログラムは、1,100例以上の患者を対象にイメグリミンの有効性と安全性を検証した3つの第III相臨床試験から構成された。試験では主要評価項目および各目標値を達成し、イメグリミンの良好な安全性ならびに忍容性プロファイルを示した。 イメグリミンは、新規の化学物質クラスであるテトラヒドロトリアジン系に分類された初めての化合物で、ミトコンドリアへの作用を介して、グルコース濃度依存的なインスリン分泌を促す膵作用と、肝臓・骨格筋での糖代謝を改善する膵外作用(糖新生抑制および糖取込み能改善)により血糖降下作用を示すと考えられている。 イメグリミンの作用機序として、糖尿病によって引き起こされる細小血管・大血管障害の予防につながる血管内皮機能および拡張機能の改善作用を有する可能性があるほか、β細胞の生存と機能を保護する効果も期待されている。この特徴的な作用機序により、イメグリミンは、現在の糖尿病治療パラダイムのほぼすべての段階において、単剤または他の血糖降下剤との併用など、2型糖尿病治療の候補となる可能性が期待されている。イメグリミンの概要販売名:ツイミーグ錠 500mg一般名:イメグリミン塩酸塩規格・含量:1錠中イメグリミン塩酸塩 500mg効能・効果:2型糖尿病用法・用量:通常、成人にはイメグリミン塩酸塩として1回1,000mgを1日2回朝、夕に経口投与する製造販売承認:2021年6月23日 薬価収載:2021年8月12日 発売日:2021年9月16日薬価:34.40円製造販売元:大日本住友製薬株式会社

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新世代MRAのfinerenone、DKDの心血管リスク減/NEJM

 2型糖尿病を合併する幅広い重症度の慢性腎臓病(CKD)患者の治療において、非ステロイド型選択的ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬finerenoneはプラセボと比較して、心血管死や非致死的心筋梗塞などで構成される心血管アウトカムを改善し、有害事象の頻度は同程度であることが、米国・ミシガン大学医学大学院のBertram Pitt氏らが実施した「FIGARO-DKD試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2021年8月28日号で報告された。標準的な治療への上乗せ効果を評価 本研究は、48ヵ国の施設が参加した二重盲検プラセボ対照無作為化イベント主導型第III相試験であり、2015年9月~2018年10月の期間に参加者のスクリーニングが行われた(Bayerの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、2型糖尿病を伴うCKDで、添付文書に記載された最大用量のレニン-アンジオテンシン系(RAS)阻害薬(ACE阻害薬、ARB)による治療で受容できない副作用の発現がみられない患者であった。スクリーニング時に、持続性のアルブミン尿の中等度上昇(尿中アルブミン[mg]/クレアチニン[g]比:30~<300)がみられ、推算糸球体濾過量(eGFR)が25~90mL/分/1.73m2(ステージ2~4のCKD)の患者、または持続性のアルブミン尿の高度上昇(尿中アルブミン/クレアチニン比:300~5,000)がみられ、eGFRが≧60mL/分/1.73m2(ステージ1/2のCKD)の患者が解析に含まれた。 被験者は、finerenone(10mgまたは20mg、1日1回、経口)またはプラセボを投与する群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは、心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、心不全による入院の複合とされ、生存時間解析を用いて評価が行われた。副次アウトカムは、腎不全、eGFRのベースラインから4週以降における40%以上の持続的な低下、腎臓が原因の死亡の複合であった。主要アウトカム:12.4% vs.14.2% 7,352例が登録され、finerenone群に3,686例、プラセボ群に3,666例が割り付けられた。全体の平均年齢(±SD)は64.1±9.8歳で、69.4%が男性であった。 ベースライン時に、全体の70.5%がスタチン、47.6%が利尿薬の投与を受けていた。また、97.9%が血糖降下薬の投与を受けており、このうち54.3%がインスリン製剤、8.4%がSGLT2阻害薬、7.5%がGLP-1受容体作動薬の投与を受けていた。試験期間中に、15.8%がSGLT2阻害薬、11.3%がGLP-1受容体作動薬の投与を新たに開始した。 追跡期間中央値3.4年の時点で、主要アウトカムのイベントは、finerenone群が12.4%(458/3,686例)、プラセボ群は14.2%(519/3,666例)で認められ、finerenone群で有意に良好であった(ハザード比[HR]:0.87、95%信頼区間[CI]:0.76~0.98、p=0.03)。 この主要アウトカムのfinerenone群での利益は、主に心不全による入院(3.2% vs.4.4%、HR:0.71、95%CI:0.56~0.90)がfinerenone群で低かったためであり、心血管死(5.3% vs.5.8%、0.90、0.74~1.09)、非致死的心筋梗塞(2.8 vs.2.8%、0.99、0.76~1.31)、非致死的脳卒中(2.9% vs.3.0%、0.97、0.74~1.26)に差はみられなかった。 副次アウトカムは、finerenone群が9.5%(350例)、プラセボ群は10.8%(395例)で認められた(HR:0.87、95%CI:0.76~1.01)。 担当医の報告による全般的な有害事象の頻度は両群で同程度であり、重篤な有害事象はfinerenone群が31.4%、プラセボ群は33.2%で発現した。高カリウム血症は、finerenone群で頻度が高かった(10.8%、5.3%)が、高カリウム血症による死亡例はなく、高カリウム血症による恒久的な投与中止例(1.2%、0.4%)や入院例(0.6%、0.1%)は、finerenone群で多いものの頻度は低かった。 著者は、「患者の60%以上がベースライン時にeGFR≧60mL/分/1.73m2のアルブミン尿を伴うCKD患者であったことから、尿中アルブミン/クレアチニン比によるスクリーニングで早期にCKDを診断し、この心血管リスクが高く認知度が低い患者集団の転帰を改善するための治療を開始する必要性が浮き彫りとなった」としている。

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ミトコンドリアを介する新規作用機序の2型糖尿病治療薬「ツイミーグ錠500mg」【下平博士のDIノート】第82回

ミトコンドリアを介する新規作用機序の2型糖尿病治療薬「ツイミーグ錠500mg」今回は、2型糖尿病治療薬「イメグリミン塩酸塩(商品名:ツイミーグ錠500mg、製造販売元:大日本住友製薬)」を紹介します。本剤は、ミトコンドリアに作用する新しい機序の糖尿病治療薬であり、インスリン分泌低下型、インスリン抵抗性亢進型のいずれであっても血糖降下作用が期待できます。<効能・効果>本剤は、2型糖尿病の適応で、2021年6月23日に承認され、同年9月16日に発売されました。本剤の適用は、あらかじめ糖尿病治療の基本である食事療法、運動療法を十分に行った上で効果が不十分な場合に限り考慮します。<用法・用量>通常、成人にはイメグリミン塩酸塩として1回1,000mgを1日2回朝、夕に経口投与します。なお、本剤とビグアナイド系薬剤は作用機序の一部が共通している可能性があります。臨床試験でも両剤を併用した場合は、ほかの糖尿病用薬との併用療法と比較して消化器症状が多く認められたことから、併用薬を選択する際は注意が必要です。<安全性>臨床試験において、本剤が投与された安全性評価対象1,103例中、副作用発現数は168例(15.2%)でした。主な副作用は、低血糖6.7%(74例)、悪心2.1%(23例)、下痢1.9%(21例)、便秘1.3%(14例)などでした。なお、低血糖は重大な副作用としても報告されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、血糖値に応じてインスリンの分泌を促す作用と、インスリンが働きにくい状態を改善する作用によって血糖値を改善します。2.薬の服用により、低血糖症状を起こすことがあります。脱力感、高度の空腹感、発汗、震えなどの症状が認められた場合には、飴やジュースなどで糖分を摂取してください。α-グルコシダーゼ阻害薬を併用している場合はブドウ糖を摂取してください。<Shimo's eyes>本剤は、既存の経口糖尿病治療薬とは異なる構造を有しており、ミトコンドリアへの作用を介してグルコース濃度依存的なインスリン分泌を促す膵作用と、肝臓・骨格筋での糖代謝を改善する膵外作用(肝臓での糖新生抑制、骨格筋などでの糖取り込み能改善)の2つによって血糖降下作用を示します。インスリン分泌低下型、インスリン抵抗性亢進型のいずれの病態であっても効果が期待できるという特徴があります。製品名は、2つを意味する“twin”と一般名の“imeglimin”に由来しています。2型糖尿病患者を対象とした長期投与試験において、単独療法または併用療法でHbA1c改善効果を示し、52週にわたってその効果が維持されました。主な副作用には、悪心、下痢、便秘などがあります。重大な副作用として低血糖(6.7%)が報告されていますが、本剤の作用によるインスリン分泌はグルコース濃度依存的で、低血糖時にはインスリンを分泌させないことが報告されており、単剤使用での重症低血糖のリスクは低いと考えられます。腎機能障害のある患者では、腎臓からの排泄が遅延し、本剤の血中濃度が上昇する恐れがあることから、eGFRが45mL/min/1.73m2未満(透析を含む)の患者への投与は推奨されていません。注意すべき点は、メトホルミンとの併用により消化器症状が増大する恐れがあることです。また、インスリン製剤やSU薬、速効型インスリン分泌促進薬と併用すると低血糖のリスクが上がるため、これらの薬剤を併用する際には減量の検討が必要です。参考1)PMDA 添付文書 ツイミーグ錠500mg

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「デベルザ」の名称の由来は?【薬剤の意外な名称由来】第69回

第69回 「デベルザ」の名称の由来は?販売名デベルザ®錠20mg一般名(和名[命名法])トホグリフロジン水和物(JAN)効能又は効果2型糖尿病用法及び用量通常、成人にはトホグリフロジンとして20mgを1日1回朝食前又は朝食後に経口投与する。警告内容とその理由設定されていない。禁忌内容とその理由禁忌(次の患者には投与しないこと)1.本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者2.重症ケトーシス、糖尿病性昏睡又は前昏睡の患者[輸液、インスリンによる速やかな高血糖の是正が必須となるので本剤の投与は適さない。]3.重症感染症、手術前後、重篤な外傷のある患者[インスリン注射による血糖管理が望まれるので本剤の投与は適さない。]※本内容は2021年9月15日時点で公開されているインタビューフォームを基に作成しています。※副作用などの最新の情報については、インタビューフォームまたは添付文書をご確認ください。1)2019年10月改訂(第12版)医薬品インタビューフォーム「デベルザ®錠20mg」2)興和株式会社:製品情報検索

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糖尿病薬物治療で最初に処方される薬は/国立国際医療研究センター

 糖尿病の治療薬は、さまざまな種類が登場し、患者の態様に合わせて治療現場で処方されている。実際、2型糖尿病患者に対して最初に投与される糖尿病薬はどのような治療薬が多いのだろうか。 国立国際医療研究センターの坊内 良太郎氏らのグループは、横浜市立大学、東京大学、虎の門病院の協力のもとこの実態について全国規模の実態調査を実施した。調査の結果、最初の治療薬としてDPP-4阻害薬を選択された患者が最も多く、ビグアナイド(BG)薬、SGLT2阻害薬がそれに続いた。また、薬剤治療開始後1年間の総医療費はBG薬で治療を開始した患者で最も安いこと、DPP-4阻害薬およびBG薬の選択には一定の地域差、施設差があることが明らかとなった。2型糖尿病患者への処方薬を全国約114万例で解析 本研究の背景として、わが国の2型糖尿病の薬物療法は、すべての薬剤の中から病態などに応じて治療薬を選択することを推奨している。そのため、BG薬を2型糖尿病に対する第1選択薬と位置付けている欧米とは処方実態に違いがあることが予想されていたが、日本全体の治療実態についての詳細は不明だった。そこで、匿名レセプト情報・匿名特定健診等情報データベース(NDB)を用い、わが国の2型糖尿病患者に対し最初に投与された糖尿病薬の処方実態を明らかにすることを目的に全国規模の研究を行った(本研究は厚生労働科学研究として実施)。 坊内 良太郎氏らのグループは、調査方法としてNDBの特別抽出データ(2014-17年度)から抽出した成人2型糖尿病患者のうち、インスリンを除いた糖尿病治療薬を単剤で開始された患者を対象に、研究期間全体および各年度別の各薬剤の処方数、処方割合、新規処方に関連する因子、さらに初回処方から1年間の総医療費を算出し、それに関連する因子についても検討。対象患者数は全体113万6,723例(総医療費の解析対象:64万5,493例)。糖尿病患者への処方選択で強く影響する因子は「年齢」 調査の結果、2型糖尿病患者に最初に処方された薬剤は全体でBG薬(15.9%)、DPP-4阻害薬(65.1%)、SGLT2阻害薬(7.6%)、スルホニル尿素(SU)薬(4.1%)、α−グルコシダーゼ阻害薬(4.9%)、チアゾリジン薬(1.6%)、グリニド薬(0.7%)、GLP-1受動体作動薬(0.2%)だった。 都道府県別では、BG薬が最大33.3%(沖縄県)、最小8.7%(香川県)、DPP-4阻害薬が最大71.9%(福井県)、最小47.2%(沖縄県)と大きな違いを認めた。 各薬剤の選択に最も強く影響した因子は「年齢」で、高齢者ほどBG薬、SGLT2阻害薬の処方割合は低く、DPP4阻害薬およびSU薬の処方割合が高いことが示された。 総医療費については、BG薬で治療を開始した2型糖尿病患者が最も安く、SU薬、チアゾリジン薬が続き、GLP-1受容体作動薬が最も高いことが明らかとなった。多変量解析で、BG薬はチアゾリジン薬を除くその他の薬剤より総医療費が有意に低いことが示された。 今回の調査から坊内 良太郎氏らのグループは、全国規模の調査により、(1)わが国の2型糖尿病患者に対して最初に投与される糖尿病薬は欧米と大きく異なりDPP-4阻害薬が最も多いこと、(2)BG薬で治療を開始した患者の総医療費が最も安いこと、(3)薬剤選択に一定の地域間差や施設間差があること、などが初めて明らかになったと総括する。 また、「今後、個々の患者に対するより適切な薬剤選択などの診療の質の全国的な均てん化を進めるためには、薬剤選択に際し代謝異常の程度、年齢、肥満その他の病態を考慮することについてのさらなる周知に加え、薬剤選択の一助となるフローやアルゴリズムなどの作成が有効と考えられる」と示唆し、「本研究により得られた成果を基に、どの薬剤の血糖改善効果が高いか、合併症予防効果が高いかを明らかにすることを目的とした研究が行われ、一人一人の糖尿病患者にとって最適な糖尿病の個別化医療の確立されることが望まれる」と展望を述べている。

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日本人高齢者における慢性疾患治療薬の使用と新規抗認知症薬使用との関連

 新たに抗認知症薬が使用された高齢者において、慢性疾患に対する治療薬の使用状況がその後の認知症発症に影響を及ぼすかについて、東京都健康長寿医療センターの半田 宣弘氏らが、調査を行った。BMJ Open誌2021年7月15日号の報告。 首都圏の患者を対象としたレトロスペクティブコホート研究を実施した。対象は、2012年4月~6月(バックグラウンド期間)に抗認知症薬を使用していなかった柏市在住の77歳以上の高齢者4万2,024人。主要アウトカムは、2015年3月までのフォローアップ期間中の新規抗認知症薬の使用とした。対象者は、年齢別に77~81歳(1群)、82~86歳(2群)、87~91歳(3群)、92歳以上(4群)に分類した。年齢、性別に加え、バックグラウンド期間に使用していた14セットの薬剤を共変量とし、Cox比例ハザードモデルを用いて分析した。 主な結果は以下のとおり。・134万5,457人月のフォローアップ期間中(平均:32.0±7.5ヵ月、中央値:35ヵ月)に新たに抗認知症薬を使用した患者は、2,365人(5.6%)であった。・12ヵ月間の新規抗認知症薬使用率は、1.9±0.1%(1群:0.9±0.1%、2群:2.1±0.1%、3群:3.2±0.2%、4群:3.6±0.3%、p<0.0001)であった。・高齢および女性に加え、以下の薬剤の使用は、新規抗認知症薬使用と有意な関連が認められた。 ●スタチン(HR:0.82、95%CI:0.73~0.92、p=0.001) ●降圧薬(HR:0.80、95%CI:0.71~0.85、p<0.0001) ●非ステロイド性気管支拡張薬(HR:0.72、95%CI:0.58~0.88、p=0.002) ●抗うつ薬(HR:1.79、95%CI:1.47~2.18、p<0.0001) ●脳卒中後の治療薬(HR:1.45、95%CI:1.16~1.82、p=0.002) ●インスリン(HR:1.34、95%CI:1.01~1.78、p=0.046) ●抗腫瘍薬(HR:1.12、95%CI:1.01~1.24、p=0.035) 著者らは「本レトロスペクティブコホート研究により、高齢者における慢性疾患に対する治療薬と新規抗認知症薬使用との関連が特定された。これらの結果は、実臨床における認知症の臨床診断や医療政策を立案するうえで役立つであろう」としている。

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2型DM、tirzepatide vs.インスリン デグルデク漸増投与/Lancet

 2型糖尿病患者で、メトホルミン単独またはSGLT-2阻害薬との併用投与では血糖コントロールが不十分な18歳以上に対し、デュアルGIP/GLP受容体作動薬tirzepatideの週1回投与は、インスリン デグルデク漸増投与に比べ、52週時点のHbA1c値低下や体重減について、優越性が示された。オーストラリア・Vienna Health AssociationのBernhard Ludvik氏らが、1,444例を対象に行った有効性と安全性を評価する第III相無作為化非盲検並行群比較試験「SURPASS-3試験」の結果を報告した。安全性プロファイルは同等だったという。Lancet誌2021年8月14日号掲載の報告。tirzepatideの3用量とインスリン デグルデク漸増投与を比較 試験は13ヵ国、122の医療機関を通じて行われた。適格被験者は、ベースラインHbA1c値7.0~10.5%、BMI値25以上、体重は安定しており、インスリン治療歴なし、スクリーニング時点までにメトホルミン単独投与またはSGLT-2阻害薬との併用投与を3ヵ月以上受けた18歳以上だった。 研究グループは被験者を無作為に4群に分け、tirzepatideの3用量(5mg、10mg、15mg)、または、インスリン デグルデク漸増投与を、週1回いずれも皮下注射投与した。国やHbA1c値、経口血糖降下薬の併用により階層化した。 初回tirzepatide投与量は2.5mgで、設定用量まで4週ごとに2.5mgずつ増量した。初回インスリン デグルデク投与量は10U/日で、自己報告による空腹時血糖値が5.0mmol/L(90mg/dL)未満になるまで毎週漸増し、目標達成に向けた治療(T2T)アルゴリズムに従い52週間治療した。 有効性の主要エンドポイントは、ベースラインから52週までのHbA1c値の平均変化値について、tirzepatide群(10mg、15mg)のインスリン群に対する非劣性だった。主な副次エンドポイントは、tirzepatide群(5mg)の同非劣性と、全tirzepatide群のインスリン群に対するHbA1c値平均変化値と体重平均変化値についての優越性、52週時点でHbA1c値が7%(53mmol/mol)未満の割合だった。tirzepatide群のインスリン群に対する推定治療差、HbA1c値-0.59~-1.04% 無作為化を受けた被験者は1,444例、修正ITT集団は1,437例だった。 ベースラインの平均HbA1c値は8.17%(SD 0.91)で、52週時点におけるHbA1c値平均低下値はtirzepatide 5mg群が1.93%(SE 0.05)、10mg群が2.20%(0.05)、15mg群が2.37%(0.05)、インスリン群が1.34%(0.05)であり、非劣性マージン0.3%を達成した。インスリン群に対するtirzepatide群の推定治療差は、-0.59~-1.04%だった(全tirzepatide群に対するp<0.0001)。52週時点でHbA1c値が7%(53mmol/mol)未満の割合も、tirzepatide群(82~93%)がインスリン群(61%)より高率だった(p<0.0001)。 ベースラインの平均体重は94.3kgで、52週時点で全tirzepatide群が減少(-7.5~-12.9kg)したのに対し、インスリン群では増加(2.3kg)し、インスリン群に対するtirzepatide群の推定治療差は-9.8~-15.2kgだった(全tirzepatide群に対するp<0.0001)。 tirzepatide群の最も多く見られた有害事象は、軽度~中等度の消化器イベントだったが、時間経過と共に減少した。tirzepatide群で、吐き気(12~24%)、下痢(15~17%)、食欲不振(6~12%)、嘔吐(6~10%)の発生率がインスリン群に比べ高率だった(インスリン群はそれぞれ、2%、4%、1%、1%)。低血糖(54mg/dL未満)の発生率は、tirzepatide群(5mg、10mg、15mg)がそれぞれ1%、1%、2%だったのに対し、インスリン群では7%だった。 有害事象による治療中断は、tirzepatide群がインスリン群より多かった。試験期間中の死亡は5例報告されたが、研究者によっていずれも試験治療に関連したものではないと判断された。

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低GI/GL食が糖尿病患者のHbA1c低下をもたらす/BMJ

 主に血糖降下薬やインスリン製剤で中等度にコントロールされている1型および2型糖尿病の成人患者において、低グリセミック指数(GI)/グリセミック負荷(GL)の食事パターンを導入すると、糖化ヘモグロビン(HbA1c)値のほか空腹時血糖値や血中脂質、体重といった心臓代謝リスク因子に関して、小さいが意義のある改善がもたらされることが、カナダ・トロント大学のLaura Chiavaroli氏らの検討で示された。研究の詳細は、BMJ誌2021年8月4日号で報告された。低GI/GL食の無作為化対照比較試験のメタ解析 研究グループは、欧州糖尿病学会(EASD)の食事療法に関する診療ガイドラインの改訂に資するデータを得る目的で、低GI/GL食の効果を検討した無作為化対照比較試験を対象に系統的レビューとメタ解析を行った(EASDなどの助成を受けた)。 2021年5月13日の時点で、医学データベース(Medline、Embase、Cochrane Library)に登録された文献を検索した。対象は、糖尿病における低GI/GL食の効果について検討した3週間以上の無作為化対照比較試験とされた。 主要アウトカムはHbA1c値とされた。2人の研究者が個別にデータを抽出し、バイアスのリスクを評価した。データは、変量効果モデルによって統合された。また、GRADEを用いて、エビデンスの確実性の評価が行われた。HbA1c値の低下はエビデンスの確実性も高い 1型および2型糖尿病患者1,617例が参加した29の試験のデータを含む27の論文が解析に含まれた。参加者は、主に2型糖尿病(90%)の成人患者(93%)で、ほとんどが中高年(年齢中央値56歳、範囲:11~67歳)であり、過体重または肥満(BMI中央値31、範囲:19~36)がみられ、血糖降下薬(69%)やインスリン製剤(14%)、またはこれらの併用(7%)で中等度にコントロールされていた(ベースラインのHbA1c中央値7.7%、範囲:6.2~13.8%)。 低GI/GLの食事パターンは高GI/GLの対照食に比べ、小さいが意義のあるHbA1c値の低下をもたらした(平均差:-0.31%、95%信頼区間[CI]:-0.42~-0.19、p<0.001、異質性のI2=75%、p<0.001)。 また、低GI/GL食は、副次アウトカムのうち空腹時血糖値(p<0.001)、LDLコレステロール(p<0.001)、non-HDLコレステロール(p=0.002)、アポB(p=0.03)、トリグリセライド(p=0.04)、体重(p<0.001)、BMI(p=0.003)、C反応性蛋白(p=0.03)の低下をもたらしたが、血中インスリン、HDLコレステロール、ウエスト周囲長、血圧には有意な差はみられなかった。 HbA1c値の低下に関してはエビデンスの確実性が高かったが、副次アウトカムの多くは確実性が中程度であった。 著者は、「低GI/GLの食事パターンは、1型および2型糖尿病患者が血糖コントロールや心臓代謝リスク因子の目標値を達成するための付加的な治療法としてとくに有用と考えられる。これらの知見は、15年以上前に発行されたEASDの診療ガイドラインの改訂に資するものとなるだろう」としている。

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若年発症2型DM、青年期の各合併症の発症率は?/NEJM

 若年発症の2型糖尿病患者では、細小血管合併症などの合併症のリスクが経時的に着実に増加し、多くの患者が若年成人に達するまでに何らかの合併症を発症していることが、米国・コロラド大学のPetter Bjornstad氏らTODAY試験グループが実施した「TODAY2追跡試験」で示された。研究の詳細は、NEJM誌2021年7月29日号に掲載された。米国では、若年者における2型糖尿病の有病率は増加を続けているが、青年から成人への移行期における関連合併症の発生状況はほとんど知られていないという。米国の無作為化試験の観察的追跡研究 研究グループは、2004~11年の期間に米国の15施設で、青少年期に2型糖尿病を発症した患者を対象に、3種類の治療(メトホルミン、メトホルミン+rosiglitazone、メトホルミン+強化生活習慣介入)が、血糖コントロールを喪失するまでの期間に及ぼす効果を評価する目的で、多施設共同無作為化臨床試験(TODAY試験、699例、年齢10~17歳)を行った。 この試験の終了後、2011~20年の期間に同試験の参加者を対象として、2つの観察研究(TODAY2追跡試験)が実施された。2011~14年(TODAY2第1期)には、参加者は血糖コントロールのためにメトホルミン単独またはメトホルミン+インスリンによる治療を受けた(572例)。また、2014~20年(TODAY2第2期)には、通常治療のみが行われ、治療や介入は行われなかった(518例)。2つの期間を通じた平均追跡期間は10.2年だった。本論文では、この追跡研究の結果が報告された。 糖尿病性腎臓病、高血圧、脂質異常症、神経障害の評価が年1回行われ、網膜症の評価が試験期間中に2回実施された。HbA1c値<6%が75%から19%に、≧10%は0%から34%に TODAY2第2期の終了時点(2020年1月)で、解析に含まれた500例の平均年齢(±SD)は26.4±2.8歳であり、糖尿病の診断からの平均経過期間は13.3±1.8年であった。 糖化ヘモグロビン(HbA1c)値の中央値は経時的に上昇し、非糖尿病の範囲(HbA1c値<6%)の参加者の割合は、ベースライン(TODAY試験開始時、2004年)の75%から15年後(TODAY2第2期終了時、2020年)には19%に低下した。また、HbA1c値≧10%の割合は、ベースラインの0%から15年後には34%に増加した。 高血圧の発生率は、ベースラインが19.2%で、15年後の累積発生率は67.5%へと増加した。同様に、脂質異常症の発生率は20.8%から51.6%へ、糖尿病性腎臓病は8.0%から54.8%へ、神経障害は1.0%から32.4%へと上昇した。また、網膜症の有病率は、2010~11年の13.7%(すべてきわめて軽度の非増殖性糖尿病性網膜症)から、7年後の2017~18年には51.0%(このうち8.8%が中等度~重度の網膜の変化、3.5%が黄斑浮腫)に増えた。 細小血管合併症は、ベースラインの9.0%から15年間で80.1%へと増加し、累積発生率が50%に達するまでの期間は9年だった。また、細小血管合併症発生のリスク因子は、少数人種/民族、高血糖、高血圧、脂質異常症などであった。患者の60.1%(407/677例)で1つ以上の合併症が発生し、28.4%(192/677例)で2つ以上の合併症が発生した。 著者は、「これらのデータは、若年発症2型糖尿病では、糖尿病に特異的な合併症の負担が大きく、本症の患者は合併症によって早期に深刻な影響を受けており、公衆衛生上も重大な意味を持つことを示している」と指摘している。本研究は、米国国立糖尿病・消化器病・腎臓病研究所(NIDDK)などの研究助成を受けて行われた。

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GLP-1受容体作動薬のNew Normalな選択【令和時代の糖尿病診療】第1回

第1回 GLP-1受容体作動薬のNew Normalな選択GLP-1受容体作動薬(以下、GLP-1 RA)、その登場は10年前にさかのぼる。ちなみに、今年はインスリン発見から100年という、糖尿病分野において記念すべき歴史的な年である(にもかかわらず、コロナの影響で大々的なイベントは開催できていない)。それに比べ、たかだか生誕10年ではあるものの、これまでに数多くのGLP-1 RA製剤が登場し、エビデンスもそろってきており、大きな注目を集めている。ここで知識の整理として、GLP-1の生理作用を見てみよう。図1:GLP-1の多彩な生理作用(間接的作用を含む)画像を拡大する非常に多彩ではあるが、GLP-1 RAは、主に膵臓において血糖依存的にインスリン分泌を促進・グルカゴン分泌を抑制、肝臓においてグルコース産生を抑制、胃においては胃内容物排出の遅延により、血糖コントロールを行うという作用機序である。次に、分類を見てみよう。図2:GLP-1受容体作動薬の分類分類としては、まずヒトGLP-1由来かExendin-4由来かに大別され、各々1日1~2回もしくは週1回の投与方法があり、それに対応する製剤が存在する。さらに、今まではGLP-1 RAといえば注射薬という位置付けだったが、2021年に経口薬も加わったのである。これには大きな衝撃を受けた。重要な3つのポイント:適応患者の選択、合併症の管理、体重減少効果GLP-1 RAを使用するに当たって、重要なポイントが3つあるので、順に説明する。(1)作用機序から考えた適応患者の選択と早期導入この薬剤の作用機序は、「インスリン分泌促進系」の中でも「血糖依存性」に分類1)されるため、膵機能が保たれているインスリン非依存状態であることが必須である。すなわち、この薬剤の醍醐味を感じていただけるのは、罹病歴が比較的短く、内因性インスリン分泌能が保たれている、SU薬を多量に服用していない患者ということになる。一方、血糖依存性といえども万能ではなく、高血糖毒性を伴いインスリンの絶対的適応となるようなケースには不向きであることをご理解いただきたい。こういった場合は、糖毒性解除後に使用するとうまくいくことが多い。ひとつ症例で考えてみよう。63歳男性。脳梗塞で脳神経内科入院となり、救急外来時の随時血糖値283mg/dL、HbA1c 10.6%とコントロール不良の糖尿病を認め、血糖コントロール依頼で当科受診となった。未治療の患者で、体重85.0kg、BMI 31.2で、2度肥満を認めた。入院後に強化インスリン療法を開始、その後リハビリ目的にて転院となっている。リハビリ病院では混合型インスリン2回打ちに変更になり、3ヵ月後、当科に今後の治療につき相談があった。この時は随時血糖値141mg/dL、HbA1c 6.9%まで改善しており、体重79.0kg、BMI 29.0の1度肥満まで改善していた。総インスリン量は、22単位から12単位まで減量となっており、軽度の右不全マヒがあるものの、インスリン自己注射は問題なくできた。そこで主治医は、患者への負担を少しでも軽くしようと考え、インスリン分泌能も保たれていたため、週1回のGLP-1 RAへの切り替えを選択した。その後、3ヵ月間単剤での管理で3.1kgの減量に成功し、HbA1cも5.9%まで改善、患者さんも減量の成功を大変喜び、継続を希望したとのことである。この例は、GLP-1 RAの早期導入が功を奏したと考えられる。実際のところ、JDDM(糖尿病データマネジメント研究会)のデータを見ると、GLP-1 RAの処方は年々増加しているものの、HbA1cの目標到達率はインスリンと大きく変わらず、あまりよくない(私も言える立場ではないが反省の意味も込めて)。もしかしたら導入が遅いため、十分な効力が発揮できていないのかもしれない。(2)合併症抑制を考慮した治療選択治療選択の際、合併症(大血管症、細小血管症)を考慮できているだろうか? 2008年から米国FDA(食品医薬品庁)で、新規の血糖降下薬は心血管合併症を増やさないことの証明が必須になっているが、最近はむしろ血糖コントロール改善とは異なる機序で、糖尿病合併症を抑制する薬剤が注目を集めてきている。実際、GLP-1 RAは2021年ADAのStandards of Medical Care in Diabetes2)にも記載されているように、動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)やCKDの合併、または高リスクがある場合は、メトホルミン使用とは無関係に優先的に使用すべき薬剤の1つになっている。わが国において薬剤の使用優先順位までは決められていないが、エビデンスのある薬剤の1つとして位置付けられているため、より処方するベネフィットが大きいと考えられる。図3:2型糖尿病における血糖降下薬:総括的アプローチ(ADA2021)画像を拡大する(3)体重減少、食欲抑制に対する効果GLP-1 RAの生理作用は、糖代謝改善作用以外に、胃内容物排出の遅延作用と中枢における食欲抑制作用があり、それには消化管で産生されたGLP-1が主に迷走神経を介して中枢へ作用する系、および中枢で産生されたGLP-1が作用する系の2つが関与するといわれている3)。いずれにせよ体重減少効果は大きく、米国では抗肥満薬としても上市されている(糖尿病薬の用量とは異なる)。セマグルチドの最近のエビデンスとして、太り過ぎまたは肥満成人に対する集中的行動療法の補助として有意な体重減少をもたらし4)、また従来の薬剤の約2倍の減量効果があり5)、肥満外科手術に匹敵するといわれるほどである。近年、高齢化が進むにつれ高齢者糖尿病患者も増加し、サルコペニアの問題も大きく取り沙汰されている。体重減少効果が筋肉量の減少を誘発していないかの問題も言われる中、経口セマグルチドにおける2型糖尿病患者のエネルギー摂取量、食事の嗜好、食欲、体重の効果についての論文が発表されている6)。表1:Changes from baseline in body weight and body composition as measured by Bodpod※ and waist circumference at week 12(day 3)※Bodpod:体脂肪測定装置(イタリア・COSMED SRL社製)表によると、12週で体重2.7kg、ウエスト2.4cmが減少しており、脂肪量は-2.6kg、除脂肪量-0.1kgと、減量のほとんどを脂肪量の減少が占めた。さらに、摂取エネルギーが減少するのはもちろんのこと、高脂肪食や甘味が有意に減少していたという嗜好の変化が非常にユニークな結果であった。また、GLP-1 RAの効果について、さらに細かい話にはなるが、ショートアクティングとロングアクティングでは、作用時間だけでなく血糖降下作用も異なるといわれている。まずロングアクティングは、主にインスリン分泌促進およびグルカゴン分泌抑制を介して血糖改善効果を発揮し、ショートアクティングに比べて空腹時血糖値やHbA1cの改善効果が大きいとされる。一方、ショートアクティングは主に胃内容物排出遅延作用やグルカゴン分泌抑制を介して血糖改善効果を発揮するとされる。実際、ロングアクティングの血糖改善効果は残存膵β細胞機能に依存するのに対し、ショートアクティングでは血糖改善効果と残存β細胞機能に明確な関連性を認めない。New Normal Selection GLP-1 RAさて、今回のタイトル「GLP-1受容体作動薬のNew Normalな選択」に対して、「何だろう?」と思って読んでくれた方の疑問にお答えしよう。コロナで流行ワードとなった「New Normal」、すなわち新しい生活様式のように、あらゆる行動を時勢に合わせてアップデートして動く中で、薬物治療の新たな選択肢としてGLP-1 RAの登場、そしてこの治療の幅が非常に広がったことで、新しい糖尿病診療が始まったことを意味する。たとえば、今までWeeklyのGLP-1 RA製剤は用量調節ができなかったが、セマグルチドではDaily製剤のように用量調節ができるようになった。実際は初期投与量・維持量・コントロール困難例と分けられているものの、消化器系症状が出やすい人や体重をあまり落としたくない高齢者など、人によっては初期投与量が維持量になるなど、使用範囲が広がる。また、過体重でとにかく減量させたい人やインスリンを減量したい人に高用量を使用するといった方法もあるかと思う。さらには、注射製剤をかたくなに拒否する患者さんには経口薬を選ぶこともでき、こちらも同様に3つの規格が使用できる。注射指導にハードルを感じる非専門医にとっても、経口薬なら処方しやすいのではないかと考えられる。いずれにせよ、まさにNew Normalな世界が広がる。ぜひ、ワクワクしながらこの薬剤を使用してみてはいかがだろうか?1)日本糖尿病学会編著. 糖尿病治療ガイド2020-2021. 文光堂;2020.2)American Diabetes Association. Diabetes Care. 2021;44(Suppl 1):S111-S124.3)上野 浩晶ほか. 日本糖尿病学会誌. 2017;60:570-572.4)Wadden TA, et al. JAMA. 2021;325:1403-1413.5)Wilding JPH, et al. N Engl J Med. 2021;384:989.6)Gibbons C, et al. Diabetes Obs Metab. 2021;23:581-588.

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新薬GIP/GLP-1受容体ダブルアゴニストは糖尿病診療に新たなインパクトを与えるか?(解説:栗山哲氏)

本論文は何が新しいか? 本論文は、2型糖尿病治療薬として開発された新規薬剤GIP/GLP-1のダブルアゴニストtirzepatideを臨床評価したものである。 同剤は、グルコース依存性インスリン刺激性ポリペプチド(GIP)に類似した39個のアミノ酸残基に長鎖脂肪酸を結合させた週1回注射製剤である。本剤の特徴は、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)とGIPの両受容体を刺激するダブルアゴニスト製剤として開発されたことである(GIP受容体の単独作動薬はない)。 GLP-1受容体作動薬のエビデンスは、多くの臨床研究でその有用性が肯定されている。すなわち、LEADER、SUSTAIN-6、REWINDなどでは心血管イベント(MACE)の改善効果が、さらにLEADER、SUSTAIN-6、AWARD-7などで2型糖尿病腎症の腎エンドポイントにも改善効果が報告されている。 本論文(SURPASS-1試験)は、tirzepatideのHbA1cや体重への効果をプラセボ群と比較した臨床研究である。その改善結果は、既存の糖尿病治療薬に比較しても驚くほど顕著であり、今後の糖尿病治療に一石を投じるものと考えられる。本論文の主たる結果 SURPASS-1試験においては、試験参加者の54%は未治療、糖尿病の平均罹病期間は4.7年、ベースラインの平均HbA1c 7.9%、平均体重85.9kg、BMI 31.9kg/m2であった。主要評価項目と重要な副次評価項目に、ベースラインから40週投与後のHbA1c低下および体重減少を指標とした。tirzepatideの最高用量群(15mg)において、プラセボに対してHbA1cは2.07%低下、体重は9.5kg(11.0%)減少した。この投与群の半数以上(51.7%)は、非糖尿病レベルであるHbA1c 5.7%未満に改善した。全体的な安全性は、既知のGLP-1受容体作動薬と同等で、消化器系の副作用が最も多い有害事象であった。 以上の結果から、tirzepatideが従来の糖尿病治療薬と比較しても顕著なHbA1cと体重の低下効果を有する可能性が示唆された。特徴は、本剤によるHbA1c低下や体重の減少は、従来の糖尿病治療薬に比べても著明な薬効であるも、しかるに胃腸障害の副作用が増加しないことであろう。また、重症低血糖がほとんどないことも特筆に値する。HbA1c 5.7%未満を達成でき、低血糖が少ない薬効を証明できた成績は、糖尿病内科医にとってもインパクトの高い論文と思われる。推定されるtirzepatideの作用機序 脂肪細胞にあるGIP受容体にGIPが結合すると脂肪蓄積に働くため、GIPは体重を増加させる作用がある。一方、視床下部にもGIP受容体があり、こちらにGIPが結合すると食事量を減らし体重減少効果が認められる。そのため、全体的には、GIP自体はそれほど体重を増やさないのではないかと考えられる。一方、GLP-1受容体刺激とGIP受容体刺激が相加されると、なぜGLP-1受容体作動効果が相乗的に高まるか、という疑問に関しては不明であり、今後の研究課題と思う。本論文の日本での意義付け 本研究を今後の糖尿病治療に外挿すると、BMIが30超の高度の肥満を伴う2型糖尿病患者が最も良い適応症になると思われる。今後、日本人にも多いと思われるBMI 25~27あたりでの層別解析が注目される。また、この効果が実際にMACE抑制に結び付くか否かはそれにも増してさらに興味深い。現在進行中のSURPASS-CVOT(NCT04255433)においては、デュラグルチドとの比較が計画され2024年末ごろには効果が確認される。 ただ、危惧される点もいくつかある。試験を完了できなかった対象患者が15%と多いこと、体重減少が大き過ぎること、などである。とくに、本邦のように高齢者2型糖尿病患者が多い条件下では、体重が下がり過ぎることがデメリットになる可能性がある。このことから、本邦での薬剤選択上は第1・第2選択薬のように早期ステージでの使用は少なかろうと思う。治療継続率が対照薬よりも良くなかったことからも、あくまでも現在のGLP-1受容体作動薬などの糖尿病注射剤と近似した位置付けになるのではないかと推察する。一方、インスリン/GLP-1受容体作動薬の配合剤がtirzepatideに置き換わっていく可能性もありえよう。本論文から何を学ぶ? 今後のインクレチン薬の展望は? GIP/GLP-1受容体ダブルアゴニストtirzepatideは優れた糖代謝改善作用を有することが示された。SURPASS-1に追従して、ほぼ同時にSURPASS-2の結果が報告され、ここではtirzepatide群をセマグルチド群と比較して検討し、SURPASS-1の結果と同様に前者で優れたHbA1c低下効果ならびに体重減少効果が確認されている(Frias JP, et al. N Engl J Med. 2021 Jun 25. [Epub ahead of print])。今後、SURPASS-3やSURPASS-5などで本剤の評価が次々と報告されていく予定があり、すべての試験で結果が一貫していると聞く。これらの集積は、現行の糖尿病ガイドラインを変える可能性もあろう。 また、インクレチン関連薬の配合剤の創薬の新たな話題として、GLP-1受容体作動薬にグルカゴンを付帯したデュアル製剤(cotadutide)が2型糖尿病腎症やNASHの治療薬として開発されている(Nahra R, et al. Diabetes Care. 2021 May 20. [Epub ahead of print])。グルカゴンは糖代謝の絶対悪ではなく、エネルギー産生作用を有しておりエネルギー消費を上げる方向に作用し、蠕動運動の低下や中枢神経を介して食欲を抑制する作用もあるようだ。これらの作用をGLP-1と組み合わせて効果を増強しようというのが、GLP-1/グルカゴン受容体作動薬である。実際に、GLP-1/グルカゴン受容体作動薬に関してグルコース吸収の遅延とインスリン感受性の改善がみられている。作用機序の面から、まだまだ検討の余地は残されるものの、興味深いダブル製薬の1つと思われる。

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「ベイスン」の名称の由来は?【薬剤の意外な名称由来】第61回

第61回 「ベイスン」の名称の由来は?販売名ベイスン®錠0.2ベイスン®錠0.3ベイスン®OD錠0.2ベイスン®OD錠0.3一般名(和名[命名法])ボグリボース(JAN)効能又は効果<ベイスン錠 0.2、0.3><ベイスンOD錠 0.2、0.3>○糖尿病の食後過血糖の改善(ただし、食事療法・運動療法を行っている患者で十分な効果が得られない場合、又は 食事療法・運動療法に加えて経口血糖降下剤若しくはインスリン製剤を使用している患者で十分な効果が得られない場合に限る) <ベイスン錠 0.2><ベイスンOD錠 0.2>○耐糖能異常における2型糖尿病の発症抑制(錠0.2、OD錠0.2のみ)(ただし、食事療法・運動療法を十分に行っても改善されない場合に限る)用法及び用量○糖尿病の食後過血糖の改善の場合通常、成人にはボグリボースとして1回0.2mgを1日3回毎食直前に経口投与する。なお、効果不十分な場合には、経過を十分に観察しながら1回量を0.3mgまで増量することができる。○耐糖能異常における2型糖尿病の発症抑制の場合(錠0.2、OD錠0.2のみ)通常、成人にはボグリボースとして1回0.2mgを1日3回毎食直前に経口投与する。警告内容とその理由該当しない禁忌内容とその理由1.重症ケトーシス、糖尿病性昏睡又は前昏睡の患者[輸液及びインスリンによる速やかな高血糖の是正が必須となるので本剤の投与は適さない。]2.重症感染症、手術前後、重篤な外傷のある患者[インスリン注射による血糖管理が望まれるので本剤の投与は適さない。]3.本剤の成分に対する過敏症の既往歴のある患者※本内容は2021年7月21日時点で公開されているインタビューフォームを基に作成しています。※副作用などの最新の情報については、インタビューフォームまたは添付文書をご確認ください。1)2021年5月改訂(第11版)医薬品インタビューフォーム「ベイスン®錠0.2・0.3/ベイスン®OD錠0.2・0.3」2)武田テバ:DI-net

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