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難治性クローン病の寛解導入と寛解維持に対するウパダシチニブの有用性(解説:上村直実氏)

 慢性かつ再発性の炎症性腸疾患であるクローン病(CD)の治療に関しては、病気の活動性をコントロールして患者の寛解状態をできるだけ長く保持し、日常生活のQOLに影響する狭窄や瘻孔形成などの合併症の治療や予防が非常に重要である。すなわち、十分な症状緩和と内視鏡的コントロールを提供する新しい作用機序の治療法が求められる中、最近、活動性とくに中等症から重症のCDに対しては、生物学的製剤により寛解導入した後、引き続いて同じ薬剤で寛解維持に対する有用性を検証する臨床試験が多く施行されている。今回は、CDの寛解導入および寛解維持療法における経口選択的低分子のJAK阻害薬であるウパダシチニブ(商品名:リンヴォック)の有効性を示すRCTの結果が、2023年5月のNEJM誌に報告された。ウパダシチニブの導入療法および維持療法の主要評価項目である臨床的寛解および内視鏡的効果に関して、プラセボより有意に優れた結果を示すと同時に安全性に関しても許容範囲であった。この報告と同時に米国FDAは難治性CDの寛解導入と寛解維持を目的としたウパダシチニブを承認している。 リンヴォック錠は1日1回投与の経口薬で、わが国でも2020年に難治性の関節リウマチ(RA)に対して保険収載され、その後も2021年には関節症性乾癬およびアトピー性皮膚炎、2022年には強直性脊椎炎に対する治療薬として適応追加が承認されている。CDについては2023年6月26日、既存治療で効果不十分な中等症から重症の活動期CDの寛解導入および維持療法の治療薬として適応追加が承認された。 このように難治性CDに対しては潰瘍性大腸炎(UC)と同様にさまざまな生物学的製剤が開発されているが、一般臨床現場で注意すべきは重篤な感染症である。今回のJAK阻害薬であるウパダシチニブ、トファシチニブおよびフィルゴチニブは、わが国でもRAなどに対して比較的長い間使用されているが、自己免疫性疾患に対する新規薬剤のリスクとして結核やB型肝炎ウイルスの再活性化はよく知られており、感染症および悪性疾患の発生には留意する必要がある。とくに、本研究でも述べられているように、JAK阻害薬には血管血栓症や帯状疱疹の発生リスク上昇の可能性も報告されており、薬理作用に精通した長期的な患者管理が重要であろう。

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円形脱毛症の母親の出生児が抱えるリスクとは?

 韓国・延世大学校のJu Yeong Lee氏らが実施した後ろ向き出生コホート研究において、円形脱毛症(AA)を有する母親から出生した児は、AAに関連する併存疾患リスクが高いことが示された。母親のAAと児の自己免疫疾患や炎症性疾患、アトピー性疾患、甲状腺機能低下症、精神疾患の発症に関連がみられ、著者は「臨床医や保護者は、これらの疾患が発生する可能性を認識しておく必要がある」と述べている。AAは自己免疫疾患や精神疾患と関連することが知られているが、AAを有する母親の児に関する長期アウトカムの調査は不足していた。JAMA Dermatology誌オンライン版2023年5月24日号掲載の報告。 研究グループは、韓国の全国健康保険サービス(Nationwide Health Insurance Service)のデータベースと、出生登録データベースを用いて後ろ向き出生コホート研究を実施した。 対象は、2003~15年にAA(ICD-10コードL63に基づく)を診断名として3回以上受診した母親から出生したすべての児6万7,364例(AA群)と、AAと診断されていない母親から出生した児(対照群)67万3,640例であった(1対10の割合で、出生年、性別、保険の種類、所得レベル、居住地をマッチング)。 対象児について出生から2020年12月31日まで追跡し、自己免疫疾患、炎症性疾患、アレルギー性疾患、甲状腺疾患、精神疾患の発症※と母親のAAとの関連について、多変量Cox比例ハザードモデルを用いて評価した(共変量:出生年、年齢、保険の種類、所得レベル、居住地、母親の年齢、分娩形態、母親のアトピー性皮膚炎の既往歴、自己免疫疾患の既往歴)。解析は、2022年7月~2023年1月に行った。※:AA、全頭型脱毛症/汎発型脱毛症(AT/AU)、白斑、乾癬、炎症性腸疾患(IBD)、関節リウマチ(RA)、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、喘息、甲状腺機能亢進症、甲状腺機能低下症、バセドウ病、橋本病、注意欠如・多動症(ADHD)、気分障害、不安症の発症。 主な結果は以下のとおり。・AA群は対照群と比較して、以下の発症リスクが有意に高かった。 -AA(調整ハザード比[aHR]:2.08、95%信頼区間[CI]:1.88~2.30) -AT/AU(同:1.57、1.18~2.08) -白斑(同:1.47、1.32~1.63) -アトピー性疾患(同:1.07、1.06~1.09) -甲状腺機能低下症(同:1.14、1.03~1.25) -精神疾患(同:1.15、1.11~1.20)・AA群のうち、AT/AUを有する母親から生まれた児5,088例は、AT/AU(aHR:2.98、95%CI:1.48~6.00)および精神疾患(同:1.27、1.12~1.44)の発症リスクが高かった。

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わが国初の原発性手掌多汗症治療薬「アポハイドローション20%」【下平博士のDIノート】第123回

わが国初の原発性手掌多汗症治療薬「アポハイドローション20%」今回は、原発性手掌多汗症治療薬「オキシブチニン塩酸塩ローション(商品名:アポハイドローション20%、製造販売元:久光)」を紹介します。本剤はわが国初の原発性手掌多汗症の適応を有する治療薬であり、いわゆる「手汗」を抑制することで、QOLの向上や労働生産性の改善が期待されています。<効能・効果>原発性手掌多汗症の適応で、2023年3月27日に製造販売承認を取得し、6月1日より発売されています。本剤は抗コリン作用を有するため、閉塞隅角緑内障の患者、前立腺肥大など排尿障害のある患者、重篤な心疾患のある患者、腸閉塞または麻痺性イレウスのある患者、重症筋無力症の患者は禁忌となっています。<用法・用量>1日1回、就寝前に適量を両手掌全体に塗布します。1回の塗布量は、両手掌に対しポンプ5押し分が目安です。本剤は可燃性であるため、保存および使用の際には火気を避けます。<安全性>第III相比較試験において、下記の副作用が認められました。1~5%未満適用部位皮膚炎、適用部位そう痒感、適用部位湿疹、皮脂欠乏症、口渇0.1~1%未満適用部位紅斑、皮膚剥脱、口角口唇炎、尿中ブドウ糖陽性なお、重大な副作用として、血小板減少、麻痺性イレウス、尿閉(いずれも頻度不明)が設定されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、手のひらの皮膚から吸収され、エクリン汗腺の受容体をブロックすることで、発汗を抑えます。2.1日1回、就寝前にポンプ5押し分を目安として、両手の手のひら全体に塗布してください。3.起床後、手を洗うまでの間は、眼や塗布部位以外に触れないようにしてください。もし塗布時に眼に入った場合は、刺激や散瞳作用があるため、直ちに水で洗い流してください。4.眼の調節障害やめまい、眠気が現れることがあるので、自動車の運転など危険を伴う機械の操作を行う際には注意してください。5.消化管運動が低下する恐れがあるので、消化器症状が現れた場合は使用を中止し、医療機関を受診してください。6.妊婦または妊娠している可能性のある人は医師に相談してください。<Shimo's eyes>本剤は、わが国初の原発性手掌多汗症に適応を有する薬剤です。原発性局所多汗症は、頭部・顔面、手掌、足底、腋窩に温熱や精神的負荷の有無に関わらず、日常生活に支障を来すほどの大量の発汗が生じる状態で、そのうち手掌部に発現するものが原発性手掌多汗症です。国内における原発性手掌多汗症の有病率は5.33%で、学習効率や労働生産性の低下、精神的苦痛、対人関係への悪影響など、患者のQOLが低下することがあります。「原発性局所多汗症診療ガイドライン 2023年改訂版」において、原発性手掌多汗症に対する第1選択の治療法は、20%~50%塩化アルミニウム外用療法および水道水イオントフォレーシス療法とされています。しかし、塩化アルミニウム外用薬は保険適用外であり、イオントフォレーシスは患者自身による機器購入または機器を有する医療機関への通院が必要です。本剤の有効成分であるオキシブチニン塩酸塩は、エクリン汗腺に発現するムスカリンM3受容体に対して抗コリン作用を有することにより、抑汗作用を示します。本剤の代謝物であるN-デスエチルオキシブチニン(N-Desethyloxybutynin:DEO)も臨床効果に関与することが示唆されています。なお、オキシブチニン塩酸塩は、頻尿治療薬のポラキスやネオキシテープと同じ成分です。12歳以上の原発性手掌多汗症患者284例を対象にした国内第III相比較試験において、投与4週後に発汗量が50%以上改善した患者の割合は、プラセボ群と比較して本剤群で有意に高いことが認められました。本剤塗布から手を洗うまでの行動制限を可能な限り少なくするため、日中の塗布を避け、1日1回就寝前に塗布します。万一、塗布時に眼に入った場合は、散瞳作用および眼刺激性があることから、直ちに水で洗い流します。また、発汗を抑制するため、気温や湿度が高い場所や運動時などでも汗が出ず、体温が上がる恐れがあるため、熱中症対策も指導しましょう。なお、なお、1回の塗布量のポンプ5押し分は約0.5mLに相当し、最初の空打ち分を差し引くと、1本で約7日分に相当します。手掌多汗症の患者のQOL低下はアトピー性皮膚炎やざ瘡よりも大きいという報告もあります。保険適用の治療選択肢が増えることは朗報です。関連サイトHamm H, et al. Dermatology. 2006;212:343-353.

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重症/治療困難なアトピー性皮膚炎、経口アブロシチニブvs.デュピルマブ

 重症および/または治療困難なアトピー性皮膚炎(AD)患者において、アブロシチニブはプラセボやデュピルマブよりも、迅速かつ大幅な皮疹消失とQOL改善をもたらした。米国・オレゴン健康科学大学のEric L. Simpson氏らが、第III相無作為化試験「JADE COMPARE試験」のサブグループについて行った事後解析の結果を報告した。著者は、「これらの結果は、重症および/または治療困難なADへのアブロシチニブ使用を支持するものである」とまとめている。重症および/または治療困難なADに関するデータはこれまで限定的であった。JADE COMPARE試験では、外用薬治療を受ける中等症~重症ADへのアブロシチニブ併用がプラセボ併用と比べて症状改善が大きいこと、デュピルマブ併用と比べてそう痒の改善が大きいことが示されていた。American Journal of Clinical Dermatology誌オンライン版2023年5月22日号掲載の報告。 研究グループは、JADE COMPARE試験の事後解析において、重症および/または治療困難なAD患者のサブセットにおけるアブロシチニブ、デュピルマブの有効性と安全性を評価した。同試験では、中等症~重症ADの成人患者に対し、1日1回の経口アブロシチニブ200mgまたは100mg、2週ごとのデュピルマブ300mg皮下注、またはプラセボを、外用薬と併用して投与した。 研究グループは、重症および/または治療困難なAD患者サブグループを、ベースライン特性に基づき、以下の7つのサブグループに分類した。1)Investigator’s Global Assessment(IGA)スコア42)Eczema Area and Severity Index(EASI)スコア21超3)全身性薬物治療に失敗または不耐性(コルチコステロイドのみ服用患者は除く)4)体表面積に占めるAD病変の割合(%BSA)50超5)EASIスコア38超(EASIスコア上位25%)6)%BSA 65超7)IGAスコア4の統合サブグループ(EASIスコア21超、%BSA 50超、全身性薬物治療に失敗または不耐性[コルチコステロイドのみ服用患者は除く]をすべて満たす) 評価項目は以下のとおり。・16週時におけるIGAスコアに基づく奏効(0[消失]または1[ほぼ消失]かつベースラインから2ポイント以上改善]・16週時におけるEASI-75達成患者の割合・16週時におけるEASI-90達成患者の割合・16週時におけるPeak Pruritus-Numerical Rating Scaleのベースラインからの4ポイント以上の改善(PP-NRS4)達成患者の割合・PP-NRS4達成までの期間・14日間(15日目に評価)のPP-NRSの変化量(最小二乗平均値[LSM])・16週時におけるPatient-Oriented Eczema Measure(POEM)のベースラインからの変化量(LSM)・16週時におけるDermatology Life Quality Index(DLQI)のベースラインからの変化量(LSM)  主な結果は以下のとおり。・重症および/または治療困難なAD患者のすべてのサブグループにおいて、16週時におけるIGAスコアに基づく奏効、EASI-75、EASI-90を達成した患者の割合が、プラセボ群よりアブロシチニブ200mg群で高率であった(名目上のp<0.05)。・PP-NRS4達成患者の割合は、ほとんどのサブグループにおいて、プラセボ群と比べてアブロシチニブ200mg群で高率であった(名目上のp<0.01)。また達成に要した期間は、アブロシチニブ200mg群(範囲:4.5~6.0日)が、100mg群(5.0~17.0日)、デュピルマブ群(8.0~11.0日)、プラセボ群(3.0~11.5日)より短かった。・POEMとDLQIのベースラインからの変化量(LSM)は、すべてのサブグループにおいて、プラセボ群よりアブロシチニブ200mg群で大きく(名目上のp<0.001)、アブロシチニブ200mg群で改善が認められた。・複数のサブグループ(全身性薬物治療に失敗または不耐性であった患者を含む)において、ほとんどの評価項目について、アブロシチニブ群とデュピルマブ群の間に臨床的に意義のある差が観察された。

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ウパダシチニブ、中等~重症クローン病に有効/NEJM

 中等症~重症のクローン病患者において、ウパダシチニブによる寛解導入療法および維持療法はプラセボと比較し優れることが、43ヵ国277施設で実施された第III相臨床開発プログラム(2件の寛解導入療法試験「U-EXCEL試験」「U-EXCEED試験」と1件の維持療法試験「U-ENDURE試験」)の結果で示された。米国・Mayo Clinic College of Medicine and ScienceのEdward V. Loftus氏らが報告した。ウパダシチニブは経口JAK阻害薬で、潰瘍性大腸炎、関節リウマチ、関節症性乾癬、アトピー性皮膚炎および強直性脊椎炎に対して承認されており、クローン病治療薬としても開発中であった。NEJM誌2023年5月25日号掲載の報告。ウパダシチニブvs.プラセボ、寛解導入療法と維持療法の有効性および安全性を比較 研究グループは、中等症~重症のクローン病で18~75歳の患者を対象とし、「U-EXCEL試験」では1剤以上の既存治療または生物学的製剤で効果不十分または不耐容の患者を、「U-EXCEED試験」では1剤以上の生物学的製剤で効果不十分または不耐容の患者を、ウパダシチニブ45mg群またはプラセボ群に2対1の割合で無作為に割り付け、1日1回12週間投与する寛解導入療法試験を行った(二重盲検期)。さらに、両試験において臨床的奏効が認められた患者は、維持療法試験「U-ENDURE試験」に移行し、ウパダシチニブ15mg、同30mgまたはプラセボ群に1対1対1の割合で無作為に割り付けられ、1日1回52週間の投与を受けた。 主要エンドポイントは、寛解導入療法(12週)、維持療法(52週)のいずれにおいても、臨床的寛解および内視鏡的改善とした。臨床的寛解は、クローン病活動指数(CDAI、スコア範囲:0~600、高スコアほど疾患活動性が重症であることを示す)のスコアが150点未満と定義した。内視鏡的改善は、中央判定による簡易版クローン病内視鏡スコア(SES-CD、スコア範囲:0~56、高スコアほど重症度が高いことを示す)が、ベースラインから50%超減少(ベースラインのSES-CDが4点の患者ではベースラインから2点以上の減少)と定義した。 U-EXCEL試験では526例、U-EXCEED試験では495例、U-ENDURE試験では502例が各群に無作為に割り付けられた。臨床的寛解、内視鏡的改善ともにウパダシチニブが有意に優れる 臨床的寛解を達成した患者の割合(ウパダシチニブ45mg群vs.プラセボ群)は、U-EXCEL試験で49.5% vs.29.1%、U-EXCEED試験で38.9% vs.21.1%、同じく内視鏡的改善は、U-EXCEL試験で45.5% vs.13.1%、U-EXCEED試験で34.6% vs.3.5%であり、プラセボ群と比較してウパダシチニブ45mg群で有意に高かった(すべての比較でp<0.001)。 また、U-ENDURE試験の52週時において、臨床的寛解を達成した患者の割合はウパダシチニブ15mg群37.3%、同30mg群47.6%、プラセボ群15.1%、同じく内視鏡的改善はそれぞれ27.6%、40.1%、7.3%であり、いずれもウパダシチニブの両用量群がプラセボ群より有意に高かった(すべての比較でp<0.001)。 安全性については、帯状疱疹の発現率は、ウパダシチニブ45mg群および30mg群がプラセボ群より高く、肝障害ならびに好中球減少症の発現率は、ウパダシチニブ30mg群が他の維持療法群より高かった。消化管穿孔が、ウパダシチニブ45mg群で4例、ウパダシチニブ30mg群ならびに15mg群で各1例に発現した。

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歯科治療の中断が全身性疾患の悪化と有意に関連

 歯科治療の中断と、糖尿病や高血圧症、脂質異常症、心・脳血管疾患、喘息という全身性慢性疾患の病状の悪化が有意に関連しているとする研究結果が報告された。近畿大学医学部歯科口腔外科の榎本明史氏らの研究によるもので、詳細は「British Dental Journal」に4月11日掲載された。 近年、口腔疾患、特に歯周病が糖尿病と互いに悪影響を及ぼしあうことが注目されている。その対策のために、歯科と内科の診療連携が進められている。また、糖尿病との関連に比べるとエビデンスは少ないながら、心・脳血管疾患や高血圧症なども、歯周病と関連のあることが報告されている。歯周病とそれらの全身性疾患は、どちらも治療の継続が大切な疾患であり、通院治療の中断が状態の悪化(歯周病の進行、血糖値や血圧などのコントロール不良)につながりやすい。榎本氏らは、歯科治療を中断することが全身性疾患の病状に影響を及ぼす可能性を想定して、以下の横断的研究を行った。 研究には、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックの社会・医療への影響を把握するために実施された大規模Web調査「JACSIS(Japan COVID-19 and Society Internet Survey)研究」のデータが用いられた。パンデミック第5波に当たる2021年9月27日~10月30日に、Web調査登録者パネルを利用して、年齢、性別、居住都道府県を人口構成にマッチさせた上で無作為に抽出した3万3,081人に回答協力を依頼。2万7,185人(年齢範囲15~79歳、男性49.7%)から有効回答を得た。 このトピックに関する質問は、「過去2カ月間に、全身性疾患の病状は悪化したか」、「過去2カ月間に、歯科治療を受けることができたか」という二つで構成されていた。前者は「はい」か「いいえ」、後者は歯科治療を「継続していた」、「中断した」、および「該当しない(以前から継続的な歯科治療は受けていない)」から選んでもらった。 全身性疾患の検討対象者は、もともと内科疾患を放置している人やコロナ禍のもと内科疾患の通院を中断した人は除外。最終的には、糖尿病1,719人、高血圧症5,130人、脂質異常症2,998人、心・脳血管疾患833人、喘息677人、アトピー性皮膚炎792人、うつ病などの精神疾患1,638人を対象者とした。これら各疾患の患者のうち、50~60%は歯科治療を継続しており、4~8%は中断していた。いずれの疾患においても、歯科治療継続群より中断群の方が、病状が悪化したとの回答が多かった。 糖尿病患者を例にとると、1,719人のうち88人が歯科治療を中断しており、そのうち16人(18.2%)が糖尿病の悪化を報告。歯科治療を継続していた1,043人ではその割合が5.6%だった。年齢、性別、喫煙習慣、教育歴、収入、居住環境(独居か否か、持ち家か否か)を共変量として調整した解析でも、病状悪化率の群間差は有意だった(P=0.0006)。 同様の解析で、高血圧症(P=0.0003)、脂質異常症(P=0.0036)、心・脳血管疾患(P=0.0007)、喘息(P=0.0094)も、歯科治療を中断した群の病状悪化率の方が有意に高かった。アトピー性皮膚炎とうつ病などの精神疾患に関しては、有意差が見られなかった。 著者らは「本研究は横断研究であるために因果関係は不明」とした上で、「歯科治療の中断がいくつかの全身性疾患の状態を悪化させる可能性が示された。つまり、歯科治療の継続が全身性疾患の進展を抑制し得るのではないか。また、全身の内科的疾患の症状悪化によって、将来的に医療において必要となる人的労力や経済的負担が、口腔の健康の維持のための比較的軽度な負担によって抑制可能かもしれない。この結果はわが国における医歯学連携の推進を後押しする、有意義な知見と考えられる」と結論付けている。

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乳児期のRSV感染が小児喘息発症に関連/Lancet

 正期産の健常児で、生後1年目(乳児期)に重症呼吸器合胞体ウイルス(RSV)に感染していない場合は感染した場合と比較して、5歳時点の小児喘息の発生割合が大幅に低く、乳児期のRSV感染と小児喘息には年齢依存的な関連があることが、米国・ヴァンダービルト大学医療センターのChristian Rosas-Salazar氏らが実施した「INSPIRE試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2023年4月19日号で報告された。米国テネシー州の大規模な出生コホート研究 INSPIRE試験は、2012年6月~12月または2013年6月~12月に正期産で生まれた非低出生体重の健常児を対象とする大規模な住民ベースの出生コホート研究であり、米国テネシー州中部地域の11の小児科診療所で参加者の募集が行われた(米国国立衛生研究所[NIH]の助成を受けた)。 乳児期のRSV感染状況(感染なし・感染あり)を、受動的サーベイランスと能動的サーベイランスを併用して調査し、分子生物学的手法と血清学的手法によりウイルスを同定した。主要アウトカム(5歳時点の喘息)を前向きにフォローアップし、5年間のフォローアップを完了したすべての子供について解析が行われた。 1,946例(年齢中央値55日[四分位範囲[IQR]:16~78]、女児48%)が登録され、このうち1,741例(89%)で生後1年目のRSV感染状況のデータが得られた。乳児期に944例(54%)がRSVに感染し、797例は感染しなかった。RSV感染回避により、15%で喘息が予防 5歳時点で喘息を発症していた子供の割合は、RSV感染群が21%(139/670例)であったのに対し、RSV未感染群は16%(91/587例)と有意に低かった(p=0.016)。補正後リスク比は0.74(95%信頼区間[CI]:0.58~0.94、p=0.014)であり、乳児期のRSV感染回避によって予防可能な5歳時点の小児喘息の割合は15%(95%CI:2.2~26.8)と推定された。 また、子供の年齢で層別化したモデルでは、喘鳴の年間再発リスクは、1~4歳のいずれの時点においても、RSV感染群に比べRSV未感染群で低かったが、有意差は1歳時(p<0.0001)と2歳時(p=0.043)でのみ認められた。 アトピー型喘息を、5歳時の喘息と3歳時の空中アレルゲン感作で定義した場合、5歳時の非アトピー型喘息の頻度はRSV感染群に比べRSV未感染群で有意に低かった(p=0.010)が、アトピー型喘息との関連はなかった。また、アトピー型喘息を、医師が5歳までにアレルギー性鼻炎またはアトピー性皮膚炎と診断し、親によって報告された場合と定義しても、同様の結果であった。 著者は、「乳児期のRSV感染と小児喘息との因果関係を明確に示すには、初回RSV感染の予防、遅延、重症度の軽減が、喘息に及ぼす影響について検討する必要がある」としている。

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釣り針が刺さった【いざというとき役立つ!救急処置おさらい帳】第2回

皆さんは釣りをしますか? 私は学生時代に釣りの楽しさを知り、よく遠征していました。「魚の引き」に快感を覚えるタイプで、学生時代はカジキマグロ、福井で働いているときは玄達瀬でアジ科最大種のヒラマサを釣り上げました。地域にもよると思いますが、救急外来で働いていると釣り針が刺さった患者を診る機会がしばしばあります。一般の方は釣り針が刺さったときに何科を受診したらよいかわからないため、かかりつけ医や意外な診療科にふらっとやって来ることもあります。そういうときに対処方法やコツを知らないと本当に困ることになりますよ! 下記は私が経験した苦い経験です。指に釣り針の刺さった強面のお兄さんが受診。疑似餌を用いて釣りをしていたようで、ゴム製の疑似餌が付いたままであった。除去しようとして疲れたのか、ややイライラしながら「痛くないようにしてくださいよ!」とプレッシャーをかけてくる。String pull technique(後述)による抜去に慣れてきたころだったのでトライしてみたが、緊張のためか変な力が入って釣り針はうまく抜けない。激しい痛みが生じたようで、顔をゆがめながらものすごい目つきでこちらを見てくる…。皆さんなら初めの段階に、もしくはこの後どうされますか? このようなことにならないように、今回は釣り針が刺さったときの対処方法とそのコツを紹介します。釣り針の構造釣りをされる方であれば一度は経験すると思いますが、釣り中に釣り針が服に引っ掛かって取れなくなってしまうことがあります。服を傷つけないように取ろうとしてもなかなか難しいですよね。釣り針には下図のように「カエシ」という突起があり、釣り針を抜こうとするとカエシが引っかかって抜けない仕組みになっています。強引に抜こうとすると皮下組織を損傷してしまい、かなりの痛みが伴います。また、餌が外れにくくするための突起である「ケン」にも注意しなければいけません。これらの複雑な構造が釣り針の抜去を難しくしています。画像を拡大する釣り針の抜去方法4選一般的に指に刺さった釣り針を抜去する手法は4つあります1)。(1)Retrograde techniqueRetrograde techniqueは、釣り針を刺さった方向と逆向きにそのまま引き抜くという方法です。釣り針を指側に押して、カエシが引っかからないように抜去します。報告によると成功率は74%とありますが、私の印象ではなかなかこの方法で釣り針を抜去することは難しいです2)。魚を簡単に逃がさないための人類の工夫ですので簡単に取れても困りますもんね…。画像を拡大する(2)String pull techniqueString pull techniqueは、最も傷が小さいと言われる方法です。釣り針を糸で結び、指側に押しながら、釣り針が刺さった方向と逆向きに糸を引っ張ります。屋外でもできることが利点ですが、しっかりとした固定が必要なので耳たぶなどの固定が難しい部位では行えません。画像を拡大する(3)Needle cover techniqueNeedle cover techniqueは、釣り針の針穴に18Gの注射針を挿入し、内腔にカエシを入れ、カエシが皮下組織に引っ掛からないようにカバーしながら抜去する方法です。注射針の先端を直接見ることができないのが難点で、成功率は高くない(47%)という報告があります。私は一度トライしましたが、カエシに注射針が入っているのかよくわからず、「かぶさった」という感覚があったものの結局皮下で引っかかって断念しました。それ以降はやっていません。画像を拡大する(4)Advance and cut techniqueAdvance and cut techniqueは、釣り針を刺さった方向に押し進め、カエシを皮膚から出してペンチなどで切断する方法です。カエシの手前で釣り針を切りますが、切った瞬間に断端が飛んでしまう危険があるため、私は釣り針をガーゼなどで覆ってから切るようにしています。カエシがなくなれば釣り針は逆向きから簡単に抜けるようになります。デメリットは釣り針による穴が2ヵ所できることでしょうか。画像を拡大するケンがある釣り針の場合は注意が必要で、刺さった方向に押し進める際に最初の針穴にケンが入り込んでしまうとそこで抜けなくなります。そのため、あらかじめケンを切っておくか、釣り針の根元を切断して、そのまま刺さった方向に押し進めて針先側から釣り針を抜く方法もあります。画像を拡大する私は基本的には(1)か(2)をトライしてダメなら(4)で抜去しています。(4)で抜けないということはまずないです。鎮痛釣り針の抜去の手技には痛みが生じることが多いため、私は処置の前に局所麻酔(1%キシロカイン)で鎮痛しています。(2)の処置では鎮痛は必要ないとも言われていますが、失敗したときの痛みはかなりのものなので私は鎮痛しています。インターネットで「String pull technique, fish hook」と検索すると動画が見れますが、なかなか簡単にはいきません。なお、痛みを抑えるコツは釣り針を素早く引っ張ることです!抗菌薬と創部処置抗菌薬に関しては基本的に推奨されていません。しかし、免疫抑制状態や糖尿病、肝硬変がある場合や、釣り針が関節内や靭帯や皮下の深いところまで到達している場合は予防投与が検討されます。予防の目的の1つに最近注目を集めるようになったエロモナス・ハイドロフィラ(Aeromonas hydrophila)があります。これは淡水、河口部、海水に広く常在するグラム陰性の通性嫌気性桿菌であり、治療にはフルオロキノロンが適応となります。海や川で使用した釣り針で傷を負い、抗菌薬の予防投与が必要な場合はフルオロキノロンを検討しましょう。また、患者の予防接種歴を確認し、基礎免疫がある場合は最終接種から5年以上経過している場合は破傷風トキソイドを投与し、基礎免疫がない場合は破傷風トキソイドに加えて抗破傷風人免疫グロブリンの投与を検討します3)。創部処置では、針穴を密閉すると感染リスクが高まるので控え、軟膏を塗布もしくは通気性がよいガーゼなどで保護します1)。もし、院外で釣り針が刺さった患者に遭遇した場合、私は(2)のString pull techniqueはあまり推奨しません。冒頭の苦い経験のように、うまくいかないとどうしても強い痛みが生じるからです。院外で遭遇したら無理をせず病院受診を促し、院内ではどの手法を使うにしても鎮痛をしっかりしたほうがよいでしょう。ちなみに、冒頭の強面のお兄さんの釣り針は、結局(4)のadvance and cut techniqueで抜去しましたが、最後に一言「最初からこれでやれよ」と言われてしまいました。ものすごい目つきでにらまれた記憶が今でも残っています…。1)Gammons MG, et al. Am Fam Physician. 2001:63;2231-2236.2)McMaster S, et al. Wilderness Environ Med. 2014:25;416-424.3)Callison C, et al. In:StatPearls [Internet]. Tetanus Prophylaxis. Treasure Island(FL):StatPearls Publishing. 2022.

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緩和ケアの「質」、どう評価する?【非専門医のための緩和ケアTips】第51回

第51回 緩和ケアの「質」、どう評価する?医療マネジメントにおいて「質の評価」はメジャーな分野ですが、“質の高い緩和ケア”って何なのでしょう? なかなか難しいテーマですが、考えてみたいと思います。今日の質問いろいろな分野で医療の質の重要性が議論されていると思うのですが、緩和ケアの質はどう評価するのでしょうか?「在宅看取りの数」が重要な指標とされているようですが、一概に「在宅で看取ることができたら、緩和ケアの質が高い」とも言えない気がするのです。どのように考えるとよいのでしょうか?今回は難しい質問を頂きました。「緩和ケアの質評価」という研究分野があって、さまざまな取り組みがなされています。一方、緩和ケアを提供する場は、急性期病院から慢性期病院まで、在宅医療でも自宅や施設で過ごす方などさまざまです。このように幅広い緩和ケアの在り方に共通する、唯一の指標はありません。それでもあえて設定するとしたら、緩和ケアは「QOLの向上」を目的としていますので、患者さんおよびその家族のQOLを精密に測定できるのであれば、それが妥当な指標かもしれません。QOLの評価ツールはもちろん存在するのですが、それをすべての患者さんに運用するのも現実的ではないですよね。結果として、現状では代替指標で質を評価し、改善しています。では、ベストでないまでも、現状、ある程度妥当だと思われている緩和ケアの質評価手法には、どのようなものがあるのでしょうか? 日本の緩和ケアの「QI:Quality Indicator(質の評価指標)」に関する論文を見ると、さまざまな切り口のQIが示されています。データベースから抽出するQI診療記録から抽出するQIICUにおける終末期に関するQIナーシングホームにおける医師のケアをパフォーマンスモニタリングするインジケーター地域ベースのQIこれらを見るだけでも、冒頭で述べたように、診療の状況によってさまざまなQIが検討されていることがご理解いただけるかと思います。今回、ご質問いただいた先生は在宅医療に関わっているようですので、ナーシングホームにおける医師のQIを見てみましょう。1)患者の希望や事前指示が記録されているか2)痛みがある場合は、それが医師の記録にあり、疼痛緩和に積極的な試みがなされているか3)呼吸困難がある場合は、それが記録にあり、それを最小限にする試みがなされているか4)痛みがある場合、鎮痛治療の効果が継続評価されて、痛みが緩和されているか5)深い症状が医師の記録にあり、緩和する試みがなされているか6)心理、社会的サポートが記載されているか7)患者が望まない治療処置がされていないか8)衛生状態が医師の記録にあるか(失禁、清潔、褥瘡、尊厳)9)患者・家族が医師のカウンセリングを受けているか10)死別後のケアについて医師から提案・提供されているかいかがでしょう? こういった指標を厳密に運用するのはなかなか大変ですし、現状の課題にマッチしたものではないなど課題もあると思います。それでも、私は時々QIを見返し、現状の改善につながる指標として活用できるものはないかと考える機会を持つようにしています。皆さんも活用方法を考えてみるとよいかもしれませんね。今回のTips今回のTips緩和ケア領域のQI指標を眺めてみよう。宮下光令ほか. Palliat Care Res. 2007;2:401-415.

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アトピー性皮膚炎、抗IL-13抗体薬lebrikizumabが有効/NEJM

 インターロイキン13(IL-13)を標的とするIgG4モノクローナル抗体lebrikizumabは、中等症~重症アトピー性皮膚炎(AD)の成人・青少年患者を対象とした2つの第III相試験において、16週の導入療法期間での有効性が確認された。米国・ジョージ・ワシントン大学のJonathan I. Silverberg氏らがNEJM誌2023年3月23日号で報告した。 研究グループが実施した「ADvocate1試験」と「ADvocate2試験」は、個別にデザインされた52週の国際共同第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験で、いずれも16週の導入療法期間と36週の維持療法期間で構成された。 中等症~重症ADの成人(18歳以上)および青少年(12歳以上18歳未満、体重40kg以上)を対象とし、lebrikizumab群とプラセボ群に2対1の割合で割り付けた。lebrikizumabの用量は、ベースライン時と2週目に500mgの負荷投与、以降は250mgとし、隔週皮下投与した。 本稿では、16週までに評価された導入療法期間の結果が報告されている。主要アウトカムは、16週時におけるIGA(Investigator's Global Assessment)スコア0または1(皮膚病変の消失またはほとんど消失)かつベースライン時からの2点以上減少とした。副次アウトカムは、16週時におけるEczema Area and Severity Indexスコアの75%改善(EASI-75)、2、4、16週時におけるそう痒NRS(Numerical Rating Scale)、16週時におけるそう痒による睡眠障害などであった。安全性も評価された。 主な結果は以下のとおり。・ADvocate1試験において、主要アウトカムを達成した患者の割合は、lebrikizumab群(283例)が43.1%、プラセボ群(141例)が12.7%であり、有意差が認められた(p<0.001)。EASI-75達成率はそれぞれ58.8%、16.2%であり、有意差が認められた(p<0.001)。・ADvocate2試験において、主要アウトカムを達成した患者の割合は、lebrikizumab群(281例)が33.2%、プラセボ群(146例)が10.8%であり、有意差が認められた(p<0.001)。EASI-75達成率はそれぞれ52.1%、18.1%であり、有意差が認められた(p<0.001)。・そう痒およびそう痒による睡眠障害の評価結果は、lebrikizumab治療による改善を示唆するものであった。・結膜炎の発生率が、プラセボ群(ADvocate1試験:2.8%、ADvocate2試験:2.1%)よりlebrikizumab群(それぞれ7.4%、7.5%)で高率であった。・導入療法期間中にみられた有害事象のほとんどは軽度または中等度で、試験中止に至ったものはなかった。

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乳児期アトピーの“早期治療介入”、鶏卵アレルギーの発症予防に/国立成育医療研究センター

 国立成育医療研究センターの大矢 幸弘氏らの研究グループは、2023年4月10日のプレスリリースで、食物アレルギーの発症リスクが高い、乳児期早期発症のアトピー性皮膚炎の乳児に対する早期の積極的治療が食物アレルギーの発症を予防することを世界で初めて実証したと発表した。 大矢氏らは、食物アレルギー予防のためにアトピー性皮膚炎の乳児に対して早期に治療を行う臨床研究「アトピー性皮膚炎への早期介入による食物アレルギー発症予防研究/多施設共同評価者盲検ランダム化介入平行群間比較試験:PACI(パッチー)Study(スタディ)」を実施し、研究対象となるアトピー性皮膚炎の生後7週~13週の乳児を、標準的な治療を行う群と、ステロイド外用薬などを使った積極的な治療を行う群に分け、生後28週時点で鶏卵アレルギーがあるかどうかを調べた。その結果、積極的な治療を行った群は標準的な治療の群と比較し、鶏卵アレルギーの発症を25%削減できることがわかった。これは、皮膚への早期の治療介入が食物アレルギーの予防につながるという二重抗原曝露仮説を実証する世界で初めての研究成果である。 今回の研究により、乳児期のアトピー性皮膚炎の発症早期からの速やかな治療開始と、湿疹ゼロを目標とした治療強化により、食物アレルギーの発症を予防できること、アトピー性皮膚炎は食物アレルギーとの関連性が高く、食物アレルギー予防のためには乳児期の発症早期からしっかり湿疹を治療し、経皮感作のリスクを低下させることが重要であることが明らかになった。 大矢氏らは、食物アレルギー予防のためには、乳児期のアトピー性皮膚炎の発症早期からしっかり湿疹を治療し、湿疹ゼロを目標にすることが重要だと語った。ただし、実臨床では、患者さんの症状や重症度などに合わせて、適切な強さのステロイド外用薬の選択を行い、個々の患者さんごとに使用期間と減量のスケジュールを組み立てて副作用を回避し、湿疹ゼロの寛解状態を実現・維持していくことが求められる、と述べている。

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軽度熱傷【いざというとき役立つ!救急処置おさらい帳】第1回

はじめまして!聖マリアンナ医科大学病院 救急医学の沼田と申します。主に救急科で勤務しながら、総合診療医、小児救急、集中治療を勉強してきました。最近は緩和ケアを勉強しています。オフ・ザ・ジョブトレーニングでは、外科系救急初期診療を学ぶ「T&Aマイナーエマージェンシーコース」のコアメンバーとして活動しています。このコラムでは、かかりつけ医が診る機会の多い軽症救急疾患の治療を、救急医の視点でわかりやすく解説していきます。初回は熱傷の中でもI、II度の軽度熱傷の治療についてです。熱傷にはさまざまな原因がありますよね。天ぷらを揚げていた、子供が電気ケトルを倒した、カセットコンロが爆発した…など。熱傷の加療の方向性はほぼ同一ですが、医師によって使用する薬剤や被覆材にはばらつきがあると感じています。大まかな治療に関してはAmerican family physicianの「Outpatient burns: prevention and care」と日本熱傷学会の「熱傷診療ガイドライン(改訂第3版)」を基に、私の経験も交えながらポイントを解説します1,2)。22歳男性。夜間にカップラーメンを食べようとして、カップに熱湯を入れて移動した際に転倒し、熱湯が両腕にかかり受診。既往歴なし、内服歴なし、アレルギー歴なし、バイタル特記事項なし。右前腕に5cm程度の発赤、左前腕に3cm程度の発赤と水疱が2ヵ所ある。水疱の1つは1cm程度、もう1つは3cm程度で破れている。これは、私が近くに皮膚科がない地方の内科外来で働いていたときに経験した症例です。熱傷の治療は、ステップを踏んで診察をしていくことが重要ですので、今回はこの症例を基にどういう判断や対応を行ったかお話しします。1. すぐに入院が必要かどうかの判断(1)受傷部位私の専門が救急であり、火災などによる熱傷に遭遇することもありますが、その場合に最も警戒するのは気道熱傷です。火災が関連している熱傷では、顔面熱傷がないかどうかを確認し、気道熱傷がある場合は人工呼吸管理を行うため入院が必要です。今回の症例は、両腕に熱湯がかかったことによる熱傷ですので気道熱傷はありません。(2)熱傷面積熱傷の面積によっては病院や熱傷センターなどへの搬送が必要になりますので、熱傷の範囲を把握します。よく使われるのが「9の法則」です。頭部、右上肢、左上肢をそれぞれ9%、体幹部の前面、後面をそれぞれ18%、右下肢、左下肢をそれぞれ18%、陰部を1%として熱傷面積を推定します。画像を拡大するまた、熱傷面積が小さく、散在しているときは「手掌法」を用います。これは、手のひらの大きさを体表面積の1%と換算して熱傷面積を推定します。患者の入院の必要性を判断するにあたっては、「Artzの基準」がよく用いられます。II度熱傷の面積が15~30%、III度熱傷の面積が2~10%で一般病院での入院加療が必要とされています。逆に言えば、この面積以下であれば外来通院でよいでしょう。今回の症例の熱傷範囲は1~2%程度ですので、外来通院としました。2. 後日専門医への相談が必要かどうかの判断(1)受傷部位受傷部位で専門的な加療が必要かどうか変わってきます。顔面、手指、肛門、陰部の熱傷や、大関節(肩、膝、股関節)を超える熱傷は、美容や機能予後に影響を与えるので、可能であればなるべく早く専門医に診察してもらいましょう。(2)深達度熱傷には、I度、II度、III度があります。I度は発赤のみ、II度(浅達)は水疱を形成して水疱底の真皮が赤色、II度(深達)は水疱を形成して水疱底の真皮が白色、III度は白色皮革様もしくは褐色皮革様で感覚が消失します。III度熱傷は、適切に治療したとしても拘縮して植皮が必要になる可能性が高いため、専門医に紹介するべきです。II度の浅達か深達かの判別は専門医でなくては困難ですが、治療もとくに変わらないので必ずしも判別する必要性はないと考えます。この患者は、右前腕は発赤のみでI度、左前腕は水疱を形成していてII度熱傷となります。3. 治療(1)冷水での洗浄ここからは、症例のような軽症熱傷を通院加療する流れを記載します。どこで受傷したとしてもまず推奨されるのが冷水での洗浄です。実は強いエビデンスはないと言われていますが、熱傷を負った人の治療で「水で洗う vs.水で洗わない」の検証は倫理的に問題があり行えないため、実際の効果を検証することは困難です。どこでも、すぐに、安価にできるので、受傷後なるべく早く10分程度洗ってもらいましょう。ただし、20分以上の冷水での洗浄や氷水の使用は組織障害や低体温を起こすことがあるため控えます。●右腕(I度)右腕のI度熱傷の治療は、基本的には適切な鎮痛薬の内服のみで完了します。しかし、熱傷は時間とともに進行することがあり、今日はI度であったとしても翌日には水疱を形成してII度に進行していることはしばしば経験するので、進行する可能性があることをしっかりと説明しましょう。進行した場合はII度として治療を行います。●左腕(II度)II 度熱傷の場合は、まずは水疱が保たれているかどうかを確認しましょう。水疱内は清潔ですので、破れていなければ基本的には保存的に加療します。American Family physicianでは水疱のサイズが6mmを超える場合は破膜するよう指導されていますが、私は2~3cmでも保存的に加療しています。重要なのは、患者自身が水疱を保護できるかどうかで、難しいようであれば破膜します。保存的に加療する場合は、ガーゼをかぶせて保護し、もし破れてしまった場合は受診するよう指導します。この症例では、3cmの大きいほうの水疱が破れていました。水疱が破けている場合や、水疱を破膜した場合の治療はどうでしょうか? 私はまずリドカイン塩酸塩ゼリー(商品名:キシロカインゼリー)を塗布してから創部を洗浄しています。その後、破れた水疱の膜を残しておくと感染のリスクがあるため除去します。なお、アルコールやポビドンヨード液などによる消毒は組織障害が生じるため、参考文献2つはいずれも推奨していません。私も創部がよほど汚染されていない限り使用はしません。(2)創部の被覆被覆材にはさまざまなものがあります。メディカルオンラインで「創傷・熱傷被覆材(ドレッシング材)」と検索すると、サイズや用途はさまざまですが130個ほど出てきます。これらの有意性に関する報告は限られていますが、元々熱傷にはスルファジアジン銀が使用されており、それに対する非劣性や有意性を示した論文はあるため、どれを選択しても大きくは変わらないと考えます。その中で、私は基本的には白色ワセリン+ガーゼを使用しています。理由はどこの施設でも置いていて、安価で簡便だからです。患者には、ワセリンをたっぷりと塗って、最低1日1回交換するよう指導して帰宅とします。私がインストラクターとして参加しているT&Aマイナーエマージェンシーコースでは、ガーゼ1枚の範囲を覆う場合、約20gの白色ワセリンの使用を推奨しています。画像のとおり「ぷにゅっとする」くらい厚塗りします。画像を拡大する熱傷の範囲に合わせて調節しますが、熱傷の初期は浸出液が多く、頻回にガーゼ交換が必要ですので、私は患者に白色ワセリンを最低100g渡しています。以前、とある外来で、軟膏がすぐになくなったのでガーゼのみを張って、乾燥して創部に引っ付いてしまった患者がいて、剥ぐのに苦労したことがありました。必ず「軟膏なしでガーゼのみを張るのは控えましょう」と伝えてください。ちなみに、白色ワセリンはドラッグストアでも販売しているので、必ずしも病院を受診して受け取る必要はありません。(4)ステロイド軟膏ステロイド軟膏は、有用性を示すエビデンスに乏しく、安易に使用するべきではないという意見がある一方で、局所の炎症兆候に対して推奨する意見もあるのが現状です。American Family physicianでは使用を推奨せず、本邦の熱傷診療ガイドラインでは「専門医が抗炎症効果を期待して使用する際は、ステロイドの副作用に十分注意しながら、受傷早期(2日間程度)に使用することが望ましい」とされているので、非専門医である私は原則使用しません。(5)外来フォロー推奨された通院間隔はなく、あくまで私のプラクティスを紹介させていただきます。I度熱傷であれば通院の必要はなく、鎮痛薬の処方で終診です。しかし、II度へ移行した場合は再診するよう指導しています。II度熱傷は状況により通院間隔が異なります。その見極めは自力で被覆交換ができるかどうかです。自力で被覆交換が可能であれば、患者の症状に合わせて3~7日程度のサイクルで通院してもらいます。自力での被覆交換が難しい場合は1~3日ごとに通院してもらいます。被覆終了のタイミングは、「ガーゼに浸出液が付かなくなったとき」と伝えています。フォロー中に患者からよく訴えられる症状は、疼痛と掻痒感です。疼痛は初期から生じますので、私は初めからNSAIDsかアセトアミノフェンで対応しています。ただし、数日経って急激に痛みが増悪する、創部に熱感が生じる場合は感染した可能性があるため受診するよう指導します。かゆみが出た場合は抗ヒスタミン薬の有効性が示されているため処方します。今回は、軽度熱傷の症例を例に挙げながら、どういう判断や対応を行ったかお話ししました。軽度熱傷はかかりつけ医が診る機会がありますが、美容や機能予後に影響を与えることも多々あるので、重症度や受傷部位によっては専門医へ相談しましょう。これから定期的に非専門医向けの軽症救急処置のコラムを連載いたします。可能な限り根拠に基づきながら、自身の経験を織り交ぜていこうと思いますのでどうぞよろしくお願いします!1)Lanham JS, et al. Am Fam Physician. 2020;101:463-470.2)日本熱傷学会編. 熱傷診療ガイドライン(改訂第3版).2021.

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IL-13を特異的に中和するアトピー性皮膚炎治療薬「アドトラーザ皮下注」【下平博士のDIノート】第117回

IL-13を特異的に中和するアトピー性皮膚炎治療薬「アドトラーザ皮下注」今回は、アトピー性皮膚炎治療薬「トラロキヌマブ(遺伝子組換え)製剤(商品名:アドトラーザ皮下注150mgシリンジ、製造販売元:レオファーマ)」を紹介します。本剤は、アトピー性皮膚炎の増悪に関与するIL-13を特異的に中和するモノクローナル抗体であり、中等症~重症のアトピー性皮膚炎患者の新たな治療選択肢となることが期待されています。<効能・効果>既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎の適応で、2022年12月23日に製造販売承認を取得しました。本剤は、ステロイド外用薬やタクロリムス外用薬などの抗炎症外用薬による適切な治療を一定期間受けても十分な効果が得られず、強い炎症を伴う皮疹が広範囲に及ぶ患者に使用します。<用法・用量>通常、成人にはトラロキヌマブ(遺伝子組換え)として初回に600mgを皮下投与し、その後は1回300mgを2週間隔で皮下投与します。本剤による治療反応は、通常使い始めてから16週までには効果が得られるため、16週までに効果が得られない場合は投与の中止を検討します。<安全性>全身療法が適用となる中等症~重症のアトピー性皮膚炎患者を対象とした臨床試験において、5%以上の頻度で認められた副作用は、上気道感染(上咽頭炎、咽頭炎を含む)、結膜炎、注射部位反応(紅斑、疼痛、腫脹など)でした。重大な副作用として、重篤な過敏症(頻度不明)が設定されています。<患者さんへの指導例>1.アトピー性皮膚炎の増悪に関与し、過剰に発現しているインターロイキン-13(IL-13)を特異的に中和するモノクローナル抗体です。2.この薬を投与中も、症状に応じて保湿外用薬などを併用する必要があります。3.寒気、ふらつき、汗をかく、発熱、意識の低下などが生じた場合は、すぐに連絡してください。<Shimo's eyes>本剤は、末梢での炎症を誘導する2型サイトカインであるIL-13を選択的に阻害することで、中等症~重症のアトピー性皮膚炎(AD)に効果を発揮する生物学的製剤です。IL-13は皮膚の炎症反応の増幅、皮膚バリアの破壊、病原体の持続性増強、痒みシグナルの伝達増強などに作用し、IL-13の発現量とADの重症度が相関するとされています。そのため、IL-13を阻害することによって、皮膚のバリア機能を回復させ、炎症や痒み、皮膚肥厚を軽減することが期待されています。現在、ADの薬物療法としては、ステロイド外用薬およびタクロリムス外用薬(商品名:プロトピックほか)が中心的な治療薬として位置付けられています。近年では、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害作用を有するデルゴシチニブ外用薬(同:コレクチム)、ホスホジエステラーゼ(PDE)4阻害作用を有するジファミラスト外用薬(同:モイゼルト)も発売されました。さらに、これらの外用薬でも効果不十分な場合には、ヒト型抗ヒトIL-4/IL-13受容体モノクローナル抗体のデュピルマブ皮下注(遺伝子組換え)(同:デュピクセント)、ヒト化抗ヒトIL-31受容体Aモノクローナル抗体のネモリズマブ皮下注(遺伝子組換え)(同:ミチーガ)、JAK阻害薬のバリシチニブ錠(同:オルミエント)などが発売され、治療選択肢が広がっています。本剤は、医療施設において皮下に注射され、原則として本剤投与時もADの病変部位の状態に応じて抗炎症外用薬を併用します。IL-13を阻害することにより2型免疫応答を減弱させ、寄生虫感染に対する生体防御機能を減弱させる恐れがあるため、本剤を投与する前に寄生虫感染の治療を行います。また、本剤投与中の生ワクチンの接種は、安全性が確認されていないため避けます。臨床効果としては、16週目にEASI75(eczema area and severity index[皮膚炎の重症度指標]が75%改善)を達成した割合は、ステロイド外用薬+プラセボ群では35.7%でしたが、ステロイド外用薬+本剤併用群では56.0%でした。また、32週目のEASI-75達成率は92.5%でした。16週時までのステロイド外用薬の累積使用量はステロイド外用薬+プラセボ群では193.5gでしたが、ステロイド外用薬+本剤併用群では134.9gでした。初期投与期間での主な有害事象はウィルス性上気道感染、結膜炎、頭痛などですが、アナフィラキシーなど重篤な過敏症の可能性があるので十分注意する必要があります。投与は大腿部や腹部、上腕部に行い、腹部へ投与する場合はへその周りを外し、同一箇所へ繰り返しの注射は避けます。遮光のため本剤は外箱に入れたまま、30℃を超えない場所で保存し、14日間以内に使用します。使用しなかった場合は廃棄します。本剤は、海外ではEU諸国、イギリス、カナダ、アラブ首長国連邦、アメリカ、スイスで承認を取得しており、中等度~重度のAD療薬として使用されています(2022年8月現在)。参考1)Silverberg JI. et al. Br J Dermatol. 2021;184:450-463.2)レオファーマ社内資料:アトピー性皮膚炎患者を対象とした国際共同第III相TCS併用投与試験(ECZTRA3試験)

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SLEへのバリシチニブ、第III相SLE-BRAVE-I試験の結果/Lancet

 オーストラリア・モナシュ大学のEric F. Morand氏らは、活動性全身性エリテマトーデス(SLE)患者を対象としたバリシチニブの無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験「SLE-BRAVE-I試験」の結果、主要エンドポイントは達成されたものの、主要な副次エンドポイントは達成されなかったことを報告した。ヤヌスキナーゼ(JAK)1/JAK2の選択的阻害薬であるバリシチニブは、関節リウマチ、アトピー性皮膚炎および円形脱毛症の治療薬として承認されている。SLE患者を対象にした24週間の第II相試験では、バリシチニブ4mgはプラセボと比較して、SLEの疾患活動性を有意に改善することが示されていた。Lancet誌オンライン版2023年2月24日号掲載の報告。SLE患者760例をバリシチニブ4mg群、2mg群、プラセボ群に無作為化 SLE-BRAVE-I試験は、アジア、欧州、北米、中米、南米の18ヵ国182施設で実施された。 研究グループは、スクリーニングの24週間以上前にSLEと診断され、標準治療を行うも疾患活動性が認められる18歳以上の患者を、バリシチニブ4mg群、バリシチニブ2mg群またはプラセボ群に1対1対1の割合で無作為に割り付け、標準治療との併用で52週間1日1回投与した。グルココルチコイドの漸減が推奨されたが、プロトコールで必須ではなかった。 主要エンドポイントは、52週時のSLE Responder Index-4(SRI-4)レスポンダーの割合で、ベースラインの疾患活動性、コルチコステロイド量、地域および治療群をモデルに組み込んだロジスティック回帰分析により、バリシチニブ4mg群とプラセボ群を比較した。 有効性解析対象集団は修正intention-to-treat(ITT)集団(無作為化され少なくとも1回治験薬の投与を受けたすべての患者)、安全性解析対象集団は無作為化され少なくとも1回治験薬を投与され、ベースライン後の最初の診察時に追跡調査不能の理由で試験を中止しなかったすべての患者とした。 760例が無作為に割り付けられ、修正ITT集団はバリシチニブ4mg群252例、バリシチニブ2mg群255例、プラセボ群253例であった。52週時のSRI-4レスポンダー率はバリシチニブ4mg群57%、プラセボ群46% 52週時のSRI-4レスポンダー率は、バリシチニブ4mg群57%(142/252例)、プラセボ群46%(116/253例)であり、オッズ比(OR)1.57(95%信頼区間[CI]:1.09~2.27)、群間差10.8(95%CI:2.0~19.6)で有意差が認められた(p=0.016)。バリシチニブ2mg群は50%(126/255例)で、プラセボ群との有意差はなかった(OR:1.14[95%CI:0.79~1.65]、群間差:3.9[95%CI:-4.9~12.6]、p=0.47)。 初回の重度SLE flareが発現するまでの時間やグルココルチコイド漸減など主要副次エンドポイントに関しては、バリシチニブ群のいずれにおいてもプラセボ群と比較して有意差は認められなかった。 重篤な有害事象は、バリシチニブ4mg群で26例(10%)、バリシチニブ2mg群で24例(9%)、プラセボ群で18例(7%)に発現した。SLE患者におけるバリシチニブの安全性プロファイルは、既知の安全性プロファイルと一致していた。

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紅皮症性アトピー性皮膚炎にもデュピルマブが有効

 紅皮症性アトピー性皮膚炎は、広範な皮膚病変によって定義され、合併症を引き起こし、場合によっては入院に至る重症アトピー性皮膚炎である。米国・ノースウェスタン大学のAmy S. Paller氏らは、デュピルマブの有効性と安全性を検討した6つの無作為化比較試験の事後解析において、紅皮症性AD患者に対するデュピルマブ治療は、全体集団と同様にアトピー性皮膚炎の徴候・症状の迅速かつ持続的な改善をもたらし、安全性は許容できるものであったと報告した。JAMA Dermatology誌オンライン版2023年2月1日号掲載の報告。紅皮症性アトピー性皮膚炎がデュピルマブで有意に改善 中等症~重症のアトピー性皮膚炎患者を対象にデュピルマブの有効性と安全性を検討した6つの国際共同、多施設共同、無作為化、二重盲検、プラセボ対照比較試験について、事後解析が行われた。対象は、アトピー性皮膚炎の病変が体表面積(BSA)の90%以上かつ全般症状スコア(Global Individual Sign Score)の紅斑のスコアが1以上を満たした患者とした(紅皮症性アトピー性皮膚炎)。 対象患者は、デュピルマブ(週1回または隔週)またはプラセボを、単剤または局所コルチコステロイド(TCS)との併用で投与された。 16週目における有効性(病変のBSAに対する割合、Eczema Area and Severity Index[EASI]スコア、Peak Pruritus Numerical Rating Scale[そう痒NRS]スコア)、血清中バイオマーカー(TARC[thymus and activation-regulated chemokine]、総IgE、LDH[乳酸脱水素酵素])の変化、安全性(有害事象の発現頻度)などを評価した。 データはレジメンごとにプールされ、デュピルマブ単剤投与とTCS併用投与で層別化された。 主な結果は以下のとおり。・無作為化された3,075例中、209例がベースライン時に紅皮症性アトピー性皮膚炎の基準を満たした。・紅皮症性アトピー性皮膚炎患者集団の年齢中央値はデュピルマブ単剤群31歳、TCS併用群39歳で、全体集団(それぞれ34歳、36歳)と類似していた。また、紅皮症性アトピー性皮膚炎患者集団の男性の割合は、デュピルマブ単剤群71.3%(97例)、TCS併用群74.0%(54例)であった(全体集団はそれぞれ58.7%、60.6%)。・紅皮症性アトピー性皮膚炎患者集団において、デュピルマブ投与群(週1回投与、隔週投与)はプラセボ群と比べて、有効性の指標がいずれも有意に改善した。・病変のBSAに対する割合(最小二乗平均変化率[標準誤差[SE]]):デュピルマブ単剤群は週1回投与-42.0% [7.7]、隔週投与-39.9%[6.5]であったのに対し、プラセボ群は-17.2%[11.0]であった(いずれもp=0.03)。TCS併用群は週1回投与-63.2% [6.7]、隔週投与-56.1%[9.1]であったのに対し、プラセボ群は-14.5%[7.3]であった(いずれもp<0.001)。・EASIスコア(最小二乗平均変化率[SE]):デュピルマブ単剤群は週1回投与-58.5% [9.0]、隔週投与-58.3%[7.9]であったのに対し、プラセボ群は-22.3%[12.4]であった(それぞれp=0.004、p=0.003)。TCS併用群は週1回投与-78.9%[7.8]、隔週投与-70.6%[10.1]であったのに対し、プラセボ群は-19.3%[8.2]であった(いずれもp<0.001)。・そう痒NRSスコア(最小二乗平均変化率[SE]):デュピルマブ単剤群は週1回投与-45.9% [7.8]、隔週投与-33.9%[6.6]であったのに対し、プラセボ群は-0.6% [9.4]であった(いずれもp<0.001)。TCS併用群は週1回投与-53.0% [8.1]、隔週投与-55.7%[10.8]であったのに対し、プラセボ群は-26.0%[8.8]であった(それぞれp=0.006、p=0.01)。・名目上の統計学的に有意な改善は、早ければ1週目からみられた(デュピルマブ単剤群のEASIスコアとそう痒NRSスコア[それぞれp<0.05、p<0.001])。・バイオマーカー値はプラセボと比べて有意に低下した(いずれもp<0.001)。・デュピルマブ治療を受けた患者で最もよくみられた有害事象は、注射部位反応、結膜炎、上咽頭炎であった。

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痛みの原因はがんとは限らない【非専門医のための緩和ケアTips】第46回

第46回 痛みの原因はがんとは限らないどの分野でも診断は大切ですが、緩和ケアでも同様に大切です。診断なくして適切な症状緩和なし! です。といっても、なかなか診断が難しいときも多いのですが、今回はそのような緩和ケアにまつわる診断エラーの話題です。今日の質問進行した大腸がん患者が腹痛を訴え、オピオイドのレスキューを使ってもらったのですが、改善がないということで往診の依頼がありました。これまで良好な疼痛緩和ができていたため、おかしいと思い診察したら、何と尿閉になっておりました。もともと腹水もあって腹部が膨隆していたので気付きにくかったのですが、危うく見逃すところでした。がん患者で注意すべき、痛みの原因になる非がん疾患はどのようなものがあるのでしょうか?今回質問をいただいた先生は、丁寧な診察もあって気付くことができたのでしょう。「腹痛の原因ががんではなく、尿閉だった」というのは、時々経験することです。とくに今回の腹水のように、診断に影響を与える修飾因子がある場合は、さらに疑うことが難しくなります。そうした意味では、今回の例はよく気付いた、といえるでしょう。後から言われれば簡単なことに思えるかもしれませんが、現場できちんと疑うのは難しいものです。最近では「診断エラー」の話題が取り上げられることが増えてきました。誤診の要因やうまく診断できなかった事例を分析して防止策を考えるのが診断エラー学の分野です。緩和ケア領域における診断エラーは、まとまった知見はないと思いますが、今回のように終末期に近くなると多くの症状が複雑に絡むため、診断エラーが生じる要素も増えます。私の経験では、同様に腹痛に対してオキシコドンを使用していた患者さんに、尿閉が生じたことがありました。実は、オピオイドであまり知られていない副作用に尿道括約筋の収縮による尿閉があるのです。そういった意味では尿閉は遭遇する可能性が比較的高い疾患なのです。ほかに気を付けたい痛みの伴う非がん疾患としては、高齢患者も多いため筋骨格系の疾患が挙げられます。変形性関節症はもちろん、ベッド上で動けないことによる関節の拘縮なども痛みの原因になります。褥瘡も心配する必要がありますし、知らない間に病的骨折をしていた、ということもあります。後は、診察しないとわからない帯状疱疹といった原因もあります。まずは、患者さんが痛みを訴えている部位をきちんと診察することが基本です。こうしてみると、緩和ケアには一般的な診断と治療の知識も大切だとわかります。主に内科的な知識ですが、しっかり勉強を続けることが求められます。今回のTips今回のTipsがん患者の痛みの原因として、非がん疾患も忘れない。

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2月20日 アレルギーの日【今日は何の日?】

【2月20日 アレルギーの日】〔由来〕1966(昭和41)年の今日、石坂 公成氏、石坂 照子氏がIgE(免疫グロブリン)を発見したことにちなみ、日本アレルギー協会により制定。同協会では今日を中心とした1週間を「アレルギー週間」と定め、この期間を中心にアレルギーに関する各種啓発活動を行っている。関連コンテンツアトピー性皮膚炎診療の最新知見【診療よろず相談TV】その症状もアナフィラキシーですよ!【Dr.山中の攻める!問診3step】じんましん【患者説明用スライド】IgEってなあに?【患者説明用スライド】アナフィラキシーなどの治療を非専門医向けに/アレルギー総合ガイドライン改訂

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076)あせもになってしまったら?~対策と肌ケア~【Dr.デルぽんの診察室観察日記】(ブログより転載)

第76回 あせもになってしまったら?(『デルマな日常』より転載)アロ~ハ☆今日も元気なデルぽんで~す☆あせもシリーズ第三弾。成り立ち、予防法、ときて今回は汗疹になってしまった場合の対策についてです!どうぞ~~~あせもはほっとくと(特に小児の場合)かきこわし~からのトビヒ~そして全身へ。。という魔のサイクルに陥らないとも限らない。なので、痒みがありかきこわしてしまう場合は早めの受診と適切な治療が大事です☆逆にぜんぜん痒くないで小さい赤ポチがプツプツしてるだけの場合、汗をかかない環境づくり・汗を溜めない工夫で自然に治ることも。いずれにしても、あせもの予防対策(⇒あせも②)適切な肌ケアをすることは大事~☆適切な肌ケアとは?これは汗疹以外にも大事な皮膚科の基本ですが爪を短く切って、かかないよう注意する毎日、清潔に(お風呂)保湿(とくに乾燥肌のひと)をすること。夏場は汗をかくから、肌がしっとりしますね。健康な肌のひとはよいですが、アトピー性皮膚炎・乾燥肌のひとは夏でも保湿をしよう★乾燥しやすいひとの肌の表面は夏でも乱れがち。保湿剤を全体に塗って、皮膚を保護しよう!保湿剤は何を塗るかよりも、しっかりたっぷり毎日塗れたかのほうが大事です。※でも、できれば余分な成分(香料とか食物蛋白とか)が入ってないほうがよい~夏場は汗ばむのでローションタイプの保湿剤が塗りやすいかとおもいま~す☆でも使いやすいものが一番です!爪切ってかかないのは皮膚科の基本★むしろ痒いようなら、きちんと治療を!おいでませ皮膚科。でわね!バーイ☆※この記事は、Dr.デルぽんのご厚意により『デルマな日常』から転載させていただきました。(転載元:『デルマな日常』2017年07月09日 あせもになってしまったら?~対策と肌ケア~)

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075)あせもの成り立ち~汗疹はどうやって出来る?~【Dr.デルぽんの診察室観察日記】(ブログより転載)

第75回 あせもの成り立ち(『デルマな日常』より転載)アロ〜ハ☆今日も元気なデルぽんで〜す☆夏だ!プールだ!あせもが真っ赤だー!!(©ロート)ということで本日は汗疹の漫画でーす☆どうぞー!あせもは、どうやって出来る?それは、作られすぎた汗が蒸発しきれずに、汗の通り道に溜まってしまい作られます!汗をかきやすい夏(高温多湿)に多く、最も季節の影響を受ける皮膚疾患とも言えるっ腕の内側、膝の裏、おなか背中、にできやすいよ☆赤ちゃんやこどもは、顔にもよくできるよ〜はじめは赤くプツプツ小さくて、ひっかいたり放っておくうちに湿疹になってボコボコ赤みが増してくるよ(かゆい)とくに、こんな方はあせもに要注意☆アトピー性皮膚炎肥満の方暑い職場で働く方多汗症の方赤ちゃんこども赤ちゃんやこどもは皮膚が薄い&弱い。そして、汗をたくさん、かきやすい!とくにケアが必要です!あせものケアは、予防も大事☆明日はあせもの予防についてお送りする予定でーす☆でわね!バーイ☆※この記事は、Dr.デルぽんのご厚意により『デルマな日常』から転載させていただきました。(転載元:『デルマな日常』2017年07月07日 あせもの成り立ち~汗疹はどうやって出来る?~)

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アトピー性皮膚炎、抗IL-13抗体薬のステロイドへの上乗せは有用か?

 中等症~重症アトピー性皮膚炎(AD)の青少年・成人患者において、インターロイキン13(IL-13)をターゲットとする高親和性モノクローナル抗体lebrikizumab(LEB)と局所コルチコステロイド(TCS)の併用は、TCS単独と比べてアウトカムの改善が認められた。米国・オレゴン健康科学大学のEric L. Simpson氏らが第III相無作為化試験「ADhere試験」の結果を報告した。安全性は先行試験の報告と一致していた。LEB単剤の有効性と安全性は、第IIb相試験の16週単独投与期間中および2件の52週の第III相試験で示されていた。JAMA Dermatology誌オンライン版2023年1月11日号掲載の報告。 ADhere試験は、第III相多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験で、2020年2月3日~2021年9月16日に、ドイツ、ポーランド、カナダ、米国の54の外来施設において16週間の期間で実施された。青少年(12歳以上18歳未満、体重40kg以上)と成人の中等症~重症AD患者を対象とした。 全体で211例が2対1の割合で、LEB+TCS群(ベースラインと2週目に500mgを投与、その後隔週で250mg投与)またはプラセボ+TCS群に無作為に割り付けられ、TCSとの併用投与を16週間受けた。 16週時点で有効性解析が行われ、主要エンドポイントは、Investigator's Global Assessmentスコア0または1(IGA[0、1])を達成かつベースラインから2以上改善した患者の割合であった。主要な副次エンドポイントは、Eczema Area and Severity Indexの75%改善(EASI-75)を達成した患者の割合(欧州医薬品庁[EMA]では本項目も主要エンドポイントに設定)、Pruritus Numeric Rating Scaleに基づくかゆみ、睡眠へのかゆみの影響、QOLなどであった。安全性評価には、有害事象(AE)のモニタリングが含まれた。 主な結果は以下のとおり。・被験者211例の平均年齢(SD)は37.2(19.3)歳で、女性が48.8%(103例)であった。人種はアジア系が14.7%(31例)、黒人/アフリカ系のアメリカ人が13.3%(28例)であった。・16週時点で、IGA(0、1)達成患者の割合は、プラセボ+TCS群が22.1%(66例)であったのに対し、LEB+TCS群は41.2%(145例)であった(p=0.01)。EASI-75達成患者の割合は、それぞれ42.2%、69.5%であった(p<0.001)。・LEB+TCS群は、主要な副次エンドポイントすべてで、統計学的に有意な改善を示した。・治療中に発現した有害事象(TEAE)のほとんどが、重篤ではなく、重症度は軽症または中等症であった。・LEB+TCS群で報告頻度が高かったTEAEは、結膜炎(7件、4.8%)、頭痛(7件、4.8%)、ヘルペス感染(5件、3.4%)、高血圧(4件、2.8%)、注射部位反応(4件、2.8%)であった。これらのTEAEのプラセボ+TCS群での発現頻度は、いずれも1.5%以下であった。・患者の報告に基づく重篤なAEの発現頻度は、LEB+TCS群(2件、1.4%)とプラセボ+TCS群(1件、1.5%)で同程度であった。

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