サイト内検索|page:129

検索結果 合計:5020件 表示位置:2561 - 2580

2561.

皮膚筋炎/多発性筋炎〔dermatomyositis/polymyositis〕

1 疾患概要■ 概念・定義皮膚筋炎/多発性筋炎は四肢近位筋、喉頭筋を中心とした筋肉を炎症の首座とする自己免疫疾患で、定型的皮疹を伴うものを皮膚筋炎と呼ぶ。■ 疫学わが国での患者数は約20,000人。小児と成人の二峰性の発症年齢を呈するが、中年以降の発症が最も多い。男女比は1:3で女性に多い。■ 病因他の自己免疫疾患と同様に遺伝的素因と環境因子の両方が想定されている。ゲノムワイド関連解析などによる遺伝要因としては、ヒト白血球抗原(HLA)遺伝子が疾患感受性遺伝子と同定された。環境因子としては過度の運動、紫外線、ウイルス感染、薬剤などが報告されている。悪性腫瘍合併例では、傍腫瘍症候群的な側面があると推測されている。これらのさまざまな因子の影響により、骨格筋や皮膚組織の構成成分に対する免疫学的寛容の破綻が起こり、自己免疫学的機序により発症するものと考えられている。筋および皮膚病理の検討からはI型インターフェロン(Type I IFN)の病態への関与が示唆されている。■ 症状1)筋症状四肢近位、頸部、体幹などの筋力低下や筋痛が主体である。しゃがみ立ちや立ち上がり困難、髪がとかせない、頭が重いなどを自覚する。嚥下に関わる咽頭筋などに病変が及ぶと、嚥下障害や嗄声を来すことがある。2)皮膚症状(1)顔・頭部ヘリオトロープ疹は上眼瞼にみられる浮腫性の紫紅色~暗紅色の斑である(図1)。紅色調は呈さずに、浮腫のみの場合もある。しばしば本症の皮膚病変の初発症状となる。原則として両側性に見られるが、左右差の見られる場合もある。顔面では、上眼瞼のみならず頬部にもしばしば紅斑を生じる。鼻根部や鼻翼周囲にとくに好発し、脂漏性皮膚炎様と表現される。蝶形に近い分布を呈することもあるが、鼻唇溝を避ける傾向がなく、全身性エリテマトーデスほど整った蝶形にならない。前額、耳、側頸部も好発部位である。耳の突出部に限局した紫紅色斑は抗MDA5抗体陽性例に多い。紅斑が被髪頭部に生じると、脱毛を呈することがある。頭部は著明なかゆみを伴うことが多い。口腔内では、上口蓋に発赤(paratal ovoid patch)や口唇粘膜にアフタ性潰瘍を伴うこともある。図1 ヘリオトロープ疹(2)手ゴットロン丘疹/徴候は、手指関節背面、特に中手指節間/近位指節間関節に好発する丘疹や紅斑である。丘疹性変化の場合にゴットロン丘疹、それ以外の場合にゴットロン徴候と呼ぶ。丘疹になる場合は扁平で敷石状に集積することが多い。爪上皮出血点を伴った爪囲紅斑は高頻度で見られ(図2)、しばしばゴットロン丘疹/徴候に先行して出現するため、診断的価値が高い。浮腫性紅斑から萎縮性の紅斑、軽微なものから爪囲全体に及ぶ激しいものまである。図2 爪囲紅斑と爪上皮出血点掌側の指関節周囲に紫紅色の鉄棒まめ様の皮疹がみられることがある。俗に逆ゴットロン徴候とも呼ばれ、抗MDA5抗体陽性例に特徴的な皮疹である(図3)。図3 逆ゴットロン徴候Mechanic’s hand(機械工の手)は手指の側面、特に拇指尺側や示指橈側を中心に生じる手湿疹に類似した皮疹である。抗ARS抗体に特徴的とされる。レイノー現象を伴う例もある。(3)体幹前胸部にはV徴候、上背部にはショール徴候と呼ばれる皮疹が好発する。皮膚筋炎の体幹の皮膚病変はかゆみが強いことが特徴的で、掻破による線状の紅斑はflagellate erythema(むち打ち様紅斑)やscratch dermatitisと称される。抗SAE抗体陽性例では背部中央だけが抜けたびまん性紅斑を呈することが多く、angel wing徴候の名称も提唱されている。抗MDA抗体陽性例では臀部に紫紅色斑がみられることもある。(4)四肢四肢の関節伸側(肘・膝)にも紅斑を生じ、これらもゴットロン徴候と呼ばれる。上腕伸側にもショール徴候と連続性ないし非連続性に皮疹がみられることが多い。大腿外側に紅斑が生じることがあり、これらはホルスター(ガンマンが腰から下げている拳銃嚢)徴候と呼ばれている。(5)その他表皮下水疱:びらん・潰瘍化することもあるが比較的速やかに痂皮となる。抗TIF1-γ抗体陽性例に多く、しばしば悪性腫瘍合併も認める。脂肪織炎:四肢近位側や体幹に生じることがあり、発赤を伴う皮下硬結として触知する。潰瘍化・石灰化沈着を来す例もある。皮膚潰瘍:手指、関節部位、圧迫部位などに穿掘性に生じることがあるが、抗MDA5抗体陽性例に多く、血管障害によると推測される。皮膚潰瘍合併例は非合併例に比べて間質性肺炎合併率が有意に高いとする報告もあり、抗MDA5抗体との相関を反映している可能性がある。このほか、水疱や脂肪織炎に合併する例もある。肢端壊疽:頻度は低いが抗MDA抗体陽性例の他、抗ARS抗体陽性例でも見られることがある。多形皮膚萎縮(ポイキロデルマ):四肢・体幹の皮膚症状が慢性の経過ののちに色素沈着・脱失を伴う萎縮性変化を呈する。皮下石灰沈着:皮下の硬結として触知し、皮膚表面から白く透見され、自壊し排出されることもある。小児皮膚筋炎、抗NXP2抗体陽性例に多いとされる。多形皮膚萎縮の中にしばしば生じ、疾患活動性とはあまり相関せず、病勢がおさまった後に出現・増数し、難治化することが多い。3)関節症状非骨破壊性の多発関節炎・関節痛を来すが、症例によっては関節リウマチ同様の骨破壊性関節炎を来す。4)レイノー現象寒冷刺激などで四肢末梢に乏血を来たし、皮膚の蒼白・チアノーゼが出現する現象で、約30%の症例で認める。5)間質性肺炎治療抵抗性で予後不良の急速進行性、亜急性、慢性に進行する症例やほとんど進行しない症例など多彩な経過をたどる。予後不良の急速進行型は抗MDA5抗体陽性例に、慢性型は抗ARS抗体進行例に多く認める。6)心病変予後因子として注意。心筋炎や期外収縮、房室ブロックなどの不整脈による心不全、まれに心膜炎なども来すことがある。7)悪性腫瘍10%に合併し、診断前1~2年で発症することが多い。合併例はしばしばヘリオトロープ疹が強く、掻痒があり、日光露光部の皮疹が強く、筋症状より皮膚症状が強くなる。■ 分類自己抗体の検出がここ数年で明らかとなり、抗体は臨床病型と密接に相関するために症状、合併症、予後予測や治療法の選択にも役立つ。わが国では2014年に抗ARS抗体、2016年に抗Mi-2抗体、抗MDA5抗体、抗TIF1-γ抗体が保険収載され、日常診療で測定できるようになったが、大まかに抗ARS抗体が20%、抗MDA5抗体が20%、抗Mi-2抗体が10%、抗TIF1-γ抗体が20%である。以下、抗体による分類とそれらをグループ化した図を示す(図4)。図4 皮膚筋炎の臨床症状と関連する筋炎自己抗体画像を拡大する1)抗ARS抗体8種類の自己抗体の総称であり、わが国では抗Jo-1抗体、抗PL-7抗体、抗PL-12抗体、抗EJ抗体、抗KS抗体の5つの抗体を1つのアッセイで測定して検出する。皮膚筋炎特異的自己抗体ではないが、比較的共通の症状を呈するため、抗ARS抗体症候群という病名が用いられることもある。慢性の間質性肺炎がほぼ必発でしばしば再発を繰り返す。2)抗Mi-2抗体筋症状がはっきりしており、血清CK値も他の抗体群と比べて高値のことが多い。間質性肺炎は低頻度であり、悪性腫瘍の合併率は20%程度である。一般にステロイドに対する治療反応性や予後は良好である。3)抗TIF1-γ抗体小児皮膚筋炎では約30%で陽性と最も頻度の高い自己抗体であるとともに成人例では悪性腫瘍合併皮膚筋炎で高頻度に検出(約65%、40歳以上では75%と報告)されるため、はじめの1~2年は繰り返し定期的な検査が必要である。皮膚症状は広範囲で重症で、嚥下障害が多いのが特徴である。4)抗MDA5抗体予後不良の急速進行性間質性肺炎を高頻度に合併し、抗MDA抗体価は重症度と相関する。この他フェリチンやIL-18なども血清学的指標として報告されている。筋炎自体は認められないか軽微なことが多く、“clinically amyopathic dermatomyositis”と称される。5)抗NXP-2抗体小児皮膚筋炎ではTIF1-γ抗体と並んで高率に陽性となる。成人では約30%で悪性腫瘍が発見される。6)抗SAE抗体皮膚筋炎に特異的であると推察され、皮膚症状が先行し広範囲であることや嚥下障害が高頻度であることが報告されている。■ 予後臨床経過ならびに予後は各症例によってさまざまであるが、生命予後を規定する因子として心筋障害、間質性肺炎、悪性腫瘍、日和見感染の併発が挙げられる。特に留意するものは間質性肺炎と悪性腫瘍で、急速進行型の間質性肺炎は予後が著しく悪いため、早期発見・治療が重要である。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ 診断基準厚生労働省指定難病としての診断基準(表)、2017年のEULAR/ACR(欧州リウマチ学会/米国リウマチ学会)成人と若年の特発性炎症性筋疾患の分類基準と主要サブグループ、BohanとPeterの診断基準を参考とする。表 診断基準(厚生労働省 指定難病の認定基準 2015)1.診断基準項目1)皮膚症状(a)ヘリオトロープ疹:両側または片側の眼瞼部の紫紅色浮腫性紅斑(b)ゴットロン丘疹:手指関節背面の丘疹(c)ゴットロン徴候:手指関節背面および四肢関節背面の紅斑(2)上肢または下肢の近位筋の筋力低下(3)筋肉の自発痛または把握痛(4)血清中筋原性酵素(クレアチンキナーゼまたはアルドラーゼ)の上昇(5)筋炎を示す筋電図変化(6)骨破壊を伴わない関節炎または関節痛(7)全身性炎症所見(発熱、CRP上昇、または赤沈亢進)(8)抗アミノアシルtRNA合成酵素抗体(抗Jo-1抗体を含む)陽性(9)筋生検で筋炎の病理所見:筋線維の変性および細胞浸潤2.診断のカテゴリー皮膚筋炎:(1)の皮膚症状の(a)~(c)の1項目以上を満たし、かつ経過中に(2)~(9)の項目中4項目以上を満たすもの。なお、皮膚症状のみで皮膚病理学的所見が皮膚筋炎に合致するものは、無筋症性皮膚筋炎として皮膚筋炎に含む。多発性筋炎:(2)~(9)の項目中4項目以上を満たすもの。3.鑑別診断を要する疾患感染による筋炎、薬剤誘発性ミオパチー、内分泌異常に基づくミオパチー、筋ジストロフィーその他の先天性筋疾患、湿疹・皮膚炎群を含むその他の皮膚疾患。■ 検査所見筋原性酵素(CK、ALD、ミオグロビン、AST、ALT、LDH)が上昇し、筋力低下は徒手筋力テスト(MMT)で確認する。MRIでは筋組織の炎症部位に一致してSTIR法で高信号が認められ、筋生検部位の決定にも有用である。筋生検の所見としては筋線維の変性および炎症細胞浸潤が認められる。筋電図では随意収縮時の低振幅電位などの筋原性変化や安静時自発電位などの炎症による所見がみられ、神経疾患による筋病変との鑑別に有用である。抗核抗体の検出率は80%以下と低いが、細胞質の抗原に対する自己抗体を有している症例も少なくないため、見逃さないようにする必要がある。皮膚生検による病理組織学的所見では表皮基底層の液状変性、真皮の血管周囲を中心とした炎症細胞浸潤、真皮のムチン沈着がみられ、診断には必須ではないが除外診断や臨床を裏付けるものとなるため可能な限り、組み合わせることが望ましい。■ 鑑別疾患湿疹、中毒疹、感染症、サルコイドーシス、リンパ腫、甲状腺機能低下症、全身性エリテマトーデスなどが鑑別となる。好発部位、特に顔と手を中心に系統的に観察し、複数の所見を見出すことで診断がより確実になる。3 治療筋肉の安静を保ち、急速進行性間質性肺炎ないし悪性腫瘍併発例ではその治療を優先させる。筋炎に対しては、プレドニゾロン(PSL)1mg/kgを初期投与量とし、通常初期治療を2~4週間継続した後に筋力低下や筋原性酵素の推移をみながら週に5~10mgのペースで減量を行う。治療抵抗例や重症例はステロイドパルス療法の導入を検討する。免疫抑制剤の併用でステロイドの減量を早めることも可能で、タクロリムス、シクロスポリン(保険適用外)、メトトレキサート(保険適用外)、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル(保険適用外)、シクロホスファミドなどがある。嚥下障害は治療に難渋することが多く、免疫グロブリン療法(IVIG)の併用で有意な改善が得られたことが報告されている。抗MDA5抗体陽性急速進行性間質性肺炎では、高用量のステロイドにタクロリムス内服を併用し、シクロホスファミドパルスを定期的に繰り返す集学的治療により間質影改善と抗MDA抗体の陰性化を期待できる。4 今後の展望 (治験中・研究中の診断法、治療薬剤など) アバタセプト(商品名:オレンシア)の第IIb相臨床試験において約半数の患者で疾患活動性が低下したことが報告されている。選択的カンナビオイド受容体アゴニストであるlenabasumについては、第II相臨床試験が行われ、皮膚スコア(CDASI)が有意に改善し、現在第III相臨床試験が行われている。5 主たる診療科 (紹介すべき診療科)皮膚科、免疫内科で主に扱う疾患であるが、呼吸器内科、神経内科、小児科などとも連携が重要となる。※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 皮膚筋炎/多発性筋炎(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)1)Fujimoto M, et al. Curr Opin Rheumatol. 2016;28:636-644.2)Bohan A, et al. N Engl J Med. 1975;292:344-347.3)難治性疾患政策研究事業 自己免疫疾患に関する調査研究班 多発性筋炎皮膚筋炎分科会 編集. 多発性筋炎・皮膚筋炎治療ガイドライン. 診断と治療社;2015.4)Fujimoto M, et al. Arthitis Rheum.2012;64:513-522.5)Lundberg IE, et al. Ann Rheum Dis. 2017;76:1955-1964.6)Fujimoto M, et al. Ann Rheum Dis.2013;72:151-153.公開履歴初回2020年03月09日

2562.

ICIがすごく効いたら、やめてよいか?再投与は有効か?【忙しい医師のための肺がんササッと解説】第12回

第12回 ICIがすごく効いたら、やめてよいか?再投与は有効か?1)Warner AB, et al. Long-Term Outcomes and Responses to Retreatment in Patients With Melanoma Treated With PD-1 Blockade. J Clin Oncol. 2020 Feb 13. [Epub ahead of print]われわれは免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の登場によって、従来では考えられない長期生存を経験するようになっている。なかには腫瘍が消失するような症例もあるが、そのような場合にICIは中止可能か、についてはまだまだ情報が少ない。今回、悪性黒色腫において完全奏効(CR)例に対するICIの中止、また再発後の再投与に関して検討した論文を紹介する。試験デザインメモリアル・スローン・ケタリングにおける後方視的研究。2009~18年に抗PD-1抗体単剤を投与された1,325例のうち、途中中止された396例が対象。観察期間中央値は21.1ヵ月。患者背景使用されたのは85%がペムブロリズマブ、残りがニボルマブ。約半数はイピリムマブの治療歴あり。抗PD-1抗体単剤の投与期間中央値は4.8ヵ月・回数中央値は8回。投与中止となった最大の理由は病勢増悪(PD)で約50%。毒性による中止は22%であった。中止症例のうち、CR例の詳細途中中止された396例のうち102例(25.8%)でCRが得られた。CR例の中止理由は「CRと考えたから」が約70%、毒性が24%。途中中止されたCR例の無治療生存期間・全生存期間はいずれも中央値に達しなかった。3年時点での無治療生存割合は72%。この研究は後方視的研究であり、CRは担当医判断である。しかし、これらを(1)放射線科医によって厳密にRECIST CRとされたもの、(2)そうでないもの(RECIST CRではないが担当医判断がCR)、(3)再生検によって病理学的にCRと判断されたものに分けても、無再発期間に有意な差を認めなかった。CRと相関する臨床背景については、病期M1bや組織型、TMB high、LDH上昇が挙げられている。中止かつCR例のうち、再発した症例観察期間中に23例(23%)が再発。一方でCRを1年間維持できた症例では80%以上で2年間以上のCRが維持されていた。CRに至るまでの治療期間と再発率には相関なし。再発後のICI再投与78例が再発後にICIの再投与を受けた。この解析はICI中止までの治療効果を問わず行われている点に注意(37例は最良効果がPDにもかかわらず、再投与されている)。奏効率(ORR)は抗PD-1抗体単剤で15%(34例中5例)であった。抗PD-1抗体+イピリムマブで25%(44例中11例)であった。単剤再投与で奏効した5例のうち、3例は初回ICIの最良効果がPD、2例は毒性により初回ICIが中止されていた。初回CRとなった10例で、再投与後に奏効が得られたものはわずかに2例であった。また、初回と再投与の効果には相関がなかったとされている。再投与期間の中央値はわずかに1.6ヵ月、2年生存割合は37.6%であった。解説本研究の強み・興味深い点CR例に限定した中止後の解析という点。CRとなっても4人に1人は再発している。再投与の有効性はそれほど高くない。また、初回投与と再投与の有効性は必ずしも相関していない。だからといって、実臨床で初回ICIがPDであった場合に再投与するのは勇気がいる気がするが…。本研究の欠点単施設による後方視的研究であること。CR症例のうち、どのような症例で無再発率が高いのか、臨床背景やバイオマーカーの検討はなされていない。その他ICI治療におけるRECISTの判断基準が厳しすぎる可能性を指摘している。

2563.

レンバチニブ+ペムブロリズマブ、進行固形がんの成績/JCO

 新しいがん治療薬として期待される免疫チェックポイント阻害薬について、その活性を増強する研究報告が示された。米国・オレゴン健康科学大学のMatthew H. Taylor氏らは、血管新生阻害による血管内皮増殖因子を介した免疫抑制の調節が、免疫チェックポイント阻害薬の活性を増強する可能性が示唆されていることから、レンバチニブ+ペムブロリズマブ併用療法の第Ib/II相試験を実施。腎細胞がん、子宮内膜がんおよびその他の進行固形がん患者を対象とした同併用療法が、有望な抗腫瘍活性と管理可能な安全性プロファイルを示したことを報告した。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2020年1月21日号掲載の報告。 研究グループは、第Ib相試験としてレンバチニブ+ペムブロリズマブ併用療法の最大耐用量(MTD)を決定した後、第II相試験を実施した。試験適格対象は、転移のある腎細胞がん、子宮内膜がん、頭頸部扁平上皮がん、悪性黒色腫、非小細胞肺がん、尿路上皮がん患者であった。 主要評価項目は、第II相試験における投与24週時の客観的奏効率(ORR)であった。 主な結果は以下のとおり。・全体で137例(第Ib相試験13例、第II相試験124例)の患者が登録された。・用量制限毒性(DLT)として、Grade3の関節痛およびGrade3の疲労の2つが、第Ib相試験の初回投与量で報告され、その後の用量漸増コホートではDLTは認められなかったことから、第II相試験におけるレンバチニブの推奨用量は20mg/日に決定された。・第II相試験での投与24週時のORRは、腎細胞がん63%(19/30例、95%信頼区間[CI]:43.9~80.1%)、子宮内膜がん52%(12/23例、30.6~73.2%)、悪性黒色腫48%(10/21例、25.7~70.2%)、頭頸部扁平上皮がん36%(8/22例、17.2~59.3%)、非小細胞肺がん33%(7/21例、14.6~57.0%)、尿路上皮がん25%(5/20例、8.7~49.1%)であった。・主な治療関連有害事象は、疲労(58%)、下痢(52%)、高血圧(47%)および甲状腺機能低下症(42%)であった。

2564.

がん患者のCOVID-19~非がん患者と比べて/Lancet Oncol

 中国およびその他の地域では、SARS-CoV-2による重症急性呼吸器症候群が発生している。がん患者は化学療法や手術などの抗がん治療によって引き起こされる全身性の免疫抑制により、易感染状態であることが多い。そのため、SARS-CoV-2についても感染リスクが高く、さらに感染後も予後不良の可能性がある。 中国の国立呼吸器疾患臨床研究センターと国家衛生健康委員会が協力し、中国全土でCOVID-19症例を観察する前向きコホートを構築した。2020年1月31日のデータカットオフの時点で、31の地方行政区域から2,007例の症例を収集。記録不十分な417例を除外し、1,590例のCOVID-19症例を分析している。Lancet Oncology誌2020年3月1日号では、その中から、がん患者について分析している。・COVID-19患者1,590例のうち18例(1%、95%CI:0.61~1.65)にがんの既往があり、これは285.83/100,000人(0.29%、2015年がん疫学統計)という中国人全体のがんの発生率よりも高かった。・COVID-19を合併した18例のがん患者内訳をみると、最も頻度が高いのは肺がん(5例、28%)であった。・重症イベント(ICU入院、要侵襲的換気または死亡)は、がん患者では39%(18例中7例)に観察されたが、非がん患者では8%(1,572例中124例)で、がん患者で有意に重症イベントのリスクが高かった(p=0.0003)。・重症イベントはさらに、1ヵ月以内に化学療法または外科手術を受けた患者では75%(4例中3例)、受けていない患者では43%(14例中6例)と、化学療法または外科手術を受けた患者でリスクが高かった。・重症イベントまでの時間を評価すると、がん患者では中央値13日、非がん患者では43日で、がん患者のほうが急速に悪化することが明らかになった(年齢調整後HR:3.56、95%CI:1.65~7.69、p<0.0001)。

2567.

処方薬が自主回収に 処方理由を掘り下げた代替薬の提案【うまくいく!処方提案プラクティス】第16回

 製薬会社からの「自主回収のお知らせ」は、ある日突然アナウンスされます。「代替薬はどうしますか?」と医師に丸投げするのではなく、服用理由や副作用リスクを考慮しながら代替薬を提案しましょう。患者情報80歳、男性(在宅)基礎疾患:慢性心不全、心房細動、高血圧症、糖尿病、症候性てんかん、甲状腺機能低下症既 往 歴:1年前に外傷性くも膜下出血で入院服薬管理:一包化処方内容1.エドキサバン錠30mg 1錠 分1 朝食後2.アゾセミド錠60mg 2錠 分1 朝食後3.スピロノラクトン錠25mg 1錠 分1 朝食後4.トルバプタン錠7.5mg 1錠 分1 朝食後5.レボチロキシンナトリウム錠50μg 1錠 分1 朝食後6.カルベジロール錠2.5mg 2錠 分2 朝夕食後7.メトホルミン錠250mg 2錠 分2 朝夕食後8.リナグリプチン錠5mg 1錠 分1 朝食後9.テルミサルタン錠20mg1錠 分1 朝食後10.ラメルテオン錠8mg 1錠 分1 夕食後11.ミアンセリン錠10mg 1錠 分1 夕食後本症例のポイントこの患者さんの訪問薬剤管理指導を始めてから3ヵ月目に、MSDよりミアンセリン錠10mgの自主回収(クラスII)のアナウンスが入りました。理由は、安定性モニタリングにおいて溶出性が承認規格に適合せず、効果発現が遅延する可能性があるとのことで、使用期限内の全製品の回収と出荷停止が行われました。そこで、医師にミアンセリンから代替薬への変更を提案することにしました。服用契機は、入院中にせん妄が生じたため処方されたと記録されていました。また、以前からこの患者さんには不眠傾向があり、睡眠薬の代替としていることも考えられました。高齢者では、ベンゾジアゼピン系睡眠薬により、せん妄や意識障害のリスクが懸念されるため、5HT2a受容体遮断作用により睡眠の質を改善するとともに、H1受容体遮断作用により睡眠の量も改善するミアンセリンが代替薬として少量投与されることがあります。なお、ラメルテオンもせん妄リスクのある患者で有効とするデータもあり、ベンゾジアゼピン系睡眠薬のリスクを回避しつつ、せん妄と不眠症の両方の改善を目指していると思われました1)。これらの背景を考慮したうえで、代替薬としてトラゾドンを考えました。トラゾドンは、弱いセロトニン再取り込み阻害作用と、強い5HT2受容体遮断作用を併せ持つ薬剤です。睡眠に関しては、全体の睡眠時間を増加させ、持続する悪夢による覚醒やレム睡眠量を減らす効果を期待して処方されることもあり、せん妄と不眠症を有するこの患者さんには最適と考えました。処方提案と経過医師に「ミアンセリン自主回収に伴う代替薬」という表題の処方提案書を作成し、トラゾドンへの変更を提案しました。標準用量では過鎮静やふらつき、起立性低血圧など薬剤有害事象の懸念があると考え、少量の25mgを提案し、認知機能や運動機能低下の有害事象をモニタリング項目として観察することを記載しました。その結果、医師の承認を得ることができました。処方変更後、過鎮静やふらつきなどはなく、せん妄の再燃や入眠困難、中途覚醒などの症状もなく経過しています。1)Hatta K, et al. JAMA Psychiatry. 2014;71:397-403.2)山本雄一郎著. 日経ドラッグインフォメーション編. 薬局で使える 実践薬学. 日経BP社;2017.3)Sateia MJ, et al. Journal of Clinical Sleep Medicine. 2017:13;307-349.doi: 10.5664/jcsm.6470.

2568.

日本初、1日2回の抗ヒスタミン点眼薬「アレジオンLX点眼液0.1%」【下平博士のDIノート】第44回

日本初、1日2回の抗ヒスタミン点眼薬「アレジオンLX点眼液0.1%」今回は、「エピナスチン塩酸塩点眼液」(商品名:アレジオンLX点眼液0.1%、製造販売元:参天製薬)を紹介します。本剤は、薬剤を高濃度化したことで抗アレルギー作用が長時間持続する1日2回点眼の薬剤であり、アレルギー性結膜炎患者のアドヒアランスと治療満足度の向上が期待できます。<効能・効果>本剤は、アレルギー性結膜炎の適応で、2019年9月20日に承認され、2019年11月27日より発売されています。<用法・用量>通常、1回1滴、1日2回(朝、夕)点眼します。<副作用>本剤の臨床試験で安全性解析対象となった総症例189例において、本剤との因果関係が否定できない臨床検査値異常変動を含む副作用として、結膜充血1例(0.5%)が認められました(承認時)。なお、アレジオン点眼液0.05%で報告されている刺激感、異物感、羞明、眼瞼炎、眼痛、流涙、点状角膜炎、そう痒感、眼脂が、その他の副作用として注意喚起されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、アレルギー症状や炎症を引き起こすヒスタミンの働きを抑えるとともに、炎症を誘発する物質の放出を抑えます。2.1日2回の点眼でかゆみを減らします。防腐剤が含まれていないので、コンタクトをつけたままでも使用可能です。3.点眼時に刺激を感じることがあります。症状が強い場合や継続する場合は、医師または薬剤師に相談してください。4.ほかの点眼薬を併用する場合には、少なくとも5分以上間隔を空けてから点眼してください。<Shimo's eyes>本剤は、2013年から発売されているアレジオン点眼液0.05%の高用量製剤です。「LX」は、Lasting extendという造語に由来し、持続性を意味しています。薬剤の高濃度化により、持続性を向上させたことで、わが国で初めての1日2回点眼の持続性抗ヒスタミン点眼薬となりました。また、防腐剤フリーの点眼薬ということも特徴に挙げられます。アレジオン点眼液0.05%も、防腐剤としてコンタクトレンズへの吸着や角膜上皮障害が問題となる塩化ベンザルコニウムではなく、ホウ酸を使用しています。本剤は、防腐剤フリーでありながら、保存効力試験に適合しているため、開封後28日間は安全に使うことができ、患者さんへの負担が少ない製剤になったと考えられます。参考1)PMDA アレジオンLX点眼液0.1%

2569.

喫煙者の高い認知症リスク、禁煙3年で軽減~大崎コホート研究

 禁煙と認知症リスクの変化について米国のARIC研究の結果が報告されているが、今回、東北大学のYukai Lu氏らが、日本の前向き研究である大崎コホートにおける縦断的分析の結果を報告した。本研究では、3年以上禁煙した場合、認知症発症リスクは非喫煙者と同じレベルまで低下することが示唆された。European Journal of Epidemiology誌オンライン版2020年2月15日号に掲載。 本研究の対象は65歳以上の日本人1万2,489人で、5.7年間追跡調査を実施した。2006年に喫煙状況およびその他の生活習慣の情報を質問票にて収集した。認知症発症に関するデータは、公的介護保険のデータベースから取得した。Cox比例ハザードモデルを使用し、認知症の多変量調整ハザード比(HR)および95%信頼区間(95%CI)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・6万1,613人年の追跡調査の間に、認知症が1,110例(8.9%)に発症した。・現在喫煙者は非喫煙者に比べて認知症リスクが高かった(HR:1.46、95%CI:1.17~1.80)。・元喫煙者の認知症リスクは、禁煙2年以下では依然高かった(HR:1.39、95%CI:0.96~2.01)が、禁煙3年以上では喫煙による認知症リスクの増加が軽減された。禁煙年数ごとの多変量HR(95%CI)は、禁煙3~5年で1.03(0.70~1.53)、6~10年で1.04(0.74~1.45)、11~15年で1.19(0.84~1.69)、15年以上で0.92(0.73~1.15)だった。

2570.

035)患者さんが言うことを聞かない理由【Dr.デルぽんの診察室観察日記】

第35回 患者さんが言うことを聞かない理由しがない皮膚科勤務医デルぽんです☆先日のこと。顔全体の紅斑・鱗屑症状がわりと強いシニアの女性が来院しました。分布や皮疹の状態から脂漏性皮膚炎を考え、生活指導・外用薬の指導を行いました。2週間後、再診に現れたその方は、鱗屑はなくなっていたものの、紅斑が明らかに残っており、ぱっと見て「あれ?」と感じる所見でした。よくよく話を聞いてみると、どうやらステロイド外用薬を自己判断で塗らなかったことが判明。しかし、ステロイド以外で炎症を抑える塗り薬を出そうか尋ねたところ、「経過に満足しているから、今のままがよい」とのこと。ニコニコの笑顔のまま帰宅され、また数週間後に来院してもらうことになりました。今はインターネットが普及し、患者さんが自分でさまざまな情報を取得できる時代です。なかには、インターネット上の情報に影響されて、こちらの指導通りに治療をしないなど、自己判断で行動される患者さんもいます。そういったケースは、残念ながら、誤った情報をうのみにしてしまっていたり、書いていることを正しく理解できていなかったりする場合がほとんどです。みていて思うのは、やはり「専門のことは専門家に任せるのが一番」ということ。餅は餅屋といいますが、医療に限らず、専門外のことは、専門家の意見に耳を傾けることが大切です。自分で調べたり考えたりももちろん大切ですが、そればかりに気を取られて行動してしまうと、自らの選択肢を狭める結果につながりかねません。自分で調べようとする姿勢は尊重しつつも、間違った認識は正していくように努めているデルぽんです。人生、日々勉強!それでは、また~!

2571.

プロピオン酸血症〔PA:Propionic acidemia〕

1 疾患概要■ 概念・定義生体内で生じる各種の不揮発酸が代謝障害によって蓄積し、代謝性アシドーシスを主徴とする各種の症状・異常所見を呈する疾患群を「有機酸代謝異常症」と総称する。主な疾患は、分枝鎖アミノ酸の代謝経路上に多く、中でもプロピオン酸血症(Propionic acidemia:PA)は最も代表的なものである。本疾患では、3-ヒドロキシプロピオン酸、メチルクエン酸などの短鎖カルボン酸が体液中に蓄積し、典型的には重篤な代謝性アシドーシスを主徴とする急性脳症様の症状で発症するほか、各種臓器に慢性進行性の病的変化をもたらす。■ 疫学新生児マススクリーニング試験研究(1997~2012年、被検者数195万人)による国内での罹患頻度は約45,000人に1人と、高頻度に発見された。ただし、これには後述する「最軽症型」が多く含まれ、典型的な症状を示す患者の頻度は約40万人に1人と推計されている。■ 病因(図)バリン・イソロイシン代謝経路上の酵素「プロピオニオニル-CoAカルボキシラーゼ(PCC)」の活性低下に起因する、常染色体劣性遺伝性疾患(OMIM#606054)である。PCCはミトコンドリア基質に発現しており、αサブユニットとβサブユニットからなる多量体である。各サブユニットは、それぞれPCCA遺伝子(MIM*232000、局在13q32.3)とPCCB遺伝子(MIM*232050、局在3q22.3)にコードされている。図 プロピオン酸血症に関連する代謝経路画像を拡大する■ 症状典型的には新生児期から乳児期にかけて、重度の代謝性アシドーシスと高アンモニア血症が出現し、哺乳不良、嘔吐、呼吸障害、筋緊張低下などから、けいれんや嗜眠~昏睡など急性脳症の症状へ進展する。初発時以降も同様の急性増悪を繰り返しやすく、特に感染症罹患が契機となることが多い。コントロール困難例では、経口摂取不良が続き、身体発育が遅延する。1)中枢神経障害急性代謝不全の後遺症として、もしくは代謝異常が慢性的に中枢神経系に及ぼす影響によって、全般的な精神運動発達遅滞を呈することが多い。急性増悪を契機に、あるいは明らかな誘因なく、両側大脳基底核病変(梗塞様病変)を生じて不随意運動が出現することもある。2)心臓病変急性代謝不全による発症歴の有無に関わらず、心筋症や不整脈を併発しうる。心筋症は拡張型の報告が多いが、肥大型の報告もある。不整脈はQT延長が本疾患に特徴的である。3)その他汎血球減少、免疫不全、視神経萎縮、感音性難聴、膵炎などが報告されている。■ 分類1)発症前型新生児マススクリーニングで発見される無症状例を指す。そのうち多数を占めるPCCB p.Y435C変異のホモ接合体は、特段の症状を発症しないと目されており、「最軽症型」と呼ばれる。2)急性発症型呼吸障害、多呼吸、意識障害などで急性に発症し、代謝性アシドーシス、ケトーシス、高アンモニア血症、低血糖、高乳酸血症などの検査異常を呈する症例を指す。3)慢性進行型乳幼児期からの食思不振、反復性嘔吐などが認められ、身体発育や精神運動発達に遅延が現れる症例を指すが、経過中に急性症状を呈しうる。■ 予後新生児期発症の重症例は、急性期死亡ないし重篤な障害を遺すことが少なくない。遅発例も急性発症時の症状が軽いとは限らず、治療が遅れれば後遺症の危険が高くなる。また、急性代謝不全の有無に関わらず、心筋症、QT延長などの心臓合併症が出現・進行する可能性があり、特に心筋症は慢性期死亡の主要な原因に挙げられている。一方、新生児マススクリーニングで発見された87例(最長20歳まで)の予後調査では、患者の大半が少なくとも1アレルにPCCB p.Y435C変異を有しており、疾患との関連が明らかな症状の回答はなかった。したがって、この群の予後は総じて良好と思われるが、より長期的な評価(特に心臓への影響)には、さらに経過観察を続ける必要がある。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)1)一般血液・尿検査急性期には、アニオンギャップ開大性の代謝性アシドーシスをはじめ、ケトーシス、高アンモニア血症、低血糖、汎血球減少などが認められる。高乳酸血症や血清アミノトランスフェラーゼ(AST・ALT)、クレアチニンキナーゼの上昇を伴うことも多い。2)タンデム質量分析法(タンデムマス、MS/MS)による血中アシルカルニチン分析プロピオニルカルニチン(C3)の増加を認め、アセチルカルニチン(C2)との比(C3/C2)の上昇を伴う。これはメチルマロン酸血症と共通の所見であり、鑑別には尿中有機酸分析が必要である。C3/C2の上昇を伴わない場合は、異化亢進状態(=アセチルCoA増加)に伴う非特異的変化と考えられる。3)ガスクロマトグラフィ質量分析法(GC/MS)による尿中有機酸分析診断確定に最も重要な検査で、3-ヒドロキシプロピオン酸・プロピオニルグリシン・メチルクエン酸の排泄が増加する。メチルマロン酸血症との鑑別には、メチルマロン酸の排泄増加が伴わないことを確認する。4)PCC酵素活性測定白血球や皮膚線維芽細胞の破砕液を粗酵素源として測定可能であり、低下していれば確定所見となるが、実施しているのは一部の研究機関に限られる。5)遺伝子解析PCCA、PCCBのいずれにも病因となる変異が報告されている。遺伝学的検査料の算定対象である。※ 2)、3)は「先天性代謝異常症検査」として保険診療項目に収載されている。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ 急性代謝不全の治療タンパク摂取を中止し、輸液にて80kcal/kg/日以上を確保する。有機酸の排泄促進に静注用L-カルニチンを投与する。未診断の段階では、ビタミンB12反応性メチルマロン酸血症の可能性に対するヒドロキソコバラミン(商品名:フレスミンS)またはシアノコバラミン(同:同名、ビタミンB12ほか)の投与をはじめ、チアミン(同:塩酸チアミン、メタボリンほか)、リボフラビン(同:強力ビスラーゼ、ハイボンほか)、ビオチン(同:同名)などの各種水溶性ビタミン剤も投与しておく。高アンモニア血症を認める場合は、安息香酸ナトリウムやカルグルミン酸を投与する。速やかに改善しない場合は、持続血液透析(CHD)または持続血液透析濾過(CHDF)を開始するか、実施可能施設へ転送する。■ 亜急性期〜慢性期の治療急性期所見の改善を評価しつつ、治療開始から24~36時間以内にアミノ酸輸液を開始する。経口摂取・経管栄養が可能になれば、母乳や育児用調製粉乳などへ変更し、自然タンパク摂取量を漸増する。必要エネルギーおよびタンパク量の不足分は、イソロイシン・バリン・メチオニン・スレオニン・グリシン除去粉乳(同:雪印S-22)で補う。薬物療法としては、L-カルニチン補充を続けるほか、腸内細菌によるプロピオン酸産生の抑制にメトロニダゾールやラクツロースを投与する。■ 肝移植・腎移植早期発症の重症例を中心に生体肝移植の実施例が増えている。食欲改善、食事療法緩和、救急受診・入院の大幅な減少などの効果が認められているが、移植後に急性代謝不全や中枢神経病変の進行などを認めた事例の報告もある。4 今後の展望新生児マススクリーニングによる発症前診断・治療開始による発症予防と予後改善が期待されているが、「最軽症型」が多発する一方で、最重症例の発症にはスクリーニングが間に合わないなど、その効果・有用性には限界も看取されている。また、臨床像が類似する尿素サイクル異常症では、肝移植によって根治的効果を得られるが、本疾患では中枢神経障害などに対する効果は十分ではない。これらの課題を克服する新規治療法としては、遺伝子治療の実用化が期待される。5 主たる診療科小児科・新生児科が診療に当たるが、急性期の治療は、先天代謝異常症専門医の下、小児の血液浄化療法に豊富な経験を有する医療機関で実施することが望ましい。成人期に移行した患者については、症状・病変に応じて内分泌代謝内科、神経内科、循環器内科などで対応しながら、小児科が並診する形が考えられる。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報日本先天代謝異常学会(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)日本マススクリーニング学会(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)タンデムマス・スクリーニング普及協会(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)先天代謝異常症患者登録制度JaSMIn(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)島根大学医学部小児科(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)福井大学医学部小児科(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)岐阜大学大学院医学系研究科小児病態学(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)国立成育医療研究センター研究所マススクリーニング研究室(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報有機酸・脂肪酸代謝異常症の患者家族会「ひだまりたんぽぽ」(患者とその家族および支援者の会)1)日本先天代謝異常学会編集. 新生児マススクリーニング対象疾患等診療ガイドライン. 診断と治療社;2019.2)山口清次編集. よくわかる新生児マススクリーニングガイドブック. 診断と治療社; 2019.公開履歴初回2020年03月02日

2572.

オシメルチニブ耐性:メカニズムから頻度、期待される治療まで【忙しい医師のための肺がんササッと解説】第11回

第11回 オシメルチニブ耐性:メカニズムから頻度、期待される治療まで1)Leonetti A, Sharma S, Minari R, et al. Resistance Mechanisms to Osimertinib in EGFR-mutated Non-Small Cell Lung Cancer. Br J Cancer. 2019;121:725-737.2)G.R.Oxnard, J.C.-H.Yang, H Yu, et al. TATTON: A multi-arm, phase Ib trial of osimertinib combined with selumetinib, savolitinib or durvalumab in EGFR-mutant lung cancer. Ann of Oncol. In press.FLAURA試験の結果、EGFR変異陽性例に対する初回治療はオシメルチニブというコンセンサスが得られたものの、日本ではサブセットに関する賛否両論もある。一方、今後の治療戦略を考えるうえで、オシメルチニブの多彩な耐性機序を整理しておくことは非常に重要であり、今回British Journal of Cancer誌によくまとまったレビューが掲載されているので紹介したい(論文1 Fig 1は必見)。本稿では耐性機序をOn-target / Off-target /組織型の転化に分け、頻度は初回治療・既治療(T790M陽性)に基づいて記載した。末尾にそれぞれに関する治療戦略も付記しているが、多くの治療が前臨床・治験レベルであることはご了解いただきたい。1. On-target(EGFR遺伝子)の獲得耐性頻度 初回治療 7%(FLAURA)   既治療 21%(AURA3)いずれにおいてもC797X変異が最多であり、それ以外にもL792X、G796X、L718Qなどが報告されている。L792Xは他のEGFR変異と併存することが多く、逆にL718QはC797Xとは独立して生じるようで、これらが今後の薬剤選択にどのように影響するのかは現時点で不明。FLAURAでは、T790Mの出現は認められていない。T790M陽性例では、治療期間が短い一因として、耐性時にT790M変異が消失している例が挙げられ、こうした症例ではKRAS変異(最近注目のG12Cではない)やMET遺伝子増幅など他の耐性機序を生じている症例が多かった。2. Off-target(EGFR遺伝子以外)の獲得耐性Off-targetによる耐性は、初回治療としてオシメルチニブを用いた場合に多くなる傾向があり、EGFR変異は保持されたままであることが多い。これは腫瘍のheterogeneityを反映しているのでは、と考察されている。機序は多種多様だが、報告されている中ではMET遺伝子増幅が最多。頻度 初回治療 15%(FLAURA)   既治療 19%(AURA3)またMET遺伝子の近傍に位置するCDK6やBRAFなどの遺伝子増幅を同時に認める症例があるとのこと(Le X, et al. Clin Cancer Res. 2018;24:6195-6203.PMID: 30228210)。近年いくつかの薬剤の有効性が示されているMET exon14 skippingも症例報告レベルではあるが報告されている(Schoenfeld AJ, et al. ASCO 2019. abst 9028.)。ほかにはHER2遺伝子増幅(FLAURA 2%、AURA3 5%)、NRAS変異、KRAS G12S変異、BRAF V600E変異(同3%、3%)、PIK3CA変異(4%、4%)、cyclin D1などcell cycle関連の変異(同12%、10%)、融合遺伝子変異(FGFR・RET/NTRK1・ROS1・BRAFなど3~10%、初回投与では少ない?)などがそれぞれ報告されている。3. 組織型の転化小細胞肺がんへの転化が4~15%でみられ、これらの症例では治療前からRB1やTP53の不活性化が確認されている。最近では扁平上皮がんへの転化も報告されている(治療ラインにかかわらず7%前後、Schoenfeld AJ, et al. ASCO 2019. abst 9028.)。4. 有効な治療方針は?耐性例ではとくに、空間的・時間的な不均一性が問題になることが指摘されている(現時点で何か解決策があるわけではないが)。つまり1ヵ所の再生検のみでは全体を十分に把握できていない可能性がある。一方で上記の頻度は解析材料(組織生検か、リキッドバイオプシーか)にも左右されうることには注意が必要。耐性時点でのT790M変異消失は予後不良とする報告がある(Oxnard GR, et al. JAMA Oncol. 2018;4:1527-1534.)。耐性機序が多彩であることを踏まえてNEJ009レジメンに倣った化学療法の併用について前臨床での報告がなされている(La Monica S, et al. J Exp Clin Cancer Res. 2019;38:222.)。C797S変異:前臨床の段階だが第4世代EGFR-TKI(EAI045)やアロステリック阻害薬(JBJ-04-125-02)の開発が進行中(To C, et al. Cancer Discov. 2019;9:926-943.)。MET遺伝子増幅/変異に対してはクリゾチニブをはじめとしたc-MET阻害薬の併用やcabozantinibの有効性が少数ながら報告されている(Kang J, et al. J Thorac Oncol. 2018;13: e49-e53.)。HER2遺伝子増幅例に対しては前臨床でオシメルチニブとT-DM1の併用が有望とされている(La Monica S, et al. J Exp Clin Cancer Res. 2017;36:174.)。その他BRAF阻害薬、AXL阻害薬、ベバシズマブ、Bcl-2阻害薬、mTORC阻害薬、CDK4/6阻害薬など多くの薬剤が検討中であるが、総じて臨床データは乏しい。最近ではTATTON試験においてc-MET阻害薬savolitinibやMEK阻害薬selumetinibとの併用が報告された。安全性は確認されたものの、対象が雑多なこともあり有効性について目立った成果は示せていない(Oxnard GR, et al. Ann Oncol. 2020 Jan 24. [Epub ahead of print])。特殊な治療として、本論文の末尾にはCRISPRを用いた‘molecular surgeon’についても紹介されていた(Tang H, et al. EMBO Mol Med. 2016;8:83-85.)。

2573.

第14回 3種の薬局で地域を未病から守る女性社長【噂の狭研ラヂオ】

動画解説今回は大分県まえはら薬局の前原理佳社長にインタビュー。OTC専門、OTC&調剤薬局、門前薬局の種類の異なる3店舗の薬局を経営するに至ったこれまでの薬剤師人生を語っていただきます。未病から関わりたいというその熱い思いは「地域に恩返ししなさい」という母の家訓によるものだった!

2574.

これだけは押さえておかないと話にならない調剤報酬改定のポイント【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第42回

2020年2月上旬に次回調剤報酬改定の個別項目の点数や割合が決まりました。対物業務から対人業務へのシフトという大きい動きがあったにもかかわらず、例年より短冊が出てからの展開が早かったような気がします。今回は、主に保険薬局に関する変更点について、変更前後を比較しながら紹介します。全体的には、中小規模のチェーン薬局に厳しい改定になるという気がしています。とくに、後述のように調剤基本料1を算定する薬局が減ることが予想できますが、その場合は地域支援体制加算でハードルの高い要件が求められるようになります。毎回算定する調剤料も7日目と14日目を中心に引き下げられ、しかも多くの患者さんは数種類の剤が処方されるため、ジワジワ苦しくなるかもしれません。今回の改定で点数が増えたのは主に対人業務に関する項目ですので、「調剤後のフォロー」に対する加算を確実に押さえていくことの重要性を感じます。そして、この流れは次回の改定でも継続・強化されそうですので、薬局や薬剤師の仕事がガラッと変わる予感がします。それでは詳しくみていきましょう。1.調剤基本料調剤基本料は、調剤基本料2(26点)や調剤基本料3(21点 ※同一グループの枚数による)の対象範囲が拡大となります。具体的には、調剤基本料2は処方箋受付回数が1,800回/月超、集中率95%超、調剤基本料3は同一グループで処方箋受付回数が3.5万回/月超となります。これに伴い、調剤基本料1(42点)の対象範囲は縮小することになるでしょう。中小規模のチェーン薬局を中心に、点数が下がる薬局のほうが多いと思われます。また、いわゆる施設内薬局が算定する特別調剤基本料が従来の11点から9点(処方箋受付1回につき)に引き下げられ、その施設基準の集中率も95%超から70%超に引き下げられます。2.地域支援体制加算地域支援体制加算は地域包括ケアを推進する中で、地域医療に貢献する薬局を評価するために2018年度の改定で新設されました。今回の改定では35点から38点に引き上げられます。変更前は、調剤基本料1さえ算定できていればほとんどの薬局が地域支援体制加算も算定できたことから、「地域医療に貢献した実績ではなく、立地と会社規模の評価」といわれていたとかいなかったとか。それが今回の改定で、地域医療への貢献に対する実績を求めるという本来の目的に立ち返るべく、以下のように変更になります。<調剤基本料1を算定している場合の地域支援体制加算の算定要件>多少、ハードルが上がりましたね。これだけは実績として最低限あってほしいというものがピックアップされたように思います。一方、上記で紹介したように、今回の改定によって調剤基本料1を算定できなくなる薬局が増えると予想されますが、その場合の算定要件は以下のように変更になります。<調剤基本料1を算定していない場合の地域支援体制加算の算定要件>地域特性で夜間の対応が難しい、麻薬指導管理加算の実績が少ないなどの意見から、算定要件9つのうち8つ以上を満たせばよいということになりました。多少現実味を帯びたかもしれませんが、全体的な難易度は変わらないと感じます。この要件は、国が示した目指すべき薬局像といえますので、次回以降の改定でも残る、もしくはもっとハードルが上がる可能性すらあると予想できます。今回調剤基本料1から外れた薬局も、諦めずにぜひ取り組んでほしいと思います。3.調剤料調剤料は、下表のように変更になります。7日目と14日目が引き下げになるって、うまいこと考えたな…と思ってしまいますが、その他の日数の調剤料についても全体的に数点引き下げられます。これは1剤ごとの点数なので、数種類の剤があればその分減算が増えることになります。調剤料の改定理由に「対物業務から対人業務への構造的な転換の観点から見直しを行う」とあり、調剤料は対物業務とされたために引き下げられたと解釈できます。4.かかりつけ薬剤師指導料かかりつけ薬剤師指導料は全体的に点数が上がります。かかりつけ薬剤師指導料は73点から76点、かかりつけ薬剤師包括管理料は281点から291点になります。こちらは施設基準として、患者さんとのやりとりが他者に聞こえないようにパーテーションなどで区切るといったプライバシー配慮要件が追加されました。5.薬剤服用歴管理指導料今回新設された、いわゆる「服薬後のフォロー」に対して算定できる加算です。がん領域、呼吸器領域、糖尿病領域、経管投与で薬学的な支援を行った場合に、それぞれ「薬剤服用歴管理指導料 特定薬剤管理指導加算2(100点、1ヵ月に1回まで)」「同 吸入薬指導加算、(30点、3ヵ月に1回まで)」「同 調剤後薬剤管理指導加算(30点、1ヵ月に1回まで)」「経管投薬支援料(100点、初回のみ)」が算定できるようになります。要件として地域支援体制加算を届け出ている薬局が対象であり、またこれらの指導を行った場合に医師などへの報告が必要です。個人的には、この薬剤服用歴管理指導料を算定する薬局が多くなり、次回の改定で算定の対象となる領域が広がってほしいなぁと思っています。6.後発医薬品関連後発医薬品の使用促進に関しては、後発医薬品の使用割合が低い場合の加算は引き下げられ、高い場合は引き上げられます。使用割合が高い薬局を評価しており、さらなる後発医薬品の使用促進を促すという意図が読み取れます。一方で、著しく後発医薬品の使用割合が低い薬局に対する減算規程は20%から40%に引き上げられます。医療機関でもこれらと同様の対応が実施され、一般名処方加算も引き上げられますので、医療機関での後発医薬品の使用促進も加速すると考えられます。2017年に閣議決定されたいわゆる「骨太の方針2017」で、2020年9月までに後発医薬品の使用割合を80%とするという目標が決まっていますが、現時点ではまだ達していません。その期限までにテコ入れできるのは今回の改定が最後ですので、個人的にはこの点数ではまだ弱いのではないかとソワソワしていますが、この最後の一押しでどうなるか見守りたいと思います。報酬改定は決められた期間で議論し結論を出すというものですので、議論には挙がったけれど変更までに至らなかった論点もあります。今回の場合、市販薬類似品の保険適用除外とフォーミュラリーがその代表格なのではないでしょうか。これらは次回までの宿題となるでしょう。この2年間で現場の薬局がどのような結果を出し、どのような議論がなされるのか、引き続き追っていきたいと思います。

2575.

心原性ショックのAMI、軸流ポンプLVAD vs.IABP/JAMA

 2015~17年に経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を実施した心原性ショックの急性心筋梗塞(AMI)患者において、軸流ポンプ左心補助人工心臓(LVAD)(Impellaデバイス)の使用は大動脈バルーンパンピング(IABP)と比較し、院内死亡および大出血合併症のリスクを増大することが示された。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のSanket S. Dhruva氏らが、機械的循環補助(MCS)デバイスによる治療を受けた、心原性ショックを伴うAMIでPCIを実施した患者のアウトカムを検討した後ろ向きコホート研究の結果を報告した。AMIの心原性ショックは、その後の後遺症や死亡と関連する。軸流ポンプLVADはIABPより良好な血行動態補助を提供するが、臨床アウトカムについてはあまり知られていなかった。JAMA誌オンライン版2020年2月10日号掲載の報告。軸流ポンプLVAD(Impella)使用例とIABP使用例で院内死亡/大出血を比較 研究グループは、2015年10月1日~2017年12月31日に、米国NCDR(National Cardiovascular Data Registry)のCathPCIレジストリとChest Pain-MIレジストリのデータを用い、PCIを実施した心原性ショックを伴うAMI患者について解析した(最終追跡期間2017年12月31日)。 患者を軸流ポンプLVAD単独使用、IABP単独使用、およびその他(たとえば、経皮的体外設置型心室補助システム、体外式膜型人工肺の使用、またはMCS併用)に分類するとともに、人口統計、既往歴、症状、梗塞部位、冠動脈の解剖学および臨床検査データに関して軸流ポンプLVAD使用患者とIABP使用患者でマッチングした。 主要評価項目は、院内死亡と院内大出血であった。Impella使用例で院内死亡/大出血リスクが有意に増大 心原性ショックを伴うAMIでPCIを施行した患者は2万8,304例(平均[±SD]年齢65.0±12.6歳、男性67.0%、ST上昇型心筋梗塞81.3%、心停止43.3%)で、このうち軸流ポンプLVAD単独使用患者は6.2%、IABP単独使用患者は29.9%であった。 傾向スコアでマッチングした軸流ポンプLVAD群1,680例およびIABP群1,680例において、軸流ポンプLVAD群はIABP群より院内死亡リスクが有意に高く(45.0% vs.34.1%、絶対リスク差:10.9ポイント[95%信頼区間[CI]:7.6~14.2]、p<0.001)、院内大出血のリスクも有意に高い(31.3% vs.16.0%、15.4ポイント[12.5~18.2]、p<0.001)ことが認められた。この関連は、PCI開始前後で患者が機器を使用したタイミングにかかわらず一貫していた。 著者は、観察研究であり、残余交絡が存在するなど研究の限界を挙げたうえで、「心原性ショックのAMI患者に対する適切な医療機器の選択について理解を深めるため、今後さらなる研究が必要である」とまとめている。

2576.

新規抗体薬bimekizumabは乾癬性関節炎に有効か?/Lancet

 活動性乾癬性関節炎患者において、IL-17AおよびIL-17Fを選択的に阻害するモノクローナル抗体bimekizumabの16mgまたは160mg投与(320mg負荷投与あり/なし)は、プラセボと比較しACR50改善率が有意に高く、安全性プロファイルは良好であることが認められた。米国・ロチェスター大学のChristopher T. Ritchlin氏らが、多施設共同48週間の無作為化二重盲検プラセボ対照第IIb相用量範囲試験「BE ACTIVE試験」の結果を報告した。今回の結果を受け著者は、「乾癬性関節炎の治療として、bimekizumabの第III相試験の実施が支持される」とまとめている。Lancet誌2020年2月8日号掲載の報告。bimekizumabの4用量による用量範囲試験 BE ACTIVE試験は、チェコ、ドイツ、ハンガリー、ポーランド、ロシア、米国の41施設にて、6ヵ月以上症状を有する乾癬性関節炎の成人患者(18歳以上)を対象に行われた。 被験者を、プラセボ群、bimekizumab 16mg群、bimekizumab 160mg群、bimekizumab160mg+320mg 1回負荷投与群およびbimekizumab 320mg群に1対1対1対1対1の割合で無作為に割り付け、4週ごとに12週間皮下投与した。12週後に、プラセボ群およびbimekizumab 16mg群の患者を再びbimekizumab 160mg群または320mg群のいずれかに1対1の割合で無作為に割り付け、その他の患者には当初割り付けられたbimekizumab投与量を最長48週間投与した。 主要評価項目は、1回以上治験薬の投与を受けた患者における、12週時の米国リウマチ学会分類基準の50%以上改善に達した患者の割合(ACR50改善率)であった。bimekizumab 16mgおよび160mg投与は主要評価項目を達成 2016年10月27日~2018年7月16日に308例がスクリーニングを受け、206例が5群に無作為に割り付けられた(プラセボ群42例、4つのbimekizumab群各41例)。 12週時のACR50改善率は、プラセボ群と比較して、bimekizumab 16mg群(オッズ比[OR]:4.2、95%信頼区間[CI]:1.1~15.2、p=0.032)、bimekizumab 160mg群(8.1、2.3~28.7、p=0.0012)、bimekizumab 160mg+320mg負荷投与群(9.7、2.7~34.3、p=0.0004)で有意に高かった。 12週時における試験治療下で発現した有害事象(TEAE)の発現率は、プラセボ群で42例中24例(57%)、bimekizumab群で164例中68例(41%)であり、そのほとんどは軽度~中等度であった。重篤なTEAEは9例の患者で確認され、そのうち8例がbimekizumabの投与を受けていた。死亡や炎症性腸疾患の報告は確認されなかった。

2577.

第43回 ホットタオルなどで目を温めるとドライアイの症状が和らぎます【使える!服薬指導箋】

第43回 ホットタオルなどで目を温めるとドライアイの症状が和らぎます1)医療情報科学研究所(編集). メディックメディア. 『薬がみえるvol.2』p.3962)Sassa T, et al. FASEB J. 2018;32:2966-2978. [Epub 2018 Jan 17].3)Lemp MA, et al. Cornea. 2012;31:472-478.4)Sim HS, et al. Ophthalmol Ther. 2014;3:37-48. [Epub 2014 Aug 26].

2578.

服薬負担を考慮した剤形・服用回数の変更提案【うまくいく!処方提案プラクティス】第15回

 今回は患者さんの服薬負担を考慮した処方提案を紹介します。さまざまな薬の剤形や規格を把握している薬剤師だからこそ提案できる場面は多くあります。薬学的な判断を行いつつ、患者さんの想いも実現できるように寄り添いましょう。患者情報90歳、女性(施設入居)体  重:50kg基礎疾患:心房細動、閉塞性動脈硬化症、高血圧症、糖尿病、褥瘡既 往 歴:とくになし直近の血液検査:TG:151mg/dL処方内容1.ジゴキシン錠0.125mg 1錠 分1 朝食後2.エソメプラゾールカプセル20mg 1カプセル 分1 朝食後3.スピロノラクトン錠25mg 2錠 分1 朝食後4.アピキサバン錠2.5mg 2錠 分2 朝夕食後5.トコフェロールニコチン酸エステルカプセル200mg 2カプセル 分2 朝夕食後6.ニコランジル錠5mg 3錠 分3 毎食後7.イコサペント酸エチルカプセル300mg 6カプセル 分2 朝夕食後8.ポラプレジンク口腔内崩壊錠75mg 2錠 分2 朝夕食後本症例のポイントこの患者さんは、以前より両下肢の冷感と違和感を自覚しており、定期訪問診療で閉塞性動脈硬化症による血流障害を指摘され、イコサペント酸エチル(以下EPA)が開始となりました。EPAには300mgの軟カプセル(直径約18mm)と、300mg/600mg/900mgの3規格の小さな粒状カプセル(直径約4mm)の分包包装があります。今回、軟カプセルが処方されたのは、いつもの定期薬と一包化することで服薬アドヒアランスに影響を与えることなく治療が可能と判断されたためです。処方提案と経過しかし、実は患者さんはこれ以上薬を増やすことが嫌で、大きい薬は服用が難しいということを話されていました。また、併用注意のアピキサバンを服用していることから、EPA1,800mg/日では出血に関わる副作用を助長する可能性があり、開始用量も慎重に検討したほうがいいと考えました。そこで、患者さんの想いに沿って、負担の少ない剤形と用法用量への変更を医師に提案することにしました。医師への疑義照会を電話で行い、アピキサバンの出血リスクからEPAは900mg/日に減量し、患者さんの心理的負担を軽減するために小さい粒状カプセルに変更して1日1回服用にまとめるのはどうか提案しました。その結果、出血リスクを懸念した医師に提案を承認してもらうことができました。現在、患者さんはEPA900mgを夕食後に1包服用しており、薬剤は増えたものの問題なく服薬を続けて症状は改善傾向にあります。

2579.

オランザピン研究の最新レビュー

 多くのエビデンスによってオランザピンは、米国で発売されている抗精神病薬の中で、クロザピンを除き最も効果的な薬剤の1つであるといわれている。しかしオランザピンは、代謝関連の副作用(とくに体重増加)の問題が報告されている。誘発される体重増加をコントロールするための戦略を明らかにすることで、オランザピンの臨床的有用性を再評価できると考えられる。米国・コロンビア大学のAmir M. Meftah氏らは、2008年と2009年に行ったレビュー以降のオランザピンに関する最近のエビデンスをレビューし、統合失調症およびその他の疾患への使用、オランザピン20mg/日超の安全性について検討を行った。Postgraduate Medicine誌オンライン版2020年1月3日号の報告。 2008年~2019年7月までのオランザピンに関する英語文献をPubMedより検索した。最初の検索で見落とした可能性のある他のレポートについて、レビュー文献を調査した。研究の有効性、安全性のデータに基づき評価を行った。 主な結果は以下のとおり。・オランザピンの使用は減少している可能性があるが、全体的には一般的に用いられている。・オランザピンは、有効性および体重増加や代謝関連の副作用の両方が報告され続けている。・最近の研究では、神経性食欲不振や化学療法誘発性悪心に対する治療にオランザピンが支持されている。・オランザピン20mg/日超の高用量に関するエビデンスは限られている。・食事のカウンセリングや運動などの非薬理学的介入は、抗精神病薬による体重増加への効果的な介入であると考えられる。・トピラマート、メトホルミン、オランザピンとsamidorphanの組み合わせも有用であると考えられる。 著者らは「オランザピンは、有用な抗精神病薬ではあるが、注意深くモニタリングする必要がある。オランザピンによる体重増加を緩和するための利用可能なさまざまなオプションを比較し、薬理学的治療と非薬理学的治療の相乗効果を評価するために、さらなる研究が必要とされる」としている。

2580.

COVID-19疑い例の来院時、具体的手順は?

 日本国内で新型コロナウイルス(COVID-19)の感染が増えつつあり、大きな懸念の一つとされているのが院内での感染の疑いが出ていることだ。中国国内でも14日までに1,716人の医療従事者が感染し、6人の死亡が報告されている。 2月7日に行われた日本感染症学会・日本環境感染学会主催の緊急セミナー(司会は日本感染症学会理事長 館田 一博氏、日本環境感染学会理事長 吉田 正樹氏)において、菅原 えりさ氏(東京医療保健大学大学院 医療保健学研究科感染制御学 教授)が「感染対策の再確認」と題し発表を行った。 菅原氏は「感染対策は基本の徹底が重要。だが、状況が刻々と変わる中で現場に応じた柔軟な対応も必要となるだろう」と説明。接触感染予防・飛沫感染予防を中心に、場合によっては空気感染予防が必要となり、その標準予防策は手指衛生と咳エチケットになる、という基本を確認した後、「疑い患者が来院した場合」を想定したシミュレーションを提示し、重要な以下のポイントを伝えた。外来診察時・帰国者、接触者を中心とした疑い患者と一般患者は受付から動線を分け、その旨を入口のポスターでしっかり注意喚起する。中国語・韓国語・英語表記も必要。・受付で症状を訴えた患者には、すぐにマスクを着用させる。・外来診察は個室を確保。窓があって換気のできる部屋がよい。・近距離で対応する医療者はPPE(個人用防護具)着用。PPEは着脱が難しいので事前にトレーニングを。とくに脱ぐときの感染防止が重要。・検体採取時にはN95マスク・アイシールドを着用。・診察後はしっかりと換気を行う。入院時・個室を確保。陰圧管理はできればベスト。・気管内装管などエアロゾルが発生する場合は、医療者は空気感染の可能性も踏まえたフルPPEを着用。・ICU管理の場合は、相当の負荷がかかる医療者へのケア(シフト等)も必要。環境衛生管理・院内の消毒。WHO(世界保健機関)推奨は通常の環境消毒薬、CDC(米国疾病管理予防センター)推奨はCOVID-19に効果のある消毒薬、となっているが、現状では院内で通常使っている消毒薬でよいだろう。その他・勤務先が「特定感染症指定医療機関」「第一種感染症指定医療機関」「第二種感染症指定医療機関」に当てはまる場合は、それぞれの役割を確認する(厚労省の指定医療機関一覧)。・厚労省や医師会の情報から「患者届け出基準」の最新動向を確認する。・院内モニタリング体制を確認する。・医療従事者の健康チェック体制を見直す。・面会ルールを見直す。・高齢者施設等を行き来する医療者がいる場合は、立ち入りルールを見直す。 菅原氏が理事を務める日本環境感染学会では、オリンピック・パラリンピック前の輸入感染症対策教育を目的としたDVDを制作しており、動画の一部を公開している。「COVID-19を想定したものではないが、感染対策の基本は共通なのでこれも参考にしてほしい」と述べた。

検索結果 合計:5020件 表示位置:2561 - 2580