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医療マンガ大賞2021「命のバトン」受賞者描き下ろし作品(ささき かずよ氏)

医療マンガ大賞2021「命のバトン」受賞者描き下ろし作品(ささき かずよ氏)ケアネット部門受賞者・ささき かずよ(ぴよ)氏からのコメント身近な人の死に向き合うことはとても辛いことですが、それを「命のバトン」というわかりやすい言葉に置き換えて、向き合うことを促すようなエピソードを拝読し、今回の作品を描かせていただきました。私自身、看護師として現場でお看取りをする場面はいつも緊張しながらも、ご家族がどのように死を受け止めているかを慎重に感じるように心がけています。この作品を通して、差し迫った時が来る前に「命のバトン」をつないでいくための話をする・考えるきっかけになれば幸いです。エピソード原案作者様、この場を提供いただいたケアネット様、皆様に感謝を込めて。看護師/NHA認定トレーナーが看護・介護にNHAをお届けします!

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エルドハイム-チェスター病〔ECD:Erdheim-Chester disease〕

1 疾患概要■ 定義エルドハイム-チェスター病(Erdheim-Chester disease:ECD)は、1930年にJakob ErdheimとWilliam Chesterによって初めて報告された組織球症の一病型である。類縁疾患としてランゲルハンス細胞組織球症(Langerhans cell histiocytosis:LCH)が挙げられる。対称性の骨病変と特徴的な画像所見を有し、骨、心臓・大血管、皮膚、中枢神経、内分泌系、腎・後腹膜などの多臓器に浸潤しさまざまな症状を起こす全身疾患である。■ 疫学ECDはまれな疾患であり2004年の時点で報告数は世界で100例にも満たなかったが、ここ15年ほどで認知度が上昇したことにより報告数が増加した。2020年の報告では世界で1,500例以上とされており、国内でも2018年時点で81例が確認されている。好発年齢は40~70歳で、男性が約7割を占める。小児例はまれで、その多くがECDとLCHを合併する混合型組織球症に分類される。 ECDの1割に骨髄異形成/骨髄増殖性腫瘍を合併していたとの報告があり、これらの症例は非合併例と比べて高齢で混合組織球症の割合が多いとされている。■ 病因ECDが炎症性の疾患か、あるいは腫瘍性の疾患かは長らく不明であったが、近年の研究でMAPK(RAS-RAF-MEK-ERK)経路に関連した遺伝子変異が細胞の増殖や生存に関与していることが報告され、腫瘍性疾患と考えられるようになってきている。変異の半数以上はBRAF V600Eの異常である。■ 症状ECDの症状および臨床経過は侵襲臓器と広がりによって症例ごとに大きく異なってくる。病変が単一臓器に留まり無症状で経過する例もある一方、多発性・進行性の臓器障害を起こし診断から数ヵ月で死亡する例もある。最も一般的な症状は四肢の骨痛(下肢優位)で、全体の半数にみられる。そのほか、尿崩症・高プロラクチン血症・性腺ホルモン異常などの内分泌異常、小脳失調症・錐体路症状などの神経症状、冠動脈疾患、心膜炎、心タンポナーデなどの循環器系の異常に加え、眼球突出、黄色腫などの局所症状など非常に多彩である。その他、発熱・体重減少・倦怠感などの非特異的な全身症状がみられることもある。一人の患者がこれらの症状を複数併せ持つことも多く、その組み合わせもさまざまである(図、表1、2)。図 ECDの主要症候(Goyal G, et al. Mayo Clin Proc. 2019;94:2054-2071.より改変)表1 わが国におけるECD症例の臓器病変(出典:Erdheim-Chester病に関する調査研究)画像を拡大する表2 わが国におけるECD症例の症状(出典:Erdheim-Chester病に関する調査研究)画像を拡大する■ 分類WHO分類の改定第4版ではリンパ系腫瘍のうち、組織球および樹状細胞腫瘍に分類されている。また、2016年改定の組織球学会分類では「L」(ランゲルハンス)グループに分類されている。■ 予後ECDの予後はさまざまで、主に病変の部位と範囲に左右される。高齢患者、心病変、中枢神経病変を有する患者ではがいして予後不良である。2000年代前半の報告では3年生存率50%程度であったが、近年では診断と治療の進歩によって5年生存率80%程度にまで上昇してきている。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)ECDは症状が極めて多彩であることから診断が困難であり、過去の報告でも発症から診断までの中央期間は数ヵ月から数年と言われている。診断の主体は組織診断だが、症状や画像所見を含めて総合的に判断することになる。形態学的所見としては、泡沫状(黄色腫様)細胞質を持つ組織球の増殖と背景の線維化を認め、ほとんどの症例で好酸性細胞質を有する大型組織球やTouton型巨細胞が混在する。免疫組織学的所見としてCD68、CD163、CD14、FactorXIIIa、Fascinが陽性、CD1a、 CD207(Langerin)は陰性である。S-100蛋白は通常陰性だが陽性のこともある。ECD患者の約10~20%にLCHを合併し、同一生検組織中に両者の病変を認めることもある。画像所見としては、単純X線撮影における長管骨骨端部の両側対称性の骨硬化や99Tc骨シンチグラフィーにおける下肢優位の長管骨末端への対称性の異常集積を認める。PET-CTは診断だけでなく活動性の評価や治療効果判定にも有用である。CTの特徴的所見として大動脈周囲の軟部陰影(coated aorta)や腎周囲脂肪織の毛羽立ち像(hairy kidney)を認めることがある。診断時には中枢病変の精査のためのGd造影頭部MRIや血液検査にて内分泌疾患、下垂体前葉機能、腎機能、CRPの評価も行うことが推奨されている。造血器腫瘍を合併する例もあるため、血算異常を伴う場合は骨髄穿刺を検討すべきである。鑑別診断として、LCHのほかRosai-Dorfman病、若年性黄色肉芽腫、ALK陽性組織球症、反応性組織球症などが挙げられ、これらは免疫染色などによって鑑別される。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)以前はLCHに準じて副腎皮質ステロイドや抗がん剤などによる治療が行われていたが、効果は限定的であった。その後interferon-α(IFN-α)が全生存期間を延長することが報告され、ガイドラインで第1選択薬として挙げられている。また、BRAF遺伝子変異陽性のECDに対するBRAF阻害薬の有効性も報告されており、2017年にはベムラフェニブが米国FDAで承認されている。ただし、わが国ではこれらの薬剤は保険適用外となっている。第1選択薬のIFN-αは300万単位を週3回皮下投与が通常量だが、重症例では600~900万単位週3回の高容量投与も考慮される。また、PEG-IFNαで135ugを週1回皮下投与、重症例では180ugを週1回投与する。これらは50~80%の奏効率が期待されるが、半数程度に疲労感、関節痛、筋肉痛、抑うつ症状などの副作用がみられ、忍容性が問題となる。BRAF阻害薬(ベムラフェニブ)はBRAF遺伝子変異陽性のECDに効果が認められているが、皮膚合併症(発疹、扁平上皮がん)、QT延長などの副作用があり、皮膚科診察、心電図検査などのモニタリングが必要である。副作用などでIFNαが使用できない症例についてはプリンアナログのクラドリビンなどが検討される。副腎皮質ステロイド、手術、放射線療法は急性期症状や局所症状の緩和に使用されることがあるが、単体治療としては推奨されない。その他、病変が限局性で症状が軽微な症例については対症療法のみで経過観察を行うこともある。4 今後の展望ECDの病態や臨床像は長らく不明であったが、ここ20年ほどで急速に病態解明が進み、報告数も増加してきている。ベムラフェニブ以外のBRAF阻害薬やMEK阻害薬などの分子標的療法の有用性も報告されており、今後のさらなる発展とわが国での保険適用が待たれる。5 主たる診療科内科、整形外科、皮膚科、眼科、脳神経外科など多岐にわたる※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報日本の研究.com  Erdheim-Chester病に関する疫学調査(医療従事者向けのまとまった情報)Erdheim-Chester Disease Global Alliance(医療従事者向けのまとまった情報)1)Diamond EL, et al. Blood. 2014;124:483-492.2)Toya T, et al. Haematologica. 2018;103:1815-1824.3)Goyal G, et al. Mayo Clin Proc. 2019;94:2054-2071.4)Haroche J, et al. Blood. 2020;135:1311-1318.5)Goyal G, et al. Blood. 2020;135:1929-1945.公開履歴初回2022年3月16日

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短期曝露の大気汚染、乾癬フレアのトリガーに?

 大気汚染への短期曝露が乾癬フレアのトリガー要因である可能性が示唆された。イタリア・ベローナ大学のFrancesco Bellinato氏らが症例クロスオーバーと断面調査法による観察試験の結果を報告した。 再燃と寛解を繰り返す慢性炎症性疾患の乾癬は、感染症やストレスフルなライフイベント、薬剤など特定の環境要因によって再燃が引き起こされる可能性が示唆されているが、大気汚染がトリガー要因なのかについては不明なままである。JAMA Dermatology誌オンライン版2022年2月16日号掲載の報告。 研究グループは、大気汚染への短期曝露が乾癬フレアに関連するかどうかを調べるため、症例クロスオーバーと断面調査法の両者を取り入れた観察試験を行った。2013年9月~2020年1月に縦断的に集めたデータを後ろ向きに解析。対象は、ベローナ大学病院の外来皮膚科クリニックを受診した慢性尋常性乾癬患者であった。 症例クロスオーバー解析には、「3~4ヵ月の期間中における2つの連続した評価時点の間にPASIが5以上上昇した場合」と定義された乾癬フレアを、1回以上有した患者を含んだ。断面的解析には、6ヵ月以上あらゆる全身性治療を受け、2回連続して行ったPASIの評価結果がグレード2以上であった患者を包含した。 主要評価として、乾癬フレア群と対照受診群の、それぞれ先行する60日間における大気汚染物質(一酸化炭素、二酸化窒素、その他の窒素酸化物、ベンゼン、粗大粒子状物質[PM10、直径2.5~10μm]、微小粒子状物質[PM2.5、直径<2.5μm])の平均および累積(曲線下面積[AUC])濃度を比較した。 主な結果は以下のとおり。・解析には、計957例の患者(フォローアップ受診4,398回)が包含された。平均年齢は61歳(SD 15)、男性602例(62.9%)であった。・イタリア環境保護研究所(ISPRA)の公式オープンソースの速報から取得した1万5,000超の大気汚染物質の濃度測定値を用いて解析を行った。・全体コホートのうち乾癬フレアを有する患者369例(38.6%)が、症例クロスオーバー解析に包含された。・すべての汚染物質の濃度は、乾癬フレア前60日間(フレア時のPASI中央値:12[IQR:9~18])のほうが、対照となる受診前60日間(PASI中央値:1[1~3])よりも有意に高かった(p<0.001)。・断面解析では、評価前60日間のPM10曝露平均20μ/m3超(補正後オッズ比[aOR]:1.55、95%信頼区間[CI]:1.21~1.99)およびPM2.5曝露平均15μ/m3超(1.25、1.0~1.57)が、PASI 5以上の悪化のリスクと関連していた。・さまざまな曝露の遅れや治療タイプを補正して評価のトリメスターを層別化した感度解析でも、同様の結果が得られた。

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単回投与で効果が期待できる世界標準の梅毒治療薬「ステルイズ水性懸濁筋注60万/240万単位シリンジ」【下平博士のDIノート】第94回

単回投与で効果が期待できる世界標準の梅毒治療薬「ステルイズ水性懸濁筋注60万/240万単位シリンジ」今回は、持続性ペニシリン製剤「ベンジルペニシリンベンザチン水和物(商品名:ステルイズ水性懸濁筋注60万/240万単位シリンジ、製造販売元:ファイザー)」を紹介します。本剤は早期梅毒に対して単回投与で効果を発揮するため、既存治療の課題であったアドヒアランス不良による治療失敗を防ぐことができると期待されています。<効能・効果>本剤は、梅毒トレポネーマによる梅毒(神経梅毒を除く)の適応で、2021年9月27日に承認され、2022年1月26日に発売されました。<用法・用量>成人および2歳以上の小児早期梅毒:通常、ベンジルペニシリンとして240万単位を単回、筋肉内に注射します。なお、2歳以上13歳未満の小児の場合は年齢、体重により適宜減量可能です。後期梅毒:通常、ベンジルペニシリンとして1回240万単位を週に1回、計3回、筋肉内に注射します。なお、2歳以上13歳未満の小児の場合は年齢、体重により適宜減量可能です。2歳未満の小児早期先天梅毒、早期梅毒:通常、ベンジルペニシリンとして体重1kgあたり5万単位を単回、筋肉内に注射します。<安全性>臨床試験で報告された主な副作用は、主な副作用は、皮疹(斑状丘疹状皮疹、剥脱性皮膚炎)、蕁麻疹、喉頭浮腫、発熱(いずれも頻度不明)などでした。重大な副作用として、ショック、アナフィラキシー、偽膜性大腸炎、中毒性表皮壊死融解症(TEN)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、間質性腎炎、急性腎障害、溶血性貧血(いずれも頻度不明)が報告されています。<患者さんへの指導例>1.梅毒の原因菌である梅毒スピロヘータの細胞壁の合成を阻害して感染症を治療する薬です。2.接種後に一時的な発熱、頭痛、倦怠感などが生じることがあります。症状がひどい場合はご相談ください。3.接種後は健康状態に留意し、接種部位の異常や体調の変化、高熱、痙攣など普段と違う症状がある場合には、速やかに医師の診察を受けてください。<Shimo's eyes>わが国では2010年以降、梅毒の感染者数は男女ともに増加しています。国立感染症研究所感染症疫学センターが公表したデータによると、2021年第1~47週までに届出があった症例数は、2020年の同時期の約1.4倍であり、1999年に感染症法が施行されてからもっとも多いことが示されました。男性は20~40代の幅広い年齢で届出がありますが、女性では20代前半が突出して多く、これは先天梅毒の増加にもつながる問題です。本剤は、海外では梅毒治療の標準薬として広く用いられており、これまで耐性菌の報告はありません。一方、わが国での現行の治療は、アモキシシリンを1日3回、2~4週間(第2期以降はさらに継続)服用する方法が一般的で、アドヒアランス不良による治療失敗が少なくないという課題があります。そのような背景から、日本感染症教育研究会などの関連団体から本剤の開発が要望され、「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」での検討結果を受けて開発されました。本剤の溶解性は低く、筋注部位から緩徐に放出された後、ペニシリンGに加水分解されて吸収されるため、血中濃度が長時間持続します。本剤は粘性が高いため、240万単位には18ゲージ、60万単位には21ゲージの注射針を用い、針が詰まらないよう、ゆっくりと一定速度で注射する必要があります。感染から1年未満(早期梅毒)の場合は単回投与ですが、感染から1年以上たった後期梅毒の場合は、週に1回を計3回投与する必要があります。本剤投与後、梅毒治療に特異的な「ヤーリッシュ・ヘルクスハイマー反応」による一時的な発熱、頭痛、倦怠感などが生じる可能性があります。多くの場合は一過性ですが、治療したにもかかわらず調子が悪くなったと勘違いする患者さんもいるので、あらかじめ説明しておきましょう。参考1)PMDA 添付文書 ステルイズ水性懸濁筋注60万単位シリンジ/ステルイズ水性懸濁筋注240万単位シリンジ

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境界性パーソナリティ障害に対する心理療法~メタ解析

 境界性パーソナリティ障害(BPD)に対する心理療法の有効性は、最新のコクランレビューにより示唆されている。ドイツ・マインツ大学のJutta M. Stoffers-Winterling氏らは、単独および追加療法による心理療法の有効性をより簡潔に評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。The British Journal of Psychiatry誌オンライン版2022年1月28日号の報告。 成人サンプルに対する積極的な治療と非特異的な対照条件との比較に焦点を当て、2020年に実施されたコクランレビューと同様の方法で検討を行った。単独またはいくつかの治療コンポーネントの1つとして個別の心理療法を含む単独療法と既存のBPD治療を補完するために行った追加療法について、それぞれ分析した。主要アウトカムは、BPDの重症度、自傷行為、自殺関連アウトカム、心理社会的機能とした。副次的アウトカムは、その他のBPD診断基準、抑うつ症状、消耗(attrition)とした。 主な結果は以下のとおり。・ランダム化比較試験31件より、1,870例が抽出された。・単独療法の中で、統計学的に有意な効果が観察されたのは、以下のとおりであった。 【弁証法的行動療法(DBT)】(確実性:低)  ●自傷行為(標準化平均差[SMD]:-0.54、p=0.006)  ●心理社会的機能(SMD:-0.51、p=0.01) 【メンタライゼーションに基づく治療】(確実性:低)  ●自傷行為(リスク比:0.51、p<0.0007)  ●自殺関連アウトカム(リスク比:0.10、p<0.0001)・併用療法の中で、統計学的に有意な効果が観察されたのは、以下のとおりであった。 【DBTスキルトレーニング】(確実性:中)  ●BPDの重症度(SMD:-0.66、p=0.002)  ●心理社会的機能(SMD:-0.45、p=0.002) 【感情調節グループセラピー】(確実性:低)  ●BPDの重症度(平均差:-8.49、p<0.00001) 【マニュアルアシスト認知療法】(確実性:低)  ●自傷行為(平均差:-3.03、p=0.03)  ●自殺関連アウトカム(SMD:-0.96、p=0.005) 【STEPPS療法】(確実性:低)  ●BPDの重症度(SMD:-0.48、p=0.002)  著者らは「BPD患者に対する心理療法的介入は、有用であると結論付ける合理的なエビデンスが示唆された。調査結果の確実性を高めるためにも、今後の複製研究が求められる」としている。

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高感度トロポニンI、心臓術後1日以内の測定値は閾値の200倍!?/NEJM

 心臓手術を受けた患者において、30日死亡率が高いことと関連する術後の高感度トロポニンIの閾値は、予後に重大な影響を及ぼす周術期の心筋損傷の同定のために推奨されている値(基準値上限[26ng/L]の>10~≧70倍)よりもはるかに高く、単独冠動脈バイパス術(CABG)または単独大動脈弁置換術・形成術(AVR)を受けた患者の術後1日以内の測定値は、この推奨閾値の200倍以上に達することが、カナダ・マクマスター大学のP.J. Devereaux氏らが実施した「VISION Cardiac Surgery試験」で明らかとなった。研究の成果は、NEJM誌2022年3月3日号に掲載された。推奨閾値を検証する国際的な前向きコホート研究 本研究は、心臓手術後の30日死亡の予測における高感度トロポニンIの推奨閾値の検証を目的とする国際的な前向きコホート研究であり、2013年5月~2019年4月の期間に12ヵ国24病院で患者の募集が行われた(カナダ保健研究機構[CIHR]などの助成による)。 対象は、年齢18歳以上の心臓手術(単独心膜開窓術、心膜切除術、ペースメーカー・除細動器の留置術を除く)を受けた患者であった。術前と、術後3~12時間および1、2、3日に、高感度トロポニンIの測定が行われた。患者、医療提供者、データ収集者には、高感度トロポニンI検査の結果は知らされなかった。 主要アウトカムは術後30日以内の死亡とされた。高感度トロポニンIの頂値と、欧州心臓手術リスク評価システムII(EuroSCORE II)のスコアで補正した30日死亡率との関連を評価する回帰スプラインを用いてCox解析が行われた。EuroSCORE IIは、心臓手術後の死亡リスクを年齢や性別などの18の変数に基づいて推定するものである。その他の心臓手術では、術後1日で基準値上限の499倍に 1万3,862例(北米35.9%、アジア28.3%、欧州26.2%、南米6.3%、オーストラリア3.3%)が解析に含まれた。平均年齢は63.3歳、70.9%が男性で、29.3%が心筋梗塞の既往歴を有していた。術前の高感度トロポニンI中央値は9ng/L(IQR:4~20)で、46.9%が単独CABG、12.5%が単独AVR、40.6%はその他の心臓手術(CABGまたはAVRと他の手技との併用など、他のすべての心臓手術)を受けていた。 高感度トロポニンIの推奨閾値(基準値上限[26ng/L]の>10倍[260ng/L]、≧35倍[910ng/L]、≧70倍[1,820ng/L])は、術後1日以内に、それぞれ97.5%、89.4%、74.7%の患者が上回った。術後30日以内に296例(2.1%)が死亡し、399例(2.9%)が主要血管の合併症を発現した。 単独CABGまたは単独AVRを受けた患者では、術後1日以内に測定された30日以内の死亡の補正後ハザード比>1.00に関連する高感度トロポニンIの最も低い閾値は5,670ng/L(95%信頼区間[CI]:1,045~8,260)であり、これは基準値上限の218倍であった。また、術後2日または3日目の同様の高感度トロポニンIの閾値は1,522ng/L(1,325~2,433)であり、これは基準値上限の59倍に相当した。 一方、その他の心臓手術を受けた患者では、術後1日以内に測定された30日以内の死亡の補正ハザード比>1.00に関連する高感度トロポニンIの最も低い閾値は1万2,981ng/L(95%CI:2,673~1万6,591)であり、基準値上限の499倍であった。また、術後2日または3日目の同様の高感度トロポニンIの閾値は2,503ng/L(95%CI:1,228~4,033)であり、基準値上限の96倍だった。 著者は、「今回の閾値の推定値は、95%CIの広さが示すように、かなりの不確実性の影響を受けており、虚血による心筋損傷(急性冠動脈血栓症など)と他の原因による心筋損傷(再灌流障害など)を区別できない。今後、心臓手術を受けた他の患者コホートにおいて、これらの知見の妥当性の検証が望まれる」としている。

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医業承継における「お宝物件」の探し方【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第37回

第37回 医業承継における「お宝物件」の探し方漫画・イラスト:かたぎりもとこ「これから開業したい」という医師の多くが、「こんな診療をしたい」という視点から、開業物件や承継案件を探します。弊社にご相談いただく方の中にも、「二診体制を取りたいので、50坪以上で」といった希望を述べられる方が多くいます。そして、広さや立地の次に重視するのは「現在の患者数」と「直近の売り上げ」です。もちろん、現在の患者数が多く、売り上げが高い診療所が優良案件であることは間違いありませんが、そうしたところは当然ながら売値も高くなります。私たち仲介業者は「伸び代が大きい」「リスクを最小化できる」といった観点から「お宝物件」を探し、買い手の方に提案しています。「伸び代が大きい」とは、近隣に「強い競合相手」が存在せず、「人口に対する競合の数自体も少ない」案件です。現在の患者数が少なく売り上げが低いと、その物件自体に興味を失ってしまう方が多いのですが、よく見るとその背景に「院長が高齢で、午前しか診療していない」「予約制を取っており、初診を積極的に受けていない」などの理由がある場合があります。このような案件で「強い競合が不在」「競合の数自体も少ない」といったことがわかれば、次の経営者のやり方次第で大きく売り上げを伸ばせる可能性がある「伸び代が大きい=お宝物件」となるのです。もうひとつの観点である「リスクを最小化できる」には、「テナントが狭い(坪数が少ない)」物件が当てはまることが多いです。狭い物件は、あまり集患数を増やせないので売り上げもそこそこであるケースが多く、買い手はそれをネガティブに捉えがちですが、私たちの見方は異なります。狭い診療所はテナント代が安く、スタッフも少ないため、固定費を抑えられ、結果としてしっかり利益を出せていることが多いのです。医師は診察のプロであっても経営は初めて、という方が多いでしょう。リスクを最小限にしてスタートすれば、うまくいかなかった場合の軌道修正もしやすくなります。

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第47回 単相関係数の算出方法は?【統計のそこが知りたい!】

第47回 単相関係数の算出方法は?第46回で解説した単相関係数(Single correlation coefficient)。データからどの程度の相関があるのかを数値で表す方法を考えてみましょう。具体例として表1に10人の学生の身長と体重のデータを示します。たとえば身長と体重の平均を計算すると、それぞれ150cm、50kgです。相関図を描き、この中に身長の平均を横線で、体重の平均を縦線で描き加えたものが図になります。*点の分布は右肩上がりの直線的な傾向になります。平均線で分けられた4つの領域をそれぞれI~IVとします。変数xとyが無関係であるならば、点は4つの領域I~IVに均等にばらついて存在します。xとyの間に相関があり、xが増すとyも増加する傾向がある場合は、点は領域IとIIIに多く、IIとIVに少なくなります。逆にxが増すとyが減少する傾向がある場合は、IIとIVに多く、IとIIIに少なくなります。このケースでは、領域IとIIIに点が多く、IIとIVにそれぞれ1つずつしか点が存在しないので、身長と体重の間には相関関係が強いと推測することができます。データが平均より上か下か、あるいは右か左かは偏差でわかります。つまり、相関係数は偏差を用いて求めることができるのです。■単相関係数の計算方法では、実際に単相関係数を計算してみましょう。画像を拡大する【計算の手順】1)身長と体重のデータについて偏差(測定値から平均値を引いた値)を求めて、表の(3)、(4)列に記入する2)まず、(3)列に数値を平方し(5)列に記入する3)同様に、(4)列の数値を平方し(6)列に記入する4)(5)列の数値の合計を求める(これを身長yの偏差平方和といい「Syy」で表す)5)同様に、(6)列の数値の合計を求める(これを体重xの偏差平方和といい「Sxx」で表す6)(3)列と(4)列の数値を掛け算し、(7)列に記入する((7)列の数値の合計を積和といい「Sxy」で表す7)下記の式から単相関係数を求める(単相関係数は、「積和」を「xの偏差平方和とyの偏差平方和の積の平方根」で割ることで求めることができる)このようにして、単相関係数は0.916であることがわかります。■単相関係数の留意点図の相関図でIIとIVに位置するのはEとFの2人、IとIIIに位置するのは8人です。表1をみると、EとFの積和はマイナス、他の8人の積和はプラスです。積和の合計は、マイナスとプラスが混在し0に近いほど相関係数は小さくなります。なお、表3の「体重」の数字のようにデータの値がすべて同じ場合、単相関係数は求めることはできません。■さらに学習を進めたい人にお薦めのコンテンツ「わかる統計教室」第4回 ギモンを解決! 一問一答質問10 2項目間の関連性を把握する際の統計学的手法の使い分けは?(その1)質問10 2項目間の関連性を把握する際の統計学的手法の使い分けは?(その2)質問10 2項目間の関連性を把握する際の統計学的手法の使い分けは?(その3)

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事例045 大腸内視鏡検査でマグコロールの入力ミスで査定【斬らレセプト シーズン2】

解説大腸内視鏡検査前の腸管内容物の排出を目的に投与したクエン酸マグネシウム(商品名:マグコロール)がB事由(医学的に過剰・重複と認められるものをさす)にて査定となりました。内容をみて、「やってしまった!」という査定でした。この医療機関のマグコロール処方の流れは、院内システムの都合上、医師に院内頓服扱いで大腸内視鏡前処置のコメントを付けて入力していただき、薬剤部から患者に服用方法の説明をしてお渡しするとしています。今回も医師は手順通り1包を処方されていました。そして、会計上では医療費請求に正しく反映させなければならないため、頓服の欄から検査用の薬剤の欄に手動で入力修正を行う運用としていました。このときに担当者は、薬剤の規格欄に「50g1包」とあったため、単位数を「1g」と思い込み、入力欄に「50」を入力してしまったようです。入力修正は医療費請求において必須の手順のため、「1g」あたりの入力なのか「1本」や「1袋」の入力なのか、規格単位数の誤りに細心の注意をはらうように常々伝えています。逆に、点眼薬や注射薬など「mL」や「g」単位で入力しなければならないものを「本、筒」単位で入力すると大きな請求漏れにつながります。入力単位の誤りをシステムで判定させようとすると、膨大な数の登録が必要となります。年に1回もあってはならないことですが、費用対効果を考えた今後の対策として会計入力時の確認と、レセプト点検時の目視点検の強化、ならびに薬剤部における払出数とレセプト請求数の比較検証で乗り切ることとしました。

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治療抵抗性統合失調症の酸化ストレスバイオマーカー

 統合失調症は、世界で約2,000万人が罹患している精神疾患である。統合失調症の病態生理には、酸化ストレス(酸化促進作用と抗酸化作用の不均衡)などさまざまな因子が関与している。ブラジル・Faculdade de Medicina de Sao Jose do Rio PretoのPatrick Buosi氏らは、統合失調症患者の臨床情報、人口統計学的データ、ライフスタイルを用いて、酸化ストレスのバイオマーカーと薬物治療反応との関連を評価した。Trends in Psychiatry and Psychotherapy誌2021年10~12月号の報告。 治療反応性統合失調症患者26例、治療抵抗性統合失調症患者27例、健康対照者36例を対象に、末梢血サンプル、質問票を用いて臨床および人口統計学的データを収集した。分光光度法を用いて分析した酸化ストレスマーカーは、カタラーゼ(CAT)、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、グルタチオンペルオキシダーゼ(GPx)、総グルタチオン(GSH-t)、マロンジアルデヒド(MDA)、トロロックス等価抗酸化能(TEAC、p<0.05)であった。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症患者は、対照者と比較し、SOD(p<0.0001)レベルが低く、MDA(p<0.0001)、CAT(p=0.0191)レベルが高かった。・その他のマーカーについては、3群間で差は認められなかった(p>0.05)。 著者らは「統合失調症患者では、薬理学的治療反応とは無関係に、低SOD、高MDA、高CATレベルが認められた。喫煙は酸化ストレスと関連していることに加え、統合失調症では家族歴と関連していることが示唆された。このことは、統合失調症の遺伝的関連性を反映している可能性がある」としている。

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口唇(口腔)のけがに対する縫合処置【漫画でわかる創傷治療のコツ】第9回

第9回 口唇(口腔)のけがに対する縫合処置《解説》図1今回は顔面外傷の中でも、口唇と口腔内の創傷についての対応を説明していきます。口唇は特殊な構造であり、外傷の際は適切な処置を施さないと傷跡が非常に目立ってしまう部位です。診察では、まず創部を観察しましょう。創傷の範囲、程度を推測するのに受傷機転は重要なので、処置の前に状況をしっかり聞き取ります。その上で、創がどんな状態か見て縫合が必要なのか判断します。知覚や表情に異常がないか(ある場合は顔面神経の損傷を疑う)を確認し、耳下腺管の損傷についても確認します(図1参照)。疑われる場合は造影が必要になることもあります。また、異物の有無も確認しましょう。場合によって単純X線、CT検査を検討します。口唇部の解剖と傷の程度による縫合処置口唇部の解剖の特徴としては、赤唇と白唇と呼ばれる皮膚と粘膜の境界があることと、遊離縁を形成し、皮膚・口輪筋の筋層・粘膜の3層構造になっていることです。(1)口唇の擦過創、浅いびらん口唇・口腔部に創傷被覆材は使いにくいため、白色ワセリンや口内炎用軟膏などの塗布で保存的に診ていけばよいです。(2)筋層に達する裂創口唇部の外傷の多くが外力と歯による損傷であり、筋層深くまでの損傷または貫通創であることが多いです。とくに口唇は遊離縁になっており組織欠損しやすい部分です。粘膜や舌は感染に強く治癒しやすい部位ではありますが、しっかり洗浄し縫合後も自宅で清潔に保ってもらうよう指示することが大切です。図2欠損がほぼない場合ズレないように縫合開始しましょう(基本は粘膜~筋層~皮膚の3層縫合)。糸は皮膚側6−0、角針の非吸収糸、粘膜側4−0、5−0、丸針の吸収糸などを選びます。エピネフリン入りの麻酔薬を注射すると、赤唇の赤みがなくなって境界がわからなくなるので先にマーキングしておくことが重要です!(図2参照)それでは、縫合を始めましょう!まずは口腔粘膜と赤唇(乾燥唇)の境界部を縫合します。次に、口輪筋の全層縫合を赤唇と白唇の境界部が一致するように行います。そして、赤唇と白唇の境界部に真皮縫合を行います。その後、赤唇と白唇の境界部から表皮縫合を開始します(できればルーペを使用)。最後に、口唇下縁が下垂しないよう粘膜部をラフに縫合します。組織欠損がある場合瘢痕が目立ちにくい縦方向に縫縮していくことが多いです。その際、白唇の長さが変化すると2次修正が困難になってしまいます。縫合に自信がない時は、洗浄・軟膏処置を行い、形成外科(または歯科口腔外科)外来へ依頼しましょう。(3)動物咬傷や高度な汚染創の場合洗浄、デブリードマンのみ、大まかな縫合にとどめて形成外科に紹介しましょう。最後に、後療法についても説明します。口唇周囲は摂食や発語で動きがある部位なので、瘢痕の炎症が遷延しやすく、肥厚性瘢痕やケロイドを起こしやすいです。トラニラスト内服や可能な範囲で傷を安静にするためのテーピングを行います。患者さんにはあらかじめ説明しておきましょう。参考1)波利井 清紀ほか監修. 形成外科治療手技全書III 創傷外科. 克誠堂出版;2015.2)安瀬 正紀監修, 菅又 章編. 外傷形成外科―そのときあなたは対応できるか. 克誠堂出版;2007.3)Frank H. Netter著, 相磯貞和訳. ネッター解剖学アトラス 原著第4版. 南江堂;2007.

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手書きメモを用いた直腸がんのインフォームドコンセント【誰も教えてくれない手術記録 】第12回

第12回 手書きメモを用いた直腸がんのインフォームドコンセントこんにちは! 手術を描く外科医おぺなかです。今回はちょっとした番外編として、手書きイラスト(メモ)を活用したインフォームドコンセントの一例をご紹介します。(主に外科医の)皆さんは、患者さんへの「術前説明」を普段どのようにしているでしょうか? 人によってさまざまなスタイルがあると思いますが、僕は時間が許せば「患者さんの目の前で白紙にイラストを描きながら説明する」というスタイルを取っています。最近では、患者説明用スライドや動画コンテンツを活用している病院もありますよね。もちろん、このように既成の資料を用いた説明でも過不足ないと思いますが、医師が患者さんと向き合って、直接語りかけながら手描きのイラストで補足していく説明が、より温かみがあり患者さんからの信頼も得られやすいのではないでしょうか(あくまでも私見です)。それでは、直腸がんに対する術前説明のイラストの一例をご紹介します。※話しながら描いた場面を想定した字とイラストなので、多少の読みづらさはご容赦ください。1枚目:解剖や機能、現在の病状、望ましい治療法、その治療を行わない場合に予想される経過・症状の説明2枚目:手術内容(アプローチ方法・切除範囲・再建方法)の説明3枚目:周術期合併症、術後経過の説明実際にはこれら手描きイラストを描きながら、口頭で説明していきます。術前説明のスタイルは人それぞれ、説明にかけられる時間も状況次第でさまざまですが、どんな場合でも大切なのは患者さんの理解と安心を得ることです。そのための一手段として、手描きイラストでの説明は有効だと思います。ただし、患者さんはその場ではわかった気になっても、時間が経てば忘れてしまうこともあります。どんな資料や方法を用いて説明するにしても、後から振り返りやすいような工夫ができるとなお良いですよね。術前説明にも、皆さんの日頃のオペレコ作成で培ったイラスト作成能力が大いに役立つことでしょう。説明後に「すごくわかりやすかったです。ありがとうございます」と患者さんから感謝の言葉がもらえたら大成功ですね!今回のようなテーマはいかがでしたか? 手術イラストに限らず、医療とイラストレーションの関わりについても今後取り上げていきたいと思います。お楽しみに!

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第99回 背景に府立医大と京大のジッツ争い?滋賀・大津市民病院で医師の大量退職が発覚

「飲食店の規制を続ける効果が小さい」と「まん防」延期に反対の委員もこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。新型コロナウイルスの「まん延防止等重点措置」の適用期間が18都道府県で3月21日まで延長されました。延長地域のうち東京や大阪、神奈川など9都府県は病床使用率が5割以上で、重点措置の効果に改めて疑問符が投げかけられています。政府の基本的対処方針分科会では今回の重点措置延長に対し、行動経済学を専門とする大阪大学特任教授の大竹 文雄氏ら委員2人が反対したとの報道がありました。大竹氏はオミクロン型の重症化リスクの低さに加え、クラスターは高齢者施設や保育所で多発していると指摘し、飲食店の規制を続ける効果が小さいことなどを反対理由としたそうです。「まん防」はもはや行政が”やってる感”を出すための道具に過ぎないようです。感染拡大を抑え込み、収束に向かわせるには、ワクチンの3回目接種が必須と思われますが、3月7日に首相官邸ホームページで公表された3回目接種の完了率は全体で24.9%、65歳以上高齢者で61.0%と依然低いままです。国(と各自治体)はこの接種遅れをどう挽回するのか、これからの施策に注目したいと思います。さて今回は滋賀県大津市にある基幹病院、地方独立行政法人・市立大津市民病院(401床)で起きている外科系医師の大量退職事件について書いてみたいと思います。外科・消化器外科・乳腺外科の9人が退職へ同病院の大量退職が発覚したのは2月初旬でした。各紙報道によれば、今年2月、病院内で突然「大津市民病院 外科・消化器外科・乳腺外科で治療中の患者様へ」と題した文書が配布されました。3科の医師9人(常勤医8人、非常勤医1人)連名の文書には「退職しなければいけないこととなりました。当院院長・理事長・事務局長により決定された病院運営上の判断とのことです」と記されていました。9人はいずれも京都大学医学部の外科学教室から派遣されている医師でした。医師側はパワーハラスメントだと主張問題が表沙汰になったことを受け、病院側は2月15日に記者会見を開き、医師9人が3月末以降退職する意向を示している事実を認めるとともに、京大側から14日に「今後は医師を派遣しない」との連絡があったと説明しました。記者会見を受け、各紙が一斉にこの事実を報じました。毎日新聞等の報道によれは、昨年9月、経営陣が外科医側に外科の経営状況に関する相談をした際、経営改善の意思がみられなかったため、市立大津市民病院のトップである北脇 城理事長が「消化器外科は府立医大(京都府立医科大学)と交代するように」と発言。消化器外科と乳腺外科を兼任している医師もおり、医師らは「全員交代」と認識したとのことです。医師側はパワーハラスメントだと主張したものの、病院内部の検証ではパワハラとは認定されなかったとのことです。医師側は冒頭の文書を病院内で患者向けに配布し、2月7日には大津市医師会に対し、「2月2日から新規手術の紹介患者の受け入れを基本的に中止している」と連絡したとのことです。「収入実績が悪いことが問題の背景にある」と理事長15日の記者会見で北脇理事長は、「外科・消化器外科・乳腺外科の収入実績が悪いことが問題の背景にある」と説明したものの、「(府立医大の医師と)交代する事実もなく、パワハラではない」と弁明、「近隣の病院から医師を派遣してもらうよう依頼するとともに、京大側にも引き続き派遣を求めている。診療体制への影響を最小限に食い止めたい」と話したそうです。また、外部の弁護士による第三者委員会を立ち上げ、パワハラの有無の検証を始めていることも明らかにしました。京大派遣の脳神経外科5人も退職へ新規の外科手術の停止など、日常診療に大きな障害が生じている中、事態は好転どころか悪化に向かいました。2月18日付の各紙は脳神経外科の全医師5人が、4月以降に退職する意向を示していると報じました。朝日新聞等の報道では、この5人も京大から派遣されている医師で、取材を受けた医師の1人は北脇理事長から同科の業績が悪いとして「府立医大から来春、3人の医師を派遣してもらい、脳卒中科を設ける。今いる2人は退任してほしい」と告げられた、と語ったとのことです。京大側はこの件についても人事に関するパワハラが生じたと判断、医師の引き上げを決定したとのことです。この事態に対し病院側は、2月18日に北脇理事長と若林 直樹院長の連名で、「脳神経外科とは、計画を踏まえた対応強化について協議を行ってきており、人事を巡って病院幹部によるパワーハラスメント的な行為があったと主張されていることは遺憾」とのコメントを発表しています。なお、3月5日付の毎日新聞は、同病院の脳神経外科医が3日、病院職員に対し「やむなく退職する予定」とメールで伝え、今夏に退職する旨を明らかにしたと報じています。同紙によれば、脳神経外科医らは「実績が良好にもかかわらず、経営陣からスタッフ減員や任用拒否を迫られるなどのハラスメント的行為を受け、信頼関係が崩壊したことが原因」と伝えたそうです。これで、大津市民病院を辞めようとしている医師は、合計14人となります。大津市、滋賀県も困惑、今後の対応を検討へこの事件、地域の医療提供体制に混乱をもたらしていることから、独立行政法人の出資者である大津市のみならず、滋賀県も病院の今後の対応を注視しています。大津市の佐藤 健司市長は2月21日に開かれた通常会議の本会議冒頭で、「設置者として遺憾。こうした事態を招いた法人の責任は極めて重い。県に協力を要請するなど、設置者として対応に努める」と述べました。さらに、3月2日の市議会での代表質問では、設置者としての市の対応や姿勢をただす質問が相次ぎ、佐藤市長は診療への影響などに関する病院側からの報告を精査している段階とし「必要に応じ、さらなる対応を検討する」と答弁したとのことです。また、三日月 大造・滋賀県知事は2月25日の県議会一般質問で「病院や大津市、派遣元の大学と課題を共有し、対応を検討したい」と答弁しています。理事長は府立医大病院の病院長経験者人事に関してパワハラがあったのか、なかったのか。純粋に経営改善のために派遣元の医局を変えようとしたのか、別の理由があったのかは現時点では判然とせず、第三者委員会の判断待ちとなっています。そんな中、一つ気になったのは、医師派遣を止めると言っているのが京大の外科、脳神経外科であるのに対し、パワハラを告発された経営者側の北脇理事長、そしてナンバー2の若林院長がともに京都府立医科大学の出身者だという点です。北脇理事長は京都府立医大の産婦人科学教室の教授を2021年3月まで努め、2017〜2019年は京都府立医科大学附属病院の病院長も務めていました。現在は京都府立医科大学名誉教授でもあります。公表されている最近の事業報告などを見ると、大津市民病院自体の経営状況は決して良好とは言えませんが、2020年度については、「財務状況としては、医業収支はマイナス14億8,600万円と医業収益の落ち込みに より多額の損失となったが、国等の補助金等により、経常収支において20億5,800万円の経常利益を確保することができた」としています。コロナ対応もあり、2021年度も補助金等でおそらく相当の黒字計上になっていると思われます。外科や脳神経外科で喫緊の経営改善が必要だったかはわかりませんが、だからといって「派遣医局を京大から府立医大に単純に替えればいい」という考え方は相当強引に見えます。調べてみると、同病院では、2019年にも産婦人科医の大量退職が起こっており、同年6月以降、分娩の取り扱いは休止したままです。北脇理事長の専門は産婦人科ですが、理事長に赴任した2021年4月以降も分娩は再開されていません。「ジッツを経営状況のいい大規模病院に集約する」ことが大学医局のこれからの役割関西の医療界では、府立医大と京大医学部との仲の悪さは昔から有名です。お互いに「川向こう(鴨川の向こう岸)」と呼び合うと聞いたこともあります。歴史的には府立医大の前身(京都府立医学専門学校)のそのまた前身である京都府医学校の方が古く、京都帝国大学医科大学が設立された時には京都府医学校から医師を大量に引き抜いたという逸話もあるようです。そういった歴史的な背景もあり、京阪神では京大医学部よりも、府立医大のジッツ(関連病院)の方が圧倒的に多いと言われています。一般の人から見れば、京大は全国区、府立医大は地方区の医学部ですが、京阪神地域においては、府立医大はジッツなどの勢力において一目置かれる存在なのです。とは言うものの、今回の事件が、「母校である府立医大のジッツを増やしたかった」という、極めて昭和的な理由が背景にあるのだとしたら、それこそ税金を払っている大津市民はたまりません。そもそも人口減少が急速に進み、各地の病院の統廃合が喫緊の課題となっている中、ジッツを闇雲に増やすことは時代に逆行する行為だと言えます。医師の働き方改革も本格化する中、大学医局のこれからの役割は、「ジッツを経営状況のいい大規模病院に集約し、大人数のスタッフで大量の症例や手術を効率的にこなす体制を作ること」だからです。症例数も少なく若手医師のトレーニングにもならない病院からは医師を引き上げる、というのが、これからのトレンドなのです。そうした意味でも、大学医学部の教授が天下って、地方の公立・公的病院等の院長を名誉職的に務める、という時代は昭和・平成で終わったと言えるでしょう。もはや病院経営は、天下った元教授が片手間にできるような甘い仕事ではないのです。

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リフィル処方箋のルールは?どんな患者に適している?【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第85回

2022年4月からの報酬改定が間近に迫ってきました。皆さんの薬局でも対応に追われているのではないでしょうか。今回は賛否両論が巻き起こっているリフィル処方箋について詳しく見ていきましょう。リフィル処方箋は、症状が安定している患者さんに対して、医師および薬剤師の適切な連携のもと、一定期間内は処方箋を反復利用できるというものです。議論自体は10年以上前からなされてきましたが、今回の改定でいよいよ導入が決まりました。一見紛らわしい制度に、2016年度から始まった分割調剤があります。これは医師が指定した日数・量の範囲内の薬剤を分割して患者さんに渡す制度ですので、繰り返し使用できるリフィル処方箋とはまったく異なります。そして、残念ながら分割調剤は浸透しませんでした…。このリフィル処方箋は患者さんの通院負担の軽減になり、またその普及度合いは医師がどのくらい薬局を信頼しているのかということに比例すると思っていますので、ぜひ普及してほしいです。リフィル処方箋のルールは以下のように定められました。(1)処方箋の使用回数の上限は3回。(2)29日以内/回のリフィル処方を行えば、現行ルールにある30日以上の投薬による処方箋料の減算を受けない。(3)リフィル処方箋による調剤は同一の薬局で行うべきである旨を薬剤師が患者に説明する。(4)薬剤師は患者の服薬状況などの確認を行い、リフィル処方箋による調剤が不適切と判断した場合は受診勧奨を行い、処方医に速やかに情報提供を行う。(5)リフィル処方箋により調剤した場合、薬剤師が調剤した内容や患者の服薬状況などについて必要に応じて処方医に情報提供を行う。(2)のとおり、長期処方に対する減算からは除外されており、処方医側のデメリットを減らして普及を促す工夫がなされています。そして、(5)にあるように、リフィル処方でとくに問題がなかった場合は、原則として医師に情報提供する必要はありません。しかし、医師もせっかく患者さんと薬剤師を信用してリフィル処方箋を発行しているわけですので、リフィル処方後の患者さんの状態や問題がなかったことなどを積極的に報告することで、医師の不安も軽減されてリフィル処方箋の普及につながっていくのではないでしょうか。どのような方にリフィル処方箋が適するかについては、症状が安定している患者さんであることは言うまでもありませんが、すでに長期処方を受けている患者さんではメリットは少ないでしょう。それほど長期処方ではない患者さんに対して、「まずは体調に問題がないかリフィル処方箋で確認」となるのかもしれません。しばらくは医師もどのような場合にリフィル処方箋が適するのかを探りながらの導入になることが予想されます。処方医とコミュニケーションを取って、医師の不安や患者さんの不利益がないようにフォローアップできたらなと思います。前回と今回の改定内容を見る限り、今後も「薬局は地域に貢献すべし。調剤後のフォローを行う役割を負う」という流れは変わらないと確信しています。先のことを言い過ぎて鬼が笑いそうですが、次の2024年は診療報酬・介護報酬の同時改定です。同時改定の際は大幅な変更があると言われています。どのような状況でリフィル処方が行われ、薬剤師がどのような対応を取ったのか、そして患者さんにどのような変化があったのかが次回の議論の的になるのではないかと思います。

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円錐角膜〔keratoconus〕

1 疾患概要■ 定義円錐角膜は、進行性の両眼角膜中央部もしくは下方の菲薄化と突出を来す疾患であり、近視化と不正乱視による視力低下を来す。■ 疫学円錐角膜の発症頻度は、450〜2,000人に1人とされてきた。しかし、診断技術の進歩により、軽症の円錐角膜の検出頻度が上がっている。屈折矯正外来を訪れる患者のうち円錐角膜または円錐角膜疑い患者は5%前後にみられる。また、難波らの調査からは、疑い例も含めると日本人の約100人に1人程度の有病率であるという結果が報告されていることから、軽症例も含めると従来考えられているよりも罹患人口が多い可能性が高い。性差については報告により異なるが、わが国では男性に多いという報告が多数ある。■ 病因明らかな病因はいまだに不明である。数多くの遺伝子変異が報告されているが、実際に遺伝的素因が明らかな例はあまり多くない。ダウン症候群やレーバー先天盲、エーラス・ダンロス症候群、マルファン症候群などでは円錐角膜の発症率が高いことが知られている。その他リスクファクターとしては、アトピーなどのアレルギー眼疾患、頻繁に目をこする、などが挙げられる。■ 症状軽度の症例では自覚症状はほとんどない場合もあるが、中等度以上になると近視性乱視と不正乱視が出現する。そのために眼鏡矯正視力が不良になりハードコンタクトレンズによる矯正が必要になる。ほとんどの場合両眼性に生じるが、程度に左右差があることも多い。■ 分類角膜の突出部位別の分類としては、以下のものがある。Nipple角膜中央の狭い範囲(5ミリ以下)に突出がみられるもの。Oval     突出部位が中央やや下方にみられるもの。最も頻度が高い。Globus突出部位が角膜の4分の3の範囲に及ぶもの。また、重症度分類としては、Amsler分類(表)が古くから用いられているが、測定機器の進歩によって、細隙灯顕微鏡で検出できない初期の変化が捉えられるようになってきたために、見直す必要がある。表 Amsler-Krumeich分類画像を拡大する■ 予後円錐角膜の多くは思春期から青年期にかけて発症し、その後加齢とともに進行するが、中年以降になると進行速度が緩やかになってやがて停止する。しかしながら、進行の有無やスピードには個人差が大きく、近年の報告によれば30歳以降でも進行する症例もみられることが明らかになっている。経過中に、デスメ膜破裂を来す場合がある。局所的な実質の浮腫と、それに伴う急速な視力低下と軽度の眼痛を認める(急性水腫:図1)。浮腫は自然に軽快するが、実質瘢痕を残すと視力が回復せずに角膜移植が必要となることもあるので、急性水腫を来さないような治療方針を建てることが重要となる。図1 急性水腫の前眼部所見急激に発症する角膜中央部の浮腫で、スリットランプでしばしば実質の裂隙とデスメ膜の断裂を認める。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)円錐角膜の診断には、正確な視力検査、自覚的屈折検査と角膜形状解析検査を行う必要がある。細隙顕微鏡での異常所見としては、角膜中央〜Vogt’s striae(角膜実質の線状の皺壁:図2)、Fleisher ring(突出部の周辺に認められるリング状のヘモジデリン沈着)、上皮化の瘢痕などが挙げられ、主として中等症以上で初めて認められる。図2 Vogt’s striae突出部に生じる細かい実質の皺壁。初期の円錐角膜の診断には、角膜トポグラフィー(形状解析検査)が有用であり、角膜中央から下方の前方突出が特徴的である(図3)。図3 典型的な円錐角膜の角膜トポグラフィー像下方角膜曲率の急峻化を認める。近年では、多くの機器で円錐角膜のスクリーニングプログラムが搭載されている。より初期の診断には、角膜前面だけではなく後面も評価でき、角膜厚の分布も検出できる角膜トモグラフィー(断層撮影)の感度が高い。さらに、角膜形状でなく生体力学的特性を調べる検査の有用性も報告されている。鑑別疾患としては、円錐角膜よりも周辺部角膜の菲薄化と突出を来たすペルーシド角膜辺縁変性が挙げられる。円錐角膜よりも発症が遅く進行が停止するまでの期間も長い。その他、レーシックなどの角膜屈折矯正手術後の角膜拡張症(エクタジア)も円錐角膜と同様の所見を呈する。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)円錐角膜の治療は、視力矯正と進行予防の2つの目的があり、前者はさらに保存的治療と外科的治療に分かれる。■ 視力矯正1)保存的治療軽度の場合は眼鏡やソフトコンタクトレンズも用いられるが、一般的には酸素透過性ハードコンタクトレンズによる矯正が中心となる。角膜突出の程度が強くなると、多段階のベースカーブを有する円錐角膜用のハードコンタクトレンズが必要となる場合もある。ハードコンタクトレンズに伴う異物感が強い場合は、ソフトコンタクトレンズの上にハードコンタクトレンズを乗せる“piggy-back”とよばれる装用法や、中心部がハードレンズで周辺部がソフトレンズのハイブリッドレンズ、あるいは強膜レンズが用いられることもある。2)外科的治療軽度の非進行例については、有水晶体眼内レンズによる近視・乱視の矯正も試みられている。近年、角膜実質の混濁をともなわない例については、角膜実質にPMMA製のリングを入れる「角膜内リング」も一部で行われるようになった(国内未承認)。これによって角膜形状の改善とハードコンタクトレンズ装用感の向上が得られる場合がある。保存的治療で充分な視力矯正が得られない場合、角膜移植が1つの選択となりうる。かつては角膜全層を移植する「全層角膜移植」が広く行われたが、術後合併症への対策が欠かせないという欠点があり、それを補うために角膜実質をデスメ膜の直上まで切除して移植する「深層層状角膜移植」が行われているが、手術手技が難しいという欠点を持つ。■ 進行抑制約20年前から、「角膜クロスリンキング」という円錐角膜の進行抑制を目的とした治療が、諸外国で広く行われるようになった(国内未承認)。角膜実質内にリボフラビン(ビタミンB12)を浸透させた後に、紫外線を照射することで角膜実質のコラーゲン線維の架橋を促して強度を向上させる。これまでの研究で、円錐角膜の進行抑制が大半の例で得られ、若干の形状改善効果もあることが報告されている。進行抑制が得られれば、角膜移植などの外科的治療を受けずに済む可能性が高く、患者の生活の質の向上に役立つ。4 今後の展望上に挙げた治療法のいくつかは保険未収載であったり、機器の承認が取れていないため、治療は多くの場合が自費診療として行われる。特に角膜クロスリンキングは、疾患の進行抑制を効率で得られるために患者のQOLを長期にわたって改善できることが海外で報告されており、わが国でも早急に実施体制が整うことが求められる。また、多くの円錐角膜患者にとってハードコンタクトレンズは生活に欠かせないが、市町村によってはその購入に対する補助がなされないなど、患者負担が大きいことが問題となっている。5 主たる診療科眼科。しかし多くの例では、眼鏡店やコンタクトレンズ販売店、あるいは屈折矯正手術施行施設を訪れることも多く、これらの施設で適切に円錐角膜の診断をつけることが重要である。※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報円錐角膜研究会(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)National Keratoconus Foundation(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)1)Amsler M. Ophtalmologica. 1946;111:96–101.公開履歴初回2023年3月8日

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英語で「吐き戻す」は?【1分★医療英語】第18回

第18回 英語で「吐き戻す」は?I am worried about my daughter because she spit up milk a lot yesterday.(娘が昨日何度もミルクを吐き戻したので心配です)Okay, what is her baseline?(なるほど、通常はどの程度[吐き戻すの]ですか?)《例文》医師Helping her burp during and after feeding will prevent from spitting up.(授乳中や授乳後にげっぷをさせてあげると、吐き戻しを防げますよ)患者Oh, that is good to know!(そうなのですね、良いことを伺いました!)《解説》今回は小児医療でよく使われる「吐き戻す」という表現をお伝えします。AAP(米国小児科学会)のサイトでは、“vomiting”は胃の内容物が口から体外に強制的に吐き戻されること、“spitting up”は強制的な筋収縮は関与せず、しばしばげっぷに伴い胃の内容物が口から出てくること、と説明されています。母乳や人工乳を飲んだ赤ちゃんが、食後にミルクを口から吐き出してしまうことがあるのですが、これがまさに“spitting up”(吐き戻す)に当たります。大人が悪心を伴って嘔吐するときのニュアンスとは大きく異なります。“spit”を単体で使う際には、「唾を吐く」もしくは「口に入れたものを飲み込まずに出す」という意味合いとなり、こちらもまた上記とはニュアンスが異なります。小児領域で言えば、子供が食べようとしたものが口に合わず、すぐに「ぺっ」と外に出すような状況です。米国で小児医療に携わっていると、赤ちゃんの“spit up”を心配して救急やクリニックを訪れる家族が非常に多く、たびたび耳にする言葉です。英語圏の方は“spit up”“vomit”“spit”といった表現を自然に使い分けていますので、ニュアンスの違いを理解して、患者の年齢や症状に応じて使い分けてみてください。講師紹介

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059)皮膚科医を悩ませる写真と実物との差【Dr.デルぽんの診察室観察日記】

第59回 皮膚科医を悩ませる写真と実物との差ゆるい皮膚科勤務医デルぽんです☆私の勤めるクリニックは、外来のほかに内科医が訪問診療を行っており、時折在宅患者さんの皮疹について相談を受けることがあります。普段、往診医とは電子カルテを介してやりとりをしていますが、「皮膚を診る」という皮膚科の特性上、非常に大事なポイントとなるのが、患者さんの臨床写真です。…なのですが、カルテの仕様上、写真を取り込む際に画像データが圧縮されてしまうようで、解像度が大幅に落ち、拡大して見たときに非常に残念なことになってしまいます。在宅の現場では、専用のカメラや照明がない所で写真を撮るので、自分が撮ってもおそらく満足のいく写真にはならないであろう、とは思うのですが、それにしても…な例が多くて困ってしまいます。こと写真に関しては、訪問看護師さんが渡してくれるデジタル写真の元データが頼りで、入手できない場合はカルテ上の粗い画像を拡大したり縮小したりしながら、最終的には心の目で診察しています。なかなか判断の難しい患者さんは、実際に受診してもらうこともあり、写真と実際の症状との違いに驚かされることも…。「見る」だけの科と思われがちな皮膚科ですが、意外と3次元(実物)から2次元(写真)に落とし込まれた際に、失われる情報は大きいなぁと痛感する瞬間です。こんなカルテ診も良い経験と思い、今後も日々精進いたします。それでは、また~!

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コロナ禍の生活変化の第1位は「毎日のストレス」/アイスタット

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染増加により、約3年にわたり私たちの生活には、さまざまな制約が発生した。これにより、私たちの日常生活に大きな変化は起こったのであろうか。 株式会社アイスタットは2月18日に全国アンケートを行った。アンケートは、セルフ型アンケートツール“Freeasy”を運営するアイブリッジ株式会社の全国の会員30~69歳の300人が対象。調査概要形式:WEBアンケート方式期日:2022年2月18日対象:セルフ型アンケートツール“Freeasy”の登録者300人(30~69歳/全国)を対象アンケート結果の概要・コロナ第1波(2020年3月~5月頃)~第6波(2022年1月頃~)のうち、生活に影響があった時期は「第1波」の39%が最多・コロナ禍生活で失ったものがある(ダメージを受けたものがある)割合は8割を超える・コロナ禍前と比べ、生活が変化(悪化)したこと第1位:日常生活のストレスの増加(54.7%)第2位:収入の減少(31.7%)第3位:体重の増加(28.7%)第4位:雇用・働き方の悪化(28.0%)第5位:食費・食生活の悪化(20.7%)第6位:同居者・家族との関係、コミュニケーション(17.7%)日常生活のストレスはいまだに解消されていない 質問1で「生活に影響があった時期」(複数回答)を聞いたところ、「第1波」(2020年3月~5月頃)の39.0%が最も多く、「第5波」(2021年7月~9月頃)が29.3%、「影響した時期はない」が29.0%の順で多かった。また、「生活に影響があった人」を回答データから分類してみたところ、「影響あり」は71%、「影響なし」は29%で、約7割の人が生活に「影響あり」と回答していた。 質問2として「コロナ禍生活で失ったもの(ダメージを受けたもの)」(単回答)について聞いたところ、「ややある」が36.0%で最も多く、「しいて言えばある」が25.3%、「まったくない」が15.7%の順だった。大きく有無別に分類すると「ある」は84.3%、「ない」は15.7%で回答者の多くが犠牲を強いられている結果だった。また、属性別に「とてもある」と回答した人は「30代」、「無職・主婦・その他」、「生活に影響があった時期は第3波(2020年11月~2021年3月頃)」が最も多かった。いわゆる社会的弱者などへの影響が考えられた。 質問3として「コロナ禍前との比較での生活の変化」について、6つの質問(単回答)を聞いたところ以下の結果だった。1)日常生活のストレス「増えた」(54.7%)、「変わらない」(42.0%)、「減った」(3.3%)2)収入「変わらない」(64.7%)、「減った」(31.7%)、「増えた」(3.7%)3)体重「変わらない」(63.0%)、「増えた」(28.7%)、「減った」(8.3%)4)雇用・働き方(無職・主婦は生活様式)「変わらない」(67.7%)、「悪くなった」(28.0%)、「良くなった」(4.3%)5)食費・食生活「変わらない」(69.7%)、「悪くなった」(20.7%)、「良くなった」(9.7%)6)同居者・家族との関係、コミュニケーション(単身では知人・友人との関係)「変わらない」(73.7%)、「悪くなった」(17.7%)、「良くなった」(8.7%) 生活の変化についてマイナス志向(悪化)の回答に着目すると、悪化率が最も高かった内容は「日常生活のストレスの増加」(54.7%)、「収入の減少」(31.7%)、「体重の増加」(28.7%)だった。 アンケートの結果から今後COVID-19そのものの治療だけでなく、心の治療への転換も待たれるところである。

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