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治療薬は「痛み」の種類で変わる

 ファイザー株式会社とエーザイ株式会社は、12月1日に都内において「いまさら聞けない痛み止め薬の基礎知識」をテーマに、プレスセミナーを共催した。 セミナーでは、ファイザー社が行ったアンケート調査「痛み止め薬の使用実態と患者意識に関する全国調査」を織り交ぜ、加藤 実氏(日本大学医学部麻酔科学系麻酔科学分野 診療教授)が慢性痛とその治療の概要をレクチャーした。慢性痛には、種類に応じた治療薬がある 加藤氏は、「慢性痛に対する痛みの種類に応じた薬物選択と適切な服薬指導の必要性」と題し、慢性痛治療の現状と今後の治療の在り方について説明した。 現在わが国には、慢性痛を有する患者は2,700万人と推定されており、神経障害性疼痛疑いの患者は660万人と推定されている。これらの痛みの治療を放置すると、睡眠・情動・QOLに多大な影響を及ぼし、破局的思考モデル(痛みへの不安や悲観的思考の増大)により、さらに身体状態を悪化させることになる。 痛みは、大きく「侵害受容性痛(外傷などの痛み)」と「神経障害性痛(電気が走るようなビリビリした痛み)」と、その混合である「混合性痛」に分かれる。通常、侵害受容性痛であれば、NSAIDsやオピオイドでの治療が行われ、神経障害性痛であれば、神経障害性疼痛治療薬、抗うつ薬、オピオイドで治療が行われる。 とくに神経障害性痛の痛みの仕組みでは、侵害受容器からの痛み信号が神経節などを経る段階で中枢感作されて脳に到達し、そのため痛み信号の増幅が起こり痛苦が発生するものであり、この感作を抑える治療薬が適用される。具体的には、第1選択薬ではプレガバリン、ノルトリプチリンなどがあり、第2選択薬ではワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液含有製剤、デュロキセチンなどが、第3選択薬ではフェンタニル、モルヒネなどが使用される。また、慢性痛の原因となる神経障害性痛は、画像所見、病理検査で診断できず、NSAIDsでも治療反応がないことから、臨床の場では痛みの鑑別に注意が必要となる。患者の8割は医師から副作用の説明を受けていない 次に11月にファイザー社がインターネットで行った「痛み止めの使用実態と患者意識に関する全国調査」を紹介した(調査対象:長く持続する痛みを抱える全国の成人男女、n=9,400)。これによると不適切使用・管理の実態として、回答者の約6割が「以前の処方薬が余っていても定期的に処方をしてもらう」と答え、約3割が「ほかの医療機関からも処方してもらい併用している」、「そのことを疼痛治療の主治医に伝えていない」など、患者の実態がわかった。また、自己判断による治療中の痛み止め中止については、約6割の回答者が「経験がある」と答え、その理由として「痛みの軽減」「症状の改善なし」「薬に頼りたくない」(上位3つ)などが挙げられていた。また、「治療薬処方時の医師からの説明」では、約5割が「効能・効果の説明を受けていない」と答えるとともに、約8割が「副作用の説明を受けていない」と回答し、医療側からの情報提供不足が懸念される結果となった。 「痛みの種類の知識」では、約2割が「よく知っている」と回答、約5割が「聞いたことがある」と答えている反面、「痛みの種類により治療効果のある薬が異なることの知識」では、約6割以上が知らないと回答するなど知識の偏在も明らかとなった。 「患者が求める痛み治療の目標設定の現状」では、「痛みは完全に取り除きたい」と約9割が回答していたが、約6割は「痛みがあっても日常生活を送ることができればよい」とも回答していた。 治療目標をどこに設定する? 実際の痛みの治療現場では、目標を「痛みを消す」ことから、「痛みが半分になり、生活改善ができる」ことを目指して、治療が行われている。具体的には、患者の痛みが和らぎ、QOLやADLが改善され、日常生活が送れるようになること、睡眠がきちんと取れることが目安となる。そして、治療薬選択の際は、痛みの評価をすることと、無効な薬を速やかに中止することが重要だという。また、加藤氏は、痛み止めを処方する際に、・少ない副作用で最大の鎮痛効果を目指す痛み止めの治療プランを提示する・患者と医師間での治療目標の設定を明確化する・治療薬の必要性について、わかりやすく説明する・副作用の種類/長期投与の安全性を説明する・効果と副作用の継続的な評価の必要性を考えるの5項目を心がけている。診療の際に具体的な説明を言葉やメモで、患者にきちんと伝えることが大切だという。 最後に、「治療環境の質の向上には、医療側から治療薬の効果と副作用の情報提供、そして、患者の正しい理解と能動的な協力は必要不可欠であり、患者参加型の治療環境で治療薬を最大限活用させることが治療のポイントになる」と述べ、レクチャーを終えた。ファイザー株式会社の「痛み止め薬の使用実態と患者意識に関する全国調査」はこちら(ケアネット 稲川 進)関連コンテンツ特集「慢性疼痛 神経障害性疼痛」

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1万超の爪からの薬物検出分析、薬物乱用を見抜けるか

 米国・United States Drug Testing Laboratories社の Irene Shu氏らは、薬物の蓄積リスクが高いと考えられる1万を超える爪のサンプルを用いて、ELISA法またはLC-MS-MS法により薬物の検出を試みた。その結果、さまざまな薬物が検出され、薬物の長期使用および乱用を評価するうえで、爪の分析が有用な可能性を示唆した。Journal of Analytical Toxicology誌2015年10月号の掲載報告。 爪(手と足爪)はケラチンでできている。爪の成長に伴い、薬物はケラチン線維に取り込まれ、使用3~6ヵ月後にそのケラチン線維内から検出される。その特性を生かして本研究では、ハイリスク症例から3年間にわたり採取した1万349サンプルについて薬物テストを実施した。全指の爪2~3mmを切り取ってサンプルを採取した(100mg)。得られたサンプルについて、有効とされる方法を用いて分析を行った。最初のテストは主に酵素免疫吸着測定法(ELIZA)により行ったが、一部は液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS-MS)によって行った。陽性と推定されるサンプルについて、薬物の種類ごとに適した洗浄、微粉砕、分解、抽出などの過程を経て確認試験を行った。 主な結果は以下のとおり。・合計サンプル7,799例を用いてアンフェタミンに関する分析を行った。・すべてのアンフェタミン分析において、濃度は40~57万2,865pg/mg(中央値100~3,687)の範囲にあった。・サンプルの14%で、アンフェタミンとメタンフェタミンが認められ、22例で3,4メチレンジオキシメタンフェタミン陽性(0.3%)、7例でメチレンジオキシアンフェタミン陽性(0.09%)、4サンプルで3,4-メチレンジオキシ-N-エチルアンフェタミン陽性(0.05%)であった。・サンプルの5%(合計7,787例における)で、コカインとその関連分析物が検出された。濃度は20~26万5,063pg/mg(中央値84~1,768)の範囲にあった。・オピオイド濃度は40~11万8,229pg/mg(中央値123~830)の範囲にあった。・オキシコドン(15.1%)、ヒドロコドン(11.4%)は、モルヒネコデイン、ヒドロモルフォン、メタドン、2-エチリデン-1,5-ジメチル‐3,3-ジフェニルピロリジン、オキシモルホンなど他のオピオイド(1.0~3.6%)に比べ高率で検出された。・カルボキシ-Δ-9-テトラヒドロカンナビノールカルボン酸の陽性率は18.1%(0.04~262pg/mg、中央値6.41)であった。・サンプル3,039例のうち756例(24.9%)が、エチルグルクロニド陽性(20~3,754pg/mg、中央値88)であった。・爪の中に認められる他の薬物にはバルビツール酸塩、ベンゾジアゼピン、ケタミン、メペリジン、トラマドール、ゾルピデム、プロポキシフェン、ナルトレキソン、ブプレノルフィンがあった。・高感度分析機器、主にLC-MS-MSが、爪における薬物をフェムトグラム(10-15g)単位での検出を可能にしている。本研究では、ハイリスク集団からサンプルを採取しているため、陽性率は非常に高かった。関連医療ニュース 薬物過剰摂取のリスクを高める薬物は 薬物依存合併の初発統合失調症患者、精神症状の程度に違いがあるか 日本人薬物乱用者の自殺リスクファクターは

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神経障害性疼痛、ノルトリプチリンとモルヒネは単剤より併用が有効

 神経障害性疼痛に対し、三環系抗うつ薬を含む1次治療は必ずしも有効ではないため、2次治療としてオピオイドが推奨されている。カナダ・クイーンズ大学のIan Gilron氏らは、三環系抗うつ薬であるノルトリプチリンとモルヒネの併用療法ついて有効性および安全性を評価する目的で、各単独療法と比較する無作為化二重盲検クロスオーバー試験を行った。その結果、併用療法において便秘、口乾および傾眠の副作用発現頻度が高かったものの、有効性は各単独療法と比較して優れていることが明らかとなった。Pain誌2015年8月号の掲載報告。 研究グループは、2010年1月25日~2014年5月22日の間に単施設にて神経障害性疼痛患者52例を登録し、経口ノルトリプチリン、モルヒネおよび併用療法に1対1対1の比で無作為に割り付けた。各治療期間は6週間とし、用量は最大耐用量(MTD)に漸増した。 主要評価項目は、MTDにおける1日の平均疼痛(0~10で評価)、副次評価項目は他の疼痛、気分、QOLおよび副作用などであった。 主な結果は以下のとおり。・39例が少なくとも2つの治療期間を完遂した。・平均1日疼痛スコアはベースライン時5.3で、MTD時は併用療法が2.6、ノルトリプチリン単独療法が3.1(p=0.046)、モルヒネ単独療法が3.4(p=0.002)であった。・簡易疼痛調査票(BPI)スコアも、各単独療法に比べ併用療法で有意に低かった。・中等度~重度の便秘の発現率は、併用療法43% vs.モルヒネ単独療法46%(p=0.82)、vs.ノルトリプチリン単独療法5%(p<0.0001)であった。・中等度~重度の口渇の発現率は、併用療法58% vs.モルヒネ単独療法13%(p<0.0001)、vs.ノルトリプチリン単独療法49%(p=0.84)であった。

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イングレスその後【Dr. 中島の 新・徒然草】(076)

七十六の段 イングレスその後とある講習会の事前打ち合わせの席で。 講師 A 「さっき中島先生、外で会いましたよね。どこか行くところだったのですか?」 中島 「ちょっとその辺を散歩に」 講師 A 「どこに向かって歩いているのかと思いました」 中島 「イングレスをやっているもんですから」 講師 A 「なんですか、それ?」 講師 B 「すごく流行っているらしいですね!」 最近は、暇さえあれば外を歩いています。この日も会場に早く着きすぎたので、周辺のポータルを巡回していたのです。医療界ではあまり浸透していないのか、「自分もやっています」という人にはまだ会ったことがありません。以前にもこのエッセーで述べましたが、イングレスというのはスマホに内蔵されたGPSを使って遊ぶゲームです。ゲームの概要を一言で表すと、「各地に散らばるポータルと呼ばれる場所を回って点数を稼ぐ」ということになります。したがって、このゲームに参加しているとつい外に出てポータルを訪問したくなるわけです。その結果、日焼けした健康な人間ができてしまいます。私もイングレスを開始してから毎日平均4.4km歩いています。もっともポータルの見当たらない田舎に行くと、まったく歩く気になれません。さて、医師のさがとして自分の健康に良いと思ったものは、患者さんにもお勧めしてしまいます。あまり高齢の方はスマホを使いこなすのも難しそうなので、ほどほどの年齢の人までになります。特に運動不足になりがちな肥満の方や糖尿病の方などが格好のターゲットです。中島「散歩すると痩せられますよ」患者「犬を飼ってたときは朝晩散歩してたんだけど」中島「目的なく散歩するのもつらいですよね」患者「そうなのよ」 中島「そこでイングレスですよ」患者「イングレス?」 中島「スマホを使ったゲームで、ついつい外を歩きたくなるんですよ」患者「はあ」ここで「何それ、面白そう!」となればいいのですが、皆さん歩くのも面倒なのか、あまり積極的な返事はかえってきません。それでも日々イングレスをお勧めしています。最後に1句イングレス 健康維持に ゲームやり

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薬物過剰摂取のリスクを高める薬物は

 米国・テキサス大学健康科学センター・サンアントニオ校のBarbara J. Turner氏らは、非がん性疼痛に対してオピオイド等を投与された患者を対象に後ろ向きコホート研究を行った。結果、オピオイドならびにベンゾジアゼピン系薬の長期投与は薬物過剰摂取と関連しており、オピオイドのリスクはうつ病患者で最も高いこと、うつ病患者では抗うつ薬の長期使用が過剰摂取のリスクを低下させるが、非うつ病患者ではすべての抗うつ薬使用が過剰摂取のリスクを高めることを報告した。Journal of general internal medicine誌オンライン版2015年2月4日号の掲載報告。 本検討で研究グループは、オピオイド、ベンゾジアゼピン系薬、抗うつ薬およびゾルピデムの処方と、精神障害患者の薬物過剰摂取の関連について調べた。対象は、HMO(健康維持機構)加入者で登録期間が1年以上、2009年1月~2012年7月の間に、非がん性疼痛に対してSchedule IIまたはIIIオピオイドを2つ以上処方された18~64歳の患者であった。評価は、オピオイドを初めて処方された後の薬物過剰摂取による初回入院または通院をアウトカムとした。予測変数として6ヵ月ごとおよび過剰摂取発現の直前6ヵ月のオピオイド使用(1日平均モルヒネ等価量)、ベンゾジアゼピン系薬使用(1日投与量)、抗うつ薬使用(1日投与量)、ゾルピデム使用(1日投与量)を算出するとともに、精神障害(うつ病、不安症/PTSD、精神病)、疼痛関連症状、物質使用障害(アルコール、他の薬物)について調べた。 主な結果は以下のとおり。・薬物過剰摂取例は、計1,385例(0.67%)であった(発生頻度421/10万人年)。・薬物過剰摂取の補正後オッズ比(AOR)は、1日オピオイド量とともに単調に上昇した。・同AORは非うつ病またはオピオイド使用患者との比較で、うつ病かつオピオイド高用量使用(1日100mg以上)患者が最も高かった(AOR:7.06)。・うつ病患者の抗うつ薬長期使用(91~180日)は、短期使用(1~30日)あるいは未使用との比較で、薬物過剰摂取のAORが20%低かった。・非うつ病患者では、抗うつ薬使用により薬物過剰摂取のAORが増加した。未使用との比較において短期使用で最も高かった(AOR:1.98)。・全対象において薬物過剰摂取のAORはベンゾジアゼピン系薬の使用期間とともに増大し、91~180日間で未使用の2.5倍以上となった。関連医療ニュース 抗精神病薬の有害事象との関連因子は なぜSSRIの投与量は増えてしまうのか ベンゾジアゼピン処方、長時間型は大幅に減少  担当者へのご意見箱はこちら

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鬼の霍乱【Dr. 中島の 新・徒然草】(053)

五十三の段 鬼の霍乱「鬼の霍乱(かくらん)」とは、丈夫そうにみえる人が急病になって苦しむことです。先日、私もインフルエンザになってしまいました。「なんだか調子が悪いなあ。腹も減らないし」と思って、インフルエンザ迅速診断をすると「A+」との結果が・・・。「あらまあ!」ということで、外来のある金曜日ではありましたが同僚に頼んで帰宅することにしました。ただし、ずいぶん遠方から初診でお見えになった患者さんがいたので、1人だけ診察することになりました。1年ほど前に自動車にはねられた男の子です。お母さんに連れられてやってきました。 中島  「私がどうやらインフルエンザにかかっちまったみたいなんで」 母親 「あらまあ」 中島 「皆さん、マスクをして、私から離れて座ってくださーい」 母親 「はーい」 中島 「私もマスクをしておきまーす」 お互いに部屋の隅と隅に座ったので、ずいぶん間の抜けたやり取りになってしまいました。 中島  「お母さんによると、交通事故以来、お子さんがおかしくなってしまったと、そういうことなんですねえ」 母親 「そうなんですよ! 実はああなって、こうなって・・・」 中島 「ちょっと待ったあ。お母さんがいろいろ言いたいのはよくわかるんですがー、ここでインフルエンザがうつったら元も子もありませーん」 母親 「ええ」 中島 「ですから30秒診療でいきまーす。お母さんの感じているとおり、この子には後遺症がありまーす」 母親 「やっぱり!どこに行っても『正常だ』としか言ってもらえなかったんです」 いわゆる頭部外傷後高次脳機能障害というやつですね。記憶力の低下や人格・性格の変化が起こるのですが、なかなか診断がつきにくいのも事実です。 中島  「後遺障害の診断書作成とリハビリの計画を立てるために神経心理検査と画像検査をやりましょう」 母親 「ぜひお願いします。それでですね、あれがこうなって、これがこうなって・・・」 中島 「今日はこれでおしまいでーす。さようならー」 母親 「あ、はい」 30秒診療なので、用件のみにて終了。それでも、ついに自分の言い分を聞いてくれる医師に会えたからか、短時間の診察でもずいぶん喜んでもらえました。私の方はヘロヘロになって帰宅しましたが、タミフルを飲んでひたすら寝ていたら翌日(土曜日)の昼にはすっかり回復しました。最小限の休みで済ますことができて良かったです。最後に1句インフルで 用件のみにて 30秒

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Dr.林の笑劇的救急問答10 【胸痛編 】

第1回 急性心筋梗塞1 「胸がキュンキュンする80歳女性」 第2回 急性心筋梗塞2 「胃痛を訴える85歳女性」 第3回 大動脈解離1 「急な背部痛の55歳男性」第4回 大動脈解離2 「右片麻痺と構音障害の72歳男性」 すっかりお馴染みのDr.林による救急シリーズの第10作目!今作は電解質異常編と胸痛編の2部構成。胸痛編では、急性心筋梗塞、右室梗塞、大動脈解離について取り上げます。「先生に恋したかも・・胸がキュンキュンするの」「胃が痛い!」「背中が痛い!」「片麻痺が!」と訪れた患者にどう対応しますか?見落としがちなポイントをDr.林ならではの講義でわかりやすく解説します。研修医・講師らが演じる爆笑症例ドラマにもヒントがぎっしり!笑いながらしっかりと学んでください。第1回 急性心筋梗塞1 「胸がキュンキュンする80歳女性」 今回のお題は急性心筋梗塞。救急や臨床の現場で最も見落としたくない疾患の1つ。しかし、心筋梗塞は「非典型例こそ典型」と言われるほど、非典型例が当たり前です。胸痛だけに着目していたら、見落としてしまうことも・・・。胸痛のない心筋梗塞は22~35%もあります。心筋梗塞の診断のPitfallsやDr.林のNERD、30cmの法則など、覚えやすくわかりやすい講義で、自分のモノにしてください。見落とさないためのヒントが満載です。第2回 急性心筋梗塞2 「胃痛を訴える85歳女性」 今回は急性心筋梗塞、その中でも右室梗塞についてです。右室梗塞は普通の心筋梗塞とは戦い方が異なります。いつもどおりMONA(モルヒネ・酸素・ニトロ・アスピリン)での対応はNG!ショックを起こしてしまうこともあります。右室梗塞を見落とさないために何をすべきか、そして右室梗塞だと診断した際にどう対応するかを学んでください。ここで重要なのはやはり心電図!Dr.林が体を使って、心電図の波形の出方を説明します。笑いながら理解できますよ。これでもう、右室梗塞を見落とすことはないでしょう!第3回 大動脈解離1 「急な背部痛の55歳男性」大動脈解離は、急性心筋梗塞に比べて頻度が低く、見逃しやすい疾患です。なんと初診時に4割は見逃すと言われています。見逃さないための診断のポイントは、1.痛みの移動、2.上縦隔拡大、3.血圧左右差で、この3つが揃えば100%大動脈解離です。しかしながら、大動脈解離の7%はこの3ついずれにもあてはまりません。そんな時こそDr.林のQRS!いえいえ心電図ではありません。はてさてQRSとは?!Dr.林の実経験を元に大動脈解離非典型例を見落とさないための診断のポイントを解説します。第4回 大動脈解離2 「右片麻痺と構音障害の72歳男性」急性発症の片麻痺では脳出血や脳梗塞を疑うのは当然のことですが、痛みを伴う場合は、大動脈解離を鑑別に挙げることも非常に重要です。また、大動脈解離は胸痛にプラスしてどのような所見が得られたときに疑うのでしょうか?下壁心筋梗塞→右室心筋梗塞→もしかして大動脈解離?痛みがない大動脈解離の場合は、どうやって見つければいいのか?など診断の難しい大動脈解離を見落とさないためのヒントがぎっしり詰まっています!

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治療抵抗性の慢性咳嗽に対する新選択肢(AF-219)の有効性について(解説:小林 英夫 氏)-291

 外来診療で、咳止めを処方してくださいという声をしばしば耳にされませんか。そんなときはどう対処されていますか。当然ですが、疾患を問わずすべての咳嗽を抑制できる夢の薬は存在していません。細菌性肺炎に鎮咳薬のみを投与しても効果は期待できないので、まず咳嗽の基盤病態の鑑別が医師の出発点ですが、受診者は余計な検査などせず咳止めを出してくれればそれでけっこうです、と主張することも少なくないと思います。 無理とは思いつつ、幅広い病態に有効な鎮咳処方箋はないかと願うこともあります。 新薬AF-219は、気道の迷走神経に発現し咳嗽感覚の過剰反応に関与するP2X3 受容体に対する低分子拮抗薬で、米国Afferent製薬により治験が進められている。同社ホームページによると、P2X3受容体は無髄の細径C神経線維に特異的で内臓、皮膚、関節にも存在し痛覚や臓器機能に関与している。その機序はATPをリガンドとして活性化されるチャンネルで、痛覚感作経路に発現する。英国で慢性咳嗽への治験(本論文)、米国で変形性関節炎による疼痛治療、さらに膀胱痛への治験中とのことである。本来の役割からも咳嗽よりも鎮痛効果を狙っている印象である。本薬を鎮咳に用いた根拠は、気道の迷走神経C線維にP2X3受容体が存在すること、モルモットではATPやヒスタミン吸入させるとP2X受容体を介した咳嗽反射が強まることなどであった。 本研究は、基礎疾患の明らかでない難治性(治療抵抗性)慢性咳嗽患者を対象とし、第II相二重盲検無作為化プラセボ対照試験、単一医療機関でのクロスオーバー法(2週間服薬、2週間wash out、2週間服薬)で実施された。結果は、咳嗽頻度は75%低下し期待できる鎮咳薬である、となっている。 臨床的に満足できる鎮咳薬が少ない実状を踏まえればAF-219に期待したい一方で、論文を読み込むとまだまだ未解決点がある。評価できる点として、primary endpointである鎮咳効果を音響学的自動咳嗽記録機(VitaloJAK)により計測し客観的量的評価がなされている。同時に主観的なvisual analogue scale (VAS)などもsecondary endpointとしているが、咳嗽回数を記録することの価値は大きい。 マイナス点としては対象集団の曖昧さがある。本論文に限らないが慢性咳嗽の研究では回避できない問題である。エントリー基準は、閉塞性障害、胃食道逆流、喫煙、感染、薬剤性咳嗽などを除外し、明らかな咳嗽の原因疾患を有さず、治療によっても8週間以上咳嗽が継続する症例、が選択されている。本邦で重視されるアトピー咳嗽の概念は導入されていない。また、呼吸機能は施行されているが胸部CTについては記載がなく、英国での試験なので未施行と推測される。さらに平均咳嗽罹病期間は9年間である。どのような病態が混在しているのかが不明瞭であろう。次の問題点は、24例中6例が有害事象により服薬中止となっている。重篤な副反応はみられないものの、全例で味覚障害が出現している点が用量変更で解決できるかどうかが大きな課題であろう。これは舌味蕾にP2X3が存在するためで、減量により味覚障害が回避できる可能性があると考察されている。 抗てんかん薬であるガバペンチン、徐放性モルヒネ、サリドマイド、リドカイン吸入などが最新の咳嗽研究対象薬であるが、いずれも十分な鎮咳効果は得られなかった。鎮咳薬という分野での選択肢が少ない、遅れているという現状からは、P2X3受容体拮抗薬の今後に期待したいが、実臨床への過程には今いっそうの検討を経なければならない。さらに有効疾患の絞り込みも望まれる。なお、本邦の咳嗽診療指針として日本呼吸器学会編集の「咳嗽に関するガイドライン第2版(PDF)」は無料ダウンロード可能なので参照をお薦めしたい。

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がん疼痛緩和治療にステロイドがもたらすもの

 オピオイド治療中のがん患者で、その痛みに炎症が重要な役割を占めると考えられる場合、抗炎症効果を期待して、コルチコステロイドを用いることが多い。しかし、そのエビデンスは限られている。そこでノルウェー大学のOrnulf Paulsen氏らは、メチルプレドニゾロンの疼痛緩和効果の評価を行った。試験は、ステロイドの進行がん患者を対象とした疼痛緩和効果の評価としては初となる、多施設無作為二重盲検比較で行われた。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2014年7月7日号の掲載報告。 対象は、中等度から重度の疼痛でオピオイド治療を受けている18歳以上、直近24時間の平均NRSスコア4点以上のがん患者。登録患者は、メチルプレドニゾロン32mg/日群(以下MP群)とプラセボ群(以下PL群)に無作為に割り付けられ、7日間治療を受けた。 主要評価項目は7日時点の平均疼痛強度(NRSスコア、範囲0~10)。副次的評価項目は鎮痛薬使用量(経口モルヒネ換算)、疲労感および食欲不振 、患者満足度である。 主な結果は以下のとおり。・592例がスクリーニングされ、そのうち50例が無作為に割り付けられ、47例が解析対象となった。・患者の平均年齢は64歳、Karnofsky スコアの平均は66であった。・主ながん種は前立腺がん、肺がん、胃・食道がん、婦人科がんであった。・ベースラインのオピオイド使用量(経口モルヒネ換算)は、MP群269.9mg、PL群は160.4mgと差があった。・7日時点の平均疼痛強度はMP群3.60、PL群3.68と両群間で差は認められなかった(p=0.88)。・ベースラインからのオピオイド使用量の変化はMP群1.19 、PL群 1.20と両群間に差はなかった(p=0.95)。・疲労感はMP群では17ポイント改善、PL群で3ポイント悪化と、MP群で有意に改善した(p=0.003)。・食欲不振はMP群で24ポイント減少、PL群では2ポイント増加 と、MP群で有意に改善した(p=0.003)。・患者の全体的な治療満足度はMP群5.4ポイント、 PL群2.0ポイントと、MP群で有意に良好であった(p=0. 001)。・有害事象は両群間に差は認められなかった。 当試験では、メチルプレドニゾロン32mg/日によるオピオイドへの疼痛緩和追加効果は認められなかった。しかしながら、コルチコステロイド治療を受けた患者は、臨床的に有意な疲労感軽減、食欲不振の改善が認められ、患者満足度も高かった。今回の試験は、両群患者のベースラインにおいて、とくにオピオイド使用量に違いがあり、サンプルサイズも小さいものであった。今後は長期的な試験で臨床的利点を検証すべきであろう。

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違法薬物使用への簡易介入は効果なし/JAMA

 プライマリ・ケアのスクリーニングで特定した不健全な薬物使用について、簡易介入(brief intervention)では効果がないことが明らかにされた。米国・ボストン大学公衆衛生大学院のRichard Saitz氏らが無作為化試験の結果、報告した。米国では、不健康なアルコール摂取への介入効果をエビデンスの1つとして、違法薬物使用および処方薬誤用についての大がかりなスクリーニングと簡易介入が行われているという。しかし有効性のエビデンスはなく、プライマリ・ケアでは一般的な予防サービスとしてそうした介入を推奨していなかった。JAMA誌2014年8月6日号掲載の報告。専門性に基づく簡易介入群vs. 簡易介入なし群で効果を比較 研究グループは、不健康な薬物使用(違法薬物使用または処方薬誤用)への効果的な介入とされる2つのカウンセリング方法、すなわち簡易ネゴシエート面接(brief negotiated interview:BNI)と動機付け面接(motivational interviewing:MOTIV)と、それら簡易介入を行わない対照群の3群を比較し、有効性について検討した。 試験は、ボストン都市部の病院をベースとしたプライマリ・ケアの内科で行われた。2009年6月~2012年1月にスクリーニングにより特定された(飲酒、喫煙、薬物関与のスクリーニング検査[ASSIST]で薬物特異的スコアが4以上)528例の薬物使用患者を対象とした。 BNI群では構造化面接法を用いた健康教育が10~15分行われ、MOTIV群では動機付け面接に基づく30~45分の介入と20~30分のブースター介入が、修士号取得者レベルのカウンセラーによって行われた。また試験参加者全員に、薬物依存症の治療および互助リソースが示されたリストが渡された。 主要アウトカムは、各被験者が特定した過去30日間に使用した主な薬物について、追跡6ヵ月時点で使用していた日数であった。副次アウトカムには、自己申告の使用薬物量、毛髪検査による薬物使用、ASSISTスコア(重症度)、薬物使用の影響、安全でない性交、互助ミーティングへの出席、ヘルスケアサービスの利用などを含んだ。介入3群間に有意差なし 試験開始時に、被験者が報告した主な使用薬物は、マリファナ63%、コカイン19%、オピオイド17%であった。 6ヵ月時点で98%が追跡調査を完了した。同時点での主な薬物使用の平均補正後日数は、簡易介入なし群で12日に対し、BNI介入群は11日(発生率比[IRR]:0.97、95%信頼区間[CI]:0.77~1.22)、MOTIV群は12日(同:1.05、0.84~1.32)であった(両比較群vs. 簡易介入群のp=0.81)。 また、その他アウトカムへの効果に関してもBNIまたはMOTIVの有意差はみられず、さらに薬物別や薬物使用重症度で分析した場合も有意な効果はみられなかった。 これらの結果を踏まえて著者は、「簡易介入は、スクリーニングで特定したプライマリ・ケア患者の、不健全な薬物使用を減らす効果はなかった。これらの結果は、違法薬物使用および処方薬誤用のスクリーニングと簡易介入の大がかりな実施を支持しないものであった」とまとめている。

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がんの痛みは我慢しない! 疼痛管理の現状と問題点を第一人者がレクチャー

 6月24日、金原出版は、患者向けの解説書である『患者さんと家族のためのがんの痛み治療ガイド(第1版)』(特定非営利活動法人 日本緩和医療学会 緩和医療ガイドライン委員会編)の出版を記念し、編者の1人である佐藤 哲観氏(弘前大学医学部附属病院 麻酔科 緩和ケア診療室)を講師に迎え、「がんの痛みはとれるんです!」と題するプレスセミナーを開催した。同書は、患者にがん性疼痛管理の内容を知ってもらうために制作されたものである。 セミナーで佐藤氏は、男女ともに毎年増加を続けるがん患者の動向などを前置き後、患者が抱える4つの痛み(がん疼痛、治療の際の痛み、身体衰弱による痛み、他の疾患の痛み)、そしてこれらの痛みはWHO方式のがん疼痛治療の手引きに従えば、80%以上は除痛可能であることを解説した。 しかしながら、除痛可能にもかかわらず、わが国では、医療者側の痛みへの認識不足や知識・治療のスキル不足、医療システム上の医療用麻薬管理の煩雑さや保険上の査定の問題、患者側のさまざまな誤解や迷信などの障壁があり、まだまだ臨床現場で疼痛管理の薬物使用が低調であると問題点を指摘した。また、医療用麻薬の消費量でみると欧米先進国と比較し、わが国は1/10~1/40とかなり低いレベルにあると一例を挙げた。 現状のこうしたさまざまなバリアを克服するために佐藤氏は、医療者には卒前教育の充実やがん診断時からの疼痛管理介入の教育活動を行っており、とくに医師に対しては、日本緩和医療学会における2日間のワークショップで、緩和ケアの知識の普及を目指す「PEACE project」(http://www.jspm-peace.jp/)を推進していることなどを紹介した。また、患者に対しては、「医療用麻薬を使うと中毒になる」や「がんの痛みは治療できない」などの誤解を払しょくするために、本書のような書籍を用いて広く啓発活動を行っていきたいと今後の展開を示した。 現在、WHOの手引では、3段階の鎮痛薬による「除痛ラダー」が示されている。その中でわが国で使用できるオピオイド鎮痛薬は、コデイン、トラマドール、モルヒネ、オキシコドン、フェンタニル、メサドン、タペンタドール(2014年3月製造販売承認)の7種類があり、錠剤だけでなく、注射薬、貼付薬などのほかに舌下錠や頬粘膜吸収錠と剤形も豊富にそろい、使いやすくなっていると紹介した。また、頬粘膜に塗布するスティック型や頬粘膜吸収型フィルムなどわが国未発売の製品の存在、鼻噴射型の薬剤も海外で開発途上にあることなど最新のオピオイドの現状を披露した。 今後の課題としては、医療者には、早い段階からのがん性疼痛への介入と患者の痛みの汲み取り、積極的な医療用麻薬の使用などを教育するとともに、患者には、痛みを我慢せずに医療者に伝えること(そのためのメモや「痛み日記」の励行など)、鎮痛薬使用を恐れないことを啓発していきたいとまとめ、セミナーを終了した。 なお医療者向けには『がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン 2014年版 (第2版)』も同時出版されている。詳しくは金原出版まで

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抗精神病薬誘発性持続勃起症への対処は

 持続勃起症(プリアピスム)は、性的刺激とは関係なく陰茎の勃起状態が、3時間以上続く状態であり、痛みを伴うことが多い。持続勃起症は泌尿器科的な緊急事態で重篤な合併症を引き起こす可能性がある。持続勃起症の発症の25~40%は薬物が原因で、抗うつ薬、降圧薬、抗凝固薬、交感神経α受容体遮断薬ほか精神を活性化する物質(アルコール、コカイン、大麻など)などが含まれるが、薬物関連の持続勃起症の約50%は抗精神病薬に起因するという。モロッコ・Ar-Razi大学精神科病院のJ. Doufik氏らは、抗精神病薬により誘発された持続勃起症とその対処について、症例報告を行った。Encephale誌オンライン版2014年4月4日号の掲載報告。持続勃起症の症例には現状ではアミスルプリドのような薬剤が適している 研究グループは、とくに非安定性の精神疾患患者において、臨床医はこのまれな副作用とその処置の困難さを認知しておくべきであるとして本症例報告を行った。 抗精神病薬により誘発された持続勃起症の症例とその対処の概要は以下のとおり。・患者は22歳、統合失調症と診断されたモロッコ人男性。精神疾患エピソードの治療のため、精神科病院に初めて入院していた。・患者は、当初15mg/日のハロペリドール投与を受けていた。7日後、持続勃起症を発症した。・患者はただちに泌尿器科に紹介され、海綿体の吸引と洗浄を行うことが提案されたが、患者が拒否したため、実行できなかった。しかしその後10時間後に勃起は自然に萎縮した。・ハロペリドールの投与は中断され、4日後患者はオランザピン10mg/日投与に切り替えられた。・10日後、患者は2度目の持続勃起症を呈した。そのため、オランザピンも投与が中断された。・緊急処置として、海綿体の吸引と洗浄を行われ、陰茎の部分的萎縮に至った。・2日後、治療が行われていないにもかかわらず、患者は再び持続勃起症を呈した。・陰茎の血行再建術が提案されたが、また患者が拒否したため施行には至らなかった。・最終的に、患者はアミスルプリド(国内未発売)400mg/日が投与され、良好なアウトカムを得た。・持続勃起症は、1ヵ月後に消失したが、海綿体の線維化と部分的な勃起不全が残った。 上記を踏まえた著者らの論点は次のとおり。・持続勃起症の発生に関する、抗精神病薬の正確な寄与機序はほとんどわかっていないが、多様な要因が関わっていると思われた。・仮説として最も言及されているのは神経筋の関与である。すなわち、抗精神病薬の作用として類似してみられる、海綿体のα-1アドレナリン様作用受容体の活性を阻害するというものである。・精神疾患患者における持続勃起症の発症、とくに代謝不全の時期における発症は、医療スタッフにとって数多くの難題をもたらすことになる。・第一に、持続勃起症の副作用について患者が認識していないこと、それにより重篤な結果を招く可能性があること。・第二に、抗精神病薬治療の投与量および投与期間と、1つの持続勃起症の発現との関連、およびそれ以上の発症との関連が判明していておらず、予測が難しいこと。・第三に、そのほかの抗精神病薬の選択と開始がチャレンジなことである。・文献では、多くの持続勃起症例が、従来および非定型の両者の抗精神病薬について報告されている。しかしながら、報告者の多くはこうした患者に与えられるべき選択肢については触れていなかった。・そうした中で現状では、α-アドレナリン作用性がないアミスルプリドのような薬剤が、こうした持続勃起症の症例に適しているようであった。・持続勃起症は、抗精神病薬治療においてまれではあるが重篤な有害事象である。・持続勃起症のリスクについて患者に知らせることは、症状の早期報告とともに、勃起不全の回避に役立つと思われた。・そのほかの抗精神病薬に切り替える場合は、α-1阻害性を持たないものが、通常は推奨される。

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オピオイドの慢性腰痛への短期効果

 慢性腰痛に対するオピオイドの使用が著しく増加しているが、利点とリスクは明らかになっていない。今回、2007年のコクランレビューがコロンビア・Hospital Pablo Tobon UribeのLuis Enrique Chaparro氏らによりアップデートされ、慢性腰痛の短期治療においてオピオイドはプラセボに比し疼痛をやや改善し、機能障害もわずかながら改善することが示された。著者は、「慢性腰痛に対するオピオイドの短期的な有効性のエビデンスは得られた。ただし、長期治療における有効性および安全性は不明のままである」とまとめている。Spine誌オンライン版2014年1月29日号の掲載報告。 研究グループは、成人の慢性腰痛に対するオピオイドの有効性を評価する目的でコクランレビューを最新版にアップデートした。 解析対象は、2012年10月までに発表された慢性腰痛に対するオピオイド非注射用製剤4週以上投与とプラセボまたはほかの治療(オピオイドを除く)を比較した無作為化比較試験15件(参加者合計5,540例)であった。 主な結果は以下のとおり。・トラマドール(商品名:トラマールほか)は、プラセボと比較して疼痛改善(標準化平均差[SMD]:-0.55、95%信頼区間[CI]:-0.66~-0.44)および機能障害改善(SMD:-0.18、95%CI:-0.29~-0.07)に優れていた。・ブプレノルフィン経皮吸収型製剤(商品名:ノルスパン)は、プラセボと比較して疼痛改善に優れていたが(SMD:-2.47、95%CI:-2.69~-2.25)、機能障害改善は認められなかった(SMD:-0.14、95%CI:-0.53~0.25)。・強オピオイド(モルヒネ、ヒドロモルフォン、オキシコドン、オキシモルフォン、タペンタドール)は、プラセボと比較して疼痛改善(SMD:-0.43、95%CI:-0.52~-0.33)および機能障害改善(SMD:-0.26、95%CI-0.37~-0.15)に優れていた。・1試験は、トラマドールとセレコキシブ(商品名:セレコックス)とで、疼痛改善効果はほとんど差がなかった。 ・2試験(272例)は、オピオイドと抗うつ薬とで、疼痛改善効果および機能障害改善効果に差がなかった。・解析対象となった試験の質は低~中等度で、脱落率が高く、機能障害改善に関する説明が限られていた。・重篤な副作用、依存または過剰摂取、合併症(睡眠時無呼吸、オピオイド誘発性痛覚過敏、性腺機能低下)は報告されなかった。

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最重症COPDに低用量オピオイドは安全か/BMJ

 低用量オピオイド(経口モルヒネ30mg/日以下相当)は、COPD患者の入院や死亡を増大せず、重度呼吸器疾患における症状軽減への使用は安全である可能性が報告された。スウェーデン・ルンド大学のMagnus P Ekstrom氏らが行った同国住民ベースの前向き連続患者コホート研究の結果で、一方で、高用量オピオイドは死亡を増大する可能性も示された。重度呼吸器疾患の患者では慢性の息切れ(呼吸困難)がみられるが、オピオイドによる緩和が可能である。またCOPD患者では一般に不安解消のためにベンゾジアゼピン系薬が用いられているが、これらの単独または併用使用が、呼吸抑制や入院、早期死亡を招くのではないかという懸念があった。BMJ誌オンライン版2014年1月30日号の掲載報告。スウェーデン最重症COPD患者2,249例への使用を評価 研究グループは、最重症のCOPD患者に対するベンゾジアゼピン系薬とオピオイド使用の安全性について評価することを目的に、2005~2009年にスウェーデンでCOPDの長期酸素療法を受けたSwedevox Register登録患者2,249例について分析した。 主要評価項目は、ベンゾジアゼピン系薬とオピオイドの入院率または死亡率への影響で、年齢、性別、動脈血ガス、BMI、呼吸機能状態、入院歴、併存疾患、併用薬で補正し評価した。 2,249例(うち女性59%)のうち、ベンゾジアゼピン系薬使用患者は535例(24%/74.2歳、FEV1 30.0%)、オピオイド使用患者は509例(23%/74.3歳、33.2%)だった。また200例(9%)がベースライン時に両種の薬物を併用していた。高用量は死亡を増大するが、低用量は死亡を増大しない 入院については、2,214例(試験開始時に入院しており退院せずに死亡した35例を除外)を対象に分析した。そのうち1,681例(76%)が入院となったが(追跡期間中央値76日後)、ベンゾジアゼピン系薬もオピオイドも入院率増大との関連はみられなかった。それぞれのハザード比(HR)は0.98(95%信頼区間[CI]:0.87~1.10)、0.98(同:0.86~1.10)だった。また、入院率増大との関連は、高用量投与でもみられなかった。一方、両薬剤の併用は入院率低下と関連していた(HR:0.67、p=0.003)。 観察期間中(2009年末まで)の死亡は、1,129例(50%)だった(追跡期間中央値1.1年)。 ベンゾジアゼピン系薬は、補正後死亡率増大と関連していた(HR:1.21、95%CI:1.05~1.39)。また、高用量であるほど死亡率が上昇する用量依存の傾向がみられた(1日定義用量0.1増大につきHR:1.01、p=0.082)。 一方、オピオイドは、死亡率増大と用量依存の直線的な関連を示し、低用量オピオイド(経口モルヒネ30mg/日以下相当)は死亡率増大と関連していなかった(HR:1.03、95%CI:0.84~1.26)。対照的に高用量は死亡率増大と関連していた(同:1.21、1.02~1.44)。また併用と死亡の関連についても、オピオイドの高用量使用は死亡率増大と関連していたが、低用量使用では死亡リスクは増大しなかった。 これらの関連は、以下の影響を考慮しても変わらなかった。他の薬物との併用(p=0.400)、高炭酸ガス血症(ベンゾジアゼピン系薬p=0.26、オピオイドp=0.22)、各薬剤にナイーブであったこと(それぞれp=0.22、p=0.25)、不安症/うつ病の併存(ベンゾジアゼピン系薬p=0.34)、既往外傷(オピオイドp=0.53)。

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睡眠に関する記事 まとめ

 高知県四万十市で国内の観測史上最高の41℃が観測されるなど、2013年は例年にない猛暑に見舞われている。連日の熱帯夜に寝苦しい思いをされている方も多いのではないか。医学論文にも睡眠にまつわる文献が多数投稿されている。今回は睡眠に関する記事をまとめて紹介する。寝室での夜間光曝露がうつ病に関連 現代生活では夜間光曝露が増加しているが、夜間光曝露はサーカディアンリズム(生体の概日リズム)の変調に関連している。しかし、家庭における夜間光曝露がうつ病と関連しているかどうかは不明である。今回、奈良県立医科大学地域健康医学講座の大林 賢史氏らが高齢者を対象とした研究の横断解析を行った結果、一般の高齢者において自宅の夜間光曝露が抑うつ症状に有意に関連することが示唆され、寝室を夜間暗く保つことによってうつ病のリスクが低下する可能性が示された。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2013年7月12日号に報告。http://www.carenet.com/news/general/carenet/35649境界性パーソナリティ障害と睡眠障害は密接に関連 Edward A. Selby氏は、境界性パーソナリティ障害(BPD)と睡眠障害の関連について、レトロスペクティブに検討を行った。その結果、BPDと睡眠障害との間に関連が認められ、両者が相互に悪影響を及ぼし合っている可能性が示唆された。これまで、BPDにおける慢性睡眠障害の状況を検討した研究は少なかった。Journal of Consulting and Clinical Psychology誌オンライン版2013年6月3日号の掲載報告。http://www.carenet.com/news/general/carenet/35263閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)と閉塞性肺疾患の有病率の関係は? 閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)と閉塞性肺疾患の有病率に関係はあるのか。OSAを有する成人患者とOSAのない成人患者において、COPD、喘息、COPDと喘息の合併、それぞれの有病率を検討した。http://www.carenet.com/news/population/carenet/35168メラトニン分泌の低下が2型糖尿病発症リスクを増大/JAMA メラトニン分泌の低下と2型糖尿病発症リスクの増大が独立して関連していることが明らかにされた。米国・ハーバード公衆衛生大学院のCiaran J. McMullan氏らが行った症例対照研究の結果で、夜間のメラトニン分泌低下とインスリン抵抗性の増大との関連も明らかになったという。メラトニンは体内時計のコントロール下にあり、一般的には夜間の就寝後3~5時間で分泌はピークに達し日中はほとんど産生されない。先行研究において、メラトニンの糖代謝における役割の可能性が示唆され、またゲノムワイド研究ではメラトニン受容体の機能喪失と2型糖尿病発症率との関連などが報告されていたが、メラトニン分泌と2型糖尿病との関連を前向きに検討した報告はなかった。JAMA誌2013年4月3日号掲載の報告。http://www.carenet.com/news/journal/carenet/34333長距離ドライバーのカフェイン摂取、事故リスク減少と関連/BMJ 商業用自動車の長距離ドライバーにとって、お茶やコーヒー、カフェイン錠剤などの法的に認められているカフェイン添加物は、事故のリスクを6割強減少することが、オーストラリア・ジョージ国際保健研究所のLisa N Sharwood氏らによる症例対照研究の結果、明らかになった。長距離ドライバーに関しては、疲労対策として違法な刺激物(コカインなど)の使用が知られる。一方で、カフェインは法的に認められた刺激物で広く消費されており、シミュレーションでは運転者の敏捷性や作業効率を亢進することが示されていたが、リアルワールドでの研究は行われていなかったという。BMJ誌オンライン版2013年3月18日号の掲載報告。http://www.carenet.com/news/journal/carenet/34105閉塞性睡眠時無呼吸症候群の治療、プライマリ・ケアでも提供可能/JAMA 閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)の治療について、プライマリ・ケアでの提供が、睡眠専門医療施設での提供に匹敵することが、オーストラリア・フリンダース大学のChing Li Chai-Coetzer氏らによる無作為化非劣性試験の結果、示された。睡眠障害への気づきと受診を促す啓発活動や肥満者の増大でOSA治療のために専門施設を受診する患者が増え、戦略的な外来治療への関心が高まってきている。プライマリ・ケア受診患者の約3分の1にOSAの疑いがあるとの報告もあり、Chai-Coetzer氏らは、適切な訓練と簡便なマネジメントツールで、プライマリ・ケアでのOSA治療が提供可能か本検討を行った。JAMA誌2013年3月13日号掲載の報告より。http://www.carenet.com/news/journal/carenet/33989ナルコレプシーのリスクが約16倍に、インフルワクチン接種の子ども/BMJ ASO3アジュバント添加パンデミックA/H1N1 2009インフルエンザワクチン(Pandemrix)の接種を受けた英国の子どもで、接種後6ヵ月以内に睡眠障害であるナルコレプシーを発症するリスクが約16倍に増大したことが、同国健康保護局(HPA)のElizabeth Miller氏らの調査で明らかとなった。2010年8月、フィンランドとスウェーデンで同ワクチンの接種とナルコレプシーの関連を示唆するデータが提示され、2012年にはフィンランドの疫学調査により、ワクチン接種を受けた小児/青少年でリスクが13倍に増大したことが判明した。現在、北欧諸国以外の国での検証が進められている。BMJ誌オンライン版2013年2月26日号掲載の報告。http://www.carenet.com/news/journal/carenet/33889統合失調症の陰性症状有病率、脳波や睡眠状態が関連か 統合失調症の研究では、臨床的な不均一性が混乱を招いていることを踏まえ、米国・ウェイン州立大学のNash N. Boutros氏らは、Deficit Syndrome(DS)を考慮した統合失調症の陰性症状集団の特定を試みた。統合失調症症候群に含まれる疾患として欠損型統合失調症(deficit schizophrenia)が提唱されており、欠損症候群診断基準(SDS;Scale for the Deficit Syndrome)の活用により持続的な陰性症状を特徴とするサブグループの特定が可能とされている。しかし長年にわたり、統合失調症の陰性症状集団の電気生理学的な相互作用を検討した研究は報告されているが、DSに焦点を当てた研究はごくわずかしかないのだという。Clinical Schizophrenia & Related Psychoses誌オンライン版2013年2月21日号の掲載報告。http://www.carenet.com/news/general/carenet/33732てんかん患者の50%以上が不眠症を合併! てんかん患者では睡眠障害が頻繁にみられるものの、不眠症とてんかんとの関係はほとんど明らかとなっていない。ボストン大学のMartina Vendrame氏らは、てんかん患者における睡眠状態に関して調査した。Journal of clinical sleep medicine誌オンライン版2013年2月1日号の報告。http://www.carenet.com/news/population/carenet/33636むずむず脚症候群と統合失調症、遺伝子の関連が示唆 脚がむずむずして眠れない、といった症状を呈するむずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群:RLS)。その原因は明らかになってはいないが、脳内のドパミン調節機能障害や鉄分の不足が大きく影響していると言われている。また、ゲノムワイド関連解析やいくつかのレプリケーション研究により、RLSとBTBD9遺伝子の一塩基多型との関連も示されている。韓国のSeung-Gul Kang氏らは抗精神病薬誘発性のRLSと統合失調症患者のBTBD9遺伝子多型との関連を調査した。Human psychopharmacology誌オンライン版2013年1月30日号の報告。http://www.carenet.com/news/general/carenet/33516低用量ゾルピデム舌下錠、不眠症患者における中途覚醒後の入眠潜時を短縮 米国・ヘンリーフォード病院(デトロイト)のThomas Roth氏らは、中途覚醒後の入眠困難を訴える不眠症患者を対象に、新規低用量ゾルピデム舌下錠の有用性をプラセボと比較検討した。その結果、低用量ゾルピデム舌下錠は中途覚醒後の入眠潜時を有意に短縮することを報告した。Sleep誌2013年2月1日号の掲載報告。http://www.carenet.com/news/head/carenet/33494検証!統合失調症患者の睡眠状態とは 統合失調症患者では、睡眠状態に問題を抱えることがしばしば見られる。また、睡眠状態が統合失調症の各症状に影響を及ぼす可能性もある。ポルトガル・リスボン精神病院センターのPedro Afonso氏らは、睡眠パターンや睡眠の質、QOLに関して、統合失調症患者と健常者で違いがあるかを検討した。The world journal of biological psychiatry : the official journal of the World Federation of Societies of Biological Psychiatry誌オンライン版2013年1月15日号の報告。http://www.carenet.com/news/head/carenet/33323

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コーヒー・お茶と健康に関する記事 まとめ

 コーヒーやお茶などカフェインを含む飲料と健康に関する話題は、医学誌でもたびたび論文が掲載される。今回はそれらに関する記事をまとめて紹介する。コーヒー摂取との関連「認めず」―4大上部消化管疾患 コーヒー摂取と4大上部消化管疾患(胃潰瘍、十二指腸潰瘍、逆流性食道炎、非びらん性胃食道逆流症)との間に有意な関連は認められないことが、亀田メディカルセンター幕張 消化器内科の島本 武嗣氏らによる横断的研究で明らかになった。PLoS One誌オンライン版2013年6月12日号の報告。http://www.carenet.com/news/risk/carenet/35810糖尿病患者の血圧を下げるのは緑茶orハイビスカスティー? 1日3杯、ハイビスカスティーや緑茶を飲むことは、血圧高めの2型糖尿病患者に好影響を与えるかもしれない。 2型糖尿病患者における軽度高血圧症にハイビスカスティーと緑茶が及ぼす影響を比較した試験の結果から、4週間、毎日3杯のハイビスカスティーや緑茶を飲むことは、どちらも収縮期および拡張期血圧の低下につながることが明らかになった。本研究は、イラン・Shahid Sadoughi 医科大学のHassan Mozaffari-Khosravi氏らによる検討で、Journal of Dietary Supplements誌2013年6月10日号に掲載された。http://www.carenet.com/news/general/carenet/35790コーヒー・紅茶の摂取量と原因別の死亡率の関係~人種によって異なる? コーヒーや紅茶の摂取量と死亡率は逆相関することが示唆されているが、原因別の死亡率との関係はあまりわかっていない。米国マイアミ大学のHannah Gardener氏らは、コーヒーや紅茶の摂取量と原因別の死亡率(血管関連、血管関連以外、がん、すべての原因)との関係を、多民族集団ベース研究であるNorthern Manhattan Studyでプロスペクティブに検討した。この調査では、人種によりコーヒー摂取量と血管関連死との関係が異なることが示唆された。Journal of Nutrition誌オンライン版2013年6月19日号に掲載。http://www.carenet.com/news/general/carenet/35428長距離ドライバーのカフェイン摂取、事故リスク減少と関連/BMJ 商業用自動車の長距離ドライバーにとって、お茶やコーヒー、カフェイン錠剤などの法的に認められているカフェイン添加物は、事故のリスクを6割強減少することが、オーストラリア・ジョージ国際保健研究所のLisa N Sharwood氏らによる症例対照研究の結果、明らかになった。長距離ドライバーに関しては、疲労対策として違法な刺激物(コカインなど)の使用が知られる。一方で、カフェインは法的に認められた刺激物で広く消費されており、シミュレーションでは運転者の敏捷性や作業効率を亢進することが示されていたが、リアルワールドでの研究は行われていなかったという。BMJ誌オンライン版2013年3月18日号の掲載報告。http://www.carenet.com/news/journal/carenet/34105紅茶・コーヒーの摂取量と前立腺がんリスクの関係 近年、紅茶やコーヒーの摂取と前立腺がんリスク低下が関連付けられている。オランダ・マーストリヒト大学のMilan S. Geybels氏らは、米国ワシントン州キング郡におけるケースコントロール研究で、紅茶・コーヒーの摂取と前立腺がんリスクとの関連を検討した。その結果、紅茶の摂取と前立腺がんリスクの低下との関連性が認められ、コーヒーの摂取については関連が認められなかったことが報告された。Cancer Causes Control誌オンライン版2013年2月15日号の掲載報告。http://www.carenet.com/news/general/carenet/33591

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「寄り道」呼吸器診療 ―呼吸器科医が悩む疑問とそのエビデンス

ひそかな人気ブログ「呼吸器内科医」を書籍化!! 呼吸器診療において多くの医師が悩んでいる、でも成書を調べても答えが見つからない―77の疑問。本書では、この疑問に真正面から取り組み、関連するエビデンス、著者の思い、診療で役立つポイントが示されています。著者は人気ブログ「呼吸器内科医」の倉原優先生(近畿中央胸部疾患センター呼吸器内科)。ブログ「呼吸器内科医」:http://pulmonary.exblog.jp内容例(詳しくは目次をご参照ください):気管支鏡時の抗菌薬にエビデンスはあるのか?結核患者さんとどのくらい接触したら自分にも感染してしまうのか?気管支喘息発作に対する全身性ステロイドの最適量は?胸腔ドレーン抜去前のクランプテストにエビデンスはあるのか?癌以外の呼吸困難感にモルヒネを使用してよいか?鎮咳薬で最も効果的なものは?吃逆の治療のエビデンスは?―など計77の疑問を解説!画像をクリックすると、一部がPDFでご覧いただけます。 「寄り道」呼吸器診療―呼吸器科医が悩む疑問とそのエビデンス 定価 本体4,500円+税判型 A5判頁数 415頁発行 2013年5月編集 倉原 優(国立病院機構近畿中央胸部疾患センター内科)Amazonでご購入の場合はこちら

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【CASE REPORT】腰椎圧迫骨折後の慢性腰痛症 症例解説

■症例:65歳 女性 腰椎圧迫骨折後の慢性腰痛症腰椎圧迫骨折の急性期に、NSAIDs抵抗性の侵害受容性疼痛に対してオピオイド鎮痛薬を段階的に導入して十分な鎮痛効果が得られ、痛みの緩和だけでなくADLの改善が達成された症例である。高齢者の腰椎圧迫骨折後の5年生存率は30%との報告(Lau E, et al. J Bone Joint Surg Am. 2008; 90: 1479-1486)もあり、腰椎圧迫骨折による疼痛(とくに体動時痛)→安静臥床の遷延→廃用症候群→寝たきり→誤嚥性肺炎→生命危機という経過が考えられる。オピオイド鎮痛薬は最も強力な鎮痛薬であることから、痛みの程度に応じて使用しADLを改善することはきわめて重要な意義を持つ。さらに、オピオイド鎮痛薬の導入にあたっては嘔気や便秘といった副作用対策も予防的に行われており、患者のオピオイド鎮痛薬に対する忍容性も達成されていた。本症例のように腰椎圧迫骨折後に痛みが遷延することは決して珍しくはない。しかしながら、このような遷延する痛みが骨折に伴う侵害受容性疼痛だといえるだろうか。言い換えると、「遷延する痛みが器質的な原因の結果として妥当であるか否か」ということだが、これは必ずしも明確に妥当であるとは言えないことが多い。確かに、本症例では、通常組織傷害が治癒すると考えられる3ヵ月を経過しても、体動とは無関係な持続痛が徐々に増悪・拡大しており、当初の腰椎圧迫骨折だけが痛みの原因とは考えにくい。したがって、われわれは非特異的腰痛症と診断した。このような症例に対して、オピオイド鎮痛薬の効果が明確では無いにもかかわらず、オピオイド鎮痛薬をやみくもに漸増し、さらに頓用薬を併用していたことは不適切であるといわざるを得ない。オピオイド鎮痛薬の使用にあたっては、1. Analgesia (オピオイド鎮痛薬を適切に使用し痛みを緩和させること)、2. Activities of daily living(オピオイド鎮痛薬の使用はADLを改善するためであることを医師が理解し患者に教育すること)、3. Adverse effects(オピオイド鎮痛薬による副作用対策を十分に実施すること)、4. Aberrant drug taking behavior(精神依存や濫用を含む不適切な使用を常に評価し、患者教育を行うこと)の頭文字をとって4Asという注意事項が知られている。本症例は急性期のAnalgesiaとAdverse effectsへの対処は適切であったと考えられるが、腰椎圧迫骨折から3ヵ月が経過した慢性期での対応については検討の余地がある。日本ペインクリニック学会が発行した「非がん性慢性疼痛に対するオピオイド鎮痛薬処方ガイドライン」では、オピオイド鎮痛薬の使用目的として、痛みを単に緩和するだけでなくADLを改善するために使用することを推奨している。したがって、組織修復(骨癒合)がある程度進んだであろう時期には、痛みが残存している状況でもオピオイド鎮痛薬を増加させずに運動療法の導入やADL改善の意義について教育すべきであったと考えられる。このことは、慢性腰痛に対して長期安静がred flagとして認識されていることと同義である。よって本症例で慢性期に痛みが残存しておりオピオイド鎮痛薬を増量しても痛みが緩和しないことから、医師が安静を指示していたことは適切であるとは言い難い。また、器質的障害による疼痛(侵害受容性疼痛や神経障害性疼痛)に対してオピオイド鎮痛薬を使用する場合には精神依存や濫用を引き起こしにくいことが基礎研究によって示されているが、この知見は言い換えるとオピオイド鎮痛薬を非器質的な疼痛に対して使用する場合には精神依存を防止し難いことを意味する。また、オピオイド鎮痛薬の血中濃度が乱高下すると精神依存を形成しやすい。したがって、日本ペインクリニック学会の指針でも、オピオイド鎮痛薬は器質的障害が明確な疼痛疾患に対して使用し、その使用時にはオピオイド鎮痛薬の血中濃度を一定にするために徐放製剤(2013年3月現在、非がん性慢性疼痛に対して保険適応を持つ製剤は、デュロテップMTパッチ®、トラムセット®、ノルスパンテープ®である)を使用することが推奨されている。また、このようなオピオイド鎮痛薬を使用する場合にも、非がん性慢性疼痛に対しては一日量として経口モルヒネ製剤120mg換算までにとどめることも推奨されている。これは、鎮痛薬を増量することとQOLの改善効果が必ずしも線形相関にはならず天井効果が現れることがあり、高用量では精神依存や濫用への懸念があるからである。さらに、オピオイド鎮痛薬の使用期間が長くなればなるほど精神依存や濫用、不適切使用が増加することも報告されており、オピオイド鎮痛薬の使用期間は可能な限り短期間にとどめなければならない。このほか、患者自身が鎮痛薬を管理する能力が低下している場合には、家族など患者の介護者にオピオイド鎮痛薬についての知識を教育し、その管理に関与するように指導することも重要である。本症例をまとめると、急性期の腰椎圧迫骨折に対してオピオイド鎮痛薬を早期から導入し、疼痛緩和とADLの改善を達成したことは適切であった。慢性期の腰痛に対して、オピオイド鎮痛薬を増量するとともに頓用させていた点は不適切であった。したがって、オピオイド鎮痛薬の使用にあたっては、治療指針などの推奨事項を十分に理解したうえで適切に使用し、そのことを患者に教育しなければならない。つまり、オピオイド鎮痛薬に対する精神依存や濫用の形成から患者を保護することは医師の義務であると同時に、これらが疑われる患者やオピオイド鎮痛薬の不適切使用が認められる患者に対しては、痛みの重症度にかかわらずオピオイド鎮痛薬を処方しないことは医師の権利であると考えている。

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【CASE REPORT】腰椎圧迫骨折後の慢性腰痛症 症例経過

■症例:65歳 女性 腰椎圧迫骨折後の慢性腰痛症自転車で転倒して腰部を打撲した直後から、腰部の持続痛と体動時の激痛を自覚し臥床して過ごしていた。近医整形外科を受診したところ腰椎レントゲン検査によって第4腰椎圧迫骨折と診断され、非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)を処方された。しかし疼痛、とくに体動時痛が非常に強いことから1%リン酸コデイン40mgを処方されたものの、疼痛に変化がなかった。そこで、転倒のエピソードから2週間目に塩酸モルヒネ散20mgを導入された。吐き気と便秘に対しては適切に制吐剤や緩下剤が使用されたため、オピオイド鎮痛薬による副作用はなかった。効果不十分のためモルヒネは30→50→60mgまで約2週間かけて漸増され、転倒から約1ヵ月後には持続痛と体動時痛のいずれも著明に改善し、日中も臥床して過ごしていた状態から体動時痛が増強しない程度に家事を行えるまでにADLは改善した。残存している痛みに対してモルヒネが漸増され、20~30mgずつ増量されると1~2週間程度は疼痛が緩和するが再び増悪することを繰り返すようになった。さらに、主治医から疼痛が増強しないように安静にするように指導されたことと、患者本人が体動時痛を過度に恐れることから、再び日中もほぼ臥床して過ごすようになりADLは低下していった。また、疼痛が増強した際の頓用薬には当初NSAIDsが処方されていたが、疼痛の増強の訴えに応じてモルヒネを頓用するように指導されていた。転倒から6ヵ月目にはモルヒネの服薬量は200mgになっていたが日中も臥床していることが多くなり家事のほとんどは夫が担当し、痛み以外に緩下剤に抵抗性の便秘や口渇、不眠も出現していた。モルヒネの頓用をしても鎮痛効果を実感していなかったが1日に数回はモルヒネの頓用を続けていた。転倒から約9ヵ月後、オピオイド鎮痛薬に抵抗性の難治性腰痛として当科を紹介され夫とともに受診した。当院受診時に下肢痛はなかったが、転倒当初の腰部に限局した疼痛ではなく腰背部全体の疼痛を訴え、痛みの増減は体動とは無関係であった。疼痛部位の感覚低下はなかった。また、両下肢の筋力低下は認められなかった。痛みの訴え以外には、不眠(入眠困難感と中途覚醒)を強く述べたが、夫から日中はしばしば傾眠傾向であることや夜間はいびきをかいて寝ていることが聴取された。患者本人は気分の落ち込みが強いが食欲はあり、夫が作った食事を食べておりADLの低下・不活動状態と相まって体重は増加していた。腰部MRIでは第4腰椎椎体に圧迫骨折所見があるが、新鮮な炎症所見や偽関節はなかった。現在の腰背部痛は、腰椎圧迫骨折に伴う侵害受容性疼痛ではなく、痛みの原因として妥当な器質的な障害を伴わない非特異的腰痛と診断した。オピオイド鎮痛薬の鎮痛効果を実感していないにもかかわらず、定期内服に加えて頓用を繰り返しており、オピオイド鎮痛薬の不適切使用(aberrant drug taking behavior)状態と評価した。モルヒネの頓用を禁止するとともに、1日量200mgから30mgずつ1週間毎に漸減し、夫にもモルヒネを中心とした鎮痛薬についての知識を教育しそれらの管理を患者と一緒に行うように指導した。加えて、痛みを理由とした行動制限を解除すること(具体的には、日中の臥床時間を減らすこと、積極的に家事に参加するようにすること)を指導し、ADLの改善とともに行動目標(散歩、ショッピング、家事全般)を段階的に増加させていった。当院初診から4ヵ月程度で腰痛は軽度残存しているが許容範囲内であり、不眠は解消した。モルヒネは漸減・中止でき、ADLおよびQOLは転倒前の状態に回復した。

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